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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01S
管理番号 1393486
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-16 
確定日 2023-01-04 
事件の表示 特願2016− 82849「ソーナーシステム及びソーナーシステム用の物体検知方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月26日出願公開、特開2017−194279〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年4月18日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和2年 1月24日付け:拒絶理由通知書
同年 3月11日 :意見書、手続補正書の提出
同年 8月 7日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年 9月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 1月18日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 2月 3日 :原査定の謄本の送達)
同年 3月16日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年10月 7日付け:拒絶理由通知書
同年11月 9日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 3月24日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年 4月15日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月21日付け:拒絶理由通知書
同年 8月30日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年8月30日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
送信波を水中へ送信する送信用圧電素子を含む送信系回路と、
前記水中の音波を受信用圧電素子によって受信波として受信し、前記送信波が前記水中の物体で反射した反響波を前記受信した音波である前記受信波から検出する受信系回路と、
前記送信波の送信指示を前記送信系回路に出力し、当該送信指示を出力した後に前記受信系回路によって反響波が検出されたか否かに基づいて、前記水中の物体を検知する制御系回路と、
前記送信波の音圧レベルを補正するための送信補正値を記憶する送信系記憶部と、を備えるソーナー装置と、
前記送信補正値を変更する補正値制御装置と、
を含むソーナーシステムにおいて、
前記送信系回路は、前記送信指示を受けると、予め定められた波形の音圧レベルを前記送信補正値によって補正し、該補正した音圧レベルの送信波を前記送信用圧電素子から送信し、
メンテナンス時に前記補正値制御装置は、前記受信系回路とは異なる外部の測定機器が前記送信系回路の前記送信用圧電素子から送信された送信波の音圧レベルを測定して得られた測定された送信波の音圧レベルを取得し、当該取得した送信波の音圧レベルを予め定められた規格に適合させるように送信補正値を求め、該求められた送信補正値に、前記送信系記憶部に記憶されている前記送信補正値を変更する
ことを特徴とするソーナーシステム。」

第3 当審において通知した拒絶の理由の概要
当審において令和4年7月21日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、本願発明についての理由2(進歩性要件違反)の概要は、次のとおりである。

進歩性)本願発明は、その出願前に発行された下記の引用文献3、7−9に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



3.特表2009−510401号公報
7.米国特許出願公開第2011/0164467号明細書
8.米国特許出願公開第2016/0069988号明細書
9.特開平10−39017号公報

第4 当審の判断
1 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
(1) 引用文献3に記載された事項及び引用発明の認定
ア 引用文献3に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に発行された前記引用文献3には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものである。
(ア) 【0011】−【0012】
「【0011】
本発明の一態様によれば、ソナーシステムは、送信制御信号及び受信制御信号を含む共通の送/受信制御信号に従って送信ソナーアレイの送信音響素子に送信し、受信ソナーアレイの受信音響素子から受信するように適応されているトランシーバ(送受信)モジュールを備える。ソナーシステムはまた、当該送受信モジュールに結合されるテレメトリ(遠隔通信)インタフェースと、遠隔通信インタフェースに結合される第1の端部及び共通の送/受信制御信号を受信するように適応されている第2の端部を有する遠隔通信媒体とを備える。
【0012】
本発明の別の態様によれば、ソナー送受信モジュールは、送信ソナーアレイの送信音響素子に結合するように適応されている送信機と、受信ソナーアレイの受信音響素子に結合するように適応されている受信機とを備える。ソナー送受信モジュールはまた、送信機及び受信機に結合され、送信制御信号及び受信制御信号を含む共通の送/受信制御信号を遠隔通信インタフェースから受信するように適応されている入/出力プロセッサを備える。送信機はさらに、共通の送/受信制御信号に従って送信制御信号を受信するように適応されている。受信機はさらに、共通の送/受信制御信号に従って受信制御信号を受信するように適応されている。受信機はさらに、入/出力プロセッサを介して音響素子によって受信される音響信号の時間サンプルを送信するように適応されている。」

(イ) 【0016】−【0021】
「【0016】
本発明について説明する前に、いくつかの予備的概念及び用語について説明する。本明細書において使用する場合、「テレメトリ(遠隔通信)媒体」という用語は、情報を通信することができる媒体を説明するために使用される。例えば、通信媒体はワイヤ、光ファイバ、複数のワイヤ、複数の光ファイバ、及び/又は自由空間とすることができる。特に、本明細書において使用する場合、「光ファイバ遠隔通信媒体」という用語は、1本の光ファイバケーブルに組み合わせても組み合わせなくてもよいが、1つの通信インタフェースを備える1つ又は複数の光ファイバを説明するために使用される。また、特に、本明細書において使用する場合、「無線遠隔通信媒体」という用語は、気体、例えば空気を含むことができ、又は気体を含まず、例えば宇宙空間を含むことができる自由空間を説明するために使用される。
…(中略)…
【0018】
本明細書において使用する場合、「音響素子」という用語は、一般にポイント音響送信機又はポイント音響受信機を表すソナーアレイの一部を説明するために使用される。しかし、音響素子が物理的な広がりを有することができ、対称である必要もないことが理解されよう。音響素子は、圧電素子、例えば圧電セラミック素子若しくは圧電ポリマー素子、磁気制限(magnetorestrictive)素子、又は音響の生成及び/若しくは受信に使用することができる任意の物理的な素子を含むことができるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書において使用する場合、「送信信号」という用語は、概して、アナログ送信波形を説明し、またアナログ送信波形を表すデジタル時間サンプリング信号を説明するために使用され、これは最終的に、送信音響信号として音響素子によって水中又は他の音響媒体内に送信される。したがって、送信信号はデジタル表現、例えば、時間に沿った一連の電気デジタル値、電気アナログ波形、又は対応する送信音響信号とすることができる。
【0020】
同様に、本明細書において使用する場合、「受信信号」という用語は、概して、アナログ受信波形を説明し、またアナログ受信波形を表すデジタル時間サンプリング信号を説明するために使用され、これはまず、水中又は他の音響媒体から受信音響信号として受信される。したがって、受信信号はデジタル表現、例えば、時間に沿った一連の電気デジタル値、電気アナログ波形、又は対応する受信音響信号であってよい。
(後略)」

