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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1391720
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-12-21 
確定日 2022-11-04 
事件の表示 特願2017− 86056「LEDディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月22日出願公開、特開2018−185396〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)4月25日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和 2年12月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 2月12日 :手続補正書、意見書の提出
同年 3月10日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年 7月26日 :手続補正書、意見書の提出
同年 8月17日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(9月21日 :原査定の謄本の送達)
同年12月21日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 4年 2月 7日 :手続補正書(方式)の提出

第2 令和3年12月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年12月21日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和3年12月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正を含むものである。本件補正前(令和3年7月26日にされた手続補正後をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1及び本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。下線は補正箇所を示す。

(1) 本件補正前の請求項1
「 【請求項1】
所定面積の可撓性を有すると共に厚み寸法が0.2〜1.5mmの範囲にある透明なフレキシブル透明シート基板と、前記フレキシブル透明シート基板の一方の面に設置された複数のLED素子とから形成され、それらLED素子が6000〜10000mcdの超高輝度であり、前記複数のLED素子が前記フレキシブル透明シート基板の単位面積当たりに所定の数で配置されて所定パターンの画素を構成し、前記複数のLED素子を利用して前記フレキシブル透明シート基板の一方の面に所定の動画または静止画を表示し、前記複数のLED素子の輝度を高くすることで、前記複数のLED素子を利用して前記フレキシブル透明シート基板の一方の面に所定の動画または静止画を表示中に、前記フレキシブル透明シート基板の一方の面の側から反対側の景観を視認不能であり、前記フレキシブル透明シート基板の他方の面の側から反対側の景観を視認可能であることを特徴とするLEDディスプレイ。」

(2) 本件補正後の請求項1
「 【請求項1】
所定面積の可撓性を有すると共に厚み寸法が0.2〜1.5mmの範囲にある透明なフレキシブル透明シート基板と、前記フレキシブル透明シート基板の一方の面に設置された複数のLED素子と、前記フレキシブル透明シート基板の他方の面を片面または両面に取り付けた所定面積の透明な支持プレートとから形成され、前記支持プレートがその前方と後方との少なくとも一方へ向かって凸となるように所定の曲率半径を有して円弧を画き、前記フレキシブル透明シート基板が前記支持プレートの曲率にあわせて円弧を画き、それらLED素子が6000〜10000mcdの超高輝度であり、前記複数のLED素子が前記フレキシブル透明シート基板の単位面積当たりに所定の数で配置されて所定パターンの画素を構成し、前記複数のLED素子を利用して前記フレキシブル透明シート基板の一方の面に所定の動画または静止画を表示し、前記複数のLED素子の輝度を高くすることで、前記複数のLED素子を利用して前記フレキシブル透明シート基板の一方の面に所定の動画または静止画を表示中に、前記動画または静止画を表示中の前記支持プレートの面の側から反対側の景観を視認不能であり、前記動画または静止画を非表示中の前記支持プレートの面の側から反対側の景観を視認可能であることを特徴とするLEDディスプレイ。」

2 本件補正の適否
(1) 本件補正の目的
ア 本件補正のうち、特許請求の範囲の請求項1についての補正は、以下の(ア)〜(ウ)の限定をするものである。
(ア) 「LEDディスプレイ」が「前記フレキシブル透明シート基板の他方の面を片面または両面に取り付けた所定面積の透明な支持プレートとから形成され」、「前記支持プレートがその前方と後方との少なくとも一方へ向かって凸となるように所定の曲率半径を有して円弧を画き、前記フレキシブル透明シート基板が前記支持プレートの曲率にあわせて円弧を画[く]」点を限定すること。
(イ) 「前記複数のLED素子を利用して前記フレキシブル透明シート基板の一方の面に所定の動画または静止画を表示中に、前記フレキシブル透明シート基板の一方の面の側から反対側の景観を視認不能であ[る]」とされる前記一方の面が「前記動画または静止画を表示中の前記支持プレートの面」であることを限定すること。
(ウ) 「前記複数のLED素子を利用して前記フレキシブル透明シート基板の一方の面に所定の動画または静止画を表示中に」「前記フレキシブル透明シート基板の他方の面の側から反対側の景観を視認可能である」とされる前記他方の面が「前記動画または静止画を非表示中の前記支持プレートの面」であることを限定すること。

イ そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、同一である。

ウ したがって、本件補正のうちの請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2) 独立特許要件について
前記のとおり、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討を行う。

ア 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

イ 引用文献4及び引用発明の認定
(ア) 引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用され、本願の出願前に発行された特開2009−186905号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。下線は、当合議体において付したものであり、後述の引用発明の認定に直接用いるところに付してある。

a 【請求項1】
「【請求項1】
透明基材の片面に複数の発光体が配列され、各発光体の透明基材への投影方向に遮光部材が設けられている透過型発光表示体。」

b 段落【0001】〜【0006】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、透視性を有する発光表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、広告宣伝は、テレビや新聞をはじめ、種々の媒体を用いて行われているが、立て看板や、商業ビルの看板のように、人目につく場所に広告媒体を設置することも、広告内容を人々に知らしめるために広く用いられている。また、これ以外にも、ショーウィンドウ、商業ビルの窓、バスやタクシーの窓等の、透明な窓や扉に広告宣伝を印刷した光透過性シートを貼付して、広告媒体とすることも行われている。
【0003】
特許文献1及び2には、表裏面に異なる絵柄を有し、裏面からの光があると手前側の絵柄が消えたように見える装飾材が開示されており、窓ガラス等の透明な基材に用いることで宣伝広告に有効であることが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−92694号公報
【特許文献2】特開平5−92695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、窓ガラス等に貼付して用いられている一般的な光透過性シートや、特許文献1及び2に記載されている装飾材は、装飾材を境目としたとき、内側と外側との光源の有無、強弱によって、視認性が異なり、宣伝広告側の視認性を高めた場合、背景透視性が低くなり、視認性と背景透視性の2つを両立することは困難であった。
【0006】
従って、本発明の課題は、透視性が高く、かつ、夜間における視認性が高い表示体を提供することにある。」

