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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61K 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A61K 審判 全部申し立て 特174条1項 A61K 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K |
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管理番号 | 1393093 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-02-01 |
確定日 | 2022-10-17 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6912763号発明「カテキンの機能性増強法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6912763号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。 特許第6912763号の請求項1、2、3に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6912763号の請求項1、2、3に係る特許についての出願は、2015年6月25日(優先日 2014年6月27日、日本国(JP))を国際出願日とする出願であって、令和3年7月13日に特許権の設定登録がされ、同年8月4日にその特許掲載公報が発行され、その後、令和4年2月1日に、特許異議申立人 田中 眞喜子(以下「特許異議申立人1」という。)、同年同月3日に特許異議申立人 寺村 祥幸(以下「特許異議申立人2」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 そして、同年3月25日付けで当審において取消理由通知が通知され、同年5月30日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年6月10日付けで当審から特許法第120条の5第5項に基づく通知書が通知され、特許異議申立人1から同年7月5日に意見書が提出され、特許異議申立人2から同年8月10日に意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 令和4年5月30日に提出された訂正請求書による訂正の請求について 令和4年5月30日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。 2 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1〜6のとおりである。 (1)訂正事項1−1 請求項1について、訂正前の「前記第一成分が、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びメチル化カテキンからなる群から選ばれる少なくとも1種」との記載を訂正後に「前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種」とする。 (2)訂正事項2−1 請求項1について訂正前の「前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であって組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)を含む」との記載を訂正後に「前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行い、また前記第一成分と前記第二成分を共に含む組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)を含む」とする。 (3)訂正事項1−2 請求項2について、訂正前の「前記第一成分が、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びメチル化カテキンからなる群から選ばれる少なくとも1種」との記載を訂正後に「前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種」とする。 (4)訂正事項2−2 請求項2について訂正前の「前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種である」との記載を訂正後に「前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う」とする。 (5)訂正事項1−3 請求項3について、訂正前の「前記第一成分が、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びメチル化カテキンからなる群から選ばれる少なくとも1種」との記載を訂正後に「前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種」とする。 (6)訂正事項2−3 請求項3について訂正前の「前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種である」との記載を訂正後に「前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う」とする。 3 判断 (1) 訂正事項1−1について ア 目的の適否について 訂正事項1−1は、訂正前の「第一成分」の択一的選択肢から「エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート」を削除し、「メチル化カテキン」を「メチル化カテキン」に該当する「エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート」に限定しているのであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項について 訂正事項1−1は、訂正前の「第一成分」の択一的選択肢から一部を削除し、【0017】の記載から、「メチル化カテキン」を好ましい具体例である「エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート」としたものであるから、明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。 したがって、訂正事項1−1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて 訂正事項1−1は、択一的選択肢の削除及び選択肢の一つを具体化し特許請求の範囲を減縮した訂正であって、かつ発明のカテゴリーや目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項1−1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。 エ 訂正事項1−1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げるものを目的とする訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2) 訂正事項2−1について ア 目的の適否について 訂正事項2−1は、訂正前の「第二成分」に関し、「第一成分」との関係を特定していなかったところ、本件訂正によって、「第一成分」である「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うこと、第二成分の含有量の特定を「第一成分と前記第二成分を共に含む組成物中の含有量」であることの特定事項を加えて限定しているのであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項について 訂正事項2−1は、【0013】の「EGCGは、67LR を活性化することで抗がん作用や抗筋萎縮作用のみならず抗炎症作用 (非特許文献20)、抗アレルギー作用(非特許文献21)、動脈硬化予防作用 (非特許文献22)、抗血栓性作用 (非特許文献22)、免疫増強作用(非特許文献23)、及び神経細胞保護作用(非特許文献24) を発揮することが知られている。」との第一成分が67LR を活性化すること、【0053】〜【0056】の第二成分が第一成分の67LR の活性化を増強することの記載、【0021】の「また、柑橘類抽出物の組成物中の含有率は、組成物の剤型または投与形態によって異なる。 本発明の組成物において、茶抽出物又はカテキンと、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体との比(茶抽出物/柑橘類抽出物、質量比)は、それぞれの濃縮程度によっても異なるが、好ましくは100〜0.01とすることができる。そして、茶抽出物又はカテキン、及び柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体の組成物中の含有量は、上記質量比の範囲で適宜設定することができる。例えば茶抽出物又はカテキンは90重量%〜0.001重量%、好ましくは30重量%〜0.01重量%であり、はフラバノン若しくはその配糖体は90重量%〜0.001重量%、好ましくは20重量%〜0.01重量%である。」との第一成分と第二成分の両方を含有する組成物を前提とした含有量の記載に基づき規定したものであり、明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。 したがって、訂正事項2−1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて 訂正事項2−1は、特許請求の範囲を減縮した訂正であって、かつ発明のカテゴリーや目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項2−1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。 エ 訂正事項2−1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げるものを目的とする訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (3) 訂正事項1−2について ア 目的の適否について 訂正事項1−2は、訂正事項1−1と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項について 訂正事項1−2は、訂正事項1−1と同様に、明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえず、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて 訂正事項1−2は、訂正事項1−1と同様に、特許請求の範囲を減縮した訂正であって、かつ発明のカテゴリーや目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。 エ 訂正事項1−2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げるものを目的とする訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (4) 訂正事項2−2について ア 目的の適否について 訂正事項2−2は、訂正前の「第二成分」に関し、「第一成分」との関係を特定していなかったところ、本件訂正によって、「第一成分」である「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことの特定事項を加えて限定しているのであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項について 訂正事項2−2は、【0013】の「EGCGは、67LR を活性化することで抗がん作用や抗筋萎縮作用のみならず抗炎症作用 (非特許文献20)、抗アレルギー作用(非特許文献21)、動脈硬化予防作用 (非特許文献22)、抗血栓性作用 (非特許文献22)、免疫増強作用(非特許文献23)、及び神経細胞保護作用(非特許文献24) を発揮することが知られている。」との第一成分が67LR を活性化すること、【0053】〜【0056】の第二成分が第一成分の67LR の活性化を増強することの記載に基づき規定したものであり、明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。 したがって、訂正事項2−2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて 訂正事項2−2は、特許請求の範囲を減縮した訂正であって、かつ発明のカテゴリーや目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項2−2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。 エ 訂正事項2−2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げるものを目的とする訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (5)訂正事項1−3、訂正事項2−3について ア 訂正事項1−3について 訂正事項1−3は、上記(3)で訂正事項1−2について検討したのと同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げるものを目的とする訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 イ 訂正事項2−3について 訂正事項2−3は、上記(4)で訂正事項2−2について検討したのと同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げるものを目的とする訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 3 本件訂正請求についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、訂正後の請求項1、2、3について訂正を認める。 第3 特許請求の範囲の記載 上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1、2、3に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明2」、「本件特許発明3」という。まとめて、「本件特許発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2、3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(なお、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1、2、3に係る発明を、「訂正前の本件特許発明1」、「訂正前の本件特許発明2」、「訂正前の本件特許発明3」といい、まとめて、「訂正前の本件特許発明」ということもある。)。 「【請求項1】 柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む、緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用の増強用食品組成物であって、前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行い、また前記第一成分と前記第二成分を共に含む組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)を含む、前記組成物。 