• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E06B
管理番号 1393983
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-09-10 
確定日 2022-11-16 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6843684号発明「建具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6843684号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3、4について訂正することを認める。 特許第6843684号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6843684号の請求項1〜4に係る特許についての出願は、平成29年4月13日に出願され、令和3年2月26日にその特許権の設定登録がされ、同年3月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年9月10日に特許異議申立人 奥住 雄一(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てが請求項1〜4に対してされたところ、その後の経緯は以下のとおりである。
令和3年12月24日付け:取消理由通知書
令和4年 3月 8日 :意見書の提出及び訂正の請求(特許権者)
同 年 3月14日付け:訂正請求があった旨の通知
同 年 4月12日 :意見書の提出(申立人)
同 年 5月12日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同 年 7月13日 :意見書の提出及び訂正の請求(特許権者)
同 年 7月28日付け:訂正請求があった旨の通知
同 年 8月24日 :意見書の提出(申立人)

なお、令和4年7月13日に訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされたことにより、同年3月8日にされた訂正の請求は、取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3に「 前記ガスケットの前記底面部に形成される開口は、前記ガスケットの長手方向に沿った一対の長辺と、前記一対の長辺に直交する一対の短辺とで区画される角穴である」と記載されているのを、「 前記ガスケットの前記底面部に形成される開口は、前記ガスケットの長手方向に沿った一対の長辺と、前記一対の長辺に直交する一対の短辺とで区画される角穴であり、
前記角穴の短辺の幅寸法W1は、前記底面部の幅寸法Wの1/2以上、2/3以下に設定され、
前記角穴の長辺の長さ寸法L1は、前記幅寸法W1の4倍以上、5倍以下に設定され、
前記底面部の面積に対する前記開口の面積比は、40%以上、70%以下に設定されている」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「 前記複層ガラスにおいて、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラス間に設けられた封着部シールは、前記薄肉部と、前記屋外厚肉部と、前記屋内厚肉部とで区画された凹部に面して設けられている」と記載されているのを、「 前記屋外厚肉部の前記屋外ガラスの外周面に当接する当接面と、前記屋内厚肉部の前記屋内ガラスの外周面に当接する当接面との間の幅寸法は、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラスの間隔寸法よりも大きくされ、
前記複層ガラスにおいて、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラス間に設けられた封着部シールは、前記薄肉部と、前記屋外厚肉部と、前記屋内厚肉部とで区画された凹部に面して設けられ、
前記屋外厚肉部および前記屋内厚肉部の前記凹部に面した各側面は、各側面の前記薄肉部側の端縁間の幅寸法に比べて、各側面の前記当接面側の端縁間の幅寸法が大きくなるように傾斜されている」に訂正する。
(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0014】に「前記ガスケットの前記底面部に形成される開口は、前記ガスケットの長手方向に沿った一対の長辺と、前記一対の長辺に直交する一対の短辺とで区画される角穴であることを特徴とする。」と記載されているのを、「前記ガスケットの前記底面部に形成される開口は、前記ガスケットの長手方向に沿った一対の長辺と、前記一対の長辺に直交する一対の短辺とで区画される角穴であり、前記角穴の短辺の幅寸法W1は、前記底面部の幅寸法Wの1/2以上、2/3以下に設定され、前記角穴の長辺の長さ寸法L1は、前記幅寸法W1の4倍以上、5倍以下に設定され、前記底面部の面積に対する前記開口の面積比は、40%以上、70%以下に設定されていることを特徴とする。」に訂正する。
(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0016】に「前記複層ガラスにおいて、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラス間に設けられた封着部シールは、前記薄肉部と、前記屋外厚肉部と、前記屋内厚肉部とで区画された凹部に面して設けられていることを特徴とする。」と記載されているのを、「前記屋外厚肉部の前記屋外ガラスの外周面に当接する当接面と、前記屋内厚肉部の前記屋内ガラスの外周面に当接する当接面との間の幅寸法は、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラスの間隔寸法よりも大きくされ、前記複層ガラスにおいて、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラス間に設けられた封着部シールは、前記薄肉部と、前記屋外厚肉部と、前記屋内厚肉部とで区画された凹部に面して設けられ、前記屋外厚肉部および前記屋内厚肉部の前記凹部に面した各側面は、各側面の前記薄肉部側の端縁間の幅寸法に比べて、各側面の前記当接面側の端縁間の幅寸法が大きくなるように傾斜されていることを特徴とする。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
以下、訂正事項1〜4について、訂正の適否について検討する。なお、本件においては、訂正前の請求項3、4を含む全ての請求項について特許異議申立ての対象とされているので、請求項3、4に係る訂正事項について特許法120条の5第9項で読み替えて準用する特許法126条7項の独立特許要件は課されない。
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、訂正前の請求項3に記載の「前記ガスケットの前記底面部に形成される開口」である「角穴」の寸法及び大きさについて、「前記角穴の短辺の幅寸法W1は、前記底面部の幅寸法Wの1/2以上、2/3以下に設定され、前記角穴の長辺の長さ寸法L1は、前記幅寸法W1の4倍以上、5倍以下に設定され、前記底面部の面積に対する前記開口の面積比は、40%以上、70%以下に設定されている」ことを特定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項1で追加された「前記角穴の短辺の幅寸法W1は、前記底面部の幅寸法Wの1/2以上、2/3以下に設定され、前記角穴の長辺の長さ寸法L1は、前記幅寸法W1の4倍以上、5倍以下に設定され、前記底面部の面積に対する前記開口の面積比は、40%以上、70%以下に設定されている」点は、願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、特許請求の範囲及び図面と併せて「本件明細書等」という。)の段落【0031】の「薄肉部711には、開口77が形成されている。開口77は、ガスケット70の長手方向に沿った一対の長辺771と、長辺771に直交する一対の短辺772とで区画される角穴である。
短辺772の幅寸法(Z軸方向の寸法)W1は、例えば、底面部71の幅寸法Wの1/2以上、2/3以下程度に設定されている。
長辺771の長さ寸法L1は、例えば、幅寸法W1の4〜5倍程度に設定されている。・・・
底面部71における開口77の面積比は、約40%以上、70%以下程度に設定することが好ましく、開口77の面積は、ガスケット70の剛性、強度を確保できる範囲で、できるだけ大きくすればよい。」との記載に基づくものといえる。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項4に記載の「前記ガスケットの前記底面部」が備える「前記開口が形成された薄肉部と、前記薄肉部と前記屋外面部とを連結する屋外厚肉部と、前記薄肉部と前記屋内面部とを連結する屋内厚肉部」の寸法関係について、「前記屋外厚肉部の前記屋外ガラスの外周面に当接する当接面と、前記屋内厚肉部の前記屋内ガラスの外周面に当接する当接面との間の幅寸法は、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラスの間隔寸法よりも大きくされ」ており、「前記屋外厚肉部および前記屋内厚肉部の前記凹部に面した各側面は、各側面の前記薄肉部側の端縁間の幅寸法に比べて、各側面の前記当接面側の端縁間の幅寸法が大きくなるように傾斜されている」ことを特定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項2は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項2で追加された「前記屋外厚肉部の前記屋外ガラスの外周面に当接する当接面と、前記屋内厚肉部の前記屋内ガラスの外周面に当接する当接面との間の幅寸法は、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラスの間隔寸法よりも大きくされ」ており、「前記屋外厚肉部および前記屋内厚肉部の前記凹部に面した各側面は、各側面の前記薄肉部側の端縁間の幅寸法に比べて、各側面の前記当接面側の端縁間の幅寸法が大きくなるように傾斜されている」点は、本件明細書の段落【0036】の「ガスケット70の屋外厚肉部712、屋内厚肉部713には、屋外ガラス51、屋内ガラス52の外周面がそれぞれ当接されて位置決めされている」との記載、段落【0030】の「薄肉部711と、屋外厚肉部712と、屋内厚肉部713とで囲まれる凹部76が形成されている」との記載、及び、図2、図4の図示に基づくものといえる。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項1に係る請求項3の記載の訂正に伴い、明細書の段落【0014】の記載をこれに整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そうすると、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは、上記(1)で検討したのと同様である。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項2に係る請求項4の記載の訂正に伴い、明細書の段落【0016】の記載をこれに整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そうすると、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは、上記(2)で検討したのと同様である。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3、4について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2で示したとおり、本件訂正は認容されるので、本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ請求項の番号に合わせて「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ガラス保持溝を有する框材と、
前記ガラス保持溝内に設けられたガスケットと、
前記ガスケットに装着された複層ガラスとを備え、
前記框材は、前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え、
前記ガスケットは、前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と、前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有し、
前記底面部には、前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され、
前記框材と前記ガスケットとの間には、加熱発泡材が配置され、
前記框材は、前記複層ガラスの外周面に沿って設けられる上框、下框、左右の縦框を備え、
前記加熱発泡材は、前記上框および前記左右の縦框では、前記見込み面部および前記底面部の間に配置され、前記下框では、前記見込み面部および前記底面部の間には配置されず、前記屋外見付け片部および前記屋外面部の間と、前記屋内見付け片部および前記屋内面部の間に配置されている
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具において、
前記加熱発泡材は、
前記左右の縦框では、前記屋外見付け片部および前記屋外面部の間と、前記屋内見付け片部および前記屋内面部の間にも配置されている
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
ガラス保持溝を有する框材と、
前記ガラス保持溝内に設けられたガスケットと、
前記ガスケットに装着された複層ガラスとを備え、
前記框材は、前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え、
前記ガスケットは、前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と、前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有し、
前記底面部には、前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され、
前記框材と前記ガスケットとの間には、加熱発泡材が配置され、
前記加熱発泡材は、テープ状に形成されて前記框材の長手方向に沿って前記框材に接着され、
前記ガスケットの前記底面部に形成される開口は、前記ガスケットの長手方向に沿った一対の長辺と、前記一対の長辺に直交する一対の短辺とで区画される角穴であり、
前記角穴の短辺の幅寸法W1は、前記底面部の幅寸法Wの1/2以上、2/3以下に設定され、
前記角穴の長辺の長さ寸法L1は、前記幅寸法W1の4倍以上、5倍以下に設定され、
前記底面部の面積に対する前記開口の面積比は、40%以上、70%以下に設定されている
ことを特徴とする建具。
【請求項4】
ガラス保持溝を有する框材と、
前記ガラス保持溝内に設けられたガスケットと、
前記ガスケットに装着された複層ガラスとを備え、
前記框材は、前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え、
前記ガスケットは、前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と、前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有し、
前記底面部には、前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され、
前記框材と前記ガスケットとの間には、加熱発泡材が配置され、
前記ガスケットの前記底面部は、前記開口が形成された薄肉部と、前記薄肉部と前記屋外面部とを連結する屋外厚肉部と、前記薄肉部と前記屋内面部とを連結する屋内厚肉部とを備えて構成され、
前記屋外厚肉部は、前記複層ガラスの屋外ガラスの外周面に当接し、
前記屋内厚肉部は、前記複層ガラスの屋内ガラスの外周面に当接し、
前記屋外厚肉部の前記屋外ガラスの外周面に当接する当接面と、前記屋内厚肉部の前記屋内ガラスの外周面に当接する当接面との間の幅寸法は、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラスの間隔寸法よりも大きくされ、
前記複層ガラスにおいて、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラス間に設けられた封着部シールは、前記薄肉部と、前記屋外厚肉部と、前記屋内厚肉部とで区画された凹部に面して設けられ、
前記屋外厚肉部および前記屋内厚肉部の前記凹部に面した各側面は、各側面の前記薄肉部側の端縁間の幅寸法に比べて、各側面の前記当接面側の端縁間の幅寸法が大きくなるように傾斜されている
ことを特徴とする建具。」

