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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
管理番号 1396298
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-10-12 
確定日 2023-03-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第7053935号発明「イソシアネート含有組成物および2液反応型ポリウレタン樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7053935号の請求項1〜7に係る特許を維持する。 
理由 結論
特許第7053935号の請求項1〜7に係る特許を維持する。

第1 手続の経緯等について
1 手続の経緯について
本件特許第7053935号に係る出願(請求項の数7。以下「本件特許」という。)は、令和3年9月29日に出願され、令和4年4月4日に特許権の設定登録がされ、同年4月12日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和4年10月12日に、請求項1〜7に係る特許に対して、特許異議申立人中野 圭二(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。

2 証拠方法
申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証 国際公開第2020/157854号
甲第2号証 特表2020−534403号公報
甲第3号証 特開2020−47603号公報
甲第4号証 特表2020−532628号公報
甲第5号証 特表2020−533467号公報
甲第6号証 特表2020−537297号公報
甲第7号証 特表2020−533770号公報
甲第8号証 国際公開第2018/135140号
甲第9号証 特表2019−508871号公報
甲第10号証 特表2018−522373号公報
甲第11号証 特表2018−510463号公報
甲第12号証 特開2013−157590号公報
甲第13号証 国際公開第2020/205137号
甲第13号証の翻訳文:特表2022−528401号公報
甲第14号証 特開2015−89944号公報
甲第15号証 特開2015−89941号公報
甲第16号証 特開2015−89909号公報
甲第17号証 特開2019−149312号公報
甲第18号証 株式会社ダイセルのホームページに掲載の総合カタログ「ε−カプロラクトンおよび誘導体 脂環式/特殊エポキシ化合物」(表紙,5頁,裏表紙)https://www.daicel.com/material/wordpress/wp−content/uploads/2021/04/total_catalog_r_tsuji.pdf、2018年
甲第19号証 特開2019−214681号公報
甲第20号証 特開2015−117299号公報
甲第21号証 特開2014−181246号公報
甲第22号証 特開2014−122301号公報
甲第23号証 特開2007−016188号公報
甲第24号証 特開2005−336429号公報
以下、甲第1号証〜24号証を、それぞれ「甲1」〜「甲24」という。

第2 本件発明
特許第7053935号の請求項1〜7の特許に係る発明は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項1〜7の特許に係る発明をそれぞれ、「本件発明1」〜「本件発明7」といい、これらをまとめて、「本件発明」という。また、本件特許の願書に添付した明細書を、「本件明細書」という。)。
【請求項1】
バッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラーとして用いられる2液反応型ポリウレタン樹脂組成物のポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物であって、
平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、
無機充填剤、
可塑剤、および、
活性水素基非含有シランカップリング剤、
を含む、イソシアネート含有組成物。
【請求項2】
前記活性水素基非含有シランカップリング剤が、アルキルシランカップリング剤、アリールシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、(メタ)アクリルシランカップリング剤、及びイソシアネートシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のイソシアネート含有組成物。
【請求項3】
2液反応型ポリウレタン樹脂組成物のポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物であって、
平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、
無機充填剤、
可塑剤、および、
活性水素基非含有シランカップリング剤、
を含み、
前記活性水素基非含有シランカップリング剤が、炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤である、イソシアネート含有組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネートおよび/または脂環式ジイソシアネートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のイソシアネート含有組成物。
【請求項5】
前記イソシアネート含有組成物100質量%中に前記無機充填剤を50〜95質量%含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のイソシアネート含有組成物。
【請求項6】
前記可塑剤がフタル酸ジエステルおよび/またはアジピン酸ジエステルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のイソシアネート含有組成物。
【請求項7】
バッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラーとして用いられる2液反応型ポリウレタン樹脂組成物であって、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のイソシアネート含有組成物と、
ポリオールおよび無機充填剤を含むポリオール含有組成物と、を備える、2液反応型ポリウレタン樹脂組成物。

第3 申立理由の概要
特許異議申立書(以下「申立書」という。)の申立理由は、以下のとおりである。
1 本件発明3及び6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法29条第1項第3号に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 本件発明1〜7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである
3 本件発明1〜7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

第4 本件明細書及び甲号証の記載
1 本件明細書の記載
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液反応型ポリウレタン樹脂組成物、およびそのポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂組成物に無機充填剤を配合することにより放熱性を付与することが知られている。例えば、特許文献1には、ポリイソシアネートとポリブタジエンポリオールとの反応により得られるポリウレタン樹脂中に、無機充填剤と、可塑剤と、リン酸エステルを配合することが開示されており、無機充填剤を高い配合比率で含有させることにより放熱性を高めることができる。
【0003】
一方、特許文献2には、2液反応型ポリウレタン樹脂組成物において、ポリオール成分を含むA液とポリイソシアネート成分を含むB液のいずれかに、チオール基を有するシランカップリング剤を配合することが開示されている。しかしながら、活性水素基を有しないシランカップリング剤を配合することは、特許文献2には開示されていない。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリウレタン樹脂組成物に無機充填剤を配合する場合、一般に、ポリオール成分に無機充填剤を配合しておき、これに無機充填剤を含まないポリイソシアネート成分を加えて混合し、両成分を反応させている。しかしながら、無機充填剤を含むポリオール成分は、無機充填剤を含まないポリイソシアネート成分と混合しにくいという問題がある。両者の混合性を向上するために、ポリイソシアネート成分に無機充填剤を配合すると、ポリイソシアネート成分の貯蔵安定性が低下する。
【0006】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、無機充填剤を含むポリウレタン樹脂組成物において、ポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物の貯蔵安定性の低下を抑えながら、ポリオール成分として用いられるポリオール含有組成物との混合性を向上することができる、イソシアネート含有組成物を提供することを目的とする。
・・・
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、イソシアネート含有組成物の貯蔵安定性の低下を抑えながら、ポリオール含有組成物との混合性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る2液反応型ポリウレタン樹脂組成物は、ポリオール成分としてのポリオール含有組成物と、ポリイソシアネート成分としてのイソシアネート含有組成物と、を備える。
【0010】
<イソシアネート含有組成物>
[ウレタンプレポリマー(a)]
イソシアネート含有組成物は、ウレタンプレポリマー(a)を含む。ウレタンプレポリマー(a)として、本実施形態では、平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールと、ポリイソシアネートと、を構成成分とするイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが用いられる。
【0011】
上記ポリオールの平均官能基数(平均水酸基数)が2.5以下であることにより、硬化後のポリウレタン樹脂の硬度を低く抑えることができ、例えば、2液反応型ポリウレタン樹脂組成物をバッテリー周りの隙間を埋めるギャップフィラーとして用いたときに、外力に対して発生する反力を低減することができる。上記ポリオールの平均官能基数は、2.4以下であることが好ましく、より好ましくは2.3以下である。上記ポリオールの平均官能基数の下限は特に限定されず、例えば平均官能基数は1.7以上でもよい。上記ポリオールは両末端に水酸基を持つことが好ましく、従って平均官能基数は2.0以上であることが好ましい。
【0012】
上記ポリオールの重量平均分子量(Mw)が700以上であることにより、イソシアネート含有組成物の貯蔵安定性を向上することができる。ポリオールの重量平均分子量は、800以上であることが好ましい。ポリオールの重量平均分子量の上限は、特に限定されず、例えば重量平均分子量は10000以下でもよく、5000以下でもよい。本明細書において重量平均分子量は、GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)の測定により、標準ポリスチレンによる検量線を用いて算出される値である。
【0013】
上記ポリオールとしては、特に限定されず、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどが挙げられ、これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコールやポリアミンにエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加させて得られたポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸やフタル酸などのカルボン酸と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの多価アルコールを脱水縮合して得られるものが挙げられる。ポリブタジエンポリオールとしては、ポリブタジエン構造の両末端にそれぞれ水酸基を有するものがより好ましく、水素添加したものでもよい。これらの中でも、ポリプロピレングリコールおよび/またはポリブタジエンポリオールを用いることが好ましい。
【0014】
上記ポリイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートなどが挙げられるが、好ましくは、脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートを用いることであり、両者を併用してもよい。
・・・
【0017】
ウレタンプレポリマー(a)は、上記ポリオールとポリイソシアネートとを、イソシアネート基過剰条件で反応させることにより得られる。ウレタンプレポリマー(a)を得るために用いるイソシアネート基と水酸基の割合(モル比)は、特に限定されないが、イソシアネート基:水酸基=1.5〜2.5:1であることが好ましく、より好ましくは1.7〜2.3:1である。ウレタンプレポリマー(a)は、好ましくは両末端にイソシアネート基を有する末端イソシアネートプレポリマーである。
【0018】
ウレタンプレポリマー(a)の配合量は、特に限定されないが、イソシアネート含有組成物100質量%中に0.5〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは1.0〜12質量%であり、更に好ましくは1.3〜10質量%である。
【0019】
[無機充填剤(b)]
イソシアネート含有組成物は、無機充填剤(b)を含む。無機充填剤(b)を配合することにより、硬化後のポリウレタン樹脂に放熱性を付与することができる。
【0020】
無機充填剤(b)としては、特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの金属窒化物などが挙げられる。これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
無機充填剤(b)の配合量は、イソシアネート含有組成物100質量%中に50〜95質量%であることが好ましい。該配合量が50質量%以上であることにより、ポリウレタン樹脂の放熱性を向上することができる。該配合量が95質量%以下であることにより、イソシアネート含有組成物の貯蔵安定性を向上することができる。該配合量は、より好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、また90質量%以下であることが好ましい。
【0022】
[可塑剤(c)]
イソシアネート含有組成物は、可塑剤(c)を含む。後述する(d)成分とともに可塑剤(c)を配合することで、イソシアネート含有組成物の貯蔵安定性が向上し、またポリオール含有組成物との混合性を向上することができる。
【0023】
可塑剤(c)としては、特に限定されず、ポリウレタン樹脂に配合される従来公知のものを使用することができ、例えば、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジウンデシルフタレートなどのフタル酸ジエステル、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸ジエステル、トリオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテートなどのトリメリット酸エステル、テトラオクチルピロメリテート、テトライソノニルピロメリテートなどのピロメリット酸エステル、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェートなどリン酸トリエステルなどが挙げられ、これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、可塑剤(c)としては、フタル酸ジエステルおよび/またはアジピン酸ジエステルが好ましい。
【0024】
可塑剤(c)の配合量は、特に限定されず、例えば、イソシアネート含有組成物100質量%中に1〜40質量%でもよく、3〜35質量%でもよく、5〜30質量%でもよく、10〜20質量%でもよい。
【0025】
[活性水素基非含有シランカップリング剤(d)]
イソシアネート含有組成物は、活性水素基非含有シランカップリング剤(d)を含む。活性水素基非含有シランカップリング剤(d)を可塑剤(c)とともに配合することにより、イソシアネート含有組成物の貯蔵安定性が向上し、またポリオール含有組成物との混合性を向上することができる。
【0026】
活性水素基非含有シランカップリング剤(d)は、分子内に活性水素基を有しないシランカップリング剤である。ここで、活性水素基とは、イソシアネート基と反応する水素原子を含む基であり、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基(−SH)である。そのため、アミノシランカップリング剤やメルカプトシランカップリング剤は、活性水素基非含有シランカップリング剤(d)ではない。
【0027】
活性水素基非含有シランカップリング剤(d)としては、例えば、アルキルシランカップリング剤、アリールシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、(メタ)アクリルシランカップリング剤、及びイソシアネートシランカップリング剤などが挙げられ、これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
アルキルシランカップリング剤は、Siに直接結合したアルキル基を有するとともにアミノ基やエポキシ基、ビニル基などの有機官能基を有しないシランカップリング剤であり、例えば、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシランなどが挙げられる。
・・・
【0030】
ビニルシランカップリング剤は、有機官能基としてビニル基を有するシランカップリング剤であり、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルトリアルコキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシランカップリング剤が挙げられる。
・・・
【0033】
イソシアネートシランカップリング剤は、有機官能基としてイソシアネート基を有するシランカップリング剤であり、例えば、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートプロピルトリアルコキシシランが挙げられる。
【0034】
活性水素基非含有シランカップリング剤(d)としては、これらのなかでも、アルキルシランカップリング剤を用いることが、イソシアネート含有組成物の粘度を低減することができることから好ましい。無機充填剤を含むイソシアネート含有組成物の貯蔵安定性を向上させる場合、通常は粘度を高くする。しかしながら、アルキルシランカップリング剤を配合した場合、貯蔵安定性を向上しつつ粘度を低減することができる。粘度の低減は、イソシアネート含有組成物の取り扱い性の向上に寄与し、ポリオール含有組成物との混合作業性の点でも好ましい。
【0035】
より好ましくは、活性水素基非含有シランカップリング剤(d)として、炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤を用いることである。該アルキルシランカップリング剤は、分子内に炭素数3以上20以下のアルキル基を1つ有してもよく、2つ有してもよい。炭素数3以上20以下のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、好ましくは直鎖状である。該アルキル基の炭素数は、より好ましくは5以上であり、更に好ましくは8以上であり、また18以下であることが好ましく、より好ましくは16以下である。
【0036】
炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤としては、例えば、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
活性水素基非含有シランカップリング剤(d)の配合量は、特に限定されず、例えば、イソシアネート含有組成物100質量%中に0.05〜10質量%でもよく、0.1〜8質量%でもよく、0.3〜5質量%でもよい。
・・・
【0043】
<ポリオール含有組成物>
[ポリオール(e)]
ポリオール含有組成物は、ポリオール(e)を含む。
・・・
【0051】
<2液反応型ポリウレタン樹脂組成物>
本実施形態に係る2液反応型ポリウレタン樹脂組成物は、通常は、ポリオール含有組成物である第1液とイソシアネート含有組成物である第2液とで構成されるが、ポリオール含有組成物およびイソシアネート含有組成物の他に、任意成分としての上記その他の成分を含むものを第3液として備えてもよい。
・・・
【0057】
<2液反応型ポリウレタン樹脂組成物の用途>
本実施形態に係る2液反応型ポリウレタン樹脂組成物の用途は、特に限定されず、電気電子部品や車載向けなどの様々な用途に用いることができる。無機充填剤を配合することで放熱性を持つことから放熱材料として好適に用いられる。一実施形態として、バッテリー等の熱源に対する放熱性のギャップフィラーとして好適に用いられる。
【実施例】
・・・
【0059】
実施例及び比較例において使用した原料を以下に示す。
[無機充填剤]
・水酸化アルミニウム:住友化学株式会社製「CW−350」(密度2.4g/cm3)
・アルミナ1:デンカ株式会社製「DAW−45」(密度4.0g/cm3)
・アルミナ2:デンカ株式会社製「DAW−03」(密度4.0g/cm3)
【0060】
[ポリオール]
・ポリブタジエンポリオール:エボニック社製「POLYVEST HT」、平均官能基数2.3
[可塑剤]
・DUP:フタル酸ジウンデシル
・DOA:アジピン酸ジ2−エチルヘキシル
【0061】
・シランカップリング剤1:n−プロピルトリメトキシシラン、信越化学株式会社製「KBM−3033」
・シランカップリング剤2:ヘキシルトリエトキシシラン、信越化学株式会社製「KBE−3063」
・シランカップリング剤3:デシルトリメトキシシラン、信越化学株式会社製「KBM−3103C」
・シランカップリング剤4:オクタデシルトリメトキシシラン、東京化成工業株式会社製「Octadecyltrimethoxysilane」
・シランカップリング剤5:ビニルトリメトキシシラン、信越化学株式会社製「KBM−1003」
【0062】
[ポリイソシアネート化合物]
・イソシアヌレート:イソシアヌレート変性HDI、万華化学製「HT600」
[吸湿剤]
・吸湿剤:ユニオン昭和株式会社製「モレキュラーシーブ3AB」
【0063】
実施例および比較例で使用したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーであるプレポリマー1〜7の合成例を以下に示す。
【0064】
[プレポリマー1]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコ内で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(旭化成株式会社製「デュラネート50M」)33質量部と、ポリプロピレングリコール(平均官能基数2.0、重量平均分子量700、水酸基価160)(AGC株式会社製「エクセノール720」)67質量部とを90℃で2時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー1)を得た。
【0065】
[プレポリマー2]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコ内で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(旭化成株式会社製「デュラネート50M」)26質量部と、ポリプロピレングリコール(平均官能基数2.0、重量平均分子量1000、水酸基価112)(AGC株式会社製「エクセノール1020」)74質量部とを90℃で2時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー2)を得た。
【0066】
[プレポリマー3]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコ内で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(旭化成株式会社製「デュラネート50M」)10質量部と、ポリプロピレングリコール(平均官能基数2.0、重量平均分子量3000、水酸基価35)(AGC株式会社製「エクセノール3020」)90質量部とを120℃で6時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー3)を得た。
【0067】
[プレポリマー4]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコ内で、イソホロンジイソシアネート(IPDI)(EVONIC社製「IPDI」)31質量部と、ポリプロピレングリコール(平均官能基数2.0、重量平均分子量1000、水酸基価112)(AGC株式会社製「エクセノール1020」)69質量部とを90℃で2時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー4)を得た。
【0068】
[プレポリマー5]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコ内で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(旭化成株式会社製「デュラネート50M」)46質量部と、ポリプロピレングリコール(平均官能基数2.0、重量平均分子量400、水酸基価281)(AGC株式会社製「エクセノール420」)54質量部とを90℃で2時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー5)を得た。
【0069】
[プレポリマー6]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコ内で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(旭化成株式会社製「デュラネート50M」)12質量部と、ポリブタジエンポリオール(平均官能基数2.3、重量平均分子量3000、水酸基価46)(EVONIC社製「POLYVEST HT」)88質量部とを90℃で2時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー6)を得た。
【0070】
[プレポリマー7]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコ内で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(旭化成株式会社製「デュラネート50M」)33質量部と、ひまし油(平均官能基数2.7、重量平均分子量941、水酸基価161)(伊藤製油株式会社製「URIC H30」)68質量部とを90℃で2時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー7)を得た。
【0071】
平均官能基数、重量平均分子量、水酸基価、およびイソシアネート価の測定方法は以下のとおりである。
[平均官能基数]
平均官能基数は、GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)により数平均分子量(Mn)を測定し、JIS K1557−1:2007のA法に準じて水酸基価(mgKOH/g)を測定して下記式より算出される値である。
平均官能基数={(水酸基価)×(Mn)}/(56.11×1000)
【0072】
[重量平均分子量および数平均分子量]
GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)で測定し、標準ポリスチレンの分子量と溶出時間から作成した検量線を用いて、測定試料の溶出時間から算出した値である。測定条件に関し、カラムにTSKgel Hxl(東ソー株式会社)を用いて、移動相はTHF(テトラヒドロフラン)、移動相流量は1.0mL/min、カラム温度は40℃、試料注入量は50μL、試料濃度は0.2質量%の条件で測定を行った。
【0073】
[水酸基価]
JIS K1557−1:2007のA法に準じて測定。
【0074】
[イソシアネート価]
イソシアネート含有率をJIS K1603−1:2007のA法に準拠して測定し、求めたイソシアネート含有率から下記式によりイソシアネート価を算出される値である。
【数1】


56.11:水酸化カリウムの分子量
1000:gからmgへの変換係数
42.02:NCOの分子量
100:百分率から/gへの変換係数
【0075】
[実施例1〜14および比較例1〜5]
下記表1に示す配合(質量%)に従い、ポリオール含有組成物A1〜7を調製した。また、下記表2に示す配合(質量%)に従い、イソシアネート含有組成物B1〜19を調製した。イソシアネート含有組成物B1〜19については、貯蔵安定性および粘度を評価した。また、下記表3に示す組合せおよび容量配合比にてポリオール含有組成物A1〜7とイソシアネート含有組成物B1〜19を混合し、両者の混合性を評価した。また、混合し硬化させた後に硬化物の硬度を測定した。貯蔵安定性、粘度、混合性、および硬度の測定・評価方法は以下のとおりである。
【0076】
[貯蔵安定性]
調製したイソシアネート含有組成物を60℃で1か月貯蔵した後の性状を評価し、液体のままの場合を「液体」、液体から固化した場合を「固化」と表3に示した。
【0077】
[粘度]
ブルックフィールド形粘度計(B型)を使用し、JIS K7117−1−1999に準拠し測定した。
【0078】
[混合性]
自転公転ミキサーを用いて、ポリオール含有組成物とイソシアネート含有組成物を、常温下、2000rpmで30分間攪拌し、それにより混合が可能であった場合を「〇」、混合できなかった場合「×」と表3に示した。
【0079】
[硬度]
ポリオール含有組成物とイソシアネート含有組成物を常温下で混合して硬化させ、常温にて7日間経過後の硬度(ショアC)をJIS K7312:1996(スプリング硬さ試験タイプC)により測定した。
【0080】
【表1】



【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
結果は表3に示すとおりである。比較例1では、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを構成するポリオールの平均官能基数が大きいため、硬化物の硬度が高かった。比較例2では、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを構成するポリオールの重量平均分子量が小さいため、イソシアネート含有組成物は60℃×1か月の貯蔵で固まってしまい、貯蔵安定性が低かった。比較例3では、イソシアネート含有組成物に活性水素基非含有シランカップリング剤(d)を配合していないため、貯蔵安定性が低下した。比較例4では、イソシアネート含有組成物に無機充填剤を配合していないため、イソシアネート含有組成物とポリオール含有組成物との混合性が悪かった。比較例5では、イソシアネート含有組成物に可塑剤を配合していないため、貯蔵安定性に劣っており、また、ポリオール含有組成物との混合性にも劣っていた。
【0084】
これに対し、実施例1〜14であると、イソシアネート含有組成物の貯蔵安定性に優れるとともに、ポリオール含有組成物との混合性も良好であり、また硬化後の硬度も60以下であり、良好な結果が得られた。また、活性水素基非含有シランカップリング剤(d)としてアルキルシランカップリング剤を用いた実施例1〜9および11〜14であると、ビニルシランカップリング剤を用いた実施例10に比べてイソシアネート含有組成物の粘度が顕著に低減していた。」

