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審決分類 審判 全部申し立て 1項2号公然実施  G02B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
審判 全部申し立て 特174条1項  G02B
審判 全部申し立て 1項1号公知  G02B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02B
管理番号 1399427
総通号数 19 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-04-04 
確定日 2023-06-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第7149630号発明「樹脂リム一体型金属眼鏡フレーム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7149630号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
特許第7149630号の請求項1〜請求項5に係る特許(以下「本件特許」という。)についての特許出願は、令和3年1月14日の出願であって、令和4年9月29日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について、令和4年10月7日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である令和5年4月4日に特許異議申立人 原 麗から、請求項1〜請求項5に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1〜請求項5に係る発明は、令和4年6月20日に提出された手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1〜請求項5に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
なお、以下、これらの発明を「本件特許発明1」などといい、まとめて「本件特許発明」という場合がある。
「【請求項1】
左右一対のレンズと、前記レンズを保持する樹脂製のリム部とからなるフロントフレームと、
前記リム部の後方に密着して配置される左右一対のバックバー部と、前記バックバー部を連結するブリッジ部と、前記バックバー部の左右端に設けられた智部とからなる金属製のメタルフレームとを備え、
前記バックバー部と前記ブリッジ部と前記智部とは一体に形成されており、
前記フロントフレームと前記メタルフレームとは複数のリベット部材で止着され、前記リベット部材のフロントフレーム側の頭部の天面全体が、フロントフレームにおける前記頭部周囲の面の包絡面となっていることを特徴とする、眼鏡フレーム。
【請求項2】
前記リベット部材の止着位置において、リム部の後面側又はバックバー部の前面側には、第一の貫通孔と共に前記第一の貫通孔よりも大きな外形の凹部が第一の貫通孔の同軸上に形成され、
前記凹部に対応する位置のバックバー部の前面側又はリム部の後面側には第二の貫通孔と共に、凹部の外形に合わせた大きさの筒状部が第二の貫通孔と同軸上に突出して形成され、
筒状部が凹部に嵌挿された状態で止着されていることを特徴とする、請求項1に記載の眼鏡フレーム。
【請求項3】
前記止着位置は、少なくともバックバー部とブリッジ部との結合部及びバックバー部と智部との結合部であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の眼鏡フレーム。
【請求項4】
前記リム部におけるレンズ外周部に沿う部分の幅は、正面視において当該部分と重なる部分のバックバー部の幅よりも太いことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の眼鏡フレーム。
【請求項5】
前記メタルフレームはチタンを含む金属又はステンレス鋼からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の眼鏡フレーム。」

第3 特許異議申立ての概要
特許異議申立人が主張する特許異議申立ての理由の概要は、以下のとおりである。
1 申立ての理由
(1)理由1(特許法第29条1項
本件特許発明1及び3〜4は、検甲第1号証及び甲第1号証〜甲第2号証によれば、本件特許出願前に公然知られた発明又は公然実施された発明である。

(2)理由2(特許法第29条2項
本件特許発明1及び5は、検甲第1号証及び甲第1号証〜甲第13号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)理由3(特許法第17条の2第3項
令和4年6月20日に提出された手続補正書による補正により追加された「包絡面」は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の記載から自明な事項に該当しないから、当該補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。

(4)理由4(特許法第36条6項1号
本件特許発明1における「リベット部材のフロントフレーム側の頭部の点面全体が、フロントフレームにおける頭部周囲の面の包絡面である」との事項は発明の詳細な説明に記載されていないから、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。