c 段落【0009】〜【0010】
「【0009】
以下、本発明の透過型発光表示体を、図面を参考にして説明する。
図1(a)は本発明の透過型発光表示体の発光面側(表面側)を、図1(b)は本発明の透過型発光表示体の裏面側を各々示す斜視図であり、図2は本発明の透過型発光表示体を示す断面の模式図である。
本発明の透過型発光表示体においては、図1(a)に示すように、透明基材1の片面に複数の発光体2が配列されている。
本発明で用いられる透明基材1としては、透明性を有するものであれば特に限定されるものではないが、透明性が高いもの、すなわち、400〜700nmの波長領域における透過率の平均値が80%以上のものが好ましく、85%以上のものがより好ましい。
透明基材1の具体例としては、ガラスや合成樹脂をフィルム状、シート状又は板状とした、ガラス基材や合成樹脂基材が挙げられる。ガラス基材の材料としては、自動車用、建築用、産業用等に通常用いられているガラスを用いることができ、具体的には、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、硼硅酸ガラス、石英ガラス、高硅酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。合成樹脂基材の材料も特に限定されず、公知のものを使用することが可能であり、具体的には、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、アクリル、セルロース系等の各種樹脂が挙げられ、汎用性の面からポリエステル系樹脂又はポリアミド系樹脂が好ましい。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等が好ましく、ポリアミド系樹脂としては、全芳香族ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン共重合体等が好ましい。
透明基材1の形状や大きさは特に限定されず、方形、三角形、多角形、円形、楕円形等の各種形状のものを、適切な大きさとして用いることができるが、取り扱い上の点から、方形又は略方形であると好ましい。
透明基材1の厚みも特に限定されないが、実用性の観点から、通常は1μm〜50mm程度であり、好ましくは5μm〜30mm、より好ましくは50μm〜10mmである。
【0010】
発光体2としては、発光ダイオード(LED)、電球、豆電球、麦球、発光管等を用いることができるが、消費電力、寿命、発熱、輝度、投影面積の小ささ等の観点から、LEDを用いることが好ましい。発光体2としては、赤色、緑色、青色、白色、橙色、黄色等の異なる色味のものから1種以上を用いることができ、また、2種以上の色味の発光体2を組み合わせ、これらを適宜配列することで、所望の文字、模様、図柄等を表示することが可能となる。例えば、図1(a)に示す本発明の態様では、青色発光体2−aと白色発光体2−bの2色の発光体を用いて数字[10]を表示している。
複数の発光体2の配列は特に限定されないが、発光体2が等間隔に散在するように配列することで、本発明の透過型発光表示体を透視しやすくなり、また、後述する発光面側から裏面側を透視困難とする効果が向上する。発光体2を等間隔に設ける配列の具体例としては、並列型、千鳥型、縞型、同心円型に設ける方法が挙げられ、並列型又は千鳥型に設けることが好ましい。発光体2を設ける間隔は、5〜100mmであると好ましく、10〜50mmであるとより好ましい。尚、ここで発光体の間隔とは、隣接する最も近い発光体の中心間の距離を示す。」

d 段落【0013】〜【0014】
「【0013】
遮光部材3は、発光体2から発せられる光が、発光体2が配列されていない側(裏面側)に透過することを阻害するために、各発光体2の透明基材1への投影方向に設けられる。
遮光部材3としては、発光体2から発せられる光を阻害できる材質のものであれば特に限定されず、金属材料、樹脂材料、顔料、染料等を用いて設けることができ、塗料を塗布することで設けることもできる。黒色、紺色、紫色、茶色等の暗色の遮光部材3を用いると、本発明の透過型発光表示体の裏面側からの光が反射、散乱しづらくなるため、裏面側から発光面側が透視しやすくなる。暗色の遮光部材3としては、黒色顔料、黒色染料、カーボンブラック、アニリンブラック、黒鉛、鉄黒、無機顔料、有機顔料等を用いることができ、これらは単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。また、上述の導通材4として挙げた材料のうち、遮光性を有するものを用いて、遮光部材3を形成することもできる。
【0014】
上述のように、各遮光部材3は、本発明の透過型発光表示体の裏面側から発光面側を透視したときに、発光体2から発せられる光が視認し難くなるように各発光体2の透明基材1への投影方向に設けられるが、具体的な発光体2と遮光部材3との位置関係は、本発明の透過型発光表示体が透視される方向によっても異なる。例えば、本発明の透過型発光表示体が、裏面側から発光面側に向かって透明基板1の垂直方向に沿って透視されることが想定される場合には、図2に示す本発明の態様のように、透明基材1上に垂直に発光体2が投影される部分に遮光部材3を設けることができる。遮光部材3は、図2に示すように透明基材1の裏面側に設けることもできるが、透明基材1の発光面側、具体的には、発光体2と透明基材1との間、透明基材1と後述する透明電極5との間等に設けることも可能であり、後述する粘着剤層の裏面側や発光体2に直接設けることも可能である。遮光部材3は、発光体2からの距離が短くなる位置に設けると、比較的面積の小さい遮光部材3を用いて発光体2から発せられる光を阻害することができる点で好ましい。
透明基材1上に遮光部材3を設ける具体的な方法としては、例えば、上記金属材料、樹脂材料、顔料、染料等とバインダーとを用いて塗料を調整し、塗布、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷などの公知の方法によって透明基材1上に塗膜を形成する方法が挙げられる。バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。」

e 段落【0016】
「【0016】
遮光部材3の大きさと数については、本発明の透過型発光表示体の透視性を良好とする観点から、本発明の透過型発光表示体の全面積に占める遮光部材3の投影面積の割合が、5〜70%であると好ましく、10〜60%であるとより好ましい。
本発明の透過型発光表示体は、配列されている発光体2が視界を遮るため、本発明の透過型発光表示体の裏面側から発光面側は透視可能でありながら、発光面側から裏面側は透視困難とすることが可能である。この効果は、発光体2を点灯したり、本発明の透過型発光表示体の裏面側を暗くしたり、発光面側を照明や太陽光によって明るくしたりすることでより強く発現する。」

