• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B65B
管理番号 1399386
総通号数 19 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-12-22 
確定日 2023-07-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第7104496号発明「容器殺菌装置及び容器に対する殺菌効率判定方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7104496号の請求項1〜7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7104496号の請求項1〜7に係る特許についての出願は、平成29年6月26日に出願され、令和4年7月12日にその特許権の設定登録がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年12月22日に特許異議申立人遠藤眞理子(以下、「申立人」という。)は、その全請求項に対して特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第7104496号の請求項1〜7の特許に係る発明(以下、「本件発明1」等といい、これらを総称して「本件発明」という場合がある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
過酸化水素、エア及び水を含む殺菌ガスを容器の内面に噴射する殺菌部と、前記殺菌部において殺菌ガスが噴射された前記容器をノズルから噴射される100℃以上のエアで洗浄するエアリンス部とを備えた容器殺菌装置において、
前記エアリンス部に、前記ノズルから噴射されるエアの流量を測定する測定手段が設けられ、
当該容器殺菌装置は、前記測定手段によって測定されたエアの流量に基づいて前記容器に対する殺菌効率を判定する判定部を更に備え、
前記判定部は、前記測定手段によって測定されたエアの流量が基準値未満である場合に、前記殺菌効率が低下していると判定することを特徴とする、容器殺菌装置。
【請求項2】
前記測定手段は、前記ノズルの直下に位置する検出部を有し、該検出部にエアが加えた力に基づいてエアの流量を測定する、請求項1に記載の容器殺菌装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記測定手段によって測定されたエアの流量が前記基準値未満である場合に、前記ノズルに供給されるエアの流量を増加させる、請求項1に記載の容器殺菌装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記測定手段によって測定されたエアの流量が少ないほど、前記ノズルに供給されるエアの流量を増加させる、請求項3に記載の容器殺菌装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記測定手段によって測定されたエアの流量が前記基準値未満である場合に、前記ノズルから前記容器にエアを噴射する時間を長くする、請求項1に記載の容器殺菌装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記測定手段によって測定されたエアの流量が少ないほど、前記ノズルから前記容器にエアを噴射する時間を長くする、請求項5に記載の容器殺菌装置。
【請求項7】
過酸化水素、エア及び水を含む殺菌ガスを容器の内面に噴射する殺菌部と、前記殺菌部において殺菌ガスが噴射された前記容器を100℃以上のエアで洗浄するエアリンス部とを備えた容器殺菌装置によって殺菌される容器に対する殺菌効率判定方法であって、
前記エアリンス部のノズルから噴射されるエアの流量を測定する工程と、
測定されたエアの流量に基づいて前記容器に対する殺菌効率を判定する工程と
を含み、
測定されたエアの流量が基準値未満である場合に、前記殺菌効率が低下していると判定する、容器に対する殺菌効率判定方法。」

第3 申立理由の概要
申立人が提出した特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1及び3〜7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1〜7に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1〜7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 申立理由2(甲第2号証の基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1及び3〜7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1〜7に係る発明は、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1〜7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

3 証拠方法
甲第1号証:特開2001−39414号公報
甲第2号証:国際公開第2013/061956号
甲第3号証:佐藤順外編集、「食の安全・安心に過酢酸はここまで使える!」、株式会社サイエンスフォーラム、2009年11月20日第1版第1刷発行、p158〜171
甲第4号証:特開2006−117256号公報
甲第5号証:特開2016−120078号公報
以下、甲第1号証等を「甲1」のようにいう。

