• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  F24F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F24F
審判 全部申し立て 2項進歩性  F24F
管理番号 1402729
総通号数 22 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-01-20 
確定日 2023-08-04 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6909850号発明「クリーンルーム装置および空気循環ユニット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6909850号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜5〕、〔6〜8〕について訂正することを認める。 特許第6909850号の請求項1、2、4及び5に係る特許を維持する。 特許第6909850号の請求項3及び6〜8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6909850号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜8に係る特許についての出願は、平成28年5月31日に出願した特願2016−108663号の一部を令和1年12月19日に新たな特許出願としたものであって、令和3年7月7日にその特許権の設定登録がされ、令和3年7月28日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和4年1月20日 :特許異議申立人新日本空調株式会社(以下、「申立人」という。)による本件特許の請求項1〜8に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年4月13日付け :取消理由通知
令和4年6月20日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出
令和4年6月30日付け :手続補正指令(方式)
令和4年7月28日 :特許権者による手続補正書の提出
令和4年8月24日付け :訂正拒絶理由通知
令和4年9月28日 :特許権者による意見書、手続補正書の提出
令和4年11月11日 :申立人による意見書の提出
令和4年12月14日付け:取消理由通知
令和5年2月20日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出
令和5年4月17日 :申立人による意見書の提出

なお、令和4年6月20日に提出された訂正請求書による訂正請求については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和5年2月20日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜8について訂正すること(以下、「本件訂正」という。)を求めるものであって、その内容は、以下の訂正事項1〜15のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を示すために付したものである。

1−1 一群の請求項1〜5に係る訂正
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「クリーンルームの下部に形成される空調領域を清浄に保つクリーンルーム装置であって、」と記載されているのを、「クリーンルームの下部に形成される空調領域を非層流方式で清浄に保つクリーンルーム装置であって、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記空調領域には機器が存在し、前記機器が存在する前記空調領域に非層流方式で給気が行われ、前記空調領域において前記機器の熱的影響による上昇流により汚染物質がクリーンルーム内において前記空調領域よりも上方に搬送され、」を加える(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記クリーンルーム内に配置され、前記クリーンルーム内の空気を循環させる空気循環ユニットを備え、」と記載されているのを、「前記クリーンルーム内に配置され、前記クリーンルーム内の前記空調領域に非層流方式で給気を行い、前記空調領域の空気を循環させる空気循環ユニットを備え、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「前記空気循環ユニットには、前記クリーンルームの内部であって前記空調領域よりも上方の位置で前記クリーンルーム内の空気を吸い込む吸気口と、前記空気循環ユニットの前面において前記空調領域と向かい合う高さまでの領域に分布して配置されて、前記空調領域に向けて横向きに給気する複数の給気口が設けられ、」と記載されているのを、「前記空気循環ユニットには、前記クリーンルームの内部であって非層流方式で空調される前記空調領域よりも上方の位置で前記クリーンルーム内の空気を吸い込む吸気口と、前記空気循環ユニットの前面において前記空調領域と向かい合う高さまでの領域に分布して配置されて、前記空調領域に向けて横向きに給気する複数の給気口が設けられ、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様に訂正する)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に「前記空気循環ユニットの上面に前記吸気口が設けられ、」を加える(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様に訂正する)。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1に「前記クリーンルーム外からの清浄空気を前記吸気口の真上の室内空間に給気するための前記清浄空気の給気口が設けられ、前記給気口から前記空気循環ユニットの真上位置に供給された清浄空気が、前記吸気口から前記空気循環ユニットの内部に吸い込まれ、」と記載されているのを、「前記クリーンルーム外からの清浄空気を前記吸気口の真上の室内空間に給気するための前記清浄空気の給気口が設けられ、前記清浄空気の給気口は前記空気循環ユニットの真上に位置し、前記清浄空気の給気口から前記空気循環ユニットの真上位置に供給された清浄空気が、前記吸気口から前記空気循環ユニットの内部に吸い込まれ、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様に訂正する)。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項1に「前記清浄空気の給気口には清浄空気が前記クリーンルーム外に設けられた給気ダクトを通じて供給され、」を加える(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様に訂正する)。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項2に「前記給気口から室内空間に清浄空気が下向きに前記吸気口に向けて給気されることを特徴とする、請求項1に記載のクリーンルーム装置。」と記載されているのを、「前記清浄空気の給気口から室内空間に清浄空気が下向きに前記吸気口に向けて給気されることを特徴とする、請求項1に記載のクリーンルーム装置。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項4、5も同様に訂正する)。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項4に「前記複数の給気口には、前記空調領域に向けて横向きに給気される空気に対して旋回成分を与えるフィンが設けられていることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のクリーンルーム装置。」と記載されているのを、「前記複数の給気口には、前記空調領域に向けて横向きに給気される空気に対して旋回成分を与えるフィンが設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のクリーンルーム装置。」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項5に「前記冷却器および高性能フィルタは、前記複数の給気口の内側全体を覆う位置に配置されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のクリーンルーム装置。」と記載されているのを、「前記冷却器および高性能フィルタは、前記複数の給気口の内側全体を覆う位置に配置されていることを特徴とする、請求項1、2、4の何れか一項に記載のクリーンルーム装置。」に訂正する。

1−2 一群の請求項6〜8に係る訂正
(1)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項6〜8を削除する。

1−3 明細書の訂正
(1)訂正事項12
明細書の段落【0009】の全記載を、「この目的を達成するために、本発明によれば、クリーンルームの下部に形成される空調領域を非層流方式で清浄に保つクリーンルーム装置であって、前記空調領域には機器が存在し、前記機器が存在する前記空調領域に非層流方式で給気が行われ、前記空調領域において前記機器の熱的影響による上昇流により汚染物質がクリーンルーム内において前記空調領域よりも上方に搬送され、前記クリーンルーム内に配置され、前記クリーンルーム内の前記空調領域に非層流方式で給気を行い、前記空調領域の空気を循環させる空気循環ユニットを備え、前記空気循環ユニットには、前記クリーンルームの内部であって非層流方式で空調される前記空調領域よりも上方の位置で前記クリーンルーム内の空気を吸い込む吸気口と、前記空気循環ユニットの前面において前記空調領域と向かい合う高さまでの領域に分布して配置されて、前記空調領域に向けて横向きに給気する複数の給気口が設けられ、前記空気循環ユニットの内部には、冷却器および高性能フィルタと、前記クリーンルーム内の空気を前記吸気口から吸い込み、前記冷却器および前記高性能フィルタを通過させて前記給気口に向けて送風するファンを備え、前記空気循環ユニットの上面に前記吸気口が設けられ、前記クリーンルーム外からの清浄空気を前記吸気口の真上の室内空間に給気するための前記清浄空気の給気口が設けられ、前記清浄空気の給気口は前記空気循環ユニットの真上に位置し、前記清浄空気の給気口から前記空気循環ユニットの真上位置に供給された清浄空気が、前記吸気口から前記空気循環ユニットの内部に吸い込まれ、前記清浄空気の給気口には清浄空気が前記クリーンルーム外に設けられた給気ダクトを通じて供給され、前記空気循環ユニットには、給気ダクトが直接接続されていないことを特徴とする、クリーンルーム装置が提供される。前記給気口から室内空間に清浄空気が下向きに前記吸気口に向けて給気されても良い。」に訂正する。

(2)訂正事項13
明細書の段落【0010】に「このクリーンルーム装置において、前記空気循環ユニットの上面に前記吸気口が設けられていても良い。また、前記複数の給気口には、前記空調領域に向けて横向きに給気される空気に対して旋回成分を与えるフィンが設けられていても良い。また、前記冷却器および高性能フィルタは、前記複数の給気口の内側全体を覆う位置に配置されていても良い。」と記載されているのを、「このクリーンルーム装置において、前記複数の給気口には、前記空調領域に向けて横向きに給気される空気に対して旋回成分を与えるフィンが設けられていても良い。また、前記冷却器および高性能フィルタは、前記複数の給気口の内側全体を覆う位置に配置されていても良い。」に訂正する。

(3)訂正事項15
明細書の段落【0011】の全記載を削除する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
2−1 一群の請求項1〜5に係る訂正について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1において、訂正前の「クリーンルーム装置」が「空調領域を清浄に保つ」ことについて、「非層流方式」であることを特定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様)。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、特許明細書等における段落【0015】に「このクリーンルーム装置1は、気流によってクリーンルーム10内の空気を混合・希釈させる非層流方式(コンベンショナル方式)である。」と記載されているから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記アのとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項1において、訂正前の「空調領域」について、「前記空調領域には機器が存在し、前記機器が存在する前記空調領域に非層流方式で給気が行われ、前記空調領域において前記機器の熱的影響による上昇流により汚染物質がクリーンルーム内において前記空調領域よりも上方に搬送され、」ることを特定をするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様)。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、特許明細書等における段落【0015】に「このクリーンルーム装置1は、気流によってクリーンルーム10内の空気を混合・希釈させる非層流方式(コンベンショナル方式)である。」、段落【0016】に「クリーンルーム10内の下部には、半導体の製造などを行うために清浄に保たれた空調領域11が形成されている。空調領域11は、床10bから所定の高さまでの領域であり、空調領域11には、半導体製造装置などの各種の機器12が存在している。・・・本発明においては、この空調領域11における空気中の浮遊粒子aが所定の濃度以下の清浄度となるように管理される。」、段落【0044】に「また、空調領域11において機器12や人間などの周りに生じた浮遊粒子aなどの汚染物質は、機器12や人間などの熱的影響によってやがて加熱され、緩やかに上昇する。その上昇流により、空調領域11に生じた浮遊粒子aなどの汚染物質は、クリーンルーム10内において空調領域11よりも上方に搬送される。」と記載されていることに基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、上記アのとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項1において、訂正前の「空気循環ユニット」の「クリーンルーム内の空気を循環させる」機能について、「前記クリーンルーム内の前記空調領域に非層流方式で給気を行い、前記空調領域の空気を循環させる」ことに特定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様)。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、特許明細書等における段落【0015】に「このクリーンルーム装置1は、気流によってクリーンルーム10内の空気を混合・希釈させる非層流方式(コンベンショナル方式)である。」と記載されているから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、上記アのとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、請求項1において、訂正前の「空調領域」について、「非層流方式で空調される」ことを特定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様)。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、特許明細書等における段落【0015】に「このクリーンルーム装置1は、気流によってクリーンルーム10内の空気を混合・希釈させる非層流方式(コンベンショナル方式)である。」と記載されているから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、上記アのとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、請求項1において、訂正前の「吸気口」について、「前記空気循環ユニットの上面に前記吸気口が設けられ、」という設けられる位置の特定をするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様)。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、特許明細書等における段落【0021】に「図2、3に示されるように、空気循環ユニット30の上面には、クリーンルーム10内の空気を吸い込む吸気口31が設けられている。」と記載されていることに基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、上記アのとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、請求項1において、訂正前の「清浄空気の給気口」について、「前記清浄空気の給気口は前記空気循環ユニットの真上に位置し、」という設置位置の特定をするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様)。
また、訂正事項6は、請求項1において、訂正前の「前記給気口」について、「前記清浄空気の給気口」とすることで、清浄空気の給気口であることを特定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様)。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、特許明細書等における段落【0018】に「清浄空気CAの給気口20は、後述する空気循環ユニット30の真上に位置している。給気口20には、外調機21で作られた低温の清浄空気CAが給気ダクト22を通じて供給されている。」、段落【0038】に「さて、以上のように構成されたクリーンルーム装置1において、外調機21で作られた低温の清浄空気CAが、給気ダクト22から給気口20を通じてクリーンルーム10内の上部に供給される。給気口20は空気循環ユニット30の真上に位置しているので、外調機21で作られた低温の清浄空気CAは、空調領域11よりも上方の空間であって、空気循環ユニット30の真上に供給される。」と記載されていることに基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、上記アのとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、請求項1において、訂正前の「清浄空気の給気口」について、「前記清浄空気の給気口には清浄空気が前記クリーンルーム外に設けられた給気ダクトを通じて供給され、」という清浄空気を供給する構造の特定をするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様)。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7は、特許明細書等における段落【0018】に「清浄空気CAの給気口20は、後述する空気循環ユニット30の真上に位置している。給気口20には、外調機21で作られた低温の清浄空気CAが給気ダクト22を通じて供給されている。」と記載されているから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、上記アのとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項2の「前記給気口」について、「前記清浄空気の給気口」とすることで、清浄空気の給気口であることを特定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである(請求項2の記載を引用する請求項4、5も同様)。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8は、特許明細書等における段落【0018】に「クリーンルーム10の天井10aには、清浄空気CAの給気口20が設けられている。」と記載されていることに基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項8は、上記アのとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(9)訂正事項9について
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、請求項3を削除するというものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項9は、上記アに記載したとおり、請求項3を削除するものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項9は、上記アに記載したとおり、請求項3を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(10)訂正事項10について
ア 訂正の目的について
訂正事項10は、訂正前の請求項4の記載が請求項1〜3のいずれか一項を引用する記載であったものを、請求項3の削除に伴い、請求項1または2を引用する記載としたものであり、択一的に引用する請求項の選択肢を削除する訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項10は、択一的に引用する請求項の選択肢を削除する訂正であるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項10は、択一的に引用する請求項の選択肢を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(11)訂正事項11について
ア 訂正の目的について
訂正事項11は、訂正前の請求項5の記載が請求項1〜4のいずれか一項を引用する記載であったものを、請求項3の削除に伴い、請求項1、2、4のいずれか一項を引用する記載としたものであり、択一的に引用する請求項の選択肢を削除する訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項11は、択一的に引用する請求項の選択肢を削除する訂正であるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項11は、択一的に引用する請求項の選択肢を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(12)一群の請求項について
訂正前の請求項1〜5について、請求項2〜5は、それぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1〜7によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1〜5に対応する訂正後の請求項[1〜5]は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2−2 一群の請求項6〜8に係る訂正について
(1)訂正事項14について
ア 訂正の目的について
訂正事項14は、請求項6〜8を削除するというものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項14は、上記アに記載したとおり、請求項6〜8を削除するものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項14は、上記アに記載したとおり、請求項6〜8を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(2)一群の請求項について
訂正前の請求項6〜8について、請求項7及び8は、それぞれ請求項6を引用しているものであって、訂正事項14によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項6〜8に対応する訂正後の請求項[6〜8]は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2−3 明細書の訂正について
(1)訂正事項12について
ア 訂正の目的について
訂正事項12は、訂正事項1〜7の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項12は、訂正事項1〜7の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、上記2−1(1)〜(7)の訂正事項1〜7の検討を踏まえると、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項12は、上記ア、イのとおり訂正事項1〜7の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るものであるから、訂正事項1〜7と同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
エ 一群の請求項との関係について
訂正事項12によって訂正された明細書の段落【0009】は、訂正後の請求項1に対応する記載になっている。
そして、上記2−1(12)で述べたように、訂正前の請求項1〜5に対応する訂正後の請求項1〜5は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」である。したがって、訂正後の請求項1〜5が、訂正事項12による明細書の訂正と関係する請求項である。
よって、訂正事項12は、明細書の訂正と関係する請求項を含む一群の請求項の全てについて行うものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。

(2)訂正事項13について
ア 訂正の目的について
訂正事項13は、訂正事項9の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項13は、訂正事項9の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、上記2−2(9)の訂正事項9の検討を踏まえると、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項13は、上記ア、イのとおり訂正事項9の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るものであるから、訂正事項9と同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
エ 一群の請求項との関係について
訂正事項13によって訂正された明細書の段落【0010】は、訂正後の請求項3に対応する記載になっている。
そして、上記2−1(12)で述べたように、訂正前の請求項1〜5に対応する訂正後の請求項1〜5は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」である。したがって、訂正後の請求項1〜5が、訂正事項13による明細書の訂正と関係する請求項である。
よって、訂正事項13は、明細書の訂正と関係する請求項を含む一群の請求項の全てについて行うものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。

(3)訂正事項15について
ア 訂正の目的について
訂正事項15は、訂正事項14の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項15は、訂正事項14の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、上記2−2(1)の訂正事項14の検討を踏まえると、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項15は、上記ア、イのとおり訂正事項14の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るものであるから、訂正事項14と同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
エ 一群の請求項との関係について
訂正事項15によって訂正された明細書の段落【0011】は、訂正後の請求項6〜8に対応する記載になっている。
そして、上記2−2(2)で述べたように、訂正前の請求項6〜8に対応する訂正後の請求項6〜8は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」である。したがって、訂正後の請求項6〜8が、訂正事項15による明細書の訂正と関係する請求項である。
よって、訂正事項15は、明細書の訂正と関係する請求項を含む一群の請求項の全てについて行うものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正の訂正事項1〜15は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第4項〜第6項の規定に適合する。
よって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜5〕、〔6〜8〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正後の本件発明
本件訂正後の請求項1〜8に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明8」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
クリーンルームの下部に形成される空調領域を非層流方式で清浄に保つクリーンルーム装置であって、
前記空調領域には機器が存在し、前記機器が存在する前記空調領域に非層流方式で給気が行われ、前記空調領域において前記機器の熱的影響による上昇流により汚染物質がクリーンルーム内において前記空調領域よりも上方に搬送され、
前記クリーンルーム内に配置され、前記クリーンルーム内の前記空調領域に非層流方式で給気を行い、前記空調領域の空気を循環させる空気循環ユニットを備え、
前記空気循環ユニットには、前記クリーンルームの内部であって非層流方式で空調される前記空調領域よりも上方の位置で前記クリーンルーム内の空気を吸い込む吸気口と、前記空気循環ユニットの前面において前記空調領域と向かい合う高さまでの領域に分布して配置されて、前記空調領域に向けて横向きに給気する複数の給気口が設けられ、
前記空気循環ユニットの内部には、冷却器および高性能フィルタと、前記クリーンルーム内の空気を前記吸気口から吸い込み、前記冷却器および前記高性能フィルタを通過させて前記給気口に向けて送風するファンを備え、
前記空気循環ユニットの上面に前記吸気口が設けられ、
前記クリーンルーム外からの清浄空気を前記吸気口の真上の室内空間に給気するための前記清浄空気の給気口が設けられ、前記清浄空気の給気口は前記空気循環ユニットの真上に位置し、前記清浄空気の給気口から前記空気循環ユニットの真上位置に供給された清浄空気が、前記吸気口から前記空気循環ユニットの内部に吸い込まれ、
前記清浄空気の給気口には清浄空気が前記クリーンルーム外に設けられた給気ダクトを通じて供給され、
前記空気循環ユニットには、給気ダクトが直接接続されていないことを特徴とする、クリーンルーム装置。
【請求項2】
前記清浄空気の給気口から室内空間に清浄空気が下向きに前記吸気口に向けて給気されることを特徴とする、請求項1に記載のクリーンルーム装置。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記複数の給気口には、前記空調領域に向けて横向きに給気される空気に対して旋回成分を与えるフィンが設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のクリーンルーム装置。
【請求項5】
前記冷却器および高性能フィルタは、前記複数の給気口の内側全体を覆う位置に配置されていることを特徴とする、請求項1、2、4の何れか一項に記載のクリーンルーム装置。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 令和4年4月13日付けで通知した取消理由の概要
当審において令和4年4月13日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

理由1(進歩性
本件特許の請求項1〜8に係る発明は、本件特許の出願の原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願の原出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。


<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2000−291989号公報(以下、「甲1」という。)
甲第2号証:特開2011−85351号公報(以下、「甲2」という。)
甲第3号証:特開平8−105641号公報(以下、「甲3」という。)
甲第4号証:特許第5361140号公報(以下、「甲4」という。)
甲第5号証:実願昭60−131207号(実開昭62−38533号)のマイクロフィルム(以下、「甲5」という。当審注:添付された写しに基づき、当審が修正した。)

(1)請求項1に係る発明について
本件特許の請求項に係る発明1は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲3に記載された事項及び甲4に記載された事項に基いて、又は、甲1に記載された発明、甲3に記載された事項及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)請求項2に係る発明について
本件特許の請求項2に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲3に記載された事項及び甲4に記載された事項に基いて、又は、甲1に記載された発明、甲3に記載された事項及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)請求項3に係る発明について
本件特許の請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲3に記載された事項及び甲4に記載された事項に基いて、又は、甲1に記載された発明、甲3に記載された事項及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)請求項4に係る発明について
本件特許の請求項4に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項及び周知技術に基いて、又は、甲1に記載された発明、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求項5に係る発明について
本件特許の請求項5に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項、甲5に記載された事項及び周知技術に基いて、又は、甲1に記載された発明、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項、甲5に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)請求項6に係る発明について
本件特許の請求項6に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲3に記載された事項及び甲4に記載された事項に基いて、又は、甲1に記載された発明、甲3に記載された事項及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)請求項7に係る発明について
本件特許の請求項7に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項及び周知技術に基いて、又は、甲1に記載された発明、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(8)請求項8に係る発明について
本件特許の請求項8に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項、甲5に記載された事項及び周知技術に基いて、又は、甲1に記載された発明、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項、甲5に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 令和4年12月14日付けで通知した取消理由の概要
当審において令和4年12月14日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

理由1(新規事項の追加
令和3年2月22日付け手続補正書でした補正(以下、「本件補正」という。)は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、本件特許の下記の請求項に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1号に該当し、取り消すべきものである。

理由2(明確性
本件特許の下記の請求項に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。


(1)理由1(新規事項の追加)について
・請求項1、2、4、5
特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項(以下、「記載事項A」という。)は、本件補正により追加されたものである。
「給気口から前記空気循環ユニットの真上位置に供給された清浄空気が、前記吸気口から前記空気循環ユニットの内部に吸い込まれ、
前記空気循環ユニットには、給気ダクトが直接接続されていない」
本件補正は、当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない。

(2)理由2(明確性)について
・請求項1、2、4、5
請求項1において、「前記空気循環ユニットには、給気ダクトが直接接続されていない」(下から2行)と記載されているが、「給気ダクト」について、他の発明特定事項との技術的関連が不明のため、給気ダクトの技術的意味が不明であり、かつ、クリーンルームにおいて、給気ダクトの配置等により空気清浄の作用や機能が異なることは技術常識であることを踏まえると、給気ダクトと他の発明特定事項との技術的関連が不足していることは、明らかである。
よって、請求項1の記載からは発明を明確に把握することができない。
請求項1を引用する請求項2、4及び5についても同様である。

第5 当審の判断
1 令和4年4月13日付けで通知した取消理由の理由1(進歩性;特許法第29条第2項)について
1−1 引用文献について
(1)甲1について
ア 甲1の記載
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付したものである。また、「・・・」は記載の省略を意味する。以下同様。)。
(ア)「【0005】本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、暖房時や温風を吹き出す場合に小風量、低速で給気しても、室に対して好適な空調を実施することができる空調設備、並びに空調方法を提供して前記問題の解決を図ることをその目的としていてる。」

(イ)「【0017】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本発明を適用した室としての高さ13.4mの高天井、大空間の機械組立工場の室Rを平面からみた様子を示し、図2はその縦断面を概略的に示している。
【0018】室Rは、その3つの側面が壁体1、2、3で囲まれ、残りの側面は製品搬入出口4を形成している。壁体1、2、3は基本的に同一の構成を有し、本実施の形態では間仕り切壁5が建て込まれて壁体の内壁を構成している。なおこの間仕切り壁5には公知のプラスターボード2枚貼の壁パネルを用いることができる。そして壁体1、2、3のいずれも図2に示したように、内壁を構成する間仕切り壁5と外壁6とによって、その内部に流路としての調和空気の循環路7が形成されている。なおこの循環路7の上面は後述のダクト16接続のための開口を残してパネル材7aで塞がれている。また間仕切り壁5は柱8と面一に建て込まれ、室Rのデッドスペースを有効利用している。
【0019】室Rの外部、例えば上部には、外気調和機11が設置されている。この外気調和機11は、冷却コイル12、加熱コイル13、加湿器14、送風機15を備えており、導入した外気OAに対して、実質的に湿度の調整を行うように構成されている。そしてそのようにして湿度調整された空気は、ダクト16を通じて前記循環路7に供給されるようになっている。なおこの外気調和機11には、起動運転時のエネルギ効率を向上させるため、天井部に設けた取り入れ口17から室Rの還気が適宜導入されるようになっている。また、例えば天井部における他の位置には、外気処理風量に相当する量を排気するための排気口18が設けられている。
【0020】本実施の形態において室Rの空調対象域Sの高さHは5mに設定されており、したがって、給気口21は、高さHより低い位置で床面Fの近傍であって、給気口21の上端が3.2mとなる位置に設定されている。また本実施の形態では、図1に示すように、対向する壁体1、3にあっては、1スパン、すなわち柱8、8の間につき、1つの単位間仕切り壁5が配置され、かつ1スパンおきに交互に循環路7を形成するように構成されている。すなわち、壁体1においては、壁体1b、1dにのみ循環路7と給気口21とが形成され、壁体3においては壁体3c、3eにのみ循環路7と給気口21とが形成されている。
・・・
【0022】給気口21は、室R内側から見ると図3に示したように、室R側にパンチング板22を有しており、その背面側に粗塵フィルタ23が設けられ、循環路7側にモータダンパ24が設けられている。このようにパンチング板22や粗塵フィルタ23を付加することにより、給気口21における各地点での圧力抵抗を均一にして、均一な吹き出し風速が得られる。この場合、パンチング板22の目の開口率や粗塵フィルタ23の厚みを調整することにより、必要に応じた圧力抵抗の調整が行える。なおパンチング板22に代えて格子状の開口形態として、適宜整流部材を取り付けた構成としてもよく、かかる部材はこれらに限らず、美観、意匠の観点から適宜選択できる。」

(ウ)「【0024】循環路7を有する壁体、例えば壁体1b、1d、2a〜2d、3c、3eの内側の各間仕り切壁5における所定の高さ、すなわち空調対象域Sよりも高い位置には、室Rからの還気RAを取り入れて循環路7に導入するための還気取り入れ口31が形成されている。この還気取り入れ口31には、循環ファンとして有圧扇32が設けられており、吸い込んだ還気RAを循環路7内に送風するようになっている。さらにこの有圧扇32には逆流防止のためのチャッキダンパ(図示せず)が押し込み側、すなわち循環路7側に取り付けられている。
【0025】本実施の形態では、空調対象域Sの温度成層が崩れることを避けるべく、前記有圧扇32は、高さ10mの位置に取り付けられており、また風速3.8m/sで還気RAを吸い込むように設定されている。なお有圧扇32については、冷房負荷減少時にその台数制御を行いつつ、温度成層の高さを一定に維持できるようにその計裝システムを構成すれば、空気搬送動力を低減でき、さらなる省エネルギ効果が期待できる。
・・・
【0027】本実施の形態にかかる空調設備は以上のように構成されており、例えば室Rの冷房運転を実施する場合には、図4に示したように、給気口21のモータダンパ24の羽根B1〜B16は、例えば全て水平位置に制御されて、すなわち吹き出し方向が水平となるように制御されて全て開の状態にされる。そして外気調和機11によって水分量が制御された処理済みの外気は、循環路7へと送られ、室Rからの還気RAと循環路7内で混合され、その後顕熱交換器41で所定の温度に制御された後、給気口21から室Rに給気される。」

(エ)「【0031】本発明をクリーンルームに応用する場合には、例えば顕熱交換器41の下流側に高性能フィルタ42、例えばHEPAフィルタやULPAフィルタなどを取り付ける。この際の載置の方法やシールの方法は公知の方法を用いることができるのでその具体的な説明は省略する。そのように高性能フィルタを介装させると、給気口21から吹き出される給気SAは、冷房時には清浄空気の水平層流となって室R内をクリーン化する。一方暖房時には床Fから天井面に向かって清浄空気が上昇することになるが、床面を防塵塗装するなどの対策を講じることで、塵埃の巻き上げ現象を防止できる。したがって、クリーンルームにおける暖房運転であっても支障がない。」

(オ)「【図2】



(カ)「【図3】



(キ)段落【0015】には、「高性能フィルタを有しているので、クリーンルームに適した設備を容易に構成できる」ことが記載されており、段落【0031】には、「クリーンルームに応用する場合には、例えば顕熱交換器41の下流側に高性能フィルタ42」「を取り付ける」ことが記載されているから、図2には、顕熱交換器41の下流側に高性能フィルタ42を取り付けたクリーンルームが示されているといえる。
そして、図2のクリーンルームは、段落【0017】の「高さ13.4mの高天井、大空間の機械組立工場の室R」との記載、段落【0020】の「室Rの空調対象域Sの高さHは5mに設定されており」との記載、段落【0031】の「給気口21から吹き出される給気SAは、冷房時には清浄空気の水平層流となって室R内をクリーン化する」との記載を踏まえると、甲1には、高さ13.4mの高天井のクリーンルームの床からの高さHが5mに設定された空調対象域Sを清浄空気によりクリーン化する空調設備が記載されているといえる。

(ク)段落【0018】には、「内壁を構成する間仕切り壁5と外壁6とによって、その内部に流路としての調和空気の循環路7が形成され」、「循環路7の上面は」「パネル材7aで塞がれている」ことが記載されており、この間仕切り壁5と外壁6と上面がパネル材7aで塞がれた構造を有し、内部に循環路7が形成されたものを、循環ユニットということができる。
以上を踏まえると、図2には、クリーンルーム内に配置され、クリーンルーム内の空調対象域Sに給気を行い、空調対象域Sの空気を循環させる循環ユニットが示されているといえる。

(ケ)段落【0024】には、「各間仕り切壁5における所定の高さ、すなわち空調対象域Sよりも高い位置には、室Rからの還気RAを取り入れて循環路7に導入するための還気取り入れ口31が形成されている。この還気取り入れ口31には、循環ファンとして有圧扇32が設けられており、吸い込んだ還気RAを循環路7内に送風するようになっている。」と記載されている。
また、段落【0020】には、「空調対象域Sの高さHは5mに設定されており、したがって、給気口21は、高さHより低い位置で床面Fの近傍であって、給気口21の上端が3.2mとなる位置に設定されている。」と記載され、図2には、循環ユニットの前面において、給気口21が、空調対象域Sに向けて横向きに給気する点が示されている。
そして、段落【0022】の「給気口21は、室R内側から見ると図3に示したように、室R側にパンチング板22を有し」との記載及び同段落の「パンチング板22の目の開口率や粗塵フィルタ23の厚みを調整することにより、必要に応じた圧力抵抗の調整が行える。なおパンチング板22に代えて格子状の開口形態として、適宜整流部材を取り付けた構成としてもよく」との記載及び図3の記載から、給気口21は、パンチング板22の目のような複数の開口を有しているものといえる。
そうすると、甲1には、循環ユニットには、クリーンルームの内部であって空調される空調対象域Sよりも上方の位置でクリーンルーム内の空気を吸い込む還気取り入れ口31と、循環ユニットの前面において前記空調対象域Sの高さHより低い位置で床面Fの近傍であって、上端が床上高さ3.2mとなる位置に設定された領域に分布して配置されて、前記空調対象域Sに向けて横向きに給気する複数の給気口21の開口が設けられることが記載されているといえる。

(コ)段落【0024】には、「空調対象域Sよりも高い位置には、室Rからの還気RAを取り入れて循環路7に導入するための還気取り入れ口31が形成されている。この還気取り入れ口31には、循環ファンとして有圧扇32が設けられており、吸い込んだ還気RAを循環路7内に送風するようになっている。」と記載され、段落【0027】には、「外気調和機11によって水分量が制御された処理済みの外気は、循環路7へと送られ、室Rからの還気RAと循環路7内で混合され、その後顕熱交換器41で所定の温度に制御された後、給気口21から室Rに給気される。」と記載され、段落【0031】には、「本発明をクリーンルームに応用する場合には、例えば顕熱交換器41の下流側に高性能フィルタ42、例えばHEPAフィルタやULPAフィルタなどを取り付ける」と記載されている。
そうすると、甲1には、循環ユニットの内部には、顕熱交換器41および高性能フィルタ42と、クリーンルーム内の空気を還気取り入れ口31から吸い込み、顕熱交換器41および高性能フィルタ42を通過させて給気口21の開口に向けて送風する有圧扇32を備えることが記載されているといえる。

(サ)段落【0024】には、「各間仕り切壁(当審注:「間仕切り壁」の誤記と認める。)5における所定の高さ、すなわち空調対象域Sよりも高い位置には、室Rからの還気RAを取り入れて循環路7に導入するための還気取り入れ口31が形成されている。」と記載されている。また、図2には、循環ユニットを構成する間仕切り壁5における空調対象域Sのよりも高い位置に還気取り入れ口31が設けられることが示されている。
そうすると、甲1には、循環ユニットを構成する間仕切り壁5における空調対象域Sよりも高い位置の所定の高さに還気取り入れ口31が設けられることが記載されているといえる。

(シ)段落【0018】には、「循環路7の上面は後述のダクト16接続のための開口を残してパネル材7aで塞がれている」ことが記載されており、段落【0019】には、「室Rの外部、例えば上部には、外気調和機11が設置されている。この外気調和機11は、冷却コイル12、加熱コイル13、加湿器14、送風機15を備えており、導入した外気OAに対して、実質的に湿度の調整を行うように構成されている。そしてそのようにして湿度調整された空気は、ダクト16を通じて前記循環路7に供給されるようになっている。」と記載されている。
よって、甲1には、クリーンルーム外に湿度調整を行う外気調和機11を設置し、循環ユニットに湿度調整された空気を供給するためのダクト16が設けられ、循環ユニットの内部に形成された循環路7の上面を塞ぐパネル材7aにダクト16が接続され、湿度調整された空気が、ダクト16を通じて循環路7に供給される、空調設備が記載されているといえる。

イ 甲1発明
上記アの事項を総合して整理すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「高さ13.4mの高天井のクリーンルームの床からの高さHが5mに設定された空調対象域Sを清浄空気によりクリーン化する空調設備であって、
前記クリーンルーム内に配置され、前記クリーンルーム内の前記空調対象域Sに給気を行い、前記空調対象域Sの空気を循環させる循環ユニットを備え、
前記循環ユニットには、前記クリーンルームの内部であって空調される前記空調対象域Sよりも上方の位置で前記クリーンルーム内の空気を吸い込む還気取り入れ口31と、前記循環ユニットの前面において前記空調対象域Sの高さHより低い位置で床面Fの近傍であって、上端が床上高さ3.2mとなる位置に設定された領域に分布して配置されて、前記空調対象域Sに向けて横向きに給気する複数の給気口21の開口が設けられ、
前記循環ユニットの内部には、顕熱交換器41および高性能フィルタ42と、前記クリーンルーム内の空気を前記還気取り入れ口31から吸い込み、前記顕熱交換器41および前記高性能フィルタ42を通過させて前記給気口21の開口に向けて送風する有圧扇32を備え、
前記循環ユニットを構成する間仕切り壁5における空調対象域Sよりも高い位置の所定の高さに前記還気取り入れ口31が設けられ、
前記クリーンルーム外に湿度調整を行う外気調和機11を設置し、前記循環ユニットに湿度調整された空気を供給するためのダクト16が設けられ、前記循環ユニットの内部に形成された循環路7の上面を塞ぐパネル材7aに前記ダクト16が接続され、湿度調整された空気が、前記ダクト16を通じて前記循環路7に供給される、空調設備。」

(2)甲2について
ア 甲2の記載
甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0016】
図1に示すように、この置換換気設備1によって空調が行われる大型空間室10は、床面11から天井面12までの高さHが例えば16〜17mであり、床面11の面積が例えば4400m2もある、大容積を有している。大型空間室10の床面11には、各種産業分野などで使用される大型機械13等が置かれている。大型空間室10の内部では、この大型機械13の精密な組み立てや調整などが行われる。このため、大型空間室10の内部は、床面11から少なくとも大型機械13と同じ高さまでの範囲が、均一な温度環境が必要な空調対象領域15とされる。なお、この実施の形態では、空調対象領域15の高さh1は7.5mに設定されている。大型空間室10の内部において、空調対象領域15よりも上方は、空調非対象領域16である。
【0017】
大型空間室10内の側方には、大型空間室10内の空気を空調非対象領域16で吸引し、温度調節した後、空調対象領域15に温度調節された空気(給気SA)を循環して供給するための給気装置20が設置されている。大型空間室10内の側方には、給気装置20が複数台設置されており、図2では、大型空間室10内の側方に、2つの給気装置20が横に並べて配置された状態を示している。なお、給気装置20の設置台数は任意である。各給気装置20は、例えば大型空間室10の内部にあるスパン(図示せず)の間に設置される。
【0018】
給気装置20は、下から順に給気チャンバ21、送風チャンバ22、熱交チャンバ23を重ねた構成である。これら給気チャンバ21の上面と送風チャンバ22の下面、送風チャンバ22の上面と熱交チャンバ23の下面はいずれも一部の面積で連通しており、給気装置20の内部には上下方向に連通する流路19が形成されている。なお、図1に示すように、各チャンバ21〜23の背部(給気装置20の背部)は、大型空間室10の側壁面24で塞がれている。隣接する給気装置20は、大型空間室10の側壁面24に沿って適当な間隔を空けて設置され、各給気装置20の前面(各チャンバ21〜23の前面)は、同一平面上になっている。
【0019】
熱交チャンバ23の内部には、加熱コイル30と冷却コイル31からなる熱交換器32が設けられている。熱交チャンバ23の前面(大型空間室10の内部から見える側面)は、パンチングメタル、メッシュなどで形成された吸気面34になっている。熱交チャンバ23の内部において、吸気面34の内側には、熱交換器32との間に、人が通ることができる通路35が形成されている。この通路35に人が入ることにより、熱交換器32や後述する送風機36の点検、メンテナンス、清掃等を行うことができる。なお後述するように、この通路35は、熱交チャンバ23の外部に設けても良い。
【0020】
送風チャンバ22の内部には、下向きに空気を送風する送風機36が設けられている。この送風機36の稼動により、空調対象領域15よりも上方の空調非対象領域16において大型空間室10の内部の空気が、吸気面34を通じて熱交チャンバ23内に引き込まれて、熱交換器32に接触し、所望の温度に調整される。そして、所望の温度に調整された空気が、熱交チャンバ23から送風チャンバ22内を通過し、更に給気チャンバ21に送風される。
【0021】
給気チャンバ21の前面には、床面11から少なくとも空調対象領域15の80%の高さまで給気面40が鉛直方向に連続して形成されている。この実施の形態では、給気面40の高さh2は6mに設定されている。即ち、少なくとも空調対象領域15の80%の高さまでは給気SAの供給領域とし、空調空気の供給領域よりも上方は、置換換気の作用で給気SAを浮上させている。大型空間室10内の側方には、上下方向に延びる給気面40が横に並んで複数列形成されており、図2は、2列の給気面40が形成された状態を示している。なお、給気装置20の前面(給気チャンバ21、送風チャンバ22、熱交チャンバ23の前面)は、吸気面34および給気面40を除く部分は、例えばALCなどの通気性の無いパネルなどで塞がれている。これらパネルも、各給気装置20の前面(各チャンバ21〜23の前面)は、同一平面上になっている。なお、各パネルの裏側の空間は、例えば保守スペースとして利用することができる。
【0022】
図3に示すように、給気面40は、大型空間室10の内部から見える給気チャンバ21の前面(大型空間室10の内部から見える側面)に、パンチングメタル、メッシュなどの通気性板41を配置し、更に、通気性板41の内側(給気チャンバ21の内部となる側)に、通気性板41と適当な隙間を空けて平行に整流板42を配置した構造である。整流板42には、複数の給気口43が分布して設けられており、通気性板41と整流板42は十分な通気性を有している。このため、上述のように送風機36の稼動で熱交チャンバ23、送風チャンバ22、給気チャンバ21の順に送風された空気は、所望の温度に調節された給気SAとして、給気面40(通気性板41と整流板42)を通じて大型空間室10の内部に供給される。
【0023】
図4に示すように、整流板42に設けられている各給気口43には、複数のフィン45がそれぞれ装着されている。図5、6に示すように、各給気口43の中央に支持部材46が設けてあり、各フィン45は、この支持部材46の周りに適当な等間隔で放射状に取り付けてある。給気口43から大型空間室10の内部に向かって吹き出す給気SAに旋回成分を与えるべく、各フィン45は給気口43の中心軸43’に対してそれぞれ傾斜して配置されており、図5と図6では、フィン45の傾斜方向が逆向きの関係になっている。
【0024】
このように、各給気口43に傾斜したフィン45を放射状に取り付けたことにより、給気チャンバ21の給気面40から大型空間室10の内部に供給する給気SAを、給気口43を通過する際に、各フィン45に沿わせて強制的に流すことができる。これにより、給気面40からから大型空間室10に向かって吹き出す給気SAに、中心軸43’を中心とする旋回成分が与えられる。」

(イ)「【0027】
空調非対象領域16には、熱交チャンバ23の吸気面34に対向して外気給気口50が設けられている。外気給気口50は、吸気面34と同じ高さに設けられている。外気給気口50には、外調機51を備える外気ダクト52が接続されている。外調機51には、冷却コイル53、加熱コイル54、加湿ノズル55、送風機56が内蔵されている。送風機56の稼動により、大型空間室10の外部から取り込まれた外気OAが、外調機51で温度調節および湿度調節される。そしてこの外気は、外気ダクト52を経て、熱交チャンバ23の吸気面34と同じ高さに設けられた外気給気口50から熱交チャンバ23の吸気面34に向けて吹出され、大型空間室10の内部に供給される。なお、この外気給気口50は、ノズルであってもよい。」

(ウ)「【0034】
一方、空調対象領域15には、大型機械13の他、発熱体としての人や各種機器などが存在しているので、空調対象領域15に供給された給気SAは、やがて加熱され、緩やかに上昇する。その上昇流により、空調対象領域15内で生じた塵埃やガスなどの汚染物質が大型空間室10内の上方に移動し、空調非対象領域16へ搬送される。
・・・
【0036】
こうして、空調対象領域15に給気SAを供給しつつ、大型空間室10の上部から、加熱空気と共に塵埃やガスなどの汚染物質を排気することにより、大型空間室10内の換気が行われ、空調対象領域15は清浄な給気SAの環境に保たれる。また、空調対象領域15は、大型機械の精密な組み立てや調整などに適した均一な温度環境に維持される。
【0037】
加えて、この置換換気設備1では、給気装置20の背面(給気チャンバ21、送風チャンバ22、熱交チャンバ23の背面)を大型空間室10の側壁面24を利用して塞いでいるので、設備費の低減効果が得られる。また、大型空間室10内の側方に形成された複数列の給気面40から、誘引作用を利用して給気SAの供給を行うことにより、例えば給気チャンバ21の前面全体を給気面とした場合に比べて給気量を抑制でき、設備費およびランニングコストを低減できる。また、給気面40が大型空間室10内下方の空調対象領域15に配置され、吸気面34が大型空間室10内上方の空調非対象領域16に配置されているので、気流のショートサーキットがない。この場合、給気面40と吸気面34を垂直線上に配置すれば、熱交換器32や送風機36などの装置類が同じ場所に集約されて保守に便利であり、吸気面34を天井面12に設けた場合に比べて、還気ダクト等を節約できる。なお、吸気面34の近傍に外気給気口50を配置すれば、装置が集約されコンパクトとなる。また、外気給気口50から一旦空調非対象領域16に外気OAを供給してから熱交チャンバ23内に取り込んでいるため、室内自由空間(空調非対象領域16)で還気と外気OAが混合され、混気箱を省略できる。なお、給気チャンバ21、送風チャンバ22、熱交チャンバ23の前面が面一となれば意匠上好ましい。また、排気口60が外気給気口50よりも大型空間室10の中央よりに設けられているので、外気給気口50から供給された外気OAは、排気口60から排気されることなく、熱交チャンバ23内に確実に取り込まれる。」

(エ)「【図1】



(オ)「【図4】



(カ)「【図5】




(キ)「【図6】




イ 甲2に記載された事項
上記アの事項を総合すると、甲2には、次の事項(以下「甲2に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「大型空間室10内の側方には、前記大型空間室10内の空気を空調非対象領域16で吸引し、温度調節した後、空調対象領域15に温度調節された空気(給気SA)を循環して供給するための給気装置20が設置され、前記大型空間室10の空調を行う置換換気設備1において、
前記大型空間室10の前記空調対象領域15には、前記発熱体としての各種機器が存在し、前記空調対象領域15に供給された給気SAは、加熱され、緩やかに上昇し、その上昇流により、空調対象領域15内で生じた塵埃やガスなどの汚染物質が大型空間室10内の上方に移動し、空調非対象領域16へ搬送され、
前記給気装置20は、下から順に、前面に床面11から少なくとも空調対象領域15の80%の高さまで給気面40が鉛直方向に連続して形成された給気チャンバ21、内部に下向きに空気を送風する送風機36が設けられた送風チャンバ22、内部に加熱コイル30と冷却コイル31からなる熱交換器32が設けられた熱交チャンバ23を重ねた構成とされ、
前記給気面40には、複数の給気口43が分布して設けられた整流板42が配置され、前記給気口43には、前記給気口43から前記大型空間室10の内部に向かって吹き出す給気SAに旋回成分を与えるべく複数のフィン45が装着され、
前記熱交チャンバ23の前面(大型空間室10の内部から見える側面)に吸気面34が形成され、
前記大型空間室10の外部から取り込まれて、外調機51で温度調節及び湿度調節された外気OAを前記吸気面34に向けて吹き出すための外気給気口50が設けられ、前記外気給気口50は前記吸気面34と同じ高さに設けられ、前記外気給気口50から前記吸気面34に向けて吹き出された外気OAが、前記吸気面34を通じて前記熱交チャンバ23内に引き込まれ、
前記外気給気口50には外気OAが前記大型空間室10の外部に設けられた外気ダクト52を経て供給され、
前記給気装置20には、前記外気ダクト52が直接接続されていないこと。」

(3)甲3について
ア 甲3の記載
甲3には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0022】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明すれば、まず図1、図2、図3は夫々本実施例にかかるクリーン搬送通路に用いたファンフィルタユニット1の概観、平面、縦断面を示しており、このファンフィルタユニット1は、下面の開口部を吹出し口2とする略直方体のアルミ製のケーシング3内下部に、前記吹出し口2を覆うように水平方向に収納されたULPAフィルタ4を有している。
【0023】ケーシング3の上部には天板5が設けられており、この天板5のほぼ中央部には、円形に開口された吸込口6が形成されている。またケーシング3内の上部空間内には、2つの吐出口11、12を有する多翼型のファン13が設けられており、このファン13のファンランナ14を駆動させるファンモータ15は、前記吸込口6の中心に位置するように、4つの支持片16によって天板5に支持されている。このファンモータ15は、例えばインバータによる周波数制御によってその出力が制御されて、ファン13の回転速度が無段階で調節自在である。
【0024】ケーシング3の内部には、さらに前記ファン13を囲むファンケーシング21が設けられており、さらにこのファンケーシング21の底部と前出ULPAフィルタ4との間の空間には、気流の流路を形成するガイド板22が水平に設けられている。なおこのガイド板22、及びケーシング3内の側壁の表面には、吸音材23が設けられている。そして前記流路の吹出し側には、拡散板24が設けられている。
【0025】前記構成にかかるファンフィルタユニット1は、図4、図5に示したように、クリーン搬送通路31における収納空間32内に設置される。詳述すれば、このクリーン搬送通路31は、上部に収納空間32、下部に搬送空間33が形成されている。」

(イ)「【0029】前記天板34には、給気ダクト41と還気ダクト42が設けられ、給気ダクト41は、別設の中央空調機(図示せず)からの空調空気を収納空間32内に給気し、還気ダクト41は、収納空間32からの還気を、前記中央空調機へと排気させる。なおこれら給気、排気は、前記中央空調機のファンが担っている。給気ダクト41から給気される空調空気は、ファンフィルタユニット1が発生する熱負荷、搬送空間33内に位置する後述の搬送機器の発生する熱負荷、及び周囲環境から、天板34等のパネルを通して入ってくる熱負荷等に見合うように空気調和され、所定温度、所定湿度に保たれている。なお前記中央空調機は、より小型化し、所定の台数をクリーン搬送通路が納まるエリアに、適宜の間隔で設置してもよい。」

(ウ)「【0039】そして搬送空間33自体の雰囲気については、アイリッドパネル56によって垂直層流が確保されているので、常にダウン・フローによる清浄雰囲気が確保され、また静圧も周囲より高くなって周囲環境からは全く隔離されているので、搬送対象物であるキャリアCや、搬送機器54にコンタミネーションが発生することはない。」

(エ)「【図4】



(オ)「【図5】



(カ)段落【0029】、図4及び5の記載から、空調空気の給気口はファンフィルタユニット1の真上に位置し、空調空気の給気口からファンフィルタユニット1の真上位置に供給された空調空気が、吸込口6からファンフィルタユニット1の内部に吸い込まれ、空調空気の給気口には空調空気がクリーン搬送通路31外に設けられた給気ダクト41を通じて供給され、ファンフィルタユニット1には、給気ダクト41が直接接続されていないことが分かる。

イ 甲3に記載された事項
上記アの事項を総合すると、甲3には、次の事項(以下「甲3に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「上部に収納空間32、下部に搬送空間33が形成されたクリーン搬送通路31において、
前記収納空間32内に設置されたファンフィルタユニット1は、ケーシング3の上部に吸込口6が設けられ、前記ケーシング3内下部には吹出し口2を覆うようにULPAフィルタ4を有しており、
前記クリーン搬送通路31外に設けられた別設の中央空調機からの空調空気を前記吸込口6の真上の収納空間33に給気するための前記空調空気の給気口が天板34に設けられ、前記空調空気の給気口は前記ファンフィルタユニット1の真上に位置し、前記空調空気の給気口から前記ファンフィルタユニット1の真上位置に供給された空調空気が、前記吸込口6から前記ファンフィルタユニット1の内部に吸い込まれ、
前記空調空気の給気口には空調空気が前記クリーン搬送通路31外に設けられた給気ダクト41を通じて供給され、
前記ファンフィルタユニット1には、前記給気ダクト41が直接接続されず、
前記搬送空間33は、清浄化雰囲気が確保されること。」

(4)甲4について
ア 甲4の記載
甲4には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0007】
本発明の目的は、少ない換気回数で作業域の清浄度を確保し、かつ作業域温度差を小さくできる非層流方式のクリーンルーム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、クリーンルームに清浄空気を供給し、希釈することによってクリーンルームの内部を清浄に保つ非層流方式のクリーンルーム装置であって、高性能フィルタでろ過された室内温度より低温の清浄空気に対して旋回成分を与え、クリーンルームの下部に形成される作業域に向けて横向きに給気する給気口と、作業域よりも上部においてクリーンルームの内部の空気を排気する排気口とを有し、作業域に向けて清浄空気を給気する給気チャンバを複数台設置し、給気チャンバの前面に前記給気口が配置され、送風量を減少させる場合は、清浄空気を供給する給気チャンバの台数を減らすことによって、清浄空気の流速が0.5m/s未満になることを防止するように構成され、前記給気口から清浄空気を室内への吐出面での平均流速が0.5m/s以上、1.2m/s以下で給気して、前記作業域のみを希釈することを特徴とする、クリーンルーム装置が提供される。」

(イ)「【0012】
クリーンルーム10の内部は、天井10a、床10b及び側壁10cで区画された閉鎖空間になっている。かかるクリーンルーム10は、例えば半導体の製造分野などにおいて広く利用される。クリーンルーム10内の下部には、半導体の製造などを行うための作業域11が形成されている。作業域11は、床から2m程度の高さまでの領域であり、作業域11には、各種作業を行うために人間12が存在している。本発明においては、この作業域11における空気中の浮遊粒子aが所定の濃度以下の清浄度となるように管理されている。
【0013】
クリーンルーム10の下部には、複数の給気口15が設けられ、クリーンルーム10の上部には、複数の排気口16が設けられている。給気口15は作業域11の高さ(床から2m程度の高さまで)に配置されており、排気口16は、作業域11よりも上方に配置されている。図示の例では、クリーンルーム10の側壁10cの下部に給気口15を開口させ、天井10aに排気口16を開口させている。」

(ウ)「【0015】
こうしてクリーンルーム10の側壁10c下部に露出した給気チャンバ20の内部は空洞になっており、その前面21には、図2に示すように、複数の給気口15が縦横に並べて配置されている。給気チャンバ20には、外気OAおよび還気RAを空調機22で処理することにより作られた給排気温度差を例えば10℃以上とする低温に調整された清浄空気(給気)SAが、給気ダクト23を経て供給されている。これにより、給気チャンバ20の前面21に形成された複数の給気口15から、クリーンルーム10下部の作業域11に向けて横向きに清浄空気SAが供給されるようになっている。この場合、作業域11全体の空気を攪拌させるために、給気口15から平均で0.5m/s以上、1.2m/s以下(例えば0.9m/s以下)の流速で清浄空気SAが作業域11に向けて供給される。なお、このように0.5m/s以上、1.2m/s以下の流速とされる清浄空気SAの基準位置は、給気口15を出た直後、即ち、後述のフィン40を経た直後の給気チャンバ20の前面21(給気面)の室内側である。なお、給気チャンバ20の前面21(給気面)の室内側における清浄空気SAの平均流速は吹き出し風量を吹き出しフェース面積(給気口15の総面積)で除した値である。」

(エ)「【0019】
給気チャンバ20の前面21の各給気口15は、板状体の前面21に複数設けられた開口である。前面21は給気ユニットのフェース部であり、給気口15はパンチングやスリット等の開口として形成されていてもよく、また前面21の全部をフィルタ面とし、給気の全量を前面21全体から吹き出してもよい。前面21の背後(給気チャンバ20の奥側)には、図3、4に示すように、複数のフィン40がそれぞれ装着されている。各給気口15の中央に支持部材41が設けてあり、各フィン40は、この支持部材41の周りに適当な等間隔で放射状に取り付けてある。給気口15からクリーンルーム10(作業域11)に向かって吹き出す清浄空気SAに旋回成分を与えるべく、各フィン40は給気口15の中心軸15’に対してそれぞれ傾斜して配置されており、図3と図4では、フィン40の傾斜方向が逆向きの関係になっている。
【0020】
このように、各給気口15に傾斜したフィン40を放射状に取り付けたことにより、給気チャンバ20の内部から給気口15に向かって流れ込んできた清浄空気SAを、給気口15に通過させる際に、各フィン40に沿わせて強制的に流すことができる。これにより、給気口15からクリーンルーム10下部の作業域11に向かって吹き出す清浄空気SAに、中心軸15’を中心とする旋回成分を与えるようになっている。」

(オ)「【0027】
これにより、作業域11に存在する空気に対して清浄空気SAが混合されて、希釈効果により作業域11全体の浮遊粒子aの濃度を下げ、作業域11を清浄に保つことができるようになる。この場合、給気ユニット20近傍の誘引量は吹出しフェース面速度の二乗に比例する。各給気口15から0.5m/s、1.2m/s以下以上の流速で清浄空気SAを給気することにより、給気流速の小さい置換換気ではできなかった作業域11全体の希釈混合ができ、熱上昇流に直接乗らない浮遊粒子aの除去もできるようになる。そして、給気ユニット20からの給気は給気面の高さと同じ距離の位置(例えば前面21の高さが2.1mのとき、前面21から室内側に2.1mの地点)では減速されて置換換気と略同等の風速、ここでは0.3m/sの風速となる。また、作業域11に向かって清浄空気SAを横向きに給気しているので、クリーンルーム10内において作業域11よりも上部に存在している空気に対しては清浄空気SAが混合されず、清浄空気SAは作業域11に存在する空気のみに対して清浄空気SAが混合され、作業域11のみを清浄に保つことができる。」

(カ)「【0029】
一方、クリーンルーム10内の作業域11には、発熱体としての人間11などが存在しているので、作業域11内に供給されて人間11やその他の発熱機器類などに熱的に接触した清浄空気SAは、やがて加熱され、緩やかに上昇する。その上昇流により、作業域11において人間11の周りに生じた浮遊粒子aなどの汚染物質をクリーンルーム10内において作業域11の上方に搬送することができる。」

(キ)「【図1】



(ク)「【図2】



(ケ)「【図3】



(コ)「【図4】



イ 甲4に記載された事項
上記アの事項を総合すると、甲4には、次の事項(以下「甲4に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「クリーンルーム10に清浄空気を供給し、前記クリーンルーム10の内部を清浄に保つ非層流方式のクリーンルーム装置に設置され、前記クリーンルーム10外からの清浄空気SAが給気ダクト23を経て供給され、吹き出す前記清浄空気SAに対して旋回成分を与えるフィン40が設けられている複数の給気口15から前記クリーンルーム10下部の作業域11に向けて前記清浄空気SAを横向きに供給する、給気チャンバ20において、
前記複数の給気口15は、前記給気チャンバ20の前面において前記作業域11の高さに配置されていること。」

(5)甲5について
ア 甲5の記載
甲5には、以下の事項が記載されている。
(ア)「又、クリーンユニツト(10)は上記室外機(7)に配管接続された蒸発器(9)と、この蒸発器(9)の風下側に設けられた水はね防止板(9A)と、例えば0.5ミクロン以上の塵埃又は細菌を濾過するヘパフィルタ(12)と、蒸発器(11)とヘパフィルタ(12)の下面を覆う露受皿(13)と、蒸発器(9)、ヘパフィルタ(12)及び水はね防止板(9A)を覆い取付ボルト(14A)、(14A)にて天井ダクト(5)に固定された箱体(14)とから構成され、この箱体(14)には吸込口(15)、及び吹出口(16)が夫々形成されている。尚、箱体(14)は取付金具(17)を介して天井ダクト(5)に取り付けられている。尚、前記露受皿(13)には除霜水等を排水するための排水パイプ(13A)が接続されている。」(明細書6ページ4行〜同ページ16行)

(イ)「

」(第1図)

(ウ)「

」(第2図)

(エ)「

」(第3図)

イ 甲5に記載された事項
上記アの事項を総合すると、甲5には、次の事項(以下「甲5に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「クリーンユニット10において、蒸発器9及びヘパフィルタ12を、箱体14に形成された吹出口16の全体に亘って配置すること。」

2−2 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
(ア)甲1発明の「クリーンルーム」は、本件発明1の「クリーンルーム」に相当し、同様に、「空調対象域S」は「空調領域」に、「清浄空気によりクリーン化する」は「清浄に保つ」に、「空調設備」は「クリーンルーム装置」に、それぞれ相当する。
そして、甲1発明の「高さ13.4mの高天井のクリーンルームの床からの高さHが5mに設定された空調対象域S」は、クリーンルームの最下部である床から5mの高さHまでの範囲に位置しているから、本件発明1の「クリーンルームの下部に形成される空調領域」に相当する。
また、甲1発明には、空調領域を「非層流方式で」清浄に保つことが明示されていない。
そうすると、甲1発明の「高さ13.4mの高天井のクリーンルームの床からの高さHが5mに設定された空調対象域Sを清浄空気によりクリーン化する空調設備」と、本件発明1の「クリーンルームの下部に形成される空調領域を非層流方式で清浄に保つクリーンルーム装置」とは、「クリーンルームの下部に形成される空調領域を清浄に保つクリーンルーム装置」という限りにおいて一致する。

(イ)甲1発明の「循環ユニット」は、本件発明1の「空気循環ユニット」に相当する。
そして、甲1発明には、循環ユニットは空調領域に「非層流方式で」給気を行う点が明示されていない。
そうすると、甲1発明の「前記クリーンルーム内に配置され、前記クリーンルーム内の前記空調対象域Sに給気を行い、前記空調対象域Sの空気を循環させる循環ユニット」と、本件発明1の「前記クリーンルーム内に配置され、前記クリーンルーム内の前記空調領域に非層流方式で給気を行い、前記空調領域の空気を循環させる空気循環ユニット」とは、「前記クリーンルーム内に配置され、前記クリーンルーム内の前記空調領域に給気を行い、前記空調領域の空気を循環させる空気循環ユニット」という限りにおいて一致する。

(ウ)甲1発明の「還気取り入れ口31」は、本件発明1の「吸気口」に相当し、同様に、「給気口21の開口」は「給気口」に相当する。
また、甲1発明の「複数の給気口21の開口」が「前記循環ユニットの前面において前記空調対象域Sの高さHより低い位置で床面Fの近傍であって、上端が床上高さ3.2mとなる位置に設定された領域に分布して配置されて」いることと、本件発明1の「複数の給気口」が「前記空気循環ユニットの前面において前記空調領域と向かい合う高さまでの領域に分布して配置されて」いることとは、「複数の給気口」が「前記空気循環ユニットの前面において前記空調領域に対応する所定の高さまでの領域に分布して配置されて」いるという限りにおいて一致する。
そして、甲1発明には、「非層流方式で」空調される点が明示されていない。
そうすると、甲1発明の「前記循環ユニットには、前記クリーンルームの内部であって空調される前記空調対象域Sよりも上方の位置で前記クリーンルーム内の空気を吸い込む還気取り入れ口31と、前記循環ユニットの前面において前記空調対象域Sの高さHより低い位置で床面Fの近傍であって、上端が床上高さ3.2mとなる位置に設定された領域に分布して配置されて、前記空調対象域Sに向けて横向きに給気する複数の給気口21の開口が設けられ」ることと、
本件発明1の「前記空気循環ユニットには、前記クリーンルームの内部であって非層流方式で空調される前記空調領域よりも上方の位置で前記クリーンルーム内の空気を吸い込む吸気口と、前記空気循環ユニットの前面において前記空調領域と向かい合う高さまでの領域に分布して配置されて、前記空調領域に向けて横向きに給気する複数の給気口が設けられ」ることとは、
「前記空気循環ユニットには、前記クリーンルームの内部であって空調される前記空調領域よりも上方の位置で前記クリーンルーム内の空気を吸い込む吸気口と、前記空気循環ユニットの前面において前記空調領域に対応する所定の高さまでの領域に分布して配置されて、前記空調領域に向けて横向きに給気する複数の給気口が設けられ」という限りにおいて一致する。

(エ)甲1発明の「顕熱交換器41」は、本件発明1の「冷却器」に相当し、同様に、「高性能フィルタ42」は「高性能フィルタ」に、「有圧扇32」は「ファン」に、それぞれ相当する。
そして、甲1発明の「前記循環ユニットの内部には、顕熱交換器41および高性能フィルタ42と、前記クリーンルーム内の空気を前記還気取り入れ口31から吸い込み、前記顕熱交換器41および前記高性能フィルタ42を通過させて前記給気口21の開口に向けて送風する有圧扇32を備え」ることは、本件発明1の「前記空気循環ユニットの内部には、冷却器および高性能フィルタと、前記クリーンルーム内の空気を前記吸気口から吸い込み、前記冷却器および前記高性能フィルタを通過させて前記給気口に向けて送風するファンを備え」ることに相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「クリーンルームの下部に形成される空調領域を清浄に保つクリーンルーム装置であって、
前記クリーンルーム内に配置され、前記クリーンルーム内の前記空調領域に給気を行い、前記空調領域の空気を循環させる空気循環ユニットを備え、
前記空気循環ユニットには、前記クリーンルームの内部であって空調される前記空調領域よりも上方の位置で前記クリーンルーム内の空気を吸い込む吸気口と、前記空気循環ユニットの前面において前記空調領域に対応する所定の高さまでの領域に分布して配置されて、前記空調領域に向けて横向きに給気する複数の給気口が設けられ、
前記空気循環ユニットの内部には、冷却器および高性能フィルタと、前記クリーンルーム内の空気を前記吸気口から吸い込み、前記冷却器および前記高性能フィルタを通過させて前記給気口に向けて送風するファンを備える、クリーンルーム装置。」

[相違点1]
「空調領域」の「清浄」、「給気」、「空調」に関し、本件発明1は、「非層流方式で」行うのに対し、甲1発明は、そのような方式について明示されていない点。

[相違点2]
本件発明1は、「前記空調領域には機器が存在し、前記機器が存在する前記空調領域に非層流方式で給気が行われ、前記空調領域において前記機器の熱的影響による上昇流により汚染物質がクリーンルーム内において前記空調領域よりも上方に搬送され」るのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。

[相違点3]
「前記空調領域に対応する所定の高さ」に関し、本件発明1は、「前記空調領域と向かい合う高さ」であるのに対し、甲1発明は、「前記空調対象域Sの高さHより低い位置で床面Fの近傍であって、上端が床上高さ3.2mとなる位置」である点。

[相違点4]
本件発明1は、「前記吸気口は前記空気循環ユニットの上面に設けられ」るのに対し、甲1発明は、「前記循環ユニットを構成する間仕切り壁5における空調対象域Sよりも高い位置の所定の高さに前記還気取り入れ口31が設けられ」る点。

[相違点5]
本件発明1は、「前記クリーンルーム外からの清浄空気を前記吸気口の真上の室内空間に給気するための前記清浄空気の給気口が設けられ、前記清浄空気の給気口は前記空気循環ユニットの真上に位置し、前記清浄空気の給気口から前記空気循環ユニットの真上位置に供給された清浄空気が、前記吸気口から前記空気循環ユニットの内部に吸い込まれ、
前記清浄空気の給気口には清浄空気が前記クリーンルーム外に設けられた給気ダクトを通じて供給され、
前記空気循環ユニットには、給気ダクトが直接接続されていない」のに対し、
甲1発明は、「前記クリーンルーム外に湿度調整を行う外気調和機11を設置し、前記循環ユニットに湿度調整された空気を供給するためのダクト16が設けられ、前記循環ユニットの内部に形成された循環路7の上面を塞ぐパネル材7aに前記ダクト16が接続され、湿度調整された空気が、前記ダクト16を通じて前記循環路7に供給される」点。

イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点5について検討する。
本件発明1のクリーンルームの天井の給気口から供給される「清浄空気」に関して、本件の特許明細書には、以下のとおり記載されている。
「【0018】・・・これにより、外調機21内において、外気OAは先ず粗フィルタ23を通過して予備的に濾過された後、冷却器24で室内温度より低温に冷却され、更に、高性能フィルタ26によって浮遊粒子が除去されて清浄空気CAにされる。高性能フィルタ26は例えばHEPAフィルタ、ULPAフィルタ等で構成される。こうして外調機21内で処理されて作られた低温の清浄空気CAが、給気ダクト22、給気口20を経てクリーンルーム10において、空調領域11よりも上方に供給されるようになっている。」
すなわち、本件発明1の「清浄空気」は、本件の特許明細書の記載を参酌すると、高性能フィルタによって浮遊流離が除去された空気であると解される。
一方、甲1発明のクリーンルーム外のダクト16から供給される空気は、「湿度調整された空気」であって「清浄空気」ではない。また、甲1発明は、湿度調整された空気が、ダクト16を通じて循環路7に供給されるものであり、循環ユニットの内部には高性能フィルタ42があるため、ダクト16から清浄空気を供給する必要がない。
また、甲2に記載された事項において、大型空間室10内に外気給気口50によって供給される空気は、「外気OA」であって、段落【0027】の、「外調機51には、冷却コイル53、加熱コイル54、加湿ノズル55、送風機56が内蔵されている。送風機56の稼動により、大型空間室10の外部から取り込まれた外気OAが、外調機51で温度調節および湿度調節される。そしてこの外気は、外気ダクト52を経て、熱交チャンバ23の吸気面34と同じ高さに設けられた外気給気口50から熱交チャンバ23の吸気面34に向けて吹出され、大型空間室10の内部に供給される。」との記載からみて、外気OAは、単に温度及び湿度が調整されるに過ぎず、外気OAが清浄化されていると解するべき特段の事情もないから、外気OAは、「清浄空気」ではない。
ここで、甲2の段落【0036】には、「空調対象領域15は清浄な給気SAの環境に保たれる。」と記載されているが、同段落【0036】の「空調対象領域15に給気SAを供給しつつ、大型空間室10の上部から、加熱空気と共に塵埃やガスなどの汚染物質を排気することにより、大型空間室10内の換気が行われ」との記載によれば、空調対象領域15が清浄な給気SAの環境に保たれているのは、大型空間室10の上部から、加熱空気と共に塵埃やガスなどの汚染物質を排気することにより、大型空間室10内の換気が行われることによるものであり、清浄な空気が大型空間室10内に供給されることによるものとは認められないから、「外気OA」が清浄空気であるとはいえない。
さらに、甲3に記載された事項において、収納空間32内に給気ダクト41によって供給される空気は、「空調空気」であって「清浄空気」ではない。
そして、甲3に記載された事項において、ファンフィルタユニット1は、ULPAフィルタ4を有しており、搬送空間33は、清浄雰囲気が確保されているから、搬送を行わない収納空間32に清浄空気を供給する必要がない。
したがって、甲1発明、甲2に記載された事項及び甲3に記載された事項のいずれにおいても、清浄空気の給気口は、空気循環ユニットの真上に位置し、清浄空気の給気口から空気循環ユニットの真上位置に供給された清浄空気が、吸気口から空気循環ユニットの内部に吸い込まれるように構成した点が開示されておらず、甲1発明の「湿度調整された空気」、甲2に記載された事項の「外気OA」及び甲3に記載された事項の「空調空気」を「清浄空気」とする動機付けもない。
さらに、甲4に記載された事項は、非層流方式のクリーンルーム装置を備えるものの、上記の構成を開示するものではなく、甲5に記載された事項も、上記の構成を開示するものではない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2〜5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2、4及び5について
本件発明2、4及び5は、本件発明1を引用し、上記相違点5に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記(1)と同様の理由により、甲1発明及び甲2〜5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立人の主張について
ア 申立人は、令和4年11月11日付けの意見書において、「特許権者は甲3発明において、給気口から供給される空気は空調空気であり、本件特許発明のような”清浄空気”ではない旨の主張も行っている。しかしながら、“ウィキペディア(Wikipedia) "によれば、「空気調和とは、人間の快滴性の向上目的や、生産、管理、貯蔵といった物品を扱う上での産業目的で、ある場所の空気の温度や湿度、清浄度、気流などを調整することである。」と定義され、“空気調和設備計画設計の実務の知識 空気調和・衛生工学会編 平成29年3月25日改訂4版”によれば、「空気調和とは、対象とする室内全体もしくは特定の場所における空気の温度、湿度、清浄度などを、人体あるいは物品や装置などに適した環境になるように、処理・調整するプロセスをいう。」と定義されているものであるから、甲3発明における「中央空調機による空気調和」には、清浄度に関する事項をも含む概念であると解釈する」と主張する(第6ページ第26行〜第7ページ第9行)。
しかしながら、上記(1)イで検討したとおり、本件の特許明細書の記載を参酌すると、本件発明1の「清浄空気」は、高性能フィルタによって浮遊流離が除去された空気であると解されものであるから、“ウィキペディア(Wikipedia) "に、空気調和と清浄度との関係が記載されていたとしても、甲3に記載された「中央空調機からの空調空気」は、本件発明1で特定される「清浄空気」とはいえない。

イ また、申立人は、令和4年11月11日付けの意見書とともに、特開2022−355517号公報(参考資料1)、特開2002−156148号公報(参考資料2)、特開2003−275513号公報(参考資料3)を提出し、同意見書において、「一方で、外調機に対して高性能フィルタを設けることは、参考資料1〜3に記載されているとおり、従来から周知の技術である。外調機に高性能フィルタを設けると、内調機に設置される高性能フィルタ(こちらは必須の構成)の負荷を低減させることが可能であり、長寿命化が図れる等のメリットを有することになるが、当業者において、外調機に高性能フィルタを配置して空気の顕熱処理と共に、清浄化を図ることは単なる設計事項であるというべきである。」と主張する。(第7ページ第19行〜同ページ24行)
しかしながら、外調機に対して高性能フィルタを設けることが従来周知の技術であるとしても、甲1発明は、循環ユニットの内部に高性能フィルタ42を備えており、これにより空調対象域Sのクリーン化を図れているのであるから、当該周知技術を採用する動機付けを認めることができない。

したがって、申立人の主張は、採用できない。

(4)小括
以上のとおり、本件発明1、2、4及び5は、甲1発明及び甲2〜5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえない。

2 令和4年12月14日付けで通知した取消理由の理由1(新規事項の追加;特許法第17条の2第3項)について
訂正事項6により、特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記クリーンルーム外からの清浄空気を前記吸気口の真上の室内空間に給気するための前記清浄空気の給気口が設けられ、前記給気口から前記空気循環ユニットの真上位置に供給された清浄空気が、前記吸気口から前記空気循環ユニットの内部に吸い込まれ、」は、「前記クリーンルーム外からの清浄空気を前記吸気口の真上の室内空間に給気するための前記清浄空気の給気口が設けられ、前記清浄空気の給気口は前記空気循環ユニットの真上に位置し、前記清浄空気の給気口から前記空気循環ユニットの真上位置に供給された清浄空気が、前記吸気口から前記空気循環ユニットの内部に吸い込まれ、」に訂正され、給気口が空気循環ユニットの真上でない構成は、含まれないものとなった。
そして、訂正事項6により訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された上記発明特定事項は、当初明細書等の段落【0018】、【0038】、図1〜3に記載されているから、本件特許の請求項1に係る発明は、当初明細書等に記載した範囲内のものとなった。
よって、本件特許の請求項1、及び請求項1を引用する請求項2、4、5に係る発明は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

3 令和4年12月14日付けで通知した取消理由の理由2(明確性;特許法第36条第6項第2号)について
訂正事項7により、請求項1は、「前記清浄空気の給気口には清浄空気が前記クリーンルーム外に設けられた給気ダクトを通じて供給され、」と特定されたため、請求項1の「前記空気循環ユニットには、給気ダクトが直接接続されていない」との記載における「給気ダクト」について、他の発明特定事項との技術的関連が明確となり、給気ダクトの技術的意味が明確となった。
なお、申立人は、令和5年4月17日付け意見書において、「依然として、給気口20がどのような態様で設けられるかが不明である。また、給気ダクト22は空気循環ユニット30に接続されていなことは明示されているが、その給気ダクト22がクリーンルーム内に存在する態様で空気循環ユニット30に接続されていないのか、或いは給気ダクト22がクリーンルーム内に存在しない態様で空気循環ユニット30に接続されていないのかが不明である。」(第4ページ第2行〜同ページ第7行)と主張する。
しかしながら、請求項1の「前記空気循環ユニットには、給気ダクトが直接接続されていない」との記載について、申立人が示す2つの態様のいずれかに特定することを要するまでもなく、その記載の意味は、明確である。
よって、本件特許の請求項1、及び請求項1を引用する請求項2、4、5の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人は、特許異議申立書の第4ページ第15行〜第25行において、本件補正(令和3年2月22日付け手続補正書でした補正)により請求項1に「前記空気循環ユニットには、給気ダクトが直接接続されていない」との発明特定事項を追加した補正について、次のとおりの主張をする。
「当該補正では、「前記空気循環ユニットは、給気ダクトが直接接続されていない」との補正が成されているが、明細書では、給気口20はクリーンルーム内に配置された給気ダクトに設けられているのではなく、当初明細書の段落[0018]に記載されるように、クリーンルーム10の天井10aに、清浄空気CAの給気口20が設けられているものである。
従って、「空気循環ユニットが給気ダクトと直接的に接続していない」という補正内容だけでは、上記参考図1に示されるように、クリーンルーム内に配置された給気ダクト22に給気口が設けられ、その給気口から清浄空気が吹き出されている態様をも含むものとなっている。
本願明細書には、給気口20は天丼10aに設けられている態様だけしか記載されておらず、クリーンルーム内に給気ダクトを有しない態様だけが明細書の記載範囲であるから、給気ダクト22をクリーンルーム内に配置された態様をも含んだ内容となっている当該補正は、明細書又は図面に記載した事項の範囲を越えたものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。」

しかしながら、本件補正により追加された「前記空気循環ユニットには、給気ダクトが直接接続されていない」との発明特定事項は、当初明細書等の段落【0038】、【0039】及び図1の記載に基づくものである。
そして、本件発明1において、給気ダクト22が接続される給気口20は、吹き出される清浄空気の流速や拡散度合いに応じて、清浄空気が空気循環ユニットの吸気口に効率よく吸い込まれる位置に配置する必要があること、空調室外からの空調された空気を空調室内に供給するダクトを、空調室内に配置することが、甲1の図2や甲2の図1にも記載があるように、従来から普通に行われていることなどを考慮すると、当初明細書等に給気ダクト22をクリーンルーム内に配置された態様が明示されていないとしても、本件補正により請求項1に追加された上記発明特定事項がそのような態様を含むことは、技術常識からみて明らかである。
そうすると、本件補正の請求項1に上記発明特定事項を追加する補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、当初明細書等に記載した範囲内においてしたものである。

2 また、申立人は、特許異議申立書の第4ページ第15行〜第25行において、請求項2の記載を「前記給気口から室内空間に清浄空気が下向きに前記吸気口に向けて給気されることを特徴とする、請求項1に記載のクリーンルーム装置。」とする補正について、次の主張をする。
「当初明細書の段落[0018]には「クリーンルーム10の天井10aには、清浄空気CAの給気口20が設けられている。清浄空気CAの給気口20は、後述する空気循環ユニット30の真上に位置している。」と記載されている。
従って、「前記給気口から室内空間に清浄空気が下向きに前記吸気口に向けて給気される」という構成は、出願人が主張するように自明と思われるが、当該補正では、給気口20が天井10aに設けられている構成が抜けているため、請求項2に係る発明は、次頁参考図2に示されるように、天井10aから垂下する給気ダクト22の先端に給気口が設けられ、清浄空気が下向きに前記吸気口に向けて給気される態様をも含むものとなっている。
本願明細書には、給気口20は天丼10aに設けられている態様だけしか記載されておらず、クリーンルーム内に給気ダクトを有しない態様だけが明細書の記載範囲であるから、給気ダクト22をクリーンルーム内に配置された態様をも含んだ内容となっている当該補正は、明細書又は図面に記載した事項の範囲を越えたものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。」

しかしながら、上記1で述べたとおり、当初明細書等に給気ダクト22をクリーンルーム内に配置された態様が明示されていないとしても、本件補正により補正された請求項2の「前記給気口から室内空間に清浄空気が下向きに前記吸気口に向けて給気される」との発明特定事項が、そのような態様を含むことは技術常識からみて明らかである。
そうすると、請求項2についての補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、当初明細書等に記載した範囲内においてしたものである。

3 したがって、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由によって、本件特許の請求項1、及び請求項1を引用する請求項2、4、5に係る発明についての本件補正を、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさないものとすることはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、2、4及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項3及び6〜8に係る特許に対する特許異議の申立てについては、本件特許の請求項3及び6〜8が本件訂正により削除されたことにより、申立ての対象が存在しないものとなったため、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】クリーンルーム装置および空気循環ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム装置に関し、さらに当該クリーンルーム装置に好適に用いられる空気循環ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体の製造分野などにおいて、クリーンルーム装置が広く利用されている。クリーンルーム装置の方式には、気流によってクリーンルーム内の空気を混合・希釈させる非層流方式(コンベンショナル方式)と、クリーンルーム内の空気を一方向に層流状態で押し流しつつ塵埃を排気させる層流方式がある。これらのうち、非層流方式のクリーンルーム装置は、層流方式のクリーンルーム装置よりも建設費、運転費などの面で経済的であるといった利点がある。かかる非層流方式のクリーンルーム装置としては、例えば本出願人が特許文献1に開示したように、高性能フィルタでろ過された室内温度より低温の清浄空気をクリーンルームの下部に形成される空調領域に向けて横向きに給気し、希釈することによってクリーンルームの内部を清浄に保つものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5361140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の非層流方式のクリーンルーム装置は、天井までのクリーンルーム内全体の空気を一様に混合・希釈させることを意図したものである。クリーンルーム内の浮遊粒子(塵埃)発生量や室内発熱量から、清浄度と温度均一度の設計値を満足する必要換気回数が設計されるが、従来の非層流方式のクリーンルーム装置では、例えば20回/hと比較的多くの換気回数を必要とするのが一般的である。クリーンルーム装置の空調エネルギーは、空気搬送系が大きな割合を占める。このため、エネルギー削減のためには、浮遊粒子発生量や室内発熱量に応じた空調風量で運転を行い、換気回数を削減することが有効である。
【0005】
少ない換気回数で設計値を満足できれば建設費、運転費の面で大きなメリットが得られるが、一般には空調が必要とされる領域がクリーンルーム内の床から限られた高さまでであるにもかかわらず、従来の非層流方式のクリーンルーム装置では、天井までのクリーンルーム内全体を混合させてしまうために換気回数を大きく削減することができない。例えば浮遊粒子発生量から換気回数を設計する場合には、理論値である完全混合を仮定した換気回数より下回ることはできない。
【0006】
一方、上記特許文献1のクリーンルーム装置によれば、低温の清浄空気に旋回成分を与えてクリーンルームの下部に形成される空調領域に向けて横向きに給気することにより、クリーンルーム下部の空調領域に存在する空気に対して清浄空気が混合されて、希釈効果により空調領域を清浄に保つことができるようになる。この非層流方式のクリーンルーム装置により、従来の非層流方式のクリーンルーム装置に比べてより少ない換気回数で空調領域の清浄度を確保することができる。このため、エネルギー削減が可能となる。
【0007】
しかしながら、いずれの場合も、従来のクリーンルーム装置では、クリーンルームに給気する大型の外調機や、クリーンルーム内から外調機に還気を戻すレタンシャフトなどの設置が必要な大掛かりな装置であり、ダクトの設置距離も全体的に長くなっており、工期に長期間を要していた。
【0008】
本発明の目的は、比較的簡単な設備でありながら、少ない換気回数で空調領域の清浄度を確保することができる、非層流方式のクリーンルーム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明によれば、クリーンルームの下部に形成される空調領域を非層流方式で清浄に保つクリーンルーム装置であって、前記空調領域には機器が存在し、前記機器が存在する前記空調領域に非層流方式で給気が行われ、前記空調領域において前記機器の熱的影響による上昇流により汚染物質がクリーンルーム内において前記空調領域よりも上方に搬送され、前記クリーンルーム内に配置され、前記クリーンルーム内の前記空調領域に非層流方式で給気を行い、前記空調領域の空気を循環させる空気循環ユニットを備え、前記空気循環ユニットには、前記クリーンルームの内部であって非層流方式で空調される前記空調領域よりも上方の位置で前記クリーンルーム内の空気を吸い込む吸気口と、前記空気循環ユニットの前面において前記空調領域と向かい合う高さまでの領域に分布して配置されて、前記空調領域に向けて横向きに給気する複数の給気口が設けられ、前記空気循環ユニットの内部には、冷却器および高性能フィルタと、前記クリーンルーム内の空気を前記吸気口から吸い込み、前記冷却器および前記高性能フィルタを通過させて前記給気口に向けて送風するファンを備え、前記空気循環ユニットの上面に前記吸気口が設けられ、前記クリーンルーム外からの清浄空気を前記吸気口の真上の室内空間に給気するための前記清浄空気の給気口が設けられ、前記清浄空気の給気口は前記空気循環ユニットの真上に位置し、前記清浄空気の給気口から前記空気循環ユニットの真上位置に供給された清浄空気が、前記吸気口から前記空気循環ユニットの内部に吸い込まれ、前記清浄空気の給気口には清浄空気が前記クリーンルーム外に設けられた給気ダクトを通じて供給され、前記空気循環ユニットには、給気ダクトが直接接続されていないことを特徴とする、クリーンルーム装置が提供される。前記給気口から室内空間に清浄空気が下向きに前記吸気口に向けて給気されても良い。
【0010】
このクリーンルーム装置において、前記複数の給気口には、前記空調領域に向けて横向きに給気される空気に対して旋回成分を与えるフィンが設けられていても良い。また、前記冷却器および高性能フィルタは、前記複数の給気口の内側全体を覆う位置に配置されていても良い。
【0011】
(削除)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クリーンルームの下部に形成される空調領域を清浄に保つ非層流方式のクリーンルーム装置において、クリーンルーム内の空気を空気循環ユニットで循環させることにより、極めて少ない換気回数で空調領域の清浄度を確保することができるようになる。また、クリーンルーム内の空気をクリーンルーム内に配置した空気循環ユニットで循環させることにより、外調機に還気を戻すレタンシャフトなどの設置を省略することが可能となる。その結果、比較的短い工期で構築できる簡単な設備でありながら、少ない換気回数で空調領域の清浄度を確保することができるクリーンルーム装置が得られるようになる。また、天井までのクリーンルーム内全体の空気を一様に混合・希釈させる従来の非層流方式のクリーンルーム装置に比べて、少ない換気回数で空調領域の清浄度を確保することができ、エネルギー削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態にかかるクリーンルーム装置を説明するための概略構成図である。
【図2】空気循環ユニットの内部構造を示す側方図である。
【図3】クリーンルームの内部から見た空気循環ユニットの正面図である。
【図4】クリーンルームの内部から見て反時計回転方向の旋回成分を低温空気に与えるようにフィンを取り付けた給気口の正面図である。
【図5】クリーンルームの内部から見て時計回転方向の旋回成分を低温空気に与えるようにフィンを取り付けた給気口の正面図である。
【図6】隣り合う給気口から吹き出される低温空気の旋回成分を交互に逆の回転方向とした給気口の説明図である。
【図7】隣り合う給気口から吹き出される低温空気の旋回成分を同じ回転方向とした給気口の説明図である。
【図8】複数の空気循環ユニットを並べて配置し、給気量に応じて給気チャンバの稼働台数を切り替えるように構成した実施の形態の説明図である。
【図9】従来の非層流方式のクリーンルーム装置の温度分布を示すグラフである。
【図10】従来の非層流方式のクリーンルーム装置の浮遊粒子個数の分布を示すグラフである。
【図11】本発明のクリーンルーム装置の温度分布を示すグラフである。
【図12】本発明のクリーンルーム装置の浮遊粒子個数の分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の一例を、図面を参照にして説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかるクリーンルーム装置1の説明図である。このクリーンルーム装置1は、気流によってクリーンルーム10内の空気を混合・希釈させる非層流方式(コンベンショナル方式)である。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
クリーンルーム10の内部は、天井10a、床(床スラブ)10b及び側壁10cで区画された閉鎖空間になっている。かかるクリーンルーム10は、例えば半導体の製造分野などにおいて広く利用される。クリーンルーム10内の下部には、半導体の製造などを行うために清浄に保たれた空調領域11が形成されている。空調領域11は、床10bから所定の高さまでの領域であり、空調領域11には、半導体製造装置などの各種の機器12が存在している。空調領域11の高さは機器12よりも高く、この実施の形態では、機器12の高さが約3mに対し、空調領域11の高さは約3.4〜4m程度に設定されている。本発明においては、この空調領域11における空気中の浮遊粒子aが所定の濃度以下の清浄度となるように管理される。
【0016】
機器12には、機器12自体から発生した汚染物質を局地的に排気する局排ダクト13が接続されている。局排ダクト13には、クリーンルーム10の外部において排気ファン14が取り付けられており、この排気ファン14により、機器12自体から発生した汚染物質が、局排ダクト13を通じて局地的に吸引され、排気EAとして外部に排出される。
【0017】
クリーンルーム10の天井10aには、清浄空気CAの給気口20が設けられている。清浄空気CAの給気口20は、後述する空気循環ユニット30の真上に位置している。給気口20には、外調機21で作られた低温の清浄空気CAが給気ダクト22を通じて供給されている。外調機21は、粗フィルタ23、冷却器24、給気ファン25、高性能フィルタ26を備えている。粗フィルタ23の上流側には、外気OAが取り入れられており、給気ファン25の動力によって、外気OAが外調機21内において、粗フィルタ23、冷却器24、給気ファン25、高性能フィルタ26の順に通過するようになっている。これにより、外調機21内において、外気OAは先ず粗フィルタ23を通過して予備的に濾過された後、冷却器24で室内温度より低温に冷却され、更に、高性能フィルタ26によって浮遊粒子が除去されて清浄空気CAにされる。高性能フィルタ26は例えばHEPAフィルタ、ULPAフィルタ等で構成される。こうして外調機21内で処理されて作られた低温の清浄空気CAが、給気ダクト22、給気口20を経てクリーンルーム10において、空調領域11よりも上方に供給されるようになっている。
【0018】
クリーンルーム10の内部には、クリーンルーム10の内部の空気を循環させる複数の空気循環ユニット30が配置されている。各空気循環ユニット30は、クリーンルーム10内に置かれている機器12を周囲から囲むように、側壁10cに沿って配置されている。
【0019】
空気循環ユニット30の高さは、空調領域11の高さよりも高くなっており、例えば空調領域11の高さが約3.4〜4m程度であるのに対して、空気循環ユニット30の高さは約5mに設定されている。このため、空気循環ユニット30の下部は空調領域11内にあるが、空気循環ユニット30の上部は、クリーンルーム10内において空調領域11よりも上方の空間に突出している。
【0020】
図2、3に示されるように、空気循環ユニット30の上面には、クリーンルーム10内の空気を吸い込む吸気口31が設けられている。また、空気循環ユニット30の前面(クリーンルーム10の内部に向かう面)には、複数の給気口32が設けられている。
【0021】
空気循環ユニット30の内部には、冷却器35および高性能フィルタ36と、クリーンルーム10内の空気を吸気口31から空気循環ユニット30の内部に吸い込み、冷却器35および高性能フィルタ36を通過させた後、空気循環ユニット30の前面に設けた給気口32からクリーンルーム10内に横向きに送風させるファン37を備えている。高性能フィルタ36は例えばHEPAフィルタ、ULPAフィルタ等で構成される。この高性能フィルタ36は、例えば、日本ケンブリッジフィルター株式会社製の低有機低ボロンULPAフィルタを用い、定格風速1.2m/sで圧力損失は190Pa以下とされる。
【0022】
上述したように、空気循環ユニット30の上部は空調領域11よりも上方の空間に突出しているので、ファン37の動力により、クリーンルーム10内における空調領域11よりも上方の空気が、吸気口31から空気循環ユニット30の内部に吸い込まれる。
【0023】
一方、複数の給気口32は、空気循環ユニット30の前面において、クリーンルーム10の床10bから空調領域11とほぼ同じ高さまでの領域に全体に分布して配置されている。このため、複数の給気口32からは、空調領域11の高さ方向の全体に渡って横向きに送風が行われる。
【0024】
空気循環ユニット30の内部に設けられた冷却器35および高性能フィルタ36は、空気循環ユニット30の前面に設けられた複数の給気口32の内側全体を覆う位置に配置されている。また、空気循環ユニット30の内部において、複数の給気口32のすぐ内側(クリーンルーム10の中心部から見たら外側)に高性能フィルタ36があり、さらに高性能フィルタ36の内側(クリーンルーム10の中心部から見たら外側)に冷却器35が配置されている。
【0025】
一方、ファン37は、空気循環ユニット30の内部において、これら冷却器35および高性能フィルタ36の上方に配置されている。また、ファン37とこれら冷却器35および高性能フィルタ36の間には、空気循環ユニット30の内部空間を部分的に上下に仕切る邪魔板40が設けられている。邪魔板40には、冷却器35よりも内側(クリーンルーム10の中心部から見たら外側)に対応する位置に開口部41が設けられており、邪魔板40の位置においては、空気循環ユニット30の内部空間は、開口部41が設けられた冷却器35よりも内側(クリーンルーム10の中心部から見たら外側)に対応する位置においてのみ連通している。吸気口31には風量調整機構(図示しない)を設け、ファン37により吸い込まれる空調領域上方の空気の流入量を調整可能としても良い。
【0026】
このため、ファン37の動力によって空気循環ユニット30上面の吸気口31から空気循環ユニット30の内部に吸い込まれた空気は、邪魔板40の位置において開口部41を通過して、冷却器35よりも内側(クリーンルーム10の中心部から見たら外側)の空間に入り込んだ後、冷却器35、高性能フィルタ36の順に通過し、給気口32からクリーンルーム10内に横向きに送風される。冷却器35および高性能フィルタ36は、複数の給気口32の内側全体を覆う位置に配置されているので、こうして給気口32からは、必ず冷却器35、高性能フィルタ36の順に通過した空気(給気SA)が吹出されることになる。
【0027】
また、高性能フィルタ36は圧力損失が高いため、ファン37により送り込まれた空気は、高性能フィルタ36の内側(クリーンルーム10の中心部から見たら外側)で圧力が均一となる。このため、ファン37により吸い込まれた空気は、縦横に配列された複数個の給気口32の縦方向及び横方向の全域に渡って設けられた冷却器35を通過する際に均一に冷却され、各給気口32をほぼ同じ流速で通過する。すなわち、各給気口32を均一な温度且つ均一な流速で空気が通過するので、各給気口32のフィン45により与えられる旋回成分にばらつきが生じない。これにより、空調領域11の全体に渡って、流速、温度、旋回成分にばらつきのない清浄空気CAが吹出されるので、非層流方式による空調領域11全体の希釈混合効果に影響を与えることがない。このようにして、クリーンルーム10全体の省エネルギー化が図られる。また、空気循環ユニット30の各給気口32から空調領域11の全体に渡って、流速、温度、旋回成分にばらつきのない清浄空気CAが吹出されるので、従来のように外調機で作られた清浄空気を給気ダクトを介してクリーンルーム内に供給していた構成に比べて、給気ダクトを省略でき、装置の簡素化が図られ、比較的短い工期で構築できる簡単な設備を提供できる。
【0028】
図4、5に示すように、空気循環ユニット30の前面の各給気口32には、クリーンルーム10内の空調領域11に向けて横向きに給気される空気に対して旋回成分を与える複数枚のフィン45が装着されている。
【0029】
各フィン45は、給気口32の中央を中心に適当な等間隔で放射状に取り付けてあり、また、クリーンルーム10(空調領域11)に向かって吹き出す空気に旋回成分を与えるべく、各フィン45は給気口32の中心軸32’に対してそれぞれ傾斜して配置されている。図4と図5では、フィン45の傾斜方向が逆向きの関係になっている。
【0030】
このように、各給気口32に傾斜したフィン45が放射状に取り付けられていることにより、給気口32からクリーンルーム10内の空調領域11に向けて横向きに給気される空気に対し、給気口32を通過させる際に、各フィン45に沿わせて強制的に流すことができる。これにより、給気口32からクリーンルーム10内の空調領域11に向かって吹き出す空気に、中心軸32’を中心とする旋回成分を与えるようになっている。
【0031】
ここで、図4と図5では、フィン45の傾斜方向が逆向きであり、図4に示したフィン45によれば、給気口32を通過する際に、空気循環ユニット30の前面をクリーンルーム10内から見た場合において、反時計回転方向の旋回成分が空気に与えられる。一方、図5に示したフィン45によれば、給気口32を通過する際に、空気循環ユニット30の前面をクリーンルーム10内から見た場合において、時計回転方向の旋回成分が空気に与えられる。
【0032】
上述のように、空気循環ユニット30の前面には、空調領域11とほぼ同じ高さまでの領域に複数の給気口32が全体に分布して配置されている。そのため、隣り合う給気口32から吹き出される空気の旋回成分により、互いの干渉作用が生ずる。
【0033】
例えば図6に示すように上下方向に並んだ4つの給気口32a、32b、32c、32dを例にして説明すると、図6に示した例では、隣り合う給気口32から吹き出される空気の旋回成分が、互いに逆の回転方向の関係になっている。即ち、図6に示した例では、1番上の給気口32aと上から3番目の給気口32cでは、フィン45の傾斜方向が図4で説明した状態であり、これら給気口32aと給気口32cからは、反時計回転方向の旋回成分を与えられた空気が吹き出される。一方、上から2番目の給気口32bと4番目の給気口32dでは、フィン45の傾斜方向が図5で説明した状態であり、これら給気口32bと給気口32dからは、時計回転方向の旋回成分を与えられた空気が吹き出される。このように、隣り合う給気口32aと給気口32b、給気口32bと給気口32c、給気口32cと給気口32dの間において、それぞれ互いに逆の回転方向に旋回する空気を吹き出すようになっている。
【0034】
この図6に示した例のように、各給気口32a、32b、32c、32dから吹き出す空気の旋回成分を交互に逆の回転方向とすれば、給気口32aと給気口32bの間、給気口32bと給気口32cの間及び給気口32cと給気口32dの間のいずれにおいても、互いに同じ方向に空気が吹き出されることとなるので、各給気口32a、32b、32c、32dから吹き出される空気の旋回成分をお互いに助長しあうように作用させることができる。
【0035】
一方、図7に示した例のように、上下方向に並んだ4つの給気口32a、32b、32c、32dからいずれも同じ回転方向に旋回する空気(図7に示す例では、いずれも反時計回転方向に旋回する空気)を吹き出した場合、給気口32aと給気口32bの間、給気口32bと給気口32cの間及び給気口32cと給気口32dの間において、互いに打ち消しあう方向に空気が吹き出されることとなる。このように、各給気口32a、32b、32c、32dから吹き出す空気の旋回成分をいずれも同じ回転方向とすれば、各給気口32a、32b、32c、32dから吹き出される空気の旋回成分を相殺させるように作用させることができる。
【0036】
なお、図6、7では、上下に配列された給気口32の関係について説明したが、上下に配列された給気口32同志の関係のみならず、横に隣接して配置された給気口32同志や斜めに隣接して配置された給気口32同志の間においても、互い隣り合う給気口32から吹き出される空気の旋回成分により、旋回成分をお互いに助長しあう関係、旋回成分をお互いに相殺させる関係を適宜設定できる。
【0037】
さて、以上のように構成されたクリーンルーム装置1において、外調機21で作られた低温の清浄空気CAが、給気ダクト22から給気口20を通じてクリーンルーム10内の上部に供給される。給気口20は空気循環ユニット30の真上に位置しているので、外調機21で作られた低温の清浄空気CAは、空調領域11よりも上方の空間であって、空気循環ユニット30の真上に供給される。
【0038】
そして、クリーンルーム10の内部では、空気循環ユニット30により、空気の循環が行われる。すなわち、空気循環ユニット30に設けられたファン37の動力により、クリーンルーム10内における空調領域11よりも上方の空気が、給気口20から空気循環ユニット30の真上位置に供給された清浄空気CAと一緒に、吸気口31から空気循環ユニット30の内部に吸い込まれる。そして、これらの空気(空気循環ユニット30の内部に吸い込まれた空調領域11よりも上方の空気と清浄空気CA)は、空気循環ユニット30の内部において、冷却器35および高性能フィルタ36を通過して低温で清浄な給気SAとされて、給気口32からクリーンルーム10内に横向きに送風される。この場合、冷却器35および高性能フィルタ36は、複数の給気口32の内側全体を覆う位置に配置されているので、給気口32からは、必ず冷却器35、高性能フィルタ36の順に通過した低温で清浄な給気SAが吹出されることになる。
【0039】
こうして、各給気口32から吹き出される給気SAには、フィン45の作用により旋回成分が与えられ、クリーンルーム10下部の空調領域11の空気が給気SAに誘引されて、一緒に移動する誘引作用がはたらく。これに伴い、運動量保存則に従って給気SAの速度は、各給気口32から吹き出された後、速やかに減速することとなる。
【0040】
また、このように空気循環ユニット30前面の各給気口32からクリーンルーム10内に横向きに給気SAを供給する場合、ファン37の動力制御により、各給気口32からは、クリーンルーム10下部の空調領域11に向けて吐出面での平均流速が0.5m/s以上、1.2m/s以下(好ましくは、0.6m/s以上、1.1m/s以下)の流速で給気SAが旋回しながら吹出される。
【0041】
これにより、空調領域11に存在する空気に対して低温で清浄な給気SAが混合されて、希釈効果により空調領域11全体の浮遊粒子aの濃度を下げ、空調領域11を清浄に保つことができるようになる。各給気口32から0.5m/s以上、1.2m/s以上の流速で給気SAを吹き出すことにより、給気流速の小さい置換換気ではできなかった空調領域11全体の希釈混合ができ、熱上昇流に直接乗らない浮遊粒子aの除去もできるようになる。そして、各給気口32から吹出された給気SAは速やかに減速し、さらに、空調領域11に向かって給気SAを横向きに供給しているので、クリーンルーム10内において空調領域11よりも上部に存在している空気に対しては給気SAが混合されず、空調領域11に存在する空気のみに対して清浄で低温な給気SAが混合され、空調領域11のみを清浄で低温の状態に保つことができる。
【0042】
また、クリーンルーム10内に置かれている半導体製造装置などの各種の機器12から発生した汚染物質は、排気ファン14の動力によって局排ダクト13を通じて局地的に吸引され、排気EAとして外部に排出される。この場合、外調機21に設けられた給気ファン25の給気量を、排気ファン14の排気量よりも多く設定しておくことにより、クリーンルーム10内を常に正圧に保つことができ、外部からの汚染物質の侵入を防ぐことができる。
【0043】
また、空調領域11において機器12や人間などの周りに生じた浮遊粒子aなどの汚染物質は、機器12や人間などの熱的影響によってやがて加熱され、緩やかに上昇する。その上昇流により、空調領域11に生じた浮遊粒子aなどの汚染物質は、クリーンルーム10内において空調領域11よりも上方に搬送される。
【0044】
そして、クリーンルーム10内において空調領域11よりも上部に溜まった空気(加熱された空気)は、清浄空気CAと一緒に、吸気口31から空気循環ユニット30の内部に吸い込まれ、空気循環ユニット30の内部において、冷却器35および高性能フィルタ36を通過して低温で清浄な給気SAとされ、給気口32からクリーンルーム10内の空調領域11に横向きに送風される。その結果、空調領域11は常に清浄で低温の環境に保たれることとなる。
【0045】
このクリーンルーム装置1によれば、クリーンルーム10内の空気を空気循環ユニット30で循環させることにより、クリーンルーム10下部の空調領域11のみを希釈混合して清浄に保つことができ、天井までのクリーンルーム全体を希釈混合させていた従来の一般的な非層流方式のクリーンルーム装置に比べて、換気回数(クリーンルーム10全体の容積を基準とした換気回数)を極めて少なくして、空調領域11の清浄度を確保することができる。このため、エネルギー削減が可能となる。また、旋回流の誘引作用によって、給気SAで空調領域11全体を希釈混合することにより、空調領域11の内部においては上下温度差を小さくできる。
【0046】
また、クリーンルーム10内の空気をクリーンルーム10内に配置した空気循環ユニット30で循環させることにより、外調機21に還気を戻すレタンシャフトなどの設置を省略することが可能となる。その結果、比較的短い工期で構築できる簡単な設備でありながら、少ない換気回数で空調領域11の清浄度を確保することができるクリーンルーム装置1が得られるようになる。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。例えば、フィン45は、本出願人が先に特開平9−250803号の図5で開示した旋回流形成板の如き、平板からフィンを打ち抜いて形成した構成を採用することもできる。
【0048】
図1、2に示すように、床10bの下方に機械室50を形成し、この機械室50に配置した制御機器51からケーブル52を介して空気循環ユニット30のファン37に電力を供給させても良い。また、制御機器51から配管53を介して冷却器35に冷媒を供給させても良い。例えば、空気循環ユニット30のファン37に電力を供給するケーブル52を、空気循環ユニット30の内部を通して床10から機械室50に引き込むことにより、クリーンルーム10の内部に晒されるケーブル52の長さを短くでき、ケーブル52による分子汚染を最小限にすることができる。また、空気循環ユニット30の底面にドレインパン55を設け、このドレインパン55で受け取ったドレンを、機械室50に速やかに回収できるようにしても良い。
【0049】
上述のように、空気循環ユニット30前面の給気口32からクリーンルーム10下部の空調領域11に向けて0.5m/s以上、1.2m/s以下の流速で給気SAを供給することにより、空調領域11全体を混合・希釈させて清浄に保つことができる。省エネルギーのためには、クリーンルーム10内の発熱負荷や浮遊粒子発生量に応じ、空調領域11の清浄度が所望のレベルとなる範囲内で、給気SAの給気量をなるべく小さくすることが望ましい。そこで、空気循環ユニット30の内部に設けたファン37にインバータなどを設けて、ファン37の動力を可変にし、全体の換気回数が変えられる構成とすることが望ましい。
【0050】
なお、空調領域11に向けて給気される給気SAの流速が0.5m/s未満になると、給気SAによって空調領域11全体を混合・希釈させることができなくなり、浮遊粒子を空調領域11から十分に除去できなくなって、清浄な作業環境が得られなくなる心配がある。そこで、図8に示すように、空調領域11に向けて給気SAを給気する空気循環ユニット30を複数台設置し、空気循環ユニット30の稼働台数を、給気量に応じて切り替えるように構成すると良い。例えば、給気SAの供給量を減らす場合は、空気循環ユニット30の稼働台数を減らすことによって、給気SAの流速が0.5m/s未満になることを防止できる。
【0051】
さらに、図1では、空気循環ユニット30が側壁1cに設置される例を示したが、大空間のクリーンルームの場合には、二つの空気循環ユニット30を背中合わせにしてクリーンルームの側壁1cと側壁1c1cとの間に、空気循環ユニット30を配置しても良い。言い換えれば、二つの空気循環ユニット30がそれぞれの給気口32が向かい合わないように、その背面同士を密着させて配置しても良い。
【実施例】
【0052】
天井までのクリーンルーム内全体の空気を一様に混合・希釈させる従来の非層流方式のクリーンルーム装置と、本発明のクリーンルーム装置をそれぞれ構築し、温度分布、および、浮遊粒子個数の分布の実測を行った。使用したクリーンルームは、高さ4mであり、高さ2mまでを空調領域とした。各温度、浮遊粒子個数は、3か所の平均値である。浮遊粒子個数は、0.3μm以上の粒子の個数(個/ft3)である。従来の非層流方式のクリーンルーム装置では、換気回数を20回/hとした。本発明のクリーンルーム装置では、換気回数を12.7回/hとした。
【0053】
図9に従来の非層流方式のクリーンルーム装置の温度分布、図10に従来の非層流方式のクリーンルーム装置の浮遊粒子個数の分布を示す。図11に本発明のクリーンルーム装置の温度分布、図12に本発明のクリーンルーム装置の浮遊粒子個数の分布を示す。空調領域に関しては、本発明のクリーンルーム装置は、少ない換気回数でありながら、従来の非層流方式のクリーンルーム装置と同等の温度分布となった。また、浮遊粒子個数は、従来の非層流方式のクリーンルーム装置よりも低減できた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、種々の産業分野で利用されるクリーンルーム装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0055】
OA 外気
SA 給気
EA 排気
CA 清浄空気
1 クリーンルーム装置
10 クリーンルーム
11 空調領域
12 機器
13 局排ダクト
14 排気ファン
20 給気口(清浄空気CA)
21 外調機
22 給気ダクト
23 粗フィルタ
24 冷却器
25 給気ファン
26 高性能フィルタ
30 空気循環ユニット
31 吸気口
32 給気口
35 冷却器
36 高性能フィルタ
37 ファン
40 邪魔板
41 開口部41
45 フィン
50 機械室
51 制御機器
52 ケーブル
53 配管
55 ドレインパン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルームの下部に形成される空調領域を非層流方式で清浄に保つクリーンルーム装置であって、
前記空調領域には機器が存在し、前記機器が存在する前記空調領域に非層流方式で給気が行われ、前記空調領域において前記機器の熱的影響による上昇流により汚染物質がクリーンルーム内において前記空調領域よりも上方に搬送され、
前記クリーンルーム内に配置され、前記クリーンルーム内の前記空調領域に非層流方式で給気を行い、前記空調領域の空気を循環させる空気循環ユニットを備え、
前記空気循環ユニットには、前記クリーンルームの内部であって非層流方式で空調される前記空調領域よりも上方の位置で前記クリーンルーム内の空気を吸い込む吸気口と、前記空気循環ユニットの前面において前記空調領域と向かい合う高さまでの領域に分布して配置されて、前記空調領域に向けて横向きに給気する複数の給気口が設けられ、
前記空気循環ユニットの内部には、冷却器および高性能フィルタと、前記クリーンルーム内の空気を前記吸気口から吸い込み、前記冷却器および前記高性能フィルタを通過させて前記給気口に向けて送風するファンを備え、
前記空気循環ユニットの上面に前記吸気口が設けられ、
前記クリーンルーム外からの清浄空気を前記吸気口の真上の室内空間に給気するための前記清浄空気の給気口が設けられ、前記清浄空気の給気口は前記空気循環ユニットの真上に位置し、前記清浄空気の給気口から前記空気循環ユニットの真上位置に供給された清浄空気が、前記吸気口から前記空気循環ユニットの内部に吸い込まれ、
前記清浄空気の給気口には清浄空気が前記クリーンルーム外に設けられた給気ダクトを通じて供給され、
前記空気循環ユニットには、給気ダクトが直接接続されていないことを特徴とする、クリーンルーム装置。
【請求項2】
前記清浄空気の給気口から室内空間に清浄空気が下向きに前記吸気口に向けて給気されることを特徴とする、請求項1に記載のクリーンルーム装置。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記複数の給気口には、前記空調領域に向けて横向きに給気される空気に対して旋回成分を与えるフィンが設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のクリーンルーム装置。
【請求項5】
前記冷却器および高性能フィルタは、前記複数の給気口の内側全体を覆う位置に配置されていることを特徴とする、請求項1、2、4の何れか一項に記載のクリーンルーム装置。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2023-07-27 
出願番号 P2019-229676
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (F24F)
P 1 651・ 121- YAA (F24F)
P 1 651・ 55- YAA (F24F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 間中 耕治
特許庁審判官 白土 博之
槙原 進
登録日 2021-07-07 
登録番号 6909850
権利者 高砂熱学工業株式会社
発明の名称 クリーンルーム装置および空気循環ユニット  
代理人 萩原 康司  
代理人 金本 哲男  
代理人 金本 哲男  
代理人 和泉 久志  
代理人 萩原 康司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