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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1391597
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-15 
確定日 2022-11-02 
事件の表示 特願2019−530039「レーダデータ及び撮像装置データを使用して物体を追跡するための装置、システム、及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月14日国際公開、WO2018/104844、令和 2年 5月28日国内公表、特表2020−515810〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)12月4日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年12月5日、アメリカ合衆国)、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。

令和元年 6月11日 :翻訳文、手続補正書の提出
令和2年 6月15日付け:拒絶理由通知書
同年 9月23日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月22日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和3年 4月 5日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月 9日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月16日 :原査定の謄本の送達)
同年10月15日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年12月15日付け:前置報告書
令和4年 5月23日 :上申書の提出


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年10月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「 【請求項1】
物体の動きを追跡するシステムであって、
レーダ装置であって、第1の視野を有しており、前記レーダ装置は、前記第1の視野内で動く物体の前記レーダ装置からの間隔を示す距離、及び、動く物体と前記レーダ装置との間の間隔の時間変化率を示す距離レートのうちの1つに対応するレーダデータを生成するものであるレーダ装置と、
撮像装置であって、前記第1の視野と少なくとも部分的に重複視野内で重複する第2の視野を有しており、前記撮像装置は、物体が前記第2の視野で動くと、前記物体が移動している間の、互いに異なる複数の時間での前記撮像装置に対する物体の角度位置のそれぞれを少なくとも1つの次元で測定する撮像装置データを生成するものである撮像装置と、
プロセッサであって、前記プロセッサは、物体が前記重複視野で動くと、前記物体の軌跡を少なくとも2次元で特定するために、前記撮像装置データと前記レーダデータとを組み合わせ、前記複数の時間での前記物体の角度位置の全ては、前記撮像装置からのデータのみを使用して決定されるものであるプロセッサと、
を備えることを特徴とするシステム。」


第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する「理由2(新規性)」及び「理由3(進歩性)」は、次のとおりである。

理由2(新規性
本願発明は、下記引用文献2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。

理由3(進歩性
本願発明は、下記引用文献2に記載された発明に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献2.米国特許出願公開第2016/0320476号明細書


第4 引用文献2、3に記載された事項及び引用発明の認定
1 引用文献2
(1) 引用文献2に記載された事項
上記引用文献2には、以下の事項が記載されている。下線及び翻訳文は当合議体が付したものである。

ア [0006]
「[0006] In one example embodiment, a method of tracking a moving sports object includes calibrating a perspective of an image of a camera to a perspective of a Doppler radar for simultaneous tracking of the moving sports object, and tracking the moving sports object simultaneously with the camera and Doppler radar. The method may further comprise removing offsets or minimizing differences between simultaneous camera measurements and Doppler radar measurements of the moving sports object. The method may further comprise combining a camera measurement of an angular position of the moving sports object with a simultaneous Doppler measurement of a radial distance, speed or other measurement of the moving sports object. The method may further comprise using a camera measurement to replace, augment, correct, or improve a measured angular position or horizontal or vertical position of the moving sports object.」
([0006] 一つの例示的な実施形態では、移動するスポーツ物体を追跡する方法は、ドップラーレーダの視点に対してカメラ画像の視点を較正し、移動するスポーツ物体をカメラ及びドップラーレーダで同時に追跡することを含む。本方法は、移動するスポーツ物体を同時測定したカメラ測定値及びドップラーレーダ測定値の間のオフセットを除去すること、又は、最小化することを更に含む。本方法は、移動するスポーツ物体の角度位置を示すカメラ測定値と、移動するスポーツ物体の径方向距離、速度、又は、他の測定値を示すドップラー測定値を組み合わせることを更に含む。本方法は、カメラ測定値を使用して、移動するスポーツ物体の測定された角度位置、又は、水平垂直位置を、置き換え、拡張し、補正し又は改善することを更に含んでもよい。)

