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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C05F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C05F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C05F
管理番号 1396270
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-04-11 
確定日 2023-01-23 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6948674号発明「イネ科植物用肥料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6948674号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜4〕、5について訂正することを認める。 特許第6948674号の請求項1〜5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6948674号の請求項1〜5に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成29年11月10日に特許出願され、令和3年9月24日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年10月13日に特許掲載公報が発行され、その後、当該特許に対して、令和4年4月11日に特許異議申立人小川鐡夫(以下、「申立人」という。)により請求項1〜5に係る特許に対して特許異議の申立てがなされたものである。
特許異議の申立て後の手続の経緯は、次のとおりである。

令和4年 7月 5日付け 取消理由の通知
同年 9月 8日付け 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年10月18日付け 訂正請求があった旨の通知(申立人宛)
なお、上記通知に対して、申立人からの応答はなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年9月8日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次の(1)〜(4)のとおりである。なお、訂正箇所に下線を引いた。
(1)訂正事項1
請求項1の「長石を含む砂を流動媒体として用いた流動層ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰を含むことを特徴とするイネ科植物用肥料。」を、
「長石を含む砂を流動媒体として用いた循環流動層ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰であって、燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰を含むことを特徴とするイネ科植物用肥料。」に訂正する。
併せて、請求項1の記載を引用する請求項2〜4も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
請求項5の「長石を含む砂を流動媒体として用いた流動層ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰の、水稲用肥料としての使用。」を、
「長石を含む砂を流動媒体として用いた循環流動層ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰であって、燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰の、水稲用肥料としての使用。」に訂正する。

(3)訂正事項3
明細書の段落0006の「流動層ボイラ」、「燃焼灰を含むことを特徴とする」をそれぞれ「循環流動層ボイラ」、「燃焼灰であって、燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰を含むことを特徴とする」に訂正する。

(4)訂正事項4
明細書の段落0010の「流動層ボイラ」、「燃焼灰の、水稲用肥料としての使用」をそれぞれ「循環流動層ボイラ」、「燃焼灰であって、燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰の、水稲用肥料としての使用」に訂正する。

2 一群の請求項について
(1)訂正前の請求項1〜5のうち、請求項1及び5は独立請求項であり、請求項2〜4は請求項1を直接的又は間接的に引用するものである。そして、訂正事項1は、訂正前の請求項2〜4を請求項1の訂正に連動して訂正するもの、すなわち、一群の請求項1〜4について訂正するものであり、訂正事項2は、訂正前の請求項5を訂正するものである。
したがって、訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項ごとに請求されたものである。
(2)訂正事項3に係る訂正は、明細書の記載を訂正後の請求項1の記載に整合させる訂正であって、請求項2〜4は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、一群の請求項〔1〜4〕の全てについてなされたものである。また、訂正事項4に係る訂正は、明細書の記載を訂正後の請求項5の記載に整合させる訂正であるから、請求項5に対してなされたものである。
したがって、訂正事項3及び4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に規定する一群の請求項の全てについてなされたものである。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1の「流動層ボイラ」を「循環流動層ボイラ」とする訂正事項を含むものであるが、これは、各種の「流動層ボイラ」が存在する中で、「循環流動式ボイラ」であることを限定するものである。
また、同じく請求項1の「燃焼灰」を「燃焼灰であって、燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」とする訂正事項を含むものであるが、これも、「焼却灰」が「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」であることを限定するものである。
してみると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、請求項1の「流動層ボイラ」及び「燃焼灰」という発明特定事項を更に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そして、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項2〜4の記載についても同様に訂正するものであるが、上記アの理由から明らかなように、訂正後の請求項1の記載は、訂正前の請求項1との関係で特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではない。また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載以外に、訂正前の請求項2〜4の記載について何ら訂正するものではなく、訂正後の請求項2〜4のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項1は、訂正前の請求項2〜4との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
してみると、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件訂正後の「循環流動層ボイラ」について、本件特許の明細書の【0016】には「流動層ボイラとして循環流動層ボイラを用いた例を説明する」と記載され、同【0017】には「サイクロン部20では、遠心力によって砂が捕集され、再び燃焼炉部10下方へともどっていく」と記載され、同【図1】には「サイクロン部20」を備えた「流動層ボイラ」が示されており、「循環流動層ボイラ」はこれらの記載から導き出される構成である。
また、本件訂正後の「燃焼灰であって、燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」について、同【0024】には「燃焼灰中の珪素成分は流動媒体(長石を含む砂)由来であり」と記載され、同【0015】には「長石を含む砂を流動媒体として用いた流動層ボイラから排出される燃焼灰には、驚くべきことに、可溶性の珪素化合物が含まれていることを見出し」と記載されており、上記「焼却灰」についての特定は、これらの記載から導き出される構成である。
してみると、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項5の「流動層ボイラ」を「循環流動層ボイラ」とする訂正事項及び「燃焼灰」を「燃焼灰であって、燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」とする訂正事項を含むものであるが、これらは、上記(1)ア〜ウで検討したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合したものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合したものである。

(3)訂正事項3、4について
ア 訂正の目的について
訂正事項3、4は、上記訂正事項1、2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
してみると、訂正事項3、4は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3、4は、上記(1)イで検討したとおり、一群の請求項〔1〜4〕及び請求項5に記載された「流動層ボイラ」及び「燃焼灰」について、流動層ボイラのタイプおよび焼却灰の性質を限定する訂正であって、いずれもカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
してみると、訂正事項3、4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3、4は、上記(1)ウで検討したとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
してみると、訂正事項3、4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。

4 特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであること
本件訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1〜5に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。

5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜4〕、5について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明
本件訂正は上記第2のとおり認められたので、本件特許の請求項1〜5に係る発明(以下、項番により「本件訂正発明1」等ともいい、まとめて「本件訂正発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
長石を含む砂を流動媒体として用いた循環流動層ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰であって、燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰を含むことを特徴とするイネ科植物用肥料。
【請求項2】
砂は、K化合物および/またはNa化合物および/またはCa化合物を含み、SiO2は64.7wt%以上96.0wt%以下、A12O3は3.0wt%以上18.3wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載のイネ科植物用肥料。
【請求項3】
燃焼灰中に、K化合物および/またはNa化合物および/またはCa化合物を含み、SiO2は10.5wt%以上、A12O3は3.0wt%以上の含有量であることを特徴とする請求項1または2に記載のイネ科植物用肥料。
【請求項4】
イネ科植物が、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、キビ、アワ、ヒエ、または、トウモロコシであることを特徴とする請求項1、2または3に記載のイネ科植物用肥料。
【請求項5】
長石を含む砂を流動媒体として用いた循環流動層ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰であって、燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰の、水稲用肥料としての使用。」

第4 取消理由及び特許異議申立理由について
1 取消理由で通知した取消理由の概要
(1)取消理由1(新規性
本件訂正前の本件特許の特許請求の範囲の請求項1、4、5に係る発明は、後記3(1)の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(進歩性
本件訂正前の本件特許の特許請求の範囲の請求項1〜5に係る発明は、後記3(1)の甲第1〜甲第3号証のいずれかに記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

2 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の概要
(1)申立理由1(明確性
本件訂正前の本件特許の特許請求の範囲の記載には不備があり、本件特許の請求項1及び5は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件訂正前の本件特許の特許請求の範囲の記載には不備があり、本件特許の請求項1、4及び5は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

3 証拠方法
(1)申立人が令和4年4月11日に提出した甲号証
甲第1号証:Ramchandra Pode, "Potential applications of rice husk ash waste from rice husk biomass power plant", Renewable and Sustainable Energy Reviews, Vol. 53(2016), p.1468−1485
(URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1364032115010217)
甲第2号証:特開2010−112684号公報
甲第3号証:R. P. Giron(注:oには、アキュートアクセントがつく), et. al., "Properties of fly ash from forest biomass combustion", Fuel, Vol. 114(2013), p.71−77
(URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0016236112003249)
甲第4号証:泉雅之、「流動床焼却による都市ごみ処理について」、環境技術、第8巻、第11号、1979年、1087〜1092頁
(URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jriet1972/8/11/8_11_1087/_article/-char/ja/)
甲第5号証:平山直道、「廃棄物焼却技術の最近の動向」、日本機械学会誌、第79巻、第690号(1976年)、443〜448頁
甲第6号証:Sigrid De Geyter, et. al., "Effects of Non-Quartz Minerals in Natural Bed Sand on Agglomeration Characteristics during Fluidized Bed Combustion of Biomass Fuels", Energy & Fuels, 2007, Vol.21, No.5, p.2663−2668
(URL: https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ef070162?hmsclkid=0ff4cb84b6f711ec8ee4b3e421072541)
甲第7号証:木下禾大 外1名、「X線回折法による珪砂中の石英および長石の定量について」、鋳物、第38巻、第8号、1966年、491〜501頁
(URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/imono/38/8/38_491/_article/-char/ja/)
甲第8号証:特開2011−251260号公報

(2)特許権者が令和4年9月8日付けの意見書とともに提出した乙号証
乙第1号証:福岡修 外3名、「籾殻を用いた非晶質シリカの調製」、愛知県産業技術研究所研究報告、2011年12月、第10号、第62〜63頁
(URL: https://www.aichi-inst.jp/tokoname/research/report/10ty22.pdf)
乙第2号証:農研機構、「籾殻の低温燃焼による高溶解性ケイ酸質肥料資材化」、中央農業総合研究センター2004年の成果情報
(URL: https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/narc/2004/narc04-06.html)
乙第3号証:JFEエンジニアリング株式会社バイオマス事業部、「JFE循環流動層ボイラ CFB(Circulating Fluidized Bed)ボイラ」
(URL: https://www.jfe-eng.co.jp/products/energy/pdf/CA7005.pdf)
乙第4号証:住友重機械工業株式会社、「循環流動層(CFB)ボイラ」
(URL: https://www.shi-fw.com/wp-content/uploads/2020/03/CFBボイラ.pdf)
乙第5号証:三菱重工株式会社、「循環流動層ボイラ(CFB)」
(URL: https://power.mhi.com/jp/products/boilers/lineup/cfb)

