• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1392691
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-18 
確定日 2022-12-13 
事件の表示 特願2019−232491「表示ピクセル及びディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月23日出願公開、特開2020− 64314〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
出願分割の経緯の概略
本願は、特許法44条1項の規定による特許出願(パリ条約による優先権主張、2013年8月26日、2014年3月27日、2014年3月27日、2014年3月28日、2014年4月10日、いずれも米国)であって、平成26年8月11日にされた外国語特許出願である特願2016−531955号を最先の出願とする、いわゆる第2世代の分割出願であるところ、出願の分割の経緯は、次のとおりである。なお、括弧内は当該出願の現実の出願日を示す。

最先の出願 :特願2016−531955号(平成26年 8月11日)
第1世代分割:特願2018− 75325号(平成30年 4月10日)
本願 :特願2019−232491号(令和 元年12月24日)

2 本願の手続の経緯の概略
本願の手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和 2年 1月21日 :翻訳文の提出
同年10月22日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 1月29日 :手続補正書、意見書の提出
同年 6月11日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月17日 :原査定の謄本の送達)
同年10月18日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年11月 2日 :手続補正書(方式)の提出


第2 令和3年10月18日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年10月18日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和3年10月18日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をするものである。本件補正前(令和3年1月29日にされた手続補正後をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1及び本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。下線は補正箇所を示す。

(1) 本件補正前の請求項1
「 第1の電源端子と、
第2の電源端子と、
前記第1の電源端子と前記第2の電源端子との間に接続された発光ダイオードと、
前記第1の電源端子と前記発光ダイオードとの間に接続された駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲートに接続された第1のスッチングトランジスタであって、前記第1のスッチングトランジスタが酸化物トランジスタである、第1のスッチングトランジスタと、
前記第1のスッチングトランジスタと前記駆動トランジスタとの間に置かれた第1のノードに接続されたコンデンサと、
信号線と、前記発光ダイオードのアノードとの間に接続された第2のスッチングトランジスタであって、前記第2のスッチングトランジスタはシリコントランジスタである、第2のスッチングトランジスタと、を備える表示ピクセル。」

(2) 本件補正後の請求項1
「 第1の電源端子と、
第2の電源端子と、
前記第1の電源端子と前記第2の電源端子との間に接続された発光ダイオードと、
前記第1の電源端子と前記発光ダイオードとの間に接続された駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲートに接続された第1のスッチングトランジスタであって、前記第1のスッチングトランジスタが酸化物トランジスタである、第1のスッチングトランジスタと、
前記第1のスッチングトランジスタと前記駆動トランジスタとの間に置かれた第1のノードに接続されたコンデンサと、
信号線と、前記発光ダイオードのアノードとの間に接続された第2のスッチングトランジスタであって、前記第2のスッチングトランジスタはシリコントランジスタである、第2のスッチングトランジスタと、を備え、
前記第2のスッチングトランジスタに接続された前記信号線は、ピクセル間のトランジスタ性能の変動を調整する補償スキームを実装するのに用いられる感知線である、表示ピクセル。」

2 本件補正の適否
(1) 本件補正の目的
ア 本件補正のうち、特許請求の範囲の請求項1についての補正は、「信号線」について「前記第2のスッチングトランジスタに接続された」ものであり「ピクセル間のトランジスタ性能の変動を調整する補償スキームを実装するのに用いられる感知線である」ことを限定するものである。
イ そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、同一である。
ウ したがって、本件補正のうちの請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2) 独立特許要件について
本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討を行う。

ア 本件補正発明
本件補正後の請求項1の記載における「スッチングトランジスタ」という用語は、本願明細書の段落【0021】、【0033】等に「スイッチングトランジスタ」と記載されていることや技術常識からして、「スイッチングトランジスタ」と記載すべきところの明らかな誤記であるから、本件補正発明は、本件補正後の請求項1の記載における「スッチングトランジスタ」を「スイッチングトランジスタ」と読み替えた、本件補正後の請求項1に記載した事項(前記1(2)参照)により特定されるとおりのものであると認める。

イ 引用文献1及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の最先の優先日より前に発行された特開2003−173154号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。下線は、当合議体において付したものであり、後述の引用発明の認定に直接用いるところに付してある。

a 段落【0001】〜【0005】
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、エレクトロルミネッセンス表示素子などの被駆動素子を制御するための回路構成に関する。
【0002】
【従来の技術】自発光素子であるエレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:以下EL)素子を各画素に発光素子として用いたEL表示装置は、自発光型であると共に、薄く消費電力が小さい等の有利な点があり、液晶表示装置(LCD)やCRTなどの表示装置に代わる表示装置として注目され、研究が進められている。
【0003】また、なかでも、EL素子を個別に制御する薄膜トランジスタ(TFT)などのスイッチ素子を各画素に設け、画素毎にEL素子を制御するアクティブマトリクス型EL表示装置は、高精細な表示装置として期待されている。
【0004】図13は、m行n列のアクティブマトリクス型EL表示装置における各画素の回路構成を示している。EL表示装置では、基板上に複数本のゲートラインGLが行方向に延び、複数本のデータラインDL及び駆動電源ラインVLが列方向に延びている。また各画素は有機EL素子50と、スイッチング用TFT(第1TFT)10、EL素子駆動用TFT(第2TFT)21及び保持容量Csを備えている。
【0005】第1TFT10は、ゲートラインGLとデータラインDLとに接続されており、ゲート電極にゲート信号(選択信号)を受けてオンする。このときデータラインDLに供給されているデータ信号は第1TFT10と第2TFT21との間に接続された保持容量Csに保持される。第2TFT21のゲート電極には、上記第1TFT10を介して供給されたデータ信号に応じた電圧が供給され、この第2TFT21は、その電圧値に応じた電流を電源ラインVLから有機EL素子50に供給する。有機EL素子50は陽極から注入される正孔と陰極から注入される電子とが発光層内で再結合して発光分子が励起され、この発光分子が励起状態から基底状態に戻る際に発光する。有機EL素子50の発光輝度は有機EL素子50に供給される電流にほぼ比例しており、上述のように各画素ごとにデータ信号に応じて有機EL素子50に流す電流を制御することで、該データ信号に応じた輝度で有機EL素子を発光し、表示装置全体で所望のイメージ表示が行われる。」