イ [0037]
「[0037] Referring now to FIG. 1, elements of a tracking system 100 are shown. A tracking Doppler radar 0001 and a camera 0002 are set up to view or measure a desired sports object 0009. The intrinsic parameters of the camera 0002 must be calibrated before use, using a patterned surface such as a checkerboard 102 or similar. An alignment apparatus 0007 is used to calibrate the orientation of the radar 0001 before use. Calibration objects 0012 and 0013 (FIG. 3) are used to calibrate the camera 0002 orientations before use. An output of the radar 0001 is connected to a radar processor 0004. The radar processor 0004 runs radar processing software 0008 to calculate the output of the radar processor 0004. The radar processor 0004 is connected to the video processor 0005. The output of the camera 0002 is connected to the video processor 0005. The video processor 0005 runs video processing software 0006 to calculate the output of the video processor 0005, also using the output from the radar processor 0004. A monitor 0014 is connected to the video processor 0005 for use during camera calibration and system operation to display information and images to an operator. Another output of the video processor 0005 is connected to an external system which can be a television broadcasting system.」
([0037] ここで図1を参照すると、追跡システム100を構成する要素が示されている。追跡ドップラーレーダ0001及びカメラ0002は、所望のスポーツ物体0009を観測する又は測定するように設定される。カメラ0002の固有パラメータは、チェッカーボード102などのパターン化された表面を使用して、使用前に較正されなければならない。使用前にレーダ0001の向きを較正するために、位置合わせ装置0007が用いられる。較正のために用いられる物体0012及び0013(図3)は、使用前にカメラ0002の向きを較正するために用いられる。レーダ0001の出力は、レーダプロセッサ0004に接続される。レーダプロセッサ0004は、レーダプロセッサ0004の出力を計算するためにレーダ処理ソフトウェア0008を実行する。レーダプロセッサ0004は、ビデオプロセッサ0005に接続されている。カメラ0002の出力はビデオプロセッサ0005に接続される。ビデオプロセッサ0005は、ビデオ処理ソフトウェア0006を実行して、レーダプロセッサ0004からの出力も使用して、ビデオプロセッサ0005の出力を計算する。モニタ0014は、カメラ較正及びシステム動作中に使用するためにビデオプロセッサ0005に接続され、オペレータに情報及び画像を表示する。ビデオプロセッサ0005の他の出力は、テレビジョン放送システムのような外部システムに接続される。)

ウ [0097]
「[0097] The camera 0002 is set up to capture images at a fixed frame rate that can be approximately 30 frames per second. The video processing software 0006 is programmed to allow control of the camera settings regarding the source of the frame clock or shutter control, to use either an internal or external signal or control input.」
([0097] カメラ0002は、約30フレーム/秒の固定フレームレートで画像を取り込むように設定される。ビデオ処理ソフトウェア0006は、内部信号、外部信号又は制御入力のいずれかを使用して、フレームクロック又はシャッタ制御の元となるように、カメラの設定の制御を可能にするようにプログラムされる。)

エ [0140]-[0150]
「[0140] Camera and radar measurements may be combined in a number of ways to improve the accuracy and reliability in the object tracking. By way of illustration and not as a complete list, camera tracking suffers or is limited by the following shortcomings:
[0141] 1. Measures an object's position in 2 dimensions only. Although stereoscopic methods can be used for 3-D measurement, depth accuracy is sensitive to the separation distance and rotational accuracies of stereo cameras. Stereoscopic arrangements also require additional costly camera hardware
[0142] 2. The distance to which objects can be tracked is restricted by camera resolution. A certain minimum number of picture elements are required to resolve an object. A camera set up with a field of view tailored to a particular sporting event will invariably have a limit in its distance tracking ability.
[0143] 3. Objects can be obscured causing the camera to temporarily or permanently lose track of the object.
[0144] 4. Objects that move primarily away or towards the camera will not be detected and tracked reliably by the usual methods of differencing to distinguish moving objects.
[0145] 5. Poor contrast of the object against the background for example a white golf ball against white clouds or bright sky impairs detection and tracking and degrades measurement accuracy.
[0146] 6. Poor illumination of the object impairs detection and tracking and degrades measurement accuracy.
[0147] 7. Poor illumination of an object may be overcome by using longer exposure times. This can however result in motion blur which impairs detection and tracking and degrades measurement accuracy.
[0148] 8. Non-uniform illumination of an object, for example a ball that appears with a high contrast crescent can impair its detection and tracking and degrades measurement accuracy.
[0149] 9. Other moving objects can mask the desired object by creating noise or false targets in the image, affecting detection, tracking, and measurement.
[0150] 10. In sports events, objects and backgrounds can be masked or interfered with by shadows from players or structures. Even if these are not moving rapidly, changes in the background brightness will affect the detection, tracking and measurement of a desired object if no adjustments are made to the camera settings to overcome this.」
([0140] カメラ測定値及びレーダ測定値は、物体追跡の精度及び信頼性を改善するために、いくつかの方法で組み合わせられ得る。カメラによる追跡は、完全なリストではないが、例として、以下に示されるような欠点を有し、又は、制約される。
[0141] 1.物体の位置は、二次元情報のみ測定される。三次元情報を測定するためにステレオ法を用いることは可能だが、その場合の奥行き精度は、ステレオカメラの各カメラの間の距離やその向きに影響される。また、ステレオカメラは、高価なカメラ機器の更なる追加を必要とする。
[0142] 2.物体を追跡可能な距離は、カメラの解像度によって制限される。物体の解像には、少なくともある程度の画素を必要とする。特定のスポーツイベントに合わせた視野を有するように設定されたカメラは、その距離追跡能力に常に限界がある。
[0143] 3.物体が不明瞭になると、カメラは、物体の軌跡を一時的又は永久的に失うことがある。
[0144] 4.主にカメラから離れる方向又はカメラに向かう方向に移動する物体は、移動物体を区別するための通常の差分による方法では、確実に検出及び追跡されない。
[0145] 5.白い雲又は明るい空に対する白いゴルフボールのように、背景に対する物体のコントラストが低いと、その検出及び追跡に支障をきたし、測定精度が低下する。
[0146] 6.物体の不十分な照度は、その検出及び追跡に支障をきたし、測定精度が低下する。
[0147] 7.物体の不十分な照度は、より長い露光時間にすることによって克服することができるかもしれない。しかしながら、これは、検出及び追跡に支障をきたし、測定精度を低下させる動きのぼやけをもたらし得る。
[0148] 8.例えば、ボールがコントラストの高い三日月に見えるような、物体の不均一な照度は、その検出および追跡に支障をきたし、測定精度を低下させる可能性がある。
[0149] 9.他の移動する物体が、画像内にノイズ又は偽のターゲットを生成し、検出、追跡及び測定に影響を及ぼすことによって、所望の物体を隠す。
[0150] 10.スポーツイベントでは、物体及びその背景は、選手又は構造物の影によって、隠されるか干渉されることがある。もし、これに対するカメラの設定調整が行われていないときは、物体がそれほど速く移動していない場合でも、背景輝度の変化は、追跡対象の物体の検出、追跡及び測定に影響を及ぼす。)

