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審決分類 審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  H04B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04B
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H04B
管理番号 1393984
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-09-28 
確定日 2022-12-08 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6850767号発明「情報通信装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6850767号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2、4〜6〕、7、8、9について訂正することを認める。 特許第6850767号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6850767号は、平成30年6月11日に出願され、令和3年3月10日にその請求項1〜7に係る発明について特許権の設定登録がされ、令和3年3月31日に特許掲載公報が発行されたものである。その特許について、特許異議申立人遠藤真美(以下「申立人」という。)は、本件特許異議の申立てを行った。その後の手続の経緯は、次のとおりである。

令和3年 9月28日 :特許異議申立書
令和3年12月23日付け:取消理由通知書
令和4年 3月 3日 :特許権者による意見書及び訂正請求書
令和4年 4月22日 :申立人による意見書

以下では、令和3年9月28日の特許異議申立書を単に「申立書」といい、令和4年3月3日の意見書を「特許権者意見書」といい、同日の訂正請求書による訂正を「本件訂正」といい、令和4年4月22日の意見書を「申立人意見書」という。


第2 申立人及び特許権者の主張の概要
1 申立人の主張の概要
(1)申立人は、本件訂正前の請求項1〜請求項7について、甲1、甲7又は甲8に記載された発明を主たる引用例として、特許異議の申立てをした。具体的には、以下の申立理由1−1〜申立理由7−3のように主張する。

申立理由1−1 本件訂正前の請求項1に係る発明は、当業者が甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。)、甲2及び甲3の記載事項並びに甲4、甲6及び甲9の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書38頁)。

申立理由1−2 本件訂正前の請求項1に係る発明は、当業者が甲7に記載された発明(以下「甲7発明」という。)、甲1、甲2及び甲3の記載事項並びに甲4、甲6及び甲9の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書39〜40頁)。

申立理由1−3 本件訂正前の請求項1に係る発明は、当業者が甲8に記載された発明(以下「甲8発明」という。)、甲1、甲2及び甲3の記載事項並びに甲4、甲6及び甲9の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書41頁)。

申立理由2−1 本件訂正前の請求項2に係る発明は、当業者が甲1発明及び甲2〜甲8に示される周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項2に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書42〜43頁)。

申立理由2−2 本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲7発明と同一であるから、本件訂正前の請求項2に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条1項3号の規定に違反してされたものである。
仮に相違点があったとしても、本件訂正前の請求項2に係る発明は、当業者が甲7発明と甲1〜甲6及び甲8の記載事項又は周知技術とに基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項2に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書44頁)。

申立理由2−3 本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲8発明と同一であるから、本件訂正前の請求項2に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条1項3号の規定に違反してされたものである。
仮に相違点があったとしても、本件訂正前の請求項2に係る発明は、当業者が甲8発明と甲1〜甲7の記載事項又は周知技術とに基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項2に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書45頁)。

申立理由3−1 本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲1発明と同一であるから、本件訂正前の請求項3に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条1項3号の規定に違反してされたものである。
仮に相違点があったとしても、本件訂正前の請求項3に係る発明は、当業者が甲1発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項3に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書46頁)。

申立理由3−2 本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲7発明と同一であるから、本件訂正前の請求項3に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条1項3号の規定に違反してされたものである。
仮に相違点があったとしても、本件訂正前の請求項3に係る発明は、当業者が甲7発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項3に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書48頁)。

申立理由3−3 本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲8発明と同一であるから、本件訂正前の請求項3に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条1項3号の規定に違反してされたものである。
仮に相違点があったとしても、本件訂正前の請求項3に係る発明は、当業者が甲8発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項3に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書49頁)。

申立理由4−1 本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲1発明と同一であるから、本件訂正前の請求項4に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条1項3号の規定に違反してされたものである。
仮に相違点があったとしても、本件訂正前の請求項4に係る発明は、当業者が甲1発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項4に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書49〜50頁)。

申立理由4−2 本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲7発明と同一であるから、本件訂正前の請求項4に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条1項3号の規定に違反してされたものである。
仮に相違点があったとしても、本件訂正前の請求項4に係る発明は、当業者が甲7発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項4に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書51頁)。

申立理由4−3 本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲8発明と同一であるから、本件訂正前の請求項4に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条1項3号の規定に違反してされたものである。
仮に相違点があったとしても、本件訂正前の請求項4に係る発明は、当業者が甲8発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項4に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書52頁)。

申立理由5−1 本件訂正前の請求項5に係る発明は、当業者が甲1発明並びに甲2、甲4、甲5、甲7及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項5に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書52頁)。

申立理由5−2 本件訂正前の請求項5に係る発明は、当業者が甲7発明並びに甲2、甲4、甲5、甲7及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項5に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書52頁)。

申立理由5−3 本件訂正前の請求項5に係る発明は、当業者が甲8発明並びに甲2、甲4、甲5、甲7及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項5に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書52頁)。

申立理由6−1 本件訂正前の請求項6に係る発明は、当業者が甲1発明並びに甲2、甲3、甲7及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項6に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書53頁)。

申立理由6−2 本件訂正前の請求項6に係る発明は、当業者が甲7発明並びに甲2、甲3、甲7及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項6に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書53頁)。

申立理由6−3 本件訂正前の請求項6に係る発明は、当業者が甲8発明並びに甲2、甲3、甲7及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項6に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書53頁)。

申立理由7−1 本件訂正前の請求項7に係る発明は、当業者が甲1発明並びに甲2、甲3、甲4及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項7に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書53頁)。

申立理由7−2 本件訂正前の請求項7に係る発明は、当業者が甲7発明並びに甲2、甲3、甲4及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項7に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書53頁)。

申立理由7−3 本件訂正前の請求項7に係る発明は、当業者が甲8発明並びに甲2、甲3、甲4及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項7に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立書53頁)。

(2)申立人は、本件訂正について、次の申立人意見1のように主張し、本件訂正の対象外である請求項1及び請求項3に係る発明について、それぞれ申立人意見2及び申立人意見3のように主張する。

申立人意見1 本件訂正は、以下の申立人意見1−1〜申立人意見1−6のとおりであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項の要件に違反するので、認められるべきではない(申立人意見書2頁)。

申立人意見1−1 本件訂正後の請求項2に係る発明は、当業者が甲7発明と、甲2記載の技術又は甲2に示される周知技術とに基いて容易に発明をすることができたものである(申立人意見書6〜7頁)。

申立人意見1−2 本件訂正後の請求項4に係る発明は、当業者が甲7発明、甲2記載の技術並びに甲10及び甲11に示される周知技術に基いて容易に発明をすることができたものである(申立人意見書8頁)。

申立人意見1−3 本件訂正後の請求項5及び請求項6に係る発明は、取消理由通知書と同様の理由(以下の第3を参照。)により、当業者が容易に発明をすることができたものである(申立人意見書8頁)。

申立人意見1−4 本件訂正後の請求項7に係る発明は、当業者が甲7発明と、甲2記載の技術又は特許第6259939号公報に示される周知技術とに基いて容易に発明をすることができたものである(申立人意見書9〜10頁)。

申立人意見1−5 本件訂正後の請求項8に係る発明は、本件訂正前の請求項2の構成要件と、本件訂正後の請求項7の構成要件とからなるので、申立理由2−1〜2−3及び申立人意見1−4により、当業者が容易に発明をすることができたものである(申立人意見書10頁)。

申立人意見1−6 本件訂正後の請求項9に係る発明は、本件訂正前の請求項4の構成要件と、本件訂正後の請求項7の構成要件とからなるので、申立理由4−1〜4−3及び申立人意見1−4により、当業者が容易に発明をすることができたものである(申立人意見書10頁)。

申立人意見2 請求項1に係る発明は、当業者が甲7発明及び甲12に示される周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正後の請求項1に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立人意見書11頁)。

申立人意見3 請求項3に係る発明は、当業者が甲7発明及び甲13に示される周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正後の請求項3に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(申立人意見書12頁)。

2 特許権者の主張の概要
特許権者は、本件の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2及び4〜9について訂正すること(本件訂正)を求めており(訂正請求書2頁)、本件訂正後の請求項2、4〜6に係る発明は、以下の第3に示す取消理由を有していない、と主張する(特許権者意見書2頁)。


第3 取消理由の概要
当審において取消理由通知書で通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

本件訂正前の請求項2及び4〜6に係る発明は、当業者が甲7発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項2及び4〜6に係る発明についての特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである(当審注:申立理由2−2、4−2、5−2及び6−2に対応)。
なお、本件訂正前の請求項1、3及び7に係る発明は、取消理由の対象ではない。


第4 証拠方法
申立人は、甲第1号証〜甲第13号証(以下、それぞれ「甲1」〜「甲13」という。)を提出した。この決定では、特に、甲1、甲2、甲4及び甲6〜甲9の記載を引用する。

甲1 特開2013−157738号公報
甲2 特開2008−206199号公報
甲3 特開2007−104215号公報
甲4 特開2018−11166号公報
甲5 特開2016−181222号公報
甲6 特開2018−85710号公報
甲7 特開平7−273770号公報
甲8 中国特許出願公開第106788496号明細書
甲9 特開2013−117691号公報
甲10 特開2015−141870号公報
甲11 2012−2014 電設資材総合カタログ、パナソニック株式会社 エコソリューションズ社、2012年4月、252〜253頁
甲12 再公表特許第2013/175943号
甲13 特表2007−504745号公報

なお、甲2には分割の表示として「特願2005−290355(P2005−290355)の分割」(1頁)と記載されており、甲3の出願番号は「特願2005−290355(P2005−290355)」(1頁)と記載されているから、甲2と甲3は分割出願の分割先の公開公報と分割元の公開公報の関係にあり、これらの記載内容は実質的に同一である。


第5 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1〜5からなる。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2の
「前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットにおける設置面の対向空間側に露出する部位に対して着脱自在に装着可能に構成されている」を
「前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットにおける設置面の対向空間側に露出する部位に対して着脱自在に装着可能に構成され、
前記電源側分割ユニットの前面部には、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で設置面の対向空間側に露出する被装着部が備えられ、
前記非電源側分割ユニットの前記電源側分割ユニット側となる後面部には、前記電源側分割ユニット側の被装着部に対して装着自在な装着部が突出形成され、その装着部は、後方から見て前記非電源側分割ユニットの全体よりも大きさが小さい」に訂正する。(請求項2の記載を直接的に、又は間接的に引用する請求項5及び6も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4の
「前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットに対して設置面の対向空間側から着脱自在に装着可能に構成されている」を
「前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットに対して設置面の対向空間側から着脱自在に装着可能に構成され、
前記電源側分割ユニットの前面部は、前記非電源側分割ユニットの後面部に突出形成された装着部が内嵌状態で装着可能な被装着部が形成された中間部位と、設置面の前面に当接させる取り付けフレームに固定自在に構成されて前記中間部位よりも外方に配置された外側部位とを有し、
前記取り付けフレームは、設置面に貫通形成される設置用孔の後面側に配置されて前記電源側分割ユニットが内部に配置されるコンセントボックスと、設置面の前面側に配置される化粧カバーとを固定自在に構成されている」に訂正する。(請求項4の記載を直接的に、又は間接的に引用する請求項5及び6も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7のうち、請求項2を引用するものについて、請求項2との引用関係を解消し、以下の請求項8として訂正する。
「 電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットにおける設置面の対向空間側に露出する部位に対して着脱自在に装着可能に構成され、
機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成されている情報通信装置。」

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7のうち、請求項4を引用するものについて、請求項4との引用関係を解消し、以下の請求項9として訂正する。
「 電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットに対して設置面の対向空間側から着脱自在に装着可能に構成され、
機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成されている情報通信装置。」

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7の
「機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報通信装置。」を
「機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成されている請求項1又は3に記載の情報通信装置。」に訂正する。

(6)一群の請求項及び訂正単位
前記訂正事項1〜5に係る本件訂正前の請求項2、4〜7について、請求項5〜7は、請求項2及び4を引用しているものであるから、本件訂正前の請求項2、4〜7に対応する本件訂正後の請求項2、4〜9は、特許法120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。
また、訂正後の請求項7、8、9に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。

2 訂正の目的、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の有無
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、
請求項2の「電源側分割ユニット」に対して「前記電源側分割ユニットの前面部には、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で設置面の対向空間側に露出する被装着部が備えられ、」との限定を付加し、さらに、
請求項2の「非電源側分割ユニット」に対して「前記非電源側分割ユニットの前記電源側分割ユニット側となる後面部には、前記電源側分割ユニット側の被装着部に対して装着自在な装着部が突出形成され、その装着部は、後方から見て前記非電源側分割ユニットの全体よりも大きさが小さい」との限定を付加するものであるから、
特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項1の「前記電源側分割ユニットの前面部には、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で設置面の対向空間側に露出する被装着部が備えられ」という事項に関し、明細書の段落【0032】には「制御側分割ユニットCUは、図2に示すように、電源側分割ユニットPUが壁Wに埋設状態で設置された状態で、電源側分割ユニットPUの前面部(壁Wの対向空間側に露出する部位の一例)に対して着脱自在に装着可能に構成されている」、段落【0046】には「電源側ケーシング33の前面部33bの左右中間部位には、前方側に筒状に突出する被装着部33eが形成され」との記載がある。
また、訂正事項1の「前記非電源側分割ユニットの前記電源側分割ユニット側となる後面部には、前記電源側分割ユニット側の被装着部に対して装着自在な装着部が突出形成され、その装着部は、後方から見て前記非電源側分割ユニットの全体よりも大きさが小さい」という事項に関し、明細書の段落【0052】には「制御側ケーシング34の後面部34cの左右中間部位には、後方側に筒状に突出する筒状の装着部34eが形成され、その装着部34eの先端面が開放されて開口部34aが形成されている。この筒状の装着部34eは、電源側ケーシング33の前面部33bの筒状の被装着部33eに対して前後方向から接近させることで、電源側ケーシング33の前面部33bの筒状の被装着部33eに内嵌状態で接続自在に構成されている。」との記載があり、また、図5、6、7(b)からは非電源側分割ユニットの装着部34eが非電源側分割ユニットの後面部34cよりも大きさが小さいことが読み取れる。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項1は、前記アのとおり特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものではない。
よって、訂正事項1は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、
請求項4の「電源側分割ユニット」に対して「前記電源側分割ユニットの前面部は、前記非電源側分割ユニットの後面部に突出形成された装着部が内嵌状態で装着可能な被装着部が形成された中間部位と、設置面の前面に当接させる取り付けフレームに固定自在に構成されて前記中間部位よりも外方に配置された外側部位とを有し、」「前記取り付けフレームは、設置面に貫通形成される設置用孔の後面側に配置されて前記電源側分割ユニットが内部に配置されるコンセントボックスと、設置面の前面側に配置される化粧カバーとを固定自在に構成されている」との限定を付加するものであるから、
特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項2の「前記電源側分割ユニットの前面部は、前記非電源側分割ユニットの後面部に突出形成された装着部が内嵌状態で装着可能な被装着部が形成された中間部位と、設置面の前面に当接させる取り付けフレームに固定自在に構成されて前記中間部位よりも外方に配置された外側部位とを有し、」という事項に関し、明細書の段落【0046】には「電源側ケーシング33の前面部33bの左右中間部位には、前方側に筒状に突出する被装着部33eが形成され、その被装着部33eの先端面が開放されて開口部33aが形成されている。電源側ケーシング33の前面部33bの残りの左右外側部位は、フランジ部33fとして形成され、このフランジ部33fが取り付けフレーム13に固定自在に構成されている。」、段落【0052】には「制御側ケーシング34の後面部34cの左右中間部位には、後方側に筒状に突出する筒状の装着部34eが形成され、その装着部34eの先端面が開放されて開口部34aが形成されている。この筒状の装着部34eは、電源側ケーシング33の前面部33bの筒状の被装着部33eに対して前後方向から接近させることで、電源側ケーシング33の前面部33bの筒状の被装着部33eに内嵌状態で接続自在に構成されている。」との記載がある。
また、訂正事項2の「前記取り付けフレームは、設置面に貫通形成される設置用孔の後面側に配置されて前記電源側分割ユニットが内部に配置されるコンセントボックスと、設置面の前面側に配置される化粧カバーとを固定自在に構成されている」という事項に関し、明細書の段落【0026】には「情報コンセント1は、図2に示すように、壁Wに貫通形成された矩形状の設置用孔10の後面側に配置されたコンセントボックス11と、壁Wの前面側に配置された化粧カバー12とを、それらの間において壁Wの前面に当接する取り付けフレーム13を介して固定して構成されている。」との記載があり、また、図2からはコンセントボックス11の内部に電源側分割ユニットPUが配置されていることが読み取れる。
したがって、訂正事項2は、明細書等の範囲内の訂正である。
また、訂正事項2は、前記アのとおり特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものではない。
よって、訂正事項2は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項7に「請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報通信装置」と記載されていたところ、訂正前の請求項7について、請求項2を引用するもののみに限定したうえで、請求項間の引用関係の解消を図ったものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号及び4号にそれぞれ掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであって、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合することは明らかである。

(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項7に「請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報通信装置」と記載されていたところ、訂正前の請求項7について、請求項4を引用するもののみに限定したうえで、請求項間の引用関係の解消を図ったものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号及び4号にそれぞれ掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであって、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合することは明らかである。

(5)訂正事項5
訂正事項5は、引用する請求項を「請求項1〜6のいずれか1項」から「請求項1又は3」に限定するものであるから、訂正事項5は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項5は、前記のとおり、訂正前の請求項7で引用する請求項を限定するのみであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項5は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。

3 申立人の意見について
申立人は、本件訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項の要件に違反するので、認められるべきではないと主張する(申立人意見1)。
しかしながら、本件特許異議の申立ては全ての請求項を対象としたものであるから、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する要件は適用されない。

4 小括
前記のとおり、訂正事項1、2及び5に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
また、訂正事項3及び4は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2、4〜6〕、7、8、9について一群の請求項ごとに訂正することを認める。


第6 訂正後の本件発明
本件訂正請求による訂正により、請求項1〜9に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、後の参照の便宜のため、当審で1A〜9Fの記号を付して分説した。

【請求項1】
1A 電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
1B 前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
1C 前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
1D 前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
1E 前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記非電源側分割ユニットで発生する熱を前記電源側分割ユニットに伝熱可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する放熱用接続部が備えられている情報通信装置。
【請求項2】
2A 電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
2B 前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
2C 前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
2D 前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
2E 前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットにおける設置面の対向空間側に露出する部位に対して着脱自在に装着可能に構成され、
2F 前記電源側分割ユニットの前面部には、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で設置面の対向空間側に露出する被装着部が備えられ、
2G 前記非電源側分割ユニットの前記電源側分割ユニット側となる後面部には、前記電源側分割ユニット側の被装着部に対して装着自在な装着部が突出形成され、その装着部は、後方から見て前記非電源側分割ユニットの全体よりも大きさが小さい情報通信装置。
【請求項3】
3A 電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
3B 前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
3C 前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
3D 前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
3E 前記非電源側分割ユニットが前記電源側分割ユニットに装着されたとき、前記非電源側分割ユニットと前記電源側分割ユニットとを装着状態でロックするロック手段が備えられ、
3F 前記ロック手段によるロックを解除するロック解除操作部が、設置面に埋設状態で設置された状態で設置面の対向空間側に露出する部位に備えられている情報通信装置。
【請求項4】
4A 電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
4B 前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
4C 前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
4D 前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
4E 前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットに対して設置面の対向空間側から着脱自在に装着可能に構成され、
4F 前記電源側分割ユニットの前面部は、前記非電源側分割ユニットの後面部に突出形成された装着部が内嵌状態で装着可能な被装着部が形成された中間部位と、設置面の前面に当接させる取り付けフレームに固定自在に構成されて前記中間部位よりも外方に配置された外側部位とを有し、
4G 前記取り付けフレームは、設置面に貫通形成される設置用孔の後面側に配置されて前記電源側分割ユニットが内部に配置されるコンセントボックスと、設置面の前面側に配置される化粧カバーとを固定自在に構成されている情報通信装置。
【請求項5】
5A WAN側の通信ケーブルが接続可能なWAN用接続部が前記電源側分割ユニットに備えられ、
5B 前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを通信可能な状態で接続する通信接続部が備えられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の情報通信装置。
【請求項6】
6A 前記電源側分割ユニットに対して、機能又は仕様の異なる複数種の前記非電源側分割ユニットの各々が選択的に装着可能に構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報通信装置。
【請求項7】
7A 機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成されている請求項1又は3記載の情報通信装置。
【請求項8】
8A 電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
8B 前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
8C 前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
8D 前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
8E 前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットにおける設置面の対向空間側に露出する部位に対して着脱自在に装着可能に構成され、
8F 機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成されている情報通信装置。
【請求項9】
9A 電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
9B 前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
9C 前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
9D 前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
9E 前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットに対して設置面の対向空間側から着脱自在に装着可能に構成され、
9F 機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成されている情報通信装置。


第7 取消理由通知の理由について
前記第3のとおり、取消理由通知書で通知された理由は、甲7を主引例としたものであり、請求項2、4〜6に係る発明に対するもの(申立理由2−2、4−2、5−2及び6−2)である。

1 甲7の記載事項及び甲7発明
取消理由通知書において引用した甲7には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与。以下、同様。)。

「【0010】
【作用】請求項1記載の発明は、予め建物内の天井面や壁面等に設置され、各種端末との信号の送受信等を行うインターフェースユニットを着脱自在に取り付け可能とした接続器具と、一端を前記配線接続器具に接続され、前記建物内に先行配線された配線群と、前記配線群の他端に接続され、前記インターフェースユニットをインターフェースユニットに対応した設備と接続させるための配線接続部を有してなる配線システムにより、各インターフェースユニットを配線接続器具に取り付けるだけで、各種端末と対応した設備とが配線群を介して接続され、その間で信号の送受信ができるのである。」

「【0013】
【実施例】以下、本発明の一実施例について図面に基づき説明する。図1は、本発明の一実施例に係る配線システムを示す概略構成図である。本配線システムは、配線接続器具1a〜1d、配線2a〜2d、パッチパネル3、各種インターフェースユニット5a〜5dおよび各種インターフェースユニット5a〜5dに対応した設備4a〜4cを有してなる。配線接続器具1a〜1dは、各種インターフェースユニット5a〜5dを設置することにより、各種インターフェースユニット5a〜5dと配線2a〜2dとを接続するものである。配線接続器具1a〜1dは、室内の天井面7や壁面8に設置されるものであり、本実施例の場合は、配線接続器具1a〜1cは天井面7に設置され、配線接続器具1dは壁面8に設置されている。配線接続器具1a〜1dは、図2に示すように、各種インターフェースユニット5a〜5dの信号線と配線2a〜2dとの接続を行う信号線接続部11と、各種インターフェースユニット5a〜5dの電源線と配線2a〜2dとの接続を行う電源接続部12および各種インターフェースユニット5a〜5dを保持するためのユニット保持部13を有してなる。ここで、各種インターフェースユニット5a〜5dとしては、各種機器を制御するための信号を出力する機器制御用リモコン6aと対応した機器制御用センサユニット5a、無線LAN端末6bと対応した無線LANユニット5b、無線通話用システムに使用される端末の一例としてのPHP端末6cに対応したPHPユニット5cおよび監視領域を撮像し、映像信号を出力する監視カメラユニット5d等がある。なお、インターフェースユニット5a〜5dを配線接続器具1a〜1dに取り付けた際に、インターフェースユニット5a〜5d側の接続端子により配線接続器具1a〜1d側の信号線接続部11内の端子の内、必要な端子が選択されるようにしておけば、各種インターフェースユニット5a〜5dをどの配線接続器具1a〜1dに設置しても良いのである。
【0014】配線2a〜2dは、天井や壁内に配設され、配線接続器具1a〜1dとパッチパネル3とを接続するものであり、各々信号線と電源線を有する。配線2a〜2dとしては、ツイストペア線や同軸ケーブルや光ファイバ等、種々のケーブルの使用が可能である。パッチパネル3は、配線接続部の一例としてのものであり、配線2a〜2dとインターフェースユニットに対応した設備とを接続するものである。パッチパネル3は、図3に示すように、1次側および2次側の端子台31と端子台31の各端子間を接続するためのパッチコード32を有してなり、パッチコード32により、容易に接続を切り換えることができるようになっているのである。なお、配線接続部としては、パッチパネル3以外にも、単に一次側端子と2次側端子とを金具等の治具により接続するようなものを用いてもよい。
【0015】各種インターフェースユニット5a〜5dに対応した設備としては、機器制御用センサユニット5aに対応したBA系GW(ビルオートメーション系ゲートウェイ)4a、無線LANユニット5bに対応したLAN機器としてのHUB(集線装置)4bおよびPHPユニットに対応したPBX(電子交換機)4c等があり、パッチパネル3の一方の端子に接続される。パッチパネル3では、パッチコード32により、予め、所定の配線2a〜2dとBA系GW(ビルオートメーション系ゲートウェイ)4a、HUB(集線装置)4b、PBX(電子交換機)4cとが対応して接続されるように配線される。
【0016】ここで、本実施例の動作を説明する。今、図1の配線システムにおいて、例えば、会議室内でパーソナルコンピュータを用いて他の部屋に設置されているサーバ(図示せず)のデータベースから種々のデータ(会議室予約状況、他の者のスケジュール等)を検索しようとする場合、無線LAN端末6bを搭載したパーソナルコンピュータからサーバに対して問い合わせの信号を送信すると、無線LANユニット5bにより前記信号が受信され、有線系LANの信号に変換され、配線接続器具1b、配線2bを介してパッチパネル3に伝送される。有線系LAN用に変換された信号は、パッチパネル3のパッチコード32を介してHUB4bに伝送され、HUB4bからサーバに伝送される。また、サーバからの返信信号は、逆の経路により無線LAN端末6bに返送される。」

