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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B |
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管理番号 | 1394653 |
総通号数 | 15 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2023-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-12-01 |
確定日 | 2023-02-27 |
事件の表示 | 特願2020−113974「粘着剤層付き偏光フィルム、及び画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年11月12日出願公開、特開2020−184082〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯等 特願2020−113974号(以下「本件出願」という。)は、平成28年5月11日に出願した特願2016−95329号(先の出願に基づく優先権主張 平成27年12月25日)の一部を令和2年7月1日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和 2年 7月15日 :手続補正書の提出 令和 3年 6月 7日付け:拒絶理由通知 令和 3年 8月19日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年 8月30日 :補正の却下の決定(令和3年8月19日付け の手続補正書による補正について) 令和 3年 8月30日付け:拒絶査定 令和 3年12月 1日 :審判請求 令和 3年12月 1日 :手続補正書の提出 令和 4年 8月31日付け:拒絶理由通知 令和 4年10月31日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明の認定 本願の請求項に係る発明は、令和4年10月31日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「 画像表示装置において画像表示部より視認側に用いられる粘着剤層付き偏光フィルムであって、 前記粘着剤層付き偏光フィルムは、偏光フィルムと当該偏光フィルムの両面に粘着剤層を有し、 前記偏光フィルムは、偏光子と当該偏光子の両面に透明保護フィルムを有し、 前記偏光子の視認側の透明保護フィルムの波長380nmにおける透過率が6%未満であり、 前記偏光子の視認側の透明保護フィルムが、トリアセチルセルロースフィルムであり、 前記偏光子の画像表示部側の透明保護フィルムの材料は、ポリエステル系ポリマー、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、アミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は、前記ポリマーのブレンドであり、 前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が、紫外線吸収剤として、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤のうちの1種又は2種以上と、染料とを含み、 前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が紫外線吸収機能を有することを特徴とする粘着剤層付き偏光フィルム。」 第3 拒絶の理由 令和4年8月31日付けで、当合議体が通知した拒絶理由は、本件出願の請求項1〜9に係る発明は、本願の先の出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 記 引用文献1:特開2014−115468号公報 引用文献2:特開昭55−69109号公報 第4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 1 引用文献1の記載事項 当合議体が拒絶の理由で引用した、本願の先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1(特開2014−115468号公報)には、以下の記載がある(下線は当合議体が付与した。)。 (1)「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、画像表示パネルの前面に透明板またはタッチパネルを備える画像表示装置の形成に用いられる粘着剤付き光学フィルムに関する。さらに、本発明は当該粘着剤付き光学フィルムを用いた画像表示装置の製造方法に関する。 ・・・省略・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 層間充填剤として、液状の光硬化性樹脂を用いる方法では、液状樹脂のはみ出しに伴う汚染が生じる等の問題がある。