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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1391635
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-10 
確定日 2022-11-17 
事件の表示 特願2017−163269「配線基板、半導体装置、配線基板の製造方法及び半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月14日出願公開、特開2019− 41041〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成29年8月28日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年11月26日付け:拒絶理由通知
令和3年 1月 8日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 2月17日付け:拒絶理由通知
令和3年 4月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 9月 6日付け:拒絶査定(原査定)
令和3年11月10日 :審判請求書、手続補正書の提出

なお、令和3年11月10日に審判請求書とともに提出した手続補正書による補正は、明細書中の「図面の簡単な説明」の記載のみを補正するものであり、特許請求の範囲については補正されていない。

2.本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、令和3年4月7日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
熱硬化性樹脂に対して補強材を入れた絶縁性樹脂からなる第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の下面に形成された凹部と、
前記凹部に充填された第1配線層と、
前記第1絶縁層の上面から露出された上端面を有し、前記第1絶縁層を厚さ方向に貫通して前記第1配線層と接続されたビア配線と、を有する第1配線構造と、
前記第1絶縁層の下面に形成された保護絶縁層と、
感光性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂からなる絶縁層と配線層とを有し、前記第1絶縁層の上面に積層された第2配線構造と、を有し、
前記第1絶縁層の上面と前記ビア配線の上端面とが研磨面であり、
前記第1配線層の下面は、前記第1絶縁層の下面よりも前記第2配線構造側に凹むように形成されており、
前記保護絶縁層は、前記第1配線層の下面の一部を被覆するとともに、前記第1配線層から露出された前記凹部の内側面を被覆するように形成されており、
前記第2配線構造の配線密度は、前記第1配線構造の配線密度よりも高く、
前記補強材は、前記第1絶縁層の厚さ方向の中心よりも前記第2配線構造側に偏在するとともに、前記第1絶縁層の下面から前記第2配線構造の最上層の配線層の上面までの厚さにおける厚さ方向の中心に位置するように設けられていることを特徴とする配線基板。」

3.原査定の拒絶の理由の概要
本願の請求項1に対する原査定(令和3年9月6日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術(下記の引用文献4−6に記載の技術)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2017−112209号公報
引用文献4:特開2014−22618号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2011−199270号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6:特開2015−18976号公報(周知技術を示す文献)

4.引用文献の記載及び引用発明
上記引用文献1(特開2017−112209号公報)には、「配線基板」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。
(1)「【請求項1】
複数の第1貫通孔を有する金属板と、前記金属板の上面及び下面と前記第1貫通孔の内側面とを被覆する第1絶縁層と、前記第1絶縁層を厚さ方向に貫通し、前記第1絶縁層から露出された上端面を有する貫通電極と、前記貫通電極と接続され、前記第1絶縁層の下面に形成された第1配線層と、を有するコア基板と、
感光性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂からなる絶縁層と配線層とを有し、前記第1絶縁層の上面に積層された配線構造と、
前記コア基板の下面に形成された最外絶縁層と、を有し、
前記第1絶縁層の上面と前記貫通電極の上端面とが研磨面であり、
前記配線構造の配線密度は、前記コア基板の配線密度よりも高く、
前記金属板は、前記第1絶縁層の厚さ方向の中心よりも前記配線構造側に片寄って設けられていることを特徴とする配線基板。」

