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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1397182
総通号数 17 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-04-04 
確定日 2023-02-17 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6944610号発明「非水電解質二次電池電極用バインダー」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6944610号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 特許第6944610号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6944610号の請求項1ないし2に係る特許についての出願は、2018年3月5日(優先権主張 2017年3月28日、以下「優先日」という。)を国際出願日とする出願(特願2019−509078号)の一部を、令和3年6月2日に新たな特許出願として出願され、令和3年9月14日にその特許権の設定登録がされ、令和3年10月6日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して令和4年4月4日に特許異議人安藤宏から特許異議の申立てがなされ、令和4年8月9日付けで取消理由通知がされ、令和4年10月14日に訂正請求書及び意見書が提出されたものである。
なお、その後、特許異議申立人に対し、期間を指定して意見書の提出を求めたが、意見書は提出されなかった。

第2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のア、イのとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「カルボキシル基を有する架橋重合体又はその塩を含有する非水電解質二次電池電極用バインダーであって、前記架橋重合体は、全構造単位に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位を50質量%以上100質量%以下含み、前記架橋重合体及びその塩の総量に対する前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びその塩を未中和型に換算した総量が4.2質量%以下であり、前記架橋重合体又はその塩の0.5質量%水溶液のpHが7.5以上である、バインダー。」
と記載されているのを、
「カルボキシル基を有する架橋重合体の塩(ただし、カルボン酸アミド、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、任意の単量体及び架橋性単量体の架橋重合体である第1の架橋重合体であって、前記第1の架橋重合体の重合反応液に10%アンモニア水を添加してpH8に調整することにより前記第1の架橋重合体を水に溶解させた水溶液の形態である水溶性の前記第1の架橋重合体の塩と、アクリル酸とポリエーテルを含むジアリル系化合物との架橋重合体である第2の架橋重合体であって、前記第2の架橋重合体を1M NaOHで80%中和させた前記第2の架橋重合体の塩の1質量%水溶液の形態である水溶性の前記第2の架橋重合体の塩と、を除く。)を含有する非水電解質二次電池電極用バインダーであって、前記架橋重合体は、全構造単位に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位を50質量%以上100質量%以下含み、前記架橋重合体の塩の総量に対する前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びその塩を未中和型に換算したときの総量が4.2質量%以下であり、前記架橋重合体の塩の0.5質量%水溶液のpHが7.5以上である、バインダー。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「前記架橋重合体又はその塩は、さらに、架橋性単量体に由来する構造単位を有する、請求項1に記載のバインダー。」と記載されているのを、「前記架橋重合体の塩は、さらに、架橋性単量体に由来する構造単位を有する、請求項1に記載のバインダー。」に訂正する。

ウ 一群の請求項について
本件訂正前の請求項2は請求項1を引用しているから、請求項1、2は一群の請求項を構成する。
よって、本件訂正は、一群の請求項について請求されたものである。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的について
a 訂正事項1のうち、「カルボキシル基を有する架橋重合体又はその塩」とあった記載を「カルボキシル基を有する架橘重合体の塩」とする訂正、及び「前記架橋重合体及びその塩の総量」とあった記載を「前記架橋重合体の塩の総量」とする訂正(以下、「訂正事項1−a」という。)は、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた「カルボキシル基を有する架橋重合体又はその塩」を「カルボキシル基を有する架橘重合体の塩」に限定し、かかる限定と整合させるため、訂正前の請求項1に「前記架橋重合体及びその塩の総量」とあった記載を「前記架橋重合体の塩の総量」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 訂正事項1のうち、「カルボキシル基を有する架橋重合体の塩」について、「(ただし、カルボン酸アミド、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、任意の単量体及び架橋性単量体の架橋重合体である第1の架橋重合体であって、前記第1の架橋重合体の重合反応液に10%アンモニア水を添加してpH8に調整することにより前記第1の架橋重合体を水に溶解させた水溶液の形態である水溶性の前記第1の架橋重合体の塩と、アクリル酸とポリエーテルを含むジアリル系化合物との架橋重合体である第2の架橋重合体であって、前記第2の架橋重合体を1M NaOHで80%中和させた前記第2の架橋重合体の塩の1質量%水溶液の形態である水溶性の前記第2の架橋重合体の塩と、を除く。)」とする訂正(以下、「水溶液の形態である水溶性の前記第1の架橋重合体の塩と、水溶液の形態である水溶性の前記第2の架橋重合体の塩を除く」訂正という。また、「訂正事項1−b」ということもある。)は、「カルボキシル基を有する架橋重合体の塩」について限定を付加するものである。

c よって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1-aは、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた事項を、その一の選択肢に限定する訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
次に、訂正事項1-bは、「カルボキシル基を有する架橋重合体の塩」から、取消理由通知で引用した甲第1号証(国際公開第2014/196547号)に記載された「水溶液の形態である水溶性の前記第1の架橋重合体の塩」と、甲第6号証(有機化学情報誌[オーガニックスクエア]、「ORGANIC SQUARE」、2016年3月、和光純薬工業株式会社(https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/journal/docs/org55.pdf))に記載された「水溶液の形態である水溶性の前記第2の架橋重合体の塩」を除く訂正であるから、訂正前の明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものではなく、新規事項の追加に該当しない。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2に、択一的に「前記架橋重合体又はその塩は、さらに、架橋性単量体に由来する構造単位を有する」と記載されていたものを、その一の選択肢である「前記架橋重合体の塩は、さらに、架橋性単量体に由来する構造単位を有する」に限定するものである。
よって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。