「【0021】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、予め建物内の天井面や壁面等に設置され、各種端末との信号の送受信等を行うインターフェースユニットを着脱自在に取り付け可能とした配線接続器具と、一端を前記配線接続器具に接続され、前記建物内に先行配線された配線群と、前記配線群の他端に接続され、前記インターフェースユニットをインターフェースユニットに対応した設備と接続させるための配線接続部を有してなる配線システムにより、各インターフェースユニットを配線接続器具に取り付けるだけで、各種端末と対応した設備とが配線群を介して接続され、その間で信号の送受信ができるようになるので、個別のシステム毎に独自の配線系を設けることなしに、自由にシステム設計のできる配線システムが提供できた。
【0022】請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明において、前記配線接続部をパッチパネルとしたので、パッチコードにより、前記配線接続器具に取り付けられたインターフェースユニットに応じて、前記配線接続部での接続を切り換えれることができるのである。
【0023】請求項3乃至請求項5記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載の発明において、前記インターフェースユニットを無線LANユニットや無線通話用ユニットや機器制御用センサユニットとし、前記インターフェースユニットに対応した設備をLAN機器や無線通話用の交換機やビル管理用ネットワークとするというように、自由にかつ容易にシステム設計ができるのである。」

「【図1】



「【図2】



「【図3】



前記【図1】、【図2】には、段落【0013】の記載も踏まえると、「配線接続器具1b」は、略円形の底面と、底面と略同じ直径の円筒状の側面とを有し、底面と側面とで凹部が形成され、凹部内側の底面に「信号線接続部11」及び「電源接続部12」が設けられ、側面の凹部開口側に「ユニット保持部13」が設けられ、「天井面7」に設置された状態において、底面は「天井面7」に埋設され、「ユニット保持部13」と側面の凹部開口側は「天井面7」から室内側に露出していることが示されていると認められる。

また、前記【図1】、【図2】には、段落【0013】の記載も踏まえると、「無線LANユニット5b」は、筐体の一部が「配線接続器具1b」の底面と側面で形成される凹部内側に入り込む状態で取り付けられていることが示されていると認められる。

したがって、甲7には、次の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲7発明をA〜Kに分説した。

<甲7発明>
「A 配線接続器具1a〜1d、配線2a〜2d、パッチパネル3、各種インターフェースユニット5a〜5dおよび各種インターフェースユニット5a〜5dに対応した設備4a〜4cを有する配線システムの配線接続器具1b及び無線LANユニット5bであって(【0013】)、
B 配線接続器具は、予め建物内の天井面や壁面等に設置され、各種端末との信号の送受信等を行うインターフェースユニットを着脱自在に取り付け可能であり(【0021】)、
C 配線接続器具1a〜1dは、各種インターフェースユニット5a〜5dを設置することにより、各種インターフェースユニット5a〜5dと配線2a〜2dとを接続するものであり、各種インターフェースユニット5a〜5dの信号線と配線2a〜2dとの接続を行う信号線接続部11と、各種インターフェースユニット5a〜5dの電源線と配線2a〜2dとの接続を行う電源接続部12および各種インターフェースユニット5a〜5dを保持するためのユニット保持部13を有し(【0013】)、
D 配線接続器具1bは、略円形の底面と、底面と略同じ直径の円筒状の側面とを有し、底面と側面とで凹部が形成され、凹部内側の底面に信号線接続部11及び電源接続部12が設けられ、側面の凹部開口側にユニット保持部13が設けられ、天井面7に設置された状態において、底面は天井面7に埋設され、ユニット保持部13と側面の凹部開口側は天井面7から室内側に露出し(【図1】、【図2】)、
E 各種インターフェースユニット5a〜5dとしては、各種機器を制御するための信号を出力する機器制御用リモコン6aと対応した機器制御用センサユニット5a、無線LAN端末6bと対応した無線LANユニット5b、無線通話用システムに使用される端末の一例としてのPHP端末6cに対応したPHPユニット5cおよび監視領域を撮像し、映像信号を出力する監視カメラユニット5d等があり、インターフェースユニット5a〜5dを配線接続器具1a〜1dに取り付けた際に、インターフェースユニット5a〜5d側の接続端子により配線接続器具1a〜1d側の信号線接続部11内の端子の内、必要な端子が選択されるようにしておけば、各種インターフェースユニット5a〜5dをどの配線接続器具1a〜1dに設置しても良く(【0013】)、
F 無線LANユニット5bは、筐体の一部が配線接続器具1bの底面と側面で形成される凹部内側に入り込む状態で取り付けられ(【図1】、【図2】)、
G 配線2a〜2dは、天井や壁内に配設され、配線接続器具1a〜1dとパッチパネル3とを接続するものであり、各々信号線と電源線を有し(【0014】)、
H パッチパネル3は、配線接続部の一例としてのものであり、配線2a〜2dとインターフェースユニットに対応した設備とを接続し(【0014】)、
I 各種インターフェースユニット5a〜5dに対応した設備としては、機器制御用センサユニット5aに対応したBA系GW(ビルオートメーション系ゲートウェイ)4a、無線LANユニット5bに対応したLAN機器としてのHUB(集線装置)4bおよびPHPユニットに対応したPBX(電子交換機)4c等があり、パッチパネル3の一方の端子に接続され、パッチパネル3では、パッチコード32により、予め、所定の配線2a〜2dとBA系GW(ビルオートメーション系ゲートウェイ)4a、HUB(集線装置)4b、PBX(電子交換機)4cとが対応して接続されるように配線されており(【0015】)、
J 無線LAN端末6bを搭載したパーソナルコンピュータからサーバに対して問い合わせの信号を送信すると、無線LANユニット5bにより前記信号が受信され、有線系LANの信号に変換され、配線接続器具1b、配線2bを介してパッチパネル3に伝送され、有線系LAN用に変換された信号は、パッチパネル3のパッチコード32を介してHUB4bに伝送され、HUB4bからサーバに伝送され、また、サーバからの返信信号は、逆の経路により無線LAN端末6bに返送される(【0016】)、
K 配線システムの配線接続器具1b及び無線LANユニット5b」

2 本件発明2についての当審の判断
(1)対比
本件発明2と甲7発明とを対比する。

ア 発明特定事項2Aについて
(ア)甲7発明の「無線LANユニット5b」は、「筐体の一部が配線接続器具1bの底面と側面で形成される凹部内側に入り込む状態で取り付けられ」る(分説F)ものであるから、甲7発明の「無線LANユニット5b」及び「配線接続器具1b」は、分割可能ながらも一体として装置を形成する。
甲7発明の「無線LANユニット5b」は、「無線LAN端末6bを搭載したパーソナルコンピュータ」から「サーバ」への「問い合わせの信号」を受信し、「サーバからの返信信号」を返送する(分説J)ものであるから、無線通信による情報通信を担うものである。
ここで、甲7の図1によれば、「無線LAN端末6b」は、「無線LANユニット5b」及び「配線接続器具1b」の外部にある情報通信端末であることが明らかであるから、甲7発明の「無線LAN端末6b」は本件発明2の「外部の情報通信端末」に相当する。
よって、甲7発明の「無線LANユニット5b」及び「配線接続器具1b」からなる装置は、本件発明2の「外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置」に相当する。
また、甲7発明の「配線接続器具1b」が設置される「天井面7」(分説D)は、本件発明2の「設置面」に相当し、「配線接続器具1b」の底面は「天井面7に埋設され」ている(分説D)から、「配線接続器具1b」及びそれと一体を成す「無線LANユニット5b」は「設置面に埋設状態で設置されて」いるといえる。
以上によれば、本件発明2と甲7発明とは、「設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置」である点で一致する。

(イ)甲7発明の「無線LANユニット5b」は、前記(ア)のとおり無線通信による情報通信を担うものであるから、無線通信による情報通信を行うために必要な「無線通信部」と「無線通信部を制御する制御部」を備えているのは当然である。

(ウ)甲7発明の「配線接続器具1b」は、「各種インターフェースユニット5a〜5d」の一つである「無線LANユニット5b」の「電源線」と「配線2b」との接続を行う「電源接続部12」を有し(分説C、図1、図2)、「配線2b」は「信号線」と「電源線」を有する(分説G)から、甲7発明の「無線LANユニット5b」に備わる「無線通信部」及び「制御部」(前記(イ))は、「配線接続器具1b」の「電源接続部12」から供給される電力にて作動することは明らかである。 そして、該「電源接続部12」は、「配線2b」の「電源線」からの電力、すなわち電源を「無線LANユニット5b」に供給するものであるから、本件発明2の「電源部」と「電源」の供給部であるという点で共通する。

(エ)前記(ア)〜(ウ)によれば、本件発明2と甲7発明とは、「電源の供給部と、前記電源の供給部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源の供給部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置」である点で共通する。

イ 発明特定事項2Bについて
前記ア(ウ)によれば、甲7発明の「配線接続器具1b」は、「電源接続部12」すなわち「電源」の供給部を備え、「設置面に埋設状態で設置可能な」ものである。
そして、「配線接続器具1b」は、前記ア(ア)に示したように「配線接続器具1b及び無線LANユニット5b」からなる装置から「分割」されたものであり、「電源」の供給部を備えるから「電源側」の「ユニット」といえる。
してみると、本件発明2の「配線接続器具1b」と甲7発明の「電源側分割ユニット」とは、「前記電源の供給部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニット」である点で共通する。

ウ 発明特定事項2Cについて
前記ア(イ)で示したとおり、甲7発明の「無線LANユニット5b」は、「無線通信部」及び「無線通信部を制御する制御部」を備えている。
また、甲7発明の「配線接続器具」には「各種端末との信号の送受信等を行うインターフェースユニットを着脱自在に取り付け可能であ」り(分説B)、「配線接続器具1b」は「配線接続器具」の1つであり、「無線LANユニット5b」は「インターフェースユニット」の1つであるから、甲7発明の「無線LANユニット5b」は、「配線接続器具1b」に対して「着脱自在に装着可能」である。
さらに、「無線LANユニット5b」は、前記ア(ア)に示したように「配線接続器具1b及び無線LANユニット5b」からなる装置から「分割」された「ユニット」であり、「電源」の供給部である「電源接続部12」を備えないユニットであるから、「非電源側」といえる。
してみると、本件発明2の「無線LANユニット5b」と甲7発明の「非電源側分割ユニット」とは、「前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニット」である点で一致する。

エ 発明特定事項2Dについて
甲7発明は、「配線接続器具1b」に「無線LANユニット5b」が取り付けられると、前記ア(ウ)で示したとおり、「配線接続器具1b」の「電源接続部12」と「無線LANユニット5b」の「電源線」が接続されて、「配線接続器具1b」から「無線LANユニット5b」に電力が供給されるのであるから、「配線接続器具1b」の「電源接続部12」と「無線LANユニット5b」の「電源線」は、「配線接続器具1b」から「無線LANユニット5b」に電力(電源)を供給するための接続部を構成しているといえる。
してみると、本件発明2の「配線接続器具1b」の「電源接続部12」と「無線LANユニット5b」の「電源線」とからなる接続部と甲7発明の「電源接続部」とは、「前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部」である点で一致する。

オ 発明特定事項2Eについて
(ア)甲7発明の「無線LANユニット5b」は、前記ウで示したとおり、「配線接続器具1b」が「設置面に埋設状態で設置された状態」(分説D)で、「配線接続器具1b」に対して「着脱自在に装着可能」といえる。

(イ)甲7発明における「配線接続器具1b」と「無線LANユニット5b」との装着の具体的な形態は明らかではないものの、「無線LANユニット5bは、筐体の一部が配線接続器具1bの底面と側面で形成される凹部内側に入り込む状態で取り付けられ」ること(分説F)、及び、「配線接続器具1b」の「底面」に設けられた「電源接続部12」(分説D)が「無線LANユニット5b」の電源線と配線2bとを接続すること(分説C)から、「無線LANユニット5b」の筐体は「配線接続器具1b」の底面と側面で形成される凹部内側の底面付近まで入り込むものと認められる。

(ウ)他方、本件発明2の「非電源側分割ユニット」と「電源側分割ユニット」との装着についての実施形態は、「制御側ケーシング34」の「筒状の装着部34e」が「電源側ケーシング33」の「筒状の被装着部33e」に「内嵌状態で接続」されるというものである(【0052】等)。
そして、本件明細書には「非電源側分割ユニット」と「電源側分割ユニット」との装着についての実施形態として、前記以外のものは記載されていないから、本件発明2の「非電源側分割ユニット」と「電源側分割ユニット」との装着は、「非電源側分割ユニット」の「筒状の装着部34e」が「電源側分割ユニット」の「筒状の被装着部33e」に「内嵌状態で接続」されることであると解釈される。

(エ)前記(ウ)の本件発明2についての解釈を踏まえた上で、2つのユニットの装着形態について本件発明2と甲7発明(前記(イ)を参照。)とを対比すると、甲7発明の「配線接続器具1b」の前記側面が、本件発明2における「前記電源側分割ユニットにおける設置面の対向空間側に露出する部位」に対応する。
しかしながら、甲7発明の「配線接続器具1b」の底面は天井面7に埋設される(分説C)から、甲7発明の「配線接続器具1b」の前記側面の少なくとも一部は天井面7に埋設されている。よって、甲7発明の「配線接続器具1b」の前記側面は、本件発明2のように「設置面の対向空間側に露出する部位」(実施形態の「筒状の被装着部33e」)のみからなるものではない。
以上によれば、本件発明2と甲7発明とは、「前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、少なくとも前記電源側分割ユニットにおける設置面の対向空間側に露出する部位に対して着脱自在に装着可能に構成され」る点で共通する。

カ 発明特定事項2Fについて
前記オ(イ)及び(エ)のとおりであるから、「配線接続器具1b」の前記側面は、本件発明2の「被装着部」に対応するものの、甲7発明の前記側面は、本件発明2の「被装着部」のようにその全てが設置面の対向空間側に露出するものではない。
よって、本件発明2と甲7発明とは、「前記電源側分割ユニットには前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で設置面の対向空間側に少なくとも一部が露出する被装着部が備えられ」ている点で共通する。

キ 発明特定事項2Gについて
前記オで示したとおり、甲7発明の「無線LANユニット5b」は、前記側面に着脱自在に装着可能であるから、前記側面に装着するための「装着部」を当然に備えているといえる。
したがって、本件発明2と甲7発明とは、「前記非電源側分割ユニットには前記電源側分割ユニット側の被装着部に対して装着自在な装着部」が備わる点で共通する。

ク 一致点及び相違点
以上のことから、本件発明2と甲7発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「電源の供給部と、前記電源の供給部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源の供給部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源の供給部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、少なくとも前記電源側分割ユニットにおける設置面の対向空間側に露出する部位に対して着脱自在に装着可能に構成され、
前記電源側分割ユニットには、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で設置面の対向空間側に少なくとも一部が露出する被装着部が備えられ、
前記非電源側分割ユニットには、前記電源側分割ユニット側の被装着部に対して装着自在な装着部が備わる情報通信装置。」

<相違点>
(相違点1)
電源の供給部が、本件発明2は「電源部」であるのに対し、甲7発明は「配線2b」の「電源線」からの電力を供給する「電源接続部12」である点。

(相違点2)
本件発明2の「電源側分割ユニット」の「被装着部」は、「前面部」に備えられているのに対し、甲7発明の「配線接続器具1b」の側面は、「配線接続器具1b」の底面とともに凹部を形成する点。
これに付随し、本件発明2の「非電源側分割ユニット」は、「前記電源側分割ユニットにおける設置面の対向空間側に露出する部位」に対して着脱自在に装着可能に構成されるのに対し、甲7発明の「無線LANユニット5b」は、「配線接続器具1b」の前記側面に対して着脱自在に装着可能に構成されているが、前記側面には、天井面から露出する部分だけでなく、天井面から露出しない部分が含まれる点。

(相違点3)
本件発明2の「装着部」は、「非電源側分割ユニット」の電源側分割ユニット側となる「後面部」に「突出形成」され、「後方から見て前記非電源側分割ユニットの全体よりも大きさが小さい」のに対し、甲7発明の「無線LANユニット5b」の「装着部」の具体的な構成は明らかでない点。

(2)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点2について検討する。

ア 甲7発明において、「無線LANユニット5b」が挿入される「配線接続器具1b」の側面は底面とともに凹部を形成しており、これら底面及び側面によって「配線接続器具1b」の外形の大部分が形成されていることは、図2から明らかである。すなわち、甲7発明には、本件発明2の「前面部」に対応する構成が存在しない。
そして、甲7発明に「前面部」に対応する構成を導入する動機付けは存在しない。

イ 加えて、甲7発明の「配線接続器具1b」は、その底面に「電源接続部12」を備えるため、「電源接続部12」からの給電を受ける「無線LANユニット5b」は、その装着時に「電源接続部12」との接触を必要とする。
その結果、「無線LANユニット5b」は、「配線接続器具1b」のほぼ底部まで挿入されることになり、「無線LANユニット5b」の挿入は「配線接続器具1b」の側面のうち天井面7に埋設されている部分にも及ぶ必要がある。
したがって、甲7発明の「配線接続器具1b」において、「無線LANユニット5b」が装着される部分を、天井面7から露出した部分のみとするためには、「電源接続部12」の位置も変更する必要があるが、そのような変更を導入する動機付けは存在しない。

ウ 前記ア及びイによれば、相違点2に係る本件発明2の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。
その他、相違点2に係る本件発明2の構成を記載又は示唆する証拠は存在しない。

(3)申立人の主張(申立人意見1−1、申立理由2−2)について
ア 申立人意見1−1(甲2に係る主張)について
申立人は、本件発明2は、当業者が甲7発明と、甲2記載の技術又は甲2に示される周知技術とに基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立人意見1−1)ので、以下、甲7発明と甲2に記載された技術との組み合わせについて検討する。

(ア)甲2の記載事項及び甲2技術
申立人が提出した甲2には、次の事項が記載されている。

「【0014】
(基本形態)
本基本形態の電力線通信モジュールMは、図1(a)に示すように扁平なハウジングH内に図1(b)に示す通信部の回路を内蔵したものである。ハウジングHは背面が平坦な面で図2に示すように分電盤1の函本体10に取り付けられている取付台200上に当接され、上端より上方向へ延長形成した取付片300aに設けられているだるま孔からなる取付孔301、301と、下端より下方向へ延長形成した取付片300bに設けた丸孔からなる取付孔302,302を用いて固定ねじ303により取付台200上に取り付けられるようなっている。」

「【0023】
(実施形態)
本実施形態は、図4に示すように電源接続端子部305と、通信部の結合回路307及び電源部313に電力線を接続するための電力線接続手段であるコンセント部315を設けたベースハウジングH1と、通信部の回路を内蔵し、ベースハウジングH1の中央部に設けた凹部316に着脱自在に嵌合するモジュールハウジングH2とにハウジングを分割した点に特徴があり、凹部316にはコンセント部315の差し込み口が開口し、この差し込み口に対して挿抜自在に挿着される被接続手段たるプラグ栓刃(図示せず)をモジュールハウジングH2の背面に突設してある。またモジュールハウジングH2の上面には通信インターフェースのドライバ部310或いはルーターブロック314に接続するためのRJ−45に対応したモジュラージャック304の差し込み口を開口させている。尚基本形態と同じ構成には同じ符号を付して説明は省略する。また回路構成は基本形態と同じであるので回路構成の図示は省略する。
【0024】
而して本実施形態では、ベースハウジングH1を基本形態と同様に分電盤1の取付台200に取り付け、電源接続端子部305に電力線を接続する。そしてモジュールハウジングH2を凹部316に嵌合すれば、プラグ栓刃がコンセント部315に差し込まれて通信部の結合回路307と電源部313とが電力線に接続されるとともに、モジュールハウジングH2を機械的にベースハウジングH1に結合した状態となり、これにより電力栓通信モジュールMとして機能することができるようになる。」
(当審注:「電力栓通信モジュールM」(【0024】)との記載は、「電力線通信モジュールM」の誤記と認める。)

「【図4】



図4によれば、モジュールハウジングH2は略直方体であり、ベースハウジングH1の凹部215にモジュールハウジングH2を嵌合させたとき、モジュールハウジングH2の上面及び下面の少なくとも一部分を覆うがモジュールハウジングH2の両側面は覆わないように構成されていると認められる。

したがって、甲2には、次の技術(以下「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。

「電力線通信モジュールMであって(【0024】)、
電力線通信モジュールMは、扁平なハウジングH内に通信部の回路を内蔵したものであり、ハウジングHは背面が平坦な面で分電盤1の函本体10に取り付けられている取付台200上に当接され、固定ねじ303により取付台200上に取り付けられ(【0014】)、
通信部の結合回路307及び電源部313に電力線を接続するための電力線接続手段であるコンセント部315を設けたベースハウジングH1と(【0023】)、
通信部の回路を内蔵し、ベースハウジングH1の中央部に設けた凹部316に着脱自在に嵌合するモジュールハウジングH2とを備え(【0023】)、
モジュールハウジングH2は略直方体であり、ベースハウジングH1の凹部215にモジュールハウジングH2を嵌合させたとき、モジュールハウジングH2の上面及び下面の少なくとも一部分を覆うがモジュールハウジングH2の両側面は覆わないように構成され(【図4】)、
プラグ栓刃をモジュールハウジングH2の背面に突設してあり(【0023】)、
モジュールハウジングH2を凹部316に嵌合すれば、プラグ栓刃がコンセント部315に差し込まれて通信部の結合回路307と電源部313とが電力線に接続されるとともに、モジュールハウジングH2を機械的にベースハウジングH1に結合した状態となる(【0024】)、
電力線通信モジュールM」

(イ)甲7発明と甲2技術との組み合わせについて
a 甲7発明と甲2技術とは、その形状が大きく異なっている上に、甲7発明が天井面に埋設されるのに対し、甲2技術は分電盤1の取付台200上に取り付けられるものであって、埋設されるものではなく、取り付けの態様も異なっているから、形状及び構造の観点から両者を組み合わせる動機付けはない。

b 機能の観点では、甲2技術の「コンセント部315」及び「プラグ栓刃」は、通信部の結合回路307と電源部313とを電力線に接続するから、甲7発明の「信号線接続部11」及び「電源接続部12」並びにそれらと接触する「無線LANユニット5b」の構成(明細書に記載なし)に対応するものと認められる。
そうすると、甲7発明の「配線接続器具1b」の側面に対応する構成は、甲2技術では「コンセント部315」ではなく、「ベースハウジングH1」の凹部316を構成する2つの水平面である。
そして、甲2技術の「ベースハウジングH1」の2つの水平面は、本件発明2の「被装着部」とは異なり、「前面部」に設けられたものではない。
したがって、仮に、甲7発明に甲2技術を組み合わせたとしても、相違点2に係る本件発明2の構成には至らない。

(ウ)前記(イ)のとおりであるから、甲2技術の存在によっても、甲7発明から本件発明2が容易に発明をすることができたとはいえない。これは、甲2技術が周知であったとしても、左右されない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

