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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
管理番号 1393066
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-08-30 
確定日 2022-10-31 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6836713号発明「湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6836713号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正することを認める。 特許第6836713号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯・本件異議申立ての趣旨・審理範囲

1.本件特許の設定登録までの経緯
本件の特許第6836713号に係る出願(特願2016−248899号、以下「本願」ということがある。)は、平成28年12月22日に出願人DIC株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされた特許出願であり、令和3年2月10日に特許権の設定登録(請求項の数1)がされ、令和3年3月3日に特許掲載公報が発行されたものである。

2.本件特許異議の申立ての趣旨
本件特許につき、
(1)令和3年8月30日付けで特許異議申立人山本美智子(以下「申立人A」という。)により、「特許第6836713号の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明についての特許を取り消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てが、
(2)同年9月2日付けで特許異議申立人大石雪絵(以下「申立人B」という。)により、「特許第6836713号の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明についての特許を取り消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てが、
それぞれされた。(以下、各人からの申立てをそれぞれ「申立てA」及び「申立てB」ということがある。)

3.以降の手続の経緯
令和4年 1月31日付け 取消理由通知
同年 3月11日受理 意見書・訂正請求書
同年 3月22日付け 通知書(両申立人あて)
同年 4月19日 意見書(申立人A)
(なお、申立人Bに対して、令和3年3月22日付け通知書により、訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人Bからの応答はなかった。)

第2 取消理由の概要

1.申立人が主張する取消理由の概要
各申立人が主張する取消理由の概要はそれぞれ以下のとおりである。

(1)申立人Aが主張する取消理由の概要
申立人Aは、同人が提出した本件特許異議申立書(以下、「申立書A」ということがある。)において、下記甲第1号証ないし甲第5号証を提示し、具体的な取消理由として、概略、以下のア.及びイ.が存するとしている。

ア.本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証のいずれかに記載された発明であるか、又は甲第1号証ないし甲第3号証のいずれかに記載された発明に基づいて、甲第2号証及び甲第4号証に記載された技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由A」という。)
イ.本件特許の請求項1は、記載不備であり、同項記載の発明が本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものでなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしておらず、本件の請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由B」という。)

●申立人A提示の甲号証
甲第1号証:特開2005−75877号公報
甲第2号証:特開2007−161991号公報
甲第3号証:米国特許出願公開第2003/0213557号明細書(抄訳添付)
甲第4号証:米国特許出願公開第2011/0174437号明細書(抄訳添付)
甲第5号証:米国特許第5965685号明細書(抄訳添付)
(上記「甲第1号証」ないし「甲第5号証」をそれぞれ「甲A1」ないし「甲A5」と略す。)

(2)申立人Bが主張する取消理由の概要
申立人Bは、同人が提出した本件異議申立書(以下、「申立書B」ということがある。)において、下記甲第1号証ないし甲第11号証を提示し、具体的な取消理由として、概略、以下のア.ないしウ.が存するとしている。

ア.本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証又は甲第9号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないから、本件の請求項1に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由C」という。)
イ.本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができるものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由D」という。)
ウ.本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載では、本件の請求項1に係る発明を、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないか、又は、本件の請求項1は、記載不備であり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件特許の請求項1に係る発明についての特許は、特許法第36条第4項第1号又は同法同条第6項(柱書)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由E」という。)

●申立人B提示の甲号証
甲第1号証:特開2005−75877号公報
甲第2号証:特開2015−196768号公報
甲第3号証:特開2007−91996号公報
甲第4号証:特開2010−275409号公報
甲第5号証:米国特許第5058607号明細書(抄訳添付)
甲第6号証:寺田千春編「ポリウレタンの材料選定、構造制御と改質 事例集」2014年12月26日、株式会社技術情報協会発行、第253、254、262頁
甲第7号証:MATERIAL STAGE、Vol.5、No.8、2005年、第69〜74頁
甲第8号証:特表2003−515636号公報
甲第9号証:米国特許出願公開第2003/0010442号明細書(抄訳添付)
甲第10号証:特開2007−45977号公報
甲第11号証:日本接着学会誌、Vol.40、No.6、2004年、第34〜37頁
(上記「甲第1号証」ないし「甲第11号証」をそれぞれ「甲B1」ないし「甲B11」と略す。)

2.当審が通知した取消理由
当審が通知した取消理由は、概略以下のとおりである。

理由1.本件特許の請求項1に係る発明は、甲A1又は甲A3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないから、本件の請求項1に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由1」という。)
理由2.本件特許の請求項1に係る発明は、甲A1、甲A3又は甲B10に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けられないものであるから、本件の請求項1に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由2」という。)

第3 令和4年3月11日受理の訂正請求について

1.訂正請求の内容
令和4年3月11日受理の訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、訂正前の請求項1(以下「旧請求項1」という。)を訂正することにより、訂正後の請求項1(以下「新請求項1」という。)にすることを含むものであり、以下の訂正事項1を含むものである。

●訂正事項1
請求項1を、「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)、及び、多官能イソシアネート(ii)を含有し、
前記ポリイソシアネート(B)が、ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを含有し、
前記多官能イソシアネート(ii)が、ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(ii−2)、ジイソシアネートのアダクト化合物(ii−3)、ジイソシアネートのビュレット化合物(ii−4)、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)からなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物。
【化1】

(式(1)中、Rl及びR2は、それぞれ独立して炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基を示し、Rl及びR2の有する炭素原子数の合計は12以上であり、nは3〜40の整数を示す。)」に訂正する。
(下線は訂正部を表す。)

2.訂正事項1に係る訂正の適否について

(1)訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正では、旧請求項1における「ウレタンプレポリマー(i)」につき、本件特許明細書の【0026】及び【0030】の記載に基づいて、「ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する」こと及び「ポリイソシアネート(B)が、ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを含有」することを付加すると共に、「式(1)」における「Rl及びR2の有する炭素原子数の合計」の下限値につき、本件特許明細書の【0014】及び【0015】の記載に基づいて、「10以上」を「12以上」としており、「ウレタンプレポリマー(i)」の選択範囲が実質的に減縮されて新請求項1にされているから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の有無及び特許請求の範囲の実質的な拡張・変更の有無
本件訂正に係る訂正事項1に係る訂正は、上記(1)で検討したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書に記載された事項の範囲内で訂正されたことが明らかであって、また、上記訂正によって本件訂正の前後で特許請求の範囲が実質的に拡張又は変更されたものでないことも明らかである。
したがって、本件訂正における訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件を満たすものといえる。

(3)独立特許要件
本件特許異議の申立ては、旧請求項1、すなわち全請求項に係る発明についての特許に対してされたものであるから、申立てが行われていない請求項に係る特許は存するものでなく、独立特許要件につき検討すべき請求項は存しない。

3.本件訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的要件を満たすものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件も満たすものであるから、本件訂正を認める。

第4 本件特許の特許請求の範囲に記載された事項
上記本件訂正により適法に訂正された本件特許の特許請求の範囲には、以下のとおりの請求項1が記載されている。
「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)、及び、多官能イソシアネート(ii)を含有し、
前記ポリイソシアネート(B)が、ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを含有し、
前記多官能イソシアネート(ii)が、ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(ii−2)、ジイソシアネートのアダクト化合物(ii−3)、ジイソシアネートのビュレット化合物(ii−4)、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)からなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物。
【化1】

(式(1)中、Rl及びR2は、それぞれ独立して炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基を示し、Rl及びR2の有する炭素原子数の合計は12以上であり、nは3〜40の整数を示す。)」
(以下、請求項1に係る発明を「本件発明」という。)

第5 当審の判断
当審は、両申立人が主張する上記取消理由及び当審が通知した上記取消理由についてはいずれも理由がなく、ほかに本件発明についての特許を取り消すべき理由も発見できないから、本件発明についての特許は、取り消すべきものではなく、維持すべきもの、と判断する。
以下、取消理由1及び2並びに取消理由AないしEにつきそれぞれ検討・詳述する。

I.取消理由A、C及びD並びに取消理由1及び2について

1.各甲号証に記載された事項及び各甲号証に記載された発明
取消理由A、C及びD並びに取消理由1及び2は、いずれも特許法第29条に係るものであるから、上記各甲号証に係る記載事項を確認し、当該記載事項に基づき甲A1、甲A3及び甲B10に記載された発明を認定する。

(1)甲A1(甲B1と同じ文献)

