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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C12G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C12G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C12G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C12G
管理番号 1393095
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-02-03 
確定日 2022-10-14 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6913455号発明「炭酸飲料、炭酸飲料の製造方法、及び、炭酸飲料の香味向上方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6913455号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4〕、5、6、7及び8について訂正することを認める。 特許第6913455号の請求項1、2及び4ないし8に係る特許を維持する。 特許第6913455号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6913455号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成28年12月12日の出願であって、令和3年7月14日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年8月4日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和4年2月4日付け(受付日:同年同月3日)で特許異議申立人 高橋 雅和(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし8)がされ、同年5月12日付けで取消理由が通知され、同年7月13日に特許権者 サッポロビール株式会社から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年同月21日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年8月24日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。

第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和4年7月13日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。また、令和4年7月13日に提出された訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)に記載された各訂正事項のうち、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲の記載と整合していないものについては、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲の記載と整合するように当審で認定し直した。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「である炭酸飲料」と記載されているのを、「であり、 前記1−オクテン−3−オールの含有量が20〜300μg/Lである炭酸飲料」に訂正する。
併せて、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び4も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「(ただし、ビールを含むものではない)」と記載されているのを、「(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)」に訂正する。
併せて、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び4も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から請求項3のいずれか1項」と記載されているのを、「請求項1又は請求項2」に訂正する。

(5)訂正事項5
願書に添付した明細書の【0009】に、
「前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有し、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が1.30〜75.00mg/Lである炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではない)。
(2)前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が6.00〜50.00mg/Lである前記1に記載の炭酸飲料。
(3)前記1−オクテン−3−オールの含有量が20〜300μg/Lである前記1又は前記2に記載の炭酸飲料。
(4)3−メチル−1−ブタノールの含有量が0.01〜0.10g/Lである前記1から前記3のいずれか1つに記載の炭酸飲料。」と記載されているのを、
「前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有し、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が1.30〜75.00mg/Lであり、前記1−オクテン−3−オールの含有量が20〜300μg/Lである炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)。
(2)前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が6.00〜50.00mg/Lである前記1に記載の炭酸飲料。
(3)(削除)
(4)3−メチル−1−ブタノールの含有量が0.01〜0.10g/Lである前記1又は前記2に記載の炭酸飲料。」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5に「(ただし、ビールを含むものではない)」と記載されているのを、「(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5に「である飲料ベース」と記載されているのを、「であり、前記1−オクテン−3−オールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、X/Dが20〜300である飲料ベース」に訂正する。

(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の【0009】に、
「(5)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではない)であって、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、Y/Dが1.30〜75.00である飲料ベース。」と記載されているのを、
「(5)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)であって、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、Y/Dが1.30〜75.00であり、前記1−オクテン−3−オールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、X/Dが20〜300である飲料ベース。」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項6に「(ただし、ビールを含むものではない)」と記載されているのを、「(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項6に「とする工程を含む」と記載されているのを、「とし、前記1−オクテン−3−オールの含有量を20〜300μg/Lとする工程を含む」に訂正する。

(11)訂正事項11
願書に添付した明細書の【0009】に、
「(6)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではない)の製造方法であって、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量を1.30〜75.00mg/Lとする工程を含む炭酸飲料の製造方法。」と記載されているのを、
「(6)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)の製造方法であって、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量を1.30〜75.00mg/Lとし、前記1−オクテン−3−オールの含有量を20〜300μg/Lとする工程を含む炭酸飲料の製造方法。」に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項7に「(ただし、ビールを含むものではない)」と記載されているのを、「(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)」に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項7に「とする工程を含む飲料ベースの製造方法」と記載されているのを、「とし、前記1−オクテン−3−オールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、X/Dを20〜300とする工程を含む飲料ベースの製造方法」に訂正する。

(14)訂正事項14
願書に添付した明細書の【0009】に、
「(7)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではない)の製造方法であって、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、Y/Dを1.30〜75.00とする工程を含む飲料ベースの製造方法。」と記載されているのを、
「(7)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)の製造方法であって、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、Y/Dを1.30〜75.00とし、前記1−オクテン−3−オールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、X/Dを20〜300とする工程を含む飲料ベースの製造方法。」に訂正する。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項8に「とする工程を含む炭酸飲料の香味向上方法」と記載されているのを、「とし、前記1−オクテン−3−オールの含有量を20〜300μg/Lとする工程を含む炭酸飲料の香味向上方法」に訂正する。

(16)訂正事項16
願書に添付した明細書の【0009】に、
「(8)炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではない)の喉越し感とスッキリ感を向上させる香味向上方法であって、前記炭酸飲料に1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有させ、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量を1.30〜75.00mg/Lとする工程を含む炭酸飲料の香味向上方法。」と記載されているのを、
「(8)炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではない)の喉越し感とスッキリ感を向上させる香味向上方法であって、前記炭酸飲料に1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有させ、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量を1.30〜75.00mg/Lとし、前記1−オクテン−3−オールの含有量を20〜300μg/Lとする工程を含む炭酸飲料の香味向上方法。」に訂正する。

2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「1−オクテン−3−オール」の含有量の数値範囲を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2による請求項1についての訂正は、「紫蘇焼酎を含むもの」を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1及び2による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)請求項2についての訂正について
訂正事項1及び2による請求項2についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)請求項3についての訂正について
訂正事項3による請求項3についての訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)請求項4についての訂正について
訂正事項1及び2による請求項4についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4による請求項4についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1、2及び4による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)請求項5についての訂正について
訂正事項6による請求項5についての訂正は、「紫蘇焼酎を含むもの」を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項7による請求項5についての訂正は、「1−オクテン−3−オール」の含有量を希釈倍率との関係で特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項6及び7による請求項5についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)請求項6についての訂正について
訂正事項9による請求項6についての訂正は、「紫蘇焼酎を含むもの」を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項10による請求項6についての訂正は、「1−オクテン−3−オール」の含有量の数値範囲を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項9及び10による請求項6についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)請求項7についての訂正について
訂正事項12による請求項7についての訂正は、「紫蘇焼酎を含むもの」を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項13による請求項7についての訂正は、「1−オクテン−3−オール」の含有量を希釈倍率との関係で特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項12及び13による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8)請求項8についての訂正について
訂正事項15による請求項8についての訂正は、「1−オクテン−3−オール」の含有量の数値範囲を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項15による請求項8についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(9)明細書についての訂正について
訂正事項5、8、11、14及び16による明細書についての訂正は、特許請求の範囲を訂正したことに伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合をとるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項5、8、11、14及び16による明細書についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし16による請求項1ないし8及び明細書についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1又は3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし16による請求項1ないし8及び明細書についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
さらに、訂正事項5、8、11、14及び16による明細書についての訂正に係る請求項の全てについて訂正の請求は行われているから、訂正事項5、8、11、14及び16による明細書についての訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。

なお、訂正前の請求項1ないし4は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項1ないし4による請求項1ないし4についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし8に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4〕、5、6、7及び8について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有し、
前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が1.30〜75.00mg/Lであり、
前記1−オクテン−3−オールの含有量が20〜300μg/Lである炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)。
【請求項2】
前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が6.00〜50.00mg/Lである請求項1に記載の炭酸飲料。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
3−メチル−1−ブタノールの含有量が0.01〜0.10g/Lである請求項1又は請求項2に記載の炭酸飲料。
【請求項5】
1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)であって、
前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、Y/Dが1.30〜75.00であり、
前記1−オクテン−3−オールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、X/Dが20〜300である飲料ベース。
【請求項6】
1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)の製造方法であって、
前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量を1.30〜75.00mg/Lとし、前記1−オクテン−3−オールの含有量を20〜300μg/Lとする工程を含む炭酸飲料の製造方法。
【請求項7】
1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)の製造方法であって、
前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、Y/Dを1.30〜75.00とし、前記1−オクテン−3−オールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、X/Dを20〜300とする工程を含む飲料ベースの製造方法。
【請求項8】
炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではない)の喉越し感とスッキリ感を向上させる香味向上方法であって、
前記炭酸飲料に1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有させ、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量を1.30〜75.00mg/Lとし、前記1−オクテン−3−オールの含有量を20〜300μg/Lとする工程を含む炭酸飲料の香味向上方法。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和4年2月4日付けで特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由1(甲第1ないし3号証のいずれかに基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1ないし3号証のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1ないし3号証のいずれかに記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 申立理由2(甲第1ないし8号証から把握される周知技術1に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1ないし8号証から把握される周知技術1であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1ないし8号証から把握される周知技術1に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

3 申立理由3(実施可能要件
本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

・炭酸飲料もしくはビールなどのアルコールにとってのど越し感が良いことは普通の課題であって、商品として売り出すときは個性の差はあっても必ず検討し選択する事項であるところ、本件特許発明の実施例で示された「喉越し感とスッキリ感の向上」は対象例(総合評価2.8)とほぼ同じ程度の評価数を含んであり、周知技術1においてすでに当然の効果として奏されていたと言える。そうすると、本件特許発明は周知技術1に対して「有利な効果」、すなわち、周知技術1の有する効果と「異質な効果」も、周知技術1の有する効果と「同質の効果ではあるが際立って優れた効果」のどちらの効果も全く認められない。以上のことから、本件特許発明は「喉越し感とスッキリ感の向上」という課題を何ら解決しておらず、本件特許発明には「技術上の意義」が実質的に記載されているとは到底言えない。そうすると、特許を受けようとする発明(請求項に係る発明)が明確に把握できるとは言えず、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないため、「喉越し感とスッキリ感の向上」という課題に対しどのような構成をとるべきか分からないことになるので、本件は特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件(同法第113条第4号)を満たしていない。

4 申立理由4(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

・本件特許発明は、請求項1において、「1−オクテン−3−オール」と記載されている一方で、明細書の【0088】の表4および【0089】においては、「1−オクテン−3−オールの含有量が所定範囲内である場合には、喉越し感(剌激感)の点数が良いことが確認できた。」と記載されており、1−オクテン−3−オールの含有量について範囲が規定されていない請求項1及び請求項1を引用する請求項2、4〜8(ただし、 請求項3を引用する請求項4を除く)に係る発明の範囲まで、出願時の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
また、請求項及び発明の詳細な説明には、いずれも「ビール」という同じ用語を記載しているが、請求項において、炭酸飲料のかっこ書きの中に「ビール」と記載していることに対して、発明の詳細な説明においては、“炭酸飲料とビールの関係性”が記載されていないという意味で、請求項及び発明の詳細な説明に記載された用語が不統一であり、その結果、両者の対応関係が不明瞭となる場合に相当する。
よって、特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された発明は発明の詳細な説明に記載したものであるとは言えないから、特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件(同法第113条第4号)を満たしていない。

5 申立理由5(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

・令和3年1月6日提出の手続補正書により請求項に挿入された「(ただし、ビールを含むものではない)」の「ビール」について本件特許明細書に定義がない。出願日は平成28年12月12日(2006.12.12)で、手続補正書(提出日)は令和3年1月6日(2021年1月6日)であり、実は2018年4月1日、日本における「ビール」の定義が変わった。これによって、中身は同じなのに「発泡酒」が「ビール」表記に変わったものや、“新定義”とラベルに書かれたビールが発売され、ますます「ビール」と「発泡酒」の違いが分かりにくくなった事情がある。
このように、「ビール」の定義が変わった結果、製造方法によって、酒税法上のビールに含まれたり、含まれなくなる発泡酒、ノンアルコールビールはどう取り扱いするべきか、問題が発生した。
意見書の中で「請求項1、5〜8に「(ただし、ビールを含むものではない)」との記載を追加する補正を行いました。この補正は、出願当初の明細書の段落0032において含ませてもよいアルコールとして挙げられている「ビール」との文言、出願当初の実施例で準備した全サンプルが「ビールを含むものではない」という事項(出願当初の段落0057、0058、0070、0077、0084)に基づくものです。」と述べている。
出願日は平成28年12月12日(2016.12.12)であるので、炭酸飲料から「ビール」を除くとは改正前のビールであるはずであるが、それでよいのかが分からない。
以上の事実から、明細書に記載の「ビール」は何を表示したもので、炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではない。)の「ビール」は何を表示しているのか明確でなく、それゆえ、本件特許発明の技術的範囲が不明確となったので、本件は特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件(同法第113条第4号)を満たさない。

6 証拠方法
甲第1号証:特開2015−123008号公報
甲第2号証:特開2016−36319号公報
甲第3号証:特許第5174020号公報
甲第4号証:特開平6−217757号公報
甲第5号証:特開昭60−34176号公報
甲第6号証:【焼酎】レモンチューハイ b y 空飛ぶイルカ【クックパッド】[https://cookpad.com/recipe/4191806]
甲第7号証:特許第5306791号公報
甲第8号証:特開2012−239427号公報
甲第9号証:「米焼酎・麦焼酎の揮発性成分組成と成分間の相関解析」、日本醸造協会誌、2016年、第111巻、第12号、第841ないし873ページ、J.Brew,Soc.Japan,vol.111,No.12,p. 841〜873(2016)
甲第10号証:J.Brew,Soc.Japan,vol.111,No.11,p.750-757(2016)
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

