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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1392919
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-03-11 
確定日 2022-12-15 
事件の表示 特願2020− 89908「加算平均ユニットおよび測定装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月13日出願公開、特開2020−122805〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年7月14日に出願した特願2015−140399号の一部を令和2年5月22日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。

令和2年 5月25日 :手続補正書の提出
令和3年 3月11日付け:拒絶理由通知書
同年 7月20日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月 8日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月14日 :原査定の謄本の送達)
令和4年 3月11日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年3月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「 【請求項1】
プローブ接続部を介して検出電圧信号を出力する複数の電流センサにおける当該各プローブ接続部がそれぞれ接続可能な複数の入力部を有する測定装置本体に接続される加算平均ユニットであって、
前記複数の電流センサの前記各プローブ接続部がそれぞれ接続可能な複数のセンサ接続部と、
前記各センサ接続部に前記各プローブ接続部が接続された前記各電流センサから出力される2以上の検出電圧信号についての加算平均信号を生成する加算平均部と、
前記加算平均信号を前記測定装置本体に出力するコネクタであって当該測定装置本体の前記複数の入力部のうちの1つの入力部に着脱自在に接続可能な第1コネクタとを備えている加算平均ユニット。」


第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

進歩性の欠如)
本願発明は、下記引用文献に記載された発明に基づいて、本願出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1.特開2010−25889号公報
引用文献2.特開2015−14525号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2001−218359号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.特開2001−222502号公報(周知技術を示す文献)


第4 引用文献に記載された発明の認定等
1 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定で引用された前記引用文献1には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したもので、以下同様である。

ア 【0001】〜【0021】
「【技術分野】
【0001】
この発明は、電流値検出装置に関し、特に電動機に供給される電流値を検出する電流検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機の出力トルク等の制御のため、電源から電動機に供給される電流の電流値を検出する電流検出装置が必要となる。この電流検出装置は、電流センサを備えており、この電流センサにより電流値の検出がなされる。ここで、電流値の測定範囲は電流センサの能力によりおおよそ決まる。そのため、電動機に供給される電流の電流値が大きい場合は、大電流まで測定することが可能な電流センサを用いる必要がある。
【0003】
しかしながら、電流値の大きな電流を直接する測定することが可能な電流センサは、高価または大型となってしまうことがある。また、測定する電動機の種類により、電動機に供給される電流の電流値は異なる。それらの電動機の種類ごとに電流センサを対応させるためには、電流センサの種類も多くなり製品管理上不便である。
【0004】
そこで、電源から電動機に供給される電流を特定の電流センサが電流値の測定が可能となる電流となるよう分流し、電源から電動機に供給される電流の一部を電流センサに供給する手法が用いられることがある(例えば、特許文献1参照)。
…(中略)…
【特許文献1】特開2002−305861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の手法にあっては、電流I1の測定範囲は、電流センサ20の内部抵抗の抵抗値(内部抵抗値)R1で決まってしまう。ここで、内部抵抗の抵抗値(内部抵抗値)R1は選定された電流センサ20により決まってしまい、抵抗値(内部抵抗値)R1を任意に設定できない。そのため、同図に示すように電流検出装置10には、ゲイン調整機能付アンプ23が別途備えられている。ゲイン調整機能付アンプ23は、電流センサ20に接続され、電流センサからの電流値信号を調整している。このように、ゲイン調整機能付アンプ2 3 を別途設けなければならず、電流検出装置のコストが高くなり、装置が大型してしまうという課題がある。
【0011】
さらに、センサ直列抵抗21および分流抵抗22の抵抗値(R2およびR3)により、電力が消費されてしまうという課題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、コストアップや装置の大型を抑えるべく、簡易な手段にて電流値の測定範囲を大きくすることが可能な電流検出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、請求項1の記載された電流検出装置は、電動機と前記電動機に電力を供給する電源との間に接続され、前記電源から前記電動機に供給される電流の電流値を検出する電流検出装置において、前記電流検出装置は、それぞれ互いに並列に接続され、かつ、前記電流が分流して供給され、前記分流して供給される電流の電流値をそれぞれ検出し、前記検出した電流値に対応する電流値信号をそれぞれ出力する2以上の電流センサを有する電流センサ群と、前記電流センサ群のそれぞれの電流センサに接続され、前記それぞれの電流センサから供給される前記電流値信号を平均化し、平均化された平均電流値信号を出力する平均化手段とを備える。
【0014】
これにより、簡易な手段にて電流値の測定範囲を大きくすることが可能な電流検出装置とすることができる。
【0015】
請求項2に記載された電流検出装置は、請求項1記載の電流検出装置において、前記平均化手段は前記それぞれの電流センサに接続されたオペアンプを備え、前記オペアンプに前記それぞれの電流センサからの前記電流値信号が供給され、前記オペアンプは、前記それぞれの電流センサからの前記電流値信号を加算するとともに、加算した前記電流値信号を前記それぞれの電流センサの数で除算し、前記平均電流値信号を求める。
【0016】
これにより、電動機に供給される電流の電流値を各電流センサにて検出される電流値信号のバラツキを平滑化することができる。
【0017】
請求項3に記載された電流検出装置は、請求項1記載の電流検出装置において、前記平均化手段は、前記それぞれの電流センサに接続され、前記それぞれの電流センサから供給された前記電流値信号をデジタル化し、それぞれの前記電流値信号に対応する複数のデジタル化電流値信号を出力するA/Dコンバータ部と、前記A/Dコンバータ部に接続され、前記複数のデジタル化電流値信号を加算し、前記平均電流値信号を求めるデジタル加算回路とを備える。
【0018】
これにより、デジタル信号にて、電動機に供給される電流の電流値を外部に出力することができる。
【0019】
請求項4に記載された電流検出装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の電流検出装置において、前記それぞれの電流センサの内部抵抗値は互いに略等しい。
【0020】
これにより、各電流センサに供給される分流された電流の電流値を等しくすることができる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の記載された発明によれば、簡易な手段にて電流値の測定範囲を大きくすることが可能な電流検出装置とすることができる。請求項2の記載された発明によれば、さらに、電動機に供給される電流の電流値を各電流センサにて検出される電流値信号のバラツキを平滑化することができる。請求項3に記載された発明によれば、デジタル信号にて、電動機に供給される電流の電流値を外部に出力することができる。請求項4に記載された発明によれば、各電流センサに供給される分流された電流の電流値を略等しくすることができる。」

