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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1396633 |
総通号数 | 17 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2023-05-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-07-15 |
確定日 | 2023-04-12 |
事件の表示 | 特願2018−548830「光拡散の方法と装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月21日国際公開、WO2017/161330、令和 1年 5月23日国内公表、特表2019−513300〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2017年(平成29年) 3月17日(パリ条約による優先権主張外国受理2016年 3月18日(以下「優先日」という。)、米国)の出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和2年 3月 6日 :手続補正書 令和2年 5月15日付け:拒絶理由通知書 令和2年 7月 8日 :意見書、手続補正書 令和2年 9月30日付け:拒絶理由通知書 令和3年 1月 5日 :意見書、手続補正書 令和3年 3月12日付け:拒絶査定 令和3年 7月15日 :審判請求、手続補正書 令和3年11月 2日 :上申書 令和4年 3月31日付け:拒絶理由通知書 令和4年 7月 5日 :意見書、手続補正書 (以下、この手続補正 書による手続補正を「本件補正」という。) 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1〜22に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「基板と、 複数のLEDであって、各LEDは、第1の側と第2の側を有し、各LEDは、そのLEDの前記第1の側で導電パッドを介して前記基板に取り付けられ、各LEDは、 前記基板から離れる方向に光を反射するように前記LEDの前記第1の側に隣接して配置された第1の反射素子と、 前記LEDの前記第1の側と反対の前記LEDの前記第2の側に隣接して配置された第2の反射素子であって、主に前記基板に向かう方向に光を反射するように配置された前記第2の反射素子と、 を含む前記複数のLEDと、 前記基板の表面に沿って前記複数のLEDと整列した光拡散特性を有する拡散部であって、前記複数のLEDの少なくとも1つのLEDの周囲で配置されるように整列された前記拡散部と、 前記複数のLEDと前記拡散部とを、前記基板との間に挟むように配置されたディスプレイパネルと を含み、 前記拡散部は、光を拡散する層内に前記各LEDと隣接して配置され、 前記拡散部は、前記第1の反射素子および前記第2の反射素子によって反射された光を捕捉し、該捕捉された光を拡散させながら、前記ディスプレイパネルにわたって均一に光分散するのを支援する、導光および拡散機能の前記光拡散特性を有し、 前記各LEDは、封止する保護樹脂が覆われていないパッケージ化されていないLEDとして構成され、 前記拡散部の厚さは、該拡散部によって拡散された光を前記ディスプレイパネルに供給することができるように、前記光を拡散する層内に配置された前記各LEDの高さと同じ高さを有し、 前記拡散部は、成形用ポリマーフィルムから形成され、これにより、 前記拡散部は、導光板又は拡散板として働いて、前記複数のLEDが発した光が前記ディスプレイパネルにわたって均一に分散するのを助けるように、該拡散部内の空いた孔に入れ子にされた前記各LEDを含むように構成された入れ子拡散部として定義されることを特徴とする ディスプレイ装置。」 第3 当審が通知した拒絶の理由 当審が通知した令和4年3月31日付け拒絶理由通知書に係る拒絶理由は、次の内容を含むものである。 1 本件補正前の請求項1及び5に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2 本件補正前の請求項1及び5に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2007−173849号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。 (1)「【請求項10】 i.一次光が生成される活性領域を含む少なくとも1つの半導体層と、 ii.前記少なくとも1つの半導体層に結合された反射底面と、 iii.前記少なくとも1つの半導体層に結合され、前記一次光の第1部分を反射する上面と、を各々が含み、前記上面と前記反射底面とが、前記一次光の方向を1つ又はそれ以上の半径方向に変え、前記1つ又はそれ以上の半径方向の各々が、前記活性領域の中央平面に対してほぼ平行である、 a.1つ又はそれ以上の発光デバイスと、 b.前記1つ又はそれ以上の発光デバイスに光学的に結合された光透過ゾーンと、 を含むことを特徴とする照明システム。 ・・・(略)・・・ 【請求項13】 前記1つ又はそれ以上の発光デバイスの各々が、前記少なくとも1つの半導体層及び前記上面を保護する光学的に透明なオーバーモールドをさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の照明システム。」 「【0007】 本発明の様々な実施形態によれば、側面放射パターンは、発光デバイスと光導波管を効率的に統合して、実質的に薄い照明システムを生成することを可能にする。