ア.甲A1に記載された事項
甲A1には、(A)イソシアネート基を末端に有するポリウレタンプレポリマー、(B)シランカップリング剤、及び(C)多官能性ポリイソシアネートを含んで成る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物であって、(A)ポリウレタンプレポリマーは、イソシアネート指数が1.0より大きく、かつ、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2.5個未満であり、(B)シランカップリング剤は、オルガノアルコキシシランであり、(C)多官能性ポリイソシアネートは、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2.5個以上であることを特徴とする湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物が記載され(【請求項1】)、当該(C)多官能性ポリイソシアネートは、ポリメリックMDIであるか、あるいは、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートの三量体であって、ビウレット型、アダクト型又はイソシアヌレート型のポリイソシアネートから選択される少なくとも一種であることも記載されている(請求項4及び6)。
そして、甲A1には、上記(A)イソシアネート基を末端に有するポリウレタンプレポリマーを構成するためのポリオールとして、エステル系ポリオールを使用することができ、エステル系ポリオールとして、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリカプロラクトンポリオール(PCL)等が例示されることが記載されている(【0022】)。
また、甲A1には、特許請求の範囲に記載された事項を具備する実施例2として、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールを縮合反応させて得た250重量部のポリエステルポリオール(水酸基価:32mgKOH/g)と33.7重量部の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを120℃で2.5時間撹拌しつつ減圧して得た、一分子当たりの平均イソシアネート基数が2.0であり、イソシアネート指数が2.0のポリウレタンプレポリマー(a2)、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(b1)及びポリメリックMDIである(c1)を含有する湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物が記載されている。
さらに、甲A1には、比較例4として、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールを縮合反応させて得た250重量部のポリエステルポリオール(水酸基価:32mgKOH/g)を、120℃のフラスコ内で1.5時間撹拌しつつ減圧して乾燥した後、38.0重量部のポリメリックMDI(住化バイエルウレタン製のスミジュール44V10(商品名))をフラスコに加え、120℃で2.5時間撹拌しつつ減圧して得た、一分子当たりの平均イソシアネート基数が3.1であり、イソシアネート指数が2.0のポリウレタンプレポリマー(a3)’、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(b1)及びポリメリックMDIである(c1)を含有する湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物が記載されている(【0050】〜【0060】)。

イ.甲A1に記載された発明
甲A1には、上記ア.の記載事項のうち、特に実施例2に係る記載からみて、次の発明が記載されているといえる。
「アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールを縮合反応させて得た250重量部のポリエステルポリオール(水酸基価:32mgKOH/g)と33.7重量部の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとから得られる一分子当たりの平均イソシアネート基数が2.0であり、イソシアネート指数が2.0のポリウレタンプレポリマー(a2)98.5重量部、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(b1)0.5重量部及びポリメリックMDIである(c1)1.0重量部を含有する湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物。」(以下「甲A1発明1」という。)
また、甲A1には、特に比較例4に係る記載からみて、次の発明が記載されているといえる。
「アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールを縮合反応させて得た250重量部のポリエステルポリオール(水酸基価:32mgKOH/g)を、38.0重量部のポリメリックMDIと反応させて得た、一分子当たりの平均イソシアネート基数が3.1であり、イソシアネート指数が2.0のポリウレタンプレポリマー(a3)’98.5重量部、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(b1)0.5重量部及びポリメリックMDI(c1)1.0重量部を含有する湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物。」
(以下「甲A1発明2」という。)
そして、甲A1には、請求項1、4及び6の各記載並びに【0022】の記載からみて、次の発明が記載されているといえる。
「(A)イソシアネート基を末端に有するポリウレタンプレポリマー、(B)シランカップリング剤、及び(C)多官能性ポリイソシアネートを含んで成る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物であって、(A)ポリウレタンプレポリマーは、イソシアネート指数が1.0より大きく、かつ、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2.5個未満であり、(B)シランカップリング剤は、オルガノアルコキシシランであり、(C)多官能性ポリイソシアネートは、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2.5個以上であることを特徴とする湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物であって、当該(C)多官能性ポリイソシアネートは、ポリメリックMDIであるか、あるいは、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートの三量体であって、ビウレット型、アダクト型又はイソシアヌレート型のポリイソシアネートから選択される少なくとも一種であり、上記(A)イソシアネート基を末端に有するポリウレタンプレポリマーを構成するためのポリオールとして、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリカプロラクトンポリオール(PCL)などのエステル系ポリオールから構成されるポリウレタンプレポリマーである、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物。」(以下「甲A1発明3」という。)

(2)甲A3
甲A3には、実施例1として、「Dynacoll 7360」なる重量平均分子量3750であるヘキサンジオールアジペート(ポリマー)を含むポリオール組成物とアクリルポリマー(反応性または非反応性)を含む75.15〜79.35重量%のポリマー組成物に「MONDUR M」なる4,4’MDIの14.85〜15.65重量%が追加され反応を完了させてなる組成物に対して、「MONDUR MR」なるポリメリックMDIの5〜10重量%が追加された配合の「Sample B」ないし「Sample D」なる反応型ホットメルト接着剤が記載されている([0043])。
ここで、『「Dynacoll 7360」なる重量平均分子量3750であるヘキサンジオールアジペート(ポリマー)を含むポリオール組成物とアクリルポリマー(反応性または非反応性)を含む75.15〜79.35重量%のポリマー組成物』に対して、『「MONDUR M」なる4,4’MDIの14.85〜15.65重量%程度』を完全に反応させた場合、4,4’MDIが化学量論的過剰量となり、生成物はポリウレタンプレポリマーを含む組成物となることが当業者に自明である。
してみると、甲A3には、上記「Sample B」ないし「Sample D」の記載からみて、次の発明が記載されているといえる。
「「Dynacoll 7360」なる重量平均分子量3750であるヘキサンジオールアジペート(ポリマー)を含むポリオール組成物とアクリルポリマー(反応性または非反応性)を含む75.15〜79.35重量%のポリマー組成物に「MONDUR M」なる4,4’MDIの14.85〜15.65重量%が追加され反応を完了させてなるポリウレタンプレポリマーを含む組成物と「MONDUR MR」なるポリメリックMDIの5〜10重量%を含む反応型ホットメルト接着剤。」(以下「甲A3発明」という。)

(3)甲B10

ア.甲B10に記載された事項
甲B10には、(A)イソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下であるウレタンプレポリマー、(B)インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂、及び(C)一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多い多官能性ポリイソシアネート を含んで成る反応性ホットメルト接着剤組成物が記載され(請求項1)、当該(A)ウレタンプレポリマーは、二官能性ポリオールと二官能性ポリイソシアネートとを反応させて得られる(請求項6)ものであることも記載されている。
また、甲B10では、(A)ウレタンプレポリマーを構成する二官能性ポリオールとしてエーテル系、エステル系、ポリカーボネート系、ポリジエン系等に分類されるポリオールを使用することができ、そのうちエステル系ポリオールとして、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリカプロラクトンポリオール(PCL)等が例示され(【0030】)、(C)多官能性ポリイソシアネートとしては、ポリメリックMDI並びにトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートの三量体であって、ビウレット型、アダクト型又はイソシアヌレート型のポリイソシアネートから選択される少なくとも一種が例示されている(【0052】)。
そして、甲B10には、請求項1及び請求項6に記載された事項を具備する「実施例1」として、数平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール(三井武田ケミカル(株)製のアクトコールDiol−2000(商品名)、水酸基価=56)と数平均分子量3500のポリエステルジオール(豊国製油(株)製のHS2H−351A(商品名)、水酸基価=29.6)とを含む組成物にジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を加え反応させた、イソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個であるウレタンプレポリマー(A−1)、インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂(B−1)(新日鐵化学(株)製のクマロンインデン樹脂であるエスクロンV−120(商品名))並びに更に一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2.55個であるポリメリックMDI(C−1)(住化バイエルウレタン(株)製:スミジュール44V10(商品名)を含有する反応性ホットメルト接着剤組成物が記載されている(【0065】、【0074】【表1】)。

イ.甲B10に記載された発明
甲B10には、上記ア.の記載からみて、次の発明が記載されているといえる。
「(A).ポリエステルジオールを含むポリオール組成物にジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を加え反応させたイソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下であるウレタンプレポリマー、(B)インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂、及び(C)ポリメリックMDIなどの一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多い多官能性ポリイソシアネートを含んで成る反応性ホットメルト接着剤組成物。」
(以下「甲B10発明」という。)

(4)その他の甲号証に記載された事項

ア.甲A2

甲A2には、
「一般式(I)で示される長鎖脂肪族ポリエステルポリオール(A)及び2000〜10000の数平均分子量を有する脂肪族ポリエーテルポリオール(B)を含むポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有してなり、前記脂肪族ポリエーテルポリオール(B)が、前記脂肪族ポリエーテルポリオール(B)全体に対して10〜60質量%の範囲のエチレンオキシド由来の構造単位を有するものであることを特徴とするウェット単板用湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【化1】

