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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H05K 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K |
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管理番号 | 1391935 |
総通号数 | 12 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-06-14 |
確定日 | 2022-12-13 |
事件の表示 | 特願2016−164709「位置決め構造」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 1日出願公開、特開2018− 32767、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年8月25日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 2年 8月 4日付け:拒絶理由通知書 令和 2年10月 6日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年12月22日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 令和 3年 2月24日 :意見書の提出 令和 3年 8月24日付け:拒絶理由通知書 令和 3年10月29日 :意見書、手続補正書の提出 令和 4年 3月10日付け:拒絶査定 令和 4年 6月14日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和 4年 3月10日付け 拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1、2、7に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 本願請求項1−7に係る発明は、以下の引用文献1−4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2007−234860号公報 2.実願昭60−113572号(実開昭62−021593号)のマイクロフィルム 3.特開2010−110174号公報 4.特開平10−321979号公報 第3 本願発明 本願請求項1−7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明7」という。)は、令和 4年 6月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 第一部材と、前記第一部材と接続部材で接続される第二部材とを、保持部材によって位置決めする位置決め構造であって、 前記保持部材は、第一部材又は第二部材の一方に接続され、第一部材又は第二部材の他方の貫通孔に挿通する突起部を有する位置決め部材を備え、 前記突起部には、前記貫通孔を、前記接続部材が接続開始される位置まで案内する誘導部と、 前記接続部材が接続完了した状態において、前記貫通孔の誘導を解除するとともに、前記第一部材と前記第二部材とが、前記貫通孔への前記突起部の挿通方向と直交する方向に互いに移動可能に保持する逃げ部と、を有し、 前記保持部材は、前記位置決め部材の前記突起部とは別に、前記第一部材及び前記第二部材の少なくとも一方と前記保持部材とを締結する締結部を備える、 ことを特徴とする位置決め構造。 【請求項2】 前記逃げ部は、前記突起部の先端より所定距離離間した位置に設けられ、前記誘導部より、太さまたは幅が小さく、高さが前記第一部材又は前記第二部材の前記貫通孔の部分の厚さよりも高いくびれ部である、請求項1に記載の位置決め構造。 【請求項3】 前記誘導部と前記くびれ部の間に、前記誘導部から前記くびれ部にかけて、太さまたは幅が徐々に変化する遷移部を有する、請求項2に記載の位置決め構造。 【請求項4】 前記突起部のそれぞれは、平板状の部材である、請求項1〜3の何れか一項に記載の位置決め構造。 【請求項5】 少なくとも2つの前記突起部を備え、前記突起部の何れかは、面の方向が他の突起部の面の向きと異なる、請求項4に記載の位置決め構造。 【請求項6】 前記2以上の突起部は、1枚の板状部材から曲げ起こしによって一体的に形成される、請求項5に記載の位置決め構造。 【請求項7】 前記位置決め部材は前記第一部材と、前記第二部材とを所定距離離間して支持する支持部をさらに備える、請求項1〜5の何れか一項に記載の位置決め構造。