f 段落【0018】〜【0019】
「【0018】
本発明の透過型発光表示体を窓ガラス等に設置する場合には、本発明の透過型発光表示体の裏面側の全面又は一部に粘着剤層等を適宜設けることができる。
粘着剤層としては透明なものが好ましく、粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などを使用することができる。
【実施例】
【0019】
実施例1
基材である厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(商品名:「ダイアホイル T−100」、三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製)上に、厚み100nmのITO膜をスパッタリング法により成膜し、フォトリソグラフィー法によりITO膜のパターニングを行い、透明電極とした。その後、ポリエチレンテレフタレート側に、スクリーン印刷にて中心間の距離が10mmピッチの並列型で、導電性ペースト(商品名:「ドータイト FEC−198」、藤倉化成株式会社製)を用いて直径5mmの円形の黒色のドットを印刷し、遮光部材とした。更に、透明電極上に銀ペースト(商品名:「ドータイト XA−492」、藤倉化成株式会社製)を用いて、発光ダイオード(商品名:「ELPA」、朝日電器株式会社製、直径:5mm)を、各遮光部材の発光面側の対応部分に配置して透過型発光表示体を得た(図1参照)。
得られた透過型発光表示体をガラス板に取付け、暗室と明室との境界に、発光面側を暗室側に向けて設置した。1000Hz、100Vの電圧をかけ、発光ダイオードを点灯して確認したところ、発光面側からは発光ダイオードのデザインが確認できたが、裏面側の明室は透視できず、裏面側からは発光ダイオードのデザインは確認できないが、透過型発光表示体を通して、発光ダイオードによって照明された発光面側の暗室が透視可能であった。」

g 段落【0021】
「【0021】
本発明の透過型発光表示体は、ショーウィンドウ、商業ビルの窓や、タクシーやバス等の自動車の窓等に貼付する広告媒体等として好適に用いられる。」

h 【図1】、【図2】







(イ) 引用発明の認定
前記(ア)a〜hにおいて摘記した事項を総合すると、引用文献4には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「裏面側の全面又は一部に粘着剤層等を適宜設けた透過型発光表示体をガラス板に取付けたものであって、(【0018】〜【0019】)
透過型発光表示体は、透明基材1の片面に複数の発光体2が配列され、各発光体の透明基材への投影方向に遮光部材が設けられており、(【請求項1】、【0009】)
透明基材1は、透明性を有し、厚みが50μm〜10mmの、合成樹脂をフィルム状又はシート状とした合成樹脂基材であり、(【0009】)
発光体2は、発光ダイオード(LED)であり、
2種以上の色味の発光体2を組み合わせ、これらを適宜配列することで、所望の文字、模様、図柄等を表示することが可能となり、
発光体2は等間隔に散在するように配列され、(【0010】)
遮光部材3は、発光体2から発せられる光が、発光体2が配列されていない側(裏面側)に透過することを阻害するために、各発光体2の透明基材1への投影方向に設けられ、(【0013】)
各遮光部材3は、透過型発光表示体の裏面側から発光面側を透視したときに、発光体2から発せられる光が視認し難くなるように各発光体2の透明基材1への投影方向に設けられ、(【0014】)
透過型発光表示体の裏面側から発光面側は透視可能でありながら、発光面側から裏面側は透視困難とすることが可能であり、この効果は、発光体2を点灯することでより強く発現し、(【0016】)
発光面側からは発光ダイオードのデザインが確認できたが、裏面側の明室は透視できず、裏面側からは発光ダイオードのデザインは確認できないが、透過型発光表示体を通して、発光ダイオードによって照明された発光面側の暗室が透視可能である、(【0019】)
透過型発光表示体をガラス板に取付けたもの。」

(ウ) 引用発明の用途の認定
引用文献4の段落【0002】及び【0021】の記載から、引用発明の用途は広告媒体であると認められる。

ウ 周知技術
(ア) 引用文献2、引用文献5及び周知技術1の認定
a 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用され、本願の出願前に発行された登録実用新案第3203462号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。下線は当合議体において付した。

(a) 段落【0001】
「【0001】
本考案は、表示装置に関する。」

(b) 段落【0011】〜【0019】
「【0011】
以下、本考案の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、表示装置1の概略を示す正面図である。図2は、表示ユニット1Aの概略を示す要部断面図である。図2では、断面を示すハッチングを一部省略している。
【0012】
表示装置1は、主として、可撓性を有する表示ユニット1Aを複数有する表示部1Bと、制御部60と、を有する。表示装置1においては、表示ユニット1Aを縦方向、横方向に複数並べて表示部1Bを形成する。図1では、表示ユニット1Aを横方向に3枚並べて表示部1Bを形成しているが、表示ユニット1Aの数や配置はこれに限られない。
【0013】
表示ユニット1Aは、主として、透明フィルム10と、発光素子20と、導電膜30と、保護部40(図2参照)と、フレキシブルプリント基板50(図1参照)と、を備える。
【0014】
透明フィルム10は、可撓性を有する透明なフィルムであり、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)等の柔軟な樹脂フィルムで形成される。透明フィルム10の表面(図2における+z側の面)には、複数の発光素子20が設けられ、透明フィルム10の表面及び裏面(図2における−z側の面)には、導電膜30が設けられる。
【0015】
透明フィルム10は、例えば、横方向(図2におけるx方向)の長さが600mm以上、縦方向(図2におけるy方向)の長さが300mm以上の大きさである。図2に示す例では、透明フィルム10の大きさは600mm(横方向の長さ)×480mm(縦方向の長さ)である。表示ユニット1Aの大きさと透明フィルム10の大きさとは略同一である。
【0016】
なお、透明フィルム10は、透明であり、可撓性を有するフィルム基板であれば、材質はPET、PEN、PC等に限られない。また、透明フィルム10の大きさも、例示した大きさに限られず、例えば、600mm×600mmでもよいし、600mm×300mmでもよいし、1200mm×600でもよい。
【0017】
透明フィルム10の端部には、フレキシブルプリント基板50が設けられる。フレキシブルプリント基板50は、薄い絶縁材(例えば、プラスチックフィルム)を使った可撓性を有するプリント基板であり、一端が導電膜30と電気的に接続され、他端が制御部60と電気的に接続される。
【0018】
発光素子20は、赤色の表示が可能なLED20r(図3参照)と、緑色の表示が可能なLED20g(図3参照)と、青色の表示が可能なLED20b(図3参照)の3種類のLEDを1個のチップに組み込んだ、いわゆる3in1タイプのLEDチップである。図3に示すように、LED20r、20g、20bは、それぞれ2個の端子を有し、これらの端子はそれぞれ導電膜30と電気的に接続される。
【0019】
図1、2に示すように、発光素子20は、透明フィルム10の表面に複数設けられる。発光素子20は、横方向及び縦方向に沿って2次元状に配置される。最も外側の発光素子20は、透明フィルム10の端から略15mmの位置に設けられ、隣接する発光素子20は、略12mmから略20mmの間の所定のピッチ(例えば、17.5mm程度)で設けられる。ここで、ピッチとは、隣り合う画素間の距離である。」

