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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08J |
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管理番号 | 1393141 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-10-05 |
確定日 | 2022-12-21 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第7048395号発明「均一性が改善されたケミカルメカニカルポリッシング層の作製方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第7048395号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第7048395号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成30年4月10日(パリ条約による優先権主張 2017年5月1日、アメリカ合衆国)の出願であって、令和4年3月28日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年4月5日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年10月5日に特許異議申立人 松本 慎一郎(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし10)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 磁性基板、光学基板及び半導体基板の少なくとも1つから選択される基板を研磨するためのケミカルメカニカルポリッシング(CMP研磨)層を製造する方法であって、 ポリマーシェルを有する複数の液体充填マイクロエレメントの組成物を提供するステップ、 遠心分離風力分級により前記組成物を分級して微粉及び粗粒子を除去し、800〜1500g/リットルの密度を有する液体充填マイクロエレメントを製造するステップ、 ならびに (i)又は(ii): (i)前記分級された液体充填マイクロエレメントを、70〜270℃にて1〜30分間加熱することにより、10〜100g/リットルの密度を有する気体充填マイクロエレメントに変換し、前記気体充填マイクロエレメントを液体ポリマーマトリックス形成材料と混合してパッド形成混合物を形成し、前記パッド形成混合物をキャスティング若しくは成形してポリマーパッドマトリックスを形成すること、又は、 (ii)前記分級された液体充填マイクロエレメントを、1〜30分のゲル化時間を有する液体ポリマーマトリックス形成材料と、25〜125℃のキャスティング温度若しくは成形温度にて混合してパッド形成混合物を形成し、前記パッド形成混合物をキャスティング若しくは成形してポリマーパッドマトリックスをキャスティング温度若しくは成形温度にて形成し、反応発熱によって前記液体充填マイクロエレメントを気体充填マイクロエレメントに変換すること のいずれかによってCMP研磨層を形成するステップ を含む方法。 【請求項2】 前記分級するステップが、微粉及び粗粒子を除去し、950〜1300g/リットルの密度を有する液体充填マイクロエレメントを製造する、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記分級するステップが、前記複数の液体充填マイクロエレメントの前記組成物をコアンダブロックを通過させることを含み、それにより、前記遠心分離風力分級が慣性、ガス又は空気流抵抗とコアンダ効果との組合せによって動作する、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記複数の液体充填マイクロエレメントの組成物が、前記組成物の1〜10重量%を微粉として、及び前記組成物の1〜10重量%を粗粒子として含み、前記分級するステップが、前記複数の液体充填マイクロエレメントの組成物から前記組成物の2〜20重量%を除去する、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記複数の液体充填マイクロエレメントの組成物が、前記組成物の1〜6重量%を微粉として、及び前記組成物の1〜6重量%を粗粒子として含み、前記分級するステップが、前記複数の液体充填マイクロエレメントの組成物から前記組成物の2〜12重量%を除去する、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記で得られる液体充填マイクロエレメントの組成物が、シリカ、マグネシア及びその他のアルカリ土類金属酸化物を実質的に含まない、請求項1に記載の方法。 【請求項7】 前記で得られる複数の液体充填マイクロエレメントの組成物が1〜100μmの平均粒径を有する、請求項1に記載の方法。 【請求項8】 前記で得られる液体充填ポリマーマイクロエレメントの組成物が2〜60μmの平均粒径を有する、請求項1に記載の方法。 