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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1393980
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-27 
確定日 2022-12-07 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6822272号発明「水中油型乳化食品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6822272号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜6〕、〔7〜9〕について」訂正することを認める。 特許第6822272号の請求項1、2、5〜9に係る特許を維持する。 特許第6822272号の請求項3、4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6822272号の請求項1〜9に係る特許についての出願は、平成29年3月29日に出願され、令和3年1月12日にその特許権の設定登録がなされ、同年1月27日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、令和3年7月27日に特許異議申立人森田弘潤(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、同年10月11日付けで取消理由が通知され、これに対して、同年11月12日に特許権者から意見書と訂正請求書が提出され、令和4年6月3日付けで当審において取消理由通知(決定の予告)が通知され、同年6月30日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年9月26日付けで当審において取消理由通知(決定の予告)が通知され、同年10月18日に訂正請求書及び意見書が提出されたものである。
なお、令和3年11月12日に提出された訂正請求書に関し、令和4年1月28日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされたが、特許異議申立人から何ら応答はなかった。

第2 訂正の許否についての判断

1 令和3年11月12日及び令和4年6月30日に提出された訂正請求書による訂正請求について
令和4年10月18日に提出された訂正請求書による訂正請求がされたため、令和3年11月12日に提出された訂正請求書による訂正請求及び令和4年6月30日に提出された訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
そして、令和4年10月18日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。

2 請求の趣旨
令和4年10月18日に特許権者が行った訂正請求に係る請求の趣旨は、「特許第6822272号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜9について訂正することを求める。」というものである。

3 訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)

(1)訂正事項1
(訂正事項1−1)
特許請求の範囲の請求項1に「卵と酢を混合後、」とあるのを、「卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合後、」に訂正する。
(訂正事項1−2)
特許請求の範囲の請求項1に「混合後、混合物を」とあるのを、「混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を」に訂正する。
(訂正事項1−3)
特許請求の範囲の請求項1に「混合物を0〜10℃で3時間以上21時間以下」とあるのを、「混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下」に訂正する。
(訂正事項1−4)
特許請求の範囲の請求項1に「保持して水相原料を調製する工程」とあるのを、「、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程」に訂正する。
(訂正事項1−5)
特許請求の範囲の請求項1に「水相原料を調製する工程を含むことを特徴とする方法。」とあるのを、「水相原料を調製する工程、及び水相原料を調製後、油相原料を添加して、乳化させる工程を含むことを特徴とする方法。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2、5、6も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1〜4のいずれか1項に記載」とあるのを、「請求項1又は2に記載」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1〜5のいずれか1項に記載」とあるのを、「請求項1、2及び5のいずれか1項に記載」に訂正する。

(6)訂正事項6
(訂正事項6−1)
特許請求の範囲の請求項7に「卵と酢を混合後、」とあるのを、「卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合後、」に訂正する。
(訂正事項6−2)
特許請求の範囲の請求項7に「混合後、混合物を」とあるのを、「混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を」に訂正する。
(訂正事項6−3)
特許請求の範囲の請求項7に「混合物を0〜10℃で3時間以上21時間以下」とあるのを、「混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下」に訂正する。
(訂正事項6−4)
特許請求の範囲の請求項7に「保持して水相原料を調製する工程」とあるのを、「、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程」に訂正する。
(訂正事項6−5)
特許請求の範囲の請求項7に「水相原料を調製する工程を含むことを特徴とする方法。」とあるのを、「水相原料を調製する工程、及び水相原料を調製後、油相原料を添加して、乳化させる工程を含むことを特徴とする方法。」に訂正する。
(請求項7の記載を引用する請求項8及び9も同様に訂正する。)

4 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1−1による訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1−1に係る請求項1の訂正は、本件訂正前の請求項1における発明特定事項である「酢」を「酸度が14〜25重量%である」ものに限定して特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
したがって、訂正事項1−1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
また、請求項1の上記訂正に連動する請求項2、5、6の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加の有無について
本件特許明細書の段落【0016】には、「酢の酸度(酢酸としての濃度)は、通常1〜25重量%であり、短時間で効果を得る観点から14〜25重量%が好ましい。」と記載されているから、登録時の明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、訂正事項1−1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項1−1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ また、請求項1の上記訂正に連動する請求項2、5、6の訂正も、同様の理由により、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項1−2による訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1−2に係る請求項1の訂正は、本件訂正前の請求項1における「卵と・・・酢を混合後」の工程について、訂正前に混合工程との関係が、不明確であったところ、「混合物の状態を保ち続けるため」の工程であるという本来の意味を明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
したがって、訂正事項1−2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
また、請求項1の上記訂正に連動する請求項2、5、6の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無について
本件特許明細書の段落【0027】には、「得られた混合物を保持する工程は、油相原料と乳化させるまで混合物の状態を保ち続ける工程であり、」と記載されているから、本件特許明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、訂正事項1−2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項1−2による訂正は、混合工程後の工程の本来の意味を明らかにしたもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ また、請求項1の上記訂正に連動する請求項2、5、6の訂正も、同様の理由により、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項1−3による訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1−3に係る請求項1の訂正は、本件訂正前の請求項1における発明特定事項である「混合物を0〜10℃で3時間以上21時間以下」の温度と時間の上限をそれぞれ「混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下」に下げるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
よって、訂正事項1−3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
また、請求項1の上記訂正に連動する請求項2、5、6の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加の有無について
本件訂正前の請求項3には、「保持する温度が0〜5℃である」との記載があり、本件特許明細書の段落【0027】には、「また保持する時間は、品質安定性の観点から、通常1時間以上であり、3時間以上が好ましく、通常24時間未満であり、21時間以下が好ましく、18時間以下がより好ましい。」と記載されているから、本件特許明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、訂正事項1−3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項1−3による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ また、請求項1の上記訂正に連動する請求項2、5、6の訂正も、同様の理由により、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項1−4による訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1−4に係る請求項1の訂正は、本件訂正前の請求項1における発明特定事項である「保持して」を明確にするために、混合工程と区別できる「、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して」に訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
したがって、訂正事項1−4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
また、請求項1の上記訂正に連動する請求項2、5、6の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無について
本件特許明細書の段落【0027】には、「上記得られた混合物を保持する工程は、油相原料と乳化させるまで混合物の状態を保ち続ける工程であり、撹拌などを行わず混合物を静止した状態で置く工程、撹拌する工程、あるいは間欠的に撹拌する工程を含んでもよい。」と記載されているから、本件特許明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、訂正事項1−4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項1−4による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正前の「保持して水相原料を調製する工程」の保持の内容をより具体的に、混合工程と区別できる「、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程」であると説明したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ また、請求項1の上記訂正に連動する請求項2、5、6の訂正も、同様の理由により、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項1−5による訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1−5に係る請求項1の訂正は、本件訂正前の請求項1における発明特定事項である「水相原料を調製する工程を含むことを特徴とする方法。」について、水相原料を調製する工程の後工程についても限定し、「水相原料を調製する工程、及び水相原料を調製後、油相原料を添加して、乳化させる工程を含むことを特徴とする方法。」とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
よって、訂正事項1−5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
また、請求項1の上記訂正に連動する請求項2、5、6の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加の有無について
本件訂正前の本件特許明細書の段落【0011】及び【0029】には、「水相原料と油相原料とを乳化させる工程」が記載され、本件訂正前の本件特許明細書の段落【0037】には、「(6)保持後、油を徐々に添加して予備混合を行い、コロイドミル(せん断速度53,850〜70,500(1/s))で本乳化する。」との記載もあることから、本件特許明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、訂正事項1−5は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項1−5による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ また、請求項1の上記訂正に連動する請求項2、5、6の訂正も、同様の理由により、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項2による訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2に係る請求項3の訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