イ 申立理由2−2について
申立人は、本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲7発明と同一であり、また、当業者が甲7発明と甲1〜甲6及び甲8の記載事項又は周知技術とに基いて容易に発明をすることができたものであると主張する(申立理由2−2)が、本件発明2と甲7発明とは少なくとも相違点2が存在し、甲1〜甲6及び甲8には、相違点2に係る本件発明2の構成が開示されていないので、申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本件発明4についての当審の判断
(1)対比
本件発明4と甲7発明とを対比する。

ア 発明特定事項4A〜4Dについて
本件発明4の発明特定事項4A〜4Dは、本件発明2の発明特定事項2A〜2Dと同じであるから、前記「2 本件発明2についての当審の判断」「(1)対比」ア〜エで示したことと同じことがいえる。

イ 発明特定事項4Eについて
(ア)前記「2 本件発明2についての当審の判断」「(1)対比」オ(ア)で示したとおり、甲7発明の「無線LANユニット5b」は、「配線接続器具1b」が「設置面に埋設状態で設置された状態」(分説D)で、「配線接続器具1b」に対して「着脱自在に装着可能」といえる。

(イ)甲7発明の「配線接続器具1b」は、「天井面7に設置された状態において」(分説D)、「側面の凹部開口側は天井面7から室内側に露出し」(分説D)、「無線LANユニット5bは、筐体の一部が配線接続器具1bの底面と側面で形成される凹部内側に入り込む状態で取り付けられ」る(分説F)ことから、「無線LANユニット5b」の「配線接続器具1b」への取り付けは、「天井面7」の室内側から行われると認められる。
そして、「配線接続器具1b」が設置される「天井面7」の「室内側」は、本件発明4の「設置面の対向空間側」に相当するから、本件発明4と甲7発明とは、「前記非電源側分割ユニットは、電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、電源側分割ユニットに対して設置面の対向空間側から着脱自在に装着可能に構成され」る点で共通する。

ウ 発明特定事項4Fについて
前記「2 本件発明2についての当審の判断」「(1)対比」キのとおり、甲7発明の「無線LANユニット5b」は、「装着部」を当然に備えているといえる。
また、前記「2 本件発明2についての当審の判断」「(1)対比」オ及びカのとおり、甲7発明の「配線接続器具1b」の側面は、本件発明4の「被装着部」に対応する。
したがって、本件発明4と甲7発明とは、「前記電源側分割ユニットは、前記非電源側分割ユニットの装着部が内嵌状態で装着可能な被装着部」を有する点で共通する。

エ 発明特定事項4Gについて
甲7発明は、本件発明4の「取り付けフレーム」、「コンセントボックス」及び「化粧カバー」に対応する構成を備えていない。

オ 一致点及び相違点
以上のことから、本件発明4と甲7発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「電源の供給部と、前記電源の供給部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源の供給部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源の供給部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットに対して設置面の対向空間側から着脱自在に装着可能に構成され、
前記電源側分割ユニットは、非電源側分割ユニットの装着部が内嵌状態で装着可能な被装着部を有する情報通信装置。」

<相違点>
(相違点4)
電源の供給部が、本件発明4は「電源部」であるのに対し、甲7発明は「配線2b」の「電源線」からの電力を供給する「電源接続部12」である点。

(相違点5)
本件発明4の「電源側分割ユニット」の「被装着部」は、「前面部」に備えられているのに対し、甲7発明の「配線接続器具1b」の側面は、「配線接続器具1b」の底面とともに凹部を形成する点。
これに付随し、本件発明4の「電源側分割ユニット」は、「被装着部が形成された中間部位」とともに「設置面の前面に当接させる取り付けフレームに固定自在に構成されて前記中間部位よりも外方に配置された外側部位」を「前面部」に有するのに対し、甲7発明の「配線接続器具1b」は、前記「中間部位」と「外側部位」とに対応する構成を有しない点。

(相違点6)
本件発明4の「非電源側分割ユニット」の「装着部」は、「後面部」に「突出形成」されるのに対し、甲7発明の「無線LANユニット5b」の「装着部」の具体的な構成は明らかでない点。

(相違点7)
本件発明4は、「電源側分割ユニット」が固定される「取り付けフレーム」が、「設置面に貫通形成される設置用孔の後面側に配置されて前記電源側分割ユニットが内部に配置されるコンセントボックス」と「設置面の前面側に配置される化粧カバー」とを「固定自在」に構成されているのに対し、甲7発明は、「取り付けフレーム」、「コンセントボックス」及び「化粧カバー」に対応する構成を備えない点。

(2)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点5について検討する。

ア 前記「2 本件発明2についての当審の判断」「(2)相違点についての検討」アのとおり、甲7発明には、本件発明4の「前面部」に対応する構成が存在しない。
そして、甲7発明に「前面部」に対応する構成を導入する動機付けは存在しない。

イ 加えて、前記「2 本件発明2についての当審の判断」「(2)相違点についての検討」アのとおり、甲7発明の「配線接続器具1b」の側面は底面とともに凹部を形成しており、これら底面及び側面によって「配線接続器具1b」の外形の大部分が形成されている。
そのため、「配線接続器具1b」の側面の外方に部材を配置しようとすると、「配線接続器具1b」の外形自体を変更する必要があるが、そのような変更を導入する動機付けは存在しない。

ウ 前記ア及びイによれば、相違点5に係る本件発明4の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。
その他、相違点5に係る本件発明4の構成を記載又は示唆する証拠は存在しない。

(3)申立人の主張(申立人意見1−2、申立理由4−2)について
ア 申立人意見1−2について
申立人は、本件発明4は、当業者が甲7発明と、甲2記載の技術並びに甲10及び甲11に示される周知技術に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立人意見1−2)。
そこで、以下、甲7発明と甲2技術並びに甲10及び甲11に示される周知技術との組み合わせについて検討する。

(ア)甲7発明と甲2技術の組み合わせについては、前記「2 本件発明2についての当審の判断」「(3)申立人の主張について」ア(イ)のとおりである。
すなわち、甲7発明に甲2技術を組み合わせる動機付けはなく、仮に、甲7発明に甲2技術を組み合わせたとしても、相違点5に係る本件発明4の「被装着部」を電源側分割ユニットの「前面部」に備える構成には至らない。

(イ)また、甲10及び甲11は、「一般家庭で使用されるコンセントボックスは、取り付けフレームが、内部に配置されるコンセントボックスと、化粧カバーとを固定自在に構成されていること」(申立人意見書8頁)が周知技術であることを示すために提出されたものである。
そして、甲10及び甲11は、本件発明4の「被装着部」の構成を示すものではないから、仮に、甲10及び甲11で示される技術を甲7発明に組み合わせたとしても、相違点5に係る本件発明4の構成には至らないことは明らかである。

(ウ)前記(ア)及び(イ)のとおりであるから、甲2技術並びに甲10及び甲11に示される技術の存在によっても、甲7発明から本件発明4が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

イ 申立理由4−2について
申立人は、本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲7発明と同一であり、また、当業者が甲7発明及び周知技術とに基いて容易に発明をすることができたものであると主張する(申立理由4−2)が、本件発明4と甲7発明とは少なくとも相違点5が存在し、該相違点5に係る本件発明4の構成が周知であるとの証拠もないので、申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本件発明2又は4を引用する本件発明5及び6についての当審の判断
(1)本件発明5について
本件発明2又は4を引用する本件発明5は、本件発明2又は4を引用して更に限定する構成を付加したものである。
そして、前記「2 本件発明2についての当審の判断」及び「3 本件発明4についての当審の判断」で示したとおり、本件発明2及び4は、甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものはない。
したがって、本件発明2又は4を引用する本件発明5は、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明6について
本件発明2又は4を直接的に、または間接的に引用する本件発明6は、本件発明2、4又は本件発明2若しくは4を引用する本件発明5を引用して更に限定する構成を付加したものであるから、前記(1)と同様の理由により、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立人の主張(申立人意見1−3、申立理由5−2及び6−2)について
ア 申立人意見1−3について
申立人は、本件発明5及び6は、取消理由通知書と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立人意見1−3)。

本件訂正前の請求項5及び6に係る発明について取消理由通知書で通知した取消理由は、本件訂正前の請求項5及び6が引用する本件訂正前の請求項2及び請求項4に係る発明が取消理由を有することを前提とするものである。
一方、前記「2 本件発明2についての当審の判断」及び前記「3 本件発明4についての当審の判断」で示したとおり、本件発明5及び6が引用する本件発明2及び4は、前記取消理由を有しない。
そのため、本件発明2又は4を引用する本件発明5及び6については、本件訂正前の請求項5及び6に係る発明について通知した取消理由は当たらない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

イ 申立理由5−2及び6−2について
申立人は、本件訂正前の請求項5に係る発明は、当業者が甲7発明並びに甲2、甲4、甲5、甲7及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由5−2)。
また、本件訂正前の請求項6に係る発明は、当業者が甲7発明並びに甲2、甲3、甲7及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由6−2)。

しかしながら、前記(1)及び(2)のとおり、本件発明2又は4を引用する本件発明5及び6は、本件発明2又は4と同一の構成を有し、さらに限定事項を付したものである。
そして、本件発明2及び4が、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができないものである以上、本件発明2又は4を引用する本件発明5及び6も、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることはできない。これは、甲2〜5、7及び8の存在に左右されない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明2又は4を引用する本件発明5及び6は、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 まとめ
よって、本件発明2及び4、並びに、本件発明2又は4を引用する本件発明5及び6は、取消理由通知書で通知した取消理由で取り消すことはできない。


第8 甲7発明に基づく申立理由のうち取消理由通知に採用しなかったものについて
以下では、取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由のうち、甲7発明を主たる引用例としたもの(申立理由1−2、3−2、7−2及び本件発明1又は3を引用する場合の申立理由5−2及び6−2)について判断する。

1 本件発明1についての当審の判断
(1)対比
本件発明1と甲7発明とを対比する。

ア 発明特定事項1A〜1Dについて
本件発明1の発明特定事項1A〜1Dは、本件発明2の発明特定事項2A〜2Dと同一のものであり、前記「第7 取消理由通知の理由について」「2 本件発明2についての当審の判断」「(1)対比」ア〜エで示したことと同じことがいえる。

イ 発明特定事項1Eについて
甲7発明は、放熱のための構成を備えていない。

ウ 一致点及び相違点
以上のことから、本件発明1と甲7発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「電源の供給部と、前記電源の供給部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源の供給部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源の供給部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられている情報通信装置。」

<相違点>
(相違点8)
電源の供給部が、本件発明1は「電源部」であるのに対し、甲7発明は「配線2b」の「電源線」からの電力を供給する「電源接続部12」である点。

(相違点9)
本件発明1は、「前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記非電源側分割ユニットで発生する熱を前記電源側分割ユニットに伝熱可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する放熱用接続部」を備えるのに対し、甲7発明は、放熱のための構成を備えない点。

(2)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点9について検討する。

甲7発明は、放熱のための構成を備えていない。
そして、相違点9に係る本件発明1の構成が周知技術であるともいえない。
その他、相違点9に係る本件発明1の構成を記載又は示唆する証拠は存在しない。
したがって、相違点9に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。

(3)申立人の主張(申立理由1−2、申立人意見2)について
ア 申立理由1−2について
申立人は、本件訂正前の請求項1に係る発明は、当業者が甲7発明と、甲1、甲2及び甲3の記載事項並びに甲4、甲6及び甲9の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由1−2)ので、以下、検討する。

(ア)甲4の記載事項及び甲4技術
申立人が提出した甲4には、次の事項が記載されている。
「【0028】
以下、情報通信装置K1の構成について、図1〜図6に基づいて説明する。
情報通信装置K1は、詳細については後述するが、設置面Fに埋設して設置される本体ユニットU1と、設置面Fに埋設して設置された埋設設置状態の本体ユニットU1に対して着脱可能に構成されたアンテナユニットU2で構成されている。以下、本体ユニットU1とアンテナユニットU2の夫々構成について説明する。
【0029】
〔本体ユニット〕
本体ユニットU1は、図3等に示すように、設置面Fに埋設して設置可能に構成されたケーシング10を備える。そのケーシング10の背面部18側には、商用電力を供給する一対の電源ケーブル61が着脱自在に差し込み接続される一対の電源線接続口52が設けられている。
【0030】
本体ユニットU1のケーシング10は、図2及び図4等に示すように、設置面Fに対して直交する前後方向(壁Wの表裏方向)から互いに脱着自在に嵌合する前側分割ケーシング10Aと後側分割ケーシング10Bとで二分割されたケーシングである。また、前側分割ケーシング10Aは樹脂製の成形品であるが、後側分割ケーシング10Bは電波シールド性が良好なアルミニウムや亜鉛鋼製等のダイキャストによるものとして構成されている。
【0031】
また、この後側分割ケーシング10Bにおける背面部18及び周面部19の表面には複数の溝が形成されて、表面積が拡大されている。これらのことで、後側分割ケーシング10Bの表面から外部への放熱が促進され、内部の昇温が抑制されている。尚、ケーシング10の内部には、詳細な説明は割愛するが、各種アダプタやコネクタ以外に、無線LAN用アンテナ、コンバータ、各種回路基板などが実装されており、例えば、図6等に示すように、通信制御用の回路基板からなる通信制御部31やアンテナ制御用の回路基板からなるアンテナ制御部32等が設けられている。」

「【0038】
〔アンテナユニット〕
一方、アンテナユニットU2は、図1、図2及び図4等に示すように、ケーシング26にアンテナ素子30を内蔵しており、そのケーシング26が、埋設設置状態の本体ユニットU1において設置面Fよりも前面側に膨出する膨出部Aに対して着脱自在に構成されている。」

「【0040】
図6に示すように、アンテナユニットU2を本体ユニットU1に装着した装着状態において、本体ユニットの前面部11の上下縁部に設けられた接続端子33を通じて、アンテナユニットU2に設けられたアンテナ素子30が、本体ユニットU1に設けられたアンテナ制御部32に接続される。そして、本体ユニットU1のアンテナ制御部32は、アンテナユニットU2に設けられたアンテナ素子30を駆動して無線信号の送受信を行うことで、通信制御部31が外部の情報通信端末との間で無線通信を可能とする。」

「【図2】



したがって、甲4には、次の技術(以下「甲4技術」という。)が記載されていると認められる。

「情報通信装置K1であって(【0028】)、
情報通信装置K1は、設置面Fに埋設して設置される本体ユニットU1と、設置面Fに埋設して設置された埋設設置状態の本体ユニットU1に対して着脱可能に構成されたアンテナユニットU2で構成され(【0028】)、
本体ユニットU1は、設置面Fに埋設して設置可能に構成されたケーシング10を備え(【0029】)、
本体ユニットU1のケーシング10は、設置面Fに対して直交する前後方向(壁Wの表裏方向)から互いに脱着自在に嵌合する前側分割ケーシング10Aと後側分割ケーシング10Bとで二分割されたケーシングであり(【0030】)、
前側分割ケーシング10Aは樹脂製の成形品であるが、後側分割ケーシング10Bは電波シールド性が良好なアルミニウムや亜鉛鋼製等のダイキャストによるものとして構成され(【0030】)、
この後側分割ケーシング10Bにおける背面部18及び周面部19の表面には複数の溝が形成されて、表面積が拡大され、これらのことで、後側分割ケーシング10Bの表面から外部への放熱が促進され、内部の昇温が抑制され(【0031】)、
ケーシング10の内部には、各種アダプタやコネクタ以外に、無線LAN用アンテナ、コンバータ、各種回路基板などが実装されており、通信制御用の回路基板からなる通信制御部31やアンテナ制御用の回路基板からなるアンテナ制御部32等が設けられ(【0031】)、
アンテナユニットU2は、ケーシング26にアンテナ素子30を内蔵しており、そのケーシング26が、埋設設置状態の本体ユニットU1において設置面Fよりも前面側に膨出する膨出部Aに対して着脱自在に構成され(【0038】)、
アンテナユニットU2を本体ユニットU1に装着した装着状態において、本体ユニットの前面部11の上下縁部に設けられた接続端子33を通じて、アンテナユニットU2に設けられたアンテナ素子30が、本体ユニットU1に設けられたアンテナ制御部32に接続され(【0040】)、
本体ユニットU1のアンテナ制御部32は、アンテナユニットU2に設けられたアンテナ素子30を駆動して無線信号の送受信を行うことで、通信制御部31が外部の情報通信端末との間で無線通信を可能とする(【0040】)
情報通信装置K1」

(イ)甲6の記載事項及び甲6技術
申立人が提出した甲6には、次の事項が記載されている。

「【0049】
POE仕様の情報通信装置1a、商用電源仕様の情報通信装置1b、及び、中継装置3の夫々は、無線LAN用のアンテナ素子6及び複数の基板7〜9等(図5参照)を収容するケーシング10を備えている。POE仕様の情報通信装置1aのケーシング10と商用電源仕様の情報通信装置1bのケーシング10と中継装置3のケーシング10とが、共通の共用ケーシング10にて構成されている。
【0050】
以下、図3〜図5に基づいて、共用ケーシング10について説明する。
共用ケーシング10は、前方側ケーシング11と後方側ケーシング12とに分割自在に構成されている。前方側ケーシング11は、例えば、合成樹脂製に構成され、後方側ケーシング12は、例えば、アルミや亜鉛鋼等の金属製に構成されており、良好な熱導伝性を有するように構成されている。
【0051】
前方側ケーシング11と後方側ケーシング12との着脱については、図示は省略するが、例えば、前方側ケーシング11と後方側ケーシング12との一方側に係合爪を形成し、前方側ケーシング11と後方側ケーシング12との他方側に係合爪が係合する係合孔を形成し、係合爪と係合孔との係合又は係合解除により、前方側ケーシング11と後方側ケーシング12とを着脱自在に構成することができる。そして、例えば、後方側ケーシング12に形成された貫通孔を通して、前方側ケーシング11に形成されたビス孔にビスを止めることで、前方側ケーシング11と後方側ケーシング12とが係合した状態で固定可能に構成されている。」

「【0058】
前方側ケーシング11と後方側ケーシング12とを組み付けることで、前後、左右及び上下が閉塞された収容空間が形成され、その収容空間に、アンテナ素子6、及び、基板7〜9等の各部品が収容されている。図5では、電源部品24、第1〜第3基板7〜9、コネクタ部25等を図示し、その他の電子部品等は図示を省略している。
【0059】
アンテナ素子6は、基板7〜9よりも前方側に位置するように前方側ケーシング11側に収容されている。基板7〜9は、前後方向の前方側から、第1基板7、第2基板8、第3基板9の順に間隔を隔てて積層させた積層構造にて配置されている。左右方向における長さは、第2基板8と第3基板9が同一の長さとなっており、第1基板7が第2基板8及び第3基板9よりも小さい長さとなっている。第1基板7の前面部には、電話回線用接続口13、及び、LAN用接続口18が設置されている。第3基板9の後面部には、電源部品24が設置され、第3基板9が電源基板として構成されている。コネクタ部25は、第1基板7の後面部、第2基板8の前面部と後面部の両面部、及び、第3基板9の前面部の夫々に配置されており、コネクタ部25によって、第1基板7と第2基板8と第3基板9とが電気的に接続されている。」

「【図5】



したがって、甲6には、次の技術(以下「甲6技術」という。)が記載されていると認められる。

「共用ケーシング10であって(【0049】)、
POE仕様の情報通信装置1aのケーシング10と商用電源仕様の情報通信装置1bのケーシング10と中継装置3のケーシング10とに共通であり(【0049】)、
共用ケーシング10は、前方側ケーシング11と後方側ケーシング12とに分割自在に構成され(【0050】)、
前方側ケーシング11は、合成樹脂製に構成され、後方側ケーシング12は、アルミや亜鉛鋼等の金属製に構成されており、良好な熱導伝性を有するように構成され(【0050】)、
前方側ケーシング11と後方側ケーシング12との一方側に係合爪を形成し、前方側ケーシング11と後方側ケーシング12との他方側に係合爪が係合する係合孔を形成し、係合爪と係合孔との係合又は係合解除により、前方側ケーシング11と後方側ケーシング12とを着脱自在に構成することができ(【0051】)、
前方側ケーシング11と後方側ケーシング12とを組み付けることで、前後、左右及び上下が閉塞された収容空間が形成され、その収容空間に、無線LAN用のアンテナ素子6、及び、基板7〜9等の各部品が収容され(【0049】、【0058】)、
基板7〜9は、前後方向の前方側から、第1基板7、第2基板8、第3基板9の順に間隔を隔てて積層させた積層構造にて配置され、第1基板7の前面部には、電話回線用接続口13、及び、LAN用接続口18が設置され、第3基板9の後面部には、電源部品24が設置され、第3基板9が電源基板として構成され、コネクタ部25は、第1基板7の後面部、第2基板8の前面部と後面部の両面部、及び、第3基板9の前面部の夫々に配置されており、コネクタ部25によって、第1基板7と第2基板8と第3基板9とが電気的に接続され(【0059】)、
POE仕様の情報通信装置1aのケーシング10と商用電源仕様の情報通信装置1bのケーシング10と中継装置3のケーシング10とが、共通の共用ケーシング10にて構成される(【0049】)
共用ケーシング10」

(ウ)甲9の記載事項及び甲9技術
申立人が提出した甲9には、次の事項が記載されている。

「【0013】
制御ユニット20は、雄コネクタ21と、雌コネクタ22と、電源ボタン23とを備えている。制御ユニット20は、電子機器1全体を制御する機能を有し、制御ユニット20から出力する信号に基づいて、各ユニット10、30の機能を制御する。制御ユニット20の電気的構成については、図7を参照して説明する。制御ユニット20は、後述の識別情報(ユニットコード)を含む情報を後述する他のユニット10、30、40、50、60、70、80、90、100に伝達する。
【0014】
電源ユニット30は、雄コネクタ31と、雌コネクタ32とを備えている。電源ユニット30は、レンズユニット10及び制御ユニット20を含む後述の各ユニット60、70、80、90、100に対し電源を供給する電池33(図7参照)を内部に有する。電源ユニット30の電気的構成については、図7を参照して後述する。」

【0017】
図4は、本実施形態に係る電子機器1を構成するレンズユニット10と、制御ユニット20と、放熱ユニット50と、電源ユニット30と、ターンテーブル制御ユニット60と、表示制御ユニット70と、マイクユニット80と、プロジェクターユニット90と、通信ユニット100、表示ユニット110とを電気的、及び機械的に接続した状態を示す斜視図である。
電子機器1を構成する各ユニット10、20、50、30、60、70、80、90、100は、その順番で接続され、表示ユニット110は、表示制御ユニット70の側方に突出して接続されている。各ユニット10、20、50、30、60、70、80、90、100により構成される電子機器1は、ターンテーブル制御ユニット60の下方において突出して形成されたターンテーブル120を介して机上等に設置可能となっている。
また、複数のユニット10、20、50、30、60、70、80、90、100は各々接続時に露出する面に該ユニットの有する機能を識別可能とする文字が記されている。例えば、レンズユニット10の露出する面には、「レンズ」という文字が記されている。また、制御ユニット20の露出する面には、「制御」という文字が記されている。レンズユニット10、制御ユニット20及び電源ユニット30については、図1及び図2を参照して説明したので、その機能については説明を省略する。図4を参照して、放熱ユニット50と、ターンテーブル制御ユニット60と、表示制御ユニット70と、マイクユニット80と、プロジェクターユニット90と、通信ユニット100について説明する。
【0018】
放熱ユニット50は、熱が伝導しやすいアルミニウムや銅等の金属材料により形成された複数の放熱フィン51により構成される。放熱ユニット50は、隣接して接続されているユニットから発生する熱を放熱フィン51を通じて放散し、隣接するユニットの温度を下げる放熱機能を有する。したがって、放熱ユニット50を、熱を発生する制御ユニット20と熱を嫌う電源ユニット30との間に配置することで、制御ユニット20の熱を速やかに発散させると共に、電源ユニット30に対する熱の影響を回避することができる。例えば、レンズユニット10においてフルHD動画等を撮影することにより、大きな熱が制御ユニット20から発生するような場合であっても、制御ユニット20と電源ユニット30との間に放熱ユニット50を配置することにより、電源ユニット30を熱から保護することが可能となる。放熱ユニット50は、後述の識別情報(ユニットコード)を持たず、制御ユニット20から送信される識別情報を含む情報を他のユニット10、30、60、70、80、90、100に対しスルーパスで伝達する。」

