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審決分類 審判 全部申し立て 1項2号公然実施  A01K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01K
審判 全部申し立て 1項1号公知  A01K
管理番号 1392056
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-05-13 
確定日 2022-11-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6967786号発明「養殖籠における貝類の回収装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6967786号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6967786号の請求項1ないし8に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成31年1月11日に出願され、令和3年10月28日にその特許権の設定登録がされ、令和3年11月17日に特許掲載公報が発行され、その後、令和4年5月13日付けで特許異議申立人株式会社森機械製作所(以下「申立人」という。)より、請求項1ないし8に係る特許に対して、特許異議の申立てがされたものである(特許異議申立書について、以下「申立書」という。)。

第2 本件特許発明
特許第6967786号の請求項1ないし8の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される、下記のとおりのものである(以下、請求項1ないし8の特許に係る発明を総称して「本件特許発明」、各請求項の特許に係る発明をそれぞれ「本件特許発明1」等という。)。

「【請求項1】
貝類が収容された養殖籠を揺動させることによって、貝類を分離して回収する養殖籠における貝類の回収装置であって、
養殖籠が載置可能な躯体フレームと、該躯体フレームの略上方に設けられ、養殖籠の側面に対し両側から接触することにより養殖籠全体を揺らす揺動手段と、稼働時における該揺動手段の動きを一定範囲に制限する規制手段とを具備し、
前記躯体フレーム上に載置された養殖籠を、該揺動手段によって揺らすことにより養殖籠の内部に収容されている貝類を分離するようにしたことを特徴とする養殖籠における貝類の回収装置。
【請求項2】
前記揺動手段は、前記躯体フレームの長手方向に沿って配設された一対のパイプ材であり、これらのパイプ材は、それぞれの前端部の間、及び後端部の間に架設された前部連結材及び後部連結材によって一体的に揺動可能に構成されているとともに、これらの前部連結材及び後部連結材には、その中央に各々支持軸が設けられ、これらの支持軸は前記躯体フレームの一方側端部及び他方側端部に軸支されていることを特徴とする請求項1に記載の養殖籠における貝類の回収装置。
【請求項3】
前記揺動手段を構成する一対の各パイプ材には、剛性を向上させる補強部材が取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の養殖籠における貝類の回収装置。
【請求項4】
前記規制手段は、前記揺動手段である一対のパイプ材の内側への撓みを制限する第一規制部材、並びに、外側への撓みを制限する第二規制部材を備えていることを特徴とする請求項1〜3のうち、何れか1項に記載の養殖籠における貝類の回収装置。
【請求項5】
前記揺動手段の駆動源は、前記躯体フレームの上部に設置されていることを特徴とする請求項1〜4のうち、何れか1項に記載の養殖籠における貝類の回収装置。
【請求項6】
前記躯体フレームの下方には、養殖籠から分離して落下する貝類を受け止めて搬送するベルトコンベアが設置され、該ベルトコンベアの搬送面は、該躯体フレーム上に載置された養殖籠下部の
開口部に対し、一定のクリアランスが保持される位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のうち、何れか1項に記載の養殖籠における貝類の回収装置。
【請求項7】
前記ベルトコンベアの搬送面上に海水又は淡水を供給する水供給手段が、設けられていることを特徴とする請求項6に記載の養殖籠における貝類の回収装置。
【請求項8】
前記躯体フレームの下部付近には、前記ベルトコンベアとの隙間を閉塞するカバー部材が取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載の養殖籠における貝類の回収装置。」

第3 申立理由の概要
1 申立理由(新規性及び進歩性)の概要及び証拠方法
申立人は、申立書において、「本件請求項1−8に係る発明は、甲第1号証−甲第5号証に基づいて、本件特許出願の出願日前に公然知られた発明若しくは公然実施された発明、又はこれらの発明から当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第1項第1号若しくは第2号又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。」(申立書16頁14〜18行)、すなわち本件特許発明1ないし8に係る特許は特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである旨を主張している。

[証拠方法]
申立人は、申立書と同時に、証拠説明書とともに、以下の甲第1号証ないし甲第5号証を提出している。

(1)甲第1号証
甲第1号証は、証拠説明書において、標目が「通知書」とされ、立証の趣旨が「本件特許発明の出願前に申立人が被申立人の製造による装置を確認して写真を撮影し、写真が被申立人に送付されたこと」とされるものである。