b 段落【0031】〜【0037】
「【0031】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いてこの発明の好適な実施の形態(以下実施形態という)について説明する。
【0032】図1は本発明の実施形態に係る有機EL素子を駆動するための回路構成を示す。なお、ここでは、具体的にはアクティブマトリクス型の有機EL表示装置における1画素の回路構成を例に挙げて説明している。
【0033】1画素は、図1に示すとおり、被駆動素子或いは表示素子としての有機EL素子50、スイッチング用薄膜トランジスタ(第1TFT)10、素子駆動用薄膜トランジスタ(第2TFT)20及び保持容量Csを有し、更に、リセット用のスイッチ素子としてリセット用薄膜トランジスタ(第3TFT)30を備える。
【0034】第1TFT10は、ここでは、nch−TFTで構成され、ゲートラインGLにゲート電極が接続され、ドレインがデータラインDLに接続され、ソースは、後述するように第2TFT20及び保持容量Csに接続されている。
【0035】第2TFT20は、本実施形態ではnch−TFTで構成され、駆動電源Pvdd(実際にはここでは駆動電源ラインVL)にそのドレインが接続され、有機EL素子50の陽極側にソースが接続されている。さらにゲートは、上記第1TFT10のソース、及び以下の保持容量Csの第1電極に接続されている。
【0036】保持容量Csは、第1及び第2電極を備え、第1電極は第1TFT10のソースと第2TFT20のゲートとに接続され、第2電極は、第2TFT20のソースと有機EL素子50の陽極との間に接続されている。
【0037】第3TFT(放電トランジスタ)30は、ここではnch−TFTで構成されており(但しpch−TFTでも良い)、ゲートはリセット信号が印加されるリセットラインRSLに接続され、ドレインは保持容量の第2電極に接続され、ソースは保持容量の第2電極電位を規定する電圧が供給されている容量ラインSLに接続されている。」

c 段落【0055】
「【0055】第1、第2及び第3TFT10、20、30の各能動層6,16,36には、ガラスなどの透明絶縁基板1上に形成したa−Siを、同一のレーザアニール処理工程によって多結晶化し、得たp−Siをパターニングして得られた層が用いられている。また、ここでは、いずれのTFTの能動層も、そのソース領域、ドレイン領域に、同一のドーピング工程によりn型不純物がドープされており、いずれもnch−TFTとして構成されている。」

d 段落【0075】
「【0075】他の用途は、第3TFT30を例えば工場からの出荷前などにおいて、各画素の検査に用いることである。すなわち、第1TFT10をオンさせて検査用のデータ信号を書き込んで第2TFT20をオンさせると、書き込んだ検査用データに応じた電流が駆動電源ライン44から第2TFT20のドレインソース間に流れる。従って、第2TFT20のソース電圧は、有機EL素子50に供給される電流量に応じた電圧となるはずであるため、このとき第3TFT30をオン制御して、この第2TFT20のソース電圧(又はソースに流れた電流)を容量ライン48の電圧測定などによって、有機EL素子に対して適正な電流を供給することができるかどうかを確実かつ簡単に検査することができる。

e 【図1】、【図13】







f 図1からの認定事項
明細書の段落【0034】の記載を踏まえて図1を参照すると、以下の事項(以下「図1からの認定事項」という。)が読み取れる。
「第1TFT10は二つ直列に配置されていること。」

g 図13からの認定事項
明細書の段落【0004】〜【0005】の記載を踏まえて図13を参照すると、以下の事項(以下「図13からの認定事項」という。)が認定できる。
「有機EL素子50の陰極側は定電位端に接続されていること。」

(イ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「アクティブマトリクス型の有機EL表示装置における1画素の回路構成であって、(【0032】)
1画素は、有機EL素子50、スイッチング用薄膜トランジスタ(第1TFT)10、素子駆動用薄膜トランジスタ(第2TFT)20及び保持容量Csを有し、更に、リセット用のスイッチ素子としてリセット用薄膜トランジスタ(第3TFT)30を備え、(【0033】)
第1TFT10は2つ直列に配置され、(図1からの認定事項)
第2TFT20は、駆動電源Pvddにそのドレインが接続され、有機EL素子50の陽極側にソースが接続され、ゲートは、第1TFT10のソース及び保持容量Csの第1電極に接続され、(【0035】)
保持容量Csは第1及び第2電極を備え、第1電極は第1TFT10のソースと第2TFT20のゲートに接続され、第2電極は第2TFT20のソースと有機EL素子50の陽極の間に接続され、(【0036】)
第3TFT(放電トランジスタ)30は、ゲートはリセット信号が印加されるリセットラインRSLに接続され、ドレインは保持容量Csの第2電極に接続され、ソースは保持容量Csの第2電極電位を規定する電圧が供給されている容量ラインSLに接続され、(【0037】)
有機EL素子50の陰極側は定電位端に接続され、(図13からの認定事項)
第1、第2及び第3TFT10、20、30の各能動層6,16,36には、p−Siをパターニングして得られた層が用いられ、(【0055】)
第3TFT30は例えば工場からの出荷前などにおいて各画素の検査に用いられる、(【0075】)
1画素の回路構成。」

ウ 技術常識
(ア) 引用文献7の記載事項
当審において、技術常識を示す文献として新たに引用する、本願の最先の優先日より前に発行された特開2003−224461号公報(以下「引用文献7」という。)には、以下の記載がある。下線は、当合議体において付したものである。

a 段落【0001】〜【0002】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は駆動回路に関し、特に漏れ電流を減少させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、発光素子として機能する有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)を用いた表示装置が、CRTやLCDに代わる表示装置として注目されている。例えば、OLEDを駆動する素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、単にTFTという)のような電界効果型トランジスタを含む表示装置の研究開発が盛んに進められている。アクティブマトリックス型の有機EL表示装置においては、各画素にスイッチング用TFTを配置して輝度データを保持し、輝度データ書込み時以外でも点灯可能としている。」

b 段落【0010】〜【0011】
「【0010】
【発明の実施の形態】第1の実施の形態:図1は本発明の第1の実施の形態に係る駆動回路を示す図である。本実施の形態において、駆動回路10は、第1のトランジスタTr1、第2のトランジスタTr2、第3のトランジスタTr3、コンデンサCおよびダイオード12を含む。ダイオード12は、例えば発光素子として機能する有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)である光学素子である。
【0011】第3のトランジスタTr3はTFTであり、ダイオード12に流れる駆動電流を制御する駆動用である。第1のトランジスタTr1および第2のトランジスタTr2もTFTであり、第3のトランジスタTr3にデータを設定および保持するためのスイッチング用である。また、第1のトランジスタTr1および第2のトランジスタTr2は直列に接続される。このような構成にすることにより、トランジスタの保持特性が向上し、漏れ電流を低減することができる。なお、このように2つのスイッチング用のトランジスタが直列に接続された回路自体は、例えば特開2000−221903号公報に開示されているが、その特性や目的に関する記載はない。」

c 【図1】




(イ) 引用文献8の記載事項
当審において、技術常識を示す文献として新たに引用する、本願の最先の優先日より前に発行された特開2003−308030号公報(以下「引用文献8」という。)には、以下の記載がある。下線は、当合議体において付したものである。

