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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01Q
管理番号 1396027
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-04-20 
確定日 2023-04-11 
事件の表示 特願2018−128660「非接触通信のためのプラスチックパッケージに入れたRFIDトランスポンダ」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月14日出願公開、特開2019− 41374、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年7月6日(パリ条約による優先権主張2017年7月7日(DE)ドイツ連邦共和国)の外国語特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年11月 1日 :翻訳文の提出
令和 3年 4月 1日付け:拒絶理由通知書
令和 3年10月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年12月13日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 4年 4月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年 1月27日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」と
いう。)
令和 5年 2月13日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1−7に係る発明は、以下の引用文献A−Dに基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2013−80324号公報
B.米国特許出願公開第2010/0321161号明細書
C.特開2005−257573号公報
D.特開2004−274754号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願請求項1−4に係る発明は、以下の引用文献1−2に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2013−80324号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.米国特許出願公開第2010/0321161号明細書(拒絶査定時
の引用文献B)

第4 本願発明
本願の請求項1−3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明3」という。)は、令和5年2月13日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1−3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1−3は、以下のとおりの発明である。(なお、分説a−jは、当審において付した。)

「【請求項1】
a チップを包含し、非接触通信のためにチップが接続されるチップアンテナを有し、および、これらのトランスポンダ構成要素を統合された構成要素として収容するプラスチックパッケージ(1)を有するRFIDトランスポンダであって、
b プラスチックパッケージ(1)は、その外表面上にコイル芯(2)を形成し、そこで少なくとも1つのコイル巻線(4)を有するブースターアンテナ(3)が配列され、
c コイル巻線(4)は、誘導結合を形成するために、統合されたアンテナを完全に囲み、
および、
d コイル巻線(4)の2つの端(5、6)は、UHFレンジのための双極子アンテナのアンテナワイヤを形成し、
e プラスチックパッケージ(1)の周面は、少なくとも1つのコイル巻線(4)のための位置決め表面であり、
f チップアンテナは、プラスチックパッケージ(1)の空間構造に関して特定の配向を有し、それに対向してコイル巻線(4)は、位置決め表面としてのプラスチックパッケージ(1)の使用のために特定の位置を想定し、
g チップに接続され、および、プラスチックパッケージ(1)中へ統合されるアンテナ、ならびに、ブースターアンテナ(3)の少なくとも1つのコイル巻線(4)が、互いに関して配列される導体ループを形成し、
h コイル芯(2)が、チップに接続され、および巻きコイルとして形成されるアンテナに関して同心円状に配列され、
チップが巻きコイルの中心において配列され、
i プラスチックパッケージ(1)および少なくとも1つのコイル巻線(4)が、組み立てられ得る二等分で構成された主ハウジング(7)中へ統合され、主ハウジング(7)を利用して、プラスチックパッケージ(1)と少なくとも1つのコイル巻線(4)とが互いに固定されることを特徴とする、
j 前記RFIDトランスポンダ。
【請求項2】
主ハウジング(7)が筒形であることを特徴とする、請求項1に記載のRFIDトランスポンダ。
【請求項3】
コイル芯(2)が丸いまたは角のある断面を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のRFIDトランスポンダ。」

第5 引用文献、引用発明等

1 当審拒絶理由に引用された引用文献について
(1) 当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は当審において付したものである。以下、同様。)。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用のリーダやリーダライタと共に用いて非接触で情報の送受信を行うことができるRFID(Radio Frequency Identification)タグ及びこれを用いた自動認識システムに関する。」

イ 「【0011】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、小型のRFIDタグ単体に比べて長い通信距離を実現し、しかも従来のRFIDタグに比べてアンテナの設置にはんだづけ等の機械的接続が不要なため設置が容易でそのため接続不良の不具合が起こりえず信頼性に優れており、導体として金属線や導電性の糸を用いることが出来て特に導電性の糸は紙、布、軟質の曲がるプラスチックなどに縫うことも可能なため設置場所や設置形状の自由度が高いRFIDタグを提供することを目的とする。」

ウ 「【0017】
図3に示すように、樹脂製の基材1上の中央部にICチップを30配置し(当審注:「ICチップを30配置し」は、「ICチップ30を配置し」の誤記と認められる。)、このICチップ30の外周部の基材1の片面にアンテナ20を配置する。アンテナ20は、基材1の外周部の長さのとれる領域に配置されるので、アンテナ形状の自由度が拡大し、アンテナ20のインダクタンスLとICチップ30の静電容量Cとを含めて形成される電気回路(以下、「LC共振回路」ということがある。)の共振周波数の調整が容易となる。また、アンテナ20は、ICチップ30の外周部に設けられるので、コイルアンテナの場合、コイルの直径が大きくなり、インダクタンスが増加して、通信距離の確保と小型化に有利となる。また、アンテナ20は、ICチップ30と接続されて電気的閉回路を形成し、開放端を有しないようにする。ここで、電気的閉回路を形成するとは、アンテナ20が端部を2箇所有しており、アンテナ20上の2箇所とICチップ30の2つの電極(図示しない。)とがそれぞれ接続されていることを意味する。ICチップ30と接続されて電気的閉回路を形成し、開放端を有しないアンテナの具体例としては、図3のコイルアンテナが挙げられ、これにより、RFIDタグパッケージのサイズが小型でも、LC回路としてアンテナ20を容易に設計でき、かつ小面積で効率的にインダクタンスを得ることができるため、通信距離を確保するのが有利となる。」


エ 「【図3】



オ 「【0021】
図4は、封止材によって封止された後、ダイシング加工によって、略直方体に形成されたRFIDタグパッケージ80を示す断面図である。基材1上にてダイパッド90上に搭載されたICチップ30、アンテナ20、ワイヤ40を、封止材10を用いて一括して封止することで、それらを保護する。基材1として薄いものを用い、アンテナ20を基材の片面のみに単層で設けているので、封止後の厚みは、例えば0.2〜1.0mm程度にすることができる。封止後、ICチップ30やアンテナ20やワイヤ40等の金属配線部分は全て封入されるため、封止材10の外部からは、まったく触れられない構造となり、環境劣化の観点からも偽造防止の観点からも安全性・信頼性が向上する。
【0022】
封止材としては、通常半導体で使用されている封止材を使用することができ、比誘電率は2.6〜4.5程度である。RDIDタグパッケージ自体の性能を高めるためには、封止材の比誘電率は低いほうが好ましいが、比誘電率が高ければインダクタンスが増加するためアンテナを小型化することができる。」

