• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1392093
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-08-09 
確定日 2022-11-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第7007161号発明「樹脂組成物及び積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7007161号の請求項1〜8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第7007161号の請求項1〜8に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成29年11月15日に出願され、令和4年1月11日に特許権の設定登録がされ、同年2月10日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和4年8月9日に、本件特許に対して、特許異議申立人合同会社SAS(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証 特開平11−246884号公報
甲第2号証 JIS K 1410 酸化亜鉛、日本工業標準調査会、平成7年
甲第3号証 堺化学工業株式会社のインターネットページ
(https://www.sakai−chem.co.jp/jp/products_services_zinc_oxide.php)の「製品一覧 汎用」のページ 2022年4月8日
甲第4号証 化学物質等安全データシート「酸化亜鉛1種」、堺化学工業株式会社、2010年
甲第5号証 DM−FLUIDカタログ 信越化学工業株式会社、1999年、及び抄訳
甲第6号証 製品安全データシート「KF−96−500CS」
信越化学工業株式会社、2014年
甲第7号証 「Greases・Oil Compounds」のカタログ
信越化学工業株式会社、2015年、及び抄訳
甲第8号証 「グリース・オイルコンパウンド」のカタログ 信越化学工業株式会社、2020年
甲第9号証 特開2007−70492号公報
甲第10号証 特開平6−227896号公報
甲第11号証 特開2018−111817号公報
以下、甲第1号証〜甲第11号証を、それぞれ「甲1」〜「甲11」という。

第2 本件発明
特許第7007161号の請求項1〜8の特許に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明8」といい、これらをまとめて、「本件発明」という。また、願書に添付した明細書を、図面を含めて「本件明細書」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
ダイヤモンド、熱伝導性フィラー、及び、樹脂を含有する樹脂組成物であって、
前記熱伝導性フィラーの形状が粒状であり、
前記ダイヤモンドの体積平均粒子径に対する前記熱伝導性フィラーの体積平均粒子径の比が0.01〜0.5であり、
前記ダイヤモンドの真比重と前記熱伝導性フィラーの真比重との差が0.2〜4g/cm3であり、
前記樹脂組成物中の前記ダイヤモンドの含有量が、25体積%以上である、
前記樹脂組成物の粘度が、1000Pa・s未満である、樹脂組成物。
【請求項2】
ダイヤモンドの形状が非球状であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ダイヤモンドの体積平均粒子径が0.01〜100μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ダイヤモンド及び熱伝導性フィラーの合計含有量が30〜95体積%であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の樹脂組成物。
【請求項5】
ダイヤモンドの形状が多面体形状である、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
ダイヤモンドの形状が六八面体である、請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
ダイヤモンドの面数が10〜18である、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物と発熱体とが積層されていることを特徴とする積層体。

第3 申立理由の概要
1 申立人の主張
(1)申立理由1(新規性)本件発明1〜5及び8は、甲1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)本件発明1〜8は、甲1〜11に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、これらの発明に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立理由3(実施可能要件)本件特許は、下記の理由により、特許法36条4項1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消すべきものである。
すなわち、本件明細書の記載からは、本件発明の課題である「優れた塗工性」と、請求項1に規定された「粘度が1000Pa・s未満」との実質的な関係を理解することができない。
(4)申立理由4(サポート要件)本件特許は、下記の理由により、特許法36条6項1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消すべきものである。
すなわち、本件明細書には、本件発明のうち、「一種のダイヤモンド」及び「一種の熱伝導性フィラー」を含む樹脂組成物以外の樹脂組成物について記載されていない。また、本件明細書には、本件発明のうち、「エポキシ樹脂」以外の「樹脂」を含む樹脂組成物について、また、「アルミナ」又は「窒化アルミニウム」以外の「熱伝導性フィラー」を含む樹脂組成物について、記載されていない。
(5)申立理由5(明確性要件)本件特許は、下記の理由により、特許法36条6項2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消すべきものである。
すなわち、請求項1の「前記ダイヤモンドの真比重と前記熱伝導性フィラーの真比重との差が0.2〜4g/cm3であり」との記載及び「前記樹脂組成物中の前記ダイヤモンドの含有量が、25体積%以上である、前記樹脂組成物の粘度が、1000Pa・s未満である、」との記載は不明確である。

2 甲号証の記載
(1)甲1

「【請求項1】(A)液状シリコーン100重量部に対して、(B)モース硬度が6以上で熱伝導率が100W/m°K以上の熱伝導性無機充填剤と(C)モース硬度が5以下で熱伝導率が20W/m°K以上の熱伝導性無機充填剤との合計量が500〜1,000重量部含有されてなる熱伝導性シリコーン組成物であって、(B)成分と(C)成分との混合割合[(C)成分/((B)成分+(C)成分)]が重量比で0.05〜0.5であることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物。
・・・
【請求項5】(B)成分が、窒化アルミニウム粉末及びダイヤモンド粉末の中から選択される少なくとも1種である請求項1〜4の何れかに記載された熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項6】(C)成分が、窒化ホウ素粉末及び酸化亜鉛粉末の中から選択される少なくとも1種である、請求項1〜5の何れかに記載された熱伝導性シリコーン組成物。」


「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はシリコーン組成物からなる熱伝導性材料に関し、特に熱伝導性に優れ電子部品の放熱用として好適な、シリコーン組成物からなる熱伝導性グリース等の熱伝導性材料に関する。」


「【0011】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者等は、ディスペンス性及び熱伝導率を更に向上させるために種々検討した結果、液状シリコーンと、モース硬度が6以上で熱伝導率が100W/m°K以上、及び、モース硬度が5以下で熱伝導率が20W/m°K以上の熱伝導性無機充填剤を組み合わせて使用することにより、熱伝導性に優れると共にディスペンス性にも優れた熱伝導性材料とすることができることを見出し、本発明に到達した。
【0012】従って本発明の第1の目的は、発熱性電子部品からの除熱のために好適な、熱伝導性シリコーン組成物を提供することにある。本発明の第2の目的は、発熱性電子部品からの除熱に有用な熱伝導性材料を提することにある。本発明の第3の目的は、発熱性電子部品からの除熱に有用な、ディスペンス性及び熱伝導性に優れた、シリコーングリースを提供することにある。」


「【0033】本発明における(B)成分は、モース硬度が6以上であって熱伝導率(理論)が100W/m°K以上の熱伝導性無機充填剤である。かかる(B)成分は高熱伝導性を付与するための充填剤であるため、出来るだけ高熱伝導性であることが好ましい。
【0034】本発明の目的である、発熱性電子部品からの除熱に有用な熱伝導性材料を提供するためには、100W/m°K以上、好ましくは300W/m°K以上の理論熱伝導率が必要である。一般に、かかる高熱伝導性無機充填剤はモース硬度が高いが、本発明においては、特に6以上あることが必要である。6以下では、(C)成分として使用する低いモース硬度の無機充填剤との相性が悪くなるからである。かかる(B)成分の具体例としては、窒化アルミニウム粉末、ダイヤモンド粉末及び炭化ケイ素粉末が挙げられる。
・・・
【0042】本発明における、熱伝導性を付与する充填剤であるダイヤモンド粉末としては、一般的に工業的に生産される合成ダイヤモンド粉末が用いられる。合成ダイヤモンド粉末は、比重が約3.5で六面体又は八面体のダイヤモンド形の結晶構造を有する。かかる合成ダイヤモンドは、黒鉛を出発原料とする超高圧合成法又は低圧合成法により製造される。
【0043】合成ダイヤモンドは、圧力と温度の組合せによる製造条件により結晶形に変化が生じ、結晶形によって破砕特性値が決まるので、目的とする用途に合わせた粒子形状と粒度分布を得るべく合成条件を決めることができる。合成ダイヤモンド粉末には、粉末の粒子形状と粒度分布により種々のものが存在するが、本発明では、通常、スラリー、ペースト、テープ等に使われるミクロンサイズのダイヤモンド粉末を使用することが可能である。ミクロンサイズのダイヤモンド粉末としては、粒径が0.1〜60μmのものや、かさ密度が1.4〜2.1のものがある。
【0044】本発明で使用する合成ダイヤモンド粉末としては平均粒径が0.2〜5μmという巾広い範囲のものが使用可能であるが、液状シリコーンに対する分散性の点からは0.5〜4μmのものが好ましく、特に1〜3μmであることが好ましい。かかるダイヤモンド粉末は、上記した粒径範囲の粉末のうち、比較的粗い8〜20μmの粒子と1〜8μmである中位の粒子、及び、0.1〜1μmである比較的細かい粒子のものとを、適宜混合して用いることにより粒径分布が広くなり、液状シリコーンに分散した場合に、ディスペンス性に優れた放熱グリースが得られるので好ましい。尚、合成ダイヤモンドの理論熱伝導率はその結晶構造により異なるが、900〜2,000W/m°Kと非常に大きい。」


