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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G06K
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  G06K
審判 全部無効 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  G06K
審判 全部無効 特29条特許要件(新規)  G06K
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  G06K
審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更  G06K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06K
審判 全部無効 特174条1項  G06K
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  G06K
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  G06K
管理番号 1393414
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-02-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-12-28 
確定日 2022-10-31 
訂正明細書 true 
事件の表示 上記当事者間の特許第4392521号発明「ドットパターン」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 令和3年3月30日付け訂正請求において,特許第4392521号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書の段落0186,0187,0191,0192のとおり訂正することを認める。 特許第4392521号の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

特許第4392521号(以下,「本件特許」という。)は,平成20年9月1日に出願され,平成21年10月23日に請求項1〜3に係る発明について特許権の設定登録がなされたものである。
これに対して,平成30年12月28日にソニックステクノロジー株式会社により,本件特許を無効にすることについての審判の請求がなされたところ,その審判における手続の経緯は,以下のとおりである。

平成30年12月28日付け 審判請求書(請求人)
令和 元年 6月10日付け 審判事件答弁書(被請求人)
同日付け 訂正請求
令和 元年 8月 2日付け 弁駁書(請求人)
令和 元年10月16日付け 審理事項通知(1回目)
令和 元年11月15日付け 口頭審理陳述要領書(第一回)(請求人)
令和 元年11月15日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人,1回目)
令和 元年11月22日付け 審理事項通知(2回目)
令和 元年12月 5日付け 口頭審理陳述要領書(第二回)(請求人)
令和 元年12月 6日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人,2回目)
令和 2年 1月14日付け 上申書(被請求人)
令和 2年 1月21日 口頭審理
令和 2年 1月28日付け 上申書(被請求人)
令和 2年 2月12日付け 上申書(請求人)
令和 2年 3月31日付け 上申書(被請求人)
令和 2年 7月15日付け 上申書(被請求人)
令和 2年 9月10日付け 上申書(請求人)
令和 3年 1月22日付け 審決の予告
令和 3年 3月30日付け 訂正請求(2回目)
令和 3年 3月30日付け 上申書(被請求人)
令和 3年 6月17日付け 弁駁書(2)(請求人)
令和 3年 8月 2日付け 答弁書(2)(被請求人)

なお,本件無効審判事件に関連する事件として,以下の無効審判事件,特許権侵害差止等請求事件,同請求控訴事件がある。
無効2018−800156号
無効2018−800157号
無効2019−800003号
平成30年(ワ)第10126号
令和2年(ネ)第10045号

第2 訂正請求
1 訂正請求の趣旨および訂正の内容
本件特許の訂正について,令和元年6月10日付け訂正請求書及び令和3年3月30日付け訂正請求書(以下,「訂正請求書(2)」という。)が提出されているが,「訂正の請求がされた場合において,その審判事件において先にした訂正の請求があるときは,当該先の請求は,取り下げられたものとみなす」(特許法第134条の2第6項)と規定されているから,訂正請求書(2)における訂正の請求のみを審理の対象とする。
被請求人が,訂正請求書(2)で求める訂正請求(以下,「本件訂正請求」という。また,本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は,「特許第4392521号の明細書,特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1〜3について訂正することを求める。」であり,その訂正の内容は,以下のとおりである。(当審注:以下,本件訂正前の「特許第4392521号の明細書」を単に,「明細書」あるいは「本件特許明細書」ともいう。なお,下線は,訂正の内容について参考のために当審で付加したものである。)

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」とあるのを,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」に訂正する。

(2)訂正事項2
明細書の段落0009の「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」を「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」に訂正する。

(3)訂正事項3
明細書の段落0186の「ここで,4×4個の格子領域を1つのデータブロックまたは格子ブロックと呼び,この格子ブロックの四隅(格子線の交点(格子点)上)には格子ドットLDが配置されている。」を「ここで,図105における4×5個の格子領域を1つのデータブロックまたは格子ブロックと呼び,この格子領域の四隅(格子線の交点(格子点)上)には格子ドットLDが配置されている。」に訂正する。

(4)訂正事項4
明細書の段落0187の「どの格子ブロックからどの格子ブロックまでが1つのデータであるかを示すためにキードットKDを配置している。」を「どの格子領域からどの格子領域までが1つのデータであるかを示すためにキードットKDを配置している。」に訂正する。

(5)訂正事項5
明細書の段落0191の「データは,図103に示すように,ドット605を格子ブロック内の中心点からどの程度ずらすかによってデータ内容が定義できるようになっている。」を「データは,図103に示すように,ドット605を格子領域内の中心点からどの程度ずらすかによってデータ内容が定義できるようになっている。」に訂正する。

(6)訂正事項6
明細書の段落0191の「同図では,中心から等距離で45度ずつそれぞれずらした点を8個定義することによって単一の格子ブロックで8通り,すなわち3ビットのデータを表現できるようになっている。」を「同図では,中心から等距離で45度ずつそれぞれずらした点を8個定義することによって単一の格子領域で8通り,すなわち3ビットのデータを表現できるようになっている。」に訂正する。

(7)訂正事項7
明細書の段落0192の「つまり,前述のようにキードットKDがデータ領域の範囲を定義しているため,このキードットKDの配置を変更すれば任意の可変長の格子ブロック群をデータ格納領域として扱うことができるわけである。」を「つまり,前述のようにキードットKDがデータ領域の範囲を定義しているため,このキードットKDの配置を変更すれば任意の可変長の格子領域群をデータ格納領域として扱うことができるわけである。」に訂正する。

2 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項1は,特許請求の範囲の請求項1に「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」とあるのを,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」に訂正するものである。

(イ)訂正前の「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」という構成は,本件特許明細書の段落【0191】の「データは,図103に示すように,ドット605を格子ブロック内の中心点からどの程度ずらすかによってデータ内容が定義できるようになっている。同図では,中心から等距離で45度ずつそれぞれずらした点を8個定義することによって単一の格子ブロックで8通り,すなわち3ビットのデータを表現できるようになっている。なお,さらに中心点から距離を変更した点をさらに8個定義すれば16通り,すなわち4ビットのデータを表現できる。」との記載や本件特許の【図103】の記載において説明されるものであり,訂正前の構成は,「中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」ているから,8方向に情報ドットを配置することができるものである。
これに対し,訂正後の構成は,「中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」ているから,4方向にしか情報ドットを配置することができない。
そうすると,中心から等距離に情報ドットを配置した場合,8方向に情報ドットを配置できる構成を,4方向にしか情報ドットを配置することができない構成に変更すると,定義できるデータ内容の個数が8個から4個に減ってしまうから,両者は異なる構成であり,訂正後の構成は,訂正前の構成を下位概念に限定したものとはいえない(逆に,4個しか定義できない構成を8個定義できる構成に変更する場合であれば,そのための構成を付加し,上位概念から下位概念に限定したといえる余地もある。)。
したがって,訂正事項1は,上位概念を下位概念に限定したものとはいえないから,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものとはいえない。
また,訂正事項1は,特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」,同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」,又は同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」のいずれを目的とするものともいえないことは明らかである。

(ウ)したがって,訂正事項1は,特許法第134条の2第1項ただし書に掲げるいずれかの事項を目的とするものではない。

(エ)被請求人の主張について
被請求人は,令和3年8月2日付けの答弁書の7頁において,「ところで,令和3年3月30日提出の訂正請求書に記載の通り,訂正前の請求項1は情報ドットを8方向のうちいずれかの方向(1方向〜8方向)にずらす場合を含んでいたのに対し,本件訂正後の請求項1に係る発明(以下,「訂正発明1」という。)は情報ドットを4方向のみのうちいずれかの方向にずらす場合しか含まないから,情報ドットを8方向,7方向,6方向,5方向にずらした場合を含まなくなる。
すなわち,訂正前の請求項1は,45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向という,【図5】から【図8】の図5ドットパターンの概念を含みそれを拡張した技術的に上位の概念を含むのに対して,訂正後の請求項1は,90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向という,【図5】〜【図8】の概念に限定される技術的に下位の概念という関係があることは明らかである。」などと主張しているが,8方向に情報ドットを配置できる構成を,4方向にしか情報ドットを配置することができない構成に変更すると,中心から等距離に情報ドットを配置した場合,定義できるデータ内容の個数が8個から4個に減ってしまうから,両者は異なる構成であり,訂正後の構成は,訂正前の構成を下位概念に限定したものとはいえないことは,上記したとおりである。
したがって,被請求人の上記主張は採用することができない。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更
(ア)上記アで検討したとおり,訂正事項1は,8方向に情報ドットを配置できる構成を,4方向にしか情報ドットを配置することができない構成に変更することで,訂正前の「少なくとも8個以上のデータ内容が定義できる」構成を,「4個のデータ内容が定義できる」構成を含む訂正後の構成に変更するものであり,両者は,定義できるデータ内容の個数が異なるものであるから,実質上特許請求の範囲を変更するものである。

(イ)したがって,訂正事項1は,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。

ウ 新規事項の有無
(ア)訂正事項1による訂正後の請求項1は,「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との事項で特定されるものである。
訂正事項1に関して,被請求人は,訂正請求書(2)の5頁において,以下の通り主張している。
「c 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は,図5〜図8から明確に把握できる事項である。具体的には,図5〜図8には,点線で囲まれた領域の中に,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点から上方向,下方向,右方向,左方向のうち少なくともいずれかの方向にドットが配置されている。点線で囲まれた領域から引き出し線で「この部分で情報を表現」と記載されていることからも明らかなように,これらのドットは,上方向,下方向,右方向,左方向のいずれかの方向,すなわち90°ずつずらした縦横方向のいずれかの方向にずれることによりデータ内容を定義している。
したがって,「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」ていることは,願書に添付した明細書等に記載された事項である。」(訂正請求書(2)第5頁「c」の項を参照。)
そこで,【図5】〜【図8】のドットパターンの記載について検討する。
【図5】〜【図8】のドットパターンに関しては,本件特許明細書の段落【0023】に「図4は他のドットパターンを用いた情報再生方法の構成を示すブロック図であり,(a)はドットコードの生成について,(b)はドットパターンの認識についての説明図である。図5から図8は他のドットパターンの一例を示す正面図である。」と記載されるほかは,特段,【図5】〜【図8】のドットパターンの内容に関する説明は記載されていないので,各図面の記載自体から読み取れる内容について検討する。

a まず,【図5】について検討する。
【図5】(図は,後記第7の「1」を参照。以下同様。)の左上のx0,x1,y0,y1のうちのx0とy0は白丸であるのに対して,x1,y1は黒丸であり,【図5】の9箇所のx0,x1,y0,y1に対応する位置の黒丸(ドット)の配置と,【図5】の下に標記されている「上記は,x座標100110001 y座標110101011 表現可能範囲は,0≦x座標≦29−1 0≦y座標≦29−1」との記載を合わせて読むと,x0とx1のうちのx0にドットを配置した場合は“x=0”を表し,x1にドットを配置した場合は,“x=1”を表し,同様に,y0とy1のうちのy0にドットを配置した場合は“y=0”を表し,y1にドットを配置した場合は,“y=1”を表していることを読み取ることができる。
してみると,【図5】には,x0とx1の中間点(x0とx1を結ぶ線とy0とy1を結ぶ線とが交わる点)から図面に向かって左側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“x=0”が表現され,前記中間点から右側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“x=1”が表現され,また,y0とy1の中間点(x0とx1を結ぶ線とy0とy1を結ぶ線とが交わる点)から図面に向かって下側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“y=0”が表現され,前記中間点から上側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“y=1”が表現されることが記載されていると認められる。
そうすると,訂正後の請求項1の「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との記載と,【図5】に記載されるドットパターンとは,「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に配置することによってデータ内容を定義し」ている点では,共通しているものの,【図5】のドットパターンは,「情報ドット」を「格子点の中心」から「どの程度ずらすか」によってデータ内容を定義しているものとはいえない。
つまり,【図5】のドットパターンでは,格子点の中心と情報ドットが配置される上下左右方向の位置とは,1マス分の距離で一定となっており,「どの程度」というような可変の距離は想定されていない。
したがって,訂正後の請求項1における「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との事項は,【図5】のドットパターンには記載されていない。

b 次に,【図6】について検討する。
【図6】の左上のc0,c1,c2,c3のうちのc0の位置に黒丸(ドット)が配置されており,【図6】の9箇所のc0,c1,c2,c3に対応する位置におけるドットの配置と,【図6】の下に標記されている「上記は,コード124432311=000111111001100000 表現可能範囲は,0≦コード≦49−1≦218−1」との記載を合わせて読むと,等式の左辺の「124432311」との記載と図面のドットの位置から,c0にドットを配置した場合は“1”を表し,c1にドットを配置した場合は“2”を表し,c2にドットを配置した場合は“3”を表し,c3にドットを配置した場合は“4”を表していることを読み取ることができ,また,同様に等式の右辺の「000111111001100000」との記載と図面のドット位置から,c0にドットを配置した場合は二進数“00”を表し,c1にドットを配置した場合は“01”を表し,c2にドットを配置した場合は“10”を表し,c3にドットを配置した場合は“11”を表していることを読み取ることができる。
してみると,【図6】には,c0とc2を結ぶ線とc3とc1を結ぶ線とが交わる点(中心点)から図面に向かって上側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“00”が表現され,前記中心点から右側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“01”が表現され,前記中心点から下側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“10”が表現され,前記中心点から左側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“11”が表現されることが記載されていると認められる。
そうすると,訂正後の請求項1の「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との記載と,【図6】に記載されるドットパターンとは,「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に配置することによってデータ内容を定義し」ている点では,共通しているものの,【図6】のドットパターンは,「情報ドット」を「格子点の中心」から「どの程度ずらすか」によってデータ内容を定義しているものとはいえない。
つまり,【図6】のドットパターンでは,格子点の中心と情報ドットが配置される上下左右方向の位置とは,1マス分の距離で一定となっており,「どの程度」というような可変の距離は想定されていない。
したがって,訂正後の請求項1における「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との事項は,【図6】のドットパターンには記載されていない。

c 次に,【図7】について検討する。
【図7】の上の段に記載されている,x1,x2,x3,x4,x5,x6の部分をみると,x1,x3,x4の位置にドットが配置されており,また,y1,y2,y3,y4,y5,y6の部分をみると,y2,y4,y5の位置にドットが配置されていることが読み取れる。
そして,【図7】のx1〜x18のドットの有無及びy1〜y18のドットの有無と,【図7】の下に標記されている「上記は,x座標101100111001010110 y座標010110011010100110 表現可能範囲は,0≦x座標≦218−1 0≦y座標≦218−1」との記載を合わせて読むと,x1〜x18,y1〜y18にドットを配置した場合は“1”を表し,ドットを配置しない場合には,“0”を表していることを読み取ることができる。
してみると,【図7】には,x1とx2を結ぶ線とy1とy2を結ぶ線とが交わる点(中心点)から図面に向かって左側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“x1=1”が表現され,ドットを配置しないと“x1=0”が表現され,同様に,前記中心点から図面に向かって右側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“x2=1”が表現され,ドットを配置しないと“x2=0”が表現され,また,前記中心点から図面に向かって上側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“y1=1”が表現され,ドットを配置しないと“y1=0”が表現され,同様に,前記中心点から図面に向かって下側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“y2=1”が表現され,ドットを配置しないと“y2=0”が表現されることが記載されていると認められる。
そうすると,訂正後の請求項1の「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との記載と,【図7】に記載されるドットパターンとは,「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に配置することによってデータ内容を定義し」ている点では,共通しているものの,【図7】のドットパターンは,「情報ドット」を「格子点の中心」から「どの程度ずらすか」によってデータ内容を定義しているものとはいえない。
つまり,【図7】のドットパターンでは,格子点の中心と情報ドットが配置される上下左右方向の位置とは,1マス分の距離で一定となっており,「どの程度」というような可変の距離は想定されていない。
したがって,訂正後の請求項1における「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との事項は,【図7】のドットパターンには記載されていない。

d 最後に,【図8】について検討する。
図8の上の段に記載されている,c1,c2,・・・c12の部分をみると,c1,c4,c6,c7,c8,c9の位置にドットが配置されており,c2,c3,c5,c10,c11,c12の位置にはドットが配置されていないことが読み取れる。
そして,【図8】のc1〜c36におけるドットの有無と,【図8】の下に標記されている「上記は,コード100101111000010010100011110011100101 表現可能範囲は,0≦コード≦236−1」との記載を合わせて読むと,c1〜c36にドットを配置した場合は“1”を表し,ドットを配置しない場合には,“0”を表していることを読み取ることができる。
してみると,【図8】には,c1とc2を結ぶ線とc3とc4を結ぶ線とが交わる点(中心点)から図面に向かって上側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“c1=1”が表現され,ドットを配置しないと“c1=0”が表現され,同様に,前記中心点から図面に向かって下側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“c2=1”が表現され,ドットを配置しないと“c2=0”が表現され,また,前記中心点から図面に向かって左側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“c3=1”が表現され,ドットを配置しないと“c3=0”が表現され,同様に,前記中心点から図面に向かって右側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“c4=1”が表現され,ドットを配置しないと“c4=0”が表現されることが記載されていると認められる。
そうすると,訂正後の請求項1の「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との記載と,【図8】に記載されるドットパターンとは,「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に配置することによってデータ内容を定義し」ている点では,共通しているものの,【図8】のドットパターンは,「情報ドット」を「格子点の中心」から「どの程度ずらすか」によってデータ内容を定義しているものとはいえない。
つまり,【図8】のドットパターンでは,格子点の中心と情報ドットが配置される上下左右方向の位置とは,1マス分の距離で一定となっており,「どの程度」というような可変の距離は想定されていない。
したがって,訂正後の請求項1における「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との事項は,【図8】のドットパターンには記載されていない。

(イ)上記(ア)で検討したとおり,本件特許の【図5】〜【図8】には,訂正事項1に係る「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との構成は記載されていない。
ところで,本件特許明細書の段落【0191】には,「データは,図103に示すように,ドット605を格子ブロック内の中心点からどの程度ずらすかによってデータ内容が定義できるようになっている。同図では,中心から等距離で45度ずつそれぞれずらした点を8個定義することによって単一の格子ブロックで8通り,すなわち3ビットのデータを表現できるようになっている。なお,さらに中心点から距離を変更した点をさらに8個定義すれば16通り,すなわち4ビットのデータを表現できる。」と記載されていて,「中心点から距離を変更した点をさらに8個定義すれば16通り,すなわち4ビットのデータを表現できる」ことは,中心点からずらす「程度」によって異なる情報を表現できることであるから,この記載は,訂正事項1に係る「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」に対応する記載であると認められる。
しかしながら,上記段落【0191】の記載は,【図103】〜【図106】の実施例に関する記載であって,後記第7の「1」で検討するとおり,【図5】〜【図8】の実施例に基づくドットパターンと【図103】〜【図106】の実施例に基づくドットパターンを組み合わせることは,本件特許明細書では想定されておらず,そのような組合せをすることは,新規事項の追加と判断されるものであることからすると,【図5】〜【図8】のドットパターンにおいて,【図103】の説明である段落【0191】の記載に基づく構成を採用することは,同様に,新規事項の追加と判断されるものである。

(ウ)上記(ア)及び(イ)で検討したとおりであるから,訂正事項1に係る「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との事項は,本件特許明細書にも,本件特許の図面にも記載されていない。
したがって,訂正事項1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正ではなく,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

エ 小括
上記ア〜ウで検討したとおり,訂正事項1は,特許法第134条の2第1項ただし書に掲げるいずれかの事項を目的とするものではなく,また,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しないから,訂正事項1に係る訂正を認めない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は,特許請求の範囲の請求項1の訂正(上記訂正事項1に係る訂正)に対応して,当該特許請求の範囲の請求項1の記載との整合を図るために明細書の記載を訂正するものであるから,特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無
訂正事項2は,訂正事項1で請求項1の記載を訂正することに対応して,対応する明細書の段落【0009】の記載を訂正事項1と同様の内容で訂正するものであるから,上記(1)ウで検討した訂正事項1と同様の理由で,訂正事項2は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正ではない。
したがって,訂正事項2は,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

ウ 小括
上記イで検討したとおり,訂正事項2は,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから,訂正事項2に係る訂正を認めない。

(3)訂正事項3〜7について
訂正事項3〜7それぞれの適否を以下の(4)〜(8)で検討する前に,本件特許明細書における,「格子線」,「格子点」,「格子ドットLD」,「キードットKD」,「データブロック」,「格子領域」,「格子ブロック」と「ダミードット」,「空ドット」,「情報ドット」の各用語の意味を検討する。
なお,本件特許明細書は,平成21年1月9日付け手続補正により段落【0009】及び【0011】が変更され,段落【0012】が削除され,平成21年6月15日付け手続補正により段落【0009】が変更されているが,それ以外は願書に最初に添付した明細書(以下,「出願当初明細書」という。)と同じである。また,特許請求の範囲については,願書に最初に添付した特許請求の範囲から変更,削除されているが,図面については,願書に最初に添付した図面から変更,削除はされていない(以下,出願当初明細書,願書に最初に添付した特許請求の範囲,及び図面を合わせて「出願当初明細書等」という。)。

ア 本件特許明細書と各図面の対応について

本件特許明細書の記載を,記載の文脈に沿って理解すると,本件特許明細書の段落【0184】〜【0202】までは,段落【0184】に「次に,本発明におけるドットパターンの仕様について図103〜図106を用いて説明する。」と記載されるとおり,主に,本件特許の図面の【図103】〜【図106】を用いた,ドットパターンの仕様の説明であると認められる。
詳細には,訂正の対象部分の本件特許明細書は,以下のような,本件特許の図面との対応関係があると認められる。
・本件特許明細書の段落【0185】〜【0189】:本件特許の図面の【図105】を用いた,ドットパターンの構成要素の説明,
・本件特許明細書の段落【0190】:本件特許の図面の【図104】を用いた,「データの並び」の順序の説明,
・本件特許明細書の段落【0191】:本件特許の図面の【図103】を用いた,ドットを「ずらした点」の説明,
・本件特許明細書の段落【0192】〜【0193】:「キードットKD」の変形(配置とずらし方)の説明。

なお,本件特許明細書の段落【0194】以下には,訂正の対象ではないが,以下の説明の記載がある。
・本件特許明細書の段落【0194】〜【0196】は,本件特許の図面の【図74】,【図76】,【図78】を用いた,角度パラメータによる階層的な情報配置の説明,
・本件特許明細書の段落【0197】は,本件特許の図面の【図106】を用いた,「ダミードット」の説明,
・本件特許明細書の段落【0198】は,「空ドット」の説明,
・本件特許明細書の段落【0199】〜【0200】は,撮影中心と「異なるブロック」(「他のブロック」)の読み取りの説明,
・本件特許明細書の段落【0201】〜【0202】は,本発明のドットパターンが,格子ドットを用いることで撮影条件による歪みに強いことの説明。

さらに,本件特許明細書の段落【0203】〜【0210】は,本件特許の図面の【図61】〜【図67】を用いた,サブブロックで構成された1ブロック相当のドットパターンをカメラで読み込む方法の説明である。

そこで,以下では,訂正事項の検討において,上記のような本件特許明細書の記載における前後の文脈に従って,本件特許明細書と対応する各図面とを参照して,検討する。

イ 「格子線」及び「格子点」について

本件特許明細書には,「格子線」及び「格子点」について,段落【0009】及び【0011】に請求項1及び請求項3の引き写しが記載され,また,段落【0185】,【0186】,【0188】,【0193】,及び【0244】に以下の記載があるほかは,「格子線」及び「格子点」に関する特段の記載はなされていない。(当審注:下線は当審で付加。)
「【0185】
ドットパターン部601は,図105に示すように,格子状に配置されたドットで構成されている。なお縦横方向の格子線はドットの配置位置を説明するためのものであり実際の印刷物上には存在しない。
【0186】
ここで,4×4個の格子領域を1つのデータブロックまたは格子ブロックと呼び,この格子ブロックの四隅(格子線の交点(格子点)上)には格子ドットLDが配置されている。格子ドットLD同士の間隔は0.35mm〜1.0mm,好ましくは0.5mm程度であることが最適である。また,ドットの直径は前記格子ドット間隔の8〜10%程度であることが望ましい。」
「【0188】
キードットKDとは,格子ドットLDの位置をずらしたものである。すなわち,格子ドットLDは本来格子点上に配置されているが,この位置をずらしてキードットKDを配置している。なお,キードットKDの格子点からのずれは約20%前後程度が好ましい。」
「【0193】
また,本発明のドットパターンでは,キードットのずらし方を変更することにより,同一のドットパターン部であっても別の意味を持たせることができる。つまり,キードットKDは格子点からずらすことでキードットKDとして機能するものであるが,このずらし方を格子点から等距離で45度ずつずらすことにより8パターンのキードットを定義できる。」
「【0244】
この場合,ペン型スキャナ1001の先端部をヒントを希望する空白枠内1133に当接させることで,該空白枠内に形成されたドットパターンを読み込んで当該ワードのヒントを液晶表示部1131に表示させることができる。このとき,同じ空白枠内に当接させる場合であっても,ペン型スキャナ1001を当接させる角度によって縦方向のヒント,横方向のヒント,斜め方向のヒントをそれぞれ表示させることができる。このとき,前述のように,格子ドットに対するキードットの格子点からのずれを中央処理装置(CPU)で計算する際に,カメラの傾き(紙面の鉛直軸を中心にした撮像素子の回転方向へのずれ)を計算できるため,カメラの傾きに応じたクロスワードパズルの縦,横,斜め方向を認識することができる。したがってそれに対応したヒントを記憶手段から読み出して表示したりスピーカ1007から発声させることができる。」

上記記載によれば,本件特許明細書において,「格子線」は,「ドットの配置位置を説明するためのもので」,「実際の印刷物上には存在しない」,「縦横方向の線」のことであることが読み取れ,また,「格子点」は,「格子線の交点」であることが読み取れる。
ここで,「格子」とは,「○一(当審注:原文の「丸付き漢数字」は,「〇」を付して表記する。以下同様。) 細い・木(竹)を縦横(タテヨコ)に組んだもの。建具(タテグ)に使う。○二 ←格子戸。 ○三 ←格子じま。」(三省堂国語辞典第三版(中型版),1989年3月25日 第32刷)の意味であり,また,「格子じま」とは,「すじを縦横(タテヨコ)に組み合わせた・しま(模様《モヨウ》)。」(三省堂国語辞典第三版(中型版),1989年3月25日 第32刷)の意味であるところ,当該意味は,本件特許明細書において,「格子線」は,「縦横方向の線」であるという,「格子線」に関する上記記載内容と整合するものであるから,本件特許明細書における「格子線」とは,「ドットの配置位置を説明するためのもので,実際の印刷物上には存在しない,縦横方向の線」のことであり,また,「格子点」とは,「格子線の交点」のことであると理解される。

「本件特許の図面の【図105】



ウ 「格子ドットLD」及び「キードットKD」について

本件特許明細書の段落【0185】の「ドットパターン部601は,図105に示すように,格子状に配置されたドットで構成されている。なお縦横方向の格子線はドットの配置位置を説明するためのものであり実際の印刷物上には存在しない」との記載から,本件特許の図面の【図105】における縦横方向の線は,上記イに記載したように,「ドットの配置位置を説明するためのもので,実際の印刷物上には存在しない,縦横方向の線」であり,当該「縦横方向の線」のうち,その交点が「格子点」となる線が「格子線」であると認められる。
そして,本件特許明細書の段落【0188】の「格子ドットLDは本来格子点上に配置されているが,この位置をずらしてキードットKDを配置している」との記載から,「格子ドットLD」は,本件特許の図面の【図105】に記載されている縦横方向の格子線の交点である格子点上に配置されているドットであると認められ,下記の【図105A】においては,格子点上の位置に置かれた丸の印の中のドットそれぞれが「格子ドットLD」であると認められる。(当審注:なお,下記の【図105A】は,本件特許の図面の【図105】に,当審において説明の都合上,丸,三角等の印を付した図である。)
また,同じく段落【0188】の「キードットKDとは,格子ドットLDの位置をずらしたものである」との記載と,本件特許の図面の【図105】中の,縦横方向に規則的に配置された「格子ドットLD」が当該規則どおりであれば本来配置されているはずの格子点から上方にずれた位置に置かれた2つのドットに対する「KD」(すなわち「キードット」)との表記から,下記の【図105A】においては,図中の2箇所の「KD」と表記された点を含む,格子点から上方にずれた位置に置かれた三角の印の中のドットそれぞれが「キードットKD」であると認められる。

「当審で【図105】に記号を付した【図105A】



エ 「データブロック」について

本件特許明細書の段落【0189】の「キードットKDに囲まれた領域,またはキードットKDを中心にした領域が1つのデータを構成している」との記載から,ここで上記の【図105A】を参照すると,三角の印の中の4つのキードットKDに囲まれた範囲内には複数のドット,すなわち,データが含まれるから,段落【0189】の「1つのデータを構成」している,「キードットKDに囲まれた領域」が,ひとかたまりのデータ,すなわち,「1つのデータブロックを構成」していることを意味していることは明らかであって,上記の【図105A】においては,4つのキードットKDに囲まれている二重線の四角で囲まれた領域が「1つのデータブロック」であると認められる。

オ 「格子領域」について

「格子領域」という用語は,本件特許明細書の段落【0186】に「4×4個の格子領域を1つのデータブロックまたは格子ブロックと呼び」との定義が記載されているのみである(当審注:後記(4)のとおり,「4×4個」は「図105における4×5個」の誤記であると認められる。)。当該記載の定義から,キードットKDで囲まれた領域である1つのデータブロックは,複数の格子領域から構成されているものであると認められる。
ここで,「格子領域」とは,文言どおりの「格子」状の「領域」,すなわち「四角形の領域」であると認められるところ,上記の【図105A】における点線の四角で囲まれた領域(格子ドットLDに相当する4つの丸の印の中のドットに囲まれた領域,または,キードットKDがずらされる前の格子ドットLDが本来配置されているはずの格子点と3つの丸の印の中のドットに囲まれた領域)のそれぞれは,4つのキードットKDで囲まれた1つのデータブロックを構成する複数の「四角形の領域」であることから,これを「格子領域」であると解釈するのが自然である。

カ 「格子ブロック」について

上記本件特許明細書の段落【0186】の記載からすると,「格子ブロック」は,「データブロック」と同義であり,複数の格子領域から構成されているものであると認められる。

キ 「ダミードット」,「空ドット」,「情報ドット」について

上記ウ記載の「格子ドットLD」及び「キードットKD」のほか,「ドット」として,「ダミードット」,「空ドット」,「情報ドット」について,以下の記載がある。(当審注:下線は当審で付加した。)

(ア)本件特許明細書の段落【0061】〜【0063】
「【0061】
図21は本発明のカメラ入力による情報入出力方法の構成を示すブロック図であり,(a)はドットコードの生成について,(b)はドットパターンの認識についての説明図である。図22はドットパターンの一例を示す正面図である。
【0062】
本発明のカメラ入力によるドットパターンを用いた情報入出力方法は,ドットパターン1の生成と,そのドットパターン1の認識と,このドットパターン1から対応した情報およびプログラムを出力する手段とからなる方法である。すなわち,ドットパターン1をカメラユニット2によりその画像データを取り込み,先ずキードット3を抽出し,次に情報ドット4を抽出することによりデジタル化して情報領域を抽出して情報の数値化を図り,その数値情報より,このドットパターン1から対応した情報およびプログラムを出力させる方法である。
【0063】
本発明のドットパターン1の生成は,ドットコード生成アルゴリズムにより,情報を認識させるために微細なドット(キードット(KD)3a,格子ドット(LD)3b,情報ドット4)を所定の規則に則って配列する。ドットパターン1の認識には,カメラユニット2のレンズによる歪率の補正,またはカメラユニット2の傾きによる歪の補正と,キードット3a(KD)と情報ドット4の数値情報の再生とからなる。ドットパターン1については,C−MOSカメラまたはCCDカメラ等の撮像素子を備えたカメラユニット2を用いてその画像データを取り込む。」

(イ)本件特許の図面の【図22】




(ウ)本件特許明細書の段落【0197】〜【0198】
「【0197】
本発明において,ダミードットDDを定義することができる。このダミードットDDは,4個の格子ドットLDの正中心に配置したドットである(図106(a)参照)。このようなダミードットは,マスク領域毎に境界を定義した絵本等に適している。図106(c)に示すようにmask1とmask2の領域の境界にダミードットDDを配置している。このようなマスク境界にダミードットDD領域を配置することにより,それぞれのマスク領域に定義されたコード情報を同時に読み取ってしまうことを防止している。図106(d)はダミードットDDの配置状態を示した図である。
【0198】
また,絵本等の背景部分については,格子ドットの中心にドットを配置しない空ドットを配置することが好ましい。空ドットは,情報が記録された通常のデータドットに比べてドット数が少ないため,ドットパターンの目立たない印刷が可能となる。また,空ドットの連続であるために,模様が生じにくく,単一色の背景に適している。」

(エ)本件特許の図面の【図103】




(オ)本件特許の図面の【図104】




(カ)本件特許の図面の【図106】




(キ)本件特許明細書の段落【0204】
「【0204】
図61に示すように,カメラは,被写体に光を照射するためにLEDと,LEDから出射される光をフィルターするためのLEDアクリルフィルターと,被写体からの反射光をフィルターするための可視光フィルター(赤外線透過フィルター)とを備える。カメラを収納する筒は,長手方向が10mm前後で構成されており,ドットパターンの撮像範囲は直径10mmとすると,4mm×4mmのドットパターン1ブロック分(I1〜I16)を読み込むためには,最大2r=2×4√2=11.28mmの撮像範囲が必要となる(図62参照)。これを解消するために,1ブロックとして構成されるキードットの周辺に配置される情報ドット16個を順次読み込むのではなく,他の情報ドットと独立的な情報を有する4個の情報ドット毎(1/4ブロック(サブブロック)毎)に読み込む。これにより,撮像範囲からはずれた1/4ブロックの情報ドットを撮像範囲内にある,他のブロックの対応する情報ドット(1/4ブロック)を入力することにより,1ブロック分の情報を撮像範囲の直径10mm内で入力可能とする。」

(ク)本件特許の図面の【図62】




(ケ)本件特許の図面の【図63】




(コ)上記(ア)〜(ケ)の記載から,4つの「格子ドットLD」(格子ドットLDの位置をずらした「キードットKD」である場合を含む)で囲まれた領域に配置されるドットとして,以下の3種類のドットがあると認められる。
・「4個の格子ドットLDの正中心に配置した」ドットである「ダミードットDD」(特に,上記(ウ)の段落【0197】及び上記(カ)の【図106】の(a)参照),
・「格子ドットの中心にドットを配置しない」「空ドット」(特に,上記(ウ)の段落【0198】参照),
・4つの格子ドット△によって囲まれている領域の中心から所定の規則に則ってずらされて配置されている「情報ドット4」(特に,上記(ア)の段落【0063】及び上記(イ)の【図22】におけるX1〜X12,Y1〜Y12を参照)。
ここで,上記(カ)の【図106】の(a)及び(d)を参照すると,格子点上に配置されている格子ドットによって囲まれている領域である格子領域内に「ダミードットDD」や「情報ドット」を配置する場合に,「ダミードットDD」が配置される位置であり,かつ,「情報ドット」をずらす基点でもある「4個の格子ドットLDの正中心」は,「格子領域内の中心点」である。
よって,「情報ドット」は,「4個の格子ドットLDの正中心」や「格子領域内の中心点」からずらしたドットであるといえる。

(4)訂正事項3について

ア 訂正の目的

上記(3)アに記載したとおり,本件特許明細書の段落【0186】は,本件特許の図面の【図105】を用いたドットパターンの構成要素を説明しているものと認められる。そして,上記(3)エに記載したとおり,「データブロック」は,上記【図105A】において4つのキードットKDに囲まれている二重線の四角で囲まれた領域であり,上記(3)オに記載したとおり,「格子領域」は,上記【図105A】において4つの格子ドットLD(格子ドットLDの位置をずらしたキードットKDである場合を含む)に囲まれている点線の四角で囲まれた領域であると認められるところ,4つのキードットKDに囲まれた,点線の四角で示された格子領域の数を計算すると,4×5(=20)個となるので,訂正後の段落【0186】の記載が正しく,訂正前の段落【0186】の記載は,誤記であると認められる。
また,訂正前の段落【0186】において,「4×4個の格子領域を1つのデータブロックまたは格子ブロックと呼び,この格子ブロックの四隅(格子線の交点(格子点)上)には格子ドットLDが配置されている」と記載されているが,上記(3)オに記載したとおり,上記【図105A】において,格子ブロックの四隅には格子線の交点(格子点)からずれた位置にキードットKDが配置されており,格子線の交点(格子点)上には格子ドットLDが配置されていない。そうすると,「この格子ブロック」における「この」が指しているのは,「格子ブロック」ではなく,四隅に格子ドットLDが配置されている「格子領域」であると解するのが自然であり,訂正前の段落【0186】の記載は,誤記であると認められる。
したがって,訂正事項3は,特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正は,出願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしなければならないところ,出願当初明細書等に記載した事項とは,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項を意味し,当該訂正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。(以下,本件審決において,「新規事項の有無」の判断について同じ。)
そして,上記アに記載したとおり,訂正事項3は,出願当初明細書等における段落【0186】に記載した事項,及び【図105】に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更

訂正事項3は,誤記を訂正したものであるから,技術的事項を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(5)訂正事項4について

ア 訂正の目的

上記(3)エ及びカに記載したとおり,4つのキードットKDに囲まれた領域が「格子ブロック」であると認められるところ,本件特許明細書の段落【0189】に「キードットKDに囲まれた領域,またはキードットKDを中心にした領域が1つのデータを構成している」と記載されるように,キードットKDに囲まれた格子ブロック自体が1つのデータを構成しているものと認められる。
そうすると,訂正前の段落【0187】の「どの格子ブロックからどの格子ブロックまでが1つのデータであるかを示すためにキードットを配置している」との記載は誤記であり,上記(3)カに記載したとおり,「格子ブロック」が複数の格子領域から構成されたものであることから,上記訂正前の段落【0187】の記載は,「どの格子領域からどの格子領域までが1つのデータであるかを示すためにキードットを配置している」との記載が正しいと認められる。
したがって,訂正事項4は,特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

上記アに記載したとおり,訂正事項4は,出願当初明細書等における段落【0186】,【0187】,【0189】に記載した事項,及び【図105】に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更

訂正事項4は,誤記を訂正したものであるから,技術的事項を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(6)訂正事項5について

