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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1395795
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-19 
確定日 2023-03-29 
事件の表示 特願2019−558581号「製品ユニットの製造プロセスのシーケンスの最適化」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月1日国際公開、WO2018/197144号、令和2年7月2日国内公表、特表2020−519932号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)3月28日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2017年4月28日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 1月 4日付け:拒絶理由通知書
令和3年 4月12日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 7月13日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和3年11月19日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1〜15に係る発明は、令和3年11月19日付けの手続補正により補正された請求項1〜15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
製品ユニットの製造のためのプロセスのシーケンスを最適化するための方法であって、
(a)前記製品ユニット上で既に実行された前記シーケンス内の前のプロセスの特性を取得することと(408)、
(b)前記製品ユニット上で実行される前記シーケンス内の後続プロセスの特性を取得することと(410)、
(c)取得された特性を使用して、前記シーケンスの前記前のプロセス及び前記後続プロセスに関連付けられた前記製品ユニットの予測性能パラメータを決定することと(412)、
(d)決定された予測性能パラメータに基づいて、前記製品ユニット上で実行される前記シーケンス内の第1の将来のプロセスに対する第1の修正を決定することと(414)、を含む方法。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由2は、この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
原査定の拒絶の理由3は、この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.特開2010−258356号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2010−258356号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。
1 引用文献1
・引用文献1に記載された事項
「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造技術に関し、特に、複数の同種の装置を用いた処理工程を含む半導体装置の製造工程に適用して有効な技術に関するものである。」
「【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態の半導体装置は、MISFETを有するものである。半導体装置の製造に当たっては、MISFETのゲート電極の寸法に製品間でのばらつきが生じると、製品の品質、性能および製造歩留りを大きく左右してしまうため、そのようなばらつきを抑制することが求められる。図1は、ゲート電極のパターニングに用いる露光機の調整および制御手順の一例を示す説明図であり、露光機としては同種のものを2台用いている場合を図示している。図2は、この図1に示した例を基本構成として用いた本実施の形態における露光機の調整および制御手順の一例を示す説明図であり、露光機としては同種のものを2台用いている場合を図示している。図3は、ゲート電極のパターニング工程を含む、本実施の形態の半導体装置の要部製造工程を示すフローチャートであり、図4〜図18(図13〜図16を除く)は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。以下、本実施の形態の半導体装置の製造方法を工程順に説明しつつ、上記のばらつき発生の抑制方法について、該当する工程時に併せて説明する。