2 甲号証の記載
(1)甲1

「[請求項1] イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、
ペンタメチレンジイソシアネート及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化合物と、
第2級アミノシラン化合物とを含有する、ウレタン系接着剤組成物。」


[0002] 近年、自動車の軽量化の観点から車体(ボディー)の材料が鋼板から樹脂材料(例えば、オレフィン系樹脂を少なくとも含む樹脂材料)に置き換えられている。
[0003] 一方、オレフィン樹脂などの材料からなる被着体に適用できる接着剤組成物として、例えば、ウレタンプレポリマー(A)、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)、および、イソシアネートシラン(C)を含有する主剤と、1分子中に2個以上の活性水素基を有する化合物(D)、および、特定の式で表される芳香族化合物(E)を含有する硬化剤と、を有する2液硬化型ウレタン接着剤組成物が提案されている(特許文献1)。
[0004] また、オレフィン樹脂を含む基材等に適用できる接着剤組成物として、例えば、イソシアネ一卜基を有するウレタンプレポリマーと、イソシアヌレート環を有するイソシアヌレート化合物と、活性水素を有するテルペン化合物とを含有する、ウレタン系接着剤組成物が提案されている(特許文献2)。
・・・
[0006] そして、自動車の安全性等の観点から、樹脂に対する接着性の要求はますます高まっている。
このようななか、本発明者らは特許文献1、2を参考にしてシランカップリング剤を含有するウレタン系接着剤組成物を調製し評価したところ、このような組成物を、プライマー処理されていない、オレフィン樹脂を少なくとも含む基材に適用する場合、接着剤組成物の接着性の耐久性が昨今要求されているレベルを必ずしも満足しない場合があることが明らかとなった。
そこで、本発明は、オレフィン樹脂に対する接着耐久性に優れるウレタン系接着剤組成物を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ウレタン系接着剤組成物に対して特定のアミノシラン化合物を使用することによって所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。」


「発明の効果
[0009] 本発明のウレタン系接着剤組成物は、オレフィン樹脂に対する接着耐久性に優れる。
発明を実施するための形態
[0010] 本発明について以下詳細に説明する。
・・・
本明細書において、オレフィン樹脂に対する接着耐久性により優れることを、「本発明の効果により優れる」という場合がある。また、「オレフィン樹脂に対する接着耐久性」を単に「接着耐久性」という場合がある。
・・・
[0014] [ウレタン系接着剤組成物]
<ウレタンプレポリマー>
本発明の接着剤組成物に含有されるウレタンプレポリマーはイソシアネート基を有する化合物である。
ウレタンプレポリマーは、複数のイソシアネート基(好ましくは2個のイソシアネート基)を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基を分子末端に有することが好ましい。
ウレタンプレポリマーとしては、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリイソシアネート化合物と1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(以下、「活性水素化合物」と略す。)とを、活性水素含有基に対してイソシアネート基が過剰となるように反応させることにより得られる反応生成物等を用いることができる。
本発明において、活性水素含有基は活性水素を含有する基を意味する。活性水素含有基としては例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
[0015] (ポリイソシアネート化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート化合物;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族(上記脂肪族は、直鎖状、分岐状及び脂環式を含む概念である)ポリイソシアネート;
これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネートが挙げられる。
[0016] ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、硬化性に優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、MDIがより好ましい。
[0017] (活性水素化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)は特に限定されない。活性水素含有基としては、例えば、水酸(OH)基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
[0018] 上記活性水素化合物としては、例えば、1分子中に2個以上の水酸(OH)基を有するポリオール化合物、1分子中に2個以上のアミノ基および/またはイミノ基を有するポリアミン化合物等が好適に挙げられ、中でも、ポリオール化合物であることが好ましい。
[0019] 上記ポリオール化合物は、OH基を2個以上有する化合物であれば、特に限定されない。ポリオール化合物の具体例としては、ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;アクリルポリオール;ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオールが挙げられる。なかでも、ポリエーテルポリオールが好ましい態様の1つとして挙げられる。
[0020] ポリエーテルポリオールは、主鎖としてポリエーテルを有し、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。ポリエーテルとは、エーテル結合を2以上有する基であり、その具体例としては、例えば、構造単位−Ra−O−Rb−を合計して2個以上有する基が挙げられる。ここで、上記構造単位中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。炭化水素基は特に制限されない。例えば、炭素数1〜10の直鎖状のアルキレン基が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体のポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、ポリイソアネート化合物との相溶性に優れるという観点から、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、イソシアネート化合物との反応によって得られるウレタンプレポリマーの粘度が常温において適度な流動性を有するという観点から、500〜20,000であることが好ましい。本発明において上記重量平均分子量は、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン(THF))により得られたポリスチレン換算値である。
活性水素化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
[0021] ウレタンプレポリマーは、本発明の効果により優れ、硬化性に優れるという観点から、ポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネート化合物とを反応させてなるウレタンプレポリマーであることが好ましい。
・・・
[0081] (イソシアネートシラン化合物)
本発明の接着剤組成物は、接着耐久性により優れ、初期接着性に優れるという観点から、イソシアネートシラン化合物を更に含有することが好ましい。
本発明の接着剤組成物に更に含有されうるイソシアネートシラン化合物は、イソシアネート基と加水分解性シリル基とを有する化合物である。
・・・
[0091] 上記イソシアネートシラン化合物としては、具体的には例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジエトキシシランが挙げられる。
上記イソシアネートシラン化合物は、接着耐久性により優れ、初期接着性に優れるという観点から、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメトキシシランが好ましく、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランが好ましい。
・・・
[0093] 本発明の接着剤組成物は1液型又は2液型とすることができる。
(2液型の接着剤組成物)
本発明の接着剤組成物が2液型である場合、2液型の接着剤組成物は、主剤と硬化剤(広義の硬化剤)とを有することができる。
・主剤
上記主剤が、上記ウレタンプレポリマーと、特定イソシアヌレート化合物と、特定アミノシラン化合物とを含むことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記のイソシアネートシラン化合物は、主剤に添加することができる。
上記のテルペン化合物は、上記主剤及び上記硬化剤のうちのいずれか又は両方に添加できる。
[0094] ・硬化剤
上記(広義の)硬化剤が、1分子中に複数の活性水素含有基を有する化合物(狭義の硬化剤)を含むことができる。上記狭義の硬化剤は、上記ウレタンプレポリマーと実質的に反応して接着剤組成物を硬化させる化合物を意味する。上記広義の硬化剤は、上記狭義の硬化剤を少なくとも含めばよい。
上記狭義の硬化剤としては、例えば、上記ウレタンプレポリマーの製造の際に使用できる上記活性水素化合物と同様のものが挙げられる。
狭義の硬化剤は、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールは上記と同様である。
・・・
[0100](他の任意成分)
本発明の接着剤組成物は、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤(例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム)、硬化触媒、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、特定アミノシラン化合物及びイソシアネートシラン化合物以外のシランカップリング剤、顔料(染料)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、上記テルペン化合物以外の接着付与剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を更に含有することができる。
なお、上記充填剤は、例えば、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物及び脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の処理剤で表面処理されていてもよい。
また、本発明の接着剤組成物が2液型の場合、上記任意成分を主剤又は硬化剤の何れに添加するかは、適宜選択することができる。
・・・
[0103] ・炭酸カルシウム
本発明の接着剤組成物は、更に炭酸カルシウムを含有することが好ましい。
炭酸カルシウムは特に制限されない。例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウム等が挙げられる。
[0104] 炭酸カルシウムの含有量は、ウレタンプレポリマー又は狭義の硬化剤100質量部に対して、20〜150質量部が好ましく、20〜120質量部がより好ましく、30〜70質量部が更に好ましい。
[0105] カーボンブラック、炭酸カルシウム以外の充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカのようなシリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物;等が挙げられる。
・・・
[0110] ・可塑剤
上記可塑剤としては、具体的には、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
可塑剤の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、5〜40質量部がより好ましい。
・・・
[0120] (用途)
本発明の接着剤組成物の用途としては、例えば、ダイレクトグレージング剤、自動車用シーラント、建築部材用シーラントが挙げられる。」


「実施例
[0121]
・・・
[0123] <2液型の接着剤組成物の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で、撹拌機を用いて混合し、各主剤、各硬化剤を製造し、2液型の接着剤組成物を得た。
次に、上記のとおり製造された主剤100gと、上記のとおり製造された硬化剤とを第1表の「2液型の主剤/硬化剤」欄に示す質量比で混合し、2液型の接着剤組成物の混合物を得た。
[0124] <試験体の作製>
(初期試験体)
ポリプロピレン樹脂及びガラスファイバー(GF)を含む組成物(商品名ファンクスター、日本ポリプロ社製。第1表では「PP−GF」と記載されている。)を用いて成形し、片面にフレーム処理を施した基材(幅:25mm、長さ:120mm、厚さ:3mm)を2枚用意した。フレーム処理後、ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業社製)を用いて樹脂表面の濡れ性が45.0mN/m以上であることを確認した。
次いで、一方の基材のフレーム処理を施した面に、上記の1液型の接着剤組成物又は2液型の接着剤組成物の混合物を、幅25mm、長さ10mm、厚さ5mmとなるように塗布した後、他方の基材のフレーム処理を施した面と張り合わせ、圧着させ、23℃、50%RHの条件下で3日間おいて、初期試験体を作製した。
[0125] (水浸漬老化後試験体)
・水浸漬老化試験
各初期試験体を50℃の温水に2,000時間浸漬する水浸漬老化試験を行い、水浸漬老化後試験体を得た。
[0126] (熱老化後試験体)
各初期試験体を90℃の条件下に2,000時間置く熱老化試験を行い、熱老化後試験体を得た。
[0127] <評価>
上記のとおり製造された各試験体について、下記の方法により接着性を評価した。結果を第1表に示す。
(引張試験)
上記のとおり作製した、各試験体について、JIS K6850:1999に準じて引張試験(引張り速度50mm/分、20℃の環境下)を行い、各試験体の剪断強度(MPa)を測定し、各試験体の破壊状態を目視で確認した。
[0128] 引張試験後の、初期試験体、水浸漬老化後試験体又は熱老化後試験体の破壊状態について、接着剤が凝集破壊しているものを「CF」と評価し、被着体−接着剤間で界面剥離しているものを「AF」と評価した。「CF/AF」は、凝集破壊と界面剥離とが混在していることを表す。
[0129] ・接着耐久性の評価基準
本発明において、水浸漬老化後及び熱老化後の破壊状態が「CF」である場合を「接着耐久性が最も優れる」と評価した。
水浸漬老化後及び熱老化後の破壊状態のうちのいずれか一方が「CF」であり、残りが「CF/AF」である場合を、「接着耐久性が非常に優れる」と評価した。
水浸漬老化後及び熱老化後の破壊状態が「CF/AF」である場合を、「接着耐久性がやや優れる」と評価した。
水浸漬老化後及び熱老化後の破壊状態のうちのいずれか一方が「CF/AF」であり、残りが「AF」である場合を、「接着耐久性がやや劣る」と評価した。
水浸漬老化後及び熱老化後の破壊状態の両方が「AF」である場合を、「接着耐久性が非常に劣る」と評価した。
[0130] 本発明において、上記評価が「接着耐久性が最も優れる」、「接着耐久性が非常に優れる」又は「接着耐久性がやや優れる」であった場合、接着耐久性に優れるものとする。
[0131] ・・剪断強度の評価基準
なお、水浸漬老化後の試験体の破壊状態の評価結果が同等であった場合、これらのうち剪断強度が高いほうが好ましい。熱老化後の試験体についても同様である。
また、水浸漬老化後の剪断強度は3.0MPa以上が好ましい。熱老化後の剪断強度も同様である。
[0132] ・初期試験体の評価基準
・・「初期接着性に優れる」
本発明において、引張試験後の初期試験体の破壊状態が「CF」かつ初期剪断強度が3.0MPa以上である場合を「初期接着性に優れる」と評価した。
・・「初期接着性にやや劣る」
上記破壊状態が「CF」かつ初期剪断強度が3.0MPa未満である場合、又は
上記破壊状態が「CF/AF」かつ初期剪断強度が3.0MPa以上である場合を「初期接着性にやや劣る」と評価した。
・・「初期接着性に非常に劣る」
上記破壊状態が「CF/AF」かつ初期剪断強度が3.0MPa未満である場合、又は、上記破壊状態が「AF」である場合を、「初期接着性に非常に劣る」と評価した。
・・・
・・初期試験体の剪断強度の評価基準
なお、初期試験体の破壊状態の評価結果が同等であった場合、これらのうち剪断強度が高いほうを、初期接着性により優れるものとする。
[0133]
[表1]

[0134] 各表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
(1液型の接着剤組成物、又は、2液型の接着剤組成物の主剤)
・ウレタンプレポリマー:ポリオキシプロピレンジオール(商品名サンニックスPP2000、三洋化成工業社製、重量平均分子量2,000)70質量部とポリオキシプロピレントリオール(商品名サンニックスGP3000、三洋化成工業社製、重量平均分子量3,000)とMDI(商品名スミジュール44S、住化バイエルウレタン社製)とをNCO/OH(モル比)が2.0となるように混合し、混合物を80℃の条件下で5時間反応させて製造したウレタンプレポリマー
[0135] ・イソシアヌレート化合物1(PDI):上記式(C1−2)で表されるペンタメチレンジイソシネートのイソシアヌレート体(三井化学社製)。分子量462
・イソシアヌレート化合物2(HDI):上記式(C1−1)で表されるヘキサメチレンジイソシネートのイソシアヌレート体(三井化学社製)。分子量504
[0136] ・第2級アミノシラン化合物1(ビス型):下記式で表される化合物。N,N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン。商品名Silquest A−1170 silane、モーメンティブ社製。分子量341.5
[化18]

[0137] ・第2級アミノシラン化合物2:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン。Silquest Y−9669。モーメンティブ社製。分子量255
・・・
[0141] ・テルペン化合物1:カンフェンとフェノールとの付加物。上記付加物は、下記式(Z1−1)で表される化合物1、式(Z1−2)で表される化合物2、式(Z2−1)で表される化合物3、式(Z2−2)で表される化合物4及び式(Z3−1)で表される化合物5からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。ヤスハラケミカル社製。
[化20]

[0142] ・イソシアネートシラン化合物:3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、モーメンティブ社製
[0143] ・カーボンブラック:商品名ニテロン#200、新日化カーボン社製、HAF級カーボンブラック
・炭酸カルシウム1:重質炭酸カルシウム、商品名スーパーS、丸尾カルシウム社製
[0144] ・可塑剤1:ジイソノニルフタレート、ジェイプラス社製
・硬化触媒1:ジモルフォリノジエチルエーテル、商品名UCAT−660M、サンアプロ社製
[0145] (2液型の接着剤組成物の硬化剤)
・ポリオール化合物1:ポリオキシプロピレントリオール、重量平均分子量1,000、商品名EXCENOL1030、旭硝子社製。狭義の硬化剤に該当する。
・ポリオール化合物2:水酸基を末端に有する液状ポリブタジエンジオール(「poly bd R−45HT」、出光興産社製)。狭義の硬化剤に該当する。室温条件下で液状である。1分子中に約2個のヒドロキシ基を有する。
・・・
[0147] ・炭酸カルシウム2:脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウム、カルファイン200、丸尾カルシウム社製
・硬化触媒2 DMDEE:ジモルフォリノジエチルエーテル、商品名UCAT−660M、サンアプロ社製
・・・
[0149] これに対して、本発明の接着剤組成物は、オレフィン樹脂に対する接着耐久性に優れた。また、本発明の接着剤組成物は、オレフィン樹脂に対する初期接着性に優れた。」

(2)甲2

「【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル系ポリオール樹脂含有主剤組成物部;ポリイソシアネート含有硬化剤組成物部;フィラー:及び吸湿剤(moisture scavenger)を含み、
前記エステル系ポリオールは、DSC(Differential Scanning calorimetry)分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない非結晶性ポリオールであるか溶融温度(Tm)が15℃未満であることを特徴とする、二液型ウレタン系組成物。
【請求項2】
前記主剤組成物部又は前記硬化剤組成物部は、フィラー及び吸湿剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項3】
前記フィラーは、アルミナ、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiC又はBeOを含むことを特徴とする、請求項1に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項4】
前記エステル系ポリオール樹脂及びポリイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して、50〜2,000重量部のフィラーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項5】
前記吸湿剤は、メチルジフェニルエトキシシラン(methyldiphenylethoxysilane)、モレキュラーシーブ(molecular sieves)、p−トルエンスルホニルイソシアネート(p−toluenesulfonyl isocyanate:PTSI)、p−トルエン−スルホニルイソシアネート(p−toluene−sulfonyl isocyanate:TI)、酸無水物エステル(acid anhydride esters)、下記化学式で表示されるシラン化合物及びこれらの混合物のうち選択されることを特徴とする、請求項1に記載の二液型ウレタン系組成物。
[化学式]
R1SiR2(n)R3(3−n)
(前記化学式で、R1は、ケイ素原子に結合されている炭素間二重結合を有する官能基である。R2及びR3は、それぞれ独立的に、ケイ素原子に結合されているヒドロキシ基、ハロゲン、アミン基又は−R4R5を示し、R4は、酸素又は硫黄原子であり、R5は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基又は−R6R7であり、R6は、アルキレン基又はアルキリデン基であり、R7は、アルコキシ基である。)
【請求項6】
前記シラン化合物は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペントキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、又はビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランを含むことを特徴とする、請求項5に記載の二液型ウレタン系組成物。
・・・
【請求項12】
前記ポリイソシアネートは、非芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項1に記載の二液型ウレタン系組成物。」


「【0002】
技術分野
本出願は、樹脂組成物に関する。具体的に、本出願は、樹脂組成物と、前記樹脂組成物の硬化物と、を含むバッテリモジュール、バッテリパック及び自動車に関する。
・・・
【0006】
上記のように、バッテリモジュールやバッテリパックを構成する方法のうち一つは、複数のバッテリセルをバッテリモジュールの内部に固定できる接着素材を用いる方法である。このとき、前記接着素材は、バッテリモジュールの表面に形成された接着素材注入ホールを通じてバッテリモジュールの内部に注入され得る。注入のために液状のシリコン系が主に用いられるが、シリコン系の場合には、接着力が十分ではないか低分子量のシロキサンにより硬化後にも接点不良の問題が発生する。
【0007】
一方、上記のような接着力の問題を除去するために、二液型である常温硬化型ウレタン系接着剤が用いられ得るが、二液型ウレタンの成分中でもイソシアネートは水分に非常に脆弱である。」
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願の一つの目的は、上述した問題点を解決することができるバッテリモジュール用樹脂組成物を提供することである。
【0009】
本出願の他の目的は、放熱性、接着力、耐寒性、耐熱性、絶縁性及び接着信頼性に優れたバッテリモジュール用樹脂組成物を提供することである。
【0010】
本出願のまた他の目的は、バッテリモジュール及びバッテリパックを提供することである。」


