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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1399389
総通号数 19 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-01-18 
確定日 2023-07-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第7113579号発明「積層シート、及び食品用包装容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7113579号の請求項1〜9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7113579号(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和4年5月24日を出願日とする特許出願であって、令和4年7月28日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、令和4年8月5日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年1月18日に特許異議申立人片岡令(以下「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:請求項1〜9)がされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1〜9に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという場合があり、また、これらをまとめて「本件特許発明」という場合がある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
3層の積層シートであって、
前記積層シートが、内層と、前記内層の表面に積層された第1の外層及び第2の外層とを備え、
前記内層が、炭酸カルシウム粒子、及び熱可塑性樹脂を含み、
前記第1の外層及び前記第2の外層が、それぞれ熱可塑性樹脂を含み、
前記炭酸カルシウム粒子の含有量が、前記内層に対して、40.0質量以上80.0質量%以下であり、
前記炭酸カルシウム粒子が、第1の炭酸カルシウム粒子群及び第2の炭酸カルシウム粒子群を少なくとも含み、
前記第1の炭酸カルシウム粒子群における、JIS M−8511に準じた空気透過法に基づく平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下であり、
前記第2の炭酸カルシウム粒子群における粒度分布D97が、20.1μm以上40.0μm以下であり、
内層における、前記第1の炭酸カルシウム粒子群と、前記第2の炭酸カルシウム粒子群との質量比が、99.95:0.05〜99.99:0.01であり、
前記第1の外層及び前記第2の外層の厚さの比率が、前記積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上20.0%以下である、
積層シート。
【請求項2】
前記内層、前記第1の外層、及び前記第2の外層における前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂を含む、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記ポリエチレン系樹脂が、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
前記高密度ポリエチレンにおける、JIS K 6922−1(ISO1133)によるMFR(190℃、21.6kg)が、5g/10分以上15g/10分以下であり、
前記直鎖状低密度ポリエチレンにおける、JIS K 6922−1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が、0.5g/10分以上1.5g/10分以下であり、
前記高密度ポリエチレンと、前記直鎖状低密度ポリエチレンとの質量比が、90:10〜50:50である、請求項2に記載の積層シート。
【請求項4】
前記ポリプロピレン系樹脂が、ポリプロピレンホモポリマー及び/又はポリプロピレンブロックポリマーである、請求項2に記載の積層シート。
【請求項5】
前記炭酸カルシウム粒子が、重質炭酸カルシウム粒子である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項6】
前記第1の炭酸カルシウム粒子群における、JIS M−8511に準じた空気透過法に基づく平均粒子径が、1.0μm以上3.0μm以下であり、
前記第2の炭酸カルシウム粒子群における、粒度分布D97が、20.1μm以上35.0μm以下である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項7】
前記第1の外層及び前記第2の外層の厚さの比率が、前記積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上10.0%以下である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項8】
前記積層シートが、真空成形用積層シートである、請求項1から7の何れかに記載の積層シート。
【請求項9】
請求項8の積層シートから成形された食品用包装容器。」

第3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人が申し立てた請求項1〜9に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである(なお、甲各号証は、それぞれ、「6 証拠方法」で記載したものである。)。
1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性
本件特許発明1、2、7〜9は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性
本件特許発明1〜9は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証〜甲第7号証に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由3(明確性要件)
本件特許発明1〜9に係る特許は、以下の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由3の具体的理由はおおむね次のとおりである。
本件特許発明1は、第1の炭酸カルシウム粒子群と第2の炭酸カルシウム粒子群とが異なる成分であることが前提となっているが、両者は同一成分であり得、市販品を用いた場合、第2の炭酸カルシウム粒子群は基本的に、第1の炭酸カルシウム粒子群にも該当し、同一成分である第1の炭酸カルシウム粒子群と第2の炭酸カルシウム粒子群とを所定の割合で配合する技術的意味を当業者は理解できないため、本件特許発明1は、第1の炭酸カルシウム粒子群と、第2の炭酸カルシウム粒子群との区別(異同)を明確にするための発明特定事項が不足していることが明らかであるため、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明2〜9は、不明確である。
4 申立理由4(実施可能要件
本件特許発明1〜9において、第1の炭酸カルシウム粒子群と第2の炭酸カルシウム粒子群とは、同一成分であり得、同一成分を所定の割合で配合することの技術的意味は不明確であり、何ら効果が奏されないため、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、請求項1〜9に係る特許は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
5 申立理由5(サポート要件)
本件特許発明1〜9は、出願時の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明に開示された内容から拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件特許発明1〜9に係る特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
6 証拠方法
甲第1号証:特願2020−21483に係る令和2年12月23日付の意見書
甲第2号証:特開2021−126789号公報
甲第3号証:株式会社丸東、”BF100粒度分布測定結果”,[online],[令和4年12月27日検索],インターネット
<URL:https://marutou.co.jp/wp-content/uploads/2021/12/ryudo_calcium-carbonate-BF100.pdf>
甲第4号証:株式会社ニッチツ,“重質炭酸カルシウム「サンカル」”,[online],[令和4年11月8日検索],インターネット
<URL:http://www.nitchitsu.co.jp/business/sun-cal/>
甲第5号証:特開2021−31644号公報
甲第6号証:特許第6764210号公報
甲第7号証:特許第6919954号公報
以下、「甲第1号証」を「甲1」という。他の甲各号証についても、同様である。