2 証拠方法
特許異議申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。

検甲第1号証:株式会社アイヴァンが製造・販売する眼鏡(商品名:ACO
STA(アコスタ))、取得日:2023年2月20日
甲第1号証:FUDGE、日本、株式会社三栄、2020年5月12日発売
、vol.204、6月・7月合併号、p.21
甲第2号証:検甲第1号証を複数の方向や角度で撮影した21枚の写真、2
023年3月20日(作成日)、撮影者:原 麗(特許異議申
立人)
甲第3号証:ビックマンスペシャル眼鏡Begin、日本、株式会社世界文
化社、2017年12月30日、vol.23、p.7
甲第4号証:ビックマンスペシャル眼鏡Begin、日本、株式会社世界文
化社、2017年12月30日、vol.23、p.97
甲第5号証:株式会社ボストンクラブのホームページのプリントアウト、株
式会社ボストンクラブ、2023年3月20日(出力日)、
<URL:http://bostonclub−eyewe
ar.com/collection/ely.html>
甲第6号証:ビックマンスペシャル眼鏡Begin、日本、株式会社世界文
化社、2014年6月20日、vol.16、p.77
甲第7号証:eBay(通信販売サイト)の商品ページのプリントアウト、
eBay Inc.、2023年3月20日(出力日)、
<URL:https://www.ebay.com/it
m/325228912798>
甲第8号証:ビックマンスペシャル眼鏡Begin、日本、株式会社世界文
化社、2014年6月20日、vol.16、p.82
甲第9号証:Drawing realclothing(通信販売サイト
)の商品ページのプリントアウト、Drawing real
clothing、2023年3月20日(出力日)、
<URL:https://drawing.ocnk.ne
t/product/133>
甲第10号証:ビックマンスペシャル眼鏡Begin、日本、株式会社世界
文化社、2014年6月20日、vol.16、p.89
甲第11号証:ポンメガネのホームページのプリントアウト、株式会社TG
カンパニー、2023年3月20日(出力日)、
<URL:http://ponmegane.cocol
og−nifty.com/pon/2015/05/le
sca−vintage−8.html>
甲第12号証:特開2019−42480号公報
甲第13号証:特開2019−152826号公報
(当合議体注:以下、甲号証を、証拠に付された番号を用いて「甲1」などといい、検甲第1号証を「検甲1」という。)

第4 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明について
1 甲号証の記載
(1)甲1及び甲2の記載事項
甲1ないし甲2には、以下の記載及び写真がある。

ア 甲1
甲1の「021」頁には、以下の記載がある。
・「EYEVAN【アイヴァン】 item:GLASSES price
:36000yen」
・「<アイヴァン>の新作モデル「アコスタ」は、メタルにプラスチックの
リムを合わせたコンビネーションフレーム。テンプルやフレームの内側
で光るゴールドメタルが放つ気品を、プラスチックフレームが引き立て
ながら絶妙な塩梅に落とし込む。」
・「お問い合わせ先:アイヴァンPR」
・「メガネ ¥36000/EYEVAN(アイヴァンPR)」