第5 取消理由の概要
令和4年5月12日付け取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要はおおむね次のとおりである。

1 取消理由1(甲3に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲3に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由1は申立理由1のうち、請求項1ないし7に対する甲3に基づく理由とおおむね同旨である。

2 取消理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1、2及び4ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由2は申立理由4のうち、1−オクテン−3−オールの含有量に起因する理由とおおむね同旨である。

・本件特許発明1及び2、請求項3を引用しない本件特許発明4並びに本件特許発明5ないし8は、「1―オクテン−3―オールの含有量が20〜300μg/Lである」ことが特定されていない。
したがって、本件特許発明1及び2、請求項3を引用しない本件特許発明4並びに本件特許発明5ないし8は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないし、また、当業者が出願時の技術常識に照らし発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。
よって、本件特許発明1及び2、請求項3を引用しない本件特許発明4並びに本件特許発明5ないし8に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しない。

第6 取消理由についての当審の判断
1 取消理由1(甲3に基づく新規性進歩性)について
(1)主な証拠に記載された事項等
ア 甲3に記載された事項等
(ア)甲3に記載された事項
甲3には、「紫蘇のフレッシュで自然な芳香を有する蒸留酒類及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は予め付されたものと当審で付したものである。他の文献についても同様。

・「【0010】
本発明は、フレッシュで自然な紫蘇の芳香を有する良質の蒸留酒及びその製造方法を提供することを目的とする。」

・「【0031】
本発明で蒸留酒と混和できる他の酒は、本発明の効果を妨げないものであれば、種類、配合量ともに何ら制限されないが、糖蜜又はとうもろこし由来の連続式蒸留焼酎、原料アルコール、ウォッカ、アクアビット、あるいはクセの少ない香気を持つ麦・米焼酎など、あまり個性が強くなく、柔らかい風味を持つ酒類が好ましい。」

・「【0035】
本発明におけるアルコール飲料には、紫蘇のフレッシュな芳香を際立たせるために、炭酸ガスを含有させることもできる。また、本発明の紫蘇のフレッシュで自然な芳香を維持し、開封した際の香り立ちを向上させるため、本発明のアルコール飲料は容器に充填して容器詰めとすることが好ましい。容器の形態は何ら制限されず、プラスチックを主成分とする成形容器、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと積層されたラミネート紙容器、ガラス瓶などの通常の形態で提供することができる。」

・「【実施例】
【0036】
以下の実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例1 紫蘇焼酎の製造(1)
(紫蘇焼酎の仕込)
下記の表2に示す配合にて仕込を行った。
【0038】
【表2】

乾燥米麹(白)、アルファ化米は、いずれも飯田商事(株)より購入したものを使用した。酵母は協会2号(日本醸造協会より購入)を使用した。協会2号は所定の通り復水し、一次醪中で生菌数が約5×105/mLになるよう添加した。
【0039】
紫蘇は、青紫蘇(大葉)を用いた。大葉は市販されているものを使用した。紫蘇は、よく水洗いした後、そのまま八つ切りにして二次醪に投入した。
【0040】
一次醪は28℃恒温室にて6日間、二次醪は同恒温室にて12〜13日間発酵させた。以上により生成した紫蘇焼酎醪は、容量18.66L、アルコール度数17.1%であった。
【0041】
(蒸留)
5L容ステンレス製単式蒸留釜に3200mLの醪を張り込み、減圧蒸留を実施した(120mmHgにて蒸留したサンプルのみ2460mL張り込んだ)。加温は、恒温水槽によって行った。減圧度は、60、80、100、120、150、200mmHgの6水準とした。得られる紫蘇焼酎原酒のアルコール度数が約40〜45%になると推定される時点で蒸留終了した。留出開始時と蒸留終了時の醪温度を測定し、また、得られた紫蘇焼酎原酒の容量とアルコール度数を測定した。
【0042】
(アルコール度数の測定)
京都電子工業製 振動式密度計によって測定した。本発明におけるアルコール度数は、特に断りがない限り容量%である。
【0043】
(ガスクロマトグラフィ(GC)による香気成分の分析)
蒸留して得られた原酒中のペリルアルデヒド、ベンズアルデヒド及びテルペン類の分析を、HP社製GC分析システム(HP6890)を用いて行った。分析条件は、次の通りである:
オーブンを45℃で1分間保持した後、5℃/分にて230℃まで昇温し、5分間保持した。注入口温度は250℃とし、スプリット比は15:1とした。カラムはUltra2 5%Phenyl Methyl Siloxane(Agilent社製、内径0.32mm、カラム長50m)を用い、キャリアガスはヘリウムを3.2mL/分で流した。検出器はFID(水素炎イオン化検出器)を用い、260℃で検出した。分析により得られた香気成分量(mg/L)は、原酒のアルコール度数で除し、アルコール100%あたりの成分量(純アルコール換算値(mg/L)と呼ぶ)で表した。
【0044】
GC分析の結果を、表3に示す。比較として、他社紫蘇焼酎製品3品(P、Q、R)のGC分析結果も併せて表3に示す。ペリルアルデヒドを(A)、その他のテルペン類及びベンズアルデヒドを(B)とする。(B)該当成分量の総和も表3に示す。
【0045】
減圧度60、80、100mmHgで蒸留した紫蘇焼酎サンプルNo.1〜3からは、リモネン、シネオールが検出されたが、ペリルアルデヒドは検出されなかった。減圧度120、150、200mmHgで蒸留した紫蘇焼酎サンプルNo.4〜6からは、ペリルアルデヒドとともに、リモネン、シネオールといったテルペン類が検出された。他社焼酎製品Pからは、ペリルアルデヒドは検出されたが、テルペン類は検出されなかった。他社製品Q及びRからは、ペリルアルデヒドに加えてリモネン、シネオール、リナロール、及びベンズアルデヒドが検出されたが、これら(B)成分はペリルアルデヒドに比べて非常に少量であり、成分量比(B)/(A)がそれぞれ約0.088及び約0.19だった。
【0046】
【表3】

(官能評価)
上記のように減圧度の異なる蒸留条件で製造した原酒6サンプルを、純水によってアルコール度数20%に割り水して、訓練された専門パネル6名にて官能評価を行った。比較として、他社紫蘇焼酎製品3品(P、Q、R)も同様にアルコール度数20%に割り水して官能評価を行った。これらの官能評価結果、サンプルNo.1〜6の蒸留時の減圧度、張込量、醪温度、蒸留により得られた原酒の容量、アルコール度数、(A)成分の量、(B)成分の量、及び比(B)/(A)を表4に示す。醪温度の「開始」は留液の留出開始時、「終了」は蒸留終了時の醪温度である。」

(イ)甲3に記載された発明
甲3に記載された紫蘇焼酎サンプルNo.1は、甲3の【0046】の【表3】によると、リモネンを6.3mg/L含有し、シネオールを2.4mg/L含有することから、リモネン及びシネオールの合計含有量は8.7mg/Lである。
同様に、甲3の紫蘇焼酎サンプルNo.2ないし6のリモネン及びシネオールの合計含有量は、それぞれ、6.6mg/L、10.6mg/L、12.1mg/L、18.6mg/L及び22.7mg/Lである。
甲3の【0035】には、紫蘇焼酎から製造したアルコール飲料に炭酸ガスを含有させることができることが記載されている。
上記事項を踏まえ、甲3に記載された事項を整理すると、甲3には次の発明(以下、順に「甲3発明1」ないし「甲3発明4」という。)が記載されていると認める。

<甲3発明1>
「リモネン及びシネオールのうちの1種以上を含有し、その合計含有量が8.7mg/L、6.6mg/L、10.6mg/L、12.1mg/L、18.6mg/L又は22.7mg/Lである紫蘇焼酎サンプルから製造した炭酸飲料。」

<甲3発明2>
「リモネン及びシネオールのうちの1種以上を含有し、その合計含有量が8.7mg/L、6.6mg/L、10.6mg/L、12.1mg/L、18.6mg/L又は22.7mg/Lである炭酸飲料用の紫蘇焼酎サンプル。」

<甲3発明3>
「甲3発明1の炭酸飲料の製造方法。」

<甲3発明4>
「甲3発明2の炭酸飲料用の紫蘇焼酎サンプルの製造方法。」

イ 甲9に記載された事項
甲9には、おおむね次の事項が記載されている。なお、半角英数字等は全角で摘記する。

・「1.試料
試料は,第35回本格焼酎鑑評会に出品された米焼酎24点,麦焼酎57点,甘藷焼酎58点,泡盛16点,酒粕焼酎11点,そば焼酎2点,その他を原料とする焼酎13点の計181点を用いた。」(第841ページ右下欄下から2行ないし第842ページ左上欄第3行)」

・第844ページのTable.2の米焼酎(Rice schouchu)のTotal欄に、イソアミルアルコール(3−メチル−1−ブタノールの別名)含有量が422±103mg/l(0.422±0.103g/L)であり、1−オクテン−3−オール含有量が20.5±20.3μg/lであることが記載されている。

・第844ページのTable.2の麦焼酎(Barley schouchu)のTotal欄に、イソアミルアルコール含有量が511±81mg/l(0.511±0.081g/L)であり、1−オクテン−3−オール含有量が17.2±11.0μg/lであることが記載されている。

ウ 甲10に記載された事項
甲10には、おおむね次の事項が記載されている。なお、表中の記載を除き、半角英数字等は全角で摘記する。

・「これらの成分以外では,1−オクテン−3−オールがあり,熟成過程での増加は不飽和脂肪酸エチルエステルの分解によるとされている。しかし,前報より1−オクテン−3−オールは,泡盛以外の焼酎と比較では平均値で10倍以上多く,古酒以外の泡盛にも含まれていることから,泡盛の1−オクテンー3−オールは不飽和脂肪酸エチルエステル以外の由来が予想される。また他方,官能では1−オクテン−3−オールは,芳香がキノコ様であることからマツタケオールとも呼ばれ,閾値は10−200μg/l,調味液では100ng/lで風味の広がりに寄与する成分であることから,泡盛での含量を考慮すると官能特性への影響も考えられる成分である。」(第750ページ右下欄下から4行ないし第751ページ左上欄第9行)

・「結果及び考察
1.泡盛品評会及び本格焼酎品評会出品酒の1−オクテン−3−オールの比較
・・・(略)・・・
その結果,1−オクテン−3−オールは,泡盛品評会の一般の部の出品酒を除き,泡盛以外の焼酎に比べ平均値で10倍以上高い値であった。・・・(略)・・・原料毎に分類した焼酎の1−オクテン−3−オールの平均値及び標準偏差等をTable 5に示す。1−オクテン−3−オールは,大半の焼酎で認められるが,泡盛以外の焼酎の平均値は泡盛の10%以下であった。その他を原料とする焼酎では,平均値が211μg/lと高いが,しそ焼酎1点の含量が高いためである。当該1点を除くと平均値13.6μg/l,標準偏差9.6μg/l,中央値11.9μg/l,最小値4.3μg/l,最大値34.8μg/lであった。なお,しそ焼酎で含量が高い理由は,塩蔵赤紫蘇では1−オクテン−3−オールは主要香気成分として報告されていることから,原料の紫蘇に由来すると推定された。
2.1−オクテン−3−オールの由来
泡盛の1−オクテン−3−オールの含量が他の焼酎に比ベ高いことから,その由来を検討した。泡盛の製造の特徴は麹の種類及び量であることを参考に,黒麹菌を使用した全麹仕込み(通常の泡盛製造),白麹菌を使用した全麹仕込み(白麹を用いた泡盛製造),及び白麹菌を用いた通常の米焼酎仕込みの比較試験を行った。仕込試験により製成した焼酎の成分をTable.6に示す。」(第753ページ左上欄第3行ないし第754ページ左上欄第13行)

・「

」(第754ページ)

・「

」(第755ページ)

(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲3発明1を対比する。
甲3の【0046】によると、甲3発明1を認定する根拠となった紫蘇焼酎サンプルNo.1ないし6(それぞれのアルコール度数は41.1%、40.3%、41.4%、41.4%、42.5%及び42.5%である。)はアルコール度数20%に割り水して官能評価を行うものであるから、希釈倍率Dは約2倍である。
そこで、甲3発明1の炭酸飲料としてのリモネン及びシネオールの合計含有量を、D=約2として換算すると、4.35mg/L、3.3mg/L、5.3mg/L、6.05mg/L、9.3mg/L又は11.35mg/Lとなり、本件特許発明1の「前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量」の「1.30〜75.00mg/L」の範囲内である。
甲9及び10によると、紫蘇焼酎を含め焼酎は1−オクテン−3―オールを含有するものであるから、甲3発明1も1−オクテン−3―オールを含有する。
甲3に記載された紫蘇焼酎サンプルNo.1ないし6がビールを含むものではないことは明らかであるし、甲3の【0031】には、飲料にビールを含ませることは記載されていないから、甲3発明1の「紫蘇焼酎サンプルから製造した炭酸飲料」は本件特許発明1における「炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)」と、「炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではない)」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有し、
前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が1.30〜75.00mg/Lである炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではない)。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3−1a>
本件特許発明1においては、「前記1−オクテン−3−オールの含有量が20〜300μg/Lである」と特定されているのに対し、甲3発明1においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3−1b>
「炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではない)」に関して、本件特許発明1においては、さらに「紫蘇焼酎を含むものでもない」と特定されているのに対し、甲3発明1においては、そのようには特定されていない点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点3−1bについて検討する。
甲3発明1は「紫蘇焼酎サンプルから製造した炭酸飲料」の発明であり、「紫蘇焼酎」を含むことから、相違点3−1bは実質的な相違点である。
また、甲3発明1において、「紫蘇焼酎」を含まないようにする動機付けとなる記載は、甲3にはないし、他の証拠にもない。むしろ、甲3発明1は、紫蘇焼酎サンプルNo.1ないし6を発明認定の根拠とするものであるから、「紫蘇焼酎」を含まないようにすることには阻害要因があるといえる。
したがって、甲3発明1において、相違点3−1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「喉越し感とスッキリ感が向上している」(本件特許の発明の詳細な説明の【0010】)という甲3発明1並びに甲3及び他の証拠に記載された事項からみて当業者が予測することができる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。

ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3発明1であるとはいえないし、甲3発明1並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明2及び4について
本件特許発明2及び4は請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲3発明1であるとはいえないし、甲3発明1並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)本件特許発明5について
ア 対比
本件特許発明5と甲3発明2を対比する。
上記(1)のとおり、甲3発明2を認定する根拠となった紫蘇焼酎サンプルNo.1ないし6はアルコール度数20%に割り水して官能評価を行うものであるから、希釈倍率は約2倍である。
そこで、甲3発明2の「Y/D」を、D=約2として換算すると、4.35、3.3、5.3、6.05、9.3又は11.35となり、本件特許発明5の「Y/D」の「1.30〜75.00」の範囲内である。
甲9及び10によると、紫蘇焼酎を含め焼酎は1−オクテン−3―オールを含有するものであるから、甲3発明2も1−オクテン−3―オールを含有する。
甲3に記載された紫蘇焼酎サンプルNo.1ないし6がビールを含むものではないことは明らかであるし、甲3の【0031】には、飲料にビールを含ませることは記載されていないから、甲3発明2の「炭酸飲料用の紫蘇焼酎サンプル」は本件特許発明5における「炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)」と、「炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではない)」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではない)であって、
前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、Y/Dが1.30〜75.00である飲料ベース。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3−2a>
「炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではない)」に関して、本件特許発明5においては、さらに「紫蘇焼酎を含むものでもない」と特定されているのに対し、甲3発明2においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3−2b>
本件特許発明5においては、「前記1−オクテン−3−オールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、X/Dが20〜300である」と特定されているのに対し、甲3発明2においては、そのようには特定されていない点。

イ 判断
相違点3−2aについて検討する。
甲3発明2は「炭酸飲料用の紫蘇焼酎サンプル」の発明であり、「紫蘇焼酎」を含むことから、相違点3−2aは実質的な相違点である。
また、甲3発明2において、「紫蘇焼酎」を含まないようにする動機付けとなる記載は、甲3にはないし、他の証拠にもない。むしろ、甲3発明2は、紫蘇焼酎サンプルNo.1ないし6を発明認定の根拠とするものであるから、「紫蘇焼酎」を含まないようにすることには阻害要因があるといえる。
したがって、甲3発明2において、相違点3−2aに係る本件特許発明5の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明5は「希釈後の炭酸飲料は喉越し感とスッキリ感が向上している」(本件特許の発明の詳細な説明の【0011】)という甲3発明2並びに甲3及び他の証拠に記載された事項からみて当業者が予測することができる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。

ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は甲3発明2であるとはいえないし、甲3発明2並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)本件特許発明6について
ア 対比
甲3発明3が「リモネン及びシネオール」の「合計含有量」を「8.7mg/L、6.6mg/L、10.6mg/L、12.1mg/L、18.6mg/L又は22.7mg/L」とする工程を含むことは明らかである。
それを踏まえて、本件特許発明6と甲3発明3を対比すると、両者の間には本件特許発明1と甲3発明1の間の相当関係と同様の相当関係が成り立つから、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではない)の製造方法であって、
前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量を1.30〜75.00mg/Lとする工程を含む炭酸飲料の製造方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3−3a>
「炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではない)」に関して、本件特許発明6においては、さらに「紫蘇焼酎を含むものでもない」と特定されているのに対して、甲3発明3においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3−3b>
本件特許発明6においては、「前記1−オクテン−3−オールの含有量を20〜300μg/Lとする」と特定されているのに対して、甲3発明3においては、そのようには特定されていない点。

イ 判断
相違点3−3aについて検討する。
甲3発明3は「紫蘇焼酎サンプルから製造した炭酸飲料」の「製造方法」の発明であり、「紫蘇焼酎」を含むことから、相違点3−3aは実質的な相違点である。
また、甲3発明3において、「紫蘇焼酎」を含まないようにする動機付けとなる記載は、甲3にはないし、他の証拠にもない。むしろ、甲3発明3は、紫蘇焼酎サンプルNo.1ないし6を発明認定の根拠とするものであるから、「紫蘇焼酎」を含まないようにすることには阻害要因があるといえる。
したがって、甲3発明3において、相違点3−3aに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、甲3発明3は「喉越し感とスッキリ感が向上した炭酸飲料を製造することができる」(本件特許の発明の詳細な説明の【0012】)という甲3発明3並びに甲3及び他の証拠に記載された事項からみて当業者が予測することができる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。

ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲3発明3であるとはいえないし、甲3発明3並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(6)本件特許発明7について
ア 対比
甲3発明4が紫蘇焼酎サンプルを炭酸飲料とする際に希釈する工程を含むことは明らかである。
それを踏まえて、本件特許発明7と甲3発明4を対比すると、両者の間には本件特許発明5と甲3発明2の間の相当関係と同様の相当関係が成り立つから、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではない)の製造方法であって、
前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、Y/Dを1.30〜75.00とする工程を含む飲料ベースの製造方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3−4a>
「炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではない)」に関して、本件特許発明7においては、さらに「紫蘇焼酎を含むものでもない」と特定されているのに対して、甲3発明4においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3−4b>
本件特許発明7においては、「前記1−オクテン−3−オールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、X/Dを20〜300とする」と特定されているのに対して、甲3発明4においては、そのようには特定されていない点。

イ 判断
相違点3−4aについて検討する。
甲3発明4は「炭酸飲料用の紫蘇焼酎サンプルの製造方法」の発明であり、「紫蘇焼酎」を含むことから、相違点3−4aは実質的な相違点である。
また、甲3発明4において、「紫蘇焼酎」を含まないようにする動機付けとなる記載は、甲3にはないし、他の証拠にもない。むしろ、甲3発明4は、紫蘇焼酎サンプルNo.1ないし6を発明認定の根拠とするものであるから、「紫蘇焼酎」を含まないようにすることには阻害要因があるといえる。
したがって、甲3発明4において、相違点3−4aに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、甲3発明4は「希釈後の炭酸飲料について喉越し感とスッキリ感が向上する飲料ベースを製造することができる」(本件特許の発明の詳細な説明の【0012】)という甲3発明4並びに甲3及び他の証拠に記載された事項からみて当業者が予測することができる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。

ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲3発明4であるとはいえないし、甲3発明4並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(7)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとも、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえず、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないから、取消理由1によっては取り消すことはできない。

2 取消理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。

(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明にはおおむね次の記載がある。

・「【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸飲料、飲料ベース、炭酸飲料の製造方法、飲料ベースの製造方法、及び、炭酸飲料の香味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料は発泡性を有することから、消費者に爽快感や刺激感を与えるといった強みがあり、飲料の市場において一定のシェアを獲得している。
そして、炭酸飲料に関し、より市場のニーズに合致した商品を創出すべく、様々な研究開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルコール度数が1.0%以上3.0%未満である飲料であって、Na+及びK+を含有し、Na+/K+のモル比が0.5〜60であり、Na+濃度が0.03〜1.1g/Lであり、炭酸を含有する飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2016−27831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、アルコール度数、Na+/K+のモル比、Na+濃度等を制御することにより、酒らしい味わいを増強することができると記載されている。
【0006】
特許文献1に係る技術をはじめとして、炭酸飲料に関して様々な香味の検討がなされているが、消費者が炭酸飲料に強く要求する特徴の1つとして、炭酸飲料に特有の「喉越し感(爽快感)」が挙げられる。
そして、この喉越し感(爽快感)は、炭酸飲料らしい喉越しの爽快な感覚を消費者に与えるものであるため、喉越し感(爽快感)が小さいと、炭酸飲料としての評価の低下につながる可能性がある。
【0007】
また、炭酸飲料の香味については、スッキリとした印象を有する消費者が多いため、スッキリ感も重要である。
【0008】
そこで、本発明者らは、喉越し感とスッキリ感とが向上した炭酸飲料、飲料ベース、炭酸飲料の製造方法、飲料ベースの製造方法、及び、炭酸飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。」

・「【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有し、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が1.30〜75.00mg/Lであり、前記1−オクテン−3−オールの含有量が20〜300μg/Lである炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)。
(2)前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が6.00〜50.00mg/Lである前記1に記載の炭酸飲料。
(3)(削除)
(4)3−メチル−1−ブタノールの含有量が0.01〜0.10g/Lである前記1又は前記2に記載の炭酸飲料。
(5)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)であって、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、Y/Dが1.30〜75.00であり、前記1−オクテン−3−オールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、X/Dが20〜300である飲料ベース。
(6)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)の製造方法であって、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量を1.30〜75.00mg/Lとし、前記1−オクテン−3−オールの含有量を20〜300μg/Lとする工程を含む炭酸飲料の製造方法。
(7)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)の製造方法であって、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、Y/Dを1.30〜75.00とし、前記1−オクテン−3−オールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、X/Dを20〜300とする工程を含む飲料ベースの製造方法。
(8)炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではない)の喉越し感とスッキリ感を向上させる香味向上方法であって、前記炭酸飲料に1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有させ、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量を1.30〜75.00mg/Lとし、前記1−オクテン−3−オールの含有量を20〜300μg/Lとする工程を含む炭酸飲料の香味向上方法。」

・「【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る炭酸飲料、飲料ベース、炭酸飲料の製造方法、飲料ベースの製造方法、及び、炭酸飲料の香味向上方法を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0016】
[炭酸飲料]
本実施形態に係る炭酸飲料は、1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネン(以下、適宜、まとめて「柑橘香気成分」という)のうちの1種以上を含有している。また、本実施形態に係る炭酸飲料は、3−メチル−1−ブタノール、果汁等を含有していてもよい。
以下、炭酸飲料を構成する各成分について説明する。
【0017】
(1−オクテン−3−オール)
1−オクテン−3−オール(1−octen−3−ol)とは、分子式がC8H16Oで示される不飽和アルコールの一種であり、キノコ類に含まれる香気成分である。この1−オクテン−3−オールは、マツタケの香気に大きな影響を及ぼす物質として知られているが、本発明者らは驚くべきことにこの物質が柑橘香気成分と組み合わさることにより炭酸飲料の喉越し感(爽快感)を向上させることを見出した。
【0018】
1−オクテン−3−オールの含有量は、20μg/L以上が好ましく、40μg/L以上がより好ましく、50μg/L以上がさらに好ましい。1−オクテン−3−オールの含有量が所定値以上であることにより、後記する柑橘香気成分と相乗的に作用し、喉越し感とスッキリ感とをより向上させることができる。
1−オクテン−3−オールの含有量は、300μg/L以下が好ましい。1−オクテン−3−オールの含有量が所定値以下であることにより、炭酸飲料として違和感のある香気が強くなってしまうといった事態を回避し、スッキリ感、飲み易さ、総合評価(炭酸飲料として好ましい香味か否か)の低下を抑制させることができる。
【0019】
1−オクテン−3−オールの含有量は、SPME−GC−MS法によって測定することができる。
【0020】
(3−メチル−1−ブタノール)
3−メチル−1−ブタノール(3−methyl−1−butanol)とは、分子式がC5H12Oで示されるアルコールの一種であり、イソアミルアルコールとも呼ばれる。この3−メチル−1−ブタノールは、香料の原料(誘導体)として知られているが、この物質が1−オクテン−3−オールと組み合わさることにより、炭酸飲料の喉越し感(爽快感)をさらに向上させる、ということを本発明者らは見出した。
【0021】
3−メチル−1−ブタノールを含有させる場合、3−メチル−1−ブタノールの含有量は、0.01g/L以上が好ましく、0.02g/L以上がより好ましく、0.04g/L以上がさらに好ましい。3−メチル−1−ブタノールの含有量が所定値以上であることにより、1−オクテン−3−オールと相乗的に作用し、炭酸飲料の喉越し感を向上させることができる。
3−メチル−1−ブタノールの含有量は、0.15g/L以下が好ましく、0.10g/L以下がより好ましく、0.08g/L以下がさらに好ましい。3−メチル−1−ブタノールの含有量が所定値以下であることにより、スッキリ感、飲み易さ、総合評価(炭酸飲料として好ましい香味か否か)の低下を抑制することができる。
【0022】
3−メチル−1−ブタノールの含有量は、SPME−GC−MS法によって測定することができる。
【0023】
(柑橘香気成分)
本実施形態に係る炭酸飲料は、柑橘系の香気を奏する柑橘香気成分として、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する。そして、これらの柑橘香気成分は、1−オクテン−3−オール(及び、3−メチル−1−ブタノール)と相乗的に作用することで炭酸飲料の喉越し感(爽快感)を向上させるだけでなく、1−オクテン−3−オールに特有のまったりとした重い感じの香味を改善し、スッキリ感をも向上させる、ということを本発明者らは見出した。
【0024】
柑橘香気成分はいずれか1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。2種以上を組み合わせる場合においてその混合比率は特に限定されず、消費者のニーズに合わせて適宜変更できる。
【0025】
柑橘香気成分の合計含有量は、1.30mg/L以上であり、6.00mg/L以上が好ましく、15.00mg/L以上がより好ましい。柑橘香気成分の合計含有量が所定値以上であることにより、1−オクテン−3−オール(及び、3−メチル−1−ブタノール)と相乗的に作用することで喉越し感を向上させるだけでなく、スッキリ感をも向上させることができる。また、柑橘香気成分の合計含有量が所定値以上であることにより、飲み易さ、総合評価(炭酸飲料として好ましい香味か否か)を向上させることもできる。
柑橘香気成分の合計含有量は、75.00mg/L以下であり、50.00mg/L以下が好ましく、30.00mg/L以下がより好ましい。柑橘香気成分の合計含有量が所定値以下であることにより、スッキリ感、飲み易さ、総合評価(炭酸飲料として好ましい香味か否か)の低下を抑制することができる。」

