• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  G09F
審判 一部無効 1項2号公然実施  G09F
管理番号 1399774
総通号数 20 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-08-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-09-20 
確定日 2023-07-03 
事件の表示 上記当事者間の特許第6440319号「図柄表示媒体」の特許無効審判事件についてされた令和 3年 5月18日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(令和03年(行ケ)第10080号、令和 4年 5月11日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第6440319号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第6440319号に係る出願(特願2015−246271号)は、平成27年12月17日に出願され、その特許権の設定登録は平成30年11月30日にされ、その後、請求人 株式会社SO−KEN(以下、「請求人」という。)から、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明についての特許に対して、無効審判の請求がされたものであって、本件審判請求に係るおもな手続の経緯は次のとおりである。

令和元年 9月20日付け 無効審判請求書、証拠説明書(1)、甲第1号証の1ないし甲第12号証及び甲第16号証提出(請求人)
同年10月11日付け 請求人に対して審尋(審判長)
同年11月 1日付け 回答書、証拠説明書(2)、甲第17号証提出(請求人)
同年11月14日付け 請求書副本の送達通知(答弁指令)
令和2年 1月20日付け 審判事件答弁書、証拠説明書(1)、乙第1号証及び乙第2号証の1ないし乙第2号証の5提出(被請求人)
同年 3月 5日付け 審理事項通知(以下「審理事項通知(1)」という。)(審判長)
同年 4月17日付け 証人尋問申出書、尋問事項書(請求人)
同年 5月 8日付け 口頭審理陳述要領書(以下、「請求人陳述要領書(1)」という。)、証拠説明書(3)、甲第18号証ないし甲第28号証提出(請求人)
同年 5月 8日付け 口頭審理陳述要領書(以下、「被請求人陳述要領書(1)」という。)
同年 5月22日付け 尋問事項書についての手続補正書(以下「尋問事項補正書」という。)(請求人)
同年 8月17日付け 審理事項通知(第2回追加分)(以下、審理事項通知(2)という。)(審判長)
同年10月 1日付け 口頭審理陳述要領書(2)(以下、「請求人陳述要領書(2)」という。)、証拠説明書(4)、甲第29号証の1ないし甲第35号証及び甲第37号証ないし甲第39号証提出(請求人)
同年10月 2日付け 口頭審理陳述要領書(2)(以下、「被請求人陳述要領書(2)」という。)、証拠説明書(2)、乙第3号証並びに乙第4号証の1及び乙第4号証の2提出(被請求人)
同年10月16日 口頭審理 証拠調べ(証人藤長義仁氏 証人尋問)
同年10月16日付け 書面審理通知(口頭審理における口頭による告知)(審判長)
同年10月20日 調書
同年11月30日付け 上申書(以下、「請求人上申書(1)」という。)、証拠説明書(5)、甲第40号証及び甲第41号証提出(請求人)
同年12月 1日付け 上申書(以下、「被請求人上申書(1)」という。)(被請求人)
同年12月14日付け 上申書(以下、「請求人上申書(2)」という。)、証拠説明書(6)、甲第42号証提出(請求人)
同年12月15日付け 上申書(以下、「被請求人上申書(2)」という。)(被請求人)
令和3年 4月19日付け 審理終結通知(審判長)
同年 5月18日付け 審決
同年 6月25日付け 審決取消訴訟出訴(令和3年(行ケ)10080号)
令和4年 5月11日付け 判決言渡し(審決取消)
同年11月 2日付け 上申書(以下、「請求人上申書(3)」という。)、証拠説明書(7)、甲第63号証ないし甲第66号証の2提出(請求人)
令和5年 1月10日付け 審決の予告


第2 請求人の主張及び証拠方法について

1 請求の趣旨と請求人の主張する無効理由の概要
請求人は、請求の趣旨を「特許第6440319号発明の明細書の請求項1に係る発明についての特許を無効とする 審判費用は被請求人の負担とする との審決を求める。」とし、その請求の理由として、次の無効理由を主張している。
(1)無効理由1(特許法第29条第1項第2号違反について)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、次の公然実施事実1−イ、1−ロ又は公然実施事実2−ハにより、本願出願前に公然実施をされた発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許発明に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。
公然実施事実1−イ
株式会社広仁社(以下、「広仁社」という。)が「ブラックレフピカ ドッグタグキーホルダー」という商品(請求人が「黒色の再帰反射材面に図柄イ(請求人が令和元年11月1日付けで提出した回答書(以下、「請求人回答書」という。)の3頁の公然実施事実1−イの項目において示した図柄のこと)を印刷したもの」と主張する商品を平成21年10月21日から23日に「危機管理産業展2009」において出品して、譲渡のために展示したこと(以下、危機管理産業展2009で展示された商品であって、甲第1号証の2資料4及び5に写っているドッグタグ製品を「公然実施品1−イ」という。))。

公然実施事実1−ロ
広仁社が、「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」という商品(請求人が、「黒色の再帰反射材面に図柄ロ(請求人回答書の3頁の公然実施事実1−ロの項目において示した図柄のこと)を印刷したもの」と主張する商品(以下、「公然実施品1−ロ」という。))を平成21年10月21日から23日に「危機管理産業展2009」において出品して、譲渡のために展示したこと。

公然実施事実2−ハ
広仁社が、「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダ」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」(黒色の再帰反射材面に図柄ハ(請求人回答書の4頁の公然実施事実2−ハの項目において示した各図柄のこと)を印刷したもの)と主張する商品(以下、「公然実施品2−ハ」という。))を平成23年10月21日に、株式会社エフケイワークスに対して販売したこと。

(2)無効理由2(特許法第29条第2項違反について)
本件特許発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証に記載された発明並びに甲第5号証ないし甲第12号証及び甲第16号証に記載の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

(3)証拠方法
甲第1号証の1:照会書(23条照会)、令和1年8月6日、作成者:大阪弁護士会会長今川忠
甲第1号証の2:回答書(23条照会)、令和1年8月16日、作成者:株式会社広仁社代表取締役藤長義仁
甲第1号証の3:訂正報告書、令和1年9月2日、作成者:株式会社広仁社代表取締役藤長義仁
甲第2号証:報告書(広仁社商品の観察結果について)、令和1年8月28日、作成者:審判請求人
甲第3号証:「ファイアーグッズ総合カタログ2009〜2010」、財団法人東京消防協会
甲第4号証:“REFLECTAmark-Reflective Pressure-Sensitive Film Series”、FLEXcon社
甲第5号証の1:「KIWALITE 再帰反射シート」、紀和化学工業株式会社
甲第5号証の2:報告書(再帰反射シートのカタログについて)、令和1年8月28日、作成者:紀和化学工業株式会社沖秀之
甲第6号証:“Joining the Digital Revolution?”、ORACAL社カタログ、平成19年2月、ORCLAL社
甲第7号証:実願昭58−40802号(実開昭59−147185号)のマイクロフィルム
甲第8号証:特開2000−321414号公報
甲第9号証:特表2000−506623号公報
甲第10号証:「「ANREALAGE」2016S/S COLLECTION パリで3回目の挑戦「リスクを背負ってでも新しく実験的なことを仕掛ける」」:デザイナー森永邦彦さんインタビュー、装苑ONLINE、学校法人文化学園、平成27年10月28日更新、2019年8月18日検索、インターネット、URL:http://soen.tokyo/fashion/collection/anrealage2016ss.html
甲第11号証:「装苑」、学校法人文化学園、2015年10月28日発行、2015年12月号、30、31、51頁
甲第12号証:「NINJA INK」カタログ、株式会社小松プロセス
甲第16号証:報告書(ニンジャインクについて)、令和1年9月17日、作成者:審判請求人
甲第17号証:報告書、令和1年10月30日、作成者:株式会社広仁社 代表取締役藤長義仁
甲第18号証:松本和雄ほか、「印刷技術」、改訂版、全日本印刷工業組合連合会、2008年7月、49〜50頁、117頁
甲第19号証:高橋恭介監修、インクジェット技術と材料、普及版、シーエムシー出版、2007年5月24日、120〜123頁
甲第20号証:Janet Best、“Colour design Theories and applications”、WOODHEAD PUBLISHING、2012年、506、516〜517、527頁
甲第21号証:特開2012−242608号公報
甲第22号証の1:「光反射メディア 高輝度再帰反射シート レフピカ、製品仕様書」、作成者:株式会社広仁社
甲第22号証の2:レフピカ製品仕様書データプロパティ、平成26年5月29日、作成者:株式会社広仁社
甲第23号証:国際公開第97/30363号
甲第24号証:報告書(図柄イがフルカラーであることについて)、令和2年3月30日、作成者:審判請求人
甲第25号証:商標登録第4756031号公報
甲第26号証:甲第17号証資料20のレフピカドッグタグ−黒の拡大データ出力、平成20年4月23日、作成者:株式会社広仁社
甲第27号証:甲第17号証資料21のレフピカドッグタグ−白の拡大データ出力、平成20年4月23日、作成者:株式会社広仁社
甲第28号証:報告書(広仁社商品の観察結果について(2))、令和2年5月8日、作成者:審判請求人
甲第29号証の1:名城大学 発光システム研究会展示写真(通常光)、平成23年7月8日、作成者:株式会社広仁社
甲第29号証の2:名城大学 発行システム研究会展示写真(通常光)データプロパティ、平成23年7月8日、作成者:株式会社広仁社
甲第30号証の1:名城大学 発光システム研究会展示写真(フラッシュ光)、平成23年7月8日、作成者:株式会社広仁社
甲第30号証の2:名城大学 発行システム研究会展示写真(フラッシュ光)データプロパティ、平成23年7月8日、作成者:株式会社広仁社
甲第31号証:報告書、令和2年8月21日、作成者:審判請求人
甲第32号証:甲第1号証の2資料5写真(危機管理産業展2009 フラッシュ光写真)の元データ、平成21年10月21日、作成者:株式会社広仁社
甲第33号証:甲第17号証資料23(ブラックレフピカドッグタグ用データ)の保存先ウィンドウ、令和2年9月16日、作成者:株式会社広仁社
甲第34号証:レフピカ関連フォルダウィンドウ、令和2年8月20日、株式会社広仁社
甲第35号証:報告書(危機管理産業展2009におけるブラックレフピカ商品展示方法等)、令和2年9月28日、株式会社広仁社
甲第37号証:REFLECTAmark-Reflective Pressure-Sensitive Film Series(甲第4号証)フラッシュ光撮影写真
甲第38号証:KIWALITE 再帰反射シート(甲第5号証の1)フラッシュ光撮影写真
甲第39号証:“Joining the Digital Revolution?”(甲第6号証)フラッシュ光撮影写真
甲第40号証:音声録音反訳書
甲第41号証:報告書、令和2年11月27日、作成者:審判請求人
甲第42号証:報告書、令和2年12月11日、作成者:審判請求人
甲第63号証:“Hugh Potter、“finally did my own van….””、uksignboatds、2011年2月15日、令和3年7月30日検索、インターネット、URL:https://uksighboards.com/forums/discussion/finally-did-my-own-van/
甲第63号証の抄訳
甲第64号証の1:“New Product: The coolest reflective technology you've seen.”、ON SCENEwithTheFireStore、2011年11月2日、令和3年7月30日検索、インターネット、URL:http://blog.thefirestore.com/2011/11/new-product-coolest-reflective.html?fbclid=IwAR0r0a8Qp4HCyCskSG7UtXYJxJKp3yJiO-UJYr9Nj4hJriqOCgLMBrqT9og
甲第64号証の1の抄訳
甲第64号証の2:“Black Printable reflective?”、Sign101、2012年7月9日、令和3年7月30日検索、インターネット、URL:https://www.signs101.com/threads/black-printable-refrective.96498/#post-1020280
甲第64号証の2の抄訳
甲第64号証の3:“COLOR ON BLACK REFLETIVE DECALES”、令和3年7月30日検索、インターネット、URL:http://www.thefirestore.com/store/category.cfm/cid_102611_color_on_black_reflective/
甲第65号証の1:Powercall Sirens、“Powercall Sirens LLC”、facebook、2012年7月5日、令和3年7月29日検索、インターネット、URL:https://www.facebook.com/powercallsirens/photos/10151261964294741
甲第65号証の1の抄訳
甲第65号証の2:Powercall Sirens、“Powercall Sirens LLC”、facebook、2012年7月6日、令和3年7月30日検索、インターネット、URL:https://www.facebook.com/powercallsirens/photos/10151263701419741
甲第65号証の2の抄訳
甲第65号証の3:Powercall Sirens、“Powercall Sirens LLC”、facebook、2012年7月6日、令和3年7月30日検索、インターネット、URL:https://www.facebook.com/powercallsirens/photos/10151263741239741
甲第65号証の4:Powercall Sirens、“Powercall Sirens LLC”、facebook、2015年5月7日、令和3年7月30日検索、インターネット、URL:https://www.facebook.com/powercallsirens/photos/10153887491214741
甲第65号証の5:Powercall Sirens、“Powercall Sirens LLC”、facebook、2015年5月7日、令和3年7月30日検索、インターネット、URL:https://www.facebook.com/powercallsirens/photos/10153887491349741
甲第66号証の1:“MunicipalGraphics”、YouTube、2015年1月7日、令和3年7月30日検索、インターネット、URL:https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=xxwv4Kz-Ytg
甲第66号証の1の抄訳
甲第66号証の2:gabagoo、“reflective decals that somehow are not that visible on police cars”、Sign101、2013年1月22日、令和3年7月30日検索、インターネット、URL:https://www.signs101.com/threads/reflective-decals-that-somehow-are-not^that-visible-on-police-car.104161/
甲第66号証の2の抄訳

2 無効理由1についての請求人の主張
(1)各証拠の記載について
ア 「照会書」控(甲第1号証の1)
甲第1号証の1は、大阪弁護士会会長が、広仁社の代表取締役藤長義仁氏に対し送付した照会書(23条照会)の控えであり、同照会書には、照会事項として、以下の記載がなされている。
「2 照会事項
(1)御社は、本件特許発明の実施品を制作したことがありますか。
(2)仮に(1)の回答が「制作したことがある」の場合、その制作時期、当該商品の名称、仕様、製造方法を回答ください。ご回答に代え、商品カタログ、設計仕様書等を送付いただければ幸いです。
(3)仮に(1)の回答が「制作したことがある」の場合、その商品を展示会等に出品したことがありますか。
(4)仮に(3)の回答が「出品したことがある」の場合、その展示会等の名称、開催時期、開催場所を回答ください。ご回答に代え、展示会等のパンフレット等を送付いただければ幸いです。
(5)仮に(1)の回答が「制作したことがある」の場合、その商品を販売したことがありますか。
(6)仮に(5)の回答が「販売したことがある」の場合、その販売先、販売時期を回答ください。ご回答に代え、注文書、納品書等を送付いただければ幸いです。」

イ 「回答書」(甲第1号証の2)
甲第1号証の2は、甲第1号証の1の「照会書」に対し、広仁社の代表取締役藤長義仁氏が作成・提出した回答書であり、同回答書には、以下の記載がなされている。
「(1)制作したことがあります。
(2)弊社では再帰反射シートに透光性のインクでフルカラー印刷を施したメディアを「レフピカ」という商標で販売しております(登録番号第5778382号)。その中でも黒色の再帰反射材を用いたものは「ブラックレフピカ」と呼んでおります。この「ブラックレフピカ」を使用したドッグタグ(軍隊が兵士個人を識別するために使用する認識票のこと)のキーホルダーとボールチェンネックレスを制作したことがあります(資料1、2 後述の危機管理産業展2008に出品したもの)。 仕様、製造方法については、黒色の再帰反射材の上に、溶剤インクジェットプリンター(ローランドDGのSC-540、XC-540)を用いて、透光性インク(Eco-sol Max)でフルカラー印刷を行ったものを、本体のアルミニウム板に接着し、ゴム枠と付属品を取り付けるというものです。設計仕様書のようなものは存在しませんが、サンプル品をご覧になれば、作り方は誰でも簡単にお分かりいただけると思います。
(3)出品したことがあります。
(4)平成20年4月22日に東高金商株式会社様から材料を仕入れて開発を行い(資料3)、平成20年10月8日〜10日に東京ビッグサイトで開催された危機管理産業展2008に出品しました。出展の様子を撮影した写真が残っておりました(資料4、5)。資料4が通常光で撮影したもの、資料5がフラッシュを使用して撮影したものです。少しわかりにくいですが、資料4でオレンジ色の手袋の左側に並べているキーホルダーがブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダーです。資料4では真っ黒に写っている部分が、資料5ではぼんやりと羽のようなマークが浮かび上がっているのがお分かりいただけると思います。
(5)販売したことがあります。
(6)キーホルダー、ポールチェンネックレスのいずれも、株式会社エフケイワークス様(東京都大田区大森北1−25−8赤羽ビル4F)に販売しました。当時の納品書(資料6 NO002008の1行目にブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー、4行目にブラックレフピカ ドッグタグ ポールチェンネックレスと記載があります。)、請求書控え(資料7)、入金履歴(資料8)によれば、販売は平成23年11月30日(審判請求人代理人注:資料7の記載により、「平成23年10月21日」の誤記であると思料される。)に行ったということで間違いありません。
(7)危機管理産業展2008への出展したキーホルダーとボールチェンネックレス、並びに株式会社エフケイワークス様へ販売したキーホルダーとボールチェンネックレスの表示材であるブラックレフピカは、納品書(資料9)と請求書(資料10)の紀和化学工業株式会社様より購入した黒色の再帰反射材「キワライト フリートマーキング #17093 ブラック」を用いました。」

ウ 「訂正報告書」(甲第1号証の3)
甲第1号証の3は、甲第1号証の2の「回答書」について、広仁社の代表取締役藤長義仁氏が危機管理産業展の開催年月日を訂正したものであり、同訂正報告書には、以下の記載がなされている。
「大阪弁護士会様からの照会に対して2019年8月16日付け送らせていただいた回答書に誤りがございましたので、訂正いたします。 回答書では、弊社のブラックレフピカ商品を危機管理産業展に出品したのは『危機管理産業展2008』(平成20年10月8〜10日)のことであると回答いたしましたが、正しくは『危機管理産業展2009』(平成21年10月21日〜23日)ですので、訂正いたします。」

エ 「報告書(広仁社商品の観察結果について)」(甲第2号証)
甲第2号証は、審判請求人が広仁社商品「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」の側面部分をデジタル顕微鏡で観察した結果を記した報告書である。(甲第2号証)。

オ 「ファイアーグッズ総合カタログ 2009〜2010」(甲第3号証)
(ア)「ファイアーグッズ総合カタログ 2009〜2010」(甲第3号証)は、財団法人東京消防協会が2009年〜2010年に頒布したグッズカタログである。同カタログには、広仁社商品と片面が同一の図柄の「反射ストラップ(キーホールダー)」が掲載されている(同製品も、広仁社が製造販売していた製品である。)。

(イ)請求人が甲第3号証により直接立証しようとする事実は、株式会社広仁社が、「ファイアーグッズ総合カタログ2009〜2010」が作成された平成21年当時、図柄イ’のデザインを完成させていた、という事実である。
この事実は、図柄イと図柄イ’とがほぼ同一のデザインであることと相俟って、平成21年10月21日〜23日に開催された「危機管理産業展2009」に、公然実施事実1−イにおける公然実施品(図柄イ)が出品されていた事実を基礎付ける間接事実となるものである。なお、上記カタログに掲載された商品は、両面とも白色の再帰反射材を仕様したものであるので、公然実施事実1において出品された商品や、公然実施事実2において販売された商品の派生商品であるが、本件特許発明の実施品ではない。(請求人回答書11頁3)

(2)事実関係について
ア 広仁社は、平成20年4月ないし平成21年9月ころ、商品「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェーンネックレス」を開発した(甲第1号証の1、甲第1号証の2の本文ならびに資料1及び資料2、甲第1号証の3。図柄は複数の種類がある。以下、これらを総称して「広仁社商品」という。)。
広仁社商品は、広仁社が、平成16年10月15日に紀和化学から黒色の再帰反射材(「キワライトフリートマーキング♯17093ブラック」)を、平成20年4月22日に東高金商株式会社からドッグタグ用プレート等の材料を、それぞれ仕入れして(甲第1号証の1、甲第1号証の2資料3、資料9及び資料10、甲第5号証の1)、上記黒色の再帰反射材の上に、透光性インクで印刷を行ったものを、ドッグタグ用プレート(ドッグタグ本体のアルミニウム板)に接着し、これにゴム枠と付属品を取り付けたものである。

公然実施事実1について
(ア)広仁社は、広仁社商品を、平成21年10月21日〜23日に東京ビッグサイト(東京都江東区有明3−11−1)で開催された危機管理産業展2009に出品し、以て、譲渡のための展示をした(甲第1号証の1、甲第1号証の2資料4及び資料5、甲第1号証の3)。