(一般式(I)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基を示し、かつR1及びR2の有する炭素原子数の合計は12以上である。nは3〜40を示す。)」が記載され(請求項1)、請求項1に記載された事項で特定される発明が、ウェット単板と基材との両方に対して優れた初期接着強さ及び常態接着強さを発現可能で、かつ耐水性に優れた接着層を形成可能であり、更には、化粧造作部材等の生産効率を向上することのできるウェット単板用湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を提供することを解決すべき課題とすること(【0009】)及び一般式(I)で示される長鎖脂肪族ポリエステルポリオール(A)を用いたウレタンプレポリマーを使用した場合(実施例1ないし7)に、他のポリエステルポリオールを用いたウレタンプレポリマーを使用した場合(比較例6)に比して、接着物の表面外観、初期接着強さなどの接着性能、耐水性の点で優れること(【0102】〜【0170】)も記載されている。

イ.甲A4
甲A4の[0046]には、「7.9%のStepanoI PH−56、29.9%のDynacoll 7380、42.1%のDynacoll 7331を使用し、更に11.4%のRubinate 1225、8.5%のRubinate 1820及びその他の組成物のパーセンテージを変更してホットメルトポリウレタン組成物が製造された。追加の組成物は、1)抗酸化剤を含む、2)Rubinate 1225をMondurMに変更、又は3)その両方を含む、さらなる組成物が製造された。Rubinate 1225、Rubinate 1820の代わりに芳香族ジイソシアネートを利用した。」と記載されている。(申立人A提出の抄訳に基づき、当審で上記のとおり解釈した。)

ウ.甲A5
甲A5の第2欄第64行〜第65行には、Dynacoll 7380 は、ドデカンジカルボン酸とヘキサンジオールとから調製されたポリエステルポリオールであり、Piscataway NJのHULS America から入手できることが記載されている。

エ.甲B2
甲B2には、
「炭素数が6〜12である直鎖ポリカルボン酸及び炭素数が2〜6である直鎖ポリオールを縮合重合させてなる高結晶性ポリエステルポリオール(A)、
炭素数が4〜6である直鎖ポリカルボン酸及び炭素数が2〜6である直鎖ポリオールを縮合重合させてなる低結晶性ポリエステルポリオール(B)及び、
数平均分子量が4000以下であるポリエーテルポリオール(C)
を含むポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物とを含む原料組成物を反応させてなり、且つ末端にイソシアネート基を有しているウレタンプレポリマーを含有していることを特徴とする湿気硬化型ホットメルト接着剤。」(請求項1)が記載されており、さらに実施例として、セバシン酸と1,6−ヘキサンジオールとからなる高結晶性ポリエステルポリオール(A1)〜(A3)を使用し、ポリイソシアネートとして、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを使用してなるウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ホットメルト接着剤が記載されている(【0071】〜【0084】)。

オ.甲B3
甲B3には、
「下記一般式(I)で示される長鎖脂肪族ポリエステルポリオール(A)、4000〜7000の数平均分子量を有し、かつ2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有する脂肪族ポリエステルポリオール(B)、及び4000〜7000の数平均分子量を有する脂肪族ポリエーテルポリオール(C)を含むポリオールと、ポリイソシアネート(D)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有してなることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【化1】

(一般式(I)中、R1及びR2は、それぞれ炭素数が偶数の直鎖のアルキレン基であり、かつR1及びR2の有する炭素数の合計が12以上である。nは1〜40である。)」
が記載され(請求項1)、当該一般式(I)で示される長鎖脂肪族ポリエステルポリオール(A)として、直鎖脂肪族ジオールとして1,6−ヘキサンジオールを、直鎖脂肪族ジカルボン酸として1,12−ドデカンジカルボン酸又はセバシン酸を反応させて得られる長鎖脂肪族ポリエステルポリオールを使用することが好適で、特に直鎖脂肪族ジオールとして1,6−ヘキサンジオールを、前記直鎖脂肪族ジカルボン酸として1,12−ドデカンジカルボン酸を反応させて得られる長鎖脂肪族ポリエステルポリオールを使用することが、比較的高温環境下で使用する場合であっても、実用上、十分なレベルの初期接着強さを有する接着剤を製造するうえで、より好適であることが記載されている(【0034】)。

カ.甲B4
甲B4には、
「(A)イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーを含むICカード用湿気硬化型ホットメルト接着剤であって、
(A)ウレタンプレポリマーは、ジオールと炭素数10以下のジカルボン酸との反応で得られる(a1)ポリエステルポリオールに由来する(A1)化学構造」「さらに、炭素数11以上18以下の脂肪族ジカルボン酸とジオールとの反応で得られる(a2)ポリエステルポリオールに由来する(A2)化学構造、及び/又は(a3)ポリエーテルポリオールに由来する(A3)化学構造」「を有し、
未湿気硬化時のせん断弾性率(40℃)は、(1×104)〜(1×108)Paであり、
未湿気硬化時のせん断弾性率(80℃)は、(1×100)〜(1×104)Paである、ICカード用湿気硬化型ホットメルト接着剤。」(請求項1及び2)が記載され、さらに、上記「(a1)ポリエステルポリオール」として「(a1−5):セバシン酸とヘキサンジオールから得られた結晶性ポリエステルポリオール」又は上記「(a2)ポリエステルポリオール」として「(a2−1):ドデカン二酸とヘキサンジオールから得られた結晶性ポリエステルポリオール」あるいは「(a2−2):ドデカン二酸とエチレングリコールから得られた結晶性ポリエステルポリオール」を使用し、ウレタンプレポリマーを構成する際のポリイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを使用してなるウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ホットメルト接着剤が記載されている(【0075】〜【0100】)。

キ.甲B5
甲B5には、
「プラグラップ紙の少なくとも1つの縦方向の端に接着剤が塗布されるシガレットフィルターを製造する方法において、接着剤が溶融している間に接着が形成され、接着剤の動きを防ぐのに十分な時間圧縮状態に保持され、接着剤として、粘着付与剤及び/又は可塑剤がない場合、120℃における粘度が3,000〜50,000cpsである本質的に以下の成分で構成される室温で固体である無溶剤のホットメルトポリウレタン接着剤組成物。
a)0.25〜15%のイソシアネート含有量及び1を超えて約2以下のイソシアネート指数を有するウレタンプレポリマー5〜90重量%;
b)活性水素を含まないエチレン性不飽和モノマーである低分子量ポリマー10〜95重量%」が記載されており(請求項1)、さらに「実施例II」としてポリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオールアジペートであるポリエステルポリオール、「Elvacite2013」なるアクリルポリマー及びメチレンビフェニルジイソシアネートを反応させてなるウレタンプレポリマーとアクリルポリマーとを含有する接着剤組成物が記載されている(第7欄第45行〜第8欄第14行)。
(申立人B提出の抄訳に基づき、当審で上記のとおり解釈した。)。

ク.甲B6及び甲B7
甲B6には、ポリエステルポリオールを使用してポリウレタンを構成する場合、耐加水分解性を高めるために、原料グリコールと二塩基酸の炭素連鎖数を増したセバシン酸を用いたポリエステルなどのエステル基濃度が低いものを使うことが好適であることが記載されており(第254頁第4行〜第8行、第262頁「5.1 ポリエステルの加水分解」の欄)、また、甲B7には、ウレタン系ホットメルト接着剤用材料としてのウレタンプレポリマーの製造にあたり、ポリオールとして脂肪族の長鎖構造をもつ二塩基酸とグリコールとからなる結晶性ポリエステルポリオールを使用することにより、短時間の固化が可能であり、接着剤層の力学特性が向上を図れること(第70頁右欄「(2)結晶性ポリエステルポリオール」の欄)及び結晶性ポリエステルポリオールとして、アジピン酸(AA)と1,6−ヘキサンジオール(HD)とからなるものを使用した場合に比して、ドデカン二酸(DDA)とエチレングリコール(EG)や1,6−ヘキサンジオール(HD)などのグリコール類とからなるポリエステルポリオールを使用した場合の方がセットタイムが短縮され、短時間での接着が実現できること(第72頁「4 結晶性ポリエステルポリオールとセット性」の欄及び「表4」)もそれぞれ記載されている。

ケ.甲B8
甲B8には、「2000以下の平均分子量(数平均分子量:Mn)を有するジオールと500以下の分子量を有するモノマー性ジイソシアネートとの反応によって得られる高分子量ジイソシアネートとポリオールとの反応生成物を基剤とする反応性ポリウレタン接着剤/シーラント組成物であって、ポリオールとの反応前の高分子量ジイソシアネートが10重量%よりも多くないモノマー性ジイソシアネートを含有することを特徴とする反応性ポリウレタン接着剤/シーラント組成物。」が記載され(請求項1)、さらに「ポリオールとして、下記の群から選択される数平均分子量が400〜20000・・・の1種または複数種の二官能性または三官能性のポリオールを使用する請求項1・・・に記載の組成物:・・・線状もしくは分枝状ポリエステルポリオール。」を使用すること(請求項4)、「接着性を補強するための移行性ポリイソシアネートであって、ジフェニルメタンジイソシアネートよりも実質上低い蒸気圧を有する」「ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット化生成物、HDIのイソシアヌレート化生成物、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の三量化生成物および上記ポリイソシアネートの任意の混合物」などの「ポリイソシアネートを含有する」こと(請求項5及び6)も記載されている。