【0028】
まず、図4に示すように、比抵抗が10Ωcm程度の単結晶シリコンからなる半導体基板(以下、単に基板と記す)1を850℃程度で熱処理して、その主面に膜厚10nm程度の薄い酸化シリコン膜(パッド酸化膜)2を形成する。次いでこの酸化シリコン膜2の上に膜厚120nm程度の窒化シリコン膜3をCVD(Chemical Vapor Deposition)法で堆積した後、フォトレジスト膜をマスクにしたドライエッチングで素子分離領域の窒化シリコン膜3と酸化シリコン膜2とを除去する。酸化シリコン膜2は、後の工程で素子分離溝の内部に埋め込まれる酸化シリコン膜をデンシファイ(焼き締め)する時などに基板1に加わるストレスを緩和する目的で形成される。また、窒化シリコン膜3は酸化されにくい性質を持つので、その下部(活性領域)の基板表面の酸化を防止するマスクとして利用される。続いて、窒化シリコン膜をマスクにしたドライエッチングで素子分離領域の基板1に深さ350nm程度の溝4を形成する(工程S1)。ここで、後のゲート電極パターニングの際に用いるゲート電極用エッチャー(後述の工程S15にて使用)を調整および制御する制御機器CD(図1参照)は、そのゲート電極用エッチャーを調整するためのパラメータとなる酸化シリコン膜2の膜厚TO1、窒化シリコン膜3の膜厚TN1および窒化シリコン膜3の上面から溝4の底部までの深さDST1のデータを収集し、収集したデータを製品情報収集部CD1(図1参照)へ格納する(工程S2)。
【0029】
次に、エッチングで溝2の内壁に生じたダメージ層を除去するために、基板1を1000℃程度で熱処理して溝2の内壁に膜厚10nm程度の薄い酸化シリコン膜を形成する。
【0030】
続いて、CVD法にて基板1上に酸化シリコン膜5を堆積した後、この酸化シリコン膜5の膜質を改善するために、基板1を熱処理して酸化シリコン膜をデンシファイ(焼き締め)する(工程S3)。ここで、前述の制御機器CDは、ゲート電極用エッチャーを調整するためのパラメータとなる酸化シリコン膜5の膜厚TO2のデータを収集し、収集したデータを製品情報収集部CD1へ格納する(工程S4)。
【0031】
次に、図6に示すように、窒化シリコン膜3をストッパに用いた化学機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)法で酸化シリコン膜5を研磨して溝4の内部に残すことにより、表面が平坦化された素子分離溝6を形成する(工程S5)。ここで、前述の制御機器CDは、ゲート電極用エッチャーを調整するためのパラメータとなる溝4内に残った酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO3および窒化シリコン膜3の膜厚TN2のデータを収集し、収集したデータを製品情報収集部CD1へ格納する(工程S6)。窒化シリコン膜3の膜厚のデータについては、上記工程S2にてすでに収集されているが、酸化シリコン膜5をCMP法にて研磨した際のストッパとして用いているために目減りが生じている場合がある。そのため、工程S6では、改めて窒化シリコン膜3の膜厚TN2のデータを収集している。
【0032】
次に、図7に示すように、熱リン酸を用いたウェットエッチングで基板1の活性領域上に残った窒化シリコン膜3を除去する(工程S7)。ここで、前述の制御機器CDは、ゲート電極用エッチャーを調整するためのパラメータとなる溝4内に残った酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO4および酸化シリコン膜2の表面より突出した酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO5のデータを収集し、収集したデータを製品情報収集部CD1へ格納する(工程S8)。溝4内に残った酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚のデータは、上記工程S6にてすでに収集されているが、窒化シリコン膜3を除去する際のウェットエッチング時に目減りが生じている場合がある。そのため、工程S6では、改めて溝4内に残った酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO4のデータを収集している。
【0033】
