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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 F01N
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F01N
管理番号 1392884
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-07 
確定日 2023-01-17 
事件の表示 特願2018−63062「ハニカム構造体」拒絶査定不服審判事件〔令和元年10月10日出願公開、特開2019−173662、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月28日の出願であって、令和3年8月23日付け(発送日:同年8月31日)で拒絶理由が通知され、令和3年10月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和3年11月2日付け(発送日:同年11月9日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して令和4年2月7日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともにその審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1.(新規性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記(引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
・請求項1、3及び4に係る発明:引用文献1

●理由2(進歩性)について
・請求項2及び5に係る発明:引用文献1

<引用文献等一覧>
1.国際公開第2012/132837号

第3 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、令和4年2月7日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
流体の流路となり流体の流入側の端面である流入端面から流体の流出側の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する円柱状のハニカム構造部、及び前記ハニカム構造部の前記外周壁の側面上に配設された一対の電極部を備え、
前記一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に延びる帯状に形成され、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部における一方の前記電極部が、前記一対の電極部における他方の前記電極部に対して、前記ハニカム構造部の中心を挟んで反対側に配設されるハニカム構造体であって、
前記外周壁の厚さが0.1〜2mmであり、前記一対の電極部の厚さがそれぞれ0.01〜3mmであり、
前記ハニカム構造部が、前記一対の電極部付近にある端部領域と、前記端部領域を除いた中央の領域である中央領域から構成され、
前記端部領域を構成する材料の平均電気抵抗率Aが、前記中央領域を構成する材料の平均電気抵抗率Bより低いハニカム構造体。
【請求項2】
前記Aと前記Bとが、1/5≦A/B≦4/5の関係を満たす請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記ハニカム構造部が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とする請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記ハニカム構造部の電気抵抗率が、0.1〜100Ωcmであり、前記電極部の電気抵抗率が、0.001〜1.0Ωcmである請求項1〜3のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記電極部の中心角が60〜120°である請求項1〜4のいずれかに記載のハニカム構造体。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2012/132837号(以下「引用文献1」という。)には、「ハニカム構造体の製造方法、Si−SiC系複合材料の製造方法、及びハニカム構造体」に関して、次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)。

(1)「[0004] ところで、特許文献1のハニカム体では、例えば、Si−SiC系のハニカム体表面に金属Siを接触させて真空下で加熱して金属Siを溶融含浸させ、金属Siを含浸させていない中央部を発熱部とし、金属Siを含浸させた両端部を電極部としている。このようなものにおいて、金属Siを含浸させる際、一般的な量産条件である常圧下では十分に含浸されないことがあった。また、Siを含浸させるだけでは、電極部と発熱部との電気抵抗の差が十分でないことがあった。このように、電極部の形成がより容易で、電極部の体積抵抗率をより低減することが望まれていた。
[0005] 本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、Si−SiC系のハニカム構造体において、電極部の形成がより容易であり、且つ体積抵抗率をより低減することができるハニカム構造体の製造方法及びSi−SiC系複合材料の製造方法を提供することを主目的とする。
[0006] 上述した目的を達成するため鋭意研究したところ、本発明者らは、Si−SiC系の多孔質ハニカム構造体の気孔内に金属Si及び金属Alを含む埋設基材を埋設させて溶融させたところ、気孔内に金属Siを含む金属相が形成可能であり、また、体積抵抗率を低減できることを見いだし、本発明を完成するに至った。」

(2)「[0009] 本発明では、Si−SiC系のハニカム構造体において、電極部の形成がより容易であり、且つ体積抵抗率をより低減することができる。この理由は、以下のように推察される。例えば、Si酸化物を含む酸化物相を含む多孔質ハニカム基材では、溶融した金属Siをその気孔内に含浸させにくいことがあるが、金属Si粒子と金属Al粒子とを含む埋設基材では、金属Si粒子をより容易に多孔質ハニカム基材の気孔内に導入することができるものと推察される。また、金属Si粒子と共に金属Al粒子が気孔内に導入されるため、金属Si粒子だけを埋設させた場合に比して、電極部の体積抵抗率をより低減することができるものと推察される。」