(ウ) 【0024】−【0027】
「【0024】
図1を参照すると、例示的なソナーシステム10は、受信プロセッサ12、送信プロセッサ34、モード選択プロセッサ36、及びピング中姿勢予測プロセッサ38を含む船舶プロセッサ11を備える。送信プロセッサ34は、ソナーシステム10の送信機能を制御するように適応されている送信制御プロセッサ40を含むことができる。送信制御プロセッサ40は、送信機セットアッププロセッサ42、送信波形発生器44、送信ビーム形成パラメータプロセッサ46、及び送信変調プロセッサ48を含むことができる。送信制御プロセッサ40の機能についてはより十分に以下に説明する。しかし、ここでは、送信制御プロセッサ40がモード選択プロセッサ36及びピング中姿勢修正プロセッサ38から情報を受け取ると共に、送信制御信号50を通信するように適応されていると言うだけで十分である。送信制御信号50は、送信セットアッププロセッサ42、送信波形発生器44、送信ビーム形成プロセッサ46、及び送信変調プロセッサ48の出力の組み合わせを含む。送信制御信号50は、以下の考察から明らかになるように、ソナーシステム10が所望の特性を有する音響を水中に送信するのを可能にするのに十分な情報を含むことができる。
【0025】
ソナーシステム10は、上述した送信制御50を受信し、光ファイバ遠隔通信媒体54(例えば、光ファイバケーブル)を介して送信制御信号50をいわゆる「共通の送/受信制御信号」54a内で送信して、1つ又は複数の送受信モジュール(図示せず、例えば図3参照)を有する送受信モジュールラック56に送信するように適応されている光ファイバ遠隔通信インタフェース52も備えることができる。共通の送/受信制御信号54aについて以下により十分に説明する。
【0026】
送受信モジュールラック56は、送信信号59a〜59Mを、ケーブル58a〜58Mを介して1つ又は複数の音響素子、例えば音響素子62a、63aをそれぞれ有する1つ又は複数のソナーアレイ62、63に提供する。いくつかの構成では、送信信号59a〜59Mはそれぞれ、たった1つのそれぞれの音響素子に結合される。しかし、他の構成では、ケーブルの1本又は複数本が2つ以上のそれぞれの音響素子に結合される。さらに別の構成では、ケーブル58a〜58Mのうちの2本以上のケーブルが1つの音響素子に結合され、並列構成を提供する。さらに別の構成では、スイッチマトリックス(図示せず)が、ケーブル58a〜58Mから選択可能な音響素子への結合を指示することができる。
【0027】
ケーブル58a〜58Mは各送信信号59a〜59M及び各受信信号60a〜60Mの両方を含むものとして示されるが、他の実施形態では、送信信号59a〜59M及び受信信号60a〜60Mは別個のケーブルで通信される。」

(エ) 【0031】
「【0031】
受信プロセッサ12は、復調器22a〜22N及びフィルタ24a〜24Nを含むことができ、これらは受信信号68a〜68Nに関連する復調された受信信号及びソナーアレイ(例えば、62及び/又は63)の選択された音響素子を多次元ビーム形成器26(例えば、三次元(3D)ビーム形成器)に提供することができる。多次元ビーム形成器26は、1つ又は複数のビーム形成された受信信号26aをレコーダ28及び信号プロセッサ30に提供することができる。信号プロセッサ30は、処理された信号30aを表示プロセッサ31に提供することができ、表示プロセッサ31はグラフィカルユーザインタフェース33を操作することができる。」

(オ) 【0042】−【0044】
「【0042】
動作中、ケーブル58a〜58Mは、双方向の信号にリンクを提供する。送信信号59a〜59Mは、送受信モジュールラック56から送信ソナーアレイ(例えば、62及び/又は63)に送信され、それによって音響が水中に送信され、受信信号60a〜60Mは、受信ソナーアレイ(例えば、62及び/又は63)から送受信モジュールラック56に返される。送信信号及び受信信号は、ケーブル58a〜58Mのうちの同じケーブルで通信されることも異なるケーブルで通信されることもできる。送信ソナーアレイ及び受信ソナーアレイが同じソナーアレイであることも異なるソナーアレイであることもできることが理解されよう。同じソナーアレイの場合であっても、ソナーアレイ内の送信音響素子は、ソナーアレイ内の受信音響素子と同じであることも、又は受信音響素子と異なることもできる。いくつかの構成では、ケーブル58a〜58Mのうちの少なくともいくつかは単方向であり、送信信号又は受信信号のいずれかを通信する。
【0043】
動作中、ソナーアレイ62、63の音響素子は、受信信号60a〜60Mを受信音響素子からケーブル58a〜58Mを通じて戻して元の送受信モジュールラック56に提供する。受信信号60a〜60Mが、例えば、標的からの各エコー、ソナーアレイ62、63からの音響送信に関連する残響、電気ノイズ、及び海中に存在する音響背景ノイズを含む種々の信号特性を含み得ることが理解されよう。
【0044】
送受信モジュールラック56は、受信信号60a〜60Mを受信信号54bとして光ファイバ遠隔通信媒体54を介して光ファイバ遠隔通信インタフェース52に通信する。特定の一実施形態では、送受信モジュールラック56は288個の受信チャネルを提供し、各受信チャネルは、各音響素子に関連する各受信波形のサンプルを含み、各サンプルは16ビットを有し、100kHzのサンプルレートを有する。しかし、ソナーシステム10は、任意の特定の受信チャネル数、1サンプル当たりの任意の特定のビット数、又は任意の特定のサンプルレートに限定されない。」

(カ) 【0046】
「【0046】
多次元ビーム形成器26は、1つ又は複数のビーム形成された信号26aを信号プロセッサ30及びレコーダ28に提供する。レコーダ28は、信号プロセッサ30による後の検索及び解析のためにビーム形成された信号26aを記憶することができる。信号プロセッサ30は、ビーム形成された信号をリアルタイムで処理し、標的の検出を示す出力30aを提供することができる。信号プロセッサ30からの出力信号30aは表示プロセッサ31に提供することができ、表示プロセッサ31は、標的をグラフィカルユーザインタフェース33上に表示することができる。」

(キ) 図1




(ク) 【0062】−【0063】
「【0062】
ここで図2を参照すると、送受信モジュールラック72は、図1の送受信モジュールラック56と同じか又は同様にすることができる。光ファイバ遠隔通信媒体82は、図1の光ファイバ遠隔通信媒体54と同じか又は同様にすることができる。ケーブル84a〜84cは、図1のケーブル58a〜58Mと同じか又は同様にすることができ、ソナーアレイの音響素子に結合される。
【0063】
送受信モジュールラック72は、複数の送受信モジュールサブラック74a〜74cを含むことができる。各サブラック、例えばサブラック74aは、複数の4チャネル送受信モジュール76a〜76g、例えば、7つの4チャネル送受信モジュールを含むことができる。各4チャネル送受信モジュール76a〜76gは、少なくとも4つの音響素子に結合されるようになっており、且つそれらの音響素子にそれぞれの送信信号を送信し、それらの音響素子からそれぞれの受信信号を受信するように適応されている。」

(ケ) 図2




(コ) 【0067】
「【0067】
ここで図3を参照すると、4チャネル送受信モジュール100(又はより簡単に送受信モジュール)は、図2の4チャネル送受信モジュールのいずれか1つ、例えば図2の4チャネル送受信モジュール76aと同じか又は同様にすることができる。送受信モジュール100は4つの送信機102a〜102d及び4つの受信機124a〜124dを含む。」