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和4年5月12日付けで訂正前の請求項3、4について特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

進歩性)本件特許の請求項3、4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証(特開2008−31654号公報。以下「甲1」という。)に記載された発明及び周知技術(特開2013−19116号公報(甲第2号証。以下「甲2」という。)や特開平11−36740号公報(甲第6号証。以下「甲6」という。)等を参照)に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3、4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

2 各甲号証について
(1)甲1について
ア 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ)。
(ア)「【0024】
図1は、本発明に係るグレージングチャンネルの第1の実施形態を示す断面図であり、図2は、グレージングチャンネルを用いて組み立てた障子12を示す正面図である。
【0025】
図2に示すように、障子12は主として、矩形状に形成されたガラスパネル14と、このガラスパネル14の周囲を覆う枠状のサッシ16によって構成されている。ガラスパネル14は、底辺に本発明のグレージングチャンネル10が取り付けられるとともに、残りの三辺に断面コ字状のグレージングチャンネル18、18、18が取り付けられ、これらのグレージングチャンネル10、18を介してサッシ16に嵌め込まれる。なお、ガラスパネル14の底辺のみでなく残りの三辺にも、底辺と同じくグレージングチャンネル10を取り付けてもよい。
【0026】
ガラスパネル14は、図1に示すように、二枚のガラス板20、20を有する複層ガラスであり、ガラス板20、20の間には、周縁部に沿ってスペーサ22が配設される。スペーサ22は、一次シール24を介してガラス板20に接着されており、スペーサ22の内部には乾燥剤23が充填されている。また、二枚のガラス板20、20の間には、スペーサ22の外側に二次シール26が設けられ、この二次シール26によってガラス板20、20の間が封止されている。
【0027】
上記の如く構成されたガラスパネル14の底辺の周縁部に、本発明のグレージングチャンネル10が装着される。グレージングチャンネル10は、図1に示すように、本体32と、この本体32に着脱自在に装着される耐熱部材34、34によって構成される。
【0028】
本体32は、ポリ塩化ビニルの溶融樹脂を押し出し成形することによって形成されており、底壁部32Aとその両側の側壁部32B、32Bで構成される。側壁部32Bは、その上縁部分に軟質樹脂から成るヒレ部32Cを有し、このヒレ部32Cがガラスパネル14の側面に密着するようになっている。
【0029】
側壁部32Bの下側部分及び底壁部32Aは硬質樹脂によって構成される。また、側壁部32Bには、内側に突出した段差部32Dが設けられており、この段差部32Dにガラスパネル14の底辺が係合されて支持される。したがって、ガラスパネル14の底辺は、ガラスパネル14の端面とグレージングチャンネル10の底壁部32Aとが離れた状態で支持されており、ガラスパネル14の底辺とグレージングチャンネル10の底壁部32Aとの間には所定の高さの排水用空間28が形成される。排水用空間28は、ガラスパネル14の周縁部に設けられる二次シール26の幅以上の幅を有するように設定される。これにより、グレージングチャンネル10のヒレ部32Cとガラスパネル14との隙間から浸入した水分が、ガラスパネル14の底辺において、ガラスパネル14を構成する複層ガラスの二次シール26に長時間接触して劣化させることを防止することができる。
・・・
【0030】
図3に示すように、本体32の底壁部32Aには、矩形状の水抜き孔32E、32E…が形成される。水抜き孔32Eは、ガラスパネル14の底辺の長手方向に沿って一定の間隔で配置されており、水抜き孔32E同士の間には連結部32Fが設けられる。このような水抜き孔32Eを設けることによって、グレージングチャンネル10の内側に溜まった水分を外側に排出することができる。・・・
・・・
【0040】
これに対して、本実施の形態のグレージングチャンネル10は、ガラスパネル14を構成するガラス板10、10(当審注:「ガラス板20、20」の誤記と認める。)の装着位置の下方に対応して耐熱部材34、34が設けられている。したがって、ポリ塩化ビニル製の本体32が軟化、溶融した場合でも、耐熱部材34、34はそのままの形状で残るので、ガラス板10、10(当審注:同上)は耐熱部材34、34によって支持される。これにより、ガラスパネル14のずり下がり量は、ポリ塩化ビニル製の本体32の厚さ(ガラス板20の下方におけるポリ塩化ビニル製の本体32の厚さ)の分だけになり、ガラスパネル14のずり下がり量を大幅に減少させることができる。」
(イ)図1、図3は、以下のものである。
「 【図1】 【図3】



図1、図3からは、水抜き孔32Eが形成された底壁部32A及びその両側の側壁部32Bの下面が面一であること、底壁部32Aとその両側の側壁部32Bとが接する部分において段差部32Dが内側に突出するように設けられていること、底壁部32Aのうち段差部32Dが設けられていない薄肉部分に水抜き孔32Eが形成されており、水抜き孔32Eの幅寸法は底壁部32Aの幅寸法の1/2を超えるものではないこと、両側の段差部32Dの上面に二枚のガラス板20、20の下面がそれぞれ支持されていること、ガラス板20、20の間を封止する二次シール26が底壁部32A及び段差部32Dとで区画された凹部に面していることが看取される。
また、図3からは、水抜き孔32Eは、グレージングチャンネル10の長手方向に沿った一対の長辺と前記長辺に直交する一対の短辺とで区画される矩形状をしていることが看取される。

イ 上記アによれば、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
【甲1発明】
矩形状に形成されたガラスパネル14と、このガラスパネル14の周囲を覆う枠状のサッシ16によって構成されている障子12であって、
ガラスパネル14は、底辺及び残りの三辺に底辺と同じく取り付けられたグレージングチャンネル10を介してサッシ16に嵌め込まれ、
ガラスパネル14は、二枚のガラス板20、20を有する複層ガラスであり、ガラス板20、20の間には、周縁部に沿ってスペーサ22が配設され、スペーサ22の外側に二次シール26が設けられ、この二次シール26によってガラス板20、20の間が封止され、
グレージングチャンネル10は、本体32と、この本体32に着脱自在に装着される耐熱部材34、34によって構成され、ガラスパネル14を構成するガラス板20、20の装着位置の下方に対応して耐熱部材34、34が設けられているので、本体32が軟化、溶融した場合でも、耐熱部材34、34はそのままの形状で残るので、ガラス板20、20は耐熱部材34、34によって支持され、
本体32は、底壁部32Aとその両側の側壁部32B、32Bで構成され、
水抜き孔32Eが形成された底壁部32A及びその両側の側壁部32Bの下面が面一であり、
底壁部32Aとその両側の側壁部32Bとが接する部分において段差部32Dが内側に突出するように設けられており、底壁部32Aのうち段差部32Dが設けられていない薄肉部分に水抜き孔32Eが形成されており、水抜き孔32Eの幅寸法は底壁部32Aの幅寸法の1/2を超えるものではなく、
両側の段差部32Dの上面に二枚のガラス板20、20の下面がそれぞれ支持されており、ガラス板20、20の間を封止する二次シール26が底壁部32A及び段差部32Dとで区画された凹部に面しており、
本体32の底壁部32Aには、グレージングチャンネル10の長手方向に沿った一対の長辺と前記一対の長辺に直交する一対の短辺とで区画される矩形状の水抜き孔32E、32E…がガラスパネル14の底辺の長手方向に沿って一定の間隔で配置されており、水抜き孔32E同士の間には連結部32Fが設けられている、障子12。

(2)甲2について
ア 甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。
(ア)「【0021】
障子10は、複層ガラスパネル11、及び框体20を備えている。複層ガラスパネル11は、板ガラス12、13、スペーサー14、パネル間シール材15、グレージングチャンネル16、封止手段としての加熱膨張体17、及び補強部材18を備えている。また、框体20は、長尺の縦框21、22、上横框23、及び下横框24を有し、これらが矩形枠状に組み合わされている。以下各構成部材について説明する。
・・・
【0026】
グレージングチャンネル16は、配列された板ガラス12、13、及び板ガラス12、13による間隙の端部を覆うとともに、板ガラス12、13の周囲を囲むように設けられる長尺の部材で、長手方向に直交する断面が図2〜図4に表れている。ここで、「板ガラス12、13及び板ガラス12、13による間隙の端部」とは、板ガラス12、13の端面を含み、さらに板ガラス12、13の外側面(板ガラス12、13が対向しない面)の外周端部を含む概念である。本実施形態では公知のグレージングチャンネルを用いることができる。図2〜図4からわかるように、グレージングチャンネル16は断面略コ字状であり、底片と、この底片の両端から同じ方向に立設される2つの立設片と、を備えている。従って、立設片間に間隙ができ、底片が配置されない側には断面コ字状の内側に通じる開口部が形成される。そして当該開口部から立設片間に板ガラス12、13の端部が差し込まれるように配置される。
・・・
【0028】
加熱膨張体17は、本実施形態では通常時において図2〜図4に示すように断面が矩形であり、グレージングチャンネル16の長手方向に沿って延びる細長の板状の部材である。ただし加熱発泡体17は、難燃性であるとともに、所定の温度にまで加熱されると膨張して体積が増加するように構成されている。具体的な膨張開始温度は特に限定されることはないが、建築基準法及び同施工令の加熱曲線に合せ、150℃程度であることが好ましい。
また、膨張倍率も特に限定されることはないが、10倍〜40倍であることが好ましい。加熱膨張体17の具体的な材料はこのような性能を有するものであれば特に限定されることはなく、公知のものを用いることができる。これには例えば黒鉛や炭素繊維等の熱発泡体を含有した材料であり、基材としては、エポキシ系、塩化ビニル、ブチル等を使用したものを挙げることができる。」
【0029】
補強部材18は、配列された板ガラス12、13、板ガラス12、13による間隙の端部、及びグレージングチャンネル16を外側から覆うように、グレージングチャンネル16の長手方向に沿って延びる長尺の部材であり、当該長手方向に直交する断面が図2〜図4に表れている。図2〜図4からわかるように、補強部材18は断面が略コ字状であり、底片と、この底片の両端から同じ方向に立設される2つの立設片と、を備えている。従って、立設片間に間隙ができ、底片が配置されない側には断面コ字状の内側に通じる開口部が形成される。そして当該開口部から立設片間に板ガラス12、13の端部やグレージングチャンネル16が差し込まれるように配置される。これにより、障子10に火災等による熱が加わっても板ガラス12、13が框体20内に留まり、板ガラス12、13が框体20から外れて崩れることをより確実に防止することが可能となる。
・・・
【0032】
障子10は、上記構成部材が例えば次のように組み合わされて形成されている。
すなわち、図2〜図4からわかるように、板ガラス12、13、該板ガラス12、13の間隙の端部、及びパネル間シール材15が、グレージングチャンネル16のコ字状の内側に挿入され、該グレージングチャンネル16に囲まれるように配置される。
【0033】
一方、縦框21、22、上横框23、及び下横框24に形成される溝部(例えば図4(b)に表した溝部21a)に補強部材18が配置される。このとき、補強部材18を構成する各片が各框(21、22、23、24)の溝の内面に沿うとともに、補強部材18の開口部にグレージングチャンネル16等が差し込めるように配置される。
また、補強部材18を配置する際には、各框(21、22、23、24)にネジやビス等の固定部材を用いて固定することが好ましい。
・・・
【0039】
次に複層ガラスパネル11による作用について説明する。図7に当該作用を説明する図で、図4(a)と同様の視点による図を示した。
複層ガラスパネル11を備える開口部装置30が火災等により加熱され、所定の温度に達すると複層ガラスパネル11に具備される樹脂材料により形成された部材が溶けて消失してしまうことがある。その際に特にパネル間シール材15はその性質上、可燃ガスを発生する。これに対して複層ガラスパネル11には加熱膨張体17が設けられており、封止手段として機能する加熱膨張体17が火災等の熱によって膨張し、図7に示したように板ガラス12と板ガラス13との間に進入する。これにより、発生した可燃性ガスを板ガラス12、13間に封止して閉じこめることができる。従って可燃性ガスが流出して発火することを防止することが可能となる。
このように、本発明によれば複層ガラス間に可燃性ガスを封じ込めてその発火を防止する。」
(イ)図2、図3は、以下のものである。
「 【図2】 【図3】