カ 「【図4】



キ 「【0030】
図6に、本発明のRFIDタグ85を示す。RFIDタグパッケージ80の外部周辺には、RFIDタグパッケージ80のアンテナ20やICチップ30とは電気的に接続されておらず、表面が絶縁体で覆われている導体100を配置している。なお導体としては金属の塊、金属の板、金属の線、導電性の糸(金属を含有した糸や、細い金属を通常の糸に織り込んだものを含む)などが含まれるが、小型・軽量・デザイン性という観点から、金属線または金属を含有する糸が良好であるため、本明細書では以降、これらを代表して金属線と言う。図6では金属線100が外部アンテナとなり、リーダ(図示せず)からの信号を効率よくRFIDタグパッケージ80に伝え、結果的に通信距離が向上する。
【0031】
金属線として、銅またはアルミニウムまたは鉄のいずれかを主成分とする金属線は、安価で透磁率が高く良好な外部アンテナとして働くため好適である。また金属線自身または外部の金属と接触することで外部アンテナとしての性能が減少するため、外部を被覆してある金属線を用いることも有効である。
【0032】
リーダからの信号を受けることで、金属線には電流が流れる。その電流によって金属線周辺には磁束が発生する。発生した磁束はRFIDタグパッケージのコイル状アンテナに電流を発生させ、それによりICチップには電圧が印加されて動作する。この原理が活用できるのはRFIDタグパッケージのアンテナがコイル状のためである。
【0033】
そのため、RFIDタグパッケージのコイル状アンテナが一つの平面上に形成されており、この平面と略同一の平面上に金属線を配置すると、金属線で発生した磁束が多くコイル状アンテナに伝わるため、効率が良く、通信距離が長くなる。ここで、コイル状アンテナが形成されている平面と略同一の平面上に金属線を配置するというのは、コイル状アンテナが形成されている平面と繋がった平面上(連続した平面上)に金属線を配置するというだけでなく、コイル状アンテナが形成されている平面とは不連続な平面上に金属線を配置する場合を含む。つまり、コイル状アンテナが形成されている平面を拡大した仮想平面上に金属線を配置する場合を含む。」

ク 「【図6】



ケ 「【0035】
図7に、外部アンテナとして効率がよい金属線100の形状を示す。(1)は金属線100が直線型である。(2)はコの字型である。(3)は折り曲げ箇所を増やしたコの字型である。(4)は折り曲げを緩やかな曲線にしたコの字型である。(5)はメアンダライン型である。(6)はRFIDタグパッケージ80の3辺を囲っている直線型であり効率が高めになる。(2)〜(5)についてもRFIDタグパッケージ80の3辺を囲うことで効率を上げることが出来る。
【0036】
金属線の長さは、ICチップの動作波長の半分程度がもっとも好適である。ICチップの動作周波数をf0(Hz)、光の速度をc(m/秒)とすると、ICチップの動作波長λ(m)は次式で示せる。
【0037】

例えば動作周波数が950MHzの場合、動作波長は315.6mmであり、金属線の長さはその半分の157.8mm程度が好適である。
【0038】
図8に、RFIDタグパッケージ80の外周に沿って金属線100が1〜4周のコイル状になっているRFIDタグ85を示す。ここで、金属線100がコイル状になっているとは、金属線100が、略平面上で、直径を徐々に拡大しながら、周回する形状をいい、円形に限らず、三角形や四角形等の多角形、楕円形あるいは星形等の種々の形状を含む。金属線は被覆してあるため重なり合う部分でも電気的に導通しない。このようにコイル状にすると外部アンテナである金属線からRFIDタグパッケージ内のコイル状アンテナへ非常に効率よくエネルギーが伝送する。従来のRFIDタグでは外部アンテナはICチップに対し電気的に接続されていなければアンテナで受け取ったエネルギーをICチップに伝えることができない。その点で本発明は外部アンテナである金属線とICチップを電気的に接続せずとも通信できるため、電気的接続の手間を省くことができ、また使用中に断線する心配が無く、外付け・後付けで通信距離が延長できる外部アンテナとして金属線を設置することができる。」

コ 「【図8】


(2) したがって、前記(1)ア〜コから、前記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「RFIDタグは、汎用のリーダやリーダライタと共に用いて非接触で情報の送受信を行うことができ(【0001】)、
樹脂製の基材1上の中央部にICチップ30を配置し、このICチップ30の外周部の基材1の片面にアンテナ20を配置し、アンテナ20は、ICチップ30の外周部に設けられ、コイルアンテナの場合、コイルの直径が大きくなり、インダクタンスが増加して、通信距離の確保と小型化に有利であり、アンテナ20は、端部を2箇所有しており、アンテナ20上の2箇所とICチップ30の2つの電極とがそれぞれ接続され、ICチップ30と接続されて電気的閉回路を形成し(【0017】)、
基材1として薄いものを用い、アンテナ20を基材の片面のみに単層で設け、基材1上にてダイパッド90上に搭載されたICチップ30、アンテナ20、ワイヤ40を、封止材10を用いて一括して封止し、封止材によって封止された後、ダイシング加工によって、略直方体に形成されたRFIDタグパッケージ80であって(【0021】)、
RFIDタグパッケージ80の外部周辺には、RFIDタグパッケージ80のアンテナ20やICチップ30とは電気的に接続されておらず、表面が絶縁体で覆われている導体100を配置しており、導体としては、金属線または金属を含有する糸が良好であり、金属線100が外部アンテナとなり、リーダからの信号を効率よくRFIDタグパッケージ80に伝え、結果的に通信距離が向上するものであって(【0030】)、
RFIDタグパッケージのコイル状アンテナが一つの平面上に形成されており、この平面と略同一の平面上に金属線を配置すると、金属線で発生した磁束が多くコイル状アンテナに伝わるため、効率が良く、通信距離が長くなるものであり、コイル状アンテナが形成されている平面と略同一の平面上に金属線を配置するというのは、コイル状アンテナが形成されている平面と繋がった平面上(連続した平面上)に金属線を配置するというだけでなく、コイル状アンテナが形成されている平面とは不連続な平面上に金属線を配置する場合を含み、コイル状アンテナが形成されている平面を拡大した仮想平面上に金属線を配置する場合を含み(【0033】)、
外部アンテナとして金属線100の形状は直線型であり(【0035】)、
金属線の長さは、ICチップの動作波長の半分程度がもっとも好適であって(【0036】)、
動作周波数が950MHzの場合、動作波長は315.6mmであり(【0037】)、
RFIDタグ85は、RFIDタグパッケージ80の外周に沿って金属線100が1〜4周のコイル状になっており、金属線100がコイル状になっているとは、金属線100が、略平面上で、直径を徐々に拡大しながら、周回する形状をいい、円形に限らず、三角形や四角形等の多角形、楕円形あるいは星形等の種々の形状を含み、このようにコイル状にすると外部アンテナである金属線からRFIDタグパッケージ内のコイル状アンテナへ非常に効率よくエネルギーが伝送するものであって、通信距離が延長できる外部アンテナとして金属線を設置することができる(【0038】)、
RFIDタグパッケージ80。」

