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審決分類 審判 全部無効 特174条1項  G09F
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  G09F
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  G09F
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G09F
審判 全部無効 2項進歩性  G09F
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  G09F
管理番号 1403920
総通号数 24 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-10-09 
確定日 2023-09-27 
訂正明細書 true 
事件の表示 上記当事者間の特許第3382936号発明「片手支持可能な表示装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3382936号の特許請求の範囲及び明細書を、令和5年5月10日付け手続補正書により補正された、令和4年6月27日付け訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1〜10〕について訂正することを認める。 特許第3382936号の請求項3及び請求項4に係る発明についての特許を無効とする。 特許第3382936号の請求項1〜2、5〜12に係る発明についての本件審判請求を却下する。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 請求及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
次の(1)及び(2)を結論とする審決を求める。
(1)特許第3382936号の請求項1〜12に係る発明についての特許を無効とする。
(2)審判費用は被請求人の負担とする。

2 答弁の趣旨
次の(1)から(3)までを結論とする審決を求める。
(1)特許第3382936号の特許請求の範囲及び明細書を、令和5年5月10日付け手続補正書により補正された、令和4年6月27日付け訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1〜10〕について訂正することを認める。
(2)本件審判請求は成り立たない。
(3)審判費用は請求人の負担とする。
当審注:令和4年7月25日付け手続補正書(令和4年7月26日差出)及び同年11月2日付け手続補正書により、令和4年6月27日付け訂正請求書が補正されたが、これら二つの手続補正書による令和4年6月27日付け訂正請求書の補正事項は、令和5年5月10日付け手続補正書により、全て上書きされている。


第2 手続の経緯
本件特許無効審判請求に係る特許第3382936号(以下「本件特許」という。)は、平成14年12月20日に、請求項1から請求項12に係る発明について、特許権の設定の登録がされたものである。
なお、本件特許の特許権は、平成23年8月30日に存続期間満了により消滅している。

1 出願の分割の経緯
本件特許に係る特許出願(特願2002−196984号)は、特許法44条1項の規定に基づいてされた特許出願であり、平成3年8月30日に出願された特願平3−245262号を最先の出願とする、いわゆる第3世代の分割出願である。
出願の分割の経緯は、次のとおりである。なお、括弧内は当該出願の提出日を示す。
最先の出願 :特願平3−245262号 (平成 3年 8月30日)
第1世代分割:特願平9−325299号 (平成 9年11月10日)
第2世代分割:特願2000−31495号 (平成12年 2月 9日)
第3世代分割:本件特許出願
特願2002−196984号(平成14年 7月 5日)

2 訂正の経緯
本件特許についての訂正の経緯は、次のとおりである。
以下、訂正2010−390023号の確定審決において認められた訂正を「1次訂正」といい、訂正2020−390019号の確定審決において認められた訂正を「2次訂正」という。
(1) 1度目の訂正審判:訂正2010−390023号
平成22年 3月 2日:審判請求書の提出
平成22年 5月28日:訂正を認める審決の送達
(1次訂正の確定)

(2) 2度目の訂正審判:訂正2010−390096号
平成22年 9月 9日:審判請求書の提出
平成22年11月29日:請求の取下げ

(3) 3度目の訂正審判:訂正2020−390019号
令和 2年 2月28日:審判請求書の提出
令和 3年 2月15日:訂正を一部認める審決の送達
(請求項11、12の削除訂正及び明細書の段落0012の訂正について部分確定)
令和 3年 3月12日:審決取消の訴えの提起
(令和3年(行ケ)10037号)
令和 4年 2月 2日:請求棄却判決
同月18日:上告提起(令和4年(行ツ)136号)及び
上告受理申立て(令和4年(行ヒ)134号)
同年 9月14日:上告棄却及び上告不受理決定
(一群の請求項〔1〜10〕に係る訂正不認容部分についても確定)

3 本件特許無効審判の手続きの経緯
本件特許無効審判における手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和2年10月 9日 :特許無効審判の請求
同日付け:証拠説明書(1)の提出(請求人)
同月29日付け:請求書副本の送達通知(答弁指令)
同年12月14日付け:手続中止通知書
令和3年 3月18日付け:手続中止解除通知書
同年 5月24日 :答弁書、訂正請求書の提出
同年 6月 3日付け:手続補正指令書(方式)
同月25日 :証拠説明書(1)の提出(被請求人)
同年 7月 8日 :手続補正書(訂正請求書の補正)の提出
同年 8月25日 :弁駁書、証拠説明書(2)の提出(請求人)
同年10月29日付け:訂正拒絶理由通知書、職権審理結果通知書
同年11月 8日付け:通知書(答弁指令)
同年12月 6日 :手続補正書(訂正請求書の補正)、意見書、
証拠説明書(2)、上申書の差出
同月13日 :答弁書(2)、証拠説明書(3)の提出
同月20日付け:無効理由通知書、職権審理結果通知書
令和4年 1月21日 :意見書(2)、手続補正書(訂正請求書の補
正)、証拠説明書(4)の提出
同月31日 :上申書の提出(請求人)
同年 2月10日付け:審尋及び通知書
同月14日 :上申書の提出(被請求人)
同月17日 :上申書の提出(請求人)
同月24日 :回答書(請求人)の提出
同日 :上申書の提出(被請求人)
同月25日付け:書面審理通知書
同年 3月 4日付け:審尋及び通知書
同日 :上申書(被請求人)の提出
同月23日 :回答書及び上申書(請求人)の提出
同月24日 :回答書(被請求人)の提出
同月30日 :上申書(回答書の訂正申立書)(被請求人)
の提出
同年 4月 5日 :上申書(回答書の訂正申立書(2))(被請
求人)の提出
同月21日付け:審決の予告
同月28日 :上申書(回答書の訂正申立書(3))、
証拠説明書(5)(被請求人)の提出
同年 5月13日 :上申書(回答書の訂正申立書(4))、
証拠説明書(6)(被請求人)の提出
同年 6月24日 :訂正請求書の提出
同月27日 :訂正請求書の提出
同年 7月11日付け:手続補正指令書(方式)
同日付け:手続補正指令書(方式)
同月26日 :令和4年7月25日付け手続補正書
(同年6月27日付け訂正請求書の補正)、
上申書(審決予告に対する上申書)
及び証拠説明書(7)の差出
同月29日 :上申書(審決予告に対する上申書の訂正書)
(被請求人)の提出
同年 9月 8日付け:手続却下の決定(令和4年6月24日付け訂
正請求書に係る手続の却下)
同月29日付け:訂正拒絶理由通知書、職権審理結果通知書
同年11月 2日 :手続補正書(令和4年6月27日付け訂正請
求書の補正)、意見書、証拠説明書(8)の
提出
同日 :意見書(請求人)の提出
同月17日 :上申書(意見書の訂正)(被請求人)の提出
同年12月 9日 :上申書(請求人)の提出(関連訴訟事件の控
訴答弁書等の写しの提出)
同月26日付け:通知書(答弁指令)
同日付け:審尋(請求人宛て)
令和5年 1月27日 :回答書(請求人)の提出
同年 2月 6日 :答弁書(請求人意見書に対する意見)の提出
同年 3月 1日 :上申書(請求人)の提出(関連訴訟事件の控
訴審判決の写しの提出)
同年 4月 6日付け:訂正拒絶理由通知書、職権審理結果通知書
同年 5月10日 :手続補正書(令和4年6月27日付け訂正請
求書の補正)、意見書の提出
同年 6月15日 :応対記録(令和5年5月17日の電話応対。
両当事者から審決予告後においても書面審理
によることを希望する旨の回答有り。)

4 関連事件について
本件特許無効審判事件に関連する令和4年(ネ)第10078号不当利得返還請求控訴事件について、知的財産高等裁判所は令和5年2月21日に判決を言渡した(以下、この判決を「関連民事事件控訴審判決」という)。
なお、関連民事事件控訴審判決の写しは、令和5年3月1日に請求人から上申書として提出されている。


第3 訂正の適否
1 令和3年5月24日の先にした訂正の請求について
令和3年5月24日に提出された訂正請求書による訂正の請求(先にした訂正の請求)は、令和4年6月27日付けの訂正請求書による訂正の請求がされたため、取り下げられたものとみなされる(特許法134条の2第6項)。

2 訂正の請求の趣旨について
(1) 訂正請求書の補正について
前記第1の2において示したとおり、令和4年7月25日付け手続補正書(令和4年7月26日差出)及び同年11月2日付け手続補正書により、令和4年6月27日付け訂正請求書が補正されたが、これら二つの手続補正書による令和4年6月27日付け訂正請求書の補正事項は、令和5年5月10日付け手続補正書により、全て上書きされている。
令和4年6月27日付けの訂正請求書についてした、令和5年5月10日付けの補正は、請求の理由についての補正を含むところ、この補正は訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法134条の2第9項において準用する同法131条の2第1項の規定に適合し、適法な補正である。
以下、令和5年5月10日付けの手続補正により補正された、令和4年6月27日付け訂正請求書を、「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。

(2) 本件訂正の請求の趣旨
本件訂正の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項1〜10について訂正することを求める、というものである。
なお、2次訂正により、請求項11及び12は削除されている。
また、被請求人は、本件訂正の請求により、一群の請求項〔1〜10〕のうちの請求項1〜2、5〜10について削除する訂正を請求しているところ、請求項1〜10に係る訂正について「別の訂正単位とする求め」をしている。

3 訂正の内容
(1) 本件訂正前と本件訂正後の特許請求の範囲の記載
ア 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3及び4の記載
本件訂正前の特許請求の範囲のうち、請求項3及び4の記載は、次のとおりである。
「【請求項3】
略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、
前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、
前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、
前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定するための中間左右見開き固定手段と、
を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
【請求項4】
画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、
前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、
前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段と、
を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。」

イ 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、
前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、
前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、
前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように、ストッパにより固定するための中間左右見開き固定手段とを備えており、前記ストッパは、前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものである、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
【請求項4】
画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、
前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、
前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、「ユーザから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように、ストッパにより固定するための左右見開き固定手段とを備えており、前記ストッパは、(a)前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板の間の見開き角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものであり、且つ(b)ユーザーが、前記少なくとも一方の表示板を、前記2つの表示板が前記所定の角度で固定された状態から互いに約180度で見開きにされる状態へと変化するようにさらに回動させるとき、前記少なくとも一方の表示板が、前記2つの表示板が互いに約180度で見開きにされる状態となるように、さらに回動できるようにするものである、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
(削除)」

(2) 本件訂正の内容
本件訂正のうち、特許請求の範囲についての訂正は、一群の請求項〔1〜10〕に対して請求されたものであるところ、本件訂正の内容を請求項ごとに訂正事項として整理すると、以下のとおり訂正事項1から訂正事項10に整理することができる。
本件訂正のうち、明細書についての訂正は、訂正事項Aとした。
また、訂正の内容に関する検討の便宜の観点から、例えば、訂正事項3について、訂正事項3−1、訂正事項3−2などのように細分化した。
なお、訂正事項の符号は、本件訂正請求書の記載を基に合議体が付け直ししたものであり、訂正事項の符号は、必ずしも本件訂正請求書に記載されたものと一致しない。

ア 訂正事項1(請求項1の訂正事項)
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

イ 訂正事項2(請求項2の訂正事項)
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ 訂正事項3(請求項3の訂正事項)
(ア) 訂正事項3−1
本件訂正前の請求項3における
「 前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定するための中間左右見開き固定手段と、」との記載中の「「約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定する」との記載を次のとおり訂正する。
「「約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように、ストッパにより固定する」

(イ) 訂正事項3−2
本件訂正前の請求項3における
「中間左右見開き固定手段と、を備えた」との記載を次のとおり訂正する。
「中間左右見開き固定手段とを備えており、前記ストッパは、前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものである、」

エ 訂正事項4(請求項4の訂正事項)
(ア) 訂正事項4−1
本件訂正前の請求項4における
「前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、「ユーザから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定する」との記載中の「約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定する」との記載を次のとおり訂正する。
「約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように、ストッパにより固定する」

(イ) 訂正事項4−2
本件訂正前の請求項4における
「左右見開き固定手段と、を備えた」との記載を次のとおり訂正する。
「左右見開き固定手段とを備えており、前記ストッパは、(a)前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板の間の見開き角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものであり、且つ(b)ユーザーが、前記少なくとも一方の表示板を、前記2つの表示板が前記所定の角度で固定された状態から互いに約180度で見開きにされる状態へと変化するようにさらに回動させるとき、前記少なくとも一方の表示板が、前記2つの表示板が互いに約180度で見開きにされる状態となるように、さらに回動できるようにするものである、」

オ 訂正事項5(請求項5の訂正事項)
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

カ 訂正事項6(請求項6の訂正事項)
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

キ 訂正事項7(請求項7の訂正事項)
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

ク 訂正事項8(請求項8の訂正事項)
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

ケ 訂正事項9(請求項9の訂正事項)
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

コ 訂正事項10(請求項10の訂正事項)
特許請求の範囲の請求項10を削除する。

サ 訂正事項A(明細書の訂正事項)
(ア) 訂正事項A−1
本件訂正前の明細書の段落【0012】の中の次の部分を削除する。
「4−(2).上記3の発明は、「次の(e)(f)(g)のいずれか1つ、いずれか2つ、又は、全て」を含むことが望ましい。
(e)表示装置の使用時の表示画面は、ユーザーから見て縦方向の線から右側部分の画面の形状(又は、画面の面積及び形状)と、同左側部分の画面の形状(又は、画面の面積及び形状)とが、ユーザーから見たときにほぼ左右均等で且つほぼ左右対称となるように、構成されている。
(f)表示装置の使用時の全体の形状は、ユーザーから見て縦方向の線の右側部分の平面の面積と同左側部分の平面の面積とが、ハードウェアとしてほぼ左右均等となるように、構成されている。
(g)表示装置を構成する表示板は偶数個であり、表示装置の使用時の全体の形状は、ユーザーから見て縦方向の線の右側部分の厚さ(又は、厚さ及び平面の面積)と同左側部分の厚さ(又は、厚さ及び平面の面積)とが、ハードウェアとしてほぼ左右均等となるように、構成されている。
4−(3).上記1,2又は3の発明の表示装置であって、「偶数個の表示板」から構成されており、この「偶数個の表示板」の全部である偶数個の表示板又はその一部である偶数個の表示板が左右見開き状態で使用される場合における表示装置の全体は、その全体のほぼ中央部の「ユーザーから見て縦方向の線」を境として、ユーザーから見たときの前記線の右側部分の平面の面積及び厚さ寸法と、同左側部分の平面の面積及び厚さ寸法とが、ハードウェアとしてほぼ左右均等となるように構成されている、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。」

(イ) 訂正事項A−2
本件訂正前の明細書の段落【0046】を削除する。

(ウ) 訂正事項A−3
本件訂正前の明細書の段落【0047】を削除する。

(エ) 訂正事項A−4
本件訂正前の明細書の段落【0065】の中の次の部分を削除する。
「さらに、特に、この例では、前記各表示板91と92は、それらの各平面の面積と各厚さ寸法とが互いにハードウェアとしてほぼ左右均等となっているので、図8(d)に示すように、ユーザーが片手の親指を前記表面側の「断面略V字状の凹状部分=”谷”状部分=デルタ状部分(図の矢印Aで指示する部分)」に当てて、親指以外の指又は掌を各表示板91,92の裏面側の「断面略V字状に突出した”山”状部分」に当てたとき、表示装置全体が、前記の”谷”状部分と”山”状部分とを支点として、その左右の均衡(バランス)が保たれた「ヤジロベエ」のような状態になり、その結果、片手だけでも極めて「左右に安定した状態」で支持できるようになる。」

