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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06Q
管理番号 1396323
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-12-15 
確定日 2023-04-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第7085701号発明「情報処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7085701号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7085701号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜5に係る特許についての出願は、令和4年2月25日に出願され、令和4年6月8日にその特許権の設定登録がされ、令和4年6月16日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、特許異議申立人 中川賢治(以下、「申立人」という。)は、令和4年12月15日に特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
本件特許の請求項1〜5の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能に接続され、
前記制御部によって、
製造されたスラグについてのスラグ伝票情報と、前記スラグの製造に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報とを関連付けて前記記憶部に記憶することを含む、
情報処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理方法において、
前記スラグが製造された電気炉の電力使用量実績から、スラグ1トンあたりの電力使用量を算出することと、
前記電力使用量に、前記スラグ伝票情報に含まれるスラグ重量の情報を掛けることによって、前記スラグを製造するために使用された電力量を算出することと、
前記電力量の電力を、非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力として決定することと、
によって、前記スラグの製造に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明することを含む、情報処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理方法において、
前記ネットワークはブロックチェーンネットワークを含み、
関連付けられた前記スラグ伝票情報と前記証明情報とをブロックチェーンに登録することを更に含む、
情報処理方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報処理方法において、
関連付けられた前記スラグ伝票情報と前記証明情報とをインターネットで公開することを更に含む、
情報処理方法。
【請求項5】
情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能に接続され、
前記制御部によって、
購入された電力の発電プロセスが再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、前記電力のうち再生可能エネルギー由来の電力を特定することと、
特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報を、スラグについてのスラグ伝票情報に関連付けて前記記憶部に記憶することと、
を含み、
前記特定することは、
前記スラグが製造された電気炉の電力使用量実績から、スラグ1トン当たりの電力使用量を算出することと、
前記スラグ1トン当たりの電力使用量に、再生可能エネルギー比率を掛けることで、再生可能エネルギー由来の電力量を算出することと、
前記電力量に、前記スラグ伝票情報に含まれるスラグ重量の情報を掛けることで、前記スラグを製造するために使用された再生可能エネルギー由来の電力の量を算出することと、
によって実行される、情報処理方法。」

第3 申立理由の概要
進歩性欠如
申立人は、主たる証拠として以下の甲第1号証を、従たる証拠として以下の甲第2号証ないし甲第4号証を提出し、本件発明1,2,5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、本件発明3,4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第4号証のいずれかに記載された発明又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1〜5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(進歩性欠如)から、取り消されるべきものである旨主張している(特許異議申立書12〜20頁。この申立理由を、以下「取消理由1」という。)。
甲第1号証: 特開2006−311675号公報
甲第2号証: 鉄鋼スラグ製品の管理に関するガイドライン,2019年3月1日改正,鐵鋼スラグ協会,インターネット<URL:https://www.slg.jp/pdf/guideline20190301.pdf>
甲第3号証: 特開2020−27340号公報
甲第4号証: 特開2020−9334号公報

2 記載不備
また、申立人は、請求項1に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり(サポート要件違反)、請求項5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(明確性及びサポート要件違反)から、取り消されるべきものである旨主張しているところ、具体的には以下のとおりである。

(1)本件発明5において、「特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報」に、どのような情報が含まれるのか、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を参酌するといくつかの解釈の可能性があり、本件発明5は明確ではない。また、本件発明5の「特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報」がどのような情報であるかが本件特許明細書に記載されていないので、本件発明5は、発明の詳細な説明に記載したものでない(特許異議申立書21〜22頁。この申立理由(明確性及びサポート要件違反)を、以下「取消理由2」という。)。

(2)本件発明5の「証明情報を、スラグについてのスラグ伝票情報に関連付けて」において、「証明情報」と関連付けられる「スラグ伝票情報」がどのようなものであるか明確ではない。また、本件発明の「証明情報を、電気炉で処理される廃棄物についてのマニフェスト情報に関連付けて」において、「証明情報」と関連付けられる「スラグ伝票情報」がどのようなものであるか本件特許明細書に記載されていないので、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない(特許異議申立書22〜24頁。この申立理由(明確性及びサポート要件違反)を、以下「取消理由3」という。)。