イ 上記アによれば、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
【甲2発明】
障子10は、複層ガラスパネル11、及び框体20を備え、
複層ガラスパネル11は、板ガラス12、13、スペーサー14、パネル間シール材15、グレージングチャンネル16、封止手段としての加熱膨張体17、及び補強部材18を備え、
框体20は、長尺の縦框21、22、上横框23、及び下横框24を有し、これらが矩形枠状に組み合わされており、
グレージングチャンネル16は、配列された板ガラス12、13、及び板ガラス12、13による間隙の端部を覆うとともに、板ガラス12、13の周囲を囲むように設けられる長尺の部材で断面略コ字状であり、底片と、この底片の両端から同じ方向に立設される2つの立設片と、を備え、底片が配置されない側には断面コ字状の内側に通じる開口部が形成され、当該開口部から立設片間に板ガラス12、13の端部が差し込まれるように配置され、
加熱膨張体17は、グレージングチャンネル16の長手方向に沿って延びる細長の板状の部材であり、所定の温度にまで加熱されると膨張して体積が増加するように構成されており、
補強部材18は、配列された板ガラス12、13、板ガラス12、13による間隙の端部、及びグレージングチャンネル16を外側から覆うように、グレージングチャンネル16の長手方向に沿って延びる長尺の部材で断面が略コ字状であり、底片と、この底片の両端から同じ方向に立設される2つの立設片と、を備え、底片が配置されない側には断面コ字状の内側に通じる開口部が形成され、当該開口部から立設片間に板ガラス12、13の端部やグレージングチャンネル16が差し込まれるように配置され、これにより、障子10に火災等による熱が加わっても板ガラス12、13が框体20内に留まり、板ガラス12、13が框体20から外れて崩れることをより確実に防止することが可能となり、
縦框21、22、上横框23、及び下横框24に形成される溝部に補強部材18が配置され、補強部材18を構成する各片が各框の溝の内面に沿うとともに、補強部材18の開口部にグレージングチャンネル16等が差し込めるように配置され、
複層ガラスパネル11を備える開口部装置30が火災等により加熱され、所定の温度に達すると複層ガラスパネル11に具備される樹脂材料により形成された部材が溶けて消失し、可燃ガスを発生するので、これに対して複層ガラスパネル11には加熱膨張体17が設けられており、封止手段として機能する加熱膨張体17が火災等の熱によって膨張し、板ガラス12と板ガラス13との間に進入し、これにより、発生した可燃性ガスを板ガラス12、13間に封止して閉じこめることができる障子10。

3 当審の判断
(1)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「ガラスパネル14」は、「周囲を覆う枠状のサッシ16」に「嵌め込まれ」るから、甲1発明における「ガラスパネル14」を「嵌め込」む部分を有する「サッシ16」は、本件発明3の『ガラス保持溝を有する框材』に相当する。
(イ)甲1発明の「グレージングチャンネル10」は、これを「介して」「ガラスパネル14」が「サッシ16に嵌め込まれ」るように設けられているから、甲1発明の「グレージングチャンネル10」は、本件発明3の『前記ガラス保持溝内に設けられたガスケット』に相当する。
(ウ)甲1発明の「ガラスパネル14」は、「二枚のガラス板20、20を有する複層ガラス」であり、「グレージングチャンネル10」(ガスケット)の本体32を構成する底壁部32Aの両側の側壁部32B、32Bに内側に突出するように設けれた段差部32Dにその(ガラスパネル14の)底辺が係合支持されることで「装着」されているといえるから、甲1発明の「ガラスパネル14」は、本件発明3の『前記ガスケットに装着された複層ガラス』に相当する。
(エ)甲1発明の「サッシ16」(框材)のガラスパネル14が嵌め込まれる部分にガラスパネル14が嵌め込まれたときに、サッシ16に、ガラスパネル14の底面側に位置することとなる部分、及び、ガラスパネル14を挟んで屋外側及びその反対側で屋内側に位置することとなる部分が存在することは自明であり、これらの部分は、「サッシ16」(框材)におけるガラスパネル14が嵌め込まれる部分(ガラス保持溝)を「区画」しているといえるから、上記(ア)も踏まえると、甲1発明における「ガラスパネル14」を「嵌め込」む部分を有する「サッシ16」は、本件発明3の『前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え』る『框材』に相当する。
(オ)甲1発明の「グレージングチャンネル10」は、「ガラスパネル14」と「サッシ16」の間に位置することは自明であり、上記(エ)も踏まえると、「グレージングチャンネル10」は、「ガラスパネル14」(複合ガラス)と「サッシ16」が備える「見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部」の間に位置するといえ、甲1発明における、これを「介して」「ガラスパネル14」が「サッシ16に嵌め込まれ」る「グレージングチャンネル10」は、本件発明3の『前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有』する『ガスケット』に相当する。
(カ)甲1発明「グレージングチャンネル10」を構成する本体32の「底壁部32A」に矩形状の水抜き孔32E、32E(複数の開口)…がガラスパネル14の底辺の長手方向に沿って一定の間隔で配置され」ていることは、本件発明3の『前記底面部』には、『前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され』ていることに相当する。
(キ)甲1発明の「グレージングチャンネル10」を構成する本体32の「底壁部32A」に形成される「水抜き孔32E」が、「グレージングチャンネル10の長手方向に沿った一対の長辺と前記一対の長辺に直交する一対の短辺とで区画される矩形状」をしていることは、本件発明3の『前記ガスケットの前記底面部に形成される開口』が『前記ガスケットの長手方向に沿った一対の長辺と、前記一対の長辺に直交する一対の短辺とで区画される角穴である』ことに相当する。
(ク)甲1発明の「障子12」は、本件発明3の『建具』に相当する。

以上によれば、本件発明3と甲1発明は、以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「ガラス保持溝を有する框材と、
前記ガラス保持溝内に設けられたガスケットと、
前記ガスケットに装着された複層ガラスとを備え、
前記框材は、前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え、
前記ガスケットは、前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と、前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有し、
前記底面部には、前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され、
前記ガスケットの前記底面部に形成される開口は、前記ガスケットの長手方向に沿った一対の長辺と、前記一対の長辺に直交する一対の短辺とで区画される角穴である、建具。」
【相違点3−1】
本件発明3では、「前記框材と前記ガスケットとの間には、加熱発泡材が配置され、」「前記加熱発泡材は、テープ状に形成されて前記框材の長手方向に沿っ前記框材に接着され」るのに対し、
甲1発明では、加熱発泡材が配置されていない点。
【相違点3−2】
「前記ガスケットの前記底面部に形成される開口」である「角穴」が、
本件発明3では、「前記角穴の短辺の幅寸法W1は、前記底面部の幅寸法Wの1/2以上、2/3以下に設定され、前記角穴の長辺の長さ寸法L1は、前記幅寸法W1の4倍以上、5倍以下に設定され、前記底面部の面積に対する前記開口の面積比は、40%以上、70%以下に設定されている」のに対し、
甲1発明では、「水抜き孔32E」の寸法、大きさについて、本件発明3のような特定はされていない点。

