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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  F21S
審判 全部申し立て 1項1号公知  F21S
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F21S
管理番号 1392029
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-11-25 
確定日 2022-09-30 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6893490号発明「LED照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6893490号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜3〕について訂正することを認める。 特許第6893490号の請求項1〜3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6893490号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜3に係る特許についての出願は、平成23年9月15日に出願した特願2011−202132号の一部を、平成27年8月25日に新たな特許出願とした特願2015−165558号の一部を、平成28年9月26日に新たな特許出願とした特願2016−187231号の一部を、平成30年4月27日に新たな特許出願としたものであって、令和3年6月3日にその特許権の設定登録がされ、令和3年6月23日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年11月25日 :特許異議申立人宮崎綾(「崎」の右辺の上は「立」。以下「申立人」という。)による請求項1〜3に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年 2月28日付け:取消理由通知
令和4年 4月27日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
令和4年 6月13日 :申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
特許請求の範囲の請求項1を、以下のとおり訂正することを請求する(訂正事項1)(下線は訂正箇所を示す。)。
「一方側の面に光源部が設けられ、他方側の面に複数の放熱フィンが設けられ、中心に前記複数の放熱フィンに囲まれてなる凹状の空間が形成されているとともに、互いに対向するように端部側に設けられ、ネジ孔が形成された板状の一対のアングル取付部を有する本体と;
前記本体の他方側の面に設けられた前記放熱フィンの上面に配置される前記光源部を点灯可能な電源部と;
前記光源部より外側であるとともに前記アングル取付部の外側に位置し、前記アングル取付部の前記ネジ孔に対応した貫通孔と長孔が形成された一対の縦板部を有し、この長孔は鉛直方向の下側で、かつ、前記貫通孔よりも縦板部の先端側に、長孔の軌跡はこの貫通孔の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されているとともに、前記電源部より上方で前記電源部と対向可能なように前記一対の縦板部間に亘って設けられる長手方向が前記電源部の長手方向と一致する横板部を有し、前記電源部より下方側で前記本体を支持するとともに前記横板部を天井に取り付けるアングルと;
を備えることを特徴とする照明器具。」
(請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載の「本体」について、「中心に前記複数の放熱フィンに囲まれてなる凹状の空間が形成されている」との限定を付与するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものでもない。

3 小括
したがって、本件訂正請求に係る訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6号の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の記載のとおり、訂正後の請求項〔1〜3〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1〜3に係る発明(以下「本件発明1〜3」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
一方側の面に光源部が設けられ、他方側の面に複数の放熱フィンが設けられ、中心に前記複数の放熱フィンに囲まれてなる凹状の空間が形成されているとともに、互いに対向するように端部側に設けられ、ネジ孔が形成された板状の一対のアングル取付部を有する本体と;
前記本体の他方側の面に設けられた前記放熱フィンの上面に配置される前記光源部を点灯可能な電源部と;
前記光源部より外側であるとともに前記アングル取付部の外側に位置し、前記アングル取付部の前記ネジ孔に対応した貫通孔と長孔が形成された一対の縦板部を有し、この長孔は鉛直方向の下側で、かつ、前記貫通孔よりも縦板部の先端側に、長孔の軌跡はこの貫通孔の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されているとともに、前記電源部より上方で前記電源部と対向可能なように前記一対の縦板部間に亘って設けられる長手方向が前記電源部の長手方向と一致する横板部を有し、前記電源部より下方側で前記本体を支持するとともに前記横板部を天井に取り付けるアングルと;
を備えることを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記本体の面には、前記複数の放熱フィンのうち、高さが異なる1枚からなる放熱フィンが備えられていることを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記電源部は、前記本体中心を通る前記長手方向に延びる直線上かつ前記一対の縦板部間に亘って設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の照明器具。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和4年2月28日付けで通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1:(新規性・公知)本件特許の請求項1〜3に係る発明は、本件特許の原出願である特願2016−187231号の出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であって、特許法第29条第1項第1号に該当するから、当該請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由2:(新規性公然実施)本件特許の請求項1〜3に係る発明は、原出願の出願前に日本国内又は外国において公然実施された発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当するから、当該請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由3:(新規性・刊行物公知)本件特許の請求項1〜3に係る発明は、原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由4:(進歩性)本件特許の請求項1〜3に係る発明は、原出願の出願前に日本国内又は外国において、公然知られた発明、公然実施された発明、あるいは、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
なお、上記第1のとおり、本件特許の出願日は平成23年9月15日であり、上記理由1〜4において、「本件特許の原出願である特願2016−187231号の出願前」及び「原出願の出願前」は「その出願前」の誤記である。取消理由通知は本件特許の出願日に基づいて判断されたものであるといえ、また、特許権者及び申立人からこれに対する意見はない。