(3)本件発明5の「再生可能エネルギー比率」の定義が明確ではない。また、本件発明の「再生可能エネルギー比率」の定義は本件特許明細書に記載されていないので、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない(特許異議申立書24〜26頁。この申立理由(明確性及びサポート要件違反)を、以下「取消理由4」という。)。

(4)本件特許明細書には、電気炉を使用して製造されるスラグ鋼材製品における課題解決手段しか開示されていないが、本件特許発明1,5は、スラグが電気炉を使用して製造されるとの限定はされていないので、本件特許発明1,5は、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない場合に該当し、本件特許発1,5は、サポート要件に違反する(特許異議申立書26頁。この申立理由(サポート要件違反)を、以下「取消理由5」という。)。

第4 文献の記載、甲1発明等
1 甲第1号証
(1)甲第1号証には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による)。

「【0008】
この発明の一の局面による電力源特定システムでは、上記のように、製品を製造する際に用いた電力源別の電力量を保存する記憶手段と、電力源別の電力量を記憶手段から読み出すとともに通知する通知手段とを設けることによって、製造業者およびその製品を購入する消費者に、製品を製造する際に実際に消費した電力源別の電力量を通知することができるので、製造業者およびその製品を購入する消費者は、製品を製造する際に実際に消費した電力源別の電力量を特定することができる。これにより、製造業者は、たとえば、自然エネルギーによる電力を多く用いた製品を製造することができるので、環境に貢献することができる。また、製品を購入する消費者は、たとえば、自然エネルギーによる電力を多く用いて製造した製品を購入することにより、環境に貢献することができる。」

「【0019】
本実施形態による電力源特定システム1は、図1に示すように、電力を計測するための電力計測装置2、3および4と、発電電力データベース5と、購入電力データベース6と、製造使用電力データベース7と、製品別希望電力源データベース8と、電気料金データベース9と、使用部品データベース10と、部品電力量データベース11と、電力源別使用電力量データベース12と、データ入力部13と、演算制御部14と、組立部15a、検査部15bおよびラベル貼付部15cを含む製造ライン15とを備えている。なお、電力源別使用電力量データベース12は、本発明の「記憶手段」の一例であり、ラベル貼付部15cは、本発明の「通知手段」の一例である。
【0020】
また、電力計測装置2および3は、電力会社20の太陽光発電システム21(電力源)および風力発電システム22(電力源)により供給される電力をそれぞれ約1分毎に計測するとともに、計測した電力データを以下の表1に示すようなデータ構成を有する発電電力データベース5に格納する機能を有する。
【0021】
【表1】

【0022】
また、電力計測装置4は、電力会社30の原子力発電システム31(電力源)および火力発電システム32(電力源)により供給される電力を約1分毎に計測するとともに、計測した電力データを以下の表2に示すようなデータ構成を有する購入電力データベース6に格納する機能を有する。
【0023】
【表2】

【0024】
また、製造使用電力データベース7には、以下の表3に示すように、部品から製品を製造する際に用いた約1分毎の電力データが製品別に格納されるように構成されている。
【0025】
【表3】



「【0035】
また、電力源別使用電力量データベース12には、以下の表8に示すように、製造使用電力データベース7、使用部品データベース10および部品電力量データベース11に基づいて、部品および製品の製造時に消費した電力量データが、演算制御部14により製品別および電力源別に格納されるように構成されている。
【0036】
【表8】