(2)甲第2号証
甲第2号証は、証拠説明書において、標目が
「甲1の添付資料(写真)
撮影対象 被申立人が製造し譲渡した貝の振出装置
撮影日
2016年5月8日
撮影者
異議申立人従業員 鈴木勝範
撮影場所 遠別漁業協働組合撮影日」
とされ、立証の趣旨が「本件特許発明が出願前に公然知られた又は公然実施されたこと」とされるものである。

(3)甲第3号証
甲第3号証は、証拠説明書において、標目が「侵害通知書への回答書」とされ、
立証の趣旨が
「甲2・甲4の装置が被申立人の製造による装置であること
本件特許発明が出願前に公然知られた又は公然実施されたこと」
とされるものである。

(4)甲第4号証
甲第4号証は、証拠説明書において、標目欄が
「写真
撮影対象 被申立人が製造し譲渡した貝の振出装置
撮影日
2016年5月8日
撮影者
異議申立人従業員 鈴木勝範
撮影場所 遠別漁業協働組合」
とされ、立証の趣旨が「本件特許発明が出願前に公然知られた又は公然実施されたこと」とされるものである。

(5)甲第5号証
甲第5号証は、証拠説明書において、標目が
「写真
撮影対象 被申立人が生産した貝の回収装置
撮影日
2018年2月20日
撮影者
異議申立人従業員 後藤茂夫
撮影場所 小樽市祝津港」
とされ、立証の趣旨が「本件特許発明が出願前に公然知られた又は公然実施されたこと」とされるものである。

2 主張の概要
申立書における、各証拠の説明及び主張の概要は、以下のとおりである。

(1)証拠の説明
ア 甲第1号証
「甲第1号証は、異議申立人が被申立人に対して送付した侵害通知書の写しである。・・・
甲第1号証には、異議申立人が、本件特許発明の特許出願の出願日・・・前に、本件特許発明1−8と同一の構成を有する被申立人の装置を確認し、写真を撮影したことが記載されている。・・・」(申立書9頁4〜12行)

イ 甲第2号証
「甲第2号証は、異議申立人が被申立人に対して送付した、甲第1号証の通知書において言及されている装置の写真の印刷物の写しである。これらの写真は、本件特許発明の特許出願の出願日・・・より前・・・に撮影されたものである。・・・
甲第2号証の写真には、本件特許発明1−8と同一の構造を有する装置が開示されている。」(申立書9頁13〜21行)

ウ 甲第3号証
「甲第3号証は、申立人の侵害通知書に対する被申立人の回答書である。・・・
甲第3号証において、被申立人は、異議申立人の特許権及び意匠権(以下、申立人特許権及び申立人意匠権という)の侵害の主張に対して、・・・被申立人の装置は、申立人特許権の技術的範囲に属さないとの反論を行っている。また、申立人意匠権に関して、被申立人の装置は、物品は申立人意匠権と同一又は類似であるものの、意匠としては非類似であるとの反論を行っている。ここで、被申立人は、甲第2号証において、異議申立人が甲第1号証に関連して送付した写真(甲第2号証)の装置が被申立人の製造に係る装置であることを前提に、当該写真に撮影された被申立人装置の構成を詳細に説明(※)した上で、被申立人装置が、申立人特許権の技術的範囲に属さず、また申立人意匠権の登録意匠とは非類似であると結論づけている。すなわち、被申立人は、異議申立人が送付した写真に撮影された装置が、本件特許発明の特許出願の出願日前に、被申立人が製造し譲渡した装置であることを自認している。
甲第3号証には、本件特許発明2、5、及び6と同一の構造を有する被申立人装置が開示されているとともに、被申立人装置の作用効果が記載されている。
(※)被申立人装置の構成及び作用効果の説明が記載された箇所は以下のとおりである。
・・・」(申立書9頁22行〜10頁21行)

エ 甲第4号証
「甲第4号証は、甲第2号証の写真とともに撮影された写真であり、異議申立人の従業員により撮影された写真を印刷したものである。これらの写真は、甲第2号証の写真と同様、本件特許発明の出願日・・・より前・・・に撮影されたものである。
甲第4号証には、本件特許発明3、6−8と同一の構造を有する装置が開示されている。」(申立書10頁22行〜11頁1行)