イ 甲2
(ア)写真1



(イ)写真2



(ウ)写真4



(エ)写真6



(オ)写真7



(カ)写真8



(キ)写真9



(ク)写真16



(ケ)写真17



(コ)写真18



(サ)写真19



(2)甲1に記載された発明(公然実施発明)
ア 甲1に記載された眼鏡「アコスタ」及び眼鏡「アコスタ」が本件出願
前の2020年5月12日に公然実施されていたこと
上記(1)アによれば、甲1には、「左右一対のレンズ」及び「メタルにプラスチックのリムを合わせたコンビネーションフレーム」を有し、「テンプルやフレームの内側で光るゴールドメタルが放つ気品を、プラスチックフレームが引き立てながら絶妙な塩梅に落とし込」んだ、眼鏡「アコスタ」が記載されている。そして、上記「リム」が「左右一対のレンズをそれぞれ保持する」部材であること及び上記「コンビネーションフレーム」が眼鏡フレーム全体を意味していることは明らかである。さらに、「テンプルやフレームの内側で光るゴールドメタル」との記載において、甲1に記載された眼鏡「アコスタ」を参照すると「フレーム」は左右一対のレンズを保持するプラスチックフレーム、つまり上記「リム」を意味していることは明らかであるから、眼鏡「アコスタ」は、テンプル及び左右のリムの内側にメタルからなるフレームの構成を有すると認められる。
ここで、眼鏡「アコスタ」が、「公然実施をされた」発明といえるためには、その発明の内容が公然知られる状況または公然知られるおそれのある状況で実施されたものでなければならないところ、甲1(雑誌)が「2020年5月12日」に「発売」されていたこと及び甲1の「021」頁の眼鏡「アコスタ」に関して「price:36000yen」及び「お問い合わせ先:アイヴァンPR」と記載されることに照らせば、眼鏡「アコスタ」が、少なくとも本件出願前である2020年5月12日の時点で、その内容(眼鏡フレームの外観)を不特定多数の者が知り得る状態で発明として実施されていた(販売又は販売の申出がなされていた)ことは明らかである。
そこで、以下では、甲1に記載された眼鏡「アコスタ」の発明を「公然実施発明」という。

公然実施発明の眼鏡の構成が、検甲1及び甲2から理解される眼鏡と
同一の構成を有していたといえるかについて
まず、検甲1に係る眼鏡は、特許異議申立人が、株式会社アイヴァンが製造・販売する眼鏡(商品名:ACOSTA(アコスタ))を2023年2月20日に取得し、現物として提出したとするものであるため、検甲1に係る眼鏡自体の発明が、本件出願前に公然知られる状況または公然知られるおそれのある状況で実施されたものとはいえない。
この点について、特許異議申立人は、「甲第1号証より、検甲第1証が少なくとも2020年5月12日の時点で公知であったことが明らかである。」(異議申立書の「(ロ)甲第1号証」参照。)と主張するが、検甲1に係る眼鏡自体が公知である(又は公然実施されたものである)との主張が誤りであることは上記のとおりである。
そうすると、次に問題となる点は、公然実施発明に係る眼鏡(甲1に記載された眼鏡「アコスタ」)が、検甲1及び(「検甲第1号証を複数の方向や角度で撮影した21枚の写真」とされる)甲2から理解される眼鏡と同一(少なくとも本件特許発明と同一であるといえる範囲での同一)の構成を有していたという事実が認められるか否か、という点である。
この点について検討するに、上記事実が認定されるためには、少なくとも
[A]検甲1に係る眼鏡が、株式会社アイヴァンが製造・販売する眼鏡(商
品名:ACOSTA(アコスタ))であること、及び、
[B]検甲1に係る眼鏡と甲1に記載された眼鏡「アコスタ」とが同一の構
造を有していたこと
を推認するのに十分な証拠が必要といえる。
しかしながら、[A]について、検甲1に係る眼鏡の取得経緯や株式会社アイヴァンが製造・販売する眼鏡(商品名:ACOSTA(アコスタ))のカタログなどの証拠は特許異議申立人から提出されておらず、検甲1に係る眼鏡が、株式会社アイヴァンが製造・販売する眼鏡(商品名:ACOSTA(アコスタ))であると認めるに足りる証拠はない。
また、[B]について、仮に検甲1の眼鏡が、株式会社アイヴァンが製造・販売する眼鏡(商品名:ACOSTA(アコスタ))であるとしても、2020年5月12日から2023年2月20日(検甲1に係る眼鏡の取得時)までの約2年9ヶ月もの間において、株式会社アイヴァンが製造・販売する眼鏡(商品名:ACOSTA(アコスタ))の製品仕様の変更がなされる可能性を否定できず、また、特許異議申立人が取得した検甲1に係る眼鏡と甲1に記載された眼鏡「アコスタ」とが同一の構造を有すると認めるに足りる証拠もない。そして、その他の証拠方法をみても、上記[A]及び[B]を推認するのに十分な証拠はない。
ところで、特許異議申立人は、検甲1について「検証申出書」(様式第65の26(特許法施行規則第62条関係))を提出していないが、仮に提出されたとして検甲1について証拠調べを実施したとしても、検証の結果(証拠資料)からは、検甲1に係る眼鏡から感得される外観に係る構成が認定できるにとどまり、上記[A]及び[B]を推認するのに十分な証拠が得られないことに変わりはない。
以上によれば、特許異議申立人が提出したいずれの証拠方法によっても、公然実施発明の眼鏡の構成が、検甲1及び甲2から理解される眼鏡と同一の構成を有していたとはいえない。