(c) 段落【0034】〜【0037】
「【0034】
このような構成を有する表示装置1の使用時には、表示部1Bの裏面が壁、窓等に貼着される。図4は、動画が表示部1Bに表示された表示例である。図4では、表示部1Bのみ表示し、制御部60については表示を省略している。また、図4では便宜上静止画として表示しているが、実際には文字情報が移動する動画が表示部1Bには表示される。また、図4は動画の表示例であるが、静止画の表示が可能であることは言うまでもない。
【0035】
図4では、空港等の公共施設に設置された動く歩道の、ハンドレール101を保持する側板102に表示部1Bが設置された例である。図4においては、表示部1Bが貼付された位置を2点鎖線で示す。図4では、文字情報(ここでは、時刻を示す情報)からなる動画を表示部1Bに表示する。
【0036】
表示部1Bは透明であるため、透明なガラスや樹脂の板材に重ねて表示部1Bを貼っても美観を損なわない。図4に示す例では、側板102及び表示部1Bを通してその先の風景が視認できるため、美観が損なわれない。
【0037】
また、表示部1Bは可撓性を有するため、貼付位置に曲面がある場合にも、曲面に沿って表示部1Bを設置することができるし、貼付位置に凹凸がある場合にも、凹凸を覆うように表示部1Bを設置することができる。図4に示す場合には、側板のつなぎ目(凹凸を有する)をまたぐように表示部1Bを設置することができる。」

(d) 【図1】、【図2】、【図4】










b 引用文献5の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用され、本願の出願前に発行された米国特許出願公開第2013/0051000号明細書(以下「引用文献5」という。)には、以下の記載がある。下線は当合議体において付した。また、括弧内に当合議体による和訳を付す。

(a) 段落[0001]-[0004]
「[0001] 1. Field of the Invention
[0002] The present invention relates to a display structure, and more particularly to a transparent display structure constructed by transparent rigid base plates holding a plurality of light strips therebetween.
[0003] 2. Description of the Prior Art
[0004] Nowadays many buildings adopt transparent glass curtain for the sake of appearance and lighting. Installing a large-sized display board on the glass curtain to increase the added value of the building has become a new advertisement style trend. Conventionally, a large-sized display board such as an electronic LED display board uses various array arrangements of LEDs to achieve the effect of variable patterns or direct image play. However, such display board mostly requires additional installation work on the external portion of the glass curtain or cement wall and would incur higher installation cost. Also, the LEDs suffering from the exposure to the sun and rain of the external environment would inevitably be damaged or deteriorate, causing the life expectancy of the large-sized display board to be affected.」

([0001] 1. 発明の分野
[0002] 本発明は、表示装置の構造に関し、特に、複数のライトストリップをその間に保持する透明剛性ベースプレートにより構成された透明表示構造に関する。
[0003] 2. 従来技術の説明
[0004] 今日、多くの建築物は、外観及び照明のために透明なガラスカーテンを採用している。建物の付加価値を高めるためにガラスカーテンに大型の表示板を設置することが、新しい広告スタイルのトレンドとなっている。
従来、電子LED表示板のような大型の表示板は、LEDの種々のアレイ配列を使用して可変パターン又は直接的な画像再生の効果を実現する。しかしながら、このような表示板は、多くの場合、ガラスカーテンやセメント壁の外部部分への付加的な設置作業を必要とし、高い設備費用を招くことになる。また、LEDは、外部環境で日光や雨にさらされることにより、必然的に損傷又は劣化し、大型の表示板の寿命が影響を受けることになる。)

(b) 段落[0017]-[0018]
「[0017] FIG. 1 is a schematic structural diagram of a transparent display structure according to a first embodiment. FIG. 2 is a schematic sectional diagram of the transparent display structure according to the first embodiment. Referring to FIG. 1 and FIG. 2, the transparent display structure 10 includes two transparent rigid base plates 12, 12′, a plurality of light strips 14 and an interlayer film 20. The two transparent rigid base plates 12, 12′ are configured spaced apart and parallel to each other. In this embodiment, the two transparent rigid base plates 12, 12′ are both flat boards. However, the present invention is not limited to be implemented in such way. The two transparent rigid base plates 12, 12′ may also be curved. The plurality of light strips 14 are arranged between the two transparent rigid base plates 12, 12′. The interlayer film 20 is disposed between the two transparent rigid base plates 12, 12′ and the plurality of light strips 14.
[0018] As illustrated in FIG. 1, the plurality of light strips 14 are electrically connected by a plurality of internal power and signal control wires 144 to each other, wherein a light strip 14 is electrically connected to an external power and control system 30 with an external power and control line group 16 to drive the plurality of the light strips 14 to emanate light. It is noted that the external power and control wire group 16 is not limited to be connected to the light strip 14 on the side, and it may connect electrically to any light strip 14 on the two sides or in the middle.」

