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審決分類 |
審判 全部申し立て ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 C03C 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C03C 審判 全部申し立て 2項進歩性 C03C 審判 全部申し立て 特174条1項 C03C |
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管理番号 | 1393054 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-05-21 |
確定日 | 2022-10-20 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6788628号発明「非誤差関数圧縮応力プロファイルによるイオン交換ガラス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6788628号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜6〕について訂正することを認める。 特許第6788628号の請求項1〜10に係る特許を維持する。 |
理由 |
理 由 第1 手続の経緯 本件特許第6788628号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜10に係る特許についての出願は、2013年(平成25年)2月27日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2012年2月29日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2014−559996号の一部を平成30年4月5日に特願2018−73075号として新たな特許出願としたものであって、令和2年11月4日にその特許権の設定登録がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 3年 5月21日 :特許異議申立人 高垣泰志(以下「申立人 」という。)による請求項1〜10に係る 特許に対する特許異議の申立て 同年 8月17日付け:取消理由通知 同年11月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提 出 同年12月 2日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出 令和 4年 1月26日 :申立人による意見書の提出 同年 5月10日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年 8月17日 :特許権者による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和3年12月2付けの手続補正書(方式)により補正された、同年11月17日付けの訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1からなる(下線部は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1について、 「前記深さd1がT前記層深さDOL未満であり」とあるのを、 「前記深さd1が前記層深さDOL未満であり」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2〜6も同様に訂正する。)。 (2)一群の請求項について 訂正前の請求項1の記載を請求項2〜6が引用する関係にあるから、訂正前の請求項1〜6は一群の請求項であるところ、本件訂正事項1に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1〜6を訂正の単位として請求されたものである。 2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否)の判断 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1において、誤記「T」を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であるといえるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 なお、特許異議の申立ては、請求項1〜10についてされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜6〕について訂正することを認める。 第3 本件発明について 本件訂正請求が認められることは前記第2に記載のとおりであるので、本件訂正請求により訂正された請求項1〜10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、これらを纏めて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された事項により特定される次のとおりのものである(下線部は訂正箇所を示す。)。 「【請求項1】 表面および0.05mmから1.3mmの範囲の厚さtを有するガラスであって、 前記ガラス中において前記表面から層深さDOLまで広がる、圧縮応力下の第一領域であって、前記圧縮応力CSが、前記表面において最大値CS1を有し、かつ前記表面からの距離dにより変わる、第一領域と、 前記層深さから前記ガラス中へと広がる、引張応力CT下の第二領域であって、当該第二領域について三角近似によって決定された値CTCは[(CS1・DOL)/(t−2・DOL)]に等しく、ここでCTCはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)より大きく、前記第二領域はさらに達成された中心張力CTAを備え、ここでCTAはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下である、第二領域と を含み、 前記第一領域が、 a.前記表面から第一深さd1まで広がる第一セグメントであって、前記深さd1が前記層深さDOL未満であり、前記圧縮応力CSが第一関数に従って変わる、第一セグメントと、 b.前記第一深さd1から前記層深さDOLまで広がる第二セグメントであって、前記圧縮応力CSが第二関数に従って変わり、前記圧縮応力が前記第二セグメント中に極大CS2を有し、ここで、CS1>CS2であり、前記第一関数が前記第二関数とは異なる、第二セグメントと、 を含む、ガラス。 【請求項2】 前記第一関数が第一相補誤差関数である、請求項1に記載のガラス。 【請求項3】 前記ガラスが、アルカリ金属酸化物を有するアルカリアルミノケイ酸塩ガラスであり、前記アルカリ金属はNaまたはKから成る、請求項1に記載のガラス。 【請求項4】 前記圧縮応力の最大値CS1が少なくとも400MPaである、請求項1に記載のガラス。 【請求項5】 前記層深さDOLは少なくとも50μmである、請求項1に記載のガラス。 【請求項6】 前記ガラスがイオン交換されたものである、請求項1に記載のガラス。 