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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H05K
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H05K
管理番号 1393131
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-09-08 
確定日 2022-12-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第7033987号発明「ケース体及び制御システム用端末器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7033987号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7033987号の請求項1〜11に係る特許についての出願は、平成30年3月30日に出願され、令和4年3月3日にその特許権の設定登録がされ、令和4年3月11日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1、2に係る特許に対し、令和4年9月8日に特許異議申立人柴田都は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第7033987号の請求項1、2の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
回路部品が実装された基板を収納するケース体であって、
上面と、
前記上面を囲む側面と、
前記上面から前記側面に沿って延び、前記基板を保持する爪部と
を備え、
前記上面における前記爪部の基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されている
ケース体。
【請求項2】
前記上面には、前記回路部品を露出させる開口窓が形成されている
請求項1に記載のケース体。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人柴田都は、主たる証拠として以下の甲第1号証〜甲第4号証、及び、従たる証拠として以下の甲第5号証〜甲第8号証を提出し、以下のとおり主張する。

1 請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるか、請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、又は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、請求項1、2に係る特許を取り消すべきものである。

2 請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるか、請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、又は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、請求項1、2に係る特許を取り消すべきものである。

3 請求項1、2に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、請求項1、2に係る特許を取り消すべきものである。

4 請求項1、2に係る発明は、甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、請求項1、2に係る特許を取り消すべきものである。

<証拠一覧>
甲第1号証:特開2017−107797号公報
甲第2号証:特開2008−301602号公報
甲第3号証:特開2016−225250号公報
甲第4号証:実願平1−105594号(実開平3−43784号)のマイクロフィルム
甲第5号証:実願昭54−184965号(実開昭56−101692号)のマイクロフィルム
甲第6号証:特開平5−108205号公報
甲第7号証:特開2009−49160号公報
甲第8号証:実願昭62−71877号(実開昭63−182623号)のマイクロフィルム

第4 甲号証の記載、甲号証に記載された発明
1 甲第1号証の記載、甲1発明
(1)甲第1号証の記載(下線は合議体が付加した。以下同じ。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧スイッチ付き回転式電子部品に関するものである。」

「【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラや携帯通信機器等の各種携帯機器、コンピュータ、自動車用電装部品、各種OA機器、ゲーム機等を操作するデバイス等として、回転式電子部品が使用されている。そしてこの種の回転式電子部品の中には、回転式電子部品の回転体(回転つまみ)をその回転軸に垂直な方向に向けて押圧して下降させることで押圧スイッチをオンする構造の押圧スイッチ付き回転式電子部品がある(例えば特許文献1,2参照)。」

「【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、回転式電子部品用の回路パターンと、押圧スイッチ用の回路パターンとを、1枚のフレキシブル回路基板上に形成して構成される押圧スイッチ付き回転式電子部品において、押圧スイッチをオンオフ操作する際に、回転式電子部品用の回路パターンを設けた部分と、押圧スイッチ用の回路パターンを設けた部分の間の部分の回路パターンに接続不良等の問題を生じることがない押圧スイッチ付き回転式電子部品を提供することにある。」

「【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る押圧スイッチ付き回転式電子部品1−1の斜視図、図2は別の方向から見た押圧スイッチ付き回転式電子部品1−1の斜視図、図3は押圧スイッチ付き回転式電子部品1−1の縦断面図、図4は押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10とケース300の分解斜視図、図5は押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10の分解斜視図、図6は押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10を別の角度から見た分解斜視図、図7はフレキシブル回路基板20と基台50の分解斜視図、図8はフレキシブル回路基板20と基台50を別の角度から見た分解斜視図、図9は基台50の縦断面図である。これらの図に示すように、押圧スイッチ付き回転式電子部品1−1は、押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10を、ケース300内に上下動自在に収納設置して構成されている。なお以下の説明において、「上」とは押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10を上下動する場合の上方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0012】
図5,図6に示すように、押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10は、フレキシブル回路基板20を取り付けた基台50と、摺動子100と、回転体120と、クリック板140と、一対のボール150と、一対の弾発手段(以下「コイルバネ」という)160と、軸保持兼クリック機構収納部材170と、固定手段(以下「ネジ」という)200と、を具備して構成されている。」