第4 当審の判断
以下のとおり、当審は、何れの申立理由も、その理由がないものと判断する。
1 申立理由1及び2(甲1を主たる証拠とする新規性進歩性)について(1) 証拠の記載事項等
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている(後述の「実験成績証明書」の標題を除き、下線は、当審で参考のため付与したものである。以下、同様である。)。
「[2]補正後の請求項に記載の発明について
(構成)
補正後の請求項1に係る積層体(以下、本願発明の積層体)は、以下の特徴A及びBを主要な特徴として備えます。
特徴A:全体厚さが300μm以上450μm以下、かつ外層の厚さの比率が2.0%以上20.0%以下
特徴B:炭酸カルシウム粒子の最大粒径が20μm以下

(効果)
本願発明の積層体は、真空成形用、圧空成形用又はマッチドモールド成形用のシート状の積層体であって、例えば、容器包装(特に、食品用容器包装)の材料として用いることができます(段落0048等)。」
「後述する添付資料Aに示すように、株式会社丸東製の炭酸カルシウム粒子において、「BF100」は、平均粒子径3.60μmですが、トップカット(最大粒径に相当)が30μmです。株式会社丸東製の炭酸カルシウム粒子において、トップカット(最大粒径に相当)20μm以下は、平均粒径2.20μm以下の炭酸カルシウム粒子(「ソフトン1000」等)です。
また、添付資料Bに示すように、株式会社丸ニッチツの炭酸カルシウム粒子において、「NA−1500」は、平均粒子径3.18μmですが、粒度分布表では20μm超の粒子が1.6%含まれます。同様に、「NA−1200」は、平均粒子径4.22μmですが、粒度分布表では20μm超の粒子が4.1%含まれます。株式会社丸ニッチツの炭酸カルシウム粒子において、粒度分布表で20μm以上の粒子が含まれなくなるのは、平均粒径1.74μm以下の炭酸カルシウム粒子(「NA−1800」等)です。」



「株式会社丸東のホームページにおける項目「炭酸カルシウム」より抜粋
https://www.marutou.co.jp/material/material0302.html」






「[3−4]実験成績証明書
本願発明の積層体は、引用文献1−3の何れにも記載されていない特徴Bを備えることで、引用文献1−3に記載の発明よりも優れた効果を奏します。この点を示すため、実験成績証明書を提出します。
実験成績証明書では、3種類の炭酸カルシウム粒子A−Cを用いた以外は、当初明細書の実施例に記載の方法と同様の方法により、3種類の積層体A−Cを製造しました。炭酸カルシウム粒子A−Cは、最大粒径がそれぞれ18μm、30μm又は40μmでした。最大粒径20μm以下である炭酸カルシウム粒子Aを用いた積層体Aは、成形性に優れ、形成される包装容器の耐衝撃性及び耐熱性も良好でした。一方で、最大粒径20μm超である炭酸カルシウム粒子B及びCを用いた積層体B及びCは、成形性に劣り、形成される包装容器の耐衝撃性及び耐熱性も不良でした。
以上から明らかなように、本願発明の積層体は、特徴Bを備え、積層体に用いる一般的な炭酸カルシウム粒子よりも大幅に粒径の小さい炭酸カルシウム粒子を用いることで、耐熱性及び耐酸性に優れる容器包装を形成でき、かつ成形性に優れます。本願発明の積層体の効果は、特徴Bを備えない引用文献1−3に記載の発明の効果よりも優れていると判断します。」
「 実験成績証明書 令和2年12月8日
1.実験日:令和2年12月8日

2.実験場所:株式会社アースクリエイト

3.実験者:西宮祥行

4.実験の目的
当初明細書の実施例に係る積層体の製造及び評価において、炭酸カルシウム粒子の粒径を変更した以外は同一の方法により積層体を製造し、評価する。これにより、また、本願請求項1に記載の「炭酸カルシウム粒子の最大粒径が20μm以下」という特徴Aを満たすことでどのような効果が奏されるかを確認する。
併せて、引用文献1に記載の平均粒径4〜5μmの炭酸カルシウム粒子が本願請求項1に記載の「炭酸カルシウム粒子の最大粒径が20μm以下」を満たすか否かを検討する。