「【0049】本発明の(C)成分は、モース硬度が5以下で熱伝導率(理論)が20W/m°K以上の熱伝導性無機充填剤である。この(C)成分は、高熱伝導性を付与するための充填剤である(B)成分と併用することにより、(B)成分を高充填可能にする。即ち、(C)成分は本発明の熱伝導性シリコーン組成物を放熱グリースとした場合に、ディスペンス性を保持しつつ熱伝導性無機充填剤の高充填率を達成するための成分である。
【0050】かかる効果を達成するためには、(C)成分のモース硬度は5以下であることが必要であり、特に1〜5の範囲にあることが好ましい。5以上では、高いモース硬度を有する(B)成分との相性が悪くなる。また、理論熱伝導率は20W/m°K以上であることが必要である。20W/m°K以下では、本発明の目的である高熱伝導性を有する組成物が得られにくい。かかる(C)成分の具体例としては、窒化ホウ素粉末や酸化亜鉛粉末等が挙げられる。
【0051】本発明で使用する酸化亜鉛は、一般的に亜鉛華(Zinc White)とも呼ばれているものであり、六方晶型又はウルツ鉱型の結晶構造を有する白色粉末である。このような酸化亜鉛の製法は、一般に、金属亜鉛を1,000℃に加熱して生じた亜鉛の蒸気を熱空気によって酸化する間接法と、亜鉛鉱石を培焼することによって得られる酸化亜鉛を石炭などで還元し、生じた亜鉛の蒸気を熱空気によって酸化するか、又は、亜鉛鉱石を硫酸で浸出させた鉱さい(滓)にコークスなどを加えたものを電気炉で加熱し、亜鉛を気化させ、熱空気によって酸化する直接法とが知られている。
【0052】いずれの方法においても、生成した酸化亜鉛を、送風機を用いた空気冷却機を通すことによって冷却し、粒子の大きさによって分別する。その他の製法としては、亜鉛塩の溶液に炭酸アルカリ溶液を加え、沈澱させた塩基性炭酸亜鉛を培焼する湿式法がある。かかる製法により作られた酸化亜鉛粉末については、日本工業規格JIS K1410、JIS K5102 及びアメリカ規格ASTM−D79に規定されている。本発明においては、上記した製法で作られたいずれの酸化亜鉛でも使用可能であり、異なった製法のものを混合して使用しても良い。」


「【0059】本発明の目的の一つである高熱伝導性を達成するためには、充填剤の中でも、特に(B)成分の窒化アルミニウム粉末又はダイヤモンド粉末の充填率を高める必要がある。グリースとしての特性を損なうことなく高充填率を達成するためには、充填剤粒子の形状や粒径が極めて重要となる。高充填率を達成しようとすれば、シートとする場合は別として、グリースとする場合には、粘稠となりディスペンス性が損なわれる傾向がある。
【0060】ここで、ディスペンス性とは、グリースを基材に塗付する際の作業性を示すものであり、これが悪いと、グリースを押し出す手段を有するシリンダー状の機器を用いて塗付する際の作業性が悪くなると共に、基材に薄く塗付することが困難となる。従って、熱伝導性材料がグリースである場合には、ディスペンス性を保持しつつ高充填率を達成する上から、充填剤の粒子形状が、平均粒子径と共に極めて大きな要因となる。
・・・
【0068】本発明の熱伝導性材料を製造する具体例は以下の通りである。少なくとも前記液状シリコーン、窒化アルミニウム粉末及び酸化亜鉛粉末を適宜計量し、更に必要に応じて酸化防止剤等を添加した後、例えば、プラネタリーミキサー等の混合機により、稠度が200〜400となるように、窒化アルミニウム粉末の隙間を酸化亜鉛で埋める如く混練することによって容易に製造することができる。グリースとしての稠度はディスペンス性を保持する点から200〜400であることが好ましく、特に250〜350であることが好ましい。」


「【実施例】以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、特に断らない限り、以下に記載する「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を示す。
【0072】実施例1〜14.下記表1に示した粘度及び化4で表される(A)成分100部をベースオイルとした。
【化4】

【表1】

【0073】上記ベースオイルに、下記表2に示す平均粒径を有する(B)成分及び(C)成分を、同表に示す量だけ計量し添加した。次いで、プラネタリーミキサーで20分間上記の3成分を良く混合した後、三本ロールによる混練りを3回実施して、本発明の熱伝導性グリース組成物を調製した。得られた熱伝導性シリコーン組成物について、グリースとしての稠度及び離油度の物性を、JIS−K−2220に準じてそれぞれ測定し、真空理工株式会社製のTCW−1000型の熱線放熱伝導率計を用いて測定した熱伝導率の結果と共に、表2に示した。
【0074】
【表2】

・・・
【0077】表2及び表3から明らかな如く、本発明のグリースの熱伝導率は、2.72〜3.79W/m°Kと、従来のグリースや比較例に比べて大巾に改良された。又、稠度も実用上最適なレベルであり、ディスペンス性も良好であった。」

(2)甲2




・・・」

(3)甲3
「製品一覧
汎用・・・





第4 当審の判断(申立理由1(新規性)、2(進歩性)について)
1 甲1に記載された発明
甲1には、第2の2(1)で摘記した事項が記載されているところ、摘記キの実施例11によれば、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「25℃における粘度が500(CS)である液状シリコーン100重量部に対して、平均粒径が3.0μmである合成ダイヤモンド粉末を280重量部、平均粒径が0.2μmである酸化亜鉛を280重量部配合した、稠度(混和)が345である熱伝導性シリコーン組成物。」(以下、「甲1発明」という。)

2 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明の対比
甲1発明の「25℃における粘度が500(CS)である液状シリコーン」は、本件発明1の「樹脂」に相当する。
甲1発明の「平均粒径が3.0μmである合成ダイヤモンド粉末」は、本件発明1の「ダイヤモンド」に相当する。
甲1発明の「平均粒径が0.2μmである酸化亜鉛」は、第3の2(1)摘記ア、オ及びキによれば、「(C)モース硬度が5以下で熱伝導率が20W/m°K以上の熱伝導性無機充填剤」として配合されたものであるから、本件発明1の「熱伝導性フィラー」に相当する。
甲1発明の「熱伝導性シリコーン組成物」は「樹脂組成物」であることは明らかである。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「ダイヤモンド、熱伝導性フィラー、及び、樹脂を含有する樹脂組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

ア 相違点1
熱伝導性フィラーの形状が、本件発明1では、「粒状」であるのに対して、甲1発明では不明な点
イ 相違点2
ダイヤモンドの体積平均粒子径に対する熱伝導性フィラーの体積平均粒子径の比が、本件発明1では、「0.01〜0.5」であるのに対して、甲1発明では不明な点
ウ 相違点3
ダイヤモンドの真比重と熱伝導性フィラーの真比重との差が、本件発明1では、「0.2〜4g/cm3」であるのに対して、甲1発明では不明な点
エ 相違点4
樹脂組成物中のダイヤモンドの含有量が、本件発明1では、「25体積%以上」であるに対して、甲1発明では不明な点
オ 相違点5
樹脂組成物の粘度が、本件発明1では、「1000Pa・s未満」であるのに対して、甲1発明では不明な点