(オ) 訂正事項A−5
本件訂正前の明細書の段落【0066】を削除する。

(カ) 訂正事項A−6
本件訂正前の明細書の段落【0080】を削除する。

4 訂正拒絶理由通知の概要
令和4年6月27日付け訂正請求については、次の(1)及び(2)に示すとおり、令和4年9月29日付け訂正拒絶理由及び令和5年4月6日付け訂正拒絶理由により、それぞれ請求項3及び請求項4についての訂正の拒絶の理由を通知した。
(1) 請求項3についての令和4年9月29日付け訂正拒絶理由の概要
当審において令和4年9月29日付けで通知した訂正拒絶理由のうち、請求項3に係る訂正が訂正要件違反(目的該当性違反)であるとする理由の概要は、次のとおりである。
ア 次の訂正事項(本件訂正の「訂正事項3−2」がおおむね対応する。)は、本件訂正前の請求項3の「中間左右見開き固定手段」の内容を単に言い換えたものにすぎないから、当該訂正事項は、特許請求の範囲の減縮には該当しない。
<訂正事項>
本件訂正前の請求項3の
「中間左右見開き固定手段であって、」を、
「中間左右見開き固定手段であって、前記ストッパは、前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度が約150度から約170度までの範囲内の所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものである、
中間左右見開き固定手段と、」
に訂正する。
イ また、訂正前の請求項3の「中間左右見開き固定手段」に誤記や明瞭でない記載があるとは認められないから、この訂正が「誤記の訂正」や「明瞭でない記載の釈明」を目的とすると考えることもできないし、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」にも該当しない。
ウ したがって、当該訂正事項による訂正は、特許法134条の2第1項ただし書の規定に適合しない。

(2) 請求項4についての令和5年4月6日付け訂正拒絶理由の概要
当審において令和5年4月6日付けで通知した訂正拒絶理由のうち、請求項4に係る訂正が訂正要件違反(目的該当性違反)であるとする理由の概要は、次のとおりである。
ア 次の訂正事項(本件訂正の「訂正事項4−2」がおおむね対応する。)は、本件訂正前の請求項4の「左右見開き固定手段」の内容を単に言い換えたものにすぎないから、当該訂正事項は、特許請求の範囲の減縮には該当しない。
<訂正事項>
本件訂正前の請求項4の
「左右見開き固定手段と、」を、
「左右見開き固定手段であって、前記ストッパは、(a)前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板の間の見開き角度が約150度から約170度までの範囲内の所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものであり、且つ(b)ユーザーが、前記少なくとも一方の表示板を、前記2つの表示板が前記所定の角度で固定された状態から互いに約180度で見開きにされる状態へと変化するようにさらに回動させるとき、前記少なくとも一方の表示板が、前記2つの表示板が互いに約180度で見開きにされる状態となるように、さらに回動できるようにするものである、左右見開き固定手段と、」に訂正する。
イ また、訂正前の請求項4の「左右見開き固定手段」に誤記や明瞭でない記載があるとは認められないから、この訂正が「誤記の訂正」や「明瞭でない記載の釈明」を目的とすると考えることもできないし、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」にも該当しない。
ウ したがって、当該訂正事項による訂正は、特許法134条の2第1項ただし書の規定に適合しない。

5 訂正請求の適法性についての当審の判断
(1) 訂正事項1〜2、5〜10について(請求項の削除について)
訂正事項1〜2、5〜10の訂正は、それぞれ請求項1〜2、5〜10を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法134条の2第1項ただし書1号に該当し、特許法第134条の2第1項の規定に適合する。
また、訂正事項1〜2、5〜10の訂正が、同条9項で準用する同法126条5項及び126条6項の規定に違反しないことは明らかである。
そして、被請求人からは、別の訂正単位とする求めがされているから、訂正事項1〜2、5〜10の訂正を認める。

(2) 訂正事項3について
ア 訂正事項3−2の「前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度が前記所定の角度となったとき、前記2つの表示板間を固定するものである、」という構成は、本件訂正前の請求項3の「中間左右見開き固定手段」の内容を単に言い換えたものにすぎない。
イ ここで、本件訂正については、訂正審判も含めて、被請求人により、単に長文に言い換えたにすぎない訂正事項を含む訂正特許請求の範囲の提出が繰り返し行われ、事案を極めて複雑にしているという経緯の下、関連民事事件控訴審の裁判所が、「特許請求の範囲の訂正は、その制度趣旨に照らしても、その要件を厳守することが求められているというべきであるから、(中略)本件のような経緯の下で、発明特定事項を単に言い換えたにすぎないような訂正をことさら含めた訂正請求は、その趣旨を正解しないものとして、厳格な認定になじむものと解する」と判示した(判決書35頁参照)ことの趣旨は、十分に考慮する必要がある。
ウ 一方、訂正事項3−2は、訂正事項3−1の「「約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように、ストッパにより固定する」との訂正事項を、「前記所定の角度」と規定することにより含むものであり、訂正事項3−1と3−2を一体として捉え、訂正として不要な事項をあえて除けば、これらにより、本件訂正前の請求項3の「「約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定する」という発明特定事項に係る特許請求の範囲が減縮されたと解する余地が全くないではないところ、この点について控訴審判決も同旨の内容を判示している(関連民事事件控訴審判決書35頁参照)。
エ そして、前記2において示したとおり、令和5年5月10日付け手続補正により、訂正特許請求の範囲は、請求項1〜2、5〜10が削除され、請求項3及び4のみが残るように補正されたところ、これにより事案の複雑さが多少なりとも軽減されたといえる。
オ そしてさらに、いずれの請求項に係る特許を無効とする本件特許無効審判の結論に鑑みれば、言い換えにすぎない訂正事項を含む訂正を認めたとしても、本件無効審判請求人及び第三者に不測の不利益を生じさせてしまうものではなく、仮にこの審決を不服として審決に対する訴えが提起されたとしても、むしろ訂正を認めた上で、訴訟における争点を本件特許の有効性に係る実体要件の充足論に収束させる方が紛争の早期解決の観点からみて適切であるとも考えられる。
カ 以上を総合考量し、当合議体は、本件訂正が目的該当性に係る訂正要件を満たすか否かについて、上述した厳格な認定に従って審理を進めるのは必ずしも適当ではなく、当審においては、訂正事項3−1と3−2を一体のものとして捉え、本件訂正前の請求項3の「「約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定する」という発明特定事項に係る特許請求の範囲が減縮されたと解することにより、訂正事項3の訂正の目的が「特許請求の範囲の減縮」に該当するものであると判断した。
キ また、訂正事項3の訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する同法126条5項及び126条6項の規定に違反するものではない。
ク したがって、訂正事項3の訂正を認める。

(3) 訂正事項4について
ア 訂正事項4−2の「左右見開き固定手段とを備えており、前記ストッパは、(a)前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板の間の見開き角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものであり、且つ(b)ユーザーが、前記少なくとも一方の表示板を、前記2つの表示板が前記所定の角度で固定された状態から互いに約180度で見開きにされる状態へと変化するようにさらに回動させるとき、前記少なくとも一方の表示板が、前記2つの表示板が互いに約180度で見開きにされる状態となるように、さらに回動できるようにするものである、」という構成は、本件訂正前の請求項4の「左右見開き固定手段」の内容を単に言い換えたものにすぎない。
イ しかしながら、訂正事項4−2は、訂正事項4−1の「約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように、ストッパにより固定する」との訂正事項を、「前記所定の角度」と規定することにより含むものであり、訂正事項4−1と4−2を一体として捉え、訂正として不要な事項をあえて除けば、これらにより、本件訂正前の請求項4の「約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、」「固定する」という発明特定事項に係る特許請求の範囲が減縮されたと解する余地が全くないではない。
ウ また、訂正事項4−2については、本件訂正前の「摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段」を「ストッパ」に限定したものであると考える余地もある。
エ したがって、訂正事項3に係る判断と同様に、当審においては、訂正事項4の訂正の目的が「特許請求の範囲の減縮」に該当するものであると判断した。
オ また、訂正事項4の訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する同法126条5項及び126条6項の規定に違反するものではない。
カ したがって、訂正事項4の訂正を認める。

(4) 訂正事項Aについて(明細書の訂正について)
訂正事項Aの訂正は、請求項1から10が訂正されることを前提として、特許請求の範囲の記載に整合するように明細書の記載を訂正することを目的とした訂正、すなわち、この意味での、明瞭でない記載の釈明を目的としたものであるところ、前記(1)から(3)に示したように、訂正事項1から訂正事項10までの訂正は認められたから、訂正事項Aの訂正は明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項Aの訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する同法126条5項及び126条6項の規定に違反するものではない。
したがって、訂正事項Aの訂正を認める。

(5) 訂正請求についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜10〕について訂正することを認める。
また、本件特許の明細書を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1〜10〕について訂正することを認める。


第4 本件訂正発明
請求項1〜10についての訂正は認められたから、請求項3及び4に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明3」及び「本件訂正発明4」という。また、これらを総称して「本件訂正発明」ということもある。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項3及び4に記載された事項により特定されるとおりのものである(前記第3の3(1)イの本件訂正後の特許請求の範囲の記載のうち請求項3及び4を参照)。


第5 請求人の主張の概要
1 請求人の主張する無効理由
請求人の主張する無効理由の概要は、次のとおりである(以下、書証については、単に「甲1」などと略記することもある。)。

(1) 無効理由1
無効理由1は、甲1号証に記載された発明を主たる引用発明とする新規性欠如又は進歩性欠如を理由とするものであるところ、次の無効理由1−1から無効理由1−7の無効理由から構成される。

ア 無効理由1−1(新規性欠如)
本件発明1〜10は、甲1号証に記載された発明であるから、本件発明1〜10に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
(審判請求書3〜10頁)

イ 無効理由1−2(進歩性欠如)
本件発明1〜10は、甲1号証に記載された発明及び甲2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜10に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。
(審判請求書10〜18頁)

ウ 無効理由1−3(進歩性欠如)
本件発明1〜10は、甲1号証に記載された発明及び甲3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜10に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。
(審判請求書18〜26頁)

エ 無効理由1−4(進歩性欠如)
本件発明1〜10は、甲1号証に記載された発明及び甲4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜10に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。
(審判請求書26〜33頁)

オ 無効理由1−5(進歩性欠如)
本件発明1〜10は、甲1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜10に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。
(審判請求書34〜41頁)

カ 無効理由1−6(進歩性欠如)
本件発明11及び12は、甲1号証に記載された発明及び甲15号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明11及び12に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。(審判請求書41〜43頁)

キ 無効理由1−7(進歩性欠如)
本件発明11及び12は、甲1号証に記載された発明及び甲16号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明11及び12に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。(審判請求書43〜44頁)

(2) 無効理由2−1(出願日の繰り下がりに伴う新規性欠如)
本件特許の出願日は、少なくとも、平成9年(1997年)11月10日よりも前に遡及することはない。
すなわち、最先の出願について平成10年6月16日付けの手続補正書(甲10)による補正は要旨変更に該当するから、特許法の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)による改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)40条の規定により、最先の出願は、同手続補正書を提出した平成10年6月16日にされたものとみなされる。したがって、第1世代分割出願の出願日は、平成3年8月30日までは遡及せず、現実の出願日である平成9年11月10日とすべきである。
また、第2世代分割出願は、旧特許法44条1項の要件を充足する適法な分割出願ではないから、第2世代分割出願の出願日は、現実の出願日である平成12年2月9日とすべきである。
さらに、本件出願は、旧特許法44条1項の要件を充足する適法な分割出願ではないから、本件出願の出願日は、現実の出願日である平成14年7月5日とすべきである。
そして、本件発明1から本件発明12は、最先の出願の特許公開公報(甲11号証)に記載された発明と同一であるから、本件発明1から本件発明12までに係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
(審判請求書44〜45頁)

(3) 無効理由2−2(出願日の繰り下がりに伴う補正要件違反)
前記(2)のとおり、本件特許の出願日は、少なくとも、平成9年(1997年)11月10日よりも前に遡及することはない。そして、平成14年(2002年)8月5日付け手続補正書による補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、本件特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり、本件発明1から本件発明12までに係る特許は、同法123条1項1号に該当し、無効とすべきである。(審判請求書45〜46頁)

2 請求人が提出した証拠
請求人の提出した証拠は、次のとおりである。
(証拠方法)
甲1 :国際公開91/05327号(抄訳を添付)
甲2 :特開平2−275108号公報
甲3 :実願平1−125015号(実開平3−67714号)のマイクロフィルム
甲4 :実開平2−91874号公報及び実願昭63−171245号(実開平2−91874号)のマイクロフィルム
甲5 :特開平2−268311号公報
甲6 :特願平3−245262号の出願書類(最先の出願)
甲7 :特開平9−325299号の出願書類(第1世代分割出願
甲8 :特願2000−31495号の出願書類(第2世代分割出願
甲9 :特願2002−196984号の出願書類(本件特許出願)
甲10:特願平3−245262号(最先の出願)についてされた平成10年6月16日付け手続補正書
甲11:特開平5−61423号公報(最先の出願の公開特許公報)
甲12:特願2002−196984号(本件特許出願)についてされた平成14年8月5日付け手続補正書
甲13:特願2000−31495号(第2世代分割出願)についてされた平成14年7月8日付け手続補正書
甲14:訂正2010−390023の特許審決公報
甲15:特開平2−257364号公報
甲16:特開平2−230360号公報
甲17:特許部分確定審決公報(訂正2020−390019)
甲18:特願2000−31495号(第2世代分割出願)の平成14年(2002年)9月4日に提出された上申書


第6 被請求人の主張の概要
1 被請求人の主張の要旨
(1) 無効理由1(新規性進歩性欠如)について
新規性欠如の無効理由1−1に対して、本件訂正発明と甲1発明の間には、「(中間)左右見開き固定手段」(ストッパを備えた構成)において相違点が存在しており、本件訂正発明は、甲1発明と同一ではない。
(令和5年2月6日付け答弁書の「第3」の「3」37〜46頁)

進歩性欠如の無効理由1−2〜1−5に対して、甲1に甲2〜4又は周知技術を適用する動機付けがなく阻害要因があるから、本件訂正発明は想到容易ではない。
(動機付けについては、令和5年2月6日付け答弁書の「第3」の「7」〜「10」65〜83頁)
(阻害要因については、令和5年2月6日付け答弁書の「第3」の「11」〜「13」83〜132頁)

(2) 無効理由2−1(出願日の繰り下がりに伴う新規性欠如)について
ア 最先の出願について、甲10補正は、明細書の要旨を変更するものではないから、最先の出願の出願日は甲10補正をした日に繰り下がらない。
(令和4年7月26日差出の「審決予告に対する上申書」の「第3」4〜12頁)

イ 第1世代分割出願について、最先の出願の出願日は繰り下がらないから、第1世代分割出願の出願日が現実の出願日に繰り下がるとの主張は根拠がなく失当である。
(令和4年7月26日差出の「審決予告に対する上申書」の「第3」4〜12頁)

ウ 第2世代分割出願について、甲13補正は、明細書の要旨を変更するものではないから、第2世代分割出願は適法な分割出願である。
(令和4年7月26日差出の「審決予告に対する上申書」の「第4」12〜30頁)

エ 第3世代分割出願(本件特許出願)について、甲14訂正は、明細書の要旨を変更するものではないから、本件特許出願は適法な分割出願である。本件特許の出願日の繰り下がりはないから、本件訂正発明は、甲11発明により新規性が否定されることはない。
(令和4年7月26日差出の「審決予告に対する上申書」の「第5」31〜36頁)

(3) 無効理由2−2(出願日の繰り下がりに伴う補正要件違反)について
前記(2)のとおり、本件特許の出願日は、繰り下がることはなく平成3年8月30日であるから、新規事項の追加を禁止した特許法17条の2第3項の規定は適用されない。甲12補正は、明細書の要旨を変更するものではない。
(令和4年7月26日差出の「審決予告に対する上申書」の「第6」〜「第7」36〜39頁)