照明システムは、一様な照明を生成し、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)を照明するために使用することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0008】 本発明の様々な実施形態は、以下で、本発明を限定するのではなく示すものとして与えられ、同じ指示が同じ要素を示す添付図面と共に説明される。 本発明の様々な実施形態は、発光デバイス及び照明の方法を提供する。発光デバイスは、半径方向において一様な側面放射を提供する。発光デバイスは、また、一様な照明を提供する実質的に薄い照明システムを生成するために、光導波管と共に使用することができる。」 「【0009】 図1は、本発明の実施形態による発光デバイス100の断面図である。この断面は、(図1に示すように)x−y平面に対して平行な平面に沿って取られている。発光デバイス100は、例えば、発光ダイオード(LED)とすることができる。発光デバイス100は、1つ又はそれ以上の半導体層102と、反射底面104と、上面106と、基板108とを含む。半導体層102は、中心平面112と共に、活性領域110のような1つ又はそれ以上の活性領域を含む。発光デバイス100は、サブマウント114上に取り付けられる。本発明の様々な実施形態によれば、反射底面104、半導体層102、及び上面106は、スタックを形成する。本発明の実施形態によれば、発光デバイス100は、例えば、伝動経路を、発光デバイス100における接合部に及び接合部から伝導経路にたいして制御するためのフリップチップ構成を含んでいる。」 「【0011】 本発明の実施形態によれば、上面106は、上面106に入射する一次光の少なくとも一部を、中心平面112に対してほぼ垂直方向に反射する。上面106により反射された一次光の一部は、以下で一次光の第1部分といい、上面106により透過された一次光の一部は、以下で一次光の第2部分という。反射底面104もまた、反射底面104に入射する一次光を、中心平面112に対してほぼ垂直方向に反射するように構成される。そのため、ファブリー・ペローキャビティのようなキャビティは、活性領域110、反射底面104及び上面106の相対位置に応じて、活性領域110、反射底面104及び上面106の少なくとも2つの間に生成されることができる。本発明の実施形態によれば、キャビティは、活性領域110と反射底面104との間に生成される。活性領域110からの一次光の波と活性領域110の鏡像116からの波は相互作用する。ここでは、鏡像116は、反射底面104における活性領域110の像である。本発明の実施形態によれば、活性領域110と反射底面104の相対位置は、一次光の建設的又は相殺的干渉を生じさせるように調整することができる。従って、発光デバイス100において生成された一次光の強度は高めることができる。また、反射底面104、上面106、及び活性領域110の相対位置は、キャビティ効果、次いで発光デバイス100の放射パターンを変更するように調整することができる。例えば、距離x(図1に示す)の所定の値は、1つ又はそれ以上の半径方向における一次光の放射を実質的に増加させることができる。ここでは、半径方向は、中心平面112に対してほぼ平行な方向を含む。本発明の実施形態によれば、所定の値xは、一次光の波長のオーダーとすることができ、発光デバイス100の大きさに応じて決まるとすることができる。 【0012】 本発明の実施形態によれば、上面106は、基板108の表面を完全に覆うことができる(図1に示す)。本発明の別の実施形態によれば、上面106は、基板108の表面の一部を覆うことができる(図3に示す)。さらに、上面106は、部分リフレクタ又は完全リフレクタを含むことができる。本発明の様々な実施形態によれば、上面106及び反射底面104は、金属層、鏡面、及び同様のものを含むことができる。」 「【0015】 本発明の実施形態によれば、発光デバイス100は、例えば、テレビ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)及び同様なもののディスプレイの直接背面照明において使用することができる。」 「【0027】 図5は、本発明の実施形態による照明システム500の断面図である。この断面は、(図5に示すように)x−z平面に対して平行な平面に沿って取られている。照明システム500は、発光デバイス100のような1つ又はそれ以上の発光デバイスと、光透過ゾーン502とを含む。光透過ゾーン502は、発光デバイス100に光学的に結合される。本発明の実施形態によれば、発光デバイス100は、光透過ゾーン502の1つ又はそれ以上の穴の中に配置することができる(図5に示す)。 【0028】 発光デバイス100は、光透過ゾーン502に放射される一次光を生成する。光透過ゾーン502は、一次光を、y軸に対して平行な方向に透過する。光透過ゾーン502は一次光を透過して、一次光がディスプレイを一様に照明するように用いることができる。本発明の実施形態によれば、発光デバイス100によって生成された一次光は、光透過ゾーン502に放射される前に、二次光に変換されることができる。 【0029】 本発明の実施形態によれば、光透過ゾーン502は、透過表面504のような1つ又はそれ以上の透過表面と、1つ又はそれ以上の非透過表面とを含むことができる。一次光は、透過表面を通って透過されることができる。さらに、透過表面及び非透過表面は互いに閉鎖された構造体を形成する。 【0030】 本発明の実施形態によれば、光透過ゾーン502は、例えば、光導波管、中空光ガイド、及び同様なものとすることができる。光透過ゾーン502は、例えば、合成樹脂、アクリル、ポリカーボネート、PMMA、ガラス、及び同様なもので作ることができる。本発明の様々な実施形態によれば、光透過ゾーン502は、一定の厚さであってもよいし、又は、例えばx軸或いはz軸に沿って先細になっていてもよい。具体的には、光透過ゾーン502の断面x−yは、くさび型の形状、又は長方形の形状などを有することができる。