「【0029】
図10はケース300の斜視図、図11はケース300を下側から見た斜視図である。これらの図に示すようにケース300は合成樹脂を、上面が解放された挿入部301となる矩形箱型に成形して構成されている。挿入部301は、前記基台50等で構成される押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10を上下動自在に挿入できる寸法形状に形成されている。挿入部301の底面303中央には、上方向に向かって突出する小突起からなるスイッチ押圧部305が形成されている。ケース300の4つの側壁の内の対向する一対の側壁の内側面近傍の底面303中央からは、一対の爪状の係止部307が上方向に向かって突出している。両係止部307の上端部には、対向する側に向かって爪部309が突設されている。また底面303の4つの外周辺の内の前記係止部307が位置しない側の対向する一対の外周辺には、これら外周辺に沿うように、一対の長孔からなる開口部311が形成されている。また開口部311の内側辺の両端位置には、それぞれ上下方向に向かって立設された平板状のガイド用板部313が設けられ、これによってケース300の内側壁とガイド用板部313の間に、ガイド部315を形成している。
【0030】
次に、押圧スイッチ付き回転式電子部品1−1を組み立てるには、予め、前述のように、基台50にフレキシブル回路基板20を取り付けておくと共に、回転体120の摺動子取付面123に、摺動子100を載置し、その際、回転体120の摺動子取付部129をそれぞれ摺動子100の取付孔103に挿入し、各摺動子取付部129の先端を熱カシメして固定しておく。
【0031】
そして、基台50の軸部65を回転体120の軸受部121に回動自在に挿入する。これによって、回転体120に取り付けた摺動子100の摺動冊子105が、基台50に取り付けたフレキシブル回路基板20の摺接パターン33に弾接する。次に、回転体120のクリック機構収納部125内にクリック板140を挿入してその底面に設置し、次に、一対のコイルバネ160とボール150を挿入穴183に収納した軸保持兼クリック機構収納部材170を、前記回転体120の後方に設置し、その際、回転体120の軸部127を軸保持兼クリック機構収納部材170の軸受部177に回動自在に挿入する。このとき、基台50の軸部65先端の一対の位置決め用突起69は、軸保持兼クリック機構収納部材170の一対の位置決め部181(図3参照)に挿入され、基台50と軸保持兼クリック機構収納部材170は一体化される。またこのとき、各ボール150はコイルバネ160の弾発力によってクリック板140に弾接される。そして、軸保持兼クリック機構収納部材170の基台取付部179中央の挿通孔180(図3参照)にネジ200を挿入してこれを貫通し、さらに基台50の固定用穴67に螺合し、基台50と軸保持兼クリック機構収納部材170とが外れないように固定する。これによって押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10が完成する。
【0032】
次に、前記押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10を、その下部からケース300の挿入部301内に上下動自在に挿入し、ケース300に設けた一対の係止部307の爪部309を、基台50の一対の係止爪97にスナップイン係合にて係止する。このとき、図3に示すように、ケース300のスイッチ押圧部305に押圧スイッチ43のスイッチ接点板39の上面が当接した状態で、前記爪部309と係止爪97が係合している。またこのとき、基台50の一対の上下方向ガイド部77と、軸保持兼クリック機構収納部材170の一対の上下方向ガイド部173は、それぞれケース300のガイド部315に上下動自在に挿入され、ガイドされる。
【0033】
また図3に示すように、フレキシブル回路基板20の第2回路基板25の引出部27側の部分は、ケース300の一方の開口部311内に挿入された基板方向変換部87の回路基板取付面89に沿うように取り付けられるので、押圧スイッチ形成部81の回路基板取付面83から略直角に下方向に向けて折り曲げられて固定され、ケース300の一方の開口部311から下方に向けて確実に貫通して突出する。従って下記するようにケース300に対して押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10全体が上下動しても、フレキシブル回路基板20がケース300から引き出される部分で開口部311の内周面に当接等することはない。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0034】
以上のように構成された押圧スイッチ付き回転式電子部品1−1において、回転体120を回転すると、これと一体に摺動子100が回転し、摺動子100の摺動冊子105が摺接パターン33上を摺動し、その電気的出力(検出出力)が変化する。回転体120を回転する際、コイルバネ160によってクリック板140に弾接しているボール150は、クリック板140のクリック係合部141への挿入、離脱が行われることで、クリック感触が得られる。
【0035】
即ち、上下動自在に設置される基台50(回転式電子部品形成部61)と、基台50の一方の面に設置される第1回路基板23と、第1回路基板23上に回動自在に設置される回転体120と、第1回路基板23と回転体120との間に設置され回転体120の回転によって出力信号を変化する検出手段(摺動子100と摺接パターン33)とを具備することによって、回転式電子部品部3が構成される。
【0036】
一方、回転体120の外周側面を、その上方からその回転軸に垂直な方向に向けて押圧すれば、押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10全体がケース300に対して下降し、押圧スイッチ43がスイッチ押圧部305によって押圧されてスイッチ接点板39が反転し、スイッチがオンする。前記回転体120の外周側面への押圧を解除すれば、前記スイッチ接点板39の弾性復帰力によってスイッチ接点板39は元の形状に自動復帰してスイッチはオフし、同時に押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10全体がケース300に対して上昇して元の位置に自動復帰する。
【0037】
即ち、基台50と一体に上下動し回転体120の外周よりも下方の位置に設置される押圧スイッチ形成部81と、押圧スイッチ形成部81の下面に載置され押圧スイッチ43を形成してなる第2回路基板25と、押圧スイッチ43に対向するその下側位置に配置され基台50の上下動によって押圧スイッチ43をオンオフ操作するスイッチ押圧部305とを具備することによって、押圧スイッチ部5が構成される。
【0038】
以上説明したように、押圧スイッチ付き回転式電子部品1−1は、フレキシブル回路基板20を、回転式電子部品に用いる基台50の一方の面(回路基板取付面63)から、押圧スイッチ43に用いる基台50の押圧スイッチ形成部81の下面に至るまで、基台50の表面に沿って取り付けるので、たとえ基台50を上下動して押圧スイッチ43をオンオフ操作しても、フレキシブル回路基板20は、基台50に沿わせて取り付けたフレキシブル回路基板20の各部において撓む所がない。従って、押圧スイッチ43をオンオフ操作する際に、回転式電子部品用の回路パターン(摺接パターン33)を設けた第1回路基板23の部分と、押圧スイッチ用の回路パターンを設けた第2回路基板25の部分の間の部分が撓むことはなく、この部分の回路パターンは良好な接続状態を保つ。即ち、接続不良等の問題は生じない。」

図1、3〜6、10、11は、以下のとおりのものである。
図10、11から、ケース300の底面303における係止部307基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されていることが見てとれる。








(2)甲第1号証の記載事項
上記記載から、甲第1号証には、次の技術的事項が記載されている。

ア 甲第1号証に記載された技術は、押圧スイッチ付き回転式電子部品に関するものであり(【0001】)、その目的は、回転式電子部品用の回路パターンと、押圧スイッチ用の回路パターンとを、1枚のフレキシブル回路基板上に形成して構成される押圧スイッチ付き回転式電子部品において、押圧スイッチをオンオフ操作する際に、回転式電子部品用の回路パターンを設けた部分と、押圧スイッチ用の回路パターンを設けた部分の間の部分の回路パターンに接続不良等の問題を生じることがない押圧スイッチ付き回転式電子部品を提供することにある(【0005】)。

イ 押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10は、フレキシブル回路基板20を取り付けた基台50と、摺動子100と、回転体120と、クリック板140と、一対のボール150と、一対のコイルバネ160と、軸保持兼クリック機構収納部材170と、ネジ200と、を具備して構成されている(【0012】、図5、6)。

ウ ケース300は、上面が解放された挿入部301となる矩形箱型に構成されており、挿入部301は、押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10を上下動自在に挿入できる寸法形状に形成されており、ケース300の4つの側壁の内の対向する一対の側壁の内側面近傍の底面303中央からは、一対の爪状の係止部307が上方向に向かって突出しており、両係止部307の上端部には、対向する側に向かって爪部309が突設されており、また底面303の4つの外周辺の内の前記係止部307が位置しない側の対向する一対の外周辺には、これら外周辺に沿うように、一対の長孔からなる開口部311が形成されている(【0029】)。

エ ケース300の挿入部301内に、予め完成させた押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10がその下部から上下動自在に挿入され、ケース300に設けた一対の係止部307の爪部309が、基台50の一対の係止爪97にスナップイン係合にて係止されて、押圧スイッチ付き回転式電子部品1−1が組み立てられる(【0030】〜【0032】)。

(3)甲1発明
上記(1)、(2)から、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「上面が解放された挿入部301となる矩形箱型に構成されているケース300であって、
挿入部301は、押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10を上下動自在に挿入できる寸法形状に形成されており、ケース300の4つの側壁の内の対向する一対の側壁の内側面近傍の底面303中央からは、一対の爪状の係止部307が上方向に向かって突出しており、両係止部307の上端部には、対向する側に向かって爪部309が突設されており、また底面303の4つの外周辺の内の前記係止部307が位置しない側の対向する一対の外周辺には、これら外周辺に沿うように、一対の長孔からなる開口部311が形成されており、
押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10は、フレキシブル回路基板20を取り付けた基台50と、摺動子100と、回転体120と、クリック板140と、一対のボール150と、一対のコイルバネ160と、軸保持兼クリック機構収納部材170と、ネジ200と、を具備して構成されており、
ケース300の底面303における係止部307の基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されており、
ケース300の挿入部301内に、予め完成させた押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10がその下部から上下動自在に挿入され、ケース300に設けた一対の係止部307の爪部309が、基台50の一対の係止爪97にスナップイン係合にて係止されて、押圧スイッチ付き回転式電子部品1−1が組み立てられる
ケース300。」

2 甲第2号証の記載、甲2発明
(1)甲第2号証の記載
「【技術分野】
【0001】
この発明は、電気接続箱の分解可能取付構造に関するものである。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された電気接続箱の取外可能取付構造では、取付土台部1からの取外時に、電気接続箱2自体を分解させることができなかったので、取外した電気接続箱2に対して、後工程で分解する作業が必要となり、その分、工程数が増えると共に、分解作業に時間や手間を要するという問題があった。」

「【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、上記構成により、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、取付土台部から電気接続箱を取外すことによって、同時に、電気接続箱を分解させることが可能となる。これにより、分解工程が不要となるため、工程数が削減されると共に、分解作業が不要となり、分解作業に要していた時間や手間を省略することができる。


