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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1393788
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-15 
確定日 2023-01-05 
事件の表示 特願2018−217201「蛍光体ホイール、光源装置、投写型映像表示装置、及び、蛍光体ホイールの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月 7日出願公開、特開2019− 35981〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年10月5日(優先権主張 平成28年2月4日)に出願した特願2016−197373号の一部を平成30年11月20日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和2年10月16日付け:拒絶理由通知書
同年12月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 5月25日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年 7月13日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月14日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月21日 :原査定の謄本の送達)
令和4年 2月15日 :審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年12月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1の記載は、次のとおりである。
なお、令和3年7月13日に提出された手続補正書による補正は、同年12月14日付けの補正の却下の決定で却下されている。
「 【請求項1】
基板と、
前記基板の一方の面に形成された光反射層と、
蛍光体層と、
前記光反射層と前記蛍光体層との間に位置し、前記光反射層と前記蛍光体層とを接着する接着層とを備え、
前記接着層は、前記接着層の基材よりも熱伝導率が高い粒子であって、光反射性を有する粒子を含有しており、
前記光反射層上に前記接着層が設けられた領域は、前記光反射層よりも光の反射率が高い
蛍光体ホイール。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。

進歩性)本願発明は、本願の優先日前に発行された下記の引用文献1、5に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



1.特開2015−118107号公報
5.特開2013−228598号公報

第4 当審の判断
1 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
(1) 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に発行された前記引用文献1には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
(ア) 第1の実施形態
「【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態のプロジェクター用蛍光ホイールを示す斜視図である。図2は、図1に示すA−A線に沿う断面図である。図1及び図2に示すように、蛍光ホイール10は、リング状の形状を有している。蛍光ホイール10は、リング状の放熱基板11と、放熱基板11の上に設けられる蛍光体層12と、放熱基板11と蛍光体層12との間に設けられ、放熱基板11と蛍光体層12とを接合する接合材層13とを備えている。
【0022】
図3は、本発明の第1の実施形態のプロジェクター用蛍光ホイールにおける蛍光体層の近傍を拡大して示す部分断面図である。本実施形態において、蛍光体層12は、ガラスマトリクスと、その中に分散した蛍光体とから構成されている。本実施形態では、蛍光体として、無機蛍光体の粒子が用いられている。
…(中略)…
【0028】
放熱基板11としては、金属基板やカーボン基板等が挙げられる。本実施形態では、放熱基板11として金属基板が用いられており、放熱だけでなく、光反射の役割も担っている。具体的には、金属基板は、蛍光体層12に入射する励起光、及び励起光の入射により蛍光体から出射される蛍光を反射する。金属基板は、一般に、金属または合金から形成され、表面処理が施されていてもよい。金属基板としては、反射率の高いものが好ましく、例えば、表面に金属酸化物などからなる増反射膜が形成されたアルミニウム基板が挙げられる。このようなものとしては、アラノッド(Alanod)社製のMiro(登録商標)及びMiro−Silver(登録商標)等が挙げられる。
【0029】
放熱基板11と蛍光体層12との間には、接合材層13が設けられている。接合材層13によって、放熱基板11と蛍光体層12が接着されている。図3に示すように、接合材層13は、接合材14と、接合材14の中に分散した熱伝導性フィラー15とから形成されている。接合材14は、透明であることが好ましい。但し、接合材14は、透明であるものに限定されず、透明でない接合材も用いることができる。ここで、「透明」は、蛍光体層12に入射する励起光及び蛍光体層12から出射される蛍光を透過することを意味している。このような透明の接合材の具体例としては、シリコーン樹脂及びポリイミド樹脂が挙げられる。
【0030】
シリコーン樹脂としては、一般的なシロキサン結合を有するシリコーン樹脂を用いることができ、特に、耐熱性の高いシルセスキオキサンを好ましく用いることができる。シルセスキオキサンは、主鎖骨格がSi−O−Si結合からなるシロキサン系の化合物で、3官能性シランを加水分解することで得られる(RSiO1.5)nの構造を持つネットワーク型ポリマーまたは多面体クラスターである。
【0031】
ポリイミド樹脂としては、いわゆる透明ポリイミド樹脂を用いることができ、透明ポリイミド樹脂として、多くの樹脂メーカーから市販されているものを用いることができる。
【0032】
熱伝導性フィラー15の具体例としては、窒化ホウ素粉末、窒化アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化チタン粉末、酸化ニオビウム粉末、酸化亜鉛粉末、光輝性アルミニウム粉末、銀粉末などが挙げられる。熱伝導性フィラー15の平均粒子径は、1〜50μmの範囲内であることが好ましく、2〜40μmの範囲内であることがより好ましい。熱伝導性フィラー15の屈折率(nd)は1.5〜2.5の範囲内であることが好ましく、1.6〜2.4の範囲内であることがより好ましい。なお、熱伝導性フィラー15は、透明または白色であることが好ましい。
【0033】
接合材層13における熱伝導性フィラー15の含有量は、20〜90体積%の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは30〜90体積%の範囲内であり、特に好ましくは40〜80体積%の範囲内である。熱伝導性フィラー15の含有量が少なすぎると、蛍光体層12で発生した熱を放熱基板11へ十分に伝導させることができない場合がある。一方、熱伝導性フィラー15の含有量が多すぎると、放熱基板11と蛍光体層12との接着力が低下する場合がある。
【0034】
接合材層13の厚みは、2μm〜100μmであることが好ましく、5μm〜50μmであることがより好ましい。接合材層13の厚みが小さすぎると、放熱基板11と蛍光体層12の接着強度に劣る場合がある。一方、接合材層13の厚みが大きすぎると、蛍光体層12で発生した熱が放熱基板11へ放熱されにくくなる場合がある。
【0035】
本実施形態では、接合材層13に、熱伝導性フィラー15が含有されており、接合材層13の熱伝導性が高くなっている。このため、励起光が蛍光体層12に入射することにより蛍光体層12に発生した熱は、接合材層13を通り放熱基板11に効率良く伝導される。放熱基板11に伝導された熱は、放熱基板11内を通り、外部に放出される。そのため、蛍光体層12が励起光の入射により加熱されるのを抑制することができる。したがって、蛍光体層12が加熱されることにより生じる蛍光強度の低下や、蛍光体層の基板からの剥離等の問題を抑制することができる。」