第3 本件発明について
本件訂正請求により訂正された請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
カルボキシル基を有する架橋重合体の塩(ただし、カルボン酸アミド、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、任意の単量体及び架橋性単量体である第1の架橋重合体であって、前記第1の架橋重合体の重合反応液に10%アンモニア水を添加してpH8に調整することにより前記第1の架橋重合体を水に溶解させた水溶液の形態である水溶性の前記第1の架橋重合体の塩と、アクリル酸とポリエーテルを含むジアリル系化合物との架橋重合体である第2の架橋重合体であって、前記第2の架橋重合体を1M NaOHで80%中和させた前記第2の架橋重合体の塩の1質量%水溶液の形態である水溶性の前記第2の架橋重合体の塩と、を除く。)を含有する非水電解質二次電池電極用バインダーであって、
前記架橋重合体は、全構造単位に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位を50質量%以上100質量%以下含み、
前記架橋重合体の塩の総量に対する前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びその塩を未中和型に換算したときの総量が4.2質量%以下であり、
前記架橋重合体の塩の0.5質量%水溶液のpHが7.5以上である、バインダー。
【請求項2】
前記架橋重合体の塩は、さらに、架橋性単量体に由来する構造単位を有する、請求項1に記載のバインダー。」

第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1、2に係る特許に対して、当審が令和4年8月9日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
●理由1(新規性
請求項1、2に係る発明は、下記の甲第1号証または甲第6号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
●理由2(進歩性
請求項1、2に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるか、または甲第6号証及び甲第9ないし11号証に記載された事項に基いて、本件の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

甲第1号証:国際公開第2014/196547号
甲第6号証:有機化学情報誌[オーガニックスクエア]、「ORGANIC SQUARE」、2016年3月、和光純薬工業株式会社(https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/journal/docs/org55.pdf)
甲第9号証:FUJIFILM/Wako,安全データシート、W01W0235-4113 JGHEJP製品名 1CLPAH,製品コード 352-41132、改訂日 2021-8-23、版 1.04
甲第10号証:FUJIFILM/Wako,安全データシート、W01W0235-4114 JGHEJP製品名 10CLPAH,製品コード 359-41142、改訂日 2021-8-23、版 1.04
甲第11号証:FUJIFILM/Wako,安全データシート、W01W0235-4115 JGHEJP 製品名 20CLPAH,製品コード 356-41152、改訂日 2021-8-23、版 1.04

なお、特許異議申立人が特許異議申立書に添付して提出した他の証拠は次のとおりである。
甲第2号証 国際公開第2014/156195号
甲第3号証 特開2011-154983号公報
甲第4号証 国際公開第2015/186363号
甲第5号証 国際公開第2015/133154号
甲第7号証 アルドリッチ製ポリアクリル酸(製品番号 306215)の規格書
甲第8号証 アルドリッチ製ポリアクリル酸(製品番号 306215)の安全データシート

第5 甲号証の記載事項、引用発明等
1 甲第1号証について
(1)甲第1号証に記載された事項について
甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
ア 「[0007] 本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、ガスの発生を抑制可能なリチウムイオン二次電池を製造できるリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物、リチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物及びリチウムイオン二次電池用電極;並びに、ガスの発生を抑制可能なリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。」

イ 「[0008] 本発明者は前記課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、リチウムイオン二次電池の電極のバインダーとして粒子状重合体及び水溶性重合体を組み合わせて用い、且つ、水溶性重合体として、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位、カルボン酸アミド単量体単位及び架橋性単量体単位を所定の割合で組み合わせて含む重合体を用いることにより、ガスの発生を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。」

ウ 「[0013] さらに、ある物質が水溶性であるとは、25℃において、その物質0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が0重量%以上0.5重量%未満であることをいう。また、ある物質が非水溶性であるとは、25℃において、その物質0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が90重量%以上100重量%以下であることをいう。
[0014] また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される構造単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。」

エ 「[0062] 水溶性重合体におけるエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の割合は、通常20重量%以上、好ましくは25重量%以上であり、通常85重量%以下、好ましくは80重量%以下である。エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、集電体及び電極活物質に対する水溶性重合体の結着性を高めることができるので、集電体と電極活物質層との結着性を高めることが可能である。また、上限値以下にすることにより、電池のサイクル特性を良好にできる。
[0063] 水溶性重合体は、前記のエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位と組み合わせて、カルボン酸アミド単量体単位を含む。ここで、カルボン酸アミド単量体単位とは、カルボン酸アミド単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。また、カルボン酸アミド単量体とは、カルボン酸基と結合したアミド基を有する単量体であり、アミド化合物だけでなく、イミド化合物も含む。水溶性重合体がカルボン酸アミド単量体単位を含むことにより、リチウムイオン二次電池においてガスの発生を防止できる。このようにガスの発生を抑制できる理由は必ずしも定かではないが、カルボン酸アミド単量体単位を含む水溶性重合体が電解液中のハロゲン化物イオンをトラップすることにより、ハロゲン化物イオンを原因としたガスの発生を抑制できるものと推察される。」

オ 「[0066] 水溶性重合体は、前記のエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位及びカルボン酸アミド単量体単位と組み合わせて、架橋性単量体単位を含む。水溶性重合体が架橋性単量体単位を含むことにより、水溶性重合体を架橋させることができるので、電極活物質層の強度及び安定性を高めることができる。」

カ 「[0070] 水溶性重合体は、フッ素含有単量体単位を含むことが好ましい。フッ素含有単量体単位とは、フッ素含有単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。フッ素含有単量体単位は、通常、高いイオン伝導性を有するので、水溶性重合体のイオン伝導性を高めて電極の抵抗を小さくすることができる。」

キ 「[0086] 水溶性重合体は、上述したエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位、カルボン酸アミド単量体単位、架橋性単量体単位、フッ素含有単量体単位及び反応性界面活性剤単位以外に、任意の構造単位を含みうる。
例えば、水溶性重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含みうる。」

ク 「[0088] 水溶性重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上、特に好ましくは35重量%以上であり、また、好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下、特に好ましくは65重量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の量を上記範囲の下限値以上にすることにより、電極活物質層の集電体への結着性を高くすることができる。また、上限値以下にすることにより、電極の柔軟性を高めることができる。」

