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審決分類 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 E04D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04D
管理番号 1391610
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-26 
確定日 2022-11-17 
事件の表示 特願2016−203227「軒先構造」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月26日出願公開、特開2018− 66110〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年10月17日に出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 5月11日付け :拒絶理由通知書
同年 7月16日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月18日付け :拒絶理由通知書(最後)
令和 3年 2月18日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月26日付け :拒絶査定(同年8月3日送達)
同年10月26日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和3年10月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和3年10月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、令和3年2月18日付け手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「建築物の構造体の一部である型鋼が軒先へ延出されるか、構造体に金属プレートが接続されて軒先へ延出されて突出躯体が形成され、」とあったのを、
「建築物の構造体の一部である型鋼が軒先へ水平状に延出されるか、前記構造体に金属プレートが接続されて軒先へ水平状に延出されて突出躯体が形成され、」とする補正を含むものである(なお、下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された「軒先へ延出され」について、「水平状に」との限定を付加し、また本件補正前の請求項1に記載された「構造体」を「前記構造体」とするものであって、補正前後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではないから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、令和3年10月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
建築物の構造体の一部である型鋼が軒先へ水平状に延出されるか、前記構造体に金属プレートが接続されて軒先へ水平状に延出されて突出躯体が形成され、該突出躯体に支持される軒先構造であって、
前記突出躯体に、その内部空間に排出手段が設けられる軒先化粧体が載置状に配設されていることを特徴とする軒先構造。」

(2)引用文献に記載された事項及び引用発明
ア 引用文献2
(ア)記載事項
本願出願前に頒布された刊行物であり、原査定で引用された特開平4−146361号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下、同様。)。
a 「次に、本発明軒先構造を組立住宅に利用した実施例を、図面を参照しながら、説明する。
第1図は、組立住宅の軒先構造を示す断面図、・・・第4図は組立住宅に使用する住宅ユニットの骨格を示す斜視図、・・・である。
図において、1は住宅ユニットであり、第4図に示されるように、この住宅ユニット1の骨格は、4本の天井梁11、4本の柱12、4本の床梁13を6面体に組み立てて、それぞれの交点を溶接したものである。天井梁11と床梁13との間には、スタッド14が取り付けられている。
天井梁11、スタッド14および床梁13は断面「[」(当審注:[の表記は正確には上下の横棒が縦棒より長い)状の軽量型鋼からなる。又、柱12は四角筒の軽量型鋼からなる。
2は庇アームであり、この庇アーム2は天井梁11にボルト21、ナット22で固定されている。
3は軒天井であり、この軒天井3の屋外側と屋内側とは軒天固定金具31、32で庇アーム2に固定されている。
4はアルミニウム製の下側化粧板であり、この下側化粧板4の下側側縁部には溝41が設けられている。この溝41の側壁の奥の方には、第2図に示されるように、係止突条411、411が設けられている。この下側化粧板4は下側側縁部に設けられた溝41にビス42を螺入して軒天固定具31にビス止めされている。又、下側化粧板4の上側側縁部はビス43で化粧板補強プレート51に固定されている。
この化粧板補強プレート51は庇アーム2に固定されている。
5はアルミニウム製の上側化粧板であり、この上側化粧板5の下側側縁部は化粧板補強金具52にビス53で固定され、上側側縁部は化粧板補強プレート51にビス54で固定されている。化粧板補強金具52は化粧板補強プレート51にビス55で固定されている。
本実施例では、化粧板を上側化粧板5と下側化粧板4とに分割しているが、これが一体になっていてもよい。
(中略)
7は外壁であり、厚み12mmの木片セメント板71と鋼製角筒状のフレーム72とからなり、この外壁7はスタッド14に固定されている。
この外壁7の上端と天井梁11との間には、雨水が漏れないように、シーリング材73が充填されている。
8は屋根固定金具であり、この屋根固定金具8は天井梁11にビス83で固定されていて、この屋根固定金具8の上に折版屋根81が嵌合され、固定されている。
折版屋根81と上側化粧板5との間には、雨が漏れないように庇カバー82が設けられている。
9は軒樋であり、この軒樋9は軒樋支持具91に支持されている。この軒樋支持具91は庇アーム2に固定されている。
軒樋支持金具91の上端には、柔軟な金属板からなる支持片92が取り付けられている。この支持片92は中央部で曲げられ、軒樋9の耳部を押さえて、軒樋9を動かないように、固定している。
93は自在ドレインであり、軒樋9に流れた雨水を縦樋94に導くものである。」(第2頁右上欄第1行〜第3頁左上欄第13行)

b 第1図は次のものである。




c 第4図は次のものである。




aの記載も踏まえると、第1図及び第4図からは以下の点が看取される。
(a)「庇アーム2は、天井梁11から、水平方向に突出している」点。
(b)「自在ドレイン93は、軒樋9の内部空間に配設されている」点。
(c)「軒樋9は、庇アーム2の上面に配設されている」点。

