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審決分類 |
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) A23F 審判 全部申し立て 1項1号公知 A23F 審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857 A23F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A23F 審判 全部申し立て 2項進歩性 A23F 審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 A23F 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A23F 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 A23F 審判 全部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更 A23F |
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管理番号 | 1393986 |
総通号数 | 14 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-02-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-10-13 |
確定日 | 2022-11-28 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6858516号発明「液状食品の濃縮方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6858516号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−7〕について訂正することを認める。 特許第6858516号の請求項3及び4、6及び7に係る特許を維持する。 特許第6858516号の請求項1、2及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6858516号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜7に係る特許についての出願は、平成28年9月9日に出願され、令和3年3月26日にその特許権の設定登録がされ、同年4月14日に特許掲載公報が発行され、その後、同年10月13日に、本件特許の請求項1〜5及び7について、特許異議申立人 大村豊(以下、「申立人A」という。)により、同年同月14日に、本件特許の全請求項について、特許異議申立人 簑さくら(以下、「申立人B」という。)により、それぞれ、特許異議の申立てがされたものである。 そして、令和4年3月22日付けで当審合議体から取消理由が通知され、同年5月24日に、訂正請求書及び意見書が提出され、同年6月10日付けで、当審合議体から特許法第120条の5第5項に基づく通知がされ、同年7月15日に申立人Bから意見書が提出されたものである。 なお、特許法第120条の5第5項に基づく通知に対し、申立人Aから意見書の提出はなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正請求の趣旨 本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜7について訂正(以下、「本件訂正」という。)することを求めるものである。 2 訂正の内容 本件訂正の内容は、以下の訂正事項1〜6のとおりである。下線は訂正箇所を示す。 なお、訂正前の請求項1〜7について、請求項2〜7はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1〜7にそれぞれ対応する訂正後の請求項1〜7に係る本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項について請求されたものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「前記正浸透プロセスが、中空糸膜状の支持膜と、前記支持膜の外表面もしくは内表面、またはこれらの双方の面上の分離活性層とを有する、中空糸状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記分離活性層が、ポリアミドからなる、 請求項1または2に記載の濃縮方法。」 と記載されているのを、 「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法であって、 前記液状食品がコーヒー抽出液であり、 前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御し、 前記正浸透プロセスが、中空糸膜状の支持膜と、前記支持膜の外表面もしくは内表面、またはこれらの双方の面上の分離活性層とを有する、中空糸状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記分離活性層が、ポリアミドからなる、 濃縮方法。」 と訂正する。 請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4及び7も同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に、 「前記正浸透プロセスを、前記平膜状の正浸透膜がモジュール化されたプリーツ型モジュールまたはスパイラル型モジュールを用いて行う、請求項5に記載の濃縮方法。」 と記載されているのを、 「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法であって、 前記液状食品がコーヒー抽出液であり、 前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御し、 前記正浸透プロセスが、支持層と、前記支持層上の分離活性層とを有する、平膜状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持層が、不織布からなり、 前記分離活性層が、支持膜とポリアミドとからなり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記正浸透プロセスを、前記平膜状の正浸透膜がモジュール化されたプリーツ型モジュールまたはスパイラル型モジュールを用いて行う、 濃縮方法。」 と訂正する。 請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に、 「正浸透プロセスに用いられる誘導溶液が、塩類、糖類、モノアルコール類、グリコール類、または重合体から選ばれる誘導溶質の水溶液である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の濃縮方法。」 と記載されているのを、 「正浸透プロセスに用いられる誘導溶液が、塩類、糖類、モノアルコール類、グリコール類、または重合体から選ばれる誘導溶質の水溶液である、請求項3、4、および6のいずれか一項に記載の濃縮方法。」 と訂正する。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否の判断 (1)訂正事項1、2及び4について 訂正事項1、2及び4は、それぞれ、請求項1、2及び5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、訂正事項1、2及び4が、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項3について 訂正事項3は、請求項1又は2の記載を引用する訂正前の請求項3のうち、請求項1の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式の請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 そして、訂正事項3は、訂正前の請求項3について、何ら実質的な内容の変更を伴うものでないから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 また、請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4及び7についての訂正事項3に係る訂正についても、同様である。 (3)訂正事項5について 訂正事項5は、請求項1又は2の記載を引用する請求項5の記載を引用する訂正前の請求項6のうち、請求項1の記載を引用する請求項5の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式の請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 そして、訂正事項5は、訂正前の請求項6について、何ら実質的な内容の変更を伴うものでないから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 また、請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7についての訂正事項5に係る訂正についても、同様である。 (4)訂正事項6について 訂正事項6は、請求項1〜6の記載を引用する訂正前の請求項7について、請求項1、2及び5を削除する訂正事項1、2及び4に伴い、引用する請求項を削除して減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、訂正事項6が、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 4 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−7〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 前記第2のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項3、4、6及び7に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項3、4、6及び7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 以下、本件特許の請求項3、4、6及び7に係る発明を、請求項順にそれぞれ、「本件特許発明3」などといい、これらをまとめて「本件特許発明」ともいう。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法であって、 前記液状食品がコーヒー抽出液であり、 前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御し、 前記正浸透プロセスが、中空糸膜状の支持膜と、前記支持膜の外表面もしくは内表面、またはこれらの双方の面上の分離活性層とを有する、中空糸状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記分離活性層が、ポリアミドからなる、 濃縮方法。 【請求項4】 前記正浸透プロセスを、前記中空糸状の正浸透膜がモジュール化された中空糸膜モジュールを用いて行う、請求項3に記載の濃縮方法。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法であって、 前記液状食品がコーヒー抽出液であり、 前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御し、 前記正浸透プロセスが、支持層と、前記支持層上の分離活性層とを有する、平膜状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持層が、不織布からなり、 前記分離活性層が、支持膜とポリアミドとからなり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記正浸透プロセスを、前記平膜状の正浸透膜がモジュール化されたプリーツ型モジュールまたはスパイラル型モジュールを用いて行う、 濃縮方法。 【請求項7】 正浸透プロセスに用いられる誘導溶液が、塩類、糖類、モノアルコール類、グリコール類、または重合体から選ばれる誘導溶質の水溶液である、請求項3、4、および6のいずれか一項に記載の濃縮方法。」 第4 特許異議申立理由及び取消理由 1 特許異議申立人が申し立てた理由 (1)申立人Aについて 申立人Aは、訂正前の請求項1〜5及び7に係る発明の特許について、証拠方法として甲第1号証〜甲第13号証を提出し、概要、次の申立理由A1〜A4を主張している。 ア 申立理由A1(新規性) 本件特許の請求項1、2及び7に係る発明は、甲第11号証及び甲第13号証の記載も参酌すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2及び7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 イ 申立理由A2(進歩性) 本件特許の請求項1〜5及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第1号証〜甲第8号証のいずれかに記載された発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜5及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ウ 申立理由A3(サポート要件) 本件特許の請求項1〜5及び7に係る発明の解決しようとする課題は、「香気成分を有する液状食品、特にコーヒー抽出液から濃縮コーヒーを製造する過程において、香気成分の損失を最小限にし、香気量の多い濃縮コーヒーを製造する方法を提供する」ことである。 一方、本件特許明細書において、具体的に上記課題を解決したものと認められるのは、極めて限定された実施例の正浸透プロセスのみである。 しかしながら、正浸透による濃縮であっても、その態様によっては、香気成分が損なわれたり、香気量の多い濃縮コーヒーを製造できなくなるものと認められる。 そうすると、甲第1号証〜甲第2号証、甲第8号証〜甲第10号証及び甲第13号証に示される、本件特許の出願時の技術常識などを踏まえても、単に、請求項1及び2のように広範な透水量を規定したり、請求項3〜5及び7のように広範な正浸透膜や誘導溶液を規定するだけでは、本件特許明細書において具体的に課題を解決できたものと認められる態様(実施例)との乖離が著しく、本件特許発明の課題を解決できるものとは認められない。 したがって、本件特許の請求項1〜5及び7に関し、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 エ 申立理由A4(明確性要件) 本件特許の請求項1及び2は、正浸透プロセスにおける透水量を「0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下」及び「0.5kg/(m2×hr)以上10kg/(m2×hr)以下」の範囲に制御する旨を規定する。 しかし、「制御する」ケースには、(1)正浸透プロセス(濃縮)中、透水量を「終始」当該範囲内に維持するよう制御するケースと、(2)正浸透プロセス(濃縮)における透水量が、少なくとも一時的に当該範囲となるように制御するケースという、2つのケースがあるものと認められ、上記請求項1及び2の記載からは、いずれのケースであるか不明である。 そうすると、これらのいずれでのケースであるかによって、請求項1及び2の技術的範囲が変動することとなり、結果として、当該発明の範囲が不明確なものとなっている。 よって、請求項1及び2並びにこれらを引用する請求項3〜5及び7の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 オ 証拠方法 申立人Aが提出した甲第1号証〜甲第13号証について、以下それぞれ順に、「甲A1」〜「甲A13」という。 甲A1:米国特許第5281430号明細書及び全文訳 (公開日:1994年1月25日) 甲A2:Journal of Food Engineering, 2012,Vol.111,No.3,p.483−489 及び部分訳 甲A3:特開2016−150308号公報 (公開日:平成28年8月22日) 甲A4:特表2013−545593号公報 甲A5:特開2016−155078号公報 (公開日:平成28年9月1日) 甲A6:国際公開第2016/024573号 (公開日:2016(平成28)年2月18日) 甲A7:特開昭57−12802号公報 甲A8:特開2014−39915号公報 甲A9:Journal of Membrane Science, 2012,Vol.396,p.1−21及び部分訳 甲A10:Journal of Food Engineering, 2011,Vol.106,No.1,p.48−52 及び部分訳 甲A11:Journal of Membrane Science, 2013,Vol.445,p.220−227及び部分訳 甲A12:特開2013−198893号公報 甲A13:Separation and Purification Technology,2010,Vol.71,No.2, p.144−151及び部分訳 (2)申立人Bについて 申立人Bは、訂正前の請求項1〜7に係る発明の特許について、証拠方法として甲第1号証〜甲第9号証を提出し、概要、次の申立理由B1〜B3を主張している。 ア 申立理由B1(新規性) (ア)申立理由B1−1(新規性) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第1号証〜甲第5号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (イ)申立理由B1−2(新規性) 本件特許の請求項3及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第3号証〜甲第5号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項3及び4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (ウ)申立理由B1−3(新規性) 本件特許の請求項5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (エ)申立理由B1−4(新規性) 本件特許の請求項7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第1号証又は甲第5号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 イ 申立理由B2(新規性) 本件特許の請求項1〜4及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明(甲第5号証)であって、特許法第29条第1項第1号に該当するから、請求項1〜4及び7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 ウ 申立理由B3(進歩性) (ア)申立理由B3−1(進歩性) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第1号証〜甲第5号証のいずれかに記載された発明及びその他の甲号証に示された技術的事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (イ)申立理由B3−2(進歩性) 本件特許の請求項3及び4係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第3号証〜甲第5号証のいずれかに記載された発明及びその他の甲号証に示された技術的事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (ウ)申立理由B3−3(進歩性) 本件特許の請求項5及び6係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第1号証に記載された発明及びその他の甲号証に示された技術的事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項5及び6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (エ)申立理由B3−4(進歩性) 本件特許の請求項7係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた甲第1号証又は甲第5号証に記載された発明及びその他の甲号証に示された技術的事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 エ 申立理由B4(進歩性) 本件特許の請求項1〜4及び7係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明(甲第5号証)及びその他の甲号証に示された技術的事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜4及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 オ 証拠方法 申立人Bが提出した甲第1号証〜甲第9号証について、以下それぞれ順に、「甲B1」〜「甲B9」という。 甲B1:米国特許第5281430号明細書 (公開日:1994年1月25日) 甲B2:国際公開第2016/027869号 (公開日:2016年2月25日) 甲B3: 甲B3の1:Ederna社のevapos(登録商標)の紹介動画 URL:https://www.labtube.tv/ video/MTAxMzY0. 甲B3の2:甲B3の1が掲載されているURLの画面 及び動画の特定場面のスナップショットのプリントアウト 甲B4:evapos(登録商標):The Green Future of Instant Coffee URL:https://www.ederna.com/ Fichiers/pages/125824 applicationnote_ederna_ instantcoffee_r.pdf 甲B5: 甲B5の1:Aquatech China in Shanghai におけるヨルグ・ボーゲル博士のプレゼンテーション資料 甲B5の2:Aquatech China in Shanghai 2016において、ヨルグ・ボーゲル博士が甲B5の1の プレゼンテーションを行っていることを撮影した写真 甲B5の3:Aquatech China in Shanghai 2016の開催日時及び場所を示すURLからのプリントアウト URL:https://www.showsbee.com/ fairs/22616−Aquatech− China−2016.html 甲B6:特開平3−98563号公報 甲B7:特開昭50−39682号公報 甲B8:Journal of Membrane Science, 2010,Vol.355,p.158−167及び抄訳 甲B9:Journal of Membrane Science, 2006,Vol.279,p.588−600及び抄訳 なお、甲B1は、甲A1と同じ文献であるため、以下では、甲B1は甲A1のみで示す場合もある。 