イ 【0022】〜【0025】、【図1】
「【0022】
次に、この発明の第1の実施形態の電流検出装置1を図1に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態の電流検出装置のブロック図である。電流検出装置1は、電動機70と電動機70に電力を供給する電源60のプラス極との間に接続される。電流検出装置1は、電流センサ群2と重み付けアナログ加算回路(平均化手段)3とを備える。
【0023】
電流センサ群2は、電流センサ2a、電流センサ2bおよび電流センサ2cを備えている。すなわち、電流センサ群2は、3つの電流センサ2a〜2cを備えている。電流センサ2a、電流センサ2bおよび電流センサ2cは、それぞれ並列に接続されており、電源60から電動機70に供給される電流Iは、電流I1、電流I2および電流I3に分流され、電流I1は電流センサ2aに、電流I2は電流センサ2bに、電流I3は電流センサ2cにそれぞれ供給される。
【0024】
電流センサ2aは、電流センサ2aに供給される電流I1の電流値を検出し、検出した電流値に対応した電流値信号を電圧信号V1にて出力する。同様に、電流センサ2bは、電流センサ2bに供給される電流I2の電流値を検出し、検出した電流値に対応した電流値信号を電圧信号V2にて出力する。さらに、電流センサ2cは、電流センサ2cに供給される電流I3の電流値を検出し、検出した電流値に対応した電流値信号を電圧信号V3にて出力する。
【0025】
本実施形態において、電流センサ2a〜2cは、同一種類の電流センサである。よって、それぞれの電流センサ2a〜2cの内部抵抗値R1〜R3は略同一となる(R1≒R2≒R3)。したがって、電流センサ2a〜2cにそれぞれ供給される電流I1〜I3の電流値は、それぞれ略同一となる(I1≒I2≒I3)。」
「【図1】



ウ 【0029】〜【0033】、【図2】
「【0029】
重み付けアナログ加算回路(平均化手段)3は、電流センサ2a〜2cのそれぞれに接続されており、電流センサ2a〜2cから供給される電圧信号V1〜V3を平均化し、外部に出力する。以下、アナログ加算回路(平均化手段)3について図2に基づき説明する。
【0030】
図2は、アナログ加算回路(平均化手段)の構成を示すブロック図である。アナログ加算回路(平均化手段)3は、オペアンプ3aおよび抵抗R11〜R13を備える。抵抗R11〜R13は、それぞれ接続点Pにて並列に接続されており、接続点pは、オペアンプ3aの正入力部(+)に接続されている。
【0031】
オペアンプ3aでは、電流センサ2a〜2cが検出するそれぞれの電流値信号(電圧信号V1〜V3)が供給され、それぞれの電流値信号(電圧信号V1〜V3)を加算するとともに、加算した電流値信号を電流センサ2a〜2cの数で除算する。すなわち、本実施形態では、加算した電流値信号は、電流センサ2a〜2cの数である3で除算される。そして、オペアンプ3aは、このような処理により求められる平均電流値信号Vout(Vout=(V1+V2+V3)/3)を外部に出力する。
【0032】
このように、アナログ加算回路(平均化手段)3で、電流センサ2a〜2cの電流値信号の平均値を求め、外部に出力することにより、電流センサ2a〜2cの測定のバラツキを平滑化することができ、電流値の測定結果の精度を向上させることができる。
【0033】
本実施形態では、3つの電流センサ2a〜2cを備えているが電流センサの数は、3つに限られることは言うまでもなく、電流の測定範囲の設定に対応して増減される。」
「【図2】