次に、図8に示すように、nチャネルMISFETが形成される領域にB(ホウ素)をイオン注入してp型ウエル7を形成し、pチャネルMISFETが形成される領域にP(リン)またはAs(ヒ素)をイオン注入してn型ウエル8を形成する(工程S9)。続いて、図9に示すように、たとえばフッ酸系の洗浄液を用いて基板1(p型ウエル7およびn型ウエル8)の主面をウェット洗浄(前洗浄)した後、約800℃の熱酸化によりp型ウエル7およびn型ウエル8の表面(主面)に清浄な酸化膜からなるゲート絶縁膜9を形成する(工程S10)。次いで、ゲート絶縁膜9の上部に、CVD法にて膜厚100nm程度の低抵抗多結晶シリコン膜(導電性膜)10を堆積する(工程S11)。この低抵抗多結晶シリコン膜10は、次工程でパターニングされて、MISFETのゲート電極となる。ここで、前述の制御機器CDは、ゲート電極用エッチャーを調整するためのパラメータとなる、素子分離溝6を形成する酸化シリコン膜上の低抵抗多結晶シリコン膜10の膜厚TP1のデータを収集し、収集したデータを製品情報収集部CD1へ格納する(工程S12)。
【0034】
次に、図10に示すように、低抵抗多結晶シリコン膜10上に、次のフォトリソグラフィ工程時における光の反射を防ぐための反射防止膜11を形成する。続いて、その反射防止膜11上にフォトレジスト膜(感光性のマスキング層)12を塗布し、そのフォトレジスト膜12をフォトリソグラフィ技術によりパターニングする(工程S13)。ここで、前述の制御機器CDは、ゲート電極用エッチャーを調整するためのパラメータとなる、パターニングされたフォトレジスト膜12のゲート長方向での長さLG1のデータを収集し、収集したデータを製品情報収集部CD1へ格納する(工程S14)。
【0035】
次に、図11に示すように、パターニングされたフォトレジスト膜12をマスクとしたドライエッチングにより低抵抗多結晶シリコン膜10をパターニングすることにより、ゲート電極13を形成する(工程S15)。次いで、フォトレジスト膜12および反射防止膜11に対してアッシング(灰化)処理を施し、続いて基板1を洗浄することにより、アッシングされたフォトレジスト膜12および反射防止膜11を除去する。ここで、前述の制御機器CDは、ゲート電極用エッチャーを調整するためのパラメータとなる、パターニングされたゲート電極13の寸法、特にゲート長方向での寸法LG2のデータを収集し、収集したデータを製品情報収集部CD1へ格納する(工程S16)。
【0036】
MISFETを有する製品の品質、性能および製造歩留りを維持もしくは向上するためには、製品間でゲート電極13の寸法にばらつきが生じてしまうことを防ぐことが求められる。以下、本実施の形態における、ゲート電極13の寸法のばらつき抑制方法について、図1、図2、および図12〜図15を用いて説明する。
【0037】
ウエハ状の基板1は、1枚または複数枚のウエハロット(以下、単にロットと記す)として、フォトレジスト膜12のパターニングを行う露光機(製造装置)へ搬送される。各ロットには、製品を区別するための番号が付与され、その番号が小さいほど古い製品となる。また、各ロットには、どの露光機で露光処理(ウエハ処理)が行われたかが明示され、図1および図2では、露光機が同種の2台である場合について示している。
【0038】
ここで、図1に示すように、前述の露光機を調整するためのパラメータ(製品情報、過去の加工結果)である酸化シリコン膜2の膜厚TO1(図4参照)、窒化シリコン膜3の膜厚TN1(図4参照)、窒化シリコン膜3の上面から溝4の底部までの深さDST1(図4参照)、酸化シリコン膜5の膜厚TO2(図5参照)、溝4内に残った酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO3、TO4(図6および図7参照)、窒化シリコン膜3の膜厚TN2(図6参照)、酸化シリコン膜2の表面より突出した酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO5(図7参照)、素子分離溝6を形成する酸化シリコン膜上の低抵抗多結晶シリコン膜10の膜厚TP1(図9参照)、フォトレジスト膜12のゲート長方向での長さLG1(図10参照)、およびゲート電極13の寸法LG2(図11参照)に関するデータが、露光処理を行った露光機の区別なく制御機器(制御手段)CDへ格納されるとする。なお、以降は、この露光機の区別なく制御機器CDへデータを格納する方式を混合制御方式と記す。制御機器CDは、製品情報収集部CD1、最適製造条件計算部CD2および出力部CD3等から形成されており、前記パラメータ群は、製品情報収集部CD1に格納される。
