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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1395697
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-06 
確定日 2023-03-22 
事件の表示 特願2019−197123「太陽電池モジュール及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月 7日出願公開、特開2020− 72271〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)10月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年(平成30年)10月31日、韓国)を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年10月29日付け:拒絶理由通知書
令和3年 2月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 6月17日付け:拒絶査定
令和3年 9月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和3年9月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年9月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「長方形に形成された半導体基板と、前記半導体基板の前面に形成され前記半導体基板の導電性と反対の第1導電型を有する第1導電型領域と、前記半導体基板と同じ第2導電型を有し前記半導体基板の後面に形成された第2導電型領域と、前記第1導電型領域の前面に配置され第1方向に延長された第1電極と、前記第2導電型領域の後面に配置され前記第1方向に延長された第2電極をそれぞれ含み、前記第1方向と交差する第2方向に沿って配置された複数本の太陽電池と、
前記第2方向に延長され、前記第2方向に沿って配置された前記複数本の太陽電池の内、隣接した第1太陽電池と第2太陽電池を電気的に接続する複数本の配線材と、
を含み、
前記複数本の太陽電池のそれぞれは、前記第2方向に一側の第1側面と他側に前記第1側面より表面粗さが粗い第2側面を含み、
前記第2導電型領域の後面には前記第2側面に隣接して突出部が形成され、
前記突出部は、前記第1方向に延長され、
前記第1太陽電池と前記第2太陽電池は、0.5(mm)〜1.5(mm)の間隔を置いて配置され、前記第2太陽電池の第1側面と前記第1太陽電池の第2側面が向き合うように配置され、
前記複数本の配線材が前記突出部と接触しないようにするために、前記配線材は、第2太陽電池の第2電極に接続され、第2太陽電池の第1側面と第1太陽電池の第2側面間を過ぎて、第1太陽電池の第1電極に接続される、太陽電池モジュール。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年2月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「長方形に形成された半導体基板と、前記半導体基板の前面に形成され前記半導体基板の導電性と反対の第1導電型を有する第1導電型領域と、前記半導体基板と同じ第2導電型を有し前記半導体基板の後面に形成された第2導電型領域と、前記第1導電型領域の前面に配置され第1方向に延長された第1電極と、前記第2導電型領域の後面に配置され前記第1方向に延長された第2電極をそれぞれ含み、前記第1方向と交差する第2方向に沿って配置された複数本の太陽電池と、
前記第2方向に延長され、前記第2方向に沿って配置された前記複数本の太陽電池の内、隣接した第1太陽電池と第2太陽電池を電気的に接続する複数本の配線材と、
を含み、
前記複数本の太陽電池のそれぞれは、前記第2方向に一側の第1側面と他側に前記第1側面より表面粗さが粗い第2側面を含み、
前記第2導電型領域の後面には前記第2側面に隣接して突出部が形成され、
前記突出部は、前記第1方向に延長され、
前記第1太陽電池と前記第2太陽電池は、0.5(mm)〜1.5(mm)の間隔を置いて配置され、前記第2太陽電池の第1側面と前記第1太陽電池の第2側面が向き合うように配置され、