「【実施例】
【0010】
図1〜図10は、この発明の実施例を示すものである。
【0011】
まず、構成について説明する。
【0012】
自動車などの車両に対し、電気接続箱を、車体に対して容易に取外すことができるように取付ける。
【0013】
即ち、図1、図2に示すように、取付土台部11に、電気接続箱12を配置する。そして、電気接続箱12を、取付土台部11に沿って配索されたハーネス13で押えるようにする。更に、ハーネス13に取付けられた複数のクリップ部材14〜16で係止固定するようにする。なお、取付土台部11は、車体パネルやステアリングサポートメンバなどの車体強度部材などとすることができる。クリップ部材14〜16は、クリップ部とバンド部とを一体に有すると共に、バンド部によってハーネス13に結着し得るようなものとされている。
【0014】
より具体的には、電気接続箱12は、少なくとも、取付土台部11に当接配設されて回路基板21を収容保持可能なケース本体22(或いは、ロワケース)と、ケース本体22の取付土台部11とは反対側に設けられた開口部23に対して着脱自在に嵌合される蓋体24(或いは、アッパケース)とを備えている。
【0015】
そして、蓋体24は、少なくともその中間部に、クリップ部材14に対する係止穴26を備えている。また、蓋体24は、その一端部のみに、別のクリップ部材15によって取付土台部11へ取付可能な蓋側取付片27を備えている。更に、ケース本体22は、その他端部のみに、更に別のクリップ部材16によって取付土台部11へ取付可能な本体側取付片28を備えている。蓋側取付片27は、蓋体24を単独で取付土台部11に取付けるようにするものである。本体側取付片28は、ケース本体22を単独で取付土台部11に取付けるようにするものである。
【0016】
また、ケース本体22の外側部には、爪穴部31を有する外方突起部32が設けられている。また、蓋体24には、爪穴部31へ挿入係止可能なケース固定用爪片33が突設されている。そして、爪穴部31とケース固定用爪片33との間には、ケース固定用爪片33が係止保持状態を解除する方向へ退避可能な爪片退避用間隙部34が形成されている。更に、取付土台部11には、爪片退避用間隙部34へ差込まれることにより、ケース固定用爪片33の退避を拘束可能な爪固定用突起部35が突設されている。これらにより、外側分解可能取付構造部36が構成されている。
【0017】
この場合、外方突起部32は、平面視ほぼコ字状などを呈している。ケース固定用爪片33は、取付土台部11とほぼ面直な方向、或いは、ケース本体22に対する蓋体24の着脱方向に向けて延設されている。爪固定用突起部35は、取付土台部11に設けられた切起片などとされている。爪固定用突起部35は、その先端を尖らせるようにしても良い。ケース固定用爪片33と爪固定用突起部35とは、ほぼ平行に設けられている。
【0018】
上記とは別に、ケース本体22の内部には、回路基板21の下部を支持可能な基板下部支持部41が設けられている。また、ケース本体22の内部には、回路基板21の上側部を係止保持可能な基板固定用爪片42が突設されている。そして、ケース本体22と基板固定用爪片42との間に、基板固定用爪片42が係止保持状態を解除する方向へ退避可能な爪片退避用空間43が形成され、蓋体24の内部に、爪片退避用空間43へ差込まれることにより、基板固定用爪片42の退避を規制可能な爪ストッパ44が突設されている。これらにより、内側分解可能取付構造部46が構成されている。
【0019】
この場合、基板固定用爪片42および爪ストッパ44とは、ケース固定用爪片33および爪固定用突起部35と、ほぼ平行に設けられている。」

「【0022】
電気接続箱12を取付土台部11に取付ける場合、先ず、以下のようにして電気接続箱12を組立てる。
【0023】
ケース本体22の内部に回路基板21を収容して、回路基板21の下部を基板下部支持部41で支持させると共に、回路基板21の上側部を基板固定用爪片42で係止させる。」

「【0032】
そして、上記とは反対に、電気接続箱12を取付土台部11から取外す場合、図3、図4に示すように、ハーネス13の一端側を上に引張って、例えば、蓋側取付片27を取付土台部11に取付けているクリップ部材14を外すか或いはクリップ部材14を破壊するようにする。
【0033】
すると、電気接続箱12の一端部と取付土台部11との固定状態が解除されるので、電気接続箱12の一端部が、取付土台部11から僅かに浮いた状態となる。
【0034】
そのまま、ハーネス13を上に引張り続けると、ハーネス13は、蓋体24の中間部の係止穴26とクリップ部材14で繋がっているので、電気接続箱12が、図5、図6に示すように、他端部の本体側取付片28を中心として回動するように、斜めに持上げられる。
【0035】
この時、取付土台部11から突設された爪固定用突起部35が、爪穴部31とケース固定用爪片33との間に形成された爪片退避用間隙部34から引抜かれるため、ケース固定用爪片33の退避が可能となり、ケース固定用爪片33が係止保持状態を解除可能となる。これにより、ケース本体22と蓋体24との固定状態も解除可能となる。
【0036】
更に、ハーネス13の一端側を上に引張り続けると、電気接続箱12の持上げ角度が大きくなるため、図7、図8に示すように、蓋体24に対するケース本体22や回路基板21の自重などの影響が大きくなり、ケース本体22と蓋体24との固定状態が解除されて、ケース本体22と蓋体24とが分離される。
【0037】
このように、ケース本体22と蓋体24とが分離されると、更に、蓋体24の内部に突設された爪ストッパ44が、ケース本体22と基板固定用爪片42との間に形成された爪片退避用空間43から引抜かれるため、図9、図10に示すように、基板固定用爪片42の退避が可能となり、基板固定用爪片42が係止状態を解除可能となる。これにより、ケース本体22による回路基板21の係止状態が解除されて、回路基板21がケース本体22から分離される。
【0038】
更に、ハーネス13を上に引張ると、最後に、本体側取付片28を取付土台部11に取付けているクリップ部材16が外れるか或いはクリップ部材16が破壊される。
【0039】
すると、電気接続箱12の他端部と取付土台部11との固定状態が解除されるので、電気接続箱12が、取付土台部11から完全に取外される。」

図1、2は、以下のとおりのものである。
図1、2から、ケース本体22の底面が4つの側面で囲まれていることが見てとれる。
図2から、ケース本体22の内部には、ケース本体22の側面に沿って基板固定用爪片42が延びており、基板固定用爪片42の基端部と、ケース本体22の内部に設けられた基板下部支持部41の基端部との間に貫通孔が形成されていることが見てとれる。




(2)甲第2号証の記載事項
上記記載から、甲第2号証には、次の技術的事項が記載されている。

ア 甲第2号証に記載された技術は、電気接続箱の分解可能取付構造に関するものであり(【0001】)、従来の電気接続箱の取外可能取付構造では、取付土台部1からの取外時に、電気接続箱2自体を分解させることができなかったので、取外した電気接続箱2に対して、後工程で分解する作業が必要となり、その分、工程数が増えると共に、分解作業に時間や手間を要するという問題があったので、取付土台部から電気接続箱を取外すことによって、同時に、電気接続箱を分解させることが可能となるものとすることより、分解工程が不要となるため、工程数が削減されると共に、分解作業が不要となり、分解作業に要していた時間や手間を省略することができる電気接続箱の分解可能取付構造を提供することにある(【0006】、【0008】)。