一方、粘着シートを用いる方法では、貼り合せの前に粘着シートを画像表示装置のサイズと合致するようにカットする必要があることに加えて、所望位置に精度よく貼り合せることが容易でなく、作業性が良好とはいえない。 【0010】 前面透明板の画像表示パネル側の面の周縁部には、装飾や光遮蔽を目的とした印刷が施されることが多い。周縁部に印刷が施されると、印刷部分の境界に、10μm〜数十μm程度の段差が生じるが、層間充填剤としてシート状粘着剤を用いた際は、この印刷段差部に気泡が生じ易いとの問題も生じ得る。 【課題を解決するための手段】 【0011】 層間充填構造を採用する画像表示装置において、画像表示パネルと前面部材との貼り合せに関わる上記の諸問題は、偏光板の両面に粘着剤層が設けられた両面粘着剤付きの偏光板を用いることによって解決される。 【0012】 すなわち、本発明は、前面透明板またはタッチパネルと画像表示セルとの間に配置して用いられる両面粘着剤付き光学フィルムに関する。本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、偏光板を含む光学フィルムの画像表示セルと貼り合せられる側の面に設けられた第一粘着剤層を備え、当該光学フィルムの透明板またはタッチパネルと貼り合せられる側の面に第二粘着剤層を備える。第一粘着剤層および第二の粘着剤層のそれぞれには、保護シートが剥離可能に貼着されている。第一粘着剤層の厚みは3〜30μmであることが好ましく、第二粘着剤層の厚みは30μm以上であることが好ましい。 ・・・省略・・・ 【発明の効果】 【0018】 本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、画像表示セルとの貼り合せのための第一粘着剤層に加えて、前面透明板やタッチパネル等の前面透明部材と貼り合せるための第二の粘着剤層を備える。このような構成によれば、画像表示パネルと前面透明部材とを貼り合せて層間充填構造とする際に、別途の液状接着剤や粘着シートを設ける必要がない。そのため、液状樹脂や粘着シートのはみ出しによる汚染が防止されることに加えて、製造プロセスが簡略化される。 ・・・省略・・・ 【発明を実施するための形態】 【0022】 本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、偏光板を含む光学フィルムの一方の面に第一粘着剤層を備え、他方の面に第二粘着剤層を備える。第一粘着剤層は、画像表示セルと光学フィルムとの貼り合せに用いられる粘着剤層であり、第二粘着剤層は、前面透明部材(前面透明板またはタッチパネル)と光学フィルムとの貼り合せに用いられる粘着剤層である。 【0023】 以下では、適宜図面を参照しながら、本発明の詳細を説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる両面粘着剤付き光学フィルム50を模式的に表す断面図であり、図3は、本発明の一実施形態にかかる画像表示装置100を模式的に表す断面図である。 【0024】 図1に示す両面粘着剤付き光学フィルム50は、光学フィルム10として偏光板11を備える。両面粘着剤付き光学フィルム50は、光学フィルム10の一方の面に第一粘着剤層21を備え、他方の面に第二粘着剤層22を備える。第一粘着剤層21上には、第一保護シート31が剥離可能に貼着されており、第二粘着剤層22上には、第二保護シート32が剥離可能に貼着されている。 ・・・省略・・・ 【0026】 [光学フィルム] 光学フィルム10を構成する偏光板11としては、偏光子の片面または両面に、必要に応じて適宜の透明保護フィルムが貼り合せられたものが一般に用いられる。偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。 【0027】 偏光子の保護フィルムとしての透明保護フィルムには、セルロース系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、フェニルマレイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性および光学等方性に優れるものが好ましく用いられる。なお、偏光子の両面に透明保護フィルムが設けられる場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムが用いられてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムが用いられてもよい。また、液晶セルの光学補償や視野角拡大等を目的として、位相差板(延伸フィルム)等の光学異方性フィルムを偏光子の保護フィルムとして用いることもできる。 ・・・省略・・・ 【0033】 [第一粘着剤層] 光学フィルム10の一方の面には、画像表示セル60との貼り合せに用いるための第一粘着剤層21が設けられる。第一粘着剤層21の厚さは、使用目的や接着力等に応じて適宜に決定できるが、本発明においては、3μm〜30μmが好ましく、5μm〜27μmがより好ましく、10μm〜25μmがさらに好ましい。