2 刊行物等(各甲号証)
(1)甲号証一覧
甲第1−1号証:東芝ライテック株式会社のホームページのうち、2011年7月28日プレスリリースのページ、「約52%の省エネを実現した『LED高天井器具』の発売について」の印刷物
(https://www.tlt.co.jp/tlt/press_release/p110728/p110728.htm)
甲第1−2号証:東芝ライテック株式会社のホームページのうち、「商品紹介>商品情報検索>商品紹介画面>商品詳細のページ」のうち、「商品詳細:LEDJ−20023W−DJ2」の印刷物(出力日:2021年11月5日)
(http://saturn.tlt.co.jp/pdocs/s/LEDJ20023WDJ2)
甲第1−3号証:東芝ライテック株式会社のホームページのうち、「商品紹介>|商品情報検索>|商品紹介画面>商品詳細のページ」のうち、「商品詳細:LEDJ−20023W−DJ2」のページのうち、「商品図面(PDF)」の印刷物、2011年9月
(http://saturn.tlt.co.jp/product/servlet/getpdf/1/00249410/p//LEDJ-20023W-DJ2.pdf)
甲第2号証 :東芝ライテック株式会社のホームページのうち、「商品紹介>|商品情報検索>|商品紹介画面>商品詳細のページ」のうち、「商品詳細:LEDJ−20023W−DJ2」のページのうち、「取扱説明書(PDF)」の印刷物
(http://saturn.tlt.co.jp/product/servlet/getpdf/11/00249899/p//LEDJ-20023W-DJ2.pdf)
上記各甲号証は、申立人の提出した甲第1−1〜第2号証である。以下において、甲第1−1号証を「甲1−1」と略記する。甲第1−2〜甲2号証も同様とする。

(2)甲1−1の記載事項
甲1−1には、次のことが記載されている(下線は当審が付与した。以下同じ。)。
ア 第1ページ
「e−timing 2011/08/09 10:53 JST
Amano Digital Time Stamp Service」
「プレスリリース」
「2011年7月28日」
「約52%の省エネを実現した『LED高天井器具』の発売について」


写真:LED高天井器具(LEDJ−20023W−DJ2)」
(以下「写真(甲1−1)」という。)
「東芝ライテック株式会社は、メタルハライドランプ400W形高天井器具とほぼ同等の明るさ(注1)を実現した『E−CORE(イー・コア)』LED高天井器具など計4機種を8月30日から発売します。」
「注1:メタルハライドランプ400W形(MF400L−J2/BU−PS)と高天井器具(SN−4044A)との組合せ(消費電力415W)と、LED高天井器具(LEDJ−20023W−DJ2)の、補足説明資料に示す設置条件での比較。」

イ 第2ページ



(「LEDJ−20023W−DJ2」を囲む枠は、申立人が付加したものである。)
「発売日
2011年8月30日」

(3)甲1−2の記載事項
甲1−2には、次のことが記載されている。
「商品詳細:LEDJ−20023W−DJ2」



(「形名」〜「発売日」までを囲む枠は、申立人が付加したものである。)

(4)甲1−3の記載事項
甲1−3には、次のことが記載されている。
ア 第1ページの左上欄外
「TOSHIBA 2011.09 003」
イ 第1ページの右上欄外
「※施工上の注意とご使用上の注意はカタログ・取扱説明書をお読みください。」
ウ 第1ページ左上 「安全に関するご注意」の欄
「・天井吊り下げ専用器具です。指定以外の取り付けを行うと、天井材の破損、器具の落下の原因となります。」
エ 第1ページの右上



オ 第1ページの左中央



(以下「図1(甲1−3)」という。)
カ 第1ページの中央



(以下「図5(甲1−3)」という。)
キ 第1ページの右中央



(以下「図4(甲1−3)」という。)
ク 第1ページの右下



(以下「図2(甲1−3)」という。枠囲みの用語及び対応する矢印は、当審が付加した。)

ケ 第1ページの中央下



(以下「図3(甲1−3)」という。枠囲みの用語及び対応する矢印は、当審が付加した。)
コ 第1ページの右下



サ 第2ページ左上 「施工上の注意」欄
「3)傾斜天井に取付ける場合には0〜30°まで取付け可能です。
器具本体が必ず水平になるよう設置してください。」

(5)甲2の記載事項
甲2には、次のことが記載されている。
ア 第1ページ
「保管用」
「東芝LED照明器具取扱説明書」
「LEDJ−20023W−DJ2」
「このたびは東芝LED照明器具をお買いあげいただきましてまことにありがとうございました。お使いになる方や他人への危害と財産の損害を未然に防ぎ、商品を安全に正しくお使いいただくために、この取扱説明書をよくお読みください。」
「工事店様へ ●工事が終了しましたら、この説明書は必ずお客様へお渡しください。」
「<生産完了 2012年7月01日>
LEDJ−20023W−DJ2(1/4)」
イ 第2ページ



(以下「図A(甲2)」という。)



「3.傾斜天井に取付ける場合には傾斜角度は0〜30°まで取付け可能です。(図3)
器具本体が必ず水平になるように調整し、六角ねじで確実に固定して下さい。」



(以下「図3(甲2)」という。枠囲みの用語及び対応する矢印は当審が付加した。)



(以下「図4(甲2)」という。枠囲みの用語及び対応する矢印は当審が付加した。)
ウ 第3ページ
「(2)電源線を(図7)のように確実に電源ユニットの電源端子台の奥まで差し込んでください。」



(以下「図11(甲2)」という。)
エ 第4ページ



(以下「図15(甲2)」という。枠囲みの用語及び対応する矢印は当審が付加した。)
「東芝ライテック株式会社 器具事業部」

3 当審の判断
(1)公知日、公然実施日、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった時期について
上記1のとおり、本件特許の出願日は平成23年9月15日であり、これに基づいて判断する。