【0039】
混合制御方式(第2の運用条件)では、まず、露光処理を行った露光機の区別なく前記パラメータが製品情報収集部CD1へ収集される。次いで、最適製造条件計算部CD2にて、過去の測定結果から推定した変動予測モデル式にパラメータを代入することでゲート電極13の寸法(新たな加工結果)が予想され、そのゲート電極13の寸法LG2の予想値を利用して、フォトレジスト膜12のパターニング(露光)および低抵抗多結晶シリコン膜10のエッチングにおける処理条件が計算される。次いで、出力部CD3がその計算された処理条件をゲート電極用エッチャーへ設定(製造装置制御処理)し、該当するロットについてフォトレジスト膜12のパターニングおよび低抵抗多結晶シリコン膜10のエッチングを実施する。このような手順を経ることで、処理したロットが増えるほどに、ゲート電極13の寸法LG2を目標値へ近づけていくことができる。しかしながら、使用している露光機が複数台(2台)であることから、同種の露光機とはいえ個体差が互いに干渉し、ゲート電極13の寸法LG2をさらに目標値へ近づけることを妨げてしまうことが懸念される。
【0040】
そこで、本実施の形態では、図1に示したパラメータの収集方法、計算方法および出力方法を生かしつつ、露光機の個体差の干渉を取り除いて、ゲート電極13の寸法LG2をさらに目標値へ近づけていく。すなわち、図2に示すように、制御機器CDは、それぞれのゲート電極用エッチャーに対して個別に配置される。露光処理が完了した各ロットは、どの露光機で露光処理がなされたかによって分類され、露光機毎に、前述のパラメータが製品情報収集部CD1に収集され、最適製造条件計算部CD2にて処理条件が計算され、計算された処理条件が設定される。すべてのロットは、露光処理を行う露光機が予め割り当てられ、露光処理が済んでいないロットは、分類機CMによって割り当てられた露光機へ振り分けられ、制御機器CDによって求められた処理条件でゲートエッチングが行われる。なお、以降は、このように露光機別に制御機器CDへデータを格納し、処理条件を算出する方式を分離制御方式と記す。このような分離制御方式(第2の運用条件)を用いることにより、パラメータの測定を重ねるほどに、ゲート電極13の寸法LG2は、目標値を100とした場合にそれぞれの露光機とも100へ近づけることが可能となり、露光機間でのゲート電極13の寸法LG2のばらつきを極力小さくすることができる。
【0041】
ここで、上記パラメータを収集するサンプリング数(基板1の枚数もしくはロット数)についても考慮してみる。図12に示すように、上記分離制御方式を用いた場合には、露光機毎にパラメータが収集されることから、混合制御方式に比べるとサンプリング数は少なくなる。サンプリング数が少なくなると、分離制御方式を用いた場合でも制御機器CD(製造条件計算部CD2)による予測制度が低下し、目標値へ合わせ込むための処理条件の算出精度も低下してしまうため、結果として露光機間でのゲート電極13の寸法LG2のばらつきが大きくなってしまうことが懸念される。」

2 引用発明
上記1より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献1の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある。
<引用発明>
「露光機を調整するためのパラメータ(製品情報、過去の加工結果)である酸化シリコン膜2の膜厚TO1、窒化シリコン膜3の膜厚TN1、窒化シリコン膜3の上面から溝4の底部までの深さDST1、酸化シリコン膜5の膜厚TO2、溝4内に残った酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO3、TO4、窒化シリコン膜3の膜厚TN2、酸化シリコン膜2の表面より突出した酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO5、素子分離溝6を形成する酸化シリコン膜上の低抵抗多結晶シリコン膜10の膜厚TP1、フォトレジスト膜12のゲート長方向での長さLG1、およびゲート電極13の寸法LG2に関するデータが、制御機器(制御手段)CDへ格納され(【0038】)、