オ [0151]-[0156]
「[0151] Doppler radar measurement has by example the following shortcomings:
[0152] 1. Position measurements become increasingly noisy as the distance between the radar and the tracked object increases.
[0153] 2. Measured elevation and azimuth angles to the object can be distorted by multipath effects.
[0154] 3. Moving machinery such as rotating fans, irrigation sprinkler systems, and others can interfere with radar's ability to detect, track and measure an object.
[0155] 4. Radar signals can be blocked by people or items between the radar and the tracked object, sometimes if the tracked object moves into a position behind a structure.
[0156] 5. Multiple targets for example on a golf driving range may cause the radar to lose a tracked object.」
([0151] ドップラーレーダによる測定は、例えば、以下の欠点を有する。
[0152] 1.レーダと追跡物体の距離が長くなるにつれて、位置測定情報に含まれるノイズは多くなる。
[0153] 2.測定された物体の仰角及び方位角は、マルチパス効果によって歪められる可能性がある。
[0154] 3.回転ファン、灌漑スプリンクラーシステム、及び、その他のものなどの移動機械は、物体を検出し、追跡し、測定するレーダの能力を妨げる可能性がある。
[0155] 4.レーダ信号は、追跡物体が構造物の背後の位置に移動した場合に、レーダと追跡物体との間の人や物品によって、遮断される可能性がある。
[0156] 5.例えば、ゴルフ練習場のように、複数のターゲットが存在する場合、レーダが追跡物体を見失うことがある。)

カ [0157]-[0162]
「[0157] Camera tracking however has the following strong characteristics:
[0158] 1. Can accurately determine an object's position in two-dimensions
[0159] Doppler radar has the following strong characteristics:
[0160] 1. Generally it can track a sports ball to a greater distance than is possible with a camera
[0161] 2. Measures radial speed accurately
[0162] 3. Not dependent on the visual illumination of the object」
([0157] しかしながら、カメラによる追跡は、以下の強い特性を有する。
[0158] 1.2次元における物体の位置を正確に決定することができる。
[0159] ドップラーレーダは、以下の強い特性を有する。
[0160] 1.一般に、それは、カメラで可能な距離よりも長い距離までスポーツボールを追跡することができる。
[0161] 2.径方向速度を正確に測定する。
[0162] 3.物体の視覚的な照度に依存しない。)

