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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02C
管理番号 1392101
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-08-26 
確定日 2022-12-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第7032618号発明「動物用コンタクトレンズ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7032618号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続等の経緯
特許第7032618号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願(特願2015−245787号)は、平成27年12月17日の出願(先の出願に基づく優先権主張 平成26年12月24日)であって、令和4年3月1日にその特許権の設定登録がされ、令和4年3月9日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報発行の日から6月以内である令和4年8月26日に特許異議申立人 赤塚正樹(以下「特許異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。


第2 本件特許発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のものである。

「人の視覚により識別可能な認識領域を、コンタクトレンズの表面又は内部の少なくとも一部に有し、
前記認識領域は、染料、顔料及び発光剤の一つ以上を含んで形成されると共に、
前記認識領域が、380〜780nmの波長における光反射率が10%以上の物性を有し、
かつ、前記認識領域内に無機粒子を含む光反射領域を有し、
前記光反射領域の少なくとも1つにおいて、JISZ8781−4によって算出される明度指数Wと面積S(mm2)との積にて算出される明度指数強度J(J=W*S(mm2))が10以上で600以下であり、
前記光反射領域の少なくとも1つにおいて、光反射率R(%)と面積S(mm2)との積にて算出される光反射強度I(I=R*S(%・mm2))が3以上で400以下であり、
飼い主が外観上、装用の有無を視認できる、
ラブラドール・レトリバーまたはシーズーである犬用コンタクトレンズ。」


第3 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人が主張する取消しの理由は、概略、以下のとおりである。
1 特許法29条2項進歩性
本件特許の請求項1に係る発明は、先の出願前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

2 特許異議申立人が提出した証拠は以下のとおりである。
甲第1号証:特開2009−151340号公報(甲1)
甲第2号証:Anna Blonska,"Soczewkowa menazeria",[online],2009年7月17日,[2019年5月29日検索],インターネット,<URL:https://kopalniawiedzy.pl/szkla-kontaktowe-wierzeta-S-and-V-Tecnologies-wszczepiac-Christine-Kreinwe,8018>(甲2)(当合議体注:「Blonska」において、「l」は、lにストローク、「n」は、nにアキュートアクセントを付与したものであり、「menazeria」において、「z」は、zに上ドットを付与したものである。)
甲第3号証:特開平1−187527号公報(甲3)
甲第4号証:特表2003−532911号公報(甲4)
甲第5号証:Acrivet Inc.,"Specific Information for Acrivet Pat, Acrivet Pat-UV, Acrivet Pat-P14, Acrivet Pat black",2012年3月(甲5)
甲第6号証:Dr. Joao Alfredo Kleiner,"Bandage Contact Lenses Acrivet",[online],2013年12月13日,[検索日不明],インターネット,<URL:https://www.youtube.com/watch?v=13H0NxvNTd5M>(甲6)(当合議体注:「Joao」において、「a」は、aにチルドを付与したものである。)
甲第7号証:Penelope J Wooff and Joanna C Norman,"Effect of corneal contact lens wear on healing time and comfort post LGK for treatment of SCCEDs in boxers" ,Veterinary Ophthalmology(2015)18,5,P364-370,2014年9月1日(甲7)
甲第8号証:Claudia Busse,"Eye Scratch in Puppies",[online],2014年10月2日,[2022年8月4日検索],インターネット,<URL:http://www.theveterinaryexpert.com/emergencies/eye-scratch-injuries-in-puppies/>(甲8)
(当合議体注:甲1は、主引用例であり、甲2〜8は、副引用例、周知技術を示す文献又は技術常識を示す文献である。)