第一粘着剤層の厚みが前記範囲であれば、耐久性に優れると共に、気泡の混入等の不具合を抑制することができる。 【0034】 第一粘着剤層を構成する粘着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性および接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。 ・・・省略・・・ 【0039】 [第二粘着剤層] 光学フィルム10の他方の面には、前面透明部材70との貼り合せに用いるための第二粘着剤層22が設けられる。このように、画像表示セルとの貼り合せに用いられる第一粘着剤層21の反対面に、前面透明部材との貼り合せのための第二粘着剤層22が設けられた両面粘着剤付き光学フィルムを用いれば、層間充填構造とする際に、光学フィルム10上に、液状接着剤や別途のシート状粘着剤層を付設する工程を設ける必要がない。そのため、画像表示装置の製造工程を簡略化できると共に、接着剤(粘着剤)のはみ出しによる汚染が防止される。 【0040】 <厚み> 第二粘着剤層22の厚さは、30μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。第二粘着剤層の厚みが前記範囲より小さいと、光学フィルムと前面透明部材との貼り合せの際に、気泡が混入し易くなる傾向がある。 ・・・省略・・・ 【0079】 第二粘着剤層22が光硬化性粘着剤である場合、粘着剤層中に光ラジカル発生剤を含有することが好ましい。光ラジカル発生剤としては、1個または複数のラジカル発生点を分子中に有する化合物が用いられ、例えば、ヒドロキシケトン類、ベンジルジメチルケタール類、アミノケトン類、アシルフォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、トリクロロメチル基含有トリアジン誘導体等が挙げられる。光ラジカル発生剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、単官能型光ラジカル発生剤と多官能型光ラジカル発生剤とを適宜併用してもよい。 【0080】 第二粘着剤層22が光硬化性粘着剤である場合、光ラジカル発生剤の含有量は、粘着剤組成物全体100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.05〜8重量部がより好ましい。 【0081】 上記例示の各成分の他、粘着剤層中には、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で用いることができる。 ・・・省略・・・ 【0090】 [カッティング] 粘着剤付き光学フィルムは、必要に応じて所望サイズにカットされた後、実用に供される。一般には、長尺状に形成された粘着剤付き光学フィルムが、画像表示装置のサイズ(画面サイズ)と合致する製品サイズにカットされる。カット方法としては、トムソン刃等を用いて打ち抜く方法や、丸刃や皿刃等のカッターを用いる方法や、レーザー光、水圧を利用する方法等が挙げられる。 ・・・省略・・・ 【0098】 [画像表示装置] 本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、図3に模式的に示すように、偏光板を含む光学フィルム10の一方の面に液晶セルや有機ELセル等の画像表示セル60を備え、他方の面(視認側)にタッチパネルや前面透明板等の前面透明部材70を備える画像表示装置100の形成に好適に用いられる。当該画像表示装置において、画像表示セル60は、第一粘着剤層21を介して光学フィルム10と貼り合せられ、前面透明部材70は、第二粘着剤層22を介して光学フィルム10と貼り合せられる。」 (2)「【実施例】 【0108】 以下に実施例および比較例を挙げてさらに説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。 【0109】 [実施例1] <偏光板> ヨウ素が含浸された厚み25μmの延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられた偏光板(偏光度99.995%)を用いた。偏光子の一方の面(画像表示セル側)の透明保護フィルムは、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムからなる位相差フィルムであり、他方の面(視認側)の透明保護フィルムは、厚さ60μmのトリアセチルセルロースフィルムであった。 【0110】 <セル側粘着剤層(第一粘着剤層)の形成> (ベースポリマーの調製) 温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、ブチルアクリレート97部、アクリル酸3部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2部および酢酸エチル233部投入した後、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後、60℃にフラスコを加熱し、7時間反応させて、重量平均分子量(Mw)が110万のアクリル系ポリマーを得た。 