「【0023】
通信ユニット100は、Bluetooth(登録商標)規格による無線通信により他の装置(例えば、図示せぬ外部記憶装置、表示装置、電子機器1に対する操作を行うためのユーザの入力操作を受け付ける入力操作受付装置、または他の電子機器等)との間で行う通信を制御する。通信ユニット100は、スマートフォン300から送信される情報を受信して、制御ユニット20に伝達する制御を実行する。また、通信ユニット100は、制御ユニット20から伝達された情報を受信して、スマートフォン300に送信する制御を実行する。通信ユニット100は、IrDA(Infrared Data Association)規格による赤外線通信、USB(Universal Serial Bus)規格、IEEE1394規格等の各種インターフェース規格により、インターネットを含むネットワークを介して外部の電子機器と画像のデータや情報の入出力を可能としているものでもよい。したがって、例えば、通信ユニット100を介してスマートフォン300等の外部機器と接続することにより、電子機器1にディスプレイ等の表示部を配置しなくても、スマートフォン300の表示画面を見ながら操作することで、ユーザは自由に電子機器1を操作することができる。」

「【0096】
以上説明したように、本実施形態の電子機器1は、個々に固有の機能を有する複数のユニット10、20、30、60、70、80、90、100を電気的、及び機構的に接続してなる。
そして、電子機器1は、複数のユニット10、20、30、60、70、80、90、100の接続する組合せに応じて当該電子機器1全体としての機能を異ならせることを可能とする。
そのため、各ユニット10、20、30、50、60、70、80、90、100を自在に組合せることができるので、ユーザは、所望の組合せにより各ユニットを接続することで、電子機器1を用途別に、最小限の大きさで接続して使用することができる。また、不必要な機能を奏するユニットを用いずに、必要最小限の機能を有するユニットのみを接続することで、電子機器1全体として最小限の消費電力に抑えることができる。」

「【図4】



したがって、甲9には、次の技術(以下「甲9技術」という。)が記載されていると認められる。

「電子機器1であって(【0017】)、
レンズユニット10と、制御ユニット20と、放熱ユニット50と、電源ユニット30と、ターンテーブル制御ユニット60と、表示制御ユニット70と、マイクユニット80と、プロジェクターユニット90と、通信ユニット100、表示ユニット110とを電気的、及び機械的に接続して構成され(【0017】)、
制御ユニット20は、電子機器1全体を制御する機能を有し(【0013】)、
電源ユニット30は、レンズユニット10及び制御ユニット20を含む後述の各ユニット60、70、80、90、100に対し電源を供給する電池33を内部に有し(【0014】)、
放熱ユニット50は、熱が伝導しやすいアルミニウムや銅等の金属材料により形成された複数の放熱フィン51により構成され、
放熱ユニット50は、隣接して接続されているユニットから発生する熱を放熱フィン51を通じて放散し、隣接するユニットの温度を下げる放熱機能を有し、
放熱ユニット50を、熱を発生する制御ユニット20と熱を嫌う電源ユニット30との間に配置することで、制御ユニット20の熱を速やかに発散させると共に、電源ユニット30に対する熱の影響を回避し(【0018】)、
通信ユニット100は、Bluetooth(登録商標)規格による無線通信により他の装置との間で行う通信を制御し(【0023】)、
各ユニット10、20、30、50、60、70、80、90、100を自在に組合せることができる(【0096】)
電子機器1」

(エ)甲7発明と甲4技術、甲6技術及び甲9技術との組み合わせについて
a 甲4技術の「本体ユニットU1」の「後側分割ケーシング10B」は、その表面に外部への放熱を促進する溝が形成されているから、放熱用の部位といえる。
しかしながら、前記「後側分割ケーシング10B」は、情報通信装置を構成する「本体ユニットU1」と「アンテナユニットU2」のいずれか一方で発生する熱を他方に伝熱するものではないから、相違点9に係る本件発明1の「放熱用接続部」の構成を開示ないし示唆するものでない。
したがって、仮に、甲7発明に甲4技術を組み合わせたとしても、相違点9に係る本件発明1の構成には至らない。

b 甲6技術の「共用ケーシング10」は、「前方側ケーシング11」と「後方側ケーシング12」とを係合することで形成される収容空間に、無線LAN用のアンテナ素子6及び基板7〜9を収容するものであり、甲7発明とは、形状や構造が大きく異なっており、両者を組み合わせる動機付けはない。
また、甲6技術の「後方側ケーシング12」は、良好な熱導伝性を有するように構成されているものの、例えば、「前方側ケーシング11」等の他の部品との間で伝熱を行うものではない。
したがって、甲7発明と甲6技術からは、相違点9に係る本件発明1の構成には至らない。

c 甲9技術の「放熱ユニット50」は、隣接して接続されているユニットから発生する熱を放散する放熱機能を有するものであり、具体的には、「制御ユニット20」と熱を嫌う「電源ユニット30」との間に配置することで、「制御ユニット20」の熱を速やかに発散させると共に、「電源ユニット30」に対する熱の影響を回避するものである。
つまり、甲9技術の「放熱ユニット50」は、「制御ユニット20」の熱を「電源ユニット30」に伝熱するのではなく、むしろ「電源ユニット30」への伝熱を防ぐためのものであるから、相違点9に係る本件発明1の「放熱用接続部」の構成を開示ないし示唆するものでない。
したがって、仮に、甲7発明に甲9技術を組み合わせても、相違点9に係る本件発明1の構成には至らない。

(オ)前記(エ)のとおりであるから、甲7発明に甲4技術、甲6技術及び甲9技術いずれを適用しても、本件発明1を容易に発明することができたとはいえない。
また、甲1、甲2及び甲3にも、相違点9に係る本件発明1の構成は開示されていない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

イ 申立人意見2について
申立人は、本件発明1は、当業者が甲7発明及び甲12に示される周知技術に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立人意見2)。

申立人意見2は、甲12に基づくものであって、甲12は申立書に添付されたものではなく、令和4年4月22日の意見書とともに新たに提出されたものである。
そして、本件発明1は、本件訂正の対象となっていないから、前記主張は、訂正により追加された事項についての見解など訂正請求の内容に付随して生じる理由に係るものではない。
さらに、甲12のみからその記載内容を周知技術と認めることもできない。
したがって、申立人意見2は、実質的に新たな理由と認められるから、これに係る主張及び証拠は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本件発明3についての当審の判断
(1)対比
本件発明3と甲7発明とを対比する。

ア 発明特定事項3A〜3Dについて
本件発明3の発明特定事項3A〜3Dは、本件発明2の発明特定事項2A〜2Dと同一のものであり、前記「第7 取消理由通知の理由について」「2 本件発明2についての当審の判断」「(1)対比」ア〜エで示したことと同じことがいえる。

イ 発明特定事項3Eについて
(ア)甲7発明は、「無線LANユニット5b」が「配線接続器具1b」に取り付けられたときに、「配線接続器具1b」の「ユニット保持部13」が「無線LANユニット5b」を「保持」するものである。
甲7発明の「ユニット保持部13」による「無線LANユニット5b」の保持の具体的な形態は明らかではないものの、図1の「無線LANユニット5b」を「配線接続器具1b」に取り付けた状態、及び、図2の「ユニット保持部13」の形状に鑑みると、「配線接続器具1b」の凹部内側に突出した「ユニット保持部13」を、「無線LANユニット5b」のいずれかの部位に係合させて、「無線LANユニット5b」が「配線接続器具1b」から外れないようにしていると解される。

(イ)一方、本件発明3の「ロック手段」について、明細書には、「図3、図5、図6、図7(b)に示すように、筒状の装着部34eの外周面における上端部位及び下端部位には、電源側ケーシング33の筒状の被装着部33eに内嵌状態で接続された状態で、電源側ケーシング33の被係合部33gに係合する係合爪34f,41aが形成されている。/下方側の係合爪34fは、装着部34eの外周面の下端部位から下向きに突出する形状で制御側ケーシング34に一体的に形成されている。/上方側の係合爪41aは、制御側ケーシング34とは別体のロック部材41に形成され、装着部34eの外周面から上向きに突出して被係合部33gに係合可能なロック位置と、そのロック位置から下方に移動して被係合部33gから係合解除可能なロック解除位置とに位置変更自在に構成されている。」(【0054】)、「なお、電源側分割ユニットPUに備えられた被係合部33g、及び、制御側分割ユニットCUに備えられた係合爪34f,41aは、制御側分割ユニットCUが電源側分割ユニットPUに装着されたとき、制御側分割ユニットCUと電源側分割ユニットPUとを装着状態でロックするロック手段を構成している。」(【0057】)との記載がある。
そうすると、本件発明3の「ロック手段」は、突出形成された係合部を、被係合部に係合することで、「制御側分割ユニットCU」を「電源側分割ユニットPU」に装着した状態で固定する態様を含むと解される。

(ウ)そして、前記(ア)のとおり、甲7発明も、突出形成された「ユニット保持部13」を、「無線LANユニット5b」のいずれかの部位に係合することで、「無線LANユニット5b」を「配線接続器具1b」に装着した状態で固定しているといえるから、該「ユニット保持部13」及び「ユニット保持部13」と係合する「無線LANユニット5b」の部位は、本件発明3の「ロック手段」に相当し、本件発明3と甲7発明とは、「前記非電源側分割ユニットが前記電源側分割ユニットに装着されたとき、前記非電源側分割ユニットと前記電源側分割ユニットとを装着状態でロックするロック手段が備えられ」ている点で一致する。

ウ 発明特定事項3Fについて
甲7発明は、「ユニット保持部13」による「無線LANユニット5b」の「保持」を解除する、換言すると、「ユニット保持部13」と「無線LANユニット5b」の部位の係合を解除するための具体的な構成は明らかでない。

エ 一致点及び相違点
以上のことから、本件発明3と甲7発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「電源の供給部と、前記電源の供給部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源の供給部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源の供給部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
前記非電源側分割ユニットが前記電源側分割ユニットに装着されたとき、前記非電源側分割ユニットと前記電源側分割ユニットとを装着状態でロックするロック手段が備えられている情報通信装置。」

<相違点>
(相違点10)
電源の供給部が、本件発明3は「電源部」であるのに対し、甲7発明は「配線2b」の「電源線」からの電力を供給する「電源接続部12」である点。

(相違点11)
本件発明3は、「ロック手段」によるロックを解除する「ロック解除操作部」を備えているのに対し、甲7発明は、「ユニット保持部13」による「無線LANユニット5b」の「保持」を解除するための構成が明らかでない点。
それに付随し、本件発明3は、「ロック解除操作部」を「設置面に埋設状態で設置された状態で設置面の対向空間側に露出する部位に備え」る点。

(2)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点11について検討する。

ア 甲7発明における「ユニット保持部13」による「無線LANユニット5b」の保持を解除する具体的な形態は、明らかでない。

イ 加えて、甲7の図1及び2からは、「ユニット保持部13」の保持を解除する何らかの操作手段が、「配線接続器具1b」又は「無線LANユニット5b」の「天井面7」から室内側に露出した部分に設けられていることは見て取ることができず、そのことを示唆する記載も甲7には存在しない。
また、相違点11に係る本件発明3の構成が周知技術であるともいえない。
その他、相違点11に係る本件発明3の構成を記載又は示唆する証拠は存在しない。

ウ 前記ア及びイのとおりであるから、相違点11に係る本件発明3の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。

(3)申立人の主張(申立理由3−2、申立人意見3)について
ア 申立理由3−2について
申立人は、本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲7発明と同一であり、仮に相違点があったとしても、当業者が甲7発明と周知技術とに基づいて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由3−2)ので、以下、検討する。

前記(1)及び(2)で示したとおり、本件発明3と甲7発明は少なくとも相違点11が存在するから、本件発明3は、甲7発明と同一でない。
また、相違点11に係る本件発明3の構成が周知技術であるとの証拠はないから、本件発明3は、甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
以上のとおり、申立人の主張は採用できない。

イ 申立人意見3について
申立人は、本件発明3は、当業者が甲7発明及び甲13に示される周知技術に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立人意見3)。

申立人意見3は、甲13に基づくものであって、甲13は申立書に添付されたものではなく、令和4年4月22日の意見書とともに新たに提出されたものである。
そして、本件発明3は、本件訂正の対象となっていないから、前記主張は、訂正により追加された事項についての見解など訂正請求の内容に付随して生じる理由に係るものではない。
さらに、甲13のみからその記載内容を周知技術と認めることもできない。
したがって、申立人意見3は、実質的に新たな理由と認められるから、これに係る主張及び証拠は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲7発明と同一ではなく、また、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

3 本件発明1又は3を引用する本件発明5及び6についての当審の判断
(1)本件発明5について
本件発明1又は3を引用する本件発明5は、本件発明1又は3を引用して更に限定する構成を付加したものである。
そして、前記「1 本件発明1についての当審の判断」及び「2 本件発明3についての当審の判断」で示したとおり、本件発明1及び3は、甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものはない。
したがって、本件発明1又は3を引用する本件発明5は、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明6について
本件発明1又は3を直接的に、または間接的に引用する本件発明6は、本件発明1、3又は本件発明1若しくは3を引用する本件発明5を引用してさらに限定する構成を付加したものであるから、前記(1)と同様の理由により、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立人の主張(申立理由5−2及び6−2)について
申立人は、本件訂正前の請求項5に係る発明は、当業者が甲7発明並びに甲2、甲4、甲5、甲7及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由5−2)。
また、本件訂正前の請求項6に係る発明は、当業者が甲7発明並びに甲2、甲3、甲7及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由6−2)。

しかしながら、前記(1)及び(2)のとおり、本件発明1又は3を引用する本件発明5及び6は、本件発明1又は3と同一の構成を有し、さらに限定事項を付したものである。
そして、本件発明1及び3が、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができないものである以上、本件発明1又は3を引用する本件発明5及び6も、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることはできない。これは、甲2〜4、7及び8の存在に左右されない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1又は3を引用する本件発明5及び6は、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本件発明7〜9についての当審の判断
(1)対比
本件訂正前の請求項7は、本件訂正前の請求項1〜6を引用するものであったところ、本件訂正後の請求項7は、請求項1又は3のみを引用する以外は本件訂正前の請求項7と同様であり(「第5 本件訂正の適否」1(5))、本件訂正後の請求項8は、本件訂正前の請求項2を引用する請求項7を独立形式としたものであり(「第5 本件訂正の適否」1(3))、本件訂正後の請求項9は、本件訂正前の請求項4を引用する請求項7を独立形式としたものである(「第5 本件訂正の適否」1(4))。
そのため、本件発明7〜9は、本件訂正前の請求項7に記載されていた「機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成されている」という構成(発明特定事項7A、8F、9F)を共通に有する。
前記構成について、本件発明7〜9と甲7発明とを対比すると、甲7発明は、機能又は仕様の異なる複数種の「配線接続器具1b」の各々に対して、「無線LANユニット5b」が選択的に装着可能であるのかが明らかでない。
したがって、本件発明7〜9と甲7発明とは、少なくとも次の相違点12があるといえる。

(相違点12)
本件発明7〜9に係る発明は、「機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成され」たものであるのに対し、甲7発明は、機能又は仕様の異なる複数種の「配線接続器具1b」の各々に対して、「無線LANユニット5b」が選択的に装着可能であるのかが明らかでない点。

(2)相違点についての検討
甲7発明は、「無線LANユニット5b」や「PHPユニット5c」のように機能が異なる「各種インターフェースユニット5a〜5d」を、どの「配線接続器具1a〜1d」に設置しても良いものである(分説E)。
そのため、「配線接続器具1a〜1d」は、その機能及び仕様が同一であると認められ、これらの機能及び仕様を異なる複数種のものとする示唆もない。
その他、相違点12に係る本件発明7〜9の構成を記載又は示唆する証拠は存在しない。
したがって、甲7発明を、相違点12に係る本件発明7〜9の構成とすることは、当業者が容易になし得ないものである。

(3)申立人の主張(申立理由7−2、申立人意見1−4、申立人意見1−5及び1−6)について
ア 申立理由7−2について
申立人は、本件訂正前の請求項7に係る発明は、当業者が甲7発明並びに甲2、甲3、甲4及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由7−2)ので、以下、甲7発明と、甲2、甲3、甲4及び甲8にそれぞれ記載された技術の組み合わせについて検討する。

(ア)甲7発明と甲2技術との組み合わせについて
a 甲2の記載事項及び甲2技術については、前記「2 本件発明2についての当審の判断」「(3)申立人の主張(申立人意見1−1、申立理由2−2)について」ア(ア)で示したとおりである。
加えて、甲2には、次の事項も記載されている。

「【0025】
そして本実施形態の電力線通信モジュールMは、使用中のモジュールハウジングH2をベースハウジングH1から取り外し、他の機能を備えた通信部を内蔵するモジュールハウジングH2と交換すれば簡単に機能変更が行える。例えば通信インターフェースに無線アクセスポイントとなる無線通信手段を備えた通信部を内蔵するモジュールハウジングH2を装着すれば、無線通信による設定等が可能となる。また通信部のメンテナンスなどの場合も簡単に行える。更に電源部313が共通に使えるためコスト的に有利である。」

b 前記「第7 取消理由通知の理由について」「2 本件発明2についての当審の判断」「(3)申立人の主張(申立人意見1−1、申立理由2−2)について」ア(イ)で示したとおり、機能の観点から、甲2技術の「ベースハウジングH1」が、甲7発明の「配線接続器具1b」に対応すると認められる。
しかしながら、甲2技術は、「ベースハウジングH1」を「機能又は仕様の異なる複数種」のものとし、その各々に「モジュールハウジングH2」が「選択的に装着可能」に構成することを示すものではない。
なお、甲2の【0025】は、通信部を備えた「モジュールハウジングH2」を、機能が異なる複数種のものにし得ることを述べたものであって、「ベースハウジングH1」について述べたものではない。
したがって、甲2技術は、相違点12に係る本件発明7〜9の構成を開示するものでなく、仮に、甲7発明に甲2技術を組み合わせたとしても、相違点12に係る本件発明7〜9の構成には至らない。

(イ)甲7発明と甲3技術との組み合わせについて
甲3は、甲2の原出願の公開特許公報であって、甲3の記載事項及び甲3に記載された技術(以下「甲3技術」という。)は、甲2のものと実質的に同じであると認められる。
したがって、前記(ア)で示した理由と同様のことが、甲7発明と甲3技術との組み合わせについていえる。

(ウ)甲7発明と甲4技術との組み合わせについて
a 甲4の記載事項及び甲4技術については、前記「1 本件発明1についての当審の判断」「(3)申立人の主張(申立理由1−2、申立人意見2)について」ア(ア)で示したとおりである。
加えて、甲4には、次の事項も記載されている。

「【0042】
更に、仕様が異なる複数種のアンテナユニットU2が準備されており、これら複数種のアンテナユニットU2から一のアンテナユニットU2が選択され、当該選択されたアンテナユニットU2が本体ユニットU1に装着される。このことにより、状況や要望に応じた無線通信を行うための情報通信装置K1を構築することができる。即ち、本体ユニットU1については、コンセント1に対して埋設して設置される共通の形態のものとして構成し、アンテナユニットU2については例えば仕様毎に複数種のものを準備するだけで、複数の仕様に対応した複数のバリエーションの情報通信装置K1が実現されることになる。」

b 甲4技術の「本体ユニットU1」は、「コンバータ」を内蔵するため、電源側のユニットといえるが、甲4技術は、該「本体ユニットU1」を「機能又は仕様の異なる複数種」のものとし、その各々に「アンテナユニットU2」が「選択的に装着可能」に構成することを示すものではない。
なお、甲4の【0042】は、「アンテナユニットU2」を、仕様が異なる複数種のものにし得ることを述べたものであって、「本体ユニットU1」について述べたものではない。
したがって、甲4技術は、相違点12に係る本件発明7〜9の構成を開示するものでなく、仮に、甲7発明に甲4技術を組み合わせたとしても、相違点12に係る本件発明7〜9の構成には至らない。

(エ)甲7発明と甲8技術との組み合わせについて
甲8の記載事項及び甲8に記載された技術(以下「甲8技術」という。)は、以下の「第10 甲8発明に基づく申立理由について」「1 甲8の記載事項及び甲8発明」で甲8発明として示すとおりのものである。
そして、「第10 甲8発明に基づく申立理由について」「7 本件発明7〜9についての当審の判断」「(1)対比」で詳細に示すように、甲8技術(甲8発明)も、相違点12に係る本件発明7〜9の構成を開示するものではない。
したがって、仮に、甲7発明に甲8技術を組み合わせたとしても、相違点12に係る本件発明7〜9の構成には至らない。

(オ)前記(ア)〜(エ)のとおりであるから、甲2、甲3、甲4及び甲8技術の存在によっても、甲7発明から本件発明7〜9が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

イ 申立人意見1−4について
申立人は、本件発明7は、当業者が甲7発明と、甲2記載の技術又は特許第6259939号公報に示される周知技術とに基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立人意見1−4)。

(ア)前記ア(ア)に示したとおりであり、甲7発明に甲2技術を組み合わせたとしても、相違点に係る本件発明7の構成には至らない。

(イ)a 申立人意見1−4にて言及された特許第6259939号公報は、令和4年4月22日の申立人の意見書とともに新たに提出されたものである。
他方、甲6、1頁に特許番号として「特許第6259939号」の記載があることから、申立人が新たに提示した特許第6259939号公報は、甲6の特許出願(特願2017−76233号)の特許公報であり、実質的に甲6と同一の内容を記載したものであって、実質的には新たな証拠とはいえない。
そこで、申立人意見1−4は、甲7発明と甲6に記載された技術との組み合わせについても主張したものと解し、以下、この組み合わせについて、念のため検討する。

b 甲6の記載事項及び甲6技術については、前記「1 本件発明1についての当審の判断」「(3)申立人の主張(申立理由1−2、申立人意見2)について」ア(イ)で示したとおりである。
加えて、甲6には、次の事項も記載されている。

「【0062】
POE仕様の情報通信装置1aと商用電源仕様の情報通信装置1bとでは、電力の供給の受け方が異なるので、電源部品24や電力の供給を受けるための構成が異なる仕様となる。上述の如く、共用ケーシング10に収容する基板7〜9について、電源部品24以外の電子部品等を第1基板7及び第2基板8に分けて装着し、電源部品24を第3基板9に集中させて装着することで、電源基板となる第3基板9を、第1基板7及び第2基板8とは分けて構成している。これにより、POE仕様の情報通信装置1aと商用電源仕様の情報通信装置1bとでは、第1基板7、第2基板8、及び、それらの基板7、8に装着される電子部品等の共通化を図ることができ、第3基板9及び電源部品24についてのみPOE仕様のものと商用電源仕様のものとの異なる仕様とすることができる。」

c 前記「1 本件発明1についての当審の判断」「(3)申立人の主張(申立理由1−2、申立人意見2)について」ア(エ)bで示したように、甲6技術は、前方側ケーシング11と後方側ケーシング12とを係合することで形成される収容空間に、無線LAN用アンテナ素子6、電源基板の基板9等を収容する共用ケーシング10を備えた情報通信装置1a、1b及び中継装置3についてのものである。
一方、甲7発明は、電源の供給部である「電源接続部」を備える「配線接続器具1b」と「無線LANユニット5b」とに分割されるものである。
そのため、甲7発明と甲6技術とは、形状や構造、機能のいずれの点でも大きく異なり、両者を組み合わせる動機付けはない。

d また、前記cのとおり、甲6技術の情報通信装置1a、1b又は中継装置3は、前方側ケーシング11と後方側ケーシング12で形成された収容空間に、無線LAN用アンテナ素子6、電源基板の基板9等を収容するものであり、電源側と非電源側とに分割した分割ユニットから構成されるものではない。そのため、甲6技術は、相違点12に係る本件発明7の構成を開示しない。
したがって、仮に、甲7発明と甲6技術を組み合わせたとしても、相違点12に係る本件発明7の構成には至らない。

e 前記c及びdのとおりであるから、甲6技術の存在によっても、甲7発明から本件発明7が容易に発明をすることができたとはいえない。これは、甲6技術が周知であったとしても、左右されない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

ウ 申立人意見1−5及び1−6について
申立人は、本件発明8は、本件訂正前の請求項2の構成要件と、本件訂正後の請求項7の構成要件とからなるので、申立理由2−2と申立人意見1−4により、当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立人意見1−5)。
また、本件発明9は、本件訂正前の請求項4の構成要件と、本件訂正後の請求項7の構成要件とからなるので、申立理由4−2及び申立人意見1−4により、当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立人意見1−6)。