「【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願に関する一つの例示で、本出願は、バッテリモジュール又はバッテリパックに用いられる組成物に関する。具体的に、本出願の組成物は、下記説明するように、バッテリモジュールのケース内部に注入され、バッテリモジュール内に存在する一つ以上のバッテリセルと接触してバッテリセルをモジュールケース内で固定するために用いられる組成物であってもよい。
【0013】
本出願で、前記組成物としては、ウレタン系組成物が用いられ得る。具体的に、本出願では、二液型ウレタン系組成物が用いられ得る。二液型ウレタンは、イソシアネート系化合物及びポリオール系化合物を混合して形成されるポリウレタンを意味することで、単一組成内にウレタン基を有する一液型ポリウレタンとは区別される。
【0014】
前記二液型ポリウレタンの場合、ポリオールなどを含む主剤とイソシアネートなどを含む硬化剤が常温で反応して硬化され得る。すなわち、本出願の組成物は、常温硬化型であってもよい。本出願で用語「常温」は、特に加温又は減温されない状態であって、約10℃〜30℃の範囲内のいずれか一つの温度、例えば、約15℃以上、約18℃以上、約20℃以上又は約23℃以上であり、約27℃以下の温度を意味する。前記硬化反応は、例えば、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL:dibutyltin dilaurate)のような触媒の助けを借りることができる。それによって、前記二液型ウレタン系組成物は、主剤成分(ポリオール)と硬化剤成分(イソシアネート)の物理的な混合物を含むことができ、そして/又は主剤成分と硬化剤成分の反応物(硬化物)を含むことができる。
【0015】
本出願の二液型ウレタン系組成物は、少なくともポリオール樹脂を含む主剤成分(又は主剤部)及び/又は少なくともポリイソシアネートを含む硬化剤成分(又は硬化剤部)を含むことができる。それによって、前記樹脂組成物の硬化物は、前記ポリオール由来の単位と前記ポリイソシアネート由来の単位を全て含むことができる。このとき、前記ポリオール由来の単位は、ポリオールがポリイソシアネートとウレタン反応して形成される単位であり、ポリイソシアネート由来の単位は、ポリイソシアネートがポリオールとウレタン反応して形成される単位であってもよい。
【0016】
また、前記組成物は、フィラーを含むことができる。 例えば、工程上必要に応じて揺変性を確保するために、そして/又はバッテリモジュールやバッテリパック内で放熱性(熱伝導性)を確保するために、下記説明するように、本出願の組成物には、過量のフィラーが含まれ得る。具体的な内容は、下記と関連された説明で詳しく記述する。
【0017】
また、前記組成物は、吸湿剤を含む。前記吸湿剤は、組成物に含まれる各構成に対する水分の悪影響を解消するために用いられ得る。例えば、前記吸湿剤は、主剤成分及び/又は硬化剤成分の保存安定性を確保するために用いられ得る。その具体的な内容は下で説明する。
・・・
【0035】
本出願で「ポリイソシアネート」とは、イソシアネート基を2以上含む化合物を意味する。
【0036】
本出願で、硬化剤成分に含まれるポリイソシアネートの種類は特に制限されないが、目的とする物性の確保のために芳香族基を含まない非芳香族イソシアネート化合物を用いることができる。すなわち、脂肪族又は脂環族系列を用いることが有利である。芳香族ポリイソシアネートを用いる場合、反応速度が過度に速く、硬化物のガラス転移温度が高くなる恐れがあるので、本出願の組成物の使用用途に適合な工程性と物性を確保しにくい場合がある。
【0037】
例えば、脂肪族又は脂肪族環状ポリイソシアネートやその変性物が用いられ得る。具体的に、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート又はテトラメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンジイソシアネート又はジシクロへキシルメタンジイソシアネートなどの脂肪族環状ポリイソシアネート;又は上記のうちいずれか一つ以上のカルボジイミド変性ポリイソシアネートやイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;などが用いられ得る。また、前記羅列された化合物のうち2個以上の混合物が用いられ得る。
【0038】
樹脂組成物内で前記ポリオール由来の樹脂成分とポリイソシアネート由来の樹脂成分の割合は、特に制限されず、これらの間のウレタン反応が可能になるように適切に調節され得る。
【0039】
上述したように、放熱性(熱伝導性)を確保するために又は工程上必要による揺変性の確保のために、過量のフィラーが組成物に含まれ得るが、過量のフィラーが用いられる場合、組成物の粘度が高くなってバッテリモジュールのケース内に前記組成物を注入するときの工程性が悪くなることがある。したがって、過量のフィラーを含むと共に、工程性に妨害にならないほどの十分な低粘度特性が必要である。また、単純に低粘度のみを示すと、やっぱり工程性の確保が困るので、適切な揺変性が要求され、硬化されながら優れた接着力を示し、硬化自体は常温で進行される必要がある。そして、エステル系ポリオールは、硬化後に接着性の確保には有利であるが、結晶性が強い方であるので、常温でワックス(wax)状態になる可能性が高く、粘度上昇によって適切な注入工程性の確保に不利な側面がある。たとえ、メルティング(melting)を通じて粘度を低めて用いる場合であっても、保存過程で自然的に発生する結晶性によりフィラーと混合した以後につながる組成物の注入又は塗布工程で結晶化による粘度上昇が発生し、結果的に工程性が低下され得る。このような点を考慮して、本出願で用いられるエステルポリオールは、下記特性を満足できる。
・・・
【0044】
また、本出願では、前記樹脂組成物の用途及びその用途によって要求される機能を確保するために、添加剤が用いられ得る。例えば、前記樹脂組成物は、樹脂層の熱伝導性、絶縁性及び耐熱性(TGA分析)などを考慮して、所定のフィラーを含むことができる。フィラーが樹脂組成物に含まれる形態や方式は特に制限されない。例えば、フィラーは、主剤成分及び/又は硬化剤成分にあらかじめ含まれた状態でウレタン系組成物の形成に用いられ得る。又は、主剤成分と硬化剤成分を混合する過程で、別途で用意したフィラーが一緒に混合される方式でも用いられ得る。
・・・
【0047】
一つの例示で、少なくても前記組成物に含まれるフィラーは、熱伝導性フィラーであってもよい。本出願で用語「熱伝導性フィラー」は、熱伝導度が約1W/mK以上、約5W/mK以上、約10W/mK以上又は約15W/mK以上である材料を意味する。具体的に、前記熱伝導性フィラーの熱伝導度は、約400W/mK以下、約350W/mK以下又は約300W/mK以下であってもよい。用いられる熱伝導性フィラーの種類は特に制限されず、絶縁性などを一緒に考慮するとき、セラミックスフィラーであってもよい。例えば、アルミナ、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiC又はBeOなどのようなセラミックス粒子が用いられ得る。前記フィラーの形態や割合は特に制限されず、ウレタン系組成物の粘度、組成物が硬化された樹脂層内での沈降可能性、目的とする熱抵抗乃至は熱伝導度、絶縁性、充填効果又は分散性などを考慮して適切に調節され得る。一般的にフィラーのサイズが大きくなるほどこれを含む組成物の粘度が高くなり、樹脂層内でフィラーが沈降する可能性が高くなる。また、サイズが小さくなるほど熱抵抗が高くなる傾向がある。したがって、上記のような点を考慮して適正種類及びサイズのフィラーが選択され得、必要に応じて、2種以上のフィラーを一緒に用いることもできる。また、充填される量を考慮すると、球形のフィラーを用いることが有利であるが、ネットワークの形成や伝導性などを考慮して針状や板状などのような形態のフィラーも用いられ得る。前記フィラーの熱伝導度は、公知された方法によって測定され得、このとき、フィラーの熱伝導度は、フィラーを溶融させた後に試片を作る方式で測定され得る。
・・・
【0049】
優れた放熱性能を得るために、熱伝導性フィラーを高含量で用いることを考慮することができる。例えば、前記フィラーは、全体樹脂成分、すなわち、前記エステル系ポリオール樹脂及びポリイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して、約50〜2,000重量部の範囲内で用いられ得る。他の例示で、前記フィラーの含量は、全体樹脂成分より過量で用いられ得る。具体的に、前記エステル系ポリオール樹脂及びポリイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して、約100重量部以上、約150重量部以上、約200重量部以上、約250重量部以上、約300重量部以上、約350重量部以上、約400重量部以上、約500重量部以上、約550重量部以上、約600重量部以上又は約650重量部以上のフィラーが用いられ得る。一つの例示で、フィラーが前記範囲ほど用いられる場合、主剤成分と硬化剤成分に同一の量に分配され得る。
【0050】
上記のように、高含量で熱伝導性フィラーが用いられる場合、フィラーを含む主剤成分、硬化剤成分又はこれらを含む組成物の粘度が増加しうる。説明したように、樹脂組成物の粘度が過度に高い場合、注入工程性が良くなく、それによって、樹脂層に要求される物性が樹脂層全体で充分に具現されない。このような点を考慮するとき、樹脂成分としては、液状であるか十分な流動を有する低粘度成分を用いることが好ましい。
・・・
【0052】
上記外にも、多様な種類のフィラーが用いられ得る。例えば、樹脂組成物が硬化された樹脂層の絶縁特性を確保するために、グラファイト(graphite)などのような炭素(系)フィラーの使用が考慮され得る。又は、例えば、フュームドシリカ、クレイ又は炭酸カルシウムなどのようなフィラーが用いられ得る。このようなフィラーの形態や含量の割合は特に制限されず、樹脂組成物の粘度、樹脂層内での沈降可能性、揺変性、絶縁性、充填効果又は分散性などを考慮して選択され得る。
・・・
【0054】
適正レベルの物性の確保のためにフィラーを用いると共に水分による副作用を最小化する方法として、熱乾燥などの前処理を通じてフィラーに吸着された絶対的な含湿量を減少させる方法を考慮することができる。その外にも本出願では、所定の吸湿剤が用いられ得る。吸湿剤を組成物内に含ませる場合、主剤成分又は硬化剤成分の保存安定性を確保し、水分による組成物の表面硬化や粘度上昇、及びそれによる工程上のエラーなどの問題を解消することができる。
【0055】
前記吸湿剤は、主剤成分及び/又は硬化剤成分に含まれ得る。特に、水分に脆弱なイソシアネートが含まれる硬化剤組成物に吸湿剤が用いられ得る。
【0056】
一つの例示で、前記吸湿剤は、例えば、メチルジフェニルエトキシシラン(methyldiphenylethoxysilane)、モレキュラーシーブ(molecular sieves)、p−トルエンスルホニルイソシアネート(p−toluenesulfonyl isocyanate:PTSI)、p−トルエン−スルホニルイソシアネート(p−toluene−sulfonyl isocyanate:TI)、例えば、ジメチルマロネート(diethyl malonate)及びジメチルサクシネート(dimethyl succinate)のような酸無水物エステル(acid anhydride esters)、下記化学式で表示される(不飽和)シラン化合物及びこれらの混合物であってもよい。
【0057】
[化学式]
R1SiR2(n)R3(3−n)
【0058】
前記化学式で、R1は、ケイ素原子に結合されている炭素間二重結合を有する官能基である。例えば、前記R1は、アルケニル基を含んでいてもよい。前記アルケニル基の炭素数は、2〜20、2〜12又は2〜6であってもよい。一つの例示で、R1は、ビニル、アリール、プロフェニル、イソプロフェニル、ブテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル又はγ−メタクリルオキシプロピルなどであってもよい。
【0059】
R2及びR3は、それぞれ独立的に、ケイ素原子に結合されている水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン、アミン基又は−R4R5を示し、R4は、酸素又は硫黄原子であり、R5は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基又は−R6R7であり、R6は、アルキレン基又はアルキリデン基であり、R7は、アルコキシ基であってもよい。
【0060】
また、前記化学式で、nは、1〜3の整数である。
【0061】
一つの例示で、本出願の吸湿剤として用いられる不飽和シラン化合物は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペントキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン又はこれらのうち2以上の混合物であってもよいが、これに特に制限されるものではない。
・・・
【0065】
前記組成物は、必要な粘度の調節、例えば、粘度を高めるかあるいは低めるために又はせん断力による粘度の調節のために、粘度調節剤、例えば、揺変性付与剤、希釈剤、分散剤、表面処理剤又はカップリング剤などをさらに含んでいてもよい。
・・・
【0069】
カップリング剤の場合は、例えば、アルミナのような熱伝導性フィラーの分散性を改善するために用いることができ、上記のような作用を示すものであれば、業界で公知にされた多様な種類のものを制限なしに用いることができる。
・・・
【0096】
本出願のバッテリモジュールは、樹脂層をさらに含むことができる。具体的に、本出願のバッテリモジュールは、フィラー含有組成物が硬化された硬化樹脂層を含むことができる。前記硬化樹脂層は、上述したウレタン系組成物から形成され得る。
【0097】
バッテリモジュールは、前記樹脂層として、前記上部板及びバッテリセルと接触している第1フィラー含有硬化樹脂層と、前記下部板とバッテリセルと接触している第2フィラー含有硬化樹脂層と、を含むことができる。前記第1及び第2フィラー含有硬化樹脂層のうち一つ以上は、上述したウレタン系組成物の硬化物を含むことができ、それによって、上述した所定の接着力、耐寒性、耐熱性及び絶縁性を有することができる。その外に、第1及び第2フィラー含有硬化樹脂層は、下記のような特性を有することができる。
・・・
【0107】
一つの例示で、前記樹脂層は、適切な高度を示すことが有利である。例えば、樹脂層の硬度が過度に高いと、樹脂層が脆い(brittle)特性を有するので、信頼性に悪い影響を与えることがある。このような点を考慮するとき、樹脂層の硬度を調節することで耐衝撃性、耐振動性を確保し、製品の耐久性を確保することができる。樹脂層は、例えば、ショアー(shore)Aタイプでの硬度が100未満、99以下、98以下、95以下又は93以下であるか、ショアーDタイプでの硬度が約80未満、約70以下、約65以下又は約60以下であってもよい。前記硬度の下限は特に制限されない。例えば、硬度は、ショアー(shore)Aタイプで硬度が60以上であるか、ショアー(shore)00タイプでの硬度が5以上又は約10以上程度であってもよい。前記範囲の硬度は、フィラーの含量などを調節することで確保され得る。ショアー硬度は、例えば、shore A硬度計のように、各タイプに合わせる硬度計を用いて公知された方法によって測定され得る。公知された方法としては、ASTM D2240などがある。
【0108】
上記のように、バッテリモジュール内に前記特性を満足する硬化樹脂層を形成することで、外部の衝撃や振動に対する耐久性に優れたバッテリモジュールが提供され得る。
・・・
【0110】
前記熱伝導性樹脂層は、前記下部板などと熱的に接触しており、また、前記バッテリセルとも熱的に接触していてもよい。上記のような構造の採用を通じて、一般的なバッテリモジュール又はそのようなモジュールの集合体であるバッテリパックの構成時に、既存に要求された多様な締結部品やモジュールの冷却装備などを大幅で減少させると共に、放熱特性を確保し、単位体積当たり一層多いバッテリセルが収納されるモジュールを具現することができる。これによって、本出願では、より小型であり、軽いと共に高出力のバッテリモジュールを提供することができる。
・・・
【発明の効果】
【0128】
本出願の一例によると、組成物内に流入した水分による工程性や保存安定性の低下を予防することができるウレタン系組成物が提供され得る。硬化された前記組成物は、バッテリセルをモジュールケース内で効果的に固定し、バッテリモジュールの放熱性を改善することができる。」


「【0130】
以下、実施例及び比較例を通じて本出願のバッテリモジュールを説明するが、本出願の範囲は下記提示された範囲によって制限されるものではない。
【0131】
評価方法
1.保存安定性
実施例及び比較例で製造されたイソシアネート含有硬化剤成分に対して粘度を測定した。具体的に、硬化剤成分に含まれる各構成を混合した後、2ヶ月が経過した時点の粘度を確認した。用意した組成物の初期粘度と比較するとき、2ヶ月が経過した後の粘度が過度に高くなる場合、すなわち、40万cPを超過する場合には、failと評価した。そして、適正レベルの粘度増加を示す場合、すなわち、約10万〜40万cPである場合には、passと評価した。熱のような外部要因が組成物に及ぼす影響が大きくならないように統制される条件で、初期粘度に比べて2ヶ月が経過した後の粘度が過度に高くなったことは、水分浸透によって保存安定性が低下したことで判断される。すなわち、failと評価された場合には、2ヶ月保管の間水分が浸透しながら水分とイソシアネート成分が反応し、それによって、粘度が上昇したと判断される。粘度は、流変物性測定器(ARES)を用いて常温で0.01〜10.0/sまでのせん断速度(shear rate)条件で測定した。下記表1に記載した粘度は、せん断速度2.5/sの地点での粘度である。
【0132】
2.熱伝導度
熱伝導度は、ISO 22007−2規格によって、下記構成組成物の硬化物に対して測定した。
【0133】
実施例及び比較例
<実施例1>
ポリオール:主剤組成物には、前記化学式2で表示されるカプロラクトン系ポリオールとして、繰り返し単位の数(化学式2のm)が約1〜3の程度のレベルであり、ポリオール由来の単位(化学式2のY)としては、1,4−ブタンジオールを含むポリオールを含む樹脂(Brookfield LV type粘度計で測定するとき、約280cPの粘度を有する)を所定量用いた。
【0134】
イソシアネート:硬化剤組成物には、HDI(Hexamethylene diisocyanate)とHDI trimerの混合物(Brookfield LV type粘度計で測定するとき、170cPの粘度を有する)を用いた。このとき、NCO indexが約100になるようにイソシアネート化合物の使用量を調節した。
【0135】
フィラー:アルミナを用いた。その含量は、前記ポリオールとイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して500重量部の割合になるようにし、主剤成分及び硬化剤成分に前記アルミナを当量に分割配合した。配合されたフィラーの場合、配合前に200℃のオーブンで12時間以上乾燥(水分処理)した後に用いた。
【0136】
吸湿剤:VTMO(vinyl trimethoxy silane)を用いた。その含量は、前記ポリオールとイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して20重量部の割合になるようにし、主剤成分及び硬化剤成分に前記VTMOを同量に分割配合した。
【0137】
触媒:ジブチル錫ジラウレート(DBTDL:dibutyltin dilaurate)を所定量用いた。
【0138】
<実施例2−4及び比較例1−2>
下記表1のように、組成を異にしたこと以外は、実施例1と同一の方法を用いた。
【0139】
【表1】



(3)甲3
「【請求項1】
内部空間を形成する下部板と側壁を有するモジュールケース;前記モジュールケースの内部空間に存在する複数のバッテリーセル;および前記モジュールケースの内部空間に存在する樹脂層を含み、
前記樹脂層は、前記複数のバッテリーセルと接触しており、また、前記モジュールケースの下部板または側壁と接触している、バッテリーモジュール。
・・・
【請求項12】
樹脂層は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、EVA樹脂またはシリコン樹脂を含む、請求項1に記載のバッテリーモジュール。
【請求項13】
樹脂層はフィラーを含む、請求項1に記載のバッテリーモジュール。」
「【0051】
樹脂層の種類はバッテリーセルの効果的な固定が可能であり、必要に応じて前記言及された物性を付与することができるものであれば、特に制限されず、公知の硬化性樹脂素材がすべて使用され得る。使用され得る素材としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、EVA(Ethylene vinyl acetate)系樹脂またはシリコン系樹脂などが挙げられ、したがって前記樹脂層は前記樹脂を含むことができる。前記樹脂層は、前記樹脂を樹脂成分の中で主成分として含むことができる。すなわち、前記樹脂層に含まれる全体樹脂成分の中で前記アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、EVA(Ethylene vinyl acetate)系樹脂またはシリコン系樹脂などは重量を基準として約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上または約90%以上含まれ得る。前記比率は約99%以下または約95%以下であり得る。
【0052】
樹脂層を形成する材料、すなわち樹脂組成物は、前述した通り接着材料であり得、また、溶剤型、水系または無溶剤型であり得るが、後述する製造工程の便宜などを考慮して無溶剤型樹脂層であることが適切であり得る。
【0053】
樹脂層材料は活性エネルギー線硬化型、湿気硬化型、熱硬化型または常温硬化型などであり得、同様に後述する製造工程の便宜性などを考慮して常温硬化型であることが適切であり得る。
【0054】
樹脂層は前述した、熱伝導性、絶縁性、耐熱性(TGA分析)または比重などを考慮してフィラーを含むことができる。適切なフィラーの使用を通じて前述した範囲の熱伝導度などを確保することができる。一つの例示において、前記フィラーは熱伝導性フィラーであり得る。本出願で用語、熱伝導性フィラーは、熱伝導度が約1W/mk以上、約5W/mk以上、約10W/mk以上または約15W/mk以上の素材を意味する。前記熱伝導性フィラーの熱伝導度は約400W/mk以下、約350W/mk以下または約300W/mk以下であり得る。使用され得る熱伝導性フィラーの種類は特に制限されないが、絶縁性などを考慮してセラミックフィラーを適用することができる。例えば、アルミナ、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、ZnO、SiCまたはBeOなどのようなセラミック粒子が使用され得る。また、樹脂層の絶縁特性が確保できるものであれば、グラファイト(graphite)などの炭素フィラーの適用も考慮することができる。樹脂層内に含まれる前記フィラーの形態や比率は特に制限されず、樹脂組成物の粘度、樹脂層内での沈降可能性、目的とする熱抵抗ないしは熱伝導度、絶縁性、充填効果または分散性などを考慮して選択され得る。一般的にフィラーのサイズが大きくなるほど樹脂組成物の粘度が高くなり、樹脂層内でフィラーが沈降する可能性が高くなる。また、サイズが小さくなるほど熱抵抗が高くなる傾向がある。したがって前記のような点を考慮して適正種類のフィラーを選択することができ、必要であれば、2種以上のフィラーを使用することもできる。また、充填される量を考慮すれば球型のフィラーを使用した方が有利であるが、ネットワークの形成や伝導性などを考慮して針状や板状などのような形態のフィラーも使用され得る。一つの例示において、前記樹脂層は平均粒径が0.001μm〜80μmの範囲内にある熱伝導性フィラーを含むことができる。前記フィラーの平均粒径は他の例示において、0.01μm以上、0.1以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上または約6μm以上であり得る。前記フィラーの平均粒径は他の例示において、約75μm以下、約70μm以下、約65μm以下、約60μm以下、約55μm以下、約50μm以下、約45μm以下、約40μm以下、約35μm以下、約30μm以下、約25μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下または約5μm以下であり得る。
【0055】
樹脂層に含まれるフィラーの比率は、前述した特性、例えば、熱伝導度、絶縁性などが確保されるように樹脂層の特性を考慮して選択され得る。例えば、前記フィラーは、樹脂層の樹脂成分100重量部対比約50〜2,000重量部の範囲内で含まれ得る。前記フィラーの重量部は他の例示において、約100重量部以上、約150重量部以上、約200重量部以上、約250重量部以上、約300重量部以上、約350重量部以上、約400重量部以上、約500重量部以上、約550重量部以上、約600重量部以上または約650重量部以上であり得る。
・・・
【発明の効果】
【0091】
本出願では簡単な工程と低費用で製造されながらも体積対比出力が優秀で、放熱特性などが優秀なバッテリーモジュール、その製造方法および前記製造方法に適用される樹脂組成物を提供することができる。
・・・
【0105】
実施例1.
【0106】
樹脂組成物の製造
2液型ウレタン系接着剤組成物(主剤:HP−3753(KPXケミカル)、硬化剤:TLA−100(旭化成))にアルミナ(粒度分布:1μm〜60μm)を前記2液型ウレタン系接着剤組成物が硬化後に約3W/mkの熱伝導度を示すことができる量(2液合計固形分100重量部対比約600〜900重量部の範囲内)で混合して、常温粘度が約250,000cP程度である樹脂組成物を製造し、これを下記バッテリーモジュールの製造に適用した。
【0107】
バッテリーモジュールの製造
図1のような形状のモジュールケースとして、アルミニウムで製造された下部板、側壁および上部板を有するモジュールケースを用いた。前記モジュールケースの下部板の内側面にはバッテリーセルの装着をガイドするガイド部が形成されており、前記モジュールケースの下部板の中心部には樹脂組成物の注入のための注入ホールが一定間隔で形成されており、下部板の末端には観察ホールが形成されている。前記モジュールケース内にバッテリーパウチを複数個積層したパウチの束を収納した。引き続き、前記モジュールケースの表面に上部板を覆った。その後、前記注入ホールに前記製造された樹脂組成物を、注入される組成物が観察ホールまで到達することが確認されるまで注入した後、硬化させてバッテリーモジュールを製造した。
・・・
【0111】
実施例3.
2液型ウレタン系接着剤組成物(主剤:PP−2000(KPXケミカル)、硬化剤:TLA−100(旭化成))にアルミナ(粒度分布:1μm〜60μm)を前記2液型ウレタン系接着剤組成物が硬化後に約3.5W/mkの熱伝導度を示すことができる量(2液合計固形分100重量部対比約600〜900重量部の範囲内)で混合し、常温粘度が約350,000cP程度となるように製造した樹脂組成物を用いたことを除いては実施例1と同一にバッテリーモジュールを製造した。
・・・
【0115】
実施例7.
2液型ウレタン系接着剤組成物(主剤:PP−2000(KPXケミカル)、硬化剤:TLA−100(旭化成))にアルミナ(粒度分布:1μm〜60μm)を前記2液型ウレタン系接着剤組成物が硬化後に約2W/mkの熱伝導度を示すことができる量(2液合計固形分100重量部対比約400〜900重量部の範囲内)で混合し、常温粘度が約150,000cP程度となるように製造した樹脂組成物を用いたことを除いては実施例1と同一にバッテリーモジュールを製造した。」