キ [0163]-[0165]
「[0163] The accurate 2-dimensional camera position measurements can be combined with the accurate distance (or depth) measurement as well as the enhanced distance tracking of the radar, providing greater tracking precision and reliability that the current state of the art. If the camera loses track of the object for a period of time, radar tracking data can be inserted. Object tracking can be extrapolated with the radar data only when the camera permanently loses a track.
[0164] Radar and camera tracking data can be combined in an optimal manner based on the quality of or variances in the measurements from the camera and radar respectively. This can for example be implemented by a tracking filter such as a Kalman filter or similar. A tracking filter estimates a current state vector comprising the three dimensional positions, speeds and accelerations of a tracked object using a prediction from a dynamic model based on physical laws of motion in combination with observations (measurements) of elements of the state vector at the current time. These observations (measurements) can include for example radar measured positions, speeds, and direction angles, as well as camera position angles.
[0165] Successive 2-D positional data from the camera tracking combined with radar tracking can be used to construct a trace of object movement in the camera's perspective view. The positional data can also be used to construct an animation of the trajectory for example to enhance a television production of a sporting event.」
([0163] 2次元カメラにより得られた精度の高い位置測定情報は、レーダによる追跡で得られた精度の高い距離情報や、それ以外の精度の高い距離情報(又は深さ情報)と組み合わせることができ、それにより、現在の技術水準よりも高い精度及び信頼性のある追跡が可能になる。ある期間にわたって、カメラが物体の追跡ができなかった場合、レーダ追跡データを差し込むことができる。物体追跡は、カメラが永続的に追跡を失う場合にのみ、レーダデータを用いて外挿することができる。
[0164] カメラ及びレーダからの測定値の品質や違いに基づいて、レーダ及びカメラ追跡データは、最適な方法で組み合わせることができる。これは、例えば、カルマンフィルタなどの追跡フィルタによって実施することができる。追跡フィルタは、現在の状態ベクトルの要素となる観測値(測定値)と運動に関する物理法則に基づいた運動モデルからの予測値を用いて、追跡物体の3次元位置、速度及び加速度を含む現在の状態のベクトルを推定する。これらの観測値(測定値)は、例えば、レーダにより測定された位置、速度及び方位角、並びに、カメラ位置角を含むことができる。
[0165] レーダ追跡と組み合わされたカメラ追跡からの連続する2次元位置データを用いて、カメラの通視図における移動物体の軌跡を求めることができる。また、位置データは、例えば、スポーツイベントのテレビ中継をより良いものにするために、軌道のアニメーションを作成するために用いることができる。)

ク Claim 8 - 10
「8. A system for tracking a moving sports object, the system comprising:
processors; and
a memory storing instructions that, when executed by at least one processor among the processors, cause the system to perform operations comprising:
calibrating a perspective of an image of a camera to a perspective of a Doppler radar for simultaneous tracking of the moving sports object, and
tracking the moving sports object simultaneously with the camera and Doppler radar.
9. The system according to claim 8, wherein the operations further comprise:
removing offsets or minimizing differences between simultaneous camera measurements and Doppler radar measurements of the moving sports object.
10. The system according to claim 8, wherein the operations further comprise:
combining a camera measurement of an angular position of the moving sports object with a simultaneous Doppler measurement of a radial distance, speed or other measurement of the moving sports object.」
([請求項8] 移動するスポーツ物体を追跡するためのシステムであって、
プロセッサと、
前記プロセッサのうちの少なくとも一つのプロセッサによって実行されたときに、前記移動するスポーツ物体の同時追跡のために、ドップラーレーダの視点に対してカメラの画像の視点を較正し、前記カメラ及びドップラーレーダを用いて、前記移動するスポーツ物体を同時に追跡する動作を、前記システムに実行させる命令を記憶するメモリと、
を備えるシステム。
[請求項9] 前記動作は、前記移動するスポーツ物体の同時測定されたカメラ測定値とドップラーレーダ測定値の間のオフセットを除去すること、又は、差を最小化することを更に含む、請求項8に記載のシステム。
[請求項10] 前記動作は、前記移動するスポーツ物体の角度位置を示すカメラ測定値を、これと同時に測定された、前記移動するスポーツ物体の径方向距離、速度、又は、他の測定値を示すドップラー測定値と組み合わせることを更に含む、請求項8に記載のシステム。)

ケ FIG. 1(図1)




コ FIG. 3(図3)




サ FIG. 5(図5)




シ 図1から読み取れる事項の認定
[0037]の記載及び図1から、ドップラーレーダ、カメラ及びプロセッサは、追跡システムを構成する要素に含まれていることが読み取れる。

(2) 引用発明の認定
前記(1)の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「移動するスポーツ物体を追跡するためのシステムであって、([請求項8])
ドップラーレーダ、カメラ及びプロセッサと、(図1から読み取れる事項)
前記プロセッサのうちの少なくとも一つのプロセッサによって実行されたときに、カメラ及びドップラーレーダを用いて、前記移動するスポーツ物体を同時に追跡する動作を、前記システムに実行させる命令を記憶するメモリと、
を備えるシステムであって([請求項8])、
前記動作は、前記移動するスポーツ物体の角度位置を示すカメラ測定値を、これと同時に測定された、前記移動するスポーツ物体の径方向距離又は速度を示すドップラー測定値と組み合わせることを含む([請求項10])、
システム。」