【0037】
また、演算制御部14は、発電電力データベース5、購入電力データベース6、製品別希望電力源データベース8および電気料金データベース9に基づいて、約1分毎に電力源別の電力を複数の製品(A、B、C、Dなど)の製造ライン15毎に分配する機能を有する。
【0038】
また、製造ライン15の組立部15aでは、部品(α、β、γなど)から製品(A、B、C、Dなど)が組み立てられるように構成されている。また、検査部15bでは、製品(A、B、C、Dなど)の検査が行われるように構成されている。また、製造ライン15のラベル貼付部15cでは、電力源別使用電力量データベース12から部品および製品の製造時に消費した電力量が読み出されるとともに、読み出された電力量を印字したラベル(図2参照)が製品に貼付されるように構成されている。なお、ラベルに印字される電力量には、製造ライン15の組立部15aおよび検査部15bにおいて消費された電力量が含まれている。また、ラベル貼付部15cでは、ラベル貼付後に、製品が梱包されるように構成されている。
【0039】
図3は、図1に示した電力源特定システムが、電力源別の電力を複数の製品の製造ライン毎に分配するとともに、部品から製品を製造する際に用いた電力データを製造使用電力データベースに格納する方法を説明するためのフローチャートである。次に、図1〜図3を参照して、電力源特定システム1が、電力源別の電力を複数の製品の製造ライン15毎に分配するとともに、部品から製品を製造する際に用いた電力データを製造使用電力データベース7に格納する方法について説明する。
【0040】
まず、図3に示したステップS1において、電力計測装置2および3(図1参照)によって電力会社20(図1参照)の太陽光発電システム21および風力発電システム22により供給される電力がそれぞれ計測されるとともに、それらの電力データが発電電力データベース5(図1参照)に格納される。そして、ステップS2において、電力計測装置4(図1参照)によって電力会社30(図1参照)の原子力発電システム31および火力発電システム32により供給される電力が計測されるとともに、その電力データが購入電力データベース6(図1参照)に格納される。その後、ステップS3において、製品Aが選択される。
【0041】
そして、ステップS4において、製品別希望電力源データベース8(表4参照)に基づいて、製品の製造時に使用しようとする第1希望の電力源が選択される。ステップS3からステップS4に進む場合、製品Aの製造時に使用する電力源として、図4に示した製品別希望電力源データベース8に基づいて、太陽光発電システム21が選択される。
【0042】
その後、ステップS5において、選択された希望電力源が電気料金の最も安価な電力源か否かが判断される。ステップS3からステップS4を介してステップS5に進んだ場合には、ステップS5において、製品Aの希望電力源(太陽光発電システム21)は電気料金の最も安価な電力源でないと判断され、ステップS6に進む。また、後述するステップS15からステップS4を介してステップS5に進んだ場合に、その製品の選択された希望電力源が電気料金の最も安価な電力源である場合には、ステップS5において、希望電力源が電気料金の最も安価な電力源であると判断され、ステップS7に進む。そして、ステップS7において、電気料金データベース9(表5参照)に基づいて、判断時における電気料金の最も安価な(最低料金の)電力源が選択される。すなわち、時刻12:00においては、風力発電システム22が選択され、時刻12:01および12:02においては、電力会社30が選択される。そして、ステップS6に進む。
【0043】
その後、ステップS6において、選択された電力源の電力が、製品の製造時に消費する予定の電力(たとえば、製品Aの場合、1.1kW)以上であるか否かが、発電電力データベース5(表1参照)および購入電力データベース6(表2参照)に基づいて判断される。ステップS6において、選択された電力源の電力が、製品の製造時に消費する予定の電力よりも小さいと判断された場合(たとえば、時刻12:02における製品Aの場合(太陽光発電による電力は「0」)には、ステップS8に進む。そして、ステップS8において、製品別希望電力源データベース8(表4参照)に基づいて、次の希望電力源があるか否かが判断される。ステップS8において、次の希望電力源がないと判断された場合(たとえば、時刻12:02における製品Aの場合)には、ステップS9に進み、その製品の製造ライン15が停止されるとともに、ステップS10に進む。また、ステップS8において、次の希望電力源があると判断された場合には、ステップS11に進む。そして、ステップS11において、次の希望電力源が選択されてステップS5に戻る。
【0044】
また、ステップS6において、選択された電力源の電力が、製品の製造時に消費する予定の電力よりも大きいと判断された場合には、ステップS12に進む。そして、ステップS12において、その製品の製造ライン15が稼働される。その後、ステップS13において、その製品の製造ライン15の使用電力が製造使用電力データベース7(表3参照)に格納される。そして、ステップS14において、ステップS13において格納された分の使用電力が電力計測装置2、3および4(図1参照)により計測された電力源別の電力から引かれる。これにより、後述するようにステップS10、S15、S4およびS5を介してステップS6に進んだ場合に、製品の製造時に消費する予定の電力と電力計測装置2、3および4により計測された電力源別の電力とを比較することが可能となる。その後、ステップS10に進む。
【0045】
そして、ステップS10において、全ての製品について検討したか否かが判断される。ステップS10において、全ての製品について検討していないと判断された場合には、ステップS15に進む。そして、ステップS15において、次の製品(B、C、Dなど)が選択されて、ステップS4に戻る。そして、全ての製品に対して、上記したステップS4以降の処理が繰り返された後、ステップS10において、全ての製品について検討したと判断され、処理を終了する。なお、全ての製品に対する上記の処理は、約1分毎に繰り返される。
【0046】
次に、図1、表3、表6〜表8を参照して、演算制御部14が、部品および製品の製造時に消費した電力量データを電力源別使用電力量データベース12に格納する方法について説明する。
【0047】
表3に示すように、製品Aが、たとえば、時刻12:00から製造されて時刻12:04に完成したとすると、図1に示した演算制御部14により、部品から製品Aを製造する際に用いた電力量と、部品を製造する際に用いた電力量とが算出される。そして、それらの値が電力源別に合計されて電力源別使用電力量データベース12に格納される。
【0048】
具体的には、製造使用電力データベース7(表3参照)に基づいて、演算制御部14により、1個の部品から製品Aを製造する際に用いた電力量(0.05kWh(=(1.1+1+0.9)kW×(1/60)h))が算出される。また、製品Aが1個の部品αおよび2個の部品βにより構成されているとすると、使用部品データベース10(表6参照)および部品電力量データベース11(表7参照)に基づいて、演算制御部14により、1個の部品αを製造する際に用いた太陽光発電システム21からの電力量(0.021kWh)と、2個の部品βを製造する際に用いた風力発電システム22からの電力量(0.02kWh(=0.01kWh×2))とが導かれる。そして、太陽光発電システム21により発電された電力量(0.071kWh(=0.05kWh+0.021kWh)と、風力発電システム22により発電された電力量(0.02kWh)とが、電力源別使用電力量データベース12(表8参照)に格納される。なお、製品Aを構成する部品α、βおよび製品Aを製造する際には、電力会社30からの電力を用いないので、電力源別使用電力量データベース12の電力会社30の欄には、0kWhが格納される。」