5.積層体の製造
(1)炭酸カルシウム粒子
炭酸カルシウム粒子として、下記表1の炭酸カルシウム粒子A〜Cを用意した。炭酸カルシウム粒子Aは、当初明細書の実施例で使用した炭酸カルシウム粒子と同一であった。

(2)マスターバッチの調製
以下に示す材料を二軸混練機によって混錬した後にチップ化することにより、内層形成用材料及び外層形成用材料のマスターバッチを得た。
内層形成用材料:ポリプロピレン樹脂43質量部、炭酸カルシウム粒子(炭酸カルシウム粒子A〜Cの何れか)57質量部
外層形成用材料:ポリプロピレン樹脂100質量部

(3)積層体の製造
多層Tダイ法により、内層と、内層の両面に積層される一対の外層とを備える積層体を形成した。内層は、上述の内層形成用材料により形成した。一対の外層は、それぞれ、上述の外層形成用材料により形成した。積層体の全体厚さは、420μmであった。内層の厚さは、378μm(積層体の全体厚さに対して90%)であった。一対の外層は、それぞれ、21μm(積層体の全体厚さに対して5%)であった。積層体における無機充填剤の含有割合は、54質量%であった。積層体の密度は、1.38g/cm3であった。これを、積層体A〜Cとした。

6.積層体の評価
以下に示す通り、各積層体について、炭酸カルシウム粒子の最大粒径を測定すると共に、成形性を評価した。また、各積層体から作製した容器について、耐衝撃性及び耐熱性を測定した。得られた結果を下記表2に示す。

[最大粒径]
当初明細書の段落0029に記載の方法により、積層体A〜Cに含まれる炭酸カルシウム粒子A〜Cの最大粒径を測定した。

[成形性]
積層体A〜Cを、遠赤外線ヒーターで予熱した後、真空成形機によって底径52mmφ、開口径65mmφ、所定の容器高さH、フランジ巾8mmのカップ状の容器に成形した。容器高さHは、15mm、20mm、30mm又は40mmの4種類とした。即ち、3種類の積層体について、それぞれ4種類の高さの容器を作製した(合計12種)。各積層体から成形された容器を目視で観察し、成形によって穴が発生していない容器高さHの最大値(最大深絞り)をその積層体の成形性の評価値とした。

[耐衝撃性]
成形性に記載した方法と同様の方法により、積層体A〜Cを用いて、それぞれ、容器高さHが15mmである容器を5個ずつ作製した。各容器に水を充填し、内部を水で満杯にした。次に、各容器に蓋をした後にシールすることで密閉した。次に、各容器に対して、正立状態で1.0mの高さからコンクリート上に底面落下させるという操作を5回繰り返した。そして、上述の操作で割れた容器の個数(割れ個数)を測定した。耐衝撃性は、以下の基準で評価した。
良好(A):割れ個数が0個
不良(B):割れ個数が1個以上

[耐熱性]
成形性に記載した方法と同様の方法により、積層体A〜Cを用いて、それぞれ、容器高さHが15mmである容器を5個ずつ作製した。各容器に大豆油を20mL充填した。次に、電子レンジを用い、各容器を800Wで3分間加熱した。そして、加熱後に各容器を目視で観察し、以下の基準で耐熱性を評価した。
良好(A):何れの容器にも変形又は破れが発生しなかった
不良(B):少なくとも1個の容器に変形又は破れが発生した