・「【0037】
[飲料ベース]
本実施形態に係る飲料ベースは、後記する割り材で希釈されることにより前記の炭酸飲料とすることができる飲料ベースであって、炭酸飲料用の(炭酸飲料を作るための)飲料ベースである。
なお、本実施形態に係る飲料ベースは、消費者や飲食店などに提供されるに際して、飲料ベースの状態(RTS:Ready To Serve)で提供された後に割り材で希釈されてもよいし、飲料ベースを割り材で希釈した後に飲料の状態(RTD:Ready To Drink)で提供されてもよい。」

・「【0039】
(1−オクテン−3−オール)
飲料ベースの1−オクテン−3−オールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合、X/Dは、20以上が好ましく、40以上がより好ましく、50以上がさらに好ましい。また、X/Dは、300以下が好ましい。」

・「【0041】
(柑橘香気成分)
飲料ベースの柑橘香気成分(リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上)の合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合、Y/Dは、1.30以上であり、6.00以上が好ましく、15.00以上がより好ましい。また、Y/Dは、75.00以下であり、50.00以下が好ましく、30.00以下がより好ましい。」

・「【0047】
[容器詰め炭酸飲料、及び、容器詰め飲料ベース]
本実施形態に係る炭酸飲料、及び、飲料ベースは、各種容器に入れて提供することができる。各種容器に炭酸飲料又は飲料ベースを詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
また、各種容器に飲料ベースを詰める場合は、その容器に、前記した割り材等によって希釈して飲んでもよい旨の表示(例えば、希釈倍率等)を付してもよい。
【0048】
[炭酸飲料、及び、飲料ベースの製造方法]
次に、本実施形態に係る炭酸飲料、及び、飲料ベースの製造方法を説明する。
本実施形態に係る炭酸飲料、及び、飲料ベースの製造方法は、混合工程S1と、後処理工程S2と、を含む。
【0049】
混合工程S1では、混合タンクに、水、1−オクテン−3−オール、3−メチル−1−ブタノール、果汁、柑橘香気成分、飲用アルコール、添加剤などを適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程S1において、1−オクテン−3−オール、3−メチル−1−ブタノール、果汁の含有量、柑橘香気成分の合計含有量、Y/D等が前記した所定範囲の量となるように各原料を混合し、調整すればよい。
【0050】
そして、後処理工程S2では、例えば、ろ過、殺菌、カーボネーション、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程S2のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程S2の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程S2のカーボネーション処理は、発泡性が前記した所定範囲内となるように炭酸ガスを圧入する。また、後処理工程S2の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填するのが好ましい。そして、後処理工程S2での各処理の順序は特に限定されない。
【0051】
なお、混合工程S1及び後処理工程S2にて行われる各処理は、RTD・RTS飲料などを製造するために一般的に用いられている設備にて行うことができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る炭酸飲料の製造方法は、1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンの合計含有量を所定範囲内とする工程を含むことから、喉越し感とスッキリ感とが向上した炭酸飲料を製造することができる。
また、本実施形態に係る飲料ベースの製造方法は、1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、Y/Dを所定範囲内とする工程を含むことから、希釈後の炭酸飲料について喉越し感とスッキリ感とが向上する飲料ベースを製造することができる。」

・「【0053】
[炭酸飲料の香味向上方法]
次に、本実施形態に係る炭酸飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係る炭酸飲料の香味向上方法は、1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンの合計含有量を所定の範囲内に調整する工程を含む方法である。
また、本実施形態に係る炭酸飲料の香味向上方法は、1−オクテン−3−オール、3−メチル−1−ブタノール、果汁(果汁率換算)、アルコール度数、発泡性を所定の範囲内に調整する工程を含むのが好ましい。
なお、これらの含有量等の値については、前記した「炭酸飲料」において説明した値と同じである。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る炭酸飲料の香味向上方法は、1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンの合計含有量を所定範囲内とする工程を含むことから、炭酸飲料の喉越し感とスッキリ感とを向上させることができる。」

・「【実施例】
【0055】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0056】
[実施例1]
まず、実施例1では、柑橘香気成分の合計含有量が、各評価に与える影響について確認する。
【0057】
(サンプルの準備:A−1〜A−8)
1−オクテン−3−オールを含有する香料、レモン系の香料、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、原料アルコール、炭酸水、水を混合して、表1の含有量となるようにサンプル液を準備した。
なお、各サンプルについて、レモン系の香料の添加量を変化させ、その他の原料の含有割合は固定した。
また、各サンプルのアルコール度数は、6.0v/v%であり、ガス圧は2.0kg/cm2(20℃)であった。
【0058】
(サンプルの準備:A−9)
1−オクテン−3−オールを含有する香料、3−メチル−1−ブタノールを含有する香料、グレープフルーツ系の香料、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、原料アルコール、炭酸水、水を混合して、表1の含有量となるようにサンプル液を準備した。
なお、1−オクテン−3−オールを含有する香料、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、原料アルコールの含有割合については、サンプルA−1〜A−8と同じとした。
また、サンプルのアルコール度数は、6.0v/v%であり、ガス圧は2.0kg/cm2(20℃)であった。
【0059】
(試験内容)
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された専門のパネル6名が下記評価基準に則って「スッキリ感」、「飲み易さ」、「喉越し感(爽快感)」、「総合評価」について、1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価した。
【0060】
(スッキリ感:評価基準)
5点:スッキリ感が非常に強く感じられた。
4点:スッキリ感が強く感じられた。
3点:スッキリ感が感じられた。
2点:スッキリ感が弱く感じられた。
1点:スッキリ感が感じらなかった。
なお、詳細には、「スッキリ感」の評価は、香味が長く残らず、清涼な感じが強く、スッキリと感じられる場合に高い点数とし、香味の後残りがあり、清涼な感じが弱く、スッキリと感じられない場合に、低い点数とした。
【0061】
(飲み易さ:評価基準)
5点:非常に飲み易かった。
4点:かなり飲み易かった。
3点:飲み易かった。
2点:少し飲み難かった。
1点:飲み難かった。
なお、詳細には、「飲み易さ」の評価は、喉に引っ掛かる様な感じがなく(喉に引っ掛かる様な香味がせず)、違和感のある香気がせず、飲み易い場合に高い点数とし、喉に引っ掛かる様な感じが強く(喉に引っ掛かる様な香味が強く)、違和感のある香気が強く、飲み難い場合に、低い点数とした。
【0062】
(喉越し感(爽快感):評価基準)
5点:炭酸飲料らしい爽快感が非常に強く、喉越しが非常に爽快に感じられた。
4点:炭酸飲料らしい爽快感が強く、喉越しがかなり爽快に感じられた。
3点:炭酸飲料らしい爽快感が感じられ、喉越しが爽快に感じられた。
2点:炭酸飲料らしい爽快感が弱く、喉越しの爽快さが弱く感じられた。
1点:炭酸飲料らしい爽快感が非常に弱く、喉越しの爽快さが非常に弱く感じられた。
【0063】
(総合評価:評価基準)
5点:炭酸飲料として非常に好適な香味である。
4点:炭酸飲料としてかなり好適な香味である。
3点:炭酸飲料として好適な香味である。
2点:炭酸飲料として不適な香味である。
1点:炭酸飲料としてかなり不適な香味である。
【0064】
表1に、各サンプルの規格を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0065】
【表1】


【0066】
(結果の検討)
サンプルA−1〜A−8は、柑橘香気成分の合計含有量を変化させたものである。
サンプルA−1〜A−8の結果を確認すると明らかなように、柑橘香気成分の合計含有量が所定範囲内である場合には、喉越し感、スッキリ感の点数が良いとともに、飲み易さ、総合評価の点数も良いことが確認できた。
なお、柑橘香気成分の合計含有量が多過ぎると、スッキリ感、飲み易さ、総合評価の点数が下がることも確認できた。
【0067】
サンプルA−9は、グレープフルーツ系の香料を使用したものである。
サンプルA−9の結果を確認すると明らかなように、レモン系の香料を使用したサンプルA−1〜A−8と同様、グレープフルーツ系の香料を使用したとしても、柑橘香気成分の合計含有量が所定範囲内であれば、喉越し感、スッキリ感、飲み易さ、総合評価のいずれの点数も良くなることが確認できた。
【0068】
以上の結果より、柑橘香気成分の合計含有量が本発明で規定する所定範囲内となっていると、喉越し感、スッキリ感を向上させるだけでなく、飲み易さ、総合評価も良いことがわかった。
また、どのような香料を使用したとしても、柑橘香気成分の合計含有量が所定範囲内であれば、所望の効果を得られることもわかった。
【0069】
[実施例2]
次に、実施例2では、1−オクテン−3−オールの含有量が、各評価に与える影響について確認する。
【0070】
(サンプルの準備)
1−オクテン−3−オールを含有する香料、レモン系の香料、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、原料アルコール、炭酸水、水を混合して、表2の含有量となるようにサンプル液を準備した。
なお、各サンプルについて、1−オクテン−3−オールを含有する香料の添加量を変化させ、その他の原料の含有割合は固定した。
また、各サンプルのアルコール度数は、6.0v/v%であり、ガス圧は2.0kg/cm2(20℃)であった。
【0071】
(試験内容、評価基準)
試験内容、及び、各試験の評価基準については、実施例1と同様であった。
【0072】
表2に、サンプルの規格を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0073】
【表2】

【0074】
(結果の検討)
サンプルB−1〜B−4は、1−オクテン−3−オールの含有量を変化させたものである。
サンプルB−1〜B−4の結果を確認すると明らかなように、1−オクテン−3−オールの含有量が所定範囲内であれば、喉越し感、スッキリ感、飲み易さ、総合評価のいずれの点数もかなり良くなることが確認できた。
【0075】
以上の結果より、各評価項目について、より良い評価とするためには、1−オクテン−3−オールの含有量を所定範囲内とすればよいことがわかった。」