【請求項7】 表面および0.05mmから1.3mmの範囲の厚さtを有するイオン交換ガラスであって、 当該ガラスは、圧縮応力CS下にあり当該ガラスの層深さDOLまで広がる第一領域および、引張応力下にあり前記層深さDOLから当該ガラス中に広がる第二領域とを有し、 前記第二領域について、三角近似によって決定される値CTCは[(CS1・DOL)/(t−(2・DOL))]と等しく、ここで、CTCはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)より大きく、 前記第一領域は、前記表面から前記層深さDOL未満である第一深さd1まで広がる第一セグメントおよび、前記第一深さd1から前記層深さDOLまで広がる第二セグメントを有し、 前記第一セグメントにおいて、前記圧縮応力CSは前記表面において最大値CS1であり、第一誤差関数に従って変化し、 前記第二セグメントにおいて、前記圧縮応力CSは、第二関数に従って変化し、前記圧縮応力が前記第二セグメント中に極大CS2を有し、ここで、CS1>CS2であり、 ここで、前記第一誤差関数は、前記第二関数とは異なるものであり、 前記第二領域はさらに、達成された中心張力CTAを備え、ここでCTAはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下である、 イオン交換ガラス。 【請求項8】 前記圧縮応力の最大値CS1が少なくとも400MPaである、請求項7に記載のイオン交換ガラス。 【請求項9】 前記層深さDOLは少なくとも50μmである、請求項7に記載のイオン交換ガラス。 【請求項10】 前記ガラスが、アルカリ金属酸化物を有するアルカリアルミノケイ酸塩ガラスであり、前記アルカリ金属はNaまたはKから成る、請求項7に記載のイオン交換ガラス。」 第4 特許異議の申立てについて 1 取消理由の概要 令和4年5月10付け取消理由(決定の予告)、及び令和3年8月17日付け取消理由は、概略、以下のとおりである。 (1)(明確性要件違反)設定登録時及び本件訂正後の請求項1〜10に係る特許は、後記4(1)の点で、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(取消理由1)。 (2)(サポート要件違反)設定登録時の請求項1〜10に係る特許は、後記5(1)の点で、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(取消理由2)。 (3)(新規事項の追加)平成30年7月13日、令和1年11月8日及び令和2年8月5日にした手続補正は、後記6(1)の点で、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるということができないため、設定登録時の請求項1〜10に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである(取消理由3)。 2 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の概要 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。 (1)(進歩性欠如)設定登録時の請求項1〜10に係る発明は、後記3(1)の甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1〜10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(申立理由1)。 3 証拠方法 (1)申立人が提出した甲各号証 甲第1号証:特表2011−527661号公報 甲第2号証:特表2011−530470号公報 甲第2’号証:米国特許第8075999号明細書 (2)特許権者が提出した乙各号証 乙第1号証:特許第6788628号公報 乙第2号証:特許第6370714号公報 乙第3号証:特表2015−511573号公報 乙第4号証:国際公開第2013/130653号 乙第5号証:Andrew D. Yablon, "Multi-Wavelength Optical Fiber Refractive Index Profiling by Spatially Resolved Fourier Transform Spectroscopy", JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, 2010, Vol.28, No.4, P.360-364 乙第6号証:Brent L. Bachim and Thomas K. Gaylord, "Microinterferometric optical phase tomography for measuring small, asymmetric refractive-index differences in the profiles of optical fibers and fiber devices", APPLIED OPTICS, 2005, Vol.44, No.3, P.316-327 乙第7号証:N. Warnasooriya and M. K. Kim, "LED-based multi-wavelength phase imaging interference microscopy", OPTICS EXPRESS, 2007, Vol.15, No.15, P.9239-9247 乙第8号証:Dietrich Marcuse, "Principles of Optical Fiber Measurements", Academic Press, 1981, P.119-196 乙第9号証:米国特許出願公開第2013/0183512号明細書 乙第10号証:Arun K. Varshneya, "Fundamentals of Inorganic Glasses", 1994, Academic Press, Inc., 1994, フロント頁, 奥付頁, P.456-506 乙第11号証:"Standard Test Method for Measuring Optical Retardation and Analyzing Stress in Glass", ASTM, 2010, F218-05, P.1-7 乙第12号証:Kristy L. Smith, "RESPONSE TO NOTICE OF INVALIDATION", August 11, 2022 以下、項番に応じて「甲1」、「乙1」などという。 4 取消理由1(明確性要件違反)について (1)具体的な指摘事項 ア 設定登録時の請求項1、7に記載の「達成された中心張力CTA」について、本件特許明細書には「CTA」の定義や測定方法について何ら説明がなされていないことはもとより、「CTA」という記載自体が存在しておらず、本件特許の出願当時の技術常識を考慮しても、「達成された中心張力CTA」の定義及び測定方法がいかなるものであるのかを把握することができないから、その意味が不明りょうである。 イ 本件訂正後の請求項1、7に記載の「達成された中心張力CTA」が、特定の3工程(第一イオン交換工程、熱処理及び再イオン交換)を経て得られる結果物が備える中心張力、すなわち当該結果物を評価して得られる中心張力の測定値を意味するものであるとしても、発明の詳細な説明における圧力の測定方法に係る記載には不明な点が散見されるし、そのような測定方法によって適正な応力プロファイルが得られることを裏付ける技術常識が本件特許の出願当時にあったともいえないから、「達成された中心張力CTA」の意味を一義的に決定できない。 (2)当審の判断 ア 「達成された中心張力CTA」の定義について (ア)標記の点について、改めて検討すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」という。また、下線は当審が付したものであり、「…」は省略を表す。以下、同様である。)の段落【0014】における「イオン交換した平面ガラス物品の断面概略図を図1に示す。…図1に示された実施形態において、ガラス物品100は、第二表面112から第二層深さd2まで広がる第二圧縮層122も有する。ガラス物品100は、d1からd2まで広がる中心領域130も有する。中心領域130は、引張張力または中心張力(CT)下にあり、当該張力は、第一圧縮層120および第二圧縮層122の圧縮応力と釣り合うかまたはそれを打ち消す。」との記載によれば、「中心張力」とは、イオン交換したガラス物品における圧縮層の圧縮応力と釣り合う中心領域の引張張力であることを理解できる。 (イ)また、発明の詳細な説明の段落【0005】における「本開示は、貯蔵された張力の所定のレベルにおいて、相補誤差関数に従う応力プロファイルを有するガラスにおいて許容可能であるものよりも高い表面圧縮およびより深い層深さ(DOL)を可能にする圧縮応力プロファイルを有するガラスを提供する。…これらの圧縮応力プロファイルは、相補誤差関数に従う圧縮応力および層深さを作り出すための第一イオン交換工程と、ガラス内の応力を部分的に緩和させてより大きなアルカリイオンをより深くまで拡散させるための、ガラスの歪点より低い温度での熱処理と、表面において高い圧縮応力を再確立するための短時間の再イオン交換とを含む3工程プロセスによって達成される。」との記載によれば、本件発明のガラスは、相補誤差関数に従う圧縮応力および層深さを作り出すための第一イオン交換工程と、ガラス内の応力を部分的に緩和させてより大きなアルカリイオンをより深くまで拡散させるための、ガラスの歪点より低い温度での熱処理工程と、表面において高い圧縮応力を再確立するための短時間の再イオン交換工程の3工程プロセス(以下、「特定の3工程」という。)を経ることで、従来の相補誤差関数に従う応力プロファイルよりも、高い表面圧縮及びより深い層深さ(DOL)を可能にする圧縮応力プロファイルを達成したものであることを理解できる。そして、図5〜8の応力プロファイルは、前記「特定の3工程」を経たイオン交換ガラスの厚み方向の応力を示すものであり(【0048】〜【0055】)、当該応力プロファイルから中心領域の引張張力の測定値を読み取れることを理解できる。 (ウ)加えて、令和3年11月17日提出の特許権者による意見書(以下、「特許権者意見書1」という。)を参照すると、段落【0005】の記載を摘記しつつ、「このように特定の3つの工程を経て得られる結果物が備える(結果物が獲得した)中心張力のことを、請求項の中で便宜上「達成された中心張力CTA」としました。」(3頁17〜27行)、また、図5〜8を摘記しつつ、「具体的な「達成された中心張力CTA」の値については、本件特許明細書の図面のうち、特に、図5〜8における「工程3」のグラフからそれぞれ読み取ることができます。」(4頁2〜4行)と主張しているが、上記(イ)で検討したとおり、図5〜8には、「特定の3工程」を経たイオン交換ガラスの応力プロファイルが示されており、当該応力プロファイルからは引張張力の測定値を読み取れるから、特定の3工程を経て得られる結果物が備える中心張力を「達成された中心張力CTA」として定義するとの上記主張は、発明の詳細な説明の内容と矛盾するものではない。 (エ)そうすると、請求項1、7で規定される「達成された中心張力CTA」とは、特定の3工程を経て得られるイオン交換ガラスが達成する応力プロファイルから読み取った中心張力の測定値であるといえる。 イ 「達成された中心張力CTA」の測定方法について (ア)標記の点について、改めて検討すると、発明の詳細な説明の段落【0049】には、「以下の名目上の組成…を有するガラスの4つの実施例を調製し、本明細書において説明した方法に従ってイオン交換して、単一の相補誤差関数に従わない応力プロファイルを達成した。応力測定および深さプロファイルは、イオン交換したガラスの650μm直径のロッドにおいて干渉法を使用して作成した。当該方法は、ロッドの最初の5〜10μm内側での応力の測定に限定した。1.3mm厚の平面ガラス試料上でのFSM測定を使用して、表面圧縮の補正を行った。」と、「本明細書において説明した方法」、すなわち「特定の3工程」を経たガラスの「達成された中心張力CTA」を決定するにあたり、(i) 干渉法を使用して「特定の3工程」を経た650μm直径のロッドの応力プロファイルを作成すること、(ii)前記干渉法による測定はロッドの最初の5〜10μm内側に限定すること、及び、(iii)1.3mm厚の平面ガラス試料上でのFSM測定を使用して表面圧縮の補正を行うこと、が記載されている。 (イ)ここで、干渉法により物質内の光学特性を測定すること、及び光学特性の測定値を応力に変換することは、それぞれ、令和4年8月17日提出の特許権者による意見書(以下、「特許権者意見書2」という。)に添付された乙5〜8、乙9〜11等にも記載されるように技術常識といえるから、発明の詳細な説明に干渉法の測定条件等の具体的な記載がなくとも、上記(ア)の工程(i)により、干渉法を使用して「特定の3工程」を経た650μm直径のロッドの応力プロファイルを作成することができる。 (ウ)また、上記 (ii)の「ロッドの最初の5〜10μm内側」とは、その記載ぶりからして、ロッド表面から5〜10μmの深さの意味であると解するのが自然かつ合理的であるから、工程(i)の干渉法による光学特性の測定は、ロッドの表面から5〜10μmの深さから中心付近まで行われたこと、すなわち表面から5〜10μmの深さを除いた部分で行われることを理解できる。 (エ)加えて、上記工程(iii)に関し、「FSM」とは「Fundamental Stress Meter」の略であり、「FSM測定」は物体表面の応力測定の意味であることは、具体的な証拠を示すまでもなく技術常識といえる。そして、上記(ウ)で検討したとおり、干渉法を使用した光学特性の測定が、ロッド表面から5〜10μmの深さの部分を除いた部分で行われることを考慮すれば、上記工程(iii)は、工程(i)で得られた応力プロファイルの表面付近の応力プロファイルを、1.3mm厚の平面ガラス試料に対するFSM測定の結果を用いて補正することであると理解できる。 (オ)そうすると、発明の詳細な説明の段落【0049】には、「特定の3工程」を経た650μm直径のロッド形状のガラスの表面から5〜10μの深さまでの部分を除いた部分の光学特性を干渉法で測定し、その測定値を応力に変換して応力プロファイルを得るとともに、1.3mm厚の平面ガラス試料に対するFSM測定の結果を用いて表面付近の応力プロファイルを補正することが記載されているといえる。加えて、前記ロッド形状のガラスが「特定の3工程」を経たものであることから、当該ロッド形状のガラスの直径650μmは、本件発明1のガラスの厚さtに対応するものであり、前記平面ガラスの厚さ1.3mmは、本件発明1のガラスの厚さtよりも十分に大きい厚さに対応するものであることも理解できる。 (カ)上記(ア)〜(オ)の検討をふまえると、請求項1、7で規定される「厚さtを有するガラス」の「達成された中心張力CTA」の測定方法は、特定の3工程を経た直径tのロッド形状のガラスの表面から5〜10μの深さまでの部分を除いた部分の光学特性を干渉法で測定し、その測定値を応力に変換して応力プロファイルを得るとともに、厚さtよりも十分に大きな厚さの平面ガラス試料に対するFSM測定の結果を用いて表面付近の応力プロファイルを補正し、当該補正した応力プロファイルから引張張力の測定値を読み取るというものであることを理解できる。 ウ まとめ 上記ア及びイの検討によれば、請求項1、7の「達成された中心張力CTA」の定義及び測定方法がいかなるものであるのかを把握することができるから、「達成された中心張力CTA」の値を一義的に決定することができる。 (3)申立人の主張 申立人は、令和4年1月26日提出の意見書(以下、「申立人意見書」という。)において、発明の詳細な説明の段落【0049】の記載に関し、下記ア〜エの点で、請求項1、7で規定される「達成された中心張力CTA」の測定方法及び定義を把握できないことを主張しているから、以下、これらの点について検討する。 ア 「干渉法」について 申立人意見書(2頁13〜14行)において、「干渉法」は種々の方法が存在するが、その詳細は不明である旨を主張する。しかしながら、干渉法により物質内の光学特性を測定し、測定した光学特性を応力に変換できることが技術常識といえることは、上記(2)イ(イ)で検討したとおりである。そうすると、当業者であれば、干渉法による測定及び応力変換を行うにあたり通常の条件の中から選択することができるから、上記主張は採用できない。 