【請求項2】 柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む、緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用の増強剤であって、前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う、前記増強剤。 【請求項3】 柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む組成物を被検体に摂取させることを特徴とする、緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の、前記被検体における抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用を増強させる方法(ヒトに対する医療行為を除く)であって、前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う、前記方法。」 第4 特許異議申立人が申し立てた理由及び取消理由 1 特許異議申立人が申し立てた理由 (1)特許異議申立人1が申し立てた理由 特許異議申立人1が申し立てた理由の概要は以下のとおりである。 異議申立理由(1−1):令和3年4月23日付け手続補正書でした補正は、補正された請求項1において、「前記第二成分が、・・・組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)を含む」として、第一成分を含まなくてもよい組成物中の第二成分の含有量が規定されたのに対して、明細書の根拠である【0021】では、第一成分及び第二成分を含む組成物における第二成分の含有量としてしか記載されていないことから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 異議申立理由(1−2):請求項1〜3に係る特許に関して、抗がん作用以外の「抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用」や、EGCG増強作用の67LR依存性を示す実施例については、エリオジクチオールを用いた例しかなく、ナリンゲニン、ヘスペレチンを用いた場合やそれらの配糖体を用いた例については、本件明細書に具体的に開示されていないし、それらの場合も同様の効果が得られるという技術常識はない(特に配糖体には多数のものが存在する。)から、抗がん作用以外の作用について、エリオジクチオール以外の第二成分が同様に課題が解決できると理解できないから、請求項1〜3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではなく、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないので、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 異議申立理由(1−3):請求項1〜3に係る特許に関して、抗肥満作用、コレステロール低下作用については、67LRを介したシグナリングを増強することによる作用であるのかどうか不明であり、実施例は「やぶきた(0.2%)及びエリオジクチオール(0.45g/kg diet)」の組み合わせのみであり、やぶきたのどの成分とエリオジクチオールとの相互作用があるのかも不明であり、エリオジクチオールの量が実施例と大きく異なる場合まで所望の効果を奏するかも不明であり、請求項1〜3に係る発明全体にわたって課題が解決できると理解できないから、請求項1〜3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではなく、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないので、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 異議申立理由(1−4):請求項1〜3に係る特許に関して、抗がん作用以外の「抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用」や、EGCG増強作用の67LR依存性を示す実施例については、エリオジクチオールを用いた例しかなく、ナリンゲニン、ヘスペレチンを用いた場合やそれらの配糖体を用いた例については、本件明細書に具体的に開示されていないし、それらの場合も同様の効果が得られるという技術常識はない(特に配糖体には多数のものが存在する。)から、抗がん作用以外の作用について、エリオジクチオール以外の第二成分が所望の効果を奏するかどうか逐一確認するのは過度の試行錯誤であるから、請求項1〜3に係る発明を当業者が実施できるように記載されておらず、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 異議申立理由(1−5):請求項1〜3に係る特許に関して、抗肥満作用、コレステロール低下作用については、67LRを介したシグナリングを増強することによる作用であるのかどうか不明であり、実施例は「やぶきた(0.2%)及びエリオジクチオール(0.45g/kg diet)」の組み合わせのみであり、やぶきたのどの成分とエリオジクチオールとの相互作用があるのかも不明であり、エリオジクチオールの量が実施例と大きく異なる場合まで所望の効果を奏するかも不明であり、所望の効果を奏するかどうか逐一確認するのは過度の試行錯誤であるから、請求項1〜3に係る発明を当業者が実施できるように記載されておらず、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 特許異議申立人1は、上記新規事項及び記載要件に関する特許異議申立の証拠として後記甲第1〜6号証を提出している。 (2)特許異議申立人2が申し立てた理由 特許異議申立人2が申し立てた理由の概要は以下のとおりである。 異議申立理由(2−1):請求項1〜3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 異議申立理由(2−2)請求項1〜3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 異議申立理由(2−3):請求項2、3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項2、3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 異議申立理由(2−4)請求項1〜3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明及び甲第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 異議申立理由(2−5):請求項2、3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項2、3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 異議申立理由(2−6)請求項1〜3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明及び甲第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 異議申立理由(2−7):請求項2、3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項2、3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 異議申立理由(2−8)請求項1〜3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された発明及び甲第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 異議申立理由(2−9):請求項2、3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項2、3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 異議申立理由(2−10)請求項1〜3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第5号証に記載された発明及び甲第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 異議申立理由(2−11):請求項1〜3に係る特許に関して、本件特許明細書では特定の第一成分と第二成分の具体例の開示にとどまり、抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用のそれぞれについて、どのような第一成分と第二成分の組み合わせが上記作用を増強できるのか理解できないから、当業者が課題が解決できると認識できる範囲を超えており、請求項1〜3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではなく、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないので、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 異議申立理由(2−12):請求項1〜3に係る特許に関して、本件特許明細書では特定の第一成分と第二成分の具体例の開示にとどまり、抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用のそれぞれについて、どのような第一成分と第二成分の組み合わせが上記作用を増強できるのか理解できないから、請求項1〜3に係る発明を実施するためには、本件特許明細書の記載は不十分であるから、請求項1〜3に係る発明を当業者が実施できるように記載されておらず、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 異議申立理由(2−13):請求項1〜3に係る特許に関して、本件特許明細書には、「増強用食品組成物」という記載は存在せず、【0027】や【0040】の増強に関する記載を参照しても「増強」が具体的にどのような態様まで含むか明らかでないから、請求項1〜3に係る発明は、は明確ではなく、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではないので、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 特許異議申立人1の提出した証拠 甲第1号証:特願2016−529649号(本件特許の出願)の審判段階で特許権者から令和3年4月23日に提出された意見書 甲第2号証:特開2007−39349号公報 甲第3号証:立花宏文、緑茶カテキン受容体67LRを介したカテキンの機能性発現機構、日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)、2008、132、p.145〜149 甲第4号証:笹沼いづみ,吉澤翠和乃、柑橘類フラボノイド配糖体による血管内皮細胞増殖の分子機構に関する研究、小山工業高等専門学校研究紀要、2015、第48号、p.97〜100 甲第5号証:特願2016−529649号(本件特許の出願)の審査段階で特許権者から令和元年7月18日に提出された意見書 甲第6号証:特開2021−136906号公報 特許異議申立人2の提出した証拠 甲第1号証:国際公開2014/083172号 甲第2号証:特開2007−60972号公報 甲第3号証:特開2009−50168号公報 甲第4号証:特開2006−188672号公報 甲第5号証:特開2009−55905号公報 甲第6号証:編集代表 吉村壽次、化学辞典(第2版)[小型版]、森北出版株式会社、2012、p.276、1178、1287 甲第7号証:厚生労働省HP、生活習慣に着目した疾病対策の基本的方針について(意見具申)、[online]、(証拠には、「96/12/18」との表記がある。)、インターネット 甲第8号証:特開2001−181190号公報 甲第9号証:山崎正利 外1名著、栄養学雑誌、2000、Vol.58、No.3、p.101〜108 甲第10号証:Dallas C. 外4名、Phytomedicine、2008、Vol.15、p.783〜792 甲第11号証:特開2013−223482号公報 甲第12号証:Carlson M. 外1名、JOURNAL OF AOAC INTERNATIONAL、1998、Vol.81、No.4、p.691〜701 甲第13号証:Dallas C. 外5名、Phytotherapy Research、2014、Vol.28、p.212〜218 甲第14号証:特開2004−75619号公報 甲第15号証:特表2012−522030号公報 甲第16号証:特開昭60−156614号公報 甲第17号証:Holy E.W. 外6名、Journal of Molecular and Cellular Cardiology、2010、Vol.48、p.1138〜1145 甲第18号証:Santilli G. 外10名、Clinical Cancer Research、2013、Vol.19、No.5、p.1116〜1125 甲第19号証:特願2016−529649号(本件特許の出願)の審査段階での2019年5月31日付け拒絶理由通知 甲第20号証:特願2016−529649号(本件特許の出願)の審査段階での2019年7月18日に提出された手続補正書 その他、特許異議申立人2からは、令和4年8月10日に提出された意見書とともに甲第21〜23号証が提出されている(参考資料21〜23として扱うこととする。)。 2 当審合議体が通知した取消理由の概要 訂正前の請求項1〜3に係る特許に対して、当審合議体が令和4年3月25日付けで通知した取消理由の要旨は次のとおりである。 理由1:(新規事項)令和3年4月23日提出の手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(決定注:取消理由通知では、「平成3年」となっているが、「令和3年」の誤記である。以下同様。)。 理由2:(新規性)下記の請求項1〜3に係る発明は、本件特許優先日前に電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的技術情報1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 記 電子的技術情報1:国際公開2014/083172号(特許異議申立人2の提出した甲第1号証) 第5 当審合議体の判断 当審合議体は、請求項1〜3に係る特許は、当審合議体の通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。 理由は以下のとおりである。 当審合議体が通知した取消理由の判断 理由1について 請求項1について ア 令和3年4月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)後の請求項1には、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む、緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用の増強用食品組成物であって、前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びメチル化カテキンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であって組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)を含む、前記組成物。」