第4 甲号証に記載された事項、発明
1 甲1の記載事項と甲1に記載された発明
(1) 甲1の記載事項
甲1には、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同様。)。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 容器内に殺菌剤のミストを導入する工程と、
前記ミストが導入された容器を加熱しつつ前記容器内から前記ミストを排出させる工程と、
前記ミストが排出された前記容器内を洗浄する工程とを備えたことを特徴とする容器の殺菌方法。
・・・
【請求項7】 前記ミストが導入された容器に熱風を送り込んで前記容器の加熱と前記ミストの排出とを行うことを特徴とする請求項1に記載の容器の殺菌方法。
・・・
【請求項9】 容器内に殺菌剤のミストを導入する手段と、前記ミストが導入された容器を加熱する手段と、前記容器内から前記ミストを排出させる手段と、前記ミストが排出された前記容器内を洗浄する手段とを備えたことを特徴とする容器の殺菌装置。
【請求項10】 容器内に殺菌剤のミストを導入する手段と、前記ミストが導入された容器内に熱風を送り込む手段と、前記容器内を洗浄する手段とを備えたことを特徴とする容器の殺菌装置。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、飲料用ボトル等の容器を殺菌する方法及び装置に関する。」
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】PETボトル等の無菌充填システムとして、ボトルの成形から内容物の充填までを同一のライン上で一貫して行うインライン型のシステムがある。このシステムでは毎分500〜1000本程度の処理能力が望まれており、これを達成するためには、ボトルの殺菌に要する時間の短縮が課題とされている。ところが従来の過酸化水素水を噴霧する方法では、高濃度の過酸化水素を使用しているため、殺菌能力は十分であるものの、プラスチック製の容器の表層へ過酸化水素が吸着、浸透し、その除去に手間がかかって殺菌工程を短縮できない。
【0004】本発明は、各種の容器を高速かつ確実に殺菌できる殺菌方法、及びそれに適した装置並びに容器の加熱方法を提供することを目的とする。」
「【0020】
【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施形態に係る飲料用ボトルの殺菌手順の概要を示している。この殺菌方法では、まず図1(a)に示すように、ボトル1の口部1aから内部へノズル2が挿入され、そのノズル2から熱風が送り込まれてボトル1が予備加熱される。同時に、ボトル1の口部1aの外周にはノズル3,3が設置され、それらのノズル3から熱風が口部1aに吹き付けられて口部1aがさらに加熱される。これは、ノズル2からの熱風のみでは口部1aが十分に加熱されないおそれがあるためである。ノズル2からの熱風のみで口部1aを十分に加熱できるときはノズル3を省略してよい。ノズル2をボトル1内に挿入するのは、熱風をボトル1内に確実に送り込むためである。ノズル2の挿入量は熱風の流量、口部1aの口径等に応じて適宜変更してよいが、図2に示すようにボトル1の口部1aと胴部1cとの間に設けられたボトル径の遷移領域1bにノズル2の先端を位置させるとよい。遷移領域1bは、口部1aの下端からボトル径が最大径の例えば70%まで拡大する範囲として定義できる。予備加熱は、ボトル1の内面が40°C以上となるように行うことが望ましい。
【0021】予備加熱されたボトル1はミスト供給工程へと搬送される。ミスト供給工程では、殺菌剤のミストがノズル4からボトル1の内部へと供給される。殺菌剤のミストは例えば図3に示すミスト発生装置33により生成される。この発生装置33は、殺菌剤としての過酸化水素(H2O2)の水溶液を滴状にして供給する殺菌剤供給部35と、この殺菌剤供給部35から供給された過酸化水素の水溶液をその沸点以上に加熱して気化させる気化部36とを備える。殺菌剤供給部35にはスプレー35aが設けられる。スプレー35aには殺菌剤供給口35b及び圧縮空気供給口35cが設けられ、それら供給口35b、35cは図示しない過酸化水素供給源又は噴霧用圧縮空気供給源にそれぞれ接続されている。
【0022】供給口35b、35cから供給される過酸化水素の水溶液と圧縮空気とが二流体スプレー35aの内部で混ざり合うことにより、そのスプレー35aとエクステンションパイプ35eを介して接続されたノズル35dから気化部36の気化管37内に過酸化水素の水溶液がスプレーされる。気化管37は例えばアスベストリボンからなる外筒37aと、気化管37の内壁を形成するサニタリパイプからなる内筒37bと、外筒37a及び内筒37bとの間に設けられた加熱手段としてのヒーター37cとを有している。気化管37の下端の吐出口37dに上述したノズル4が接続される。
【0023】気化管37の内部に供給された滴状の過酸化水素はヒーター37cの熱で気化される。気化された過酸化水素は、ノズル4を経てボトル1の近傍に導かれるまでの間の温度降下により再び液化する。これにより、二流体スプレー35aにて生成される過酸化水素の滴よりも微細な過酸化水素のミストが生成される。このミスト化された過酸化水素がボトル1の内部に導入されることにより、ボトル1の内面が過酸化水素と接触して殺菌される。なお、容量500mlのボトル1本に対する過酸化水素ミストの付着量は、35重量%過酸化水素溶液に換算して5μl〜100μlの範囲が好ましい。すなわち、過酸化水素を35重量%含んだ過酸化水素溶液を5μl〜100μlの範囲でボトル内に供給したときと同等の過酸化水素がボトル1内に付着するようにミストの量を設定することが好ましい。ミストの吹き込み時間はボトル1本に対して0.1秒〜1秒の範囲が好ましい。生成されるミスト中に含まれる過酸化水素の濃度は35重量%以上が望ましい。殺菌剤は過酸化水素に限らず、殺菌作用を有する各種の薬液を使用できる。
【0024】ミストの供給後は熱風供給工程へとボトル1が搬送される。搬送中、ボトル1はその内部に殺菌剤ミストが導入された状態で所定時間保持される。熱風供給工程では、ボトル1の内部にノズル5が挿入され、そのノズル5から熱風が送り込まれる。熱風によりボトル1は内面から加熱され、殺菌剤ミストによる殺菌効果が高めるとともに、過酸化水素のボトル1への浸透が抑制されて過酸化水素がボトル1の内面に浮かび易くなる。さらに、ボトル1の内部に漂っているミストが熱風によりボトル1外へ排出される。この時点では、ボトル1の内面に付着した殺菌剤ミストにより既に殺菌が十分に行われているので、ボトル1の内部空間に漂っているミストを排出しても殺菌効果は損なわれず、むしろ余分なミストを早期に排出することにより、ボトル1の内面への過酸化水素の過剰な浸透を抑え、後工程における洗浄を短時間で済ませられる利点が生じる。
【0025】殺菌剤ミストの導入後、熱風の吹き込みを開始するまでの保持時間は1.0〜10秒の範囲が好ましい。熱風の吹き込みは、ボトル1の内部に漂っているミストをすべて排出できる範囲で行えばよく、時間にして1秒程度で十分である。熱風の温度がボトル1の耐熱温度(例えば60℃)以上の場合、熱風の吹き込み時間があまり長いとボトル1が耐熱温度を超えて加熱され、変形等が生じることがあるので注意を要する。ノズル5は予備加熱工程と同じくボトル径の遷移領域1bまで挿入することが望ましい。」
「【0030】外面殺菌機15にて外面が殺菌されたボトル1は次に内面殺菌機16のターンテーブル16aへと移される。ターンテーブル16aの旋回経路の一部には保持ゾーン16bが設けられ、そのゾーン16bを通過することによりボトル1が所定時間保持される。保持ゾーン16bを通過したボトル1は内部殺菌ゾーン16cへ導かれる。内部殺菌ゾーン16cには過酸化水素ミストを供給するノズル4(図1(b)参照)が設けられ、そのノズル4からボトル1の内部へと過酸化水素ミストが供給される。内部殺菌ゾーン16cを通過したボトル1は熱風供給機17のターンテーブル17aへと移される。
【0031】ターンテーブル17aの旋回経路には保持ゾーン17b及び熱風吹き込みゾーン17cが設けられる。この保持ゾーン17bを通過することにより、ボトル1はその内部に過酸化水素ミストが吹き込まれた状態で所定時間保持される。熱風吹き込みゾーン17cでは、ボトル1の内部に図1(c)のノズル5が挿入され、そのノズル5がボトル1と同期して移動しつつボトル1の内部に熱風が送られてボトル1が加熱されつつ内部の過酸化水素ミストが排出される。」
「【0036】
【実施例】容量500mlのPETボトル(ポリエチレンテレフタレート製のボトル)を対象として、次の手順に従って細部の条件を変えながら殺菌処理を行った。
【0037】1.内径10mmのノズルから毎分0.1m3の熱風をボトルの内部に供給してボトルを予備加熱した。熱風の温度はノズルの先端付近で105℃〜125℃に設定し、ノズルのボトル内への挿入量は30mmに設定した。同時に、内径50mmのノズルから85℃の熱風を毎分0.1m3の流量でボトルの口部に向けて吹き付けた。なお、口部加熱用のノズルの本数はボトル1本に対して2本とした。各ノズルからの熱風の吹き付け時間は3秒間に設定した。熱風吹き込み完了後のボトル内の温度は50℃に達していた。
【0038】2.熱風吹き込みの停止後1秒間ボトルを放置し、続いて過酸化水素ミストをボトル内に0.6秒間吹き込んだ。過酸化水素のボトル内面への付着量は35重量%過酸化水素溶液に換算して15〜40μlとした。
【0039】3.ミストの吹き込み完了後、ボトルを0.5〜3.5秒間放置した。その後、ボトル内にノズルを挿入して熱風を1秒間吹き込んだ。ノズルの内径、挿入量、熱風の温度及び流量は予備加熱時と同様である。
【0040】4.熱風の吹き込み後、ボトルを1〜3.5秒間放置した。その後、ボトルを反転し、内径6mmのノズルをボトルの内部に挿入して70℃に加熱された無菌水を3秒間送り込みボトル内部を洗浄した。無菌水の流量は毎分8.5リットルとした。
【0041】また、一部の工程を省略して殺菌処理を行った。
【0042】各殺菌条件のそれぞれについて、103、104、105の枯草菌芽胞を付着させたボトルを5本ずつ殺菌処理し、ボトル内にトリプトソイブイヨン培地を無菌的に分注し、培養、殺菌性の有無を評価した。各殺菌条件における試験結果から確率論的に最確数(MPN:most probable number)で生残菌数を算出し、付着菌数と生残菌数との対数値を次の式により求めて殺菌効果を評価した。
【0043】
【数1】殺菌効果=log(付着菌数/生残菌数)
【0044】テスト結果の一覧を次表に示す。
【0045】
【表1】

