ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C01B 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C01B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C01B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C01B |
---|---|
管理番号 | 1395243 |
総通号数 | 15 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-03-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-09-26 |
確定日 | 2023-02-07 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第7041787号発明「球状シリカ粒子の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第7041787号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第7041787号の請求項1〜7に係る特許についての出願は、令和3年10月20日を出願日とする出願であり、令和4年3月15日にその特許権の設定登録がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行され、その後、同年9月26日に、その請求項1〜7(全請求項)に係る特許を対象として特許異議申立人田中都子(以下、「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件発明 請求項1〜7に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応して「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 非晶質の球状シリカ粒子(A)を分級して、表面フラクタル次元が1.0〜2.3の球状シリカ粒子(B)を調製したのち、前記球状シリカ粒子(B)を800〜1200℃で熱処理して、球状シリカ粒子(X)を得ることを含む、球状シリカ粒子(X)の製造方法。 【請求項2】 前記分級工程が湿式分級を含む、請求項1に記載の球状シリカ粒子(X)の製造方法。 【請求項3】 前記分級工程が、前記球状シリカ粒子(A)表面の異物を除去することを含む、請求項1または2に記載の球状シリカ粒子(X)の製造方法。 【請求項4】 前記球状シリカ粒子(A)が粉末溶融法により得られた非晶質の球状シリカ粒子である、請求項1から3のいずれか一項に記載の球状シリカ粒子(X)の製造方法。 【請求項5】 前記分級工程が湿式分級であり、前記湿式分級が、少なくとも水を含む分散媒と、前記球状シリカ粒子(A)とを含むスラリーを用いて行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の球状シリカ粒子(X)の製造方法。 【請求項6】 前記球状シリカ粒子(X)の比表面積が0.1〜2.0m2/gである、請求項1から5のいずれか一項に記載の球状シリカ粒子(X)の製造方法。 【請求項7】 前記球状シリカ粒子(A)及び前記球状シリカ粒子(X)の平均粒子径及び比表面積が、下記の条件(1)〜(2)を満たす、請求項1から6のいずれか一項に記載の球状シリカ粒子(X)の製造方法。 条件(1):前記球状シリカ粒子(A)の平均粒子径(Da50)に対する、前記球状シリカ粒子(X)の平均粒子径(Dx50)((Dx50)/(Da50))が、0.8以上1.2以下である。 条件(2):前記球状シリカ粒子(A)の比表面積(Sa)に対する、前記球状シリカ粒子(X)の比表面積(Sx)((Sx)/(Sa))が、0.2以上0.6以下である。」 第3 異議申立人による特許異議の申立理由の概要 1 特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)及び同法同条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(以下、「申立理由1」とする。) (1)本件発明1、6は、下記甲第1号証に記載された発明であって(下記甲第3号証〜甲第6号証を参考とする)、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、本件発明1〜6は、下記甲第1号証に記載された発明及び下記甲第2号証〜甲第6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(「申立理由1−1」)。 (2)本件発明1、3、4、6は、下記甲第2号証に記載された発明であって(下記甲第3号証、甲第5号証及び甲第6号証を参考とする)、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、本件発明1〜6は、下記甲第2号証に記載された発明及び下記甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(「申立理由1−2」)。 記 甲第1号証:特許第6564517号公報 甲第2号証:国際公開2020/195205号 甲第3号証:特開2007−51019号公報 甲第4号証:「製品紹介 PRODUCTS アドマファインとは」及び「製品紹介 PRODUCTS 製品一覧/シリカ」と題する株式会社アドマテックスのホームページの出力物、出力日2022年9月23日(URL:https://www.admatechs.co.jp/product-admafine.html及びhttps://www.admatechs.co.jp/product-admafine-silica.html) 甲第5号証:2022年3月25日付けで株式会社アドマテックスから異議申立人宛ての、品名SO−C6(ロットLCA228、数量1kg×1、平均粒径:2.2μm、比表面積:1.7m2/g、生産日:2018年1月22日)他のサンプル送付案内 甲第6号証:令和4年9月23日付け異議申立人による実験成績証明書(2022年9月2日付け 株式会社リガク 応用技術センター 粉末・薄膜解析グループ(PDX/TFX) 山本泰司による分析結果報告書、及び散乱ベクトルqと強度I(q)の関係を示す両対数グラフである「表面フラクタル次元(Ds)の指数部α及びDsの算出」と題する書面を添付) 2 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)及び同法同条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)(以下、「申立理由2」とする。) 本件特許は、請求項6、7に対応する本件明細書の発明の詳細な説明の記載が後記第4の2(1)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、また、特許請求の範囲の請求項6、7の記載が同じく後記第4の2(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)(以下、「申立理由3」とする。) 