イ 判断
相違点3−1及び相違点3−2は関連するのでまとめて検討する。
(ア)甲1発明における「水抜き孔32E」(本件発明3の「角穴」に相当)は、「底壁部32Aのうち段差部32Dが設けられていない薄肉部分」に形成されるものであり、「水抜き孔32Eの幅寸法は底壁部32Aの幅寸法の1/2を超えるものではな」く、「水抜き孔32E」の短辺の幅寸法(本件発明3の「角穴の短辺の幅寸法W1」に相当)が、「底壁部32A」と幅寸法(本件発明3の「底面部の幅寸法W」に相当)の「1/2以上、2/3以下に設定され」ているものではないから、甲1発明は、相違点3−2に係る構成を有するものではない。
甲1発明における「耐熱部材34、34」は、ガラスパネル14を構成するガラス板10、10の装着位置の下方に対応して設けられるので、本体32が軟化、溶融した場合でも、「耐熱部材34、34」はそのままの形状で残り、ガラス板10、10を支持するという特有の機能を有することからみて、甲1発明において、甲1発明の底壁部32Aに「水抜き孔32E」を設けるとしても「耐熱部材34、34」が存在する位置を超えて「水抜き孔32E」を設ける動機付けはないというべきであるから、甲1発明において、「水抜き孔32E」の短辺の幅寸法を「底壁部32A」と幅寸法の「1/2以上、2/3以下」とする動機付けがあるとは認められない。
(イ)取消理由通知(決定の予告)で引用した甲2、甲6は、そもそもガスケットの底面部に開口を形成することは記載されておらず、相違点3−2に係る構成を何ら記載ないし示唆するものではない。
申立人が特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付して提出した甲第3号証(特開2017−66623号公報。以下「甲3」という。)、甲第4号証(特開2016―23448号公報。以下「甲4」という。)、甲第5号証(特開2016−180269号公報。以下「甲5」という。)、甲第7号証(特開2006−70592号公報。以下「甲7」という。)、甲第8号証(特開2013−108225号公報。以下「甲8」という。)は、いずれも加熱発泡材に関するもので、ガスケットの底面部に開口を形成することに関する相違点3−2に係る構成を何ら記載ないし示唆するものではない。
申立人が申立書に添付して提出した甲第9号証(特開2006−249708号公報。以下「甲9」という。)、甲第10号証(特開2005−30037号公報。以下「甲10」という。)、甲第11号証(特開2001−20622号公報。以下「甲11」という。)、甲第12号証(特開2001−182448号公報。以下「甲12」という。)、甲第13号証(特開2006−70634号公報。以下「甲13」という。)、甲第14号証(意匠登録第1274519号公報)は、グレージングチャンネル(グレチャン)に開口を形成することに一応関するが、上記のとおり、甲1発明における「耐熱部材34、34」が本体32の溶融時にもそのままの形状で残り、ガラス板10、10を支持するという特有の機能を有することからみて、甲9ないし甲14の記載にかかわらず、甲1発明において、「耐熱部材34、34」が存在する位置を超えて「水抜き孔32E」を設ける動機付けはないという判断を左右するものではない。
(ウ)そして、本件発明3は、相違点3−1及び相違点3−2に係る構成を採用することで、テープ状の加熱発泡材をガスケットの開口を介して発泡させるのに適したものとなるとともに、ガスケットの剛性、強度を確保できるという効果を有するものと認められる。
(エ)この点、申立人は、令和4年8月24日付け意見書(6頁10〜12行)において、相違点3−2に係る構成は、当業者が適当に定めた数値範囲の限定であるか、もしくは、適宜なし得る数値範囲の最適化・好適化であって、設計変更に過ぎないという旨主張する。
しかし、上記(ア)で検討したとおり、甲1発明の特徴に照らせば、甲1発明において、「水抜き孔32E」の短辺の幅寸法を「底壁部32A」と幅寸法の「1/2以上、2/3以下」とする動機付けがあるとは認められないし、本件発明3は、上記(ウ)で検討したとおりの効果を有していると認められるから、申立人の上記主張を採用することができない。
(オ)したがって、相違点3−1及び相違点3−2に係る本件発明3の構成は、甲1発明及び甲2ないし甲14に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明3は、甲1発明及び甲2ないし甲14に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明4について
ア 対比
本件発明4と甲1発明とを対比する。
上記「1(1)」で検討した本件発明3と甲1発明との対比(ア)〜(カ)、(ク)は、本件発明4と甲1発明との対比にも同様に当てはまる。
加えて、甲1発明の「グレージングチャンネル10」において、水抜き孔32E(開口)が形成された底壁部32A(薄肉部)及びその両側の側壁部32B(屋外・屋内面部)の下面(底面部)が面一であること、底壁部32Aとその両側の側壁部32Bとが接する部分において段差部32D(屋外・屋内厚肉部)が内側に突出するように設けられていること、両側の段差部32Dの上面にガラス板20、20(屋外・屋内ガラス)の下面(外周面)がそれぞれ支持(当接)されていることは、本件発明4の『ガスケット』において、『前記底面部』が、『前記開口が形成された薄肉部と、前記薄肉部と前記屋外面部とを連結する屋外厚肉部と、前記薄肉部と前記屋内面部とを連結する屋内厚肉部とを備えて構成され、前記屋外厚肉部は、前記複層ガラスの屋外ガラスの外周面に当接し、前記屋内厚肉部は、前記複層ガラスの屋内ガラスの外周面に当接し』ていることに相当する。
そして、甲1発明において、「ガラス板20、20(屋外・屋内ガラス)の間を封止する二次シール26(封着部シール)」が「底壁部32A(薄肉部)及び段差部32D(屋外・屋内厚肉部)とで区画された凹部に面して」いることは、 本件発明4の『前記複層ガラス』において、『前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラス間に設けられた封着部シールは、前記薄肉部と、前記屋外厚肉部と、前記屋内厚肉部とで区画された凹部に面して設けられている』ことに相当する。

以上によれば、本件発明4と甲1発明は、以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「ガラス保持溝を有する框材と、
前記ガラス保持溝内に設けられたガスケットと、
前記ガスケットに装着された複層ガラスとを備え、
前記框材は、前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え、
前記ガスケットは、前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と、前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有し、
前記底面部には、前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され、
前記ガスケットの前記底面部は、前記開口が形成された薄肉部と、前記薄肉部と前記屋外面部とを連結する屋外厚肉部と、前記薄肉部と前記屋内面部とを連結する屋内厚肉部とを備えて構成され、
前記屋外厚肉部は、前記複層ガラスの屋外ガラスの外周面に当接し、
前記屋内厚肉部は、前記複層ガラスの屋内ガラスの外周面に当接し、
前記複層ガラスにおいて、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラス間に設けられた封着部シールは、前記薄肉部と、前記屋外厚肉部と、前記屋内厚肉部とで区画された凹部に面して設けられている、建具。
【相違点4−1】
本件発明4では、「前記框材と前記ガスケットとの間には、加熱発泡材が配置され」ているのに対し、
甲1発明では、加熱発泡材が配置されていない点。
【相違点4−2】
「前記ガスケットの前記底面部」が備える「前記開口が形成された薄肉部と、前記薄肉部と前記屋外面部とを連結する屋外厚肉部と、前記薄肉部と前記屋内面部とを連結する屋内厚肉部」について、
本件発明4では、「前記屋外厚肉部の前記屋外ガラスの外周面に当接する当接面と、前記屋内厚肉部の前記屋内ガラスの外周面に当接する当接面との間の幅寸法は、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラスの間隔寸法よりも大きくされ」ており、「前記屋外厚肉部および前記屋内厚肉部の前記凹部に面した各側面は、各側面の前記薄肉部側の端縁間の幅寸法に比べて、各側面の前記当接面側の端縁間の幅寸法が大きくなるように傾斜されている」のに対し、
甲1発明では、かかる特定を有しない点。

イ 判断
相違点4−1及び相違点4−2は関連するのでまとめて検討する。
(ア)甲1発明は、相違点4−2に係る構成のうち、特に「前記屋外厚肉部および前記屋内厚肉部の前記凹部に面した各側面は、各側面の前記薄肉部側の端縁間の幅寸法に比べて、各側面の前記当接面側の端縁間の幅寸法が大きくなるように傾斜されている」との構成を有しないところ、甲1には、かかる構成を採用する記載も示唆もされていない。
そして、甲1発明における「耐熱部材34、34」は、ガラスパネル14を構成するガラス板20、20の装着位置の下方に対応して設けられるので、本体32が軟化、溶融した場合でも、「耐熱部材34、34」はそのままの形状で残り、ガラス板20、20を支持するという特有の機能を有することからみて、甲1発明において、「前記屋外厚肉部の前記屋外ガラスの外周面に当接する当接面と、前記屋内厚肉部の前記屋内ガラスの外周面に当接する当接面との間の幅寸法は、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラスの間隔寸法よりも大きくされ」ており、「前記屋外厚肉部および前記屋内厚肉部の前記凹部に面した各側面は、各側面の前記薄肉部側の端縁間の幅寸法に比べて、各側面の前記当接面側の端縁間の幅寸法が大きくなるように傾斜されている」という構成を採用する場合には、これに合わせて甲1発明において上記特有の機能を有する「耐熱部材34、34」が占める位置を変更させる必要が生じると認められるから、甲1発明において、相違点4−2に係る構成を採用する動機付けがあるとは認められない。
(イ)この点、申立人は、令和4年8月24日付け意見書(7頁10〜13行)において、相違点4−2に係る構成は、上記甲12、特開2015−209711号公報(参考資料1)の図8、特開2005−127104号公報(参考資料2)の図3に記載されているという旨主張する。
しかし、上記証拠及び参考資料には、耐熱部材を内部に配置するようにした屋内及び屋外厚肉部を有するグレージングチャンネル(ガスケット)において、相違点4−2に係る構成を採用することを記載ないし示唆するものではないから、申立人の上記主張を採用することができない。
(ウ)そして、本件発明4は、各厚肉部が角穴に向けて傾斜しているので、ガスケットの屋外面部と屋外ガラス間から雨水が浸入した場合でも、浸入した水を屋外厚肉部の当接面および傾斜された側面を介してガスケットの開口に流すことができ、甲1のように傾斜されていない場合に比べて効率良く排水できるという効果を有するものと認められる。
(エ)したがって、相違点4−1及び相違点4−2に係る本件発明4の構成は、甲1発明及び甲2ないし甲14に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明4は、甲1発明及び甲2ないし甲14に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 まとめ
以上のとおり、本件発明3、4は、甲1発明及び甲2ないし甲14に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件請求項3、4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。

第5 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について

1 甲1発明を主引用発明とする進歩性欠如(請求項1、2について)
(1)理由の概要
本件発明3、4が甲1発明を主引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものでないことは、上記「第4」で検討したとおりであるところ、申立人は、申立書において、本件発明1、2についても、甲1発明を主引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件請求項1、2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるという旨申し立てている。
(2)当審の判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、上記「第4」の「3(1)ア」で検討した本件発明3と甲1発明との対比(ア)〜(カ)、(ク)は、本件発明1と甲1発明との対比にも同様に当てはまる。そして、甲1発明において「矩形状に形成されたガラスパネル14」の周囲を覆う「枠状のサッシ16」は、本件発明1における『前記複層ガラスの外周面に沿つて設けられる上框、下框、左右の縦框』に相当することを踏まえると、両者は、以下の一致点及び相違点を有するものと認められる。
(一致点)
ガラス保持溝を有する框材と、
前記ガラス保持溝内に設けられたガスケットと、
前記ガスケットに装着された複層ガラスとを備え、
前記框材は、前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え、
前記ガスケットは、前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と、前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有し、
前記底面部には、前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され、
前記框材は、前記複層ガラスの外周面に沿って設けられる上框、下框、左右の縦框を備える建具。
【相違点1−1】
本件発明1は、「前記框材と前記ガスケットとの間には、加熱発泡材が配置され、」「前記加熱発泡材は、前記上框および前記左右の縦框では、前記見込み面部および前記底面部の間に配置され、前記下框では、前記見込み面部および前記底面部の間には配置されず、前記屋外見付け片部および前記屋外面部の間と、前記屋内見付け片部および前記屋内面部の間に配置されている」のに対し、
甲1発明は、かかる構成を有しない点。