以下、項番に応じて「甲1」、「乙1」などともいう。
また、乙3〜5は公知日不詳であり、令和5年1月4日の時点で、乙4の記事はリンクが切れて参照不能である。

4 甲号証に記載された事項
(1)甲1には次の記載がある。仮訳及び下線は当審が付した。
ア 第1468頁 ABSTRACT



(仮訳)
要約
農業廃棄物である籾殻(RH)は、中国、インド、バングラデシュ、ブラジル、アメリカ、カンボジア、ベトナム、ミャンマー、東南アジアなどの米の生産国に大量に存在する。世界的に年間生産量が多いにもかかわらず、これまでのところ、RHは低価値の用途にしかリサイクルされていない。近年、米生産国の多くの精米工場の運転用のエネルギー生産のため、また農村部の家庭用照明として、RHを利用し始めている。RHを燃焼すると、籾殻灰(RHA)が生成される。RHAは嵩密度が低いため、埋立地や野原に廃棄することは難しく、環境や人体に深刻な影響を与える可能性がある。
RHAを商業的に利用可能とする方法がいくつか考えられている。RHAの主成分(83〜90%)は、非晶質シリカである。非晶質シリカを多く含むRHAには、幅広い用途がある。本稿では、シリカゲル、シリコンチップの製造、活性炭とシリカの合成、軽量建材、断熱材、触媒、ゼオライト、リチウムイオン電池の材料、グラフェン、エネルギー貯蔵/コンデンサ、炭素捕捉、ドラッグデリバリー担体の製造におけるRHAの使用など、価値の高い用途や現在行われている研究調査について報告した。また、将来可能性のある用途におけるRHAの使用について考察した。非晶質シリカに富むRHAは、実用的な用途に向けた付加価値のあるシリカベースの材料を製造するための、低コストな前駆体のリソースとなり得ることが示唆された。

イ 第1471〜1472頁 3.2. Rice husk and rice husk ash




(仮訳)
3.2.籾殻と籾殻灰
RHは、籾の最外層であり、精米工程で米粒から分離される。RHの化学組成は、籾の種類、収穫年、気候、地理的条件の違いにより、試料ごとに異なることが分かっている[25]。RHは、栄養価の低い物質であり、動物の餌として利用されることはほとんどない。伝統的な用途として、肥料添加物、畜産用敷物、調理用燃料、埋立地造成用や舖装用などが挙げられる。RHの他の有益な用途には、コンポジットやパーティションボード、バイオ炭の生産がある。バイオ炭は、土壌改良のための重要な材料である。代替となる再生可能な動力源として、バイオエネルギーをRHから生成することによる可能性は計り知れない。しかし現在、わずかな量のRHが、エネルギー生産やシリカの生産・堆肥化などその他の用途に利用されているに過ぎない。
RHAの工業生産には、通常、流動床燃焼が採用されている。ボイラー中で高品質のRHAを生産する技術を習得しているボイラー業者は、世界でもほんの僅かしかいない。しかし、技術の進歩に伴い、プロジェクトの中には、高品質の灰を生産するものもある。

ウ 第1482頁 10.17. Biofertilizer production



(仮訳)
10.17.生物肥料の生産
バイオ炭を堆肥や有機肥料と組み合わせて使うことで、土壌中の養分を保持しながら植物の成長を劇的に向上させることができる。また、バイオ炭は土壌のpH、保水力、陽イオン交換容量も向上させる[15、148]。RHAを使用する主な利点は、農業廃棄汚染物質を使用することにあり、生分解性有機物を含んでいるため、使用後に土壌改良剤として再利用が可能である。RHを低温(約500℃)で燃焼させると、溶解性の高い非晶質ケイ酸を含む有用な肥料が生成される。
近年、日本の農研機構と高田エンジニアリングが共同で、高溶解性ケイ酸を含む肥料をRHAから製造する技術を開発した[149]。この新技術は、これらの灰の有効活用に貢献するものである。水田に灰肥料を与えることで、土壤中のケイ酸濃度を高め、米の収穫量が増加する。

(2)甲2には次の記載がある。下線は当審が付した。
「【請求項3】
汚泥燃焼炉を用いた汚泥の肥料化方法であって、汚泥に木材チップを混入して燃焼させることにより肥料を製造することを特徴とする汚泥の肥料化方法。
・・・
【0021】
さらに、汚泥に木材チップを混入して燃焼させることにより製造される燃焼灰は、肥料として用いることができる。例えば、汚泥の乾燥固形分と木材チップとの質量比が1:1〜1:3.4となるように汚泥と木材チップとを混合して燃焼させることにより、P2O5を5〜28%、カリウムを1〜5%含む肥料を成形することができる。下水汚泥1kgを燃焼するのに必要な木材チップを0.3kgとすれば、これらを燃焼すると、それぞれ下水汚泥の燃焼灰は0.04kg、木材チップの燃焼灰は0.009kg程度得られる。一般的な下水汚泥の燃焼灰の成分は、例えば、P2O5:28%、K:1.5%、CaO:10.5%、SiO2:32%、Mg:4%、Al2O3:19%、Fe2O3:3%程度であり、木材チップの燃焼灰中のカリウム(K)の成分は、5%程度であるから、下水汚泥に木材チップを混入して燃焼させて得られる燃焼灰は、P2O5:23%、K(カリウム):2.1%含むものとなり、良質な肥料となる。
・・・
【0025】
汚泥燃焼炉20は、ガスの上方への移動を許容する板状部材21Aによって下方が仕切られてガス供給部21となっている。このガス供給部21は、外部から供給された高温のガスを汚泥燃焼炉20の上部の流動層1へ向かって噴出することができるようになっている。かかる流動層1は、砂から形成されるものであり、ガス供給部21から供給されるガスで流動するようになっている。なお、流動層1の上部は、空気と微量の未燃ガスを混合して完全燃焼させるフリーボード部となっている。
・・・
【0028】
ホッパ12から供給される汚泥及びホッパ13から供給される木材チップは、コンベア11により汚泥燃焼炉20へと搬送される。そして、汚泥燃焼炉20を所定の流動速度で運転することで、汚泥及び木材チップは流動層1の砂の中に分散されて、燃焼させられる。
・・・
【0032】
汚泥を燃焼させて得た燃焼灰を取り出したところ、P2O5:14%、K:2.5%、CaO:20.5%、SiO2:33.5%、Al2O3:19.0%、Fe2O3:7.5%、Mg:3%であった。これより、燃焼灰は良質の肥料となることがわかった。」

(3)甲3には次の記載がある。仮訳及び下線は当審が付した。
ア 第71頁 ABSTRACT



(仮訳)
現在、再生可能なエネルギー源として森林バイオマスの利用が進んでいる。しかしこの利用法には、大量のフライアッシュが発生するという欠点がある。生成されるフライアッシュの性質は、バイオマスの供給源と燃焼条件によって異なり、その性質によって最終的な用途(セメント、栄養土など)が決まる。また重金属を含まないフライアッシュは、活性炭、ゼオライト、ビーライトセメントを得る手段として非常に有用である。本研究では、スペイン北部のパルプ工場で森林バイオマス(ユーカリノキ樹皮(Eucalyptus globulus bark))を燃焼させたときのフライアッシュを調査した。火格子炉および流動床の2種類の燃焼システムによって灰を生成した。原料フライアッシュとそれらに対応する様々な粒径の篩画分を精査した結果、以下の結論が得られた。(i)森林バイオマスの流動床燃焼は、火格子炉燃焼よりも効率的である。(ii)未燃炭素は、特に火格子炉燃焼のフライアッシュにおいて、粒径の大きい画分に集中する傾向がある。(iii)高粒度の画分は、活性炭の前駆体となり得る良好な組織特性を示す。(iv)最も低い粒度画分には、肥料として、あるいはゼオライトやビーライトセメントの原料として使用できる鉱物が最も多く含まれる。(v)流動床燃焼で生成される中間粒度の画分は、燃焼床で生じるSiO2を多く含むことから、燃焼床の構成に再度使用しうる。

イ 第72頁 2. Materials and methods


・・・」
(仮訳)
2.材料と方法
この研究では、750℃付近で運転する火格子炉の静電気集塵装置からフライアッシュを採取し、試料Aと称した。また、550℃付近で運転する流動床燃焼装置に付属する静電気集塵装置から、第二の試料を採取した(試料B)。これら炉の特性を表1に示す。流動床燃焼装置の炉床は、主にシリカ(砂)で構成され、その粒径は、約400〜800μmである。試料(A及びB)のフライアッシュ(両燃焼方式の静電気集塵機から各8Okg)は、1ヶ月間、毎週20kgずつ採取した。全試料は、乾燥後、実験室規模で容易に管理できるように2kgの小口試料に分割した。未燃炭素を濃縮するため、500μm超、500〜212μm、212μm未満の粒径に、試料を乾式で篩分けした。石炭および配合炭の燃焼から生じるフライアッシュの場合、フライアッシュの成分を濃縮するために湿式篩分けが通常推奨されているが、湿式篩分けでは鉱物の一部が溶解して、材料の元の無機組成が変化する可能性があるため、本件では乾式を採用した。各画分は、まず原料を示し続いて画分の大きさを下付き文字で示すものとして、ラベル付けした。例えば、試料Aからの500μmを超える画分をA5と称した。
生試料と篩分け画分を岩石学的および化学的に特性評価し、未燃炭素の量と種類、および粒子径に依存したフライアッシュ中のそれらの濃度を決定した。

ウ 第73頁 Fig.1.