本件特許は、請求項7の記載が後記第4の3(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第4 当審の判断 1 申立理由1について (1)甲1〜6に記載された事項 ア 甲1に記載された事項 (ア)「【請求項3】 乾式法によりシリカ粒子材料を製造するシリカ粒子材料製造工程と、 200℃で加熱したときに生成する水分量が表面積1m2あたり40ppm以下になるように加熱乾燥して乾燥シリカ粒子材料を得る乾燥工程と、 を有し、 前記シリカ粒子材料が乾式法にて製造された後は、液体状の水に接触させず、且つ、粒径が100nm〜2000nmであるか又は比表面積が2m2/g〜35m2/gである電子材料用フィラーの製造方法。」 (イ)「【背景技術】 【0002】 半導体装置の封止材、基板材料、その他の電子材料として金属酸化物粒子材料からなる電子材料用フィラーが採用されており、特に樹脂材料中に電子材料用フィラーを分散させた樹脂組成物が知られている(特許文献1、2など)。 【0003】 ところで、特許文献2には、金属酸化物粒子材料を樹脂材料中に分散させた樹脂組成物を電子材料に応用する際に、分散させる金属酸化物粒子材料について物理吸着水の量を50ppm以下にすることによりプレッシャークッカ試験の結果が好ましくなることが開示されている。なお、シリカは200℃を超えて加熱すると表面OH基(結合水)が除去され始めるため(例えば非特許文献1参照)、シリカの物理吸着水は200℃まで加熱することで測定する。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明者らは、金属酸化物粒子材料を電子材料用フィラーに応用するに当たって、物理吸着水の量以外にも含有する水(結合水など)についても減少させることによって電気的特性(例えば誘電正接:Df)を向上することができるとの知見を得た。 【0007】 ここで、特許文献2に開示の発明においては、請求項1に粒径が20〜100μmと規定されている通り、比較的粒径の大きな粒子を扱うことを想定している。近年の電子材料用フィラーは半導体素子構造や回路の微細化に伴い粒径がサブミクロンからナノメートルオーダーにまで小さくなっている。物理吸着している水分量は粒子材料の表面積に比例して大きくなるため、粒径が小さくなると表面積も大きくなって物理吸着水の量も大きくなる。例えば、粒径がサブミクロンからナノメートルオーダーになった粒子材料では、特許文献2にて規定するところの「水分量を50ppm以下」と同等の水分量は数十倍となって1000ppmを超えるような量となった。その程度の水分量を目指して水分量を減少させることを目的として加熱しても電気的特性の向上が実現できるほどにまで含まれる水分(結合水など)を減少することは期待できず、充分な電気的特性とはならなかった。特に物理吸着水の量を減らしても、その後に空気中の水分が速やかに再結合することもあった。 【0008】 本発明者らは、物理吸着水以外に含有する水分の量を減少することにより電気的特性に優れた電子材料用フィラー及びその製造方法、電子材料用樹脂組成物の製造方法、高周波用基板、並びに電子材料用スラリーを提供することを解決すべき課題とする。」 (ウ)「【0027】 (電子材料用フィラー) 本実施形態の電子材料用フィラーは、電子部品の封止材、基板材料、伝熱材料などの材料として用いることができる。特に後述する電子材料用樹脂組成物として用いることが好ましい。 【0028】 本実施形態の電子材料用フィラーは、粒径が100nm〜2000nmであるか又は比表面積が2m2/g〜35m2/gである、シリカ粒子材料である。そして、200℃で加熱したときに生成する水分量が表面積1m2あたり40ppm以下である。 【0029】 粒径は、下限値として150nmが採用でき、上限値として1000nm、800nm、600nm、500nmが採用できる。これらの上限値及び下限値は任意に組み合わせて採用することができる。粒径は動的散乱法など一般的な方法にて測定できる。 【0030】 比表面積は、下限値として3m2/g、5m2/g、10m2/gが採用でき、上限値として30m2/gが採用できる。これらの上限値及び下限値は任意に組み合わせて採用することができる。比表面積の測定は窒素によるBET法にて測定した値である。 【0031】 粒径と比表面積とは関連があり、粒径が小さいほど、比表面積が大きくなる傾向にある。粒径(比表面積)は、この下限値以上(上限値以下)にすることにより樹脂中添加時の流動性が良好であり、上限値以下(下限値以上)にすることによりスラリー組成物にした際の安定性が良好である。 ・・・ 【0037】 (1)ビニル基、フェニル基、フェニルアミノ基、炭素数4以上のアルキル基、メタクリル基、又はエポキシ基を有するシラン化合物にて表面処理されている。特にビニル基、フェニル基、炭素数4以上のアルキル基を有するシラン化合物にて表面処理することが好ましい。表面処理を行うシラン化合物の量は特に限定しないが、表面処理前のシリカ粒子材料の表面に存在するOH基が全て無くなる程度にすることが好ましい。これらの官能基をもつシラン化合物により表面処理することによりシリカ粒子材料内に水分が浸透することが抑制される。 【0038】 シラン化合物による表面処理は、シラン化合物を含む表面処理剤(例えばシラン化合物を溶媒に溶解した溶液)を表面に接触することで行う。表面処理は、水を用いずに行う。ここで、水を用いないとは、シラン化合物を含む表面処理剤中に含まれる水分量を1000ppm以下にすることを意味する。詳しくは後述する。」 (エ)「【0041】 (電子材料用フィラーの製造方法:その1) 本実施形態の電子材料用フィラーの製造方法は、調製工程と第1表面処理工程とその他必要な工程とを有する。・・・ 【0042】 ・調製工程 調製工程は、乾式法にてシリカ粒子材料を調製する工程である。乾式法としては水との接触をすることなしにシリカ粒子材料を形成する方法である。乾式法としては、金属ケイ素からなる金属からなる粉粒体を酸化雰囲気ガス中にて燃焼、急冷することでシリカ粒子材料を調製するVMC法や、シリカからなる粉粒体を火炎中に投入することにより溶融させた後に急冷してシリカ粒子材料とする溶融法などがある。VMC法、溶融法は、火炎などの高温雰囲気下に投入して燃焼させたり、加熱溶融させたりするとき以降において水に接触させないことで乾式での製造方法(本明細書における乾式法)として扱われる。VMC法、溶融法共に、投入する粉粒体の粒度分布や、投入する量を調節することにより調製されるシリカ粒子材料の粒度分布が制御できる。例えば、投入する粉粒体の粒径が小さかったり、投入する量が少なかったりするほど調製されるシリカ粒子材料の粒径も小さくなる。 【0043】 なお、VMC法、溶融法において、原料となる粉粒体を投入する空間内に存在する水分量を低くすることが好ましい。例えば、原料となる粉粒体は、何らかの分散媒に分散させて搬送するが、その分散媒中の水分を除去することが望ましい。また、VMC法における酸化雰囲気ガス、溶融法における高温雰囲気において含有する水分を除去することが好ましい。水分の除去は一般的な除湿法(温度を低下させて含有する水分を凝縮除去する、乾燥剤にて水分を除去するなど)が採用できる他、もともと含まれる水分量が低いとき(季節や天候などにより変化する空気を利用する)に操作を行うことでも達成できる。」 (オ)「【実施例】 【0064】 本発明の電子材料用フィラーについて実施例に基づき以下詳細に説明を行う。 【0065】 (試験1:加熱工程における加熱温度の評価) 金属ケイ素からなる粉粒体を酸化雰囲気ガス中にて燃焼させることでシリカ粒子材料を製造した(VMC法:シリカ粒子材料製造工程)。製造したシリカ粒子材料は体積平均粒径が0.3μm、比表面積が16m2/gであった。なお、実施例においてシリカ粒子材料を製造した方法として「乾式法」と記載している場合にはVMC法にて製造している。 