ア 訂正の目的

上記(3)エ及びオに記載したとおり,「格子領域」は,上記【図105A】において4つの格子ドットLD(格子ドットLDの位置をずらした「キードットKD」である場合を含む)に囲まれている点線の四角で囲まれた領域であり,「データブロック」は,上記【図105A】において4つのキードットKDに囲まれている二重線の四角で囲まれた領域であって,4×5個の格子領域から構成されているものと認められるところ,これら4×5個の格子領域それぞれが,格子領域内の中心点からドットをどの程度ずらすかによってデータ内容を定義しているものと認められる。そして,上記【図105A】の点線の四角で示された格子領域それぞれにおいて,格子領域内にあるドットが,本件特許の図面の【図103】に示されるように中心点からずらされてデータ内容を定義しているものと認められる。
そうすると,訂正前の段落【0191】の「データは,図103に示すように,ドット605を格子ブロック内の中心点からどの程度ずらすかによってデータ内容が定義できるようになっている」との記載における「格子ブロック」は「格子領域」の誤記であると認められる。
したがって,訂正事項5は,特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

上記アに記載したとおり,訂正事項5は,出願当初明細書等における段落【0191】に記載した事項,及び【図103】,【図105】に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更

訂正事項5は,誤記を訂正したものであるから,技術的事項を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(7)訂正事項6について

ア 訂正の目的

上記(3)エ及びオに記載したとおり,「格子領域」は,上記【図105A】において4つの格子ドットLD(格子ドットLDの位置をずらした「キードットKD」である場合を含む)に囲まれている点線の四角で囲まれた領域であり,「データブロック」は,上記【図105A】において4つのキードットKDに囲まれている二重線の四角で囲まれた領域であって,4×5個の格子領域から構成されているものと認められるところ,これら4×5個の格子領域それぞれが,格子領域内の中心点からドットをどの程度ずらすかによってデータ内容を定義しているものと認められる。そして,上記【図105A】の点線の四角で示された格子領域それぞれにおいて,格子領域内にあるドットが,【図103】に示されるように中心点からずらされてデータ内容を定義しているものと認められる。
そうすると,訂正前の段落【0191】の「同図では,中心から等距離で45度ずつそれぞれずらした点を8個定義することによって単一の格子ブロックで8通り,すなわち3ビットのデータを表現できるようになっている」との記載における「格子ブロック」は「格子領域」の誤記であると認められる。
したがって,訂正事項6は,特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

上記アに記載したとおり,訂正事項6は,出願当初明細書等における段落【0191】に記載した事項,及び【図103】,【図105】に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更

訂正事項6は,誤記を訂正したものであるから,技術的事項を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(8)訂正事項7について

ア 訂正の目的

上記(3)エ及びオに記載したとおり,「格子領域」は,上記【図105A】において4つの格子ドットLD(格子ドットLDの位置をずらした「キードットKD」である場合を含む)に囲まれている点線の四角で囲まれた領域であり,「データブロック」は,上記【図105A】において4つのキードットKDに囲まれている二重線の四角で囲まれた領域であって,複数個の格子領域(すなわち,「格子領域群」)から構成されているものと認められる。そして,本件特許明細書の段落【0192】における「キードットKDがデータ領域の範囲を定義している」とは,キードットKDがデータ領域の範囲であるデータブロック(格子領域群)を定義していることにほかならない。
そうすると,訂正前の段落【0192】の「つまり,前述のようにキードットKDがデータ領域の範囲を定義しているため,このキードットKDの配置を変更すれば任意の可変長の格子ブロック群をデータ格納領域として扱うことができるわけである」との記載における「格子ブロック群」は「格子領域群」でなければならず,上記訂正前の段落【0192】における「格子ブロック群」は「格子領域群」の誤記であると認められる。
したがって,訂正事項5は,特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

上記アに記載したとおり,訂正事項7は,出願当初明細書等における段落【0192】に記載した事項,及び【図105】に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更

訂正事項7は,誤記を訂正したものであるから,技術的事項を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

3 訂正請求に対する結論
上記2(1)で検討したとおり,訂正事項1は,特許法第134条の2第1項ただし書に掲げるいずれかの事項を目的とするものではなく,また,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しないから,訂正事項1に係る訂正を認めない。
また,上記2(2)で検討したとおり,訂正事項2は,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから,訂正事項2に係る訂正を認めない。
また,上記2(3)〜(8)で検討したとおり,訂正事項3〜7は,特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に掲げる事項を目的とするものであり,また,訂正事項3〜7は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないから,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,訂正事項3〜7については,訂正を認める。

第3 本件特許発明
以上のとおり,本件訂正のうち,請求項1〜3に係る訂正事項1,2は認められないので,本件特許の請求項1〜3に係る発明は,特許請求の範囲に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。(以下,「請求項1に係る発明」を「本件特許発明1」といい,同様に「請求項2に係る発明」等を「本件特許発明2」等といい,本件特許発明1〜3を総称して「本件特許発明」という。)

「【請求項1】
媒体面上に形成され,且つデータ内容が定義できる情報ドットが配置されたドットパターンであって,
前記ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し,
前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された
ことを特徴とするドットパターン。
【請求項2】
前記ドットパターンは,水平方向および/または垂直方向に,複数繰り返されていることを特徴とする請求項1に記載のドットパターン。
【請求項3】
前記格子ドットの1つは,前記格子点からのずれ方によって一般コードまたはXY座標を示すフラグを意味していることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のドットパターン。」

第4 無効理由

1 請求人の請求の趣旨および主張した無効理由の概要

請求人は,「特許第4392521号発明の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」との請求の趣旨を述べ,証拠方法として以下の書証を提出し,本件特許が無効とされるべき理由として,以下に要約される無効理由1ないし10を主張している。

(1)無効理由1:特許法第36条第4項第1号

本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明が,下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず,本件特許の請求項1〜3に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当し,無効とされるべきである。

ア 本件特許明細書段落【0184】〜【0202】及び【図103】〜【図106】の記載からは,「格子領域」「格子ブロック」「格子ブロック群」を互いに矛盾なく定義することができず,その結果として,「情報ドット」も正しく定義することができない。したがって,本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載は,少なくとも,本件特許発明1の「前記ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」に関し,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

イ 本件特許発明1における「第一方向ライン」「第二方向ライン」を「ドットパターン」のみから一義的に導き出せることが,本件特許明細書及び図面には記載されている必要があるところ,少なくとも明示的には「ドットパターン」のみから「第一方向ライン」「第二方向ライン」を導き出せることは,本件特許明細書及び図面には記載されておらず,本件特許明細書及び図面の記載は,本件特許発明1の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいうことができないのであるから,本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載は,少なくとも,本件特許発明1の「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」に関し,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2)無効理由2:特許法第17条の2第3項

本件特許に係る出願の願書に添付した特許請求の範囲について,平成21年6月15日付でした補正は,下記の点で,本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから,平成21年6月15日付でした補正は,特許法第17条の2第3項の規定に規定する要件を満たしておらず,本件特許の請求項1〜3に係る特許は同法第123条第1項第1号に該当し,無効とされるべきである。

ア 本件特許明細書段落【0184】〜【0202】及び【図103】〜【図106】に記載される発明と,本件特許に係る【図5】,【図6】,【図7】,【図8】に記載される発明が組合せたものとされる本件特許発明1は,本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものではない。

イ 本件特許発明1における「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように」という点は,本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものではない。

(3)無効理由3:特許法第36条第6項第1号

本件特許の請求項1〜3に係る発明は,下記の点で本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないから,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず,本件特許の請求項1〜3に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当し,無効とされるべきである。

ア 本件特許発明1の「前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン」「該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン」という点は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。

イ 本件特許発明1の「前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」という点は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。

ウ 本件特許発明3の「前記格子ドットの1つは,前記格子点からのずれ方によって一般コードまたはXY座標を示すフラグを意味していることを特徴とする」という点は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(4)無効理由4:特許法第36条第6項第2号

本件特許の請求項1〜3に係る発明は,下記の点で明確ではないから,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,本件特許の請求項1〜3に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当し,無効とされるべきである。

ア 本件特許発明1の「縦横方向」「縦方向」「横方向」「水平方向」「垂直方向」は明確ではない。

イ 本件特許発明1における「格子点の中心」は明確ではない。

ウ 本件特許発明1における「格子線」「格子点」「格子点の中心」「縦横方向に等間隔に設けられた格子線」「格子点を中心に」は明確ではない。

エ 本件特許発明1における「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすか」は明確ではない。

オ 本件特許発明1における「所定の格子点間隔」は明確ではない。

カ 本件特許発明3の「格子点からのずれ方」は明確ではない。

キ 本件特許発明3の「一般コードまたはXY座標を示すフラグ」は明確ではない。

(5)無効理由5:特許法第29条第2項

本件特許発明1,2は,甲第1,2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるから,本件特許の請求項1,2に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。

(6)無効理由6:特許法第29条第2項

本件特許に係る出願(特願2008−223887号)(以下,「本件特許出願」という。)は,特許法第41条に基づく優先権の主張を適法にしたものではなく,本件特許発明1,2に関する新規性進歩性等の判断は,原出願である特願2005−501954号(PCT/JP2003/012364)の現実の国際出願日である平成15年9月26日を基準としてなされるべきものである。
そして,本件特許発明1,2は,甲第3,2,4号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるから,本件特許の請求項1,2に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。

(7)無効理由7:特許法第29条第2項

本件特許出願は分割の要件を満たさないから,本件特許出願の出願日は,現実の出願日である平成20年9月1日とすべきものである。
そして,本件特許発明1,2は,甲第5,4号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるから,本件特許の請求項1,2に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。

(8)無効理由8:特許法第29条第2項

本件特許出願は分割の要件を満たさないから,本件特許出願の出願日は,現実の出願日である平成20年9月1日とすべきものである。
そして,本件特許発明1〜3は,甲第6,7号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるから,本件特許の請求項1〜3に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。

(9)無効理由9:特許法第29条第1項第3号

本件特許出願は分割の要件を満たさないから,本件特許出願の出願日は,現実の出願日である平成20年9月1日とすべきものである。
そして,本件特許発明1〜3は,甲第7号証に記載されたものであるから,本件特許の請求項1〜3に係る特許は,特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。

(10)無効理由10:特許法第29条第1項柱書

本件特許発明1〜3は,特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから,本件特許の請求項1〜3に係る特許は,特許法第29条第1項柱書の規定に違反してされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。

(11)証拠方法

甲第1号証:特開平10−326331号公報(平成10年(1998年)12月8日公開)
甲第2号証:米国特許出願公開第2002/0091711号明細書(2002年7月11日公開)
甲第3号証:英国特許出願公開第2384094号明細書(2003年7月16日公開)
甲第4号証:特開平03−038791号公報(平成3年(1991年)2月19日公開)
甲第5号証:特開2007−288756号公報(平成19年(2007年)11月1日公開)
甲第6号証:国際公開第2006/070458号(2006年7月6日公開)
甲第7号証:国際公開第2004/029871号(2004年4月8日公開)
甲第8号証:優先権証明書(特願2002−281815号)
甲第9号証:優先権証明書(特願2002−292907号)
甲第10号証:優先権証明書(特願2002−380503号)
甲第11号証:優先権証明書(特願2002−380932号)
甲第12号証:優先権証明書(特願2002−381743号)
甲第13号証:特願2008−177416号に対する平成22年11月30日付拒絶理由通知書
甲第14号証:特願2008−177416号に対する平成23年1月31日付意見書
甲第15号証:特願2010−254460号に対する平成23年3月8日付拒絶理由通知書
甲第16号証:特願2010−254460号に対する平成23年4月28日付意見書
甲第17号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件における平成30年9月7日付原告第1準備書面
甲第18号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件における平成31年1月31日付原告第3準備書面
甲第19号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件における令和元年6月12日付原告第5準備書面
甲第20号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件における平成31年4月16日付被告補助参加人第5準備書面
甲第21号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件における令和元年10月7日付原告第7準備書面
甲第22号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件における平成31年4月16日付被告補助参加人第5準備書面抜粋
甲第23号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件における令和元年11月6日付原告第8準備書面
甲第24号証:ウィキペディア(Wikipedia)の『ブロック(データ)』
甲第25号証:長屋隆之外 "4G-11 高速読取り対応2次元コード[QRコード]の開発" 情報処理学会第52回(平成8年前期)全国大会講演論文集 メディア情報処理 (1996), pp. 2-253〜2-254
甲第26号証:野村政弘外 "QRコード(2次元バーコード)の開発と生産管理" 生産管理, Vol.8, No.2, (2002年3月), pp. 107-112
甲第27号証:特願2007−026471号(特開2007−115291号公報)
甲第28号証:特願2008−177416号(特開2009−026311号公報)
甲第29号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件被告補助参加人第9準備書面
甲第30号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件原告第9準備書面
甲第31号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件被告補助参加人第10準備書面
甲第32号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件原告第10準備書面
甲第33号証:特願2008−223887号に対する平成21年1月9日付意見書
甲第34号証:特願2008−223887号に対する平成21年1月9日付手続補正書
甲第35号証:特願2008−223887号に対する平成21年5月25日付拒絶理由通知書
甲第36号証:特願2008−223887号に対する平成21年6月15日付意見書
甲第37号証:特願2008−223887号に対する平成21年6月15日付手続補正書
甲第38号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件判決
甲第39号証:令和2年(ネ)第10045被控訴人補助参加人控訴答弁書
甲第40号証:令和2年(ネ)第10045被控訴人補助参加人第1準備書面
甲第41号証:令和3年3月4日付知的財産高等裁判所特許権侵害差止等請求控訴事件(令和2年(ネ)第10045号)判決
甲第42号証:令和3年3月4日付知的財産高等裁判所特許権侵害差止等請求控訴事件(令和2年(ネ)第10045号)判決の判決確定証明書
甲第43号証:特許第4231947号公報

第5 被請求人の主張および証拠方法

被請求人は,「請求人の請求をすべて棄却する。審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める。」との反論を述べ,上記請求人の主張する無効理由は,いずれも理由がないと主張し,証拠方法として以下の書証を提出している。

乙第1号証:特許第4392521号訂正請求書
乙第2号証:岩波 数学入門辞典,「格子」の項
乙第3号証:広辞苑 第七版,「一般」の項
乙第4号証:広辞苑 第七版,「コード」の項
乙第5号証:広辞苑 第七版,「フラグ」の項
乙第6号証:広辞苑 第七版,「横」の項
乙第7号証:広辞苑 第七版,「縦」の項
乙第8号証:広辞苑 第七版,「垂直」の項
乙第9号証:広辞苑 第七版,「水平」の項
乙第10号証:広辞苑 第七版,「点」の項
乙第11号証:広辞苑 第七版,「ずれる」の項
乙第12号証:特開平6−231466号公報(平成6年8月19日公開)
乙第13号証:特開2004−166177号公報(平成16年6月10日公開)
乙第14号証:特許・実用新案審査基準,「3.2 分割出願の明細書等に記載された事項が,原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること(要件2)」の項
乙第15号証:特許・実用新案審査基準,(参考)知財高判平成20年5月30日(平成18年(行ケ)10563号)「ソルダーレジスト」大合議判決
乙第16号証:特願2012−39515号に対する平成25年5月20日付け拒絶理由通知書
乙第17号証:特願2012−39515号に対する平成27年4月13日付け拒絶理由通知書
乙第18号証:特願2013−162943号に対する平成26年10月9日付け拒絶理由通知書
乙第19号証:特願2013−162943号に対する平成27年6月4日付け拒絶理由通知書
乙第20号証:特開2001−343979号公報,特開2002−140541号公報,特開2002−164862号公報,特開2002−152833号公報,特開2002−82959号公報,特開2002−64807号公報,特開2002−32396号公報,特開平11−265324号公報,及び,特開平11−215217号公報における特許出願公開公報の抄録
乙第21号証:特許技術用語集第3版,「連設」の項
乙第22号証:特願2010−254460号における平成23年4月28日付け手続補正書
乙第23号証:特開2011−44180号公報
乙第24号証:特許・実用新案審査ハンドブック附属書B「第1章 コンピュータソフトウエア関連発明」,「b 技術的思想ではないもの」における,「情報の提示(提示それ自体,提示手段,提示方法等)に技術的特徴があるものは,情報の単なる提示に当たらない。」との記載
乙第25号証:特許第3996520号公報
乙第26号証:広辞苑 第七版,「群」の項
乙第27号証:岩波 情報科学辞典,「パルス」の項
乙第28号証:令和2年(ネ)第10045号特許権侵害差止等請求控訴事件控訴理由書
乙第29号証:広辞苑無料検索 格子
乙第30号証:NTT DoCoMoテクニカル・ジャーナル Vol.1 NO.3
乙第31号証:広辞苑 第七版,「仮想」の項

第6 証拠の記載事項

以下の甲号証には,それぞれ以下の事項が記載されている。

1 甲第1号証

(1)甲第1号証には,図面と共に,以下の事項が記載されている(当審注:下線は当審で付加した。)

ア 段落【0001】

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,例えば音声情報,映像情報又はデジタルコードデータ等を含む所謂マルチメディア情報が光学的に読み取り可能なコードパターンとして紙等の記録媒体に記録されるドットコードを有する記録媒体,及び当該記録媒体上に当該ドットコードとして記録されたマルチメディア情報を読み取るコード読取装置に関するものである。」

イ 段落【0002】〜【0008】

「【0002】
【従来の技術】従来,デジタル情報を紙等の記録媒体に記録する方法としてバーコード等が汎用されているが,当該バーコードは一次元的配列の記録方式であるため記録できる情報量には限界があった。従って,今日の大容量の記録密度を有する情報記録媒体の実現といった要望を満足させるものではなかった。
【0003】かかる点に鑑みて,例えば,本出願人による特開平6−231466号公報には,音声情報や映像情報,又はデジタルデータ等を含む情報量の大きい所謂マルチメディア情報を高密度で紙等に記録する技術として,その有無で1ビットの情報量となる微細なドットを2次元的に記録媒体上に配列した,光学的に読み取り可能な「ドットコード」に関する技術が開示されている。
【0004】上記ドットコードは,ブロックを複数個隣接可能に配置してなり,上記ブロックのそれぞれが,マルチメディア情報に係る情報データの内容に応じて配列された複数のドットでなるデータドットパターンと,該データドットパターンには有り得ないパターンを持ち且つ該データドットパターンに関して第1の所定の位置関係で配置されるマーカと,該マーカに関して第2の所定の位置関係に配置される当該ブロックのアドレスを示すブロックアドレスパターンとを具備することを特徴とする。そして,上記データドットパターンと上記マーカとを画像として区別するために,上記データドットパターンに対しては,連続する黒ドットの数が制限されるように変調処理が施されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで,上記ドットコードの商品化を進めるにあたり,コードを印刷する際の紙質やインクの種類,又はドットコードとして記録される情報データの必要とされる信頼性の度合いに応じて,多様な変調処理を用いる必要が生じてきた。
【0006】しかしながら,上述した特開平6−231466号公報に係る技術では,このような多様な変調処理に対応するための手段については開示されていなかった。尚,特開平7−254037号公報には,二進コードで表されるデータをセル化して,二次元のマトリクス上にパターンとして配置した二次元コードにおいて,このパターンを所定の変換処理をすることによりデータ以外に設定された部分のパターンである,例えば,位置決め用シンボルのパターンとは異なる特徴のパターンにすると共に,その変換処理に使用した変化用マトリクスパターンの種別情報をデータとして二次元コード内に入れておくことの記載があるが,このものは,基本的に前記種別情報が変換処理の対象であるデータパターン内に紛れ込んでいるものであるため,その種別情報の抽出に際しては別段の工夫を要するものである。
【0007】本発明は,上記問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,マルチメディア情報に係る情報データを光学的に読み取り可能なコードパターンとして記録するドットコードであって,情報データが多様な変調方法で記録できるドットコードを有する記録媒体,及び当該ドットコードとして変調記録された情報データを復元するコード読取装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために,本発明の第1の態様によるドットコードは,ブロックを複数個隣接可能に配列して構成した光学的に読み取り可能なドットコードを有する記録媒体であって,上記ブロックのそれぞれが,上記ブロックを認識するためのマーカ部と,上記マーカ部と構造的に区別可能とすべく変調処理の施された情報データの各ビット値が,その値に対応するドットで配列された複数のドットでなる変調領域としてのデータドットパターン部と,上記ブロックのアドレスを表すためのブロックアドレス情報を含む非変調領域としてのブロックヘッダ部と,を所定の位置関係に従って配置してなり,上記ブロックヘッダ部は,各ブロックに含まれるデータドットパターンに基づく変調された情報データを処理して所定の知覚可能な情報データに復元する際に必要な復元パラメータ情報を更に含むことを特徴とする。」

ウ 段落【0017】〜【0025】

「【0017】図1(a)に示されるように,マルチメディア情報に係る情報データは,光学的に読み取り可能なドットコード1として,紙等のシート状の記録媒体上に印刷記録されている。かかるドットコード1は,所定単位のドットの集合からなるブロック2を二次元マトリクス状に隣接配置したブロック群で構成されている。所定数のドットの集合である各ブロック2はマクロ的には所定の濃度をもって認識される。 図1(b)はドットコード1を構成するブロック2の構成を更に詳細に示した図である。図1(b)に示されるように,ブロック2は,情報データが変調処理され,各ビット値に対応して配置されたデータドットパターン部3と,このデータドットパターン部3に関して所定の位置関係で配置される当該ブロックのアドレス等の情報を示すブロックヘッダ部4とを有するものである。尚,格子状に記入された縦・横の直線は,仮想線である。
【0018】また,ブロック2は,所定の位置,例えば,その4隅に配置された,ブロックの認識に利用するマーカ5と,このマーカ5に対して所定の位置,例えば,第1の方向に隣接するマーカ間に配置されたマッチングドットパターン部6を有している。尚,上記ブロックヘッダ部4は,上記マーカ5に対して所定の位置,例えば第2の方向に隣接するマーカ間に配置されることになる。
【0019】これらマッチングドットパターン部6,ブロックヘッダ部4及びデータドットパターン部3に配されるデータドット7は,同じ大きさの複数のドットで構成されている。また,マーカ3(当審注:「マーカ5」の誤記と認める。)は,これらのドットに比較して大きな面積のドットとして構成されており,例えばデータドット7の5倍の直径を有する円形ドットとし記録媒体上に記録されている。
【0020】マルチメディア情報に係る情報データは,データドットパターンとして記録される前に変調処理がなされる。かかる変調処理は,データドット7とマーカ5を画像として区別すべく,データドット7の図中における縦方向に連続する連続数を制限するために行う。マーカ5の直径がデータドット7の5倍とすると,データドット7の連続数は4以下に制限しなければならない。例えば,ここで行われる変調処理は,4 ビットのデータに1ビットの冗長を付加して5ビットにする4−5変調であり,変調後のドット連続数が最大で4を越えないような変調テーブルが選択されることになる。
【0021】尚,先に図1(b)に示したブロックでは,17データドット×17データドットの格子からなるブロックで説明したが,この大きさに限定されず,30データドット×30データドット,又は40データドット×40データドットであってもよいことは勿論である。図1(c)はブロックヘッダ部4 に記録されたデータの内容を示しており,ドットが存在する黒部分には「1」,存在しない白部分には「0」が記録される(実際には,白が記録されるのではなく,媒体の地の色のままである)。ブロックヘッダ部4には各ブロック2のアドレス情報が非変調で記録される。
【0022】以下,上述したようなドットコードの読み取り方法について説明する。記録媒体上のドットコードの画像は,コード読取装置を図1(b)中矢印の方向に移動することで順次撮像される。ドットコード画像の読み取り処理は,複数フレームにわたりCCD等によって撮像された各画像からドットの位置を正確に求めるために先ず基準位置となるマーカを検出した後,ブロック2内のデータドットパターン部3を読み取る。マーカ5の検出は,撮像した画像からドットサイズが大きい特徴を利用して行う。この後,マーカ間に配置されたマッチングドットパターン部6を探索し,その各ドットの重心座標を求める。そして,これらの重心座標から,例えば最小二乗法等を用いて,上記データドットパターン部3内の各ドットの読取基準点を求め,更にドットの読取点を求める。この読取方法の詳細については,本出願人による特開平8−171620号公報に開示されているので,ここでは詳細な説明を省略する。
【0023】次に図2は,コード読取装置の機能ブロック図であり,ドットコード1のデータドット7を読み取って,二値データとして記録された所定の知覚可能な情報データに変換処理し,これを出力するものである。
【0024】同図に示されるように,このコード読取装置11は,シート等の記録媒体上に印刷記録されている図1(a)のドットコード画像を撮像するための検出部12,この検出部12から供給される画像データをドットコード画像として認識しノーマライズを行う走査変換部13,データ列の調整や変調テーブル19を参照して復調処理を行うデータ列調整部14,再生時の読み取りエラーやデータエラーを訂正するエラー訂正部15,データをそれぞれの属性に応じたデータ圧縮処理に対応する伸長処理を行う再生処理部16,これら各部を制御するコントローラ17,スピーカやモニタ等のマルチメディア情報が出力される出力装置18からなる。
【0025】尚,上記検出部12,走査変換部13,データ列調整部14,エラー訂正部15,再生処理部16及び音声出力装置18の細部については,本出願人により先に開示された特開平6−231466号公報に詳細に示されているので,ここでは,これらの詳細な説明は省略する。」

エ 段落【0027】〜【0031】

「【0027】図3は,第1の実施の形態に係るドットコードを有する記録媒体の構成を示す図である。図3(a)に示されるように,ドットコード1は,複数のブロック2が2次元的に隣接配列されて構成されている。図3(b)に示されるように,上記ブロック2は,当該ブロック2を認識するためのマーカ部5と,このマーカ部5と構造的に区別すべく変調処理の施された情報データの各ビット値がその値に対応するドットで配列された複数のデータドット7からなる変調領域としてのデータドットパターン部3と,上記ブロック2のアドレスを表すためのブロックアドレス情報を含む非変調領域としてのブロックヘッダ部4と,マッチングドットパターン部6が図示の如く配列されて構成されている。
【0028】この実施の形態では,特に図3(c)に示されるように,上記ブロックヘッダ部4に復元パラメータ情報21を有している。この復元パラメータ情報21は,各ブロック2に含まれるデータドットパターンに基づく変調された情報データを処理して所定の知覚可能な情報データに復元する際に必要となるものである。従って,この復元パラメータ情報21により,変調処理された情報データを元の情報データに復元することが可能になる。
【0029】ここで,元の情報データに復元する際に必要な上記復元パラメータ情報21としては,データドットパターン部3の変調処理の方式を示す情報の他,例えばエラー訂正符号,エラー訂正の符号長に係る情報,ドットコード1に含まれるブロック2の総数,コピープロテクト(禁止)に係る情報,又は変調領域に記録されるデータドットパターンに係るインターリーブ情報等があり,これらを必要に応じて記録する。
【0030】尚,上記変調処理の方式については,特に制限がなく,各種の変調方式を採用することができる。この場合,変調方式に対応した変調方式情報22を復元パラメータ情報21内に含めておけば,任意の変調方式に対しても復元処理を容易に行うことができることは勿論である。
【0031】このように,第1の実施の形態に係る記録媒体上のドットコードは,ブロックヘッダ部4に記録されるブロックアドレス情報20及び復元パラメータ情報21を非変調で記録する。この為,ブロックヘッダ部4に記録されるデータには,変調処理による冗長データが発生せず,ブロックヘッダ部4のデータドットの全てを,ブロックアドレス情報20及び復元パラメータ情報21に割り当てることができる。」

オ 「【図1】



カ 「【図2】



キ 「【図3】



(2)甲第1号証の上記記載について検討する。

ア 上記(1)アの段落【0001】の「音声情報,映像情報又はデジタルコードデータ等を含む所謂マルチメディア情報が光学的に読み取り可能なコードパターンとして紙等の記録媒体に記録されるドットコード」との記載,上記(1)ウの段落【0017】の「光学的に読み取り可能なドットコード1として,紙等のシート状の記録媒体上に印刷記録されている」との記載からすると,甲第1号証には,“音声情報,映像情報又はデジタルコードデータ等を含む情報が光学的に読み取り可能なコードパターンとして紙等の記録媒体に印刷記録されるドットコード1”が記載されている。

イ 上記(1)ウの段落【0017】の「ドットコード1は,所定単位のドットの集合からなるブロック2を二次元マトリクス状に隣接配置したブロック群で構成されている」との記載からすると,甲第1号証の「ドットコード1」は,“所定単位のドットの集合からなるブロック2を二次元マトリクス状に隣接配置したブロック群で構成され”ている。

ウ 上記(1)ウの段落【0017】の「ブロック2は,情報データが変調処理され,各ビット値に対応して配置されたデータドットパターン部3と,このデータドットパターン部3に関して所定の位置関係で配置される当該ブロックのアドレス等の情報を示すブロックヘッダ部4とを有するものである」との記載,段落【0018】の「ブロック2は,所定の位置,例えば,その4隅に配置された,ブロックの認識に利用するマーカ5と,このマーカ5に対して所定の位置,例えば,第1の方向に隣接するマーカ間に配置されたマッチングドットパターン部6を有している」及び「上記ブロックヘッダ部4は,上記マーカ5に対して所定の位置,例えば第2の方向に隣接するマーカ間に配置されることになる」との記載,段落【0020】の「マルチメディア情報に係る情報データは,データドットパターンとして記録される前に変調処理がなされる」及び「かかる変調処理は,データドット7とマーカ5を画像として区別すべく,データドット7の図中における縦方向に連続する連続数を制限するために行う」との記載,及び上記(1)オの【図1】(b)から「ブロック2」が有する「格子状の第1の方向・第2の方向の複数の複数の仮想直線」が「互いに直交」している態様が読み取れるから,甲第1号証の「ブロック2」は,“互いに直交し格子状の,第1の方向・第2の方向の複数の仮想直線”と,“情報データが変調処理され,各ビット値に対応して配置されたデータドットパターン部3であって,かかる変調処理は,データドット7とマーカ5を画像として区別すべく,データドット7の連続する連続数を制限するために行う,データドットパターン部3”と,“ブロック2の4隅に配置された,ブロックの認識に利用するマーカ5”と,“第1の方向に隣接するマーカ5の間に配置されたマッチングドットパターン部6”と,“第2の方向に隣接するマーカ5の間に配置されるブロックヘッダ部4であって,当該ブロック2のアドレス等の情報を示すブロックヘッダ部4”とを有している。

エ 上記(1)オの【図1】(b)から,
(ア)「格子状の第1の方向・第2の方向の複数の仮想直線」のうち,「データドットパターン部3」に存在するものについては等間隔である態様,
(イ)「マッチングドットパターン部6」と「ブロックヘッダ部4」が「データドットパターン部3」を囲む態様,
(ウ)「データドットパターン部3」の「格子状の第1の方向・第2の方向の複数の仮想直線」の交点上のみに「データドット7」が配置されている態様,
(エ)「マッチングドットパターン部6」の「第1の方向の仮想直線と第2の方向の仮想直線」の交点に一つ飛ばしでドットが等間隔で配列されている態様,
(オ)「ブロックヘッダ部4」の「第1の方向の仮想直線と第2の方向の仮想直線」の交点上にドットが配置されている態様,
(カ)「ブロックヘッダ部4」と「マッチングドットパターン部6」には,ドットが異なるように配置されている態様,
が読み取れるから,
甲第1号証の「ブロック2」が有する「データドットパターン部3」,「ブロックヘッダ部4」及び「マッチングドットパターン部6」について,
“データドットパターン部3に存在する格子状の第1の方向・第2の方向の複数の仮想直線は互いに等間隔”であり,
“ブロックヘッダ部4とマッチングドットパターン部6は,データドットパターン部3を囲むもの”であり,
“データドットパターン部3には,格子状の第1の方向・第2の方向の複数の仮想直線の交点上のみにデータドット7が配置”され,
“マッチングドットパターン部6には,第1の方向の仮想直線と第2の方向の仮想直線の交点に一つ飛ばしでドットが等間隔で配列”され,
“ブロックヘッダ部4には,第1の方向の仮想直線と第2の方向の仮想直線の交点上にドットが配置”され,
“ブロックヘッダ部4とマッチングドットパターン部6には,ドットが異なるように配置”されているものと認められる。

オ 上記(1)ウの段落【0022】の「記録媒体上のドットコードの画像は,コード読取装置を図1(b)中矢印の方向に移動することで順次撮像される」との記載,及び上記(1)オの【図1】(b)から,甲第1号証の「ドットコード1」は,“第2の方向に読み取られる”ものと認められる。

(3)したがって,甲第1号証には,次の発明(以下,「甲第1号証発明」という。)が記載されているものと認められる。

「音声情報,映像情報又はデジタルコードデータ等を含む情報が光学的に読み取り可能なコードパターンとして紙等の記録媒体に印刷記録されるドットコード1であって,
所定単位のドットの集合からなるブロック2を二次元マトリクス状に隣接配置したブロック群で構成され,
ブロック2は,
互いに直交し格子状の,第1の方向・第2の方向の複数の仮想直線と,
情報データが変調処理され,各ビット値に対応して配置されたデータドットパターン部3であって,かかる変調処理は,データドット7とマーカ5を画像として区別すべく,データドット7の連続する連続数を制限するために行う,データドットパターン部3と,
ブロック2の4隅に配置された,ブロックの認識に利用するマーカ5と,
第1の方向に隣接するマーカ5の間に配置されたマッチングドットパターン部6と,
第2の方向に隣接するマーカ5の間に配置されるブロックヘッダ部4であって,当該ブロック2のアドレス等の情報を示すブロックヘッダ部4とを有し,
データドットパターン部3に存在する格子状の第1の方向・第2の方向の複数の仮想直線は互いに等間隔であり,
ブロックヘッダ部4とマッチングドットパターン部6は,データドットパターン部3を囲むものであり,
データドットパターン部3には,格子状の第1の方向・第2の方向の複数の仮想直線の交点上のみにデータドット7が配置され,
マッチングドットパターン部6には,第1の方向の仮想直線と第2の方向の仮想直線の交点に一つ飛ばしでドットが等間隔で配列され,
ブロックヘッダ部4には,第1の方向の仮想直線と第2の方向の仮想直線の交点上にドットが配置され,
ブロックヘッダ部4とマッチングドットパターン部6には,ドットが異なるように配置されており,
第2の方向に読み取られる,
ことを特徴とする,音声情報,映像情報又はデジタルコードデータ等を含む情報が光学的に読み取り可能なコードパターンとして紙等の記録媒体に印刷記録されるドットコード1。」

2 甲第2号証

(1)甲第2号証には,図面と共に,以下の事項が記載されている。(当審注:下線は当審で付加した。)