本発明の実施形態によれば、照明システム500の厚さは、y軸に沿って測定された場合に、0.4mmから10mmまでの範囲にあるとすることができる。 【0031】 本発明の実施形態によれば、一次光は、光透過ゾーン502において、TIRを受けることができる。光透過ゾーン502のくさび型形状は、例えば、透過表面504を通る一時光のTIR及びその後の透過の障害にする可能性がある。光透過ゾーン502の非透過表面は、透過表面を通る一次光の透過を可能にし、光透過ゾーン502における一次光の一様な分布を助けるように反射性をもって作ることができる。 【0032】 本発明の実施形態によれば、非透過表面の少なくとも1つは、複数の結合部材を含むことができる。結合部材は、例えば、透過表面504を通る光透過ゾーン502からの一次光を、一様にかつ効率的に結合するために提供することができる。本発明の様々な実施形態によれば、結合部材は、くさび状、リッジ状、スクリーン印刷ドットなどのような表面変形を含むことができる。ここでは、結合部材は、異なる形状及び密度を含むことができ、印刷、プレッシング、エッチング、スクライビング、サンドブラスティングなどのようなプロセスを使用して提供することができる。」 「【0035】 本発明の様々な実施形態によれば、図1から図4までに関連して説明された発光デバイス100は、照明システム500における光透過ゾーン502と併せて使用することができる。」 (2)図1及び図5は、次のとおりである。 「【図1】 【図5】 」 (3)請求項10に記載された「発光デバイス」には、請求項13で特定される「前記1つ又はそれ以上の発光デバイスの各々が、前記少なくとも1つの半導体層及び前記上面を保護する光学的に透明なオーバーモールド」を含まない態様が典型的に想定されているということができるのであり、このことは、当該請求項10の従属項である当該請求項13が当該「オーバーモールド」を「さらに」含むと特定されていること、さらには、図1に係る発光デバイスが当該「オーバーモールド」を含んでいないことからも明らかである。 2 引用発明の認定 上記1からみて、引用文献1には、請求項10に係る照明システムを、液晶ディスプレイ(LCD)を照明するために使用することができる(【0007】)ディスプレイ装置について、次の発明が記載されていると認められる。(以下「引用発明」という。なお、括弧内は認定の根拠とした段落番号などを参考までに示す。以下同じ。) 「一次光が生成される活性領域を含む少なくとも1つの半導体層と、前記少なくとも1つの半導体層に結合された反射底面と、前記少なくとも1つの半導体層に結合され、前記一次光の第1部分を反射する上面と、を各々が含み、前記上面と前記反射底面とが、前記一次光の方向を1つ又はそれ以上の半径方向に変え、前記1つ又はそれ以上の半径方向の各々が、前記活性領域の中央平面に対してほぼ平行である、 1つ又はそれ以上の発光デバイスと、 前記1つ又はそれ以上の発光デバイスに光学的に結合された光透過ゾーンと、 を含む照明システムであって、(【請求項10】)、 前記1つ又はそれ以上の発光デバイスの各々が、前記少なくとも1つの半導体層及び前記上面を保護する光学的に透明なオーバーモールドを含んでおらず、(上記1(3)) 発光デバイスは、半径方向において一様な側面放射を提供するものであり、発光デバイスは、また、一様な照明を提供する実質的に薄い照明システムを生成するために、光導波管と共に使用することができるものであり、(【0008】) 発光デバイス100は、発光ダイオード(LED)とすることができ、 発光デバイス100は、1つ又はそれ以上の半導体層102と、反射底面104と、上面106と、基板108とを含み、 半導体層102は、中心平面112と共に、活性領域110のような1つ又はそれ以上の活性領域を含み、 発光デバイス100は、発光デバイス100における接合部に及び接合部から伝導経路にたいして制御するためのフリップチップ構成を含んでおり、(【0009】) 上面106は、基板108の表面を完全に覆うことができ、 上面106及び反射底面104は、金属層を含むことができ、(【0012】) 発光デバイス100は、光透過ゾーン502の1つ又はそれ以上の穴の中に配置することができ、(【0027】) 発光デバイス100は、光透過ゾーン502に放射される一次光を生成し、光透過ゾーン502は一次光を透過して、一次光がディスプレイを一様に照明するように用いることができ、(【0028】) 光透過ゾーン502は、透過表面504のような1つ又はそれ以上の透過表面と、1つ又はそれ以上の非透過表面とを含むことができ、 一次光は、透過表面を通って透過されることができ、 透過表面及び非透過表面は互いに閉鎖された構造体を形成し、(【0029】) 光透過ゾーン502は、光導波管とすることができ、 光透過ゾーン502は、例えば、合成樹脂、アクリル、ポリカーボネート、PMMAで作ることができ、 光透過ゾーン502は、一定の厚さであり、(【0030】) 光透過ゾーン502の非透過表面は、透過表面を通る一次光の透過を可能にし、光透過ゾーン502における一次光の一様な分布を助けるように反射性をもって作ることができ、(【0031】) 光透過ゾーン502の非透過表面は、プレッシング、エッチング、スクライビング、サンドブラスティングなどのようなプロセスを使用して提供される結合部材を含む、(【0032】) 照明システムであり、 照明システムは、液晶ディスプレイ(LCD)を照明するために使用することができる、(【0007】) ディスプレイ装置。」 第5 対比 本願発明と引用発明を対比する 1 本願発明の「基板と、複数のLEDであって、各LEDは、第1の側と第2の側を有し、各LEDは、そのLEDの前記第1の側で導電パッドを介して前記基板に取り付けられ」るとの特定事項について (1)引用発明の「発光デバイス」(「発光デバイス100」)は、「発光ダイオード(LED)とすることができ」るものであるから、本願発明の「LED」に相当する。