【0066】 製造したシリカ粒子材料について300℃、500℃、700℃、800℃、900℃で加熱(加熱工程)して含有する水分を除去した試料を調製した(全て合わせて調製工程)。 【0067】 得られたシリカ粒子材料について生成水量200℃及び生成水量500℃を前述の方法に準じて測定した。実施例の各表における水分の量の単位はppmである。結果を表1に示す。更に、各試験例の試料について1GHzにおける誘電正接を測定した。誘電正接の測定はJIS C 2138に準拠して行った。具体的には、ネットワークアナライザー(キーサイト社製、E5071C)と空洞共振器摂動法を用いて、1GHzにおける比誘電率、誘電正接を測定した。この測定はASTMD2520(JIS C2565)に準拠して行った。 【0068】 【表1】 【0069】 表より明らかなように、各温度における生成水量が少なくなるにつれて誘電正接の値が小さくなることが分かった。200℃で加熱した時に生成する単位面積あたりの水分量[=(生成水量200℃:ppm)÷(比表面積:m2/g):a/b]が40ppm以下になると誘電正接の値も小さくなることが分かった。また、500℃で加熱した時に生成する単位面積あたりの水分量[=(生成水量500℃:ppm)÷(比表面積:m2/g):c/b]が70ppm以下になると誘電正接の値も小さくなることが分かった。なお、加熱工程後においては、各試験例の試料は全て常温に放置した場合でも生成水量200℃及び生成水量500℃の増加は認められなかった。 【0070】 (試験2:加熱工程における加熱温度の評価:表面処理を行った場合) 試験例2〜6の試料について、それぞれビニルシランとヘキサメチルジシラザン(HMDS)にて2段階での表面処理を行った(第1表面処理工程及び第2表面処理工程)。ビニルシランによる表面処理は表面シラノール基量の2倍当量程度の量にて処理を行った。HMDSによる表面処理は残ったOH基を全て反応させるため、第1の表面処理剤量の当量以上の量にて処理を行い第2表面処理済粒子材料の試験試料とした。なお、以下の試験においても第2表面処理工程にて用いるオルガノシラザンはHMDSを用いた。 【0071】 得られた試験試料(処理後)について生成水量200℃及び誘電正接を試験1の方法で測定した。結果を表2に示す。なお、表2中において(a*)及び(c)の「生成水量」とは表面処理を行う前のシリカ粒子材料をその後に記載の温度に加熱した時に生成する水分量を示す(以下同じ)。 【0072】 【表2】 【0073】 表2より明らかなように、第1表面処理工程及び第2表面処理工程を行うことで、表面処理前の試験例2〜6の試験試料と比べて誘電正接の値が小さくできることが分かった。処理後の粒子材料についての単位面積あたりの水分量(a/b)が40ppm以下になると誘電正接の値も小さくなることが分かった。 【0074】 (試験3:表面処理に用いるシラン化合物の評価及びシリカ粒子材料の粒径の評価) シリカ粒子材料製造工程(調製工程)でのVMC法の製造条件を変更することにより体積平均粒径0.5μmのシリカ粒子材料(試験例12〜16)、体積平均粒径0.2μmのシリカ粒子材料(試験例17)、体積平均粒径0.1μmのシリカ粒子材料(試験例18)、体積平均粒径2μmのシリカ粒子材料(試験例19)を製造し、それぞれ加熱工程として800℃で加熱を行った。 【0075】 試験例14、17〜19については試験例7〜11と同様にビニルシラン及びHMDSにて第1表面処理工程及び第2表面処理工程を行い第2表面処理済粒子材料を製造し、各試験例の試験試料とした。試験例12、13、15、16については第1表面処理工程としてそれぞれフェニルアミノシラン、フェニルシラン、ヘキシルシラン、デシルシランにて表面処理を行った。第1表面処理済工程における表面処理は表面シラノール基量の2倍当量程度の量にて処理を行った。得られた試験試料について生成水量200℃及び誘電正接を試験1の方法で測定した。結果を表3に示す。 【0076】 【表3】 【0077】 表3より明らかなように、第1表面処理工程としてビニルシランを用いて表面処理を行った試験例14が、それぞれフェニルアミノシラン、フェニルシラン、ヘキシルシラン、デシルシランにて表面処理を行った試験例12、13、15、16と比べて低い誘電正接の値を示すことが分かった。また、試験例19(2μm)、試験例14(0.5μm)、試験例10(0.3μm)、試験例17(0.2μm)、試験例18(0.1μm)と体積平均粒径が小さくなっていくにつれて比表面積が大きくなると、誘電正接の値も大きくなっていくことが分かった。また、単位面積あたりの水分量(a/b)が40ppm以下になると誘電正接の値も小さくなることが分かった。」 イ 甲2に記載された事項 (ア)「[0005] GHz帯のセラミックス材料の誘電特性は、例えば、非特許文献1等により知られているが、いずれも焼結された基板としての特性である。シリカ(SiO2)は、誘電率が小さく(3.7)、品質係数指標Qf(誘電正接の逆数と測定周波数を掛けた値)が約12万であり、低誘電率かつ誘電正接を有するフィラーの材料として有望である。また、樹脂中での配合を容易にするためには、フィラー形状が球形に近い程好ましいが、球状シリカは容易に合成可能であり(例えば特許文献2)、既に多くの用途で使用されている。そのため、高周波帯の誘電体デバイス等においても広く用いられることが期待される。 [0006] しかしながら、球状シリカの粒子の表面には、吸着水やシラノール基といった極性官能基等が多く存在し、特に、誘電正接が焼結された基板としての特性よりも悪化するという問題点がある。 [0007] フィラー粒子の表面の吸着水や極性官能基の低減方法としては、例えば、非特許文献2で、シランカップリング剤により表面処理する方法が検討されているが、1〜10MHzでは誘電正接はほとんど低減しておらず、効果は不十分であり、GHz帯の効果は明記されていない。 ・・・ 発明が解決しようとする課題 [0010]本発明は、誘電正接が低い球状シリカ粉末を提供することにある。 課題を解決するための手段 [0011](1) 樹脂に配合してシート状に成形した後、共振器法にて周波数35〜40GHzの条件で測定した該シートの誘電正接(tanδc)から、下記の式(I)を用いて算出される球状シリカ粉末の誘電正接において、誘電正接低減処理前の球状シリカ粉末の誘電正接(tanδfA)をA、誘電正接低減処理後の球状シリカ粉末の誘電正接(tanδfB)をBとしたとき、B/Aが0.70以下であり、誘電正接低減処理後の球状シリカ粉末の比表面積が1〜30m2/gであることを特徴とする球状シリカ粉末。 [0012][数1] ただし、式(I)において記号の意味は次の通り。 Vf;シート中の球状シリカ粉末の体積分率 tanδr;樹脂シート(フィラー配合無し)の誘電正接 ・・・ [0013] 本発明によれば、樹脂材料、例えば基板等の誘電正接を低くすることが可能な球状シリカ粉末を提供することができる。」 (イ)「[0021] 本発明の誘電正接低減処理した球状シリカ粉末の原料となる球状シリカ粉末としては、平均円形度が0.85以上、比表面積が1〜30m2/gの球状シリカ粉末であれば、好適に使用することができる。原料の球状シリカ粉末の製造方法としては、例えば、融点以上の温度の高温域を通過させ球状化させる粉末溶融法が挙げられる。 [0022] 本発明の誘電正接低減処理した球状シリカ粉末は、原料の球状シリカ粉末を高温加熱処理することによって製造することができる。