(3)「[0012] 図1は、本発明のハニカム構造体20の構成の概略の一例を示す説明図である。このハニカム構造体20は、図1に示すように、流体の流路となる複数のセル23を形成する隔壁部22を備えている。このハニカム構造体20は、セル23の両端が開放している構造を有し、隔壁部22の一部に形成された電極部32と、隔壁部22の一部であり電極部32より体積抵抗率が高い発熱部34と、を備えている。このハニカム構造体20では、隔壁部22を形成したのちに、その端部領域に対して金属Siと金属Alとを含む埋設基材を用いて所定の埋設処理を行うことにより、隔壁部22の一部を電極部32としている。この隔壁部22のうち、電極部32が形成されていない領域は発熱部34であり、電極部32と発熱部34とは隣接している。このハニカム構造体20の電極部32間に電圧を印加すると、発熱部34が通電により発熱する。
[0013] このハニカム構造体20の外形は、特に限定されないが、円柱状、四角柱状、楕円柱状、六角柱状などの形状とすることができる。また、セル23は、その断面の形状として四角形、三角形、六角形、八角形、円形、楕円形などの形状とすることができる。ここでは、ハニカムフィルタ20の外形が円柱状に形成され、セル23の形状が断面四角形に形成されている場合について主として説明する。」

(4)「[0014] 隔壁部22は、その一部に電極部32が形成されると共に、その残部が発熱部34として構成されている。隔壁部22は、その気孔率が20体積%以上85体積%以下であることが好ましく、25体積%以上50体積%以下であることがより好ましい。また、この隔壁部22は、その平均細孔径が2μm以上30μm以下の範囲であることが好ましい。こうすれば、電極部32を形成させる際に、気孔内に埋設基材を埋設させやすく、かつ、排ガスに含まれる有害成分の除去を十分に図ることができる。この隔壁部22は、その厚さである隔壁厚さが20μm以上300μm以下で形成されていることが好ましく、30μm以上200μm以下であることがより好ましく、50μm以上150μm以下であることが更に好ましい。このような気孔率、平均細孔径、厚さで隔壁部22を形成すると、排ガスが隔壁部22に接触しやすく、有害成分を除去しやすい。なお、この隔壁部22の気孔率や平均細孔径は、水銀圧入法で測定した結果をいうものとする。
[0015] 発熱部34は、隔壁部22そのものとして構成されており、骨材としてのSiC相と、Si酸化物を含む酸化物相とを備えている。この発熱部34は、骨材であるSiC相が電極部32と共通するため、熱膨張率や強度などが電極部32と近く、電極部32と発熱部34との間でのクラックの発生などを抑制することができる。また、酸化物相を備えているため、耐食性や強度をより高めることができる。この発熱部34は、複数の領域であってもよいが、ハニカム構造体20全体を均一に加熱するといった観点から連続した一つの領域であることが好ましい。発熱部34において、SiC相と酸化物相との比率や、気孔率などは特に限定されるものではない。また、発熱部34は金属Siを含むものとしてもよいが、電極部32に比して金属Siの比率が低いことが好ましい。電極部32より体積抵抗率を高めることができるからである。なお、実質的に効率よく発熱させるといった観点から体積抵抗率は10Ωcm〜200Ωcmであることが好ましい。
[0016] 電極部32は、電源と接続され、発熱部34に通電させるものである。電源との接続方法は、特に限定されず、電源に接続された給電線や給電端子を、ロウ付けしてもよいし、リベットなどを用いて機械的に接続してもよい。電極部32は、隔壁部22の一部に形成されていればよく、1箇所に形成されていてもよいし、2箇所以上に形成されていてもよい。電極部32が1箇所に形成されている場合には、電極部32以外の隔壁部22に外付け電極を取り付け、電極部32と外付け電極とによって隔壁部22に通電させることができる。電極部32が2箇所以上に形成されている場合には、対をなす電極部32によって隔壁部22に通電させることができる点で好ましい。なお、電極部32が2箇所以上に形成されている場合であっても、電極部32以外の隔壁部22に外付け電極を取り付けて電極部32と外付け電極とによって隔壁部22に通電させてもよい。電極部32は、ハニカム構造体20の一方の端部とそれに対向する他方の端部とに形成されていることが好ましい。なお、以下では、このような態様のものを「端部に対向して形成された態様」とも称する。端部に形成されていれば、給電線や給電端子などの取り付けが容易であり、電源からの電力供給が容易である。また、電極部32が対向して形成されていれば、発熱部34からの発熱量の分布をほぼ均一にすることができる。特に、電極部32の対向面が互いに平行になるように電極部が形成されていれば、発熱部34の長さ、即ち抵抗を一定にできるため、電極部の間の領域内における隔壁部からの発熱量の分布をより均一にすることができ好ましい。」