そして、引用発明の「発光デバイス」の数は、「1つ又はそれ以上」であるから、引用発明は、本願発明の「複数のLED」の特定事項を満たしているといえる。 (2)引用発明の「発光デバイス」は、「反射底面」(「反射底面104」)及び「前記一次光の第1部分を反射する上面」(「上面106」)を備えるところ、当該「発光デバイス」のうち、当該「反射底面」のある側が本願発明の「第1の側」に相当し、当該「上面」のある側が本願発明の「第2の側」に相当する。 (3)引用発明の「発光デバイス」は、「発光デバイス100における接合部に及び接合部から伝導経路にたいして制御するためのフリップチップ構成を含んで」いるから、「反射底面」のある側(本願発明の「第1の側」に相当。)において、何らかの支持構造に取り付けられていることが明らかである。 そうすると、本願発明と引用発明とは、「各LEDは、そのLEDの前記第1の側で」支持構造に「取り付けられ」る点で一致する。しかし、引用発明では、その「発光デバイス」の支持構造への取り付けが「導電パッドを介して」なされているのか、また、その支持構造が「基板」といえるのかが不明である。 (4)上記(1)〜(3)によれば、本願発明と引用発明とは、支持構造と、「複数のLEDであって、各LEDは、第1の側と第2の側を有し、各LEDは、そのLEDの前記第1の側で」前記支持構造に「取り付けられ」る点で一致するが、引用発明は、それに当然備わる支持構造が「基板」といえるのか、また、LEDの当該支持構造への取り付けが「導電パッドを介して」なされているのかが不明である点で、本願発明とは一応相違する。 2 本願発明の「前記基板から離れる方向に光を反射するように前記LEDの前記第1の側に隣接して配置された第1の反射素子と」との特定事項について (1)引用発明の「反射底面」(「反射底面104」)は、「金属層を含むことができ」るものであるから、本願発明の「第1の反射素子」に相当する。そして、引用発明の当該「反射底面」は、上記1(2)も踏まえると、本願発明でいう「前記LEDの前記第1の側に隣接して配置された」ものといえる。 (2)引用発明では、上記1(3)のとおり、「発光デバイス」が「反射底面」のある側(本願発明の「第1の側」に相当。)において支持構造に取り付けられているから、本願発明と引用発明とは、「第1の反射素子」が前記支持構造「から離れる方向に光を反射するように前記LEDの前記第1の側に隣接して配置された」点で一致するといえる。 (3)上記(1)及び(2)によれば、本願発明と引用発明とは、「第1の反射素子」が前記支持構造「から離れる方向に光を反射するように前記LEDの前記第1の側に隣接して配置された」点で一致するが、引用発明は、支持構造が「基板」といえるのかが不明である点で、本願発明とは一応相違する。 3 本願発明の「前記LEDの前記第1の側と反対の前記LEDの前記第2の側に隣接して配置された第2の反射素子であって、主に前記基板に向かう方向に光を反射するように配置された前記第2の反射素子と」との特定事項について (1)引用発明の「上面」(「上面106」)は、「金属層を含むことができ」るものであるから、本願発明の「第2の反射素子」に相当する。そして、引用発明の当該「上面」は、上記1(2)も踏まえると、本願発明でいう「前記LEDの前記第2の側に隣接して配置された」ものといえる。 (2)引用発明は、上記1(3)のとおり、「発光デバイス」が「反射底面」のある側(本願発明の「第1の側」に相当。)において支持構造に取り付けられているから、本願発明と引用発明とは、「第2の反射素子」が前記支持構造「に向かう方向に光を反射するように配置された」点で一致するといえる。 (3)上記(1)及び(2)によれば、本願発明と引用発明とは「前記LEDの前記第1の側と反対の前記LEDの前記第2の側に隣接して配置された第2の反射素子であって、主に」前記支持構造「に向かう方向に光を反射するように配置された前記第2の反射素子」を備える点で一致するが、引用発明は、支持構造が「基板」といえるのかが不明である点で、本願発明とは一応相違する。 4 本願発明の「前記基板の表面に沿って前記複数のLEDと整列した光拡散特性を有する拡散部であって、前記複数のLEDの少なくとも1つのLEDの周囲で配置されるように整列された前記拡散部と」との特定事項について (1)引用発明の「照明システム」は、「一様な照明を提供する実質的に薄い」ものであり、「液晶ディスプレイ(LCD)を照明するために使用する」ものである。そして、当該「照明システム」には「光透過ゾーン」(「光透過ゾーン502」)が備わっているところ、当該「光透過ゾーン」は、「発光デバイスに光学的に結合」されるとともに、「一次光を透過して、一次光がディスプレイを一様に照明するように用いることができ」るものであり、それに含まれる「透過表面」と「非透過表面」のうち、「非透過表面」は、「透過表面を通る一次光の透過を可能にし、光透過ゾーンにおける一次光の一様な分布を助けるように反射性をもって作ることができる」ものであって、「プレッシング、エッチング、スクライビング、サンドブラスティングなどのようなプロセスを使用して提供される結合部材を含む」ものである。 このように、引用発明の「光透過ゾーン」は、一次光がディスプレイを一様に照明できるものであるとともに、上記のような結合部材を含むものであるから、本願発明の「光拡散特性を有する拡散部」に相当するといえる。 (2)引用発明の「光透過ゾーン」(「光透過ゾーン502」)は、「一定の厚さ」であって、「一次光を透過して、一次光がディスプレイを一様に照明するように用いることができ」るものであるから、平板状であることが明らかである。そして、当該「光透過ゾーン」は、「1つ又はそれ以上の発光デバイスに光学的に結合された」ものであるところ、引用発明では、「発光デバイス100は、光透過ゾーン502の1つ又はそれ以上の穴の中に配置することができ」るものである。