7.結論
上記表2に示すように、平均粒径3.6〜4.0μmの炭酸カルシウム粒子は、最大粒径が20μm超であった。このことから、引用文献1に記載されている平均粒径4〜5μmの炭酸カルシウム粒子は、最大粒径が20μm超である蓋然性が高いと判断される。
また、上記表に示すように、積層体Aは、最大粒径が20μm以下の炭酸カルシウム粒子を用いることにより、成形性に優れると共に、耐衝撃性及び耐熱性に優れる容器を形成できた。これに対して、積層体B〜Cは、最大粒径が20μm超の炭酸カルシウム粒子を用いたため、成形性に劣ると共に、耐衝撃性及び耐熱性に優れる容器を形成できなかった。このことから、積層体に用いる炭酸カルシウム粒子の最大粒径を20μm以下とすることで、積層体の成形性を向上できると共に、積層体から形成される容器の耐衝撃性及び耐熱性を向上できると判断される。」
イ 甲1に記載された発明
上記アの記載、特に実験成績証明書に記載された積層体B〜Cに着目すると、甲1には次の発明が記載されていると認める。
「内層と、内層の両面に積層される一対の外層とを備える積層体であって、
前記内層の形成用材料が、ポリプロピレン樹脂43質量部、炭酸カルシウム粒子57質量部であり、
前記炭酸カルシウム粒子は、平均粒径3.6μmかつ最大粒径30μmの炭酸カルシウム粒子B、又は平均粒径4.0μmかつ最大粒径40μmの炭酸カルシウム粒子Cであり、
前記外層の形成用材料が、ポリプロピレン樹脂100質量部であり、
前記積層体の全体厚さは、420μmであり、
前記内層の厚さは、378μm(積層体の全体厚さに対して90%)であり、
一対の外層の厚さは、それぞれ、21μm(積層体の全体厚さに対して5%)である、
積層体。」(以下「甲1発明」という。)
ウ 甲2の記載事項
「【請求項1】
内層と、前記内層の両面に積層される一対の外層とを備える積層体であって、
前記内層は、無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含有し、
前記外層は、熱可塑性樹脂を含有し、
前記無機充填剤は、炭酸カルシウム粒子を含み、
前記積層体における前記無機充填剤の含有割合は、50.0質量%超であり、
前記外層の厚さの比率は、前記積層体の全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上20.0%以下である、積層体。」
「【0026】
(無機充填剤)
無機充填剤は、炭酸カルシウム粒子を含む。ここで、無機充填剤として使用される炭酸カルシウム粒子は、入手元によって純度が大きく異なる。詳しくは、無機充填剤として使用される炭酸カルシウム粒子の多くは、鉱物資源として得られた炭酸カルシウム鉱石を精製せずにそのまま粒子化したものである。そのため、炭酸カルシウム粒子は、産地によって純度が大きく異なる。例えば、産地によっては、炭酸カルシウムの含有割合が70質星%程度である低純度の炭酸カルシウム粒子が存在する。一方、食品用及び医薬品用の炭酸カルシウム粒子として、化学合成により得られた高純度の炭酸カルシウム粒子も存在する。」
「【0029】
なお、炭酸カルシウム粒子の最大粒径は、以下の方法で測定することができる。まず、電子顕微鏡を用い、内層の断面から無作為に選択された5箇所(視野:100μm×100μm)において、炭酸カルシウム粒子の粒径(長径)を測定する。そして、測定された炭酸カルシウム粒子の粒径の最大値を、炭酸カルシウム粒子の最大粒径とする。」
「【0035】
(熱可塑性樹脂)
内層が含有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂)が挙げられる。」
「【0039】
ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンのうち少なくとも一方と、高密度ポリエチレンとを含む混合樹脂が好ましい。この混合樹脂において、低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンの合計含有割合としては、10質量%以上50質量%以下が好ましい。上述の混合樹脂は、強度に優れる高密度ポリエチレンと、成形性に優れる低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンとを併用した樹脂である。そのため、上述の混合樹脂を用いることで、内層の強度及び成形性を向上できる。」
「【0043】
[外層]
外層は、熱可塑性樹脂を含有する層である。外層の厚さの比率としては、本発明の積層体の全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上20.0%以下であり、4.0%以上10.0%以下が好ましい。外層の厚さの比率を2.0%以上とすることで、本発明の積層体の成形性を向上できる。外層の厚さの比率を20.0%以下とすることで、本発明の積層体における無機充填剤の含有割合を50.0質量%超に調整し易くなる。なお、一対の外層の厚さは、互いに同一でも異なっていてもよい。」
「【0045】
外層が含有する熱可塑性樹脂としては、例えば、内層が含有する熱可塑性樹脂として例示したものと同様の樹脂が挙げられる。外層が含有する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂又はポリスチレン樹脂が好ましく、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂又はポリスチレン樹脂がより好ましい。」
エ 甲3の記載事項



オ 甲3から以下の事項を認めることができる。
サンプルID1が「BF100」の粒度分布測定結果が記載され、甲3の下方の表には、全粒子を100%としたときに、ボーダーラインとなる粒子径よりもサイズの小さい粒子が、どのような割合(累積%)で含まれているかが示され、表のCH47には、粒径37.00μm、累積97.25%、CH48には、粒径33.93μm、累積96.37%と記載され、このことから、「BF100のD97は、粒径33.93μm〜粒径37.00μmの間にあること」(以下「甲3事項」という。)が分かる。
カ 甲4の記載事項