a 段落【0001】〜【0002】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は表示装置に関し、特に電界効果型トランジスタを含む表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、発光素子として機能する有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)を用いた表示装置が、CRTやLCDに代わる表示装置として注目されている。例えば、OLEDを駆動する素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、単にTFTという)のような電界効果型トランジスタを含む表示装置の研究開発が盛んに進められている。アクティブマトリックス型の有機EL表示装置においては、各画素にスイッチング用TFTを配置して輝度データを保持し、輝度データ書込み時以外でも点灯可能としている。」

b 段落【0023】〜【0026】
「【0023】
【発明の実施の形態】第1の実施の形態:図1は本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の一部を示す図である。本実施の形態において、表示装置10は、スイッチング用トランジスタTr1、駆動用トランジスタTr2、コンデンサC、およびダイオード12を含む。ダイオード12は、例えば発光素子として機能する有機ELである光学素子である。
【0024】駆動用トランジスタTr2はTFTであり、ダイオード12に流れる駆動電流を制御する駆動用である。スイッチング用トランジスタTr1もTFTであり、駆動用トランジスタTr2にデータを設定するためのスイッチング用である。
【0025】スイッチング用トランジスタTr1において、ゲート電極はゲート線14に接続され、ドレイン電極(またはソース電極)はデータ線16に接続され、ソース電極(またはドレイン電極)は駆動用トランジスタTr2のゲート電極およびコンデンサCの一方の電極に接続される。コンデンサCの他方の電極は所定の電位に設定される。データ線16は定電圧源(不図示)に接続され、ダイオード12に流れる電流を決定する輝度データを伝達する。
【0026】駆動用トランジスタTr2において、ドレイン電極は電源線18に接続され、ソース電極はダイオード12のアノード電極に接続される。ダイオード12のカソード電極は接地される。電源線18は電源(不図示)に接続され、所定の電圧が印加される。」

c 段落【0036】〜【0037】
「【0036】図3は、本発明の他の実施の形態に係る表示装置の一部を示す図である。
第2の実施の形態:本実施の形態において、表示装置20は、直列に接続された第1のスイッチング用トランジスタTr1aおよび第2のスイッチング用トランジスタTr1bを有する点で、第1の実施の形態と異なる。図3において、第1の実施の形態における構成要素と同様のものには同様の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、本実施の形態において、第1のスイッチング用トランジスタTr1aおよび第2のスイッチング用トランジスタTr1bは実質的に同一である。
【0037】第1のスイッチング用トランジスタTr1aにおいて、ゲート電極はゲート線14に接続され、ドレイン電極(またはソース電極)はデータ線16に接続され、ソース電極(またはドレイン電極)は第2のスイッチング用トランジスタTr1bのドレイン電極(またはソース電極)に接続される。第2のスイッチング用トランジスタTr1bにおいて、ゲート電極はゲート線14に接続され、ソース電極(またはドレイン電極)は駆動用トランジスタTr2のゲート電極およびコンデンサCの一方の電極に接続される。」

d 段落【0040】
「【0040】本実施の形態において、スイッチング用トランジスタが、直列に接続された2つのトランジスタTr1aおよびTr1bにより構成されているので、スイッチング用トランジスタの保持特性を向上させることができる。また、駆動用トランジスタTr2の電流駆動能力に関連する特性の考慮は同様である。」

e 【図1】、【図3】







(ウ) 技術常識の認定
前記(ア)及び(イ)に摘記した引用文献7及び引用文献8の記載に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識」という。)。
<技術常識>
「有機EL表示装置において、スイッチング用トランジスタが二つ直列に接続される構成は、保持特性の向上や漏れ電流の低減を目的としていること。」

エ 周知技術
(ア) 引用文献3の記載事項と周知技術1の認定
a 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の最先の優先日より前に発行された特開2011−141529号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。下線は、当合議体において付したものである。