(サ) 【0070】−【0075】
「【0070】
受信機124aを他の受信機124b〜124dの代表とすると、受信機124aは、ソナーアレイの音響送信素子(図示せず)へのリンク118aに結合される送/受信スイッチ126を含む。上述したように、いくつかの実施形態では、リンク118a(すなわち、ケーブル)は送信信号及び受信信号の両方を通信することができ、受信信号は送/受信スイッチ126によって受信され、受信機124aの他の部分に渡される。他の実施形態では、受信信号はリンク125a上で通信され、受信機124aの他の部分に渡される。受信機124aは、時変利得(TVG)増幅器130、アナログフィルタ132、アナログ/デジタル(A/D)変換器134、及びデジタルフィルタ/信号プロセッサ136も含む。受信機124aは、以下により十分に説明する種々の機能の同期をとるように適応されているタイミングリファレンス158も含む。いくつかの実施形態では、送/受信スイッチ126は、固体中継器、例えば、サイリスタを有する固体中継器を含む。この種類の送/受信スイッチ126は、従来のソナーシステムの構成よりも約15dBの信号対雑音の改善を生じることができる。送/受信スイッチ126の一般的な機能を当業者は理解しよう。
…(中略)…
【0073】
送/受信スイッチ126は、送信機102aが受信機124aに近いことから利用可能な追加の機能を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、送/受信スイッチ126は、送受信モジュール100が使用されるソナーシステムの送信機の較正中にケーブル118a上に出現する高電圧送信信号を(例えば、負の固定利得に設定された)TVG増幅器130に結合することができる。送信機較正では、結果として受信機124aで生じる信号は、ケーブル118a上の電圧を示し、所望の電圧を達成するように送信信号をそれに従って調整することができる。このために、送信機較正値を送信較正メモリ170に保存し、送信機102aでの送信信号レベルの調整に使用することができる。
【0074】
受信機124aも、受信機較正中に較正することができ、受信較正値を受信較正メモリ172に保存することができる。受信機較正では、テスト信号発生器150がテスト信号152を生成することができ、送/受信スイッチ126を介してこのテスト信号を(例えば、固定利得に設定された)TVG増幅器に提供することができる。その結果として受信機124aで生じる信号は、受信機124aの利得を示す。
【0075】
送信機較正及び受信機較正の両方で、受信機124aに出現する信号(例えば、図1の信号54b)は、例えば、図1の船舶プロセッサ11に送信することができ、船舶プロセッサ11は信号を処理し、上述した共通の送/受信制御信号(例えば、図1の54a)を介して較正値を送受信モジュール100に返すことができる。しかし、他の実施形態では、送信機較正及び受信機較正の両方で、受信機124aに出現する信号を受信機(例えば、素子136)によって測定し、送受信モジュール100が送信較正値及び受信較正値を生成することができる。」

(シ) 【0083】−【0084】
「【0083】
送信機、例えば送信機102aは、セットアップされると、較正され、時間スケーリングされ、適切に遅延された(且つ/又は位相シフトされた)送信波形を、ソナーアレイの1つ又は複数の音響素子(例えば、図1の62a及び/又は63a)に生成することができ、これは、電力増幅器112及び調整磁性体114を介して変調することができる。時間スケーリング及び振幅スケーリングは、他の送信機102b〜102d又は別の送受信モジュール(図示せず)上の他の送信機と組み合わせて送信される場合、1つ又は複数の送信音響ビームパターンを水中に生成することができる。
【0084】
受信機、例えば受信機124aは、セットアップされると、水中から音響信号を受信し、受信信号を増幅し、フィルタリングし、受信信号のデジタル時間サンプルを生成することができ、デジタル時間サンプルを通信リンク164aを介して入/出力プロセッサ166に提供することができる。入/出力プロセッサ168は、受信信号のデジタル時間サンプルを受信機124aから受信プロセッサ12(図1)に、すなわちリンク168を介して光ファイバ遠隔通信インタフェース(例えば、図2の80a)に提供し、光ファイバケーブル(例えば、図2の82)を介して光ファイバ遠隔通信インタフェース(図1の52)に提供し、そしてケーブル(図1の68a)を介して受信プロセッサ(例えば、図1の12)に提供することができる。同様に、他の受信機124b〜124d及び/又は他の送受信モジュール(図示せず)上の他の受信機は、他の音響素子に関連する受信信号を受信プロセッサ12に提供する。受信プロセッサ12は、受信ビーム形成及び図1に関連して上述した他の受信機能処理を実行することができる。」

(ス) 図3




(セ) 【0097】
「【0097】
【図1】送受信モジュールラックを有する本発明によるソナーシステムのブロック図である 。
【図2】複数の送受信モジュールをそれぞれ有する複数の送受信モジュールサブラックを有する、図1の送受信モジュールラックのさらなる詳細を示すブロック図である。
【図3】図2に示す送受信モジュールのさらなる詳細を示すブロック図である。
【図4】図2に示す送受信モジュールサブラックのさらなる詳細を示す分解組立ブロック図である。」

イ 引用文献3から読み取れる事項の認定
(ア) 前記ア(ウ)の【0025】及び前記ア(セ)の【0097】の記載並びに前記ア(キ)の図1から、引用文献3には、「ソナーシステム10は送受信モジュールラック56を含む」ことが記載されていると認められる。
(イ) 前記ア(エ)の【0031】の記載及び前記ア(キ)の図1から、引用文献3には、「受信プロセッサ12は信号プロセッサ30を含む」ことが記載されていると認められる。

引用発明の認定
前記アに摘記した引用文献3の記載事項及び前記イにおいて認定した事項を総合すると、引用文献3には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「受信プロセッサ12、送信プロセッサ34を含む船舶プロセッサ11を備えるソナーシステム10であって、(【0024】)
ソナーシステム10は、送受信モジュールラック56を含み、(前記イ(ア)の認定事項)
送信プロセッサ34は、ソナーシステム10の送信機能を制御するように適応されており、送信制御信号50を通信する送信制御プロセッサ40を含み、(【0024】)
受信プロセッサ12は信号プロセッサ30を含み、(前記イ(イ)の認定事項)
信号プロセッサ30は、標的の検出を示す出力30aを提供し、(【0046】)
送信信号59a〜59Mは、送受信モジュールラック56から送信ソナーアレイ62及び/又は63に送信され、それによって音響が水中に送信され、(【0042】)
受信信号60a〜60Mは、受信ソナーアレイ62及び/又は63から送受信モジュールラック56に返され、(【0042】)
受信信号60a〜60Mは、標的からの各エコー、ソナーアレイ62、63からの音響送信に関連する残響、電気ノイズ、及び海中に存在する音響背景ノイズを含む種々の信号特性を含み、【0043】
ソナーアレイ内の送信音響素子は、ソナーアレイ内の受信音響素子と同じであることも、又は受信音響素子と異なることもでき、(【0042】)
音響素子は、圧電素子を含み、(【0018】)
送受信モジュールラック56と同じである送受信モジュールラック72は、複数の送受信モジュールサブラック74a〜74cを含み、(【0062】−【0063】)
各サブラックは、複数の4チャネル送受信モジュール76a〜76gを含み、(【0063】)
4チャネル送信モジュール76aと同じである4チャネル送受信モジュール100は、4つの送信機102a〜102d及び4つの受信機124a〜124dを含み、(【0067】)
送信機は、送信制御信号を受信し、(【0012】)
送信機102aは、較正され、時間スケーリングされ、適切に遅延された送信波形を、ソナーアレイの1つ又は複数の音響素子62a及び/又は63aに生成し、(【0083】)
受信機124aは、水中から音響信号を受信し、受信信号を増幅し、フィルタリングし、受信信号のデジタル時間サンプルを生成し、(【0084】)
受信機124aは、ソナーアレイの音響送信素子へのリンク118aに結合される送/受信スイッチ126を含み、(【0070】)
送/受信スイッチ126は、送受信モジュール100が使用されるソナーシステムの送信機の較正中にケーブル118a上に出現する高電圧送信信号をTVG増幅器130に結合し、送信機較正では、受信機124aで生じる信号は、ケーブル118a上の電圧を示し、所望の電圧を達成するように送信信号をそれに従って調整し、送信機較正値を送信較正メモリ170に保存し、送信機102aでの送信信号レベルの調整に使用し、(【0073】)
送信機較正で、受信機124aに出現する信号54bを船舶プロセッサ11に送信し、船舶プロセッサ11は信号を処理し、較正値を送受信モジュール100に返す(【0075】)
ソナーシステム10(【0024】)」