(2)「【0009】
まず、図1に従って配線基板10の構造について説明する。 図1(a)に示すように、配線基板10は、コア基板11と、コア基板11の下面に積層されたソルダレジスト層12と、コア基板11の上面に積層された配線構造13とを有している。
【0010】
コア基板11は、コア材となる金属板20と、金属板20を被覆する絶縁層21と、絶縁層21を厚さ方向に貫通する貫通電極25と、絶縁層21の下面に形成された配線層26とを有している。
・・・・(中 略)・・・・
【0013】
絶縁層21は、金属板20の上面20Aと金属板20の下面20Bと貫通孔20Xの内側面とに接し、それら上面20A全面、下面20B全面及び貫通孔20Xの内側面全面を被覆するように形成されている。また、絶縁層21は、金属板20の外側面を露出するように形成されている。絶縁層21の外側面は、例えば、金属板20の外側面と略面一に形成されている。絶縁層21の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂などの熱硬化性樹脂を主成分とする非感光性の絶縁性樹脂を用いることができる。絶縁層21は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有していてもよい。
・・・・(中 略)・・・・
【0015】
別の見方をすると、金属板20は、絶縁層21の厚さ方向の中心位置D1よりも上側(配線構造13側)に片寄って設けられている。具体的には、金属板20の厚さ方向の中心位置D2は、中心位置D1よりも上側に片寄った位置に配置されている。さらに、金属板20は、配線基板10全体の厚さ方向の中心付近に配設されるように、中心位置D1よりも上側に片寄って設けられている。具体的には、金属板20は、ソルダレジスト層12を除く配線基板10全体の厚さ方向の中心に配設されるように、中心位置D1よりも上側に片寄って設けられている。すなわち、配線基板10では、ソルダレジスト層12を除く配線基板10全体の厚さ方向の中心に金属板20が配設されるように、絶縁層22の厚さと絶縁層23の厚さとが設定されている。
・・・・(中 略)・・・・
【0018】
貫通電極25の上端面25Aは、絶縁層21の上面21Aから露出されている。例えば、貫通電極25の上端面25Aは、絶縁層21の上面21Aと略面一に形成されている。これら絶縁層21の上面21A及び貫通電極25の上端面25Aは、凹凸が少ない平滑面(低粗度面)である。例えば、絶縁層21の上面21A及び貫通電極25の上端面25Aは研磨面である。・・(以下、略)
【0019】
配線層26は、絶縁層21の下面21Bに形成されている。配線層26は、貫通電極25の下面に接続され、貫通電極25と電気的に接続されている。配線層26は、例えば、貫通電極25と一体に形成されている。この配線層26は、絶縁層21(絶縁層23)によって金属板20と電気的に絶縁されている。配線層26の厚さは、例えば、15〜35μm程度とすることができる。配線層26のラインアンドスペース(L/S)は、例えば、20μm/20μm程度とすることができる。ここで、ラインアンドスペース(L/S)は、配線の幅と、隣り合う配線同士の間隔とを示す。なお、配線層26の材料としては、銅や銅合金を用いることができる。
【0020】
図1(a)に示すように、ソルダレジスト層12は、以上説明したコア基板11の下面(具体的には、絶縁層21の下面21B)に、配線層26の一部を被覆するように積層されている。このソルダレジスト層12は、配線基板10における最外層(ここでは、最下層)の絶縁層である。ソルダレジスト層12の材料としては、例えば、フェノール系樹脂やポリイミド系樹脂などを主成分とする感光性の絶縁性樹脂を用いることができる。ソルダレジスト層12は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有していてもよい。ソルダレジスト層12の厚さは、例えば、30〜50μm程度とすることができる。」

(3)「【0024】
次に、配線構造13の構造について説明する。 配線構造13は、絶縁層21の上面21Aに積層された配線構造である。配線構造13は、コア基板11の配線層26よりも配線密度の高い配線層が形成された高密度配線層である。
【0025】
配線構造13は、絶縁層21の上面21Aに形成された配線層30と、絶縁層31と、配線層32と、絶縁層33と、配線層34とが順に積層された構造を有している。 ここで、絶縁層31,33の材料としては、例えば、フェノール系樹脂やポリイミド系樹脂等の感光性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂を用いることができる。これら絶縁層31,33は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有していてもよい。また、配線層30,32,34の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。」

(4)「【0045】
次に、図1及び図2を参照して、配線基板10及び半導体装置40の作用について説明する。
コア基板11のコア材として、機械的強度(剛性)の高い金属板20を設けた。この金属板20により、コア基板11の剛性を高めることができる。例えば、コア基板11が薄くなった場合であっても、金属板20によってコア基板11の剛性を確保することができ、ひいては配線基板10の剛性を確保することができる。このため、配線基板10全体を薄型化しつつも、配線基板10に反りが発生することを好適に抑制することができる。
【0046】
また、配線基板10は、コア基板11の一方の側にソルダレジスト層12が形成され、他方の側に高密度配線層である配線構造13が形成された構造、つまりコア基板11を中心として上下非対称の構造を有している。但し、配線基板10では、機械的強度の高い金属板20を、コア基板11内において、絶縁層21の厚さ方向の中心位置D1よりも上側(配線構造13側)に片寄らせて設けるようにした。これにより、機械的強度の高い金属板20の位置を、配線基板10の厚さ方向の中心に近づけることができる。このため、配線基板10を上下方向(厚さ方向)に見たときに、金属板20を中心として上下対称の構造に近づけることができる。この結果、配線基板10を反りに強い構造とすることができるため、配線基板10に反りが発生することを好適に抑制することができる。」