(イ)公然実施事実1−イについて
a 株式会社広仁社が、本件特許発明の実施品である「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」(黒色の再帰反射材面に「図柄イ」を印刷したもの)を、平成21年10月21日〜23日に「危機管理産業展2009」において出品し、以て譲渡のための展示をした事実。

公然実施品1−イの訂正について
審判請求書では、公然実施事実1−イにおける公然実施品の図柄が、甲第2号証において受領した「商品の現物である「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」と同一である旨主張したが、甲第17号証(藤長義仁の報告書)の7項(2)により、甲第2号証において受領した「商品の現物」である「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」の図柄は、図柄イの背景色を緑色から白色に変更し、かつ、文字部分を「BRAVO TEAM」・「sinc e 1927」から、「TOKYO FIRE DEPARTMENT」・「since 1948」に変更したもの(以下この図柄を「図柄イ’」という。)であることが判明した。それ故、公然実施品1−イにおける公然実施品の図柄を訂正する。」(請求人回答書4頁2)
なお、公然実施事実1−イにかかる公然実施品の図柄について、証人藤長義仁に改めて確認したところ、甲第1号証の2資料5に映る「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」の図柄は、鷲の図柄及び文字部分が一致すること、広仁社が保管する印刷元データとして他に考えられるものがないことから、甲第17号証資料20で提出した図柄であると考えていたが、特許庁からの指摘を受けて、10年以上前のことを改めて思い返すと、危機管理産業展2009の当時、印刷作業を担当していた従業員が、実際の製作物を確認しながら色調整を行っていた可能性もあり、改めて社内を探索したところ、甲第1号証の2資料5に映る「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」と似た色の商品現物が社内から発見された旨述べている(甲第35号証)。
そのため、公然実施事実1−イにかかる公然実施品の図柄は、「フルカラーの図柄5、又は同図柄から色調整を行った図柄」とする。(請求人陳述要領書(2)3頁 第4 1 審理事項通知第4―1―(3)について)

c 被請求人の主張について(請求人陳述要領書(1)11頁 4)
被請求人は、答弁書の7頁及び8頁において、請求人が公然実施事実1−イについて、図柄がイにかかるものに変更したことが要旨変更である旨主張している。しかし、合議体の理解のとおり、請求人の公然実施事実1−イは、「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」という商品を平成21年10月21日から23日に「危機管理産業展2009」において出品して、譲渡のために展示したことであって、その事実を変更するものではないから、要旨変更にはあたらない

(ウ)公然実施事実1―ロについて
株式会社広仁社が、本件特許発明の実施品である「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」(黒色の再帰反射材面に「図柄ロ」を印刷したもの)を、平成21年10月21日〜23日に「危機管理産業展2009」において出品し、以て譲渡のための展示をした事実。

(エ)商品の展示について
a 株式会社広仁社は、展示会に「フルカラー再帰反射と蓄光の専門」という看板を掲げ、公然実施品を展示していた(甲第1号証の2資料4及び資料5)。それ故、広仁社が、再帰反射性能を使用した商品を紹介するために、参加者に、通常光下での商品の見え方と、フラッシュ光下での商品の見え方の違いを確認させていたことは明らかである。
また、再帰反射材を使用して、通常光下では図柄が視認できず、フラッシュ光下ではフルカラーに図柄が視認できるようになる作用効果を生む商品は、本件特許発明の構造以外には有り得ない。
まして、広仁社は「フルカラー再帰反射」という看板を掲げて展示を行っていたのであるから、少なくとも再帰反射材の取扱業者であれば、展示を見ることで、その構造を十分に理解することができる。(請求人陳述要領書(1)5頁第4 1(2))

b 一般に危機管理産業展には再帰反射材のメーカー・卸売業者、再帰反射材製品の卸売業者等も来場する。そして、請求人が公然実施事実1として主張する危機管理産業展2009においても、再帰反射材のメーカー・卸売業者、再帰反射材製品の卸売業者が来場し、広仁社の展示ブースを訪れていた。以上は、証人藤長義仁による報告書(甲第35号証)及び同人の証言により立証する。
広仁社は、来場者に対して、通常光下では視認できない図柄がフラッシュ光下ではフルカラーに図柄が視認できるようになるという効果を、双眼鏡様のキットを用いながら確認させ、特に興味を持って質問した来場者に対しては、その構造についても説明し、公然実施品を展示していた。この展示方法についても、証人藤長義仁による報告書(甲第35号証)及び同人の証言により立証する。(請求人陳述要領書(2)第4 1 審理事項通知書第4−1−(1)について)

公然実施事実2について
(ア)広仁社は、平成23年10月21日、広仁社商品を株式会社エフケイワークス(当時の本店所在地:東京都大田区大森北1−25−8赤羽ビル4F)に販売し(甲第1号証の2資料6及び資料7)、同年12月28日に同販売代金を受領した(甲第1号証の2資料7及び資料8)。

(イ)公然実施事実2−ハ
a 株式会社広仁社が、本件特許発明の実施品である「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」(黒色の再帰反射材面に「図柄ハ」(甲第17号証資料23のいずれかの図柄)のいずれかを印刷したもの)を平成23年10月21日に、株式会社エフケイワークスに対し販売した事実。(請求人回答書)

b 甲第17号証資料25が、公然実施品2−ハの図柄が図柄ハであることを直接的に示す証拠である。甲第17号証資料25に映るキーホルダーは、同資料23のデータにより黒色再帰反射材上に透光性の印刷層を形成したもの(公然実施事実2−ハにかかる公然実施品と同一の商品)である。同資料25は通常光下での撮影写真であるため、透光性印刷部分(背景部分)が全て黒く視認されているが、フラッシュ撮影をすると当該部分がフルカラーに視認される(甲第17号証資料23)。
この点、令和元年11月1日付け請求人回答書7頁下から6行目「資料25の写真では、本件特許発明の実施品は映っておらず、他の色の再帰反射材を使用した商品のみが映っている」という説明は、あらためて広仁社に確認したところ、誤りであったことが判明したので、撤回する。(請求人陳述要領書(1)7頁)

(ウ)甲第1号証の2資料6について
・甲第1号証の2資料6の2011年11月30日(水)No002006には、「件名 あ〜るえす様 レフピカTSG210−UFT 11月29日・30日納品分」とあるが、その左上には「株式会社エフケイワークス様」と記載がある。
これは、商社である株式会社エフケイワークスが納品書の宛先となっているが、納品時において、既に同社からの販売先があーるえす株式会社に決まっており、あーるえす株式会社向けの商品として納品を行ったという理由による。
・同資料6のNo002006とNo002007、No002008を比較すると、No002006には、会社名及び担当者が記載されているが、No002007及びNo002008他には記載されていない。
これは、No002006の取引では、商品を広仁社からあーるえす株式会社に直接配送したため、株式会社エフケイワークスに送料を請求するための摘要として送付先(あーるえす鈴木様 〒329−0611 栃木県河内郡上三川町上三川3297)を記載したが、その他では株式会社エフケイワークスに対して商品を手渡したため、送料の摘要記載が必要なかったという理由による。
・同資料6の伝票番号No002006とNo002007、No002008は、日付の新しいものが少ない番号となっている。
これは、当時広仁社の事務処理が滞っており、資料6の伝票が全てまとめて起票されたことが原因である。広仁社は、納品日付(伝票右上に付記された日付)の新しいものから順に起票作業を行い、これにNo002006からNo002009まで起票順に伝票番号が付されて資料6が作成された。
(請求人陳述要領書(1)7頁審理事項通知書4−2−(1)について)

(エ)公然実施事実2−ハの図柄について
公然実施事実2−ハに係る公然実施品の「フルカラー図柄」とは、どくろの図柄及び文字部分を除いた背景からなる「図柄」のことであり、どくろの図柄及び文字部分そのものではない。どくろの図柄及び文字部分は非透光性の白色インクで印刷されるので(甲第17資料23)、当該部分を除いた背景部分に透光性印刷層が設けられ、「フルカラー図柄」となる。
この「フルカラー図柄」は、通常光下では黒く視認されているものがフラッシュ光下ではフルカラーに視認される、本件特許発明と同じ構造である。(請求人陳述要領書(2)第4 2 3頁 審理事項通知書第4−2−(2)について)

(3)広仁社商品の構成
ア 広仁社商品には、キーホルダーとボールチェーンネックレスの2種類の商品があるが、ドッグタグ本体の構成は同一である。
上記(1)イの写真が示すとおり、広仁社商品では、明度の低い図柄の背後に黒色が配されていて、通常光下では、全体的に黒っぽく見えるため、図柄を視認することが困難である。しかし、光照射時には、通常光下で真黒に見えていた箇所が白色に表示され、図柄を視認することが可能となる。
この表示の変化からすれば、広仁社商品が、黒色再帰反射材の上に、透光性のインクで図柄を印刷したものであることは、一見して明らかである。広仁社も、広仁社商品の構成について、「黒色の再帰反射材の上に、溶剤インクジェットプリンター(ローランドDGのSC−540、XC−540)を用いて、透光性インク(Eco−sol Max)でフルカラー印刷を行ったもの」と説明しているところである(甲第1号証の2の本文(2))。

イ なお、念のため、審判請求人において広仁社商品「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」の側面部分をデジタル顕微鏡で観察したところ、下掲写真のとおり、ガラスビーズを含む黒色の再帰反射材の表面に赤色の溶剤インク層が形成されていることが確認できた(甲第2号証)。

ウ したがって、広仁社商品は、入射光をそのまま光源方向へ再帰反射する黒色の再帰反射材と、前記再帰反射材の表面に印刷により形成された図柄からなる透光性の印刷層と、を備えることを特徴とする図柄表示媒体なる構成を備えたものである。

エ 「ブラックレフピカ ドッグタグ」商品の具体的な構造について(請求人陳述要領書(1)8頁 3 審理事項通知書第4−3−(2)について)
(ア)請求人の主張する、公然実施品1−イ、1−ロ及び2−ハの商品の構造は、いずれも同じ「アルミニウム製のドッグタグプレートの片面に、黒色の再帰反射材に透光性インクでフルカラー印刷を行ったものを貼り付け、他方の片面に、白色の再帰反射材に透光性インクでフルカラー印刷を行ったものを貼り付けた商品」である。

(イ)甲第2号証は、本件特許発明との関係で問題となる片面(黒色の再帰反射材に透光性インクでフルカラー印刷を行った面)を分析した結果を示したものであり、分析結果と甲第17号証記載の商品構造の説明と異ならない。この点、分析結果と甲第17号証記載の商品構造とが異ならないことを明らかにするため、白色再帰反射材を使用した印刷面を含む分析画像を改めて提出する(甲第28号証)。

(ウ)甲第2号証において分析された商品の背景色となる赤色インクが透光性であると見て取れる理由は、再帰反射材を使用して、通常光下では図柄が視認できず、フラッシュ光下ではフルカラーに図柄が視認できる作用効果を生むのは、本件特許発明の構造以外には有り得ないからであり、顕微鏡写真によって初めて判断されるものではない。仮に赤色インクが非透光性であれば、黒色再帰反射材による彩度の低下が生じず、通常光下でも赤色がはっきりと視認されるはずであるが、甲第2号証において分析された商品はそのようになっていない。
また、甲第2号証において分析された商品の背景色となる赤色インクが溶剤カラーインクであると判断される理由は、上記のような透光性の印刷層を形成するには、通常溶剤インクジェット印刷が用いられるということによる(甲第18号証ないし甲第20号証)。

(エ)甲第2号証で分析された商品のヒョウ柄及び文字部分は何も印刷が施されていない、いわゆる無地である。そのため、通常光下では黒色再帰反射材そのものの黒色が視認されているが、フラッシュ光下(再帰反射時)には再帰反射光により白色に視認されている。

(4)本件特許発明と広仁社商品との対比
以上のとおり、広仁社商品は、本件特許発明と同一の構成「入射光をそのまま光源方向へ再帰反射する黒色の再帰反射材と、前記再帰反射材の表面に印刷により形成された図柄からなる透光性の印刷層と、を備えることを特徴とする図柄表示媒体」を備えたものである。
したがって、広仁社商品は本件特許発明の公然実施品である。

(5)本件特許出願前の公然実施であること
ア 広仁社による上記の公然実施が本件特許出願日である平成27年12月17日より前であることは、下記のとおり、商品の開発、展示会での出品、販売の各段階についての関係証拠により明らかである。
[1]商品の開発について
・平成16年10月15日、広仁社は、紀和化学から黒色の再帰反射材「キワライト フリートマーキング #17093 ブラック」の納品を受けた(甲第1号証の2資料9(納品書)及び資料10(請求書)、甲第5号証の1)
・平成20年4月22日、広仁社は、東高金商株式会社から「ドッグタグプレート」(「ドッグタグ」を製作するための基材となるプレート)の納品を受けた(甲第1号証の2資料3(納品書))
・甲第1号証の2(回答書)に記載された、広仁社の「平成20年4月22日に東高金商株式会社様から材料を仕入れて(広仁社商品の)開発を行」ったという説明((4)項)、及び「・・・ブラックレフピカは、納品書(資料9)と請求書(資料10)の紀和化学工業株式会社様より購入した黒色の再帰反射材「キワライト フリートマーキング #17093 ブラック」を用いました」の説明((7)項)は、上記の各証拠と符合する
[2]商品の出品について
・広仁社は、危機管理産業展2009(平成21年10月21日〜23日開催)において、通常光下では視認できない図柄が光照射時には視認できる商品を出品した(甲第1号証の2資料4及び資料5、甲第1号証の3)
・甲第1号証の2(回答書)、甲第1号証の3(訂正報告書)に記載された、広仁社が広仁社商品を平成21年10月21日〜23日に東京ビッグサイトで開催された危機管理産業展2009に出品した旨の説明及び広仁社商品の構成についての説明は、上記の各証拠と符合する
[3]商品の販売について
・広仁社は、平成23年10月21日、株式会社エフケイワークスに対し、広仁社商品を納品した(甲第1号証の2資料6(納品書)の3枚目の「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」の欄、資料7の伝票番号002008欄の記載)
・広仁社は、平成23年11月30日、株式会社エフケイワークスに対し、納品した広仁社商品の代金請求を行った(甲第1号証の2資料7(請求書):甲第1号証の2資料6(納品書)と、伝票番号(No002008))、納品日「平成23年10月21日」及び金額(合計4100円(消費税別))が一致する。)
・広仁社は、平成23年12月28日、株式会社エフケイワークスから、広仁社商品の代金を受領した(甲第1号証の2資料8(通帳写し):株式会社エフケイワークスからの振込金額が甲第1号証の2資料7(請求書)に記載の請求額(21万6804円)と一致する。)
・甲第1号証の2(回答書)に記載された、広仁社の「キーホルダー、ボールチェンネックレス(広仁社商品)のいずれも、株式会社エフケイワークス様に販売しました」((6)項)という説明は、上記の各証拠と符合する
・なお、甲第1号証の2(回答書)の(6)項では、株式会社エフケイワークスに対する販売がされた日が「平成23年11月30日」である旨記載されているが、同回答書資料6の伝票番号(No002008)上に記載の日付及び資料7に記載の納品日が「平成23年10月21日」と記載されていることから、これは、明白な誤記である。

イ 広仁社がブラックレフピカ ドッグタグを開発した経緯について(請求人陳述要領書(1)8頁3 <審理事項通知書第4−3−(1)について>)
(ア)広仁社が再帰反射材に直接インクジェット印刷を施す技術を研究し始めたのが平成12年のことである。平成15年、広仁社は、白色の再帰反射材上に溶剤インクジェット印刷を施す商品を、『レフピカ』の登録商標を用いて取り扱うようになった(甲第25号証:商標登録第4756031号。広仁社が更新手続を失念したため平成26年3月12日に一旦存続期間が満了したが、平成27年2月16日、改めて出願を行って商標権設定登録を受けたものが商標登録第5778382号である。)

(イ)平成16年10月頃、広仁社は、紀和化学工業株式会社から、同社が取り扱う再帰反射シートのカタログ(甲第5号証の1)を受領し、『レフピカ』商品に使用していた白色再帰反射材と同じフリートマーキンググレード17000シリーズに、黒色が存在することを知った。このとき、広仁社は、黒色再帰反射材と溶剤インクジェットプリンタによる透光性印刷を組み合わせれば、印刷した図柄が通常光下では視認できず、フラッシュ照射時には透光性の印刷層の図柄が視認できるという効果を生む媒体が完成することを容易に理解できた。

(ウ)広仁社は、同月15日、紀和化学工業株式会社から黒色再帰反射材を購入して新商品を開発することとし(甲第1号証の2資料9、10)、黒色再帰反射材に溶剤インクジェット印刷を施した商品を、『レフピカ』のシリーズ商品として、『ブラックレフピカ』と名付け、通常光下で黒く視認されるが、夜間は車のヘッドライトを受けてフルカラーが浮かび上がる切り文字ステッカーなどから取扱いを始めた。「ブラックレフピカ ドッグタグ」商品は、危機管理産業展向けに、災害時に役立つドッグタグと『ブラックレフピカ』を組み合わせて開発した商品である。

(6)被請求人上申書(1)についての反論(請求人上申書(1))
公然実施品の要旨変更とする被請求人の主張について
(ア)請求人は、公然実施1の公然実施品の図柄データについて、審判請求時には「図柄イ’」としていたが、これを「図柄イ」に訂正し、そして、図柄イの背景部分につき色調整を行った可能性も考えられることから、「図柄イあるいは図柄イの背景部分に色調整を加えたもの」に訂正した。
令和2年3月5日付け審理事項通知書8頁19行目以下で合議体が示したとおり、請求人が主張する公然実施事実1−イは、商品「ブラックレフピカ ドッグタグ」を平成21年10月21日〜23日に「危機管理産業展2009」において出品して、譲渡のために展示したことであり、上記の訂正は、その事実を変更するものではない。
また、当該展示における対象物は、甲第1号証の2資料4及び資料5も含めて特定をしており、訂正したのは、対象物そのものではなく、その図柄データである。
したがって、上記訂正は、審判請求書の要旨を変更するものではない。

(イ)この点、被請求人は、上記の訂正が要旨変更ではないとすれば、公然実施品を「図柄イの製品」「図柄イ’の製品」「図柄イから色調整を行った図柄の製品」のすべてを包含するような上位概念としての製品群として特定した、ということに等しい旨主張する(被請求人上申書(1)5頁本文1行目以下)。
しかし、請求人は、上記のとおり、甲第1号証の2資料4及び資料5に撮影された商品「ブラックレフピカ ドッグタグ」を以て、公然実施品を特定しているのである。したがって、これは、上位概念としての製品群で特定するものではなく、被請求人の上記主張に理由はない。

(ウ)また、被請求人は、具体的な製品が変更されている、「図柄イの製品」と「図柄イ’の製品」と「図柄イから色調整を行った図柄の製品」とでは、製造時期、展示時期、背景色、最終作成者、画像イメージデータの完成時期が異なるとして、「いかなる製品が」展示されたのかという具体的な社会的事実が異なる旨主張する(被請求人上申書(1)5頁本文5行目以下)。
しかし、上記(ア)のとおり、上記の訂正は、公然実施事実にかかる展示品そのものを変更するものでないから、公然実施事実にかかる具体的な製品を変更するものではなく、社会的事実を変更するものでもない。
したがって、被請求人の上記主張に理由はない。

(7)まとめ
以上より、本件特許発明は、本件特許出願前に、広仁社が広仁社商品を譲渡のための展示をし、販売したことにより、公然実施されたものであって、新規性が欠如したものでしかない。

3 無効理由2についての請求人の主張
(1)甲4発明について
ア 米国FLEXcon社が平成19年11月〜平成20年5月に頒布した「REFLECTAmark-Reflective Pressure-Sensitive Film Series」のカタログには、「再帰反射フィルム」、「色が選べます:黄色、緑、青、赤、オレンジ、黒」、「従来の印刷手法に加え、溶剤インクジェット、UVインクジェット印刷に対応しています」との記載がなされていて、<溶剤インクジェット印刷に対応した黒色の再帰反射フィルム>が開示されていた(甲第4号証)。
「溶剤インクジェット印刷」とは、CMYK(シアン(青)、マゼンタ(赤)、イエロー(黄)、ブラック(黒))の透光性のインクを微滴化して塗り重ねることによりフルカラーを表現する印刷手法のことをいう(本件特許明細書段落【0019】でも、溶剤インクジェットプリンタが透光性の印刷層を形成することを前提とした記載がなされている。)。
したがって、この「REFLECTAmark-Reflective Pressure-Sensitive Film Series」のカタログ(甲第4号証)には、<溶剤インクジェット印刷を施すことにより透光性の印刷層を形成することができる黒色の再帰反射フィルム>という発明が開示されている(以下「甲4発明」という。)。