2 当審合議体が通知した取消理由 訂正前の請求項1〜2、5及び7に係る発明の特許について、当審合議体が令和4年3月22日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)理由1(新規性) 本件特許の請求項1〜2及び7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1〜2及び7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)理由2(進歩性) 本件特許の請求項1〜2、5及び7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1〜2、5及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 引用文献1(甲A1及び甲B1): 米国特許第5281430号明細書 引用文献2(甲A2): Journal of Food Engineering,2012, Vol.111,No.3,p.483−489 引用文献3(甲A11): Journal of Membrane Science,2013, Vol.445,p.220−227 引用文献4(甲A13): Separation and Purification Technology,2010,Vol.71,No.2, p.144−151 引用文献5(甲A9): Journal of Membrane Science,2012, Vol.396,p.1−21 第5 当審合議体の判断 当審合議体は、本件特許発明3、4、6及び7に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 1 甲号証に記載された事項 なお、甲号証の記載はすべて全角にして転記する。以下、本決定全体について同様である。 また、証拠に記載された事項を示す場合は、単に(甲A1a)などと示す。 (1)甲A1(及び甲B1)(訳文で示す。) (甲A1a)「請求の範囲 ・・・ 8.ジュースを直接浸透圧濃縮(DOC)するための方法であって、以下の工程(a)、(b)及び(c)を有する直接浸透圧濃縮方法。 (a)連続流でジュースを浸透圧濃縮装置のジュース入口に提供し、前記装置は、外壁、第1チャンバーに接続された流路入口と流路出口、第2チャンバーに接続された浸透圧剤(OA)の入口と出口、及び複数の濃縮セルとを有する密閉装置を含む浸透圧濃縮装置であって、各濃縮セルは、第1チャンバーを規定する第1の側面及び第2チャンバーを規定する第2の側面を有する半透膜と、平行に配置された複数の支持部材とを含み、第2チャンバー内の浸透圧剤の流体圧よりも高い圧力の流体圧を第1チャンバー内のジュースに加えると、半透膜は、支持部材の間で第2チャンバーに偏向し、第1チャンバー内に波形の流路を形成し、 (b)浸透圧濃縮セルの第1チャンバーを通して約0.01m/秒から約2m/秒の速度で、ジュースをポンプで送り、 (c)第2チャンバーに、約0.01m/秒から約1m/秒の速度で浸透圧剤をポンプで供給する。」(15欄下から20行〜16欄最終行) (甲A1b)「発明の技術分野 本発明は、第1の膜表面での乱流を促進して膜表面の汚れを防止する構造を有する、浸透圧濃縮装置及び浸透圧濃縮セルに関する。・・・ 発明の背景 浸透圧濃縮セルは、水を選択的に除去することにより、フルーツジュースなどの食品を濃縮するためによく使用される。・・・ 浸透圧濃縮セルでは、水が食品から拡散し、半透膜を経てはるかに低い含水量の溶液に濃縮される。浸透圧濃縮システムは、フルーツジュースなどの食品に損傷を与える可能性のある熱を使用せずに食品を濃縮できるという利点がある。これにより、蒸発プロセスに関連する品質の低下の多くが防止される。・・・ ほとんどの濃縮ジュースは、蒸発器を使用して作られる。これは、揮発性香料の損失、製品の変性及び自己酸化という、濃縮に伴う品質問題の原因となる。揮発性物質は水よりも沸点が低いため、蒸発プロセス中に揮発性物質が失われる。一部の揮発性物質は蒸気の蒸留によって回収できるが、このシステムはせいぜい部分的にしかうまくいかず、プロセス全体に莫大なコストがかかる。揮発性物質はフレッシュジュースなどのさまざまな製品に関連する香りの原因となるため、揮発性物質が失われると製品の品質が低下する。・・・ ジュースの濃縮中の揮発性物質の損失と自己酸化の問題を解決するための以前の試みには、さまざまな低温濃縮技術が含まれる。食品の場合、低温技術には、凍結濃縮、逆浸透圧法(RO)、及び直接浸透圧濃縮(DOC)が含まれる。・・・ ・・・ROは、半透膜(多孔質になるように製造された薄いポリマー)を介してジュースから水を絞り出すように動作する。半透膜の細孔構造は十分に小さいため、水などの小さな分子は通過できるが、大きな有機物の分子は通過できない。ROの欠点は、膜が急速に汚れ、ジュース濃縮物を得るために非常に高い圧力(例えば、3000psi)が必要になることである。 直接浸透圧濃縮(DOC)は、他の低温濃縮プロセスのように研究されていない。DOCは半透膜を使用する。ただし、DOCは、圧力で水を絞り出す代わりに、水のモル分率が低い溶液を使用して、製品から水を引き出す。水のモル分率が低いこの溶液は浸透圧剤(OA)である。・・・ ・・・したがって、膜表面に高度の乱流を誘発して、これらの分子がより強く結合して付着する前に、これらの分子を膜表面から一掃することが望ましい。」(1欄4〜2欄54行) (甲A1c)「発明の概要 本発明は、浸透圧濃縮セル及び浸透圧濃縮装置(・・・)を提供し、各セルは、第1の半透膜表面に高乱流を有する流体設計の第1チャンバーを有する。第1チャンバーの流路の流れ方向は絶えず変化する。浸透圧剤(OA)は、第2チャンバー内の半透膜の第2の側面を、好ましくは支持部材間の曲がりくねった経路を、流れと同じ方向に、ジュースよりわずかに低い圧力で流れる。」(5欄3〜15行) (甲A1d)「図面の簡単な説明 図1は、浸透圧濃縮セルの一部の側面を示している。支持部材は、紙面の内外に延びる平行に配置された真っ直ぐな棒である。このセルでは、支持部材の中心間の距離は約2.5cmであり、支持部材の高さは約2cmである。動作中、ジュースとOAとの間の圧力差は30psi未満に保持され、支持部材間の膜の曲率半径(すなわち、曲がり)は約2.0cmである。流路は、膜間の曲線の矢印で示されている。流れの方向が絶えず変化するため、流路は高度の乱流を引き起こす。OAは、支持部材(すなわち、第2チャンバー)の間の間隙を通って、好ましくはジュースの流れ方向に垂直な方向に流れる。 ・・・ 図6は、本明細書の実施例4に記載されているコーヒーを濃縮するときの流束(flux)を示している。コーヒーのBrix数は直線的に増加した。」(7欄6〜50行) (甲A1e)「本明細書で使用されるジュースとは、水又はアルコールなどの別の種類のものを選択的に除去して濃縮ジュースを作成するために濃縮される任意の液体を指す。ワインなどのアルコール飲料の場合、濃縮されるジュースは低アルコールワイン又は薄いワインである。溶媒としての水分を除去するために濃縮されるジュースの例には、フルーツジュース(オレンジ、リンゴ、レッドラズベリー、ナシ、クランベリー、グアバ、グレープフルーツ、レモン、その他の柑橘系の果物、トロピカルフルーツ又はベリーなど)、トマト又はニンジンジュースなどの野菜ジュース、コーヒーや紅茶、牛乳や乳製品、アロエベラなどの特製ジュース、香水や香料が含まれる。」(8欄13〜25行) (甲A1f)「半透膜は、非水性ジュースの場合は疎水性、水性ジュースの場合は親水性である。親水性膜の例には、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリスルホン、他の高分子親水性材料、及び前記の材料の組み合わせから形成された複合膜が含まれる。」(8欄57〜63行) (甲A1g)「浸透圧剤(OA)は、選択した溶媒(通常、果物や野菜のジュースの場合は水、ビールやワインの場合はエタノール)をジュースからOAに浸透圧で引き込むように設計される。浸透圧は、最初はOA内の溶質(例えば、塩、砂糖、グリコール、フレーバーや香料成分などの有機揮発性物質)の方が高くなる。」(9欄52〜58行) (甲A1h)「実施例1 この実施例は、異なるジュースを濃縮するために以下の実験を実施するために作られた上部モジュール及び下部モジュールからなる1つのセルを含む本発明のDOC装置のパイロットスケールのプロトタイプの実施形態を示す。さらに、装置内に複数のセルを作成するための中間モジュールは、DOC装置のスループットを増加させるために追加の第1チャンバーを作成することによって装置の効率を増加させるために作製された。 上部モジュールと下部モジュールは、長方形の鏡像コンポーネント(・・・)である。パイロットモデルは、28cm×100cmの長方形のポリカーボネートで作製された。各コンポーネントの厚さは2.5cmで、内部スペースには平行な棒状の支持部材が収納されている。これも、溶剤で固定されたポリカーボネート製である。支持膜は2.5cm離して配置した。内部空間は長方形で、膜を密閉するのに役立つOリングで囲まれている。100分子量のカットオフを有する三酢酸セルロース半透膜を、内部空間とわずかに重なるように各内部の長方形の空間に配置し、その半透膜は、1つの第1チャンバーと2つの第2チャンバーを有するDOCセルを形成するように上部モジュール及び下部モジュールが結合されるとき、第1チャンバーを形成するようにシールされる。・・・ 実施例2 この実施例は、実施例1に記載の本発明のパイロットスケールの装置を使用したオレンジジュースの濃縮の実施形態である。・・・ 実施例3 この実施例は、実施例1に記載の本発明のパイロットスケールの装置を使用したトマトジュースの濃縮の実施形態である。・・・ 実施例4 この実施例は、インスタントコーヒー又は液体コーヒー濃縮物の製造におけるステップとしてのコーヒーの濃縮の実施形態である。連続するコーヒーバッチを、OAとして60−70Brix HFCS(高果糖コーンシロップ:55%果糖、42%ブドウ糖、3%スクロース)を使用して、5Brixから、56Brixと63Brixの間までに濃縮した。これらの実験には、単一のセルと単一の膜セットを使用した。膜は、8〜10時間の使用ごとに、5〜15分間水で洗い流すことによって洗浄した。このフラッシング後、(透明なプラスチック材料で作製されている)セル内にコーヒーの堆積物は見られなかった。セルは、バッチ間にULTRASILクリーナーで5分間の再循環を行い、次いで、水でリンスして洗浄した。 これらの実験の合計実行時間は150時間であった。図6に示すように、流束率はコーヒー濃度に応じて変化することが見出された。時間の経過に伴う流束の低下(汚染率の尺度)は最小限であった。シングルストレングスコーヒーを定期的に添加することにより、20Brixコーヒーを8時間使用したが、その間、流束の低下は測定されなかった。45Brixコーヒーを使用した同様の実験では、6時間で約20%の低下が見られた。」(13欄1行〜14欄45行) (甲A1i)「 」(図1) (甲A1j)「 」(図6) (2)甲A2(訳文で示す。なお、表1は原文と部分訳で示す。) (甲A2a)「正浸透による液体食品の膜濃縮:プロセスと品質の観点から」(タイトル) (甲A2b)「食品の工業的な熱処理は、最終製品の官能特性や栄養特性に大きな影響を与える可能性がある。代替プロセスとして、膜技術が広く研究されてきた。正浸透(FO)は、食品産業で使用される有望な膜技術である。このプロセスの唯一の推進力は、透過性のある膜の反対側を向流で流れる2つの溶液間の浸透圧の差である。そのため、熱水処理や従来の膜処理と比較して、FOの主な利点は、低水圧、低処理温度、低ファウリング傾向、高固形分処理能力、容易なスケールアップなどである。この総説では、液体食品を濃縮するためのFOアプリケーションの可能性について、詳細かつ最新の情報をまとめている。主なプロセスパラメータがろ過性能に与える影響と、最終製品の官能的及び栄養的要素に与える影響について、幅広い食品について説明し、考察する。」(483ページ要約) (甲A2c)「現在の市場の需要を満たすために、食品産業における最近の開発は、非熱的な技術に焦点を合わせている。膜処理は、室温で作動し、低エネルギー消費と高性能を発揮し、スケールアップが容易で、広範囲の食品汚染物質を除去できるため、液体食品の清澄化と濃縮のための興味深い代替手段となっている。現在、最も採用されている膜処理は、精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、逆浸透(RO)などである。しかし、これらの技術を食品業界で使用するには、高い水圧、限られた最大到達濃度、濃度の偏り、高い有機ファウリング環境など、いくつかの操作上の制限がある(Petrotosら,2010)。 直接浸透とも呼ばれる正浸透(FO)は、有望な膜技術である。食品を濃縮する概念としてのFOは1960年代にさかのぼり(Popperら,1966)、その推進力は浸透圧の差のみである。水分の移動は、半透膜を介して供給側(低濃度)から抽出液側(高濃度)へ、双方の浸透圧差がゼロに近くなるまで行われる。この意味で、FOは従来の食品工業化技術と比較して、以下のようないくつかの利点がある。 (1)作動時の油圧が低いため、電気エネルギーのコストを削減できる。 (2)処理温度が低いため、食品の品質要因の熱劣化を回避でき、電気エネルギーを節約できる。 (3)製品の回収率が高く、ブラインの環境への排出が少ない。 (4)不可逆的なファウリングが少ないため、膜の洗浄や交換にかかるコストが低い。 (5)固形分の多い供給物の効率的な処理。 (6)モジュール化されており、スケールアップが容易である。 液体食品の浸透圧濃縮に関するレビューが発表されている(WongとWinger,1999;PetrotosとLazarides,2001;Jiaoら,2004)。しかし、これらの論文では、操作パラメータがプロセス性能や最終製品の品質に与える影響には焦点が当てられていない。さらに最近では、液体食品の濃縮にはFOが適していることが多くの研究で示されている。そこで、本論文の目的は、幅広い種類の液体食品を濃縮するためのFOについて説明し、考察することであり、この技術が食品の感覚的及び栄養的要素に与える影響を従来の技術と比較することである。特に、操作上のプロセスパラメータと最終製品の品質に焦点を当て、浸透膜処理に関する将来の傾向と課題についても検討する。」(484ページ左欄2行〜右欄7行) (甲A2d)「3.食品の濃縮 液体食品の加工にFOを利用した最初の記録は1966年のことである。表1は、その後に行われた液体食品加工のためのFO技術研究の一覧である。Popperら(1966)は、管状及び平板状の酢酸セルロース高分子RO膜を用いて、16〜60Brixのブドウジュースの全可溶性固形分(TSS)を濃縮し、飽和塩化ナトリウム(NaCl)水溶液をドロー溶液として用いて、平均2.5kgm−2h−1の水流束を達成した。しかし、製品への塩分の拡散が激しく、ジュースの味が損なわれたため、この膜技術を食品に応用するための検討は進まなかった。1990年代半ば、BeaudryとLampi(1990a)は、この問題を最小限に抑えるため、改良型薄膜複合RO膜を使用して、オレンジジュースのろ過時の塩分除去率を高めた。著者らは、4.0kgm−2h−1の水流束を達成し、塩と全有機酸を99.9%以上除去したことで、膜を通過する供給物溶液の溶質の通過と供給物への塩化ナトリウムの移動を妨げた。 BeaudryとLampi(1990b)は、72Brixの砂糖シロップをドロー溶液として使用してオレンジジュースを42Brixまで濃縮し、プロセス温度30℃で平均水流束1.3kgm−2h−1を達成した。著者らは、各濃縮段階で供給ストリームを冷蔵した結果、濃縮ジュースの風味と色を高く保つことができた。このシステムで適用される低温と圧力は、飲料の感覚的な特性を維持するために重要であった(BeaudryとLampi,1990b)。 FO法と真空蒸発法で濃縮したラズベリージュースの官能分析と百分率分析を行った。浸透剤として69Brixのコーンシロップを使用し、25℃で10〜45Brixの直接浸透濃縮を行った。両プロセスによる処理では、アントシアニンの損失が少なく、重合した色素の増強が少なく、風味の違いもないことから、両ジュースは品質が良く、市販サンプルと同等であることがわかった(Wrolstadら,1993)。FO濃縮ジュースは、強いラズベリーの香りと風味を示し、いくつかの市販サンプルとよく比較された。1994年、Herronらは、オレンジジュースとコーヒーの濃縮に、フルクトース/グルコース溶液(74Brix)を使用した。最大浸透圧流束はそれぞれ4kgm−2h−1と3kgm−2h−1で、従来の真空蒸発装置で製造したものに比べて優れた品質の製品が得られた。」(485ページ右欄9行〜486ページ左欄10行) (甲A2e)「 (表1 FOによる液体食品の濃縮についてのまとめ 参考資料 食品 ドロー溶液 温度 平均流束 ・・・ (℃) (kgm−2h−1) ・・・ Herronら コーヒー 74Brix n.m. 4.0 (1994) オレンジ 果糖/ブドウ糖 3.0 ・・・ n.m.は言及されていない。)」(485ページ表1) (甲A2f)「4.1.膜とモジュールの条件 FOでは、フルーツジュースが膜の活性層又は支持層のいずれかに向かって流れるように構成することができる。・・・ FO濃縮には、一般的に芳香族ポリアミドRO膜が使用されている(・・・)。・・・ 市販されているFO膜は、Hydration Technologies Inc.(HTI,Albany,OR)の非対称酢酸セルロース膜がある。・・・市販の酢酸セルロース膜よりも優れた性能を示すポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリベンゾイミダゾールなどのポリマーを用いたFO膜の合成に関する研究がいくつか発表されている(・・・)。・・・ FOのろ過性能を向上させるもう一つの方法は、処理液の乱流を大きくすることである。」(487ページ左欄7〜50行)。 (甲A2g)「4.2.ドロー溶液 浸透圧剤溶液は、FOプロセスにおける推進力の源であり、液体食品の濃縮のためのその選択は、いくつかの基準に基づいて行われる。例えば、原料液よりも浸透圧が高く、回収可能で毒性がなく、安価であることが望ましい。 ドロー溶液の特性が浸透圧駆動プロセスに与える影響は、Wilke−Chang方程式(WilkeとChang,1955)で説明できる。この方程式では、質量拡散係数は対象となる溶液の粘度に反比例する。Petrotosら(1998)は、トマトジュースを濃縮するためのドロー溶液を構成するいくつかの溶質を評価した。その結果、浸透圧剤として塩化ナトリウムを4molL−1使用した場合、水の膜透過流束が最も優れており(3.10kgm−2h−1)、ブドウ糖を3.5molL−1(0.37kgm−2h−1)、ショ糖を1.7molL−1(0.55kgm−2h−1)、塩化カルシウムを2.65molL−1(2.33kgm−2h−1)、及びポリエチレングリコールを1.2molL−1(0.70kgm−2h−1)使用した場合と比較しても遜色なかった。これらの結果は、食塩水の粘度特性が大きく影響している。低粘度の薬剤は、拡散性が高く、浸透媒体の分極層を介した物質移動の抵抗が小さいため、高いプロセス性能が得られる。 より高濃度のドロー溶液を使用すると、食塩水の浸透圧が上昇し、その結果、供給物に対する浸透圧の差が生じるため、水流束が増加する。しかし、溶質イオンは浸透プロセスにより、浸透剤から供給溶液に拡散する。この意味で、ナトリウムの大量摂取による健康障害が増加していることから、塩化ナトリウムの利用については慎重に検討する必要がある。」(487ページ右欄3行〜488ページ左欄15行) (3)甲A3 (甲A3a)「【請求項8】 正浸透膜を備えた濃縮装置を使用して経口又は外用液体を濃縮する方法であって、 前記濃縮装置は、原料液通過室と吸水液通過室とが正浸透膜によって隔てられた原料液濃縮部を有しており、 前記原料液通過室に濃縮前の経口又は外用液体を連続的に又は間欠的に供給しつつ、前記吸水液通過室には、前記濃縮前の経口又は外用液体よりも浸透圧が高い吸水液を循環させることにより、前記原料液通過室に供給された経口又は外用液体の水分の一部が前記正浸透膜を介して吸水液通過室に拡散するものであり、 前記経口又は外用液体の水分で希釈された吸水液を吸水液濃縮部に送り、吸水液濃縮部で濃度が回復した吸水液を前記吸水液通過室に還流させることにより、前記吸水液通過室における吸水液の濃度を原料液通過室における経口又は外用液体よりも高い濃度に維持している、 経口又は外用液体の濃縮方法。」 (甲A3b)「【0001】 本願発明は、経口又は外用液体の濃縮装置及びその洗浄方法に関するものである。ここに、経口の液体とは、人又は動物が口にするもの全体を意味しており、その典型として、濃縮ジュースや清涼飲料等の飲料、麺つゆ・各種出汁・調味料・スープのような液状(汁状)の食べ物、液状の健康補助食品、経口医薬品などが挙げられる。 【0002】 また、外用液体とは、人又は動物の体に塗る液状のものを総称しており、典型として、化粧水やローション、液状ハンドクリームのような液状化粧料、皮膚や口中に塗布又は散布する液状医薬品などが挙げられる。また、液状とは水分を含んで流動性があることを意味しており、ジェル状やシャーベット状のものも含んでいる。更に、経口液体にしても外用液体にしても、消費者或いは患者が最終的に使用するものには限らず、原料になるものも含んでいる。 【0003】 飲料・食品の分野では、例えば、果汁ジュース、スープや麺つゆ、出汁などにおいて、流通や保管に要するスペース・費用を節約するために濃縮品が広く使用されている。これら濃縮タイプの飲料・食品は、原料を製造してから濃縮処理しており、濃縮方法としては、一般に、特許文献1に開示されているように、煮沸して水分を除去する蒸発法が採用されている。しかし、蒸発法では、熱によって品質が変化したり、固形成分が崩れてしまったりする不具合が懸念される。 ・・・ 【0008】 しかし、正浸透膜を使用した濃縮方法では、水分の透過・拡散によって吸水液が希釈されるため、正浸透膜の片側において吸水液を高い濃度に維持しけなければならないという制約がある。また、効率向上やコスト抑制といった要請もある。 【0009】 本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、飲料や食品等の経口・外用液体を正浸透膜にて濃縮する装置及び方法を、改良された状態で提供しようとするものである。 ・・・ 【0018】 本願各発明では、原料液(濃縮対象である経口又は外用液体)から拡散した水によって吸水液が希釈されても、吸水液は吸水液濃縮部に送られて濃度が回復してから吸水液通過室に流入する(循環する)。このため、吸水液を連続的に供給して、原料液を連続的に濃縮することができる。これにより、高い作業効率を確保することができる。」 (甲A3c)「【0028】 正浸透膜の目詰まりを抑制するには、吸水液通過室に固形物が入るのはできるだけ避けるべきである。この点、請求項7の構成を採用すると、吸水液の循環経路で固形物をフィルターに補集できるため、吸水液をいわばサラサラの状態に保持して正浸透膜の目詰まりを抑制することができる。」 (甲A3d)「【0071】 (6).その他 本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、正浸透膜は、平膜や中空糸状のものなど、各種の構造のものを使用できる。また、吸水液の濃縮方法は必ずしも蒸発・凝縮式のものを使用する必要はないのであり、例えば逆浸透膜を使用することも可能である。吸水液として例えば飽和食塩水を使用すると、吸水液の目詰まりは殆どないため、逆浸透膜を使用した濃縮でも実用に足りる。」 (4)甲A4 (甲A4a)「【請求項1】 正浸透膜であって、 親水性多孔質支持層と、 第1のポリアミドバリア層とを含み、 前記支持層及び前記バリア層が、薄膜複合膜に組み込まれており、かつ前記薄膜複合膜内で互いに隣接配置されていることを特徴とする正浸透膜。 ・・・ 【請求項6】 請求項1に記載の正浸透膜であって、 当該膜が、平坦シートとして構成されていることを特徴とする正浸透膜。 【請求項7】 請求項1に記載の正浸透膜であって、 当該膜が、中空ファイバーとして構成されていることを特徴とする正浸透膜。 ・・・ 【請求項14】 産業産物または産業廃棄物を濃縮する方法であって、 請求項1に記載の正浸透膜を含む正浸透装置を使用して産業産物または産業廃棄物を濃縮することを特徴とする方法。」 (甲A4b)「【0002】 正浸透は、水濃度が相対的に高い溶液(フィード溶液)から水濃度が相対的に低い溶液(ドロー溶液)へ、水が透過性膜を通過して流れるプロセスである。しなしながら、他の望ましい膜特性(例えば、低い溶質流束、汚染に対する耐性、良好な機械的ハンドリング特性など)と共に、高い水流束を提供するためには、問題が依然として存在する。したがって、正浸透及び浸透圧発電用の改良された膜を提供することは、当技術分野における進歩となるであろう。 ・・・ 【0003】 本発明の薄膜複合膜を使用することにより、正浸透(forward osmosis:FO)及び浸透圧発電(pressure retarded osmosis:PRO)の性能を向上させることができる。・・・ ・・・ 【0010】 本発明の実施形態による膜及び/または膜要素は、様々な用途を有する。一般的に、用途には、本明細書で説明した1若しくはそれ以上のFO膜を含む正浸透装置を使用して、産業産物及び/または産業廃棄物を濃縮することが含まれる。このような用途は、食品及び飲料産業、バイオ燃料生産産業、石油及びガス産業などにおいて期待される。・・・さらなる用途は、本明細書で説明した1または複数のFO膜を含むPRO装置を使用して圧力及び/またはエネルギーを生成する浸透圧発電に関する。・・・ ・・・ 【0029】 食品産業における用途では、食品製品の製造中に、本発明の膜を水の除去または再生に用いることができる。本発明の膜は、ジュース濃縮物を作製するのに、またはジャガイモやトマトなどの水分含有量が高い食品を脱水するのに用いることができる。」 (5)甲A5 (甲A5a)「【請求項1】 半透膜ユニットと、 前記半透膜ユニットを介して互いに仕切られた第1の領域および第2の領域と、 前記第1の領域に低浸透圧溶液を供給する低浸透圧溶液供給部と、 前記第2の領域に高浸透圧溶液を供給する高浸透圧溶液供給部と、を備え、 前記低浸透圧溶液が供給された前記第1の領域から、前記高浸透圧溶液が供給された前記第2の領域へと、前記半透膜ユニットを介して流体移動を生じさせる正浸透処理システムであって、 前記半透膜ユニットが、ポリケトン多孔膜支持層と、該ポリケトン多孔膜支持層上に配された半透膜スキン層とから成る複合半透膜を含むことを特徴とする正浸透処理システム。 【請求項2】 前記ポリケトン多孔膜支持層が中空糸形状又は平板形状である、請求項1に記載の正浸透処理システム。 【請求項3】 前記半透膜スキン層が、酢酸セルロース、ポリアミド、ポリビニルアルコール/ポリピペラジンアミド、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリピペラジンアミド、ポリイミドのいずれかから成る、請求項1又は2に記載の正浸透処理システム。 ・・・ 【請求項7】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の正浸透処理システムを用いて、含水物から水を除去することを特徴とする、含水物の濃縮方法。」 (甲A5b)「【0010】 本発明の正浸透処理システムは、半透膜の支持層としてポリケトン多孔膜を用いることにより、支持層の内部濃度分極を抑え、透水量を効果的に高めることが出来る。さらに、有機性化合物を含む低浸透圧流体に対する耐久性を高めることが出来、長時間性能の安定した正浸透処理システムとして使用できる。従って、本発明の正浸透処理システムは、例えば、海水の淡水化、かん水の脱塩、排水処理、各種有価物の濃縮、さらにはオイル・ガスの掘削における随伴水の処理、浸透圧の異なる2液を利用した発電、糖類や肥料や冷媒の希釈などにも好適に用いることができる。」 (甲A5c)「【0043】 [含水物の濃縮方法] 本発明の含水物の濃縮方法は、本発明の正浸透処理システムを用いるものである。 ・・・ 【0044】 濃縮や脱水の対象となる含水物としては、正浸透膜ユニットによって、濃縮が可能な含水物であれば特に制限はなく、有機性化合物または無機性化合物のいずれでもよい。 ・・・ 【0048】 更に、含水有機物の例としては、果汁、酒類、食酢などの液体食品、液体肥料、生活排水、工業排水、揮発性有機化合物(VOC)を回収した水溶液などが挙げられる。果汁、酒類、食酢などの液体食品においては、正浸透膜(複合体)による濃縮であれば、蒸発などの手法と異なり、低温でも濃縮が可能であるため、風味を損なわずに、濃縮、減容できるという点で特に望ましい。 また、本発明の正浸透膜(複合体)は、耐酸性を有するため、水と酢酸など有機酸の混合物からの有機酸の濃縮、エステル化反応促進のための系中の水の除去などにも有効に利用できる。 一方、無機性化合物が含まれる溶液を濃縮または脱水する場合、無機性化合物としては、例えば、金属粒子や金属イオン、硫酸イオン、硝酸イオンなどのアニオンなどが挙げられる。」 (6)甲A6 (甲A6a)「[請求項1] 半透膜の性能を有する薄膜層がポリケトン支持層に積層されていることを特徴とする、正浸透膜。 [請求項2] 前記半透膜の性能を有する薄膜層が、酢酸セルロース、ポリアミド、ポリビニルアルコール/ポリピペラジンアミド複合膜、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリピペラジンアミド、またはポリイミドから成る薄膜層である、請求項1に記載の正浸透膜。 ・・・ [請求項13] 請求項1〜11のいずれか一項に記載の正浸透膜から成る半透膜ユニットと、 前記半透膜ユニットを介して互いに仕切られた第1の領域および第2の領域と、 前記第1の領域に低浸透圧溶液を供給する低浸透圧溶液供給部と、 前記第2の領域に高浸透圧溶液を供給する高浸透圧溶液供給部と、 を備え、そして、 前記低浸透圧溶液が供給された前記第1の領域から、前記高浸透圧溶液が供給された前記第2の領域へと、前記半透膜ユニットを介して流体移動を生じさせる機能を有することを特徴とする、正浸透処理システム。 ・・・ [請求項16] 請求項13または14に記載の正浸透処理システムを用いて、含水物から水を除去することを特徴とする、含水物の濃縮方法。」 (甲A6b)「[0018] 本発明の正浸透膜は、支持層における溶質の内部濃度分極が抑えられており、 透水量が効果的に向上されており、 濃厚溶液側からの溶質の逆拡散が低レベルに維持されており、そして 有機化合物を含む低浸透圧流体に対する耐久性が高い。従って、本発明の正浸透膜を適用して得られる正浸透処理システムは、長期間安定して高い性能を発揮することができる。 本発明の正浸透処理システムは、例えば、海水の淡水化、かん水の脱塩、排水処理、各種有価物の濃縮、オイル・ガスの掘削における随伴水の処理、浸透圧の異なる2液を利用した発電、糖類・肥料・冷媒の希釈などに、好適に用いることができる。」 (甲A6c)「[0059]<含水物の濃縮方法> 本発明の含水物の濃縮方法は、本発明の正浸透処理システムを用いるものである。 ・・・ 濃縮および脱水の対象となる含水物としては、正浸透膜ユニットによって、濃縮が可能な含水物であれば特に制限はない。濃縮の対象物は、有機化合物および無機化合物のいずれであってもよい。 ・・・ [0063] 濃縮または脱水対象の含水物としては、さらに、果汁、酒類、食酢などの液体食品;液体肥料;生活排水、工業排水などの排水;揮発性有機化合物(VOC)を回収した水溶液などが挙げられる。液体食品の濃縮において本発明の方法を適用すると、蒸発などの加熱を要する手法と異なり、低温における濃縮が可能となるため、風味を損なわずに濃縮または減容できるという点で、特に望ましい。」 (甲A6d)「[0080]<平板状正浸透膜の作製および性能評価> [実施例1] ・・・ このようにして得られた積層体につき、90℃において600秒間のアニーリング処理を行い、水で十分洗浄することにより、ポリケトン支持層上にポリアミド薄膜層が形成された正浸透膜1を得た。」 (7)甲A7 (甲A7a)「2.特許請求の範囲 1 半透膜を介して低浸透圧性液体と高浸透圧性媒体とを接触させることによって低浸透圧性液体中の水分子を高浸透圧性媒体側に膜透過させたのち、水分子によって稀釈された高浸透圧性媒体を濃縮して前記と同等以上の高浸透圧性媒体とし、該高浸透圧性媒体を前記半透膜を介して低浸透圧性液体と接触させるために再利用することを特徴とする透過膜利用による水の抽出システム。 2 上記稀釈された高浸透圧性媒体の濃縮手段が膜法、冷凍法、蒸発法より選ばれたる一つ以上の手段である特許請求の範囲第1項記載の透過膜利用による水の抽出システム。」(1ページ左欄4〜最終行) (甲A7b)「被処理液を直接濃縮することはないから、該液の特性を変性させるとか、濃縮装置の物質移動面に対する汚染、スケール付着なども避けられる。」(2ページ右上欄6〜9行) (甲A7c)「たとえば被処理液が食品の場合には媒体として食塩あるいは糖液を利用するとよく、廃水の場合には媒体として食塩をはじめとする一価乃至二価の陽イオンを有する塩が利用される。」(3ページ左下欄14〜18行) (甲A7d)「本発明の方法は、食品の浸透濃縮にも利用でき、その場合には、膜室AのA−1室側に濃縮せんとする食品、たとえばジュースを供給し、A−2室側へ水分子を膜透過せしめ、かくて濃縮されたジュースを2から排出し、排出される稀釈された媒体3の有する圧力エネルギーを回収した後、適当な蒸発装置で濃縮し、再度濃縮された高浸透圧媒体としてA−2室へ送って利用する。」(3ページ右下欄3〜11行) (8)甲A8 (甲A8a)「【請求項1】 0.4質量%を超えるゼオライトを含有することを特徴とする正浸透膜。 ・・・ 【請求項8】 含水有機物と、該含水有機物より浸透圧の高い水溶液を、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の正浸透膜を介して接触させ、該含水有機物から該浸透圧の高い水溶液に水を浸透させることにより、該含水有機物を濃縮することを特徴とする含水有機物の濃縮方法。」 (甲A8b)「【0003】 そのため、海水や排水の浸透圧をそのまま水分離に利用する、正浸透分離方法が注目されている(特許文献1)。正浸透分離方法は、エネルギー消費量が少ない、膜がファウリングしにくい、プロセスが単純である、といった利点があるため、技術的に期待され、正浸透圧分離による海水の淡水化、有機物等の濃縮の他、正浸透圧エネルギーを駆動力として発電を行う正浸透圧発電プロセスの提案もなされている(特許文献2)。 【0004】 現在、正浸透分離に使用されている膜は、酢酸セルロースやポリイミドなど高分子の薄膜である(非特許文献1)。 正浸透分離に使用される膜は、膜が受ける種々のプロセス条件に耐えうることが要求されるが、従来の高分子正浸透膜は、酸や有機溶媒への耐久性や耐熱性、ファウリング除去の洗浄に使用される次亜塩素酸などの薬剤への耐久性、膜強度に課題があり、適用範囲が制限されていた。 ・・・ 【0009】 本発明の目的は、酸や有機溶媒に対し十分な耐久性をもち、耐熱性に優れ、ファウリング除去の洗浄に使用される次亜塩素酸などの薬剤への耐久性も高く、また、十分な膜強度をもち、膜が受ける種々のプロセス条件に耐えうる上に、正浸透膜としての膜性能にも優れるゼオライトを用いた正浸透膜を提供することにある。」 (甲A8c)「【0029】 支持層が高分子で構成される場合、支持層はその表面に正浸透膜(分離活性層)を形成しうるような、化学的安定性があり、支持層中の溶媒の拡散を妨げない多孔質構造のものであればどのようなものであってもよい。具体的な材質としては、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルサルホンなどが挙げられる。また、具体的な形状としては、メッシュ状、スポンジ状、多孔質不織布状などが挙げられる。」 (甲A8d)「【0038】 支持層を有する正浸透膜複合体の形状は特に限定されず、管状、中空糸状、モノリス型、ハニカム型などあらゆる形状を採用できる。また大きさも特に限定されず、例えば、管状の場合は、通常長さ2cm以上200cm以下、内径0.05cm以上2cm以下、厚さ(正浸透膜と支持層との合計の厚さ)0.5mm以上4mm以下が実用的で好ましい。」 (甲A8e)「【0126】 [含水有機物の濃縮方法] 本発明の含水有機物の濃縮方法は、本発明の正浸透膜(複合体)を膜分離手段として用いるものである。 ・・・ 【0128】 濃縮の対象となる含水有機物としては、本発明の正浸透膜(複合体)によって、濃縮が可能な含水有機物であれば特に制限はなく、如何なる含水有機物であってもよい。 ・・・ 【0133】 更に、含水有機物の例としては、果汁、酒類、食酢などの液体食品、液体肥料、生活排水、工業排水、揮発性有機化合物(VOC)を回収した水溶液などが挙げられる。果汁、酒類、食酢などの液体食品においては、正浸透膜(複合体)による濃縮であれば、蒸発などの手法と異なり、低温でも濃縮が可能であるため、風味を損なわずに、濃縮、減容できるという点で特に望ましい。」 (9)甲A9(訳文で示す。) (甲A9a)「近年、正浸透(FO)は、発電、海水淡水化、廃水処理、食品加工など、様々な分野で注目を集めている。しかし、FOでの濃度分極、膜ファウリング、逆方向への溶質の拡散、新しい膜の開発やドロー溶液の設計など、いくつかの重要な課題が残っている。・・・これらの潜在的な利点は、FOの低エネルギー消費、低ファウリング傾向、洗浄の低減又は容易さ、低コスト、高塩分除去及び高水流束にある。・・・このレビューは、FOに関心のある研究者に、FOの最近の進展について明確な概要を提供するものである。」(1ページ要約) (甲A9b)「2.正浸透の利点 FOは、浸透圧を利用したプロセスに必要な水圧が低いことが主な理由で、さまざまなメリットが期待できる。・・・最近の研究では、FOにおける膜のファウリングは比較的低く[10]、可逆的であり[25,30]、流体力学を最適化することで最小化できることが示されている[31]。・・・ さらに、液体食品や医薬品加工の分野では、FOは、供給物が加圧又は加熱されないため、供給物の品質を劣化させることなく、供給物の物理的特性(色、味、香り、栄養など)を維持できるという利点がある[18,34,35]。」(2ページ右欄1〜25行) (甲A9c)「3.4.液体食品の濃縮 食品業界では、安定性を高め、保存期間を改善し、保管及び輸送コストを削減するために、液体食品から水分を除去することがしばしば必要とされる[18]。従来の蒸発濃縮技術と比較して、FOは、液体食品の品質を劣化させることなく、その物理的特性(色、味、香り、栄養など)を維持できるという利点がある[18]。そのため、FOは、トマトジュース[16,17]、マッシュルーム[90]、フルーツジュース[19,35,91−93]、梨[94]、ニンジン[95]、パパイヤ[96,97]、ジャガイモ[98,99]、アプリコット[100]、イチゴ[101]、パイナップル[102]及びコショウ[103]など、さまざまな含水食品の濃縮に広く使用されている。これらの用途では、FOは液体食品から水分を除去するための浸透性脱水プロセスとして機能する。」(6ページ右欄18〜31行) (甲A9d)「4.4.2.薄膜複合膜 現在、HTIから市販されている2種類のFO膜は、複数の層で構成された膜である。・・・ ・・・ フラットシートTFC(薄膜複合)FO膜は、最初に、Elimelechの研究室でポリエステル不織布にキャストされた多孔質ポリスルホン(PSf)基板上でのm−フェニレンジアミン(MPD)と塩化トリメソイル(TMC)の界面重合によって調製された[134]。」(13ページ左欄下から11行〜右欄28行)。 (10)甲A10(訳文で示す。) (甲A10a)「3.1.化学薬品と膜 ショ糖、ブドウ糖、塩化ナトリウム及びペクチン(分子重量30,000〜100,000g/mol)はMerck India Ltd,Munbai,Indiaから調達した。すべての化学薬品は分析用のものを使用した。本調査では、Osmotek,Inc.,Corvallis,OR,USAによって開発された正浸透非対称膜を使用した。膜は、強度を提供するためにナイロンメッシュ(多孔質支持層)に埋め込まれた三酢酸セルロースの非常に薄い半透性の非多孔質活性スキン層で構成されていた。膜は本質的に親水性が高かった。走査型電子顕微鏡で測定した膜の厚さは、50から100μmの間で変化することが見出された。膜はMcCutcheonら(2005)によって特徴づけられた。」(49ページ右欄下から13行〜最下行) (11)甲A11(訳文で示す。) (甲A11a)「正浸透(FO)は、プロセスがシンプルでエネルギー消費量が少ないことから、携帯型の水和バッグ、海水淡水化、土壌浸出水処理、塩水濃縮などの分野で注目されている。しかし、現在の最先端の逆浸透(RO)膜は、市販されている微多孔質支持膜の高い内部濃度分極(ICP)と高い物質移動抵抗のために、FOプロセスにおいて比較的低い水流束を示す。本研究では、カルボキシル化ポリスルホン(CPSF)を直接ポリスルホン(PSF)官能化によって合成し、親水性で機械的に安定した微多孔性支持膜として検討した。疎水性ポリマーの骨格に親水基を導入すると、過度の水膨潤により機械的強度が低下することが多い。しかし、CPSFの機械的特性(置換度,DS=0.49−0.85)は元のPSFと同様であり、親水性も保持していた。様々な条件でCPSF微多孔膜を作製し、ポリアミド薄膜/CPSF複合膜のFO水流束と塩分通過量を測定し、比較した。CPSFを用いたFO膜は、PSFを用いたFO膜(同条件で10.5L/m2h、1.5g/m2h)と比較して、水の流束量(FOモードでの水流束:18L/m2h、塩分通過量:2.2g/m2h、塩化マグネシウム1Mをドロー溶液とし、活性層を脱イオン水に対向させた場合)が大幅に増加したが、これは親水性の向上とICPの減少によるものと考えられる。」(220ページ要約) (甲A11b)「1.はじめに ・・・新しいFO膜は、ナノ材料複合膜[ナノファーバー、ゼオライト、CNT]を含めて広範囲に開発されているが、多くの研究は、PATFC膜[4−6]やセルロース膜[7−9]などの従来のRO膜の化学的及び物理的な改良にのみ焦点を当てている。・・・しかし、一部の膜(例えば、セルロース系のFO膜)は、水の流束量が少ないにもかかわらず高い除去特性と機械的安定性を備えているため、実用化されている。」(220ページ左欄1行〜右欄5行) (12)甲A12 (甲A12a)「【請求項1】 25℃の塩化ナトリウム濃度35g/L、圧力1.0MPaの水溶液を、長さが約70cmの中空糸型半透膜の外側に流し、25℃の塩化ナトリウム濃度0g/Lの淡水を中空糸型半透膜の一方の開口端部の内側に流して他方の開口端部から10kPa以下で排出させた場合に、濃度差を駆動力として、中空糸型半透膜の内側から外側へ向かって流れる透水量の2倍が外側へ流入する流量であって、かつ中空糸型半透膜の内側から排出の流量が該透水量の10%となる条件での透水量が30〜90L/m2/日であり、塩化ナトリウム濃度1.5g/Lの水溶液を、25℃、圧力1.5MPaで中空糸型半透膜の外側から内側へ向かって濾過した際の透水量が100〜300L/m2/日である中空糸型半透膜であって、外径が100〜(280)μmであり、内径が50〜200μmであり、中空率が24〜42%であることを特徴とする中空糸型半透膜。 ・・・ 【請求項3】 請求項1に記載の中空糸型半透膜を組み込んだことを特徴とする中空糸型半透膜モジュール。」 (甲A12b)「【0003】 例えば、半透膜を用いた海水と淡水との濃度差を利用して得られる水によるエネルギーの生成は、クリーンなプロセスであり、再生可能エネルギーとして期待されている。特に中空糸型半透膜は、スパイラル型半透膜に比べ単位膜面積当たりの透水量は小さいが、膜モジュール容積当たりの膜面積を大きくとることができるため、全体として透水量を大きくとることができ、容積効率が非常に高いという利点があり、コンパクト性に優れる。また、高濃度水溶液と淡水の両方をモジュール内に供給して半透膜を介して接触させることにより発生する濃度差を駆動力とする水処理の場合に、スパイラル型に比して、膜表面の濃度分極を小さく抑えられ、濃度差の低下を抑制できる利点がある。」 (13)甲A13(訳文で示す。) (甲A13a)「3.4.膜 本調査では、Osmotek,Inc.,Corvallis,OR,USAによって開発された逆浸透非対称膜を使用した。膜は、強度を提供するためにナイロンメッシュ(多孔質支持層)に埋め込まれた三酢酸セルロースの非常に薄い半透性の非多孔質活性スキン層で構成されていた。膜は本質的に親水性が高かった。走査型電子顕微鏡で測定し膜の厚さは、50から100μmの間で変化することが見出された[22,23,29]。」(146ページ右欄下から13〜5行) (甲A13b)「4.結果と考察 アントシアニン抽出物と塩化ナトリウム溶液をそれぞれ供給物溶液と浸透圧剤溶液として用いて、正浸透実験を行った。浸透圧剤溶液の濃度、供給物及び浸透圧剤の流束が、膜透過流束に及ぼす影響を調べた。また、供給物の温度が膜透過流束に与える影響についても評価した。 4.1.浸透圧剤溶液の濃度が膜透過流束に及ぼす影響 水やアントシアニン抽出物を供給物とした場合の浸透圧剤(塩化ナトリウム)濃度の膜透過流束への影響を、モードIとIIで比較した(図3)。実験中の供給物と浸透圧剤の流束は100ml/minに維持した。モードIで純水を供給物とした場合の膜透過流束は、浸透圧剤の濃度を1.0Mから6.0Mに上げることで、12.4から17.5l/m2hに増加することが分かった(p≦0.05、図3)。正浸透中の流束の増加は、浸透圧剤溶液の濃度の上昇により、膜全体の浸透圧差の増加に起因し、その結果、膜を通る水の移動の推進力が増加した為と考えられる。さらに、対応する濃度の浸透圧剤溶液では、モードIの膜透過流束値がモードIIに比べて高かった(9.3−13.8l/m2h)。これは、モードIでは濃度分極がごくわずかであるという事実に起因する可能性がある。しかし、モードIIでは、浸透圧溶質が支持層に拡散して濃度勾配が生じるため、濃度分極が顕著になる[22](図1a及びb)。 アントシアニン抽出物を供給物とした場合、濃度が1Mから6Mに増加すると、モードI及びIIの膜透過流束がそれぞれ2.7から4.4l/m2h及び7.5から12.3l/m2hに増加することが分かった(p≦0.05、図3)。モードIIの流束値は、対応するすべての濃度でモードIと比較して高かった。モードIの流束値が低いのは、供給物に高分子化合物が含まれているため、外部の濃度分極が大きく作用したためであり、これはモードIIでは存在せず、その結果、モードIに比べて高い推進力が得られたことに留意されたい(Δπc>Δπb、図1)。 ・・・ 4.2.供給物と浸透圧剤の流量が膜透過流束に及ぼす影響 モードI及びIIにおけるアントシアニン抽出物の膜透過流束に対する供給流量の影響を図4aに示した。実験中の浸透圧剤の流量と濃度は、それぞれ100ml/minと6.0Mに維持した。モードIで供給流量を50ml/minから125ml/minに増加させたところ、膜透過流束は4.2から4.7l/m2hに、アントシアニン濃度は50.9から57.8mg/l(p≦0.05)にそれぞれ増加することが分かった。一方、モードIIでは、膜透過流束とアントシアニン濃度がそれぞれ11.4から12.5l/m2h、54.1から67.1mg/l(p≦0.05)に増加することが分かった。 