(4)甲4
「【請求項1】
下記関係式1で定義される初期粘度変化率が1.1〜5.0の範囲内であり、
下記関係式2で定義される初期粘度変化率が10以上であり、
下記関係式1及び2で、V1は、100,000〜500,000cPの範囲内であり、
V2は、2,000,000cP以下であり、V3は、5,000,000cP以上を満足する硬化性樹脂組成物。
[関係式1]
初期粘度変化率=V2/V1
[関係式2]
初期粘度変化率 V3/V1
(前記関係式1及び2で、V1は、初期粘度であって、樹脂組成物の主剤及び硬化剤成分を混合した後60秒以内に常温で測定した粘度値であり、V2は、V1が測定された樹脂組成物を常温で5分の間放置した後に測定された粘度値であり、V3は、V1が測定された樹脂組成物を常温で60分間放置後に測定された粘度値であり、V1〜V3は、流変物性測定器(ARES)を用いて0.01〜10.0/sまでのせん断速度(shear rate)の範囲で測定するとき、2.5/s地点で測定された粘度値である。)
・・・
【請求項4】
前記樹脂組成物は、二液型ウレタン系組成物であり、
前記二液型ウレタン系組成物は、エステル系ポリオール樹脂含有主剤組成物部;ポリイソシアネート含有硬化剤組成物部;及びフィラーを含み、
前記エステル系ポリオールは、DSC(Differential Scanning calorimetry)分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない非結晶性ポリオールであるか溶融温度(Tm)が15℃未満であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
・・・
【請求項12】
前記フィラーは、アルミナ、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiC又はBeOを含むことを特徴とする、請求項4〜11のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記エステル系ポリオール樹脂及びポリイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して、50〜2,000重量部のフィラーを含むことを特徴とする、請求項4〜12のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
上部板、下部板及び側壁を有し、前記上部板、下部板及び側壁により内部空間が形成されているモジュールケース;
前記モジュールケースの内部空間に存在する複数のバッテリセル;及び 請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物が硬化されて形成され、前記複数のバッテリセルと接触する樹脂層を含むことを特徴とする、バッテリモジュール。」
「【0032】
また、前記組成物は、フィラーを含むことができる。例えば、工程上必要に応じて揺変性を確保するために、そして/又はバッテリモジュールやバッテリパック内で放熱性(熱伝導性)を確保するために、下記説明するように、本出願の組成物には、過量のフィラーが含まれ得る。具体的な内容は、下記関連された説明で詳しく説明する。
・・・
【0062】
優れた放熱性能を得るために、熱伝導性フィラーを高含量で用いることを考慮することができる。例えば、前記フィラーは、全体樹脂成分、すなわち、前記エステル系ポリオール樹脂及びポリイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して、約50〜2,000重量部の範囲内で用いられ得る。他の例示で、前記フィラーの含量は、全体樹脂成分より過量で用いられ得る。具体的に、前記エステル系ポリオール樹脂及びポリイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して、約100重量部以上、約150重量部以上、約200重量部以上、約250重量部以上、約300重量部以上、約350重量部以上、約400重量部以上、約500重量部以上、約550重量部以上、約600重量部以上又は約650重量部以上のフィラーが用いられ得る。一つの例示で、フィラーが前記範囲ほど用いられる場合、主剤組成物部と硬化剤組成物部に同一の量に分配され得る。」

(5)甲5
「【請求項1】
エステル系ポリオール樹脂含有主剤組成物部;ポリイソシアネート含有硬化剤組成物部;及びフィラーを含む二液型ウレタン系組成物であって、
前記エステル系ポリオールは、DSC(Differential Scanning calorimetry)分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない非結晶性ポリオールであるか溶融温度(Tm)が15℃未満であることを特徴とする、二液型ウレタン系組成物。
・・・
【請求項10】
前記フィラーは、アルミナ、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiC又はBeOを含むことを特徴とする、請求項1に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項11】
前記エステル系ポリオール樹脂及びポリイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して、50〜2,000重量部のフィラーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項12】
前記エステル系ポリオール樹脂及びポリイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して、100〜2,000重量部のフィラーを含むことを特徴とする、請求項10に記載の二液型ウレタン系組成物。」
「【0009】
本出願の他の目的は、バッテリモジュールやバッテリパックに用いられる場合において、放熱性、接着力及び接着信頼性だけではなく工程性に優れた樹脂組成物を提供することである。
・・・
【0016】
また、前記組成物は、フィラーを含むことができる。 例えば、工程上必要に応じて揺変性を確保するために、そして/又はバッテリモジュールやバッテリパック内で放熱性(熱伝導性)を確保するために、下記説明するように、本出願の組成物には、過量のフィラーが含まれ得る。具体的な内容は、下記と関連された説明で詳しく記述する。
・・・
【0046】
優れた放熱性能を得るために、熱伝導性フィラーを高含量で用いることを考慮することができる。例えば、前記フィラーは、全体樹脂成分、すなわち、前記エステル系ポリオール樹脂及びポリイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して、約50〜2,000重量部の範囲内で用いられ得る。他の例示で、前記フィラーの含量は、全体樹脂成分より過量で用いられ得る。具体的に、前記エステル系ポリオール樹脂及びポリイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して、約100重量部以上、約150重量部以上、約200重量部以上、約250重量部以上、約300重量部以上、約350重量部以上、約400重量部以上、約500重量部以上、約550重量部以上、約600重量部以上又は約650重量部以上のフィラーが用いられ得る。一つの例示で、フィラーが前記範囲ほど用いられる場合、主剤成分と硬化剤成分に同一の量に分配され得る。
・・・
【発明の効果】
【0113】
本出願は、バッテリセルをモジュールケース内で効果的に固定し、バッテリモジュールの放熱性と製造工程性を改善することができる組成物を提供する発明の効果を有する。また、本出願によると、耐寒性、耐熱性、絶縁性及び接着信頼性に優れた樹脂層を有するバッテリモジュール及びバッテリパックが提供される。それによって、体積対比出力に優れるだけでなく放熱特性及び耐久性が改善されたバッテリモジュール及びバッテリパックが提供され得る。」

(6)甲6
「【請求項1】
下部板と側壁によって内部空間が形成されており、前記下部板または側壁には注入口が形成されているモジュールケース;前記内部空間に存在する複数のバッテリーセル;および前記バッテリーセルと接触しながら前記下部板または側壁と接触している樹脂層を含むバッテリーモジュールの製造方法であって、
前記下部板または側壁の注入口を覆うようにテープを付着する段階;樹脂組成物の注入装置が前記テープを貫通して前記注入口に装着されるように、前記注入装置を装着する段階;および装着された注入装置で樹脂組成物を注入する段階を含む、バッテリーモジュールの製造方法。
・・・
【請求項9】
樹脂組成物は常温硬化型樹脂組成物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のバッテリーモジュールの製造方法。
【請求項10】
樹脂組成物は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、EVA系樹脂またはシリコン系樹脂である樹脂成分を含むか、または前記樹脂のうちいずれか一つ以上の前駆体を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のバッテリーモジュールの製造方法。
【請求項11】
樹脂組成物はフィラーをさらに含む、請求項10に記載のバッテリーモジュールの製造方法。
【請求項12】
樹脂組成物は、樹脂成分または前駆体100重量部対比50〜2,000重量部の範囲内のフィラーを含む、請求項11に記載のバッテリーモジュールの製造方法。」
「【0080】
本出願ではこのような特性を確保する樹脂組成物として、ウレタン系樹脂組成物を適用することができる。すなわち、前記樹脂層は、ウレタン系樹脂層、すなわちウレタン樹脂を、樹脂成分のうち主成分として含む樹脂層であり得る。
【0081】
ウレタン系樹脂組成物は、少なくともポリオールなどを含む主剤組成物部;および少なくともイソシアネート化合物を含む硬化剤組成物部を含む二液型であり得、このような二液型を配合して樹脂組成物を調製し、これを硬化させて前記樹脂層を形成することができる。
・・・
【0105】
したがって、樹脂組成物は前述した、熱伝導性、絶縁性、耐熱性(TGA分析)または比重などを考慮してフィラーを含むことができる。必要な場合に適切なフィラーの使用を通じて、前述した範囲の熱伝導度などを確保することができる。一つの例示において、少なくとも熱伝導性のフィラー含有硬化樹脂層に含まれる前記フィラーは、熱伝導性フィラーであり得る。本出願で用語熱伝導性フィラーは、熱伝導度が約1W/mK以上、5W/mK以上、10W/mK以上または約15W/mK以上の素材を意味する。前記熱伝導性フィラーの熱伝導度は約400W/mK以下、350W/mK以下または約300W/mK以下であり得る。使われ得る熱伝導性フィラーの種類は特に制限されないが、絶縁性などを考慮してセラミックフィラーを適用することができる。例えば、アルミナ、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiCまたはBeOなどのようなセラミック粒子が使われ得る。また、樹脂層の絶縁特性が確保され得るのであれば、グラファイト(graphite)等の炭素フィラーの適用も考慮することができる。樹脂組成物内に含まれる前記フィラーの形態や比率は特に制限されず、樹脂組成物の粘度、樹脂層内での沈降可能性、目的とする熱抵抗乃至は熱伝導度、絶縁性、充填効果または分散性などを考慮して選択され得る。一般的にフィラーのサイズが大きくなるほど樹脂組成物の粘度が高くなり、樹脂層内でフィラーが沈降する可能性が高くなる。また、サイズが小さくなるほど熱抵抗が高くなる傾向がある。したがって、前記のような点を考慮して適正種類のフィラーが選択され得、必要であれば2種以上のフィラーを使うこともできる。また、充填される量を考慮すると、球型のフィラーを使うことが有利であるが、ネットワークの形成や伝導性などを考慮して針状や板状などのような形態のフィラーも使われ得る。一つの例示において、前記樹脂層は平均、が約0.001μm〜約80μmの範囲内にある熱伝導性フィラーを含むことができる。前記フィラーの平均粒径は他の例示で約0.01μm以上、0.1以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上または約6μm以上であり得る。前記フィラーの平均粒径は他の例示で約75μm以下、70μm以下、65μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下または約5μm以下であり得る。
【0106】
熱伝導性である樹脂層または樹脂組成物に含まれるフィラーの比率は、前述した特性、例えば、熱伝導度、絶縁性などが確保されるように、樹脂層の特性を考慮して選択され得る。例えば、前記フィラーは、樹脂層または樹脂組成物の樹脂成分またはその前駆体100重量部対比約50〜約2,000重量部の範囲内で含まれ得る。前記フィラーの重量部は他の例示で約100重量部以上、約150重量部以上、200重量部以上、250重量部以上、300重量部以上、350重量部以上、400重量部以上、500重量部以上、550重量部以上、600重量部以上または約650重量部以上であり得る。
・・・
【発明の効果】
【0118】
本出願では逆吐出現状が発生することなく、簡単な工程と低費用でバッテリーモジュールを製造する方法を提供することができる。」

(7)甲7
「【請求項1】
上部板、下部板および側壁を有し、前記上部板、下部板および側壁によって内部空間が形成されているモジュールケース;前記モジュールケースの内部空間に存在する複数のバッテリセル;前記バッテリセルと接触しながら前記上部板と接触している第1フィラー含有硬化樹脂層および前記バッテリセルと接触しながら前記下部板と接触している第2フィラー含有硬化樹脂層を含む、バッテリモジュール。
・・・
【請求項5】
第1および第2フィラー含有硬化樹脂層は、ウレタン樹脂層である、請求項1から4のいずれか一項に記載のバッテリモジュール。
・・・
【請求項12】
第1フィラー含有硬化樹脂層はフュームドシリカ、クレー、炭酸カルシウム、アルミナ、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiC、BeOまたは炭素フィラーを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のバッテリモジュール。
【請求項13】
第1フィラー含有硬化樹脂層は、樹脂成分100重量部に対して100〜300重量部のフィラーを含む、請求項12に記載のバッテリモジュール。【請求項14】
第2フィラー含有硬化樹脂層は、セラミック粒子または炭素系フィラーである熱伝導性フィラーを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のバッテリモジュール。
【請求項15】
第2フィラー含有硬化樹脂層は、樹脂成分100重量部に対して500〜2,000重量部のフィラーを含む、請求項14に記載のバッテリモジュール。」
「【0064】
本出願ではこのような特性を確保する樹脂組成物として、ウレタン系樹脂組成物を適用する。すなわち、前記樹脂層は、ウレタン系樹脂層、すなわちウレタン樹脂を樹脂成分の中で主成分として含む樹脂層であり得る。
【0065】
ウレタン系樹脂組成物は、少なくともポリオールなどを含む主剤組成物部;および少なくともイソシアネート化合物を含む硬化剤組成物部を含む2液型であり得、このような2液型を配合して樹脂組成物を調製し、これを硬化させて前記樹脂層を形成することができる。
・・・
【0089】
樹脂層は前述した、熱伝導性、絶縁性、耐熱性(TGA分析)または比重などを考慮してフィラーを含むことができる。必要な場合に適切なフィラーの使用を通じて、前述した範囲の熱伝導度などを確保することができる。一例示において、少なくとも熱伝導性のフィラー含有硬化樹脂層に含まれる前記フィラーは、熱伝導性フィラーであり得る。本出願で用語熱伝導性フィラーは、熱伝導度が約1W/mK以上、約5W/mK以上、約10W/mK以上または約15W/mK以上の素材を意味する。前記熱伝導性フィラーの熱伝導度は約400W/mK以下、約350W/mK以下または約300W/mK以下であり得る。使用され得る熱伝導性フィラーの種類は特に制限されないが、絶縁性などを考慮してセラミックフィラーを適用することができる。例えば、アルミナ、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiCまたはBeOなどのようなセラミック粒子が使用され得る。また、樹脂層の絶縁特性が確保され得るものであれば、グラファイト(graphite)等の炭素フィラーの適用も考慮することができる。樹脂層内に含まれる前記フィラーの形態や比率は特に制限されず、樹脂組成物の粘度、樹脂層内での沈降の可能性、目的とする熱抵抗乃至は熱伝導度、絶縁性、充填効果または分散性などを考慮して選択され得る。一般的にフィラーのサイズが大きくなるほど樹脂組成物の粘度が高くなり、樹脂層内でフィラーが沈降する可能性が高くなる。また、サイズが小さくなるほど熱抵抗が高くなる傾向がある。したがって、前記のような点を考慮して適正種類のフィラーを選択することができ、必要であれば2種以上のフィラーを用いることもできる。また、充填される量を考慮すると球状のフィラーを用いることが有利であるが、ネットワークの形成や伝導性などを考慮して針状または板状などのような形態のフィラーも用いられ得る。一例示において、前記樹脂層は平均粒径が0.001μm〜80μmの範囲内にある熱伝導性フィラーを含むことができる。前記フィラーの平均粒径は他の例示において、0.01μm以上、0.1以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上または約6μm以上であり得る。前記フィラーの平均粒径は他の例示において、約75μm以下、約70μm以下、約65μm以下、約60μm以下、約55μm以下、約50μm以下、約45μm以下、約40μm以下、約35μm以下、約30μm以下、約25μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下または約5μm以下であり得る。
【0090】
熱伝導性である樹脂層に含まれるフィラーの比率は、前述した特性、例えば、熱伝導度、絶縁性などが確保され得るように、樹脂層の特性を考慮して選択され得る。例えば、前記フィラーは、樹脂層の樹脂成分100重量部に対して約50〜2,000重量部の範囲内で含まれ得る。前記フィラーの重量部は他の例示において、約100重量部以上、約150重量部以上、約200重量部以上、約250重量部以上、約300重量部以上、約350重量部以上、約400重量部以上、約500重量部以上、約550重量部以上、約600重量部以上または約650重量部以上であり得る。」

(8)甲8
「[請求項1] ベース樹脂と、
前記ベース樹脂中に混合された放熱フィラーと、
前記ベース樹脂中に混合された中空粒子と、
前記ベース樹脂中に生成された気泡とからなる複合材料。
[請求項2] 前記ベース樹脂は、熱硬化性樹脂であり、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂のうちの少なくとも一種により構成されている
請求項1に記載の複合材料。
[請求項3] 前記ベース樹脂は、熱可塑性エラストマーであり、熱可塑性スチレン、熱可塑性ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリエステル系エラストマー、熱可塑性加硫エラストマー、熱可塑性塩化ビニル系エラストマー、熱可塑性ポリアミド系エラストマー、有機過酸化物で部分架橋してなるブチルゴム系熱可塑性エラストマーから選ばれる1種又は2種以上、もしくはこれらの共重合体、あるいはスチレン−ビニルイソプレンブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン及びスチレン系エラストマーの混合物又は共重合体のうちの少なくとも一種により構成されている請求項1に記載の複合材料。
[請求項4] 前記放熱フィラーは、窒化ホウ素(BN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、炭素繊維のうちの少なくとも一種により構成されている請求項1に記載の複合材料。」
「[0002] これまでに電子部品から発生する熱を効率よく放熱させるために、電子機器の筐体内や電子部品と放熱部品の空間を放熱性能の高い樹脂で充填する技術(ポッティングと称される)が提案されている(特許文献1)。空気よりも熱伝導率の高い樹脂で空間を充填することにより、電子部品から発生する熱を効率よく放熱することが可能になる。
・・・
[0004] しかし、放熱性能の高い樹脂は一般に放熱フィラーとしてアルミナ(Al2O3), 窒化ホウ素(BN), 窒化アルミニウム(AIN)などの密度の高い無機微粒子を充填しているため、その比重がベース樹脂よりも大きくなる。その放熱樹脂を電子機器等に大量に充填するとその電子機器の重量が大きくなるという問題がある。そこで、軽くて(低比重)、熱伝導率の高い複合材料が求められている。
・・・
[0010] 本技術によれば、熱伝導率が高く放熱効果に優れ、かつ、軽い(低比重)な複合材料および電子機器を実現することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
・・・
[0028] [1−2.複合材料の構成]
次に、電子機器10内の空間に充填されている複合材料17の詳細について説明する。複合材料17は、ベース樹脂21、放熱フィラー22、中空粒子23および気泡24から構成されており、放熱材として機能するものである。
[0029] 複合材料17は、硬化(固化)前は液状で流動性を有し、1液の加熱、2液の混合または加熱により硬化(固化)するものである。複合材料17の粘度は500Pa・s以下が好ましく、さらに好ましくは100Pa・s以下である。硬化(固化)条件は室温〜100℃の環境で数時間、好ましくは室温〜60℃の環境で数分間である。
・・・
[0034] 複合材料17の熱伝導性を向上させるために、ベース樹脂21に放熱フィラー22が混合されている。放熱フィラー22としては、絶縁性のものとして、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムを用いることができる。また、放熱フィラー22としては、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ダイヤモンドなどを用いてもよい。導電性のものとしては、炭素繊維、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、アルミニウム、銅などがある。導電性のものを使用する際には、それらを絶縁コーティングするか、複合材料17と接する回路基板等部材側を絶縁コーティングする必要がある。また、これら放熱フィラー22は単独でも複数種類を組み合わせて用いてもよい。また、これら放熱フィラー22は、樹脂との界面接着性を高めるため、適切な表面処理がなされていてもよい。例えば、ベース樹脂21としてシリコーン樹脂、放熱フィラー22として酸化アルミニウムを用いる場合には、シランカップリング剤でフィラーの表面処理がなされてから混合される。なお、電子機器10が備える撮像素子14、制御回路15、バッテリー16などの回路部品、電子部品などが絶縁コーティングされている場合には上述の放熱フィラー22として用いる材料は絶縁コーティングせずに使用することができる。
・・・
[0055] また、バッテリー16は直接複合材料17に接触してもよいが、筐体11内においてバッテリー16を収めるバッテリーケースが複合材料17で埋まってしまうとバッテリー16を収めることができなくなってしまう。よって、筐体11内にバッテリーケースを設ける場合、バッテリーケースが複合材料17で埋まらないようにバッテリー16と同じ形状の物体をバッテリーケースに設けておくとよい。複合材料17充填後、その物体を外せばバッテリー16をバッテリーケースに収めることができる。なお、複合材料17がバッテリー16に直接接触したほうが温度上昇防止効果は高い。」