「【図1】



「【図2】



(2)甲第1号証の段落【0039】〜【0048】は、「電力源特定システム1」(段落【0019】)による情報処理方法についての記載であるといえる。

(3)上記(1)、(2)から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「電力を計測するための電力計測装置2、3および4と、発電電力データベース5と、購入電力データベース6と、製造使用電力データベース7と、電力源別使用電力量データベース12と、演算制御部14と、組立部15a、検査部15bおよびラベル貼付部15cを含む製造ライン15とを備え、
電力計測装置2および3は、電力会社20の太陽光発電システム21(電力源)および風力発電システム22(電力源)により供給される電力をそれぞれ計測するとともに、計測した電力データを発電電力データベース5に格納する機能を有し、
電力計測装置4は、電力会社30の原子力発電システム31(電力源)および火力発電システム32(電力源)により供給される電力を計測するとともに、計測した電力データを購入電力データベース6に格納する機能を有し、
電力源別使用電力量データベース12には、部品および製品の製造時に消費した電力量データが、演算制御部14により製品別および電力源別に格納されるように構成されており、
製造ライン15のラベル貼付部15cでは、電力源別使用電力量データベース12から部品および製品の製造時に消費した電力量が読み出されるとともに、読み出された電力量を印字したラベルが製品に貼付されるように構成されており、ラベルに印字される電力量には、製造ライン15の組立部15aおよび検査部15bにおいて消費された電力量が含まれている、
電力源特定システム1による情報処理方法であって、
製品の製造時に使用しようとする電力源が選択され、
選択された電力源の電力が、製品の製造時に消費する予定の電力以上であるか否かが、発電電力データベース5および購入電力データベース6に基づいて判断され、
選択された電力源の電力が、製品の製造時に消費する予定の電力よりも大きいと判断された場合には、その製品の製造ライン15が稼働され、その後、その製品の製造ライン15の使用電力が製造使用電力データベース7に格納され、
製品Aが完成したとすると、製造使用電力データベース7に基づいて、演算制御部14により、製品Aを製造する際に用いた電力量が算出され、また、演算制御部14により、1個の部品αを製造する際に用いた太陽光発電システム21からの電力量と、2個の部品βを製造する際に用いた風力発電システム22からの電力量とが導かれ、そして、太陽光発電システム21により発電された電力量と、風力発電システム22により発電された電力量とが、電力源別使用電力量データベース12に格納され、製品Aを構成する部品α、βおよび製品Aを製造する際には、電力会社30からの電力を用いないので、電力源別使用電力量データベース12の電力会社30の欄には、0kWhが格納される、
情報処理方法。」