(5)「【図1】



上記(1)ないし(5)から以下のことがいえる。
・上記引用文献1に記載の「配線基板」は、上記(1)、(2)の段落【0009】の記載、及び(5)(図1)によれば、コア基板11と、コア基板11の下面に積層(形成)されたソルダレジスト層12(最外絶縁層)と、コア基板11の絶縁層21(第1絶縁層)の上面に積層された配線構造13とを有するものである。
・上記(1)、(2)の記載、及び(5)(図1)によれば、コア基板11は、金属板20と、金属板20の上面全面及び下面全面を被覆する絶縁層21(第1絶縁層)と、絶縁層21(第1絶縁層)を厚さ方向に貫通し、絶縁層21(第1絶縁層)から露出された上端面を有する貫通電極25と、貫通電極25と接続され、絶縁層21(第1絶縁層)の下面に形成された配線層26(第1配線層)を有するものである。そして、上記(2)の段落【0013】の記載によれば、絶縁層21(第1絶縁層)には、熱硬化性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂が用いられてなるものである。ここで、上記(4)の段落【0045】の記載によれば、金属板20は、機械的強度(剛性)の高いものであり、コア基板11の剛性を高めることができるものである。
・上記(1)、(2)の段落【0018】の記載によれば、絶縁層21(第1絶縁層)の上面と貫通電極25の上端面とは研磨面である。
・上記(2)の段落【0020】の記載、及び(5)(図1)によれば、コア基板11の下面に積層されたソルダレジスト層12(最外絶縁層)は、具体的には、絶縁層21(第1絶縁層)の下面に、配線層26(第1配線層)の一部(下面の一部と側面)を被覆するように積層されてなるものである。
・上記(1)、(3)の記載によれば、絶縁層(第1絶縁層)の上面に積層された配線構造13は、感光性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂からなる絶縁層31,33と配線層30,32とを有し、その配線密度がコア基板11の配線密度よりも高い高密度配線層である。
・上記(1)、(2)の段落【0015】の記載、(4)の段落【0046】の記載によれば、金属板20は、絶縁層21(第1絶縁層)の厚さ方向の中心よりも配線構造13側に片寄って設けられ、ソルダレジスト層12(最外絶縁層)を除く配線基板10全体の厚さ方向の中心に位置するように金属板20が配設されてなるものである。これにより、金属板20を中心として上下対称の構造に近づけることができ、配線基板10に反りが発生することを好適に抑制することができるものである。

以上のことから、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「機械的強度(剛性)の高い金属板と、熱硬化性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂からなり、前記金属板の上面全面及び下面全面を被覆する第1絶縁層と、前記第1絶縁層を厚さ方向に貫通し、前記第1絶縁層から露出された上端面を有する貫通電極と、前記貫通電極と接続され、前記第1絶縁層の下面に形成された第1配線層と、を有するコア基板と、
前記第1絶縁層の下面に積層され、前記第1配線層の一部(下面の一部と側面)を被覆するソルダレジスト層(最外絶縁層)と、
前記第1絶縁層の上面に積層され、感光性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂からなる絶縁層と配線層とを有する配線構造と、を有し、
前記第1絶縁層の上面と前記貫通電極の上端面とは研磨面であり、
前記配線構造の配線密度は、前記コア基板の配線密度よりも高く、
前記金属板は、前記第1絶縁層の厚さ方向の中心よりも前記配線構造側に片寄って設けられ、前記ソルダレジスト層(最外絶縁層)を除く配線基板全体の厚さ方向の中心に位置するように当該金属板が配設されてなる、配線基板。」

5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)第1配線構造について
引用発明における「金属板」は、機械的強度(剛性)の高いものであるから、本願発明でいう「補強材」に相当するということができる。
また、引用発明における「第1絶縁層」は、熱硬化性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂からなり、金属板の上面全面及び下面全面を被覆するものであり、熱硬化性樹脂に対して金属板を入れた絶縁性樹脂からなるといえるものであるから、本願発明でいう「第1絶縁層」に相当する。
引用発明における「第1配線層」は、第1絶縁層の下面に形成されてなるものであるところ、本願発明でいう「第1配線層」とは、「前記第1絶縁層の下面側に設けられた」ものである点では共通するといえる。
さらに、引用発明における「貫通電極」は、第1絶縁層から露出された上端面を有し、第1絶縁層を厚さ方向に貫通して、第1絶縁層の下面に形成された第1配線層と接続されてなるものであるから、本願発明でいう「ビア配線」に相当する。
ここで、引用発明においても、「第1絶縁層」の上面と「貫通電極」の上端面とは研磨面である。
そして、引用発明における「コア基板」は、上述の金属板、第1絶縁層及び貫通電極を有するものである点で、本願発明でいう「第1配線構造」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「熱硬化性樹脂に対して補強材を入れた絶縁性樹脂からなる第1絶縁層と、前記第1絶縁層の下面側に設けられた第1配線層と、前記第1絶縁層の上面から露出された上端面を有し、前記第1絶縁層を厚さ方向に貫通して前記第1配線層と接続されたビア配線と、を有する第1配線構造と」を有する点で共通するといえ、そして、「前記第1絶縁層の上面と前記ビア配線の上端面とが研磨面」である点で一致する。
ただし、第1絶縁層の下面側に設けられた第1配線層について、本願発明では第1絶縁層の下面に「凹部」が形成され、「前記凹部に充填」されたものであり、その「下面は、前記第1絶縁層の下面よりも前記第2配線構造側に凹む」ように形成されていることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違する。