浸透圧剤の流量が、モードI及びIIの膜透過流束及びアントシアニン濃縮抽出物に及ぼす影響を図4bに示す。実験中の浸透圧剤溶液の供給流量と濃度は、それぞれ100ml/minと6.0Mに維持した。浸透圧剤の流量を50ml/minから125ml/minに増加させたところ、モードI及びIIでは、膜透過流束がそれぞれ3.8から4.6l/m2h及び10.0から12.71/m2h(p≦0.05)に増加することが分かった。同時に、アントシアニン濃度もそれぞれ50.9mg/lから57.76mg/l及び54.42mg/lから65.8mg/l(p≦0.05)に増加した。 4.3.膜透過流束に及ぼす供給物温度の影響 供給物温度を25〜40℃に上昇させたときのモードI及びIIにおける膜透過流束とアントシアニン含有量の変化を調べた(図5)。実験中、供給物と浸透圧剤溶液は、125ml/minの一定の流量で循環させた。実験中の浸透圧剤溶液の濃度は6.0Mに維持された。膜透過流束は、供給温度が25〜40℃に上昇するにつれて、モードI(4.7−5.1l/m2h)及びモードII(12.3−20.4l/m2h)で増加することが分かった。」(147ページ右欄4行〜148ページ右欄17行) (14)甲B2 (甲B2a)「[請求項1] 複数の中空糸で構成される中空糸糸束を有する正浸透複合中空糸膜モジュールであって、 前記中空糸が、微細孔性中空糸支持膜の内表面に高分子重合体薄膜の分離活性層を設けた中空糸であり、 前記中空糸糸束の膜面積が1m2以上であり、そして 前記分離活性層の厚み方向の断面を撮影した走査型電子顕微鏡画像における分離活性層部分の質量を測定する方法により算出された、前記中空糸糸束の半径方向および長さ方向における分離活性層の平均厚みの変動係数が0〜60%であることを特徴とする、前記モジュール。」 (甲B2b)「[0023] このような微細孔性中空糸支持膜の素材としては、微細孔性中空糸支持膜に形成できるものであればどのようなものでも使用できる。ただし、本実施形態における好ましい製造方法によって複合膜を製造するにあたり、使用されるモノマー溶液などによって化学的に損傷を受けないことが必要である。従って、耐薬品性、製膜性、耐久性などの観点から、微細孔性中空糸支持膜の素材としては、例えばポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とすることが好ましく、より好ましくはポリスルホンおよびポリエーテルスルホンから選ばれる少なくとも1種を主成分とすることであり、さらに好ましくはポリエーテルスルホンである。」 (甲B2c)「[0027] 前記高分子重合体薄膜における重合体としては、例えば、 多官能アミンから選択される少なくとも1種以上の第1モノマーと、 多官能酸ハライドおよび多官能イソシアネートから成る群より選択される少なくとも1種以上の第2モノマーと、 の重縮合生成物であることが好ましい。より具体的には、例えば 多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合反応により得られるポリアミド、 多官能性アミンと多官能性イソシアネートとの界面重合反応により得られるポリウレア などが挙げられる。分離活性層としてこれらの重合体薄膜を用いる場合の分離性能とは、純水とそれに溶解しているイオンなどの溶質とを分離する性能を指す。」 (15)甲B3 ア 甲B3の1 Ederna社のevapeos(登録商標)を紹介した動画である。 イ 甲B3の2 (甲B3の2a)動画が掲載されているURLの画面の印刷物 (表示内容の訳文) 2011年2月2日 edernaは、生命科学のための分離に関する解決の提供者である。当該会社は、中空繊維接触器(Hollow Fiber Contactors)(HFCs)を用いた分離システムの製造においてパイオニアである。edernaは、繊細な分子の濃縮に特化した蒸発器を開発する。evapeos及びevapeos Mini−Pilotと呼称されるedernaの製品は、研究室において、数百ミリリットルから20リットルまでの試料の処理に利用できる。edernaはさらに、evapeos及びHFCs技術に関し、高品質のサービスを国際的に提供する。サービスは、ユニットレンタル、方法開発、カスタムユニット製造を含む。 (甲B3の2b)動画の(00:03)場面のスナップショットの印刷物 (甲B3の2c)動画の(00:13)場面のスナップショットの印刷物 (表示内容の訳文) evapeos(登録商標) ライフサイエンス向けの新世代のエバポレーター (甲B3の2d)動画の(00:54)場面のスナップショットの印刷物 (表示内容の訳文) 水蒸気の移動 浸透圧剤 サンプル (甲B3の2e)動画の(01:18)場面のスナップショットの印刷物 (表示内容の訳文) 40℃における水流束(L/hr) ロータリーエバポレーター[真空下]:0.33 evapeos(登録商標)[大気圧]:1.0(3倍) (16)甲B4(訳文で示す。) (甲B4a)「evapeos(登録商標):インスタントコーヒーのグリーンフューチャー ・・・ ・・・ (コピーライト)2014 ederna.V.1.2」(1ページ1〜6行) (甲B4b)「はじめに ・・・ インスタントコーヒーの生産には、コーヒー濃縮物の濃縮工程がある。この工程は繊細であり、(コーヒーの)香りを損なわないよう製品を変化させないように、マイルドな条件下行わなければならない。しかしながら、現在では、この工程は高温下の蒸留によってのみ行われている。 evapeos(登録商標)はこの問題の解決のカギとなりうる。これは、野菜及び生物学的製品の濃縮を可能にする膜技術を含む工程である。evapeos(登録商標)の低温条件は、コーヒー抽出物の香りの維持を可能とする。さらに、evapeos(登録商標)は、エネルギー消費が少ないため、グリーンな工程である。 ・・・ 本稿の目的は、インスタントコーヒーの製造工程へのevapeos(登録商標)の導入の利点を示すことである。」(1ページ右欄1行〜左欄最終行) (甲B4c)「蒸発に代わる穏やかな代替品:evapeos(登録商標) 原理 evapeos(登録商標)は、膜を介して製品から抽出液体、即ち、浸透剤へ浸透濃縮水移動の原理を利用する。膜の各側の区画間の活性相違によって、移動は自然に生じる。さらに、水のみが膜を通過し、その他の成分は、製品中に維持される。 ・・・ 作業 evapeos(登録商標)を用いる濃縮作用は、バッチ又はセミバッチモードで行う。膜の片側に製品を流し、一方、膜のもう片側に浸透剤を流す。溶液が濃縮され、浸透剤が希釈される。膜モジュールを流した後、浸透剤は、図2に詳述したように、Machanical Vapour Recompression(MVR)によって継続的に再生される。evapeos(登録商標)は、作業の低エネルギー化のためにMVRの使用を推奨しているが、実際はあらゆる蒸発装置を用いることが可能である。 」(2ページ上段1〜最終行及び図2) (甲B4d)「インスタントコーヒーの製造プロセス インスタントコーヒーを入手するには、さまざまな手順がある。すべてのフレーバーを開発するために、コーヒー豆を焙煎する必要があり、その後、コーヒーはお湯で抽出される。得られた希釈コーヒーは濃縮する必要がある。最初に逆浸透を伴う一次濃縮のステップがあり、次に蒸発を伴う濃縮のステップがあり得る。通常、この目的には薄膜蒸発器缶が使用される。最後に、濃縮コーヒーは凍結乾燥又は噴霧乾燥される。 evapeos(登録商標)は、薄層蒸留器に置換することにより、インスタントコーヒー濃縮工程に容易に取り入れることが可能である。evapeos(登録商標)は、より低エネルギーで、高品質の製品を得ることを可能にする。 」(2ページ下段1行〜最終行及び図3) (甲B4e)「実験:コーヒー濃縮アッセイ 操作の技術的実現可能性を検証し、技術的経済的評価のためのデータを収集するために、evapeos(登録商標)プロセスを使用したコーヒー濃縮実験が実験室で実施された。逆浸透により予備濃縮を行った。 装置 この実験の目的のために、ederna Lab Unitが使用された。これは、0.5m2の特定の面積の膜技術を使用してevapeos(登録商標)プロセスをテストするように設計された使いやすい実験装置である。 濃縮するコーヒー溶液の初期容量は10Lである。コーヒー豆を粉砕してコーヒー溶液を調製した。次に、お湯(コーヒー100gに対して1L)を加えてコーヒーを抽出した。 次に、得られた溶液を濾過した。初期濃度は5%TSSであった。逆浸透後、到達した濃度は15%TSS*であった。 *TSS=総可溶性固形分 結果 コーヒー溶液について、20℃でevapeos(登録商標)工程を用いた結果、15%TSSから50%TSSの濃縮に達した。流れと濃度の変化を以下の図に示す: 感覚分析によって、コーヒーの香りの大半は濃縮工程によって影響されなかったことが明らかにされた、良品質の製品を得ることができた。」(3ページ上段1行〜右欄図5下4行並びに図4及び図5) (甲B4f)「インスタントコーヒー製造の最適化 実験的な濃縮結果と経済的データに基づいて、evapeos(登録商標)プロセスを可溶性コーヒー製造プロセスに組み込むことの利点を定量化するための研究が行われた。 研究の目的 この研究は、2つのインスタントコーヒー製造プロセスを比較するために実施された。どちらのプロセスでも、コーヒーは粉砕され、熱湯で抽出されてから濃縮され、最後に噴霧乾燥又は凍結乾燥される。 2つのプロセスを比較した。 ユニット1「evapeos(登録商標)なし」:希釈溶液を逆浸透、次に薄膜エバポレーターで濃縮した。この技術には、滞留時間が非常に短いという利点がある。そのため、製品を劣化させる時間はないが、多くのエネルギーを必要とするため、操作に費用がかかる。 ユニット2「evapeos(登録商標)使用」:希釈溶液を逆浸透によって15%TSSに濃縮し、次にevapeos(登録商標)プロセスによって50%TSSに濃縮した。 仮説 − 両方のユニットには、コーヒーを事前に濃縮できる逆浸透ユニットが装備されていた。 − evapeos(登録商標)ユニットは550m2の膜面を備えている。」(3ページ下段1行〜右欄8行) (17)甲B5 ア 甲B5の1 「The Aquaporin InsideTM Technology」と題する資料のスライド (甲B5の1a)スライド1 (甲B5の1b)スライド22 (表示内容の訳文) 事例研究: コーヒーの脱水 背景: コーヒー抽出物の脱水 コーヒー収率の増加+品質及び味の向上 製造部署において使用される水の量の減少 (甲B5の1c)スライド23 (表示内容の訳文) 事例研究: コーヒーの脱水 コーヒー抽出物 DS:1.5% ドロー溶液 1Mショ糖 膜 研究室規模の中空糸Aquaporin InsideTM正浸透モジュール 実行時間 45分 製品体積の削減 >90% 膜間の水の流束 見積もり3−5L(m2/h) 結果: アクアポリン正浸透膜は、コーヒー抽出物を、高収率で味を保ったまま、コスト効率良く脱水し、同時に、飲料製造の当初の材料を希釈する工程に使用することができる。 (甲B5の1d)スライド27 (表示内容の訳文) 事例研究: 都市下水 LundのKaellby下水処理場のパイロットプラント ・・・ 結果: このプロジェクトは、特に殺虫剤、低分子医薬品、重金属、微量有機物などの微量汚染物質を対象とする、MWWTにおけるAquaporin正浸透膜の可能性を示す 結果は2016年春/夏に発表予定 イ 甲B5の2 (甲B5の2a)甲B5の1のプレゼンテーションの様子を撮影した写真1 (甲B5の2b)甲B5の1のプレゼンテーションの様子を撮影した写真2 ウ 甲B5の3 (赤枠部分の訳文) Aquatech China 2016 プロセス、飲料水、廃水の業界をリードする見本市 日程:2016年6月15日〜2016年6月17日 会場:National Exhibition and Convention Center、上海、中国 (18)甲B6 (甲B6a)「2.特許請求の範囲 1)供給液の入口と出口及び透過液の入口と出口を有し、かつ食塩排除率が98%以上の中空糸膜モジュールを用い、供給液入口から中空糸外側に、加圧下に飲料液を、透過液入口から中空糸内側に、無機塩水溶液を通液することを特徴とする飲料液の濃縮方法。」(1ページ左欄4〜10行) (甲B6b)「(産業上の利用分野) 本発明発明は、果汁及びコーヒー等の飲料液の濃縮方法に関するものである。」(1ページ左欄15〜17行) (甲B6c)「本発明に用いられる中空糸膜素材としては、例えば酢酸セルロース、ポリアミド及び架橋性ポリアミドを表面層とする複合膜などが挙げられる。」(2ページ右上欄12〜14行) (19)甲B7 (甲B7a)「3.発明の詳細な説明 本発明は高分子重合体或いはその他の繊維形成性能を有する材料よりなる中空糸を用いた流体分離装置に関する。」(1ページ左欄13〜16行) (甲B7b)「本発明の流体分離装置は、溶液にその浸透圧以上の圧力を加えて純溶媒のみを浸出させるいわゆる逆浸透による流体分離の場合に使えるのみならず、正浸透による流体分離の場合にも使うことができ例えば人工腎臓あるいは野菜ジユース,飲料の濃縮などの目的にも使える。」(3ページ右下欄1〜6行) (20)甲B8(訳文で示す。) (甲B8a)「正浸透(FO)は、排水処理、水の精製及び海水の脱塩などの、広範な可能性のある応用のために、最近、集中的な研究が行われてきた。解決しなければならない主な課題の一つは、市販のRO膜と比較して、水の高い流動を生じさせることのできる最適なFO膜がない、ということである。多孔中空繊維基質の外表面(#A−FO)又は内表面(#B−FO)上に、超薄ポリアミドベースのRO様の表面薄層を伴う、2種類のタイプの薄層複合材料FO中空繊維が成功裏に製造された。これらの新規な複合材料FO中空繊維を、一連の標準的なプロトコールで特性付けし、FO工程に使用されている、市販で入手可能なFO平坦シート膜及び報告されているNF中空繊維に対して評価した。」(158ページ要約1〜8行) (甲B8b)「2.1.2. 中空繊維FO基質を調製及び特性付けるための化学薬品 基質調製のために、市販のポリマー、ポリエーテルスルホン(PES)を用いた。・・・ ・・・ 2.2. PES中空繊維基質の製造及び後処理 いずれの基質も、同じPESポリマー材料に基づいて作製されたが、異なる添加物及び異なる紡織(spinning)条件を用いた。」(159ページ左欄43行〜右欄6行) (21)甲B9(訳文で示す。) (甲B9a)「・・・ポリプロピレンの平坦なCelgard2400フィルム、Cegard X−10及びX−20中空繊維を、界面ポリマー化(IP)技術によって調製された薄層複合材料(TFC)膜の支持体として用いた。」(588ページ要約1〜4行) (甲B9b)「本研究において、IPによって形成された、表面修飾親水性ポリアミドフィルム及び繊維を、種々の方法によって特性付けした。」(589ページ右欄36〜38行) 2 本件特許明細書の記載 (1)背景技術に関する記載 「【0002】 一般に、香味(香気および/または味)成分を有する食品は、その成分を適度に含有することが重要である。消費者は、製品の味とともに、香気にも敏感であり、これを欠くと製品に対する感覚に悪影響を及ぼす。 香気成分の含有量は、特に液状食品の濃縮加工時に減少する可能性が大きい。各種ジュース、乳酸菌飲料などの乳製品、だし汁、コーヒーなどの分野において、濃縮加工時に香気成分を維持することは、重要な問題である。特にコーヒーの分野では、可溶性粉末コーヒーを調製する際に淹れたての香りを保つことは、最大の課題とされている。 【0003】 コーヒー抽出液の水分を単純に加熱蒸発させて濃縮すると、コーヒーの香気成分が蒸発して失われ、風味の低下した濃縮コーヒーしか得られない。 香気に優れる濃縮コーヒーを製造するために、散逸したコーヒーの香気成分を回収して濃縮したコーヒーと混合する方法、コーヒー豆粉砕物から直にコーヒー香気成分を取り出して濃縮したコーヒー抽出液と混合する方法などが検討されている。 ・・・ 【0005】 さらに、ろ過膜を使って香気成分を分離回収する方法も提案されている。特許文献3では、コーヒー抽出液を逆浸透膜によって濃縮する。しかしこの方法によると、除去した水分中に香気成分が含まれるため、濃縮除去液を減圧下で蒸発させて蒸散した香気成分を低温凝縮させて回収する工程を要する。この方法でも、蒸散した香気成分の凝縮による完全回収は難しい。コーヒー抽出液の逆浸透膜による濃縮では、コーヒーの固形成分が膜の目詰まりを起こし、十分な濃縮倍率が得られないという問題もある。 特許文献4には、逆浸透膜により得た濃縮除去液に、低圧の操作圧力の逆浸透膜処理を施すことにより、香気成分を逃さずに濃縮する方法が開示されている。しかしこの場合でも、最初の逆浸透膜による濃縮でコーヒーの固形成分が膜の目詰まりを起こし、十分な濃縮倍率が得られないという問題を有している。」 (2)発明が解決しようとする課題に関する記載 「【0007】 本発明の課題は、香気成分を有する液状食品、特にコーヒー抽出液から濃縮コーヒーを製造する過程において、香気成分の損失を最小限にし、香気量の多い濃縮コーヒーを製造する方法を提供することである。」 (3)課題を解決するための手段に関する記載 「【0008】 本発明者らは、上記の問題点を解消するために鋭意検討を進め、本発明を完成させた。 本発明は以下のとおりである。 [1] 正浸透プロセスによって濃縮を行うことを特徴とする、液状食品の濃縮方法。 [2] 前記液状食品がコーヒー抽出液である、[1]に記載の濃縮方法。 [3] 前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御する、[1]または[2]に記載の濃縮方法。 [4] 前記透水量を、0.5kg/(m2×hr)以上10kg/(m2×hr)以下の範囲に制御する、[3]に記載の濃縮方法。」 (4)発明の効果に関する記載 「【0009】 本発明の方法によると、液状食品を濃縮する際の香気成分の損失を最小限にし、香気量に優れる液状食品濃縮物を製造することができる。 本発明の方法は、特にコーヒー抽出液の濃縮に適する。本発明の方法によってコーヒー抽出液の濃縮を行うと、淹れたてと変わらない香気量を有する濃縮コーヒーを製造することができる。」 (5)発明を実施するための形態に関する記載 「【0011】 ・・・ 本明細書における香味成分とは、消費者が味覚として感じる食品の味および香りを発現する成分のことをいい、特に香りを発現する成分を香気成分という。 本発明は、正浸透プロセスにより、液状食品、特にコーヒー抽出液を、香気成分の劣化、飛散などによる損失を最小限に抑えながら、効率よく高倍率に濃縮することを可能にするものである。 【0012】 正浸透プロセスにおいては、処理液と誘導溶液とを、正浸透膜を介して接触させ、濃度が相対的に低い処理水から、濃度が相対的に高い誘導溶液に、両液の浸透圧差を駆動源として水が移動する。 従って、正浸透膜に印加される圧力は、送液のために必要な圧力のみでよい。そのため、処理水に浸透圧差以上の圧力を加える逆浸透による濃縮と比べて、濃縮に要するエネルギー(電力)を低減できることの他、高い圧力の印加に起因する膜の目詰まり(ファウリング)がほとんどなく、安定した透水量で長時間運転することが可能となる。 また、処理水を濃縮するために用いられる誘導溶液としては、海水など、自然界に存在する水も使用可能である。そのため、誘導溶液を準備するために要するエネルギーを低減できる。 さらに、正浸透プロセスを濃縮に用いることにより、濃縮工程における加熱が不要となるので、食品を加熱することによる香味成分の劣化がなく、香気成分の損失が少ない濃縮が可能になる。 ・・・ 【0014】 本発明における正浸透プロセスに使用される正浸透膜の形状としては、例えば、平膜、中空糸膜などが可能である。 ・・・ 【0020】 本発明における正浸透プロセスは、正浸透膜をモジュール化したうえで適用することが便利である。 ・・・ 【0024】 本発明における処理液の正浸透プロセスによる濃縮方法につき、図2を用いて説明する。 処理液タンク11には、処理液(濃縮すべき液状食品)が充填される。処理液は、ポンプ14により配管12を通って正浸透膜モジュール15に入り、該モジュール15を通過した後、配管13を通って処理液タンク11に戻る。 誘導溶液タンク16には、誘導溶液が充填される。誘導溶液は、ポンプ19により配管8を通って正浸透膜モジュール15に入り、該モジュール15を通過した後、配管18を通って誘導溶液タンク16に戻る。 ここで、処理液はコア側導管(図1における符号9および10)を介して中空糸側を構成する中空糸の内側を通り、誘導溶液はシェル側導管(図1における符号2および3)を介して中空糸の外側を通る。このときに処理液と誘導溶液とは、正浸透膜である中空糸の壁を介して接するが、両者が直接交わることはない。そして、処理液と誘導溶液とが中空糸の壁を介して接したときに、処理液中の水が正浸透膜を通って誘導溶液側に移動して、処理液が濃縮される。 ・・・ 【0025】 誘導溶液とは、処理液と比較して高い浸透圧を示し、正浸透膜を介して処理液から水を移動させる機能を有する溶液を指す。この誘導溶液は、誘導溶質を高濃度で含有することにより、高い浸透圧を発現する。溶媒は、処理液の溶媒と同じであることが好ましく、液状食品の場合、典型的には水である。 前記誘導溶質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなどの、水に易溶な塩類; ショ糖、果糖、ブドウ糖などの一般的な糖類; オリゴ糖、希少糖などの特殊な糖類; メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのモノアルコール類; エチレングルコール、プロピレングリコールなどのグリコール類; ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどの重合体; 上記重合体の共重合体などが挙げられる。 ・・・ 【0027】 正浸透膜モジュール15の透水量は、大きければ大きいほど好ましい。しかしながら、処理すべき原水(処理水)を、できるだけ圧損のない条件下で流すときに、処理水が枯渇して沈殿が発生するおそれを回避するため、透水量を200kg/(m2×hr)以下に調整することが好ましい。 本明細書における正浸透膜モジュール15の透水量とは、正浸透膜を挟んで処理液と誘導溶液を配置したときに、両液の浸透圧差によって処理液から誘導溶液に移動する水の量を、正浸透膜の単位面積当たり、および単位時間当たりに割り付けた量を意味しており、下記数式(1)により定義される。 F=L/(M×H)・・・(1) ここで、Fは透水量(kg/(m2×hr))、Lは透過した水の量(kg)、Mは正浸透膜の表面積(m2)、Hは時間(hr)である。 【0028】 本発明の濃縮方法において、透水量は、誘導溶液の濃度を調整することにより制御可能である。透水量を高くするほど濃縮効率は高くなるが、濃縮工程中に食品の成分が膜の表面に付着して透水量が低下するおそれがある。 例えばコーヒー抽出液を濃縮する場合の透水量としては、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲で濃縮するのが好ましい。濃縮効率、および膜の寿命を考慮すると、0.5kg/(m2×hr)以上10kg/(m2×hr)以下の範囲で濃縮するのがより好ましい。これより透水量が小さいと濃縮の効率が低下する場合があり、これより透水量が大きいと膜の寿命が低下する場合がある。 ・・・ 【0030】 本発明の正浸透プロセスを用いる濃縮方法では、系外部から印加することが必要な圧力は、処理液および誘導溶液を送液するための圧力のみである。従って、本発明の方法は、逆浸透プロセスを用いる濃縮方法のように高い操作圧力でろ過する必要がないから、処理液中の食品成分が膜表面へ吸着することによる目詰まり(ファウリング)が小さく、膜の寿命が長いのが特長である。」 (6)実施例の記載 「【0032】 [実験方法] (正浸透モジュールの作製) ポリエーテルスルホン(・・・)をN−メチル−2−ピロリドン(・・・)に溶解して20質量%の中空糸紡糸原液を調製した。二重紡口を装備した湿式中空糸紡糸機に上記の原液を充填し、水を満たした凝固槽中に押し出し、相分離により中空糸を形成した。・・・この中空糸を支持膜として用いた。 上記中空糸支持膜130本を、2cm径、10cm長の円筒状プラスチックハウジングに充填し、両端部を接着剤で固定することにより、・・・中空糸支持膜モジュールを作製した。 0.5L容器に、m−フェニレンジアミン10gおよびラウリル硫酸ナトリウム0.8gを入れ、さらに純水489.2gを加えて溶解し、界面重合に用いる第1溶液を0.5kg調製した。 別の0.5L容器に、トリメシン酸クロリド0.8gを入れ、n−ヘキサン399.2gを加えて溶解し、界面重合に用いる第2溶液0.4kgを調製した。 上記で製造した中空糸支持膜モジュールのコア側(中空糸の内側)に第1溶液を充填し、30分静置した後に液を抜いて、中空糸の内側に第1溶液の薄い液膜を形成した。この状態で、第2溶液をコア側に0.15L/分の流量で3分送液し、界面重合を行った。重合温度は25℃とした。 次いで、中空糸支持膜モジュールのコア側に50℃の窒素を30分流してn−ヘキサンを蒸散除去した。さらに、シェル側およびコア側の双方を純水により洗浄することにより、正浸透モジュールを作製した。 この正浸透モジュールの透水量は、処理液として純水を用い、誘導溶液として3.5質量%食塩水を用いた場合、10.12kg/(m2×hr)であった。 【0033】 (コーヒーの抽出) ドリップ式コーヒーフィルター付きの容量1.2LのSUS304製密閉容器を十分予熱して、コーヒー豆粉砕物(ドトールコーヒー製)70gを入れ、85℃の湯100mLを入れて1分間蒸らした後、85℃の湯900mLを加えて10分間コーヒー成分を抽出した。得られた抽出液の0.5Lを、密閉系のままフィルターでろ過しながら容量1LPTFE製タンクに移送して25℃まで冷却することにより、コーヒー抽出液を得た。 【0034】 (コーヒーの香気成分の分析) 測定サンプルとしては、上記のコーヒー抽出液、および濃縮後のコーヒー抽出液を水で所定倍率に希釈したものをそれぞれ用いた。各サンプル1mLを容量20mLのヘッドスペースボトルに入れ、窒素パージし、80℃にて1時間加熱した後、気相部分について15分間の固相マイクロ抽出(SPME)を行って、GC/MS分析に供した。本開示においては、上記の気相部分に存在する全有機成分を香気成分として、その定量を行い、濃縮前後の香気成分の維持率(重量%)を調べた。 【0035】 [実施例1] ・・・ 処理液タンク11にコーヒー抽出液0.5kgを入れ、誘導溶液タンク16に、濃度2重量%の食塩水1kgを入れた。誘導溶液である食塩水を、送液ポンプ19により配管17を通して370mL/分の流速で正浸透モジュール15のシェル側に送液した。モジュール15を出た食塩水は、配管18を通ってタンク16に戻して循環使用した。処理液であるコーヒー抽出液を、送液ポンプ14により配管12を通して170mL/分の流速で正浸透モジュール15のコア側に送液した。モジュール15を出たコーヒー抽出液は、配管13を通ってタンク11に戻して循環させた。この操作により、処理液タンク11中のコーヒー抽出液は徐々に濃縮されることになる。 【0036】 濃縮初期の透水量は4.1kg/(m2×hr)であった。 透水量が4.0±1kg/(m2×hr)の範囲内を維持するように、食塩水の濃度を処理液タンク11中のコーヒー抽出液の濃縮度に合わせて変えながら正浸透処理を継続し、最終的に50gまでコーヒーを濃縮した(濃縮倍率10倍)。上記の透水量を維持するために、食塩水の濃度は2重量%から5重量%まで変化させた。 【0037】 濃縮前のコーヒー抽出液、および濃縮後のコーヒー抽出液に純水を加えて10倍に希釈した希釈液をそれぞれサンプルとし、上記の方法によってコーヒー成分の分析を実施し、濃縮前後のコーヒー香気量の維持率を調べた。結果を表1に示す。 また、コーヒー抽出液の濃縮後、濃縮処理に使用した正浸透濃縮装置における正浸透膜の目詰まり(ファウリング)の有無を、以下の方法によって確認した。 濃縮処理後の正浸透濃縮装置をそのまま用い、処理液を元の濃縮前のコーヒー抽出液とし、誘導溶液を濃縮初期と同じ2重量%食塩水としたときの透水量を調べたところ、3.9kg/(m2×hr)であった。この透水量の値は、濃縮処理初期の値とほとんど変わらないことから、濃縮処理による正浸透膜の目詰まりがほとんどないことが確認された。 【0038】 [実施例2] 処理液タンク1にコーヒー抽出液4kgを入れ、誘導溶液を20重量%食塩水5kgとし、さらに濃縮途中における食塩水の濃度調整を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、コーヒー抽出液の濃縮を実施した。 抽出初期の透水量は15.1kg/(m2×hr)であった。 処理液の量が0.2kgになるまで濃縮されたところで、濃縮操作を停止した(濃縮倍率20倍)。濃縮後のコーヒー抽出物の希釈倍率を20倍とした他は実施例1と同様の方法により、濃縮前後のコーヒー香気量の維持率を調べた。結果を表1に示す。 濃縮処理に使用した正浸透膜モジュールを用い、処理液を元の濃縮前のコーヒー抽出液とし、誘導溶液を20重量%食塩水としたときの透水量は、5.1kg/(m2×hr)であった。 【0039】 [比較例1] コーヒー抽出液3kgを、分離活性層がポリアミド系重合体であり、支持層がポリスルホンである逆浸透膜(・・・)を用い、3.0MPaの操作圧力で10倍に濃縮した。 濃縮後のコーヒー抽出液を10倍希釈し、実施例1と同様の方法により、濃縮前後のコーヒー香気量の維持率を調べた。結果を表1に示す。 濃縮初期の透水量は26.2kg/(m2×hr)であり、濃縮後、処理液をもとのコーヒー抽出液に戻した時の透水量は4.2kg/(m2×hr)であり、濃縮操作による逆浸透膜の目詰まりが大きいことが確認された。 【0040】 [比較例2] 比較例1と同様の逆浸透膜処理により、コーヒー抽出液3kgを10倍に濃縮して、濃縮液を得るとともに、このときの濃縮除去液を採取した。 この採取した濃縮除去液を、51.3kPaの圧力下、82℃において蒸発させ、蒸散した成分を凝縮器にて5℃で冷却して、濃縮香気液を捕集した。 捕集した濃縮香気液を前記10倍濃縮液に混合することにより、9.5倍濃縮の濃縮コーヒー抽出液(316g)を得た。 得られた濃縮コーヒー抽出液の希釈倍率を9.5倍とした他は実施例1と同様の方法により、濃縮前後のコーヒー香気量の維持率を調べた。結果を表1に示す。 【0041】 【表1】 【0042】 逆浸透膜を用いてコーヒーを濃縮した場合は香気成分の保持率は36%であった。濃縮除去液中の香気成分を加熱蒸発させて凝縮器で回収して濃縮液と合わせる方法によっても、香気成分の維持率は55重量%にとどまった。 これに対して本発明の正浸透膜を用いるコーヒーの濃縮方法では、濃縮倍率10倍で98%重量の香気成分が保持されていた。濃縮倍率20倍でも90重量%の香気成分が保持されていた。」 (7)図面に関する記載 「【符号の説明】 【0044】 1 中空糸膜モジュール 2、3 シェル側導管 4 中空糸 5、6 接着剤固定部 7、8 ヘッダー 9,10 コア側導管 11 処理液タンク 12、13 送液配管 14 送液ポンプ 15 正浸透モジュール 16 誘導溶液タンク 17、18 送液配管 19 送液ポンプ 【図1】 【図2】 」 3 取消理由について (1)甲A1を主引用例とする理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について ア 甲A1に記載された発明 甲A1は、ジュースを、外壁、第1チャンバーに接続された流路入口と流路出口、第2チャンバーに接続された浸透圧剤(OA)の入口と出口、及び複数の濃縮セルとを有する密閉装置を含む浸透圧濃縮装置であって、各濃縮セルは、第1チャンバーを規定する第1の側面及び第2チャンバーを規定する第2の側面を有する半透膜と、平行に配置された複数の支持部材とを含み、第2チャンバー内の浸透圧剤の流体圧よりも高い圧力の流体圧を第1チャンバー内のジュースに加えると、半透膜は、支持部材の間で第2チャンバーに偏向し、第1チャンバー内に波形の流路を形成する浸透圧濃縮装置を用いて、直接浸透圧濃縮(DOC)する方法に関する技術的事項を開示するものである(甲A1a)。 上記甲A1に開示される「浸透圧濃縮装置」を用いて「直接浸透圧濃縮(DOC)」する方法とは、甲A1の発明の背景に関する記載、特に「直接浸透圧濃縮(DOC)」に関する、半透膜を使用し、圧力で水を絞り出す代わりに水のモル分率が低い浸透圧剤(OA)を使用して水を引き出すという記載から(甲A1b)、正浸透プロセスによる濃縮方法であることが理解できる。また、甲A1の「浸透圧濃縮装置」は、第2チャンバー内の浸透圧剤の流体圧よりも高い圧力の流体圧を第1チャンバー内のジュースに加えるものであるが、浸透圧剤の流れは、ジュースの流れよりわずかに低い圧力で流れることが説明されているとおり(甲A1c)、半透膜に偏向を与えるために加える圧力であって、逆浸透プロセスのような圧力ではないことも明らかである。 そして、甲A1における「ジュース」とは、水を選択的に除去して濃縮される任意の液体を指し、溶媒としての水分を除去するために濃縮されるジュースの例としてコーヒーが挙げられており(甲A1e)、実施例4に、コーヒーを濃縮する方法が示されている(甲A1h)。ここで、実施例4には、浸透圧濃縮装置を用いて直接浸透圧濃縮(DOC)を行ったことは明記されていないが、実施例1に、複数のセルを有する本発明のDOC装置のパイロットスケールのプロタイプの実施形態が示され、実施例2及び3では、実施例1に記載の本発明のパイロットスケールの装置を使用したことが記載されていること、実施例4では、単一のセルと単一の膜のセットを使用したことが記載されていることから、実施例4においても、浸透圧濃縮装置を用いて直接浸透圧濃縮(DOC)を行ったと理解できる。 したがって、甲A1には、実施例4及びその結果及び考察を示した図6及びそれに関する記載((甲A1d)、(甲A1h)及び(甲A1j))からみて、まとまりをもった技術的思想を示す次の「甲A1発明」が記載されていると認める。 甲A1発明: 「インスタントコーヒー又は液体コーヒー濃縮物を製造するために、連続するコーヒーバッチを、浸透圧剤(OA)として60−70Brix HFCS(高果糖コーンシロップ:55%果糖、42%ブドウ糖、3%スクロース)を使用して、5Brixから、56Brixと63Brixの間までに、浸透圧濃縮装置を用いて、直接浸透圧濃縮(DOC)する方法であって、流束(flux)が約10Brixから50Brixに関して約6LMHから約1LMHに直線的に変化する方法。」 イ 対比・判断 取消理由では、訂正前の請求項1〜2及び7に係る発明は、甲A1発明に記載された発明であり、訂正前の請求項1〜2、5及び7に係る発明は、甲A1発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易になし得たものであるとした。 それに対し、前記第2のとおり、本件訂正により訂正前の請求項1、2及び5は削除され、本件特許発明7は、取消理由が通知されていない訂正前の請求項3、4又は6の構成を含む本件特許発明3、4及び6のいずれかの記載を引用するものとなった。 したがって、本件特許発明7は、甲A1に記載された発明でなく、甲A1発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないが、念のため、訂正前の請求項1〜2又は5の構成を含む本件特許発明3、4、6及び7について、以下検討する。 (ア)本件特許発明3について 本件特許発明3と甲A1発明とを対比する。 a 甲A1発明の「連続するコーヒーバッチ」は、「インスタントコーヒー又は液体コーヒー濃縮物を製造するため」のものであるから、本件特許発明3の「液状食品」であって、「液状食品がコーヒー抽出液であり」に相当する。 b 甲A1発明の「浸透圧濃縮装置を用いて、直接浸透圧濃縮(DOC)する方法」は、上記アのとおり、正浸透プロセスによる濃縮方法であると理解できるから、本件特許発明3の「正浸透プロセスによって濃縮を行う」、「濃縮方法」に相当する。 c 甲A1発明が「浸透圧剤(OA)として60−70Brix HFCS(高果糖コーンシロップ:55%果糖、42%ブドウ糖、3%スクロース)を使用」することは、本件特許発明3の正浸透プロセスも、処理液と比較して高い浸透圧を示し、正浸透膜を介して処理液から水を移動させる機能を有する誘導溶液を使用するものであるから(上記2(5)【0024】〜【0025】及び(7))、両発明おける相違点とはならない。 d したがって、両発明は、次の一致点及び相違点A1−1及び相違点A1−2を有する。 一致点: 「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法であって、 前記液状食品がコーヒー抽出液である、 液状食品の濃縮方法。」である点。 相違点A1−1: 本件特許発明3の濃縮方法は、「前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御する」と特定しているのに対し、 甲A1発明の浸透圧濃縮装置を用いて、直接浸透圧濃縮(DOC)する方法は、「流束(flux)が約10Brixから50Brixに関して約6LMHから約1LMHに直線的に変化する」ものである点。 相違点A1−2: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスが、中空糸膜状の支持膜と、前記支持膜の外表面もしくは内表面、またはこれらの双方の面上の分離活性層とを有する、中空糸状の正浸透膜を用いて行われるものであり、前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、前記分離活性層が、ポリアミドからなる」と特定しているのに対し、 甲A1発明は、浸透圧濃縮装置に用いる浸透膜について、特定していない点。 e 相違点についての検討 (a)相違点A1−1について 甲A1に記載の流束(flux)は、図6に示される「FLUX(LMH)」のとおり、浸透膜の分野で使われるL/m2hで表される、単位時間あたりに単位面積あたりに流れる物質量のことを指すといえる。例えば、甲A2(甲A2g)、甲A11(甲A11a)及び甲A13(甲A13b)においても、それぞれ、正浸透プロセスにおける水の流束について、L/m2h(=kg/m2h=kgm−2h−1)で表した量が示されている。 一方、本件特許発明3の透水量は、本件特許明細書に、「本明細書における正浸透膜モジュール15の透水量とは、正浸透膜を挟んで処理液と誘導溶液を配置したときに、両液の浸透圧差によって処理液から誘導溶液に移動する水の量を、正浸透膜の単位面積当たり、および単位時間当たりに割り付けた量を意味しており、下記数式(1)により定義される。 F=L/(M×H)・・・(1) ここで、Fは透水量(kg/(m2×hr))、Lは透過した水の量(kg)、Mは正浸透膜の表面積(m2)、Hは時間(hr)である。」(上記2(4)【0027】)と説明されている。 したがって、甲A1発明における流束(flux)は、本件特許発明3の透水量と同じことを意味していることは明らかである。 そして、実施例4では、コーヒーを5Brixから、56Brixと63Brixの間までに濃縮しており(甲A1h)、その濃縮過程の範囲内である約10Brixから50Brixにおける流束(flux)は約6LMHから約1LMHに直線的に変化することが図6に示されているのだから(甲A1j)、甲A1発明は、濃縮中に、流束(flux)が少なくとも1kg/(m2×hr)〜6kg/(m2×hr)に制御されているといえ、相違点A1−1は実質的な相違点ではない。 仮に、実質的な相違点であるとしても、正浸透プロセスにおいて、浸透圧剤(OA)の濃度が流束に影響することは技術常識であり((甲A1g)、(甲A2g)及び(甲A13b))、濃縮の効率を考慮して流束(flux)の下限値を設定したり、浸透圧剤の処理対象物への拡散や浸透膜への影響などを考慮して流束(flux)の上限値を設定したりして、浸透圧剤(OA)の濃度を調整して、流束(透水量)を最適化することは、当業者が適宜なし得ることである。 したがって、相違点A1−1は、実質的な相違点でないか、甲A1発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易になし得たことである。 (b)相違点A1−2について 甲A1には、浸透圧濃縮装置に用いる半透膜について、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリスルホンなどが例示され(甲A1f)、実施例1では、三酢酸セルロース半透膜を用いたことが記載されているから、実施例4のコーヒーの濃縮にも三酢酸セルロース半透膜を用いたものといえる(甲A1h)。 そして、正浸透に用いる半透膜は、活性層と支持層とからなることや、支持層として不織布を用いること、膜材料としてポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリベンゾイミダゾールなどのポリマーを用いることは、本件特許の出願時に周知の技術的事項である((甲A2f)及び(甲A9d))。 しかしながら、甲A1は、「第1チャンバーを規定する第1の側面及び第2チャンバーを規定する第2の側面を有する半透膜と、平行に配置された複数の支持部材とを含み、第2チャンバー内の浸透圧剤の流体圧よりも高い圧力の流体圧を第1チャンバー内のジュースに加えると、半透膜は、支持部材の間で第2チャンバーに偏向し、第1チャンバー内に波形の流路を形成」する構造を備える、特定の浸透圧濃縮装置を用いることで、第1の膜表面での乱流を促進して膜表面の汚れを防止することに特徴を有する濃縮方法に関するものである((甲A1a)〜(甲A1c)及び(甲A1i))。 そうすると、甲A1に記載の浸透圧濃縮装置について、正浸透に用いる半透膜として中空糸膜状の膜にかえる動機付けはない。 したがって、相違点A1−2は、当業者が容易になし得たことではない。 f 小括 よって、本件特許発明3は、甲A1に記載された発明でなく、甲A1発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (イ)本件特許発明4について 本件特許発明4は、本件特許発明3についてさらに「前記正浸透プロセスを、前記中空糸状の正浸透膜がモジュール化された中空糸膜モジュールを用いて行う」ことを特定するものである。 そうすると、本件特許発明4と甲A1発明とを対比すると、両発明は、少なくとも上記(ア)dのとおりの相違点A1−2で相違し、この相違点A1−2は、上記(ア)e(b)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことではない。 したがって、本件特許発明4は、甲A1に記載された発明でなく、甲A1発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ)本件特許発明6について 本件特許発明6と甲A1発明とを対比すると、両発明は、上記(ア)dのとおりの一致点及び相違点A1−1に加えて、次の相違点A1−3を有する。 相違点A1−3: 本件特許発明6は、「前記正浸透プロセスが、支持層と、前記支持層上の分離活性層とを有する、平膜状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持層が、不織布からなり、 前記分離活性層が、支持膜とポリアミドとからなり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記正浸透プロセスを、前記平膜状の正浸透膜がモジュール化されたプリーツ型モジュールまたはスパイラル型モジュールを用いて行う」と特定しているのに対し、 甲A1発明は、浸透圧濃縮装置に用いる浸透膜について、特定していない点。 上記相違点A1−3について検討するに、上記(ア)e(b)で検討したのと同様に、正浸透に用いる半透膜は、活性層と支持層とからなることや、支持層として不織布を用いること、膜材料としてポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリベンゾイミダゾールなどのポリマーを用いることは、本件特許の出願時に周知の技術的事項であるとしても、甲A1に記載の浸透圧濃縮装置について、正浸透に用いる半透膜として、半透膜に対して特定の配置で複数の支持部材を設けることを発明の前提とした甲A1発明において、平膜状の正浸透膜であって、モジュール化されたプリーツ型モジュールやスパイラル型モジュールにかえる動機付けはない。 したがって、相違点A1−3は、当業者が容易になし得たことではない。 よって、本件特許発明6は、甲A1に記載された発明でなく、甲A1発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (エ)本件特許発明7について 本件特許発明7は、本件特許発明3、4又は6についてさらに「正浸透プロセスに用いられる誘導溶液が、塩類、糖類、モノアルコール類、グリコール類、または重合体から選ばれる誘導溶質の水溶液である」ことを特定するものである。 そうすると、本件特許発明7と甲A1発明とを対比すると、両発明は、少なくとも上記(ア)dのとおりの相違点A1−2又は上記(ウ)のとおりの相違点A1−3で相違し、この相違点A1−2及び相違点A1−3は、上記(ア)e(b)又は上記(ウ)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことではない。 したがって、本件特許発明7は、甲A1に記載された発明でなく、甲A1発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2)甲A2を主引用例とする理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について ア 甲A2に記載された発明 甲A2は、「正浸透による液体食品の膜濃縮:プロセスと品質の観点から」と題する学術文献であり(甲A2a)、液体食品の正浸透技術をまとめた表1の記載からみて((甲A2d)及び(甲A2e))、次の「甲A2発明」が記載されていると認める。 甲A2発明: 「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法であって、 前記液状食品がコーヒー抽出液であり、 前記正浸透プロセスにおける透水量が4.0kgm−2h−1であり、 前記正浸透プロセスに用いられるドロー溶液が、74Brix果糖/ブドウ糖である、 液状食品の濃縮方法。」 イ 対比・判断 取消理由では、訂正前の請求項1〜2及び7に係る発明は、甲A2発明に記載された発明であるか、甲A2発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易になし得たものであるとした。 それに対し、前記第2のとおり、本件訂正により訂正前の請求項1及び2は削除され、本件特許発明7は、取消理由が通知されていない訂正前の請求項3、4又は6の構成を含む本件特許発明3、4及び6のいずれかの記載を引用するものとなった。 したがって、本件特許発明7は、甲A2に記載された発明でなく、甲A2発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないが、念のため、訂正前の請求項1又は2の構成を含む本件特許発明3、4及び7について、以下検討する。 (ア)本件特許発明3について a 本件特許発明3と甲A2発明とを対比する。 