エ 【0034】〜【0037】、【図3】
「【0034】
次に本発明の第2の実施形態について、図3に基づき説明する。図3は、第2の実施形態の電流検出装置のブロック図である。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態と平均化手段3のみ異なり、その他の部分は同じである。よって、以下、平均化手段のみ説明し、その他の部分については説明を省略する。
【0035】
平均化手段3は、A/Dコンバータ部50およびデジタル加算回路40を備える。A/Dコンバータ部50は、A/Dコンバータ51、A/Dコンバータ52およびA/Dコンバータ53を備えている。
【0036】
A/Dコンバータ51は、電流センサ2aに接続され、アナログ信号である電流値信号(電圧信号V1)が供給され、電流値信号(電圧信号V1)をデジタル信号に変換し、デジタル化電流値信号V1(A/D)を出力する。同様に、A/Dコンバータ52は、電流センサ2bに接続され、アナログ信号である電流値信号(電圧信号V2)が供給され、電流値信号(電圧信号V2)をデジタル信号に変換し、デジタル化電流値信号V2(A/D)を出力する。さらに、A/Dコンバータ53は、電流センサ2cに接続され、アナログ信号である電流値信号(電圧信号V3)が供給され、電流値信号(電圧信号V3)をデジタル信号に変換し、デジタル化電流値信号V3(A/D)を出力する。
【0037】
デジタル加算回路40は、A/Dコンバータ51〜53に接続され、デジタル化電流値信号V1(A/D)〜V3(A/D)が供給され、デジタル化電流値信号V1(A/D)〜V3(A/D)をそれぞれ加算し、平均電流値信号Vout(A/D)を求める(Vout(A/D)=V1(A/D)+V2(A/D)+V3(A/D))。そして、平均電流値信号Vout(A/D)を外部に出力する。」
「【図3】



(2) 引用文献1が引用する特許文献1の記載事項
引用文献1が特許文献1として引用する特開2002−305861号公報には次の記載がある。
「 【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両等に搭載される回転電機のアーマチュアおよびその製造方法の技術分野に属するものである。」

(3) 引用発明の認定
前記(1)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

<引用発明>
「電動機70に供給される電流値を検出する電流検出装置1が備える重み付けアナログ加算回路(平均化手段)3であって(【0001】、【0022】)、
電動機の出力トルク等の制御のために用いられるものであり(【0002】)、
電動機70に供給される電流Iは、電流I1、電流I2および電流I3に分流され、電流I1は電流センサ2aに、電流I2は電流センサ2bに、電流I3は電流センサ2cにそれぞれ供給され(【0023】)、
重み付けアナログ加算回路(平均化手段)3は、電流センサ2a〜2cのそれぞれに接続されており(【0029】)、
重み付けアナログ加算回路(平均化手段)3が備えるオペアンプ3aでは、電流センサ2a〜2cが検出するそれぞれの電流値信号(電圧信号V1〜V3)が供給され、それぞれの電流値信号(電圧信号V1〜V3)を加算するとともに、加算した電流値信号を電流センサ2a〜2cの数で除算し、このような処理により求められる平均電流値信号Vout(Vout=(V1+V2+V3)/3)を外部に出力する(【0030】、【0031】)、
重み付けアナログ加算回路(平均化手段)3。」

2 引用文献7に記載された事項及び技術常識Aの認定
(1) 引用文献7に記載された事項
当審において新たに引用する、本願出願前に発行された特開2001−121974号公報(以下「引用文献7」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気自動車、ハイブリッド自動車の推進用モータの制御システム、あるいはその他の電流測定が必要なシステムに用いる車両走行用モータの制御用電流検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4は、従来の車両走行用モータの制御用電流検出装置の構成を示すブロック図である。この図において、符号1は、ホール素子を用いた電流センサである。ここで、ホール素子とは、流された電流の大きさ及び発生した磁束密度の大きさの双方に比例した電圧を出力する特性を持つ素子である。
【0003】図5は、電流センサ1の構成を示すブロック図である。この図において、7は、ホール素子である。8は、導線Lに電流が流れると、磁束を発生するコアである。9は、入力された12[V]電圧を5[V]電圧に変換して出力する電源回路である。10は、電源回路9の出力電圧である5[V]電圧によって駆動され、ホール素子7から電圧v1が入力されると、電圧v1を増幅すると共にオフセットを加え、電圧v2として出力する増幅回路である。11は、電源回路9の出力電圧である5[V]電圧が基準電圧として印加され、この基準電圧を抵抗によって分圧した電圧によって決まる一定電流をホール素子7に流す定電流生成回路である。
【0004】図4において、3は、電流センサ1から端子Cを介して入力される電圧が、電源回路4から入力される基準電圧に対して、どの程度の割合であるかを算出し、その値をデジタル値に変換して出力するA/Dコンバータである。電源回路4は、入力された12[V]の電圧を5[V]に変換してA/Dコンバータ3に出力する。5は、CPU(中央処理装置)である。6は、CPU5を駆動する電源回路である。
【0005】次に以上の構成による車両走行用モータの制御用電流検出装置の動作について説明する。端子Bを介して、電流センサ1に12[V]電圧が入力されると、電源回路9は、12[V]電圧を5[V]電圧に変換し、ホール素子7及び定電流生成回路11に出力する。一方、導線Lに被測定電流が流れると、コア8に磁束が発生する。ホール素子7は、磁束を受けると、その大きさに比例した電圧v1を増幅回路10に出力する。増幅回路10は、入力された電圧v1を増幅すると共にオフセットを加え、電圧v2(0[V]≦v2≦5.0[V])とし、端子Cを介してA/Dコンバータ3に出力する。
【0006】A/Dコンバータ3は、端子Cを介して電圧v2が入力されると、電圧v2が、端子A,電源回路4を介して入力された基準電圧(5[V])に対して、どの程度の割合であるかを算出し、その値をデジタル値に変換してCPU5に出力する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ここで、電流センサ1の精度を高めるためには、環境の変化に対しても安定した一定電流を流す必要があり、そのためには、定電流生成回路11に供給する電圧を高精度な電圧とする必要があり、従って、電源回路9に高精度な電源回路を用いる必要がある。また、A/Dコンバータ3も、電流センサ1の測定値を正確にデジタル変換するためには、電源回路4に高精度な電源回路を用いなくてはならない。
【0008】従って、従来は、高精度に電流を測定しようとした場合、電源回路4,9の双方に高精度な電源を用いる必要があり、高コストとなっていた。さらに、それぞれの基準電源は完全には同一電圧にならないため、誤差が発生してしまうという問題もあった。
【0009】さらに、走行用モータの制御においても、電流センサの誤差はモータのトルク制御の誤差にも大きく寄与し、例えば実際の値と検出値の差が制御値の差となり過大または過小な制御によって車体へのショックを与える要因となったり、電力源であるバッテリーの過放電や過充電を引き起こす要因ともなる。よって、電流検出誤差を見込んでのシステム設計等が必要になり、設計上の制限要因となったり、より高価なシステムとなってコストアップの原因となったりする。本発明は、以上のことに鑑みてなされたものであり、その目的は、高精度な電源回路を用いることなく、しかも、高精度な電流検出を行うことのできる車両走行用モータの制御用電流検出装置を提供することにある。」