コ.甲B9
甲B9には、実施例1として、「Dynacoll 7360」なる重量平均分子量3750であるヘキサンジオールアジペート(ポリマー)を含むポリオール組成物とアクリルポリマー(反応性または非反応性)を含む75.15〜79.35重量%のポリマー組成物に「MONDUR M」なる4,4’MDIの14.85〜15.65重量%が追加され反応を完了させてなる組成物に対して、「MONDUR MR」なるポリメリックMDIの5〜10重量%が追加された配合の「Sample B」ないし「Sample D」なる反応型ホットメルト接着剤が記載されている([0043])。
(なお、甲B9に実施例1として記載されているものは、甲A3発明と同一であるものと認められる。)

2.取消理由1及び2に係る検討
取消理由A、C及びD並びに取消理由1及び2は、いずれも、本件発明が、特許法第29条に違反して特許されたものか否かに係る理由であるので併せて検討する。

(1)甲A1発明1及び甲A1発明2に基づく検討

ア 対比
本件発明と甲A1発明1及び甲A1発明2とをそれぞれ対比すると、甲A1発明1における「アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールを縮合反応させて得た250重量部のポリエステルポリオール(水酸基価:32mgKOH/g)と33.7重量部の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとから得られる一分子当たりの平均イソシアネート基数が2.0であり、イソシアネート指数が2.0のポリウレタンプレポリマー(a2)」、及び甲A1発明2における「アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールを縮合反応させて得た250重量部のポリエステルポリオール(水酸基価:32mgKOH/g)」と「38.0重量部のポリメリックMDI(住化バイエルウレタン製のスミジュール44V10(商品名))」とから得られる「一分子当たりの平均イソシアネート基数が3.1であり、イソシアネート指数が2.0のポリウレタンプレポリマー(a3)’」は、「アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールを縮合反応させて得た・・ポリエステルポリオール(水酸基価:32mgKOH/g)」が、1,4−ブタンジカルボン酸である「アジピン酸」と1,6−ヘキサンジオールとの縮合反応物であるから、本件発明の式(1)におけるR1の炭素数が6の直鎖アルキレン基及びR2の炭素数が4の直鎖アルキレン基であるポリエステルポリオールであるといえる。そして、甲A1発明1の「ポリウレタンプレポリマー(a2)」及び甲A1発明2の「ポリウレタンプレポリマー(a3)’」は、原料であるポリエステルポリオールがジオールであると解するのが自然であり」、これと「(水酸基価:32mgKOH/g)」とを併せると、数平均分子量が約3500(=(2×56100)/32))であり、繰り返し単位の式量が228であることから、繰り返し単位数nが約15であると算出される。このことから、甲A1発明1の「ポリウレタンプレポリマー(a2)」及び甲A1発明2の「ポリウレタンプレポリマー(a3)’」は、上記の原料ポリエステルポリオールにポリイソシアネートを反応させたものであって、本件発明における「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)」と、「ポリイソシアネート(B)」に係る点及び「R1及びR2の有する炭素原子数の合計が12以上であ」る点を除き相当するといえる。
また、甲A1発明1又は甲A1発明2における「ポリメリックMDIである(c1)」は、ポリメリックMDIがポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの別名であることが、本件優先日時点の当業者の技術常識であるから、本件発明における「多官能イソシアネート(ii)を含有し、」「前記多官能イソシアネート(ii)が、・・ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)・・である」に相当する。
そして、甲A1発明1又は甲A1発明2における「湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物」は、本件発明における「湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物」に相当する。

そうすると、本件発明と甲A1発明1及び甲A1発明2とは、
「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)、及び、多官能イソシアネート(ii)を含有し、
前記多官能イソシアネート(ii)が、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物。
【化1】

(式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基を示し、nは15の整数を示す。)」の点で一致し、以下の各点で相違する(以下、式(1)の構造式及びその括弧書きは省略する。)。

相違点a1:「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)」につき、本件発明では「R1及びR2の有する炭素原子数の合計は12以上であ」るのに対して、甲A1発明1及び甲A1発明2では「アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールを縮合反応させて得た」「ポリエステルポリオール」であって、前記式(1)におけるR1及びR2の炭素原子数の合計が10である点

相違点a2:本件発明では「多官能イソシアネート(ii)が、ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(ii−2)、ジイソシアネートのアダクト化合物(ii−3)、ジイソシアネートのビュレット化合物(ii−4)、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)からなる群より選ばれる1種以上の化合物である」のに対して、甲A1発明1及び甲A1発明2では、「ポリメリックMDIである(c1)」である点

相違点a3:甲A1発明1及び甲A1発明2では「メルカプトプロピルトリメトキシシラン(b1)」を含むのに対して、本件発明では当該シラン化合物を含むことが規定されていない点

相違点a4:本件発明では「前記ポリイソシアネート(B)が、ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを含有」するのに対して、甲A1発明1では「4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート」であり、甲A1発明2では「ポリメリックMDI」である点

イ 検討
事案に鑑みて、相違点a4から検討する。
甲A1には、ウレタンプレポリマーの製造にあたり、ポリイソシアネートとして、「ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)」を組み合わせて使用することは記載ないし示唆されていないから、相違点a4は実質的な相違点であるといえる。
してみると、本件発明は、甲A1に記載された発明ということができない。
また、両申立人が提示したいずれの甲号証の記載を検討しても、甲A1発明1又は甲A1発明2において、ウレタンプレポリマーの製造の際に、「ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)」を組み合わせて使用することを想起し得る記載は見あたらないから、当業者が容易に想到し得たものとも認められない。
そして、本件特許明細書の実施例及び比較例に係る記載(【表1】)からみて、本件発明に係る実施例1ないし4の場合、相違点a4に係る点で本件発明の範囲外となった実施例5の場合に比して、初期(接着)強度及び耐加水分解性につき更に改善されていることが看取できるから、本件発明は、相違点a4の点で特段の効果を奏しているものと認められる。一方、両申立人が提示したいずれの甲号証の記載を見ても、本件発明の前記効果を予測し得ない。

ウ 小括
したがって、本件発明は、相違点a1〜a3について検討するまでもなく、甲A1に記載された発明でないし、甲A1に記載された発明、及び両申立人が提示した各甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(2)甲A1発明3に基づく検討

ア 対比
本件発明と甲A1発明3とを対比すると、甲A1発明3における「(A)イソシアネート基を末端に有するポリウレタンプレポリマー」、「(C)多官能性ポリイソシアネート」及び「湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物」は、それぞれ本件発明における「イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)」、「多官能イソシアネート(ii)」及び「湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物」に相当する。
そして、甲A1発明3における「(C)多官能性ポリイソシアネートは、ポリメリックMDIであるか、あるいは、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートの三量体であって、ビウレット型、アダクト型又はイソシアヌレート型のポリイソシアネートから選択される少なくとも一種であり」は、本件発明における「前記多官能イソシアネート(ii)が、ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(ii−2)、ジイソシアネートのアダクト化合物(ii−3)、ジイソシアネートのビュレット化合物(ii−4)、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)からなる群より選ばれる1種以上の化合物である」に相当する。
また、甲A1発明3における「上記(A)イソシアネート基を末端に有するポリウレタンプレポリマーを構成するためのポリオールとして、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリカプロラクトンポリオール(PCL)などのエステル系ポリオールから構成される」は、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリカプロラクトンポリオール(PCL)などのポリエステルポリオールがエステル系ポリオールとして例示されているから、本件発明における「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)」との間で、「ポリエステルポリオールを含むポリオール由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー」である限りにおいて一致する。

そうすると、本件発明と甲A1発明3とは、
「ポリエステルポリオールを含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)、及び、多官能イソシアネート(ii)を含有し、
前記多官能イソシアネート(ii)が、ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(ii−2)、ジイソシアネートのアダクト化合物(ii−3)、ジイソシアネートのビュレット化合物(ii−4)、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)からなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。

相違点b1:「ポリエステルポリオール」につき、本件発明では「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)」「【化1】(式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基を示し、R1及びR2の有する炭素原子数の合計は12以上であり、nは3〜40の整数を示す。)」であるのに対して、甲A1発明3では「ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリカプロラクトンポリオール(PCL)などのエステル系ポリオール」である点

相違点b2:甲A1発明3では「(B)シランカップリング剤」を含み、更に「(B)シランカップリング剤は、オルガノアルコキシシランであ」るのに対して、本件発明では当該シランカップリング剤を含むことが規定されていない点

相違点b3:本件発明では「ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)」「を含有し、前記ポリイソシアネート(B)が、ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを含有」するのに対して、甲A1発明3では「(A)イソシアネート基を末端に有するポリウレタンプレポリマー」であり、ポリイソシアネート由来の構造につき特定されていない点