原料の球状シリカ粉末を500〜1100℃の温度で、かつ、加熱温度(℃)×加熱時間(h)を1000〜26400(℃・h)とする所定時間(例えば、約1〜52時間)、好ましくは、1800〜17600(℃・h)とする所定時間(例えば、約2〜35時間)、熱風あるいは電気炉にて処理し、電気炉内にて自然放冷後、110℃〜300℃の状態で球状シリカ粉末を回収し、さらに湿度40%RH以下の環境下にて25℃にまで冷却し、15〜25℃にて保管し、防湿アルミ袋にて回収することにより製造することができる。 [0023] 上記の製造方法により、比表面積といった粉体特性を変化させずに、球状シリカ粒子の表面の吸着水および極性官能基を低減させることができる。製造後においても、例えば、1ヵ月の間高湿度下に保存しても、球状シリカの誘電正接(tanδf)の増加に影響するほど粒子の表面の吸着水および極性官能基量が変化しないことが期待できる。 [0024] 製造方法において、所望の比表面積および平均粒子径が得られるように粉末を分級する工程を備えてもよい。加熱温度が500〜1100℃であれば、加熱前後にて比表面積および平均粒子径は変化しないことから、分級する工程は加熱前に実施し、所望の比表面積および平均粒子径に調整の後、加熱処理をすることが望ましい。」 (ウ)「実施例 [0031] 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。 [0032][原料シリカ粉末1] 球状シリカ(デンカ社製:FB−5D、比表面積2.4m2/g)を加熱処理せずにそのまま、後述の実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、誘電正接低減処理をしていない原料シリカ粉末1の粉末換算誘電正接(tanδfA)は、樹脂にポリエチレン(PE)を使用した場合は2.9×10−3、ポリプロピレン(PP)を使用した場合は3.0×10−3であった。 [0033][原料シリカ粉末2] 球状シリカ(デンカ社製:SFP−30M、比表面積6.0m2/g)を加熱処理せずにそのまま、後述の実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、誘電正接低減処理をしていない原料シリカ粉末2の粉末換算誘電正接(tanδfA)は、1.2×10−2であった。 [0034][原料シリカ粉末3] 球状シリカ(デンカ社製:UFP−30、比表面積30m2/g)を加熱処理せずにそのまま、後述の実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、誘電正接低減処理をしていない原料シリカ粉末3の粉末換算誘電正接(tanδfA)は、5.0×10−2であった。 [0035][原料シリカ粉末4] 球状シリカ(デンカ社製:FB−40R、比表面積0.4m2/g)を加熱処理せずにそのまま、後述の実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、誘電正接低減処理をしていない原料シリカ粉末4の粉末換算誘電正接(tanδfA)は、3.7×10−4であった。 [0036][実施例1] 原料シリカとして、原料シリカ粉末1(デンカ社製:FB−5D、比表面積2.4m2/g)を15g、アルミナ坩堝に充填し、電気炉内温度1000℃にて4時間加熱処理した。加熱処理後、炉内で200℃まで冷却し、デシケーター内(23℃−10%RH)で室温まで冷却し、各種評価の直前までアルミパック(PET/AL/PEラミネート袋:生産日本社製)のスタンドパック内で保存した。評価結果を表2に示す。なお、36GHz空洞共振器(サムテック社製)にて測定した加熱処理後の球状シリカ粉末の粉末換算誘電正接(tanδfB)は、7.6×10−4であり、原料シリカ粉末1の粉末換算誘電正接(tanδfA)が、2.9×10−3であったことから、B/Aは0.26であった。」 (エ)「[0054][比表面積] 測定用セルに試料を1g充填し、Mountech社製 MacsorbHM model−1201全自動比表面積系測定装置(BET一点法)により比表面積を測定した。測定前の脱気条件は、200℃−10分とした。吸着ガスは窒素とした。」 (オ)「[0058] [表1] 」 ウ 甲3に記載された事項 (ア)「【請求項1】 球状化無機物粉末の製造方法であって: (a)酸化ケイ素含有無機物を粉砕して粉砕物を形成し; (b)前記粉砕物を噴霧状態で加熱して前記粉砕物を球状化して球状化物を形成し; (c)前記球状化物の噴霧状態を維持したまま、前記球状化物に水を噴射して冷却し;そして、 (d)冷却した球状化物を捕集する;ことを包含する、球状化無機物粉末の製造方法。」 (イ)「【0029】 工程(d)において捕集する手段は、例えば、工程(c)で噴射により冷却した球状化物を、粉体回収装置により捕集することができる。粉体回収装置により捕集する場合、冷却した球状化物を、サイクロン、バグフィルター、あるいは湿式捕集器などの粉体回収装置に導入して、必要に応じて吸引ファンやブロワーなどの手段を用いて気体を屋外排気することにより、粉体を回収することができる。粉体回収装置としては、サイクロンとバグフィルターを併用するのが好ましい。」 エ 甲4に記載された事項 (ア)「 」 (イ)「 」 オ 甲5に記載された事項 (ア)「 」 (イ)「 」 カ 甲6に記載された事項 (ア)「 」 (イ)「 」 (2)甲1及び甲2に記載された発明 ア 甲1に記載された発明 甲1の上記(1)ア(ア)の【請求項3】には、「乾式法によりシリカ粒子材料を製造するシリカ粒子材料製造工程と、200℃で加熱したときに生成する水分量が表面積1m2あたり40ppm以下になるように加熱乾燥して乾燥シリカ粒子材料を得る乾燥工程と、を有し、前記シリカ粒子材料が乾式法にて製造された後は、液体状の水に接触させず、且つ、粒径が100nm〜2000nmであるか又は比表面積が2m2/g〜35m2/gである電子材料用フィラーの製造方法。」が記載され、同(オ)には、この「電子材料用フィラーの製造方法」の実施例が記載されているところ、同(オ)の【0075】、【0076】の【表3】には、試験例19として、上記【請求項3】に記載される製造方法における加熱乾燥の温度(【表3】の「加熱工程での温度(℃)」)が800℃であり、製造されるシリカ粒子材料の粒径(【表3】の「平均粒子径(μm)」)が2、比表面積(【表3】の「比表面積(m2/g)」)が2である例が記載されている。この試験例19の具体的な数値を、上記【請求項3】の記載に当てはめれば、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「乾式法によりシリカ粒子材料を製造するシリカ粒子材料製造工程と、200℃で加熱したときに生成する水分量が表面積1m2あたり40ppm以下になるように800℃で加熱乾燥して乾燥シリカ粒子材料を得る乾燥工程と、を有し、前記シリカ粒子材料が乾式法にて製造された後は、液体状の水に接触させず、且つ、粒径が2μmであり、比表面積が2m2/gである電子材料用フィラーの製造方法。」 イ 甲2に記載された発明 甲2の上記(1)イ(ウ)の[0036]の[実施例1]には、球状シリカ粉末の製造方法として、「原料シリカとして、原料シリカ粉末1(デンカ社製:FB−5D、比表面積2.4m2/g)を15g、アルミナ坩堝に充填し、電気炉内温度1000℃にて4時間加熱処理した。加熱処理後、炉内で200℃まで冷却し、デシケーター内(23℃−10%RH)で室温まで冷却」することが記載されているところ、ここでの原料シリカである原料シリカ粉末1は、同(ウ)の[0032]に「[原料シリカ粉末1] 球状シリカ(デンカ社製:FB−5D、比表面積2.4m2/g)」と記載されているから、甲1には、上記[実施例1]を基とする以下の発明が記載されているといえる。 