ケ 「[0099] 重合により、通常は水溶性重合体を含む反応液が得られる。得られた反応液は通常は酸性であり、水溶性重合体は水系溶媒に分散していることが多い。このように水溶性溶媒に分散した水溶性重合体は、通常、その反応液のpHを、例えば7〜13に調整にすることにより、水系溶媒に可溶にできる。こうして得られた反応液から水溶性重合体を取り出してもよい。しかし、通常は、水系媒体として水を用い、この水に溶解した状態の水溶性重合体を用いて本発明のバインダー組成物を製造する。
[0100] 反応液をpH7〜pH13にアルカリ化する方法としては、例えば、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ金属水溶液;水酸化カルシウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液等のアルカリ土類金属水溶液;アンモニア水溶液などのアルカリ水溶液を混合する方法が挙げられる。前記のアルカリ水溶液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。」

コ 「[0106] 〔1.5.バインダー組成物の製造方法〕
本発明のバインダー組成物の製造方法に制限は無い。例えば、本発明のバインダー組成物は、上述した粒子状重合体、水溶性重合体及び溶媒を任意の順序で混合することにより製造しうる。
[0107] 粒子状重合体を水分散体の状態で使用したり、水溶性重合体を水溶液の状態で使用したりする場合、これらの水分散体及び水溶液と別に水を混合してもよく、これらの水分散体及び水溶液と別に水を混合しなくてもよい。通常は、これらの水分散体及び水溶液とは別に水を混合して、バインダー組成物の固形分濃度が所望の範囲に収まるように調整を行う。」

サ 「[0171] 以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。」

シ 「[0182] [実施例1]
(1−1.水溶性重合体の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、アクリルアミド(カルボン酸アミド単量体)0.8部、メタクリル酸(エチレン性不飽和カルボン酸単量体)32.5部、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体)7.5部、エチルアクリレート(任意の単量体)57.2部、エチレンジメタクリレート(架橋性単量体)0.8部、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(反応性界面活性剤)1.2部、t−ドデシルメルカプタン0.6部、イオン交換水150部、及び過硫酸カリウム(重合開始剤)1.0部を入れ、十分に攪拌した後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、水溶性重合体を含む混合物を得た。上記水溶性重合体を含む混合物に10%アンモニア水を添加してpH8に調整することにより水溶性重合体を水に溶解させて、所望の水溶性重合体を含む水溶液を得た。
[0183] (1−2.粒子状重合体の製造)
・・・(省略)・・・重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状重合体(SBR)を含む混合物を得た。上記粒子状重合体を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整した。その後、加熱減圧蒸留によって混合物から未反応単量体の除去を行った後、30℃以下まで冷却し、所望の粒子状重合体を含む水分散液を得た。
[0184] (1−3.二次電池電極用バインダー組成物の製造)
容器に前記工程(1−2)で作製した粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で95部、及びジオクチルコハク酸ナトリウム0.25部を混合し、その後で前記工程(1−1)で作製した水溶性重合体を含む水溶液を固形分相当で5部を更に混合した。ここに水を混合して濃度を調整し、固形分濃度25%の電極用バインダー組成物を得た。」

ス 「[0197] [実施例8]
前記工程(1−1)において、メタクリル酸の量を82部に変更し、エチルアクリレートの量を7.7部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。」

セ 「[0218] [結果]
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表1〜表5に示す。
下記の表1〜表5において、略称の意味は、以下の通りである。
「単量体X」:エチレン性不飽和カルボン酸単量体
「ST」:スチレン
「BD」:1,3−ブタジエン
「β−HEA」:2−ヒドロキシエチルアクリレート
・・・(省略)・・・
「IA」:イタコン酸
「単量体I」:カルボン酸アミド単量体
「AAm」:アクリルアミド
・・・(省略)・・・
「単量体II」:エチレン性不飽和カルボン酸単量体
「MAA」:メタクリル酸
「単量体III」:フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体
「TFEMA」:2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート
「単量体IV」:架橋性単量体
「EDMA」:エチレンジメタクリレート
・・・(省略)・・・
「単量体V」:反応性界面活性剤
「PD−104」:ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム
「単量体VI」:任意の単量体
「EA」:エチルアクリレート
「Mw」:重量平均分子量
「粒:水」:粒子状重合体と水溶性重合体の重量比
・・・(省略)・・・」

ソ 「[0220]



タ 「[0228] また、特に比較例2においては、粒子状重合体がカルボン酸ア ミド単量体単位を含んでいるが、電池のセルの体積変化量ΔVが大きい。このことから、カルボン酸アミド単量体単位によってガスの発生を抑制する効果は、水溶性重合体がエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位及び架橋性単量体単位と組み合わせてカルボン酸アミド単量体単位を含むことによってはじめて奏される効果であることがわかる。」

(2) 甲第1号証に記載された発明について
ア 甲第1号証の段落[0197]に「[実施例8]前記工程(1−1)において、メタクリル酸の量を82部に変更し、エチルアクリレートの量を7.7部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様」と記載されていることから、甲第1号証における実施例1(上記(1)シ参照)における「メタクリル酸の量」を「82部」、「エチルアクリレートの量」を「7.7部」に変更すると、甲第1号証には、実施例8として、次の単量体及び反応性界面活性剤から重合された水溶性重合体が記載されていると認められる。
「アクリルアミド(カルボン酸アミド単量体)0.8部、
メタクリル酸(エチレン性不飽和カルボン酸単量体)82部、
2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体)7.5部、
エチルアクリレート(任意の単量体)7.7部、
エチレンジメタクリレート(架橋性単量体)0.8部、
ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(反応性界面活性剤)1.2部」(以上、100部)

イ 段落[0107]に「通常は、これらの水分散体及び水溶液とは別に水を混合して、バインダー組成物の固形分濃度が所望の範囲に収まるように調整を行う。」と記載されていることから、段落[0106]に記載された「溶媒」は「水」と認められる。