(2) 引用文献7−9に記載された事項及び周知技術1−4の認定
ア 引用文献7−9に記載された事項
(ア) 引用文献7に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に発行された前記引用文献7には、以下の事項が記載されている。翻訳文は当合議体によるもので、下線は当合議体が付したものである。

a [0018]-[0020]
「[0018] Embodiments of the present invention use acoustic signals as calibration signal, i.e. sound waves received by a transducer or other device for measuring sound. While electrical measurements are easier to perform, they cover only the electrical part of the sonar apparatus, and no directional response is obtained. Acoustic measurements also cover the acoustic/mechanical part of the sonar, and it is possible to measure the complex directional response.
[0019] The acoustic measurements may be performed by measuring the response of the sonar or of the individual channels to signals received from a standard target such as a standard sphere, e.g. signals transmitted by the sonar's transmitter and reflected by a standard target at different positions relative to the sonar receiver. Alternatively, the acoustic measurements may be performed by measuring the sonar's or the individual channels' response to signals received from a standard acoustic source, e.g. a standard hydrophone, or the like. In particular cases the sphere can be replaced with a standard projector, which will transmit sound imitating the reflected signal from the sphere.
[0020] Optionally, electric measurements may be performed by replacing the receiver channel's transducers with suitable signal generators. Hence, while calibration based on electric measurements only compensate for artifacts of the receiver electronics, the acoustic measurements also allow for compensation of acoustic/mechanical artifacts of the transducers. 」
([0018] 本発明の実施形態では、較正信号として音響信号、すなわちトランスデューサー又は音を測定するための他の装置で受信した音波を用いる。電気的な測定は実行が容易であるが、ソーナー装置の電気的な部分のみを対象とし、指向性のある応答は得られない。音響測定は、ソーナー装置の音響/機械部分も対象としており、複雑な指向性応答を測定することが可能である。
[0019] 音響測定は、標準球などの標準ターゲットから受信した信号、例えば、ソーナーの送信機によって送信され、ソーナー受信機に対して異なる位置にある標準ターゲットによって反射された信号に対するソーナー又は個々のチャネルの応答を測定することによって実行されてもよい。あるいは、音響測定は、標準的な音響源、例えば標準的なハイドロフォンなどから受信した信号に対するソーナーまたは個々のチャネルの応答を測定することによって実行されてもよい。特に、球体は、球体からの反射信号を模倣して音を送信する標準的なプロジェクターと置き換えることができる。
[0020] 任意選択的に、電気的測定は、受信機チャネルのトランスデューサーを適切な信号発生器に置き換えることによって実行することができる。したがって、電気的測定に基づく較正は受信機電子機器のアーチファクトを補償するだけだが、音響的測定はトランスデューサーの音響的/機械的アーチファクトの補償を可能にする。)

b [0069]-[0072]
「[0069] An example of a calibration process will now be described with reference to FIGS. 6 and 7, where FIG. 6 shows a flow diagram of a calibration procedure for a sonar apparatus, while FIG. 7 schematically shows an example of a system for performing the calibration process.
[0070] The system, generally designated 700, comprises a mounting arrangement 701 for mounting the sonar apparatus 702, or at least the receiver array of the apparatus, at a predetermined position in a water tank 703. For example, the mounting arrangement may comprise a rotatable/turnable rack or other support structure for receiving the sonar apparatus or receiver array, e.g. a turntable, such that the rack may be suspended in water, e.g. by means of a hydraulic arm, a crane, or any other suitable device or arrangement. The system further comprises a mounting device 705 for deploying a standard sphere 706 (or a standard transducer/hydrophone) at a predetermined position relative to the sonar apparatus 702. For example, the sphere may be suspended by a crane, a hydraulic arm, or in any other suitable way. The mounting device 705 and/or the mounting arrangement 701 may be mounted on a movable frame such that the standard sphere and the sonar apparatus may be positioned at different positions relative to each other. For example the mounting device 705 and/or the arrangement 701 may be movably mounted on a frame suspended over the water tank and supported on two trolleys arranged to move along tracks or guides on respective sides of the water tank. Consequently the position of the device 705 and/or the arrangement 701 may by changed in a horizontal plane as well as in the vertical direction.
[0071] It will be appreciated that the system may allow for horizontal and or vertical movement of the standard sphere, the sonar apparatus, or both so as to provide a desired relative positioning of the standard sphere relative to the sonar apparatus.
[0072] The system further comprises a signal and data processing unit 707, e.g. a computer or other data processing device comprising suitable data acquisition circuitry, e.g. in the form of a suitable data acquisition circuit board. The signal and data processing unit is connected to the sonar apparatus via a suitable data connection 708, e.g. a serial or parallel interface, a local area network, and/or the like, for receiving the acoustic signals detected by the receiver elements of the sonar apparatus 702 and for forwarding the calibration parameters determined by the signal and data processing unit 707 during the calibration process for storage in the sonar apparatus 702. It will be appreciated that the signal and data processing unit may be implemented as a single unit or as separate modules, e.g. a signal acquisition unit and a separate data processing unit. In some embodiments some or all of the signal and/or data processing may be performed by a suitable processing unit of the sonar apparatus. It will further be appreciated that the data processing and storing of calibration parameters may be performed during the measurement process or at a later point in time, e.g. after completion of the data acquisition phase.」
([0069] 次に、図6及び図7を参照して較正処理の一例を説明するが、図6はソーナー装置の校正手順のフロー図、図7は較正処理を行うシステムの一例を模式的に示す図である。
[0070] 一般に700と指定されるシステムは、ソーナー装置702、又は少なくとも装置の受信機アレイを水槽703内の所定の位置に取り付けるための取り付け配置701から構成される。例えば、取り付け配置は、ソーナー装置又は受信機アレイを受けるための回動可能/回転可能なラック又は他の支持構造、例えばターンテーブルからなり、例えば油圧アーム、クレーン、又は他の任意の適切な装置又は配置によって、ラックを水中に吊るすことができるようにしてもよい。システムは、ソーナー装置702に対する所定の位置に標準球体706(又は標準トランスデューサー/ハイドロフォン)を配備するための取付け装置705をさらに備える。例えば、球体は、クレーン、油圧アーム、又は任意の他の適切な方法で吊り下げられてもよい。取付装置705及び/又は取付配置701は、標準球体及びソーナー装置が互いに相対的に異なる位置に配置され得るように可動フレームに取り付けられてもよい。例えば、取付け装置705及び/又は配置701は、水槽の上に吊り下げられたフレームに移動可能に取付けられ、水槽のそれぞれの側のトラック又はガイドに沿って移動するように配置された2つのトロリーに支持されてもよい。その結果、装置705及び/又は配置701の位置は、垂直方向だけでなく、水平面内でも変更することができる。
[0071] このシステムは、ソーナー装置に対する標準球の所望の相対的位置決めを行うために、標準球、ソーナー装置、またはその両方の水平および垂直移動を可能にすることができることを理解されるであろう。
[0072] システムは、信号及びデータ処理ユニット707、例えば、適切なデータ取得回路、例えば、適切なデータ取得回路基板の形態で、を含むコンピュータ又は他のデータ処理装置を更に備える。信号及びデータ処理ユニットは、ソーナー装置702の受信機要素によって検出された音響信号を受信するため、及びソーナー装置702に記憶するために較正プロセス中に信号及びデータ処理ユニット707によって決定された較正パラメータを転送するための適切なデータ接続708、例えば、シリアル又はパラレルインターフェース、ローカルエリアネットワーク、及び/又は同様のものを介してソナー装置へ接続される。信号及びデータ処理ユニットは、単一ユニットとして、又は別個のモジュール、例えば信号取得ユニット及び別個のデータ処理ユニットとして実装されてもよいことが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、信号及び/又はデータ処理の一部又は全部は、ソーナー装置の適切な処理ユニットによって実行されてもよい。データ処理及び較正パラメータの保存は、測定プロセス中又は後の時点、例えば、データ取得段階の完了後に実行されてもよいことが更に理解されよう。)