次いで、最適製造条件計算部CD2にて、過去の測定結果から推定した変動予測モデル式にパラメータを代入することでゲート電極13の寸法(新たな加工結果)が予想され、そのゲート電極13の寸法LG2の予想値を利用して、フォトレジスト膜12のパターニング(露光)および低抵抗多結晶シリコン膜10のエッチングにおける処理条件が計算され、次いで、出力部CD3がその計算された処理条件をゲート電極用エッチャーへ設定(製造装置制御処理)し、該当するロットについてフォトレジスト膜12のパターニングおよび低抵抗多結晶シリコン膜10のエッチングを実施し、このような手順を経ることで、処理したロットが増えるほどに、ゲート電極13の寸法LG2を目標値へ近づけていくことができる(【0039】)、
半導体装置の製造工程中のばらつき発生の抑制方法(【0027】)。」

第5 対比、判断
1 本願発明と引用発明とを、以下に対比する。
(1)引用発明の「半導体装置」及び「製造工程」は、本願発明の「製品ユニット」及び「製造のためのプロセスのシーケンス」に相当する。
また、引用発明の「最適製造条件計算部CD2」を用いて「半導体装置の製造工程中のばらつき発生の抑制」を行うことは、本願発明の「製品ユニットの製造のためのプロセスのシーケンスを最適化する」ことに相当する
したがって、引用発明の「半導体装置の製造工程中のばらつき発生の抑制方法」は、本願発明の「製品ユニットの製造のためのプロセスのシーケンスを最適化するための方法」に相当する。

(2)本願明細書には「プロセスの特性はコンテキストデータである。コンテキストデータは、ツール識別子や測定されたプロセスパラメーターなど、製品ユニットの処理に関する1つ以上のパラメータを表す。」(【0040】)と記載され、当該「プロセスの特性」は「測定されたプロセスパラメーター」を含むといえるから、引用発明の「露光機を調整するためのパラメータ(製品情報、過去の加工結果)」である、「酸化シリコン膜2の膜厚TO1、窒化シリコン膜3の膜厚TN1、窒化シリコン膜3の上面から溝4の底部までの深さDST1、酸化シリコン膜5の膜厚TO2、溝4内に残った酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO3、TO4、窒化シリコン膜3の膜厚TN2、酸化シリコン膜2の表面より突出した酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO5、素子分離溝6を形成する酸化シリコン膜上の低抵抗多結晶シリコン膜10の膜厚TP1、フォトレジスト膜12のゲート長方向での長さLG1、およびゲート電極13の寸法LG2に関するデータ」(以下「収集したデータ」という。)は、本願発明の「プロセスの特性」に相当するといえる。
ここで、引用発明は、「ゲート電極13の寸法LG2の予想値を利用して、フォトレジスト膜12のパターニング(露光)および低抵抗多結晶シリコン膜10のエッチングにおける処理条件」を計算し、「計算された処理条件をゲート電極用エッチャーへ設定(製造装置制御処理)し、該当するロットについてフォトレジスト膜12のパターニングおよび低抵抗多結晶シリコン膜10のエッチングを実施」し、「このような手順を経ることで、処理したロットが増えるほどに、ゲート電極13の寸法LG2を目標値へ近づけていく」ものである。そうすると、引用発明は、「フォトレジスト膜12のパターニング(露光)および低抵抗多結晶シリコン膜10のエッチング」(についてのみ)処理条件の計算を行っていることから、「収集したデータ」のうち、「フォトレジスト膜12のゲート長方向での長さLG1、およびゲート電極13の寸法LG2に関するデータ」以外のデータを前提として(変更することなく)、LG1、LG2の値を変更して、LG2を目標値へ近づけているといえ、フォトレジスト膜12のパターニング(露光)を行う直前に、「フォトレジスト膜12のパターニング(露光)および低抵抗多結晶シリコン膜10のエッチングにおける処理条件」を計算していると考えるのが自然である。
以上を踏まえると、前記収集したデータのうち、「露光機を調整するためのパラメータ(製品情報、過去の加工結果)である酸化シリコン膜2の膜厚TO1、窒化シリコン膜3の膜厚TN1、窒化シリコン膜3の上面から溝4の底部までの深さDST1、酸化シリコン膜5の膜厚TO2、溝4内に残った酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO3、TO4、窒化シリコン膜3の膜厚TN2、酸化シリコン膜2の表面より突出した酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO5、素子分離溝6を形成する酸化シリコン膜上の低抵抗多結晶シリコン膜10の膜厚TP1に関するデータ」は、本願発明の「前記製品ユニット上で既に実行された前記シーケンス内の前のプロセスの特性」に相当し、「フォトレジスト膜12のゲート長方向での長さLG1、およびゲート電極13の寸法LG2に関するデータ」は、本願発明の「前記製品ユニット上で実行される前記シーケンス内の後続プロセスの特性」に相当するといえる。