(4)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0008】の記載によると、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は「喉越し感とスッキリ感とが向上した炭酸飲料、飲料ベース、炭酸飲料の製造方法、飲料ベースの製造方法、及び、炭酸飲料の香味向上方法を提供すること」である。
他方、本件特許の発明の詳細な説明の【0009】には、本件特許発明1、2及び4ないし8に対応する記載がある。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0017】には「この1−オクテン−3−オールは、マツタケの香気に大きな影響を及ぼす物質として知られているが、本発明者らは驚くべきことにこの物質が柑橘香気成分と組み合わさることにより炭酸飲料の喉越し感(爽快感)を向上させることを見出した。」と記載され、【0018】には「1−オクテン−3−オールの含有量は、20μg/L以上が好ましく、40μg/L以上がより好ましく、50μg/L以上がさらに好ましい。1−オクテン−3−オールの含有量が所定値以上であることにより、後記する柑橘香気成分と相乗的に作用し、喉越し感とスッキリ感とをより向上させることができる。1−オクテン−3−オールの含有量は、300μg/L以下が好ましい。1−オクテン−3−オールの含有量が所定値以下であることにより、炭酸飲料として違和感のある香気が強くなってしまうといった事態を回避し、スッキリ感、飲み易さ、総合評価(炭酸飲料として好ましい香味か否か)の低下を抑制させることができる。」と記載され、【0023】には「本実施形態に係る炭酸飲料は、柑橘系の香気を奏する柑橘香気成分として、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する。そして、これらの柑橘香気成分は、1−オクテン−3−オール(及び、3−メチル−1−ブタノール)と相乗的に作用することで炭酸飲料の喉越し感(爽快感)を向上させるだけでなく、1−オクテン−3−オールに特有のまったりとした重い感じの香味を改善し、スッキリ感をも向上させる、ということを本発明者らは見出した。」と記載され、【0025】には「柑橘香気成分の合計含有量は、1.30mg/L以上であり、6.00mg/L以上が好ましく、15.00mg/L以上がより好ましい。柑橘香気成分の合計含有量が所定値以上であることにより、1−オクテン−3−オール(及び、3−メチル−1−ブタノール)と相乗的に作用することで喉越し感を向上させるだけでなく、スッキリ感をも向上させることができる。また、柑橘香気成分の合計含有量が所定値以上であることにより、飲み易さ、総合評価(炭酸飲料として好ましい香味か否か)を向上させることもできる。柑橘香気成分の合計含有量は、75.00mg/L以下であり、50.00mg/L以下が好ましく、30.00mg/L以下がより好ましい。柑橘香気成分の合計含有量が所定値以下であることにより、スッキリ感、飲み易さ、総合評価(炭酸飲料として好ましい香味か否か)の低下を抑制することができる。」と記載されている。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0055】ないし【0075】において、1―オクテン−3−オールの含有量が20〜300μg/Lの範囲内であり、柑橘系香気成分含有量が1.30〜75.00mg/Lの範囲内であるという条件を満たすサンプルA−3ないしA−7、A−9、B−2及びB−3が、上記条件を満たさないサンプルA−1、A−2、B−1及びB−4と比べて、スッキリ感及び喉越し感に優れていることを確認している。
そうすると、これらの記載から、「1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有し、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が1.30〜75.00mg/Lである炭酸飲料」であって、「1―オクテン−3―オールの含有量が20〜300μg/Lである炭酸飲料」、「1―オクテン−3―オールの含有量が20〜300μg/L」となるように希釈する「飲料ベース」及びそれらの製造方法並びに「1―オクテン−3―オールの含有量が20〜300μg/L」となるように「1−オクテン−3−オール」を含有させ、かつ、「リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上」を「合計含有量が1.30〜75.00mg/L」となるように含有させる「香味向上方法」は、発明の課題を解決できると当業者は認識できる。
そして、本件特許発明1、2及び4は上記「炭酸飲料」をさらに限定するものであり、本件特許発明5は上記「飲料ベース」をさらに限定するものであり、本件特許発明6は上記「炭酸飲料」の「製造方法」をさらに限定するものであり、本件特許発明7は上記「飲料ベース」の「製造方法」をさらに限定するものであり、本件特許発明8は上記「香味向上方法」をさらに限定するものである。
したがって、本件特許発明1、2及び4ないし8は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件特許発明1、2及び4ないし8に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

なお、特許異議申立人は、令和4年8月24日に提出された意見書において、サポート要件について縷々主張するが、該主張によっては上記判断は左右されない。そもそも、特許異議申立人の上記主張は本件訂正によって生じたものではなく、実質的に新たな内容を含むものでもあり、採用できないものでもある。

(5)取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1、2及び4ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないから、取消理由2によっては取り消すことはできない。

第7 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由1(甲1ないし3のいずれかに基づく新規性進歩性)のうち、請求項1ないし8に対する甲1に基づく新規性進歩性、請求項1ないし8に対する甲2に基づく新規性進歩性及び請求項8に対する甲3に基づく新規性進歩性、申立理由2(甲1ないし8から把握される周知技術1に基づく新規性進歩性)、申立理由3(実施可能要件)、申立理由4(サポート要件)のうち、「ビール」という用語に起因する理由並びに申立理由5(明確性要件)である。
以下、順に検討する。

1 申立理由1のうち、請求項1ないし8に対する甲1に基づく新規性進歩性について
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「レモン風味飲料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0035】
試験例1:劣化臭評価試験
(1)レモン風味飲料の調製
以下の処方に従い、レモン風味飲料(調合品1〜5)を調製した。
処方:レモン果汁0.1〜5%、クエン酸0.5%、クエン酸ナトリウム0.1%、香料(レモンフレーバー)0.2〜0.4%、甘味料0.02%(pH3、アルコール濃度:6%)
シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンの含有量を下記表3に記載の含有量および含有量比となるように、処方中のレモン果汁および香料のレモン風味飲料中の含有割合を調製した(調合品1〜5)。
【0036】
調製したレモン風味飲料(調合品1〜5)を、350mL容アルミ缶に入れ、50℃で4日間保管した後に下記の官能評価を行った。保管後のシトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンの飲料(F品1〜5)中の含有量および含有量比は、下記表3に記載の通りであった。」

・「【0041】
(3)評価結果
【表3】



イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、調合品3ないし5に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されていると認める。

<甲1発明1>
「リモネン及びγ−テルピネンを含有し、前記リモネン及び前記γ−テルピネンの合計含有量が3.69〜8.87ppmのレモン風味飲料。」

(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明1を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有し、
前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が1.30〜75.00mg/Lである飲料。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1−1a>
本件特許発明1においては、「1−オクテン−3−オールを含有するとともに」、「前記1−オクテン−3−オールの含有量が20〜300μg/Lである」と特定されているのに対し、甲1発明1においては、そのようには特定されていない点。

<相違点1−1b>
「飲料」に関して、本件特許発明1においては、「炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)」と特定されているのに対し、甲1発明1においては、「レモン風味飲料」と特定されている点。

イ 判断
相違点1−1aについて検討する。
相違点1−1aは実質的な相違点であることは当業者に明らかである。
また、甲1発明1において、「1−オクテン−3−オールを含有するとともに」、「1−オクテン−3−オールの含有量が20〜300μg/Lである」という条件を満たすようにする動機付けとなる記載は、甲1にはないし、他の証拠にもない。
そして、本件特許発明1の奏する「喉越し感とスッキリ感が向上している」という効果は甲1発明1並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて当業者が予測することができる範囲を超えた顕著なものである。

なお、特許異議申立人は、令和4年8月24日に提出された意見書において、おおむね以下のとおり主張する。
・「甲第1号証の【0024】では、本発明のレモン風味飲料をアルコール飲料とすることができること、アルコール飲料の場合にアルコール含有量が1.0〜10%程度のものが好ましいこと、アルコールとして焼酎を用いることができることが開示されている。また、甲第9号証のTable2には、サンプルのアルコール濃度が2.5%であること、「The other shochu」の1−オクテン−3−オールの含有量が「61.3±155.9」であることが開示されている。なお、「The other shochu」は甘藷焼酎58点、泡盛16点、酒粕焼酎11点、そば焼酎2点、その他を原料とする焼酎13点の計100点のサンプルである。
甲第9号証の「The other shochu」を希釈して、甲第1号証の【0035】に記載されているように、レモン風味飲料であるアルコール飲料を、アルコール含有量を6%として作製した場合、1−オクテン−3−オールの含有量が「14.71±37.42」となり、リモネン、シネオール、γ−テルピネンの合計含有量も甲第1号証の表3の調合品3〜5では3,69〜8.87ppmであるため、本件訂正発明1の範囲内となる。
このように、本件訂正発明1は、紫蘇焼酎でない焼酎を含む甲第1号証に記載の発明と同一、または、これに基づいて当業者が容易に発明することができたものと言え、依然として、新規性または進歩性を有しないと言える。」
そこで、該主張について検討する。
甲1には、焼酎を用いることができることの記載がある(甲1の【0031】)ものの、数多くの焼酎の中から、甲9に記載された1−オクテン−3−オールの含有量が「61.3±155.9」である「The other shochu」を選択する動機付けとなる記載はないから、甲1発明において、甲9に記載された1−オクテン−3−オールの含有量が「61.3±155.9」である「The other shochu」を選択することは、当業者といえども容易であるとはいえないし、仮にその選択に至ったとしても、本件特許発明1の奏する「喉越し感とスッキリ感が向上している」という効果を当業者に予測させるような記載は、甲1にはないし、他の証拠にもない。
したがって、本件特許発明1は甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明1であるとはいえないし、甲1発明1並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明2及び4について
本件特許発明2及び4は請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明1であるとはいえないし、甲1発明1並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)本件特許発明5について
甲1に記載された事項から、甲1発明1に対応する飲料の飲料ベース(以下、「甲1発明2」という。)を認定すると、本件特許発明5と甲1発明2の間には、相違点1−1a及び1−1bと同様の相違点がある。
そして、これらの相違点についての判断は、本件特許発明1と同様である。
したがって、本件特許発明5は甲1発明2であるとはいえないし、甲1発明2並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)本件特許発明6について
甲1に記載された事項から、甲1発明1に対応する飲料の製造方法(以下、「甲1発明3」という。)を認定すると、本件特許発明6と甲1発明3の間には、相違点1−1a及び1−1bと同様の相違点がある。
そして、これらの相違点についての判断は、本件特許発明1と同様である。
したがって、本件特許発明6は甲1発明3であるとはいえないし、甲1発明3並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(6)本件特許発明7について
甲1に記載された事項から、甲1発明1に対応する飲料の飲料ベースの製造方法(以下、「甲1発明4」という。)を認定すると、本件特許発明7と甲1発明4の間には、相違点1−1a及び1−1bと同様の相違点がある。
そして、これらの相違点についての判断は、本件特許発明1と同様である。
したがって、本件特許発明7は甲1発明4であるとはいえないし、甲1発明4並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(7)本件特許発明8について
甲1に記載された事項からは、「炭酸飲料の香味向上方法」に係る発明は認定できない。
したがって、本件特許発明8は甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(8)申立理由1のうち、請求項1ないし8に対する甲1に基づく新規性進歩性についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとも、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえず、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないから、申立理由1のうち、請求項1ないし8に対する甲1に基づく新規性進歩性によっては取り消すことはできない。

2 申立理由1のうち、請求項1ないし8に対する甲2に基づく新規性進歩性について
(1)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2には、「柑橘系果実の香味を有する飲料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【請求項1】
シネオールまたはシス−3−ヘキセノール、あるいはそれらの両方を含み、シネオールとシス−3−ヘキセノールとを合計した濃度が0.1〜500mg/Lである、柑橘系果実の香味を有する飲料。
・・・(略)・・・
【請求項4】
柑橘系果実の果汁、または柑橘系果実から抽出したエキスを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項5】
シトラール、d−リモネン、α−テルピネン、γ−テルピネン、α−ピネン、β−ピネン、リナロール、酢酸リナロール、ネロール、ゲラニオール、ミルセン、シトロネロール、p−サイメン、酢酸ゲラニル、α−フェランドレン、β−フェランドレン、メチルヘプテノン、カンフェン、テルピノレン、及びジペンテンのうちの少なくとも1つを、0.5mg/L以上含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の飲料。」

・「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、柑橘系果実の香気成分からの劣化臭の生成を抑制する方法は種々報告されているが、生じた劣化臭(不快な匂い)をマスキングする方法については知られていない。本発明は、柑橘系果実の香気成分から生成した飲料中の劣化臭をマスキングする方法を提案する。」

・「【0010】
柑橘系果実の香味を有する飲料としては、例えば、柑橘系果実の果汁を含有する飲料や、酒類、柑橘系カクテル、柑橘系RTD(レディー・トゥ・ドリンク)、柑橘系RTS(レディー・トゥ・サーブ)のような柑橘原料を一部使用した飲料、たとえばサングリア、等が挙げられる。また、柑橘系果実の香味が感じられるものであれば、無果汁であってもよく、例えば、柑橘系果実から抽出した香気成分を含有するエキスを含む飲料や、柑橘系果実に特徴的な香気成分を人工的に再現した香料を含有する飲料などでもよい。例えば、柑橘系果実ジュース、柑橘系果実風味の清涼飲料、柑橘系果実をアルコールに浸漬して得た浸漬酒なども含まれる。
【0011】
飲料は、炭酸を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。また、アルコール(エタノール)を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。一般に、アルコールを含有する飲料は、アルコールを含有しない飲料に比べて、長期の保管が可能であることから、製造から消費されるまでの間に時間がかかる場合があり、このような長期保管中に、柑橘系果実の香気成分の経時劣化がより進行する可能性がある。したがって、飲料の中でも、香気成分が劣化する可能性の高い(長期に保管される可能性がある)アルコールを含有する飲料は、本発明を適用するのに好ましい態様であるといえる。」

イ 甲2に記載された発明
甲2に記載された事項を整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明1」という。)が記載されていると認める。

<甲2発明1>
「シネオールの濃度が0.1〜500mg/Lであり、d−リモネン、γ−テルピネンのうちの少なくとも1つを0.5mg/L以上含有する、柑橘系RTD(レディー・トゥ・ドリンク)。」

(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明1を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する飲料。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2−1a>
本件特許発明1においては、「1−オクテン−3−オールを含有するとともに」、「前記1−オクテン−3−オールの含有量が20〜300μg/Lである」と特定されているのに対し、甲2発明1においては、そのようには特定されていない点。

<相違点2−1b>
本件特許発明1においては、「前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が1.30〜75.00mg/Lであり」と特定されているのに対し、甲2発明1においては、「シネオールの濃度が0.1〜500mg/Lであり、d−リモネン、γ−テルピネンのうちの少なくとも1つを0.5mg/L以上含有する」と特定されている点。