しかしながら、前記イのとおり申立人意見1−4は採用できないから、申立人意見1−4に依拠した本件発明8及び9についての主張(申立人意見1−5、1−6)も採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明7〜9は、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第9 甲1発明に基づく申立理由について
以下では、取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由のうち、甲1を主たる引用例としたもの(申立理由1−1、2−1、3−1、4−1、5−1、6−1、7−1及び申立人意見1−5、1−6)について判断する。

1 甲1の記載事項及び甲1発明
甲1には、次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、WAN側からの通信ケーブルを接続する第1接続部と、商用電源線を接続する電源接続部と、前記第1接続部を通す情報データを、前記電源接続部からの電気を使用して無線で外部の情報端末装置と送受信可能な無線送受信部と、前記電源接続部からの交流電気を直流電気に変換して前記無線送受信部に供給するコンバータとを備えた情報通信ユニットに関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の情報通信ユニットによれば、情報コンセントの前面に差し込んだ状態で使用するものであるから、情報コンセントの前面に本体部分が大きく突出したままになり、美観性に欠けると共に、近傍の歩行時に情報通信ユニットが引っ掛かり易いから、部屋内での歩行等の障害になる問題がある。
更には、情報コンセントのLAN接続部は、当該情報通信ユニットが接続されて塞がった状態となるから、該当する部屋では、当該情報通信ユニットによる無線LAN接続と同時に有線LAN接続を行うことができないことも問題となる。
【0008】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、無線LAN接続と有線LAN接続とを同時に可能としながら、情報コンセントに取り付けた状態で嵩張らない情報通信ユニットを提供するところにある。」

「【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】情報コンセントの正面図
【図2】情報コンセントに通信ユニットを設置してある状況を示す断面図
【図3】通信ユニットの分解斜視図
【図4】情報コンセントを裏側から見た説明図
【図5】別実施形態の通信ユニットの斜視図」

「【0025】
図1は、本発明の情報通信ユニットの一実施形態品(以後、単に通信ユニットYという)を、壁(設置対象部の一例)1に設置した情報コンセント2に埋設してある状態を示している。
【0026】
情報コンセント2は、壁1に形成した矩形形状の設置用穴3の裏面側に配置したコンセントボックス2Aと、壁1の前面に設置した表面板2Bとの間に、穴3周囲の壁部分1aが位置する状態で固定されている。
当該実施形態で説明する情報コンセント2には、4つのユニットが設置されている。
図1、図4に示すように、正面視における左端には、上下に2つの差込口4aを備えた電源コンセントユニット4が設けられ、正面視における右端には、上側に電話用のモジュラージャックを接続する電話接続ユニット5が、下側にテレビアンテナ用の同軸ケーブルを接続する同軸ケーブル接続ユニット6が、それぞれ設けられている。
正面視における中央部に、前記通信ユニットYが設けられている。
それぞれのユニット4,5,6,Yは、取付フレーム7を介して、前記コンセントボックス2A、表面板2Bと一体に取り付けられている。
【0027】
また、コンセントボックス2Aは、矩形箱形状に構成してあり、図2に示すように、箱の開口を表面側に向けた状態に設置されている。箱の周壁部には、図には示さないが、前記壁1の裏側空間に配線された電源ケーブルや、電話ケーブルや、同軸ケーブルや、通信ケーブル8の端部を挿入できる挿入口hが形成してあり、その挿入口hから、コンセントボックス2A内に前記各ケーブルが導入されるように構成されている。
因みに、電源コンセントユニット4には電源ケーブル(不図示)が、電話接続ユニット5には電話ケーブル(不図示)が、同軸ケーブル接続ユニット6には同軸ケーブル(不図示)が、通信ユニットYには通信ケーブル8がそれぞれ接続される。
通信ケーブル8は、WANにつながるもので、先端部には、接続用のコネクタ8aが取り付けられており、後述する通信ユニットYの第1接続部17に、このコネクタ8aを差し込むことで接続ができるように構成されている。
【0028】
表面板2Bは、壁の穴3よりも一回り大きな矩形形状に構成してあり、前記各ユニット4,5,6,Yに対応した窓部9がそれぞれ形成されている。この窓部9に、各ユニット4,5,6,Yの表部分が露出する(図1参照)。
【0029】
次に、通信ユニットYについて説明する。
通信ユニットYは、コンセントボックス2A内の各ユニットにそれぞれ割り当てられる設置空間が、縦長空間であるのに対応させて、ユニット本体10の外形を縦長形状に構成してある(図1、図4参照)。
【0030】
ユニット本体10は、図2、図3に示すように、情報コンセント2の表面視における奥行き方向(表裏方向)に2分割に形成された合成樹脂製のケーシング11を備え、そのケーシング11の中に、各部品を納めて一体に構成されている。
【0031】
ケーシング11は、互いに着脱可能な表側分割ケーシング11Aと、裏側分割ケーシング11Bとを備えて構成してある。
表側分割ケーシング11Aと裏側分割ケーシング11Bとの取付部分は、裏側分割ケーシング11Bの開口縁部に、表側分割ケーシング11Aの開口縁部が内嵌することで嵌り合う構造に形成してある。両者の外れ止めは、嵌合面の一方の面に嵌合穴11aを形成すると共に、嵌合面の他方の面に、前記嵌合穴11aに係合する係合突起11bを形成し、これら嵌合穴11aと係合突起11bとの係合によって実施できるように構成されている。
【0032】
表側分割ケーシング11Aは、情報コンセント2の表側を向く面における幅方向の中間部が、情報コンセント2の表側に膨出する形状の膨出部12として形成してある。また、情報コンセント2の表側を向く面における幅方向の両端部は、前記取付フレーム7の裏面部に沿うような偏平形状の偏平部13として形成してある。
【0033】
前記膨出部12は、当該ユニット本体10を情報コンセント2に取り付けた状態で、前記表面板2Bの窓部9を通して表面側に突出するように寸法設定されている。
また、膨出部12の表面は、下端側の平面部が上端側の平面部より前方に位置していると共に、互いの平面部間は両平面部に亘る緩やかな曲面部で構成されている。
下端側の平面部には、後述する第2接続部21が配置されており、該当部分には、開閉自在なスライド扉12aが設けてある。
また、上端側の平面部には、図1に示すように、通信ユニットYのオン状態で点灯するインジケーター12bや、後述する無線送受信部19のアクセス状態を点灯によって表示するインジケーター12cや、通信ユニットYのリセット操作を行うための操作孔12dが設けられている。
図2に示すように、表側分割ケーシング11Aに膨出部12を設けて、表面板2Bより前方側に第2接続部21が突出する状態に形成してあることで、膨出部12を設けずに平面形状に構成するものに比べて、ケーシング11としての断面係数の増加を図ることができ、第2接続部21周囲での通信ユニットYの強度アップを実現することができる。
【0034】
また、前記偏平部13には、図3に示すように、前記取付フレーム7の係合突起(不図示)を係合させて、通信ユニットYを取付フレーム7に取り付けるための係合凹部13aが、表側に形成してある。
また、偏平部13には、複数のネジ挿通部13bが形成してあり、後述する電子基板22を表側分割ケーシング11Aの裏側に取り付けるネジ部材Mを、ネジ挿通部13bに取り付けるように構成してある。
【0035】
裏側分割ケーシング11Bは、情報コンセント2に設置した状態で前記表面板2Bに平行な姿勢に形成されている矩形形状の後壁部14と、後壁部の各辺から前方側に連設された周壁部15とを備えて構成してある。
後壁部14には、ケーシング11内に設けられている電源接続部18(後述)に通じる電源ケーブル挿通孔14aが2つ設けられている。
周壁部15は、両側壁部15Aと、下壁部15Bと、上壁部15Cとから構成されており、上壁部15Cに関しては、後壁部14から前方に離れるほど上方に位置する傾斜壁部15aと、前記下壁部15Bと平行な平壁部15bとで構成されている。
即ち、図2に示すように、通信ユニットYの側面視において、傾斜壁部15aが、ユニット本体10の裏側の上隅部分を斜めに切り欠いた形状となっている。
この傾斜壁部15aの裏側には、前記第1接続部17が配置されており、コネクタ8aを挿通可能な窓部16が、前記傾斜壁部15aに形成されている。
【0036】
前記ケーシング11の内部には、WAN側からの通信ケーブル8を接続する第1接続部17と、商用電源線を接続する電源接続部18と、第1接続部17を通す情報データを、電源接続部18からの電気を使用して無線で外部の情報端末装置(不図示)と送受信可能な無線送受信部19と、電源接続部18からの交流電気を直流電気に変換して無線送受信部19に供給するコンバータ20と、LAN側の通信ケーブル(不図示)を接続して、第1接続部17に接続したWANとの情報データの送受信を可能とする第2接続部21とを設けてある。
【0037】
第1接続部17と第2接続部21とは、無線送受信部19を組み込んだ電子基板22に一体に固着してあり、電子基板22は、表側分割ケーシング11Aのネジ挿通部13bに挿通したネジ部材Mで、表側分割ケーシング11Aに一体に取り付けてある。
電源接続部18とコンバータ20とは、裏側分割ケーシング11Bの後壁部14にそれぞれネジ固定してある。
従って、表側分割ケーシング11Aと裏側分割ケーシング11Bとを取り付けることで、一体の通信ユニットYを構成することができる。
【0038】
因みに、情報コンセント2に埋設した状態の通信ユニットYの内部では、前記第1接続部17と前記コンバータ20とは、図2に示すように、情報コンセント2の表面板2Bの面方向に隣合う配置となるように位置決めされている。更に詳しくは、第1接続部17の下方にコンバータ20が位置するように配置されている。
また、電子基板22の裏側に第1接続部17が設けてあり、電子基板22の表側に第2接続部21が設けてある。
このような部品配置にすることで、通信ユニットYにおける情報コンセント2の奥行き方向の寸法を極力少なくすることが可能となる。
【0039】
また、第1接続部17は、通信ケーブル8のコネクタ8aを差し込む接続開口部17aを備えて構成してあり、上述の裏側分割ケーシング11Bの傾斜壁部15aに形成された窓部16に臨ませて配置されている。即ち、ユニット本体10の裏側で且つ外周側に開口する状態に配置されている。
また、接続開口部17aへのコネクタ8aの差し込み方向は、表面板2Bに対して傾斜する方向(後方側からユニット本体10の中央側に向かう方向、即ち、前方下方に向かう方向)に設定してある。
従って、コネクタ8aから後方に延びる通信ケーブル8は、コンセントボックス2Aの上端の入り隅に確保された広い空間に、緩やかにカーブする状態に配置でき、通信ケーブルやコネクタ8aや第1接続部17に外力の負荷が作用するのを防止して、良好な配線状態を維持することができる。
【0040】
本実施形態の通信ユニットYによれば、電源接続部18に、隣接の電源コンセントユニット4の分岐端子から引いた電源線23を接続し(図4参照)、第1接続部17に通信ケーブル8のコネクタ8aを接続した状態に、情報コンセント2に埋設するだけで、当該通信ユニットYを介した情報コンセント外部の情報端末装置(例えば、スマートフォンやパーソナルコンピュータ等)による無線LAN接続や、有線LAN接続が同時に可能となる。
また、通信ユニットYの薄型化によって、情報コンセント2内に無理なく埋設することが可能となり、更には、表面側への突出量を従来に比べて大きく減少させることが実現し、意匠性、取扱性が共に向上するようになった。
また、高速の有線LAN接続に対応できるように通信ユニットYを構成しても、部品の縮小化と共に各部品配置の工夫によって省スペース化が図れるようになり、情報コンセント2の限られたスペース内に設置することができ、高速通信に対応することが可能となった。」

「【0042】
〈1〉 当該通信ユニットYを設置する情報コンセント2は、先の実施形態で説明した壁を設置対象部1とするものに限るものではなく、例えば、柱や梁や床等を設置対象部1とするものであってもよい。従って、表面板2Bは、必ずしも縦面となっていることに限らない。
また、情報コンセント2に備える各種ユニットは、当該通信ユニットYの他に、先の実施形態で説明した電源コンセントユニット4、電話接続ユニット5、同軸ケーブル接続ユニット6の全てに限るものではなく、例えば、通信ユニットYのみ、又は、通信ユニットYにその他の何れか単数または複数を備えたもの等であってもよい。
〈2〉 当該通信ユニットYの第1接続部17は、先の実施形態で説明したコネクタ8aを先端に備えた通信ケーブル8を接続するものに限るものではなく、例えば、コネクタ8aに替えて複数の端子を先端にそれぞれ備えた通信ケーブル8を接続するものであってもよい。
〈3〉 当該通信ユニットYにおける第1接続部17の配置は、先の実施形態で説明したように裏側で且つ上端側(外周側)に接続開口部17aが開口する配置に限るものではなく、例えば、裏側で且つ下端側(外周側)であってもよい。
更には、第1接続部17は、通信ユニットYの裏側、又は、外周側の何れかに開口する配置に設けてあってもよい。
〈4〉 当該通信ユニットYにおける第1接続部17とコンバータ20との配置は、先の実施形態で説明したように、第1接続部17の下方にコンバータ20が位置する配置に限るものではなく、例えば、その逆であったり、第1接続部17とコンバータ20とが横方向に隣合う配置であってもよい。
また、第1接続部17とコンバータ20以外の部品の配置に関しては、変更することが可能である。
〈5〉 当該通信ユニットYの外形は、先の実施形態で説明した形状に限るものではなく、例えば、膨出部12は、先の実施形態で説明した緩やかな曲面部を備えた形状に限らず、図5に示すように、偏平面のみによって構成してあってもよい。この実施形態の場合、膨出部12の裏面空間が先の実施形態のものに比べてより広くなるから、内空部に余裕を生み出すことができる。」

「【図2】



「【図3】



【図2】には、段落【0023】、【0027】及び【0031】の記載も踏まえると、情報通信ユニットYを情報コンセント2に設置した状態で、裏側分割ケーシング11Bは、その全体がコンセントボックス2A内に位置し、表側分割ケーシング11Aは、その開口縁部はコンセントボックス2A内に位置していることが示されていると認められる。
また、【図2】には、段落【0023】及び【0026】の記載も踏まえると、取付フレーム7は壁1の前面に当接されていることが示されていると認められる。

したがって、前記甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明をA〜Uに分説した。

<甲1発明>
「A 情報通信ユニット(以後、単に通信ユニットYという)であって(【0025】)、
B 壁1に設置した情報コンセント2に埋設してある状態で(【0025】)、
C 情報コンセント2は、壁1に形成した矩形形状の設置用穴3の裏面側に配置したコンセントボックス2Aと、壁1の前面に設置した表面板2Bとの間に、穴3周囲の壁部分1aが位置する状態で固定され、正面視における中央部に、前記通信ユニットYが設けられ、ユニットYは、取付フレーム7を介して、前記コンセントボックス2A、表面板2Bと一体に取り付けられ(【0026】)、
D 取付フレーム7は壁1の前面に当接されており(【図2】)、
E コンセントボックス2Aは、矩形箱形状に構成され、箱の開口を表面側に向けた状態に設置され、通信ケーブル8の端部を挿入できる挿入口hが形成され、その挿入口hから、コンセントボックス2A内に前記ケーブルが導入され、通信ユニットYには通信ケーブル8が接続され(【0027】)、
F 通信ケーブル8は、先端部には、接続用のコネクタ8aが取り付けられており、通信ユニットYの第1接続部17に、このコネクタ8aを差し込むことで接続ができるように構成され(【0027】)、
G 表面板2Bは、壁の穴3よりも一回り大きな矩形形状に構成してあり、前記ユニットYに対応した窓部9が形成され、この窓部9に、ユニットYの表部分が露出し(【0028】)、
H 通信ユニットYは、コンセントボックス2A内の各ユニットにそれぞれ割り当てられる設置空間が、縦長空間であるのに対応させて、ユニット本体10の外形を縦長形状に構成され(【0029】)、
I ユニット本体10は、情報コンセント2の表面視における奥行き方向(表裏方向)に2分割に形成された合成樹脂製のケーシング11を備え、そのケーシング11の中に、各部品を納めて一体に構成され(【0030】)、
J ケーシング11は、互いに着脱可能な表側分割ケーシング11Aと、裏側分割ケーシング11Bとを備え、表側分割ケーシング11Aと裏側分割ケーシング11Bとの取付部分は、裏側分割ケーシング11Bの開口縁部に、表側分割ケーシング11Aの開口縁部が内嵌することで嵌り合う構造に形成され、両者の外れ止めは、嵌合面の一方の面に嵌合穴11aを形成すると共に、嵌合面の他方の面に、前記嵌合穴11aに係合する係合突起11bを形成し、これら嵌合穴11aと係合突起11bとの係合によって実施できるように構成され(【0031】)、
K 情報通信ユニットYを情報コンセント2に設置した状態で、裏側分割ケーシング11Bは、その全体がコンセントボックス2A内に位置し、表側分割ケーシング11Aは、その開口縁部はコンセントボックス2A内に位置し(【図2】)、
L 表側分割ケーシング11Aは、情報コンセント2の表側を向く面における幅方向の中間部が、情報コンセント2の表側に膨出する形状の膨出部12として形成され、情報コンセント2の表側を向く面における幅方向の両端部は、前記取付フレーム7の裏面部に沿うような偏平形状の偏平部13として形成され(【0032】)、
M 前記偏平部13には、前記取付フレーム7の係合突起(不図示)を係合させて、通信ユニットYを取付フレーム7に取り付けるための係合凹部13aが、表側に形成され、偏平部13には、複数のネジ挿通部13bが形成してあり、後述する電子基板22を表側分割ケーシング11Aの裏側に取り付けるネジ部材Mを、ネジ挿通部13bに取り付けるように構成され(【0034】)、
N 裏側分割ケーシング11Bは、情報コンセント2に設置した状態で前記表面板2Bに平行な姿勢に形成されている矩形形状の後壁部14と、後壁部の各辺から前方側に連設された周壁部15とを備え、周壁部15は、両側壁部15Aと、下壁部15Bと、上壁部15Cとから構成されており、上壁部15Cに関しては、後壁部14から前方に離れるほど上方に位置する傾斜壁部15aと、前記下壁部15Bと平行な平壁部15bとで構成され(【0035】)、
O 傾斜壁部15aの裏側には、前記第1接続部17が配置されており、コネクタ8aを挿通可能な窓部16が、前記傾斜壁部15aに形成され(【0035】)、
P 前記ケーシング11の内部には、WAN側からの通信ケーブル8を接続する第1接続部17と、商用電源線を接続する電源接続部18と、第1接続部17を通す情報データを、電源接続部18からの電気を使用して無線で外部の情報端末装置と送受信可能な無線送受信部19と、電源接続部18からの交流電気を直流電気に変換して無線送受信部19に供給するコンバータ20と、LAN側の通信ケーブルを接続して、第1接続部17に接続したWANとの情報データの送受信を可能とする第2接続部21とを設けてあり(【0036】)、
Q 第1接続部17と第2接続部21とは、無線送受信部19を組み込んだ電子基板22に一体に固着してあり、電子基板22は、表側分割ケーシング11Aのネジ挿通部13bに挿通したネジ部材Mで、表側分割ケーシング11Aに一体に取り付け、電源接続部18とコンバータ20とは、裏側分割ケーシング11Bの後壁部14にそれぞれネジ固定し、表側分割ケーシング11Aと裏側分割ケーシング11Bとを取り付けることで、一体の通信ユニットYを構成することができ(【0037】)、
R 情報コンセント2に埋設した状態の通信ユニットYの内部では、第1接続部17の下方にコンバータ20が位置するように配置され、電子基板22の裏側に第1接続部17が設けてあり、電子基板22の表側に第2接続部21が設けられ(【0038】)、
S 第1接続部17は、通信ケーブル8のコネクタ8aを差し込む接続開口部17aを備えて構成してあり、上述の裏側分割ケーシング11Bの傾斜壁部15aに形成された窓部16に臨ませて配置され、接続開口部17aへのコネクタ8aの差し込み方向は、表面板2Bに対して傾斜する方向(後方側からユニット本体10の中央側に向かう方向、即ち、前方下方に向かう方向)に設定され、コネクタ8aから後方に延びる通信ケーブル8は、コンセントボックス2Aの上端の入り隅に確保された広い空間に、緩やかにカーブする状態に配置でき、通信ケーブルやコネクタ8aや第1接続部17に外力の負荷が作用するのを防止して、良好な配線状態を維持することができ(【0039】)、
T 電源接続部18に、隣接の電源コンセントユニット4の分岐端子から引いた電源線23を接続し(図4参照)、第1接続部17に通信ケーブル8のコネクタ8aを接続した状態に、情報コンセント2に埋設する(【0040】)
U 情報通信ユニットY」

2 本件発明1についての当審の判断
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。

ア 発明特定事項1Aについて
(ア)甲1発明の「コンバータ20」は、「電源接続部18」からの交流電気を直流電気に変換して、「無線送受信部19」に供給する(分説P)ものであるから、本件発明1の「電源部」に相当する。

(イ)甲1発明の「無線送受信部19」は、「無線で外部の情報通信端末と送受信可能」なものであり(分説P)、「コンバータ20」により交流電気から変換された直流電気が供給される(分説P)ものである。
したがって、甲1発明の「無線送受信部19」は、本件発明1の「前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部」に相当する。

(ウ)甲1発明の「情報通信ユニットY」は、「無線送受信部19」を制御するための「制御部」を当然に備えていると認められ、当該制御部は、前記(イ)の「無線送受信部19」と同様、「コンバータ20」から直流電気が供給されると解するのが自然である。
したがって、甲1発明の「無線送受信部19」を制御するための「制御部」は、本件発明1の「前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部」に相当する。

(エ)甲1発明の「情報通信ユニットY」は、「壁1」に形成した矩形形状の設置用穴3の裏面側に配置した「コンセントボックス2A」(分説C)に埋設される(分説B、K)。
したがって、「情報通信ユニットY」が埋設される「壁1」は、本件発明1の「設置面」に相当し、本件発明1の「情報通信装置」と甲1発明の「情報通信ユニットY」は、「設置面に埋設状態で設置され」る点で一致する。

(オ)前記(イ)のとおり、甲1発明の「情報通信ユニットY」は、「無線送受信部19」により「無線で外部の情報通信端末と送受信可能」である(分説P)から、本件発明1の「情報通信装置」とは、「外部の情報通信端末との間で無線通信を行う」点で一致する。

(カ)甲1発明の「情報通信ユニットY」は、情報通信を行う装置といえるから、後述する相違点を除き、本件発明1の「情報通信装置」に相当する。

(キ)前記(ア)〜(カ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、「電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置」である点で一致する。

イ 発明特定事項1Bについて
(ア)甲1発明の「裏側分割ケーシング11B」は、その「後壁部14」に「コンバータ20」がネジ固定される(分説Q)から、「コンバータ20」が固定された「裏側分割ケーシング11B」は、「情報通信ユニットY」のうちの「分割」された「電源側」の「ユニット」を構成しているといえる。

(イ)甲1発明の「裏側分割ケーシング11B」は、「情報通信ユニットY」が情報コンセントに設置された状態で、「裏側分割ケーシング11B」の全体が「壁1」の裏面側に配置された「コンセントボックス2A」内に位置し(分説K)、「壁1」に「埋設状態」であるといえるから、前記(ア)も踏まえると、甲1発明の「裏側分割ケーシング11B」は、本件発明1の「前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニット」に相当する。

(ウ)したがって、本件発明1と甲1発明とは、「前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニット」を備える点で一致する。

ウ 発明特定事項1Cについて
(ア)甲1発明の「表側分割ケーシング11A」は、「無線送受信部19」を組み込んだ「電子基板22」が一体に取り付けられるものである(分説Q)。そして、前記ア(ア)及びイ(ア)のとおり、「無線送受信部19」は、「裏側分割ケーシング11B」に固定された「コンバータ20」から直流電気が供給されるものである。
そうすると、前記「無線送受信部19」が組み込まれた「電子基板22」が取り付けられた「表側分割ケーシング11A」(以下、単に「表側分割ケーシング11A」という。)は、「情報通信ユニットY」の「分割」された「ユニット」のうち「電源側」でない方を構成しているといえる。から、本件発明1の「前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備え」た「非電源側分割ユニット」に相当する。

(イ)甲1発明の「表側分割ケーシング11A」と「裏側分割ケーシング11B」とは互いに着脱可能である(分説J)から、前記(ア)も踏まえると、甲1発明の「表側分割ケーシング11A」は、本件発明1の「前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニット」に相当する。