(a) 段落【0001】
「【0001】
本発明は、表示装置に関する。または、当該表示装置を具備する電子機器に関する。」

(b) 段落【0036】〜【0048】
「【0036】
図2は、図1における画素201の構成の一例を示す等価回路図である。なお、本発明は図2に示す画素構成に限定されるものではない。
【0037】
画素6400には、第1のトランジスタ(以下、スイッチング用トランジスタと呼ぶことがある)6401と、第2のトランジスタ(以下、駆動用トランジスタと呼ぶことがある)6402と、発光素子6404が設けられている。
【0038】
第1のトランジスタ6401は、ゲートが走査線6406に電気的に接続され、第1の電極(ソース電極及びドレイン電極の一方)が信号線6405に電気的に接続され、第2電極(ソース電極及びドレイン電極の他方)が第2のトランジスタ6402のゲートに電気的に接続されている。また、第2のトランジスタ6402は、第1の電極(ソース電極及びドレイン電極の一方)が電源線6407に電気的に接続され、第2の電極(ソース電極及びドレイン電極の他方)が発光素子6404の第1の電極(画素電極)に電気的に接続されている。なお、発光素子6404の第2の電極は共通電極6408に相当する。また、図2においては第2のトランジスタ6402のゲートと電源線6407との間に容量素子6410を設ける構成としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、第2のトランジスタ6402のゲートと第2のトランジスタ6402の第2の電極との間に容量素子を設ける構成としてしてもよい。
【0039】
共通電極6408は、共通電位線と電気的に接続され、低電源電位が与えられるように設定されている。また、電源線6407には高電源電位が与えられるように設定されている。なお、低電源電位とは、電源線6407に設定される高電源電位を基準にして低電源電位<高電源電位を満たす電位である。低電源電位の具体例としては、GND、0Vが挙げられる。なお、高電源電位と低電源電位の電位は、高電源電位と低電源電位との電位差が少なくとも発光素子6404の順方向しきい値電圧以上となるようにそれぞれ設定する必要がある。
【0040】
ここで、本実施の形態においては、酸化物半導体層を有するトランジスタを第1のトランジスタ6401として用いている。このとき、第1のトランジスタ6401はnチャネル型のトランジスタである。また、第2のトランジスタ6402は、nチャネル型のトランジスタ及びpチャネル型のトランジスタのどちらを用いても構わない。また、第2のトランジスタ6402は、活性層として酸化物半導体層を用いた構成としてもよいし、シリコン層を用いた構成としてもよい。活性層としてシリコン層を用いる場合は、非晶質のシリコン層でもよいが、多結晶のシリコン層を用いるのが好ましい。本実施の形態においては、第2のトランジスタ6402がnチャネル型のトランジスタであり、酸化物半導体層を活性層として用いる場合について説明する。
【0041】
次に、画素6400における第1のトランジスタ6401の断面図の一例を図3に示す。図3に示すトランジスタ106は、第1のトランジスタ6401に対応するものであり、ボトムゲート型の構造である。また、チャネル領域となる酸化物半導体層103に対して下側にゲート電極として機能する第1の配線101を有し、酸化物半導体層103を間に挟んで第1の配線101と反対側に、第1の電極(ソース電極及びドレイン電極の一方)102A、及び第2の電極(ソース電極及びドレイン電極の他方)102Bを有するため、逆スタガ型のトランジスタとも呼ばれる。
【0042】
基板111上には、下地膜112を介して第1の配線101が設けられている。第1の配線101は、トランジスタ106のゲートとして機能する。そして、第1の配線101は、走査線駆動回路と電気的に接続される走査線そのものであってもよいし、走査線と電気的に接続されている配線であってもよい。
【0043】
また、第1の配線101を覆うようにゲート絶縁膜113が設けられている。そして、ゲート絶縁膜113上には酸化物半導体層103が設けられている。そして、酸化物半導体層103上には、第1の電極102A、及び第2の電極102Bが設けられている。第1の電極102A、及び第2の電極102Bは、酸化物半導体層103に電気的に接続されており、一方がソース電極として機能し、他方がドレイン電極として機能する。なお、第1の電極102Aは、信号線駆動回路と電気的に接続される信号線そのものであってもよいし、信号線と電気的に接続されている配線であってもよい。
【0044】
また、酸化物半導体層103、第1の電極102A、及び第2の電極102Bの上には、パッシベーション膜として機能する酸化物絶縁層114が設けられている。酸化物絶縁層114には開口部が形成されており、この開口部において第4の配線105と第2の電極102Bとが電気的に接続されている。なお、この第4の配線105は、第2のトランジスタのゲートに電気的に接続されている。
【0045】
次に、酸化物半導体層103について説明する。
【0046】
本実施の形態で用いる酸化物半導体層103は、酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性に悪影響を与える不純物が極めて少ないレベルにまで低減されたものであって、高純度化されたものである。電気特性に悪影響を与える不純物の代表例としては、水素が挙げられる。水素は、酸化物半導体中で電子の供与体(ドナー)となり得る不純物であり、酸化物半導体中に水素が多量に含まれていると、酸化物半導体がN型化されてしまう。このように水素が多量に含まれた酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオンとなってしまう。そして、トランジスタのオン・オフ比を十分にとることができない。したがって、本明細書における「高純度の酸化物半導体」は、酸化物半導体における水素が極力低減されているものであって、真性又は実質的に真性な半導体を指す。高純度の酸化物半導体の一例としては、含有する水素濃度が少なくとも5×1019/cm3以下であって、好ましくは5×1018/cm3以下、さらに好ましくは5×1017/cm3以下、または1×1016/cm3未満である酸化物半導体である。そして、キャリア濃度が、1×1014/cm3未満、好ましくは1×1012/cm3未満、さらに好ましくは1×1011/cm3未満、または6.0×1010/cm3未満である酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用いてトランジスタを構成する。なお、酸化物半導体層中の水素濃度測定は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)で行えばよい。
【0047】
また、酸化物半導体層103のエネルギーギャップは、2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。
【0048】
このように、酸化物半導体層に含まれる水素を徹底的に除去することにより得られる高純度の酸化物半導体層をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、オフ電流値が極めて小さいトランジスタを提供できる。」

(c) 段落【0085】〜【0089】
「【0085】
次に、発光素子6404の駆動方法の一例として、アナログ階調駆動を行う方法を説明する。第2のトランジスタ6402のゲートに発光素子6404の順方向電圧+第2のトランジスタ6402のVth以上の電圧をかける。ここで、発光素子6404の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指し、少なくとも順方向しきい値電圧を含む。例えば、第2のトランジスタ6402が飽和領域で動作するようなビデオ信号(映像信号)を入力することで、発光素子6404に電流を流すことができる。なお、第2のトランジスタ6402を飽和領域で動作させるためには、電源線6407の電位を第2のトランジスタ6402のゲート電位よりも高くするとよい。ビデオ信号をアナログとすることで、発光素子6404にビデオ信号に応じた電流を流し、アナログ階調駆動を行うことができる。
【0086】
また、電圧入力電圧駆動方式によれば、複数の画素を用いた面積階調表示や、発光色が異なる複数の画素(例えばR、G、B)の組み合わせによる色表現、(例えば、R+G、G+B、R+B、R+G+B)等が可能である。電圧入力電圧駆動方式の場合には、第2のトランジスタ6402のゲートには、第2のトランジスタ6402が十分にオンするか、オフするかの二つの状態となるような信号を入力する。つまり、第2のトランジスタ6402は線形領域で動作させる。なお、第2のトランジスタ6402を線形領域で動作させるためには、電源線6407の電圧を第2のトランジスタ6402のゲート電位よりも低くするとよい。具体的には、電源線の電位に第2のトランジスタ6402のしきい値電圧を加えた値以上の電位を与える電圧信号を信号線6405に入力すればよい。
【0087】
なお、発光素子6404をアナログ階調駆動する場合も、電圧入力電圧駆動する場合も、スイッチング用トランジスタ6401のオフ電流が例えば1×10−16A以下に抑制されているため、第2のトランジスタ6402のゲート電位の保持期間が長い。したがって、少ない画像信号の書き込み回数でも、表示部での静止画の表示を行うことができる。信号の書き込みを行う頻度を低減することができるため、低消費電力化を図ることができる。また、図2に示す画素構成は、これに限定されない。例えば、図2に示す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ又は論理回路等を追加してもよい。
【0088】
特に、発光素子の一例として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子が挙げられる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0089】
有機EL素子は、一対の電極(陽極及び陰極)と、一対の電極間に設けられた有機化合物を含む層を有する。陽極の電位を陰極の電位より高くして、有機化合物を含む層に陽極から正孔を、陰極から電子を注入する。電子および正孔(キャリア)が有機化合物を含む層にて再結合する際に発光する。」

(d) 【図2】、【図3】







b 周知技術1の認定
前記aにおいて摘記した引用文献3の記載に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。
<周知技術1>
「スイッチング用トランジスタ、駆動用トランジスタ及び有機EL素子が設けられた画素において、スイッチング用トランジスタのオフ電流を抑制して保持期間を長くするために、スイッチング用トランジスタに酸化物半導体層を有するトランジスタを用いること。」

(イ) 引用文献9、引用文献10の記載事項と周知技術2の認定
a 引用文献9の記載事項
当審において、周知技術を示す文献として新たに引用する、本願の最先の優先日より前に発行された特表2006−525539号公報(以下「引用文献9」という。)には、以下の記載がある。下線は、当合議体において付したものである。