([0017] 図1は、第1の実施の形態に係る透明表示構造の模式的な構成図である。図2は、第1の実施の形態に係る透明表示構造の模式的な断面図である。図1及び図2を参照すると、透明表示構造10は、2枚の透明剛性ベースプレート12、12′、複数のライトストリップ14及び層間膜20を備えている。2枚の透明剛性ベースプレート12、12′は間隔をおいて互いに平行になっている。この実施形態では、2枚の透明剛性ベースプレート12、12′はいずれも平坦な板である。しかし、本発明は、このような方法で実施することに限定されるものではない。2枚の透明剛性ベースプレート12、12′は曲面であってもよい。複数のライトストリップ14は、2枚の透明剛性ベースプレート12、12′の間に配置されている。層間膜20は、2枚の透明剛性ベースプレート12、12′及び複数のライトストリップ14の間に配置されている。
[0018] 図1に示すように、複数のライトストリップ14は、複数の内部電源及び制御信号線144を介して互いに電気的に接続され、ライトストリップ14が、外部電源及び制御線群16によって、外部電源及び制御システム30に電気的に接続されることで、複数のライトストリップ14を駆動して光を放射させる。なお、外部電源及び制御線群16は、一端でライトストリップ14に接続されることに限定されず、両端又は中間で任意のライトストリップ14に電気的に接続することができる。)

(c) 段落[0021]-[0023]
「[0021] Continuing the above description, each light strip 14 includes a substrate 141, a plurality of light-emitting elements 142 and a plurality of electric elements 143. The substrate 141 can be a flexible circuit board, a printed circuit board or a non-flexible circuit board. The plurality of light-emitting elements 142 are disposed on the outer surface of the substrate 141. According to an embodiment, the light-emitting elements 142 can be monochromatic or color point controlled LEDs so that the light strips can have varying effects of color, text, images or animation. The plurality of electric elements 143 such as control ICs are disposed inside the substrate 141 or on an inner surface of the substrate 141 and electrically connecting the light-emitting elements 142. According to another embodiment, the control ICs may also be disposed inside the light-emitting elements 142.
[0022] The material of the transparent rigid base plates 12, 12′ can be but not limited to be glass, polycarbonate, plastic, laminated glass or laminated plastic. And the interlayer film can be but not limited to be polyvinyl butyral (PVB), ethylene naphthalate (EN), polyethylene naphthalate (PEN), ethyl vinyl acetate (EVA), poly urethane (PU), thermoplastic poly urethane (TPU) or adhesive gel. According to an embedment, the plurality of light strips 14 are held in the laminated glass formed by two transparent glasses and PVB, i.e. the light strips are fixed by glue injection. In the transparent display structure 10 formed by the laminated glass, area other than the area where the plurality of light strips 14 are disposed are transparent, providing great transparency and allowing the transparent display structure 10 of the present embodiment to have both the advantages of the color varying effect produced by the plurality of the light strips 10 and the transparency of the laminated glass. Moreover, using curved laminated glass affords the transparent display structure 10 high flexibility on shape design.
[0023] FIG. 4 is a schematic sectional diagram illustrating a transparent display structure according to a third embodiment. Referring to FIG. 4, the transparent display structure includes two transparent rigid base plates 12, 12′, a plurality of light strips 14 and an interlayer film 20. The transparent rigid base plates 12, 12′ are configured spaced apart and parallel to each other and having two inner surfaces 121, 121′ facing against each other. According to this embodiment, as illustrated in the figure, the two transparent rigid base plates 121, 121′ are curved for illustration purpose. However, the present invention is not limited to be implemented in such way. The two transparent rigid base plates 12, 12′ may also be planar. The plurality of light strips 14 are arranged on the inner surface 121 of one of the transparent rigid base plate 12. The interlayer film 20 is disposed on the peripheries of the two inner surfaces 121, 121′ so as to space apart the two transparent rigid base plates 12, 12′ and seal the hollow space 122 formed by the two transparent rigid base plates 12, 12′. The structure, connection and control mechanism of the light strips 14 have been provided in the first embodiment and are omitted to be described here.」

([0021] 上述の説明を続けると、各ライトストリップ14は、基板141、複数の発光素子142及び複数の電気素子143を備えている。基板141は、可撓性回路基板、プリント回路基板又は非可撓性回路基板とすることができる。複数の発光素子142は、基板141の外面上に配置されている。一実施形態によれば、発光素子142は単色又は色点制御のLEDとすることができるので、ライトストリップは、色、テキスト、画像又はアニメーションの様々な効果を持つことができる。制御IC等の複数の電気素子143は、基板141内に又は基板141の内面上に配置され、発光素子142に電気的に接続される。別の実施形態によれば、制御ICは、発光素子142の内側に配置されてもよい。
[0022] 透明な剛性基板12、12′の材料は、これに限定されるものではないが、ガラス、ポリカーボネート、プラスチック、積層ガラス又は積層プラスチックにすることができる。そして、層間膜は、これに限定されるものではないが、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレンナフタレート(EN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチルビニルアセテート(EVA)、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)又は接着性ゲルとすることができる。
一実施形態によれば、複数のライトストリップ14は、2枚の透明ガラス及びPVBにより形成された積層ガラスに保持されている、すなわち、ライトストリップは接着剤の注入により固定されている。積層ガラスで形成された透明表示構造10では、複数のライトストリップ14が配置される領域以外の領域は透明であり、優れた透明性を提供するとともに、本実施形態の透明表示構造10は、複数のライトストリップ10によって生じる色変化効果と積層ガラスの透明性の両方の利点を兼ね備えることができる。さらに、曲面積層ガラスは、透明表示構造10の形状設計に高い柔軟性をもたらす。
[0023] 図4は、第3の実施の形態に係る透明表示構造を示す模式的な断面図である。図4を参照すると、透明表示構造は、2枚の透明剛性ベースプレート12、12′、複数のライトストリップ14及び層間膜20を備えている。透明剛性ベースプレート12、12′は、間隔をおいて互いに平行になっており、互いに向き合う内面121、121′を有している。この実施形態によれば、図に示すように、2枚の透明剛性ベースプレート121、121′は図示目的のために曲面となっている。しかし、本発明は、このような方法で実施することに限定されるものではない。2枚の透明剛性ベースプレート12、12′は、平坦であってもよい。複数のライトストリップ14は、透明剛性ベースプレート12の一方の内面121に配置されている。層間膜20が2つの内面121、121′の外周に配置されることで、2枚の透明剛性ベースプレート12、12′は間隔をおき、2枚の透明剛性ベースプレート12、12′により形成される中空空間122が封止される。ライトストリップ14の構造、接続及び制御機構は、第1の実施形態で提供されており、ここでは説明を省略する。)