との記載があり、本件訂正前の請求項1の上記記載は、「増強用食品組成物」中に第一成分を含まない場合が包含されているのに対して、該第一成分を含まない場合の「第二成分が、」「組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)を含」まれることは、この出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載されておらず、また、自明な事項であるともいえない(【0021】の記載は、両者の質量比に言及するなど第一成分と第二成分とを共に含む組成物を前提とした含有量の記載であって、第一成分を含まない場合の増強用食品組成物の第二成分の含有量割合の記載は全く存在しない。)ものであった。 しかしながら、本件訂正によって、訂正後の請求項1は、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む、緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用の増強用食品組成物であって、前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行い、また前記第一成分と前記第二成分を共に含む組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)を含む、前記組成物。」と記載され、訂正後は、第一成分と第二成分とを共に含む組成物の第二成分の含有量に限定されることになった。 したがって、訂正後の請求項1の第二成分の含有量の数値範囲は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえず、本件特許明細書及び図面は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていることとなった。 イ したがって、本件訂正により、取消理由1は解消している。 理由2について 請求項1〜3について 1 電子的技術情報1の記載 電子的技術情報1:国際公開第2014/8317号には、以下の記載がある。 訳文にて示す。 (1a)「(発明の名称) 「ポリフェノールによるフラバン−3−オールのバイオアベイラビリティの増大」 (1b)「[1 すくなくとも1種のフラバン−3−オールを含む組成物において、フラバン−3−オールのバイオアベイラビリティを増大させるための少なくとも1種のポリフェノール化合物の非治療的使用であって、前記少なくとも1種のポリフェノール化合物が、フラボノール、フラボン、イソフラボン、フラバノン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、非治療的使用。 ・・・ 3 前記少なくとも1種のポリフェノール化合物が、イソラムネチン、ケンフェロール、ジオスメチン、ネバデンシン、クリシン、エコール、ゲニステイン、ヘスペリチン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の非治療的使用。 4 前記フラバン−3−オールが、(+)−カテキン(C)、(−)−エピカテキン(EC)、ガロカテキン(GC)、ガロカテキンガレート(GCG)、(−)−エピガロカテキン(EGC)、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCg)、(−)−エピカテキン−3−ガレート(ECg)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の非治療的使用。 ・・・ 6 フラバン−3−オールが、緑茶、野生植物の果実、特にベリー、リンゴ、ココア豆、又は フラバン−3−オールを含有するその他の果実に由来する、請求項1〜5にいずれか一項に記載の非治療的使用。 7 前記組成物が、食品、ドリンク、栄養補助食品、ペットフード製品、栄養品、又は化粧用組成物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の非治療的使用。 ・・・ 10 前記フラバン−3−オールのバイオアベイラビリティに次いで、その生物有効性も増大す る、請求項1〜9のいずれか一項に記載の非治療的使用。 11 フラバン−3−オールの投与により治療又は予防できる障害の治療又は予防に使用するた めの、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。 12 フラバン−3−オールの投与により治療又は予防できる前記障害が、循環器疾患、2型糖 尿病、太りすぎ、肥満、炎症性障害、認知障害及び皮膚の酸化損傷からなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。」(請求の範囲) (1c)「実施例1:インビトロcaco 2−細胞モデル 方法:Caco−2ヒト上皮性結腸直腸腺癌細胞を用いて、(−)−エピカテキン輸送をインビトロで研究した。実験当日、培地を除去し、25mMグルコース、10mMHEPE及び1.8mMCaC12を添加したHBSSに取り替えた。カタラーゼ(189U/m1)及びアスコルビン酸(0.5mM)を加え、試験化合物の酸化を防いだ。次いで、(−)−エピカテキン(100μM)を単独で又は他のポリフェノール(2〜100μM)を加えて、細胞単層の頂端面に入れ、2時間インキュベーションした。全ての化合物は、DMSOの原液から暴露培地に加えられた。それぞれの実験において、頂端面のDMSO濃度を0.05%に維持した。抱合化合物(代謝物)を、HSS C18 VanGuardプレカラム(W a t e r s製、スイス)を備えたA c q u i t y U P L C H S S C18の2.1×100mm、1.8μmカラム(W a t e r s製、スイス)を使用する超高速液体クロマトグラフィーを用いて、細胞培地中で検出した。 ・・・ こうしたインビトロモデルの結果、いくつかの選択されたポリフェノールと組み合わせると、基底区画のメチル及び/又はサルフェートエピカテキン代謝物の濃度が有意に高くなり(図2及び3)、これら代謝物の吸収が改善されたことが示された。加えて、選択されたポリフェノールと(−)−エピカテキンとの共インキュベーションによる用量依存的効果も観察された(図4)。 」(15頁16行〜16頁23行及び図3) 2 電子的技術情報1記載の発明 電子的技術情報1は、ポリフェノールによるフラバン−3−オールのバイオアベイラビリティの増大に関する特許文献であって(摘記(1a))、摘記(1b)の請求項7を引用する請求項12に対応した実施例1には、(−)−エピカテキン(100μM)を単独で又は他のポリフェノール(2〜100μM)を加えて、細胞単層の頂端面に入れ、2時間インキュベーションし、インビトロモデルの結果、いくつかの選択されたポリフェノールと組み合わせると、基底区画のメチル及び/又はサルフェートエピカテキン代謝物の濃度が有意に高くなり(図2及び3)、これら代謝物の吸収が改善されたことが示され、加えて、選択されたポリフェノールと(−)−エピカテキンとの共インキュベーションによる用量依存的効果も観察された(図4)ことが示されている(摘記(1c))。 緑茶の成分であるカテキンに循環器疾患、2型糖尿病、太りすぎ、肥満、炎症性障害等に効果のあることは、技術常識であるから(摘記(1b)参照)、電子的技術情報1から、技術的思想のまとまりとしての組成物として、以下の発明が認定できるといえる。 「循環器疾患、2型糖尿病、太りすぎ、肥満、炎症性障害の治療又は予防に効果のある(−)−エピカテキンの吸収改善のためへスペリチンが(−)−エピカテキン(100μM)に対して、2〜100μM添加された組成物」(以下「引用1発明」という。) また、方法の発明として以下の方法も記載されているといえる。 「循環器疾患、2型糖尿病、太りすぎ、肥満、炎症性障害の治療又は予防に効果のある(−)−エピカテキンの吸収改善のためへスペリチンが(−)−エピカテキン(100μM)に対して、2〜100μM添加された吸収改善方法」(以下「引用1方法発明」という。) 3 対比・判断 ア−1 本件特許発明1と引用1発明との対比 引用1発明の組成物は、電子的技術情報1において、緑茶等の飲料を想定しているものであるので、本件特許発明1の「食品組成物」に相当するといえる。 また、引用1発明の「へスペリチン」は、本件特許発明1の「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)」及び「前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種」に該当する。 さらに、引用1発明の「(−)−エピカテキン」が「循環器疾患、2型糖尿病、太りすぎ、肥満、炎症性障害の治療又は予防に」効果のあることは、本件特許発明1の「緑茶抽出物又はカテキン」「の抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つ」に作用する限りにおいて共通する。 したがって、本件特許発明1と引用1発明とは、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む、緑茶抽出物又はカテキンの抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つ」に作用する「食品組成物であって、前記第二成分は、前記緑茶抽出物又はカテキンの成分と組み合わせて使用され、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であ」る、「前記組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1−1:本件特許発明1は、「第一成分の」「作用の増強用」の「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行い、また前記第一成分と前記第二成分を共に含む組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)を含む」と特定されているのに対して、引用1発明においては、「(−)−エピカテキンの吸収改善のためへスペリチンが(−)−エピカテキン(100μM)に対して、2〜100μM添加された」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、「第一成分の」「作用の増強用」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも特定されていない点。 イ−1 相違点1−1の判断 エピカテキンの分子量が290.27、ヘスペレチンの分子量が302.27であることから含有量(重量%)自体が計算できることを考慮しても(特許異議申立人2の甲第6号証参照)、本件特許発明1と引用1発明の緑茶抽出物又はカテキン成分が異なっており、電子的技術情報1には「第一成分の」「作用の増強用」の「第二成分と共に67LRの活性化を行」うことも記載されていないし、このことは本願優先日時点の技術常識でもないので、相違点1−1の本件特許発明1に係る構成が記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点1−1は、実質的な相違点である。 ウ−1 したがって、本件特許発明1は、電子的技術情報1に記載された発明であるとはいえない。 ア−2 本件特許発明2と引用1発明との対比 本件特許発明2は、本件特許発明1の「作用の増強用食品組成物」の発明を「増強剤」として特定し、「また前記第一成分と前記第二成分を共に含む組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)を含む」との特定を削除したものにすぎないので、上記ア−1〜ウ−1で検討したのと同様に、 「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む、緑茶抽出物又はカテキンの抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つ」の作用に係る「剤であって、前記第二成分は、前記緑茶抽出物又はカテキンの成分と組み合わせて使用され、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であ」る、「剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1−2:本件特許発明2は、「作用の増強」用の「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う」と特定されているのに対して、引用1発明においては、「(−)−エピカテキンの吸収改善のためへスペリチンが(−)−エピカテキン(100μM)に対して、2〜100μM添加された」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、「第一成分の」「作用の増強用」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも特定されていない点。 イ−2 判断 上記イ−1で判断したのと同様に、相違点1−2は、実質的な相違点である。 したがって、本件特許発明2は、電子的技術情報1に記載された発明とはいえない。 ア−3 本件特許発明3と引用1方法発明との対比 本件特許発明3は、本件特許発明2の「増強剤」の発明を「増強方法」として特定したものにすぎないので、上記ア−2〜イ−2で検討したのと同様に、本件特許発明3と引用1方法発明とを対比すると、 「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む、緑茶抽出物又はカテキンの抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つ」の作用に係る「方法(ヒトに対する医療行為を除く)であって、前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であ」る「方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1−3:本件特許発明3は、「組成物を被検体に摂取させる」「作用を増強させる方法」であって、「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う」「方法」と特定されているのに対して、引用1方法発明においては、「(−)−エピカテキンの吸収改善のためへスペリチンが(−)−エピカテキン」「に対して、」「添加された」「吸収改善方法」として、「(−)−エピカテキンの吸収改善のためへスペリチンが(−)−エピカテキン(100μM)に対して、2〜100μM添加された」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、「第一成分の」「作用を増強させる方法として」の「前記第二成分が、「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも特定されていない点。 イ−3 判断 上記イ−1で判断したのと同様に、相違点1−3は、実質的な相違点である。 したがって、本件特許発明3は、電子的技術情報1に記載された発明とはいえない。 ア−4 したがって、本件訂正により、取消理由2は解消している。 4 取消理由の判断のまとめ 本件訂正により、請求項1の新規事項の追加は存在しないものとなり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていることとなった。 また、本件特許発明1〜3は、本件特許出願前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的技術情報1に記載された発明とはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しないので、本件特許の請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものとはいえない。 よって、本件訂正によって、前記取消理由は解消した。 