ア 段落[0133]〜[0148]
「 [0133] In the following the description is reproduced of a preferred position-coding pattern according to the International Patent Application PCT/SE00/01895.
[0134] FIG. 4 shows a part of a product in the form of a sheet of paper A1, which on at least part of its surface A2 is provided with an optically readable position-coding pattern A3 which makes possible position determination.
[0135] The position-coding pattern comprises marks A4, which are systematically arranged across the surface A2, so that it has a “patterned” appearance. The sheet of paper has an X-coordinate axis and a Y-coordinate axis. The position determination can be carried out on the whole surface of the product. In other cases the surface which enables position determination can constitute a small part of the product.」
[0136] The pattern can, for example, be used to provide an electronic representation of information which is written or drawn on the surface. The electronic representation can be provided while writing on the surface with a pen, by continually determining the position of the pen on the sheet of paper by reading off the position-coding pattern.
[0137] The position-coding pattern comprises a virtual raster, which is thus neither visible to the eye nor can be detected directly by a device which is to determine positions on the surface, and a plurality of marks A4, each of which, depending upon its position, represents one of four values “1” to “4” as described below. In this connection it should be pointed out that for the sake of clarity the position-coding pattern in FIG. 4 is greatly enlarged. In addition, FIG. 4 only shows part of the sheet of paper.
[0138] The position-coding pattern is so arranged that the position of a partial surface on the total writing surface for any partial surface of a predetermined size is determined unambiguously by the marks on this partial surface. A first and a second partial surface A5a, A5b are shown by broken lines in FIG. 4. The second partial surface partly overlaps the first partial surface. The part of the position-coding pattern (here 4*4 marks) which is situated on the first partial surface A5a codes a first position, and the part of the position-coding pattern which is found on the second partial surface A5b codes a second position. The position-coding pattern is thus partly the same for the adjoining first and second positions. Such a position-coding pattern is called "floating" in this application. Each partial surface codes a specific position.
[0139] FIGS. 5a-d show how a mark can be designed and how it can be positioned relative to its nominal position A6. The nominal position A6, which can also be called a raster point, is represented by the intersection of the raster lines A8. The mark A7 has the shape of a circular dot. A mark A7 and a raster point A 6 can together be said to constitute a symbol.
[0140] In one embodiment, the distance between the raster lines is 300 μm and the angle between the raster lines is 90 degrees. Other raster intervals are possible, for example 254μm to suit printers and scanners which often have a resolution which is a multiple of 100 dpi, which corresponds to a distance between points of 25.4 mm/100, that is 254μm.
[0141] The value of the mark thus depends upon where the mark is located relative to the nominal position. In the example in FIG. 5 there are four possible locations, one on each of the raster lines extending from the nominal position. The displacement from the nominal position is the same size for all values.
[0142] Each mark A7 is displaced relative to its nominal position A6, that is no mark is located at the nominal position. In addition, there is only one mark per nominal position and this mark is displaced relative to its nominal position. This applies to the marks which make up the pattern. There can be other marks on the surface which are not part of the pattern and thus do not contribute to the coding. Such marks can be specks of dust, unintentional points or marks and intentional marks, from for example a picture or figure on the surface. Because the position of the pattern marks on the surface is so well-defined, the pattern is unaffected by such interference.
[0143] In one embodiment, the marks are displaced by 50μm relative to the nominal positions A6 along the raster lines A8. The displacement is preferably 1/6 of the raster interval, as it is then relatively easy to determine to which nominal position a particular mark belongs. The displacement should be at least approximately 1/8 of the raster interval, otherwise it becomes difficult to determine a displacement, that is the requirement for resolution becomes great. On the other hand, the displacement should be less than approximately 1/4 of the raster interval, in order for it to be possible to determine to which nominal position a mark belongs.
[0144] The displacement does not need to be along the raster line, but the marks can be positioned in separate quadrants. However, if the marks are displaced along the raster lines, the advantage is obtained that the distance between the marks has a minimum which can be used to recreate the raster lines, as described in greater detail below.
[0145] Each mark consists of a more or less circular dot with a radius which is approximately the same size as the displacement or somewhat less. The radius can be 25% to 120% of the displacement. If the radius is much larger than the displacement, it can be difficult to determine the raster lines. If the radius is too small, a greater resolution is required to record the marks.
[0146] The marks do not need to be circular or round, but any suitable shape can be used, such as square or triangular, etc.
[0147] Normally, each mark covers several pixels on a sensor chip and, in one embodiment, the center of gravity of these pixels is recorded or calculated and used in the subsequent processing. Therefore the precise shape of the mark is of minor significance. Thus relatively simple printing processes can be used, provided it can be ensured that the center of gravity of the mark has the required displacement.
[0148] In the following, the mark in FIG. 5a represents the value 1, in FIG. 5b the value 2, in FIG. 5c the value 3 and in FIG. 5d the value 4.」
(請求人による甲第2号証抄訳:
[0133] 以下,国際特許出願PCT/SE00/01895に記載された好ましい位置コードパターンについて説明する。
[0134] 図4は,その表面A2の少なくとも一部に位置決定を可能にする光学的に読み取り可能な位置コードパターンA3が設けられたシートA1の形態の製品の一部を示す。
[0135] 位置コードパターンは,表面A2上で系統的に配置されたマークA4を含み,それにより「パターン化された」外観を有する。用紙はX座標軸とY座標軸とを有する。位置決定は,製品の全表面に対して行うことができる。他の場合,位置決定を可能にする表面は製品の小さな部分のみを構成することもある。
[0136] パターンは,例えば,表面上に書き込まれ又は描かれる情報の電子表現を提供するために使用され得る。電子表現は,ペンで表面に書き込む間に,位置コードパターンを読み取ることによって紙面上のペンの位置を連続的に決定することができる。
[0137] 位置コードパターンは,目に見えず,表面上の位置を決定する装置によって直接検出することもできない仮想ラスタと,複数のマークA4とを含み,それぞれは,その位置には,以下に説明する4つの値「1」〜「4」のいずれかを示す。これに関連して,図を明確にするために,図4の位置コードパターンは,大きく拡大されている。また図4は,用紙の一部分のみを示している。
[0138] 位置コードパターンは,この部分表面上のマークによって,所定の大きさの任意の部分表面に対する全面書き込み面上の部分表面の位置が一義的に決まるように配置されている。第1および第2の部分表面A5a,A5bは図3において破線で示されている。第2の部分表面は,第1の部分表面と部分的に重なる。第1の部分表面A5aに位置する位置コードパターンの部分(ここでは4×4個のマーク)は第1の位置を符号化し,第2の部分表面A5bにある位置コードパターンの部分は第2の位置を符号化する。したがって位置コードパターンは,隣接する第1および第2の位置について部分的に同じである。このような位置コードパターンは,本出願では「浮動」と呼ばれる。各部分サーフェイスは特定の位置をコードする。
[0139] 図5a,5bは,どのようにしてマークを設計することができ,どのようにマークをその公称位置A6に対してどのように配置することができるかを示す。ラスタ点とも呼ばれる公称位置A6は,ラスタ線A8の交点によって表される。マークA7は円形のドットの形状をしている。マークA7とラスタ点A6はシンボルを構成するといえる。
[0140] 一実施形態では,ラスタライン間の距離は300μmであり,ラスタライン間の角度は90°である。25.4mm/100点間の距離に対応する100dpiの倍数である解像度を有することが多いプリンタ及びスキャナに適した他のラスタ間隔,例えば254μmも可能である。
[0141] したがって,マークの値は,マークが公称位置に対してどこに位置するかに依存する。別ウィンドウ(タブ)の大きな表示で見る図5では,4つの可能な位置が存在し,1つは公称位置から伸びる各ラスタライン上にある。公称位置からの変位はすべての値で同じサイズである。
[0142] 各マークA7は,公称位置A6に対して変位され,すなわちマークは公称位置に配置されない。加えて,公称位置当たり1つのマークしか存在せず,このマークはその公称位置に対して変位している。これは,パターンを構成するマークに適用される。表面にはパターンの一部ではない他のマークが存在することがあり,したがって,コーディングに寄与しない。そのようなマークは,例えば,表面上の画像または図形からのほこり,意図しない点またはマークおよび意図的な斑点であり得る。表面上のパターンマークの位置は非常に明確であるので,パターンはそのような干渉の影響を受けない。
[0143] 一実施形態では,マークはラスタラインA8に沿った公称位置A6に対して50μmだけ移動される。変位は,好ましくは,ラスタ間隔の1/6である。特定のマークがどの公称位置に属するかを決定することは比較的容易であるからである。変位は,少なくともラスタ間隔の約1/8でなければなりません。そうしないと,変位を決定することが困難になる。つまり,解像度の要件が大きくなる。一方,マークがどの公称位置に属するかを決定するために,変位はラスタ間隔の約1/4未満でなければならない。
[0144] 変位は,ラスタラインに沿っている必要はないが,マークを別々の象限に配置することができる。しかしながら,マークがラスタラインに沿って移動された場合,マーク間の距離が最小であり,ラスタラインを再現するために使用することができるという利点が得られる。
[0145] 各マークは変位とほぼ同じ大きさの半径を有する多かれ少なかれ円形のドットからなるか,幾分少ない。半径は,変位の25%〜120%とすることができる。半径が変位よりもはるかに大きい場合,ラスタラインを決定するのが難しい場合がある。半径が小さすぎると,マークを記録するためにより大きな分解能が必要となる。
[0146] マークは,円形または円形である必要はないが,正方形または三角形などの任意の適切な形状を使用することができる。
[0147] 通常,各マークはセンサチップ上のいくつかのピクセルをカバーし,一実施形態では,これらのピクセルの重心が記録または計算され,後続の処理に使用される。したがって,マークの正確な形状は重要ではない。したがって,マークの重心が所要の変位を有することが保証されれば,比較的単純な印刷プロセスを用いることができる。
[0148] 図5aは,値1を表している。図5bには,値2が示されている。図5cは値3を示し,図5dは値4である。)

イ 段落[0197]〜[0199]
「[0197] In the example above, the marks are used within a square partial surface for coding a position. The partial surface can be another shape, for example hexagonal. The marks do not need to be arranged along the raster lines in an orthogonal raster but can also have other arrangements, such as along the raster lines in a raster with 60 degree angles, etc. A polar coordinate system can also be used.
[0198] Rasters in the form of triangles or hexagons can also be used. For example, a raster with triangles enables each mark to be displaced in six different directions, which provides even greater possibilities, corresponding to 6 6*6 partial surface positions. For a hexagonal raster, a honeycomb pattern, each mark can be displaced in three different directions along the raster lines.
[0199] As mentioned above, the marks do not need to be displaced along the raster lines but can be displaced in other directions, for example in order to be located each in a separate quadrant of a square raster pattern. In the hexagonal raster pattern the marks can be displaced in four or more different directions, for example in six directions along the raster lines and along lines which are at 60 degrees to the raster lines.」
(請求人による甲第2号証抄訳:
[0197] 上記の例では,位置を符号化するために四角い部分表面内でマークが使用される。部分的な表面は別の形状,例えば六角形であってもよい。マークは直交ラスタ内のラスタラインに沿って配置される必要はないが,60度のラスタ内のラスタラインに沿ったような他の配置を有することもできる。極座標システムも使用できる。
[0198] 三角形または六角形の形態のラスタを使用することができる。例えば,三角形を有するラスタは,各マークを6つの異なる方向に変位させることができ,66*6の部分表面位置に対応する。より大きな可能性を提供する。ハニカムパターンの六角形ラスタの場合,各マークは,ラスタラインに沿って3つの異なる方向に移動することができる。
[0199] 上述したように,マークは,ラスタラインに沿ってずらされる必要はないが,例えば,それぞれが正方形のラスタパターンの別個の四分円内に位置するように,他の方向にずらすことができる。六角形のラスタパターンでは,マークは4つ以上異なる方向に,例えばラスタラインに沿って6方向に,ラスタラインに対して60度のラインに沿ってずらすことができる。)

ウ 段落[0203]〜[0204]
「[0203] In the embodiment above, the raster is an orthogonal grid. It can also have other forms, such as a rhombic grid, for example with 60 degree angles, a triangular or hexagonal grid, etc.
[0204] Displacement in more or less than four directions can be used, for example displacement in three directions along a hexagonal virtual raster. In an orthogonal raster only two displacements can be used, in order to facilitate the recreation of the raster. However, a displacement in four directions is preferred, but six or eight directions are also possible.」
(請求人による甲第2号証抄訳:
[0203] 上記の実施形態では,ラスタは直交グリッドである。それはまた,例えば60度の角度を有する菱形格子,三角形または六角形格子などの他の形態を有することができる。
[0204] 4方向より多いまたは少ない方向の変位,例えば,六角形の仮想ラスタに沿った3方向の変位を使用することができる。直交ラスタでは,ラスタの再現を容易にするために,2つの変位のみを使用することができる。しかし,4方向の変位が好ましいが,6方向または8方向も可能である。)

(2)甲第2号証の上記記載について検討する。

ア 上記(1)アの段落[0134]の「図4は,その表面A2の少なくとも一部に位置決定を可能にする光学的に読み取り可能な位置コードパターンA3が設けられたシートA1の形態の製品の一部を示す」との記載からすると,甲第2号証には,“光学的に読み取り可能な位置コードパターン”が記載されている。

イ 上記(1)アの段落[0137]の「位置コードパターンは,目に見えず,表面上の位置を決定する装置によって直接検出することもできない仮想ラスタ・・・を含み」との記載,段落[0139]の「図5a,5bは,どのようにしてマークを設計することができ,どのようにマークをその公称位置A6に対してどのように配置することができるかを示す」,「ラスタ点とも呼ばれる公称位置A6は,ラスタ線A8の交点によって表される」,「マークA7は円形のドットの形状をしている」との記載からすると,甲第2号証の「位置コードパターン」は,“表面上の位置を決定する装置によって直接検出することもできない仮想ラスタ線A8と,仮想ラスタ線A8の交点によって表されるラスタ点A6と,円形のドットの形状をしているマークA7とを有”する。

ウ 上記イの検討内容,上記(1)アの段落[0137]の「位置コードパターンは,目に見えず,表面上の位置を決定する装置によって直接検出することもできない仮想ラスタ・・・を含み」との記載,上記(1)ウの段落[0203]の「上記の実施形態では,ラスタは直交グリッドである」との記載からすると,甲第2号証の「位置コードパターン」が有する「仮想ラスタ線A8」に関して,“表面上の位置を決定する装置によって直接検出することもできない仮想ラスタ線A8は直交グリッドを構成”するものである。

エ 上記イの検討内容,上記(1)アの段落[0141]の「マークの値は,マークが公称位置に対してどこに位置するかに依存する」との記載,段落[0142]の「各マークA7は,公称位置A6に対して変位され,すなわちマークは公称位置に配置されない」,「公称位置当たり1つのマークしか存在せず,このマークはその公称位置に対して変位している」との記載からすると,甲第2号証の「位置コードパターン」が有する「円形のドットの形状をしているマークA7」は,“仮想ラスタ線A8の交点によって表されるラスタ点A6に対してどこに位置するかという変位に依存してマークA7の値を表現するもの”であるといえる。

オ 上記イの検討内容,上記(1)アの段落[0141]の「マークの値は,マークが公称位置に対してどこに位置するかに依存する・・・図5では,4つの可能な位置が存在し,1つは公称位置から伸びる各ラスタライン上にある」との記載,上記(1)イの段落[0199]の「それぞれが正方形のラスタパターンの別個の四分円内に位置するように,他の方向にずらすことができる」との記載,上記(1)ウの段落[0204]の「4方向の変位が好ましいが,6方向または8方向も可能である」との記載,上記(1)アの段落[0141]の「公称位置からの変位はすべての値で同じサイズである」との記載,段落[0142]の「各マークA7は,公称位置A6に対して変位され,すなわちマークは公称位置に配置されない」との記載からすると,甲第2号証の「位置コードパターン」が有する「円形のドットの形状をしているマークA7」は,“仮想ラスタ線A8の交点によって表されるラスタ点A6から伸びる各ラスタライン上にある4つの可能な位置と,正方形のラスタパターンの別個の四分円内に位置するように8方向に変位し,仮想ラスタ線A8の交点によって表されるラスタ点A6からの変位は,すべての値で同じサイズである”といえる。

(3)したがって,甲第2号証には,次の発明(以下,「甲第2号証発明」という。)が記載されているものと認められる。

「光学的に読み取り可能な位置コードパターンであって,
表面上の位置を決定する装置によって直接検出することもできない仮想ラスタ線A8と,仮想ラスタ線A8の交点によって表されるラスタ点A6と,円形のドットの形状をしているマークA7とを有し,
表面上の位置を決定する装置によって直接検出することもできない仮想ラスタ線A8は直交グリッドを構成し,
円形のドットの形状をしているマークA7は,仮想ラスタ線A8の交点によって表されるラスタ点A6に対してどこに位置するかという変位に依存してマークA7の値を表現するものであり,
円形のドットの形状をしているマークA7は,仮想ラスタ線A8の交点によって表されるラスタ点A6から伸びる各ラスタライン上にある4つの可能な位置と,正方形のラスタパターンの別個の四分円内に位置するように8方向に変位し,仮想ラスタ線A8の交点によって表されるラスタ点A6からの変位は,すべての値で同じサイズである,
ことを特徴とする光学的に読み取り可能な位置コードパターン。」

3 甲第3号証

(1)甲第3号証には,図面と共に,以下の事項が記載されている。(当審注:下線は当審で付加した。)

ア 「The present invention relates to a method for producing indicators and processing apparatus and system utilizing the indicators, and more particularly, to a method, an apparatus and a system for providing additional information form the indicators affixed onto the surface of an object.」(第1頁第8〜11行)
(請求人による甲第3号証抄訳:本発明は,標識を生成するための方法及び該標識を利用する処理装置とシステムに関し,特にオブジェクトの表面に書き添えられたもしくは付された標識から追加情報を提供するための方法,装置,システムに関する。)

イ 「One aspect of the present invention is to provide a method for producing graphical indicators. Some visually negligible graphical indicators are affixed on the surface of an object. The graphical indicators co-exist with main information, such as a text or picture, on the surface of object, and do not interfere with the perception of human eyes to the main information. A user retrieves the graphical indicators through an electronic system that does not couple with the object and acquires additional information from the graphical indicators.
Another aspect of the present invention provides an apparatus and a system utilizing the graphical indicators. The apparatus or the system includes an optical-reading device, a processing device, and an output device. The optical-reading device captures an image including the graphical indicators from the surface of object, the processing device, responsive to the graphical indicators, acquires the corresponding additional information by processing and/or transforming the graphical indicators, and the output device outputs the additional information.」(第3頁第3〜17行)
(請求人による甲第3号証抄訳:本発明の1つの側面は,図形標識を生成するための方法を提供することである。不可視な図形標識がオブジェクトの表面に幾つか書き添えられるもしくは付される。これらの図形標識は,オブジェクトの表面上でテキストや図等の主要情報と共存し,その主要情報に対する人間の目の知覚を妨げることがない。ユーザーは,オブジェクトと連動しない電子システムを通して図形標識を取り出し,その図形標識から追加情報を取得する。
本発明の他の側面は,図形標識を利用する装置とシステムを提供することである。装置又はシステムは,光学読取装置と,処理装置と,出力装置とを含む。光学読取装置は,オブジェクトの表面から図形標識が含まれる画像を取り込み,処理装置は,該図形標識に応答して,該図形標識を処理する及び/ 又は変形することにより対応する追加情報を取得し,そして出力装置は,その追加情報を出力する。)

ウ 「The combination 100 of the graphical micro-units consists of multiple graphical indicators arranged in sequence. Each graphical indicator includes multiple state zones for selectively respectively storing the graphical micro-units, wherein each of the state zones displays a state from at least two candidate states.」(第8頁第3〜6行)
(請求人による甲第3号証抄訳:図形微細単位の組み合わせ100は,順次配置された多数の図形標識から成る。各図形標識は,図形微細単位をそれぞれ選択的に記憶するための多数の状態領域を含み,ここで,状態領域は各々,少なくとも2つの候補状態から1つの状態を表示する。)

エ 「For example, shown in FIG. 1 (B) is an enlarged diagram illustrating one of the graphical indicators in FIG. 1 (A). The graphical indicator 11 includes 36 units of state zones 113 in the form of 6 by 6 matrix.Each state zone 113 selectively includes one graphical micro-unit or does not include the graphical micro-unit to represent the first or second state.」(第8頁第8〜12行)
(請求人による甲第3号証抄訳:例えば,図1(A)の図形標識の1つを拡大したものを図1(B)に示す。図形標識11には,状態領域113が6×6マトリックスの形式で36単位含まれる。各状態領域113は,第1又は第2状態を表すために,選択的に1つの図形単位を含んだり,その図形微細単位を含まなかったりする。)

オ 「When the micro-units in state zone 113 of the first state are assigned value of one and those of the second state are assigned value of zero, a bit matrix form 114 shown in FIG. 1 (C) is resulted. Thus, the bit matrix form 114 stores a variety of information as expected or desired. In other word, the user can store desired information based on the combination of different values of the state zones.」(第8頁第14〜18行)
(請求人による甲第3号証抄訳:第1状態の状態領域113における微細単位が,“1”の値を割当てられ,また,第2状態の状態領域113における微細単位が“0”の値を割当てられる場合,図1(C)に示すビットマトリックス形式114が生じる。従ってビットマトリックス形式114は,予想された様に又は希望通りに様々な情報を記憶する。言い換えると,ユーザーは,状態領域の異なる値の組み合せに基づき,所望の情報を記憶し得る。)

カ 「Shown in FIG. 1 (B), which has scale of 100:1, the graphical indicator 11 includes a header information 111 and a content information 112 arranged in a layout that corresponds to different indicator information. In one embodiment, all header information 111 are identical among different graphical indicators 11. However, for a more comprehensive design, more than one set of header information may be employed as long as each header information which each graphical indicator is capable of distinguishing the corresponding graphical indicator from adjacent graphical indicators and indicating the orientation of the corresponding graphical indicator to the optical device. On the other hand, different value of content information 112 represents different indicator information. Thus, one graphical indicator 11 is read through capturing one header information 111, and the graphical indicator 11 does not interfere with each adjacent graphical indicator 11. However, in another embodiment, the header information 111 in one graphical indicator 11 may be different from that of other graphical indicator 11 as long as the system can use the header information to retrieve the corresponding content information.」(第9頁第7行〜第10頁第2行)
(請求人による甲第3号証抄訳:縮尺が100:1の図1(B)に示すように,図形標識11には,異なる標識情報に対応するレイアウトで配置されたヘッダ情報111とコンテンツ情報112が含まれる。1つの実施形態において,全てのヘッダ情報111は,異なる図形標識11間において同じである。しかしながら,包含的な設計に対しては,各図形標識内の各ヘッダ情報が,隣接の図形標識から対応の図形標識を識別して,光学装置へ該対応の図形標識の配向を指し示すことができる限りにおいて一組以上のヘッダ情報が用いられ得る。他方,コンテンツ情報112の異なる値は,異なる標識情報を表す。従って,1つの図形標識11は,1つのヘッダ情報111を取り込むことによって読取られ,また,図形標識11は,各隣接する図形標識11と干渉しない。しかしながら,他の実施形態において,ヘッダ情報を用いて,対応するコンテンツ情報をシステムが取り出し得る限り,1つの図形標識11におけるヘッダ情報111は,他の図形標識11のそれと異なってもよい。)

キ 「FIG. 1(D), which has scale of 120:1, is a schematic diagram illustrating the two-dimensional matrix form in accordance with the present invention. The user first searches the header information 111 and further retrieves the graphical indicator 11 and the corresponding content information 112.」(第10頁第4〜7行)
(請求人による甲第3号証抄訳:縮尺が120:1の図1(D)は,本発明に基づく2次元マトリックス形式を示す概略図である。まず,ユーザは,ヘッダ情報111を検索し,更に,図形標識11と対応するコンテンツ情報112を取り出す。)

ク 「Furthermore, in order to rapidly retrieve the indicator information, the image corresponding to the matrix form of the graphical indicators is rotated and converted into bit matrix form, shown in FIG. 1(F) during the process.」(第10頁第9〜11行)
(当審訳:更に,迅速に標識情報を取り出すために,図1(F)に示すように,処理中,図形標識のマトリックス形式に対応する画像は,回転され又ビットマトリックス形式に変換される。)

ケ 「Furthermore, we divide the surface of object into multiple index zones. Each zone corresponds to an index value. The graphical indicator corresponding to identical indicator information is repeatedly arranged in each index zone. The graphical indicator corresponding to different indicator information is repeatedly arranged in different index zones. The system maker of the invention records the corresponding relationship of the indicator information to the index zone in an electronic apparatus. When the electronic apparatus captures an image from a index zone, it can acquire the index value of the zone using the corresponding relationship.」(第10頁第13行〜第11頁第1行)
(請求人による甲第3号証抄訳:更に,オブジェクトの表面を多数の指標領域に分割する。各領域は,指標値に対応する。同一の標識情報に対応する図形標識は,各指標領域に繰り返し配置される。異なる標識情報に対応する図形標識は,異なる指標領域に繰り返し配置される。本発明のシステムメーカは,電子機器における指標領域に対する標識情報の対応関係を記録する。電子機器は,指標領域から画像を取り込む場合,その対応関係を用いて,その領域の指標値を得ることができる。)

コ 「FIG.1(B)



サ 「FIG.1(D)



シ 「FIG.1(F)



(2)甲第3号証の上記記載について検討する。

ア 上記(1)アの「本発明は・・・オブジェクトの表面に書き添えられたもしくは付された標識から追加情報を提供するための方法,装置,システムに関する」との記載,上記(1)イの「本発明の1つの側面は,図形標識を生成するための方法を提供することである」との記載,上記(1)カの「図形標識11は,各隣接する図形標識11と干渉しない」との記載からすると,甲第3号証には,“複数隣接配置できる,オブジェクトの表面に書き添えられたもしくは付された図形標識11”が記載されている。

イ 上記(1)エに「図形標識11には,状態領域113が6×6マトリックスの形式で36単位含まれる」と記載され,上記(1)カに「図形標識11には,異なる標識情報に対応するレイアウトで配置されたヘッダ情報111とコンテンツ情報112が含まれる」と記載され,上記(1)コのFig.1(B)から「コンテンツ情報112が状態領域113を含む」態様が読み取れるから,甲第3号証の「図形標識11」は,“5×5マトリックスの形式で25単位の状態領域113を含むコンテンツ情報112”を含むものである。

ウ 上記(1)カに「図形標識11には,異なる標識情報に対応するレイアウトで配置されたヘッダ情報111とコンテンツ情報112が含まれる」,「各図形標識内の各ヘッダ情報が,隣接の図形標識から対応の図形標識を識別して,光学装置へ該対応の図形標識の配向を指し示すことができる」と記載され,上記(1)コのFig.1(B)から「直交する2つの腕を有するL字状の形状をし,L字状のそれぞれの腕の一方を水平に,他方を垂直に置くことができ,L字状のそれぞれの腕に直線状に概略等間隔に連なるドットが含まれ,L字状のそれぞれの腕に含まれるドット数が異なる」態様が読み取れることから,甲第3号証の「図形標識11」は,“直交する2つの腕を有するL字状の形状をし,L字状のそれぞれの腕の一方を水平に,他方を垂直に置くことができ,L字状のそれぞれの腕に直線状に概略等間隔に連なるドットが含まれ,L字状のそれぞれの腕に含まれるドット数が異なることによって,図形標識11の配向を差し示すことができるヘッダ情報111”を含むものである。

エ 上記(1)エに「各状態領域113は,第1又は第2状態を表すために,選択的に1つの図形単位を含んだり,その図形微細単位を含まなかったりする」と記載され,上記(1)コのFig.1(B)から「各状態領域113が含む図形微細単位はドットの形状である」態様が読み取れることから,甲第3号証の「図形標識11」が含む「各状態領域113」は,“第1又は第2状態を表すために,選択的に1つのドットを含んだり,そのドットを含まなかったりするもの”である。

オ 上記(1)オの「第1状態の状態領域113における微細単位が,“1”の値を割当てられ,また,第2状態の状態領域113における微細単位が“0”の値を割当てられる」との記載からすると,上記エの「第1又は第2状態」について,“第1状態の状態領域113に“1”の値を割当てられ,第2状態の状態領域113に“0”の値を割当てられ“ている。

カ 上記(1)クの「迅速に標識情報を取り出すために,図1(F)に示すように,処理中,図形標識のマトリックス形式に対応する画像は,回転され又ビットマトリックス形式に変換される」との記載からすると,甲第3号証の「図形標識11」は,“迅速に標識情報を取り出すために,処理中,図形標識のマトリックス形式に対応する画像は,回転され又ビットマトリックス形式に変換される”ものである。

(3)したがって,甲第3号証には,次の発明(以下,「甲第3号証発明」という。)が記載されているものと認められる。

「複数隣接配置できる,オブジェクトの表面に書き添えられたもしくは付された図形標識11であって,
6×6マトリックスの形式で36単位の状態領域113を含むコンテンツ情報112と,
直交する2つの腕を有するL字状の形状をし,L字状のそれぞれの腕の一方を水平に,他方を垂直に置くことができ,L字状のそれぞれの腕に直線状に概略等間隔に連なるドットが含まれ,L字状のそれぞれの腕に含まれるドット数が異なることによって,図形標識11の配向を指し示すことができるヘッダ情報111と,
を含み,
各状態領域113は,第1又は第2状態を表すために,選択的に1つのドットを含んだり,そのドットを含まなかったりするものであり,
第1状態の状態領域113に“1”の値を割当てられ,第2状態の状態領域113に“0”の値を割当てられ,
迅速に標識情報を取り出すために,処理中,図形標識のマトリックス形式に対応する画像は,回転され又ビットマトリックス形式に変換される
オブジェクトの表面に書き添えられたもしくは付された図形標識11。」

4 甲第4号証

(1)甲第4号証には,図面と共に,以下の事項が記載されている。(当審注:下線は当審で付加した。)

ア 「【特許請求の範囲】
(1)データフィールドと,
前記データフィールドの少なくとも2方で前記データフィールドに隣接した位置決め用境界と,を備えることを特徴とする確認用シンボル。
(2)前記境界はタイミングを決定するための境界であることを特徴とする請求項第1項に記載の確認用シンボル。
(3)前記前記境界は前記データフィールドを取り囲んでいることを特徴とする請求項第1項に記載の確認用シンボル。
(4)前記データフィールドは矩形のマトリクスであることを特徴とする請求項第3項に記載の確認用シンボル。
(5)前記データフィールドはマトリクスデータセルを含み,前記境界は既知のデータセルの幅であることを特徴とする請求項第4項に記載の確認用シンボル。
(6)前記境界に隣接して前記データセルのタイミング用ラインをさらに含むことを特徴とする請求項第5項に記載の確認用シンボル。
(7)前記タイミング用ラインは前記境界の2方にあることを特徴とする請求項第6項に記載の確認用シンボル。
(8)前記タイミング用ラインは前記境界のそれぞれの側で異なる距離にあることを特徴とする請求項第7項に記載の確認用シンボル。
(9)前記タイミング用ラインは前記境界の3方にあることを特徴とする請求項第6項に記載の確認用シンボル。
(10)前記タイミング用ラインは前記境界のそれぞれの側で異なる距離にあることを特徴とする請求項第9項に記載の確認用シンボル。
(11)前記タイミング用ラインは前記境界を取り囲んでいることを特徴とする請求項第6項に記載の確認用シンボル。
(12)前記タイミング用ラインは前記境界のそれぞれの側で異なる距離にあることを特徴とする請求項第11項に記載の確認用シンボル。
(13)前記データフィールドのタイミング用セルをさらに含むことを特徴とする請求項第5項に記載の確認用シンボル。
(14)前記境界の外側にタイミング用セルをさらに含むことを特徴とする請求項第5項に記載の確認用シンボル。
(15)前記境界の外側に位置決め用のセルをさらに含むことを特徴とする請求項第5項に記載の確認用シンボル。
(16)前記データセルはグレイスケールを用いて符号化されることを特徴とする請求項第5項に記載の確認用シンボル。
(17)前記データセルは色により符号化されることを特徴とする請求項第5項に記載の確認用シンボル。
(18)サブストレートと,
前記サブストレートに形成され,第1の情報を表す情報データセルからなる内部データフィールドと,
前記サブストレート上に形成され,前記内部データフィールドを取り囲む位置決め用及びタイミング用データセルと,
前記サブストレート上に形成され,第2の情報を表わすデータセルからなる外部データフィールドと,
を備えることを特徴とする確認用シンボル。
(19)データセルからなる直線で囲まれたデータフィールドと,前記データフィールドを取り囲む位置決め用境界とを備えるシンボルを含むイメージフィールドを表わすイメージデータを入力するためのイメージ入力手段と,
前記イメージデータを処理して境界を特定し,前記境界により位置とタイミング情報を決定し,前記データセルをサンプリングする復号化手段とを有することを特徴とするシンボル確認装置。
(20)情報用のデータセルからなる直線のデータフィールドと,前記データフィールドを取り囲む位置決め用境界とを備えるシンボルのイメージを作成する手段と,
前記イメージをサブストレート上に形成する手段と,
を有することを特徴とするシンボル形成装置。」(第1頁左下欄第3行〜第2頁右下欄第4行)

イ 「[発明が解決しようとする課題]
従来のシンボルは好適な走査方向を有し,それらがシンボルを走査する装置におかれるとき,ランダムに置かれるということのために,高いデータ密度を有し,いかなる方向にも置くことができて,機械により効率よく読取ることができるシンボルの出現が要求されていた。
本発明は上述従来例に鑑みてなされたもので,イメージデータの方向付けなしに,いかなる方向でも読取ることのできる確認用シンボルを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は,好適な走査方向を必要としない確認用シンボルを提供することを目的とする。
さらに本発明の目的は,情報の密度を高くした確認用シンボルを提供することにある。
[問題点を解決するための手段及び作用]
上記目的を達成するために本発明の確認用シンボルは以下のような構成からなる。即ち,
1つあるいはより以上の位置決め境界線を構成する他のデータセルによって取り囲まれた,直線で囲まれて並べられたデータセルを含むシンボルである。
また本発明の装置は,シンボルのイメージを入力して,シンボルの方向を決定し,そのシンボルの内容を復号する。そして,その復号した結果をディスプレイや他の装置に出力する。
これらに加えて,本発明の他の目的や利点は,添付した図面を参照して詳しく後述されるとともに,特許請求の範囲に記載された構成や作用に含まれており,これらはこれ以降の説明で明らかになるであろう。」(第3頁右下欄第2行〜第4頁右上欄第1行)

ウ 「第1図に示すように,本実施例のシンボル10は,マトリクスに配列された内部のデータセル14を備えた,直線で囲まれたデータフィールド22を含んでいる。パリティビットとして1つのセルを使用し,7×7のデータセルからなるマトリクス14は,248の異なるシンボル10を取り得る。第1図のシンボル10は,64ビットの内部データフィールドと,295の異なるシンボルを取り得る96ビットの外部データフィールドとを有している。図から明らかなように,シンボル10は,内部及び外部のデータフィールドのサイズ(N/X/N)を有し,これらは所望のいかなる数の異なる特有のシンボルに適用できるように,自由に変更可能である。内部データフィールド12は方向付け及び,あるいはタイミング用のデータセル境界16によって囲まれており,この境界線16はタイミング用及びシンボルの方向決めのために使用される。
境界線16はこの実施例では斜線で示しているが,一般に実用に応じて,光を反射するかあるいは光を吸収する“オン”データセルによって構成されている。18は境界線16を取り囲む外部データセルで,方向付やタイミングあるいはシンボルの確認用の付加情報を提供する外部データセルを含んでいる。境界線16あるいは外部データフィールド18を囲んでいるものは静寂領域であり,これは“オン”セルの最も外側のパターンを囲んでいる1つあるいはそれ以上の“オフ”データセルからなる,同心の直線で囲まれた輪に等しい。この静寂領域の同心の直線の輪に要求される線数は,そのシンボルを使用する状況によって影響される。外部データフィールド18は静寂領域としても作用しても良く,さらに静寂領域により囲まれていてもよい。シンボル10は光学的に読取れる程度に小さければよく,所望の大きさでよい。」(第4頁右上欄第5行〜右下欄第8行)

エ 「第4図は本願発明のシンボル10を検知,復号できるとともに,粘着性のあるラベルなど適当なサブストレートの上にシンボルを記録することができるシステムの構成を示している。」(第6頁左上欄第14行〜右上欄第1行)

オ 「データセルの全ての画素を,レーザジェットプリンタのグレイスケールで同じ値にセットするのにビット値が使用される。コンピュータはイメージメモリの内容を読出し,種々の粘着ラベルに各シンボルを印刷したり,金属材にシンボルを形成するレーザエッチングする,あるいは適当なデータセルを形成するインクジェットを駆動するプリンタに送る。」(第6頁左下欄第14行〜右下欄第5行)

カ 「データセル領域に登録するのに使用されたタイミングが内部のデータ構造の一部でなく,角の座標値及び,あるいは1方あるいは幅方向のセル数から計算される様なシンボル処理に対して,第1図に示すようなシンボルが使用される。実際のタイミング情報が処理の前にはわからず,第3図に示すように,非対称であるようにしてイメージが撮像されて処理されるシンボル処理のときは,第6図に示すようなシンボルが使用されるのが望ましい。このシンボルでは境界線16は,全てがオンからなる最も外側の境界線と,交互にオン,オフしているタイミングセル90からなる境界とが組み合されて構成されている。内部のデータフィールドのセルの内容をサンプリングするためのタイミングシーケンスは,シンボル10がいずれの方向にあっても,基準セル90によって提供される。
第7図は境界線16の外側にタイミングデータセル100を備えたシンボル10を示している。
この種のタイミングセルはまた,シンボルの3次元方向を規定する手助けとなる補助の位置決めデータセルとして使用される。」(第7頁左下欄第6行〜右下欄第12行)

キ 「シンボルが撮像装置40のイメージ面に正確に配されているような状況のもとでは,第9図に示すようなシンボルが提供できる。このシンボル10は,走査方向に最も近い2つの側94と96にそれぞれ1本の境界線16を配しており,この境界はタイミング情報を提供している。本出願によって検討された境界線の全てに対する重要な点は,静寂領域を含まない最も外側の境界線16は平滑で,データ領域の少なくとも2つの方向にオンとなっていることである。この種の境界線は,置かれたエッジの数が最小で,エッジが隣接しているためにシンボル10の正確な位置が知られていない状況のもとで,画素データのイメージ処理を高速に行うようにしている。シンボルのサイズやデータ密度に加えて,シンボルの正確な位置が前もって分っているときは,境界線を完全に省略できるような,最高に早いシンボルの復号化環境が形成できるであろう。」(第8頁左上欄第6行〜右上欄第7行)

ク 「第11図は外部の方向付け用セル120によって,その方向が速やかに決定できる他のシンボル10を示している。この境界線が置かれると,コンピュータ42は,方向付け用セル120が見つかるまで,境界線の外側あるいは境界線に隣接した外部データフィールドのサンプリングデータセル20のみを調べればよい。第12図は外部の方向付けセルを用いた他の形式のシンボルを示している。」(第8頁右下欄第6〜14行)

(2)甲第4号証の上記記載について検討する。

ア 上記(1)アの「前記データフィールドの少なくとも2方で前記データフィールドに隣接した位置決め用境界と,を備えることを特徴とする確認用シンボル」との記載,上記(1)イの「機械により効率よく読取ることができるシンボルの出現が要求されていた」,「本発明は上述従来例に鑑みてなされたもので,イメージデータの方向付けなしに,いかなる方向でも読取ることのできる確認用シンボルを提供する」との記載,上記(1)ウの「本実施例のシンボル10は,マトリクスに配列された内部のデータセル14を備えた,直線で囲まれたデータフィールド22を含んでいる」,「第1図のシンボル10は,64ビットの内部データフィールド・・・を有している」,「内部データフィールド12は方向付け及び,あるいはタイミング用のデータセル境界16によって囲まれており,この境界線16はタイミング用及びシンボルの方向決めのために使用される」との記載からすると,甲第4号証には,“マトリクスに配列された内部のデータセル14を備えた内部データフィールド12と,前記内部データフィールド12に隣接した境界線16と,を備えることを特徴とする機械により効率よく読取ることができるシンボル10”が記載されている。

イ 上記(1)アの「前記境界の外側に位置決め用のセルをさらに含む」との記載,上記(1)クの「第11図は外部の方向付け用セル120によって,その方向が速やかに決定できる他のシンボル10を示している」との記載からすると,甲第4号証の「シンボル10」は,“境界線16の外側に方向付け用セル120をさらに含”むものである。

ウ 上記(1)ウの「内部データフィールド12は方向付け及び,あるいはタイミング用のデータセル境界16によって囲まれており」との記載,上記(1)キの「シンボルが撮像装置40のイメージ面に正確に配されているような状況のもとでは,第9図に示すようなシンボルが提供できる」,「このシンボル10は,走査方向に最も近い2つの側94と96にそれぞれ1本の境界線16を配しており」との記載からすると,甲第4号証の「シンボル10」は,“内部データフィールド12を囲むように境界線16を配する”ものであるが,“撮像装置40のイメージ面に正確に配されているような状況のもとでは,内部データフィールド12の2つの側94と96にそれぞれ1本の境界線16を配する”ものである。

エ 上記(1)エの「粘着性のあるラベルなど適当なサブストレートの上にシンボルを記録することができる」との記載,上記(1)オの「種々の粘着ラベルに各シンボルを印刷したり,金属材にシンボルを形成するレーザエッチングする」との記載からすると,甲第4号証の「シンボル10」は,“種々の粘着ラベルや金属材の上に形成できる”ものである。

(3)したがって,甲第4号証には,次の発明(以下,「甲第4号証発明」という。)が記載されているものと認められる。

「マトリクスに配列された内部のデータセル14を備えた内部データフィールド12と,前記内部データフィールド12に隣接した境界線16と,を備えることを特徴とする機械により効率よく読取ることができるシンボル10において,
前記境界線16の外側に方向付け用セル120をさらに含み,
前記内部データフィールド12を囲むように境界線16を配するものであるが,シンボル10が撮像装置40のイメージ面に正確に配されているような状況のもとでは,前記内部データフィールド12の2つの側94と96にそれぞれ1本の境界線16を配するものであり,
種々の粘着ラベルや金属材の上に形成できる
ことを特徴とするシンボル10。」