(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
(ア)本件明細書には、「熱伝導性フィラーが粒状であるとは、上記熱伝導性フィラーの球形度が0.4以上であることを意味している。」(【0025】)と記載されているから、本件発明1において、熱伝導性フィラーが粒状であるとは、その「球形度が0.4以上」であることを意味するものである。
これに対して、甲1発明の酸化亜鉛は上記(1)のとおり「(C)モース硬度が5以下で熱伝導率が20W/m°K以上の熱伝導性無機充填剤」として配合されたものであるところ、甲1には、「(C)成分の具体例としては、窒化ホウ素粉末や酸化亜鉛粉末等が挙げられる」(第3の2(1)摘記オの【0049】)、「本発明で使用する酸化亜鉛は、一般的に亜鉛華(Zinc White)とも呼ばれているものであり、六方晶型又はウルツ鉱型の結晶構造を有する白色粉末である(同【0051】)と記載されていることから、甲1には、甲1発明の酸化亜鉛が「粉末」であることについては記載されているといえるものの、「粒状」であることについては記載も示唆もされておらず、その「球形度を0.4以上」とすることについても記載も示唆もされていない。
そうすると、相違点1は、実質的な相違点である。
(イ)本件発明1は、熱伝導性フィラーが粒状であることにより、樹脂組成物中でのダイヤモンドと熱伝導性フィラーとの局在化が生じやすくなり、その結果、誘電率勾配を形成して、優れた電気絶縁性を発揮することができるというものである(【0025】)。
これに対して、甲1には、酸化亜鉛が粒状であることやその「球形度を0.4以上」とすることについて記載も示唆もされていないことは上記(ア)のとおりであり、甲1発明において、当業者が酸化亜鉛を粒状にすることや、その「球形度を0.4以上」にすることを動機づけられたとする根拠は何ら見いだせない。
そうすると、相違点1に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。
(ウ)申立人は、甲1発明の酸化亜鉛は、「JIS K1410」に規定された酸化粉末であるところ、「JIS K1410」(甲2)によれば、酸化亜鉛には1種、2種及び3種が存在し、甲3の酸化亜鉛の写真によれば、上記1種、2種及び3種の酸化亜鉛は「粒状」である蓋然性が高いと主張する(申立書23頁10行〜24頁1行)。
しかしながら、そもそも甲1は、実施例11において、JIS K1410に規定された酸化亜鉛を使用したことを記載していない。確かに甲1には、使用可能な酸化亜鉛として、JISK1410で規定された酸化亜鉛が記載されているが、これと並列に、JIS K5102 及びアメリカ規格ASTM−D79に規定された酸化亜鉛も記載されているのだから(第3の2(1)の摘記オ)、実施例11に使用した酸化亜鉛が、JIS K1410に規定された酸化亜鉛であるということはできない。そうすると、甲1発明の酸化亜鉛がJIS K1410に規定された酸化亜鉛であるということはできず、申立人の主張は前提において誤りがある。
さらに、甲2によれば、JIS K1410は、酸化亜鉛の品質を、純度や、鉛、カドミウムなどの不純物の量にしたがって、1種〜3種を規定しているものと理解することができ、実際、甲3でも、当該規格を代表分析値と対比して記載している。
そうであれば、甲1発明において、JIS K1410で規定された、1種〜3種のいずれかの酸化亜鉛を使用したと仮定しても、それは、純度や、鉛、カドミウムなどの不純物の量がJIS K1410の規定を満たす酸化亜鉛を使用したということを意味しているに過ぎないのであって、甲3に記載された酸化亜鉛1種〜3種の酸化亜鉛が粒状であるからといって、上記のように甲1発明で使用したと仮定された、JIS K1410の1種〜3種のいずれかの酸化亜鉛が粒状であるということにはならない。
なお、甲3は、申立人も認めるとおり、本件特許の出願日以降に公開されたものであるから、仮に、甲3の写真の酸化亜鉛1種〜3種が粒状であると理解できたとしても、本件出願時において、酸化亜鉛1種〜3種として粒状のものが知られていたということの根拠にはならないうえ、そもそもこれらの写真の倍率は明らかでなく、球形度も不明であるから、これらの写真をみても、ただちに、これらの写真の酸化亜鉛が粒状であると断じることもできない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(エ)上記(ア)〜(ウ)から、相違点1に係る事項は、実質的な相違点であり、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものでもない。

イ 相違点2について
(ア)甲1発明は、合成ダイヤモンドの平均粒径が3.0μm、酸化亜鉛の平均粒径が0.2μm、というものであるが、これらの平均粒径が「体積平均粒子径」であることは記載も示唆もされておらず、これらの平均粒径が「体積平均粒子径」であると理解すべき根拠はない。
そうすると、相違点2は、実質的な相違点である。
(イ)本件発明1は、上記相違点2に係る事項を具備することにより、ダイヤモンドと熱伝導性フィラーとの接触性を向上させることができるとともに、ダイヤモンドと熱伝導性フィラーとの接触回数が過剰になることがなく、熱伝導性に優れたものとすることができ、また、ダイヤモンドと熱伝導性フィラーとの局在化が生じやすくなり、結果として誘電率勾配が形成されて、優れた電気絶縁性を発揮することができるものである(【0040】)。
これに対して、甲1には、ダイヤモンド及び酸化亜鉛の平均粒径が「体積平均粒子径」であることについて記載も示唆もされていないことは上記(ア)のとおりであり、ましてや、「ダイヤモンドの体積平均粒子径に対する熱伝導性フィラーの体積平均粒子径の比を0.01〜0.5」とすることについては何ら記載も示唆もされていないから、甲1発明において、「ダイヤモンドの体積平均粒子径に対する熱伝導性フィラーの体積平均粒子径の比を0.01〜0.5」とすることは、何ら動機づけられない。
そうすると、相違点2に係る事項は、当業者が容易に想到しうるものではない。
(ウ)申立人は、甲1発明の平均粒径に関し、「体積平均粒径」である蓋然性が高いこと、また、酸化亜鉛及びダイヤモンド粒子の粒子径について、「体積平均粒径」であるものを用いることは当業者が適宜なし得る事項であると主張する(申立書24頁2〜18行)が、当該主張に関し何ら具体的根拠をあげていないから、当該主張を採用することはできない。
また、仮に、酸化亜鉛及びダイヤモンド粒子の粒子径について、「体積平均粒径」を用いること自体が当業者にとって容易想到であったとしても、「ダイヤモンドの体積平均粒子径に対する熱伝導性フィラーの体積平均粒子径の比を0.01〜0.5」にすることが容易想到であったとまではいえない。
(エ)上記(ア)〜(ウ)から、相違点2に係る事項は、実質的な相違点であり、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものでもない。

(3)小括
上記(2)のとおり、相違点1及び2は、いずれも実質的な相違点であり、これらの相違点にかかる事項が、当業者が容易に想到し得た事項であるともいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明と甲1〜甲3の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。さらに、甲4〜甲11に記載された事項を併せて検討しても、本件発明1は、甲1発明と、甲1〜甲11の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本件発明2〜8について
本件発明2〜8は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであり、上記2と同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明と、甲2〜11の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

第5 当審の判断(申立理由3(実施可能要件)について)
1 判断基準
本件発明1〜7は「樹脂組成物」という物の発明であり、本件発明8は「積層体」という物の発明であるところ、発明の詳細な説明が物の発明について実施可能要件を満たすためには、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要するものと解される。