(9)甲9
「【請求項1】
内部空間を形成する下部板と側壁を有するモジュールケース;前記モジュールケースの内部空間に存在する複数のバッテリセル;および前記モジュールケースの内部空間に存在する樹脂層を含み、 前記樹脂層は、UL 94 VテストでV−0等級以上の難燃性を有し、樹脂成分とリン系難燃剤を含む、バッテリモジュール。
・・・
【請求項13】
樹脂層は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、EVA樹脂またはシリコン樹脂を含む、請求項1に記載のバッテリモジュール。
【請求項14】
樹脂層はフィラーを含む、請求項1に記載のバッテリモジュール。
【請求項15】
フィラーは、セラミック粒子または炭素系フィラーである、請求項14に記載のバッテリモジュール。」
「【0053】
樹脂層の種類は、バッテリセルの効果的な固定が可能であり、必要に応じて前記言及された物性が付与され得るものであれば特に制限されず、公知の硬化性樹脂素材がすべて使われ得る。
【0054】
前記樹脂層は、基本的に樹脂成分を含む樹脂組成物を硬化させて形成することができ、したがって前記樹脂層または前記樹脂組成物は樹脂成分を含むことができる。使われ得る樹脂成分としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、EVA(Ethylene vinyl acetate)系樹脂またはシリコン系樹脂などが挙げられ、したがって前記樹脂層は前記樹脂を含むことができる。前記樹脂層は、前記樹脂を樹脂成分のうち主成分で含むことができる。すなわち、前記樹脂層に含まれる全体樹脂成分のうち前記アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、EVA(Ethylene vinyl acetate)系樹脂またはシリコン系樹脂などは重量を基準に約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上または約90%以上含まれ得る。前記比率は約99%以下または約95%以下であり得る。
・・・
【0057】
樹脂層は前述した、熱伝導性、絶縁性、耐熱性(TGA分析)または比重などを考慮してフィラーを含むことができる。適切なフィラーの使用を通じて前述した範囲の熱伝導度などを確保することができる。一つの例示において、前記フィラーは熱伝導性フィラーであり得る。本出願で用語熱伝導性フィラーは、熱伝導度が約1W/mK以上、約5W/mK以上、約10W/mK以上または約15W/mK以上の素材を意味する。前記熱伝導性フィラーの熱伝導度は、約400W/mK以下、約350W/mK以下または約300W/mK以下であり得る。使われ得る熱伝導性フィラーの種類は特に制限されないが、絶縁性などを考慮してセラミックフィラーを適用することができる。例えば、アルミナ、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiCまたはBeOなどのようなセラミック粒子が使われ得る。また、樹脂層の絶縁特性が確保され得るのであれば、グラファイト(graphite)などの炭素フィラーの適用も考慮することができる。樹脂層内に含まれる前記フィラーの形態や比率は特に制限されず、樹脂組成物の粘度、樹脂層内での沈降可能性、目的とする熱抵抗ないしは熱伝導度、絶縁性、充填効果または分散性などを考慮して選択され得る。一般に。フィラーのサイズが大きくなるほど樹脂組成物の粘度が高くなり、樹脂層内でフィラーが沈降する可能性が高くなる。また、サイズが小さくなるほど熱抵抗が高くなる傾向がある。したがって、前記のような点を考慮して適正種類のフィラーが選択され得、必要であれば2種以上のフィラーを使うこともできる。また、充填される量を考慮すれば、球形フィラーを使うことが有利であるが、ネットワークの形成や伝導性などを考慮して針状や板状などのような形態のフィラーも使われ得る。一つの例示において、前記樹脂層は平均粒径が0.001μm〜80μmの範囲内にある熱伝導性フィラーを含むことができる。前記フィラーの平均粒径は他の例示において、0.01μm以上、0.1以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上または約6μm以上であり得る。前記フィラーの平均粒径は他の例示において、約75μm以下、約70μm以下、約65μm以下、約60μm以下、約55μm以下、約50μm以下、約45μm以下、約40μm以下、約35μm以下、約30μm以下、約25μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下または約5μm以下であり得る。
【0058】
樹脂層に含まれるフィラーの比率は、前述した特性、例えば、熱伝導度、絶縁性などが確保されるように樹脂層の特性を考慮して選択され得る。例えば、前記フィラーは、樹脂層の樹脂成分100重量部対比約50重量部以上の範囲内で含まれ得る。前記フィラーの重量部は他の例示において、約100重量部以上、約150重量部以上、約200重量部以上、約250重量部以上、約300重量部以上、約350重量部以上、約400重量部以上、約500重量部以上、約550重量部以上、約600重量部以上、約650重量部以上または約700重量部以上であり得る。前記フィラーの比率の上限は特に制限されず、例えば、前述した樹脂層の熱伝導度を満足させることができる範囲内で制御され得る。一例示において、前記フィラーの比率は前記樹脂成分100重量部対比約2,000重量部以下、1,800重量部以下、1,600重量部以下、1,400重量部以下、1,200重量部以下、1,000重量部以下、950重量部以下または900重量部以下であり得る。
・・・
【発明の効果】
【0102】
本出願では簡単な工程と低費用で製造されながらも体積対比出力が優秀であり、放熱特性などが優秀なバッテリモジュール、その製造方法および前記製造方法に適用される樹脂組成物を提供することができる。
・・・
【0115】
実施例1
【0116】
樹脂組成物の製造
2液型ウレタン系接着剤組成物(主剤:HP−3753(KPXケミカル)、硬化剤:TLA−100(旭化成製))にアルミナ(粒度分布:1μm〜60μm)を前記2液型ウレタン系接着剤組成物が難燃剤が配合されていない状態で硬化後に約3W/mKの熱伝導度を示すことができる量(2液樹脂成分合計100重量部対比約600〜900重量部の範囲内)で混合した。引き続き、前記接着剤組成物の2液樹脂成分合計100重量部対比約15重量部のレゾシノールビス(ジフェニルホスファイト)(resorcinol bis(diphenylphosphate))と、同じく約15重量部のアルミニウムホスフィネート(Aluminium phosphinate)をさらに配合して樹脂組成物を製造した。前記でレゾシノールビス(ジフェニルホスファイト)は、リン(P)の含有量が約10〜12%である液相リン系難燃剤であり、アルミニウムホスフィネートはリン(P)含有量が約23〜24%程度である固相難燃剤であって、粒度分布50%粒径(D50)が約5μm程度であり、分解温度が約350℃である固相リン系難燃剤である。
【0117】
バッテリモジュールの製造
図1のような形状のモジュールケースであって、アルミニウムで製造された下部板、側壁および上部板を有するモジュールケースを使った。前記モジュールケースの下部板の内側面にはバッテリセルの装着をガイドするガイド部が形成されており、前記モジュールケースの下部板の中心部には樹脂組成物の注入のための注入ホールが一定の間隔で形成されており、下部板の末端には観察ホールが形成されている。前記モジュールケース内にバッテリパウチを複数個積層したパウチの束を収納した。引き続き前記モジュールケースの上面に上部板を被せた。その後、前記注入ホールに前記製造された樹脂組成物を、注入される組成物が観察ホールまで到達するのが確認されるまで注入した後、硬化させてバッテリモジュールを製造した。」

(10)甲10
「【請求項1】
バッテリーセルをガイドする2個以上の凸部が形成されている下部板を有するモジュールケース;前記凸部の間に装着されている複数のバッテリーセル;前記凸部の間の下部板の表面と前記バッテリーセルの間に存在する冷却プレート;および前記凸部の上部表面を覆った状態で前記複数のバッテリーセルの間に位置する冷却ピンを含み、
前記冷却ピンと下部板の凸部の間で前記冷却ピンおよび凸部と接触しており、熱伝導度が2W/mK以上である樹脂層をさらに含む、バッテリーモジュール。
・・・
【請求項10】
樹脂層は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、EVA樹脂またはシリコン樹脂を含む、請求項1に記載のバッテリーモジュール。
【請求項11】
樹脂層はフィラーを含む、請求項1に記載のバッテリーモジュール。
【請求項12】
フィラーは、セラミック粒子または炭素系フィラーである、請求項11に記載のバッテリーモジュール。」
「【0051】
樹脂層の種類は、バッテリーセルの効果的な固定が可能であり、必要に応じて前記言及された物性を付与できるものであれば特に制限されず、公知の硬化性樹脂素材をすべて使うことができる。使用できる素材としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、EVA(Ethylene vinyl acetate)系樹脂またはシリコン系樹脂などが挙げられ、したがって前記樹脂層は前記樹脂を含むことができる。前記樹脂層は、前記樹脂を樹脂成分のうち主成分として含むことができる。すなわち、前記樹脂層に含まれる全体樹脂成分のうち前記アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、EVA(Ethylene vinyl acetate)系樹脂またはシリコン系樹脂などは、重量を基準として約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上または約90%以上含まれ得る。前記比率は約99%以下または約95%以下であり得る。
・・・
【0054】
樹脂層は前述した、熱伝導性、絶縁性、耐熱性(TGA分析)または比重などを考慮してフィラーを含むことができる。適切なフィラーの使用を通じて前述した範囲の熱伝導度などを確保することができる。一つの例示において、前記フィラーは熱伝導性フィラーであり得る。本出願で用語熱伝導性フィラーは、熱伝導度が約1W/mK以上、約5W/mK以上、約10W/mK以上または約15W/mK以上の素材を意味する。前記熱伝導性フィラーの熱伝導度は、約400W/mK以下、約350W/mK以下または約300W/mK以下であり得る。使用できる熱伝導性フィラーの種類は特に制限されないが、絶縁性などを考慮してセラミックフィラーを適用することができる。例えば、アルミナ、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiCまたはBeOなどのようなセラミック粒子が使われ得る。また、樹脂層の絶縁特性を確保することができるのであれば、グラファイト(graphite)などの炭素フィラーの適用も考慮することができる。樹脂層内に含まれる前記フィラーの形態や比率は特に制限されず、樹脂組成物の粘度、樹脂層内での沈降可能性、目的とする熱抵抗乃至は熱伝導度、絶縁性、充填効果または分散性などを考慮して選択され得る。一般に、フィラーのサイズが大きくなるほど樹脂組成物の粘度が高くなり、樹脂層内でフィラーが沈降する可能性が高くなる。また、サイズが小さくなるほど熱抵抗が高くなる傾向がある。したがって、前記のような点を考慮して適正種類のフィラーを選択することができ、必要であれば、2種以上のフィラーを使うこともできる。また、充填される量を考慮すると、球型のフィラーを使うことが有利であるが、ネットワークの形成や伝導性などを考慮して針状や板状などのような形態のフィラーも使われ得る。一つの例示において前記樹脂層は、平均粒径が0.001μm〜80μmの範囲内にある熱伝導性フィラーを含むことができる。前記フィラーの平均粒径は他の例示で0.01μm以上、0.1以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上または約6μm以上であり得る。前記フィラーの平均粒径は、他の例示で約75μm以下、約70μm以下、約65μm以下、約60μm以下、約55μm以下、約50μm以下、約45μm以下、約40μm以下、約35μm以下、約30μm以下、約25μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下または約5μm以下であり得る。
【0055】
樹脂層に含まれるフィラーの比率は、前述した特性、例えば、熱伝導度、絶縁性などが確保されるように、樹脂層の特性を考慮して選択され得る。例えば、前記フィラーは、樹脂層の樹脂成分100重量部対比約50〜2,000重量部の範囲内で含まれ得る。前記フィラーの重量部は、他の例示で約100重量部以上、約150重量部以上、約200重量部以上、約250重量部以上、約300重量部以上、約350重量部以上、約400重量部以上、約500重量部以上、約550重量部以上、約600重量部以上または約650重量部以上であり得る。
・・・
【発明の効果】
【0088】
本出願では簡単な工程と低費用で製造されながらも体積対比出力が優秀であり、放熱特性などが優秀なバッテリーモジュール、その製造方法および前記製造方法に適用される樹脂組成物を提供することができる。
・・・
【0101】
実施例1.
【0102】
2液型ウレタン系接着剤組成物(主剤:HP−3753(KPXケミカル)、硬化剤:TLA−100(旭化成製))にアルミナ(粒度分布:1μm〜60μm)を前記2液型ウレタン系接着剤組成物が硬化後に約3W/mKの熱伝導度を表わすことができる量(2液合計固形分100重量部対比約600〜900重量部の範囲内)で混合し、常温粘度が約250,000cP程度の樹脂組成物を製造し、これを下記のバッテリーモジュールの製造に適用した。
【0103】
バッテリーモジュールの製造
製造された樹脂組成物を使って図2のような形状のバッテリーモジュールを製造した。図2の形態において、下部板101、冷却ピン201および冷却プレート202はすべてアルミニウムで製造された。前記下部板の表面に前記製造された樹脂組成物を下部板全体を覆うように塗布した後、その上部に冷却ピンと冷却プレートをそれぞれ装着し、凸部の表面を覆うように装着された冷却ピンの間にバッテリーセルを装着し、樹脂組成物を硬化させてバッテリーモジュールを製造した。
・・・
【0107】
実施例3.
2液型ウレタン系接着剤組成物(主剤:PP−2000(KPXケミカル)、硬化剤:TLA−100(旭化成製))にアルミナ(粒度分布:1μm〜60μm)を前記2液型ウレタン系接着剤組成物が硬化後に約3.5W/mKの熱伝導度を表わすことができる量(2液合計固形分100重量部対比約600〜900重量部の範囲内)で混合し、常温粘度が約350,000cP程度となるように製造した樹脂組成物を使ったことを除いては、実施例1と同じようにしてバッテリーモジュールを製造した。
・・・
【0109】
実施例5.
2液型ウレタン系接着剤組成物(主剤:PP−2000(KPXケミカル)、硬化剤:TLA−100(旭化成製))にアルミナ(粒度分布:1μm〜60μm)を前記2液型ウレタン系接着剤組成物が硬化後に約2W/mKの熱伝導度を表わすことができる量(2液合計固形分100重量部対比約400〜900重量部の範囲内)で混合し、常温粘度が約150,000cP程度となるように製造した樹脂組成物を使ったことを除いては、実施例1と同じようにしてバッテリーモジュールを製造した。
【0110】
実施例6.
実施例5と同一にバッテリーモジュールを製造するものの、樹脂組成物が下部板面積の約50%を覆うようにしてモジュールを製造した。」

(11)甲11
【請求項1】
内部空間を形成する下部板と側壁を有するモジュールケース;前記モジュールケースの内部空間に存在する複数のバッテリーセル;および前記モジュールケースの内部空間に存在する樹脂層を含み、
前記樹脂層は、前記複数のバッテリーセルと接触しており、また、前記モジュールケースの下部板または側壁と接触している、バッテリーモジュール。
・・・
【請求項12】
樹脂層は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、EVA樹脂またはシリコン樹脂を含む、請求項1に記載のバッテリーモジュール。
【請求項13】
樹脂層はフィラーを含む、請求項1に記載のバッテリーモジュール。
【請求項14】
フィラーは、セラミック粒子または炭素系フィラーである、請求項13に記載のバッテリーモジュール。」
「【0051】
樹脂層の種類はバッテリーセルの効果的な固定が可能であり、必要に応じて前記言及された物性を付与することができるものであれば、特に制限されず、公知の硬化性樹脂素材がすべて使用され得る。使用され得る素材としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、EVA(Ethylene vinyl acetate)系樹脂またはシリコン系樹脂などが挙げられ、したがって前記樹脂層は前記樹脂を含むことができる。前記樹脂層は、前記樹脂を樹脂成分の中で主成分として含むことができる。すなわち、前記樹脂層に含まれる全体樹脂成分の中で前記アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、EVA(Ethylene vinyl acetate)系樹脂またはシリコン系樹脂などは重量を基準として約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上または約90%以上含まれ得る。前記比率は約99%以下または約95%以下であり得る。
【0052】
樹脂層を形成する材料、すなわち樹脂組成物は、前述した通り接着材料であり得、また、溶剤型、水系または無溶剤型であり得るが、後述する製造工程の便宜などを考慮して無溶剤型樹脂層であることが適切であり得る。
【0053】
樹脂層材料は活性エネルギー線硬化型、湿気硬化型、熱硬化型または常温硬化型などであり得、同様に後述する製造工程の便宜性などを考慮して常温硬化型であることが適切であり得る。
【0054】
樹脂層は前述した、熱伝導性、絶縁性、耐熱性(TGA分析)または比重などを考慮してフィラーを含むことができる。適切なフィラーの使用を通じて前述した範囲の熱伝導度などを確保することができる。一つの例示において、前記フィラーは熱伝導性フィラーであり得る。本出願で用語、熱伝導性フィラーは、熱伝導度が約1W/mk以上、約5W/mk以上、約10W/mk以上または約15W/mk以上の素材を意味する。前記熱伝導性フィラーの熱伝導度は約400W/mk以下、約350W/mk以下または約300W/mk以下であり得る。使用され得る熱伝導性フィラーの種類は特に制限されないが、絶縁性などを考慮してセラミックフィラーを適用することができる。例えば、アルミナ、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、ZnO、SiCまたはBeOなどのようなセラミック粒子が使用され得る。また、樹脂層の絶縁特性が確保できるものであれば、グラファイト(graphite)などの炭素フィラーの適用も考慮することができる。樹脂層内に含まれる前記フィラーの形態や比率は特に制限されず、樹脂組成物の粘度、樹脂層内での沈降可能性、目的とする熱抵抗ないしは熱伝導度、絶縁性、充填効果または分散性などを考慮して選択され得る。一般的にフィラーのサイズが大きくなるほど樹脂組成物の粘度が高くなり、樹脂層内でフィラーが沈降する可能性が高くなる。また、サイズが小さくなるほど熱抵抗が高くなる傾向がある。したがって前記のような点を考慮して適正種類のフィラーを選択することができ、必要であれば、2種以上のフィラーを使用することもできる。また、充填される量を考慮すれば球型のフィラーを使用した方が有利であるが、ネットワークの形成や伝導性などを考慮して針状や板状などのような形態のフィラーも使用され得る。一つの例示において、前記樹脂層は平均粒径が0.001μm〜80μmの範囲内にある熱伝導性フィラーを含むことができる。前記フィラーの平均粒径は他の例示において、0.01μm以上、0.1以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上または約6μm以上であり得る。前記フィラーの平均粒径は他の例示において、約75μm以下、約70μm以下、約65μm以下、約60μm以下、約55μm以下、約50μm以下、約45μm以下、約40μm以下、約35μm以下、約30μm以下、約25μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下または約5μm以下であり得る。
【0055】
樹脂層に含まれるフィラーの比率は、前述した特性、例えば、熱伝導度、絶縁性などが確保されるように樹脂層の特性を考慮して選択され得る。例えば、前記フィラーは、樹脂層の樹脂成分100重量部対比約50〜2,000重量部の範囲内で含まれ得る。前記フィラーの重量部は他の例示において、約100重量部以上、約150重量部以上、約200重量部以上、約250重量部以上、約300重量部以上、約350重量部以上、約400重量部以上、約500重量部以上、約550重量部以上、約600重量部以上または約650重量部以上であり得る。
・・・
【発明の効果】
【0091】
本出願では簡単な工程と低費用で製造されながらも体積対比出力が優秀で、放熱特性などが優秀なバッテリーモジュール、その製造方法および前記製造方法に適用される樹脂組成物を提供することができる。
・・・
【0105】
実施例1.
【0106】
樹脂組成物の製造
2液型ウレタン系接着剤組成物(主剤:HP−3753(KPXケミカル)、硬化剤:TLA−100(旭化成))にアルミナ(粒度分布:1μm〜60μm)を前記2液型ウレタン系接着剤組成物が硬化後に約3W/mkの熱伝導度を示すことができる量(2液合計固形分100重量部対比約600〜900重量部の範囲内)で混合して、常温粘度が約250,000cP程度である樹脂組成物を製造し、これを下記バッテリーモジュールの製造に適用した。
【0107】
バッテリーモジュールの製造 図1のような形状のモジュールケースとして、アルミニウムで製造された下部板、側壁および上部板を有するモジュールケースを用いた。前記モジュールケースの下部板の内側面にはバッテリーセルの装着をガイドするガイド部が形成されており、前記モジュールケースの下部板の中心部には樹脂組成物の注入のための注入ホールが一定間隔で形成されており、下部板の末端には観察ホールが形成されている。前記モジュールケース内にバッテリーパウチを複数個積層したパウチの束を収納した。引き続き、前記モジュールケースの表面に上部板を覆った。その後、前記注入ホールに前記製造された樹脂組成物を、注入される組成物が観察ホールまで到達することが確認されるまで注入した後、硬化させてバッテリーモジュールを製造した。
・・・
【0111】
実施例3.
2液型ウレタン系接着剤組成物(主剤:PP−2000(KPXケミカル)、硬化剤:TLA−100(旭化成))にアルミナ(粒度分布:1μm〜60μm)を前記2液型ウレタン系接着剤組成物が硬化後に約3.5W/mkの熱伝導度を示すことができる量(2液合計固形分100重量部対比約600〜900重量部の範囲内)で混合し、常温粘度が約350,000cP程度となるように製造した樹脂組成物を用いたことを除いては実施例1と同一にバッテリーモジュールを製造した。
・・・
【0115】
実施例7.
2液型ウレタン系接着剤組成物(主剤:PP−2000(KPXケミカル)、硬化剤:TLA−100(旭化成))にアルミナ(粒度分布:1μm〜60μm)を前記2液型ウレタン系接着剤組成物が硬化後に約2W/mkの熱伝導度を示すことができる量(2液合計固形分100重量部対比約400〜900重量部の範囲内)で混合し、常温粘度が約150,000cP程度となるように製造した樹脂組成物を用いたことを除いては実施例1と同一にバッテリーモジュールを製造した。」

(12)甲12
「【請求項1】
金属層とグラファイト層とを接着層を介して積層した積層体を含み、
該接着層が、ポリビニルアセタール樹脂を含む組成物から形成される、放熱部材。
・・・
【請求項20】
前記放熱部材の最外層の片面または両面に樹脂層を有する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の放熱部材。
【請求項21】
前記樹脂層が、無機化合物からなるフィラーを含む、請求項20に記載の放熱部材。
【請求項22】
前記樹脂層が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂およびニトロセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、アルミナ、シリカ、コーディエライト、ムライト、炭化珪素および酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含む、請求項20または21に記載の放熱部材。
・・・
【請求項24】 請求項1〜22のいずれか1項に記載の放熱部材を含むバッテリー。」
「【0058】
[熱伝導性フィラー]
前記接着層が、熱伝導性フィラーを含むことで、接着層の熱伝導性が向上し、特に、前記積層体の積層方向への熱伝導性が向上する。
熱伝導性フィラーを含む接着層を用いることで、接着層の厚みが薄く、放熱特性および加工性に優れ、金属層とグラファイト層との接着強度が高く、加工性に優れ、折り曲げ可能である放熱部材を提供することができる。また、発熱体から発せられる熱が十分に除去され、軽量化、小型化可能な電子デバイスや、高エネルギー密度でも発熱によるトラブルが抑えられたバッテリーなどを提供することができる。
・・・
【0060】
前記熱伝導性フィラーとしては、特に制限されないが、金属粉、金属酸化物粉、金属窒化物粉、金属水酸化物粉、金属窒化物粉および金属炭化物粉などの金属または金属化合物含有フィラー、ならびに炭素材料を含むフィラー等が挙げられる。
・・・
【0091】
<樹脂層>
本発明の放熱部材は、酸化防止や意匠性向上のために、その最外層の片面または両面に樹脂層を有していてもよい。
前記樹脂層は、樹脂を含む層であれば特に制限されないが、該樹脂としては、例えば、塗料として広く使用されているアクリル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ニトロセルロースが挙げられ、これらの中でも耐熱性のある樹脂が望ましい。
前記樹脂を含む塗料の市販品としては、耐熱塗料(オキツモ(株)製:耐熱塗料ワンタッチ)などが挙げられる。
【0092】
前記樹脂層は、放熱部材表面からの遠赤外線の放射による放熱能力付与のために、前記熱伝導性フィラーや、遠赤外線放射率の高いフィラーを含んでいてもよい。
【0093】
前記遠赤外線放射率の高いフィラーとしては特に制限されないが、例えば、コーディエライト、ムライトなどの鉱物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒化物;シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の酸化物;炭化珪素;および黒鉛;からなる群より選ばれる少なくとも1種のフィラーであることが望ましい。
【0094】
前記樹脂層に用いる樹脂の種類は、放熱部材が使用される温度、樹脂層を形成する際の方法や温度に応じて適宜選択すればよい。
また、前記樹脂層に用いるフィラーの種類は放熱部材が使用される用途に応じて、熱伝導率の高いフィラーおよび/または遠赤外線放射率の高いフィラーを適宜選択すればよい。
・・・
【0118】
〔バッテリー〕
前記バッテリーとしては、自動車や携帯電話などに用いられるリチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、ニッケル水素電池などが挙げられる。」