新規事項の追加の有無について
訂正事項2は、請求項を削除する訂正であり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(7)訂正事項3による訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項3に係る請求項4の訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

新規事項の追加の有無について
訂正事項3は、請求項を削除する訂正であり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(8)訂正事項4による訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項4に係る請求項5の訂正は、訂正前の請求項5が「請求項1〜4」を引用する記載であったところ、引用する請求項を「請求項1又は2」と減少させる訂正である。これは、引用する請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

新規事項の追加の有無について
訂正事項4に係る請求項5についての訂正により、請求項5は請求項1又は2を引用するものとなったが、引用する請求項を減少させるだけの訂正であり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項4に係る請求項5についての訂正により、請求項5は請求項1又は2を引用するものとなったが、上記のとおり、これは特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、引用する請求項を減少させるだけの訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(9)訂正事項5による訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項5に係る請求項6は、訂正前の請求項6が「請求項1〜5」を引用する記載であったところ、引用する請求項を「請求項1、2及び5」と減少させる訂正である。これは、引用する請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

新規事項の追加の有無について
訂正事項5に係る請求項6についての訂正により、請求項6は請求項1、2及び5を引用するものとなったが、引用する請求項を減少させるだけの訂正であり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項5に係る請求項6についての訂正により、請求項6は請求項1、2及び5を引用するものとなったが、上記のとおり、これは特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、引用する請求項を減少させるだけの訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(10)訂正事項6による訂正について
訂正事項6−1〜訂正事項6−5は、請求項1の「水中油型乳化食品の製造方法」に関する訂正事項1−1〜訂正事項1−5を、請求項7の「水中油型乳化食品の保水性向上方法」に対してそれぞれ、同じ内容の訂正を行ったものである。
したがって、上記(1)〜(5)において検討したのと同様に、訂正事項6−1〜訂正事項6−5は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号(訂正事項6−1、訂正事項6−3及び訂正事項6−5)又は第3号(訂正事項6−2及び訂正事項6−4)に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
また、請求項7の上記訂正に連動する請求項8、9の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

なお、独立特許要件について、特許異議申立人による特許異議の申立ては、本件訂正前の全ての請求項に対してされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

(11)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1〜6について、請求項2〜6はそれぞれ請求項1を直接または間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1〜6は一群の請求項である。
また、本件訂正前の請求項7〜9について、請求項8及び9はそれぞれ請求項7を直接または間接的に引用しているものであって、訂正事項6によって記載が訂正される請求項7に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項7〜9は一群の請求項である。
したがって、訂正前の請求項1〜6及び請求項7〜9に、それぞれ対応する訂正後の請求項1〜6及び請求項7〜9に係る本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。

5 小括
以上のとおりであるから、令和4年10月18日に特許権者によってされた本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1〜6〕、〔7〜9〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の特許請求の範囲の記載
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1〜9に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」〜「本件特許発明9」という。まとめて、「本件特許発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(なお、令和4年9月26日付け取消理由通知(決定の予告)の対象となった本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜9に係る発明を、「本件訂正前の本件特許発明1」〜「本件訂正前の本件特許発明9」といい、まとめて、「本件訂正前の本件特許発明」ということもある。)。

「【請求項1】
少なくとも卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなる水中油型乳化食品の製造方法であって、卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程、及び水相原料を調製後、油相原料を添加して、乳化させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
水中油型乳化食品がマヨネーズである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
卵が、卵黄、卵白、全卵、液卵及び卵粉末からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
水中油型乳化食品中の油滴の粒子径が1〜10μm及び水中油型乳化食品の粘度が10〜800(Pa・s)である、請求項1、2及び5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなる水中油型乳化食品の保水性向上方法であって、卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程、及び水相原料を調製後、油相原料を添加して、乳化させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
水中油型乳化食品がマヨネーズである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
卵が、卵黄、卵白、全卵、液卵及び卵粉末からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7又は8に記載の方法。」

第4 特許異議申立人が申し立てた理由及び取消理由(決定の予告)

1 特許異議申立人が申し立てた理由

異議申立理由1:請求項1〜9に係る特許に関して、登録時の請求項1〜9に係る発明においては、卵と酢を混合後、混合物を3時間以上21時間以下保持して水相原料を調製する工程を含むことが規定されている一方、本件特許明細書には、保持する工程に関する記載として【0027】には、保持する工程として、攪拌する工程、あるいは間欠的に攪拌する工程を含んでよいと記載され、混合する工程と保持する工程の区別が判別できず、保持する工程の始期が不明であるから、上記請求項1〜9に係る発明は明確ではなく、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではないので、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

異議申立理由2−1:請求項1〜9に係る特許に関して、舌触りに関して本件特許明細書に裏付けがなく、それに影響する旨記載されている油滴の粒子径や粘度に関する規定がなく、他のファクターも多数存在するから、良好な舌触りが得られると認識し得ず、課題が解決できると理解できないから、登録時の請求項1〜9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではなく、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないので、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

異議申立理由2−2:請求項1〜9に係る特許に関して、実施例と比較例が保水性に影響のある粘度や粒子径が異なり、作用効果に関する条件が揃えられていないので、保持時間と保水性との関係を示すものとは認められず、保持時間や保持温度が特許請求の範囲であれば所望の効果が得られると認識できる技術常識もないから、登録時の請求項1〜9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではなく、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないので、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

異議申立理由2−3:請求項1〜9に係る特許に関して、実施例は、実施例の条件限りの結果にすぎず、舌触り等の食感が良く高い保水性が得られる観点から、粘度、液滴の粒子径、配合成分の種類や割合、混合や攪拌の条件、酢酸の濃度、卵の種類、油含量、食塩の%によっても影響を受けるので、それらの限定のない登録時の請求項1〜9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではなく、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないので、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