<相違点2−1c>
「飲料」に関して、本件特許発明1においては、「炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)」と特定されているのに対し、甲2発明1においては、「柑橘系RTD(レディー・トゥ・ドリンク)」と特定されている点。

イ 判断
相違点2−1aについて検討する。
相違点2−1aは実質的な相違点であることは当業者に明らかである。
また、甲2発明1において、「1−オクテン−3−オールを含有するとともに」、「1−オクテン−3−オールの含有量が20〜300μg/Lである」という条件を満たすようにする動機付けとなる記載は、甲2にはないし、他の証拠にもない。
そして、本件特許発明1の奏する「喉越し感とスッキリ感が向上している」という効果は甲2発明1並びに甲2及び他の証拠に記載された事項からみて当業者が予測することができる範囲を超えた顕著なものである。

ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明1であるとはいえないし、甲2発明1並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明2及び4について
本件特許発明2及び4は請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2発明1であるとはいえないし、甲2発明1並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)本件特許発明5について
甲2に記載された事項から、甲2発明1に対応する飲料の飲料ベース(以下、「甲2発明2」という。)を認定すると、本件特許発明5と甲2発明2の間には、相違点2−1aないし2−1cと同様の相違点がある。
そして、これらの相違点についての判断は、本件特許発明1と同様である。
したがって、本件特許発明5は甲2発明2であるとはいえないし、甲2発明2並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)本件特許発明6について
甲2に記載された事項から、甲2発明1に対応する飲料の製造方法(以下、「甲2発明3」という。)を認定すると、本件特許発明6と甲2発明3の間には、相違点2−1aないし2−1cと同様の相違点がある。
そして、これらの相違点についての判断は、本件特許発明1と同様である。
したがって、本件特許発明6は甲2発明3であるとはいえないし、甲2発明3並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(6)本件特許発明7について
甲2に記載された事項から、甲2発明1に対応する飲料の飲料ベースの製造方法(以下、「甲2発明4」という。)を認定すると、本件特許発明7と甲2発明4の間には、相違点2−1aないし2−1cと同様の相違点がある。
そして、これらの相違点についての判断は、本件特許発明1と同様である。
したがって、本件特許発明7は甲2発明4であるとはいえないし、甲2発明4並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(7)本件特許発明8について
甲2に記載された事項からは、「炭酸飲料の香味向上方法」に係る発明は認定できない。
したがって、本件特許発明8は甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(8)申立理由1のうち、請求項1ないし8に対する甲2に基づく新規性進歩性についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとも、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえず、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないから、申立理由1のうち、請求項1ないし8に対する甲2に基づく新規性進歩性によっては取り消すことはできない。

3 申立理由1のうち、請求項8に対する甲3に基づく新規性進歩性について
甲3に記載された事項からは、「炭酸飲料の香味向上方法」に係る発明は認定できない。
したがって、本件特許発明8は甲3に記載された発明であるとはいえないし、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、本件特許発明8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとも、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえず、本件特許の請求項8に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないから、申立理由1のうち、請求項8に対する甲3に基づく新規性進歩性によっては取り消すことはできない。

4 申立理由2(甲1ないし8から把握される周知技術1に基づく新規性進歩性)について
(1)周知技術1
甲1ないし8に記載された事項から、特許異議申立人が把握されると主張する周知技術1は次のとおりである(特許異議申立書第28ページ第23行ないし第29ページ第9行)。

<周知技術1>
「焼酎に炭酸水を混ぜ、これに柑橘類を添加した飲料。」

以下、このような周知技術1の認定が可能であるとして検討する。

(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と周知技術1を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「炭酸飲料。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点a>
本件特許発明1においては、「1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有し、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が1.30〜75.00mg/Lであり、前記1−オクテン−3−オールの含有量が20〜300μg/Lである」と特定されているのに対し、周知技術1においては、そのようには特定されていない点。

<相違点b>
「炭酸飲料」に関して、本件特許発明1においては、「ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない」と特定されているのに対し、周知技術1においては、そのようには特定されていない点。

イ 判断
相違点aについて検討する。
相違点aは実質的な相違点であることは当業者に明らかである。
また、周知技術1において、「リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有し、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が1.30〜75.00mg/Lであり」という条件を満たすように「柑橘類」を添加する動機付けはないし、「1−オクテン−3−オールの含有量が20〜300μg/L」という条件を満たすような「焼酎」を選択する動機付けもない。
そして、本件特許発明1の奏する「喉越し感とスッキリ感が向上している」という効果は周知技術1からみて当業者が予測することができる範囲を超えた顕著なものである。

ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は周知技術1であるとはいえないし、周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明2及び4について
本件特許発明2及び4は請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、周知技術1であるとはいえないし、周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)本件特許発明5について
甲1ないし8に記載された事項から、周知技術1に対応する炭酸飲料の飲料ベース(以下、「周知技術1’」という。)の認定が可能だとしても、本件特許発明5と周知技術1’の間には、相違点a及びbと同様の相違点がある。
そして、これらの相違点についての判断は、本件特許発明1と同様である。
したがって、本件特許発明5は周知技術1’であるとはいえないし、周知技術1’に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)本件特許発明6について
甲1ないし8に記載された事項から、周知技術1に対応する炭酸飲料の製造方法(以下、「周知技術1’’」という。)の認定が可能だとしても、本件特許発明6と周知技術1’’の間には、相違点a及びbと同様の相違点がある。
そして、これらの相違点についての判断は、本件特許発明1と同様である。
したがって、本件特許発明6は周知技術1’’であるとはいえないし、周知技術1’’に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(6)本件特許発明7について
甲1ないし8に記載された事項から、周知技術1に対応する炭酸飲料の飲料ベースの製造方法(以下、「周知技術1’’’」という。)の認定が可能だとしても、本件特許発明7と周知技術1’’’の間には、相違点a及びbと同様の相違点がある。
そして、これらの相違点についての判断は、本件特許発明1と同様である。
したがって、本件特許発明7は周知技術1’’’であるとはいえないし、周知技術1’’’に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(7)本件特許発明8について
甲1ないし8に記載された事項からは、「炭酸飲料の香味向上方法」に係る発明は認定できない。
したがって、本件特許発明8は甲1ないし8に記載された事項から把握される周知技術であるとはいえないし、該周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(8)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとも、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえず、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないから、申立理由2によっては取り消すことはできない。

5 申立理由3(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1、2、4及び5は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明6及び7は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法を使用し、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明8は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。

(2)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、上記第6 2(3)のとおりであり、発明の詳細な説明には、本件特許発明1、2及び4ないし8の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1、2、4及び5を生産し、使用することができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明6及び7を使用し、本件特許発明6及び7により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明8を使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1、2及び4ないし8に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。

なお、特許異議申立人の上記第4 3の主張について検討する。
実施可能要件を充足するかどうかの判断は、上記(1)の判断基準により行うものであり、本件特許発明が発明の課題を解決しているかどうか、また、発明の詳細な説明に「技術上の意義」が実質的に記載されているかどうかは、実施可能要件を充足するかどうかの判断と関係がない。
したがって、特許異議申立人の上記第4 3の主張は採用できない。

(3)申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1、2及び4ないし8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由3によっては取り消すことはできない。

6 申立理由4(サポート要件)のうち、「ビール」という用語に起因する理由について
(1)サポート要件の判断
本件特許発明1、2及び4ないし8に関して、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するといえるのは、上記第6 2(4)のとおりである。

なお、特許異議申立人の上記第4 4の主張について検討したが、上記判断は左右されない。

(2)申立理由4のうち、「ビール」という用語に起因する理由についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1、2及び4ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由4のうち、「ビール」という用語に起因する理由によっては取り消すことはできない。

7 申立理由5(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。

(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項1、2及び4ないし8の記載は、上記第3のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、願書に添付した明細書の記載及び図面とも整合する。
したがって、本件特許発明1、2及び4ないし8に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。

なお、特許異議申立人の上記第4 5の主張について検討する。
請求項1及び5ないし7に記載された「ビールを含むものではなく」並びに請求項8に記載された「ビールを含むものではない」という記載における「ビール」が、本件特許の出願時に「ビール」とされていたものであることは当業者に明らかであり、本件特許発明1、2及び4ないし8の技術的範囲が不明確となっているとはいえない。
したがって特許異議申立人の上記第4 5の主張は採用できない。

(3)申立理由5についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1、2及び4ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由5によっては、取り消すことはできない。