(仮訳)
図1.a)森林バイオマス(ユーカリノキ樹皮)、b)火格子炉燃焼で得られたフライアッシュ、c)流動床燃焼で得られたフライアッシュの無機分画の組成を、蛍光X線及び原子吸光分析で測定した。一部のデータは[18]から引用した。

エ 第74頁 3.2.2. Inorganic composition of fly ashes




(仮訳)
3.2.2 フライアッシュの無機組成
両燃焼炉の原料フライアッシュとその篩画分に対応する高温灰(HTA)の化学組成を、酸化物として図1のb、cに示す。XRD分析により同定したフライアッシュ中の結晶性鉱物種を、表4に示す。原料試料Aでは、CaOとSiO2が主な酸化物である[18]。Caが存在するのは、森林バイオマスの主要元素であることが理由である[21]。篩分けしたフライアッシュ中のCaとSiの濃度は、粒子径によって異なる。篩画分の場合、CaOは最も細かい篩画分(A2)に集中し、SiO2は中程度の粒径の篩画分(A5-2)に存在する。他の酸化物は少量〜微量で存在する。XRDで確認されるように、Caは主に方解石として存在する(表4)。Siは、様々な組成のガラス質、石英、ケイ酸塩として存在する(表4)。その他、酸化鉄や硫酸カルシウムなどの鉱物も確認された。
Bのフライアッシュおよびその画分の場合、最も重要な元素はSi(表4)であり、その多くは、流動燃焼炉の炉床の一部を形成し、フライアッシュと一緒に引きずられるSiO2に由来する[22]。これが、2つの燃焼炉からのフライアッシュの無機組成の主な違いである。CaOは、このフライアッシュの無機質画分の組成において次に重要な元素であり、上の場合と同様に、最も細かい画分(b2)に集中している。どちらの種類のフライアッシュにも、Mgは少量含まれているが、非結晶のためXRDで検出できないか(図1のb、cおよび表4)、少なくとも他の元素よりも検出しにくいことに注意する必要がある[23]。以上のことから、ユーカリノキ樹皮のフライアッシュの無機質画分には、他のタイプの森林バイオマスの燃焼灰と同様に、アルカリ土類元素が多く含まれていることがわかる[19]

オ 第75頁 Table 4



(仮訳)
表4
フライアッシュサンプルの鉱物学的分析(XRD分析)

カ 第76〜77頁 4. Conclusions


・・・


(仮訳)
4.結論
・・・
鉱物(灰分)が最も多く含まれているのは、最も細かい篩分け画分(A2、B2、A5-2、B5-2試料)である。これらの画分は、肥料として或いはゼオライトやビーライトセメントを得る原料として利用できる可能性がある。実際に、フライアッシュのこれらの画分の無機物について行ったこれまでの試験結果からも、フライアッシュがセメント産業で有効に利用できることが示唆されている。更に、流動床燃焼から得られるB5-2篩画分は、燃焼床からのSiO2に富んでおり、バイオマスの流動床燃焼に再利用できる可能性がある。

(4)甲4には次の記載がある。
第46頁第3〜10行、図−1


・・・



(5)甲5には次の記載がある。仮訳及び下線は当審が付した。
ア 第446頁右欄第19行〜第447頁左欄第6行





イ 第447頁左欄図10




(6)甲6には次の記載がある。仮訳及び下線は当審が付した。
ア 第2663頁 要約



(仮訳)
バイオマス燃焼時の流動床凝塊形成に関するこれまでの文献の多くは、床材に石英を用いている。しかし、実規模施設では石英以外に非石英系鉱物(カリ長石、斜長石など)を多く含む天然砂が使用されることが多い。そこで本研究では、天然砂に含まれる非石英系鉱物がバイオマス燃料の流動床燃焼時の凝塊形成挙動に及ぼす影響を解明することを目的とした。モデル燃料として、これまでに凝塊形成メカニズムが解明されている代表的な3種類の燃料である、カルシウムに富む樹皮と、カリウムに富むオリーブ粕と、シリカとカリウムに富む麦藁とを選択した。長石鉱として、多くの市販床材に含まれる、カリ長石と斜長石である曹灰長石との2種類を使用した。さらに、実規模施設で使用されている別のタイプの床材であることから、橄攬石を床材として使用した。石英を対照床材として使用した。天然砂に含まれる非石英系鉱物が初期流動化温度に及ぼす影響を、慎重に制御したベンチスケール流動床凝塊形成実験により評価した。また、床粒子のコーティング層およびアタック層(attack layer)と凝塊粒子間のネック部との形成及び化学組成を調べるため、床材試料と凝塊体とを走査型電子顕微鏡/エネルギー分散分光法(SEM/EDS)により分析した。樹皮とオリーブ粕を燃焼させた場合、鉱物の違いに応じて凝塊形成特性に有意な差が認められた。カリ長石は、樹皮およびオリーブ粕の燃焼において、初期脱流温度を低下させることが示された。
一方、斜長石と橄攬石は、オリーブ粕の燃焼では石英に比べて初期脱流温度を上昇させるが、樹皮の燃焼では石英と有意差はなかった。麦藁の燃焼では、すべての床材が実験開始直後に凝塊形成した。樹皮とオリーブ粕の試料では、すべての床材にアタック層が見られ、内側アタック層と凝塊ネックの組成は、燃料と床材との組み合わせによって有意に異なっていた。しかし、麦藁については、連続的なアタック層は見られず、このバイオマスの凝塊形成特性には床材組成が影響しないと結論付けることができた。この結果を元に、異なる鉱物の層形成に関与する可能性のあるメカニズムを示唆することができた。

イ 第2664頁左欄第21〜26行



(仮訳)
しかし、バイオマス燃焼時の床凝塊形成のメカニズムを解明するために行われた先行研究のほとんどは、床材として石英を用いている。一方、実規模施設では、カリ長石や斜長石など他の鉱物が著しい分画を含む天然砂混合物を使用することが多い(表1)。

ウ 第2664頁 Table 1.



(仮訳)


エ 第2664頁 Table 2.



(仮訳)



(7)甲7には「X線回折法による珪砂中の石英および長石の定量」について、次の記載がある。
ア 第495頁左欄第10行〜同頁右欄3行、表6


・・・




イ 第496頁右欄第14〜24行




ウ 第498頁左欄表9




(8)甲8には次の記載がある。
「【請求項1】
流動層炉の使用済み炉内砂と薬剤の水溶液とを接触させることにより、該使用済み炉内砂の付着物を溶出させる第1溶出工程と、
前記第1溶出工程で得られた処理液を濾過し、固液分離する第1濾過工程と、
を含むことを特徴とする、流動層炉の使用済み炉内砂再生方法。
・・・
【0028】
未使用の炉内砂には、一例として、SiO2が92重量%とその他の少量のAl2O3、CaO、Na2O等が含まれている。また、使用済み炉内砂には、一例として、SiO2が43重量%、P2O5が22重量%、Al2O3が13重量%、CaOが10重量%、Fe2O3が10重量%、MgOが3.2重量%含まれている。」

5 乙号証に記載された事項
(1)乙1には、次の記載がある。
ア 第62頁左欄第9〜16行
「一般的な非晶質シリカの製造法では珪砂を原料として用いており、1200℃でのアルカリ融解の工程が必要となる。籾殻の場合、シリカは非晶質として含有されているので、そのまま抽出するかもしくはアルカリ融解でも100℃以下で行うことができる。他の籾殻由来のシリカの研究例では、一旦籾殻を燃焼させた籾殻灰を用いたシリカの抽出を行っている例1)2)3)が多い。」

イ 第63頁左欄第2〜6行
「未燃焼の籾殻は平坦な表面が見られた。そこで市販のミキサーを用いて籾殻を微粉砕し、炭酸ナトリウムとの反応性の向上を計った。その結果、籾殻シリカの収率を3倍近く向上させることができた(図2参照)。





(2)乙2の「成果の内容・特徴」には、次の記載がある。
「1.高温(900℃)で灰化した籾殻灰のケイ酸は溶解性が極めて低いが、灰化温度が800℃以下ではかなり溶解し、400〜500℃で最も溶解性が高い(図1)。
・・・



(3)乙3の「JFE循環流動層ボイラの画期的特徴」には、次の記載がある。




(4)乙4には、次の記載がある。




(5)乙5の「循環流動層ボイラー(CFB)」には、次の記載がある。
「循環流動層(CFB:Circulating Fluidized Bed)ボイラーは、流動床(BFB:Bubbling Fluidized Bed)ボイラーよりも火炉(コンバスタ)内のガス速度(空塔速度)を上げ、粒子・ガスの混合を活発化し、燃焼反応の向上をはかったボイラーです。
・・・
低い環境負荷
火炉内での燃焼温度は、一般的なボイラーが1,400〜1,500℃であるのに対し、CFBでは800〜900℃と低いため、サーマルNOx(燃焼温度依存の発生NOx)の生成量を抑制できます。」

6 取消理由1(新規性)について
(1)甲1に記載された発明
ア 上記4(1)ア「第1468頁 ABSTRACT」には、「農業廃棄物である籾殻(RH)」「を燃焼すると、籾殻灰(RHA)が生成され」、「RHAの主成分(83〜90%)は、非晶質シリカである」ことが記載されている。
イ 上記4(1)イ「第1471〜1472頁 3.2. Rice husk and rice husk ash」には、「RHAの工業生産には、通常、流動床燃焼」の「ボイラー」「が採用されている」ことが記載されている。
ウ 上記4(1)ウ「第1482頁 10.17. Biofertilizer production」には、「RHを低温(約500℃)で燃焼させると、溶解性の高い非晶質ケイ酸を含む有用な肥料が生成され」、「水田に灰肥料を与えることで、土壤中のケイ酸濃度を高め、米の収穫量が増加する」ことが記載されているから、甲1には、籾殻灰は、非晶質ケイ酸を含むイネ用肥料として用いることができることが認められる。
してみると、甲1には、次の発明(以下、「甲1−1発明」及び「甲1−2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1−1発明)
「流動床燃焼ボイラーにより、籾殻を燃焼して生成された籾殻灰であって、非晶質ケイ酸を含む籾殻灰からなるイネ用肥料」
(甲1−2発明)
「流動床燃焼ボイラーにより、籾殻を燃焼して生成された籾殻灰であって、非晶質ケイ酸を含む籾殻灰の、イネ用肥料としての使用」

(2)対比・判断
ア 本件訂正発明1
本件訂正発明1と甲1−1発明とを対比すると、甲1−1発明の「籾殻」は、本件訂正発明1の「バイオマス燃料」に、「籾殻を燃焼して生成された籾殻灰」は「バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰」に、「イネ用肥料」は「イネ科植物用肥料」に、それぞれ相当する。
甲1−1発明の「流動床燃焼ボイラー」と本件訂正発明1の「長石を含む砂を流動媒体として用いた循環流動層ボイラ」とは、ともに「流動媒体ボイラ」である点で共通する。
甲1−1発明の「非晶質ケイ酸を含む籾殻灰」と本件訂正発明1の「可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」とは、ともに「珪素化合物を含む燃焼灰」である点で共通する。
してみると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>
「流動媒体ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰であって、珪素化合物を含む燃焼灰を含むイネ科植物用肥料」