キ 甲4から以下の事項を認めることができる。
重質炭酸カルシウム「サンカルNA」の粒度分布がグラフで示され、横軸に「ストークス径」が、縦軸に「累積フルイ下」が示され、サンカルの品名に応じて、粒度分布は異なる曲線を示すこと(以下「甲4事項」という。)が分かる。
ク 甲5の記載事項
「【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂と無機物質粉末とを50:50〜10:90の質量比で含み、
前記無機物質粉末が、炭酸カルシウムを含み、
前記炭酸カルシウムが、JIS M−8511によるによる空気透過法により測定した平均粒子径が0.5μm以上2.0μm未満である第1の炭酸カルシウムと、JIS M−8511による空気透過法により測定した平均粒子径が2.0μm以上9.0μm未満である第2の炭酸カルシウムとを含み、
前記第1の炭酸カルシウムと前記第2の炭酸カルシウムとの質量比が、90:10〜98:2である樹脂組成物。」
「【0019】
ポリオレフィン系樹脂含有樹脂組成物から得られた成形品においては、上述の通り、ブロッキングの抑制と、良好な印刷性とを両立することが困難だった。そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、意外にも、ポリオレフィン系樹脂含有樹脂組成物に上記の要件を満たすように平均粒子径が異なる2種の炭酸カルシウム(すなわち、第1及び第2の炭酸カルシウム)を配合することで、印刷性を損なわずに、ブロッキングが抑制された成形品が得られる樹脂組成物を提供できることが見出された。」
ケ 甲6の記載事項
「【請求項1】
熱可塑性樹脂と卵殻粉末とを質量比50:50〜10:90の割合で含有する卵殻粉末含有熱可塑性樹脂組成物において、
前記卵殻粉末含有熱可塑性樹脂組成物全体に対する前記卵殻粉末の質量比が50/100以上であり、
前記卵殻粉末のBET比表面積が、0.1m2/g以上10.0m2/g以下であり、
前記卵殻粉末の真円度が、0.50以上0.95以下であり、
前記卵殻粉末は、平均粒子径の異なる少なくとも2群の粒子群を含み、かつ
前記した平均粒子径の異なる少なくとも2群の粒子群として、空気透過法による平均粒子径が0.7μm以上2.2μm未満の卵殻粉末群と、空気透過法による平均粒子径が2.2μm以上6.0μm未満の卵殻粉末群とを質量比1:1〜5:1で含有しているものであることを特徴とする卵殻粉末含有熱可塑性樹脂組成物。」
「【0030】
例えば、ある平均粒子径を有する卵殻粉末群Aに、これよりも大きい平均粒子径を有する卵殻粉末群Bを混ぜると、卵殻粉末群Bが単独で熱可塑性樹脂中に粗く分散する複合状態のものにおいて、卵殻粉末群Bの卵殻粉末と樹脂との空間を、卵殻粉末群Aの卵殻粉末により埋めることができ、これによって、卵殻粉末の偏在が抑制され、その添加量を効果的に向上させることができる。また、卵殻粉末群Bの卵殻粉末が分散した隙間に卵殻粉末群Aの卵殻粉末を分散させることにより、樹脂組成物中における卵殻粉末の分布の緻密化と、粒子相互の三次元的な配置関係の複雑化がなされ、力学的な強度も増大する。」
コ 甲7の記載事項
「【請求項2】
前記ポリエチレン系樹脂が、
JIS K 6922−1(ISO1133)によるMFR(190℃、21.6kg)が5g/10分以上15g/10分以下である高密度ポリエチレンと、
JIS K 6922−1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が0.5g/10分以上1.5g/10分以下である直鎖状低密度ポリエチレンとを含み、
前記高密度ポリエチレンと前記直鎖状低密度ポリエチレンとの質量比が、92.5:7.5〜99.5:0.5である、
請求項1に記載の樹脂組成物。」