以上を「光透過ゾーン」を中心に整理すれば、当該「光透過ゾーン」は、複数の「穴」を備えるとともに、それらの「穴」の中にそれぞれ「発光デバイス」を配置しているといえる。 また、引用発明では、「発光デバイスは、半径方向において一様な側面放射を提供するものであ」る。 このように、引用発明では、「光透過ゾーン」が平板状であって、複数の「穴」を備えるとともに、それらの「穴」の中にそれぞれ「発光デバイス」を配置しており、しかも、「発光デバイス」は「半径方向において一様な側面放射を提供する」ものであるから、当該「光透過ゾーン」(本願発明の「拡散部」に相当。)は、本願発明でいう「前記複数のLEDと整列した」ものであって、「前記複数のLEDの少なくとも1つのLEDの周囲で配置されるように整列された」ものといえる。 (3)上記(1)及び(2)によれば、本願発明と引用発明とは、「前記複数のLEDと整列した光拡散特性を有する拡散部であって、前記複数のLEDの少なくとも1つのLEDの周囲で配置されるように整列された前記拡散部」を備える点で一致するが、引用発明は、その「拡散部」の「前記複数のLED」に対する整列が「前記基板の表面に沿って」なされているのかが不明である点で、本願発明とは一応相違する。 5 本願発明の「前記複数のLEDと前記拡散部とを、前記基板との間に挟むように配置されたディスプレイパネルと」との特定事項について (1)引用発明は、「液晶ディスプレイ(LCD)」を備えているから、本願発明の「ディスプレイパネル」を備えることが明らかである。そして、引用発明は、「光拡散ゾーン」を含む「照明システム」を含むとともに、「照明システムは、液晶ディスプレイ(LCD)を照明するために使用することができ」るものであることに照らせば、引用発明は、「光透過ゾーン」(本願発明の「拡散部」に相当。)を含む「照明システム」を当該「液晶ディスプレイ(LCD)」の照明のために使用するものである。そうすると、当該「光透過ゾーン」は、当該「液晶ディスプレイ」に対して、その背面側(当審注:視認側とは反対側のことである。以下、同じ。)に存在するといえる。 また、上記1(3)のとおり、引用発明の「発光デバイス」は、「反射底面」のある側において、何らかの支持構造に取り付けられており、上記4(2)のとおり、引用発明の当該「光透過ゾーン」は、本願発明でいう「前記複数のLEDと整列した」ものであるから、当該支持構造は、当該「光透過ゾーン」に対して、その背面側に存在するといえる。 このように、引用発明は、「液晶ディスプレイ(LCD)」に係る「ディスプレイ装置」であって、複数のLEDと整列した「光透過ゾーン」(本願発明の「拡散部」に相当。)を備えるものであるところ、当該「光透過ゾーン」に対して、その視認側に「液晶ディスプレイ(LCD)」(「ディスプレイパネル」が当然に含まれている。)が存在するとともに、その背面側に何らかの支持構造が存在するものであるから、本願発明と引用発明とは、「前記複数のLEDと前記拡散部」とを、前記支持構造「との間に挟むように配置されたディスプレイパネル」を備える点で一致する。 (2)上記(1)によれば、本願発明と引用発明とは、「前記複数のLEDと前記拡散部」とを、前記支持構造「との間に挟むように配置されたディスプレイパネル」を備える点で一致するが、引用発明は、その支持構造が「基板」といえるのかが不明である点で、本願発明とは一応相違する。 6 本願発明の「前記拡散部は、光を拡散する層内に前記各LEDと隣接して配置され」との特定事項について (1)引用発明の「光透過ゾーン」(本願発明の「拡散部」に相当。)は、「一定の厚さ」であるとともに、上記4(2)のとおり、本願発明でいう「前記複数のLEDの少なくとも1つのLEDの周囲で配置されるように整列された」ものである。そして、引用発明の「光透過ゾーン」は、「前記1つ又はそれ以上の発光デバイスに光学的に結合された」ものであるから、引用発明では、「光透過ゾーン」と「LED」とは「光学的に結合」している。 そうすると、引用発明は、本願発明の「前記拡散部は、」「前記各LEDと隣接して配置され」ることを満たしているといえる。 (2)一方で、引用発明は、「光透過ゾーン」が「前記各LEDと隣接して配置され」るのが、「光を拡散する層内に」おいてなされているのか不明である。 (3)上記(1)及び(2)によれば、本願発明と引用発明とは、「前記拡散部は、」「前記各LEDと隣接して配置され」る点で一致するが、引用発明は、「前記各LEDと隣接して配置され」るのが「光を拡散する層内に」おいてなされているのか不明である。 7 本願発明の「前記拡散部は、前記第1の反射素子および前記第2の反射素子によって反射された光を捕捉し、該捕捉された光を拡散させながら、前記ディスプレイパネルにわたって均一に光分散するのを支援する、導光および拡散機能の前記光拡散特性を有し」との特定事項について (1)引用発明の「発光デバイス」は「一次光が生成される活性領域を含む少なくとも1つの半導体層」を含んでおり、引用発明では「前記上面と前記反射底面とが、前記一次光の方向を1つ又はそれ以上の半径方向に変え」るから、当該「一次光」は、「発光デバイス」によって生成される光であるとともに、その「方向」が、「前記上面と前記反射底面」によって、「1つ又はそれ以上の半径方向に変え」られるものである。そうすると、当該「一次光」は、本願発明の「光」に相当するとともに、本願発明でいう「前記第1の反射素子および前記第2の反射素子によって反射された」ものといえる。 そして、引用発明の「光透過ゾーン」(本願発明の「拡散部」に相当。)は「発光デバイスに光学的に結合されている」ことから、引用発明は、本願発明の「前記拡散部は、前記第1の反射素子および前記第2の反射素子によって反射された光を捕捉」することを満たしている。 (2)引用発明の「光透過ゾーン」は、「一次光を透過して、一次光がディスプレイを一様に照明するように用いることができ」るものであるところ、上記5(1)と同様の理由で、「ディスプレイ」は本願発明でいう「ディスプレイパネル」を備えているといえる。