異議申立理由3:請求項1〜9に係る特許に関して、乳化食品の安定性(保水性)は、用いる卵の種類、その配合量、油、酢酸、食塩などの他の成分の配合量、それらと卵との比率、製造方法によって大きく異なることが技術常識であるので、単に攪拌後の保持時間と温度を規定するのみで、保水性を向上させられず、実施例の条件記載が不足し再現できないので、過度な試行錯誤が必要であるから、登録時の請求項1〜9に係る発明を当業者が実施できるように記載されておらず、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

異議申立理由4−1:登録時の請求項1〜9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

異議申立理由4−2:登録時の請求項1〜9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜13号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1〜9に係る特許に対して、当審が令和4年9月26日付け取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。

1 (明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。



本件訂正前の請求項1、2、5〜9には、「卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合後、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、撹拌するか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程」との記載があり、本件特許明細書の記載及び本願出願時の技術常識を参酌しても、「混合」と「攪拌」とは、その文言のみによって明確に区別できる技術的事項であるとは認められない。
したがって、本件訂正前の本件特許発明1、2、5〜9において、「卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合」する工程と、その後に「混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、撹拌するか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程」とは、前者が「混合」する工程であり、後者が「攪拌」することを含む工程である以上、各工程の始期又は終期がいつであるのかについて、当業者が外形上明確に把握できるとはいえず、第三者に不測の不利益を生じるといえるので、本件訂正前の請求項1、2、5〜9に係る発明の範囲は不明確である。

2 (進歩性)本件訂正前の本件特許発明1、2、5〜9は、本件特許出願前日本国内において、頒布された甲第1号証に記載された発明および本件特許出願前日本国内又は外国において、頒布された引用例5及び引用例6及び電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件訂正前の請求項1、2、5〜9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。



甲第1号証:特開2001−120221号公報
甲第2号証:日本農林規格、JAS0801、醸造酢、農林水産省、2019年12月13日改正、インターネット
甲第3号証:特開2003−310207号公報
甲第4号証:小林幸芳 著、鶏卵と水産油脂を用いた乳化物の物性に関する研究、東京水産大学博士学位論文、インターネット
甲第5号証:国際公開2008/139945号
甲第6号証:特開平2−227047号公報
甲第7号証:小林幸芳 著、食品知識ミニブックスシリーズ、マヨネーズ・ドレッシング入門、平成17年2月25日、株式会社日本食糧新聞社、p.88〜93
甲第8号証:今井忠平 著、食品知識ミニブックスシリーズ、マヨネーズ・ドレッシング入門、
昭和59年12月6日、社団法人 日本セルフサービス協会、p.50〜55
甲第9号証:今井忠平 著、卵の知識−その保蔵と加工の科学−、昭和58年2月1日、発売元株式会社 特潮社、p.118〜137、144〜149
甲第10号証:特開2005−261233号公報
甲第11号証:国際公開2014/178139号
甲第12号証:特開2009−207386号公報
甲第13号証:特開平11−318384号公報

なお、甲第2、3、7〜13号証に関しては、記載要件に関する特許異議申立理由の証拠又は訂正によって検討が実質的に不要になった証拠であるので、後記の摘記を省略した。

第5 当審合議体の判断
当審合議体は、請求項1〜9に係る特許は、当審合議体の通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。

I 取消理由(決定の予告)の判断
1 理由1(明確性要件)について

(1)判断
本件訂正後の請求項1及び7には、「卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程」との記載がある。
ここで、本件訂正によって、訂正前の保持する工程から「攪拌する」ことが削除され、「卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合」する工程と、その後の「混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程」の区別が外形上も含めて理解できるようになり、「混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程」の始期と終期が明確となった。
したがって、請求項1及び7の上記「卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程」との記載は、当業者が外形上明確に把握できるものであり、第三者に不測の不利益を生じるとはいえないから、請求項1及び7に係る発明の範囲は不明確である。
また、請求項1及び7を引用する請求項2、5〜6及び8〜9も、本件訂正よって同様に明確になったといえる。
よって、本件特許発明1、2及び5〜9は、明確であり、取消理由1は解消している。

(2)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書10〜11頁において、得られた混合物を保持して水相原料を調製する工程に関して、本件特許明細書【0027】には、攪拌する工程や、間欠的に攪拌する工程を含んでいてもよい旨記載されていることを問題として、その場合は、混合工程と保持工程がどこで区切られているかが判然しない旨主張している。
しかしながら、本件訂正によって、保持する段階で攪拌する態様は削除されているし、「卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合」する工程と、「混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程」とは、その技術的意味としても、外形的にも、区別ができるものであり、本件訂正後の「卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程」との記載は、第三者に不測の不利益を生じる不明確な点はなく、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。

2 理由2(進歩性)について

(1)引用例及びその記載

引用例1: 特開2001−120221号公報
(特許異議申立書で証拠として提出された「甲第1号証」。)

(1a)「【請求項1】水相原料に少なくとも卵と酢を含み、油相原料と乳化されている水中油型乳化食品の製造法であって、油相原料が0℃未満の融点を有する油脂を、20重量%を超える量含み、水相原料の製造段階で卵と酢との混合温度及び混合時間を制御して乳化物の物性を安定化せしめることを特徴とする水中油型乳化食品の製造法。
【請求項2】水相原料に少なくとも卵と酢を含み、油相原料と乳化されている水中油型乳化食品の製造法であって、油相原料が0℃未満の融点を有する油脂を、20重量%を超える量含み、水相原料の製造段階で卵と酢とを、下記の条件で混合することを特徴とする水中油型乳化食品の製造法:
イ. 混合温度T℃が30〜55℃のとき、混合時間t(分)を、t=106×EXP(aT)で得られる時間t(分)とし[a:−0.2〜−0.3の係数];及び
ロ. 混合温度が0〜15℃のとき、混合時間を1日〜1週間とする。
【請求項3】水中油型乳化食品がマヨネーズである請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】請求項1又は2記載の方法で得られ、又は得ることができる乳化物の物性が安定した半固形状乳化食品。」(請求項1〜4)

(1b)「【0001】
【発明の技術分野】本発明は水中油型乳化食品の新規製造法及びこの方法により得られ、又は得ることができる、乳化物の物性変動が少なく、好ましくはマヨネーズ等の半固体状にある水中油型乳化食品に関する。」

(1c)「【0006】本発明の目的は、水相部に卵と酢を含む乳化物について、乳化物製造後のセットアップが生じ難く、製品の使用後においても物性が安定しており、かつ製造時に転相を起こし難い水中油型乳化食品の製造にある。」