(2)保護絶縁層について
引用発明における「ソルダレジスト層(最外絶縁層)」は、第1絶縁層の下面に積層されてなるものであり、本願発明でいう「保護絶縁層」に相当する。そして、引用発明における「ソルダレジスト層(最外絶縁層)」にあっても、第1配線層の一部(下面の一部と側面)を被覆するものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記第1絶縁層の下面に形成された保護絶縁層と」を有する点で一致し、さらに、「前記保護絶縁層は、前記第1配線層の下面の一部を被覆するように形成されて」いる点で共通するといえる。
ただし、本願発明では「前記第1配線層から露出された前記凹部の内側面を被覆する」ことも特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違する。

(3)第2配線構造について
引用発明における「配線構造」は、感光性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂からなる絶縁層と配線層とを有し、コア基板の第1絶縁層の上面に積層されてなるものであり、本願発明でいう「第2配線構造」に相当する。そして、引用発明における「配線構造」にあっても、その配線密度は、コア基板の配線密度よりも高い。
したがって、本願発明と引用発明とは、「感光性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂からなる絶縁層と配線層とを有し、前記第1絶縁層の上面に積層された第2配線構造と」を有し、「前記第2配線構造の配線密度は、前記第1配線構造の配線密度よりも高」い点で一致する。

(4)補強材の配設位置について
引用発明における「金属板」においても、第1絶縁層の厚さ方向の中心よりも配線構造側に片寄って設けられる、すなわち配線構造側に偏在するように設けられてなるものである。そしてさらに、ソルダレジスト層(最外絶縁層)を除く配線基板全体、すなわち第1絶縁層の下面から配線構造の最上の層(配線層)の上面までの厚さの厚さ方向の中心に位置するように当該金属板が配設されてなるものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記補強材は、前記第1絶縁層の厚さ方向の中心よりも前記第2配線構造側に偏在するとともに、前記第1絶縁層の下面から前記第2配線構造の最上層の配線層の上面までの厚さにおける厚さ方向の中心に位置するように設けられている」点で一致する。

(5)配線基板について
そして、引用発明における「配線基板」は、本願発明の「第1配線構造」、「保護絶縁層」及び「第2配線構造」にそれぞれ相当するコア基板、ソルダレジスト層(最外絶縁層)及び配線構造とを有するものであるから、本願発明でいう「配線基板」に相当するものである。

よって上記(1)ないし(5)によれば、本願発明と引用発明とは、
「熱硬化性樹脂に対して補強材を入れた絶縁性樹脂からなる第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の下面側に設けられた第1配線層と、
前記第1絶縁層の上面から露出された上端面を有し、前記第1絶縁層を厚さ方向に貫通して前記第1配線層と接続されたビア配線と、を有する第1配線構造と、
前記第1絶縁層の下面に形成された保護絶縁層と、
感光性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂からなる絶縁層と配線層とを有し、前記第1絶縁層の上面に積層された第2配線構造と、を有し、
前記第1絶縁層の上面と前記ビア配線の上端面とが研磨面であり、
前記保護絶縁層は、前記第1配線層の下面の一部を被覆するように形成されており、
前記第2配線構造の配線密度は、前記第1配線構造の配線密度よりも高く、
前記補強材は、前記第1絶縁層の厚さ方向の中心よりも前記第2配線構造側に偏在するとともに、前記第1絶縁層の下面から前記第2配線構造の最上層の配線層の上面までの厚さにおける厚さ方向の中心に位置するように設けられていることを特徴とする配線基板。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
第1絶縁層の下面側に設けられた第1配線層について、本願発明では第1絶縁層の下面に「凹部」が形成され、「前記凹部に充填」されたものであり、その「下面は、前記第1絶縁層の下面よりも前記第2配線構造側に凹む」ように形成されていることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。
[相違点2]
保護絶縁層について、本願発明では「前記第1配線層の下面の一部を被覆するとともに、前記第1配線層から露出された前記凹部の内側面を被覆する」ように形成されていることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。