「球状シリカ(デンカ社製:FB−5D、比表面積2.4m2/g)を15g、アルミナ坩堝に充填し、電気炉内温度1000℃にて4時間加熱処理し、加熱処理後、炉内で200℃まで冷却し、デシケーター内(23℃−10%RH)で室温まで冷却する球状シリカ粉末の製造方法。」 (3)申立理由1−1について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「電子材料用フィラーの製造方法」は、電子材料用フィラーであるシリカ粒子材料の製造方法でもあるといえるから、本件発明1の「球状シリカ粒子(X)の製造方法」と、「シリカ粒子(X)の製造方法」である点で共通している。 また、甲1発明の「乾式法によりシリカ粒子材料を製造するシリカ粒子材料製造工程」は、シリカ粒子を調製する工程であるといえると共に、「200℃で加熱したときに生成する水分量が表面積1m2あたり40ppm以下になるように800℃で加熱乾燥して乾燥シリカ粒子材料を得る乾燥工程」は、(シリカ粒子材料製造工程に続いて)シリカ粒子を800℃で熱処理する工程であるといえるから、甲1発明の「乾式法によりシリカ粒子材料を製造するシリカ粒子材料製造工程と、200℃で加熱したときに生成する水分量が表面積1m2あたり40ppm以下になるように800℃で加熱乾燥して乾燥シリカ粒子材料を得る乾燥工程と、を有」することは、本件発明1と、「シリカ粒子(B)を調製したのち、前記球状シリカ粒子(B)を800〜1200℃で熱処理して、シリカ粒子(X)を得ることを含む」ことで共通している。 そうすると、本件発明1と甲1発明は、「シリカ粒子(B)を調製したのち、前記シリカ粒子(B)を800〜1200℃で熱処理して、シリカ粒子(X)を得ることを含む、シリカ粒子(X)の製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点1> シリカ粒子(B)を調製するにおいて、本件発明1では、「非晶質の球状シリカ粒子(A)を分級して、表面フラクタル次元が1.0〜2.3の球状シリカ粒子(B)を調製し」ているのに対し、甲1発明では、「非晶質の球状シリカ粒子(A)を分級して、表面フラクタル次元が1.0〜2.3の球状シリカ粒子(B)を調製し」ているのか明らかでない点。 <相違点2> シリカ粒子(X)の製造方法において、本件発明1は、「球状」シリカ粒子(X)の製造方法であるのに対し、甲1発明は、「球状」シリカ粒子(X)の製造方法であるのか明らかでない点。 (イ)相違点についての検討 まず、上記相違点1について、検討する。 a 甲1において、シリカ粒子の調製の段階を記載している甲1の上記(1)ア(エ)及び同(オ)の【0065】の記載を見ても非晶質の球状シリカ粒子を分級することは記載も示唆もされていない。 b ここで、本件発明において、シリカ粒子を調製する段階で、非晶質の球状シリカ粒子を分級することの技術的な意義を、以下、確認する。 本件発明は、樹脂に充填した際に、より低い誘電正接を達成可能な球状シリカ粒子の製造方法を提供することを発明の課題とする(【0007】)ところ、この課題は、非晶質の球状シリカ粒子から微粒を除去し、その後、高温条件で球状シリカ粒子を熱処理することにより解決できるとされ(【0008】)、非晶質の球状シリカ粒子から微粒を除去することは、詳しくは、球状シリカ粒子(A)に含まれる0.9μm以下の微粒子を除去すること、また、球状シリカ粒子(A)の粒子表面に付着した微粒子等を除去することであり、これにより、表面の凹凸が少なく、比表面積の小さな球状シリカ粒子(X)を得ることができる。そして、このような球状シリカ粒子(X)は、吸着水やシラノール基等の極性官能基の絶対量が少なくなり、より低い誘電正接を達成することができるものであるところ(【0015】)、「表面フラクタル次元」とは、粒子の表面凹凸の程度を示す指標であって、表面フラクタル次元の数値が低いほど、粒子表面の凹凸が少なく、滑らかな表面を有していることを意味している(【0016】)から、本件発明は、吸着水やシラノール基等の極性官能基の絶対量が少なくなるような、粒子の表面凹凸が少ないことを意味する1.0〜2.3の表面フラクタル次元を有する球状シリカ粒子を分級することにより得ているものである。 c これに対し、甲1発明は、甲1の上記(1)ア(イ)の記載によれば、金属酸化物粒子材料を電子材料用フィラーに応用するに当たって、物理吸着水の量以外にも含有する水(結合水など)についても減少させることによって電気的特性(例えば誘電正接:Df)を向上することができるとの知見を得た(【0006】)ことから、物理吸着水以外に含有する水分の量を減少することにより電気的特性に優れた電子材料用フィラー等を提供することを解決すべき課題とし(【0008】)、この課題を、同(ウ)の【0037】及び【0038】の記載によれば、ビニル基、フェニル基、フェニルアミノ基、炭素数4以上のアルキル基、メタクリル基、又はエポキシ基を有するシラン化合物にてシリカ粒子材料を表面処理することにより、シリカ粒子材料内に水分が浸透することを抑制すると共に、この表面処理を、水を用いずに行うことで、解決するものである。 これによれば、甲1発明は、電気的特性(例えば誘電正接:Df)を向上するにあたって、シリカ粒子の形状や表面の構造、粒径の分布に何ら着目するものではないし、上記bによれば、本件発明における分級は、球状シリカ粒子(A)に含まれる0.9μm以下の微粒子を除去するものであるところ、同(ウ)の【0028】、【0029】の記載によれば、甲1発明は、0.9μm以下のシリカ粒子も対象とするものであるから、甲1には、甲1発明における調製工程で、上記bで述べたように、粒子の表面凹凸の程度を示す指標であり、シリカ粒子表面に付着した微粒子等の存在も反映する表面フラクタル次元が特定の範囲となるように分級を行おうとする動機付けがあるとはいえない。 そうすると、シリカ粒子(B)を調製するにおいて、非晶質の球状シリカ粒子(A)を分級して、表面フラクタル次元が1.0〜2.3の球状シリカ粒子(B)を調製すること、すなわち、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 d 甲2〜甲6にも、シリカ粒子(B)を調製するにおいて、非晶質の球状シリカ粒子(A)を分級して、表面フラクタル次元が1.0〜2.3の球状シリカ粒子(B)を調製することに関する記載はないから、甲2〜甲6を考慮したとしても、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 e ここで、特許異議申立書には、「具体的には、甲第1号証では、甲1発明である実施例19の球状シリカ粒子の製造方法が開示されている。 ・・・ 実施例19で用いた原料は、VMC法で製造されたシリカ粒子であること、平均粒子径が2μm、比表面積が2m2/gであることが開示されている。 ここで、VMC法により製造された実施例19のシリカ粒子である原料について、性質を確認するために入手方法を探したところ、甲第1号証の出願人である株式会社アドマテックスの製品に平均粒子径1.8〜2.3μm、比表面積1.5〜2.5m2/gのVMC法により製造されたシリカ粒子材料が型番SO−C6として存在することを発見した(甲第4号証参照)。このSO−C6は、実施例19で用いた原料を規定する要件を全て満たす。 ここで、甲1発明に係る実施例19で用いた原料(SO−C6)の表面フラクタル次元(Ds)を測定するために株式会社アドマテックスより取り寄せたサンプルについて分析した結果を示す。 結論としては、以下の検討の結果、甲1発明に係る実施例19で用いた原料(SO−C6)の表面フラクタル次元(Ds)は、2.0であり構成要件Bを充足することが分かった。 