【請求項9】 前記液体充填マイクロエレメントのポリマーシェルが、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(イソボルニルアクリレート)、ポリスチレン、それらの相互間のコポリマー、それらとビニルハライドモノマーとのコポリマー、それらとC1〜C4アルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー、それらとC2〜C4ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー、又はアクリロニトリル−メタクリロニトリルコポリマーから選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項10】 前記複数の液体充填マイクロエレメントの組成物が液体充填微小球を含む、請求項1に記載の方法。」 第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和4年10月5日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第2号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 証拠方法 甲第1号証:特開2000−344850号公報 甲第2号証:特開平11−322878号公報 甲第3号証:Expancelマイクロスフェアー製品カタログ、日本フィライト株式会社(2013年1月発行) 甲第4号証:特開2013−237841号公報 証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第4 当審の判断 1 証拠に記載された事項等 (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1には、「研磨パッド用ウレタン成形物の製造方法及び研磨パッド用ウレタン成形物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の証拠についても同様。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、半導体素子等の被研磨物を研磨するのに供される研磨パッド用ウレタン成形物の製造方法と、研磨パッド用ウレタン成形物に関するものである。」 ・「【0003】近年、半導体素子の高集積化に伴って基板の配線パターンの緻密化が進んでパターンの転写に影響するため、基板表面の平坦化がより強く要望されるようになった。そして、半導体基板のウェハ表面をより平坦化するため化学的な作用と機械的な作用を組み合わせた化学的機械的研磨法(Chemical Mechanical Polishing、略称CMP法)が採用されている。このCMP法に利用するのにより好適な研磨パッドの開発が要望されている。 【0004】このために、例えば特表平8−500622号公報にはポリウレタンの高分子マトリックス中に複数の膨脹済みの微小中空球体等の高分子微小エレメントが含有された研磨パッドが開示されている。このものは表面硬度が硬いので前述の不織布タイプや発泡ポリウレタンタイプの研磨パッドに比べて圧縮変形が生じ難く研磨速度及び平坦性が良好である。しかし、使用する高分子微小エレメントは膨脹済みの微小中空球体であり、その比重が小さく、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと比重差が大きいため混合しても分離しやすく分散状態が悪く、その粘度も高くなり、アミン化合物と混合攪拌すると泡かみを生ずる欠点が有り、又微小中空球体混合イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとアミン化合物を金型内に注入成形するとき、ポリウレタン樹脂が硬化するまでの間に膨脹済微小中空球体が浮上して均一に分散した研磨パッドが得られない欠点があり、さらなる改善が要望されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述した従来の欠点を解決するために研磨パッド用ウレタン成形物中に未発泡の加熱膨脹性微小中空球体による発泡と、これよりも大きさが大きい水による気泡の2種類の大きさの異なる気泡を形成させることにより、得られたウレタン成形物をスライスして得られる研磨パッドの研磨特性を向上させ、研磨パッド間の研磨特性のバラツキの少ない研磨パッド用ウレタン成形物を得ることにある。」 ・「【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、未発泡の加熱膨脹性微小球状体(A)とイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)と活性水素含有化合物(C)の混合物に対し、水(D)を0.005〜0.5重量%混合し、反応熱及び外部からの加熱により未発泡の加熱膨脹性微小球状体(A)を発泡させるとともに、水(D)による気泡を形成させる研磨パッド用ウレタン成形物の製造方法であり、該製造方法において、未発泡の加熱膨脹性微小球状体(A)はイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)及び/又は活性水素含有化合物(C)に対し予め混合する。又、本発明は活性水素含有化合物(C)がジアミン系化合物(C−1)のみ、もしくはジアミン系化合物(C−1)及び分子量500〜1000の低分子ジオール(C−2)との混合物を用いる研磨パッド用ウレタン成形物の製造方法を含む。