取消理由に採用しなかった特許異議申立人が申し立てた理由について 1 特許異議申立人1及び2が申し立てた理由(異議申立理由(1−2)(1−3)(2−11)(特許法第36条第6項第1号)及び異議申立理由(1−4)(1−5)(2−12)(特許法第36条第4項第1号))について (1)異議申立理由(1−2)(1−3)(2−11)(特許法第36条第6項第1号)について ア 特許法第36条第6項第1号の判断の前提 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ 特許請求の範囲の記載 前記第3に記載されたとおりの発明特定事項を有する「緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用の増強用食品組成物」の発明が、請求項1に、「緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用の増強剤」の発明が請求項2に、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む組成物を被検体に摂取させる」「緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の、前記被検体における抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用を増強させる方法(ヒトに対する医療行為を除く)」の発明が請求項3にそれぞれ記載されている。 ウ 発明の詳細な説明の記載 (ア)本件特許明細書の発明の詳細な説明には、請求項1〜3に係る発明に関する記載として、特許請求の範囲の実質的繰り返し記載を除いて、【0003】〜【0007】の背景技術、発明が解決しようとする課題、課題を解決しようとする解決手段の記載、【0008】の発明の効果の記載、【0009】のEGCG等の抗がん作用等のEriodictyol等による併用効果に関する図面の簡単な説明の記載、【0010】〜【0013】の第二成分が第一成分による67LRの活性化を増強することで抗がん作用等を発揮する機構に関する記載、【0014】〜【0018】のガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート等の緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)に関する記載、【0019】〜【0021】のエリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチンの柑橘類抽出物又はフラバノン並びにその配糖体(第二成分)の記載、及び第一成分(緑茶抽出物又はカテキン)及び第二成分(柑橘類抽出物又はフラバノン並びにその配糖体)の組成物中の各成分の含有量に関する記載、【0022】〜【0024】の第一成分と第二成分以外の組成物中の添加成分と組成物の摂取対象に関する記載、【0025】【0026】の茶抽出物又はカテキンと柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体を含む食品及び摂取対象に関する記載、【0027】の増強剤に関する記載がある。 (イ)そして、実施例として、【0028】〜【0043】には、EGCG等の各作用のEriodictyol等による増強効果の実験方法に関する記載があり、【0044】〜【0064】及び図1〜19には、各作用に関する第一成分の第二成分による増強効果の結果が図面とともに示されている。 エ 判断 (ア)本件特許発明の課題について 上記ウの【0002】〜【0007】の背景技術、発明が解決しようとする課題、課題を解決しようとする課題の記載、課題を解決しようとする手段及び本件特許明細書全体を参酌して、本件特許発明1の課題は、抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用を有する緑茶抽出物又はカテキンと、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体とを含む増強用促進組成物を提供することにあり、本件特許発明2の課題は、該増強剤を提供することにあり、本件特許発明3の課題は、該組成物を被検体に摂取させる増強方法を提供することにあると認める。 (イ)判断 上記ウの(ア)(イ)のとおり、本件特許発明1の各特定事項に対応して、本件特許明細書には、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート等の緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)に関する記載、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチンの柑橘類抽出物又はフラバノン並びにその配糖体(第二成分)の記載、第二成分が第一成分による67LRの活性化を増強することで抗がん作用等を発揮する機構に関する記載、第一成分(緑茶抽出物又はカテキン)及び第二成分(柑橘類抽出物又はフラバノン並びにその配糖体)の組成物中の各成分の含有量に関する一般的記載が存在し、第二成分により第一成分の作用を増強させるという技術的思想が示されており、各特定事項間の技術的意議の相関記載に技術的矛盾はなく、増強効果を確認する実験方法や本件特許発明1の効果を奏した具体的検証結果の記載も存在するのであるから、本件特許発明1の構成によって、当業者であれば上記本件特許発明1の課題を解決できることを認識できるといえる。 また、本件特許発明2、3に関しても、【0027】の増強剤に関する記載、【0024】の本件特許発明の組成物の接種対象に関する記載等についても併せて考慮すれば、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2、3の構成によって、当業者であれば上記本件特許発明2、3の課題を解決できることを認識できるといえる。 (ウ)特許異議申立人1のサポート要件に関する主張(異議申立理由1(1−2))について 特許異議申立人1は、甲第2〜6号証を提出して、ヘスペレチンの配糖体には多数の種類があることや、エピカテキンやエピガロカテキンでは67LRの作用部位に発現しない場合もあること等を指摘し、前記第4(1)に記載のとおり、請求項1〜3に係る特許は、抗がん作用以外の「抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用」や、EGCG増強作用の67LR依存性を示す実施例については、エリオジクチオールを用いた例しかなく、ナリンゲニン、ヘスペレチンを用いた場合やそれらの配糖体を用いた例については、本件明細書に具体的に開示されていないし、それらの場合も同様の効果が得られるという技術常識がない(特に配糖体には多数のものが存在する。)から、抗がん作用以外の作用について、エリオジクチオール以外の第二成分が同様に課題を解決できると理解できない旨主張している。 しかしながら、配糖体に種類が存在するからといって、技術常識を考慮して課題が解決できない理由にはならないし、エピカテキンやエピガロカテキンは、本件訂正によって第一成分から除かれている。そして、【0010】〜【0013】(特に【0012】【0013】の記載)の第二成分が第一成分による67LRの活性化を増強することで抗がん作用等を発揮する機構に関する記載、【0009】のEGCG等の抗がん作用等のEriodictyol等による併用効果に関する図面の簡単な説明の記載、【0014】〜【0018】のガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート等の緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)に関する記載、【0019】〜【0021】のエリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチンの柑橘類抽出物又はフラバノン並びにその配糖体(第二成分)の記載を考慮すれば、実施例の組み合わせが、EGCG等の抗がん作用等のEriodictyol等による併用効果に関するものが中心であるからといって、67LRの活性化に関与する第一成分と第二成分の技術常識及び67LRの活性化に抗がん作用をはじめとした種々の作用が関与することの技術常識を考慮すれば、実施例以外の特許請求の範囲に記載された第一成分と第二成分と増強する作用の組み合わせの場合においても、一定程度、本件特許発明の課題を解決できるといえ、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。 (エ)特許異議申立人1のサポート要件に関する主張(異議申立理由1(1−3))について 特許異議申立人1は、前記第4の1(1)に記載のとおり、請求項1〜3に係る特許は、抗肥満作用、コレステロール低下作用については、67LRを介したシグナリングを増強することによる作用であるのかどうか不明であり、実施例は「やぶきた(0.2%)及びエリオジクチオール(0.45g/kg diet)」の組み合わせのみであり、やぶきたのどの成分とエリオジクチオールとの相互作用があるのかも不明であり、エリオジクチオールの量が実施例と大きく異なる場合まで所望の効果を奏するかも不明であり、請求項1〜3に係る発明全体にわたって課題が解決できると理解できない旨主張している。 しかしながら、上記(ウ)で検討したように、【0010】〜【0013】(特に【0012】【0013】の記載)の第二成分が第一成分による67LRの活性化を増強することで抗がん作用等を発揮する機構に関する記載が存在し、【0009】のEGCG等の抗がん作用等のEriodictyol等による併用効果に関する図面の簡単な説明の記載が存在し、67LRの活性化に関与する第一成分と第二成分の技術常識及び67LRの活性化に抗がん作用をはじめと種々の作用が関与することの技術常識を考慮すれば、やぶきた中の第1成分とエリオジクチオールとの相互作用が十分推認できるし、エリオジクチオールの量によって一定の変化があるとしても、請求項1〜3に係る発明全体にわたって、一定程度課題が解決できると理解でき、上記主張を採用することはできない。 (オ)特許異議申立人2のサポート要件に関する主張(異議申立理由2(2−11))について 特許異議申立人2は、前記第4の1(2)に記載のとおり、請求項1〜3に係る特許に関して、本件特許明細書では特定の第一成分と第二成分の具体例の開示にとどまり、抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用のそれぞれについて、どのような第一成分と第二成分の組み合わせが上記作用を増強できるのか理解できないから、当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えて旨主張している。 しかしながら、上記(エ)で検討したのと同様に、【0010】〜【0013】(特に【0012】【0013】の記載)の第二成分が第一成分による67LRの活性化を増強することで抗がん作用等を発揮する機構に関する記載が存在し、【0009】のEGCG等の抗がん作用等のEriodictyol等による併用効果に関する図面の簡単な説明の記載が存在し、67LRの活性化に関与する第一成分と第二成分の技術常識及び67LRの活性化に抗がん作用をはじめと種々の作用が関与することの技術常識を考慮すれば、具体的に開示された組み合わせ以外の場合にも、各作用が増強されることは十分推認でき、請求項1〜3に係る発明が、当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えているとはいえず、上記主張を採用することはできない。 (2)異議申立理由(1−4)(1−5)(2−12)(特許法第36条第4項第1号)について ア 発明の詳細な説明の記載 本件明細書の発明の詳細な説明には、請求項1〜3に係る発明に関する記載として、特許請求の範囲の実質的繰り返し記載を除いて上記(1)ウのとおり記載がある。 特に、【0014】〜【0017】には、緑茶抽出物又はカテキンの抽出方法等に関する記載があり、【0019】〜【0021】には、柑橘類抽出物又はフラバノンの抽出方法及び本件特許発明の組成物の製造方法の記載があり、【0027】には、本件特許発明の増強剤の製造方法や増強方法の使用方法の記載も存在し、具体例としての実験方法及び実施例1〜19の記載がそれぞれある。 イ 判断 (ア)上記アのとおり、本件の発明の詳細な説明には、本件特許発明に関し、「緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用の増強用食品組成物」及び「増強剤」の製造方法の記載があり、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む組成物を被検体に摂取させる」「緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の、前記被検体における抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用を増強させる方法(ヒトに対する医療行為を除く)」の使用方法の記載があり、該記載や本件特許発明に対応する具体的実施例1〜19の記載もあるから、それらの記載を参考にすれば、本件の発明の詳細な説明は、本件特許発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 (イ)特許異議申立人1の実施可能要件に関する主張(異議申立理由1(1−4))について 特許異議申立人1は、前記第4の1(1)に記載のとおり、抗がん作用以外の「抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用」や、EGCG増強作用の67LR依存性を示す実施例については、エリオジクチオールを用いた例しかなく、ナリンゲニン、ヘスペレチンを用いた場合やそれらの配糖体を用いた例については、本件明細書に具体的に開示されていないし、それらの場合も同様の効果が得られるという技術常識のない(特に配糖体には多数のものが存在する。)から、抗がん作用以外の作用について、エリオジクチオール以外の第二成分が所望の効果を奏するかどうか逐一確認するのは過度の試行錯誤であるから、請求項1〜3に係る発明を当業者が実施できるように記載されていない旨主張している。 しかしながら、【0010】〜【0013】(特に【0012】【0013】の記載)の第二成分が第一成分による67LRの活性化を増強することで抗がん作用等を発揮する機構に関する記載が存在し、【0009】のEGCG等の抗がん作用等のEriodictyol等による併用効果に関する図面の簡単な説明の記載、【0014】〜【0018】のガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート等の緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)に関する記載、【0019】〜【0021】のエリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチンの柑橘類抽出物又はフラバノン並びにその配糖体(第二成分)の記載を考慮すれば、実施例の組み合わせが、EGCG等の抗がん作用等のEriodictyol等による併用効果に関するものが中心であるからといって、67LRの活性化に関与する第一成分と第二成分の技術常識及び67LRの活性化に抗がん作用をはじめとした種々の作用が関与することの技術常識を考慮すれば、実施例以外の特許請求の範囲に記載された第一成分と第二成分と増強する作用の組み合わせの場合においても、本件の発明の詳細な説明は、本件特許発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえ、上記特許異議申立人1の主張を採用することはできない。 (ウ)特許異議申立人1の実施可能要件に関する主張(異議申立理由1(1−5))について 特許異議申立人1は、前記第4の1(1)に記載のとおり、請求項1〜3に係る特許は、抗肥満作用、コレステロール低下作用については、67LRを介したシグナリングを増強することによる作用であるのかどうか不明であり、実施例は「やぶきた(0.2%)及びエリオジクチオール(0.45g/kg diet)」の組み合わせのみであり、やぶきたのどの成分とエリオジクチオールとの相互作用があるのかも不明であり、エリオジクチオールの量が実施例と大きく異なる場合まで所望の効果を奏するかも不明であり、所望の効果を奏するかどうか逐一確認するのは過度の試行錯誤であるから、請求項1〜3に係る発明を当業者が実施できるように記載されていない旨主張している。 しかしながら、上記(イ)で検討したように、【0010】〜【0013】(特に【0012】【0013】の記載)の第二成分が第一成分による67LRの活性化を増強することで抗がん作用等を発揮する機構に関する記載が存在し、【0009】のEGCG等の抗がん作用等のEriodictyol等による併用効果に関する図面の簡単な説明の記載が存在し、67LRの活性化に関与する第一成分と第二成分の技術常識及び67LRの活性化に抗がん作用をはじめと種々の作用が関与することの技術常識を考慮すれば、やぶきた中の第1成分とエリオジクチオールとの相互作用が十分推認できるし、エリオジクチオールの量によって一定の変化があるとしても、過度な試行錯誤は必要なく、請求項1〜3に係る発明を当業者が実施できるように記載されているといえ、上記主張を採用することはできない。 (オ)特許異議申立人2の実施可能要件に関する主張(申立理由2(2−12))について 特許異議申立人2は、前記第4の1(2)に記載のとおり、請求項1〜3に係る特許に関して、本件特許明細書では特定の第一成分と第二成分の具体例の開示にとどまり、抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用のそれぞれについて、どのような第一成分と第二成分の組み合わせが上記作用を増強できるのか理解できないから、請求項1〜3に係る発明を実施するためには、本件特許明細書の記載は不十分であるから、請求項1〜3に係る発明を当業者が実施できるように記載されていない旨主張している。 しかしながら、上記(エ)で検討したのと同様に、【0010】〜【0013】(特に【0013】の記載)の第二成分が第一成分による67LRの活性化を増強することで抗がん作用等を発揮する機構に関する記載が存在し、【0009】のEGCG等の抗がん作用等のEriodictyol等による併用効果に関する図面の簡単な説明の記載が存在し、67LRの活性化に関与する第一成分と第二成分の技術常識及び67LRの活性化に抗がん作用をはじめとした種々の作用が関与することの技術常識を考慮すれば、具体的に開示された組み合わせ以外の場合にも、各作用が増強されることは十分推認でき、請求項1〜3に係る発明を当業者が実施できるように記載されているといえ、上記主張を採用することはできない。 (3)異議申立理由(1−2)(1−3)(2−11)(特許法第36条第6項第1号)及び異議申立理由(1−4)(1−5)(2−12)(特許法第36条第4項第1号))のまとめ 異議申立理由(1−2)(1−3)(2−11)(特許法第36条第6項第1号)及び異議申立理由(1−4)(1−5)(2−12)(特許法第36条第4項第1号))には、理由がない。 2 特許異議申立人2が申し立てた理由(異議申立理由(2−13)(特許法第36条第6項第2号))について (1)請求項1〜3に係る発明の明確性 請求項1〜3の記載は、その発明特定事項の記載自体に不明確なところはなく、発明特定事項間の関係にも不明確な点はない。 したがって、請求項1〜3に係る発明は明確である。 (2)特許異議申立人2の明確性要件に関する主張(異議申立理由2(2−13))について ア 特許異議申立人2は、前記第4の1(2)に記載のとおり、請求項1〜3に係る特許に関して、本件特許明細書には、「増強用食品組成物」という記載は存在せず、【0027】や【0040】の増強に関する記載を参照しても「増強」が具体的にどのような態様まで含むか明らかでないから、請求項1〜3に係る発明は、は明確ではない旨主張している。 イ しかしながら、本件特許明細書には、【0012】【0013】には、第二成分が第一成分による67LRの活性化を増進することについての記載があり、【0022】〜【0027】には、組成物、食品、増強剤に関する記載もあるので、これらの記載を参照すれば、「増強用食品組成物」や「増強」の技術的意味や範囲は明確であり、請求項1〜3に係る発明が第三者の不測の不利益を生じる程に不明確であるとはいえない。 (3)異議申立理由(2−13)(特許法第36条第6項第2号)のまとめ 異議申立理由(2−13)(特許法第36条第6項第2号)には、理由がない。 3 特許異議申立人2が申し立てた理由(異議申立理由(2−2)(特許法第29条第2項))について (1)本件特許発明1と引用1発明(甲第1号証に記載された発明)の対比・判断 ア−1 対比 本件特許発明1と引用1発明(甲第1号証に記載された発明)とは、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む、緑茶抽出物又はカテキンの抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つ」に作用する「食品組成物であって、前記第二成分は、前記緑茶抽出物又はカテキンの成分と組み合わせて使用され、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であ」る、「前記組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1−1:本件特許発明1は、「作用の増強用」の「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行い、また前記第一成分と前記第二成分を共に含む組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)を含む」と特定されているのに対して、引用1発明(甲第1号証に記載された発明)においては、「(−)−エピカテキンの吸収改善のためへスペリチンが(−)−エピカテキン(100μM)に対して、2〜100μM添加された」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも特定されていない点。 イ−1 相違点1−1の判断 エピカテキンの分子量が290.27、ヘスペレチンの分子量が302.27であることから含有量(重量%)自体が計算できることを考慮しても(特許異議申立人2の甲第6号証参照)、本件特許発明1と引用1発明(甲第1号証に記載された発明)の緑茶抽出物又はカテキン成分が異なっており、甲第1号証には、「第一成分の」「作用の増強用」の「第二成分と共に67LRの活性化を行」うことも記載されていないし、本願優先日時点の技術常識でもなく、該相違点1−1について、そのように特定事項を変更する動機付けはない。 また、甲第1号証は、ポリフェノールによるフラバン−3−オールのバイオアベイラビリティの増大に関する文献であり、フラバン−3−オールの一例としてフラバノンが、ポリフェノールの一例としてヘスペリチンが、フラバン−3−オールが、(+)−カテキン(C)、(−)−エピカテキン(EC)、ガロカテキン(GC)、ガロカテキンガレート(GCG)、(−)−エピガロカテキン(EGC)、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCg)、(−)−エピカテキン−3−ガレート(ECg)、及びそれらの組合せからなる群から選択されることが記載されているが、第一成分と第二成分の組み合わせとして本件特許発明1に該当する具体例の記載もなく、第一成分の作用の増強用の第二成分と共に67LRの活性化を行うことや抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用の増強の記載も示唆もない。 さらに、甲第2号証には、褐変が抑制された茶飲料の製造方法に関する文献として、実施例1、2に、L−アスコルビン酸2−グルコシドの緑茶の褐変に及ぼす影響を調べる実験として、茶飲料を調整し、その茶飲料に糖転移ヘスペリジンを100mg、カテキン50mgを添加し、生活習慣病の予防等に用いることが記載されている(【0019】【0027】【0028】)が、第一成分と第二成分の組み合わせとして本件特許発明1に該当する具体例の記載もなく、第一成分の作用の増強用の第二成分と共に67LRの活性化を行うことや抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用の増強の記載も示唆もない。 また、甲第3号証は、食品組成物に関する文献として、脂肪蓄積抑制効果を高める食品組成物として、メチル化カテキンの苦みをマスキングするために加える柑橘系の油脂の一例としてグナリンギン、ヘスペリジンがあげられ、メチル化カテキンとグナリンギンを含有する飲料について脂肪蓄積抑制効果の記載がある(【0005】【0022】【0028】【0033】〜【0035】。 しかしながら、メチル化カテキンの種類は明らかでなく、第一成分の作用の増強用の第二成分と共に67LRの活性化を行うことや抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用の増強に関する記載も示唆もない。 次に、甲第4号証は、ラジカル生成抑制剤に関する文献であり、ラジカル生成抑制剤、カテキンと糖転移ヘスペリジンを含む飲料を調製し、糖転移ヘスペリジンを含むので、体内の脂質調節の目的で飲用することもできることが記載されている(【0089】)。 しかしながら、第一成分と第二成分の組み合わせとして本件特許発明1に該当する具体例の記載もなく、第一成分の作用の増強用の第二成分と共に67LRの活性化を行うことや抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用の増強の記載も示唆もない。 さらに、甲第5号証は、容器詰め飲料に関する文献であり、非重合性カテキン類とフラバノン類を含有する容器詰め飲料で、カテキン類由来の苦みが抑制できること、カテキン類の効果としてコレステロール抑制効果等があることが記載されている(特許請求の範囲、【0002】【0008】【0009】)。 しかしながら、第一成分と第二成分の組み合わせとして本件特許発明1に該当する具体例の記載もなく、第一成分の作用の増強用の第二成分と共に67LRの活性化を行うことや抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用の増強の記載も示唆もない。 さらに、甲第6号証には、カテキン、ヘスペレチン、フィブリノーゲンの用語の意味に関する記載が、甲第7号証には、生活習慣病に関する記載が、甲第8号証には、消化管粘膜障害を呈する医薬活性成分とフラボノイドを含有する医薬化合物に関する文献で(【請求項1】)、消化管粘膜障害を回避する成分としてのヘスペリジン等の記載がある(【請求項5】【0009】)。 しかしながら、第一成分と第二成分の組み合わせとして本件特許発明1に該当する具体例の記載もなく、第一成分の作用の増強用の第二成分と共に67LRの活性化を行うことや抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用の増強の記載も示唆もない。 また、甲第9号証には、グルタチオンの白血球活性化作用に関する記載が、甲第10号証には、ガラナ等の果物とナリンギンを含む抗肥満用途に用いられる食品組成物が、甲第11号証には、ヘスペリジンに関する記載が、甲第12号証には、ガラナ中にカテキン、エピカテキンが含まれることが記載されている。 しかしながら、これらの文献にも、第一成分と第二成分の組み合わせとして本件特許発明1に該当する具体例の記載はなく、第一成分の作用の増強用の第二成分と共に67LRの活性化を行うことや抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用の増強の記載も示唆もない。 さらに、甲第13号証には、太り気味の健常人の体重管理と代謝パラメーターに関するレッドオレンジ、グレープフルーツ、オレンジの柑橘系ポリフェノール抽出物(Sinetrol−XPur)の有効性と安定性を評価するための臨床研究に関する文献で、試験化合物として、Sinetrol−XPurが、総ポリフェノール(カテキンとして表される)が少なくとも90%、総フラバノン(ナリンギンとして表される)が少なくとも20%、及び天然カフェインを1〜3%の間に含むように標準化されたこと、体重は、プラセボに比べてSinetrol−XPurは体重減少が大きかったことが示されている(213頁右欄5〜10行、214頁右欄9〜12行)。 しかしながら、この文献にも、第一成分と第二成分の組み合わせとして本件特許発明1に該当する具体例の記載はなく、第一成分の作用の増強用の第二成分と共に67LRの活性化を行うことや抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用の増強の記載も示唆もない。 甲第14号証には、カテキン類、フラボノール類、フラバノール類、クマリン類、ビチス属に属するきのこ、マルス属に属する植物の果皮の抽出物の1種又は2種以上を有効成分として含む、タイプ2ヘルパーT細胞型サイトカイン産生抑制剤が記載され、具体例では、茶抽出エキスとヘスペリジン、ナリンゲニンが含有されている(【請求項1】【0039】)。 しかしながら、この文献にも、第一成分と第二成分の組み合わせとして本件特許発明1に該当する具体例の記載はなく、第一成分の作用の増強用の第二成分と共に67LRの活性化を行うことや抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用の増強の記載も示唆もない。 甲第15号証には、ヘスペレチンの健康特性を向上させるためのフラボノイド化合物を含む組成物の使用に関する記載がある(【特許請求の範囲】)。 しかしながら、この文献にも、第一成分と第二成分の組み合わせとして本件特許発明1に該当する具体例の記載はなく、第一成分の作用の増強用の第二成分と共に67LRの活性化を行うことや抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用の増強の記載も示唆もない。 さらに、甲第16号証には、茶カテキン類のコレステロール上昇抑制剤に関する記載や、甲17号証には、緑茶カテキンエピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)が67LRのリガンドで、67LRが抗血栓療法の開発の潜在的ターゲットとなる可能性については記載がある。 しかしながら、これら文献にも、第一成分と第二成分の組み合わせとして本件特許発明1に該当する具体例の記載はなく、第一成分の作用の増強用の第二成分と共に67LRの活性化を行うことや抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用の増強の記載も示唆もない。 また甲第18号証には、緑茶カテキンの臨床グレード混合物であるポリフェノンEが、腫瘍浸潤性骨髄細胞の数を減らし、自然神経芽細胞種の発生を抑制したことに関する記載がある。 しかしながら、この文献にも、第一成分と第二成分の組み合わせとして本件特許発明1に該当する具体例の記載はなく、第一成分の作用の増強用の第二成分と共に67LRの活性化を行うことや抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用の増強の記載も示唆もない。 したがって、引用1発明(甲第1号証に記載された発明)において、甲第1〜18号証に記載された技術的事項を考慮したとしても、第一成分を、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種とした上で、第一成分の作用の増強用として第二成分が、前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行うと特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。 