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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 A01B 審判 全部無効 1項2号公然実施 A01B 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 A01B |
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管理番号 | 1393452 |
総通号数 | 14 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2023-02-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2020-12-15 |
確定日 | 2022-10-28 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第6688356号発明「農作業機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第6688356号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4、5、6について訂正することを認める。 特許第6688356号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 特許第6688356号の請求項3ないし6に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その6分の4を請求人の負担とし、6分の2を被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第6688356号(以下「本件特許」という。平成30年9月18日出願(原出願:平成27年2月6日(特願2015−21893号)、優先日:平成26年7月22日)、登録日:令和2年4月7日、請求項の数:6)の特許請求の範囲の請求項1〜6に係る特許を無効とすることを求める事案であって、その手続の経緯(無効理由に係る主張に関するもの。)は、以下のとおりである。 令和 2年12月15日:審判請求書提出 令和 3年 3月 9日:審判事件答弁書提出 令和 3年 6月28日:審理事項通知(起案日) 令和 3年 7月26日:口頭審理陳述要領書提出(請求人) 令和 3年 7月29日:口頭審理陳述要領書(2)提出(請求人) 令和 3年 8月10日:口頭審理陳述要領書提出(被請求人) 令和 3年 8月26日:第1回口頭審理 令和 3年 8月26日:上申書(1)及び上申書(2)提出(請求人) 令和 4年 1月14日:審決の予告(起案日) 令和 4年 2月10日:上申書及び訂正請求書提出 令和 4年 4月 1日:弁駁書提出 第2 訂正請求 1 訂正事項 被請求人が提出した令和4年2月10日付け訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし6について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容(以下「本件訂正」という。)は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して最上げ位置まで前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている ことを特徴とする農作業機。」と記載されているのを、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 前記機体に上下方向に回動可能に設けられ、前記耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して最上げ位置まで前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられ、 前記付勢体の付勢力のみによって前記整地体が前記最上げ位置まで上方回動する ことを特徴とする農作業機。」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する ことを特徴とする農作業機。」と記載されているのを、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 前記機体と前記整地体との間に設けられ、前記整地体の圃場面に対する接地圧を調整する接地圧調整手段と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記接地圧調整手段は、連結ロッドと、この連結ロッドの外周側に配設された接地圧調整用のコイルバネとを有し、 前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動する ことを特徴とする農作業機。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「持上アシスト手段は、操作部材の操作によりアシストオフ状態およびアシストオン状態に切換可能となっている ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。」と記載されているのを、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体と、前記移動体に回動可能に取り付けられた操作部材とを有し、かつ、前記操作部材の操作によりアシストオフ状態およびアシストオン状態に切換可能となっており、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動する ことを特徴とする農作業機。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、 「付勢体の少なくとも一部は、持上アシスト手段内に収納されている ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機。」と記載されているのを、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動し、 前記付勢体の少なくとも一部は、前記持上アシスト手段内に収納されている ことを特徴とする農作業機。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、 「付勢体は、ガススプリングである ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の農作業機。」と記載されているのを、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、筒状に形成された長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動し、 前記付勢体は、前記長尺体内に収納されたガススプリングである ことを特徴とする農作業機。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に、 「持上アシスト手段の一方側は、機体のフレームに設けられた取付部に取り付けられている ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の農作業機。」と記載されているのを、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、筒状に形成された長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動し、 前記付勢体は、前記長尺体内に収納されており、 前記持上アシスト手段の前記長尺体の一方側の端部である前端部は、前記機体のフレームに設けられた取付部に回動可能に取り付けられている ことを特徴とする農作業機。」に訂正する。 2 訂正の適否の判断 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1の発明特定事項である「整地体」について、「前記機体に上下方向に回動可能に設けられ」るとの限定を加え、さらに「前記付勢体の付勢力のみによって前記整地体が前記最上げ位置まで上方回動する」との限定を加える訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張、変更 訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、訂正によって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項 本件特許の明細書に、「【0017】農作業機1は、・・・機体2に左右方向の軸(回動支点)5を中心として上下方向に回動可能に設けられ耕耘体3の後方で整地作業する板状の整地体(均平板)4とを備えている。」、「【0116】さらに、例えば持上アシスト手段8の付勢体(圧縮バネ31やガススプリング61,91等)の付勢力のみによって整地体4が最上げ位置まで上方回動するようにしてもよい。」と記載されていることからみて、上記明細書には、「整地体」が、「前記機体に上下方向に回動可能に設けられ」ていること、「前記付勢体の付勢力のみによって」「前記最上げ位置まで上方回動する」ことが記載されているといえるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 よって、訂正事項1は本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものである。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項2の発明特定事項である「農作業機」について、「前記機体と前記整地体との間に設けられ、前記整地体の圃場面に対する接地圧を調整する」ものであって、「連結ロッドと、この連結ロッドの外周面に配設された接地圧調整用のコイルバネとを有」する「接地圧調整手段」を備えるとの限定を加える訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張、変更 訂正事項2は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、訂正によって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項 本件特許の明細書に、「【0019】さらに、農作業機1は、圃場状態に対応するように整地体4の圃場面に対する接地圧を調整する接地圧調整手段9を備えている。接地圧調整手段9は、例えば1本で、農作業機1の他方側である右側の位置において機体2と整地体4との間に設けられている。」、「【0039】接地圧調整手段9は、スプリングエンド51のピン(図示せず)が着脱される複数の孔部52およびストッパ装置53のストッパピン54が着脱される1つのストッパピン用孔部(図示せず)を有する連結ロッド55を有している。」、「【0041】また、連結ロッド55の外周側には、接地圧調整用の第1コイルバネ58および第2コイルバネ59がそれぞれ配設されている。・・・」と記載されていることからみて、上記明細書には、「農作業機」が「前記機体と前記整地体との間に設けられ、前記整地体の圃場面に対する接地圧を調整する」ものであって、「連結ロッドと、この連結ロッドの外周面に配設された接地圧調整用のコイルバネとを有」する「接地圧調整手段」を備えることが記載されているといえるから、訂正事項2は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 よって、訂正事項2は本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものである。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的 訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用しないものとした上で、請求項2を引用するものについて請求項間の引用を解消して、独立形式請求項に書き改め、さらに、訂正前の請求項3の発明特定事項である「持上アシスト手段」について、「前記移動体に回動可能に取り付けられた操作部材を有」するとの限定を加える訂正である。 したがって、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張、変更 訂正事項3は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、訂正によって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないものであるから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項 本件特許の明細書に、「【0077】そして、この持上アシスト手段8は、操作部材である操作レバー90の操作(例えば位置変更である回動)により、ガススプリング91が整地体4を上方側に付勢するアシストオン状態およびガススプリング91が整地体4を上方側に付勢しないアシストオフ状態に選択的に切換可能となっている。」、「【0090】また、移動体111のレバー取付部121には、作業者が把持して手動操作する略L字状の操作レバー90がオフ位置(下位置)およびオン位置(上位置)に回動可能に取り付けられている。」と記載されていることからみて、上記明細書には、「前記移動体に回動可能に取り付けられた操作部材とを有する」ことが記載されているといえるから、訂正事項3のこの「操作部材」に関する記載は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 よって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とした訂正部分も含めて、訂正事項3は、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものである。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的 訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1ないし3のいずれか一の記載を引用する記載であるところ、請求項1及び3を引用しないものとした上で、請求項2を引用するものについて請求項間の引用を解消して、独立形式請求項に書き改めるものである。 したがって、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張、変更、及び新規事項 訂正事項4は、上記アのとおり、訂正前の請求項4について、請求項1及び3を引用しないものとした上で、請求項2を引用するものについて請求項間の引用を解消して、独立形式請求項に書き改めるものであるから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的 訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項1ないし4のいずれか一の記載を引用する記載であるところ、請求項1、3及び4を引用しないものとした上で、請求項2を引用するものについて請求項間の引用を解消して、独立形式請求項に書き改め、さらに、訂正前の請求項2の発明特定事項である「長尺体」について「筒状に形成された」と、訂正前の請求項5の発明特定事項である「ガススプリング」について「該長尺体に収納された」との限定を加える訂正である。 したがって、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張、変更 訂正事項5は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、訂正によって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないものであるから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項 本件特許の明細書には、「【0079】ここで、持上アシスト手段8は、細長い円筒状に形成された前後方向長手状の長尺体(インナーパイプ)93を有している。」、「【0082】そして、長尺体93内にガススプリング91が収納配設されており、その結果、このガススプリング91は、その全体が常に長尺体93によって覆われて保護されている。このガススプリング91は、窒素ガス等の高圧ガスが封入された本体部98と、この本体部98内に対して出入りするロッド部99とにて構成されている。」、「【0110】さらに、付勢体であるガススプリング91は、長尺体93内に収納配設され、その全体が常に長尺体93によって覆われているため、作業時に泥土等がガススプリング91に付着するのを防止できるとともに、異物等によって損傷することを防止できる。」と記載されていることからみて、上記明細書には、「筒状に形成された長尺体」及び「長尺体内に収納されたガススプリング」が記載されているものといえるから、訂正事項5のこの「長尺体」及び「ガススプリング」に関する記載は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 よって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とした訂正部分も含めて、訂正事項5は、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものである。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的 訂正事項6は、訂正前の請求項5が請求項1ないし4のいずれか一の記載を引用する記載であるところ、請求項1、3及び4を引用しないものとした上で、請求項2を引用するものについて請求項間の引用を解消して、独立形式請求項に書き改め、また、訂正前の請求項2の発明特定事項である「長尺体」及び「付勢体」について「筒状に形成された」こと及び「前記長尺体に収納され」たことの限定を加え、さらに、訂正前の請求項6の発明特定事項である「持上アシスト手段の一方側は、機体のフレームに設けられた取付部に取り付けられている」ことについて、取り付けられているものが「持上アシスト手段」のうちの「長尺体」とし、その取り付け態様を特定することにより、「前記持上アシスト手段の前記長尺体の一方側の端部である前端部は、前記機体のフレームに設けられた取付部に回動可能に取り付けられている」との限定を加える訂正である。 したがって、訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張、変更 訂正事項6は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、訂正によって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないものであるから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項 本件特許の明細書には、「【0079】ここで、持上アシスト手段8は、細長い円筒状に形成された前後方向長手状の長尺体(インナーパイプ)93を有している。」、「【0082】そして、長尺体93内にガススプリング91が収納配設されており、その結果、このガススプリング91は、その全体が常に長尺体93によって覆われて保護されている。このガススプリング91は、窒素ガス等の高圧ガスが封入された本体部98と、この本体部98内に対して出入りするロッド部99とにて構成されている。」、「【0110】さらに、付勢体であるガススプリング91は、長尺体93内に収納配設され、その全体が常に長尺体93によって覆われているため、作業時に泥土等がガススプリング91に付着するのを防止できるとともに、異物等によって損傷することを防止できる。」、「【0080】長尺体93は、機体2に左右方向の軸37を中心として上下方向に回動可能に設けられている。つまり、機体2の左側のフレームパイプ部18には取付部33が突設され、この取付部33に長尺体93の前端部が軸37を介して回動可能に取り付けられている。」、と記載されていることからみて、上記明細書には、「筒状に形成された長尺体」、「前記付勢体は、前記長尺体に収納されて」いること、及び「前記持上アシスト手段の前記長尺体の一方側の端部である前端部は、前記機体のフレームに設けられた取付部に回動可能に取り付けられている」ことが記載されているといえるから、訂正事項6のこの「長尺体」、「付勢体」及び「持上アシスト手段」に関する記載は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 よって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とした訂正部分も含めて、訂正事項6は、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものである。 (7)訂正を請求する請求項の単位について ア 一群の請求項 訂正前の請求項1、3ないし6について、請求項3ないし6は請求項1を引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1、3ないし6に対応する訂正後の請求項1、3ないし6は、一群の請求項を構成する。 また、訂正前の請求項2、3ないし6について、請求項3ないし6は請求項2を引用しており、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項2、3ないし6に対応する訂正後の請求項2、3ないし6は、一群の請求項を構成する。 そして、上記2つの一群の請求項は、共通する請求項3ないし6を有しているから、請求項1ないし6が一群の請求項を構成することとなる。 イ 別の訂正単位とする求め なお、本件訂正請求の請求人は、訂正後の請求項3、4、5、6については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 上記(3)〜(6)のとおり、請求項3〜6に係る訂正事項3〜6はすべて認められるので、訂正後の請求項3〜6は、それぞれ別の訂正単位とする。 そして、請求項3ないし6は、上記アで検討した2つの一群の請求項に共通のものではなくなったので、請求項1、請求項2についても、それぞれが別の訂正単位となる。 3 訂正請求のまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであって、同法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、訂正後の請求項1、2、3、4、5、6について、本件訂正を認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり本件訂正請求は認められるから、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下「本件訂正発明1」等といい、全体の発明を「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 前記機体に上下方向に回動可能に設けられ、前記耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して最上げ位置まで前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられ、 前記付勢体の付勢力のみによって前記整地体が前記最上げ位置まで上方回動する ことを特徴とする農作業機。 【請求項2】 走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 前記機体と前記整地体との間に設けられ、前記整地体の圃場面に対する接地圧を調整する接地圧調整手段と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記接地圧調整手段は、連結ロッドと、この連結ロッドの外周面に配設された接地圧調整用のコイルバネとを有し、 前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動する ことを特徴とする農作業機。 【請求項3】 走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体と、前記移動体に回動可能に取り付けられた操作部材とを有し、かつ、前記操作部材の操作によりアシストオフ状態およびアシストオン状態に切換可能となっており、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動する ことを特徴とする農作業機。 【請求項4】 走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動し、 前記付勢体の少なくとも一部は、前記持上アシスト手段内に収納されている ことを特徴とする農作業機。 【請求項5】 走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、筒状に形成された長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動し、 前記付勢体は、前記長尺体内に収納されたガススプリングである ことを特徴とする農作業機。 【請求項6】 走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、筒状に形成された長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動し、 前記付勢体は、前記長尺体内に収納されており、 前記持上アシスト手段の前記長尺体の一方側の側部である前端部は、前記機体のフレームに設けられた取付部に回動可能に取り付けられている ことを特徴とする農作業機。」 第4 請求人の主張と証拠方法 1 請求人の主張の概要 (1)請求人は、本件特許発明の特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載された各発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件訂正請求前においては概ね以下のとおり主張し(審判請求書、口頭審理陳述要領書、口頭審理陳述要領書(2)参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第35号証を提出している。 〔無効理由〕 1.特許第6688356号の請求項1乃至6に係る発明(以下「本件発明1乃至6」という。)は、本件特許の原出願の優先日前(以下、単に「出願前」という。)に日本国内において公然実施をされた発明であるから、又は、特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が公然実施発明、甲第9号証に記載された発明、及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第2号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件特許の請求項1乃至6に係る特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 2.本件発明1乃至6は、甲第9号証に記載された発明であるから、又は、甲第9号証及び甲第10号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件特許の請求項1乃至6に係る特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 3.本件発明1乃至6は、甲第10号証に記載された発明であるから、又は、甲第10号証、甲第9号証に記載された発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件特許の請求項1乃至6に係る特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (審理事項通知書の「2.」参照。) (2)また、請求人は、本件訂正請求後において、概ね以下のとおり主張し(弁駁書参照。)、証拠方法として、甲第36号証ないし甲第55号証を提出している。 ア 本件訂正発明1 ・公然実施発明+設計的変更 ・甲9発明+設計的変更 ・甲10発明+設計的変更 ・公然実施発明+甲38乃至甲40に例示される周知技術、または、甲38乃至甲40のいずれか ・甲9発明+甲38乃至甲40に例示される周知技術、または、甲38乃至甲40のいずれか ・甲10発明+甲38乃至甲40に例示される周知技術、または、甲38乃至甲40のいずれか イ 本件訂正発明2 ・甲9発明と同一 ・甲9発明+公然実施発明、甲10発明、甲41、甲42及び甲47に例示される周知技術、または、公然実施発明、甲10発明、甲41、甲42又は甲47のいずれか ・公然実施発明+甲43乃至甲45に例示される周知技術、または、甲43乃至甲45のいずれか ・甲10発明+甲43乃至甲45に例示される周知技術、または、甲43乃至甲45のいずれか ウ 本件訂正発明3 ・甲9発明+甲43及び甲44に例示される周知技術、または、甲43又は甲44のいずれか ・公然実施発明+甲43乃至甲45に例示される周知技術、または、甲43乃至甲45のいずれか ・甲10発明+甲43乃至甲45に例示される周知技術、または、甲43乃至甲45のいずれか エ 本件訂正発明4 ・甲9発明+設計的変更 ・甲9発明+甲46、甲48−1乃至甲55に例示される周知技術、または、甲46又は甲48−1乃至甲55のいずれか ・公然実施発明+甲43乃至甲45に例示される周知技術、または、甲43乃至甲45のいずれか オ 本件訂正発明5 ・甲9発明+設計的変更 ・甲9発明+甲49乃至甲53に例示される周知技術、または、甲49乃至甲53のいずれか ・公然実施発明+甲43乃至甲45に例示される周知技術、または、甲43乃至甲45のいずれか+設計的変更、甲49乃至甲53に例示される周知技術、または、甲49乃至甲53のいずれか ・甲10発明+甲43乃至甲45に例示される周知技術、または甲43乃至甲45のいずれか+設計的変更、甲49乃至甲53に例示される周知技術、または、甲49乃至甲53のいずれか カ 本件訂正発明6 ・甲9発明+設計的変更、甲49乃至甲53に例示される周知技術、または、甲49乃至甲53のいずれか ・公然実施発明+甲43乃至甲45に例示される周知技術、または甲43乃至甲45のいずれか+甲9発明、甲43乃至甲46、甲49乃至甲53に例示される周知技術、または、甲9発明、甲43乃至甲46、甲49乃至甲53のいずれか (弁駁書3頁5行〜4頁末行) 2 証拠方法 提出された証拠は、以下のとおりである。(以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。) 甲1:写真撮影報告書 甲2:測定結果報告書 甲3の1:動画撮影報告書 甲3の2:動画 甲4:コバシスーパーシリーズ研修会資料 甲5:コバシスーパーシリーズカタログ 甲6:売買契約書写し(販社用) 甲7:受領書 甲8:証明書 甲9:特開2010−63367号公報 甲10:特開2008−278757号公報 甲11:特開平9−142153号公報 甲12:特開平8−232283号公報 甲13:特開平9−60411号公報 甲14:コバシ農業機械希望小売価格表 2017.7−2018.6 甲15:コバシ農業機械希望小売価格表 2012.7−2013.6 甲16:53期機番表 甲17:1月度生産日程計画表(本計画) 甲18:コバシツーウェイローターフランジタイプSUPER SERIES Earth 取扱説明書 甲19:コバシツーウェイローター部品表 甲20:コバシスーパーシリーズ研修会資料 甲21:コバシスーパーシリーズカタログ 甲22:部品表14頁 甲23:ガススプリング設計図 甲24:写真撮影・測定結果報告書 甲25:ガススプリング注文書控え 甲26:2013年01月度検収兼支払明細書 甲27:ガススプリング仕様書 甲28:ガススプリング仕様書 甲29:ガススプリング仕様書 甲30:農村ニュース 甲31:農機新聞 甲32:農経しんぽう 甲33:動作確認報告書 甲34:測定結果報告書 甲35:動画撮影報告書 甲36:売買契約書 甲37:受領書 甲38:実用新案第3173562号公報 甲39:特開2000−255269号公報 甲40:特開2008−168253号公報 甲41:特開2013−215185号公報 甲42:特開2007−6776号公報 甲43:特開2001−128503号公報 甲44:特開2005−218316号公報 甲45:特開2009−45028号公報 甲46:特開2008−104433号公報 甲47:特開2014−97042号公報 甲48−1:国際公開2012/170244 甲48−2:特表2014−524041号 甲49:特開2000−172183号公報 甲50:特開2000−347580号公報 甲51:特開2004−230068号公報 甲52:特開2010−273767号公報 甲53:特開2011−72492号公報 甲54:特開2000−60221号公報 甲55:特開2010−252703号公報 上記の甲1〜13は審判請求書に、甲14〜甲33は口頭審理陳述要領書に、甲34及び甲35は口頭審理陳述要領書(2)に、甲36及び甲37は上申書(1)に、甲38〜甲55は弁駁書にそれぞれ添付して提出されたものである。 なお、上記の甲20及び甲21は、それぞれ甲4及び甲5の原本として提出された証拠である甲20の1及び甲21の1を読み替えたものであり、また、それらの電子データとして提出された甲20の2及び甲21の2は、令和3年7月26日付け証拠説明書(2)から削除された。(第1回口頭審理調書の請求人の3を参照。) 3 請求人の具体的な主張(本件訂正請求前) 本件訂正請求前の請求項1ないし6に係る発明(以下「本件発明1」等という。)に対する請求人の具体的な主張は以下のとおりである。 (1)無効理由1 ア 公然実施発明が存在する事実及び証拠の説明 (ア)公然実施発明の存在 本件特許の出願日前の平成25年2月28日に、日本国内において以下の農作業機(ツーウェイローター FTE220RT−4L(コードNo.945523300100)」、(製造番号53021366)、以下「公然実施発明」という。)が販売された。(甲6〜甲8) (審判請求書22頁5〜10行) (イ)公然実施発明に係る農作業機が備える構成 a 公然実施発明に係る農作業機は以下の構成を備えている。 (a)走行車に連結される作業機本体に、耕耘作業をするロータ、ロータの後方で整地作業するエプロン、及びエプロンの持ち上げをアシストするクイックアシスト機構を備えている。(甲1、甲5) (b)クイックアシスト機構は、その一方側が作業機本体側に取り付けられ、かつ、その他方側がエプロン側に取り付けられている(甲1)。 クイックアシスト機構は持上アシスト用の付勢体(ガススプリング)を有する(甲4、甲5)。付勢体(ガススプリング)の少なくとも一部は、クイックアシスト機構内に収納されている。 (c)付勢体(ガススプリング)の付勢力を利用して最上げ位置までエプロンの持ち上げをアシストしている(甲2、甲3) クイックアシスト機構においては、クイックアシスト解除レバーを手前に引っ張ってガススプリングのシリンダー側端部を保持しているストッパーを開放することで、アシスト有りの状態にすることができる。 エプロンを最上げ位置から最下げ位置に押し下げると、その途中でストッパーが自動復帰し、最下げ位置でロックされ、アシスト無しの状態になる。 このように、ストッパーの操作によりアシストオフ状態からアシストオン状態に切替可能となっている(甲3〜甲5)。 (d)クイックアシスト機構は、ベースプレートと、ベースプレートに対して移動可能なアシストリンクAを有しており、ベースプレートに形成された細長い長孔状の隙間をアシストリンクAに設けられたピンが移動することによってアシストリンクAがベースプレートに対して移動する。 また、クイックアシスト機構は、エプロンに回動可能に設けられたアシストリンクBを有しており、アシストリンクBに形成された細長いへの字の隙間をエプロンに設けられたピンが移動することによってアシストリンクBがエプロンに回動可能になっている。 アシストリンクAは、ベースプレートに対してアシストリンクBとともに付勢体の付勢力に基づいて移動する(図17、図18、甲8)。 また、クイックアシスト機構は、コンプレッションロッドと、エプロンに回動可能に設けられたレバーブラケットとを有している。レバーブラケットには、エプロンに連結されるピンが設けられており、このピンを支点に回動することによってレバーブラケットがエプロンに回動可能になっている。 レバーブラケットは、エプロンの持ち上げに伴い、コンプレッションロッドに対して移動する。そして、エプロンの持ち上げは、付勢体の付勢力にアシストされるのであるから、レバーブラケットは、付勢体の付勢力に基づいて移動する構成である(図17、図18、甲8)。 (審判請求書22頁11行〜32頁末行) b 公然実施発明の設計図(審判請求書33、34頁) (a)図17(エプロン最下げ位置) (b)図18(エプロン最上げ位置) c 公然実施発明 上記a及びbからみて、公然実施発明は次のとおりのものである。 構成2fと2gについては、本件発明2の構成要件2Fと2Gとの関係で、2通り示すこととする。 1a 走行車に連結される作業機本体と、 1b この作業機本体に設けられ、耕耘作業をするロータと、 1c ロータの後方で整地作業するエプロンと、 1d 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して最上げ位置までエプロンの持ち上げをアシストするクイックアシスト機構とを備え、 1e クイックアシスト機構は、その一方側が作業機本体側に取り付けられ、かつ、その他方側がエプロン側に取り付けられている 1f 農作業機。 2a 走行車に連結される作業機本体と、 2b この作業機本体に設けられ、耕耘作業をするロータと、 2c ロータの後方で整地作業するエプロンと、 2d 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用してエプロンの持ち上げをアシストするクイックアシスト機構を備え、 2e クイックアシスト機構は、その一方側が作業機本体側に取り付けられ、かつ、その他方側がエプロン側に取り付けられている農作業機であって、 2f(1)クイックアシスト機構は、ベースプレートと、ベースプレートに対して移動可能に設けられたアシストリンクAと、エプロンに回動可能に設けられたアシストリンクBとを有し、 (2)クイックアシスト機構は、コンプレッションロッドと、エプロンに回動可能に設けられたレバーブラケットとを有し、 2g(1)アシストリンクAは、ベースプレートに対してアシストリンクBとともに付勢体の付勢力に基づいて移動する (2)レバーブラケットは、コンプレッションロッドに対して付勢体の付勢力に基づいて移動する 2h 農作業機。 3a クイックアシスト機構は、ストッパーの開放及び復帰によりアシストオフ状態およびアシストオン状態に切替可能となっている 4a 付勢体の少なくとも一部は、クイックアシスト機構内に収納されている 5a 付勢体は、ガススプリングである 6a クイックアシスト機構の一方側は、作業機本体のフレームに設けられた取付部に取り付けられている (審判請求書34頁1行〜35頁末行) (2)無効理由2 ア 甲9発明 甲9の記載から、甲9には次の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されている。 1−1a トラクタに装着される作業機本体10と、 1−1b 作業機本体10に設けられ、耕耘ロータになる作業ロータ5と、 1−1c 作業ロータ5の後方を覆う、耕耘土の均平を行うエプロン3と、 1−1d エプロン3を跳ね上げ方向に付勢する伸縮自在な伸縮部を21aを有する付勢手段21を有し、付勢手段21がコンプレッションロッド18と並列に配置され、伸縮部21aが、コンプレッションロッド18に間接的に接合されており、コンプレッションロッド18の軸方向に移動可能なストッパ19がコンプレッションロッド18の係止部に係止されることにより跳ね上げ状態が維持され、付勢手段21の付勢力を利用してエプロン3の跳ね上げをアシストするエプロン跳ね上げ軽減装置1を備え、 1−1e エプロン跳ね上げ軽減装置1は、作業機本体10の表面に一端部が連結され、エプロン3の表面に他端部が接続される 1−1f ロータリ作業機。 1−2a トラクタに装着される作業機本体10と、 1−2b 作業機本体10に設けられ、耕転ロータになる作業ロータ5と、 1−2c 作業ロータ5の後方を覆う、耕転土の均平を行うエプロン3と、 1−2d エプロン3を跳ね上げ方向に付勢する伸縮自在な伸縮部21aを有する付勢手段21を有し、付勢手段21がコンプレッションロッド18と並列に配置され、伸縮部21aが、コンプレッションロッド18に間接的に接合されており、コンプレッションロッド18の軸方向に移動可能なストッパ19がコンプレッションロッド18の係止部に係止されることにより跳ね上げ状態が維持され、付勢手段21の付勢力を利用してエプロン3の跳ね上げをアシストするエプロン跳ね上げ軽減装置1を備え、 1−2e エプロン跳ね上げ軽減装置1は、作業機本体10の表面に一端部が連結され、エプロン3の表面に他端部が接続されるロータリ作業機であって、 1−2f エプロン跳ね上げ軽減装置1は、コンプレッションロッド18と、コンプレッションロッド18に対して移動可能な支持部材22と、エプロン3の回転に伴い、コンプレッションロッド18に沿って摺動するストッパ19とを有し、 1−2g 支持部材22は、コンプレッションロッド18に対して、ストッパ19とともにヒ゜ストンロッド21aの伸縮動作により移動する 1−2h ロータリ作業機。 1−3a エプロン跳ね上げ軽減装置1は、切替装置24の操作により、ピストンロッド21aの伸縮を阻止(ロック規制)する状態とピストンロッド21aの伸縮が可能な状態を切換可能となっている 1−4a 付勢手段21の少なくとも一部は、エプロン跳ね上げ軽減装置1の一部を構成している 1−5a 付勢手段21にはガススプリングが使用される 1−6a エプロン跳ね上げ軽減装置1のコンプレッションロッド18の一端は、伝動フレーム14と支持フレーム15との上に固定された上部ブラケット14b、15bに回転自在に連結されている。 (審判請求書59頁1行〜61頁14行) (3)無効理由3 ア 甲10発明 甲10の記載から、甲10には次の発明(以下「甲10発明」という。)が記載されている。 2−1a 走行機体の後部に昇降可能に装着される作業機本体10と、 2−1b 作業機本体10は多数の耕転爪が取り付けられた耕転ロータ20を有し、 2−1c 耕転ロータ20の上側を覆うシールドカバー22の後方側へ延びて耕土表面を均平にするエプロン25と、 2−1d 持上アシスト用のガススプリング41を有し、ガススプリング41の付勢力を利用して所定の非作業位置Pnまでエプロン25の持ち上げをアシストするエプロン跳ね上げ補助装置40とを備え、 2−1e エプロン跳ね上げ補助装置40は、その一方側が作業機本体10の側部カバー23の外側に取り付けられ、かつ、その他方側がエプロン25側に取り付けられている 2−1f ロータリ作業機。 2−2a 走行機体の後部に昇降可能に装着される作業機本体10と、 2−2b 作業機本体10は多数の耕転爪が取り付けられた耕転ロータ20を有し、 2−2c 耕転ロータ20の上側を覆うシールドカバー22の後方側へ延びて耕土表面を均平にするエプロン25と、 2−2d 持上アシスト用のガススプリング41を有し、ガススプリング41の付勢力を利用して所定の非作業位置Pnまでエプロン25の持ち上げをアシストするエプロン跳ね上げ機構とを備え、 2−2e エプロン跳ね上げ機構は、その一方側が作業機本体10の側部カバー23の外側に取り付けられ、かつ、その他方側がエプロン25側に取り付けられているロータリ作業機であって、 2−2f エプロン跳ね上げ機構は、コンプレッションロッド30と、エプロン25に回動可能に設けられたロック装置32とを有し、エプロン25の上方への回動に伴ってロック装置32がコンプレッションロッド30の前側に移動し、 2−2g ロック装置32は、コンプレッションロッド30に対してガススプリング41の付勢力に基づいて移動する 2−2h ロータリ作業機。 2−3a エプロン跳ね上げ機構は、支持保持機構部60の把手部62の前側又は後側への傾動により、アシストオフ状態およびアシストオン状態に切換可能となっている 2−4a ガススプリング41の少なくとも一部は、カバー内に収納されている 2−5a エプロン跳ね上げ補助装置40はガススプリング41を有して構成されている 2−6a エプロン跳ね上げ機構の一方側は、シールドカバー22に取り付けられている (審判請求書79頁1行〜80頁15行) 4 請求人の具体的な主張(本件訂正請求後) 本件訂正請求後の本件訂正発明1ないし6に対する請求人の具体的な主張は以下のとおりである。 (1)本件訂正発明1 ア 対象物を最上げ位置まで上方回動させるに当たり、これをガススプリングの付勢力のみで行うように設計するのか、ガススプリングの付勢力のみとはせず、人力も併用するように設計するのかは、用途や目的に応じて設計者が適宜選択する事項です。 例えば、ガススプリングの付勢力のみで対象物を最上げ位置まで上方回動させるとなると、特に初動時に、作業者が意図せず持ち上がる恐れがあるため、ガススプリングの付勢力のみとはせず、人力も併用するように設計することになりますし、その点を考慮しないのであればガススプリングの付勢力のみで対象物を最上げ位置まで上方回動させることもあり得ます。 また、持上アシスト機構の取付位置の制約の有無によって、取付位置の制約が無いのであればガススプリングの付勢力のみで対象物を最上げ位置まで上方回動させることもあり得ますし、他方、取付位置の制約がある場合にはガススプリングの付勢力のみとはせず、人力も併用するように設計することがあり得ます。 よって、本件訂正発明1は、公然実施発明、甲9発明及び甲10発明のいずれかから当業者の設計的変更により容易に想到されるものです。 (弁駁書5頁9行〜6頁10行、13頁14〜16行) イ ガススプリングの付勢力のみによって対象物を最上げ位置まで上方回動させる構成(ロック状態が解除されると人力を要さずガススプリングの付勢力で対象物を最上げ位置まで上方回動させる構成)は甲38乃至甲40に例示される周知技術、又はそれらのいずれかに開示されている事項です。 よって、本件訂正発明1は、公然実施発明、甲9発明及び甲10発明のいずれかに上記の周知技術又は上記の開示されている事項を適用することにより容易に想到されるものです。 (弁駁書6頁11〜下から4行、12頁3行〜13頁12行) (2)本件訂正発明2について ア 「機体と整地体との間に設けられ連結ロッドとその外周側に配設されたコイルバネとを有する接地圧調整手段」は甲9に開示されているので、訂正前の本件発明2に、「機体と整地体との間に設けられ連結ロッドとその外周側に配設されたコイルバネとを有する接地圧調整手段」が加えられたのみの本件訂正発明2は、甲9発明と同一です。 (弁駁書15頁下から9行〜16頁末行) イ 機体と整地体との間に設けられ、連結ロッドとその外周側に配設されたコイルバネとを有する接地圧調整手段は、公然実施発明、甲10発明、甲41、甲42及び甲47に例示される周知技術又はそれらのいずれかに開示されている事項です。 よって、本件訂正発明2は、仮に接地圧調整手段を持上アシスト手段とは別体でなければならないと解釈したとしても、甲9発明に上記の周知技術又は上記の開示されている事項を適用することにより容易に想到されるものです。 (弁駁書17頁1行〜18頁4行、25頁6行〜26頁11行) ウ 長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体であって、長尺体に対して回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する移動体と、整地体に回動可能に設けられた回動体とを有する持上アシスト手段は甲43乃至甲45に例示される周知技術、又はそれらのいずれかに開示されている事項です。 よって、本件訂正発明2は、公然実施発明又は甲10発明のいずれかに、上記の周知技術又は上記の開示されている事項を適用することにより容易に想到されるものです。 (弁駁書26頁21行〜27頁12行、36頁5行〜37頁11行) (3)本件訂正発明3について ア 長尺体に対して移動可能な移動体に、回動可能な操作部材を取り付けること、及び操作部材の回動操作により、アシストオフ状態(長尺体に対して移動体を固定した状態)およびアシストオン状態(長尺体に対して移動体の固定を解除した状態)を切換えることは甲43及び甲44に例示される周知技術です。また、甲43及び甲44には、移動体が、付勢体の付勢力に基づいて、整地体に対して回動可能な回動体とともに長尺体に対して移動することも記載されています。 甲9発明では、ピストンロッドの一端部にアシストオフ状態およびアシストオン状態に切換可能な操作部材が取り付けられていますが、このような操作部材を取り付けるに当たり、上記の周知技術を参照し、操作部材をピストンロッドの一端部に取り付けることに代えて、操作部材を移動体である支持部材22に回動可能に取り付けることに際し特段の困難性はありません。 したがって、本件訂正発明3は、甲9発明に周知技術を適用することにより容易に想到されるものです。 (弁駁書38頁下から8行〜39頁18行、44頁1〜3行) イ 上述のとおり、移動体に回動可能に取り付けられた操作部材は甲43及び甲44に開示されている事項です。 甲9発明において、アシストオフ状態およびアシストオン状態に切換可能な操作部材を取り付けるに当たって、この開示されている事項を参照して、ピストンロッドの一端部に取り付けることに変えて、移動体である支持部材22に回動可能に取り付けることに際し特段の困難性はありません。 したがって、本件訂正発明3は、甲9発明に甲43及び甲44のいずれかに開示されている事項を適用することにより容易に想到されるものです。 (弁駁書44頁4行〜45頁6行) ウ 「長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体であって、長尺体に対して回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する移動体と、整地体に回動可能に設けられた回動体とを有する持上アシスト手段」は甲43乃至甲45に例示される周知技術、又はそれらのいずれかに開示されている事項です。 よって、本件訂正発明3は、公然実施発明又は甲10発明のいずれかに、上記の周知技術又は上記の開示されている事項を適用することにより容易に想到されるものです。 (弁駁書45頁16行〜46頁下から5行) エ 上述のとおり、移動体に回動可能に取り付けられた操作部材は甲43及び甲44に例示される周知技術、又はそれらのいずれかに開示されている事項です。 よって、本件訂正発明3は、公然実施発明又は甲10発明のいずれかに、上記の周知技術、又は上記の開示されている事項を適用することにより容易に想到されるものです。 (弁駁書46頁下から4行〜47頁24行) (4)本件訂正発明4について ア 付勢体の一部を持上アシスト手段内に収納することは、甲9発明に接した当業者が、作業時に泥土等が付着するのを防止するために付勢体に何らかのカバーを設けるに当たって通常の創作能力を発揮にすることにより想到される設計的事項であり、格別の作用効果を奏する構成ではありませんので、「一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項」に該当します。 本件訂正発明4は、甲9発明を設計変更することにより容易に想到されるものです。 (弁駁書48頁20〜下から2行) イ ガススプリングをカバーで覆う構成は甲46、甲48−1乃至甲53に例示される周知技術、又はそれらのいずれかに開示されている事項です。 また、伸縮するガススプリングを筒状の長尺体内に収納する構成は甲49乃至甲53に例示される周知技術、またはそれらのいずれかに開示されている事項です。 また、ガススプリングを、筒状の長尺体内に収納する構成は甲55及び甲56に例示される周知技術、またはそれらのいずれかに開示されている事項です。 よって、本件訂正発明4は、甲9発明に上記の周知技術又は上記の開示されている事項を適用することにより容易に想到されるものです。 (弁駁書48頁末行〜49頁15行、75頁1〜19行) ウ 長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体であって、長尺体に対して回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する移動体と、整地体に回動可能に設けられた回動体とを有する持上アシスト手段は甲43乃至甲45に例示される周知技術、又はそれらのいずれかに開示されている事項です。 よって、本件訂正発明4は、公然実施発明に上記の周知技術又は上記の開示されている事項を適用することにより容易に想到されるものです。 (弁駁書75頁下から5行〜77頁2行) (5)本件訂正発明5について ア 上述したとおり、「付勢体の一部を持上アシスト手段内に収納する」構成は当業者における設計的事項であり、かつ、甲46、甲48−1乃至甲55に開示されている事項です。 そして、付勢体にガススプリングを用いるということは公然実施発明、甲9発明及び甲10発明に例示される周知技術であり、付勢体を持上アシスト手段内にどのように収納するかは、当業者の通常の創作能力の範囲内で決定され得る設計的事項であり、格別の作用効果を奏する構成ではありません。 したがって、本件訂正発明5は、甲9発明に接した当業者が通常の創作能力を発揮すること(設計変更)により容易に想到されるものです。 (弁駁書78頁下から5行〜79頁6行) イ 上述したとおり、ガススプリングを筒状の長尺体内に収納する構成は甲49乃至甲53に例示される周知技術、又はそれらのいずれかに開示されている事項です。 したがって、本件訂正発明5は、甲9発明に上記の周知技術又は上記の開示されている事項を適用することにより容易に想到されるものです。 (弁駁書79頁7行〜80頁2行) ウ 上述のとおり、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体であって、長尺体に対して回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する移動体と、整地体に回動可能に設けられた回動体とを有する持上アシスト手段は甲43乃至甲45に例示される周知技術、またはそれらのいずれかに開示されている事項です。 よって、本件訂正発明5は、公然実施発明又は甲10発明に上記の周知技術又は上記の開示されている事項を適用することにより容易に想到されるものです。 (弁駁書80頁12行〜81頁下から7行) エ 上述したとおり、ガススプリングを「筒状に形成された長尺体内に収納」する構成には格別の作用効果が存在せず、当業者が通常の創作能力を発揮することにより想到され得る設計的事項に当たります。 よって、本件訂正発明5は、公然実施発明又は甲10発明に接した当業者が通常の創作能力を発揮すること(設計変更)により容易に想到されるものです。あるいは、本件訂正発明5は、公然実施発明又は甲10発明に甲46、甲49乃至甲53に開示されている事項を適用するにあたり、当業者が通常の創作能力を発揮すること(設計変更)により容易に想到されるものです。 (弁駁書81頁下から6行〜82頁6行) オ 上述のとおり、ガススプリングを筒状の長尺体内に収納する構成は甲49乃至甲53に例示される周知技術、又はそれらのいずれかに開示されている事項です。 よって、本件訂正発明5は、公然実施発明又は甲10発明に上記の周知技術又は上記の開示されている事項を適用することにより容易に想到されるものです。 (弁駁書82頁7行〜83頁4行) (6)本件訂正発明6について ア 上述したとおり、付勢体を「筒状に形成された長尺体内に収納」することは、当業者の通常の創作能力の範囲内で決定され得る設計的事項であり、格別の作用効果を奏する構成ではありません。 上述したとおり、甲49乃至甲53に例示される周知技術であり、又はこれらのいずれかに開示されている事項であり、甲9発明にこれらを適用するに際し特段の困難性はありません。 付勢体(ガススプリング)を収容し、筒状に構成された長尺体の前端部を機体に回動可能に取り付ける構成は、甲9発明、甲43乃至甲46、甲49乃至甲53に例示される周知技術です。 また、機体に対して整地体を回動可能に取りつけた農作業機において、機体と整地体とを連結する部材を設けるときに当該部材の前端部を機体に回動可能に取りつけることは周知技術です。 すなわち、機体と整地体とを連結する持上アシスト手段を機体に取り付けるにあたり、その前端部を回動可能に取りつけることは、単なる周知技術に過ぎません。長尺体を介して、持上アシスト手段を機体に取り付けるのであれば、当該長尺体を機体のフレームに設けられた取付部に回動可能に取りつけるという構成は、当業者であれば当然容易に想到できる構成です。 (弁駁書84頁下から4行〜86頁11行) イ 上述のとおり、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体であって、長尺体に対して回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する移動体と、整地体に回動可能に設けられた回動体とを有する持上アシスト手段は甲43乃至甲45に例示される周知技術、またはそれらのいずれかに開示されている事項です。 よって、本件訂正発明6は、公然実施発明に上記の周知技術または上記の開示されている事項を適用することにより容易に想到されるものです。 (弁駁書86頁22行〜87頁下から2行) ウ 上述したとおり、付勢体を「筒状に形成された長尺体内に収納」することは当業者の通常の創作能力の範囲内で決定され得る設計的事項であり、格別の作用効果を奏する構成ではありません。 また、上述したとおり、付勢体を「筒状に形成された長尺体内に収納」することは甲49乃至甲53に例示される周知技術、またはそれらのいずれかに開示されている事項であり、公然実施発明にこれを適用するに際し特段の困難性はありません。 (弁駁書87頁末行〜88頁19行) エ 上述したとおり、付勢体(ガススプリング)を収容し、筒状に構成された長尺体の前端部を機体に回動可能に取り付ける構成は、甲9発明、甲43乃至甲46、甲49乃至甲53に例示される周知技術です。 また、機体に対して整地体を回動可能に取りつけた農作業機において、機体と整地体とを連結する部材を設けるときに当該部材の前端部を機体に回動可能に取りつけることは周知技術です(甲9、甲10、甲41、甲42、甲43、甲44、甲47)。 すなわち、機体と整地体とを連結する持上アシスト手段を機体に取り付けるにあたり、その前端部を回動可能に取りつけることは、単なる周知技術に過ぎません。長尺体を介して、持上アシスト手段を機体に取り付けるのであれば、当該長尺体を機体のフレームに設けられた取付部に回動可能に取りつけるという構成は、当業者であれば当然容易に想到できる構成です。 したがって、公然実施発明に甲43乃至甲45に例示される周知技術を適用した構成あるいは、甲43乃至甲45に開示された事項を適用した構成は、付勢体、長尺体、長尺体の前端部と機体とを連結する部材を備える構成ですので、当業者が、この周知技術を参照して、長尺体の前端部と機体とを連結する部材を回動可能なものとすることに際し特段の困難性はありません。 (弁駁書88頁20行〜89頁18行) オ 上述したとおり、付勢体(ガススプリング)を収容し、筒状に構成された長尺体の前端部を機体に回動可能に取り付ける構成は、甲9発明、甲43乃至甲46、甲49乃至甲53に開示された事項であり、公然実施発明にこれを適用するに際し特段の困難性はありません。 (弁駁書89頁19〜26行) 第5 被請求人の主張と証拠方法 1 無効理由1 (1)出願前の販売事実は不明であること 甲6ないし甲8によれば、請求人の製品である農作業機「ツーウェイローター FTE220RT−4L(製造番号53021366、コードNo.945523300100)」(以下、「請求人製品」という)は、本件特許の出願日(原出願日、優先日)よりも前に顧客に対して公然と販売された事実があると主張するようである。 しかし、少なくとも以下の理由から、上記出願前の販売事実があったか否かは不明である。 (i)甲6(売買契約書)、甲7(受領書)、甲8(証明書)の製造番号とコード番号の関係が不明である。 (ii)甲7、甲8のサインの筆跡が相違しており、同一人物でない可能性がある。 (iii)甲8について、(a)証明者が具体的な構成を記憶しているとは考えられず、証明者がサインしただけである、(b)別紙2の参考図なるものが何であるのか、作成日や作成者等も分からず、意味不明である、(c)別紙1の写真と別紙2の参考図のストッパーの姿勢が相違し、記載に齟齬がある、(d)製品を改良していないという主張は事実とは異なる(「ガススプリング」の付け替え、及び「反射板」や「シール」の後付け。)、等から、信憑性がない。 (審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)9頁2行〜15頁末行) (2)請求人製品の構成は不明であること 仮に、請求人製品が、当該出願前の販売事実があったとしても、その販売当時(本件特許の出願前)の請求人製品が本件発明と同一の構成を有していたか否かは不明である。 請求人は、公然実施発明の構成を特定するための証拠として、甲1(写真撮影報告書)、甲2(測定結果報告書)、甲3の1(動画撮影報告書)、甲3の2(動画)、甲4(カタログ)、甲5(カタログ)、及び甲8(証明書)を提出している。 しかし、少なくとも以下の理由から、それらの証拠では、本件特許の出願前において、請求人製品が本件発明1ないし6と同一の構成を有していたか否かは不明である。 (i)甲1、甲2、甲3の1、及び甲3の2は、いずれも請求人の社員が作成、撮影したものに過ぎないから、客観性がない。 (ii)証拠の記載に齟齬がある。 (iii)甲1、甲3の2、甲4、甲5は、請求人製品の外観を示すものにすぎず、また、甲4、甲5の記載からも、請求人製品が備えるクイックアシスト機構の具体的な構成や動作は不明である。 (iv)甲2や甲8のガススプリング長の測定結果からみて、請求人製品のクイックアシスト機構のガススプリングは、付け替えられた可能性が否定できない。 (v)甲2の測定に不備がある。 (答弁書16頁1行〜26頁末行) (3)甲8(証明書)は信憑性がないこと 甲19(部品表)の8頁図中の「ワンタッチホルダASSY」(見出番号30)及び「コンプレッションスプリングウエ」(見出番号31)は、甲33の図面から省略されている。また、甲3の2の動画の作業機からは、「ワンタッチホルダASSY」が取り外されており、当該農作業機が改良されている。 (口頭審理陳述要領書(以下「要領書」という。)37頁下から5行〜38頁5行) 2 本件訂正発明1について (1)本件訂正発明1は、「前記付勢体の付勢力のみによって前記整地体が前記最上げ位置まで上方回動する」との構成を備えるが、公然実施発明、甲9発明及び甲10発明はそのような構成を備えておらず、その点で両者は明らかに相違する。 そして、上記相違点に係る構成は、請求人が提示した各証拠のいずれにも何ら開示がなく、当業者にとって容易想到なものではない。 したがって、本件訂正発明1は、新規性及び進歩性を有する。 (上申書7頁2〜9行) (2)ワンタッチホルダが取り外された状態の農作業機を用いた動画や測定結果報告書の証拠(甲2、甲3の1、甲3の2、甲34等)は無意味である。 動画(甲第3号証の2)をみると、最上げ位置のあそび範囲において、手を離した瞬間に何らかの力が作用してエプロン(整地体)が上方回動しているようにもみえる。 しかし、当該動画の農作業機は、ワンタッチホルダが取り外された状態であるから、当該ワンタッチホルダを取り付ければ、エプロンの動作は当然異なったものとなる。 請求人が提示した全証拠をみても、請求人が主張する公然実施発明が、本件訂正発明1の「前記付勢体の付勢力のみによって前記整地体が前記最上げ位置まで上方回動する」との構成を備えるか否かは不明である。 そして、本件訂正発明1によれば、持上アシスト用の付勢体の付勢力のみによって整地体が最上げ位置まで上方回動(初期位置は特定されていないので最下げ位置からではなく途中位置から最上げ位置までの上方回動も含む)するため、例えば作業者が最上げ位置手前付近の途中位置で手を離しても、ストッパ装置等によって整地体を最上げ位置に適切にロックできる、という公然実施発明等の先行技術発明では奏し得ない格別な作用効果を奏することができる。 (上申書10頁1〜7行) 3 本件訂正発明2について 本件訂正発明2は、「前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動する」との構成(以下において「構成X」という場合がある)を備えるが、公然実施発明、甲9発明及び甲10発明はそのような構成を備えておらず、その点で両者は明らかに相違する。 