2 甲第2号証
甲第2号証には、次の事項が記載されている。
「5−3.鉄鋼スラグ製品の運送
鉄鋼スラグ製品の運送に際しては、各会員は、代金受領、運搬 伝票等で鉄鋼スラグ製品が確実に需要家に届けられたこと確認しなければならない。また、需要家が製造元及び販売元を確 認できるように、納入伝票等には、製造元及び販売元の各会員名称を記載しなければならない。」(5頁)

第5 当審の判断
1 取消理由1(進歩性欠如)について
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)甲1発明の「電力源特定システム1」は、「演算制御部14」による「電力量」の「算出」や「電力源別使用電力量データベース12」への「格納」といった情報処理を実行するものであって、本件発明の「情報処理装置」に相当する。そして、当該情報処理は、具体的な処理の内容を除き、本件発明1の「情報処理装置による情報処理方法」に相当する。

(イ)甲1発明の「電力源特定システム1」が備える「演算制御部14」、「電力源別使用電力量データベース12」は、それぞれ、本件発明1の「制御部」、「記憶部」に相当する。
この点について、上記(ア)(甲1発明の「電力源特定システム1」が本件発明の「情報処理装置」に相当すること)を踏まえると、
甲1発明の「電力源特定システム1」が「演算制御部14」及び「電力源別使用電力量データベース12」を備えることと、本件発明1の
「前記情報処理装置は、制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能に接続され」ている
こととは、
「前記情報処理装置は、制御部と記憶部とを含む」
ことである点で共通する。

(ウ)甲1発明において、「電力源別使用電力量データベース12」は、「部品および製品の製造時に消費した電力量データが、演算制御部14により製品別および電力源別に格納される」ものであり、また、「演算制御部14により」、「電力源別使用電力量データベース12」に「製品別および電力源別に格納される」、「部品および製品の製造時に消費した電力量データ」は、例えば「製品A」については、「太陽光発電システム21により発電された電力量と、風力発電システム22により発電された電力量」であるから、「演算制御部14」によって、製造された製品が「製品A」であることを特定する情報と、「太陽光発電システム21により発電された電力量と、風力発電システム22により発電された電力量」とを関連付けて「電力源別使用電力量データベース12」に記憶することがなされるといえる。
そして、上記における、製造された製品が「製品A」であることを特定する情報と、本件発明1の「製造されたスラグについてのスラグ伝票情報」とは、「製造された製品に関する情報」である点で共通し、また、上記における、「太陽光発電システム21により発電された電力量と、風力発電システム22により発電された電力量」と、本件発明1の「前記スラグの製造に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報」とは、「前記製品の製造に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることに関する情報」である点で共通する。
以上のことについて、上記(イ)(甲1発明の「演算制御部14」、「電力源別使用電力量データベース12」が、それぞれ、本件発明1の「制御部」、「記憶部」に相当すること)を踏まえると、甲1発明における「演算制御部14」によって、製造された製品が「製品A」であることを特定する情報と、「太陽光発電システム21により発電された電力量と、風力発電システム22により発電された電力量」とを関連付けて「電力源別使用電力量データベース12」に記憶することと、本件発明1の
「前記制御部によって、
製造されたスラグについてのスラグ伝票情報と、前記スラグの製造に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報とを関連付けて前記記憶部に記憶することを含む」
こととは、
「前記制御部によって、
製造された製品に関する情報と、前記製品の製造に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることに関する情報とを関連付けて前記記憶部に記憶することを含む」
ことである点で共通する。