ア 甲1−1
甲1−1は、上記2(1)及び2(2)アから、東芝ライテック株式会社のインターネット上のホームページに掲載された2011年7月28日のプレスリリースの印刷物であって、2011年8月9日にデジタルタイムスタンプされたものであるから、その内容が本件特許の出願前にウェブページ等に掲載されたものと認められる。

イ 甲1−2
甲1−2は、上記2(1)から、東芝ライテック株式会社のインターネット上のホームページに掲載された形名が「LEDJ−20023W−DJ2」である商品についての印刷物と認められるが、その公知日、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった時期は不明である。

ウ 甲1−3
甲1−3は、上記2(1)から、東芝ライテック株式会社のインターネット上のホームページに掲載された形名が「LEDJ−20023W−DJ2」である商品の取扱説明書の印刷物であり、上記2(4)アの「TOSHIBA 2011.09 003」の記載から、2011年9月末日までに作成されたものであることが推認できる。
しかしながら、甲1−3が、平成23年9月15日よりも前に作成され、かつ、頒布されたことを示す証拠はない。
よって、甲1−3は、本件特許の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものと認めることはできない。

エ 甲1−1〜甲1−3に掲載された製品
(ア)甲1−1は、上記2(1)から、東芝ライテック株式会社のインターネット上のホームページに掲載された2011年7月28日のプレスリリースの印刷物であるところ、上記2(2)アの「東芝ライテック株式会社は、メタルハライドランプ400W形高天井器具とほぼ同等の明るさ(注1)を実現した『E−CORE(イー・コア)』LED高天井器具など計4種類を8月30日から発売します。」との記載、同イの表の「形名」として「LEDJ−20023W−DJ2」との記載及び同イの「発売日2011年8月30日」との記載から総合的に判断して、遅くとも2011年7月28日の時点で、東芝ライテック株式会社は、形名がLEDJ−20023W−DJ2である「E−CORE(イー・コア)」LED高天井器具(以下「甲1製品」という。)を2011年8月30日に発売する予定であったことが認められ、その事実はインターネットを通じて知られていたことが認められる。

(イ)甲1−2は、上記2(1)から、東芝ライテック株式会社のインターネット上のホームページに掲載された形名が「LEDJ−20023W−DJ2」である商品についての印刷物であるところ、上記2(3)から、東芝ライテック株式会社は、形名がLEDJ−20023W−DJ2であるLED高天井屋内用器具、すなわち甲1製品を、2011年8月30日から発売し、2021年11月5日の時点では生産完了していたことが認められる。

(ウ)上記2(4)コのとおり、甲1−3には、「形名」として「LEDJ−20023W−DJ2」と、「品名」として「東芝LED照明器具」と記載されていることから、甲1−3に記載された技術は、形名がLEDJ−20023W−DJ2であるLED照明器具、すなわち甲1製品に関するものであると認められる。

(エ)上記(ア)〜(ウ)からみて、甲1製品は、2011年8月30日に、つまり本件特許の出願前に販売を開始したものであり、その構成は甲1−3に記載されたものと推認できる。
しかしながら、甲1−1〜甲1−3だけでは、甲1製品の販売を開始した2011年8月30日に、実際に、甲1製品を購入者等に対して納品したことを示すに十分な証拠を構成しているとはいえず、他にそれを示す証拠もない。
よって、甲1製品が本件特許の出願前に公然知られたもの、又は公然実施されたものと認めることはできない。

オ 甲2
上記2(5)ア〜エから、甲2は、東芝ライテック株式会社が作成した、形名がLEDJ−20023W−DJ2であるLED照明器具、すなわち甲1製品の取扱説明書であると認められる。そして、取扱説明書は販売製品に添付して頒布するのが一般的であるところ、甲2には、上記2(5)アのとおり、「保管用」、「お買いあげいただき」、「商品を安全に正しくお使いいただくために、この取扱説明書をよくお読みください」、「工事が終了しましたら、この説明書は必ずお客様へお渡しください。」などの記載があることから、甲2は、形名がLEDJ−20023W−DJ2であるLED照明器具、すなわち甲1製品を、東芝ライテック株式会社が販売し納品した際、甲1製品に添付して購入者や施工業者に頒布されたものであると推認できる。
しかしながら、上記エにおいて説示したとおり、実際に、甲1製品が購入者等に対して納品された日を特定することができないことから、その納品に伴って頒布されることとなる甲2についても、その頒布の時期を特定することはできない。
よって、甲2が本件特許の出願前に頒布されたものと認めることはできない。

カ 小括
甲1−1は、本件特許の出願前に公知になったものと認められる。
甲1−2、甲1−3及び甲2は、その公知日、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった時期を特定することができず、本件特許の出願前に公知になったものと認めることができない。
甲1製品は、本件特許の出願前に公然知られたもの、又は公然実施されたものと認めることはできない。

(2)甲1−1を主引用例とする場合
ア 甲1−1から認定できる技術的事項
写真(甲1−1)から、本体と、本体に取り付けられるアングルとを備え、アングルは、本体の外側に位置する一対の縦板部と、本体より上方で、一対の縦板部に亘って設けられる横板部とをすることが看取される。

