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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1391931
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-05-20 
確定日 2022-12-13 
事件の表示 特願2018− 44234「車両用制御装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月19日出願公開、特開2019−159661、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成30年3月12日の出願であって、令和3年11月26日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月17日に意見書とともに手続補正書が提出され、令和4年3月8日付けで拒絶査定(謄本送達日同年3月15日。以下、「原査定」という。」)がなされ、これに対して同年5月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(令和4年3月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1−3
・引用文献等 1−3

<引用文献等一覧>
1.特開2014−168219号公報
2.特開2006−226788号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2013−173490号公報(周知技術を示す文献)


第3 本願発明

本願請求項1〜3に係る発明(以下、「本願発明1」〜「本願発明3」といい、これらをまとめて「本願発明」ということがある。)は、令和3年12月17日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
車両に搭載されかつ車内ネットワークで接続された複数のECU間のデータ通信、及び当該複数のECUと車外装置との間のデータ通信を、中継するゲートウェイ機能を備えた車両用制御装置であって、
所定の機能を実現するアプリケーションを実行するアプリケーション実行部と、
前記アプリケーションの一部である特定アプリケーションの取得及び消去を管理するアプリケーション管理部と、を備え、
前記アプリケーション管理部は、前記特定アプリケーションを取得することによって、所定の機能を追加し、
前記アプリケーション実行部は、
前記アプリケーション管理部が追加した機能に基づいて、前記複数のECUから前記車内ネットワークに送出される複数のデータのうち所定のデータを収集し、前記収集したデータを前記車外装置に送信し、
前記アプリケーション管理部が追加した機能に基づいて、前記収集したデータを用いて前記車外装置が行った演算の結果を前記車外装置から受信し、所定のECUが実行する所定の車両制御に前記演算の結果を反映させるためのデータを前記車内ネットワークに送出する、
ことを特徴とする、車両用制御装置。
【請求項2】
前記アプリケーション実行部は、前記アプリケーション管理部が追加した機能に基づいて、所定のECUに所定の車両制御を実行させるためのデータを前記車内ネットワークに送出する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記アプリケーション実行部は、前記アプリケーション管理部が追加した機能に基づいて、前記複数のECUから前記車内ネットワークに送出される複数のデータのうち、所定のデータを収集して所定の記憶領域に記憶する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両用制御装置。」


第4 引用例

1 引用例1に記載された事項及び引用発明
(1)引用例1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2014−168219号公報(平成26年9月11日公開。以下、これを「引用例1」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A 「【0032】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本実施の形態に係る車載通信システムの構成を示す模式図である。図において一点鎖線で示す1は車輌であり、車輌1にはセキュリティコントローラ10、ゲートウェイ30及び複数のECU(Electronic Control Unit)50等が搭載されている。車輌1には、共通の通信線にバス接続された複数のECU50による通信グループが複数存在し、通信グループ間の通信をゲートウェイ30が中継している。このためゲートウェイ30には、複数の通信線が接続されている。またゲートウェイ30は、セキュリティコントローラ10が接続されており、セキュリティコントローラ10からの情報をECU50へ送信すると共に、ECU50から受信した情報をセキュリティコントローラ10へ与える。
【0033】
セキュリティコントローラ10は、ユーザが所持する端末装置3又は種々のサーバ装置5等と、ゲートウェイ30及びECU50等を含んで構成された車輌1の車内ネットワークとの間の通信を中継する機能を有し、ゲートウェイ30に接続されている。端末装置3は、例えばユーザが所持する携帯電話機、スマートフォン、タブレット型端末又はノートPC(Personal Computer)等の装置であり、セキュリティコントローラ10との間で有線又は無線による通信を行う。サーバ装置5は、車輌1外の適所に設置され、車輌1のセキュリティコントローラ10と直接的に、及び/又は、端末装置3を介して間接的に通信を行う。
【0034】
図2は、セキュリティコントローラ10の構成を示すブロック図である。セキュリティコントローラ10は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、位置情報取得部13、有線通信部14、無線通信部15、車内通信部16及び記憶部17等を備えて構成されている。
【0035】
CPU11は、記憶部17のプログラム記憶部17aに記憶された一又は複数のプログラムをRAM12に読み出して実行することにより、種々の処理を行う演算処理装置である。図示の例では、CPU11が3つのプログラムA〜Cを実行している。CPU11は、例えば時分割などで複数のプログラムを切り替えて実行することにより、複数のプログラムを並列的に実行することができる。RAM12は、SRAM(Static RAM)又はDRAM(Dynamic RAM)等のメモリ素子で構成され、CPU11が実行するプログラム及び実行に必要なデータ等が一時的に記憶される。
【0036】
位置情報取得部13は、車輌1の位置情報を取得してCPU11へ与える。位置情報取得部13は、例えばGPS(Global Positioning System)の信号を受信するアンテナなどが接続され、受信信号に基づいて車輌1の位置(緯度及び経度等)を算出する構成とすることができる。更に、位置情報取得部13は、速度センサ、加速度センサ又はジャイロセンサ等のセンサから得られる情報、並びに、地図情報等を利用して車輌1の位置を算出してもよい。なお車輌1にカーナビゲーション装置が搭載されている場合、車輌1の位置を算出する処理はカーナビゲーション装置が行い、算出結果をセキュリティコントローラ10が取得して利用する構成であってもよい。」