「【図4】



「【図5】



(2) 技術常識Aの認定
引用文献7の【0004】及び【図4】には、車両走行用モータの制御用電流検出装置の電流センサ(検出手段)が端子Cを介して、A/Dコンバータ及びCPUに接続されていることが記載されている。
さらに、【0009】から、電流センサは、モータのトルク制御のためのものであることが理解できる。
そうすると、当該記載から、次の事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識A」という。)。

<技術常識A>
「車両走行用モータのトルク制御のために、モータの制御用電流を検出するための電流センサの出力をA/D変換器を介して演算素子に出力すること。」

3 引用文献2、3及び8に記載された事項及び技術常識B及びCの認定
(1) 引用文献2、3及び8に記載された事項
ア 引用文献2に記載された事項
原査定で引用された前記引用文献2には、以下の事項が記載されている。

「【0036】
電流測定装置1は、図1に示すように、複数の入力部11(本例では一例として、上記した電流プローブCPの数に合わせて3つの入力部11a,11b,11c)、入力部11と同数のA/D変換部12(本例では一例として、3つのA/D変換部12a,12b,12c)、入力部11と同数のフィルタ13(本例では一例として、3つのフィルタ13a,13b,13c)、1つの信号加算部14、処理部15、記憶部16および出力部17を備えている。
【0037】
各入力部11a,11b,11cは、複数の電流プローブCPのうちの任意の1つを接続可能な入力コネクタ(コネクタCNと接続可能なコネクタ)21と、入力コネクタ21を介して電流プローブCPから入力される検出信号Viを設定された増幅率で増幅して電圧信号Vnとして出力する増幅部22とをそれぞれ備えて、同一に構成されている。」

「【図1】



イ 引用文献3に記載された事項
原査定で引用された前記引用文献3には、以下の事項が記載されている。

「【0024】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1の通電情報計測装置付き回路遮断器の回路構成ブロック図、図2はこの発明の通電情報計測装置付き回路遮断器の補正値を求め各メモリ装置に補正値を記憶させるときの補正作業時の回路構成図である。図において、1〜14、20〜27は上記従来例の説明と同様である。
【0025】28はマイコン、29は第2のメモリ装置で、不揮発メモリであるEPROMなどを使用している。30は演算値補正部、31は計測値補正部、32は通信インターフェイス(通信I/F)である。33は回路遮断器本体1と計測表示ユニット20とを接続する接続コネクタ、34は通信I/F31を介して送信される各種計測値を遠隔で表示する外部表示装置であり、この装置はコンピュータを用いて表示すると共に、負荷の制御手段をしてもよい。」