<相違点1−1>
流動媒体ボイラが、本件発明1は「長石を含む砂を流動媒体として用いた循環流動層ボイラ」であるのに対し、甲1−1発明は「流動床燃焼ボイラー」であって、流動媒体の種類や形式が不明である点。

<相違点1−2>
珪素化合物を含む燃焼灰が、本件発明1は「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」であるのに対し、甲1−1発明は「籾殻を燃焼して生成された籾殻灰であって、非晶質ケイ酸を含む籾殻灰」である点。

まず、相違点1−1について検討する。流動媒体の種類について、甲7の第495頁左欄の表6(上記4(7)ア参照。)には、天然の珪砂には長石成分が含まれていることが記載されているものの、甲6の第2663頁の要約(上記4(6)ア参照。)に、「バイオマス燃焼時の流動床凝塊形成に関するこれまでの文献の多くは、床材に石英を用いている。しかし、実規模施設では石英以外に非石英系鉱物(カリ長石、斜長石など)を多く含む天然砂が使用されることが多い。」と記載されていることも考慮すると、甲1における床材が長石を含まない可能性も否定できないから、甲1−1発明の流動媒体が、長石を含む砂であるとは限らない。
また、流動媒体ボイラの種類について、流動床と流動層を区別しないこともあるが、バブリング方式の流動床ボイラと循環方式の流動層ボイラを区別することもあることから、甲1−1発明の「流動床燃焼ボイラー」が「循環流動層ボイラ」であるとは限らない。
このことは、特許権者が令和4年9月8日付けの意見書とともに提出した乙3〜5(上記5(3)〜(5)参照。)に、各社の循環流動層ボイラの概要が記載され、特に、甲5には、循環流動層ボイラーは、流動床ボイラーよりも火炉内のガス速度を上げ、粒子・ガスの混合を活発化し、燃焼反応の向上をはかったボイラーであることが記載され、「循環流動層ボイラー」と「流動床ボイラー」を区別していることからも裏付けられる。
そうすると、相違点1−1は実質的な相違点である。
次に、相違点1−2について検討する。甲1−1発明の「籾殻を燃焼して生成された籾殻灰であって、非晶質ケイ酸を含む籾殻灰」において、籾殻灰中の「非晶質ケイ酸」は、もともと燃焼前の籾殻に含まれていたものが、燃焼により非晶質の状態を保ったまま籾殻灰に含まれた状態になったものである。
これに対し、本件補正発明1の「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」において、燃焼灰中の「可溶性の珪素化合物」は、「長石を含む砂由来」の「珪素成分」が、燃焼により「可溶性の珪素化合物」として新たに形成されたものと解される。
そうすると、甲1−1発明の「非晶質ケイ酸」と本件訂正発明1の「可溶性の珪素化合物」とは同じものとはいえないから、それらを含む甲1−1発明の「籾殻を燃焼して生成された籾殻灰であって、非晶質ケイ酸を含む籾殻灰」と、本件補正発明1の「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」とは同じものではないし、実質的に同じものともいえないから、相違点1−2も実質的な相違点である。
よって、本件訂正発明1と甲1−1発明とは、相違点1−1及び相違点1−2において相違するものであるから、本件訂正発明1は甲1−1発明ではない。

イ 本件訂正発明4
本件訂正発明4は、本件訂正発明1の特定事項を全て含むものであるから、上記アのとおり、本件訂正発明4は甲1−1発明ではない。

ウ 本件訂正発明5
本件訂正発明5と甲1−2発明を対比すると、上記アで検討したように、次の点で一致し、上記アの相違点1−1及び相違点1−2で相違する。

<一致点>
「流動媒体ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰であって、珪素化合物を含む燃焼灰の、水稲用肥料としての使用」

しかしながら、上記アのとおり、上記相違点1−1及び相違点1−2は実質的な相違点であるから、本件訂正発明5は甲1−2発明と同一ではない。

7 取消理由2(進歩性)について
(1)甲1を主たる引用文献とした場合
ア 甲1に記載された発明
甲1には、上記「6(1)」に示したとおりの甲1−1発明及び甲1−2発明が記載されている。

イ 対比・判断
(ア)本件訂正発明1
本件訂正発明1と甲1−1発明を対比すると、上記「6(2)」に示したとおり、一致点において一致し、相違点1−1及び相違点1−2で相違する。

事案に鑑み、相違点1−2について検討する。本件補正発明1の「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」において、燃焼灰中の「可溶性の珪素化合物」は、「長石を含む砂由来」の「珪素成分」が、燃焼により「可溶性の珪素化合物」として新たに形成されたものと解される。
この「長石を含む砂由来」の点について、本件特許の明細書の【0018】には「なお、流動媒体に含まれる長石は、長石同士、長石と長石でない砂組成物、または長石とバイオマス燃料と激しくぶつかり合い、かつ、熱履歴を受け、長石は少しずつ微細化・非晶質化していき、焼却灰として放出されていく。あわせて長石以外の砂部分たとえば珪石の微細物も燃焼灰に含まれることとなる。」と記載され、同【0034】には「・・・一般的に結晶質を非晶質化すると融点が低下することから、バイオマスの燃焼時の950℃前後での長石同士や長石と木質材料との接触および木質材料由来のCa、Mg等のアルカリ土類との接触により、長石は非晶質化した可能性が高い。・・・」と記載されている。
すなわち、本件補正発明1においては、バイオマス中の珪素成分ではなく、長石に含まれる珪素成分を、950℃前後の温度で、循環流動層ボイラのような長石とバイオマス燃料とが激しくぶつかり合う環境下に置くことで、非晶質で可溶性の珪素化合物を形成するものとされている。
これに対し、甲1−1発明の「籾殻を燃焼して生成された籾殻灰であって、非晶質ケイ酸を含む籾殻灰」において、籾殻灰中の「非晶質ケイ酸」は、もともと燃焼前の籾殻に含まれていたものが、燃焼により非晶質の状態を保ったまま籾殻灰に含まれた状態になったものである。
この「籾殻に含まれていた」「非晶質ケイ酸」の点について、甲1の第1482頁(上記4(1)ウ参照。)には「・・・RH(当審注:籾殻)を低温(約500℃)で燃焼させると、溶解性の高い非晶質ケイ酸を含む有用な肥料が生成される。・・・」と記載されており、甲1−1発明においては、約500℃で籾殻を燃焼させることにより、籾殻中の非晶質ケイ酸が燃焼灰に含まれるようになったものである。
このことは、特許権者が令和4年9月8日付けの意見書とともに提出した乙1の図2(上記5(1)イ参照。)に、籾殻シリカは400℃焼成で生成したことが記載され、同乙2(上記5(2)参照。)に、籾殻灰の珪酸は、籾殻を400〜500℃の燃焼温度で生成した場合に最も溶解性が高いことが記載されていることからも裏付けられる。
そうすると、甲1−1発明の「籾殻を燃焼して生成された籾殻灰であって、非晶質ケイ酸を含む籾殻灰」と本件訂正発明1の「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」とが同じ物であるということはできず、例えば、甲4及び甲5(上記4(4)及び(5)参照。)に流動床炉が公知であることが記載され、甲6の第2663頁の要約(上記4(6)ア参照。)に、「バイオマス燃焼時の流動床凝塊形成に関するこれまでの文献の多くは、床材に石英を用いている。しかし、実規模施設では石英以外に非石英系鉱物(カリ長石、斜長石など)を多く含む天然砂が使用されることが多い。」と記載され、甲7の第495頁左欄の表6(上記4(7)ア参照。)に、天然の珪砂には長石成分が含まれていることが記載され、甲8(上記4(8)参照。)に、流動層炉の未使用炉内砂の成分組成が記載されていたとしても、本件訂正発明1のような「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」は公知でないから、甲1−1発明の「籾殻を燃焼して生成された籾殻灰であって、非晶質ケイ酸を含む籾殻灰」を、本件訂正発明1のような「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」に変えようという動機付けはないし、変えることが容易ともいえない。
よって、本件訂正発明1は、相違点1について検討するまでもなく、甲1−1発明に甲4〜甲8に記載された技術のいずれを組み合わせても、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(イ)本件訂正発明2〜4
本件訂正発明2〜4は、本件訂正発明1の特定事項を全て含むものであるから、上記(ア)のとおり、本件訂正発明2〜4は、甲1−1発明に甲4〜甲8に記載された技術のいずれを組み合わせても、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(ウ)本件訂正発明5
本件訂正発明5と甲1−2発明を対比すると、上記6(2)ウの一致点で一致し、上記6(2)アの相違点1−1及び相違点1−2で相違する。
しかしながら、上記(ア)のとおり、上記相違点1−2は、甲4〜8に記載された技術を考慮しても、変更する動機付けがないし、変更することが容易ともいえない。
よって、本件訂正発明5は、甲1−2発明に甲4〜甲8に記載された技術のいずれを組み合わせても、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(2)甲2を主たる引用文献とした場合
ア 甲2に記載された発明
(ア)上記4(2)の【請求項3】には、「汚泥燃焼炉を用いた汚泥の肥料化方法であって、汚泥に木材チップを混入して燃焼させることにより肥料を製造することを特徴とする汚泥の肥料化方法。」が記載されている。
(イ)上記4(2)の【0025】には、「汚泥燃焼炉20の上部の流動層1」は「砂から形成される」ことが記載されている。
(ウ)上記4(2)の【0032】には、「汚泥を燃焼させて得た燃焼灰」は「SiO2:33.5%、Al2O3:19.0%」である「良質の肥料となること」が記載されている。
してみると、甲2には、次の発明(以下、「甲2−1発明」及び「甲2−2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2−1発明)
「流動層が砂から形成される汚泥燃焼炉を用いて、汚泥に木材チップを混入して燃焼させて得た燃焼灰であって、P2O5:14%、K:2.5%、CaO:20.5%、SiO2:33.5%、Al2O3:19.0%、Fe2O3:7.5%、Mg:3%である燃焼灰からなる肥料」
(甲2−2発明)
「流動層が砂から形成される汚泥燃焼炉を用いて、汚泥に木材チップを混入して燃焼させて得た燃焼灰であって、P2O5:14%、K:2.5%、CaO:20.5%、SiO2:33.5%、Al2O3:19.0%、Fe2O3:7.5%、Mg:3%である燃焼灰の、肥料としての使用」