(2)甲4発明と本件特許発明との対比
本件特許発明と甲4発明とを対比すると、両者は、
<一致点>入射光をそのまま光源方向へ再帰反射する黒色の再帰反射材を備えていて、同再帰反射材は、その表面に、印刷により透光性の印刷層を形成することができる点
において一致し、わずかに、
<相違点>本件特許発明が、<図柄の印刷を実際に施した表示媒体>であるのに対し、甲4発明は、透光性の印刷層を形成することができる旨示すにとどまり、図柄の印刷を実際に施した表示媒体ではない点
において相違するにすぎない。

(3)容易想到性
上記の相違点は、本件特許出願時の技術常識に照らし、当業者が容易に想到し得たものでしかない。
ア 技術常識
(ア)再帰反射材に「図柄」を印刷することにより課題を解決する技術の存在
a 本件特許発明の解決課題は「所定の照明下において図柄等を視認できる図柄表示媒体であって、簡素な装置により使用可能な図柄表示媒体を提供すること」(本件特許明細書の段落【0006】)というものであり、これは、本件特許明細書段落【0002】、【0003】に記載のとおり、本件特許出願前に当業者において周知の課題となっていたものでしかない(甲第7号証(本件特許明細書に記載の先行技術文献)、甲第8号証、甲第9号証)。

b そして、再帰反射材の特性である、通常光下と再帰反射時の光量の差を利用することによって上記課題を解決する技術は、一例として、特開2000−321414号公報(平成11年4月28日にスリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーが特許出願した発明の公開公報、平成12年11月24日に公開、甲第8号証)に記載されているように、本件特許出願前には周知な技術となっていた。

c また、特表2000−506623号公報(平成9年1月13日にミネソタ マイニング アンド マニュファクチャリング カンパニーが出願した発明の公表公報、平成12年5月30日に公表、甲第9号証)には、通常光下(拡散ライティング状態)では最上面に印刷されたホログラフィーが視認できるものが(一次の特徴)、再帰反射時(再帰反射ライティング状態)には、再帰反射光量が大きいために、再帰反射材自体、又は再帰反射材とホログラフィーとの間に含まれる図柄(証印パターン)が強く視認されるようになり、相対的にホログラフィーが視認できなくなる、という技術が開示されている(二次の特徴)。上記技術を、再帰反射材とホログラフィーとの間に含まれる図柄(証印パターン)について見れば、これは、上記の「普段は図柄等が視認できないが、所定の条件下で図柄が視認できる」という課題を、再帰反射材の特性を利用することにより解決したものである。

d さらに、甲第9号証には、着色された再帰反射層、それも好ましくは黒色の再帰反射層であれば、着色インクで印刷(プリント)された図柄(証印パターン又はロゴ)を隠蔽し、通常光下で、ホログラムのみが視認可能であることが開示されている。したがって、甲第9号証は、本件特許発明と同一の構成の上面にホログラフィー層を設け、以て、通常光下(拡散ライティング状態)ではホログラフィーが視認され(一次の特徴)、再帰反射時(再帰反射ライティング状態)には証印パターンが視認される、という発明を開示したものであり、いわば、本件特許発明を当然の前提技術として、これを利用した発明といえるものである。(請求人陳述要領書(1)37頁 第5 審理事項通知第5−2−(1)について))

(イ)黒色基材に再帰反射塗料を「実際に」印刷した「物」の存在
a ファッションデザイナー森永邦彦は、平成27年9月29日に開催されたパリコレクションにおいて、「アンリアレイジ」2016S/Sコレクションを発表した。
同コレクションでは、再帰反射を利用した多数の衣服がシリーズとして発表され、その中には、黒色の布地の表面を、再帰反射インク(再帰反射性を有するガラスビーズと透光性インクとを混合したもの、株式会社小松プロセス製「ニンジャインク」)で図柄を印刷し、通常光下では視認できない図柄が再帰反射時には視認できるようになる、という衣服も含まれていた(甲第10号証ないし甲第12号証、甲第16号証、以下「本件衣服」という。)。

b 本件衣服に使用された「再帰反射インク」(商品名「ニンジャインク」(甲第12号証、同号証の2枚目右上欄には同インクが「アンリアレイジ」2016S/Sコレクションに使用された旨記載されている。)は、「再帰反射性を有するガラスビーズ」と「透光性インク」から構成されるものであるから(甲第16号証)、本件衣服は、「黒色の基材」の上に「再帰反射性を有するガラスビーズ」と「透光性インク」を配したものである。
これに対し、本件特許発明の黒色の再帰反射材は、「黒色層」と「再帰反射性を有するガラスビーズ」から構成されるものであるから、本件特許発明は、「黒色層」と「再帰反射性を有するガラスビーズ」から構成される黒色の再帰反射材に対し、その表面に「透光性インク」による印刷を施したものである。
それ故、本件特許発明及び本件衣服のいずれも、「黒色層」、「再帰反射性を有するガラスビーズ」及び「透光性インク」から構成されている点において同一である。
そして、本件衣服は、上記構成を備えることによって、本件特許発明と同一の課題「所定の照明下において図柄等を視認できる図柄表示媒体であって、簡素な装置により使用可能な図柄表示媒体を提供すること」(本件特許明細書の段落【0006】)を解決し、同一の効果「本発明に係る図柄表示媒体によれば、通常の照明下では図柄を視認できないが、相対的に強い光を照らすだけで、光源方向から図柄を視認することができる」(本件特許明細書の段落【0008】)を奏したものである。
なお、本件衣服に用いられた再帰反射インクは、「再帰反射性を有するガラスビーズ」と「透光性インク」とを混合させたものであり、「透光性インク」は「再帰反射性を有するガラスビーズ」の前面にも裏面にも存在することから(甲第16号証)、本件特許発明と比べて、層の順序等の構成は異なるが、これは、上記の課題解決や効果に相違を生じさせるようなものではない。

c したがって、本件特許出願前には、黒色基材に再帰反射塗料を「実際に」印刷することによって、本件特許発明と同じく「黒色層」、「再帰反射性を有するガラスビーズ」及び「透光性インク」から構成され、本件特許発明と同一の課題解決をし、同一の効果を奏する技術が公知ないし周知となっていたのである。

イ 容易想到性
(ア)以上のとおり、甲4発明は、<溶剤インクジェット印刷を施すことにより透光性の印刷層を形成することができる黒色の再帰反射フィルム>であり、これは、本件特許出願前に周知慣用技術となっていたものでしかない。そして、本件特許発明と甲4発明とは、わずかに、「本件特許発明が、<図柄の印刷を実際に施した表示媒体>であるのに対し、甲4発明は、透光性の印刷層を形成することができる旨示すにとどまり、図柄の印刷を実際に施した表示媒体ではない点」において相違するにすぎない。

(イ)上記相違点について、甲4発明は、<溶剤インクジェット印刷に対応した黒色の再帰反射フィルム>というものであるから、甲4発明には、それ自体に、実際に印刷を行って本件特許発明の図柄表示媒体を生み出すことについての直接的な動機付けがある。

(ウ)また、本件特許発明の課題「所定の照明下において図柄等を視認できる図柄表示媒体であって、簡素な装置により使用可能な図柄表示媒体を提供すること」(本件特許明細書の段落【0006】)は、本件特許出願前に周知な課題となっていたものでしかない。そして、再帰反射材に図柄を印刷することにより上記課題を解決する技術は、本件特許出願前に周知となっていた。その上、本件特許出願前には、<黒色の再帰反射材に透光性印刷を施す技術>を利用して、通常光下と再帰反射時で視認される図柄を変化させる発明も公知となっていた(甲第9号証)。甲第9号証に記載の上記発明は、本件特許発明を、当然の前提技術として、その構成の一部に備えたものである。さらに、本件特許出願前には、現に、黒色の基材に再帰反射インクを使用して、上記課題「所定の照明下において図柄等を視認できる図柄表示媒体であって、簡素な装置により使用可能な図柄表示媒体を提供すること」(本件特許明細書の段落【0006】)を解決した「物」も生み出されていた。

ウ したがって、甲4発明に接した当業者は、甲第4号証が明記する用途に従って、甲4発明の黒色の再帰反射材に透光性印刷により図柄を印刷すれば、通常光下では図柄を視認することができないが、フラッシュ光下では図柄を視認することができる印刷物となることを、当然に理解する。
よって、本件特許発明は、技術常識により、当業者が甲4発明に基づき容易に想到し得たものでしかない。

(4)まとめ
以上より、本件特許発明は、進歩性が欠如するものであったにもかかわらず、特許法29条2項の規定に違反して特許がなされたものである。


第3 被請求人の主張及び提出した証拠方法について

1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。
被請求人の提出した証拠及び主張の概要は以下のとおりである。
(1)証拠方法
乙第1号証:被告株式会社SO−KEN第4準備書面、令和元年12月20日 作成者請求人代理人
乙第2号証の1:WEBページ、広仁社、URL:http://www.koujinsha.com/index.html
乙第2号証の2:WEBページ、レフピカ〜新素材反射メディア/広仁社、URL:http://www.koujinsha.com/acce.html
乙第2号証の3:WEBページ、レフピカ〜新素材反射メディア/広仁社、URL:http://www.koujinsha.com/02.html
乙第2号証の4:WEBページ、レフピカ〜新素材反射メディア/広仁社、URL:http://www.koujinsha.com/shikumi.html
乙第2号証の5:WEBページ、レフピカ〜新素材反射メディア/広仁社、URL:http://www.koujinsha.com/03.html
乙第3号証:実験報告書、令和2年6月19日、作成者:審判被請求人
乙第4号証の1:アドビイラストレータ(資料20200616.ai)データ(乙第3号証実験報告書2頁図1に掲載されている画像の元データ)、令和2年6月16日、作成者:審判被請求人
乙第4号証の2:画像(資料20200616.jpg)データ(乙第4号証の1アドビイラストレータのデータをJPG形式で出力した画像ファイル)、令和2年9月24日、作成者:審判被請求人

(2)被請求人の主張する本件特許発明の特徴
本件特許の技術的特徴本件特許発明は、「入射光をそのまま光源方向へ再帰反射する黒色の再帰反射材」(構成A)と、「再帰反射材の表面に印刷により形成された図柄からなる透光性の印刷層」(構成B)とを設けた図柄表示媒体であり、構成A及びBを備える本件特許発明によれば、印刷層を照射光が透過するため、図柄をフルカラーで形成しておけば、通常の照明下では視認し難い図柄が、強い照射光の下ではフルカラーで現れるという特有の作用効果を奏する。

(本件特許発明の構成イメージ図)

この点、仮に黒色の再帰反射材(構成A)を用いたとしても、隠蔽性の高いインクなどを用いた非透光性の印刷層である場合には、強い照明光の下では印刷部の周囲の再帰反射光により印刷部のシルエットが浮かび上がるだけとなってしまい、図柄自体をフルカラーで表現することができない。

2 無効理由1について
請求人は、広仁社による回答書(甲第1号証の2)及び報告書(甲第17号証)を根拠に、公然実施事実1−イ、1−ロ及び2−ハ(請求人による令和元年11月1日付け回答書3頁14行〜4頁8行、以下同文書を「請求人回答書」という。)により、本件特許発明が新規性を欠如する旨を主張している(無効理由1)。
しかし、広仁社は本件特許が無効となることについて利害関係を有しており、その回答書(甲第1号証の2)及び報告書(甲第17号証)の内容を完全に信用することはできないし、請求人による新規性欠如の主張は以下のとおり誤りである。
なお、請求人は、「広仁社商品には、キーホルダーとボールチェーンネックレスの2種類の商品があるが、ドッグタグ本体の構成は同一である」(審判請求書21頁下2行〜末行)などと主張している。しかし、請求人の主張する公然実施事実毎に広仁社商品の図柄や実施の態様は異なっているから、以下、それぞれの公然実施事実毎に反論をする。
(1)公然実施事実1について
公然実施事実1−イについて
(ア)請求人は、広仁社の回答書(甲第1号証の2)及び報告書(甲第17号証)に基づき、図柄イを印刷したブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー(以下「本件キーホルダー」という。)が本件特許発明の出願前に公然と実施されたと主張している(公然実施事実1−イ)。
前提として、請求人による公然実施事実1−イの主張(請求人回答書5頁4行〜末行)は、公然実施品を「甲第2号証において受領した『商品の現物』である『ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー』」から図柄イにかかるものに変更するものであり、令和元年9月20日付け審判請求書に述べられていない新たな公然実施事実を請求の理由として主張するものであって、要旨変更(特許法第131条の2第1項第1文)に該当し、許されない。
上記のとおり請求人による公然実施事実1−イの主張は要旨変更に該当し許されないものであるが、当該主張が誤りであることについても、念のため以下説明する。
請求人が公然実施品であると主張する本件キーホルダーは、通常光下で黒色に見える面に対してフラッシュを照射すると、白い背景に黒色の鷲の模様と文字(請求人は当該模様を「図柄イ」と主張している)が浮かび上がって見える製品とのことである(請求人回答書4頁9行〜5頁1行、審判請求書22頁1〜4行)。
本製品において再帰反射材が用いられているとすると、フラッシュを照射した際に白色に見える部分については、再帰反射した光がそのまま出射されて視認できるようになっているものと言えるから、そもそも印刷層は形成されていない。
他方、フラッシュを照射した際に黒色の図柄に見える部分については、黒色の非透光性の印刷層を設けたものである。
すなわち、フラッシュを照射した際に、[1]非透光性の印刷層が塗られた部分以外の部分については、再帰反射材によって光が再帰反射するが、[2]非透光性の印刷層が塗られた部分については、(黒色の)非透光性の印刷層が存在するために、光が反射せず、そのシルエットが見えるようになっている。
ゆえに、請求人の主張する本件キーホルダーは、再帰反射材の上に、単色の非透光性の印刷層を設けた構成を有しており、少なくとも「透光性の印刷層」を有しない点で、本件特許発明とは相違する。
したがって、請求人による、本件キーホルダーが本件特許発明の公然実施品であるから本件特許発明は新規性を欠如するとの主張は誤りである。
また、上記のとおりの理由により、請求人回答書5頁9〜11行の「通常光下では視認できないがフラッシュ光下では視認できる図柄イを表示した商品を出品した」との主張(「主張(ア)」)、及び、請求人回答書12〜17行の「通常光下では視認できないがフラッシュ光下では視認できる図柄を表示する商品を、・・・として展開していて、その構成が『黒色の再帰反射材の上に・・・透光性インク・・・でフルカラー印刷をしたもの』であること」との主張(「主張(イ)」)は、いずれも誤りである。
また、そもそも、上記「主張(ア)」に関し、資料4及び資料5は拡大図であっても鮮明な写真ではなく、資料5では何が反射しているのか明らかではない。そのため、これらの写真から「通常光下では視認できないがフラッシュ光下では視認できる図柄イを表示した商品」が存在しているとは言い難い。
加えて、上記「主張(イ)」に関し、そもそも資料1及び資料2は本件紛争が生じてから作成されたものであり、また、甲第2号証の観察対象も、本件紛争が生じてから広仁社から請求人が貸与された「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェーンネックレス」を観察したものということである。そのため、いずれも本件特許発明の実施品を販売したことを裏付けるものではない。
この点、請求人は、審判請求書23頁12〜23行、及び、請求人回答書5頁下9行〜下4行において、広仁社が黒色の再帰反射材及びドッグタグプレートを購入した事実が請求人の主張に合致することを主張している(「主張(ウ)」)。しかし、黒色の再帰反射材及びドッグタグプレートは、それぞれ全く別の時期に購入されたものであって、両者が同一の製品の製造に向けられたものであるという確証は全くない。その上、両部材は、他の製品にも使用することのできる部材であり、かかる部材を購入したからと言って、当該ドッグタグプレートにおいて「透光性」の印刷層を設けた「黒色の」再帰反射材を用いて本件特許発明の実施品を「製造した」ということは裏付けられない。
また、請求人は、「『レフピカドッグタグ−黒』というファイル」の中に「図柄イのデータが含まれていた」ことを主張し、「黒色再帰反射材に印刷する図柄を作成」したものであると主張している(請求人回答書5頁下3行〜末行、「主張(エ)」)が、そもそも、当該ファイルが本件特許の出願前に存在していたかどうかも客観的には明らかではない。
さらに、ファイル名からは何が「黒」なのかは明らかではない。そのようなファイル名が付けられているからといって、黒色の「再帰反射材」に設けるための図柄として作成されたものであるとは言えないし、まして、黒色の再帰反射材「上に」「透光性の」図柄イが設けられた製品が製造されていたことを裏付けるものでもない。

請求人は本件キーホルダーが公然実施されたものであることの理由として、甲第3号証(パンフレット)における写真及び「反射するストラップ(キーホルダー)」との説明が記載されていることを主張している(審判請求書28頁1行〜8行)。しかし、当該パンフレットでは、本件特許発明とは全く作用効果の異なる通常光下で図柄が視認可能な製品しか記載されていない。その上、当該パンフレットの「反射するストラップ(キーホルダー)」という説明からでは、何が反射するのかを窺い知ることはできない。よって、当該パンフレットの記載から本件キーホルダーが本件特許出願前に公然と実施されたものであることは裏付けられない。
また、甲第1号証資料1の写真については、これと同じ写真について「次頁写真は、この危機管理産業展2009に出品された広仁社商品を、今般撮影したものである」(審判請求書20頁20〜21行)と述べられているとおり、本件紛争が生じてから撮影されたものであり、当該写真からは本件キーホルダーが本件特許出願前に公然と実施されたものであるとは言えない。
広仁社による回答書(甲第1号証の2)における本件「キーホルダー」(資料1)が「黒色の再帰反射材の上に、溶剤インクジェットプリンター(ローランドDGのSC−540、XC−540)を用いて透光性インク(Eco−sol Max)でフルカラー印刷を行ったものを、本件のアルミニウム版に接着し、ゴム枠と付属品を取り付け」たものであるとの記載(同2枚目の別紙9〜12行)は、本件キーホルダーについては透光性インクで印刷したものではなく、事実に反する。
また、広仁社による回答書(甲第1号証の2)には、現存すると主張するドッグタグ(甲第1号証の2資料1)と、公然実施したと主張するドッグタグの図柄とが異なっている(請求人回答書4頁9行〜5頁1行参照)という不備があり、「『商品の現物』が同じであるとする具体的な根拠は何か」と審尋されるや否や、一転して報告書(甲第17号証)でこれを訂正していることからすれば、広仁社社長の各供述は、俄かには信じ難い。

以上のとおり、請求人の主張は、そのいずれもが「透光性」の印刷層を設けた「黒色の」再帰反射材を用いて本件特許発明の実施品を「製造した」という核心部分に関する客観的証拠を欠くものであって、信用できない。