イ 甲1−1発明
上記2(2)、上記(1)ア及び上記アから、本件特許の出願前にウェブページ等に掲載された甲1−1には、次の発明(以下「甲1−1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「 本体と、本体に取り付けられるアングルとを備え、アングルは、本体の外側に位置する一対の縦板部と、本体より上方で、一対の縦板部に亘って設けられる横板部とを有するLED高天井器具。」

ウ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲1−1発明とを対比する。
甲1−1発明の「LED高天井器具」は、本件発明1の「照明器具」に相当する。
また、甲1−1発明の「本体と、本体に取り付けられるアングルとを備え、アングルは、本体の外側に位置する一対の縦板部と、本体より上方で、一対の縦板部に亘って設けられる横板部とを有する」構成は、本件発明1の「本体と」「一対の縦板部を有し、」「前記一対の縦板部間に亘って設けられる」「横板部を有」する「アングルと」「を備える」構成に相当する。
したがって、本件発明1と甲1−1発明との一致点、相違点は以下のとおりと認められる。

<一致点1>
「 本体と、
一対の縦板部を有し、前記一対の縦板部間に亘って設けられる横板部を有するアングルと、
を備える照明器具。」

<相違点1−1>
本体について、本件発明1は、「一方側の面に光源部が設けられ、他方側の面に複数の放熱フィンが設けられ、中心に前記複数の放熱フィンに囲まれてなる凹状の空間が形成されているとともに、互いに対向するように端部側に設けられ、ネジ孔が形成された板状の一対のアングル取付部を有する」構成であるのに対し、甲1−1発明は、上記構成であるか否かが明らかでない点。

<相違点1−2>
本件発明1は、「前記本体の他方側の面に設けられた前記放熱フィンの上面に配置される前記光源部を点灯可能な電源部」を備える構成であるのに対し、甲1−1発明は、電源部を備える構成であるか否かが明らかでない点。

<相違点1−3>
アングルについて、本件発明1は、縦板部、「前記光源部より外側であるとともに前記アングル取付部の外側に位置し、前記アングル取付部の前記ネジ孔に対応した貫通孔と長孔が形成され」、「この長孔は鉛直方向の下側で、かつ、前記貫通孔よりも縦板部の先端側に、長孔の軌跡はこの貫通孔の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されている」ものであり、横板部が「前記電源部より上方で前記電源部と対向可能なように前記一対の縦板部間に亘って設けられる長手方向が前記電源部の長手方向と一致する」ものであり、「前記電源部より下方側で前記本体を支持するとともに前記横板部を天井に取り付ける」構成であるのに対し、甲1−1発明は、上記構成であるか否かが明らかでない点。

b 判断
甲1−1には、本体及びアングルの構成及び機能について、何ら記載も示唆もされておらず、甲1−1発明において、相違点1−1〜相違点1−3に係る本件発明1の発明特定事項とする動機付けは存在しない。
また、相違点1−1〜相違点1−3に係る本件発明1の発明特定事項は、申立人が令和4年6月13日に提出した意見書に添付した特開2008−98020号公報(以下「参考資料1」という。)及び特開2010−272497号公報(以下「参考資料2」という。)には、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1は、甲1−1発明、参考資料1及び参考資料2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本件発明2〜3について
本件発明2〜3は、本件発明1の事項を全て含み、さらに請求項2〜3に記載された事項により限定するものであるから、本件発明1と同じ理由により、甲1−1発明、参考資料1及び参考資料2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 小括
以上のとおり、本件発明1〜3は、甲1−1発明、参考資料1及び参考資料2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)甲1製品を主引用例とする場合
上記(1)エにおいて説示したとおり、甲1製品は、本件特許の出願前に公然知られたものと認めることはできないが、仮に、甲1製品が本件特許の出願前に公然知られたものであるとして検討する。

ア 甲1−3から認定できる技術的事項
(ア)上記(1)エ(ウ)において説示したとおり、甲1−3に記載された技術は、甲1製品に関するものと認められる。

(イ)図2(甲1−3)及び図3(甲1−3)から、「本体1」の下面に「LEDモジュール5」が設けられていると認められる。

(ウ)図1(甲1−3)、図3(甲1−3)及び図4(甲1−3)から、「本体1」の上面に複数の板状部材が設けられていることが看取される。また、当該板状部材が「放熱フィン」であることは、技術常識からみて明らかである。

(エ)図2(甲1−3)〜図4(甲1−3)から、「本体1」において「アングル6」が取り付ける部位を「アングル取付部」として特定でき、当該「アングル取付部」が、板状で一対あり、互いに対向するように「本体1」の端部側に設けられ、上下2つの「孔」が形成されていることが看取される。

(オ)図1(甲1−3)〜図3(甲1−3)から、「電源ボックス2」が、「本体1」の上面に設けられることが看取される。また、「電源ボックス2」が「LEDモジュール5」を点灯可能であることは、技術常識からみて明らかである。