【0111】 (粘着剤組成物の調製) 上記アクリル系ポリマー溶液(固形分を100重量部とする)に、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製「コロネートL」)0.8重量部、シランカップリング剤(信越化学(株)製「KBM−403」)0.1部を加えて粘着剤組成物(溶液)を調製した。 【0112】 (粘着剤層の形成および架橋) セパレータ(表面が離型処理された厚み38μmのポリエチレンテレフタレート系フィルム)上に、上記の粘着剤組成物溶液を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥させて溶媒を除去して、粘着剤層を得た。その後、50℃で48時間加熱して、架橋処理を行った。(以下、この粘着剤層を「粘着剤層A」と称する) 【0113】 <視認側粘着剤層(第二粘着剤層)の形成> (ベースポリマーの調製) ベースポリマーとして、ブチルアクリレート(BA)とメチルメタクリレート(MMA)のブロック共重合体(BA/MMA=2/1、重量平均分子量10万)が用いられた。(以下、このベースポリマーを「ポリマー1」と称する) 【0114】 (粘着剤組成物の調製) 上記のポリマー1を80重量部、および可塑剤を20重量部、120重量部のトルエンに溶解して、粘着剤組成物(溶液)を調製した。可塑剤としては、重量分子量約3000のアクリルオリゴマー(東亜合成(株)製「ARUFON UP−1000」)が用いられた。 【0115】 (粘着剤層の形成) セパレータ上に、上記の粘着剤組成物溶液を、乾燥後の厚みが150μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥させて溶媒を除去して、粘着剤層を得た。(以下、この粘着剤層を「粘着剤層B1」と称する) 【0116】 <両面粘着剤付き光学フィルムの作製> 上記偏光板の一方の面にセル側粘着剤層として上記の粘着剤層Aを貼り合せた。その後、偏光板の他方の面に視認側粘着剤層として上記の粘着剤層B1を貼り合せた後、セパレータを剥離し、その上に粘着剤層B1を貼り合せて、粘着剤層B1が2層(合計厚み300μm)の粘着剤層とした。 【0117】 このようにして、偏光板(光学フィルム)の一方の面に、厚み20μmの粘着剤層、他方の面に、厚み300μmの粘着剤層が貼り合せられ、各粘着剤層上にセパレータが剥離可能に貼着された両面粘着剤付き光学フィルムを得た。 【0118】 <カッティング> 上記の両面粘着剤付き光学フィルムを、48mm×98mmのサイズにトムソン刃で打ち抜いた。同一サイズに打ち抜かれた両面粘着剤付き光学フィルムを50枚積み重ね、その上下から万力状の治具にてフィルムを保持し、光学フィルムの端面から粘着剤層がはみ出るように加圧した。この状態で、光学フィルムの端面から0.5mm内側を、回転刃を用いて光学フィルムおよびセパレータと共に粘着剤層ごと切削した。その後、上記圧力を解放し、製品サイズにカットされた両面粘着剤付き偏光板を得た。」 (3)図1 「 ![]() 」 (4)図3 「 ![]() 」 2 引用発明 引用文献1には、実施例1の「両面粘着剤付き偏光板」の発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号を参考までに括弧内に付してある。)。 「 偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられた偏光板を用い、偏光子の一方の面(画像表示セル側)の透明保護フィルムは、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムからなる位相差フィルムであり、他方の面(視認側)の透明保護フィルムは、厚さ60μmのトリアセチルセルロースフィルムであって(【0109】)、 上記偏光板の一方の面にセル側粘着剤層として粘着剤層Aを貼り合せ、その後、偏光板の他方の面に視認側粘着剤層として粘着剤層B1を貼り合せた後、セパレータを剥離し、その上に粘着剤層B1を貼り合せて、粘着剤層B1が2層(合計厚み300μm)の粘着剤層とし(【0116】)、各粘着剤層上にセパレータが剥離可能に貼着された両面粘着剤付き光学フィルムを得(【0117】)、 上記の両面粘着剤付き光学フィルムを製品サイズにカットして得た(【0118】)、画像表示装置に用いられる(【0001】)両面粘着剤付き偏光板。」 第5 対比 1 本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)偏光子について 引用発明の「偏光板」は、「偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられた」ものであって、「偏光子の一方の面(画像表示セル側)の透明保護フィルムは、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムからなる位相差フィルムであり、他方の面(視認側)の透明保護フィルムは、厚さ60μmのトリアセチルセルロースフィルムである」から、引用発明の「偏光子」は、その文言どおり、本願発明の「偏光子」に相当する。 (2)透明保護フィルムについて 上記(1)に示した引用発明における「偏光子」と「透明保護フィルム」の位置関係からみて、引用発明の「他方の面(視認側)の透明保護フィルム」及び「偏光子の一方の面(画像表示セル側)の透明保護フィルム」は、それぞれ、本願発明の「偏光子の視認側の透明保護フィルム」及び「偏光子の画像表示部側の透明保護フィルム」に相当する。 また、引用発明の「他方の面(視認側)の透明保護フィルム」は「トリアセチルセルロースフィルムからなる」ものであるから、本願発明の「偏光子の視認側の透明保護フィルム」が「トリアセチルセルロースであり」との要件を満たす。 (3)偏光フィルムについて 引用発明の「偏光板」は、「偏光子」と、その両面に「透明保護フィルム」を有するものであるから、引用発明の「偏光板」は、本願発明の「偏光フィルム」に相当する。 また、引用発明の「偏光板」は、本願発明の「偏光フィルム」の「偏光子と該偏光子の両面に透明保護フィルムを有し」との要件を満たす。 (4)粘着剤層について 引用発明は、「上記偏光板の一方の面にセル側粘着剤層として粘着剤層Aを貼り合せ、その後、偏光板の他方の面に視認側粘着剤層として粘着剤層B1を貼り合せた後、セパレータを剥離し、その上に粘着剤層B1を貼り合せて、粘着剤層B1が2層(合計厚み300μm)の粘着剤層とした、各粘着剤層上にセパレータが剥離可能に貼着された両面粘着剤付き光学フィルムを得」、「上記の両面粘着剤付き光学フィルムを製品サイズにカットして得た」ものである。 上記構成からみて、引用発明の「偏光板の他方の面」の「視認側粘着剤層」は、本願発明の「偏光フィルムの視認側の粘着剤層」に相当する。 また、引用発明の「偏光板の他方の面」の「視認側粘着剤層」及び「偏光板の一方の面」の「セル側粘着剤層」は、本願発明の「粘着剤層」に相当する。 (5)粘着剤層付き偏光フィルムについて 上記(1)〜(4)を総合すると、引用発明の「両面粘着剤付き偏光板」は、本願発明の「粘着剤層付き偏光フィルム」に相当する。 また、引用発明における偏光子の一方の面が画像表示セル側であり,他方の面が視認側であることからみて,引用発明が画像表示セルより視認側に位置するのは明らかであるから、引用発明は、本願発明の「画像表示装置において画像表示部より視認側に用いられる」との要件を満たす。 さらに、引用発明は、「偏光板」と当該「偏光板」の両面に粘着剤層を有する。そうしてみると、引用発明は、本願発明の「偏光フィルムと当該偏光フィルムの両面に粘着剤層を有し」との要件を満たす。 2 一致点及び相違点の認定 (1)一致点 上記1によれば、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。 「 画像表示装置において画像表示部より視認側に用いられる粘着剤層付き偏光フィルムであって、 前記粘着剤層付き偏光フィルムは、偏光フィルムと当該偏光フィルムの両面に粘着剤層を有し、 前記偏光フィルムは、偏光子と当該偏光子の両面に透明保護フィルムを有し、 前記偏光子の視認側の透明保護フィルムが、トリアセチルセルロースフィルムである、 粘着剤層付き偏光フィルム。」 (2)相違点 本願発明と引用発明は、以下の点で相違する。 <相違点1> 「前記偏光子の視認側の透明保護フィルム」が、本願発明においては、「波長380nmにおける透過率が6%未満であ」るのに対して、引用発明の「偏光子の」「他方の面(視認側)の透明保護フィルム」は、そのように特定されていない点。 <相違点2> 「前記偏光子の画像表示部側の透明保護フィルム」が、本願発明においては、「材料は、ポリエステル系ポリマー、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、アミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は、前記ポリマーのブレンドであ」るのに対して、引用発明の「偏光子の」「画像表示セル側の透明保護フィルム」は、「トリアセチルセルロース」である点。 <相違点3> 「前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層」が、本願発明においては、「紫外線吸収剤として、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤のうちの1種又は2種以上と、染料とを含み」、「紫外線吸収機能を有する」のに対して、引用発明の「偏光板の他方の面」の「視認側粘着剤層」は、そもそも紫外線吸収剤及び染料を含むものではなく、このように特定されていない点。 第6 判断 1 相違点についての判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 偏光子等の光学部材の紫外線による劣化を防止するという課題は、画像表示装置に係る技術分野において広く一般に知られた課題であって、かかる課題を解決すべく、偏光フィルムの透明保護フィルムの380nmにおける透過率を6%未満とすることは、例えば、特開2008−40277号公報の【0077】〜【0078】、特開2011−203400号公報の【0042】及び【0055】〜【0056】、特開2012−2981号公報の【0012】、【0053】〜【0055】に示されるとおり、周知の技術的事項である。 