【0046】なお、残留判定、殺菌判定及び総合判定はそれぞれ4段階に分けて評価し、最も良好なものから順に◎、○、△、×で示している。
【0047】以上の表から次の点が確認できる。
【0048】条件3と条件7とは、過酸化水素ミストの付着量が同一で予備加熱の有無が異なっている。また、条件2と条件6とでは、過酸化水素の残留濃度が同じであり、予備加熱の有無が異なっている。これらの結果から、予備加熱を行ってから過酸化水素ミストを供給する方が殺菌効果が高いことがわかる。但し、ミスト吹き付け後の保持時間を長くすれば、殺菌効果は実用上十分なレベルまで改善される。
【0049】次に、条件2と条件8又は条件3と条件9とを比較すると、過酸化水素の残留量又は過酸化水素ミストの付着量が同じでも、過酸化水素ミストをボトル内に導入した後、熱風の送り込みを開始するまでの保持時間が短いと殺菌効果が損なわれることがわかる。
【0050】条件10,11ではミスト導入後の熱風吹き込みを省略している。条件3と条件10とを比較すると、過酸化水素ミストの付着量が同一でも熱風吹き込みが省略されると過酸化水素の残留濃度が上昇することがわかる。条件2と条件11とを比較すると、過酸化水素ミストの残留濃度が同一の場合、熱風吹き込みが省略されると殺菌効果が不足することがわかる。
【0051】予備加熱工程におけるボトル口部の加熱の効果をみるため、条件3では口部を外側から加熱せず、条件5ではボトルの口部を外部から加熱した。これらの比較から明らかなように、口部を別に加熱すれば殺菌効果が上昇する。
【0052】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の殺菌方法及び装置によれば、殺菌剤ミストが導入された容器を加熱してミストによる殺菌効果を高めつつ容器への殺菌剤成分の浸透を抑制するとともに、容器内に漂っている余分な殺菌剤のミストを強制的に排出して殺菌剤成分の容器内への浸透をさらに効果的に防止し、その後に容器を洗浄して容器に吸着、浸透した殺菌剤を洗い流しているので、殺菌剤の残留濃度を最小限度に抑えつつ、容器の内面を短時間で確実に殺菌することができる。」
「【図1】


「【図4】


(2) 甲1に記載された発明
上記(1)の特許請求の範囲、段落【0021】、【0024】、【0025】、図1、図4の記載から、甲1には、以下の、<甲1装置発明>及び<甲1方法発明>が記載されている。

<甲1装置発明>
「過酸化水素ミストを供給するノズル4を備えたボトル1である容器内に殺菌剤のミストを導入する手段と、前記ミストが導入されたボトル1の内部にノズル5が挿入され、そのノズル5からノズルの先端付近で105℃〜125℃に設定された熱風が送り込まれる熱風を送り込む手段と、前記容器内から前記ミストを排出させる手段と、前記ミストが排出された前記容器内を洗浄する手段とを備えたボトル1である容器の殺菌装置。」

<甲1方法発明>
「過酸化水素ミストを供給するノズル4を備えたボトル1である容器内に殺菌剤のミストを導入する工程と、前記ミストが導入されたボトル1の内部にノズル5が挿入され、そのノズル5からノズルの先端付近で105℃〜125℃に設定された熱風が送り込まれる熱風を送り込む工程と、前記容器内から前記ミストを排出させる工程と、前記ミストが排出された前記容器内を洗浄する工程とを有する方法。」

なお、申立人は、申立書の25〜26頁において、甲1には本件発明が実質的に記載されていると主張しているが、エアの流量を測定する手段についての記載は甲1にはないから、申立人の主張は採用できない。