前記複数本の配線材が前記突出部と接触しないようにするために、前記配線材は前記第1太陽電池の前記第1電極と前記第2太陽電池の前記第2電極に接続する、太陽電池モジュール。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「配線材」について、「前記第1太陽電池の前記第1電極と前記第2太陽電池の前記第2電極に接続する」を「第2太陽電池の第2電極に接続され、第2太陽電池の第1側面と第1太陽電池の第2側面間を過ぎて、第1太陽電池の第1電極に接続される」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
ただし、本件補正発明では、「複数本の太陽電池」と特定されており、「太陽電池」が「複数本」では、その構成が不明(通常、太陽電池は、1本、2本と数えられるものではない)であるところ、本願明細書の「一方、太陽電池を複数本に分割する過程は、太陽電池の表面に仮想の切断線に沿ってレーザーを照射し、分割溝を形成し、この分割溝に沿って太陽電池を機械的に分割することにより、母太陽電池は、複数本の太陽電池に分割されることができる」(【0010】)及び「…(前略)…。このように母太陽電池150aを2つの太陽電池150に分割するようにすると、複数本の太陽電池150を接続して、太陽電池パネル100に作るときに発生する出力損失(cell to module loss、CTM loss)を減らすことができる」(【0078】)との記載を参酌すると、「複数本の太陽電池」は、単に「複数の太陽電池」を意味するものと解することが自然といえる。
よって、本件補正発明の「複数本の太陽電池」は、「複数の太陽電池」と解して、以下に検討する。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2016−225624号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審が付した。以下同じ。)
「【請求項1】
長方形状の第1面と該第1面の裏側に位置する長方形状の第2面とをそれぞれ有しており且つ第1方向に並んでいる複数の太陽電池素子と、該複数の太陽電池素子のうちの前記第1方向において隣り合って位置する第1太陽電池素子と第2太陽電池素子とを電気的に接続している配線材と、をそれぞれ含む複数の太陽電池素子群と、
前記第1面側から前記複数の太陽電池素子群を覆うように位置する透光性基板と、
前記第2面側から前記複数の太陽電池素子群を覆うように位置する裏面保護部材と、
前記透光性基板と前記複数の太陽電池素子群との間に位置する第1封止材と、
前記複数の太陽電池素子群と裏面保護部材との間に位置する第2封止材と、を備え、
前記複数の太陽電池素子群は、前記第1方向と直交する第2方向に並んでおり、
前記複数の太陽電池素子のそれぞれは、前記第1面と前記第2面とをそれぞれ接続している4つの側部を有しており、
前記4つの側部は、第1側部と、該第1側部の裏側に位置する第2側部と、第3側部と、該第3側部の裏側に位置する第4側部と、を含み、
前記第3側部および前記第4側部のそれぞれが、前記第1方向に沿って位置しており、
前記第1側部および前記第2側部のそれぞれが、前記第2方向に沿って位置しており、
前記第1側部の前記第2方向における長さおよび前記第2側部の前記第2方向における
長さが、前記第3側部の前記第1方向における長さおよび前記第4側部の前記第1方向における長さよりも長く、
前記複数の太陽電池素子群のそれぞれにおいて、前記複数の太陽電池素子が、前記第1側部と前記第2側部とが対向して位置しており、
前記配線材は、前記第1太陽電池素子の前記第1面に対して前記第1方向に沿って電気的に接続されているとともに、前記第2太陽電池素子の前記第2面に対して前記第1方向に沿って電気的に接続されており、
前記透光性基板は、前記第1方向に沿ってそれぞれ位置している第1短辺および第2短辺と、前記第2方向に沿ってそれぞれ位置している第1長辺および第2長辺と、を有する、太陽電池モジュール。」
「【0020】
<2−1−1.太陽電池素子>