取り寄せたサンプルは、lot番号LCA228であり、製造年月日は、2018年1月22日である(甲第5号証参照)。 ・構成要件Bについて 甲第6号証より、サンプルについて、構成要件Bに規定する表面フラクタル次元(Ds)が2.0であり、構成要件Bに規定する「表面フラクタル次元(Ds)が1.0〜2.3」を充足することが分かった。」(6頁8行〜7頁12行)と記載され、甲1発明の、乾式法により製造され、粒径が2μmであり、比表面積が2m2/gであるシリカ粒子材料と同様に、乾式法であるVMC法により製造され、粒径及び比表面積が、甲1発明のシリカ粒子材料の粒径及び比表面積を含む、甲1の出願人である株式会社アドマテックスの製品のSO−C6の表面フラクタル次元が、2.0であることから、甲1発明のシリカ粒子材料の表面フラクタル次元(Ds)が1.0〜2.3の範囲にある旨主張している。 しかしながら、仮に、株式会社アドマテックスの製品のSO−C6の表面フラクタル次元が、2.0であるとしても、SO−C6の製造者が甲1の出願人であることは、甲1発明のシリカ粒子材料の表面フラクタル次元が、株式会社アドマテックスの製品のSO−C6の表面フラクタル次元と同じになることの根拠となるものではないし、乾式法により製造されること、粒径、及び比表面積の値と、表面フラクタル次元の値との関係性が明らかにされていない以上、甲1発明のシリカ粒子材料が、乾式法により製造され、その粒径及び比表面積の値が、株式会社アドマテックスの製品のSO−C6の粒径及び比表面積の値と同程度であるとしても、甲1発明のシリカ粒子材料の表面フラクタル次元を、株式会社アドマテックスの製品のSO−C6と同様に2.0であるとすることはできない。 そうすると、甲1発明のシリカ粒子材料の表面フラクタル次元は、依然として不明であると言わざるを得ないし、「非晶質シリカ粒子を分級」する点についての言及もないから、甲1発明は、上記相違点1に係る本件発明1の構成を充足しておらず、上記特許異議申立書の記載内容は採用することができない。 (ウ)小括 上記(イ)で述べたように、上記相違点1は、実質的な相違点であるとともに、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、上記相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2〜6に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 イ 本件発明2〜7について 本件発明2〜7は、少なくとも本件発明1の構成をすべて具備するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明6は、甲1発明ではないし、本件発明2〜7は、甲1発明及び甲2〜6に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (4)申立理由1−2について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明を対比すると、甲2発明の「球状シリカ粉末の製造方法」は、本件発明1の「球状シリカ粒子(X)の製造方法」に相当している。 また、甲2発明の「球状シリカ(デンカ社製:FB−5D、比表面積2.4m2/g)」は、何らかの方法により調製されたものであることは明らかであると共に、「球状シリカ(デンカ社製:FB−5D、比表面積2.4m2/g)を15g、アルミナ坩堝に充填し、電気炉内温度1000℃にて4時間加熱処理」することは、球状シリカ(デンカ社製:FB−5D、比表面積2.4m2/g)が調製された後、球状シリカ粒子を1000℃で熱処理しているといえるから、甲1発明の「球状シリカ(デンカ社製:FB−5D、比表面積2.4m2/g)を15g、アルミナ坩堝に充填し、電気炉内温度1000℃にて4時間加熱処理」することは、本件発明1と、「シリカ粒子(B)を調製したのち、前記球状シリカ粒子(B)を800〜1200℃で熱処理して、シリカ粒子(X)を得ることを含む」ことで共通している。 そうすると、本件発明1と甲2発明は、「球状シリカ粒子(B)を調製したのち、前記球状シリカ粒子(B)を800〜1200℃で熱処理して、球状シリカ粒子(X)を得ることを含む、球状シリカ粒子(X)の製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点3> 球状シリカ粒子(B)を調製するにおいて、本件発明1では、「非晶質の球状シリカ粒子(A)を分級して、表面フラクタル次元が1.0〜2.3の球状シリカ粒子(B)を調製し」ているのに対し、甲2発明では、「非晶質の球状シリカ粒子(A)を分級して、表面フラクタル次元が1.0〜2.3の球状シリカ粒子(B)を調製し」ているのか明らかでない点。 (イ)相違点についての検討 上記相違点3について、検討する。 a 甲2において、球状シリカ粒子の調製に関する記載は、甲2の上記(1)イ(イ)の[0021]の「原料の球状シリカ粉末の製造方法としては、例えば、融点以上の温度の高温域を通過させ球状化させる粉末溶融法が挙げられる。」のみであるし、同(イ)の[0024]の「製造方法において、所望の比表面積および平均粒子径が得られるように粉末を分級する工程を備えてもよい。加熱温度が500〜1100℃であれば、加熱前後にて比表面積および平均粒子径は変化しないことから、分級する工程は加熱前に実施し、所望の比表面積および平均粒子径に調整の後、加熱処理をすることが望ましい。」との記載によれば、甲2発明において、球状シリカを、電気炉内温度1000℃にて4時間加熱処理する前に分級しても良いことは理解できるが、甲2には、表面フラクタル次元が1.0〜2.3の球状シリカ粒子を調製するために、非晶質の球状シリカ粒子を分級することは記載も示唆もされていない。 b ここで、本件発明において、シリカ粒子を調製する段階において、非晶質の球状シリカ粒子を分級することの技術的な意義は、上記(3)ア(イ)bで述べたように、表面フラクタル次元が1.0〜2.3の球状シリカ粒子が得られるように分級を行うことにより、粒子表面の凹凸が少なく、滑らかな表面を有し、吸着水やシラノール基等の極性官能基の絶対量が少ないシリカ粒子を得ることができるものである。 c これに対し、甲2発明は、甲2の上記(1)イ(ア)の記載によれば、球状シリカの粒子の表面には、吸着水やシラノール基といった極性官能基等が多く存在し、特に、誘電正接が焼結された基板としての特性よりも悪化するという問題点があったものを([0006])、同(イ)の[0022]及び[0023]の記載によれば、「原料の球状シリカ粉末を500〜1100℃の温度で、かつ、加熱温度(℃)×加熱時間(h)を1000〜26400(℃・h)とする所定時間(例えば、約1〜52時間)・・・熱風あるいは電気炉にて処理し、電気炉内にて自然放冷後、110℃〜300℃の状態で球状シリカ粉末を回収し、さらに湿度40%RH以下の環境下にて25℃にまで冷却し、15〜25℃にて保管し、防湿アルミ袋にて回収することにより製造する」ことにより([0022])、比表面積といった粉体特性を変化させずに、球状シリカ粒子の表面の吸着水および極性官能基を低減させ([0023])るものである。 これによれば、甲2発明は、誘電正接の向上にあたって、上記[0023]に「比表面積といった粉体特性を変化させず」とあるように、シリカ粒子の形状、表面の構造に着目するものではないから、甲2には、甲2発明における球状シリカの調製工程で、粒子の表面凹凸の程度を示す指標である表面フラクタル次元が特定の範囲となるように分級を行おうとする動機付けがあるとはいえない。 