(イ) 図1





(ウ) 図3





引用発明の認定
前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「リング状の放熱基板11と、(【0021】)
放熱基板11の上に設けられる蛍光体層12と、(【0021】)
放熱基板11と蛍光体層12との間に設けられ、放熱基板11と蛍光体層12とを接合する接合材層13とを備え、(【0021】
放熱基板11は、表面に金属酸化物などからなる増反射膜が形成されたアルミニウム基板であり、(【0028】)
放熱基板11と蛍光体層12との間に設けられた接合材層13によって、放熱基板11と蛍光体層12が接着されており、(【0029】)
接合材層13は、接合材14と、接合材14の中に分散した熱伝導性フィラー15とから形成されており、(【0029】)
接合材14は透明であることが好ましく、(【0029】)
透明な接合材の具体例としては、シリコーン樹脂及びポリイミド樹脂が挙げられ、(【0029】)
熱伝導性フィラー15の具体例としては、窒化ホウ素粉末、窒化アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化チタン粉末、酸化ニオビウム粉末、酸化亜鉛粉末、光輝性アルミニウム粉末、銀粉末などが挙げられ、(【0032】)
熱伝導性フィラー15の平均粒子径は、1〜50μmの範囲内であることが好ましく、(【0032】)
熱伝導性フィラー15は、透明又は白色であることが好ましく、(【0032】)
接合材層13に、熱伝導性フィラー15が含有されており、接合材層13の熱伝導性が高くなっている、(【0035】)
蛍光ホイール10。(【0021】)」