太陽電池素子2は、入射される太陽光を電気に変換する機能を有している。図4から図7で示されるように、太陽電池素子2は、第1面2bと、該第1面2bの裏側に位置する第2面2cとを有している。また、太陽電池素子2は、一導電型を有する半導体基板2aを有する。ここでは、半導体基板2aの第1表面(第1基板表面ともいう)2a1側に第1面2bが位置している。また、半導体基板2aの第1基板表面2a1の裏側に位置する第2表面(第2基板表面ともいう)2a2側に第2面2cが位置している。そして、太陽電池素子2は、太陽電池素子2の第1面2bにおいて、表面側バスバー電極2hおよびフィンガー電極2jを有する。別の観点から言えば、半導体基板2aの第1基板表面2a1上に表面側バスバー電極2hおよびフィンガー電極2jが配されている。さらに、太陽電池素子2は、太陽電池素子2の第2面2cにおいて、裏面側バスバー電極2iおよび裏面電極2kを有する。別の観点から言えば、半導体基板2aの第2基板表面2a2上に裏面側バスバー電極2iおよび裏面電極2kが配されている。本実施形態においては、太陽電池素子2の第1面2bが主として光が入射される受光面となる。
【0021】
例えば、太陽電池素子2の第1面2bおよび第2面2cは、それぞれ長辺および短辺を有する長方形状の外形を有している。つまり、太陽電池素子2が第1面2b側から平面視されると、太陽電池素子2の外形は、長辺および短辺を有する長方形となる。そして、太陽電池素子2の第1面2bの短辺は、表面側バスバー電極2hの長手方向と略平行である。ここで、例えば、半導体基板2aが多結晶シリコンであれば、太陽電池素子2における長辺が約120mmから200mmに設定され、太陽電池素子2の短辺が60mmから100mm程度に設定され得る。なお、本明細書では、”略平行である”という記載は、完全に平行である形態だけでなく、実質的に平行である形態も含む意味で使用されている。また、同様に、”略垂直である”という記載は、完全に垂直である形態だけでなく、実質的に垂直である状態も含む意味で使用されている。
【0022】
図6および図7で示されるように、太陽電池素子2は、半導体基板2aの第1基板表面2a1側に、該半導体基板2aの導電型とは逆の導電型を有する逆導電型層2fと、絶縁層2gとを備えている。半導体基板2aは、主として光が入射する面に相当する第1基板表面2a1と、該第1基板表面2a1の裏面に位置する第2基板表面2a2とを有する。逆導電型層2fは、半導体基板2aの第1基板表面2a1側に設けられている。つまり、第1基板表面2a1は、逆導電型層2fによって構成されている。絶縁層2gは、半導体基板2aの第1基板表面2a1側の逆導電型層2f上に設けられている。
【0023】
半導体基板2aは、第1基板表面2a1と第2基板表面2a2に加えて、4つの側面を有する。この4つの側面には、第1側面2a3、第2側面2a4、第3側面2a5および第4側面2a6が含まれる。第1側面2a3は、第1基板表面2a1と第2基板表面2a2とを接続している。また、第1側面2a3は、第1基板表面2a1の長辺に沿う面である。また、第2側面2a4は、第1基板表面2a1と第2基板表面2a2とを接続するとともに、第1側面2a3の反対側(裏側)に位置する。そのため、第2側面2a4も第1基板表面2a1の長辺に沿う面である。第3側面2a5および第4側面2a6は、半導体基板2aの側面のうち第1側面2a3および第2側面2a4以外の側面であり、第1側面2a3および第2側面2a4にそれぞれ略直交する。第1側面2a3は、後述する太陽電池素子の親基板9が分割されることによって新たに形成される面である。
【0024】
なお、太陽電池素子2の第1面2bは、表面側バスバー電極2hの表面、フィンガー電極2jの表面および第1基板表面2a1側に位置する絶縁層2gの表面によって構成される。また、太陽電池素子2の第2面2cは、裏面側バスバー電極2iの表面および裏面電極2kの表面によって構成される。」
「【0032】
また、図6および図7で示されるように、太陽電池素子2には、半導体基板2aの第2基板表面2a2側の表層部に、p型のドーパント元素の濃度が元の半導体基板2aよりも高められた(p+を有する)BSF領域2lが形成されている。このBSF領域2lは、例えば、半導体基板2aの第2基板表面2a2側に内部電界を形成することができる。このため、このBSF領域2lは、半導体基板2aの第2基板表面2a2の近くの領域におけるキャリアの再結合の発生を低減させて、光電変換の効率の低下を低減させる機能を有している。
【0033】