(3) 当審拒絶理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「[0033] In the illustrated embodiment, the IC or microchip 12 and the operatively connected loop antenna 14 are encapsulated in an encapsulant 16 made from a significantly durable and/or substantially rigid material. For example, the encapsulant 16 is optionally made of a sufficiently durable and/or rigid plastic material. In practice, the encapsulant 16 is optionally durable enough to protect the IC or microchip 12 and operatively connected loop antenna 14 from experiencing any significant damage or performance degradation as a result of repeated expose to washing and/or other laundry processes. The combination of the IC or microchip 12 and operatively connected loop antenna 14 along with the encapsulant 16 surrounding the same are collectively referred to herein nominally as the button structure 18 since they optionally form what appears to be and/or function as an otherwise standard clothing button. As is shown in the illustrated embodiment, one or more holes 20 or the like are optionally drilled or otherwise formed in the encapsulant 16 so that the button structure 18 may be readily sewn or otherwise affixed to a garment or other apparel item (e.g., as better seen in FIG. 2).」
(当審訳: [0033] 図示の実施形態では、集積回路又はマイクロチップ12と動作可能に接続されたループアンテナ14は、大幅に耐久性があり及び/又は十分に剛性のある材料から作成された封止材料16で封止されている。例えば、封止材料16は、必要に応じて、十分に耐久性があり及び/又は剛性のあるプラスチック材料で形成されている。実際には、洗浄及び/又は他の洗濯プロセスに繰り返し晒されることの結果として、重大な損傷又は性能低下を経験することから、封止材料16は、IC又はマイクロチップ12と動作可能に接続されたループアンテナ14を保護するのに十分な耐久性を有する。集積回路またはマイクロチップ12と作動可能に接続されたループアンテナ14と、それを囲む封止材料16との組み合わせは任意選択で、他の標準的な衣類ボタンのように見えるもの及び/又はそのように機能するものを形成するので、本明細書では名目上、ボタン構造体18と総称される。図示の実施形態に示されるように、ボタン構造体18が(例えば、図2に好適に示されるように)衣服または他の衣料品に容易に縫い付けられるか、さもなければ取り付けられ得るように、封止材料16において1つ以上の穴20等が任意選択で開けられるか、形成される。)

イ 「[0034] Returning attention now to FIG. 1, the RFID device 10 also includes a radiating structure 22 that is in practice located sufficiently near and/or arranged with respect to the button structure 18 so as to inductively couple with the loop antenna 14 thereby substantially extending the effective distance (i.e., read range) at which the device 10 can be read by an associated RFID reader (not shown). Suitably, the radiating structure 22 is made from any of a variety of electrically conductive materials and/or components having a wide variety of lengths, sizes, shapes, patterns, etc. In any event, the radiating structure 22 is optionally sufficiently durable to withstand repeated washing and/or other laundry processes without experience significant damage and/or performance degradation. Optionally, the radiating structure 22 is made from an electrically conductive thread (e.g., a standard type sewing thread coated and/or embedded with a metal or other conductive material), thin wire or the like. In one suitable embodiment, the radiating structure 22 is sewn in a selected pattern directly in the garment or other apparel item near the location where the button structure 18 is to be affixed or otherwise attached to the garment or apparel item. In an alternate embodiment, the radiating structure 22 is similarly provisioned in or on a patch or label or the like which is in turn ironed-on or sewed or otherwise secured or attached at the proper location to the garment or apparel item that is receiving the RFID device 10. In either case, the radiating structure 22 is optionally encapsulated in a suitable material to further enhance its protection from washing and/or other laundry processes. For example, the electrically conductive thread, wire or other like component is optionally coated or otherwise encased in a suitable protective layer and/or material. Suitably, the radiating structure 22 increases the read range of the overall RFID device 10 (e.g., as compared to the button structure 18 alone) due to inductive coupling between the loop antenna 14 and the radiating structure 22. For example, read ranges up to approximately 6 m or greater are optionally achieved.」
(当審訳:[0034] ここで図1に戻ると、RFID装置10は、ループアンテナ14と誘導的に結合するように十分に近くに配置され、及び/又は、ボタン構造体18に配置された放射構造体22を含み、それによって、装置10は、対応するRFIDリーダ(図示せず)によって読み取ることができる有効距離(即ち、読取り範囲)が実質的に延長される。好適には、放射構造体22は、長さ、寸法、形状、パターンなどの多様な導電性材料及び/又は種々の構成要素のいずれかから形成されている。いずれにしても、放射構造体22は、経験の重大な損傷及び/又は性能劣化することなく繰り返しの洗浄及び/又は他の洗濯プロセスに耐えるに十分な耐久性がある。任意選択的に、放射構造体22は、導電性の糸(例えば、金属または他の導電性材料で被覆されかつ/または埋設された標準型の縫合糸)、細いワイヤ等で形成されている。1つの好適な態様では、放射構造体22は、ボタン構造体18は、固定され又はそうでなければ衣服又は衣料品に取り付けられる場所の近くの衣服または他の衣料品に直接選択されたパターンで縫い付けられている。別の態様では、放射構造体22は、同様にパッチまたはラベルなどのアイロン掛けに縫合または他の方法で固定されたり、その他、用意されるか、あるいは適切な位置でRFID装置10を収容する衣類又は衣料品に取り付けられている。いずれの場合にも、放射構造体22は、任意に洗浄及び/又は他の洗濯プロセスからの保護をさらに強化するために適当な材料でカプセル化される。例えば、導電性の糸、ワイヤまたは他の同様の構成要素は、任意にコーティングし、或いは適切な保護層および/または材料で覆われている。好適には、放射構造体22は、ループアンテナ14と放射構造体22との間の誘導性結合に起因する全体的なRFID装置10の読み取り範囲(例えば、単独で、ボタン構造体18と比較して)を増大させる。例えば、約6m以上までの読取範囲は、必要に応じて達成される。)

