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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1395833
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-12-22 
確定日 2023-03-02 
事件の表示 特願2017− 78710「トナー、トナー収容ユニット、画像形成装置、及び画像形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月15日出願公開、特開2018−180239〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特願2017−78710号(以下「本件出願」という。)は、平成29年4月12日の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 3年 2月16日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 4月 1日提出:意見書
令和 3年 4月 1日提出:手続補正書
令和 3年 9月29日付け:拒絶査定
令和 3年12月22日提出:審判請求書
令和 3年12月22日提出:手続補正書
令和 4年 9月28日付け:拒絶理由通知書
令和 4年11月25日提出:意見書
令和 4年11月25日提出:手続補正書


第2 本願発明
本件出願の請求項1〜7に係る発明は、令和4年11月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「 少なくともポリエステルを含有する結着樹脂、及び着色剤を含有するトナーであって、前記着色剤が、ソルベントレッド49を含有し、
前記トナーの酸価が15.6mgKOH/g以上27.2mgKOH/g以下であることを特徴とするトナー。」


第3 拒絶の理由
令和4年9月28日付けの当合議体が通知した拒絶理由は、本件出願の請求項1〜2、4〜7に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定に該当し特許を受けることができない、また、本件出願の請求項1〜7に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開平11−15171号公報
引用文献2:特開昭62−17753号公報
(当合議体注:引用文献1及び引用文献2は、主引用例である。)


第4 引用文献1及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
当合議体の拒絶の理由で引用文献1として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開平11−15171号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定で活用した箇所である。

(1)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディスクのレーベル印刷方法に関する。さらに詳しくは、電子写真方式により、光ディスクなどのディスクに印刷するディスクのレーベル印刷方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ディスクのレーベル印刷方法には、主としてシルクスクリーン印刷法が採用されているが、近年、電子写真方式によるレーベル印刷方法について検討が行なわれている。
【0003】しかしながら、前記電子写真方式によるレーベル印刷方法を採用した場合には、トナーを熱定着させる際の加熱により、ディスクが熱変形するため、ディスクのデータエラーを引き起こすという欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、トナーを用いてレーベルに印刷した場合であっても、ディスクに熱変形を生じない電子写真方式によるディスクのレーベル印刷方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の要旨は、ディスクの表面に電子写真方式によってトナー像をレーベルに印刷するディスクのレーベル印刷方法であって、前記ディスクの熱変形温度以下の軟化温度を有するトナーを用いて印刷することを特徴とするディスクのレーベル印刷方法に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明のディスクのレーベル印刷方法は、ディスクの表面に電子写真方式によってトナー像をレーベルに印刷するディスクのレーベル印刷方法であり、前記ディスクの熱変形温度以下の軟化温度を有するトナーを用いて印刷することを特徴とする。
・・・省略・・・
【0047】
【実施例】次に本発明のディスクのレーベル印刷方法を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
・・・省略・・・
【0053】製造例2
まず、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1045g、ポリオキシエチレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン420g、テレフタル酸205gおよび無水トリメリット酸335gをエステル化触媒(酸化ジブチル錫)2gとともにガラス製の3リットル容の4つ口フラスコ内に入れ、温度計、ステンレス鋼製攪拌棒、液化式コンデンサーおよび窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒータ中で窒素気流下で、230℃の常圧で7時間攪拌し、そののち60Torrに減圧し、攪拌しながら反応を行なった。
【0054】得られたポリエステルは、酸価28.5KOHmg/gおよび水酸基価56.6KOHmg/gおよび軟化温度135℃を有していた。
【0055】次に、前記で得られた結着樹脂100重量部、帯電制御剤(日本カーリット(株)製、商品名:LR−147)2重量部、着色剤(C.I.ソルベントレッド49)2重量部およびワックス(三洋化成工業(株)製、商品名:ビスコール550P)2重量部をヘンシェルミキサーで混合し、2軸混練機で溶融混練したのち、冷却し、ジェットミルで粉砕して分級を行なって平均粒子径11μmのトナーBを得た。
【0056】得られたトナーBの軟化温度を前記と同様にして測定したところ、130.0℃であった。」