(a) 段落【0001】〜【0002】
「【0001】
本発明は、アクティブマトリクス表示装置、それだけではないが特に、夫々の画素に結合される薄膜スイッチングトランジスタを有するアクティブマトリクス電界発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電界発光、光放射、表示素子を用いるマトリクス表示装置が良く知られる。表示素子は、有機薄膜電界発光素子、例えば高分子化合物質、又は従来のIII-V族半導体化合物を使用する発光ダイオード(LED)を有しても良い。有機電界発光物質、特に高分子化合物における最近の発展は、特に映像表示装置用に使用されるようなそれらの能力を実証している。一般に、これらの物質は、一対の電極間に挟まれる半導体複合高分子化合物の一以上の層を有する。該電極の一つは透明であり、もう片方は空孔又は電子を高分子化合物層に入れるのに適した物質である。」

(b) 段落【0010】
「【0010】
アクティブマトリクスLED表示部用のアモルファスシリコン画素回路を実施することに非常に関心がある。これは、LED素子に対する電流要求が素子の効率が改善されると共に低減されるので、可能になってきている。例えば、有機LED素子及び溶解処理された有機LED素子は、最近、燐光の使用によって非常に高い効率を示している。閾値電圧の変化は、アモルファストランジスタでは小さく、少なくとも基材全体では短い範囲に亘る。しかし、閾値電圧は、電圧ストレスに対して非常に敏感である。駆動トランジスタに対する必要とされる閾値以上の高い電圧の印加は、閾値電圧での大きな変化を引き起こし、この変化は、表示画像の情報コンテンツに依存する。このエージングは、アモルファスシリコン・トランジスタで駆動されるLED表示部での深刻な問題である。」

(c) 段落【0047】〜【0056】
「【0047】
図7は、図3の画素回路の挙動をモデル化するための擬似画素の設計に関する一つの可能な例を示す。擬似画素の回路素子2、22、24は、画素でのそれらの複製であっても良く、あるいは擬似回路は、画素回路の増減された形を有しても良い。従って、擬似回路は、回路が画素回路と同じように動作するが、同じ電圧に対して更に大きな電流が流れるように、幾つかの画素の並列接続を有しても良い。これは、単一の画素回路よりも容易に測定できる。
【0048】
代わりに、回路の構成要素は、全ての回路の構成要素が同じ係数で大きくされるが、物理的には更に大きくなりうる。重要な点は、回路が画素回路と同じように動作することである。全ての場合で、擬似画素回路は、正確な補正を確実にするために、同様の構成要素及び動作を有する実際の画素回路を表わす。擬似画素回路は、検出トランジスタ42(後述される)が、表示素子のアノードが画素のプログラミングの間に既知の電圧であることを確実にするための、第二の駆動トランジスタ23の機能に取って替わる限り、トランジスタ23を有する必要はない。駆動トランジスタ22のエージングは、トランジスタに印加されたゲート‐ソース間電圧にのみ基づいてモデル化されうる。このゲート‐ソース間電圧は、均一な平均的エージング状態に基づき、表示部の全ての画素が本発明によってこれの影響を受ける。
【0049】
擬似画素回路は、付加的な検出ライン40及び検出ライン40と駆動トランジスタ22との間に接続された検出トランジスタ42を有する。そのとき、擬似回路は、駆動トランジスタの閾値電圧を測定するために使用される。
【0050】
駆動トランジスタの閾値電圧を測定するために、検出ライン40は、図8で示されるように、仮想的な接地電流検出器50に接続される。この装置は、検出ライン40での電圧の如何なる変化をも許容せずに電流を測定するので、非常に小さな電流を検出することができる。電流検出器は、ランプ電圧発生器52の動作を制御する。
【0051】
表示部の夫々のフィールド期間の始まりにおいて、擬似画素回路は、閾値電圧の測定動作を実行するために使用される。残りのフィールド期間の間、擬似回路は、配列の画素の駆動状態を表わす電圧まで駆動される。
【0052】
閾値測定動作のために、アドレストランジスタ16及び検出トランジスタ42はオンとされる。次に、駆動トランジスタ22のゲートは、その時点で駆動トランジスタ22の閾値電圧よりも低くなるよう配置されたデータ列6の電圧まで放電されるので、それはオフとされる。LED表示素子2のアノードはまた、接地である検出ライン40の電圧に保たれる。電力レール26はハイである。
【0053】
次に、ランプ発生器52は、列6の電圧を線形な又は段階的ないずれかの方法で、例えば、バッファの電圧出力を増大させることによって、あるいは列に充電を注入することによって増大させる。駆動トランジスタ22のゲートは、駆動トランジスタがオンとなるまで列電圧に従い、そのとき電流は、検出ライン40に注入され、電流検出器42によって検出される。この時点で、ランプ発生器の電圧出力が蓄えられて、駆動トランジスタの閾値電圧の測定時に使用される。
【0054】
残りのフィールド期間の間、信号は、データ源54から擬似画素に供給される。この時間の間、擬似画素は、画素の配列全体の均一な平均的駆動状態を表わす信号で駆動される。
【0055】
擬似画素は、擬似画素での回路構成要素に従って、ゲート‐ソース間電圧の平均値又はこれの増減された値で駆動される。閾値電圧の測定は、夫々のフィールド期間で一度であっても良いが、多少多くても良い。タイミングは夫々の調整が小さい程度であり、望ましくは、調整はゆっくり実施される。
【0056】
一つの形式において、測定された閾値電圧は、アナログ又はデジタルの領域で、例えば、ソース駆動回路(デジタル)又は画素自体(アナログ)において個々の画素に対する望ましいデータ電圧に加えられる。この方法では、複数の表示画素に対する画素駆動信号は、擬似駆動トランジスタの閾値電圧の測定された閾値電圧に応じて変えられる。更なる代案は、他の電圧と比較される列電圧範囲のオフセットを取ることである。これは、アナログ技術であり、外部から実行される。」

(d) 【図7】、【図8】







(e) 引用文献9に記載された技術事項の認定
前記(a)〜(d)に摘記した事項から、引用文献9には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献9に記載された技術事項」という。)。
<引用文献9に記載された技術事項>
「有機薄膜電界発光素子を用いる表示装置において、エージングにより駆動トランジスタの閾値電圧が変化するところ、検出ライン40及び検出ライン40と駆動トランジスタ22の間に接続された検出トランジスタ42を用いて、駆動トランジスタの閾値電圧の測定を行い、駆動トランジスタの測定された閾値電圧に応じて、複数の表示画素に対する画素駆動信号を変えること。」

b 引用文献10の記載事項
当審において、周知技術を示す文献として新たに引用する、本願の最先の優先日前に発行された特開2010−243645号公報(以下「引用文献10」という。)には、以下の記載がある。下線は、当合議体において付したものである。

(a) 段落【0001】〜【0002】
「【0001】
本発明は、表示素子の駆動方法、及び、表示装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電流駆動型の発光部を備えた表示素子、及び、係る表示素子を備えた表示装置が周知である。例えば、有機材料のエレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:以下、ELと略称する場合がある)を利用した有機エレクトロルミネッセンス発光部を備えた表示素子(以下、単に、有機EL表示素子と略称する場合がある)は、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な表示素子として注目されている。」