ウ 甲第1号証の段落[0197]に「[実施例8]前記工程(1−1)において、メタクリル酸の量を82部に変更し、エチルアクリレートの量を7.7部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様」と記載されていることから、上記アに示した「水溶性重合体」も、段落[0182][実施例1]と同様に、重合を開始し、重合転化率が96%になった時点で反応を停止して、水溶性重合体を含む混合物を得、上記水溶性重合体を含む混合物に10%アンモニア水を添加してpH8に調整することにより水溶性重合体を水に溶解させて、所望の水溶性重合体を含む水溶液を得たものであると認められる。

エ 上記アないしウ及び上記(1)ア、コ、シより、甲第1号証には、水溶性重合体として本件発明1に最も関連する実施例8に注目すると、次の発明(以下、 「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「粒子状重合体、水溶性重合体及び水を混合したリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物であって、
水溶性重合体は、
アクリルアミド(カルボン酸アミド単量体)0.8部、
メタクリル酸(エチレン性不飽和カルボン酸単量体)82部
2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体)7.5部、
エチルアクリレート(任意の単量体)7.7部、
エチレンジメタクリレート(架橋性単量体)0.8部、
ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(反応性界面活性剤)1.2部、
t−ドデシルメルカプタン0.6部、
イオン交換水150部、
過硫酸カリウム(重合開始剤)1.0部
を入れ、重合を開始し、重合転化率が96%になった時点で反応を停止して、水溶性重合体を含む混合物を得、上記水溶性重合体を含む混合物に10%アンモニア水を添加してpH8に調整することにより水溶性重合体を水に溶解させて、所望の水溶性重合体を含む水溶液を得たものである、
電極用バインダー組成物。」

2 甲第6号証について
(1)甲第6号証に記載された事項について
甲第6号証には、次の事項が記載されている(下線及び当審訳は、当審で付与した。)。
ア 「・架橋型ポリアクリル酸バインダー
我々はこれまでに、LIB 用シリコン系負極の特性改善を目指し、バインダーとして従来のポリフッ化ビニリデン(PVdF)に代わり、ポリアクリル酸(PAH)に注目して一連の研究を行ってきた2)-5)。電極は通常、シリコン粒子や黒鉛、カーボン系導電剤、バインダー高分子に適当な分散媒を加えてよく混合することによりスラリーを調製し、集電箔に均一に塗工し乾燥させることで作製する。ここで特に、PAH の官能基であるカルボキシル基をアルカリにより中和させ、電極スラリー中のPAH のコンフォメーションを制御し、適切なスラリー粘度を持たせることにより、材料の分散性やシリコンへの被覆性を高めることができ、電池特性が大幅に向上することを見出してきた3),5)。本解説では、PAH バインダーの主鎖を共有結合により化学架橋し、さらにカルボキシル基の部分中和によってバインダーのコンフォメーションおよびレオロジー特性を制御した、シリコン系負極におけるさらなる電気化学特性向上への試みを紹介する。」(第6頁左欄下から17行−同欄最下行)

イ 「・実験の概要
PAH と、ポリエーテルを含むジアリル系化合物との共重合(Fig.2 参照)により主鎖を共有結合架橋した架橋型PAH(CLPAH)を和光純薬工業社との共同研究で調製した6)。架橋剤量はアクリル酸モノマー比で0.007 mol%から0.7 mol%まで変化させた。さらに、これらのCLPAH を1 M のNaOH水溶液で80%中和させた各CLPAH0.2Na0.8 も作製し、Table1 に示すように、計9 種類のバインダーを検討した。各CLPAH の頭の数字は、0.007 mol%を1 としたときの架橋剤量の比を表している。
1wt%のバインダー水溶液を用いシリコン(粒径 100nm):黒鉛:アセチレンブラック(導電剤):バインダーを3:5:1:1の重量比となるように混合し、スラリーを調製した。」(第6頁右欄第1−13行)」

ウ 「


(第6頁)(当審訳:Fig.2. アクリル酸及び架橋剤としてのジアリルエーテルの共重合)」

エ 「


(第6頁)
(当審訳:Table1. PAHとPAH0.2Na0.8バインダーの共重合に用いられた架橋剤量の比、(各列の項目)架橋剤量の比/mol%、未中和タイプ、部分中和タイプ)

オ 「ここで我々が80 %の中和度にしているのは、ポリマーの20 %未中和カルボキシル基間で水素結合を介した物理架橋を形成することで、ポリマー鎖が実質的に長くなり、完全中和体よりも粘性が高く、さらにスラリー乾燥時にゾルゲル転移を起こして多孔質な合剤層を得ることができるという知見によるものである3),5)。」(第7頁左欄第9−14行)

カ 「そして、架橋型PAH を中和することにより、Fig.7(b)に示すようにサイクル特性はさらに向上し、特に20CLPAH0.2Na0.8のサンプルは最も高い特性を示した6)。架橋型PAH の中和はシリコン系電極のサイクル特性改善に効果的であることを見出した。」(第7頁右欄下から14行−下から10行)

(2)甲第6号証に記載された発明について
ア バインダーの「レオロジー特性」、つまり「粘度」は、「バインダー水溶液の粘性測定」により求められるものであるから、上記(1)ア、イ、カより、「ポリアクリル酸(PAH)の主鎖を共有結合により化学架橋し、さらにカルボキシル基の部分中和によってバインダーのコンフォメーションおよびレオロジー特性を制御し、サイクル特性をさらに向上させたLIB用バインダー水溶液」との技術事項を読み取ることができる。

イ 上記(1)イより、「ポリエーテルを含むジアリル系化合物との共重合により主鎖を共有結合架橋した架橋型PAH(CLPAH)を1 M のNaOH水溶液で80%中和させた、1wt%のバインダー水溶液」との技術事項を読み取ることができる。