また、紫外線の吸収を防止する手段として、偏光子の透明保護フィルムに紫外線吸収剤を添加することもまた、上述の特開2008−40277号公報の【0075】〜【0078】、同特開2011−203400号公報の【0048】、同特開2012−2981号公報の【0053】〜【0055】の他、特開2005−181615号公報の【0040】、特開2011−232493号公報の【0094】、特開2012−3269号公報の【0097】にそれぞれ記載されているように、周知の技術的事項である。 そうしてみると、引用発明において、紫外線による劣化を防止すべく、上記した周知の技術的事項を採用し、偏光子の視認側の透明保護フィルムの380nmの透過率を6%未満とすること、及び、その手段として、透明保護フィルムに添加する紫外線吸収剤の材料や添加量を実験的に最適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮であるといえる。 したがって、引用発明において、偏光子の視認側の透明保護フィルムに周知技術を適用して、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)相違点2について 引用文献1の【0027】には、「なお、偏光子の両面に透明保護フィルムが設けられる場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムが用いられてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムが用いられてもよい。」と記載されており、かつ【0027】には、偏光子の保護フィルムとしての透明保護フィルムとして、「透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性および光学等方性に優れるものが好ましく用いられる」としたうえで、その材料として、セルロース系樹脂と並記して、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が例示されている。 そうすると、偏光子の「画像表示セル側の透明保護フィルム」に求められる透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性および光学等方性を考慮して、「トリアセチルセルロース」に代えて、引用文献1の【0027】に例示された材料を用いることに格別の技術的困難性を見いだせない。 したがって、引用発明の「偏光子」の「画像表示セル側の透明保護フィルム」を、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3)相違点3について 引用文献1の【0081】に、「上記例示の各成分の他、粘着剤層中には、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で用いることができる。」と記載されるとおり、引用文献1には、粘着剤層中に着色剤、紫外線吸収剤を用い得ることが示されている。また、引用文献2には、2頁右上欄及び第3図に示されるような、両面に粘着剤層を設けた積層偏光膜に関し、3頁左下欄ないし4頁右上欄に記載されるとおり、425mμ以上の可視光領域における透過率が70%以上で、230mμから390mμの透過率が10%以下のフィルター特性を付与して偏光膜の耐光性を向上させるべく、黄色染料と紫外線吸収剤を含有させることが記載されている。また、紫外線吸収剤として、上記相違点3に係る紫外線吸収剤の材料は、特開2012−3269号公報の【0097】に、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤が記載され、特表2015−529344号公報の【0059】に紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール化合物や、トリアジン化合物が例示され、【0121】において、実際に粘着剤層にトリアジン系紫外線吸収剤を添加した具体例が示されているように、偏光板の技術分野において広く一般に知られたものである。 そして、上記(1)でも述べたように、画像表示装置の技術分野において、紫外線による部材の劣化を防止することは、自明の課題であって、引用発明において、紫外線による部材の劣化を防ぐべく、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術を採用して、引用発明の「偏光板」の「視認側粘着剤層」に、上記相違点3に係る紫外線吸収剤の材料と染料を含有させて、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 2 効果について 本件明細書の【0021】には、「本発明の粘着剤層付き偏光フィルムは、紫外線吸収機能を有する粘着剤層が偏光フィルムの視認側に予め積層されている構成であるため、工程削除、歩留まり低下の課題を解決することができ、かつ、偏光フィルムが薄型の場合であっても、より高い紫外線カット機能を付与することができ、カール発生を抑制することができる。