2 引用文献3
(1) 引用文献3に記載された事項
当審において新たに引用され、本願の優先日前に発行された特開2007−226761号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0037】
以下、発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。なお、ここでは、移動する被写体をゴルフボールとし、カメラにより撮影されたゴルフボール(映像オブジェクト)の軌跡画像を映像に合成し表示する場合を例として説明する。
[第1の実施形態]
(本発明の原理)
はじめに、本発明の原理について説明する。
映像オブジェクトの軌跡を表示する場合、前記した従来技術のように、一般には移動中の被写体(ゴルフボール)の3次元位置座標が必要になる。なお、座標系は直交座標であっても極座標であっても構わないが、カメラを原点とする極座標で考えると、カメラのパン角・チルト角がそのままカメラの光軸の水平角・垂直角に相当するため都合がよい。ただし、カメラのパン軸・チルト軸の交点とレンズの光学主点が一致する理想状態であることとする。残るゴルフボールまでの奥行き情報が分れば3次元の極座標となるが、1台のカメラの情報だけではゴルフボールまでの距離を計算することができない。」

「【0052】
オブジェクト位置算出手段5は、オブジェクト抽出手段4または後記するオブジェクト指定手段8から入力される画像座標と、カメラの姿勢情報であるパン角・チルト角および画角とに基づいて、ゴルフボール(被写体)の検出方向を表わすカメラの位置を原点とする2次元の視線ベクトル(位置座標)を算出するものである。このオブジェクト位置算出手段5で算出された視線ベクトル(位置座標)は、オブジェクト位置記憶手段6に記憶される。
また、ここでは、オブジェクト位置算出手段5は、後記するオブジェクト指定手段8によって指定された挿入先に従って、オブジェクト位置記憶手段6に記憶されている視線ベクトル群に新たな視線ベクトルを追加する。
【0053】
なお、視線ベクトルの座標系は、直交座標でも極座標でも、あるいは、他の座標系でもよいが、カメラの位置を原点とする極座標で考えると、カメラのパン角・チルト角がそのままカメラの光軸方向、すなわち映像フレームの中心点の座標値である水平角・垂直角に相当するため都合がよい。そこで、本実施の形態では視線ベクトルの座標系としてカメラの位置を原点とする2次元極座標を用いることとする。
ここでは、オブジェクト位置算出手段5は、画角値に基づいて2次元直交座標で表わされる画像座標を2次元極座標で表わされる誤差角度、すなわち映像フレームの画像中心から映像オブジェクトの位置までの水平・垂直角度に変換し、その誤差角度(水平・垂直角度)を、それぞれパン角・チルト角と加算して2次元極座標で表わされる視線ベクトルを算出することとする。
【0054】
ここで、図6を参照して、オブジェクト位置算出手段5の構成について詳細に説明する。図6は、オブジェクト位置算出手段の構成を示すブロック図である。ここでは、オブジェクト位置算出手段5は、誤差角度算出手段51と、加算手段52とを備えている。
誤差角度算出手段51は、画角値に基づいて画像座標を誤差角度に変換するものである。具体的には、誤差角度算出手段51は、映像フレームの水平方向の画素数をWID、映像オブジェクトの水平方向の座標(映像フレームの画像中心を原点とした2次元直交座標(画像座標))をx、水平方向の画角をFOVとしたとき、水平方向の誤差角度ρxを以下の式(1)で算出する。
【0055】
【数1】

【0056】
加算手段52は、誤差角度算出手段51で変換された誤差角度と、パン角・チルト角とを加算して視線ベクトルを算出するものである。
具体的には、加算手段52は、以下の式(2)に示すように、誤差角度算出手段51で変換された誤差角度ρxと、カメラのパン角ρcamとを加算することで、カメラの位置を原点とした極座標上における映像オブジェクトの水平角度ρobjを算出する。
【0057】
【数2】

【0058】
なお、映像オブジェクトが常に画像中心にあると仮定した場合、前記の例ではxは常に“0”となる。従って、ρxも“0”となるため、映像オブジェクトの水平角度はカメラのパン角に等しくなる。すなわち、映像オブジェクトが常に画像中心にあるとすれば、パン角をそのまま利用することができる。また、映像オブジェクトの垂直角度に関しても、チルト角を用いることで、同様の計算で求めることができる。
以上により、映像オブジェクトの2次元極座標(カメラの位置を原点とした水平・垂直方向の角度)表示された視線ベクトルを得ることができる。」

「【図6】



(2) 技術常識の認定
上記引用文献3に記載されているように、次の事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識」という。)。