5 甲第5号証

(1)甲第5号証には,図面と共に,以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は画像識別(pattern/image recognition)を利用して読み取ることができる画像インジケーターに関するもので,当該画像インジケーターは物体表面上に形成され,且つインジケーターのデータをマッピングする。」

イ 「【0003】
図2は電子システム110を表示する図である。その電子システム110は光学デバイス112,プロセッサー114及び出力デバイス116を有し,画像識別ステップによりその画像インジケーター102を読み取る。光学デバイス112,プロセッサー114,及び出力デバイス116は互いに有線或いは無線方式で接続されている。光学デバイス112は物体表面を読み取り,拡大影像を取得し,続いてプロセッサー114が拡大影像中から画像インジケーター102を取り出し,さらにデジタルデータに転換すると同時にそのデジタルデータに対応する付加情報を取得する。最後に,出力デバイス116がこの付加情報を受け取ると同時に,予め定められた形式でこの付加情報を出力する。こうして,画像インジケーター102の設計により,例えばブックページ等のよく見かける物体の表面上に,より多くの付加情報をロードすることができる。」

ウ 「【0007】
本発明に基づく設計では,画像インジケーターが物体の表面上に形成され,且つインジケーターのデータをマッピングする。またその画像インジケーターはコンテンツデータ部(content part)及びヘッダー部(header part)を含む。コンテンツデータ部は複数個の画像マイクロユニット(micro−units)を含み,且つコンテンツデータ部が占有するエリアは複数の状態エリアに区分される。その中で各状態エリアには全て画像マイクロユニットが設置され,且つ画像マイクロユニットは選択的に等分状態エリアが形成する多くのバーチャルエリア中の1つに位置する。ヘッダー部は複数個の画像マイクロユニットを含み,且つ画像マイクロユニットは予め定められた方式で配列され,その画像インジケーターを識別するヘッダー情報(header information)を提供させる。ヘッダー部はコンテンツデータ部のボーダー上に分布し,且つコンテンツデータ部の画像マイクロユニットの分布エリアを定めることができる。」

エ 「【0012】
図4は本発明に基づく実施例で設計された,多くの画像インジケーター10が配列し形成する図案を表示し,図5はその中の画像インジケーター10の拡大図で,はっきりと本発明の設計を説明するものである。図5に示すように,画像インジケーター10はコンテンツデータ部(content part) 12及びヘッダー部(header part) 14を含む。本実施例によると,コンテンツデータ部12は9個のドット16で構成される9個の画像マイクロユニットを含み,且つそのコンテンツデータ部12の占有エリアは9個の状態エリア18に区分され,3*3の平面2次元状態エリアのアレイを構成する。各状態エリア18は全て1つのドット16を含む。本実施例に基づく設計では,1つのドット16が状態エリア18中の異なる配列位置に置かれると,マッピングしたインジケーターデータ中の個別の数値で表すことを利用することができる。詳しく言うと,図6に示すように,1つの状態エリア18は4個のバーチャルエリアに等分することができ,ドット16は選択的に右下方,左下方,左上方或いは右上方のバーチャルエリアに設置でき,それぞれ4個の異なるビット値00,01,10或いは11で表すことができる。こうして,図5のコンテンツデータ部12が示すドット16の配置関係は,図7に示すビットアレイに対応させることができる。コンテンツデータ部12が9個のドット16を有し,且つそれぞれ9個の状態エリア中に置く時,各状態エリア18が4個のバーチャルエリアに等分されているため,各ドット16を選択的に4個のバーチャルエリア中の1つに設置する場合,そのコンテンツデータ部12に49 (=262144)種の状態の組み合わせを持たせることができる。そこで,図5に示す画像インジケーター10の設計を利用すると,マッピングするインジケーターデータ中の262144個の異なる数値を表示することができる。そのため,本実施例によるコンテンツデータ部12の設計は,その262144種の状態組み合わせ中から,65536種の状態組み合わせを取り出し,ユニコード(Unicode)のコード構造中の1つのプレーン(plane)に属する65536個のコード位置に対応させ,その残りの状態組み合わせは,その他の用途のために保留することができる。例をあげると,チェックサムコード(checksum code)に対応させるコード位置として状態組み合わせを提供することができる。
【0013】
もう一方では,画像インジケーター10が1グループの画像マイクロユニットから構成されているため,ヘッダー部14を設置して2つの隣り合う画像インジケーター10を区分する必要がある。図8に示すように,4個の画像インジケーター10は全て同じコンテンツデータ部12を持ち,また同じインジケーターのデータ内容を有する。そのため,4個の画像インジケーター10には全て同じ特定のヘッダー部14を設置し,こうすることで,その特定のヘッダー部14を探し出すだけで,同じ画像インジケーター10が探し出せ,近隣の他の画像インジケーター10における干渉を受けない。ヘッダー部14は同様に例えばドット16から構成される多くの画像マイクロユニットを含み,且つそのヘッダー部14の占有エリアが多くの状態エリア18に区分されている。さらに図5を参照する。本実施例に基づく設計では,ヘッダー部14の各状態エリア18は全て状態エリア18の中心位置に設置される1つのドットを含み,そのためヘッダー部14は7個のドットを持つ。且つ2つの隣り合うボーダー上を9個のドットを有するコンテンツデータ部12で囲み,ヘッダー部14をL型分布に形成させ,且つ画像インジケーター10全体を16個のドットで構成される4*4マトリックス配列とする。図5に示すように,ヘッダー部14のドットの配列位置は全て状態エリアの中心位置に予設され,画像インジケーターがヘッダー部14を識別する過程をさらに速くさせることができる。但し,ヘッダー部14中の1つのドット16'の位置は特定方向に偏移させ,その他のドット16の位置と変える必要がある。そのため画像識別(pattern/image recognition)を行い,その画像インジケーター10を読み取る時,光学デバイス(図の表示なし)が物体表面を読み取り拡大影像を取得した後,まず画像インジケーター10のヘッダー部14を識別するだけで,その画像インジケーター10に対する方向付けができ,コンテンツデータ部12の状態組み合わせを正確にキャプチャすることができる。」

オ 「【0022】
当然,本発明に基づく設計では,ドット16を複数個のバーチャルエリア中の1つに置くだけで,異なるビット値で表示され,各状態エリア18が等分されたバーチャルエリアの数量も限定されない。また図16に示すように,状態エリア18を八個のバーチャルエリアに区分でき,それぞれのドット16を選択的にその中の1つのバーチャルエリアに置くと,8種の可能な状態組み合わせが発生する。言い換えると,本発明ではそれぞれのドット16を置く状態エリアの位置は限定されず,状態エリア18が,幾つのバーチャルエリアに区分されているかだけを見ればよい。」

カ 「図2



キ 「図4



ク 「図5



ケ 「図6



コ 「図7



サ 「図8



シ 「図9



ス 「図10



セ 「図16



6 甲第6号証

(1)甲第6号証には,図面と共に,以下の事項が記載されている。
ア 「[1] 印刷物等の媒体面の正方形または長方形の矩形領域をブロックとし,核ブロックの枠を構成する縦方向および横方向の直線を基準格子線として,該基準格子線上の所定間隔毎に仮想格子点を設け,横方向の該基準格子線上に設けられた仮想格子点上に基準格子点ドットを配置し,該基準格子点ドット同士および縦方向の仮想格子点同士を結んだ直線を格子線とし,格子線同士の交点を仮想格子点とし,前記仮想格子点を基準に距離と方向を有する1または複数の情報ドットをそれぞれ配置したドットパターンを生成し,そのようなドットパターンを画像情報として光学読み取り手段で読み込んで,該ドットパターンを数値化して,該数値化情報に対応する情報を記憶手段から読み出して出力するドットパターンを用いた情報出力方法。」

イ 「[3] 前記ブロックを構成する基準格子ドットもしくは,準基準格子ドットの少なくとも1つが,仮想格子点からずれた位置に配置され,そのずれた向きが当該ブロックの向きおよびブロックの構成を定義されているキードットであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のドットパターンを用いた情報入出力方法。」

ウ 「[5] 前記ブロックが任意の領域内に縦・横方向に連続して配置され,前記基準格子ドットを縦方向に各ブロックで共用することを特徴とする請求項1〜4記載のドットパターンを用いた情報入出方法。」

エ 「[0002] 従来より,印刷物等に印刷されたバーコードを読み取り,音声等の情報を出力させる情報出力方法が提案されている。例えば,予め記憶手段に与えられたキー情報に一致する情報を記憶させておき,バーコードリーダで読み込まれたキーから検索して情報等を出力する方法が提案されている。 また,多くの情報やプログラムを出力できるように,微細なドットを所定の法則で並べたドットパターンを生成し,印刷物等に印刷したドットパターンをカメラにより画像データとして取り込み,デジタル化して音声情報を出力させる技術も提案されている。」

オ 「[0007] 本発明の請求項1は,印刷物等の媒体面の正方形または長方形の矩形領域をブロックとし,各ブロックの枠を構成する縦方向および横方向の直線を基準格子線として,該基準格子線上の所定間隔毎に仮想格子点を設け,横方向の該基準格子線上に設けられた仮想格子点上に基準格子点ドットを配置し,該基準格子点ドット同士および縦方向の仮想格子点同士を結んだ直線を格子線とし,格子線同士の交点を仮想格子点とし,前記仮想格子点を基準に距離と方向を有する1または複数の情報ドットをそれぞれ配置したドットパターンを生成し,そのようなドットパターンを画像情報として光学読み取り手段で読み込んで,該ドットパターンを数値化して,該数値化情報に対応する情報を記憶手段から読み出して出力するドットパターンを用いた情報出力方法である。」

カ 「[0011] 本発明の請求項3は,前記ブロックを構成する基準格子ドットもしくは,準基準格子ドットの少なくとも1つが,仮想格子点からずれた位置に配置され,そのずれた向きが当該ブロックの向きおよびブロックの構成を定義されているキードットであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のドットパターンを用いた情報入出力方法である。
[0012] このキードットの存在により,光学読取手段で読み取った場合に,ドットパターンの方向を認識することができる。そのため当該方向毎に読み取った情報ドットの意味を変えることにより,さらに多量の情報をドットパターンとして定義することが可能となる。」

キ 「[0026] 図1は,本発明の実施形態であるドットパターンを具体的に示したものであり,(a)は4×4格子,(b)は5×4格子,(c)は6×4格子分のドットパターンを示している。
[0027] 同図(a)において,まず四角形を構成する縦横方向の基準格子線1a〜1dを設け,その四角形内の所定間隔毎に仮想格子点4が配置されている。
[0028] なお,基準格子線1a〜1dおよび仮想格子点4については,実際に紙面(媒体面)に印刷されるわけではなく,あくまでもコンピュータの画像メモリ上にドットパターンの配置の際,またはドットパターンの読取の際に仮想的に設定されるものである。
[0029] 次に,上下の横方向の基準格子線1a,1b上の仮想格子点4上に基準格子点ドット2を配置する。
[0030] 次に,仮想格子点4同士を結ぶ縦横方向の格子線3を想定し,この格子線3同士の交点を同じく仮想格子点4とする。
[0031] 次に,仮想格子点4を基準に距離と方向とを有する情報ドット5を仮想格子点4毎に1または2以上配置してドットパターンを生成する。なお,図1では仮想格子点4毎に1つの情報ドット5が配置されている。
[0032] 以上に説明した図1(a)は格子数を縦方向に4個,横方向に4個の単位で情報ドットを配置した場合(4×4格子)であるが,同図(b)は5×4格子,(c)は6×4格子をそれぞれ示している。尚,格子数は2×1格子以上で任意に設定できる。
[0033] 図2は情報ドットの定義を示したものであり,仮想格子点4を中心に情報ドットの方向で値を定義したものである。同図では仮想格子点4を通過する格子線3を基準に時計方向に45度ずつ8方向に情報ドットを配置することによって,合計8通り(二進法で000〜111,3ビット)の情報を定義できるようになっている。」

ク 「[0046] 図8(a)〜(c)は,図7で説明した準基準格子点ドットを配置したドットパターンにおける情報ドットの読取順を示す図である。同図中,丸付き数字は読み取り順を示したものである。これらの図に示すように,格子線C上には準基準格子点ドットが配置されているため,この格子点部分に情報ドットを配置することはできなくなるが,前述のように読み取り精度を大幅に向上させ,情報ドットの値の計算を短縮することができるとともに,エラーを起こすことなく情報ドット5を簡易に読み取ることができるという利点がある
図9(a)および(b)は,基準格子線上の仮想格子点上に,基準格子点ドットのかわりにキードットを配置した例である。(a)は,基準格子線Aの中間位置の仮想格子点を基準に上方向にずらした位置にキードットを配置している。一方,(b)は,キードットを中間の格子線30上の準基準格子点ドットの位置に配置したものである。
[0047] これらのキードットにより,ドットパターンの方向を定義することができる。」

ケ 「図1



コ 「図2



サ 「図9



7 甲第7号証

(1)甲第7号証には,図面と共に,以下の事項が記載されている。

ア 「ここで,ドットパターン部(607)には,記憶手段に登録された音声データに対応するコード情報を定義しておいてもよいし,XY座標値を定義しておいてもよい。また,コード情報とXY座標値とを混在させておいてもよい。ドットパターン部(607)のヘッダには当該ドットパターン部がコード情報なのかXY座標なのかを定義するフラグを登録しておくことができる。」(第3頁第1〜5行)

イ 「ドットパターン部601は,図105に示すように,格子状に配置されたドットで構成されている。なお縦横方向の格子線はドットの配置位置を説明するためのものであり実際の印刷物上には存在しない。
ここで,4×4個の格子領域を1つのデータブロックまたは格子ブロックと呼び,この格子ブロックの四隅(格子線の交点(格子点)上)には格子ドットLDが配置されている。格子ドットLD同士の間隔は0.35mm〜1.0mm,好ましくは0.5mm程度であることが最適である。また,ドットの直径は前記格子ドット間隔の8〜10%程度であることが望ましい。
どの格子ブロックからどの格子ブロックまでが1つのデータであるかを示すためにキードットKDを配置している。」(第44頁第24行〜第45頁第4行)

ウ 「図5



エ 「図6



オ 「図105



第7 当審の判断

1 無効理由2(特許法第17条の2第3項)について
事案に鑑み,まず,無効理由2について先に検討する。

(1)新規事項の追加の判断の枠組みについて

特許請求の範囲等の補正は,出願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしなければならないところ,出願当初明細書等に記載した事項とは,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項を意味し,当該補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。
以下,この観点に立って,判断する。

(2)本件特許発明及びその意義

ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。

(ア)発明の属する技術分野
「本発明は,印刷物に形成したドットパターン情報を光学的に読み取り該ドットパターンに対応した種々の情報を再生する技術に関する。」【0001】

(イ)背景技術
「従来より,光センサを用いて絵本やゲームカードに印刷されたバーコードを読み取り,特定の音声を発音させる音声発生玩具が提案されている。これらの音声発生玩具では,読み込んだバーコードに対応した音声情報をメモリから読み出すことで多種の音声情報を再生できるようにしていた。」【0002】
「しかし,このようなバーコードを用いた技術は,紙面上にバーコード印刷用の専用領域を確保しなければならず,かつバーコードは情報処理システムが読み取るためのものであり,絵本や書籍の読者にとっては目視でそのコード内容を把握しかねるものであったため,限られた紙面上にバーコードが印刷されていることは読者にとっては煩わしく絵本等書籍の製品価値を下げかねないものとなっていた。」【0003】
「さらに,上記のようにバーコード技術は,紙面上に印刷された文字,図形,記号に重ねて印刷することができないために,これらの文字,図形,記号等に対して音声再生を行いたい場合に文字等の近傍にバーコードを印刷するしかなく,読者にとって直感的に文字等に別の音声情報等が付加されていることを伝えにくい特性を有していた。」【0004】
「この点について,特開平10−261059号公報に開示されている『ドットコード』技術では,ドットパターンで印刷されたコード情報を読み取って情報を再生させる方法が提案されている。」【0005】
「係る先行技術では,ブロック領域内のドットパターンの配置の仕方によってデータを定義するとともに,データドットパターンではあり得ないドットパターンでマーカを定義することにより,これを同期信号として機能させている。したがって,この技術では,ドットを所定の法則で紙面の二次元方向に印刷したドットパターンをペン型のスキャナで読み取り,このスキャナの走査速度と走査方向を情報処理装置で解析して予め対応付けられた音声等の情報を再生させる方法となっている。」【0006】
「しかし,係るドットコード技術では,動的にスキャナを走査させることを前提としているために,紙面に印刷された文字に沿って音声情報を再生することは可能であるものの, 紙面上にキャラクタ等が自由に印刷配置された絵本等で静的に読取装置を当接させるだけで情報を再生させたいような用途には不向きであった。すなわち,このドットコード技術では意味のあるコード情報を取得するためにはXY座標上で一定の距離以上のスキャニングを実行する必要があるため,紙面上に印刷された極小領域にドットコードを対応付けて印刷することはできなかった。」【0007】

(ウ)発明が解決しようとする課題
「本発明は,極小領域であってもコード情報やXY座標情報が定義可能なドットパターンを提案し,係るドットパターンに基づいた情報再生方法および情報再生装置を提案するものである。」【0008】

(エ)発明の効果
「本発明によれば,極小領域であってもコード情報やXY座標情報が定義可能なドットパターンを提供することができる。」【0013】

イ 本件特許発明の意義
前記アによれば,本件特許発明の意義は,以下のとおりであると認められる。
従来から,光センサを用いて絵本やゲームカードに印刷されたバーコードを読み取り,特定の音声を発音させる音声発生玩具が提案されており,先行技術においては,バーコードに代わってドットパターンで印刷されたコード情報を読み取って情報を再生させる方法が提案されていた。同技術においては,ドットを所定の法則で紙面の二次元方向に印刷したドットパターンをペン型のスキャナで読み取り,このスキャナの走査速度と走査方向を情報処理装置で解析してあらかじめ対応付けられた音声等の情報を再生させるが,動的にスキャナを走査させることを前提としているために,紙面上にキャラクタ等が自由に印刷配置された絵本等で静的に読取装置を当接させるだけで情報を再生させる用途には不向きであった。
本件特許発明は,印刷物に形成したドットパターン情報を光学的に読み取り該ドットパターンに対応した種々の情報を再生する技術に関するものであり,極小領域であってもコード情報やXY座標情報が定義可能なドットパターンを提案し,このドットパターンに基づいた情報再生方法及び情報再生装置を提案するものである。

(3)本件特許明細書におけるドットパターンの記載

本件特許明細書には,発明に係るドットパターンについて説明した以下の記載がある。また,本件特許の図面には,図1〜図113が掲載されており,このうち,ドットパターンを示すものとして,【図2】,【図5】〜【図8】,【図22】,【図103】〜【図106】がある。
「図1は本発明のドットパターンを用いた情報再生方法の構成を示すブロック図であり,(a)はドットコードの生成について,(b)はドットパターンの認識についての説明図である。図2はドットパターンの一例を示す正面図である。図3は絵本と情報再生方法の状態を説明する機能ブロック図である。」【0014】
「本発明のドットパターン601の生成は,ドットコード生成アルゴリズムにより,音声情報を認識させるために微細なドット605を第一方向ライン603に所定の規則に則って配列し,かつこの第一方向ライン603に交差するように配置した第二方向ライン604に所定の規則に則ってドット605を配列する。さらに,パソコン608内のメモリまたはカメラ602内に設けられたメモリにマッピングテーブルも生成する。この第一方向ライン603と第二方向ライン604とは90度の角度で交差させたものに限定されず,たとえば,60度の角度で交差させたものでもよい。」【0017】
「図4は他のドットパターンを用いた情報再生方法の構成を示すブロック図であり,(a)はドットコードの生成について,(b)はドットパターンの認識についての説明図である。図5から図8は他のドットパターンの一例を示す正面図である。」【0023】
「上述したようにカメラ602で取り込んだ画像データは,画像処理アルゴリズムで処理してドット605を抽出し,歪率補正のアルゴリズムにより,カメラ602が原因する歪とカメラ602の傾きによる歪を補正するので,ドットパターン601の画像データを取り込むときに正確に認識することができる。」【0024】
「このドットパターンの認識では,先ず連続する等間隔のドット605により構成されたラインを抽出し,その抽出したラインが正しいラインかどうかを判定する。このラインが正しいラインでないときは別のラインを抽出する。」【0025】
「次に,抽出したラインの1つを水平ラインとする。この水平ラインを基準としてそこから垂直に延びるラインを抽出する。垂直ラインは,水平ラインを構成するドットからスタートし,次の点もしくは3つ目の点がライン上にないことから上下方向を認識する。」【0026】
「最後に,情報領域を抽出してその情報を数値化し,この数値情報を再生する。」【0027】
「図21は本発明のカメラ入力による情報入出力方法の構成を示すブロック図であり,(a)はドットコードの生成について,(b)はドットパターンの認識についての説明図である。図22はドットパターンの一例を示す正面図である。」【0061】
「次に,本発明におけるドットパターンの仕様について図103〜図106を用いて説明する。」【0184】
「ドットパターン部601は,図105に示すように,格子状に配置されたドットで構成されている。なお縦横方向の格子線はドットの配置位置を説明するためのものであり実際の印刷物上には存在しない。」【0185】
「ここで,図105における4×5個の格子領域を1つのデータブロックまたは格子ブロックと呼び,この格子領域の四隅(格子線の交点(格子点)上)には格子ドットLDが配置されている。格子ドットLD同士の間隔は0.35mm〜1.0mm,好ましくは0.5mm程度であることが最適である。また,ドットの直径は前記格子ドット間隔の8〜10%程度であることが望ましい。」【0186】(訂正後)
「どの格子領域からどの格子領域までが1つのデータであるかを示すためにキードットKDを配置している。」【0187】(訂正後)
「キードットKDとは,格子ドットLDの位置をずらしたものである。すなわち,格子ドットLDは本来格子点上に配置されているが,この位置をずらしてキードットKDを配置している。なお,キードットKDの格子点からのずれは約20%前後程度が好ましい。」【0188】
「前記キードットKDに囲まれた領域,またはキードットKDを中心にした領域が1つのデータを構成している。」【0189】
「このデータの並びは,図104に示すように,左上から下方向に向かって順番に配置されている。」【0190】
「データは,図103に示すように,ドット605を格子領域内の中心点からどの程度ずらすかによってデータ内容が定義できるようになっている。同図では,中心から等距離で45度ずつそれぞれずらした点を8個定義することによって単一の格子領域で8通り,すなわち3ビットのデータを表現できるようになっている。なお,さらに中心点から距離を変更した点をさらに8個定義すれば16通り,すなわち4ビットのデータを表現できる。」【0191】(訂正後)
「本発明のドットパターンは,1個のデータブロックを構成する格子を自由に定義することができる点に特徴がある。つまり,前述のようにキードットKDがデータ領域の範囲を定義しているため,このキードットKDの配置を変更すれば任意の可変長の格子領域群をデータ格納領域として扱うことができるわけである。」【0192】(訂正後)
「また,本発明のドットパターンでは,キードットのずらし方を変更することにより,同一のドットパターン部であっても別の意味を持たせることができる。つまり,キードットKDは格子点からずらすことでキードットKDとして機能するものであるが,このずらし方を格子点から等距離で45度ずつずらすことにより8パターンのキードットを定義できる。」【0193】
「ここで,ドットパターン部をC−MOS等の撮像手段で撮像した場合,当該撮像データは当該撮像手段のフレームバッファに記録されるが,このときもし撮像手段の位置が紙面の鉛直軸(撮影軸)を中心に回動された位置,すなわち撮影軸を中心にして回動した位置(ずれた位置)にある場合には,撮像された格子ドットとキードットKDとの位置関係から撮像手段の撮像軸を中心にしたずれ(カメラの角度)がわかることになる。この原理を応用すれば,カメラで同じ領域を撮影しても角度という別次元のパラメータを持たせることができる。そのため,同じ位置の同じ領域を読み取っても角度毎に別の情報を出力させることができる。」【0194】
「いわば,同一領域に角度パラメータによって階層的な情報を配置できることになる。」【0195】
「この原理を応用したものが図74,図76,図78に示すような例である。図74では,ミニフィギュア1101の底面に設けられたスキャナ部1105でこのミニフィギュア1101を台座上で45度ずつ回転させることでドットパターン部の読取り情報とともに異なる角度情報を得ることできるため,8通りの音声内容を出力させることができる。」【0196】
「本発明において,ダミードットDDを定義することができる。このダミードットDDは,4個の格子ドットLDの正中心に配置したドットである(図106(a)参照)。このようなダミードットは,マスク領域毎に境界を定義した絵本等に適している。図106(c)に示すようにmask1とmask2の領域の境界にダミードットDDを配置している。このようなマスク境界にダミードットDD領域を配置することにより,それぞれのマスク領域に定義されたコード情報を同時に読み取ってしまうことを防止している。図106(d)はダミードットDDの配置状態を示した図である。」【0197】
「また,絵本等の背景部分については,格子ドットの中心にドットを配置しない空ドットを配置することが好ましい。空ドットは,情報が記録された通常のデータドットに比べてドット数が少ないため,ドットパターンの目立たない印刷が可能となる。また,空ドットの連続であるために,模様が生じにくく,単一色の背景に適している。」【0198】
「また,本発明では,本来撮影中心を含む1ブロック分のデータを解析する必要があるが,撮影中心の近傍の格子データ(情報データ)をブロックをまたがって読取りデータとしてもよい。このような場合,本来の1ブロックから欠けている情報データに該当するデータを隣り合う他のブロックから読み込んで1ブロック分のデータに補完して入力を完了することができる。」【0199】
「XY座標を定義するドットパターンについては,撮影中心とは異なるブロックからそれに相当するXY座標を構成する情報ドットを読み,補正をかけて撮影中心のXY座標値とすることができる。」【0200】
「本発明は,以上に説明したような,格子ドットを用いたドットパターンであるため,撮影条件にあまり左右されないという特性を有している。すなわち,撮影条件(カメラのレンズのひずみ,カメラの写す角度,紙の変形) によってドットパターン全体がひずみを起こした場合,4個の格子ドットで形成される形状と,情報ドットの位置のずれが同様に起きるため,格子ドットからの相対的な位置関係にかわりはなく,これら格子ドットを基準に補正計算を行えば,各情報ドット,キードットについての真の位置がわかる。」【0201】
「つまり,本発明の格子ドットを用いたドットパターンは歪みに強いといえる。」【0202】

「本件特許の図面の【図5】



「本件特許の図面の【図6】



「本件特許の図面の【図7】



「本件特許の図面の【図8】



「本件特許の図面の【図103】



「本件特許の図面の【図104】



「本件特許の図面の【図105】



「本件特許の図面の【図106】



(4)補正要件違反について

ア 補正の内容
(ア)本件特許について平成21年6月15日付けでした補正(以下「本件補正」という。)は,以下の内容を含む。

a 平成21年1月9日付け手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1の「前記ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットをいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し,」の「前記情報ドットを」と「いずれかの方向に」との間に,「前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうち」との事項が追加されたこと(以下,この補正部分を「本件補正第1部分」といい,この補正に係る「前記ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との構成要件を「構成要件1」という。)

b 平成21年1月9日付け手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1が以下のとおり変更されたこと(以下,この補正部分を「本件補正第2部分」という。)

(a)変更前
「前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」

(b)変更後
「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」(以下,この補正に係る「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」との構成要件を「構成要件2」という。)

c 段落【0009】の記載について,上記a及びbと同じ変更がされたこと

イ 出願当初明細書等の記載
(ア)本件特許に係る出願当初明細書等には,本件特許の図面の【図2】,【図5】〜【図8】,【図22】,【図103】〜【図106】と同じ図面に加え,上記(3)の段落【0023】〜【0027】,【0184】〜【0202】と同一の段落に同一の記載がある。
そして,上記図面のうち,【図2】及び【図22】は,いずれも,発明の詳細な説明において,ドットパターンを示す一例であるとだけ記載され,ドットパターンの内容に関する説明はなく(【0014】,【0061】),発明の詳細な説明にドットパターンの内容についての記載があるのは,【図5】〜【図8】のドットパターンと,【図103】〜【図106】のドットパターンである。

(イ)a 出願当初明細書等の【図5】〜【図8】のドットパターンに関係して,上記(3)のとおり,【0023】〜【0027】の記載がある。これらには,情報を示すドットパターンについて,等間隔のドットにより構成されたラインが抽出されるとともに,そのうちの一つを水平ラインとして,そこから垂直に延びるラインを抽出し,その垂直ラインは,水平ラインを構成するドットの次の点,または3つ目の点がライン上にないことから上下方向を認識し,情報領域を抽出して,その数値情報を再生することが記載されている(以下,【図5】〜【図8】や上記発明の詳細な説明に記載されている技術思想のドットパターンを「図5ドットパターン」ということがある。)。

b ここで,下記【図5】の参考図に示すように,【図5】において縦方向に引かれた16本のラインを左から縦1,縦2,縦3,・・・,縦16と呼び,横方向に引かれた16本のラインを上から横1,横2,横3,・・・,横16と呼ぶこととする。

「【図5】の参考図


横1,横13上には,水平方向に等間隔にドットが配置されている。縦1は,横1,横13上に配置されたドットから垂直方向に延びるところ,縦1上には,垂直方向に基本的に等間隔にドットが配置されている。ただし,縦1と横4との交点にはドットはなく,その交点から左に矢印が伸び,その先にドットがあり,このドットに「x,y座標フラグ」との説明がある。また,縦13上には,垂直方向に基本的に等間隔にドットが配置されているが,縦13と横4との交点にはドットがなく,その左側にドットがある。そして,【図5】には,概ね,縦1,縦13,横1,横13で囲まれる範囲に対応する,点線で囲まれた部分が「この部分で情報を表現」と説明されている。そうすると,【図5】では,横1,横13が第一方向ラインであり,縦1,縦13が第二方向ラインであって,それらにより情報領域が示されているといえる。また,【図5】で「情報を表現」として記載されている部分をみると,例えば,縦4,縦7,縦10と,横4,横7,横10の各交点について,水平方向及び垂直方向に矢印が示され,その先に水平方向及び垂直方向に各1個のドットが記載されている。縦4と横4上の交点について,同交点から上にずれた場合はy1を示し,下にずれた場合はy0を示し,右にずれた場合はx1を示し,左にずれた場合はx0を示すと記載され,【図5】では,上にずれたドットと右にずれたドットが示され,それがx座標,y座標ともに1を示す旨が記載されている。そして,【図5】のドットパターンがx座標,y座標を示しているとして,その具体的な座標が記載されている。

c 出願当初明細書等の【図6】に示されたドットパターンは,概ね出願当初明細書等の【図5】に示されたドットパターンと同じであるが,第二方向ライン上にドットがない部分について右に矢印が示されその先にドットがあり,このドットに「一般コードフラグ」との説明がある。第一方向ラインと第二方向ラインで概ね囲まれる「この部分で情報を表現」とされている部分では,第一方向ライン上に配置されたドットから垂直方向に延びるラインと,第二方向ライン上に配置された各ドットから水平方向に延びるラインの交点から,上にずれた場合にはc0,右にずれた場合にはc1,下にずれた場合にはc2,左にずれた場合にはc3などと示され,各交点について,水平方向又は垂直方向にずれたドットが1個示されている。そして,【図6】のドットパターンがコードを示しているとして,その具体的なコードが記載されている。

d 出願当初明細書等の【図7】に示されたドットパターンは,概ね出願当初明細書等の【図5】に示されたドットパターンと同じであり,第一方向ラインと第二方向ラインで概ね囲まれ「この部分で情報を表現」とされている部分では,第一方向ライン上に配置されたドットから垂直方向に延びるラインと,第二方向ライン上に配置された各ドットから水平方向に延びるラインの交点から,上にずれた場合にはy1,下にずれた場合にはy2,右にずれた場合にはx2,左にずれた場合にはx1などと示され,各交点について,水平方向又は垂直方向にずれたドットが1〜3個示されている。そして,【図7】のドットパターンがx座標,y座標を示しているとして,その具体的な座標が記載されている。

e 出願当初明細書等の【図8】に示されたドットパターンは,概ね出願当初明細書等の【図5】に示されたドットパターンと同じであるが,第二方向ライン上にドットがない部分について右に矢印が示されその先にドットがあり,このドットに「一般コードフラグ」との説明がある。第一方向ラインと第二方向ラインで概ね囲まれ「この部分で情報を表現」とされている部分では,第一方向ライン上に配置されたドットから垂直方向に延びるラインと,第二方向ライン上に配置された各ドットから水平方向に延びるラインの各交点について,水平方向又は垂直方向にずれたドットが1〜3個示されている。そして,【図8】のドットパターンがコードを示しているとして,その具体的なコードが記載されている。

(ウ)a 出願当初明細書等の【図103】〜【図106】のドットパターンに関係して,上記(3)のとおり,段落【0184】〜【0195】の記載がある。これらによれば,そのドットパターンは,格子状に配置されたドットで構成される。そして,格子ドットLDと呼ばれるドットを四隅に配置し,その4つの格子ドットLDで囲まれた領域の中心からどの程度ずらすかによってテータ内容が定義され,例えば,同領域の中心から等距離の位置で45度ずつずらした点を8個定義することで,8通りのデータを表現でき,このずらす距離を変更した点を8個定義することで16通りのデータを表現できる。また,格子ドットLDは,本来,縦横方向の格子線の交点上である格子点上に配置されるが,その位置をずらしたドットをキードットKDとして,このキードットKDに囲まれた領域,又は,キードットKDを中心にした領域が一つのデータを示している。また,キードットKDを格子点から等距離で45°ずつずらすことにより,その角度ごとに別の情報を定義することができることなどが記載されている。(以下,【図103】〜【図106】や上記発明の詳細な説明に記載されている技術思想のドットパターンを「図105ドットパターン」ということがある。)

b ここで,下記【図105】の参考図に示すように,【図105】において縦方向に引かれた19本のラインを左から縦1,縦2,縦3,・・・,縦19と呼び,横方向に引かれた11本のラインを上から横1,横2,横3,・・・,横11と呼ぶこととする。

「【図105】の参考図



【図105】においては,例えば,垂直方向の格子線である縦1,縦3,縦5と,水平方向の格子線である横1,横3,横5の交点に格子ドットが配置され,格子ドットが四隅に配置されている領域が示されている(例えば,縦1と横1の交点,縦1と横3の交点,縦3と横3の交点,及び縦3と横1の交点を四隅とするもの,縦1と横3の交点,縦1と横5の交点,縦3と横5の交点,及び縦3と横3の交点を四隅とするもの)。そして,その4個の格子ドットで囲まれる領域の中心から等距離の位置でいずれかの位置に1個のドットが配置されていることが示され(例えば,縦2と横2の交点から右にずれたドット,縦2と横4の交点から下にずれたドット),【図105】全体では,上記領域の中心から等距離の位置で,45°ずつずれた位置のいずれか1つの位置にドットが配置されることが記載されている。また,【図103】には,交点から45°ずつずれた位置にドットを配置する構成が記載されている。そして,縦3と横1の交点から上にずれたドットや縦11と横1の交点から上にずれたドットは,垂直方向の格子線である縦3又は縦11上にあるが,水平方向の格子線である横1上にはなく,これらは,格子線の交点からずれたキードットKDであることが示されている。

ウ(ア)図105ドットパターンにおいては,情報ドットは,四隅を格子ドットで囲まれた領域の中心からずれた位置に置かれるところ,構成要件1の情報ドットは,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点の中心」からずれた位置に置かれる。図105には,水平又は垂直の格子線の中間に各格子線と平行な線が引かれているが,出願当初明細書等に,「格子状に配置されたドットで構成されている。」(【0185】),「格子領域の四隅(格子線の交点(格子点)上)には格子ドットLDが配置されている」(【0186】(訂正後)),「4個の格子ドットLDの正中心に配置したドットである(図106(a)参照)」(【0197】)と記載されているとおり,格子ドットは等間隔に配置されたドットにより構成された水平ラインと垂直ラインの交点であり,格子線は格子ドットを結ぶラインであるから,図105に示された各格子線の中間に引かれた線は格子ドットで囲まれた領域の中心を示すために参考として引かれた補助線にすぎず,格子線とは認められない(図106(a)のように,格子ドット同士を対角線で結べば,その交点は「格子線の交点」となるが,その線は構成要件1に規定する「縦横方向」のラインではない。)。
そうすると,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点の中心」を基点として情報ドットが位置付けられることを構成要件とする本件補正第1部分は,図105のドットパターンとは似て非なるものであり,そもそも図105ドットパターンに基づく補正であるとは認められない。
(イ)図5ドットパターンにおいては,情報を表現するドットは,格子ドットから上下左右の格子線上にずらした位置に配置されるところ,構成要件1の情報ドットは「格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向」に配置されるものであるから,本件補正第1部分は,図5ドットパターンに基づく補正であるとは認められない。
(ウ)そのほか,出願当初明細書等に本件補正第1部分に対応する記載は認められないから,本件補正前の本件補正第1部分に対応する部分と構成要件1とを対比するまでもなく,本件補正第1部分は新たな技術的事項を導入するものである。
(エ)以上のとおり,本件補正第1部分は新たな技術的事項を導入するものであることが明らかであり,本件補正第2部分について判断するまでもないが,事案に鑑み,更に検討する。

エ(ア)本件補正による補正後の構成要件1は「前記ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」である。
被請求人の主張によれば,上記構成要件1に係る構成は,出願当初明細書等の段落【0184】〜【0195】及び【図105】に記載されているものである。
他方,図5ドットパターンにおいて,出願当初明細書等の【図5】〜【図8】では,縦横方向に等間隔で設けられた格子線(例えば縦4,縦7,縦10,横4,横7,横10)の交点から等距離に,水平方向及び(又は)垂直方向にずらした位置に各1〜3個のドットが記載されて情報を示している。これらでは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,情報内容を定義するドットが格子点の中心からずれることで情報が示されているといえるが,情報内容を定義するドットは,水平方向及び(又は)垂直方向にずらされるのであり,等距離で90°ずつずらしているとはいえるとしても,等距離で45°ずつずらしているものではない。【図5】〜【図8】では,格子線の間に設けられた垂直方向及び水平方向のライン(例えば,縦3,縦5,横3,横5)が示された上で,それらのラインや格子線の交点(例えば,縦4と横3の交点,縦5と横4の交点)に情報を示すドットが示されていて,これは情報を示すドットを格子点の中心から等距離で90°ずつずらすことを前提としているものであり,このように交点に情報を示すドットを配置するこの図では情報を示すドットを等距離で45°ずつずらすことは想定されていない。そうすると,上記構成要件1に係る構成は,出願当初明細書等の段落【0023】〜【0027】及び【図5】〜【図8】に記載されているものではない。