(カ)図2(甲1−3)及び図3(甲1−3)に示したように、「アングル6」について、「一対の縦板部」、「横板部」、「貫通孔」、「長孔」が特定できる。

(キ)図2(甲1−3)〜図4(甲1−3)から、「一対の縦板部」が、「LEDモジュール5」より外側であるとともに「アングル取付部」の外側に位置し、「アングル取付部」の「孔」に対応した「貫通孔」と「長孔」が形成されていることが看取される。

(ク)図2(甲1−3)〜図4(甲1−3)から、「縦板部」の「長孔」が、鉛直方向の下側で、かつ、「貫通孔」よりも「縦板部」の先端側に形成されていることが看取される。また、上記2(4)サの「傾斜天井に取付ける場合には0〜30°まで取付け可能です。」との記載及び図2から、「アングル6」が「貫通孔」を中心に回動することは明らかであるから、「長孔」の軌跡はこの「貫通孔」の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されていると認められる。

(ケ)図1(甲1−3)〜図3(甲1−3)から、「アングル6」が、「電源ボックス2」より上方で「電源ボックス2」と対向可能なように「一対の縦板部」間に亘って設けられる長手方向が「電源ボックス2」の長手方向と一致する「横板部」を有し、「電源ボックス2」より下方側で「本体1」を支持することが看取される。また、上記2(4)ウの「天井吊り下げ専用器具です。」との記載及び図5(甲1−3)も踏まえると「横板部」は天井に取り付けられるものと認められる。

(コ)図3(甲1−3)から、本体1の上面には、複数の放熱フィンのうち、高さが異なる1枚からなる放熱フィンが備えられていることが看取される。

(サ)図1(甲1−3)〜図3(甲1−3)から、電源ボックス2が、本体1中心を通る長手方向に延びる直線上かつ一対の縦板部間に亘って設けられることが看取される。

イ 甲1発明
上記2(2)〜2(4)及び上記アから、甲1−3には甲1製品に関する次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認定できる。
「 下面にLEDモジュール5が設けられ、上面に複数の放熱フィンが設けられるとともに、互いに対向するように端部側に設けられ、上下2つの孔が形成された板状の一対のアングル取付部を有する本体と、
本体1の上面に設けられ、LEDモジュール5を点灯可能な電源ボックス2と、
LEDモジュール5より外側であるとともにアングル取付部の外側に位置し、アングル取付部の上下2つの孔に対応した貫通孔と長孔が形成された一対の縦板部を有し、この長孔は鉛直方向の下側で、かつ、貫通孔よりも縦板部の先端側に、長孔の軌跡はこの貫通孔の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されているとともに、電源ボックス2より上方で電源ボックス2と対向可能なように一対の縦板部間に亘って設けられる長手方向が電源ボックス2の長手方向と一致する横板部を有し、電源ボックス2より下方側で本体1を支持するとともに横板部を天井に取り付けるアングル6と、
を備え、
本体1の上面には、複数の放熱フィンのうち、高さが異なる1枚からなる放熱フィンが備えられ、
電源ボックス2が、本体1中心を通る長手方向に延びる直線上かつ一対の縦板部間に亘って設けられる、
LED照明器具。」

ウ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(a)甲1発明の「下面」、「LEDモジュール5」、「上面」、「電源ボックス2」及び「LED照明器具」は、本件発明1の「一方側の面」、「光源部」、「他方側の面」、「電源部」及び「照明器具」に相当する。

(b)甲1発明の「下面にLEDモジュール5が設けられ、上面に複数の放熱フィンが設けられるとともに、互いに対抗するように端部側に設けられ、上下2つの孔が形成された板状の一対のアングル取付部を有する本体」と本件発明1の「一方側の面に光源部が設けられ、他方側の面に複数の放熱フィンが設けられるとともに、互いに対向するように端部側に設けられ、ネジ孔が形成された板状の一対のアングル取付部を有する本体」とは、上記アも踏まえると「一方側の面に光源部が設けられ、他方側の面に複数の放熱フィンが設けられるとともに、互いに対向するように端部側に設けられ、孔が形成された板状の一対のアングル取付部を有する本体」という点で共通する。

(c)甲1発明の「本体1の上面に設けられ、LEDモジュール5を点灯可能な電源ボックス2」は、上記アも踏まえると本件発明1の「前記本体の他方側の面に設けられた前記放熱フィンの上面に配置される前記光源部を点灯可能な電源部」に相当する。

(d)甲1発明の「LEDモジュールより外側であるとともにアングル取付部の外側に位置し、アングル取付部の上下2つの孔に対応した貫通孔と長孔が形成された一対の縦板部を有し、この長孔は鉛直方向の下側で、かつ、貫通孔よりも縦板部の先端側に、長孔の軌跡はこの貫通孔の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されているとともに、電源ボックス2より上方で電源ボックス2と対向可能なように一対の縦板部間に亘って設けられる長手方向が電源ボックス2の長手方向と一致する横板部を有し、電源ボックス2より下方側で本体1を支持するとともに横板部を天井に取り付けるアングル6」と本件発明1の「前記光源部より外側であるとともに前記アングル取付部の外側に位置し、前記アングル取付部の前記ネジ孔に対応した貫通孔と長孔が形成された一対の縦板部を有し、この長孔は鉛直方向の下側で、かつ、前記貫通孔よりも縦板部の先端側に、長孔の軌跡はこの貫通孔の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されているとともに、前記電源部より上方で前記電源部と対向可能なように前記一対の縦板部間に亘って設けられる長手方向が前記電源部の長手方向と一致する横板部を有し、前記電源部より下方側で前記本体を支持するとともに前記横板部を天井に取り付けるアングル」とは、上記(a)も踏まえると「前記光源部より外側であるとともに前記アングル取付部の外側に位置し、前記アングル取付部の孔に対応した貫通孔と長孔が形成された一対の縦板部を有し、この長孔は鉛直方向の下側で、かつ、前記貫通孔よりも縦板部の先端側に、長孔の軌跡はこの貫通孔の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されているとともに、前記電源部より上方で前記電源部と対向可能なように前記一対の縦板部間に亘って設けられる長手方向が前記電源部の長手方向と一致する横板部を有し、前記電源部より下方側で前記本体を支持するとともに前記横板部を天井に取り付けるアングル」という点で共通する。