(13)甲13(訳は、甲13号証の翻訳文として提出された、甲13の国内公表公報である、特表2022−528401号公報による。)
「1. A thermal interface material composition comprising:
a) a urethane based binder component, which comprises at least one
non-reactive polyurethane prepolymer, and
b) about 80-95 wt% of aluminum trihydroxide,
with the total weight of the composition totaling to 100 wt%,
wherein, the at least one non-reactive polyurethane prepolymer, i) is a reaction product of at least one polyisocyanate and at least one aliphatic monol, ii) is substantially free of residual isocyanate groups; and iii) has an average molecular weight of 2,000-50,000 g/mol,
and wherein, if polyol based material is present in the composition, the content level of the polyol based material is less than the total content level of the urethane based binder component.」(請求項1)
(訳)
「1. a)少なくとも1種の非反応性ポリウレタンプレポリマーを含むウレタンベースのバインダー成分と、b)約80〜95重量%の水酸化アルミニウムとを含有する熱界面材料組成物であって、組成物の総重量が合計100%重量であり、前記少なくとも1種の非反応性ポリウレタンプレポリマーが、i)少なくとも1種のポリイソシアネートと少なくとも1種の脂肪族モノールとの反応生成物であり、ii)残留イソシアネート基を実質的に含まず、iii)平均分子量が2,000〜50,000g/molであり、ポリオールベースの材料が前記組成物中に存在する場合には、前記ポリオールベースの材料の含有量は前記ウレタンベースのバインダー成分の総含有量よりも少ない、熱界面材料組成物。」
「EXAMPLES
Materials
・PU-Pre - Methylene diphenyl diisocyanate (MDI) based urethane
prepolymer, having a density of 1.040 g/ml and viscosity (dynamic) of 1500 mPa-s;
・・・
・Silane - hexadecyltrimethoxysilane;
・・・
Methods
Sample Preparation
In each of the Comparative Examples CE1 -CE13 and Examples E1 - E14, all components as listed in Table 3 or Table 4 (first liquid components, then solid components) were added in a planetary mixer or a dual asymmetric centrifuge, mixed for about 30 min under vacuum, and the resulting TIM (in paste form) was then transferred into cartridges, pails, or drums for storage.


」(6頁26行〜12頁)
(訳)
「材料
・PU−Pre−1.040g/mlの密度及び1500mPa−sの粘度(動的)を有するメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)ベースのウレタンプレポリマー;
・・・
・シラン−ヘキサデシルトリメトキシシラン;
・・・
方法
サンプルの準備
比較例CE1〜CE13及び実施例E1〜E14のそれぞれにおいて、表3又は表4に記載されている全ての成分(最初に液体成分、その後固体成分)をプラネタリーミキサー又は二重非対称遠心分離機に入れ、真空下で約30分間混合し、得られたTIM(ペースト形態)をカートリッジ、ペール缶、又はドラム缶の中に移して保管した。
・・・




(14)甲14
「【請求項1】
水酸基含有化合物、イソシアネート基含有化合物および無機充填材(D)を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、
前記水酸基含有化合物が、ポリブタジエンポリオール(A)を含有し、
前記イソシアネート基含有化合物が、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(B)およびポリイソシアネート化合物のアロファネート変性体(C)を含有し、
前記無機充填材(D)が、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムからなる群より選ばれる1種以上であり、無機充填材(D)の配合量は、ポリウレタン樹脂組成物に対して、50〜95質量%である、
ポリウレタン樹脂組成物を硬化して得られるポリウレタン樹脂。
【請求項2】
請求項1記載のポリウレタン樹脂を用いてなる電気電子部品。」
「【0037】
また、本発明のポリウレタン樹脂組成物には、触媒、酸化防止剤、吸湿剤、防黴剤、シランカップリング剤など、必要に応じて各種の添加剤を添加することができる。シランカップリング剤としては、例えばアルコキシシラン類、ビニル基含有シランカップリンク剤、エポキシ基含有シランカップリンク剤、メタクリル基含有シランカップリンク剤、アクリル基含有シランカップリンク剤などが挙げられる。
・・・
【実施例】
【0040】
・・・
【0041】
実施例及び比較例において使用する原料を以下に示す。
(ポリブタジエンポリオール(A))
A1:平均水酸基価103mgKOH/gのポリブタジエンポリオール (商品名:Poly bd R−15HT、出光興産社製)
A2:平均水酸基価47mgKOH/gのポリブタジエンポリオール (商品名:Poly bd R−45HT、出光興産社製)
(ひまし油系ポリオール(E))
E1: ひまし油 (商品名:ひまし油、伊藤製油社製)
E2: ひまし油脂肪酸−多価アルコールエステル
(商品名:URIC Y−403、伊藤製油社製)
E3:ひまし油脂肪酸−多価アルコールエステル
(商品名:HS 2G 160R、豊国製油社製)
(ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(B))
B1:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体 (商品名:デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ社製)
B2:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体 (商品名:デュラネートTLA−100、旭化成ケミカルズ社製)
(ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(C))
C:ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート変性体 (商品名:デュラネートA201H、旭化成ケミカルズ社製)
(無機充填材(D))
D1:水酸化アルミニウム
(商品名:ハイジライトH−32、昭和電工社製)
D2:水酸化アルミニウム
(商品名:水酸化アルミC−305、住友化学社製)
(可塑剤(F))
F1:トリキシレニルホスフェート
(商品名:TXP、大八化学工業社製)
F2:トリクレジルホスフェート
(商品名:TCP、大八化学工業社製)
F3:ジウンデシルフタレート
(商品名:サンソサイザー DUP、新日本理化社製)
(シランカップリング剤(G))
G1:デシルトリメトキシシラン
(商品名:KBM−3103、信越化学工業社製)
G2:ビニルトリメトキシシラン
(商品名:KBM−1003、信越化学工業社製)
G3:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(商品名:KBM−403、信越化学工業社製)
G4:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(商品名:KBM−503、信越化学工業社製)
(触媒(H))
H:ジオクチル錫 ジラウレート
(商品名:ネオスタンU−810、日東化成社製)
(酸化防止剤(I))
I:ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(商品名:イルガノックス1010、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
【0042】
<実施例1〜22及び比較例1〜3>
表1に示す配合により、各実施例及び各比較例のポリウレタン樹脂に用いる、ポリウレタン樹脂組成物を調製した。調製に際しては、表1に示す成分のうち、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(B)、ポリイソシアネート化合物のアロファネート変性体(C) および触媒(H)を除く成分を混合機(商品名:あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて2000rpmで1分間混合した後、25℃に調整した。続いて、この混合物に25℃に調整したポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(B)、ポリイソシアネート化合物のアロファネート変性体(C)を加え、同上の混合機を用いて2000rpmで30秒間混合することにより、各実施例のポリウレタン樹脂に用いる、ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0043】
【表1】




(15)甲15
「【請求項1】
水酸基含有化合物、イソシアネート基含有化合物および無機充填材(D)を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、
前記水酸基含有化合物が、ポリブタジエンポリオール(A)を含有し、
前記イソシアネート基含有化合物が、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(B)およびポリイソシアネート化合物のアロファネート変性体(C)を含有するポリウレタン樹脂組成物。」
「【0039】
また、本発明のポリウレタン樹脂組成物には、触媒、酸化防止剤、吸湿剤、防黴剤、シランカップリング剤など、必要に応じて各種の添加剤を添加することができる。シランカップリング剤としては、例えばアルコキシシラン類、ビニル基含有シランカップリンク剤、エポキシ基含有シランカップリンク剤、メタクリル基含有シランカップリンク剤、アクリル基含有シランカップリンク剤などが挙げられる。
・・・
【実施例】
【0042】
・・・
【0043】
実施例及び比較例において使用する原料を以下に示す。
(ポリブタジエンポリオール(A))
A1:平均水酸基価103mgKOH/gのポリブタジエンポリオール (商品名:Poly bd R−15HT、出光興産社製)
A2:平均水酸基価47mgKOH/gのポリブタジエンポリオール (商品名:Poly bd R−45HT、出光興産社製)
(ひまし油系ポリオール(E))
E1: ひまし油 (商品名:ひまし油、伊藤製油社製)
E2: ひまし油脂肪酸−多価アルコールエステル
(商品名:URIC Y−403、伊藤製油社製)
E3:ひまし油脂肪酸−多価アルコールエステル
(商品名:HS 2G 160R、豊国製油社製)
(ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(B))
B1:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体 (商品名:デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ社製)
B2:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体 (商品名:デュラネートTLA−100、旭化成ケミカルズ社製)
(ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(C))
C:ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート変性体 (商品名:デュラネートA201H、旭化成ケミカルズ社製)
(無機充填材(D))
D1:水酸化アルミニウム
(商品名:ハイジライトH−32、昭和電工社製)
D2:水酸化アルミニウム
(商品名:水酸化アルミC−305、住友化学社製)
(可塑剤(F)) F1:トリキシレニルホスフェート
(商品名:TXP、大八化学工業社製)
F2:トリクレジルホスフェート
(商品名:TCP、大八化学工業社製)
F3:ジウンデシルフタレート
(商品名:サンソサイザー DUP、新日本理化社製)
(シランカップリング剤(G))
G1:デシルトリメトキシシラン
(商品名:KBM−3103、信越化学工業社製)
G2:ビニルトリメトキシシラン
(商品名:KBM−1003、信越化学工業社製)
G3:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(商品名:KBM−403、信越化学工業社製)
G4:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(商品名:KBM−503、信越化学工業社製)
(触媒(H))
H:ジオクチル錫 ジラウレート
(商品名:ネオスタンU−810、日東化成社製)
(酸化防止剤(I))
I:ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(商品名:イルガノックス1010、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
【0044】
<実施例1〜22及び比較例1〜3>
表1に示す配合により、各実施例及び各比較例のポリウレタン樹脂組成物を調製した。調製に際しては、表1に示す成分のうち、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(B)、ポリイソシアネート化合物のアロファネート変性体(C) および触媒(H)を除く成分を混合機(商品名:あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて2000rpmで1分間混合した後、25℃に調整した。続いて、この混合物に25℃に調整したポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(B)、ポリイソシアネート化合物のアロファネート変性体(C)を加え、同上の混合機を用いて2000rpmで30秒間混合することにより、各実施例のポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0045】
【表1】




(16)甲16
「【請求項1】
水酸基含有化合物、イソシアネート基含有化合物および無機充填材(D)を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、
前記水酸基含有化合物が、ポリブタジエンポリオール(A)を含有し、 前記イソシアネート基含有化合物が、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(B)およびポリイソシアネート化合物のアロファネート変性体(C)を含有するポリウレタン樹脂組成物。」
「【0039】
また、本発明のポリウレタン樹脂組成物には、触媒、酸化防止剤、吸湿剤、防黴剤、シランカップリング剤など、必要に応じて各種の添加剤を添加することができる。シランカップリング剤としては、例えばアルコキシシラン類、ビニル基含有シランカップリンク剤、エポキシ基含有シランカップリンク剤、メタクリル基含有シランカップリンク剤、アクリル基含有シランカップリンク剤などが挙げられる。
・・・
【実施例】
【0042】
・・・
【0043】
実施例及び比較例において使用する原料を以下に示す。
(ポリブタジエンポリオール(A))
A1:平均水酸基価103mgKOH/gのポリブタジエンポリオール (商品名:Poly bd R−15HT、出光興産社製)
A2:平均水酸基価47mgKOH/gのポリブタジエンポリオール (商品名:Poly bd R−45HT、出光興産社製)
(ひまし油系ポリオール(E))
E1: ひまし油 (商品名:ひまし油、伊藤製油社製)
E2: ひまし油脂肪酸−多価アルコールエステル
(商品名:URIC Y−403、伊藤製油社製)
E3:ひまし油脂肪酸−多価アルコールエステル
(商品名:HS 2G 160R、豊国製油社製)
(ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(B))
B1:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体 (商品名:デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ社製)
B2:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体 (商品名:デュラネートTLA−100、旭化成ケミカルズ社製)
(ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(C))
C:ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート変性体 (商品名:デュラネートA201H、旭化成ケミカルズ社製)
(無機充填材(D))
D1:水酸化アルミニウム
(商品名:ハイジライトH−32、昭和電工社製)
D2:水酸化アルミニウム
(商品名:水酸化アルミC−305、住友化学社製)
(可塑剤(F))
F1:トリキシレニルホスフェート
(商品名:TXP、大八化学工業社製)
F2:トリクレジルホスフェート
(商品名:TCP、大八化学工業社製)
F3:ジウンデシルフタレート
(商品名:サンソサイザー DUP、新日本理化社製)
(シランカップリング剤(G))
G1:デシルトリメトキシシラン
(商品名:KBM−3103、信越化学工業社製)
G2:ビニルトリメトキシシラン
(商品名:KBM−1003、信越化学工業社製)
G3:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(商品名:KBM−403、信越化学工業社製)
G4:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(商品名:KBM−503、信越化学工業社製)
(触媒(H))
H:ジオクチル錫 ジラウレート
(商品名:ネオスタンU−810、日東化成社製)
(酸化防止剤(I))
I:ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(商品名:イルガノックス1010、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
【0044】
<実施例1〜22及び比較例1〜3>
表1に示す配合により、各実施例及び各比較例のポリウレタン樹脂組成物を調製した。調製に際しては、表1に示す成分のうち、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(B)、ポリイソシアネート化合物のアロファネート変性体(C) および触媒(H)を除く成分を混合機(商品名:あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて2000rpmで1分間混合した後、25℃に調整した。続いて、この混合物に25℃に調整したポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(B)、ポリイソシアネート化合物のアロファネート変性体(C)を加え、同上の混合機を用いて2000rpmで30秒間混合することにより、各実施例のポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0045】
【表1】




(17)甲17
「【請求項1】
(A1)ウレタン結合を有する樹脂、及び/又は、(A2)ウレタン結合を有する樹脂生成用化合物を含む、フレキシブル電子デバイス封止用組成物。」
「【0049】
<(B)吸湿性フィラー>
本発明の組成物には、封止層に、より高い耐水蒸気透過性を付与するために、吸湿性フィラー(以下、「(B)成分」とも略称する)」)を配合することができる。
・・・
【0064】
(B)成分は、表面処理剤で表面処理したものを用いることができる。表面処理に使用する表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸、アルキルシラン類、シランカップリング剤等を使用することができ、なかでも、高級脂肪酸、アルキルシラン類が好適である。表面処理剤は、1種または2種以上を使用できる。
【0065】
高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、モンタン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸などの炭素数18以上の高級脂肪酸が挙げられ、中でも、ステアリン酸が好ましい。これらは1種たは2種以上組み合わせて使用してもよい。アルキルシラン類としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、n−オクタデシルジメチル(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランおよび2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランおよび11−メルカプトウンデシルトリメトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシメチルシランなどのアミノ系シランカップリング剤;3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルメチルジエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;p−スチリルトリメトキシシランなどのスチリル系シランカップリング剤;3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリレート系シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等を挙げることができる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。」

(18)甲18



(19)甲19
「【請求項1】
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する主剤と、
1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(A)を含有する硬化剤と、を有し、
前記化合物(A)が、1分子中に3個の活性水素含有基を有し、末端にエチレンオキサイドを有し、数平均分子量が1,000を超え20,000以下であり、不飽和度が0.01meq/g以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.05以下であるポリオール化合物(a1)を含み、
前記イソシアネート基に対する、前記化合物(A)が有する活性水素全量のモル比率が0.2以上0.8未満である、2液ウレタン系接着剤組成物。」
「【0077】
(他の任意成分)
本発明の組成物は、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤(例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム)、硬化触媒、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料(染料)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、イソシアヌレート化合物、テルペン樹脂のような接着付与剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を更に含有することができる。
・・・
【0087】
・可塑剤
上記可塑剤としては、具体的には、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
可塑剤の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、5〜40質量部がより好ましい。
・・・
【0091】
(基材)
本発明の組成物を適用することができる基材としては、例えば、プラスチック、ガラス、ゴム、金属等が挙げられる。好適な基材としては、プラスチックを含む基材が挙げられる。プラスチックは、例えば、単独重合体、共重合体、水素添加物であってもよい。ゴムも同様である。
・・・
【実施例】
【0099】
・・・
【0101】
<<2液ウレタン系接着剤組成物の製造>>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で、撹拌機を用いて混合し、各主剤、各硬化剤を製造した。
次に、上記のとおり製造された主剤100gと、上記のとおり製造された硬化剤とを第1表に示す「主剤/硬化剤」欄に示す質量比で混合し、2液ウレタン系接着剤組成物(接着剤組成物)を得た。
なお、第1表において、ウレタンプレポリマー1の量は、ウレタンプレポリマー1に含まれるウレタンプレポリマーの正味の量である。また、第1表において使用されたウレタンプレポリマー1に含まれる可塑剤(DINP)の量は、第1表の主剤の「可塑剤1」の使用量に含まれる。ウレタンプレポリマー2についても同様である。
・・・
【0113】
【表1】

・・・
【0115】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
(主剤)
・ウレタンプレポリマー1:ポリオキシプロピレンジオール(商品名サンニックスPP2000、三洋化成工業社製、数平均分子量2,000)25質量部とポリオキシプロピレントリオール(商品名エクセノール5030、旭硝子社製、数平均分子量5,000)50質量部とMDI(商品名スミジュール44S、住化コベストロウレタン社製。以下同様)とをNCO/OH(モル比)が1.6となるように用い、これらに更に可塑剤(DINP)20質量部を混合し、得られた混合物を80℃の条件下で5時間反応させて製造したウレタンプレポリマー。得られたウレタンプレポリマーをウレタンプレポリマー1とする。ウレタンプレポリマー1のNCO含有量:1.48質量%
・・・
【0120】
・可塑剤1:ジイソノニルフタレート(DINP)、ジェイプラス社製」

(20)甲20
「【請求項1】
次に示す主剤(A)と硬化剤(B)を含む二液型ポリウレタン手塗り施工用塗料組成物であって、
前記(A)が少なくとも
(a−1)ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及びこれらのカルボジイミド変性体からなる群から選ばれた有機イソシアネート化合物と、
(a−2)ポリオールを反応させてなるイソシアネート基末端プレポリマーを含有し、
前記(B)が少なくとも
(b−1)下記一般式(1)で表されるジアミンを含有することを特徴とする、二液型ポリウレタン手塗り施工用塗料組成物。
【化1】

(式中、Xは同一又は異種のハロゲン原子を示す)」
「【0022】
(a−2)ポリオールとして2官能のポリオールと3官能のポリオールとを併用することも好ましい態様である。この場合の2官能ポリオールの数平均分子量は75〜4000が好ましく、3官能ポリオールの数平均分子量は80〜10000が好ましい。
・・・
【0028】
主剤(A)には、溶剤、可塑剤、消泡剤等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
・・・
【0030】
可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、トリメリット酸エステル等のカルボン酸エステルが使用でき、特に、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジイソノニル(DINP)等が好ましい。中でもDINPは、耐水性の観点で好ましい。
・・・
【実施例】
【0055】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、「部」、「%」とあるのは、特に断らない限り、それぞれ「質量部」、「質量%」である。
【0056】
(主剤の製造)
窒素置換したフラスコに、表1に示す割合で各原料を混合し、90℃で1時間反応させ、主剤A1〜A9を得た。また、各主剤A1〜A9のNCO/OH当量比、粘度(mPa・s、25℃)及び貯蔵安定性(20℃、24時間)の測定結果についても表1に併せて示した。
表1に示されている各成分は、以下のとおりである。
<(a−1−1)イソシアネート>
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:ミリオネートMT、日本ポリウレタン工業株式会社製)
<(a−1−2)イソシアネート>
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(商品名:ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業株式会社製)
<(a−1−3)イソシアネート>
カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート含有液状ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:ミリオネートMTL、日本ポリウレタン工業株式会社製)
<(a−2−1)ポリオール>
ポリエーテルポリオール、出発物質プロピレングリコール、プロピレンサイド付加率100%、エチレンオキサイド付加率0%、水酸基数:2、数平均分子量:2000
<(a−2−2)ポリオール>
ポリエーテルポリオール、出発物質グリセリン、プロピレンサイド付加率91%、エチレンオキサイド付加率9%(エチレンオキサイド末端ブロック付加)、水酸基数:3、数平均分子量:5000
<(a−2−3)ポリオール>
ポリエーテルポリオール、出発物質グリセリン、プロピレンサイド付加率100%、エチレンオキサイド付加率0%、水酸基数:3、数平均分子量:5000
<(a−2−4)ポリオール>
トリプロピレングリコール(商品名:トリプロピレングリコール、旭硝子株式会社製)
<(a−2−5)ポリオール>
ヒマシ油(商品名:ヒマシ油D、伊藤製油株式会社製)
<可塑剤>
ジイソノニルフタレート(商品名: サンソサイザーDINP、新日本理化株式会社製)
・・・
【0057】
【表1】