(d) Fig.1, Fig.4







c 周知技術1の認定
前記a及びbにおいて摘記した事項に例示されるように、次の技術は周知技術であると認められる(以下、当該技術を「周知技術1」という。)。
<周知技術1>
「表示装置において、LED素子を設けたフレキシブル基板を曲面ガラスに配置すること。」

(イ) 引用文献7及び周知技術2の認定
a 引用文献7の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用され、本願の出願前に発行された特開2012−173545号公報(以下「引用文献7」という。)には、以下の記載がある。下線は当合議体において付した。

(a) 段落【0001】
「【0001】
本発明は、店舗に設置され、当該店舗の宣伝情報を表示する店舗宣伝用デジタルサイネージに関する。」

(b) 段落【0012】〜【0013】
「【0012】
[第一実施形態]
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1〜図4において、1Aは本発明の第一実施形態に係る店舗宣伝用デジタルサイネージであって、該店舗宣伝用デジタルサイネージ1Aは、店舗に設置され、当該店舗の宣伝情報を表示するためのものであり、二種類の表示部を備えている。
【0013】
一方の表示部は、多数のLEDをマトリックス状に配置して、その発光制御に基づいて画像を発光表示するLED表示部2である。このLED表示部2は、どうしても画像の解像度が粗くなるという短所を持っているが、同時に複数のLEDが自発光するため、直射日光にも負けない高い輝度(5000mcd〜10000mcd以上)の画像表示が可能であり、且つ、高い耐熱性を持つという長所がある。」

(c) 【図1】、【図2】







b 周知技術2の認定
前記aにおいて摘記した事項に例示されるように、次の技術は周知技術であると認められる(以下、当該技術を「周知技術2」という。)。
<周知技術2>
「店舗宣伝用デジタルサイネージのLED表示部において、直射日光にも負けない高い輝度(5000mcd〜10000mcd以上)の画像表示が行われていること。」

エ 対比
(ア) 対比分析
本件補正後の請求項1の記載の順に沿って、本件補正発明と引用発明を対比する。

a(a) 引用発明において、「透明基材1は、透明性を有し、厚みが50μm〜10mmの、合成樹脂をフィルム状又はシート状とした合成樹脂基材であ[る]」から、引用発明における「透明基材1」は、本件補正発明における「透明な」「透明シート基板」に相当する。
(b) 引用発明における「透明基材1」が所定面積を有することは、自明な事項である。
(c) よって、本件補正発明と引用発明は、「所定面積の透明な」「透明シート基板」から形成される点で一致する。

b(a) 引用発明において、「発光体2は、発光ダイオード(LED)であ[る]」から、引用発明における「発光体2」は、本件補正発明における「LED素子」に相当する。
(b) 引用発明において、「透明基材1の片面に複数の発光体2が配列され」るから、前記aを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「透明シート基板の一方の面に設置された複数のLED素子」から形成される点で一致する。

c(a) 引用発明における「ガラス板」は、本件補正発明における「透明な支持プレート」に相当する。
(b) 引用発明における「ガラス板」が所定面積を有することは、自明な事項である。
(c) 引用発明は「裏面側の全面又は一部に粘着剤層等を適宜設けた透過型発光表示体をガラス板に取付けたもの」であるから、前記a及びbを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「透明シート基板の他方の面を片面」「に取り付けた所定面積の透明な支持プレート」から形成される点で一致する。

d(a) 引用発明において、「発光体2は等間隔に散在するように配列され[る]」ものであることから、発光体2は、単位面積当たりに所定の数で配置されていると認められる。
(b) 引用発明において、「2種以上の色味の発光体2を組み合わせ、これらを適宜配列することで、所望の文字、模様、図柄等を表示することが可能とな[る]」から、引用発明における「発光体2」は、「所定パターンの画素を構成[する]」ものであると認められる。
(c) よって、前記a及びbを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記複数のLED素子が」「透明シート基板の単位面積当たりに所定の数で配置されて所定パターンの画素を構成[する]」点で一致する。

e(a) 引用発明において、「2種以上の色味の発光体2を組み合わせ、これらを適宜配列することで、所望の文字、模様、図柄等を表示することが可能となり」、「発光面側からは発光ダイオードのデザインが確認でき[る]」ところ、「発光ダイオードのデザイン」は「所望の文字、模様、図柄等」に対応するものであるから、引用発明は、発光面側に発光ダイオードのデザインを表示するものである。
(b) よって、前記a及びbを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記複数のLED素子を利用して」「透明シート基板の一方の面に所定の動画または静止画を表示[する]」点で一致する。
(c) また、引用発明において「発光面側からは」「裏面側の明室は透視でき[ない]」こと、及び、「裏面側からは」「発光面側の暗室が透視可能である」ことは、それぞれ、本件補正発明において「前記動画または静止画を表示中の前記支持プレートの面の側から反対側の景観を視認不能である」こと、及び、「前記動画または静止画を非表示中の前記支持プレートの面の側から反対側の景観を視認可能である」ことに相当する。
(d) さらに、引用発明において、「発光面側からは」「裏面側の明室は透視でき[ない]」ところ、発光ダイオードの輝度が十分高くなければ、「発光面側からは」「裏面側の明室は透視でき[ない]」ようにはならないことは自明であり、また、引用発明において、「透過型発光表示体の裏面側から発光面側は透視可能でありながら、発光面側から裏面側は透視困難とすることが可能であり、この効果は、発光体2を点灯することでより強く発現[する]」から、引用発明は、発光ダイオードの輝度を十分高くすることにより、「発光面側からは」「裏面側の明室は透視でき[ない]」ようにするものであると認められる。
(e) 前記(a)〜(d)をまとめると、本件補正発明と引用発明は、「前記複数のLED素子を利用して」「透明シート基板の一方の面に所定の動画または静止画を表示し、前記複数のLED素子の輝度を高くすることで、前記複数のLED素子を利用して」「透明シート基板の一方の面に所定の動画または静止画を表示中に、前記動画または静止画を表示中の前記支持プレートの面の側から反対側の景観を視認不能であり、前記動画または静止画を非表示中の前記支持プレートの面の側から反対側の景観を視認可能である」点で一致する。

f 引用発明は「透過型発光表示体をガラス板に取付けたもの」であるところ、「透過型発光表示体」の「発光体2は、発光ダイオード(LED)であり」、「2種以上の色味の発光体2を組み合わせ、これらを適宜配列することで、所望の文字、模様、図柄等を表示することが可能とな[る]」ものであるから、本件補正発明と引用発明は、「LEDディスプレイ」である点で共通する。