オ 甲第5号証
「甲第5号証は、被申立人の製造による「養殖籠における貝類の回収装置」を撮影した写真であり、異議申立人の従業員により撮影された写真を印刷したものである。これらの写真は、本件特許発明の出願日・・・より前・・・に撮影されたものである。甲第5号証においては、撮影された装置が被申立人の製造に係る装置であることは明示されていないが、甲第2号証の写真とほぼ同一の構成を有していることから、被申立人の装置であることが推認される。仮に、甲第5号証の写真の装置が被申立人の装置であるかどうか不明であるとしても、これらの写真は本件特許発明の出願日より前に撮影されたものであるから、写真に撮影されている装置は、本件特許発明の出願日前に公知である。
甲第5号証には、本件特許発明1−7と同一の構造を有する装置が開示されている。」(申立書11頁2〜14行)

(2)主張の概要
「本件特許発明と証拠に記載された事項との対比
(ア)本件特許発明1について
甲第2号証及び甲第5号証には、本件特許権の特許公報の明細書及び図面に記載された装置とほぼ同一の構造を有する装置が示されている。甲第2号証は、甲第1号証により、本件特許発明の出願前に申立人が被申立人の製造による装置を確認して撮影した写真であり、これらの写真は被申立人に送付されている。
甲第2号証の装置は、甲第3号証に記載された被申立人の主張及び本件特許明細書において特許文献1として提示された記載の内容から、貝類が収容された養殖籠を揺動させることによって、貝類を分離して回収する、養殖籠における貝類の回収装置であることは明らかである。
甲第2号証の装置は、本件特許公報の明細書及び図面の記載内容と比較するとともに甲第3号証における被申立人の主張を勘案すれば、本件特許発明1の構成のうち、養殖籠が載置可能な躯体フレーム、及び、該躯体フレームの略上方に設けられ、養殖籠の側面に対し両側から接触することにより養殖籠全体を揺らす揺動手段を有するものと認められる。
このように、本件特許発明1の躯体フレーム(12)及び揺動手段(14)と同様の構成を有する甲第2号証の装置は、甲第3号証に記載された被申立人の主張から、躯体フレーム上に載置された養殖籠を、揺動手段によって揺らすことにより養殖籠の内部に収容されている貝類を分離する作用効果を奏するものであることは明らかである。
また、甲第5号証の装置も、本件特許発明1の躯体フレーム(12)及び揺動手段(14)と同様の構成を有し、本件特許発明1と同様の作用効果を奏するものと解される。
さらに、本件特許発明1の構成要件である、稼働時における該揺動手段の動きを一定範囲に規制する規制手段について、甲第2号証及び甲第5号証からは、稼働時における該揺動手段の動きを一定範囲に規制するかどうかは明らかではないものの、甲第2号証及び甲第5号証において、特許公報の図面における参照番号16の部分ときわめて類似する構造の部分が特許公報の図面とほぼ同じ位置に設けられていることを考慮すれば、甲第2号証及び甲第5号証の装置における当該構造も、稼働時における該揺動手段の動きを一定範囲に規制する規制手段であると解される。
・・・
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証−第3号証及び甲第5号証から、その特許出願前に日本国内において公然知られた発明又は公然実施された発明である。」(申立書11頁15行〜12頁26行)

(続いて、本件特許発明2ないし8に関しての主張が申立書12頁27行〜16頁12行に記載されている。)

第4 当審の判断
1 各甲号証の記載事項
(1)甲第1号証
甲第1号証には、以下の記載がある。(甲第1号証には頁番号が付されていないため、便宜上、その1枚目を1頁とし、以下順に頁番号を付加する。頁番号が付されていない甲号証について、以下同様。)

ア 「通知書
・・・
当法人は、株式会社森機械製作所(以下、「当社」といいます)の代理人として、貴社に対して次の通り通知致します。
当社は、下記特許権(以下、「本件特許権」といいます)及び意匠権(以下、「本件意匠権」といいます)を所有しております。

本件特許権
特許番号 :第5956666号
出願日 :平成27年11月2日
登録日 :平成28年6月24日
発明の名称:連段養殖籠から貝を振るい出すための振出装置及び振出方法