ウ 甲1から認定することができる公然実施発明
上記ア及びイを総合すれば、甲1から認定することができる、公然実施発明は、結局、以下のものである。
「左右一対のレンズと、左右一対のレンズをそれぞれ保持するプラスチックのリムからなるプラスチックフレームと、テンプル及び左右のリムの内側にメタルからなるフレームを有する眼鏡フレーム。」

第5 当合議体の判断
1 理由1及び理由2について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
(ア)公然実施発明の「リム」は、「左右一対のレンズをそれぞれ保持するプラスチックのリム」であるから、樹脂製といえる。
したがって、公然実施発明は、本件特許発明1の「左右一対のレンズと、前記レンズを保持する樹脂製のリム部とからなるフロントフレーム」に相当する構成を有している。

(イ)公然実施発明の「左右のリムの内側」の「フレーム」は「メタル」からなるため、金属製であることは明らかである。また、公然実施発明の「左右のリムの内側」にある「メタルからなるフレーム」部分は、本件特許発明1の「左右一対のバックバー部」に相当する。
したがって、公然実施発明は、本件特許発明1における「リム部の後方に配置される左右一対のバックバー部からなる金属製のメタルフレーム」に相当する構成を有している。

以上によれば、本件特許発明1と公然実施発明とは、
「左右一対のレンズと、前記レンズを保持する樹脂製のリム部とからなるフロントフレームと、前記リム部の後方に配置される左右一対のバックバー部からなる金属製のメタルフレームとを備える、眼鏡フレーム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
「金属製のメタルフレーム」が、本件特許発明1は「左右一対のバックバー部」が「リム部の後方に密着して配置され」るのに対して、公然実施発明は密着して配置されているか明らかでない点。

(相違点2)
「金属製のメタルフレーム」が、本件特許発明1は、「前記バックバー部を連結するブリッジ部と、前記バックバー部の左右端に設けられた智部とからな」り、「バックバー部と前記ブリッジ部と前記智部とは一体に形成されて」いるのに対して、公然実施発明はそのような構成を有するか明らかでない点。

(相違点3)
本件特許発明1は、「フロントフレームと前記メタルフレームとは複数のリベット部材で止着され、前記リベット部材のフロントフレーム側の頭部の天面全体が、フロントフレームにおける前記頭部周囲の面の包絡面となっているリベット部材のフロントフレーム側の頭部の天面全体が、フロントフレームにおける前記頭部周囲の面の包絡面となっている」のに対して、公然実施発明はそのような構成を有するか明らかでない点。

イ 判断
(ア)理由1(新規性)について
上記アのとおり、本件特許発明1と公然実施発明とは、上記相違点1〜3を有する。
したがって、本件特許発明1は公然実施発明ではない。
また、同様の理由により、本件特許発明1は、検甲1及びその他のいずれの証拠方法を検討しても、公然知られた発明であるともいえない。

(イ)理由2(進歩性)について
上記相違点について検討する。
仮に、公然実施発明に、本件特許の出願日前に公知である甲3〜4、6、8、10、12〜13に記載された技術事項を採用したとしても、当業者が上記相違点1〜3に係る本件特許発明1の構成に至ることはない。
したがって、本件特許発明1は、公然実施発明及び甲3〜4、6、8、10、12〜13に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