<技術常識>
「1台のカメラの情報だけでは、対象物体までの距離は求まらないが、カメラの位置を原点とする2次元の視線ベクトルは求まり、何らかの手段で距離を求めることができれば3次元座標位置を決定できること。」


第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「移動するスポーツ物体」は、本願発明の「物体」に相当し、引用発明の「移動するスポーツ物体を追跡する」ことは、本願発明の「物体の動きを追跡する」ことに相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、「物体の動きを追跡するシステム」である点で一致する。

イ(ア) 引用発明の「ドップラーレーダ」に測定可能な領域があることは自明であって、当該測定可能領域は、本願発明の「レーダ装置」が有する「第1の視野」に相当する。
(イ) 引用発明の「ドップラー測定値」は「前記移動するスポーツ物体の径方向距離又は速度を示す」ところ、「移動するスポーツ物体の径方向距離」は、本願発明の「物体の前記レーダ装置からの間隔を示す距離」に相当し、「移動するスポーツ物体」の「速度」は、本願発明の「動く物体と前記レーダ装置との間の間隔の時間変化率を示す距離レート」に相当する。
(ウ) そうすると、引用発明の「ドップラー測定値」は、本願発明の「前記第1の視野内で動く物体の前記レーダ装置からの間隔を示す距離、及び、動く物体と前記レーダ装置との間の間隔の時間変化率を示す距離レートのうちの1つに対応するレーダデータ」に相当する。
(エ) 前記(ア)から(ウ)の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、「レーダ装置であって、第1の視野を有しており、前記レーダ装置は、前記第1の視野内で動く物体の前記レーダ装置からの間隔を示す距離、及び、動く物体と前記レーダ装置との間の間隔の時間変化率を示す距離レートのうちの1つに対応するレーダデータを生成するものであるレーダ装置」を備える点で一致する。

ウ(ア) 引用発明の「カメラ」に測定可能な領域があることは自明であって、当該測定可能領域は、本願発明の「撮像装置」が有する「第2の視野」に相当する。
(イ) 引用発明では、「カメラ及びドップラーレーダを用いて、前記移動するスポーツ物体を同時に追跡する動作」が行われるから、カメラの測定可能領域とドップラーレーダの測定可能領域が部分的に重複する必要があることは明らかであり、このことは、本願発明の「第2の視野」が「前記第1の視野と少なくとも部分的に重複視野内で重複する」ことに相当する。
(ウ) 引用発明の「カメラ測定値」は「前記移動するスポーツ物体の角度位置を示す」ところ、「移動するスポーツ物体の角度位置」は、本願発明の「前記撮像装置に対する物体の角度位置」に相当する。また、引用発明の「カメラ」による撮像により移動するスポーツ物体の2次元位置を測定できることは自明であるから(引用文献2の段落[0158]の記載も参照)、このことは、本願発明の「前記撮像装置に対する物体の角度位置のそれぞれを少なくとも1つの次元で測定する」ことに相当する。
(エ) カメラによる撮像は、通常1/30秒ごとに1フレームの割合で複数の画像フレームを取得することにより実行されるから(引用文献2の段落[0097]の「The camera 0002 is set up to capture images at a fixed frame rate that can be approximately 30 frames per second.」という記載も参照)、引用発明の「カメラ」を用いた「移動するスポーツ物体」の「追跡」においても、スポーツ物体が移動している間の、互いに異なる複数の時間でのカメラに対するスポーツ物体の角度位置のそれぞれを測定しているといえる。
(オ) 上記(ア)〜(エ)を踏まえると、引用発明の「カメラ測定値」は、本願発明の「物体が前記第2の視野で動くと、前記物体が移動している間の、互いに異なる複数の時間での前記撮像装置に対する物体の角度位置のそれぞれを少なくとも1つの次元で測定する撮像装置データ」に相当する。
(カ) したがって、本願発明と引用発明は、「撮像装置であって、前記第1の視野と少なくとも部分的に重複視野内で重複する第2の視野を有しており、前記撮像装置は、物体が前記第2の視野で動くと、前記物体が移動している間の、互いに異なる複数の時間での前記撮像装置に対する物体の角度位置のそれぞれを少なくとも1つの次元で測定する撮像装置データを生成するものである撮像装置」を備える点で一致する。

エ(ア) 引用発明の「プロセッサ」は、カメラ及びドップラーレーダを用いて、移動するスポーツ物体を同時に追跡する動作をシステムに実行させるものであるから、引用発明では、カメラの測定可能領域とドップラーレーダの測定可能領域が部分的に重複する領域におけるスポーツ物体の軌跡の特定が行われているといえる。
(イ) 引用発明の「前記動作は、前記移動するスポーツ物体の角度位置を示すカメラ測定値を、これと同時に測定された、前記移動するスポーツ物体の径方向距離又は速度を示すドップラー測定値と組み合わせる」ものであるところ、「カメラ測定値」により、移動するスポーツ物体の2次元位置を特定できることは明らかである。
(ウ) そうすると、本願発明と引用発明は、「物体が前記重複視野で動くと、前記物体の軌跡を少なくとも2次元で特定するために、前記撮像装置データと前記レーダデータとを組み合わせ[る]」「プロセッサ」を備える点で共通する。