2 甲2の記載事項と甲2に記載された発明
(1) 甲2の記載事項
甲2には、次の記載がある。
「請求の範囲
[請求項1] 正立状態の容器にその口部から過酸化水素ミスト又はガスを吹き込む工程と、容器を倒立させて下向きになったその口部から加熱した無菌エアを吹き込んで容器内の過酸化水素を活性化させると同時に、容器内のエアを上記無菌エアで置換することによって容器内から異物を除去する工程と、容器を正立させて口部から飲料を容器内に充填する工程と、容器の口部を蓋で閉じる工程とを包含してなることを特徴とする飲料充填方法。
・・・
[請求項6] プリフォームが容器に成形され、容器に飲料が充填され、容器が蓋で密封されるまでプリフォーム及び容器を連続走行させ、飲料が充填される前に容器を一時的に倒立状態で走行させる搬送路が設けられ、プリフォームを成形温度まで加熱する加熱炉と、成形温度まで加熱されたプリフォームを容器にブロー成形する成形型と、ブロー成形した容器にその口部から過酸化水素ミスト又はガスを吹き込む殺菌用ノズルと、上記倒立状態で走行する容器の下向きの口部から加熱した無菌エアを容器内に吹き込んで容器内の過酸化水素を活性化させると同時に、容器内のエアを上記無菌エアで置換することによって容器内から異物を除去するエアリンス用ノズルと、容器に飲料を充填する充填用ノズルと、飲料が充填された容器の口部を閉じるキャッパーとが上記搬送路に沿って設けられたことを特徴とする飲料充填装置。」
「[0001] 本発明は、飲料充填方法及び装置に関する。」
「発明が解決しようとする課題
[0004] 上記従来技術は、ボトル成形後の殺菌処理に代えて、ボトル成形前のプリフォームの段階で殺菌処理し、ボトル成形後は直ちに飲料を充填しようというものであるから、殺菌が不十分にならないよう、多量の殺菌剤をプリフォームに供給する必要がある。しかし、多量の殺菌剤をプリフォームに付着させると、ボトルを成形する際にボトルに変色、変形を引き起こすおそれがある。これを防止するため殺菌剤を少なめに供給すると、ボトルに菌が生残するおそれがある。
[0005] また、上記インラインシステムの場合に限らず、ボトルを高圧エアによりブロー成形する時等にボトル内に細かいプラスチック片等の異物が混入することがある。また、ボトル内に過酸化水素等の殺菌剤が残留することがある。従来、異物や残留殺菌剤をボトルから除去するため、内容物を充填する前にボトル内に無菌水を入れてリンスを行っている(例えば、特許文献3参照。)。
[0006] しかし、無菌水によりボトルの洗浄を行うとすれば、飲料充填装置が大型化し、また、無菌水を製造するためのエネルギーを大量に消費するという問題がある。
[0007] 本発明は、上記問題点を解消することを課題とする。」
「[0052] このように金型4内でボトル2が成形されると、金型4が引き続き走行しながら型開きし、図2(E)に示すように、ボトル2の完成品が金型4外へ取り出される。
[0053] ボトル2は成形後も連続走行しつつ、図2(F)に示すように本殺菌される。この本殺菌は、殺菌剤である過酸化水素のミストM又はガスGが殺菌用ノズル6により吹き付けられることによって行われる。殺菌用ノズル6はプリフォーム1の口部2aに対峙するように配置される。過酸化水素のミストM又はガスGは殺菌用ノズル6の先端から流下し、ボトルの口部2aからボトル2内に侵入してボトル2の内面を殺菌する。
[0054] また、このボトル2の連続走行箇所にはトンネル44が形成され、殺菌用ノズル6から吐出された過酸化水素のミストM又はガスGがボトル2の外面に沿って流れ落ち、さらにトンネル44内に滞留することから、ボトル2の外面も効果的に殺菌される。
[0055] 過酸化水素のミストM又はガスGは、例えば図6に示すミスト生成器7によって生成可能である。
[0056] このミスト生成器7は、殺菌剤である過酸化水素の水溶液を滴状にして供給する二流体スプレーである過酸化水素供給部8と、この過酸化水素供給部8から供給された過酸化水素の噴霧をその沸点以上の非分解温度以下に加熱して気化させる気化部9とを備える。過酸化水素供給部8は、過酸化水素供給路8a及び圧縮空気供給路8bからそれぞれ過酸化水素の水溶液と圧縮空気を導入して過酸化水素の水溶液を気化部9内に噴霧するようになっている。気化部9は内外壁間にヒータ9aを挟み込んだパイプであり、このパイプ内に吹き込まれた過酸化水素の噴霧を加熱し気化させる。気化した過酸化水素のガスGは吐出ノズル9bから気化部9外に凝結ミストMとなって噴出する。
[0057] 図2(F)に示したミストMはこの凝結ミストである。このミストMに代えてガスGを用いる場合は、図6に二点鎖線で示すように、吐出ノズル9bの先端に熱風Hの流れる導管42を連結し、吐出ノズル9bから出た凝結ミストMをこの熱風Hによってガス化し、このガスGをフレキシブルホース等で上記殺菌用ノズル6へと流すようにすればよい。
[0058] 殺菌用ノズル6はボトル2の搬送路上の定位置に設置してもよいし、ボトル2と同期的に移動させてもよい。また、殺菌用ノズル6は一本であってもよいし、複数本であってもよい。
[0059] 図2(F)に示すように、殺菌用ノズル6から吹き出た過酸化水素のミストM又はガスGはボトル2の内外の表面に接触するが、その際ボトル2は上記プリフォーム1の段階で加えられた熱が残留し、この余熱によって所定温度に保持されていることから、効率良く殺菌される。この所定温度は、プリフォーム1がPET製の場合、望ましくは40℃〜80℃であり、より望ましくは、50℃〜75℃である。40℃よりも低い場合は殺菌性が著しく低下する。80℃よりも高い場合は成型後にボトルが収縮するという不具合が生じる。
[0060] この本殺菌で使用する過酸化水素のミストM又はガスGは次の通りである。
[0061] 1)過酸化水素ミストMを使用する場合:従来の本殺菌のみを行ってボトル2を滅菌するためには、ボトル2に50μL/500mLボトル〜100μL/500mLボトルの量の過酸化水素を付着させる必要があったが、本発明のようにプリフォーム1の予備加熱を伴う予備殺菌を行った場合は、10μL/500mLボトル〜50μL/500mLボトルの量の過酸化水素ミストMを付着させることで商業的無菌充填が可能となった。[0062] 2)過酸化水素ガスGを使用する場合:従来の本殺菌のみを行ってボトル2を滅菌するためには、ガス濃度が5mg/L〜10mg/Lの過酸化水素ガスGをボトル2に吹き付ける必要があったが、本発明のようにプリフォーム1の予備加熱を伴う予備殺菌を行った場合は、ガス濃度が1mg/L〜5mg/Lの過酸化水素ガスGを吹き付けることで商業的無菌充填が可能となった。
[0063] 上記過酸化水素のミストM又はガスGの吹き付け後もボトル2は連続走行し、図3(G1)に示すように、倒立状態になり、下向きになった口部2aから無菌エアNが吹き込まれることによりエアリンスされる。
[0064] エアリンスはノズル45から無菌エアNがボトル2内に吹き込まれることによって行われる。無菌エアNは望ましくは加熱され、この加熱無菌エアNのボトル2内への吹き込みによって、ボトル2内に本殺菌工程(図2(F))で供給された過酸化水素が活性化し、ボトルの殺菌効果が向上する。加熱無菌エアNは、70℃以上であるのが殺菌効果を高めるうえで望ましい。
[0065] ノズル45は望ましくはボトル2の口部2aからボトル2の遷移領域2cまで挿入される。これにより、無菌エアNはボトル2内の全域に速やかに行き渡ることになる。遷移領域2cとは、ボトル2の口部2aの下端からボトル径が最大径の70%程度まで拡大する範囲として定義することができる。
[0066] また、このエアリンス工程では、上記無菌エアNのボトル2内への吹き込みによって、吹き込み前から存在する既存エアが速やかに置換される。その結果、既存エア中に含まれる余剰の過酸化水素やボトル2内の異物Pが口部2aからボトル2外に排出される。ボトル2外に排出された異物Pは、ボトル2が口部2aを下にした倒立状態にあるので口部2aの下方へ落下し、再び口部2aからボトル2内に入ることはない。」
[0098] ホイール23の外周には、ボトル2について本殺菌を行うための殺菌用ノズル6(図2(F)参照)が配置される。上記金型4で成形されたボトル2に対して、殺菌用ノズル6から過酸化水素のミストM又はガスGが吹き付けられることによって、ボトル2の殺菌が行われ、その表面に生残した菌類が殺菌される。この段階のボトル2はプリフォーム1での加熱による熱が残留しており、この熱によって過酸化水素のミストM又はガスGによる殺菌効果が高められる。」
[0102]ホイール27の外周には、エアリンス用のノズル45(図3(G1)参照)が上向きに配置される。また、ノズル45に対応した箇所では、ボトル2を把持するグリッパが上下反転状態でホイール27の周りを走行するようになっている。この反転機構は公知であるからその詳細な説明は省略する。
[0103] 過酸化水素のミストM又はガスGが吹き込まれたボトルがホイール27のグリッパに把持され、倒立状態になって走行し、ノズル45の真上に到来すると、ノズル45から、下向きになった口部2aを通してボトル2内にエアリンス用の加熱された無菌エアNが吹き込まれる(図3(G1))。これにより、ボトル2内の過酸化水素が活性化され、殺菌効果が高められる。また、上記無菌エアNでボトル2内の既存のエアが速やかに置換される結果、ボトル内の余剰の過酸化水素や異物Pが下向きの口部2aからボトル2外へと排出される。
[0104] なお、ノズル45は図3(G1)のごとくボトル2内に挿入して無菌エアNを供給してもよいが、図3(G2)のごとくボトル2外からボトル2内に無菌エアNを供給してもよい。」
「[0115] 成形されたボトル2は、金型4の型開き後にホイール22のグリッパによって金型4外に取り出され、検査装置47によって成形不良等の有無について検査された後、ホイール23の外周を通過する際に図2(F)のごとく本殺菌に付され、殺菌用ノズル6から過酸化水素のガスG又はミストMを吹き付けられる。過酸化水素のガスG又はミストMは口部2aからボトル2内に流入し、また、ボトル2の外面に接触しつつ流れる。
[0116] ボトル2には、加熱炉50で加えられた熱が残留しているので、殺菌用ノズル6から吹き付けられた過酸化水素のガスG又はミストMによって効果的に殺菌処理される。この殺菌により、プリフォーム1の表面に生残していた菌が殺菌される。
[0117] この成形され殺菌されたボトル2は、ホイール23から下流側のホイール27へと流れ、ホイール27の周りでエアリンスに付される。すなわち、ホイール27の周りで図3(G1)又は(G2)のごとくボトル2が倒立状態とされ、下向きになった口部2aからボトル内に挿入され又はボトル2外において口部2aに対峙するノズル45から加熱された無菌エアNがボトル2内に吹き込まれる。
[0118] 加熱された無菌エアNによって、ボトル2内の過酸化水素が活性化され、殺菌効果が高められ、また、無菌エアNがボトル2内の既存エアと高速で置換される際にボトル2内に異物Pが入っていた場合は、図3(G1)又は(G2)のごとく異物Pが下向きの口部2aからボトル2外へと排出される。
[0119] なお、ノズル45からボトル2内に吹き込むエアリンス用の無菌エアNの流量は、50mL(ミリリットル)〜5000mL或いは200mL〜2000mLの容量のボトル2について、好ましくは100L/min〜500L/min、より好ましくは、150L/min〜300L/minであり、好ましくは3秒間〜20秒間、より好ましくは3秒間〜10秒間吐出される。
[0120] また、無菌エアNの加熱温度すなわちノズル45からの吐出時の温度は、望ましくは50℃〜150℃、より望ましくは75℃〜120℃である。
[0121] その後、ホイール34,35,36,37,38の列へと受け渡されつつ充填機13内を走行する。」
「実施例1
[0132] 実施の形態1に関し、エアリンスの実施例を記す。
[0133] 図3(G1)又は(G2)に示す異物Pの種類、無菌エアNのボトル2内への供給量等は表1に示す通りである。
[0134][表1]