イ 電気接続箱12が、蓋体24とともに備えるケース本体22は、取付土台部11に当接配設されて回路基板21を収容保持可能なものであり、取付土台部11とは反対側に設けられた開口部23に対して着脱自在に蓋体24(或いは、アッパケース)が嵌合されるものである(【0014】)。

ウ ケース本体22の外側部に設けられた、爪穴部31を有する外方突起部32と、蓋体24に突設された、爪穴部31へ挿入係止可能なケース固定用爪片33と、爪穴部31とケース固定用爪片33との間に形成された爪片退避用間隙部34と、取付土台部11に突設された爪固定用突起部35とにより、外側分解可能取付構造部36が構成されている(【0016】)。

エ ケース本体22の内部に設けられた、回路基板21の下部を支持可能な基板下部支持部41と、ケース本体22の内部に突設された、回路基板21の上側部を係止保持可能な基板固定用爪片42と、ケース本体22と基板固定用爪片42との間に形成された爪片退避用空間43と、蓋体24の内部に突設された爪ストッパ44とにより、内側分解可能取付構造部46が構成されている(【0018】)。

オ 電気接続箱12を取付土台部11に取付ける場合、先ず、ケース本体22の内部に回路基板21を収容して、回路基板21の下部を基板下部支持部41で支持させると共に、回路基板21の上側部を基板固定用爪片42で係止させて、電気接続箱12を組立てる(【0022】〜【0023】)。

(3)甲2発明
上記(1)、(2)から、甲第2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「電気接続箱12が、蓋体24とともに備えるケース本体22であって、
取付土台部11に当接配設されて回路基板21を収容保持可能なものであり、
蓋体24(或いは、アッパケース)が、取付土台部11とは反対側に設けられた開口部23に対して着脱自在に嵌合されるものであり、
底面が4つの側面で囲まれており、
電気接続箱12の外側分解可能取付構造部36が、ケース本体22の外側部に設けられた、爪穴部31を有する外方突起部32と、蓋体24に突設された、爪穴部31へ挿入係止可能なケース固定用爪片33と、爪穴部31とケース固定用爪片33との間に形成された爪片退避用間隙部34と、取付土台部11に突設された爪固定用突起部35とにより、構成されており、
電気接続箱12の内側分解可能取付構造部46が、ケース本体22の内部に設けられた、回路基板21の下部を支持可能な基板下部支持部41と、ケース本体22の内部に突設された、回路基板21の上側部を係止保持可能な基板固定用爪片42と、ケース本体22と基板固定用爪片42との間に形成された爪片退避用空間43と、蓋体24の内部に突設された爪ストッパ44とにより、構成されており、
基板固定用爪片42は、ケース本体22の内部に、ケース本体22の側面に沿って延びており、
基板固定用爪片42の基端部と基板下部支持部41の基端部との間に貫通孔が形成されており、
電気接続箱12を取付土台部11に取付ける場合、先ず、ケース本体22の内部に回路基板21を収容して、回路基板21の下部を基板下部支持部41で支持させると共に、回路基板21の上側部を基板固定用爪片42で係止させて、電気接続箱12を組立てる
ケース本体22。」

3 甲第3号証の記載、甲3発明
(1)甲第3号証の記載
「【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具等の機器に用いられるモジュール及びこのモジュールの製造方法に関する。」

「【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ベース部材の爪部の先端部を折り曲げることなく基板をベース部材に簡単に固定することができるモジュール及びモジュールの製造方法を提供することを目的とする。」

「【0015】
[照明器具]
まず、実施の形態1に係る照明器具100の構成について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係る照明器具100の斜視図である。図2は、実施の形態1に係る照明器具100の分解斜視図である。図3は、図2のIII−III線における光源ユニット120の断面斜視図である。
【0016】
本実施の形態に係る照明器具100は、天井直付け型の照明器具であり、図1及び図2に示すように、例えば室内の天井に吊りボルト等で取り付けられて固定される器具本体110と、器具本体110に固定された光源ユニット120とを備える。
・・・
【0020】
図3に示すように、光源ユニット120は、モジュール1と、カバー部材2とを備える。本実施の形態において、光源ユニット120は、白色等の所定の色の光をライン状に発光するライン光源である。
【0021】
モジュール1は、ベース部材10と、基板20とを有する。本実施の形態におけるモジュール1は、LEDモジュールであり、さらに、LED30を有する。モジュール1の詳細な構成については後述する。
・・・
【0029】
[モジュール]
次に、本実施の形態に係るモジュール1の構成について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、実施の形態1に係るモジュール1の斜視図である。図5は、実施の形態1に係るモジュール1におけるベース部材10に爪部11及び凸部12を形成する方法を説明するための図である。
【0030】
図4に示すように、本実施の形態に係るモジュール1は、ベース部材10と、ベース部材10に支持された基板20と、基板20に実装されたLED30とを有する。
【0031】
ベース部材10は、基板20を支持する部材(フレーム)である。ベース部材10には基板20が載置される。ベース部材10に基板20を載置して基板20をベース部材10に固定することで、基板20はベース部材10に支持される。
・・・
【0033】
ベース部材10は、基板20を載置するための本体部10aと、ベース部材10をカバー部材2に取り付けるための一対の取付部10bとを有する。本体部10aは、Y軸方向に長尺状で且つ矩形状に形成されている。本体部10aには、幅方向(X軸方向)に一対をなす段差部が長手方向に沿って形成されており、この一対の段差部によって形成された凹部に基板20が載置される。一対の取付部10bの各々は、本体部10aの短手方向(X軸方向)における両端部からZ軸方向に延設されている。
【0034】
ベース部材10は、爪部11(爪片)及び凸部12を有する。爪部11及び凸部12は、基板20をベース部材10に固定するための部材であり、本実施の形態では、板金製のベース部材10の一部を切り起こすことによって形成されている。
【0035】
具体的には、爪部11は、ベース部材10(本体部10a)の一部をX軸方向(図4における第1開口部21aの幅方向)に切り起こすことにより形成されている。爪部11を形成する場合、まず、図5の(a)に示すように、例えばプレス機を用いてベース部材10の一部を打ち抜くことにより、ベース部材10に所定形状の切り込みを形成する。この切り込みを形成することで所定形状の爪部11が形成される。その後、図5の(b)に示すように、例えばパンチ金型を用いて、爪部11を略垂直に曲げ起こす。これにより、ベース部材10の主面から立設するように爪部11が形成される。」

「【0070】
[モジュールの製造方法]
次に、実施の形態1に係るモジュール1の製造方法(組み立て方法)について、図4を参照しながら、図6〜8を用いて説明する。図6は、実施の形態1に係るモジュール1の製造方法を示す図(基板20をベース部材10に載置する前の状態を示す図)である。図7は、実施の形態1に係るモジュール1の製造方法を示す図(基板20をベース部材10に載置したときの状態を示す図)である。図8は、実施の形態1に係るモジュール1の製造方法を説明するための断面図である。
【0071】
まず、図6に示すように、スリット状の第1開口部21a及び第2開口部21bが形成された基板20と、爪部11及び凸部12が形成されたベース部材10とを準備し、図7に示すように、基板20をベース部材10の本体部10aに配置する。」

図2〜6は、以下のとおりのものである。
図5(b)、6から、ベース部材10の本体部10aに形成された爪部11の基端部に隣接する位置に貫通孔が形成されていることが見てとれる。