本件意匠権
登録番号 :第1539956号
出願日 :平成27年3月18日
登録日 :平成27年11月13日
意匠に係る物品:振動装置付きベルトコンベア

本件特許権に係る発明の内容は、特許公報の特許請求の範囲に掲載されているとおりであり、本件意匠権に係る登録意匠は、意匠公報に掲載されているとおりです。

ところで、当社は、貴社が「貝の振出装置」(以下、「貴社装置」といいます)を製造し、貴社装置が遠別漁業協同組合様に譲渡されたことを平成29年5月17日に確認し、写真を撮影しております。・・・撮影した写真は別便にて郵送申し上げます。

この貴社装置は、全体の構成として本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項1に記載の発明と同一の構成であり、振動体の構成についても請求項2に記載の発明と同一の構成です。
また、貴社装置は、本件意匠権に係る物品と同一であり、外観においても本件意匠権に係る登録意匠と極めて類似しています。」(1頁1行〜2頁下から3行)

(2)甲第2号証
甲第2号証には、以下の記載がある。(甲第2号証の写真には番号が付されていないため、便宜上、その1枚目を「甲2写真1」とし、以下順に番号を付加する。また甲第2号証各写真を総称して「甲2写真」という。以下同様。)

ア 「「貝の振出装置」及び「ベルトコンベア付き傾斜台」写真送付の件
・・・
表記の件に関しまして、平成29年6月13日付けで、当所を差出人として、貴社製造による「貝の振出装置」が株式会社森機械製作所の特許権(第5956666号)及び意匠権(第1539956号)を侵害・・・している旨の通知書をお送りしております。
当該通知書において、貴社製造によるこれらの装置の写真を別便でお送りする旨のご連絡をしておりますので、ここに写真を送らせていただきます。・・・



同封物:
1 貝の振出装置写真一式(平成29年5月17日、平成28年5月7日撮影) 1
・・・以上」(1頁7行〜最下行)
(なお、原文では、「「貝の振出装置」及び「ベルトコンベア付き傾斜台」写真送付の件」に下線が付され、また「1 貝の振出装置写真一式」の冒頭の「1」は丸数字である。)

イ 甲2写真1は以下のものである。

(2頁)

ウ 甲2写真2は以下のものである。

(3頁)

エ 甲2写真3は以下のものである。

(4頁)

オ 甲2写真4は以下のものである。

(5頁)

カ 甲2写真5は以下のものである。

(6頁)

キ 「甲第2号証の写真の撮影日時(EXIF情報)」とされる画像は以下のものである。


(7頁)

(3)甲第3号証
甲第3号証には、以下の記載がある。

ア 「回答書
・・・
一 弊社は、貴社所有の特許第5956666号(発明の名称〜連段養殖籠から貝を振るい出すための振出装置及び振出方法〜以下、「貝の振出装置」と略します)に係わる特許権、又、意匠登録第1539956号(振動装置付きベルトコンベア〜同様に「貝の振出装置」と略します)に係わる意匠権について、6月13日付の通知書を受領致しましたので、当該通知書に対し、当職は弊社代理人として以下の通り回答致します。
当該通知書によりますと、・・・別便にて当該装置(以下、「弊社装置」とします)の写真を弊社に送付されております。」(1頁1〜10行)

イ 「・・・弊社装置は、平行配置された一対のパイプ状の支持部材(御社特許の振動体又は支持部材に相当)・・・を主たる構成要素とし、一対の支持部材から、丸かごに振動を付与するように構成されています。・・・
そして、弊社装置は・・・支持部材全体を左右に揺り動かして丸かごに振動を付与し、これによって丸かごに付着している貝類を剥離するようになっています。」(2頁18行〜3頁5行)

ウ 「・・・弊社装置は御社の「貝の振出装置」と同様に丸かご内部のホタテ貝などを剥離するためのものである・・・。」(3頁18〜20行)

(4)甲第4号証
甲第4号証には、以下の記載がある。

ア 甲4写真1は以下のものである。

(1頁)

イ 甲4写真2は以下のものである。

(2頁)

ウ 「甲第4号証の写真の撮影日時(EXIF情報)」とされる画像は以下のものである。

(3頁)

(5)甲第5号証
甲第5号証には、以下の記載がある。

ア 甲5写真1は以下のものである。

(1頁)

イ 甲5写真2は以下のものである。

(2頁)