イ 検討
事案に鑑みて、相違点b3について検討する。
相違点b3は、本件発明と甲A1発明1及び甲A1発明2の相違点a4と同内容であり、前記(1)イで甲A1発明1及び甲A1発明2について述べたのと同じ理由により、相違点b3は実質的な相違点であって、本件発明は甲A1に記載された発明でないし、甲A1に記載された発明及び両申立人が提示した全ての甲号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 小括
したがって、本件発明は、相違点b1及びb2について検討するまでもなく、甲A1に記載された発明でないし、甲A1に記載された発明、及び両申立人が提示した全ての甲号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(3)甲A3発明に基づく検討

ア.対比
本件発明と甲A3発明とを対比すると、甲A3発明における「「Dynacoll 7360」なる重量平均分子量3750であるヘキサンジオールアジペート(ポリマー)」は、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とからなるポリエステルポリオールであり、重量平均分子量が3750であるところより重量平均重合度が約16であるものと認められるから、本件発明の式(1)におけるR1の炭素数が6の直鎖アルキレン基及びR2の炭素数が4の直鎖アルキレン基であるポリエステルポリオールであって、平均の繰り返し単位数nが約16であるものと認められ、本件発明における「式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)」と、「R1及びR2の有する炭素原子数の合計が12以上であ」る点を除き、相当するといえる。
してみると、甲A3発明における「「Dynacoll 7360」なる重量平均分子量3750であるヘキサンジオールアジペート(ポリマー)を含むポリオール組成物とアクリルポリマー(反応性または非反応性)を含む75.15〜79.35重量%のポリマー組成物に「MONDUR M」なる4,4’MDIの14.85〜15.65重量%が追加され反応を完了させてなるポリウレタンプレポリマーを含む組成物」は、ヘキサンジオールアジペート(ポリマー)を含むポリオール組成物に4,4’MDIを反応させたウレタンプレポリマーを含有するものであるから、本件発明における「式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)」に相当する。
また、甲A3発明における「ポリメリックMDIの5〜10重量%を含む」は、「ポリメリックMDI」がポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの別名であることが、本件優先日時点の当業者の技術常識であるから、本件発明における「多官能イソシアネート(ii)を含有し、」「前記多官能イソシアネート(ii)が、・・ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)」であることに相当する。
さらに、甲A3発明における「反応型ホットメルト接着剤」は、加熱溶融して塗工した後、空気中の湿分により反応・硬化させて接着を行うことを意図するものである(必要ならば甲A3の[0037]〜[0038]を参照)から、本件発明における「湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物」に相当する。

したがって、本件発明と甲A3発明とは、
「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)、及び、多官能イソシアネート(ii)を含有し、
前記多官能イソシアネート(ii)が、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物。」
で一致し、以下の各点で相違する。

相違点c1:「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)」につき、本件発明では「R1及びR2は、それぞれ独立して炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基を示し、R1及びR2の有する炭素原子数の合計は12以上であ」るのに対して、甲A3発明では「「Dynacoll 7360」なる重量平均分子量3750であるヘキサンジオールアジペート(ポリマー)」であって、式(1)におけるR1の炭素数が6の直鎖アルキレン基及びR2の炭素数が4の直鎖アルキレン基であるポリエステルポリオールであり、炭素原子数の合計が10である点

相違点c2:本件発明では「多官能イソシアネート(ii)が、ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(ii−2)、ジイソシアネートのアダクト化合物(ii−3)、ジイソシアネートのビュレット化合物(ii−4)、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)からなる群より選ばれる1種以上の化合物である」のに対して、甲A3発明では、「ポリメリックMDI」である点

相違点c3:本件発明では「ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)」「を含有し、 前記ポリイソシアネート(B)が、ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを含有」するのに対して、甲A3発明では「「MONDUR M」なる4,4’MDIの14.85〜15.65重量%が追加され反応を完了させてなるポリウレタンプレポリマー」である点

イ.検討
事案に鑑みて、相違点c3について検討する。
甲A3発明に係る甲A3の記載を検討しても、甲A3発明のウレタンプレポリマーの製造にあたりポリイソシアネートとして、「ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)」を組み合わせて使用することは記載ないし示唆されていないから、相違点c3は実質的な相違点であるといえる。
そうすると、本件発明は、甲A3に記載された発明ということができない。
また、両申立人が提示したいずれの甲号証の記載を検討しても、甲A3発明において、ウレタンプレポリマーの製造の際、「ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)」を組み合わせて使用することを想起し得る記載は見あたらないから、当業者が容易に想到し得たものとも認められない。

ウ 小括
したがって、本件発明は、相違点c1及びc2について検討するまでもなく、甲A3に記載された発明でないし、甲A3に記載された発明及び両申立人が提示した全ての甲号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(4)甲B10発明に基づく検討

ア 対比
本件発明と甲B10発明とを対比すると、甲B10発明における「(A)・・イソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下であるウレタンプレポリマー」、「(C)・・一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多い多官能性ポリイソシアネート」及び「ホットメルト接着剤組成物」は、それぞれ、本件発明における「イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)」、「多官能イソシアネート(ii)」及び「ポリウレタンホットメルト組成物」に相当する。
そして、甲B10発明における「(C)ポリメリックMDIなどの一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多い多官能性ポリイソシアネート」は、「ポリメリックMDI」がポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの別名であることは、本件優先日時点の当業者の技術常識であるから、本件発明における「前記多官能イソシアネート(ii)」が、「ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)」であることに相当する。
また、甲B10発明における「(A)ポリエステルジオールを含むポリオール組成物にジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を加え反応させたイソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下であるウレタンプレポリマー」は、ポリエステルジオールを含むポリオール組成物が製造原料とされており、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と反応させてウレタンプレポリマーとしているのであるから、本件発明における「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)」との間で、「ポリエステルポリオールを含むポリオール由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー」である限りにおいて、一致する。
さらに、甲B10発明における「反応性ホットメルト接着剤組成物」は、一般に加熱溶融状態で被着体同士を接着し、冷却固化した後、イソシアネート基が水分の存在で架橋することにより、主成分の熱可塑性樹脂がより高分子量化して、接着力及び耐熱性等が向上するタイプの接着剤であって、水分の存在で架橋硬化するものである(【0003】)から、本件発明における「湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物」に相当する。
そうすると、本件発明と甲B10発明とは、
「ポリエステルポリオールを含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)、及び、多官能イソシアネート(ii)を含有し、
前記多官能イソシアネート(ii)が、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物。」
で一致し、以下の各点で相違する。

相違点d1:「ポリエステルポリオール」につき、本件発明では「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)」であるのに対して、甲B10発明では「ポリエステルジオール」である点

相違点d2:本件発明では「多官能イソシアネート(ii)が、ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(ii−2)、ジイソシアネートのアダクト化合物(ii−3)、ジイソシアネートのビュレット化合物(ii−4)、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)からなる群より選ばれる1種以上の化合物である」のに対して、甲B10発明では、「ポリメリックMDIなどの一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多い多官能性ポリイソシアネート」である点

相違点d3:甲B10発明では「(B)インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂」を含んで成るのに対して、本件発明では当該「(B)インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂」を含むことが規定されていない点

相違点d4:本件発明では「ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)」「を含有し、前記ポリイソシアネート(B)が、ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを含有」するのに対して、甲B10発明では「(A)ポリエステルジオールを含むポリオール組成物にジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を加え反応させたイソシアネート基を末端に有」する「ウレタンプレポリマー」である点

イ 検討
事案に鑑みて、相違点d4について検討する。
甲B10発明に係る甲B10の記載を検討しても、甲B10発明のウレタンプレポリマーの製造にあたり、ポリイソシアネートとして「ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを」組み合わせて使用すべき動機となる事項は記載ないし示唆されておらず、相違点d4は実質的な相違点であるといえる。
そうすると、本件発明は、甲B10に記載された発明ということができない。
また、両申立人が提示したいずれの甲号証の記載を検討しても、甲B10発明において、ウレタンプレポリマーの製造の際、「ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)」を組み合わせて使用すべきことを想起し得る記載はないから、当業者が容易に想到し得たものとも認められない。

ウ 小括
したがって、本件発明は、相違点d1〜d3について検討するまでもなく、甲B10に記載された発明でないし、甲B10に記載された発明、及び両申立人が提示した各甲号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(3)まとめ
したがって、本件発明は、甲A1発明1〜3、甲3A発明又は甲B10発明であるということはできず、また、甲A1発明1〜3、甲3A発明又は甲B10発明、及び両申立人が提示した全ての甲号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