そうすると、シリカ粒子(B)を調製するにおいて、非晶質の球状シリカ粒子(A)を分級して、表面フラクタル次元が1.0〜2.3の球状シリカ粒子(B)を調製すること、すなわち、上記相違点3に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 d 甲1、甲3、甲5及び甲6にも、シリカ粒子(B)を調製するにおいて、非晶質の球状シリカ粒子(A)を分級して、表面フラクタル次元が1.0〜2.3の球状シリカ粒子(B)を調製することに関する記載はないから、甲1、甲3、甲5及び甲6を考慮したとしても、上記相違点3に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 e ここで、特許異議申立書には、「甲第5号証にて説明したように一般的な球状シリカ粒子であるアドマテックス製SO−C6について表面フラクタル次元を測定したところ2.0であり、本件発明1が規定する表面フラクタル次元が1.0〜2.3との範囲は一般的な球状シリカ粒子であれは普通に満たす条件では無いかと推測できる。 本件発明1では、表面フラクタル次元の説明として0016段落に「『表面フラクタル次元』とは、粒子の表面凹凸の程度を示す指標である。表面フラクタル次元(Ds)の数値が低いほど、粒子表面の凹凸が少なく、滑らかな表面を有していることを意味する。」と記載しており、単に球状シリカ粒子の表面が滑らかであることを示しているだけである。 また、本件発明1で採用している粉末溶融法を初め、一般的に球状シリカ粒子を製造する方法は、極めて滑らかな表面をもつ球状シリカ粒子が得られることが知られており一般的な球状シリカ粒子についても表面フラクタル次元が1.0〜2.3の範囲にはいるものは一般的ではないという合理的な推測ができる。」(13頁18行〜14頁4行)と記載され、一般的な球状シリカ粒子であれば、本件発明1が規定する表面フラクタル次元が1.0〜2.3の範囲を満たすことや、一般的に球状シリカ粒子を製造する方法では、極めて滑らかな表面を持つ球状シリカ粒子が得られることから、甲2発明における球状シリカは、本件発明1が規定する表面フラクタル次元の範囲にある旨を主張している。 しかしながら、仮に、特定の製品である株式会社アドマテックスのSO−C6の表面フラクタル次元が、2.0であるとしても、一般的な球状シリカ粒子の表面フラクタル次元が1.0〜2.3の範囲を満たすことにはならないし、また、球状シリカ粒子というだけで、球状シリカ粒子の表面フラクタル次元が1.0〜2.3の範囲を満たすことに関する証拠も示されていない。 そうすると、甲2発明の球状シリカの表面フラクタル次元は、依然として不明であると言わざるを得ないし、「非晶質シリカ粒子を分級」する点についての言及もないから、甲2発明は、上記相違点3に係る本件発明1の構成を充足しておらず、上記特許異議申立書の記載内容は採用することができない。 (ウ)小括 上記(イ)で述べたように、上記相違点3は、実質的な相違点であるとともに、上記相違点3に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1は、甲2発明ではないし、甲2発明及び甲1、甲3、甲5、甲6に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 イ 本件発明2〜7について 本件発明2〜7は、少なくとも本件発明1の構成をすべて具備するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明3、4、6は、甲1発明ではないし、本件発明2〜7は、甲1発明及び甲1、甲3、甲5、甲6に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (5)申立理由1−1及び申立理由1−2に関するまとめ 以上のとおり、本件特許1〜7は、特許法第29条第1項及び同条第2項の規定に違反してされたものではないから、申立理由1−1及び申立理由1−2には、理由がない。 2 申立理由2(実施可能要件違反及び明確性要件違反)について (1)申立理由2の概要 申立理由2の概要は、以下のとおりである。 ・請求項6、7 明細書及び特許請求の範囲には、BET法にて本件発明6及び7を特定することが開示されているが吸着ガスについてはどのように選択すべきかの指標すら開示されていない。 ここで、BET法の測定においては吸着ガスの選定が測定された比表面積の値に与える影響が大きいことが技術常識である。 従って、本件発明6及び7の構成要件についてBET法により特定することができず、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず、また、発明を特定するための事項であるBET法の技術的意味を理解することができないため明確では無い。 なお、BET法にて比表面積を測定する場合には、一般的に窒素ガスを利用するとの意見もあるが、一般的に使用されるガスが窒素であることと本願の明細書のように発明を特定する主要要素であるBET法に用いるガスが特定されていないときに一般的に使用されるガスが窒素ガスであることのみをもって窒素ガスに訂正することはできない。例えば、比表面積の測定対象として孔径が小さい孔まで含ませようとすると測定ガスとしてヘリウムガスを用いる場合もあり、測定目的によってどのような測定ガスを採用するかが決定されるため、どの測定ガスを 採用するのが一般的であるかは一義的ではない(特許異議申立書16頁19行〜17頁11行)。 (2)申立理由2についての検討 ア 上記(1)にも記載されているように、BET法にて比表面積を測定する場合、吸着ガスとして窒素ガスを用いることが一般的である。 イ そして、本件発明の球状シリカ粒子(X)の比表面積の測定方法について、本件明細書の【0039】には、「<比表面積の測定方法> 測定用セルに球状シリカ粒子を1g充填し、全自動比表面積径測定装置(Mountech社製、製品名:Macsorb HM model−1201(BETー点法))を用いて、球状シリカ粒子の比表面積を測定した。なお、測定前の脱気条件は、200℃、10分間とした。」との記載があるところ、本件発明の球状シリカ粒子(X)と同様の球状シリカ粒子の比表面積の測定について、例えば、上記第3、1(2)の申立理由1−2で引用されている甲2には、比表面積が0.4〜30m2/g、平均円形度が0.90〜0.96のシリカ粉末(甲2の上記1(1)イ(ウ)の[0032]〜[0035]及び同(オ))の比表面積の測定について、同(エ)には、「[0054][比表面積] 測定用セルに試料を1g充填し、Mountech社製 MacsorbHM model−1201全自動比表面積系測定装置(BET一点法)により比表面積を測定した。測定前の脱気条件は、200℃−10分とした。吸着ガスは窒素とした。」と記載されるように、本件発明の球状シリカ粒子(X)と同程度の比表面積を有する球状シリカ粒子の比表面積の測定に、本件発明の場合と同じ測定装置(Mountech社製、製品名:Macsorb HM model−1201)を用いる場合、吸着ガスとして窒素を用いることが記載されている。 ウ また、上記(1)では、「比表面積の測定対象として孔径が小さい孔まで含ませようとすると測定ガスとしてヘリウムガスを用いる場合もあ」るとされているが、本件発明が対象とする球状シリカに対して、あえてヘリウムガス等を使用しなければならないこと、さらにそのような場合に、測定値が窒素を用いた場合と、測定値が一義的に定まらないといえるほどの違いがでることを認めるに足る証拠は提出されていない。 むしろ、甲5の上記(1)オ(ア)の「サンプル送付案内」には、「SO−C6」について、単に「比表面積:1.7m2/g」と記載され、この比表面積の測定方法がBET法であるとして、比表面積を測定する場合の吸着ガスの種類の明示がないものの、このことは、比表面積の表示において、BET法による場合の吸着ガスの種類の明示を含め測定方法を明らかにしなくとも、当業者にとって、比表面積の値を一義的に把握できないといった特段の支障を生じないことを示しているといえる。 エ 上記ア〜ウによれば、本件明細書において、球状シリカ粒子(X)の比表面積の測定における吸着ガスの明示がないとしても、当業者であれば、一般的に用いられる窒素ガスを用いていることを認識できると共に、本件発明が対象とする球状シリカに対して、あえてヘリウムガス等を使用しなければならないこと、さらにそのような場合に、測定値が窒素を用いた場合と、測定値が一義的に定まらないといえるほどの違いがでることを認めるに足る証拠は提出されていないのであるから、本件発明6、7に対応する本件明細書は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないということはできないし、請求項6、7の記載が、比表面積の値が一義的に定まらないため、明確でないということはできない。 (3)申立理由2に関するまとめ 以上のとおり、本件特許は、請求項6、7に対応する本件明細書の発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないし、請求項6、7の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、上記申立理由2には、理由がない。 3 申立理由3(サポート要件違反)について (1)申立理由3の概要 申立理由3の概要は、以下のとおりである。 ・請求項7 明細書及び特許請求の範囲には、条件(1)及び条件(2)を特定することで本件発明7を特定することが開示されている。 条件(1)について明細書中においては、0024段落にて「条件(1):球状シリカ粒子(A)の平均粒子径(Da50)に対する、球状シリカ粒子(X)の平均粒子径(Dx50)すなわち、(Dx50)/(Da50)が、0.8以上1.2以下である。」と規定されているところ、請求項7の条件(1)では、「前記球状シリカ粒子(A)の平均粒子径(Da50)に対する、前記球状シリカ粒子(X)の平均粒子径(Dx50)((Dx50)/(Da50))が、0.8以上1.2以下である。」と規定されている。 そのため明細書のように「球状シリカ粒子(A)の平均粒子径(Da50)に対する、」「球状シリカ粒子(X)の平均粒子径(Dx50)が」 「0.8以上1.2以下である。」のか、請求項のように「前記球状シリカ粒子(A)の平均粒子径(Da50)に対する、」「前記球状シリカ粒子(X)の平均粒子径(Dx50)((Dx50)/(Da50))が、」「0.8以上1.2以下である。」のかが不明瞭である。 また条件(2)について明細書中においては、0024段落にて「条件(2):球状シリカ粒子(A)の比表面積(Sa)に対する、球状シリカ粒子(X)の比表面積(Sx)、すなわち(Sx)/(Sa)が、0.2以上0.6以下である。」と規定されているところ、請求項 7の条件(2)では、「前記球状シリカ粒子(A)の比表面積(Sa)に対する、前記球状シリカ粒子(X)の比表面積(Sx)((Sx)/(Sa))が、0.2以上0.6以下である。」と規定されている。 そのため明細書のように「球状シリカ粒子(A)の比表面積(Sa)に対する、」「球状シリカ粒子(X)の比表面積(Sx)が」「0.8以上1.2以下である。」のか、請求項のように「前記球状シリカ粒子(A)の比表面積(Sa)に対する、」「前記球状シリカ粒子(X)の比表面積(Sx)((Sx)/(Sa))が、」「0.8以上1.2以下である。」のかが不明瞭である(特許異議申立書17頁13行〜18頁11行)。 (2)申立理由3についての検討 上記(1)の主張は、条件(1)について、上記(1)の「そのため明細書のように「球状シリカ粒子(A)の平均粒子径(Da50)に対する、」「球状シリカ粒子(X)の平均粒子径(Dx50)が」 「0.8以上1.2以下である。」のか、請求項のように「前記球状シリカ粒子(A)の平均粒子径(Da50)に対する、」「前記球状シリカ粒子(X)の平均粒子径(Dx50)((Dx50)/(Da50))が、」「0.8以上1.2以下である。」のかが不明瞭である。」との記載を参照すると、請求項7の記載では、((Dx50)/(Da50))が、「前記球状シリカ粒子(X)の平均粒子径(Dx50)」の言い換えと理解され、「球状シリカ粒子(A)の平均粒子径(Da50)に対する、球状シリカ粒子(X)の平均粒子径(Dx50)」を、(Dx50)/(Da50)としている明細書の記載と整合していないため、本件発明7は、本件明細書に発明の詳細な説明に記載されたものではないことを主張しているものと解される。また、条件(2)についても同様である。 しかしながら、請求項7の「前記球状シリカ粒子(A)の平均粒子径(Da50)に対する、前記球状シリカ粒子(X)の平均粒子径(Dx50)((Dx50)/(Da50))が、0.8以上1.2以下である。」の((Dx50)/(Da50))は、「前記球状シリカ粒子(A)の平均粒子径(Da50)に対する、前記球状シリカ粒子(X)の平均粒子径(Dx50)」の言い換えであることが明らかであるから、本件明細書の【0024】における条件(1)の記載に一致している。 また、請求項7の((Sx)/(Sa))も、同様に、「前記球状シリカ粒子(A)の比表面積(Sa)に対する、前記球状シリカ粒子(X)の比表面積(Sx)」の言い換えであることが明らかであるから、本件明細書の【0024】における条件(2)の記載に一致している。 そうすると、本件発明7は、本件明細書に発明の詳細な説明に記載されたものである。 (3)申立理由3に関するまとめ 以上のとおり、本件特許は、請求項7の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、上記申立理由3には、理由がない。 第5 むすび 上記第4で検討したとおり、本件特許1〜7は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであるということはできないし、同法第36条第4項第1号並びに同法同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということもできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記申立理由1〜3では、本件特許1〜7を取り消すことはできない。 また、他に本件特許1〜7を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2023-01-24 |
出願番号 | P2021-171457 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Y
(C01B)
P 1 651・ 537- Y (C01B) P 1 651・ 121- Y (C01B) P 1 651・ 536- Y (C01B) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
三崎 仁 |
特許庁審判官 |
原 賢一 後藤 政博 |
登録日 | 2022-03-15 |
登録番号 | 7041787 |
権利者 | デンカ株式会社 |
発明の名称 | 球状シリカ粒子の製造方法 |
代理人 | 園田・小林弁理士法人 |