表面側バスバー電極2hは、太陽電池素子2が第1基板表面2a1の側から平面視された場合に、第1側面2a3および第2側面2a4に直交する方向に延びて位置する線状の電極である。また、このように平面視された場合に、フィンガー電極2jは、第1側面2a3および第2側面2a4に平行な方向に延びて位置する線状の電極である。表面側バスバー電極2hの少なくとも一部は、フィンガー電極2jと交差している。表面側バスバー電極2hは、例えば、1.3mmから2.5mm程度の幅を有している。フィンガー電極2jは、例えば、50μmから200μm程度の幅を有している。このように、フィンガー電極2jの幅は、表面側バスバー電極2hの幅よりも小さい。また、ここでは、複数のフィンガー電極2jが、互いに1.5mmから3mm程度の間隔を空けて設けられている。これらの表面側バスバー電極2hおよびフィンガー電極2jの厚みは、10μmから40μm程度に設定され得る。表面側バスバー電極2hおよびフィンガー電極2jは、例えば、主として銀を含有する導電性ペーストがスクリーン印刷等で所望の形状に塗布された後に焼成されることで、形成され得る。
【0034】
裏面側バスバー電極2iは、太陽電池素子2が第2基板表面2a2側から平面透視された場合に、半導体基板2aを挟んで表面側バスバー電極2hと相対する位置に設けられている。裏面側バスバー電極2iは、第1側面2a3および第2側面2a4に直交する方向に延びて位置する線状の電極である。なお、裏面側バスバー電極2iの形態は、一連なりの線状の形態以外の形態であってもよい。例えば、図5で示されるように、裏面側バスバー電極2iは、複数の線分によって構成されていてもよい。裏面側バスバー電極2iは、例えば、10μmから30μm程度の厚みを有し、1.3mmから7mm程度の幅を有する。裏面側バスバー電極2iは、前述の表面側バスバー電極2hと同等の材質および製法で形成され得る。裏面電極2kは、例えば、半導体基板2aの第2基板表面2a2のうち、裏面側バスバー電極2iが形成された領域などを含む一部の領域を除いた半導体基板2aの第2基板表面2a2側の略全面に形成される。裏面電極2kの厚みは、15μmから50μm程度に設定されればよい。この裏面電極2kは、例えば、主としてアルミニウムを含有する導電性ペーストとしてのアルミニウムペーストが所望の形状に塗布された後に焼成されることで、形成され得る。
【0035】
本実施形態に係る太陽電池素子2については、親基板9が分割されることで、複数の太陽電池素子2が形成され得る。ここで、大型の太陽電池素子(以下、太陽電池素子の親基板9)が分割されて、太陽電池素子2が形成される方法について、図面を用いて説明する。
【0036】
図8および図9で示されるように、親基板9は、複数の太陽電池素子2に分割される前の大型の太陽電池素子である。そのため、親基板9は、複数の太陽電池素子2を含む構成を有している。例えば、図8および図9で示されるように、太陽電池素子の親基板9は、絶縁層2g、表面側バスバー電極2h、フィンガー電極2j、裏面側バスバー電極2i、裏面電極2kを備えている。それゆえ、この親基板9も、太陽電池素子として使用可能である。
【0037】
まず、太陽電池素子の親基板9の第1面2bにおける破線2m1で示された分割線に沿った領域にレーザー光が照射されて、図10で示されるように、親基板9の第1面2b側に分割溝2mが形成される。ここで、使用されるレーザー光としては、例えば、YAGレーザー光などが挙げられる。レーザー光の条件としては、例えば、波長が1.06μm、出力が10Wから30W、ビーム広がり角が1mradから5mrad、走査速度が50mm/秒から300mm/秒に設定されればよい。分割溝2mの深さは、例えば、半導体基板2aの厚さの25%以上に設定され得る。これにより、分割溝2mに沿って容易に太陽電池素子の親基板9が分割され得る。」
「【0066】
また、本実施形態では、例えば、第2太陽電池素子2B側において、配線材8が半導体基板2aの第1面2bと第2側部2pと第2面2cとが成す稜部に近接するように位置しており、ラミネート工程において半導体基板2aの上記稜部に配線材8が接触して該稜部に圧力が加えられるおそれがある。しかしながら、前述したように、アルカリ水溶液に半導体基板2aが浸漬される処理によって、半導体基板2aの第1基板表面2a1、第2基板表面2a2および第2側面2a4の成す半導体基板2aの稜部が滑らかになっている。このため、配線材8によって上記稜部に圧力が加えられることで半導体基板2aにクラック等が生じる不具合が発生し難い。一方、第1太陽電池素子2Aの第1側部2oは、親基板9が分割されて形成された破面である。このような破面は、分割で生じた微細な凹凸およびキズなどを持つ。このため、第1太陽電池素子2Aの第1側部2oは、クラックの起点となり易い。しかしながら、本実施形態では、第1太陽電池素子2Aの第1側部2oに配線材8が接触し難い構成である。このため、クラックの進展が生じ難い。その結果、クラックの伸展等に起因する太陽電池素子2の出力の損失が低減され得る。」