(1d)「【0010】更に、本発明には下記の内容が好ましい態様として含まれる。
1.前記同様の組成を有する水相原料と油相原料が水中油型に乳化され、水相原料中の卵と酢とを下記の条件で混合して水中油型乳化食品を製造する方法:
イ. 混合温度T℃が30〜55℃のとき、混合時間t(分)は、t=106×EXP(aT)で得られ[a:−0.2〜−0.3、より好ましくは−0.22〜−0.27、更に好ましくは−0.23〜−0.26の係数];及び
ロ. 混合温度が0〜15℃、乳化物の安定性の面でより好ましくは0〜10℃、更に好ましくは0〜5℃のとき、混合時間は1日〜1週間程度である。
混合温度が55℃を超えると蛋白が変性する可能性が高くなり、一方0℃未満では水相が凝固する可能性があり、何れも好ましくない。」

(1e)「【0018】水相原料を構成する原料や成分としては、このような乳化食品に通常使用され、使用可能なものであればよく、一般には卵黄、全卵、卵白、その他の乳化補助剤、食塩、水飴、砂糖、食酢、その他の調味料、ペッパー類その他の香辛料、清水等を挙げることができ、用途や目的に合わせて任意に配合することができる。」

(1f)「【0021】本発明で目的とする水中油型乳化食品を製造するには、本発明における水相原料の事前混合条件(卵と酢との混合温度及び混合時間)以外では、水中油型乳化食品の製造法として一般に使用される方法に従って又はそれに準じて行うことができる(「マヨネーズ・ドレッシングの知識」、幸書房、今井忠平、19993年等参照。)。
【0022】例えば、水を除く水相原料を水等に混合、融解して、これに油相原料を加え、攪拌機により予備乳化を行う。次いで、コロイドミル等の乳化機を用いて仕上げ乳化を行うことにより、水中油型乳化食品を製造することができる。
【0023】本発明で製造される水中油型乳化食品は、水相原料成分の混合(予備混合)において混合温度と混合時間を詳細に制御して物性が安定した乳化物を取得することに大きな特徴を有している。卵は蛋白がある程度変性して疎水性が増すと乳化力が増大し、更に変性が過度に進むと逆に乳化力を失うことが一般に知られている。本発明によれば混合温度・混合時間を制御することにより水相部の成分、おそらくは卵蛋白を程良く変性させて乳化食品の製造後に乳化状態の変化を抑制して物性安定化に寄与しているものと考えられる。」

(1g)「【0034】また、水相部の予備混合温度が15℃及び予備混合時間が24時間の場合においても、貯蔵弾性率の変化の割合が1%となり、同様の好ましい結果が得られた。
【0035】
【発明の効果】本発明の方法によれば、貯蔵弾性率の変化の割合が少ない水中油型乳化食品が得られ、乳化物の物性が安定した即ち物性変動の少ない、特にマヨネーズ等半固体状の水中油型乳化食品を提供することができる。」

引用例4: 小林幸芳,“鶏卵と水産油脂を用いた乳化物の物性に関する研究”,東京水産大学博士学位論文,[online],2008年3月31日,[令和3年7月26日検索],インターネット,<URL:https://core.ac.uk/download/70317393.pdf>(特許異議申立書で証拠として提出された「甲第4号証」。)

(4a)「3.2.2 マヨネーズの物性に及ぼす固形分濃度の影響
鶏卵を全卵から純卵黄まで変化させてマヨネーズを調製した。配合を表3−2
に示す。

・・・
3.2.3 マヨネーズの調製
配合1〜5及び配合A〜Dの水相を均一に溶解し25℃に1時間放置した後、ステンレス製泡たて器を用いて大豆油を混合し、粗乳化物を得た。これを真空下でゆっくり撹拌しながら気泡を除いたあと、連続無脈動定量ポンプ((株)荏原製作所製 SMP−216型)を介してポータブル形連続乳化分散機((株)荏原製作所製 MDN−303V型)に送り込み試料乳化物を得た。・・・

3.2.4 マヨネーズの物性評価方法
・・・
3.2.4.2 粒径分布の測定
第1章3.1で述べたようにマヨネーズの物性には粒径分布が関係しているので、油滴の粒子分布はレーザ回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製 SALD 2000A型)を用い、試料をイオン交換水で希釈し室温で測定した。

3.2.4.3 粘度の測定
日本農林規格のドレッシングの項の中のマヨネーズの粘度測定は比較的安価で簡便に測定の出来るB型回転式粘度計を使用するよう指示されているが、マヨネーズの粘度には時間依存性があり、非ニュートン流体なので、上記粘度計は適当ではない77,78,79)。そこで、ゲルやペーストなどの非ニュートン流体の粘度測定に推奨されていて、測定時に時間依存性がほとんど認められないで測定が可能なHelipath Stand Model D35)(Brookfield Engineering Laboratories,INC.製)をRVF型回転式粘度計(Brookfield Engineering Laboratories,INC.製)に付加して粘度を測定した。」(33頁1行〜34頁21行)

(4b)「

」(39頁表3−4)

(4c)


」(40頁表3−6)

引用例5:多山賢二,食酢と微生物,モダンメディア,2016年,62巻3号,第83−93頁

(5a)「マヨネーズやケチャップ等の原料加工用として使用されている高酸度醸造酢(ホワイトビネガーなど)は主に業務用として広く用いられている」(第83頁右欄第3〜5行)

引用例6:特開平11−178565号公報

(6a)「【0043】(2)マヨネーズの製造
上記(1)で得た各試料(いずれも酸度15%のホワイトビネガー)を用い、以下の処方により、マヨネーズを製造した。
【0044】〔処方〕
卵黄 : 90.0g
精製塩 : 4.5g
醸造酢 : 15.0ml
水 : 30.0ml
サラダ油 : 450.0g
白コショウ: 0.33g」