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の記載がある。(当審注:下線は当審による。) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、コネクタを搭載した基板の取付を補助するサポート部品およびサポート部品を利用した基板取付方法に関する。 【背景技術】 【0002】 2枚またはそれ以上の基板を連結(固定)する場合、一般にサポート部品(以下、サポートという。)が用いられる。サポートは、基板に組み込まれている電子部品や配線されている集積回路などが接触しないような間隔を保持させつつ基板間を固定するために用いられる。ここで、サポートを用いて基板間を連結するときに、各々の基板にコネクタが搭載され、各基板に搭載されたコネクタを接続(連結)させたい場合もある。この場合、一方のコネクタのピンが他方のコネクタの穴にうまく嵌るように、サポートがコネクタ同士の接続をガイド(誘導)する機能を備えているのが好ましい。 【0003】 特許文献1には、基板へのコネクタの実装を補助するサポートが開示されている。・・・ 【0004】 また、特許文献2には、基板間を固定するときにコネクタの接続をガイドする機構を備えたサポートが開示されている。・・・ 【0005】 【特許文献1】実開平5−17982号公報 【特許文献2】特開平11−4088号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかし、特許文献1に記載されたサポートは、コネクタを基板に装着する際に用いられるサポートであって、基板間を連結する際に用いられるサポートではない。従って、特許文献1に記載されたサポートのガイドピンは、複数の基板を連結するときに、各基板に搭載されたコネクタのピンと穴を嵌合させるようにコネクタ同士の接続をガイドすることはできない。 【0007】 一方、特許文献2に記載されたサポートは、基板間を連結する際に用いられるサポートであって、複数の基板を連結するときに各基板に搭載されたコネクタ同士の接続をガイドする機構を備えている。しかし、各基板の固定は、ナットとネジを螺合させることにより行っている。このため、複数の基板を固定する(組み立てる)ときの作業工程が多くなってしまう。 【0008】 そこで、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、基板を取り付けるときの作業工程が少なく、またコネクタの接続を容易かつ正確に行うことができるサポート部品および基板取付方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 以上の目的を達成するため、本発明によるサポート部品は、コネクタが搭載された基板の取付を補助するサポート部品であって、サポート部品の一端に形成された、第1のコネクタが搭載された第1の基板または部品を組みつける台に取付可能に構成された取付部と、サポート部品の他端に形成された、第2のコネクタが搭載された第2の基板に形成されている穴を通り抜けたときに第2の基板を固定する基板固定部とを備え、サポート部品の基板固定部の先端が穴に挿入されたときに第1のコネクタと第2のコネクタとが嵌合するような位置においてサポート部品が第1の基板または台に取り付けられた状態で、第1の基板または台の面から基板固定部の先端までの長さが、少なくとも、第1のコネクタと第2のコネクタとの嵌合が開始される前の第1の基板と第2の基板との距離または台と第2の基板との距離よりも長くなるようにサポート部品が形成されたことを特徴とする。」 「【0019】 以下、本発明の実施の一形態を図面を参照して説明する。 【0020】 実施の形態1. 図1は、基板間コネクタを備えた連結前の基板を示す斜視図である。図1に示す構成において、基板1,2は、電子部品が組み込まれたり、集積回路などが配線されるプリント基板である。図1に示す構成において、基板1,2は、電子部品が組み込まれたり、集積回路などが配線されるプリント基板である。図1に示すように、基板1の内面には、基板間コネクタ4が搭載され、基板2の内面には、基板間コネクタ5が搭載されている。基板間コネクタ5には、複数本のピン7が設けられている。また、基板間コネクタ4には、基板間コネクタ5の複数本のピン7が差し込まれる複数の嵌合用穴6が形成されている。複数の嵌合用穴6に複数本のピン7が嵌合することによって基板間コネクタ4,5が接続され、基板1,2間が電気的に接続されることになる。 【0021】 図1に示すように、基板1には、基板間の間隔を所定間隔に保持した状態で基板間を固定(連結)する3つのサポート3が取り付けられている。基板2には、3つのガイド用穴8が形成されている。