(ウ)したがって、本件発明1と甲1発明とは、「前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニット」を備える点で一致する。

エ 発明特定事項1Dについて
前記ウ(ア)のとおり、甲1発明の「表側分割ケーシング11A」の「無線送受信部19」は、「裏側分割ケーシング11B」に固定された「コンバータ20」から直流電気が供給されるから、「裏側分割ケーシング11A」と「裏側分割ケーシング11B」とが装着されたとき、前者から後者に電力供給が可能な状態であることは明らかである。
一方で、甲1発明は、「コンバータ20」から「無線送受信部19」に直流電気を供給するための具体的な構成を明示しない。
したがって、甲1発明は、「前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ」た本件発明1とは、「前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態」である点で共通する。

オ 発明特定事項1Eについて
甲1発明は、放熱のための構成を備えていない。

カ 一致点及び相違点
以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、が備えられ、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態である、情報通信装置。」

<相違点>
(相違点13)
「電源側分割ユニット」から「非電源側分割ユニット」への電力供給について、本件発明1は、「電源側分割ユニット」と「非電源側分割ユニット」とを電力供給が可能状態で接続する「電源接続部」を備えるのに対し、甲1発明は、「裏側分割ケーシング11B」の「コンバータ20」から「表側分割ケーシング11A」の「無線送受信部19」へ直流電気を供給するための具体的な構成が明らかでない点。

(相違点14)
放熱に関し、本件発明1は、「電源側分割ユニット」に「非電源側分割ユニット」が装着されたとき、「非電源側分割ユニット」で発生する熱を「電源側分割ユニット」に伝熱可能な状態で「電源側分割ユニット」と「非電源側分割ユニット」とを接続する「放熱用接続部」を備えるのに対し、甲1発明は、放熱のための構成を備えない点。

(2)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点14について検討する。

甲1発明は、放熱のための構成を備えていない。
そして、相違点14に係る本件発明1の「放熱用接続部」の構成を記載又は示唆する証拠は存在せず、また、該「放熱用接続部」の構成が周知技術であるともいえない。
したがって、相違点14に係る本件発明1の「放熱用接続部」の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。

(3)申立人の主張(申立理由1−1)について
申立人は、本件訂正前の請求項1に係る発明は、当業者が甲1発明と、甲2及び甲3の記載事項並びに甲4、甲6及び甲9の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由1−1)。

相違点14に係る本件発明1の「放熱用接続部」の構成は、前記相違点9に係る本件発明1の構成と同じである。
そして、前記「第8 甲7発明に基づく申立理由のうち取消理由通知に採用しなかったものについて」「1 本件発明1についての当審の判断」「(3)申立人の主張(申立理由1−2、申立人意見2)について」ア(エ)(オ)のとおり、甲2〜甲4、甲6及び甲9は、相違点9に係る本件発明1の構成を開示するものではない。
したがって、甲2〜甲4、甲6及び甲9は、相違点14に係る本件発明1の「放熱用接続部」の構成も開示せず、甲1発明に、甲2及び甲3の記載事項並びに甲4、甲6及び甲9の記載事項を適用しても、相違点14に係る本件発明1の構成には至らないから、申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本件発明2についての当審の判断
(1)対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。

ア 発明特定事項2A〜2Dについて
本件発明2の発明特定事項2A〜2Dは、本件発明1の発明特定事項1A〜1Dと同一のものであり、前記「2 本件発明1についての当審の判断」「(1)対比」ア〜エで示したことと同じことがいえる。

イ 発明特定事項2Eについて
甲1発明の「表側分割ケーシング11A」の「裏側分割ケーシング11B」への装着は、「表側分割ケーシング11A」の「開口縁部」が「裏側分割ケーシング11B」の「開口縁部」に内嵌する(分説J)ことによるものである。そのため、「裏側分割ケーシング11B」の「開口縁部」は、「表側分割ケーシング11A」が「装着」される「部位」といえる。
一方、図2に示されるように、「裏側分割ケーシング11B」は、「情報コンセント2」に設置された状態で、「裏側分割ケーシング11B」全体が「コンセントボックス2A」内に位置するから、「裏側分割ケーシング11B」の「開口縁部」は、「壁1」から「情報コンセント2の表側」には露出しない。
そして、前記2(1)ウ(イ)のとおり、「表側分割ケーシング11A」と「裏側分割ケーシング11B」とは「互いに着脱可能」(分説J)である。
したがって、甲1発明は、「前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットにおける設置面の対向空間側に露出する部位に対して着脱自在に装着可能に構成され」ている本件発明2とは、「非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットの部位に対して着脱自在に装着可能に構成され」ている点で共通する。

ウ 発明特定事項2Fについて
前記イのとおり、甲1発明の「裏側分割ケーシング11B」の「開口縁部」は、「表側分割ケーシング11A」が装着される部位であるから、本件発明2の「被装着部」に対応する。
一方、前記イのとおり、「裏側分割ケーシング11B」の「開口縁部」は、「壁1」から「情報コンセント2の表側」には露出しない。
また、図3に示されるように、「裏側分割ケーシング11B」の「開口縁部」は、「周壁部15」の開口縁、すなわち、「裏側分割ケーシング11B」の周面の開口縁であって、「裏側分割ケーシング11B」の前面に備えられるものではない。
したがって、甲1発明は、「前記電源側分割ユニットの前面部には、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で設置面の対向空間側に露出する被装着部が備えられ」た本件発明2とは、「前記電源側分割ユニットには、被装着部が備えられ」ている点で共通する。

エ 発明特定事項2Gについて
前記イのとおり、甲1発明の「表側分割ケーシング11A」の「開口縁部」は、「裏側分割ケーシング11B」の「開口縁部」に内嵌することで装着される部分であるから、「装着部」といえる。
一方、図3に示されるように、「表側分割ケーシング11A」の「開口縁部」は、「表側分割ケーシング11A」の周面の開口縁であり、また、「裏側分割ケーシング11B」側から見た時の大きさは、「表側分割ケーシング11A」全体の大きさと略同じであるといえる。
したがって、甲1発明は、「前記非電源側分割ユニットの前記電源側分割ユニット側となる後面部には、前記電源側分割ユニット側の被装着部に対して装着自在な装着部が突出形成され、その装着部は、後方から見て前記非電源側分割ユニットの全体よりも大きさが小さい」構成である本件発明2とは、「非電源側分割ユニットには、前記電源側分割ユニットの被装着部に対して着脱自在な装着部」が備わる点で共通する。

オ 一致点及び相違点
以上のことから、本件発明2と甲1発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、が備えられ、
非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットの部位に対して着脱自在に装着可能に構成され、
前記電源側分割ユニットには、被装着部が備えられ、
非電源側分割ユニットには、前記電源側分割ユニットの非装着部に対して着脱自在な装着部が備わる情報通信装置。」

(相違点15)
「電源側分割ユニット」から「非電源側分割ユニット」への電力供給について、本件発明2は、該電力供給が可能な状態で「電源側分割ユニット」と「非電源側分割ユニット」とを接続する「電源接続部」を備えるのに対し、甲1発明は、「裏側分割ケーシング11B」の「コンバータ20」から「表側分割ケーシング11A」の「無線送受信部19」へ直流電気を供給するための具体的な構成が明らかでない点。

(相違点16)
本件発明2の「非電源側分割ユニット」は、「電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態」で、「電源側分割ユニット」に対して「着脱自在に装着可能」であるのに対し、甲1発明の「表側分割ケーシング11A」は、「裏側分割ケーシング11B」が壁1に埋設状態で設置された状態で、「裏側分割ケーシング11B」に対して着脱自在に装着可能であるかが明らかでない点。

(相違点17)
本件発明2の「被装着部」は、「電源側分割ユニット」の「前面部」に備えられ、「前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で設置面の対向空間側に露出する」のに対し、甲1発明の「裏側分割ケーシング11B」の「開口縁部」は、「裏側分割ケーシング11B」の「周壁部15」の開口縁であり、「情報通信ユニットY」が「情報コンセント2」に設置された状態で「壁1」から「情報コンセント2の表側」には露出しない点。

(相違点18)
本件発明2の「装着部」は、「非電源側分割ユニット」の電源側分割ユニット側となる「後面部」に「突出形成」され、「後方から見て前記非電源側分割ユニットの全体よりも大きさが小さい」のに対し、甲1発明の「表側分割ケーシング11A」の「開口縁部」は、「表側分割ケーシング11A」の周面の開口縁であり、その大きさも後方からみて「表側分割ケーシング11A」の全体の大きさと略同じである点。

(2)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点17について検討する。

ア 甲1発明において、「表側分割ケーシング11A」が内嵌される「裏側分割ケーシング11B」の「開口縁部」は、「裏側分割ケーシング11B」の「周壁部15」の開口縁であって、この「周壁部15」により「裏側分割ケーシング11B」の外形の大部分が形成されていることは、図3からも明らかである。すなわち、甲1発明の「裏側分割ケーシング11B」には、本件発明2の「前面部」に対応する構成が存在しない。
そして、甲1発明に「前面部」に対応する構成を導入する動機付けは存在しない。

イ 甲1発明は、従来の情報通信ユニットの「情報コンセントの前面に本体部分が大きく突出したままになり、美観性に欠けると共に、近傍の歩行時に情報通信ユニットが引っ掛かり易いから、部屋内での歩行等の障害になる」(【0007】)という課題を解決するために、「裏側分割ケーシング11B」を、その全体が「コンセントボックス2A内」に位置するよう設置して、「裏側分割ケーシング11B」に装着される「表側分割ケーシング11A」の「情報コンセント2の表側」への突出を抑えているものと理解される。
仮に、甲1発明において、「裏側分割ケーシング11B」の「開口縁部」を、「壁1」から「情報コンセント2の表側」に露出させようとすると、該「開口縁部」に装着される「表側分割ケーシング11A」は、「情報コンセント2の表側」からさらに突出する配置に変更されることになるが、前記課題との関係において、そのような変更を導入する動機づけは存在しない。

ウ したがって、相違点17に係る本件発明2の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。
その他、相違点17に係る本件発明2の構成を記載又は示唆する証拠は存在しない。

(3)申立人の主張(申立理由2−1)について
申立人は、本件訂正前の請求項2に係る発明は、当業者が甲1発明及び甲2〜甲8に示される周知技術に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由2−1)が、甲2〜甲8には、相違点17に係る本件発明2の構成が開示も示唆もされていないので、申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本件発明3についての当審の判断
(1)対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。

ア 発明特定事項3A〜3Dについて
本件発明3の発明特定事項3A〜3Dは、本件発明1の発明特定事項1A〜1Dと同一のものであり、前記「2 本件発明1についての当審の判断」「(1)対比」ア〜エで示したことと同じことがいえる。

イ 発明特定事項3Eについて
甲1発明の「表側分割ケーシング11A」の「裏側分割ケーシング11B」への装着は、「表側分割ケーシング11A」の「開口縁部」が、「裏側分割ケーシング11B」の「開口縁部」に内嵌すること(分説J)によるものである。
そして、その嵌合面の一方の面に形成された「嵌合穴11a」と、嵌合面の他方の面に掲載された「係合突起11b」の係合によって、「表側分割ケーシング11A」の「裏側分割ケーシング11B」の外れ止めが実施される(分説J)から、甲1発明の「嵌合穴11a」と「係合突起11b」は、本件発明3の「前記非電源側分割ユニットが前記電源側分割ユニットに装着されたとき、前記非電源側分割ユニットと前記電源側分割ユニットとを装着状態でロックするロック手段」に相当する。
したがって、本件発明3と甲1発明とは、「前記非電源側分割ユニットが前記電源側分割ユニットに装着されたとき、前記非電源側分割ユニットと前記電源側分割ユニットとを装着状態でロックするロック手段が備えられ」ている点で一致する。

ウ 発明特定事項3Fについて
甲1発明は、「係合穴11a」と「係合突起11b」の係合を解除するための具体的な構成は明らかではない。

エ 一致点及び相違点
以上のことから、本件発明3と甲1発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、が備えられ、
前記非電源側分割ユニットが前記電源側分割ユニットに装着されたとき、前記非電源側分割ユニットと前記電源側分割ユニットとを装着状態でロックするロック手段が備えられている情報通信装置。」

(相違点19)
「電源側分割ユニット」から「非電源側分割ユニット」への電力供給について、本件発明3は、該電力供給が可能な状態で「電源側分割ユニット」と「非電源側分割ユニット」とを接続する「電源接続部」を備えるのに対し、甲1発明は、「裏側分割ケーシング11B」の「コンバータ20」から「表側分割ケーシング11A」の「無線送受信部19」へ直流電気を供給するための具体的な構成が明らかでない点。

(相違点20)
本件発明3は、「ロック手段」によるロックを解除する「ロック解除操作部」を備えているのに対し、甲1発明は、「係合穴11a」と「係合突起11b」の係合を解除するための具体的な構成が明らかでない点。
それに付随し、本件発明3の前記「ロック解除操作部」が「設置面に埋設状態で設置された状態で設置面の対向空間側に露出する部位」に備えられる点。

(2)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点20について検討する。

甲1発明は、「係合穴11a」と「係合突起11b」の係合を解除するための具体的な態様が明らかではなく、甲1の図2及び3からは、「係合穴11a」と「係合突起11b」の係合を解除するための何らかの操作手段が、「表側分割ケーシング11A」の「壁1」の「情報コンセント2の表側」に露出した部分に設けられていることも見て取ることはできず、そのことを示唆する記載も甲1には存在しない。
そして、相違点20に係る本件発明3の「ロック解除操作部」の構成が周知技術であるともいえない。
その他、相違点20に係る本件発明3の構成を記載又は示唆する証拠は存在しない。
したがって、相違点20に係る本件発明3の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。

(3)申立人の主張(申立理由3−1)について
ア 申立人は、本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲1発明と同一であり、仮に相違点があったとしても、本件訂正前の請求項3に係る発明は、当業者が甲1発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由3−1)。

イ 前記主張の根拠として、申立人は、甲1発明の「係合穴11a」と「係合突起11b」の係合の解除するために、「表側分割ケーシング11A」の「係合突起11b」付近の部分を押下することは明らかであるから、甲1発明は、本件発明3の「ロック解除操作部」の構成を開示するものであり、また、本件発明1の「ロック解除操作部」の構成は設計事項であることを挙げている(申立書46頁)。

ウ 仮に、申立人の主張のとおり、甲1発明の「表側分割ケーシング11A」の「係合突起11b」付近の部分の押下により「係合穴11a」と「係合突起11b」の係合が解除されるとしても、「表側分割ケーシング11A」の「係合突起11b」付近の部分は、「表側分割ケーシング11A」そのものであって、ロック解除の機能を持たせることを目的として設けたものではない。
さらに、甲1の図2に示されるように、「情報通信ユニットY」が情報コンセント2に埋設された状態において、前記「表側分割ケーシング11A」の「係合突起11b」付近の部分が、壁1の前面側(対向空間側)に露出しているとも認められない。
すなわち、甲1発明は、本件発明3の「ロック解除操作部」の構成を開示も示唆もするものではない。

エ したがって、本件発明3と甲1発明とは、少なくとも前記相違点20が存在するから、同一ではない。また、相違点20に係る本件発明3の「ロック解除操作部」の構成が周知技術または設計事項であるとの証拠もないから、申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明と同一ではなく、また、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

5 本件発明4についての当審の判断
(1)対比
本件発明4と甲1発明とを対比する。

ア 発明特定事項4A〜4Dについて
本件発明4の前記事項は、本件発明1と同一のものであり、前記「2 本件発明1についての当審の判断」「(1)対比」ア〜エで示したことと同じことがいえる。

イ 発明特定事項4Eについて
甲1発明の「表側分割ケーシング11A」と「裏側分割ケーシング11B」とは互いに着脱可能である(分説J)が、「裏側分割ケーシング11B」が「コンセントボックス2A」内に設置した状態で、「表側分割ケーシング11A」が「裏側分割ケーシング11B」に着脱可能であるかは明らかでない。
したがって、甲1発明は、「前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットに対して設置面の対向空間側から着脱自在に装着可能に構成され」た本件発明4とは、「前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能に構成され」ている点で共通する。

ウ 発明特定事項4Fについて
(ア)前記「3 本件発明2についての当審の判断」「(1)対比」ウ及びエのとおり、甲1発明の「表側分割ケーシング11A」の「裏側分割ケーシング11B」への装着は、前者の「開口縁部」を後者の「開口縁部」に内嵌させる(分説J)ことで行われるため、前者の「開口縁部」は「装着部」、後者の「開口縁部」は「被装着部」といえる。
一方、「表側分割ケーシング11A」の「開口縁部」は、「表側分割ケーシング11A」の周面の開口縁であり、「裏側分割ケーシング11B」の「開口縁部」も、「裏側分割ケーシング11B」の「周壁部15」の開口縁である。

(イ)甲1発明は、「表側分割ケーシング11A」の「偏平部13」に形成された「係合凹部13a」を、「取付フレーム7」の「係合突起」と係合させて、「情報通信ユニットY」を「取付フレーム7」に取り付ける(分説M)ものである。つまり、甲1発明において「取付フレーム7」に取り付けられるのは、「表側分割ケーシング11A」であって、「裏側分割ケーシング11B」ではない。

(ウ)したがって、甲1発明は、「前記電源側分割ユニットの前面部は、前記非電源側分割ユニットの後面部に突出形成された装着部が内嵌状態で装着可能な被装着部が形成された中間部位と、設置面の前面に当接させる取り付けフレームに固定自在に構成されて前記中間部位よりも外方に配置された外側部位とを有し」ている本件発明4とは、「前記電源側分割ユニットは、前記非電源側分割ユニットの装着部が内嵌状態で装着可能な被装着部が形成され」ている点で共通する。

エ 発明特定事項4Gについて
(ア)甲1発明の「コンセントボックス2A」は、「壁1」に形成した矩形形状の「設置用穴3」の「裏面側」に配置され(分説C)、「情報コンセントY」を情報コンセントに設置したときに、「コンセントボックス2A」内に「裏側分割ケーシング11B」全体が位置する(分説K)ものであるから、本件発明4の「設置面に貫通形成される設置用孔の後面側に配置されて前記電源側分割ユニットが内部に配置されるコンセントボックス」に相当する。

(イ)甲1発明の「表面板2B」は、「壁1」の「前面」に設置されるものであって(分説C)、「壁の穴3よりも一回り大きな矩形形状に構成」され、「窓部9」が形成され、その「窓部9」から「情報通信ユニットY」の表部分が露出するものである(分説G)。
「表面板2B」が、「設置用穴3」及び前記(ア)の「コンセントボックス2A」を、「壁1」の前面側から覆い隠して美観を保つ機能があることは、その構成から明らかであるから、甲1発明の「表面板2B」は、本件発明4の「設置面の前面側に配置される化粧カバー」に相当する。

(ウ)前記ウ(イ)のとおり、甲1発明の「取付フレーム7」は、「情報通信ユニットY」を取り付けるものであり、また、壁1の前面に当接される(分説D)ものであるから、本件発明4の「取り付けフレーム」に相当する。
また、甲1発明の「取付フレーム7」を介して、「情報通信ユニットY」と、「コンセントボックス2A」及び「表面板2B」とが一体に「取り付け」られる(分説C)から、「取付フレーム7」には、「コンセントボックス2A」と「表面板2B」とが「取り付け」られているといえるが、該「取り付け」が「取付フレーム7」への「固定」であるか明らかではない。

(エ)したがって、甲1発明は、「前記取り付けフレームは、設置面に貫通形成される設置用孔の後面側に配置されて前記電源側分割ユニットが内部に配置されるコンセントボックスと、設置面の前面側に配置される化粧カバーとを固定自在に構成されている」本件発明4とは、「前記取り付けフレームは、設置面に貫通形成される設置用孔の後面側に配置されて前記電源側分割ユニットが内部に配置されるコンセントボックスと、設置面の前面側に配置される化粧カバーとを取り付けるように構成されている」点で一致する。

オ 一致点及び相違点
以上のことから、本件発明4と甲1発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、が備えられ、
前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能に構成され、
前記電源側分割ユニットは、前記非電源側分割ユニットの装着部が内嵌状態で装着可能な被装着部が形成され、
前記取り付けフレームは、設置面に貫通形成される設置用孔の後面側に配置されて前記電源側分割ユニットが内部に配置されるコンセントボックスと、設置面の前面側に配置される化粧カバーとを取り付けるように構成されている情報通信装置。」

<相違点>
(相違点21)
「電源側分割ユニット」から「非電源側分割ユニット」への電力供給について、本件発明4は、該電力供給が可能な状態で「電源側分割ユニット」と「非電源側分割ユニット」とを接続する「電源接続部」を備えるのに対し、甲1発明は、「裏側分割ケーシング11B」の「コンバータ20」から「表側分割ケーシング11A」の「無線送受信部19」へ直流電気を供給するための具体的な構成が明らかでない点。

(相違点22)
本件発明4の「非電源側分割ユニット」は、「電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態」で、「電源側分割ユニット」に対して「設置面の対向空間側から」「着脱自在に装着可能」であるのに対し、甲1発明の「表側分割ケーシング11A」は、「裏側分割ケーシング11B」が壁1に埋設状態で設置された状態で、「裏側分割ケーシング11B」に対して壁1の表面側から着脱自在に装着可能であるかが明らかでない点。

(相違点23)
本件発明4の「電源側分割ユニット」の「被装着部」は、「前面部」に備えられているのに対し、甲1発明の「裏側分割ケーシング11B」の「開口縁部」は、「裏側分割ケーシング11B」の「周壁部15」の開口縁である点。
これに付随し、本件発明4の「電源側分割ユニット」は、「被装着部」が形成された「中間部位」の「外方に配置」され、「設置面の前面に当接させる取り付けフレームに固定自在に構成され」た「外側部位」を有するのに対し、甲1発明の「裏側分割ケーシング11B」は、そのような構成を有しない点。

(相違点24)
本件発明4の「非電源側分割ユニット」の「装着部」は、「後面部」に「突出形成」されているのに対し、甲1発明の「表側分割ケーシング11A」の「開口縁部」は、「表側分割ケーシング11A」の周面の開口縁である点。

(相違点25)
「取り付けフレーム」への「コンセントボックス」及び「化粧カバー」の取り付けが、本件発明4は「固定自在」なものであるのに対し、甲1発明は、「取付フレーム7」への「コンセントボックス2A」及び「表面板2B」の取り付けが「固定自在」か明らかではない点。

(2)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点23について検討する。

ア 甲1発明に「前面部」に対応する構成を導入する動機づけが存在しないことは、前記「3 本件発明2についての当審の判断」「(2)相違点についての検討」アに示したとおりである。

イ また、甲1発明において、「取付フレーム7」に固定されるのは「表側分割ケーシング11A」であるから、「裏側分割ケーシング11B」に、本件発明4の「外側部位」に対応する構成を導入する動機づけも存在しない。
さらに、仮に、甲1発明の「裏側分割ケーシング11B」を、「取付フレーム7」に固定しようとすると、「裏側分割ケーシング11B」の配置を、「取付フレーム7」が当接される「壁1」の前面側に変更する必要がある。その結果、「裏側分割ケーシング11B」に橈装着された「表側分割ケーシング11A」は、「壁1」からより前面側に突出することになるが、甲1発明の課題との関係において、前記の変更を導入する動機づけが存在しないことは、前記「3 本件発明2についての当審の判断」「(2)相違点についての検討」イに示したとおりである。
その他、相違点23に係る本件発明4の構成を記載又は示唆する証拠は存在しない。

ウ したがって、相違点23に係る本件発明4の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。

(3)申立人の主張(申立理由4−1)について
申立人は、本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲1発明と同一であり、仮に相違点があったとしても、本件訂正前の請求項4に係る発明は、当業者が甲1発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであると主張する(申立理由4−1)が、本件発明4と甲1発明とは、少なくとも相違点23が存在し、また、相違点23に係る本件発明4の構成が周知であるとの証拠もないので、申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1発明と同一ではなく、また、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 本件発明5及び6についての当審の判断
(1)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1〜4のいずれかを引用して更に限定する構成を付加したものである。
そして、前記「2 本件発明1についての当審の判断」〜「5 本件発明4についての当審の判断」で示したとおり、本件発明1〜4は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものはない。
したがって、本件発明1〜4のいずれかを引用する本件発明5は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明6について
本件発明1〜5のいずれかを引用する本件発明6は、本件発明1〜4又は本件発明1〜4を引用する本件発明5のいずれかを引用してさらに限定する構成を付加したものであるから、前記(1)と同様の理由により、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立人の主張(申立理由5−1及び6−1)について
申立人は、本件訂正前の請求項5に係る発明は、当業者が甲1発明並びに甲2、甲4、甲5、甲7及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由5−1)。
また、本件訂正前の請求項6に係る発明は、当業者が甲1発明並びに甲2、甲3、甲7及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由6−1)。