第4 当合議体の判断
1 甲1の記載、引用発明
(1)甲1の記載
甲1には、次の記載がある。なお、下線は、当合議体が付与したもので、引用発明の認定に用いた。

ア 「【0006】
上記した課題を解決するため、本発明のコンタクトレンズは、レンズの素材が有する色とは異なる色の複数の着色部を離散的に備えることを特徴とする。かかるコンタクトレンズは、その離散的な着色部のために自然物の中に置かれたとき、それら自然物と区別することが容易である。従って、簡単に判別することができ、不測の紛失を防止することができる。また、離散的という特異な着色部は、装着時に多種多様な印象を対人に与えることができ、変化に富んだ生活に適合した装飾品としての付加価値が発生する。」
・・・中略・・・
【0010】
上記の構成を有する本発明のコンタクトレンズは、以下の態様を採ることもできる。まず、着色部は、幾何学的な形状でとすることができる。ここで幾何学的な形状とは、ハート形、星形、円形、四角形、三角形、千鳥格子などの広く知られた形状、表意文字、表音文字、音符や交通標識など所定の観念を想起させる記号など、人間によって案出された形状である。この様な幾何学的な形状は、自然界に存在する形状を人間の観念によって抽象化したり、特定の意志や意味を伝えるために案出されたものであり、自然界に存在する形状と異なっている。従って、自然物との峻別は容易となって紛失防止の効果が顕著となる。また、コンタクトレンズの着色部が、虹彩や角膜などの疾病に起因するものとの誤解を招くこともなくなる。
【0011】
複数の着色部の形状は、互いに同一形状としても良いし、互いに形状が異なるものとすることもできる。前者にあっては着色部の製作が容易となり、後者にあっては、識別がより容易となる。また、コンタクトレンズに上下左右の
別を付けることができる。
【0012】
また、複数の着色部は、対称的に配置してもよいし、非対称的に配置してもよい。前者にあっては、対称性が識別の容易さを醸成することがあり、後者にあってはコンタクトレンズに上下左右の別を付けることができる。なお、対称性は、複数の着色部の集合に対して考えることもできるが、通常円形に作られるコンタクトレンズのレンズ形状に対する対称性(同心性)を考えることもできる。この結果、複数の着色部を、該着色部の集合としては対称的に配置し、かつレンズに対しては非同心的に配置するといった構成も考えることができる。
【0013】
着色部が離散的に配置されるコンタクトレンズは、眼球および/または瞼との相互作用により眼球との位置関係が所定位置となる特定形状に形成することができる。一般的に屈折異常を矯正するために使用されるコンタクトレンズは、コンタクトレンズと角膜との間に介在する涙液との相互作用により複合的な屈折作用を奏し、瞳孔との位置関係や回転位置などは問題とならない。他方、離散的に着色部が存在する本発明のコンタクトレンズは、その着色部の形状あるいは着色部の離散的な配置状態などによって前述のように自然物との相違を表現するものである。この様な着色部による表現は、上下あるいは左右が逆になるなどその見方によっては意味をなさないもの、例えば逆さになったハート、トーン記号のように本来の意味を失ったり、伝達できず、却って滑稽にさえ映るものもある。そこで、眼球および/または瞼との相互作用により眼球との位置関係が所定位置となるように特定されるコンタクトレンズに上述の着色部を設けるならば、その着色部に求めた効果を確実に奏することができる。なお、この様な眼球との位置関係
を所定位置とするコンタクトレンズは、特開昭57−210319号公報などに開示される技術に限らず、何れの技術を利用するものであってもよい。
【0014】
更に着色部は、特定波長の光に反応する材質とすることができる。ここで、特定波長の光とは紫外線、赤外線、可視光などの光であり、日常生活上で容易に取り扱うことができるものであることがより好ましい。また、反応とは、その特定波長の光に起因して着色部が発光したり変色したりするなどの変化である。この様な材質により構成された着色部は、特定波長の光が照射されることでその存在を容易に知ることができる。このため、眼球にコンタクトレンズが存在していることの認識を自他共に容易としたり、コンタクトレンズの紛失時に特定波長の光を照射して簡単に探し出すことができる。また、複数個を組としたコンタクトレンズに異なる反応の着色部を設けることで、自然な状態では左右何れに装着するものであるか判別不可能なコンタクトレンズに対し、特定波長の光を照射することで左右何れに装着するものであるかを見分ける識別表示としても利用できる。また、着色部の一部にのみこうした特殊なインクを用い、ブラックライトなどを当てたときのみ、そのインクが蛍光を発するようにすること可能である。こうしたインク(染料)としては、フローレスセインといった材料が知られている。」
イ 「【0017】
以上のような優れた効果を発揮するコンタクトレンズを製造するコンタクトレンズの製造方法の発明は、コンタクトレンズの素材と同一または異なるモノマーに所定の色素を混合してインクを製造し、このインクを、所定の形状の複数かつ離散的に配置された凹部に充填し、該凹部のインクをパッドにて採取してコンタクトレンズの成型型に転写し、該転写された成型型にてコンタクトレンズの少なくとも一方面の成型を行なうことを特徴とする。
・・・中略・・・
【0019】
ここで、色素としては、Iron oxide,Titanium dioxide,Phthalocyanine green,Phthalocyanine blue,Reactive Red11,Reactive Yellow86,Reactive Black5等を単体または適宜配合したものが利用できる。また、インクを注入する凹部としては、微細加工の容易な金属板が利用でき、特に銅板が適している。インクを採取するパッドとしては、モノマーに対して科学的に安定した物性を有する軟質ポリマーなどの材質が適しており、特にシリコンが好適である。インクをプリントする成型型としては、ポリビニール製樹脂が適しているが、他に金属製の型なども用いることができる。この様にして製造されるコンタクトレンズは、その着色部の製造に当たって大幅な製造工程の追加・改変を必要としない。また、形成される着色部をコンタクトレンズと全く同一のモノマーから形成すれば、光学的特性を同一とし、屈折異常の矯正用のコンタクトレンズとして利用可能となる。異なるモノマーを用いれば、そのモノマーの特性を着色部に利用することができる。かかる構成では、着色用に用いる色素をモノマーに混合するため、その着色部はコンタクトレンズと完全一体となり、たとえ色素の成分が単独では涙液などによって劣化する性質のものであっても使用することができる。なお、コンタクトレンズの製造方法としては、上記の成型を伴う手法の他に、前面(外界からの光線が最初に接触する面)と後面(角膜に接触する面)とをポリマーから削り出すレースカット法がある。この製造方法を採用する場合には、所望の形状のコンタクトレンズを予め削りだしておき、これに後から、着色部を環状に配置すれば、本発明のコンタクトレンズを得ることができる。この場合の着色部の配置は、レンズ前面側または後面側を削りだした後、この面にインクを転写し、インクの重合を行ない、表面研磨後、反対側の面を切削するといった手法を用いて行なえば良い。」

ウ 「【0021】
以上説明した本発明の構成及び作用を一層明らかにするために、以下本発明のコンタクトレンズについて、その実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施例であるコンタクトレンズ10の正面図である。図示するように本実施例のコンタクトレンズ10は、円形の外形をしており、全体的には無色透明であって所望の光学特性を有する一般的なコンタクトレンズである。図中に点線で示す仮想線は、このコンタクトレンズ10の光学効果を有する光学部12とその外周に位置するベベル14との境界線であり、ベベル14には4つの星形の着色部16が等間隔、すなわち90度毎に離散的に配置されている。従って、この着色部16はコンタクトレンズ10の光学特性には全く影響を与えることなく、単に印としてのみ機能する。
【0022】
この様に構成されるコンタクトレンズ10は、角膜に装着したときには多種多様な印象を対人に与えることができ、変化に富んだ生活に適合した装飾品としての付加価値が発生する。また、意図的にあるいは不用意に角膜から取り外したときには、その離散的な着色部16のために、周辺の自然物と明らかな区別が可能となっている。したがって、簡単にその存在を認識することができ、不測の紛失などを防止することができる。しかも、着色部16は星形という極めて人工的な形状であるため、自然物との峻別はより容易であり、かつ、着色部16が意図的になされたものであって虹彩や角膜などの疾病に起因するものとの誤解を招くこともない。
【0023】
次に本発明の第2の実施例について説明する。第2実施例のコンタクトレンズは、図1に示したコンタクトレンズ10と、図2に示すコンタクトレンズを20とからなる。図2は、コンタクトレンズ10と同時に使用される一対のコンタクトレンズの他方のコンタクトレンズ20の正面図である。このコンタクトレンズ20の光学効果を有する光学部22の外周に位置するベベル24には、4つの三日月形の着色部26が90度毎に離散的に配置されている。従って、この着色部26もコンタクトレンズ20の光学特性には全く影響を与えることなく、単に印としてのみ機能する。この様なコンタクトレンズ10と一対となるコンタクトレンズ20は、前述したコンタクトレンズ10が奏する効果を発揮することは勿論のこと、その着色部26の形状がコンタクトレンズ10の着色部16と相違するためにコンタクトレンズ10,20を同時に洗浄、殺菌などの保守を行ったり、同一箇所に管理しても左右どの眼球に適合するものであるかを簡単に判別することができる。しかも、一対のコンタクトレンズ10,20の着色部16,26の
形状は、星形、三日月形という天体を連想させる相互補完の形状であるため、相乗効果として対人に与える印象が深まり、より一層の人工的、意図的な表現が可能となる。」

エ 「【0027】
準備工程PROVの残りの作業は、インクを調合する工程である(工程S120)。インクは、色素としてReactiveRed11を使用し、コンタクトレンズ10,20の主たる材料であるヘマと同一のモノマーと混合する。ここでは、赤色の色素を用いたが、混合する色素を適宜選択すれば、インクは、種々の色に調合することができる。以上の各工程(工程S100ないし120)により、コンタクトレンズ製造の準備が整ったことになる。
【0028】
次にコンタクトレンズの成形工程MOLDについて声明する。準備工程PROVで準備したインクを銅板に塗布し(工程S200)、その後銅板表面のインクをぬぐい取る(工程S210)。この結果、銅板には、その刻線の凹部にのみインクが残っていることになる。次に、シリコン製のパッドをこの銅板の表面に押しつける(工程S220)。シリコン製のパッドは弾力に富むので、押しつけることにより変形し、刻線内部のインクは、パッドの表面に採取される。そこで次に、このシリコン製のパッドを、図3に示す雄型34の凸部に押し当てる(工程S230)。パッド表面のインクは、この結果、凸部表面に転写される。さらに、この雄型34を、50度〜60度Cの状態に置き、インクを乾燥させる(工程S240)。
【0029】
他方、コンタクトレンズとなるモノマーを調合し(工程S250)、これにより成形を行なう。本実施例では、最終的にコンタクトレンズ10,20となる素材として、Hydroxyethyl Mathacrylate( 通称「ヘマ」)を用いている。このモノマーを、成分の調整後に雌型32の凹部に適量入れ(工程S260)、工程S200ないし240により、表面にインクがプリントされた雄型34を、図3に示すように装着して固定する(工程S270)。そして、固定されたプラスチック製型30をオーブンに入れて、70度〜80度で加熱する(工程280)。加熱することにより、モノマーは、重合しコンタクトレンズ10,20の大まかな形状が成型される。このとき、色素が調合された図柄のインクも重合し、コンタクトレンズに一体となる。成型後に雌型32を取り外すと(工程290)、雄型34には、図1,図2に示した着色部16,26を有するコンタクトレンズ10,20が固定された状態で、得られる。以上でコンタクトレンズの成形工程MOLDは完了する。」

オ 「【0033】
以上、本発明が実施される形態を説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる様態で実施し得ることは勿論である。例えば、離散的な図柄は、星形や三日月形状などに限定されるものではなく、クローバやハート型など、様々な形状が採用可能である。また、これらの図形は、コンタクトレンズの完成後、後からフロントカーブ面に着色するといった手法で形成しても良い。また、着色するのでなければ、レーザ等で、表面に乱反射面を形成することにより、図柄を設けることも可能である。また、図柄を形成する色素としては、蛍光材料等、特定の波長の光を当てることで別の波長の光を発するようなものを用いることもできる。こうした色素を用いれば、環境や照明装置により、コンタクトレンズの色が変わると言った演出ができる。また、コンタクトレンズを紛失したときに、特定の波長の光を照射するライトなどを使うことで、容易をこれを見い出すことができる。ブラックライトとこれにより蛍光発光する色素とを組み合わせて用いれば、暗い部屋で
瞳だけが特定の色に輝いたり、更にそこに特定の図柄を浮かび上がらせるといったことも可能である。」

カ 「図1



キ 「図2



ク 「図3



(2)引用発明
甲1の【0006】及び【0013】には、複数の着色部が離散的に配置されるコンタクトレンズが記載されている。また、同文献の【0014】には、上記「着色部」の機能が記載されている。さらに、「着色部」をコンタクトレンズの表面又は内部の少なくとも一部に有していることは自明である。
以上によれば、甲1には、次のコンタクトレンズの発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数の着色部をコンタクトレンズの表面又は内部の少なくとも一部に有しており、当該着色部は離散的に配置され、眼球にコンタクトレンズが存在していることの認識を自他共に容易としたり、コンタクトレンズの紛失時に特定波長の光を照射して簡単に探し出すことができるコンタクトレンズ。」

2 対比
本件特許発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
(1)認識領域
引用発明の「着色部」は、「眼球にコンタクトレンズが存在していることの認識を自他共に容易と」するものであるから、他人が認識可能なものといえる。
したがって、引用発明の「着色部」は、本件特許発明の「人の視覚により識別可能な」「認識領域」に相当する。

(2)コンタクトレンズ
引用発明の「コンタクトレンズ」は、用語どおりの意味であると認められ、本件特許発明の「コンタクトレンズ」に相当する。
また、引用発明の「コンタクトレンズ」と、本件特許発明の「コンタクトレンズ」とは、「人の視覚により識別可能な認識領域を、コンタクトレンズの表面又は内部の少なくとも一部に有」する点及び「外観上、装用の有無を視認できる」という点でも本件特許発明と共通する。

3 一致点及び相違点
(1)一致点
本件特許発明と引用発明は、次の構成で一致する。
「人の視覚により識別可能な認識領域を、コンタクトレンズの表面又は内部の少なくとも一部に有し、外観上、装用の有無を視認できるコンタクトレンズ。」

(2)相違点
本件特許発明と引用発明は、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明においては、「コンタクトレンズ」が、「前記認識領域は、染料、顔料及び発光剤の一つ以上を含んで形成されると共に、」「380〜780nmの波長における光反射率が10%以上の物性を有し、かつ、前記認識領域内に無機粒子を含む光反射領域を有し、前記光反射領域」が、その「少なくとも1つにおいて、JISZ8781−4によって算出される明度指数Wと面積S(mm2)との積にて算出される明度指数強度J(J=W*S(mm2))が10以上で600以下であり、前記光反射領域の少なくとも1つにおいて、光反射率R(%)と面積S(mm2)との積にて算出される光反射強度I(I=R*S(%・mm2))が3以上で400以下であ」るのに対して、引用発明では、着色部の光学特性は明らかではない点。

<相違点2>
本件特許発明においては、「コンタクトレンズ」が、「飼い主が外観上、装用の有無を視認できる、ラブラドール・レトリバーまたはシーズーである犬用」のものであるのに対して、引用発明では、「飼い主が外観上、装用の有無を視認できる、ラブラドール・レトリバーまたはシーズーである犬用」コンタクトレンズではない点。

4 判断
上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
甲1には、着色部に用いるインクの色素として、【0019】にTitanium dioxide等が例示されていることにとどまり、着色部の明度指数や反射率は記載されていない。また、甲1には、【0021】〜【0023】、図1、図2に着色部の形状が記載されていることにとどまり、着色部の面積は記載されていない。甲1の図1、図2は模式的な図であって、実物を正確に拡大縮尺したものであるかは不明であって、これらの図で計測した長さを基に着色部の面積を導き出すことはできない。さらに、甲1には、着色部について、上記相違点1に係る明度強度指数及び光反射強度については記載されていない。
また、甲4には、【0024】には、「青緑色着色剤を上に有するコンタクトレンズが、分光測光的に計測されると、約430〜約600nmの非標準反射率を含み、反射率が、約480nmの波長で約30反射単位に増大することを示す。600nm〜750nmでは、反射率は約7反射単位である。」、【0027】には、「上記青緑着色剤のみを上に有するコンタクトレンズをCIE表色系で計測した。コンタクトレンズは、約43.3のL*、約−24.9のa*及び約−9.8のb*の計測値を有する。」と記載されている。これらの記載と請求項1、4等の記載も参酌すると、甲4には、コンタクトレンズの虹彩区分に用いられる着色剤として、明度指数が数十程度、反射率が数十%程度のものが用いられていることが読み取れる。
しかしながら、甲1には、「ベベル14には4つの星形の着色部16が等間隔、すなわち90度毎に離散的に配置されている。」(【0021】、図1)、「ベベル24には、4つの三日月形の着色部26が90度毎に離散的に配置されている。」(【0023】、図2)と記載されているのに対して、甲4には、「模様の要素は好ましくは点であり、特に好ましいものは、図1に示すような、そのいくつかがつながる点」(【0012】、図1〜図4)と記載されていて、甲1の着色部と甲4の模様とは構成が異なるものである。そして、甲4には、インクペーストの成分としてTiO2(【0026】)が用いられていることにとどまり、甲1の着色部のインクの例示として記載されたTitanium dioxideと共通するものの、甲4において、引用発明の着色部に甲4に記載された明度指数及び反射率事項を適用することを窺わせる記載はなく、引用発明の着色部に甲4に記載された事項を適用する動機付けがあるとはいえない。
また、特許異議申立人が提示した他の甲号証にも、引用発明の着色部に上記相違点1に係る構成を適用することを窺わせる記載はない。さらに、引用発明の着色部に上記相違点1に係る構成を適用することが周知技術であるともいえない。
そうしてみると、当業者といえども、引用発明及び甲2〜8に記載された事項によっては、上記相違点1に係る本件特許発明の構成には想到し得ない。