(イ)判断
相違点1−1について検討する。
甲1には、框材とガスケットとの間に加熱発泡材を配置する点も含めて、相違点1−1に係る構成を採用する記載も示唆もされておらず、申立人が申立書に添付して提出した甲2ないし甲14のいずれにも相違点1−1に係る上記構成は記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、相違点1−1に係る構成を採用することで、上框および左右の縦框では、加熱発泡材を底面部の開口に配置しているので、加熱発泡材が発泡すると即座に開口から凹部内に膨張し、封着部シールを迅速に覆うことができる一方で、下框では、加熱発泡材は見込み面部に接着されていないため、下框内に流入した雨水が見込み面部上を流れる際の障害にならず、雨水を見込み面部に形成した排水穴から容易に排水できるという効果を有するものと認められる。
そうすると、相違点1−1に係る本件発明1の構成は、甲1発明及び甲2ないし甲14に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲2ないし甲14に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成をすべて含んでいるから、本件発明1について検討したのと同様の理由により、甲1発明及び甲2ないし甲14に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)まとめ
したがって、本件発明1、2について、甲1発明を主引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件請求項1、2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるという申立書に記載した主張には理由がない。

2 甲2発明を主引用発明とする進歩性欠如(請求項1〜4について)
(1)理由の概要
申立人は、申立書において、本件発明1〜4について、甲2発明を主引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件請求項1〜4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるという旨申し立てている。
(2)当審の判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「縦框21、22、上横框23、及び下横框24に形成される溝部」、「長尺の縦框21、22、上横框23、及び下横框24」、「グレージングチャンネル16」、「板ガラス12、13」、「加熱膨張材17」、「障子10」が、本件発明1における『ガラス保持溝』、『框材』、『ガスケット』、『複層ガラス』、『加熱発泡材』、『建具』に相当することを踏まえて検討すると、両者は、以下の一致点及び相違点を有するものと認められる。
(一致点)
ガラス保持溝を有する框材と、
前記ガラス保持溝内に設けられたガスケットと、
前記ガスケットに装着された複層ガラスとを備え、
前記框材は、前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え、
前記ガスケットは、前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と、前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有し、
前記框材と前記ガスケットとの間には、加熱発泡材が配置され、
前記框材は、前記複層ガラスの外周面に沿って設けられる上框、下框、左右の縦框を備える建具。
【相違点1−A】
本件発明1は、「前記底面部には、前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され」ているのに対し、
甲2発明は、かかる構成を有しない点。
【相違点1−B】
本件発明1は、「前記加熱発泡材は、前記上框および前記左右の縦框では、前記見込み面部および前記底面部の間に配置され、前記下框では、前記見込み面部および前記底面部の間には配置されず、前記屋外見付け片部および前記屋外面部の間と、前記屋内見付け片部および前記屋内面部の間に配置されている」のに対し、
甲2発明は、かかる構成を有しない点。

(イ)判断
相違点1−Aについて検討する。
甲2には、相違点1−Aに係る構成を採用する記載も示唆も見いだすことができないし、申立人が申立書に添付して提出した甲1、甲3ないし甲14のいずれにも相違点1−Aに係る構成は記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、相違点1−Aに係る構成を採用することで、上框および左右の縦框では、加熱発泡材を底面部の開口に配置しているので、加熱発泡材が発泡すると即座に開口から凹部内に膨張し、封着部シールを迅速に覆うことができる一方で、下框では、加熱発泡材は見込み面部に接着されていないため、下框内に流入した雨水が見込み面部上を流れる際の障害にならず、雨水を見込み面部に形成した排水穴から容易に排水できるという効果を有するものと認められる。
そうすると、相違点1−Aに係る本件発明1の構成は、甲2発明及び甲1、甲3ないし甲14に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2発明及び甲1、甲3ないし甲14に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成をすべて含んでいるから、本件発明1について検討したのと同様の理由により、甲2発明及び甲1、甲3ないし甲14に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明3について
(ア)対比
本件発明3と甲2発明とを対比すると、両者は、本件発明1と甲2発明との対比を踏まえると、以下の一致点及び相違点を有するものと認められる。
(一致点)
ガラス保持溝を有する框材と、
前記ガラス保持溝内に設けられたガスケットと、
前記ガスケットに装着された複層ガラスとを備え、
前記框材は、前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え、
前記ガスケットは、前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と、前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有し、
前記框材と前記ガスケットとの間には、加熱発泡材が配置されている建具。
【相違点3−A】
本件発明3では、「前記加熱発泡材は、テープ状に形成されて前記框材の長手方向に沿って前記框材に接着され」るのに対し、
甲2発明では、かかる構成を有するのか明らかでない点。
【相違点3−B】
本件発明3は、「前記底面部には、前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され、」「前記ガスケットの前記底面部に形成される開口は、前記ガスケットの長手方向に沿った一対の長辺と、前記一対の長辺に直交する一対の短辺とで区画される角穴であり、前記角穴の短辺の幅寸法W1は、前記底面部の幅寸法Wの1/2以上、2/3以下に設定され、前記角穴の長辺の長さ寸法L1は、前記幅寸法W1の4倍以上、5倍以下に設定され、前記底面部の面積に対する前記開口の面積比は、40%以上、70%以下に設定されている」のに対し、
甲2発明は、かかる構成を有しない点。

(イ)判断
相違点3−A及び相違点3−Bは関連するのでまとめて検討する。
甲2には、ガスケットに開口を設けることに関し、段落【0072】、【0073】に、断面略コ字状であるグレージングチャンネル66(ガスケット)の底片66aの両端から同じ方向に立設される2つの立設片66bに孔66fを設け、板ガラス62、63と立設片66bとの間に侵入した水を排出することが記載されているが、グレージングチャンネルの底片に開口を設けることは記載も示唆もされていないし、加熱発泡材をガスケットの開口を介して発泡させることについて記載も示唆もされていないことにかんがみると、甲2発明におけるグレージングチャンネル16の底片にその長手方向に沿って、相違点3−Aに係る「複数の開口」を形成する動機付けはなく、仮に「複数の開口」を形成するとしても、相違点3−Bに係る特有の寸法、大きさを有する「開口」とする動機付けがあるとは認められない。
そして、本件発明3は、相違点3−A及び相違点3−Bに係る構成を採用することで、テープ状の加熱発泡材をガスケットの開口を介して発泡させるのに適したものとなっており、ガスケットの剛性、強度を確保できるという効果を有するものと認められる。
この判断は、申立人が申立書に添付して提出した甲1、甲3ないし甲14に記載された技術的事項を参酌しても変わるものではない。

そうすると、相違点3−A及び相違点3−Bに係る本件発明3の構成は、甲2発明及び甲1、甲3ないし甲14に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明3は、甲2発明及び甲1、甲3ないし甲14に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明4について
(ア)対比
本件発明4と甲2発明とを対比すると、両者は、本件発明1と甲2発明との対比を踏まえると、以下の一致点及び相違点を有するものと認められる。
(一致点)
ガラス保持溝を有する框材と、
前記ガラス保持溝内に設けられたガスケットと、
前記ガスケットに装着された複層ガラスとを備え、
前記框材は、前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え、
前記ガスケットは、前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と、前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有し、
前記框材と前記ガスケットとの間には、加熱発泡材が配置されている建具。
【相違点4−A】
本件発明4は、「前記底面部には、前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され」るのに対し、
甲2発明は、かかる構成を有しない点。
【相違点4−B】
本件発明4は、「前記ガスケットの前記底面部は、前記開口が形成された薄肉部と、前記薄肉部と前記屋外面部とを連結する屋外厚肉部と、前記薄肉部と前記屋内面部とを連結する屋内厚肉部とを備えて構成され、
前記屋外厚肉部は、前記複層ガラスの屋外ガラスの外周面に当接し、
前記屋内厚肉部は、前記複層ガラスの屋内ガラスの外周面に当接し、
前記屋外厚肉部の前記屋外ガラスの外周面に当接する当接面と、前記屋内厚肉部の前記屋内ガラスの外周面に当接する当接面との間の幅寸法は、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラスの間隔寸法よりも大きくされ、
前記複層ガラスにおいて、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラス間に設けられた封着部シールは、前記薄肉部と、前記屋外厚肉部と、前記屋内厚肉部とで区画された凹部に面して設けられ、
前記屋外厚肉部および前記屋内厚肉部の前記凹部に面した各側面は、各側面の前記薄肉部側の端縁間の幅寸法に比べて、各側面の前記当接面側の端縁間の幅寸法が大きくなるように傾斜されている」のに対し、
本件発明4は、かかる構成を有しない点。