(イ)本件補正による補正後の構成要件2は「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」である。
上記(ア)のとおり,被請求人の主張によれば,本件補正による補正後の構成要件1に係る構成は,図105ドットパターンに関する記載において記載されているものである。しかし,図105ドットパターンにおいては,縦横方向の格子線の交点上である格子点上に格子ドットLDが配置され,その位置をずらしたドットをキードットKDとして,このキードットKDに囲まれた領域,又は,キードットKDを中心にした領域が一つのデータを示すものとされている。このようなキードットKDに囲まれた領域又はキードットKDを中心にした領域が一つのデータを示すものであり,「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分」(構成要件2)であるといえるところ,図105ドットパターンでは,前記のようにキードットKDによって,それに囲まれた領域,又はそれを中心にした領域が情報を表現する部分とされているのであり,また,【図105】では,情報を表現する部分はキードットKDにより囲まれていることが示されているのであって,そうである以上,「第一方向ライン」及び「第二方向ライン」(構成要件2)として特定される水平方向及び垂直方向のラインによって,情報を表現する部分を囲んでいると直ちにいえるものではない。したがって,「第一方向ライン」,「第二方向ライン」がない以上,情報を示すドットが配置されて情報を表現する部分を囲むような「第一方向ライン」及び「第二方向ライン」上にドットが配置されているということもできない。以上によれば,上記構成要件2に係る構成は,出願当初明細書等の段落【0184】〜【0195】及び【図105】に記載されているとは認められない。
なお,図5ドットパターンについて,補正後の構成要件1に係る構成の記載はないのであるが,図5ドットパターンには,情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,縦方向の所定のドットの間隔ごとに水平方向に引いた水平ラインと,水平ラインと交差するように横方向の所定のドットの間隔ごとに垂直方向に引いた垂直ラインが存在し,また,それらのライン上において,複数の格子点上に格子ドットが配置されているといえる。したがって,上記構成要件2に係る構成は,出願当初明細書等の段落【0023】〜【0027】及び【図5】〜【図8】に記載されているとはいえる。

オ(ア)上記エによれば,出願当初明細書等において,仮に構成要件1に係る構成は,段落【0184】〜【0195】及び【図105】には記載されているとはいえても,そこで記載されているドットパターンである図105ドットパターンは構成要件2の構成を有するものではない。また,出願当初明細書等において,構成要件2に係る構成は,段落【0023】〜【0027】及び【図5】〜【図8】には記載されているとはいえるが,そこで記載されているドットパターンである図5ドットパターンは構成要件1の構成を有するものではない。
そして,図5ドットパターンと図105ドットパターンは,情報ドットのずらし方,1つの交点に対する情報ドットの個数,情報ドット以外のドットの配置,格子線又はラインのうち特定のものを「第一方向ライン」等として特定するか否か,垂直ライン上のドットが本来の位置からのずれ方によってデータの種類を表すか否か,1つのデータを区画するキードットKDが存在するか否か等,多くの点で相違しており,これらの相違は,各実施例が開示する技術的事項,すなわちドットパターンによる情報の定義方法が相当に異なることに起因する。出願当初明細書等は,極小領域であってもコード情報やXY座標情報が定義可能なドットパターンを提供するとし(【0013】),複数のドットパターンを記載しているのであるが,そこに記載されたドットパターンである図5ドットパターンと図105ドットパターンの情報の定義方法は上記のとおり相当に異なるのであり,また,出願当初明細書等に,これらの異なる情報定義方法を採用した各ドットパターンが採用する情報定義方法を相互に入れ替えたり,重ねて採用したりすることについては何ら記載されていない。したがって,出願当初明細書等に,これらのドットパターンを組み合わせたものについての記載があるとはいえないし,それが当業者に自明であるともいえない。
以上によれば,出願当初明細書等には,本件補正によって変更された構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備えるドットパターンについての記載があるとはいえない。
そうすると,出願当初明細書等において,全ての記載を総合したとしても,出願当初明細書等には,本件補正による補正後のドットパターンが記載されているとはいえず,本件補正は,出願当初明細書等に開示されていない新たな技術的事項を導入するものである。

(イ)被請求人は,【図103】〜【図106】の実施例と【図5】〜【図8】の実施例は,共通の課題を解決するための異なる実施例であり,これらを組み合わせることは当業者には自明の範囲のものであると主張する。
しかしながら,【図5】〜【図8】の実施例で示される図5ドットパターンと【図103】〜【図106】の実施例で示される図105ドットパターンでは,上記のとおり,情報の定義方法が相当に異なり,それを組み合わせることが当業者に自明とはいえないし,出願当初明細書等にそのような組み合わせを前提とした記載も存在しないから,被請求人の主張は採用することができない。

(5)小括
したがって,本件補正は,出願当初明細書等の記載等から導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入したものであるから,特許法第17条の2第3項補正要件に違反するものである。
よって,本件特許発明1〜3に係る特許は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから,特許法第123条第1項第1号の規定に該当し,無効とすべきものである。


2 無効理由3(特許法第36条第6項第1号)について

次に,無効理由3について判断する。

特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否か,また,発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下,この観点に立って,判断する。

(1)本件特許発明1について
本件特許発明1は,「前記ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との構成要件1を含むものであるところ,上記1(4)ウのとおり,当該構成要件1に係る構成は,出願当初明細書等に記載されているとは認められない。
また,本件特許発明1は,「前記ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との構成要件1と,「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」との構成要件2をいずれも備えるドットパターンの発明であるところ,上記1(4)オ(ア)のとおり,出願当初明細書等には,構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備えるドットパターンについての記載があるとはいえない。
そして,本件特許明細書は,平成21年1月9日付け手続補正により段落【0009】及び【0011】が変更され,段落【0012】が削除され,平成21年6月15日付け手続補正により段落【0009】が変更されているが,それ以外は出願当初明細書と同じであり,また,特許請求の範囲については,願書に最初に添付した特許請求の範囲から変更,削除されているが,図面については,願書に最初に添付した図面から変更,削除はされていない。
そうすると,出願当初明細書等に,構成要件1に係る構成は記載されておらず,また,構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備えるドットパターンについての記載があるともいえないのであるから,本件特許明細書の発明の詳細な説明にも,構成要件1に係る構成,或いは,構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備えるドットパターンについての記載があるとはいえない。
したがって,構成要件1を備えるドットパターンである本件特許発明1,或いは,構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備えるドットパターンである本件特許発明1は,発明の詳細な説明に記載されたものではないから,本件特許発明1に係る発明は,サポート要件に適合しない。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は,本件特許発明1の構成を全て含むものであるところ,上記(1)のとおり,構成要件1を備えるドットパターンである本件特許発明1,或いは,構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備えるドットパターンである本件特許発明1は,サポート要件に適合しないものであるから,本件特許発明2も,同様に,サポート要件に適合しない。

(3)本件特許発明3について
上記(2)と同様の理由により,本件特許発明3も,サポート要件に適合しない。

(4)小括
したがって,本件特許発明1〜3に係る特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきものである。

3 無効理由1(特許法第36条第4項第1号)について

次に,無効理由1について判断する。

特許法第36条第4項は,「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。」と記載され,その第1号において,「経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しなければならない。」と規定している。同号は,明細書のいわゆる実施可能要件を規定したものであって,ものの発明では,そのものを製造し使用するための具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか,そのような記載がない場合には,明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき,当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく,そのものを製造し使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。
以下,この観点に立って,判断する。

(1)本件特許発明1は,「前記ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との構成要件1と,「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」との構成要件2をいずれも備えるドットパターンの発明であるところ,上記2で検討したように,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,構成要件1に係る構成,或いは,構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備えるドットパターンの具体的な記載はないし,当業者がそのドットパターンを製造し使用することができる程度に記載されているともいえない。
したがって,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は,構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備える本件特許発明1のドットパターンに係る発明を,当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は,本件特許発明1の構成を全て含むものであるから,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件特許発明2のドットパターンに係る発明を,当業者が実施することができる程度に,明確かつ十分に記載したものとはいえない。

(3)本件特許発明3について
上記(2)と同様の理由により,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件特許発明3のドットパターンに係る発明を,当業者が実施することができる程度に,明確かつ十分に記載したものとはいえない。

(4)小括
したがって,本件特許発明1〜3に係る特許は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきものである。


4 無効理由4(特許法第36条第6項第2号)について

特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
以下,この観点に立って,判断する。

(1)審判請求人が不明確であると主張する「縦横方向」,「縦方向」,「横方向」,「水平方向」,「垂直方向」,「格子点の中心」,「格子線」,「格子点」,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線」,「格子点を中心に」,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」,「所定の格子点間隔」,「格子点からのずれ方」,「一般コードまたはXY座標を示すフラグ」との記載は,いずれも,その用語の意味は,通常の用語の意味として理解できるものであり,その技術的意義も,当業者の出願当時における技術常識を基礎とすることで容易に理解することができるものである。
そして,本件特許発明1〜3に,ほかに第三者の利益が不当に害されるほどに不明確な点はない。

(2)小括

以上のとおり,本件特許の請求項1〜3に係る発明は明確であり,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているので,同法第123条第1項第4号の規定に該当するものではなく,無効理由4によって本件特許発明1〜3に係る特許を無効とすることはできない。

したがって,請求人の主張する無効理由4には理由がない。

5 無効理由5(特許法第29条第2項:本件特許発明1,2に対する甲第1号証,甲第2号証に基づく進歩性)について

(1)本件特許発明1〜3の新規性進歩性の判断基準日について

ア 優先権主張について

(ア)本件特許に係る出願は,特許法第41条及び第44条の規定に基づき,
平成14年9月26日付で出願された特願2002−281815号(甲第8号証。以下,「優先権主張1出願」という。),
平成14年10月4日付で出願された特願2002−292907号(甲第9号証。以下,「優先権主張2出願」という。),
平成14年12月27日付で出願された特願2002−380503号(甲第10号証。以下,「優先権主張3出願」という。),
平成14年12月27日付で出願された特願2002−380932号(甲第11号証。以下,「優先権主張4出願」という。),
平成14年12月27日付で出願された特願2002−381743号(甲第12号証。以下,「優先権主張5出願」という。)
を基礎とする優先権を主張するPCT/JP2003/012364号 (国際公開第2004/029871号。甲第7号証)から国内移行した特願2005−501954号の一部を新たな特許出願とした
特願2006−261555号(以下,「第1世代出願」という。)の一部をさらに新たな特許出願とした
特願2007−026471号(甲第27号証。以下,「第2世代出願」という。)の一部をさらに新たな特許出願とした
特願2008−177416号(甲第28号証。以下,「第3世代出願」という。)の一部をさらに新たな特許出願とした
特願2008−223887号(以下,「第4世代出願」という。)である。

(イ)本件特許発明1における「前記ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」の部分は,本件特許明細書の段落【0184】〜【0202】及び本件特許の図面の【図103】〜【図106】に対応しているものと認められるところ,本件特許出願における特許法第41条に基づく優先権主張が適法であるためには,本件特許明細書の段落【0184】〜【0202】及び本件特許の図面の【図103】〜【図106】に対応する記載が,上記優先権主張1出願,上記優先権主張2出願,上記優先権主張3出願,上記優先権主張4出願,上記優先権主張5出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に存在しなければならない。

(ウ)しかしながら,上記優先権主張1出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(甲第8号証),上記優先権主張2出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(甲第9号証),上記優先権主張3出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(甲第10号証),上記優先権主張4出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(甲第11号証),及び上記優先権主張5出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(甲第12号証)のいずれにも,本件特許明細書の段落【0184】〜【0202】及び本件特許の図面の【図103】〜【図106】に対応する記載は存在しない。

(エ)ところで,上記優先権主張5出願(甲第12号証)には,図面とともに次の事項が記載されているので,以下,念のため検討する。(当審注:下線は当審で付加。以下同様。)

「【0022】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明のカメラ入力による情報入出力方法の構成を示すブロック図であり,(a)はドットコードの生成について,(b)はドットパターンの認識についての説明図である。図2はドットパターンの一例を示す正面図である。
本発明のカメラ入力による情報入出力方法を用いた情報入出力方法は,ドットパターン1の生成と,そのドットパターン1の認識と,このドットパターン1から対応した情報及びプログラムを出力する手段とからなる方法である。即ち,ドットパターン1をカメラユニット2によりその画像データを取り込み,先ずキードット3を抽出し,次に情報ドット4を抽出することによりデジタル化して情報領域を抽出して情報の数値化を図り,その数値情報より,このドットパターン1から対応した情報及びプログラムを出力させる方法である。
【0023】
本発明のドットパターン1の生成は,ドットコード生成アルゴリズムにより,音声等の情報を認識させるために微細なドット(キードット3a,格子ドット3b,情報ドット4)を所定の規則に則って配列する。ドットパターン1の認識には,カメラユニット2のレンズによる歪率の補正,又はカメラユニット2の傾きによる歪の補正と,キードット3aと情報ドット4の数値情報の再生とからなる。ドットパターン1については,C−MOSカメラ又はCCDカメラ等のカメラユニット2を用いてその画像データを取り込む。」

「【0030】
なお,xy座標情報とコード番号情報から成るドットパターン部6を印刷物5の同一平面上に印刷することは勿論可能である。」

「【0034】
上述した本発明の方法では,印刷物5という媒体を介在して種々の音声情報を出力,実行させることができる。例えば,絵本,飛び出す絵本,写真自体,教材,テキスト,問題集,雑誌,新聞紙,カード,会員証,フォトスタンド,粘着剤付写真,博物館内の展示物の説明,カードゲーム,ボードゲーム,パンフレット,通信販売のカタログ等のあらゆる印刷物5に応用することができる。このように,印刷物5中の文字又は図等から成る情報伝達部7からの視覚情報と同時に,ドットパターン部6からの音声情報を共に認識することができる。」

「【図2】



上記段落【0022】の「情報ドット4を抽出することによりデジタル化して情報領域を抽出して情報の数値化を図り」との記載及び上記【図2】の記載(併せて下記の「【図2】の下部分の図面」の記載も参照)から,
・ドットパターン1が,図で示された文字の方向からみて,縦横方向に等間隔に設けられた直線の交点により格子を構成する旨,
・情報ドット4と格子ドット3bを表す△印が,ドットパターン1を構成し,図で示された文字の方向からみて,水平方向及び垂直方向に複数設けられる旨,
・情報ドット4が,図で示された文字の方向からみて,縦横方向に等間隔に設けられた直線の交点を中心として,
mだけ上方にずれることで0,
m/√2だけ上方かつm/√2だけ右方にずれることで1,
mだけ右方にずれることで2,
m/√2だけ下方かつm/√2だけ右方にずれることで3,
mだけ下方にずれることで4,
m/√2だけ下方かつm/√2だけ左方にずれることで5,
mだけ左方にずれることで6,
m/√2だけ上方かつm/√2だけ左方にずれることで7
とすることにより,0〜7の情報を表す旨(下記「【図2】の下部分の図面
」を参照),
が読み取れる。

「【図2】の下部分の図面



(オ)ここで,本件特許発明1と優先権主張5出願を比較する。

a 上記(エ)の段落【0030】の「ドットパターン部6を印刷物5の同一平面上に印刷する」との記載,上記(エ)の段落【0034】の「印刷物5という媒体」との記載より,媒体としての印刷物5は,ドットパターンが平面上に印刷されたものであると認められるから,優先権主張5出願には,“媒体面上に形成され”た“ドットパターン”が記載されている。
そして,上記(エ)の段落【0022】の「情報ドット4を抽出することによりデジタル化して情報領域を抽出して情報の数値化を図り,その数値情報より,このドットパターン1から対応した情報及びプログラムを出力させる」との記載から,情報ドット4には,数値情報がデータ内容として定義されているものと認められるところ,上記(エ)の段落【0023】の「本発明のドットパターン1の生成は,ドットコード生成アルゴリズムにより,音声等の情報を認識させるために微細なドット(キードット3a,格子ドット3b,情報ドット4)を所定の規則に則って配列する」との記載から,ドットパターン1には情報ドット4が配置されていると認められるので,優先権主張5出願には,“媒体面上に形成され,且つデータ内容が定義できる情報ドットが配置されたドットパターン”が記載されている。

b 上記(エ)の【図2】から「ドットパターン1が,図で示された文字の方向からみて,縦横方向に等間隔に設けられた直線の交点により格子を構成する旨」が読み取れるから,優先権主張5出願には,“前記ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点”が記載されていると認められる。
同じく,上記(エ)の「【図2】の下部分の図面」から「情報ドット4が,図で示された文字の方向からみて,縦横方向に等間隔に設けられた直線の交点を中心として,mだけ上方にずれることで0,m/√2だけ上方かつm/√2だけ右方にずれることで1,mだけ右方にずれることで2,m/√2だけ下方かつm/√2だけ右方にずれることで3,mだけ下方にずれることで4,m/√2だけ下方かつm/√2だけ左方にずれることで5,mだけ左方にずれることで6,m/√2だけ上方かつm/√2だけ左方にずれることで7とすることにより,0〜7の情報を表す」ことが読み取れるから,0〜7の情報は,ずらした方向及びずらした量により表されることは明らかであるので,優先権主張5出願には,“ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義”することが記載されている。

c 他方で,上記(エ)の【図2】のドットパターンにおいては,下記の【図2】参考図に示すように,△で囲まれた4つの格子ドットで形成される菱形の中心にそれぞれ配置された24個の情報ドット(x1〜x12,y1〜y12)は,全体として,おおよそ「二重線で囲まれた範囲」に配置されていると認められるところ,【図2】に関して優先権主張5出願の明細書には,具体的な説明はないものの,【図2】参考図に示したように,上記「24個の情報ドット(x1〜x12,y1〜y12)」と同様の24個の情報ドットが,残る3つの「二重線で囲まれた範囲」にも配置されていることが読み取れる。そして,「二重線で囲まれた範囲」のそれぞれは,本件特許発明1における「情報ドットが配置されて情報を表現する部分」であると認められるところ,【図2】参考図に示される4つの「二重線で囲まれた範囲」は,それぞれが互いに隙間無く隣接して配置されていて,それぞれの「二重線で囲まれた範囲」を「囲むように」,「格子ドット」が「配置」された「水平方向に引いた」「ライン」や「垂直方向に引いた」「ライン」は記載されていないものと認められる。
そうすると,優先権主張5出願の明細書及び図面には,「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」との構成要件2の構成が記載されているとは認められない。

「【図2】参考図



d 上記a〜cの検討から,優先権主張5出願には,本件特許発明1に係る発明が記載されているとは認められない。

(カ)以上,(イ)〜(オ)の検討から,本件特許発明1は,優先権主張1出願〜優先権主張5出願のいずれにも記載されていない発明であると認められるので,本件特許発明1について,優先権主張1出願〜優先権主張5出願を基礎とした優先権主張は認められない。

(キ)本件特許発明2,3について
本件特許発明2,3は,本件特許発明1の構成を全て含む発明であるから,本件特許発明1と同様に,優先権主張1出願〜優先権主張5出願を基礎とした優先権主張は認められない。

イ 分割要件について

(ア)本件特許に係る出願は,第1出願である,甲第7号証から国内移行した特願2005−501954号(以下,「甲7出願」ともいう。)の次から数えて4世代目の分割出願となるため,本件特許に係る出願の分割が適法になされ,その出願日が甲7出願の出願日に遡及すると認められるためには,本件特許に係る出願(以下,「第4世代出願」ともいう。),甲第28号証である特願2008−177416号(以下,「第3世代出願」ともいう。),甲第27号証である特願2007−026471号(以下,「第2世代出願」ともいう。),特願2006−261555号(以下,「第1世代出願」ともいう。特開2007−73057号公報を参照。)がそれぞれ,そのもとの出願との間で,新たな出願の明細書等に記載された事項がもとの出願の出願当初の明細書,特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものであることが必要であり,加えて,本件特許に係る出願の明細書等に記載された事項が,甲7出願の出願当初の明細書,特許請求の範囲及び図面(以下,「甲7出願当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内のものであること,すなわち,甲7出願当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであることが必要である。

(イ)本件特許発明1は,「前記ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との構成要件1と,「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」との構成要件2をいずれも備えるドットパターンの発明であるところ,上記1(4)ウのとおり,構成要件1に係る構成は,出願当初明細書等に記載されているとは認められないし,上記1(4)オ(ア)のとおり,本件特許の出願当初明細書等には,構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備えるドットパターンについての記載があるとはいえないことから,本件特許発明1は,本件特許に係る出願(第4世代出願)の出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであるとはいえない。
そして,本件特許に係る出願(第4世代出願)の出願当初明細書等と第3世代出願の出願当初明細書等とは,実施例及び図面の記載が実質的に同一である。
そうすると,本件特許発明1は,第3世代出願の出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであるともいえない。
したがって,本件特許発明1を含む本件特許に係る出願(第4世代出願)は,「分割出願(第4世代出願)の明細書等に記載された事項が,原出願(第3世代出願)の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること」を要件とする分割要件を満たしていないから,本件特許に係る出願は,不適法な分割出願であり,出願日は遡及しない。
よって,本件特許に係る出願の出願日は,現実の出願日である平成20年9月1日である。

ウ 上記ア及びイのことから,本件特許発明1〜3の新規性進歩性の判断基準日は,本件特許に係る出願の現実の出願日である平成20年9月1日である。

(2)本件特許発明1について

ア 本件特許発明1と甲第1号証発明とを対比する。

(ア)甲第1号証発明の「紙等の記録媒体」は,本件特許発明1の「媒体」に相当し,甲第1号証発明の「音声情報,映像情報又はデジタルコードデータ等を含む情報」は,「データ内容」といえる。また,甲第1号証発明の「音声情報,映像情報又はデジタルコードデータ等を含む情報」は,「所定単位のドットの集合からなるブロック2を二次元マトリクス状に隣接配置したブロック群で構成され」るものであるから,データ内容が定義できるドットが配置されたドットパターンと言い得るものである。
してみると,甲第1号証発明と本件特許発明1とは,“媒体面上に形成され,且つデータ内容が定義できる情報ドットが配置されたドットパターン”である点で一致する。

(イ)甲第1号証発明の「ブロック2」の「データドットパターン部3」は,ドットが配置されることにより情報を表現する部分といえるから,本件特許発明1の「情報ドットが配置されて情報を表現する部分」に相当する。
また,甲第1号証発明の「第1の方向」は,本件特許発明1の「縦方向(垂直方向)」または「第二方向」に相当し,甲第1号証発明の「第2の方向」は,本件特許発明1の「横方向(水平方向)」または「第一方向」に相当する。
また,甲第1号証発明の「第1の方向の仮想直線と第2の方向の仮想直線の交点」は,本件特許発明1の「格子点」に相当する。
そうすると,甲第1号証発明は,「ブロックヘッダ部4とマッチングドットパターン部6は,データドットパターン部3を囲むものであり」,「マッチングドットパターン部6には」,第1の方向の仮想直線上において,「第2の方向の仮想直線」との「交点に一つ飛ばしでドットが等間隔で配列され」,「ブロックヘッダ部4には」,第2の方向の仮想直線上において,「第1の方向の仮想直線」との「交点上にドットが配置され」ているものであって,更に「データドットパターン部3に存在する格子状の第1の方向・第2の方向の複数の仮想直線は互いに等間隔であ」ることから,甲第1号証発明の「ブロックヘッダ部4」において,「第1の方向の仮想直線」との「交点上にドットが配置され」ている「第2の方向の仮想直線」と本件特許発明1の「横方向」の「複数の格子点上」に「格子ドット」が配置された,「縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン」とは,“横方向”の“複数の格子点上”に“格子ドット”が配置された,“縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン”である点で一致し,また,甲第1号証発明の「マッチングドットパターン部6」において,「第2の方向の仮想直線」との「交点に一つ飛ばしでドットが等間隔で配列され」ている「第1の方向の仮想直線」と本件特許発明1の「縦」「方向」の「複数の格子点上」に「格子ドット」が配置された,「第一方向ラインと交差するように」「横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン」とは,“縦”“方向”の“複数の格子点上”に“格子ドット”が配置された,“第一方向ラインと交差するように”“横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン”である点で一致するといえる。
したがって,甲第1号証発明と本件特許発明1とは,“情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された”点で一致する。

(ウ)以上から,本件特許発明1と甲第1号証発明とは,以下の点で一致し,また以下の点で相違する。

[一致点]

「媒体面上に形成され,且つデータ内容が定義できる情報ドットが配置されたドットパターンであって,
前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された
ことを特徴とするドットパターン。」

[相違点1]

本件特許発明1では,「前記ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義」するものであるのに対して,甲第1号証発明はそうではない点。

イ 当審の判断

(ア)相違点1について

甲第1号証発明は,「データドット7とマーカ5を画像として区別すべく,データドット7の連続する連続数を制限するために」「情報データが変調処理され」るものであるから,甲第1号証発明の「変調処理」は,データドット7の有無により「0」または「1」を識別する2値変調であるというだけでなく,例えば,上記第6の1(1)ウの段落【0020】に「マーカ5の直径がデータドット7の5倍とすると,データドット7の連続数は4以下に制限しなければならない」と記載されているように,「変調処理は,データドット7とマーカ5を画像として区別すべく,データドット7の連続する連続数を制限するために行う」ものであると認められる。
これに対して,甲第2号証発明は,「円形のドットの形状をしているマークA7は,仮想ラスタ線A8の交点によって表されるラスタ点A6に対してどこに位置するかという変位に依存してマークA7の値を表現するものであり」,「円形のドットの形状をしているマークA7は,仮想ラスタ線A8の交点によって表されるラスタ点A6から伸びる各ラスタライン上にある4つの可能な位置と,正方形のラスタパターンの別個の四分円内に位置するように8方向に変位し,仮想ラスタ線A8の交点によって表されるラスタ点A6からの変位は,すべての値で同じサイズである」ことから,「ドットを8方向にずらす変調」を採用しているといえ,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に」ずらすかによってデータ内容を定義するものと認められるものの,連続するラスタ点A6に対応して配置されるマークA7の連続数について特に制限を設けるというものではない。
そうすると,甲第1号証の段落【0030】に「尚,上記変調処理の方式については,特に制限がなく,各種の変調方式を採用することができる」と記載されているからといって,上記したように,甲第1号証発明は,データドット7の連続数が例えば4以下に制限されるような変調処理を採用し,これによって,「データドット7とマーカ5を画像として区別」できるようにしているものであるから,この甲第1号証発明の変調処理と,ドットの連続数について考慮していない甲第2号証発明の「ドットを8方向にずらす変調」を組み合わせると,「データドット7とマーカ5を画像として区別す」ることができなくなってしまうことも容易に想定されることから,甲第1号証発明と甲第2号証発明とを組み合わせることにはむしろ阻害要因があるといえる。
したがって,甲第1号証発明に甲第2号証発明を適用することはできず,上記相違点1に係る構成を,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

(イ)小括

したがって,本件特許発明1は,甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)本件特許発明2について

本件特許発明2は,本件特許発明1を引用する発明であって,本件特許発明1に対して更に発明特定事項を付加したものであり,本件特許発明1が,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとはいえないから,本件特許発明1に対して更に発明特定事項を付加した本件特許発明2も,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(4)小括

以上のとおり,本件特許の請求項1及び2に係る発明は進歩性を有するものであり,特許法第29条第2項の規定に該当しないから,同法第123条第1項第2号の規定に該当するものではなく,無効理由5によって本件特許発明1及び2に係る特許を無効とすることはできない。

したがって,請求人の主張する無効理由5には理由がない。

6 無効理由6(特許法第29条第2項:本件特許発明1,2に対する甲第3号証,甲第2号証,甲第4号証に基づく進歩性)について

(1)本件特許発明1について

ア 本件特許発明1と甲第3号証発明とを対比する。

(ア)甲第3号証発明は,「オブジェクトの表面に書き添えられたもしくは付された図形標識11」であって,「各状態領域113は,第1又は第2状態を表すために,選択的に1つのドットを含んだり,そのドットを含まなかったりするものであり,第1状態の状態領域113に“1”の値を割り当てられ,第2状態の状態領域113に“0”の値を割り当てられ」るものであるから,甲第3号証発明と本件特許発明1とは,“媒体面上に形成され,且つデータ内容が定義できる情報ドットが配置されたドットパターン”である点で一致する。

(イ)甲第3号証発明の「図形標識11」は,「コンテンツ情報112」の「状態領域113」と,「ヘッダ情報111」の「L字状のそれぞれの腕」に「含まれ」る「直線状に概略等間隔に連なるドット」とが“縦横方向に等間隔に”配置されているから,本件特許発明1とは,“前記ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点”を有する点で共通するといえる。

(ウ)甲第3号証発明の「図形標識11」の「コンテンツ情報112」と本件特許発明1の「情報ドットが配置されて情報を表現する部分」は,いずれも情報を表現するために存在する場所である点で対応している。
次に,甲第3号証発明の「ヘッダ情報111」は,「直交する2つの腕を有するL字状の形状を」しているが,この「ヘッダ情報111のL字状のそれぞれの腕の一方を水平に,他方を垂直に置くことができ」ること,「ヘッダ情報111」は,「L字状のそれぞれの腕に直線状に概略等間隔に連なるドットが含まれ」ているものであって,これら「直線状に概略等間隔に連なるドット」を通る直線を引くことができることからみて,甲第3号証発明と本件特許発明1とは,後記する点で相違するものの,“水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された”点で共通する。

(エ)以上から,本件特許発明1と甲第3号証発明とは,以下の点で一致し,また以下の点で相違する。

[一致点]

「媒体面上に形成され,且つデータ内容が定義できる情報ドットが配置されたドットパターンであって,
前記ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を有し,
水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された
ことを特徴とするドットパターン。」

[相違点1]

本件特許発明1では,「格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義」するものであるのに対して,甲第3号証発明はそうではない点。

[相違点2]

縦横方向の複数の格子点上に配置される格子ドットについて,本件特許発明1は,「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように」配置されるのに対し,甲第3号証発明では,「直交する2つの腕を有するL字状の形状」に配置される点。

イ 当審の判断

(ア)相違点1について

甲第3号証発明は,「各状態領域113は,第1又は第2状態を表すために,選択的に1つのドットを含んだり,そのドットを含まなかったりするものであり,第1状態の状態領域113に“1”の値を割り当てられ,第2状態の状態領域113に“0”の値を割り当てられ」るものであるから,第1又は第2状態を表すために,ドットの有無により「1」または「0」を識別する2値変調であり,また,甲第3号証発明の「図形標識11」は,当該「図形標識11」を処理する際,「迅速に標識情報を取り出すために,図形標識のマトリックス形式に対応する画像は,回転され又ビットマトリックス形式に変換される」ものであるから,上記第6の3(1)サで引用したFIG.1(D)で示される「図形標識のマトリックス形式に対応する画像」を,各状態領域113におけるドットの有無に応じて,上記第6の3(1)シで引用したFIG.1(F)で示される「ビットマトリックス形式」に変換したうえで処理しているものと認められる。
これに対して,甲第2号証発明は,「円形のドットの形状をしているマークA7は,仮想ラスタ線A8の交点によって表されるラスタ点A6に対してどこに位置するかという変位に依存してマークA7の値を表現するものであり」,「円形のドットの形状をしているマークA7は,仮想ラスタ線A8の交点によって表されるラスタ点A6から伸びる各ラスタライン上にある4つの可能な位置と,正方形のラスタパターンの別個の四分円内に位置するように8方向に変位し,仮想ラスタ線A8の交点によって表されるラスタ点A6からの変位は,すべての値で同じサイズである」ことから,「ドットを8方向にずらす変調」を採用しているといえ,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に」ずらすかによってデータ内容を定義するものと認められる。
ここで,甲第2号証発明で採用されている「ドットを8方向にずらす変調」は一般的な周知技術であることから,一見すると,甲第3号証発明に甲第2号証発明で採用されている「ドットを8方向にずらす変調」を適用することができるようにも思われるものの,上記したとおり,甲第3号証発明の「図形標識11」は,当該「図形標識11」を処理する際,上記第6の3(1)サで引用したFIG.1(D)で示される「図形標識のマトリックス形式に対応する画像」を,各状態領域113におけるドットの有無に応じて,上記第6の3(1)シで引用したFIG.1(F)で示される「ビットマトリックス形式」に変換して処理するものであるから,甲第3号証発明の図形標識11の各状態領域113内のドットを,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義」するようなものとすると,甲第3号証発明が予定している,各状態領域113におけるドットの有無に応じて「図形標識のマトリックス形式に対応する画像」を「回転」し,「ビットマトリックス形式」に「変換」して処理することができなくなってしまうことは明らかである。
そうすると,ドットの有無により「0」または「1」を識別する2値変調を採用し,それを前提として,「迅速に標識情報を取り出すために,処理中,図形標識のマトリックス形式に対応する画像は,回転され又ビットマトリックス形式に変換される」ものである甲第3号証発明に,甲第2号証発明が採用している「ドットを8方向にずらす変調」を適用して,「迅速に標識情報を取り出すために,図形標識のマトリックス形式に対応する画像」を「回転」し,「ビットマトリックス形式」に「変換」して処理することができなくなるようにする動機付けはなく,むしろ阻害要因があるといえる。
そして,甲第4号証発明にも,相違点1に係る構成は記載されていない。
したがって,甲第3号証発明に甲第2号証発明及び甲第4号証発明を適用して,上記相違点1に係る構成を,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

(イ)小括

したがって,相違点2について検討するまでもなく,本件特許発明1は,甲第3号証に記載された発明,甲第2号証に記載された発明,及び甲第4号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本件特許発明2について

本件特許発明2は,本件特許発明1を引用する発明であって,本件特許発明1に対して更に発明特定事項を付加したものであり,本件特許発明1が,甲第3号証,甲第2号証,及び甲第4号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとはいえないから,本件特許発明1に対して更に発明特定事項を付加した本件特許発明2も,甲第3号証,甲第2号証,及び甲第4号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)小括

以上のとおり,本件特許の請求項1及び2に係る発明は進歩性を有するものであり,特許法第29条第2項の規定に該当しないから,同法第123条第1項第2号の規定に該当するものではなく,無効理由6によって本件特許発明1及び2に係る特許を無効とすることはできない。

したがって,請求人の主張する無効理由6には理由がない。

7 無効理由7(特許法第29条第2項:本件特許発明1,2に対する甲第5号証,甲第4号証に基づく進歩性)について

(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲第5号証に記載された発明(以下,「甲第5号証発明」という。)とを対比すると,以下の相違点1が存在する。

[相違点1]
本件特許発明1の「ドットパターン」の「第一方向ライン」「第二方向ライン」は,「前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに」ないし「前記横方向の所定の格子点間隔ごとに」複数存在し,その結果として「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように」存在するのに対し,甲第5号証発明の「L型分布に形成されたヘッダー部14」は「画像インジケーター10」毎に1つのみ存在する点。

しかしながら,甲第5号証発明及び甲第4号証に記載された事項について検討しても,相違点1に係る構成は,当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。
したがって,本件特許発明1は,甲第5号証発明及び甲第4号証に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)本件特許発明2について

本件特許発明2は,本件特許発明1を引用する発明であって,本件特許発明1に対して更に発明特定事項を付加したものであるから,本件特許発明1と同様に,甲第5号証発明及び甲第4号証に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)小括

以上のとおり,本件特許の請求項1及び2に係る発明は進歩性を有するものであり,特許法第29条第2項の規定に該当しないから,同法第123条第1項第2号の規定に該当するものではなく,無効理由7によって本件特許発明1及び2に係る特許を無効とすることはできない。

したがって,請求人の主張する無効理由7には理由がない。

8 無効理由8(特許法第29条第2項:本件特許発明1〜3に対する甲第6号証,甲第7号証に基づく進歩性)について

(1)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲第6号証に記載された発明(以下,「甲第6号証発明」という。)とを対比すると,以下の相違点1が存在する。

[相違点1]
本件特許発明1は「『第二方向ライン上』に配置された『格子ドット』」を有し,「第一方向ライン」「第二方向ライン」は「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように」配置されているのに対し,甲第6号証発明の「縦方向に置かれ」た「基準格子線1c,1d」には「基準格子点ドット2」は配置されておらず,その結果として,「基準格子線1a〜1d」は「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように」配置されていない点。

しかしながら,甲第6号証発明及び甲第7号証に記載された事項について検討しても,相違点1に係る構成は,当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。
したがって,本件特許発明1は,甲第6号証発明及び甲第7号証に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)本件特許発明2,3について

本件特許発明2,3は,本件特許発明1を引用する発明であって,本件特許発明1に対して更に発明特定事項を付加したものであるから,本件特許発明1と同様に,甲第6発明及び甲第7号証に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)小括
以上のとおり,本件特許の請求項1〜3に係る発明は進歩性を有するものであり,特許法第29条第2項の規定に該当しないから,同法第123条第1項第2号の規定に該当するものではなく,無効理由8によって本件特許発明1〜3に係る特許を無効とすることはできない。

したがって,請求人の主張する無効理由8には理由がない。

9 無効理由9(特許法第29条第1項第3号:本件特許発明1〜3に対する甲第7号証に基づく新規性)について

(1)本件特許発明1について

上記1で判断したとおり,本件特許発明1は,本件特許の出願当初明細書等に記載された発明ではない。
そして,本件特許の出願当初明細書等と,甲第7号証(国際公開第2004/029871号)の明細書及び図面とは,実質的に同一の内容である。
そうすると,本件特許発明1は,甲第7号証(国際公開第2004/029871号)に記載されているとはいえない。
したがって,本件特許発明1は,甲第7号証に記載された発明ではない。

(2)本件特許発明2,3について

本件特許発明2,3は,本件特許発明1を引用する発明であって,本件特許発明1に対して更に発明特定事項を付加したものであるから,本件特許発明1と同様に,本件特許発明2,3は,甲第7号証(国際公開第2004/029871号)に記載された発明ではない。

(3)小括

以上のとおり,本件特許の請求項1〜3に係る発明は新規性を有するものであり,特許法第29条第1項第3号の規定に該当しないから,同法第123条第1項第2号の規定に該当するものではなく,無効理由9によって本件特許発明1〜3に係る特許を無効とすることはできない。