・・・
【0061】
主剤(A)と硬化剤(B)とを表3に記載の質量比で混合して得られたウレタン樹脂組成物を硬化させ、その際の混合初期粘度、相溶性、以下の硬化物物性を測定した。」

(21)甲21
「【請求項1】
次に示す主剤(A)と硬化剤(B)を反応させて得られるウレタン樹脂組成物からなる二液型ポリウレタン手塗り施工用被塗物であって、前記(A)が少なくとも
(a−1)ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及びこれらのカルボジイミド変性体からなる群から選ばれた有機イソシアネート化合物
(a−2)水酸基数が2〜4であり、数平均分子量が400〜10000であるポリエーテルポリオール
(a−3)数平均分子量が50〜1000である前記(a−2)以外のジオール
を反応させてなるイソシアネート末端プレポリマーを含有し、
前記(B)が少なくとも
(b−1)水酸基数が2〜3であり、数平均分子量が3000〜10000であるポリエーテルポリオール
(b−2)数平均分子量が50〜1000であるジオール
を含有し、
前記(b−1)が、少なくともエチレンオキシドを付加されてなるポリエーテルポリオールであることを特徴とする、二液型ポリウレタン手塗り施工用被塗物。」
「【0032】
主剤(A)には、溶剤、可塑剤、消泡剤等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
・・・
【0034】
可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、トリメリット酸エステル等のカルボン酸エステルが使用でき、特に、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジイソノニル(DINP)等が好ましい。中でもDINPは、MDIとの相溶性の点で好ましい。
・・・
【実施例】
【0063】
・・・
(主剤の製造)
窒素置換したフラスコに、表1に示す割合で各原料を混合し、90℃で1時間反応させ、主剤A1〜A6を得た。また、各主剤A1〜A6のNCO/OH当量比、粘度(mPa・s、25℃)及び貯蔵安定性(20℃、24時間)の測定結果についても表1に併せて示した。
表1に示されている各成分は、以下のとおりである。
<(a−1−1)イソシアネート1>
4,4’ −ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:ミリオネートMT、日本ポリウレタン工業株式会社製)
<(a−1−2)イソシアネート2>
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(商品名:ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業株式会社製)
<(a−1−3)イソシアネート3>
カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート含有液状ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:ミリオネートMTL、日本ポリウレタン工業株式会社製)
<(a−2−1)ポリエーテルポリオール1>
ポリエーテルポリオール、出発物質プロピレングリコール、プロピレンサイド付加率100%、エチレンオキサイド付加率0%、水酸基数:2、数平均分子量:2000
<(a−2−2)ポリエーテルポリオール2>
ポリエーテルポリオール、出発物質グリセリン、プロピレンサイド付加率91%、エチレンオキサイド付加率9%(エチレンオキサイド末端ブロック付加)、水酸基数:3、数平均分子量:5000
<(a−3−1)ジオール1>
トリプロピレングリコール(商品名:トリプロピレングリコール、旭硝子株式会社製)
<(a−3−2)ジオール2>
出発物質アニリン、アニリン1モルに対し、エチレンオキサイド3モル付加物、数平均分子量:225
<可塑剤>
ジイソノニルフタレート(商品名: サンソサイザーDINP、新日本理化株式会社製)
・・・
【0064】
【表1】


・・・
【0067】
主剤(A)と硬化剤(B)とを混合して得られたウレタン樹脂組成物を硬化させ、その際の混合初期粘度、相溶性、以下の硬化物物性を測定した。結果を表3に示す。」

(22)甲22
「【請求項1】
ウレタンプレポリマーとイソシアネートシラン化合物とを含有する主剤と、
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体、又はヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の少なくとも何れか1つを有する3官能以上のイソシアネートの末端をロジンジオールで変性して得られる多官能ポリオール化合物を含有する硬化剤と、を有することを特徴とする接着剤組成物。」
「【0013】
(ウレタンプレポリマー)
本実施形態の組成物の主剤に含有されるウレタンプレポリマーは、分子内に複数のイソシアネート基を分子末端に含有するプレポリマーである。
・・・
【0017】
上記ウレタンプレポリマーの数平均分子量は2000以上であり、2000以上15000以下であることが好ましく、2000以上10000以下であることがより好ましい。
・・・
【0060】
本実施形態の組成物は、主剤及び硬化剤に、上記任意の各成分の他に、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、添加剤を含むことができる。添加剤としては、上記充填剤、硬化促進剤(触媒)の他に、例えば、硬化剤、可塑剤、反応性希釈剤、チクソトロピー性付与剤、シランカップリング剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、乾性油、接着性付与剤、分散剤、脱水剤、紫外線吸収剤、溶剤等が挙げられる。これらの中の2種類以上を含有してもよい。添加剤等は一般的な方法で混練して組成物とし、架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本実施形態の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
・・・
【実施例】
【0067】
・・・
【0068】
<ウレタンプレポリマーの作製>
数平均分子量5000のポリプロピレンエーテルトリオール200g(G−5000、商品名「EXCENOL5030」、旭硝子株式会社製)と、数平均分子量2000のポリプロピレンエーテルジオール600g(D−2000、商品名「EXCENOL2020」、旭硝子株式会社製)とをフラスコに投入して、100℃〜130℃に加熱し、脱気しながら攪拌して水分率が0.01%以下になるまで脱水した。その後、90℃まで冷却し、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、商品名「スミジュール44S」、住化バイエルウレタン株式会社製)を、NCO基/OH基のモル比が1.80となる量162gを添加した後、約24時間、窒素雰囲気下で反応を進めNCO含有量が2.5%の表1に示すウレタンプレポリマーを作製した。
【0069】
<主剤の作製>
表1に示す主剤の各成分を、同表に示す配合量(質量部)で配合し、混合機(5Lレベル)にて脱気しながら約1時間均一に混合して、表1に示される主剤を作製した。主剤における各成分の配合量(質量部)を表1に示す。・・・
【0079】
<接着剤組成物の作製>
上記で得られた主剤中のウレタンプレポリマーのNCO基と硬化剤中のポリオール化合物中のOH基とを、NCO基/OH基のモル比が1.50となるように、主剤と硬化剤とを配合して均一に混合して、表1に示される各々の実施例および比較例の各組成物を作製した。表1に示す各実施例および比較例における主剤および硬化剤の組み合わせを表1に示す。
・・・
【0088】

【0089】
上記表1に示される各成分は、以下のとおりである。
(主剤)
・ウレタンプレポリマー:上記で得られたウレタンプレポリマー、横浜ゴム株式会社製
・イソシアネートシラン化合物:HDIのビュレット体(商品名「D−165N」、三井化学ポリウレタン社製)と、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名「Y9669」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)との反応物、横浜ゴム株式会社製
・可塑剤:アジピン酸ジイソノニル、商品名「DINA」、ジェイ・プラス社製
・カーボンブラック:商品名「MA600」、三菱化学社製
・炭酸カルシウム:商品名「スーパーS」、丸尾カルシウム株式会社製 ・アミン触媒:2−メチルトリエチレンジアミン、商品名「ME−DABCO」、エアープロダクツジャパン株式会社製
・錫触媒:ジブチルチンジアセテート、商品名「U−200」、日東化成株式会社製」

(23)甲23
「【請求項1】
ポリブタジエンポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有する主剤(A)と、ポリブタジエンポリオールとポリエーテルポリオールとアミノポリエーテルとを含有する硬化剤(B)とを有し、
前記アミノポリエーテルが、分子内に1つ以上のアミノ基と水酸基とを有し、
前記アミノポリエーテルの数平均分子量が、500〜6000であり、 前記アミノポリエーテルを、前記硬化剤(B)中のポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオールおよびアミノポリエーテルの全モル量に対して10.0〜50.0モル%含有する、二液常温硬化型ウレタン組成物。」
「【実施例】
【0047】
・・・
【0048】
<主剤(A1)の調製>
ポリブタジエンポリオール(R−45HT、Mn2800、水酸基価46.6mgKOH/g、出光石油化学社製)290.0質量部と、2官能型PPG(エクセノール3020、Mn3000、水酸基価36.2mgKOH/g、旭硝子社製)480.0質量部と、フタル酸ジイソノニル(サンソサイザーDINP、新日本化学社製)450.0質量部と、トリレンジイソシアネート(TDI80、三井武田ケミカル社製)87.3質量部と、ジフェニルメタンジイソシアネート(コスモネートPH、三井武田ケミカル社製)59.6質量部とを、80℃で7時間加熱混合し、主剤(A1)を調製した。 得られた主剤(A1)は液状であり、それに含まれるウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率は2.55質量%であった。
【0049】
<硬化剤(B1)〜(B13)の調製>
・・・
【0052】
(実施例1〜6および比較例1〜7)
<ウレタン組成物の調製>
得られた主剤(A1)と硬化剤(B1)〜(B13)とを第2表に示す組み合せで、室温で混合し、ウレタン組成物を調製した。」

(24)甲24
「【請求項1】
ウレタンプレポリマー(A)とウレタン結合および/または尿素結合を分子内に少なくとも1つ有するイソシアネートシラン化合物(B)とを含有し、該ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、該イソシアネートシラン化合物(B)を0.2〜10質量部含有する第1液と、
ポリオール化合物(C)を含有する第2液とからなる2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。」
「【0058】
本発明の樹脂組成物は、可塑剤を含有するのが好ましい態様の一つである。
本発明に用いられる可塑剤は、特に限定されず、その具体例としては、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジペンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル;パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等の石油系軟化剤が挙げられる
・・・
【0066】
本発明の樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されないが、ウレタンプレポリマー(A)、イソシアネートシラン化合物(B)および所望により加えられる可塑剤を減圧下もしくは窒素などの不活性ガス雰囲気下で、混合ミキサー等のかくはん装置を用いて充分に混練し、均一に分散させて得られる第1液と、ポリオール化合物(C)および所望により加えられる炭酸カルシウム、可塑剤、カップリング剤等の各種添加剤を含有する第2液とを、使用時に混練させて得られる。
・・・
【実施例】
【0068】
・・・
<第1液(主剤1〜10)>
第1液として、以下に示す主剤1〜10を用いた。各主剤の成分(上述したウレタンプレポリマー(A)およびイソシアネートシラン化合物(B)に相当する化合物ならびに可塑剤等)の質量比、質量%、および、得られた各主剤のNCO%を下記表1に示す。
なお、下記表1中、イソシアネートシラン化合物B1もしくはイソシアネートシランの添加量は、得られたウレタンプレポリマー(可塑剤の添加量は含まず。以下同じ。)100質量部に対する質量部を表し、該可塑剤の添加量は、得られたウレタンプレポリマーと該可塑剤との合計質量(即ち、主剤の質量)に対する質量%を表すものである。
【0069】
(主剤1)
主剤1として、以下に示す方法により生成させたウレタンプレポリマーと、以下に示すイソシアネートシラン化合物B1とを、以下に示す方法により所定量混合させて得られるポリマーを用いた。
まず、ポリブタジエンポリオール(R45HT、数平均分子量2800、2.3官能、出光石油化学社製)162.5gと、ポリエーテルポリオール(EXC2020、数平均分子量2000、2官能、旭硝子社製)487.4gと、可塑剤として用いるジイソノニルアジペート(DINA、新日本理化社製)200gとの混合物を、110℃、減圧下で16時間脱水した後、該混合物に対してジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、三井化学社製)をイソシアネート基/水酸基(水酸基1個あたりのイソシアネート基の基数。以下、単に「NCO/OH」という。)=1.95となるように150.1g添加し、窒素気流中、80℃下で24時間、かくはんさせながら反応させることにより、ウレタンプレポリマーを生成させた。
次に、上記反応(ウレタンプレポリマーの生成反応)の反応率が100%になったところで、ウレタンプレポリマーを単離しないまま、以下に示すイソシアネートシラン化合物B1を8g添加し、かくはん混合させることで、NCO%=2.49%のポリマーを得た。
【0070】
ここで、イソシアネートシラン化合物B1としては、トリレンジイソシアネート(TDI)174.1gを冷却し、該TDIに対して、NCO/NH=2.0となるように、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(Y9669、日本ユニカー社製)255gを徐々に滴下し、窒素気流中、30分間かくはん混合し、その後、常温に戻して更に3時間かくはん混合することにより合成した、NCO基を1個有するイソシアネートシランを用いた。
・・・
【0081】
【表1】

【0082】
<第2液>
第2液として、以下に示すポリオール化合物C1、C2およびC3ならびに充填剤を用いた。
・・・
【0086】
(充填剤)
充填剤として、炭酸カルシウムを用いた。
【0087】
<実施例1〜4、比較例1〜6>
上述した主剤1〜10および第2液の組成成分を下記表2に記載の成分比(質量部)で配合し、樹脂組成物を調製した。」

第5 当審の判断
1 甲1及び甲2に記載された発明
(1)甲1には、第4の2(1)で摘記した事項が記載されているところ、摘記エの実施例4、6、8に着目すると、それぞれ、以下の甲1発明1〜甲1発明3が記載されていると認められる。
ア 甲1発明1(実施例4)
「ポリオキシプロピレンジオール(重量平均分子量2000)70質量部とポリオキシプロピレントリオール(重量平均分子量3,000)とMDIとをNCO/OH(モル比)が2.0となるように混合し、混合物を80℃の条件下で5時間反応させて製造したウレタンプレポリマーを42.0質量部と、
ペンタメチレンジイソシネートのイソシアヌレート体であるイソシアヌレート化合物1(PDI)を2.0質量部と
N,N−[3―(トリメトキシシリル)プロピル]アミンである第2級アミノシラン化合物1(ビス型)を0.2質量部と、
カンフェンとフェノールとの付加物であるテルペン化合物1を0.5質量部と、
3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランであるイソシアネートシラン化合物0.3質量部と、
カーボンブラック20.6質量部と、
重質炭酸カルシウムである炭酸カルシウム1を19.3質量部と、
ジイソノニルフタレートである可塑剤1を15.5質量部と、
ジモルフォリノジエチルエーテルである硬化触媒1を0.15質量部とを含む、
2液型の接着剤組成物の主剤。」

イ 甲1発明2(実施例6)
「ポリオキシプロピレンジオール(重量平均分子量2,000)70質量部とポリオキシプロピレントリオール(重量平均分子量3,000)とMDIとをNCO/OH(モル比)が2.0となるように混合し、混合物を80℃の条件下で5時間反応させて製造したウレタンプレポリマーを42.0質量部と、
ヘキサメチレンジイソシネートのイソシアヌレート体であるイソシアヌレート化合物2(HDI)を2.0質量部と
N,N−[3―(トリメトキシシリル)プロピル]アミンである第2級アミノシラン化合物1(ビス型)を0.2質量部と、
カンフェンとフェノールとの付加物であるテルペン化合物1を0.5質量部と、
3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランであるイソシアネートシラン化合物0.3質量部と、
カーボンブラック20.6質量部と、
重質炭酸カルシウムである炭酸カルシウム1を19.3質量部と、
ジイソノニルフタレートである可塑剤1を15.5質量部と、
ジモルフォリノジエチルエーテルである硬化触媒1を0.15質量部とを含む、
2液型の接着剤組成物の主剤。」

ウ 甲1発明3(実施例8)
「ポリオキシプロピレンジオール(重量平均分子量2,000)70質量部とポリオキシプロピレントリオール(重量平均分子量3,000)とMDIとをNCO/OH(モル比)が2.0となるように混合し、混合物を80℃の条件下で5時間反応させて製造したウレタンプレポリマーを42.0質量部と、
ペンタメチレンジイソシネートのイソシアヌレート体であるイソシアヌレート化合物1(PDI)を2.0質量部と
N−フェニル−3―アミノプロピルトリメトキシシランである第2級アミノシラン化合物2を0.2質量部と、
カンフェンとフェノールとの付加物であるテルペン化合物1を0.5質量部と、
3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランであるイソシアネートシラン化合物0.3質量部と、
カーボンブラック20.6質量部と、
重質炭酸カルシウムである炭酸カルシウム1を19.3質量部と、
ジイソノニルフタレートである可塑剤1を15.5質量部と、
ジモルフォリノジエチルエーテルである硬化触媒1を0.15質量部とを含む、
2液型の接着剤組成物の主剤。」

(2)甲2には、第4の2(2)で摘記した事項が記載されているところ、摘記エの実施例1〜4に着目すると、以下の甲2発明1及び甲2発明2が記載されていると認められる。
ア 甲2発明1(実施例1、2、4)
「ヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートトリマーの混合物である硬化剤組成物に、フィラーとしてのアルミナと、吸湿剤としてのビニルトリメトキシシランを配合した硬化剤組成物。」

イ 甲2発明2(実施例3)
「ヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートトリマーの混合物である硬化剤組成物に、フィラーとしての窒化ホウ素(BN)と、吸湿剤としてのビニルトリメトキシシランを配合した硬化剤組成物。」

2 申立理由1及び2について
第3の1及び2のとおり、申立理由1は、本件発明3及び6の、甲1を主引例とする新規性に係るものであり、申立理由2は、本件発明1〜7の、甲1を主引例とする進歩性に係るものである。
そこで、まず、本件発明1の、甲1を主引例とする進歩性について検討し(後記(1))、次に、本件発明3の、甲1を主引例とする新規性、及び進歩性について検討し(後記(2))、さらに、本件発明6の甲1を主引例とする新規性及び本件発明2、4〜7の、甲1を主引例とする進歩性について併せて検討する(後記(3))。

(1)本件発明1の、甲1を主引例とする進歩性について
ア 対比
本件発明1と甲1発明1を対比する。
(ア)甲1発明1の、「重量平均分子量2,000のポリオキシプロピレンジオール70質量部と重量平均分子量3,000のポリオキシプロピレントリオールとMDIとをNCO/OH(モル比)が2.0となるように混合し、混合物を80℃の条件下で5時間反応させて製造したウレタンプレポリマー」は、ポリオキシプロピレンジオール及びポリオキシプロピレントリオールがポリオールであり、MDI(甲1摘記ウ[0015]より、ジフェニルメタンジイソシアネートである)がポリイソシアネートであること、及び、NCO/OH(モル比)が2.0となるように混合し、反応してさせていることから、本件発明1の「平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー」と、「ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー」である限りにおいて一致する。
(イ)甲1発明1の、「カーボンブラック」及び「重質炭酸カルシウムである炭酸カルシウム」は、いずれも本件発明1の「無機充填剤」に相当する。
(ウ)甲1発明1の「ジイソノニルフタレートである可塑剤」は、本件発明1の「可塑剤」に相当する。
(エ)甲1発明1の、「3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランであるイソシアネートシラン化合物」は、活性水素を含有しないから、「活性水素非含有シランカップリング剤」である。
なお、本件明細書には、「活性水素非含有シランカップリング剤」として「イソシアネートプロピルトリアルコキシシラン」が例示されている(【0027】、【0033】)。
(オ)甲1発明1の、「2液型の接着剤組成物の主剤」は、上記(ア)のとおり、「ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有プレポリマー」を含むから、2液反応型ポリウレタン樹脂組成物のポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物であるといえる。
(カ)上記(ア)〜(オ)より、本件発明1と甲1発明1とは、
「2液反応型ポリウレタン樹脂組成物のポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物であって、
ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、
無機充填剤、
可塑剤、および、
活性水素基非含有シランカップリング剤、
を含む、イソシアネート含有組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点1】
本件発明1は、「バッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラーとして用いられる」ものであるのに対して、甲1発明1は、そのような記載はない点。

【相違点2】
「ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー」に関して、本件発明1は、「平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる」ものであるのに対して、甲1発明1では、「重量平均分子量2,000のポリオキシプロピレンジオール70質量部と重量平均分子量3,000のポリオキシプロピレントリオールとMDI」を反応させて得られるものである点。