このことに、上記(1)を併せれば、当該「光透過ゾーン」は、本願発明の「該捕捉された光を拡散させながら、前記ディスプレイパネルにわたって均一に光分散するのを支援する」ことを満たしているといえる。 (3)引用発明の「光透過ゾーン」は、上記4(1)のとおり、本願発明でいう「光拡散特性を有する」ものといえるから、本願発明でいう「光拡散機能」を有している。さらに、引用発明の「光透過ゾーン」が、「導光」機能を有することは明らかである。 (4)上記(1)〜(3)によれば、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。 8 本願発明の「前記各LEDは、封止する保護樹脂が覆われていないパッケージ化されていないLEDとして構成され」との特定事項について 引用発明は、「前記1つ又はそれ以上の発光デバイスの各々が、前記少なくとも1つの半導体層及び前記上面を保護する光学的に透明なオーバーモールドを含んで」いないものであるところ、当該「オーバーモールド」は、本願発明の「封止する保護樹脂」に相当するものである。 したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。 9 本願発明の「前記拡散部の厚さは、該拡散部によって拡散された光を前記ディスプレイパネルに供給することができるように、前記光を拡散する層内に配置された前記各LEDの高さと同じ高さを有し」との特定事項について 引用発明では「光透過ゾーン」の厚さと「発光デバイス」の高さとの関係が不明であるため、引用発明が、本願発明の「前記拡散部の厚さは、」「前記各LEDの高さと同じ高さ」であることを満たしているか不明である。 したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしているか不明である点で、本願発明とは一応相違する。 10 本願発明の「前記拡散部は、成形用ポリマーフィルムから形成され」との特定事項について (1)引用発明の「光透過ゾーン」(本願発明の「拡散部」に相当。)は、「合成樹脂、アクリル、ポリカーボネート、PMMA」で作ることができるものであり、上記4(2)のとおり、平板状であるから、当該「光拡散ゾーン」は、本願発明でいう「ポリマーフィルムから形成され」るといえる。 (2)引用発明の「光透過ゾーン」は、その「非透過表面」が「プレッシング、エッチング、スクライビング、サンドブラスティングなどのようなプロセスを使用して提供される結合部材を含む」ことから、当該「光透過ゾーン」を作るための「合成樹脂、アクリル、ポリカーボネート、PMMA」は、本願発明の「成形用」であることを満たしている。 (3)上記(1)及び(2)によれば、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。 11 本願発明の「前記拡散部は、導光板又は拡散板として働いて、前記複数のLEDが発した光が前記ディスプレイパネルにわたって均一に分散するのを助けるように、該拡散部内の空いた孔に入れ子にされた前記各LEDを含むように構成された入れ子拡散部として定義される」との特定事項について (1)引用発明は、「発光デバイス100は、光透過ゾーン502に放射される一次光を生成し、光透過ゾーン502は一次光を透過して、一次光がディスプレイを一様に照明するように用いることができ」るものであるところ、当該「光透過ゾーン」は、上記4(2)のとおり、複数の「穴」を備えるとともに、それらの「穴」の中にそれぞれ「発光デバイス」を配置しているものである。そして、引用発明では、上記7(2)のとおり、「ディスプレイ」が、本願発明でいう「ディスプレイパネル」を備えている。 このように、引用発明の「光透過ゾーン」(本願発明の「拡散部」に相当。)は、「一次光がディスプレイを一様に照射するように用いることができ」るものであるとともに、複数の「穴」の中にそれぞれ「発光デバイス」(本願発明の「LED」に相当。)が配置されるものであるから、「発光デバイス」の周囲には「光透過ゾーン」を構成する部材が存在していると解される。そして、当該「光透過ゾーン」によって一様に照射される「ディスプレイ」は、本願発明でいう「ディスプレイパネル」を備えている。そうすると、当該「光透過ゾーン」は、本願発明でいう「導光板又は拡散板として働いて、前記複数のLEDが発した光が前記ディスプレイパネルにわたって均一に分散するのを助けるように、該拡散部内の空いた孔に」配置された「前記各LEDを含むように構成」されたものといえる。 (2)一方で、引用発明は、複数の「穴」の中にそれぞれ「発光デバイス」が配置されているが、本願発明の「入れ子にされた」ものに相当するといえるのか不明であり、それに伴い引用発明が本願発明の「入れ子拡散部として定義される」構成を有するのかも不明である。 (3)上記(1)及び(2)によれば、本願発明と引用発明とは、「前記拡散部は、導光板又は拡散板として働いて、前記複数のLEDが発した光が前記ディスプレイパネルにわたって均一に分散するのを助けるように、該拡散部内の空いた孔に」配置された「前記各LEDを含むように構成」されている点で一致するが、引用発明は、本願発明の「入れ子にされた」こと及び「入れ子拡散部として定義」されることを満たしているか不明な点で、本願発明とは一応相違する。 12 本願発明の「これにより、」との特定事項について 上記11に係る「前記拡散部は、導光板又は拡散板として働」くことについて、本願発明は、上記4〜10に係る特定事項によりそれを実現しているものと解されるが、引用発明は、上記4〜10のとおり、当該各特定事項を全て満たしているのか不明である点で、本願発明とは一応相違する。 13 本願発明の「ディスプレイ装置」との特定事項について 引用発明の「ディスプレイ装置」は、本願発明の「ディスプレイ装置」に相当する。 