3つのサポート3のそれぞれが3つのガイド用穴8に挿入されると、基板間コネクタ5の複数本のピン7が基板間コネクタ4の嵌合用穴6に嵌合するように、3つのサポート3の位置と3つのガイド用穴8の位置とが対応付けられている。すなわち、嵌合用穴6およびピン7の各基板1,2上の位置と、サポート3およびガイド用穴8の各基板上1,2の位置とが嵌合するように対応付けられている。従って、基板2のガイド用穴8にサポート3の先端を挿入するだけで、ピン7と嵌合用穴6の位置合わせも完了する。このように、サポート3は、基板1,2間を連結するスペーサの役割を果たすだけでなく、基板間コネクタ4,5の嵌合(接続)をガイド(誘導)するガイドピンの役割も果たすことになる。 【0022】 なお、サポート3とガイド用穴8が1つだけでは、基板間コネクタ4,5の位置合わせを行うことができないが、少なくとも2つ以上のサポート3とガイド用穴8が設けられると、基板間コネクタ4,5の位置合わせを行うことは可能である。 【0023】 ・・・図2に示すように、サポート3は、サポート本体である円筒状の円筒部31の一端に取付部32が形成され、円筒部31の他端に頭部33が形成されている。・・・ 【0024】 取付部32は、基板1の内面に対して円筒部31を垂直に取付可能な構造である。すなわち、取付部32は、基板1の厚さと略同じ厚さの溝が円筒部31の端部に外周に沿って形成されており、この溝に、基板1に形成されている穴9(図2参照)の内径が嵌り込むことで、基板1の内面に対して円筒部31が垂直に取り付けられる。なお、サポート3自体は、変形自在な材料(圧力を加えると変形し、圧力を加えないと元の形に戻るような材質)で形成されている。・・・ 【0025】 頭部33は、傘あるいは矢印の先端のような形状(構造)になっている。図2に示すように、本発明のサポート3における頭部33の形状が、従来のサポートにおける頭部の形状と異なっている。つまり、本発明のサポート3における頭部33の先端は、従来のサポートの頭部の先端よりも尖っており、頭部33の軸方向の長さが長くなっている。そして、頭部33は、頭部33の軸方向の長さが基板間コネクタ5のピン7の長さよりも長くなるように形成されている。 【0026】 このように、頭部33の軸方向の長さが基板間コネクタ5のピン7の長さよりも長くなっており、また、上述したように、円筒部31の軸方向の長さは、基板間コネクタ4,5が結合されたときの基板1,2の内面間の長さ(距離)となっている。すなわち、サポート3が基板1に取り付けられた状態で、基板1の内側の面からサポート3の先端までの距離(すなわち円筒部31と頭部33の軸方向の長さを合計)が、少なくとも、基板2に設けられている基板間コネクタ5のピン7が基板1に設けられている基板間コネクタ4の嵌合用穴6に嵌合(挿入)される前の基板1,2間の距離よりも長くなっている。このため、基板間コネクタ5のピン7が基板間コネクタ4の嵌合用穴6に挿入される前に、頭部33の先端が基板2の内面に到達することになる。よって、サポート3の頭部33の先端が基板2のガイド用穴8に挿入されることにより、ピン7と嵌合用穴6の位置合わせを行うことができるようになる。 【0027】 図2に示すように、頭部33の先端は、基板2のガイド用穴8に挿入しやすいように、丸みをおびた形状(滑らかなR形状)になっている。従って、基板間コネクタ4,5の位置合わせを容易に行うことができる。 【0028】 次に、図3および図4を用いて、基板1,2の組立て作業工程について説明する。 【0029】 図3は、コネクタの嵌合前と嵌合後の状態を示す断面図であり、図4は、コネクタの嵌合直前の状態を示す断面図である。図3(A)に示すように、サポート3は、予め、下側の基板1に取り付けられている。このとき、サポート3の頭部33の軸方向の長さが長くなっているので、基板間コネクタ4,5が嵌合する前に、頭部33の先端が基板2の内面に達している。図4に示すように、作業者は、頭部33の先端を基板2に形成されているガイド用穴8に挿入する。この行為によって、基板間コネクタ4,5の位置合わせが行われる。このとき、作業者は、基板1,2の内面側(裏側)に設けられている基板間コネクタ4,5の位置を確認しなくても、基板2の外面側(表側)から視認可能なガイド用穴8にサポート3の頭部33の先端を挿入するだけで、基板間コネクタ4,5の位置合わせを行うことができることとなる。なお、図3および図4には、サポート3やガイド用穴8は1つだけしか示されていないが、確実に位置合わせを行うことができるように、図1に示したように、3つのサポート3が基板1上に取り付けられ、3つのガイド用穴8が基板2に形成されている。 【0030】 次いで、サポート3の頭部33が基板2に形成されているガイド用穴8に押し込まれると、頭部33の端部から外側斜め下方に向かって伸びている2つの羽根が内側に変形して閉じる。