(b) 段落【0031】〜【0032】
「【0031】
上述した動作によれば、閾値電圧キャンセル処理や移動度補正処理により、駆動トランジスタの特性ばらつきに起因する輝度のばらつきを補正することができる。しかしながら、例えば、書込みトランジスタの閾値特性が経時変化すると、書込み処理を行う時間が変化し、移動度補正による電位補正値ΔVが変化する。これにより、駆動トランジスタのドレイン電流に変化が生ずる。このように、種々の要因により、発光部に流れる電流の値は経時変化し、結果として発光部の輝度も経時変化する。上述した電流の経時変化を正確に把握するためには、閾値電圧キャンセル処理や移動度補正処理の動作を妨げることなく電流を検出することが必要となる。
【0032】
従って、本発明の目的は、閾値電圧キャンセル処理や移動度補正処理の動作を妨げることなく発光部に流れる電流を検出することができる表示装置や係る表示装置の駆動方法を提供することにある。」

(c) 段落【0058】〜【0061】
「【0058】
実施例1乃至実施例3において用いられる表示装置の概念図を図1に示す。図2には、表示装置を構成する表示素子10の等価回路図を示す。表示素子10を構成する駆動回路11は、2トランジスタ/1容量部から基本的に構成された駆動回路(2Tr/1C駆動回路と呼ぶ場合がある)である。尚、便宜のため、図1にあっては、図2に示すスイッチング手段SWSの表示を省略した。
【0059】
図1に示すように、実施例1において用いられる表示装置は、
(1)走査回路101に接続され、第1の方向に延びる走査線SCL、
(2)信号出力回路102に接続され、第2の方向に延びるデータ線DTL、
(3)電流駆動型の発光部ELP、及び、駆動回路11を備えている表示素子10、並びに、
(4)電源部100に接続され、第1の方向に延びる給電線PS1、
を備えている。図1及び後述する図6においては、3×3個の表示素子10を図示しているが、これは、あくまでも例示に過ぎない。尚、便宜のため、図1及び図6においては、図2等に示す第2の給電線PS2の図示を省略した。第2の給電線PS2は、共通の給電線として構成されている。
【0060】
発光部ELPは、例えば、アノード電極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、カソード電極等から成る周知の構成や構造を有する。走査回路101、信号出力回路102、走査線SCL、データ線DTL、電源部100の構成や構造は、周知の構成や構造とすることができる。後述する電流検出制御回路103、電流検出線SENの構成や構造も、周知の構成や構造とすることができる。
【0061】
駆動回路11の最小構成要素を説明する。駆動回路11は、少なくとも、駆動トランジスタTRD、書込みトランジスタTRW、及び、容量部C1から構成されている。駆動トランジスタTRDは、ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた、nチャネル型のTFTから成る。また、書込みトランジスタTRWも、ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた、nチャネル型のTFTから成る。尚、書込みトランジスタTRWがpチャネル型のTFTから成る構成であってもよい。」

(d) 段落【0067】〜【0069】
「【0067】
表示装置は、更に、
(5)第2の方向に延びる、電流検出線SEN、及び、
(6)第2ノードND2と電流検出線SENとの間に配されたスイッチング手段SWS、
を備えている。実施例にあっては、スイッチング手段SWSはnチャネル型のTFTから構成されているが、これに限るものではない。
【0068】
第m行、第n列目の表示素子10にあっては、第2ノードND2と第n番目の電流検出線SENnとがスイッチング手段SWSを介して接続されている。電流検出線SENは電流検出部104に接続されている。電流検出線SENには、オン状態とされたスイッチング手段SWSを介して電流検出線SENと第2ノードND2とが電気的に接続されたとき、発光部ELPに備えられたアノード電極とカソード電極との間の電位差が発光部ELPの閾値電圧Vth-ELを超えない条件を満たす電圧VSENが印加される。電圧VSENについては後述する。
【0069】
表示装置は、電流検出制御回路103に接続され、第1の方向に伸びる制御線CTLを備えている。第m行、第n列目の表示素子10にあっては、スイッチング手段SWSのゲート電極は、第m番目の制御線CTLmに接続されている。制御線CTLmからの信号に基づいて、スイッチング手段SWSのオン/オフ動作が制御される。」

(e) 段落【0142】〜【0143】
「【0142】
参考例に係る駆動方法の動作について説明した。次に、実施例1の駆動方法について説明する。図10の(A)乃至(C)、図11の(A)乃至(C)、及び、図12は、電流検出の工程を説明するための、表示素子10の駆動回路11を構成する各トランジスタ、及び、スイッチング手段SWSのオン/オフ状態等を模式的に示す図である。
【0143】
実施例1の駆動方法は、例えば、電源投入時等における表示装置の自己診断として行うのに適した駆動方法である。発光部ELPの他端と電流検出線SENnとの間の電位差が発光部ELPの閾値電圧を超えないように電流検出線SENnの電位を保った状態で、スイッチング手段SWSをオン状態とし、駆動トランジスタTRDを介して流れる電流を電流検出線SENnに流して検出する。」