イ 「ロッドの最初の5〜10μm内側」について 申立人意見書(2頁15行〜3頁1行)において、「ロッドの最初の5〜10μm内側」が、ロッドのどの部位について応力測定を行ったのか不明である旨を主張する。しかしながら、上記(2)イ(ウ)で検討したとおり、「ロッドの最初の5〜10μm内側」とは、その記載ぶりからして、「ロッド表面から5〜10μmの深さ」の意味であると解するのが自然かつ合理的である。そうすると、「ロッドの最初の5〜10μm内側」についての応力測定は、申立人意見書(2頁23〜25行)において自ら示した、「ロッドの外周面から深さ5〜10μmの範囲内で所定の基準深さを設定し、当該基準深さから更に深い部位(中心領域を含む)について、干渉法で応力を測定」するものといえるから、上記主張は採用できない。 ウ 「表面圧縮の補正」について 申立人意見書(3頁15〜17行)において、FSM測定を使用して、どのような態様で表面圧縮(圧縮応力)の補正を行ったのか不明である旨を主張する。しかしながら、上記(2)イ(エ)で検討したとおり、FSMの測定結果による補正は、厚さtよりも十分に大きい厚さの平面ガラス試料をFSM測定し、その結果を用いて干渉法によるロッド表面付近の応力プロファイルを補正することであることを理解できるから、上記主張は採用できない。 エ 「中心張力プロファイル」について 申立人意見書(4頁4〜7行)において、「図5〜8に示されている中心張力プロファイルは、中心張力の計算値(積分値から算出した値)ではなく、中心張力の測定値(実測値)」に基づいて作成されたものであると考えられる」とした上で、特許権者意見書1(3頁28〜31行)における「結果物の圧縮プロファイルを測定することで、それに釣り合う中心張力も求めることができます」との説示には矛盾があると説示し、「達成された中心張力CTA」の定義及び測定方法がいかなるものであるか把握できない旨を主張する。しかしながら、申立人の上記主張の根拠は判然としないものであるし、「達成された中心張力CTA」の定義及び測定方法が理解できることは、上記(2)ア及びイでの検討のとおりであるから、上記主張は採用できない。 (4)小括 よって、取消理由1に理由はない。 5 取消理由2(サポート要件違反)について (1)具体的な指摘事項 設定登録時の請求項1、7に記載の「達成された中心張力CTA」という記載について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「CTA」という記載自体が存在せず、また、「CTA」が「−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)」以下であることの記載もないから、請求項1、7の「前記第二領域はさらに達成された中心張力CTAを備え、ここでCTAはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下である」との記載は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (2)当審の判断 ア 「CTA」について 上記4での判断をふまえて改めて検討すると、発明の詳細な説明には、「CTA」という記載は存在しないものの、「達成された中心張力CTA」が、特定の3工程を経て得られるイオン交換ガラスが達成する応力プロファイルから読み取った中心張力の測定値といえることは、上記4(2)ア(エ)のとおりであるから、発明の詳細な説明に「CTA」という記載がないことをもって、発明の詳細な説明に記載されたものではない、ということはできない。 イ 「CTA」が「−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下」について (ア)標記の点について、改めて検討すると、請求項1、7で規定される「−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)」という数式に関し、発明の詳細な説明の段落【0026】には、「 」との記載があり、同【0023】に「厚さtの関数として脆性限界CTlimit」と記載されていることも考慮すると、上記数式は、脆性限界CTlimitを表すものであることを理解できる。 (イ)また、同【0047】の「本明細書において説明されたガラスおよび方法は、脆性限界未満に維持しつつ、CSおよびDOLのより高い組合せを達成する。」との記載から、「本明細書において説明されたガラス」は、CSおよびDOLのより高い組合せを達成し、かつ脆性限界未満に維持されたものであることを理解できる。 (ウ)ここで、図5〜8には、前記「本明細書において説明されたガラス」の具体例といえる、「本明細書において説明した方法に従ってイオン交換して、単一の相補誤差関数に従わない応力プロファイルを達成した」「4つの実施例」(同【0049】)の応力プロファイルが示されているところ、当該応力プロファイルから「達成された中心張力CTA」の測定値を読み取ると、図5〜7について、概ね40〜60MPa程度であることが読み取れる。 (エ)ここで、図5〜7に示された応力プロファイルは、イオン交換した650μm直径のロッドのものであるところ、「厚さt=650μm」を上記(ア)の数式に代入すると、「脆性限界CTlimit」は概ね65MPa程度と算出される。そうすると、図5〜7から読み取った「達成された中心張力CTA」の測定値(概ね40〜60MPa)は、「脆性限界CTlimit」(65MPa程度)以下の値になっている。 (オ)したがって、発明の詳細な説明において、「CTA」が「−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下」であることは、実質的に記載された事項ということができる。 (3)申立人の主張 ア 申立人意見書(5頁2行〜7頁18行)において、「図5〜7における「工程3」の応力プロファイルから読み取ることができる中心張力の値は、特許権者が意見書の第4〜5頁で述べている上記のCTAの値よりもかなり大きく、何れの図においても少なくとも65MPa超であると読み取れる。よって、中心張力の値が「−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)」以下であることが、図5〜7に示されているとは言えない。…達成された中心張力CTAを、「−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)」=(CTlimit)を上限値(閾値)としてそれ以下に規制するということが全く記載されていない状況下において、図5〜7における中心張力の具体値の開示を、本件発明1、7の「ここでCTAはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下である」という数値限定の発明特定事項(CTA≦CTlimit)にまで拡張することはできない。」と主張する。 イ しかしながら、図5〜7の応力プロファイルに関し、中心張力CTAの測定値が概ね40〜60MPa程度と読み取れることは、上記(2)イ(ウ)で検討したとおりであるし、段落【0047】には、「本明細書において説明されたガラス」を脆性限界未満に維持することも記載されているから、「達成された中心張力CTAを、「−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)」=(CTlimit)を上限値(閾値)としてそれ以下に規制するということが全く記載されていない」という主張は採用できない。 ウ また、申立人意見書(3頁3〜14行)において、「このロッド形状のイオン交換ガラスについての中心張力の測定結果を、平板形状を含むイオン交換ガラス一般にまで拡張して適用することに合理性が認められない(これはサポート要件の問題でもある)。