また、本件特許発明1は、発明特定事項全体により、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む、緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用の増強用食品組成物を提供できるという予測できない顕著な効果を奏しているといえる。 ウ−1 本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明及び第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (2)本件特許発明2と引用1発明(甲第1号証に記載された発明)の対比・判断 ア−2 対比・判断 本件特許発明2は、本件特許発明1の増強用食品組成物の発明を増強剤として記載したものにすぎないから、上記(1)で相違点1−1を検討したのと同様に、本件特許発明2と引用1発明(甲第1号証に記載された発明)との相違点である相違点1−2に関し、引用1発明(甲第1号証に記載された発明)において、甲第1〜18号証に記載された技術的事項を考慮したとしても、第一成分を、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種とした上で、第一成分の作用の増強剤として第二成分が、前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行うと特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。 また、本件特許発明2は、発明特定事項全体により、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む、緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用の増強剤を提供できるという予測できない顕著な効果を奏しているといえる。 イ−2 本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (3)本件特許発明3と引用1方法発明(甲第1号証に記載された発明)の対比・判断 ア−3 対比 本件特許発明3は、本件特許発明2の「増強剤」の発明を「増強方法」として特定したものにすぎないので、本件特許発明3と引用1方法発明(甲第1号証に記載された発明)とを対比すると、 「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む、緑茶抽出物又はカテキンの抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つ」の作用に係る「方法(ヒトに対する医療行為を除く)であって、前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であ」る「方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1−3:本件特許発明3は、「組成物を被検体に摂取させる」「作用を増強させる方法」であって、「第一成分の」「作用を増強させる」「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う」「方法」と特定されているのに対して、引用1方法発明(甲第1号証に記載された発明)においては、「(−)−エピカテキンの吸収改善のためへスペリチンが(−)−エピカテキン」「に対して、」「添加された」「吸収改善方法」として、「(−)−エピカテキンの吸収改善のためへスペリチンが(−)−エピカテキン(100μM)に対して、2〜100μM添加された」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、」「第一成分の」「作用を増強させる」「第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも特定されていない点。 イ−3 相違点1−3の判断 引用1方法発明(甲第1号証に記載された発明)の緑茶抽出物又はカテキン成分が異なっており、第一成分の作用を増強させる第二成分と共に67LRの活性化を行」うことも記載されていないし、本願優先日時点の技術常識でもなく、該相違点1−3について、そのように特定事項を変更する動機付けはないので、上記(1)イ−1で相違点1−1を検討したように、甲第第1〜18号証に記載された技術的事項を考慮しても、引用1方法発明(甲第1号証に記載された発明)において、第一成分を、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種とした上で、第一成分の作用を増強させる第二成分が、前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行うと特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。 また、本件特許発明3は、発明特定事項全体により、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む組成物を被検体に摂取させ、緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の、前記被検体における抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用を増強させる方法(ヒトに対する医療行為を除く)を提供できるという予測できない顕著な効果を奏しているといえる。 ウ−3 本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (4)理由(2−2)(特許法第29条第2項))のまとめ 特許異議申立理由(2−2)(特許法第29条第2項)には、理由がない。 4 特許異議申立人2が申し立てた理由(異議申立理由(2−3)(特許法第29条第1項第3号)理由(2−4)(特許法第29条第2項))について (1)甲第2号証に記載された発明 甲第2号証には、実施例1、2の記載から、実施例2に係る発明として以下の発明が記載されている(以下「甲2発明」という。)。 「L−アスコルビン酸2−グルコシドを添加した緑茶抽出物に添加し茶飲料を製造し、該茶飲料100gあたり、糖転移ヘスペリジンを100mg、カテキン50mgとなるように添加した、健康補助飲料。」 また、甲2発明の製造方法の発明として、以下の発明が記載されている(以下「甲2方法発明」という。)。 「L−アスコルビン酸2−グルコシドを添加した緑茶抽出物に添加し茶飲料を製造し、該茶飲料100gあたり、糖転移ヘスペリジンを100mg、カテキン50mgとなるように添加した、健康補助飲料の製造方法。」 (2)本件特許発明1と甲2発明との対比について ア−1 対比 糖転移ヘスペリジンは、フラバノンの配糖体であり、カテキンは、緑茶抽出物成分でもあることは、技術常識であるので、本件特許発明1と甲2発明とは、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体と緑茶抽出物又はカテキンを含む食品組成物」という点で一致し、以下の点で相違する。 相違点A2−1:本件特許発明1は、「第一成分の」「作用の増強用」の「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行い、また前記第一成分と前記第二成分を共に含む組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)を含む」と特定されているのに対して、甲2発明においては、「L−アスコルビン酸2−グルコシドを添加した緑茶抽出物に添加し茶飲料を製造し、該茶飲料100gあたり、糖転移ヘスペリジンを100mg、カテキン50mgとなるように添加した」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、「第一成分の」「作用の増強用」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも、「第二成分」が、「第一成分と前記第二成分を共に含む組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)」であることも特定されていない点。 イ−1 相違点A2−1の判断 本件特許発明1と甲2発明の緑茶抽出物又はカテキン成分が異なっており、甲第2号証には、「第一成分の」「作用の増強用」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも記載されていないし、本願優先日時点の技術常識でもないので、相違点A2−1の本件特許発明1に係る構成が記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点A2−1は、実質的な相違点である。 ウ−1 したがって、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。 エ−1 また、上記3(1)イ−1で、相違点1−1の検討をしたのと同様に、相違点A2−1は、甲第1〜18号証に記載された技術的事項を参照しても、当業者が容易になし得る技術的事項ではなく、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明及び第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 (3)本件特許発明2と甲2発明との対比について ア−2 対比 本件特許発明2と甲2発明とは、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体と緑茶抽出物又はカテキンを含む剤」という点で一致し、以下の点で相違する。 相違点A2−2:本件特許発明2は、「第一成分の」「作用の増強剤」の「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う」と特定されているのに対して、甲2発明においては、「L−アスコルビン酸2−グルコシドを添加した緑茶抽出物に添加し茶飲料を製造し、該茶飲料100gあたり、糖転移ヘスペリジンを100mg、カテキン50mgとなるように添加した」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、「第一成分の」「作用の増強剤」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことが特定されていない点。 イ−2 相違点A2−2の判断 本件特許発明2と甲2発明の緑茶抽出物又はカテキン成分が異なっており、甲第2号証には、「第一成分の」「作用の増強剤」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも記載されていないし、本願優先日時点の技術常識でもないので、相違点A2−2についての本件特許発明2に係る構成が記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点A2−2は、実質的な相違点である。 ウ−2 したがって、本件特許発明2は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。 エ−2 また、上記3(2)で、相違点1−2の検討をしたのと同様に、相違点A2−2は、甲第1〜18号証に記載された技術的事項を参照しても、当業者が容易になし得る技術的事項ではなく、本件特許発明2は、甲第2号証に記載された発明及び第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 (4)本件特許発明3と甲2方法発明との対比について ア−3 対比 本件特許発明3と甲2方法発明とは、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体と緑茶抽出物又はカテキンを含む組成物に関する方法。」という点で一致し、以下の点で相違する。 相違点A2−3:本件特許発明3は、「組成物を被検体に摂取させる」「作用を増強させる方法」であって、「第一成分の」「作用を増強させる」「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う」「方法」と特定されているのに対して、甲2方法発明においては、「(−)−エピカテキンの吸収改善のためへスペリチンが(−)−エピカテキン」「に対して、」「添加された」「吸収改善方法」として、「(−)−エピカテキンの吸収改善のためへスペリチンが(−)−エピカテキン(100μM)に対して、2〜100μM添加された」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、」「第一成分の」「作用を増強させる」「第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも特定されていない点。 イ−3 相違点A2−3の判断 本件特許発明3と甲2方法発明の緑茶抽出物又はカテキン成分が異なっており、甲第2号証には、「第一成分の」「を増強させる方法」としての「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも記載されていないし、優先日時点の技術常識でもないので、相違点A2−3の本件特許発明3に係る構成が記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点A2−3は、実質的な相違点である。 ウ−3 したがって、本件特許発明3は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。 エ−3 また、上記3(3)で、相違点1−3の検討をしたのと同様に、相違点A2−3は、甲第1〜18号証に記載された技術的事項を参照しても、当業者が容易になし得る技術的事項ではなく、本件特許発明3は、甲第2号証に記載された発明及び第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (5)異議申立理由(2−3)(特許法第29条第1項第3号)異議申立理由(2−4)(特許法第29条第2項)のまとめ 異議申立理由(2−3)(特許法第29条第1項第3号)異議申立理由(2−4)(特許法第29条第2項)には、理由がない。 5 特許異議申立人2が申し立てた理由(異議申立理由(2−5)(特許法第29条第1項第3号)異議申立理由(2−6)(特許法第29条第2項))について (1)甲第3号証に記載された発明 甲第3号証には、実施例1の記載から、以下の発明が記載されている(以下「甲3発明」という。)。 「べにふうき茶葉から純水を用いて抽出した抽出液(メチル化カテキン20mg)に、グレープフルーツアロマ果汁(グナリンギン1質量%含有)20g含有させたビン入り飲料。」 また、甲3発明の製造方法の発明として、以下の発明が記載されている(以下「甲3方法発明」という。) 「べにふうき茶葉から純水を用いて抽出した抽出液(メチル化カテキン20mg)に、グレープフルーツアロマ果汁(グナリンギン1質量%含有)20g含有させたビン入り飲料の製造方法。」 (2)本件特許発明1と甲3発明との対比について ア−1 対比 グレープフルーツアロマ果汁(グナリンギン1質量%含有)が「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体」に相当し、メチル化カテキンは、緑茶抽出物成分でもあることは、技術常識であるので、本件特許発明1と甲3発明とは、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体と緑茶抽出物又はカテキンを含む食品組成物」という点で一致し、以下の点で相違する。 