これによって頭部33がガイド用穴8を通り抜けることが可能となる。頭部33がガイド用穴8を通り抜けるときに、基板間コネクタ5の複数のピン7が基板間コネクタ4の嵌合用穴6に徐々に挿入されていく。頭部33がガイド用穴8を完全に通り抜けたとき、図3(B)に示すように、基板間コネクタ4,5が嵌合された状態になる。また、頭部33がガイド用穴8を完全に通り抜けると、頭部33の羽根が閉じた状態から元の開いた状態に戻る(元の形に戻る)。この状態では、頭部33の羽根の端部が基板2の外面を下方(基板1側の方向)に押さえつけ、また円筒部31の上端部が基板2を内面と圧接されているので、基板1と基板2の位置(間隔)が保持された状態で固定される。これにより、振動や衝撃などが加えられても、嵌合している基板間コネクタ4,5が外れてしまうようなことはない。」 「図1 」 「【図2】 」 「【図3】 」 「【図4】 」 (2)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 ア 引用文献1に記載された技術は、コネクタを搭載した基板の取付を補助するサポートを利用した基板取付に関すること(【0001】、【0002】)。 イ 基板1の内面には、基板間コネクタ5の複数本のピン7が差し込まれる複数の嵌合用穴6が形成された基板間コネクタ4が搭載され、基板2の内面には、複数本のピン7が設けられた基板間コネクタ5が搭載され、複数の嵌合用穴6に複数本のピン7が嵌合することによって基板間コネクタ4、5が接続され、基板1、2間が電気的に接続されること(【0020】)。 ウ 基板1には、基板間の間隔を所定間隔に保持した状態で基板間を固定(連結)する3つのサポート3が取り付けられていること(【0021】)。 エ サポート3には、サポート本体である円筒状の円筒部31の一端に取付部32が形成され、取付部32には、基板1の厚さと略同じ厚さの溝が円筒部31の端部に外周に沿って形成されており、この溝に、基板1に形成されている穴9の内径が嵌り込むことで、基板1の内面に対して円筒部31が垂直に取り付けられること(【0023】、【0024】)。 オ 基板2には、3つのガイド用穴8が形成されること(【0021】)。 カ サポート3には、円筒部31の他端に頭部33が形成され、頭部33の先端は基板2のガイド用穴8に挿入しやすいように、丸みをおびた形状(滑らかなR形状)になっており、頭部33の先端をガイド用穴8に挿入する行為によって、基板間コネクタ4,5の位置合わせが行われること(【0023】、【0030】)。 キ サポート3の頭部33が基板2に形成されているガイド用穴8に押し込まれると、頭部33が変形することで、ガイド用穴8を通り抜けることが可能となり、頭部33がガイド用穴8を通り抜けるときに、基板間コネクタ5の複数のピン7が基板間コネクタ4の嵌合用穴6に徐々に挿入されていき、頭部33がガイド用穴8を完全に通り抜けたとき、基板間コネクタ4,5が嵌合された状態になり、頭部33がガイド用穴8を完全に通り抜けると、頭部33が元の形に戻ること(【0030】)。 (3)上記(2)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「コネクタを搭載した基板の取付を補助するサポートを利用した基板取付構造であって、 基板1の内面には、基板間コネクタ5の複数本のピン7が差し込まれる複数の嵌合用穴6が形成された基板間コネクタ4が搭載され、基板2の内面には、複数本のピン7が設けられた基板間コネクタ5が搭載され、複数の嵌合用穴6に複数本のピン7が嵌合することによって基板間コネクタ4、5が接続され、基板1,2間が電気的に接続されており、 基板1には、基板間の間隔を所定間隔に保持した状態で基板間を固定(連結)する3つのサポート3が取り付けられており、 サポート3の本体である円筒状の円筒部31の一端には取付部32が形成され、取付部32には、基板1の厚さと略同じ厚さの溝が円筒部31の端部に外周に沿って形成されており、この溝に、基板1に形成されている穴9の内径が嵌り込むことで、基板1の内面に対して円筒部31が垂直に取り付けられており、 サポート3の円筒部31の他端には頭部33が形成され、丸みをおびた形状(滑らかなR形状)になっているため、基板間コネクタ4,5の位置合わせを容易に行うことができ、 サポート3の頭部33が基板2に形成されているガイド用穴8に押し込まれると、頭部33の端部が変形することで、ガイド用穴8が通り抜けることが可能となり、頭部33がガイド用穴8を通り抜けるときに、基板間コネクタ5の複数のピン7が基板間コネクタ4の嵌合用穴6に徐々に挿入されていき、頭部33がガイド用穴8を完全に通り抜けたとき、基板間コネクタ4,5が嵌合された状態になり、頭部33がガイド用穴8を完全に通り抜けると、頭部33が元の形に戻る、基板取付構造。