甲A2発明の「ドロー溶液」は浸透圧剤溶液であるから(甲A2g)、甲A2発明がドロー溶液を用いることは、上記(1)イ(ア)cで述べたのと同様に、本件特許発明3との相違点とはならない。 したがって、両発明は、次の一致点及び相違点A2−1及び相違点A2−2を有する。 一致点: 「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法であって、 前記液状食品がコーヒー抽出液である、 液状食品の濃縮方法。」である点。 相違点A2−1: 本件特許発明3の濃縮方法は、「前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御する」と特定しているのに対し、 甲A2発明の濃縮方法は、「前記正浸透プロセスにおける透水量が4.0kgm−2h−1」である点。 相違点A2−2: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスが、中空糸膜状の支持膜と、前記支持膜の外表面もしくは内表面、またはこれらの双方の面上の分離活性層とを有する、中空糸状の正浸透膜を用いて行われるものであり、前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、前記分離活性層が、ポリアミドからなる」と特定しているのに対し、 甲A2発明は、正浸透プロセスに用いる浸透膜について、特定していない点。 b 相違点についての検討 (a)相違点A2−1について 甲A2発明は、透水量が少なくとも4.0kgm−2h−1に制御されているといえ、相違点A2−1は実質的な相違点ではない。 また、仮に、実質的な相違点であるとしても、上記(1)イ(ア)e(a)で述べたのと同様に、透水量を最適化することは、当業者が適宜なし得ることである。 (b)相違点A2−2について 甲A2発明は、甲A2の表1に液体食品の正浸透技術の一例として示されたものであり、正浸透プロセスを用いた濃縮方法である以外、どのような装置を用いたかは理解できない。 そして、透水量が特定の範囲となるように維持しつつ、相違点A2−2の浸透膜を備えた装置とする動機付けがあるとはいえない。 なお、甲A2発明を認定した表1の「Herron et al.(1994)」について、甲A2には、「Herron,J.R.,・・・,1994.・・・,US Patent 5281,430.」(469ページのReferences)と記載されており、甲A1を紹介したものであることが理解でき、当業者であれば、甲A2の記載から具体的な装置として甲A1の装置を確認するといえるため、この点からも相違点A2−2は、当業者が容易になし得たこととはいえない。 c 小括 したがって、本件特許発明3は、甲A2に記載された発明でなく、甲A2発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (イ)本件特許発明4について 本件特許発明4は、本件特許発明3についてさらに「前記正浸透プロセスを、前記中空糸状の正浸透膜がモジュール化された中空糸膜モジュールを用いて行う」ことを特定するものである。 そうすると、本件特許発明4と甲A2発明とを対比すると、両発明は、少なくとも上記(ア)aのとおりの相違点A2−2で相違し、この相違点A2−2は、上記(ア)b(b)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことではない。 したがって、本件特許発明4は、甲A2に記載された発明でなく、甲A2発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ)本件特許発明7について 本件特許発明7は、本件特許発明3、4又は6についてさらに「正浸透プロセスに用いられる誘導溶液が、塩類、糖類、モノアルコール類、グリコール類、または重合体から選ばれる誘導溶質の水溶液である」ことを特定するものである。 そうすると、本件特許発明7と甲A2発明とを対比すると、両発明は、少なくとも上記(ア)aのとおりの相違点A2−2で相違し、この相違点A2−2は、上記(ア)b(b)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことではない。 したがって、本件特許発明7は、甲A2に記載された発明でなく、甲A2発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)申立人Bの主張について 申立人Bは、令和4年7月15日に提出した意見書において、取消理由が通知されていない訂正前の請求項3、4及び6の構成を含む、本件特許発明3、4、6及び7について、甲A1、甲A2及び甲B2に対し進歩性を具備しないとして、概要、次のことを主張している。 ア 本件特許発明3及び4について 本件特許発明3は、さらに「前記正浸透プロセスが、中空糸膜状の支持膜と、前記支持膜の外表面もしくは内表面、またはこれらの双方の面上の分離活性層とを有する、中空糸状の正浸透膜を用いて行われるもの」であり、「前記分離活性層が、ポリアミドからなる」ことを特定しており、本件特許発明4は、「前記正浸透プロセスを、前記中空糸状の正浸透膜がモジュール化された中空糸膜モジュールを用いて行う」ことを特定している。 しかしながら、甲A2に記載されているとおり((甲A2f)及び(甲A2g))、活性層及び中空層を有する膜を用いて液体食品を正浸透(FO)で濃縮することや、芳香族ポリアミドRO膜が、FO濃縮に用いられる典型的な膜であることは明白である。また、正浸透膜に中空糸膜状の支持膜を含むことは容易であるし、モジュール化された中空糸モジュールは公知である(甲B2a)。 イ 本件特許発明6について 本件特許発明6は、さらに「前記正浸透プロセスを、前記平膜状の正浸透膜がモジュール化されたプリーツ型モジュールまたはスパイラル型モジュールを用いて行う」ことを特定している。 しかしながら、甲A1には、膜表面の乱流を高頻度で誘導することが望ましいことが記載され(甲A1b)、甲A2には、溶液の乱流を増加させることによって、FOのろ過性能を向上させることが記載されている(甲A2f)。そして、平膜状の正浸透膜にモジュール化されたプリーツ型モジュール又はスパイラル型モジュールを適用し、膜の表面積を増加させることは、当業者にとって容易であったことは明白である。 ウ 本件特許発明7について 本件特許発明7は、本件特許発明3、4又は6の記載を引用し、「正浸透プロセスに用いられる誘導溶液が、塩類、糖類、モノアルコール類、グリコール類、または重合体から選ばれる誘導溶質の水溶液である」ことを特定している。 しかしながら、本件特許発明3、4及び6が進歩性を有しないことは上記ア及びイのとおりであり、本件特許発明7で特定される事項は、取消理由においても当業者が容易になし得たものとされている。 上記主張について検討するに、本件特許発明3、4及び6は、甲A1及び甲A2と、上記(1)及び(2)で検討した相違点A1−2、相違点A1−3及び相違点A2−2で相違し、これらの相違点は、当業者が容易になし得たものではないことは、上述したとおりである。 そして、液状食品の濃縮に、中空糸膜モジュールを用いることが知られていることや、平膜状の正浸透膜にモジュール化されたプリーツ型モジュール又はスパイラル型モジュールを用いることが周知であり、それらを適用することで膜の表面積を増加させることが容易であったとしても、甲A1発明又は甲A2発明について、半透膜に対して特定の配置で複数の支持部材を設けることを発明の前提とした甲A1発明において、半透膜を中糸膜状の膜にかえるに足りる動機付けがあるとはいえず、全く構造の異なる中空糸膜モジュールや、プリーツ型モジュール又はスパイラル型モジュールを採用することを動機付けられるところもない。 よって、申立人Bの上記主張ア〜ウはいずれも採用できない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明3、4、6及び7に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、理由1(新規性)及び理由2(進歩性)には、理由がない。 4 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について 前記第2のとおり、訂正前の請求項1、2及び5は削除されたため、これらの請求項を対象とする申立理由はいずれも理由がない。 したがって、本件特許発明3、4、6及び7を対象とする申立理由について検討する。 (1)申立理由A3(サポート要件)について ア 本件特許発明の解決しようとする課題 本件特許明細書の記載、特に上記2(2)からみて、本件特許発明3、4、6及び7の解決しようとする課題は、「コーヒー抽出液から濃縮コーヒーを製造する過程において、香気成分の損失を最小限にし、香気量の多い濃縮コーヒーを製造する方法」を提供することにあると認める。 イ 判断 本件特許明細書の上記2(1)及び(4)〜(5)の一般記載によれば、コーヒー抽出液のような香気成分を含有する液状食品を濃縮する方法として、加熱蒸発させて濃縮する方法や、逆浸透膜を用いて濃縮する方法、さらには逆浸透膜を用いた濃縮に加えて除去した水分中に含まれる香気成分を回収して混合する方法などが知られているが、いずれも、風味が低下したり、香気成分の損失を防ぐことができなかったりするといった問題があったのに対し、本件特許発明3、4、6及び7では、透水量を特定の範囲に制御した正浸透プロセスによる濃縮方法を採用することで、濃縮工程における加熱が不要となるとともに、膜の目詰まりを抑制しながら、香気成分の劣化、飛散などによる損失を最小限に抑えて効率よく濃縮することが可能になることが説明されている。 そして、上記2(6)の実施例において、正浸透プロセスによって10倍又は20倍に濃縮したところ(実施例1又は実施例2)、従来技術の逆浸透によって10倍に濃縮した場合(比較例1)、濃縮除去液から香気成分を回収して濃縮コーヒー抽出液と混合した場合(比較例2)に比べて、香気成分が保持されていたことが、具体的に示されている。 これらの一定の理論的説明の記載や実施例の記載を考慮すれば、本件特許発明3、4、6及び7の濃縮方法を採用することで、上記アの課題を解決できることが理解できる。 したがって、本件特許発明3、4、6及び7は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、本件特許発明3、4、6及び7の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内のものであるから、本件特許発明3、4、6及び7は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。 ウ 申立人Aの主張について 申立人Aは、甲A3、甲A8及び甲A9から理解されるとおり((甲A3c)、(甲A8b)及び(甲A9a))、正浸透による濃縮であっても、その態様によっては、ファウリング(目詰まり)の問題が生じ、それと関連して香気成分が損なわれたり、香気量の多い濃縮コーヒーを製造できなくなるものと認められること、正浸透による濃縮プロセスを実現できなければ、「香気量の多い」はおろか、濃縮コーヒーの製造さえままならないことを主張している。 また、本件特許発明3、4、6及び7で規定する透水量範囲は、甲A1及び甲A2の記載を考慮すれば極めて広範なものであり((甲A1h)及び(甲A2e))、正浸透膜や誘導溶液の規定も、本件特許明細書において具体的に課題を解決できたものと認められる実施例との乖離が著しく、本件特許発明3、4、6及び7の課題を解決できるものとは認められないとも主張している。 しかしながら、本件特許発明3、4、6及び7は、透水量範囲や正浸透膜及び誘導溶液の種類を特定することで課題を解決したものではない(本件特許発明の技術的思想となるものではない。)うえ、申立人Aも理解するとおり、正浸透による濃縮を行う場合に、相対的にファウリングの問題が生じない条件など、濃縮プロセスを実現できる条件を選択すること自体は、当業者は理解できる事項であるといえる。 そして、上記イでも述べたとおり、本件特許発明3、4、6及び7は、従来の蒸発や逆浸透による処理ではなく、正浸透プロセスを採用したことにより、上記アの課題を解決できることが理解できる。 よって、申立人Aの上記主張は採用できない。 エ まとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明3、4、6及び7に係る特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものではなく、申立理由A3(サポート要件)には、理由がない。 (2)申立理由A4(明確性要件)について ア 判断 本件特許発明3、4、6及び7の記載は、その発明特定事項の記載自体に不明確なところはなく、発明特定事項間の関係にも不明確な点はない。 したがって、本件特許発明3、4、6及び7は明確である。 イ 申立人Aの主張について 申立人Aは、本件特許発明3及び6に記載の「前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御し、」について、制御するケースには、(1)正浸透プロセス(濃縮)中、透水量を「終始」当該範囲内に維持するよう制御するケースと、(2)正浸透プロセス(濃縮)における透水量が、少なくとも一時的に当該範囲となるように制御するケースという、2つのケースがあるものと認められるところ、(1)の場合では、0.1未満や20超となることはないのに対し、(2)の場合では、0.1未満や20超になってもよいことになるが、いずれのケースであるか不明であるため技術的範囲が変動することとなり、結果として、当該発明の範囲が不明確なものとなっていると主張している。 しかしながら、本件特許発明3及び6の記載は、申立人Aが主張する(1)のケースにあたる、正浸透プロセスの透水量を規定した範囲に制御して行うことを意味することは明確であり、(2)のケースなど、それ以外の意味に解釈できるとはいえない。 よって、申立人Aの上記主張は採用できない。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明3、4、6及び7に係る特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものではなく、申立理由A4(明確性要件)には、理由がない。 (3)申立理由A2(進歩性)について ア 甲A1に基づく申立理由について (ア)本件特許発明3及び4について 甲A1発明は、上記3(1)アに記載のとおりである。 そして、取消理由通知で採用しなかった、本件特許発明3及び4についての対比・判断は、上記3(1)イ(ア)及び(イ)で述べたとおりであり、本件特許発明3及び4は、甲A1発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)申立人Aの主張について 申立人Aの主張は、概要、次のとおりである。 甲A1は、半透膜と支持部材とを組み合わせることや、半透膜の材料として酢酸セルロース、ポリスルホン等を例示し、実施例でも三酢酸セルロースを使用しており((甲A1f)及び(甲A1h))、本件特許発明3及び4で規定する正浸透膜は、甲A2〜甲A6、甲A8及び甲A10〜甲A13にも示されるとおり、正浸透においてもごく一般的で、極めて周知なものである((甲A2f)、(甲A3d)、(甲A4a)、(甲A5a)、(甲A6a)、(甲A6d)、(甲A8c)、(甲A8d)、(甲A10a)、(甲A11b)、(甲A12a)及び(甲A13a))。 特に、本件特許明細書の実施例でも使用されている、中空糸状のものは、上記のように極めて一般的である上、甲A12に記載されているように、スパイラル型に比べても好適であると認識されており(甲A12b)、その選択の動機は極めて強いと言える。 そうすると、甲A1発明において、本件特許発明3及び4で規定する要件を選択することは、容易に想到し得たことと言える。 しかしながら、上記3(1)イ(ア)及び(イ)で述べたとおり、甲A1は、特定の浸透圧濃縮装置を用いることで、第1の膜表面での乱流を促進して膜表面の汚れを防止することに特徴を有する濃縮方法に関するものであるから、正浸透に用いる半透膜として、中空糸膜モジュールを用いることが知られていたり、スパイラルに比べて好適であることが認識されていたりしても、半透膜に対して特定の配置で複数の支持部材を設けることを発明の前提とした甲A1発明において、半透膜を中糸膜状の膜や中空糸膜モジュールにかえるに足りる動機付けがあるとはいえない。 よって、申立人Aの上記主張は採用できない。 イ 甲A2に基づく申立理由について (ア)本件特許発明3及び4についての判断 甲A2発明は、上記3(2)アに記載のとおりである。 そして、取消理由通知で採用しなかった、本件特許発明3及び4についての対比・判断は、上記3(2)イ(ア)及び(イ)で述べたとおりであり、本件特許発明3及び4は、甲A2発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)申立人Aの主張について 申立人Aの主張は、上記ア(イ)と同旨であり、上記ア(イ)で述べたとおり、申立人Aの主張は採用できない。 ウ 甲A3に基づく申立理由について (ア)甲A3に記載された発明 甲A3の請求項8の記載からみて(甲A3a)、甲A3には、次の「甲A3発明」が記載されていると認める。 甲A3発明: 「正浸透膜を備えた濃縮装置を使用して経口液体を濃縮する方法であって、 前記濃縮装置は、原料液通過室と吸水液通過室とが正浸透膜によって隔てられた原料液濃縮部を有しており、 前記原料液通過室に濃縮前の経口液体を連続的に又は間欠的に供給しつつ、前記吸水液通過室には、前記濃縮前の経口液体よりも浸透圧が高い吸水液を循環させることにより、前記原料液通過室に供給された経口液体の水分の一部が前記正浸透膜を介して吸水液通過室に拡散するものであり、 前記経口液体の水分で希釈された吸水液を吸水液濃縮部に送り、吸水液濃縮部で濃度が回復した吸水液を前記吸水液通過室に還流させることにより、前記吸水液通過室における吸水液の濃度を原料液通過室における経口液体よりも高い濃度に維持している、 経口液体の濃縮方法。」 (イ)対比・判断 a 本件特許発明3について (a)本件特許発明3と甲A3発明との対比 本件特許発明3と、甲A3発明とを対比すると、甲A3発明の「経口液体」は、本件特許発明3の「液状食品」と、「液体」である限りにおいて一致するといえるから、甲A3発明の「正浸透膜を備えた濃縮装置を使用して経口液体を濃縮する方法」は、本件特許発明3の「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法」と、「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液体の濃縮方法」である限りにおいて一致する。 よって、両発明は、次の一致点及び相違点A3−1〜相違点A3−3を有する。 一致点: 「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液体の濃縮方法。」である点。 相違点A3−1: 本件特許発明3は、「液状食品」の濃縮方法であって、「前記液状食品がコーヒー抽出液」であるのに対し、 甲A3発明は、「経口液体」の濃縮方法である点。 相違点A3−2: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御」すると特定しているのに対し、 甲A3発明は、透水量を特定していない点。 相違点A3−3: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスが、中空糸膜状の支持膜と、前記支持膜の外表面もしくは内表面、またはこれらの双方の面上の分離活性層とを有する、中空糸状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記分離活性層が、ポリアミドからなる」と特定しているのに対し、 甲A3発明は、「正浸透膜」であるとしか特定していない点。 (b)相違点についての検討 甲A3には、経口液体として、濃縮ジュースや清涼飲料等の飲料、調味料のような液状の食べ物、経口医薬品などが挙げられ、蒸発法では、熱によって品質が変化するという欠点があること、正浸透膜を使用した濃縮方法では、吸水液を高い濃度に維持しなければならない制約があることに鑑み、甲A3発明の濃縮方法を採用したことが記載されている(甲A3b)。 また、正浸透膜は、平膜や中空糸状のものなど、各種の構造のものを使用できることも記載されている(甲A3d)。 しかしながら、甲A3には、正浸透膜を備えた濃縮装置を使用して濃縮する対象について、経口液体であっても、食品以外の医薬が挙げられ、さらに液状化粧品などの外用液体も挙げられているが(甲A3b)、コーヒー抽出液やそれを想起させるものは例示されていない。 そうすると、甲A3発明において、経口液体として、記載もされていないコーヒー抽出液に着目することを動機付けられるところはないから、相違点A3−1は、当業者が容易になし得たことではなく、相違点A3−2及び相違点A3−3について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲A3発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 そして、本件特許発明3は、相違点A3−1〜相違点A3−3を備えることにより、本件特許明細書に記載の、液状食品を濃縮する際の香気成分の損失を最小限にし、淹れたてと変わらない香気量を有する濃縮コーヒーを製造することができるという、甲A3からは予測できない効果を奏するものである。 b 本件特許発明4及び7について 本件特許発明4及び7と、甲A3発明とは、少なくとも上記a(a)の相違点A3−1で相違し、この相違点は、上記a(b)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことではなく、本件特許発明4及び7は、甲A3からは予測できない効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明4及び7は、甲A3発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)申立人Aの主張について 申立人Aは、甲A3には、濃縮対象としてのコーヒー抽出液や本件特許発明3で規定する透水量について具体的な記載はないが、コーヒー抽出液を濃縮対象とする技術は既に公知であるし、コーヒー抽出液を含め液状食品の透水量として本件特許発明3で規定する値は、甲A1及び甲A2にもあるとおり、ごく一般的なものであるから((甲A1h)及び(甲A2e))、濃縮対象としてジュースのようなコーヒー同様の食品を想定していることに鑑みても、甲A3において、濃縮対象としてコーヒー抽出液を選択し、透水量を本件特許発明3で規定する範囲のものとすることは、極めて容易に想到し得たことであるし、そのことによる格別な効果もないと主張している。 しかしながら、甲A1及び甲A2を含め、コーヒー抽出液を濃縮することが公知であるとしても、それだけの理由から、液状食品の濃縮以外の技術も開示する甲A3に接した当業者が、甲A3発明の濃縮方法について、経口液体として、記載もされていないコーヒー抽出液に着目してそれを採用する動機付けがあるとはいえない。 よって、申立人Aの上記主張は採用できない。 エ 甲A4に基づく申立理由について (ア)甲A4に記載された発明 甲A4の請求項14の記載からみて(甲A4a)、甲A4には、次の「甲A4発明」が記載されていると認める。 甲A4発明: 「産業産物を濃縮する方法であって、 親水性多孔質支持層と、第1のポリアミドバリア層とを含み、前記支持層及び前記バリア層が、薄膜複合膜に組み込まれており、かつ前記薄膜複合膜内で互いに隣接配置されている正浸透膜を含む正浸透装置を使用して産業産物を濃縮する方法。」 (イ)対比・判断 a 本件特許発明3について (a)本件特許発明3と甲A4発明との対比 本件特許発明3と、甲A4発明とを対比すると、甲A4発明の「産業産物」は、正浸透装置を使用して濃縮されるものであるから液体であることは自明であり、本件特許発明3の「液状食品」と、「液体」である限りにおいて一致するといえるから、甲A4発明の「正浸透膜を含む正浸透装置を使用して産業産物を濃縮する方法」は、本件特許発明3の「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法」と、「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液体の濃縮方法」である限りにおいて一致する。 よって、両発明は、次の一致点及び相違点A4−1〜相違点A4−3を有する。 一致点: 「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液体の濃縮方法。」である点。 相違点A4−1: 本件特許発明3は、「液状食品」の濃縮方法であって、「前記液状食品がコーヒー抽出液」であるのに対し、 甲A4発明は、「産業産物」の濃縮方法である点。 相違点A4−2: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御」すると特定しているのに対し、 甲A4発明は、透水量を特定していない点。 相違点A4−3: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスが、中空糸膜状の支持膜と、前記支持膜の外表面もしくは内表面、またはこれらの双方の面上の分離活性層とを有する、中空糸状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記分離活性層が、ポリアミドからなる」と特定しているのに対し、 甲A4発明は、「親水性多孔質支持層と、第1のポリアミドバリア層とを含み、前記支持層及び前記バリア層が、薄膜複合膜に組み込まれており、かつ前記薄膜複合膜内で互いに隣接配置されている正浸透膜を含む正浸透装置を使用」すると特定している点。 (b)相違点についての検討 甲A4には、濃縮される産業産物に関して、食品及び飲料産業が挙げられ、ジュース濃縮物を作製するのに用いることができることも記載されている(甲A4b)。 また、平坦シートや中空ファイバーとして構成されていることも記載されている(甲A4a)。 しかしながら、甲A4は、正浸透及び浸透圧発電の性能を向上させることができる薄膜複合膜を提供することに関するものである(甲A4b)。そして、濃縮する対象として産業廃棄物などまで挙げられているが、産業産物としてコーヒー抽出液やそれを想起させるものは例示されていない。 そうすると、甲A4発明において、産業産物として、記載もされていないコーヒー抽出液に着目することを動機付けられるところはないから、相違点A4−1は、当業者が容易になし得たことではなく、相違点A4−2及び相違点A4−3について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲A4発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 そして、本件特許発明3は、甲A4からは予測できない効果を奏するものである。 b 本件特許発明4及び7について 本件特許発明4及び7と、甲A4発明とは、少なくとも上記a(a)の相違点A4−1で相違し、この相違点は、上記a(b)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことではなく、本件特許発明4及び7は、甲A4からは予測できない効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明4及び7は、甲A4発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)申立人Aの主張について 申立人Aの主張は、上記ウ(ウ)で検討したのと同旨であるところ、同様に、液状食品の濃縮以外の様々な技術を開示する甲A4に接した当業者が、甲A4発明の濃縮方法について、産業産物として、記載もされていないコーヒー抽出液に着目してそれを採用する動機付けがあるとはいえない。 よって、申立人Aの上記主張は採用できない。 オ 甲A5に基づく申立理由について (ア)甲A5に記載された発明 甲A5の請求項7の記載からみて(甲A5a)、甲A5には、次の「甲A5発明」が記載されていると認める。 甲A5発明: 「半透膜ユニットと、前記半透膜ユニットを介して互いに仕切られた第1の領域及び第2の領域と、前記第1の領域に低浸透圧溶液を供給する低浸透圧溶液供給部と、前記第2の領域に高浸透圧溶液を供給する高浸透圧溶液供給部とを備え、前記低浸透圧溶液が供給された前記第1の領域から、前記高浸透圧溶液が供給された前記第2の領域へと、前記半透膜ユニットを介して流体移動を生じさせる正浸透処理システムであって、前記半透膜ユニットが、ポリケトン多孔膜支持層と、該ポリケトン多孔膜支持層上に配された半透膜スキン層とから成る複合半透膜を含む正浸透処理システムを用いて、含水物から水を除去する、含水物の濃縮方法。」 (イ)対比・判断 a 本件特許発明3について (a)本件特許発明3と甲A5発明との対比 本件特許発明3と、甲A5発明とを対比すると、甲A5発明の「含水物」は、本件特許発明3の「液状食品」と、「液体」である限りにおいて一致するといえるから、甲A5発明の「正浸透処理システムを用いて、含水物から水を除去する、含水物の濃縮方法」は、本件特許発明3の「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法」と、「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液体の濃縮方法」である限りにおいて一致する。 よって、両発明は、次の一致点及び相違点A5−1〜相違点A5−3を有する。 一致点: 「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液体の濃縮方法。」である点。 相違点A5−1: 本件特許発明3は、「液状食品」の濃縮方法であって、「前記液状食品がコーヒー抽出液」であるのに対し、 甲A5発明は、「含水物」の濃縮方法である点。 相違点A5−2: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御」すると特定しているのに対し、 甲A5発明は、透水量を特定していない点。 相違点A5−3: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスが、中空糸膜状の支持膜と、前記支持膜の外表面もしくは内表面、またはこれらの双方の面上の分離活性層とを有する、中空糸状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記分離活性層が、ポリアミドからなる」と特定しているのに対し、 甲A5発明は、「半透膜ユニットが、ポリケトン多孔膜支持層と、該ポリケトン多孔膜支持層上に配された半透膜スキン層とから成る複合半透膜を含む正浸透処理システムを用い」ると特定している点。 (b)相違点についての検討 甲A5には、濃縮の対象となる含水物として、特に制限なく有機性化合物又は無機性化合物のいずれでもよいと記載され、含水有機物の例として、果汁、酒類、食酢などの液体食品が挙げられ、正浸透膜による濃縮であれば、蒸発などの手法と異なり、低温でも濃縮が可能であるため、風味を損なわずに濃縮できるという点で特に望ましいことも記載されている(甲A5c)。 しかしながら、甲A5は、特定の正浸透処理システムに関し、海水の淡水化、かん水の脱塩、排水処理、各種有価物の濃縮、さらにはオイル・ガスの掘削における随伴水の処理、浸透圧の異なる2液を利用した発電、糖類や肥料や冷媒の希釈などまで挙げられているが(甲A5b)、含水物としてコーヒー抽出液やそれを想起させるものは例示されていない。 そうすると、甲A5発明において、含水物として、記載もされていないコーヒー抽出液に着目することを動機付けられるところはないから、相違点A5−1は、当業者が容易になし得たことではなく、相違点A5−2及び相違点A5−3について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲A5発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、本件特許発明3は、甲A5からは予測できない効果を奏するものである。 b 本件特許発明4及び7について 本件特許発明4及び7と、甲A5発明とは、少なくとも上記a(a)の相違点A5−1で相違し、この相違点は、上記a(b)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことではなく、本件特許発明4及び7は、甲A5からは予測できない効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明4及び7は、甲A5発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)申立人Aの主張について 申立人Aの主張は、上記ウ(ウ)で検討したのと同旨であるところ、同様に、液状食品の濃縮以外の技術を開示する甲A5に接した当業者が、甲A5発明の濃縮方法について、含水物として、記載もされていないコーヒー抽出液に着目してそれを採用する動機付けがあるとはいえない。 よって、申立人Aの上記主張は採用できない。 カ 甲A6に基づく申立理由について (ア)甲A6に記載された発明 甲A6の請求項16の記載からみて(甲A6a)、甲A6には、次の「甲A6発明」が記載されていると認める。 甲A6発明: 「半透膜の性能を有する薄膜層がポリケトン支持層に積層されている正浸透膜から成る半透膜ユニットと、前記半透膜ユニットを介して互いに仕切られた第1の領域及び第2の領域と、前記第1の領域に低浸透圧溶液を供給する低浸透圧溶液供給部と、前記第2の領域に高浸透圧溶液を供給する高浸透圧溶液供給部とを備え、前記低浸透圧溶液が供給された前記第1の領域から、前記高浸透圧溶液が供給された前記第2の領域へと、前記半透膜ユニットを介して流体移動を生じさせる機能を有する、正浸透処理システムを用いて、含水物から水を除去する、含水物の濃縮方法。」 (イ)対比・判断 a 本件特許発明3について (a)本件特許発明3と甲A6発明との対比 本件特許発明3と、甲A6発明とを対比すると、甲A6発明の「含水物」は、本件特許発明3の「液状食品」と、「液体」である限りにおいて一致するといえるから、甲A6発明の「正浸透処理システムを用いて、含水物から水を除去する、含水物の濃縮方法」は、本件特許発明3の「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法」と、「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液体の濃縮方法」である限りにおいて一致する。 よって、両発明は、次の一致点及び相違点A6−1〜相違点A6−3を有する。 一致点: 「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液体の濃縮方法。」である点。 相違点A6−1: 本件特許発明3は、「液状食品」の濃縮方法であって、「前記液状食品がコーヒー抽出液」であるのに対し、 甲A6発明は、「含水物」の濃縮方法である点。 相違点A6−2: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御」すると特定しているのに対し、 甲A6発明は、透水量を特定していない点。 相違点A6−3: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスが、中空糸膜状の支持膜と、前記支持膜の外表面もしくは内表面、またはこれらの双方の面上の分離活性層とを有する、中空糸状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記分離活性層が、ポリアミドからなる」と特定しているのに対し、 甲A6発明は、「半透膜の性能を有する薄膜層がポリケトン支持層に積層されている正浸透膜から成る」「半透膜ユニットを介して流体移動を生じさせる機能を有する、正浸透処理システムを用い」ると特定している点。 (b)相違点についての検討 甲A6には、濃縮の対象となる含水物として、特に制限なく有機化合物及び無機化合物のいずれでもよいと記載され、含水物の例として、果汁、酒類、食酢などの液体食品が挙げられ、蒸発などの加熱を要する手法と異なり、低温における濃縮が可能となるため、風味を損なわずに濃縮できるという点で特に望ましいことも記載されている(甲A6c)。 しかしながら、甲A6は、特定の正浸透膜を備えた正浸透処理システムに関し、海水の淡水化、かん水の脱塩、排水処理、各種有価物の濃縮、オイル・ガスの掘削における随伴水の処理、浸透圧の異なる2液を利用した発電、糖類・肥料・冷媒の希釈などまで挙げられているが(甲A6b)、含水物としてコーヒー抽出液やそれを想起させるものは例示されていない。 そうすると、甲A6発明において、含水物として、記載もされていないコーヒー抽出液に着目することを動機付けられるところはないから、相違点A6−1は、当業者が容易になし得たことではなく、相違点A6−2及び相違点A6−3について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲A6発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、本件特許発明3は、甲A6からは予測できない効果を奏するものである。 b 本件特許発明4及び7について 本件特許発明4及び7と、甲A6発明とは、少なくとも上記a(a)の相違点A6−1で相違し、この相違点は、上記a(b)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことではなく、本件特許発明4及び7は、甲A6からは予測できない効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明4及び7は、甲A6発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)申立人Aの主張について 申立人Aの主張は、上記ウ(ウ)で検討したのと同旨であるところ、同様に、液状食品の濃縮以外の技術を開示する甲A6に接した当業者が、甲A6発明の濃縮方法について、含水物として、記載もされていないコーヒー抽出液に着目してそれを採用する動機付けがあるとはいえない。 よって、申立人Aの上記主張は採用できない。 キ 甲A7に基づく申立理由について (ア)甲A7に記載された発明 甲A7の請求項1に記載の水の抽出システムは、低浸透圧性液体から水を抽出するものであるから、低浸透圧性液体を濃縮する方法といえる(甲A7a)。したがって、甲A7には、次の「甲A7発明」が記載されていると認める。 甲A7発明: 「半透膜を介して低浸透圧性液体と高浸透圧性媒体とを接触させることによって低浸透圧性液体中の水分子を高浸透圧性媒体側に膜透過させたのち、水分子によって稀釈された高浸透圧性媒体を濃縮して前記と同等以上の高浸透圧性媒体とし、該高浸透圧性媒体を前記半透膜を介して低浸透圧性液体と接触させるために再利用する、透過膜利用による水の抽出システムを用いた低浸透圧性液体の濃縮方法。」 (イ)対比・判断 a 本件特許発明3について (a)本件特許発明3と甲A7発明との対比 本件特許発明3と、甲A7発明とを対比すると、甲A7発明の「低浸透圧性液体」は、本件特許発明3の「液状食品」と、「液体」である限りにおいて一致する。 また、甲A7発明の「透過膜利用による水の抽出システム」は、正浸透処理システムといえるから、甲A7発明の「透過膜利用による水の抽出システムを用いた低浸透圧性液体の濃縮方法」は、本件特許発明3の「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法」と、「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液体の濃縮方法」である限りにおいて一致する。 よって、両発明は、次の一致点及び相違点A7−1〜相違点A7−3を有する。 一致点: 「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液体の濃縮方法。」である点。 相違点A7−1: 本件特許発明3は、「液状食品」の濃縮方法であって、「前記液状食品がコーヒー抽出液」であるのに対し、 甲A7発明は、「低浸透圧性液体」の濃縮方法である点。 相違点A7−2: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御」すると特定しているのに対し、 甲A7発明は、透水量を特定していない点。 相違点A7−3: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスが、中空糸膜状の支持膜と、前記支持膜の外表面もしくは内表面、またはこれらの双方の面上の分離活性層とを有する、中空糸状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記分離活性層が、ポリアミドからなる」と特定しているのに対し、 甲A7発明は、「半透膜」としか特定していない点。 (b)相違点についての検討 甲A7には、例えばジュースのような食品の浸透濃縮にも利用できること(甲A7d)、被処理液の特性の変性を避けられることが記載されている(甲A7b)。 しかしながら、甲A7には、低浸透圧性液体である被処理液として、食品のほかに廃水も例示されているが(甲A7c)、コーヒー抽出液やそれを想起させるものは例示されていない。 そうすると、甲A7発明において、低浸透圧性液体として、記載もされていないコーヒー抽出液に着目することを動機付けられるところはないから、相違点A7−1は、当業者が容易になし得たことではなく、相違点A7−2及び相違点A7−3について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲A7発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることがでたものとはいえない。 そして、本件特許発明3は、甲A7からは予測できない効果を奏するものである。 b 本件特許発明4及び7について 本件特許発明4及び7と、甲A7発明とは、少なくとも上記a(a)の相違点A7−1で相違し、この相違点は、上記a(b)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことではなく、本件特許発明4及び7は、甲A7からは予測できない効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明4及び7は、甲A7発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)申立人Aの主張について 申立人Aの主張は、上記ウ(ウ)で検討したのと同旨であるところ、同様に、液状食品の濃縮以外の技術を開示する甲A7に接した当業者が、甲A7発明の濃縮方法について、低浸透圧性液体として、記載もされていないコーヒー抽出液に着目してそれを採用する動機付けがあるとはいえない。 よって、申立人Aの上記主張は採用できない。 ク 甲A8に基づく申立理由について (ア)甲A8に記載された発明 甲A8の請求項8に記載からみて(甲A8a)、甲A8には、次の「甲A8発明」が記載されていると認める。 甲A8発明: 「含水有機物と、該含水有機物より浸透圧の高い水溶液を、0.4質量%を超えるゼオライトを含有する正浸透膜を介して接触させ、該含水有機物から該浸透圧の高い水溶液に水を浸透させることにより、該含水有機物を濃縮する含水有機物の濃縮方法。」 (イ)対比・判断 a 本件特許発明3について (a)本件特許発明3と甲A8発明との対比 本件特許発明3と、甲A8発明とを対比すると、甲A8発明の「低含水有機物」は、本件特許発明3の「液状食品」と、「液体」である限りにおいて一致するといえるから、甲A8発明の「正浸透膜を介して接触させ、該含水有機物から該浸透圧の高い水溶液に水を浸透させることにより、該含水有機物を濃縮する含水有機物の濃縮方法」は、本件特許発明3の「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法」と、「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液体の濃縮方法」である限りにおいて一致する。 よって、両発明は、次の一致点及び相違点A8−1〜相違点A8−3を有する。 一致点: 「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液体の濃縮方法。」である点。 相違点A8−1: 本件特許発明3は、「液状食品」の濃縮方法であって、「前記液状食品がコーヒー抽出液」であるのに対し、 甲A8発明は、「含水有機物」の濃縮方法である点。 相違点A8−2: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御」すると特定しているのに対し、 甲A8発明は、透水量を特定していない点。 相違点A8−3: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスが、中空糸膜状の支持膜と、前記支持膜の外表面もしくは内表面、またはこれらの双方の面上の分離活性層とを有する、中空糸状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記分離活性層が、ポリアミドからなる」と特定しているのに対し、 甲A8発明は、「0.4質量%を超えるゼオライトを含有する正浸透膜」と特定している点。 (b)相違点についての検討 甲A8には、含水有機物の例として、果汁、酒類、食酢などの液体食品が挙げられ、蒸発などの手法と異なり、低温でも濃縮が可能であるため、風味を損なわずに、濃縮、減容できるという点で特に望ましいことが記載されている(甲A8e)。 しかしながら、甲A8には、濃縮される対象として、如何なる含水有機物であってもよいことが記載され、液体肥料、排水なども例示されているが(甲A8e)、コーヒー抽出液やそれを想起させるものは例示されていない。 そうすると、甲A8発明において、含水有機物として、記載もされていないコーヒー抽出液に着目することを動機付けられるところはないから、相違点A8−1は、当業者が容易になし得たことではなく、相違点A8−2及び相違点A8−3について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲A8発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 そして、本件特許発明3は、甲A8からは予測できない効果を奏するものである。 b 本件特許発明4及び7について 本件特許発明4及び7と、甲A8発明とは、少なくとも上記a(a)の相違点A8−1で相違し、この相違点は、上記a(b)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことではなく、本件特許発明4及び7は、甲A8からは予測できない効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明4及び7は、甲A8発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)申立人Aの主張について 申立人Aの主張は、上記ウ(ウ)で検討したのと同旨であるところ、同様に、液状食品の濃縮以外の技術を開示する甲A8に接した当業者が、甲A8発明の濃縮方法について、含水有機物として、記載もされていないコーヒー抽出液に着目してそれを採用する動機付けがあるとはいえない。 