(2)甲第3号証の記載事項
上記記載から、甲第3号証には、次の技術的事項が記載されている。

ア 甲第3号証に記載された技術は、照明器具等の機器に用いられるモジュール及びこのモジュールの製造方法に関するものであり(【0001】)、ベース部材の爪部の先端部を折り曲げることなく基板をベース部材に簡単に固定することができるモジュール及びモジュールの製造方法を提供することを目的とする(【0006】)。

イ 照明器具100が備える光源ユニット120が備えるモジュール1は、ベース部材10と、ベース部材10に支持された基板20とを有し、モジュール1は、LEDモジュールであり、基板20に実装されたLED30を有する(【0016】、【0020】、【0021】、【0030】)。

ウ ベース部材10は、基板20を支持する部材(フレーム)であり、ベース部材10には基板20が載置され、基板20を載置するための本体部10aと、ベース部材10をカバー部材2に取り付けるための一対の取付部10bとを有し、一対の取付部10bの各々は、本体部10aの短手方向(X軸方向)における両端部からZ軸方向に延設されている(【0031】、【0033】)。

エ ベース部材10は、本体部10aに爪部11及び凸部12が形成され、爪部11及び凸部12は、基板20をベース部材10に固定するための部材である(【0034】、【0071】)。

(3)甲3発明
上記(1)、(2)から、甲第3号証には、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。

「ベース部材10であって、
照明器具100が備える光源ユニット120が備えるモジュール1が有するものであり、
モジュール1は、ベース部材10と、ベース部材10に支持された基板20とを有するLEDモジュールであり、基板20に実装されたLED30を有し、
ベース部材10は、基板20を支持する部材(フレーム)であり、ベース部材10には基板20が載置され、
基板20を載置するための本体部10aと、ベース部材10をカバー部材2に取り付けるための一対の取付部10bとを有し、
一対の取付部10bの各々は、本体部10aの短手方向(X軸方向)における両端部からZ軸方向に延設されており、
ベース部材10は、本体部10aに爪部11及び凸部12が形成され、爪部11及び凸部12は、基板20をベース部材10に固定するための部材であり、
爪部11の基端部に隣接する位置に貫通孔が形成されている
ベース部材10。」

4 甲第4号証の記載、甲4発明
(1)甲第4号証の記載
「[産業上の利用分野]
本考案は、電子部品等を配線するプリント配線基板をシャーシに結合するための基板固定構造に関する。」(明細書第2ページ1〜4行)

「[従来の技術]
従来第6図及び第7図に示すように、電子部品等を装着したプリント配線基板1をシャーシのロワーケース2に結合させて支持する場合、ロワーケース2から基部5と頭部3を有する爪6を一体に切り起こし、該爪6の頭部3を、プリント配線基板1上に設けた長方形の角孔7に挿通した上で、その頭部3を連結部4のところでねじり曲げて固定していた。
[考案が解決しようとする課題]
しかし、このようにねじり曲げを行うためには治具が必要であり、又このねじり曲げ用治具を挿入するため、シャーシ内にデッドスペースを設ける必要もあるため、プリント配線基板上のその部分に部品を配置しないようにしなければならない。
本考案は以上のような問題点を解決することを目的としてなされたものである。」(明細書第2ページ15行〜第3ページ11行)

「[実施例]
以下本考案を図面にしたがって詳細に説明する。
第1図、第2図、第3図及び第4図に本考案の一実施例を示す。これらの図は本考案による爪6及び該爪6を基板1に挿入した状態を示すもので、第1図(a)に示すようにロワーケース2から切り起こしにより爪6が設けられている。該爪6は略長方形で大型の基部5の上辺中央に、弾性を有する連結部4を介して略長方形で小型の頭部3を一体に成形したもので、該頭部3には連結部4との境界線の中央に突起3aが設けられ、又、頭部3は基部5に対して第1図(c)及び第2図(b)に示すように傾斜角θをなすように折り曲げられている。頭部3の下辺3b,3bは第1図(a)の如くロワーケース2に対して外方に向けて上向きに傾斜するようになされている。また頭部3の幅は上方に向かって狭くなるように両側辺3c,3cも傾斜している。
このような爪6は第1図(b)及び第3図に示すように、取付けようとするプリント配線基板1の周辺に設けられた略コ字状の切欠き8に対応する位置に設けられている。
以上の構成を有する爪6の動作について第1図〜第4図を参照して説明する。ここで第1図、第2図(a)及び第4図はプリント配線基板1と爪6の結合状態を示しており、又、第3図はロワーケース2を爪6によりプリント配線基板1に固定する前の状態を示すものである。」(明細書第4ページ11行〜第5ページ18行)

「このような状態で第3図に示すように、ロワーケース2の上方からプリント配線基板1を載置し、爪6をプリント配線基板1上に設けられた切欠き8に差し込むと、第1図の如くその差込量は基部5の上辺5a,5aにより制限され、プリント配線基板1はロワーケース2から基部5により定まる一定距離だけ離して取付けられる。
・・・
このように頭部3の下辺の全幅A1は頭部3が切欠き8を変形しなから通過しうる程度の長さに設定する。こうして頭部3の下辺3b,3bの各中間部分が切欠き8の側辺8b,8bを上方から押さえると共に、基部5の上辺5a,5aが切欠き8の側辺8b,8bを下方より押さえ、さらに突起3aが切欠き8の底部8aを上方から押さえ、プリント配線基板1は爪6により固定される。」(明細書第6ページ11行〜第7ページ17行)

第3図は、以下のとおりのものである。
第3図から、ロワーケース2の底面が2つの側面に挟まれていること、及び、爪6の基端部に隣接する位置に貫通孔が形成されていることが見てとれる。



(2)甲第4号証の記載事項
上記記載から、甲第4号証には、次の技術的事項が記載されている。

ア 甲第4号証に記載された技術は、電子部品等を配線するプリント配線基板をシャーシに結合するための基板固定構造に関するものであり(第2ページ1〜4行)、爪6の頭部3を、プリント配線基板1上に設けた長方形の角孔7に挿通した上で、その頭部3を連結部4のところでねじり曲げて固定していたので、治具が必要であり、又、シャーシ内にデッドスペースを設ける必要もあるため、プリント配線基板上のその部分に部品を配置しないようにしなければならないとの問題点を解決することを目的とするものである(明細書第2ページ15行〜第3ページ11行)。

イ ロワーケース2には、爪6が設けられている(明細書第4ページ14〜17行)。

ウ ロワーケース2には、プリント配線基板1が取り付けられ、プリント配線基板1は爪6により固定される(明細書第4ページ11行〜第5ページ18行、第6ページ11行〜第7ページ17行)。

(3)甲4発明
上記(1)、(2)から、甲第4号証には、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。

「ロワーケース2であって、
底面が2つの側面に挟まれており、
爪6が設けられており、
プリント配線基板1が取り付けられ、プリント配線基板1は爪6により固定され、
爪6の基端部に隣接する位置に貫通孔が形成されている
ロワーケース2。」

5 甲第5号証〜甲第8号証について
甲第5号証〜甲第8号証のいずれの証拠にも、「上面と、前記上面を囲む側面と、前記上面から前記側面に沿って延び、前記基板を保持する爪部とを備えるケース体」との技術的事項は記載されていない。