未発泡の加熱膨脹性微小球状体(A)の配合量は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)と活性水素含有化合物(C)の合計100重量部に対し0.1〜10重量部とすることができる。更に、本発明は、ウレタン成形物中に未発泡の加熱膨脹性微小球状体(A)をウレタン成形時の熱により膨脹させた微小中空球体と水(D)による気泡が含有されている研磨パッド用ウレタン成形物を提供する。」 ・「【0007】 【発明の実施の形態】本発明で用いられる未発泡の加熱膨脹性微小球状体(A)は、特開昭57−137323号公報等に開示されている如く中心部に、例えば、イソブタン,ペンタン,イソペンタン,石油エーテル等の低沸点炭化水素が内包され、殻部分は例えば、アクリニトリル−塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体,塩化ビニル−エチレン共重合体等の熱可塑性樹脂からなり、加熱することにより中心部の低沸点炭化水素が気化しガス状となり殻部分が軟化しガスを内包した微小中空球体(E)となる。未発泡の加熱膨脹性微小球状体(A)の粒径は好ましくは5〜30μmであり、加熱により発泡し粒径は10〜100μmになるが、未発泡の加熱膨脹性微小球状体(A)の粒径が30μmより大きいと発泡後の粒径が大きくなり過ぎ研磨パッド用ウレタン成形物として好ましくない。又、未発泡の加熱膨脹性微小球状体(A)の比重は、用いられるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)の比重に近いものが使用上支障が無く好ましい。」 ・「【0018】混合機からの重合体溶液を90〜120℃に昇温されている金型内に注入し、型締し、90〜120℃で約30分間一次硬化する。更に、脱型後加熱オーブンに入れ90〜120℃で5〜20時間二次硬化する。このときの外部からの加熱により未発泡の加熱膨脹性微小球状体(A)は完全に発泡され加熱膨脹した微小中空球体(E)となりウレタン成形物中に含有される。」 ・「【0023】〔実施例1〕トリレンジイソシアネート770部をポリ(オキシテトラメチレン)グリコール1000部とジエチレングリコール155部の混合グリコールに反応させて得られたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー1000部に殻部分がアクリロニトリル−塩化ビニリデン共重合体からなり、殻内にイソブタンガスが内包された商品名:マツモトマイクロスフェアF−30D(松本油脂製薬(株)製)の粒子の大きさが10〜20μmである未発泡の加熱膨脹性微小球状体40部を添加混合した混合液を第1液タンクに仕込み70℃で保温し、活性水素含有化合物として3,3´−ジクロロ−4,4´−ジアミノジフェニルメタンを238部第2液タンクに仕込み、120℃で保温した。前記の未発泡の加熱膨脹性微小球状体とイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー及び活性水素含有化合物の合計量に対して、0.003重量%の水を第3液タンクに仕込み常温で管理した。第1液タンク,第2液タンク,第3液タンクの夫々の液体を注入口を3つ具備した混合機に夫々の注入口から注入し、3液を混合攪拌しながら100℃に予熱した成形機の金型へ注入した後、型締めをし、30分間、110℃で加熱し一次硬化させた。一次硬化させた成形物を脱型後、オーブンにて120℃で5時間二次硬化しウレタン成形物を得た。得られたウレタン成形物を25℃まで放冷した後に、1.5mmの厚みにスライスし、研磨パッドを10枚作製しこれを試料2とした。」 ・「【0027】〔比較例1〕トリレンジイソシアネート770部をポリ(オキシテトラメチレン)グリコール1000部とジエチレングリコール155部の混合グリコールに反応させて得られたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの1000部に殻部分がアクリロニトリル−塩化ビニリデン共重合体からなり殻内にイソブタンガスが内包された粒子の大きさが30〜50μmの商品名:EXPANCEL 551 DE(エクスパンセル社製)の膨脹済みの微小中空球体23部を添加混合した混合液を第1液タンクに仕込み70℃で保温し、活性水素含有化合物の3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン238部を第2液タンクに仕込み120℃で保温した。第1液タンク、第2液タンクの夫々の液体を注入口を2つ具備した混合機に夫々の注入口から注入し、混合機中で2液混合攪拌しながら100℃に予熱された成形機の金型へ注入後、型締めをし、30分間、110℃で加熱し一次硬化させた。一次硬化させた成形物を脱型後、オーブンにて120℃で5時間二次硬化させウレタン成形物を得た。得られたウレタン成形物は25℃まで放冷した後に、1.5mmの厚みにスライスし、研磨パッドを10枚作製し、これを試料9とした。」 