イ 対比・判断
(ア)本件訂正発明1
本件訂正発明1と甲2−1発明とを対比すると、甲2−1発明の「木材チップ」は、本件訂正発明1の「バイオマス燃料」に、「汚泥に木材チップを混入して燃焼させて得た燃焼灰」は「バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰」に、それぞれ相当する。
甲2−1発明の「流動層が砂から形成される汚泥燃焼炉」と本件訂正発明1の「長石を含む砂を流動媒体として用いた循環流動層ボイラ」とは、ともに「砂を流動媒体として用いた流動層ボイラ」である点で共通する。
甲2−1発明の「P2O5:14%、K:2.5%、CaO:20.5%、SiO2:33.5%、Al2O3:19.0%、Fe2O3:7.5%、Mg:3%である燃焼灰」と本件訂正発明1の「可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」とは、ともに「珪素化合物を含む燃焼灰」である点で共通する。
甲2−1発明の「肥料」と本件訂正発明1の「イネ科植物用肥料」とは、ともに「肥料」である点で共通する。
してみると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>
「砂を流動媒体として用いた流動層ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰であって、珪素化合物を含む燃焼灰を含む肥料。」

<相違点2−1>
流動層ボイラが、本件発明1は「長石を含む砂を流動媒体として用いた循環流動層ボイラ」であるのに対し、甲2−1発明は「流動層が砂から形成される汚泥燃焼炉」であって、砂が長石を含むか不明であり、流動層ボイラが循環式かどうかも不明である点。

<相違点2−2>
珪素化合物を含む燃焼灰が、本件発明1は「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」であるのに対し、甲2−1発明は「SiO2:33.5%」「である燃焼灰」であるが、珪素成分が長石を含む砂由来かどうか明らかでなく、また、珪素成分が可溶性であるかどうかも明らかでない点。

<相違点2−3>
肥料が、本件発明1は「ネ科植物用肥料」であるのに対し、甲2−1発明の肥料は対象植物が特定されていない点。

事案に鑑み、相違点2−2について検討する。本件補正発明1の「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」において、燃焼灰中の「可溶性の珪素化合物」は、「長石を含む砂由来」の「珪素成分」が、燃焼により「可溶性の珪素化合物」として新たに形成されたものと解される。
この「長石を含む砂由来」の点について、本件特許の明細書の【0018】には「なお、流動媒体に含まれる長石は、長石同士、長石と長石でない砂組成物、または長石とバイオマス燃料と激しくぶつかり合い、かつ、熱履歴を受け、長石は少しずつ微細化・非晶質化していき、焼却灰として放出されていく。あわせて長石以外の砂部分たとえば珪石の微細物も燃焼灰に含まれることとなる。」と記載され、同【0034】には「・・・一般的に結晶質を非晶質化すると融点が低下することから、バイオマスの燃焼時の950℃前後での長石同士や長石と木質材料との接触および木質材料由来のCa、Mg等のアルカリ土類との接触により、長石は非晶質化した可能性が高い。・・・」と記載されている。
すなわち、本件補正発明1においては、バイオマス中の珪素成分ではなく、長石に含まれる珪素成分を、950℃前後の温度で、循環流動層ボイラのような長石とバイオマス燃料とが激しくぶつかり合う環境下に置くことで、非晶質で可溶性の珪素化合物を形成するものとされている。
これに対し、甲2−1発明の「SiO2:33.5%」「である燃焼灰」は、珪素成分が長石を含む砂由来かどうか明らかでなく、また、珪素成分が可溶性であるかどうかも明らかでない。この珪素成分の由来について、甲2の【0021】(上記4(2)参照。)には「汚泥に木材チップを混入して燃焼させることにより製造される燃焼灰は、肥料として用いることができる。・・・一般的な下水汚泥の燃焼灰の成分は、例えば、P2O5:28%、K:1.5%、CaO:10.5%、SiO2:32%、Mg:4%、Al2O3:19%、Fe2O3:3%程度であり、木材チップの燃焼灰中のカリウム(K)の成分は、5%程度であるから、下水汚泥に木材チップを混入して燃焼させて得られる燃焼灰は、P2O5:23%、K(カリウム):2.1%含むものとなり、良質な肥料となる。」と記載されていることから、甲2−1発明において、燃焼灰中のP2O5(リン酸)成分やSiO2(珪酸)成分は下水汚泥由来で、K(カリウム)成分は木材チップ由来であることがわかる。
そうすると、甲2−1発明の「SiO2:33.5%」「である燃焼灰」と本件訂正発明1の「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」とが同じ別物であるということはできず、例えば、甲4及び甲5(上記4(4)及び(5)参照。)に流動床炉が公知であることが記載され、甲6の第2663頁の要約(上記4(6)ア参照。)に、「バイオマス燃焼時の流動床凝塊形成に関するこれまでの文献の多くは、床材に石英を用いている。しかし、実規模施設では石英以外に非石英系鉱物(カリ長石、斜長石など)を多く含む天然砂が使用されることが多い。」と記載され、甲7の第495頁左欄の表6(上記4(7)ア参照。)に、天然の珪砂には長石成分が含まれていることが記載され、甲8(上記4(8)参照。)に、流動層炉の未使用炉内砂の成分組成が記載されていたとしても、本件訂正発明1のような「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」は公知でないから、甲2−1発明の「SiO2:33.5%」「である燃焼灰」を、本件訂正発明1のような「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」に変えようという動機付けはないし、変えることが容易ともいえない。
よって、本件訂正発明1は、相違点1及び3について検討するまでもなく、甲2−1発明に甲4〜甲8に記載された技術のいずれを組み合わせても、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(イ)本件訂正発明2〜4
本件訂正発明2〜4は、本件訂正発明1の特定事項を全て含むものであるから、上記(ア)のとおり、本件訂正発明2〜4は、甲2−1発明に甲4〜甲8に記載された技術のいずれを組み合わせても、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(ウ)本件訂正発明5
本件訂正発明5と甲2−2発明を対比すると、次の点で一致し、上記(ア)の相違点2−1〜相違点2−3で相違する。

<一致点>
「砂を流動媒体として用いた流動層ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰であって、珪素化合物を含む燃焼灰の、肥料としての使用」

しかしながら、上記(ア)のとおり、上記相違点2−2は、甲4〜8に記載された技術を考慮しても、変更する動機付けがないし、変更することが容易ともいえない。
よって、本件訂正発明5は、甲2−2発明に甲4〜甲8に記載された技術のいずれを組み合わせても、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(3)甲3を主たる引用文献とした場合
ア 甲3に記載された発明
(ア)上記4(3)ア「第71頁 ABSTRACT」には、「フライアッシュ」は「森林バイオマス(ユーカリノキ樹皮(Eucalyptus globulus bark))を燃焼させた」ものであることが記載されている。
(イ)上記4(3)イ「第72頁 2. Materials and methods」には、「流動床燃焼装置に付属する静電気集塵装置から、第二の試料を採取した(試料B)」こと、「試料(A及びB)のフライアッシュ」であること、「全試料は」「500μm超、500〜212μm、212μm未満の粒径に」「篩分けし」、「各画分は、まず原料を示し続いて画分の大きさを下付き文字で示すものとして、ラベル付けした」ことが記載されているから、例えば、「試料B5-2」は、流動床燃焼装置の集塵装置から採取した粒径500〜212μmのフライアッシュであるといえる。
(ウ)同「第72頁 2. Materials and methods」には、「流動床燃焼装置の炉床は、主にシリカ(砂)で構成され」ることが記載されている。
(エ)上記4(3)ウ「第73頁 Fig.1.」の図「c」には、流動床燃焼で得られたユーカリ由来のフライアッシュがK2O、Na2O、CaOに加え、SiO2や、Al2O3成分を含むことが記載されている。
(オ)上記4(3)カ第76〜77頁 4. Conclusions」には、「鉱物(灰分)が最も多く含まれているのは、最も細かい篩分け画分(A2、B2、A5-2、B5-2試料)であ」り、「これらの画分は、肥料として」「利用できる可能性がある」ことが記載されている。
してみると、甲3には、次の発明(以下、「甲3−1発明」及び「甲3−2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲3−1発明)
「炉床が主にシリカ(砂)で構成される流動床燃焼装置から採取したフライアッシュであって、森林バイオマスを燃焼させたフライアッシュであり、K2O、Na2O、CaOに加え、SiO2やAl2O3成分を含むフライアッシュからなる肥料」
(甲3−2発明)
「炉床が主にシリカ(砂)で構成される流動床燃焼装置から採取したフライアッシュであって、森林バイオマスを燃焼させたフライアッシュであって、K2O、Na2O、CaOに加え、SiO2やAl2O3成分をむフライアッシュの肥料としての使用」

イ 対比・判断
(ア)本件訂正発明1
本件訂正発明1と甲3−1発明とを対比すると、甲3−1発明の「森林バイオマス」は、本件訂正発明1の「バイオマス燃料」に、「森林バイオマスを燃焼させたフライアッシュ」は「バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰」に、それぞれ相当する。
甲3−1発明の「炉床が主にシリカ(砂)で構成される流動床燃焼装置」と本件訂正発明1の「長石を含む砂を流動媒体として用いた循環流動層ボイラ」とは、ともに「砂を流動媒体として用いた流動媒体ボイラ」である点で共通する。
甲3−1発明の「K2O、Na2O、CaOに加え、SiO2やAl2O3成分を含むフライアッシュ」と本件訂正発明1の「可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」とは、ともに「珪素化合物を含む燃焼灰」である点で共通する。
甲3−1発明の「肥料」と本件訂正発明1の「イネ科植物用肥料」とは、ともに「肥料」である点で共通する。
してみると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>
「砂を流動媒体として用いた流動媒体ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰であって、珪素化合物を含む燃焼灰を含む肥料」

<相違点3−1>
流動媒体ボイラが、本件発明1は「長石を含む砂を流動媒体として用いた循環流動層ボイラ」であるのに対し、甲3−1発明は「炉床が主にシリカ(砂)で構成される流動床燃焼装置」であって、シリカ(砂)が長石を含むか不明であり、流動媒体ボイラが循環式かどうかも不明である点。