ウ 「図1



エ 「図2



(4) したがって、前記(3)ア〜エから、前記引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。

「集積回路又はマイクロチップ12と動作可能に接続されたループアンテナ14は、大幅に耐久性があり及び/又は十分に剛性のある材料から作成された封止材料16で封止されており([0033])、
封止材料16は、必要に応じて、十分に耐久性があり及び/又は剛性のあるプラスチック材料で形成され、洗浄及び/又は他の洗濯プロセスに繰り返し晒されることの結果として、重大な損傷又は性能低下を経験することから、封止材料16は、集積回路又はマイクロチップ12と動作可能に接続されたループアンテナ14を保護するのに十分な耐久性を有しており([0033])、
ICまたはマイクロチップ12と作動可能に接続されたループアンテナ14と、それを囲む封止材料16との組み合わせは任意選択で、他の標準的な衣類ボタンのように見えるもの及び/又はそのように機能するものを形成し([0033])、
RFID装置10は、ループアンテナ14と誘導的に結合するように十分に近くに配置され、及び/又は、ボタン構造体18に配置された放射構造体22を含み、それによって、装置10は、対応するRFIDリーダによって読み取ることができる有効距離(即ち、読取り範囲)が実質的に延長される([0034])
ボタン構造体18。」

2 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Cには、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0031】
図1に本発明の試料収納用ミニチューブの一態様の正面図を示す。ミニチューブ1は上部のキャップ及び、試料を収納するミニチューブ本体2、本体とICタグ収納部とを接続するためのチューブ本体下部3、ICタグ収納部5からなっている。ミニチューブ本体1の上部にはキャップがパッキングを介して取り付けられ、チューブ本体の内部が気密に保持されるようになっている。チューブ本体下部3とICタグ収納部5とが連結面4で接続されている。試料収納用ミニチューブは低温の状態で保管されることが多い。本発明は主として、前記のチューブ本体下部3及びICタグ収納部5、両者の連結面4の構造及び機能に関するものである。」

イ 「図1



ウ 「【0033】
図2(1) にICタグ収納部の一態様の正面図を、図2(2) にその底面図を示す。また図2(3) にICタグ収納部の中心軸を通るA-A'面で切断した断面図を示す。図2(2) 及び(3) に示すように、ICタグ収納部にはICタグ6及び補助アンテナコイル7が収納されている。ICタグ6は、基板上に取り付けられた大規模半導体集積回路8と送受信用のアンテナ9からなり、これらの回路には更に励磁用のコンデンサーも含まれている。」

エ 「図2



オ 「【0035】
補助アンテナコイル7はドーナツ型で、図2(2) 及び(3) に示すようにICタグ6の周囲に配置されている。内部にはアンテナ用のコイル10と励磁用コンデンサー11が含まれている。コイル10は、プラスチック製の基板上に導電性インクを連続した円周状または方形にプリントしてつくられている。補助アンテナコイルは、ICタグとそのデータのリーダー/ ライターとの間に設置され、両者の送受信の電波を中継・増幅する機能を有している。ここで円周状または方形のコイル10の径が大きい程、電波の到達距離が長くなる効果が認められる。」

(2) したがって、前記(1)ア〜オから、前記引用文献Cには、次の技術が記載されていると認められる。

「ミニチューブ1は上部のキャップ及び、試料を収納するミニチューブ本体2、本体とICタグ収納部とを接続するためのチューブ本体下部3、ICタグ収納部5からなっており、チューブ本体下部3とICタグ収納部5とが連結面4で接続されているものであって(【0031】)、
ICタグ収納部にはICタグ6及び補助アンテナコイル7が収納され、ICタグ6は、基板上に取り付けられた大規模半導体集積回路8と送受信用のアンテナ9からなり、これらの回路には更に励磁用のコンデンサーも含まれており(【0033】)、
補助アンテナコイル7はドーナツ型で、ICタグ6の周囲に配置され、内部にはアンテナ用のコイル10と励磁用コンデンサー11が含まれており、コイル10は、プラスチック製の基板上に導電性インクを連続した円周状または方形にプリントしてつくられており(【0035】)、
補助アンテナコイルは、ICタグとそのデータのリーダー/ ライターとの間に設置され、両者の送受信の電波を中継・増幅する機能を有し、円周状または方形のコイル10の径が大きい程、電波の到達距離が長くなる効果が認められる(【0033】)、
ICタグ収納部5。」

(3) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Dには、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0034】
図3は本発明の装置10の代替実施形態を図示していて、この代替実施形態においては、担体ストリップ36は除去されていて、アンテナ32とトランスポンダ34は、タイヤ12の製造中に直接にタイヤ12の中に埋め込まれている。アンテナ32の位置は、この場合においても、上記の段落において最適として記述された区域44内、すなわち、タイヤ12がリム26に取り付けられているときにリムフランジ面30の上方の約10〜30mmである。装置10をタイヤ12の製造中にタイヤ12に取り付けることは、本発明によって可能であるが、そのような方法は、タイヤが成形されるときに、ダメージを与える可能性のある力にトランスポンダ34とアンテナとをどうしても曝すおそれがあるので、好ましくない。また、露出された環状アンテナ32とトランスポンダ34を埋め込むことは、ダメージと破壊の際における組立体の交換と修繕とを厄介なものにする。したがって、製造後の工程で、接着剤等によって装置10をタイヤ12に取り付けることが好ましい。製造後の組立ての利点は、装置10がタイヤ製造工程の応力を免れるとともに、破壊の際には装置10を容易に取り外して交換することができることである。」