そして、上記相違点に係る構成は、請求人が提示した各証拠のいずれにも何ら開示がなく、当業者にとって容易想到なものではない。 したがって、本件訂正発明2は、新規性及び進歩性を有する。 甲9発明の「コンプレッションロッド18」は、甲第9号証の【0021】における「・・・エプロン3の圃場面との接地圧を適度に保つためと、エプロン3を跳ね上げた状態に保持するためのコンプレッションロッド18・・・」との記載からみて明らかなように、本件訂正発明2の「接地圧調整手段の連結ロッド」に相当するものであり、決して「持上アシスト手段の長尺体」に相当するものではない。よって、甲9発明も構成Xを備えていない。 (上申書18頁1〜18行) 4 本件訂正発明3について 本件訂正発明3は、「前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体と、前記移動体に回動可能に取り付けられた操作部材とを有し、かつ、前記操作部材の操作によりアシストオフ状態およびアシストオン状態に切換可能となっており」との構成を備えるが、公然実施発明、甲9発明及び甲10発明はそのような構成を備えておらず、その点で両者は明らかに相違する。 そして、上記相違点に係る構成は、請求人が提示した各証拠のいずれにも何ら開示がなく、当業者にとって容易想到なものではない。 したがって、本件訂正発明3は、新規性及び進歩性を有する。 甲9発明の「切替装置24」は、ガススプリング21のピストンロッド21aの一端部に装着されているため(甲第9号証の【0027】等を参照)、甲9発明の「切替装置24のレバー24a」は、本件訂正発明3の「移動体に回動可能に取り付けられた操作部材」に相当しない。 (上申書18頁19行〜19頁7行) 5 本件訂正発明4について 本件訂正発明4は、審決予告において無効理由の対象となっていない訂正前の請求項4(旧請求項2+4)に係る発明である。 したがって、本件訂正発明4は、新規性及び進歩性を有する。 (上申書19頁8〜11行) 6 本件訂正発明5について 本件訂正発明5は、「前記持上アシスト手段は、筒状に形成された長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動し、前記付勢体は、前記長尺体内に収納されたガススプリングである」との構成を備えるが、公然実施発明、甲9発明及び甲10発明はそのような構成を備えておらず、その点で両者は明らかに相違する。 そして、上記相違点に係る構成は、請求人が提示した各証拠のいずれにも何ら開示がなく、当業者にとって容易想到なものではない。 したがって、本件訂正発明5は、新規性及び進歩性を有する。 (上申書19頁12〜末行) 7 本件訂正発明6について 本件訂正発明6は、「前記持上アシスト手段は、筒状に形成された長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動し、前記付勢体は、前記長尺体内に収納されており、前記持上アシスト手段の前記長尺体の一方側の端部である前端部は、前記機体のフレームに設けられた取付部に回動可能に取り付けられている」との構成を備えるが、公然実施発明、甲9発明及び甲10発明はそのような構成を備えておらず、この点で両者は明らかに相違する。 そして、上記相違点に係る構成は、請求人が提示した各証拠のいずれにも何ら開示がなく、当業者にとって容易想到なものではない。 したがって、本件訂正発明6は、新規性及び進歩性を有する。 (上申書20頁1〜12行) 第6 証拠の記載 1 甲1〜甲3の2、甲8、甲24 (1)甲1 請求人が提出した甲1には、以下の記載及び写真がある。 (2)甲3の1 請求人が提出した甲3の1には、以下の記載及び写真がある。 (3)甲8 請求人が提出した甲8には、上記(1)で示した記載及び写真がある。 (4)甲24 請求人が提出した甲24には、以下の記載及び写真がある。 (5)甲1〜甲3の2、甲8、甲24に記載の農作業機の構成について ア 上記(1)、(2)及び(4)の甲1、甲3の1及び甲24の記載及び写真、甲3の2の動画からみて、甲1〜甲3の2、甲8、甲24に示された、請求人が公然実施をされたと主張する農作業機である「ツーウェイローター FTE220RT−4L(コードNo.945523300100)」(製造番号53021366)について、以下の構造を備えるものと認められる。(各部材の名称について、この農作業機の取扱説明書である甲18、パーツリストである甲19に記載された対応する部材の名称を適宜用いることとする。) なお、無効理由1に関する他の証拠は、甲1〜甲3の2、甲8、甲24に示された以外の技術事項を開示するものではない。 (ア)農作業機は、機体と、機体の下方に配置されたロータと、ロータの後方を覆うエプロンを備え、機体は、前方上方に連結器と、ロータの上方を覆うシールドカバーを備え、ロータの後方を覆うエプロンが、その前方をシールドカバーに連結されている。(甲1の写真1〜3、5、6) (イ)農作業機は、クイックアシスト機構を備え、その一方をシールドカバーに、他方をエプロンに取り付けられている。(甲1の写真7〜12) (ウ)クイックアシスト機構は、ガススプリング、ロックレバー、アシストリンクA、アシストリンクB、アシストハンドル(ソウサロッド)を備えている。(甲1の写真7〜12、甲24の写真3〜14) (エ)シールドカバーの上部には、ベースプレートが突設されている。(甲1の写真7〜10、12、甲24の写真3〜5、7) (オ)エプロンの上部には、突部が突設されている。(甲1の写真3、7、13、甲24の写真3) (カ)ベースプレートの先端には、ロックレバーが設けられ、ベースプレートに設けられた長孔にアシストリンクAが移動可能に設けられ、アシストリンクAの長孔にアシストリンクBが移動可能に設けられ、アシストリンクBの長孔に突部が移動可能に設けられている。 また、アシストハンドルの先端が、ロックレバーに連結されている。(甲1の7〜10、12、甲24の写真3〜7) (キ)その一方を機体に、他方をエプロンから上方に突設されたブラケットに連結されたコンプレッションロッドが設けられ、コンプレッションロッドには、その外周側にコイルバネが配設され、また、該ブラケットに連結されるレバーブラケットが設けられ、レバーブラケットにははね上げロックレバーが設けられている。(甲1の写真7、10、12、甲24の写真3〜7) (ク)ガススプリングは、その一部が、下方をシールドカバーにより、側方をベースプレートにより、上方をアシストリンクAにより囲われている。(甲1の写真7〜10、12、甲24の写真3〜7、12) (ケ)農作業機のエプロンの動作を撮影した甲3の2(動画)、及び該動画の特定の時間での静止画像である甲3の1(写真撮影・測定結果報告書)から、以下の事項が看取できる。 (a)動画00:54〜動画03:35から、アシストハンドルの操作により、アシスト機能が作用する状態と作用しない状態とに切替えていること。 (b)動画03:21付近から、コンプレッションロッドの所定の位置に空けられた穴に、レバーブラケットのピンが自動的に挿入された状態で、エプロンが固定されること。 (c)エプロンを持ち上げる際、動画00:54〜動画02:50と比較して、動画02:51〜動画04:10では、アシスト機能が作用していること。 (d)動画03:29から動画04:10付近のエプロンの高さは最上げ位置であること。 (コ)クイックアシスト機構は、ガススプリングを備え(上記(ウ))、エプロンを持ち上げる際、エプロンの最上げ位置まで、アシスト機能が作用しており(上記(ケ)の(c)(d))、また、ガススプリングは付勢力を有することは自明であるから、クイックアシスト機構は、ガススプリングの付勢力を利用して、最上げ位置までエプロンの持ち上げをアシストするものといえる。 イ 農作業機の技術分野において、該機体はトラクタに連結されており、該ロータは、耕耘作業をする耕耘ロータであり、該エプロンは、上下方向に回動可能であって、耕耘ロータの後方で整地作業をするものであることは、当業者にとって自明な事項である。 以上のことから、甲1ないし甲3の2、甲8、甲24に示された農作業機は、以下のとおりのものと認める。 「トラクタに連結される機体と、 この機体に設けられた、耕耘作業をする耕耘ロータ、及び耕耘ロータの上方を覆うシールドカバーと、 その前方をシールドカバーに上下方向に回動可能に連結されて、耕耘ロータの後方で整地作業するエプロンと、 ガススプリングを有し、このガススプリングの付勢力を利用して、最上げ位置まで前記エプロンの持ち上げをアシストするクイックアシスト機構と、 その一方を機体に、他方をエプロンから上方に突設したブラケットに連結されたコンプレッションロッド、を備え、 前記クイックアシスト機構は、その一方側が前記シールドカバーに取り付られ、かつ、その他方側が前記エプロンに取り付けられている 農作業機であって、 シールドカバーの上部にはベースプレートが突設され、 エプロンの上部には、突部が突設され、 前記クイックアシスト機構は、ガススプリング、ロックレバー、アシストリンクA、アシストリンクB、アシストハンドル(ソウサロッド)を備えており、 ロックレバーは、ベースプレートの先端に設けられ、ベースプレートに設けられた長孔にアシストリンクAが移動可能に設けられ、アシストリンクAの長孔にアシストリンクBが移動可能に設けられ、アシストリンクBの長孔に突部が移動可能に設けられ、また、アシストハンドルの先端が、ロックレバーに連結されており、 ガススプリングは、その一部が、下方をシールドカバーにより、側方をベースプレートにより、上方をアシストリンクAにより囲われており、 クイックアシスト機構は、アシストハンドルの操作によりアシスト機能が作用する状態および作用しない状態に切換可能となっており、 コンプレッションロッドは、その外周側にコイルバネが配設され、また、ブラケットに連結されるレバーブラケットが設けられ、レバーブラケットにははね上げロックレバーが設けられており、コンプレッションロッドの所定の位置に空けられた穴に、レバーブラケットのピンが自動的に挿入された状態において、エプロンが固定された最上げ位置である、 農作業機。」 (6)農作業機の公然実施について ア 上記(5)の農作業機について、 甲1 写真撮影報告書の写真4等の銘板の型式・製造番号 甲6 売買契約書 甲7 受領書 甲8 甲6の売買契約者であって甲7の受領者による証明である証明書 甲14 コバシ農業機械希望小売価格表 甲15 コバシ農業機械希望小売価格表 甲16 53期機番表 甲17 1月度生産日程計画表(本計画) により、上記農作業機が本件特許の出願前に販売された事実が証明されている。 そして、各証拠の記載事項について、その販売の事実に疑問を抱かせるような記載の齟齬や整合していない箇所等は存在しない。 また、上記(5)の農作業機のカタログである甲4(甲20)や甲5(甲21)、さらにその取扱説明書である甲18や、部品表である甲19からみて、上記(5)の農作業機から、上記(1)等の「ツーウェイローター FTE220RT−4L」は、本件特許の出願前に既に営業上販売されていたことが明らかであるから、上記(5)の農作業機と同様の構成を備える農作業機が、本件特許の出願前に販売されていたといえる。 イ 被請求人の主張について (ア)被請求人は、上記(5)の農作業機の販売の事実について、上記第5の1(1)のとおり主張している。 しかしながら、製造番号とコード番号の関係については不明ながら、甲14〜甲17からみて、当該製造番号もしくはコード番号の製品が、その当時製造又は販売されていた事実が認められるから、当該農作業機は上記製造番号及びコード番号を備えるものと認められる。 また、甲7と甲8とのサインの相違については、両サインの筆跡の違いの程度では、同一人物ではないとまでは言えない。 さらに、甲8の記載内容について、サインした者がどの程度理解していたか不明であったとしても、農作業機の実物が存在する以上、その記載内容の信憑性が疑われるとまでは言えない。 (イ)また、被請求人は、上記(5)の農作業機の構成について、上記第5の1(2)のとおり主張している。 しかしながら、各証拠には、請求人が作成したものも存在するが、それらの証拠を含めて証拠全体として、それぞれの証拠の記載は各証拠間で整合していることから、請求人が作成した証拠に客観性がないとまではいえない。 また、誤記や若干の整合しない部分があったり、測定結果に曖昧な部分や不備があったとしても、それらは、明らかな誤記等であったり、測定誤差等であったと認められるから、各証拠を総合的にみて、特段の不備は見当たらない。 (ウ)さらに、被請求人は、上記第5の1(1)(iii)、同(2)(iv)及び(3)の主張において、部品の付け替え等の可能性を指摘しているが、当該部品は、保安部品であったり、取り外し可能なものであって、ガススプリングの付勢力に影響するものではないし、仮に影響したとしても、ガススプリングの両端の取付位置を変えるようなものでなければ、ガススプリングが伸長するにあたって付勢力が働き続けるのであるから、上記(4)の作業機において、エプロンの最上げ位置までガススプリングの付勢力が働くことに変わりはない。 (エ)以上のことから、被請求人の主張は採用できない。 (7)公然実施発明 上記(6)のとおりであるから、上記(5)の農作業機が本件特許の出願前に販売された事実により、上記(5)イで示した農作業機の構成が、本件特許の出願前に公然実施された発明(以下「公然実施発明」という。)であるものと認める。 2 甲10 (1)甲10の記載 甲10には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、トラクタの後部に昇降可能に装着された作業ロータの上方を覆うエプロンを備えるロータリ作業機において、エプロンを跳ね上げる際の作業者の負荷を軽減するエプロン跳ね上げ軽減装置に関する。」 イ 「【背景技術】 【0002】 耕耘作業機のような、ロータリ軸の周りに複数の耕耘爪が突設された作業ロータを備えるロータリ作業機では、耕耘爪が跳ね上げる耕耘土が作業機本体に及ぶのを防止すると共に耕耘作業時に上下方向に揺動しながら機体後方に排出される耕耘土の均平を行うために、作業ロータの後方にエプロン(リヤカバー)が回動自在に設けられている。 【0003】 エプロンは、トラクタのPTO軸から動力を受けるギアボックスを中心として作業機本体の幅方向に張り出し、ロータリ軸に動力を伝達する伝動フレームと、ギアボックスを挟んで伝動フレームに連続する支持フレームとの下方に配置されたシールドカバー(メインカバー)の進行方向後方側に、伝動フレームの軸と平行な軸の回りに回動自在に連結されている。エプロンの表面側、すなわち作業ロータの反対側の面には、エプロンの圃場面との接地圧を適度に保つためと、エプロンを跳ね上げた状態に保持するためのコンプレッションロッドが接続される。 【0004】 エプロンは、耕耘爪が跳ね上げる耕耘土の飛散防止を行うと共に耕耘作業時に上下方向に揺動しながら後方に排出される耕耘土の均平を行うために、板厚の厚い板材を用いて頑丈に、重く作られており、爪の付け替え作業や作業後の整備等を行う際に、1人でエプロンを跳ね上げるのは容易ではない。 【0005】 エプロンを跳ね上げる際に作業者にかかる負荷を軽減する軽減装置として、エプロンと作業機本体との間にエプロンを跳ね上げ方向に付勢するガススプリングを設けることがある(特許文献1参照)。 【0006】 【特許文献1】特開2006−325526号公報(段落0017、図8)」 ウ 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 特許文献1のように、エプロンとサイド耕耘伝動ケースとの間にエプロンを常に上方に付勢するガススプリングを設けたことにより、エプロンを跳ね上げる際に作業者にかかる負荷が軽減するのは期待できる。 ところで、エプロンは頻繁に上げ下げするものではないから、なるべくコストをかけずにガススプリングを作業機本体に装着することが望まれる。しかしながら、特許文献1では、ガススプリングをエプロンやサイド耕耘伝動ケースに連結するための取付フランジが必要となるうえに、取付フランジをエプロンやサイド耕耘伝動ケースに取り付けるための取り付け作業が必要なことから、部品及び製造コストを低減することは期待できない。 また、特許文献1では、ガススプリングはエプロンを常に上方に付勢することから、コンプレッションロッドによりエプロンを圃場面に接地させる際の接地圧に対してガススプリングの付勢力が影響を及ぼす虞がある。 【0008】 本発明は上記背景により、ローコストにガススプリング等の付勢手段を作業機本体に装着することが可能であること、また、そのうえで、コンプレッションロッドによるエプロン接地圧に対しガススプリング等の付勢手段の付勢力の影響を排除することが可能なロータリ耕耘機のエプロン跳ね上げ軽減装置を提供することを目的とする。」 エ 「【発明の効果】 【0014】 付勢手段が作業機本体部の表面とエプロンの表面との間に配置され、付勢手段の伸縮部が、コンプレッションロッドに接合され、この伸縮部の伸縮動作により、見かけ上、コンプレッションロッドをその軸方向に移動させてエプロンの跳ね上げをアシストさせるようにした。これにより、付勢手段をエプロンやサイド耕耘伝動ケースに連結するための取付フランジは必要なくなるので、部品及び製造コストを低減することができる。また、伸縮部の伸張動作を阻止することで、付勢手段の付勢力がコンプレッションロッドにかからない状態となり、コンプレッションロッドによりエプロンを圃場面に接地させる際の接地圧に付勢手段の付勢力が影響を及ぼすことが防止される。」 オ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0015】 以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。 【0016】 図1は、トラクタの後部に装着され、トラクタと共に走行し、作業ロータ5の後方を覆うエプロン3を有する作業機本体10の表面に一端部が連結され、エプロン3の表面に他端部が接続され、エプロン3をコイルスプリング18aの復元力により圃場面に接地させるコンプレッションロッド18と、コイルスプリング18aの一端部が係止し、コンプレッションロッド18に複数段設けられた位置調節スリット18b1を適宜選択することで最適の接地圧が得られるように、コンプレッションロッド18の軸方向に摺動する係止部18bと、エプロン3に連結され、コイルスプリング18aの他端部が係止し、エプロン3の回転に伴って軸方向に移動するコンプレッションロッド18を摺接可能に支持するストッパ19と、エプロン3を跳ね上げ方向に付勢する伸縮自在な伸縮部21aを有する付勢手段21と、を備えるロータリ作業機において、付勢手段21が、作業機本体10の表面とエプロン3の表面との間にコンプレッションロッド18と並列に配置され、伸縮部21aが、コンプレッションロッド18に間接的に接合されているエプロン跳ね上げ軽減装置1の構成例を示す。 【0017】 作業機本体10は、トラクタの後部に3点リンクヒッチ機構を介して昇降可能に装着される。 作業機本体10は、トラクタ後部のトップリンクとロアリンクからなる3点リンクヒッチ機構に連結されるトップマスト11と、ロアリンク連結部12とを備え、トップマスト11の下端部に、トラクタのPTO軸にユニバーサルジョイント、伝動シャフト等を介して連結されるギヤボックス13が配置され、ギヤボックス13から図7、図8に示す作業機本体10の幅方向に伝動フレーム14と支持フレーム15とが架設される。PTO軸からの動力は、ギヤボックス13の入力軸13aに伝達され、入力軸13aで受けた動力は、伝動フレーム14の内部を挿通する伝動シャフトに伝達される。 【0018】 伝動フレーム14の先端部には、チェーン伝動ケース16が垂下する形で固定され、支持フレーム15の先端部には、チェーン伝動ケース16に対向する端部カバー17が固定される。このチェーン伝動ケース16と端部カバー17との間に、作業ロータ5のロータリ軸6が軸回りに回転自在に架設される。チェーン伝動ケース16とロータリ軸6間にはチェーンが張架され、チェーンを通じて伝動シャフトの動力がロータリ軸6に伝達される。 【0019】 ロータリ軸6の外周には、周方向に適度な間隔を置いて耕耘爪等の爪7が突設される。爪7は主にナタ爪であるが、圃場面の土砂を掻き上げる機能を有すれば、代掻き機用や畦塗り機用等の爪も含む。爪7は、ロータリ軸6の軸方向には互いに干渉しない程度の間隔を置いて配置される。作業ロータ5は、ロータリ軸6とその外周に突設された爪7から構成され、作業ロータ5は耕耘ロータになる。 【0020】 伝動フレーム14と支持フレーム15との下方には、作業ロータ5の爪7の回転範囲を覆い、作業機本体10を土砂から保護するシールドカバー本体2(メインカバーとも言う)が配置される。シールドカバー本体2は、図1〜3に示すように、伝動フレーム14と支持フレーム15との下に突設された下部ブラケット14a、15aにフランジ2aにおいて接合されることにより両フレーム14、15に支持される。図7中、符号20は、圃場面上を転動することで、作業中にある作業ロータ5の圃場面からの深度を調整するためのゲージホイールである。 【0021】 シールドカバー本体2の、作業機本体10の進行方向後側には作業ロータ5の後方を覆うエプロン3(リアカバーとも言う)が伝動フレーム14の軸と平行な軸部2bの回りに回転自在に連結される。エプロン3の表面側、すなわち作業ロータ5の反対側の面には、エプロン3の圃場面との接地圧を適度に保つためと、エプロン3を跳ね上げた状態に保持するためのコンプレッションロッド18が接続される。 【0022】 コンプレッションロッド18の一端、すなわちトラクタ側の端部(上端)は、伝動フレーム14と支持フレーム15との上に固定された上部ブラケット14b、15bに回転自在に連結され、他端(下端)は、エプロン3の表面に固定されたブラケット3aに軸方向の位置調整が自在な状態に接続される。コンプレッションロッド18には、コイルスプリング18aが内蔵されるか、外周を巻回することにより装着される。 【0023】 コイルスプリング18aの一端(上端)は、その軸方向に摺動可能な係止部18bに係止し、他端(下端)は、コンプレッションロッド18の軸方向に移動可能なストッパ19に係止しており、係止部18bの位置調節によりコイルスプリング18aが常に復元力を有する状態または復元力を有しない状態のいずれかにある。ストッパ19には、エプロン3のブラケット3aが接続されており、ストッパ19はエプロン3の回転に伴い、コンプレッションロッド18に沿って摺動する。 【0024】 前記または図1〜3に示されるように、付勢手段21が、作業機本体10表面とエプロン3の表面との間にコンプレッションロッド18と並列に配置され、伸縮部21aが、コンプレッションロッド18に間接的に接合される。 【0025】 付勢手段21には、常に伸張方向に付勢されているが、伸縮部21aの内部に設けられたプッシュロッド21bの操作(例えば、プッシュロッド21bを押すと伸縮部21aが伸縮可能、離すとロック。この逆でもよい。)により伸縮部21aの伸張を任意の位置で停止可能なプッシュロックタイプのガススプリングが使用される。付勢手段(以下、ガススプリング)21は、支持部材22によりコンプレッションロッド18に並列した状態で支持される。 【0026】 支持部材22の上面には、ガススプリング21のシリンダチューブ21cをコンプレッションロッド18に並列した状態で支持する支持部22a、22bが上向きに突設される。また、支持部材22の上面の進行方向後方側には、ストッパ19に接続し、固定される脚部22cが下向きに設けられる。ガススプリング21(当審注:「ガススプリング21」は「支持部材22」の誤記と認める。)の左右側面には、上部ブラケット14b、15bとコンプレッションロッド18の一端とを連結する連結部(連結ピン23)が摺接可能に接続されるガイド孔22dが、コンプレッションロッド18の軸方向に向かって穿設されることにより、支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向に向かって移動可能とされる。 【0027】 ガススプリング21の伸縮部21a(以下、ピストンロッド)の内部には、シリンダチューブ21cに向かって押し込むとピストンロッド21aの任意の位置での停止が解除され、解放する(離す)とピストンロッド21aの伸縮を任意の位置で停止させるプッシュロッド21bが設けられる。ピストンロッド21aの一端部には、プッシュロッド21bの押し込み、解放を行う操作手段としての切替装置24が装着される。 【0028】 ここで、ガススプリング21(例えばフリーピストンタイプ)の動作原理について図9を用いて説明する。図9(a)、(b)に示すように、シリンダチューブ21cの内部には、フリーピストン21d及びピストン21eがシリンダ軸方向に摺動可能に配置される。ピストン21eには、プッシュロッド21bを摺接可能に支持したピストンロッド21aの他端部が接続される。 【0029】 シリンダチューブ21cとフリーピストン21dによって仕切られたA室には圧縮された窒素ガス、シリンダチューブ21cとフリーピストン21dとピストン21eによって仕切られたB室にはオイルが充填される。また、シリンダチューブ21cとピストン21eとシール21fによって仕切られたC室にもオイルが充填される。B室とC室とのオイルは、ピストン21e内部においてプッシュロッド21bの他端部に接続されたスプール弁21gのシリンダ軸方向への移動によって開閉されるオリフィス孔21hにより移動(流通)可能とされる。なお、図中の符号21iは、ピストンロッド21aを摺接可能に支持するガイド、21jは、シリンダチューブ21c内に異物が入るのを防止するダストシールである。 【0030】 図9(a)に示すように、プッシュロッド21bが解放されている(離されている)場合、B室とC室のオイルは、スプール弁21gによりオリフィス孔21hが閉ざされているので移動(流通)できず、ピストン21eはロック状態となる。 【0031】 図9(b)に示すように、プッシュロッド21bがシリンダチューブ21cに向かって押し込まれると、スプール弁21gが軸方向(フリーピストン21d側)に移動してオリフィス孔21hを開く。すると、B室、C室のオイルはオリフィス孔21hを介して移動(流通)可能となり、ピストン21eのロックが解除される。その場合、A室のガス圧によりピストンロッド21aは伸張可能となるが、ピストンロッド21aに押し込む力を加えると、ピストンロッド21aは短縮する。 【0032】 プッシュロッド21bが、図9(a)に示すように再び解放されると、ガス圧によりスプール弁21gは閉じられ、ピストン21eはロック状態となる。 以上、ガススプリング21の動作原理について説明した。 【0033】 図6に示すように、この切替装置24の本体側面には、プッシュロッド21bの押し込み、解放(離す)を行う切替レバー24aが水平軸回りに回転自在に設けられる。切替レバー24aの基部には、プッシュロッド21bが接合し、プッシュロッド21bの押し込み、解放を可能とする凹凸状のカム面を有する回動カム24bが連結されており、切替レバー24aをシリンダチューブ21b側に倒すと、プッシュロッド21bが解放され、ピストンロッド21aの伸縮が阻止(ロック、規制)される。また、切替レバー24aをシリンダチューブ21b側とは異なる方向に倒すと、プッシュロッド21bが押し込まれ、ピストンロッド21aは常に伸張方向へ付勢されている状態で伸縮が可能となる。 【0034】 切替装置24の端部(シリンダチューブ21bとは異なる側)には、コンプレッションロッド18の他端(下端)に抜け止め固定されたフランジ25を離脱可能に押圧する円筒状の押圧部24cが設けられる。また、フランジ25の一端(上部)には、押圧部24cが接合される際に押圧部24cを適正な位置に誘導し、押圧部24cによる押圧を確実に受容する側面視弓状の受容部25aが設けられる。 【0035】 通常の耕耘作業時にあっては、図2に示すように、ピストンロッド21aが短縮された状態で、切替装置24のレバー24aによりプッシュロッド21bが解放され(図6(b)参照)、ピストンロッド21aの伸張が阻止された状態となる。また、ピストンロッド21aの短縮に伴って、押圧部24cは受容部25aから離脱している。また、コイルスプリング18aは、コンプレッションロッド18に複数段設けられた位置調節スリット18b1の下側(フランジ25側)に配置された係止部18bと、軸部に沿って摺動可能なストッパ19とによって適度に圧縮された状態にあり、この際に発生するコイルスプリング18aの復元力によって、エプロン3は下方(圃場面)に向かって付勢される。 【0036】 そして、前記した状態において、エプロン3が圃場表面に応じて上方に向かって回転しようとすると、ストッパ19がコンプレッションロッド18の上方(連結ピン23側)に摺動し、コイルスプリング18aを上方(連結ピン23側)に移動させようとするが、コンプレッションロッド18に固定された係止部18bによってコイルスプリング18aの上方(連結ピン23側への移動は規制されるので、コイルスプリング18aはより圧縮され、より強い復元力を発生する。その際のより強い復元力によりエプロン3を圃場面により強く接地させる。このように、エプロン3の圃場面との接地圧は、コイルスプリング18aの復元力に抗しながら一定範囲内に収まるようになっている。 【0037】 耕耘作業状態の一形態でもあるエプロン3の最垂下状態にあっては、図3に示すように、エプロン3の下方側への回転に伴ってストッパ19がコンプレッションロッド18の下方(フランジ25側)に向かって摺動され(このとき、コイルスプリング18aの上部は、図2に示す位置と同じ位置にある係止部18bから離脱している)、これに伴って支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向エプロン3側に向かって移動し、押圧部24cが受容部25aに突く(接合する)ことで、エプロン3の垂下が規制される。また、押圧部24cが受容部25aに突かない場合は、コンプレッションロッド18の下部(フランジ25側)に装着されたコイルスプリング18cの上部(連結ピン23側)がストッパ19に係止されることによって、エプロン3の垂下が規制される。なお、コイルスプリング18cの下部(フランジ25側)は常にフランジ25に係止され、下方側への抜け止めがなされる。 【0038】 エプロン3の跳ね上げは、前記したようなエプロン3の最垂下状態(図3に示した状態)から行われるのが望ましい。これは、押圧部24cが受容部25aに接合されることで、レバー24aによるプッシュロッド21b押し込み時におけるピストンロッド21aの突発的な伸張動作が規制され、ピストンロッド21aを緩やかに伸張動作させるためである。 【0039】 エプロン3の跳ね上げ時にあっては、図1に示すように、係止部18bを、複数段設けられた位置調節スリット18b1の上側(連結ピン23側)方向、つまり係止部18bが最上段のスリット位置よりも上側(連結ピン23側)に位置するように、まず移動させることで、コイルスプリング18a及びストッパ19の上側(連結ピン23側)への移動が許容される。また、その状態において、切替装置24のレバー24aによりプッシュロッド21bが押し込まれ(図6(a)参照)、押圧部24cが受容部25aに突いた状態でピストンロッド21aが伸張動作すると、支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向トラクタ側に移動し、ストッパ19がコンプレッションロッド18の上端側(連結ピン23側)へ移動させられ、ストッパ19とフランジ25との間の距離が広げられる(間隔をあける)ことによって、エプロン3の跳ね上げがアシストされる。そして、跳ね上げられたエプロン3は、ストッパ19がコンプレッションロッド18の図示しない係止部に係止されることにより跳ね上げ状態が維持される。 【0040】 上述したように、ピストンロッド21aの伸縮動作により支持部材22をコンプレッションロッド18の軸方向トラクタ側に移動させることによって、(見かけ上、コンプレッションロッド18がその軸方向に移動し)、ストッパ19とフランジ25との間の距離が広げられ、これにより、ガススプリング18をエプロン3や作業機本体10に連結するための取付フランジを用いることなく、エプロン3の跳ね上げをアシストさせることが可能となるので、従来のような取付フランジが必要な場合と比較して、部品及び製造コストが大幅に低減される。また、ピストンロッド21aが大きく縮んだ状態で、切替装置24によるピストンロッド21aの伸張阻止をしておくことで、通常の作業中においてはガススプリング21がエプロン3に作用を及ぼすことはなくなるので、コンプレッションロッド18によるエプロン3を圃場面に接地させる際の接地圧に対してガススプリング21の付勢力が影響を及ぼすことが防止される。」 