(2) 一致点及び一応の相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明は次の一致点の点において一致し、次の一応の相違点において少なくとも表現上の相違が認められる。

<一致点>
物体の動きを追跡するシステムであって、
レーダ装置であって、第1の視野を有しており、前記レーダ装置は、前記第1の視野内で動く物体の前記レーダ装置からの間隔を示す距離、及び、動く物体と前記レーダ装置との間の間隔の時間変化率を示す距離レートのうちの1つに対応するレーダデータを生成するものであるレーダ装置と、
撮像装置であって、前記第1の視野と少なくとも部分的に重複視野内で重複する第2の視野を有しており、前記撮像装置は、物体が前記第2の視野で動くと、前記物体が移動している間の、互いに異なる複数の時間での前記撮像装置に対する物体の角度位置のそれぞれを少なくとも1つの次元で測定する撮像装置データを生成するものである撮像装置と、
プロセッサであって、前記プロセッサは、物体が前記重複視野で動くと、前記物体の軌跡を少なくとも2次元で特定するために、前記撮像装置データと前記レーダデータとを組み合わるものであるプロセッサと、
を備えるシステム。

<一応の相違点>
本願発明においては、「前記複数の時間での前記物体の角度位置の全ては、前記撮像装置からのデータのみを使用して決定されるものである」のに対して、引用発明においては、「前記移動するスポーツ物体の角度位置を示すカメラ測定値を、これと同時に測定された、前記移動するスポーツ物体の径方向距離又は速度を示すドップラー測定値と組み合わせることを含む」が、複数の時間での前記移動するスポーツ物体の角度位置の全ては、前記カメラからのデータ(カメラ測定値)のみを使用して決定されるものであるのか否か、少なくとも表面上はその点が、明示的でない点。

2 判断
(1) 一応の相違点について
ア(ア) 引用文献2においては、「カメラ測定値及びレーダ測定値は、物体追跡の精度及び信頼性を改善するために、いくつかの方法で組み合わせられ得る」としている([0140])。
(イ) そして、カメラによる測定の短所として、「物体の位置は、二次元情報のみ測定される」([0141])ことを挙げ、ドップラーレーダによる測定の長所として、「カメラで可能な距離よりも長い距離までスポーツボールを追跡することができる」こと([0160])及び「径方向速度を正確に測定する」こと([0161])を挙げている。
(ウ) 反対に、ドップラーレーダによる測定の短所として、「測定された物体の仰角及び方位角は、マルチパス効果によって歪められる可能性がある」こと([0153])を挙げ、カメラによる測定の長所として、「2次元における物体の位置を正確に決定することができる」こと([0158])を挙げている。
(エ) すなわち、引用文献2においては、カメラによる測定及びドップラーレーダによる測定にはそれぞれ一長一短があることが開示されており、径方向距離については、カメラよりもドップラーレーダによる測定の方が強みを有しており、角度(水平角と仰角)については、ドップラーレーダよりもカメラによる測定の方が強みを有していることが理解される。
イ そして、「1台のカメラの情報だけでは、対象物体までの距離は求まらないが、カメラの位置を原点とする2次元の視線ベクトルは求まり、何らかの手段で距離を求めることができれば3次元座標位置を決定できること」は技術常識(前記第4の2(2)参照)であるから、引用文献2に接した当業者がカメラによる測定データを取得したという立場から見た場合、ドップラーレーダによる測定値からは径方向距離を計算できるデータのみを利用すれば足りることは、当業者にとっては、極めて容易に理解できることというべきである。
ウ(ア) してみれば、「カメラ測定値及びレーダ測定値は、物体追跡の精度及び信頼性を改善するために、いくつかの方法で組み合わせられ得る」という引用文献2の記載事項に従って測定手法の組み合わせを検討する際、3次元の位置測定においては、3次元極座標表示(r,φ,θ)に対応した三つの測定値の測定が必要になるのであるから、径方向距離rの測定はドップラーレーダが行い、角度(水平角φと仰角θ)の測定はカメラが行うように役割分担させるのが最善の組み合わせであり、それぞれ、ドップラーレーダの測定値のみとカメラでの測定値のみを用いれば良いことは、当業者が当然に理解することができることである。
(イ) すなわち、前記一応の相違点は、引用文献2に接した当業者が当然に理解できることであるから、実質的な相違点ではなく、相違点であるとしても、当業者が容易に想到し得ることである。
エ したがって、本願発明は引用文献2に記載された発明であるといえ、そうでなくとも本願発明は当業者が引用文献2に記載された発明に基づいて容易に想到し得たものである。