イ 判断
(ア)上記相違点1について検討する。
a 甲1は、ウレタン系接着剤組成物を開示するものであって(甲1摘記ア)、ウレタン系接着剤組成物を、プライマー処理されていないオレフィン樹脂を含む基材に適用する場合、接着耐久性が昨今要求されるレベルを必ずしも満足しない場合があることを踏まえ、オレフィン樹脂に対する接着耐久性に優れるウレタン系接着剤組成物を提供することを目的としたものである(甲1摘記イ[0006])。
そして、甲1には、ウレタン系接着剤組成物に特定のアミノシラン化合物を使用することによって、オレフィン樹脂に対する接着耐久性に優れるという効果が奏されることが記載され(甲1摘記イ[0007]、摘記ウ[0009])、接着剤組成物の用途として、ダイレクトグレージング剤、自動車用シーラント、建築部材用シーラント、建築部材用シーラントが挙げられている(甲1摘記ウ[0120])。
さらに、甲1発明1の接着剤組成物は、甲1の実施例4であるところ、甲1には、当該実施例4の接着剤樹脂組成物は、オレフィン樹脂に対する接着耐久性、初期接着性に優れていたことが記載されている(甲1摘記エ実施例)。
しかしながら、甲1には、接着剤組成物を「バッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラー」として用いることに関しては、記載も示唆もされていない。
b 第4の2(2)〜(7)、(9)〜(11)によれば、甲2〜7、9〜11には、2液型ウレタン樹脂組成物を、バッテリーセルをモジュールケース内に接着固定してバッテリモジュールの放熱性を改善するといった、バッテリーモジュールやバッテリーパック内で放熱性を確保するために用いることが記載されている。
また、同(8)及び(12)によれば、甲8及び12には、ウレタン樹脂及び放熱フィラーを含む材料を、バッテリー等の放熱のために用いることが記載されている。
しかしながら、上記aのとおり、甲1は、特にオレフィン樹脂に対する接着耐久性に優れる接着剤組成物を記載し、その用途として、ダイレクトグレージング剤、自動車用シーラント、建築部材用シーラント、建築部材用シーラントを記載するところ、甲2〜12のいずれの文献にも、バッテリーの接着固定や放熱といった用途において、甲1に記載されるような、オレフィン樹脂に対する接着耐久性や初期接着性に優れた接着剤組成物が適しているといった記載はなく、甲1発明1の2液型の接着剤組成物の主剤を、バッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラーとして用いることの動機付けは、何ら見いだせない。
c ここで、本件明細書には、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを形成するポリオールについて、平均官能基数が2.5以下であることにより、硬化後のポリウレタン樹脂の硬度を低く抑えることができ、2液反応型ポリウレタン樹脂組成物をバッテリー周りの隙間を埋めるギャップフィラーとして用いたときに、外力に対して発生する反力を低減することができることが記載されており(【0011】)、当該記載によれば、本件発明1は、所定の平均官能基数を有するポリオールを用いたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含むイソシアネート含有組成物は、硬化後のポリウレタン樹脂の硬度を低く抑えることができるという知見を踏まえて、「バッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラー」としての用途を特定したものと解される。
これに対して、甲1〜12のいずれをみても、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを構成するポリオールを特定のものにすることにより、硬化後の硬度を低く抑えることができ、このため、「バッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラー」に特に適しているということについては記載がなく、このような観点からみても、甲1発明1の2液型の接着剤組成物の主剤を、バッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラーとして用いることの動機付けは、何ら見いだせない。
d さらに、その他の甲号証をみても、甲1発明1の2液型接着剤組成物の主剤を、バッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラーとして用いることを動機付けると解するに足りる記載はない。
よって、相違点1に係る事項は、当業者が容易に想到し得た事項ではない。
(イ)上記(ア)のとおり、相違点1に係る事項は当業者が容易に想到し得た事項ではないから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1及び甲1〜24に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、相違点1について、以下のとおり主張する。
(ア)申立人の主張(申立書49頁16行〜51頁12行)
甲1には、「炭酸カルシウムの含有量は、ウレタンプレポリマー又は狭義の硬化剤100質量部に対して、20〜150質量部が好ましく、20〜120質量部がより好ましく、30〜70質量部が更に好ましい。」(【0104】)と記載され、また、「カーボンブラック、炭酸カルシウム以外の充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカのようなシリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物;等が挙げられる。」(【0105】)と記載される一方で、二液型ウレタン樹脂組成物に高含量の無機充填剤を添加してバッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラーとして用いることは、甲2〜12によれば、本件出願時の周知技術であるから、甲1に記載された発明において、無機充填剤の添加量を増やして、「バッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラーとして用いる」ことは当業者が容易になし得ることである。
(イ)上記主張について検討する。
仮に、申立人の指摘する甲1の記載によって、甲1発明1において、無機充填剤の含有量を増やすことについては、動機付けられるといえるとしても、甲2〜12の記載をみても甲1発明1の2液型の接着剤組成物の主剤を、バッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラーとして用いることの動機付けは、何ら見いだせないことは上記イ(ア)のとおりである。
よって、上記主張は採用できない。

エ 小括
上記ア〜ウのとおりであるから、本件発明1は、甲1発明1及び甲1〜24の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲1発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
同様の理由により、本件発明1は,甲1発明2及び甲1〜24の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲1発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないし、さらに、甲1発明3及び甲1〜24の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲1発明3及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない

(2)本件発明3の、甲1を主引例とする新規性、及び進歩性について
ア 対比
本件発明3と甲1発明1を対比する。
(ア)上記(1)ア(ア)のとおり、甲1発明1の、「重量平均分子量2,000のポリオキシプロピレンジオール70質量部と重量平均分子量3,000のポリオキシプロピレントリオールとMDIとをNCO/OH(モル比)が2.0となるように混合し、混合物を80℃の条件下で5時間反応させて製造したウレタンプレポリマー」は、「ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー」である限りにおいて、本件発明1の「ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー」と一致する。
(イ)上記(1)ア(イ)及び(ウ)と同様にして、甲1発明1の、「カーボンブラック」及び「重質炭酸カルシウムである炭酸カルシウム」は、いずれも本件発明3の「無機充填剤」に相当し、「ジイソノニルフタレートである可塑剤」は、本件発明3の「可塑剤」に相当する。
(ウ)甲1発明1の「3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランであるイソシアネートシラン化合物」は、「活性水素非含有シランカップリング剤」である。
(エ)甲1発明1の、「2液型の接着剤組成物の主剤」は、上記(1)ア(オ)のとおり、2液反応型ポリウレタン樹脂組成物のポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物であるといえる。
(オ)上記(ア)〜(エ)より、本件発明3と甲1発明1とは、
「2液反応型ポリウレタン樹脂組成物のポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物であって、
ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、
無機充填剤、
可塑剤、および、
活性水素基非含有シランカップリング剤、
を含む、イソシアネート含有組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点3】
活性水素非含有シランカップリング剤について、本件発明3は、「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」であるのに対して、甲1発明1では、「3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン」である点。

【相違点4】
「ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー」に関して、本件発明3は、「平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる」ものであるのに対して、甲1発明1では、「重量平均分子量2,000のポリオキシプロピレンジオール70質量部と重量平均分子量3,000のポリオキシプロピレントリオールとMDI」を反応させて得られるものである点。

イ 検討
(ア)相違点3について検討する。
「3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン」はアルキレン基は有するものの、アルキル基を有さないから、「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」ではない。
よって、相違点3は実質的な相違点である。
(イ)次に、相違点3に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるかについて検討する。
a(a)甲1には、接着剤組成物に関し、接着耐久性に優れ、初期接着性に優れるという観点から、イソシアネートシラン化合物をさらに含有することが好ましいことが記載され(甲1摘記ウ[0081])、接着耐久性により優れ、初期接着性に優れるという観点から、イソシアネートシラン化合物は、「3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン」が好ましいことが記載されている(甲1摘記ウ[0091])。
そうすると、甲1発明1の「3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン」は、接着耐久性に優れ、初期接着性に優れるという観点から配合されたイソシアネートシラン化合物であると理解できるのであって、このような、イソシアネートシラン化合物である「3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン」を、イソシアネートシラン化合物ではないものに変えることの動機付けはなく、ましてや、これを、「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」に変えることは、何ら動機づけられない。
(b)また、甲1には、甲1記載の接着剤組成物に関して、他の任意成分として、特定アミノシラン化合物及びイソシアネートシラン化合物以外のシランカップリング剤を更に含有することができることが記載されている(甲1摘記ウ[0100])ものの、特定アミノシラン化合物及びイソシアネートシラン化合物以外のシランカップリング剤として、「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」を用いることは記載も示唆もされていないから、甲1発明1の2液型の接着剤組成物の主剤に、「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」を配合することは、何ら動機付けられない。
b 第4の2(13)〜(16)によれば、甲13〜16には、ポリウレタン樹脂組成物に、ヘキサデシルトリメトキシシラン又はデシルトリメトキシシランを配合することが記載され、甲17には、ウレタン結合を有する樹脂、及び/又はウレタン結合を有する樹脂生成用化合物を含む、フレキシブル電子デバイス封止用組成物に含まれる吸湿性フィラーをアルキルシラン類である表面処理剤で表面処理することが記載され、表面処理剤として、ヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられている(甲6【0064】、【0065】)。ヘキサデシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン(以下、「ヘキサデシルトリメトキシシラン等」という。)は、いずれも、「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」である。
しかしながら、甲13〜17はいずれも、単にポリウレタン樹脂組成物等に、ヘキサデシルトリメトキシシラン等を含有させることについて記載するにとどまる上、甲14〜17には「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」以外のシランカップリング剤についても多数記載され(甲14【0037】、甲15【0039】、甲16【0039】、甲17【0065】)、甲13にも、特にヘキサデシルトリメトキシシランを使用することの技術的意義などは記載されていないから、甲13〜17にヘキサデシルトリメトキシシラン等が記載されているからといって、甲1発明1の2液型の接着剤組成物の主剤に、上記ヘキサデシルトリメトキシシラン等を含有させることが動機付けられるとはいえない。
c ここで、本件明細書には、活性水素基非含有シランカップリング剤として、アルキルシランカップリング剤を用いると、イソシアネート含有組成物の貯蔵安定性を向上しつつ粘度を低減することができること及び活性水素基非含有シランカップリング剤として炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤を用いることがより好ましいことが記載されており(【0034】、【0035】)、当該記載によれば、本件発明3では、所定のシランカップリング剤を配合した場合、貯蔵安定性を向上しつつ粘度を低減することができることから、活性水素非含有シランカップリング剤を、特に、「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」であると特定したものと解される。
これに対して、甲1には、2液型接着剤組成物の貯蔵安定性についての着目はなく、ましてや、所定のシランカップリング剤と貯蔵安定性の技術的関係についても記載も示唆もされていないのだから、このような観点からみても、甲1発明1の2液型の接着剤組成物に、炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤を配合することが動機付けられるとはいえない。
d さらに、その他の甲号証をみても、甲1発明1の2液型接着剤組成物の主剤に、炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤を配合することが動機付けられると解するに足りる記載はない。
よって、相違点3に係る事項は、当業者が容易に想到し得た事項ではない。
(ウ)上記(ア)及び(イ)のとおり、相違点3は実質的な相違点であり、当該相違点に係る事項は当業者が容易に想到し得た事項ではないから、相違点4について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明1ではないし、甲1発明1及び甲1〜24に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、相違点3について、以下のとおり主張する(申立書51頁21行〜54頁2行)
a 甲1発明1の「3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン」は、「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」に相当する(申立書51頁16〜19行)。
b 甲1には、接着剤組成物について、特定アミノシラン化合物及びイソシアネートシラン化合物以外のシランカップリング剤等の各種添加剤等を更に含有することができること、接着剤組成物が2液型の場合、上記任意成分を主剤又は硬化剤の何れに添加するかは、適宜選択することができことが記載されており、かつ、「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」をウレタン樹脂組成物に添加することは、本件特許出願時の周知技術(甲13〜17)であるから、本件発明3は、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(申立書52頁4〜10行)。
c 「3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン」を使用した場合と、「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」を使用した場合とで、本件発明の効果に差が生じることは本件明細書の記載からは不明であり、進歩性を認めるべきといえるほどの顕著な差が生じるとは考えられない(申立書52頁10〜16行)。

(イ)上記主張について検討する。
a 主張aについて
「3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン」は、アルキレン基を有するものの、炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤ではないことは、上記イ(ア)のとおりである。
よって、主張aは採用できない。
b 主張bについて
確かに甲1には申立人の主張する記載があるが、そうであっても、甲13〜17の記載をみても、甲1発明1の「3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン」を、「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」に変えることや、甲1発明1の、「2液型の接着剤組成物の主剤」に「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」を配合することが動機づけられるとはいえないことは、上記イ(イ)のとおりである。
よって、主張bは採用できない。
c 相違点3に係る事項が、当業者が容易に想到しうるものではない以上、本件発明3は、甲1発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないと解されるのであって、「3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン」を使用した場合と、「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」を使用した場合とで、効果に差が生じるかが不明であるから本件発明3の進歩性が認められないという申立人の主張cは、採用することはできない。
なお、本件明細書には、活性水素基非含有シランカップリング剤として、アルキルシランカップリング剤を用いると、イソシアネート含有組成物の貯蔵安定性を向上しつつ粘度を低減することができること及び活性水素基非含有シランカップリング剤として炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤を用いることがより好ましいことが記載されていることは上記イ(イ)cのとおりであり、実際に、シランカップリング剤のみが異なるイソシアネート含有組成物B2、B7〜B10を用いた実施例2、7〜10をみると、実施例2、7〜9(炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤を使用)は、実施例10(ビニルトリメトキシシランを使用)よりも低粘度であることがみてとれる(表3)から、本件明細書の記載から、「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」を用いることの効果についても十分に理解できるといえる。

エ 小括
上記ア〜ウのとおりであるから、本件発明3は、甲1発明1ではなく、甲1発明1及び甲1〜24の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでも、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
同様の理由により、本件発明3は,甲1発明2又は甲1発明3ではないし、甲1発明2及び甲1〜24の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでも、甲1発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、さらに、甲1発明3及び甲1〜24の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでも、甲1発明3及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない

(3)本件発明6の甲1を主引例とする新規性及び本件発明2、4〜7の、甲1を主引例とする進歩性について
ア 本件発明2、4〜7は、本件発明1又は3を、直接又は間接的に引用するものである。
そして、本件発明1が、甲1に記載された発明並びに甲1〜24の記載又は周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは上記(1)のとおりであり、本件発明3が甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明並びに甲1〜24記載又は周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは上記(2)のとおりであるから、そうである以上、本件発明6は甲1に記載された発明ではないし、本件発明2、4〜7は、甲1に記載された発明並びに甲1〜24は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)まとめ
よって、申立理由1及び2は、いずれも理由がない。

3 申立理由3について
第3の3のとおり、申立理由3は、甲2を主引例とした進歩性に係るものである。
そこで、まず、本件発明1の、甲2を主引例とする進歩性について検討し(後記(1))、次に、本件発明3の、甲2を主引例とする進歩性について検討し(後記(2))、さらに、本件発明2、4〜7の、甲2を主引例とする進歩性について検討する(後記(3))。

(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明1とを対比する。
(ア)甲2発明1の硬化剤組成物は、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)を含み、二液型ウレタン系組成物の硬化剤組成物である(甲2摘記ア【請求項1】、摘記ウ【0013】)から、「2液反応型ポリウレタン樹脂組成物のポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物」である。
そして、甲2発明1の硬化剤組成物を用いた、二液型ウレタン系組成物は、バッテリーモジュールのケース内部に注入され、バッテリセルと接触してバッテリセルをモジュールケース内で固定するために用いられる組成物であり(甲2摘記ウ【0012】)、放熱性を確保するために,過量のフィラーが含まれ、バッテリーモジュールの放熱性を改善することができるものである(甲2摘記ウ【0016】、【0128】)から、「バッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラー」として用いられるといえる。
(イ)甲2発明1の、「フィラーとしてのアルミナ」は、本件発明1の「無機充填剤」に相当する。
(ウ)甲2発明1の、「吸湿剤としてのVTMO(ビニルトリメトキシシラン)」は、「活性水素基非含有シランカップリング剤」である。
(エ)上記(ア)〜(ウ)によれば、本件発明1と甲2発明1とは、
「バッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラーとして用いられる2液反応型ポリウレタン樹脂組成物のポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物であって、
無機充填剤、および、
活性水素基非含有シランカップリング剤、
を含む、イソシアネート含有組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点5】
イソシアネート含有組成物が、本件発明1では、「平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー」を含むのに対して、甲2発明では、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)とHDIトリマーの混合物を含む点。

【相違点6】
本件発明1が可塑剤を含むのに対して、甲2発明は可塑剤を含まない点。

イ 検討
相違点5について検討する。
(ア)甲2は、放熱性、接着力、耐寒性、耐熱性、絶縁性及び接着信頼性に優れたバッテリーモジュール用樹脂組成物を提供することを目的とし(甲2摘記イ【0009】)、エステル系ポリオール樹脂含有主剤組成物部と、ポリイソシアネート含有硬化剤組成物部と、フィラーと、吸湿剤を含み、エステル系ポリオールは、DSC分析で結晶化温度と溶融温度が観察されない非結晶性ポリオールであるか溶融温度が15℃未満である二液型ウレタン系組成物を開示する(甲2摘記ア【請求項1】)。
そして、甲2発明1は、甲2に記載された実施例であり、上記甲2が開示する二液型ウレタン系組成物における、ポリイソシアネート含有硬化剤組成物部にフィラーと吸湿剤が配合されたものであるところ、甲2には、硬化剤成分に含まれるポリイソシアネートとして、脂肪族又は脂肪族環状ポリイソシアネートやその変性物が記載されている(【0037】)。
しかしながら、甲2には、イソシアネート成分が、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーであること、及び、この際用いられるポリオールが、平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のものであることについては記載も示唆もされていない。
(イ)a 第4の2(1)、(19)〜(21)によれば、甲1、19には、ウレタン系接着剤組成物において、甲20及び21には、二液型ポリウレタン手塗り施工用被塗物において、それぞれ、有機イソシアネート化合物とポリオールを反応させてなるイソシアネート基末端プレポリマーを用いることが記載されているが、上記(ア)のとおり、甲2には、イソシアネート成分がイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーであることは記載されていないから、甲1、19〜21に上記記載があるからといって、これを甲2発明1において採用することは、ただちに動機付けられない。
その上、甲1、19〜21のいずれにも、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを形成するポリオールが、平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のものであることについては明示がなく、甲1、19〜21をみても、甲2発明1の硬化剤組成物に、上記構造のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有させることは、何ら動機付けられない。
b さらに、その他の甲号証をみても、甲2発明1の硬化剤組成物に、平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有させることを動機付けると解するに足りる記載はない。
よって、相違点5に係る事項は、当業者が容易に想到し得た事項ではない。
(ウ)上記(ア)、(イ)のとおり、相違点5に係る事項は当業者が容易に想到し得た事項ではないから、相違点6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明1及び甲1〜24に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、相違点5について、以下のとおり主張する(申立書87頁19行〜88頁17行)。
a 当該相違点1にかかる本件発明1の構成は、例えば、甲1、19〜21にあるように、本件出願時の周知技術であるから、甲2に記載された発明において、イソシアネートに換えてプレポリマー化した「イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー」を用いること、及び「イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー」として「平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー」を用いることは当業者が容易になしうる(申立書87頁19〜88頁12行)。
なお、上記主張中、「相違点1」とあるのは、「本件特許発明1は「B1 平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー」を含むが、甲2−1発明は「B1” イソシアネートとしてのHDIとHDI trimerの混合物」を含む点。」(申立書87頁19〜23行)であり、当該相違点は、上記相違点5と実質的に同一である。
b 貯蔵安定性の低下抑制やポリオール含有組成物との混合性向上という本件発明1の効果が、甲2に記載された発明に比して顕著であるということはできない(申立書88頁13〜17行)。

(イ)上記主張について検討する。
a 主張aについて
上記イ(イ)aのとおり、甲1、19〜21のいずれにも、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを形成するポリオールが、平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールであることについての明示はないのだから、甲1、19〜21をみても、相違点5に係る事項が本件出願時の周知技術であるとはいえないから、上記主張aは前提において誤りがある。
よって、上記主張aは採用できない。

b 主張bについて
相違点5に係る事項が、当業者が容易に想到しうるものではない以上、本件発明1は、甲2発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないと解されるのであって、貯蔵安定性の低下抑制やポリオール含有組成物との混合性向上という本件発明1の効果が、甲2に記載された発明に比して顕著であるということはできないという理由で本件発明1の進歩性が認められないという申立人の主張は、採用することはできない。
なお、本件明細書には、所定のポリオールを用いたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含むイソシアネート含有組成物は、混合性及び貯蔵安定性に優れていたことが記載されているから(実施例、特に【表2】、【表3】)、本件明細書の記載から、イソシアネート含有組成物に所定のポリオールを用いたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含ませることの効果についても十分に理解できるといえる。

エ 小括
上記ア〜ウのとおりであるから、本件発明1は、甲2発明1及び甲1〜24の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
同様の理由により、本件発明1は,甲2発明2及び甲1〜24の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲2発明1とを対比する。
(ア)上記(1)ア(ア)のとおり、甲2発明1の硬化剤組成物は、「2液反応型ポリウレタン樹脂組成物のポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有イソシアネート含有組成物」である。
(イ)甲2発明1の、「フィラーとしてのアルミナ」は、本件発明3の「無機充填剤」に相当する。
(ウ)甲2発明1の、「吸湿剤としてのVTMO(ビニルトリメトキシシラン)」は、「活性水素基非含有シランカップリング剤」である。
(エ)上記(ア)〜(ウ)によれば、本件発明3と甲2発明1とは、
「2液反応型ポリウレタン樹脂組成物のポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物であって、
無機充填剤、および、
活性水素基非含有シランカップリング剤、
を含む、イソシアネート含有組成物」
である点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点7】
イソシアネート含有組成物が含むイソシアネート成分について、本件発明3は、「平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー」を含むのに対して、甲2発明1では、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)とHDIトリマーの混合物である点。

【相違点8】
活性水素基非含有シランカップリング剤について、本件発明3では、「炭素数3以上20以下のアルキル基を有するアルキルシランカップリング剤」であるのに対して、甲2発明1では、「ビニルトリメトキシシラン」である点

イ 検討
相違点7について検討する。
相違点7は、相違点5と同じであり、上記(1)イと同様の理由により、当業者が容易に想到し得た事項ではない
したがって、相違点8について検討するまでもなく、本件発明3は、甲2発明1及び甲1〜24に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、相違点7に関して、上記(1)ウ(ア)と同様の主張を繰り返すが(申立書89頁19〜22行)、そのような主張が採用できないことは、上記(1)ウ(イ)のとおりである。

エ 小括
上記ア〜ウのとおりであるから、本件発明3は、甲2発明1及び甲1〜24の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
同様の理由により、本件発明3は,甲2発明2及び甲1〜24の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明2、4〜7について
本件発明2は、本件発明1を引用するものであり、本件発明4〜7は、本件発明1又は3を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(1)及び(2)のとおり、本件発明1及び3のいずれも、甲2に記載された発明及び甲1〜24の記載に基づいて当業者が発明をすることができたものではなく、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が発明をすることができたものでもないのだから、本件発明2、4〜7も、甲2に記載された発明及び甲1〜24の記載に基づいて当業者が発明をすることができたものではなく、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が発明をすることができたものでもない。

(4)まとめ
よって、申立理由3は、理由がない。

第5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2023-03-09 
出願番号 P2021-159944
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C08G)
P 1 651・ 121- Y (C08G)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 杉江 渉
特許庁審判官 藤代 亮
海老原 えい子
登録日 2022-04-04 
登録番号 7053935
権利者 第一工業製薬株式会社
発明の名称 イソシアネート含有組成物および2液反応型ポリウレタン樹脂組成物  
代理人 弁理士法人蔦田特許事務所  

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