カ 「【図面の簡単な説明】 【0041】 【図1】エプロンを跳ね上げたときの作業ロータと本発明のエプロン跳ね上げ軽減装置との関係を示したロータリ軸に直交する断面図である。 ・・・ 【図4】(a)は、ガススプリングの伸張力を作用させ、エプロンを跳ね上げたときの本発明のエプロン跳ね上げ装置の平面図、(b)は、(a)の側面図である。」 キ 図面は以下のとおり。 【図1】 【図4】 (2)甲9発明 上記(1)からみて、甲9には、次の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されているものと認める。 「トラクタの後部に装着され、トラクタと共に走行し、作業ロータ5の後方を覆うエプロン3を有する作業機本体10の表面に一端部が連結され、エプロン3の表面に他端部が接続され、その外周を巻回することによって装着されるコイルスプリング18aの復元力によりエプロン3を圃場面に接地させるコンプレッションロッド18と、エプロン3に連結され、コイルスプリング18aの他端部が係止し、エプロン3の回転に伴って軸方向に移動するコンプレッションロッド18を摺接可能に支持するストッパ19と、エプロン3を跳ね上げ方向に付勢する伸縮自在な伸縮部21aを有する付勢手段21と、を備えるロータリ作業機において、付勢手段21が、作業機本体10の表面とエプロン3の表面との間にコンプレッションロッド18と並列に配置され、伸縮部21aが、コンプレッションロッド18に間接的に接合されているエプロン跳ね上げ軽減装置1であって、 作業機本体10は、トラクタ後部の3点リンクヒッチ機構に連結されるトップマスト11と、ロアリンク連結部12とを備え、トップマスト11の下端部にギヤボックス13が配置され、ギヤボックス13から作業機本体10の幅方向に伝動フレーム14と支持フレーム15とが架設され、伝動フレーム14の先端部に固定されたチェーン伝動ケース16と、支持フレーム15の先端部に固定された端部カバー17との間に、作業ロータ5のロータリ軸6が軸回りに回転自在に架設され、 作業ロータ5は、ロータリ軸6とその外周に突設された爪7から構成され、耕耘ロータになるものであり、 伝動フレーム14と支持フレーム15にシールドカバー本体2が支持され、シールドカバー本体2の進行方向後側には作業ロータ5の後方を覆うエプロン3が回転自在に連結され、 コンプレッションロッド18の一端、すなわちトラクタ側の端部(上端)は、伝動フレーム14と支持フレーム15との上に固定された上部ブラケット14b、15bに回転自在に連結され、他端(下端)は、エプロン3の表面に固定されたブラケット3aに軸方向の位置調整が自在な状態に接続され、 ストッパ19は、エプロン3のブラケット3aに接続され、エプロン3の回転に伴い、コンプレッションロッド18に沿って摺動するものであり、 付勢手段(ガススプリング)21は、支持部材22により、作業機本体10の表面とエプロン3の表面との間にコンプレッションロッド18と並列に配置・支持され、 支持部材22の上面には、ガススプリング21のシリンダチューブ21cをコンプレッションロッド18に並列した状態で支持する支持部22a、22bが上向きに突設され、また、支持部材22の上面の進行方向後方側には、ストッパ19に接続し、固定される脚部22cが下向きに設けられており、 支持部材22の左右側面には、上部ブラケット14b、15bとコンプレッションロッド18の一端とを連結する連結部(連結ピン23)が摺接可能に接続されるガイド孔22dが、コンプレッションロッド18の軸方向に向かって穿設されることにより、支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向に向かって移動可能とされ、 ガススプリング21の伸縮部21a(以下、ピストンロッド)の内部には、シリンダチューブ21cに向かって押し込むとピストンロッド21aの任意の位置での停止が解除され、解放する(離す)とピストンロッド21aの伸縮を任意の位置で停止させるプッシュロッド21bが設けられ、ピストンロッド21aの一端部には、プッシュロッド21bの押し込み、解放を行う操作手段としての切替装置24が装着され、 切替装置24の本体側面には、プッシュロッド21bの押し込み、解放(離す)を行う切替レバー24aが水平軸回りに回転自在に設けられ、切替レバー24aをシリンダチューブ21b側に倒すと、プッシュロッド21bが解放され、ピストンロッド21aの伸縮が阻止(ロック、規制)され、また、切替レバー24aをシリンダチューブ21b側とは異なる方向に倒すと、プッシュロッド21bが押し込まれ、ピストンロッド21aは常に伸張方向へ付勢されている状態で伸縮が可能となり、 切替装置24の端部(シリンダチューブ21bとは異なる側)には、コンプレッションロッド18の他端(下端)に抜け止め固定されたフランジ25を離脱可能に押圧する円筒状の押圧部24cが設けられ、また、フランジ25の一端(上部)には、押圧部24cが接合される際に押圧部24cを適正な位置に誘導し、押圧部24cによる押圧を確実に受容する側面視弓状の受容部25aが設けられ、 エプロン3の跳ね上げ時にあっては、ストッパ19の上側(連結ピン23側)への移動が許容される状態において、切替装置24のレバー24aによりプッシュロッド21bが押し込まれ、押圧部24cが受容部25aに突いた状態でピストンロッド21aが伸張動作すると、支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向トラクタ側に移動し、ストッパ19がコンプレッションロッド18の上端側(連結ピン23側)へ移動させられ、ストッパ19とフランジ25との間の距離が広げられる(間隔をあける)ことによって、エプロン3の跳ね上げがアシストされ、そして、跳ね上げられたエプロン3は、ストッパ19がコンプレッションロッド18の係止部に係止されることにより跳ね上げ状態が維持される、 エプロン跳ね上げ軽減装置1。」 3 甲10 (1)甲10の記載 甲10には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、作業機本体に回転可能に支持された作業ロータの上方を覆うシールドカバーの後端部にエプロンの上端部を上下回動自在に枢支したロータリ作業機に関する。」 イ 「【背景技術】 【0002】 このようなロータリ作業機の後部にエプロンを設けたものは、エプロンの前面部分や作業ロータに付着した土を掻き落としたり、作業ロータに設けられた耕耘爪を取り替えたりする場合に、エプロンを跳ね上げた状態に保持しながら、土の掻き落としや耕耘爪の交換が行われるのが一般的であるが、エプロンは重いため、作業者にとってエプロンを跳ね上げる作業は重労働である。またエプロンを跳ね上げた状態に保持するにはコンプレッションロッドに設けられたロック装置を操作してエプロンの回動をロックする作業が必要であるが、この作業も作業者にとってはなはだ煩わしい。 【0003】 そこで、特許文献1に記載されているように、これらの作業を容易にするエプロン装置(文献では均平板装置)が提案されている。このエプロン装置90は、図7(側面図)に示すように、機枠91の下部に回転自在に設けられた作業ロータ(図示せず)の上方を覆うシールドカバー22の後端部に上下方向に回動自在に取り付けられて後方斜め下方へ延びるエプロン25と、エプロン25の上方に配設された機枠91の後部に上下方向に回動自在に軸支されて後方に延びる保持アーム92と、保持アーム92の後部に前後方向に回動自在に取り付けられた軸受け体93と、上側が軸受け体93に摺動可能に挿通して下端部がエプロン25の後側上面に設けられた取付け枠94の上部に回動自在に軸支された保持杆95と、軸受け体93よりも上側の保持杆95及び軸受け体93よりも下側の保持杆95に巻装されて軸受け体93に対し保持杆95を上下方向に付勢するコイルばね96,96'を備えてなる。 【0004】 このエプロン装置90によれば、非作業時において、エプロン25の前面部分や作業ロータに付着した土を掻き落とす場合には、保持アーム92の後部を上方に向かって回動させながらエプロン25の後下端縁を持ち上げて、エプロン25をシールドカバー22との回動支点Pを中心として上方へ回動させる。そして、保持杆95の長手方向の中心軸線が機枠91に対する保持アーム92の回動支点Rを超えた段階で、エプロン25は前方に付勢され、軸受け体93が機枠91に設けられたストッパ枠97に当接して、エプロン25が上方の非作業位置に保持される。 【0005】 【特許文献1】実開昭55−12324号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 この従来のエプロン装置90では、エプロン25を持ち上げ操作するだけで作業姿勢にあるエプロン25を上方の所定の非作業位置に移動させることができるが、作業者が作業姿勢にあるエプロン25を上方に持ち上げるには、重いエプロン25を一定範囲を回動する段階まで持ち上げる必要があり、作業者にとってこの持ち上げ作業は重労働であることに変わりがなかった。 【0007】 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、エプロンを持ち上げて所定の非作業位置に移動させる際の作業者の労力負担を軽減することができるロータリ作業機のエプロン跳ね上げ補助装置を提供することを目的とする。」 ウ 「【発明の効果】 【0016】 本発明に係わるロータリ作業機のエプロン跳ね上げ補助装置によれば、上記特徴を有することによって、エプロンを持ち上げて所定の非作業位置に移動させる際の作業者の労力負担を軽減可能なロータリ作業機のエプロン跳ね上げ補助装置を提供することができる。」 エ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0017】 以下、本発明に係わるロータリ作業機のエプロン跳ね上げ補助装置の実施形態を図1から図6に基づいて説明する。なお、本実施形態は、耕起・砕土用の耕耘作業機を対象として説明する。 【0018】 [第1実施形態] 先ず、エプロン跳ね上げ補助装置を説明する前に、このエプロン跳ね上げ補助装置を装備した耕耘作業機について説明する。耕耘作業機1は、図1(側面図)に示すように、作業機本体10を備える。作業機本体10は、左右方向に延びる本体フレーム11の前部に、図示しない走行機体の後部に設けられた3点リンク連結機構に連結されるトップマスト12とロアーリンク連結部13を設けて、走行機体の後部に昇降可能に装着される。また、本体フレーム11の中央部には走行機体のPTO軸からユニバーサルジョイント等の動力伝達手段を介して走行機体からの動力が伝達される入力軸14を有した図示しないギアボックスが設けられている。 【0019】 本体フレーム11は、ギアボックスから幅方向両側に延びる主フレーム16を有し、走行機体の前進方向に向かって左側の主フレーム16の端部には、チェーン伝動ケース18が垂設され、右側の主フレーム16の端部には図示しない側部フレームがチェーン伝動ケース18と対向して垂設されている。左側の主フレーム16及びチェーン伝動ケース18内には伝動機構が設けられ、このチェーン伝動ケース18と側部フレームの下端部間に多数の耕耘爪が取り付けられた耕耘ロータ20が回転自在に取り付けられている。そして、入力軸14に伝達された動力は、ギアボックスを介して主フレーム16及びチェーン伝動ケース18内の伝動機構に伝達されて、耕耘ロータ20を所定方向に回転させる。 【0020】 耕耘ロータ20の上側はシールドカバー22により覆われ、このシールドカバー22の後側の幅方向両端部には側部カバー23が設けられている。つまり、作業機本体10は、本体フレーム11、トップマスト12、ロアーリンク連結部13、ギアボックス、チェーン伝動ケース18、側部フレーム、耕耘ロータ20、シールドカバー22、側部カバー23等を有して構成されている。 【0021】 シールドカバー22の後端部には、エプロン25の前端部が上下方向に回動可能に枢支されている。エプロン25は後方側へ延びてその先端部が接地して耕土表面を均平にする。エプロン25の上面と主フレーム16との間には、圧縮ばね31が巻装されてエプロン25の作用圧を調整可能なコンプレッションロッド30が設けられ、コンプレッションロッド30には、エプロン25に対してコンプレッションロッド30をロックしてエプロン25の上下回動を規制するロック装置32が設けられている。なお、コンプレッションロッド30の詳細については後述する。 【0022】 シールドカバー22の前方側には、走行機体の後輪幅に合わせて、作業時に耕耘ロータ20による作業深さを一定にしながら圃場に接して走行する一対の接地輪35が設けられている。 【0023】 コンプレッションロッド30は、エプロン25の幅方向に所定間隔を有して複数設けられている。コンプレッションロッド30の前端部は主フレーム16に上下回動可能に枢支され、コンプレッションロッド30の後側はエプロン上面に設けられたブラケット座26に上下回動可能に枢支されたブラケット27に嵌装されている。コンプレッションロッド30には、これに取り付けられた座金33とロック装置27との間に巻装された圧縮ばね31の圧力によりエプロン25の作用圧が調整可能に構成されている。座金33は、コンプレッションロッド30の軸方向に沿って位置変更可能に取り付けられている。 【0024】 チェーン伝動ケース18側の側部カバー23の外側には、エプロン跳ね上げ補助装置40が設けられている。エプロン跳ね上げ補助装置40は、図1及び図2(部分平面図)に示すように、側部カバー23の外側に配設されたガススプリング41と側部カバー23の外側上部に配設された支点ロック装置50を有して構成されている。ガススプリング41は、チェーン伝動ケース18よりも幅方向内側に配設されており、シリンダチューブ42と、シリンダチューブ42内に摺動自在に挿入されたピストンに接続されてシリンダチューブ42の一端から延出するシリンダロッド43とを有してなる。ガススプリング41は、シリンダロッド43に何ら負荷が作用していないときは、所定のガス反力を有して全伸長状態となり、ガススプリング41が縮小する方向にシリンダロッド43に負荷が作用すると、シリンダロッド43の移動量に応じてガス反力が徐々に増大するように構成されている。 【0025】 ガススプリング41のロッド側端部には幅方向に所定間隔を有して対向配置されて長手方向に延びる一対のフランジ部44が設けられ、各フランジ部44には挿通孔が設けられている。この挿通孔に後述するリンク部材51の先端部に取り付けられた回動軸45が挿通されて、ガススプリング41のロッド側端部がリンク部材51を介して上下方向に移動自在に支持される。ガススプリング41のボトム側端部はエプロン25の左側端部に設けられた取付け座28に枢結されている。 【0026】 リンク部材51は、その基端部が側部カバー23の後側上部の外側に上下方向に回動自在に枢結され、リンク部材51の先端側は側部カバー23に沿って延びて先端部に回動軸45を取り付けている。回動軸45は一対のフランジ部44の挿通孔に挿通されてガススプリング41のロッド側端部を回動自在に支持する。このため、回動軸45の中心軸線がガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oになっている。ガススプリング41は、エプロン25が斜め下方に延びて耕耘作業が可能な作業姿勢になると、略全縮状態になるとともに、ガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oがエプロン25の作業機本体10に対する回動支点Pと同軸上又は略同軸上に配置される。このため、エプロン25が作業姿勢になると、ガススプリング41の付勢力によってエプロン25の回動が補助されることはない。 【0027】 このように構成されたエプロン跳ね上げ補助装置40は、ガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oをエプロン25の回動支点Pと同軸上又は略軸上に保持可能な支点ロック装置50を有している。支点ロック装置50は、側部カバー23の外側上部に突設された移動規制板53と、移動規制板53と協働してリンク部材51の先端部を挟持する支点保持機構部60とを有する。 【0028】 移動規制板53は、側部カバー23の外側であってエプロン25の回動支点Pを通る回動中心軸線Qに近接した位置に設けられて、リンク部材51の先端上部と当接可能である。一方、支点保持機構部60は、基端部が側部カバー23の外側に上下方向に回動自在に取り付けられて先端部がリンク部材51の先端下部と当接するロック板61と、ロック板61の上部に固着されて上方へ延びる把手部62と、ロック板61と側部カバー23との間に取り付けられてロック板61を下方に付勢する引っ張りばね63とを有してなる。 【0029】 ロック板61は、その基端部に突出片61aを有し、この突出片61aが側部カバー23に設けられた係止ピン64に当接すると、ロック板61の先端部と移動規制板53との間にリンク部材51の先端を挟持可能である。そして、ロック板61は引っ張りばね63によって常に下方に付勢されているので、ロック板61は、移動規制板53と協働してリンク部材51の先端を挟持した状態に維持することが可能である。このため、リンク部材51の先端部が挟持されると、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oをエプロン25の回動支点Pと同軸上又は略同軸上に保持することができる 【0030】 そして、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oをエプロン25の回動支点Pと同軸上又は略同軸上に保持した状態で、把手部62を前側に傾動すると、引っ張りばね63抗してロック板61が上方へ回動して、ロック板61の先端部がリンク部材51の先端から外れて、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oのロック保持状態を解除することができる。 【0031】 このように構成された耕耘作業機1において、非作業時に作業姿勢にあるエプロン25を上方に持ち上げて非作業位置に移動させる場合には、先ず、コンプレッションロッド30に設けられたロック装置32によるロック状態を解除するとともに、コンプレッションロッド30に対して座金33をフリーな状態にする。そして、エプロン跳ね上げ補助装置40の支持保持機構部60の把手部62を前側に傾動して、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oのロック保持を解除する。そして、エプロン25を上方に持ち上げると、図3(a)(側面図)に示すように、エプロン25は回動支点Pを中心として上方へ回動し、これと同時にガススプリング41のボトム側端部が上方へ移動するとともに、ガススプリング41のロッド側端部がリンク部材51を介して徐々に下方に移動する。またエプロンの上方への回動に伴ってロック装置32がコンプレッションロッド30の前側に移動するとともに、圧縮ばね31及び座金33がコンプレッションロッド30の前側に移動する。そして、ガススプリング41のロッド側端部側の回動支点Oがボトム側の回動支点Rよりも下方に移動して、ガススプリング41の後側が斜め上方に傾き、ガススプリング41が伸長すると、ガススプリング41の付勢力のうちの上方向成分の力によってエプロン25が上方に付勢される。このため、作業者は軽い労力負担でエプロン25を上方へ跳ね上げることができる。 【0032】 そして、エプロン25が所定の非作業位置Pnに移動すると、図3(b)側面図)に示すように、作業者はエプロン25の持ち上げ作業を停止する。このとき、ガススプリング41は伸長しようとしてエプロン25を上方に付勢しようとするため、作業者は小さな力で楽に非作業位置Pnにエプロン25を維持若しくは停止させることができる。そして、ロック装置32によってコンプレッションロッド30を固定して、エプロン25をコンプレッションロッド30を介して作業本体部10に固定する。 【0033】 このように、非作業時において作業姿勢にあるエプロン25を上方へ回動させると、ガススプリング41からの力によってエプロン25の上方への回動を補助する。このため、重いエプロン25を軽い負担で跳ね上げて所定の非作業位置Pnに移動させることができ、エプロン跳ね上げ作業の作業者の労力を軽減することができる。 【0034】 一方、非作業位置Pnに移動したエプロン25を作業姿勢に戻す場合には、ロック装置32を操作してエプロン25に対するコンプレッションロッド30のロック状態を解除し、エプロン25を下方に押圧する。エプロン25が下方に押圧されると、エプロン25は回動支点Pを中心として下方に回動する。これと同時にガススプリング41は、ボトム側端部が下方に移動するとともにロッド側端部が上方に移動しながら縮小する。このときガススプリング41は自己の緩衝効果によって徐々に縮小するため、エプロン25の自重が作用しても、エプロン25が速い速度で回動することはなく、エプロン25が急激に下降することはない。 【0035】 そして、エプロン25が作業姿勢に戻ると、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oはエプロン25の回動支点Pと同軸上又は略同軸上に移動して、ガススプリング41はエプロン25と一体化される。そして、エプロン跳ね上げ補助装置40の支持保持機構部60の把手部62を後側に傾動して、リンク部材51の先端部を移動規制板53とロック板61との間で挟持して、ガススプリング41のロッド側端部を保持する。そして、座金33をコンプレッションロッド30の所定位置に移動させて固定する。 【0036】 このように、非作業位置Pnに移動したエプロン25を作業姿勢に戻すためにエプロン25を下方に押し下げても、エプロン25が急激に下降することはない。また、エプロン25が作業姿勢に戻ると、ガススプリング41はエプロン25と一体化するので、ガススプリング41の付勢力によってエプロン25の上方への回動が補助されることはない。 【0037】 なお、前述した実施形態では、エプロン25が作業姿勢になると、ガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oがエプロン25の作業機本体10に対する回動支点Pと同軸上又は略同軸上に配置される場合を示したが、エプロン25が作業姿勢になると、ガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oがエプロン25の回動支点Pよりやや上方位置に移動し、又は回動支点Oがエプロン25の回動支点Pよりやや下方位置に移動するようにしてもよい。 【0038】 回動支点Oがエプロン25の回動支点Pよりやや上方位置に移動する場合には、エプロン25はガススプリング41によって常に下方向に付勢され、回動支点Oがエプロン25の回動支点Pよりやや下方位置に移動する場合には、エプロン25はガススプリング41によって常に上方向に付勢される。このため、エプロン25が作業姿勢になったときの回動支点Pに対する回動支点Oの位置を選択的に設定可能にすると、圃場条件に応じて、エプロン25を常に下方に付勢する下方付勢状態、エプロン25を常に上方に付勢する上方付勢状態、エプロン25が作業姿勢にあるときは付勢しない中立状態の3態様を使い分けることができる。」 オ 図面は以下のとおり。 【図1】 【図2】 【図3】 (2)甲10発明 上記(1)からみて、甲10には、次の発明(以下「甲10発明」という。)が記載されているものと認める。 「本体フレーム11、トップマスト12、ロアーリンク連結部13、ギアボックス、チェーン伝動ケース18、側部フレーム、耕耘ロータ20、シールドカバー22、側部カバー23等を有して構成されている作業機本体10を備える耕耘作業機1であって、 本体フレーム11は、左右方向に延び、その前部に、走行機体の後部に設けられた3点リンク連結機構に連結されるトップマスト12とロアーリンク連結部13を設け、中央部にはギアボックスが設けられ、ギアボックスから幅方向両側に延びる主フレーム16を有し、 左側の主フレーム16の端部に垂設されたチェーン伝動ケース18と、右側の主フレーム16の端部に垂設された側部フレームの下端部間に多数の耕耘爪が取り付けられた耕耘ロータ20が回転自在に取り付けられており、 耕耘ロータ20の上側はシールドカバー22により覆われ、このシールドカバー22の後側の幅方向両端部には側部カバー23が設けられ、 シールドカバー22の後端部には、後方側へ延びてその先端部が接地して耕土表面を均平にするエプロン25の前端部が上下方向に回動可能に枢支されており、 エプロン25の上面と主フレーム16との間には、圧縮ばね31が巻装されてエプロン25の作用圧を調整可能なコンプレッションロッド30が設けられ、 チェーン伝動ケース18側の側部カバー23の外側には、エプロン跳ね上げ補助装置40が設けられており、 エプロン跳ね上げ補助装置40は、側部カバー23の外側に配設されたガススプリング41と側部カバー23の外側上部に配設された支点ロック装置50を有して構成され、 ガススプリング41は、シリンダチューブ42と、シリンダチューブ42内に摺動自在に挿入されたピストンに接続されてシリンダチューブ42の端から延出するシリンダロッド43とを有してなり、 ガススプリング41のロッド側端部には幅方向に所定間隔を有して対向配置されて長手方向に延びる一対のフランジ部44が設けられ、 ガススプリング41のボトム側端部はエプロン25の左側端部に設けられた取付け座28に枢結され、 リンク部材51が、その基端部が側部カバー23の後側上部の外側に上下方向に回動自在に枢結され、リンク部材51の先端側は側部カバー23に沿って延びて先端部に回動軸45を取り付けており、回動軸45は一対のフランジ部44の挿通孔に挿通されてガススプリング41のロッド側端部を回動自在に支持するため、回動軸45の中心軸線がガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oになっており、 エプロン25が斜め下方に延びて耕耘作業が可能な作業姿勢になると、ガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oがエプロン25の作業機本体10に対する回動支点Pと同軸上又は略同軸上に配置されて、ガススプリング41の付勢力によってエプロン25の回動が補助されることはなく、 エプロン跳ね上げ補助装置40は、ガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oをエプロン25の回動支点Pと同軸上又は略軸上に保持可能な支点ロック装置50を有し、支点ロック装置50は、支点保持機構部60を有し、 非作業時に作業姿勢にあるエプロン25を上方に持ち上げて非作業位置に移動させる場合には、エプロン跳ね上げ補助装置40の支点保持機構部60の把手部62を前側に傾動して、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oのロック保持を解除し、エプロン25を上方に持ち上げると、エプロン25は回動支点Pを中心として上方へ回動し、これと同時にガススプリング41のボトム側端部が上方へ移動するとともに、ガススプリング41のロッド側端部がリンク部材51を介して徐々に下方に移動し、そして、ガススプリング41のロッド側端部側の回動支点Oがボトム側の回動支点Rよりも下方に移動して、ガススプリング41の後側が斜め上方に傾き、ガススプリング41が伸長すると、ガススプリング41の付勢力のうちの上方向成分の力によってエプロン25が上方に付勢されるため、作業者は軽い労力負担でエプロン25を上方へ跳ね上げることができ、そして、エプロン25が所定の非作業位置Pnに移動すると、作業者はエプロン25の持ち上げ作業を停止し、このとき、ガススプリング41は伸長しようとしてエプロン25を上方に付勢しようとするため、作業者は小さな力で楽に非作業位置Pnにエプロン25を維持若しくは停止させることができ、ロック装置32によってコンプレッションロッド30を固定して、エプロン25をコンプレッションロッド30を介して作業本体部10に固定する、 耕耘作業機1。」 4 甲38 (1)甲38の記載 甲38には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本考案は、荷箱の折り畳み式ドアおよびそれを備えた貨物車両に関するものである。 【背景技術】 【0002】 近年、冷凍品等を収納可能な荷箱を有する冷凍車等の貨物車両において、荷箱の開口部を開閉する折り畳み式ドアが知られている(例えば、特許文献1参照)。 この折り畳み式ドアは、上方フレーム(支持杆)、下方フレームおよび一対の側方フレームが設けられた荷箱フレームと、上部ドアと、下部ドアと、ワイヤーと、スプリングを有するワイヤー巻取器と、を備える。」 イ 「【0034】 次に、図2および図4(A)〜(C)を参照して、この荷箱の折り畳み式ドア2の開閉動作について、詳細に説明する。 【0035】 まず、折り畳み式ドア2を開くため、図2および図4(A)に示すように、ドア開閉用ハンドル72をハンドル受け部材71から離して、ロック部74と被ロック部75の係合を解除する。これにより、荷箱の折り畳み式ドア2のロック状態が解除される。 【0036】 この時、第1のガススプリング50が屈曲アーム40を介して下部ドア30および上部ドア20を押し上げ方向に付勢しているので、これによって、折り畳み式ドア2が完全に閉じられた状態から徐々に押し上げられていき(開口部Oが完全閉鎖された状態から徐々に開放されていき)、図4(B)のような中間状態(開口部Oが一部開放された状態)を経て、図4(C)のように、折り畳み式ドア2が完全に押し上げられた状態となる(開口部Oが完全に開放された状態となる)。 【0037】 ここで、第2のガススプリング60は、以下のような付勢動作を行う。 すなわち、図4(B)に示すように、第2のガススプリング60の付勢によって、第2のガススプリング取付回転軸62aが、ドア取付回転軸21aを回転中心として、ドア取付回転軸21aを含む鉛直面G−G’を挟む両側の領域間にわたって、円弧(点Aから点Bを経て点Cに至るまでの太線で示した軌跡を参照)を描くように回動可能になっている。なお、点A、点Bおよび点Cは、それぞれ図4(A)、(B)および(C)における第2のガススプリング取付回転軸62aの位置を示したものである。 【0038】 そして、第2のガススプリング取付回転軸62aがB点からC点に回動するような開口部Oの開放時には、第2のガススプリング取付回転軸62aが、上記両側の領域のうちの鉛直面G−G’よりも押し上げ方向側にある一方の領域に位置することによって、第2のガススプリング60が、上部ドア20および下部ドア30を押し上げ方向に付勢する。 また、第2のガススプリング取付回転軸62aがB点からA点に回動するような開口部Oの閉鎖時には、第2のガススプリング取付回転軸62aが、上記両側の領域のうちの鉛直面G−G’よりも引き込み方向側にある他方の領域に位置することによって、第2のガススプリング60が、上部ドア20および下部ドア30を引き込み方向に付勢する。」 5 甲39 (1)甲39の記載 甲39には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、車両用ドア特に車両ボデー後部の開口部を開閉するバックドアに関する。 【0002】 【従来の技術】図6および図7にバン型車のバックドアを示す。車両ボデー1の開口部11上縁に上下開閉自在にドア2が枢着され、車両ボデー1とドア2との間にガススプリング3が介装されている。そして図7に示すように、ドア2が全閉位置Aから所定開度開いた位置Bの範囲にある時は、ドア2の自重による閉モーメントがガススプリング3による開モーメントより大きく、手を放すとドア2が閉方向に回動するように設定されている。またドア2が所定位置Bから全開位置Cの範囲にある時は、ガススプリング3による開モーメントがドア2の自重による閉モーメントより大きくなってドア2を開方向に付勢するとともにドア2を全開位置Cに保持するように設定されている。これによりドア2を手動で開閉する作業を楽に行えるようにしている。 【0004】この場合、ドアを閉鎖するには、特開平10−153044号公報に示すようにドアと車両ボデーとの間にワイヤを掛け渡し、車両ボデー側に設けた電動式のワイヤ巻取り装置によりワイヤを巻き取るようにすれば良い。一方ドアを開放するには、ワイヤをゆるめた後、ガススプリングによる開モーメントがドアの自重による閉モーメントにより大きくなる位置までドアを機械的に押し出してやれば、その後はガススプリングに付勢されて全開位置まで自然に回動する。しかしながら、この場合ドアを機械的に押し出す機構を室内に設置するスペースを要するのみならず、ドアを開放した時該機構が室外に突出するため見栄えを損なうとともに安全上も好ましくない。