(5)「[0018] 電極部32は、骨材としてのSiC相と、Si酸化物とAl酸化物とアルカリ土類金属酸化物とを含む酸化物相と、金属Siと金属Alとを含みこの金属Siと金属Alとの総量に対する金属Alの割合が0.001mol%以上20mol%以下である金属相を有している。このような電極部32では、金属相にAlを含まないものに比して体積抵抗率を低減することができる。電極部32において、SiC相と酸化物相と金属相との比率や、気孔率などは特に限定されるものではない。例えば、電極部32は、15体積%以上50体積%以下のSiC相と、2体積%以上30体積%以下の酸化物相と、25体積%以上80体積%以下の金属相と、1体積%以上30体積%以下の気孔と、を備えているものとしてもよい。なお、電極部32の体積抵抗率を発熱部34より十分に低いものとするといった観点からは、金属相の比率が高く、気孔の比率が低いものが好ましい。ここで、体積比は、まず、アルキメデス法もしくは、水銀圧入法で気孔率(体積%)を求め、残りの部分がSiC相と酸化物相と金属相であるものと仮定し、組成比から換算して、SiC相と酸化物相と金属相との体積%を求めることができる。なお、上述とは別の方法として、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて研磨面を撮影し、得られた写真をコンピュータ画像解析することによって求めることもできる。より具体的には、反射電子象のコントラストの違いからSiC相、酸化物相、金属相、気孔部を区別し、各々の面積比を体積比とすることができる。電極部32は、SiC相と酸化物相と金属相と気孔との比率が、全域に渡り一定でもよいし、一定でなくてもよい。例えば、電極部32は、隣接する発熱部34にむけて、金属相が少なくなる傾向に形成されているものとしてもよい。こうすれば、発熱部34に近い領域ほど体積抵抗率が大きくなって通電時の発熱量が大きくなるため、発熱量の小さい電極部32と発熱量の大きい発熱部34との温度勾配を緩やかにすることができる。このため、電極部32と発熱部34との境界領域でのクラックの発生などを抑制できる。また、例えば、電極部32の気孔率は、隣接する発熱部34にむけて、発熱部34の気孔率に近づく傾向に形成されているものとしてもよい。こうすれば、電極部32と発熱部34との強度の勾配が緩やかになり、電極部32と発熱部34との境界領域でのクラックの発生などを抑制できる。このとき、電極部32の気孔率は、隣接する発熱部34にむけて、高くなる傾向に形成されていることが好ましい。こうすれば、電極部32がハニカム構造体20の端部に形成されている場合に、ハニカム構造体20の表面の強度が高くなる傾向にあり、エロージョンに対する耐久性を高めることができるからである。」