(エ)なお、上記(ウ)において、製造された製品が「製品A」であることを特定する情報は、「伝票」として必要な情報を有していない点で、本件発明1の「伝票情報」に相当するとまではいえない。
また、「太陽光発電システム21により発電された電力量と、風力発電システム22により発電された電力量」は、証明力を伴っていない点で、本件発明1の「証明情報」に相当するとまではいえない。

(オ)上記(ア)〜(エ)から、本件発明1と甲1発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、制御部と記憶部とを含み、
前記制御部によって、
製造された製品に関する情報と、前記製品の製造に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることに関する情報とを関連付けて前記記憶部に記憶することを含む、
情報処理方法。」

(相違点1)
本件発明1の「情報処理装置」は、「制御部と」「記憶部と」に加えて「通信部」を含み、かつ、「前記通信部を介してネットワークと通信可能に接続され」るものであるのに対して、甲1発明は、「通信部」を含むことが特定されるものではない点。

(相違点2)
「関連付けて前記記憶部に記憶する」の情報の一方が、本件発明1では、「製造されたスラグについてのスラグ伝票情報」であるのに対して、甲1発明では、製造された「製品」に関する情報であって、「製品」が「スラグ」であることが特定されるものではなく、情報が「伝票情報」であることが特定されるものでもない点。

(相違点3)
「関連付けて前記記憶部に記憶する」の情報の他方が、本件発明1では、「前記スラグの製造に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報」であるのに対して、甲1発明では、例えば「製品A」における「太陽光発電システム21により発電された電力量と、風力発電システム22により発電された電力量」であって、情報が「証明情報」であることが特定されるものではない点。

イ 判断
事案に鑑みて、「関連付けて前記記憶部に記憶する」情報についてのものである点で相互に関連する相違点2,3について、まとめて先に検討する。
製造物についてのスラグ伝票情報と、前記製造物の製造に使用された電力が特定の電力であることを証明する証明情報とを関連付けて記憶するとの事項については、甲第2号証ないし甲第4号証のいずれにも記載されておらず、本件特許の出願前に周知であったとも認められない。
甲第2号証には、上記第4の2の記載があるが、上記事項について開示するものではなく、甲1発明に甲第2号証の記載事項を適用しても、本件発明1の相違点2,3に係る構成には至らない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第4号証のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2〜4
本件発明2〜4は、本件発明1を減縮した発明であって、相違点2,3に係る構成を含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第4号証のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明5
本件発明5は、本件発明1の「製造されたスラグについてのスラグ伝票情報と、前記スラグの製造に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報とを関連付けて前記記憶部に記憶すること」と一部が異なる、「特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報を、スラグについてのスラグ伝票情報に関連付けて前記記憶部に記憶すること」を含むことから、本件発明5と甲1発明とを対比した場合の相違点には、少なくとも、以下の相違点4,5が存在するものとなる。

(相違点4)
「関連付けて前記記憶部に記憶する」の情報の一方が、本件発明5では、「スラグについてのスラグ伝票情報」であるのに対して、甲1発明では、製造された「製品」に関する情報であって、「製品」が「スラグ」であることが特定されるものではなく、情報が「伝票情報」であることが特定されるものでもない点。

(相違点5)
「関連付けて前記記憶部に記憶する」の情報の他方が、本件発明5では、「特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報」であるのに対して、甲1発明では、例えば「製品A」における「太陽光発電システム21により発電された電力量と、風力発電システム22により発電された電力量」であって、情報が「証明情報」であることが特定されるものではない点。