(2) 引用文献5に記載された事項及び引用文献5技術事項の認定
ア 引用文献5に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に発行された前記引用文献5には、以下の事項が記載されている。
(ア) 【技術分野】
「【0001】
本発明は、励起光源及び蛍光発光板を備える光源装置と、該光源装置を備える投写型表示装置に関する。」

(イ) 【発明が解決しようとする課題】
「(前略)
【0011】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、反射率を向上させて反射光の利用効率を高めることができ、且つ、低コスト化を実現することができる光源装置及び該光源装置を備える投写型表示装置を提供することである。」

(ウ) 【課題を解決するための手段】
「【0012】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の光源装置及び該光源装置を備える投写型表示装置が提供される。
【0013】
すなわち、本発明の一態様に係る光源装置は、励起光源と、前記励起光源に対向配置された蛍光発光部と、前記励起光源の反対側であって蛍光発光部に接合するように配置された酸化チタンを有する反射部と、を備える蛍光発光板と、を備え、前記励起光源からの励起光が前記蛍光発光部に照射されることにより、前記蛍光発光部での蛍光発光光及び前記反射部での蛍光反射光をそれぞれ出射することを特徴とする。」

(エ) 【発明の効果】
「【0014】
上記構成によれば、蛍光発光部に対向配置された励起光源から出射された励起光が、蛍光発光部に照射されたあと、酸化チタンを有する反射部で反射する。このとき、蛍光発光部で蛍光発光光が出射されるのと同時に、反射部で反射された蛍光反射光が出射される。反射部が、高い屈折率を持った酸化チタンを有するので、銀よりも高い反射率が得られる。したがって、酸化チタンを有する反射部は、反射率の向上により、反射光の利用効率を高めることができる。また、反射部において用いられている酸化チタンは、無機酸化物であり、銀よりも安価である。酸化チタンの高い屈折率を利用して反射作用を得ているので、基板の界面の影響を受けにくく、基板の下地処理に要する費用を削減することができる。また、酸化チタン自身が耐酸化性及び耐熱性を有するので、フッ化マグネシウム等の保護膜も不要であり、低コスト化に寄与することができる。また、酸化チタンは、比較的良好な熱伝導性を有する。したがって、酸化チタンを有する反射部は、反射率の向上と、低コスト化とを実現することができる。」