「【図1】



ウ 引用文献8に記載された事項
当審において新たに引用する、本願出願前に発行された特開2010−204068号公報(以下「引用文献8」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0017】
図1に示される本発明の一例である絶縁入力型計測機器1は、入力端子ユニット2と測定本体ユニット3とが着脱可能に連結されており、入力端子ユニット2に入力される電圧などの電気的パラメータに基づいて測定を行う計測機器である。絶縁入力型計測機器1としては、例えば、電圧波形や電流波形、温度変動波形を記録する波形記録計や、電圧計、非接触電流計などが挙げられる。
【0018】
入力端子ユニット2は、箱体状の筐体の一側面に、一例として端子板またはBNC(Bayonet Neill Concelman)同軸コネクタで構成された一組の測定入力端子5a,5bを備えている。この測定入力端子5a,5bには、一例として、被測定対象物に接触させて被測定対象物の電位差(電圧)を検知するための接触型プローブや、被測定対象物に非接触でそこに流れる電流に応じた電圧を出力する電流プローブ、温度差に応じた電圧を出力する熱電対プローブ(何れも非図示)など、絶縁入力型計測機器1が測定値を検知するためのものが接続される。
【0019】
また入力端子ユニット2は、その筐体内部に、測定入力端子5a,5bに入力された電気入力信号を増幅する入力回路7を備えると共に、測定入力端子5a,5bの設けられた側面とは反対側の筐体側面に、入力回路7の出力を筐体外部に出力するコネクタ8を備えている。
【0020】
測定本体ユニット3は、箱体状の筐体に、コネクタ9、基礎絶縁回路10、本体回路11、および表示部12を備えている。コネクタ9は、筐体の一側面に設けられて、入力端子ユニット2のコネクタ8に嵌合して、ユニット2,3間で電気信号の受け渡しを行うと共に、ユニット2,3どうしを着脱可能に連結する。またコネクタ9には、後述する絶縁ユニット4が連結されていることを検出用の端子24aおよび端子24bを有している。端子24a,24bは各々本体回路11に接続されている。コネクタ9は、基礎絶縁回路10の入力側に接続されている。」

「【0023】
本体回路11は、筐体内部に設けられて、入力回路7や基礎絶縁回路10などを介して入力される、測定入力端子5a,5bへの電気入力信号に基づいて、測定動作を行う回路である。本体回路11は、例えば、測定値の演算処理回路、電源回路、表示部12に測定結果を表示させる表示回路、測定値を記録するメモリ、および外部のパーソナルコンピュータなどに測定データを出力するためのインタフェース回路(いずれも非図示)などを備える回路であり、電気計測機器として動作するための主回路である。
【0024】
表示部12は、一例として液晶パネルで構成され、コネクタ9の設けられた側面とは反対側の筐体側面に設けられており、本体回路11に制御されて、測定結果の波形や測定値などを表示する。また、表示部12は、本発明の表示部の一例であって、本体回路11に制御されて、後述する絶縁ユニット4が測定本体ユニット3に連結されていること、および/または非連結であることを、液晶パネルの一部に文字表示や絵表示などで表示可能になっている。」

「【0028】
次に、上記した基礎絶縁入力型の計測機器1を二重絶縁入力型に変更する場合について、図2を参照しつつ説明する。
【0029】
二重絶縁入力型への変更は、入力端子ユニット2と測定本体ユニット3とを連結していたコネクタ8とコネクタ9との嵌合を外して、同図に示されるように、入力端子ユニット2と測定本体ユニット3との間に、絶縁ユニット4を連結して行う。
【0030】
絶縁ユニット4は、箱体状の筐体に、コネクタ13、基礎絶縁回路14、およびコネクタ15を備えている。コネクタ13は、筐体の一側面に設けられて、入力端子ユニット2のコネクタ8に嵌合してユニット2,4間で電気信号の受け渡しを行うと共に、ユニット2,4どうしを着脱可能に連結する。コネクタ13は基礎絶縁回路14の入力側に接続されている。
【0031】
基礎絶縁回路14は、本発明の第2の基礎絶縁回路に相当し、上記で説明した基礎絶縁回路10と同様の構成であり、絶縁素子21と同様の絶縁素子22が配されて、筐体の内部に設けられている。基礎絶縁回路14の出力側にはコネクタ15が接続されている。
【0032】
コネクタ15は、コネクタ13の設けられた側面とは反対側の筐体側面に設けられて、測定本体ユニット3のコネクタ9に嵌合してユニット4,3間で電気信号の受け渡しを行うと共に、ユニット4,3どうしを着脱可能に連結する。また、コネクタ15には、コネクタ9の端子24aに接続される端子25aと、コネクタ9の端子24bに接続される端子25bとを有している。この端子25aと端子25bとは導線でショート状態に接続されている。
【0033】
このように、同図に示された、絶縁ユニット4の追加連結された状態の絶縁入力型計測機器1では、測定入力端子5a,5bが、入力回路7、コネクタ8、コネクタ13、基礎絶縁回路14、コネクタ15、コネクタ9、基礎絶縁回路10を経由して本体回路11に接続される。したがって、測定入力端子5a,5bと本体回路11との間に、基礎絶縁回路14および基礎絶縁回路10が挿入されているから、二重絶縁が完成している。
【0034】
また、この状態の計測機器1では、コネクタ9の端子24a,24bが端子25a,25bに接続されてショート状態となるので、本体回路11は、このショート状態を検出して、絶縁ユニット4が連結されていることを表示部12に表示させる。
【0035】
このように、絶縁ユニット4を追加することで、基礎絶縁入力型の計測機器1を簡便に二重絶縁入力型に変更することができる。例えば、計測器製造メーカは、絶縁ユニット4をオプション品として製造販売することで、ユーザーは、このオプション品の追加購入により、二重絶縁入力の測定を行うことが可能になる。
【0036】
なお、上記では、入力端子ユニット2が一組の測定入力端子5a,5bを備えた例について説明したが、これに限定されず、入力端子ユニット2が、例えば2組、5組、または10組などのように複数組の測定入力端子を備える構成とすることもできる。この場合、測定本体ユニット3の基礎絶縁回路10には、測定入力端子の組数と同じ数だけ絶縁素子21を配し、絶縁ユニット4の基礎絶縁回路14にも、測定入力端子の組数と同じ数だけ絶縁素子22を配する。入力端子ユニット2と測定本体ユニット3とを連結したときには、複数組の測定入力端子は、各々別個の絶縁素子21を介して、並列に、測定本体ユニット3の本体回路に接続されて基礎絶縁される。また、入力端子ユニット2と絶縁ユニット4と測定本体ユニット3とを連結したときには、複数組の測定入力端子は、各々が、別個の絶縁素子22および絶縁素子21を介して、並列に、測定本体ユニット3の本体回路に接続されて二重絶縁される。
【0037】
また、入力回路7は、電気入力信号を増幅して出力する例について説明したが、これに限定されず、例えば、電気入力信号を増幅して、この増幅した信号をアナログ/ディジタル変換してディジタル信号を出力する構成とすることもできるし、電気入力信号をそのままアナログ/ディジタル変換してディジタル信号を出力する構成とすることもできる。」