<相違点3−2>
珪素化合物を含む燃焼灰が、本件発明1は「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」であるのに対し、甲3−1発明は「SiO2」「を含むフライアッシュ」であるが、珪素成分が長石を含む砂由来かどうか明らかでなく、また、珪素成分が可溶性であるかどうかも明らかでない点。

<相違点3−3>
肥料が、本件発明1は「イネ科植物用肥料」であるのに対し、甲3−1発明の肥料は対象植物が特定されていない点。

事案に鑑み、相違点3−2について検討する。本件補正発明1の「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」において、燃焼灰中の「可溶性の珪素化合物」は、「長石を含む砂由来」の「珪素成分」が、燃焼により「可溶性の珪素化合物」として新たに形成されたものと解される。
この「長石を含む砂由来」の点について、本件特許の明細書の【0018】には「なお、流動媒体に含まれる長石は、長石同士、長石と長石でない砂組成物、または長石とバイオマス燃料と激しくぶつかり合い、かつ、熱履歴を受け、長石は少しずつ微細化・非晶質化していき、焼却灰として放出されていく。あわせて長石以外の砂部分たとえば珪石の微細物も燃焼灰に含まれることとなる。」と記載され、同【0034】には「・・・一般的に結晶質を非晶質化すると融点が低下することから、バイオマスの燃焼時の950℃前後での長石同士や長石と木質材料との接触および木質材料由来のCa、Mg等のアルカリ土類との接触により、長石は非晶質化した可能性が高い。・・・」と記載されている。
すなわち、本件補正発明1においては、バイオマス中の珪素成分ではなく、長石に含まれる珪素成分を、950℃前後の温度で、循環流動層ボイラのような長石とバイオマス燃料とが激しくぶつかり合う環境下に置くことで、非晶質で可溶性の珪素化合物を形成するものとされている。
これに対し、甲3−1発明の「SiO2」「を含むフライアッシュ」は、珪素成分が長石を含む砂由来かどうか明らかでなく、また、珪素成分が可溶性であるかどうかも明らかでない。
そして、この珪素成分の由来について、甲3の第74頁 3.2.2. Inorganic composition of fly ashes(上記4(3)エ参照。)には「Bのフライアッシュおよびその画分の場合、最も重要な元素はSi(表4)であり、その多くは、流動燃焼炉の炉床の一部を形成し、フライアッシュと一緒に引きずられるSiO2に由来する[22]。・・・どちらの種類のフライアッシュにも、Mgは少量含まれているが、非結晶のためXRDで検出できないか(図1のb、cおよび表4)、少なくとも他の元素よりも検出しにくいことに注意する必要がある[23]。」と記載されているように、甲3−1発明の「SiO2」は、「流動燃焼炉の炉床の一部を形成」するようなものであって、表4のXRD検出結果で検出可能な結晶質のものであると考えられる。
そうすると、甲3−1発明の「SiO2」は、本件訂正発明1の「長石を含む砂由来」の「可溶性の珪素化合物」とは異なるものであり、例えば、甲4及び甲5(上記4(4)及び(5)参照。)に流動床炉が公知であることが記載され、甲6の第2663頁の要約(上記4(6)ア参照。)に、「バイオマス燃焼時の流動床凝塊形成に関するこれまでの文献の多くは、床材に石英を用いている。しかし、実規模施設では石英以外に非石英系鉱物(カリ長石、斜長石など)を多く含む天然砂が使用されることが多い。」と記載され、甲7の第495頁左欄の表6(上記4(7)ア参照。)に、天然の珪砂には長石成分が含まれていることが記載され、甲8(上記4(8)参照。)に、流動層炉の未使用炉内砂の成分組成が記載されていたとしても、本件訂正発明1のような「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」は公知でないから、甲3−1発明の「SiO2」「を含むフライアッシュ」を、本件訂正発明1のような「燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰」に変えようという動機付けはないし、変えることが容易ともいえない。
よって、本件訂正発明1は、相違点1及び3について検討するまでもなく、甲3−1発明に甲4〜甲8に記載された技術のいずれを組み合わせても、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(イ)本件訂正発明2〜4
本件訂正発明2〜4は、本件訂正発明1の特定事項を全て含むものであるから、上記(ア)のとおり、本件訂正発明2〜4は、甲3−1発明に甲4〜甲8に記載された技術のいずれを組み合わせても、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(ウ)本件訂正発明5
本件訂正発明5と甲3−2発明を対比すると、次の点で一致し、上記(ア)の相違点3−1〜相違点3−3で相違する。

<一致点>
「砂を流動媒体として用いた流動層ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰であって、珪素化合物を含む燃焼灰の、肥料としての使用」

しかしながら、上記(ア)のとおり、上記相違点3−2は、甲4〜8に記載された技術を考慮しても、変更する動機付けがないし、変更することが容易ともいえない。
よって、本件訂正発明5は、甲3−2発明に甲4〜甲8に記載された技術のいずれを組み合わせても、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

8 申立理由1(明確性)について
本件訂正発明1及び5の「長石を含む砂」は、砂が長石を含むものである点で明確であり、その砂が元砂なのか焼却後の砂なのかや、砂の長石の含有量がどの程度なのかによらず、「長石を含む砂」であることが明らかである。
また、本件訂正発明1及び5において、「長石を含む砂」における長石の含有量が具体的な数値として特定されていないとしても、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とはいえない。
したがって、本件訂正発明1及び5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合するものである。

9 申立理由2(サポート要件)について
(1)判断手法
特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる、「サポート要件」)に適合するか否かは、「特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもの」(知財高裁特別部、平成17年(行ケ)第10042号、平成17年11月11日判決言渡)とされている。

(2)本件訂正発明の課題
本件訂正発明の課題は、本件特許の明細書の段落【0005】に記載されたとおり、「砂とバイオマス燃料が接触する流動層ボイラの焼却灰を有価物に転換すること」であると認められる。

(3)本件訂正発明
本件訂正発明1、4及び5は、上記第3に記載したとおりである。

(4)判断
ア 本件訂正発明1、5について、本件特許の明細書の段落【0015】に「本願発明者らは、長石を含む砂を流動媒体として用いた流動層ボイラから排出される燃焼灰には、驚くべきことに、可溶性の珪素化合物が含まれていることを見出し、本発明に至った。」と記載され、同【0018】に「なお、流動媒体に含まれる長石は、長石同士、長石と長石でない砂組成物、または長石とバイオマス燃料と激しくぶつかり合い、かつ、熱履歴を受け、長石は少しずつ微細化・非晶質化していき、焼却灰として放出されていく。あわせて長石以外の砂部分たとえば珪石の微細物も燃焼灰に含まれることとなる。」と記載されている。さらに、同【0034】には「元砂である流動媒体をXRD回折測定したところ、元砂を粉砕により微細化すると長石の回折ピーク強度だけが低下することが確認でき、衝撃により元砂に含まれる長石は非晶質化し易いことが分かった。一般的に結晶質を非晶質化すると融点が低下することから、バイオマスの燃焼時の950℃前後での長石同士や長石と木質材料との接触および木質材料由来のCa、Mg等のアルカリ土類との接触により、長石は非晶質化した可能性が高い。非晶質化すると特にアルカリ性の水溶液に溶融しやすくなる。燃焼灰を蒸留水中に加えると溶液のpHは12前後に変化したことから、燃焼灰A、BからのSiO2の溶出源は非晶質化した長石と推定している。」と記載され、当該記載は、流動媒体が元砂の場合についての説明であるが、元砂でなかったとしても、流動媒体に長石が含まれていれば、同様のことが起こるものといえる。
また、同【0031】の【表8】及び【0032】の【表9】において、燃焼灰A及び燃焼灰Bには、元砂に含まれていなかった可溶性の珪素(SiO2)が形成されたことが示されており、同【0035】〜【0037】、【図3】〜【図6】において、このような燃焼灰の水稲用肥料としての使用が可能であることが裏付けられている。
そうすると、上記した発明の詳細な説明の記載から、長石を含む砂を流動媒体として使用したものとして、発明の詳細な説明に記載された発明は、本件訂正発明の課題を解決できるものと認識できるから、本件訂正発明1、5は、発明の詳細な説明に記載された発明である。

イ 本件訂正発明4について、本件特許の明細書の段落【0039】には「・・・特にイネ科植物、例えば、水稲種を含むイネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、キビ、アワ、ヒエ、または、トウモロコシなどは、多くの珪素を要求するので肥料として好適である。」と記載されており、本件訂正発明4の「イネ科植物用肥料」は、「可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰を含む」ものであるから、「多くの珪素を要求する」「イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、キビ、アワ、ヒエ、または、トウモロコシなど」の肥料として好適であって、本件訂正発明4は、本件訂正発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであることが推認できる。
そうすると、本件訂正発明4は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

ウ したがって、本件訂正発明1、4及び5は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものである。

第5 申立人の主張について
ア 取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
本件訂正発明1〜5は、上記第2のとおり訂正が認められた上記第3に記載したとおりのものである。そして、申立人は、「燃焼灰中の珪素成分」が「長石を含む砂由来」のものである証拠を示していないから、上記第4の6及び7で検討したとおり、申立人の理由によっては新規性及び進歩性を否定することができない。

イ 申立理由1(明確性)について
申立人は、「長石を含む砂」が元砂であるか否か、及び、「砂に含まれる長石の割合」が不明確であると主張するが、上記第4の8で述べたとおり、「長石を含む砂」は、元砂であろうとなかろうと、また、長石の割合によらず、長石を含む砂である点で明確であるから、申立人の主張は採用できない。

ウ 申立理由2(サポート要件)について
(ア)申立人は、「長石を含む砂」が元砂でない場合や「砂に含まれる長石の割合」が一定割合以上でない場合には、本件特許発明の課題を解決できないと主張するが、上記第4の9(4)アで述べたとおり、長石の割合によらず、燃焼灰に可溶性の珪素化合物が含まれることになるから、本件訂正発明1及び5は、その課題を解決できるものといえる。