3.取消理由通知に採用しなかった取消理由A及びDについての検討

(1)甲B8を主引用文献とする取消理由D

ア.甲B8の記載事項
甲B8には、上記1.(4)ケ.で示した記載に加えて、以下の事項が記載されてはいる。

(ア)「【0014】
上述の従来技術にもかかわらず、接着剤/シーラント、特に反応性ホットメルト接着剤として使用するのに適した改良ポリウレタン組成物であって、モノマー性ジイソシアネートの含有量の低いポリウレタン組成物が依然として要請されている。特に、このような組成物の製造原料は容易かつ安価に入手できる易反応性の原料であるべきであり、また、これらの接着特性は常套のホットメルト接着剤の接着特性に比べて少なくとも同等であるべきである。
【0015】
本発明の目的は特許請求の範囲に記載の反応性ポリウレタン組成物によって達成された。この達成手段は、実質的にはポリオールと高分子量ジイソシアネートとの反応生成物を提供することから成る。
【0016】
本発明の目的は、上記のポリオールと高分子量ジイソシアネートとの反応生成物に、蒸気圧が、例えばモノマー性ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等よりも実質上低い移行性ポリイソシアネートを添加するという別の手段によって達成された。」

(イ)「 (実施例)
(1)高分子量ジイソシアネートの製造
モノマー性ジイソシアネートを酢酸エチルに添加し、50℃に加熱した。加熱を停止して適量のジオールを10分間かけて滴下した。反応熱に起因して、反応混合物は約60℃まで加熱された。反応を15分間おこなった後、反応混合物を80℃まで加熱した。さらに15分間経過後、触媒を添加し、反応をさらに30分間続行した。高分子量ジイソシアネートの沈殿剤として酢酸エチル、クロロベンゼン、ガソリン、アセトンおよびm−ヘプタンを使用した。高分子量ジイソシアネートの特性を以下の表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1中の符号の意義は次のとおりである。
1)NPG:ネオペンチルグリコール
HPN:ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート
2)dr.:滴
DBTL:ジブチル錫ジラウレート
3)A1:合成中の反応混合物の沈殿後に単離した。
A2:A1と同様に処理した後、冷蔵庫内での晶出によって完全に沈殿させた。
A3:A1と同様に処理した後、ヘキサンで沈殿させ、濾取した。
A4:冷蔵庫内での晶出後、ヘキサンで沈殿させた。
A5:A1と同様に処理した後、濾取物をヘキサンで処理した。
A6:沈殿させた後、ガソリンで洗浄した。
A7:沈殿させた後、ガソリンで洗浄し、次いでクロロベンゼンで洗浄した。
表1から明かなように、沈殿させた高分子量ジイソシアネートを適当な溶剤を用いて再結晶/洗浄することによってモノマー残渣を0.5重量%以下に低減させることができる。
【0054】
(2)高分子量ジイソシアネートとポリオールとの反応
(実施例13)
実施例11で調製した高分子量ジイソシアネートを既知の方法に従ってヒドロキシ官能性ポリエステル「ダイナコル(Dynacoll)7380」(クレアノヴァ(Creanova)社製のドデカン二酸と1,6−ヘキサンジオールとのポリエステル;OH価30)[特性ナンバー:2.2]と反応させた。得られたPUプレポリマーのNCO含有量は1.97重量%(理論値:2.01重量%)であり、130℃での粘度は24.8 Pa・sであった。残留モノマー含有量は<0.1重量%であった。この生成物は反応性ホットメルト接着剤として良好な特性を示した。」

イ.甲B8に記載された発明
甲B8には、実施例13に着目すると、次の発明が記載されているといえる。
「モノマー性ジイソシアネートを酢酸エチルに添加し、50℃に加熱した後、加熱を停止して適量のジオールを10分間かけて滴下し、反応熱に起因して反応混合物は約60℃まで加熱され、反応を15分間おこなった後、反応混合物を80℃まで加熱し、さらに15分間経過後、触媒を添加し、反応をさらに30分間続行し、沈殿剤として酢酸エチル、クロロベンゼン、ガソリン、アセトンおよびm−ヘプタンを使用して得られた高分子量ジイソシアネートを、既知の方法に従ってヒドロキシ官能性ポリエステル「ダイナコル(Dynacoll)7380」(クレアノヴァ(Creanova)社製のドデカン二酸と1,6−ヘキサンジオールとのポリエステル;OH価30)[特性ナンバー:2.2]と反応させて得られた、NCO含有量は1.97重量%(理論値:2.01重量%)であり、130℃での粘度は24.8 Pa・sであり、残留モノマー含有量は<0.1重量%であるPUプレポリマーからなる反応性ホットメルト接着剤。」(以下、「甲B8発明」という。)

ウ.検討

(ア)対比
本件発明と甲B8発明を対比する。
甲B8発明の「ヒドロキシ官能性ポリエステル「ダイナコル(Dynacoll)7380」(クレアノヴァ(Creanova)社製のドデカン二酸と1,6−ヘキサンジオールとのポリエステル;OH価30)[特性ナンバー:2.2]」は、本件発明の「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール」に相当する。
甲B8発明の「高分子量ジイソシアネート」は、本件発明の「ポリイソシアネート(B)」に相当する。
そして、甲B8発明の「PUプレポリマー」は、本件発明の「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)」に相当する。
甲B8発明の「反応性ホットメルト接着剤」と、本件発明の「湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物」とは、ポリウレタンホットメルト組成物である限りにおいて、一致する。

そうすると、本件発明と甲B8発明とは、
「下記式(1)で示されるポリエステルポリオールを含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有する、ポリウレタンホットメルト組成物。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点e1:本件発明は、「多官能イソシアネート(ii)を含有し」、「前記多官能イソシアネート(ii)が、ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(ii−2)、ジイソシアネートのアダクト化合物(ii−3)、ジイソシアネートのビュレット化合物(ii−4)、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)からなる群より選ばれる1種以上の化合物である」のに対して、甲B8発明は、そのような「多官能イソシアネート(ii)」を含有しない点

相違点e2:「ポリイソシアネート(B)」が、本件発明は、「ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを含有」するのに対して、甲B8発明は、「高分子量ジイソシアネート」である点

相違点e3:本件発明は「湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物」であるのに対して、甲B8発明は「反応性ホットメルト接着剤」である点

(イ)検討
事案に鑑みて、相違点e2について検討する。
甲B8には、甲B8発明の「高分子量ジイソシアネート」として、「ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)」を組み合わせて使用することは記載されていない。また、両申立人が提示した全ての甲号証にも、甲B8発明の「高分子ポリイソシアネート」として、「ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)」組み合わせて使用すべきことを想起し得る記載はないから、当業者が容易に想到し得たものとも認められない。

エ.小括
したがって、本件発明は、相違点e1及びe3について検討するまでもなく、甲B8に記載された発明、及び両申立人が提示した全ての甲号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲B9を主引用文献とする取消理由D
甲B9には、実施例1として、「Dynacoll 7360」なる重量平均分子量3750であるヘキサンジオールアジペート(ポリマー)を含むポリオール組成物とアクリルポリマー(反応性または非反応性)を含む75.15〜79.35重量%のポリマー組成物に「MONDUR M」なる4,4’MDIの14.85〜15.65重量%が追加され反応を完了させてなる組成物に対して、「MONDUR MR」なるポリメリックMDIの5〜10重量%が追加された配合の「Sample B」ないし「Sample D」なる反応型ホットメルト接着剤が記載されており([0043])、これらは甲A3に記載された「Sample B」ないし「Sample D」と同じものである。
そうすると、甲B9には、実施例1の「Sample B」ないし「Sample D」に着目して、甲A3発明と同じく、次の発明が記載されているといえる。

「「Dynacoll 7360」なる重量平均分子量3750であるヘキサンジオールアジペート(ポリマー)を含むポリオール組成物とアクリルポリマー(反応性または非反応性)を含む75.15〜79.35重量%のポリマー組成物に「MONDUR M」なる4,4’MDIの14.85〜15.65重量%が追加され反応を完了させてなるポリウレタンプレポリマーを含む組成物と「MONDUR MR」なるポリメリックMDIの5〜10重量%を含む反応型ホットメルト接着剤。」(以下「甲B9発明」という。)
そして、上記2.(3)で甲A3発明について説示した理由と同一の理由により、本件発明につき、甲B9発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

(3)甲B2を主引用文献とする取消理由D

ア.甲B2に記載された発明
甲B2には、上記1(4)エの記載からみて、次の発明が記載されているといえる。
「セバシン酸と1,6−ヘキサンジオールとからなる高結晶性ポリエステルポリオール(A1)〜(A3)、低結晶性ポリエステルポリオール(B)及び数平均分子量が4000以下であるポリエーテルポリオール(C)を含むポリオール化合物と、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートであるポリイソシアネート化合物とを含む原料組成物を反応させてなり、且つ末端にイソシアネート基を有しているウレタンプレポリマーを含有していることを特徴とする湿気硬化型ホットメルト接着剤。」(以下「甲B2発明」という。)