…圧縮応力層が中心領域を外周側から包囲するような態様で形成されるロッド形状のイオン交換ガラスと、圧縮応力層が中心領域を両表面側から挟むような態様で形成される平板形状のイオン交換ガラスとでは、中心領域に対する圧縮応力層の圧縮応力の作用態様が異なるため、中心領域に貯蔵される中心張力の大きさも異なると考えられる。」と主張する。 エ そこで検討するに、まず、請求項1、7の「達成された中心張力CTA」が、特定の3工程を経て得られるイオン交換ガラスが達成する応力プロファイルから読み取った中心張力の測定値であることは、上記4(2)ア(エ)のとおりであり、「達成された中心張力CTA」の測定方法が、「特定の3工程を経た直径tのロッド形状のガラスの表面から5〜10μの深さまでの部分を除いた部分の光学特性を干渉法で測定し、その測定値を応力に変換して応力プロファイルを得るとともに、厚さtよりも十分に大きな厚さの平面ガラス試料に対するFSM測定の結果を用いて表面付近の応力プロファイルを補正し、当該補正した応力プロファイルから引張張力の測定値を読み取る」というものであることは、同イ(カ)のとおりである。 オ 上記エによれば、「達成された中心張力CTA」は、本件発明のガラスを得るときに採用される特定の3工程を経た直径tのロッド形状のガラスの応力プロファイルから引張張力の測定値を読み取ったもの、すなわち、本件発明のガラス形状に関わらず直径tのロッド形状のガラスを測定試料として用いるものといえる。他方、本件発明1〜10に係る請求項1〜10には、ガラスの「厚さt」が「0.05mmから1.3mmの範囲である」ことが特定されているから、形状について他の特定がないことをもって、発明の詳細な説明の記載を本件発明1〜10の範囲まで拡張ないし一般化することができない、ということはできない。 カ なお、特許権者意見書2(7頁下から4〜1行)において、「本件特許権者は650μm厚のシート(平面ガラス)で応力プロファイルを可能な限り再現し、それを現在利用可能な装置と技術を用いて測定しました。これらの再現実験の実験結果を乙第12号証として添付いたします。」と説示する。そこで、乙12(2〜3頁)を参照すると、本件特許の図5〜7に示される実施例に対応する特定の3工程を経た650μm厚の平面ガラスのCTを測定することが記載されているところ、当該CTの測定結果は、ガラスの形状や測定方法の点で本件発明の「達成された中心張力CTA」の測定方法と完全に一致するものではないが、請求項1、7で規定される「達成された中心張力CTA」と「CTlimit」の大小関係と整合するものといえる。 (4)小括 よって、取消理由2に理由はない。 6 取消理由3(新規事項の追加)について (1)具体的指摘事項 平成30年7月13日、令和1年11月8日及び令和2年8月5日にした手続補正において追加された事項のうち、「達成された中心張力CTA」、及び、当該「CTA」が「−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下である」に関連し、特許権者は、平成30年7月13日提出の上申書において、CTAなる用語は、本件特許出願の分割前の原出願(特願2014−559996号)の分割直前における段落【0005】、【0016】、【0047】、【0049】、【0051】〜【0064】及び要約の記載に基づくものである旨主張しているが、原出願の前記該当部分及び当初明細書等には、CTAなる用語や当該CTAが「−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下」との記載はなく、また、実施例に相当する図5〜8を参酌しても記載はないし、本件特許出願時の技術常識に照らして自明な事項であるともいえないから、上記補正により追加された事項は、当初明細書等の全ての記載を総合して導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 (2)当審の判断 上記(1)の指摘事項について改めて検討すると、当初明細書等には、「CTA」という記載自体、及び「CTA」が「−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下」であることの明示的な記載はないものの、これらが発明の詳細な説明に実質的に記載されたものといえることは、上記5(2)で検討したとおりである。そうすると、上記補正により追加された事項について、当初明細書等の全ての記載を総合して導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである、ということはできない。 (3)申立人の主張 ア 特許異議申立書(11頁9行〜16頁3行)において、本件特許の当初明細書の段落【0022】及び【0023】で参照している米国特許第8075999号明細書(甲2’:甲2は甲2’に対応する公表公報である。)の記載を参酌しても、本件発明1の「前記第二領域はさらに達成された中心張力CTAを備え、ここでCTAはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下である」との事項、及び本件発明7の「前記第二領域はさらに、達成された中心張力CTAを備え、ここでCTAはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下である」とに事項を追加する補正は新規事項であると主張するが、甲2’(甲2)の記載にかかわらず、前記事項が新規事項に該当しないことは、上記(2)のとおりであるから、当該主張は採用できない。 イ 申立人意見書(7頁下から3行〜8頁12行)において、「図5〜7は中心張力の値が「−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下」であることを示しているとは言えない。また、仮に図5〜7の中心張力が「−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下」であったとしても、図5〜7及び段落0048〜0054の開示は、本件発明1、7の「ここで、CTAはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下である」という発明特定事項を開示したものとは言えない。」と主張するが、当該主張の論拠は、上記5(1)の指摘事項と同様であり、同(2)で検討したのと同様の理由により採用することはできない。 (4)小括 よって、取消理由3に理由はない。 7 申立理由1(進歩性欠如)について (1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明 ア 甲1の記載事項 甲1には以下の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 複数のイオン交換浴への連続的な浸漬によって化学的に強化され、 圧縮応力下で外側領域を有する、 ガラスであって、 前記外側領域が、前記ガラスの表面から、ある層深度、および中央引張領域に及び、 前記中央引張領域が、約2.8MPa・cmから約3.2MPa・cmの範囲の値以下の積分中心張力を受ける、 ガラス。」 (イ)「【技術分野】 【0002】 本開示は、強化ガラスに関する。さらに詳細には、本開示は、イオン交換によるガラスの化学的強化に関する。さらに具体的には、本開示は、多重的イオン交換処理によるガラスの化学的強化に関する。 … 【0016】 本明細書には強化ガラスが開示される。1つの実施の形態では、ガラスは、約0.5〜3mmの範囲の厚さを有する、プレート、平面シート、または3次元の曲面物体またはシートの形状をしている。ガラスシートの断面の略図を図2に示す。ガラス100は、圧縮応力が表面110またはその近くで生じるような工程に晒され、ここで、前記表面自体が少なくともある程度の圧縮応力下にある。1つの実施の形態では、圧縮応力は少なくとも200MPaである。圧縮を受ける層の深さ(「層深度」または「DOL」)120は少なくとも約50μmである。 【0017】 表面110近くの圧縮応力は、ガラス内の力のバランスを取るために、中央領域130に引張応力を誘起する。