ウ 小括
上記のとおり、本件特許発明1は、公然知られた発明又は公然実施された発明ではない。また、本件特許発明1は、甲1に基づく公然実施発明及び甲3〜4、6、8、10、12〜13の記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
したがって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、取り消すべきものではない。

(2)本件特許発明2〜5について
本件特許発明2〜5に係る発明は、いずれも、本件特許発明1を引用する発明である。
そうしてみると、これら発明は、本件特許発明1と同じ理由により、公然知られた発明又は公然実施された発明ではなく、また、甲1に基づく公然実施発明及び甲3〜4、6、8、10、12〜13の記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
したがって、請求項2〜5に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、取り消すべきものではない。

2 理由3及び理由4について
本件特許発明1は、「リベット部材のフロントフレーム側の頭部の天面全体が、フロントフレームにおける前記頭部周囲の面の包絡面となっている」との構成を具備するところ、特許異議申立人は「包絡面」は本件特許の出願当初の明細書等に記載されていない旨主張する。
そこで、上記主張について検討するに、上記「リベット部材のフロントフレーム側の頭部」に関して、出願当初明細書(【0074】−【0076】)には、「リベット部材とフロントフレームとが一体感を有する構成」、「リム部21よりも部分的に少し突出したリベット部材4の頭部41を研磨によってリム部21と略面一に加工する。これにより、これにより、・・・(中略)・・・正面視においてフロントフレーム2とリベット部材4・4…との一体感がより一層向上し、リベット部材4・4…が目立たないだけでなく、意匠によってはデザイン上のアクセントとして機能させることもできる」こと及び「そのため、研磨においては、まず、やすりによってなるべくリベット部材4の頭部41のみを手作業で削ってフロントフレーム2との面を合わせ、その後バフ研磨によってリベット部材4の頭部41及びフロントフレーム2を同時に研磨することで、一体感のある表面に仕上げる」ことが記載されている。
そうしてみると、本件特許発明1の「リベット部材のフロントフレーム側の頭部の天面全体が、フロントフレームにおける前記頭部周囲の面の包絡面となっている」構成は、上記リベット部材とフロントフレームとを略面一として一体感を有する構成であることは明らかである。
また、特許異議申立人は、「「包絡面」には、本件特許発明の眼鏡フレームのように周囲の面と連続した「平坦面」のほか、例えば波状の面のような、より複雑な曲面と連続的に繋がる面も含まれると考えられ、出願人が行った補正は、権利範囲を不当に拡張するものである」(異議申立書の「4−4」参照。)と主張する。しかしながら、本件特許発明の趣旨は「樹脂リムを金属製のフレームと強固に結合することができるだけでなく、接合部材を目立たせることなく、造形処理の外観を向上させる」(【0011】)ことであり、当該趣旨に照らせば、本件特許発明1の「リベット部材のフロントフレーム側の頭部の天面全体」が、例えば樹脂リムと金属製のフレームとを強固に結合できないような「包絡面」(例えば、上記「波状の面」等)や、フロントフレームの頭部周囲と段差を形成してしまうような外観上好ましくないような「包絡面」を含むとは解し難い。
したがって、上記主張を採用することはできない。

よって、令和4年6月20日に提出された手続補正書による補正により追加された「包絡面」は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。また、請求項1〜5の記載は、発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
したがって、申立理由3〜4によっては、請求項1〜5に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上述べたとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2023-06-13 
出願番号 P2021-003844
審決分類 P 1 651・ 111- Y (G02B)
P 1 651・ 121- Y (G02B)
P 1 651・ 112- Y (G02B)
P 1 651・ 537- Y (G02B)
P 1 651・ 55- Y (G02B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 大▲瀬▼ 裕久
関根 洋之
登録日 2022-09-29 
登録番号 7149630
権利者 株式会社G.A.Yellows
発明の名称 樹脂リム一体型金属眼鏡フレーム  
代理人 岩堀 圭吾  
代理人 戸川 委久子  

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