(f) 段落【0155】〜【0163】
「【0155】
[期間−TP(2)7B](図4、図11の(C))
この期間は、第(m+2)番目の水平走査期間Hm+2における映像信号期間に対応する。この期間の始期において、スイッチング手段SWSをオン状態とし、第2ノードND2と、電流検出線SENnとを電気的に接続する。
【0156】
その結果、第2ノードND2の電位はVSEN(−15ボルト)となる。駆動トランジスタの一方のソース/ドレイン領域には電圧VCC-L(−10ボルト)が印加されている。駆動トランジスタTRDのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の電位差Vgsは、上述した式(4)で与えられる値を維持しているので、駆動トランジスタTRDには、上述した式(5)で与えられるドレイン電流Idsが流れる。
【0157】
そして、発光部ELPのアノード電極とカソード電極の間の電位差は、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELを超えない。従って、駆動トランジスタTRDを介して流れる電流Idsを電流検出線SENnに流して検出することができる。
【0158】
[期間−TP(2)7C](図4、図12)
この期間は、第(m+3)番目の水平走査期間Hm+3以降の期間に対応する。この期間の始期において、スイッチング手段SWSをオフ状態とする。給電線PS1mには第2ノード初期化電圧VCC-Lが供給されているので、第2ノードND2の電位はVCC-Lに復帰する。第2ノードND2の電位変化に倣うように、浮遊状態の第1ノードND1(駆動トランジスタTRDのゲート電極)の電位も復帰する。
【0159】
上述した動作を線順次で行うことにより、図5に示すように、各水平走査期間毎に、表示素子10を構成する駆動トランジスタTRDに流れるドレイン電流が、電流検出線SENnに流れる。実施例1にあっては、映像信号VSigを一定の値とし、閾値電圧キャンセル処理と移動度補正処理を行った条件でのドレイン電流を検出することができる。
【0160】
そして、電流検出部104は、電流検出線SENnに流れる電流に応じて信号を出力し、その信号を信号制御部105に送る。信号制御部105は、電流検出部104からの信号に応じて映像信号の大きさを調整する制御を行う。
【0161】
電流検出部104は、各表示素子10の駆動トランジスタTRDに流れるドレイン電流の基準値が格納された、図示せぬ記憶手段を備えている。この基準値は、例えば、映像信号を一定値(実施例1では8ボルト)としたときの、表示装置の出荷検査時におけるドレイン電流値である。電流検出部104は、電流検出線SENnに流れる電流値と、上記の基準値とを対比し、基準値に対する相対的な変化の程度を値とする信号を出力する。
【0162】
信号制御部105は、D/A変換前のデジタル数値である映像信号に対する乗算回路から構成されている。信号制御部105は、各表示素子10に対応した乗算のパラメータが格納された図示せぬ記憶手段を備えている。信号制御部105は、電流検出部104からの信号に基づき、該当する表示素子10に対応する乗算のパラメータを修正する。具体的には、或る表示素子10においてドレイン電流が減少している場合には、その表示素子10においてドレイン電流の減少分を補填できるように、乗算のパラメータを大きくすればよい。上述した動作を全ての表示素子10について行うことにより、良好な画像表示特性を維持することができる。尚、上述した操作を施した後は、映像信号VSigは8ボルトを超える値を取り得る。
【0163】
上述したように、実施例1の駆動方法は、例えば電源投入時の表示装置の自己診断として行うことができる。全ての表示素子10について上述した乗算のパラメータが設定された後は、スイッチング手段SWSをオフ状態に保った状態で、参考例において説明したと同様の動作を行って映像を表示すればよい。」

(g) 【図1】、【図2】、【図4】、【図11】













(h) 引用文献10に記載された技術事項の認定
前記(a)〜(g)に摘記した事項から、引用文献10には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献10に記載された技術事項」という。)。
<引用文献10に記載された技術事項>
「有機EL表示素子を備えた表示装置において、書込みトランジスタの閾値特性の経時変化等により、発光部に流れる電流の値が経時変化するため、当該経時変化を正確に把握するため、電流検出線SENn及び第2ノードND2と電流検出線SENnとの間に配されたTFTであるスイッチング手段SWSを用いて、駆動トランジスタTRDを介して流れる電流Idsを電流検出線SENnに流して検出し、それに応じて映像信号の大きさを調整すること。」

c 周知技術2の認定
前記a(e)及びb(h)において認定した「引用文献9に記載された技術事項」及び「引用文献10に記載された技術事項」に例示されるように、次の技術は周知技術2であると認める。
<周知技術2>
「有機EL表示装置において、トランジスタの経時変化に対応するため、駆動トランジスタの有機EL表示素子に接続された端子に検出用トランジスタを介して接続された検出線を用いた測定を行い、測定結果に応じて画像信号を変化させること。」

オ 対比
(ア) 対比分析
本件補正後の請求項1の記載の順に沿って、本件補正発明と引用発明を対比する。

a(a) 引用発明における「駆動電源Pvdd」及び「定電位端」は、それぞれ、本件補正発明における「第1の電源端子」及び「第2の電源端子」に相当する。
(b) したがって、本件補正発明と引用発明は「第1の電源端子」及び「第2の電源端子」を備える点で一致する。

b(a) 引用発明において、「第2TFT20は、駆動電源Pvddにそのドレインが接続され、有機EL素子50の陽極側にソースが接続され」、「有機EL素子50の陰極側は定電位端に接続され[る]」から、「駆動電源Pvdd」、「第2TFT20」、「有機EL素子50」及び「定電位端」はこの順に接続されていることになる。
(b) よって、引用発明における「有機EL素子50」及び「第2TFT20」は、それぞれ本件補正発明における「前記第1の電源端子と前記第2の電源端子との間に接続された発光ダイオード」及び「前記第1の電源端子と前記発光ダイオードとの間に接続された駆動トランジスタ」に相当する。
(c) したがって、本件補正発明と引用発明は「前記第1の電源端子と前記第2の電源端子との間に接続された発光ダイオード」及び「前記第1の電源端子と前記発光ダイオードとの間に接続された駆動トランジスタ」を備える点で一致する。

c(a) 引用発明において、「第2TFT20は、駆動電源Pvddにそのドレインが接続され、有機EL素子50の陽極側にソースが接続され、ゲートは、第1TFT10のソース及び保持容量Csの第1電極に接続され[る]」、すなわち、第2TFT20のゲートは第1TFT10のソースに接続されるから、引用発明における「第1TFT10」は、本件補正発明における「前記駆動トランジスタのゲートに接続された第1のスイッチングトランジスタ」に相当する。
(b) したがって、本件補正発明と引用発明は「前記駆動トランジスタのゲートに接続された第1のスイッチングトランジスタ」を備える点で一致する。

d(a) 引用発明において「保持容量Csは第1及び第2電極を備え、第1電極は第1TFT10のソースと第2TFT20のゲートに接続され[る]」から、引用発明における「保持容量Cs」は、本件補正発明における「前記第1のスイッチングトランジスタと前記駆動トランジスタとの間に置かれた第1のノードに接続されたコンデンサ」に相当する。
(b) したがって、本件補正発明と引用発明は「前記第1のスイッチングトランジスタと前記駆動トランジスタとの間に置かれた第1のノードに接続されたコンデンサ」を備える点で一致する。

e(a) 引用発明において「第3TFT(放電トランジスタ)30は、ゲートはリセット信号が印加されるリセットラインRSLに接続され、ドレインは保持容量Csの第2電極に接続され、ソースは保持容量Csの第2電極電位を規定する電圧が供給されている容量ラインSLに接続され」、「第2電極は第2TFT20のソースと有機EL素子50の陽極の間に接続され[る]」から、引用発明における「第3TFT30」は、容量ラインSLと有機EL素子50の陽極の間に接続されたスイッチングトランジスタである。
(b) また、引用発明において「第1、第2及び第3TFT10、20、30の各能動層6,16,36には、p−Siをパターニングして得られた層が用いられ[る]」から、引用発明における「第3TFT30」は、シリコントランジスタである。
(c) 上記(a)と(b)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「ある線と、前記発光ダイオードのアノードとの間に接続された第2のスイッチングトランジスタであって、前記第2のスイッチングトランジスタはシリコントランジスタである、第2のスイッチングトランジスタ」を備える点で共通する。

f(a) 引用発明における「画素」は、本件補正発明における「表示ピクセル」に相当する。
(b) したがって、本件補正発明と引用発明は、「表示ピクセル」の発明である点で共通する。