しかしながら、相違点4,5については相違点2,3と同様であって、製造物の製造に使用された電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報を、前記製造物についての伝票情報に関連付けて前記記憶部に記憶するとの事項については、甲第2号証ないし甲第4号証のいずれにも記載されておらず、本件特許の出願前に周知であったとも認められない。
甲第2号証には、上記第4の2の記載があるが、上記事項について開示するものではなく、甲1発明に甲第2号証の記載事項を適用しても、本件発明5の相違点4,5に係る構成には至らない。
よって、本件発明5は、本件発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第4号証のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 取消理由2(明確性及びサポート要件違反)について
請求項5に記載されている「特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報」は、文言上、「特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する」ことが可能な情報であって、また、請求項5に別途記載されている「購入された電力の発電プロセスが再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、前記電力のうち再生可能エネルギー由来の電力を特定する」との記載によれば、「証明する」内容が、「再生可能エネルギー由来の電力」であることが「特定された」「電力」について、「再生可能エネルギー由来の電力である」ということであることが、その記載自体から理解できるといえる。
そして、このように理解することは、本件特許明細書の発明の詳細な説明における「電力需要者によって購入された電力の発電プロセスが、再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、購入及び使用された電力のうち再生可能エネルギー由来の電力についてのみ特定することができる。そのような特定は、電力会社等によって公開される任意の証明情報(例えば二酸化炭素排出係数(残渣))を利用して行うことができる。」(段落【0051】)との記載と整合するものである。
よって、請求項5の上記記載は明確であり、また、当該記載について発明の詳細な説明に記載されているから、当該記載に基づいて特許請求の範囲の記載が明確性及びサポート要件に違反するということはできない。
なお、申立人が取消理由2の根拠として主張する段落【0054】の記載は、上記理解と何ら矛盾するものではないから、本件発明の明確性等とは無関係である。

3 取消理由3(明確性及びサポート要件違反)について
請求項5に記載されている「スラグ伝票情報」について、請求項5には、当該情報が「スラグについて」のものであることを除き、その意味内容を特定する記載はないものの、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「【0027】
製造されるスラグには、スラグ伝票が添付される。スラグ伝票の一例が図2に示される。スラグ伝票21は、納入される1単位のスラグに関するスラグ伝票情報を含む。スラグ伝票情報は例えば次の情報を含む。
・整理番号22(唯一無二のシリアルナンバー)
・証明情報23(図2では一例としてグリーン電力証書のシリアルナンバー)
代替例として又は追加例として、スラグ伝票情報はスラグ重量の情報を含んでよい。」
そして、請求項5に記載されている「スラグ伝票情報」は、本件特許明細書の上記記載等を参酌して、例えば、納入される1単位のスラグに付される固有のシリアルナンバー、当該スラグの製造のために消費した電力についてのグリーン電力証書のシリアルナンバー等を含む情報であることが理解できる。
よって、請求項5の上記記載は明確であり、また、当該記載について発明の詳細な説明に記載されているから、当該記載に基づいて特許請求の範囲の記載が明確性及びサポート要件に違反するということはできない。
なお、申立人が取消理由3の根拠として主張する段落【0054】、【0060】の記載は、上記理解と何ら矛盾するものではないから、本件発明5の明確性等とは無関係である。

4 取消理由4(明確性及びサポート要件違反)について
請求項5に記載されている「再生可能エネルギー比率」について、請求項5には、その意味内容を特定する記載はないものの、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「【0054】
発電プロセスが、再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、購入及び使用された電力のうち再生可能エネルギー由来の電力についてのみ特定する方法は、以下の方法により得ることができる。電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを実現するには、まず、対象となる電気炉EFの1ヒート分に相当する工場電力使用量が操業実績から、算出される。算出は、制御部11(例えばプロセスコンピュータ)によって行われてよいし、手動で行われてよい(以下同じ)。1ヒートとは、電気炉EFにおいて1回に溶解される溶鋼である。次いで、1ヒートに使用される電力量に、電力会社等によって公開される再生可能エネルギー比率を掛けることで、再生可能エネルギー由来の電力量が算出される。」
そして、上記記載から、「1ヒートに使用される電力量」、すなわち「発電プロセスが、再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合」の「対象となる電気炉EFの1ヒート分に相当する工場電力使用量」が、「再生可能エネルギー」と「再生可能エネルギー以外のエネルギー」との合計であることから、これに「再生可能エネルギー比率を掛けることで」、「再生可能エネルギー由来の電力量が算出される」ことが、当業者であれば当然に理解でき、このことからさらに、「再生可能エネルギー比率」の定義が、「再生可能エネルギー」と「再生可能以外のエネルギー」との合計のうちの「再生可能エネルギー」の割合であることも、当然に理解できる。
よって、請求項5の上記記載は明確であり、また、当該記載について発明の詳細な説明に実質的に記載されているから、当該記載に基づいて特許請求の範囲の記載が明確性及びサポート要件に違反するということはできない。
なお、申立人が取消理由4の根拠として主張する段落【0054】及び段落【0055】の記載は、前者については上記のとおりである。また、後者については上記理解と何ら矛盾するものではないから、本件発明の明確性等とは無関係である。