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には次の記載がある。 「3.考案の詳細な説明 〈産業上の利用分野〉 本考案はトランジスタ、SCR(シリコン制御整流素子)やIC(集積回路)等の半導体放熱部品の付いた放熱板をプリント基板上に取付ける放熱板取付装置に関するものである。」(第1ページ第11行−同ページ第16行)」 「〈実施例〉 以下図面に示す実施例に従って本考案を説明する。 第1図は本考案の1実施例の分解斜視図を示し、ここで1はトランジスタやSCR等の半導体放熱部品2が取付けられた板状の放熱板、3,3は前記放熱板1の左右両下端部を挟着保持する放熱板挾持金具、4は前記挾持金具3,3及び放熱部品2が他の部品(図示せず)とともに取付けられ裏面で半田付けされるプリント基板である。 上記挟持金具3についてさらに詳しく説明すると、この挟持金具3としては鉄、銅、またはりん青銅のような半田付け可能な金属板材料を用い、この金属板を第2図に拡大して示すようにU字状に折曲して2枚の挟持部3a,3bと底面部3cとを形成し、且つこの底面部3cの一部を90゜下方に切起して係止用突片3dを形成しさらに底面部3cの一部を短手方向に延長して傾倒防止用突片3eを形成している。さらにここでは前記係止用突片3dの先端部に割溝3fを設け、また挾持部の一方3aに放熱板脱落防止用の突起3gを設けている。なお1a,1aは前記突起3gと嵌合する嵌合凹部である。」(第3ページ第5行−第4ページ第6行) 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、電源装置に関するものであり、特に、放熱板の形状および放熱板のプリント配線板への取り付け構造に関する発明である。」 「【0015】 実施の形態4 図6(A)は、本発明の実施の形態3に係る電源装置において、プリント配線板と放熱板の一部を示した斜視図であり、(B)は、プリント配線板と放熱板の接合部の一部を下面から示した背面図である。図6(A)に示すように、放熱板10は、プリント配線板1と接する側の端部に差込み部11を有している。たとえば、差込み部11は図6(A)に示すように、くびれ部を有し、先端に突出部を有する形状にしてもよい。プリント配線板1には、放熱板10の差込み部11に対応する位置に孔部12が形成されている。図6(B)に示すように、放熱板10の差込み部11をプリント配線板1の孔部12に挿入した後、差込み部11と孔部12とを係止することにより、放熱板10をプリント配線板1上に設置している。差込み部11と孔部12との係止の方法として、たとえば、半田付けで行なってもよいし、上述のように、差込み部11にくびれ部が形成されている場合には、差込み部11の突出部をねじることにより係止してもよい。差込み部11の突出部をねじって係止した場合、放熱板10がプリント配線板1に引き付けられて、強固に接続することができる。」 4 引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はPCボードへの部品の取り付けるための組立体に関する。特に、電圧レギュレータをPCボード上のマイクロプロセッサへ近接した位置に省スペースで取り付けるためのプラットフォームに関する。」 「【0014】 【実施例】図1には、本発明の第1の実施態様による取り付けプラットフォーム100が示されている。取り付けプラットフォーム100は、第1の電気接点132と第2の電気接点134(図2を参照)を備えたプラットフォーム・プリント回路基板110を含むプラットフォーム・トップ108と、入力電力脚116a、出力電力脚116b、及び、少なくとも第1の支持脚116cを含む複数の細長い脚から構成されている。プラットフォーム・プリント回路基板110は、第1の表面118と、第2の表面120を備えている(図2を参照)。一般に、第1の電気接点132は、プラットフォーム・プリント回路基板110の第1の表面118に形成され、第2の電気接点134は、プラットフォーム・プリント回路基板110の第2の表面120に形成される。 【0015】 望ましい実施態様の場合、取り付けプラットフォーム100は、ベース・プリント回路基板124に機械的及び電気的に結合される。取り付けプラットフォーム100は、ベースPCB124の第1の表面128における第2の装置126が、プラットフォームPCB110の第1の表面118における第1の装置130に近接するように構成されている。望ましい実施態様の場合、第1の装置130は電圧レギュレータ回路であり、第2の装置126は、マイクロプロセッサであり、第1の面は、プラットフォーム・プリント回路基板(PCB)の第1の表面であり、第2の面は、ベース・プリント回路基板の第1の表面128である。