(e)したがって、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりと認められる。

<一致点2>
「 一方側の面に光源部が設けられ、他方側の面に複数の放熱フィンが設けられるとともに、互いに対向するように端部側に設けられ、孔が形成された板状の一対のアングル取付部を有する本体と、
前記本体の他方側の面に設けられた前記放熱フィンの上面に配置される前記光源部を点灯可能な電源部と、
前記光源部より外側であるとともに前記アングル取付部の外側に位置し、前記アングル取付部の前記孔に対応した貫通孔と長孔が形成された一対の縦板部を有し、この長孔は鉛直方向の下側で、かつ、前記貫通孔よりも縦板部の先端側に、長孔の軌跡はこの貫通孔の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されているとともに、前記電源部より上方で前記電源部と対向可能なように前記一対の縦板部間に亘って設けられる長手方向が前記電源部の長手方向と一致する横板部を有し、前記電源部より下方側で前記本体を支持するとともに前記横板部を天井に取り付けるアングルと、
を備える照明器具。」

<相違点2−1>
本件発明1では、本体が、「中心に前記複数の放熱フィンに囲まれてなる凹状の空間が形成され」る構成であるのに対して、甲1発明では、そのような構成なのか否かが明らかでない点。

<相違点2−2>
本件発明1では「アングル取付部」に「ネジ孔が形成され」、「縦板部」が「アングル取付部の前記ネジ孔に対応した貫通孔と長孔が形成され」ているのに対して、甲1発明では「アングル取付部」に「上下2つの孔が形成され」、「縦板部」が「アングル取付部の上下2つの孔に対応した貫通孔と長孔が形成され」ている点。

b 判断
相違点2−1について検討する。
甲1発明の本体における複数の放熱フィンが構成する形状について、中心に複数の放熱フィンに囲まれた凹状の空間を形成することは、甲1−3には記載も示唆もないことから、甲1発明にはそのような構成とする動機付けは存在しない。
また、参考資料1及び参考資料2をみても、そのような形状とすることについての記載も示唆も見当たらない。
したがって、上記相違点2−2について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、参考資料1及び参考資料2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本件発明2〜3について
本件発明2〜3は、本件発明1の事項を全て含み、さらに請求項2〜3に記載された事項により限定するものであるから、本件発明1と同じ理由により、甲1発明、参考資料1及び参考資料2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 小括
以上のとおり、仮に、甲1製品が本件特許の出願前に公然知られたものであるとしても、本件発明1〜3は、甲1発明、参考資料1及び参考資料2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)甲2を主引用例とする場合
上記(1)オにおいて説示したとおり、甲2は、本件特許の出願前に頒布されたものと認めることはできないが、仮に、甲2が本件特許の出願前に頒布されたものであるとして検討する。

ア 甲2から認定できる技術的事項
(ア)上記(1)オにおいて説示したとおり、甲2は甲1製品の取扱説明書であると認められる。

(イ)図A(甲2)及び図3(甲2)から、「本体」の下面に「LED」が設けられていることは、技術常識からみて明らかである。

(ウ)図A(甲2)、図4(甲2)及び図15(甲2)から「本体」の上面に複数の板状部材が設けられていることが看取される。また、当該板状部材が「放熱フィン」であることは、技術常識からみて明らかである。

(エ)図4(甲2)、図11(甲2)及び図15(甲2)から、「本体」において「アングル」が取り付ける部位を「アングル取付部」として特定でき、当該「アングル取付部」が、板状で一対あり、互いに対向するように「本体」の端部側に設けられ、上下2つの「孔」が形成されていることが看取される。

(オ)図11(甲2)に示される「電源穴」を通る配線が電源線であることは明らかであり、図11(甲2)、図15(甲2)及び上記2(5)ウの「(2)電源線を(図7)のように確実に電源ユニットの電源端子台の奥まで差し込んでください。」との記載から、図15(甲2)に示したように「端子台」及び「電源ユニット」が特定できる。

(カ)図4(甲2)及び図15(甲2)から、「電源ユニット」が、「本体」の上面に設けられることが看取される。また、「電源ユニット」が「LED」を点灯可能であることは、技術常識からみて明らかである。