(イ)公然実施事実1−イについての請求の理由の要旨の変更について
a 本件では、新たな証拠に基づいて、図柄イの製品に係る主張へと主張の変更が行われているところ、図柄イの製品と図柄イ’の製品とは、本件特許発明の構成として含まれる「図柄」の内容が異なり、図柄イ’にかかる実際の製造時と図柄イにかかる製品の製造時・展示時期は異なることを考えると、本件特許発明の構成についての事実が異なるものとして、権利を無効にする根拠となる「事実」が異なると考えられる。
よって、請求人の係る主張の変更は、審判請求の理由の要旨変更に該当するものである。(被請求人陳述要領書(1)6頁6.(7))

b 特許法第29条第1項第2号にいう「公然実施」とは、その発明の内容を不特定の者が知り得る状況でその発明が実施されることをいうものであり、公然実施されていたと認められるためには、[1]製品・技術等が対象特許の特許出願前に、不特定の者がその構成を知り得る状況で実施(特許法第2条第3項各号に該当する行為)されていた事実、[2]当該製品・技術等と本件特許発明とが同一であることの立証が必要である。
ここで、公然実施による無効を主張する者は公然実施を基礎づける「実施」がされたことを示す具体的事実を主張立証する必要があり、その具体的事実を主張立証するには、どの製品が、いつ、どこで、誰に対して、どのような形態で展示、販売等されたのかという具体的な社会的事実を特定する必要があるというべきである。実務上、公然実施事実を主張する場合、公然実施品を具体的に特定し、当該特定された公然実施品の解析結果、及び、当該公然実施品が特許出願前に流通等していたことを主張立証する必要があり、他方、複数の製品を包含し得る製品名などで製品群を「公然実施品」と主張することは許されない。
本件では、新たな証拠に基づいて、[1]令和元年9月20日付け審判請求書に記載の「図柄イ’」の製品から、[2]請求人による令和元年11月1日付け回答書に記載の「図柄イ」に公然実施品が変更され、そこからさらに、[3]請求人による令和2年10月1日付け口頭審理陳述要領書(2)において「図柄イまたは図柄イから色調整を行った図柄」へと公然実施品が変更されている。
もし審判合議体がこれらの変更を要旨変更ではないとすれば、それは、公然実施品を「図柄イの製品」「図柄イ’の製品」「図柄イから色調整を行った図柄の製品」のすべてを包含するような上位概念としての製品群として特定した、ということに等しいが、そのような特定は許容されない。
すなわち、公然実施の主張は、特定された具体的な公然実施品と本件特許発明を対比して行われるのであるが、仮に始めに特定された公然実施品が別の公然実施品になった場合、対比の主張としても異なるものとなり、また公然実施の主張としても別の主張となることは明らかである。審判合議体としても、例えば審判請求書に記載の公然実施の主張がA社の製品に基づくものであったとして、後にこれを請求人がB社の製品に変更した場合は、要旨変更とするものと考えるが、本件も、具体的な製品が変更されているという点では、そのような場合と同じである。
本件において、「図柄イの製品」と「図柄イ’の製品」とは、本件特許発明の構成として含まれる「図柄」の内容が異なっており、また、その製造時期・展示時期も異なる。加えて、「図柄イの製品」と「図柄イから色調整を行った図柄の製品」とは、背景色も当該図柄の最終作成者も異なり、また、その画像イメージデータの完成時期も異なる。
このように、「いかなる製品が」展示されたのかという具体的な社会的事実が異なる以上、権利を無効にする根拠となる社会的事実は異なるのである。
また、本件特許発明では「透光性の印刷層」「図柄」がその構成要件として規定されているところ、当該印刷層ないし図柄の透光性の有無及び程度は「色」によって変化し得る。そのため、「図柄イの製品」と「図柄イ’の製品」と「図柄イから色調整を行った図柄の製品」との相違は、本件特許発明との一致点・相違点の判断に影響を及ぼし得る重要な事実の相違である。
以上により、被請求人としては、上記変更[1]及び上記変更[2]は、いずれも、要旨変更に該当し許されない、との立場を維持する。(被請求人上申書(1) 6.(1)公然実施の主張についての要旨変更について)

公然実施事実1−ロについて
請求人は、広仁社の回答書(甲第1号証の2)及び報告書(甲第17号証)に基づいて、図柄ロを印刷したブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェーンネックレス(以下「本件ネックレス」という。)が本件特許発明の出願前に公然と実施されたと主張している(公然実施事実1−ロ)。
審判請求書21頁には、通常光下で黒色に見える面に対してフラッシュを照射した場合、赤色の背景に白色の動物の形が見える製品として、本件ネックレスの写真が掲載されている。
本件ネックレスについて請求人は、広仁社が「平成21年10月21日〜23日に東京ビックサイトで開催された危機管理産業展2009に出品し、以て譲渡のための展示をした」ものであると主張している(審判請求書20頁16〜18行。請求人回答書6頁7〜9行、及び、同10〜12行の「主張(ア)」も同趣旨)。また、請求人は審判請求書24〜28頁で、当時の広仁社による展示を撮影したとする写真を紹介し、これにより本件ネックレスが本件特許出願前に公然と実施されたものだと主張している。
しかし、審判請求書24〜28頁の写真をすべて確認しても、「通常光下で黒色に見える面に対してフラッシュを照射した場合、赤色の背景に白色の動物の写真が浮かび上がるという製品」は含まれていない。
たとえば、27頁のフラッシュ光での写真(カラー写真)では、赤い枠で囲まれた部分に写っている製品はすべて「白色」に光って見えている。当該写真では、赤い色のものは赤に見えているから(例えば27ページ写真拡大図の右下には赤い看板[下図の青い枠]が存在している)、もし本件ネックレスが含まれているのであれば、フラッシュ光下で赤色に光る本件ネックレスが写っていなければおかしい。
そのため、審判請求書24〜28頁に紹介されている写真からは、本件ネックレスが本件特許出願前に公然と実施されたものであるとは言えない。
また、そもそも、上記「主張(ア)」に関し、資料4及び資料5は拡大図であっても鮮明な写真ではなく、資料5では何が反射しているのか明らかではない。そのため、これらの写真から「通常光下では視認できないがフラッシュ光下では視認できる図柄ロを表示した商品」が存在しているとは言い難い。
また、請求人は、「『レフピカドッグタグ−黒』というファイル」の中に「図柄ロのデータも含まれていた」ことを主張し、「黒色再帰反射材に印刷する図柄を作成」したものであると主張している(請求人回答書6頁13〜15行の「主張(オ)」)が、そもそも、当該ファイルが本件特許の出願前に存在していたかどうかも客観的には明らかではない。
さらに、当該ファイル名からは何が「黒」なのかは明らかではない。『レフピカドッグタグ−黒』とのファイル名が付けられているからといって、黒色の「再帰反射材」に設けるための図柄として作成されたものであるとは言えないし、まして、黒色の再帰反射材「上に」「透光性の」図柄ロが設けられた製品が製造されていたことを裏付けるものでもない。
請求人は、「本件特許発明の実施品である『ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェーンネックレス』(黒色の再帰反射材に右掲の図柄(以下「図柄ロ」という。)を印刷したもの)が実在する」ことが、公然実施事実1−ロを裏付けると主張している(請求人回答書6頁16〜18行の「主張(カ)」)が、当該実在する製品が製造された時期も明らかでないのに、今現在そのような製品が存在するからと言って、本件特許出願前に公然実施をされたものであることは裏付けられない。

以上のとおり、請求人の主張は、そのいずれもが「透光性」の印刷層を設けた「黒色の」再帰反射材を用いて本件特許発明の実施品を「製造した」という核心部分に関する客観的証拠を欠くものであって、信用できない。

公然実施事実1における展示について
本件特許発明によれば、印刷層を照射光が通過するため、図柄をフルカラーで形成しておけば、通常の照明下では視認し難い図柄が、相対的に強い照射光の下(フラッシュ撮影)ではフルカラーで現れるという特有の作用効果を奏する。
この点、甲第1号証の2資料4及び5は、本展示会において参加者が通常の照明下での視認及び相対的に強い照射光での視認の両方を行ったことを立証できるものではなく、また、当該作用効果の説明ないしはそのような撮影を行うことを推奨する案内文や看板なども存在していないことが見て取れる。
したがって、当該展示会において公然実施品1−イ又は1−ロの図柄が通常光下では視認し難くフラッシュ光下で認識できるものであることについては、参加者が確認することができなかったものと言える。
また、展示品そのものがその構造を把握し難い物品であって、その構造を把握することができる態様での展示ではなかったことはもとより、構造の詳細や断面図などの説明ないしは掲載したパンフレット・説明文・看板なども存在しないのであるから、参加者がその構造を理解することができなかったものと言える。
以上により、請求人の主張する公然実施事実1によっては、本件特許発明が公然知られ得る状態で実施されたものとは言えない。
なお、甲第1号証の2資料4の看板には「フルカラー再帰反射と蓄光の専門(株)広仁社 車両用エンブレム マグネット ヘルメット 腕章 ワッペン Tシャツ」という記載があるが、これが公然実施品1−イ又は1−ロについての記述であるとは読み取れないし、仮にそうであるとしても公然実施品1−イ又は1−ロで「再帰反射」材が使われているかどうか、まして、「黒色の」再帰反射材であるかどうか、及び、その「上に」「透光性の」印刷層を設けているかについては何ら推認させるものではない。(被請求人陳述要領書(1)3頁6.(4))

(2)公然実施事実2について
請求人は、甲第1号証の2及び3並びに甲第17号証(第6項)に基づいて、図柄ハを印刷した「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェーンネックレス」が本件特許発明の出願前に公然と実施されたと主張している(公然実施事実2−ハ)。

請求人は、甲第1号証の2資料7、8に基づいて、広仁社がエフケイワークスに「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェーンネックレス」を販売したと主張する(請求人回答書7頁1〜4行の「主張(キ)」)が、資料7には「2011年10月19日〜21日 危機管理産業展 ドッグタグ販売分 ¥4,100」としか記載されていない上、資料8は単に資料7に対応する入金記録があるというだけである。そのため、資料7及び資料8からは、せいぜい2011年10月19日〜21日の危機管理産業展におけるドッグタグ販売の事実が推認できるにすぎず、当該ドッグタグの図柄が図柄ハであるかどうかや、本件特許発明の実施品であるかどうかなどを推認することはできない。
そのため、甲第1号証の2資料7、8は上記主張の裏付証拠たり得ない。

請求人は、甲第1号証の2資料1、2及び甲第2号証に基づいて、「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェーンネックレス」を展開していたことを主張する(請求人回答書7頁5〜10行の「主張(イ)」)が、そもそも資料1、2は本件紛争が生じてから作成されたものであり、また、甲第2号証の観察対象も、本件紛争が生じてから広仁社から請求人が貸与された「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェーンネックレス」を観察したものということである。そのため、いずれも本件特許発明の実施品を販売したことを裏付けるものではない。

請求人は、広仁社が黒色の再帰反射材及びドッグタグプレートを購入した事実が請求人の主張に合致する旨を主張している(請求人回答書7頁11〜16行の「主張(ウ)」)が、上記(3)アに記載のとおり、黒色の再帰反射材及びドッグタグプレートは、それぞれ全く別の時期に購入されたものであって、両者が同一の製品の製造に向けられたものであるという確証は全くない。その上、両部材は、他の製品にも使用することのできる部材であり、係る部材を購入したからと言って、当該ドッグタグプレートにおいて「透光性」の印刷層を設けた「黒色の」再帰反射材を用いて本件特許発明の実施品を「製造した」ということは裏付けられない。

請求人は、報告書(甲第17号証)資料23及び24に基づき、平成23年7月11日に、「図柄ハのデータを作成していた」ことを主張し、これが「黒色再帰反射材に印刷する図柄」であると主張している(請求人回答書7頁17〜18行の「主張(エ)」)が、そもそも、当該ファイルが本件特許の出願前に存在していたかどうかも客観的には明らかではない。その上、黒色の「再帰反射材」に設けるための図柄として作成されたものであるとは言えないし、まして、黒色の再帰反射材「上に」「透光性の」図柄ハが設けられた製品が製造されていたことを裏付けるものでもない。

請求人は、「平成23年10月21日に、図柄ハの表示があるドッグタグを展示・販売していたこと」を主張している(請求人回答書7頁19〜25行の「主張(ケ)」)。しかし、請求人も認めるとおり、資料25には、本件特許発明の実施品は写っていない。そのため、資料25は上記主張の裏付けたり得ない。

以上のとおり、請求人の主張は、そのいずれもが「透光性」の印刷層を設けた「黒色の」再帰反射材を用いて本件特許発明の実施品を「製造した」という核心部分に関する客観的証拠を欠くものであって、信用できない。

(3)公然実施品について
被請求人は、公然実施品1−イ、1−ロ及び2−ハが「一連の商品」とは考えておらず、現時点の証拠からは具体的にどのような意味で一連の商品なのかが明らかになっていないと考えている。
甲第2号証で主張されている「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェーンネックレス」については、本件特許発明の構成を有するものではない。甲第2号証の断面写真には、「溶剤カラーインク:赤色」「ガラスビーズ」「接着剤」「アルミプレート」とあるだけで、その理由が記載されていないばかりか、それらの分析が行われた形跡もなく、単に観察者である請求人ないしそれを指揮した請求人代理人の主観が記載されているにすぎないと思われる。
特に、甲第2号証は、赤い色のインクと称する部分についての成分分析が行われたものでもないし、透光性の印刷層であるかどうかの分析(例えば、透過率試験など)が行われたものでもない。
また、本件特許発明では、文言上、「図柄からなる透光性の印刷層」が存在しなければならないと考えられるところ、甲第2号証は製品の端部を観察したことが記載されているものの、図柄が透光性の印刷層であることについては記載も分析もされていない。
以上により、甲第2号証は、少なくとも公然実施品1−イ又は1−ロが「再帰反射材の表面に印刷により形成された図柄からなる透光性の印刷層」との本件特許発明の構成を有することを証明できるものではない。(被請求人陳述要領書(2)12頁6.(8))

3 無効理由2について
請求人は、FLEXcon社製の「REFLECTAmark○R(当審注:○Rは、丸囲みのRが右上1/4角表示)-Reflective Pressure-Sensitive Film Series」(以下「本件フィルム」という。)のカタログ(甲第4号証拠)を主たる引用発明とした本件特許発明の進歩性欠如を主張している(審判請求書2頁、令和元年10月11日付け審尋の第2、請求人回答書11頁下2行〜末行)。
(1)本件フィルムについて
ア 本件フィルムは、甲第4号証1頁目のタイトルのとおり、「Reflective Pressure-Sensitive Film」(和訳:反射性感圧フィルム)である。
その用途は、請求人が「再帰反射フィルム」だと訳している箇所で「Fleet Marking Grade Reflective Pressure-Sensitive Film - Sheet Form」(和訳:車両マーキング等級の、反射性感圧フィルム)と記載され、また、「Consumer-product companies that aim to reach the masses in their advertising campaigns often utilize their truck fleet for promotional messaging.」(和訳:広告キャンペーンを大衆に届けることを狙う消費者向け製品の企業は、しばしば、プロモーションメッセージのためにそのトラック車両を利用する。)と記載されているように、トラックを始めとする車両用のステッカーやマーキングに使用されるためのものであって、せいぜい文字等を印刷することが考えられる程度であり、図柄を視認できるようにするという技術思想については全く示唆されていない。
また、同フィルムでは通常の照明下では視認し難い図柄を用いるというような発想は全くなく、通常の照明下では視認し難い図柄が強い照射光の下ではフルカラーで現れるという技術思想についても、全く示唆されていない。
さらに、透光性の印刷層を用いるという技術思想も開示されていない。むしろ、これら製品の用途からして、文字等の広告を浮き上がらせるためには非透光性の印刷層を設けるのが最も適しており、透光性の印刷層を設けることには阻害要因がある。
この点、請求人は、本件フィルムが、「溶剤インクジェット印刷」に対応していることを根拠に、「透光性印刷層を設けることができる」ことが開示されていると主張している(審判請求書29頁下7行〜33頁4行)。
しかし、「溶剤インク」というのは、インクを溶かす液体(溶媒)の種類が、水系ではなく、(有機)溶剤であるという意味であり、インク自体の透光性とは何ら関連がない。
まして、本件フィルムが様々な印刷方式に対応している中で「溶剤インクジェット」にも「対応」していることを以て、透光性の印刷層という構成を設けることまでの示唆があるとは言えない。
以上により、本件特許発明との関係では、甲第4号証は、単に黒色であってもよい反射性フィルムが本件特許出願前に販売されていたことを示すにすぎない。

イ 被請求人は、[1]甲第4号証に「黒色の反射フィルム」が記載されていること、及び、[2]当該フィルムに対して「透光性の印刷層」を設け得ること、については特に争わない。
もっとも[3]甲第4号証には「透光性の印刷層を設けることが可能」とは記載されておらず、あくまで多数のカラーバリエーションの反射フィルムに対して「溶剤インクジェット印刷が可能である旨が記載されているにすぎない。
答弁書でも述べたとおり、「溶剤インク」というのは、インクを溶かす液体(溶媒)の種類が、水系ではなく、(有機)溶剤であるという意味で有り、インク自体の透光性とは何ら関連がない。
さらに言えば、溶剤インクジェット印刷では、例えば黒、白、シルバー、ゴールドなどの印刷も可能であるところ、黒は光を透過・反射していない状態であるから非透光性で、白は白を印刷するには元の下地を必ず白にしなければならないため非透光性で、シルバーやゴールドもインク自体に金属が含有されていること、及び、白と同様に下地の影響を受けないようにするため非透光性である。
よって、溶剤インクジェット印刷によって非透光性の印刷層を設けることができる以上、「溶剤インクジェット印刷に対応」していることは「透光性の印刷層を設ける」ことを意味するものではない。
以上のとおり、甲第4号証には「透光性の印刷層を設けることが可能」とは記載されていないし、記載されているに等しいとも言えない。(口頭審理陳述要領書(1)7頁6(8)審理事項通知書第5の1(1)イ(ア)について)

ウ 甲第4号証には、 本件フィルムがトラックを始めとする車両用のステッカーやマーキング、プロモーションメッセージ等に使用される旨が記載されているところ、 ステッカーやマーキング、プロモーションメッセージは、そこに書かれている文字等を視認させ、それによって、視認した者に記載された文字等の情報を伝える、というものである。
そのため、通常の照明下(例えば太陽光の下など)において敢えて図柄を視認し難くするという発想はないし、そのような変更を加えることもあり得ない。
たとえば、トラックに貼り付けるプロモーションメッセージとして甲第4号証の反射フィルムを活用する場合、日中走行する際に後方車両や歩行者などから視認されることでプロモーションを行い、夜間においても反射フィルムの効果で後方車両などから視認されることでプロモーションを行う、という態様が当然想定されるが、その場合、通常の照明下(例えば太陽光の下など)において図柄を視認できるようにするはずであり、敢えて図柄を視認し難くするという発想はない。
そうであるならば、仮に[1]甲第4号証に記載の多数の カラーバリエ−ションの反射フィルムの中から黒色を選択し、かつ、[2]当該反射フィルムを再帰反射材とすることができたとしても、通常の照明下(例えば太陽光の下など)において 字等を視認させるためにはその上には「非透光性」の印刷層を設けなければならず、「透光性」の印刷層を設けて通常の照明下(例えば太陽光の下など)において図柄を視認し難くすることには阻害要因がある。(被請求人陳述要領書(1)8頁6(8)審理事項通知書第5の1(1)イ(イ)について)

エ 相違点2については、答弁書に記載のとおり、請求人の主張する主たる甲4発明(本件フィルム)は、黒色であってもよい反射フィルムにすぎず、[1]文字ではなく図柄を視認できるようにするという技術思想、[2]通常の照明下では視認し難い図柄が強い照射光の下ではフルカラーで現れるという技術思想、及び、[3]当該フィルム上に透光性の印刷層を用いるという技術思想、の何れをも開示・示唆するものではない。
そして、請求人が主張する各公知技術を本件フィルムと組み合わせる動機付けはなく、阻害要因があり、仮に組み合わせることができたとしても、本件特許発明に至ることはない。(被請求人陳述要領書(1)9頁6(9)審理事項通知書第5の1(1)ウについて)

(2)容易想到性について
請求人は、容易想到性に関し、「黒色の再帰反射材に図柄の印刷を施す技術」を利用して図柄を変化させることが公知であるから、本件フィルムに透光性の印刷を施すことは容易であるかのように主張するが、これは従来技術の不当な上位概念化である。
下記のとおり、被告が主張する公知技術を本件フィルムと組み合わせても本件特許発明には至らないし、本件特許発明に至る動機付けもない。

(3)特表2000−321414号公報(甲第8号証)
請求人は、本件フィルムから、本件特許発明に至ることができる動機付けとして、「再帰反射材に図柄を印刷することにより課題を解決する技術の存在」を挙げ、特表2000−321414号公報がそのような技術を開示すると主張している(審判請求書31頁1行〜32頁9行)。
しかし、請求人自身も審判請求書32頁6行で「上記技術は、印刷層に透光性がないという点で本件特許発明とは異なる」と認めているとおり、特表2000−321414号公報の印刷層には透光性がない。
したがって、仮に本技術を参照して本件フィルムに印刷層を設けることができたとしても、当該印刷層は非透光性の印刷層となり、本件特許発明に至ることはない。
そして、印刷層が非透光性である以上、強い照明光を照射しても、印刷部の周囲の再帰反射光により印刷部のシルエットが浮かび上がるだけの効果しか奏しないこととなる。