(イ)判断
相違点4−A及び相違点4−Bは関連するのでまとめて検討する。
甲2の段落【0072】、【0073】には、断面略コ字状であるグレージングチャンネル16(ガスケット)の底片66aの両端から同じ方向に立設される2つの立設片66bに孔66fを設け、板ガラス62、63と立設片66bとの間に侵入した水を排出することが記載されているが、グレージングチャンネル16の底片に開口を設けることは記載も示唆もされていないし、加熱発泡材をガスケットの底面部に設けた開口を介して発泡させることについて記載も示唆もされていないことにかんがみると、甲2発明におけるグレージングチャンネル16の底面部の長手方向に沿って、相違点4−Aに係る「複数の開口」を形成する動機付けがあるとは認められない。
また、甲2の図3に示されるように、甲2発明におけるグレージングチャンネル16(ガスケット)のパネル間シール材15(封着部シール)のすぐ下方には、加熱膨張体17及び補強部材18が重ねて配置されており、仮に参考資料2の図8や参考資料2の図3に記載されるような構成を有するガスケットを採用したとしても加熱膨張体17及び補強部材18により効率的な排水が妨げられるから、パネル間シール材15のすぐ下方に加熱膨張体17及び補強部材18が重ねて配置される甲2発明において、相違点4−Bに係る構成を採用することに動機付けがあるとは認められない。
そして、本件発明4は、各厚肉部が角穴に向けて傾斜しているので、ガスケットの屋外面部と屋外ガラス間から雨水が浸入した場合でも、浸入した水を屋外厚肉部の当接面および傾斜された側面を介してガスケットの開口に効率良く排水できるという効果を有するものと認められる。
そうすると、相違点4−A及び相違点4−Bに係る本件発明4の構成は、甲2発明及び甲1、甲3ないし甲14に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明4は、甲2発明及び甲1、甲3ないし甲14に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ まとめ
したがって、本件発明1〜4について、甲2発明を主引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1〜4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるという申立書に記載した主張には理由がない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1ないし4に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した理由及び証拠によっては取り消すことはできない。
さらに、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (54)【発明の名称】建具
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットを介して複層ガラスを保持する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
引違い窓や開き窓などの障子のように、複層ガラスを保持する建具において、断熱性や遮音性を向上するために、框材のガラス保持溝に複層ガラスを組み込んだ建具が知られている(例えば特許文献1)。
特許文献1の建具では、複層ガラスは、複数の板ガラス間にスペーサーを配置し、さらにスペーサーの外周側に封着部シール(パネル間シール材)を充填して各板ガラスを固着している。また、複層ガラスの外周部には、ガスケット(グレージングチャンネル)が装着され、このガスケットおよび複層ガラスを、ガラス保持溝内に挿入して建具を組み立てている。
【0003】
特許文献1の建具は、封着部シールが加熱によって溶けて焼失し、可燃性ガスを発生させた場合に、ガスによる発火を防止するため、板ガラス間に入り込んで板ガラス間にガスを封止する加熱膨張材を設けていた。具体的には、ガラス保持溝内に組み込まれる補強部材の底面に加熱膨張材を固定し、加熱膨張材を補強部材とガスケットとの間に配置した構成や、ガスケットとガラスの端部との間に加熱膨張材を配置した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−19116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱膨張材を補強部材とガスケットとの間に配置した場合は、加熱膨張材と封着部シールとの間にガスケットが配置されているため、加熱膨張材が膨張した際にガスケットが残存していると、加熱膨張材が板ガラス間に入り込むことを阻害する。このため、ガスケットにひびが発生し、そのひびを通って可燃性ガスがガラス保持溝から流出するおそれがある。
【0006】
また、ガスケットとガラス端部間に加熱膨張材を配置した場合には、防火性の有無でガスケットの種類が異なり、管理が煩雑になるという課題もあった。すなわち、防火性が不要な建具の場合、ガスケットは、ガラス端部に密着される。一方、防火性が必要な建具の場合、ガスケットは、ガラス端部との間に加熱発泡材を収納可能なスペースが必要となる。したがって、ガスケットの構造が異なり、ガスケットの種類が増加して管理が煩雑になる。
【0007】
本発明の目的は、加熱発泡材でガラス間を迅速に塞ぐことができ、ガスケットの種類の増加も防止できる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の建具は、ガラス保持溝を有する框材と、前記ガラス保持溝内に設けられたガスケットと、前記ガスケットに装着された複層ガラスとを備え、前記框材は、前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え、前記ガスケットは、前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と、前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有し、前記底面部には、前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され、前記框材と前記ガスケットとの間には、加熱発泡材が配置され、前記框材は、前記複層ガラスの外周面に沿って設けられる上框、下框、左右の縦框を備え、前記加熱発泡材は、前記上框および前記左右の縦框では、前記見込み面部および前記底面部の間に配置され、前記下框では、前記見込み面部および前記底面部の間には配置されず、前記屋外見付け片部および前記屋外面部の間と、前記屋内見付け片部および前記屋内面部の間に配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、框材のガラス保持溝に設けられたガスケットの底面部に複数の開口を形成しているので、加熱発泡材が発泡して膨張した際に開口からガスケットの内側に入り込み、複層ガラスの外周面を加熱発泡材で覆うことができる。このため、封着部シールから可燃性ガスが発生しても、そのガスをガラス間に封入でき、ガスによる発火を防止できる。また、ガスケットに開口を形成しているので、ガスケットが残存していても、加熱発泡材で封着部シールを確実にかつ迅速に覆うことができる。さらに、框材とガラスとの間を膨張した加熱発泡材が塞ぐため、加熱面から非加熱面への炎の貫通を防止できる。
また、加熱発泡材は、ガスケットと框材との間に配置され、ガスケットと複層ガラスとの間には配置されないため、加熱発泡材の有無によってガスケットの種類を変更する必要が無い。このため、ガスケットの種類の増加を防止でき、部品管理も容易にできる。
【0010】(削除)
【0011】
本発明によれば、上框および左右の縦框では、加熱発泡材を底面部に対向して配置しているので、加熱発泡材が膨張すると底面部の開口から即座に封着部シールを覆うことができる。一方、下框では、加熱発泡材は見込み面部には配置されていないため、ガラス保持溝に流入した雨水などをガラス保持溝の底面(見込み面部)から容易に排水できる。
【0012】
本発明の建具において、前記加熱発泡材は、前記左右の縦框では、前記屋外見付け片部および前記屋外面部の間と、前記屋内見付け片部および前記屋内面部の間にも配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、縦框では、加熱発泡材は、ガスケットの底面部に対向して配置されるだけでなく、ガスケットの屋外面部および屋内面部にも対向して配置されるため、ガスケットと縦框間に配置される加熱発泡材の体積を大きくできる。このため、縦框で熱反りが生じ、屋外見付け片部や屋内見付け片部と、複層ガラスの屋外面や屋内面との隙間が大きくなった場合でも、その隙間をその部分に配置された加熱発泡材によって迅速に塞ぐことができ、防火性能をさらに向上できる。
【0014】
本発明の建具は、ガラス保持溝を有する框材と、前記ガラス保持溝内に設けられたガスケットと、前記ガスケットに装着された複層ガラスとを備え、前記框材は、前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え、前記ガスケットは、前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と、前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有し、前記底面部には、前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され、前記框材と前記ガスケットとの間には、加熱発泡材が配置され、前記加熱発泡材は、テープ状に形成されて前記框材の長手方向に沿って前記框材に接着され、前記ガスケットの前記底面部に形成される開口は、前記ガスケットの長手方向に沿った一対の長辺と、前記一対の長辺に直交する一対の短辺とで区画される角穴であり、前記角穴の短辺の幅寸法W1は、前記底面部の幅寸法Wの1/2以上、2/3以下に設定され、前記角穴の長辺の長さ寸法L1は、前記幅寸法W1の4倍以上、5倍以下に設定され、前記底面部の面積に対する前記開口の面積比は、40%以上、70%以下に設定されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、加熱発泡材は長尺なテープ状に形成されるため、各框材の長手方向に沿って容易に接着することができる。特に、テープ状の加熱発泡材に、予め接着層(粘着層)を形成しておけば、容易に接着できる。
また、ガスケットの底面部に形成される開口を角穴とし、さらにガスケットの長手方向つまり框材の長手方向に沿った一対の長辺と、長辺に直交する一対の短辺とで形成したので、テープ状の加熱発泡材を底面部に対向して配置した場合に、前記開口と平面的に重なる面積を大きくでき、加熱発泡材が膨張した際に、多くの加熱発泡材を開口から複層ガラスの外周面側に膨張させることができ、封着部シールの表面を確実に被覆できる。
【0016】
本発明の建具は、ガラス保持溝を有する框材と、前記ガラス保持溝内に設けられたガスケットと、前記ガスケットに装着された複層ガラスとを備え、前記框材は、前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え、前記ガスケットは、前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と、前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有し、前記底面部には、前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され、前記框材と前記ガスケットとの間には、加熱発泡材が配置され、前記ガスケットの前記底面部は、前記開口が形成された薄肉部と、前記薄肉部と前記屋外面部とを連結する屋外厚肉部と、前記薄肉部と前記屋内面部とを連結する屋内厚肉部とを備えて構成され、前記屋外厚肉部は、前記複層ガラスの屋外ガラスの外周面に当接し、前記屋内厚肉部は、前記複層ガラスの屋内ガラスの外周面に当接し、前記屋外厚肉部の前記屋外ガラスの外周面に当接する当接面と、前記屋内厚肉部の前記屋内ガラスの外周面に当接する当接面との間の幅寸法は、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラスの間隔寸法よりも大きくされ、前記複層ガラスにおいて、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラス間に設けられた封着部シールは、前記薄肉部と、前記屋外厚肉部と、前記屋内厚肉部とで区画された凹部に面して設けられ、前記屋外厚肉部および前記屋内厚肉部の前記凹部に面した各側面は、各側面の前記薄肉部側の端縁間の幅寸法に比べて、各側面の前記当接面側の端縁間の幅寸法が大きくなるように傾斜されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、ガスケットの底面部において、複層ガラスの封着部シールに面する凹部を形成したので、膨張した加熱発泡材が前記開口から凹部内に広がって封着部シールを覆うことができる。このため、開口の面積が小さくても、凹部を設けることでより広い範囲で加熱発泡材を膨張させることができ、封着部シールの表面全体をより確実に被覆できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の建具によれば、加熱発泡材でガラス間を迅速に塞ぐことができ、ガスケットの種類の増加も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る引違い窓を示す内観姿図。