第5 当審の判断
1 甲1発明を主引例とする新規性進歩性について
(1)請求項1に係る発明について
ア 対比
請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。また、請求項2に係る発明を「本件発明2」という。」)と甲1発明を対比する。

(ア)甲1発明の「ケース300」、「フレキシブル回路基板20」は、それぞれ本件発明1の「ケース体」、「基板」に相当する。

(イ)甲1発明は、「上面が解放された挿入部301となる矩形箱型に構成されているケース300」であって、「押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10は、フレキシブル回路基板20を取り付けた基台50」を具備して構成されており、「ケース300の挿入部301内に、予め完成させた押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10がその下部から上下動自在に挿入され」、「スイッチ付き回転式電子部品1−1が組み立てられる」ものであるから、「ケース300」は、「フレキシブル回路基板20」を収納するといえる。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「基板を収納するケース体」である点で一致する。

(ウ)甲1発明は、「上面が解放された挿入部301となる矩形箱型に構成されているケース300」であって、「ケース300の4つの側壁」を有するところ、甲1発明の「側壁」は、「ケース300」の底面を囲むものであるといえる。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「面を囲む側面」を有する点で共通する。

(エ)甲1発明は、「ケース300の4つの側壁の内の対向する一対の側壁の内側面近傍の底面303中央からは、一対の爪状の係止部307が上方向に向かって突出しており」、「ケース300に設けた一対の係止部307の爪部309が、基台50の一対の係止爪97にスナップイン係合にて係止されて、押圧スイッチ付き回転式電子部品1−1が組み立てられる」ものであり、ケース300に設けた係止部307は、側壁に沿って延び、係止部307はフレキシブル回路基板20を保持するものであるといえるから、甲1発明の「係止部307」は、本件発明1の「爪部」に相当するといえる。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「前記側面に沿って延び、前記基板を保持する爪部」を備える点で共通する。

(オ)甲1発明は、「ケース300の底面303における係止部307の基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されて」いるから、本件発明1と甲1発明とは、「前記爪部の基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されている」点で一致する。

(カ)したがって、本件発明1と甲1発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「基板を収納するケース体であって、
面を囲む側面と、
前記側面に沿って延び、前記基板を保持する爪部と
を備え、
前記爪部の基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されている
ケース体。」

<相違点>
<相違点1−1>
「基板」について、本件発明1では、「回路部品が実装された」ものであるのに対し、甲1発明では、フレキシブル回路基板20に回路部品が実装されたものであることは特定されていない点。

<相違点1−2>
本件発明1は、「上面と、前記上面を囲む側面と、前記上面から前記側面に沿って延び、前記基板を保持する爪部と」を備え、「前記上面における前記爪部の基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されている」のに対し、甲1発明は、「上面が解放された挿入部301となる矩形箱型に構成されているケース300であって、挿入部301は、押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10を上下動自在に挿入できる寸法形状に形成されており、ケース300の4つの側壁の内の対向する一対の側壁の内側面近傍の底面303中央からは、一対の爪状の係止部307が上方向に向かって突出しており、両係止部307の上端部には、対向する側に向かって爪部309が突設されており、また底面303の4つの外周辺の内の前記係止部307が位置しない側の対向する一対の外周辺には、これら外周辺に沿うように、一対の長孔からなる開口部311が形成されて」いるものであり、「上面」を備えるものではなく、「側壁」は「前記上面を囲む」ものではなく、「係止部307」は、「前記上面から」延びるものではなく、「貫通孔」は、「前記上面における前記爪部(係止部307)」の基端部に隣接する位置には形成されていない点。

イ 判断
(ア)相違点1−2について
事案に鑑み、まず、相違点1−2について検討する。
甲1発明は、「上面」を備えるものではないから、相違点1−2は、実質的な相違点である。
また、甲1発明は、「上面が解放された挿入部301となる矩形箱型に構成されているケース300」であって、「ケース300の挿入部301内に、予め完成させた押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10がその下部から上下動自在に挿入され、ケース300に設けた一対の係止部307の爪部309が、基台50の一対の係止爪97にスナップイン係合にて係止されて、押圧スイッチ付き回転式電子部品1-1が組み立てられる」ものであるところ、ケース300に「挿入部」は必要不可欠であるから、ケース300を上面を備えるものとするためには、「ケース300の底面303」を上面に変更する必要がある。この場合、図1等に示された押圧スイッチ付き回転式電子部品1−1の上下を逆さまなものとして、ケース300を逆さまなものに変更する必要がある。

そこで、甲第1号証の段落【0002】、【0034】〜【0038】の記載を参照すると、押圧スイッチ式回転式電子部品は、回転式電子部品の回転体(回転つまみ)をその回転軸に垂直な方向に向けて押圧して下降させることで押圧スイッチをオンする構造(【0002】)であり、押圧スイッチ付き回転式電子部品1−1は、回転体120の外周側面を、その上方からその回転軸に垂直な方向に向けて押圧すれば、スイッチがオンし、押圧を解除すれば、スイッチはオフする(【0036】)ものであり、基台50と一体に上下動し回転体120の外周よりも下方の位置に設置される押圧スイッチ形成部81の下面に載置され押圧スイッチ43をオンオフ操作する(【0037】〜【0038】)ものである。
したがって、押圧スイッチ付き回転式電子部品1−1の上下を逆さまなものに変更するには、押圧スイッチ43を押圧方向を反対方向とする必要がある。
また、甲第1号証の段落【0032】の記載から、押圧スイッチ付き回転式電子部品1−1の上下を逆さまなものに変更するには、係止部307が係合する係止爪97が設けられている基台50と、摺動子100と、回転体120と、クリック板140と、一対のボール150と、一対のコイルバネ160と、軸保持兼クリック機構収納部材170と、ネジ200と、を具備して構成されている押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10を、一対の係止部307によって支えるものに変更する必要が生じる。
そうすると、押圧スイッチ付き回転式電子部品1−1の上下を逆さまなものとして、甲1発明のケース300を逆さまなものに変更するには、押圧スイッチ43の押圧方向を反対方向として上から押圧するものとし、かつ、基台50や回転体120を具備する押圧スイッチ付き回転式電子部品本体10を係止部307により支えるものに変更する必要があるから、そのように変更する動機付けは当業者にはない。

しかも、甲第2号証〜甲第8号証には、ケース体が、「上面と、前記上面を囲む側面と、前記上面から前記側面に沿って延び、前記基板を保持する爪部と」を備えることは記載も示唆もされていないから、このことは、本件特許の出願時において周知技術であるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1発明であるとはいえず、また、甲1発明において、周知技術に基づいて、相違点1−2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。

(イ)まとめ
したがって、相違点1−1について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、また、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人柴田都は、特許異議申立書の「3(4)ウ(ア)甲1発明を主引例とする新規性進歩性について」の(a)の第19ページにおいて、「・構成要件B 甲1発明のケース300の「底面303」は、本件特許発明1の「上面」(構成要件B)に相当する。」と主張する。
しかし、「底面」とは、立体の下側の面を意味し、反対に上側の面を「上面」ということは、文献を示すまでもない一般常識であるから、かかる主張は採用できない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に対して、更に技術的事項を追加して限定したものである。よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲1発明ではないし、また、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易になし得るものではない。

(3)小括
以上のとおり、本件発明1、2は、甲1発明ではないし、また、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項、第2項の規定に違反してされたものではない。