よって、申立人Aの上記主張は採用できない。 ケ まとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明3、4及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由A2(進歩性)には、理由がない。 (4)申立理由B2(新規性)及び申立理由B4(進歩性)について 申立理由B2(新規性)及び申立理由B4(進歩性)は、本件特許発明3、4及び7は、甲B5から公然知られた発明であるか、甲B5から公然知られた発明及びその他の甲号証に示された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるというものである。 そこで、甲B5が、本件特許の出願前に公然知られた発明といえるかについて検討する。 ア 申立人Bによる説明 申立人Bは、甲B5は、2016年6月17日に中国の上海で開催されたAquatech China 2016において、ヨルグ・ボーゲル博士が、Aquaporin InsideTM技術に関するプレゼンテーションを行ったことを示すものであり、甲B5の1は、そのプレゼンテーションのスライド資料であり、甲B5の2は、ヨルグ・ボーゲル博士が甲B5の1のスライド27を説明している様子を出席者が撮影したものであり、甲B5の3は、Aquatech China 2016が2016年6月15日〜2016年6月17日にNational Exhibition and Convention Centerで開催されたことを示すものであると説明している。 イ 甲B5についての検討 甲B5の(甲B5の1)には、「The Aquaporin InsideTM Technology」及び「Dr.Joerg Vogel」の表示があり(甲B5の1a)、スライドの左下には「07/06/16」と表示されている((甲B5の1b)〜(甲B5の1d))。 しかしながら、(甲B5の3)には、「Aquatech China 2016」が「2016年6月15日〜2016年6月17日」の期間にわたって開催された「プロセス、飲料水、廃水の業界をリードする見本市」であることが示されているが、(甲B5の1)の資料を用いたプレゼンテーションが、実際にその期間内である2016年6月17日に行われたことを確認できるプログラムのようなものは掲載されていない。 また、(甲B5の2a)及び(甲B5の2b)には、男性がプレゼンテーションを行っている様子が示されているが、これらの写真からは、「Aquatech China 2016」という見本市において、その参加者がいる場所で、2016年6月17日に行われたことを確認できるところはない。 また、(甲B5の1a)には、スライドの右上に「AQUAPORIN」と表示されているのに対し、(甲B5の2a)及び(甲B5の2b)には、「AQUAPOTEN」という文字が写っており、写り込んだスライドが、甲B5の1の一部であることが明確であるともいえない。 (なお、申立人Bは、写真中の「AQUAPOTEN」は、ヨルグ・ボーゲル博士が2016年当時に所属していたAquaporin A/Sと密接に業務を行っていた中国の会社であり、「AQUAPOTEN」とAquaporin A/Sは同じロゴを使用していると説明しているが(証拠説明書)、そのことで、(甲B5の2)の写真が(甲B5の1)のスライドを説明していることが理解できるものでもない。) したがって、甲B5に示されたスライド資料によるプレゼンテーションが、本件特許の出願前に、中国の上海で実施されたことを確認することはできないから、甲B5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であるとはいえない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明3、4及び7は、甲B5から公然知られた発明であるとはいえないから、本件特許発明3、4及び7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではなく、申立理由B2(新規性)は、理由がない。 そして、本件特許発明3、4及び7は、甲B5から公然知られた発明及びその他の甲号証に示された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件特許発明3、4及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由B4(進歩性)は、理由がない。 (5)申立理由B1−4(新規性)及び申立理由B3−4(進歩性)について 申立理由B1−4(新規性)及び申立理由B3−4(進歩性)は、本件特許発明7について、甲B5に基づく申立理由であるところ、上記(4)で検討したように、甲B5に示されたスライド資料によるプレゼンテーションが、本件特許の出願前に、中国の上海で実施されたことを確認することはできないうえに、スライド資料自体の具体的な取扱いも不明であるから、甲B5の1のスライド資料は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるとはいえない。 したがって、本件特許発明7に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由B1−4(新規性)及び申立理由B3−4(進歩性)は、理由がない。 (6)申立理由B1−2(新規性)及び申立理由B3−2(進歩性)について 申立理由B1−2(新規性)及び申立理由B3−2(進歩性)のうち、甲B5に基づく理由は、上記(5)と同様の理由により、理由がない。 したがって、申立理由B1−2(新規性)及び申立理由B3−2(進歩性)のうち、甲B3又は甲B4に基づく理由について検討する。 ア 甲B3に基づく申立理由について (ア)甲B3から把握される発明について 甲B3は、Ederna社のevapeos(登録商標)を紹介した動画であり(甲B3の1)、その動画が掲載されているURLの画面の印刷物には、「2011年2月2日」と表示されているから(甲B3の2a)、本件特許の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に該当するといえる。 そして、その動画の特定場面のスナップショットの印刷物からみて((甲B3の2d)及び(甲B3の2e))、甲B3から、次の「甲B3発明」が把握されると認める。 甲B3発明: 「40℃における大気圧での水流束(L/hr)が1.0である中空繊維膜と浸透圧剤を用いる、正浸透工程によるサンプルの濃縮方法。」 (イ)対比・判断 a 本件特許発明3について (a)本件特許発明3と甲B3発明との対比 本件特許発明3と、甲B3発明とを対比すると、甲B3発明の「サンプル」は、(甲B3の2d)のとおり、浸透圧剤側に水蒸気が移動することで濃縮される水を含む液体であることが理解できるから、本件特許発明3の「液状食品」と、「液体」である限りにおいて一致するといえ、甲B3発明の「正浸透工程によるサンプルの濃縮方法」は、本件特許発明3の「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法」と、「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液体の濃縮方法」である限りにおいて一致する。 よって、両発明は、次の一致点及び相違点B3−1〜相違点B3−3を有する。 一致点: 「正浸透プロセスによって濃縮を行う、液体の濃縮方法。」である点。 相違点B3−1: 本件特許発明3は、「液状食品」の濃縮方法であって、「前記液状食品がコーヒー抽出液」であるのに対し、 甲B3発明は、「サンプル」の濃縮方法である点。 相違点B3−2: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御」すると特定しているのに対し、 甲B3発明は、「40℃における大気圧での水流束(L/hr)が1.0である中空繊維膜」を用いている点。 相違点B3−3: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスが、中空糸膜状の支持膜と、前記支持膜の外表面もしくは内表面、またはこれらの双方の面上の分離活性層とを有する、中空糸状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記分離活性層が、ポリアミドからなる」と特定しているのに対し、 甲B3発明は、「中空繊維膜」としか特定していない点。 (b)新規性について 相違点B3−1〜相違点B3−3は、実質的な相違点であるから、本件特許発明3は、甲B3に記載された発明ではない。 (c)進歩性について 甲B3には、Ederna社が、生命科学のための分離や、繊細な分子の濃縮に特化した蒸発器を開発する企業であること、研究室で試料の処理に利用できることが示されている(甲B3の2a)。 しかしながら、甲B3には、濃縮される対象として、コーヒー抽出液やそれを想起させるところはない。 そうすると、甲B3発明において、サンプルとして、記載もされていないコーヒー抽出液に着目することを動機付けられるところはないから、相違点B3−1は、当業者が容易になし得たことではなく、相違点B3−2及び相違点B3−3について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲B3発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 そして、本件特許発明3は、甲B3からは予測できない効果を奏するものである。 b 本件特許発明4について 本件特許発明4と、甲B3発明とは、少なくとも上記a(a)の相違点B3−1で相違し、この相違点は、上記a(c)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことではなく、本件特許発明4は、甲B3からは予測できない効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明4は、甲B3発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 甲B4に基づく申立理由について (ア)甲B4に記載された発明について 甲B4は、Ederna社のHPに掲載された記事と解されるところ、「(コピーライト)2014 ederna.V.1.2」と記載されているから、(甲B4a)、本件特許の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に該当するといえる。 そして、evapeos(登録商標)の原理と、インスタントコーヒーの製造プロセス及び実験の記載からみて((甲B4c)〜(甲B4e))からみて、甲B4には、次の「甲B4発明」が記載されていると認める。 甲B4発明: 「コーヒー抽出液を、逆浸透工程により初期濃度5%TSS(総可溶性固形分)から15%TSSに予備濃縮し、次いで20℃でevapeos(登録商標)による正浸透工程により50%TSSに濃縮し、正浸透工程の水流束が、約2.0(L/h/m2)から約0.5(L/h/m2)に変化する、インスタントコーヒーの濃縮方法。」 (イ)対比・判断 a 本件特許発明3について (a)本件特許発明3と甲B4発明との対比 本件特許発明3と、甲B4発明とを対比すると、甲B4発明は、逆浸透工程と正浸透工程を組み合わせた濃縮方法であるから、本件特許発明3とは、正浸透プロセスを含むプロセスによって濃縮を行うことで共通するといえ、両発明は、次の一致点及び相違点B4−1及び相違点B4−2を有する。 一致点: 「正浸透プロセスを含むプロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法であって、 前記液状食品がコーヒー抽出液である 濃縮方法。」である点。 相違点B4−1: 本件特許発明3は、「正浸透プロセスによって濃縮を行う」濃縮方法であって、「前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1kg/(m2×hr)以上20kg/(m2×hr)以下の範囲に制御」すると特定しているのに対し、 甲B4発明は、「逆浸透工程」により予備濃縮し、次いで「正浸透工程」により濃縮する方法であって、「正浸透工程の水流束が、約2.0(L/h/m2)から約0.5(L/h/m2)に変化する」ものである点。 相違点B4−2: 本件特許発明3は、「前記正浸透プロセスが、中空糸膜状の支持膜と、前記支持膜の外表面もしくは内表面、またはこれらの双方の面上の分離活性層とを有する、中空糸状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記分離活性層が、ポリアミドからなる」と特定しているのに対し、 甲B4発明は、膜について特定していない点。 (b)新規性について 相違点B4−1及び相違点B4−2は、実質的な相違点であるから、本件特許発明3は、甲B4に記載された発明ではない。 (c)進歩性について 相違点B4−1について検討するに、甲B4発明の流束(L/h/m2)は、本件特許発明3の透水量kg/(m2×hr)と同じといえるので、甲B4発明も、濃縮工程中に、透水量が約0.5kg/(m2×hr)〜約2.0kg/(m2×hr)に制御されているといえ、この点は、実質的な相違点ではないといえる。 しかしながら、甲B4には、evapeos(登録商標)は、高温下の蒸留と異なり低温条件のためコーヒー抽出物の香りの維持を可能とすることや(甲B4b)、感覚分析によって、コーヒーの香りの大半が濃縮工程に影響されなかったことが記載されているものの(甲B4e)、コーヒー抽出液の濃縮は、最初に逆浸透を伴う一次濃縮ステップがあり、次に蒸発を伴う濃縮ステップが行われていたところ、この蒸発を伴う濃縮ステップにかえてevapeos(登録商標)を用いることが記載され(甲B4d)、インスタントコーヒー製造の最適化の研究でも、最初に逆浸透による濃縮を行うことが記載されている(甲B4f)。 すなわち、甲B4では、逆浸透工程による予備濃縮と組み合わせた正浸透程によるコーヒー抽出液の濃縮方法が示されており、その方法でコーヒーの香りが維持されているとしているのだから、逆浸透工程を行うことなく、正浸透工程のみにより濃縮する方法とする動機付けがあるとはいえない。 それに対し、本件特許明細書には、コーヒー抽出液を逆浸透膜により濃縮する場合の問題点を解決することを目的とし、逆浸透膜を用いることなく、正浸透膜処理のみで濃縮することで、香料成分維持率が98%という定量分析結果が示されているとおり、甲B4からは予測できない効果を奏するものである。 よって、相違点B4−1は、当業者が容易になし得たことではなく、相違点B4−2について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲B4発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 b 本件特許発明4について 本件特許発明4と、甲B4発明とは、少なくとも上記a(a)の相違点B4−1で相違し、この相違点は、上記a(c)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことではなく、本件特許発明4は、甲B4からは予測できない効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明4は、甲B4発明及びその他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 申立人Bの主張について 申立人Bは、甲B3及び甲B4を組み合わせて、概要、次のことを主張している。 甲B3及び甲B4は、コーヒー等の液体の濃縮に適用可能な、中空繊維モジュールを適用した正浸透工程の濃縮を利用する分離システム、evapeos(登録商標)を開示している。 特に、甲B3の2に示した動画の(00:54)場面のスナップショット(甲B3の2d)及び甲B4の図4(甲B4e)から、evapeos(登録商標)は、中空繊維モジュールを使用していることが明らかであるところ、支持膜として、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどを用いること、そして、分離層として、ポリアミドを用いることは周知の慣用技術である。 例えば、甲B2には、支持膜の内容面に高分子重合体薄膜の分離活性層を設けた正浸透複合中空糸膜モジュールが記載され(甲B2a)、支持膜の素材として、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどを主成分とできること(甲B2b)、高分子重合体薄膜における重合体として、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合反応により得られるポリアミドが記載されている(甲B2c)。また、甲B6には、中空糸膜モジュールを用いた正浸透によるコーヒーなどの飲料液の濃縮方法が記載され((甲B6a)及び(甲B6b))、中空糸膜素材として、酢酸セルロース、ポリアミド及び架橋性ポリアミドを表面層とする複合膜などが記載されている(甲B6c)。甲B7には、高分子重合体又はそのほかの繊維形成能を有する材料よりなる中空糸を用いた正浸透による流体分離にも使用できる液体分離装置が記載されている((甲B7a)及び(甲B7b))。そして、甲B8には、ポリエーテルスルホン(PES)からなる支持層及びポリアミドの表面薄層(skin layer)からなる中空糸繊維が記載され((甲B8a)及び(甲B8b))、甲B9には、ポリアミド分離層を有する、ポリプロピレンの支持層の中空繊維が記載されている((甲B9a)及び(甲B9b))。 したがって、甲B3及び甲B4とこれら先行技術文献とを組み合わせることにより、本件特許発明3及び4は、容易に想到可能である。 そこで検討するに、甲B3と甲B4は、同じEderna社の同じ登録商用名の製品に関するものではあるが、これらが型番なども含め同じ製品であることは確認できないし、甲B4の図4は、ederna Lab Unitの写真であるから(甲B4e)、甲B4のevapeos(登録商標)が中空糸膜モジュールであるという根拠にはならない。 そして、甲B3に示される中空繊維モジュールといえるevapeos(登録商標)を、甲B4に示されるコーヒー抽出液の濃縮方法に採用することが容易であって、本件特許発明3及び4で特定される中空糸状の正浸透膜やモジュール化された中空糸膜モジュールの構成自体が、周知の慣用技術であるとしても、逆浸透処理を行うことなく正浸透プロセスのみで、コーヒー抽出液を濃縮することが動機付けられるところはない。 よって、申立人Bの上記主張は採用できない。 エ まとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明3及び4に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由B1−2(新規性)及び申立理由B3−2(進歩性)には、理由がない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、請求項3、4、6及び7に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、ほかに請求項3、4、6及び7に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件訂正により請求項1、2及び5に係る発明の特許は削除されたため、異議申立人の請求項1、2及び5に係る発明の特許についての特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 したがって、請求項1、2及び5に係る発明の特許についての特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法であって、 前記液状食品がコーヒー抽出液であり、 前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1k/(m2×hr)以上20k/(m2×hr)以下の範囲に制御し、 前記正浸透プロセスが、中空糸膜状の支持膜と、前記支持膜の外表面もしくは内表面、またはこれらの双方の面上の分離活性層とを有する、中空糸状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記分離活性層が、ポリアミドからなる、 濃縮方法。 【請求項4】 前記正浸透プロセスを、前記中空糸状の正浸透膜がモジュール化された中空糸膜モジュールを用いて行う、請求項3に記載の濃縮方法。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 正浸透プロセスによって濃縮を行う、液状食品の濃縮方法であって、 前記液状食品がコーヒー抽出液であり、 前記正浸透プロセスにおける透水量を、0.1k/(m2×hr)以上20k/(m2×hr)以下の範囲に制御し、 前記正浸透プロセスが、支持層と、前記支持層上の分離活性層とを有する、平膜状の正浸透膜を用いて行われるものであり、 前記支持層が、不織布からなり、 前記分離活性層が、支持膜とポリアミドとからなり、 前記支持膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種を主成分とし、 前記正浸透プロセスを、前記平膜状の正浸透膜がモジュール化されたプリーツ型モジュールまたはスパイラル型モジュールを用いて行う、 濃縮方法。 【請求項7】 正浸透プロセスに用いられる誘導溶液が、塩類、糖類、モノアルコール類、グリコール類、または重合体から選ばれる誘導溶質の水溶液である、請求項3、4、および6のいずれか一項に記載の濃縮方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-11-14 |
出願番号 | P2016-176847 |
審決分類 |
P
1
651・
857-
YAA
(A23F)
P 1 651・ 111- YAA (A23F) P 1 651・ 537- YAA (A23F) P 1 651・ 113- YAA (A23F) P 1 651・ 855- YAA (A23F) P 1 651・ 841- YAA (A23F) P 1 651・ 851- YAA (A23F) P 1 651・ 121- YAA (A23F) P 1 651・ 854- YAA (A23F) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
瀬良 聡機 |
特許庁審判官 |
関 美祝 阪野 誠司 |
登録日 | 2021-03-26 |
登録番号 | 6858516 |
権利者 | 旭化成株式会社 |
発明の名称 | 液状食品の濃縮方法 |
代理人 | 古賀 哲次 |
代理人 | 中村 和広 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 勝又 秀夫 |
代理人 | 三間 俊介 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 勝又 秀夫 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 中村 和広 |
代理人 | 古賀 哲次 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 三間 俊介 |
代理人 | 齋藤 都子 |
代理人 | 齋藤 都子 |