イ 甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「トリレンジイソシアネート770部をポリ(オキシテトラメチレン)グリコール1000部とジエチレングリコール155部の混合グリコールに反応させて得られたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー1000部に殻部分がアクリロニトリル−塩化ビニリデン共重合体からなり、殻内にイソブタンガスが内包された商品名:マツモトマイクロスフェアF−30D(松本油脂製薬(株)製)の粒子の大きさが10〜20μmである未発泡の加熱膨脹性微小球状体40部を添加混合した混合液を第1液タンクに仕込み70℃で保温し、活性水素含有化合物として3,3´−ジクロロ−4,4´−ジアミノジフェニルメタンを238部第2液タンクに仕込み、120℃で保温し、前記の未発泡の加熱膨脹性微小球状体とイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー及び活性水素含有化合物の合計量に対して、0.003重量%の水を第3液タンクに仕込み常温で管理し、第1液タンク,第2液タンク,第3液タンクの夫々の液体を注入口を3つ具備した混合機に夫々の注入口から注入し、3液を混合攪拌しながら100℃に予熱した成形機の金型へ注入した後、型締めをし、30分間、110℃で加熱し一次硬化させ、一次硬化させた成形物を脱型後、オーブンにて120℃で5時間二次硬化しウレタン成形物を得、得られたウレタン成形物を25℃まで放冷した後に、1.5mmの厚みにスライスし、研磨パッドを作製する方法。」 (2)甲2に記載された事項等 ア 甲2に記載された事項 甲2には、「泡含有ポリウレタン成形物の製造方法、泡含有成形物用ウレタン樹脂組成物及びそれを用いた研磨パッド」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、半導体ウエハの研磨特性、平坦性に優れる研磨パッドを作成する為の泡含有ポリウレタン成形物の製造方法、そのウレタン樹脂組成物及びそれを用いた研磨パッドに関するものである。」 ・「【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、CMP法の研磨パッドとして優れた平坦性、研磨特性を有する泡含有ポリウレタン成形物の製造方法及びその研磨パッドを目的とするものである。」 ・「【0008】即ち、本発明は、(a)イソシアネート末端プレポリマーと(b)活性水素含有化合物を二液混合攪拌し反応硬化させるに際し、(c)未発泡又は発泡済みポリスチレン系ビーズを(a)イソシアネート末端プレポリマー又は(b)活性水素含有化合物の少なくとも一方に予め添加混合しておき、二液反応硬化の際に放出される反応熱及び外部からの加熱によって未発泡ポリスチレン系ビーズ(c)を微発泡させるか、又は発泡済みポリスチレン系ビーズ(c)を単に分散させることを特徴とする泡含有ポリウレタン成形物の製造方法、ポリスチレン系ビーズ(c)が、50重量%以上のスチレンモノマー成分から構成される硬質ポリスチレンタイプであること、好ましくはポリスチレン系ビーズ(c)が、成形物中で約150μm以下の平均粒径を有するものであること、好ましくは未発泡のポリスチレン系ビーズ(c)が、発泡剤を内部に含浸しているものであること、好ましくはイソシアネート末端プレポリマー(a)、活性水素含有化合物(b)、及び未発泡のポリスチレン系ビーズ(c)より構成され、熱によって該ポリスチレン系ビーズ(c)を発泡させることを特徴とする微発泡成形物用ウレタン樹脂組成物、泡含有ポリウレタン成形物を主構成物としてなる研磨パッドを提供するものである。」 ・「【0043】[参考例1] ポリスチレン系ビーズー1の製造(未発泡ビーズの製造) オートクレーブに、懸濁安定剤として第三燐酸カルシウム6部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05部及び脱イオン水100部の混合物と、触媒としてベンゾイルパーオキサイド0.25部及びtert-ブチルパーベンゾエート0.05部をスチレンモノマー95部及びアクリロニトリルモノマー5部からなるモノマー混合物に溶解した溶液と、αーピネンの完全水添単独重合体(ヤスハラケミカル社製「クリアロンP−125」)2.0部とを仕込み、85℃で重合を行い、重合率が90%に達した時点で、第三燐酸カルシウム2部を追加し、更に発泡剤としてのブタン8.5部とシクロヘキサン1.5部とを圧入した後、昇温して115℃で重合を完結させた。次いで、内容物を冷却後に生成したビーズを取り出し、脱水、乾燥、分級を行って、粒子径0.02〜0.07mmなる発泡性ポリスチレン系ビーズを得た。」 ・「【0049】[実施例1]ポリオキシテトラメチレングリコール(MW=1000)、ジエチレングリコール、2,6ートリレンジイソシアネートから構成されるイソシアネート末端プレポリマー(NC0当量=600)1000部に、参考例1で得られたポリスチレン系ビーズ40部を添加混合したコンパウンドと3,3’ージクロロー4,4’ージアミノジフェニルメタン211部を、それぞれエラストマー注型機のA液タンク及びB液タンクに仕込む。A液系は70℃、B液系は120℃で運転し、ミキシングヘッドで二液混合した樹脂を型温100℃の金型へ注入後、型締めをし、更にオーブン中で30分間110℃に加熱・一次硬化した。インゴットを脱型後、120℃で5時間二次硬化した。インゴットは25℃まで放冷した後に、1.5mm厚みにスライスし、研磨パッドを形成した。尚、インゴットの比重は0.81、硬度はショア-D54であった。」 イ 甲2に記載された発明 甲2に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。 <甲2発明> 「オートクレーブに、懸濁安定剤として第三燐酸カルシウム6部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05部及び脱イオン水100部の混合物と、触媒としてベンゾイルパーオキサイド0.25部及びtert-ブチルパーベンゾエート0.05部をスチレンモノマー95部及びアクリロニトリルモノマー5部からなるモノマー混合物に溶解した溶液と、αーピネンの完全水添単独重合体(ヤスハラケミカル社製「クリアロンP−125」)2.0部とを仕込み、85℃で重合を行い、重合率が90%に達した時点で、第三燐酸カルシウム2部を追加し、更に発泡剤としてのブタン8.5部とシクロヘキサン1.5部とを圧入した後、昇温して115℃で重合を完結させ、次いで、内容物を冷却後に生成したビーズを取り出し、脱水、乾燥、分級を行って、粒子径0.02〜0.07mmなる発泡性ポリスチレン系ビーズを得、ポリオキシテトラメチレングリコール(MW=1000)、ジエチレングリコール、2,6ートリレンジイソシアネートから構成されるイソシアネート末端プレポリマー(NCO当量=600)1000部に、上記で得られた発泡性ポリスチレン系ビーズ40部を添加混合したコンパウンドと3,3’ージクロロー4,4’ージアミノジフェニルメタン211部を、それぞれエラストマー注型機のA液タンク及びB液タンクに仕込み、A液系は70℃、B液系は120℃で運転し、ミキシングヘッドで二液混合した樹脂を型温100℃の金型へ注入後、型締めをし、更にオーブン中で30分間110℃に加熱・一次硬化し、インゴットを脱型後、120℃で5時間二次硬化し、インゴットは25℃まで放冷した後に、1.5mm厚みにスライスして、研磨パッドを形成する方法。」 (3)甲3に記載された事項 甲3にはおおむね次の事項が記載されている。 ・「 」(第2ページ) ・「 」 (第3ページ) ・「 」(第4ページ) (4)甲4に記載された事項 甲4には、「中空ポリマーアルカリ土類金属酸化物複合材」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は、ケミカルメカニカルポリッシング(CMP)のための研磨パッドに関し、特に、半導体、磁性又は光学基材の少なくとも一つを研磨するのに適したポリマー複合体研磨パッドに関する。」 ・「【0021】 ポリマーマトリックスは、ポリマーマトリックス内及びポリマーマトリックスの研磨面に分散したポリマー微小要素を含有する。ポリマー微小要素は外面を有し、研磨面にテキスチャを形成するために流体を充填されている。マトリックスを充填する流体は液体又は気体であることができる。流体が液体であるならば、好ましい流体は水、たとえば偶発的な不純物しか含有しない蒸留水である。流体が気体であるならば、空気、窒素、アルゴン、二酸化炭素又はそれらの組み合わせが好ましい。いくつかの微小要素の場合、気体は有機気体、たとえばイソブタンであってもよい。気体充填ポリマー微小要素は一般に、5〜200ミクロンの平均サイズを有する。好ましくは、気体充填ポリマー微小要素は一般に、10〜100ミクロンの平均サイズを有する。もっとも好ましくは、気体充填ポリマー微小要素は一般に、10〜80ミクロンの平均サイズを有する。必ずしもではないが、ポリマー微小要素は、好ましくは、球形を有する、又は微小球を表す。したがって、微小要素が球形である場合、平均サイズ範囲は直径範囲をも表す。たとえば、5〜200ミクロン、好ましくは10〜100ミクロン、もっとも好ましくは10〜80ミクロンの平均直径範囲である。」 ・「【0024】 不都合なアルカリ土類金属酸化物含有粒子種が最小限である複合アルカリ土類金属酸化物含有ポリマー微小要素を製造するためには、空気分級が有用であることができる。残念ながら、アルカリ土類金属酸化物含有ポリマー微小要素は、多くの場合、様々な密度、様々な壁厚さ及び様々な粒径を有する。加えて、ポリマー微小要素は、その外面上に分散した様々なアルカリ土類金属酸化物含有領域を有する。したがって、様々な壁厚さ、粒径及び密度を有するポリマー微小要素を分離することには多数の難題があり、遠心空気分級及び粒子選別における多数の試行が失敗している。これらの方法は、せいぜい、微粉のような供給原料から一つの不都合な成分を除去するのに有用である。たとえば、アルカリ土類金属酸化物含有微小球の多くは所望のアルカリ土類金属酸化物含有複合体と同じサイズを有するため、選別法を使用してこれらを分離することは困難である。しかし、慣性、気体又は気流抵抗及びコアンダ効果の組み合わせで作用する分離器が効果的な結果を提供し得るということが見いだされた。コアンダ効果とは、ジェットの一つの側に壁が配置されるならば、そのジェットはその壁に沿って流れる傾向を示すというものである。具体的には、気体充填微小要素を、コアンダブロックの曲面壁に隣接させながらガスジェット中に通すと、ポリマー微小要素が分離する。粗大なポリマー微小要素はコアンダブロックの曲面壁から分離して、ポリマー微小要素を二方向分離で浄化する。供給原料がアルカリ土類金属酸化物含有微粉を含む場合、方法は、コアンダブロックの壁によってアルカリ土類金属酸化物含有微粉からポリマー微小要素を分離し、微粉がコアンダブロックに沿って進むようにするさらなる工程を含むこともできる。三方向分離においては、粗粉がコアンダブロックから最大距離まで分離し、中間又は浄化された分級物が中間距離まで分離し、微粉がコアンダブロックに沿って進む。株式会社マツボーは、効果的な粒子分離にためにこれらの特徴を利用するエルボージェット空気分級機を製造している。供給原料ジェットに加えて、マツボー分級機は、二つのさらなる気流をポリマー微小要素の中に送り込んで、ポリマー微小要素と会合した粗粒子からのポリマー微小要素の分離を促進するさらなる工程を提供する。 