したがって,請求人の主張する無効理由9には理由がない。

10 無効理由10(特許法第29条柱書)について

(1)本件特許発明1〜3について

請求項に記載された特許を受けようとする発明が,特許法第2条1項に規定する「発明」といえるか否かは,前提とする技術的課題,その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らし,全体として考察した結果,「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するといえるか否かによって判断すべきものである。
以下,この観点に立って,判断する。
本件特許発明が前提としている課題について見てみると,本件特許明細書の段落【0007】に「しかし,係るドットコード技術では,動的にスキャナを走査させることを前提としているために,紙面に印刷された文字に沿って音声情報を再生することは可能であるものの,紙面上にキャラクタ等が自由に印刷配置された絵本等で静的に読取装置を当接させるだけで情報を再生させたいような用途には不向きであった。すなわち,このドットコード技術では意味のあるコード情報を取得するためにはXY座標上で一定の距離以上のスキャニングを実行する必要があるため,紙面上に印刷された極小領域にドットコードを対応付けて印刷することはできなかった。」との記載,及び,段落【0008】に「本発明は,極小領域であってもコード情報やXY座標情報が定義可能なドットパターンを提案し,係るドットパターンに基づいた情報再生方法および情報再生装置を提案するものである」との記載があることを踏まえると,従来のドットコード技術では,動的にスキャナを走査させることを前提としているために,意味のあるコード情報を取得するためにはXY座標上で一定の距離以上のスキャニングを実行する必要があるため,紙面上に印刷された極小領域にドットコードを対応付けて印刷することはできず,静的に読取装置を当接させるだけで情報を再生させたいような用途には不向きであったという技術的課題があったのに対し,本件特許発明は,極小領域であってもコード情報やXY座標情報が定義可能なドットパターンを提供すること,を目的とするものと理解することができる。
そして,その課題を解決するための技術的手段の構成として,本件特許発明に係る「ドットパターン」は,
「媒体面上に形成され,且つデータ内容が定義できる情報ドットが配置されたドットパターンであって,
前記ドットパターンは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し,
前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」
との構成を有するものであり,本件特許発明の当該構成により,「極小領域であってもコード情報やXY座標情報が定義可能なドットパターンを提供することができる」(【0013】)との効果を奏するものと理解することができる。
そうすると,本件特許発明の技術的意義は,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義」するとともに,「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置され」ているという所定のデータ構造を有する「ドットパターン」を提供することで,動的にスキャナを走査させることを前提とせず,静的に読取装置を当接させるだけで情報を再生させたいような用途にも対応するよう,紙面上に印刷された極小領域にドットコードを対応付けて印刷することを可能とし,極小領域であってもコード情報やXY座標情報を定義可能とするものと認められる。
したがって,本件特許発明は,所定のデータ構造を「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°ずつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義」するとともに,「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置され」ているという所定のデータ構造を有し,静的な読取装置を当接することで情報を再生させることを前提とするものであるから,例えば人に向けた単なる情報の提示に当たるとはいえず,情報の提示自体に技術的特徴があるといえる。
よって,本件特許発明1〜3に係るドットパターンは,単なる情報の提示ではなく,全体として「自然法則を利用した技術的思想」である「発明」に該当すると認められるから,特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしているものと認められる。

(2)小括
以上のとおり,本件特許の請求項1〜3に係る発明は特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしているから,同法第123条第1項第2号の規定に該当するものではなく,無効理由10によって本件特許発明1〜3に係る特許を無効とすることはできない。