しかしながら、前記(1)及び(2)のとおり、本件発明5及び6は、本件発明1〜4のいずれかと同一の構成を有し、さらに限定事項を付したものである。
そして、本件発明1〜4が、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができないものである以上、本件発明5及び6も、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることはできない。これは、甲2〜5、7及び8の存在に左右されない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明5及び6は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

7 本件発明7〜9についての当審の判断
(1)対比
前記「第8 甲7発明に基づく申立理由のうち取消理由通知に採用しなかったものについて」「4 本件発明7〜9についての当審の判断」「(1)対比」のとおり、本件発明7〜9は、「機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成されている」という構成(発明特定事項7A、8F、9F)を共通に有する。
前記構成について、本件発明7〜9と甲1発明とを対比すると、甲1発明は、「コンバータ20」が固定された「裏側分割ケーシング11B」(分説Q)を、機能又は仕様の異なる複数種のものとし、その各々に対して「表側分割ケーシング11A」を選択的に装着するものではない。
したがって、本件発明7〜9と甲1発明とは、少なくとも次の相違点26があるといえる。

(相違点26)
本件発明7〜9に係る発明は、「機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成され」たものであるのに対し、甲1発明は、機能又は仕様の異なる複数種の「裏側分割ケーシング11B」に「表側分割ケーシング11A」を選択的に装着するものではない点。

(2)相違点についての検討
相違点26に係る本件発明7〜9の構成を記載又は示唆する証拠は存在しない。また、相違点26に係る本件発明7〜9の構成が周知技術であるともいえない。
したがって、甲1発明を、相違点26に係る本件発明7〜9の構成とすることは、当業者が容易になし得ないものである。

(3)申立人の主張(申立理由7−1、申立人意見1−5及び1−6)について
ア 申立理由7−1について
申立人は、本件訂正前の請求項7に係る発明は、当業者が甲1発明並びに甲2、甲3、甲4及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由7−1)。

相違点26に係る本件発明7〜9の構成(発明特定事項7A、8F、9F)は、前記相違点12に係る本件発明7〜9の構成と同じである。
そして、前記「第8 甲7発明に基づく申立理由のうち取消理由通知に採用しなかったものについて」「4 本件発明7〜9についての当審の判断」「(3)申立人の主張(申立理由7−2、申立人意見1−4、申立人意見1−5及び1−6)について」アのとおり、甲2〜甲4及び甲8には、相違点12に係る本件発明7〜9の構成は開示されていない。
したがって、甲2〜甲4及び甲8は、相違点26に係る本件発明7〜9の構成も開示せず、甲1発明並びに甲2、甲3、甲4及び甲8に記載の技術を組み合わせても、相違点26に係る本件発明7〜9の構成には至らないから、申立人の主張は採用できない。

イ 申立人意見1−5及び1−6について
申立人は、本件発明8は、本件訂正前の請求項2の構成要件と、本件訂正後の請求項7の構成要件とからなるので、申立理由2−1と申立人意見1−4により、当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立人意見1−5)。
また、本件発明9は、本件訂正前の請求項4の構成要件と、本件訂正後の請求項7の構成要件とからなるので、申立理由4−1及び申立人意見1−4により、当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立人意見1−6)。

しかしながら、本件発明7の構成要件、すなわち、相違点26に係る本件発明7の構成(発明特定事項7A)は、前記アのとおり、前記相違点12に係る本件発明7の構成と同じであり、相違点12に係る本件発明7の構成について申立人意見1−4が採用できないことは、前記「第8 甲7発明に基づく申立理由のうち取消理由通知に採用しなかったものについて」「4 本件発明7〜9についての当審の判断」「(3)申立人の主張(申立理由7−2、申立人意見1−4、申立人意見1−5及び1−6)について」イに示したとおりである。
したがって、相違点26に係る本件発明7の構成についても申立人意見1−4は採用できないから、申立人意見1−4に依拠した本件発明8及び9についての主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明7〜9は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第10 甲8発明に基づく申立理由について
以下では、取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由のうち、甲8を主たる引用例としたもの(申立理由1−3、2−3、3−3、4−3、5−3、6−3、7−3及び申立人意見1−5、1−6)について判断する。

1 甲8の記載事項及び甲8発明
甲8には、次の事項が記載されている。




(当審訳:
背景技術
[0002] 従来の電気器具アタッチメント装置の分野では通常、スイッチ、ソケットなどを含み、受音装置の用途はない。
発明の概要
[0003] 本発明が解決しようとする技術的課題は、受音システムを壁の内側に配置することができる壁型受音装置を提供することである。
[0004] 本発明が技術的課題を解決するのに採用する技術的解決手段は、壁面に取り付けられる取付パネルと、取付パネルに取り付けられる受音装置とを含む壁型受音装置である。
[0005] 上述の技術的解決手段を採用すると同時に、本発明は以下のさらなる技術的解決手段を採用する又は組み合わせてもよい:
前記受音装置は受音機能を有するパネルであり、前記受音機能を有するパネルが前記取付パネルに取り外し可能に固定接続される。
[0006] 前記受音機能を有するパネルは、自身の形状により前記取付パネルに締まり嵌めで接続される、又は、前記受音機能を有するパネルはロック固定機構(たとえばネジ)により前記取付パネルに固定される、又は、前記受音機能を有するパネルと前記取付パネルとの接触面に隠しスナップとスナップジョイントがそれぞれ配置され、それにより両者をスナップフィットの形式で取り付け固定する、又は、前記受音機能を有するパネルと前記取付パネルの内部に相互に吸引する磁性材料がそれぞれ配置され、それにより両者を磁性吸着の方式で一体に接続する、又は、前記受音機能を有するパネルと前記取付パネルとの係合表面に面ファスナーがそれぞれ配置され、それにより両者を貼り付けの形式で一体に固定接続する。
[0007] 前記受音機能を有するパネルは、ハウジングと、ボタン制御ユニットと、制御及び変換回路システムユニットとスクリーン表示ユニットとを含み、前記ボタン制御ユニット及びスクリーン表示ユニットは前記ハウジングの外面に取り付けられ、制御及び変換回路システムはハウジング内に取り付けられ、前記ハウジングは取付パネルに取り外し可能に固定接続される。)





(当審訳:
[0012] 受音機能を有するパネルは、無線信号送受信装置を含み、wifi、ブルートゥース又は赤外線の方式で外部と信号交換を行うことで、ネットワーク放送などの機能を実現してもよい。
[0013] 前記取付ベース3は、埋込ボックス4により壁に固定されてもよい。
[0014] ここで、埋込ボックス4は特注品でも、標準的な取付ボックスでもよい。)




([0018] 本発明の有益な効果は、本発明がスマート制御、受音システム及び無線伝送などの複数の方式を壁型パネルに集積し、壁型パネルの機能を拡張し、且つ受音システムを壁の内側に配置することで、室内の空間を占有せず、部屋のレイアウトに調和させ、スマートホームシステムの新しい方向性を切り開き、ユーザーエクスペリエンスを向上させることができるということである。
添付図面の説明
[0019] 図1は本発明の受音装置の全体的な組み立て概略図である。
[0020] 図2は受音機能を有するパネルの組み立て概略図である。
[0021] 図3は本発明の取付孔の距離の説明概略図である。)




(当審訳:
[0042] 取付ベース3内の電源モジュールは外部接続の交流を直流に変換し、出力電圧は5Vであってもよく、又は、12Vであってもよく、又は、その他の利用可能な供給電圧であってもよい。)



(当審訳:図1)





(当審訳:図2)





(当審訳:図3)



したがって、前記甲8には、次の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲8発明をA〜Jに分説した。

<甲8発明>
「A 壁型受音装置及び取付ベース3であって、
B 壁型受音装置は、壁面に取り付けられる取付パネルと、取付パネルに取り付けられる受音装置とを含み([0004])、
C 前記受音装置は受音機能を有するパネルであり、前記受音機能を有するパネルが前記取付パネルに取り外し可能に固定接続され([0005])、
D 前記受音機能を有するパネルは、ハウジングと、ボタン制御ユニットと、制御及び変換回路システムユニットとスクリーン表示ユニットとを含み、前記ハウジングは取付パネルに取り外し可能に固定接続され([0007])、
E 受音機能を有するパネルは、無線信号送受信装置を含み、wifi、ブルートゥース又は赤外線の方式で外部と信号交換を行い([0012])、
F 取付ベース3は埋込ボックス4により壁に固定され([0013])、
G 埋込ボックス4は、標準的な取付ボックスであり([0014])、
H 取付ベース3内の電源モジュールは外部接続の交流を直流に変換し、出力電圧は5Vであってもよく、又は、12Vであってもよく、又は、その他の利用可能な供給電圧であってもよく([0042])、
I スマート制御、受音システム及び無線伝送などの複数の方式を壁型パネルに集積し、壁型パネルの機能を拡張し、且つ受音システムを壁の内側に配置することで、室内の空間を占有しない([0018])
J 壁型受音装置及び取付ベース3」

2 本件発明1についての当審の判断
(1)対比
本件発明1と甲8発明とを対比する。

ア 発明特定事項1Aについて
(ア)甲8発明の「壁型受音装置」の「取付パネル」は「壁面に取り付けられ」(分説B)、「取付ベース3」は「埋込ボックス4」により「壁に固定され」(分説F)るものである。前記「取付ベース3」は「取付」の「ベース」となる機器であり、図1の「受音装置の全体的な組み立て概略図」も参酌すれば、「取付パネル」は「取付ベース3」に取り付けられると解されるから、「壁型受音装置」は「取付ベース3」に取り付けられるものといえる。

(イ)甲8発明の「取付ベース3」内の「電源モジュール」は、「外部接続の交流を直流に変換し」、「利用可能な供給電圧」を「出力」(分説H)するものであるから、本件発明1の「電源部」に相当する。

(ウ)甲8発明の「無線信号送受信装置」(分説E)は、本件発明1の「無線通信部」に相当する。
甲8発明の「無線信号送受信装置」は、「受音機能を有するパネル」に含まれ(分説E)、「受音機能を有するパネル」は「受音装置」であって(分説C)、「受音装置」は「壁型受音装置」に含まれる(分説B)から、「無線信号送受信装置」は「壁型受音装置」に含まれるものである。
そして、前記(ア)のとおり、甲8発明の「壁型受音装置」は「取付ベース3」に取り付けられるものであって、前記(イ)のとおり「取付ベース3」内に「電源モジュール」があることを考慮すると、「無線信号送受信装置」は、「電源モジュール」が出力する「利用可能な供給電力」によって動作すると解するのが自然である。
したがって、本件発明1と甲8発明とは、「前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部」を備える点で一致する。

(エ)前記(ウ)のとおり、甲8発明の「壁型受音装置」は「無線信号送受信装置」を含むものであるから、該「無線信号送受信装置」を制御するための「制御部」を当然に含むものと認められ、該「制御部」は、本件発明1の「制御部」に相当する。
そして、該「制御部」も、「無線信号送受信装置」と同様に「電源モジュール」が出力する「利用可能な供給電力」によって動作するといえる。 したがって、本件発明1と甲8発明とは、「前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部」を備える点で一致する。

(オ)前記(ア)のとおり、甲8発明は、「壁型受音装置」が「取付ベース3」に取り付けられ、前記(ウ)及び(エ)のとおり、「電源モジュール」から「無線信号送受信装置」及び「制御部」に「利用可能な供給電力」が供給され、動作するものであるから、「壁型受音装置」及び「取付ベース3」は、一体で装置を構成するものといえる。
そして、甲8発明の「壁型受音装置」及び「取付ベース3」は、「無線信号送受信装置」及び「制御部」によって無線信号の送受信を行うものであるから、後述の相違点を除いて、本件発明1の「情報通信装置」に相当する。

(カ)甲8発明の「壁型受音装置」の「取付パネル」が取り付けられる「壁」(分説Bは、本件発明1の「設置面」に相当する。
甲8発明の「埋込ボックス4」が、「壁の内側」(分説I)に埋め込まれて配置されるものであることは、技術常識に照らせば明らかである。
また、甲8発明の「取付ベース3」は、該「埋込ボックス4」により「壁に固定され」(分説F)、図1の「受音装置の全体的な組み立て概略図」も参照すると、「取付ベース3」は「埋込ボックス4」の内部に配置されることは明らかである。
そうすると、甲8発明の「取付ベース3」は「壁の内側」に埋設されるといえるから、前記(オ)も踏まえると、本件発明1と甲8発明とは、「情報通信装置」が「設置面に埋設状態で設置され」る点で一致する。

(キ)甲8発明の「無線信号送受信装置」が「wifi、ブルートゥース又は赤外線の方式」で「信号交換を行」う「外部」(分説E)が、通信装置であることは明らかである。
したがって、前記(オ)も踏まえると、甲8発明は、「外部の情報通信端末との間で無線通信を行う」構成の本件発明1とは、「情報通信装置」が「外部の通信装置との間で無線通信を行う」点で共通する。

(ク)前記(ア)〜(キ)を踏まえると、本件発明1と甲8発明とは、「電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の通信装置との間で無線通信を行う情報通信装置であ」る点で共通する。

イ 発明特定事項1Bについて
(ア)前記ア(イ)のとおり、甲8発明の「取付ベース3」は「電源モジュール」を備えるものである。
そして、甲8発明の「取付ベース3」は、前記ア(オ)のとおり、「壁型受音装置」と一体となって無線通信を行う装置を構成するものであり、「電源モジュール」を備える「取付ベース3」は、無線通信を行う装置のうちの電源側のユニットといえるから、本件発明1の「電源側分割ユニット」に相当する。

(イ)前記ア(カ)のとおり、甲8発明の「取付ベース3」は「壁の内側」に埋設されるものである。

(ウ)したがって、本件発明1と甲8発明とは、「前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニット」を備える点で一致する。

ウ 発明特定事項1Cについて
(ア)甲8発明の「壁型受音装置」は、前記ア(ウ)(エ)のとおり、「無線信号送受信装置」と、該「無線信号送受信装置」を制御するための「制御部」を備えるものである。

(イ)甲8発明の「壁型受音装置」は、前記ア(オ)のとおり、「取付ベース3」と一体となって無線通信を行う装置を構成するものであり、前記ア(ウ)(エ)のとおり、「壁型受音装置」の「無線信号送受信装置」及び「制御部」は、「入力可能な供給電力」が「電源モジュール」から供給されるから、「壁型受音装置」は、無線通信を行う装置のうちの電源が供給される側のユニットといえる。
したがって、甲8発明の「壁型受音装置」は、本件発明1の「非電源側分割ユニット」に相当し、本件発明1と甲8発明とは、「非電源側分割ユニット」が「前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備え」る点で一致する。

(ウ)前記ア(ア)のとおり、甲8発明の「壁型受音装置」は、「取付ベース3」に取り付けられるものであるが、その取り付けが着脱自在かは明らかでない。

(エ)前記(ア)〜(ウ)を踏まえると、甲8発明は、「前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと」を備える本件発明1とは、「前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して装着可能な非電源側分割ユニット」を備える点で共通する。

エ 発明特定事項1Dについて
前記ア(オ)のとおり、甲8発明は、「壁型受音装置」が「取付ベース3」に取り付けられて、「取付ベース3」の「電源モジュール」から、「壁型受音装置」の「無線信号送受信装置」及び「制御部」に「利用可能な供給電力」が供給されると解される。
他方で、「電源モジュール」から「無線信号送受信装置」及び「制御部」への「利用可能な供給電力」の「供給」のための具体的な構成は明らかでない。
したがって、甲8発明は、「前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部」を備える本件発明1とは、「前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で」ある点で共通する。

オ 発明特定事項1Eについて
甲8発明は、放熱のための構成を備えていない。

カ 一致点及び相違点
以上のことから、本件発明1と甲8発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の通信装置との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して装着可能な非電源側分割ユニットと、が備えられ、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態である情報通信装置。」

<相違点>
(相違点27)
本件発明1は、無線通信を行う相手が「情報通信端末」であるのに対し、甲8発明は、無線通信を行う相手の「通信装置」が「情報通信端末」であるか明らかではない点。

(相違点28)
本件発明1は、「非電源側分割ユニット」の「電源側分割ユニット」に対する装着が「着脱自在」であるのに対し、甲8発明は、「壁型受音装置」の「取付ベース3」に対する取り付けが「着脱自在」であるか明らかはでない点。

(相違点29)
本件発明1は、「電源側分割ユニット」から「非電源側分割ユニット」に「電力供給可能な状態」で「電源側分割ユニット」と「非電源側分割ユニット」とを接続する「電源接続部」を備えるのに対し、甲8発明は、「取付ベース3」から「壁型受音装置」に「利用可能な供給電力」を供給するための構成が明らかでない点。

(相違点30)
放熱に関し、本件発明1は、「電源側分割ユニット」に「非電源側分割ユニット」が装着されたとき、「非電源側分割ユニット」で発生する熱を「電源側分割ユニット」に伝熱可能な状態で「電源側分割ユニット」と「非電源側分割ユニット」とを接続する「放熱用接続部」を備えるのに対し、甲8発明は、放熱のための構成を備えない点。

(2)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点30について検討する。

甲8発明は、放熱のための構成を備えていない。
そして、相違点30に係る本件発明1の「放熱用接続部」の構成を記載又は示唆する証拠は存在せず、また、該「放熱用接続部」の構成が周知技術であるともいえない。
したがって、相違点30に係る本件発明1の「放熱用接続部」の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。

(3)申立人の主張(申立理由1−3)について
申立人は、本件訂正前の請求項1に係る発明は、当業者が甲8発明と、甲1、甲2及び甲3の記載事項並びに甲4、甲6及び甲9の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由1−3)。

相違点30に係る本件発明1の「放熱用接続部」の構成は、前記相違点9に係る本件発明1の構成と同じである。
そして、前記「第8 甲7発明に基づく申立理由のうち取消理由通知に採用しなかったものについて」「1 本件発明1についての当審の判断」「(3)申立人の主張(申立理由1−2、申立人意見2)について」ア(エ)(オ)のとおり、甲1〜甲4、甲6及び甲9は、相違点9に係る本件発明1の構成を開示するものではない。
したがって、甲1〜甲4、甲6及び甲9は、相違点30に係る本件発明1の「放熱用接続部」の構成も開示せず、甲8発明に、甲1〜甲3の記載事項並びに甲4、甲6及び甲9の記載事項を適用しても、相違点30に係る本件発明1の構成には至らないから、申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲8発明並びに甲8及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本件発明2についての当審の判断
(1)対比
本件発明2と甲8発明とを対比する。

ア 発明特定事項2A〜2Dについて
本件発明2の前記事項は、本件発明1と同一のものであり、前記「2 本件発明1についての当審の判断」「(1)対比」ア〜エで示したことと同じことがいえる。

イ 発明特定事項2Eについて
甲8発明は、「壁型受音装置」の「取付ベース3」に対する取り付けの具体的な形態が不明であるため、前記相違点28のとおり、甲8発明は、「壁型受音装置」の「取付ベース3」に対する取り付けが「着脱自在」であるか明らかではない。
さらに、前記「2 本件発明1についての当審の判断」「(1)対比」ア(カ)のとおり、甲8発明は、「取付ベース3」が「埋込ボックス4」に固定されて「壁の内側」に埋設されるものであるが、「壁型受音装置」の「取付ベース3」への取り付けが、「取付ベース3」が壁に埋設された状態で可能なのかも明らかでない。
したがって、甲8発明は、「前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットにおける設置面の対向空間側に露出する部位に対して着脱自在に装着可能に構成され」ている本件発明2とは、「前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットに対して装着可能に構成され」ている点で共通する。

ウ 発明特定事項2Fについて
甲8発明の「取付ベース3」は、図1及び3を参照すると、「壁型受音装置」と対向する側が、略正方形の外形をした面を見て取ることができ、当該面は、本件発明2の「前記電源側分割ユニットの前面部」に相当する。
一方、前記イのとおり、甲8発明は、「壁型受音装置」の「取付ベース3」に対する取り付けの具体的な形態が不明であるため、「取付ベース3」における「壁型受音装置」を取り付ける部位の具体的な構成も明らかでない。
したがって、甲8発明は、「前記電源側分割ユニットの前面部には、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で設置面の対向空間側に露出する被装着部が備えら」れた本件発明2とは、「前記電源側分割ユニットは前面部を備える」点で共通する。

エ 発明特定事項2Gについて
前記「2 本件発明1についての当審の判断」「(1)対比」ア(ア)のとおり、甲8発明における「壁型受音装置」の「取付ベース3」への取り付けは、「取付パネル」を「取付ベース3」に取り付けるものと解されるが、甲8発明は、「取付ベース3」に取り付けるための「取付パネル」の具体的な構成は明らかでない。

オ 一致点及び相違点
以上のことから、本件発明2と甲8発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の通信装置との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して装着可能な非電源側分割ユニットと、が備えられ、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態であり、
非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットに対して装着可能に構成され、
前記電源側分割ユニットは前面部を備える情報通信装置。」

<相違点>
(相違点31)
本件発明2は、無線通信を行う相手が「情報通信端末」であるのに対し、甲8発明は、無線通信を行う相手の「通信装置」が「情報通信端末」であることは明らかでない点。

(相違点32)
本件発明2は、「非電源側分割ユニット」の「電源側分割ユニット」に対する装着が「着脱自在」であるのに対し、甲8発明は、「壁型受音装置」の「取付ベース3」に対する取り付けが「着脱自在」であるかが明らかでない点。
さらに、本件発明2の「非電源側分割ユニット」の「電源側分割ユニット」に対する着脱は、「非電源側分割ユニット」が「設置面に埋設状態で設置された状態」で可能であるのに対し、甲8発明は、「取付ベース3」が壁に埋設された状態で「壁型受音装置」が着脱可能かも明らかでない点。

(相違点33)
本件発明2は、「電源側分割ユニット」から「非電源側分割ユニット」に「電力供給可能な状態」で「電源側分割ユニット」と「非電源側分割ユニット」とを接続する「電源接続部」を備えるのに対し、甲8発明は、「取付ベース3」から「壁型受音装置」に「利用可能な供給電力」を供給するための構成は明らかではない点。

(相違点34)
本件発明2の「電源側分割ユニット」は、「前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で設置面の対向空間側に露出する被装着部」を「前面部」に備えるのに対し、甲8発明の「取付ベース3」は、「壁型受音装置」を取り付ける部位の具体的な構成が明らかでない点。

(相違点35)
本件発明2の「非電源側分割ユニット」は、「電源側分割ユニット側となる後面部」に、「後方から見て前記非電源側分割ユニットの全体よりも大きさが小さ」く、「前記電源側分割ユニット側の被装着部に対して着脱自在な装着部」が「突出形成」されているのに対し、甲8発明の「壁型受音装置」を「取付ベース3」に取り付けるための「取付パネル」の具体的な構成が明らかでない点。

(2)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点35について検討する。

ア 前記「(1)対比」ウ及びエのとおり、甲8発明は、「壁型受音装置」を「取付ベース3」に取り付けるための「壁型受音装置」の「取付パネル」の具体的な構成及び「取付ベース3」の具体的な構成はいずれも明らかでない。

イ 仮に、甲8発明の「取付パネル」が、「取付ベース3」に対向する「後面部」を有し、その「後面部」に「突出形成」された「装着部」を備えているのであれば、該「装着部」が装着されるための構成を「取付ベース3」は備えているはずであるが、図1及び3を参照しても、「取付ベース3」にそのような構成が存在することは見て取ることはできない。
したがって、甲8発明は、「取付パネル」が、相違点35に係る本件発明2の「非電源側分割ユニット」の「装着部」の構成を備えることを示唆しない。

ウ そして、甲8発明の「取付パネル」を、「後面部」に「突出形成」された「装着部」を備える構成に変更すると、「取付パネル」を「取付ベース3」に取り付けたとき、「突出形成」された「装着部」が「取付ベース3」に装着され、該「装着部」を突出させた分、「取付パネル」及び「取付パネル」に取り付けられる「受音装置」は壁から室内空間側にせり出す構成となる。
しかしながら、甲8発明は、「受音システムを壁体内に配置することで、室内の空間を占有しない」(分説I)ものであるから、そのような変更を導入する動機づけは存在せず、むしろ、阻害事由があるといえる。