2 本件明細書の記載
本件明細書には、以下の記載がある。
「【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、高い熱伝導性と優れた電気絶縁性とを有し、高充填化した場合にも優れた塗工性を発揮して膜厚変化の少ない均一な塗膜を形成可能な樹脂組成物を提供することを目的とする。また、該樹脂組成物を含む積層体を提供することを目的とする。
・・・
【0010】
本発明の樹脂組成物は、ダイヤモンド、熱伝導性フィラー、及び、樹脂を含有する。
本発明の樹脂組成物は、熱伝導性及び接着性に優れるため、例えば、発熱体と放熱体との接着に用いられることで、発熱体が発した熱を効率よく放熱体に伝えることができる。また、形状保持性にも優れるため、塗工した際の膜厚の変化が少なく、均一な塗膜を形成することができる。体積平均粒子径が大きく異なるとともに、真比重差が所定の範囲である熱伝導性材料を組み合わせて用いることで、樹脂組成物中で熱伝導性材料が局在化する。このため、樹脂組成物中で誘電率勾配が形成されて絶縁破壊が起こりにくくなり、電気絶縁性を向上させることができる。
【0011】
本発明の樹脂組成物を介して発熱体と放熱体とを積層した場合の一例を図1に示す。
本発明の樹脂組成物1は、発熱体5及び放熱体6との間に薄膜状として配置される。
本発明の樹脂組成物1は、ダイヤモンド2、熱伝導性フィラー3及びバインダー樹脂4を含有する。ダイヤモンド2の体積平均粒子径に対する熱伝導性フィラー3の体積平均粒子径の比は0.01〜0.5であり、真比重差は0.2〜4g/cm3である。
本発明の樹脂組成物1では、ダイヤモンド2と熱伝導性フィラー3とを併用することで、バインダー樹脂4とのなじみがよく、ペースト化した際の粘性を充分に向上させて、塗工性に優れたものとすることができる。
また、ダイヤモンド2と熱伝導性フィラー3との体積平均粒子径と真比重差が所定の関係を満たすことで、樹脂組成物中でダイヤモンドや熱伝導性フィラー3が局在化して、誘電率が空間的に傾斜したものとなる。その結果、樹脂組成物は絶縁破壊を起こしにくくなり、電気絶縁性が向上する。更に、比較的小さい粒子である熱伝導性フィラー3がダイヤモンド2間の隙間を埋めて、熱伝導パスを形成し、熱伝導性を向上させることができる。
更に、本発明の樹脂組成物1は、バインダー樹脂4を含有することで、発熱体5と放熱体6との接着性を高めることができ、剥離に伴う熱伝導性の低下を抑制することができる。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、ダイヤモンドを含有する。本発明の樹脂組成物は、ダイヤモンドを含有することにより、熱伝導性に優れたものとなる。なお、上記ダイヤモンドは、表面に分散剤や表面処理剤等を有するものであってもよい。
上記ダイヤモンドの形状は、非球状であることが好ましく、多面体形状であることがより好ましく、六面体、八面体、六八面体等が更に好ましく、六八面体が特に好ましい。なお、非球状であるとは、球形度が0.9以下であることを意味する。
また、多面体形状とは、表面を形成する面の半分以上が全て平らな多角形によって構成される立体形状を意味する。
【0013】
上記多面体形状であるダイヤモンドにおいて、多面体形状を形成する多角形は、三角形〜六角形であることが好ましい。
【0014】
上記多面体形状のダイヤモンドの面数は10〜18であることが好ましい。
上記ダイヤモンドの面数が10以上であることで、ダイヤモンドの配向制御が容易となり、ダイヤモンド同士や熱伝導性フィラーとを面接触させて、熱伝導効率を向上させることができる。また、上記ダイヤモンドの面数が18以下であることで、ダイヤモンドが充分に大きな面を有するものとなり、ダイヤモンド同士や熱伝導性フィラーとの点接触の回数を減らして、熱伝導効率の低下を抑制することができる。
なお、上記ダイヤモンドの面数は、例えば、電子顕微鏡写真を確認し、得られた像における粒子300個の面数の平均を算出することにより測定することができる。
【0015】
上記ダイヤモンドの球形度は、好ましい下限が0.2、より好ましい下限が0.3、好ましい上限が0.9、より好ましい上限が0.85である。
なお、上記ダイヤモンドの球形度は、電子顕微鏡写真を確認し、得られた像における粒子300個について、(粒子の投影面積に等しい円の直径/粒子の投影像に外接する最小円の直径)を算出し、その平均値により求めることができる。
【0016】
上記ダイヤモンドのアスペクト比は、好ましい下限が1、より好ましい下限が1.01、好ましい上限が10、より好ましい上限が9である。
なお、上記ダイヤモンドのアスペクト比は、電子顕微鏡写真を確認し、得られた像における粒子300個について、(長径/短径)を算出し、その平均値により求めることができる。
【0017】
上記ダイヤモンドの比表面積は、好ましい下限が0.05m2/g、より好ましい下限が0.1m2/g、好ましい上限が500m2/g、より好ましい上限が400m2/gである。上記比表面積は、窒素ガス等を用いたガス吸着法等により測定することができる。
【0018】
上記ダイヤモンドの破壊靭性は、好ましい下限が2MPa・m1/2、より好ましい下限が3MPa・m1/2、好ましい上限が9MPa・m1/2、より好ましい上限が8MPa・m1/2である。
なお、上記破壊靭性は、JIS R 1607に準拠して測定することができる。
【0019】
本発明の樹脂組成物中の上記ダイヤモンドの含有量は、好ましい下限が10体積%、好ましい上限が90体積%である。
上記ダイヤモンドの含有量が10体積%以上であると、充分な熱伝導性を付与することができる。上記ダイヤモンドの含有量が90体積%以下であると、接着性に優れたものとすることができる。
上記ダイヤモンドの含有量は、より好ましい下限が25体積%、より好ましい上限が75体積%である。
なお、上記ダイヤモンドの含有量は、例えば、樹脂組成物の断面を電子顕微鏡で観察し、得られた画像中のダイヤモンドの占有率を算出することにより測定することができる。
なお、上記占有率とは、画像全面積に対するダイヤモンドの面積の割合を意味し、エネルギー分散型X線分光器によって判別することができ、その後に画像解析により測定することができる。
【0020】
本発明の樹脂組成物中の上記ダイヤモンドの含有量は、好ましい下限が10重量%、より好ましい下限が15重量%、好ましい上限が95重量%、より好ましい上限が90重量%である。
【0021】
上記ダイヤモンドの体積平均粒子径は、好ましい下限が0.01μm、好ましい上限が100μmである。
上記ダイヤモンドの体積平均粒子径が0.01μm以上であると、熱伝導性フィラーを破砕して接触性を向上させることができる。上記ダイヤモンドの体積平均粒子径が100μm以下であるとダイヤモンド同士やダイヤモンドと熱伝導性フィラーとが衝突することで、ダイヤモンド自体が破砕し、接触性を向上させることができる。
上記ダイヤモンドの体積平均粒子径は、より好ましい下限が0.02μm、より好ましい上限が90μmである。
上記ダイヤモンドの体積平均粒子径は、例えば、乾式のレーザー回析法により測定することができる。
【0022】
上記ダイヤモンドの体積平均粒子径は、本発明の樹脂組成物の膜厚に対して、好ましい上限が75%である。
上記ダイヤモンドの体積平均粒子径が上記樹脂組成物の膜厚に対して75%以下であることで、ダイヤモンドの充填量を充分なものとすることができる。
上記ダイヤモンドの体積平均粒子径は、上記樹脂組成物の膜厚に対して、好ましい下限が20%、より好ましい下限が25%、より好ましい上限が70%である。
なお、本発明において、樹脂組成物の膜厚とは、薄膜状とした樹脂組成物の厚みを意味し、薄膜状とした樹脂組成物とは、基材上に塗工することで得られるシート形状の樹脂組成物のみではなく、部材間に充填されることで得られる層状の樹脂組成物も含む。
【0023】
上記ダイヤモンドはグラファイト等の炭素からなる元素鉱物を原料として、例えば、爆轟法、フラックス法、静的高圧法、化学気相蒸着法、高温高圧法等により製造することができる。なかでも、粒子径の大きなダイヤモンドを得られることから、高温高圧法により製造されたものが好ましく用いられる。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、熱伝導性フィラーを含有する。上記熱伝導性フィラーを含有することにより、熱伝導性材料と樹脂とのなじみを向上させて、樹脂組成物の塗工性を高めて、均一な塗膜を形成することができる。また、硬化物の強靭性を向上させることができる。
【0025】
上記熱伝導性フィラーの形状は粒状である。
上記熱伝導性フィラーの形状が粒状であることにより、樹脂組成物中でのダイヤモンドと熱伝導性フィラーとの局在化が生じやすくなり、その結果、誘電率勾配を形成して、優れた電気絶縁性を発揮することができる。
なお、上記熱伝導性フィラーが粒状であるとは、上記熱伝導性フィラーの球形度が0.4以上であることを意味する。
【0026】
上記熱伝導性フィラーとしては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等が挙げられる。なかでも、金属酸化物、金属窒化物が好ましい。
また、上記金属としては、アルミニウム、亜鉛、ケイ素等が挙げられる。なかでも、アルミニウムが好ましい。
上記熱伝導性フィラーとしては、具体的には、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられる。なかでも、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムが好ましい。
【0027】
上記熱伝導性フィラーのビッカース硬度は、下限が5GPa、上限が30GPaである。上記熱伝導性フィラーのビッカース硬度が5GPa以上であると、混錬時にダイヤモンドと接触することで、熱伝導性フィラーが削られて接触性を向上させることができる。上記熱伝導性フィラーのビッカース硬度が30GPa以下であると、混錬時にダイヤモンドと接触することで、ダイヤモンドを派生して接触性を向上させることができる。
上記熱伝導性フィラーのビッカース硬度は、好ましい下限が6GPa、より好ましい下限が7GPa、好ましい上限が29GPa、より好ましい上限が28GPaである。
上記熱伝導性フィラーのビッカース硬度は、例えば、DUH−W201(島津製作所社製)等のビッカース硬度計を用いることで測定することができる。
【0028】
上記熱伝導性フィラーの球形度は、好ましい下限が0.2、より好ましい下限が0.3、好ましい上限が1、より好ましい上限が0.95である。
【0029】
上記ダイヤモンドの球形度と上記熱伝導性フィラーの球形度との比(ダイヤモンドの球形度/熱伝導性フィラーの球形度)は、好ましい下限が0.1、より好ましい下限が0.2、好ましい上限が10、より好ましい上限が5である。
【0030】
上記熱伝導性フィラーのアスペクト比は、好ましい下限が1、より好ましい下限が1.05、好ましい上限が10、より好ましい上限が9である。
【0031】
上記ダイヤモンドのアスペクト比と上記熱伝導性フィラーのアスペクト比との比(ダイヤモンドのアスペクト比/熱伝導性フィラーのアスペクト比)は、好ましい下限が0.1、より好ましい下限が0.2、好ましい上限が10、より好ましい上限が5である。
【0032】
上記熱伝導性フィラーの比表面積は、好ましい下限が0.05m2/g、より好ましい下限が0.1m2/g、好ましい上限が500m2/g、より好ましい上限が400m2/gである。
【0033】
上記熱伝導性フィラーの真比重は、好ましい下限が1.0g/cm3、より好ましい下限が1.2g/cm3、好ましい上限が10.0g/cm3、より好ましい上限が9.5g/cm3である。
【0034】
上記ダイヤモンドの真比重と上記熱伝導性フィラーの真比重との差は、下限が0.2g/cm3、上限が4g/cm3である。
上記真比重の差が0.2g/cm3以上であると、比重差によりダイヤモンドと熱伝導性フィラーとが樹脂組成物中で局在化して、樹脂組成物中に誘電率勾配が生じ、優れた電気絶縁性を発揮することができる。上記真比重の差が4g/cm3以下であると、樹脂組成物中でダイヤモンドと熱伝導性フィラーとが分離することがなく、ダイヤモンドと熱伝導性フィラーとの接触回数を好適化して、熱伝導性を向上させることができる。上記真比重の差は、より好ましい下限が0.25g/cm3、より好ましい上限が3.5g/cm3である。
【0035】
上記熱伝導性フィラーの破壊靭性は、好ましい下限が1MPa・m1/2、より好ましい下限が2MPa・m1/2、好ましい上限が8MPa・m1/2、より好ましい上限が7MPa・m1/2である。
【0036】
上記熱伝導性フィラーの熱伝導率は、好ましい下限が1.0W/m・K、より好ましい下限が5W/m・K、好ましい上限が2500W/m・K、より好ましい上限が2000W/m・Kである。
【0037】
上記熱伝導性フィラーの誘電率は、好ましい下限が0.01、より好ましい下限が0.1、好ましい上限が100、より好ましい上限が50である。なお、誘電率は25℃、周波数1MHzの条件で測定したものである。
【0038】
上記ダイヤモンドの誘電率と上記熱伝導性フィラーの誘電率との差は、好ましい下限が0.1、より好ましい下限が0.5、好ましい上限が50、より好ましい上限が40である。
【0039】
上記熱伝導性フィラーの体積平均粒子径は、好ましい下限が0.01μm、より好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が50μm、より好ましい上限が30μmである。上記熱伝導性フィラーの体積平均粒子径は、例えば、乾式のレーザー回析法により測定することができる。
【0040】
上記ダイヤモンドの体積平均粒子径に対する上記熱伝導性フィラーの体積平均粒子径の比(熱伝導性フィラーの体積平均粒子径/ダイヤモンドの体積平均粒子径)は、下限が0.01、上限が0.5である。
上記体積平均粒子径の比が0.01以上であると、ダイヤモンドと熱伝導性フィラーとの接触性を向上させることができるとともに、ダイヤモンドと熱伝導性フィラーとの接触回数が過剰になることがなく、熱伝導性に優れたものとすることができる。上記体積平均粒子径の比が0.5以下であると、ダイヤモンドと熱伝導性フィラーとの局在化が生じやすくなり、結果として、誘電率勾配が形成されて優れた電気絶縁性を発揮することができる。
【0041】
上記熱伝導性フィラーの体積平均粒子径は、上記樹脂組成物の膜厚に対して、好ましい下限が20%、好ましい上限が75%である。
上記熱伝導性フィラーの体積平均粒子径が上記好ましい下限以上、且つ、上記好ましい上限以下であると、上記熱伝導性フィラーの充填量を充分なものとして、熱伝導性に優れたものとすることができる。
上記熱伝導性フィラーの体積平均粒子径は、上記樹脂組成物の膜厚に対して、より好ましい下限が25%、より好ましい上限が70%である。
【0042】