c 図7




(イ) 引用文献8に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に発行された前記引用文献8には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものである。

a [0048]-[0049]
「[0048] Overview. The invention provides platform-independent calibration systems and methods for underwater sonar systems with a heretofore unachievable flexibility of use. The systems and methods of the invention allow for low-cost calibration, recalibration, and confirmation of sonar system performance attributes over the active lifetime of the device. A particularly useful aspect of the invention is for the calibration of sonar instrumentation following upgrade or repair processes. In another aspect, the invention provides in situ calibration capability for both stationary and moving sonar platforms at a plurality of depths.
[0049] The inventive calibration assemblies, devices, and components described herein are schematically represented in FIG. 3. The invention provides means to determine (e.g., localize) and/or monitor referent 2 positioning relative to a sonar system 1 being calibrated, thereby allowing the referent 2 to be of either fixed or moving position anywhere within the sonar range (e.g., up to 0.05 km, up to 0.1 km, 0.1 to 0.3 km, up to 0.5 km, or more). Positional monitoring of the referent 2 is generally enabled by a referent-locator means 6, which provides positional information 8 about the referent 2 to a locator-detection means 7 capable of communication via 11 or optionally 12, with the analyzer 10 component of the sonar system or optionally with the referent-locator 6 via 9. The analyzer 10 integrates referent 2 positional information provided by the detector 7 into the calibration algorithm. Calibration may be accomplished with or without additional apparatus.」
([0048] 概要。本発明は、これまで達成できなかった柔軟な使用方法を有する水中ソーナーシステム用のプラットフォーム非依存型較正システム及び方法を提供する。本発明のシステム及び方法は、装置の能動的寿命にわたるソーナーシステムの性能属性の低コスト較正、再較正、及び確認を可能にする。本発明の特に有用な態様は、アップグレード又は修理工程に続くソーナー機器の較正のためのものである。別の態様では、本発明は、複数の深度において、固定および移動するソナー・プラットフォームの両方に対する現場での較正能力を提供する。
[0049] 本明細書に記載される本発明の較正アセンブリ、装置、及び構成要素は、図3に概略的に表されている。本発明は、校正されるソーナーシステム1に対する参照物2の位置決めを決定(例えば、局在化)及び/又は監視する手段を提供し、それによって、参照物2がソーナー範囲内(例えば、最大0.05km、最大0.1km、0.1〜0.3km、最大0.5km、又はもっと)のどこでも固定又は移動位置となることが可能である。参照物2の位置監視は、一般に、参照物ロケータ手段6によって可能となり、この手段は、参照物2に関する位置情報8を、ソーナーシステムの分析器10構成要素と、又は任意に9を介して参照物ロケータ6と、11または任意に12を介して通信可能なロケータ検出手段7に提供する。分析器10は、検出器7によって提供される参照物2の位置情報を較正アルゴリズムに統合する。較正は、追加の装置を用いて、あるいは用いずに行うことができる。)

b 図3




c [0057]
「[0057] The referent and its use. Referents 2 of the invention consist of essentially three types: targets (e.g., standard targets, non-standard targets), acoustic sources, and hydrophones or functional equivalents thereof. Referent type is selected according to the needs of the calibration being performed. In all cases, the referent 2 is associated with a referent-locator 6, according to the means described herein. Each form of referent 2 and its selection is described below.」
([0057] 参照物とその使用。本発明の参照物2は、本質的に、ターゲット(例えば、標準ターゲット、非標準ターゲット)、音響源、及びハイドロフォン又はその機能的等価物の3つのタイプから構成される。参照物タイプは、実行される較正の必要性に応じて選択される。全ての場合において、参照物2は、本明細書に記載される手段に従って、参照物ロケータ6と関連付けられる。参照物2の各形態とその選択について、以下に説明する。)

d [0070]
「[0070] Referent acoustic receiver. An acoustic receiver with appropriate sensitivity, directionality, and frequency discrimination may be employed as a referent 2 for the reception of sound or to calibrate a sonar 1 exclusively in the transmit mode when specific transmission properties of the sonar 1 in the absence of an echo or backscattered acoustic signal need to be determined. In preferred embodiments, a previously calibrated hydrophone in association with a referent-locator 6 is positioned within the transmit beam of the sonar 1 being calibrated with a range and orientation sufficient to receive transmitted sound. In one embodiment, the acoustic receiver is an echo repeater of the art capable of recording the impinging sonar signal.」
([0070] 参照用音響受信機。適切な感度、指向性及び周波数識別を有する音響受信機は、音の受信のための参照2として採用されてもよいし、エコー又は後方散乱音響信号がない場合のソーナー1の特定の送信特性を決定する必要がある場合に、送信モードのみでソーナー1を較正するために採用されてもよい。好ましい実施形態では、参照物ロケータ6と関連して以前に較正されたハイドロフォンは、送信音を受信するのに十分な範囲及び方向で較正されているソーナー1の送信ビーム内に位置決めされる。一実施形態では、音響受信機は、衝突するソーナー信号を記録することができる当業者のエコーリピータである。)