(6)「[0020] 電極部32において、金属相は、金属Siと金属Alとを含んでいる。金属Siと金属Alとは、隣接して存在していてもよいし、離れて存在していてもよい。また、一方が他方に固溶していてもよく、例えば、金属Siに金属Alが固溶していてもよい。この金属相は、金属Siと金属Alとの総量に対する金属Alの割合が0.001mol%以上20mol%以下である。金属Alの割合が0.001mol%以上であれば電極部32の体積抵抗率を低減することができるからである。また、金属Alの割合が20mol%以下であれば、耐熱性の低下をより抑制することができるためである。この金属相での金属Alの割合は0.1mol%以上がより好ましく0.4mol%以上が更に好ましい。電極部32の体積抵抗率を更に低減できるからである。また、金属相での金属Alの割合は10mol%以下であることが好ましく、5mol%以下であることが更に好ましい。耐熱性の低下を更に抑制することができるためである。」

(7)「[0038] 上述した実施形態では、上流端部と下流端部とに電極部32を設けたハニカム構造体20として説明したが、図3に示すように、電極部は、ハニカム構造体の一方の端部とこの端部に対向する他方の端部とに形成されているものとすれば、特にこれに限定されない。図3は、ハニカム構造体20Bの構成の概略の一例を示す説明図である。図3に示すように、中心領域にセル23に沿って発熱部34Bが形成されており、この発熱部34Bを挟んで、ハニカム構造体40の外周面の壁部を含む領域にセル23に沿って電極部32Bが互いに対向するように形成されたものとしてもよい。即ち、ハニカム構造体20Bの上端部及び下端部(あるいは右端部及び左端部)に電極部32Bが形成されているものとしてもよい。この場合、電極部32Bは、上流側の端部から下流側の端部まで、流路に平行に、連続的又は断続的に形成されているものとしてもよい。こうすれば、ハニカム構造体40Bの上流側から下流側まで効率よく加熱することができる。また、対向する電極部32Bがいずれも上流側の端部以外の領域にも形成されているため、上流側の端部の隔壁部がエロージョンなどで滅失しても、電極部が残り十分通電することができる。」

(8)


上記記載事項及び図面(図3を参照。)の図示内容から、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。

〔引用発明〕
「流体の流路となる複数の両端が開放しているセル23を形成する隔壁部22を備えた円柱状の多孔質ハニカム構造体20Bであって、
壁部22には、その一部に電極部32Bが形成され、その残部が発熱部34Bとして構成され、
中心領域にセル23に沿って発熱部34Bが形成されており、この発熱部34Bを挟んで、ハニカム構造体20Bの外周面の壁部を含む領域にセル23に沿って電極部32Bが互いに対向するように形成され、
電極部32Bは、多孔質ハニカム構造体20Bの気孔内に、金属Siと金属Alとを含む金属相が形成されることにより、その体積抵抗率が発熱部34Bの体積抵抗率より低くなっている、ハニカム構造体20B。」

第5 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「流体の流路となる複数の両端が開放しているセル23を形成する隔壁部22を備えた円柱状の多孔質ハニカム構造体20B」は、円柱状の多孔質ハニカム構造体20Bの最外周には外周壁があることは自明であるから、本願発明1の「流体の流路となり流体の流入側の端面である流入端面から流体の流出側の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する円柱状のハニカム構造部」に相当する。

イ 引用発明の「壁部22には、その一部に電極部32Bが形成され、その残部が発熱部34Bとして構成され、中心領域にセル23に沿って発熱部34Bが形成されており、この発熱部34Bを挟んで、ハニカム構造体20Bの外周面の壁部を含む領域にセル23に沿って電極部32Bが互いに対向するように形成され」る態様は、本願発明1の「一対の電極部を備え」る態様及び「セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部における一方の前記電極部が、前記一対の電極部における他方の前記電極部に対して、前記ハニカム構造部の中心を挟んで反対側に配設される」態様に相当するものを備えている。