ウ 上記(1)ア、エより、Table1 に示すバインダーが、
「架橋剤量の比/mol%、未中和タイプ、部分中和タイプ
0.007, 1CLPAH, 1CLPAH0.2Na0.8
0.07, 10CLPAH, 10CLPAH0.2Na0.8
0.14, 20CLPAH, 20CLPAH0.2Na0.8
ここで、各CLPAH の頭の数字は、0.007 mol%を1 としたときの架橋剤量の比を表す。」との技術事項を読み取ることができる。

エ よって、上記アないしウより、甲第6号証には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「ポリアクリル酸(PAH)の主鎖を共有結合により化学架橋し、さらにカルボキシル基の部分中和によってバインダーのコンフォメーションおよびレオロジー特性を制御し、サイクル特性をさらに向上させたLIB 用バインダーであって、
ポリエーテルを含むジアリル系化合物との共重合により主鎖を共有結合架橋した架橋型PAH(CLPAH)を、Table1 に示すとおり1 M のNaOH水溶液で80%中和させた、1wt%のバインダー水溶液。
Table1
架橋剤量の比/mol%、未中和タイプ、部分中和タイプ
0.007, 1CLPAH, 1CLPAH0.2Na0.8
0.07, 10CLPAH, 10CLPAH0.2Na0.8
0.14, 20CLPAH, 20CLPAH0.2Na0.8
ここで、各CLPAH の頭の数字は、0.007 mol%を1 としたときの架橋剤量の比を表す。」

3 甲第9ないし11号証について
甲第9ないし11号証には、改訂日2021−8−23、版1.04の安全データシート(作成者、富士フィルム和光純薬株式会社)であって、製品名1CLPAH(甲第9号証)、10CLPAH(甲第10号証)、及び20CLPAH(甲第11号証)のそれぞれについて、化学名が「ポリ(アクリル酸)」、重量パーセントが「=<100」であることが記載されている(甲第9号証ないし甲第11号証それぞれについて、1/5頁−2/5頁の「3.組成及び成分情報」欄参照。)。

第6 対比・判断
1 引用発明1を主引用発明とした場合
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明1とを対比する前に、本件発明1で特定された「架橋重合体の塩」、及び「カルボン酸単量体(塩)含有量」の技術的意味について検討する。
本件明細書の段落【0047】に「ここでいう『本架橋重合体及びその塩の総量』は、本架橋重合体又はその塩の『樹脂粉末』としての総量であり、残存するエチレン性不飽和カルボン酸単量体及びその塩を含むものである。かかる『樹脂粉末』は、例えば、架橋重合体又はその塩の合成において得られ、必要に応じて乾燥された粉末(樹脂固形分)である。また、『残カルボン酸単量体(塩)含有量』は、バインダーとしての『樹脂粉末』内に存在するエチレン性不飽和カルボン酸単量体又はその塩を、すべて未中和酸の形態に換算したときの総量である。」と記載され、また、特許権者が令和4年10月14日に提出した意見書の第9頁第13−15行にも「また、訂正発明1における架橋重合体の塩は、例えば、本件明細書の段落0047、0075、0081〜0083から明らかなように、重合体粒子の形態を採るものであり、分離して洗浄等することが容易である」と記載されていることから、本件発明1で特定された「架橋重合体の塩」とは、化学における一般的な「塩」と同じく、「粉末」(固体)の形態をとるものである。
また、上記のとおり、「塩」は、一般的に「粉末」(固体)の形態をとるものであるから、「塩」を水に溶かした水溶液を「塩」と呼ぶことは適切でないが、訂正請求書における表現にしたがって、以下、「塩」を水に溶かした水溶液を「水溶液の形態である水溶性の」「塩」という。
また、甲第1号証の段落[0066]に「水溶性重合体が架橋性単量体単位を含むことにより、水溶性重合体を架橋させることができる」と記載されているように、引用発明1における「水溶性重合体」は、「エチレンジメタクリレート(架橋性単量体)」により架橋されていることは明らかであるので、引用発明1における「水溶性重合体」は「架橋されている」「水溶性重合体」である。

以上の点を踏まえて、以下、本件発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1における「10%アンモニア水」は「塩基である『アンモニア』」の水溶液であるから、本件発明1と引用発明1とは、「カルボキシル基を有する架橋重合体の塩を含有する」点で一致する。
しかしながら、該塩が、本件発明1では「カルボキシル基を有する架橋重合体の塩」(ただし、カルボン酸アミド、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、任意の単量体及び架橋性単量体である第1の架橋重合体であって、前記第1の架橋重合体の重合反応液に10%アンモニア水を添加してpH8に調整することにより前記第1の架橋重合体を水に溶解させた水溶液の形態である水溶性の前記第1の架橋重合体の塩」「を除く。)」であるのに対し、引用発明1は、「10%アンモニア水を添加してpH8に調整することにより水溶性重合体を水に溶解させて、所望の水溶性重合体を含む水溶液」としたものであって、本件発明1において除かれた「水溶液の形態である水溶性の第1の架橋重合体の塩」に相当するものである点で相違する。

(イ)次に、引用発明1における「リチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物」と本件発明1とは、「非水電解質二次電池電極用バインダー」の点で共通する。
しかしながら、非水電解質二次電池電極用バインダーが、本件発明1では「水溶液の形態」を除いているのに対し、引用発明1では「水を混合した」「水溶液」の形態である点で相違する。

(ウ)次に、引用発明1において、(架橋されている)「水溶性重合体」が、「単量体」および「反応性界面活性剤」の合計100部に対しメタクリル酸(エチレン性不飽和カルボン酸単量体)82部を含んでいることが、本件発明1における1「前記架橋重合体は、全構造単位に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位を50質量%以上100質量%以下含」むことに相当する。