B 「【0038】
無線通信部15は、電波又は光等の無線信号を利用して、車輌1内又は車輌1から無線信号が到達する範囲内に存在する端末装置3との間で無線通信を行う。無線通信部15は、例えば無線LAN(Local Area Network)又はBluetooth(登録商標)等の規格に応じて無線通信を行う。また無線通信部15は、公衆の携帯電話網などを利用して、車輌1から遠隔地にセットされたサーバ装置5などとの通信を行う構成としてもよい。無線通信部15は、CPU11から与えられた情報を端末装置3又はサーバ装置5等の外部装置へ送信すると共に、外部装置から受信した情報をCPU11へ与える。」

C 「【0041】
本実施の形態に係るセキュリティコントローラ10は、CPU11にて実行するプログラムを追加、更新及び削除等することが可能な構成である。例えば、ユーザがGPS受信機の搭載された端末装置3にてカーナビゲーションプログラムを動作させ、端末装置3をカーナビゲーション装置として利用する場合、車輌1の速度情報などを端末装置3が取得することによって精度のよい車輌位置の算出を行うことが可能となる。そこでユーザは、端末装置3のカーナビゲーションプログラムと連動し、車輌1の速度情報などを取得して端末装置3へ送信するプログラムを、セキュリティコントローラ10に追加(いわゆるインストール)することができる。」

D 「【0044】
またセキュリティコントローラ10のCPU11は、既に記憶部17に記憶されたプログラムについて、例えば機能拡張又は不具合修正等を目的として、プログラムの更新処理を行う。プログラムの更新処理は、例えば車輌1の操作部又は端末装置3等から更新指示が与えられた場合に行ってもよく、また例えばサーバ装置5などとの通信を定期的に行い、プログラムの更新の要否をCPU11が判定して自発的に行ってもよい。セキュリティコントローラ10のCPU11は、記憶部17のプログラム記憶部17aに記憶されているプログラムの一部又は全部を、端末装置3又はサーバ装置5等から取得した更新用の情報(更新用のプログラム又はデータ等)にて書き換えることにより、プログラムを更新する。」