【図2】前記実施形態の引違い窓の縦断面図。
【図3】前記実施形態の引違い窓の横断面図。
【図4】前記実施形態の引違い窓に用いられるガスケットを示す斜視図。
【図5】(A)は外召合せ框における加熱発泡材の配置状態を示す図、(B)は外召合せ框における加熱発泡材の発泡後の状態を示す横断面図。
【図6】上框および下框における加熱発泡材の発泡後の状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態の引違い窓1は、図1〜図3に示すように、建物躯体の開口部に設けられる窓枠2と、窓枠2で囲まれた内部に左右方向に引き違い可能に配置された外障子3Aおよび内障子3Bとを備えている。
窓枠2は、アルミ製の押出形材によって形成された上枠21、下枠22および左右の縦枠23、24を枠組みして構成されている。図2に示すように、上枠21には、上レール25,26が形成されており、下枠22には、下レール27,28が形成されている。
【0021】
外障子3Aおよび内障子3Bは、アルミ製の押出形材によって形成された上框31と、下框32と、戸先側の縦框33と、召合せ側の縦框34と、複層ガラス50とを框組みして構成されている。本実施形態では、上框31、下框32、縦框33、34は、複層ガラス50を保持するガラス保持溝40を有する框材であり、外障子3A、内障子3Bが框材、ガスケット70、複層ガラス50を備える建具である。
【0022】
なお、図1〜3に示すように、引違い窓1の上下方向をY軸とし、外障子3A、内障子3Bのスライド移動方向をX軸とし、X軸およびY軸に直交する方向をZ軸とすると、窓枠2(上枠21、下枠22、縦枠23、24)や、外障子3A、内障子3Bの見込み方向は、Z軸方向つまり引違い窓1の屋内外方向(奥行き方向)である。また、上枠21、下枠22、上框31、下框32の見付け方向は、Y軸方向つまり上下方向であり、縦枠23、24、縦框33、34の見付け方向は、X軸方向つまり外障子3A、内障子3Bの移動方向(左右方向)である。
【0023】
上框31は、図2に示すように、ガラス保持溝40を区画する見込み面部311と、屋外見付け片部312と、屋内見付け片部313とを備える。
見込み面部311は、上框31の見込み方向(Z軸方向)に沿って形成され、高さ位置が異なる第1見込み面部311Aと、第2見込み面部311Bとで構成されている。屋外見付け片部312は、見込み面部311の屋外側端縁から下方(見付け方向)に延長され、屋内見付け片部313は、見込み面部311の屋内側端縁から下方に延長されている。
【0024】
下框32は、ガラス保持溝40を区画する見込み面部321と、屋外見付け片部322と、屋内見付け片部323とを備える。
見込み面部321は、下框32の見込み方向(Z軸方向)に沿って形成されている。屋外見付け片部322は、見込み面部321の屋外側端縁から上方に延長され、屋内見付け片部323は、見込み面部321の屋内側端縁から上方に延長されている。
【0025】
縦框33、34は、図3に示すように、ガラス保持溝40を区画する見込み面部331、341と、屋外見付け片部332、342と、屋内見付け片部333、343とを備える。
見込み面部331、341は、縦框33、34の見込み方向(Z軸方向)に沿って形成されている。屋外見付け片部332、342は、見込み面部331、341の屋外側端縁から見付け方向(X軸方向)に沿って延長され、屋内見付け片部333、343は、見込み面部331、341の屋内側端縁から見付け方向(X軸方向)に沿って延長されている。
【0026】
[補強材]
外障子3Aの下框32には、図2、6に示すように、屋外見付け片部322と見込み面部321とに沿って配置された断面L字状の補強材35が配置されている。
外障子3Aの縦框34には、図3、5に示すように、屋外見付け片部342、見込み面部341、屋内見付け片部343に沿って配置された断面コ字状の補強材36が配置されている。補強材36は、屋外見付け片部342、屋内見付け片部343の折返し部分に差し込まれて、屋外見付け片部342、屋内見付け片部343の口開きを防止する。
補強材35、36は、スチールやアルミ製のピース材(短尺材)であり、下框32や縦框34の長手方向に沿って間隔をあけて複数個配置され、下框32や縦框34に図示略のネジで固定されている。なお、他の框に補強材を設けてもよく、補強材の有無は、各框の構造や、各框に加わる力などを考慮して設定すれば良い。
【0027】
[加熱発泡材]
図2に示すように、上框31には、3枚の加熱発泡材511、512、513が接着されている。加熱発泡材511〜513は、熱膨張性黒鉛などを含んで構成された長尺のテープ材であり、火災時などに温度が所定温度(例えば150〜200度程度)以上になると、発泡して約10〜40倍程度に膨張し、遮炎材として機能するものである。また、加熱発泡材511〜513は、裏面側に接着層(粘着層)が積層されており、剥離紙で保護されている。このため、剥離紙を剥がすだけで上框31に容易に接着できるものである。以下で説明する他の加熱発泡材514〜518も同じテープ材である。
加熱発泡材511〜513は、上框31の長手方向(X軸方向)に沿って接着されている。加熱発泡材511は、第1見込み面部311Aの下面に接着され、加熱発泡材512は、第2見込み面部311Bの下面に接着されている。加熱発泡材513は、外障子3Aの屋内見付け片部313や、内障子3Bの屋外見付け片部312の各内面において、第1見込み面部311A側の上端部分に接着されている。
【0028】
下框32には、2枚の加熱発泡材514、515が接着されている。加熱発泡材514、515は、下框32の長手方向(X軸方向)に沿って接着されている。加熱発泡材514は、屋外見付け片部322の内面において、見込み面部321側の下端部に接着されている。加熱発泡材515は、屋内見付け片部323の内面において、見込み面部321側の下端部に接着されている。
【0029】
図3に示すように、縦框33、34には、3枚の加熱発泡材516、517、518が接着されている。加熱発泡材516〜518は、長尺のテープ状に形成され、縦框33、34の長手方向(Y軸方向)に沿って接着されている。
加熱発泡材516は、見込み面部331、341に接着されている。加熱発泡材517は、屋外見付け片部332、342の内面において、見込み面部331、341側の端部に接着されている。加熱発泡材518は、屋内見付け片部333、343の内面において、見込み面部331、341側の端部に接着されている。
【0030】
[ガスケット]
各框31〜34のガラス保持溝40には、複層ガラス50に装着されたガスケット(グレージングチャンネル)70が挿入されている。ガスケット70は、図4にも示すように、底面部71と、屋外面部72と、屋内面部73とを備えた硬質樹脂部74と、屋外面部72および屋内面部73の上端部に設けた軟質樹脂部75とを備えている。軟質樹脂部75は、硬質樹脂部74に比べて硬度が低く、複層ガラス50に当接して水密性、気密性を向上できるものであればよい。
底面部71は、薄肉部711と、薄肉部711の屋外側に設けられて薄肉部711と屋外面部72とを連結する屋外厚肉部712と、薄肉部711の屋内側に設けられて薄肉部711と屋内面部73とを連結する屋内厚肉部713とを備えている。屋外厚肉部712、屋内厚肉部713の複層ガラス50側の表面は、薄肉部711の表面よりも複層ガラス50に近づくように形成されている。これにより、薄肉部711と、屋外厚肉部712と、屋内厚肉部713とで囲まれる凹部76が形成されている。
【0031】
薄肉部711には、開口77が形成されている。開口77は、ガスケット70の長手方向に沿った一対の長辺771と、長辺771に直交する一対の短辺772とで区画される角穴である。
短辺772の幅寸法(Z軸方向の寸法)W1は、例えば、底面部71の幅寸法Wの1/2以上、2/3以下程度に設定されている。
長辺771の長さ寸法L1は、例えば、幅寸法W1の4〜5倍程度に設定されている。また、各開口77間の寸法L2は、例えば、長さ寸法L1の1/10以上、1/15以下程度に設定されている。
底面部71における開口77の面積比は、約40%以上、70%以下程度に設定することが好ましく、開口77の面積は、ガスケット70の剛性、強度を確保できる範囲で、できるだけ大きくすればよい。本実施形態では、底面部71、屋外面部72、屋内面部73は、硬質樹脂部74で構成されているので、底面部71における開口77の面積比が約40%以上であっても、底面部71が捻れたりすることもなく、必要な強度を確保できる。
【0032】
[複層ガラス]
複層ガラス50は、図2,3に示すように、屋外側に配置された屋外ガラス51と、屋内側に配置された屋内ガラス52と、屋外ガラス51および屋内ガラス52間に配置されたスペーサー53および封着部シール54を備えている。
屋外ガラス51は、網入りガラスからなる防火ガラスで構成され、屋内ガラス52は、LOW−Eガラス等の板ガラスで構成されている。なお、屋外ガラス51を板ガラスで構成し、屋内ガラス52を防火ガラスで構成してもよいし、屋外ガラス51および屋内ガラス52を防火ガラスで構成してもよい。なお、防火ガラスとしては、網入りガラスに限定されず、耐熱強化ガラス等の各種の防火ガラスを用いることができる。
【0033】
スペーサー53は、屋外ガラス51および屋内ガラス52間の間隔を維持するものであり、公知のものを用いることができる。スペーサー53は、屋外ガラス51および屋内ガラス52の外周面よりも内側に配置されている。複層ガラス50は、屋外ガラス51、屋内ガラス52間においてスペーサー53で区画される中空部に、乾燥空気やアルゴンガスを封入したり、中空部を真空状態にしてユニット化することで、断熱性能を向上している。
【0034】
封着部シール54は、スペーサー53の外周側において、屋外ガラス51および屋内ガラス52の各外周端部間に形成される空間に充填されている。封着部シール54は、各ガラス51,52を強固に接着固定でき、中空部の水密性、気密性を確保できる材質であればよく、シリコン系やポリサルファイド系等の接着剤を利用できる。
【0035】
なお、複層ガラス50としては、屋外ガラス51、屋内ガラス52の2枚のガラスを備えるものに限定されず、屋外ガラス51、屋内ガラス52に加えて、各ガラス51,52間に配置される1枚以上の中間ガラスを備えるものでもよい。
複層ガラス50の外周面とは、屋外ガラス51、屋内ガラス52の外周面(屋外厚肉部712、屋内厚肉部713に対向する面)と、封着部シール54の露出面(外周面)とを含むものである。
【0036】
複層ガラス50の外周面には、前述したガスケット70が装着される。本実施形態では、複層ガラス50の外周面のうち、上面と一方の縦面に沿って配置されるガスケット70と、下面と他方の縦面に沿って配置されるガスケット70との2つのガスケットが装着されている。
ガスケット70の屋外厚肉部712、屋内厚肉部713には、屋外ガラス51、屋内ガラス52の外周面がそれぞれ当接されて位置決めされている。
【0037】
下框32の見込み面部321には、図2に示すように、複層ガラス50を支持するセッティングブロック56が配置されている。セッティングブロック56は、短尺の直方体状のブロックであり、下框32の長手方向に沿って複数(例えば2個)配置されている。また、外障子3Aの下框32に固定された補強材35は、短尺のピース材であり、セッティングブロック56とは異なる位置に配置されている。
なお、下框32の見込み面部321には、加熱発泡材が配置されないため、セッティングブロック56および補強材35は、見込み面部321に直接載置されている。
【0038】
[ガラス保持溝の防火構造]
火災時の熱で加熱発泡材511〜518が発泡、膨張した場合の防火構造について、図5、6を参照して説明する。
図5(A)に示すように、縦框34には、ピース材である補強材36が配置されているため、縦框34に設けられた各加熱発泡材516〜518は、補強材36の配置部分では補強材36に接着され、補強材36が配置されていない部分では縦框34に接着されている。
【0039】
火災時の熱で外障子3A、内障子3Bの温度が上昇し、各加熱発泡材516〜518が発泡温度(例えば150〜200℃)に到達すると、各加熱発泡材516〜518が発泡して膨張する。
図5(B)に示すように、加熱発泡材516は、発泡すると、ガスケット70の開口77から凹部76内に膨張し、凹部76に面している封着部シール54の表面を覆って被覆する。
また、加熱発泡材517、518が発泡すると、ガスケット70の屋外面部72、屋内面部73と、屋外見付け片部342、屋内見付け片部343との間で膨張する。このため、軟質樹脂部75が焼失している場合には、加熱発泡材517、518は、屋外見付け片部342、屋内見付け片部343を覆い、複層ガラス50と屋外見付け片部342、屋内見付け片部343との間を塞ぐ。