[0135] はじめに容量が2L(リットル)のボトルを5本用意し、異物サンプル2(樹脂糸B)、異物サンプル4(PETフィルム)を各々投入し、ボトルを順に倒立状態にしたうえで、流量150L/minのエアを3秒間ボトルの口部から吹き込んだ。エアとしては70℃以上に加熱した無菌エアを使用した。その結果、異物除去率は、図7(A)の左側に示すように、異物サンプル2(樹脂糸B)について58.9%、異物サンプル4(PETフィルム)について83.3%であった。
[0136] 一方、異物サンプル2(樹脂糸B)、異物サンプル3(ゴムパッキン)、異物サンプル4(PETフィルム)、異物サンプル5(樹脂糸C)を各々投入した2Lのボトルを順に倒立状態にしたうえで、流量200L/minの加熱無菌エアを3秒間ボトル口から吹き込んだ場合は、異物除去率は、図7(A)の右側に示すように、異物サンプル2(樹脂糸B)について90.1%、異物サンプル3(ゴムパッキン)について100%、異物サンプル4(PETフィルム)について90%、異物サンプル5(樹脂糸C)について99%であった。
[0137] また、異物サンプル1(樹脂糸A)、異物サンプル2(樹脂糸B)、異物サンプル3(ゴムパッキン)、異物サンプル4(PETフィルム)、異物サンプル5(樹脂糸C)を各々投入した500mLのボトルを順に倒立状態にしたうえで、流量200L/minの加熱無菌エアを3秒間ボトルの口部から吹き込んだ場合は、異物除去率は、図7(B)に示すように、異物サンプル1(樹脂糸A)について97.2%、異物サンプル2(樹脂糸B)について97.5%、異物サンプル3(ゴムパッキン)について100%、異物サンプル4(PETフィルム)について100%、異物サンプル5(樹脂糸C)について95.6%であった。
[0138] なお、異物除去率は、各々のボトルについてボトル外に排出された異物の個数を当初ボトル内に入れた異物の個数から減ずることによって算出した。
[0139]以上の結果から、容量2Lのボトルについては200L/minのエアを3秒間吹き込むことで異物除去率が90%を超え、容量500mLのボトルについては200L/minのエアを3秒間吹き込むことで異物除去率が90%を超えることが分かった。
[0140]これらの結果より、本殺菌方法は、上記種類、大きさの異物について除去率が90%を超える異物除去性能を有し、且つ加熱無菌エアを使用することで過酸化水素を活性化させつつ分解・除去することが可能であり、ボトル詰め飲料を製造する上で最も経済性がよい方法であると考えられる。
[0141] なお、500mlと2Lのボトルについて、上述のごとく過酸化水素を付着させた後、倒立させたうえで200L/minの加熱無菌エアを各々3秒間吹き込んだ場合の殺菌効果は、B.subtilis胞子に対して6log以上であった。
[0142] また、蒸留水を異物除去後のボトル内に充填し、蒸留水に含まれる過酸化水素の濃度を測定した結果、共に0.5ppm未満であった。この数値はアメリカ食品医薬品局(FDA)の基準に合致するものである。実施例Z
[0143] 実施の形態2に関し、エアリンスの実施例を記す。
[0144] [表2]