(イ)引用発明
上記(ア)によれば、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「組立住宅の軒先構造であって、
組立住宅に使用する住宅ユニット1の骨格は、軽量型鋼からなる、4本の天井梁11、4本の柱12、4本の床梁13を6面体に組み立てて、それぞれの交点を溶接したものであり、
庇アーム2は天井梁11にボルト21、ナット22で固定されており、天井梁11から、水平方向に突出しており、
軒樋9は軒樋支持具91に支持されており、軒樋支持具91は庇アーム2に固定されており、軒樋9は庇アーム2の上面に配設され、
自在ドレイン93は、軒樋9に流れた雨水を縦樋94に導くものであり、軒樋9の内部空間に配設されている、
軒先構造。」

(3)対比
本願補正発明は、「建築物の構造体の一部である型鋼が軒先へ水平状に延出されるか、前記構造体に金属プレートが接続されて軒先へ水平状に延出されて突出躯体が形成され」との記載により、「突出躯体」の「形成」について、「建築物の構造体の一部である型鋼が軒先へ水平状に延出されて突出躯体が形成され」る態様と、「前記構造体に金属プレートが接続されて軒先へ水平状に延出されて突出躯体が形成され」る態様の2つの選択肢を含むものとなっている。以降、本願補正発明のうちの後者の態様の選択肢を発明特定事項とした発明と引用発明とを対比するものとする。
ア 引用発明の「組立住宅」は、本願補正発明の「建築物」に相当する。また、引用発明の「軒先構造」は、本願補正発明の「軒先構造」に相当する。
イ 引用発明の「天井梁11」は、本願補正発明の「前記構造体」(「建築物の構造体」)に相当する。
ウ 本願補正発明の「水平状に延出され」について、【0024】の記載(略水平状に延在する大型のH型鋼(躯体7F))、図1(a)の記載(躯体7Fは紙面奥に向けて水平方向に延伸していることが看取される。)を参照して、本願補正発明における「水平状に延出」とは、水平方向に延出することを意味するものと解される。そして、引用発明の「庇アーム2」も「水平方向に突出」するものであるから、「水平状に延出」するものといえ、また「庇アーム2」には「軒樋9」が設けられることから、「庇アーム2」は「軒先へ」突出する「突出躯体」といえるものであり、かつ、「軒樋9」を支持する「軒先構造」を構成するものといえる。
そうすると、引用発明の「天井梁11」に「庇アーム2」が「ボルト21、ナット22で固定され」て、「天井梁11から、水平方向に突出しており」、「軒樋9は庇アーム2の上面に配設されて」いる点と、本願補正発明の「前記構造体に金属プレートが接続されて軒先へ水平状に延出されて突出躯体が形成され、該突出躯体に支持される軒先構造」とは、「前記構造体に部材が接続されて軒先へ水平状に延出されて突出躯体が形成され、該突出躯体に支持される軒先構造」の点で共通する。
エ 引用発明の「軒樋9」は、本願補正発明の「軒先化粧体」に相当し、引用発明において「自在ドレイン93」が「軒樋9の内部空間に配設されている」ことは、本願補正発明において「軒先化粧体」の「内部空間に排出手段が設けられる」ことに相当する。
そして、上記ウも踏まえると、引用発明において「軒樋9」が「庇アーム2の上面に配設されて」いることは、本願補正発明において「突出躯体に」「軒先化粧体が載置状に配設されている」ことに相当する。
オ 上記アないしエ、加えて本願補正発明における「前記構造体」が「建築物の構造体」を指すことは自明であることから、本願補正発明と引用発明とは、以下の一致点、相違点を有する。

(一致点)
建築物の構造体に部材が接続されて軒先へ水平状に延出されて突出躯体が形成され、該突出躯体に支持される軒先構造であって、
前記突出躯体に、その内部空間に排出手段が設けられる軒先化粧体が載置状に配設されている軒先構造。

(相違点)
本願補正発明は、「突出躯体」が「金属プレート」であるのに対し、引用発明の「庇アーム2」はそのように特定されていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
ア 引用発明の「庇アーム2」は、「軽量型鋼からなる天井梁11」に「ボルト21、ナット22」で固定されて突出する部材であり、このような部材を金属プレートで構成することは、格別の発明力を要することなく、当業者が容易に採用し得る範囲内のことである。
イ よって、相違点に係る本願補正発明の構成は、引用発明に基いて当業者が容易に想到し得たことである。