電圧レギュレータ130は、プラットフォーム・プリント回路基板110の第1の表面118に取り付けられて、プラットフォーム・プリント回路基板110に電気的に結合され、一方、マイクロプロセッサ126は、ベース・プリント回路基板124の第1の表面128に取り付けられて、ベース・プリント回路基板124に電気的に結合される。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 ア 引用発明1は、「基板1」には、「基板間コネクタ4が搭載され」、「基板2」には、「基板間コネクタ5が搭載され」、「基板間コネクタ4、5が接続され、基板1、2間が電気的に接続されており」、「基板1」には、「サポート3が取り付けられており」、「サポート3」の「円筒部31の一端には取付部32が形成され」、「サポート3の円筒部31の他端には頭部33が形成され」、「基板間コネクタ4、5の位置合わせを容易に行うことができ」るものであるから、基板1と、基板1と基板間コネクタ4、5で接続される基板2とを、サポート3によって位置決めする基板取付構造であるといえる。 したがって、引用発明1の「基板1」、「基板2」、「基板間コネクタ4、5」、「サポート3」は、それぞれ本願発明1の「第一部材」、「第二部材」、「接続部材」、「保持部材」に相当し、引用発明1の「基板取付構造」は、本願発明1の「位置決め構造」に対応し、本願発明1と引用発明1とは、「第一部材と、前記第一部材と接続部材で接続される第二部材とを、保持部材によって位置決めする位置決め構造」である点で一致する。 イ 引用発明1は、「基板1」には、「サポート3が取り付けられており」、「サポート3の円筒部31の他端には頭部33が形成され、丸みをおびた形状(滑らかなR形状)になっているため、基板間コネクタ4、5の位置合わせを容易に行うことができ」、「サポート3の頭部33が基板2に形成されているガイド用穴8に押し込まれると、頭部33の端部が変形することでガイド用穴8が通り抜けることが可能とな」るものであるところ、サポート3は、頭部33を有する位置決め部材を備えるものであるいえるから、サポート3は、基板1に接続され、基板2に形成されているガイド用穴8に挿通する頭部33を有する位置決め部材を備えるものであるといえる。 したがって、引用発明1の「ガイド用穴8」、「頭部33」は、それぞれ本願発明1の「貫通孔」、「突起部」に相当し、本願発明1と引用発明1とは、「前記保持部材は、第一部材に接続され、第二部材の貫通孔に挿通する突起部を有する位置決め部材を備え」る点で一致する。 ウ 引用発明1は、「サポート3の円筒部31の他端には頭部33が形成され、丸みをおびた形状(滑らかなR形状)になっているため、基板間コネクタ4、5の位置合わせを容易に行うことができ」、「頭部33がガイド用穴8を通り抜けるときに、基板間コネクタ5の複数のピン7が基板間コネクタ4の嵌合用穴6に徐々に挿入されていき、頭部33がガイド用穴8を完全に通り抜けたとき、基板間コネクタ4、5が嵌合された状態になり」、「頭部33がガイド用穴8を完全に通り抜けると、頭部33が元の形に戻」るものであるところ、基板間コネクタ4、5が接続完了した状態において、ガイド用穴8の誘導は解除されるといえるから、引用発明1の頭部33は、ガイド用穴8を、基板間コネクタ4、5が接続開始される位置まで案内する誘導部に相当する構成、及び、基板間コネクタ4、5が接続完了した状態において、ガイド用穴8の誘導を解除する部分に相当する構成を備えるといえる。 したがって、本願発明1と引用発明1とは、「前記突起部には、前記貫通孔を、前記接続部材が接続開始される位置まで案内する誘導部」を有する点で一致し、「前記接続部材が接続完了した状態において、前記貫通孔の誘導を解除する部分」を有する点で共通する。 エ 引用発明1は、「サポート3の本体である円筒状の円筒部31の一端には取付部32が形成され、取付部32には、基板の厚さと略同じ厚さの溝が円筒部31の端部に外周に沿って形成されており、この溝に、基板1に形成されている穴9の内径が嵌り込むことで、基板1の内面に対して円筒部31が垂直に取り付けられて」いるものであるから、引用発明1のサポート3は、基板1とサポート3とを取り付ける取付部を備えるといえる。一方で、本願発明1における「締結」とは、「かたくしめてむすぶこと。」(精選版 日本国語大辞典)であるといえる。そうすると、本願発明1における「締結する締結部」と、引用発明1における「取り付ける取付部」とは、「接続する接続部」である点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明1とは、「前記保持部材は、前記第一部材及び前記第二部材の少なくとも一方と前記保持部材とを接続する接続部」を備える点で共通する。 