2 甲2発明を主引例とする新規性進歩性について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明を対比する。

(ア)甲2発明の「ケース本体22」、「回路基板21」は、それぞれ本件発明1の「ケース体」、「基板」に相当する。

(イ)甲2発明は、「電気接続箱12を取付土台部11に取付ける場合、先ず、ケース本体22の内部に回路基板21を収容して、回路基板21の下部を基板下部支持部41で支持させる」ものであるから、本件発明1と甲2発明とは、「基板を収納するケース体」である点で一致する。

(ウ)甲2発明は、「底面が4つの側面で囲まれて」いるものであるから、本件発明1と甲2発明とは、「面を囲む側面」を有する点で共通する。

(エ)甲2発明は、「電気接続箱12の内側分解可能取付構造部46」を構成する「ケース本体22の内部に突設された、回路基板21の上側部を係止保持可能な基板固定用爪片42」は、「ケース本体22の内部に、ケース本体22の側面に沿って延びており」、基板固定用爪片42は、ケース本体22の側面に沿って延びており、回路基板21を保持するものであるといえるから、甲2発明の「基板固定用爪片42」は、本件発明1の「爪部」に相当するといえる。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、「前記側面に沿って延び、前記基板を保持する爪部」を備える点で共通する。

(オ)甲2発明は、「基板固定用爪片42の基端部と基板下部支持部41の基端部との間に貫通孔が形成されて」いるから、本件発明1と甲2発明とは、「前記爪部の基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されている」点で一致する。

(カ)したがって、本件発明1と甲2発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「基板を収納するケース体であって、
面を囲む側面と、
前記側面に沿って延び、前記基板を保持する爪部と
を備え、
前記爪部の基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されている
ケース体。」

<相違点>
<相違点2−1>
「基板」について、本件発明1では、「回路部品が実装された」ものであるのに対し、甲2発明では、回路基板21に回路部品が実装されたものであることは特定されていない点。

<相違点2−2>
本件発明1は、「上面と、前記上面を囲む側面と、前記上面から前記側面に沿って延び、前記基板を保持する爪部と」を備え、「前記上面における前記爪部の基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されている」のに対し、甲2発明は、「底面が4つの側面で囲まれており」、「基板固定用爪片42は、ケース本体22の内部に、ケース本体22の側面に沿って延びており」、「上面」を備えるものではなく、「側面」は「前記上面を囲む」ものではなく、「基板固定用爪片42」は、「前記上面から」延びるものではなく、「貫通孔」は、「前記上面における前記爪部(基板固定用爪片42)」の基端部に隣接する位置には形成されていない点。

イ 判断
(ア)相違点2−2について
事案に鑑み、まず、相違点2−2について検討する。
甲2発明は、「底面が4つの側面で囲まれており」、「基板固定用爪片42は、ケース本体22の内部に、ケース本体22の側面に沿って延びて」いるものであるところ、ケース本体22を上面を備えるものとするためには、「ケース本体22」の底面を上面に変更する必要がある。この場合、図1、2に示された、回路基板21が収容された電気接続箱12(ケース本体22及び蓋体24)を取付土台部11と共に、その上下を逆さまにして、ケース本体22の上下を逆さまにすることで、回路基板21の上面に、ケース本体22の基板下部支持部41を載せ、回路基板21の裏面の端部を基板固定用爪片42で支持するとともに、取付土台部11の爪固定用突起部35を、蓋体24の爪片退避用間隙部34に差込まれるものとして、取付土台部11とケース本体22と回路基板21とを蓋体24で保持するものに変更する必要がある。
甲第2号証の段落【0013】、【0014】、【0022】の記載から、取付土台部11は、電気接続箱12(ケース本体22及び蓋体24)を取り付ける際の土台部であると解され、また、同段落【0013】には、「取付土台部11は、車体パネルやステアリングサポートメンバなどの車体強度部材などとすることができる。」と記載されており、更に、同段落【0032】〜【0039】には、電気接続箱12を取付台部11から取外す場合には、ハーネス13の一端側を上に引っ張り続ける旨、及び、「回路基板21の自重」などの影響により、ケース本体22と蓋体24との固定状態が解除される旨が記載されているから、上記のように、ケース本体22を逆さまにして、蓋体24で、取付土台部11とケース本体22と回路基板21を保持するようにするものに変更する動機付けは、当業者にはない。

しかも、甲第1号証、甲第3号証〜甲第8号証には、ケース体が、「上面と、前記上面を囲む側面と、前記上面から前記側面に沿って延び、前記基板を保持する爪部と」を備えることは記載も示唆もされていないから、このことは、本件特許の出願時において周知技術であるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲2発明であるとはいえず、また、甲2発明に基づいて、又は、甲2発明において、周知技術に基づいて、相違点2−2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。

(イ)まとめ
したがって、相違点2−1について判断するまでもなく、本件発明1は、甲2発明ではないし、また、甲2発明に基づいて、又は、甲2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人柴田都は、特許異議申立書の「3(4)ウ(イ)甲2発明を主引例とする新規性進歩性について」の(a)の第22ページにおいて、「・構成要件B 甲2発明のケース本体22の「底面」は、本件特許発明1の「上面」(構成要件B)に相当する。」と主張する。
しかし、「底面」とは、立体の下側の面を意味し、反対に上側の面を「上面」ということは、文献を示すまでもない一般常識であるから、かかる主張は採用できない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に対して、更に技術的事項を追加して限定したものである。よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易になし得るものではない。

(3)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲2発明ではないし、また、甲2発明に基づいて、又は、甲2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、本件発明2は、甲2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項、第2項の規定に違反してされたものではない。

3 甲3発明を主引例とする進歩性について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲3発明を対比する。

(ア)甲3発明の「ベース部材10」は本件発明1の「ケース体」に対応し、甲3発明の「基板20」、「LED30」は、それぞれ本件発明1の「基板」、「回路部品」に相当する。

(イ)甲3発明は、「モジュール1は、ベース部材10と、ベース部材10に支持された基板20とを有するLEDモジュールであり、基板20に実装されたLED30を有し」、「ベース部材10は、基板20を支持する部材(フレーム)であり、ベース部材10には基板20が載置され」たものであり、基板20は、LED30が実装されたベース部材10が載置されたものであるといえる。
したがって、本件発明1と甲3発明とは、「回路部品が実装された基板が載置された部材」である点で共通する。

(ウ)甲3発明は、「ベース部材10は、本体部10aに爪部11及び凸部12が形成され、爪部11及び凸部12は、基板20をベース部材10に固定するための部材であり」、爪部11は基板20を保持するものであるといえる。
したがって、本件発明1と甲3発明とは、「前記基板を保持する爪部」を備える点で共通する。

(エ)甲3発明は、「爪部11の基端部に隣接する位置に貫通孔が形成されている」から、本件発明1と甲3発明とは、「前記爪部の基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されている」点で一致する。

(オ)したがって、本件発明1と甲3発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「回路部品が実装された基板を載置する部材であって、
前記基板を保持する爪部
を備え、
前記爪部の基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されている
部材。」

<相違点>
<相違点3−1>
本件発明1は、「基板を収納するケース体」であるのに対し、甲3発明は、「基板20」を「載置」する「ベース部材10」である点。

<相違点3−2>
本件発明1は、「上面と、前記上面を囲む側面と、前記上面から前記側面に沿って延び、前記基板を保持する爪部と」を備え、「前記上面における前記爪部の基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されている」のに対し、甲3発明は、「ベース部材10は、本体部10に爪部11及び凸部12が形成され、爪部11及び凸部12は、基板20をベース部材10に固定するための部材であ」るものの、ベース部材10について、本件発明1の上記のような特定はなされていない点。