本発明の樹脂組成物中の上記熱伝導性フィラーの含有量は、好ましい下限が1体積%、より好ましい下限が5体積%、好ましい上限が75体積%、より好ましい上限が50体積%である。
【0043】
本発明の樹脂組成物における上記ダイヤモンドと上記熱伝導性フィラーとの合計含有量は、好ましい下限が30体積%、好ましい上限が95体積%である。
上記合計含有量が30体積%以上であると、充分な熱伝導性を付与することができる。上記合計含有量が95体積%以下であると、樹脂組成物のハンドリング性を向上させて、塗工性に優れたものとすることができる。
上記合計含有量は、より好ましい下限が35体積%、より好ましい上限が85体積%である。
【0044】
本発明の樹脂組成物における上記ダイヤモンドの含有量に対する上記熱伝導性フィラーの含有量の比(熱伝導性フィラーの含有量/ダイヤモンドの含有量)は、体積比で、好ましい下限が1/20、より好ましい下限が1/10、好ましい上限が20/1、より好ましい上限が10/1である。
【0045】
本発明の樹脂組成物は、樹脂を含有する。
上記樹脂は、ダイヤモンド及び熱伝導性フィラーを樹脂組成物に保持するものであり、樹脂組成物に要求される、接着性、機械的強度、耐熱性、電気的特性等の特定に応じて選択される。
上記樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂が挙げられ、接着性、機械的強度をより向上させることができることから、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。
【0046】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−αオレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等が挙げられる。また、ポリフッ化ビニリデン及びポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。更に、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリフェニレン−エーテル共重合体(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル等のポリメタクリル酸エステル類等が挙げられる。また、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、アイオノマー等が挙げられる。
【0047】
上記光硬化性樹脂としては、感光性オニウム塩等の光カチオン触媒を含有するエポキシ樹脂や感光性ビニル基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。
【0048】
上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル酸メチル又はアクリル酸ブチル等を主なモノマー単位とするポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等のホットメルト型接着樹脂が挙げられ、なかでもエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0049】
上記エポキシ樹脂としては特に限定されないが、多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂が好ましい。多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂を用いた場合、剛直となり、接着性や機械的強度が高められる。
【0050】
上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ジシクロペンタジエンジオキシド、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシ樹脂等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(以下、「ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂」と記す)等が挙げられる。また、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリジジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(以下、「ナフタレン型エポキシ樹脂」と記す)が挙げられる。更に、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、または3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボネート等が挙げられる。なかでも、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂やナフタレン型エポキシ樹脂が好適に用いられる。
【0051】
これらの多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。また、上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いられてもよいし、両者が併用されてもよい。
【0052】
本発明の樹脂組成物中の上記樹脂の含有量は、好ましい下限が20重量%、好ましい上限が80重量%である。
上記樹脂の含有量が、20重量%以上であると、得られる樹脂組成物の接着性を向上させることができる。上記樹脂の含有量が、80重量%以下であると、得られる樹脂組成物の熱伝導性を向上させることができる。
上記樹脂の含有量は、より好ましい下限が25重量%、より好ましい上限が75重量%である。
【0053】
上記樹脂の重量平均分子量は、好ましい下限が5000、好ましい上限が1000000である。
・・・
【0057】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、ダイヤモンドに、熱伝導性フィラー、樹脂、必要に応じて添加される熱硬化剤、分散剤等の添加剤、及び、溶媒を混合し、攪拌して樹脂組成物溶液を調製し、続いて、溶媒を除去する方法等が挙げられる。
【0058】
上記溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン及びキシレン等が挙げられる。上記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、トルエンであることがより好ましい。
上記溶媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
・・・
【0066】
本発明の積層体を製造する方法としては、特に限定されない。例えば、発熱体に本発明の樹脂組成物を塗工する方法、本発明の樹脂組成物を離型処理されたPETフィルム上に塗工し、乾燥させて薄膜状の樹脂組成物を作製した後、薄膜状の樹脂組成物と発熱体とを接着する方法、発熱体と放熱体との間に本発明の樹脂組成物を充填して薄膜状の樹脂組成物を含む積層体とする方法等が挙げられる。
・・・
【0070】
(実施例1)
エポキシ樹脂(エピコート828US、三菱化学社製)100重量部に対して、熱硬化剤としてジシアンジアミド(東京化成工業社製)10重量部、イミダゾール硬化剤(2MZA−PW、四国化成工業社製)1重量部を加えた。更に、表1に示す配合となるようにダイヤモンド粒子及び熱伝導性フィラーを加え、遊星式攪拌機を用いて500rpmで25分間攪拌することにより、樹脂組成物を得た。
なお、ダイヤモンド粒子として、体積平均粒子径50μmのダイヤモンド粒子(トーメイダイヤ社製、TMSグレード、六八面体形状、球形度0.9、アスペクト比1.1、真比重3.52g/cm3、誘電率5.6)を用いた。また、熱伝導性フィラーとして、体積平均粒子径20μmのアルミナ粒子(昭和電工社製、CB−A20S、球形度1.0、アスペクト比1.0、熱伝導率30W/m・K、真比重3.92g/cm3、誘電率9.2)を用いた。
なお、ダイヤモンド粒子及び熱伝導性フィラーの体積平均粒子径は、レーザー回析粒度分布計(マルバーン社製、MasterSizer3000)を用いて測定した。
【0071】
また、熱伝導性フィラーのビッカース硬度をビッカース硬度計(島津製作所社製、HMV−G21)を用いて測定した。
ダイヤモンド粒子及び熱伝導性フィラーの破壊靭性をJIS R 1607に準拠して測定した。
ダイヤモンド粒子及び熱伝導性フィラーの誘電率をインピーダンス測定器(HP社製、HP4291B)を用いて、25℃、周波数1MHzの条件で測定した。
更に、得られた樹脂組成物をクロスセクションポリッシャー(日本電子社製、IB−19500CP)を用いて平滑に加工し、加工後の樹脂組成物の断面を電界放出型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4800)で観察し、得られた電子顕微鏡画像に基づいてダイヤモンド粒子及び熱伝導性フィラーの含有量を算出した。
結果を表1に示した。
【0072】
(実施例2)
熱伝導性フィラーとして、体積平均粒子径0.5μmのアルミナ粒子(アドマックス社製、AO502、球形度1.0、アスペクト比1.0、熱伝導率30W/m・K、真比重3.92g/cm3、誘電率9.2)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0073】
(実施例3)
熱伝導性フィラーとして、体積平均粒子径20μmの窒化アルミニウム粒子(球形度1.0、アスペクト比1.0、熱伝導率180W/m・K、真比重3.26g/cm3、誘電率8.7)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0074】
(実施例4)
熱伝導性フィラーとして、体積平均粒子径0.5μmの窒化アルミニウム粒子(球形度1.0、アスペクト比1.0、熱伝導率180W/m・K、真比重3.26g/cm3、誘電率8.7)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0075】
(実施例5)
ダイヤモンド粒子として、体積平均粒子径50μmのダイヤモンド粒子(トーメイダイヤ社製、CMMグレード、球形度0.6、アスペクト比1.8、真比重3.52g/cm3、誘電率5.6)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0076】
(実施例6)
ダイヤモンド粒子として、実施例5と同様のダイヤモンド粒子を用いた以外は実施例2と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0077】
(実施例7)
ダイヤモンド粒子として、実施例5と同様のダイヤモンド粒子を用いた以外は実施例3と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0078】
(実施例8)
ダイヤモンド粒子として、実施例5と同様のダイヤモンド粒子を用いた以外は実施例4と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0079】
(比較例1)
アルミナ粒子を添加しなかった以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0080】
(比較例2)
ダイヤモンド粒子を添加しなかった以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0081】
(比較例3)
熱伝導性フィラーとして、体積平均粒子径20μmの酸化マグネシウム粒子(球形度1.0、アスペクト比1.0、熱伝導率40W/m・K、真比重3.58g/cm3、誘電率9.7)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0082】
(比較例4)
熱伝導性フィラーとして、体積平均粒子径1μmの酸化マグネシウム粒子(球形度1.0、アスペクト比1.0、熱伝導率40W/m・K、真比重3.58g/cm3、誘電率9.7)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0083】
(評価)
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物について、下記の評価を行った。結果を表1に示した。
【0084】
(1)熱伝導性の評価
得られた樹脂組成物を自転公転混錬器により混錬した。その後、離型PETシート上に塗工し、90℃のオーブン内にて10分間乾燥させることで積層シートを得た。得られた積層シートから離型PETシートを剥離し、更に銅箔及びアルミニウム板によって挟み、温度140℃、圧力4MPaの条件で真空プレス成型を行うことにより樹脂組成物層を有する積層体を得た。積層体を10mm×10mmにカットした後、両面にカーボンブラックをスプレーして測定サンプルを作製した。得られた測定サンプルについて、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(アルバック理工社製、「TC−9000」)を用いて熱伝導率を測定し、以下の基準で評価した。なお、熱伝導率としては、積層体を3つ用意し、それぞれの積層体内の3箇所から切り出して得られた測定サンプル合計9つの平均値を用いた。
◎:8W/m・K以上であった。
〇:6W/m・Kよりも大きく、8W/m・K未満であった。
×:6W/m・K以下であった。
【0085】
(2)絶縁性
「(1)熱伝導性の評価」で得られた積層体に対して、耐電圧試験機(ETECH Electronics社製「MODEL7473」)を用いて、テストサンプル間に0.33kV/秒の速度で電圧が上昇するように、25℃にて交流電圧を印加した。テストサンプルに10mAの電流が流れた電圧を絶縁破壊電圧とした。絶縁破壊電圧をテストサンプルの厚みで除算することで規格化し、絶縁破壊強度を算出した。絶縁破壊強度を以下の基準で判定した。
◎:30kV/mm以上
〇:20kV/mm以上、30kV/mm未満
×:20kV/mm未満
【0086】
(3)塗工性の評価
得られた樹脂組成物について、E型粘度計(VISCOMETER TV−22、東機産業社製、使用ローターΦ48mm、設定温度25℃)を用いて、回転数5rpmにおける粘度(mPa・s)を測定し、以下の基準で評価した。
〇:粘度が1000Pa・s未満であった。
×:粘度が1000Pa・s以上であった。
【0087】
(4)接着性評価
得られた積層体を20mm×50mmにカットし、85℃で90°の方向に50gの荷重を掛け、剥離時間を測定した。得られた剥離時間をもとに、比較例1における剥離時間を1.00とした際の相対値により評価した。
【0088】