(2)引用例1に記載された発明
引用例1には、水相原料に少なくとも卵と酢を含み、油相原料と乳化されている水中油型乳化食品の製造法であって、水相原料の製造段階で卵と酢との混合温度及び混合時間を制御して乳化物の物性を安定化せしめる水中油型乳化食品の製造法が記載されており、該水中油型乳化食品をマヨネーズとすることも記載されており(摘記(1a))、該製造法は、製品の製造後においても物性が安定しており、製造時に転相を起こし難い水中油型乳化食品の製造を目的としたものであること、該製造法により、乳化物性が安定した水中油型乳化食品が得られることが記載されており(摘記(1b)、(1g))、水中油型乳化食品の製造においては、水を除く水相原料を水等に混合、融解して、これに油相原料を加え、攪拌機により予備乳化を行った上で、コロイドミル等の乳化機を用いて仕上げ乳化を行うことにより、水中油型乳化食品を製造することができること、また、そのようにして製造される水中油型乳化食品に関して、卵は卵白がある程度変性して疎水性が増すと乳化力が増大し、更に変性が進むと逆に乳化力を失うことが一般的に知られており、混合温度・混合時間を制御することにより、おそらくは卵蛋白を程よく変性させて乳化食品の製造後に乳化状態の変化を抑制して物性安定化に寄与していると考えられることが記載されている(摘記(1f))。そして、特許請求の範囲に記載された発明に対応した好ましい態様として、水相原料中の卵と酢とを混合温度が0〜15℃、乳化物の安定性の面でより好ましくは0〜10℃、更に好ましくは0〜5℃のとき、混合時間を1日〜1週間程度とすることであることが記載されている(摘記(1d))。また、水相原料を構成する原料や成分として、卵黄、全卵、卵白等を挙げることができることも記載されている(摘記(1e))。
よって、引用例1には、
「卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなるマヨネーズである水中油型乳化食品の製造法であって、卵黄、全卵又は卵白である卵と酢を0〜10℃又は0〜5℃で1日から1週間程度混合して水相原料を調製する工程、及び水相原料を調製後、油相原料を添加して、乳化させる工程を含む、水中油型乳化食品の製造法。」の発明(以下、「引用発明1−1」という。)及び

「卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなるマヨネーズである水中油型乳化食品の乳化状態の安定性向上方法であって、卵黄、全卵又は卵白である卵と酢を0〜10℃又は0〜5℃で1日から1週間程度混合して水相原料を調製する工程、及び水相原料を調製後、油相原料を添加して、乳化させる工程を含む、方法。」の発明(以下、「引用発明1−2」という。)が記載されているといえる。

(3)対比・判断
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
引用発明1−1の「卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなるマヨネーズである水中油型乳化食品の製造法」は、本件特許発明1の「少なくとも卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなる水中油型乳化食品の製造方法」に相当する。
また、引用発明1−1の「卵黄、全卵又は卵白である卵と酢を0〜10℃又は0〜5℃で1日から1週間程度混合して水相原料を調製する工程」は、本件特許発明1の「卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程」とは、「卵と酢を混合して水相原料を調製する工程」である限りにおいて共通する。

したがって、本件特許発明1と引用発明1−1とは、「少なくとも卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなる水中油型乳化食品の製造方法であって、卵と酢を混合して水相原料を調製する工程、及び水相原料を調製後、油相原料を添加して、乳化させる工程を含む方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:水相原料を調製する工程に関して、本件特許発明1は、「卵と」「酢を混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌する」と特定しているのに対して、引用発明1−1は、「卵と酢を0〜5℃で1日から1週間程度混合する」と特定しており、混合後の静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌するとの特定がない点。
相違点2:本件特許発明1は、酢の酸度が14〜25%と特定されているのに対して、引用発明1−1は酢の酸度を特定していない点。

(イ)相違点の判断
a まず、上記相違点1について検討する。
本件特許発明1における「卵と」「酢を混合」する段階と、「混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌する」段階とは、実施する態様が外形的に異なっているので区別できるものといえる。
引用発明1−1においては、「卵と酢を0〜5℃で1日から1週間程度混合する」と混合する段階のみ特定しており、混合後の「静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌する」段階が特定されていないし、上記混合後の段階の特定が本件の出願時の技術常識であるともいえないので、相違点1は、実質的な相違点である。

b また、引用発明1−1の認定の根拠となった、引用例1(甲1)全体の記載をみても、混合段階での混合温度や混合時間に着目した記載があるだけで、混合後の段階に着目した記載がないのであるから、引用発明1−1において、混合後の段階の処理に関して、わざわざ「混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌する」との処理条件を特定する動機付けはない。

c したがって、引用発明1−1において、相違点1に対応する「混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌する」との特定をすることは、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。

d 次に、上記相違点2について検討する。
引用例5には、主に業務用として広く用いられているホワイトビネガーなどの高酸度醸造酢がマヨネーズ等の原料加工用として使用されていることが記載されており(記載(5a))、引用例6の実施例でマヨネーズの調製に酸度15%のホワイトビネガーが用いられることが例示記載されている(記載(6a))。
引用例1及び引用例5〜6はいずれもマヨネーズの技術分野に属するものであるところ、食酢や農林規格におけるより低い酸度(4〜5%)のものが知られているとしても(甲第2号証、甲第3号証)、引用例5〜6の上記記載に触れた当業者であれば、業務用への適用をも当然想定した引用発明1−1のマヨネーズの製造方法においても、その製造に用いる酢として、引用例5に記載されるようなホワイトビネガーなどの高酸度醸造酢、例えば、引用例6に記載されるような酸度15%程度のホワイトビネガーを用いることは、当業者が容易になし得る技術的事項である。

e したがって、引用発明1−1において、酢の酸度に関し、相違点2に対応する、「酢の酸度が14〜25%」との特定をする程度のことは、当業者が容易になし得る技術的事項である。

f また、本件特許発明1の効果について本件特許明細書の実施例等の記載を参酌すると、本件特許発明1は、高酸度醸造酢を用い、「混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌する」との混合後の処理段階を特定することで、本件特許発明1の構成全体により、【0009】や実施例に記載された、引用発明1−1及び本願出願時の技術常識からは、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏している。

(ウ)以上のように、本件特許発明1は、引用例1に記載された発明及び引用例5〜6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件特許発明2及び5について
(ア)本件特許発明2は、本件特許発明1において、水中油型乳化食品をマヨネーズに特定したものであり、本件特許発明5は、本件特許発明1又は2において、卵を卵黄、卵白、全卵、液卵及び卵粉末からなる群から選択される少なくとも1種であることを特定したものである。
本件特許発明2及び5と引用発明1−1とを対比すると、引用発明1−1は、「卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなるマヨネーズである水中油型乳化食品の製造法」であり、引用例1の【0018】の「水相原料を構成する原料や成分としては、このような乳化食品に通常使用され、使用可能なものであればよく、一般には卵黄、全卵、卵白、その他の乳化補助剤、食塩、水飴、砂糖、食酢、その他の調味料、ペッパー類その他の香辛料、清水等を挙げることができ、用途や目的に合わせて任意に配合することができる。」との記載を参照すると、引用発明1−1において、原材料の卵とは、「卵黄、全卵、卵白」を想定していると理解できるので、両者は、上記相違点1及び相違点2以外に相違点はないといえる。