イ 「図3



ウ 「【0037】
図5〜12を一括して参照して、環状装置10の構成をさらに詳細に説明する。トランスポンダ・モジュールは、一般に、従来型の手段によってゴムまたはプラスチック材料から形成されたベース筐体52を有する。筐体52は、相互に向かい合った鉛直方向の端部壁58、60に対し曲率をつけられた底面55に沿ってつながっている、相互に対向した側壁54、56を有する。壁54、55、56、58、60は、中央の仕切り室62を画定する。貫通孔64は、仕切り室62に連通して、端部壁58、60の下方部分を通って延びている。
【0038】
筐体52は、さらに、射出成形のような従来型の手段によって同様に在来のゴムまたはプラスチック材料によって形成されたキャップ部材68を有する。キャップ部材68は、水平な上面74で終端される鉛直な側壁72を有する上部突出部、すなわち「スナウト(snout)」70を有する。センサ・ポートまたはセンサ開口76は、表面74の中央に配置され、それを貫通して延びている。フランジ78は、キャップ68の下部境界を周囲で画定し、鉛直な側壁72と直角に交差する水平棚状面80を有する。フランジ78は、当然のことながら、モジュールのベース筐体52の上端部上に坐るように、寸法が決められている。キャップ68の水平棚状面80は、フランジ78と鉛直な側壁72との間に配置される。上部の側壁部分81は、上面74に向かって内方にテーパが付けられるように設けられる。キャップ68のテーパ付けされた外形によって、装置10の都合よく確実な製造が助長される。」

エ 「図8



オ 「【0041】
続けて図5〜12を参照して、回路基板98が、トランスポンダのベース筐体52の中央仕切り室62内に実装されている。回路基板98は、一般に、上面102に取り付けられた電子部品パッケージ100を備えるように構成され、また、下側104に取り付けられた電子部品パッケージ106を有することができる。電子部品パッケージ100、106は、図5〜12には包括的に描かれていて、タイヤ中空部の監視動作を実行するために必要なトランスポンダ・センサ、論理回路及びRF伝送システムを備えている。本発明はトランスポンダの設計に特化したものではなく、多数の従来型トランスポンダ・システム中の任意のものを用いて回路基板98の一方または両方の表面102、104に搭載することができる。基板98は、さらに、基板側部内に作られたリード収容溝108を有する。」

カ 「【0044】
アンテナ32は、図5から最もよく分かるように、トランスポンダ・モジュール34を通過して引き回され、連続するループを構成する。好ましい実施形態において、アンテナ32は、正弦曲線(sinusoidal)の形状に形成され、正弦曲線の形状は、タイヤの稼動中にタイヤの中の歪み力に対抗するための伸長機能をアンテナに与える働きをする。アンテナ32は、スリーブ90の貫通孔94、本体82の孔88、および筐体52の貫通孔64を非接触で突き抜ける。このようにして、アンテナ32は、機械的にはトランスポンダ・モジュール34から分離している。」

キ 「図5



(4) したがって、前記(3)ア〜キから、前記引用文献Dには、次の技術が記載されていると認められる。

「アンテナ32とトランスポンダ34は、タイヤ12の製造中に直接にタイヤ12の中に埋め込まれ、(【0034】)、
トランスポンダ・モジュールは、従来型の手段によってゴムまたはプラスチック材料から形成されたベース筐体52を有し、筐体52は、相互に向かい合った鉛直方向の端部壁58、60に対し曲率をつけられた底面55に沿ってつながっている、相互に対向した側壁54、56を有しており(【0037】)、
筐体52は、さらに、射出成形のような従来型の手段によって同様に在来のゴムまたはプラスチック材料によって形成されたキャップ部材68を有し、キャップ部材68は、水平な上面74で終端される鉛直な側壁72を有する上部突出部、すなわち「スナウト(snout)」70を有し、フランジ78は、キャップ68の下部境界を周囲で画定し、鉛直な側壁72と直角に交差する水平棚状面80を有し、フランジ78は、モジュールのベース筐体52の上端部上に坐るように、寸法が決められており(【0038】)、
回路基板98が、トランスポンダのベース筐体52の中央仕切り室62内に実装され、上面102に取り付けられた電子部品パッケージ100を備えるように構成されており、電子部品パッケージ100は、タイヤ中空部の監視動作を実行するために必要なトランスポンダ・センサ、論理回路及びRF伝送システムを備え(【0041】)、
アンテナ32は、スリーブ90の貫通孔94、本体82の孔88、および筐体52の貫通孔64を非接触で突き抜けて(【0044】)設けられる
トランスポンダ・モジュール34。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について

(1) 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。

ア 分説aについて
(ア) 引用発明1の「ICチップ30」及び「アンテナ20」から構成される「RFIDタグ」(【0017】、【0021】)は、「汎用のリーダやリーダライタと共に用いて非接触で情報の送受信を行う」もの(【0001】)であり、「アンテナ20上の2箇所とICチップ30の2つの電極とがそれぞれ接続され、ICチップ30と接続されて電気的閉回路を形成」する(【0017】)ものであるから、
引用発明1の「ICチップ30」は、本願発明1の「チップ」に相当し、
引用発明1の「アンテナ20」は、本願発明1の「チップを包含し、非接触通信のためにチップが接続されるチップアンテナ」に相当する。

(イ) 引用発明1では、「基材1上にてダイパッド90上に搭載されたICチップ30、アンテナ20、ワイヤ40を、封止材10を用いて一括して封止」した後、「ダイシング加工によって、略直方体に形成する」ことで「RFIDタグパッケージ80」を形成(【0021】)しているから、
引用発明1の「基材1上にてダイパッド90上に搭載されたICチップ30、アンテナ20、ワイヤ40」(【0021】)は、本願発明1の「トランスポンダ構成要素」に相当し、
引用発明1の「基材1上にてダイパッド90上に搭載されたICチップ30、アンテナ20、ワイヤ40を、封止材10を用いて一括して封止」(【0021】)することは、本願発明1の「これらのトランスポンダ構成要素を統合された構成要素として収容する」ことに相当し、
引用発明1の「RFIDタグパッケージ80」(【0030】)は、本願発明1の「プラスチックパッケージ(1)を有するRFIDトランスポンダ」とは、「パッケージ(1)を有するRFIDトランスポンダ」である点で共通する。