(オ) 第1実施形態
「(前略)
【0026】
図4に示すように、第1実施形態に係る蛍光発光板32は、下地基板80と、下地基板80の上に密着して形成された反射層(反射部)82と、反射層82の上に密着して形成された蛍光発光層(蛍光発光部)84と、を備える。図4(B)において、励起光源である青色レーザー25(図示しない)からの励起光が上から下に向けて蛍光発光層84に照射されるので、反射層82は、蛍光発光層84を挟んで、青色レーザー25の反対側に配置されている。
【0027】
下地基板80は、例えば円盤形状をしており、熱伝導及び耐熱性が良好である材料からできている。例えば、下地基板80の熱伝導率が、0.8乃至20W/m・Kである。下地基板に使用可能な材料は、例えば、ガラスやアルミナのようなセラミック材料、アルミニウムや銅やステンレスのような金属材料、あるいはシリコン基板である。アルミの下地基板80としては、高輝アルミ基板や、金属基板上にアルミを蒸着したその表面上に誘電体保護膜(増反射膜)をコートしたアルミ増反射基板等を例示することができる。下地基板80の厚みは、例えば0.2mm乃至1.5mmである。後述するように、反射層82のバインダ及び蛍光発光層84のバインダとして、有機系バインダ又は無機系バインダを用いることができるが、例えば、有機系バインダを用いる場合には200℃程度の耐熱性を有する下地基板80を使用し、無機系バインダを用いる場合には600℃程度の耐熱性を有する下地基板80を使用することができる。
【0028】
下地基板80の上に形成された反射層82は、酸化チタンとバインダとを含む層である。反射層82の厚みは、例えば10μm乃至350μmである。好ましい反射層82の厚みは、10μm乃至100μmである。反射層82の厚みが10μmよりも薄いと、反射層82における酸化チタンの存在量が少ないために、反射層82で反射される蛍光発光光が少なくなる。反射層82の厚みが350μmよりも厚いと、励起光の照射された部分で発生した熱が反射層82の中で籠もってしまって下地基板80の側から逃げにくくなるために、蛍光発光層84の温度が上昇する。その結果、外部に出射される蛍光発光光が少なくなり、蛍光発光層84の変換効率が低下する。しかしながら、下地基板80及び/又は反射層82自体の放熱性を改善することにより、厚みのある反射層82でも使用可能である。すなわち、熱伝導率の大きい下地基板80を使用すること、及び/又は、反射層82を酸化チタンと無機系バインダガラスから構成することが、放熱性の改善において有効である。その結果、蛍光発光層84での変換効率が向上する。
【0029】
反射層82で使用される酸化チタンは、ルチル型(屈折率:約2.72)又はアナターゼ型(屈折率:約2.52)の結晶構造を持った粉末である。酸化チタンの粒径は、例えば3μm乃至100μmである。
【0030】
反射層82のバインダとして、有機系バインダ又は無機系バインダを使用することができる。有機系バインダは、例えば、シリコーン樹脂(屈折率:1.35乃至1.45、熱伝導率:0.15W/m・K、耐熱性:約200℃)、エポキシ樹脂(屈折率:1.35乃至1.45、熱伝導率:0.3W/m・K、耐熱性:約150℃)である。無機系バインダは、例えば、ホウ酸塩ガラス(屈折率:1.40乃至1.65、熱伝導率:1.0乃至1.5W/m・K、耐熱性:約350℃)、リン酸塩ガラス(屈折率:1.40乃至1.65、熱伝導率:1.0乃至1.5W/m・K、耐熱性:約350℃)である。
(後略)」

(カ) 図4





イ 引用文献5技術事項の認定
前記アに摘記した引用文献5の記載事項を総合すると、引用文献5には次の技術事項(以下「引用文献5技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「蛍光発光部と、蛍光発光部と接合するように配置された酸化チタンを有する反射部と、を備える蛍光発光板であって、(【0013】)
蛍光発光板32は、下地基板80と、下地基板80の上に密着して形成された反射層(反射部)82と、反射層82の上に密着して形成された蛍光発光層(蛍光発光部)84と、を備え、(【0026】)
下地基板80に使用可能な材料は、例えば、ガラスやアルミナのようなセラミック材料、アルミニウムや銅やステンレスのような金属材料、あるいはシリコン基板であり、(【0027】)
アルミの下地基板80としては、金属基板上にアルミを蒸着したその表面上に誘電体保護膜(増反射膜)をコートしたアルミ増反射基板等を例示することができ、(【0027】)
下地基板80の上に形成された反射層82は、酸化チタンとバインダとを含む層であり、(【0028】)
酸化チタンの粒径は、例えば3μm乃至100μmであり、(【0029】)
反射層82のバインダとして、有機系バインダを使用することができ、(【0030】)
有機系バインダは、例えばシリコーン樹脂であり、(【0030】)
酸化チタンを有する反射部は、反射率の向上により反射光の利用効率を高めることができ、(【0014】)
酸化チタンは、比較的良好な熱伝導性を有すること(【0014】)」

2 対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「リング状の放熱基板11」は、本願発明の「基板」に相当する。

イ 引用発明の「放熱基板11」である「アルミニウム基板」の「表面に」「形成された」「金属酸化物などからなる増反射膜」は、本願発明の「前記基板の一方の面に形成された光反射層」に相当する。