したがって、引用発明は本願発明の上記特定事項を満たしている。 14 一致点及び相違点の認定 上記1〜13によれば、本願発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で一応相違する。 <一致点> 「支持構造と、 複数のLEDであって、各LEDは、第1の側と第2の側を有し、各LEDは、そのLEDの前記第1の側で前記支持構造に取り付けられ、各LEDは、 前記支持構造から離れる方向に光を反射するように前記LEDの前記第1の側に隣接して配置された第1の反射素子と、 前記LEDの前記第1の側と反対の前記LEDの前記第2の側に隣接して配置された第2の反射素子であって、主に前記支持構造に向かう方向に光を反射するように配置された前記第2の反射素子と、 を含む前記複数のLEDと、 前記複数のLEDと整列した光拡散特性を有する拡散部であって、前記複数のLEDの少なくとも1つのLEDの周囲で配置されるように整列された前記拡散部と、 前記複数のLEDと前記拡散部とを、前記支持構造との間に挟むようにディスプレイパネルと を含み、 前記拡散部は、前記各LEDと隣接して配置され、 前記拡散部は、前記第1の反射素子及び前記第2の反射素子によって反射された光を捕捉し、該捕捉された光を拡散させながら、前記ディスプレイパネルにわたって均一に光分散するのを支援する、導光及び拡散機能の前記光拡散特性を有し、 前記各LEDは、封止する保護樹脂が覆われていないパッケージ化されていないLEDとして構成され 前記拡散部は、成形用ポリマーフィルムから形成され、 前記拡散部は、導光板又は拡散板として働いて、前記複数のLEDが発した光が前記ディスプレイパネルにわたって均一に分散するのを助けるように、該拡散部内の空いた孔に配置された前記各LEDを含むように構成された ディスプレイ装置。」 <相違点1>(上記第5の1〜5の本願発明の特定事項に係る相違点) 支持構造が、本願発明は「基板」であるのに対し、引用発明はそうであるのか不明であり、各LEDの第1の側での支持構造への取り付けが、本願発明は「導電パッドを介して」いるのに対し、引用発明はそうであるのか不明であり、「拡散部」の「前記複数のLED」に対する「整列」が、本願発明は「基板の表面に沿って」なされているのに対し、引用発明はそうであるのか不明である点。 <相違点2>(上記第5の6の本願発明の特定事項に係る相違点) 「前記拡散部」が「前記LEDと隣接して配置され」るのが、本願発明では、「光を拡散する層内に」おいてなされているのに対して、引用発明では、そうであるか不明である点。 <相違点3>(上記第5の9の本願発明の特定事項に係る相違点) 本願発明では、「前記拡散部の厚さは、該拡散部によって拡散された光を前記ディスプレイパネルに供給することができるように、前記光を拡散する層内に配置された前記各LEDの高さと同じ高さを有する」のに対し、引用発明では、そのようになっているか不明である点。 <相違点4>(上記第5の11の本願発明の特定事項に係る相違点) 本願発明は、「該拡散部内の空いた孔に」「前記各LED」が「入れ子にされ」、「入れ子拡散部として定義」される構造を有しているのに対して、引用発明は、当該構造を有するのか不明である点。 <相違点5>(上記第5の4〜10の本願発明の特定事項に係る相違点) 「前記拡散部」が「導光板又は拡散板として働」くのが、本願発明では、「前記基板の表面に沿って前記複数のLEDと整列した光拡散特性を有する拡散部であって、前記複数のLEDの少なくとも1つのLEDの周囲で配置されるように整列された前記拡散部と、前記複数のLEDと前記拡散部とを、前記基板との間に挟むように配置されたディスプレイパネルとを含み、前記拡散部は、光を拡散する層内に前記各LEDと隣接して配置され、前記拡散部は、前記第1の反射素子および前記第2の反射素子によって反射された光を捕捉し、該捕捉された光を拡散させながら、前記ディスプレイパネルにわたって均一に光分散するのを支援する、導光および拡散機能の前記光拡散特性を有し、前記各LEDは、封止する保護樹脂が覆われていないパッケージ化されていないLEDとして構成され、前記拡散部の厚さは、該拡散部によって拡散された光を前記ディスプレイパネルに供給することができるように、前記光を拡散する層内に配置された前記各LEDの高さと同じ高さを有し、前記拡散部は、成形用ポリマーフィルムから形成され」るということ「により」とされているのに対し、引用発明では、そうなっているといえるのか不明である点。 第6 判断 上記相違点1〜5について、判断する。 1 相違点1について 引用発明は、「照明システムは、液晶ディスプレイ(LCD)を照明するために使用することができる、ディスプレイ装置」に係るものであって、当該「照明システム」は複数の「発光デバイス」を備えており、当該「発光デバイス」は「発光ダイオード(LED)」とすることができるものである。そして、液晶ディスプレイを照明するために複数のLEDを設ける場合において、当該複数のLEDを支持する支持構造として基板を用いることが、例示するまでもなく技術常識であると認められる。 そうすると、引用発明においても、複数のLEDを支持する支持構造として基板を用いているといえる。そして、そうである以上、引用発明における複数のLEDは、基板の表面に沿って配列されていることになり、よって、引用発明の「光透過ゾーン」の複数のLEDに対する整列も、基板の表面に沿ってなされているといえる。また、引用発明は、「発光デバイス100は、発光デバイス100における接合部に及び接合部から伝導経路にたいして制御するためのフリップチップ構成を含んで」いるものであるから、支持構造として基板を用いた場合に、「発光デバイス100」の基板への取り付けが導電パッドを介するようになされることも、通常のことであるといえる。 したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。 