(イ) 一致点及び相違点
前記(ア)の対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

a 一致点
「 所定面積の透明な透明シート基板と、前記透明シート基板の一方の面に設置された複数のLED素子と、前記透明シート基板の他方の面を片面に取り付けた所定面積の透明な支持プレートとから形成され、前記複数のLED素子が前記透明シート基板の単位面積当たりに所定の数で配置されて所定パターンの画素を構成し、前記複数のLED素子を利用して前記透明シート基板の一方の面に所定の動画または静止画を表示し、前記複数のLED素子の輝度を高くすることで、前記複数のLED素子を利用して前記透明シート基板の一方の面に所定の動画または静止画を表示中に、前記動画または静止画を表示中の前記支持プレートの面の側から反対側の景観を視認不能であり、前記動画または静止画を非表示中の前記支持プレートの面の側から反対側の景観を視認可能であるLEDディスプレイ。」

b 相違点
(a) 相違点1
本件補正発明においては、
「フレキシブル透明シート基板」が「可撓性を有すると共に厚み寸法が0.2〜1.5mmの範囲にある」
のに対し、
引用発明においては、「透明基材1は」「厚みが50μm〜10mm」であり、可撓性を有するフレキシブル基板であるか否かは特定されていない点。

(b) 相違点2
本件補正発明においては、
「前記支持プレートがその前方と後方との少なくとも一方へ向かって凸となるように所定の曲率半径を有して円弧を画き、前記フレキシブル透明シート基板が前記支持プレートの曲率にあわせて円弧を画[く]」
のに対し、
引用発明においては、「ガラス板」及び「透明基材1」の形状は特定されていない点。

(c) 相違点3
本件補正発明においては、
「それらLED素子が6000〜10000mcdの超高輝度であ[る]」
のに対し、
引用発明においては、「発光体2」の輝度は特定されていない点。

オ 判断
(ア) 相違点の想到容易性について
a 相違点1について
引用文献4の段落【0009】には「透明基材1の厚みも特に限定されないが、実用性の観点から」「より好ましくは50μm〜10mmである。」と記載されているところ、引用発明における透明基材1の厚みを、加工容易性や耐久性などを考慮して、50μm〜10mmの範囲内で最適なものとすることは、当業者が当然考慮すべき事項であり、そのなかで0.2〜1.5mmの範囲のものを選択することに格別の困難性はない。
また、前記ウ(ア)において認定したとおり、「表示装置において、LED素子を設けたフレキシブル基板を曲面ガラスに配置すること」は周知技術(周知技術1)であるから、引用発明において当該周知技術1を適用し、ガラス板を曲面とするとともに、透明基材1もそれに応じた形状のフレキシブル基板とすることは、当業者が適宜なし得た事項である。

b 相違点2について
前記aにおいて示したとおり、引用発明において周知技術1を適用し、ガラス板を曲面とするとともに、透明基材1もそれに応じた形状のフレキシブル基板とすることは、当業者が適宜なし得た事項であるところ、さらに、引用文献5のFig.4に示されるように、当該曲面として最も一般的な曲面形状の一つである円弧を採用することは、当業者にとって自明な選択にすぎない。

c 相違点3について
以下の(a)及び(b)のいずれの論理付けによっても、引用発明において、「発光体2」の輝度を6000〜10000mcdの超高輝度とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(a) 論理付け1
引用発明において、「透過型発光表示体の裏面側から発光面側は透視可能でありながら、発光面側から裏面側は透視困難とすることが可能であり、この効果は、発光体2を点灯することでより強く発現[する]」から、当該効果を所望の程度に発現させ得るに必要な明るさとなるまで、発光体2の輝度をより高輝度とすることは、当業者が当然考慮すべき事項である。
また、前記ウ(イ)において認定したとおり、「店舗宣伝用デジタルサイネージのLED表示部において、直射日光にも負けない高い輝度(5000mcd〜10000mcd以上)の画像表示が行われていること」は、周知技術(周知技術2)であるから、「6000〜10000mcdの超高輝度」は、前記輝度の選択範囲として当業者が通常想定すべき範囲内のものであるといえる。

(b) 論理付け2
前記ウ(イ)において認定したとおり、「店舗宣伝用デジタルサイネージのLED表示部において、直射日光にも負けない高い輝度(5000mcd〜10000mcd以上)の画像表示が行われていること」は、周知技術(周知技術2)である。
また、前記イ(ウ)において認定したとおり、引用発明の用途は広告媒体である。
よって、引用発明と周知技術2は、技術分野を共通するものであるから、引用発明において周知技術2を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。また、発光体2の輝度として、「5000mcd〜10000mcd以上」の範囲から6000〜10000mcdの範囲のものを採用することは、設計事項の範囲内のものである。

(イ) 総合検討
前記相違点1〜3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術1及び2から予測される程度のものにすぎず、格別顕著な効果を認めることはできない。

(ウ) 小括
したがって、前記相違点1〜3は、格別のものではなく、本件補正発明は引用発明及び周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(エ) 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、以下の主張1〜主張5の主張を行っている。

a 主張1
(a) 主張1の内容
請求人は、原査定における引用文献1〜9には、本件補正発明の全構成に相当する構成の明確な開示がなく、引用文献1に引用文献2〜9を適用したとしても、本件補正発明の全構成を構想することはできない旨を主張している。