(イ)したがって、上記アで検討したとおり、上記相違点1は、実質的相違点であるし、引用発明1−1において、相違点1に対応する「混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌する」との特定をすることは、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。

また、上記相違点2については、上記アで検討したとおり、当業者が容易になし得る技術的事項である。

そして、本件特許発明2及び5は、その構成全体により、【0009】や実施例に記載された効果であり、引用発明1−1及び本願出願時の技術常識からは、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏している。

(ウ)以上のように、本件特許発明2及び5は、引用例1に記載された発明及び引用例5〜6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件特許発明6について
(ア)本件特許発明6は、本件特許発明1、2又は5において、「水中油型乳化食品中の油滴の粒子径が1〜10μm及び水中油型乳化食品の粘度が10〜800(Pa・s)である」ことを特定したものである。

(イ)したがって、本件特許発明6は、引用発明1−1との対比において、上記相違点1及び2のほかに以下の相違点を有する。

相違点3:本件特許発明6は、「水中油型乳化食品中の油滴の粒子径が1〜10μm及び水中油型乳化食品の粘度が10〜800(Pa・s)である」ことを特定しているのに対して、引用発明1−1では、水中油型乳化食品中の油滴の粒子径及び粘度を特定していない点。

(ウ)上記アで検討したとおり、上記相違点1は、実質的相違点であるし、引用発明1−1において、相違点1に対応する「混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌する」との特定をすることは、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。

また、上記相違点2については、上記アで検討したとおり、当業者が容易になし得る技術的事項である。

(エ)以上のように、本件特許発明6は、引用例4には、本件特許発明6に該当するマヨネーズの油滴の粒子径や粘度の記載があることを考慮しても(摘記(4b)(4c))、相違点3について検討するまでもなく、引用例1に記載された発明及び引用例4〜6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 本件特許発明7について
(ア)対比
引用発明1−2の「卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなるマヨネーズである水中油型乳化食品の乳化状態の安定性向上方法」は、本件特許発明7の「少なくとも卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなる水中油型乳化食品の保水性向上方法」に相当する。
また、引用発明1−2の「卵黄、全卵又は卵白である卵と酢を0〜10℃又は0〜5℃で1日から1週間程度混合して水相原料を調製する工程」は、本件特許発明7の「卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程」とは、「卵と酢を混合して水相原料を調製する工程」である限りにおいて共通する。

したがって、本件特許発明7と引用発明1−2とは、「少なくとも卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなる水中油型乳化状態の安定性向上方法であって、卵と酢を混合して水相原料を調製する工程、及び水相原料を調製後、油相原料を添加して、乳化させる工程を含む方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点4:水相原料を調製する工程に関して、本件特許発明1は、「卵と」「酢を混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌する」と特定しているのに対して、引用発明1−2は、「卵と酢を0〜5℃で1日から1週間程度混合すると特定しており、混合後の静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌するとの特定がない点。
相違点5:本件特許発明7は、酢の酸度が14〜25%と特定されているのに対して、引用発明1−2は酢の酸度を特定していない点。
相違点6:本件特許発明7は「水中油型乳化食品の保水性向上方法」であるのに対して、引用発明1−2は「水中油型乳化食品の乳化状態の安定性向上方法」である点。

(イ)相違点の判断
a まず、上記相違点4について検討する。
上記アの相違点1で検討したのと同様に、本件特許発明7における「卵と」「酢を混合」する段階と、「混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌する」段階とは、実施する態様が外形的に異なっているので区別できるものといえる。
引用発明1−2においては、「卵と酢を0〜5℃で1日から1週間程度混合する」と混合する段階のみ特定しており、混合後の「静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌する」段階が特定されていないし、上記混合後の段階の特定が本件の出願時の技術常識であるともいえないので、相違点4は、実質的な相違点である。

b また、引用発明1−2の認定の根拠となった、引用例1(甲1)全体の記載をみても、混合段階での混合温度や混合時間に着目した記載があるだけで、混合後の段階に着目した記載がないのであるから、引用発明1−2において、混合後の段階の処理に関して、わざわざ「混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌する」との処理条件を特定する動機付けはない。

c したがって、引用発明1−2において、相違点4に対応する「混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌する」との特定をすることは、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。

d したがって、引用発明1−2において、酢の酸度に関し、引用例5〜6の記載を考慮すれば、相違点5に対応する、「酢の酸度が14〜25%」との特定をする程度のことは、当業者が容易になし得る技術的事項である。

e また、本件特許明細書の実施例等の記載を参酌すると、本件特許発明7は、高酸度醸造酢を用い、「混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌する」との混合後の処理段階を特定することで、本件特許発明7の構成全体により、【0009】や実施例に記載された、引用発明1−2及び本願出願時の技術常識からは、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏している。

(ウ)以上のように、本件特許発明7は、相違点6について検討するまでもなく、引用例1に記載された発明及び引用例5〜6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ 本件特許発明8及び9について
(ア)本件特許発明8は、本件特許発明7において、水中油型乳化食品をマヨネーズに特定したものであり、本件特許発明9は、本件特許発明7又は8において、卵を卵黄、卵白、全卵、液卵及び卵粉末からなる群から選択される少なくとも1種であることを特定したものである。
本件特許発明8及び9と引用発明1−2とを対比すると、引用発明1−2は、「卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなるマヨネーズである水中油型乳化食品の乳化状態の安定化向上方法」であり、引用例1の【0018】の「水相原料を構成する原料や成分としては、このような乳化食品に通常使用され、使用可能なものであればよく、一般には卵黄、全卵、卵白、その他の乳化補助剤、食塩、水飴、砂糖、食酢、その他の調味料、ペッパー類その他の香辛料、清水等を挙げることができ、用途や目的に合わせて任意に配合することができる。」との記載を参照すると、引用発明1−2において、原材料の卵とは、「卵黄、全卵、卵白」を想定していると理解できるので、両者は、上記相違点4〜6以外に相違点はないといえる。

(イ)したがって、上記エで検討したとおり、上記相違点4は、実質的相違点であるし、引用発明1−2において、相違点4に対応する「混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌する」との特定をすることは、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。

また、上記相違点5については、上記エで検討したとおり、当業者が容易になし得る技術的事項である。

そして、本件特許発明8及び9は、その構成全体により、【0009】や実施例に記載された効果であり、引用発明1−2及び本願出願時の技術常識からは、当業者が予測し得ない程顕著な効果を奏している。

(ウ)以上のように、本件特許発明8及び9は、相違点6について検討するまでもなく、引用例1に記載された発明及び引用例5〜6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ よって、本件特許発明1、2、5、8及び9は、引用例1に記載された発明とはいえないし、本件特許発明1、2、5〜9は、引用例1に記載された発明及び引用例4〜6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、取消理由2は解消している。