なお、特別の押し出し機構を用いないでドアを自然開放させるには、全閉位置からガススプリングによる開モーメントより大きくなるようにガススプリングの取付位置を変更することも考えられるが、ガススプリングの取付位置には制約が多いとともに、取付位置をそのように変更すると、ドアの開閉を手動で行う場合に操作性が極端に悪化するため、電動開閉式とならざるを得ない。専用化の問題としては部品種類が増えることによるコストの上昇である。」 6 甲40 (1)甲40の記載 甲40には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、遠心力を利用して血液等の液体試料を分離する遠心分離機のドア機構に関するものである。」 イ 「【0027】 遠心分離機20による試料の遠心分離作業が終了すると、チャンバー23からロータ24もしくは試料管40を取り出すために操作者が操作パネル30のオープンボタンを操作する。すると、ドア22のロック状態が解除され、ガススプリング43が駆動して伸長し、ドア22を押し上げる。このため、ドア22は、ガススプリング43の伸長作用により蝶番42の軸を中心として上方に徐々に回動して開いていく。ガススプリング43が伸長すると、ストッパ部材50もガススプリング43の伸長動作にともなって上昇し、一定高さまで上昇すると、ストッパ部材50の上面両側部分が上面板31の下面に片当たりして圧縮され、上面板31との接触面積Sが徐々に増大する。そして、一定量圧縮されると、その弾撥力がガススプリング43の伸長力に対して抗力となり、ガススプリング43がストロークエンドになる直前にガススプリング43の伸長動作を停止させる。このため、ドア22も停止し、最大角度開いた状態に保持される。このとき、ドア22はあおり振動、それに伴う振動音が生じることなく静粛に停止する。」 7 甲41 (1)甲41の記載 甲41には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、作業機本体に回転可能に支持された作業ロータの上方がシールドカバーによって覆われ、シールドカバーの後端部にエプロンが上下方向に回動自在に設けられ、エプロン跳ね上げ補助機構が設けられた耕耘作業機に関する。 【背景技術】 【0002】 このような耕耘作業機は、エプロンの内側部分や作業ロータに付着した土を掻き落としたり、作業ロータに設けられた耕耘爪を取り替えたりする場合に、エプロンを跳ね上げた状態に保持しながら、土の掻き落としや耕耘爪の交換が行われるのが一般的である。 【0003】 しかしながら、エプロンは重量物であるため、作業者にとってエプロンを跳ね上げる作業は重労働である。そこで、電動シリンダを駆動源としてエプロンの跳ね上げ動作を自動化する提案もあるが、コストが高くなり実用化には至っていない。 【0004】 そこで、手動でエプロンを跳ね上げるときに、ガススプリングの弾性力を利用して跳ね上げる力を補助するエプロン跳ね上げ補助装置が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載のエプロン跳ね上げ補助装置は、ロータリ作業機の作業機本体の幅方向端部に設けられた側部カバーとエプロンの幅方向端部との間に設けられたガススプリングを有し、ガススプリングのロッド側端部は側部カバーに設けられた案内孔に沿って上下方向に移動可能に支持されている。 【0005】 このエプロン跳ね上げ補助装置は、エプロンを跳ね上げるときに、ガススプリングのロッド側端部が案内孔の下部に移動して、ガススプリングが斜め上方を向いた姿勢になってエプロンの跳ね上げる動作を補助する。」 イ 「【0020】 シールドカバー22の後端部には、エプロン25の前端部が上下方向に回動可能に図2(b)に示す軸23を介して枢支されている。エプロン25は後方側へ延びてその先端部が接地して耕土表面を均平にする。エプロン25の上面と主フレーム16との間には、圧縮ばね31が巻装されてエプロン25の作用圧を調整可能なコンプレッションロッド30が設けられている。 【0021】 コンプレッションロッド30は、エプロン25の幅方向に所定間隔を有して複数設けられている。コンプレッションロッド30の前端部は主フレーム16に上下回動可能に枢支され、コンプレッションロッド30の後側はエプロン上面に設けられたブラケット座26に回動可能に枢支されたブラケット27に嵌装されている。」 8 甲42 (1)甲42の記載 甲42には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、ロータリ耕耘装置のカバー装置に関するものである。」 イ 「【0016】 また、支持棒23の下部における下部ロック具42とコマ37との間に下部押圧バネ43を介装し、支持棒23に対する下部ロック具42の取付位置を上下方向に調節することにより、リヤカバー21の接地圧を調節できる。また、上部ロック具38の固定位置を支持棒23に対してその長手方向に調節すると、リヤカバー21の下限位置を調整できる。」 ウ 「【0018】 また、耕耘カバー19にリヤカバー21を軸支するにあたり、図2及び図5、図6に示すように、持ち上げ付勢手段51を介してリヤカバー21を支持する構成としてもよい。この持ち上げ付勢手段51は次のように構成されている。耕耘カバー19の上面に設けたU型のブラケット52に左右方向の軸53を軸架し、この軸53の一側にはアーム54を後側に延出するように固着し、軸53の他側には持ち上げレバー56を貫通状に取り付け、アーム54と持ち上げレバー56との間にスプリング57を介装し、アーム54を上方に回動しがちに付勢する。なお、アーム54側の大径ハブ54aとレバー56側の小径ハブ56aとを前記軸53と同芯状に配置し、大径ハブ54aの外周にコイル状スプリング57を巻回すると共に該スプリング57の一端をアーム54の基端側に形成する段部に係合し、他端をレバー56の基端側に係合させてなり、レバー56を図5(A)の略水平姿勢から垂直姿勢に回動するとアーム54がスプリングを介して追随しうる構成である。 【0019】 そして、耕耘カバー19の上面に持ち上げ付勢手段51を取り付け、リヤカバー21の外面隆起状に設ける断面コ型の補強部材21aにブラケット21bを固定し、このブラケット21bの連結ピン21cに一端の筒軸58aを貫入保持させたロッド58を前記持ち上げ付勢手段51のアーム54にピン連結し、前記支持棒23を操作しリヤカバー21を自由に回動できるようにする。 【0020】 前記構成によると、持ち上げ付勢手段51によりリヤカバー21を上方に回動するように付勢しているので、大量の泥が付着したリヤカバー21でも持ち上げレバー56の操作により楽に持ち上げることができ、リヤカバー21の清掃を容易にすることができる。なお、持ち上げレバー56を持ち上げ姿勢で保持すべく前記ブラケット52には着脱自在のレバー保持用ピン52aを設けている。」 9 甲47 (1)甲47の記載 甲47には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、作業機本体に回転可能に支持された作業ロータの上方がシールドカバーによって覆われ、シールドカバーの後端部にエプロンが上下方向に回動自在に設けられた耕耘作業機に装着されるエプロン跳ね上げ補助機構及びこれが装着された耕耘作業機に関する。 【背景技術】 【0002】 このような耕耘作業機は、エプロンの内側部分や作業ロータに付着した土を掻き落としたり、作業ロータに設けられた耕耘爪を取り替えたりする場合に、エプロンを跳ね上げた状態に保持しながら、土の掻き落としや耕耘爪の交換が行われるのが一般的である。 【0003】 しかしながら、エプロンは重量物であるため、作業者にとってエプロンを跳ね上げる作業は重労働である。そこで、電動シリンダを駆動源としてエプロンの跳ね上げ動作を自動化する提案もあるが、コストが高くなり実用化には至っていない。 【0004】 そこで、手動でエプロンを跳ね上げるときに、ガススプリングの弾性力を利用して跳ね上げる力を補助するエプロン跳ね上げ補助機構が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載のエプロン跳ね上げ補助機構は、ロータリ作業機の作業機本体の幅方向端部に設けられた側部カバーとエプロンの幅方向端部との間に設けられたガススプリングを有し、ガススプリングのロッド側端部は側部カバーに設けられた案内孔に沿って上下方向に移動可能に支持されている。 【0005】 このエプロン跳ね上げ補助機構は、エプロンを跳ね上げるときに、ガススプリングのロッド側端部が案内孔の下部に移動して、ガススプリングが斜め上方を向いた姿勢になってエプロンの跳ね上げる動作を補助する。」 イ 「【0022】 耕耘ロータ20(図2(b)参照)の上側はシールドカバー22により覆われ、このシールドカバー22の後側の左右方向両端部には図示しない側部カバーが設けられている。つまり、作業機本体10は、本体フレーム11、ギアボックス14、チェーン伝動ケース、側部フレーム、耕耘ロータ20(図2(b)参照)、シールドカバー22、側部カバー等を有して構成されている。 【0023】 シールドカバー22の後端部には、エプロン25の前端部が上下方向に回動可能に図2(b)に示す軸23を介して枢支されている。エプロン25は後方側へ延びてその先端部が接地して耕土表面を均平にする。エプロン25の上面と主フレーム16との間には、圧縮ばね31が巻装されてエプロン25の作用圧を調整可能なコンプレッションロッド30が設けられている。 【0024】 コンプレッションロッド30は、エプロン25の幅方向(左右方向)に所定間隔を有して複数設けられている。コンプレッションロッド30の前端部は主フレーム16に上下回動可能に枢支され、コンプレッションロッド30の後側はエプロン上面に設けられたブラケット座26に回動可能に枢支されたブラケット27に嵌装されている。」 ウ 「【0026】 次に、エプロン跳ね上げ補助機構40について、図1、図2(a)、図2(b)を参照しながら説明する。エプロン跳ね上げ補助機構40は、図1及び図2(b)に示すように、シールドカバー22及び主フレーム16に接続されて前後方向に延びる支持板41と、前側が支持板41に前後方向に移動自在に支持され、後側が支持板41の後側に回動自在に接続されたガススプリング50(図2(b)参照)と、前側が支持板41にガススプリング50の前側とともに前後方向に移動自在に支持され、後側がガススプリング50に沿って後方側へ延びるリンクアーム部材60と、前側が支持板41の後側に設けられた支点軸部45に回動自在に支持されるとともにリンクアーム部材60の後側に回動自在に接続されて、支点軸部45を中心として前後方向に回動可能なリンクプレート70と、上端部がリンクプレート70の後側に回動自在に接続され、下端部がエプロン25に回動自在に接続されたエプロン側接続部材75とを有してなる。」 10 甲43 (1)甲43の記載 甲43には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は耕耘作業機に係り、たとえば、水田を耕耘砕土するとともに、この砕土の表面部を整地する作業を行なうものに関する。」 イ 「【0031】 【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態を添付図面に基づいて説明する。 【0032】1は耕耘作業機で、この耕耘作業機1は、図1及び図2に示すように、作業機本体2と、この作業機本体2に設けられたロータリー3と、前記作業機本体2に上下方向に回動可能に設けられた整地体支持杆4と、前記作業機本体2にロータリー3の後方に位置して上下方向に回動可能に設けられ前記整地体支持杆4に移動可能に係合した整地体5と、この整地体5を前記整地体支持杆4に固定する整地体固定手段7とを具備している。」 ウ 「【0042】つぎに、前記整地体5は、図6に示すように、前記ロータリーカバー16の後端部にヒンジ24にて上下方向に回動可能に取り付けられている。この整地体5は、前記ロータリー3の後方に位置する整地板25と、この整地板25の両側端部にそれぞれ形成された側端板26と、前記整地板25の両側上部にそれぞれ固定されこの整地板25を補強する前後方向を長手方向とした左右の補強兼用の取付け板27を有する取付け支枠28と、前記左右の取付け板27の上端部にて回動自在に支持され前記整地体支持杆4を移動可能に係合した係合部29とを有している。 【0043】そして、前記整地板25の下端部と前記両側端部の側端板26の下端部とにて前記整地体5の下端部6が形成されている。また、前記係合部29は、図3及び図5に示すように、左右方向を長手方向とした円柱状の係合体29a にて形成され、この係合体29a の両端部が前記左右の取付け板27の上端部にて回動自在に支持され、この係合体29a の中間部に前記整地体支持杆4を移動可能に挿通した挿通孔30が形成されている。 【0044】また、図1及び図2に示すように、前記係合部29の挿通孔30に挿通した前記整地体支持杆4の後端部にストッパー31が取り付けられ、このストッパー31に一端部を当接した第1のコイルばね32a が前記整地体支持杆4に装着されている。そして、前記ストッパー31と前記第1のコイルばね32a とにて前記整地体支持杆4が前記係合部29から外れないように抜け止めされている。また、前記係合部29の前方に位置して前記整地体支持杆4に第2のコイルばね32b が装着されている。 【0045】つぎに、前記整地体固定手段7は、図3乃至図5に示すように、前記整地体5の係合部29に係合された係合支枠33と、この係合支枠33に回動可能に支持された切替レバー35と、前記係合支枠33に進退可能に設けられ前記整地体支持杆4の上方固定部21に係脱可能に係合する固定ピン36と、前記切替レバー35の回動操作により前記固定ピン36を前記上方固定部21に係合させる方向または前記上方固定部21から離間させる方向に附勢するスプリング38と、を有している。 【0046】また、前記整地体固定手段7は、前記係合支枠33に支持された前記切替レバー35の軸支部34に回動可能に軸支され前記固定ピン36を備えたピン支持体37を有し、前記整地体支持杆4の下方固定部22に前記固定ピン36が係脱可能に係合するようになっている。」 11 甲44 (1)甲44の記載 甲44には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、農作業機用のストッパ装置に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来、例えば整地体支持用のロッドが挿通されるロッド用孔を有するロッド被挿通体と、このロッド被挿通体の後方位置でロッドに対するロッド被挿通体の移動を規制する規制位置およびロッドに対するロッド被挿通体の移動を許容する許容位置に選択的に移動するストッパ体(ストッパピン)とを備えたストッパ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。」 イ 「【0021】 そして、整地体6およびロッド14間には、ロッド14に対して整地体6を固定するための整地体固定用のストッパ装置21が配設されている。 【0022】 ここで、このストッパ手段であるストッパ装置21は、図3ないし図8に示すように、装置本体23を備え、この装置本体23は、互いに離間対向した左右一対の側面視略U字状の保持枠部24を下部に有している。 【0023】 そして、装置本体23の保持枠部24には、整地体支持用のロッド14がスライド移動可能に挿通されたロッド用孔25を有するロッド被挿通体(タンブラ)26が固定的に設けられている。すなわち、装置本体23の保持枠部24の内側にはロッド被挿通体26が嵌着され、このロッド被挿通体26がその保持枠部24の内側から抜け出ないようにスナップリング27がロッド被挿通体26の溝部28に装着されている。 【0024】 ロッド被挿通体26は、左右方向に軸方向を有する略円柱状のもので、このロッド被挿通体26の略中央部に断面略円形状をなす前後方向のロッド用孔25が形成され、このロッド用孔25にロッド14が挿通されている。また、ロッド被挿通体26の軸方向の略中央部の上下部分には、断面略円形状をなす上下方向のストッパ体用孔29が形成され、両ストッパ体用孔29はロッド用孔25に連通している。 【0025】 なお、ロッド被挿通体26の軸方向両端部の外周側には、整地体6の突出板部12が回動可能に取り付けられている。」 ウ 「【0029】 また一方、図7に示されるように、装置本体23にはストッパピン31を移動させるためのロック部33付の操作レバー34が回動可能に設けられ、この装置本体23内には操作レバー34の回動に連動する巻きばね35、止めピン36、第1押しばね37およびEリング38が配設されている。」 エ 「【0032】 固定手段であるストッパ装置21を用いて整地体6をロッド14に対して固定する場合、ロック部33によるロックを解除してから、操作レバー34を所定方向(図7中、時計回りの方向)に回動操作した後に、両手で整地体6を持上げて軸部9を中心に上方回動させると、ロッド14が軸部16を中心として上方回動するとともに、ロッド被挿通体26がロッド14に対してこのロッド14に沿って移動する。」 12 甲45 (1)甲45の記載 甲45には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、崩れにくい強固な新畦を得ることができる畦塗り機に関するものである。」 イ 「【0013】 畦塗り機21は、トラクタの作業機昇降支持部に連結される機枠22と、機枠22に前端部が上下方向の第1縦軸線を中心として回動可能に取り付けられた回動アーム23と、回動アーム23の後端部に上下方向の第2縦軸線を中心として回動可能に取り付けられた回動機枠24と、回動機枠24にて支持され進行方向前方に移動しながら畦塗り作業をする作業手段25とを備えている。」 ウ 「【0020】 連動棒体53は、円筒状のタンブラ等の筒状支持体55にてスライド可能に支持され、水平方向に対して傾斜した傾斜状態に位置する。つまり、連動棒体53は、筒状支持体55内にスライド可能に挿通され、前処理手段43の上下動に連動して筒状支持体55に対してスライドする。筒状支持体55は、コ字状枠56に前後方向の支軸57を介して回動可能に取り付けられている。コ字状枠56は、回動機枠24のカバー部58の上面側に固着され、このカバー部58にて盛土手段41の切削爪47が覆われている。なお、前処理手段43の切削爪50は、伝動ケース51に固着されたカバー体59にて覆われている。」 エ 「【0022】 そして、連動棒体53の外周側で第1受体61と筒状支持体55の軸方向一端との間には円筒状の金属製のばね、例えば金属線状部材を螺旋状にしたコイルばね(圧縮ばね)63が圧縮された状態で配設されている。すなわち、傾斜状態の連動棒体53の筒状支持体55より下方 側の部分の外周にコイルばね63が嵌着され、このコイルばね63は、第1受体61と筒状支持体55の軸方向一端との間に圧縮された状態で位置する。また、連動棒体53の外周側で第2受体62と筒状支持体55の軸方向他端との間には円筒状の防振ゴム64が配設されている。すなわち、傾斜状態の連動棒体53の筒状支持体55より上方側の部分の外周に防振ゴム64が嵌着され、この防振ゴム64は第2受体62と筒状支持体55の軸方向他端との間に位置する。また、防振ゴム64は、コイルばね63に比べて軸方向に弾性変形しにくいものである。」 オ 「【0029】 前処理手段43が上動すると、連動棒体53が連動し、図3に示すようにコイルばね63が第1受体61と筒状支持体55の軸方向一端との間で挟持されて軸方向に圧縮される。この際、防振ゴム64は、筒状支持体55の軸方向他端から離間する。 【0030】 そして、前処理手段43の切削爪50が硬い物から離れると、コイルばね63の付勢力等によって前処理手段43が元の位置を越えて下動し、今度は防振ゴム64が第2受体62と筒状支持体55の軸方向他端との間で挟持されて軸方向に若干圧縮される。こうしてコイルばね63および防振ゴム64が交互に圧縮され、これらコイルばね63および防振ゴム64がつり合うまで、前処理手段43が上下振動する。」 13 甲46 (1)甲46の記載 甲46には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、適切なオフセット作業ができる農作業機に関するものである。」 イ 「【0020】 ここで、回動体21は、固定機枠11に上下方向の第1回動中心軸線X1を中心として回動可能に連結された長手状の第1アーム(外側支持枠等の第1支持フレーム)31と、第1アーム31にこの第1アーム31の長手方向に沿ってスライド可能に設けられ可動機枠22が上下方向の第2回動中心軸線X2を中心として回動可能に連結された長手状の第2アーム(内側支持枠等の第2支持フレーム)32とを有している。 【0021】 第1回動駆動手段26のシリンダ部26aの基端が固定機枠11の枠部19に回動可能に取り付けられ、第1回動駆動手段26のロッド部26bの先端が第1アーム31の被取付部33に回動可能に取り付けられている。第2回動駆動手段27のシリンダ部27aの基端が第2アーム32の被取付部34に回動可能に取り付けられ、第2回動駆動手段27のロッド部27bの先端が可動機枠22の被取付部35に回動可能に取り付けられている。伸縮駆動手段28のシリンダ部28aの基端が第1アーム31に取り付けられ、伸縮駆動手段28のロッド28bの先端が第2アーム32に取り付けられている。」 14 甲48−1、甲48−2 (1)甲48−2の記載 甲48−1の日本語での公表公報である甲48−2には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0002】 本発明は、モニタや液晶表示装置などの対象物を保持するように構成されたモニタアームやその他の可動アームアセンブリなどの支持アームに関する。」 イ 「【0025】 釣り合い機構31は、ハウジング39をさらに備えてよく、ハウジング39は、ガススプリング38を覆うべくガススプリング38を収容するサイズのチャネルを有している。ハウジングの両端部は、ガススプリングの両端部に取り付けられ、さらには、アームアセンブリ9の端部21及び23に取り付けられてよい。ハウジング39は、好ましくは鋼で作られており、ガスピストンを覆うような、又はガススプリング38の一部分を囲むようなサイズ且つ構成を有するチャネルを定めることができる。ハウジング39は、機械的なファスナを必要とせず、且つシュラウド37をガススプリング38へと直接取り付ける必要なく、ハウジング及びアームアセンブリ9の挟み込みの箇所を覆うべく、シュラウド37をハウジング39に取り付けできるようなサイズ及び構成にされてよい。」 15 甲49 (1)甲49の記載 甲49には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、主に机上等でディスプレイを移動自在に支持するディスプレイ支持装置に関する。」 イ 「【0014】固定基部4は、特に図2に示されるように、天板2に対して着脱可能に固定できるブラケット13と、第1アーム6及び支持アーム12の基端が取り付けられる回転体14とからなり、回転体14は、内部に設けられた挿通穴15をブラケット13の上面に垂設された垂直軸16に上方から挿通することで、垂直軸16の軸心周りに回転自在に取り付けられている。」 ウ 「【0019】19はガススプリング18を覆うためのカバー体であり、このカバー体19は2枚の側板19a、19aと背板19bとから後面が開口するように形成されており、この基端は円弧状に形成された長穴20を介して水平軸10に対して回転自在に取り付けられているとともに、先端は第1アーム6と第2アーム9とを連結する水平軸7に対して取り付けられている。」 エ 「【0021】また、水平軸7は、図3に示されるようにノブ7aを有し、外周面に雄ネジ部が形成された軸7bと、内周面に雌ネジ部が形成された挿通穴を有する軸部材7cとからそれぞれ構成されているため、ノブ7aを締め付けることにより第1アーム6、第2アーム9との関節部をの回動を固定出来るようになっている。なお、水平軸17も同様の構成になっており、ノブ17aを締め付けることにより、ディスプレイ1の上下方向の回動を固定出来るようになっている。」 オ 「【0025】この状態から、さらにディスプレイ1の裏面の把手部23を凹圧してガススプリング18のロッド21を押圧してガススプリング18のロックを解除すると、図4(b)に示されるようにガススプリング18の伸縮棒18b、すなわち支持アーム12が伸張される。この支持アーム18の伸張により、第2アーム9が上方に付勢され、水平軸7を中心に回転されるため、ディスプレイ1はさらに前方位置に押し出されるとともに、上方に移動され、図5に示される状態になる。」 16 甲50 (1)甲50の記載 甲50には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、主に机上等でディスプレイを移動自在に支持するディスプレイ支持装置に係わり、特にディスプレイ支持装置における配線処理構造に関する。」 イ 「【0012】第1リンク10は、長手方向に対して垂直な断面が下向き略コ字形をなす板部材により構成されており(図6参照)、この第1リンク10の左右側板10aの前後には、水平軸9a、9bの挿通孔が形成されている。第2リンク11は、前後位置にそれぞれ水平軸9c、9ディスプレイの挿通孔が形成された2枚の側板11aからなり、側板11aはそれぞれ第1リンク10の側板10aの内側に位置するように設けられている。 【0013】これら2枚の側板11aの内面には、図6に示されるように、左右の垂直板33aと、水平板33bと、垂直板33aの下端縁と水平板33bの左右端縁とを連設する傾斜板33cとから構成される区画板33の垂直板33aの外面が固着されており、左右の側板11aが区画板33により連結されている。この区画板33は、後述するコイルバネの外周面に沿うように第1アーム12の長手方向に設けられており、この区画板33と、下向きに開口する第1リンク10と、側板11aとにより、第1アーム12内に空間部Sが形成されている。 【0014】空間部S内には、図1、図4、図6に示されるように、一端が水平軸9cに係止され、他端が後述する付勢力調整機構34(図7参照)を介して水平軸9bに係止されている略円筒形をなすコイルバネ35が収納されている。コイルバネ35は引っ張りバネであり、第1アーム12の下方への回動に伴い伸長する。」 ウ 「【0018】第2垂直軸8は、図2に示されるように、上下が開口する筒状部材8aと、この筒状部材8a内の略中心部に、取付板40介して取り付けられる筒状部材41とから構成されており、筒状部材8aの上部には、第1リンク10及び第2リンク11を支持する水平軸9b、9ディスプレイの挿通孔が形成された支持板8bが固着されている。この筒状部材41の直径は筒状部材8aの直径よりも小径であり、筒状部材41の外周面と筒状部材8aの内面との間に、電源ケーブルやケーブル類挿通用の周状の配線収納空間46が形成されている。この筒状部材41内に、ブラケット14の上板14a上に立設された支持棒42を挿通し、支持棒42の上端面と筒状部材41の蓋板下面とが摺接された状態で、筒状部材41が支持棒42の軸心周りに回動自在に支持される。」 エ 「【0025】図1に戻って、第2アーム13の一端は、第1垂直軸7上部に水平方向に回動自在に軸着されている。第2アーム13の他端には水平方向を向く水平軸21が取り付けられており、この水平軸21が取付板4の裏面に、軸心周りに回転自在に保持されているため、図1中実線と2点鎖線で示されるように、ディスプレイ1を前後方向に傾けることが出来るようになっている。」 オ 「【0027】次にこのように構成された本発明実施例としてのアーム装置3の作用を、以下図面に基づいて説明する。停止状態にあるディスプレイ1の上下方向の移動は、図3に示されるように第1アーム12の上下回動により行われる。この時、第1、第2リンク10、11からなる平行リンク機構により、第1垂直軸7は垂直状態が保持された状態で上下移動されるので、ディスプレイ1は上下方向の向きを変えることなく上下移動される。よって、使用者はディスプレイ1の手前からディスプレイ1の画面部(図示略)を見ながら上下位置を容易に調整することが出来る。なお、ディスプレイ1の上下向きの微妙な調整は、水平軸21を中心にディスプレイ1を回動させることにより行うことが出来る。 【0028】第1アーム12内に設けられたコイルバネ35は、第1アーム12の上方向への回動時において収縮されて第1アーム12を上方に付勢するため、アーム装置3の先端にディスプレイ1等の重量物を支持する場合にあっても、小さい力でディスプレイ1を上方向へ容易に移動出来るとともに、コイルバネ35が第1アーム12の下方向への回動時において伸長することで、ディスプレイ1の急激な落下等が防止されるようになっている。」 カ 「【0039】例えば、第1アームの上方付勢手段としてコイルバネ35が使用されていたが、円筒形の付勢手段として、例えばガススプリング等が用いられてもよい。また、カバー部材37は、長手方向に対して垂直な断面が略コ字状をなしていたが、カバー部材37は平面板で、側板11aと平面板とにより前記実施例と同様の配線収納空間39が形成されるようになっていてもよい。さらに、区画板33は、長手方向に対する断面形状が上向き略U字状に形成されていてもよい。」 17 甲51 (1)甲51の記載 甲51には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、不使用時は背もたれを前傾させて収納される学校など講義室や会議場に備えられる収納式椅子に関するものである。」 イ 「【0014】 上記の各図に示すように、この収納式椅子は、上面に座1を固設した座受け2が、床にボルトなどで固設された脚座10に前脚3と後脚4で連結されている。そして、後脚4には背もたれ9が固設された逆U字状の背支柱8が固設されている。 【0015】 前脚3の上端は座受け2の前部側に水平方向の軸3aによって、また、下端は脚座10に水平方向の軸3bによって回動可能に取り付けられ、使用時の状態では、ほぼ垂直ないし若干前傾状態で取り付けられている。 後脚4は、円筒状の脚体に上方へ伸出する支持筒5が摺動可能に内装され、下端には取付部材7が固設されている。そして、上端がピン6bで支持筒5に取り付けられ、下端が脚体にピン6aで取り付けられた付勢手段としてのガススプリング6が設けられている。」 ウ 「【0019】 次に、このように構成された収納式椅子の作用について説明する。 収納式椅子の不使用時は図5(a)に示すように、背もたれ9を前へ倒し、全体として前傾した状態で収納される。この状態では後脚4の支持筒5がガススプリング6に付勢されて上昇し、座受け2は前脚3の上端の軸3aを支点として回動し、座受け2のストッパ2aが前脚3の上部前端に当接している。なお、ガススプリング6の付勢力はこの状態においても座受け2を付勢している状態であり、座受け2は後部が大きく上昇した傾斜状態となり、コンパクトに折り畳まれる。」 18 甲52 (1)甲52の記載 甲52には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、学校などの講義室や会議場等に設置され、使用状態と不使用状態とに変化させうるようにした椅子に関する。」 イ 「【0031】 脚体4の内部には、回動付勢手段の一部をなすガススプリング37と、このガススプリング37のシリンダケース37aに外嵌された筒体38とが挿入され、ガススプリング37の下方に突出する伸縮ロッド37bの下端部に穿設された左右方向を向く軸孔39と、ベース3の左右の側面板3aの後端部に穿設された軸孔40とに、左右方向を向く枢軸41を嵌合することにより、ガススプリング37の下端部は、ベース3に、前後方向に回動自在に、かつ脚体4の内部において前後に傾動しうるように支持されている。なお、ベース脚11の両側面板11aには、下方に開口する上向き凹状の長溝42、42が形成され、椅子1を使用状態まで後傾させた際に、ベース脚11が枢軸41と干渉しないようにしてある。 【0032】 ガススプリング37のシリンダケース37aと筒体38の上部は、脚杆12の上端より突出して、背フレーム18の下部まで延出されている。 シリンダケース37aと筒体38の上端部には、左右方向を向く軸孔43、43が形成され、これらの軸孔43と、回動レバー25における左右の側片25bの前端部に形成された軸孔44とに、左右方向を向く軸45を嵌合することにより、ガススプリング37と筒体38の上端部は、回動レバー25の前端部に、相対回動自在に枢着されている。