ウ 甲5写真3は以下のものである。

(3頁)

エ 甲5写真4は以下のものである。

(4頁)

オ 甲5写真5は以下のものである。

(5頁)

カ 「甲第5号証の写真の撮影日時(EXIF情報)」とされる画像は以下のものである。

(6頁)

2 特許第5956666号及び意匠登録第1539956号
上記1(1)及び(3)に摘記した甲第1号証及び甲第3号証に記載されている「特許第5956666号」及び「意匠登録第1539956号」に係る特許公報及び意匠公報(いずれも本件特許の出願前に発行)には、それぞれ以下の事項が記載されている。

(1)特許第5956666号公報(下線は審決で付与。)
ア 「【発明の名称】連段養殖籠から貝を振るい出すための振出装置及び振出方法」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、貝を収容した連段養殖籠から貝を取り出すための装置及び方法に関する。より具体的には、本発明は、連段養殖籠に振動を与えることによって貝を振るい出すための振出装置及び振出方法に関する。さらに、本発明による振出装置及び振出方法は、一般に、容器から内容物を取り出すために用いることができる。
【背景技術】
【0002】
ホタテ貝などの貝類の養殖において一般に用いられる連段養殖籠は、外囲に網が張られ、内部は被覆鋼線を円形又は多角形に成形した支持枠に張られた仕切網によって高さ方向に20cm程度の間隔で10〜20の段に区切られた籠である。・・・特に略円筒形状の連段養殖籠は丸カゴとも通称される。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、成長した貝を丸カゴから取り出す際には、3〜4人で、丸カゴの口部を下に向け、並べたサンテナーの上や既成のコンベア上で丸カゴを上下に揺り動かして中の貝を振るい落としているが、これは大変な重労働である。
・・・
【0012】
そこで、本出願の発明者は、作業者の労働を軽減する、効率的でコンパクトな振出装置及びそれを用いた振出方法を発明した。」

ウ 「【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一実施形態に係る振出装置1について、以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る振出装置1の全体図である。振出装置1は、振動体11と、原動機12と、動力伝達機構13とを備える。図2は、振出装置1が備える振動体11及び動力伝達機構13を、図1の左側面から見た図である。・・・
【0032】
振動体11は、一対の支持部材111(111a、111b)及び連結部材112(112a、112b、112c)で構成されており、互いに平行に配置された一対のパイプ状の支持部材111a、111bの両端部及び中央部を連結部材112で連結して一体としたものである。一対の支持部材111は、この上に載置される容器Cを上下に跳ね上げるように振動させて容器Cから内容物Sを振るい出すための部材であり、その長さは容器Cの想定される長さよりも長く、その間隔は容器Cを振動させても転がり落ちないように調節される。・・・
・・・
【0040】
・・・容器Cは、・・・揺動を伴って振動する・・・
【0041】
振出装置1の使用方法の具体例として、振出装置1を用いて丸カゴCから内容物の貝Sを振るい出す方法について説明する。まず、原動機12を作動させて、振動体11を振動させる。その状態で、図4に示されるように、丸カゴCを、口部C1が下向きになるように、振動体11を構成する一対のパイプ状の支持部材111a、111bの間に載置する。あるいは、丸カゴCを振動体11に載置してから原動機12を作動させるようにしても良い。すると、図3を参照して説明したように、振動体11の振動が丸カゴCに伝達して、中から貝Sが振るい出される。・・・
・・・
【0043】
本発明の別の一実施形態に係る振出装置付きコンベア2について、以下に説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る振出装置付きコンベア2の全体図である。振出装置付きコンベア2は、振出装置1とコンベア20とを備え、振出装置1を構成する振動体11を支持するスプリング14は、コンベア20の固定部に取り付けられている。コンベア20は水平部201及び傾斜部202を有し、振動体11は水平部201の上方に水平部201に沿って設置されている。・・・
・・・
【0047】
振出装置付きコンベア2の使用方法の具体例として、丸カゴCから内容物の貝Sを振るい出して搬送する方法について説明する。まず、振出装置1が備える原動機12を作動させて、振動体11を振動させる。その状態で、図6に示されるように、丸カゴCを、口部C1が下向きになるように、振動体11を構成する一対のパイプ状の支持部材111a、111bの間に載置する。あるいは、丸カゴCを振動体11に載置してから原動機12を作動させるようにしても良い。すると、図3を参照して説明したように、振動体11の振動が丸カゴCに伝達して、中から貝Sが振るい出され、コンベア20を走行するベルト22上に落下する。・・・」