6.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]及び[相違点2]について
例えば原査定の拒絶の理由に引用された特開2014−22618号公報(特に段落【0014】、【0046】〜【0067】、図1を参照)や、原査定時に引用した特開2011−199270号公報(特に【請求項1】、段落【0012】、【0030】、【0034】〜【0047】、図1を参照)、特開2015−18976号公報(特に【請求項1】、段落【0022】、【0049】〜【0090】、図1を参照)に記載されているように、後に除去される支持基板(支持体)上に、配線層、樹脂絶縁層を順次ビルドアップしていく製法を採用することにより、配線層が樹脂絶縁層に埋設、すなわち配線層が樹脂絶縁層の下面に形成された凹部に充填され、配線層の下面が樹脂絶縁層の下面よりも上方側に凹んでなる構成とすることは周知のものである。またその際、上記特開2011−199270号公報(特に【請求項1】、段落【0012】、【0031】、図1を参照)や上記特開2015−18976号公報(特に【請求項1】、段落【0031】〜【0033】、図1を参照)に記載のように、配線層の抜けを防止(配線層の密着強度を高める)等のために、ソルダーレジスト層を配線層の下面の一部(周縁部)を被覆するとともに、樹脂絶縁層の凹部の内側面を被覆するようにした構成とすることも周知のものであり、引用発明においてもこれら周知の技術を採用することにより、相違点1及び相違点2に係る構成とすることは当業者であれば適宜なし得たことである。

そして、上記各相違点を総合勘案しても、本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

7.審判請求人の主張について
審判請求人は審判請求書において、以下のように主張している。
(1)引用文献1(特開2017−112209号公報)に開示された技術はコア付き基板に関する技術であるのに対し、引用文献4(特開2014−22618号公報)に開示された技術はコアレス基板に関する技術であり、技術分野が互いに異なることから、引用発明のコア付き基板に対して引用文献4のコアレス基板に関する技術を適用することは、当業者といえども困難である。
(2)拒絶査定における相違点の判断について、2つの段階の組み合わせ、つまり引用発明に対する引用文献4に記載の構成の組み合わせと、更にその引用文献4に記載の構成に対する引用文献5,6に記載の構成の組み合わ
せを行うことによって相違点に係る構成を導きだすことが容易であるとしているが、引用発明に基づき、2つの段階を経て相違点に係る構成に至ることは、格別な努力を要するものと言え、当業者といえども容易なものではない。さらに言えば、引用文減4の「絶縁層12」が「ガラスクロス13」を内蔵するものであるのに対し、引用文献5の「絶縁層21」及び引用文献6の「絶縁層12」はガラスクロスを内蔵するものではなく、このような構造の相違があることから、引用文減4に記載の構成に対する引用文献5,6に記載の構成の組み合わせ自体も困難なものである。

そこで、上記主張を検討する。
(1)について
引用文献4に記載の「配線基板」にあっても、絶縁層12には補強部材であるガラスクロス13が含まれており(段落【0016】〜【0017】、図1を参照)、かかるガラスクロス13を含む絶縁層12は、コア基板に相当するとみることができるものであることに加えて、そもそも引用文献4に記載の絶縁層の下面側に設けられた配線層についての構成は、コア基板の有無とは直接関係のない構成であり、引用発明に対して引用文献4に記載の配線層についての構成を適用することに阻害要因はなく、当業者といえども困難であるとはいえない。
(2)について
拒絶査定において、<引用文献等一覧>に記載のように、引用文献4ないし6はいずれも周知技術を示す文献として引用されたものである(なお、引用文献5(特開2011−199270号公報)及び引用文献6(特開2015−18976号公報)は、拒絶理由通知後の手続補正で「前記保護絶縁層は、前記第1配線層の下面の一部を被覆するとともに、前記第1配線層から露出された前記凹部の内側面を被覆するように形成されており」という特定事項が追加されたことに伴って新たに引用したものである。)。そして、当該拒絶査定では「よって、請求項1、3、4、7−9に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献4−6に記載の周知技術に基いて当業者が容易になし得たものであるから、依然として特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」と判断しており、新たに引用した引用文献5,6に記載の構成(周知技術)についても引用発明に対して適用されるものであって、引用文献4に記載の構成(周知技術)に対して適用されるものではなく、審判請求人が主張するような2つの段階の組み合わせで相違点に係る構成を導き出すことが容易であるとしているわけではない。

よって、審判請求人の主張はいずれも採用することはできない。

8.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-09-08 
結審通知日 2022-09-13 
審決日 2022-09-29 
出願番号 P2017-163269
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 井上 信一
木下 直哉
発明の名称 配線基板、半導体装置、配線基板の製造方法及び半導体装置の製造方法  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

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