「図1



「図3



「図6



「図11



(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
a 太陽電池素子2の第1側面2a3は、親基板9が分割されて形成された破面であり、分割で生じた微細な凹凸およびキズなどを持つこと。(【0066】及び図11)
b 太陽電池素子2の第1側面2a3は、第2側面2a4より表面粗さが粗いこと。(図3及び図6)
c 配線材は、第1太陽電池素子の第1面と第2太陽電池素子の第2面とを、第1太陽電池素子2Aの第1側部2oと第2太陽電池素子2Bの第2側部2pとの間の領域を通して接続していること。(図3)
d 第1太陽電池素子の第1面及び第2太陽電池素子の第2面に電気的に接続されている配線材は複数であること。(図3)

(ウ)上記(ア)及び(イ)より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献1の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある。

<引用発明>
「長方形状の第1面と該第1面の裏側に位置する長方形状の第2面とをそれぞれ有しており且つ第1方向に並んでいる複数の太陽電池素子と、該複数の太陽電池素子のうちの前記第1方向において隣り合って位置する第1太陽電池素子と第2太陽電池素子とを電気的に接続している配線材と、をそれぞれ含む複数の太陽電池素子群と、
前記第1面側から前記複数の太陽電池素子群を覆うように位置する透光性基板と、
前記第2面側から前記複数の太陽電池素子群を覆うように位置する裏面保護部材と、
前記透光性基板と前記複数の太陽電池素子群との間に位置する第1封止材と、
前記複数の太陽電池素子群と裏面保護部材との間に位置する第2封止材と、を備え、
前記複数の太陽電池素子群は、前記第1方向と直交する第2方向に並んでおり、
前記複数の太陽電池素子のそれぞれは、前記第1面と前記第2面とをそれぞれ接続している4つの側部を有しており、
前記4つの側部は、第1側部と、該第1側部の裏側に位置する第2側部と、第3側部と、該第3側部の裏側に位置する第4側部と、を含み、
前記第3側部および前記第4側部のそれぞれが、前記第1方向に沿って位置しており、
前記第1側部および前記第2側部のそれぞれが、前記第2方向に沿って位置しており、
前記第1側部の前記第2方向における長さおよび前記第2側部の前記第2方向における
長さが、前記第3側部の前記第1方向における長さおよび前記第4側部の前記第1方向における長さよりも長く、
前記複数の太陽電池素子群のそれぞれにおいて、前記複数の太陽電池素子が、前記第1側部と前記第2側部とが対向して位置しており、
前記配線材は、前記第1太陽電池素子の前記第1面に対して前記第1方向に沿って電気的に接続されているとともに、前記第2太陽電池素子の前記第2面に対して前記第1方向に沿って電気的に接続されており、
前記透光性基板は、前記第1方向に沿ってそれぞれ位置している第1短辺および第2短辺と、前記第2方向に沿ってそれぞれ位置している第1長辺および第2長辺と、を有する、太陽電池モジュールであって、(請求項1)
配線材は、第1太陽電池素子の第1面と第2太陽電池素子の第2面とを、第1太陽電池素子2Aの第1側部2oと第2太陽電池素子2Bの第2側部2pとの間の領域を通して接続しており、(上記(イ)c)
第1太陽電池素子の第1面及び第2太陽電池素子の第2面に電気的に接続されている配線材は複数であり、(上記(イ)d)
太陽電池素子2は、第1面2bにおいて表面側バスバー電極2hおよびフィンガー電極2jを有し、第2面2cにおいて裏面側バスバー電極2iおよび裏面電極2kを有し、(【0020】)
太陽電池素子2は、半導体基板2aの第1基板表面2a1側に、該半導体基板2aの導電型とは逆の導電型を有する逆導電型層2fと、絶縁層2gとを備えており、
半導体基板2aは、主として光が入射する面に相当する第1基板表面2a1と、該第1基板表面2a1の裏面に位置する第2基板表面2a2とを有し、(【0022】)
半導体基板2aの第2基板表面2a2側の表層部に、ドーパント元素の濃度が元の半導体基板2aよりも高められたBSF領域2lが形成されており、(【0032】)
表面側バスバー電極2hは、太陽電池素子2が第1基板表面2a1の側から平面視された場合に、第1側面2a3および第2側面2a4に直交する方向に延びて位置する線状の電極であり、このように平面視された場合に、フィンガー電極2jは、第1側面2a3および第2側面2a4に平行な方向に延びて位置する線状の電極であり、(【0033】)
裏面側バスバー電極2iは、太陽電池素子2が第2基板表面2a2側から平面透視された場合に、半導体基板2aを挟んで表面側バスバー電極2hと相対する位置に設けられており、裏面側バスバー電極2iは、第1側面2a3および第2側面2a4に直交する方向に延びて位置する線状の電極であり、(【0034】)
大型の太陽電池素子(以下、太陽電池素子の親基板9)の分割線に沿った領域にレーザー光が照射され、親基板9が分割されることで、複数の太陽電池素子2が形成され、(【0035】・【0037】)
太陽電池素子2の第1側面2a3は、親基板9が分割されて形成された破面であり、第2側面2a4より表面粗さが粗い、(上記(イ)a及びb)
太陽電池モジュール。」

イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用された、国際公開第2012/043770号には、次の記載がある。
「[0063] (第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る太陽電池モジュール104について、図6(b)を用いて説明する。本実施形態に係る太陽電池モジュール104は、太陽電池素子204の構成について、第1の実施形態に係る太陽電池モジュール101と異なる。
[0064] 具体的には、図6(b)に示すように、第4の実施形態に係る太陽電池モジュール104に用いられる太陽電池素子204は、第1側面8aと受光面4の交差部に設けられた第1隆起部19をさらに有する。このような第1隆起部19は、例えば、太陽電池素子204を受光面4側または非受光面5側からレーザ光でカットする際に、レーザ光の出力を調整することによって形成することができる。
[0065] 上述したように、太陽電池素子204は、レーザ光で溝を入れた後に、スナッピングによって分割することによって形成してもよい。その場合、このような第1隆起部19を設けることによって、第1側面8aを補強することができ、第1側面8aから生じるマイクロクラックの進展を低減することができる。
[0066] なお、本実施形態においては、第1側面8aと受光面4との交差部に設けられた第1隆起部19について説明したが、第1側面8aと非受光面5との交差部に第2隆起部をさらに設けてもよい。このような形態においても、分割により生じる第1側面8aにおけるマイクロクラックの発生を低減することができる。なお、第1隆起部19を設けず、第2隆起部のみを設けた形態であっても、上述した第1隆起部19を有することで得られる効果と同様の効果を奏すことができる。したがって、太陽電池素子204の構造など種々の要素に応じて、第1隆起部19および第2隆起部の少なくとも一方を、適宜設けることができる。」
「[0114] 例えば、上記第1の実施形態においては、太陽電池素子201の形成方法として、受光面側からレーザ光を照射して分割する方法を説明したが、それ以外に非受光面側からレーザ光を照射して分割する方法を用いてもよい。」
「[0171]また、本実施形態に係る製造方法によれば、第1工程の前に、第1主面50にpn接合領域を形成する。これにより、本製造方法によれば、太陽電池素子集合体50の接合領域(pn接合)が形成されている面の反対側の面にレーザ光を照射することができる。つまり、第1主面50aに接合領域が形成されている太陽電池素子集合体50においては、第2主面50b側にレーザ光を照射することができる。これにより、レーザ光が照射される面の境界(仮想分割線)62に接合領域(pn接合)が形成されていないことから、レーザ照射による接合領域へのダメージを低減することができる。」

「図6(b)



(イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
a 太陽電池素子集合体を分割して太陽電池素子を形成するに際して、レーザ照射による接合領域へのダメージを低減するために、接合領域(pn接合)が形成されている面の反対側の面からレーザ光を照射すること。([0171])
b 分割により形成された太陽電池素子の第1側面から生じるマイクロクラックの進展を低減するために、第1側面と受光面4及び/又は非受光面5との交差部に隆起部を設けること。([0064]〜[0066]及び図6(b))
c 隆起部は、太陽電池素子集合体をレーザ光で分割する際に、レーザ光の出力を調整することによって形成されること。([0064])

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)本件補正発明の「長方形に形成された半導体基板と、前記半導体基板の前面に形成され前記半導体基板の導電性と反対の第1導電型を有する第1導電型領域と、前記半導体基板と同じ第2導電型を有し前記半導体基板の後面に形成された第2導電型領域と、前記第1導電型領域の前面に配置され第1方向に延長された第1電極と、前記第2導電型領域の後面に配置され前記第1方向に延長された第2電極をそれぞれ含み、前記第1方向と交差する第2方向に沿って配置された複数本の太陽電池と、」との特定事項について
引用発明の「複数の太陽電池素子群」は、「長方形状の第1面と該第1面の裏側に位置する長方形状の第2面とをそれぞれ有しており且つ第1方向に並んでいる複数の太陽電池素子と、該複数の太陽電池素子のうちの前記第1方向において隣り合って位置する第1太陽電池素子と第2太陽電池素子とを電気的に接続している配線材と、をそれぞれ含」み、「前記第1方向と直交する第2方向に並んで」いる。また、引用発明の「太陽電池素子」は、「半導体基板2aの第1基板表面2a1側に、該半導体基板2aの導電型とは逆の導電型を有する逆導電型層2f」を備え、「半導体基板2aの第2基板表面2a2側の表層部に、ドーパント元素の濃度が元の半導体基板2aよりも高められたBSF領域2lが形成されており」、「第1面2bにおいて」「フィンガー電極2jを有し」、「フィンガー電極2jは、第1側面2a3および第2側面2a4に平行な方向に延びて位置する線状の電極であり」、「第2面2cにおいて」「裏面電極2kを有し」ている。
そうすると、引用発明の「半導体基板2a」、「逆導電型層2f」、「BSF領域2l」、「フィンガー電極2j」、「裏面電極2k」、「第1方向」及び「第2方向」は、上記特定事項の「半導体基板」、「第1導電型領域」、「第2導電型領域」、「第1電極」、「第2電極」、「第2方向」及び「第1方向」に、それぞれ相当するといえ、「裏面電極2k」を除く各構成は、それぞれの構成を特定する上記特定事項を満たしている。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項における「前記第2導電型領域の後面に配置され前記第1方向に延長された第2電極」と「前記第2導電型領域の後面に配置され」「た第2電極」の点で一致し、「前記第1方向に延長され」との特定事項を備えない点で相違し、その余の各構成の特定事項を満たしている。