他の縦框33、34においても、同様に、加熱発泡材516が開口77から凹部76内に膨張して封着部シール54の表面を覆い、加熱発泡材517、518が、複層ガラス50の屋外面や屋内面と、縦框33、34との隙間を塞ぐ。
【0040】
図6に示すように、上框31では、加熱発泡材511〜513が発泡し、主に加熱発泡材511が開口77から凹部76に膨張して封着部シール54の表面を覆い、加熱発泡材512、513が複層ガラス50の屋外面や屋内面と、上框31との隙間を塞ぐ。
下框32では、加熱発泡材514、515が発泡すると、開口77から凹部76に膨張して封着部シール54の表面を覆う。下框32では、見込み面部321には加熱発泡材が設けられておらず、加熱発泡材514、515は、屋外見付け片部322、屋内見付け片部323に設けられているので、互いに対向する加熱発泡材514、515が発泡、膨張して衝突すると、開口77から凹部76内に膨張して封着部シール54の表面を覆う。また、加熱発泡材514、515は、複層ガラス50の屋外面や屋内面と、下框32との隙間も塞ぐ。
以上により、各加熱発泡材511〜518が発泡するため、ガラス保持溝40での防火性能を確保できる。
【0041】
[実施形態による効果]
(1)ガスケット70の底面部71に複数の開口77を形成しているので、特に開口77に対向して配置される加熱発泡材511、512、516や、下框32に設けられた加熱発泡材514、515が発泡、膨張した際に、開口77からガスケット70の内側に入り込み、複層ガラス50の外周面を覆うことができる。このため、封着部シール54から可燃性ガスが発生しても、そのガスをガラス51、52間に封入でき、ガスの流出を防止して流出したガスによる発火も防止できる。
また、ガスケット70に開口77を形成しているので、ガスケット70が残存していても、加熱発泡材511〜518で封着部シール54を確実にかつ迅速に覆うことができる。さらに、各框31〜34と複層ガラス50との間を膨張した加熱発泡材511〜518が塞ぐため、外障子3A、内障子3Bの加熱面(屋外側または屋内側)から非加熱面(屋内側または屋外側)への炎の貫通を防止でき、複層ガラス50の周囲の防火性能を向上できる。
【0042】
(2)加熱発泡材511〜518は、ガスケット70と框31〜34との間に配置され、ガスケット70と複層ガラス50との間には配置されないため、加熱発泡材511〜518の有無によってガスケット70の種類を変更する必要が無い。このため、ガスケット70の種類の増加を防止でき、部品管理も容易にできる。
【0043】
(3)上框31および左右の縦框33、34では、加熱発泡材511、512、516を底面部71の開口77に対向して配置しているので、加熱発泡材511、512、516が発泡すると即座に開口77から凹部76内に膨張し、封着部シール54を迅速に覆うことができる。一方、下框32では、加熱発泡材514、515は見込み面部321に接着されていないため、下框32内に流入した雨水が見込み面部321上を流れる際の障害にならず、雨水を見込み面部321に形成した排水穴から容易に排水できる。
【0044】
(4)縦框33、34は、ガスケット70の底面部71の開口77に対向して配置される加熱発泡材516だけでなく、ガスケット70の屋外面部72および屋内面部73にも対向して配置される加熱発泡材517、518を備えているので、ガスケット70と縦框33、34間に配置される加熱発泡材516〜518の合計の体積を大きくできる。このため、縦框33、34で熱反りが生じ、屋外見付け片部322や屋内見付け片部323と、複層ガラス50の屋外面や屋内面との隙間が大きくなった場合でも、その隙間を加熱発泡材517,518によって塞ぐことができ、防火性能をさらに向上できる。
【0045】
(5)加熱発泡材511〜518は長尺なテープ状に形成されるため、各框31〜34の長手方向に沿って容易に接着することができる。
また、ガスケット70の底面部71に形成される開口77を角穴とし、ガスケット70の長手方向つまり框31〜34の長手方向に沿った一対の長辺771と、長辺771に直交する一対の短辺772とで開口77を形成したので、テープ状の加熱発泡材511、516を底面部71に対向して配置した場合に、開口77と平面的に重なる面積を大きくできる。このため、加熱発泡材511、516が膨張した際に、多くの加熱発泡材511、516を開口77から複層ガラス50の外周面側に膨張させることができ、封着部シール54の表面を確実に被覆できる。
【0046】
(6)ガスケット70の底面部71に凹部76を形成したので、膨張した加熱発泡材511〜518は開口77から凹部76内で広がって封着部シール54を覆うことができる。このため、開口77の面積が小さくても、凹部76を設けることでより広い範囲で加熱発泡材511〜518を膨張させることができ、封着部シール54の表面全体をより確実に被覆できる。
【0047】
[変形例]
なお、本発明は以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、加熱発泡材511〜518は、框31〜34に接着されるものに限定されず、ガスケット70側に接着してもよい。すなわち、加熱発泡材511〜518は、框31〜34とガスケット70との間に配置されていればよい。
また、各框31〜34における加熱発泡材の数や配置位置は前記実施形態に限定されない。例えば、下框32において、底面部71の開口77に対向する見込み面部321に加熱発泡材を接着してもよい。逆に、上框31や縦框33、34において、見込み面部311、331、341に加熱発泡材を配置せず、屋外見付け片部312、332、342や、屋内見付け片部313、333、343に加熱発泡材を接着してもよい。
【0048】
ガスケット70は前記実施形態で開示された形状、構造のものに限定されない。例えば、凹部76が形成されていないガスケットでもよく、少なくとも底面部71に複数の開口77が形成されていればよい。
また、開口77の形状も角穴に限定されず、楕円形状等でもよく、加熱発泡材511〜518の発泡膨張時に封着部シール54を覆うことができればよい。また、ガスケット70の底面部71の複数の開口77は、必ずしも建具の四辺(上、縦、下)に設けられるガスケット70のすべてが備える必要はなく、建具のいずれか一辺に設けられるガスケット70のみに開口77が設けられていてもよいし、建具の2辺もしくは3辺に設けられるガスケット70に開口77が設けられてもよい。
【0049】
本発明の建具は、引違い窓に限らず、片引き窓、縦すべり出し窓、横すべり出し窓、内倒し窓、外倒し窓、上げ下げ窓、内開き窓、外開き窓、FIX窓等の各種サッシ窓として用いることができる。なお、FIX窓においては、複層ガラスを保持する窓枠が、本発明におけるガラス保持溝40を有する框材に相当する。
【符号の説明】
【0050】
1…引違い窓、3A…建具である外障子、3B…建具である内障子、31…框材である上框、32…框材である下框、33、34…框材である縦框、35、36…補強材、40…ガラス保持溝、50…複層ガラス、51…屋外ガラス、52…屋内ガラス、53…スペーサー、54…封着部シール、56…セッティングブロック、70…ガスケット、71…底面部、711…薄肉部、712…屋外厚肉部、713…屋内厚肉部、72…屋外面部、73…屋内面部、74…硬質樹脂部、75…軟質樹脂部、76…凹部、77…開口、771…長辺、772…短辺、311、321、331、341…見込み面部、311A…第1見込み面部、311B…第2見込み面部、312、322、332、342…屋外見付け片部、313、323、333、343…屋内見付け片部、511〜518…加熱発泡材。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス保持溝を有する框材と、
前記ガラス保持溝内に設けられたガスケットと、
前記ガスケットに装着された複層ガラスとを備え、
前記框材は、前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え、
前記ガスケットは、前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と、前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有し、
前記底面部には、前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され、
前記框材と前記ガスケットとの間には、加熱発泡材が配置され、
前記框材は、前記複層ガラスの外周面に沿って設けられる上框、下框、左右の縦框を備え、
前記加熱発泡材は、前記上框および前記左右の縦框では、前記見込み面部および前記底面部の間に配置され、前記下框では、前記見込み面部および前記底面部の間には配置されず、前記屋外見付け片部および前記屋外面部の間と、前記屋内見付け片部および前記屋内面部の間に配置されている
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具において、
前記加熱発泡材は、
前記左右の縦框では、前記屋外見付け片部および前記屋外面部の間と、前記屋内見付け片部および前記屋内面部の間にも配置されている
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
ガラス保持溝を有する框材と、
前記ガラス保持溝内に設けられたガスケットと、
前記ガスケットに装着された複層ガラスとを備え、
前記框材は、前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え、
前記ガスケットは、前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と、前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有し、
前記底面部には、前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され、
前記框材と前記ガスケットとの間には、加熱発泡材が配置され、
前記加熱発泡材は、テープ状に形成されて前記框材の長手方向に沿って前記框材に接着され、
前記ガスケットの前記底面部に形成される開口は、前記ガスケットの長手方向に沿った一対の長辺と、前記一対の長辺に直交する一対の短辺とで区画される角穴であり、
前記角穴の短辺の幅寸法W1は、前記底面部の幅寸法Wの1/2以上、2/3以下に設定され、
前記角穴の長辺の長さ寸法L1は、前記幅寸法W1の4倍以上、5倍以下に設定され、
前記底面部の面積に対する前記開口の面積比は、40%以上、70%以下に設定されている
ことを特徴とする建具。
【請求項4】
ガラス保持溝を有する框材と、
前記ガラス保持溝内に設けられたガスケットと、
前記ガスケットに装着された複層ガラスとを備え、
前記框材は、前記ガラス保持溝を区画する見込み面部、屋外見付け片部、屋内見付け片部を備え、
前記ガスケットは、前記複層ガラスと前記見込み面部との間に配置される底面部と、前記複層ガラスと前記屋外見付け片部との間に配置される屋外面部と、前記複層ガラスと前記屋内見付け片部との間に配置される屋内面部とを有し、
前記底面部には、前記ガスケットの長手方向に沿って複数の開口が形成され、
前記框材と前記ガスケットとの間には、加熱発泡材が配置され、
前記ガスケットの前記底面部は、前記開口が形成された薄肉部と、前記薄肉部と前記屋外面部とを連結する屋外厚肉部と、前記薄肉部と前記屋内面部とを連結する屋内厚肉部とを備えて構成され、
前記屋外厚肉部は、前記複層ガラスの屋外ガラスの外周面に当接し、
前記屋内厚肉部は、前記複層ガラスの屋内ガラスの外周面に当接し、
前記屋外厚肉部の前記屋外ガラスの外周面に当接する当接面と、前記屋内厚肉部の前記屋内ガラスの外周面に当接する当接面との間の幅寸法は、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラスの間隔寸法よりも大きくされ、
前記複層ガラスにおいて、前記屋外ガラスおよび前記屋内ガラス間に設けられた封着部シールは、前記薄肉部と、前記屋外厚肉部と、前記屋内厚肉部とで区画された凹部に面して設けられ、
前記屋外厚肉部および前記屋内厚肉部の前記凹部に面した各側面は、各側面の前記薄肉部側の端縁間の幅寸法に比べて、各側面の前記当接面側の端縁間の幅寸法が大きくなるように傾斜されている
ことを特徴とする建具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-11-04 
出願番号 P2017-079712
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (E06B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 居島 一仁
特許庁審判官 長井 真一
西田 秀彦
登録日 2021-02-26 
登録番号 6843684
権利者 YKK AP株式会社
発明の名称 建具  
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所  
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