【0025】 アルカリ土類金属酸化物含有微粉及びポリマー微小要素と会合した粗粒子の分離は、有利には、単一の工程で起こる。粗大物質及び微細物質の両方を除去するために一回のパスが効果であるが、様々な順序で、たとえば、一回目の粗大パス、二回目の粗大パス、次いで一回目の微細パス及び二回目の微細パスで分離を繰り返すことが可能である。しかし、一般には、もっとも清浄な結果は二又は三方向分離から生じる。さらなる三方向分離の欠点は収率及びコストである。供給原料は一般に、不都合なアルカリ土類金属酸化物含有粒子を0.1重量%よりも多く含む。さらには、不都合なアルカリ土類金属酸化物含有粒子を0.2重量%よりも多く、1重量%よりも多く含む供給原料とで効果的である。 【0026】 ポリマー微小要素を分離又は浄化したのち、ポリマー微小要素を液体ポリマーマトリックスの中に挿入して研磨パッドを形成する。ポリマー微小要素をパッドに挿入するための一般的な手段としては、流込み、押出し、水性溶媒置換及び水性分散ポリマーがある。混合すると、液体ポリマーマトリックス中へのポリマー微小要素の分散が改善する。混合ののち、ポリマーマトリックスを乾燥又は硬化させると、溝削り、孔あけ又は他の研磨パッド仕上げ作業に適した研磨パッドが形成する。 【0027】 図1A及び1Bを参照すると、エルボージェット空気分級機は、二つの側壁の間に幅「w」を有する。空気又は他の適当な気体、たとえば二酸化炭素、窒素もしくはアルゴンが開口10、20及び30を通って流れて、コアンダブロック40の周囲でジェット気流を発生させる。フィーダ50、たとえばポンプ又は振動フィーダによってポリマー微小要素を注入すると、そのポリマー微小要素は、分級工程を開始するジェット気流に入る。ジェット気流中、慣性、抗力(又は気流抵抗)及びコアンダ効果の力が合わさって粒子を三つの区分に分離する。微粉60はコアンダブロックに沿って流れる。中間粒径のアルカリ土類金属酸化物含有粒子は、コアンダ効果に打ち勝つのに十分な慣性を有して、浄化産物70として収集される。最後に、粗粒子80は最大距離を移動して中間粒子から分離する。粗粒子は、i)5μmよりも大きい粒径を有するアルカリ土類金属酸化物含有粒子、ii)ポリマー微小要素の外面の50%超を被覆するアルカリ土類金属酸化物含有領域、及びiii)アルカリ土類金属酸化物含有粒子と凝集して、120μmよりも大きい平均クラスタサイズになったポリマー微小要素の組み合わせを含む。これらの粗粒子は、ウェーハ研磨、特に先進ノードのためのパターン付きウェーハ研磨に対してマイナスの影響を及ぼす。分級機の間隔又は幅が、各区分に分離される画分(fraction)を決定する。あるいはまた、微粉コレクタを閉じて、ポリマー微小要素を二つの画分、すなわち粗画分及び浄化画分に分離することも可能である。」 2 申立理由1(甲1に基づく進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1の【0001】及び【0003】によると、甲1発明における「研磨パッド」は、「半導体素子等の被研磨物を研磨するのに供される」ものであり、「化学的機械的研磨法(Chemical Mechanical Polishing、略称CMP法)」に利用するのにより好適なものであるから、本件特許発明1における「磁性基板、光学基板及び半導体基板の少なくとも1つから選択される基板を研磨するためのケミカルメカニカルポリッシング(CMP研磨)層」に相当する。 甲1発明における「殻部分がアクリロニトリル−塩化ビニリデン共重合体からなり、殻内にイソブタンガスが内包された商品名:マツモトマイクロスフェアF−30D(松本油脂製薬(株)製)の粒子の大きさが10〜20μmである未発泡の加熱膨脹性微小球状体40部」は本件特許発明1における「ポリマーシェルを有する複数の液体充填マイクロエレメント」に相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「磁性基板、光学基板及び半導体基板の少なくとも1つから選択される基板を研磨するためのケミカルメカニカルポリッシング(CMP研磨)層を製造する方法であって、 ポリマーシェルを有する複数の液体充填マイクロエレメントの組成物を提供するステップを含む方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1−1> 本件特許発明1においては、「遠心分離風力分級により前記組成物を分級して微粉及び粗粒子を除去し、800〜1500g/リットルの密度を有する液体充填マイクロエレメントを製造するステップ」を「含む」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点1−2> 本件特許発明1においては、「(i)又は(ii): (i)前記分級された液体充填マイクロエレメントを、70〜270℃にて1〜30分間加熱することにより、10〜100g/リットルの密度を有する気体充填マイクロエレメントに変換し、前記気体充填マイクロエレメントを液体ポリマーマトリックス形成材料と混合してパッド形成混合物を形成し、前記パッド形成混合物をキャスティング若しくは成形してポリマーパッドマトリックスを形成すること、又は、 (ii)前記分級された液体充填マイクロエレメントを、1〜30分のゲル化時間を有する液体ポリマーマトリックス形成材料と、25〜125℃のキャスティング温度若しくは成形温度にて混合してパッド形成混合物を形成し、前記パッド形成混合物をキャスティング若しくは成形してポリマーパッドマトリックスをキャスティング温度若しくは成形温度にて形成し、反応発熱によって前記液体充填マイクロエレメントを気体充填マイクロエレメントに変換すること のいずれかによってCMP研磨層を形成するステップ」を「含む」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点1−1について検討する。 