(ウ) したがって、前記(ア)〜(イ)から、
引用発明1の「基材1上にてダイパッド90上に搭載されたICチップ30、アンテナ20、ワイヤ40を、封止材10を用いて一括して封止し、封止材によって封止された後、ダイシング加工によって、略直方体に形成されたRFIDタグパッケージ80」と、
本願発明1の「チップを包含し、非接触通信のためにチップが接続されるチップアンテナを有し、および、これらのトランスポンダ構成要素を統合された構成要素として収容するプラスチックパッケージ(1)を有するRFIDトランスポンダ」とは、
「チップを包含し、非接触通信のためにチップが接続されるチップアンテナを有し、および、これらのトランスポンダ構成要素を統合された構成要素として収容するパッケージ(1)を有するRFIDトランスポンダ」である点で共通する。

イ 分説bについて
(ア) 引用発明1では、「RFIDタグパッケージのコイル状アンテナ」が形成される「一つの平面」上と略同一の平面上に金属線を配置するだけでなく、平面とは不連続な平面上や、平面を拡大した仮想平面上にも金属線を配置することを含むのであるから(【0033】)、「RFIDタグパッケージ80の外周」に、「金属線100」を「1〜4周のコイル状」に配置する(【0030】、【0038】)ことは、「RFIDタグパッケージ80」の「外周」面に「金属線100」を巻回することも含まれるものといえる。
すると、その場合には、「RFIDタグパッケージ80」の「外周」面は、「金属線100」が巻回される芯部となるのであるから、
引用発明1の「RFIDタグパッケージ80の外周」に「金属線100」を「1〜4周のコイル状」に配置することと、本願発明1の「プラスチックパッケージ(1)は、その外表面上にコイル芯(2)を形成」することとは、「パッケージ(1)は、その外表面上にコイル芯(2)を形成」する点で共通する。

(イ) 引用発明1では、「RFIDタグパッケージ80の外周に沿って」、「1〜4周のコイル状」に配置する「金属線100」を、「通信距離が延長できる外部アンテナ」として「設置」することができるものであるので(【0030】、【0038】)、
引用発明1の「金属線100」の「1〜4周のコイル状」の部分は、本願発明1の「少なくとも1つのコイル巻線(4)」に相当し、
引用発明1の「通信距離が延長できる外部アンテナ」は、本願発明1の「ブースターアンテナ(3)」に相当する。
よって、引用発明1の「金属線100」の「1〜4周のコイル状」の部分を有する「通信距離が延長できる外部アンテナ」は、本願発明1の「少なくとも1つのコイル巻線(4)を有するブースターアンテナ(3)」に相当する。

(ウ) したがって、前記(ア)〜(イ)から、
引用発明1の「RFIDタグパッケージ80の外周」に「金属線100」を「1〜4周のコイル状」に配置し、該「金属線100」が「通信距離が延長できる外部アンテナ」として「設置」されることと、
本願発明1の「プラスチックパッケージ(1)は、その外表面上にコイル芯(2)を形成し、そこで少なくとも1つのコイル巻線(4)を有するブースターアンテナ(3)が配列され」ることとは、
「パッケージ(1)は、その外表面上にコイル芯(2)を形成し、そこで少なくとも1つのコイル巻線(4)を有するブースターアンテナ(3)が配列され」る点で共通する。


ウ 分説cについて
(ア) 引用発明1では、「RFIDタグパッケージ80の外周に沿って金属線100が1〜4周のコイル状」に配置され(【0038】)、「RFIDタグパッケージのコイル状アンテナ」が形成された「平面と略同一の平面上」に「金属線を配置」すると「金属線で発生した磁束が多くコイル状アンテナに伝わる」(【0033】)ものであるから、
引用発明1の「金属線100」の「コイル状」の部分(【0038】)は、本願発明1の「コイル巻線(4)」に相当し、
引用発明1の「RFIDタグパッケージのコイル状アンテナ」(【0033】)は、本願発明1の「統合されたアンテナ」に相当し、
引用発明1の「金属線で発生した磁束が多くコイル状アンテナに伝わる」ことは、本願発明1の「誘導結合を形成する」ことに相当する。

(イ) 引用発明1では、「金属線100がコイル状」に配置されることで、「RFIDタグパッケージ80」の外周を完全に囲んでいることは明らかであるから(【0038】)、
引用発明1の「RFIDタグパッケージ80の外周に沿って金属線100が1〜4周のコイル状になって」いることは、本願発明1の「コイル巻線(4)」が「統合されたアンテナを完全に囲」むことに相当する。

(ウ) したがって、前記(ア)〜(イ)から、
引用発明1の「RFIDタグパッケージ80の外周に沿って金属線100が1〜4周のコイル状」に配置され、「RFIDタグパッケージのコイル状アンテナ」が形成された「平面と略同一の平面上」に「金属線を配置」すると「金属線で発生した磁束が多くコイル状アンテナに伝わる」ことは、
本願発明1の「コイル巻線(4)は、誘導結合を形成するために、統合されたアンテナを完全に囲」むことに相当する。

エ 分説dについて
(ア) 引用発明1では、「外部アンテナとして金属線100の形状は直線型」であり(【0035】)、この「金属線100」により構成される「直線型」の部分が「外部アンテナ」として作動するものであるところ、この「金属線100」の「コイル状」の部分を中心として、両端の「直線型」の部分が、本願発明1の「コイル巻線(4)の2つの端(5、6)」に相当する。
また、引用発明1では、「金属線の長さは、ICチップの動作波長の半分程度がもっとも好適」であるところ(【0036】)、ここで、ダイポールアンテナ(双極子アンテナ)は、両端が直線形で全長が半波長であるアンテナであることは技術常識であるから、引用発明1の金属線の「長さ」が「ICチップの動作波長の半分程度」で、両端が「直線型」の部分からなる「外部アンテナ」は、本願発明1の「双極子アンテナ」に相当する。
また、引用発明1の外部アンテナを構成している「金属線100」が、本願発明1の「アンテナワイヤ」に相当する。

(イ) 引用発明1では、「ICチップ」の「動作周波数が950MHz」であること(【0037】)が例示されているところ、一般に、RFIDのUHF帯レンジは、周波数が860〜960MHzであることは技術常識であるから、引用発明1の「ICチップ」の「動作周波数が950MHz」で作動する当該「外部アンテナ」は、UHF帯レンジに含まれるものといえる。

(ウ) したがって、前記(ア)〜(イ)から、
引用発明1の「金属線100」の「コイル状」の部分を中心として、両端の「直線型」の部分が、「動作周波数が950MHz」で作動し、「長さ」が「ICチップの動作波長の半分程度」で、両端が「直線型」の部分からなる「外部アンテナ」の「金属線100」により構成されることは、本願発明1の「コイル巻線(4)の2つの端(5、6)は、UHFレンジのための双極子アンテナのアンテナワイヤを形成する」ことに相当する。