積分中心張力(ICT)は、応力プロファイルの引張部分全体にわたる応力の積分によって得られる。ICTは、ガラス100の全厚、圧縮応力層の深さ(「層の深度」または「DL」)、および圧縮応力層の形状またはプロファイルに関連している。ICTとは、引張応力の平均値に、表面に対して垂直方向における引張応力領域の長さを乗じた値であり、本明細書ではMPa・cmで表す。力のバランスにより、積分された表面圧縮はICTと全く同一の大きさであるが、全てを積分した応力はゼロでなければならないことから、反対(負)の符号を有する。ガラスの一部に破壊を生じるのに十分な点衝撃に晒す際にガラスを壊れにくくするため、張力下における中央領域130の体積の積分値は、約2.8MPa・cmから約3.2MPa・cm以下であり、一部の実施の形態では、約3.0MPa・cm以下である。 … 【0020】 ガラスの表面110またはその近く(すなわち、表面から10μm以内)に、層の深さにまで及ぶ圧縮応力を生じさせるために用いる方法は、複数の(または多重的な)強化ステップを有してなる。多重的な強化ステップは、互いに連続して、かつ互いに別々に行われる。別の実施の形態では、連続的な強化ステップの合間に、アニーリング、洗浄、予熱などの追加のステップの少なくとも1つが行われうる。…表面領域の部分を占拠する、より大きいイオンの存在により、ガラスの表面領域に圧縮応力が生じる。表面領域に圧縮応力が存在することにより、ガラス内の力のバランスを取るため、ガラスの中心または内部の領域に、対応する引張または中心張力が生じる。 … 【0027】 1つの実施の形態では、損傷抵抗は、表面に高い圧縮応力を保持しつつ、表面下に少なくとも1つの圧縮応力の最大値、すなわち「ピーク」を提供することによって達成されうる。イオン交換は、アルカリ金属の段階的な濃度プロファイルを生じる。このプロファイルは、異なるガラス部分間に内部界面を有しないにもかかわらず、薄層の効果を有する。したがって、イオン交換によって導入された圧縮応力のピークは、ガラスが落下または衝撃を受ける状況において、利益をもたらすであろうことが予想される。 【0028】 単一イオン交換(表1および2におけるIX1)および二重イオン交換(表1および2におけるIX2)を使用したガラスについて得られた応力プロファイルを表1に記載する。二重および三重イオン交換(表2におけるIX3)を使用したガラスについて得られた応力プロファイルを表2に記載する。表示したプロセスに晒された、異なる厚さ(表1および2におけるL)のガラスサンプル(近似組成:66.18mol%のSiO2;14.00mol%Na2O;10.29mol%Al2O3;0.59mol%B2O3;2.45mol%K2O;5.71mol%のMgO;0.57mol%のCaO;0.18mol%のSnO2;および0.02mol%のZrO2)について実験を行った。強化プロセスの完了後に各サンプルを破壊することによって、先に定義した脆性を評価した(試験しなかった実施例14および15を除く)。約3未満の積分圧縮張力(ICT)を有するサンプルは壊れにくいが、約3を超えるICT値を有するものは壊れやすかった。表1および2に示す、ICT値および脆性の検査結果は、壊れにくい性質から壊れやすい性質への推移は、完全にシャープではないが、ほぼ、ICTが約2.8MPa・cm〜約3.2MPa・cmの領域に生じることを示している。層の深さ(DOL:表面から、応力が信号を変更する位置までの距離として定義される)、CS(表面における圧縮応力)およびICTの値は、本明細書に先に記載したモデル計算を使用して得られる。DOLおよびCSの表の値は、測定値と同様である。しかしながら、ICTを計算するためには、拡散/応力モデルを使用して、十分な応力プロファイルについての詳細な形状を提供する必要がある。層の深さ全体にわたる実際の応力プロファイルを測定するために機器類が利用可能な場合には、ICTは、モデルの必要性なしに応力プロファイルから直接計算して差し支えない。いずれの場合にも、ICTは、壊れにくい性質および/または壊れやすい性質を予測するための手段としての役割をする。 【表1】 【表2】 【0029】 単一、二重、および三重イオン交換法を受けたサンプルについて得られたイオン交換プロファイルを、深さの関数として図3にプロットした。イオン交換プロファイルは、ガラスサンプルの深さの関数として、電子マイクロプローブ解析によって決定される、カリウム濃度を表している。410℃の純KNO3浴中で8.5時間(図3における1)の単一イオン交換によって得られたイオン交換/酸化カリウム・プロファイルを、2つの多重的なイオン交換の壊れにくいプロファイル、すなわち:410℃の純KNO3浴中で16時間、その後、410℃の純NaNO3浴中で80分間の工程を有する二重イオン交換(図3における2);および、410℃の純KNO3浴中で16時間、その後、410℃の純NaNO3浴中で3時間、さらにその後、410℃の純KNO3浴中で20分間(表3における実施例10)の工程を有する、三重イオン交換(図3における3)と比較する。ガラスが純KNO3塩浴に浸漬される時間が延長されると、はるかに深い圧縮応力層を生じる。純NaNO3浴中での比較的短時間のイオン交換は、非常に大きい応力が表面に集中することから、積分圧縮応力を軽減し、したがって、積分中心張力を低下させる働きをする。例えば三重イオン交換プロファイルなどにおいて、中心張力が十分に低下したら、次に、追加のイオン交換法において表面の近くに追加の圧縮応力を加えることができる。このパターンは、無限に繰り返すことができ、必要に応じて複数の内部ピークを生成し、また、積分中心張力が約2.8MPa・cmから約3.2MPa・cmの範囲の値以下、一部の実施の形態では、約3.0MPa・cm以下である限り、川下用途へのリスクを有しない。」 (ウ)「 」 イ 甲1に記載された発明 上記ア(イ)の段落【0028】【表2】の実施例13に注目すると、同(ア)の【請求項1】の「複数のイオン交換浴への連続的な浸漬によって化学的に強化され、圧縮応力下で外側領域を有する、ガラスであって、前記外側領域が、前記ガラスの表面から、ある層深度、および中央引張領域に及び、前記中央引張領域が、約2.8MPa・cmから約3.2MPa・cmの範囲の値以下の積分中心張力を受ける、ガラス」の具体例として、三重のイオン交換法により化学的に強化された、厚さ(L)が0.197cm、層深さ(DOL)が81μm、表面の圧縮応力(CS)が546MPa、積分中心張力(ICT)が3MPa・cmであるガラスが記載されている。 ここで、同(ウ)の段落【0028】によれば、層深さ(DOL)とは、表面から応力が信号を変更する位置までの距離として定義されることが記載されている。 また、同【0029】によれば、三重イオン交換法を受けたサンプルで得られたイオン交換プロファイルを深さの関数としてプロットすると、図3における「3」で示されるようなイオン交換プロファイルになることと、追加のイオン交換法において表面近くに追加の圧縮応力を加えられることが記載されているから、三重イオン交換法を受けたガラスは、同【0027】に記載されるように、表面に高い圧縮応力を保持しつつ、表面下に少なくとも1つの圧縮応力の最大値、すなわち「ピーク」有するといえる。 以上をふまえると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「三重のイオン交換法により化学的に強化されて、圧縮応力下の外側領域を有し、前記外側領域は前記ガラスの表面から層深さ(DOL)まで形成され、中央引張領域を有し、前記中央引張領域が、約2.8MPa・cmから約3.2MPa・cmの範囲の値以下の積分中心張力を受けるガラスであって、 前記ガラスは、厚さ(L)が0.197cm、層深さ(DOL)が81μm、表面の圧縮応力(CS)が546MPa、積分中心張力(ICT)が3MPa・cmであり、 表面に高い圧縮応力を保持しつつ、表面下に少なくとも1つの圧縮応力のピークを有する、ガラス。