相違点A3−1:本件特許発明1は、「第一成分の」「作用の増強用」の「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行い、また前記第一成分と前記第二成分を共に含む組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)を含む」と特定されているのに対して、甲3発明においては、「べにふうき茶葉から純水を用いて抽出した抽出液(メチル化カテキン20mg)に、グレープフルーツアロマ果汁(グナリンギン1質量%含有)20g含有させた」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、第二成分も異なり、「第一成分の」「作用の増強用」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも、「第二成分」が、「第一成分と前記第二成分を共に含む組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)」であることも特定されていない点。 イ−1 相違点A3−1の判断 本件特許発明1と甲3発明の緑茶抽出物又はカテキン成分が異なっており、甲第3号証には、「第一成分の」「作用の増強用」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも記載されていないし、本願優先日時点の技術常識でもないので、相違点A3−1の本件特許発明1に係る構成が記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点A3−1は、実質的な相違点である。 ウ−1 したがって、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。 エ−1 また、上記3(1)イ−1で、相違点1−1の検討をしたのと同様に、相違点A3−1は、甲第1〜18号証に記載された技術的事項を参照しても、当業者が容易になし得る技術的事項ではなく、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明及び第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 (3)本件特許発明2と甲3発明との対比について ア−2 対比 本件特許発明2と甲3発明とは、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体と緑茶抽出物又はカテキンを含む剤」という点で一致し、以下の点で相違する。 相違点A3−2:本件特許発明3は、「第一成分の」「作用の増強剤」の「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う」と特定されているのに対して、甲3発明においては、「べにふうき茶葉から純水を用いて抽出した抽出液(メチル化カテキン20mg)に、グレープフルーツアロマ果汁(グナリンギン1質量%含有)20g含有させた」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、第二成分も異なり、「第一成分の」「作用の増強剤」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことが特定されていない点。 イ−2 相違点A3−2の判断 本件特許発明2とは甲3発明の緑茶抽出物又はカテキン成分が異なっており、甲第3号証には、「第一成分の」「作用の増強剤」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも記載されていないし、本願優先日時点の技術常識でもないので、相違点A3−2の本件特許発明2に係る構成が記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点A3−2は、実質的な相違点である。 ウ−2 したがって、本件特許発明2は、甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。 エ−2 また、上記3(2)で、相違点1−2の検討をしたのと同様に、相違点A3−2は、甲第1〜18号証に記載された技術的事項を参照しても、当業者が容易になし得る技術的事項ではなく、本件特許発明2は、甲第3号証に記載された発明及び第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (4)本件特許発明3と甲3方法発明との対比について ア−3 対比 本件特許発明3と甲3方法発明とは、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体と緑茶抽出物又はカテキンを含む組成物に関する方法。」という点で一致し、以下の点で相違する。 相違点A3−3:本件特許発明3は、「組成物を被検体に摂取させる」「作用を増強させる方法」であって、「第一成分の」「作用を増強させる」「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う」「方法」と特定されているのに対して、甲3方法発明においては、「べにふうき茶葉から純水を用いて抽出した抽出液(メチル化カテキン20mg)に、グレープフルーツアロマ果汁(グナリンギン1質量%含有)20g含有させたビン入り飲料の製造方法」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、」第二成分も異なり、「第一成分の」「作用を増強させる」「第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも特定されていない点。 イ−3 相違点A3−3の判断 本件特許発明3とは、甲2方法発明の緑茶抽出物又はカテキン成分が異なっており、甲第3号証には、「第一成分の」「を増強させる方法」としての「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも記載されていないし、本願優先日時点の技術常識でもないので、相違点A3−3の本件特許発明1に係る構成が記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点A3−3は、実質的な相違点である。 ウ−3 したがって、本件特許発明3は、甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。 エ−3 また、上記3(3)イ−3で、相違点1−3の検討をしたのと同様に、相違点A3−3は、甲第1〜18号証に記載された技術的事項を参照しても、当業者が容易になし得る技術的事項ではなく、本件特許発明3は、甲第3号証に記載された発明及び第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 (5)異議申立理由(2−5)(特許法第29条第1項第3号)異議申立理由(2−6)(特許法第29条第2項)のまとめ 異議申立理由(2−5)(特許法第29条第1項第3号)異議申立理由(2−6)(特許法第29条第2項)には、理由がない。 6 特許異議申立人2が申し立てた理由(異議申立理由(2−7)(特許法第29条第1項第3号)異議申立理由(2−8)(特許法第29条第2項))について (1)甲第4号証に記載された発明 甲第4号証には、実施例1、実施例27の記載から、実施例27に係る発明として以下の発明が記載されている(以下「甲4発明」という。)。 「緑茶3質量部の熱水180質量部により浸出した浸出液にラジカル抑制剤0.05%、カテキン2%、糖転移へスペリジン1.5%となるように溶解したボトル入り緑茶飲料」 また、甲4発明の製造方法の発明として、以下の発明が記載されている(以下「甲4方法発明」という。) 「緑茶3質量部の熱水180質量部により浸出した浸出液にラジカル抑制剤0.05%、カテキン2%、糖転移へスペリジン1.5%となるように溶解したボトル入り緑茶飲料の製造方法。」 (2)本件特許発明1と甲4発明との対比について ア−1 対比 糖転移へスペリジンは、フラバノンの配糖体であり、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体」に相当し、カテキンは、緑茶抽出物成分でもあることは、技術常識であるので、本件特許発明1と甲4発明とは、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体と緑茶抽出物又はカテキンを含む食品組成物」という点で一致し、以下の点で相違する。 相違点A4−1:本件特許発明1は、「第一成分の」「作用の増強用」の「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行い、また前記第一成分と前記第二成分を共に含む組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)を含む」と特定されているのに対して、甲4発明においては、「緑茶3質量部の熱水180質量部により浸出した浸出液にラジカル抑制剤0.05%、カテキン2%、糖転移へスペリジン1.5%となるように溶解した」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、第二成分も異なり、「第一成分の」「作用の増強用」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも特定されていない点。 イ−1 相違点A4−1の判断 本件特許発明1とは、甲4発明の緑茶抽出物又はカテキン成分が異なっており、甲第4号証には、「第一成分の」「作用の増強用」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも記載されていないし、本願優先日時点の技術常識でもないので、相違点A4−1の本件特許発明1に係る構成が記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点A4−1は、実質的な相違点である。 ウ−1 したがって、本件特許発明1は、甲第4号証に記載された発明であるとはいえない。 エ−1 また、上記3(1)イ−1で、相違点1−1の検討をしたのと同様に、相違点A4−1は、甲第1〜18号証に記載された技術的事項を参照しても、当業者が容易になし得る技術的事項ではなく、本件特許発明1は、甲第4号証に記載された発明及び第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 (3)本件特許発明2と甲4発明との対比について ア−1 対比 本件特許発明2と甲4発明とは、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体と緑茶抽出物又はカテキンを含み、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種である剤」という点で一致し、以下の点で相違する。 相違点A4−2:本件特許発明4は、「第一成分の」「作用の増強剤」の「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり」」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う」と特定されているのに対して、甲4発明においては、「緑茶3質量部の熱水180質量部により浸出した浸出液にラジカル抑制剤0.05%、カテキン2%、糖転移へスペリジン1.5%となるように溶解した」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、第二成分も異なり、「第一成分の」「作用の増強剤」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことが特定されていない点。 イ−2 相違点A4−2の判断 本件特許発明2とは、甲4発明の緑茶抽出物又はカテキン成分が異なっており、甲第4号証には、「第一成分の」「作用の増強剤」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも記載されていないし、本願優先日時点の技術常識でもないので、相違点A4−2の本件特許発明2に係る構成が記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点A4−2は、実質的な相違点である。 ウ−2 したがって、本件特許発明2は、甲第4号証に記載された発明であるとはいえない。 エ−2 また、上記3(2)で、相違点1−2の検討をしたのと同様に、相違点A4−2は、甲第1〜18号証に記載された技術的事項を参照しても、当業者が容易になし得る技術的事項ではなく、本件特許発明2は、甲第4号証に記載された発明及び第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 (4)本件特許発明3と甲4方法発明との対比について ア−3 対比 本件特許発明3と甲4方法発明とは、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体と緑茶抽出物又はカテキンを含み、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種である組成物に関する方法。」という点で一致し、以下の点で相違する。 相違点A4−3:本件特許発明4は、「組成物を被検体に摂取させる」「作用を増強させる方法」であって、「第一成分の」「作用を増強させる」「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う」「方法」と特定されているのに対して、甲4方法発明においては、「緑茶3質量部の熱水180質量部により浸出した浸出液にラジカル抑制剤0.05%、カテキン2%、糖転移へスペリジン1.5%となるように溶解したボトル入り緑茶飲料の製造方法」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、」第二成分も異なり、「第一成分の」「作用を増強させる」「第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも特定されていない点。 イ−3 相違点A4−3の判断 本件特許発明3との甲4方法発明の緑茶抽出物又はカテキン成分が異なっており、甲第4号証には、「第一成分の」「を増強させる方法」としての「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも記載されていないし、本願優先日時点の技術常識でもないので、相違点A4−3の本件特許発明3に係る構成が記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点A4−3は、実質的な相違点である。 ウ−3 したがって、本件特許発明3は、甲第4号証に記載された発明であるとはいえない。 エ−3 また、上記3(3)イ−3で、相違点1−3の検討をしたのと同様に、相違点A4−3は、甲第1〜18号証に記載された技術的事項を参照しても、当業者が容易になし得る技術的事項ではなく、本件特許発明3は、甲第4号証に記載された発明及び第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 (5)異議申立理由(2−7)(特許法第29条第1項第3号)異議申立理由(2−8)(特許法第29条第2項)のまとめ 異議申立理由(2−7)(特許法第29条第1項第3号)異議申立理由(2−8)(特許法第29条第2項)には、理由がない。 7 特許異議申立人2が申し立てた理由(異議申立理由(2−9)(特許法第29条第1項第3号)異議申立理由(2−10)(特許法第29条第2項))について (1)甲第5号証に記載された発明 甲第5号証には、請求項3に係る発明として以下の発明が記載されている(以下「甲5発明」という。)。 「カテキン類を含有する容器詰め飲料であって、非重合体カテキン類0.05〜0.5質量%、フラバノン類(ヘスペリジン、ネオヘスペリジン、及びヘスペレチンから選択される1種以上)を0.001〜1.0質量%を含有する容器詰め飲料」 また、甲5発明の製造方法の発明として、以下の発明が記載されている(以下「甲5方法発明」という。) 「カテキン類を含有する容器詰め飲料であって、非重合体カテキン類0.05〜0.5質量%、フラバノン類(ヘスペリジン、ネオヘスペリジン、及びヘスペレチンから選択される1種以上)を0.001〜1.0質量%を含有する容器詰め飲料の製造方法。」 (2)本件特許発明1と甲5発明との対比について ア−1 対比 非重合体カテキンは、緑茶抽出物成分でもあることは、技術常識であるので、本件特許発明1と甲5発明とは、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体と緑茶抽出物又はカテキンを含む食品組成物」という点で一致し、以下の点で相違する。 相違点A5−1:本件特許発明1は、「第一成分の」「作用の増強用」の「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行い、また前記第一成分と前記第二成分を共に含む組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)を含む」と特定されているのに対して、甲5発明においては、「カテキン類を含有する容器詰め飲料であって、非重合体カテキン類0.05〜0.5質量%、フラバノン類(ヘスペリジン、ネオヘスペリジン、及びヘスペレチンから選択される1種以上)を0.001〜1.0質量%を含有する」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、「第一成分の」「作用の増強用」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも特定されていない点。 イ−1 相違点A5−1の判断 本件特許発明1とは、甲5発明の緑茶抽出物又はカテキン成分が異なっており、甲第5号証には、「第一成分の」「作用の増強用」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも記載されていないし、本願優先日時点の技術常識でもないので、相違点A5−1の本件特許発明1に係る構成が記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点A5−1は、実質的な相違点である。 ウ−1 したがって、本件特許発明1は、甲第5号証に記載された発明であるとはいえない。 エ−1 また、上記3(1)イ−1で、相違点1−1の検討をしたのと同様に、相違点A5−1は、甲第1〜18号証に記載された技術的事項を参照しても、当業者が容易になし得る技術的事項ではなく、本件特許発明1は、甲第5号証に記載された発明及び第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 (3)本件特許発明2と甲5発明との対比について ア−2 対比 本件特許発明2と甲5発明とは、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体と緑茶抽出物又はカテキンを含む剤」という点で一致し、以下の点で相違する。 相違点A5−2:本件特許発明2は、「第一成分の」「作用の増強剤」の「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う」と特定されているのに対して、甲5発明においては、「カテキン類を含有する容器詰め飲料であって、非重合体カテキン類0.05〜0.5質量%、フラバノン類(ヘスペリジン、ネオヘスペリジン、及びヘスペレチンから選択される1種以上)を0.001〜1.0質量%を含有する」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、「第一成分の」「作用の増強剤」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことが特定されていない点。 イ−2 相違点A5−2の判断 本件特許発明2とは、甲5発明の緑茶抽出物又はカテキン成分が異なっており、甲第5号証には、「第一成分の」「作用の増強剤」の「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも記載されていないし、本願優先日時点の技術常識でもないので、相違点A5−2の本件特許発明2に係る構成が記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点A5−2は、実質的な相違点である。 ウ−2 したがって、本件特許発明2は、甲第5号証に記載された発明であるとはいえない。 エ−2 また、上記3(2)で、相違点1−2の検討をしたのと同様に、相違点A5−2は、甲第1〜18号証に記載された技術的事項を参照しても、当業者が容易になし得る技術的事項ではなく、本件特許発明2は、甲第5号証に記載された発明及び第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 (4)本件特許発明3と甲5方法発明との対比について ア−3 対比 本件特許発明3と甲5方法発明とは、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体と緑茶抽出物又はカテキンを含む組成物に関する方法。」という点で一致し、以下の点で相違する。 相違点A5−3:本件特許発明3は、「組成物を被検体に摂取させる」「作用を増強させる方法」であって、「第一成分の」「作用を増強させる」「第二成分」に関して、「前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う」「方法」と特定されているのに対して、甲5方法発明においては、「非重合体カテキン類0.05〜0.5質量%、フラバノン類(ヘスペリジン、ネオヘスペリジン、及びヘスペレチンから選択される1種以上)を0.001〜1.0質量%を含有する容器詰め飲料の製造方法」と特定され、第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種でなく、」「第一成分の」「作用を増強させる」「第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも特定されていない点。 イ−3 相違点A5−3の判断 本件特許発明3とは、甲5方法発明の緑茶抽出物又はカテキン成分が異なっており、甲第5号証には、「第一成分の」「を増強させる方法」としての「前記第二成分が、」「前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことも記載されていないし、本願優先日時点の技術常識でもないので、相違点A5−3の本件特許発明3に係る構成が記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点A5−3は、実質的な相違点である。 ウ−3 したがって、本件特許発明3は、甲第5号証に記載された発明であるとはいえない。 エ−3 また、上記3(3)イ−3で、相違点1−3の検討をしたのと同様に、相違点A5−3は、甲第1〜18号証に記載された技術的事項を参照しても、当業者が容易になし得る技術的事項ではなく、本件特許発明3は、甲第5号証に記載された発明及び第1〜18号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (5)異議申立理由(2−9)(特許法第29条第1項第3号)異議申立理由(2−10)(特許法第29条第2項)のまとめ 異議申立理由(2−9)(特許法第29条第1項第3号)異議申立理由(2−10)(特許法第29条第2項)には、理由がない。 8 特許異議申立人の意見書の主張について (1)特許異議申立人1の意見書の主張について ア 特許異議申立人1は、令和4年7月5日に提出した意見書3〜4頁において、訂正前の増強用食品組成物中の第二成分の含有量であったものが、訂正後に添加剤を添加して得られた組成物中の含有量となったので、本件訂正は、実質上特許請求の範囲を変更している旨主張している。 しかしながら、本件訂正により、訂正前の第二成分の含有量の範囲が第一成分を含む場合と含まない場合の両方を含んでいたのを、第一成分を含む場合に限定したものにすぎないから、特許請求の範囲は変更されておらず、特許異議申立人1の上記主張は採用できない。 イ 特許異議申立人1は、令和4年7月5に提出した意見書5頁において、訂正後の第二成分が、第一成分(ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う点は、単に達成すべき結果が記載されているにすぎず、当業者であっても過度な試行錯誤が必要で、実施可能要件に違反している旨主張している。 しかしながら、前記1(2)の「異議申立理由(1−4)(1−5)(2−12)(特許法第36条第4項第1号)について」で検討したように、本件特許明細書は、当業者が本件特許発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されており、第二成分が、第一成分(ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート又はエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う点は、発明の詳細な説明の背景技術、機構の説明、具体的実施例から当業者が理解できるように記載されているといえ、上記特許異議申立人1の主張を採用できない。 (2)特許異議申立人2の意見書の主張について ア 特許異議申立人2は、令和4年8月10日に提出した意見書4〜13頁において、参考資料21〜23を提出して、構造が類似しているフラバノンであっても抗がん作用などにおいて、異なる生理作用を有すること(参考資料21)、特定の腫瘍細胞の細胞死に対する作用がフラバノン類の種類により異なること(参考資料22)、フラバノン類の体内挙動が異なること(参考資料23)から、本件特許明細書で具体例が示された第一成分と第二成分と作用の種類の組み合わせ以外は、同様の増強(活性化)が生じると理解できないので、サポート要件及び実施可能要件に違反している旨主張している。 しかしながら、前記1(1)の「異議申立理由(1−2)(1−3)(2−11)(特許法第36条第6項第1号)について」及び前記1(2)の「異議申立理由(1−4)(1−5)(2−12)(特許法第36条第4項第1号)について」で検討したように、本件特許発明はサポート要件及び実施可能要件を満たしており、第一成分と第二成分の組み合わせ及び、それらと第一成分の作用の種類との組み合わせの具体的実施例の記載がなくとも、発明の詳細な説明の背景技術、機構の説明(【0012】【0013】等)及び具体的実施例から当業者が理解できるように記載されているといえ、参考資料21〜23に記載されるように、特定の組み合わせによって、第一成分の作用に一定の変化が生じたからといって、サポート要件及び実施可能要件に違反しているとはいえず、上記特許異議申立人2の主張を採用できない。 イ 特許異議申立人2は、令和4年8月10日に提出した意見書13〜17頁において、本件特許発明のすべての組み合わせにおいて、67LRの活性化が達成されるとは限らないことを前提に、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明であり、甲第1号証に記載された発明及び甲第1〜18号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたとして、本件特許発明が新規性・進歩性を欠如している旨主張している。 しかしながら、本件特許発明は、「柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む、緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用の増強用食品組成物」として、「前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であ」ること、第二成分が「前記ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート又はエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行」うことを同時に特定し、当業者の予測できない顕著な効果を奏する増強用食品組成物、増強剤及び増強方法に関する発明であって、そのような記載も示唆もない甲第1号証に記載された発明ともいえないし、そのような特定事項に変更する動機付けもない。 したがって、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1〜18号証に記載された技術的事項を参照しても、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものともいえない。 よって、上記特許異議申立人2の主張を採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、本件請求項1、2、3に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。 また、ほかに本件請求項1、2、3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む、緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用の増強用食品組成物であって、前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行い、また前記第一成分と前記第二成分を共に含む組成物中の含有量として90重量%〜0.001重量%(但し0.001〜1.0重量%を除く)を含む、前記組成物。 【請求項2】 柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む、緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用の増強剤であって、前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル〉ガレートと共に67LRの活性化を行う、前記増強剤。 【請求項3】 柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体(第二成分)を含む組成物を被検体に摂取させることを特徴とする、緑茶抽出物又はカテキン(第一成分)の、前記被検体における抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、コレステロール低下作用、血栓予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用を増強させる方法(ヒトに対する医療行為を除く)であって、前記第二成分は、前記第一成分と組み合わせて使用され、前記第一成分が、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記第二成分が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記ガロカテキンガレート、前記エピガロカテキンガレート又は前記エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートと共に67LRの活性化を行う、前記方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-10-03 |
出願番号 | P2016-529649 |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YAA
(A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K) P 1 651・ 55- YAA (A61K) P 1 651・ 113- YAA (A61K) P 1 651・ 537- YAA (A61K) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
冨永 みどり |
特許庁審判官 |
瀬良 聡機 野田 定文 |
登録日 | 2021-07-13 |
登録番号 | 6912763 |
権利者 | 国立大学法人九州大学 |
発明の名称 | カテキンの機能性増強法 |
代理人 | 鈴木 康仁 |
代理人 | 鈴木 康仁 |
代理人 | 小林 浩 |
代理人 | 小林 浩 |
代理人 | 大森 規雄 |
代理人 | 大森 規雄 |