これにより、回動レバー25は、ガススプリング37の伸縮ロッド37bが最大ストローク伸長することにより、常時上向きに付勢され、かつ回動レバー25の上片25aの上面が後部リンク24の上片24aの下面に当接することにより、後部リンク24の下向き回動が阻止されるので、座6は、斜め後上方を向く不使用位置に傾斜して保持される(図5参照)。なお、この状態においては、上部リンク24は、最大上向き回動範囲よりも小さい上向き回動位置で停止している。」 ウ 「【0039】 なお、座6に着座した状態において、背フレーム18の後面板18aと、下向きに回動した回動レバー25の後下面、および後部リンク24の後下面との間に、若干の隙間Sが形成されるようにしてある。 ガススプリング37は強く圧縮された状態となっているので、着座状態から離席すると、椅子1は、ガススプリング37の上向き付勢力により、自動的に不使用状態まで戻される。」 19 甲53 (1)甲53の記載 甲53には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、床面に固定されるベースと、該ベースから起立する支柱と、該支柱上方の座とを有し、座の傾倒により使用状態と不使用状態とに可変する椅子に関する。」 イ 「【0020】 本発明の椅子1の一例としては、図1(a)(b)(c)に示すように、床面に固定されたベース91に対して起立する角柱状の支柱51が、ベース91前方の軸孔93へと枢軸99を介して前後傾倒自在に軸支され、支柱51上方に、略水平方向に形成された支杆54の後方には、略垂直方向に背杆53が形成され、該背杆53の上方に背凭れ21が形成された椅子1であって、前記支柱51上方に位置する座31の後方部分が上下昇降自在に形成されるとともに、座31の前方部分が前後摺動自在に形成されることで、座31を略水平な使用状態から、座31が前方に傾倒した不使用状態に移動させることができるとともに、支柱51の前後傾倒により、(a)椅子1の収納状態1aから、(b)椅子1の引き出し状態1bを経て、(c)座31に着座する着座状態1cへと、変形することが可能な椅子1である。 特に、本発明の椅子は、前記座31の可動機構が簡易な構成であり、従来の支柱の傾倒に追従させて座を可動させるための複雑なリンク機構を用いない利点がある。」 ウ 「【0023】 前記座受け板32の支持片36に設けられた前記軸孔33には、略コ字状の筒体からなるガイド部40の、横方向の円筒部材(枢軸41)が軸支され、該枢軸41へと前記座受け板32の前方32aが回動自在に取り付けられる。 また、枢軸41の左右端から水平方向の円筒部材(ガイド部材42)が、それぞれ保持部43を介して取り付けられ、後述する、支杆54の内部55(空洞55)へと前後摺動自在に挿通される。」 エ 「【0032】 他方、ガススプリング70上方の筒本体72および軸支部71が、内部に空洞を有する角柱状のカバー部材61に収納される。これにより、支柱内部の付勢部材70を露出することなく、また、支柱51内部に異物が入り込むことを防せぎ、付勢部材70の可動部に異物等が付着することを防止することが可能である。 【0033】 そして、この状態(ガススプリング70がカバー部材61で覆われた状態)で、支柱51の内部へと挿通された後、カバー部材61およびガススプリング70上方の軸支部72が、前記支柱51の上方に突出した状態で、前記座受け板32の後方32bに形成された支持片37の軸孔34へと、枢軸35を用いて一体に軸支される。 【0034】 すなわち、ガススプリング70と、カバー部材61と、座受け板32とが回動自在に軸支されており、特に、ガススプリング70の上方への付勢力により、座受け板32の後方部分32bが、常に上方へと押し上げられる構成である。」 20 甲54 (1)甲54の記載 甲54には以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、農業用作業台、特に、農業機械の補助作業者用等の重量が重い農業用作業台に関する。」 イ 「【0006】 【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る農業用作業台を、図1及び図2を参照して詳細に説明する。図1は、農業機械の補助作業者用の作業台を示す。平板状の作業台10の下面10aに、断面が4角形の管状部材から成る支持支柱11を下方に突設する。手すり付き階段12及び安全手すり13を作業台10に夫々取り付ける。支持部材(基台)3を、この農業機械1のフレーム2から横方向に延出する。断面が4角形の管状部材から成る支持支柱4を、支持部材3に上方に突設する。 【0007】図2(a)に示すように、上述の支持支柱4、11を摺動可能に嵌合する。支持支柱4、11は断面が4角形なので、支持支柱4は支持支柱11を、作業台10が水平に昇降可能に且つ回転不能に支持する。ガススプリング15を、支持支柱4、11の内部の作業台10と支持部材3との間に介装する。ガススプリング15は、シリンダ部16、バルブ部17及びノブ部18とから成る。」 21 甲55 (1)甲55の記載 甲55には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、茶樹畝に栽培された茶樹の上部にスクリーンを張り込んだり、茶樹の上部からスクリーンを巻き取ったりするためのスクリーン巻取機に関するものである。」 イ 「【0017】 伸縮フレーム30は、図4及び図5に示すように、入れ子状に組まれた上部中空管35及び下部中空管36と、該上部中空管35及び下部中空管36の管内に挿入されるとともに、上端及び下端がそれぞれ上部中空管35及び下部中空管36に固定され、該上部中空管35及び該下部中空管36が上下方向へ相対的に離れるように付勢する付勢手段37と、上部中空管35及び下部中空管36を上下方向における任意又は複数の相対位置関係で固定する固定手段38とを備えている。本例では、上部中空管35の中に下部中空管36が挿入されることにより入れ子状に組まれている。付勢手段37としては、ガススプリングを例示する。固定手段38としては、上部中空管35に取り付けられた雌ネジ部材39と、該雌ネジ部材39に螺入されるとともに、先端が上部中空管35の周壁に設けられた貫通穴を経て下部中空管36の外周に離接可能に設けられた固定ボルト40とにより構成されている。図6に示すように、地面に対し茶樹畝Uの上面が相対的に傾斜している場合に、該一対の伸縮フレーム30の長さを個別に調節することにより、茶樹Tの上面に対して巻取軸4が平行になるようにすることができる。」 第7 当審の判断 1 無効理由1 (1)本件訂正発明1 ア 対比・判断 本件訂正発明1と公然実施発明とを対比する。 (ア)公然実施発明の「農作業機」、「トラクタに連結される機体」、「この機体に設けられた、耕耘作業をする耕耘ロータ」、「その前方をシールドカバーに上下方向に回動可能に連結されて、耕耘ロータの後方で整地作業するエプロン」は、それぞれ本件訂正発明1の、「農作業機」、「走行車に連結される機体」、「この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体」、「前記機体に上下方向に回動可能に設けられ、前記耕耘体の後方で整地作業する整地体」に相当する。 (イ)公然実施発明において、「クイックアシスト機構」は「ガススプリングの付勢力を利用して」「エプロンの持ち上げをアシストする」ことから、公然実施発明の「ガススプリング」は、本件訂正発明1の「持上アシスト用の付勢体」に相当する。 また、公然実施発明の「最上げ位置」は、「コンプレッションロッドの所定の位置に空けられた穴に、レバーブラケットのピンが自動的に挿入された状態において、エプロンが固定された最上げ位置である」から、本件訂正発明1の「整地体」の「最上げ位置」に相当する。 これらの検討によれば、公然実施発明の「ガススプリングを有し、このガススプリングの付勢力を利用して、最上げ位置まで前記エプロンの持ち上げをアシストするクイックアシスト機構」は、本件訂正発明1の「持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して最上げ位置まで前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段」に相当する。 (ウ)公然実施発明の「前記クイックアシスト機構は、その一方側が前記シールドカバーに取り付けられ、かつ、その他方側が前記エプロンに取り付けられている」ことは、本件訂正発明1の「前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている」ことに相当する。 (エ)公然実施発明の「エプロン」が「上下方向に回動可能」であることを踏まえると、本件訂正発明1の「前記付勢体の付勢力のみによって前記整地体が前記最上げ位置まで上方回動すること」と、公然実施発明の「このガススプリングの付勢力を利用して、最上げ位置まで前記エプロンの持ち上げをアシストする」こととは、「前記付勢体の付勢力を利用して前記整地体が前記最上げ位置まで上方回動すること」で共通する。 (オ)以上のことから、本件訂正発明1と公然実施発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 前記機体に上下方向に回動可能に設けられ、前記耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して最上げ位置まで前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられ、 前記付勢体の不勢力を利用して前記整地体が前記最上げ位置まで上方回動する 農作業機。」で一致するものの、整地体が最上げ位置まで上方回動することが、本件訂正発明1は、付勢体の付勢力のみによって行われるのに対し、公然実施発明は、付勢体の付勢力を利用しているものの、該付勢力のみではない点(以下「相違点1」という。)で相違する。 イ 判断 上記アの相違点1について検討する。 (ア)公然実施発明において、「クイックアシスト機構」を設けるにあたって、甲9(第6の2(1)イ)、甲10(第6の3(1)イ)、甲41(第6の7(1)ア)及び甲47(第6の9(1)ア))に記載されているように、重いエプロンを持ち上げる作業は非常に負荷がかかるものであるから、該負荷を軽減するために設けることは、本件出願前に周知の課題である。よって、当業者であれば、エプロンを跳ね上げる際に作業者にかかる負荷をより軽減するような変更を適宜採用しようとするものと認められる。 また同時に、近年、農業従事者の高齢化の問題も一般に知られていることであるから、農作業全体においても、作業者の負荷をより軽減しようとすることは、当業者が当然考慮すべき事項である。 そして、どの程度負荷を軽くするかは、エプロンを跳ね上げる作業者を想定して、当業者が適宜決定することであるところ、上記の課題を踏まえた上で、農業従事者の負荷を最大限軽減するように跳ね上げる作業の負荷をゼロとすること、例えば、付勢体(ガススプリング)の付勢力をより強くすることによって、整地体の最上げ位置までの上方回動を付勢体の付勢力のみによって行うようにすることにより、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことと認める。 (イ)被請求人は、農作業機を用いた動画や測定結果報告書の証拠(甲2、甲3の1、甲3の2、甲34等)の農作業機は、ワンタッチホルダが取り外された状態であって、当該ワンタッチホルダを取り付ければ、エプロンの動作は当然異なったものとなり、公然実施発明が「前記付勢体の付勢力のみによって前記整地体が前記最上げ位置まで上方回動する」との構成を備えるか否か不明である旨(第5の2(2))、主張する。 しかしながら、ワンタッチホルダが取り外されている甲3の1の動画の最上げ位置のあそび範囲において、手を離した瞬間にエプロン(整地体)が上方回動しているようにもみえている(第5の2(2)の被請求人の主張)ことからみて、相当なアシスト機能が働いているといえるから、当該ワンタッチホルダが取り付けられた状態においても、仮に手を離していてもエプロンが上方に回動するかどうか不明であるものの、少なくとも手を添えてエプロンを上方回動する際には、アシスト機能が働いているものと認められる。 そして、上記(ア)で検討したとおり、周知の課題等を鑑みて、整地体の最上げ位置までの上方回動を付勢体の付勢力のみによって行うようにすることにより、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこと判断したことに誤りは無い。 よって、被請求人の主張は採用できない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、公然実施発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件訂正発明2 ア 対比 本件訂正発明2と公然実施発明を対比する。 (ア)公然実施発明の「農作業機」、「トラクタに連結される機体」、「この機体に設けられた、耕耘作業をする耕耘ロータ」、「耕耘ロータの後方で整地作業するエプロン」は、それぞれ本件訂正発明2の、「農作業機」、「走行車に連結される機体」、「この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体」、「この耕耘体の後方で整地作業する整地体」に相当する。 (イ)公然実施発明において、「クイックアシスト機構」は「ガススプリングの付勢力を利用して」「エプロンの持ち上げをアシストする」ことから、公然実施発明の「ガススプリング」は、本件訂正発明2の「持上アシスト用の付勢体」に相当する。 してみると、公然実施発明の「ガススプリングを有し、このガススプリングの付勢力を利用して、最上げ位置まで前記エプロンの持ち上げをアシストするクイックアシスト機構」は、本件訂正発明2の「持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段」に相当する。 (ウ)公然実施発明の「前記クイックアシスト機構は、その一方側が前記シールドカバーに取り付けられ、かつ、その他方側が前記エプロンに取り付けられている」ことは、本件訂正発明2の「前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている」ことに相当する。 (エ)公然実施発明の「コンプレッションロッド」及び「コイルバネ」は、それぞれ本件訂正発明2の「連結ロッド」及び「コイルバネ」に相当する。 公然実施発明の「コンプレッションロッド」は、「その一方を機体に、他方をエプロンから上方に突設したブラケットに連結された」ものであって、「その外周側にコイルバネが配設」されているから、技術常識を考慮すれば、「コンプレッションロッド」及び「コイルバネ」は、「エプロンの圃場面に対する接地圧を調整する」手段を構成する部材であること、及び該「コイルバネ」は、接地圧調整用のものであることは自明である。 してみると、公然実施発明の「その一方を機体に、他方をエプロンから上方に突設したブラケットに連結され」、「その外周側にコイルバネが配設」された「コンプレッションロッド」は、本件訂正発明2の「前記機体と前記整地体との間に設けられ、前記整地体の圃場面に対する接地圧を調整する接地圧調整手段」に相当し、また、これらの検討を踏まえると、公然実施発明の「コンプレッションロッド」及び「コイルバネ」は、本件訂正発明2の「接地圧調整手段」であって、「連結ロッドと、この連結ロッドの外周側に配設された接地圧調整用のコイルバネを有」することに相当する。 (オ)以上のことから、本件訂正発明2と公然実施発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 前記機体と前記整地体との間に設けられ、前記整地体の圃場面に対する接地圧を調整する接地圧調整手段と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記接地圧調整手段は、連結ロッドと、この連結ロッドの外周側に配設された接地圧調整用のコイルバネとを有する 農作業機。」で一致するものの、持上アシスト手段が、本件訂正発明2は、「長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する」のに対し、公然実施発明は、本件訂正発明2の長尺体、移動体及び回動体を備えているかどうか不明な点(以下「相違点2」という。)、で相違している。 イ 判断 持上アシスト手段が備えた上記相違点2に係る構成は、請求人が提示した各証拠には記載されておらず、上記相違点2に係る構成を採用することが当業者にとって適宜なし得るともいえない。 請求人は、上記相違点2に係る構成は、甲43ないし甲45に記載されている旨(第4の4(2)ウ)主張するが、甲43ないし甲45には、上記相違点2の構成は見当たらない。 仮に、上記相違点2の構成が、本件の原出願の優先日前に公知または周知の技術であったとしても、公然実施発明の「クイックアシスト機構」は、「シールドカバーの上部に」「突設され」た「ベースプレート」に設けられた「長孔にアシストリンクAが移動可能に設けられ、アシストリンクAの長孔にアシストリンクBが移動可能に設けられ、アシストリンクBの長孔の長孔に」、「エプロンの上部に」「突設され」た「突部が移動可能に設けられ」た構成を備えているから、これらのリンク等を本件訂正発明2の長尺体、移動体及び回動体に代える動機付けが存在しない。 よって、公然実施発明に甲43ないし甲45等に記載された技術事項を適用することにより、上記相違点2に係る本件訂正発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 以上のことから、本件訂正発明2は、公然実施発明及びその他の証拠から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件訂正発明3 ア 対比 (ア)本件訂正発明3と公然実施発明を対比する。 本件訂正発明2と公然実施発明を対比した上記(2)アの(ア)〜(ウ)については、本件訂正発明2を本件訂正発明3に読み替えることで、本件訂正発明3と公然実施発明の対比においても同様である。 (イ)公然実施発明の「クイックアシスト機構」の「アシストハンドル」は、本件訂正発明3の「持上アシスト手段」の「操作部材」に相当するから、公然実施発明の「クイックアシスト機構」は、「アシストハンドルの操作によりアシスト機能が作用する状態および作用しない状態に切替可能となって」いることは、本件訂正発明3の「持上アシスト手段は、」「操作部材とを有し、かつ、前記操作部材の操作によりアシストオフ状態およびアシストオン状態に切り替え可能となって」いることに相当する。 (ウ)以上のことから、本件訂正発明3と公然実施発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、操作部材とを有し、かつ、前記操作部材の操作によりアシストオフ状態およびアシストオン状態に切換可能となっている 農作業機。」で一致するものの、持上アシスト手段が、本件訂正発明3は、「長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体と、前記移動体に回動可能に取り付けた操作部材とを有し、」「前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する」のに対し、公然実施発明は、本件訂正発明3の長尺体、移動体及び回動体を備えているのか、操作部材が移動体に回動可能に取り付けたのか不明な点(以下「相違点3」という。)、で相違している。 イ 判断 上記アの相違点3について検討する。 相違点3の構成のうち、少なくとも本件訂正発明3が「長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体を有し、」、「前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する」ことは、上記(2)ア(オ)で挙げた相違点2でいうところの「長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体を有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する」ことと同一のものであるから、上記(2)イで検討した理由と同じ理由により、公然実施発明に甲43ないし甲45等に記載の技術事項を適用することにより、上記の同一の点を含む上記相違点3に係る本件訂正発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明3は、公然実施発明及びその他の証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件訂正発明4 ア 対比 本件訂正発明4と公然実施発明を対比する。 (ア)本件訂正発明2と公然実施発明を対比した上記(2)アの(ア)〜(ウ)については、本件訂正発明2を本件訂正発明4に読み替えることで、本件訂正発明4と公然実施発明の対比においても同様である。 (イ)公然実施発明の「ガススプリングは、その一部が、下方をシールドカバーにより、側方をベースプレートにより、上方をアシストリンクAにより囲われて」いることは、本件訂正発明4の「前記付勢体の少なくとも一部は、前記持上アシスト手段内に収納されていること」に相当する。 (ウ)以上のことから、本件訂正発明4と公然実施発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記付勢体の少なくとも一部は、前記持上アシスト手段内に収納されている 農作業機。」で一致するものの、持上アシスト手段が、本件訂正発明4は、「長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動」するのに対し、公然実施発明は、本件訂正発明4の長尺体、移動体、回動体を備えているかどうか不明である点(以下「相違点4」という。)、で相違している。 イ 判断 上記アの相違点4について検討する。 上記相違点4は、上記(2)ア(オ)で挙げた相違点2と同一のものであるから、上記(2)イで検討した理由と同じ理由により、公然実施発明に甲43ないし甲45等に記載の技術事項を適用することにより、上記の同一の点を含む上記相違点4に係る本件訂正発明4の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明4は、公然実施発明及びその他の証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件訂正発明5 ア 対比 本件訂正発明5と公然実施発明を対比する。 (ア)本件訂正発明2と公然実施発明を対比した上記(2)アの(ア)〜(ウ)については、本件訂正発明2を本件訂正発明5に読み替えることで、本件訂正発明5と公然実施発明の対比においても同様である。 (イ)公然実施発明の「クイックアシスト機構」は、「ガススプリングの付勢力を利用」するものであるから、「ガススプリング」は「付勢体」ということができる。 よって、公然実施発明の付勢体といえるガススプリングと、本件訂正発明5の「前記付勢体は、前記長尺体内に収納されたガススプリングである」こととは、「前記付勢体はガススプリングである」ことで共通する。 (ウ)以上のことから、本件訂正発明5と公然実施発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている 農作業機であって、 付勢体はガススプリングである 農作業機。」で一致するものの、持上アシスト手段が、本件訂正発明5は、「筒状に形成された長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動し、」「前記付勢体は、前記長尺体内に収納された」のに対し、公然実施発明は、本件訂正発明5の長尺体、移動体及び回動体を備えているのか不明であって、さらにガススプリングが長尺体に収納されていない点(以下「相違点5」という。)、で相違している。 イ 判断 上記アの相違点5について検討する。 相違点5の構成のうち、少なくとも「長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動」することは、上記(2)ア(オ)で挙げた相違点2でいうところの「長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体を有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動」することと同一のものであるから、上記(2)イで検討した理由と同じ理由により、公然実施発明に甲43ないし甲45等に記載の技術事項を適用することにより、上記相違点5に係る本件訂正発明5の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明5は、公然実施発明及びその他の証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件訂正発明6 ア 対比 本件訂正発明6と公然実施発明を対比する。 本件訂正発明2と公然実施発明を対比した上記(2)アの(ア)〜(ウ)については、本件訂正発明2を本件訂正発明6に読み替えることで、本件訂正発明6と公然実施発明の対比においても同様である。 よって、本件訂正発明6と公然実施発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている 農作業機。」で一致するものの、持上アシスト手段が、本件訂正発明6は、筒状に形成された長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動し、前記付勢体は、前記長尺体内に収納されており、前記持上アシスト手段の前記長尺体の一方側の端部である前端部は、前記機体のフレームに設けられた取付部に回動可能に取り付けられているのに対し、公然実施発明は、本件訂正発明6の長尺体、移動体及び回動体とそれらに関する構成を備えているのか不明である点(以下「相違点6」という。)、で相違している。 イ 判断 上記アの相違点6について検討する。 相違点6の構成のうち、少なくとも「長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動」することは、上記(2)ア(オ)で挙げた相違点2でいうところの「長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体を有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動」することと同一のものであるから、上記(2)イで検討した理由と同じ理由により、公然実施発明に甲43ないし甲45等に記載の技術事項を適用することにより、上記相違点6に係る本件訂正発明6の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明6は、公然実施発明及びその他の証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 無効理由2 (1)本件訂正発明1 ア 対比 本件訂正発明1と甲9発明を対比する。 (ア)甲9発明の「トラクタ」、「作業機本体10」、「ロータリ作業機」は、それぞれ本件訂正発明1の「走行車」、「機体」、「農作業機」に相当する。 甲9発明において、「作業機本体10は、トラクタ後部の3点リンクヒッチ機構に連結されるトップマスト11と、ロアリンク連結部12とを備え」ているから、甲9発明の「トラクタ後部に装着され、トラクタと共に走行」する「作業機本体10」は、本件訂正発明1の「走行車に連結される機体」に相当する。 (イ)甲9発明の「ロータリ軸6とその外周に突設された爪7から構成され、耕耘ロータになるものであ」る「作業ロータ5」は、本件訂正発明1の「耕耘作業をする耕耘体」に相当する。 甲9発明において、「伝動フレーム14の先端部に固定されたチェーン伝動ケース16と、支持フレーム15の先端部に固定された端部カバー17との間に、作業ロータ5のロータリ軸6が軸回りに回転自在に架設され」ており、また、「伝動フレーム14」や「支持フレーム15」は、「作業機本体10」の一部である。 これらの検討から、甲9発明の「作業ロータ5」は、本件訂正発明1の「この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体」に相当する。 (ウ)甲9発明の「エプロン3」について、甲9に、その背景技術として、「耕耘作業時に上下方向に揺動しながら機体後方に排出される耕耘土の均平を行うために、作業ロータの後方にエプロン(リヤカバー)が回動自在に設けられている」(上記第5の2(1)イ【0002】)と記載されていることからみて、甲9発明の「エプロン3」は、整地を行うことは自明であるから、本件訂正発明1の「整地作業する整地体」に相当する。 甲9発明において、「エプロン3」は「回転自在に連結され」ていることから、その回転は上下方向であることは自明である。 甲9発明において、「シールドカバー本体2」は、「伝動フレーム14と支持フレーム15」に「支持され」、そして「伝動フレーム14と支持フレーム15」は、「ギヤボックス13から作業機本体10の幅方向に」「架設され」たものであるから、「シールドカバー本体2」は、「作業機本体10」を構成する部材であるといえる。 以上の検討から、甲9発明の「シールドカバー本体2の進行方向後側には作業ロータ5の後方を覆う」ように「回転自在に連結され」た「エプロン3」は、本件訂正発明1の「前記機体に上下方向に回動可能に設けられ、前記耕耘体の後方で整地作業する整地体」に相当する。 (エ)甲9発明において、「付勢体21」(「ガススプリング21」)は、「エプロン跳ね上げ軽減装置1」を構成しており、「ガススプリング21」の「ピストンロッド21aが伸張動作すると、」「エプロン3の跳ね上げがアシストされ」ることからみて、甲9発明の「付勢体21」、「エプロン跳ね上げ軽減装置1」は、それぞれ本件訂正発明1の「持上アシスト用の付勢体」、「持上アシスト手段」に相当する。 してみると、甲9発明の「付勢体21」を備えた「エプロン跳ね上げ軽減装置1」と、本件訂正発明1の「持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して最上げ位置まで前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段」とは、「持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段」で共通する。 (オ)甲9発明において、「支持部材22の左右側面には、上部ブラケット14b、15bとコンプレッションロッド18の一端とを連結する連結部(連結ピン23)が摺接可能に接続されるガイド孔22dが、コンプレッションロッド18の軸方向に向かって穿設されることにより、支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向に向かって移動可能とされ」ており、「上部ブラケット14b、15b」は、「伝動フレーム14と支持フレーム15との上に固定された」ものであるから、「支持部材22」の一端側は、「連結部(連結ピン23)」を介して「伝動フレーム14と支持フレーム15」の「上部ブラケット14b、15b」に支持されているといえる。 また、「支持部材22の上面の進行方向後方側には、ストッパ19に接続し、固定される脚部22cが下向きに設けられており、」「ストッパ19は、エプロン3のブラケット3aに接続され」ていることから、支持部材22の進行方向後方側は、「ストッパ19」を介して「エプロン3」の「ブラケット3a」に支持されているといえる。 そして、上記の支持部材22の一端部及び進行方向後方側での支持態様、及び「付勢手段(以下、ガススプリング)21は、支持部材22により、作業機本体10の表面とエプロン3の表面との間にコンプレッションロッド18と並列に配置・支持され」ていることからみて、甲9発明において、「付勢手段21」(「ガススプリング21」)は、その一端側が、「伝動フレーム14と支持フレーム15」の「上部ブラケット14b、15b」に、他端側が、「ストッパ19」を介して「エプロン3」の「ブラケット3a」に支持されている。 してみると、甲9発明の上記ガススプリング21の一端側及び他端側の支持態様は、本件訂正発明1の「前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている」ことに相当する。 (カ)本件訂正発明1の「前記付勢体の付勢力のみによって前記整地体が前記最上げ位置まで上方回動すること」と、甲9発明の「ガススプリング21」の「ピストンロッド21aが伸張動作すると、」「エプロン3の跳ね上げがアシストされ」ることとは、前記付勢体の付勢力を利用して前記整地体が上方回動することで共通する。 (キ)上記(ア)ないし(カ)からみて、本件訂正発明1と甲9発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 前記機体に上下方向に回動可能に設けられ、前記耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられ、 前記付勢体の付勢力を利用して前記整地体が上方回動すること 農作業機。」で一致するものの(以下「一致点」という。)、付勢体の不勢力を利用した整地体の持ち上げについて、本件訂正発明1は、付勢体の付勢力のみによって最上げ位置まで上方回動するのに対して、甲9発明は、付勢体の付勢力のみかどうか、またその付勢力のみで最上げ位置まで上方回動するのか不明である点(以下「相違点A」という。)、で相違している。 イ 判断 上記相違点Aについて検討する。 (ア)甲9発明は、「跳ね上げられたエプロン3は、ストッパ19がコンプレッションロッド18の係止部に係止されることにより跳ね上げ状態が維持される」ものとすれば、跳ね上げられたエプロン3が、跳ね上げ状態が維持される位置以上に持ち上げることは想定していないから、ストッパ19がコンプレッションロッド18の係止部に係止されたときのエプロン3の跳ね上げ状態が、甲9発明におけるエプロン3の最上げ位置といえる。 そして、甲9の【図1】は、「エプロンを跳ね上げたときの作業ロータと本発明のエプロン跳ね上げ軽減装置との関係を示したロータリ軸に直交する断面図であ」(上記第5の2(1)カ【0041】)るから、該図1の状態が、エプロン3の跳ね上げ状態が維持された状態、つまり最上げ位置といえる。 (イ)ここで、甲9の図1をみると、連結ピン23は、支持部材22のガイド孔22dの後端部よりも所定距離だけ前方に位置しており、その結果、支持部材22は、その所定距離分、更に前方へ移動可能であるものと認められ、「ストッパ19がコンプレッションロッド18の係止部に係止されること」を考慮しなければ、エプロン3は更に跳ね上げ可能であって、その状態において、ガスススプリング21は、まだ最大長に達していないといえるから、ガススプリング21の伸長力は残っているものと認められ、その位置、つまり上記(ア)のエプロン3の跳ね上げ状態が維持された状態である最上げ位置においても、ガススプリング21がエプロン3の持ち上げをアシストする力を残しているものと認められる。 (ウ)また、甲9の記載によれば、甲9発明は「トラクタの後部に昇降可能に装着された作業ロータの上方を覆うエプロンを備えるロータリ作業機において、エプロンを跳ね上げる際の作業者の負荷を軽減するエプロン跳ね上げ軽減装置に関する」(上記第6の2(1)ア【0001】)ものであるところ、該エプロン跳ね上げ軽減装置を設けるにあたっては、「エプロンは、耕耘爪が跳ね上げる耕耘土の飛散防止を行うと共に耕耘作業時に上下方向に揺動しながら後方に排出される耕耘土の均平を行うために、板厚の厚い板材を用いて頑丈に、重く作られており、爪の付け替え作業や作業後の整備等を行う際に、1人でエプロンを跳ね上げるのは容易ではな」(上記第6の2(1)イ【0004】)いという課題が存在し、そのために従来では「エプロンを跳ね上げる際に作業者にかかる負荷を軽減する軽減装置として、エプロンと作業機本体との間にエプロンを跳ね上げ方向に付勢するガススプリングを設け」(同【0005】)ており、甲9の記載に接した当業者であれば、エプロンを跳ね上げる際に作業者にかかる負荷をより軽減するような変更を適宜採用しようとするものと認められる。 同時に、近年、農業従事者の高齢化の問題も一般に知られていることであるから、農作業全体においても、作業者の負荷をより軽減しようとすることは、当業者が当然考慮すべき事項である。 そして、どの程度負荷を軽くするかは、エプロンを跳ね上げる作業者を想定して、当業者が適宜決定することであるところ、甲9発明において、上記の課題を踏まえた上で、農業従事者の負荷を最大限軽減するように跳ね上げる作業の負荷をゼロとすること、例えば、付勢体(ガススプリング)の付勢力をより強くすることによって、整地体の最上げ位置までの上方回動を付勢体の付勢力のみによって行うようにすることにより、上記相違点Aに係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことと認める。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲9発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件訂正発明2 ア 対比・判断 本件訂正発明2と甲9発明を対比する。 (ア)甲9発明の「トラクタ」、「作業機本体10」、「ロータリ作業機」は、それぞれ本件訂正発明2の「走行車」、「機体」、「農作業機」に相当する。 甲9発明において、「作業機本体10は、トラクタ後部の3点リンクヒッチ機構に連結されるトップマスト11と、ロアリンク連結部12とを備え」ているから、甲9発明の「トラクタ後部に装着され、トラクタと共に走行」する「作業機本体10」は、本件訂正発明2の「走行車に連結される機体」に相当する。 (イ)甲9発明の「ロータリ軸6とその外周に突設された爪7から構成され、耕耘ロータになるものであ」る「作業ロータ5」は、本件訂正発明2の「耕耘作業をする耕耘体」に相当する。 甲9発明において、「作業機本体10」の「ギヤボックス13から作業機本体10の幅方向に伝動フレーム14と支持フレーム15とが架設され、伝動フレーム14の先端部に固定されたチェーン伝動ケース16と、支持フレーム15の先端部に固定された端部カバー17との間に、」その「ロータリ軸6が軸回りに回転自在に架設され」た「作業ロータ5」は、本件訂正発明2の「この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体」に相当する。 (ウ)甲9発明の「エプロン3」について、甲9に、その背景技術として、「耕耘作業時に上下方向に揺動しながら機体後方に排出される耕耘土の均平を行うために、作業ロータの後方にエプロン(リヤカバー)が回動自在に設けられている」(上記第5の2(1)イ【0002】)と記載されていることからみて、甲9発明の「エプロン3」は、整地を行うことは自明であるから、本件訂正発明2の「整地作業する整地体」に相当する。 よって、甲9発明の「作業ロータ5の後方を覆う」「エプロン3」は、本件訂正発明2の「この耕耘体の後方で整地作業する整地体」に相当する。 (エ)甲9において、「コンプレッションロッド18」は、「その外周を巻回することによって装着されるコイルスプリング18aの復元力によりエプロン3を圃場面に接地させる」ことからみて、「コンプレッションロッド18」と「コイルスプリング18a」は、エプロン3の圃場面に対する接地圧を調整する手段といえる。 よって、甲9発明の「作業機本体10の表面に一端部が連結され、エプロン3を覆う表面に他端部が接続され、その外周を巻回することによって装着されるコイルスプリング19aの復元力によりエプロン3を圃場面に接地させるコンプレッションロッド18」は、本件訂正発明2の「前記機体と前記整地体との間に設けられ、前記整地体の圃場面に対する接地圧を調整する接地圧調整手段」に相当する。 (オ)甲9発明において、「付勢体21」(「ガススプリング21」)は、「エプロン跳ね上げ軽減装置1」を構成しており、「ガススプリング21」の「ピストンロッド21aが伸張動作すると、」「エプロン3の跳ね上げがアシストされ」ることからみて、甲9発明の「付勢体21」、「エプロン跳ね上げ軽減装置1」は、それぞれ本件訂正発明2の「持上アシスト用の付勢体」、「持上アシスト手段」に相当する。 してみると、甲9発明の「付勢体21」を備えた「エプロン跳ね上げ軽減装置1」は、本件訂正発明2の「持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段」に相当する。 (カ)甲9発明において、「支持部材22の左右側面には、上部ブラケット14b、15bとコンプレッションロッド18の一端とを連結する連結部(連結ピン23)が摺接可能に接続されるガイド孔22dが、コンプレッションロッド18の軸方向に向かって穿設されることにより、支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向に向かって移動可能とされ」ており、「上部ブラケット14b、15b」は、「伝動フレーム14と支持フレーム15との上に固定された」ものであるから、「支持部材22」の一端側は、「連結部(連結ピン23)」を介して「伝動フレーム14と支持フレーム15」の「上部ブラケット14b、15b」に支持されているといえる。 また、「支持部材22の上面の進行方向後方側には、ストッパ19に接続し、固定される脚部22cが下向きに設けられており、」「ストッパ19は、エプロン3のブラケット3aに接続され」ていることから、支持部材22の進行方向後方側は、「ストッパ19」を介して「エプロン3」の「ブラケット3a」に支持されているといえる。 そして、上記の支持部材22の一端部及び進行方向後方側での支持態様、及び「付勢手段(以下、ガススプリング)21は、支持部材22により、作業機本体10の表面とエプロン3の表面との間にコンプレッションロッド18と並列に配置・支持され」ていることからみて、甲9発明において、「付勢手段21」(「ガススプリング21」)は、その一端側が、「伝動フレーム14と支持フレーム15」の「上部ブラケット14b、15b」に、他端側が、「ストッパ19」を介して「エプロン3」の「ブラケット3a」に支持されている。 してみると、甲9発明の上記ガススプリング21の一端側及び他端側の支持態様は、本件訂正発明2の「前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている」ことに相当する。 (キ)上記(エ)の検討を踏まえると、公然実施発明の「コンプレッションロッド18」、「コイルスプリング18a」、それらを合わせたものは、それぞれ本件訂正発明2の「連結ロッド」、「接地圧調整用のコイルバネ」、「接地圧調整手段」に相当するから、甲9発明の「コイルスプリング18a」と「コンプレッションロッド18」とが、「その外周を巻回することにより装着されるコイルスプリング19aの復元力によりエプロン3を圃場面に接地させる」ことは、本件訂正発明2の「前記接地圧調整手段は、連結ロッドと、この連結ロッドの外周側に配設された接地圧調整用のコイルバネとを有」することに相当する。 (ク)甲9発明の「エプロン跳ね上げ軽減装置1」において、「コンプレッションロッド18」と「ストッパ19」の機能についてみると、「付勢手段(ガススプリング)21は、支持部材22により、作業機本体10の表面とエプロン3の表面との間にコンプレッションロッド18と並列に配置・支持され」ること、「支持部材22の左右側面には、上部ブラケット14b、15bとコンプレッションロッド18の一端とを連結する連結部(連結ピン23)が摺接可能に接続されるガイド孔22dが、コンプレッションロッド18の軸方向に向かって穿設されることにより、支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向に向かって移動可能とされ」ていること、「支持部材22の上面の進行方向後方側には、ストッパ19に接続し、固定される脚部22cが下向きに設けられて」いること、「ストッパ19は、エプロン3のブラケット3aに接続され、エプロン3の回転に伴い、コンプレッションロッド18に沿って摺動するものであ」ること、「エプロン3の跳ね上げ時にあっては、」「ピストンロッド21aが伸張動作すると、支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向トラクタ側に移動し、ストッパ19がコンプレッションロッド18の上端側(連結ピン23側)へ移動させられ、ストッパ19とフランジ25との間の距離が広げられる(間隔をあける)ことによって、エプロン3の跳ね上げがアシストされ」ること、「コンプレッションロッド18の他端(下端)に抜け止め固定されたフランジ25」であることからみて、「支持部材22」は「コンプレッションロッド18の一端」にある「連結部(連結ピン23)」と「ストッパ19」を介して「コンプレッションロッド18」に支持されているといえる。 よって、「コンプレッションロッド18」は、上記(エ)で検討したとおり、「エプロン3の圃場面に対する接地圧を調整する」手段である上に、「エプロン跳ね上げ軽減装置1」を構成する部材でもある。また、「ストッパ19」も「エプロン跳ね上げ軽減装置1」を構成する部材である。 そして、甲9発明の「コンプレッションロッド18」は、その名称からみて、長尺体であることは明らかであるから、本件訂正発明2の「長尺体」に相当し、また、甲9発明の「ストッパー19」は、「エプロン3のブラケット3aに接続され、エプロン3の回転に伴い、コンプレッションロッド18に沿って摺動するものであ」るから、エプロン3に回転可能に設けられているといえるので、本件訂正発明2の「前記整地体に回動可能に設けられた回動体」に相当する。 さらに、甲9発明の「コンプレッションロッド18の軸方向に向かって移動可能」とされる「支持部材22」は、本件訂正発明2の「この長尺体に対して移動可能な移動体」に相当する。 (ケ)甲9発明の「コンプレッションロッド18」に関して、被請求人は、甲第9号証の【0021】における「・・・エプロン3の圃場面との接地圧を適度に保つためと、エプロン3を跳ね上げた状態に保持するためのコンプレッションロッド18・・・」との記載からみて明らかなように、本件訂正発明2の「接地圧調整手段の連結ロッド」に相当するものであり、決して「持上アシスト手段の長尺体」に相当するものではないから、甲9発明は「前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動する」との構成を備えていない(第5の3)旨、主張する。 しかしながら、上記(エ)で検討したとおり、甲9発明の「コンプレッションロッド18」は、「エプロン3の圃場面に対する接地圧を調整する」手段を構成するものであるが、上記(ク)で検討したとおり、該手段に加えて「エプロン跳ね上げ軽減装置1」を構成する部材であるとも認められるから、甲9発明の「コンプレッションロッド18」は、本件訂正発明2の「連結ロッド」と「長尺体」の両方に相当することとなるので、被請求人の主張は採用できない。 (コ)上記(ク)のとおり、甲9発明の「コンプレッションロッド18」、「支持部材22」及び「ストッパー19」が、それぞれ本件訂正発明2の「長尺体」、「移動体」及び「回動体」に相当するから、甲9発明の「エプロン3の跳ね上げ時にあっては、」「ピストンロッド21aが伸張動作すると、支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向トラクタ側に移動し、ストッパ19がコンプレッションロッド18の上端側(連結ピン23側)へ移動させられ」ることは、本件訂正発明2の「前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する」ことに相当する。 (サ)上記(ア)ないし(コ)からみて、本件訂正発明2と甲9発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 前記機体と前記整地体との間に設けられ、前記整地体の圃場面に対する接地圧を調整する接地圧調整手段と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられて農作業機であって、 前記接地圧調整手段は、連結ロッドと、この連結ロッドの外周側に配設された接地圧調整用のコイルバネとを有し、 持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する 農作業機。」で一致し、相違点は存在しないから、本件訂正発明2は、甲9発明と同一である。 イ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明2は、甲9に記載された発明である。 (3)本件訂正発明3 ア 対比 本件訂正発明3と甲9発明を対比する。 (ア)本件訂正発明2と甲9発明とを対比した上記(2)アにおける(ア)〜(ウ)、(オ)、(カ)、(コ)については、本件訂正発明2を本件訂正発明3と読み替えることにより、本件訂正発明3と甲9発明の対比においても同様である。 (イ)甲9発明の「エプロン跳ね上げ軽減装置1」において、「コンプレッションロッド18」と「ストッパ19」の機能についてみると、「付勢手段(ガススプリング)21は、支持部材22により、作業機本体10の表面とエプロン3の表面との間にコンプレッションロッド18と並列に配置・支持され」ること、「支持部材22の左右側面には、上部ブラケット14b、15bとコンプレッションロッド18の一端とを連結する連結部(連結ピン23)が摺接可能に接続されるガイド孔22dが、コンプレッションロッド18の軸方向に向かって穿設されることにより、支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向に向かって移動可能とされ」ていること、「支持部材22の上面の進行方向後方側には、ストッパ19に接続し、固定される脚部22cが下向きに設けられて」いること、「ストッパ19は、エプロン3のブラケット3aに接続され、エプロン3の回転に伴い、コンプレッションロッド18に沿って摺動するものであ」ること、「エプロン3の跳ね上げ時にあっては、」「ピストンロッド21aが伸張動作すると、支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向トラクタ側に移動し、ストッパ19がコンプレッションロッド18の上端側(連結ピン23側)へ移動させられ、ストッパ19とフランジ25との間の距離が広げられる(間隔をあける)ことによって、エプロン3の跳ね上げがアシストされ」ること、「コンプレッションロッド18の他端(下端)に抜け止め固定されたフランジ25」であることからみて、「支持部材22」は「コンプレッションロッド18の一端」にある「連結部(連結ピン23)」と「ストッパ19」を介して「コンプレッションロッド18」に支持されているといえる。 よって、「コンプレッションロッド18」は、「エプロン跳ね上げ軽減装置1」を構成する部材でもある。また、「ストッパ19」も「エプロン跳ね上げ軽減装置1」を構成する部材である。 そして、「コンプレッションロッド18」は、その名称の形状からみて、長尺体であることは明らかであるから、本件訂正発明3の「長尺体」に相当し、また、甲9発明の「ストッパー19」は、「エプロン3のブラケット3aに接続され、エプロン3の回転に伴い、コンプレッションロッド18に沿って摺動するものであ」るから、エプロン3に回転可能に設けられているといえるので、本件訂正発明3の「前記整地体に回動可能に設けられた回動体」に相当する。 さらに、甲9発明の「コンプレッションロッド18の軸方向に向かって移動可能」とされる「支持部材22」は、本件訂正発明3の「この長尺体に対して移動可能な移動体」に相当する。 (ウ)甲9発明において、「ガススプリング21の伸縮部21a(以下、ピストンロッド)の内部には、シリンダチューブ21cに向かって押し込むとピストンロッド21aの任意の位置での停止が解除され、解放する(離す)とピストンロッド21aの伸縮を任意の位置で停止させるプッシュロッド21bが設けられ、ピストンロッド21aの一端部には、プッシュロッド21bの押し込み、解放を行う操作手段としての切替装置24が装着され」ていることは、操作手段としての切替装置24を操作することにより、ガススプリング21のピストンロッド21の伸長の停止させる又は解放を切り換えている、つまり、エプロン跳ね上げ装置におけるエプロン3の跳ね上げをアシストオフ状態およびアシストオン状態に切り換えているといえる。 よって、甲9発明の「装着され」た「操作手段としての切替装置24」が、「ガススプリング21の伸縮部21a(以下、ピストンロッド)の内部には、シリンダチューブ21cに向かって押し込むとピストンロッド21aの任意の位置での停止が解除され、解放する(離す)とピストンロッド21aの伸縮を任意の位置で停止させるプッシュロッド21bが設けられ、ピストンロッド21aの一端部には、プッシュロッド21bの押し込み、解放を行う」ことは、本件訂正発明3の「前記持上アシスト手段は、」「操作部材とを有し、かつ、前記操作部材の操作によりアシストオフ状態およびアシストオン状態に切換可能となって」いることに相当する。 (エ)上記(ア)ないし(ウ)からみて、本件訂正発明3と甲9発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体と、操作部材とを有し、かつ、前記操作部材の操作によりアシストオフ状態およびアシストオン状態に切換可能となっており、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する 農作業機。」で一致するものの(以下「一致点」という。)、その操作によりアシストオフ状態およびアシストオン状態に切換可能となっている操作部材について、本件訂正発明3は、移動体に回動可能に取り付けられているのに対し、甲9発明は、そのような特定がない点(以下「相違点B」という。)で相違している。 イ 判断 甲9発明の「切替装置24」は、「ピストンロッド21aの一端部」に「装着され」るものであるから、「コンプレッションロッド18」に回動可能に取り付けられたものではない。 そして、上記「切替装置24」は、「プッシュロッド21bの押し込み、解放を行う操作手段」であって、該「プッシュロッド21b」は、「ガススプリング21の伸縮部21a(以下、ピストンロッド)の内部には、シリンダチューブ21cに向かって押し込むとピストンロッド21aの任意の位置での停止が解除され、解放する(離す)とピストンロッド21aの伸縮を任意の位置で停止させる」ものであるから、「切替装置24」は、「ガススプリング21」の「ピストンロッド21a」の停止およびその解除を行うものであるといえる。 してみると、仮に、操作部材を長尺体に回動可能に設けることが公知又は周知技術であったとしても、甲9発明の「切換装置24」の上記の機能及び構造を踏まえると、「切換装置24」を「ピストンロッド21aの一端部」に装着されるものから、「ピストンロッド18」に回動可能に取り付けるものに替える動機付けは存在しないし、同様に替えることは当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明3は、甲9発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件訂正発明4 ア 対比 本件訂正発明4と甲9発明を対比する。 本件訂正発明2と甲9発明とを対比した上記(2)アにおける(ア)〜(ウ)、(オ)、(カ)、(コ)、及び本件訂正発明3と甲9発明を対比した上記(3)アにおける(イ)については、本件訂正発明2または本件訂正発明3を本件訂正発明4と読み替えることにより、本件訂正発明4と甲9発明の対比においても同様である。 よって、本件訂正発明4と甲9発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体を有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する 農作業機」で一致するものの(以下「一致点」という。)、本件訂正発明4は、「前記付勢体の少なくとも一部は、前記持上アシスト手段内に収納されている」のに対し、甲9発明は、付勢体の少なくとも一部が、持上アシスト手段内に収納されているかどうか不明な点(以下「相違点C」という。)で相違している。 イ 判断 上記相違点Cについて検討する。 (ア)甲9発明において、「支持部材22の上面には、ガススプリング21のシリンダチューブ21cをコンプレッションロッド18に並列した状態で支持する支持部22a,22bが上向きに突設され」ていることから、「ガススプリング21」は「支持部材22」の上面に配置しており、このような配置において、ガススプリング21を支持部材22内に収納するように代えること、つまりは、支持部材22から上方に向かってガススプリング21を収納するような部材を延長させるような動機付けは存在しない。 (イ)また、公然実施発明は、「ガススプリングは、その一部が、下方をシールドカバーにより、側方をベースプレートにより、上方をアシストリンクAにより囲われて」いる構成を備えており、該構成は、上記相違点Cに係る「前記付勢体の少なくとも一部は、前記持ち上げアシスト手段内に収納されている」ことに相当する。 しかしながら、甲9発明の「エプロン跳ね上げ軽減装置1」と公然実施発明の「クイックアシスト機構」とは、共にガススプリングを備えるものの、該ガススプリングを支持する構成、及びガススプリングの付勢力を機能させるための構成が異なっていることから、公然実施発明における「ガススプリング」の一部を収納するための「クイックアシスト機構」の構成を、甲9発明の「エプロン跳ね上げ軽減装置1」に適用することにより、上記相違点Cに係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 つまり、甲9発明の「ガススプリング21」は、「支持部材22」の上面に支持されているのに対し、公然実施発明の「ガススプリング」は、その一部が「シールドカバー」、「ベースプレート」及び「アシストリンクA」に囲われているものであるから、甲9発明の「支持部材22」の上面に支持された「ガススプリング21」の周囲を、公然実施発明の「シールドカバー」、「ベースプレート」及び「アシストリンクA」により囲うように替えることは、到底思いつくものではない。 また、後述するように、上記の相違点Cの構成は、甲10にも記載されていない。 (ウ)さらに、請求人は、甲46、甲48−1乃至甲53、甲55、甲56を挙げて、ガススプリングをカバーで覆ったり、長尺体内に収納することは、周知技術または公知技術である(第4の4(4)イ)旨、主張する。 しかしながら、各証拠に記載についてみると、甲48−1〜甲5はディスプレイの支持装置、甲51〜甲53は椅子の脚体、甲55は支持台の脚体、甲56は作業機の脚体に関するものであるから、技術分野が相違しており、また甲46は、付勢体が収納されているかどうか不明であり、かつ、完全に露出している付勢体もみられることから、付勢体を収納しようとすることを示唆していない。 よって、上記の証拠をみても、甲9発明において、上記相違点Cに係る構成を採用する動機付けになるものではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明4は、甲9発明と同一ではなく、甲9発明及び公然実施発明又は甲10発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)本件訂正発明5 ア 対比 本件訂正発明5と甲9発明を対比する。 (ア)本件訂正発明2と甲9発明とを対比した上記(2)アにおける(ア)〜(ウ)、(オ)、(カ)、(コ)、及び本件訂正発明3と甲9発明を対比した上記(3)アにおける(イ)については、本件訂正発明2または本件訂正発明3を本件訂正発明5と読み替えることにより、本件訂正発明5と甲9発明の対比においても同様である。 (イ)甲9発明の「付勢手段21」は「ガススプリング21」であるから、この点と、本件訂正発明5の「前記付勢体は、前記長尺体内に収納されたガススプリングであること」とは、「前記付勢体は、ガススプリングであること」で共通する。 (ウ)上記(ア)及び(イ)からみて、本件訂正発明5と甲9発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動し、 前記付勢体は、ガススプリングである 農作業機。」で一致するものの(以下「一致点」という。)、長尺体について、本件訂正発明5は、筒状に形成され、その中に付勢体が収納されるのに対し、甲9発明は、そのようなものか不明である点(以下「相違点D」という。)で相違している。 イ 判断 持上アシスト手段の長尺体を筒状とし、該筒状の長尺体内に付勢体(ガススプリング)を収納することは、本件特許の原出願の優先日前に公知又は周知であったことを示す文献は、請求人から提示されておらず、甲9発明の長尺体を上記相違点Dに係る本件訂正発明5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 請求人は、「付勢体の一部を持上アシスト手段内に収納する」構成は当業者における設計的事項であり、かつ、甲46、甲48−1乃至甲55に開示されている事項であり、ガススプリングを筒状の長尺体内に収納する構成は甲49乃至甲53に例示される周知技術、又はそれらのいずれかに開示されている事項である(第4の4(5))旨、主張する。 しかしながら、それらの証拠は、上記(4)イ(ウ)で検討したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。 また、甲9発明の「コンプレッションロッド18」には、「コイルスプリング18a」が「その外周を巻回」していることから、「コンプレッションロッド18」を「ガススプリング21」が収納されるような筒状とすると、「コンプレッションロッド18」の径が大きくなり、「コイルスプリング18a」を外周に巻回するには不都合が生じるものと認められる。 よって、請求人が提示する各証拠を参照したとしても、甲9発明の「コンプレッションロッド18」を筒状として、その中にガススプリングを収納することは、当業者が容易に想到するものではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明5は、甲9発明及びその他の証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件訂正発明6 ア 対比 本件訂正発明6と甲9発明を対比する。 本件訂正発明2と甲9発明とを対比した上記(2)アにおける(ア)〜(ウ)、(オ)、(カ)、(コ)、及び本件訂正発明3と甲9発明を対比した上記(3)アにおける(イ)については、本件訂正発明2または本件訂正発明3を本件訂正発明6と読み替えることにより、本件訂正発明6と甲9発明の対比においても同様である。 よって、本件訂正発明6と甲9発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する、 農作業機。」で一致するものの(以下「一致点」という。)、長尺体について、本件訂正発明6は、筒状に形成され、その中に付勢体が収納され、その一方側の端部である前端部は、機体のフレームに設けられた取付部に回動可能に取り付けられているのに対し、甲9発明は、筒状に形成され、その中に付勢体が収納され、その一方側の端部である前端部が、機体のフレームに設けられた取付部に回動可能に取り付けられているか不明な点(以下「相違点E」という。)で相違している。 イ 判断 上記相違点Eのうち、長尺体を筒状に形成し、その中に付勢体を収納する点については、上記(5)イで検討したとおり、当業者が容易に想到し得たことではないから、上記(5)イで検討した理由と同じ理由により、甲9発明において、長尺体を筒状に形成し、その中に付勢体を収納する点を含む相違点Eに係る本件訂正発明6の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明5は、甲9発明及びその他の証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 無効理由3 (1)本件訂正発明1 ア 対比 本件訂正発明1と甲10発明とを対比する。 (ア)甲10発明の「走行機体」、「作業機本体10」、「耕耘作業機1」は、それぞれ本件訂正発明1の「走行車」、「機体」、「農作業機」に相当する。 甲10発明の「作業機本体10」の「本体フレーム11」は、「その前部に、走行機体の後部に設けられた3点リンク連結機構に連結されるトップマスト12とロアーリンク連結部13が設け」られていることから、甲10発明の「作業機本体10」は、「走行機体」に連結されているものである。 よって、甲10発明の「作業機本体10」は、本件訂正発明1の「走行車に連結される機体」に相当する。 (イ)甲10発明において、「多数の耕耘爪が取り付けられた耕耘ロータ20」は、本件発明1の「耕耘作業をする耕耘体」に相当し、また、「耕耘ロータ20」は、「作業機本体10」を構成しているから、甲10発明の「作業機本体10」を構成する「多数の耕耘爪が取り付けられた耕耘ロータ20」は、本件訂正発明1の「この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体」に相当する。 (ウ)甲10発明の「後方側へ延びてその先端部が接地して耕土表面を均平するエプロン25」は、本件訂正発明1の「整地作業する整地体」に相当する。 