[0145] 判定基準は次の通りである。
(A) 容器収縮性(ボトルの収縮量)(図9(A)参照)
0.2%未満:◎
0.2〜1%:○
1%以上 :×
(B) 残留過酸化水素低減効果(過酸化水素のボトル内残留値)(図9(B)参照)
0.5ppm以上:×
0.1〜0.5ppm:○
0.1ppm未満:◎
(C) 滅菌効果(B.subtilis胞子に対する滅菌効果)(図9(C)参照)
6LRV(Log Reduction Value)未満:×
6〜7LRV :○
7LRV以上:◎
(D) 異物除去性能(樹脂糸除去率)(図9(D)参照)
90%未満:△
90〜95%:○
95%以上:◎
(E) コスト(トータルコスト(投資コスト+ランニングコスト+メンテナンスコスト)の序列)(図9(E)参照)
低:◎
中:○
高:×
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されることなく種々の形態にて実施可能である。例えば、本発明が適用される容器はPETボトルに限定されず、種々の樹脂製容器に適用することができる。容器の成形はインジェクションブローに限定されず、ダイレクトブロー等各種のブロー成形によって成形可能である。また、プリフォームや容器を搬送する搬送手段は、図4に示したホイール搬送装置に限定されない。容器が成形された順に所定の搬送速度で搬送可能な種々の搬送装置、例えばベルト搬送装置、バケット搬送装置、エア搬送装置を使用することもできる。」

(2) 甲2に記載された発明
上記(1)の記載から、甲2の飲料充填装置を構成しているボトルの殺菌を行う装置部分及び甲2の飲料充填方法の一部の方法として、以下の発明が記載されていると認める。

<甲2装置発明>
「ブロー成形した容器にその口部から過酸化水素ミスト又はガスを吹き込む殺菌用ノズルと、倒立状態で走行する容器の下向きの口部から50℃〜150℃に加熱した無菌エアを容器内に吹き込んで容器内の過酸化水素を活性化させると同時に、容器内のエアを無菌エアで置換することによって容器内から異物を除去するエアリンス用ノズルとを備えたボトルの殺菌装置。」

<甲2方法発明>
「ブロー成形した容器にその口部から過酸化水素ミスト又はガスを吹き込む殺菌用ノズルと、上記倒立状態で走行する容器の下向きの口部から50℃〜150℃に加熱した無菌エアを容器内に吹き込んで容器内の過酸化水素を活性化させると同時に、容器内のエアを上記無菌エアで置換することによって容器内から異物を除去するエアリンス用ノズルとを備えた方法。」

なお、申立人は、申立書の51〜52頁において、甲2には本件発明が実質的に記載されていると主張しているが、甲2には、エアの流量を測定する手段についての記載がないから、申立人の主張は採用できない。

3 甲3の記載事項
甲3には、次の記載がある。
「図−5の過酸化水素−水系の気液平衡曲線から明らかであるが,モル分率として約0.22mol%である35重量%の過酸化水素は,120℃以上で気化される。このガスが容器に接触すると温度降下により疑縮する。凝縮した過酸化水素濃度のモル分率は約0.6mol%(74重量%)になる。容器はこの高濃度過酸化水素環境下に1〜3秒間保持された後,ホットエアーにより乾燥(気化)される。その際,沸点の低い水が先に蒸発するため,,菌体表面に付着した過酸化水素はさらに高濃度化され菌は死滅する。乾燥終了と同時に過酸化水素は気化され消失し,容器滅菌は完了する。ボトルとキャップの滅菌工程の詳細は2.項に示す。」(160ページ、16〜22行)















「ボトル滅菌で影響を受ける要素は,○1(当審注:丸囲み1を意味する。以下同じ)滅菌効果,○2ボトル収縮率,○3残留過酸化水素湊度の3つである(図−7)。この3要素は相互に複雑に依存しており,滅菌条件の最適化(滅菌効呆を高めつつ,残留せず,収縮しないこと)を図る際は、これらのバランスに留意する必要がある。」(164ページ、1〜5行)
「国内に納入された無菌充填システムの多くは第4世代である。このシステム(表−3)において滅菌効果に最も影響を与える因子は過酸化水素のガス濃度である。図−9に500mlボトルを用いた場合の過酸化水素ガス濃度と滅菌効果の関係を示す。ボトル内側に濃度6mg/L以上のホット過酸化水素ガスを供給し、凝縮、乾燥させることによりB. atrophaeus sporeに対して6log減少の滅菌効果が得られる。」(164ページ下から1行〜165ページ4行)
「「図−10にエアーリンス工程でのボトル内に残留した過酸化水素の低減効果を示す。エアーリンス時間を長くすることにより残留過酸化水素濃度は著しく減少する。従来、エアーリンスと温水リンスを併用して過酸化水素を除去したが、温水リンスがなくてもエアーリンスの時間延長により残留過酸化水素の低減化は可能である。」(165ページ5〜8行)