イ.対比
甲B2発明の「セバシン酸と1,6−ヘキサンジオールとからなる高結晶性ポリエステルポリオール(A1)〜(A3)」は、本件発明の「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)」に「R1及びR2の有する炭素原子数の合計が12以上であ」る点を除き相当する。
甲B2発明の「4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートであるポリイソシアネート化合物」は、ポリイソシアネート化合物である限りにおいて、本件発明の「ポリイソシアネート(B)」に相当する。
甲B2発明のウレタンプレポリマー」は、本件発明の「イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー」に相当する。
甲B2発明の「湿気硬化型ホットメルト接着剤」は、本件発明の「湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物」に相当する。

そうすると、本件発明と甲B2発明とは、
「ポリエステルポリオールを含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有する、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点g1:「ポリエステルポリオール」につき、本件発明では「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)」であるのに対して、甲B2発明では「セバシン酸と1,6−ヘキサンジオールとからなる高結晶性ポリエステルポリオール(A1)〜(A3)」である点

相違点g2:本件発明は、「多官能イソシアネート(ii)を含有し」、「前記多官能イソシアネート(ii)が、ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(ii−2)、ジイソシアネートのアダクト化合物(ii−3)、ジイソシアネートのビュレット化合物(ii−4)、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)からなる群より選ばれる1種以上の化合物である」のに対して、甲B2発明は、そのような「多官能イソシアネート(ii)」を含有しない点

相違点g3:「ポリイソシアネート(B)」が、本件発明では、「ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを含有」するのに対して、甲B2発明では、「4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートであるポリイソシアネート化合物」である点

ウ.検討
事案に鑑みて、相違点g3から検討する。
相違点g3は、前記(1)アで述べた本件発明と甲8発明の相違点e2と同内容の相違点であり、前記(1)イで述べたのと同じ理由により、甲B2発明において、「ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)」を組み合わせて使用することは記載されていない。また、両申立人が提示した全ての甲号証にも、甲B2発明の「4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートであるポリイソシアネート化合物」に代えて、「ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)」を組み合わせて使用すべきことを想起し得る記載はないから、当業者が容易に想到し得たものではない。


エ.小括
したがって、本件発明は、甲B2に記載された発明、及び両申立人が提示した全ての甲号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)甲A2を主引用文献とする取消理由A

ア.甲A2に記載された発明
甲A2には、上記1(4)アの記載からみて、次の発明が記載されているといえる。
「一般式(I)で示される長鎖脂肪族ポリエステルポリオール(A)及び2000〜10000の数平均分子量を有する脂肪族ポリエーテルポリオール(B)を含むポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有してなり、前記脂肪族ポリエーテルポリオール(B)が、前記脂肪族ポリエーテルポリオール(B)全体に対して10〜60質量%の範囲のエチレンオキシド由来の構造単位を有するものであることを特徴とするウェット単板用湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【化1】

(一般式(I)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基を示し、かつR1及びR2の有する炭素原子数の合計は12以上である。nは3〜40を示す。)」(以下「甲A2発明」という。)

イ.対比
本件発明と甲A2発明を対比する。
甲A2発明の「一般式(I)で示される長鎖脂肪族ポリエステルポリオール(A)」は、本件発明の「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール」に相当する。
甲A2発明の「ポリイソシアネート」は、ポリイソシアネートである限りにおいて、本件発明の「ポリイソシアネート(B)」に相当する。
そして、甲A2発明の「一般式(I)で示される長鎖脂肪族ポリエステルポリオール(A)・・・を含むポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマー」は、本件発明の「下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)」に相当する。
甲A2発明の「ウェット単板用湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤」と、本件発明の「湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物」とは、ポリウレタンホットメルト組成物である限りにおいて、一致する。

そうすると、本件発明と甲A2発明とは、
「下記式(1)で示されるポリエステルポリオールを含むポリオール(A)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有する、ポリウレタンホットメルト組成物。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点h1:本件発明は、「多官能イソシアネート(ii)を含有し」、「前記多官能イソシアネート(ii)が、ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(ii−2)、ジイソシアネートのアダクト化合物(ii−3)、ジイソシアネートのビュレット化合物(ii−4)、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)からなる群より選ばれる1種以上の化合物である」のに対して、甲A2発明は、そのような「多官能イソシアネート(ii)」を含有しない点

相違点h2:「ポリイソシアネート(B)」が、本件発明は、「ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを含有」するのに対して、甲A2発明は、「ポリイソシアネート」である点

相違点h3:本件発明は「湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物」であるのに対して、甲A2発明は「ウェット単板用湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤」である点

ウ.検討
事案に鑑みて、相違点h2から検討する。
甲A2には、甲A2発明の「ポリイソシアネート」として、「ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)」を組み合わせて使用することは記載も示唆もされていない。
したがって、上記相違点h2は、実質的な相違点である。
また、両申立人が提示した全ての甲号証にも、甲A2発明の「ポリイソシアネート」として、「ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)」を組み合わせて使用すべきことを想起し得る記載はないから、当業者が容易に想到し得たものではない。


エ.小括
したがって、本件発明は、相違点h1及びh3について検討するまでもなく、甲A2に記載された発明であるということはできず、また、甲A2に記載された発明、及び両申立人が提示した全ての甲号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、甲A2を主引用文献とする取消理由Aは理由がない。

4.取消理由A、C及びD並びに取消理由1及び2についてのまとめ
以上のとおりであるから、両申立人が主張する取消理由A、C及びD並びに当審が通知した取消理由1及び2についてはいずれも理由がない。

II.取消理由B及びEについて
申立人Aが主張する取消理由B及び申立人Bが主張する取消理由Eはいずれも特許法第36条に係るものであるから、併せて検討する。

1.各取消理由の内容

(1)取消理由B
申立人Aが主張する取消理由Bは、申立書Aの記載(第11頁〜第12頁)によると、本件請求項1では、「ウレタンプレポリマー(i)」及び「多官能イソシアネート(ii)」の含有量が全く限定されておらず、本件発明には、例えば、「ウレタンプレポリマー(i)」及び「多官能イソシアネート(ii)」の含有量がそれぞれ0.1質量%である組成物も含まれるところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載では、「ウレタンプレポリマー(i)」及び「多官能イソシアネート(ii)」のみから成る実施例1〜5の組成物しか、「初期強度、耐加水分解性、及び、熱安定性」の評価が行われておらず、そのような本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らしても、「ウレタンプレポリマー(i)」及び「多官能イソシアネート(ii)」の含有量がそれぞれ0.1質量%である組成物が「初期強度、耐加水分解性、及び、熱安定性に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を提供すること」という課題を解決できるとはいえないから、本件の出願時の技術常識に照らしても、本件請求項1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、本件の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない、というものと解される。

(2)取消理由E
申立人Bが主張する取消理由Eは、以下の2点をいうものと解される。
なお、2点とも特許法第36条第6項第1号不適合をいうものと認められ、同法同条第4項第1号について具体的に主張しているものとは認められない。

ア.本件の請求項1には、「ウレタンプレポリマー(i)」が「ポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)由来の構造を有する」ことが規定されているのみであるところ、本件特許明細書の実施例において実際に製造及び評価した湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物は、ポリエステルポリオール(A−1)以外のポリオールとして、数平均分子量2,000のポリプロピレングリコールをさらに用いたもののみである。
ここで、一般に、接着剤として用いるホットメルト組成物の特性は、主剤をはじめとする含有成分の化学構造によって変化することが当業者間の技術常識であるといえるところ、甲B11の記載事項に照らすと、ポリエーテル系のポリオールを用いないウレタンプレポリマーを含有するポリウレタンホットメルト組成物は、1液湿気硬化型の接着剤として用いるには粘度が高すぎるものと推測されるから、本件特許明細書の実施例において、数平均分子量2,000のポリプロピレングリコールを用いた場合に良好な特性が得られていたとしても、当該ポリプロピレン(グリコール)を用いない場合にも同等の特性が得られるか否かは不明であって、本件特許明細書の実施例に具体的に開示された内容を、本件特許発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえず、本件請求項1に記載されている事項を具備する発明のすべてにわたって本願発明の課題に即した効果を達成できるともいえないとし、本件の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない、というものと解される。