(イ)申立人は、「イネ科植物用肥料」の具体的対象について、イネ以外では課題を解決できるか不明であると主張するが、上記第4の9(4)イで述べたとおり、イネ以外のイネ科植物も多くの珪素を要求するとされているのであるから、イネだけでなく、イネ以外のイネ科植物においても、課題を解決できることが推認される。また、申立人は、イネ以外のイネ科植物では課題を解決できないことを示す具体的な根拠を示していない。
よって、申立人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件訂正後の請求項1〜5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】イネ科植物用肥料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長石を含む砂を流動媒体として用いる流動層ボイラから出てくる燃焼灰を用いた肥料に関し、特に、珪素成分を多く含む肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスを活用した発電方式には、主に、ストーカ炉、バブリング流動床、循環流動層の3タイプのボイラがあり、バブリング流動床、循環流動層の2種類の炉では、燃焼時に流動媒体として砂を用いてバイオマス燃料を燃焼し、発電を行う。
【0003】
ここで、例えば年間発電量が11メガワット程度の規模の発電所では、1700トン近い燃焼灰が排出され、発電により様々な恩恵が得られる一方、燃焼灰(ばいじん)の処分に数千万円程度の処理費が発生するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−20711
【特許文献2】WO2011/007618
【特許文献3】特開2016−216316
【特許文献4】特開2013−202423
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、長石を含む砂を流動媒体として使用し、砂とバイオマス燃料が接触する流動層ボイラの焼却灰を有価物に転換することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、長石を含む砂を流動媒体として用いた循環流動層ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰であって、燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰を含むことを特徴とするイネ科植物用肥料である。
なお、燃焼灰のみによって肥料を構成しても良い。
【0007】
請求項2に記載の発明は、砂は、K化合物および/またはNa化合物および/またはCa化合物を含み、SiO2は64.7wt%以上96.0wt%以下、Al2O3は3.0wt%以上18.3wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載のイネ科植物用肥料である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、燃焼灰中に、K化合物および/またはNa化合物および/またはCa化合物を含み、SiO2は10.5wt%以上、Al2O3は3.0wt%以上の含有量であることを特徴とする請求項1または2に記載のイネ科植物用肥料である。
この含有量とすると、後述のケイカルと同等以上の可溶性珪酸が溶出する。
なお、請求項2や請求項3において、SiO2、Al2O3の含有量は、蛍光X線分析法や原子吸光法等による定量分析により算出し、長石量はAl2O3中のAlが全てカリ長石(KAlSi3O8)のAlと推定して算出するものとする。なお、溶出したSiO2量は算出したカリ長石に含まれるSi量から算出するものとする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、イネ科植物が、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、キビ、アワ、ヒエ、または、トウモロコシであることを特徴とする請求項1、2または3に記載のイネ科植物用肥料である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、長石を含む砂を流動媒体として用いた循環流動層ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰であって、燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰の、水稲用肥料としての使用である。
なお、砂のうち、長石が27.3wt%以上100wt%以下の含有量であるようにしてもよい。また、燃焼灰中のSiO2の含有量が10.5wt%以上であるようにしてもよい。
【0011】
なお、長石には、カリ長石(KAlSi3O8),曹長石(NaAlSi3O8),灰長石(CaAl2Si2O8)の3種類があり、さらにこれらを端成分とし、カリ長石成分と曹長石成分が混ざり合ったアルカリ長石や、曹長石成分と灰長石成分が混ざり合った斜長石等も存在する。いずれの長石も天然の岩石(火成岩、変成岩、堆積岩等)に普遍的に存在する鉱物であり、砂中に一般的に含まれる。
従って、本願では、長石を含む砂とは、例えば天然の岩が砕かれて砂状となったものや、天然の岩が変質・風化し堆積したものを挙げることができる。さらに、珪砂のような石英を主成分とし、他に長石、角閃石、雲母、粘土鉱物、あるいは鉄酸化物等を含む砂や、石英と長石を人工的に混ぜ合わせた砂であっても、長石が含まれた砂であれば当然に「長石を含む砂」に該当する。
流動層ボイラとしては、循環流動層ボイラを挙げることができるが、このほか、例えば、高温の砂を攪拌する気泡流動層ボイラを挙げることもできる。
バイオマス燃料は、概ね木質系材料および/または農業系材料から構成されていれば良く、木質系材料としては、例えば間伐材や剪定材、これらのチップ、オガ屑、木屑などを例示することができ、農業系材料としては、パームヤシ殻、その他のヤシ殻、稲藁、籾殻などを例示することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、流動媒体とバイオマス燃料を適正に選定することにより、流動層ボイラの焼却灰をイネ科植物用の肥料、特に水稲用肥料として利用でき、従来廃棄物としてコストがかかっていたものを有価物として扱うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】流動媒体の循環部分を中心に描画した循環流動層ボイラの構成概要図である。
【図2】湛水培養による珪酸溶出試験をおこなったグラフである。
【図3】燃焼灰を用いたポッド栽培試験による、a全重、bワラ重、c穂重、d精玄米重を示したグラフである。
【図4】燃焼灰を用いたポッド栽培試験による、a粒数、b千粒重、c穂数、d一穂粒数を示したグラフである。
【図5】燃焼灰を用いたポッド栽培試験による、a整粒比、b白未熟粒比、c乳白未熟粒比、d基部未熟粒比を示したグラフである。
【図6】燃焼灰を用いたポッド栽培試験による、a腹白未熟粒比、b胴割れ未熟粒比を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
珪素はすべての植物に含まれ、珪酸塩Si(OH)2をとりこみ、植物は珪素を蓄積している。特にイネをはじめとするイネ科植物では、多量の珪素を必要とする。ところで、土壌には珪素がSiO2(鉱物名:石英やクリストバライト)として高比率で含まれているが、石英やクリストバライトは、事実上水に対して難溶であり、石英やクリストバライトから珪酸塩Si(OH)2の溶出は期待できない。同様に天然の岩石に含まれる長石も水に対して難溶であり、長石からも珪酸塩Si(OH)2の溶出は期待できない。従って、石英、クリストバライト、長石を主成分とする砂そのものは、植物の肥料として位置づけられない。
【0015】
本願発明者らは、長石を含む砂を流動媒体として用いた流動層ボイラから排出される燃焼灰には、驚くべきことに、可溶性の珪素化合物が含まれていることを見出し、本発明に至った。
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、流動層ボイラとして循環流動層ボイラを用いた例を説明する。図1は、循環流動層ボイラの構成概要図である(流動媒体の循環部分を中心に描画している)。
循環流動層ボイラ1は、図示したように、燃焼炉部10と、サイクロン部20とにより構成され、燃焼を補助する流動媒体が、燃焼炉部10とサイクロン部20との間で循環する。図では流動媒体はグレーに、バイオマス燃料は円で表示している。但し、大きさや密度等は概念的に表示している。
【0017】
詳しくは、燃焼炉部10では、バイオマス燃料と砂(長石を含む砂)とが、下から送られる空気と激しく混合攪拌されて極めて効率的に燃焼し、上方のサイクロン部20へと飛び出していく。サイクロン部20では、遠心力によって砂が捕集され、再び燃焼炉部10下方へともどっていく。サイクロン部の中心からは、熱風と燃焼灰が放出され、熱風は適宜熱交換され、焼却灰は適宜回収される。
【0018】
なお、流動媒体に含まれる長石は、長石同士、長石と長石でない砂組成物、または長石とバイオマス燃料と激しくぶつかり合い、かつ、熱履歴を受け、長石は少しずつ微細化・非晶質化していき、焼却灰として放出されていく。あわせて長石以外の砂部分たとえば珪石の微細物も燃焼灰に含まれることとなる。
【0019】
バイオマス燃料は、木材チップとPKS(パームヤシ殻)との混合燃料を挙げることができる。
【実施例1】
【0020】
循環流動層ボイラとして外部循環流動層ボイラ(JFEエンジニアリング社製)を用い、燃料として木材チップ(材質:国内森林における杉等の林地残材)とPKSとが重量比でおよそ3:1で混ざったものを用い、また、流動媒体として長石を含む砂(販売元:株式会社ツチヨシ産業、採取場所:島根県江津市内)を用いて発電用に運転して出てきた燃焼灰を用いて、水稲の育成実験をおこなった。
【0021】
表1に、用いた元砂(流動媒体)と、得られた燃焼灰との定量分析値を示した(分析値は、それぞれの元素が単一の酸化物になっていると仮定するため、列記した酸化物が組成物であることを必ずしも意味しない)。
【表1】

表から明らかなように、元砂は80wt%以上がSiO2であり、燃焼灰も、成分として最も多いものはSiO2であって50wt%を超え、56wt%にも達する。但し、流動層ボイラの仕様や稼働状況、また、元砂の組成により焼却灰におけるSiO2は変動し、最少で10.5wt%以上であれば、効率的な肥料効果が得られる。(表1のCaOとP2O3は、それぞれ相関係数が0.9999と0.9984の検量線の濃度範囲を超えたため、同検量線の範囲外を利用して算出した。)
【0022】
一方、0.5Mの塩酸を用いた塩酸抽出法により燃焼灰の可溶性珪酸含量を測定した。なお、比較として、珪化石(軟質多孔性古代海洋腐植質:商品名ミロプライム(株式会社ビーティエヌの登録商標))と、珪酸石灰肥料(水稲用肥料:商品名ケイカル(ミネックス株式会社))の測定もおこなった。結果を表2に示す。
【表2】

【0023】
また、湛水培養による珪酸溶出試験をおこなった。
試験方法は、水田土壌と試料とを、試料の施用量を変えて混合し湛水状態にたもち、7日間静置培養して溶液中の珪酸を測定して評価した。なお、比較として、ミロプライム、ケイカルの測定もおこなった。結果を図2に示す。
【0024】
燃焼灰中の珪素成分は流動媒体(長石を含む砂)由来であり、可溶性珪酸(SiO2)の溶出はほとんどないと思われたところ、表2の結果からは、驚くべきことに7%程度もの溶出が認められた。ただしこれは、水稲用肥料のケイカルよりは遙かに小さい。しかしながら、実際の湛水試験では、図2に示した様に、施用量にともなう可溶性珪酸の溶出が認められ、さらに驚くべきことにいずれの施用量においてもケイカルより2割以上多い溶出が認められた。
表3にケイカルと燃焼灰の溶出試験前の珪酸含有量に対する可溶性珪酸量の割合を示す。この比較から、市販されているケイカルよりも燃焼灰の方が可溶性珪酸の溶出量が14%程度多いことが分かった。
【表3】