実施可能要件の検討
上記2によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1〜7の樹脂組成物に含まれる樹脂、ダイヤモンド及び熱伝導フィラーとしてどのようなものを用いることができるかや、各成分の好ましい含有量が記載され(【0010】〜【0053】)、樹脂組成物をどのように製造するかについても記載され(【0057】〜【0058】)、実施例には、具体的に樹脂組成物を製造したことが記載されている(【0070】〜【0088】)。
また、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明8の積層体をどのように製造するかについても記載されている(【0066】)。
そうすると、本件明細書の記載に接した当業者であれば、格別の試行錯誤することなく、本件発明1〜7の樹脂組成物及び本件発明8の積層体を製造することができたといえるし、これらを使用することに格別の困難性があったともいえないから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載には、本件発明1〜8の樹脂組成物又は積層体を製造し、使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件を充足する。

4 申立人の主張について
申立人は、請求項1の、本件明細書の実施例の「(3)塗工性の評価」では、具体的に塗布性の試験を行っておらず、粘度が1000Pa・s未満であることによって、どのように塗工性に優れているかが当業者であっても理解することができないから、本件明細書の記載からは、本件発明の課題である優れた塗工性と、請求項1に規定された粘度が、1000Pa・s未満であることとの実質的な関係を理解することができず、実施可能要件の違反が存在すると主張する(申立書34頁5〜24行)。
しかしながら、上記1の判断基準に照らせば、仮に、本件明細書の記載から優れた塗工性と、粘度が1000Pa・s未満であることとの関係を理解することができないとしても、このことにより、本件明細書の発明の詳細な説明が、実施可能要件を満たさないということにはならない。
また、本件明細書には、実施例で製造された樹脂組成物の塗工性の評価として、粘度が1000Pa・s未満であれば「○」、粘度が1000Pa・s以上であれば「×」と評価することが記載されている(【0086】)のだから、当該記載に接した当業者は、粘度が1000Pa・s未満であれば塗工性に優れるが、この値以上に高くなりすぎると塗工性が悪化すると当然に理解する。
よって、上記主張は採用できない。