(4)特表2000−506623号公報(甲第9号証)
請求人は、本件フィルムから、本件特許発明に至ることができる動機付けに関連し、特表2000−506623号公報が、「再帰反射材に図柄を印刷することにより課題を解決する技術の存在」を示すものであるとしている(審判請求書32頁10行〜34頁下8行)。
同公報には、「ホログラフィー層」と、「再帰反射ライティング状態で知覚される再帰反射層」と、「証印層」と、を有し、再帰反射層には「任意でビードボンド層90を与えてもよ」く、「着色された顔料を含有するビードボンド」を含み、再帰反射層が「好ましくは銀色である背景」である発明が開示されている。同発明において、再帰反射材自体は「好ましくは銀色である背景」なのであり、「着色された顔料を含有するビードボンド層90」を含むものとされているにすぎず、「入射光をそのまま光源方向へ再帰反射する黒色の再帰反射材」自体を開示するものではない。
また、同文献12頁には「着色インク・・・でプリントされた・・・証印」パターンは、「着色されたビードボンドのある再帰反射層の前面より上の何れかの位置でプリントするときは有用」と記載されているとおり、非透光性の印刷層を設けることは開示されているが、透光性の印刷層を設けることは開示されていない。
要するに、特表2000−506623号公報に記載された発明は、背景が銀色等となっており、ビードボンド90が好ましくは黒色となっており、認証パターンは黒色等の不透光のもので形成されていて、通常時は最上面に印刷されたホログラフィーが視認され、その結果として認証パターンが視認できない。そして、強い照明光の下では、ホログラフィーは視認されなくなる一方で、背景が銀色となり不透光印刷の認証パターンのシルエットが浮かび上がる。これにより2段階の確認が可能となり全体として物品の高度な安全対策がなされる、というものであり、本件特許発明とは技術思想が大きく異なる。
したがって、本技術を参照して本件フィルムに(透光性と非透光性とを問わず)印刷層を設けることはできない。
また、仮に本技術を参照して本件フィルムに印刷層を設けることができたとしても、当該印刷層は非透光性の印刷層となり、本件特許発明に至ることはない。
さらに言えば、同発明はホログラフィーを必須の構成とする発明であるから、これを除外して、本件フィルムに組み合わせるには阻害要因がある。

(5)ニンジャインク(甲第10号証ないし甲第12号証及び甲第16号証)
請求人は、本件フィルムから本件特許発明に至る動機付けとして「黒色基材に再帰反射塗料を「実際に」印刷した「物」の存在」を挙げ、その根拠として「黒色の布地の上に再帰反射インク・・・ニンジャインクで図柄を印刷し・・・た衣服」(以下「本件衣服」という。)が公表されていたことを主張している(審判請求書34頁下7行〜35頁2行)。
まず、本件衣服に塗布されたニンジャインクは、ガラスビーズを含ませたインクであり、服のみならず様々な物品に塗布することができるという特徴を持つ。したがって、本件衣服と本件特許発明とは、本件衣服が黒色の布地の上にガラスビーズを含むインクを塗布したものであるのに対し、本件特許発明が黒色の再帰反射材の表面に設けられた透光性の印刷層を有するという点で全く相違する。
ニンジャインクは、あくまでガラスビーズを含むインクであり、だからこそ、様々な物品に塗布することができる。そのようなインクからガラスビーズを取り除き、さらに、塗布対象を黒色の再帰反射材に置き換える動機付けはない。

(6)請求人が追加で提出した各証拠について(被請求人陳述要領書(2)3頁6.(2))
ア 甲第18号証ないし甲第20号証について
請求人の証拠説明書(3)によれば、甲第18号証ないし甲第20号証の立証趣旨は、いずれも「インクジェット印刷に用いられる染料インクがCMYKインクであり、透明である(透光性がある)ことは本件特許出願日前から周知慣用の技術であったこと」とされている。被請求人は、上記立証趣旨の限度であれば、甲第18号証ないし甲第20号証を新たに提出すること自体については積極的には争わない。
この点、インクジェット印刷は、必ずしも染料インクを用いたものではないし、必ずしもシアン(C)、マゼンダ(M)及びイエロー(Y)を用いた印刷でもない。そのため、インクジェット印刷であるならば印刷層は透光性を有する旨の主張については、被請求人の前回の口頭審理陳述要領書「6」の「(8)」においても主張したとおり、争う。

イ 甲第21号証ないし甲第22号証について
請求人の証拠説明書(3)によれば、甲第21号証ないし甲第22号証の立証趣旨は、「インクジェット印刷を再帰反射材に透光性の印刷層を設けるために用いることは、本件特許出願日前から周知慣用の技術であること」と記載されている。
この点、令和元年9月20日付け審判請求書(以下「無効審判請求書」という。)では、この点に関連し、「溶剤インクジェット印刷を施すことにより透光性の印刷層を形成することができる黒色の再帰反射フィルム」として甲第5号証、甲第6号証が挙げられていたものの、「インクジェット印刷を再帰反射材に透光性の印刷層を設けるために用いること」が周知であるとの主張はなされていなかった。
そのため、当該周知技術を新たに主張することは、無効審判請求書に記載のない新たな無効理由を請求の理由として主張するものであって、要旨変更(特許法第131条の2第1項第1文)に該当し、許されず、また、そのような立証趣旨における甲第21号証ないし甲第22号証の提出も許されない。

ウ 甲第23号証について
甲第23号証については、明らかに無効理由の追加であり、要旨変更に当たる。
請求人の証拠説明書(3)における甲第23号証の立証趣旨には、「特表2000−506623号公報が黒色再帰反射材に透光性の印刷層を備える構成を開示していること等」と記載されており、また、請求人の口頭審理陳述要領書38頁には、甲第9号証あるいは甲第23号証が「ホログラフィー層を設けているか否かの相違を除いては、本件特許発明と同一の構成により、通常光下では視認できない図柄が再帰反射時では視認される、という発明を開示している」と記載されている。
このように、請求人は、請求人の令和2年5月8日付け口頭審理陳述要領書において、特表2000−506623号公報(すなわち、甲第9号証)が「本件特許発明と同一の構成により、通常光下では視認できない図柄が再帰反射時では視認される、という発明」だと主張している。
しかし、当該主張は、当初、無効審判請求書において主張された無効理由(2)とは異なっている。
すなわち、無効審判請求書3頁の表には、甲第9号証は、以下の2か所において証拠とされていたが、「本件特許発明と同一の構成により、通常光下では視認できない図柄が再帰反射時では視認される、という発明」とは主張されていなかった。
また、無効審判請求書31〜34頁においても、せいぜい「ア 再帰反射材に『図柄』を印刷することにより課題を解決する技術の存在」(無効審判請求書31頁2行)において、「通常光下・・・ではホログラフィーが視認され・・・再帰反射時・・・には証印パターンが視認されるという発明を開示したもの」(無効審判請求書34頁20〜22行)という程度の記載しかなかった。
したがって、そのような無効理由の追加・変更は要旨変更(特許法第131条の2第1項第1文)に該当し、許されず、また、そのような立証趣旨における甲第23号証の提出も許されない。

(7)小括
以上のとおり、請求人の主張する主たる引用発明(本件フィルム)は、黒色であってもよい再帰反射フィルムにすぎず、[1]文字ではなく図柄を視認できるようにするという技術思想、[2]通常の照明下では視認し難い図柄が強い照射光の下ではフルカラーで現れるという技術思想、及び、[3]透光性の印刷層を用いるという技術思想、の何れをも開示・示唆するものではない。
そして、請求人が主張する各公知技術を本件フィルムと組み合わせる動機付けはなく、仮に組み合わせることができたとしても、本件特許発明に至ることはない。

4 結論
以上により、本件特許発明に無効理由1ないし2が存在する旨の請求人の主張は、そのいずれもが誤りである。


第4 本件特許発明について

本件特許発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「 【請求項1】
入射光をそのまま光源方向へ再帰反射する黒色の再帰反射材と、
前記再帰反射材の表面に印刷により形成された図柄からなる透光性の印刷層と、
を備えることを特徴とする図柄表示媒体。」


第5 無効理由に対する当審の判断

1 無効理由1について
請求人は、公然実施事実1−イ及び公然実施事実1−ロ並びに公然実施事実2−ハにより、本件特許発明は、本件特許に係る出願の出願前に公然実施されたものである旨主張しているので、以下、各公然実施事実について検討する。
(1)公然実施事実1−イについて
公然実施事実1−イに関する証拠について
広仁社が「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」という商品(請求人が「黒色の再帰反射材面に図柄イ(請求人回答書の3頁の公然実施事実1−イの項目において示した図柄のこと)を印刷したもの」と主張する商品(「公然実施品1−イ」))を平成21年10月21日から23日に「危機管理産業展2009」において出品して、譲渡のために展示したことに関して、次のものがある。
(ア)甲第1号証の2は、広仁社の代表取締役藤長義仁氏(以下、「証人藤長氏」という。)が作成した大阪弁護士会からの照会書(甲第1号証の1)に対する回答書(以下、この「ア」の項では、「回答書」という。)であるところ、回答書の別紙には、「(2)弊社では、再帰反射シートに透光性のインクでフルカラー印刷を施したメディアを「レフピカ」という商標で販売しております。・・・その中でも黒色の再帰反射材を用いたものは「ブラックレフピカ」と呼んでおります。この「ブラックレフピカ」を使用したドッグタグ(軍隊が兵士個人を識別するために使用する認識票のこと)のキーホルダーとボールチェーンネックレスを製作したことがあります(資料1、2 後述の危機管理展2008に出品したもの)。 仕様、製造方法については、黒色の再帰反射材の上に、溶剤インクジェットプリンター(ローランドDGのSC-540、XC-540)を用いて、透光性インク(Eco−sol Max)でフルカラー印刷を行ったものを、本体のアルミニウム板に接着し、ゴム枠と付属品を取り付けるというものです。設計仕様書のようなものは存在しませんが、サンプル品をご覧になれば、作り方は誰にでも簡単にお分かりいただけると思います。」、「(4)平成20年4月22日に東高金商株式会社様から材料を仕入れて開発を行い(資料3)、平成20年10月8日〜10日に東京ビッグサイトで開催された危機管理産業展2008に出品しました。出展の様子を撮影した写真が残っておりました(資料4、5)。資料4が通常光で撮影したもの、資料5がフラッシュを使用して撮影したものです。少しわかりにくいですが、資料4でオレンジ色の手袋の左側に並べているキーホルダーがブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダーです。資料4では真っ黒に写っている部分が、資料5ではぼんやりと羽のようなマークが浮かび上がっているのがお分かりいただけると思います。」、「(7)危機管理産業展2008への出典したキーホルダーとボールチェーンネックレス、並びに株式会社エフケイワークス様へ販売したキーホルダーとボールチェーンネックレスの表示材であるブラックレフピカは、納品書(資料9)と請求書(資料10)の紀和化学工業株式会社様より購入した黒色の再帰反射材「キワライト フリートマーキング #17093 ブラック」を用いました」との回答内容が記載されている。
a 甲第1号証の2資料3、9及び10について
回答書において広仁社が用いた黒色の再帰反射材を購入した事実を示すものとして説明されている甲第1号証の2資料9及び10は紀和化学工業株式会社の納品書及び請求書であって、甲第1号証の2資料9の納品書には「発行年月日に2004/10/15」、「伝票番号に3403525-1」と記入され「商品名 キワライトフリートマーキング#17093 ブラックPタイプ」、「容量/数量 1.24×45.71」、「単価」及び「金額」が「89、600」と記載されており、甲第1号証の2資料10の請求書には、「発行年月日に2004/10/31」と記入され、「日付」の項目に「2004/10/15」、「伝票番号」の項目に「3403525」と記入された行に「商品名 キワライトフリートマーキング#17093 ブラックPタイプ」、「容量/数量 1.24×45.7 1」、「単価」及び「金額」が「 89、600」と記載されている。
同じく報告書において広仁社がドッグタグプレート材料を購入した事実を示すものとして説明されている同資料3の東高金商株式会社の20年4月22日付けの「納品書」には、「商品名」、「数量」として、「ドッグタグプレート AL」、「10コ」、「ドッグタグプレート真鍮」、「10コ」、「ドッグタグプレート用ゴム枠」、「20コ」等について記載されている。

b 甲第1号証の2資料4及び5について
回答書において危機管理展2008の展示であって通常光で撮影された画像として説明されている甲第1号証の3資料4には、「フルカラー再帰反射と蓄光の専門(株)広仁社」と表示された看板が表示された展示用ブースが映っており、そこに映るオレンジの手袋の左横(この資料4中の付箋矢印の右横部分)の黒い領域には、上段左に1つ、下段左に1つ、下段右に1つ、それぞれぼんやりとした白っぽい商品の影が映っており、回答書において危機管理展2008の展示であってフラッシュ光で撮影された画像として説明されている甲第1号証の3資料5に映る同じ領域((この資料5中の付箋矢印の右横部分)には、甲第1号証の3資料4の白っぽい商品の影が映っている部分と同じ位置には、白色のはっきりとした商品の影が映っており、それ以外に、上段に1つ、下段に2つそれぞれぼんやりとした白っぽい三角形状の影が映っており、審判請求書の26及び27頁に記載の甲第1号証の3資料4及び資料5の当該領域を拡大したものからは、それらの影がドッグタグプレート商品であることが看て取れる。

(イ)甲第1号証の3は、証人藤長氏が請求人代理人あてに提出した訂正報告書であるところ、同訂正報告書において、証人藤長氏は「回答書には、「弊社のブラックレフピカ商品を危機管理産業展に出品したのは『危機管理産業展2008』(平成20年10月8日〜10日)のことであると回答いたしましたが、正しくは『危機管理産業展2009』(平成21年10月21日〜23日)ですので、訂正いたします。」との報告が記載されている。
a 甲第1号証の3資料11について
訂正報告書において「危機管理産業展2009」に出品したことを示す証拠として説明されている甲第1号証の3資料11の出展申込書には、「会期2009年10月21日(水)〜23日(金)」、「会社名 株式会社広仁社」、「出展小間料金合計 378、000円」、「出展予定商品 C−1−7 誘導標識
C−3−16 その他 消化、救急、救助製品、サービス C−2−32
その他、災害対策製品 サービス」、「展示内容 新聞、雑誌などマスコミにも多数紹介された世界初の蓄光&反射シート『エルカーズ』をはじめ、「避難誘導」と「グラフィックデザイン」を融合させた(広仁社)オンリーワン製品の数々を出展いたします。(お楽しみください!!)」と記載されている。

b 甲第1号証の3資料12及び13について
甲第1号証の3資料12の出展費用の請求書及び甲第1号証の3資料13の2ページ目の振り込みデータの金額として「378、000円」が記載されている。

c 甲第1号証の3資料14について
訂正報告書において、甲第1号証の2資料4及び5画像データのプロパティであると説明されている甲第1号証の3資料14の1頁目からは、「_DSC0003.JPGのプロパティ 撮影日時 2008/10/21 9:28」と表示された画像データであるJPGファイルのプロパティ表示画面を印刷したものであることが看て取れ、2頁目からは「_DSC0004.JPGのプロパティ 撮影日時 2008/10/21 9:28」と表示された画像データであるJPGファイルのプロパティ表示画面を印刷したものであることが看て取れる。
訂正報告書において、甲第1号証の2資料4及び5を撮影したカメラの日付が1年ずれて設定したことを示す資料であると説明している甲第1号証の3資料15ないし18のうち、資料15の写真には、国立科学博物館のロゴの入った看板が設置された風景が撮影されており、この資料15のプロパティであるとして提出された甲第1号証の3資料16は、「DSC0072.JPGのプロパティ 撮影日時 2009/04/25 16:32」と表示された画像データであるJPGファイルのプロパティ表示画面を印刷したものであり、甲第1号証の3資料17は、2010年4月25日付け、No 00129の広仁社からの株式会社エフケイワークス宛の納品書であって、そこには、「件名 国立科学博物館 別館サイン・看板シート出力、貼り込み」、「合計 74、550円」と記載されている。

(ウ)甲第3号証には、「ファイヤーグッズ総合カタログ 2009〜2010 財団法人 東京消防協会」(1頁)、「商品番号476E 反射するストラップ(キーホルダー) ¥600(サイズ28mm×50mm) おこのみでデザインを入れる事ができます。」(2頁 ストラップの欄の右下)と記載され、鷲のデザインの図柄に背景が白色のドッグタグキーホルダーと黒色の文字に赤色の背景の図柄のドッグタグキーホルダーの写真が掲載されている。

(エ)甲第17号証は、証人藤長氏が請求人代理人あてに提出した報告書であるところ、当該報告書には次の報告事項が記載され、その内容を裏付けるものとして資料が添付されている。
a 甲第17号証の「2.」について
「2.弊社は、平成20年4月22日、東高金商株式会社様から「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」の本体部分の材料であるドッグタグプレートを仕入れました。 平成20年4月22日当時は製品の試作段階でしたので、一旦アルミニウム(AL)製のドッグタグプレートと真鍮製のドッグタグプレートを各10個ずつ仕入れましたが、結局、真鍮製のものは使用せず、アルミニウム製のものだけを使用して試作品を製作することとしました(資料3・・・)。」との報告内容が記載されている。

b 甲第17号証の「3.」について
「3.(1)弊社は、平成20年4月23日、上記のドッグタグプレートに印刷するためのイラストデータを作成しました(資料19〜21)。 「レフピカドッグタグ−黒」というデータ(資料19、20)は、黒色の再帰反射材の面(ブラックレフピカ)に印刷するためのイラストデータです。 「レフピカドッグタグ−白」というデータ(資料19、21)は、白色の再帰反射材の面「レフピカ」に印刷するためのイラストデータです。 資料19に記録された「変更日」から、平成20年4月23日にこれらのイラストデータを作成していたことがわかります。 (2)「レフピカドッグタグ−黒」というデータ(資料20)と「レフピカドッグタグ−白」というデータ(資料21)は、同じ位置にあるイラストが「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」又は「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」の本体部分の裏表面に対応するようになっています。 例えば、「レフピカドッグタグ−黒」というデータ(資料20)の左端には「Murayama」という文字イラストがある一方で、「レフピカドッグタグ−白」というデータ(資料21)の左端には「日本赤十字社」のロゴイラストがあります。これは、ドッグタグプレートの片面には、黒色の再帰反射材に「Murayama」という文字イラストを印刷したものを貼り付け、他方の片面には、裏面の白色の再帰反射材に「日本赤十字社」のロゴイラストを印刷したものを貼り付けた商品の製作を予定していたことを意味します。」との報告が記載されている。
(a)甲第17号証資料19ないし21について
甲第17号証資料19は、2008年4月23日_レフピカドッグタグ出力との表題で名前:「レフピカドッグタグ黒.ai」、変更日:2008/04/23 22:26」、名前:「レフピカドッグタグ白.ai」、変更日:2008/04/23 22:27」の2つのファイルが表示されており、甲第17号証資料20及び資料21には、それぞれ、7種類の図柄が表示されている。

c 甲第17号証の「4.」について
「4.弊社は、平成20年4月23日から翌24日午前中にかけて、上記の「レフピカドッグタグ−黒」というデータ(資料20)と「レフピカドッグタグ−白」というデータ(資料21)から、黒色の再帰反射材と白色の再帰反射材にそれぞれ透光性インクでフルカラー印刷を行い、これをアルミニウム製のドッグタグプレートに貼り付けて試作品を完成させました。 このとき試作された「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」又は「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」の図柄は、資料20及び資料21に示されたとおり、全部で7種類ありました。この7種類を、以下では、資料20及び資料21の左端から順番に図柄1、2、3・・・と呼ぶこととします。」との証人藤長氏の報告が記載されている。

d 甲第17号証の「5.」について
「5.弊社は、平成20年8月7日、東高金商株式会社様にこれを410個発注し、仕入れを行い(資料22)、この頃商品を製作しました。」との証人藤長氏の報告が記載されている。
(a)甲第17号証資料22について
同報告において、その事実を証明するものとして説明されている甲第17号証資料22は、2008年8月7日付けの東高金商株式会社あての広仁社の発注書であって、そこには、「件名 アクセサリーパーツ」、項目:ドッグタグプレート AL 厚み1mm、単価:40円、数量410、希望納期8月11日、項目:ドッグタグプレート用 ゴム枠、単価:30、数量:400、希望納期8月11日」と記載されている。

e 甲第17号証の「6.」について
「6.弊社は、5.で東高金商株式会社様から仕入れたドッグタグプレートを用いて製作した「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグボールチェンネックレス」を「危機管理産業展2009」(平成21年10月21日〜23日)に展示しました。また、来場者の皆様にサンプル配布もいたしました。 以前にお送りした展示会の写真(資料4、5)には、図柄7(豹のイラスト)を印刷した「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」が映っていませんが、これは、来場者の皆様にサンプル配布をしていた際、配布の都度展示品を補充しておりましたので、撮影時にはちょうど図柄7(豹のイラスト)を印刷した「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」が展示されていなかったものと思われます。 写真にこそ映っておりませんが、弊社が『危機管理産業展2009』(平成21年10月21日〜23日)に図柄7(豹のイラスト)を印刷した「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」を展示していたことは間違いありません。 なお、上記5で制作した商品には日本赤十字社や文京区向けに作ったものもありますが、図柄5(翼のイラスト)及び図柄7(豹のイラスト)は、特定の得意先のための商品ではなく、『危機管理産業展』をはじめ不特定多数のお客様に向けて提案するために制作したものであり、『危機管理産業展2009』で展示・配布したことに間違いありません。」との報告が記載されている。

f 甲第17号証の「7.」について
「7.(1)弊社が森本先生にお送りした、図柄7(豹のイラスト)の「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」は、6.の『危機管理産業展2009』においてサンプル配布をした後に弊社に残った余りを提供したものです。
お送りしたものが実際に展示されていたものか、展示用として保管されていたものかはわかりませんが、実際に展示を行っていた「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」と全く同じ構造・図柄を有するものであることは間違いありません。
(2)令和元年8月16日付け回答書では、森本先生に提供した翼のイラストの「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」と同一の商品を『危機管理産業展2009』に出品したものと回答しておりましたが、改めて確認すると、図柄5と少しデザイン違うようです。
この点、詳細は覚えておりませんが、森本先生にお送りした商品の図柄が「ファイヤーグッズ総合カタログ2009〜2010」に掲載された「反射するストラップ(キーホルダー)商品番号476E」の片面と同じものであることからすれば、平成21年頃に東京消防協会向けに、図柄5を基にして文字部分を変更し別途製作したデザインを流用したものであると思います。 この商品は、平成23年頃に株式会社エフケイワークス様から依頼を受けて製作したサンプルです。」との報告が記載されている。
なお、被請求人は、請求人が公然実施事実1−イにおいて展示した公然実施品1−イの図柄を当初の図柄イ’から図柄イ、さらに図柄イの色を調整した図柄と変更することは、請求の理由の要旨を変更するものである旨主張し、そのような主張変更の根拠となる証拠の提出を認めるべきではない旨主張しているが、審判請求書において、請求人が主張する公然実施事実1−イは、公然実施品1−イを危機管理産業展2009において販売のために展示したという事実であって、当該公然実施品1−イがどのようなものであるのかを説明しているのであって、公然実施事実1−イ自体を変更するものではないから、本件特許が無効であることを根拠付ける事実の変更はないものというべきであるから、請求の理由の要旨を変更するものとまではいえない。