E 「図1



(2)引用発明
上記(1)記載事項A〜Eの記載から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「車載通信システムにおけるセキュリティコントローラ10であって、
車輌1にはセキュリティコントローラ10、ゲートウェイ30及び複数のECU50等が搭載され、共通の通信線にバス接続された複数のECU50による通信グループが複数存在し、通信グループ間の通信をゲートウェイ30が中継しているため、ゲートウェイ30には、複数の通信線とセキュリティコントローラ10が接続されており、セキュリティコントローラ10からの情報をECU50へ送信すると共に、ECU50から受信した情報をセキュリティコントローラ10へ与え(【0032】)、
セキュリティコントローラ10は、CPU11、RAM12、位置情報取得部13、有線通信部14、無線通信部15、車内通信部16及び記憶部17等を備え(【0034】)、
セキュリティコントローラ10は、ユーザが所持する端末装置3又は種々のサーバ装置5等と、ゲートウェイ30及びECU50等を含んで構成された車輌1の車内ネットワークとの間の通信を中継する機能を有し、ゲートウェイ30に接続され、サーバ装置5は、車輌1外の適所に設置され、車輌1のセキュリティコントローラ10と通信を行い(【0033】)、
CPU11は、記憶部17のプログラム記憶部17aに記憶された一又は複数のプログラムをRAM12に読み出して実行することにより、種々の処理を行い(【0035】)、
位置情報取得部13は、車輌1の位置情報を取得してCPU11へ与え、速度センサ、加速度センサ又はジャイロセンサ等のセンサから得られる情報を利用して車輌1の位置を算出してもよく(【0036】)、
無線通信部15は、車輌1から遠隔地にセットされたサーバ装置5などとの通信を行い(【0038】)、
セキュリティコントローラ10は、CPU11にて実行するプログラムを追加、更新及び削除等することが可能な構成であり、車輌1の速度情報などを取得して端末装置3へ送信するプログラムを、セキュリティコントローラ10に追加(インストール)することができ(【0041】)、
セキュリティコントローラ10のCPU11は、既に記憶部17に記憶されたプログラムについて、例えば機能拡張又は不具合修正等を目的として、プログラムの更新処理を行い、プログラムの更新処理はセキュリティコントローラ10のCPU11が、記憶部17のプログラム記憶部17aに記憶されているプログラムの一部又は全部を、端末装置3又はサーバ装置5等から取得した更新用の情報(更新用のプログラム又はデータ等)にて書き換えることにより、プログラムを更新する(【0044】)
車載通信システムにおけるセキュリティコントローラ10。」

2 引用例2に記載された事項
(1)引用例2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2006−226788号公報(平成18年8月31日公開。以下、これを「引用例2」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。

F 「【0018】
図1に示すように、本形態におけるバッテリ管理システムは、ユーザの車両に搭載された車両システム10と、予め登録された個々のユーザの車両に備えられたバッテリの情報をデータベースに蓄積して一括管理する管理サーバ100とを主として構成され、更に、ユーザへバッテリ情報を提供するための通信端末50を備えて構成されている。本形態においては、車両システム10の外部に管理サーバ100を設置する例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、車両システム10内に管理サーバ100を備えるようにしても良い。」

G 「【0022】
車両システム10は、本形態においては、図2に例示するように、エンジンとモータとを併用するハイブリッド車(HEV)を制御する車両システムであり、電源ユニット20、電源ユニット20からの直流電力を交流電力に変換してモータ30を駆動するインバータ35、インバータ35を介してモータ30を制御すると共に、図示しないエンジンを制御し、HEV全体を統括的に制御するHEV制御用電子制御ユニット(HEV制御用ECU)40等を備えて構成されている。
【0023】
電源ユニット20は、例えば複数のセルを封止した電池パックを複数個直列に接続して構成されるバッテリ21と、バッテリ21の残存容量の演算、バッテリ21の冷却や充電の制御、異常検出及び異常検出時の保護動作等のエネルギーマネージメントを行う演算ユニット(演算ECU)22とを1つの筐体内にパッケージして構成されている。」

H 「【0028】
また、電源ユニット20には、無線通信網を介して外部の管理サーバ100と通信するための通信モジュール26が備えられ、この通信モジュール26が演算ECU22によって制御される。演算ECU22は、通信モジュール26を介してバッテリ21の端子電圧V、電流I、温度T等のバッテリ情報を定期的に管理サーバ100に送信すると共に、通信モジュール26を介して管理サーバ100からバッテリの劣化状態を受信し、バッテリ管理に反映させる。」