(エ)次に、引用発明1における「重合転化率」は、「水溶性重合体」を含む混合物中に残っている未反応の「メタクリル酸(エチレン性不飽和カルボン酸単量体)」の量から求めた値であって、該重合転化率から、「水溶性重合体」の「塩」(粉末)の総量に対する、該「塩」(粉末)の中の未反応の「メタクリル酸」(固体)または重合されなかった「メタクリル酸」「塩」(固体)の総量の比(質量%)を求めることは困難である。
よって、本件発明1では「前記架橋重合体の塩の総量に対する前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の塩を未中和型に換算した総量が4.2質量%以下であ」るのに対し、引用発明1では、そのような値が特定がされていない点で相違する。

(オ)次に、本件発明1では「前記架橋重合体の塩の0.5質量%水溶液のpHが7.5以上である」のに対し、引用発明1では、(架橋されている)「水溶性重合体」を「10%アンモニア水を添加してpH8に調整」して「溶解」させた「水溶液」を、水溶液中の固形分相当(「水溶性重合体」のアンモニウム塩)が0.5質量%となる新たな水溶液としたとき、いかなるpHの値となるか特定されていない点で相違する。

よって、上記(ア)ないし(オ)より、本件発明1と引用発明1との一致点、相違点は、次のとおりであると認められる。
(一致点)
「カルボキシル基を有する架橋重合体の塩を含有する非水電解質二次電池電極用バインダーであって、前記架橋重合体は、全構造単位に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位を50質量%以上100質量%以下含む、バインダー。」

(相違点1)
カルボキシル基を有する架橋重合体の塩が、本件発明1では「カルボキシル基を有する架橋重合体の塩(ただし、カルボン酸アミド、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、任意の単量体及び架橋性単量体である第1の架橋重合体であって、前記第1の架橋重合体の重合反応液に10%アンモニア水を添加してpH8に調整することにより前記第1の架橋重合体を水に溶解させた水溶液の形態である水溶性の前記第1の架橋重合体の塩を除く。)」であるのに対し、引用発明1では「10%アンモニア水を添加してpH8に調整することにより水溶性重合体を水に溶解させて、所望の水溶性重合体を含む水溶液」としたものであって、本件発明1において「カルボキシル基を有する架橋重合体の塩」から除かれた「水溶液の形態である水溶性の第1の架橋重合体の塩」に相当するものである点。

(相違点2)
非水電解質二次電池電極用バインダーが、本件発明1では「水溶液の形態」を除いているのに対し、引用発明1では「水を混合した」「水溶液」の形態である点。

(相違点3)
本件発明1では「前記架橋重合体の塩の総量に対する前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の塩を未中和型に換算した総量が4.2質量%以下であ」るのに対し、引用発明1では、そのような値が特定がされていない点。

(相違点4)
本件発明1では「前記架橋重合体の塩の0.5質量%水溶液のpHが7.5以上である」のに対し、引用発明1では、(架橋された)「水溶性重合体」を「10%アンモニア水を添加してpH8に調整」して「溶解」させた「水溶液」を、水溶液中の固形分相当(「水溶性重合体」のアンモニウム塩)が0.5質量%となる新たな水溶液としたとき、いかなるpHの値となるか特定されていない点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
引用発明1は、本件発明1から除かれた上記「水溶液の形態である水溶性の第1の架橋重合体の塩」に相当するものであるから、上記相違点1は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、引用発明1ではない。
また、引用発明1において「10%アンモニア水を添加してpH8に調整することにより水溶性重合体を水に溶解させて、所望の水溶性重合体を含む水溶液」を、水溶液の形態ではない、水溶性重合体の塩(粉末)とする動機付けも見いだせない。
そして、本件発明1では、「架橋重合体」を「塩」(粉末)としたことで、「有機溶剤又は有機溶剤/水の混合溶剤を用いて洗浄すること」(本件明細書の段落【0060】参照。)が可能となり、「未反応単量体及びその塩の総量」を「洗浄工程の回数を適宜調節することにより制御することができる。」(本件明細書の段落【0061】参照。)という格別の作用効果を奏するものである。
したがって、相違点1は、当業者であっても容易になし得たことではない。

ウ まとめ
以上のとおり、本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。
また、相違点2ないし相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は当業者であっても、甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものともはいえない。

(2)本件発明2について
本件発明2に係る請求項2は、請求項1を引用して記載されているから、本件発明2と引用発明1とは、上記相違点1と同じ相違点を有している。
よって、本件発明2は、本件発明1について述べたのと同じ理由により、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、当業者であっても、甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 引用発明2を主引用発明とした場合
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明2とを対比する。
なお、引用発明2における「架橋型PAH(CLPAH)」は、ポリアクリル酸(PAH)の主鎖を共有結合により化学架橋」した「共重合」であるから、「カルボキシル基を有する架橋重合体」である。

(ア)引用発明2において「1 M のNaOH水溶液」を加えた「架橋型PAH(CLPAH)」は、ポリアクリル酸ナトリウム(つまり、塩)の水溶液である。
よって、本件発明1と引用発明1とは、「カルボキシル基を有する架橋重合体の塩を含有する」点で一致する。
しかしながら、該塩が、本件発明1では「カルボキシル基を有する架橋重合体の塩(ただし、」「アクリル酸とポリエーテルを含むジアリル系化合物との架橋重合体である第2の架橋重合体であって、前記第2の架橋重合体を1M NaOHで80%中和させた前記第2の架橋重合体の塩の1質量%水溶液の形態である水溶性の前記第2の架橋重合体の塩と、を除く。)」であるのに対し、引用発明2では、「架橋型PAH(CLPAH)を1 M のNaOH水溶液で80%中和させた」「1wt%のバインダー水溶液」であって、本件発明1から除かれた「水溶液の形態である水溶性の前記第2の架橋重合体の塩」に相当する塩である点で相違する。