5 小括
以上のとおりであるから、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1〜8について、実施可能要件を満たす。

第6 当審の判断(申立理由4(サポート要件)について)
1 判断基準
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か,また,発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。

2 サポート要件の検討
(1)本件発明1について
ア 課題
本件明細書には、上記第5の2のとおりの記載があるところ、そのうち段落【0007】の記載からみて、本件発明1の課題は、
「高い熱伝導性と優れた電気絶縁性とを有し、高充填化した場合にも優れた塗工性を発揮して膜厚変化の少ない均一な塗膜を形成可能な樹脂組成物を提供すること、また、該樹脂組成物を含む積層体を提供すること」
である。
イ 本件明細書の記載
(ア)上記第5の2のとおり、本件明細書には、ダイヤモンドと熱伝導性フィラーとを併用することで、バインダー樹脂とのなじみがよく、ペースト化した際の粘性を充分に向上させて、塗工性に優れたものとすることができること、ダイヤモンドと熱伝導性フィラーとの体積平均粒子径と真比重が所定の関係を満たすことで、樹脂組成物中でダイヤモンドや熱伝導性フィラーが局在化して、誘電率が空間的に傾斜したものとなり、絶縁破壊を起こしにくくなって電気絶縁性が向上し、さらに、比較的小さい粒子である熱伝導性フィラーがダイヤモンド間の隙間を埋めて熱伝導パスを形成し、熱伝導性を向上させることができること、バインダー樹脂を含有することで、発熱体と放熱体との接着性を高めることができ、剥離に伴う熱伝導性の低下を抑制することができることが記載されている(【0011】)。
より詳細には、ダイヤモンドの含有量が10体積%以上であると、充分な熱伝導性を付与することができ、90体積%以下であると、接着性に優れたものとすることができること(【0019】)、熱伝導性フィラーを含有することにより、熱伝導性材料と樹脂とのなじみを向上させて、樹脂組成物の塗工性を高めて、均一な塗膜を形成することができること(【0024】)、熱伝導性フィラーの形状が粒状であることにより、樹脂組成物中でのダイヤモンドと熱伝導性フィラーとの局在化が生じやすくなり、誘電率勾配を形成して、優れた電気絶縁性を発揮することができること(【0025】)、ダイヤモンドの真比重と熱伝導性フィラーの真比重との差が0.2g/cm3以上であると、比重差によりダイヤモンドと熱伝導性フィラーとが樹脂組成物中で局在化して、樹脂組成物中に誘電率勾配が生じ、優れた電気絶縁性を発揮することができ、4g/cm3以下であると、樹脂組成物中でダイヤモンドと熱伝導性フィラーとが分離することがなく、ダイヤモンドと熱伝導性フィラーとの接触回数を好適化して、熱伝導性を向上させることができること(【0034】)、ダイヤモンドの体積平均粒子径に対する熱伝導性フィラーの体積平均粒子径の比が0.01以上であると、ダイヤモンドと熱伝導性フィラーとの接触性を向上させることができるとともに、ダイヤモンドと熱伝導性フィラーとの接触回数が過剰になることがなく、熱伝導性に優れたものとすることができ、0.5以下であると、ダイヤモンドと熱伝導性フィラーとの局在化が生じやすくなり、結果として、誘電率勾配が形成されて優れた電気絶縁性を発揮することができること(【0040】)が記載されている。
(イ)上記第5の2のとおり、本件明細書の実施例には、本件発明1の規定を満たす実施例1〜8の樹脂組成物は、熱伝導性、絶縁性、塗工性及び接着性のいずれにも優れていることが記載されている。
(ウ)そうすると、本件明細書の記載に接した当業者は、樹脂組成物が、ダイヤモンドと熱伝導性フィラーを併用することにより塗工性を高めて、均一な塗膜を形成することができること、熱伝導性フィラーの形状が粒状であることにより優れた電気絶縁性を発揮するものとなること、ダイヤモンドの体積平均粒子径に対する熱伝導性フィラーの体積平均粒子径の比及びダイヤモンドの真比重と熱伝導性フィラーの真比重との差を本件発明1に規定の範囲内の値とすることにより、熱伝導性に優れ、優れた電気絶縁性を発揮するものとなることを、具体的な裏付けをもって理解する。
すなわち、本件明細書の記載に接した当業者は、本件発明1に係る樹脂組成物が、熱伝導性、電気絶縁性に優れ、均一な塗膜を形成可能な塗工性に優れた樹脂組成物であることを、具体的裏付けを持って理解するといえるから、本件発明1が、上記1の課題を解決するものであると理解する。
よって、請求項1の記載は、サポート要件に適合する。
(2)本件発明2〜8について
請求項2〜8は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、上記(1)と同様の理由により、請求項2〜8の記載は、サポート要件に適合する。