(2)相違点2について
引用発明は、「外観上、装用の有無を視認できるコンタクトレンズ」であるものの、「飼い主が」「外観上、装用の有無を視認できる」「ラブラドール・レトリバーまたはシーズーである犬用」のものではない。
ここで、甲2、甲3、甲5〜8に記載されているように、犬用のコンタクトレンズは周知技術である。特に、甲5には、ラブラドール・レトリバー用のコンタクトレンズ、甲6には、シーズー用のコンタクトレンズが記載されている。
しかしながら、甲2、甲3、甲5〜8には、引用発明の「コンタクトレンズ」を、「ラブラドール・レトリバーまたはシーズーである犬用」のものとすることを窺わせる記載はなく、引用発明において、甲2、甲3、甲5〜8に記載された事項を適用する動機付けがあるとはいえない。また、特許異議申立人が提示した他の甲号証にも、引用発明に上記相違点2に係る構成を適用することを窺わせる記載はない。さらに、引用発明に上記相違点2に係る構成を適用することが周知技術であるともいえない。
そうしてみると、当業者といえども、引用発明及び甲2〜8に記載された事項によっては、上記相違点2に係る本件特許発明の構成には想到し得ない。

(3)効果について
本件特許発明は、本件特許明細書に記載された、「このレンズを褐色の目の大型犬のラブラドール・レトリバーと小型犬のシーズーに装用し、蛍光灯による通常の室内の明るさにて、肉眼でレンズを確認した。本発明例(実施例1)のレンズは容易に確認できた。」(【0066】)、「このレンズを褐色の目の大型犬のラブラドール・レトリバーと小型犬のシーズーに装用し、実施例1と同様に肉眼でレンズを観察した。本発明例(実施例2)のレンズは容易に確認できた。」(【0075】)、「褐色の目の背景に対するレンズの橙色の標識は容易には確認できなかったが、灯っていた蛍光灯を消して暗くすると、レンズの標識は発光して容易に確認できた。」(【0077】)といった、引用発明及び甲2〜8から予測し得ない作用効果を奏する。

(4)特許異議申立人の主張について
ア 特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲第5号証〜甲第8号証の上記記載を鑑みれば、先の出願時において、動物用のコンタクトレンズを「飼い主が外観上、装用の有無を視認できる」ものとすることを記載する証拠があり、もってこれらから、引用発明1(当合議体注:本審決における「引用発明」である。)の「コンタクトレンズ」を、「ラブラドール・レトリバーまたはシーズーである犬用」とすることは動機付けられる。」(以下「主張1」という。)、「本件特許発明1(当合議体注:本審決における「本件特許発明」である。以下、同様。)が有する「獣医師だけでなく、一般の飼い主からもレンズの有無や装用状態の観察が容易になる」との効果は、先の出願時の当業者にとって、何ら顕著性の無いものである。」(以下「主張2」という。)、「甲第7号証の記載は、先の出願時において、犬用コンタクトレンズにおいて、犬の眼球にコンタクトレンズが存在していることの認識が自他共に(特に、飼い主)に容易とするようなニーズが当業者に周知であったことを示すものである。すなわち、本件特許発明1の課題は、先の出願時において周知の課題であったといえる。そして、甲第2号証〜甲第4号証及び甲第5号証〜甲第8号証を参照して、甲第1号証に記載のコンタクトレンズに基づいて、本件特許発明1を構成しようとすることは、先の出願時の当業者にとって容易に想到し得たことである」(以下「主張3」という。)と主張している。

イ しかしながら、上記主張1及び3については上記(2)で、上記主張2について上記(3)で、それぞれ述べたとおりであって、特許異議申立人の主張は、いずれも採用することができない。

(5)まとめ
本件特許発明は、当業者といえども、甲1に記載された発明及び甲2〜8に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。


第5 むすび
請求項1に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-11-30 
出願番号 P2015-245787
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G02C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 加々美 一恵
特許庁審判官 井口 猶二
石附 直弥
登録日 2022-03-01 
登録番号 7032618
権利者 株式会社メニコンネクト
発明の名称 動物用コンタクトレンズ  
代理人 神谷 英昭  
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