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「表面から層深さ(DOL)まで形成され」る「圧縮応力下の外側領域」は、本件発明1の「前記ガラス中において前記表面から層深さDOLまで広がる、圧縮応力下の第一領域」に相当し、甲1発明の「中央引張領域」は、本件発明1の「引張応力CT下の第二領域」に相当する。 甲1発明のガラスが「表面に高い圧縮応力を保持」することは、前記表面に圧縮応力の最大値を有することいえるから、甲1発明の「表面に高い圧縮応力を保持し」は、本件発明1の「前記表面において最大値CS1を有し」に相当する。 また、甲1発明の「圧縮応力下の外側領域」において、イオン交換後の圧縮応力の値が深さによって変化することは明らかである。 以上をふまえると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおり整理される。 <一致点> 「表面および厚さtを有するガラスであって、 前記ガラス中において前記表面から層深さDOLまで広がる、圧縮応力下の第一領域であって、前記圧縮応力CSが、前記表面において最大値CS1を有し、かつ前記表面からの距離dにより変わる、第一領域と、 前記層深さから前記ガラス中へと広がる、引張応力CT下の第二領域と、 を含む、ガラス。」 <相違点> (相違点1) 本件発明1のガラスは、「0.05mmから1.3mmの範囲の厚さt」を有するのに対し、 甲1発明のガラスは、「厚さ(L)が0.197cm」である点。 (相違点2) 本件発明1の「第二領域」は、「三角近似によって決定された値CTCは[(CS1・DOL)/(t−2・DOL)]に等しく、ここでCTCはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)より大き」いのに対し、 甲1発明の「中央引張領域」について、そのような特定はない点。 (相違点3) 本件発明1の「第二領域」は、「達成された中心張力CTAを備え、ここでCTAはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下」であるのに対し、 甲1発明の「中央引張領域」は、「積分中心張力(ICT)が3MPa・cm」である点。 (相違点4) 本件発明1の「第一領域」は、「a.前記表面から第一深さd1まで広がる第一セグメントであって、前記深さd1が前記層深さDOL未満であり、前記圧縮応力CSが第一関数に従って変わる、第一セグメントと、b.前記第一深さd1から前記層深さDOLまで広がる第二セグメントであって、前記圧縮応力CSが第二関数に従って変わり、前記圧縮応力が前記第二セグメント中に極大CS2を有し、ここで、CS1>CS2であり、前記第一関数が前記第二関数とは異なる、第二セグメントと、を含む」のに対し、 甲1発明の「外側領域」について、そのような特定はない点。 イ 判断 事案にかんがみ、相違点3から検討する。 本件発明1の「第二領域」における「達成された中心張力CTA」が、特定の3工程を経て得られるイオン交換ガラスが達成する応力プロファイルから読み取った中心張力を意味するものであることは、上記4(2)アで検討したとおりである。 他方、甲1発明の「中央引張領域」における「積分中心張力(ICT)」については、上記(1)ア(イ)の段落【0017】に「ICTとは、引張応力の平均値に、表面に対して垂直方向における引張応力領域の長さを乗じた値であり」と記載され、同(イ)の段落【0028】に「DOLおよびCSの表の値は、測定値と同様である。しかしながら、ICTを計算するためには、拡散/応力モデルを使用して、十分な応力プロファイルについての詳細な形状を提供する必要がある」と記載されている。これらの記載を考慮すると、甲1発明の「積分中心張力(ICT)」は、詳細に提供された応力プロファイルから算出された引張応力の平均値に垂直方向における引張応力領域の長さを乗じた値といえるから、「積分中心張力(ICT)」を引張応力領域の長さの値で除して求められるのは、応力プロファイルから算出された引張張力の平均値である。そうすると、甲1発明の「積分中心張力(ICT)」は、本件発明1の「達成された中心張力CTA」のように、応力プロファイルから読み取った測定値とはいえないから、上記相違点3は実質的なものである。 そして、相違点3の容易想到性について検討するに、甲1の図3には、三重イオン交換したときのイオン交換プロファイルが記載されていところ(上記(1)ア(ウ))、当該イオン交換プロファイルは、深さに対するK2O濃度を示すものであって、同(イ)の段落【0028】でいうところの「詳細に提供された応力プロファイル」ではないから、前記イオン交換プロファイルから引張張力の測定値を読みとることはできない。さらに、甲1の明細書等の他の記載を子細にみても、応力プロファイルから読み取った引張張力の測定値を、「−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下」にすることは記載されていないし、これを記載する他の証拠もない以上、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることはできない。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 なお、上記の検討は、実施例13に着目したものであるが、他の実施例に着目しても同様である。 (3)本件発明2〜6について 本件発明2〜6に係るガラスは、本件発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、本件発明2〜6は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明7について ア 対比 本件発明7と甲1発明を対比する。 甲1発明の「表面から層深さ(DOL)まで形成され」る「圧縮応力下の外側領域」は、本件発明7の「圧縮応力CS下にあり当該ガラスの層深さDOLまで広がる第一領域」に相当し、甲1発明の「中央引張領域」は、本件発明7の「引張応力下にあり前記層深さDOLから当該ガラス中に広がる第二領域」に相当するから、本件発明7と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおり整理される。 <一致点> 「表面および厚さtを有するイオン交換ガラスであって、 当該ガラスは、圧縮応力CS下にあり当該ガラスの層深さDOLまで広がる第一領域および、引張応力下にあり前記層深さDOLから当該ガラス中に広がる第二領域とを有し、 イオン交換ガラス。」 <相違点> (相違点1’) 本件発明7のガラスは、「0.05mmから1.3mmの範囲の厚さt」を有するのに対し、 甲1発明のガラスは、「厚さ(L)が0.197cm」である点。 (相違点2’) 本件発明7の「第二領域」は、「三角近似によって決定される値CTCは[(CS1・DOL)/(t−(2・DOL))]と等しく、ここで、CTCはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)より大き」いのに対し、 甲1発明の「中央引張領域」について、そのような特定はない点。 (相違点3’) 本件発明7の「第二領域」は、「達成された中心張力CTAを備え、ここでCTAはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下」であるのに対し、 甲1発明の「中央引張領域」は、「積分中心張力(ICT)が3MPa・cm」である点。 (相違点4’) 本件発明7の「第一領域」は、「前記表面から前記層深さDOL未満である第一深さd1まで広がる第一セグメントおよび、前記第一深さd1から前記層深さDOLまで広がる第二セグメントを有し、前記第一セグメントにおいて、前記圧縮応力CSは前記表面において最大値CS1であり、第一誤差関数に従って変化し、前記第二セグメントにおいて、前記圧縮応力CSは、第二関数に従って変化し、前記圧縮応力が前記第二セグメント中に極大CS2を有し、ここで、CS1>CS2であり、ここで、前記第一誤差関数は、前記第二関数とは異なるもの 」であるのに対し、 甲1発明の「外側領域」について、そのような特定はない点。 