「【図1】



「【図2】


(2) 技術常識B及び技術常識Cの認定
ア 技術常識Bの認定
引用文献2の【0036】に記載された「電流プローブCP」及び「電流測定装置1」、引用文献3の図1に示された「通電情報計測装置付き回路遮断機1」、引用文献8の【0018】に記載された「電位差(電圧)を検知する接触型プローブ」、「電流プローブ」及び「熱電対プローブ」が、ユニット化されていることは明らかであるから、前記引用文献2、3及び8の記載から、次の事項は周知技術であると認められる(以下「技術常識B」という。)。

<技術常識B>
「電流などを測定する測定器の構成部材をユニット化し、ユニット化された部材をコネクタにより接続すること。」

イ 技術常識Cの認定
引用文献8の【0018】には、測定入力端子にBNC同軸コネクタのような一般的なコネクタを採用することが記載されている。
そして、前記引用文献8の【0028】〜【0035】、【図1】、【図2】には、測定本体ユニット3は、入力端子ユニット2とコネクタ8、9を介して連結可能である(図1)とともに、絶縁ユニット4ともコネクタ15、9を介して連結可能であること(図2)が記載されている。
引用文献8の記載に例示されるように、次の事項は技術常識である(以下「技術常識C」という。)。

<技術常識C>
「各ユニットの接続部を共通のコネクタとすることにより接続の自由度を上げること。」


第5 対比
1 対比検討
本願発明と引用発明を対比する。
(1)ア 加算平均部について
引用発明の「重み付けアナログ加算回路(平均化手段)3」は、電流センサ2a〜2cが検出するそれぞれの電流値信号(電圧信号V1〜V3)が供給され、それぞれの電流値信号(電圧信号V1〜V3)を加算するとともに、加算した電流値信号を電流センサ2a〜2cの数で除算して、平均電流値信号Vout(Vout=(V1+V2+V3)/3)を外部に出力するものであるから、本願発明の「各電流センサから出力される2以上の検出電圧信号についての加算平均信号を生成する加算平均部」に相当する。

イ プローブ接続部について
(ア) 本願発明における「プローブ」の意味を理解するために明細書の【0027】の記載を参酌すると、次のとおり記載されている。
「各電流プローブ2は、一例として、電線をクランプ可能(電線に装着可能)に構成された電流センサ11、加算平均ユニット3の後述するセンサ接続部(複数の接続ピンを有するコネクタ)21a〜21d(以下、区別しないときには「センサ接続部21」ともいう)に着脱自在に接続可能なプローブ接続部(センサ接続部21と同じピン配列のコネクタ)12、および電流センサ11とプローブ接続部12とを接続するケーブル13をそれぞれ有している。」
(イ) 引用発明の「電流センサ2a〜2c」は、「重み付けアナログ加算回路(平均化手段)3」との接続により、検出した電流値信号を伝達するところ、このような検出信号の伝達のために用いられる接続手段(信号ケーブル)を引用発明が備えていることは明らかである。
そして、引用発明において、このような信号ケーブルの先端部は、重み付けアナログ加算回路(平均化手段)3に接続されるところ、前記(ア)の「プローブ」の解釈に係る摘記事項を踏まえると、引用発明が有していると認められる信号ケーブルは、プローブに含まれるものであり、その先端部は、プローブの出力する部分であるといえる。
したがって、本願発明の「プローブ接続部」と引用発明が有していると認められる信号ケーブルの先端部は、「プローブの出力する部分」である点で共通する。

ウ センサ接続部について
引用発明の「重み付けアナログ加算回路(平均化手段)3」は、上記信号ケーブル(プローブに含まれるもの)を介して電流センサ2a〜2cのそれぞれに接続されているから、上記信号ケーブルの先端部と接続されている三つの接続部分を有していることは明らかであり、当該三つの接続部分と本願発明の「複数」の「センサ接続部」は、「複数」の「プローブから入力される部分」である点で共通する。

エ 加算平均ユニットについて
前記アからウの検討結果をまとめると、「加算平均ユニット」の発明である本願発明と、「重み付けアナログ加算回路(平均化手段)」の発明である引用発明は、次の発明である点で共通する。
「各複数のプローブから入力される部分に各プローブの出力する部分が接続された前記各電流センサから出力される2以上の検出電圧信号についての加算平均信号を生成する加算平均部を備えている加算平均装置」