II 取消理由に採用しなかった特許異議申立人が申し立てた理由について
1 特許異議申立人が申し立てた理由(異議申立理由2−1、2−2、2−3(特許法第36条第6項第1号)及び異議申立理由3(特許法第36条第4項第1号))について

(1)異議申立理由2−1、2−2、2−3(特許法第36条第6項第1号)について
ア 特許法第36条第6項第1号の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

イ 特許請求の範囲の記載
前記第3に記載されたとおりの発明特定事項を有する「少なくとも卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなる水中油型乳化食品の製造方法」の発明が、請求項1、2、5及び6に、「少なくとも卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなる水中油型乳化食品の保水性向上方法」の発明が請求項7〜9に、それぞれ記載されている。

ウ 発明の詳細な説明の記載
(ア)本件特許明細書の発明の詳細な説明には、請求項1、2、5〜9に係る発明に関する記載として、特許請求の範囲の実質的繰り返し記載を除いて、【0002】〜【0007】の背景技術、発明が解決しようとする課題、課題を解決しようとする解決手段の記載、【0009】の発明の効果の記載、【0010】のマヨネーズの特性及びキャベツ試験、米飯乗せ試験及びフィリングモデル遠沈試験におけるマヨネーズの保水性の評価結果に関する図面の簡単な説明の記載、【0012】〜【0025】の水中油型乳化食品、油相原料、水相原料、卵、酢、酢の酸度の技術的意義、卵と酢以外の乳化食品に通常使用可能なものの各記載、【0026】の卵と酢を混合する工程に関する記載、【0027】の得られた混合物から保持して水相原料を調製する工程に関する記載、【0028】の油相原料を調製する工程に関する記載、【0029】の水相原料と油相原料とを乳化させる工程に関する記載、【0030】〜【0035】の油滴の粒子径の測定方法、水中油型乳化食品の粘度、製造された水中油型乳化食品の特定に関する記載がある。

(イ)そして、実施例として、【0037】〜【0057】には、評価マヨネーズの調製、マヨネーズ中の油滴の粒子径の測定、マヨネーズの粘度の測定、マヨネーズの保水性の評価方法、産業上の利用可能性に関する記載があり、図1には、酢と卵の混合物の保持時間を変えた場合の保水性等の評価結果が示されている。

エ 判断
(ア)本件特許発明の課題について
上記ウの【0002】〜【0007】の背景技術、発明が解決しようとする課題、課題を解決するための手段及び本件特許明細書全体を参酌して、本件特許発明1〜6の課題は、保水性に優れ、舌触りのよい水中油型乳化食品の製造方法を提供することにあり、本件特許発明7〜9の課題は、保水性に優れ、舌触りのよい水中油型乳化食品の保水性向上方法を提供することにあると認める。

(イ)判断
上記ウの(ア)(イ)のとおり、本件特許発明1の各特定事項に対応して、本件特許明細書には、少なくとも卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなる水中油型乳化食品の製造方法として、卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合する工程の記載、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程の記載、及び水相原料を調製後、油相原料を添加して、乳化させる工程の記載が存在し、特定条件で保持を行うことで、保水性や舌触りを優れた水中油型乳化食品を製造できるという技術的思想が示されており、各特定事項間の技術的意議の相関記載に技術的矛盾はなく、水中油型乳化食品の代表例としてのマヨネーズの保水性を確認する評価方法や本件特許発明1の効果を奏した具体的検証結果の記載も存在するのであるから、本件特許発明1の構成によって、当業者であれば上記本件特許発明1の課題を解決できることを認識できるといえる。

また、本件特許発明2及び5〜9に関しても、【0012】及び【0035】の実施例における水中油型乳化食品に関する記載、【0015】の本件特許発明の卵に関する記載、【0030】〜【0035】の乳化工程、粘度、油滴の粒子径に関する記載、【0032】及び【0041】〜【0057】の保水性の向上の機構及び保水性評価の結果及び考察に関する記載等についても併せて考慮すれば、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2及び5〜9の構成によって、当業者であれば上記本件特許発明2及び5〜9の課題を解決できることを認識できるといえる。

(ウ)特許異議申立人のサポート要件に関する主張(異議申立理由2−1)について
特許異議申立人は、甲第3号証、甲第5号証及び甲第6号証を提出して、保水性と舌触りの良さと粒子径や粘度がどのように関係しているか技術的説明がない点やその他の配合成分が影響する点や甲第5号証及び甲第6号証の記載に基づく、乳化食品又は乳製品における油脂の種類やその配合割合による舌触りの変化が生じることや甲第3号証の水相中の水あめの滑らか物性への影響が生じることの点から、本件特許明細書の実施例以外の範囲まで課題が解決できると認識できない旨主張している。
しかしながら、水中油型乳化食品において、保水性と舌触りの良さと粒子径や粘度とが関係することは、乳化の技術的な意味や舌の感じ方の技術常識から当然理解できることであり、甲第3、5、6号証のような成分組成の変化が乳化食品の舌触りに一定の影響することがあったとしても(油脂や水あめが舌触りに影響するであろうことは、当然予想される技術的事項である。)、そのような添加成分が存在する場合には、当業者であれば、それらの点も考慮しながら乳化を行えばよく、技術常識に基づく変化が存在するからといって、課題が解決できない理由にはならない。
上述のとおり、実施例以外の説明記載や実施例の記載及び本願出願時点の技術常識を考慮すれば、実施例以外の特許請求の範囲に記載された場合においても、一定程度、本件特許発明の課題を解決できるといえ、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。

(エ)特許異議申立人のサポート要件に関する主張(異議申立理由2−2)について
特許異議申立人は、保水性の課題に関して、実施例と比較例の粘度や粒子径の条件が揃っておらず、実施例の方が有利な条件で行っているので、図1の結果は実施例特有の値にすぎず、卵と酢を混合後の保持時間と粒子径や粘度の対応関係を示しているとはいえないから、保水性に関するサポート要件の根拠とならない旨主張している。
しかしながら、上記(ウ)で検討したように、水中油型乳化食品において、保水性と舌触りの良さと粒子径や粘度とが関係することは、乳化の技術的な意味や舌の感じ方の技術常識から当然理解できることであり、当業者であれば、卵と酢を混合後の保持時間によって、その結果として、粒子径や粘度にずれが生じたからといって、課題が解決できる条件が形成されたにすぎないと理解できる(実施例と比較例の条件が揃っていないことにはならない。)。
上述のとおり、実施例以外の説明記載や実施例の記載及び本願出願時点の技術常識を考慮すれば、実施例特有の結果ではなく、それ以外の特許請求の範囲に記載された場合においても、一定程度、本件特許発明の課題を解決できるといえ、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。