イ 各証拠から認められる事実について
(ア)上記ア(ア)の回答内容及び上記ア(ア)aの甲第1号証の2資料3によれば、「広仁社に平成20年4月22日に東高金商株式会社より、ドッグタグプレートAL、ドッグタグプレート真鍮各10個、ドッグタグプレート用ゴム枠20個が納品された事実を認めることができる。
また、上記ア(ア)bの甲第1号証の2資料4及び5の画像には、展示日時や展示会名などについての情報は映っていないことから、同資料4及び5がどの展示会における展示を映した画像であるのかは、これらの資料4及び5の画像自体からはうかがい知ることはできない。

(イ)上記ア(イ)の訂正報告書の報告内容及び甲第1号証の3資料11ないし15によれば、甲第1号証の3資料14及び15が甲第1号証の2資料4、5のデータプロパティであることを客観的に示す証拠は提出されていないものの、訂正報告書における証人藤長氏の報告、証言及び甲第1号証の3資料15ないし17からみて、甲第1号証資料4、5の撮影に使用したカメラの日付が1年ずれて設定されていたものであり、甲第1号証の2資料4及び5が、平成21年10月21日に撮影されたものと認めることができる。
そして、甲第1号証の3資料11の「会期2009年10月21日(水)〜23日(金)」、「会社名 株式会社広仁社」、「展示内容 新聞、雑誌などマスコミにも多数紹介された世界初の蓄光&反射シート『エルカーズ』をはじめ、「避難誘導」と「グラフィックデザイン」を融合させた(広仁社)オンリーワン製品の数々を出展いたします。(お楽しみください!!)」などの記載及び甲第1号証の3資料12の出展費用の請求書に記載された金額が甲第1号証の3資料13のとおり振り込まれていることがすれば、広仁社が会期2009年10月21日(水)から23日(金)までの「危機管理産業展2009」において展示を行った事実を認めることができる。
してみると、証人藤長氏の上記ア(ア)の回答内容、上記ア(イ)の訂正報告書の報告内容と同cの資料14及び15並びに証人藤長氏の証言(証人等の陳述を記載した書面(以下、「陳述書面」という。)の056〜059)によれば、甲第1号証の2資料4及び5が危機管理産業展2009における展示を映した画像であると一応認めることができる。
そして、上記ア(ア)bのとおり甲第1号証の2資料4及び5並びにこれらの資料を拡大したものによれば、「(株)広仁社」が危機管理展において展示したブースにおいて、通常光下では見えないが、フラッシュ光では暗い背景色にそれよりも白い鷲柄の図柄が視認されるドッグタグキーホルダーが展示されていたものと認められる。

(ウ)上記ア(エ)aの証人藤長氏の報告によれば、「広仁社が平成20年4月22日、東高金商株式会社から「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」の本体部分の材料であるアルミニウム製のドッグタグプレートを10個仕入れたものとされているところ、この点については、甲第1号証の2資料3によって裏付けられているものである。
そして、甲第1号証の2資料1及び2や甲第3号証によれば、広仁社がドッグタグプレートキーホルダーやドッグタグプレートボールチェンネックレスの製品を取り扱っていたことを認めることはできる。
してみると、広仁社が、平成20年4月22日以降に、この仕入れたドッグタグプレートを用いて何らかの試作品を製作したものと認めることができるが、これらの証拠からは、当該試作品が具体的にどのような構造のものであるのかを特定することができないから、その試作品の製作において、黒色の再帰反射材の上に透光性のフルカラーの印刷を行ったものであるとまでは認めることができない。

(エ)上記ア(エ)のbの証人藤長氏の報告及び甲第17号証資料19ないし21によれば、広仁社が、2008年4月23日に、7種類の図柄がそれぞれ格納されている「レフピカドッグタグ黒.ai」、「レフピカドッグタグ白.ai」というデータを作成した事実については一応認めることができるものの、資料20及び21の画像データがどのように用いられるものであるのかやそれを用いて公然実施品1−イが製造されたことを示す客観的な証拠は提出されておらず、甲第17号証の「3.」で証人藤長氏が報告する内容のみから、これらのデータを用いて公然実施品1−イが製造されたものということはできない。
上記ア(エ)cの証人藤長氏の報告によれば、平成20年4月23日から24日午前中にかけて、甲第17号証資料20及び資料21のデータを用いて、7種類の図柄の黒色の再帰反射材と白色の再帰反射材にそれぞれ透光性インクでフルカラー印刷を行い、これをアルミニウム製のドッグタグプレートに貼り付けて試作品を完成させたとしているが、そのことを客観的に示す証拠はない。
仮に、平成20年4月23日から24日午前中にかけて甲第17号証資料20及び21のデータを用いてドッグタグプレート製品の試作品を完成させたとしても、それから一年以上経過した平成21年10月21日頃に開催された危機管理産業展2009において展示したとする公然実施品1−イを同じデータを用いて製造されたものと認められるものではない。
なお、証人藤長氏は、証人尋問において、「従業員の人たちにいろいろやってもらったデータというのは、会社で共有のRAIDを組んで、ハードディスクに入れておいたんですが、そのRAIDもちょっと、200メガぐらいしかない当時古いものですし、バックアップも取っておいたのですが、ハードディスクもこわれてしまって、その中にあるかどうか分からない」(陳述書面068)と証言し、公然実施品1−イの作成に関して「もともとその子がデザインしたものなので、自分の好きなようにしたいと思って、好きなようにしていいって言ってましたから、好きなようにしたのかもしれません」(陳述書面071)、「藤長さんとしては、今お手元に示している甲17号証の資料20、これが唯一のデータということになりますけれども。これが商品化されたものが写真に写っているというご理解なんでしょうか」との質問に「そうですね。そのつもりでいました。」と回答している(陳述書面072)。
これらの証言に照らせば、危機管理産業展2009において展示した商品を作成したデータが、甲第17号証資料20であるとの証人藤長氏の記憶は、不確かなものと評価するのが相当である。

(オ)上記ア(エ)dの証人藤長氏の報告及び甲第17号証資料22によれば、広仁社が平成20年8月7日、東高金商株式会社にドッグタグプレートを410個発注し、仕入れを行ったことについて認めることができるが、この資料22からは、この材料を使って製品を製作したことについては不明であり、そのことを客観的に示す証拠は見受けられない。
また上記ア(エ)eの証人藤長氏の報告によれば、広仁社が平成20年8月7日、東高金商株式会社に410個発注し仕入れたドッグタグプレートを用いて製作したものが、危機管理産業展2009において展示された製品であるとしているところ、ドッグタグプレートの納品された時期が平成20年8月7日であるのに対して、危機管理産業展2009の開催時期が平成21年10月21日〜23日であることに照らして、危機管理産業展2009において展示された甲第1号証の2資料4、5に映っている製品が、このドッグタグプレートを用いて製作されたものであるとしても不可能なものとはいえないが、その納品時期と危機管理産業展2009の開催時期が1年以上経過していることに照らせば、そのことが具体的に根拠付けられるものということはできない。

(カ)上記ア(エ)fの証人藤長氏の報告によれば、危機管理産業展2009において展示したブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダーは、甲第1号証の2資料1に映る「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」ではなく、甲第17号証資料20の図柄5が印刷されたものであるということになるが、甲第1号証の2資料4及び5に映るドッグタグ製品が図柄5であることは、この資料4及び5から明確に看て取れるものとはいえず、甲第17号証資料20の図柄5が緑色の背景に黒っぽい鷲の図柄であることからすれば、甲第1号証の2資料5において、鷲の図柄が背景に比べて暗く映っている事と整合性はないから、危機管理産業展2009において甲第17号証資料20の図柄5が印刷されたドッグタグ製品が展示されていたと認めることはできない。

(キ)上記ア(ウ)のとおり、甲第3号証には「鷲のデザインの図柄に背景が白色のドッグタグキーホルダー」が掲載されているところ、上記ア(エ)fのとおり、証人藤長氏の報告によれば、甲第3号証の「ドッグタグキーホルダー」製品が甲第1号証の2資料1に映っているドッグタグキーホルダー製品と同一の図柄のものであり、請求人の審判請求書28頁の3行目〜6行目における主張によれば、同ドッグタグキーホルダー製品は、「広仁社が製造販売していた製品」であり、「上記カタログに掲載された商品は、両面とも白色の再帰反射材を仕様したものである」ということである。
このように、証人藤長氏より当初展示品であるとして受領した甲第1号証の2資料1に映る「図柄イ’」のドッグタグキーホルダーとよく似た絵柄の「ドッグタグ製品」を当時広仁社が取り扱っていることからすれば、甲第1号証の2資料4及び5において撮影されたドッグタグ製品である公然実施品1−イが、両面白色の再帰反射材を仕様としたものである製品である可能性を否定することはできない。
なお、甲第1号証の2資料1において撮影された製品は、危機管理産業展2009において展示したものとは異なる商品であって(甲第17号証7.(1))、その商品が公然実施品1−イと同じ構造であると認めるに足りる証拠はないから、その商品が通常光下で撮影した場合に図柄が視認できず、フラッシュを用いて撮影した場合に図柄が表示されるものであったとしても、危機管理産業展2009において展示したとする公然実施品1−イが同様のものであるということはできない。

ウ 当審の判断
以上のとおり、請求人の提出した証拠からは、公然実施事実1−イにおいて展示されたとする公然実施品1−イは、「通常光下では見えないが、フラッシュ光では暗い背景色にそれよりも白い鷲柄の図柄が視認されるドッグタグキーホルダー」製品であると一応認めることができる。
しかしながら、公然実施品1−イがどのような図柄の商品であるのかや、その構造が具体的にどのようなものであるのかは、甲第1号証の2資料4及び5の画像からは不明であると言わざるを得ないから、公然実施品1−イが、本件特許発明であると認めることはできない。
したがって、公然実施品1−イがどのように展示されていたかについて検討するまでもなく、本件特許発明が公然実施事実1−イにより、公然知られたものとなったものということはできない。

エ 請求人は、広仁社は、平成20年4月22日に東高金商株式会社からドッグタグ用プレート等の材料を仕入れ(甲第1号証の2資料3)、公然実施品1−イを製造したと主張している(審判請求書20頁等)が、2010年(平成22年)頃に広仁社が、甲第3号証に記載のドッグタグ製品を掲載し、販売していたという事実に照らせば、仕入れたドッグタグ用プレート材料を用いて甲第3号証に記載のドッグタグ製品、すなわち、両面ともに白い反射材を用いた製品を製造したとしても不合理はないこと、ドッグタグプレート材料の仕入れ時期と、「キワライトフリートマーキング#17093 ブラックPタイプ」の納品時期が6年程度はなれていることからすれば、この時期に仕入れたドッグタグ用プレート材料により、黒色反射材の上に透光性インクで印刷を行ったドッグダグ製品を製造したことが、これらの事実から裏付けられているものということはできない。

オ 請求人は、公然実施品1−イの図柄イが甲第17号証資料20(証人藤長氏のいう図柄5)にあること、そして、当該資料20には、公然実施品1−ロの図柄ロ(証人藤長氏のいう図柄7)があること、公然実施品1−イ、1−ロ及び2−ハは一連のブラックレフピカ商品という製品であることから、公然実施品1−イが公然実施品1−ロと同じ時期に製造されたものであり、同じ構造を有するものであると主張している(請求人陳述要領書(1)8頁、21頁、24、25頁、請求人陳述要領書4頁)。
しかしながら、公然実施品1―イ及び1−ロに関する証拠や甲第1号証の2資料4及び5の画像からは、「ブラックレフピカ」という商品名が用いられていたことを直接に示すものはなく、広仁社がレフピカという商品を取り扱っているからといってブラックレフピカという名称の商品の存在が直接裏付けられるわけではない。
また、証人藤長氏が証人尋問において、「もうこれじゃ会社は成り立たないので、これをメインで売ろうなんて気はさらさら僕には」(陳述書面165)、「このドッグタグとか、こういったおもちゃみたいなもので会社を成り立たせられるとは思っていなかった」(陳述書面171)などとの証言からは、広仁社がドッグタグをメインで売ろうとは考えていなかったこととなる。
なお、公然実施事実2に関して、証人藤長氏が報告書においてエフケイワークスに公然実施品2の商品を譲渡したことを示す資料として説明される甲第1号証の2資料6には、項目に「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」が用いられているものと認められるが、後述のとおり、公然実施品2−ハが具体的にどのような商品であったのかは不明と言わざるを得ないことに照らせば、甲第1号証の2資料6で用いられている「ブラックレフピカ」という名称が、黒色反射材に透光性の印刷層を設けた一連の商品の存在を根拠づけるものということもできない。
そして、証人藤長氏が、当初危機管理産業展2009に出展したブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダーであるとした図柄イ‘のドッグタグタグキーホルダーは、甲第1号証の2資料1からみて、背景は無色で、黒っぽい鷲や文字が印刷された図柄を備えるものであるのに対して、公然実施品1−ロとして提出した甲第1号証の2資料2の図柄ロのドッグタグボールチェーンネックレスは、背景が赤色で豹の図柄が無地の部分で形成されていることから、図柄の構成自体が大きく相違しており、また甲第3号証のドッグタグ製品のように、図柄イ’とよく似た絵柄であるものの、黒色の再帰反射材に図柄を印刷した製品ではないものも存在していたことに照らせば、請求人のいう、図柄イの公然実施品1−イや図柄ロの公然実施品1−ロが、同じ構造の一連の製品であるとか、ブラックレフピカとの商品名の一連の商品として取り扱われていたものと認めるに足りないというべきである。
なお、証人藤長氏は、証人尋問において「ブラックレフピカという商品」について、当初は「切り文字」であり、「消防団の名前をヘルメットに貼って、昼間は黒く見えるんですけど、車のヘッドライトや懐中電灯とか写真を撮ったりしたときは赤く光ったり青文字になったりというもの」であった旨証言しており(陳述書面035〜037)、その証言によれば、「ブラックレフピカ」という名称が付いた商品が必ず「黒色の再帰反射材上に透光性の印刷による図柄が形成された商品」であることを意味するものと認めることは相当でない。
証人藤長氏は、公然実施品1−イ、1−ロ及び2−ハが一連のブラックレフピカドッグタグ製品として同じ構造の物である旨報告している(甲第17号証の報告事項1.)。
しかしながら、証人藤長氏が公然実施事実1−イについて、当初展示していた商品としていた図柄イ’の商品から、甲第17号証資料20のデータにある図柄イが印刷された商品であると訂正し、さらに、その後、甲第17号証資料20のデータとは異なるデータで印刷されるものであると訂正した過程に照らせば、証人藤長氏の危機管理展2009において展示したドッグタグ商品の作成経緯についての記憶は定かであるとはいえない。
また、証人藤長氏は、証人尋問において、甲第1号証の2資料4及び5において公然実施品1−ロが写っていないのは、公然実施品1−ロは人気があったため配布されて残っておらず、人気の無かった鷲の図柄のものが残って展示されていたことが理由である旨証言している(陳述書面081〜082)。
これに対して、上記ア(イ)cのとおり、甲第1号証の3の訂正報告書において甲第1号証の2資料4及び5のデータプロファイルであるとする甲第1号証の3資料14によれば、甲第1号証の2資料4及び5は、平成21年10月21日の9時28分に撮影されたものということになるが、危機管理産業展2009の会期が平成21年10月21日〜23日(甲第1号証の3資料11)であることに照らせば、甲第1号証の2資料4及び5は、展示会開催日初日の展示会の開始前あるいは開始後まもない時間に撮影されたものであると認められる。
そうすると、証人藤長氏の証言は、甲第1号証の2資料4及び5の撮影時期との関係で矛盾のないものということはできないから、証人藤長氏公然実施品1−ロが危機管理産業展2009において展示されていたという記憶は定かでないと評価するほかない。
また、証人藤長氏は、「公然実施品1−ロを1個だけ確保しておいた」とも証言している(陳述書面082)が、甲第17号証の「7.」(1)では、「図柄7(豹のイラスト)の「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」は、「危機管理産業展2009においてサンプル配布をした後に弊社に残った余りを提供したものです。 お送りしたものが実際に展示されていたものか、展示用として保管されていたものかはわかりません」と説明しており、その内容が異なること、証人藤長氏の報告及び証言によれば、甲第1号証の2資料4及び5に撮影されている鷲の図柄をはじめその他の図柄(証人藤長氏は、証人尋問において、鷹の羽のものと、ライオンのものと、ヒョウのもので、私の名前が付いているものは私自身が首からつり下げていたと証言している(陳述書面0173))の商品を展示していたにもかかわらず、それらの商品については確保されていないのは不自然と言わざるを得ないことから、証人藤長氏の公然実施品1−ロについての記憶も定かでないと評価するほかない。
なお、請求人は、広仁社は図柄イを印刷したブラックレフピカキーホルダーを現在保有していなかったと主張している。
以上のとおりであるから、証人藤長氏の証言によっても、公然実施品1−イが、公然実施品1−ロと同じ構造を持つものであると認めることができない。

カ 請求人は、甲第1号証の2資料5に映る「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」の図柄は、鷲の図柄及び文字部分が一致すること、広仁社が保管する印刷元データとして他に考えられるものがないことから、甲第17号証資料20で提出した図柄であると考えていたが、特許庁からの指摘を受けて、10年以上前のことを改めて思い返すと、危機管理産業展2009の当時、印刷作業を担当していた従業員が、実際の製作物を確認しながら色調整を行っていた可能性もあり、改めて社内を探索したところ、甲第1号証の2資料5に映る「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」と似た色の商品現物が社内から発見された旨述べている(甲第35号証)ことを根拠に、公然実施事実1−イにかかる公然実施品の図柄は、「フルカラーの図柄5、又は同図柄から色調整を行った図柄」であると主張している(請求人陳述要領書(2)3頁)。
しかしながら、そもそも公然実施品1−イが甲第17号証資料20を用いて作成されたものと認めるに足りないことは上述のとおりである。
また、証人藤長氏の証言や請求人の主張によれば、印刷作業を担当していた従業員が、実際の製作物を確認しながら色調整を行っていた可能性もあり、改めて社内を探索したところ、甲第1号証の2資料5に映る「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」と似た色の商品現物が社内から発見されたものであるとするが、危機管理産業展2009において展示されたとするドッグタグキーホルダーの図柄が、甲第17号証資料20にある図柄の色と異なる図柄であるとすれば、それが、具体的にどのような色であったのかを示すものはなく、その図柄の色は不明と言わざるを得ない。
そして、上述のとおり、公然実施品1−イは、鷲の模様は、背景に比べて明るいものであるところ、甲第17号証資料20の図柄5(図柄イ)は、鷲の図柄は背景に比べて暗い色で作成されており、仮にこれが透光性インクで形成されているとすると、鷲の図柄が背景よりも暗く視認されるものとも考えられるところ、被請求人の提出する乙第3号証によれば、フラッシュ光下において、[1]緑色背景部分、[2]イエロー20%・ブラック15%の図柄部分、及び、[3]イエロー100%・ブラック85%の文字ないし図柄部分は、ほぼ同程度の明るさで映っている。
一方、請求人は、当初、背景色は、甲第1号証の2資料5の拡大写真に映る鷲様の図柄と、図柄イの鷲の図柄を重ね合わせると、両者は一致し、公然実施事実1−イにかかる公然実施品の図柄が「図柄イ」であることは明らかである旨主張(請求人口頭審理陳述要領書12頁)するとともに、甲第1号証の2資料5に写っている図柄の背景が緑色である(同21頁等)と主張していたものを、その後、図柄の背景を色調整をしたものであると、その主張を変更していることに照らしても、甲第1号証の2資料5に写る映像からは、その図柄の色彩等が、甲第17号証資料20の図柄であるとも、その色を調整した図柄であるとも判別することができないというべきである。
以上のことに照らせば、甲第1号証の2資料5において写っている公然実施品1−イの図柄が甲第17号証資料20の図柄5(図柄イ)であると認めるには足りず、また、請求人のいうようにその図柄を色調整したものであったとすれば、当該色や図柄が具体的にどのようなものであったかは不明であるといわざるを得ない。