(2) 前記(1)の検討結果も踏まえると、本願発明と引用発明は、「複数の電流センサの各プローブの出力する部分がそれぞれ使用時に接続された状態にある複数のプローブから入力される部分」を備える点で共通する。

(3) 引用発明においては、「重み付けアナログ加算回路(平均化手段)3が備えるオペアンプ3a」は、「平均電流値信号Vout(Vout=(V1+V2+V3)/3)を外部に出力する」ところ、当該出力する部分と、本願発明における「前記加算平均信号を前記測定装置本体に出力するコネクタ」は、「前記加算平均信号を後段部に出力する部分」である点で共通する。

2 一致点及び相違点
上記1の対比検討の結果を総合すると、本願発明と引用発明は、次の一致点において一致し、後述の相違点において相違する。

(1) 一致点
「複数の電流センサの各プローブの出力する部分がそれぞれ使用時に接続された状態にある複数のプローブから入力される部分と、
前記各複数のプローブから入力される部分に前記各プローブの出力する部分が接続された前記各電流センサから出力される2以上の検出電圧信号についての加算平均信号を生成する加算平均部と、
前記加算平均信号を後段部に出力する部分
を備えている加算平均装置」である点。

(2) 相違点
ア 相違点1
「加算平均信号」の出力先である「後段部」が、
本願発明においては、「測定装置本体」であるのに対して、
引用発明においては、このような特定がない点。

イ 相違点2
本願発明においては、「前記加算平均信号を後段部に出力する部分」が、「出力先の複数の入力部のうちの1つの入力部に着脱自在に接続可能な」「第1コネクタ」であり、
複数の「プローブの出力する部分」及び複数の「プローブから入力される部分」が、「それぞれ接続可能な」「プローブ接続部」及び「センサ接続部」であり、
後段部の入力される部分が、複数であり、「プローブ接続部」がそれぞれ接続可能な「入力部」であり、
「加算平均装置」が「加算平均ユニット」となっているのに対して、
引用発明においては、信号ケーブル(プローブに含まれるもの)と重み付けアナログ加算回路(平均化手段)3の接続は(常時)接続されているものであって、「重み付けアナログ加算回路(平均化手段)3」はユニット化されておらず、後段部に出力する部分と後段部との接続がコネクタで接続されるという特定はない点。

第6 判断
1 相違点の想到容易性についての判断
前記相違点について検討する。
(1) 相違点1について
ア(ア) 本願発明において「測定装置本体」の意味を理解するために、本願明細書の段落【0018】の記載を参酌すると、次のとおり記載されている。
「この加算平均ユニットによれば、例えば、A/D変換器および処理部などを有する測定装置本体」
(イ) 本願明細書の段落【0018】の記載を参酌すると、A/D変換器及び処理部を有している部分は、「測定装置本体」であるといえる。

イ 引用文献1には、電動機70が、車両用の用途であることの明示の記載はないものの、引用文献1が特許文献1として引用する特開2002−305861号公報の段落【0001】には「【発明の属する技術分野】本発明は、車両等に搭載される回転電機のアーマチュアおよびその製造方法の技術分野に属するものである。」との記載があることから、「電動機の出力トルク等の制御のために用いられるもの」である引用発明において、「電動機は車両等に搭載されるものであること」も当業者は当然に理解できることである。

ウ ここで、前記第4の2(2)において技術常識Aとして示したとおり、「車両走行用モータのトルク制御のために、モータの制御用電流を検出するための電流センサの出力をA/D変換器を介して演算素子に出力すること」は、技術常識である。

エ 技術常識Aも踏まえると、「車両等に搭載される電動機の出力トルク等の制御のために用いられるもの」である引用発明の「平均電流値信号」を、A/D変換器を介して演算素子に出力することは、引用文献1に明示の記載がなくとも、当業者が自明に認識できる記載されているに等しい事項であるといえる。

オ 前記アからエまでの検討結果をまとめると、引用発明の「平均電流値信号」の出力先を、A/D変換器及び処理部を有している部分とすること、すなわち、引用発明の「平均電流値信号」の出力先を「測定装置本体」とすることは、引用文献1に明示の記載がなくとも、記載されているに等しい事項であるから、相違点1は、実質的な相違点ではない。

(2) 相違点2について
ア ユニット化について
(ア) 前記第4の3(2)アにおいて技術常識Bとして示したとおり、「電流などを測定する測定器の構成部材をユニット化し、ユニット化された部材をコネクタにより接続すること」は、技術常識である。
(イ)a そして、引用文献1の【0034】〜【0037】、【図3】には、第2の実施形態として、第1の実施形態である引用発明の「アナログ加算回路(平均化手段)3」を、A/Dコンバータ部50及びデジタル加算回路40を備えた平均化手段3に変更することが記載されており、第2の実施形態は、第1の実施形態と平均化手段3のみ異なり、その他の部分は同じであると記載されている。
b すなわち、引用発明(第1の実施形態)の「アナログ加算回路(平均化手段)3」は、外部にアナログ信号を出力することに応じて、重み付けアナログ加算回路(オペアンプ3a)を備えるようにしており、第2の実施形態の平均化手段3は、外部にデジタル信号を出力することに応じて、A/Dコンバータ部50及びデジタル加算回路40を備えるようにしたものであり、それ以外は構成を共通としているから、両者は、外部に出力する信号がアナログかデジタルかという形態に応じて、平均化手段3のみが変えられているものである。
(ウ) よって、製造の簡単化・コスト削減や部品交換の簡単化等のため、引用発明において、前記技術常識Bを踏まえて、アナログ加算回路(平均化手段)3をユニット化し、電流センサとコネクタを介して接続するようにし、アナログ加算回路(平均化手段)3のみを交換可能にする動機付けは十分にあったものと認められ、当業者にとっては自明の設計変更にすぎない。