(b) 主張1についての検討
当合議体における特許法29条2項の規定に係る検討は、原査定における引用文献1〜9のいずれかに本件補正発明の全構成に相当する構成が開示されていることを前提とするものでなければ、引用文献1に引用文献2〜9を適用することを前提とするものでもないから、当該主張は、前記(ウ)の結論を左右するものではない。
なお、本件補正発明と引用発明は前記相違点1〜3において相違するものの、前記(ウ)に示したとおり、前記相違点1〜3は、格別のものではなく、本件補正発明は引用発明及び周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

b 主張2
(a) 主張2の内容
請求人は、本件補正発明が「任意の場所に設置可能であって所定の動画または静止画を支持プレートの片面または両面に表示することができる」という効果を有する旨を主張している。

(b) 主張2についての検討
第一に、本件補正後の請求項1に「任意の場所に設置可能で[ある]」という発明特定事項はないから、当該主張は特許請求の範囲の記載に基づくものではない。
第二に、仮に、本件補正発明が当該効果を有するものであったとしても、前記イ(ウ)において認定したとおり、引用発明の用途は広告媒体であり、広告効果向上のために、「透過型発光表示体をガラス板に取付けたもの」である引用発明を、任意の場所に設置可能であるようにすることは、当業者が当然考慮すべき事項である。
「所定の動画または静止画を支持プレートの片面」「に表示することができる」ことについては、引用発明も同様である。

c 主張3
(a) 主張3の内容
請求人は、本件補正発明が「所定の動画または静止画を表示中に、動画または静止画を非表示中の支持プレートの面の側から反対側の景観を視認することができ、動画または静止画を非表示中の支持プレートの面の側から反対側の様子を知ることができるとともに、動画または静止画を表示中の支持プレートの面の側から反対側の景観を視認不能にすることによって、動画または静止画を非表示中の支持プレートの面の側の様子を隠すことができ、動画または静止画を非表示中の支持プレートの面の側をプライベートスペースやシークレットスペースにすることができる」という効果を有する旨を主張している。

(b) 主張3についての検討
引用発明において、「発光面側からは発光ダイオードのデザインが確認できたが、裏面側の明室は透視できず、裏面側からは発光ダイオードのデザインは確認できないが、透過型発光表示体を通して、発光ダイオードによって照明された発光面側の暗室が透視可能である」から、引用発明もまた当該効果を有するものである。

d 主張4
(a) 主張4の内容
請求人は、本件補正発明が「支持プレートが所定の曲率半径で湾曲していたとしても、可撓性を有するフレキシブル透明シート基板をその曲率半径にあわせて湾曲させることができるから、所定の曲率半径で湾曲する支持プレートにフレキシブル透明シート基板を取り付けることができ、様々な湾曲形状のLEDディスプレイを作ることができるとともに、様々に湾曲する支持プレートにおいてその片面または両面に所定の動画または静止画を表示することができる」という効果を有する旨を主張している。

(b) 主張4についての検討
前記ウ(ア)において認定したとおり、「表示装置において、LED素子を設けたフレキシブル基板を曲面ガラスに配置すること」は周知技術(周知技術1)であるから、当該効果は、周知技術に基づき当業者が予測し得る程度のものである。

e 主張5
(a) 主張5の内容
請求人は、本件補正発明が「LEDディスプレイは、所定の曲率半径で湾曲する支持プレートの両面や片面に所定の画像を表示することで、任意の場所に設置可能であって所定の曲率半径で湾曲するポスターパネルや展示パネル、間仕切りパネル等の宣伝用のパネル板として使用することができ、商品やサービスの各種情報を伝える伝達媒体として利用することができる」という効果を有する旨を主張している。

(b) 主張5についての検討
「任意の場所に設置可能であ[る]」ことについては、前記bにおいて検討したとおりである。
また、「所定の曲率半径で湾曲する支持プレートの両面や片面に所定の画像を表示すること」については、前記dにおいて検討したとおりである。
さらに、前記イ(ウ)において認定したとおり、引用発明の用途は広告媒体であるから、引用発明を、宣伝用のパネル板や伝達媒体として使用することできることは、当業者にとって自明である。

f 請求人の主張についてのまとめ
請求人の前記主張1〜5を参酌しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術1及び2から予測される程度のものにすぎず、請求人の主張は、前記(ウ)の結論を左右するものではない。

カ 独立特許要件についての判断のまとめ
前記オにおいて検討したとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1及び2に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正の却下の決定の理由のむすび
以上検討のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件発明について
1 本件発明の認定
本件補正は、上記第2において示したとおり却下したから、本願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、前記第2の1(1)の本件補正前の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における請求項1についての拒絶の理由である理由2(進歩性)の概要は、次のとおりである。

進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(下記引用文献1〜5、7〜9参照)に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1.特開2017−45855号公報
引用文献2.登録実用新案第3203462号公報
引用文献3.米国特許出願公開第2008/0198584号明細書
引用文献4.特開2009−186905号公報
引用文献5.米国特許出願公開第2013/0051000号明細書
引用文献7.特開2012−173545号公報
引用文献8.特開2005−267875号公報
引用文献9.特開2012−028820号公報

3 引用文献に記載された発明等
引用文献4に記載された技術事項及び引用発明の認定並びに周知技術1及び2の認定は、前記第2の2(2)イ及びウにおいて示したとおりである。

4 対比・判断
本件発明は、本件補正発明のうち、前記第2の2(1)アに示した(ア)〜(ウ)の限定を省いたものである。
そして、本件発明の構成を全て含み、さらに前記(ア)〜(ウ)の限定を付加した本件補正発明は、前記第2の2(2)において示したとおり、引用発明及び周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、この限定を省いた本件発明も、同様に、引用発明及び周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上検討のとおり、本件発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-09-01 
結審通知日 2022-09-06 
審決日 2022-09-22 
出願番号 P2017-086056
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 佐藤 久則
濱本 禎広
発明の名称 LEDディスプレイ  
代理人 小林 義孝  
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