(2)公然実施事実1−ロについて
公然実施事実1−ロに関する証拠について
広仁社が「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」という商品(請求人が「黒色の再帰反射材面に図柄ロ(「請求人回答書」の3頁の公然実施事実1−ロの項目において示した図柄のこと)を印刷したもの」と主張する商品(「公然実施品1−ロ」)を平成21年10月21日から23日に「危機管理産業展2009」において出品して、譲渡のために展示したことに関して、次のものがある。
(ア)甲第1号証の2
甲第1号証の2の証人藤長氏の回答書の別紙には、上記(1)ア(ア)で摘示した回答内容が記載されており、それによれば、危機管理産業展において展示された公然実施品1−ロが、甲第1号証の2資料2に示されている商品であることが報告されており、通常光で撮影した場合に黒色で図柄が表示されず、フラッシュを用いて撮影した場合に、背景が赤色で白色の豹の形とその下に「Red panther」の文字が配置された図柄(「図柄ロ」)が表示されるドッグタグボールチェンネックレス商品が映っている。

(イ)甲第2号証
甲第2号証は、請求人 株式会社 SO−KENの代表取締役 浅尾孝司氏(以下、「請求人浅尾氏」という。)の広仁社製品の観察結果についての報告書であるところ、上記甲第1号証の2資料2に映っている商品の現物を入手して、その断面を観察したものである。
当該報告書の「1 弊社は、代理人弁護士である森本純先生から、株式会社広仁社が森本純先生に提供くださった「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェーンネックレス」(株式会社広仁社の回答書資料1、2に映っている商品の現物)を受領しました。」、「2 受領した商品を拝見しますと、「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」は、通常光下では黒い背景に明度の低い黄色の図柄が見えますが、光を照射してみると、白い背景に明度の高い黄色の図柄が見えるようになるというものであり、「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」は、通常光下では明度の低い赤色の背景に黒色の図柄が見えますが、光を照射してみると、明度の高い赤色の背景に白色の図柄が見えるようになるというものでした。」、「4 弊社は、森本純先生の指示により、「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」のゴム枠を外し、商品側面から印刷層をデジタル顕微鏡で観察しました。その結果、3に述べたとおり、受領した商品が黒色の再帰反射材の上に透光性のインクで印刷を行ったものであることが確認できました。撮影機材、撮影の様子、及び撮影結果につき、別紙に写真を添付して報告いたします。」と報告されている。
甲第2号証の2頁の<ネームタグ>の2枚の画像のうち左側の「通常撮影」の文字の下の画像には、「明度の低いオレンジに近い赤色の背景に黒い豹の形が配置された図柄」のドッグタグ ボールチェンネックレスが映っており、右側の「フラッシュ撮影」の文字の下の画像には「明度の高いオレンジに近い赤色の背景に白い豹の形とその下に「Red panther」の文字が配置された図柄が表示されるドッグタグ ボールチェンネックレスが映っている。
また、同頁の<撮影結果>の画像のうち「断面拡大」の画像には、表面にオレンジに近い赤色の層とその下に黒色の層に白っぽい点状のものがちりばめられた層が映っている。

(ウ)甲第28号証
請求人が後に提出した甲第28号証請求人浅尾氏の報告書(広仁社商品の観察結果について2)には、「4 上記のとおり「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」の片面の観察結果のみを報告したことにより、このたびの審理事項通知書では、弊社の観察結果と株式会社広仁社が報告する商品構造とが異なるものではないか、とのご指摘がありました。 この点、弊社が森本先生から受領し、観察結果をご報告した商品は、株式会社広仁社が報告する商品構造、すなわち、「アルミニウム製のドッグタグプレートの片面に、黒色の再帰反射材に透光性インクでフルカラー印刷を行ったものを貼り付け、他方の片面に、白色の再帰反射材に透光性インクでフルカラー印刷を行ったものを貼り付けた商品」に間違いありません。」、「5 これを明らかにするため、森本先生から受領した「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」のゴム枠を外し、商品側面から印刷層をデジタル顕微鏡で観察した結果を、改めて両面ともご報告いたします。 別紙のとおり。商品の片面は黒色の再帰反射材の上に透光性のインクで印刷を行ったものであること、他方の面は白色の再帰反射材であることが確認できます。なお、白色再帰反射材を使用した面の観察結果に透光性のインクの印刷層が確認できないのは、受領した「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」の白色再帰反射材を使用した面の周辺端部には印刷層がなく無地であることによります。」との報告内容が記載されている。
甲第28号証の「■ネームタグ断面図」の1/2頁の<ネームダグ:裏面>の2枚の画像のうち左側の「通常撮影」の文字の下の画像には、「黒色の背景にうすい黒色の豹の形が配置された図柄」のドッグタグ ボールチェンネックレスが映っており、右側の「フラッシュ撮影」の文字の下の画像には「明度の高いオレンジに近い赤色の背景に白い豹の形とその下に「Red panther」の文字が配置された図柄が表示されるドッグタグ ボールチェンネックレスが映っている。
また、2/2頁の<撮影結果:断面>の画像のうち「拡大(約1600倍)」の「<断面:裏面>」の画像には、表面にオレンジに近い赤色の層とその下に黒色の層に白っぽい点状のものがちりばめられた層が映っている。

(エ)甲第17号証は、証人藤長氏が請求人代理人あてに提出した報告書であるところ、当該報告書には、「6.弊社は、5.で東高金商株式会社様から仕入れたドッグタグプレートを用いて製作した「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグボールチェンネックレス」を「危機管理産業展2009」(平成21年10月21日〜23日)に展示しました。また、来場者の皆様にサンプル配布もいたしました。 以前にお送りした展示会の写真(資料4、5)には、図柄7(豹のイラスト)を印刷した「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」が映っていませんが、これは、来場者の皆様にサンプル配布をしていた際、配布の都度展示品を補充しておりましたので、撮影時にはちょうど図柄7(豹のイラスト)を印刷した「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」が展示されていなかったものと思われます。 写真にこそ映っておりませんが、弊社が『危機管理産業展2009』(平成21年10月21日〜23日)に図柄7(豹のイラスト)を印刷した「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」を展示していたことは間違いありません。 なお、上記5で制作した商品には日本赤十字社や文京区向けに作ったものもありますが、図柄5(翼のイラスト)及び図柄7(豹のイラスト)は、特定の得意先のための商品ではなく、『危機管理産業展』をはじめ不特定多数のお客様に向けて提案するために制作したものであり。『危機管理産業展2009』で転じ・配布したことに間違いありません。」、「7.(1)弊社が森本先生にお送りした、図柄7(豹のイラスト)の「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」は、6.の『危機管理産業展2009』においてサンプル配布をした後に残った余りを提供したものです。 お送りしたものが実際に展示されていたものか、展示用として保管されていたものかはわかりませんが、実際に展示をおこなっていた「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」と全く同じ構造・図柄を有するものであることは間違いありません。」との報告内容が記載されている。

イ 各証拠から認められる事実について
(ア)上記ア(ア)ないし(ウ)によれば、請求人代理人が証人藤長氏から受領した公然実施品1−ロは、通常光下では、撮影条件により「通常光で撮影した場合に黒色で図柄が表示され」ないか、「明度の低いオレンジに近い赤色の背景に黒い豹の形が配置された図柄」が表示されるか、又は、「黒色の背景にうすい黒色の豹の形が配置された図柄」が表示され、「フラッシュ撮影」の文字の下の画像には「明度の高いオレンジに近い赤色の背景に白い豹の形とその下に「「Red panther」の文字が配置された図柄が表示されるドッグタグ ボールチェンネックレスであって、その面が、表面にオレンジに近い赤色の層とその下に黒色の層に白っぽい点状のものがちりばめられた層を備えるものであると認めることができる。
してみると、公然実施品1−ロは、黒色の再帰反射材の上に透光性のオレンジに近い赤色の印刷がされたドッグタグ ボールチェンネックレスであると一応認めることができる。

(イ)甲第1号証の2資料2からは、資料2に映る公然実施品1−ロが、展示会に展示されていたものであることや、いつ、どのように製造されたものであるかやその構造などは明らかでない。
また、上記(1)ア(ア)のとおり、甲第1号証の2資料4及び5の画像のいずれにも公然実施品1−ロは映っておらず、甲第1号証の2資料4及び5によっては、公然実施品1−ロが展示されていたものということはできない。
なお、上記ア(エ)の甲第17号証の報告内容によれば、広仁社が危機管理産業展2009に図柄7を印刷したブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレスを展示していた、すなわち、公然実施品1−ロを展示していたとのことであるが、公然実施品1−ロを展示した事実や公然実施品1−ロがいつ製造されたものであるのかを客観的に示す証拠はない。
証人藤長氏は、甲第1号証の2資料4及び5において公然実施品1−ロが写っていないのは、公然実施品1−ロは人気があったため配布されて残っておらず、人気の無かった鷲の図柄のものが残って展示されていたことが理由である旨証言している。
これに対して、上記(1)アの(イ)のとおり、甲第1号証の2資料4及び5のデータプロファイルであるとする甲第1号証の3資料14及び15によれば、「撮影日時 2008/10/21 9:28」であり、その設定が1年ずれていたとされることからすれば、甲第1号証の2資料4及び5は、平成21年10月21日の9時28分に撮影されたものということになるが、危機管理産業展2009の会期が平成21年10月21日〜23日(甲第1号証の3 資料11)であることに照らせば、甲第1号証の2資料4及び5は、展示会開催日初日の展示会の開始前あるいは開始後まもない時間に撮影されたものであると認められる。
そうすると、証人藤長氏の証言は、甲第1号証の2資料4及び5の撮影時期との関係で矛盾のないものということはできないから、証人藤長氏公然実施品1−ロが危機管理産業展2009において展示されていたという記憶は定かでないと評価するほかない。
また、証人藤長氏は、「公然実施品1−ロを1個だけ確保しておいた」とも証言しているが、甲第17号証の7.(1)では、「図柄7(豹のイラスト)の「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」は、「危機管理産業展2009においてサンプル配布をした後に弊社に残った余りを提供したものです、お送りしたものが実際に展示されていたものか、展示用として保管されていたものかはわかりません」と説明しており、その内容が異なること、証人藤長氏の報告及び証言によれば、甲第1号証の2資料4及び5に撮影されている鷲の図柄をはじめその他の図柄(証人藤長氏は、証人尋問において、義仁の名前のついた図柄のものは証人が首からつり下げていたと証言している)の商品を展示していたにもかかわらず、それらの商品については確保されていないのは不自然と言わざるを得ない。
また、証人藤長氏の証言が矛盾のないものとした場合には、公然実施品1−ロは、展示前に既に配布が終了して存在しないか、あるいは、展示まもなく配布が終了してなくなったということになり、その展示は短時間ということになり、そのような短時間にすぎない公然実施品1−ロの展示が、請求人がいうようにその構造を理解できる態様でされたものと直ちに認めることはできない。

ウ 当審の判断
以上のとおり、請求人の提出した証拠からは、公然実施事実1−ロにおいて展示されたとする公然実施品1−ロが、「黒色の再帰反射材の上に透光性のオレンジに近い赤色の印刷がされたドッグタグ ボールチェンネックレスである」と一応認めることができる。
しかしながら、請求人の提出した証拠からは、その公然実施品1−ロが危機管理産業展2009において展示されたものと認めるに足りる証拠は提出されていないから、本件特許発明と公然実施品1−ロとを対比するまでもなく、請求人の主張する公然実施事実1−ロによって、本件特許発明が本願特許に係る出願前に公然実施されたものであるとすることはできない。

(3)公然実施事実2について
公然実施事実2に関する証拠について
広仁社が「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダ」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」という商品である公然実施品2−ハを平成23年10月21日〜23日に株式会社エフケイワークスに販売したことに関して、次の証拠がある。

(ア)甲第1号証の2の証人藤長氏の回答書(以下、この「ア」の項では、「回答書」という。)の別紙には、「(6)キーホルダー、ボールチェンネックレスのいずれも、株式会社エフケイワークス様(東京都大田区大森北1−25−8赤羽ビル4F)に販売しました。当時の納品書(資料6 NO002008の1行目にブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー、4行目にブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレスと記載があります。)、請求書控え(資料7)、入金履歴(資料8)によれば、販売は平成23年11月30日に行ったということで間違いありません。」、「(7)・・・株式会社エフケイワークス様へ販売したキーホルダーとボールチェンネックレスの表示材であるブラックレフピカは、納品書(資料9)と請求書(資料10)の紀和化学工業株式会社様より購入した黒色の再帰反射材「キワライト フリートマーキング#17093 ブラック」を用いました。」との回答内容が記載されている。
a 甲第1号証の2資料6について
回答書において、株式会社広仁社が株式会社エフケイワークスに平成23年10月19日〜21日に「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラック レフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」を販売した事実(以下、「公然実施事実2」ともいう。)を示す資料として説明している甲第1号証の2資料6は、4枚の納品書からなるものである。
1枚目の納品書は、左上に「株式会社エフケイワークス様」、その下に「納品書」と記載され、その右上には「2011年11月30日(水)」の日付とその下に「No 002006」、さらにその下に住所と「株式会社広仁社」と記載がされ、その下に「件名 あ〜るえす様 レフピカTSG201−UFT 11月29日・30日分納品分」、項目、単価、数量、値段の記載欄には、納品に係る商品等が記載され、その合計金額は、165,081円と記載されているものである。
2枚目の納品書は、左上に「株式会社エフケイワークス様」、その下に「納品書」と記載され、その右上には「2011年10月21日(金)」の日付とその下に「No 002007」、さらにその下に住所と「株式会社広仁社」と記載がされ、その下に「件名2011年10月19日〜21日 危機管理産業展 パッチ販売分」、項目、単価、数量、値段の記載欄には、納品に係る商品等が記載され、その合計金額は、37,968円と記載されているものである。
3枚目の納品書には、左上に「株式会社エフケイワークス様」、その下に「納品書」と記載され、その右上には「2011年10月21日(金)」の日付とその下に「No 002008」、さらにその下に住所と「株式会社広仁社」との記載がされ、その下に「件名2011年10月19日〜21日 危機管理産業展 ドッグタグ販売分」、項目、単価、数量、値段の記載欄には、項目「■ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー 表=ブラック反射/裏=レフピカ」、単価「800」、数量「4」、値段「3,200」、「■ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス 表=ブラック反射/裏=レフピカ」、単価「900」、数量「1」、値段「900」との記載がされており、合計金額は4,305円と記載されているものである。
4枚目の納品書は、左上に「株式会社エフケイワークス様」、その下に「納品書」と記載され、その右上には「2011年9月27日(火)」の日付とその下に「No 002009」、さらにその下に住所と「株式会社広仁社」との記載がされ、その下に「件名特注 日の丸 エルカーズパッチ 7650」、項目、単価、数量、値段の記載欄には、納品に係る商品等が記載され、その合計金額は、9,450円と記載されているものである。

b 甲第1号証の2資料7について
回答書において、公然実施事実2を示す資料として説明している甲第1号証の2資料7は、上部に「請求書」、「2011年11月30日」と記載され、その下の左に住所とともに「株式会社エフケイワークス様」、その右に住所とともに「株式会社広仁社」と記載され、その下に「下記のとおりご請求申し上げます
小計 206,480円+消費税:10,324円=税込合計金額 216,804円 お振込先:さわやか信用金庫(コード1310) 戸越銀座支店(店番104) 普通 口座番号 カ)コウジンシャ」と記載され、表の「伝票No 納品日 件名 金額」の欄に、伝票No「002009」、納品日「11.09.27」、件名「特注 日の丸 エルカーズバッチ 7650」、金額「¥9,000」、伝票No「002007」、納品日「11.10.21」、件名「2011年10月19日〜21日 危機管理産業展 パッチ販売分」、金額「¥36,160」、伝票No「002008」、納品日「11.10.21」、件名「2011年10月19日〜21日 危機管理産業展 ドッグタグ販売分」、金額「¥4,100」、伝票No「002006」、納品日「11.11.30」、件名「あ〜るえす様 レフピカTSG210-UFT 11月29日・30日納品分」、金額「¥157,220」と記載されているものである。

c 甲第1号証の2資料8について
回答書において、公然実施事実2を示す資料として説明している甲第1号証の2資料8は、同資料7の「お振込先」に記載されているさわやか信用金庫の株式会社広仁社の普通預金口座の通帳の写しであり、3枚目には、「D23-12-28 振込入金※カ)エフケイワークス 216,804 ¥・・・」との記載がある。

(イ)甲第17号証は、証人藤長氏が請求人代理人あてに提出した報告書であるところ、当該報告書には次の報告事項が記載され、その内容を裏付けるものとして資料が添付されている。
a 甲第17号証の「8.」について
「8.弊社は、平成23年10月21日に(令和元年8月16日に送らせていただいた回答書では、平成23年11月30日としておりましたが、資料7の読み間違いですので、訂正いたします。)、株式会社エフケイワークス様に対して、「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」を4つ、「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」を1つ販売しております。
このときに使用したイラストデータは資料23(平成23年7月11日作成、資料24)であり、図柄5(翼のイラスト)や図柄7(豹のイラスト)のものではありません。資料23の中断にあるデザインが黒色の再帰反射材に印刷をするためのイラストであり(図柄・文字がピンク色になっていますが、これは白色印刷を行うときに使用するデータ上の指定色です。)、下段にあるデザインが白色の再帰反射材に印刷をするためのイラストです。
株式会社エフケイワークス様は、この商品を『危機管理産業展2011』(平成23年10月19日〜21日)に出品しておりました(資料25、26)。資料7にある販売数よりも多くの商品が写真には映っておりますが、これは株式会社エフケイワークス様が弊社からの委託販売を行っておりましたので、実際に売れた商品だけ購入いただいたという経緯によります。
もっとも、資料7にあります「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」、「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」というのは、アルミニウム製のドッグタグプレートの片面に、黒色の再帰反射材に透光性インクでフルカラー印刷を行ったものを貼り付け、他方の片面に、白色の再帰反射材に透光性インクでフルカラー印刷を行ったものを貼り付けた商品のことをいい、これ以外に同じ商品名のものはございません。その意味で、「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」の販売を行ったと、ご報告させていただいた次第です。」と証人藤長氏が報告をしている。

b 甲第17号証資料25について
同報告において株式会社エフケイワークスが「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラック レフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」商品を危機管理産業展2011に出品していた事実を示すものとして説明している甲第17号証資料25には、通常撮影された画像であり、画像中の赤丸線で囲っている領域には「白い背景に黒色のドクロ」と「黒い背景に白色のドクロ」の図柄のドッグタグキーホルダー及びドッグタグボールチェンネックレスが映っている。
なお、画像中には「Lcars」、「レフピカ」などの文字が映っているものの、展示会の名称や会社名を示すものは映っていない。

c 甲第17号証資料26について
甲第17号証資料26は、「CIMG0808のプロパティ 撮影日時 2011/10/21 10:02」と表示されたデータのプロパティ表示画面を印刷したものであるが、甲第17号証資料26には、同資料25のプロパティであることが直接読み取れる手がかりはない。
甲第17号証資料25のプロパティデータであるとすれば、同資料25が平成23年10月21日に撮影されたものであるということができる。

d 甲第17号証資料23について
同報告において平成23年10月21日に株式会社エフケイワークスに販売した「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー」及び「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス」に使用したイラストデータであると説明する甲第17号証資料23には、上段に左から背景が赤、紫、うす青、緑、黄色、白にピンクのドクロ柄及び白色の背景に黒のドクロ柄のドッグタグの画像が4列並んであり、各列のドッグタグの図柄は上から各ドクロ柄の下にAB、A、B、Oの文字を有するものが表示され、その下に「横48mm 縦30mm ブロック移動横588mm、縦150mm」との文字が記載され、その下に中段に左から背景が赤、紫、うす青、緑、黄色、白にピンクのドクロ柄のデータが各2つずつ8列並んでいるものが、2組あり、下段には、白色の背景に黒のドクロ柄のデータが12個8列並んでいるものが2組ある。

e 甲第17号証資料24について
甲第17号証資料24には、「110702FKWドッグタグ_ブラックレフピカ・・・5.2MB 変更日:2011年7月11日月曜日 18:14」、「一般情報: 種類:Adobe Illustrator 書類 サイズ:5、179、859バイト(ディスク上の5.2MB) 場所:Volumes/FujinagaRAID/広仁社の仕事/広仁社のクライアント/紀和化学/ブラック反射の裁判関連/ブラックレフピカのaiデータ 作成日:2010年2月22日月曜日 19:18 変更日:2011年7月11日月曜日 18:14・・・」と表示されたデータのプロパティ表示画面を印刷したものである。