2 被請求人が提出した証拠
乙1の1 :特表平5−501023号公報
乙1の2 :特表平5−501023号公報中のテキストデータの各頁ごとに対応させたプリントアウトに関する報告書
乙1の3 :甲1−3中の「本件特許発明との対比の観点から重要な部分」に関する報告書
乙2 :被告製品1−5の「縦持ち(左右方向見開き)」及び「横持ち(上下方向見開き)」の各状態に関する写真撮影報告書
乙3 :「縦開き(上下方向見開き)タイプの絵本」(計24個)の写真撮影報告書
乙4 :「ワンセグ受信アダプタDSテレビ」広告用インターネットホームページ
乙5 :実願昭58−126314号(実開昭60−34234号)のマイクロフィルム
乙6 :実願昭60−89575号(実開昭61−207244号)のマイクロフィルム
乙7 :実願昭61−183142号(実開昭63−89121号)のマイクロフィルム
乙8 :特開平2−129689号公報
乙9 :特開平3−130813号公報
乙10:特開平3−58108号公報
乙11:特開平1−282587号公報
乙12:特開昭55−149577号公報
乙13:特開昭63−207284号公報
乙14:特開昭63−256071号公報
乙15:特開昭63−258173号公報
乙16:特開昭64−24580号公報
乙17:特開平2−10972号公報
乙18:実願平1−36116号(実開平2−126476号)のマイクロフィルム
乙19:実願平1−157631号(実開平3−22680号)のマイクロフィルム
乙20:特開平3−135179号公報
乙21:実願昭59−65162号(実開昭60−176480号)のマイクロフィルム
乙22:特開昭62−117020号公報
乙23:特開昭63−266207号公報
乙24:特開平1−118189号公報
乙25:実願昭63−8337号(実開平1−117797号)のマイクロフィルム
乙26:実願昭63−124673号(実開平2−47682号)のマイクロフィルム
乙27:実願平1−30220号(実開平2−121773号)のマイクロフィルム
乙28:ウィキペディアの「磁気ディスク」の項目(2019年12月19日(木)17:13最終更新)
乙29:ウィキペディアの「パーソナルコンピュータ」の項目(2020年6月9日(火)14:48最終更新)
乙30:ウィキペディアの「フロッピーディスク」の項目(2020年4月13日(月)10:11最終更新)
乙31:ウィキペディアの「光磁気ディスク」の項目(2020年1月25日(土)13:22最終更新)
乙32:ウィキペディアの「ビデオテープレコーダ」の項目(2019年1月17日(木)16:52最終更新)
乙33:特開昭61−211767号公報
乙34:特開平2−192383号公報
乙35:特開昭56−43684号公報
乙36:特開平1−222321号公報
乙37:特開昭62−57082号公報
乙38:特許第5513347号公報
乙39:特許第4769559号公報
乙40:ウィキペディアの「自動運転車」の項目
乙41:広辞苑第7版の「ストッパー」の項目
乙42:特開昭62−234744号公報
乙43の1:インターネット上のgoo辞書の「により」の項目
乙43の2:インターネット上のgoo辞書の「によって」の項目
乙44:広辞苑第7版の「よる(因る・由る・拠る・依る」」の項目
乙45:広辞苑第7版の「任意」の項目
乙46:特開昭62−94886号公報
乙47:特開昭62−210496号公報
乙48:「ワンセグ受信アダプタ DSテレビ」の広告用インターネットホームページ
乙49:ウィキペディアの「ワンセグ受信アダプタDSテレビ」の項目(最終更新2020年3月12日)
乙50:実願昭46−46684号(実開昭48−7376号)のマイクロフィルム
乙51:広辞苑第7版の「等(など)」の項目
乙52:「注解特許法 第2版増補上巻」376−401頁
乙53:吉藤幸朔「特許法概説 第9版」232頁
乙54:「実例でみる特許・実用新案 審査基準の解説」201−203頁
乙55:「特許審査・審判の法理と課題」「明細書の補正」
乙56:広辞苑第7版の「さらに」の項目
乙57:訂正請求項1,3,6の「それらが互いに接続されている部分及びその近傍部分」に関する写真撮影報告書
乙58: 審査基準 実施可能要件
乙59: 審査基準 サポート要件
乙60:「新・注解特許法 上巻」649−661頁
乙61の1:特許庁ホームページ中の「特許・実用新案審査基準−審査基準の追加・改訂について」のページ
乙61の2:特許庁ホームページ中の「「明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の審査基準改訂について」と題するページ
乙61の3:特許庁ホームページ中の「明細書及び特許請求の範囲の記載要件の改訂審査基準」と題するページ
乙61の4:特許庁ホームページ中の「「明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の審査基準改訂(案)に寄せられたご意見の概要及び回答」と題するページ
乙62:広辞苑第7版の「や」の項目
乙63:ネット上の「コトバンク」の「並立助詞」の項目
乙64:実願昭63−123633号(実開平2−45270号)のマイクロフィルム
乙65:特開昭60−97174号公報
乙66:特開昭56−16782号公報
乙67:実願昭48−50825号(実開昭50−368号)のマイクロフィルム
乙68:特開昭61−72184号公報
乙69:実願昭53−829号(実開昭54−104976号)のマイクロフィルム
乙70:実願昭52−129335号(実開昭54−56141号)のマイクロフィルム
乙71:Wikipediaの「接続詞」の項目
乙72:広辞苑第七版の「また」の項目中の「副」(副詞)の次の「接続」(接続詞)の項目
乙73:広辞苑第七版の「蝶番」の項目
乙74:Wikipediaの「蝶番」の項目
乙75:「並立助詞『や』を用いた『AやB』の意味」
乙76:「GAME&WATCH」の写真撮影報告書
乙77:Wikipedia「ゲーム&ウォッチ」
乙78:Wikipedia「ZELDA(ゲーム&ウォッチ)」
乙79:ニコニコ大百科「ゲーム&ウォッチ」
乙80:「帰って来た電子ゲーム・週刊電子ゲームレビュー」抜粋
乙81:「進歩性を考える」(「パテント」2022年1月号15〜21頁)
乙82:特許・実用新案審査基準 第III部第2章第4節 特定の表現を有する請求項等についての取扱い
乙83:特許・実用新案審査基準 第II部第2章第3節 明確性要件
乙84:特許・実用新案審査基準 第II部第1章第1節 実施可能要件
乙85:広辞苑第七版の「バランス」の項目
乙86:龍田光弘「博士論文内容要旨および論文審査結果要旨 咬合接触状態の不均衡が顎関節部粘弾性特性に及ぼす影響」(歯科医学1997年60巻2号49〜50頁)
乙87:特許・実用新案審査基準 第II部第2章第4節 簡潔性要件(特許法第36条第6項第3号


第7 当審において職権で調査して通知した無効理由
当審において、請求人が申し立てない本件特許の無効の理由について審理したところ(特許法153条1項)、令和3年12月20日付けで次の無効の理由(以下「職権無効理由3」という。)を通知した。
<職権無効理由3(サポート要件違反)>
本件訂正前の請求項1〜10においては、2つの表示板の見開き角が0度から180度の範囲であることの限定はないから、最大の見開き角が180度よりも大きい角度であるものも含むところ、最大の見開き角度が180度を越えるものは、明細書又は図面には記載されていないから、本件訂正前の請求項1〜10は、当該発明の課題を解決できると当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
したがって、本件訂正前の請求項1〜10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

なお、本件特許の出願日が、最先の出願である特願平3−245262号の出願日(平成3年8月30日)にまで遡及するか否かについては、本件特許無効審判における審理事項であるところ(請求人の主張する無効理由2−1、2−2を参照)、当該遡及の有無に従って、サポート要件について適用される法条は、次のア、イのように条文の項番が変わっているが、要件についての実体的な変更はない。
ア 出願日が平成3年8月30日にまで遡及する場合
平成6年法律116号による改正前の特許法36条5項1号
イ 出願日が平成3年8月30日にまで遡及しない場合
平成6年法律116号による改正後の特許法36条6項1号


第8 当審の判断
1 本件訂正発明の捉え方について
(1) 本件訂正発明の概要について
本件訂正発明は「表示装置」の発明であるところ、以下では本件訂正発明3を例として各構成について論じることにする。
本件訂正後の請求項3の記載は次のとおりである。
「【本件訂正後の請求項3】
<構成A>
略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、
<構成B>
前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、
<構成C>
前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、
<構成D0>
前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように、ストッパにより固定するための中間左右見開き固定手段とを備えており、
<構成D1>
前記ストッパは、前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものである、
<構成E>
ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。」

各構成を分説するための符号A〜C、D0、D1及びE(構成D0及びD1を総称して「構成D」という。)は、当審において付したものであり、請求人が審判請求書において付した符号とは一致していない。
本件訂正発明3の構成についてみると、この表示装置が備える構成として明示されているのは、要するに次のとおりである。
構成A:「2つの表示板」
構成B:「左右見開き接続手段」
構成C:「完全左右見開き固定手段」
構成D:「中間左右見開き固定手段」(「ストッパ」)
構成E:「片手支持可能な表示装置」

(2) 本件訂正発明の開示について
ア 各構成の具体的開示内容について
本件訂正発明の構成ごとにその具体的な内容がどのように明細書及び図面に開示されているのかについて、本件訂正発明3を例にして以下検討する。
(ア) 構成A(「2つの表示板」)
「2つの表示板」(構成A)については、次の記載がある。
a 【0014】
「図1において、符号1は枠体(筐体)である。(中略)またこの枠体1は、前記LCD駆動装置6によりLCD画面が出力されるLCDパネル(表示板)5(本明細書では、符号5を、LCDパネルとLCD画面との両者を示すために用いている)を備えている。」
b 【0015】
「また符号2も枠体(筐体)で、(中略)またこのLCD駆動装置8によりLCD画面が出力されるLCDパネル(表示板)7(本明細書では、この符号7を、LCDパネルとLCD画面との両者を示すために用いている)が備えられている。」
上記記載から、本件訂正発明1の「2つの表示板」(構成A)は、具体的には「LCDパネル(表示板)5」と「LCDパネル(表示板)7」に対応する。
c 【図1】




(イ) 構成B(「左右見開き接続手段」)
「左右見開き接続手段」(構成B)については、次の記載がある。
a 【0016】
「また本実施例では、前記の枠体1と枠体2とは、図示のように、その端部同士が、3つの比較的小さい蝶番9と1つの比較的大きい蝶番10とにより、折り曲げ自在に接続(連結)されている。これにより、枠体1と枠体2とは、本実施例の平面図である図2に示すように、図2の(a)に示す約180度に見開かれた「左右完全見開き状態」から、図2(b)のような「左右半見開き状態」(図2(a)のように約180度に見開きにされた状態と、図2(c)のように各枠体1、2がそれぞれ画面が表示される側が互いに向き合うように折り畳まれた状態との間の状態)を経て、さらに図2(c)の「折り畳み状態」へと、自在に折り曲げることができるようになっている。また本実施例では、上記と逆に、図2(c)の状態から図2(b)の状態を経て図2(a)の状態にすることもできる。」
上記記載から、本件訂正発明3の「左右見開き接続手段」(構成B)は、具体的には「蝶番9」と「蝶番10」が対応する。
b 【図2】




(ウ) 構成C(「完全左右見開き固定手段」)
「完全左右見開き固定手段」(構成C)については、次の記載がある。
a 【0016】
「図2の(a)に示す約180度に見開かれた「左右完全見開き状態」」
b 【0026】
「この実施例においては、前記第1の枠体1と第2の枠体2を見開き状態にしたとき、これらの2つの枠体を、その両者の枠体1、2の各LCDパネル5、7の間の角度が「約180度の角度」で固定できる」
「ユーザーは、本実施例による表示装置を、例えば、会社のデスクの上では約180度の角度に見開いた「完全見開き状態」で使用し、」
上記記載の他に「完全左右見開き固定手段」に関する記述は見出せず、その具体的な構造を明らかにした記載はない。
また、後述する「中間左右見開き固定手段」(構成D)と、「完全左右見開き固定手段」(構成C)は、そもそも別部材であるのか、何か付加等されたものであるのかなど、構造上相違するものであるのか否か不明であり、さらに、相違する場合、後述するとおり、構成Dは実施例としては蝶番9及び10の構造に従来周知の方法で工夫して設けたストッパであるとしているところ、構成Cはこれとどのように異なり、どのような構造であるのか不明である。

(エ) 構成D(「中間左右見開き固定手段」)
「中間左右見開き固定手段」(構成D)については、次の記載がある。
a 【0018】
「また本実施例においては、蝶番9及び10の構造を従来周知の方法で工夫すること(例えば、ストッパを設けること等)により、2つの枠体1と枠体2の間が、例えば約105度から約170度まで(又は、約110度から約170度まで)の間の5段階の角度のいずれかの角度で、ストッパがかかって固定できるように構成するようにしてもよい。」
b 【0026】
「その両者の枠体1、2の各LCDパネル5、7の間の角度が「約105度から約175度まで(又は、約110度から約170度まで)の間の所定の角度(任意の角度)」で固定できる(例えば摩擦力やストッパやチルト機構等により)ようにしている。」
「混雑している通勤電車の中では(他人に本実施例の装置が当たって迷惑がかかることのないように)例えば約105度〜約120度の角度に見開いた「半見開き状態」で使用する等、周囲の状況に応じた使用ができるようになる。」
上記記載から、「蝶番9及び10の構造を従来周知の方法で工夫すること(例えば、ストッパを設けること等)により」又は「例えば摩擦力やストッパやチルト機構等により」途中の角度で固定することが読み取れるから、「摩擦力やストッパやチルト機構」は、「中間左右見開き固定手段」に関するものと考えられる。
しかしながら、本件訂正発明3の「中間左右見開き固定手段」(構成D)について、蝶番9及び10の構造に従来周知の方法で工夫して設けたストッパであるとする他に、その具体的な構造(ストッパを蝶番9及び10のどの箇所にどのように設けるのか、「工夫」とは具体的にどのようなことをいうのか等)を明らかにした記載はない。

(オ) 構成E(「片手支持可能な表示装置」)
構成Eは、「片手支持可能な表示装置」であって、これは、構成Aの「ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置」と同じものであるが、これについては次の記載がある。
a 【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は、複数の表示板を備えた表示装置に係り、特に携帯時には携帯に便利なコンパクト・サイズでありながら使用時には比較的大きな見やすい表示画面を提供できる、あるいは使用時に複数の表示画面を提供できる、片手支持可能な表示装置に関する。」
b 【0002】
「【従来の技術】近年の情報化の進展に伴い、携帯用のコンパクト・サイズの電子情報機器、例えばCD−ROM再生専用装置(例えばソニー株式会社の商品名「データディスクマン」)、VTR(ビデオテープレコーダー)、TV(テレビ)、A4版ファイル・サイズのノートブックパソコン(パーソナルコンピュータ)、電子手帳、などの携帯型電子情報機器が続々と製品化されている。」
上記記載から、構成Eは、携帯用のコンパクト・サイズの表示装置を具体的には意味する。
しかしながら、このような携帯用のコンパクト・サイズの表示装置は、上記【0002】に記載されているように従来周知のものであり、「片手支持可能」とするための手段は構成A〜Dにより特定されているから、重量が片手で支持できる程度のものである点を限定すること以外には、本件訂正発明3の構成Eに格別な特徴として取り上げるべきものはない。