(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
(ア) 本件特許発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1発明の「内層」、「一対の外層」、「炭酸カルシウム粒子」、「ポリプロピレン樹脂」、及び「全体厚さ」は、それぞれ、本件特許発明1の「内層」、「第1の外層及び第2の外層」、「炭酸カルシウム粒子」、「熱可塑性樹脂」及び「全体厚さ」に相当する。
甲1発明の「内層と、内層の両面に積層される一対の外層とを備える」ことは、本件特許発明1の「3層」に相当する。
甲1発明の「積層体」は、「前記積層体の全体厚さは、420μm」であるので、シートといえるものであるから、本件特許発明1の「積層シート」に相当する。
甲1発明の「内層と、内層の両面に積層される一対の外層とを備える積層体」の態様は、本件特許発明1の「前記積層シートが、内層と、前記内層の表面に積層された第1の外層及び第2の外層とを備え」る態様に相当する。
甲1発明の「前記内層の形成用材料が、ポリプロピレン樹脂43質量部、炭酸カルシウム粒子57質量部であ」ることは、本件特許発明1の「前記内層が、炭酸カルシウム粒子、及び熱可塑性樹脂を含」むことに相当する。
甲1発明の「前記外層の形成用材料が、ポリプロピレン樹脂100質量部であ」ることは、本件特許発明1の「前記第1の外層及び前記第2の外層が、それぞれ熱可塑性樹脂を含」むことに相当する。
甲1発明の「前記内層の形成用材料が、ポリプロピレン樹脂43質量部、炭酸カルシウム粒子57質量部であ」ることは、内層が100質量部としたときに炭酸カルシウム粒子が57質量部であるから、本件特許発明1の「前記炭酸カルシウム粒子の含有量が、前記内層に対して、40.0質量以上80.0質量%以下であ」ることに相当する。
甲1発明の「前記積層体の全体厚さは、420μmであり、前記内層の厚さは、378μm(積層体の全体厚さに対して90%)であり、一対の外層の厚さは、それぞれ、21μm(積層体の全体厚さに対して5%)である、」ことは、本件特許発明1の「前記第1の外層及び前記第2の外層の厚さの比率が、前記積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上20.0%以下である」ことに相当する。
してみると、両者は、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
「3層の積層シートであって、
前記積層シートが、内層と、前記内層の表面に積層された第1の外層及び第2の外層とを備え、
前記内層が、炭酸カルシウム粒子、及び熱可塑性樹脂を含み、
前記第1の外層及び前記第2の外層が、それぞれ熱可塑性樹脂を含み、
前記炭酸カルシウム粒子の含有量が、前記内層に対して、40.0質量以上80.0質量%以下であり、
前記第1の外層及び前記第2の外層の厚さの比率が、前記積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上20.0%以下である、
積層シート。」
[相違点]
炭酸カルシウム粒子について、本件特許発明1は、「第1の炭酸カルシウム粒子群及び第2の炭酸カルシウム粒子群を少なくとも含」んでいて、その「第1の炭酸カルシウム粒子群における、JIS M−8511に準じた空気透過法に基づく平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下であり」、「前記第2の炭酸カルシウム粒子群における粒度分布D97が、20.1μm以上40.0μm以下であ」り、「内層における、前記第1の炭酸カルシウム粒子群と、前記第2の炭酸カルシウム粒子群との質量比が、99.95:0.05〜99.99:0.01であ」るのに対して、甲1発明は、そのような特定はなされておらず、「炭酸カルシウム粒子」は、「平均粒径3.6μmかつ最大粒径30μmの炭酸カルシウム粒子B、又は平均粒径4.0μmかつ最大粒径40μmの炭酸カルシウム粒子C」である点。
(イ) 上記相違点について、以下に検討する。
そもそも、甲1発明は、炭酸カルシウム粒子について、「前記炭酸カルシウム粒子は、平均粒径3.6μmかつ最大粒径30μmの炭酸カルシウム粒子B、又は平均粒径4.0μmかつ最大粒径40μmの炭酸カルシウム粒子Cであり」としていて、積層体の内層に含まれる炭酸カルシウム粒子は、特定の炭酸カルシウム粒子Bであるか、特定の炭酸カルシウムCであって、2つの炭酸カルシウム群を少なくとも含むものではない。
さらに、炭酸カルシウムの2つの群の1つの群に係るD97についてもなく、炭酸カルシウムの2つの群の質量比についても記載も示唆もない。
さらに、甲1で、
「4.実験の目的
当初明細書の実施例に係る積層体の製造及び評価において、炭酸カルシウム粒子の粒径を変更した以外は同一の方法により積層体を製造し、評価する。」とされていることから、甲1発明の炭酸カルシウム粒子の粒径の測定法は、当該当初明細書(甲1の特許出願の公開特許公報である甲2を参照。)に記載された「電子顕微鏡を用い、内層の断面から無作為に選択された5箇所(視野:100μm×100μm)において、炭酸カルシウム粒子の粒径(長径)を測定する。そして、測定された炭酸カルシウム粒子の粒径の最大値を、炭酸カルシウム粒子の最大粒径とする。」(【0029】)によるものである。
そうすると、「前記第1の炭酸カルシウム粒子群における、JIS M−8511に準じた空気透過法に基づく平均粒子径」とする本件特許発明1と甲1発明とは、粒子径の測定方法が異なるものであり、そして、測定方法が異なっていても、炭酸カルシウム粒子の平均粒子径が同じものになるといえないから、本件特許発明1の炭酸カルシウム粒子群の平均粒子径と、甲1発明の平均粒径とは、対比して検討すべき値ではない。
(ウ) よって、上記(ア)で述べたとおり、上記相違点は実質的な相違点であり、上記(イ)で述べたとおりであるから、上記相違点に係る本件特許発明1の特定事項を、甲1発明において採用することは、当業者であっても容易に想到し得たものではない。
(エ) 以上のとおり、本件特許発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明することができたものでもない。
イ 本件特許発明2〜9について
本件特許発明2〜9は、本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである。そして、本件特許発明1は、上記アの検討のとおり、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2、7〜9も、甲1発明ではなく、また、本件特許発明2〜9も甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
2 申立理由3(明確性要件)について