したがって、引用発明の「露光機を調整するためのパラメータ(製品情報、過去の加工結果)である酸化シリコン膜2の膜厚TO1、窒化シリコン膜3の膜厚TN1、窒化シリコン膜3の上面から溝4の底部までの深さDST1、酸化シリコン膜5の膜厚TO2、溝4内に残った酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO3、TO4、窒化シリコン膜3の膜厚TN2、酸化シリコン膜2の表面より突出した酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO5、素子分離溝6を形成する酸化シリコン膜上の低抵抗多結晶シリコン膜10の膜厚TP1」を「制御機器(制御手段)CDへ格納」することは、本願発明の「前記製品ユニット上で既に実行された前記シーケンス内の前のプロセスの特性を取得すること」に相当し、引用発明の「フォトレジスト膜12のゲート長方向での長さLG1、およびゲート電極13の寸法LG2に関するデータ」を「制御機器(制御手段)CDへ格納」することは、本願発明の「前記製品ユニット上で実行される前記シーケンス内の後続プロセスの特性を取得すること」に相当する。

(4)本願明細書には「CDU最適化アプリケーション320は、取得された特性を使用して、前の304及び後続の306、308のプロセスのシーケンスに関連付けられたウェーハの予測性能パラメータ(この例ではフィンガープリント)を決定する。」(【0048】)及び「リソグラフィプロセスの実行中の段階で位置合わせデータ又は他の測定が行われ、位置ずれを表すオブジェクトデータ又は各ウェーハ全体に空間的に分布するポイントで測定される他のパラメータが取得される。オーバーレイ及びアライメントの残留物は、通常、フィンガープリントとして知られるウェーハ全体にわたるパターンを示す。」(【0007】)と記載され、当該「予測性能パラメータ」(フィンガープリント)は、「ウェーハ」の「パターン」を含むといえるから、引用発明の「ゲート電極13の寸法(新たな加工結果)」は、本願発明の「予測性能パラメータ」に相当するといえる。
したがって、引用発明の「露光機を調整するためのパラメータ(製品情報、過去の加工結果)」である「収集したデータ」が「制御機器(制御手段)CDへ格納され、次いで、最適製造条件計算部CD2にて、過去の測定結果から推定した変動予測モデル式にパラメータを代入することでゲート電極13の寸法(新たな加工結果)が予想され」ることは、上記(2)及び(3)を踏まえると、「露光機を調整するためのパラメータ(製品情報、過去の加工結果)である酸化シリコン膜2の膜厚TO1、窒化シリコン膜3の膜厚TN1、窒化シリコン膜3の上面から溝4の底部までの深さDST1、酸化シリコン膜5の膜厚TO2、溝4内に残った酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO3、TO4、窒化シリコン膜3の膜厚TN2、酸化シリコン膜2の表面より突出した酸化シリコン膜5(素子分離溝6)の膜厚TO5、素子分離溝6を形成する酸化シリコン膜上の低抵抗多結晶シリコン膜10の膜厚TP1」、つまり、シーケンスの前のプロセスに関連付けられるとともに、「フォトレジスト膜12のゲート長方向での長さLG1、およびゲート電極13の寸法LG2」、つまり、シーケンスの後続プロセスに関連付けられるものであるといえるから、本願発明の「取得された特性を使用して、前記シーケンスの前記前のプロセス及び前記後続プロセスに関連付けられた前記製品ユニットの予測性能パラメータを決定すること」に相当する。

(5)本願明細書には、「修正の決定は、ウェーハ上で実行される以前のプロセス304と実行される将来のプロセス306、308の両方の特性に基づく。」(【0045】)と記載されるとともに、「CDU最適化アプリケーション320は、ウェーハ上で実行されるシーケンス302の後続プロセス306(EXP)の特性(露光コンテキスト)を取得する。この例では、エッチング最適化アプリケーション334は、ウェーハ上で実行されるシーケンス202の別の後続プロセス308(ETC)の特性(エッチングコンテキスト)も取得する。」(【0047】)と記載されるから、本願発明における「(b)前記シーケンス内の後続プロセス」と、「(d)・・・前記シーケンス内の第1の将来のプロセス」は同じプロセスを意味していると解される。