第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1、2及び4ないし8に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、2及び4ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項3に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】炭酸飲料、炭酸飲料の製造方法、及び、炭酸飲料の香味向上方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸飲料、飲料ベース、炭酸飲料の製造方法、飲料ベースの製造方法、及び、炭酸飲料の香味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料は発泡性を有することから、消費者に爽快感や刺激感を与えるといった強みがあり、飲料の市場において一定のシェアを獲得している。
そして、炭酸飲料に関し、より市場のニーズに合致した商品を創出すべく、様々な研究開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルコール度数が1.0%以上3.0%未満である飲料であって、Na+及びK+を含有し、Na+/K+のモル比が0.5〜60であり、Na+濃度が0.03〜1.1g/Lであり、炭酸を含有する飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−27831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、アルコール度数、Na+/K+のモル比、Na+濃度等を制御することにより、酒らしい味わいを増強することができると記載されている。
【0006】
特許文献1に係る技術をはじめとして、炭酸飲料に関して様々な香味の検討がなされているが、消費者が炭酸飲料に強く要求する特徴の1つとして、炭酸飲料に特有の「喉越し感(爽快感)」が挙げられる。
そして、この喉越し感(爽快感)は、炭酸飲料らしい喉越しの爽快な感覚を消費者に与えるものであるため、喉越し感(爽快感)が小さいと、炭酸飲料としての評価の低下につながる可能性がある。
【0007】
また、炭酸飲料の香味については、スッキリとした印象を有する消費者が多いため、スッキリ感も重要である。
【0008】
そこで、本発明者らは、喉越し感とスッキリ感とが向上した炭酸飲料、飲料ベース、炭酸飲料の製造方法、飲料ベースの製造方法、及び、炭酸飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有し、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が1.30〜75.00mg/Lであり、前記1−オクテン−3−オールの含査量20〜300μg/Lである炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)。
(2)前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が6.00〜50.00mg/Lである前記1に記載の炭酸飲料。
(3)(削除)
(4)3−メチル−1−ブタノールの含有量が0.01〜0.10g/Lである前記1又は前記2に記載の炭酸飲料。
(5)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)であって、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、Y/Dが1.30〜75.00であり、前記1−オクテン−3−オールの含有量をX■g/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、X/Dが20〜300である飲料ベース。
(6)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)の製造方法であって、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量を1.30〜75.00mg/Lとし、前記1−オクテン−3−オールの含有量を20〜300μg/Lとする工程を含む炭酸飲料の製造方法。
(7)1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)の製造方法であって、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、Y/Dを1.30〜75.00とし、前記1−オクテン−3−オールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、X/Dを20〜300とする工程を含む飲料ベースの製造方法。
(8)炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではない)の喉越し感とスッキリ感を向上させる香味向上方法であって、前記炭酸飲料に1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有させ、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量を1.30〜75.00mg/Lとし、前記1−オクテン−3−オールの含有量を20〜300μg/Lとする工程を含む炭酸飲料の香味向上方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る炭酸飲料は、1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンの合計含有量が所定範囲内となっていることから、喉越し感とスッキリ感とが向上している。
【0011】
本発明に係る飲料ベースは、1−オクテン−3−オールを含有するとともに、Y/Dが所定範囲内となっていることから、希釈後の炭酸飲料は喉越し感とスッキリ感とが向上している。
【0012】
本発明に係る炭酸飲料の製造方法は、1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンの合計含有量を所定範囲内とする工程を含むことから、喉越し感とスッキリ感とが向上した炭酸飲料を製造することができる。
本発明に係る飲料ベースの製造方法は、1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、Y/Dを所定範囲内とする工程を含むことから、希釈後の炭酸飲料について喉越し感とスッキリ感とが向上する飲料ベースを製造することができる。
【0013】
本発明に係る炭酸飲料の香味向上方法は、1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンの合計含有量を所定範囲内とする工程を含むことから、炭酸飲料の喉越し感とスッキリ感とを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る炭酸飲料の製造方法の内容を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る炭酸飲料、飲料ベース、炭酸飲料の製造方法、飲料ベースの製造方法、及び、炭酸飲料の香味向上方法を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0016】
[炭酸飲料]
本実施形態に係る炭酸飲料は、1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオヤル、γ−テルピネン(以下、適宜、まとめて「柑橘香気成分」という)のうちの1種以上を含有している。また、本実施形態に係る炭酸飲料は、3−メチル−1−ブタノール、果汁等を含有していてもよい。
以下、炭酸飲料を構成する各成分について説明する。
【0017】
(1−オクテン−3−オール)
1−オクテン−3−オール(1−octen−3−ol)とは、分子式がC8H16Oで示される不飽和アルコールの一種であり、キノコ類に含まれる香気成分である。この1−オクテン−3−オールは、マツタケの香気に大きな影響を及ぼす物質として知られているが、本発明者らは驚くべきことにこの物質が柑橘香気成分と組み合わさることにより炭酸飲料の喉越し感(爽快感)を向上させることを見出した。
【0018】
1−オクテン−3−オールの含有量は、20μg/L以上が好ましく、40μg/L以上がより好ましく、50μg/L以上がさらに好ましい。1−オクテン−3−オールの含有量が所定値以上であることにより、後記する柑橘香気成分と相乗的に作用し、喉越し感とスッキリ感とをより向上させることができる。
1−オクテン−3−オールの含有量は、300μg/L以下が好ましい。1−オクテン−3−オールの含有量が所定値以下であることにより、炭酸飲料として違和感のある香気が強くなってしまうといった事態を回避し、スッキリ感、飲み易さ、総合評価(炭酸飲料として好ましい香味か否か)の低下を抑制させることができる。
【0019】
1−オクテン−3−オールの含有量は、SPME−GC−MS法によって測定することができる。
【0020】
(3−メチル−1−ブタノール)
3−メチル−1−ブタノール(3−methyl−1−butanol)とは、分子式がC5H12Oで示されるアルコールの一種であり、イソアミルアルコールとも呼ばれる。この3−メチル−1−ブタノールは、香料の原料(誘導体)として知られているが、この物質が1−オクテン−3−オールと組み合わさることにより、炭酸飲料の喉越し感(爽快感)をさらに向上させる、ということを本発明者らは見出した。
【0021】
3−メチル−1−ブタノールを含有させる場合、3−メチル−1−ブタノールの含有量は、0.01g/L以上が好ましく、0.02g/L以上がより好ましく、0.04g/L以上がさらに好ましい。3−メチル−1−ブタノールの含有量が所定値以上であることにより、1−オクテン−3−オールと相乗的に作用し、炭酸飲料の喉越し感を向上させることができる。
3−メチル−1−ブタノールの含有量は、0.15g/L以下が好ましく、0.10g/L以下がより好ましく、0.08g/L以下がさらに好ましい。3−メチル−1−ブタノールの含有量が所定値以下であることにより、スッキリ感、飲み易さ、総合評価(炭酸飲料として好ましい香味か否か)の低下を抑制することができる。
【0022】
3−メチル−1−ブタノールの含有量は、SPME−GC−MS法によって測定することができる。
【0023】
(柑橘香気成分)
本実施形態に係る炭酸飲料は、柑橘系の香気を奏する柑橘香気成分として、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する。そして、これらの柑橘香気成分は、1−オクテン−3−オール(及び、3−メチル−1−ブタノール)と相乗的に作用することで炭酸飲料の喉越し感(爽快感)を向上させるだけでなく、1−オクテン−3−オールに特有のまったりとした重い感じの香味を改善し、スッキリ感をも向上させる、ということを本発明者らは見出した。
【0024】
柑橘香気成分はいずれか1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。2種以上を組み合わせる場合においてその混合比率は特に限定されず、消費者のニーズに合わせて適宜変更できる。
【0025】
柑橘香気成分の合計含有量は、1.30mg/L以上であり、6.00mg/L以上が好ましく、15.00mg/L以上がより好ましい。柑橘香気成分の合計含有量が所定値以上であることにより、1−オクテン−3−オール(及び、3−メチル−1−ブタノール)と相乗的に作用することで喉越し感を向上させるだけでなく、スッキリ感をも向上させることができる。また、柑橘香気成分の合計含有量が所定値以上であることにより、飲み易さ、総合評価(炭酸飲料として好ましい香味か否か)を向上させることもできる。
柑橘香気成分の合計含有量は、75.00mg/L以下であり、50.00mg/L以下が好ましく、30.00mg/L以下がより好ましい。柑橘香気成分の合計含有量が所定値以下であることにより、スッキリ感、飲み易さ、総合評価(炭酸飲料として好ましい香味か否か)の低下を抑制することができる。
【0026】
(果汁)
果汁とは、果実を搾った汁である。果汁の由来となる果実は、特に限定されないものの、特に限定されず、食用のものであれば、いずれの果実も使用できる。
例えば、果実としては、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、ライム、イヨカン、ウンシュウミカン、カボス、キシュウミカン、キノット、コウジ、サンボウカン、シトロン、ジャバラ、スダチ、ダイダイ、タチバナ、タンゴール、ナツミカン、ハッサク、ハナユズ、ヒュウガナツ、ヒラミレモン(シークワーサー)、ブンタン、ポンカン(マンダリンオレンジ)、ユズ、セイヨウリンゴ(いわゆるリンゴ)、エゾノコリンゴ、カイドウズミ、ハナカイドウ、イヌリンゴ(ヒメリンゴ)、マルバカイドウ、ノカイドウ、ズミ(コリンゴ、コナシ)、オオウラジロノキ、ブドウ、イチゴ、モモ、メロン、パイナップル、グァバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、スモモ、キウイフルーツ、カシス、ブルーベリー、ラズベリーなどが挙げられる。
【0027】
果汁は、例えば、濃縮果汁、還元果汁、ストレート果汁といった各種果汁、果実ピューレ(火を通した果実あるいは生の果実をすりつぶしたり裏ごししたりした半液体状のもの)、これらの希釈液、濃縮液、混合液などを用いることができる。さらに、果汁は、1種類の果実を原料としてもよいし、2種類以上の果実を原料としてもよい。
なお、本実施形態に係る炭酸飲料は果汁を含有することにより、様々な果実の香味を付与することができる。
【0028】
果汁を含有させる場合、果汁の含有量は、果汁率換算で0.5%以上が好ましく、1.0%以上がより好ましく、3.0%以上がさらに好ましい。果汁の含有量が所定値以上であることにより、フルーティーな酸味を付与し、総合評価(炭酸飲料として好ましい香味か否か)を向上させることができる。
果汁の含有量は、果汁率換算で20.0%以下が好ましく、10.0%以下がより好ましい。果汁の含有量が所定値以下であることにより、喉越し感の低下を抑制することができる。
【0029】
本実施形態に係る炭酸飲料の果汁の含有量(果汁率換算)は、「含有量(果汁率換算)%(詳細には、w/v%)」=「果汁配合量(g)」×「濃縮倍率」/100mL×100により算出することとする。
ここで、「濃縮倍率」(ストレート果汁を100%としたときの果汁の相対的濃縮倍率)を算出するにあたり、JAS規格に準ずるものとし、果汁に加えられた糖類、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。
詳細には、ストレート果汁の糖用屈折計示度あるいは酸度の値は、JAS規格である果実飲料の日本農林規格(平成28年2月24日農林水産省告示第489号)において、各果実に固有の基準値が定められている(別表3において「糖用屈折計示度の基準(Bx)」、別表4において「酸度の基準(%)」)。したがって、使用する果汁の糖用屈折計示度あるいは酸度を測定し、その果実に固有の糖用屈折計示度あるいは酸度の基準値で割れば、果汁の濃縮倍率を求めることができる。
【0030】
例えば、果実飲料の日本農林規格(平成28年2月24日農林水産省告示第489号)の別表4によるとレモンの基準酸度は4.5%であるから、酸度が9.0%のレモン果汁は、2倍濃縮のレモン果汁となる。この2倍濃縮のレモン果汁を、飲料100mL中にZg配合した場合、この飲料におけるレモン果汁の含有量(果汁率換算)は、「Zg×2(濃縮倍率)/100mL×100」によって算出することができる。
【0031】
(発泡性)
本実施形態に係る炭酸飲料は、発泡性の飲料であり、20℃におけるガス圧が1.0kg/cm2以上であるのが好ましく、1.5kg/cm2以上であるのがより好ましく、2.0kg/cm2以上であるのがさらに好ましい。炭酸飲料の発泡性が所定値以上であることにより、炭酸飲料として好ましい喉越し感を消費者に感じさせることができる。
なお、炭酸飲料のガス圧は、ガス内圧計を用いて測定することができる。
【0032】
(アルコール)
本実施形態に係る炭酸飲料は、アルコールを含有してもよい。
アルコールは飲用することができるアルコールであればよく、種類、製法、原料などに限定されることはないが、蒸留酒又は醸造酒であることが好ましい。蒸留酒としては、例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー、ラム等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。醸造酒としては、例えば、ビール、発泡酒、果実酒、甘味果実酒、清酒などを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記した様々な酒類に果実等を漬け込んだ浸漬酒を使用してもよい。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
【0033】
(アルコール度数)
アルコール度数は、特に限定されないが、炭酸飲料をアルコール飲料とする場合は、1v/v%以上であることが好ましく、3v/v%以上であることがさらに好ましい。また、アルコール度数は、12v/v%以下であることが好ましく、9v/v%以下であることがより好ましい。
なお、炭酸飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3−4アルコール分(振動式密度計法)に基づいて測定することができる。
【0034】
(その他)
本実施形態に係る炭酸飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維、着色料など(以下、適宜「添加剤」という)を添加することもできる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。着色料としては、例えば、カラメル色素、アントシアニン、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素などを用いることができる。
【0035】
そして、前記した1−オクテン−3−オール、3−メチル−1−ブタノール、柑橘香気成分については、化合物、香料等として一般に市販されているものを使用することができ、また、果汁、添加物も、一般に市販されているものを使用することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る炭酸飲料は、1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンの合計含有量が所定範囲内となっていることから、喉越し感とスッキリ感とが向上している。また、本実施形態に係る炭酸飲料は、飲み易さ、総合評価も優れたものとなる。
【0037】
[飲料ベース]
本実施形態に係る飲料ベースは、後記する割り材で希釈されることにより前記の炭酸飲料とすることができる飲料ベースであって、炭酸飲料用の(炭酸飲料を作るための)飲料ベースである。
なお、本実施形態に係る飲料ベースは、消費者や飲食店などに提供されるに際して、飲料ベースの状態(RTS:Ready To Serve)で提供された後に割り材で希釈されてもよいし、飲料ベースを割り材で希釈した後に飲料の状態(RTD:ReadyTo Drink)で提供されてもよい。
【0038】
以下、本実施形態に係る飲料ベースを説明するに際して、前記の炭酸飲料と共通する構成については説明を省略し、相違する構成(特に含有量等)を中心に説明する。
【0039】
(1−オクテン−3−オール)
飲料ベースの1−オクテン−3−オールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合、X/Dは、20以上が好ましく、40以上がより好ましく、50以上がさらに好ましい。また、X/Dは、300以下が好ましい。
【0040】
(3−メチル−1−ブタノール)
飲料ベースの3−メチル−1−ブタノールの含有量をAg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合、A/Dは、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.04以上がさらに好ましい。また、A/Dは、0.15以下が好ましく、0.10以下がより好ましく、0.08以下がさらに好ましい。
【0041】
(柑橘香気成分)
飲料ベースの柑橘香気成分(リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上)の合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合、Y/Dは、1.30以上であり、6.00以上が好ましく、15.00以上がより好ましい。また、Y/Dは、75.00以下であり、50.00以下が好ましく、30.00以下がより好ましい。
【0042】
(果汁)
飲料ベースの果汁の含有量の果汁率換算をB%とし、希釈倍率をD倍とした場合、B/Dは、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、3.0以上がさらに好ましい。また、B/Dは、20.0以下が好ましく、10.0以下がより好ましい。
【0043】
(アルコール度数)
飲料ベースのアルコール度数をCv/v%とし、希釈倍率をD倍とした場合、C/Dは、1以上であることが好ましく、3以上であることがさらに好ましい。また、C/Dは、12以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましい。
【0044】
(発泡性)
飲料ベースは、後記する割り材によって発泡性を付与するのが一般的であるため、発泡性はなくてもよい。
【0045】
(割り材)
割り材とは、本実施形態に係る飲料ベースの希釈に用いるものである。
割り材としては、例えば、水、炭酸水、お湯、氷、果汁、果汁入り飲料、牛乳、茶、アルコール等を挙げることができ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ただし、基本的に飲料ベースは発泡性ではないため、割り材としては、発泡性の有する炭酸水等、又は、炭酸水等と他の割り材との組み合わせであり、希釈後の飲料が前記した発泡性となるのが好ましい。
なお、割り材を用いた希釈は、本実施形態に係る飲料ベースが1.2〜20倍、好ましくは1.5〜10倍、さらに好ましくは2〜5倍となるように実施すればよい。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る飲料ベース(希釈倍率=D倍用)は、Y/Dが所定範囲内となっている、言い換えると、希釈後(飲用時)の炭酸飲料の柑橘香気成分の含有量が所定範囲内となっている。その結果、希釈後(飲用時)の炭酸飲料は、喉越し感とスッキリ感とが向上している。また、希釈後(飲用時)の炭酸飲料は、飲み易さ、総合評価も優れたものとなる。
【0047】
[容器詰め炭酸飲料、及び、容器詰め飲料ベース]
本実施形態に係る炭酸飲料、及び、飲料ベースは、各種容器に入れて提供することができる。各種容器に炭酸飲料又は飲料ベースを詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
また、各種容器に飲料ベースを詰める場合は、その容器に、前記した割り材等によって希釈して飲んでもよい旨の表示(例えば、希釈倍率等)を付してもよい。
【0048】
[炭酸飲料、及び、飲料ベースの製造方法]
次に、本実施形態に係る炭酸飲料、及び、飲料ベースの製造方法を説明する。
本実施形態に係る炭酸飲料、及び、飲料ベースの製造方法は、混合工程S1と、後処理工程S2と、を含む。
【0049】
混合工程S1では、混合タンクに、水、1−オクテン−3−オール、3−メチル−1−ブタノール、果汁、柑橘香気成分、飲用アルコール、添加剤などを適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程S1において、1−オクテン−3−オール、3−メチル−1−ブタノール、果汁の含有量、柑橘香気成分の合計含有量、Y/D等が前記した所定範囲の量となるように各原料を混合し、調整すればよい。
【0050】
そして、後処理工程S2では、例えば、ろ過、殺菌、カーボネーション、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程S2のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程S2の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程S2のカーボネーション処理は、発泡性が前記した所定範囲内となるように炭酸ガスを圧入する。また、後処理工程S2の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填するのが好ましい。そして、後処理工程S2での各処理の順序は特に限定されない。
【0051】
なお、混合工程S1及び後処理工程S2にて行われる各処理は、RTD・RTS飲料などを製造するために一般的に用いられている設備にて行うことができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る炭酸飲料の製造方法は、1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンの合計含有量を所定範囲内とする工程を含むことから、喉越し感とスッキリ感とが向上した炭酸飲料を製造することができる。
また、本実施形態に係る飲料ベースの製造方法は、1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、Y/Dを所定範囲内とする工程を含むことから、希釈後の炭酸飲料について喉越し感とスッキリ感とが向上する飲料ベースを製造することができる。
【0053】
[炭酸飲料の香味向上方法]
次に、本実施形態に係る炭酸飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係る炭酸飲料の香味向上方法は、1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンの合計含有量を所定の範囲内に調整する工程を含む方法である。
また、本実施形態に係る炭酸飲料の香味向上方法は、1−オクテン−3−オール、3−メチル−1−ブタノール、果汁(果汁率換算)、アルコール度数、発泡性を所定の範囲内に調整する工程を含むのが好ましい。
なお、これらの含有量等の値については、前記した「炭酸飲料」において説明した値と同じである。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る炭酸飲料の香味向上方法は、1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンの合計含有量を所定範囲内とする工程を含むことから、炭酸飲料の喉越し感とスッキリ感とを向上させることができる。
【実施例】
【0055】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0056】
[実施例1]
まず、実施例1では、柑橘香気成分の合計含有量が、各評価に与える影響について確認する。
【0057】
(サンプルの準備:A−1〜A−8)
1−オクテン−3−オールを含有する香料、レモン系の香料、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、原料アルコール、炭酸水、水を混合して、表1の含有量となるようにサンプル液を準備した。
なお、各サンプルについて、レモン系の香料の添加量を変化させ、その他の原料の含有割合は固定した。
また、各サンプルのアルコール度数は、6.0v/v%であり、ガス圧は2.0kg/cm2(20℃)であった。
【0058】
(サンプルの準備:A−9)
1−オクテン−3−オールを含有する香料、3−メチル−1−ブタノールを含有する香料、グレープフルーツ系の香料、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、原料アルコール、炭酸水、水を混合して、表1の含有量となるようにサンプル液を準備した。
なお、1−オクテン−3−オールを含有する香料、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、原料アルコールの含有割合については、サンプルA−1〜A−8と同じとした。
また、サンプルのアルコール度数は、6.0v/v%であり、ガス圧は2.0kg/cm2(20℃)であった。
【0059】
(試験内容)
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された専門のパネル6名が下記評価基準に則って「スッキリ感」、「飲み易さ」、「喉越し感(爽快感)」、「総合評価」について、1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価した。
【0060】
(スッキリ感:評価基準)
5点:スッキリ感が非常に強く感じられた。
4点:スッキリ感が強く感じられた。
3点:スッキリ感が感じられた。
2点:スッキリ感が弱く感じられた。
1点:スッキリ感が感じらなかった。
なお、詳細には、「スッキリ感」の評価は、香味が長く残らず、清涼な感じが強く、スッキリと感じられる場合に高い点数とし、香味の後残りがあり、清涼な感じが弱く、スッキリと感じられない場合に、低い点数とした。
【0061】
(飲み易さ:評価基準)
5点:非常に飲み易かった。
4点:かなり飲み易かった。
3点:飲み易かった。
2点:少し飲み難かった。
1点:飲み難かった。
なお、詳細には、「飲み易さ」の評価は、喉に引っ掛かる様な感じがなく(喉に引っ掛かる様な香味がせず)、違和感のある香気がせず、飲み易い場合に高い点数とし、喉に引っ掛かる様な感じが強く(喉に引っ掛かる様な香味が強く)、違和感のある香気が強く、飲み難い場合に、低い点数とした。
【0062】
(喉越し感(爽快感):評価基準)
5点:炭酸飲料らしい爽快感が非常に強く、喉越しが非常に爽快に感じられた。
4点:炭酸飲料らしい爽快感が強く、喉越しがかなり爽快に感じられた。
3点:炭酸飲料らしい爽快感が感じられ、喉越しが爽快に感じられた。
2点:炭酸飲料らしい爽快感が弱く、喉越しの爽快さが弱く感じられた。
1点:炭酸飲料らしい爽快感が非常に弱く、喉越しの爽快さが非常に弱く感じられた。
【0063】
(総合評価:評価基準)
5点:炭酸飲料として非常に好適な香味である。
4点:炭酸飲料としてかなり好適な香味である。
3点:炭酸飲料として好適な香味である。
2点:炭酸飲料として不適な香味である。
1点:炭酸飲料としてかなり不適な香味である。
【0064】
表1に、各サンプルの規格を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0065】
【表1】