したがって,請求人の主張する無効理由10には理由がない。

第8 むすび
以上のとおりであるので,本件特許発明1〜3に係る特許は,無効理由1,無効理由2及び無効理由3により,無効とすべきものである。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】ドットパターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物に形成したドットパターン情報を光学的に読み取り該ドットパターンに対応した種々の情報を再生する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光センサを用いて絵本やゲームカードに印刷されたバーコードを読み取り、特定の音声を発音させる音声発生玩具が提案されている。これらの音声発生玩具では、読み込んだバーコードに対応した音声情報をメモリから読み出すことで多種の音声情報を再生できるようにしていた。
【0003】
しかし、このようなバーコードを用いた技術は、紙面上にバーコード印刷用の専用領域を確保しなければならず、かつバーコードは情報処理システムが読み取るためのものであり、絵本や書籍の読者にとっては目視でそのコード内容を把握しかねるものであったため、限られた紙面上にバーコードが印刷されていることは読者にとっては煩わしく絵本等書籍の製品価値を下げかねないものとなっていた。
【0004】
さらに、上記のようにバーコード技術は、紙面上に印刷された文字、図形、記号に重ねて印刷することができないために、これらの文字、図形、記号等に対して音声再生を行いたい場合に文字等の近傍にバーコードを印刷するしかなく、読者にとって直感的に文字等に別の音声情報等が付加されていることを伝えにくい特性を有していた。
【0005】
この点について、特開平10−261059号公報に開示されている「ドットコード」技術では、ドットパターンで印刷されたコード情報を読み取って情報を再生させる方法が提案されている。
【0006】
係る先行技術では、ブロック領域内のドットパターンの配置の仕方によってデータを定義するとともに、データドットパターンではあり得ないドットパターンでマーカを定義することにより、これを同期信号として機能させている。したがって、この技術では、ドットを所定の法則で紙面の二次元方向に印刷したドットパターンをペン型のスキャナで読み取り、このスキャナの走査速度と走査方向を情報処理装置で解析して予め対応付けられた音声等の情報を再生させる方法となっている。
【0007】
しかし、係るドットコード技術では、動的にスキャナを走査させることを前提としているために、紙面に印刷された文字に沿って音声情報を再生することは可能であるものの、紙面上にキャラクタ等が自由に印刷配置された絵本等で静的に読取装置を当接させるだけで情報を再生させたいような用途には不向きであった。すなわち、このドットコード技術では意味のあるコード情報を取得するためにはXY座標上で一定の距離以上のスキャニングを実行する必要があるため、紙面上に印刷された極小領域にドットコードを対応付けて印刷することはできなかった。
【特許文献1】特開平10−261059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、極小領域であってもコード情報やXY座標情報が定義可能なドットパターンを提案し、係るドットパターンに基づいた情報再生方法および情報再生装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1は、媒体面上に形成され、且つデータ内容が定義できる情報ドットが配置されたドットパターンであって、前記ドットパターンは、縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に、前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に、どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し、前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように、前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と、該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて、該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置されたことを特徴とするドットパターンである。
【0010】
本発明の請求項2は、前記ドットパターンは、水平方向および/または垂直方向に、複数繰り返されていることを特徴とする請求項1に記載のドットパターンである。
【0011】
本発明の請求項3は、前記格子ドットの1つは、前記格子点からのずれ方によって一般コードまたはXY座標を示すフラグを意味していることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のドットパターンである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、極小領域であってもコード情報やXY座標情報が定義可能なドットパターンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明のドットパターンを用いた情報再生方法の構成を示すブロック図であり、(a)はドットコードの生成について、(b)はドットパターンの認識についての説明図である。図2はドットパターンの一例を示す正面図である。図3は絵本と情報再生方法の状態を説明する機能ブロック図である。
【0015】
本発明のドットパターンを用いた情報再生方法は、ドットパターン601の生成と、そのドットパターン601の認識と、このドットパターン601から対応した音声情報の再生とからなる方法である。すなわち、ドットパターン601を読取り手段であるカメラ602によりその画像データを取り込み、かつ画像上の歪率を補正し、それを数値化してデジタル化し、そのデジタル化した数値を第一方向603と第二方向604に分解し、その位置を読み取り、このドットパターン601から対応した音声情報をパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」と略称する)パソコン608、PDAまたは携帯電話等で再生させる方法である。
【0016】
なお、カメラ602は図3ではペン型のスキャナで構成されており、内部にはCCDやC−MOS等の撮像素子が内蔵されているが、後述するように一般のデジタルカメラや携帯電話等の携帯端末に搭載されたカメラであってもよい。
【0017】
本発明のドットパターン601の生成は、ドットコード生成アルゴリズムにより、音声情報を認識させるために微細なドット605を第一方向ライン603に所定の規則に則って配列し、かつこの第一方向ライン603に交差するように配置した第二方向ライン604に所定の規則に則ってドット605を配列する。さらに、パソコン608内のメモリまたはカメラ602内に設けられたメモリにマッピングテーブルも生成する。この第一方向ライン603と第二方向ライン604とは90度の角度で交差させたものに限定されず、たとえば、60度の角度で交差させたものでもよい。
【0018】
ドットパターン601の認識には、カメラ602のレンズによる歪率の補正、またはカメラ602の傾きによる歪の補正と、第一方向603の数値情報の再生と、第二方向604の数値情報の再生とからなる。ドットパターン601については、C−MOSカメラまたはCCDカメラ等の撮像素子を内蔵したカメラ602を用いてその画像データを取り込む。さらに、カメラ付き携帯電話または携帯電話に接続したカメラを前記ペン型スキャナに換えて用いることができる。これらの携帯電話の場合には、携帯電話のメモリにダウンロードされたJAVA(登録商標)プログラム等の制御により、そのまま音声を再生させることも可能である。このカメラ602で取り込んだ画像データは、画像処理アルゴリズムで処理してドット605を抽出し、歪率補正のアルゴリズムにより、カメラ602のレンズによる歪率の補正をする。または、ドットパターン601に対するカメラ602の傾きによる歪を補正する。
【0019】
カメラ602で取り込んだ画像データは、パソコン608の中央処理装置(CPU)により所定の画像処理アルゴリズムで処理されてドット605が抽出されて、歪率補正のアルゴリズムにより、カメラ602に原因する歪を補正するので、歪率の高いレンズを付けた普及型のカメラ602でドットパターン601の画像データを取り込むときにも正確に認識することができる。また、ドットパターン601の面に対してカメラ602を傾けて読み取っても、そのドットパターン601を正確に認識することができる。
【0020】
第一方向603の数値情報の再生では、第一方向603の2ラインを抽出して、この第一方向603の2ライン間のドット情報を二値化する。次に、パターン認識アルゴリズムにより、そのパターンを認識し、マッピングテーブルを用いて、第一方向603の数値情報を再生する。この際、ラインの読み取りが汚れなどでできない場合がある。その場合、隣のラインを抽出し同様の処理を行う。その情報を数値補正情報として記録し、数値情報を再生する際、これにより補正を行う。
【0021】
第二方向604の数値情報の再生では、第二方向ライン604を抽出して、この第二方向ライン604間のドット情報を二値化する。次に、パターン認識アルゴリズムにより、そのパターンを認識し、マッピングテーブルを用いて、第二方向604の数値情報を再生する。この際、ラインの読み取りが汚れなどのノイズにより正確に走査できない場合がある。その場合、隣のラインを抽出し同様の処理を行う。その情報を数値補正情報として記録し、数値情報を再生する際、これにより補正を行う。
【0022】
上述したようなドットパターン601は、絵本、テキスト等の印刷物606に印刷することによりドットパターン部607に構成する。このドットパターン部607を、このカメラ602が画像認識し、該画像データから抽出された数値化データに基づいてそれに対応する音声情報をメモリから読み出してパソコン608、PDAまたは携帯電話等のスピーカ9等の出力手段からそれに対応する音声、音楽を再生する。
【0023】
図4は他のドットパターンを用いた情報再生方法の構成を示すブロック図であり、(a)はドットコードの生成について、(b)はドットパターンの認識についての説明図である。図5から図8は他のドットパターンの一例を示す正面図である。
【0024】
上述したようにカメラ602で取り込んだ画像データは、画像処理アルゴリズムで処理してドット605を抽出し、歪率補正のアルゴリズムにより、カメラ602が原因する歪とカメラ602の傾きによる歪を補正するので、ドットパターン601の画像データを取り込むときに正確に認識することができる。
【0025】
このドットパターンの認識では、先ず連続する等間隔のドット605により構成されたラインを抽出し、その抽出したラインが正しいラインかどうかを判定する。このラインが正しいラインでないときは別のラインを抽出する。
【0026】
次に、抽出したラインの1つを水平ラインとする。この水平ラインを基準としてそこから垂直に延びるラインを抽出する。垂直ラインは、水平ラインを構成するドットからスタートし、次の点もしくは3つ目の点がライン上にないことから上下方向を認識する。
【0027】
最後に、情報領域を抽出してその情報を数値化し、この数値情報を再生する。
【0028】
図9は絵本の絵柄と物語の文章を印刷した一例を示す正面図である。
【0029】
このようなページでは、ページの左上のアイコン606aをカメラ602で読み取り、スイッチを入れる。次に、絵柄606bに相当する物語の文章が印刷されたその文章部分606cをカメラ602で読み取る。アイコン606aと文章部分606cそれぞれにはドットパターン部607が印刷されているので、これらのドットパターン部607は絵本の何ページのどの領域にある情報かを認識し、それに対応するように記憶した物語の音声をパソコン608に再生させる。たとえば、ドットパターン部607のドット605はカーボンで印字し、それ以外はノンカーボンのカラーインクで印字または印刷することにより、赤外線照射で読み取ることができる。
【0030】
図10は絵本の絵柄と物語の文章を印刷した他の一例を示す正面図である。図11は絵本の絵柄と物語の文章を印刷したさらに他の一例を示す正面図である。
【0031】
本発明のドットパターンを用いた情報再生方法は、物語からなる絵本に限らず、図10に示すように、算数をわかりやすく教える教材に応用することができる。また、図11に示すように、音楽をわかりやすく教える教材に応用することができる。
【0032】
パソコン608、PDAまたは携帯電話のメモリには、「音の出る絵本」として絵本の絵に加えて音楽や主人公等の会話まで発生させる絵本として利用できるコンテンツを記憶させる。但し、組立てブロック等の玩具と合わせて音声が発生する教材として利用できるコンテンツ、「音の出る辞書」として、外国語の単語や文章をなぞると翻訳してくれ辞書ソフトとして利用できるコンテンツを記憶させることも勿論可能である。
【0033】
本発明のドットパターンを用いた情報再生方法は、さらに次のような利用方法がある。
【0034】
「音が出るポップ絵本」
カメラ602をドットパターン部607に当接または走査させるだけという特性を活かし、ページを開くと立体物が現れる「ポップ絵本」と組み合わせることができる。ページを開くと立体物の中にドットパターン部607を貼り付け、または印刷し、このドットパターン部607を探し出してカメラ602の先端部を当接させると、様々な音声が発生する「音が出るポップ絵本」として利用することができる。たとえば、ページを開くとポップアップで、「恐怖の館」が立ち上がり、「窓」にあるドットパターン部607をカメラ602でなぞると「キャー!」といった女性の悲鳴の音声が再生され、「廊下」にあるドットパターン部607をカメラ602でなぞると「コツ、コツ、コツ・・・」といった不気味な足音の音声が再生される。
【0035】
「創作絵本(創作本)」
印刷部606である絵本の好きな箇所にドットパターン部607を貼ることができ、使用者自身がコンテンツを創作できるドットパターン部607を貼れば、どこでもスイッチを設定できる「創作絵本(創作本)」として利用することができる。たとえば、絵本、セリフ集、サウンドリスト、音源データ等をセットにしたものを、使用者が好きなようにセリフや音楽のドットパターン部607を絵本606に貼ってオリジナルストーリーを作ることができる。
【0036】
さらに、何も描かれていない絵本に、ドットパターン部607の形成された音源リストのシールや、アイコンシール等を準備し、使用者が絵本に自分で絵を描き、これらのシールを貼り付けてオリジナルストーリーを創造し、音が出る絵本をユーザ自身に作成させることもできる。
【0037】
「音が出る教材」
本発明は子供から大人、老人までのすべての世代に向けた「音が出る教材」として利用することができる。たとえば、印刷物606のドットパターン部607にカメラ602の先端を当接させたり、走査させると音声が再生され、英会話等の語学教育や知育・音楽等の幼児教育、ドリル等の補助教材として使用できる。
【0038】
このように、本発明は印刷物606等に印刷した入力インターフェースとして使用できるので、コンテンツ毎にそれに合わせたインターフェースを製造することができる。また、インターネット等の汎用ネットワークを介して、ドットパターンデータをパソコン608にダウンロードさせるようにし、ユーザが当該ドットパターンデータを自由に組み合わせて汎用のプリンタ装置で紙面上にドットパターンを印刷することにより、前述の「絵の出る絵本」等をユーザ自身が作成することができる。
【0039】
さらに、印刷物606等その他媒体のドットパターン部607にURL情報を定義し、カメラ602でドットパターン部607を撮影した画像データから前記URLを抽出することにより、パソコン608にインストールされたブラウザプログラムが前記URLにアクセスして所定の動作を行わせるようにしてもよい。
【0040】
図12はドットパターン部607を形成したタッチパネルを説明する斜視図である。図13はドットパターン部607を形成したタッチパネルを説明する分解側面図である。
【0041】
従来のタッチパネルは、液晶ディスプレイ(LCD)やCRT(ブラウン管)などのモニタ画面上に配置し、透視した画面の指示に従って指やペンなどで上から押圧することにより位置入力が行えるようにしたものである。この従来のタッチパネルは、たとえば透明フィルム上にITO等からなる透明電極を有する一対の上部電極シートと下部電極シートとが電極間に絶縁物よりなるスペーサーを介して対向配置し、その下部電極シートの下面に樹脂よりなる透明保持板が透明接着層を介して全面的に接着されたもので、高価であるという欠点があり、また長期間使用しているとその表面が反り返り使用しづらくなることがあった。
【0042】
そこで、本発明では高価にならないように、透明フィルム611にドットパターン部607を印刷したタッチパネル612と普及型のカメラ602(ペン型スキャナ)のみを使用した。
【0043】
このタッチパネル612をパソコン608等の液晶ディスプレイ(LCD)やCRT(ブラウン管)などのモニタ613の画面上に配置し、透視した画面の指示に従ってカメラ602でなぞることにより位置入力が行える。このように、モニタ画面に貼り付けたタッチパネル612に、カメラ602を向けてそのドットパターン部607の画像データを取り込み、上述したのと同様にそのドットパターン部607がパソコン608のモニタ画面に対応した情報を認識して、それに対応するように記憶した種々の音声等を再生させる。
【0044】
ドットパターン部607のドット605はカーボンを主成分とした場合、光を吸収しやすい特性を有しているため、モニタ画面からの光線を遮断しないとカメラ602でドットパターン部607の画像データを正確に取り込むことができない。そこで、モニタ画面とタッチパネル612との間に赤外線遮断フィルム614を配置し、モニタ画面から発生する赤外線を遮断するようにしている。これにより、カメラ内から照射された赤外線のみを照射光としてドット605からの反射光を認識しやすいようにしてドットパターン部607の認識を容易にして、当該パソコン608のタッチパネルとして利用することができる。
【0045】
このタッチパネル612は、カメラ602をポインタデバイスとして利用することが可能である。さらに、連続してポイントを認識することにより、トレースデバイスとして利用することが可能である。たとえば、このタッチパネル612を上向きに配置し、従来のトレース用のライティングテーブルとして使用することができる。
【0046】
なお、前記タッチパネルはパソコン608のモニター画面に装着した場合で説明したが、PDAの表示画面、写真シール販売機の画面、銀行のATM端末の画面等に利用できる。
【0047】
図14はドットパターン部607を形成したマウスパッドとマウス型のカメラとからなる他の実施形態を示す断面図である。図15はマウス型カメラを示す平面図である。
【0048】
この実施形態では、カメラ602をマウス型のケース615に内蔵し、マウスパッド616と組み合わせる。このマウス型のケース615内に半透過式鏡体617を取り付け、このマウス型のケース615の下面615aからマウスパッド616の表面を認識することができると共に、ケース615の上面615bの開けた窓618から、マウスパッド616に印刷されている座標情報を持たせたドットパターン部607をなぞるようになっている。この窓618の側にボタン615cを設けたものである。
【0049】
このマウス型ケース615内のカメラ602はマウスパッド616を認識することにより、通常のマウスに代わる入力デバイスとして使用できる。特に通常のマウスが、相対座標でしか入力できなかったのに対し、絶対座標での入力も可能となる。
【0050】
図16はマウス型のカメラの他の実施形態を示すものであり、(a)は平面図、(b)は側面図である。図17はさらにマウス型のカメラの他の実施形態を示すものであり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0051】
この実施形態では、図16に示すようにカメラ602をマウス型のケース615の突端615dに内蔵した。このようにマウス型のケース615に突端615dを形成することにより、マウスパッド616の所定位置に容易に位置決めし、ボタンスイッチ615eを押すことができ、このマウス型のケース615の下面615aからマウスパッド616の表面を認識することができる。
【0052】
なお、ケース615の下面615aにボタンスイッチ615fを設けることも可能である。このようにボタン615fを、マウスパッド616の所定位置においてマウス型のケース615をマウスパッド面に押し付けるだけで、このボタンスイッチ615fが入るようになっている。
【0053】
図18はドットパターン部607を形成した印刷面をタブレットとして利用する他の実施形態を示す断面図である。
【0054】
この実施形態では、カメラ602が内蔵されているペン状部材619と、テーブル620(またはトレース台)と組み合わせ、ドットパターン部607を形成した印刷面をタブレットとして利用する。テーブル620の上に、ドットパターン部607が印刷された紙621(印刷面)をセットし、このペン状部材619で絵や文字をなぞり、スイッチ622aを入れることによりデータをパソコン608やPDAに取り込むことができる。さらに、ペン状部材619の先端に、圧力スイッチ622bの先端部を突出させている。
【0055】
このペン状部材619は、ディスプレイを見ることなく、通常の絵や文字を描くのと同様に手元の紙の上に絵や文字を描けば、そこに描いたものを、カメラ602がその音声等の情報を認識してパソコン608やPDA等に入力される。そこで、イラストや図面作画用にも、またトレース用にも使える。今までは、マウスでなぞりながらディスプレイを見る必要があったが、その必要がなくなり、入力負荷が減る。また、従来タブレットと呼ばれる座標入力機器でしか実現できなかった操作が安価で実現できる。
【0056】
図19はペン状部材の先端にカメラを取り付けた他の実施形態を示す断面図である。図20はさらにペン状部材の先端にカメラを取り付けた他の実施形態を示す断面図である。
【0057】
ペン状部材619の先端に取り付けるカメラ602は、図示するように、ペン状部材619の先端で首振り自在に取り付けることができる。このようにカメラ602を首振り自在に構成することにより、ドットパターン部607の印刷面に対してカメラ602を常に垂直に当てることができ、カメラ602(ペン状部材619)の傾きが原因する歪を考慮する必要がない。
【0058】
図20は圧力スイッチをペン状部材の先に取り付けた他の実施形態を示す断面図である。スイッチ622は、必ずしもペン状部材619に設ける必要はなく、図示するように、首振り自在になるカメラ602の側に取り付けることもできる。このように、カメラ602のスイッチ622を、ドットパターン部607の印刷面に押し付けるだけで、このボタンスイッチ622を入れることができる。
【0059】
このように、本発明はパソコン608における通常のキーボードとマウスに代わってこのパソコン608を操作することができ、押すだけで誰でもパソコン608を簡単に操作することができる。そこで、本発明は人との親和性の高いインターフェースにすることができる。また、入力パッドよりも、簡単な構造で安価に製造することができる。
【0060】
なお、本発明は上述した発明の実施形態に限定されず、印刷物606や透明フィルム611(タッチパネル612)のドットパターン部607を認識することにより、所定の情報や音声を再生させて様々な使用を可能にする構造であれば、上述した形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【0061】
図21は本発明のカメラ入力による情報入出力方法の構成を示すブロック図であり、(a)はドットコードの生成について、(b)はドットパターンの認識についての説明図である。図22はドットパターンの一例を示す正面図である。
【0062】
本発明のカメラ入力によるドットパターンを用いた情報入出力方法は、ドットパターン1の生成と、そのドットパターン1の認識と、このドットパターン1から対応した情報およびプログラムを出力する手段とからなる方法である。すなわち、ドットパターン1をカメラユニット2によりその画像データを取り込み、先ずキードット3を抽出し、次に情報ドット4を抽出することによりデジタル化して情報領域を抽出して情報の数値化を図り、その数値情報より、このドットパターン1から対応した情報およびプログラムを出力させる方法である。
【0063】
本発明のドットパターン1の生成は、ドットコード生成アルゴリズムにより、情報を認識させるために微細なドット(キードット(KD)3a、格子ドット(LD)3b、情報ドット4)を所定の規則に則って配列する。ドットパターン1の認識には、カメラユニット2のレンズによる歪率の補正、またはカメラユニット2の傾きによる歪の補正と、キードット3a(KD)と情報ドット4の数値情報の再生とからなる。ドットパターン1については、C−MOSカメラまたはCCDカメラ等の撮像素子を備えたカメラユニット2を用いてその画像データを取り込む。
【0064】
上述したようなドットパターン1は、種々の印刷物5に印刷することによりドットパターン部6を構成する。特に、本発明では、図23に示すように、このドットパターン部6の他に、人が通常にそのまま情報内容を目視にて認識することができる文字または図等で表示された情報伝達部7を印刷物5の同一面に印刷してある。ここで、情報伝達部7はノンカーボンインクを用いて印刷することが望ましい。また、ドットパターン部6を構成するドットはカーボンインクで印刷することが望ましい。
【0065】
本発明の情報入出力方法では、先ず、カメラユニット2を用いて、ドットパターン部6の画像データを取り込む際に、このドットパターン部6に赤外線を照射することにより、ノンカーボンのカラーインクで印刷した情報伝達部7から、ドットをカーボンで印刷したドットパターン部6のみを正確に読み取ることができる。すなわち、このような文字または図等で表示された情報伝達部7とドットパターン部6が同−一面に重ねて印刷された印刷物5におけるドットパターン部6の画像データのみを取り込むことにより、ドットパターン部6の情報のみを抽出することができる。
【0066】
図23はXY座標情報からなるドットパターンを示す説明図である。図24はXY座標情報からなるドットパターンを認識し、その処理方法についての説明図である。
【0067】
本発明のドットパターン部6はXY座標情報で作成し、そのXY座標情報と情報伝達部7の内容とを関連付けることができる。このドットパターン部6については、上述したようにカメラユニット2を用いてその画像データを取り込み、その画像情報をデジタル化して数値化し、そのX方向、Y方向の座標情報化したものを、円形部分A、四角部分B、三角部分Cで表現した各情報伝達部7の内容のいずれかの位置に対応させる。このときに図24の参照テーブル1を用いてXY座標と各情報伝達部7の内容とを対応させる。すなわち、どのXY領域が、情報伝達部7のいずれの内容であるかを対照させ、次に図24の参照テーブル2を参照することによりドットパターン部6に対応した情報、プログラムを出力する。
【0068】
このXY座標情報からなるドットパターン部6によれば、予めドットパターン1を印刷した印刷物5を用意しておき、この印刷物5上に情報伝達部7を重ね印刷するだけで、特定の内容(コンテンツ)に対してXY座標の領域と音声等の情報およびプログラムとを関連付けることが可能になる。すなわち、情報伝達部7の内容に合わせたドットパターン部6を作成する必要がないので、その汎用性が非常に高くなる。
【0069】
図25はコード番号情報からなるドットパターンを示す説明図である。図26はコード番号情報からなるドットパターンの認識および処理手順を示した説明図である。
【0070】
本発明のドットパターン部6は、前述したXY座標情報に代えてコード番号情報で作成し、そのコード番号情報と情報伝達部7の内容とを関連付けることができる。たとえば、円形部分Aの情報伝達部7、四角部分Bの情報伝達部7または三角部分Cの情報伝達部7の内容に対応して、それぞれ1つのコード番号情報を含んだドットパターン部6を印刷する。このドットパターン部6についても、上述したようにカメラユニット2を用いてその画像データを取り込み、その画像情報をデジタル化して数値化(コード番号情報化)し、図26の参照テーブルを参照することによりそのドットパターン部6に対応した情報、プログラムを出力する。
【0071】
このコード番号情報からなるドットパターン部6によれば、コード番号と情報伝達部7の内容が直接対応しているために、図26に示すように、参照テーブルを1つ作成すればよい。さらに、参照テーブルを1つ作成すればよいので情報処理時間を短縮することができる。
【0072】
なお、XY座標情報とコード番号情報からなるドットパターン部6を印刷物5の同一平面上に印刷することは勿論可能である。
【0073】
図27は印刷物に赤外線を照射することにより、ノンカーボンのカラーインクで印刷した文字または図等の情報伝達部から、カーボンインクで印刷したドットパターン部の画像データのみをカメラで取り込む状態を説明する説明図である。
【0074】
図示するように、印刷物5は白色用紙に対して、赤外線域波長において透明で、かつ可視光域波長において発色するインク、例えばノンカーボンインク(染料インク)などで印刷した情報伝達部7を形成したものである。次に、この印刷物5に対してさらに赤外線域波長において発色するインクで印字、例えばトナー等のカーボンインク、赤外線インク、透明インク等で印字したドットパターン部6を形成する。この情報伝達部7とドットパターン部6とを同一面に重ねて印刷した状態に対してカメラユニット2のカメラで撮像する。このとき、赤外線フィルター2aは、可視光線波長をカットし、赤外線域波長のみを通過させる。カメラにはドットパターン1のみの情報を入手することができる。逆に、ドットパターン部6を先に印刷し、次に情報伝達部7を印刷することも可能である。
【0075】
このカメラユニット2が、これらのドットパターン部6に所定の規則により印刷されたドットを認識し、それをデジタル化して数値化し、その数値情報の読み取りにより、そのドットパターン部6は印刷物5のどの領域にある情報またはプログラムかを認識して、それに対応するように記憶した種々の情報およびプログラムを記憶部(メモリ)より出力および実行する。たとえば、ドットパターン部6に対応した情報およびプログラムは、テキストおよび画像あるいは音声により出力させることができる。
【0076】
なお、カメラユニット2で印刷物5中のドットパターン部6の画像データのみを取り込む際に、ドットパターン部6に紫外線を照射する方法によることも可能である。
【0077】
上述した本発明の方法では、印刷物5という媒体を介在して種々の音声情報を出力、実行させることができる。たとえば、絵本、飛び出す絵本、写真自体、教材、テキスト、問題集、雑誌、新聞紙、カード、会員証、フォトスタンド、粘着剤付写真、博物館内の展示物の説明、カードゲーム、ボードゲーム、パンフレット、通信販売のカタログ等のあらゆる印刷物5に応用することができる。このように、印刷物5中の文字または図等からなる情報伝達部7からの視覚情報と同時に、ドットパターン部6からの音声情報を共に認識することができる。
【0078】
図28はカメラ入力による情報入出力方法を用いた携帯情報入出力装置の第一の実施形態を説明する機能ブロック図である。
【0079】
携帯情報入出力装置は、カメラユニット2からなるセンサ部8と、処理部9と記憶部(メモリ)10とからなる本体処理部11とを備えたものである。このセンサ部8は、印刷物5中のドットパターン部6の画像データのみを取り込むカメラユニット2と、この画像データをデジタル化して数値化する画像処理部12とを備えたものである。このカメラユニット2の近くに印刷物5に赤外線を照射する赤外線発光部13を備えている。
【0080】
本体処理部11は、画像処理部12で画像処理した数値より、ドットパターン部6に対応する、予め記憶させた記憶部(メモリ)10の情報およびプログラムを出力および実行させる処理部9を備えたものである。この本体処理部11には、スピーカ14、イヤホンまたは液晶モニタ25等の出力部15を備えている。この出力部15からは、この音声による出力以外に、音声出力(ライン)、TVモニタまたはパソコンに画像出力することも可能である。
【0081】
記憶部10には、予め情報およびプログラムを記憶させるほかに、後から情報およびプログラムを記憶させることができる。たとえば、この記憶部10に入力部17となるマイク17aを用いて音声により情報およびプログラムを記憶させることも可能である。この入力部17には、マイク17aの他に、音声入力端子、映像入力端子、パソコン等を接続して情報およびプログラムを記憶させることができる。
【0082】
このように、たとえばマイク17aを用いて音声を後から入力することができるので、携帯情報入出力装置は、絵本等の印刷物5に関連した自分や知人の声をマイク17を用いて記憶させておき、その後、この携帯情報入出力装置でその印刷物5を読み取ることで、別の人がその印刷物の内容に対応した音声情報を聞き取ることができる。たとえば、「親子の伝言装置」として、あるいは写真に声を入れた「ボイスメッセージの入った粘着剤付写真」といった用い方が可能である。
【0083】
この本体処理部11には、通信カード16を装着して外部の情報およびプログラムを出力または実行させることができる。たとえば、カメラユニット2で入力したドットパターン1を数値化し、そのデータを通信カード16を介してサーバ等のコンピュータ23に送信することができる。また、カメラユニット2で入力したドットパターン1を数値化し、そのデータを通信カード16を介してサーバ等のコンピュータ23に送信し、そのデータに対応する情報およびプログラムを受信する、ことも可能である。カメラユニット2で入力したドットパターン1を数値化したデータを入力し、それに対応した音声を入力する。通信カード16を装着して前記記憶部10に情報およびプログラムを記憶させる。
【0084】
このように通信カード16を用いることで、情報およびプログラムを容易に送信し、受信することができる。たとえば、携帯情報入出力装置を用いてアンケートに声で答え、この音声情報をサーバ等のコンピュータ23に送信することができる。問題集またはテストに声で回答し、その音声情報をサーバ等のコンピュータ23に送信して、発音テストや添削することができる。
【0085】
さらに、印刷物5等その他の媒体のドットパターン部6にURL情報を埋め込み、スキャンしたら自動的にそのサイトに接続する。あるいはその接続後、特定の動作を行うように構成することも可能である。
【0086】
また、音の出る出版物を自作することができる。絵葉書、手紙に音声情報を後から入れることができる。たとえば、これらの印刷物5にBGM(バックグラウンドミュージック)、SE(サウンド・エフェクト)等を後で付加することができる。
【0087】
この本体処理部11にはGPS24をさらに設けることにより、現在の位置情報を容易に表示することができる。
【0088】
図29はカメラ入力による情報入出力方法を用いた携帯情報入出力装置の実施形態を説明する機能ブロック図である。
【0089】
この実施形態の携帯情報入出力装置では、センサ部8にはカメラユニット2のみを備え、センサ部8をコンパクトに構成することができる。
【0090】
なお、本発明は図示例の実施形態に限定されず、印刷物5中のドットパターン部6のみを認識することにより、所定の情報や音声を再生させて様々な使用を可能にする構造であれば、上述した利用方法に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【0091】
図30はコンパクトなケース本体に収納した携帯情報入出力装置を示す斜視図である。図31はコンパクトなケース本体に収納した携帯情報入出力装置を示すものであり、(a)は全体の斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図と(d)は正面図である。
【0092】
本発明の携帯情報入出力装置は、手のひらの中に容易に収まる程度の大きさの本体ケース18内に上述した本体処理部11を収納し、この本体ケース18にカメラユニット2を下向きに設け、側面に出力部15となるスピーカ14を、あるいはイヤホン端子19を設けている。この本体ケース18の上部にボタンスイッチ20を設け、また正面にはUSB端子21や記憶部10となるメモリカードスロット22を備えている。
【0093】
本発明の携帯情報入出力装置は、さらに液晶モニタ25、イヤホンジャック19、TVモニタ用出力端子26等を設けることができる。また、本体ケース18にはマイク17a、撮影ボタン27、収録ボタン28、プログラム選択ボタン29、出力ランプ30、GPS24、音声入力端子31、USB端子21や記憶部10となるメモリカードスロット22を備えている。
【0094】
この本体ケース18は、手のひらの中に収まりやすい形状にするために図31に示すように、全体に丸みを帯びた形状にすることができる。このように形成することにより印刷物5のドットパターン部6の画像データを容易に取り込むことが可能になる。
【0095】
なお、本体ケース18の形状は、図示例の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【0096】
図32と図33はカメラと出力部分とを別体に構成した実施形態を説明する機能ブロック図である。
【0097】
この実施形態では、カメラユニット2を、前述した画像処理部12、記憶部10、処理部9および出力部15と分離し、インターフェース部を介して送信するように構成することができる。このインターフェース部は有線のほかに無線で送信する。無線で送信するときは、図示するように、インターフェース部となる無線送信部32と無線受信部33を介して送信することができる。
【0098】
図33では、センサ部8にはカメラ2のみを備えたものである。このように構成することにより、センサ部8をコンパクトに構成することができる。
【0099】
図34はカメラユニット部分と出力側本体を分離した装置を示す斜視図である。
【0100】
図示例ではカメラユニット部分と出力側本体を分離し、ケーブル34で接続した有線型を示している。このように分離することにより、印刷物5に対してカメラユニット2を当てやすくなり、本発明の携帯情報入出力装置について卓上で使用しやすくなる。このカメラユニット2は、カメラの周囲にリング型スイッチ35を構成したものである。このように構成することにより、印刷物5に対してカメラユニット2を押し当てるだけでスイッチを入れることができ、片手で容易に操作することができる。
【0101】
図35はカメラユニット部分の他形態を示す斜視図であり、(a)はペン型のカメラユニット、(b)はペン型のカメラユニット、(c)はマウス型のカメラユニット、(d)は聴診器型のカメラユニットの例を示すものである。
【0102】
(a)のペン型のカメラユニット2は、ペン36の軸先にバヨネット37でフレキシブルに可動するようにカメラユニット2を接続したものである。これにはペン軸にボタンスイッチ38を設けている。(b)のペン型のカメラユニット2は、ペン36の軸先にバヨネット37でフレキシブルに可動するようにカメラユニット2を接続し、かつカメラの周囲にリング型スイッチ39を構成したものである。このように構成することにより、印刷物5に対してカメラユニット2を押し当てるだけでスイッチを入れることができる。(c)のマウス型のカメラユニット2は、パソコン用のマウスの形態を模したマウス型本体40にカメラユニット2を設けたものである。これにはマウス型本体40の上面にボタンスイッチ38を設けている。このマウス型のカメラユニット2は手のひらに入る大きさであるために、パソコンのマウスのように印刷物5上で操作することができる。(d)の聴診器型のカメラユニット2は、聴診器のように指で挟める本体41にカメラユニット2を設けたものである。これにもボタンスイッチ38を設け、指先で摘んで操作することができるようになっている。
【0103】
図36は携帯電話機用のカメラを用いた情報入力装置の実施形態を説明する機能ブロック図である。
【0104】
情報入力装置118は、カメラユニット102からなるセンサ部108と、処理部109からなる本体処理部111とを備えたものである。このセンサ部108は、印刷物5中のドットパターン部6(図27参照)の画像データのみを取り込むカメラユニット102と、この画像データをデジタル化して数値化する画像処理部112とを備えたものである。このカメラユニット102の近傍に印刷物5に赤外線を照射する赤外線発光部113を備えている。
【0105】
本体処理部111は、画像処理部112で画像処理した数値に基づいてドットパターン部6に対応する、予め携帯電話機110内に記憶させた記憶部(メモリ)の情報およびプログラムを出力および実行させる処理部109を備えたものである。この本体処理部111にはGPS(図示していない)をさらに設けることにより、現在の位置情報を容易に表示することができる。
【0106】
携帯電話機110の記憶部(メモリ)には、予め情報およびプログラムを記憶させるほかに、後から情報およびプログラムを記憶させることができる。たとえば、この携帯電話機110の記憶部にはマイクまたはカメラ(図示していない)等を用いて音声、画像または文字情報により情報およびプログラムを記憶させることも可能である。
【0107】
図37はカメラを用いた情報入力装置の実施形態を説明する機能ブロック図である。
【0108】
実施形態の携帯情報出力装置では、センサ部108にはカメラユニット102のみを備え、センサ部108をコンパクトに構成することができる。
【0109】
図38は携帯電話機用のカメラを用いた情報入力装置を示す説明図である。
【0110】
上述した情報入力装置118は、携帯電話機110に装着して使用することができる。このように、携帯電話機110に情報入力装置118を装着することにより、カメラユニット102で取り込んだ、ドットパターン部6に対応した情報やプログラムをその携帯電話機110から出力および実行させることができる。
【0111】
図39は携帯電話機用のカメラを用いた情報入力装置を示す説明図である。
【0112】
上述した情報入力装置118は、携帯電話機110にインターフェース部119を介して装着することができる。このように、情報入力装置118を携帯電話機110にインターフェース部119を介して装着することにより、情報入力装置118のみを自由に動作させることができる。
【0113】
この情報入力装置118は、携帯電話機110に装着して次のような利用方法がある。たとえば、印刷物5中の文字または図等からなる情報伝達部7からの視覚情報と同時に、ドットパターン部6に連動した音声情報を共に認識することができる。このときは、携帯電話機110に音声情報の他に、画像、テキスト等を同時に表示することができる。この印刷物5としては、教材、テキスト、問題集、雑誌、新聞紙、写真自体、カード、会員証、フォトスタンド、粘着剤付写真、博物館内の展示物の説明、カードゲーム、ボードゲーム、パンフレット、通信販売のカタログ等がある。
【0114】
なお、情報入力装置118と携帯電話機110への装着手段は、図示例の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【0115】
図40は情報入力装置を内蔵した携帯電話機を示す説明図である。
【0116】
本発明の情報入力装置118は、携帯電話機110に内蔵することも可能である。このように、携帯電話機110と情報入力装置118とを一体化することで、よりコンパクトな情報入・出力装置を実現することができる。
【0117】
携帯電話機110には、その通信機能を利用して記憶部に、外部からの情報およびプログラムを記憶させ、この記憶させた情報およびプログラムを送信することができる。このように構成すれば、情報およびプログラムを容易に送信することが可能になる。
【0118】
たとえば、カメラユニット102で入力したドットパターン1を数値化し、そのデータを携帯電話機110の通信機能を介してサーバ等のコンピュータ123に送信することができる。また、カメラユニット102で入力したドットパターン1を数値化し、そのデータを同じく携帯電話機110の通信機能を介してサーバ等のコンピュータ123に送信し、そのデータに対応する情報およびプログラムを受信することも可能である。カメラユニット102で入力したドットパターン1を数値化したデータを入力し、それに対応した音声、テキスト、画像を入力する。従来から供給されている携帯電話機用の膨大なコンテンツについてドットパターン1を用いて迅速かつ容易に出力と実行することができる。
【0119】
さらに、このように携帯電話機110の通信機能を用いることで、情報およびプログラムを容易に送信し、受信することができるので、アンケートに声で答え、この音声情報をサーバ等のコンピュータ123に送信することができる。問題集またはテストに声で回答し、その音声情報をサーバ等のコンピュータ123に送信して、発音テストや添削するといった利用方法もある。
【0120】
また、携帯電話機110にはGPSを設けることにより、現在の位置情報を容易に表示することができる。
【0121】
図41は本発明のドットパターンを用いた実施形態の携帯用電子玩具の機能ブロック図である。図42は実施形態の携帯用電子玩具を示す正面図である。図43は実施形態の携帯用電子玩具を示す右側面図である。図44は実施形態の携帯用電子玩具を示す左側面図である。図45は実施形態の携帯用電子玩具を示す底面図である。
【0122】
実施形態の携帯用電子玩具801は、ドットパターンの情報を再生させることにより、媒体802となる書籍、ゲームカード、小物類または玩具等に関する種々の音声または音楽を発生させる玩具である。この携帯用電子玩具801は、書籍等の記載事項と関連する音声を認識させるドットパターン部803と、種々の音声を記憶した音声記憶部804と、その音声をスピーカ805に再生させる処理部(CPU)806と、音声再生LSI807とを備え、これらをケース本体808内に収納したものである。このケース本体808にケーブル809で、ドットパターン部803の画像データを取り込むためのペン型のカメラ810を接続したものである。
【0123】
携帯用電子玩具801のケース本体808内に収納した音声記憶部804は、書籍等の記載事項と関連する音声を認識させるドットパターン部803の情報に基づいて再生させる音声を記憶させたものである。この音声記憶部804は、そのまま内部メモリとして使用するだけでなく、外部メモリを使用して最新のコンテンツを取り込むことができる。たとえば、外部からプログラムをダウンロードしてその音声内容を更新することができ、一台の携帯用電子玩具801を繰り返し使用することができる。
【0124】
カメラ810は、書籍、ゲームカード、小物類または玩具類に貼り付けるドットパターン部803または書籍等に認識信号となる数字、文字等を直接印刷したドットパターン部803の画像データを取り込むものである。カメラ810で取り込んだドットパターン部803の画像データは、画像処理アルゴリズムで処理してドットを抽出し、歪率補正のアルゴリズムにより、カメラ810が原因する歪を補正するので、歪率の高いレンズを付けた普及型のカメラ810でドットパターン部803の画像データを取り込むときにも正確に認識することができる。また、ドットパターン部803の面に対してカメラ810を傾けて読み取っても、そのドットパターン部803を正確に認識することができる。
【0125】
このカメラ810は、ドットパターン部803の情報を認識して、それに対応する音声、音楽を音声再生LSI807でスピーカ805から再生させる。
【0126】
本発明の携帯用電子玩具801のケース本体808は、たとえば縦13cm×横18cmの「システム手帳」のサイズで容易に携帯できるような大きさからなる。そこで、この携帯用電子玩具801を手に持ったり、バッグに入れて携帯することができる。
【0127】
また、ケース本体808に設けた液晶表示部812により、音声以外の情報も同時に表示する。この液晶表示部812は画像再生LSI813で表示させる。このように音声以外の情報も同時に入手することができるので、本発明の携帯用電子玩具801の応用範囲が広い。この携帯用電子玩具801は、ケース本体808の側面のスイッチ14をオンにすると、パイロットランプ15が点灯する。
【0128】
音声記憶部804は、その記憶媒体816として、フラッシュメモリ、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、記憶用ICカード、メモリーステイック等を用いることができる。これにより音声内容を容易に変更し得る。
【0129】
音声記憶部804は、たとえば、外国語の発音等を音声で教示する教材として利用できるコンテンツデータ(音声データ、画像データ、動画データまたは文字・記号等のキャラクタコードデータ)を記憶する。その他に、音声記憶部804は、音楽を作れる絵本や、フィギュア人形を使った楽団として利用できるコンテンツ、組立てブロック等の玩具と合わせて音声が発生する教材として利用できるコンテンツ、「音の出る絵本」として、絵本の絵に加えて音楽や主人公等の会話まで発生させる絵本として利用できるコンテンツ、「音の出る辞書」として、外国語の単語や文章をなぞると翻訳してくれ辞書ソフトとして利用できるコンテンツを記憶させる。
【0130】
さらに、本発明は、対戦型カードと組み合わせて、その対戦ゲームやRPGソフトができる。「販促ツール」として、商品の特徴や会社概要を音声で解説するパンフレットとして利用することができる。あるいは、「各種情報(ガイド等)」として、博物館等の施設や観光地の名所等を音声で解説する電子機器として利用することができる。
【0131】
このカメラ810はその使用後には、本発明の携帯用電子玩具801を携帯できるようにケース本体808の側面に格納できるようになっている。
【0132】
カメラ810の近くにライト(図示していない)を設けることにより、ドットパターン部803を照明して暗い場所でもこのドットパターン部803を正確に認識することができる。
【0133】
本発明の携帯用電子玩具801は、書籍、ゲームカード、小物類または玩具等の媒体802とドットパターン部803との組み合わせにより、次のような様々な使用方法がある。
【0134】
「音が出る教材」
ケース本体808の底面にセットできるミニサイズの書籍を教材として用いることができる。本発明は携帯性に優れているという特長を活かし、場所を選ばず、いつでもどこでも勉強することができ、子供から大人、老人までのすべての世代に向けた「音が出る教材」として利用することができる。たとえば、書籍の文字をなぞると音声が再生され、英会話等の語学教育や知育・音楽等の幼児教育、ドリル等の補助教材として使用できる。
【0135】
「対戦カードゲーム」
本発明の携帯用電子玩具801は、「対戦カードゲーム」として利用することができる。対戦カードゲームに対応した「専用シール&データ集」を制作し、それぞれのカードに対応したドットパターン部803を貼付すると、携帯用電子玩具801のスピーカ805からそのカードのキャラクタが生き生きと話し出すようにすることができる。また、キャラクタの声で解説を流したり、裏技を教えるなど、カード機能を拡張するアイテムとしても活用できる。
【0136】
または、人気の映画カードに対応した「専用シール&データ集」を制作すれば、カードに対応したドットパターン部803を貼ると、映画のセリフや音楽が流れるようにすることができる。あるいは、確実なファン層を持つ、アイドルカードに対応した「専用シール&データ集」を制作し、それぞれのカードに対応したドットパターン部803シールを貼ると、アイドル本人のプレゼントボイスが流れるようにすることができる。このとき、1枚に付き曲が1フレーズだけ流れ、全部集めると1曲になるといったタイアップ展開に利用することも可能である。
【0137】
本発明の携帯用電子玩具801は、身の回りにある様々なモノにドットパターン部803を貼り付け、音を出して楽しむことができる、イタズラ感覚の「専用シール&データ集」を制作し、身の回りのモノにドットパターン部803を貼り付けて、カメラ810でなぞると話し出させることができる。たとえば、男の子なら皆大好きなミニカーキットと組み合わせ、音の出る道路を作るための「専用シール&データ集」を制作する。踏み切りや建物が同梱されたミニカー用の道路キットにドットパターン部803を付け、踏み切りにきたら「カンカンカン」、道路からはみ出したら「キキー!危ないよ!」などと音声が流れるようにして、臨場感を出すことができる。
【0138】
本発明の携帯用電子玩具801は、ドットパターン部803が沢山プリントされたTシャツを制作し、身に付けて楽しむという、新しい遊び方に使用することができる。
【0139】
本発明の携帯用電子玩具801は、「占い装置」として利用することができる。自分で楽しむことは勿論、新歓コンパや忘年会といったパーティの余興で使用することができる。たとえば、「専用文字盤」に書かれた文字(ドットパターン部803)を順番にカメラ810でなぞると、ランダムで面白いコメントが流れるようにする。文字盤を使って名前を入力することで、姓名判断に使用することができる。「今日の運勢」などのコメントが流れるようにし、たとえば「恋愛運、仕事運、健康運、ともに最悪。ただし、動物運だけはサイコウです。外出すれば、散歩している犬とすてきな恋が芽生えるかも!」といった脱力系のコメントを表示するようにすることができる。
【0140】
「宝探しゲーム」
本発明の携帯用電子玩具801は、「宝探しゲーム」として利用することができる。
【0141】
参加者の数だけ本発明の携帯用電子玩具801を用意し、事前にドットパターン部803を色々な場所に隠し貼っておく。その後、一斉にスタート地点(玄関など)を出発し、隠されたドットパターン部803を見つけ出し、「廊下を探せ」などといった次の場所へ行く指示を探しながら進んでいき、一番早くゴールのドットパターン部803を見つけた人が勝ちといったゲームに使用することができる。
【0142】
「外国語翻訳装置」
本発明の携帯用電子玩具801により、「外国語翻訳装置」として利用することができる。
【0143】
英字新聞や外国の雑誌などを読んでいて分からない単語に出会ったとき、カメラ810で単語(ドットパターン部803)をなぞると、それに対応した日本語に翻訳して読み上げるように使用することができる。
【0144】
複数の携帯用電子玩具801が、ネットワークに対応できるようにケース本体808にUSBコネクタ(図示していない)を設けることができる。このUSBコネクタにつないだケーブルを相互に接続したり、パソコン等につないでネットワーク化することも可能である。
【0145】
図46は主にミニフィギュアに相応する音声を発生させる携帯用電子玩具の実施形態を示す斜視図である。図47は複数の音声発生玩具をコントローラユニットに接続した状態を示す斜視図である。
【0146】
実施形態の携帯用電子玩具821は、主にミニフィギュアに相応する音声を発生させるように構成した玩具である。この携帯用電子玩具821は、ミニフィギュア822のキャラクタ相応する音声情報を発生させるためのコード情報を記録したドットパターン部803と、ケース本体823内に収納した、音声を記憶した音声記憶部804と、カメラ810と、音声をスピーカ805に再生させる処理部(CPU)806と、音声再生用LSI807を備えたものである。
【0147】
ドットパターン部803は、ミニフィギュア822の台824またはボトルキャップの内面天井に貼り付けられるように円形状のシート材からなり、その一面に粘着剤を貼付し、シート材の他面にドットパターン部803を表示したものである。なお、このシート材に代えて、ミニフィギュア822自体にドットパターン部803を印刷することも可能である。
【0148】
携帯用電子玩具821のケース本体823内に収納した音声記憶部804は、そのまま内部メモリとして使用するだけでなく、外部メモリを使用して最新のコンテンッデータを取り込むことができる。たとえば、外部からプログラムやデータを入力またはネットワークを介してダウンロードしてその音声内容を更新することができ、一台の携帯用電子玩具821を繰り返し使用することができる。
【0149】
ケース本体823の中央部分のカメラ810の近くに照明手段としてのライトを設けることにより、ドットパターン部803を照明して暗い場所でもこのドットパターン部803を正確にその画像を取り込むことができるようにすることが好ましい。
【0150】
図48は実施形態の携帯用電子玩具の機能ブロック図である。
【0151】
複数の携帯用電子玩具821が、ネットワークに対応できるようにケース本体823にUSBコネクタ(図示していない)を設けることができる。このUSBコネクタにつないだケーブルをパソコン等につないでネットワーク化することも可能である。
【0152】
図49は本発明の光学文字認識(OCR)を用いた実施形態の携帯用電子玩具の機能ブロック図である。
【0153】
この実施形態では、前述の実施形態のカメラ810とドットパターン部(認識シール)803に代えて、光学文字認識センサペン831と音声認識信号部32を採用した。すなわち、携帯用電子玩具801は、光学文字認識を用いることにより、媒体802となる書籍、ゲームカード、小物類または玩具等に関する種々の音声または音楽を発生させる玩具である。この携帯用電子玩具801は、書籍等の記載事項と関連する音声を認識させる音声認識信号部832と、種々の音声を記憶した音声記憶部804と、その音声をスピーカ805に再生させる処理部(CPU)806と、音声再生LSI807とを備え、これらをケース本体808内に収納したものである。このケース本体808にケーブル809で光学文字認識センサペン831を接続したものである。
【0154】
光学文字認識センサペン831は、書籍、ゲームカード、小物類または玩具類に貼り付けるアイコンシール(音声認識信号部832)または書類等に認識信号となる数字、文字等を直接印刷した音声認識信号部832をなぞるものである。すなわち、この光学文字認識センサペン831が、音声認識信号部832に記載されている数字、簡易的なマーク等を認識して、それに対応する音声、音楽を音声再生LSI807でスピーカ805から再生させる。
【0155】
図50は磁性体を用いた実施形態を示す携帯用電子玩具の機能ブロック図である。
【0156】
この実施形態では、前述の実施形態のカメラ810とドットパターン部(認識シール)803に代えて、磁気読取センサペン841と磁気記録部842を採用した。すなわち、この携帯用電子玩具801は、媒体802等に相応する音声を認識させるために磁気記録部842を用い、この磁気記録部842に対応する音声を記憶した音声記憶部804と、この磁気記録部842を読み取る磁気読取センサペン841とを備えたものである。この磁気読取センサペン841で磁気記録部842を読み取り、音声記憶部804からそれに対応した音声を音声再生LSI807でスピーカ805に再生させる。
【0157】
この実施形態では、媒体802の種類に対応した音声、音楽を再生するだけでなく、さらに、媒体802に貼り付けた磁気記録部842の記録内容を容易に変換することができる。そこで、使用者が自分の好みの音声に容易に変更することができる。
【0158】
図51はカメラ等の撮影ペンを用いた実施形態を示す携帯用電子玩具の機能ブロック図である。
【0159】
この実施形態では、前述の実施形態のドットパターン部(認識シール)803に代えたものである。すなわち、媒体802に印刷された個々の形状または色彩に対応する音声を記憶した音声記憶部804と、媒体802に印刷された形状等を撮影するCCDカメラ等の撮影ペン851と、この撮影ペン851で撮影した形状、色彩または形状と色彩に関する映像に基づき音声記憶部804からそれに対応した音声をスピーカ805に再生させる処理部806とを備えたものである。
【0160】
この実施形態では、ドットパターン部803、音声認識信号部(認識シール)832または磁気記録部(磁気シート)842を用いることなく、媒体802に印刷された形状と色彩に対応した音声、音楽を再生することができる。なお、CCDカメラ等の撮影ペン851の近くにライト(図示していない)を設けることにより、媒体802を照明して暗い場所でもその形状等を正確に撮影することができる。
【0161】
さらに、このCCDカメラ等の撮影ペン851によって、媒体802に貼付し得る音声認識シール852を用いて、その媒体802に対応する種々の音声または音楽を発生させることもできる。たとえば、媒体802に貼付し得ると共に、該媒体802等に相応する音声を認識させる音声認識シール852と、この音声認識シール852に対応する音声を記憶した音声記憶部804と、音声認識シール852を撮影する撮影ペン851と、撮影ペン851で撮影した音声認識シール852の認識信号となる数字、文字等に関する映像に基づき音声記憶部804からそれに対応した音声をスピーカ805に再生させる処理部806とを備えた構成にする。
【0162】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、書籍等の媒体802自体を認識することにより、所定の音声を音声再生LSI807でスピーカ805に再生させて様々な使用を可能にする構造であれば、図示したケース本体808、の形状に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【0163】
図52と図53はカメラ入力による情報出力機能を有するフィギュアユニットについて、カメラと出力部とを一体に構成した実施形態を説明する機能ブロック図である。
【0164】
実施形態は、カメラ202と画像処理部212とからなるセンサ部208と、処理部209と記憶部(メモリ)210とからなる本体処理部211とを備えたものである。このセンサ部208は、印刷物5中のドットパターン部803の画像データのみを取り込むカメラ202と、この画像データをデジタル化して数値化する画像処理部212とを備えたものである。このカメラ202の近くに印刷物5に赤外線を照射する赤外線発光部213を備えている。
本体処理部211は、画像処理部212で画像処理した数値より、ドットパターン部803に対応する、予め記憶させた記憶部(メモリ)210の情報およびプログラムを出力および実行させる処理部209を備えたものである。この本体処理部211には、スピーカ14等の出力部15を備えている。
【0165】
記憶部10には、予め情報およびプログラムを記憶させるほかに、後から情報およびプログラムを記憶させることができる。たとえば、この記憶部10にマイク17を用いて音声により情報およびプログラムを記憶させることも可能である。
【0166】
図53は実施形態の変形例で、センサ部208にはカメラ202のみを備えたものである。このように構成することにより、センサ部208をコンパクトに構成することができる。
【0167】
図54と図55はカメラ入力による情報出力機能を有するフィギュアユニットについて、カメラユニットと出力ユニットとを別体に構成した実施形態を説明する機能ブロック図である。
【0168】