(ウ) 引用文献9に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に発行された前記引用文献9には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものである。

a 【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は空気中で超音波を使って物体を検知および/または認識する装置のための制御方法に関するものである。この装置はマウント上に配置され、位相ネットワーク上で操作されるよう配置された複数の超音波発信器と少なくとも一つの受信器を持つ。本発明はまたこの種の装置のためのキャリブレーション方法にも関するものである。」

b 【0016】
「【0016】これらの問題は本発明に係わる検知装置の制御方法によって解決される。というのも、装置のキャリブレーション操作は、その検知操作の前に少なくとも1回行なわれるからである。キャリブレーション操作は検知装置が組み立てられた後に1回か、または検知操作の前に行なわれる。あるいは、検知装置の通常使用時において、定期的にキャリブレーション操作を行なうことも良い。例えば検知操作の前毎や適宜決められたメンテナンス期間毎である。キャリブレーション操作を行なうためにターゲットを超音波発信器1の対向する位置に配置する。ターゲットは、図3に示すように基準超音波受信器RRとして働く超音波受信器9や、なめらかな幾何学面11などを用いる。後者の場合、検知装置上の1つまたは複数の超音波受信器を、図4(1つの超音波受信器2)や図5(複数の超音波受信器2)に示すように基準超音波受信器RRとして用いる。」

イ 周知技術1−4の認定
(ア) 周知技術1の認定
前記ア(ア)b、cに摘記した引用文献7の記載事項から、次の技術事項は周知技術(以下「周知技術1」という。)であると認められる。

<周知技術1>
「ソーナー装置等のセンサや計測機器一般において、較正値を、センサや計測機器の部分でない他の装置で決定し、ソーナー装置等の計測機器に記憶させること」

(イ) 周知技術2の認定
前記ア(ア)aに摘記した引用文献7の記載事項から、次の技術事項は周知技術(以下「周知技術2」という。)であると認められる。

<周知技術2>
「電気的測定はソーナー装置の電気的な部分のみを対象とし、音響的測定はソーナー装置の音響/機械的な部分も対象とした較正を行えること」

(ウ) 周知技術3の認定
前記ア(ア)a〜cに摘記した引用文献7の記載事項、前記ア(イ)a〜dに摘記した引用文献8の記載事項及び前記ア(ウ)a、bに摘記した引用文献9の記載事項を総合すると、次の技術事項は周知技術(以下「周知技術3」という。)であると認められる。

<周知技術3>
「ソーナー装置や超音波センサ装置の送信系の較正に際して、送信系からの送信波を外部の受信機で測定すること」

(エ) 周知技術4の認定
前記ア(イ)aに摘記した引用文献8の記載事項及び前記ア(ウ)a、bに摘記した引用文献9の記載事項を総合すると、次の技術事項は周知技術(以下「周知技術4」という。)であると認められる。

<周知技術4>
「ソーナー装置や超音波センサ装置においてメンテナンス時に較正を行うこと」

2 対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。

ア(ア) 引用発明の「送信信号59a〜59Mは、送受信モジュールラック56から送信ソナーアレイ62及び/又は63に送信され、それによって音響が水中に送信され」ることは、送信ソナーアレイ62及び/又は63が音響を水中に送信することを意味するから、送信ソナーアレイ62及び/又は63内の「圧電素子を含[む]」「送信音響素子」は、本願発明の「送信波を水中へ送信する送信用圧電素子」に相当する。
(イ) そして、引用発明の「圧電素子を含[む]」「送信音響素子」及び「較正され、時間スケーリングされ、適切に遅延された送信波形を、ソナーアレイの1つ又は複数の音響素子62a及び/又は63aに生成[する]」「送信機」の両者を含む回路構成は、本願発明の「送信波を水中へ送信する送信用圧電素子を含む送信系回路」に相当する。

イ(ア) 引用発明の「受信信号60a〜60Mは、受信ソナーアレイ62及び/又は63から送受信モジュールラック56に返され」、「送受信モジュール100」に含まれる「受信機124a」が水中から音響信号を受信[する]」ことは、水中からの音響信号を受信ソナーアレイ62及び/又は63が受信することを意味するから、受信ソナーアレイ62及び/又は63内の「圧電素子を含[む]」「受信音響素子」は、本願発明の「前記水中の音波を」「受信波として受信[する]」「受信用圧電素子」に相当する。
(イ) 引用発明における「受信信号60a〜60Mは、標的からの各エコー、ソナーアレイ62、63からの音響送信に関連する残響、電気ノイズ、及び海中に存在する音響背景ノイズを含む種々の信号特性を含[む]」ことと、ソナーシステムは標的からのエコーを検出するものであるという技術常識から見て、引用発明の受信機が「水中から音響信号を受信し、受信信号を増幅し、フィルタリングし[て]」生成する「受信信号のデジタル時間サンプル」は、本願発明の「前記送信波が前記水中の物体で反射した反響波を前記受信した音波である前記受信波から検出」した信号に相当することは明らかである。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明の「圧電素子を含[む]」「受信音響素子」及び「水中から音響信号を受信し、受信信号を増幅し、フィルタリングし、受信信号のデジタル時間サンプルを生成[する]」受信機の両者を含む回路構成は、本願発明の「前記水中の音波を受信用圧電素子によって受信波として受信し、前記送信波が前記水中の物体で反射した反響波を前記受信した音波である前記受信波から検出する受信系回路」に相当する。

ウ(ア) 引用発明は「送信プロセッサ34は、ソナーシステム10の送信機能を制御するように適応されており、送信制御信号50を通信する送信制御プロセッサ40を含み」、「送信機は、送信制御信号を受信[する]」ものであるから、引用発明の「送信制御プロセッサ40」が「送信制御信号50を通信する」こと及び「送信機は、送信制御信号を受信[する]」ことは、本願発明の「前記送信波の送信指示を前記送信系回路に出力[する]」ことに相当する。
(イ) 送信ソナーから送信される音響の標的からのエコーに基づいて標的の検出を行うというソナーシステムにおける技術常識を考慮すれば、引用発明の「受信プロセッサ12」に含まれる「信号プロセッサ30」が「標的の検出を示す出力30aを提供[する]」ことは、送信プロセッサ34の送信制御プロセッサ40が送信制御信号を通信した後に得られる、本願発明の「反響波を前記受信した音波である前記受信波から検出」した信号に相当する受信信号のデジタル時間サンプル(前記イ(イ)参照)に基づくことは明らかである。そうすると、引用発明は、本願発明の「当該送信指示を出力した後に前記受信系回路によって反響波が検出されたか否かに基づいて、前記水中の物体を検知する」ことに相当する構成を備えているといえる。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明の「受信プロセッサ12、送信プロセッサ34を含む船舶プロセッサ11」は、本願発明の「前記送信波の送信指示を前記送信系回路に出力し、当該送信指示を出力した後に前記受信系回路によって反響波が検出されたか否かに基づいて、前記水中の物体を検知する制御系回路」に相当する。