2 引用発明
引用文献1において、【0055】の得られた結着樹脂は、【0054】のポリエステルであることは明らかであることから、引用文献1には、製造例2として製造された「トナー」の発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「酸価28.5KOHmg/gおよび水酸基価56.6KOHmg/gおよび軟化温度135℃を有しているポリエステルである結着樹脂100重量部、帯電制御剤(日本カーリット(株)製、商品名:LR−147)2重量部、着色剤(C.I.ソルベントレッド49)2重量部およびワックス(三洋化成工業(株)製、商品名:ビスコール550P)2重量部を混合し、溶融混練したのち、冷却し、粉砕して分級を行なって得た、トナー。」


第5 対比
1 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)ポリエステルについて
引用発明の「トナー」は、「ポリエステルである結着樹脂100重量部、帯電制御剤(日本カーリット(株)製、商品名:LR−147)2重量部、着色剤(C.I.ソルベントレッド49)2重量部およびワックス(三洋化成工業(株)製、商品名:ビスコール550P)2重量部を混合し、溶融混練したのち、冷却し、粉砕して分級を行なって得た」ものである。
上記トナーの組成からみて、引用発明の「ポリエステル」は、その文言どおり、本願発明の「ポリエステル」に相当する。

(2)結着樹脂について
上記(1)の組成からみて、引用発明の「結着樹脂」は、その文言どおり、本願発明の「結着樹脂」に相当する。また、引用発明の「結着樹脂」は、本願発明の「結着樹脂」の「少なくともポリエステルを含有する」との要件を満たす。

(3)着色剤について
上記(1)の組成からみて、引用発明の「着色剤」は、その文言どおり、本願発明の「着色剤」に相当する。また、引用発明の「着色剤」は、本願発明の「着色剤」の「ソルベントレッド49を含有し」との要件を満たす。

(4)トナーについて
上記(1)〜(3)を総合すると、引用発明の「トナー」は、その文言どおり、本願発明の「トナー」に相当する。
また、上記(1)の組成からみて、引用発明は、「ポリエステル」を含有する「結着樹脂」、及び「着色剤」を含有する。そうしてみると、引用発明は、本願発明の「少なくともポリエステルを含有する結着樹脂、及び着色剤を含有する」との要件を満たす。

2 一致点及び相違点
(1)一致点
以上の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。
「 少なくともポリエステルを含有する結着樹脂、及び着色剤を含有するトナーであって、前記着色剤が、ソルベントレッド49を含有するトナー。」

(2)相違点
本願発明と引用発明は、以下の点で一応相違する。
<相違点>
「トナー」の酸価が、本願発明は、「15.6mgKOH/g以上27.2mgKOH/g以下である」のに対して、引用発明の「トナー」の酸価は、一応明らかでない点。


第6 判断
1 相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用発明の「ポリエステル」は、「酸価28.5KOHmg/g」である。また、引用発明の「トナー」の組成は、「ポリエステルである結着樹脂100重量部、帯電制御剤(日本カーリット(株)製、商品名:LR−147)2重量部、着色剤(C.I.ソルベントレッド49)2重量部およびワックス(三洋化成工業(株)製、商品名:ビスコール550P)2重量部」である。上記のポリエステルの酸価とトナーの組成から、引用発明のトナーの酸価を計算すると、
28.5×100/(100+2+2+2)=26.9mgKOH/gとなり、引用発明の「トナー」の酸価は、上記相違点に係る酸価の数値範囲内になる。
したがって、上記相違点は、実質的な差異ではない。
あるいは、引用発明の「トナー」の酸価を上記相違点に係る酸価の数値範囲内とすることは、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない。

2 審判請求人の主張について
(1)審判請求人の主張の概要
審判請求人は、令和4年11月25日提出の意見書において、「引用文献1、2には、本願の課題である高い蛍光性と、耐高温高湿保存性とを両立できること、特に高い蛍光性については記載も示唆もされていません。従いまして、本願発明は、引用文献1、2と同一ではありませんし、引用文献1、2から容易に想到することはできません。」と主張している。
しかしながら、上記1で述べたとおり、本願発明と引用発明は相違しないのであるから、上記主張は、採用することができない。

3 小括
本願発明は、引用文献1に記載された発明であるか、あるいは、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号の規定に該当し特許を受けることができないか、あるいは、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件出願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-12-16 
結審通知日 2022-12-20 
審決日 2023-01-13 
出願番号 P2017-078710
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (G03G)
P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 石附 直弥
井口 猶二
発明の名称 トナー、トナー収容ユニット、画像形成装置、及び画像形成方法  

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