オ 分説eについて
前記イ(ア)のとおり、引用発明1では、「RFIDタグパッケージ80の外周」に、「金属線100」を「1〜4周のコイル状」に配置する(【0030】、【0038】)ことは、「RFIDタグパッケージ80」の「外周」面に、「金属線100」が巻回される場合も含まれるので、この場合には、「RFIDタグパッケージ80」の「外周」面は、巻回される「金属線100」の位置決め表面になるものといえる。
したがって、引用発明1の「RFIDタグパッケージ80の外周」に「金属線100」を「1〜4周のコイル状」に配置することと、
本願発明1の「プラスチックパッケージ(1)の周面は、少なくとも1つのコイル巻線(4)のための位置決め表面であ」ることとは、
「パッケージ(1)の周面は、少なくとも1つのコイル巻線(4)のための位置決め表面であ」る点で共通する。

カ 分説fについて
(ア) 前記ア(イ)に示したように、引用発明1の「RFIDタグパッケージ80」は、本願発明1の「プラスチックパッケージ(1)」とは、「パッケージ(1)」である点で共通する。

(イ) 引用発明1では、「RFIDタグパッケージ80」には、「基材1」として薄いものを用い、「アンテナ20」を基材の片面のみに単層で設けており(【0021】)、「RFIDタグパッケージ80」に対する「アンテナ20」の空間的な位置は、「基材1」上に配置される「アンテナ20」の位置によって一意に定まるから、「アンテナ20」は、「RFIDタグパッケージ80」の空間構造に関して、特定の配向を有しているものといえる。

(ウ) 前記イ(ア)及び前記オのとおり、引用発明1において、「RFIDタグパッケージ80」の「外周」面に、「金属線100」が巻回される場合、「RFIDタグパッケージ80」の「外周」面上に、「金属線100」が巻かれる位置によって、「RFIDタグパッケージ80」に対する「金属線100」の相対的な位置が定まるものであるから、
引用発明1の「RFIDタグパッケージ80」の「外周」面上に、「金属線100」が巻かれる位置を定めることと、本願発明1の「位置決め表面としてのプラスチックパッケージ(1)の使用のために特定の位置を想定」することとは、「位置決め表面としてのパッケージ(1)の使用のために特定の位置を想定」する点で共通する。

(エ) したがって、前記(ア)〜(ウ)から、
引用発明1の「RFIDタグパッケージ80」に対する「アンテナ20」の空間的な位置は、「基材1」上に配置される「アンテナ20」の位置によって一意に定まるものであり、その「RFIDタグパッケージ80」の「外周」面上に、「金属線100」が巻かれる位置を定めることと、
本願発明1の「チップアンテナは、プラスチックパッケージ(1)の空間構造に関して特定の配向を有し、それに対向してコイル巻線(4)は、位置決め表面としてのプラスチックパッケージ(1)の使用のために特定の位置を想定」することは、
「チップアンテナは、パッケージ(1)の空間構造に関して特定の配向を有し、それに対向してコイル巻線(4)は、位置決め表面としてのパッケージ(1)の使用のために特定の位置を想定」する点で共通する。

キ 分説gについて
(ア) 引用発明1では、「アンテナ20上の2箇所とICチップ30の2つの電極とがそれぞれ接続され」(【0017】)、「アンテナ20」は、「RFIDタグパッケージ80」として「封止材10を用いて一括して封止」された後、「ダイシング加工によって、略直方体に形成」される(【0021】)ものであるから、
引用発明1の「アンテナ20上の2箇所とICチップ30の2つの電極とがそれぞれ接続され」(【0017】)、「RFIDタグパッケージ80」として「封止材10を用いて一括して封止」された後、「ダイシング加工によって、略直方体に形成」される(【0021】)「アンテナ20」と、
本願発明1の「チップに接続され、および、プラスチックパッケージ(1)中へ統合されるアンテナ」とは、
「チップに接続され、および、パッケージ(1)中へ統合されるアンテナ」である点で共通する。

(イ) 引用発明1では、「アンテナ20は、ICチップ30の外周部に設けられ」、「封止され」、「ダイシング加工によって、略直方体に形成され」た「RFIDタグパッケージ80」(【0017】)に対し、前記イ(ア)及び前記オのとおり、その外周部に「金属線100」が巻回されるものであるから、「アンテナ20」と、「金属線100」とは、「RFIDタグパッケージ80」の外周に沿って互いに配列され、コイル状の導体ループを形成するものであるといえる。
そして、前記イ(イ)から、引用発明1の「通信距離が延長できる外部アンテナ」として設置される「金属線100」の「1〜4周のコイル状」に巻回される部分(【0030】、【0038】)は、本願発明1の「ブースターアンテナ(3)の少なくとも1つのコイル巻線(4)」に相当する。

(ウ) したがって、前記(ア)〜(イ)から、
引用発明1の「アンテナ20上の2箇所とICチップ30の2つの電極とがそれぞれ接続され」(【0017】)、「RFIDタグパッケージ80」として「封止材10を用いて一括して封止」された後、「ダイシング加工によって、略直方体に形成」される(【0021】)「アンテナ20」及び「通信距離が延長できる外部アンテナ」として設置される「金属線100」の「1〜4周のコイル状」に巻回される部分が(【0030】、【0038】)「アンテナ20」と「RFIDタグパッケージ80」の外周に沿って互いに配列され、コイル状の導体ループを形成することと、
本願発明1の「チップに接続され、および、プラスチックパッケージ(1)中へ統合されるアンテナ、ならびに、ブースターアンテナ(3)の少なくとも1つのコイル巻線(4)が、互いに関して配列される導体ループを形成」することとは、
「チップに接続され、および、パッケージ(1)中へ統合されるアンテナ、ならびに、ブースターアンテナ(3)の少なくとも1つのコイル巻線(4)が、互いに関して配列される導体ループを形成」する点で共通する。

ク 分説hについて
(ア) 引用発明1の「アンテナ20」は、「ICチップ30」に接続され、「コイルアンテナ」として構成されているから、(【0017】)、本願発明1の「チップに接続され、および巻きコイルとして形成されるアンテナ」に相当する。