イ 本件訂正発明の解決課題と課題解決手段について
(ア) 前記アの検討内容を踏まえると、本件訂正発明3の表示装置の構造上の特徴は、結局のところ、「LCDパネル(表示板)5及び7」、「蝶番9及び10」(及びその周辺)にあると考えられるが、明細書及び図面には、蝶番9、10及びその周辺の具体的な構造(どのような工夫によりストッパ等の手段が設けられるのか等)は、何等開示されていない。
また、それらの具体的な構造が従来周知のものであるとしても、これら従来周知のものをどのように組み合わせ、その組み合わせの際にどのような技術的課題や問題点が生じ、それらをどのように克服して解決したのかについても、明細書及び図面には一切開示されていない。
そうすると、本件訂正発明3は、「LCDパネル(表示板)5及び7」(構成A)を「蝶番9及び10」(構成B)で接続した「携帯用のコンパクト・サイズの表示装置」(構成E)ということの他に、具体的構造がどのようなものであるか全く不明であって、従来周知のものを組み合わせた際に生じるであろう、さまざまな技術的課題や問題点すら認識したものではなく、本件訂正発明3は、「LCDパネル(表示板)5及び7」(構成A)を「蝶番9及び10」(構成B)で接続した「携帯用のコンパクト・サイズの表示装置」(構成E)に従来周知の手段を用いるという発想自体を主題としたものであって、単に抽象的・観念的レベルで創作したものにすぎない。

(イ) この点に関し、本件特許の明細書には、発明解決課題と課題解決手段について、次の記載がある(下線は当審において付した)。
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の携帯型電子情報機器においては、携帯の便利さを追求すればディスプレー装置などのサイズは小さいほどよいが、他方、ユーザーが使用するときの便宜を考えればディスプレー画面のサイズは見ずらくならない程度には大きくしておく必要がある、という二律背反の問題があった。そして、近年、このような二律背反の課題に着目して、携帯の便利さ(コンパクト化)と使用時のディスプレー画面の見やすさ(画面の大きさのある程度の確保)という2つの要請を同時に満たし、前記の二律背反の問題を一挙に解決することができる表示装置として、2つの表示板を接続し、不使用時には2つの表示板を収納又は携帯しやすいように折り畳み状態とし、使用時には2つの表示板を見開き状態とするような「折り畳み・見開き型の表示装置」が提案されている(例えば、特開平3−103889号公報)。
【0005】
しかしながら、このような従来から提案されている「折り畳み・見開き型の表示装置」においては、単に、不使用時には2つの表示板を収納又は携帯しやすいように折り畳み状態とし、使用時には2つの表示板を見開き状態とすることを提案するだけであり、「ユーザーが、外出先(戸外)などで、例えば立ったままで、その一方の片手だけを使って表示装置全体を容易且つ安定的に支持しながら、その他方の片手は、表示装置を支持すること以外の他の様々な動作を行うために(例えば電車の吊り革を掴むために)使用することができるようにできないか。」という問題意識(ニーズ)は、全く窺うことができない(前記公報などの先行技術文献には、このような問題意識については、何らの記載も示唆も無い)。
【0006】
携帯情報端末(PDA)や携帯電話などの移動体通信機器に使用するための表示装置を考えるときは、ユーザーが、外出先(戸外)などで、例えば立ったままで、その両手の一方の片手だけで容易且つ安定的に表示装置を支持しながら使用できること、そして、表示装置を支持していない他方の片手は、例えば、ユーザーが、電子ペンで表示画面に文字を手書き入力したり、タッチパネル式の表示画面を指先でタッチして操作したり、テンキーを押して数字や文字を入力したり、トラックボール・マウス・パッド・ジョイスティクなどのポインティングデバイスを操作したり、他の操作キーやジョグ・ダイヤルなどを操作したり、通勤電車の吊り革を掴んだり、隣の人と握手したり、などのような様々な動作を行うために使用できるようにすることが、極めて重要なはずである。
【0007】
本発明は、このような従来技術に関する問題意識から構想されたものであって、「ユーザーが、例えば外出先(戸外)などで、例えば立ったままでも、その一方の片手だけを使って表示装置全体を極めて容易且つ安定的に支持することができる、片手支持可能な表示装置」を提供することを課題(目的)とするものである。さらに、本発明は、「ユーザーが、例えば外出先(戸外)などで、例えば立ったままでも、その一方の片手だけを使って表示装置全体を極めて容易且つ安定的に支持しながら、その他方の片手は、(例えば文字入力動作や電車の吊り革を掴む動作などのような)表示装置を支持すること以外の他の様々な動作を行うために使うことができる、片手支持可能な表示装置」を提供することを課題(目的)とするものである。
【0008】
このような本発明の課題は、従来の先行技術文献の中には全く記載も示唆も無く、従来技術からは容易に予想・認識することができない「新規な課題」である。
【0009】
すなわち、本発明者は、本願発明の上記「課題」は、少なくとも本願の原出願の出願日(1991年8月30日)当時は、まだ「公知・自明」にはなっていなかったと考える。なぜなら、この当時は、まだ、「2つの表示板を互いに接続して使用する表示装置」は全く市販などされていなかったし、その製品化の予定なども皆無であった。確かに、この当時、既に、上記公報のように「2つの表示板を折り畳み自在に接続する」という表示装置のアイデアは一部だが開示されていた。しかし、このようなアイデアを発想した発明者たちは、おそらく、「2つの表示板を互いに接続して使用する表示装置」を、「単に頭の中で(紙とペンだけで)構想しただけ」か又は「何らかの試作品を作っただけ(といっても、当時の技術水準では、『片手の上に載せて使用するような小型のもの』を試作することは実際上不可能で、仮に何らかの試作が行われたとしても、せいぜい『大型のもので机の上に据え置いて使用するようなもの』しか作れなかったはずである)」かのいずれかのレベル(技術水準)に止まっていたはずである。もし、「2つの表示板を互いに接続して使用する表示装置」が実際に市販されて多数の一般人が利用するような状況になれば、その多数の一般人の中から、このような表示装置について、「一方の片手だけに載せて使用できるようにしたい、そして、それだけでなく、さらに、一方の片手だけで極めて容易且つ安定的に支持して使用できるようにしたい(そして、他方の片手は文字入力や電車の吊り革を掴むなどの他の様々な動作のために使えるようにしたい)」と考える人も出てきて、そのような「ニーズ・課題」(本願発明の課題に相当するもの)が「公知・自明」のものとなるであろう。しかし、実際には、少なくとも本願の原出願の出願日(1991年8月30日)当時は、「2つの表示板を互いに接続して使用する表示装置」が実際に市販されて一般人が利用することはなく(分割出願である本願を提出する時点でも、まだ、市販されていない)、またその製品化の予定もなく、従ってまた、前記の「課題・ニーズ」が「公知・自明」のものとなることも無かったのである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(用語説明)本明細書において、「固定」には、(a)摩擦力やチルト機構などにより「半固定」する場合(ここで、「半固定」とは、「固定」の一形態であって、ユーザーがある程度強めの所定量以上の力を加えることにより状態を変更させる(すなわち、固定状態を解除して、前記各表示板(各表示パネル)間の角度を変更させる)ことができるような状態、を言う)や、(b)ストッパ(例えば、2つの表示板を接続する蝶番の回動を所定の角度でストップさせるもの)などを使用して「一時的に固定」する場合、なども含まれる。
【0011】
なお、上記の「固定手段」の一例としての「チルト機構」とは、2つの部材を接続するヒンジ部(蝶番)に装着・固定した軸とその軸に装着したコイルスプリングとにより前記2つの部材を任意の回転角度で保持できるようにした機構である。このような「チルト機構」は、従来より、例えばキーボードと薄型ディスプレイとを接続するノート型(ブック型)電子機器のヒンジ部(蝶番)などに設けられている周知の技術であって、例えば、実願平1−54228号(実開平2−145423号公報)のマイクロフィルム(この中の明細書の第4ページの第7−14行及び第4図参照)には、キーボードが備えられた本体側の固定金具と薄型ディスプレイが備えられた蓋体側の固定金具との間に装着された軸にコイルスプリングを装着すること等により、前記蓋体を前記本体に対して任意の回転角度で保持できるようにしたチルト機構が開示されている。」

(ウ) 前記発明解決課題と課題解決手段の記載からみると、本件訂正発明3は、「ユーザーが、例えば外出先(戸外)などで、例えば立ったままでも、その一方の片手だけを使って表示装置全体を極めて容易且つ安定的に支持することができる、片手支持可能な表示装置」を提供することを課題として、2つの表示板を、摩擦力により半固定する手段、チルト機構により半固定する手段、あるいはストッパにより一時的に固定する手段を設けたことを課題解決手段としているということができる。
しかしながら、前記記載は、本件訂正発明3の構成A〜Eのうち、特に、構成B(左右見開き接続手段)、構成C(完全左右見開き固定手段)、構成D(中間左右見開き固定手段)を組み合わせたときに生じる技術的な課題を何等提示しておらず、これらを具体的に組み合わせたときに生じるであろう技術的困難性を乗り越えるための技術手段を開示するものではない。
すなわち、前記記載は、蝶番の回動を所定の角度で固定させる「固定手段」がどのような機構を具体的に有するものであるかについて開示していないから、本件訂正発明3が、ストッパとその他の手段を具体的に組み合わせた場合に生じる技術的な課題を認識しておらず、そのような技術的困難性を乗り越えるための具体的な手段は不明のままである。
(明細書の他の記載、特に、段落【0017】及び【0018】の記載を参照しても、その点が不明であることに変わりはない。)

(3) 明細書の開示内容及び技術水準からみた本件訂正発明の位置づけ
ア 前記(2)アにおいて検討したとおり、本件訂正発明3は、構成A〜Eについて、外見上は長文による特定を伴うものであるが、それらは全て各構成の機能や状態を記述したものにすぎず、当該機能や状態を実現する構造については、「LCDパネル(表示板)5及び7」(構成A)を「蝶番9及び10」(構成B)で接続した「携帯用のコンパクト・サイズの表示装置」(構成E)ということの他は不明であって、表示装置としての具体的構造がどのようなものであるかは全く不明なものである。
また、前記(2)イにおいて検討したとおり、本件特許の明細書及び図面は、本件訂正発明の各構成を組み合わせたときに生じる技術的な課題を何等提示しておらず、各構成を具体化して組み合わせたときに生じる技術的困難性を乗り越えるための技術手段を開示するものではない。

イ これらの点を踏まえると、本件訂正発明3は、「ユーザーが、例えば外出先(戸外)などで、例えば立ったままでも、その一方の片手だけを使って表示装置全体を極めて容易且つ安定的に支持することができる、片手支持可能な表示装置」を提供することを目的として、
「2つの表示板」(構成A)を、
a 蝶番などの左右見開き接続手段(構成B)で接続するとともに、
b ストッパにより一時的に固定する「完全左右見開き固定手段」(構成C)及び「中間左右見開き固定手段」(構成D)
を設けたことを構成とするものである。
しかしながら、明細書及び図面を参酌しても、前記a及びbの具体的構造がどのようなものであるか全く不明であり、これらの構成を具体的に組み合わせるときに生じる技術的困難性の説明はなく、当該技術的困難性を乗り越えるための具体的な手段は開示されていない。

ウ すなわち、本件訂正発明3は、ある機能を備える手段を抽象的に組み合わせると、前記目的(「片手支持可能な表示装置」を提供すること)が達成できるとする、いわゆる「願望クレーム」の発明(装置を具体的に製作するときの技術的困難性を克服するものでなく、装置の構成を機能的に特定するのみで、その機能を実現するための具体的構造が全く不明なものであり、こんな風になればいいな、こんなことができたらいいなといった願望そのものを発明として特許請求の範囲に記載したものという意味)と称される域を越えるものではない。
本件特許の明細書の段落【0009】には、「2つの表示板を互いに接続して使用する表示装置」を「単に頭の中で(紙とペンだけで)構想しただけ」のレベルという記載があるが、本件訂正発明3も、技術水準からみれば、そのように位置づけられるものである。
したがって、特許付与の対象となった技術思想は、前記a及びbを組み合わせることにより、前記の目的を達成することができるという発想自体である。すなわち、本件訂正発明3は、構成A及び構成Bを具現化して具体的に組み合わせるときに生じ得る技術的困難性を乗り越えるための具体的な手段について特許権を取得しようとしたものではなく、「LCDパネル(表示板)5及び7」(構成A)を「蝶番9及び10」(構成B)で接続した「携帯用のコンパクトサイズの表示装置」(構成E)において、周知の固定手段を用いれば片手だけで支持可能になるという発想自体について特許権を取得しようとしたものと考えるべきである。
なお、本件訂正発明3の目的である「ユーザーが、例えば外出先(戸外)などで、例えば立ったままでも、その一方の片手だけを使って表示装置全体を極めて容易且つ安定的に支持することができる、片手支持可能な表示装置」を提供することは、そもそも最先の出願には記載されていなかったことであり、最先の出願の開示内容からは、当該目的を達成することができるという発想自体は把握することが可能であったとしても、それを超えて、当該課題を解決する手段を具現化するに当たって生じる技術的困難性を乗り越えるための具体的な手段を認識することはできないことを付言する。

(4) 本件訂正発明の進歩性の判断の在り方について
前記(3)ウのとおり、本件訂正発明3は、このような技術的困難性を乗り越えるための具体的な手段について特許権を取得しようとしたものではなく、「LCDパネル(表示板)5及び7」(構成A)を「蝶番9及び10」(構成B)で接続した「携帯用のコンパクトサイズの表示装置」(構成E)において、周知の固定手段を用いれば片手だけで支持可能になるという発想自体について特許権を取得しようとしたものと考えるべきである。
そして、このような周知の固定手段を用いれば片手だけで支持可能になるという発想自体を主題とする本件訂正発明3に係る進歩性の判断においては、甲1発明(2つのパネルを備え、左右見開きにして任意の角度で固定でき、片手保持・片手入力可能なコンピュータノートブック)に、2つのパネルを半固定する手段あるいは一時的に固定する手段を設けるという発想自体に想到することが当業者にとって容易か、という観点から検討すべきである。それを超えて、先行技術に開示された具体的技術手段の具体的構造に関する個々の点を取上げて、そのときに生じる困難性を論じることは適当ではない。
このように判断しないと、特許権者は、特許の対価としての情報は何ら開示しないでおいて、特許だけを取得し、しかも、同じ目的を達成するための他の具体的な手法(構造や方法)をも自らの特許の範囲に取り込むことになる。このような結果が特許法の許すところでないことは、平成14年(行ケ)495号、平成14年(行ケ)251号、平成17年(行ケ)10187号、平成22年(行ケ)10334号、平成14年(行ケ)483号などの裁判例が説示するとおりである。
さらに換言すると、各種の固定手段自体は周知技術であるという前提の下で本件訂正発明3をみると、結局のところ、本件訂正発明3はこれらの周知技術を用いて表示装置とするという達成すべき課題をそのまま構成要件としただけのものであり、それ以上に具体的な要素(技術的困難性を乗り越えるための具体的な手段)を何ら有するものではない。
このようなとき、引用文献に記載された各発明の具体的構造(例えば、甲1発明では、第1の軸36と第2の軸38からなる2軸構成であること、第1の軸36のロッキング機構、第2のパネル14のロッキング機構を有すること、背中合わせで折畳まれた位置にもできること等)に関する個々の点を取上げて論じることは適当ではない(同様の判断を示した裁判例として、平成12年(行ケ)第429号参照)。

2 無効理由1について
(1) 甲1号証に記載された事項及び甲1発明の認定
ア 甲1号証の翻訳について
(ア) 甲1号証の翻訳についての事実関係
a 無効理由1−1〜1−7(出願日遡及を前提とする新規性進歩性欠如の無効理由)に関して、請求人は、甲1号証(国際公開第91/05327号)を主たる引用文献として提出するとともに、甲1の抄訳を提出した。

b これに対して、被請求人は、前記甲1の抄訳の内容を(全体として)否認するとともに、甲1号証の対応日本出願の公表公報である特表平5−501023号公報を乙1号証の1として提出した(令和3年5月24日付け答弁書1頁「6 理由」の「第1 認否等」の4を参照)。

c 当審において前記甲1の抄訳の内容を確認したところ、特表平5−501023号公報の記載と表現上異なる箇所が多く見られた。
他方、特表平5−501023号公報の記載も、符号の誤記や誤訳と思われる箇所(具体的には段落【0020】における誤訳)が見られた。

d 本件特許無効審判事件の特許に関する訂正審判の審決取消請求事件(知的財産高等裁判所令和4年2月2日判決(令和3年(行ケ)第10037号))において、原告(本件特許無効審判の被請求人)は、甲1当審訳のうち下線を付した箇所(前記訂正審決において引用した箇所)に基づいて認定した引用発明を「認める」としていた(令和3年9月12日付け原告第2準備書面3頁2(1)参照)。