4 甲4の記載事項
甲4には、次の記載がある。
「【0012】
前記供給スターホイール8から容器処理装置2の回転体10に容器が供給される位置Aと、回転体10から排出スターホイール16に容器が引き渡されて排出される位置Bとの間、つまり、過酸化水素ガスを噴射する噴射ノズル12の下方に容器が存在しない区間(B〜A)に、ノズル12からの流体の噴射状態を検出する検出装置20が設けられている(図2および図3参照)。この実施例では、噴射ノズル12からの過酸化水素ガスの噴射状態を、検出手段としてのロードセル22によって検出するようになっている。前記容器処理装置2の回転体10の外側に設置されたスタンド24上にカバー26が固定され、このカバー26の内部にロードセル22が収容されている。」
「【0018】
容器排出位置Bから次の容器が供給される位置Aまでの間は、噴射ノズル12の下方に配置されているネックグリッパ14が容器を持たずに空の状態で移動している。この区間(B〜A)に検出手段(ロードセル)22を備えた検出装置20が配置されている。回転移動してきた噴射ノズル12は、検出装置20の検出プレート34上に過酸化水素ガスを噴射する。検出プレート34が受けた過酸化水素ガスの重量をロードセル22が検出し、制御装置44の比較判定部48に送る。制御装置44の記憶部46には、予め適正な値の過酸化水素ガスの噴射量が記憶されており、比較判定部48では、前記ロードセル22が検出した検出値と記憶されている適正値と比較する。検出値が適正値を中心とする所定の範囲内に収まっている場合には、前記噴射ノズル12が過酸化水素ガスを正常に噴射していると判断する。また、検出値が適正値から所定以上外れている場合には、充分な滅菌を行うことができないので、この噴射ノズル12は異常であると判定する。この実施例では、噴射ノズル12からの流体の噴射量の良否を判定する検出装置20を一個所に設けるだけで、噴射ノズル12が正常か否かを判定できるので、装置が低コストであり、しかも、構造が簡素化する。」

5 甲5の記載事項
甲5には、次の記載がある。
「【0033】
また、殺菌に使用したオゾンガス、水蒸気及び噴霧水の仕様、並びに、リンスに用いたエアの仕様は以下の通りである。
オゾンガス:ドライ(酸素を原料),室温,オゾン濃度;10vol.%,流量;20mL/min.
水蒸気(蒸気圧);0.3MPa
噴霧水:蒸留水,室温
エア(リンス):ドライ,室温,流量;20mL/min.
比較例:湿潤オゾンガス,30mL/min.」

第5 当審の判断
1 申立理由1(甲1に基づく新規性進歩性)について
(1) 本件発明1について
本件発明1と甲1装置発明とを対比する。
甲1装置発明における「容器内に殺菌剤のミストを導入する手段」である「過酸化水素ミストを供給するノズル4」は、本件発明1の「過酸化水素、エア及び水を含む殺菌ガスを容器の内面に噴射する殺菌部」に相当する。
甲1装置発明における「前記ミストが導入されたボトル1の内部にノズル5が挿入され、そのノズル5からノズルの先端付近で105℃〜125℃に設定された熱風が送り込まれる熱風を送り込む手段」は、本件発明1の「前記殺菌部において殺菌ガスが噴射された前記容器をノズルから噴射される100℃以上のエアで洗浄するエアリンス部」に相当する。
甲1装置発明の「ボトル1である容器の殺菌装置」は、本件発明1における「容器殺菌装置」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1装置発明は、以下の点で一致し、かつ、相違する。
<一致点>
「過酸化水素、エア及び水を含む殺菌ガスを容器の内面に噴射する殺菌部と、前記殺菌部において殺菌ガスが噴射された前記容器をノズルから噴射される100℃以上のエアで洗浄するエアリンス部とを備えた容器殺菌装置。」

<相違点1−1>
本件発明1は、「エアリンス部に、前記ノズルから噴射されるエアの流量を測定する測定手段が設けられ、当該容器殺菌装置は、前記測定手段によって測定されたエアの流量に基づいて前記容器に対する殺菌効率を判定する判定部を更に備え、前記判定部は、前記測定手段によって測定されたエアの流量が基準値未満である場合に、前記殺菌効率が低下していると判定する」と特定するのに対し、甲1装置発明は、このような特定がない点。

以下、相違点1−1について検討する。
まず、新規性について検討する。
相違点1−1は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1装置発明でない。
次いで、進歩性について検討する。
甲1装置発明においては、「エアリンス部に、ノズルから噴射されるエアの流量を測定する測定手段」が設けられておらず、当該測定手段を設ける動機もない。
また、エアリンス部にノズルから噴射されるエアの流量を測定する測定手段を設け、測定手段によって測定されたエアの流量が基準値未満である場合に、前記殺菌効率が低下していると判定する判定手段を設ける構成について、申立人が提示するその他の証拠には記載されていない。
そうすると、甲1装置発明において、相違点1−1に係る発明特定事項を有するようにすることは、当業者といえども容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本件発明1は、当該相違点1−1に係る発明特定事項を有することにより、容器殺菌装置によって殺菌される容器に対する殺菌効率の低下を迅速に検出することができるという格別の効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、甲1装置発明でないし、甲1装置発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2) 本件発明2〜6について
本件発明2〜6は、直接あるいは間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。上記(1)に示したように、本件発明1は、甲1装置発明、すなわち、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、本件発明2〜6も甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3) 本件発明7について
本件発明7と甲1方法発明とを対比すると、上記(1)と同様に対比できるから、両者は、以下の点で一致し、かつ、相違する。
<一致点>
「過酸化水素、エア及び水を含む殺菌ガスを容器の内面に噴射する殺菌部と、前記殺菌部において殺菌ガスが噴射された前記容器をノズルから噴射される100℃以上のエアで洗浄するエアリンス部とを備えた方法。」

<相違点1−2>
本件発明7は、「エアリンス部に、前記ノズルから噴射されるエアの流量を測定する測定する工程と、測定されたエアの流量に基づいて前記容器に対する殺菌効率を判定する工程と、測定されたエアの流量に基づいて前記容器に対する殺菌効率を判定する工程とを含み、測定されたエアの流量が基準値未満である場合に、前記殺菌効率が低下していると判定する、殺菌効率判定」の方法であるのに対し、甲1方法発明は、このような特定がない点。