イ.本件の請求項1では、「多官能イソシアネート(ii)が、ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(ii−2)、ジイソシアネートのアダクト化合物(ii−3)、ジイソシアネートのビュレット化合物(ii−4)、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)からなる群より選ばれる1種以上の化合物である」ことが規定されているところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明では、この「多官能イソシアネート(ii)」は、本件特許発明が解決しようとする課題の一つである優れた「熱安定性」を得る上で必須の成分であることが明示されている(段落【0044】)し、実施例をもって「多官能イソシアネート(ii)」を用いたことが具体的に開示されるのは、上記(ii−5)に対応する「ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)」(実施例1〜3)、及び上記(ii−2)に対応する「ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(HDIヌレート)」(実施例4、5)に限られ、これら以外の多官能イソシアネート(ii)を用いた場合にすべて「初期強度、耐加水分解性、及び熱安定性に優れる」(段落【0010】)といった効果が得られること、また、その合理的な根拠が本件明細書に明らかにされておらず、出願時の技術常識でもないのに対して、当該技術分野において、多官能イソシアネートの種類や構造が、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物が所望とする特性を発揮するか否かに大きな影響を及ぼすものであるといえるから、本件明細書の実施例に具体的に開示された内容を、本件の請求項1に記載された事項で特定される発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえず、本件特許発明の全てにわたって本願発明の課題に即した効果を達成できるともいえないとし、本件の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない、というものと解される。

2.検討

(1)本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された事項
本件特許明細書には、【0013】〜【0025】(ポリエステルポリオール(A−1))、【0026】〜【0043】(ウレタンプレポリマー(i)及びその製造方法)、【0044】〜【0046】(多官能イソシアネート(ii))の記載があり、具体的に次の事項が記載されている。

「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、初期強度、耐加水分解性、及び、熱安定性に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を提供することである。」

「【0013】
前記ポリエステルポリオール(A−1)は、優れた初期強度を得るうえで、前記式(1)で示されるものを用いることが必須である。」

「【0030】
前記ポリイソシアネート(B)としては、より一層優れた耐加水分解性が得られる点から、ジイソシアネート(B−1)を含有することが好ましく、ジイソシアネート(B−1)と、前記イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又は前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを含有することがより好ましい。また、前記ジイソシアネート(B−1)としては、ジフェニルメタンジイソシアネートを用いることが好ましく、前記イソシアヌレート化合物(B−2−1)としては、脂肪族イソシアヌレート化合物を用いることが好ましい。」

「【0044】
前記多官能イソシアネート(ii)は、優れた熱安定性を得る上で必須の成分である。」

「【0058】
[実施例1]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口を備えた四口フラスコに、ポリエステルポリオール(1,6−ヘキサンジオールとドデカン二酸との反応物、数平均分子量:3,500、以下「HG/DDA」と略記する。)を33質量部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量:2,000、以下「PPG」と略記する。)を48質量部仕込み、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、フラスコ内を70℃に冷却し、70℃で溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する。)13質量部、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(東ソー株式会社製「ミリオネート MR−200」、以下「ポリメリックMDI」と略記する。)3質量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(以下、「HDIヌレート」と略記する。)3質量部を加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで100℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマーを得た。
このウレタンプレポリマー100質量部に対し、ポリメリックMDIを3質量部配合して湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を得た。
【0059】
[実施例2〜5、及び、比較例1]
用いるポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、多官能イソシアネート(ii)の種類及び量を表1に示す通り変更した以外は、実施例1と同様にしてウレタンプレポリマーを得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を得た。」





(2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)の判断手法
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点に立って判断する。

(3)本件発明の課題
本件発明は、「初期強度、耐加水分解性、及び、熱安定性に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を提供すること」(【0007】)を解決すべき課題とするものである。

(4)本件発明について
本件発明は、第3で述べたとおり、「前記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)、及び、多官能イソシアネート(ii)を含有し、
前記ポリイソシアネート(B)が、ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを含有し、
前記多官能イソシアネート(ii)が、ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(ii−2)、ジイソシアネートのアダクト化合物(ii−3)、ジイソシアネートのビュレット化合物(ii−4)、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)からなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物。」である。

本件特許明細書には、前記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を用いることにより、優れた初期強度を得ること(【0013】)、前記ポリイソシアネート(B)が、ジイソシアネート(B−1)と、前記イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又は前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを含有することにより、より一層優れた耐加水分解性が得られること(【0030】)、及び、前記多官能イソシアネート(ii)を含むことにより、優れた熱安定性を得ること(【0044】)が記載されている。
そして、本件発明の実施例1〜4は、初期強度、耐加水分解性、及び熱安定性のいずれも優れることを具体的に確認することができる。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明が前記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されていると解される。

また、本件明細書には、前記(1)で述べたとおり、本件発明の構成成分である「ポリエステルポリオール(A−1)」の具体例(【0013】〜【0025】)、「ウレタンプレポリマー(i)」の具体例とその製造方法(【0026】〜【0043】)、「多官能イソシアネート(ii)」(【0044】〜【0046】)の具体例が例示されており、実施例1〜5として本件発明に係る湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物の具体例を製造したことが記載されている。
そうすると、本件明細書は、本件発明に係る湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を、当業者が製造することができる程度に明確かつ十分に記載しているともいえる。

(5)申立人の主張について
両申立人は、それぞれ、上記1.(1)又は(2)の点を主張する。
しかるに、上記(4)で説示したとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明が前記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されていると解されるところ、本件発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物において、「ウレタンプレポリマー(i)」及び「多官能イソシアネート(ii)」の含有量(取消理由B)につき少量であれば本件発明の上記課題を解決できるような効果を奏し得ないというような当業者の技術常識が存するものとは認められず、また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても、本件発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物全体に対する「ウレタンプレポリマー(i)」及び「多官能イソシアネート(ii)」の含有量が少量となった場合、本件発明の上記課題を解決できるような効果を奏し得ないことを示唆する記載が存するものとも認められない。
さらに、本件発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物において、「ポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)由来の構造を有する」のみならず、ポリエステルポリオール(A−1)以外のポリオール(A)として、数平均分子量2,000のポリプロピレングリコールなどの他のポリオールを含有しない「ウレタンプレポリマー(i)」の場合、適当な粘度を有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を構成できず、本件発明の上記課題を解決できるような効果を奏し得ないというような当業者の技術常識が存するものとは認められない。(取消理由Eの上記ア.の点)
そして、本件発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物において、「多官能イソシアネート(ii)」として、「ジイソシアネートのアダクト化合物(ii−3)」又は「ジイソシアネートのビュレット化合物(ii−4)」を使用した場合、本件発明に係る実施例1ないし4で使用された「ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(ii−2)」又は「ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)」を使用した場合と異なり、本件発明の課題を解決できるような効果を奏し得ないというような当業者の技術常識が存するものとは認められない。(取消理由Eの上記イ.の点)
そして、上記(4)で示したとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、前記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を用いることにより、優れた初期強度を得ること(【0013】)、前記ポリイソシアネート(B)が、ジイソシアネート(B−1)と、前記イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又は前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを含有することにより、より一層優れた耐加水分解性が得られること(【0030】)、及び、前記多官能イソシアネート(ii)を含むことにより、優れた熱安定性を得ること(【0044】)が記載されており、さらに、本件発明の実施例1〜4は、初期強度、耐加水分解性、及び熱安定性のいずれも優れることを具体的に確認することができるのであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明に接した当業者は、本件の請求項1に記載された事項を具備する発明であれば、上記課題を解決できるであろうと認識することができるものと認められる。
そうすると、申立人A及びBの前記主張を採用することはできない。

(6)取消理由B及び取消理由Eに係る検討のまとめ
以上のとおり、本件の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、同法第4条第1項に適合するものであるから、取消理由B及び取消理由Eはいずれも理由がない。

III.当審の判断のまとめ
以上のとおりであるから、両申立人が主張する上記取消理由AないしE及び当審が通知した上記取消理由1及び2についてはいずれも理由がなく、他に各特許を取り消すべき理由も発見できない。

第6 むすび
以上のとおり、本件特許に対する令和4年3月11日受理の訂正請求は、適法であるから、これを認める。
そして、本件特許に係る異議申立てにおいて両特許異議申立人が主張する取消理由はいずれも理由がなく、また、当審が通知した取消理由についても理由がないから、本件の請求項1に係る発明についての特許は、取り消すことができない。
他に本件の請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)由来の構造を有する、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)、及び、多官能イソシアネート(ii)を含有し、
前記ポリイソシアネート(B)が、ジイソシアネート(B−1)と、イソシアヌレート化合物(B−2−1)及び/又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−2−2)とを含有し、
前記多官能イソシアネート(ii)が、ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(ii−2)、ジイソシアネートのアダクト化合物(ii−3)、ジイソシアネートのビュレット化合物(ii−4)、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ii−5)からなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物。
【化1】

(式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基を示し、R1及びR2の有する炭素原子数の合計は12以上であり、nは3〜40の整数を示す。)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-10-20 
出願番号 P2016-248899
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08G)
P 1 651・ 536- YAA (C08G)
P 1 651・ 113- YAA (C08G)
P 1 651・ 537- YAA (C08G)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 橋本 栄和
杉江 渉
登録日 2021-02-10 
登録番号 6836713
権利者 DIC株式会社
発明の名称 湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物  
代理人 大野 孝幸  
代理人 小川 眞治  
代理人 岩本 明洋  
代理人 小川 眞治  
代理人 岩本 明洋  
代理人 大野 孝幸  

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