エ 引用発明の「送信機102aでの送信信号レベルの調整に使用[される]」「送信機較正値を」「保存する」「送信較正メモリ170」は、送信信号レベルを調整すればおのずと音圧レベルも調整されることを考慮すれば、本願発明の「前記送信波の音圧レベルを補正するための送信補正値を記憶する送信系記憶部」に相当する。

オ 引用発明の「ソナーシステム」は、本願発明の「ソーナー装置」に相当する。

カ(ア) 引用発明において「送信機は、送信制御信号を受信」することは、本願発明において「送信系回路は、前記送信指示を受ける」ことに相当する。
(イ) 引用発明の「送信機較正値を」「送信機102aでの送信信号レベルの調整に使用[する]」ことは、送信信号レベルを調整すればおのずと音圧レベルも調整されること、及び、「送信機102aは、送信波形を、ソナーアレイの1つ又は複数の音響素子62a及び/又は63aに生成[する]」ことを踏まえると、本願発明の「予め定められた波形の音圧レベルを前記送信補正値によって補正[する]」ことに相当する。
(ウ) 引用発明の「送信信号59a〜59Mは、送受信モジュールラック56から送信ソナーアレイ62及び/又は63に送信され、それによって音響が水中に送信され[る]」こと及び「送信機102aは、較正され、時間スケーリングされ、適切に遅延された送信波形を、ソナーアレイの1つ又は複数の音響素子62a及び/又は63aに生成[する]」ことは、前記(イ)の内容も踏まえると、本願発明の「該補正した音圧レベルの送信波を前記送信用圧電素子から送信[する]」ことに相当する。
(エ) 前記(ア)〜(ウ)を踏まえると、引用発明は、本願発明の「前記送信系回路は、前記送信指示を受けると、予め定められた波形の音圧レベルを前記送信補正値によって補正し、該補正した音圧レベルの送信波を前記送信用圧電素子から送信[する]」ことに相当する構成を備えているといえる。

キ(ア) 引用発明の「所望の電圧を達成するように送信信号をそれに従って調整[する]」ことと、本願発明の「送信波の音圧レベルを予め定められた規格に適合させる」ことは、「送信波に関連するレベルを予め定められた規格に適合させる」点で共通する。
(イ) 引用発明の「受信機124aに出現する信号54bを船舶プロセッサ11に送信し、船舶プロセッサ11は信号を処理し、較正値を送受信モジュール100に返す」こと及び「送信機較正値を送信較正メモリ170に保存[する]」ことは、本願発明の「送信補正値を求め、該求められた送信補正値に、前記送信系記憶部に記憶されている前記送信補正値を変更する」ことに相当する。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明と本願発明は、「送信波に関連するレベルを予め定められた規格に適合させるように送信補正値を求め、該求められた送信補正値に、前記送信系記憶部に記憶されている前記送信補正値を変更する」点で共通しているといえる。

(2) 一致点及び相違点の認定
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

ア 一致点
「 送信波を水中へ送信する送信用圧電素子を含む送信系回路と、
前記水中の音波を受信用圧電素子によって受信波として受信し、前記送信波が前記水中の物体で反射した反響波を前記受信した音波である前記受信波から検出する受信系回路と、
前記送信波の送信指示を前記送信系回路に出力し、当該送信指示を出力した後に前記受信系回路によって反響波が検出されたか否かに基づいて、前記水中の物体を検知する制御系回路と、
前記送信波の音圧レベルを補正するための送信補正値を記憶する送信系記憶部と、
を備えるソーナー装置であって、
前記送信系回路は、前記送信指示を受けると、予め定められた波形の音圧レベルを前記送信補正値によって補正し、該補正した音圧レベルの送信波を前記送信用圧電素子から送信し、
送信波に関連するレベルを予め定められた規格に適合させるように送信補正値を求め、該求められた送信補正値に、前記送信系記憶部に記憶されている前記送信補正値を変更する
ソーナー装置」である点。

イ 相違点
<相違点1>
本願発明は、「前記送信補正値を変更する補正値制御装置」を含む「ソーナーシステム」であり、当該補正値制御装置が送信補正値を求め、該求められた送信補正値に、前記送信系記憶部に記憶されている前記送信補正値を変更するのに対して、引用発明は、本願発明の「制御系回路」に相当する「船舶プロセッサ11」が信号を処理し、較正値を送受信モジュール100に返す点。

<相違点2>
送信補正値を求めるに際し、本願発明は、「メンテナンス時に」「前記受信系回路とは異なる外部の測定機器が前記送信系回路の前記送信用圧電素子から送信された送信波の音圧レベルを測定して得られた測定された送信波の音圧レベルを取得し、当該取得した送信波の音圧レベルを予め定められた規格に適合させるように送信補正値を求め[る]」のに対して、引用発明は、「送信機較正では、受信機124aで生じる信号は、ケーブル118a上の電圧を示し、所望の電圧を達成するように送信信号をそれに従って調整[する]」点。

3 判断
(1) 相違点について
前記相違点について検討する。
ア 相違点1について
(ア) 前記1(2)イ(ア)で周知技術1として認定したとおり、「ソーナー装置等のセンサや計測機器一般において、較正値を、センサや計測機器の部分でない他の装置で決定し、ソーナー装置等の計測機器に記憶させること」は周知技術である。
(イ) そして、引用発明において、ソナーシステムの部分である船舶プロセッサ11が信号を処理し、較正値を送受信モジュール100に返すことに代えて、周知技術1のように、送信機較正値をソナーシステムの部分ではない他の装置で決定し、決定された送信機較正値に、送信較正メモリに保存されている送信機較正値を変更するようにすることは、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。
(ウ) そして、このとき「ソナーシステムの部分ではない他の装置」が本願発明の「前記送信補正値を変更する補正値制御装置」に相当し、ソナーシステム及び当該他の装置の両者を含むシステムが本願発明の「ソーナーシステム」に相当することとなる。

イ 相違点2について
(ア)まず、送信補正値設定処理を行うのが「メンテナンス時」である点については、ソーナーシステムの使用方法に関する事項であって、ソーナーシステム自体を特定するものではないから、実質的な相違点ではない。また、仮に実質的な相違点であるとしても、「ソーナー装置や超音波センサ装置においてメンテナンス時に較正を行うこと」は、前記1(2)イ(エ)で周知技術4として認定したとおり周知技術にすぎない。
(イ)a また、ソーナー装置を較正するに際して、「電気的測定はソーナー装置の電気的な部分のみを対象とし、音響的測定はソーナー装置の音響/機械的な部分も対象とした較正を行えること」は、前記1(2)イ(イ)で周知技術2として認定したとおり周知技術である。
b そして、引用発明においても、ソナーシステムの音響・機械的な部分を対象とした較正を行うことが好ましいことは、当業者には自明な事項であるから、引用発明において周知技術2を参酌して、ソナーシステムの音響・機械的な部分を対象とした較正を行うために音響的測定を行うことは、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ)a さらに、前記1(2)イ(ウ)で周知技術3として認定したとおり「ソーナー装置や超音波センサ装置の送信系の較正に際して、送信系からの送信波を外部の受信機で測定すること」もまた周知技術である。
b したがって、前記(イ)で説示したように引用発明において音響的測定を伴う送信系の較正を行うに際して、その具体的な手段として周知な較正手段の中から周知技術3を選択して、送信音響素子からの送信波を外部の受信機、すなわち測定機器で測定して、当該測定結果である送信波の音圧レベルが所望の音圧レベルを達成するように、すなわち、当該測定結果である送信波の音圧レベルを予め定められた規格に適合するように、送信機較正値を求めることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 総合評価
そして、上記相違点1及び2を総合的に判断しても、本件発明は引用発明及び周知技術1〜4から当業者が容易になし得たものであり、本願発明の奏する効果についても、引用発明と周知技術1〜4から予測される程度のものにすぎず、予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。