そして、「耕耘ロータ20の上側はシールドカバー22により覆われ」、「シールドカバー22」は「作業機本体10」を構成しており、「エプロン25」は「シールドカバー22の後端部に」「回動可能に枢支され」、「その先端部が接地して」いることから、「エプロン25」は、「作業機本体10に上下方向に回動可能に設けられるものであって、耕耘ロータ20の後方に位置しているといえる。 以上を踏まえると、甲10発明の「シールドカバー22の後端部には、後方側へ延びてその先端部が接地して耕土表面を均平にするエプロン25の前端部が上下方向に回動可能に枢支されて」いることにおける「エプロン25」は、本件訂正発明1の「前記機体に上下方向に回動可能に設けられ、前記耕耘体の後方で整地作業する整地体」に相当する。 (エ)甲10発明において、「ガススプリング41」は、「エプロン跳ね上げ補助装置40」を構成しており、「ガススプリング41のロッド側端部側の回動支点Oがボトム側の回動支点Rよりも下方に移動して、ガススプリング41の後側が斜め上方に傾き、ガススプリング41が伸長すると、ガススプリング41の付勢力のうちの上方向成分の力によってエプロン25が上方に付勢されるため、作業者は軽い労力負担でエプロン25を上方へ跳ね上げることができ」るものであるから、甲10発明の「ガススプリング41」、「エプロン跳ね上げ補助装置40」は、それぞれ、本件訂正発明1の「持上アシスト用の付勢体」、「持上アシスト手段」に相当する。 そして、甲10発明において、「エプロン25が所定の非作業位置Pnに移動すると、作業者はエプロン25の持ち上げ作業を停止し、このとき、ガススプリング41は伸長しようとしてエプロン25を上方に付勢しようとするため、作業者は小さな力で楽に非作業位置Pnにエプロン25を維持若しくは停止させることができ」ることから、上記「非作業位置Pn」は、エプロン25の最上げ位置といえる。 してみると、甲10発明の「ガススプリング41が伸長すると、ガススプリング41の付勢力のうちの上方向成分の力によってエプロン25が上方に付勢されるため、作業者は軽い労力負担でエプロン25を上方へ跳ね上げることができ、そして、エプロン25が所定の非作業位置Pnに移動すると、作業者はエプロン25の持ち上げ作業を停止し、このとき、ガススプリング41は伸長しようとしてエプロン25を上方に付勢しようとするため、作業者は小さな力で楽に非作業位置Pnにエプロン25を維持若しくは停止させることができ」る「エプロン跳ね上げ補助装置40」は、本件訂正発明1の「持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して最上げ位置まで前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段」に相当する。 (オ)甲10発明は、「ガススプリング41のボトム側端部はエプロン25の左側端部に設けられた取付け座28に枢結されて」いることから、「ガススプリング41」の「ボトム側端部」は「エプロン25」に取り付けられているといえる。 また、甲10発明は、 「ガススプリング41のロッド側端部には幅方向に所定間隔を有して対向配置されて長手方向に延びる一対のフランジ部44が設けられ、各フランジ部44には挿通孔が設けられて、この挿通孔にリンク部材51の先端部に取り付けられた回動軸45が挿通されており、 ガススプリング41のロッド側端部がリンク部材51を介して上下方向に移動自在に支持され、 リンク部材51は、その基端部が側部カバー23の後側上部の外側に上下方向に回動自在に枢結され、リンク部材51の先端側は側部カバー23に沿って延びて先端部に回動軸45を取り付けており、回動軸45は一対のフランジ部44の挿通孔に挿通されてガススプリング41のロッド側端部を回動自在に支持するため、回動軸45の中心軸線がガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oになって」いることから、「ガススプリング41」の「ロッド側端部」は、「リンク部材51」を介して「側部カバー23」に取り付けられているといえる。 そして、「側部カバー23」は、「作業機本体10」を構成する「シールドカバー22の後側の幅方向両端部に」設けられているものであって、さらに「作業機本体10」は、上記(ア)のとおり、本件発明1の「機体」に相当する。そうすると、「ガススプリング41」の「ロッド側端部」は、本件発明1の「機体」に相当する「側部カバー23」を介して取り付けられているといえるから、上記「機体」側に取り付けられているものである。 以上のことから、甲10発明において、「ガススプリング41」が、その「ボトム側端部」が「エプロン25」に取り付けられ、その「ロッド側端部」が「側部カバー23」に取り付けられていることは、本件訂正発明1の「前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられていること」に相当する。 (カ)上記(エ)での「最上げ位置」の検討を踏まえると、本件訂正発明1の「前記付勢体の付勢力のみによって前記整地体が前記最上げ位置まで上方回動する」ことと、甲10発明において、「非作業時に作業姿勢にあるエプロン25を上方に持ち上げて非作業位置に移動させる場合には、」「ガススプリング41が伸長すると、ガススプリング41の付勢力のうちの上方向成分の力によってエプロン25が上方に付勢されるため、作業者は軽い労力負担でエプロン25を上方へ跳ね上げることができ、そして、エプロン25が所定の非作業位置Pnに移動すると、作業者はエプロン25の持ち上げ作業を停止し、このとき、ガススプリング41は伸長しようとしてエプロン25を上方に付勢しようとする」こととは、「前記付勢体の付勢力を利用して前記整地体が前記最上げ位置まで上方回動する」ことで共通する。 (キ)上記(ア)ないし(カ)からみて、本件発明1と甲10発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して最上げ位置まで前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられ、 前記付勢体の付勢力を利用して前記整地体が前記最上げ位置まで上方回動する 農作業機。」で一致するものの、付勢体の付勢力を利用した整地体の持ち上げについて、本件訂正発明1は、付勢体の不勢力のみによって最上げ位置まで上方回動するのに対し、甲10発明は、付勢体の不勢力のみかどうか、またその付勢力のみで最上げ位置まで上方回動するのか不明な点(以下「相違点α」という。)で相違する。 イ 判断 上記アの相違点αについて検討する。 甲10の記載によれば、甲10発明は「作業機本体に回転可能に支持された作業ロータの上方を覆うシールドカバーの後端部にエプロンの上端部を上下回動自在に枢支したロータリ作業機に関」(上記第6の3(1)ア【0001】)し、「作業者が作業姿勢にあるエプロン25を上方に持ち上げるには、重いエプロン25を一定範囲を回動する段階まで持ち上げる必要があり、作業者にとってこの持ち上げ作業は重労働であることに変わりがなかった。・・・このような字状に鑑みて・・・エプロンを持ち上げて所定の非作業位置に移動させる際の作業者の労力負担を軽減することができるロータリ作業基のエプロン跳ね上げ補助装置を提供することを目的」(同イ【0006】、【0007】)とするものであるから、甲10の記載に接した当業者であれば、エプロンを跳ね上げる際に作業者の労力負担をより軽減するような変更を適宜採用しようとするものと認められる。 また同時に、近年、農業従事者の高齢化の問題も一般に知られていることであるから、農作業全体においても、作業者の労力をより軽減しようとすることは、当業者が当然考慮すべき事項である。 そして、どの程度負荷を軽くするかは、エプロンを跳ね上げる作業者を想定して、当業者が適宜決定することであるところ、上記の課題を踏まえた上で、農業従事者の負を最大限軽減して持ち上げる作業の労力をゼロとすること、例えば、付勢体(ガススプリング)の付勢力をより強くすることによって、整地体の最上げ位置までの上方回動を付勢体の不勢力のみによって行うようにすることにより、上記相違点αに係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことと認める。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲10発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件訂正発明2 ア 対比 本件訂正発明2と甲10発明を対比する。 (ア)甲10発明の「走行機体」、「作業機本体10」、「耕耘作業機1」は、それぞれ本件訂正発明2の「走行車」、「機体」、「農作業機」に相当する。 甲10発明の「作業機本体10」の「本体フレーム11」は、「その前部に、走行機体の後部に設けられた3点リンク連結機構に連結されるトップマスト12とロアーリンク連結部13が設け」られていることから、甲10発明の「作業機本体10」は、「走行機体」に連結されているものである。 よって、甲10発明の「作業機本体10」は、本件訂正発明2の「走行車に連結される機体」に相当する。 (イ)甲10発明において、「多数の耕耘爪が取り付けられた耕耘ロータ20」は、本件発明1の「耕耘作業をする耕耘体」に相当し、また、「耕耘ロータ20」は、「作業機本体10」を構成しているから、甲10発明の「作業機本体10」を構成する「多数の耕耘爪が取り付けられた耕耘ロータ20」は、本件訂正発明2の「この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体」に相当する。 (ウ)甲10発明の「後方側へ延びてその先端部が接地して耕土表面を均平するエプロン25」は、本件訂正発明1の「整地作業する整地体」に相当する。 そして、「エプロン25」は「シールドカバー22の後端部に」「回動可能に枢支され」、「その先端部が接地して」いることから、「エプロン25」は、耕耘ロータ20の後方に位置しているといえる。 以上を踏まえると、甲10発明の「シールドカバー22の後端部には、後方側へ延びてその先端部が接地して耕土表面を均平にするエプロン25の前端部が上下方向に回動可能に枢支されて」いることにおける「エプロン25」は、本件訂正発明2の「この耕耘体の後方で整地作業する整地体」に相当する。 (エ)甲10発明において、「エプロン25の上面と主フレーム16との間には、圧縮ばね31が巻装されてエプロン25の作用圧を調整可能なコンプレッションロッド30が設けられ」ていることからみて、甲10発明の「圧縮ばね31が巻装され」た「コンプレッションロッド25」は、エプロン25の作用圧を調整する手段といえる。 よって、甲10発明の「エプロン25の上面と主フレーム16との間に」「設けられ」た、「圧縮ばね31が巻装されてエプロン25の作用圧を調整可能なコンプレッションロッド30」は、本件訂正発明2の「前記機体と前記整地体との間に設けられ、前記整地体の圃場面に対する接地圧を調整する接地圧調整手段」に相当する。 (オ)甲10発明において、「ガススプリング41」は、「エプロン跳ね上げ補助装置40」を構成しており、「ガススプリング41のロッド側端部側の回動支点Oがボトム側の回動支点Rよりも下方に移動して、ガススプリング41の後側が斜め上方に傾き、ガススプリング41が伸長すると、ガススプリング41の付勢力のうちの上方向成分の力によってエプロン25が上方に付勢されるため、作業者は軽い労力負担でエプロン25を上方へ跳ね上げることができ」るものであるから、甲10発明の「ガススプリング41」、「エプロン跳ね上げ補助装置40」は、それぞれ、本件訂正発明1の「持上アシスト用の付勢体」、「持上アシスト手段」に相当する。 してみると、甲10発明の「ガススプリング41が伸長すると、ガススプリング41の付勢力のうちの上方向成分の力によってエプロン25が上方に付勢されるため、作業者は軽い労力負担でエプロン25を上方へ跳ね上げることができ、そして、エプロン25が所定の非作業位置Pnに移動すると、作業者はエプロン25の持ち上げ作業を停止し、このとき、ガススプリング41は伸長しようとしてエプロン25を上方に付勢しようとするため、作業者は小さな力で楽に非作業位置Pnにエプロン25を維持若しくは停止させることができ」る「エプロン跳ね上げ補助装置40」は、本件訂正発明2の「持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段」に相当する。 (カ)甲10発明は、「ガススプリング41のボトム側端部はエプロン25の左側端部に設けられた取付け座28に枢結されて」いることから、「ガススプリング41」の「ボトム側端部」は「エプロン25」に取り付けられているといえる。 また、甲10発明は、 「ガススプリング41のロッド側端部には幅方向に所定間隔を有して対向配置されて長手方向に延びる一対のフランジ部44が設けられ、各フランジ部44には挿通孔が設けられて、この挿通孔にリンク部材51の先端部に取り付けられた回動軸45が挿通されており、 ガススプリング41のロッド側端部がリンク部材51を介して上下方向に移動自在に支持され、 リンク部材51は、その基端部が側部カバー23の後側上部の外側に上下方向に回動自在に枢結され、リンク部材51の先端側は側部カバー23に沿って延びて先端部に回動軸45を取り付けており、回動軸45は一対のフランジ部44の挿通孔に挿通されてガススプリング41のロッド側端部を回動自在に支持するため、回動軸45の中心軸線がガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oになって」いることから、「ガススプリング41」の「ロッド側端部」は、「リンク部材51」を介して「側部カバー23」に取り付けられているといえる。 そして、「側部カバー23」は、「作業機本体10」を構成する「シールドカバー22の後側の幅方向両端部に」設けられているものであって、さらに「作業機本体10」は、上記(ア)のとおり、本件訂正発明1の「機体」に相当する。そうすると、「ガススプリング41」の「ロッド側端部」は、本件訂正発明1の「機体」に相当する「側部カバー23」を介して取り付けられているといえるから、上記「機体」側に取り付けられているものである。 以上のことから、甲10発明において、「ガススプリング41」が、その「ボトム側端部」が「エプロン25」に取り付けられ、その「ロッド側端部」が「側部カバー23」に取り付けられていることは、本件訂正発明2の「前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられていること」に相当する。 (キ)上記(エ)の検討を踏まえると、甲10発明の「コンプレッションロッド30」、「コンプレッションロッド30に巻装され」る「圧縮バネ31」は、それぞれ本件訂正発明の「連結ロッド」、「接地圧調整用のコイルバネ」に相当するから、甲10発明の「圧縮ばね31が巻装され」た「コンプレッションロッド30」は、本件訂正発明2の「前記接地圧調整手段は、連結ロッドと、この連結ロッドの外周側に配設された接地圧調整用のコイルバネとを有」することに相当する。 (ク)上記(ア)ないし(キ)からみて、本件訂正発明2と甲10発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 前記機体と前記整地体との間に設けられ、前記整地体の圃場面に対する接地圧を調整する接地圧調整手段と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して最上げ位置まで前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記接地圧調整手段は、連結ロッドと、この連結ロッドの外周側に配設された接地圧調整用のコイルバネとを有する 農作業機。」で一致するものの、持上アシスト手段が、本件訂正発明2は、「長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する」のに対し、甲10発明は、本件訂正発明2の「長尺体」、「移動体」及び「回動体」の構成を備えているかどうか不明な点(以下「相違点β」という。)で相違している。 イ 判断 上記相違点βについて検討する。 上記1(2)で検討したとおり、公然実施発明は、上記相違点βに相当する構成を備えていない。 また、甲9発明において、上記2(2)で検討したとおり、「コンプレッションロッド18」は、「エプロン跳ね上げ軽減装置1」を構成するものであって、かつ、エプロン3の圃場面に対する接地圧を調整する手段でもあるから、そのような両機能を同時に備える「コンプレッションロッド18」の構成を、甲10発明に適用することは、当業者が容易になし得たことではない。 また、請求人が上記相違点βの構成が記載されていると主張する甲43乃至甲45についても、そのような構成は見当たらない。 したがって、甲10発明において、公然実施発明または甲9発明に基いて、相違点βに係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ 小括 以上のことから、本件発明2は、甲10発明及び公然実施発明または甲9発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件訂正発明3について ア 対比 本件訂正発明3と甲10発明を対比する。 (ア)本件訂正発明2と甲10発明とを対比した上記(2)アにおける(ア)〜(ウ)、(オ)、(カ)については、本件訂正発明2を本件訂正発明3と読み替えることにより、本件訂正発明3と甲10発明の対比においても同様である。 (イ)甲10発明において、 「エプロン跳ね上げ補助装置40」は、 「支点保持機構部60」の「把手部62」を手前に傾動して、「ガススプリング41」の「ロッド側の回動支点Oのロックを解除し、」 「ガススプリング41のロッド側端部がリンク部材51を介して徐々に下方に移動し、」そして「ガススプリング41が伸長すると、ガススプリング41の付勢力のうちの上方向成分の力によってエプロン25が上方に付勢される」ことになり、逆に、「ロッド側の回動支点Oのロックを解除し」なければ、「ガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oがエプロン25の作業機本体10に対する回動支点Pと同軸上又は略同軸上に配置されて、ガススプリング41の付勢力によってエプロン25の回動が補助されることはな」いことから、「支点保持機構60」の「把手部62」を操作することにより、エプロン25の回動を補助する状態と保持しない状態を切り替えることができるものである。 してみると、甲10発明の「エプロン跳ね上げ補助装置40」が「支点保持機構部60」の「把手部62」を有し、「把手部62」を操作することにより、エプロン25の回動を補助する状態と保持しない状態を切り替えることができるすることは、本件訂正発明3の「前記持上アシスト手段は、操作部材を有し、かつ、前記操作部材の操作によりアシストオフ状態およびアシストオン状態に切換可能となって」いることに相当する。 (ウ)上記(ア)及び(イ)からみて、本件訂正発明3と甲10発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して最上げ位置まで前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、操作部材を有し、かつ、前記操作部材の操作によりアシストオフ状態およびアシストオン状態に切換可能となっている 農作業機。」で一致するものの、持上アシスト手段について、本件訂正発明1は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する」のに対し、甲10発明は、本件訂正発明2の「長尺体」、「移動体」及び「回動体」の構成を備えているかどうか不明であって、さらに操作部が移動体に回動可能に取り付けられていない点(以下「相違点γ」という。)で相違している。 イ 判断 上記相違点γについて検討する。 相違点γのうち「長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体と」を有し、「前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する」構成は、上記1(2)アで挙げた相違点βの構成と同じであるから、上記1(2)イで検討した理由と同じ理由により、甲10発明において、公然実施発明または甲9発明に基づいて、上記相違点γに係る本件訂正発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 以上のことから、本件発明2は、甲10発明及び公然実施発明または甲9発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件訂正発明4について ア 対比 本件訂正発明4と甲10発明を対比する。 本件訂正発明2と甲10発明とを対比した上記(2)アにおける(ア)〜(ウ)、(オ)、(カ)については、本件訂正発明2を本件訂正発明4と読み替えることにより、本件訂正発明4と甲10発明の対比においても同様である。 よって、本件訂正発明4と甲10発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して最上げ位置まで前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている、 農作業機。」で一致するものの、持上アシスト手段について、本件訂正発明4は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動し、前記付勢体の少なくとも一部は、前記持上アシスト手段内に収納されている」のに対し、甲10発明は、本件訂正発明4の「長尺体」、「移動体」及び「回動体」の構成を備えているかどうか不明であって、さらに前記付勢体の少なくとも一部は、前記持上アシスト手段内に収納されているか不明な点(以下「相違点δ」という。)で相違している。 イ 判断 上記相違点δについて検討する。 相違点δのうち「長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体と」を有し、「前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動する」構成は、上記1(2)アで挙げた相違点βの構成と同じであるから、上記1(2)イで検討した理由と同じ理由により、甲10発明において、公然実施発明または甲9発明に基づいて、上記相違点δに係る本件訂正発明4の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 以上のことから、本件訂正発明4は、甲10発明及び公然実施発明または甲9発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件訂正発明5について ア 対比 本件訂正発明5と甲10発明を対比する。 (ア)本件訂正発明2と甲10発明とを対比した上記(2)アにおける(ア)〜(ウ)、(オ)、(カ)については、本件訂正発明2を本件訂正発明4と読み替えることにより、本件訂正発明4と甲10発明の対比においても同様である。 (イ)甲10発明の「エプロン跳ね上げ補助装置40」は、「ガススプリング41が伸長すると、ガススプリング41の付勢力のうちの上方向成分の力によってエプロン25が上方に付勢されることから、「ガススプリング41」、「エプロン跳ね上げ補助装置40」の付勢体ということができる。 してみると、甲10発明の付勢体である「ガススプリング41」と、件訂正発明5の「前記付勢体は、前記長尺体内に収納されたガススプリングである」こととは、「前記付勢体は、」「ガススプリングである」ことで共通する。 (ウ)上記(ア)及び(イ)からみて、本件訂正発明5と甲10発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して最上げ位置まで前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている、 農作業機。」で一致するものの、持上アシスト手段について、本件訂正発明5は、筒状に形成された長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動し、前記付勢体は、前記長尺体内に収納されたガススプリングである」のに対し、甲10発明は、本件訂正発明5の「長尺体」、「移動体」及び「回動体」の構成を備えているかどうか不明であって、さらに前記ガススプリングは、前記持上アシスト手段内に収納されていない点(以下「相違点ε」という。)で相違している。 イ 判断 上記相違点εについて検討する。 相違点εのうち「長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動」する構成は、上記1(2)アで挙げた相違点βの構成と同じであるから、上記1(2)イで検討した理由と同じ理由により、甲10発明において、公然実施発明または甲9発明に基づいて、上記相違点εに係る本件訂正発明5の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 以上のことから、本件訂正発明5は、甲10発明及び公然実施発明または甲9発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件訂正発明6について ア 対比 本件訂正発明6と甲10発明を対比する。 本件訂正発明2と甲10発明とを対比した上記(2)アにおける(ア)〜(ウ)、(オ)、(カ)については、本件訂正発明2を本件訂正発明6と読み替えることにより、本件訂正発明6と甲10発明の対比においても同様である。 よって、本件訂正発明6と甲10発明とは、 「走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して最上げ位置まで前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている、 農作業機。」で一致するものの、持上アシスト手段について、本件訂正発明6は、筒状に形成された長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動し、前記付勢体は、前記長尺体内に収納されており、前記持上アシスト手段の前記長尺体の一方側の端部である前端部は、前記機体のフレームに設けられた取付部に回動可能に取り付けられている」のに対し、甲10発明は、本件訂正発明2の「長尺体」、「移動体」及び「回動体」及びそれらに関連する構成を備えているかどうか不明である点(以下「相違点ζ」という。)で相違している。 イ 判断 上記相違点ζについて検討する。 相違点ζのうち「長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに付勢体の付勢力に基づいて移動」する構成は、上記1(2)アで挙げた相違点βの構成と同じであるから、上記1(2)イで検討した理由と同じ理由により、甲10発明において、公然実施発明または甲9発明に基づいて、上記相違点ζに係る本件訂正発明6の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 以上のことから、本件訂正発明6は、甲10発明及び公然実施発明または甲9発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第9 むすび 以上のとおり、本件訂正発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、本件訂正発明2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、無効とすべきものである。 また、本件訂正発明3ないし6に係る特許は、特許法第29条第1項第12号または3号、及び同条第2項の規定に違反してなされたものではなく、審判請求人の主張する無効理由及び証拠によっては、本件訂正発明3ないし6に係る特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第64条の規定により、請求人がその6分の4を、被請求人がその6分の2を負担すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 前記機体に上下方向に回動可能に設けられ、前記耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して最上げ位置まで前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられ、 前記付勢体の付勢力のみによって前記整地体が前記最上げ位置まで上方回動する ことを特徴とする農作業機。 【請求項2】 走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 前記機体と前記整地体との間に設けられ、前記整地体の圃場面に対する接地圧を調整する接地圧調整手段と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記接地圧調整手段は、連結ロッドと、この連結ロッドの外周側に配設された接地圧調整用のコイルバネとを有し、 前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動する ことを特徴とする農作業機。 【請求項3】 走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体と、前記移動体に回動可能に取り付けられた操作部材とを有し、かつ、前記操作部材の操作によりアシストオフ状態およびアシストオン状態に切換可能となっており、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動する ことを特徴とする農作業機。 【請求項4】 走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動し、 前記付勢体の少なくとも一部は、前記持上アシスト手段内に収納されている ことを特徴とする農作業機。 【請求項5】 走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、筒状に形成された長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動し、 前記付勢体は、前記長尺体内に収納されたガススプリングである ことを特徴とする農作業機。 【請求項6】 走行車に連結される機体と、 この機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、 この耕耘体の後方で整地作業する整地体と、 持上アシスト用の付勢体を有し、この付勢体の付勢力を利用して前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、 前記持上アシスト手段は、その一方側が前記機体側に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体側に取り付けられている農作業機であって、 前記持上アシスト手段は、筒状に形成された長尺体と、この長尺体に対して移動可能な移動体と、前記整地体に回動可能に設けられた回動体とを有し、 前記移動体は、前記長尺体に対して前記回動体とともに前記付勢体の付勢力に基づいて移動し、 前記付勢体は、前記長尺体内に収納されており、 前記持上アシスト手段の前記長尺体の一方側の端部である前端部は、前記機体のフレームに設けられた取付部に回動可能に取り付けられている ことを特徴とする農作業機。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2022-07-25 |
結審通知日 | 2022-07-28 |
審決日 | 2022-09-16 |
出願番号 | P2018-173887 |
審決分類 |
P
1
113・
113-
ZDA
(A01B)
P 1 113・ 112- ZDA (A01B) P 1 113・ 121- ZDA (A01B) |
最終処分 | 03 一部成立 |
特許庁審判長 |
居島 一仁 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 前川 慎喜 |
登録日 | 2020-04-07 |
登録番号 | 6688356 |
発明の名称 | 農作業機 |
代理人 | 高橋 雄一郎 |
代理人 | 山田 哲也 |
代理人 | 林 佳輔 |
代理人 | 山田 哲也 |
代理人 | 樺澤 聡 |
代理人 | 福永 健司 |
代理人 | 阿部 実佑季 |
代理人 | 樺澤 聡 |