(イ)本件補正発明の「前記第2方向に延長され、前記第2方向に沿って配置された前記複数本の太陽電池の内、隣接した第1太陽電池と第2太陽電池を電気的に接続する複数本の配線材と、」との特定事項について
引用発明の「複数の太陽電池素子群」は、「第1方向に並んでいる複数の太陽電池素子と、該複数の太陽電池素子のうちの前記第1方向において隣り合って位置する第1太陽電池素子と第2太陽電池素子とを電気的に接続している配線材と、をそれぞれ含」み、引用発明の「第1太陽電池素子の第1面及び第2太陽電池素子の第2面に電気的に接続されている配線材は複数であ」る。
そうすると、引用発明の「第1太陽電池素子」、「第2太陽電池素子」及び「配線材」は、上記特定事項の「第1太陽電池」、「第2太陽電池」及び「配線材」に、それぞれ相当するといえ、各構成を特定するそれぞれの上記特定事項を満たしている。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備える。

(ウ)本件補正発明の「前記複数本の太陽電池のそれぞれは、前記第2方向に一側の第1側面と他側に前記第1側面より表面粗さが粗い第2側面を含み、」との特定事項について
引用発明の「複数の太陽電池素子のそれぞれ」は、「前記第1面と前記第2面とをそれぞれ接続している4つの側部を有しており」、「前記4つの側部は、第1側部と、該第1側部の裏側に位置する第2側部と、」「を含み」、「前記複数の太陽電池素子が、前記第1側部と前記第2側部とが対向して位置して」いる。
そして、引用発明の「太陽電池素子」は、「太陽電池素子2の第1側面2a3は、親基板9が分割されて形成された破面であり、第2側面2a4より表面粗さが粗い」ものであるから、引用発明の「第1側面2a3」及び「第2側面2a4」は、本件補正発明の「第2側面」及び「第1側面」に、それぞれ相当するといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備える。

(エ)本件補正発明の「前記第2導電型領域の後面には前記第2側面に隣接して突出部が形成され、前記突出部は、前記第1方向に延長され、」との特定事項について
引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えない。

(オ)本件補正発明の「前記第1太陽電池と前記第2太陽電池は、0.5(mm)〜1.5(mm)の間隔を置いて配置され、前記第2太陽電池の第1側面と前記第1太陽電池の第2側面が向き合うように配置され、」との特定事項について
引用発明は、「前記複数の太陽電池素子群のそれぞれにおいて、前記複数の太陽電池素子が、前記第1側部と前記第2側部とが対向して位置して」いる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項における「前記第1太陽電池と前記第2太陽電池は、0.5(mm)〜1.5(mm)の間隔を置いて配置され」との特定事項を備えるか不明であり、その余の特定事項を備える。

(カ)本件補正発明の「前記複数本の配線材が前記突出部と接触しないようにするために、前記配線材は、第2太陽電池の第2電極に接続され、第2太陽電池の第1側面と第1太陽電池の第2側面間を過ぎて、第1太陽電池の第1電極に接続される、」との特定事項について
引用発明の「配線材」は、「第1太陽電池素子の第1面と第2太陽電池素子の第2面とを、第1太陽電池素子2Aの第1側部2oと第2太陽電池素子2Bの第2側部2pとの間の領域を通して接続して」しているところ、配線材が各電極に接続されていることは自明な事項といえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項における「前記複数本の配線材が前記突出部と接触しないようにするために」との特定事項を備えず、その余の特定事項を備える。

(キ)引用発明の「太陽電池モジュール」は、本件補正発明の「太陽電池モジュール」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「長方形に形成された半導体基板と、前記半導体基板の前面に形成され前記半導体基板の導電性と反対の第1導電型を有する第1導電型領域と、前記半導体基板と同じ第2導電型を有し前記半導体基板の後面に形成された第2導電型領域と、前記第1導電型領域の前面に配置され第1方向に延長された第1電極と、前記第2導電型領域の後面に配置された第2電極をそれぞれ含み、前記第1方向と交差する第2方向に沿って配置された複数本の太陽電池と、
前記第2方向に延長され、前記第2方向に沿って配置された前記複数本の太陽電池の内、隣接した第1太陽電池と第2太陽電池を電気的に接続する複数本の配線材と、
を含み、
前記複数本の太陽電池のそれぞれは、前記第2方向に一側の第1側面と他側に前記第1側面より表面粗さが粗い第2側面を含み、
前記第2太陽電池の第1側面と前記第1太陽電池の第2側面が向き合うように配置され、
前記配線材は、第2太陽電池の第2電極に接続され、第2太陽電池の第1側面と第1太陽電池の第2側面間を過ぎて、第1太陽電池の第1電極に接続される、太陽電池モジュール。」