3 申立人の主張について
申立人は、
(1)ダイヤモンド粒子に対して、真比重が大きい熱伝導性フィラーと、真比重が小さい熱伝導性フィラーとが同時に存在する場合、比重差によりダイヤモンドと熱伝導性フィラーとが樹脂組成物の中で局在化するとはいえず、本件発明の効果を奏しない蓋然性が高いから、本件明細書には、一種のダイヤモンド及び一種の熱伝導性フィラーを含む樹脂組成物以外の樹脂組成物の全範囲について、本件発明は本件明細書に記載されていない。
例えば、本件明細書の実施例1において、熱伝導性フィラーとしてアルミナに代えて、実施例1のアルミナ(真比重3.92g/cm3、体積平均粒子径20μm)と比較例4の酸化マグネシウム(真比重3.58g/cm3、体積平均粒子径1μm)との1:1混合物を用いた樹脂組成物を想定したとき(以下、この組成物を「仮想組成物」という。)、仮想組成物の熱伝導性フィラーの真比重は3.75(g/cm3)、体積平均粒子径を10.5(μm)と算出され、これらの値とダイヤモンドの真比重、体積平均粒子径から、仮想組成物における真比重の差、体積平均粒子径の比を求めると、いずれも本件発明1の範囲内であるところ、仮想組成物は、比較例相当の酸化マグネシウムが熱伝導性フィラーの半分量も入っているのだから、本件明細書の表1の結果を考慮すると、全体としてせいぜい比較例2と同程度の絶縁性しか達成できないことが見てとれ、樹脂組成物に、真比重大の熱伝導性フィラーと、真比重小の熱伝導性フィラーとが同時に存在する場合、本件発明の効果を奏しない蓋然性が高い
と主張し(申立書34頁25行〜36頁19行)、また、
(2)実施例には、樹脂としてエポキシ樹脂のみ、熱伝導性フィラーとしてアルミナ、窒化アルミニウムのみしか記載されていないところ、樹脂組成物中の樹脂の種類や熱伝導性フィラーの種類が異なれば各成分との相互作用等も異なることは技術常識であって、エポキシ樹脂以外の樹脂を使用し、また、アルミナ、窒化アルミニウム以外の熱伝導性フィラーを使用した場合にも、本件発明が課題を解決することを認識することはできないから、本件明細書には、本件発明の樹脂組成物の全範囲について記載されていない
と主張する(申立書36頁20行〜37頁27行)。
上記主張(1)及び(2)について検討する。
主張(1)について、ダイヤモンド粒子に対して、真比重が大きい熱伝導性フィラー(以下「真比重大の熱伝導性フィラー」という。)と、真比重が小さい熱伝導性フィラー(以下「真比重小の熱伝導性フィラー」という。)とが樹脂組成物中に同時に存在する場合も、各粒子は、それぞれ真比重が異なる以上、その真比重の違いに起因して樹脂組成物の中で局在化するとみるのが合理的であり、これと異なる、真比重大の熱伝導性フィラーと、真比重小の熱伝導性フィラーとが存在する場合に、比重差によりダイヤモンドと熱伝導性フィラーとが樹脂組成物の中で局在化するとはいえないとの主張は根拠がない。
また、上記主張における仮想組成物の、熱伝導性フィラーの真比重である3.75(g/cm3)との値はアルミナの真比重と酸化マグネシウムの真比重の平均値を算出したものであり、体積平均粒子径である10.5(μm)との値は、アルミナの体積平均粒子径と酸化マグネシウムの体積平均粒子径の平均値を算出したものであるところ、本件明細書のいずれの箇所にも、2種類の熱伝導性フィラーを用いる場合には、各々の真比重、体積平均粒子径の平均値を算出して、熱伝導性フィラーの真比重、体積平均粒子径とすることについて、記載されていない。
かえって本件明細書には、熱伝導性フィラーとして好ましい各材料が記載された上で(【0026】)、「上記熱伝導性フィラーの真比重は、好ましい下限が1.0g/cm3、より好ましい下限が1.2g/cm3、好ましい上限10.0g/cm3が、より好ましい上限が9.5g/cm3である。」(【0033】)と記載され、さらに、「上記ダイヤモンドの真比重と上記熱伝導性フィラーの真比重との差は、下限が0.2g/cm3、上限が4g/cm3である。」(【0034】)と記載され、また、「上記熱伝導性フィラーの体積平均粒子径は、好ましい下限が0.01μm、より好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が50μm、より好ましい上限が30μmである。」と記載され(【0039】)、さらに、「上記ダイヤモンドの体積平均粒子径に対する上記熱伝導性フィラーの体積平均粒子径の比(熱伝導性フィラーの体積平均粒子径/ダイヤモンドの体積平均粒子径)は、下限が0.01、上限が0.5である。」(【0040】)と記載されていることからみれば、熱伝導性フィラーの真比重及び体積平均粒子径は、熱伝導性フィラーの種類ごとに規定されるものと理解すべきである。
そうすると、真比重大の熱伝導性フィラーの真比重と真比重小の熱伝導性フィラーの真比重の平均値を熱伝導性フィラーの真比重とし、真比重大の熱伝導性フィラーの体積平均粒子径と真比重小の熱伝導性フィラーの体積平均粒子径の平均値を熱伝導性フィラーの体積平均粒子径として、これらに基づいてなされた上記主張は、前提において誤りがある。
さらに、仮想組成物に、酸化マグネシウムが熱伝導性フィラーの半分量入っていたとしても、比較例2と同程度の絶縁性しか達成できないと理解することができる合理的な根拠は何ら見いだせない。
むしろ、仮想組成物は、ダイヤモンド粒子との真比重、体積平均粒子径の関係が本件発明の規定を満たす熱伝導性フィラーであるアルミナを含有するのだから、本件明細書の記載(第5の2)に照らせば、比重差によりダイヤモンドと熱伝導性フィラーであるアルミナとが樹脂組成物の中で局在化し、絶縁性に優れたものとなると理解するのが合理的である。
したがって、真比重大の熱伝導性フィラーと、真比重小の熱伝導性フィラーとが同時に存在する場合、本件発明の効果を奏しない蓋然性が高いという主張は理由がない。
よって、上記主張(1)は採用できない。
主張(2)について、確かに、本件明細書に記載された実施例には、樹脂としてエポキシ樹脂のみ、熱伝導性フィラーとしてアルミナ、窒化アルミニウムのみしか記載されていないが、このことによりただちに、本件明細書の記載から、本件発明が、本件発明の課題を解決できることを理解できないということにはならない。
そして、本件明細書の記載に接した当業者は、本件発明が、本件発明の課題を解決するものであると理解することは上記2のとおりである。
ここで、申立人は、樹脂組成物中の樹脂の種類や熱伝導性フィラーの種類が異なれば各成分との相互作用等も異なることは技術常識であるということを根拠に上記主張(2)をするものと解されるが、樹脂の種類や熱伝導性フィラーの種類がどのように異なればどのように相互作用が異なり、それが、樹脂組成物の熱伝導性、絶縁性、塗工性にどのように関連するかについて何ら具体的な説明はないし、エポキシ樹脂以外の樹脂を使用した場合、あるいは、アルミナ、窒化アルミニウム以外の熱伝導性フィラーを使用した場合に、本件発明の課題が解決できないと解すべき具体的理由についても、何ら説明がない。
そうすると、仮に上記の技術常識があったとしても、そのことにより、ただちに、本件明細書の記載から、本件発明が、本件発明の課題を解決できることを理解できないということにはならない。
よって、上記主張(2)は採用できない。

4 小括
以上のとおりであるから、請求項1〜8の記載は、サポート要件に適合する。

第7 当審の判断(申立理由5(明確性要件)について)
1 判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

明確性要件の検討
申立人は、
(1)「熱伝導性フィラー」や「ダイヤモンド」が2種以上存在する場合の「真比重」をどのように考えるかについて本件明細書に記載がないこと、及び、ダイヤモンドの真比重と熱伝導性フィラーの真比重の大小関係が規定されていないことを根拠に、請求項1の「前記ダイヤモンドの真比重と前記熱伝導性フィラーの真比重との差が0.2〜4g/cm3であり、」との記載が不明確である
と主張し(申立書33頁2〜11行、21行〜34頁4行)、また、
(2)請求項1の「前記樹脂組成物中の前記ダイヤモンドの含有量が、25体積%以上である、前記樹脂組成物の粘度が、1000Pa・s未満である、」との記載が不明確である
と主張する(申立書33頁12〜20行)。
そこで検討するに、主張(1)について、「前記ダイヤモンドの真比重と前記熱伝導性フィラーの真比重との差が0.2〜4g/cm3であり」なる記載は、ダイヤモンドの真比重と熱伝導性フィラーの真比重の差を特定の数値範囲としたことを意味するものであることは明らかであって、当該記載は明確である。
ここで、本件明細書の記載からみれば、熱伝導性フィラーの真比重は、熱伝導性フィラーの種類ごとに規定されるとものと理解すべきであることは、上記第6の3のとおりであり、熱伝導性フィラーが2種以上存在したからといって、「前記ダイヤモンドの真比重と前記熱伝導性フィラーの真比重との差が0.2〜4g/cm3であり」なる記載とが不明確になることはないし、ダイヤモンドに関していえば、2種以上存在したとしても、真比重は、ダイヤモンドの真比重に他ならず、何ら不明確にはなり得ない。
また、本件明細書には、ダイヤモンドの真比重「3.52」(【表1】)に対して、熱伝導性フィラーの真比重は、好ましい下限が1.0g/cm3、好ましい上限が10.0g/cm3であるから(【0033】)、熱伝導性フィラーの真比重は、ダイヤモンドの真比重よりも大きい場合も小さい場合もあり得ると解されるところ、実際に実施例においても、熱伝導性フィラーの真比重は、実施例1,2,5,6ではダイヤモンドの真比重より大きく、実施例3、4、7、8では、ダイヤモンドの真比重より小さい。そして、ダイヤモンドの真比重と熱伝導性フィラーの真比重とのいずれが大きくても、ダイヤモンドの真比重と熱伝導性フィラーの真比重の差が「0.2〜4g/cm3」と正の値であるのだから、当該差は、値が大なる方から小なる方を引いた値であると一義的に理解できる。
したがって、ダイヤモンドの真比重と熱伝導性フィラーの真比重の大小関係についての記載がないとしても、そのことにより、ダイヤモンドの真比重と熱伝導性フィラーの真比重の差の意味するところが明確でないということにはならない。
主張(2)について、「前記樹脂組成物中の前記ダイヤモンドの含有量が、25体積%以上である、前記樹脂組成物の粘度が、1000Pa・s未満である、」との記載は、樹脂組成物中のダイヤモンドの含有量を特定の値以上とし、かつ、樹脂組成物の粘度を特定の値未満としたものであることは明らかであって、当該記載は明確である。

3 小括
以上のとおりであるから、本件発明1〜8は、明確である。

第8 むすび
したがって、上記第5ないし第7で検討したとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-11-11 
出願番号 P2017-220329
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08L)
P 1 651・ 113- Y (C08L)
P 1 651・ 536- Y (C08L)
P 1 651・ 537- Y (C08L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 細井 龍史
特許庁審判官 海老原 えい子
藤井 勲
登録日 2022-01-11 
登録番号 7007161
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 樹脂組成物及び積層体  
代理人 弁理士法人WisePlus  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