甲1には、相違点1−1に係る本件特許発明1の発明特定事項に関する記載はない。 また、そもそも、甲1発明は、「粒子の大きさが10〜20μm」と既に分級された市販品(「商品名:マツモトマイクロスフェアF−30D(松本油脂製薬(株)製)」)を使用するものであり、しかも、甲1の【0005】によると、わざわざ、未発泡の加熱膨張性微小中空球体による発泡よりも大きさが大きい水による気泡を形成させるものであるから、「未発泡の加熱膨張性微小球状体」を「分級して微粉及び粗粒子を除去する」動機付けがない。 他方、甲2には、「分級」することは記載されているものの、甲1発明において、「遠心分離風力分級」により「微粉及び粗粒子を除去」して「800〜1500g/リットルの密度を有する」ようにする動機付けとなる記載はない。 甲3には、「遠心分離風力分級」することは記載されていないし、当然、甲1発明において、「遠心分離風力分級」により「微粉及び粗粒子を除去」して「800〜1500g/リットルの密度を有する」ようにする動機付けとなる記載はない。 甲4には、「遠心分離風力分級」により「微粉及び粗粒子を除去」することは記載されているものの、その対象は、「気体充填ポリマー微小要素」であるし、甲1発明において、「遠心分離風力分級」により「微粉及び粗粒子を除去」して「800〜1500g/リットルの密度を有する」ようにする動機付けとなる記載もない。 以上のとおり、甲1ないし4のいずれにも、甲1発明において、相違点1−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載があるとはいえない。 したがって、甲1ないし4に記載された事項を考慮しても、甲1発明において、相違点1−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 ウ まとめ したがって、相違点1−2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明及び甲1ないし4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2ないし10について 本件特許発明2ないし10は、請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明及び甲1ないし4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)申立理由1についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし10は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないので申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(甲2に基づく進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲2発明を対比する。 甲2の【0001】及び【0006】によると、甲2発明における「研磨パッド」は、「半導体ウエハの研磨特性、平坦性に優れる」ものであり、「CMP法の研磨パッドとして優れた平坦性、研磨特性を有する」ものであるから、本件特許発明1における「磁性基板、光学基板及び半導体基板の少なくとも1つから選択される基板を研磨するためのケミカルメカニカルポリッシング(CMP研磨)層」に相当する。 甲2発明における「オートクレーブに、懸濁安定剤として第三燐酸カルシウム6部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05部及び脱イオン水100部の混合物と、触媒としてベンゾイルパーオキサイド0.25部及びtert-ブチルパーベンゾエート0.05部をスチレンモノマー95部及びアクリロニトリルモノマー5部からなるモノマー混合物に溶解した溶液と、αーピネンの完全水添単独重合体(ヤスハラケミカル社製「クリアロンP−125」)2.0部とを仕込み、85℃で重合を行い、重合率が90%に達した時点で、第三燐酸カルシウム2部を追加し、更に発泡剤としてのブタン8.5部とシクロヘキサン1.5部とを圧入した後、昇温して115℃で重合を完結させ、次いで、内容物を冷却後に生成したビーズを取り出し、脱水、乾燥、分級を行って」得た「粒子径0.02〜0.07mmなる発泡性ポリスチレン系ビーズ」は本件特許発明1における「ポリマーシェルを有する複数の液体充填マイクロエレメント」に相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「磁性基板、光学基板及び半導体基板の少なくとも1つから選択される基板を研磨するためのケミカルメカニカルポリッシング(CMP研磨)層を製造する方法であって、 ポリマーシェルを有する複数の液体充填マイクロエレメントの組成物を提供するステップを含む方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点2−1> 