(2) 請求人の主張について
ア 請求人の主張
(ア) 審判請求書における請求人の主張
(審判請求書5頁25行〜6頁24行)
「引用文献2において、レーダデータを角度の決定に用いず、かつ、そのレーダデータが、カメラデータのみから決定された角度位置と組み合わせられる構成は、一言も言及されていません。
実際のところ、引用文献2では、レーダデータとカメラデータの両方が採用され、これによって冗長性のあるシステムが実現されています。このデータの組合せによって、引用文献2では精度を向上させることができ、2種類のセンサからのデータ間の誤差あるいは差異を補正することができます。即ち、一方のデータソースが信頼性の高い情報を提供できない場合に他方のデータソースを利用可能であり、また、レーダとカメラからのデータの間に差異がある場合、測定値を組み合わせて、より正確な追跡を実現することができます(引用文献2、要約、段落0005〜0009、0013、0111〜0112、0136〜0140)。
引用文献2は、カメラのみを使用した3D追跡に関連する問題を取り上げ、レーダ測定の欠点を指摘しています。これは、引用文献2の技術思想が、あらゆる測定をレーダ又はカメラの一方のみに依存するシステムからの脱却であることを示しています(引用文献2、段落0140〜0156、0164)。
引用文献2のシステムは、1つはレーダデータから、もう1つはカメラデータから、それぞれ別のトラックを生成し、それらのトラックを比較、変更、及び/又は結合して、両者の間に生じているオフセットを最小化したり、一方のデータの質が低下した場合に他方による補完を行ったりします(引用文献2、段落0098)。
原査定では、引用文献2の段落0006について指摘がありました。確かに、引用文献2の段落0006には、カメラ測定による角度位置と同時ドップラー測定の組合せが開示されています。
しかし、引用文献2の段落0006に開示された「・・・その他の測定値の同時ドップラー測定値」に、「(レーダにより)測定された角度位置」が含まれていると解釈する余地は否定できません。」

(審判請求書8頁26行〜9頁1行)
「出願人は引用文献2を精査しましたが、引用文献2の全ての実施形態において、レーダは角度測定値を生成します。レーダが角度測定値を生成しない構成に関する開示は、引用文献2に存在しません。」

(イ) 令和4年5月23日付け上申書における請求人の主張
(上申書2頁36〜46行)
「引用文献2の段落0006と関連する請求項3−4は、3次元ドップラーレーダの測定、特に3次元ドップラーレーダの角度測定が何らかの方法で欠陥がある場合のシナリオに言及しています。引用文献2の構成においては、これらのシナリオにおいて、そしてこれらのシナリオにおいてのみ、カメラからの個々の角度測定は、3次元ドップラーレーダからの角度測定を置換/補正/改善するために使用することができます。引用文献2においては、カメラ角度測定のみを使用して形成された物体の追跡について、何ら記載も示唆もされていません。
即ち、引用文献2には、カメラからの角度測定値をレンジ/レンジレートの3次元ドップラーレーダ測定値と組み合わせて使用することが、角度測定値を含む3次元ドップラーレーダ測定値の生成と切り離した形で、開示されていません。引用文献2の構成で、あらゆる物体のあらゆる追跡は、レーダからの角度測定値を利用しています。」

イ 請求人の主張についての当合議体の見解
請求人は、引用文献2では、レーダデータとカメラデータの両方が採用され、カメラ角度測定のみを使用して形成された物体の追跡について、何ら記載も示唆もされていない旨主張しているが、データの組み合わせ方として、レーダの測定値を、カメラの測定値で補正することで角度情報を算出するものがある一方、引用文献2の記載から、角度情報をカメラ測定値のみとし、距離情報をドップラー測定値のみとするような組み合わせ方を当業者が理解できることは、前記(1)において説示したとおりであるから、請求人の前記主張は採用できない。

(3) 小括
以上(1)及び(2)に検討したとおり、本願発明は、引用発明である、又は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。




 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 岡田 吉美
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-06-06 
結審通知日 2022-06-08 
審決日 2022-06-23 
出願番号 P2019-530039
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01S)
P 1 8・ 113- Z (G01S)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱本 禎広
濱野 隆
発明の名称 レーダデータ及び撮像装置データを使用して物体を追跡するための装置、システム、及び方法  
代理人 桂川 直己  

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