イ 判断
(ア)相違点3−1、3−2について
相違点3−1、3−2は、いずれもケース体に関するものであるから、まとめて検討する。
甲3発明は、「モジュール1は、ベース部材1と、ベース部材10に支持された基板20とを有するLEDモジュールであり、基板20に実装されたLED30を有し、ベース部材10は、基板20を支持する部材(フレーム)であり、ベース部材10には基板20が載置され、基板20を載置するための本体部10aと、ベース部材10をカバー部材2に取り付けるための一対の取付部10bとを有し、一対の取付部10bの各々は、本体部10aの短手方向(X軸方向)における両端部からZ軸方向に延設されて」いるものであるところ、「ベース部材10は、基板20を支持する部材(フレーム)」であり、「一対の取付部10b」は「ベース部材19をカバー部材2に取り付けるため」のものである。
したがって、「カバー部材2に取り付けるための一対の取付部10b」を有する「ベース部材10」を、本件発明1のように、「基板を収納するケース体」であって、「上面と、前記上面と囲む側面と、前記上面から前記側面に沿って延び、前記基板を保持する爪部と」を備える「ケース体」に変更する動機付けは当業者にはない。

しかも、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証〜甲第8号証には、ケース体が、「上面と、前記上面を囲む側面と、前記上面から前記側面に沿って延び、前記基板を保持する爪部と」を備えることは記載も示唆もされていないから、このことは、本件特許の出願時において周知技術であるとはいえない。

したがって、甲3発明において、周知技術に基づいて、相違点3−1、3−2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。

(イ)まとめ
したがって、本件発明1は、甲3発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人柴田都は、特許異議申立書の「3(4)ウ(ウ)甲3発明を主引例とする進歩性について」の(a)の第24ページにおいて、「甲3発明における」「ベース部材10」は、「本件特許発明1の特許要件Aにおける」「ケース体」に「相当する。」と主張する。
しかし、「ケース体」とは、「容器、入れ物」を意味することが、一般常識であるところ、甲3発明において、「ベース部材10は、基板20を支持する部材(フレーム)であり、ベース部材10には基板20が載置され」るものであるから、かかる主張は採用できない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に対して、更に技術的事項を追加して限定したものである。よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲3発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易になし得るものではない。

(3)小括
以上のとおり、本件発明1、2は、甲3発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

4 甲4発明を主引例とする進歩性について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4発明を対比する。

(ア)甲4発明の「ロワーケース2」、「プリント配線基板1」は、それぞれ本件発明1の「ケース体」、「基板」に相当する。

(イ)甲4発明は、「ロワーケース2」であって、「爪6が設けられており、プリント配線基板1が取り付けられ、プリント配線基板1は爪6により固定され」ているものであるから、「ロワーケース2」は、「プリント配線基板2」を収納するといえる。
したがって、本件発明1と甲4発明とは、「基板を収納するケース体」である点で一致する。

(ウ)甲4発明は、「底面が2つの側面に挟まれており、爪6が設けられており、プリント配線基板1が取り付けられ、プリント配線基板1は爪6により固定され」るから、「爪6」は、「プリント配線基板1」を保持するといえる。
したがって、本件発明1と甲4発明とは、「側面と、前記基板を保持する爪部と」を備える点で共通する。

(エ)甲4発明は、「爪6の基端部に隣接する位置に貫通孔が形成されている」から、本件発明1と甲4発明とは、「前記爪部の基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されている」点で一致する。

(オ)したがって、本件発明1と甲4発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「基板を収納するケース体であって、
側面と、
前記基板を保持する爪部と
を備え、
前記爪部の基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されている
ケース体。」

<相違点>
<相違点4−1>
「基板」について、本件発明4では、「回路部品が実装された」ものであるのに対し、甲4発明では、プリント配線基板1に回路部品が実装されたものであることは特定されていない点。

<相違点4−2>
本件発明1は、「上面と、前記上面を囲む側面と、前記上面から前記側面に沿って延び、前記基板を保持する爪部と」を備え、「前記上面における前記爪部の基端部に隣接する位置には、貫通孔が形成されている」のに対し、甲4発明は、「底面が2つの側面に挟まれており」、「爪6の基端部に隣接する位置に貫通孔が形成されている」ものであり、「上面」を備えるものではなく、「側面」は「前記上面を囲む」ものではなく、「爪6」は、「前記上面から」延びるものではなく、「貫通孔」は、「前記上面における前記爪部(爪6)」の基端部に隣接する位置には形成されていない点。

イ 判断
(ア)相違点4−2について
事案に鑑み、まず、相違点4−2について検討する。
甲4発明において、「ロワーケース2」は、「底面が2つの側面に挟まれており、爪6が設けられており、プリント配線基板1が取り付けられ、プリント配線基板1は爪6により固定され」ているものであるところ、甲第4号証の第2ページ1〜4行、第2ページ5行〜第3ページ3行の記載から、ロワーケース2は、シャーシのロワーケースであるから、ロワーケース2を上面を備えるものとするためには、ロワーケース2の上下を逆さまにして、底面を上面として、その下方において、プリント配線基板1を爪6により支持した状態のシャーシに変更する必要がある。
ロワーケース2は、その下方において、プリント配線基板1を爪6により支持した状態とするよりも、その上方において、「プリント配線基板1が取り付けられ、プリント配線基板1は爪6により固定され」たものとすることが自然であるから、上記のように、ロワーケース2の上下を逆さまにして、その下方において、プリント配線基板1を爪6により支持した状態のシャーシに変更する動機付けは当業者にはない。

しかも、甲第1号証〜甲第3号証、甲第5号証〜甲第8号証には、ケース体が、「上面と、前記上面を囲む側面と、前記上面から前記側面に沿って延び、前記基板を保持する爪部と」を備えることは記載も示唆もされていないから、このことは、本件特許の出願時において周知技術であるとはいえない。
したがって、甲4発明において、周知技術に基づいて、相違点4−2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。

(イ)まとめ
したがって、相違点4−1について判断するまでもなく、本件発明1は、甲4発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人柴田都は、特許異議申立書の「3(4)ウ(エ)甲4発明を主引例とする進歩性について」の(a)の第25ページにおいて、「甲4発明におけるロワーケース2の「底面」は、本件特許発明1の構成要件Bの「上面」に相当する。」と主張する。
しかし、「底面」とは、立体の下側の面を意味し、反対に上側の面を「上面」ということは、文献を示すまでもない一般常識であるから、かかる主張は採用できない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に対して、更に技術的事項を追加して限定したものである。よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲4発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易になし得るものではない。

(3)小括
以上のとおり、本件発明1、2は、甲4発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-12-14 
出願番号 P2018-067224
審決分類 P 1 652・ 113- Y (H05K)
P 1 652・ 121- Y (H05K)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 河本 充雄
特許庁審判官 鈴木 聡一郎
恩田 春香
登録日 2022-03-03 
登録番号 7033987
権利者 三菱電機照明株式会社 三菱電機株式会社
発明の名称 ケース体及び制御システム用端末器  
代理人 弁理士法人きさ特許商標事務所  
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