(オ)特許異議申立人のサポート要件に関する主張(異議申立理由2−3)について
特許異議申立人は、甲第5号証〜甲第13号証を提示して、実施例で示された特定の油滴の粒子径や粘度の範囲しか課題を解決できると認識できないこと、食酢が卵のたんぱく質を変性させて粘度を上昇することが技術常識であるから(甲第7号証、甲第8号証)卵の種類や用いる酸の濃度が影響を与えること、卵の卵黄と卵白等の成分でたんぱく質の変性や保水性が変化するのが技術常識であるから(甲第10号証〜甲第12号証)卵の混合物状態が影響を与えること、卵以外の成分の配合量や温度条件がマヨネーズ等の安定性に影響するから(甲第9号証、本件特許明細書【0027】)、実施例を一般化・抽象化できないこと、油脂の種類や配合量、水あめの配合の有無が舌触り及び保水性に影響を与えるから(甲第5号証、甲第6号証、甲第12号証、甲第13号証)、実施例を一般化・抽象化できないことを主張している。
しかしながら、甲第5号証〜甲第13号証等から、食酢が卵のたんぱく質を変性させて粘度を上昇することや、卵の卵黄と卵白等の成分でたんぱく質の変性や保水性が変化することや、卵以外の成分の配合量や温度条件がマヨネーズ等の安定性に影響することや、油脂の種類や配合量、水あめの配合の有無が舌触り及び保水性に影響を与えることが、知られているからといって、実施例以外の説明記載や実施例の記載及び本願出願時点の技術常識を考慮すれば、実施例特有の結果ではなく、それ以外の特許請求の範囲に記載された場合においても、一定程度、本件特許発明の課題を解決できるといえ、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。

(2)異議申立理由3(特許法第36条第4項第1号)について
ア 発明の詳細な説明の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、請求項1、2及び5〜9に係る発明に関する記載として、特許請求の範囲の実質的繰り返し記載を除いて上記(1)ウのとおり記載がある。
特に、【0026】〜【0035】には、少なくとも卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなる水中油型乳化食品の製造方法に関して、卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合する工程と、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程と、水相原料を調製後、油相原料を添加して、乳化させる工程に関する記載があり、【0032】には、上記記載が保水性向上方法としても理解できる旨の記載があり、【0037】〜【0057】には、少なくとも卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなる水中油型乳化食品(マヨネーズ)の製造を行い保水性評価をした、製造方法及び保水性向上方法の具体例の記載がある。

イ 判断
(ア)上記アのとおり、本件の発明の詳細な説明には、本件特許発明に関し、「少なくとも卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなる水中油型乳化食品の製造方法」及び「保水性向上方法」の記載があり、特殊な設備や添加物を使用することなく、保水性が高く舌触りのよいマヨネーズを提供できるという一定の有用性を有した「少なくとも卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなる水中油型乳化食品の製造方法」及び「保水性向上方法」が使用できるといえる。
したがって、上記記載や本件特許発明に対応する具体的実施例の記載を参考にすれば、本件の発明の詳細な説明は、本件特許発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

(イ)特許異議申立人の実施可能要件に関する主張(異議申立理由3)について
特許異議申立人は、甲第9号証を提示して、マヨネーズなどの乳化食品の安定性(保水性)は、卵の種類や配合量、油、酢酸、食塩などの他の成分の配合量及び製造方法により異なることが技術常識であるから、単に攪拌後の保持時間と温度を規定するのみで、保水性を向上させられず、本件特許発明を実施するには過度な試行錯誤が必要であること、実施例の表1の「10%加塩液卵」がどのような卵の状態か判然とせず、再現が不可能であるので過度な試行錯誤を要することについて主張している。
しかしながら、上記の異議申立理由2−3で検討したように、マヨネーズなどの乳化食品の安定性(保水性)が、卵の種類や配合量、油、酢酸、食塩などの他の成分の配合量及び製造方法により、一定の影響を受けることが技術常識であったとしても、当業者であれば、それら技術常識を考慮して実施条件を調整すればよく、実施例以外の説明記載や実施例の記載及び本願出願時点の技術常識を考慮すれば、過度な試行錯誤なく本件特許発明を実施することができるといえる。
また、実施例の「10%加塩液卵」は、本件特許明細書【0014】【0015】の記載から、通常、液卵に10%食塩が加えられていると理解すればよいし、実施例の再現が不可能という事情となるともいえないから、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。

(3)まとめ
異議申立理由2−1、2−2、2−3(特許法第36条第6項第1号)及び異議申立理由3)(特許法第36条第4項第1号))には、理由がない。

2 特許異議申立人が申し立てた理由(異議申立理由4−1(特許法第29条第1項第3号)について
前記I 取消理由(決定の予告)の判断の2(3)で検討したのと同様に、本件特許発明と甲第1号証に記載された発明との対比において、相違点1及び相違点4は、実質的相違点であり、本件出願時の技術常識であるともいえないので、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、異議申立理由4−1(特許法第29条第1項第3号)には、理由がない。

第6 むすび
以上のとおり、本件請求項1、2及び5〜9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。
そして、請求項3及び4に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項3及び4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
また、ほかに本件請求項1、2、5〜9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなる水中油型乳化食品の製造方法であって、卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程、及び水相原料を調製後、油相原料を添加して、乳化させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
水中油型乳化食品がマヨネーズである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
卵が、卵黄、卵白、全卵、液卵及び卵粉末からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
水中油型乳化食品中の油滴の粒子径が1〜10μm及び水中油型乳化食品の粘度が10〜800(Pa・s)である、請求項1、2及び5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも卵と酢を含む水相原料及び油相原料からなる水中油型乳化食品の保水性向上方法であって、卵と酸度が14〜25重量%である酢を混合後、混合物の状態を保ち続けるために、混合物を0〜5℃で3時間以上18時間以下、静止した状態で置くか、又は間欠的に撹拌して水相原料を調製する工程、及び水相原料を調製後、油相原料を添加して、乳化させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
水中油型乳化食品がマヨネーズである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
卵が、卵黄、卵白、全卵、液卵及び卵粉末からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7又は8に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-11-25 
出願番号 P2017-065761
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 536- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 阪野 誠司
特許庁審判官 冨永 みどり
瀬良 聡機
登録日 2021-01-12 
登録番号 6822272
権利者 味の素株式会社
発明の名称 水中油型乳化食品の製造方法  
代理人 鎌田 光宜  
代理人 高島 一  
代理人 高島 一  
代理人 鎌田 光宜  
代理人 當麻 博文  
代理人 當麻 博文  

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