エ 図1は次のものである。


オ 図2は次のものである。


カ 図3は次のものである。


キ 図4は次のものである。


ク 図5は次のものである。


ケ 図6は次のものである。


(2)意匠登録第1539956号公報
ア 「【意匠に係る物品】振動装置付きベルトコンベア」

イ 「【意匠に係る物品の説明】本物品は、容器の内容物を容器から振るい出すための振動装置と、容器から振るい出された内容物を搬送するためのベルトコンベアとを備える、振動装置付きベルトコンベアである。ベルトコンベアは、途中の屈曲部で屈曲することによって水平部と傾斜部とを有し、水平部と傾斜部とを通して1本のベルトが走行することによって、容器から振るい出された内容物を目的の位置及び高さに搬送する。振動装置は、ベルトコンベアの水平部の上方においてベルトコンベアの走行方向と平行に設けられた2本の振動体と、振動体を振動させるためのモータ及び振動伝達部材とを含み、振動体を振動させることによってその上に載置された容器から内容物をベルトコンベアの水平部のベルト上に振るい出す。本物品は、例えば、内部に貝を格納した、直径が2本の振動体の間隔より大きい略円筒形の丸カゴを、丸カゴの略円筒側面に設けられた開口部が下向きになるように振動体の上に載置し、振動体を振動させて丸カゴ内部から貝を振るい出し、振るい出した貝をコンベアが搬送するようにして用いる。

ウ 「【意匠の説明】参考図1は、本物品の連続する中間部分を省略した上で全体を拡大して正面より表す参考図である。参考図2は、本物品の使用状態の例として丸カゴを載置した状態を正面より表す参考図である。」

エ 「正面図」は次のものである。


オ 「背面図」は次のものである。


カ 「平面図」は次のものである。


キ 「左側面図」は次のものである。


ク 「右側面図」は次のものである。


ケ 「底面図」は次のものである。


コ 「参考図1」は次のものである。


サ 「参考図2」は次のものである。


3 引用発明
事案に鑑み、甲第2号証(甲2写真)に記載された発明を引用発明として認定し、甲第4号証(甲4写真)及び甲第5号証(甲5写真)等のその他甲号証については、その後、必要な事項について記載内容を確認することとする。
そして、甲第2号証(甲2写真)自体からは、装置の各部材の目的・機能等、とくにその動きや、仮に丸カゴを載置したとした場合の位置関係等は明確ではないが、これも事案に鑑み、上記2(1)に摘記した特許第5956666号公報の記載を参考にし、引用発明を一応認定することとする。

(1) 特許第5956666号公報
上記2(1)で摘記した特許第5956666号公報における図2、図3、5図及び図6を再掲するとともに、それら図面に示される主要な部材の機能、目的を以下に示す。





C:丸カゴ(ホタテ貝などの貝類(図示はされていないが、貝S)の養殖に用いられる、略円筒形状の連段養殖籠(上記2(1)イの段落【0002】、同ウの段落【0041】、【0047】参照。))
1:振出装置(丸カゴCから貝Sを振るい出すための振出装置(上記2(1)イの段落【0001】、【0007】、同ウの段落【0041】、【0047】参照。))
111(111a、111b):支持部材(丸カゴCが載置され、載置された丸カゴCを揺動を伴って振動させて丸カゴCから貝Sを振るい出すための部材(上記2(1)ウの段落【0032】、【0040】、【0041】、【0047】参照。))

(2)甲2写真
ア 上記(1)を参考にし、甲2写真に示される主要な部材を以下に矢印で示す。

(ア)甲2写真1


(イ)甲2写真2


(ウ)甲2写真3


(エ)甲2写真4


(オ)甲2写真5


(カ)
上記(ア)ないし(オ)から、支持部材は振出装置の上方側に設けられていることが看取できる。

イ 甲2写真3部分拡大
下は上記甲2写真3を部分的に拡大したものである。(以下「甲2写真3部分拡大」という。)