(イ) 甲1号証の日本語訳についての合議体の方針と審尋
前記(ア)に示した事情に鑑み、合議体としては、甲1号証の日本語訳については、特表平5−501023号公報の記載を基にして当審において作成することにし、特段の意見がない場合は、甲1当審訳に基づいて、前記無効理由についての審理を進めることとした。
そして、両当事者に対し、令和4年2月10日付けで審尋を行い、甲1当審訳について意見を求めたところ、請求人は異論がないとの意見であり(令和4年2月24日提出の回答書参照)、被請求人からは意見の提出はなかった。

(ウ) 甲1当審訳についての補助説明
a 翻訳範囲
甲1当審訳は、国際公開第91/05327号の明細書及び請求の範囲の記載についての、合議体が特表平5−501023号公報の記載を基にして作成した日本語訳である。フロントページ(書誌、要約)及び図面の日本語訳は作成していない。

b 段落番号
明細書の記載については、原文の摘記箇所を簡潔に表示するため、原文の字下げ箇所ごとに【0001】等の段落番号を当審において割り当てて付した。
同様に、請求の範囲の記載についても、当審において【請求項1】等の符号を付した。

c 公表公報の訳との相違
(a) 甲1当審訳は、特表平5−501023号公報の記載をほぼ採用しているが、前記公表公報の記載と異なる翻訳箇所が一部ある。

(b) 甲1当審訳のうち、段落【0011】、【0015】〜【0021】及び【0024】の下線を付した箇所の訳文は、前記審決取消請求事件(知的財産高等裁判所令和4年2月2日判決(令和3年(行ケ)第10037号))の判決書の別紙4「引用文献1の記載事項(抜粋)」に示されたものと同一である(前記判決書101〜109頁参照)。

イ 甲1号証に記載された事項
甲1号証(国際公開第91/05327号)は、最先の出願(特願平3−245262号)の出願日(平成3年8月30日)より前に頒布された刊行物である。甲1号証には、以下の記載がある。なお、下線は、合議体が付与した。日本語訳については、上記ア(イ)及び(ウ)を参照。

(ア) 3頁21〜28行
【0011】の一部
「Another objective of the present invention is to provide a system that allows one digitizer to be rotated with respect to the second so that the computer aided notebook can be opened to a variety of selected positions and where one of such positions allows a user to hold the computer in one hand while data is entered with the other while the user is in a sitting、 standing or walking position.」
(日本語訳)
「この発明の別の目的は、コンピュータ援助ノートブックが様々な選択された位置に開かれ得るように1つのデジタイザが第2のデジタイザを基準にして回転することを許容し、かつこのような位置の1つは、ユーザが座ったり、立ったり、又は、歩いたりする位置にあるときに、片手でコンピュータを保持し、もう片方の手でデータを入力することを許容するシステムを提供することである。」

(イ) 5頁10行〜6頁6行
【0015】の一部
「Brief Description of the Drawings:
Fig.1 illustrates a portable computer according to the invention in a flat open position;
Fig. 2 is a perspective view of a portable computer according to the invention in a closed position;
Fig. 3 is a perspective view of a portable computer according to the invention in a compact open position folded back to back having a screen orientation upside down as compared to Fig. 1;
Fig. 4 is a perspective view of a portable computer according to the invention in a partially folded open position having a screen orientation oriented sideways as compared to Fig. l;
Fig. 5 is a top plan view of a portable computer according to the invention in a position separated at the hinge;
Fig. 6A is an exploded illustration of a hinge in accordance with the invention;
Fig. 6B is an exploded illustration of the hinge showing the primary axis in accordance with the invention;
Fig. 6C is another exploded illustration of the hinge showing the primary axis in accordance with the invention;
Fig. 6D is an exploded illustration of the hinge showing the secondary axis in accordance with the invention;
Fig. 6E is an exploded illustration of the hinge showing the anchoring means in accordance with the invention;」
(日本語訳)
「図面の簡単な説明
図1は平坦な開いた位置におけるこの発明に従った携帯用コンピュータを示す。
図2は閉じた位置におけるこの発明に従った携帯用コンピュータの斜視図である。
図3は図1と比較するとスクリーンの配向が逆さまである、背中合わせで折畳まれたコンパクトな開いた位置にあるこの発明に従った携帯用コンピュータの斜視図である。
図4は、図1と比較すると横に配向されたスクリーン配向を有する部分的に折畳まれた開いた位置におけるこの発明に従った携帯用コンピュータの斜視図である。
図5は蝶番で分離された位置におけるこの発明に従った携帯用コンピュータの上面図である。
図6Aはこの発明に従った蝶番の分解図である。
図6Bはこの発明に従った第1の軸を示す蝶番の分解された図である。
図6Cはこの発明に従った第1の軸を示す蝶番の別の展開された図である。
図6Dはこの発明に従った第2の軸を示す蝶番の分解図である。
図6Eはこの発明に従った保留手段を示す蝶番の分解図である。」

(ウ) 6頁32行〜7頁4行及びFIG. 1(図1)
【0016】
「Description of the Specific Embodiments:
Fig. 1 shows a perspective view of a computer notebook 10 according to the present invention. Notebook 10 includes a first panel 12, a second panel 14 connected to first panel 12 by a hinge means 16 that allows both first panel 12 and second panel 14 to orient in a multitude of angles about hinge means 16, and a stylus 18 for writing on first panel 12 and second panel 14.」
(日本語訳)
「好ましい実施例の説明
図1はこの発明に従ったコンピュータノートブック10の斜視図を示す。ノートブック10は第1のパネル12と、第1のパネル12及び第2のパネル14の両方が蝶番手段16を中心とした多数の角度において配向することを許容する蝶番手段16によって第1のパネル12に接続される第2のパネル14と、第1のパネル12及び第2のパネル14上に書くためのスタイラス18を含む。」




(エ) 7頁5〜16行
【0017】
「First panel 12 has a first flat surface 20 with an opaque first digitizer tablet 22 and allows placement of standard templates, pads of single-sheet hard copy forms or a thin pad of forms. A digitizer tablet includes a digitizer and the backing for mounting the digitizer; hereinafter, "digitizer" will be used instead of digitizer tablet. First panel 12 also has selected liquid-crystal displays for acknowledging data entered upon first digitizer 22. Second panel 14 includes a second flat surface 24 with a liquid crystal display and includes a transparent second digitizer 26 overlaying the liquid crystal display.」
(日本語訳)
「第1のパネル12は不透明な第1のデジタイザタブレット22を有する第1の平坦な表面20を有し、かつ標準のテンプレート、単一シートハードコピーフォームのパッド又は書式の薄いパッドの配置を許容する。デジタイザタブレットはデジタイザとデジタイザを装着するための裏当てとを含み、これ以降、「デジタイザ」がデジタイザタブレットの代わりに使用されるであろう。
第1のパネル12はまた第1のデジタイザ22上へ入力されるデータに応答するための選択された液晶ディスプレイを有する。第2のパネル14は液晶ディスプレイを有する第2平坦な表面24と液晶ディスプレイの上に置かれる透明な第2のデジタイザ26を含む。」

(オ) 7頁17行〜8頁5行、FIG. 2(図2)〜FIG. 4(図4)
【0018】
「First panel 12 is primarily the data entry panel and houses the major electronics of the invention, namely the logic, memory, and power supply, as well as peripheral ports for a printer, modem, and other like peripheral devices. Second panel 14 serves primarily as a display panel and doubles as a secondary data entry panel. Each panel is connected to the other by means of hinge 16. Hinge 16 allows one panel to be set at any angle position relative to the other. In one specific embodiment, the panels will have at least four distinct settings including closed (Fig. 2), initial or partially opened (Fig. 4), flat (Fig. 1), and folded (Fig. 3) positions that will allow each panel to support a nominal amount of torque without movement. The configuration shown in Fig. 1 may also be rotated 180° in the plane of the figure, and the paper form the display correspondingly inverted with respect to the frame of the computer, for the convenience of left-handed, users. Also included is means to allow electrical communication between the two panels, where the first panel 12 has the logic, memory, and power supply and second panel 14 provides a display and secondary data entry device. One such means of communication is a ribbon computer cable and is well known in the art.」
(日本語訳)
「第1のパネル12は主にデータ入力パネルであり、かつこの発明の主要な電子回路、すなわち、論理と、メモリと、電源と、プリンタ、モデム、他の同様な周辺装置のための周辺ポートとを収容する。第2のパネル14は主にディスプレイパネルとして役立ち、かつ第2のデータ入力パネルとしても兼務する。各パネルは蝶番16によって他方に接続される。蝶番16は1つのパネルが他方に対していかなる角度位置においても設定されることを許容する。1つの特定の実施例では、パネルは、各パネルが動かずに定格のトルク量を支えることを許容するであろう、閉じられた(図2)、最初の又は部分的に開かれた(図4)、平坦な(図1)、かつ閉じられた(図3)位置を含む少なくとも四つの明確な設定を有するであろう。図1において示されている構成は図の平面において180度回転されてもよく、かつ左利きのユーザの便宜のために、コンピュータのフレームに対してディスプレイ書式が相応して反転される。また、二つのパネル間の電気通信を許容する手段も含み、第1のパネル12は論理、メモリ、電源を有するし、かつ第2のパネル14はディスプレイ及び第2のデータ入力装置を備える。1つのこのような通信の手段はリボンコンピュータケーブルであり、技術においてよく知られている。」










(カ) 8頁6〜31行、FIG. 6A(図6A)〜FIG. 6C(図6C)
【0019】〜【0020】
「Referring to Fig. 6A, hinge 16 includes a first hinge bracket 28, a second hinge bracket 30, a third hinge bracket 32 and a fourth hinge bracket 34 through which are threaded a primary axis 36 and a secondary axis 38 for holding first panel 12 and second panel 14 together. The primary axis 36 provides the axis about which first panel 12 revolves and secondary axis 38 provides the axis about which second panel 14 revolves. Each axis has a distinctly different locking mechanism with secondary axis 38 locking system permitting greater ease of movement than that of primary axis 36.
The locking mechanism of primary axis 36 includes a shaft 37 threaded at one end and flared at the other. Primary axis 36 fits the flared end 39 of shaft 37 in first hinge bracket 28 (Fig. 6B) and its threaded end 41 through fourth hinge bracket 34 as fastening knob 42 mounts thereon (Fig. 6C). Fastening knob 42 turns to selectively fasten primary axis 36 and the increased tension tightens the fit of the flared end 39 on first hinge bracket 28 and first panel 12. In addition a ceramic jacket 40 is used as a spacer at both ends 39 and 41 of primary axis 36 where in contact with first hinge bracket 28 and fourth hinge bracket 34 to provide improved friction to allow the first panel 12 to support a nominal amount of torque without movement and to reduce wear on the plastic parts.」
(日本語訳)
「図6Aを参照して、蝶番16は第1の蝶番ブラケット28、第2の蝶番ブラケット30、第3の蝶番ブラケット32及び第4の蝶番ブラケット34を含み、第1のパネル12及び第2のパネル14をともに保持するための第1の軸36及び第2の軸38がそれらを介して通る。第1の軸36は第1のパネル12が回転する軸を提供し、かつ第2の軸38は第2のパネル14が回転する軸を提供する。各軸は、第2の軸38のロッキングシステムが第1の軸36のそれよりもより大きい動きのゆとりを許容して、明らかに異なったロッキング機構を有する。第1の軸36のロッキング機構は一方がねじ切りされ、かつ他方が拡開されたシャフト37を含む。第1の軸36は、第1の蝶番ブラケット28にシャフト37の拡開端39を嵌合させ(図6B)、ねじ切りされた端部41を第4の蝶番ブラケット34に通して、締着つまみ42を装着して嵌合する(図6C)。締着つまみ42は選択的に第1の軸36を締めるために回され、かつ増加された引張りが、第1の蝶番ブラケット28に接している拡開端39と第1のパネル12との嵌合をきつくする。さらに、セラミックジャケット40が第1の蝶番ブラケット28と第4の蝶番ブラケット34とに接触する第1の軸36の両端39及び41におけるスペーサとして使用され、第1のパネル12が動かずに定格のトルク量を支持することを許容する改良された摩擦を提供するため、かつ、プラスチック部分における摩耗を減少させるために用いられる。」










(キ) 8頁32行〜9頁7行、FIG. 6D(図6D)
【0021】
「The locking mechanism of second panel 14 includes a threaded shaft secondary axis 38 which interacts with second hinge bracket 30 and third hinge bracket 32 and is secured by another fastening knob 42(Fig. 6D). Third hinge bracket 32 is also threaded so that as fastening knob 42 is turned clockwise, the tension between second hinge bracket 30 and third hinge bracket 32 exerted on second panel 14 can hold second panel 14 as rigidly as desired. Each hinge bracket 30 and 32 uses a semi-hard rubber washer 46 to increase the friction needed to hold the panels 12 and 14.」
(日本語訳)
「第2のパネル14のロッキング機構は、第2の蝶番ブラケット30及び第3の蝶番ブラケット32と相互作用するねじ切りされたシャフトの第2の軸38を含み、かつ別の締着つまみ42によって固定する(図6D)。第3の蝶番ブラケット32もまた、締着つまみ42が時計回りに回転して、第2の蝶番ブラケット30と第3の蝶番ブラケット32との間の第2のパネル14にかかる引張りが第2のパネル14を所望されるほど堅く保持し得るようにねじ切りされる。各蝶番ブラケット30及び32はパネル12及び14を保持するのに必要とされる摩擦を増加するために半硬のゴム座金46を使用する。」




(ク) 9頁32行〜10頁13行
【0024】
「This embodiment of the hinge 16 provides for first panel 12 and second panel 14 to be oriented in any position within a 360° arc about hinge 16. Ideally, four main positions will be preset to allow functionability. These four positions are: closed, initial or partially opened, flat and folded. The closed position is shown in Fig. 2 and occurs when the first panel 12 and the second panel 14 are juxtaposed face to face providing protection 5 to the panel surfaces when the apparatus is not in use. The initial position is illustrated in Fig. 4 and has one panel approximately perpendicular to the other, much like a conventional laptop portable computer. The flat position has both panels lying in the same plane side by 10 side. In a folded position shown in Fig. 3 the first panel 12 and second panel 14 are juxtaposed back to back in order to facilitate carrying the apparatus in one hand and entering data with the other.」
(日本語訳)
「蝶番16のこの実施例は蝶番16のまわりの360度の弧内のいかなる位置においても第1のパネル12及び第2のパネル14が配向されるために備えられる。理想的には、四つの主たる位置が機能性を許容するために予め設定されるであろう。これらの四つの位置は閉じられたもの、最初の、又は部分的に開かれたもの、平坦なもの及び折畳まれたものである。閉じられた位置は、図2において示されており、装置が使用されていないときパネルの表面を保護するために第1のパネル12及び第2のパネル14が面を合わせて並置されるときに起こる。最初の位置は図4に示され、かつかなり従来のラップトップ携帯用コンピュータに似たような、一方のパネルがほぼ他方に対して垂直になるようになる。平坦な位置は同一の面において並んで横たわる両方のパネルを有する。図3において示されている折畳まれた位置では、片手で装置を運び、もう片方の手でデータを入力することを容易にするために第1のパネル12と第2のパネル14が背中合わせて並置される。」

ウ 甲1発明の認定
前記記載事項及び図面の図示内容を総合すると、甲1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