(イ)次に、引用発明2における「LIB 用バインダー」「水溶液」と本件発明1とは「非水電解質二次電池電極用バインダー」の点で共通する。
しかしながら、非水電解質二次電池電極用バインダーが、本件発明1では「水溶液の形態」を除いているのに対し、引用発明1では「水溶液」の形態である点で相違する。

(ウ)次に、引用発明2における「架橋型PAH(CLPAH)」は、「アクリル酸」に由来する「ポリアクリル酸(PAH)」を「主鎖」とするものであるから、本件発明1における「前記架橋重合体は、全構造単位に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位を50質量%以上100質量%以下含」むとの条件を満たしているといえる。

(エ)次に、本件発明1では「前記架橋重合体の塩の総量に対する前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びその塩を未中和型に換算した総量が4.2質量%以下であ」るのに対し、引用発明2では、「架橋型PAH(CLPAH)」が「水溶液」の形態のナトリウム「塩」であって、未反応の「アクリル酸(エチレン性不飽和カルボン酸単量体)」を未中和型に換算した総量を本件発明1のように特定することは示されていない点で相違する。

(オ)次に、本件発明1では、「前記架橋重合体の塩の0.5質量%水溶液のpHが7.5以上である」のに対し、引用発明2では、「主鎖を共有結合架橋した架橋型PAH(CLPAH)を1 M のNaOH水溶液で80%中和させた、1wt%のバインダー水溶液」を、水溶液中の固形分相当(架橋型PAH(CLPAH)のナトリウム塩)が0.5質量%となる新たな水溶液としたとき、いかなるpHの値となるか特定されていない点で相違する。

よって、上記(ア)ないし(オ)より、本件発明1と引用発明2との一致点、 相違点は、次のとおりであると認められる。
(一致点)
「カルボキシル基を有する架橋重合体と塩基とから調製された物質を含有する非水電解質二次電池電極用バインダーであって、前記架橋重合体は、全構造単位に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位を50質量%以上100質量%以下含む、バインダー。」

(相違点5)
カルボキシル基を有する架橋重合体の塩が、本件発明1では「カルボキシル基を有する架橋重合体の塩(ただし、」「アクリル酸とポリエーテルを含むジアリル系化合物との架橋重合体である第2の架橋重合体であって、前記第2の架橋重合体を1M NaOHで80%中和させた前記第2の架橋重合体の塩の1質量%水溶液の形態である水溶性の前記第2の架橋重合体の塩と、を除く。)」であるのに対し、引用発明2では「ポリエーテルを含むジアリル系化合物との共重合により主鎖を共有結合架橋した架橋型PAH(CLPAH)を1 M のNaOH水溶液で80%中和させた」「バインダーの1wt%水溶液」であって、本件発明1から除かれた「水溶液の形態である水溶性の前記第2の架橋重合体の塩」である点。

(相違点6)
非水電解質二次電池電極用バインダーが、本件発明1では「水溶液の形態」を除いているのに対し、引用発明2では「水溶液」の形態である点。

(相違点7)
本件発明1では「前記架橋重合体の塩の総量に対する前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びその塩を未中和型に換算した総量が4.2質量%以下であ」るのに対し、引用発明2では、「架橋型PAH(CLPAH)」が「水溶液」の形態の「塩」であって、未反応の「アクリル酸(エチレン性不飽和カルボン酸単量体)」を未中和型に換算した総量を本件発明1のように特定することは示されていない点。

(相違点8)
本件発明1では、「前記架橋重合体又はその塩の0.5質量%水溶液のpHが7.5以上である」のに対し、引用発明2では、「主鎖を共有結合架橋した架橋型PAH(CLPAH)を1 M のNaOH水溶液で80%中和させた、1wt%のバインダー水溶液」を、水溶液中の固形分相当(架橋型PAH(CLPAH)のナトリウム塩)が0.5質量%となる新たな水溶液としたとき、いかなるpHの値となるか特定されていない点。

イ 判断
上記相違点5について検討すると、引用発明2は、本件発明1から除かれた「水溶液の形態である水溶性の前記第2の架橋重合体の塩」に相当するものであるから、上記相違点1は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、引用発明2ではない。
また、引用発明2において「架橋型PAH(CLPAH)を1 M のNaOH水溶液で80%中和させた」「バインダー水溶液」に代え、水溶液の形態ではない架橋型PAH(CLPAH)のナトリウム塩(粉末)とする動機付けも見いだせない。
さらに、甲第9ないし11号証にも、上記相違点5に係る本件発明1の上記構成は記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1では、「架橋重合体」を「塩」(粉末)としたことで、「有機溶剤又は有機溶剤/水の混合溶剤を用いて洗浄すること」(本件明細書の段落【0060】参照。)が可能となり、「未反応単量体及びその塩の総量」を「洗浄工程の回数を適宜調節することにより制御することができる。」(本件明細書の段落【0061】参照。)という格別の作用効果を奏するものである。
よって、相違点5は、当業者であっても容易になし得たことではない。

ウ まとめ
よって、本件発明1は甲第6号証に記載された発明ではない。
また、相違点6ないし相違点8について検討するまでもなく、本件発明1は当業者であっても、甲第6号証に記載された発明及び甲第9ないし11号証に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2について
本件発明2に係る請求項2は、請求項1を引用して記載されているから、本件発明2と引用発明1とは、上記相違点5と同じ相違点を有している。
よって、本件発明2は、本件発明1について述べたのと同じの理由により、甲第6号証に記載された発明ではなく、また、当業者であっても、甲第6号証に記載された発明及び甲第9ないし11号証に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由及び甲号証について
1 特許異議申立人は、特許異議申立書第64頁下から4行−第65頁第12行において、甲第2号証、甲第3号証に開示されているとおり、水溶性重合体中の残留モノマーの量を低くすることは、甲第1号証に記載された発明の技術分野において、技術常識であるから、甲第1号証に記載された発明において、エチレン性不飽和カルボン酸単量体の量を少なくし、エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びその塩を未中和型に換算した総量を、水溶性重合体及びその塩の総量に対して、4.2質量%以下にすることは当業者が容易になしうることである旨主張している。
しかし、一般的に、残留モノマーの量を低減することが望ましい(甲第2、3号証)としても、「カルボキシル基を有する架橋重合体の塩」「を含有する非水電解質二次電池電極用バインダー」において「前記架橋重合体の塩の総量に対する前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びその塩を未中和型に換算したときの総量」を「4.2質量%以下」とすることにより、「予想を超えて、バインダーの結着性に寄与して、合剤層の密着性と電池特性を向上させうる効果があること」(本件明細書の段落【0100】参照。)までは、当業者であっても予測し得ないことである。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。