オ 以上のア−エによれば、本願発明1と引用発明1の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「第一部材と、前記第一部材と接続部材で接続される第二部材とを、保持部材によって位置決めする位置決め構造であって、 前記保持部材は、第一部材に接続され、第二部材の貫通孔に挿通する突起部を有する位置決め部材を備え、 前記突起部には、前記貫通孔を、前記接続部材が接続開始される位置まで案内する誘導部と、 前記接続部材が接続完了した状態において、前記貫通孔の誘導を解除する部分と、を有し、 前記保持部材は、前記第一部材及び前記第二部材の少なくとも一方と前記保持部材とを接続する接続部を備える、 ことを特徴とする位置決め構造。」 <相違点1> 本願発明1では、「前記接続部材が接続完了した状態」において、「前記貫通孔の誘導を解除するとともに、前記第一部材と前記第二部材とが、前記貫通孔への前記突起部の挿通方向と直交する方向に互いに移動可能に保持する逃げ部」を有するのに対し、引用発明1では、基板間コネクタ4、5が接続完了した状態において、ガイド用穴8の誘導を解除する部分に相当する構成を備えるといえるものの、本願発明1の「前記第一部材と前記第二部材とが、前記貫通孔への前記突起部の挿通方向と直交する方向に互いに移動可能に保持する逃げ部」に相当する構成を備えるか不明である点。 <相違点2> 本願発明1では、「前記保持部材は、前記位置決め部材の前記突起部とは別に、前記第一部材及び前記第二部材の少なくとも一方と保持部材とを締結する締結部を備える」のに対し、引用発明1では、サポート3は、基板1とサポート3とを取り付ける取付部32を備えるといえるものの、取付部32が、サポート3に、位置決め部材の頭部33とは別に備えられた、基板1とサポート3とを締結する締結部であるとの構成は特定されていない点。 (2)相違点についての判断 ア 事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。 引用文献1には、【発明が解決しようとする課題】について【0007】に「各基板の固定は、ナットとネジを螺合させることにより行っている。このため、複数の基板を固定する(組み立てる)ときの作業工程が多くなってしまう。」と記載されており、同【0008】に、「基板を取り付けるときの作業工程が少なく、またコネクタの接続を容易かつ正確に行うことができるサポート部品および基板取付方法を提供することを目的とする。」と記載されているから、引用発明1は、作業工程を少なくすることを目的としている。 ここで、引用発明1において、基板1と接続する「取付部32」を「締結部」に変更することは、「かたくしめてむすぶ」という作業工程を追加することになる。しかしながら、作業工程を追加することは、引用発明1が解決しようとする課題である「作業工程を少なくすること」に反することであるから、当業者といえども、そのような変更を行うことには阻害要因があるといえる。 そして、このことは、引用文献2−4の記載に左右されるものではない。 したがって、引用発明1において、相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 イ したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1、引用文献2−4に記載された技術事項に基づいて容易に想到し得たものとはいえない。 2 本願発明2−7について 本願発明2−7も、上記相違点2に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明1−5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明1−7は、いずれも上記相違点2に係る本願発明1の構成を有するものとなっており、前記第5で検討したとおり、本願発明1−7は、引用発明1、引用文献2−4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-11-30 |
出願番号 | P2016-164709 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H05K)
P 1 8・ 113- WY (H05K) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
恩田 春香 |
特許庁審判官 |
小田 浩 柴垣 俊男 |
発明の名称 | 位置決め構造 |
代理人 | 中村 健一 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 森本 有一 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 南山 知広 |