ウ 引用発明の「放熱基板11の上に設けられる蛍光体層12」は、本願発明の「蛍光体層」に相当する。

エ(ア) 引用発明の「放熱基板11」が「表面に金属酸化物などからなる増反射膜が形成されたアルミニウム基板」であることを考慮すれば、「放熱基板11と蛍光体層12との間に設けられ、放熱基板11と蛍光体層12とを接合する接合材層13」は、増反射膜と蛍光体層12との間に設けられたものであるといえる。
(イ) また、引用発明は「放熱基板11と蛍光体層12との間に設けられた接合材層13によって、放熱基板11と蛍光体層12が接着されて[いる]」から、引用発明の「接合材層13」は、本願発明の「接着層」に相当する。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)並びに前記イの検討を踏まえると、引用発明の「放熱基板11と蛍光体層12との間に設けられ、放熱基板11と蛍光体層12とを接合する接合材層13」は、本願発明の「前記光反射層と前記蛍光体層との間に位置し、前記光反射層と前記蛍光体層とを接着する接着層」に相当する。

オ(ア) 引用発明の「接合材層13」を形成する「接合材14」は、本願発明の「前記接着層の基材」に相当する。
(イ) 引用発明の「熱伝導性フィラー15」は、「窒化ホウ素粉末、窒化アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化チタン粉末、酸化ニオビウム粉末、酸化亜鉛粉末、光輝性アルミニウム粉末、銀粉末などが挙げられ」、またその「平均粒子径は、1〜50μmの範囲内であることが好まし[い]」ことから、本願発明の「粒子」に相当することは明らかである。
(ウ) そして、引用発明は、「接合材層13に、熱伝導性フィラー15が含有されており、接合材層13の熱伝導性が高くなっている」ものであるから、熱伝導性フィラーの熱伝導率は、接合材14の熱伝導率よりも高いことは明らかである。
(エ) 前記(ア)〜(ウ)の検討を踏まえると、引用発明の「接合材層13は、接合材14と、接合材14の中に分散した熱伝導性フィラー15とから形成されて[いる]」ことは、本願発明の「前記接着層は、前記接着層の基材よりも熱伝導率が高い粒子であって、光反射性を有する粒子を含有して[いる]」ことと、「前記接着層は、前記接着層の基材よりも熱伝導率が高い粒子を含有して[いる]」点で共通する。

カ 引用発明の「蛍光ホイール10」は、本願発明の「蛍光体ホイール」に相当する。

(2) 一致点及び相違点の認定
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

ア 一致点
「基板と、
前記基板の一方の面に形成された光反射層と、
蛍光体層と、
前記光反射層と前記蛍光体層との間に位置し、前記光反射層と前記蛍光体層とを接着する接着層とを備え、
前記接着層は、前記接着層の基材よりも熱伝導率が高い粒子を含有している、
蛍光体ホイール」である点。

イ 相違点
本願発明は、接着層が含有する粒子が「光反射性を有する粒子」であり、「前記光反射層上に前記接着層が設けられた領域は、前記光反射層よりも光の反射率が高い」のに対して、引用発明は、熱伝導性フィラー15が光反射性を有するものであるか必ずしも明らかであるとはいえず、また、増反射膜上に接合材層13が設けられた領域と、増反射膜の反射率の大小関係が不明な点。