エ さらに、相違点35に係る本件発明2の構成を記載又は示唆する他の証拠は存在せず、周知技術であるともいえない。

オ したがって、相違点35に係る本件発明2の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。

(3)申立人の主張(申立理由2−3)について
申立人は、本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲8発明と同一であり、仮に相違点があったとしても、本件訂正前の請求項2に係る発明は、当業者が甲8発明と甲1〜甲7の記載事項又は周知技術とに基いて容易に発明をすることができたものであると主張する(申立理由2−3)。
しかしながら、本件発明2と甲8発明とは、少なくとも相違点35が存在し、また、甲1〜甲7には、相違点35に係る本件発明2の構成が開示されていないので、申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲8発明と同一ではなく、また、甲8発明並びに甲8及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

4 本件発明3についての当審の判断
(1)対比
本件発明3と甲8発明とを対比すると、以下のことがいえる。

ア 発明特定事項3A〜3Dについて
本件発明3の前記事項は、本件発明1と同一のものであり、前記「2 本件発明1についての当審の判断」「(1)対比」ア〜エで示したことと同じことがいえる。

イ 発明特定事項3Eについて
前記「2 本件発明1についての当審の判断」「(1)対比」ア(ア)のとおり、甲8発明は、「壁型受音装置」の「取付パネル」を「取付ベース3」に取り付けるものと解されるが、取り付けた状態で「ロック」するものであるのかは明らかでない。

ウ 発明特定事項3Fについて
前記イに付随して、甲8発明は、「壁型受音装置」の「取付パネル」と「取付ベース3」のロックを「解除」可能であるかも明らかでない。

エ 一致点及び相違点
以上のことから、本件発明3と甲8発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の通信装置との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して装着可能な非電源側分割ユニットと、が備えられ、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態である情報通信装置。」

<相違点>
(相違点36)
本件発明3は、無線通信を行う相手が「情報通信端末」であるのに対し、甲8発明は、無線通信を行う相手の「通信装置」が「情報通信端末」であることは明らかでない点。

(相違点37)
本件発明3は、「非電源側分割ユニット」の「電源側分割ユニット」に対する装着が「着脱自在」であるのに対し、甲8発明は、「壁型受音装置」の「取付ベース3」に対する取り付けが「着脱自在」であるか明らかではない点。

(相違点38)
本件発明3は、「電源側分割ユニット」から「非電源側分割ユニット」に「電力供給可能な状態」で「電源側分割ユニット」と「非電源側分割ユニット」とを接続する「電源接続部」を備えるのに対し、甲8発明は、「取付ベース3」から「壁型受音装置」に「利用可能な供給電力」を供給するための構成が明らかでない点。

(相違点39)
本件発明3は、「前記非電源側分割ユニットと前記電源側分割ユニットとを装着状態でロックするロック手段」を備えるのに対し、甲8発明は、「壁型受音装置」の「取付パネル」を「取付ベース3」に取り付けた状態で「ロック」するための構成を備えるのかが明らかでない点。

(相違点40)
相違点39に付随して、本件発明3は、「情報通信装置」が「設置面に埋設状態で設置された状態」で「設置面の対向空間側に露出する部位」に、「ロック手段によるロックを解除するロック解除操作部」を備えるのに対し、甲8発明は、前記「ロック解除操作部」に対応する構成を備えるのか明らかではない点。

(2)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点40について検討する。

ア 相違点40に係る本件発明3の構成は、「ロック解除操作部」を、「設置面に埋設状態で設置された状態」で「設置面の対向空間側に露出する部位」に備えるものである。

イ 一方、甲8発明は、前記「3 本件発明2についての当審の判断」「(1)対比」イのとおり、「壁型受音装置」を「取付ベース3」に取り付ける具体的な形態は不明である。そのため、「壁型受音装置」を「取付ベース3」に取り付けた状態において、「壁型受音装置」あるいは「取付ベース3」が、壁面から室内空間側に露出するのかどうか、露出する場合にどの部分が露出するのかは明らかでない。
その上で、図1〜3からは、「壁型受音装置」及び「取付ベース」のいずれにも、「ロック解除操作部」を示すような構成を見て取ることはできない。
そのため、「壁型受音装置」あるいは「取付ベース3」が壁面から室内空間側に露出するかどうかにかかわらず、甲8発明は、相違点40に係る本件発明3の「設置面の対向空間側に露出する部位に備えられている」「ロック解除操作部」の構成を示唆しない。
さらに、相違点40に係る本件発明3の構成を記載又は示唆する証拠は存在せず、周知技術であるともいえない。

ウ したがって、相違点40に係る本件発明3の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。

(3)申立人の主張(申立理由3−3)について
ア 申立人は、本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲8発明と同一であり、仮に相違点があったとしても、本件訂正前の請求項3に係る発明は、当業者が甲8発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由3−3)。

イ 具体的には、申立人は、甲8に記載の「集音装置1」(当審訳における「受音装置」)を「WiFiユニット」と称し、該「WiFiユニット」及び「取付ベース」が本件発明3の「非電源側分割ユニット」及び「電源側分割ユニット」にそれぞれ相当するとし、さらに、甲8には、「ハウジング5」と「取付パネル2」とにそれぞれ「隠しバックル」と「バックル」([0006]の当審訳における「隠しスナップ」と「スナップジョイント」)が配置されているから、「バックル」が本件発明3の「ロック手段」に相当し、「バックル」の片側が本件発明3の「ロック解除操作手段」に相当する、と主張する(申立書48頁)。

ウ しかしながら、甲8の[0005]〜[0007]の記載のとおり、「隠しスナップ」及び「スナップジョイント」は、「受音装置」の「ハウジング」を「取付パネル」に取り外し可能に固定するものであって、「取付ベース3」に固定するためのものではない。
加えて、甲8の図1及び2からは、「ハウジング」を「取付パネル」に固定する形態は、「ハウジング」を「取付パネル」の枠体の内側に配置するものであると推測される一方、「壁型受音装置」の「取付パネル」を「取付ベース3」に取り付ける形態が、「ハウジング」と「取付パネル」との固定の形態と大きく異なることは、「取付パネル」及び「取付ベース3」の構造、形状から明らかである。
そのため、前記「隠しスナップ」及び「スナップジョイント」を、「取付パネル」の「取付ベース3」への取り付けに適用する動機付けもない。
すなわち、甲8の「隠しスナップ」及び「スナップジョイント」は、本件発明3の「非電源側分割ユニット」と「電源側分割ユニット」の着脱のための「ロック手段」及び「ロック解除操作手段」を開示するものではなく、示唆するものでもない。

エ したがって、本件発明3と甲8発明とは、少なくとも相違点40が存在するから同一ではない。また、相違点40に係る本件発明3の構成が周知技術または設計事項であるとの証拠もないから、申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲8発明と同一ではなく、また、甲8発明並びに甲8及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

5 本件発明4についての当審の判断
(1)対比
本件発明4と甲8発明とを対比する。

ア 発明特定事項4A〜4Dについて
本件発明4の前記事項は、本件発明1と同一のものであり、前記「2 本件発明1についての当審の判断」「(1)対比」ア〜エで示したことと同じことがいえる。

イ 発明特定事項4Eについて
前記「3 本件発明2についての当審の判断」「(1)対比」イのとおり、甲8発明の「壁型受音装置」の「取付ベース3」に対する取り付けが「着脱自在」かどうか、また、「壁型受音装置」の「取付ベース3」への取り付けが、「取付ベース3」が壁に埋設された状態で可能なものかは明らかでない。
したがって、甲8発明は、「前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットに対して設置面の対向空間側から着脱自在に装着可能に構成され」ている本件発明4とは、「非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットに対して装着可能に構成され」いる点で共通する。

ウ 発明特定事項4Fについて
前記「3 本件発明2についての当審の判断」「(1)対比」ウのとおり、甲8発明の「取付ベース3」のうち、「壁型受音装置」と対向する略正方形の面は、本件発明4の「前記電源側分割ユニットの前面部」に相当する。
一方で、前記「3 本件発明2についての当審の判断」「(2)相違点についての検討」のとおり、甲8発明の「壁型受音装置」の「取付パネル」は、「取付ベース3」に取り付けるための「装着部」が「後面部」に「突出形成」されたものではない。
また、甲8発明は、「取付ベース3」を本件発明4の「取り付けフレーム」のようなフレームに固定するものでもないため、「取付ベース3」の前記略正方形の面は、本件発明4の「前記非電源側分割ユニットの後面部に突出形成された装着部が内嵌状態で装着可能な被装着部が形成された中間部位」及び「設置面の前面に当接させる取り付けフレームに固定自在に構成されて前記中間部位よりも外方に配置された外側部位」に対応する構成を備えない。
したがって、甲8発明は、「前記電源側分割ユニットの前面部は、前記非電源側分割ユニットの後面部に突出形成された装着部が内嵌状態で装着可能な被装着部が形成された中間部位と、設置面の前面に当接させる取り付けフレームに固定自在に構成されて前記中間部位よりも外方に配置された外側部位とを有し」ている本件発明4とは、「前記電源側分割ユニットが前面部を備え」ている点で共通する。

エ 発明特定事項4Gについて
(ア)前記「2 本件発明1についての当審の判断」「(1)対比」ア(カ)のとおり、甲8発明の「埋込ボックス4」は、「壁の内側」(分説I)に埋め込まれて配置されるものである。
また、前記「2 本件発明1についての当審の判断」「(1)対比」ア(カ)のとおり、壁の内側の「埋込ボックス4」の内部に「取付ベース3」が配置され、前記「2 本件発明1についての当審の判断」「(1)対比」ア(ア)のとおり、該「取付ベース3」に「取付パネル」が取り付けられ、該「取付パネル」は「壁面」に設置されると解される(分説B)から、「取付ベース3」と「取付パネル」の間には壁が介在しないように、壁に貫通孔が形成されていると解される。そうすると、「取付ベース3」を内部に配置する「埋込ボックス4」は、壁に形成された貫通孔の後面側に配置されているといえる。
したがって、甲8発明の「埋込ボックス4」は、本件発明4の「設置面に貫通形成される設置用孔の後面側に配置されて前記電源側分割ユニットが内部に配置されるコンセントボックス」とは、「設置面に貫通形成される設置用孔の後面側に配置されて前記電源側分割ユニットが内部に配置されるボックス」である点で共通する。

(イ)一方、甲8発明は、本件発明4の「取り付けフレーム」及び「化粧カバー」に対応する構成を備えていない。

(ウ)前記(ア)及び(イ)を踏まえると、甲8発明は、「前記取り付けフレームは、設置面に貫通形成される設置用孔の後面側に配置されて前記電源側分割ユニットが内部に配置されるコンセントボックスと、設置面の前面側に配置される化粧カバーとを固定自在に構成されている」本件発明4とは、「設置面に貫通形成される設置用孔の後面側に、電源側分割ユニットが内部に配置されるボックスが配置される」点で共通する。

オ 一致点及び相違点
以上のことから、本件発明4と甲8発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の通信装置との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して装着可能な非電源側分割ユニットと、が備えられ、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態であり、
非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットに対して装着可能に構成され、
前記電源側分割ユニットには前面部が備わり、
設置面に貫通形成される設置用孔の後面側に、電源側分割ユニットが内部に配置されるボックスが配置される、情報通信装置。」

<相違点>
(相違点41)
本件発明4は、無線通信を行う相手が「情報通信端末」であるのに対し、甲8発明は、無線通信を行う相手の「通信装置」が「情報通信端末」であることは明らかでない点。

(相違点42)
本件発明4は、「非電源側分割ユニット」の「電源側分割ユニット」に対する装着が「着脱自在」であるのに対し、甲8発明は、「壁型受音装置」の「取付ベース3」に対する取り付けが「着脱自在」であるかは明らかでない点。
さらに、本件発明4の「非電源側分割ユニット」の「電源側分割ユニット」に対する着脱は、「非電源側分割ユニット」が「設置面に埋設状態で設置された状態」で「設置面の対向空間側から」行えるのに対し、甲8発明は、「取付ベース3」が壁に埋設された状態で「壁型受音装置」が「設置面の対向空間側から」着脱可能かも明らかでない点。

(相違点43)
本件発明4は、「電源側分割ユニット」から「非電源側分割ユニット」に「電力供給可能な状態」で「電源側分割ユニット」と「非電源側分割ユニット」とを接続する「電源接続部」を備えるのに対し、甲8発明は、「取付ベース3」から「壁型受音装置」に「利用可能な供給電力」を供給するための構成が明らかでない点。

(相違点44)
本件発明4の「非電源側分割ユニット」は、「後面部」に「装着部」が「突出形成」されているのに対し、甲8発明の「壁型受音装置」が、そのような構成を備えるのか明らかではない点。
加えて、本件発明4の「電源側分割ユニット」の「前面部」は、「非電源側分割ユニット」の「装着部」が「内嵌状態で装着可能な被装着部が形成された中間部位」と、「設置面の前面に当接させる取り付けフレームに固定自在に構成されて前記中間部位よりも外方に配置された外側部位」とを有しているのに対し、甲8発明の「取付ベース3」の「壁型受音装置」と対向する面は、そのような構成を備えない点。

(相違点45)
本件発明4は、「電源側分割ユニット」が内部に配置される「ボックス」が「コンセントボックス」であるのに対し、甲8発明は、「取付ベース3」が内部に設けられる「埋込ボックス4」が「コンセントボックス」であるか明らかではない点。

(相違点46)
本件発明4は、「取り付けフレーム」が「コンセントボックス」と「設置面の前面側に配置される化粧カバー」とが固定自在に構成されているのに対し、甲8発明は、「取り付けフレーム」及び「設置面の前面側に配置される化粧カバー」に対応する構成を備えない点。

(2)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点44について検討する。

ア 前記「3 本件発明2についての当審の判断」「(2)相違点についての検討」のとおり、甲8発明の「壁型受音装置」の「取付パネル2」を、その「後面部」に「装着部」を「突出形成」することは、当業者が容易になし得ないものである。そのため、前記「装着部」を「内嵌状態で装着可能」な「被装着部」を、「取付ベース3」に形成することも、当業者が容易になし得るものではない。

イ さらに、甲8発明は、「取付ベース3」を「埋込ボックス4」によって壁に「固定」する(分説F)ものであるため、本件発明4の「電源側分割ユニット」を固定するための「取り付けフレーム」のような構成を要しない。
そして、仮に、甲8発明を、「取付ベース3」を「取り付けフレーム」に固定する構成にする場合、「取付ベース3」の構造や形状の変更に加えて、「埋込ボックス4」の構造や形状をも変更する必要があるが、そのような変更を導入する動機づけは存在しない。

ウ したがって、相違点44に係る本件発明4の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。
その他、相違点44に係る本件発明4の構成を記載又は示唆する証拠は存在しない。

(3)申立人の主張(申立理由4−3)について
申立人は、本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲8発明と同一であり、仮に相違点があったとしても、本件訂正前の請求項4に係る発明は、当業者が甲8発明及び周知技術とに基いて容易に発明をすることができたものであると主張する(申立理由4−3)。

しかしながら、本件発明4と甲8発明とは少なくとも相違点44が存在し、また、相違点44に係る本件発明4の構成が周知であるとの証拠もないので、申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲8発明と同一でなく、また、本件発明4は、甲8発明並びに甲8及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

6 本件発明5及び6についての当審の判断
(1)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1〜4のいずれかを引用して更に限定する構成を付加したものである。
そして、前記「2 本件発明1についての当審の判断」〜「5 本件発明4についての当審の判断」で示したとおり、本件発明1〜4は、甲8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものはない。
したがって、本件発明1〜4のいずれかを引用する本件発明5は、甲8発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明6について
本件発明1〜5のいずれかを引用する本件発明6は、本件発明1〜4又は本件発明1〜4を引用する本件発明5のいずれかを引用してさらに限定する構成を付加したものであるから、前記(1)と同様の理由により、甲8発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立人の主張(申立理由5−3及び6−3)について
申立人は、本件訂正前の請求項5に係る発明は、当業者が甲8発明並びに甲2、甲4、甲5、甲7及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由5−3)。
また、本件訂正前の請求項6に係る発明は、当業者が甲8発明並びに甲2、甲3、甲7及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由6−3)。

しかしながら、前記(1)及び(2)のとおり、本件発明5及び6は、本件発明1〜4のいずれかと同一の構成を有し、さらに限定事項を付したものである。
そして、本件発明1〜4が、甲8発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができないものである以上、本件発明5及び6も、甲8発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることはできない。これは、甲2〜5、7及び8の存在に左右されない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明5及び6は、甲8発明並びに甲8及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

7 本件発明7〜9についての当審の判断
(1)対比
前記「第8 甲7発明に基づく申立理由のうち取消理由通知に採用しなかったものについて」「4 本件発明7〜9についての当審の判断」「(1)対比」のとおり、本件発明7〜9は、「機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成されている」という構成(発明特定事項7A、8F、9F)を共通に有する。
前記構成について、本件発明7〜9と甲8発明とを対比すると、甲8発明は、「取付ベース3」内の「電源モジュール」は、「外部接続の交流を直流に変換し、出力電圧は5Vであってもよく、又は、12Vであってもよく、又は、その他の利用可能な供給電圧であってもよ」い(分説H)ものである。
しかしながら、前記分説Hは、甲8発明の「取付ベース3」の「電源モジュール」の出力電圧を特定するに過ぎないものであって、「電源モジュール」の出力電圧がそれぞれ「5V」、「12V」又は「その他の利用可能な供給電圧」である複数種の「取付ベース3」に対して、「壁型受音装置」を選択的に取り付けることを示すものではない。
したがって、本件発明7〜9と甲8発明とは、少なくとも次の相違点47があるといえる。

(相違点47)
本件発明7〜9に係る発明は、「機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成され」たものであるのに対し、甲8発明は、複数種の「取付ベース3」の各々に対して「壁型受音装置」を選択的に取り付け可能なものではない点。

(2)相違点についての検討
相違点47に係る本件発明7〜9の構成を記載又は示唆する証拠は存在しない。また、相違点47に係る本件発明7〜9の構成が周知技術であるともいえない。
したがって、甲8発明を、相違点47に係る本件発明7〜9の構成とすることは、当業者が容易になし得ないものである。

(3)申立人の主張(申立理由7−3、申立人意見1−5及び1−6)について
ア 申立理由7−3について
申立人は、本件訂正前の請求項7に係る発明は、当業者が甲8発明並びに甲2、甲3、甲4及び甲8の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由7−3)。

相違点47に係る本件発明7〜9の構成(発明特定事項7A、8F、9F)は、前記相違点12に係る本件発明7〜9の構成と同じである。
そして、前記「第8 甲7発明に基づく申立理由のうち取消理由通知に採用しなかったものについて」「4 本件発明7〜9についての当審の判断」「(3)申立人の主張(申立理由7−2、申立人意見1−4、申立人意見1−5及び1−6)について」アのとおり、甲2〜甲4及び甲8には、相違点12に係る本件発明7〜9の構成は開示されていない。
したがって、甲2〜甲4及び甲8は、相違点47に係る本件発明7〜9の構成も開示せず、甲8発明並びに甲2、甲3、甲4及び甲8に記載の技術を組み合わせても、相違点47に係る本件発明7〜9の構成の構成には至らないから、申立人の主張は採用できない。

イ 申立人意見1−5及び1−6について
申立人は、本件発明8は、本件訂正前の請求項2の構成要件と、本件訂正後の請求項7の構成要件とからなるので、申立理由2−3と申立人意見1−4により、当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立人意見1−5)。
また、本件発明9は、本件訂正前の請求項4の構成要件と、本件訂正後の請求項7の構成要件とからなるので、申立理由4−3及び申立人意見1−4により、当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立人意見1−6)。

しかしながら、本件発明7の構成要件、すなわち、相違点47に係る本件発明7の構成(発明特定事項7A)は、前記アのとおり、前記相違点12に係る本件発明7の構成と同じであり、相違点12に係る本件発明7の構成について申立人意見1−4が採用できないことは、前記「第8 甲7発明に基づく申立理由のうち取消理由通知に採用しなかったものについて」「4 本件発明7〜9についての当審の判断」「(3)申立人の主張(申立理由7−2、申立人意見1−4、申立人意見1−5及び1−6)について」イで示したとおりである。
したがって、相違点47に係る本件発明7の構成についても申立人意見1−4は採用できないから、申立人意見1−4に依拠した本件発明8及び9についての主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明7〜9は、甲8発明並びに甲8及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。


むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1〜9を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜9を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記非電源側分割ユニットで発生する熱を前記電源側分割ユニットに伝熱可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する放熱用接続部が備えられている情報通信装置。
【請求項2】
電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットにおける設置面の対向空間側に露出する部位に対して着脱自在に装着可能に構成され、
前記電源側分割ユニットの前面部には、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で設置面の対向空間側に露出する被装着部が備えられ、
前記非電源側分割ユニットの前記電源側分割ユニット側となる後面部には、前記電源側分割ユニット側の被装着部に対して装着自在な装着部が突出形成され、その装着部は、後方から見て前記非電源側分割ユニットの全体よりも大きさが小さい情報通信装置。
【請求項3】
電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
前記非電源側分割ユニットが前記電源側分割ユニットに装着されたとき、前記非電源側分割ユニットと前記電源側分割ユニットとを装着状態でロックするロック手段が備えられ、
前記ロック手段によるロックを解除するロック解除操作部が、設置面に埋設状態で設置された状態で設置面の対向空間側に露出する部位に備えられている情報通信装置。
【請求項4】
電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットに対して設置面の対向空間側から着脱自在に装着可能に構成され、
前記電源側分割ユニットの前面部は、前記非電源側分割ユニットの後面部に突出形成された装着部が内嵌状態で装着可能な被装着部が形成された中間部位と、設置面の前面に当接させる取り付けフレームに固定自在に構成されて前記中間部位よりも外方に配置された外側部位とを有し、
前記取り付けフレームは、設置面に貫通形成される設置用孔の後面側に配置されて前記電源側分割ユニットが内部に配置されるコンセントボックスと、設置面の前面側に配置される化粧カバーとを固定自在に構成されている情報通信装置。
【請求項5】
WAN側の通信ケーブルが接続可能なWAN用接続部が前記電源側分割ユニットに備えられ、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを通信可能な状態で接続する通信接続部が備えられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の情報通信装置。
【請求項6】
前記電源側分割ユニットに対して、機能又は仕様の異なる複数種の前記非電源側分割ユニットの各々が選択的に装着可能に構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報通信装置。
【請求項7】
機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成されている請求項1又は3記載の情報通信装置。
【請求項8】
電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットにおける設置面の対向空間側に露出する部位に対して着脱自在に装着可能に構成され、
機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成されている情報通信装置。
【請求項9】
電源部と、前記電源部から供給される電力にて作動する無線通信部と、前記電源部から供給される電力にて作動して前記無線通信部を制御する制御部とを備え、設置面に埋設状態で設置されて外部の情報通信端末との間で無線通信を行う情報通信装置であって、
前記電源部を備えて設置面に埋設状態で設置可能な電源側分割ユニットと、
前記無線通信部及び前記制御部の少なくともいずれかを備えて前記電源側分割ユニットに対して着脱自在に装着可能な非電源側分割ユニットと、
前記電源側分割ユニットに前記非電源側分割ユニットが装着されたとき、前記電源側分割ユニットから前記非電源側分割ユニットに電力供給可能な状態で前記電源側分割ユニットと前記非電源側分割ユニットとを接続する電源接続部と、が備えられ、
前記非電源側分割ユニットは、前記電源側分割ユニットが設置面に埋設状態で設置された状態で、前記電源側分割ユニットに対して設置面の対向空間側から着脱自在に装着可能に構成され、
機能又は仕様の異なる複数種の前記電源側分割ユニットの各々に対して、前記非電源側分割ユニットが選択的に装着可能に構成されている情報通信装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-11-25 
出願番号 P2018-111341
審決分類 P 1 651・ 851- YAA (H04B)
P 1 651・ 857- YAA (H04B)
P 1 651・ 113- YAA (H04B)
P 1 651・ 121- YAA (H04B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 丸山 高政
寺谷 大亮
登録日 2021-03-10 
登録番号 6850767
権利者 因幡電機産業株式会社
発明の名称 情報通信装置  
代理人 宮地 正浩  
代理人 宮地 正浩  

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