(1) 炭酸カルシウム粒子群について、本件特許発明1は、「前記炭酸カルシウム粒子が、第1の炭酸カルシウム粒子群及び第2の炭酸カルシウム粒子群を少なくとも含」み、その含む量について、「内層における、前記第1の炭酸カルシウム粒子群と、前記第2の炭酸カルシウム粒子群との質量比が、99.95:0.05〜99.99:0.01であ」ることが特定されている。そして、各炭酸カルシウム粒子群は、「前記第1の炭酸カルシウム粒子群における、JISM−8511に準じた空気透過法に基づく平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下であ」ることが特定され、「前記第2の炭酸カルシウム粒子群における粒度分布D97が、20.1μm以上40.0μm以下であ」ることが特定され、これらの記載事項は、文言上明確であるし、他に不明確とするところもない。
(2) したがって、本件特許発明1〜9に関して、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものである。
3 申立理由4(実施可能要件)について
(1) 実施可能要件の判断基準
本件特許発明1〜9は、上記第2のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、例えば、明細書等にその物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
(2) 実施可能要件についての判断
本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明が「本発明は、積層シート、及び食品用包装容器に関する」ものであって(【0001】)、「外観及び機械的特性の不均一性が抑制された、炭酸カルシウム粒子含有積層シートの提供」を課題とし(【0006】)、「本発明者らは、3層の積層シートの内層において、所定の平均粒子径又は粒度分布を有する2種の炭酸カルシウム粒子群を所定比率で配合することで、上記課題を解決出来る点を見出し」たことが記載されている(【0007】)。
そして、「【0038】
[第1の炭酸カルシウム粒子群及び第2の炭酸カルシウム粒子群]
内層に含まれる炭酸カルシウム粒子は、第1の炭酸カルシウム粒子群及び第2の炭酸カルシウム粒子群を少なくとも含む。
内層に含まれる炭酸カルシウム粒子は、第1の炭酸カルシウム粒子群及び第2の炭酸カルシウム粒子群を、質量比99.95:0.05〜99.99:0.01の割合で含む。
【0039】
第1の炭酸カルシウム粒子群における、JIS M−8511に準じた空気透過法に基づく平均粒子径は、0.7μm以上6.0μm以下である。
【0040】
第1の炭酸カルシウム粒子群における、JIS M−8511に準じた空気透過法に基づく平均粒子径の下限は0.7μm以上であるが、成形時の粘度の上昇を抑制し易いという観点から、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.2μm以上である。
【0041】
第1の炭酸カルシウム粒子群における、JIS M−8511に準じた空気透過法に基づく平均粒子径の上限は6.0μm以下であるが、第2の炭酸カルシウム粒子群を構成する粒子の直径との差が大きいほど本発明の効果が奏され易いという観点から、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは2.8μm以下である。
【0042】
第2の炭酸カルシウム粒子群における、粒度分布D97は、20.1μm以上40.0μm以下である。
【0043】
第2の炭酸カルシウム粒子群における、粒度分布D97の下限は20.1μm以上であるが、第1の炭酸カルシウム粒子群の平均粒子径との差が大きいほど本発明の効果が奏され易いという観点から、好ましくは20.3μm以上、より好ましくは20.5μm以上である。
【0044】
第2の炭酸カルシウム粒子群における、粒度分布D97の上限は40.0μm以下であるが、内層中の炭酸カルシウム粒子の偏在が抑制し易いという観点から、好ましくは35.0μm以下、より好ましくは32.0μm以下である。」と記載され、実施例として以下の事項が記載されている。
「【0108】
(1)材料の準備
各層の材料を以下のとおり準備した。
【0109】
(炭酸カルシウム粒子群)
炭酸カルシウム粒子群−1:重質炭酸カルシウム粒子群(平均粒径=0.3μm、粒度分布D97=2.5μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム粒子群−2:重質炭酸カルシウム粒子群(平均粒径=1.2μm、粒度分布D97=4.0μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム粒子群−3:重質炭酸カルシウム粒子群(平均粒径=5.0μm、粒度分布D97=9.5μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム粒子群−4:重質炭酸カルシウム粒子群(平均粒径=10.0μm、粒度分布D97=14.5μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム粒子群−5:重質炭酸カルシウム粒子群(平均粒径=17.0μm、粒度分布D97=21.0μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム粒子群−6:重質炭酸カルシウム粒子群(平均粒径=28.0μm、粒度分布D97=36.0μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム粒子群−7:重質炭酸カルシウム粒子群(平均粒径50.0μm、粒度分布D97=65.0μm、表面処理なし)
【0110】
炭酸カルシウム粒子群のうち、「炭酸カルシウム粒子群−2」、及び「炭酸カルシウム粒子群−3」が、「第1の炭酸カルシウム粒子群」に相当する。
炭酸カルシウム粒子群のうち、「炭酸カルシウム粒子群−5」、及び「炭酸カルシウム粒子群−6」が、「第2の炭酸カルシウム粒子群」に相当する。」
「【0114】
(熱可塑性樹脂)
ポリプロピレン系樹脂−1(PP−1):ポリプロピレンホモポリマー(ポリプロピレン単独重合体、融点160℃)
ポリプロピレン系樹脂−2(PP−2):ポリプロピレンブロックコポリマー(融点160℃)
ポリエチレン系樹脂(PE):HDPE及びLLDPEのブレンド(HDPE:LLDPE(質量比)=70:30)
なお、上記HDPEにおける、JIS K 6922−1(ISO1133)によるMFR(190℃、21.6kg)は、7.5g/10分である。
上記LLDPEにおける、JIS K 6922−1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)は、0.8g/10分である。
【0115】
(2)積層シートの作製
表に示す材料を用いて、多層Tダイ法により、3層の積層シートを作製した。
積層シートの全体厚さは、300.0μmに設定した。
内層の厚さは、270μm(積層シートの全体厚さに対して90%)に設定した。
内層の両面に外層(第1の外層及び第2の外層)を設け、それぞれの外層の厚さは、15μm(積層シートの全体厚さに対して5%)に設定した。」
「【0123】