ウ 引用発明の「中心領域にセル23に沿って発熱部34Bが形成されており、この発熱部34Bを挟んで、ハニカム構造体20Bの外周面の壁部を含む領域にセル23に沿って電極部32Bが互いに対向するように形成され」る態様を踏まえれば、引用発明の「電極部32B」及び「発熱部34B」は、本願発明1の「端部領域」及び「中央領域」に、それぞれ相当するといえる。

エ 引用発明の
「壁部22には、その一部に電極部32Bが形成され、その残部が発熱部34Bとして構成され、中心領域にセル23に沿って発熱部34Bが形成されており、この発熱部34Bを挟んで、ハニカム構造体20Bの外周面の壁部を含む領域にセル23に沿って電極部32Bが互いに対向するように形成され、
電極部32Bは、多孔質ハニカム構造体20Bの気孔内に、金属Siと金属Alとを含む金属相が形成されることにより、その体積抵抗率が発熱部34Bの体積抵抗率より低くなっている」と、
本願発明1の
「前記ハニカム構造部の前記外周壁の側面上に配設された一対の電極部を備え、
前記一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に延びる帯状に形成され、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部における一方の前記電極部が、前記一対の電極部における他方の前記電極部に対して、前記ハニカム構造部の中心を挟んで反対側に配設されるハニカム構造体であって、
前記外周壁の厚さが0.1〜2mmであり、前記一対の電極部の厚さがそれぞれ0.01〜3mmであり、
前記ハニカム構造部が、前記一対の電極部付近にある端部領域と、前記端部領域を除いた中央の領域である中央領域から構成され、
前記端部領域を構成する材料の平均電気抵抗率Aが、前記中央領域を構成する材料の平均電気抵抗率Bより低い」
とは、
「一対の電極部を備え、
前記一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に形成され、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部における一方の前記電極部が、前記一対の電極部における他方の前記電極部に対して、前記ハニカム構造部の中心を挟んで反対側に配設されるハニカム構造体であって、
前記ハニカム構造部が、前記一対の端部領域と、前記端部領域を除いた中央の領域である中央領域から構成され、
前記端部領域を構成する材料の平均電気抵抗率Aが、前記中央領域を構成する材料の平均電気抵抗率Bより低い」
という限りにおいて一致している。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
〔一致点〕
「流体の流路となり流体の流入側の端面である流入端面から流体の流出側の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する円柱状のハニカム構造部、及び一対の電極部を備え、
前記一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に形成され、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部における一方の前記電極部が、前記一対の電極部における他方の前記電極部に対して、前記ハニカム構造部の中心を挟んで反対側に配設されるハニカム構造体であって、
前記ハニカム構造部が、前記一対の端部領域と、前記端部領域を除いた中央の領域である中央領域から構成され、
前記端部領域を構成する材料の平均電気抵抗率が、前記中央領域を構成する材料の平均電気抵抗率より低いハニカム構造体。」

〔相違点〕
本願発明1においては、
「前記ハニカム構造部の前記外周壁の側面上に配設された」一対の電極部を備え、前記一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に延びる「帯状に」形成され、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部における一方の前記電極部が、前記一対の電極部における他方の前記電極部に対して、前記ハニカム構造部の中心を挟んで反対側に配設されるハニカム構造体であって、
「前記外周壁の厚さが0.1〜2mmであり、前記一対の電極部の厚さがそれぞれ0.01〜3mmであり、」
前記ハニカム構造部が、「前記一対の電極部付近にある端部領域と、前記端部領域を除いた中央の領域である中央領域から構成され、」
前記端部領域を構成する材料の平均電気抵抗率Aが、前記中央領域を構成する材料の平均電気抵抗率Bより低い、のに対して、
引用発明においては、
隔壁部22は、その一部に電極部32Bが形成され、その残部が発熱部34Bとして構成された、円柱状の多孔質ハニカム構造体20Bであって、
中心領域にセル23に沿って発熱部34Bが形成されており、この発熱部34Bを挟んで、ハニカム構造体20Bの外周面の壁部を含む領域にセル23に沿って電極部32Bが互いに対向するように形成され、
電極部32Bは、多孔質ハニカム構造体20Bの気孔内に、金属Siと金属Alとを含む金属相が形成されることにより、その体積抵抗率が発熱部34Bの体積抵抗率より低くなっている、点。