(イ) 引用発明1では、「樹脂製の基材1上の中央部にICチップ30を配置」し、「このICチップ30の外周部の基材1の片面にアンテナ20を配置」している(【0017】)から、
「ICチップ30」は、「アンテナ20」の「中央部」に配列されており、
「アンテナ20」と、「基材1」の周縁部は、同心円状に配列されているといえる。
そして、「基材1」の周縁部は、「RFIDタグパッケージ80」の「外周」面と一致しており、前記イ(ア)を踏まえると、「RFIDタグパッケージ80」の「外周」面は、「金属線100」が巻回される芯部となるのであるから、芯部となる「RFIDタグパッケージ80」の「外周」面と「アンテナ20」は、同心円状に配列されているといえる。

(ウ) したがって、前記(ア)〜(イ)から、
引用発明1の「樹脂製の基材1上の中央部にICチップ30を配置」し、「このICチップ30の外周部の基材1の片面にアンテナ20を配置」し(【0017】)、「RFIDタグパッケージ80の外周」に、「金属線100」を「1〜4周のコイル状」に配置すること(【0030】、【0038】)は、
本願発明1の「コイル芯(2)が、チップに接続され、および巻きコイルとして形成されるアンテナに関して同心円状に配列され、チップが巻きコイルの中心において配列され」ることに相当する。

ケ 分説iについて
引用発明1は、本願発明1の分説iの「主ハウジング(7)」に対応する構成を有していない。

コ 分説jについて
引用発明1の「RFIDタグパッケージ80」は、後述する相違点を除き、本願発明1の「前記RFIDトランスポンダ」に相当する。

(2) したがって、前記(1)ア〜コの検討結果をまとめると、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「チップを包含し、非接触通信のためにチップが接続されるチップアンテナを有し、および、これらのトランスポンダ構成要素を統合された構成要素として収容するパッケージ(1)を有するRFIDトランスポンダであって、
パッケージ(1)は、その外表面上にコイル芯(2)を形成し、そこで少なくとも1つのコイル巻線(4)を有するブースターアンテナ(3)が配列され、
コイル巻線(4)は、誘導結合を形成するために、統合されたアンテナを完全に囲み、および、コイル巻線(4)の2つの端(5、6)は、UHFレンジのための双極子アンテナのアンテナワイヤを形成し、
パッケージ(1)の周面は、少なくとも1つのコイル巻線(4)のための位置決め表面であり、
チップアンテナは、パッケージ(1)の空間構造に関して特定の配向を有し、それに対向してコイル巻線(4)は、位置決め表面としてのパッケージ(1)の使用のために特定の位置を想定し、
チップに接続され、および、パッケージ(1)中へ統合されるアンテナ、ならびに、ブースターアンテナ(3)の少なくとも1つのコイル巻線(4)が、互いに関して配列される導体ループを形成し、
コイル芯(2)が、チップに接続され、および巻きコイルとして形成されるアンテナに関して同心円状に配列され、
チップが巻きコイルの中心において配列される、
前記RFIDトランスポンダ。」

(相違点)

(相違点1)
「パッケージ(1)」を形成するのは、本願発明1では、「プラスチック」であるのに対し、引用発明1では、「封止材」であって、当該「封止材」がプラスチックであるとの特定はなされていない点。

(相違点2)
本願発明1では「プラスチックパッケージ(1)および少なくとも1つのコイル巻線(4)が、組み立てられ得る二等分で構成された主ハウジング(7)中へ統合され、主ハウジング(7)を利用して、プラスチックパッケージ(1)と少なくとも1つのコイル巻線(4)とが互いに固定される」のに対して、引用発明1では、該「主ハウジング(7)」に対応する構成を有していない点。

(3) 相違点2についての判断
事案に鑑みて、前記相違点2を先に検討する。

引用文献Dに記載された技術では、「電子部品パッケージ100、106」及び「アンテナ32」を収納する「トランスポンダモジュール34」が、「ベース筐体52」と「キャップ部材68」により組み立てられる構成が特定されているものの、本願発明1のように「二等分で構成された」部材により「トランスポンダモジュール34」が組み立てられるものではなく、「電子部品パッケージ100」の周囲に「アンテナ32」がコイル巻線として固定される構成も有していない。
また、引用文献Dのその他の記載を参照しても、本願発明1の「プラスチックパッケージ(1)と少なくとも1つのコイル巻線(4)とが互いに固定される」ように、「二等分で構成された主ハウジング(7)」を設けることに対応する構成は存在せず、示唆もされていない。
したがって、前記相違点2に係る本願発明1の「プラスチックパッケージ(1)および少なくとも1つのコイル巻線(4)が、組み立てられ得る二等分で構成された主ハウジング(7)中へ統合され、主ハウジング(7)を利用して、プラスチックパッケージ(1)と少なくとも1つのコイル巻線(4)とが互いに固定される」という構成は、引用文献Dに記載も示唆もされていない。

また、引用文献2及び引用文献Cにおいても、前記相違点2に係る本願発明1の「プラスチックパッケージ(1)および少なくとも1つのコイル巻線(4)が、組み立てられ得る二等分で構成された主ハウジング(7)中へ統合され、主ハウジング(7)を利用して、プラスチックパッケージ(1)と少なくとも1つのコイル巻線(4)とが互いに固定される」構成は、記載も示唆もされておらず、また、当該構成は、本願優先日前において周知技術であるともいえない。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1並びに引用文献2、引用文献C及びDに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1を引用する発明であって、本願発明1の前記相違点2と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1並びに引用文献2、引用文献C及びDに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
令和5年2月13日の手続補正により、補正後の請求項1−3は、「プラスチックパッケージ(1)および少なくとも1つのコイル巻線(4)が、組み立てられ得る二等分で構成された主ハウジング(7)中へ統合され、主ハウジング(7)を利用して、プラスチックパッケージ(1)と少なくとも1つのコイル巻線(4)とが互いに固定されること」という技術的事項を有するものとなった。
当該技術的事項は、原査定における引用文献A、B(当審拒絶理由における引用文献1、2)、C及びDには記載も示唆もされておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1−3は、当業者であっても、原査定における引用文献A−Dに基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-03-30 
出願番号 P2018-128660
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01Q)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 土居 仁士
猪瀬 隆広
発明の名称 非接触通信のためのプラスチックパッケージに入れたRFIDトランスポンダ  
代理人 葛和 清司  
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