5 取消理由5(サポート要件違反)について
(1)本件特許明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
ア 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気炉を使用してスラグを製造する場合、使用されるエネルギーの大部分が電力である。電力を火力発電等により発電する場合、発電時に二酸化酸素が排出される。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、スラグのカーボンニュートラルの実現性を高めるための製造方法、スラグ及び情報処理方法を提供することにある。」
イ 「【0056】
対照的に、高炉一貫製鉄所スラグ(転炉スラグ)は、コークス(石炭)、天然ガス等のエネルギーを使用して製造される。この場合、カーボンニュートラルを実現するためにはLCA評価を元にした複雑な計算が必要であるものの、計算を行っても完全なカーボンニュートラルを実現することは不可能である。
【0057】
また本実施形態によれば、情報処理装置1は、製造されたスラグについてのスラグ伝票情報と、スラグの製造に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報とを関連付ける。この構成により、スラグ伝票情報と、スラグの製造に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報とが関連付けられたスラグとなり、製造されたスラグがカーボンニュートラルであることの証明が容易である。」
ウ「【0060】
また本実施形態によれば、制御部11は、購入された電力の発電プロセスが再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、電力のうち再生可能エネルギー由来の電力を特定することと、特定された電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報を、スラグ伝票情報に関連付ける。この構成により情報処理装置1は、発電プロセスにおいて再生可能エネルギー以外のエネルギーが使用された場合であっても、スラグが部分的にカーボンニュートラルであることを証明することができる。」

(2)以上の記載から、発明の詳細な説明に記載されている発明が解決しようとする課題は、スラグのカーボンニュートラルの実現性を高めること(段落【0005】)であり、当該課題の解決には、少なくとも、スラグの製造に使用された電力に非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力(段落【0057】)又は再生可能エネルギー由来の電力(段落【0060】)が含まれていることが必要である一方、コークス(石炭)、天然ガス等のエネルギーを使用して製造される高炉一貫製鉄所スラグ(転炉スラグ)は、完全なカーボンニュートラルを実現することは不可能である(段落【0056】)ことから、製造されたスラグが高炉一貫製鉄所スラグ(転炉スラグ)である場合は上記課題が解決できないことが理解できる。

(3)そして、請求項1には、「製造されたスラグについてのスラグ伝票情報と、前記スラグの製造に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報とを関連付けて前記記憶部に記憶する」との発明特定事項が記載されているから、本件発明1は、上記(2)で検討した発明が解決しようとする課題を解決し得るものである。
また、その余の発明特定事項も含め、請求項1に記載されている発明特定事項については、発明の詳細な説明(段落【0011】〜【0050】等)に実質的に記載されている。
請求項5についても同様に、「購入された電力の発電プロセスが再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、前記電力のうち再生可能エネルギー由来の電力を特定する」との発明特定事項が記載されているから、本件発明5は、上記(2)で検討した発明が解決しようとする課題を解決し得るものであり、また、その余の発明特定事項(上記2〜4で検討したもの等)も含め、請求項5に記載されている発明特定事項については、発明の詳細な説明(段落【0011】〜【0054】等)に実質的に記載されている。
その一方で、請求項1、請求項5のいずれにも、製造されたスラグが高炉一貫製鉄所スラグ(転炉スラグ)であることを特定する記載はないから、本件発明1,5に上記課題が解決できないものが含まれるとはいえない。

(4)よって、本件発明1,5は、いずれも、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであって、サポート要件を満たしている。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2023-03-31 
出願番号 P2022-028525
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G06Q)
P 1 651・ 537- Y (G06Q)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 中野 裕二
特許庁審判官 富澤 哲生
野崎 大進
登録日 2022-06-08 
登録番号 7085701
権利者 JFE条鋼株式会社
発明の名称 情報処理方法  
代理人 杉村 光嗣  
代理人 石井 裕充  
代理人 杉村 憲司  
代理人 川原 敬祐  
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