イ プローブ、加算平均ユニット及び加算平均ユニットの出力先(測定装置本体)を共通仕様のコネクタで接続することについて
(ア)a 引用文献8の【0018】には、測定入力端子にBNC同軸コネクタを用いることが記載されているように、プローブ、加算平均ユニット及び加算平均ユニットの出力先(本願発明の「測定装置本体」に相当する。)の各複数の接続する部分を、BNC同軸コネクタのような、一般的なコネクタとすることは、当業者にとっては、自然の発想である。そうすると、引用発明の「重み付けアナログ加算回路(平均化手段)3」において、前段部(プローブ)との接続や、後段部(測定装置本体)との接続も、一般的なコネクタを用いて行われると考えるのが自然である。
b また、前記第4の3(2)イにおいて技術常識Cとして示したとおり、「各ユニットの接続部を共通のコネクタとすることにより接続の自由度を上げること」は、技術常識である。
(イ) したがって、プローブ、加算平均ユニット及び加算平均ユニットの出力先(測定装置本体)を共通仕様のコネクタで接続するようにすることは、当業者にとっては自明の設計事項である。

ウ 相違点2の想到容易性についてのまとめ
前記ア及びイに検討したとおり、引用発明の「重み付けアナログ加算回路(平均化手段)3」をユニット化して「加算平均ユニット」とし、さらに、「後段部に出力する部分」が、「出力先の複数の入力部のうちの1つの入力部に着脱自在に接続可能な」「第1コネクタ」であり、複数の「プローブの出力する部分」及び複数の「プローブから入力される部分」が、「それぞれ接続可能な」「プローブ接続部」及び「センサ接続部」であり、後段部の入力される部分が、複数であり、「プローブ接続部」がそれぞれ接続可能な「入力部」であるようにして、相違点2に係る構成を備えるようにすることは、当業者にとっては、自明の設計事項にすぎない。

(3) 総合評価
前記(1)及び(2)において検討したとおり、相違点1は実質的な相違点ではなく、相違点2は当業者にとって自明の設計事項にすぎない。
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果としては、引用発明及び技術常識A〜Cから予測困難であって、かつ、格別顕著な効果を奏するものと認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び技術常識A〜Cに基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。

2 請求人の主張について
(1) 請求人の主張内容
請求人は、審判請求の理由において、以下の主張をしている。
ア 請求人の主張1
引用文献1〜6には、次の本願発明の発明特定事項A及びBが開示されておらず、また、本願出願時における周知技術でもない。したがって、たとえ、引用文献1〜6を組み合わせても、また引用文献1〜6と本願出願時における周知技術とを組み合わせても、本願発明の構成には想到し得ない。
(ア) 発明特定事項A
プローブ接続部を介して検出電圧信号を出力する複数の電流センサにおける当該各プローブ接続部がそれぞれ接続可能な複数の入力部を有する測定装置本体に接続される加算平均ユニットであること
(イ) 発明特定事項B
前記複数の電流センサの前記各プローブ接続部がそれぞれ接続可能な複数のセンサ接続部

イ 請求人の主張2
本願発明は、発明特定事項A及びBを備えたことにより、「例えば、A/D変換器および処理部などを有する測定装置本体の一つの入力部に第1コネクタを接続することで、測定装置本体が備えている入力部の使用数を必要最小限(一つ)に抑えつつ、電流センサの測定レンジを超える電流値の測定電流(電流路に流れる電流)を、この測定電流が流れる電流路を複数の他の電流路に分岐させて測定する手法を採用して処理部に対して測定させることができる」との顕著な効果を奏する。

(2) 請求人の主張についての検討
ア 請求人の主張1について
請求人は、引用文献1〜6には、本願発明の発明特定事項A及びBが開示されていないと主張しているが、前記1において検討したとおり、当該発明特定事項A及びBは、引用発明及び技術常識A〜Cに基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
よって、請求人の主張1は採用できないものであり、前記1において示した判断を左右するものではない。

イ 請求人の主張2について
請求人の主張する効果は、本願発明の構成により奏される効果として、引用発明及び技術常識A〜Cから、予測困難であるということはできず、格別顕著なものであるとは認められない。
よって、請求人の主張2は採用できないものであり、前記1において示した判断を左右するものではない。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び技術常識A〜Cに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。




 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-10-14 
結審通知日 2022-10-18 
審決日 2022-10-31 
出願番号 P2020-089908
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01R)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱本 禎広
濱野 隆
発明の名称 加算平均ユニットおよび測定装置  
代理人 酒井 伸司  

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