上の甲2写真3部分拡大において、矢印で示したように、
・黒い帯状の部材を「帯状部材」
・帯状部材の下端側で帯状部材を装置の躯体側の側面に取り付けている部材を「下端側固定部材」、上端側で帯状部材を支持部材側の側面に取り付けている部材を「上端側固定部材」
・帯状部材の内側面と接している棒状の部材を「棒状部材」
とすれば、甲2写真3部分拡大から、以下の構成が看取できる。
「帯状部材が、その下端が、装置躯体側側面に対し、下端側固定部材により取り付けられているとともに、その上端は、支持部材側側面に対し、上端側固定部材により取り付けられ、また帯状部材の内側面と接触する棒状部材を有する構成」

(3)甲2写真発明
上記(1)、(2)より、特許第5956666号公報の記載を参考にすれば、甲2写真から次の発明(以下、甲2写真発明という。)が一応看取できる。

<甲2写真発明>
「ホタテ貝などの貝類の養殖に用いられる、略円筒形状の連段養殖籠である丸カゴから貝を振るい出すための振出装置であって、
振出装置の上方側に設けられ、丸カゴが載置され、載置された丸カゴを揺動を伴って振動させて丸カゴから貝を振るい出すための部材である、支持部材を具備し、
さらに、帯状部材が、その下端が、装置躯体側側面に対し、下端側固定部材により取り付けられているとともに、その上端は、支持部材側側面に対し、上端側固定部材により取り付けられ、また帯状部材の内側面と接触する棒状部材を有する構成を有する、
振出装置。」

4 本件特許発明1について
事案に鑑み、甲2写真発明はじめ各甲号証に記載された発明の公知性、公然実施性についての検討より先に、まず本件特許発明1、続いて2ないし8の新規性進歩性について検討していく。

(1)対比
本件特許発明1と甲2写真発明を対比する。

ア 甲2写真発明の「ホタテ貝などの貝類の養殖に用いられる、略円筒形状の連段養殖籠である丸カゴ」は、本件特許発明1の「貝類が収容された養殖籠」に相当する。
また甲2写真発明における「貝を振るい出す」ことは、本件特許発明1における「貝類を分離して回収する」ことに相当する。
また甲2写真発明の「丸カゴを揺動を伴って振動させ」ることは、本件特許発明1における「養殖籠を揺動させる」ことに相当する。
よって、甲2写真発明の「ホタテ貝などの貝類の養殖に用いられる、略円筒形状の連段養殖籠である丸カゴから貝を振るい出すための振出装置であって、」「載置された丸カゴを揺動を伴って振動させて丸カゴから貝を振るい出す」「振出装置」は、甲1発明の「貝類が収容された養殖籠を揺動させることによって、貝類を分離して回収する養殖籠における貝類の回収装置であって、」「載置された養殖籠を、該揺動手段によって揺らすことにより養殖籠の内部に収容されている貝類を分離するようにしたことを特徴とする養殖籠における貝類の回収装置。」に相当する。

イ 甲2写真発明において「載置された丸カゴを揺動を伴って振動させて丸カゴから貝を振るい出すための部材である、支持部材」が「振出装置の上方側に設けられ」ていることと、本件特許発明1において「養殖籠の側面に対し両側から接触することにより養殖籠全体を揺らす揺動手段」が「躯体フレームの略上方に設けられ」こととについて、「装置の上方側」ということと、「躯体フレームの略上方」ということとに、位置関係の実質的な相違は無いといえる。
よって、甲2写真発明において「振出装置の上方側に設けられ、丸カゴが載置され、載置された丸カゴを揺動を伴って振動させて丸カゴから貝を振るい出すための部材である、支持部材を具備」することと、本件特許発明1において「該躯体フレームの略上方に設けられ、養殖籠の側面に対し両側から接触することにより養殖籠全体を揺らす揺動手段」「を具備」することとは、「装置の躯体の略上方に設けられ、」「養殖籠全体を揺らす揺動手段を具備」する点で共有する。

ウ よって、前記ア及びイから、本件特許発明1と甲2写真発明とは、

[一致点]
「貝類が収容された養殖籠を揺動させることによって、貝類を分離して回収する養殖籠における貝類の回収装置であって、
装置の躯体の略上方に設けられ、養殖籠全体を揺らす揺動手段を具備し、
養殖籠を、該揺動手段によって揺らすことにより養殖籠の内部に収容されている貝類を分離するようにした、養殖籠における貝類の回収装置。」