(イ) 一致点及び相違点
前記(ア)の対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
a 一致点
「 第1の電源端子と、
第2の電源端子と、
前記第1の電源端子と前記第2の電源端子との間に接続された発光ダイオードと、
前記第1の電源端子と前記発光ダイオードとの間に接続された駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲートに接続された第1のスイッチングトランジスタと、
前記第1のスイッチングトランジスタと前記駆動トランジスタとの間に置かれた第1のノードに接続されたコンデンサと、
ある線と、前記発光ダイオードのアノードとの間に接続された第2のスイッチングトランジスタであって、前記第2のスイッチングトランジスタはシリコントランジスタである、第2のスイッチングトランジスタと、を備える、
表示ピクセル。」

b 相違点
(a) 相違点1
「前記第1のスイッチングトランジスタ」が、
本件補正発明においては、「酸化物トランジスタである」のに対して、
引用発明においては、「p−Siをパターニングして得られた層」を「能動層」とするシリコントランジスタである点。

(b) 相違点2
「前記第2のスイッチングトランジスタに接続された」ある線が、
本件補正発明においては、「信号線」であって、「ピクセル間のトランジスタ性能の変動を調整する補償スキームを実装するのに用いられる感知線である」のに対して、
引用発明においては、「前記第2のスイッチングトランジスタに接続され[た]」線である「容量ラインSL」についてそのようなことは特定されていないが、「第3TFT30は例えば工場からの出荷前などにおいて各画素の検査に用いられる」、すなわち、画素の検査に用いるものである点。

カ 判断
(ア) 相違点1の想到容易性について
a 引用発明において、「第1TFT10は2つ直列に配置され[る]」ところ、前記ウ(ウ)において認定したとおり、「有機EL表示装置において、スイッチング用トランジスタが二つ直列に接続される構成は、保持特性の向上や漏れ電流の低減を目的としていること」は技術常識であるから、引用発明において「第1TFT10は2つ直列に配置され[る]」ことは、「第1TFT10における保持特性の向上や漏れ電流の低減」を目的としていると認められる。
b 前記エ(ア)bにおいて認定したとおり、「スイッチング用トランジスタ、駆動用トランジスタ及び有機EL素子が設けられた画素において、スイッチング用トランジスタのオフ電流を抑制して保持期間を長くするために、スイッチング用トランジスタに酸化物半導体層を有するトランジスタを用いること」は周知技術である(「周知技術1」)である。
c してみれば、引用発明において「第1TFT10における保持特性の向上や漏れ電流の低減」するための手段として周知技術1を適用して第1TFT10を酸化物半導体層を有するトランジスタとし、前記相違点1に係る本件補正発明の構成を有するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ) 相違点2の想到容易性について
a 前記エ(イ)cにおいて認定したとおり、「有機EL表示装置において、トランジスタの経時変化に対応するため、駆動トランジスタの有機EL表示素子に接続された端子に検出用トランジスタを介して接続された検出線を用いた測定を行い、測定結果に応じて画像信号を変化させること」は、周知技術である(「周知技術2」)。
b よって、引用発明においてトランジスタの経時変化に対応するために、周知技術2を適用し、第2TFT20の有機EL素子50の陽極側及び保持容量Csの第2電極に接続された第3TFT(放電トランジスタ)30及び第3TFT(放電トランジスタ)30のソースに接続された容量ラインSLを使ってトランジスタの経時変化に係る測定を行い、当該測定結果に応じて画像信号を変化させることは、当業者にとっては、適宜なし得る設計変更にすぎない。
c すなわち、引用発明における「容量ラインSL」を「ピクセル間のトランジスタ性能の変動を調整する補償スキームを実装するのに用いられる感知線である」ようにすることは、当業者にとっては適宜なし得る設計変更にすぎない。
d なお、本件補正発明における「信号線」について、本件補正後の請求項1においては、どのような信号が伝送されるものであるのか特定されておらず、また、本願明細書においても、段落【0033】に「ピクセル間のトランジスタ性能の変動を調整する、補償スキームを実装するために、感知線SENSINGが使用される。」としか記載されていないことに鑑みれば、本件補正後の請求項1における「信号線」の「信号」という事項は、「ピクセル間のトランジスタ性能の変動を調整する補償スキームを実装するのに用いられる感知線である」ことに加えて、更に何らかの技術事項を限定するものであるとは認められない。
e 以上のとおりであるから、相違点2に係る本件補正発明の構成は、引用発明及び周知技術2から当業者が容易に想到し得たものである。

(ウ) 総合検討
前記相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、技術常識及び周知技術1、2から予測される程度のものにすぎず、格別顕著な効果を認めることはできない。

(エ) 小括
以上のとおり、前記相違点1及び2は、格別のものではなく、本件補正発明は、引用発明、技術常識及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(オ) 請求人の主張について
a 請求人は審判請求書において、本件補正発明は、拒絶査定において引用された引用文献1〜4に開示や示唆がされたものではなく、引用文献1〜4に基づいて当業者が容易に想到できたものではないと主張している。
b しかしながら、上記(ウ)に示したとおり、本件補正発明は、引用発明、技術常識及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

キ 独立特許要件についての判断のまとめ
前記カにおいて検討したとおり、本件補正発明は、引用発明、技術常識及び周知技術1、2に基づいて、本願の最先の優先日前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正の却下の決定の理由のむすび
以上検討のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件発明について
1 本件発明の認定
本件補正は前記第2において示したとおり却下したこと及び本件補正前の請求項1の記載における「スッチングトランジスタ」という用語は、「スイッチングトランジスタ」と記載すべきところの明らかな誤記であること(前記第2の2(2)ア参照)から、本願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、本件補正前の請求項1の記載における「スッチングトランジスタ」を「スイッチングトランジスタ」と読み替えた、本件補正前の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における本件発明についての拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

進歩性)本件発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(下記引用文献1〜4参照)に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



1.特開2003−173154号公報
2.特開2011−48339号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2011−141529号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2011−76078号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献に記載された発明等
引用文献1に記載された技術事項及び引用発明の認定並びに技術常識及び周知技術1、2の認定は、前記第2の2(2)イ〜エにおいて示したとおりである。

4 対比・判断
本件発明は、本件補正発明のうち、前記第2の2(1)アに示した限定を省いたものである。そうすると、本件発明を更に限定した本件補正発明は引用発明、技術常識及び周知技術1、2に基づいて、本願の最先の優先日前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明は、引用発明、技術常識及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上検討のとおり、本件発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 岡田 吉美
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-07-14 
結審通知日 2022-07-19 
審決日 2022-08-01 
出願番号 P2019-232491
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱野 隆
佐藤 久則
発明の名称 表示ピクセル及びディスプレイ  
代理人 大塚 文昭  
代理人 岩崎 吉信  
代理人 那須 威夫  
代理人 ▲吉▼田 和彦  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 西島 孝喜  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