(2)新規性についての判断
引用発明は、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項のうち、少なくとも、「外周壁の厚さが0.1〜2mm」及び「一対の電極部の厚さがそれぞれ0.01〜3mm」という事項を備えていない。
したがって、上記相違点は、実質的な相違点であるから、本願発明1は引用発明ではない。

(3)進歩性についての判断
上記相違点について検討する。
引用発明の電極部32Bは、多孔質ハニカム構造体20Bの気孔内に、金属Siと金属Alとを含む金属相が形成されることより形成されたものであって、本願発明1のように、電極部が、ハニカム構造部の外周壁の側面上に配設されたものとは前提が異なるから、引用発明において、ハニカム構造部の外周壁の側面上に電極部が配設されたものとする動機付けは存在しない。
ハニカム構造部の外周壁の側面上に電極部を配設することは公知の技術であるが、仮に、これを考慮したとしても、多孔質ハニカム構造体20Bの気孔内に、金属Siと金属Alとを含む金属相が形成された電極部32Bの外周壁の側面上にさらに電極部を配設する必要性はない。
また、多孔質ハニカム構造体20Bの気孔内に、金属Siと金属Alとを含む金属相が形成された電極部32Bを、ハニカム構造部の外周壁の側面上に電極部を配設する構成に置き換えた場合には、元々電極部であった端部領域は、当該端部領域を除いた中央の領域である中央領域と同じ平均電気抵抗率となるから、「端部領域を構成する材料の平均電気抵抗率Aが、中央領域を構成する材料の平均電気抵抗率Bより低い」ものとはならないし、そのように構成する動機付けも存在しない。
さらに、引用発明において、多孔質ハニカム構造体20Bの外周壁の側面上にも金属Siと金属Alとを含む金属相が形成され、それを電極部と見立てたとしても、引用文献1の段落[0044]の「埋設基材およびアルカリ土類金属化合物のスラリー調製は、以下のように行った。まず、金属Si粉末(平均粒径2μm)及び金属Al粉末(平均粒径1μm)を80:20のモル比で混合して混合粉末を得た。次に、分散媒としてのエタノールに、エタノールに対して1.0質量%の分散剤(アルキルアンモニウム塩)を外配で添加し、さらに、エタノールに対して20質量%の混合粉末を添加して、埋設基材を含む埋設用スラリーを調製した。続いて、上述のようにして作製した多孔質ハニカム基材を、調製した埋設用スラリーに常温常圧で10秒間浸漬し、さらに、多孔質ハニカム基材の表面の余剰スラリーをエアーで吹き払ったあと、大気雰囲気下、120℃で3時間乾燥した。そして、所定質量の埋設基材が多孔質ハニカム基材に埋設されるまで浸漬から乾燥までの処理を繰り返し、多孔質ハニカム基材の気孔内部に埋設基材を形成した。ここでは、所定質量は、電極部が所望の体積抵抗率になる量であればよいが、気孔内に埋設させるといった観点から気孔体積より算出される最大埋設量より小さな値とした。」との記載からみて、その厚さを「0.01〜3mm」とすることが設計的事項であるとはいえない。
よって、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明に基いて、当業者が容易に想到できたものではない
したがって、本願発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5は、本願発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本願発明1の発明特定事項を全て含んでいる。
したがって、本願発明1に対して述べたのと同様の理由により、本願発明2ないし5は、引用発明ではなく、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-01-05 
出願番号 P2018-063062
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F01N)
P 1 8・ 113- WY (F01N)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 河端 賢
特許庁審判官 木村 麻乃
鈴木 充
発明の名称 ハニカム構造体  
代理人 アクシス国際弁理士法人  

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