【0025】
さらに、異なるバイオマス発電所から排出された燃焼灰と元砂(燃焼灰Aの発生元で使用される砂)について溶出試験を行った(これらをそれぞれ焼却灰A、焼却灰B、元砂とする)。実験と分析は以下の方法で行った。燃焼灰A,Bと元砂のそれぞれ10gを蒸留水400mLに投入し、マグネットスターラーで撹拌(360rpm)しながら7日間放置した。その後、遠心分離機を用いて水分と固形分を分離し、固形分は全て回収し、それらを110℃で乾燥した。溶出試験前後の試料については、粉末X線回折法による構成化合物の同定、強熱減量の測定、蛍光X線による定量分析を実施した。更に乾燥後の固形分については重量を測定した。
【0026】
表4に燃焼灰Aと焼却灰Bの溶出試験前後の重量を示す。この表から、燃焼灰A、B共に重量減少が生じており、燃焼灰中の固形分が溶媒中に溶け出したことが確認された。
【表4】

【0027】
表5に粉末X線回折法により同定した溶出試験前後の燃焼灰AとBの構成化合物を示す。燃焼灰Aでは、溶出試験により石膏が溶解し、焼失した。燃料灰Bでは、水酸化カルシウム(消石灰)が溶出試験により消失した。この消石灰は硫黄酸化物の低減のために流動溶媒として使用されたものと考えられた。なお、溶出試験後では、両燃焼灰からドロマイトが検出された。
【表5】

【0028】
表6に燃焼灰AとBと元砂の溶出試験前後の強熱減量と定量分析値を示す。
溶出試験前の燃焼灰Aと燃焼灰B定量分析結果から、SiO2分は燃焼灰Aが燃焼灰Bよりも8wt%程度高い、CaO分は燃焼灰Bが燃焼灰Aよりも3wt%程度高い、等の違いがあることが分かった。元砂は燃焼灰AよりもSiO2量が多く、Al2O3量は少ない。
【表6】

【0029】
表7に溶出試験前の燃焼灰A、燃焼灰B、元砂に含まれる石英、長石および酸化カリウム量を示す。長石量の算出は、表5に示した構成酸化物の種類からAl2O3は全て長石(KAlSi3O8)に含まれていると仮定し、表6のAl2O3量から算出した。石英量は表6のSiO2量から長石に含まれるSiO2量を減じた値とした。また、酸化カリウム量は算出した長石に含まれるK量を算出し、併せて表記した。
【表7】

【0030】
表7から、燃焼灰A、B共に元砂よりも長石分が増加し、石英が減少していることが分かる。すなわち、流動層ボイラを用いたバイオマスの焼却により、流動媒体に含まれる石英は減少し、長石(非晶質化した長石を含む)が増加することが判明した。消失した石英は、集塵機以外の場所から排出されたと考えられる。
なお、算出した長石に含まれるK量(K2Oとして表記)は、表6の実測値のK量よりも多い。このことから長石(非晶質化した長石を含む)はカリ長石(KAlSi3O8)、だけではなく、曹長石(NaAlSi3O8)、灰長石(CaAl2Si2O8)の混合物から形成されていると考えられる。
【0031】
表8に、実験に用いた燃焼灰A、Bの溶出試験前後に含まれる各成分の含有量と差分(溶出量)を示す。含有量は表6の定量値と表4の溶出試験前後の重量を用いて算出した。この表からSiO2の溶出量は他の酸化物よりも多いことが判明した。
【表8】

【0032】
表9に、実験に用いた元砂の溶出試験前後に含まれる各成分の含有量と差分(溶出量)を示す。含有量は表6の定量値と表4の溶出試験前後の重量を用いて算出した。その結果、元砂については溶出試験によりSiO2が溶出していないことが判明した。他方、表8に示した燃焼灰A、BではSiO2が溶出したことから、流動層ボイラによるバイオマスの焼却により、可溶性の珪酸を生じる物質が新たに形成されることが確認された。
【表9】

【0033】
表10に燃焼灰A、B、元砂に含まれるSiO2(表8溶出試験前SiO2量)に対するが可溶性珪酸量(表8溶出したSiO2量)の比率を示す。
燃焼灰AとBは含有SiO2量に対して4%前後の溶出が認められ、これらの値は図2と表2に示した湛水培養による珪酸溶出試験結果よりも2.5倍高い値となった。この差異は試験条件の違いによるものと考えられる。また、元砂は溶出が認められなかったことから0%となった。さらにケイカルでは含有SiO2量に対して1.4%程度の溶出しか認められないことから、燃焼灰は異なる条件下では最大でケイカルの2.86分の1程度の含有SiO2量でケイカルと同等の溶出量となることが明らかとなった。すなわち、燃焼灰については、含有SiO2量が10.5%以上であればケイカルと同等以上の肥料効果が期待できる。この含有SiO2量はカリ長石由来と仮定してAl2O3量を見積もると3.0wt%となる。よって、燃焼灰中のSiO2量とAl2O3量の下限はそれぞれ10.5wt%、3.0wt%と定めることができる。他方、流動媒体である元砂はバイオマスの焼却によりAl2O3が増加することから、元砂に含まれる長石成分が増加することはあっても減少することはない。そこで、元砂に含まれるAl2O3量は3.0wt%以上とし、この場合の長石に含まれるK2Oの含有量は2.7wt%と見積もられ、これらを鑑みて、SiO2量は96wt%以下と定める。
【表10】

【0034】
元砂である流動媒体をXRD回折測定したところ、元砂を粉砕により微細化すると長石の回折ピーク強度だけが低下することが確認でき、衝撃により元砂に含まれる長石は非晶質化し易いことが分かった。一般的に結晶質を非晶質化すると融点が低下することから、バイオマスの燃焼時の950℃前後での長石同士や長石と木質材料との接触および木質材料由来のCa、Mg等のアルカリ土類との接触により、長石は非晶質化した可能性が高い。非晶質化すると特にアルカリ性の水溶液に溶融しやすくなる。燃焼灰を蒸留水中に加えると溶液のpHは12前後に変化したことから、燃焼灰A、BからのSiO2の溶出源は非晶質化した長石と推定している。
【0035】
以上の試験を経て、バイオマス燃料+珪砂由来の焼却灰の、肥料、特に珪素を要求する水稲その他のイネ科植物用肥料への利用について検討することとした。ここでは、ポット栽培をおこない、燃焼灰とケイカルとを比較した。具体的には、燃焼灰またはケイカルを混和した土壌3kgを1/500ワグネルポットに充填し、平成28年5月31日にイネ‘コシヒカリ’を各ポットに1株移植した後、湛水条件にて管理し、9月8日に収穫した。ポット栽培試験はいずれも5反復とした。
【0036】
図3は、a全量、bワラ重、c穂重、d精玄米重を示したグラフである。なお、図3を含めて、以降では、施用量の単位はmg/土壌100g(kg/10aに相当)であり、○○重とある単位はgである。
図4は、a粒数、b千粒重、c穂数、d一穂粒数を示したグラフである。
図5は、a整粒比(整粒歩合)、b白未熟粒比、c乳白未熟粒比、d基部未熟粒比を示したグラフである。
図6は、a腹白未熟粒比、b胴割れ未熟粒比を示したグラフである。
【0037】
図から明らかなように、燃焼灰はケイカルと同等以上であり、特に施用量が多い場合にケイカルに優れる傾向がある。特筆すべきは、粒数図4a、千粒重図4b、乳白未熟粒比図5cであり、未熟が少なく、収量が多く、かつ、一粒あたりの実太りがよいことが見て取れる。すなわち、本試験により、燃焼灰の水稲用肥料としての使用が可能であることが確認された。
【0038】
なお、流動媒体は、長石が含まれた砂であるが、花崗岩や玄武岩が砕かれた砂を原料として、適宜珪石由来の砂や珪砂を添加しても良い。いずれにせよ、流動媒体中の長石部分の割合は27.3wt%以上あれば、焼却灰中の可溶性珪素が肥料として好適に含まれる割合となっていく。なお、上限は、Al2O3が18.33wt%のインド長石が存在することから、長石の割合は100wt%とする。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、燃料をその出所がはっきりしているバイオマス燃料とすることにより、従来処理費が発生していた燃焼灰を、肥料という有価物にすることが可能となる。特にイネ科植物、例えば、水稲種を含むイネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、キビ、アワ、ヒエ、または、トウモロコシなどは、多くの珪素を要求するので肥料として好適である。
【符号の説明】
【0040】
1 流動層ボイラ
10 燃焼炉部
20 サイクロン部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長石を含む砂を流動媒体として用いた循環流動層ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰であって、燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰を含むことを特徴とするイネ科植物用肥料。
【請求項2】
砂は、K化合物および/またはNa化合物および/またはCa化合物を含み、SiO2は64.7wt%以上96.0wt%以下、Al2O3は3.0wt%以上18.3wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載のイネ科植物用肥料。
【請求項3】
燃焼灰中に、K化合物および/またはNa化合物および/またはCa化合物を含み、SiO2は10.5wt%以上、Al2O3は3.0wt%以上の含有量であることを特徴とする請求項1または2に記載のイネ科植物用肥料。
【請求項4】
イネ科植物が、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、キビ、アワ、ヒエ、または、トウモロコシであることを特徴とする請求項1、2または3に記載のイネ科植物用肥料。
【請求項5】
長石を含む砂を流動媒体として用いた循環流動層ボイラにより、バイオマス燃料を燃焼させて排出される燃焼灰であって、燃焼灰中の珪素成分は長石を含む砂由来であり、可溶性の珪素化合物が形成された燃焼灰の、水稲用肥料としての使用。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2023-01-12 
出願番号 P2017-216845
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C05F)
P 1 651・ 537- YAA (C05F)
P 1 651・ 113- YAA (C05F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 亀ヶ谷 明久
特許庁審判官 門前 浩一
関根 裕
登録日 2021-09-24 
登録番号 6948674
権利者 国立大学法人島根大学 島根県
発明の名称 イネ科植物用肥料  
代理人 田邊 義博  
代理人 田邊 義博  
代理人 田邊 義博  
代理人 田邊 義博  
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