(2)引用例2記載事項
上記(1)記載事項F〜Hより、引用例2には次の事項(以下、「引用例2記載事項」という。)が記載されているといえる。

「ユーザの車両に搭載された車両システム10と、予め登録された個々のユーザの車両に備えられたバッテリの情報をデータベースに蓄積して一括管理する管理サーバ100とを主として構成されるバッテリ管理システムであって(【0018】)、
車両システム10は、電源ユニット20、HEV制御用電子制御ユニット40等を備えて構成され(【0022】)、
電源ユニット20は、バッテリ21の残存容量の演算、バッテリ21の冷却や充電の制御、異常検出及び異常検出時の保護動作等のエネルギーマネージメントを行う演算ユニット(演算ECU)22を1つの筐体内にパッケージして構成され(【0023】)、
電源ユニット20には、無線通信網を介して外部の管理サーバ100と通信するための通信モジュール26が備えられ、この通信モジュール26が演算ECU22によって制御され、演算ECU22は、通信モジュール26を介してバッテリ21の端子電圧V、電流I、温度T等のバッテリ情報を定期的に管理サーバ100に送信すると共に、通信モジュール26を介して管理サーバ100からバッテリの劣化状態を受信し、バッテリ管理に反映させる(【0028】)
バッテリ管理システム。」

3 引用例3に記載された事項
(1)引用例3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2013−173490号公報(平成25年9月5日公開。以下、これを「引用例3」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。

I 「【0020】
図1は、本実施形態に係るサスペンション制御システム1の構成を示すブロック図である。
サスペンション制御システム1は、自動二輪車2(車両)にECU(Electronic Control Unit)10(制御手段)、アクチュエータ20、情報入力部30、記憶部40(記憶手段)及び通信部50(送信手段)と、外部サーバ3(外部機器)に記憶部60(外部記憶手段)及び演算部70(外部演算手段)とを備える。
さらに、自動二輪車2は、通信部50を介して、制御部80及び表示部90を備える外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ(PC)4)と接続可能である。
【0021】
ECU10は、自動二輪車2の電子デバイスを制御する。具体的には、ECU10は、情報入力部30により取得される各種情報に基づいて外部サーバ3の演算部70により決定された設定値を受信し、この受信した設定値に基づいてアクチュエータ20を制御する。なお、ECU10における処理の詳細は後述する。」

J 「【0026】
記憶部40は、ECU10に実行させるためのプログラム及び各種データを記憶する装置である。本実施形態では、記憶部40は、ナビゲーションシステム319の地図情報と関連付けて、サスペンションの作動量の検出値、前後輪のブレーキ作動圧の検出値、又は前後輪の車輪速の検出値とスロットル開度の検出値若しくはパワーユニットの回転数の検出値をチューニングデータとして記憶する。
【0027】
通信部50は、記憶部40に記憶されているチューニングデータを外部サーバ3へ送信し、演算部70で決定された設定値を受信する。
また、通信部50は、ECU10の指示に応じて、外部サーバ3又はインターネット等から、天気情報等の外部入力情報を取得し、ECU10へ提供する。」

(2)引用例3記載事項
上記(1)記載事項I及びJから、引用例3には次の事項(以下、「引用例3記載事項」という。)が記載されているといえる。

「自動二輪車2(車両)にECU10(制御手段)、アクチュエータ20、情報入力部30、記憶部40及び通信部50と、外部サーバ3(外部機器)に記憶部60及び演算部70とを備えるサスペンション制御システム1(【0020】)であって、
ECU10は、外部サーバ3の演算部70により決定された設定値を受信し、この受信した設定値に基づいてアクチュエータ20を制御し(【0021】)、
記憶部40は、ECU10に実行させるためのプログラム及び各種データを記憶し、サスペンションの作動量の検出値、前後輪のブレーキ作動圧の検出値、又は前後輪の車輪速の検出値とスロットル開度の検出値若しくはパワーユニットの回転数の検出値をチューニングデータとして記憶し(【0026】)、
通信部50は、記憶部40に記憶されているチューニングデータを外部サーバ3へ送信し、演算部70で決定された設定値を受信する(【0027】)
サスペンション制御システム1。」