<相違点1>
「第2電極」について、本件補正発明は、「第1方向に延長され」ているのに対し、引用発明では、そのように特定されていない点。

<相違点2>
本件補正発明は、「前記第2導電型領域の後面には前記第2側面に隣接して突出部が形成され、前記突出部は、前記第1方向に延長され」ており、配線材の接続について、「前記複数本の配線材が前記突出部と接触しないようにするために」と特定しているのに対し、引用発明は、突出部を備えておらず、そのような特定もなされていない点。

<相違点3>
第1太陽電池と第2太陽電池との間隔について、本件補正発明は「0.5(mm)〜1.5(mm)」と特定されるのに対し、引用発明では、特定されていない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
太陽電池素子において、表面側及び裏面側の電極を、いわゆる「フィンガー電極」にて構成することは周知技術(例えば、特開2018−93167号公報の【0080】〜【0081】及び【0126】、特開2016−134448号公報の【0063】、【0067】及び図1(b)参照)であるから、引用発明の「第2電極」を、「第1電極」と同様に「フィンガー電極(第1側面2a3および第2側面2a4に平行な方向に延びて位置する線状の電極)」として構成することは、当業者が適宜なし得た設計的な事項といえる。

イ 相違点2について
引用文献2には、上記(2)イ(イ)のとおり、a〜cの技術的事項が記載されているところ、引用発明と引用文献2に記載された太陽電池素子とは、大型の太陽電池素子(太陽電池素子集合体)にレーザ光を照射して分割した太陽電池素子である点で共通するものであり、引用文献1には、「第1太陽電池素子2Aの第1側部2oは、クラックの起点となり易い」(【0066】)と記載され、破面からのクラックが認識されていることを踏まえると、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用する動機はあるといえる。
したがって、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用し、レーザ照射による接合領域(半導体基板2aと逆導電型層2fとの接合領域)へのダメージを低減するために、第2基板表面2a2側の面からレーザ光を照射して、親基板9を分割すると共に、破面からのクラックを低減するために、レーザ光の出力を調整して「隆起部」を設けることは、当業者が容易になし得たことであって、当該「隆起部」は、引用発明の「第1側面2a3」と「第2基板表面2a2」との交差部に、第2方向に沿って形成されるものと理解できる。また、引用発明の「配線材」は、「第1太陽電池素子の第1面と第2太陽電池素子の第2面とを、第1太陽電池素子2Aの第1側部2oと第2太陽電池素子2Bの第2側部2pとの間の領域を通して接続して」いるものであるから、当該「配線材」は、上記「隆起部」とは接触しない構成であるし、引用文献1が、分割面(側面)から配線材への電流漏れを課題として認識していること(【0013】)を踏まえると、引用発明の「配線材」が、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用することによってできる「隆起部」と接触しないようにすることは、当業者が当然配慮することである。
よって、上記相違点2に係る本件補正発明の特定事項は、本願発明及び引用文献2記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

ウ 相違点3について
配線材により電気的に接続される複数の太陽電池セル同士の間隔として、1.0mm程度の間隔は通常のものであるから(例えば、特開平6−21501号公報の【0100】参照)、引用発明の「第1太陽電池素子」と「2太陽電池素子」との間隔を、「0.5(mm)〜1.5(mm)」とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書にて、引用文献1では、基板の前面(エミッタ形成領域の方向)に分割溝を形成しており、引用文献2では、配線材の接続方向が異なるから、引用文献1のモジュール構造に、引用文献2に記載の構成(隆起部の形成位置)を単純に適用することは容易ではない旨を主張している。
しかしながら、上記イに説示のとおりであるから、上記審判請求人の主張は、上記判断を左右するものではない。

カ したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年9月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年2月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項並びに周知技術(引用文献3〜5)に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2016−225624号公報
引用文献2:国際公開第2012/043770号
引用文献3:特開平6−21501号公報
引用文献4:特開2018−93167号公報
引用文献5:特開2016−134448号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1〜5の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)及び(4)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の特定事項である「第2太陽電池の第2電極に接続され、第2太陽電池の第1側面と第1太陽電池の第2側面間を過ぎて、第1太陽電池の第1電極に接続される」から、配線材の構成を特定する「第2太陽電池の第1側面と第1太陽電池の第2側面間を過ぎて」との限定事項を削除し、「前記第1太陽電池の前記第1電極と前記第2太陽電池の前記第2電極に接続する」としたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 瀬川 勝久
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-10-21 
結審通知日 2022-10-25 
審決日 2022-11-10 
出願番号 P2019-197123
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 吉野 三寛
野村 伸雄
発明の名称 太陽電池モジュール及びその製造方法  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 三橋 真二  
代理人 胡田 尚則  
代理人 河合 章  
代理人 鶴田 準一  
代理人 南山 知広  
代理人 青木 篤  

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