そうすると、本願明細書には「416:この例では、決定された予測フィンガープリントに基づいて、ウェーハ上で実行されるシーケンス302で、第1の将来プロセス306(EXP)に続く第2の将来プロセス308(ETC)に対する第2の修正338を決定する。第1の修正328は、第2の将来のプロセス308(ETC)に関連する予測フィンガープリントの複数のツール(例えば平均)にわたる変動に関係し、第2の修正338は特定のツール308(例えばエッチングチャンバ)の変動に関係する。」(【0064】)と記載され、「第1の将来プロセス306(EXP)」及び「第2の将来プロセス308(ETC)」は、「既に実行された前記シーケンス内の前のプロセス」の「後続プロセス」であるといえるから、引用発明の「フォトレジスト膜12のパターニングおよび低抵抗多結晶シリコン膜10のエッチング」は、本願発明の「前記製品ユニット上で実行される前記シーケンス内の第1の将来のプロセス」に相当するといえる。
また、上記【0064】の記載によれば、「第1の修正328」は、「第1の将来プロセス306(EXP)」に関する修正であるから、引用発明の「フォトレジスト膜12のパターニング(露光)・・・における処理条件が計算され、次いで、出力部CD3がその計算された処理条件をゲート電極用エッチャーへ設定(製造装置制御処理)し、該当するロットについてフォトレジスト膜12のパターニング・・・を実施する」ことにおける計算された「処理条件」は、本願発明の「第1の修正」に相当するといえる。
したがって、引用発明の「ゲート電極13の寸法LG2の予想値を利用して、フォトレジスト膜12のパターニング(露光)および低抵抗多結晶シリコン膜10のエッチングにおける処理条件が計算され、次いで、出力部CD3がその計算された処理条件をゲート電極用エッチャーへ設定(製造装置制御処理)し、該当するロットについてフォトレジスト膜12のパターニングおよび低抵抗多結晶シリコン膜10のエッチングを実施する」ことは、本願発明の「決定された予測性能パラメータに基づいて、前記製品ユニット上で実行される前記シーケンス内の第1の将来のプロセスに対する第1の修正を決定すること」に相当する。

(5)小括
以上(1)〜(4)の検討によれば、引用発明は本願発明の構成をすべて備えている。
よって、本願発明は引用発明である。
また、相違点があったとしても当業者が容易に想到し得たことにすぎない。
したがって、本願発明は、引用発明であるか、又は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 請求人の主張について
(1)請求人の主張
請求人は、審判請求書の【請求の理由】「3.本願発明が特許されるべきものであるとする理由」「(3)本願発明が特許されるべき理由」「(3−3)本願発明と引用発明の対比」において、概略、引用文献1に記載の「寸法」すなわち「ゲート電極の寸法」は、既にゲート電極を作製済みのウエハロットから測定される過去の加工結果であることから、請求項1に係る発明の「前記製品ユニット上で実行される前記シーケンス内の後続プロセスの特性」、つまりステップ(a)と同じ製品ユニットおよびシーケンスについてこれから実行される後続のプロセスの特性に相当しない旨主張する。

(2)当審の判断
本願発明は、「シーケンス」について、一般的な意味での「製品ユニットの製造のためのプロセスのシーケンス」と特定するにとどまり、「同じ製品ユニット」についての「シーケンス」であるとまで特定するものではない。
したがって、上記(1)の主張は請求項の記載のみに基づくものではなく採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 瀬川 勝久
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-10-31 
結審通知日 2022-11-01 
審決日 2022-11-14 
出願番号 P2019-558581
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G03F)
P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 松川 直樹
吉野 三寛
発明の名称 製品ユニットの製造プロセスのシーケンスの最適化  
代理人 森下 賢樹  
代理人 青木 武司  

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