イ 判断 事案にかんがみ、相違点3’から検討すると、上記(2)で検討した相違点3と事情は同じであるから、甲1発明において、上記相違点3’に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることはできない。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)本件発明8〜10について 本件発明8〜10に係るガラスは、本件発明7の発明特定事項をすべて具備するものであるから、本件発明8〜10は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6)申立人の主張 特許異議申立書(20頁下から4行〜21頁5行)において、「積分中心張力(ICT)は、引張応力(MPa)の平均値に、表面に対して垂直方向における引張応力領域の厚さ(cm)を乗じた値であり、MPa・cmで表される(段落0017)。従って、ITC(MPa・cm)を引張応力領域の厚さ(cm)で除した値は引張応力(MPa)になり、この引張応力(MPa)は、「達成された中心張力CTA」に相当する。」と説示し、甲1の実施例12、13は、「CTA<CTlimit<CTc」を満たすことを主張する。しかしながら、上記(2)イで検討したとおり、「積分中心張力(ICT)」を引張応力領域の長さの値で除して求められるのは、応力プロファイルから算出された引張張力の平均値であるから、甲1発明の「積分中心張力(ICT)」は、応力プロファイルから読み取った測定値ではなく、本件発明1の「達成された中心張力CTA」に相当するものとはいえないから、上記主張は採用できない。 また、特許異議申立書(21頁下から2行〜22頁12行)において、「本件特許発明1では、ガラスの厚さtが0.05mmから1.3mmの範囲であるのに対し(発明特定事項A)、甲第1号証に記載の発明(実施例12、13のガラス)では、ガラスの厚さが1.97mmである点」を相違点とした上で、甲1発明のガラスの厚さを0.7mm程度にした場合であっても、「CTA<CTlimit<CTc」を満たすと主張しているが、甲1の図3に示されているのは、深さに対するK2O濃度を示すもので応力プロファイルではなく、ガラスの厚さが1.97mmであるときの応力プロファイルは不明であるから、当該厚さを0.7mm程度に変更したときの応力プロファイルも当然に不明であり、引張張力の測定値を読み取ることはできないから、上記主張は採用できない。 (7)小括 よって、申立理由1に理由はない。 8 まとめ したがって、取消理由1〜3及び申立理由1に理由はない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1〜10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1〜10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 表面および0.05mmから1.3mmの範囲の厚さtを有するガラスであって、 前記ガラス中において前記表面から層深さDOLまで広がる、圧縮応力下の第一領域であって、前記圧縮応力CSが、前記表面において最大値CS1を有し、かつ前記表面からの距離dにより変わる、第一領域と、 前記層深さから前記ガラス中へと広がる、引張応力CT下の第二領域であって、当該第二領域について三角近似によって決定された値CTcは[(CS1・DOL)/(t−2・DOL)]に等しく、ここでCTcはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)より大きく、前記第二領域はさらに達成された中心張力CTAを備え、ここでCTAはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下である、第二領域と を含み、 前記第一領域が、 a.前記表面から第一深さd1まで広がる第一セグメントであって、前記深さd1が前記層深さDOL未満であり、前記圧縮応力CSが第一関数に従って変わる、第一セグメントと、 b.前記第一深さd1から前記層深さDOLまで広がる第二セグメントであって、前記圧縮応力CSが第二関数に従って変わり、前記圧縮応力が前記第二セグメント中に極大CS2を有し、ここで、CS1>CS2であり、前記第一関数が前記第二関数とは異なる、第二セグメントと、 を含む、ガラス。 【請求項2】 前記第一関数が第一相補誤差関数である、請求項1に記載のガラス。 【請求項3】 前記ガラスが、アルカリ金属酸化物を有するアルカリアルミノケイ酸塩ガラスであり、前記アルカリ金属はNaまたはKから成る、請求項1に記載のガラス。 【請求項4】 前記圧縮応力の最大値CS1が少なくとも400MPaである、請求項1に記載のガラス。 【請求項5】 前記層深さDOLは少なくとも50μmである、請求項1に記載のガラス。 【請求項6】 前記ガラスがイオン交換されたものである、請求項1に記載のガラス。 【請求項7】 表面および0.05mmから1.3mmの範囲の厚さtを有するイオン交換ガラスであって、 当該ガラスは、圧縮応力CS下にあり当該ガラスの層深さDOLまで広がる第一領域および、引張応力下にあり前記層深さDOLから当該ガラス中に広がる第二領域とを有し、 前記第二領域について、三角近似によって決定される値CTcは[(CS1・DOL)/(t−(2・DOL))]と等しく、ここで、CTcはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)より大きく、 前記第一領域は、前記表面から前記層深さDOL未満である第一深さd1まで広がる第一セグメントおよび、前記第一深さd1から前記層深さDOLまで広がる第二セグメントを有し、 前記第一セグメントにおいて、前記圧縮応力CSは前記表面において最大値CS1であり、第一誤差関数に従って変化し、 前記第二セグメントにおいて、前記圧縮応力CSは、第二関数に従って変化し、前記圧縮応力が前記第二セグメント中に極大CS2を有し、ここで、CS1>CS2であり、 ここで、前記第一誤差関数は、前記第二関数とは異なるものであり、 前記第二領域はさらに、達成された中心張力CTAを備え、ここでCTAはMPaで表され、−37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)以下である、イオン交換ガラス。 【請求項8】 前記圧縮応力の最大値CS1が少なくとも400MPaである、請求項7に記載のイオン交換ガラス。 【請求項9】 前記層深さDOLは少なくとも50μmである、請求項7に記載のイオン交換ガラス。 【請求項10】 前記ガラスが、アルカリ金属酸化物を有するアルカリアルミノケイ酸塩ガラスであり、前記アルカリ金属はNaまたはKから成る、請求項7に記載のイオン交換ガラス。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-09-28 |
出願番号 | P2018-073075 |
審決分類 |
P
1
651・
852-
YAA
(C03C)
P 1 651・ 537- YAA (C03C) P 1 651・ 55- YAA (C03C) P 1 651・ 121- YAA (C03C) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
宮澤 尚之 |
特許庁審判官 |
関根 崇 金 公彦 |
登録日 | 2020-11-04 |
登録番号 | 6788628 |
権利者 | コーニング インコーポレイテッド |
発明の名称 | 非誤差関数圧縮応力プロファイルによるイオン交換ガラス |
代理人 | 柳田 征史 |
代理人 | 柳田 征史 |