[甲1発明]
「主にデータ入カパネルである第1のパネル12と、主にディスプレイパネルとして役立ち、かつ第2のデータ入力パネルとしても兼務する第2のパネル14と、第1のパネル12及び第2のパネル14上の書くためのスタイラス18を含むコンピュータノートブック10であって(摘記事項(ウ)、(オ))、
ユーザーが座ったり、立ったり、又は、歩いたりする位置にあるときに、片手でコンピュータを保持し、もう片方の手でデータを入力することを許容するものであり(摘記事項(ア))、
第1のパネル12と第2のパネル14は蝶番手段16によって接続されており、蝶番手段16は1つのパネルが他方に対していかなる角度位置においても設定されることを許容するものであり(摘記事項(オ))、
第1のパネル12及び第2のパネル14の両方が蝶番手段16を中心とした多数の角度において配向することが許容されており(摘記事項(ウ))、
第1のパネル12は、不透明な第1のデジタイザ22を有する第1の平坦な表面20を有し、第1のデジタイザ22上へ入力されるデータに応答するための選択された液晶ディスプレイを有するものであり(摘記事項(エ))、
第2のパネル14は、液晶ディスプレイを有する第2平坦な表面24と液晶ディスプレイの上に置かれる透明な第2のデジタイザ26を含み(摘記事項(エ))、
蝶番手段16は第1の蝶番ブラケット28、第2の蝶番ブラケット30、第3の蝶番ブラケット32及び第4の蝶番ブラケット34を含み、
第1のパネル12及び第2のパネル14をともに保持するための第1の軸36及び第2の軸38がそれらを介して通り、
第1の軸36は第1のパネル12が回転する軸を提供し、
第2の軸38は第2のパネル14が回転する軸を提供し(摘記事項(カ))、
第1の軸36のロッキング機構は、一方がねじ切りされ、かつ他方が拡開されたシャフト37を含み、
第1の軸36は、第1の蝶番ブラケット28にシャフト37の拡開端39を嵌合させ(図6B)、
ねじ切りされた端部41を第4の蝶番ブラケット34に通して、締着つまみ42を装着して嵌合し(図6C)、
締着つまみ42は選択的に第1の軸36を締めるために回され、かつ増加された引張りが、第1の蝶番ブラケット28に接している拡開端39と第1のパネル12との嵌合をきつくするようにされ、
セラミックジャケット40が第1の蝶番ブラケット28と第4の蝶番ブラケット34とに接触する第1の軸36の両端39及び41におけるスペーサとして使用され、第1のパネル12が動かずに定格のトルク量を支持することを許容する改良された摩擦を提供するため、かつ、プラスチック部分における摩耗を減少させるために用いられ(摘記事項(カ))、
第2のパネル14のロッキング機構は、第2の蝶番ブラケット30及び第3の蝶番ブラケット32と相互作用するねじ切りされたシャフトの第2の軸38を含み、別の締着つまみ42によって固定されるものであり(図6D)、第3の蝶番ブラケット32は、締着つまみ42が時計回りに回転して、第2の蝶番ブラケット30と第3の蝶番ブラケット32との間の第2のパネル14にかかる引張りが第2のパネル14を所望されるほど堅く保持し得るようにねじ切りされ、各蝶番ブラケット30及び32にはパネル12及び14を保持するのに必要とされる摩擦を増加するために半硬のゴム座金46が使用され(摘記事項(キ))、
蝶番手段16は、蝶番手段16のまわりの360度の弧内のいかなる位置においても第1のパネル12及び第2のパネル14が配向されるために備えられ(摘記事項(ク))、
四つの主たる位置(閉じられた位置(図2)、一方が他方に対してほぼ垂直になる位置(図4)、平坦な位置(図1)、背中合わせで折畳まれた位置(図3))が、機能性を許容するために予め設定され、背中合わせで折畳まれた位置では、片手で装置を運び、もう片方の手でデータを入力することが容易になる(摘記事項(ク))、
コンピュータノートブック10。」

(2) 周知技術1並びに甲2技術事項及び甲3技術事項の認定
ア 甲4号証に記載された事項と周知技術1の認定
(ア) 甲4号証に記載された事項
甲4号証(実願昭63−171245号(実開平2−91874号)のマイクロフィルム)は、最先の出願(特願平3−245262号)の出願日(平成3年8月30日)より前に頒布された刊行物であり、以下の記載がある。下線は合議体が付した。

a 明細書1頁14行〜2頁7行
「(考案の属する技術分野)
本考案は、小型電子機器等に用いられるチルト機構に関し、特にポップアップ機構を備えたものである。
(従来の技術)
ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ等の小型電子機器等においては、全体を小体積とするため、表示パネル部(表示板と略す)と入カキーボード部(操作板と略す)のカバー構成を折畳み式にしている。そして、使用時に表示板を見易い傾斜角度に開いたり、或いは開いた状態でスライドしうるようにして、機器全体の小型化をはかっている。」

b 明細書4頁8〜20行
「本考案は、ロック機構を外し、操作板上に折畳まれた表示板を引き起こすと、これに取付けられた可動部固定用ブラケットとともに回転軸が回転し、この回転軸に刻まれた最初の溝に沿って回転軸止め用シャフトが摺動し、その凹みのところで弾性部材により圧接され、このポップアップ機構によりある傾斜角度で一旦止まる。さらに表示板を引き起こすと、例えば等間隔に刻まれた任意の回転軸の溝に回転軸止め用シャフトが弾性部材の圧接力で圧接され、クリック感を持たせて固定される。つまり、表示板は見易い傾斜角度を持った位置に確実に固定保持され、外部からの衝撃や振動により位置がずれることがない。」

c 明細書5頁1行〜7頁18行
「(実施例)
第1図は本考案の一実施例の斜視外観図を示し、図において、8は回転軸で、第2図の側面略図に示すように、回転軸の相対向する周緑に溝a〜eが軸方向へ数条刻まれている。この溝a〜eは、この回転軸を支軸に回転する表示板を見易い位置(傾斜角度)になるように複数刻まれている。9は該回転軸受けベースで、その凹形突縁部が回転軸止め用シャフト10を保持するため、弾性部材でなる圧接部9Aを形成し、また、底面部の切り起こしプレートが回転軸8の両端支持部9Bを形成する。上記圧接部9Aで保持される回転軸止めシャフト10の高さ位置は、第2図の側面略図に示すように、回転軸8の軸心8Aとほぼ同じ高さにあって、回転軸8の対向周縁部から軸心に向って挟むようにA矢印方向から圧接するよう凹形突縁部が形成されている。11は脚部が二又状の可動部固定用ブラケットで、ネジ穴11Aを有し、ここにネジ等を通して表示板2が固定される。
第3図は、回転軸8に可動部固定用ブラケット11を取付ける一例の拡大斜視図を示し、回転軸8の軸心に突起した角軸80に可動部固定用ブラケット11の脚部角穴11Bを嵌込み、両端支持部9Bの丸穴9bに段付ネジ12を挿入し、前記角軸80のネジ穴に螺定することで、可動部固定用ブラケット11の脚部が固定される。
このような取付機構により、表示板2が取付けられた可動部固定用ブラケット11は、回転軸8を支軸に回転が可能であり、回転軸止め用シャフト10は、圧接部9Aにより回転軸8の溝a〜eに弾性的に圧入される。上記において、回転軸止め用シャフト10は、回転軸受けベース9と別体で形成された場合を例にとって示しているが、一体に成形しても同じ機能を持たせることができる。
第4図は、上記第1図ないし第3図に説明したチルト機構を操作板1と表示板2に実施した要部の斜視外観図である。図面に示すように、操作板1(アンダーカバー)上の突起1Aに、回転軸受けベース9のネジ穴9Cを通してネジ13で螺着固定される。また、表示板2(アンダーカバー)上の突起2Aに、可動部固定用ブラケット11のネジ穴11Aを通してネジ14で螺着固定される。
次に、表示板の開閉動作を説明すると、例えば第5図に示すように、操作板1上に折畳まれた状態の表示板2を矢印方向へ引き起こす時、図示せざるロック機構を外すと、回転軸8の溝aに沿って表示板2はIの位置までポップアップ回動する。以後、表示板2を見易い傾斜位置まで手で回転軸8を支軸に回転すると、該回転軸の各溝b、c、d、eの任意のところで夫々クリック音を感触させながらII、III、IV、Vの位置で停止し、確実に固定させることができる。
上記実施例は、小型電子機器の操作板と表示板のチルト機構について述べたが、これに限定されるものでなく、他の部材間の結合機構部にも実施可能である。また、回転軸に刻む溝の間隔、数等は、開閉する部材の使用目的により任意に選定すればよい。」

d 第1図




e 第2図




f 第5図




(イ) 周知技術1の認定
a 甲4号証には、使用時に表示板2を見易い傾斜角度に開くことができる折畳み式の小型電子機器において、表示板2を手で回転させると、回転軸8の溝a〜eに回転軸止め用シャフト10が弾性的に圧入され、例えば回転軸8の溝d、eのところでは、夫々クリック音を感触させながら位置IV、Vで停止し表示板2を固定させることが開示されており、回転軸8の溝a〜eと回転軸止め用シャフト10は、表示板2の回動を途中で止めて固定するから、回動をストップする機能を有する固定手段(「ストッパ」)であるといえる。

b ここで、甲4号証の第5図からみて、位置IVや位置Vは、それぞれ傾斜角度が約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度に対応した位置であると認められる。

c そうすると、次の技術事項は、甲4に記載されているように周知の技術であると認められる(以下「周知技術1」という。)。なお、甲4号証の他にも、例えば、実願昭59−104166号(実開昭61−19832号)のマイクロフィルムなども周知技術1を示す文献として挙げられる。
(当審注:上記「実願昭59−104166号(実開昭61−19832号)のマイクロフィルム」は、関連民事事件控訴審判決において「乙26文献」とされたものである。)

[周知技術1]
「折り畳み式の小型電子機器において、表示板2を含む二つの部材のなす角度が、ユーザーによる表示板2の回動により約120度から約170度までの範囲内の所定の角度となったとき、前記回動をストップさせて前記二つの部材の間を前記所定の角度で固定する中間ストッパであって、前記二つの部材のなす角度が折り畳まれた状態から広げられて行く回動を前記所定の角度においてストップさせ、前記所定の角度で固定された状態からさらに広げられた状態に回動できる中間ストッパを設けること。」

イ 甲2号証
(ア) 甲2号証に記載された事項
甲2号証(特開平2−275108号公報)は、最先の出願(特願平3−245262号)の出願日(平成3年8月30日)より前に頒布された刊行物であり、以下の記載がある。下線は合議体が付した。
ただし、○の内に符号a、b、cが入ったものを、それぞれ○a、○b、○cと表記した。

a 4頁左下欄9行〜同頁右下欄9行
「[実 施 例]
以下に本発明を図面に示した一実施例に基づき説明する。
第2図中、1はラップトップ型のマイクロコンピュータやワードプロセッサ等の電子機器を示し、この電子機器1は、内部にCPUやメモリ等を有し、表面にキーボードを有する機器本体2と、液晶やプラズマ等を用いた比較的薄型のディスプレイを有する回転部品3から成り、回転部品3はヒンジ装置4を介して機器本体2に回転可能に支持され、第7図に示すように、機器本体2の上にほゞ重合する閉位置○aと、この閉位置○aから上方に約90度開いてほぼ直立した直立位置○bと、この直立位置○bから約50度後傾した後傾位置○cを採ることができる。
上記ヒンジ装置4は、第7図に示すように、直立位置○bと後傾位置○cの間の角度範囲(B=50°)内では、回転部品3のフリーストップ機構を有し、閉位置○aと後傾位置○cの全角度範囲(A+B=140°)においてダンパー機能を有する。」

b 7頁右上欄18行〜同頁左下欄11行
「そして、回転部品3を閉位置○aから直立位置○bまで引上げると、この位置でプレート21の当接部22は、コイルバネ11の一端11aに引掛かる。この直立位置○bで回転部品3から手を離すと、シャフト7にトルクが発生しないので、シャフト7は回ることがなく、回転部品3は直立位置○bに静止する。
そして、直立位置○bに静止する回転部品3を手で後傾すると、ロータ10が歯車機構により、シャフト7及びプレート21より速く回転することから、コイルバネ11が巻き解く。
そして、直立位置○bと後傾位置○cの間の角度範囲(B=50°)内で、回転部品3から手を離すと、回転部品3はその位置で静止する。」

c 8頁右上欄8〜10行
「そして、回転部品3の最大後傾位置○cは、回転部品3が機器本体2に直接、当った位置により規制するが、別にストッパを設けてもよい。」

d 8頁左下欄19行〜同頁右下欄1行
「一方、電子機器1は、ラップトップ型のマイクロコンピュータやワードプロセッサ等に限らず、回転部品を有する他の電子機器に用いてもよい。」

e 第2図〜第4図




f 第7図




(イ) 甲2技術事項の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、甲2には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「甲2技術事項」という。)
[甲2技術事項]
「ラップトップ型のマイクロコンピュータやワードプロセッサ等の回転部品を有する電子機器1であって、内部にCPUやメモリ等を有し、表面にキーボードを有する機器本体2と、液晶やプラズマ等を用いた比較的薄型のディスプレイを有する回転部品3から成る電子機器1において、
回転部品3は、ヒンジ装置4を介して機器本体2に回転可能に支持され、機器本体2の上にほぼ重合する閉位置aと、この閉位置aから上方に約90度開いてほぼ直立した直立位置bと、この直立位置bから約50度後傾した後傾位置cを採ることができ、
ヒンジ装置4は、直立位置bと後傾位置cの間の角度範囲(B=50°)内では、上記回転部品3のフリーストップ機構を有し、閉位置aと後傾位置cの全角度範囲(A+B=140°)においてダンパー機能を有し、
回転部品3を閉位置aから直立位置bまで引上げると、この位置でプレート21の当接部22は、コイルバネ11の一端11aに引掛かり、この直立位置bで回転部品3から手を離すと、シャフト7にトルクが発生しないので、シャフト7は回ることがなく、回転部品3は直立位置bに静止し、
直立位置bに静止する回転部品3を手で後傾すると、ロータ10が歯車機構により、シャフト7及びプレート21より速く回転することから、コイルバネ11が巻き解かれ、直立位置bと後傾位置cの間の角度範囲(B=50°)内で、回転部品3から手を離すと、回転部品3はその位置で静止し、
回転部品3の最大後傾位置cは、回転部品3が機器本体2に直接、当った位置により規制するが、別にストッパを設けてもよい、電子機器1。」

ウ 甲3号証
(ア) 甲3号証に記載された事項
甲3号証(実願平1−125015号(実開平3−67714号)のマイクロフィルム)は、最先の出願(特願平3−245262号)の出願日(平成3年8月30日)より前に頒布された刊行物であり、以下の記載がある。下線は合議体が付した。

a 明細書9頁11〜16行
「図中、10は電子機器を示し、この電子機器10は、本体としての機器本体20と、この機器本体20の後端部に回転自在に軸支される回転体としての表示装置30と、この表示装置30を前記機器本体20に対して回転自在に軸支するヒンジ装置40と回転部50とから構成される。機器本体20は、例えばパーソナルコンピュータやワードプロセッサ等に用いる。」

b 明細書10頁8〜19行
「そして、表示装置30は、第2図に示すように、機器本体20の上面にほゞ重なり合う大きさを有し、その厚さも機器本体20とほゞ等しく設定している。表示装置30は、第2図に示すように、ヒンジ装置40及び回転部50により機器本体20に軸支され、機器本体20の上面にほゞ重合した重合位置と、この重合位置からほゞ90度開いて、機器本体20の上方に直立した直立位置と、この直立位置からほゞ50度に後傾した最大傾斜位置をとり得えると共に、ヒンジ装置40により、前記直立位置と最大傾斜位置との間の任意の位置で停止可能となっている。」

c 第1図




d 第2図




(イ) 甲3技術事項の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、甲3には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「甲3技術事項」という。)
[甲3技術事項]
「本体としての機器本体20と、この機器本体20の後端部に回転自在に軸支される回転体としての表示装置30と、この表示装置30を前記機器本体20に対して回転自在に軸支するヒンジ装置40と回転部50とから構成される電子機器10であって、
機器本体20は、例えばパーソナルコンピュータやワードプロセッサ等に用いるものであり、
表示装置30は、機器本体20の上面にほぼ重なり合う大きさを有し、その厚さも機器本体20とほぼ等しく設定しており、
表示装置30は、ヒンジ装置40及び回転部50により機器本体20に軸支され、機器本体20の上面にほぼ重合した重合位置と、この重合位置からほぼ90度開いて、機器本体20の上方に直立した直立位置と、この直立位置からほぼ50度に後傾した最大傾斜位置をとり得るものであり、
ヒンジ装置40により、前記直立位置と最大傾斜位置との間の任意の位置で停止可能となっている、電子機器10。」