3 判断
(1) 相違点について
前記相違点について検討する。
ア 引用発明への引用文献5技術事項の適用について
(ア) まず、引用文献5の発明の詳細な説明においては、【発明が解決しようとする課題】として、段落【0011】に「したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、反射率を向上させて反射光の利用効率を高めることができ、且つ、低コスト化を実現することができる光源装置及び該光源装置を備える投写型表示装置を提供することである。」(前記1(2)ア(イ)参照)として、反射率の向上という課題が明示されている。そして、引用文献5技術事項は、下地基板11上に酸化チタンを有する反射層82を形成することにより、「反射率の向上により反射光の利用効率を高めることができ[る]」ものであり、当該反射膜が設けられた領域について、当該反射膜が設けられない下地基板よりも反射率を高くすることをその技術上の意義とするものである。
(イ) このことは、引用文献5技術事項で下地基板11として例示されている、誘電体保護膜(増反射膜)をコートしたアルミ増反射基板を用いる場合でも同様であり、この場合は、当該反射膜が設けられた領域は、当該反射膜が設けられない誘電体保護膜(増反射膜)よりも反射率を高くすることがその技術上の意義となる。
(ウ) また、引用文献5技術事項においては「酸化チタンは、比較的良好な熱伝導性を有すること」とされており、酸化チタンを有する反射層は、反射率の向上と共に熱伝導性を向上させることも、その技術上の意義とするものであるといえる。
(エ) そして、引用発明と引用文献5技術事項はいずれも蛍光ホイールに関するものであり、反射率及び熱伝導率の向上という課題を共有することは明らかであるといえる。
(オ) ここで、引用発明の接合材層13と、引用文献5技術事項の反射層82とを対比すると、両者は、
a 光反射層(引用発明の「増反射膜」、引用文献5技術事項の「誘電体保護膜(増反射膜)」)と蛍光体層(引用発明の「蛍光体層12」、引用文献5技術事項の「蛍光発光層84」)との間に位置し、
b シリコーン樹脂に例示される基材(引用発明の「接合材」、引用文献5技術事項の「バインダ」)に、
c 熱伝導性が良好な粒子(引用発明の「熱伝導性フィラー」、引用文献5技術事項の「酸化チタン」)を含有するものである
点で共通している。
(カ) さらに、引用発明で、「接合材14は透明であることが好ましく」、「熱伝導性フィラー15は、透明又は白色であることが好まし[い]」ことは、接合材14及び熱伝導性フィラー15は少なくとも光吸収性ではないのが好ましいことが示唆されているといえ、熱伝導性フィラー15の具体例として、引用文献5技術事項で反射層に用いられている酸化チタンも例示されている。
(キ) してみると、引用発明において、熱伝導率の向上に加え、蛍光ホイール10の反射率を向上させるために、引用文献5技術事項の反射層82と同じく光反射層と蛍光体層との間に位置する引用発明の接合材層13において、引用文献5技術事項の、反射率及び熱伝導率の向上を図ることができる、酸化チタンを熱伝導性フィラーとして採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
(ク) そして、前記(キ)のように、蛍光ホイール10の反射率を向上させるために、引用発明の接合材層13の熱導電性フィラーとして酸化チタンを採用する際には、前記(イ)の引用文献5技術事項における誘電体保護膜(増反射膜)上に設けられる反射層82の技術上の意義を考慮すれば、引用発明の増反射膜上に接合材層13が設けられた領域が、増反射膜よりも光の反射率が高くなるようにすることは、当業者が当然に考慮して実現すべき事項にすぎない。

イ 効果について
本願発明の奏する効果についても、引用発明と引用文献5技術事項から予測される程度のものにすぎず、予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。

相違点の判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献5技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2) 請求人の主張について
ア 意見書における請求人の主張内容
請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。