2 特許異議申立人は、特許異議申立書第66頁第9行−第69頁下から4行において、本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第4号証に記載された発明及び、及び甲第2号証、甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨と主張している。
しかし、特許異議申立人も認めるとおり、甲第4号証には、本件発明1における「前記架橋重合体の塩の総量に対する前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びその塩を未中和型に換算したときの総量が4.2質量%以下であ」るとする構成は記載されていない。
そして、一般的に「残留モノマーの量を低減することが望ましい」(甲第2、3号証)としても、「カルボキシル基を有する架橋重合体の塩」「を含有する非水電解質二次電池電極用バインダー」において「前記架橋重合体の塩の総量に対する前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びその塩を未中和型に換算したときの総量」を「4.2質量%以下」とすることにより、「予想を超えて、バインダーの結着性に寄与して、合剤層の密着性と電池特性を向上させうる効果があること」(本件明細書の段落【0100】参照。)までは、当業者であっても予測し得ないことであるから、甲第4号証に記載された発明においてそのような構成を採用することは、当業者であっても容易になし得たことではない。。
本件発明2についても同様である。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。

3 特許異議申立人は、特許異議申立書第69頁下から3行−第72頁第18行において、本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第5号証に記載された発明、及び甲第2号証、甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。
しかし、特許異議申立人も認めるとおり、甲第5号証に記載された発明(特許異議申立人のいう「甲5発明A」)には、本件発明1における「前記架橋重合体の塩の総量に対する前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びその塩を未中和型に換算したときの総量が4.2質量%以下であ」るとの構成は、記載されていない。
そして、一般的に「残留モノマーの量を低減することが望ましい」(甲第2、3号証)としても、「カルボキシル基を有する架橋重合体の塩」「を含有する非水電解質二次電池電極用バインダー」において「前記架橋重合体の塩の総量に対する前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びその塩を未中和型に換算したときの総量」を「4.2質量%以下」とすることにより、「予想を超えて、バインダーの結着性に寄与して、合剤層の密着性と電池特性を向上させうる効果があること」(本件明細書の段落【0100】参照。)までは、当業者であっても予測し得ないことであるから、甲5発明Aにおいてそのような構成を採用することは、当業者であっても容易になし得たことではない。
本件発明2についても同様である。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。

4 特許異議申立人は、特許異議申立書第72頁第19行−第73頁最下行において、本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第7号証及び甲第8号証を参照すると、甲第5号証に記載された発明である旨主張している。
しかし、特許異議申立人が本件訂正前の請求項1、2に係る発明であると主張する甲第5号証の「比較例1」(特許異議申立人のいう「甲5発明B」)は、架橋剤が添加されていないから、甲第5号証の「比較例1」の重合体は架橋されておらず、本件発明1における「カルボキシル基を有する架橋重合体」に相当しない。
よって、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明ではない。
本件発明2についても同様である。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

5 特許異議申立人は、特許異議申立書第75頁第7−13行において、甲第4号証の段落[0054]の記載より、甲第6号証に記載された発明において、架橋された重合体の0.5質量%水溶液のpHを5以上となるようにすることは、当業者が容易になし得ることである旨主張している。
しかし、仮に、甲第6号証に記載された発明において、架橋された重合体の0.5質量%水溶液のpHを5以上となるようにすることが、当業者が容易になし得ることであったとしても、本件発明1が甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたといえないことは、上記「第6」「2」「イ」で述べたとおりである。
本件発明2についても同様である。
よって、特許異議申立人の主張は、結論に影響しないので、採用できない。

第8 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有する架橋重合体の塩(ただし、カルボン酸アミド、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、任意の単量体及び架橋性単量体の架橋重合体である第1の架橋重合体であって、前記第1の架橋重合体の重合反応液に10%アンモニア水を添加してpH8に調整することにより前記第1の架橋重合体を水に溶解させた水溶液の形態である水溶性の前記第1の架橋重合体の塩と、アクリル酸とポリエーテルを含むジアリル系化合物との架橋重合体である第2の架橋重合体であって、前記第2の架橋重合体を1M NaOHで80%中和させた前記第2の架橋重合体の塩の1質量%水溶液の形態である水溶性の前記第2の架橋重合体の塩と、を除く。)を含有する非水電解質二次電池電極用バインダーであって、
前記架橋重合体は、全構造単位に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位を50質量%以上100質量%以下含み、
前記架橋重合体の塩の総量に対する前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びその塩を未中和型に換算したときの総量が4.2質量%以下であり、
前記架橋重合体の塩の0.5質量%水溶液のpHが7.5以上である、バインダー。
【請求項2】
前記架橋重合体の塩は、さらに、架橋性単量体に由来する構造単位を有する、請求項1に記載のバインダー。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2023-02-08 
出願番号 P2021-093225
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (H01M)
P 1 651・ 121- YAA (H01M)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 清水 稔
山本 章裕
登録日 2021-09-14 
登録番号 6944610
権利者 三洋電機株式会社 東亞合成株式会社
発明の名称 非水電解質二次電池電極用バインダー  
代理人 弁理士法人 快友国際特許事務所  
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