(3) 本件訂正発明3について
ア 甲1発明との対比及び判断
(ア) 対比
本件訂正発明3と甲1発明を対比する。
a 甲1発明の「主にデータ入カパネルである第1のパネル12」は、「不透明な第1のデジタイザ22を有する第1の平坦な表面20を有し、第1のデジタイザ22上へ入力されるデータに応答するための選択された液晶ディスプレイを有するもの」である。
また、甲1発明の「主にディスプレイパネルとして役立ち、かつ第2のデータ入力パネルとしても兼務する第2のパネル14」は、「液晶ディスプレイを有する第2平坦な表面24と液晶ディスプレイの上に置かれる透明な第2のデジタイザ26を含」むものである。
そうすると、甲1発明の「第1のパネル12」と「第2のパネル14」は、通常「パネル」は四角の形状を有するから、本件訂正発明3の「略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」」に相当する。
また、甲1発明の「コンピュータノートブック10」は、「ユーザーが座ったり、立ったり、又は、歩いたりする位置にあるときに、片手でコンピュータを保持し、もう片方の手でデータを入力することを許容する」ものであるから、本件訂正発明3の「ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置」に相当する。
したがって、本件訂正発明3と甲1発明は、次の点で一致する。
「略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置」(構成A)である点。

b 甲1発明においては、「第1のパネル12と第2のパネル14は蝶番手段16によって接続されており、蝶番手段16は1つのパネルが他方に対していかなる角度位置においても設定されることを許容するものであり、第1のパネル12及び第2のパネル14の両方が蝶番手段16を中心とした多数の角度において配向することが許容されており」、「蝶番手段16は、蝶番手段16のまわりの360度の弧内のいかなる位置においても第1のパネル12及び第2のパネル14が配向されるために備えられ、四つの主たる位置(図2の閉じられた位置、図4の一方が他方に対してほぼ垂直になる位置、図1の平坦な位置、図3の背中合わせで折畳まれた位置)が、機能性を許容するために予め設定され」ている。
したがって、本件訂正発明3と甲1発明は、次の点で一致する。
「前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段」(構成B)を備える点。

c 甲1発明は、「蝶番手段16は、蝶番手段16のまわりの360度の弧内のいかなる位置においても第1のパネル12及び第2のパネル14が配向されるために備えられ、四つの主たる位置(図2の閉じられた位置、図4の一方が他方に対してほぼ垂直になる位置、図1の平坦な位置、図3の背中合わせで折畳まれた位置)が、機能性を許容するために予め設定され」るものであり、「予め設定され」る「図1の平坦な位置」での「第1のパネル12及び第2のパネル14」の「配向」は、本件訂正発明3の構成Cの「前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となる」ことに相当する。
そして、甲1発明では、「図1の平坦な位置」に「設定」したとき、「第1のパネル12」の「ロッキング機構」及び「第2のパネル14」の「ロッキング機構」を用いて、その設定位置を固定することが可能であるから、このような設定位置を固定可能な「第1のパネル12」の「ロッキング機構」及び「第2のパネル14」の「ロッキング機構」は、本件訂正発明3の構成Cの「前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段」に相当する。
したがって、本件訂正発明3と甲1発明は、次の点で一致する。
「前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段」(構成C)を備える点。

d(a) 甲1発明では、「蝶番手段16は、蝶番手段16のまわりの360度の弧内のいかなる位置においても第1のパネル12及び第2のパネル14が配向されるために備えられ」ているから、蝶番手段16のまわりの360度の弧内の、例えば、約150度から約170度までの範囲内のいずれかの角度となるように配向することが可能である。
そのような配向に設定したとき、「第1のパネル12」の「ロッキング機構」及び「第2のパネル14」の「ロッキング機構」を用いて、その設定位置を固定することが可能である。
そうすると、このような設定位置に固定可能な甲1発明の「第1のパネル12」の「ロッキング機構」及び「第2のパネル14」の「ロッキング機構」は、本件訂正発明3の構成D0の「前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように」「固定するための中間左右見開き固定手段」に相当する。
(b) 甲1発明の「第1のパネル12」の「ロッキング機構」では、「締着つまみ42」が「第1の軸36を締めるために回され、かつ増加された引張りが、第1の蝶番ブラケット28に接している拡開端39と第1のパネル12との嵌合をきつくするようにされ」、「セラミックジャケット40」が「スペーサとして使用され、第1のパネル12が動かずに定格のトルク量を支持することを許容する改良された摩擦を提供するため」に「用いられ」るから、甲1発明の「第1のパネル12」の「ロッキング機構」では、摩擦力(パネルが動かないときは静止摩擦力、回動中は動摩擦力)が生じており、当該静止摩擦力により第1のパネル12が動かずに支持されている。
そして、静止摩擦力が作用している第1のパネル12にユーザーが外力を加えると回動が開始し、その摩擦力は動摩擦力として作用し、外力を加えることをやめれば、第1のパネル12の回動はその時点で停止(ストップ)することは、力学の常識を考えれば自明な事項である。
(c) 同様に、甲1発明の「第2のパネル14」の「ロッキング機構」では、「締着つまみ42によって固定されるものであり」、「締着つまみ42が時計回りに回転して、第2の蝶番ブラケット30と第3の蝶番ブラケット32との間の第2のパネル14にかかる引張りが第2のパネル14を所望されるほど堅く保持し得るように」され、「パネル12及び14を保持するのに必要とされる摩擦を増加するために半硬のゴム座金46が使用され」るから、引用発明の「第2のパネル14」の「ロッキング機構」でも、摩擦力(パネルが動かないときは静止摩擦力、回動中は動摩擦力)が生じており、当該静止摩擦力により第2のパネル14が動かずに支持されている。
そして、静止摩擦力が作用している第2のパネル14にユーザーが外力を加えると回動が開始し、その摩擦力は動摩擦力として作用し、外力を加えることをやめれば、第2のパネル14の回動はその時点で停止(ストップ)することも、力学の常識を考えれば自明な事項である。
(d) 前記(b)及び(c)の検討内容を踏まえると、甲1発明の「第1のパネル12」の「ロッキング機構」及び「第2のパネル14」の「ロッキング機構」は、本件訂正発明3の構成D1の「前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定する」「ストッパ」(構成D1)に相当する。
(e) したがって、本件訂正発明3と甲1発明は、次の点で一致する。
「前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように、ストッパにより固定するための中間左右見開き固定手段とを備えており、
前記ストッパは、前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものである、」(構成D)点。

e 前記aにおける検討内容を踏まえると、「片手支持可能な表示装置」の発明である本件訂正発明3と、「コンピュータノートブック10」の発明である甲1発明は、「片手支持可能な表示装置」(構成E)の発明である点で一致する。

(イ) 対比のまとめ
前記(ア)の対比結果をまとめると、本件訂正発明3と甲1発明は、構成A〜Eの全ての点において一致するから、本件訂正発明3は、甲1号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、新規性がない。

(ウ) 仮の相違点とその判断
前記(ア)及び(イ)において検討したとおり、本件訂正発明3は、甲1号証に記載された発明であり新規性がないと認められる。
しかしながら、念のため、本件訂正発明3の構成Dが、甲1発明との対比において相違点(以下「仮の相違点1」という。)であるとして検討しても、以下の「a 仮の相違点1の判断(その1)」において示すとおり、甲1発明に周知技術1を採用することにより、前記相違点1に係る本件訂正発明3の構成Dとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、同様に、以下の「b 仮の相違点1の判断(その2)」において示すとおり、甲1発明に甲2技術事項を採用することにより、前記相違点1に係る本件訂正発明3の構成Dとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
さらに、以下の「c 仮の相違点1の判断(その3)」において示すとおり、甲1発明に甲3技術事項を採用することにより、前記相違点1に係る本件訂正発明3の構成Dとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
[仮の相違点1]
本件訂正発明3は、
「前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように、ストッパにより固定するための中間左右見開き固定手段」(構成D0)を備えており、
「前記ストッパは、前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものである」(構成D1)のに対して、
甲1発明は、そのような構成を備えていない点。

a 仮の相違点1についての判断(その1)
(a) 折り畳み式の小型電子機器において、表示板2を含む二つの部材のなす角度が、ユーザーによる表示板2の回動により約120度から約170度までの範囲内の所定の角度となったとき、前記回動をストップさせて前記二つの部材の間を前記所定の角度で固定する中間ストッパであって、前記二つの部材のなす角度が折り畳まれた状態から広げられて行く回動を前記所定の角度においてストップさせ、前記所定の角度で固定された状態からさらに広げられた状態に回動できる中間ストッパを設けることは、周知の技術である(前記(2)ア(イ)の「周知技術1」を参照)。
(b) そして、甲1発明は「ユーザーが座ったり、立ったり、又は、歩いたりする位置にあるときに、片手でコンピュータを保持し、もう片方の手でデータを入力することを許容するコンピュータノートブック10」であり、小型の電子機器であるといえる点で甲4に開示された技術と共通するから、甲1発明において、「第1のパネル12及び第2のパネル14の両方が蝶番手段16を中心とした多数の角度において配向する」に際し、前記周知技術1を採用することにより、前記仮の相違点1に係る本件訂正発明3の構成Dとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(c) そして、本件訂正発明3の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難かつ格別顕著な効果は、認められない。
(d) したがって、本件訂正発明3は、甲1発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

b 仮の相違点1についての判断(その2)
(a) 甲2技術事項には、回転部品3(ディスプレイ)が、ヒンジ装置4を介して電子機器1の機器本体2に回転可能に支持されており、閉位置aから上方に約90度開いてほぼ直立した直立位置bと、後傾位置cの間の角度範囲である90度から140度までの範囲内では、回転部品3のフリーストップ機構が働き、直立位置bに静止する回転部品3を手で後傾し、回転部品3から手を離すと、回転部品3はその位置で静止することが開示されている(前記(2)イ(イ)の「甲2技術事項」を参照)。
(b) ここで、前記甲2技術事項は、回転部品3と機器本体2の間の角度が90度から140度までの範囲内のいずれかの角度にあるとき、回転部品3を手で後傾させて角度が広げられて行く途中で手を離すと回転部品3はその位置で静止(ストップ)して一時的に固定されることを意味する。
(c) そして、本件特許の明細書の段落【0010】には、
「(用語説明)本明細書において、「固定」には、(a)摩擦力やチルト機構などにより「半固定」する場合(ここで、「半固定」とは、「固定」の一形態であって、ユーザーがある程度強めの所定量以上の力を加えることにより状態を変更させる(すなわち、固定状態を解除して、前記各表示板(各表示パネル)間の角度を変更させる)ことができるような状態、を言う)や、(b)ストッパ(例えば、2つの表示板を接続する蝶番の回動を所定の角度でストップさせるもの)などを使用して「一時的に固定」する場合、なども含まれる。」
と記載されており、2つの部材の回動を所定の角度でストップさせるものを一時的な固定手段としての「ストッパ」として定義しているから、甲2技術事項の「フリーストップ機構」も、一時的な固定手段としての「ストッパ」であるといえる。
(d) よって、甲1発明において、「第1のパネル12及び第2のパネル14の両方が蝶番手段16を中心とした多数の角度において配向する」に際し、前記甲2技術事項の一時的な固定手段としてのストッパを採用することにより、前記仮の相違点1に係る本件訂正発明3の構成Dとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。その際、配向角度を約150度から約170度までの範囲内の所定の角度とすることは、当業者が適宜なし得た設計変更にすぎない。
(e) そして、本件訂正発明3の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難かつ格別顕著な効果は、認められない。
(f) したがって、本件訂正発明3は、甲1発明及び甲2技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

c 仮の相違点1についての判断(その3)
(a) 甲3技術事項には、ヒンジ装置40及び回転部50により機器本体20に軸支された表示装置30が、機器本体20の上面にほぼ重合した重合位置からほぼ90度開いて機器本体20の上方に直立した直立位置と、この直立位置からほぼ50度に後傾した最大傾斜位置をとり得るものであり、ヒンジ装置40により、前記直立位置と最大傾斜位置との間の任意の位置で停止可能であることが開示されている(前記(2)ウ(イ)の「甲3技術事項」を参照)。
(b) ここで、上記甲3技術事項は、表示装置30と機器本体20の間の角度が90度から140度までの範囲内のいずれかの角度にあるとき、表示装置30の傾斜角度が広げられて行く途中の任意の位置で停止(ストップ)して一時的に固定されることを意味する。
(c) そして、本件特許の明細書の段落【0010】の記載からみて、2つの部材の回動を所定の角度でストップさせるものを一時的な固定手段としての「ストッパ」として定義しているから、甲3技術事項も、一時的な固定手段としての「ストッパ」を備えたものであるといえる。
(d) よって、甲1発明において、「第1のパネル12及び第2のパネル14の両方が蝶番手段16を中心とした多数の角度において配向する」に際し、前記甲3技術事項の一時的な固定手段としてのストッパを採用することにより、前記仮の相違点1に係る本件訂正発明3の構成Dとすることは当業者が容易に想到し得たことである。その際、配向角度を約150度から約170度までの範囲内の所定の角度とすることは、当業者が適宜なし得た設計変更にすぎない。
(e) そして、本件訂正発明3の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難かつ格別顕著な効果は、認められない。
(f) したがって、本件訂正発明3は、甲1発明及び甲3技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 本件訂正発明3についての小括
前記アの検討のとおり、本件訂正発明3は、甲1号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、新規性がない。
また、本件訂正発明3は、甲1発明、及び、周知技術1、甲2技術事項又は甲3技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

(4) 本件訂正発明4について
ア 甲1発明との対比及び判断
(ア) 対比
前記(3)ア(ア)において検討した本件訂正発明3と甲1発明の対比を踏まえながら、本件訂正発明4と甲1発明を対比すると、以下のとおりである。
a 甲1発明の「第1のパネル12」と「第2のパネル14」は、本件訂正発明4の「画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の表示板」」に相当する。
また、甲1発明の「背中合わせで折畳まれた位置では、片手で装置を運び、もう片方の手でデータを入力することが容易になる」「コンピュータノートブック10」は、本件訂正発明4の「ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置」に相当する。
したがって、本件訂正発明4と甲1発明は、次の点で一致する。
「画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置」である点。

b 前記(3)ア(ア)bにおける検討結果を踏まえると、本件訂正発明4と甲1発明は、次の点で一致する。
「前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段」を備える点。

c(a) 前記(3)ア(ア)d(a)における検討結果を踏まえると、甲1発明の「第1のパネル12」の「ロッキング機構」及び「第2のパネル14」の「ロッキング機構」は、本件訂正発明4の「前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、「ユーザから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように」、「固定するための左右見開き固定手段」に相当する。
(b) 前記(3)ア(ア)d(b)〜(d)における検討結果を踏まえると、甲1発明の「第1のパネル12」の「ロッキング機構」及び「第2のパネル14」の「ロッキング機構」は、本件訂正発明4の「(a)前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板の間の見開き角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定する」「ストッパ」に相当する。
(c) 前記(3)ア(ア)d(b)及び(c)において説示したとおり、甲1発明においては、静止摩擦力が作用している第1のパネル12及び第2のパネル14にユーザーが外力を加えると回動が開始するのであるから、第1のパネル12及び第2のパネル14が所定の角度で固定された状態から互いに約180度で見開きにされる状態へと変化するようにさらに回動できることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「第1のパネル12」の「ロッキング機構」及び「第2のパネル14」の「ロッキング機構」は、本件訂正発明4の「(b)ユーザーが、前記少なくとも一方の表示板を、前記2つの表示板が前記所定の角度で固定された状態から互いに約180度で見開きにされる状態へと変化するようにさらに回動させるとき、前記少なくとも一方の表示板が、前記2つの表示板が互いに約180度で見開きにされる状態となるように、さらに回動できるようにするものである」「ストッパ」に相当する。
(d) したがって、本件訂正発明4と甲1発明は、次の点で一致する。
「前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、「ユーザから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように、ストッパにより固定するための左右見開き固定手段とを備えており、
前記ストッパは、(a)前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板の間の見開き角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものであり、且つ(b)ユーザーが、前記少なくとも一方の表示板を、前記2つの表示板が前記所定の角度で固定された状態から互いに約180度で見開きにされる状態へと変化するようにさらに回動させるとき、前記少なくとも一方の表示板が、前記2つの表示板が互いに約180度で見開きにされる状態となるように、さらに回動できるようにするものである」点。

d 前記aにおける検討内容を踏まえると、「片手支持可能な表示装置」の発明である本件訂正発明4と、「コンピュータノートブック10」の発明である甲1発明は、「片手支持可能な表示装置」の発明である点で一致する。