相違点の判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術1〜4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2) 請求人の主張について
ア 意見書における請求人の主張内容
請求人は、当審拒絶理由に対して令和4年8月30日に提出された意見書において、以下の主張をしている。
(ア) 主張1 本願発明と引用発明の相違点について
a 本願発明と引用文献3との間には、較正(較正方法)に明らかな相違点がある。
b 詳述すると、引用文献3では、「送信機較正」および「受信機較正」と記載しているように、送信機(102a〜102d)や受信機(124a〜124d)を較正しており、「送信機較正」や「受信機較正」を行うためには、送/受信スイッチ126やテスト信号発生器150が必須の構成要素となる。すなわち、引用文献3は、高電圧送信信号およびテスト信号の電圧レベルの補正を行っているだけであり、「送信音響素子」や「受信音響素子」をも較正することを意図しておらず、それらを較正してもよいことも、何ら記載も開示も示唆もしていない。すなわち、引用文献3の「較正」には、圧電素子による音圧/電圧変換及び電圧/音圧変換の較正が含まれていない。
c このように、引用文献3では、「送信機較正」や「受信機較正」を行っているだけなので、わざわざ、送信波を「送信音響素子」を使用して外部へ送信したり、外部から水中の音波を「受信音響素子」を使用して受信することを一切行っておらず、また、それをする必要性もない。 d 引用文献3において、送信較正メモリ170は「送信較正値」を保存しているが、引用文献3において、「送信較正値」とは、送信音響素子を含まない送信機(102a〜102d)からの出力信号の大きさに関連する送信較正値であるから、審判合議体は、本願発明と引用文献3との間の上述した相違点を見逃している。

(イ) 主張2 引用発明を変更する動機付けの不存在及び阻害要因についての主張
a 仮に「送信音響素子」や「受信音響素子」をも較正しようとすると、上記「送信機較正」や「受信機較正」を行うために必須な構成要素である、送/受信スイッチ126やテスト信号発生器150が不要となってしまうことも明らかであり、「送信音響素子」や「受信音響素子」をも較正しようとすると、引用文献3に開示された構成を大幅に設計変更することが必要となり、全く、別の発明になることは明らかである。
b 本願発明では、送信用圧電素子(110、317)を含む送信系回路(101、201、301)や、受信用圧電素子(112、317)を含む受信系回路(103、203、303)には、経年変化があるので、その経年変化を管理するため(本願発明の課題)に、メンテナンス時に送信補正値設定処理や受信補正値設定処理を行っているが、引用文献3には、このような本願発明の課題の認識がないので、当然に、本願発明の較正方法を採用することもあり得ない。
c 引用文献7は、単に、較正パラメータを決定してソーナー装置へ格納のために転送する信号及びデータ処理ユニット707や、ソーナーの音響・機械的部分をカバーしてもよいことを記載しているにすぎず、引用文献8は、単に、ソーナー1の較正のための音響受信機や、修理プロセスについて開示しているにすぎず、引用文献9は、単に、基準超音波受信器RRとして働く超音波受信器9や、キャリブレーション操作をメンテナンス期間毎に行うことを開示しているにすぎない。
d 本願発明と引用文献3に記載の引用発明とは、「較正」という一般的な課題においては共通するものの、送信用圧電素子を含む送受信回路および受信用圧電素子を含む受信系回路の経年変化を管理するためにメンテナンス時に補正値設定処理を行うという具体的な課題において全く異なるものであり、しかも、引用文献3に記載の引用発明と引用文献7〜9に記載の引用発明とも具体的な課題において異なるのであるから、当業者であっても、引用文献3に引用文献7〜9を組み合わせる動機付けが存在しない。

イ 請求人の主張についての検討
(ア)主張1についての検討
a まず、前記ア(ア)dの審判合議体が相違点を看過している旨の主張について検討すると、当審拒絶理由では、補正値が「前記受信系回路とは異なる外部の測定機器が前記送信系回路の前記送信用圧電素子から送信された送信波の音圧レベルを測定して得られる、当該測定された送信波の音圧レベルを予め定められた規格に適合させるように求められた」ものである点は、「ソーナー装置」を特定するための意味を有しないものとして、本願発明1を認定することを明記しており、さらに、この点がソーナー装置の構成を特定するものと解した場合についても予備的に検討しているから、相違点の看過には該当せず、請求人の主張は失当である。
b そして、請求人の主張する相違点は前記2(2)イで認定した相違点2であるが、当該相違点2に係る構成は引用発明及び周知技術2〜4から当業者が容易に想到し得たことであることは、前記(1)イで検討したとおりである。
c よって、主張1は採用できない。

(イ) 主張2について検討
a まず、本願発明の課題の認識及び動機付けについて検討すると、前記1(2)イ(イ)で周知技術2として認定したとおり、「電気的測定はソーナー装置の電気的な部分のみを対象とし、音響的測定はソーナー装置の音響/機械的な部分も対象とした較正を行えること」は周知技術であり、引用発明においても、ソナーシステムの音響・機械的な部分を対象とした較正を行うことが好ましいことは、当業者には自明な事項であることも、前記(1)イ(イ)bに記載したとおりである。
b したがって、引用発明は請求人が主張する本願発明の課題を内在しており、引用発明に周知技術2を適用することには、ソナーシステムの音響・機械的な部分を対象とした較正を行うためという動機付けが存在する。
c また、引用文献3に開示された構成を大幅に設計変更することが必要となることが、引用発明に周知技術2〜4を適用する阻害要因に該当するかについて検討すると、引用発明において、音響的測定を伴う較正を行うことが、引用文献3に開示された技術の目的に反するものとなったり、引用文献3に記載された技術が機能しなくなるといった事情は存在しない。
d さらに、周知技術2の例示として挙げた引用文献7には、音響的測定に加えて電気的測定を行うことも示唆されており(前記1(2)ア(ア)aの[0020]参照)、音響的測定を行うことがただちに、請求人が大幅な設計変更と主張するテスト信号発生器150等が不要になることを意味するものではない。
e よって、主張2は採用できない。

4 当審の判断のまとめ
以上検討のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1〜4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-10-27 
結審通知日 2022-11-02 
審決日 2022-11-17 
出願番号 P2016-082849
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01S)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 波多江 進
濱本 禎広
発明の名称 ソーナーシステム及びソーナーシステム用の物体検知方法  
代理人 佐々木 敬  
代理人 池田 憲保  

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