仮に、相違点1が実質的であるとしても、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。 2 相違点2及び3について 上記第5の4(2)のとおり、引用発明では、「光透過ゾーン」(本願発明の「拡散部」に相当。)が平板状であって、複数の「穴」を備えるとともに、それらの「穴」の中にそれぞれ「発光デバイス」を配置しており、しかも、「発光デバイス」は「半径方向において一様な側面放射を提供する」ものであるから、平板状の「光透過ゾーン」の一方の表面から他方の表面までにわたる厚さ内に、「発光デバイス」が配置されていると解するのが自然である。その際、引用発明の「照明システム」は、「一様な照明を提供する実質的に薄い」ものであることから、引用発明の「光透過ゾーン」の厚さと、「発光デバイス」の高さとは、同じにすることが自然である。 また、引用発明の「光透過ゾーン」においては、上記第5の4(1)のとおり、それに含まれる「透過表面」と「非透過表面」のうち、「非透過表面」は、「透過表面を通る一次光の透過を可能にし、光透過ゾーンにおける一次光の一様な分布を助けるように反射性をもって作ることができる」ものであって、「プレッシング、エッチング、スクライビング、サンドブラスティングなどのようなプロセスを使用して提供される結合部材を含む」ものである。そうすると、引用発明の平板状の「光透過ゾーン」では、一方の表面たる「非透過表面」から他方の表面たる「透過表面」までにわたる厚さの全体において、拡散光が存在しているといえるから、当該「光透過ゾーン」をもって、本願発明でいう「光を拡散する層」に該当するということができる。 このように、引用発明の「光透過ゾーン」は、(i)平板状であって、(ii)一方の表面たる「非透過表面」から他方の表面たる「透過表面」までにわたる厚さ内に「発光デバイス」が配置されており、(iii)その厚さと「発光デバイス」の高さとは同じにされており、(iv)本願発明でいう「光を拡散する層」に該当するものであるから、相違点2及び3は、実質的な相違点ではない。 仮に、相違点2及び3が実質的であるとしても、引用発明の「照明システム」は、「一様な照明を提供する実質的に薄い」ものであることから、平板状の「光透過ゾーン」の一方の表面から他方の表面までにわたる厚さ内に、「発光デバイス」を配置するように構成することは、当業者が適宜なし得たことであるし、また、「光透過ゾーン」は、「一次光の一様な分布」を形成するものであるから、その一方の表面から他方の表面までにわたって、光を拡散する構成とすることも、当業者が適宜なし得たことである。 3 相違点4について 上記2の説示によれば、引用発明は、「光透過ゾーン」の厚さ内で「穴」の中に「発光デバイス」が配置されており、その厚さと「発光デバイス」の高さとは同じにされたものであり、かつ、「光透過ゾーン」と「発光デバイス」は、本願発明の「光を拡散する層」に相当する同じ層に配置された構成を有しているといえるところ、引用発明のこのような構成が、本願発明の相違点4に係る構成とどのような関係にあるかについて検討する。 本願の願書に添付された明細書の【0013】には「「入れ子拡散部」という用語は、本明細書においては、光を拡散するLCDの同じ層内で、すなわち、光源のほぼ高さ/ 厚さの拡散部内で、光の拡散が生じるという特徴を記載するために使用される。」と記載されている。上記記載を踏まえると、本願発明の「拡散部内の空いた孔に」「前記各LED」が「入れ子にされ」ることは、前記「拡散部」の厚さが「各LED」のほぼ高さであり、かつ、両者が同じ層内にある構成を備えた上で、「拡散部内の空いた孔に」「前記各LED」が配置されていれば満たされるものと解される。さらに、当該「入れ子にされ」ることが満たされれば、「入れ子拡散部として定義」されるといえる。 これを引用発明についてみると、上記のとおり、引用発明は、本願発明の上記構成及び配置を満たすものであるから、相違点4は、実質的な相違点ではない。仮にそうとはいえないとしても、相違点2及び3に係る本願発明の構成は上記2のとおり当業者が適宜なし得たことであるから、相違点4に係る本願発明の構成は、それをもって満たされることになる。 4 相違点5について 上記1〜3を踏まえれば、引用発明は、第5の4〜10に係る本願発明の特定事項を全て満たしているといえるから、相違点5は、実質的な相違点ではないし、仮にそうとはいえないとしても、上記1〜3のとおり、相違点1〜4に係る本願発明の構成は格別のものではないから、相違点5に係る本願発明の構成も格別のものではない。 5 本願発明の奏する作用効果について 上記相違点1〜5が存在するとしても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 6 審判請求人の主張について 審判請求人は令和4年7月5日提出の意見書において、引用文献1には、本願発明に係る拡散部を用いるという技術的事項、及び、パッケージ化されていないLEDを用いるという技術的事項、が記載されていない旨を主張しているが、前記各技術的事項は、上記第5の4及び8で説示したとおり、引用文献1に記載された事項である。 7 小括 したがって、本願発明は、引用発明であるか、又は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 審判長 山村 浩 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。 |
審理終結日 | 2022-11-04 |
結審通知日 | 2022-11-08 |
審決日 | 2022-11-28 |
出願番号 | P2018-548830 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
山村 浩 |
特許庁審判官 |
加々美 一恵 金高 敏康 |
発明の名称 | 光拡散の方法と装置 |
代理人 | 弁理士法人谷・阿部特許事務所 |