第5 対比・判断

1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「車輌1」、「車内ネットワーク」、及び「複数のECU50」は、本願発明1の「車両」、「車内ネットワーク」、及び「複数のECU」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明の「セキュリティコントローラ10」は、「車輌1」に「搭載され」ていることから、上記アを踏まえると、本願発明1の「車両用制御装置」とは、“車両に搭載され”ている点で一致する。
引用発明の「複数のECU50」は、「共通の通信線にバス接続され」ていて、「通信グループ」を形成し、当該「通信グループ間の通信をゲートウェイ30が中継」するものであり、当該「ゲートウェイ30」は、本願発明1の「車両用制御装置」と“データ通信を、中継するゲートウェイ機能を備えた”ものである点で一致する。
また、引用発明の「セキュリティコントローラ10」は、「ゲートウェイ30に…中略…接続され」るものであって、「セキュリティコントローラ10からの情報をECU50へ送信すると共に、ECU50から受信した情報をセキュリティコントローラ10へ与え」、かつ、「種々のサーバ装置5等と、ゲートウェイ30及びECU50等を含んで構成された車輌1の車内ネットワークとの間の通信を中継する機能を有」するものである。そして、当該「サーバ装置5」は、「車輌1外の適所に設置され」ているから、本願発明1の「車外装置」に相当するものといえ、引用発明の「セキュリティコントローラ10」は、本願発明1の「車両用制御装置」と“車内ネットワークで接続された複数のECU間のデータ通信、及び当該複数のECUと車外装置との間のデータ通信を、中継”する点で一致するといえ、以上を総合すると、引用発明の「セキュリティコントローラ10」は、本願発明1の「車両に搭載されかつ車内ネットワークで接続された複数のECU間のデータ通信、及び当該複数のECUと車外装置との間のデータ通信を、中継するゲートウェイ機能を備えた車両用制御装置」と一致する。

ウ 引用発明の「セキュリティコントローラ10」は、「CPU11、RAM12…中略…及び記憶部17等を備え」、「CPU11は、記憶部17のプログラム記憶部17aに記憶された一又は複数のプログラムをRAM12に読み出して実行することにより、種々の処理を行」うところ、当該「プログラム」は、本願発明1の「所定の機能を実現するアプリケーション」に相当するものであるから、本願発明1と「所定の機能を実現するアプリケーションを実行するアプリケーション実行部」を備える点で一致する。

エ 引用発明は、「セキュリティコントローラ10のCPU11が、記憶部17のプログラム記憶部17aに記憶されているプログラムの一部又は全部を、端末装置3又はサーバ装置5等から取得した更新用の情報(更新用のプログラム又はデータ等)にて書き換えることにより、プログラムを更新する」ことによって、「プログラムの更新処理」がなされ、当該更新の際には、更新に係るプログラムすなわちアプリケーションの取得及び消去がなされるものと認められ、上記ウの認定を踏まえ、引用発明と本願発明1とは、“前記アプリケーションの取得及び消去を管理するアプリケーション管理部”を備える点で一致する。

オ 以上、ア〜エの検討から、引用発明と本願発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
車両に搭載されかつ車内ネットワークで接続された複数のECU間のデータ通信、及び当該複数のECUと車外装置との間のデータ通信を、中継するゲートウェイ機能を備えた車両用制御装置であって、
所定の機能を実現するアプリケーションを実行するアプリケーション実行部と、
前記アプリケーションの取得及び消去を管理するアプリケーション管理部と、を備える、
車両用制御装置。

〈相違点1〉
本願発明1の「アプリケーション管理部」が、「前記特定アプリケーションを取得することによって、所定の機能を追加」するものであるのに対し、引用発明は、「機能拡張又は不具合修正等を目的として、プログラムの更新処理」が行われるものの、当該「プログラムの更新処理」において、「特定アプリケーションを取得することによって、所定の機能を追加」することについての特定がなされていない点。

〈相違点2〉
本願発明1の「アプリケーション実行部」は、「前記アプリケーション管理部が追加した機能に基づいて、前記複数のECUから前記車内ネットワークに送出される複数のデータのうち所定のデータを収集し、前記収集したデータを前記車外装置に送信し、」「前記アプリケーション管理部が追加した機能に基づいて、前記収集したデータを用いて前記車外装置が行った演算の結果を前記車外装置から受信し、所定のECUが実行する所定の車両制御に前記演算の結果を反映させるためのデータを前記車内ネットワークに送出する」のに対し、引用発明の「セキュリティコントローラ10」の「CPU11」は、「記憶部17のプログラム記憶部17aに記憶された一又は複数のプログラムをRAM12に読み出して実行することにより、種々の処理を行」うものの、「アプリケーション管理部が追加した機能に基づいて」、「収集したデータを前記車外装置に送信し」たり、「前記収集したデータを用いて前記車外装置が行った演算の結果を前記車外装置から受信し、所定のECUが実行する所定の車両制御に前記演算の結果を反映させるためのデータを前記車内ネットワークに送出する」ことの特定がなされていない点。