【0066】
(結果の検討)
サンプルA−1〜A−8は、柑橘香気成分の合計含有量を変化させたものである。
サンプルA−1〜A−8の結果を確認すると明らかなように、柑橘香気成分の合計含有量が所定範囲内である場合には、喉越し感、スッキリ感の点数が良いとともに、飲み易さ、総合評価の点数も良いことが確認できた。
なお、柑橘香気成分の合計含有量が多過ぎると、スッキリ感、飲み易さ、総合評価の点数が下がることも確認できた。
【0067】
サンプルA−9は、グレープフルーツ系の香料を使用したものである。
サンプルA−9の結果を確認すると明らかなように、レモン系の香料を使用したサンプルA−1〜A−8と同様、グレープフルーツ系の香料を使用したとしても、柑橘香気成分の合計含有量が所定範囲内であれば、喉越し感、スッキリ感、飲み易さ、総合評価のいずれの点数も良くなることが確認できた。
【0068】
以上の結果より、柑橘香気成分の合計含有量が本発明で規定する所定範囲内となっていると、喉越し感、スッキリ感を向上させるだけでなく、飲み易さ、総合評価も良いことがわかった。
また、どのような香料を使用したとしても、柑橘香気成分の合計含有量が所定範囲内であれば、所望の効果を得られることもわかった。
【0069】
[実施例2]
次に、実施例2では、1−オクテン−3−オールの含有量が、各評価に与える影響について確認する。
【0070】
(サンプルの準備)
1−オクテン−3−オールを含有する香料、レモン系の香料、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、原料アルコール、炭酸水、水を混合して、表2の含有量となるようにサンプル液を準備した。
なお、各サンプルについて、1−オクテン−3−オールを含有する香料の添加量を変化させ、その他の原料の含有割合は固定した。
また、各サンプルのアルコール度数は、6.0v/v%であり、ガス圧は2.0kg/cm2(20℃)であった。
【0071】
(試験内容、評価基準)
試験内容、及び、各試験の評価基準については、実施例1と同様であった。
【0072】
表2に、サンプルの規格を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0073】
【表2】

【0074】
(結果の検討)
サンプルB−1〜B−4は、1−オクテン−3−オールの含有量を変化させたものである。
サンプルB−1〜B−4の結果を確認すると明らかなように、1−オクテン−3−オールの含有量が所定範囲内であれば、喉越し感、スッキリ感、飲み易さ、総合評価のいずれの点数もかなり良くなることが確認できた。
【0075】
以上の結果より、各評価項目について、より良い評価とするためには、1−オクテン−3−オールの含有量を所定範囲内とすればよいことがわかった。
【0076】
[実施例3]
次に、実施例3では、3−メチル−1−ブタノールの含有量が、各評価に与える影響について確認する。
【0077】
(サンプルの準備)
1−オクテン−3−オールを含有する香料、3−メチル−1−ブタノールを含有する香料、レモン系の香料、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、原料アルコール、炭酸水、水を混合して、表3の含有量となるようにサンプル液を準備した。
なお、各サンプルについて、3−メチル−1−ブタノールを含有する香料の添加量を変化させ、その他の原料の含有割合は固定した。
また、各サンプルのアルコール度数は、6.0v/v%であり、ガス圧は2.0kg/cm2(20℃)であった。
【0078】
(試験内容、評価基準)
試験内容、及び、各試験の評価基準については、実施例1と同様であった。
【0079】
表3に、サンプルの規格を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0080】
【表3】

【0081】
(結果の検討)
サンプルC−1〜C−5は、3−メチル−1−ブタノールの含有量を変化させたものである。
サンプルC−1〜C−5の結果を確認すると明らかなように、3−メチル−1−ブタノールの含有量が所定範囲内であれば、喉越し感、スッキリ感、飲み易さ、総合評価のいずれの点数もかなり良くなることが確認できた。
【0082】
以上の結果より、各評価項目について、より良い評価とするためには、3−メチル−1−ブタノールの含有量を所定範囲内とすればよいことがわかった。
【0083】
[参考例]
なお、参考例として、1−オクテン−3−オールの含有量が所定の評価に与える影響を示しておく。
【0084】
(サンプルの準備)
1−オクテン−3−オールを含有する香料、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、原料アルコール、炭酸水、水を混合して、表4の含有量となるようにサンプル液を準備した。
なお、各サンプルについて、1−オクテン−3−オールを含有する香料の添加量を変化させ、その他の原料の含有割合は固定した。
また、各サンプルのアルコール度数は、6.0v/v%であり、ガス圧は2.0kg/cm2(20℃)であった。
【0085】
(試験内容)
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された専門のパネル6名が下記評価基準に則って、「喉越し感(刺激感)」について、1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価した。
【0086】
(喉越し感(刺激感):評価基準)
5点:刺激感が非常に強く、喉越し感が非常に強く感じられた。
4点:刺激感が強く、喉越し感が強く感じられた。
3点:刺激感が感じられ、喉越し感が感じられた。
2点:刺激感が弱く、喉越し感が弱く感じられた。
1点:刺激感が非常に弱く、喉越し感が非常に弱く感じられた。
【0087】
表4に、各サンプルの規格を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0088】
【表4】

【0089】
(結果の検討)
サンプルD−1〜D−5は、1−オクテン−3−オールの含有量を変化させたものである。
サンプルD−1〜D−5の結果を確認すると明らかなように、1−オクテン−3−オールの含有量が所定範囲内である場合には、喉越し感(刺激感)の点数が良いことが確認できた。
【符号の説明】
【0090】
S1 混合工程
S2 後処理工

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有し、
前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が1.30〜75.00mg/Lであり、
前記1−オクテン−3−オールの含有量が20〜300μg/Lである炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)。
【請求項2】
前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量が6.00〜50.00mg/Lである請求項1に記載の炭酸飲料。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
3−メチル−1−ブタノールの含有量が0.01〜0.10g/Lである請求項1又は請求項2に記載の炭酸飲料。
【請求項5】
1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)であって、
前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、Y/Dが1.30〜75.00であり、
前記1−オクテン−3−オールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、X/Dが20〜300である飲料ベース。
【請求項6】
1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)の製造方法であって、
前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量を1.30〜75.00mg/Lとし、前記1−オクテン−3−オールの含有量を20〜300μg/Lとする工程を含む炭酸飲料の製造方法。
【請求項7】
1−オクテン−3−オールを含有するとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有する炭酸飲料用の飲料ベース(ただし、ビールを含むものではなく、紫蘇焼酎を含むものでもない)の製造方法であって、
前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量をYmg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、Y/Dを1.30〜75.00とし、前記1−オクテン−3−オールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をD倍とした場合において、X/Dを20〜300とする工程を含む飲料ベースの製造方法。
【請求項8】
炭酸飲料(ただし、ビールを含むものではない)の喉越し感とスッキリ感を向上させる香味向上方法であって、
前記炭酸飲料に1−オクテン−3−オールを含有させるとともに、リモネン、シネオール、γ−テルピネンのうちの1種以上を含有させ、前記リモネン、前記シネオール、前記γ−テルピネンの合計含有量を1.30〜75.00mg/Lとし、前記1−オクテン−3−オールの含有量を20〜300μg/Lとする工程を含む炭酸飲料の香味向上方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-10-03 
出願番号 P2016-240588
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C12G)
P 1 651・ 121- YAA (C12G)
P 1 651・ 536- YAA (C12G)
P 1 651・ 113- YAA (C12G)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 植前 充司
加藤 友也
登録日 2021-07-14 
登録番号 6913455
権利者 サッポロビール株式会社
発明の名称 炭酸飲料、炭酸飲料の製造方法、及び、炭酸飲料の香味向上方法  
代理人 弁理士法人磯野国際特許商標事務所  
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