本件特許発明1においては、「遠心分離風力分級により前記組成物を分級して微粉及び粗粒子を除去し、800〜1500g/リットルの密度を有する液体充填マイクロエレメントを製造するステップ」を「含む」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点2−2> 本件特許発明1においては、「(i)又は(ii): (i)前記分級された液体充填マイクロエレメントを、70〜270℃にて1〜30分間加熱することにより、10〜100g/リットルの密度を有する気体充填マイクロエレメントに変換し、前記気体充填マイクロエレメントを液体ポリマーマトリックス形成材料と混合してパッド形成混合物を形成し、前記パッド形成混合物をキャスティング若しくは成形してポリマーパッドマトリックスを形成すること、又は、 (ii)前記分級された液体充填マイクロエレメントを、1〜30分のゲル化時間を有する液体ポリマーマトリックス形成材料と、25〜125℃のキャスティング温度若しくは成形温度にて混合してパッド形成混合物を形成し、前記パッド形成混合物をキャスティング若しくは成形してポリマーパッドマトリックスをキャスティング温度若しくは成形温度にて形成し、反応発熱によって前記液体充填マイクロエレメントを気体充填マイクロエレメントに変換すること のいずれかによってCMP研磨層を形成するステップ」を「含む」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点2−1について検討する。 甲2には、相違点2−1に係る本件特許発明1の発明特定事項に関する記載はないし、甲2発明において、「遠心分離風力分級」により「微粉及び粗粒子を除去」して「800〜1500g/リットルの密度を有する」ようにする動機付けとなる記載もない。 他方、甲1にも、甲2発明において、「遠心分離風力分級」により「微粉及び粗粒子を除去」して「800〜1500g/リットルの密度を有する」ようにする動機付けとなる記載はない。 甲3には、「未膨張EXPANCEL」の「真比重」が「1000〜1300kg/m3」であること、すなわち、「密度」が「1000〜1300g/リットル」であることが記載されているといえるものの、甲3の第4ページの左欄(外殻成分は、上から順に、「MMA,AN」、「MMA、AN、MAN」及び「PVDC、AN」となっている。)によると、「未膨張EXPANCEL」は、「ポリスチレン系ビーズ」ではないから、甲3に記載された事項を「ポリスチレン系ビーズ」を必須成分とする甲2発明に適用するには阻害要因があるといえる。なお、甲3から、「真比重」、すなわち「密度」の値だけを都合良く抽出して甲2発明に適用できるとする理由もない。すなわち、甲3には、甲2発明において、「800〜1500g/リットルの密度を有する」ようにする動機付けとなる記載はない。 甲4には、「遠心分離風力分級」により「微粉及び粗粒子を除去」することは記載されているものの、その対象は、「気体充填ポリマー微小要素」であるし、甲2発明において、「遠心分離風力分級」により「微粉及び粗粒子を除去」して「800〜1500g/リットルの密度を有する」ようにする動機付けとなる記載もない。 以上のとおり、甲1ないし4のいずれにも、甲2発明において、相違点2−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載があるとはいえない。 したがって、甲1ないし4に記載された事項を考慮しても、甲2発明において、相違点2−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 ウ まとめ したがって、相違点2−2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明及び甲1ないし4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2ないし10について 本件特許発明2ないし10は、請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2発明及び甲1ないし4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)申立理由2についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし10は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないので申立理由2によっては取り消すことはできない。 第5 結語 上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-12-09 |
出願番号 | P2018-075519 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C08J)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
▲吉▼澤 英一 |
特許庁審判官 |
加藤 友也 三上 晶子 |
登録日 | 2022-03-28 |
登録番号 | 7048395 |
権利者 | ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド |
発明の名称 | 均一性が改善されたケミカルメカニカルポリッシング層の作製方法 |
代理人 | 弁理士法人 津国 |
代理人 | 弁理士法人 津国 |