(5)審判請求人の主張について
ア 主張の概要
審判請求人は、審判請求書にて、以下のように主張する。
(ア)引用文献2は、庇アーム2の端縁を、天井梁11の側面に、ボルト21及びナット22で固定するものであるから、その支持強度はボルト21及びナット22の取付強度に依存するものである。しかもその第1図からも明らかなように天井梁11の側面は、軒先へ水平状に延出されるものでは決してない。
(イ)「建築物の構造体の一部である型鋼が軒先へ水平状に延出される」構成があるか否かで本件発明1と引用文献2とは明らかに相違する。

イ 主張の検討
上記主張について検討する。
(ア)上記ア(ア)の主張について、本願補正発明は「建築物の構造体の一部である型鋼が軒先へ水平状に延出されるか、前記構造体に金属プレートが接続されて軒先へ水平状に延出されて突出躯体が形成され、該突出躯体に支持される軒先構造」であり、すなわち単に「構造体に金属プレートが接続され」としか特定されておらず、明細書及び図面を参照しても「接続」という用語の意味を特別に限定して解釈できるような記載はなく、引用発明のボルトとナットによる接続構成と相違する点はない。そして、「軒先構造」の支持強度は、「構造体」と「突出躯体」である「金属プレート」との「接続」の強度に依存することは明らかであるから、その点において本願補正発明と引用発明との間に本質的な違いはない。また、引用発明の天井梁11自体は「水平状に延出」するものではないが、本願補正発明の「突出躯体」に相当する庇アーム2が「水平状に延出」するものであることは、上記(3)ウで述べたとおりである。よって、審判請求人の主張は採用できない。
(イ)上記ア(イ)の主張について、上記(3)で述べたとおり、本願補正発明は突出躯体の形成について「建築物の構造体の一部である型鋼が軒先へ水平状に延出される」か、「前記構造体に金属プレートが接続されて軒先へ水平状に延出されて突出躯体が形成」されるという2つの選択肢を有するものである。そして上記(3)及び(4)のとおり、後者の選択肢を発明特定事項とした発明と引用発明とを対比し、進歩性を有していないと判断がなされるところ、前者の選択肢に拠って本願補正発明が引用発明と相違するとの審判請求人の主張により、本願補正発明の進歩性を肯定することはできない。

(6)小括
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、上記2のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年2月18日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
建築物の構造体の一部である型鋼が軒先へ延出されるか、構造体に金属プレートが接続されて軒先へ延出されて突出躯体が形成され、該突出躯体に支持される軒先構造であって、
前記突出躯体に、その内部空間に排出手段が設けられる軒先化粧体が載置状に配設されていることを特徴とする軒先構造。」

第4 拒絶査定の概要
令和3年7月26日付け拒絶査定は、概略、次のとおりである。
理由 (進歩性)この出願の請求項1−2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 当審の判断
1 本願発明
本願発明は、上記第3に記載されたとおりである。

2 引用文献一覧
拒絶査定において、進歩性について引用した引用文献2は次のものである。
引用文献2 特開平4−146361号公報

3 引用文献の記載
(1)引用文献2
引用文献2の記載事項及びそれらに記載された発明は、上記第2の2(2)アに記載したとおりである。

4 対比・判断
(1)本願発明と本願補正発明の関係
本願発明は、本願補正発明のうち、次のア〜ウの点の限定を省いたものである。
ア 「型鋼が軒先へ水平状に延出され」のうちの「水平状に」の点。
イ 「金属プレートが接続されて軒先へ水平状に延出され」のうちの「水平状に」の点。
ウ 「前記構造体」の「前記」の点。

(2)対比
本願発明と引用発明との対比については、上記第2の2(3)ア〜エと同様であり、本願発明と引用発明とは、以下の一致点、相違点を有する。

(一致点)
構造体に部材が接続されて軒先へ延出されて突出躯体が形成され、該突出躯体に支持される軒先構造であって、
前記突出躯体に、その内部空間に排出手段が設けられる軒先化粧体が載置状に配設されている軒先構造。

(相違点)
本願発明は、「突出躯体」が「金属プレート」であるのに対し、引用発明の「庇アーム2」はそのように特定されていない点。

(3)判断
上記相違点の判断は、上記第2の2(4)と同様であり、相違点に係る本願発明の構成は、引用発明に基いて当業者が容易に想到し得たことである。

5 小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
上記のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
したがって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-09-08 
結審通知日 2022-09-13 
審決日 2022-09-29 
出願番号 P2016-203227
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04D)
P 1 8・ 575- Z (E04D)
P 1 8・ 56- Z (E04D)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 前川 慎喜
特許庁審判官 土屋 真理子
奈良田 新一
発明の名称 軒先構造  
代理人 福田 伸一  

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