また、本発明の画像表示装置は、前記粘着剤層付き偏光フィルムを用いているため、画像表示装置に用いられる液晶パネル、有機EL素子等をはじめとする各種光学部材の紫外線による劣化を抑制することができる。」と記載されている。 しかしながら、かかる効果は、本願発明の構成に基づき当業者が予測し得るものであって、格別なものとは認められない。 3 審判請求人の主張について (1)審判請求人の主張の概要 審判請求人は、令和4年10月31日提出の意見書において、相違点3につき、「視認側透明保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを採用する引用発明に、セルロース系フィルムを否定する引用文献2に記載の発明を適用して本願発明の構成に到達するには阻害要因があると思料いたします。」(以下「主張1」という。)、「引用文献2に記載の発明は、黄色染料とベンゾフェノン誘導体との組み合わせを強く指向しており、その他の組み合わせを否定しているといえます。そうである以上、当業者が引用文献2に記載の発明を参酌したとしても、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤と染料との組み合わせを採用する本願発明の構成に至るには阻害要因があると思料いたします。」(以下「主張2」という。)と主張する。 (2)主張1について まず、上記主張1についてみると、耐光性の向上は、保護フィルムがセルロース系フィルムであるか、疎水性フィルムであるかの素材の相違にかかわらず、偏光板の分野において求められる課題であることは当業者の技術常識に照らし明らかである。確かに、引用文献2には、偏光膜にセルロース系フィルムを積層して補強する方法においては、セルロース系フィルム積層偏光膜は吸湿して膨張する欠点があり、偏光膜との間の膨張率の差で偏光膜にヒビ割れを生じる障害があったことが記載され(第1頁右下欄第11〜15行)、かかる欠点を解決すべくなされたものであることが説明されている。しかしながら、引用文献2には、上記記載に続けて、「更に偏光膜は光に当てることによって漸次脆化し、偏光能自体も低下する偏光膜として致命的な欠点があった」旨記載されている。 そして、引用文献2には、上記相違点3の判断において示したとおり、425mμ以上の可視光領域における透過率が70%以上で、230mμから390mμの透過率が10%以下のフィルター特性を付与して偏光膜の耐光性を向上させるべく、黄色染料と紫外線吸収剤を含有させることが記載されているのであり、かかる耐光性の向上は、保護フィルムの素材の相違にかかわらず、偏光膜としての機能を保持するために求められるものであるから、引用発明において、引用文献2に示される紫外線防止剤と黄色染料との組合せを粘着剤層に含有させることを阻害するものではない。 (3)主張2について 次に、上記主張2についてみると、引用文献2の3頁右下欄16行〜20行に「使用する紫外線吸収剤としては、なるべく長波長側まで吸収する能力のあるもの、例えば、・・・ベンゾフェノン誘導体が好ましく」と記載されているとおり、引用文献2には、あくまで、好ましい例としてベンゾフェノン誘導体が記載されているのであって、かかる記載に接した当業者であれば、長波長側まで吸収する能力のあるものであれば、ベンゾフェノン誘導体に限られるものではないと理解する。そして、上記1(3)で延べたように、偏光板の粘着剤層に含有させる紫外線吸収剤の材料としては、ベンゾフェノン誘導体に限らず、さまざまなものが知られており、引用発明において、引用文献2に記載された技術的事項に基づき、紫外線吸収剤と染料の組合せを粘着剤層に含有させる際に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤と染料との組合せを採用することも、引用文献2の記載から何ら妨げられるものではない。 (4)したがって、審判請求人の上記主張は、いずれも採用できない。 4 小括 本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本件出願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2022-12-16 |
結審通知日 | 2022-12-20 |
審決日 | 2023-01-17 |
出願番号 | P2020-113974 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G02B)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
松波 由美子 |
特許庁審判官 |
井口 猶二 清水 康司 |
発明の名称 | 粘着剤層付き偏光フィルム、及び画像表示装置 |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |