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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1402511
総通号数 22 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-10-31 
確定日 2023-08-31 
事件の表示 特願2022−528282「電流センサ保持構造、電気機器及びインバータ装置」拒絶査定不服審判事件〔令和4年12月22日国際公開、WO2022/264728〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2022年(令和4年)5月16日を国際出願日とする日本語特許出願であって(国内優先権 2021年6月14日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。なお、2021年6月14日を、以下「優先日」という。

令和4年 6月21日付け:拒絶理由通知書
同年 7月25日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月21日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年10月 4日 :原査定の謄本の送達)
同年10月31日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 本願発明
本願の請求項1〜4に係る発明は、令和4年10月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は次に特定されるとおりである。

「【請求項2】
電流センサと嵌合するセンサ収容部と、
前記嵌合時に前記電流センサの上面と当接して当該電流センサを係止する上フックと、
前記嵌合時に当該電流センサの下面と当接して当該電流センサを係止する下フックと、を有する樹脂成型品からなり、
奥行長さが前記上フックの長さよりも短い前記電流センサの本体部には、当該上フックと嵌合することで当該本体部と前記センサ収容部との嵌合を補助する補助嵌合部が突設され、
前記上フックの長さは、前記本体部の奥行長さと前記補助嵌合部の突出長さとから成る奥行長さと同等である電流センサ保持構造。」


第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、理由1及び理由3の概要は、次のとおりである。

1 理由1(明確性
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。

2 理由3(進歩性
本願発明は、優先日前に日本国内又は外国において発行された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開2020−128935号公報


第4 当審の判断
1 理由1 明確性について
(1) 本願発明は「電流センサ保持構造」に関するものであり、「電流センサと嵌合するセンサ収容部と、
前記嵌合時に前記電流センサの上面と当接して当該電流センサを係止する上フックと、
前記嵌合時に当該電流センサの下面と当接して当該電流センサを係止する下フックと、を有する樹脂成型品からな」ることが特定されている。
一方、請求項2には、「奥行長さが前記上フックの長さよりも短い前記電流センサの本体部には、当該上フックと嵌合することで当該本体部と前記センサ収容部との嵌合を補助する補助嵌合部が突設され」ること(以下「記載A」という。)が記載されているが、当該記載は、「電流センサ」の構成を特定するものであって、「電流センサ保持構造」を特定するものではない。
すなわち、前記記載Aのうち、「奥行長さが前記上フックの長さよりも短い前記電流センサ」との記載は、「電流センサ」の「奥行長さ」を特定するものであり、また、「前記電流センサの本体部には、当該上フックと嵌合することで当該本体部と前記センサ収容部との嵌合を補助する補助嵌合部が突設され」との記載は、「電流センサの本体部」に「当該上フックと嵌合することで当該本体部と前記センサ収容部との嵌合を補助する補助嵌合部が突設され」ることを特定するものであるから、前記記載Aは「電流センサ」の構成のみを特定する記載である。
また、本願発明を特定する「前記嵌合時に前記電流センサの上面と当接して当該電流センサを係止する上フック」について、前記記載Aにより、上フックと、電流センサの本体部に突設された補助嵌合部とが嵌合するものとはなるが、上フックの長さは補助嵌合部を含む電流センサの奥行き長さによってのみ決まり、補助嵌合部の有無が上フックの長さに何ら影響を与えるものではないから、補助嵌合部が突設されることは、上フックの構造について何ら特定するものではない。そうすると、前記記載Aは、「電流センサ保持構造」を特定するものとはならない。

(2) 前記記載Aに関して、明細書及び図面には、以下に摘記するとおり、実施形態2としての記載がある。

「【0042】
[実施形態2]
実施形態1の電流センサ保持構造1を図7(d)に示した奥行長さa2の短い小型の電流センサ2に適用する場合、上フック11の長さL2を奥行長さa2に合わせて短くする必要がある。
【0043】
同図(a)〜(c)のような長さL1及び肉厚tの上フック11と奥行長さa1が長さL1と同等の電流センサ2とが嵌合する場合、上フック11の根元部のひずみ率e1は、以下の式(3)で示される。
【0044】
e1=(3・δ・t)/(2・L12) …(3)
ひずみ率e1は、式(3)に基づき、たわみ量δ及び肉厚tを小さくすれば小さくなる。
【0045】
しかしながら、電流センサホルダー3への電流センサ2の組み付け作業の容易性及び上フック11の機械的強度を考慮すると、上フック11のたわみ量δと肉厚tをある程度確保する必要がある。
【0046】
同図(d)に示された長さL1よりも短い奥行長さa2の短い電流センサ2が奥行長さa2と同等の長さL2の上フック11と嵌合する場合、長さL2の上フック11の根元部のひずみ率e2は、以下の式(4)から明らかなように、長さL1の上フック11の根元部のひずみ率e1よりも大きくなる。
【0047】
e2=(3・δ・t)/(2・L22) …(4)
そこで、実施形態2の電流センサ保持構造1は、図8,9のように、奥行長さa2が上フック11(上フック本体部13)の長さL3よりも短い電流センサ2の本体部20のハウジング部27において、上フック11と嵌合することで本体部20とセンサ収容部10との嵌合を補助する補助嵌合部28が突設される。
【0048】
補助嵌合部28は、ハウジング部27を構成する樹脂の成形によりハウジング部27と一体的に設けられる。また、電流センサ2のハウジング部27が上フック11と嵌合した際の上フック11とハウジング部27及び補助嵌合部28との当接面の奥行長さa3は、上フック11の長さL3と同等に設定される。
【0049】
図8,9を参照して実施形態2の電流センサ保持構造1の作用について説明する。
【0050】
電流センサ2の本体部20がセンサ収容部10と嵌合すると、下フック12だけでなく上フック11も電流センサ2と当接し、センサ収容部10の位置決め部17と上フック11と下フック12により電流センサ2が係止される。このとき、電流センサ2の補助嵌合部28は上フック11(上フック本体部13、係止本体部14)と嵌合することで、電流センサ2(本体部20)とセンサ収容部10との嵌合が補助される。
【0051】
以上の実施形態2の電流センサ保持構造1によれば、電流センサ2の本体部20(ハウジング部27)に補助嵌合部28が設けられたことで、上フック11の長さL3をより長く確保できる。したがって、電流センサ2とセンサ収容部10との嵌合時に上フック11の根元部のひずみ率e2を低減でき、図7(d)の奥行長さa2の短い小型の電流センサ2に適用する場合でも図9の上フック11の破損に対する安全率が向上する。そして、上フック11の長さL3を長く確保できることで、実施形態1の効果に加えて、上フック11自体の変形が容易となり、前記嵌合時に同じたわみ量を発生させるために必要な電流センサ2を押す力が低減し、前記組み立て作業性も向上する」

「【図7】

【図8】

【図9】



これらの明細書及び図面の記載からすると、電流センサ保持構造を奥行長さの短い小型の電流センサに適用する場合、上フックの長さを奥行長さに合わせて短くする必要があるが、そうすると電流センサとセンサ収容部との嵌合時に上フックの根元部のひずみ率が大きくなるという問題が生じるため、電流センサの本体部に補助嵌合部を突設することで、上フックの長さをより長く確保でき、電流センサとセンサ収容部との嵌合時に上フックの根元部のひずみ率を低減できるとしたものである。すなわち、電流センサの本体部に補助嵌合部を突設するという電流センサの特定をしたものであって、電流センサ保持構造の特定をしたものではない。電流センサ保持構造の上フックの長さは、そのような電流センサにあわせたものとはなるが、電流センサが電流センサ保持構造のセンサ収容部に嵌合するものであるから、そのような長さとなることは自明のものであって、電流センサ保持構造を特定するものとはならない。また、上フック自体の変形が容易となり、前記嵌合時に同じたわみ量を発生させるために必要な電流センサを押す力が低減し、前記組み立て作業性も向上する、との効果も、前記電流センサの特定によって奏されるものである。
してみると、本願の明細書及び図面の記載を参照しても、前記記載Aについては、本願発明の「電流センサ保持構造」を特定するものではない。

(3) 請求人は、審判請求書において、請求項2の「上フックの長さ」が本件補正により「前記上フックの長さは、前記本体部の奥行長さと前記補助嵌合部の突出長さとから成る奥行長さと同等である」と補正されたことで、「電流センサ保持構造の上フック」は「補助嵌合部が設けられた電流センサの本体部と嵌合するもの」であることが明確となっている、と主張する。
しかし、「上フックの長さ」については、「前記嵌合時に前記電流センサの上面と当接して当該電流センサを係止する上フック」について、「電流センサ」が前記記載Aにより特定された場合の構成を記載したに過ぎない。この「上フックの長さ」について、例えば、上フックの長さが10mmである「電流センサ保持構造」について、本体部の奥行長さが7mmであり補助嵌合部の長さが3mmである「電流センサ」であっても、本体部の奥行長さが10mmであり補助嵌合部が設けられない「電流センサ」であっても、いずれも嵌合することができることからみても、前記記載Aは「電流センサ保持構造」を特定するものではない。
また、「上フック」は、「前記嵌合時に前記電流センサの上面と当接して当該電流センサを係止する上フック」であるから、「上フック」が「係止する」対象である「電流センサ」に「補助嵌合部が設けられ」ることは、電流センサについて特定をするものとは言えるものの、「電流センサ保持構造」を特定するものではない。
そうすると、請求人の主張を採用することはできない。

(4) 以上のとおり、前記記載Aについては、実質的に本願発明を特定するものではなく、前記記載Aにより特定される本願発明の範囲が不明確となる。そして、前記記載Aに関して、当業者の優先日当時における技術常識を基礎としても、第三者において本願発明の特定に誤解が生じかねず、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得る。そうすると、本願発明について、特許請求の範囲の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。

(5) したがって、本願発明は、不明確である。
また、請求項2の記載を引用する、請求項3及び4それぞれに係る発明も、不明確である。


2 理由3 進歩性について
(1) 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された引用文献1(特開2020−128935号公報)には、以下の記載がある。なお、下線は、当合議体が付したものであり、後記ウにおいて引用発明の認定に直接用いるところに付してある。

(ア) 【0001】〜【0005】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサ及びサービスプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転機を駆動源とする車両(電気自動車やハイブリッド自動車等)においては、電源回路に高電圧回路が用いられており、その電源回路を介した回転機への安定した給電や回転機からの安定した電力回生を行うべく、電源回路を流れる電流が監視されている。その電流の監視には、電源回路上の導電部材(電線等)に流れる電流を測定する電流センサが用いられる。電流センサは、電流検出位置に配置された導電部材の電流に応じた磁束を発生させる磁気コア部材と、この磁気コア部材の磁束に応じた信号を出力する磁気検出素子(ホール素子等)と、を備える(下記の特許文献1)。車両においては、その電流の検出結果に基づいて、電源回路に関わる部品のメンテナンス作業等が実施される。その電源回路上には、作業を始める前に電源回路を遮断し、作業を終えた後で電源回路を復帰させるサービスプラグが設けられている(下記の特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−109518号公報
【特許文献2】特開2017−16915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電流センサは、電源回路にて、例えば、電線の配索経路上や電気接続箱に設置されている。しかしながら、電流センサを電線の配索経路上に設置した場合には、その電線の屈曲等で電線が電流検出位置からずれてしまうと、電流の検出精度を低下させてしまう可能性がある。また、電流センサを電気接続箱に設置した場合には、その電気接続箱にリレー等の磁界の発生源が存在していると、その発生した磁界によって電流の検出精度を低下させてしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、電流の検出精度の安定化を図り得る電流センサ及びサービスプラグを提供することを、その目的とする。」

(イ) 【0012】〜【0017】、【図1】〜【図4】
「【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る電流センサ及びサービスプラグの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
[実施形態]
本発明に係る電流センサ及びサービスプラグの実施形態の1つを図1から図11に基づいて説明する。本実施形態では、電流センサをサービスプラグに設ける。このため、以下においては、サービスプラグの説明を進めつつ、その中で電流センサの説明を行う。
【0014】
図1から図4に示す符号1は、本実施形態のサービスプラグを示す。また、図1から図4に示す符号40は、本実施形態の電流センサを示す。
【0015】
サービスプラグ1は、回転機を駆動源とする車両(電気自動車やハイブリッド自動車等)の高電圧の電源回路上に設置される。そして、このサービスプラグ1は、その電源回路に関わる部品のメンテナンス作業等を実施する際に電源回路を遮断させ、かつ、そのメンテナンス作業等を終えた後で電源回路を復帰させるために利用される。このため、このサービスプラグ1は、電源回路を閉回路と開回路との間で切り替え可能なものとして構成する。
【0016】
サービスプラグ1は、着脱自在なプラグ部品10とプラグ受け部品20とを備える(図1から図4)。このサービスプラグ1においては、プラグ部品10とプラグ受け部品20とが嵌合状態のときに電源回路が閉回路となり、プラグ部品10とプラグ受け部品20とが抜去状態のときに電源回路が開回路となる。
【0017】
プラグ部品10は、プラグ側端子11と、このプラグ側端子11を収容及び保持するプラグハウジング12と、を備える(図3及び図4)。一方、プラグ受け部品20は、プラグ受け側端子21及び端子ハウジング22を備えるコネクタ23と、このコネクタ23を収容及び保持するプラグ受けハウジング24と、を備える(図3及び図4)。プラグ側端子11とプラグ受け側端子21は、その内の一方を雌端子形状に形成し、その内の他方を雄端子形状に形成する。この例示では、プラグ側端子11を雄端子形状に形成し、プラグ受け側端子21を雌端子形状に形成している。また、プラグハウジング12は、プラグ受けハウジング24の内方に挿入嵌合されるものとして形成する。」








(ウ) 【0023】〜【0026】、【図6】
「【0023】
プラグ受けハウジング24は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形する。このプラグ受けハウジング24は、その内方に、一方のコネクタ23を収容し且つ保持する第1コネクタ収容室24aと、他方のコネクタを収容し且つ保持する第2コネクタ収容室24bと、プラグ部品10のプラグハウジング12が挿入嵌合されるプラグ収容室24cと、が形成されている(図2)。
【0024】
サービスプラグ1は、そのプラグ部品10とプラグ受け部品20との間に、プラグ部品10のプラグ受け部品20への挿入嵌合作業と、プラグ部品10のプラグ受け部品20からの抜去作業と、を補助するレバー部材30を備える(図1から図4)。この例示では、所謂LIF(Light Insertion Force)レバーとしてのレバー部材30をプラグハウジング12とプラグ受けハウジング24との間に配置し、サービスプラグ1をLIFコネクタの如く構成している。
【0025】
このサービスプラグ1は、プラグ受け側端子21の電流を検出し、その検出結果を電子制御装置等(図示略)に送信する電流センサ40を備える。電流センサ40は、プラグ側端子11とプラグ受け側端子21とが嵌合接続されているときにプラグ受け側端子21に流れる電流の検出を行う。この電流センサ40は、その電流の検出を行う電流検出部品50を備える(図2、図3及び図6)。
【0026】
ここで、この電流センサ40は、プラグ受け部品20に設ける。例えば、電流センサ40は、プラグ受け部品20の構成部品の1つとして設けてもよい。この場合には、例えば、電流検出部品50を金型内に収めてプラグ受けハウジング24をインサート成形すればよい。よって、この場合、後述するコア収容部61は、プラグ受けハウジング24の一部分として形成される。また、電流センサ40は、プラグ受け部品20とは別の部品として用意し、このプラグ受け部品20に取り付けてもよい。ここでは、プラグ受け部品20とは別の部品として用意された電流センサ40を例示している。よって、この例示の電流センサ40は、電流検出部品50が収容される筐体60を備えている(図2、図3及び図6)。」





(エ) 【0033】〜【0034】、【図7】〜【図9】
「【0033】
筐体60は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形する。この筐体60は、その一部として、コア主体51aが収容されるコア収容部(第1収容部)61を有している(図1から図3及び図6)。また、この筐体60は、磁気センサ52と回路基板53と出力端子54とが収容される出力側収容部(第2収容部)62を有している(図1から図3及び図6)。出力側収容部62には、電子制御装置側の相手方コネクタが嵌合接続されるコネクタ部62aが形成されている。
【0034】
この筐体60は、プラグ受けハウジング24に固定される。この例示の筐体60は、プラグ受けハウジング24のセンサ収容室24d(図1から図4)に収容され且つ保持される。よって、筐体60とプラグ受けハウジング24との間には、複数箇所に筐体保持構造が設けられている。この例示では、コア収容部61とプラグ受けハウジング24との間に第1筐体保持構造71を1つ設け、出力側収容部62とプラグ受けハウジング24との間に第2筐体保持構造72を2つ設けている(図7から図9)。」








(オ) 【0039】〜【0042】
「【0039】
第2筐体保持構造72は、出力側収容部62に設けた第1出力側係止体72aと、プラグ受けハウジング24に設け、第1出力側係止体72aに係止させることによって出力側収容部62をプラグ受けハウジング24に収容状態で保持させる第2出力側係止体72bと、を備える(図2、図7及び図8)。
【0040】
例えば、この第2筐体保持構造72は、第1出力側係止体72aと第2出力側係止体72bの内の少なくとも一方が爪部を有し、その爪部を相手方に係止させるものとして構成する。
【0041】
この例示では、第1出力側係止体72aを爪部として形成している(図2及び図8)。この例示の第1出力側係止体72aは、出力側収容部62の外周面から突出させている。一方、この例示の第2出力側係止体72bは、可撓性を持つ片持ちの片体状で、かつ、第1出力側係止体72aが挿入され、この挿入された第1出力側係止体72aを周縁部で係止することが可能な貫通孔72b1を有するものとして形成する(図2及び図8)。
【0042】
第2出力側係止体72bは、自由端側に作用させた力で自由端と固定端との間を撓ませることができる。このため、この第2筐体保持構造72においては、出力側収容部62をセンサ収容室24dへと収容する際に、第1出力側係止体72aが第2出力側係止体72bの片体部分を乗り越えて貫通孔72b1に入り込む。更に、この第2筐体保持構造72においては、出力側収容部62をセンサ収容室24dから抜き取る際に第2出力側係止体72bを撓ませることによって、第1出力側係止体72aと貫通孔72b1の周縁部との間の係止状態を解除させることができる。」

イ 引用文献1から読み取れる事項
(ア) 引用文献1の図7〜9に示される、筐体60と、センサ収容室24dとの関係は、筐体60がセンサ収容室24dに嵌合することが見て取れる。

(イ) 引用文献1の図7及び8から、2つの「第2筐体保持構造72」は、筐体60の出力側収容部62の対向する面に対応してそれぞれ設けられることが見て取れる。

(ウ) 引用文献1に記載された「第1出力側係止体72a」は、「出力側収容部62の外周面から突出させている」ものであり、「第2出力側係止体72b」は「可撓性を持つ片持ちの片体状で、かつ、第1出力側係止体72aが挿入され、この挿入された第1出力側係止体72aを周縁部で係止することが可能な貫通孔72b1を有するもの」であるが(【0041】)、図7〜9を見ると、この「第2出力側係止体72b」と「第1出力側係止体72a」とが係止した状態において、「第2出力側係止体72b」は、第1出力側係止体72aが突出している「出力側収容部62の外周面」に当接していることが見て取れる。

引用発明の認定
前記アにおいて摘記した事項及び前記イの引用文献1から読み取れる事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「回転機を駆動源とする車両(電気自動車やハイブリッド自動車等)の高電圧の電源回路上に設置されるサービスプラグ1のプラグ受け部品20であって、(【0015】、【0016】)
プラグ受け部品20は、プラグ受け側端子21及び端子ハウジング22を備えるコネクタ23と、このコネクタ23を収容及び保持するプラグ受けハウジング24と、を備え、(【0017】)
プラグ受けハウジング24は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形され、(【0023】)
プラグ受け側端子21の電流を検出し、その検出結果を電子制御装置等に送信する電流センサ40をサービスプラグ1のプラグ受け部品20に設け、(【0025】、【0026】)
電流センサ40は、電流検出部品50が収容される筐体60を備え、(【0026】)
筐体60がセンサ収容室24dに嵌合するものであり、(認定事項イ(ア))
筐体60は、磁気センサ52と回路基板53と出力端子54とが収容される出力側収容部(第2収容部)62を有し、(【0033】)
筐体60は、プラグ受けハウジング24のセンサ収容室24dに収容され且つ保持され、出力側収容部62とプラグ受けハウジング24との間に第2筐体保持構造72を2つ設けており、(【0034】)
2つの第2筐体保持構造72は、出力側収容部62の対向する面に対応してそれぞれ設けられ、(認定事項イ(イ))
第2筐体保持構造72は、出力側収容部62に設けた第1出力側係止体72aと、プラグ受けハウジング24に設け、第1出力側係止体72aに係止させることによって出力側収容部62をプラグ受けハウジング24に収容状態で保持させる第2出力側係止体72bと、を備え、(【0039】)
第1出力側係止体72aは、出力側収容部62の外周面から突出させ、第2出力側係止体72bは、可撓性を持つ片持ちの片体状で、かつ、第1出力側係止体72aが挿入され、この挿入された第1出力側係止体72aを周縁部で係止することが可能な貫通孔72b1を有するものとして形成され、(【0041】)
第2出力側係止体72bと第1出力側係止体72aとが係止した状態において、第2出力側係止体72bは、第1出力側係止体72aが突出している出力側収容部62の外周面に当接している、(認定事項イ(ウ))
サービスプラグ1のプラグ受け部品20。」

(2) 本願発明と引用発明の対比
ア 対比分析
以下、請求項2の記載に沿って、本願発明と引用発明を対比する。

(ア)a 引用発明の「電流検出部品50が収容される筐体60を備え」る「電流センサ40」は、本願発明の「電流センサ」に相当する。

b 引用発明において、「筐体60は、プラグ受けハウジング24のセンサ収容室24dに収容され且つ保持され」るものであり、「筐体60がセンサ収容室24dに嵌合する」ものであるから、引用発明の「電流センサ40」の筐体60と嵌合して収容し、且つ保持する「センサ収容室24d」は、本願発明の「電流センサと嵌合するセンサ収容部」に相当する。

(イ) 引用発明の「2つの第2筐体保持構造72」のうち、1つに着目すると、出力側収容部62のある一面に第1出力側係止体72aが設けられており、プラグ受けハウジング24に設けられた第2出力側係止体72bは、可撓性を持つ片持ちの片体状で、貫通孔72b1を有するものとして形成され、該貫通孔72b1に挿入された第1出力側係止体72aを周縁部で係止することで、出力側収容部62をプラグ受けハウジング24に収容状態で保持させるものであって、「第2出力側係止体72b」は、第1出力側係止体72aを係止しているときには、出力側収容部62のある一面に当接したものとなって、係止している。また、「第2出力側係止体72b」は、「可撓性を持つ片持ちの片体状」であるから、「フック」と言いうるものである。
してみれば、本願発明の「前記嵌合時に前記電流センサの上面と当接して当該電流センサを係止する上フック」と、引用発明の「2つの第2筐体保持構造72」のうちの1つの「第2出力側係止体72b」は、「前記嵌合時に前記電流センサのある一面と当接して当該電流センサを係止するフック」である点で共通する。

(ウ) 引用発明の「2つの第2筐体保持構造72」のうち、前記(イ)で着目したものとは別の1つに着目すると、出力側収容部62の前記ある一面と対向する面に第1出力側係止体72aが設けられており、他の点については前記(イ)で示したことと同様である。
そうすると、本願発明の「前記嵌合時に当該電流センサの下面と当接して当該電流センサを係止する下フック」と、引用発明の「2つの第2筐体保持構造72」のうちの別の1つの「第2出力側係止体72b」は、「前記嵌合時に前記電流センサのある一面と対向する面と当接して当該電流センサを係止するフック」である点で共通する。

(エ) 引用発明の「プラグ受けハウジング24」は、「合成樹脂等の絶縁性材料で成形」されている。
また、引用発明の「プラグ受けハウジング24」は、前記(ア)〜(ウ)のとおり、「センサ収容室24d」及び「2つの第2筐体保持構造72」を有するものであり、電流センサ40をなす筐体60を収容し、且つ保持するものである。
そうすると、引用発明の「プラグ受けハウジング24」は、本願発明の「樹脂成型品からな」る「電流センサ保持構造」と、「樹脂」で成形された「電流センサ保持構造」である点で共通する。

イ 本願発明と引用発明の一致点及び相違点
上記アの対比分析の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

(ア) 一致点
「電流センサと嵌合するセンサ収容部と、
前記嵌合時に前記電流センサのある一面と当接して当該電流センサを係止するフックと、
前記嵌合時に当該電流センサのある一面と対向する面と当接して当該電流センサを係止するフックと、を有する樹脂で成形された電流センサ保持構造。」である点。

(イ) 相違点
a 相違点1
本願発明においては、「ある一面」及び「ある一面と対向する面」をそれぞれ「上面」及び「下面」とし、対応するフックを「上フック」及び「下フック」としているのに対し、
引用発明では、「ある一面」や「フック」について、上下での特定はしていない点。

b 相違点2
本願発明は、「奥行長さが前記上フックの長さよりも短い前記電流センサの本体部には、当該上フックと嵌合することで当該本体部と前記センサ収容部との嵌合を補助する補助嵌合部が突設され」るものであるのに対して、
引用発明はそのような特定がされていない点。

c 相違点3
本願発明は「前記上フックの長さは、前記本体部の奥行長さと前記補助嵌合部の突出長さとから成る奥行長さと同等である」のに対して、引用発明はそのような特定がされていない点。

d 相違点4
「樹脂で成形された電流センサ保持構造」に関して、本願発明は「樹脂成型品からな」る電流センサ保持構造であるのに対して、引用発明は「合成樹脂等」の材料で「成形され」ることが特定されている点。

(3) 相違点についての判断
ア 相違点1について
上下と特定することに関して、本願の明細書を参照すると、背景技術として、次の記載がある。
「【0002】
電気自動車には、車輪を駆動するためのモータを制御するインバータ装置が内蔵されている。また、インバータ装置においては、制御や計測用に電流センサを用いることが多い。電動自動車用のインバータ装置に組み付けられる電流センサの保持構造の先行技術として例えば特許文献1に開示の電流センサホルダーが挙げられる。
【0003】
電流センサホルダーは、一般的には樹脂成型品からなり、バスバーとこのバスバーを保持するケーシングがインサート成型されている。そして、電流センサが電流センサホルダーに組み付けられる際には、電流センサホルダーの上下部位のフック(スナップフィット)及び左右部位の位置決め部の機能により、電流センサと電流センサホルダーとが嵌合する。このとき、電流センサホルダーにおいて、電流センサは上下部位のフックにより係止されるが、上部位のフックの下面と電流センサの上面との間に隙間が生じた状態となっている。」
当該記載から、電流センサホルダーの上下部位のフック及び左右部位の位置決め部の機能により、電流センサと電流センサホルダーとが嵌合するものであるが、これらフック及び位置決め部がそれぞれ上下及び左右に設けられる必要はなく、対向する部位に設けられるものであればよい、すなわち、フックが左右部位に、位置決め部が上下部位に設けられるようなものでもよいものであることは明らかである。
また、本願の明細書には、この他に、上下と特定することの技術的な意味について、特段記載されていない。
そうすると、本願発明において「上面」、「下面」と特定していることは、本願発明の電流センサ保持構造が有するフックが、嵌合する対象である電流センサの「対向する面」とそれぞれ当接することを規定しているとするのがその技術的な意味であり、「上面」、「下面」でなく、例えば「左面」、「右面」のような面であっても、それらの面が対向しているのであれば、本願発明における「上面」、「下面」のような特定と同じ技術的な意味を有するものである。
してみれば、引用発明では、上下での特定はしていないが、引用発明の「2つの第2筐体保持構造72」は、それぞれ出力側収容部62の対向する面と当接して筐体60を係止するものであるから、それらを上下で特定して相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば適宜になし得たことである。

イ 相違点2について
前記1のとおり、相違点2をなす前記記載Aは、本願発明の「電流センサ保持構造」を特定するものではなく、相違点2は本願発明と引用発明との間の実質的な相違点とはならない。

ウ 相違点3について
引用文献1には「第2筐体保持構造72」は、「第1出力側係止体72aと第2出力側係止体72bの内の少なくとも一方が爪部を有し、その爪部を相手方に係止させるものとして構成する」と記載されている(【0040】)。引用発明は、「第1出力側係止体72aは、出力側収容部62の外周面から突出させ」るものであるから、第1出力側係止体72aが爪部を有するものとなっているが、上記記載によれば「第1出力側係止体72aと第2出力側係止体72bの内の少なくとも一方が爪部を有」するのであるから、「第2出力側係止体72b」が爪部を有するように構成してもよいものである。そのような構成を考えたときに、第2出力側係止体72bのどこに爪部が設けられるかについて、引用発明においては、第2出力側係止体72bは出力側収容部62の外周面に当接しており、外周面となる位置に爪部を設けても相手方を係止できないことは明らかであるから、相手方を係止できるような箇所、すなわち、出力側収容部62の外周面の端部と係止できるような箇所に、爪部を設けようとすることは、当業者であれば適宜になし得た設計的事項である。そして、このようにしたときに、第2出力側係止体72bの爪部までの長さは、センサ収容室24dに嵌合し収容、保持される筐体60の出力側収容部62の嵌合する方向の長さ、すなわち奥行き長さと同等となることは、明らかである。(なお、奥行き長さに補助嵌合部の突出長さが含まれる点については、前記イの相違点2についての検討を参照。)
そうすると、相違点3については、当業者であれば引用発明及び引用文献1の記載に基づいて、容易に想到し得たことである。

エ 相違点4について
引用文献1には、「電流センサ40は、プラグ受け部品20の構成部品の1つとして設けてもよい。この場合には、例えば、電流検出部品50を金型内に収めてプラグ受けハウジング24をインサート成形すればよい。」との記載があり(【0026】)、プラグ受けハウジング24を金型を用いてインサート成形しうることが記載されている。そうすると、引用発明におけるプラグ受けハウジング24を、合成樹脂等の絶縁性材料で成形することについて、金型を用いるなどにより、樹脂成型品からなすようにすることは、当業者であれば適宜になし得たことである。

オ 総合評価
前記ア〜エの検討内容を踏まえると、前記相違点1、3及び4に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願発明の奏する効果も、引用発明に基づいて当業者が容易に予測し得たものにすぎない。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

(4) 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、引用文献1には、本願発明の「電流センサと嵌合するセンサ収容部」に相当する「プラグ受け部品20」の記載があるが、その他の発明特定事項について記載されていない、と主張する。
しかし、前記1で示したとおり、前記記載Aについては、本願発明を特定するものではなく、また、その他の発明特定事項については、前記(1)〜(3)で示したとおり、引用発明から当業者であれば容易に発明することができたものである。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。


第5 むすび
以上のとおり、本願発明並びに請求項3及び4それぞれに係る発明は不明確であり、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-06-30 
結審通知日 2023-07-04 
審決日 2023-07-19 
出願番号 P2022-528282
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G01R)
P 1 8・ 121- Z (G01R)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 濱本 禎広
田邉 英治
発明の名称 電流センサ保持構造、電気機器及びインバータ装置  
代理人 太田 友幸  
代理人 富岡 潔  
代理人 小林 博通  
代理人 鵜澤 英久  

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