この実施形態は、カメラユニットAと、出力ユニットBとからなるものである。カメラユニットAは、カメラ202と、画像処理部212とからなるセンサ部208とインターフェース部となる無線送信部221とからなる。このセンサ部208は、印刷物5中のドットパターン部803の画像データのみを取り込むカメラ202と、この画像データをデジタル化して数値化する画像処理部212とを備えたものである。このカメラ202の近くに印刷物5に赤外線を照射する赤外線発光部213を備えている。
【0169】
出力ユニットBは、無線受信部222と、処理部209と記憶部(メモリ)210とからなる本体処理部211と、スピーカ214等の出力部215を備えたものである。本体処理部211は、画像処理部212で画像処理した数値より、ドットパターン部803に対応する、予め記憶させた記憶部(メモリ)210の情報およびプログラムを出力および実行させる処理部209を備えたものである。このインターフェース部となる無線送信部221と無線受信部222とは、赤外線を使って通信する。この出力ユニットBはパソコンをそのまま用いることができる。
【0170】
図55は実施形態の変形例で、センサ部208にはカメラ202のみを備えたものである。このように構成することにより、センサ部208をコンパクトに構成することができる。
【0171】
図56はカメラユニットを備えるフィギュアを示す斜視図であり、(a)は人形、(b)はサッカーボール、(c)は自動車、(d)は動物の例を示すものである。
【0172】
図示例は、フィギュア218にカメラ202を備えたカメラユニットAを備えたフィギュアユニットである。カメラ202のレンズを下向きに配置し、このフィギュア218を印刷物5の上に置いたときに、そのドットパターン部803の画像データを取り込む際に、このドットパターン部803に赤外線を照射することにより、ノンカーボンのカラーインクで印刷した情報伝達部7から、ドットをカーボンで印刷したドットパターン部803のみを読み取るようになっている。なお、フィギュア218の形状は、図示例の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【0173】
上述した本発明のフィギュアユニットでは、印刷物5という媒体を介在して種々の音声情報を出力、実行させることができる。たとえば、次のような使用方法がある。
【0174】
「すごろく」や「ボードゲーム」の駒としての利用
本発明のフィギュア218は、「すごろく」や「ボードゲーム」の駒として利用することができる。このフィギュア218を、「すごろく」や「ボードゲーム」の上に置いたときに、フィギュア218のカメラ202で印刷物5上のドットパターン803の特定の音声を発生し、指示内容を音声で知らせることができる。そこで、これらの「すごろく」や「ボードゲーム」の遊び方に幅を持たせることができる。
【0175】
「軍人将棋」の駒としての利用
本発明のフィギュア218は、「軍人将棋」の駒として利用することができる。このフィギュア218を、「軍人将棋」の将棋盤(印刷物5)上に置いたときに、フィギュア218のカメラ202でボードゲームのベース(印刷物5)上のドットパターン部803の特定の音声を発生し、指示内容を音声で知らせることができるので、今までとは違った新たな側面を持つゲームに飛躍させることができる。たとえば、本体の処理プログラムによって、駒(フィギュア218)の対決に偶然性や時間軸を設けることができる。このような付加価値は、実際の戦場をリアルに再現する重要な要素になり、ノーマルな軍人将棋にはなかった新たな戦略性を生み出し、楽しく遊ぶことができる。
【0176】
図57は本発明のフィギュアユニットを新シミュレーション・ボードゲームの中央バトルステージに置いた状態を示す斜視図である。
【0177】
「新シミュレーション・ボードゲーム」の駒としての利用
本発明のフィギュアユニットは、「ボードゲーム」の駒として利用することができる。ベース(印刷物5)とフィギュア218をセットした状態で、ベース(印刷物5)の上にフィギュア218を配置して遊ぶことができる。対戦の際には、中央のバトルステージ(印刷物5)に向かい合わせにフィギュア218を置き、ステージにはドットパターン部803と情報伝達部7が印刷されており、このドットパターン部6をフィギュア218のカメラ202で読み取り、内部の処理プログラムによって、複雑な対戦を展開することができる。
【0178】
このように、本発明のフィギュアユニットは印刷物5等に印刷した入力インターフェースとして使用できるので、コンテンツ毎にそれに合わせたインターフェースを製造することができる。また、インターネットを経由して、紙のインターフェースをPDF等でダウンロードしてプリンタ装置で出力し、それに応じたプログラムをダウンロードしてパソコン等にセットすれば、インターフェースをネットワーク経由で供給することも可能である。
【0179】
図58はフィギュアの一形態であるヌイグルミ内にカメラユニットと出力ユニットを内蔵した本発明の他の実施形態を示す説明断面図である。
【0180】
本発明のカメラユニットAと出力ユニットBについては、上述したフィギュア218の一形態である、綿またはスポンジのような弾力性素材を所定の形態を有する外皮に詰め込んだ、いわゆるヌイグルミ231内に内蔵することが可能である。たとえば、カメラユニットAのレンズ部分をそのままヌイグルミ231の眼球232部分に配置すると共に、出力ユニットBをヌイグルミ231の胴体233内に出し入れ自在に内蔵する。このように構成すれば、お気に入りのヌイグルミ231をそのまま所定の情報や音声を再生させる装置として使用することができる。
【0181】
図59と60はフィギュアの一形態であるヌイグルミ内にカメラユニットと出力ユニットを内蔵した他の実施形態を示す説明断面図である。
【0182】
ヌイグルミ231内に内蔵するカメラユニットAは、必ずしもそのヌイグルミ231の眼球232部分に配置する必要はない。たとえば、ヌイグルミ231の眼球232部分以外に、図示するように、ヌイグルミ231の手234に配置することができる。この他に本発明のカメラユニットAは、ヌイグルミ231の尻、腹、足、その他の所望の位置に配置することができることは勿論である。このカメラユニットAの配置位置はヌイグルミ231の種類や大きさまたは遊び方の目的に応じて決定される。
【0183】
なお、本発明は上述した発明の実施形態に限定されず、印刷物5中のドットパターン部6のみを認識することにより、所定の情報や音声を再生させて様々な使用を可能にする構造であれば、上述した利用方法に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【0184】
次に、本発明におけるドットパターンの仕様について図103〜図106を用いて説明する。
【0185】
ドットパターン部601は、図105に示すように、格子状に配置されたドットで構成されている。なお縦横方向の格子線はドットの配置位置を説明するためのものであり実際の印刷物上には存在しない。
【0186】
ここで、図105における4×5個の格子領域を1つのデータブロックまたは格子ブロックと呼び、この格子領域の四隅(格子線の交点(格子点)上)には格子ドットLDが配置されている。格子ドットLD同士の間隔は0.35mm〜1.0mm、好ましくは0.5mm程度であることが最適である。また、ドットの直径は前記格子ドット間隔の8〜10%程度であることが望ましい。
【0187】
どの格子領域からどの格子領域までが1つのデータであるかを示すためにキードットKDを配置している。
【0188】
キードットKDとは、格子ドットLDの位置をずらしたものである。すなわち、格子ドットLDは本来格子点上に配置されているが、この位置をずらしてキードットKDを配置している。なお、キードットKDの格子点からのずれは約20%前後程度が好ましい。
【0189】
前記キードットKDに囲まれた領域、またはキードットKDを中心にした領域が1つのデータを構成している。
【0190】
このデータの並びは、図104に示すように、左上から下方向に向かって順番に配置されている。
【0191】
データは、図103に示すように、ドット605を格子領域内の中心点からどの程度ずらすかによってデータ内容が定義できるようになっている。同図では、中心から等距離で45度ずつそれぞれずらした点を8個定義することによって単一の格子領域で8通り、すなわち3ビットのデータを表現できるようになっている。なお、さらに中心点から距離を変更した点をさらに8個定義すれば16通り、すなわち4ビットのデータを表現できる。
【0192】
本発明のドットパターンは、1個のデータブロックを構成する格子を自由に定義することができる点に特徴がある。つまり、前述のようにキードットKDがデータ領域の範囲を定義しているため、このキードットKDの配置を変更すれば任意の可変長の格子領域群をデータ格納領域として扱うことができるわけである。
【0193】
また、本発明のドットパターンでは、キードットのずらし方を変更することにより、同一のドットパターン部であっても別の意味を持たせることができる。つまり、キードットKDは格子点からずらすことでキードットKDとして機能するものであるが、このずらし方を格子点から等距離で45度ずつずらすことにより8パターンのキードットを定義できる。
【0194】
ここで、ドットパターン部をC−MOS等の撮像手段で撮像した場合、当該撮像データは当該撮像手段のフレームバッファに記録されるが、このときもし撮像手段の位置が紙面の鉛直軸(撮影軸)を中心に回動された位置、すなわち撮影軸を中心にして回動した位置(ずれた位置)にある場合には、撮像された格子ドットとキードットKDとの位置関係から撮像手段の撮像軸を中心にしたずれ(カメラの角度)がわかることになる。この原理を応用すれば、カメラで同じ領域を撮影しても角度という別次元のパラメータを持たせることができる。そのため、同じ位置の同じ領域を読み取っても角度毎に別の情報を出力させることができる。
【0195】
いわば、同一領域に角度パラメータによって階層的な情報を配置できることになる。
【0196】
この原理を応用したものが図74、図76、図78に示すような例である。図74では、ミニフィギュア1101の底面に設けられたスキャナ部1105でこのミニフィギュア1101を台座上で45度ずつ回転させることでドットパターン部の読取り情報とともに異なる角度情報を得ることできるため、8通りの音声内容を出力させることができる。
【0197】
本発明において、ダミードットDDを定義することができる。このダミードットDDは、4個の格子ドットLDの正中心に配置したドットである(図106(a)参照)。このようなダミードットは、マスク領域毎に境界を定義した絵本等に適している。図106(c)に示すようにmask1とmask2の領域の境界にダミードットDDを配置している。このようなマスク境界にダミードットDD領域を配置することにより、それぞれのマスク領域に定義されたコード情報を同時に読み取ってしまうことを防止している。図106(d)はダミードットDDの配置状態を示した図である。
【0198】
また、絵本等の背景部分については、格子ドットの中心にドットを配置しない空ドットを配置することが好ましい。空ドットは、情報が記録された通常のデータドットに比べてドット数が少ないため、ドットパターンの目立たない印刷が可能となる。また、空ドットの連続であるために、模様が生じにくく、単一色の背景に適している。
【0199】
また、本発明では、本来撮影中心を含む1ブロック分のデータを解析する必要があるが、撮影中心の近傍の格子データ(情報データ)をブロックをまたがって読取りデータとしてもよい。このような場合、本来の1ブロックから欠けている情報データに該当するデータを隣り合う他のブロックから読み込んで1ブロック分のデータに補完して入力を完了することができる。
【0200】
XY座標を定義するドットパターンについては、撮影中心とは異なるブロックからそれに相当するXY座標を構成する情報ドットを読み、補正をかけて撮影中心のXY座標値とすることができる。
【0201】
本発明は、以上に説明したような、格子ドットを用いたドットパターンであるため、撮影条件にあまり左右されないという特性を有している。すなわち、撮影条件(カメラのレンズのひずみ、カメラの写す角度、紙の変形)によってドットパターン全体がひずみを起こした場合、4個の格子ドットで形成される形状と、情報ドットの位置のずれが同様に起きるため、格子ドットからの相対的な位置関係にかわりはなく、これら格子ドットを基準に補正計算を行えば、各情報ドット、キードットについての真の位置がわかる。
【0202】
つまり、本発明の格子ドットを用いたドットパターンは歪みに強いといえる。
【0203】
図61から図67は、本発明のカメラによるドットパターン入力方法の好ましい実施形態を用いてカメラによりサブブロックで構成された1ブロック相当のドットパターンを読み込む方法を示す説明図である。
【0204】
図61に示すように、カメラは、被写体に光を照射するためにLEDと、LEDから出射される光をフィルターするためのLEDアクリルフィルターと、被写体からの反射光をフィルターするための可視光フィルター(赤外線透過フィルター)とを備える。カメラを収納する筒は、長手方向が10mm前後で構成されており、ドットパターンの撮像範囲は直径10mmとすると、4mm×4mmのドットパターン1ブロック分(11〜116)を読み込むためには、最大2r=2×4√2=11.28mmの撮像範囲が必要となる(図62参照)。これを解消するために、1ブロックとして構成されるキードットの周辺に配置される情報ドット16個を順次読み込むのではなく、他の情報ドットと独立的な情報を有する4個の情報ドット毎(1/4ブロック(サブブロック)毎)に読み込む。これにより、撮像範囲からはずれた1/4ブロックの情報ドットを撮像範囲内にある、他のブロックの対応する情報ドット(1/4ブロック)を入力することにより、1ブロック分の情報を撮像範囲の直径10mm内で入力可能とする。
【0205】
上記方法により入力されたいずれかの1/4ブロックの中でエラーが生じた場合は、他のブロックの対応する情報ドット(1/4ブロック)を入力し、エラー修正を行う。
【0206】
図64はカメラの撮像中心がB1ブロックのI8を示しており、撮像中心から最も近いB1ブロックの[I1〜I16]を入力する。
【0207】
図65はカメラの撮像中心がB1ブロックのI5を示しており、カメラ中心から最も近いB1ブロックの[I1,I2,I3,I4]および[I5,I6,I7,I8]とB2ブロックの[I9,I10,I11,I12]および[I13,I14,I15,I16]を入力する。
【0208】
図66はカメラの撮像中心がB1ブロックのI6を示しており、中心から最も近いB1ブロックの[I5,I6,I7,I8]とB2ブロックの[I9,I10,I11,I12]、B3ブロックの[I13,I14,I15,I16]とB4ブロックの[I1,I2,I3,I4]を入力する。
【0209】
図67はカメラの撮像中心がB1ブロックのI7を示しており中心から最も近いB1ブロックの[I5,I6,I7,I8]および[I9,I10,I11,I12]とB4ブロックの[I1,I2,I3,I4]および[I13,I14,I15,I16]を入力する。
【0210】
図64〜図67において、入力したドットパターンにエラーが生じた場合、代替で入力可能な1/4ブロックのドットパターンがいずれも最大8ヶ所ある。
【0211】
上述したような本発明のドットパターン1を、絵本、テキスト等の印刷物に印刷することにより、このカメラで画像データとして取り込み、それをデジタル化して求めた数値よりパソコン、情報出力装置、PDAまたは携帯電話等からそれに対応する情報、プログラムを出力させる。
【0212】
次に、ドットを読み取るための原理およびその装置構成について図107〜113を用いて説明する。
【0213】
光の反射は、物体表面において、物体表面の特性によって一定の比率で鏡面反射と拡散反射が生じる。鏡面反射は図110の右図に示すように、物体表面が平滑な場合に入射角と反射角が同一となるように入射した光が反射する。特に、表面が滑らかである場合、鏡面反射係数が大きくなり、光の反射が強く、ハイライトを生じる。
【0214】
拡散反射では、図110の左図に示すように、表面に細かな凹凸がある場合、入射した光が全方向に拡散して反射する。この拡散反射において、物体表面の特性によって定まる一定の波長の光が吸収される。従って、上質紙やマット紙のように、紙面表面が凹凸である場合、印刷したドット605に含まれるカーボンインクがLED2022による入射光を吸収し、反射光を生ぜずドット605が黒点としてC−MOSカメラ202に写像される(図111左図参照)。ところが、コート紙やアート紙のように表面の平滑な紙やフィルム、プラスチック等にドットを印刷した場合、もしくは印刷したドットの表面をコーティング、あるいは透明フィルムでカバーした場合は鏡面反射を生じ、カーボンインクがLED2022の光を吸収しないでハイライトとなり、C−MOSカメラ202にドット605が写像できない状態となる(図111右図参照)。そこで、これを回避するために、図107に示すように、LED2022からの直接光が鏡面反射して、C−MOSカメラ202に入射しないような位置、すなわちC−MOSカメラ202の側方にLED2022を配置すると供に、拡散反射する表材を内壁2021に用いて、LED2022からの光を内壁2021に反射させ、間接光として柔らかな光を平滑な紙面に均一して照射することにより、ハイライトを生じさせないようにする。
【0215】
また、図108に示すように、LED2022からの光をアクリル等のフィルタ2023を介して、光を拡散させて紙面に均一に照射することにより、ハイライトを生じさせないようにしてもよい。さらに、図109に示すように、LED2022に対して、その周面を覆うアクリルフィルタ2023を装着してもよい。
【0216】
図112および図113は、このようなC−MOSカメラとLED1122との理想的な配置を具体的に実現したペン型スキャナの先端部分の内部構造を示す説明図である。
【0217】
図112は、筒状ケース1124の先端に先端先細状のノーズ部1125を嵌合したものであり、該ノーズ部は軸方向に可動となっており、該可動はノーズ部1125の内面に設けられた突起壁に設けられたスプリングまたはラバー等の弾性部材1121により付勢されている。また突起壁にはC−MOSカメラが装着されており、C−MOSカメラの中央に設けられたレンズ1126は前記ノーズ部先端の開口部に臨むように配置され、開口部からの反射光を撮像できるようになっている。また、レンズ1126の側方には図109で説明したようなフィルタ2023を装着したLED1122(2022)が設けられている。このLED1122は筒状ケース1124内において前記レンズl126のレンズ面よりも後退した位置に設けられており、LED1122からの照射光が直接レンズ面に入射されない配置構成となっている。
【0218】
前記突起壁には押圧力により電気回路を電気的に導通させるスイッチ1123が設けられており、前記弾性部材1121の付勢力に抗してノーズ部1125が筒状ケース1124方向に移動すると、ノーズ部1125の基端部がスイッチ1123を押圧して動作させるようになっている。
【0219】
前記スイッチ1123が作動されることによってLED1122が照射状態となり、C−MOSカメラは読取り処理を開始する。
【0220】
ペン型スキャナの先端部を図112に示したような構成とすることによって、筒状ケース1124に対してノーズ部1125をはめ込むだけで組み立て作業が完了するため、組み立て効率を向上させることができる。
【0221】
また、図113はペン型スキャナの先端部の別の構成例を示している。同図の構成では、ノーズ部1125はラバー(弾性部材)1132を介して接着剤等で接続されている。また、スイッチ1123は、前記ラバー1132の内側の所定部分に配置されており、ラバーの弾性力に抗して付勢移動されたノーズ部1125の基端部がスイッチ1123を押圧するようになっている。
【0222】
また、C−MOSカメラはレンズ1126の側方にアクリルフィルタ1133を介してLED1131が配置されており、スイッチ1123が作動されるとLED1131の照射光はアクリルフィルタ1133を介して前記ノーズ部1125の開口部から外部に照射される。
【0223】
図68〜図111は、実施形態のさらに変形例を示した図である。
【0224】
図68は、カメラをペン型スキャナ1001としてペン状のケース(装置本体)1015に収容したものである。
【0225】
ケース1015内には、バッテリ1016、スピーカ1007、回路基板1017が内設されている。回路基板1017上には中央処理装置(CPU)とメモリが面付実装されている。また図示は省略したマイク等を内蔵してもよい。また、ケース1015の後端(図で右上端部)にはメモリカートリッジ1014が着脱可能に装着されている。このメモリカートリッジ1014にはプログラムまたは既存の音声データ等が登録されるようになっている。メモリカートリッジ1014は交換可能に構成されており、ROMカートリッジ、マイクユニットカートリッジ等に交換可能である。
【0226】
ケース1015の表面には、ボタン1130a〜1130cが設けられており、読取り開始、録音開始、音声再生等が制御できるようになっている。
【0227】
当該ボタンの中で録音ボタンを押すことによって図示しないマイクで音声を録音することができる。録音した音声データはメモリカートリッジ1014に記録される。このとき、録音ボタンを押圧した状態のままドットパターン部をスキャンすると当該ドットパターン部に録音した音声が割り当てられる。消去ボタンを押しながらドットパターン部をスキャンすると音声のドットパターン部への割り当てが解除される。なお、このとき音声データはメモリカートリッジ1014に保存されたままであってもよい。
【0228】
同図において、ケース1015の先端(図で左下端部)には、ケース1015を約45度程度傾けて媒体面に当接したときに、媒体面の鉛直軸に沿ってC−MOSカメラユニット、スプリング1121および先細り状のノーズ1125が設けられている。ノーズ1125は、ケース1015が媒体面方向に押圧されると、スプリング1121の付勢力に抗して後退(情報に移動)し、スイッチ1123を押圧作動させるようになっている。
【0229】
ノーズ1125内空間にはC−MOSカメラユニットのレンズ1126が該空間に臨むように取り付けられており、ノーズ先端の窓部を撮像可能となっている。
【0230】
ノーズ1125内空間にはクランク状に45度ずつの2箇所の折曲部を有する照射管1127が設けられている。
【0231】
該照射管1127は、透明樹脂の筒体で構成されており、その基端面はLED1122に対面しており、LED1122の照射光が照射管内に入射されるようになっている。照射管内壁面で照射光の拡散成分(光軸に対して45度よりも大きな角度の光成分)は照射管内壁面を通過して外部に放射される。そして照射光の直進成分(光軸に対して45度よりも小さな角度の光成分)は照射管内壁面で反射されて管内を進行する。照射光は照射管内で光軸とほぼ平行な成分だけが先端面からノーズ1125の開口部に対して照射されるようになっている。
【0232】
このように、照射光は、透明樹脂で構成されたクランク状の照射管を通過することによって光軸に平行な集束光となるため、ノーズ部1125の開口部の全域にわたって均一な光量を供給することができる。このように本実施形態によれば、拡散光のような場合に生じる周辺部の暗がりがないため、ドットパターン部607の読取り精度を高めることができる。
【0233】
図69は、このようなペン型スキャナ1001を装置本体1002に接続したものである。同図において、装置本体1002にはメモリカードスロット1003を備えており、音声データやプログラムが登録されたメモリカード1004を挿入可能となっている。また、装置本体1002にはマイクロホン1005が接続されて外部から音声データを装置本体内のメモリに登録することができるようになっている。音声データは装置本体1002のスピーカ1007又は装置本体1002に接続されたスピーカ1006から出力させることができるようになっている。
【0234】
なお、図69ではペン型スキャナ1001と装置本体とはケーブルで接続されているが、図70に示すようにスキャナ内に無線インターフェースを内蔵して装置本体1002とは無線で通信を行うようにしてもよい。
【0235】
図71はペン型スキャナの変形例を示している。同図に示すように、ペン型スキャナ1001aは、バッテリー1010、スピーカ1007を備えており、SDカードやメモリーステイックまたはスマートメディア等のメモリーカード1004を装着できるようになっている。
【0236】
図72は、本発明をボードゲームに適用した場合を示しており、ミニフィギュア1101を駒としてボード1102に記載されたマス目1103をサイコロやスピーカ1104で決定された数字分だけミニフィギュア1101をマス目に沿って移動させるものである。この、ミニフィギュア1101の底面にはCCDやC−MOS等の読取り素子が設けられており、ボード1102のマス目にはドットパターン部が形成されている。したがって、ミニフィギュア1101をマス目上に置くことによってマス目毎に異なった音声情報をケーブルで接続されたスピーカ1104から出力させることができる。これによってたとえば次のマス目への移動指示やゲーム進行にとって必要な情報を音声情報として出力させることができる。
【0237】
図73は、ミニフィギュア1101と装置本体1102とを分離し、ミニフィギュア1101の底面に設けられたスキャナ部1105で図示しないドットパターン部を読み込んで無線通信で装置本体1102に当該ドットパターンに対応した読取り信号を送信するものである。装置本体1102ではスピーカ1007を備えており、前記読取り信号に対応した音声情報をメモリカード1004から読み出して音声情報として出力するようになっている。
【0238】
なお、この構成の場合、ミニフィギュア1101と装置本体1102との通信トラフィックを低減するために、ミニフィギュア1101本体内にデコーダを設けて、読み取ったドットパターンの画像データをデコードして数桁のコード情報に変換し該コード情報のみを読み取り信号として装置本体1102に送信することが望ましい。
【0239】
図74は、ミニフィギュア1101の底面に設けられたスキャナ部1105で台座1110表面に形成されたドットパターン部を読み取る場合の変形例である。本実施形態では、スキャナ部1105のドットパターンに対する位置によって読取り内容を変えることができる。たとえば、ミニフィギュア1101の立設軸を中心にドットパターンに対して所定の角度ずつ傾けると、読取り信号も変化させることができるため、ミニフィギュアの向く方向によって出力させる音声内容も変化させることができる。ドットパターン部に対してミニフィギュアの角度を変化させることで音声内容を変化させる方法については前述したので省略する。
【0240】
図75は、ミニフィギュア1101の他の構成例であり、この実施形態ではミニフィギュア1101内にはスキャナ部1105の他、バッテリー1010、スピーカ1007が内蔵されており、さらにメモリカード1004が装着可能となっており、メモリカード1004を交換することにより、プログラムまたは音声データを変更させて全く異なるゲームやミニフィギュア1101を全く異なるキャラクタに変更することもできる。
【0241】
なお、これらの図で説明したミニフィギュア1101は、図面上簡易な人形形状のもので説明したが、アニメーションのキャラクタやペット等の小動物、架空の動物、人物等を模したものであってもよいことは勿論である。
【0242】
図76は、カード1121にドットパターン部1122が設けられており、このドットパターン部1122を読み取るスキャナが内蔵された台座1123上にカード1121を所定角度で配置することにより音声や表示データで得点が出力される形式の玩具である。
【0243】
図78は、雑誌等に印刷されたクロスワードパズル1132をペン型スキャナ1001を用いて遊ぶ場合の例を示したものである。紙面のクロスワードパズル1132の空白枠内1133には本発明のドットパターン部1122が形成されており、ペン型スキャナ1001の先端を所定の空白枠1133内に当接させることによって当該空白枠1133に設定された縦列または横列のワードのヒントがペン型スキャナ1001の液晶表示部1131に表示されるようになっている。
【0244】
この場合、ペン型スキャナ1001の先端部をヒントを希望する空白枠内1133に当接させることで、該空白枠内に形成されたドットパターンを読み込んで当該ワードのヒントを液晶表示部1131に表示させることができる。このとき、同じ空白枠内に当接させる場合であっても、ペン型スキャナ1001を当接させる角度によって縦方向のヒント、横方向のヒント、斜め方向のヒントをそれぞれ表示させることができる。このとき、前述のように、格子ドットに対するキードットの格子点からのずれを中央処理装置(CPU)で計算する際に、カメラの傾き(紙面の鉛直軸を中心にした撮像素子の回転方向へのずれ)を計算できるため、カメラの傾きに応じたクロスワードパズルの縦、横、斜め方向を認識することができる。したがってそれに対応したヒントを記憶手段から読み出して表示したりスピーカ1007から発声させることができる。
【0245】
なお、ペン型スキャナ1001を縦方向、横方向または斜め方向に2枠程度移動させることによってXY座標方向への移動を検出し(検出方法については前述している)当該方向のワードのヒントを液晶表示部1131に表示させたり、スピーカ1007から音声情報として発声させてもよい。
【0246】
図80は、自走型の猫のヌイグルミ1141の腹部底面にスキャナ部1105を設けておき、ボードや家庭内の床面にシール等で形成されたドットパターン部1122上を該ヌイグルミ1141が自走することによってドットパターン部1122を読取り、該読取り信号を装置本体1102に送信するものである。
【0247】
図81は、自走式またはラジオコントロール式の自動車玩具1151の底面にスキャナ部1105が設けられており、ボードや床面にシール等で形成されたドットパターン部1122を読み取って装置本体1102に読取り信号を送信することによって装置本体1102のスピーカ1007からドットパターン部1122に対応する音声情報を出力するものである。
【0248】
たとえば、市街の道路を印刷したシートを用意し、当該シート上を自動車玩具を走らせて遊ぶ場合、交差点や踏切の手前には該シート上にドットパターン部1122を形成したシールを貼っておき、前記自動車玩具1151が交差点や踏切に接近した際に一時停止を促す音声情報を装置本体1102のスピーカ1007から出力させてもよい。
【0249】
図82は、対戦型カードゲームに本発明を適用した場合の説明図である。
【0250】
同図に示すように、装置本体1102には一対のカード挿入口が設けられており、各カード挿入口に対戦する2人のそれぞれの持ちカード1121,1121を挿入することにより、カード1121,1121に設定されたパラメータの優劣を判定するものである。カード1121,1121の表面には図77で説明したようにドットパターン部1122が設けられており、このドットパターン部1122を装置本体1102のスキャナ部1105で読み取ることにより、ドットパターン部1122に対応付けられたパラメータをメモリカード1004から読み出すことで勝敗の判定ができるようになっている。なお、この装置本体1102に液晶表示画面を設けて勝敗結果を表示できるようにしてもよい。なお、図83は、1枚のカードのみを挿入可能とした装置本体1102の例である。
【0251】
図84は、装置本体1102が単なるカードリーダであり、当該装置本体1102をパーソナルコンピュータと接続する場合の実施形態である。また、図85は、ドットパターン部の形成されたはがき大のシート1161を連続的に読み込むための装置本体1102の例であり、たとえばドットパターン部の形成されたユーザからの返信はがきを次々と読み込む場合に適した装置構成である。
【0252】
図86は、POSレジ等で利用可能な装置本体1102の例であり、表面にガラス面1171を備えており、ガラス面1171下に配置されたスキャナ部1105でガラス面1171上を通過する商品等に貼付されたドットパターン部1122を走査することによりバーコードと同様な商品管理、販売管理等をすることができる。この場合、本発明では、包装箱または包装紙の印刷表面に印刷面と重畳してドットパターン部を形成できるため、バーコードシステムのように商品の表面を体裁の悪いバーコードシールが占有することがない。
【0253】
図87は、装置本体を台座1102で構成し、ミニフィギュア1101と組み合わせた例である。この実施形態では、台座1102の上面にガラス板1171が配置され、その下方にスキャナ部1105が設けられている。そして底面にドットパターン部1122が形成されたミニフィギュア1101が台座1102上に載置されると、このドットパターン部1122がスキャナ部1105で読み取られてドットパターン部1122から読み出したコード番号に対応する音声データが挿入されたメモリカード1004から読み出されてスピーカ1007から出力されるようになっている。
【0254】
図88は、装置本体1102がテレビモニタ1171に接続された例である。装置本体1102から映像信号と音声信号とがピンプラグを介してテレビモニタ1171に出力されるようになっている。音声データと映像データとは装置本体1102のメモリーカード1004または内蔵メモリに蓄積されており、ペン型スキャナ1001で読み取ったドットパターン部1122に対応した動画データが音声データと映像データとに分離されてテレビモニタ1171に入力されて、テレビモニタ1171の画面とスピーカから出力されるようになっている。
【0255】
図89は、フォトスタンド形式の装置本体1102を示している。写真1181の裏面にはドットパターン部1122が形成されており、スタンド部分の背面にはスキャナ部(図示せず)が設けられており、このドットパターン部1122を読み取ったコード番号に対応した音声情報が装置本体1102に内蔵されたメモリまたはメモリカードから読み出されてスピーカ1007から出力されるようになっている。この実施形態によれば、写真1181毎に予めドットパターン部1122に対応した音声を内蔵メモリまたはメモリカード1004に登録しておくことにより、写真撮影時の解説または「誕生日おめでとう」等の音声メッセージをスピーカ1007から再生させることができる。
【0256】
なお、スピーカ1007の他にマイク1005を設けて、音声データを内蔵メモリまたはメモリカード1004に登録しておき、予め写真1181の裏面に貼付しているドットパターン部1122と対応付けておいてもよい。
【0257】
また、同図のフォトスタンド型の装置本体1102には、液晶表示部1131を有しており、撮影日時やメッセージ文章等のデータをドットパターン部1122に対応付けておき、写真1181に対応付けたこれらのデータを液晶表示部1131に表示させてもよい。
【0258】
図90は、ペン型スキャナ1001をUSBケーブルを介してパソコン1201に接続したものである。ペン型スキャナ1001とパソコン1201との接続はUSBインターフェースを用いる場合の他、RS−232Cによるシリアルインターフェース、LANインターフェース、IEEE1394インターフェース等を用いてもよい。
【0259】
また、パソコンに無線インターフェースカード1209を装着してペン型スキャナ1001と無線通信で接続してもよい。無線インターフェースについては、ブルートゥース(登録商標)、無線LAN等を用いることができる。また、無線インターフェースの他に赤外線通信等の光インターフェースを用いてペン型スキャナ1001とパソコン1201とを接続するようにしてもよい。
【0260】
図91は、PDA1202にケーブルでペン型スキャナ1001を接続した図である。PDA1202とペン型スキャナ1001との接続も有線接続の他、無線接続、光通信接続で実現してもよい。
【0261】
図92は、スキャナをマウス1301に内蔵した場合のパソコン1201との接続を示したものである。マウス1301はUSBインターフェースを介してパソコン1201にケーブル接続する場合が一般的であるが、無線接続または光通信接続を用いてもよい。
【0262】
図93および図94は、マウス1301にデジタイザ機能を持たせたものである。このマウスの中にはスキャナ部1105が設けられており、マウス1301の先端にガラス部材1302で透過窓を設けて、上方からスキャナ部1105によるドットパターン部1122の読み取りターゲットを目視で確認できるようになっている。
【0263】
図95は、PDA1202の本体にスキャナ部1105を設けた構成であり、図96はパソコン本体1201にスキャナ部1105を設けた構成を示している。図95のようにPDA1202の本体にスキャナ部1105を設けた場合、PDA1202の本体のスキャナ部1105を紙面等のドットパターン部1122に翳して該ドットパターン部1122を読み取ることができる。一方、図96のようにパソコン本体1201にスキャナ部1105を設けた場合、名刺やカード1121(図77参照)に設けられたドットパターン部1122を前記スキャナ部1105に翳すことによってドットパターン部1105を読み取るように使用できる。なお、図97や図99に示すように、携帯電話1401の本体にスキャナ部1105を設けたり、ゲーム機本体にスキャナ部を設けてもよい(図示は省略)。
【0264】
図98は、ペン型スキャナ1001を携帯電話1401のコネクタに接続したものである。このような構成の場合、ペン型スキャナ1001で読み取ったドットパターン部に対応する読取り信号を、携帯電話1401に予めダウンロードしたプログラムで処理し、携帯電話の表示部に表示したり、音声出力させてもよい。また、当該プログラムでサーバにアクセスし、読取り信号を送信してサーバで処理した結果データを携帯電話1401で受信するようにしてもよい。
【0265】
図100は、ペン型スキャナ1001に液晶表示部1131とスピーカ1007とを設けた構成を説明している。この実施形態のペン型スキャナ1001は、その先端にボールペン等の筆記具1601が装着されており、その周囲にスキャナ部1105が設けられている。
【0266】
このようなペン型スキャナ1001の使用例としては、レストラン等のメニューにドットパターン部1122を形成しておき、当該メニューとペン型スキャナ1001とを来店者に手渡す。
【0267】
来店者は、メニューを選択して、当該筆記具1601で選択したメニューの四角形状のボックスをチェックする。このときスキャナ部1105で選択されたメニューに対応したドットパターン部1122が読み込まれる。これによりペン型スキャナ1001の内部の中央処理装置の処理によりメモリから当該メニューに対応する文字情報を読み出して液晶表示部1131に表示する。同図では液晶表示部1131に来店者が選択したメニュー名「和風ハンバーグプレートセット」、とカロリー「864kca1」と金額「1,250円」とが表示されている。
【0268】
このように、来店者自身がメニューを選択し、かつその選択を確認することができるため、店員はペン型スキャナ1001を回収するだけでオーダー処理を完了することができる。
【0269】
図101は、ペン型スキャナ1001にマイク1005とスピーカ1007とを設けた構成を示している。この実施形態では、写真1181の表面に形成されたドットパターン部1122をスキャナ部1105で読み込んで、読取り完了後にマイク1005を用いて当該ドットパターン部1122に対応した音声を入力する。入力された音声データはペン型スキャナ1001内の図示しないメモリに登録される。このときの音声は、当該写真1181を撮影したとの説明文や挨拶文等が考えられる。なお、写真表面の全体にわたってドットパターン部1122を形成しておけば、集合写真等の場合、写真に写っている個人毎に説明文を登録しておくことも可能である。
【0270】
次に、当該写真1181の表面で説明を聞きたい部分にペン型スキャナ1001の先端(スキャナ部1105)を当接させることによってスピーカ1007から前述の音声データを再生させることができる。
【0271】
このように写真1181の他、個々のシールにドットパターン部1122を形成しておき、シール表面にペン型スキャナ1001を当接して音声データを入力させることができる。
【0272】
図102は、システム手帳1701とノートとペン型スキャナ1001を組み合わせて用いる場合の例を示している。
【0273】
同図において、システム手帳1701のスケジュール欄1702にはあらかじめドットパターン部1122が形成されている。そして、スケジュール欄1702に予定を登録する際に、出先等で文字を記録する余裕がない場合、ペン型スキャナ1001の先端(スキャナ部1105)を当該予定を入力した日付のスケジュール欄1702に当接させて、図示しないマイクから当該日付の予定を音声で入力しておく。
【0274】
そして、システム手帳1701上で予定を確認したいときには、確認した日付のスケジュール欄1702にペン型スキャナ1001(スキャナ部1105)を当接させてドットパターン部1122を読み取ることにより、当該日付に対応付けて音声で入力した予定がスピーカ1007から再生される。
【0275】
なお、前記ペン型スキャナ1001はパソコン1201とUSBインターフェース等で接続可能としておくことにより、パソコン1201内のスケジュール管理システム(たとえば、マイクロソフト社のアウトルックや、ロータス社のノーツ等)とデータリンク(シンクロナイズ)させておけば、ペン型スキャナ1001で日付の欄(スケジュール欄1702)のドットパターン部1122を読み込んだときに当該日付に対応する予定を文字データで同図に示すように液晶表示部1131に表示させることもできる。
【0276】
なお、ペン型スキャナ1001をパソコン1201に接続しておき、前記システム手帳1701、IDカード、免許証等の表面に形成されたドットパターン部を読み取ることによりパソコン1201の入力制御を行えるようにしてもよい。このようなパソコン1201の制御はいわゆる「ペーパーアイコン」ということができ、パソコン1201の画面上のアイコンを外部のドットパターン部1122が形成された媒体(システム手帳1701に添付したシールやIDカード)に置き換えることができる。
【0277】
すなわち、ペン型スキャナ1001でこれらの媒体上のドットパターン部1122を読み取り、当該ドットパターン部1122から読み取られたコード情報がパソコン1201内に格納されたコード情報と一致する場合にのみ当該パソコン1201へのアクセスを許可するものである。
【0278】
前記ドットパターン部1122は、ペーパーアイコンとしてシールに印刷しシステム手帳1701、IDカード、免許証の表面に貼付してもよいし、パソコン1201に接続されたプリンタ装置でユーザ自身が印刷し、当該印刷シートを所持しておいてもよい。
【0279】
なお、前記ドットパターン部が形成されたペーパーアイコンはパソコン1201へのアクセスを制御するために用いたが、特定のアプリケーションの起動、特定のインターネットサイトへのアクセスの際のIDやパスワードの入力に用いてもよい。
【0280】
このようなペーパーアイコンは、パソコンのOS上にインストールされたペーパーアイコン用アプリケーションプログラムで管理することができる。
【0281】
具体的には当該アプリケーションプログラムによって実行される、「パソコン上へのアイコンの登録」、「ペーパーアイコンの登録」、「アイコン消去」の各ステップに分けることができる。
【0282】
(通常アイコンの登録)
パソコン上のペーパーアイコン用アプリケーションプログラムは、アイコンエデイタを有しており、画面上でペーパーアイコンの作成、設定が可能となっている。
【0283】
前記アイコンエディタにおいて、パソコン上の所定の機能を実行するためのアイコンをエディタ上に登録する際には、まず、アイコンの割り当て(ALLOCATE)をON状態とする。次に、パソコン画面上の所望のアイコンをマウスで指定することにより、当該アイコンがエディタ上に登録される。
【0284】
このようにしてエディタ上に登録されたアイコンは、初期状態において、ディスプレイ上の表示がON、実行可能状態(active)がONとなっている。
【0285】
この状態でエディタ上で、ディスプレイ表示をOFFにすると、ディスプレイ上のアイコンが画面上から消滅する。また、実行可能状態(active)をOFFにすると、パソコンでのアイコンの指定実行およびキーボード入力による実行が不能な状態となる。
【0286】
(ペーパーアイコンの登録)
前記エディタにおいて、ペーパーアイコンの割り当て(ALLOCATE)をON状態とする。次に、ディスプレイ上のアイコンをON状態にして登録したいペーパーアイコンの媒体をペン型スキャナ等でスキャンする。
【0287】
以上の作業により、選択されたアイコンにスキャンしたペーパーアイコンのドットパターンのコードが登録される(割り付けられる)。
【0288】
ペーパーアイコンの初期状態では、実行可能状態(active)がON、パスワードが入力可能状態となっている。ここでパスワードを入力すると当該パスワードがエディタプログラムによって暗号化されて登録される。
【0289】
この状態で、実行可能状態(active)をOFFにすると、前記ペーパーアイコンをペン型スキャナでスキャンしてもアイコンに定義された機能の実行が不能な状態となる。
【0290】
(アイコンの消去)
消去フラグ(DELETE)をON状態とすると、実行可能状態(active)も連動してOFF状態となる。そして、この状態で当該アイコンイメージフラグを指定すると、当該アイコンは削除され復旧できない状態となる。
【0291】
(ペーパーアイコンの消去)
ペーパーアイコンの消去についても、消去フラグ(DELETE)をON状態とすると、実行可能状態(active)も連動してOFF状態となる。そして、この状態でペーパーアイコンに割り当てられたコード番号を指定するとパスワードの入力が求められる。そしてパスワードを入力するとエディタ上でのペーパーアイコンのリンクは解消され、復旧できなくなる。
【0292】
ドットパターン部1122は、実施形態で説明した絵本等の媒体の他、通常の書籍、グリーティングカード、新聞、通信販売カタログ、パンフレット、ペーパークラフト、折り紙、レシピ等に形成してもよい。
【0293】
たとえば、通信販売カタログにドットパターンを形成しておくことにより、当該ドットパターン部をスキャナ部で読み取って、商品の説明文を発声させたり、パソコン内のメモリに登録された購入申込みプログラムを起動させるようにしてもよい。
【0294】
また、ペーパークラフトや折り紙にドットパターン部を形成しておくことで、該ドットパターン部をスキャナ部で読み取って、作品の組み立て方をスピーカから音声で解説させるようにしてもよい。
【0295】
また、レシピにドットパターン部を形成しておくことにより、料理等のレシピを音声で出力させることができる。
【0296】
また、本発明のドットパターン部を用いてぬり絵のための絵本を提供してもよい。具体的には図106(b)、(c)に示すような領域毎(マスク領域毎)に異なる色をクレヨン、フェルトペン、水彩絵の具等で着色させるようにしてもよい。この場合、ドットパターン部が形成された紙面上であってもノンカーボンの水彩絵の具、クレヨン、フェルトペン等であれば着色が施されていたとしても赤外線は前記着色層を透過させることができるため、ドットパターン部の読取りは可能である。
【0297】
また、ドットパターン部は、バーコードリーダと重ねて印刷されたものであってもよい。その場合、紙面等の媒体上でバーコードをノンカーボンインクで印刷し、さらにその上にカーボンインクでドットパターン部を印刷する。通常のバーコードリーダーは、小さなドットが打ってあっても、バーコードを正確に読み取ることができる。次に本実施形態のペン型スキャナを用いて、ドットパターン部のみを読み取り情報コードを入力する。
【0298】
また、バーコードを「(A)可視光線+可視光線の波長領域に近い赤外線もしくは紫外線」或いは、「(B)可視光線の波長領域に近い赤外線もしくは紫外線」を吸収するインクで印刷し、ドットを「(C)バーコードで使用した赤外線もしくは紫外線の波長領域とは異なる赤外線もしくは紫外線」を吸収するインクで印刷してもよい。
【0299】
この場合、C−MOSSカメラに可視光線遮断フィルターを取り付け、前記(A)もしくは(B)と同一の波長の光を発する第1のLEDを照射し、バーコードのみを読み取る。次に、(C)と同一の波長の光を発する第2のLEDを照射し、ドットパターン部のみを読み取り、情報コードを入力する。このように、バーコード上にドットパターン部からの情報を配置することにより重畳的な情報の取得(バーコードとドットパターン部からのコード)が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0300】
【図1】本発明のドットパターンを用いた情報再生方法の構成を示すブロック図であり、(a)はドットコードの生成について、(b)はドットパターンの認識についての説明図である。
【図2】ドットパターンの一例を示す正面図である。
【図3】絵本と情報再生方法の状態を説明する機能ブロック図である。
【図4】他のドットパターンを用いた情報再生方法の構成を示すブロック図であり、(a)はドットコードの生成について、(b)はドットパターンの認識についての説明図である。
【図5】他のドットパターンの一例を示す正面図である。
【図6】他のドットパターンの一例を示す正面図である。
【図7】他のドットパターンの一例を示す正面図である。
【図8】他のドットパターンの一例を示す正面図である。
【図9】絵本の絵柄と物語の文章を印刷した一例を示す正面図である。
【図10】絵本の絵柄と物語の文章を印刷した他の一例を示す正面図である。
【図11】絵本の絵柄と物語の文章を印刷したさらに他の一例を示す正面図である。
【図12】ドットパターン部を形成したタッチパネルを説明する斜視図である。
【図13】ドットパターン部を形成したタッチパネルを説明する分解側面図である。
【図14】ドットパターン部を形成したマウスパッドとマウス型のカメラとからなる他の実施形態を示す断面図である。
【図15】マウス型カメラを示す平面図である。
【図16】マウス型のカメラの他の実施形態を示すものであり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図17】さらにマウス型のカメラの他の実施形態を示すものであり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図18】ドットパターン部を形成した印刷面をタブレットとして利用する他の実施形態を示す断面図である。
【図19】ペン状部材の先端にカメラを取り付けた他の実施形態を示す断面図である。
【図20】さらにペン状部材の先端にカメラを取り付けた他の実施形態を示す断面図である。
【図21】本発明のカメラ入力による情報入出力方法の構成を示すブロック図であり、(a)はドットコードの生成について、(b)はドットパターンの認識についての説明図である。
【図22】ドットパターンの一例を示す正面図である。
【図23】XY座標情報からなるドットパターンを示す説明図である。
【図24】XY座標情報からなるドットパターンを認識し、その処理方法についての説明図である。
【図25】コード番号情報からなるドットパターンを示す説明図である。
【図26】コード番号情報からなるドットパターンを認識し、その処理方法についての説明図である。
【図27】印刷物に赤外線を照射することにより、ノンカーボンのカラーインクで印刷した文字または図等の情報伝達部から、カーボンインクで印刷したドットパターン部の画像データのみをカメラで取り込む状態を説明する説明図である。
【図28】カメラ入力による情報入出力方法を用いた携帯情報入出力装置の実施形態を説明する機能ブロック図である。
【図29】カメラ入力による情報入出力方法を用いた携帯情報入出力装置の実施形態を説明する機能ブロック図である。
【図30】コンパクトなケース本体に収納した携帯情報入出力装置を示す斜視図である。
【図31】他の形状のコンパクトなケース本体に収納した携帯情報入出力装置を示すものであり、(a)は全体の斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図と(d)は正面図である。
【図32】カメラユニットと出力部分とを別体に構成した実施形態を説明する機能ブロック図である。
【図33】カメラユニットと出力部分とを別体に構成した実施形態を説明する機能ブロック図である。
【図34】カメラユニット部分と出力側本体を分離した装置を示す斜視図である。
【図35】カメラユニット部分の他形態を示す斜視図であり、(a)はペン型のカメラユニット、(b)はペン型のカメラユニット、(c)はマウス型のカメラユニット、(d)は聴診器型のカメラユニットの例を示すものである。
【図36】携帯電話機用のカメラを用いた情報入力装置の実施形態を説明する機能ブロック図である。
【図37】カメラを用いた情報入力装置の実施形態を説明する機能ブロック図である。
【図38】携帯電話機用のカメラを用いた情報入力装置を示す説明図である。
【図39】携帯電話機用のカメラを用いた情報入力装置を示す説明図である。
【図40】情報入力装置を内蔵した携帯電話機を示す説明図である。
【図41】ドットパターンを用いた実施形態の携帯用電子玩具の機能ブロック図である。
【図42】ドットパターン部を用いた携帯用電子玩具の実施形態を示す正面図である。
【図43】携帯用電子玩具を示す右側面図である。
【図44】携帯用電子玩具を示す左側面図である。
【図45】携帯用電子玩具を示す底面図である。
【図46】主にミニフィギュアに相応する音声を発生させる携帯用電子玩具の実施形態を示す斜視図である。
【図47】実施形態の携帯用電子玩具の機能ブロック図である。
【図48】複数の音声発生玩具をコントローラユニットに接続した状態を示す斜視図である。
【図49】光学文字認識(OCR)を用いた携帯用電子玩具の実施形態を示す正面図である。
【図50】磁性体を用いた実施形態を示す携帯用電子玩具の機能ブロック図である。
【図51】カメラ等の撮影ペンを用いた実施形態を示す携帯用電子玩具の機能ブロック図である。
【図52】カメラ入力による情報出力機能を有するフィギュアユニットについて、カメラと出力部とを一体に構成した実施形態を説明する機能ブロック図である。
【図53】実施形態の変形例を説明する機能ブロック図である。
【図54】カメラ入力による情報出力機能を有するフィギュアユニットについて、カメラユニットと出力ユニットとを別体に構成した実施形態を説明する機能ブロック図である。
【図55】実施形態の変形例を説明する機能ブロック図である。
【図56】カメラユニットを備えるフィギュアを示す斜視図であり、(a)は人形、(b)はサッカーボール、(c)は自動車、(d)は動物の例を示すものである。
【図57】フィギュアユニットを新シミュレーション・ボードゲームの中央バトルステージに置いた状態を示す斜視図である。
【図58】フィギュアの一形態であるヌイグルミ内にカメラユニットと出力ユニットを内蔵した本発明の他の実施形態を示す説明断面図である。
【図59】フィギュアの一形態であるヌイグルミ内にカメラユニットと出力ユニットを内蔵した他の実施形態を示す説明断面図である。
【図60】フィギュアの一形態であるヌイグルミ内にカメラユニットと出力ユニットを内蔵した本発明の他の実施形態を示す説明断面図である。
【図61】カメラの断面図である。
【図62】カメラの撮像範囲を示す説明図である。
【図63】4ブロック分の情報ドットを示す斜視図である。
【図64】カメラによる撮像中心位置とサブブロックの入力手順を示す説明図である。
【図65】カメラによる撮像中心位置とサブブロックの入力手順を示す説明図である。
【図66】カメラによる撮像中心位置とサブブロックの入力手順を示す説明図である。
【図67】カメラによる撮像中心位置とサブブロックの入力手順を示す説明図である。
【図68】ペン型スキャナの構造を示す説明図である。
【図69】実施形態の使用例を示す図である。
【図70】実施形態の使用例を示す図である。
【図71】実施形態の使用例を示す図である。
【図72】実施形態の使用例を示す図である。
【図73】実施形態の使用例を示す図である。
【図74】実施形態の使用例を示す図である。
【図75】実施形態の使用例を示す図である。
【図76】実施形態の使用例を示す図である。
【図77】実施形態の使用例を示す図である。
【図78】実施形態の使用例を示す図である。
【図79】実施形態の使用例を示す図である。
【図80】実施形態の使用例を示す図である。
【図81】実施形態の使用例を示す図である。
【図82】実施形態の使用例を示す図である。
【図83】実施形態の使用例を示す図である。
【図84】実施形態の使用例を示す図である。
【図85】実施形態の使用例を示す図である。
【図86】実施形態の使用例を示す図である。
【図87】実施形態の使用例を示す図である。
【図88】実施形態の使用例を示す図である。
【図89】実施形態の使用例を示す図である。
【図90】実施形態の使用例を示す図である。
【図91】実施形態の使用例を示す図である。
【図92】実施形態の使用例を示す図である。
【図93】実施形態の使用例を示す図である。
【図94】実施形態の使用例を示す図である。
【図95】実施形態の使用例を示す図である。
【図96】実施形態の使用例を示す図である。
【図97】実施形態の使用例を示す図である。
【図98】実施形態の使用例を示す図である。
【図99】実施形態の使用例を示す図である。
【図100】実施形態の使用例を示す図である。
【図101】実施形態の使用例を示す図である。
【図102】実施形態の使用例を示す図である。
【図103】実施形態のドットパターンの仕様を説明した図(1)である。
【図104】実施形態のドットパターンの仕様を説明した図(2)である。
【図105】実施形態のドットパターンの仕様を説明した図(3)である。
【図106】実施形態のドットパターンの仕様を説明した図(4)である。
【図107】実施形態のドットパターン部の読取り手段の装置構成を説明するための図(1)である。
【図108】実施形態のドットパターン部の読取り手段の装置構成を説明するための図(2)である。
【図109】実施形態のドットパターン部の読取り手段の装置構成を説明するための図(3)である。
【図110】実施形態のドットパターン部の読取り手段の装置構成を説明するための図(4)である。
【図111】実施形態のドットパターン部の読取り手段の装置構成を説明するための図(5)である。
【図112】実施形態のドットパターン部の読取り手段の装置構成を説明するための図(6)である。
【図113】実施形態のドットパターン部の読取り手段の装置構成を説明するための図(7)である。
【符号の説明】
【0301】
1、601 ドットパターン
2、102 カメラユニット
3 キードット
4 情報ドット
5、606 印刷物
6、601、607、803、1122 ドットパターン部
7 情報伝達部
8、108、208 センサ部
9、109、209、806 処理部
10、210 記憶部(メモリ)
11、111、211 本体処理部
12、112、212 画像処理部
14 スピーカ
15 出力部
16 通信カード
17 入力部
18 本体ケース
19 イヤホン端子
20 ボタンスイッチ
21 USB端子
23 コンピュータ
24 GPS
31 音声入力端子
32 無線送信部
33 無線受信部
34 ケーブル
36 ペン
40 マウス型本体
110 携帯電話機
113、213 赤外線発光部
118 情報入力装置
123 コンピュータ
202、602、810 カメラ
218 フィギュア
231 ヌイグルミ
603 第一方向
604 第二方向
605 ドット
608、1201 パソコン
611 透明フィルム
612 タッチパネル
615 ケース
616 マウスパッド
619 ペン状部材
620 テーブル
621 紙
622 スイッチ
801、821 携帯用電子玩具
802 媒体
805 スピーカ
807 音声再生LSI
808 ケース本体
809 ケーブル
812、1131 液晶表示部
813 画像再生LSI
816 記憶媒体
822、1101 ミニフィギュア
824 台
823 ケース本体
1001 ペン型スキャナ
1002、1102 装置本体
1004 メモリカード
1007 スピーカ
1015 ケース
1105 スキャナ部
1121 カード
1124 筒状ケース
1125 ノーズ部
1181 写真
1202 PDA
1301 マウス
1401 携帯電話
1701 システム手帳
2022 LED
2023 フィルタ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体面上に形成され、且つデータ内容が定義できる情報ドットが配置されたドットパターンであって、
前記ドットパターンは、縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に、前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に、どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し、
前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように、前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と、該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて、該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された
ことを特徴とするドットパターン。
【請求項2】
前記ドットパターンは、水平方向および/または垂直方向に、複数繰り返されていることを特徴とする請求項1に記載のドットパターン。
【請求項3】
前記格子ドットの1つは、前記格子点からのずれ方によって一般コードまたはXY座標を示すフラグを意味していることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のドットパターン。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2021-09-30 
結審通知日 2021-10-07 
審決日 2021-10-20 
出願番号 P2008-223887
審決分類 P 1 113・ 536- ZAB (G06K)
P 1 113・ 1- ZAB (G06K)
P 1 113・ 113- ZAB (G06K)
P 1 113・ 537- ZAB (G06K)
P 1 113・ 55- ZAB (G06K)
P 1 113・ 851- ZAB (G06K)
P 1 113・ 855- ZAB (G06K)
P 1 113・ 121- ZAB (G06K)
P 1 113・ 852- ZAB (G06K)
P 1 113・ 841- ZAB (G06K)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 須田 勝巳
稲葉 和生
登録日 2009-10-23 
登録番号 4392521
発明の名称 ドットパターン  
代理人 矢部 耕三  
代理人 松尾 淳一  
代理人 西川 喜裕  
代理人 特許業務法人秀和特許事務所  
代理人 弁理士法人秀和特許事務所  
代理人 細谷 道代  
代理人 末松 亮太  
代理人 細谷 道代  
代理人 岡本 義則  

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