(キ)図3(甲2)及び図4(甲2)に示したように、「アングル」について、「一対の縦板部」、「横板部」、「貫通孔」、「長孔」が特定できる。

(ク)図A(甲2)、図3(甲2)及び図4(甲2)から、「一対の縦板部」が、「LED」より外側であるとともに「アングル取付部」の外側に位置し、「アングル取付部」の「孔」に対応した「貫通孔」と「長孔」が形成されていることが看取される。

(ケ)図3(甲2)から、「縦板部」の「長孔」が、鉛直方向の下側で、かつ、「貫通孔」よりも「縦板部」の先端側に形成されていることが看取される。また、上記2(5)イの「傾斜天井に取付ける場合には傾斜角度は0〜30°まで取付け可能です。」との記載及び図3(甲2)から、「アングル」が「貫通孔」を中心に回動することは明らかであるから、「長孔」の軌跡はこの「貫通孔」の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されていると認められる。

(コ)図4(甲2)及び図15(甲2)から、「アングル」が、「電源ユニット」より上方で「電源ユニット」と対向可能なように「一対の縦板部」間に亘って設けられる長手方向が「電源ユニット」の長手方向と一致する「横板部」を有し、「電源ユニット」より下方側で「本体」を支持することが看取される。また、上記2(5)イの「傾斜天井に取付ける」との記載及び図3(甲2)も踏まえると「横板部」は天井に取り付けられるものと認められる。

(サ)図4(甲2)から、本体の上面には、複数の放熱フィンのうち、高さが異なる1枚からなる放熱フィンが備えられていることが看取される。

(シ)図4(甲2)及び図15(甲2)から、電源ユニットが、本体中心を通る長手方向に延びる直線上かつ一対の縦板部間に亘って設けられていることが看取される。

イ 甲2発明
上記2(5)及びアより、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「 下面にLEDが設けられ、上面に複数の放熱フィンが設けられるとともに、互いに対向するように端部側に設けられ、上下2つの孔が形成された板状の一対のアングル取付部を有する本体と、
本体の上面に設けられ、LEDを点灯可能な電源ユニットと、
LEDより外側であるとともにアングル取付部の外側に位置し、アングル取付部の上下2つの孔に対応した貫通孔と長孔が形成された一対の縦板部を有し、この長孔は鉛直方向の下側で、かつ、貫通孔よりも縦板部の先端側に、長孔の軌跡はこの貫通孔の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されているとともに、電源ユニットより上方で電源ユニットと対向可能なように一対の縦板部間に亘って設けられる長手方向が電源ユニットの長手方向と一致する横板部を有し、電源ユニットより下方側で本体を支持するとともに横板部を天井に取り付けるアングルと、
を備え、
本体の上面には、複数の放熱フィンのうち、高さが異なる1枚からなる放熱フィンが備えられ、
電源ユニットが、本体中心を通る長手方向に延びる直線上かつ一対の縦板部間に亘って設けられる、
LED照明器具。」

ウ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(a)甲2発明の「下面」、「LED」、「上面」、「電源ユニット」及び「LED照明器具」は、本件発明1の「一方側の面」、「光源部」、「他方側の面」、「電源部」及び「照明器具」に相当する。

(b)甲2発明の「下面にLEDが設けられ、上面に複数の放熱フィンが設けられるとともに、互いに対抗するように端部側に設けられ、上下2つの孔が形成された板状の一対のアングル取付部を有する本体」と本件発明1の「一方側の面に光源部が設けられ、他方側の面に複数の放熱フィンが設けられるとともに、互いに対向するように端部側に設けられ、ネジ孔が形成された板状の一対のアングル取付部を有する本体」とは、上記(a)も踏まえると「一方側の面に光源部が設けられ、他方側の面に複数の放熱フィンが設けられるとともに、互いに対向するように端部側に設けられ、孔が形成された板状の一対のアングル取付部を有する本体」という点で共通する。

(c)甲2発明の「本体の上面に設けられ、LEDを点灯可能な電源ユニット」は、上記(a)も踏まえると本件発明1の「前記本体の他方側の面に設けられた前記放熱フィンの上面に配置される前記光源部を点灯可能な電源部」に相当する。

(d)甲2発明の「LEDより外側であるとともにアングル取付部の外側に位置し、アングル取付部の上下2つの孔に対応した貫通孔と長孔が形成された一対の縦板部を有し、この長孔は鉛直方向の下側で、かつ、貫通孔よりも縦板部の先端側に、長孔の軌跡はこの貫通孔の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されているとともに、電源ユニットより上方で電源ユニットと対向可能なように一対の縦板部間に亘って設けられる長手方向が電源ユニットの長手方向と一致する横板部を有し、電源ユニットより下方側で本体を支持するとともに横板部を天井に取り付けるアングル」と本件発明1の「前記光源部より外側であるとともに前記アングル取付部の外側に位置し、前記アングル取付部の前記ネジ孔に対応した貫通孔と長孔が形成された一対の縦板部を有し、この長孔は鉛直方向の下側で、かつ、前記貫通孔よりも縦板部の先端側に、長孔の軌跡はこの貫通孔の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されているとともに、前記電源部より上方で前記電源部と対向可能なように前記一対の縦板部間に亘って設けられる長手方向が前記電源部の長手方向と一致する横板部を有し、前記電源部より下方側で前記本体を支持するとともに前記横板部を天井に取り付けるアングル」とは、上記(a)も踏まえると「前記光源部より外側であるとともに前記アングル取付部の外側に位置し、前記アングル取付部の孔に対応した貫通孔と長孔が形成された一対の縦板部を有し、この長孔は鉛直方向の下側で、かつ、前記貫通孔よりも縦板部の先端側に、長孔の軌跡はこの貫通孔の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されているとともに、前記電源部より上方で前記電源部と対向可能なように前記一対の縦板部間に亘って設けられる長手方向が前記電源部の長手方向と一致する横板部を有し、前記電源部より下方側で前記本体を支持するとともに前記横板部を天井に取り付けるアングル」という点で共通する。