イ 各証拠から認められる事実について
(ア)甲第1号証の2資料6の3枚目の「No 002008」の納品書には、広仁社が株式会社エフケイワークスに危機管理産業展 販売分として平成23年10月21日付けで「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー(表=ブラック反射/裏=レフピカ)」を4個、「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス(表=ブラック反射/裏=レフピカ)」を1個納品したことが記載されており、甲第1号証の2資料7の請求書の表には、同資料6の4枚の納品書に対応する項目等が記載され、その振込金額として、合計金額216,804円が記載されており、広仁社から株式会社エフケイワークスに対して、甲第1号証の2資料6の納品書に対応する請求がなされたこと、同資料8から平成23年12月28日に、株式会社エフケイワークスから広仁社に216,804円の振り込みによる入金があったことが認められるから、これらの証拠によれば、広仁社が株式会社エフケイワークスに平成23年10月21日付けで、「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー(表=ブラック反射/裏=レフピカ)」、「単価800」を4個、「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス(表=ブラック反射/裏=レフピカ)」、「単価900」を1個販売したものと一応認めることができる。

(イ)上記ア(イ)a甲第17号証の「8.」の報告内容からは、広仁社が平成23年10月21日付けで株式会社エフケイワークスに危機管理産業展販売分として販売したとする公然実施事実2において、販売した公然実施品2−ハは、甲第17号証資料23を用いて製造したものであり、同資料25に映っている株式会社エフケイワークスが『危機管理産業展2011』(平成23年10月19日〜21日)に出品していた商品であるということである。
しかしながら、上記(ア)の甲第1号証の2資料6ないし8からは、公然実施品2−ハがどのような商品であるのかは不明である。
また、甲第1号証の2資料6は、伝票番号No002006の日付が2011年11月30日、No002007の日付が2011年10月21日、No002008の日付が2011年10月21日、No002009の日付が2011年9月27日となっており、日付の新しいものが少ない番号となっている。
納品書は、通常、日付順位番号が振られるものであることからすると、この点は不自然といわざるを得ない。
請求人は、この点に関しては、当時広仁社の事務処理が滞っており、甲第1号証の2資料6の伝票が全てまとめて起票されたことが原因であり、広仁社は納品日付の新しいものから起票作業を行った結果であると説明している(請求人陳述要領書(1)7頁)。
また証人藤長氏は、証人尋問において「納品書の番号は得意先ごとにつくっていること、エフケイワークスには、専用伝票をつくっていることから、専用の番号がずっとならんで振られると証言しており、甲第1号証の3資料17の伝票番号のNo.000129と甲第1号証の2資料6のNo002009からすれば1800ぐらいの数の納品書が出たことになる旨証言している(陳述書面140〜146)。
この証言によれば、甲第1号証の3資料17の伝票番号がNo.000129で日付が2010年4月25日であることから、それから約17ヶ月後の2011年9月27日までには、エフケイワークス株式会社への納品伝票が1800枚以上発行されたと計算されることとなり、1月平均で100枚の納品伝票が起票されていたものと推認される。
これに対して、甲第1号証の2資料6の伝票番号は通番で連続しているから、2011年9月27日から2011年11月30日の2月間には、エフケイワークス株式会社への納品伝票は、都合4枚発行されたものと認められ、証人藤長氏の証言との間に不整合があるというべきである。
なお、請求人は甲第17号証資料25において示されるドッグタグ商品は、黒色再帰反射材を用いたものではない旨説明(請求人回答書7頁(ケ))しており、当初この資料25に映っているドッグタグ商品は、公然実施品2−ハを撮影したものではないと認識していたが、当審からの審尋に対して、甲第17号証資料25のドッグタグ商品が公然実施品2−ハである(請求人陳述要領書(1)7頁<審理事項通知書第4−2−(2)について>)と訂正したものである。
以上のことに照らせば、甲第17号証資料25が公然実施品2−ハが展示された様子を撮影したものと認めることは相当でない。

(ウ)同報告によれば甲第17号証資料25には公然実施品2−ハが映っているとされているが、上記ア(イ)bのとおり、この資料25は、通常撮影された画像であり、そこには、「白い背景に黒色のドクロ」と「黒い背景に白色のドクロ」の図柄のドッグタグキーホルダー及びドッグタグボールチェンネックレスが映っているが、通常光下で撮影された画像において黒く見える背景や白く見える背景が印刷された地色が見えているのか、再帰反射材の色が直接見えているのかは区別することができないし、フラッシュ光下でそれらの図柄がどのように見えるのかは明らかでないから、これらの商品が再帰反射材を備えるものであること、また、再帰反射材上に透光性の印刷がされているかは不明であると言わざるを得ない。
また、甲第17号証資料25には、「Lcars」、「レフピカ」などの文字が映っているものの、展示会の名称や会社名を示すものは映っておらず、この資料25が、株式会社エフケイワークスの展示ブースであるかや危機管理産業展2011の展示ブースであるかは、この資料25の画像からは不明である。かえって、「Lcars」、「レフピカ」などの文字があわせて展示されていることからすれば、広仁社の展示ブースであると解したとしても不合理はない。証人藤長氏の証人尋問での証言においても「広仁社で出展したんですが、エフケイワークスさんに手伝ってもらって、エフケイワークスさんにブースをお貸しして、出展してもらったものになります。」(陳述書面099)「登録は広仁社が危機管理産業展に出していますけど、表向きはエフケイワークスさんのブースという形にしています。」(陳述書面100)と証言していることにも整合する。
当該証言によれば、甲第17号証資料25の展示ブースは広仁社が出展し、エフケイワークス株式会社に手伝ってもらったものであって、広仁社が出展者であったことになるが、自己の出展ブースで自己の商品を他者に委託販売するということは不自然なものと言わざるを得ないし、そもそも、株式会社エフケイワークスが危機管理産業展2011において公然実施品2−ハを展示していたとの報告内容と整合しないものといえる。
以上のとおり、甲第17号証資料25には、危機管理産業展2011の展示であることを示すものは映っておらず、当該データのプロパティから、危機管理産業展2011の開催日である平成23年10月21日に撮影されたものであることが推認できるのみであるから、この資料25に映るドッグタグ製品が、公然実施品2−ハであるとか、この資料25により当該ドッグタグ製品が危機管理産業展2011において、株式会社エフケイワークスにより展示されていた事実を認めることができない。

(エ)上記ア(イ)aの報告によれば、公然実施品2−ハは、甲第17号証資料23のデータを用いて作成したものであるとのことであるが、甲第17号証資料24は、上記ア(イ)eのとおり、「データプロパティ表示画面」が示されているところ、そこには、「データ作成日が2010年2月22日月曜日、変更日として2011年7月11日と表示されている。
この甲第17号証資料24が、同資料23のデータプロパティであることを示す手がかりはないものの、甲第17号証資料24が同資料23のデータプロパティであるとすると、甲第17号証資料23のデータは少なくとも2011年7月11日に変更されたものとして存在していたものであると一応認めることができる。
そうすると、公然実施品2−ハが平成23年7月11日にそのデータを用いて作成されたものであり、その後の平成23年10月19日に販売されたと推認することに不合理はない。
しかしながら、証人藤長氏は、証人尋問において、審判長からの「株式会社エフケイワークスに販売したブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー、どくろのマークのものですけれども、これはいつ製造されたものなんでしょうか」との質問に対して、「2011年の危機管理産業展の前に作っています。たぶん、エフケイワークスさんのフクモトさんから、要するにこちらの若いデザイナーたち、もういなくなっちゃったデザイナーたちが作ったものではちょっと扱いたくないとのことだったので、彼が自分でデザインして企画したものをこちらに示して、それを作らせていただいたことになっているものと、その作ったデータを見れば、その作った時期が分かります。」との証言をしており(陳述書面168)、その証言によれば、甲第17号証資料23のデータは、2011年の危機管理産業展の前に株式会社エフケイワークスの社員が自分でデザインしたものということになるが、当該データが2010年2月22日に作成されたものであることと整合するものとはいえない。

ウ 当審の判断
上記イのとおりであるから、甲第1号証の2資料6については、その内容に矛盾がないものとはいえないものの、それらの資料に基づけば、広仁社が、平成23年10月21日〜23日に株式会社エフケイワークスに、公然実施品2−ハ、すなわち、「ブラックレフピカ ドッグタグ キーホルダー(表=ブラック反射/裏=レフピカ)」を4個、「ブラックレフピカ ドッグタグ ボールチェンネックレス(表=ブラック反射/裏=レフピカ)」を1個販売したものと一応認めることができる。
しかしながら、当該公然実施品2−ハが具体的にどのようなものであったかを客観的に示す証拠は見出せず、請求人の提出した甲第1号証の2資料6ないし8、甲第17号証資料23ないし26及び証人藤長氏の証言等からは、公然実施品2−ハがどのような製品であったのかは不明であると言わざるを得ない。
してみると、本件特許発明が公然実施事実2によって公然知られたものとなったものということはできない。

2 無効理由2について
(1)甲第4号証に記載された事項について
ア 甲第4号証には次の記載がある。
(ア)甲第4号証は、米国FLEXcon社が発行・頒布したカタログである。

(イ)甲第4号証の表紙には、「REFLECTAmark (R) Reflective Pressure-Sensitive Film Series」と記載されている(「(R)」は丸R。)。

(ウ)甲第4号証の2頁目(表紙を除く。以下同じ。)には、「Fleet/Vehicle - Fleet Graphics」、「Fleet Marking Grade Reflective Pressure-Sensitive Film - Sheet Form」との表題の下、フィルムに文字や図柄が印刷されたステッカー等が消防自動車様の車両に貼付された様子を撮影した写真が掲載されるとともに、「色が選べます:黄、緑、青、赤、オレンジ及び黒」との記載及び「従来の印刷手法に加え、溶剤及びUVインクジェットに対応しています」との記載がある。

(エ)甲第4号証の4頁目には、「Fleet Marking Grade [FMG]」との表題の下、黒色を含む7色の商品サンプルが貼付され、また、「Fleet Marking Grade [FMG]」の用途として「vehicle graphics」との語が用いられている。

イ 甲第37号証(上記ア(エ)の商品サンプルにフラッシュ光を照射して撮影した写真)
には、黒色の商品サンプルが肌色様に見える様子が撮影されている。

ウ 上記ア(イ)及び(ウ)の「Reflective ... Film」との用語に加え、上記ア(エ)及びイのとおり通常光下では黒色であった商品サンプルがフラッシュ光下では肌色様に見えることから、甲第4号証に貼付された黒色の商品サンプルは、「黒色の再帰反射フィルム」であると認めるのが相当である。また、上記ア(ウ)の「従来の印刷手法に加え、溶剤及びUVインクジェットに対応しています」との記載は、甲第4号証の黒色の再帰反射フィルムに溶剤インクジェット印刷を施すことが可能であることを意味するものと解され、溶剤インクジェット印刷が施されれば、黒色の再帰反射フィルムの上に印刷層が形成されることは明らかであるから、甲第4号証には「溶剤インクジェット印刷を施すことにより印刷層を形成することができる黒色の再帰反射フィルム」が記載されているといえる。

エ そこで進んで、甲第4号証に「溶剤インクジェット印刷を施すことにより透光性の印刷層を形成することができる黒色の再帰反射フィルム」が記載されているかにつき検討する。
(ア)上記ア(ウ)のとおり、印刷層の形成に関し、甲第4号証には「従来の印刷手法に加え、溶剤及びUVインクジェットに対応しています」との記載があるのみであり、溶剤インクジェット印刷が非透光性のインクを用いたものに限られるとの記載又は示唆はみられない。

(イ)ここで、溶剤インクジェット印刷の意義等に関し、下記の各証拠には、それぞれ次の記載がある。
A 甲第18号証(全日本印刷工業組合連合会(教育・労務委員会)編「印刷技術」(平成20年7月発行))「カラー印刷では基本的にCMYKの4色によって原稿の色を再現している。この4色をプロセスセットインキと呼び、このうちCMYは透明インキとなっているので刷り重ねで印刷した場合、下のインキの色が一緒になり2次色、3次色が発色する。」

B 甲第19号証(高橋恭介監修「インクジェット技術と材料」(平成19年5月24日発行))「インクの色剤としては染料、顔料を挙げることができる。・・・染料は媒体である水に可溶であり、分子状態でインク媒体中に存在している。個々の分子が置かれた環境はほぼ同一であるため、吸収スペクトルは非常にシャープであり、透明性の高い印刷物が得られる。・・・従来、インクジェットプリンタ用色材としては、上記特徴とインク設計が容易であるということで、染料が用いられた。」

C 甲第20号証(Janet Best編「Colour design Theories and applications」(2012年発行))「CMYK:印刷業界で画像の再現に使用される減法混色プロセスであって、純度の高い透光性プロセスカラーインク(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)が網点様に重ね刷りされて、様々な色及びトーンを表現する。」

D 甲第21号証(特開2012−242608号公報)「【0033】ここで、第1の装飾層20aを形成する印刷インクとしては、光透過性を有し、屋外使用にも耐えられる有機溶剤系のアクリル樹脂インク、例えば、市販のエコソルインクMAXのESL3−CY、ESL3−MG、ESL3−YE、ESL3−BK(それぞれローランド社製)を用いることが望ましい。そして、かかる第1の装飾層20aを形成するには、例えば、インクジェットプリンタなどのインクジェット装置に、印刷インクをセットし、これを微滴化して表面フィルム12h上の所定場所に、吹き付け処理して行なうことが好ましい。」

(ウ)上記(イ)によれば、本件出願前に、溶剤インクジェット印刷においては、透光性(透明性)を有するCMYのインクが広く用いられていたものと認められるから、仮に、本件出願前に、溶剤インクジェット印刷において非透光性のインクが用いられることがあったとしても、溶剤インクジェット印刷に対応しており、かつ、前記アのとおり、溶剤インクジェット印刷が非透光性のインクを用いたものに限られるとの記載も示唆もみられない甲第4号証の記載に接した当業者は、甲第4号証は透光性を有するインクを用いた溶剤インクジェット印刷に対応しているものと容易に理解したといえる。

オ 以上によると、甲第4号証には「溶剤インクジェット印刷を施すことにより透光性の印刷層を形成することができる黒色の再帰反射フィルム」の発明(以下、「甲4発明」という)が記載されているものと認められる。

カ この点に関し、被請求人は、甲4発明の用途(トラックを始めとする車両に貼付されるステッカー等)に照らすと、甲4発明に透光性の印刷層を設けることは考えられないと主張する。
確かに、前記ア(ウ)のとおり、甲第4号証には消防自動車様の車両を撮影した写真が掲載されているが、車両に貼付して用いる黒色の再帰反射フィルムの上に透光性の印刷層を形成すると甲4発明の目的が阻害されるものと認めるに足りる証拠はないし、また、甲第4号証には甲4発明の用途が車両に貼付して用いるステッカー等に限られるとする記載も示唆もないから、被請求人の上記主張を採用することはできない。
なお、被請求人の請求人が追加する甲第21号証、甲第22号証の1及び甲第22号証の2は、その立証趣旨からして審判請求の理由を追加するものであり要旨変更である旨主張する。
しかしながら、被請求人の主張は、本件特許発明が甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるという審判請求書記載の無効理由について、その判断の前提となる本件特許に係る出願前の当業者の技術水準を示すための証拠を提出するものであって、無効理由2自体を変更するものとはいえないから、請求の理由の要旨を変更するものとはいえない。

(2)本件特許発明と甲4発明との対比
ア 本件特許発明と甲4発明とを対比する。
上記(1)オのとおり、甲4発明は、「溶剤インクジェット印刷を施すことにより透光性の印刷層を形成することができる黒色の再帰反射フィルム」の発明である。
してみると、本件特許発明と甲4発明とは、次の点で、一致又は相違する。

(一致点)
「入射光をそのまま光源方向へ再帰反射する黒色の再帰反射材を備え、前記再帰反射材の表面に印刷により形成された透光性の印刷層を備えることができる表示媒体」

(相違点)
印刷層に関し、本件特許発明が「印刷により形成された図柄からなる透光性の印刷層」を備えるのに対し、甲4発明は、透光性の印刷層を備えることはできるものの、図柄の印刷を実際に施して「図柄からなる透光性の印刷層」を形成していない点。

イ 相違点についての検討
上記相違点について検討する。
(ア)前記(1)アのとおりの甲第4号証の記載によれば、甲4発明は、図柄からなる印刷層を形成することを想定していると認めることができる。

(イ)さらに、下記の各証拠には、それぞれ次の記載等がある。
A 甲第63号証(インターネット上の電子掲示板(uksignboards)への投稿記事(2011年2月15日))
「私は、反射フィルムの研究をしており、反射フィルムが大好きです。私は、いつも反射フィルムの実験をしていて、反射フィルムを使用した新しいアイデアを顧客に提案することに努めています。今回のバンは、これを反映する必要がありました・・・。これは、白く光る黒色反射材でして、…私は、その制作を実行することにしました。・・・私のバンは黒いので、黒色のフィルムに印刷すれば、微妙な虹色や透明感のあるデザインになり、夜に車の中からバンを見たときや、見る人の真後ろから太陽光がバンに当たったときに、きれいに発色することを期待していたのですが、
見事にそのとおりになりました。」
また、甲第63号証には、文字、図柄等が印刷された反射フィルムが車両に貼付されている様子を撮影した写真が掲載されている。

B 甲第65号証(フェイスブックへの投稿記事(2012年7月5日、同月6日及び2015年5月7日))
「このアイテムは、夜間には黒く見える反射性のある黒い素材に印刷されています。反射材の黒にフラッシュや強い光を当てると、実際にデザインが浮かび上がります。写真は、基本的に、左がフラッシュなしの状態、右がカメラにフラッシュを付けて撮影したものです。」
また、甲第65号証には、黒色に写った素材を撮影した写真と素材上の文字、図柄等が明るく光って見える様子を撮影した写真を並べたものなどが掲載されている。

C 甲第66号証の1(ユーチューブへの投稿記事(2015年1月7日))
「当社のステルスグラフィックス(又はゴーストグラフィックス)パッケージは、黒の反射性カットビニールとデジタル印刷されたグラフィックスで作られ、耐久性とUV保護のためにラミネート加工されています。反射性の視認性を備えつつ、昼間には落ち着いた外観に見えます。現在のデカールスキームをステルス車両に改装しましょう。新しいデザインにすることをお手伝いします。」
また、甲第66号証の1には、文字、図柄等が印刷された反射性カットビニールが車両に貼付されている様子を撮影した動画が掲載されている。

(ウ)上記(イ)によると、黒色の再帰反射フィルムに文字、図柄等からなる印刷層を形成することは、本件出願前の周知技術であったと認められる。以上に加え、上記(ア)のとおり甲4発明自体が図柄からなる印刷層を形成することを想定していることも併せ考慮すると、本件出願前の当業者は、甲4発明及び上記周知技術に基づいて、甲4発明に図柄からなる印刷層を形成するとの構成に容易に想到し得たものと認めるのが相当である。
そして、相違点の構成とすることよって奏する効果も、当業者の予測し得る範囲内の事項である。

(4)よって、本件特許発明は、甲4発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 審決の予告に対する応答について
令和5年1月10日付けの審決の予告に対して、指定期間内に、被請求人から訂正の請求等はなかった。


第6 むすび

以上のとおり、本件特許発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1に係る本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-04-25 
結審通知日 2023-04-28 
審決日 2023-05-23 
出願番号 P2015-246271
審決分類 P 1 123・ 112- Z (G09F)
P 1 123・ 121- Z (G09F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 佐藤 海
松田 直也
登録日 2018-11-30 
登録番号 6440319
発明の名称 図柄表示媒体  
代理人 鈴木 佑一郎  
代理人 乾 裕介  
代理人 本阿弥 友子  
代理人 森本 純  
代理人 堀内 一成  
代理人 中岡 起代子  
代理人 窪田 英一郎  
代理人 相原 正  
代理人 今井 優仁  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