である点で一致し、そして以下の点で相違する。

[相違点1] 本件特許発明1においては「養殖籠が載置可能な躯体フレーム」を具備し、養殖籠は「躯体フレーム上に載置」されるものであり、「揺動手段」はその状態で「養殖籠の側面に対し両側から接触することにより」養殖籠を揺らすというものであるのに対して、甲2写真発明においては、丸カゴは、丸カゴを揺動を伴って振動させて丸カゴから貝を振るい出すための部材である支持部材に、載置されるものである点。

[相違点2] 本件特許発明1においては「稼働時における該揺動手段の動きを一定範囲に制限する規制」手段を具備しているのに対して、甲2写真発明における「帯状部材が、その下端が、装置躯体側側面に対し、下端側固定部材により取り付けられているとともに、その上端は、支持部材側側面に対し、上端側固定部材により取り付けられ、また帯状部材の内側面と接触する棒状部材を有する構成」は、「振出装置」が稼働するときの動作・機能が明らかにされていない点。

(2)判断
ア 検討
相違点1について検討する。
まず新規性について、本件特許発明1と甲2写真発明との間に実質的な相違点が存在するから、本件特許発明1は、甲2写真発明ではない。
次に進歩性について、相違点1に係る本件特許発明1の構成である「養殖籠が載置可能な躯体フレーム」を具備し、養殖籠は「躯体フレーム上に載置」される点は、甲4写真及び甲5写真、さらには特許第5956666号公報及び意匠登録第1539956号公報のいずれを見ても、記載も示唆もされておらず、また甲第3号証を参照してもそのような記述はない。
よって、相違点1に係る本件特許発明1の構成は、甲2写真発明及びその他各甲号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。

イ 申立人の主張及びそれに対する判断
ここで、上記第3の2(2)に記載したように、申立人は申立書において、相違点1に関連して、以下の主張をしている。

「甲第2号証の装置は、本件特許公報の明細書及び図面の記載内容と比較するとともに甲第3号証における被申立人の主張を勘案すれば、本件特許発明1の構成のうち、養殖籠が載置可能な躯体フレーム・・・を有するものと認められる。
このように、本件特許発明1の躯体フレーム(12)及び揺動手段(14)と同様の構成を有する甲第2号証の装置は、甲第3号証に記載された被申立人の主張から、躯体フレーム上に載置された養殖籠を、揺動手段によって揺らす・・・ことは明らかである。」(申立書11頁25行〜12頁7行)

しかしながら、上記主張を見ても、各証拠のどの記載を理由に、養殖籠が載置可能な躯体フレーム、あるいは、躯体フレーム上に載置された養殖籠といえるのか、根拠となる具体的な記載箇所は述べられておらず、対して甲2写真、甲4写真及び甲5写真、さらには特許第5956666号公報及び意匠登録第1539956号公報のいずれにも、「養殖籠が載置可能な躯体フレーム」を具備し、養殖籠は「躯体フレーム上に載置」されることは記載も示唆もされておらず、また甲第3号証を参照してもそのような記述はないから、申立人の主張を採用することはできない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2写真発明ではなく、また、当業者が甲2写真発明及びその他各甲号証に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。

5 本件特許発明2ないし8について
本件特許発明2ないし8は、それぞれ、本件特許発明1の構成をすべて含み、更に減縮したものであるから、上記4と同様の理由により、甲2写真発明ではなく、また、当業者が甲2写真発明及びその他各甲号証に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。

6 小括
したがって、本件特許発明1ないし8は、特許法第29条第1項第1号若しくは第2号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、甲2写真発明はじめ各甲号証に記載された発明の公知性、公然実施性について検討するまでもなく、本件特許発明1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由により取り消すことはできない。

第5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-11-10 
出願番号 P2019-003735
審決分類 P 1 651・ 112- Y (A01K)
P 1 651・ 121- Y (A01K)
P 1 651・ 111- Y (A01K)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 藤脇 昌也
前川 慎喜
登録日 2021-10-28 
登録番号 6967786
権利者 株式会社 星野鉄工所
発明の名称 養殖籠における貝類の回収装置  
代理人 岩城 全紀  
代理人 特許業務法人ピー・エス・ディ  

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