請求項1に係る発明の「前記光反射層上に前記接着層が設けられた領域は、前記光反射層よりも光の反射率が高い」構成については、引用文献5の実施例1を根拠に拒絶している。
ここで、この実施例1に相当する引用文献5の段落0065には「まず、下地基板80として、アルミ基板(住友軽金属製)を準備した。酸化チタンが50体積%になるように、有機系バインダとしての二液性のシリコーン樹脂(信越化学製)と、反射材料としての酸化チタン(ルチル型)と、を準備して、シリコーン樹脂及び酸化チタンを攪拌混合した。脱泡機を用いて、気泡の無い反射層用ペーストを作成した。様々な厚み(例えば、厚みが10μm乃至430μm)になるように、反射層用ペーストをスクリーン印刷で下地基板80上に塗布した。反射層82の形成された下地基板80を、熱硬化炉を用いて、150℃、30分の条件で熱硬化させた。」と記載されている。
上記段落0065の下線部を参照すると、実施例1は、請求項1に係る発明の「光反射層」に相当する構成が無い状態で蛍光体層の変換効率を計測したものである。
なお、引用文献5の段落0027には、「アルミの下地基板80としては、高輝アルミ基板や、金属基板上にアルミを蒸着したその表面上に誘電体保護膜(増反射膜)をコートしたアルミ増反射基板等を例示することができる。」と記載されているが、実施例1にアルミ増反射基板が用いられているという記載はなく、引用文献5の実施例1では、増反射膜がコートされていないアルミ基板を用いて実験が行われていると考えることが普通である。
そうすると、引用文献5には、「増反射膜がコートされていない下地基板80(請求項1に係る発明の基板に相当)上に反射層82(請求項1に係る発明の接着層に相当)が設けられた領域は、増反射膜がコートされていない下地基板80よりも光の反射率が高い」ことを示唆しているが、「増反射膜(請求項1に係る発明の光反射層に相当)上に反射層82が設けられた領域は、増反射膜よりも光の反射率が高い」ことについては示唆していない。
つまり、引用文献5は、請求項1に係る発明の「前記光反射層上に前記接着層が設けられた領域は、前記光反射層よりも光の反射率が高い」構成を示唆していない。言い換えれば、引用文献5は、光反射層と光反射層上の接着層が設けられた領域との反射率の関係を示唆する文献ではない。
なお、引用文献5の実施例1は、引用文献5の段落0067、0070に「実験」という用語が用いられている通り、実験結果を示すものある。下地基板80を増反射膜がコートされた基板に変更した場合に同様の結果が得られるかどうかは実験してみないとわからない。この点からも引用文献5は、請求項1に係る発明の「前記光反射層上に前記接着層が設けられた領域は、前記光反射層よりも光の反射率が高い」構成を示唆していない。

イ 請求人の主張についての検討
(ア) 請求人の主張は要するに、引用文献5の実験結果は、本願発明の光反射層に相当する増反射膜を設けた構成に対応するものではなく、増反射膜を設けた場合に、本願発明の「前記光反射層上に前記接着層が設けられた領域は、前記光反射層よりも光の反射率が高い」との構成を示唆するものではない、というものである。
(イ) しかしながら、引用文献5技術事項は、下地基板11上に酸化チタンを有する反射層82を形成することにより、「反射率の向上により反射光の利用効率を高めることができ[る]」ものであり、当該反射膜が設けられた領域は、当該反射膜が設けられない下地基板よりも反射率を高くすることをその技術上の意義とするものであることは前記(1)ア(ア)で検討したとおりであり、これは、下地基板11として誘電体保護膜(増反射膜)をコートしたアルミ増反射基板を用いる場合でも同様であることも前記(1)ア(イ)で検討したとおりである。
(ウ) そして、この技術上の意義を考慮すれば、引用発明に引用文献5技術事項を適用する際には、引用発明の増反射膜上に接合材層が設けられた領域が、増反射膜よりも光の反射率が高くなるようにすることは、当業者が当然に考慮して実現すべき事項にすぎないことも、前記(1)ア(キ)で検討したとおりである。
(エ) よって、請求人の主張は採用できない。

4 当審の判断のまとめ
以上検討のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献5技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-11-04 
結審通知日 2022-11-08 
審決日 2022-11-21 
出願番号 P2018-217201
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 波多江 進
濱本 禎広
発明の名称 蛍光体ホイール、光源装置、投写型映像表示装置、及び、蛍光体ホイールの製造方法  
代理人 新居 広守  
代理人 道坂 伸一  
代理人 寺谷 英作  
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