【0124】


これらの記載を参考とすれば、本件特許発明1〜9に関して、そのものを作ることができるので、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、過度の試行錯誤を要することなく当業者が実施できる程度に記載されているものといえ、実施可能要件を満たしている。
よって、本件特許発明1〜9に関して、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号の要件を満たすものである。
(3) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「本件特許発明1の第1の炭酸カルシウム粒子群と第2の炭酸カルシウム粒子群とは、同一成分であり得る」、「第1の炭酸カルシウム粒子群及び第2の炭酸カルシウム粒子群が同一成分である場合にこのような効果が得られないことは自明である。そのため、本件特許発明1は、いわゆる当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。」(特許異議申立書第38頁2、3行、17〜20行)と主張する。
しかしながら、「本件特許発明1の第1の炭酸カルシウム粒子群と第2の炭酸カルシウム粒子群とは、同一成分であり得る」ことに関係なく、上記(2)のとおり、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1〜9に関して、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるので、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
4 申立理由5(サポート要件)について
(1) サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2) サポート要件についての判断
本件特許発明における発明の課題(以下「発明の課題」という。)は、「外観及び機械的特性の不均一性が抑制された、炭酸カルシウム粒子含有積層シートの提供」(【0006】)である。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「3層の積層シートの内層において、所定の平均粒子径又は粒度分布を有する2種の炭酸カルシウム粒子群を所定比率で配合することで、上記課題を解決出来る点を見出」したこと(【0007】)が記載され、2種の炭酸カルシウム粒子群を所定比率で配合することに関して、上記3(2)で示した事項が記載されている。
さらに、「【0109】
(炭酸カルシウム粒子群)
炭酸カルシウム粒子群−1:重質炭酸カルシウム粒子群(平均粒径=0.3μm、粒度分布D97=2.5μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム粒子群−2:重質炭酸カルシウム粒子群(平均粒径=1.2μm、粒度分布D97=4.0μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム粒子群−3:重質炭酸カルシウム粒子群(平均粒径=5.0μm、粒度分布D97=9.5μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム粒子群−4:重質炭酸カルシウム粒子群(平均粒径=10.0μm、粒度分布D97=14.5μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム粒子群−5:重質炭酸カルシウム粒子群(平均粒径=17.0μm、粒度分布D97=21.0μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム粒子群−6:重質炭酸カルシウム粒子群(平均粒径=28.0μm、粒度分布D97=36.0μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム粒子群−7:重質炭酸カルシウム粒子群(平均粒径50.0μm、粒度分布D97=65.0μm、表面処理なし)」のうち、第1の炭酸カルシウム粒子群である炭酸カルシウム粒子群−2又は炭酸カルシウム粒子群−3、及び第2の炭酸カルシウム粒子群である炭酸カルシウム粒子群−5又は炭酸カルシウム粒子群−6を用いた実施例1−1〜実施例1−6及び実施例2−1〜実施例2−6で、その評価において、「外観」で「A:表面状態全体が非常に良好である(凹凸、変形、破れ等が全く発生しなかった)。」となっており、「機械的特性」で「A:引張強度が13MPa以上だった。」となって、2種類の「第1の炭酸カルシウム粒子群」及び「第2の炭酸カルシウム粒子群」をそれぞれ所定量混合させることで、本件発明の課題を解決できると理解できる。
よって、本件特許発明1〜9に関して、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1〜9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1〜9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2023-06-28 
出願番号 P2022-084711
審決分類 P 1 651・ 537- Y (B32B)
P 1 651・ 121- Y (B32B)
P 1 651・ 113- Y (B32B)
P 1 651・ 536- Y (B32B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 森本 哲也
山崎 勝司
登録日 2022-07-28 
登録番号 7113579
権利者 株式会社TBM
発明の名称 積層シート、及び食品用包装容器  
代理人 新山 雄一  
代理人 正林 真之  
代理人 林 一好  

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