(2)相違点についての判断
相違点1及び2についてまとめて検討する。
本願発明は、従来、車両に搭載していない新たな機能を後から車両に追加したり、車両に搭載している既存の機能を削除したりしようとした場合、処理の対象となる電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)のプログラムを更新する必要があり(【0004】)、数十個のECUが搭載される車両において追加や削除による機能の変更が生じるたびに個々のECUプログラムを更新していたのでは、更新の時間や手間がかかるだけでなく、正規のECUを組み合わせた品番が増加して管理が大変になるため、機能の変更が生じた場合におけるECUプログラムの更新については、さらなる改善の余地があることを解決しようとする課題とするものであって(【0005】)、ECUプログラムを更新することなく、車両に対して新たな機能の追加や既存機能の削除を実施できる車両用制御装置を提供することを目的としてなされたものである(【0006】)。
そして、本願発明は、ECUプログラムを更新することなく、車両に対して新たな機能の追加や既存機能の削除を実施できる(【0016】)という効果とともに、ECUから取得した制御量を外部装置に送信し、外部装置から応答受信する目標制御量をECUに送信する、という機能を特定アプリで追加しておくことによって(【0040】)、車両用制御装置が、ECUなどから通信バスに送出された制御量やセンサー値などのCANデータを取得し、取得した制御量やセンサー値に位置情報(高度)や車両情報やドライバー情報などの情報を付加した信号を、外部装置に送信し、外部装置は、車両用制御装置から受信した信号に基づいて例えば統計処理などの所定の演算を行い、演算の結果を車両用制御装置に送信し、車両用制御装置は、外部装置から受信する演算結果に基づいて推奨される目標制御量を算出し、目標制御量を制御対象となるECUに指示するCANデータを通信バスに流し、このCANデータを受信したECUは、制御量を制御し(【0041】)、このような機能の追加によって、特定アプリをECUと外部装置との通信の橋渡し役として機能させることで、当初では設定外であった車両制御を実行させるといった新たな動作や処理を、現行のECUプログラムのままで制御対象のECU20に実行させることができる(【0042】)という格別な効果を奏するものである。
一方、引用発明は、「セキュリティコントローラ10」が、「車輌1外の適所に設置され」た「サーバ装置5」と「通信を行」ったり、「位置情報取得部13」が、「車輌1の位置情報を取得してCPU11へ与え、速度センサ、加速度センサ又はジャイロセンサ等のセンサから得られる情報を利用して車輌1の位置を算出し」たりするものの、当該「サーバ装置5」が行った演算の結果を取得するものではないから、「セキュリティコントローラ10」に「与え」られるところの、「ECU50から受信した情報」を、「車輌1外の適所に設置され」た「サーバ装置5」に送信したり、「サーバ装置5」から受信したデータを車内ネットワークに送出したりする動機付けに欠くものといわざるを得ない。
また、引用例2及び引用例3には、それぞれ上記第4に示した引用例2記載事項及び引用例3記載事項が記載されているものと認められるものの、相違点1及び2に係る、「特定アプリケーション」による、「所定の機能」の「追加」とともに、当該追加された機能によって、「複数のECUから前記車内ネットワークに送出される複数のデータのうち所定のデータを収集し、前記収集したデータを前記車外装置に送信」したり、「前記収集したデータを用いて前記車外装置が行った演算の結果を前記車外装置から受信し、所定のECUが実行する所定の車両制御に前記演算の結果を反映させるためのデータを前記車内ネットワークに送出」することまでは記載されているとはいえず、当該事項は本願出願前の周知技術ともいえない。
そして、上記本願発明に係る効果は、引用発明並びに引用例2及び3の記載から、当業者にとって普通に想起される程度のものともいえないから、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1をさらに減縮するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-11-30 
出願番号 P2018-044234
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 須田 勝巳
特許庁審判官 中村 信也
山崎 慎一
発明の名称 車両用制御装置  
代理人 弁理士法人小笠原特許事務所  
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