以下、相違点1−2について検討する。
まず、新規性について検討する。
相違点1−2は、実質的な相違点であるから、本件発明7は甲1方法発明でない。
次いで、進歩性について検討する。
甲1方法発明においては、「エアリンス部に、ノズルから噴射されるエアの流量を測定する測定手段」が設けられておらず、当該測定手段を設ける動機もない。
また、「エアリンス部に、前記ノズルから噴射されるエアの流量を測定する測定する工程と、測定されたエアの流量に基づいて前記容器に対する殺菌効率を判定する工程と、測定されたエアの流量に基づいて前記容器に対する殺菌効率を判定する工程とを含み、測定されたエアの流量が基準値未満である場合に、前記殺菌効率が低下していると判定する、殺菌効率判定方法」について、申立人が提示するその他の証拠には記載されていない。
そうすると、甲1方法発明において、相違点1−2に係る発明特定事項を有するようにすることは、当業者といえども容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本件発明7は、当該相違点1−2に係る発明特定事項を有することにより、容器殺菌装置によって殺菌される容器に対する殺菌効率の低下を迅速に検出することができるという格別の効果を奏するものである。
よって、本件発明7は、甲1方法発明、すなわち、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4) 申立理由1の小括
以上の通りであるから、本件発明1及び3〜7は、甲1に記載された発明ではない。
また、本件発明1〜7は、甲1に記載された発明、並びに甲2〜5に例示される技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 申立理由2(甲2に基づく新規性進歩性)について
(1) 本件発明1について
本件発明1と甲2装置発明とを対比する。
甲2装置発明における「ブロー成形した容器にその口部から過酸化水素ミスト又はガスを吹き込む殺菌用ノズル」は、本件発明1の「過酸化水素、エア及び水を含む殺菌ガスを容器の内面に噴射する殺菌部」に相当する。
甲2装置発明における「上記倒立状態で走行する容器の下向きの口部から50℃〜150℃に加熱した無菌エアを容器内に吹き込んで容器内の過酸化水素を活性化させると同時に、容器内のエアを上記無菌エアで置換することによって容器内から異物を除去するエアリンス用ノズル」は、本件発明1の「前記殺菌部において殺菌ガスが噴射された前記容器をノズルから噴射されるエアで洗浄するエアリンス部」に相当する。
甲2装置発明における「ボトルの殺菌装置」は、本件発明1の「容器殺菌装置」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲2装置発明は、以下の点で一致し、かつ、相違する。
<一致点>
「過酸化水素、エア及び水を含む殺菌ガスを容器の内面に噴射する殺菌部と、前記殺菌部において殺菌ガスが噴射された前記容器をノズルから噴射されるエアで洗浄するエアリンス部とを備えた容器殺菌装置。」

<相違点2−1>
本件発明1は、「エアリンス部に、前記ノズルから噴射されるエアの流量を測定する測定手段が設けられ、当該容器殺菌装置は、前記測定手段によって測定されたエアの流量に基づいて前記容器に対する殺菌効率を判定する判定部を更に備え、前記判定部は、前記測定手段によって測定されたエアの流量が基準値未満である場合に、前記殺菌効率が低下していると判定する」と特定するのに対し、甲2装置発明は、このような特定がない点。

<相違点2−2>
エアリンス部のエアに関し、本件発明1は「100℃以上の」と特定するのに対し、甲2装置発明は、50℃〜150℃との特定である点。

以下、相違点2−1について検討する。
まず、新規性について検討する。
相違点2−1は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2装置発明でない。
次いで、進歩性について検討する。
甲2装置発明においては、「エアリンス部に、ノズルから噴射されるエアの流量を測定する測定手段」が設けられておらず、当該測定手段を設ける動機もない。
また、エアリンス部にノズルから噴射されるエアの流量を測定する測定手段を設け、測定手段によって測定されたエアの流量が基準値未満である場合に、前記殺菌効率が低下していると判定する判定手段を設ける構成について、申立人が提示するその他の証拠には記載されていない。
そうすると、甲2装置発明において、相違点2−1に係る発明特定事項を有するようにすることは、当業者といえども容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本件発明1は、当該相違点2−1に係る発明特定事項を有することにより、容器殺菌装置によって殺菌される容器に対する殺菌効率の低下を迅速に検出することができるという格別の効果を奏するものである。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2装置発明でないし、甲2装置発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2) 本件発明2〜6について
本件発明2〜6は、直接あるいは間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。上記(1)に示したように、本件発明1は、甲2装置発明、すなわち、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、本件発明2〜6も甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3) 本件発明7について
本件発明7と甲2方法発明とを対比すると、上記(1)と同様に対比されるから、両者は、以下の点で一致し、かつ、相違する。
<一致点>
「過酸化水素、エア及び水を含む殺菌ガスを容器の内面に噴射する殺菌部と、前記殺菌部において殺菌ガスが噴射された前記容器をノズルから噴射されるエアで洗浄するエアリンス部とを備えた方法。」

<相違点2−3>
本件発明7は、「エアリンス部に、前記ノズルから噴射されるエアの流量を測定する測定する工程と、測定されたエアの流量に基づいて前記容器に対する殺菌効率を判定する工程と、測定されたエアの流量に基づいて前記容器に対する殺菌効率を判定する工程とを含み、測定されたエアの流量が基準値未満である場合に、前記殺菌効率が低下していると判定する、殺菌効率判定」の方法であるのに対し、甲2方法発明は、このような特定がない点。

<相違点2−4>
エアリンス部のエアに関し、本件発明7は「100℃以上の」と特定するのに対し、甲2方法発明は、50℃〜150℃との特定である点。

以下、相違点2−3について検討する。
まず、新規性について検討する。
相違点2−3は、実質的な相違点であるから、本件発明7は甲2方法発明でない。
次いで、進歩性について検討する。
甲2方法発明においては、「エアリンス部に、ノズルから噴射されるエアの流量を測定する測定手段」が設けられておらず、当該測定手段を設ける動機もない。
また、「エアリンス部に、前記ノズルから噴射されるエアの流量を測定する測定する工程と、測定されたエアの流量に基づいて前記容器に対する殺菌効率を判定する工程と、測定されたエアの流量に基づいて前記容器に対する殺菌効率を判定する工程とを含み、測定されたエアの流量が基準値未満である場合に、前記殺菌効率が低下していると判定する、殺菌効率判定方法」について、申立人が提示するその他の証拠には記載されていない。
そうすると、甲2方法発明において、相違点2−3に係る発明特定事項を有するようにすることは、当業者といえども容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本件発明7は、当該相違点2−3に係る発明特定事項を有することにより、容器殺菌装置によって殺菌される容器に対する殺菌効率の低下を迅速に検出することができるという格別の効果を奏するものである。
よって、本件発明7は、甲2方法発明、すなわち、甲2に記載された発明でないし、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4) 申立理由2の小括
以上の通りであるから、本件発明1及び3〜7は、甲2に記載された発明ではない。
また、本件発明1〜7は、甲2に記載された発明、並びに甲2〜5に例示される技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2023-06-28 
出願番号 P2017-124365
審決分類 P 1 651・ 113- Y (B65B)
P 1 651・ 121- Y (B65B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 稲葉 大紀
久保 克彦
登録日 2022-07-12 
登録番号 7104496
権利者 サントリーホールディングス株式会社
発明の名称 容器殺菌装置及び容器に対する殺菌効率判定方法  
代理人 池田 達則  
代理人 中島 勝  
代理人 三橋 真二  
代理人 青木 篤  
代理人 渡辺 陽一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