(e)したがって、本件発明1と甲2発明との一致点、相違点は以下のとおりと認められる。

<一致点3>
「 一方側の面に光源部が設けられ、他方側の面に複数の放熱フィンが設けられるとともに、互いに対向するように端部側に設けられ、孔が形成された板状の一対のアングル取付部を有する本体と、
前記本体の他方側の面に設けられた前記放熱フィンの上面に配置される前記光源部を点灯可能な電源部と、
前記光源部より外側であるとともに前記アングル取付部の外側に位置し、前記アングル取付部の前記孔に対応した貫通孔と長孔が形成された一対の縦板部を有し、この長孔は鉛直方向の下側で、かつ、前記貫通孔よりも縦板部の先端側に、長孔の軌跡はこの貫通孔の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されているとともに、前記電源部より上方で前記電源部と対向可能なように前記一対の縦板部間に亘って設けられる長手方向が前記電源部の長手方向と一致する横板部を有し、前記電源部より下方側で前記本体を支持するとともに前記横板部を天井に取り付けるアングルと、
を備える照明器具。」

<相違点3−1>
本件発明1では、本体が、「中心に前記複数の放熱フィンに囲まれてなる凹状の空間が形成される構成であるのに対して、甲2発明では、そのような構成なのか否かが明らかでない点。

<相違点3−2>
本件発明1では「アングル取付部」に「ネジ孔が形成され」、「縦板部」が「アングル取付部の前記ネジ孔に対応した貫通孔と長孔が形成され」ているのに対して、甲2発明では「アングル取付部」に「上下2つの孔が形成され」、「縦板部」が「アングル取付部の上下2つの孔に対応した貫通孔と長孔が形成され」ている点。

b 判断
相違点3−1について検討する。
甲2発明の本体における複数の放熱フィンが構成する形状について、中心に複数の放熱フィンに囲まれた凹状の空間を形成することは、甲2には記載も示唆もないことから、甲2発明にはそのような構成とする動機付けは存在しない。
また、参考資料1及び参考資料2をみても、そのような形状とすることについての記載も示唆も見当たらない。
したがって、上記相違点3−2について判断するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、参考資料1及び参考資料2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本件発明2〜3について
本件発明2〜3は、本件発明1の事項を全て含み、さらに請求項2〜3に記載された事項により限定するものであるから、本件発明1と同じ理由により、甲2発明、参考資料1及び参考資料2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 小括
以上のとおり、仮に、甲2が本件特許の出願前に頒布されたものであるとしても、本件発明1〜3は、甲2発明、参考資料1及び参考資料2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1〜3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1〜3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側の面に光源部が設けられ、他方側の面に複数の放熱フィンが設けられ、中心に前記複数の放熱フィンに囲まれてなる凹状の空間が形成されているとともに、互いに対向するように端部側に設けられ、ネジ孔が形成された板状の一対のアングル取付部を有する本体と;
前記本体の他方側の面に設けられた前記放熱フィンの上面に配置される前記光源部を点灯可能な電源部と;
前記光源部より外側であるとともに前記アングル取付部の外側に位置し、前記アングル取付部の前記ネジ孔に対応した貫通孔と長孔が形成された一対の縦板部を有し、この長孔は鉛直方向の下側で、かつ、前記貫通孔よりも縦板部の先端側に、長孔の軌跡はこの貫通孔の中心を中心とする円の円周の一部となるように形成されているとともに、前記電源部より上方で前記電源部と対向可能なように前記一対の縦板部間に亘って設けられる長手方向が前記電源部の長手方向と一致する横板部を有し、前記電源部より下方側で前記本体を支持するとともに前記横板部を天井に取り付けるアングルと;
を備えることを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記本体の面には、前記複数の放熱フィンのうち、高さが異なる1枚からなる放熱フィンが備えられていることを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記電源部は、前記本体中心を通る前記長手方向に延びる直線上かつ前記一対の縦板部間に亘って設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の照明器具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-09-13 
出願番号 P2018-087133
審決分類 P 1 651・ 112- YAA (F21S)
P 1 651・ 111- YAA (F21S)
P 1 651・ 113- YAA (F21S)
P 1 651・ 121- YAA (F21S)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 一ノ瀬 覚
特許庁審判官 芦原 康裕
大谷 光司
登録日 2021-06-03 
登録番号 6893490
権利者 東芝ライテック株式会社
発明の名称 LED照明器具  
代理人 白井 達哲  
代理人 市川 浩  
代理人 市川 浩  
代理人 河野 仁志  
代理人 河野 仁志  
代理人 白井 達哲  
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