(イ) 対比のまとめと仮の相違点の判断
前記(ア)の対比結果をまとめると、本件訂正発明4と甲1発明は、本件訂正発明4の構成の全ての点において一致するから、本件訂正発明4は、甲1号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、新規性がない。
仮に、本件訂正発明4の「左右見開き固定手段」(ストッパ)に係る構成が、甲1発明との対比において相違点であるとしても、かかる相違点の判断については、前記「仮の相違点1についての判断(その1)」、「同(その2)」及び「同(その3)」において示した理由が同様に当てはまるから、甲1発明に、前記周知技術1、甲2技術事項又は甲3技術事項を採用することにより、前記相違点に係る本件訂正発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、本件訂正発明4の「ストッパ」が「(b)ユーザーが、前記少なくとも一方の表示板を、前記2つの表示板が前記所定の角度で固定された状態から互いに約180度で見開きにされる状態へと変化するようにさらに回動させるとき、前記少なくとも一方の表示板が、前記2つの表示板が互いに約180度で見開きにされる状態となるように、さらに回動できるようにするものである」点については、周知技術1が、所定の角度で固定された状態からさらに広げられた状態に回動できるものであり、甲2技術事項が、角度が広げられて行く途中で手を離すと回転部品3はその位置で静止(ストップ)して一時的に固定されるものであり、甲3技術事項が、傾斜角度が広げられて行く途中の任意の位置で停止(ストップ)して一時的に固定するものであることを踏まえると、いずれの理由においても、当業者にとって自明な設計事項にすぎない。
そして、本件訂正発明4の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難かつ格別顕著な効果は、認められない。
したがって、本件訂正発明4は、甲1発明、及び、周知技術1、甲2技術事項又は甲3技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 本件訂正発明4についての小括
前記アの検討のとおり、本件訂正発明4は、甲1号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、新規性がない。
また、本件訂正発明4は、甲1発明、及び、周知技術1、甲2技術事項又は甲3技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

(5) 被請求人の主張について
以下のア〜エに示す被請求人の主張は、いずれも本件訂正発明が甲1発明に対して相違点を有することを前提とするものであるところ、本件訂正発明は、前記(3)ア(イ)及び(4)ア(イ)において説示したとおり、新規性がないから、被請求人の前記主張は前提条件を満たさないものであり、採用することはできない。
仮に、本件訂正発明が甲1発明に対して相違点を有するとしても、以下に詳述するとおり、被請求人の主張は誤りであるから、採用できない。

ア 相違点の看過
(ア) 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件訂正発明3と甲1発明の間には、前記「仮の相違点1」(構成D)が存在する旨主張している。
(令和5年2月6日付け答弁書の「第3」の「3」37〜46頁)
なお、令和5年2月6日付け答弁書の主張は、令和5年5月10日付け手続補正前の特許請求の範囲の記載に基づいた主張であるところ、令和5年5月10日付け手続補正により、訂正特許請求の範囲の請求項1〜2、5〜10は削除され、また、請求項4においては、「回動中心として相対的に回動する」という構成も削除されたため、被請求人の主張する相違点は、前記「仮の相違点1」のみとなる。本件訂正発明4についても同様である。

(イ) 被請求人の主張に対する当審の判断
前記(3)ア(ウ)aからcまでの「a 仮の相違点1の判断(その1)」から「c 仮の相違点1の判断(その3)」までにおいて説示したとおり、前記仮の相違点1に係る本件訂正発明3の構成Dとすることは、甲1発明に周知技術1を採用することにより、甲1発明に甲2技術事項を採用することにより、又は、甲1発明に甲3技術事項を採用することにより、当業者が容易に想到し得たことである。また、本件訂正発明4についても同様である。
したがって、前記(ア)の被請求人の主張は採用することができない。

イ 周知技術1の認定の誤り
(ア) 被請求人の主張の概要
被請求人は、次の主張をしている。
甲4及び実願昭59−104166号(実開昭61−19832号)のマイクロフィルム(以下、この文献を「引用周知文献」という。)から周知技術1を認定したことは、以下のとおり、誤りである。
甲4には、ポップアップ機構を備えたチルト機構が、キーボードである操作板1、操作板に対し回動する表示板2、複数条のストップ用溝(a〜e)を有する回転軸8、回転軸止め用シャフト10を回転軸8の溝に圧接させる弾性部材(圧接部9A)、弾性部材9Aによる弾性的な圧接力をもって回転軸8の溝に嵌合する回転軸止め用シャフト10、回転軸8を表示板2(可動部)側に取り付ける可動部固定用ブラケット11、及び弾性部材9A、回転軸止め用シャフト10等を操作板1側に固定する回転軸受けベース9という複数の部品が必須の構成として互いに有機的に組み合わせられて構成されていることが開示されている。
また、引用周知文献には、ポップアップチルト機構を備えたヒンジ機構が、キーボードである本体ケース1、本体ケース1に対し回動する表示体ケース2、凸凹部10を有する回転軸6、クリックツメ12を回転軸6の凸凹10に押圧させるクリックバネ11、クリックバネ11により回転軸6の凸凹10に押圧されるクリックツメ12、及び回転軸6を表示板ケース2、可動部側に取り付けるレバー14という複数の部品が必須の構成として互いに有機的に組み合わせられていることが開示されている。
周知技術1は、甲4の表示板2、溝a〜eを備えた回転軸8、回転軸止め用シャフト10、又は、引用周知文献の表示体ケース2、凸凹10を備えた回転軸、クリックツメ12だけを組み合わせて認定したものであって、必須の構成の一部を捨象し、上位概念化した構成又は技術思想を抽出して認定したものである。
(令和5年2月6日付け答弁書の「第3」の「4」〜「6」46〜65頁)

(イ) 被請求人の主張に対する当審の判断
前記仮の相違点1に係る本件訂正発明3の構成Dについては、前記1(2)ア(エ)において検討したとおり、本件特許の明細書及び図面において、蝶番9及び10の構造に従来周知の方法で工夫して設けたストッパであるとする他に、その具体的な構造(ストッパを蝶番9及び10のどの箇所にどのように設けるのか、「工夫」とは具体的にどのようなことをいうのか等)を明らかにした記載はなく、「中間左右見開き固定手段」の具体的な構成は何ら特定されていない。
周知技術は、各文献に記載された技術的事項から共通の技術的思想を抽出して認定するものであるところ、具体的な構成を開示するものではない相違点に係る構成に対応する周知技術を認定するに当たって、甲4又は引用周知文献における表示板又は表示体ケースの動作をストップする具体的な構成を含める必要はない(関連民事事件控訴審判決の28頁も参照)。
したがって、被請求人の前記主張は採用できない。

ウ 動機付けがないこと
(ア) 被請求人の主張の概要
被請求人は、次のa〜cに示す主張をしている。
a 甲1発明が属する技術分野は、「第1の操作板とこれに対し折り畳み可能な第2の表示板とを必須の構成要素として成る、操作板(キーボード・本体ケース)のない、折り畳み式の小型電子機器」である。
これに対して、甲4及び引用周知文献に共通に記載された発明が属する技術分野は、操作板(キーボード・本体ケース)とこれに対し折り畳み可能な表示板とを必須の構成とする小型電子機器であり、特に、操作板(キーボード・本体ケース)を必須とするものであるから、技術分野が共通しているとはいえない。折り畳み式の小型電子機器という上位概念化した広い技術分野が一致するのみで、甲1発明の「ロッキング機構」を甲4及び引用周知文献の「ポップアップ型チルト機構」に置き換えることが容易に想到する旨の判断は誤りである。

b 甲1発明の課題又は目的は、片手でコンピュータを保持し、もう片方の手でデータを入力することを許容するものであり、こうした課題を解決するために、(a)2つのパネル12、14が互いに360度の弧内のいかなる位置においても回動・配向できるようにすること、(b)2つの各軸36、38に装着された締着つまみ42を回すことにより、セラミックジャケット40又は硬質ゴム座金46側に摩擦力を生じさせて、2つのパネル12、14を互いに背中合わせを含む複数の位置で保持、固定できるようにする作用又は機能を有する。
これに対し、甲4及び引用周知文献の課題又は目的は、摩擦力によりフリーストップ型チルト機構において生じていた停止位置がずれてしまうなどの不都合を解消し、表示板を任意の位置で停止させることであり、こうした課題に対応するために、操作板とそれに対して回動する表示板が所定の角度に変化させられたとき、回転軸止め用シャフト10(クリックツメ12)が回転軸8の溝(回転軸6の凸凹10)に対して弾性的に圧入されて固定する作用又は機能を有する。
このように、甲1発明と甲4又は引用周知文献に記載された技術的事項は、課題又は目的、作用又は機能において異なっているから、甲1発明に甲4又は引用周知文献に記載された事項を採用する動機付けはない。

c 甲1発明は、(a)第1のロッキング機構として、第1の軸36のシャフト37、同シャフト37の一端部に装着される締着つまみ42、同シャフトの両端部に取り付けられるセラミックジャケット40、セラミックジャケット40が接触する第1及び第4の蝶番ブラケット28、34という複数の部品、(b)第2のロッキング機構として、第2の軸38のシャフト、同シャフトの一端部に装着される締着つまみ42、同シャフトが挿通する第2及び第3の蝶番ブラケット30、32、同各蝶番ブラケット30、32と第2のパネル14との間に摩擦力を生じさせるゴム座金46という複数の部品が、それぞれ必須の構成として有機的に組み合わせられている。
これに対し、甲4及び引用周知文献に記載のポップアップチルト機構は、外周側に複数の溝(又は凸凹)が備えられた比較的大径の回転軸、回転軸を表示板(又は表示体ケース)側に固定する可動部固定用ブラケット(又はレバー)、溝(又は凸凹)に係合(嵌合)する回転軸止め用シャフト(又はクリックツメ)、これらを軸又は凸凹側に押圧する弾性部材(又はクリックバネ)、並びに回転軸止め用シャフト(又はクリックツメ)、弾性部材(又はクリックバネ)を操作板(又は本体ケース)側に固定するベース(回転軸受けベース)という複数の部品が必須の構成として有機的に組み合わせられている。
このように、甲1発明のロッキング機構と、甲4又は引用周知文献のポップアップチルト機構は、それぞれがひとかたまりの技術であり、互いに大きく異なる構成であるから、両者を共存させることは困難であり、甲1発明に対して甲4又は引用周知文献に記載の機構を採用するときは、甲1発明のロッキング機構を除外する必要があるところ、甲1発明は、独自のロッキング機構を採用することで前記bの発明の課題を解決しており、そうした独自の構成を他の構成(ポップアップチルト機構)にあえて置き換える動機付けはない。
(令和5年2月6日付け答弁書の「第3」の「7」〜「10」65〜83頁)

(イ) 被請求人の主張に対する当審の判断
a 甲1と周知技術1の技術分野の共通性について
折り畳み式の小型電子機器がキーボードや本体ケースの有無によって異なる技術分野に属するとは認め難いから、技術分野が共通していないとの被請求人の主張については理由がない(関連民事事件控訴審判決の29頁参照)。

b 甲1と周知技術1の課題・目的の共通性について
被請求人の主張は、要するに、甲1、甲4、引用周知文献に開示された具体的構造に関する個々の点を取り上げて、甲1発明において、周知技術1を採用する動機付けがないと主張しているにすぎないから、被請求人の主張については理由がない(関連民事事件控訴審判決の29頁参照)。
前記1(4)において説示したとおり、本件訂正発明3は、周知の固定手段を用いれば片手だけで支持可能になるという発想自体を主題とするのであるから、その進歩性の判断においては、甲1発明(二つのパネルを備え、左右見開きにして任意の角度で固定でき、片手保持・片手入力可能なコンピュータノートブック)に、二つのパネルを半固定する手段あるいは一時的に固定する手段を設けるという発想自体に想到することが当業者にとって容易か、という観点から検討すべきであって、これらの文献に開示された具体的構造に殊更に着目して、それを根拠に動機付けの存在を否定するのは適当ではなく、相違点1に係る本件訂正発明3の構成Dとすることは、クリック感を備えるようにするという動機から想到容易であるというべきである。

c 甲1のロッキング機構について
相違点1に係る判断においては、甲1発明の第1の軸36のロッキング機構及び第2のパネル14のロッキング機構とは別に、中間ストッパである周知技術1を甲1発明に適用するとしているのであるから、甲1発明の第1、2の軸36、38の構成を変更することなく適用可能であって、甲1発明の構成の全体を大きく変更する必要はないから、被請求人の前記主張は失当である。
被請求人の主張は、結局のところ、甲1発明や周知技術1の具体的構造について、過度に詳細に論じることでその相違を強調して、想到容易でないという結論へ結びつけようとするものであるが、このような主張は、自らの発明の構成について、その具体的構造がどのようなものであるか全く開示していないにも関わらず、特許法36条実施可能要件・サポート要件に抵触することはなく容易に実施できるものであるとする一方で、他人が詳細に開示した発明からは容易に想到できないとするものであって、採用することはできない。

エ 阻害要因があること
(ア) 被請求人の主張の概要
被請求人は、次のa及びbに示す主張をしている。
a 甲4及び引用周知文献に記載のあるポップアップチルト機構の必須の構成要素である「外周側に複数の溝(又は凸凹)が備えられた比較的大径の回転軸、回転軸を表示板(又は表示体ケース)側に固定する可動部固定用ブラケット(又はレバー)、溝(又は凸凹)に係合(嵌合)する回転軸止め用シャフト(又はクリックツメ)、これらを溝又は凸凹側に押圧する弾性部材(又はクリックバネ)、並びに回転軸止め用シャフト(又はクリックツメ)又は弾性部材(又はクリックバネ)を操作板(又は本体ケース)側に固定する部材(回転軸受けベース)という複数の部品を配置するためのスペースを、表示用の2つのパネル12、14を蝶番で接続して成り、ユーザーが片手だけで保持するキーボードなしの携帯用コンピュータである甲1発明における蝶番16内に確保することが極めて困難であることは、甲1文献の図1〜3から明らかであるから、甲1発明の第1のロッキング機構及び第2のロッキング機構からポップアップ型チルト機構への置換には阻害要因がある。

b 甲1発明の目的は、ユーザーが座ったり、立ったり、又は歩いたりする位置にあるときに、片手でコンピュータを保持し、もう片方の手でデータを入力することを許容するシステムを提供することであり、こうした目的を達成するため、甲1発明は、第1のパネル12及び第2のパネル14を互いに360度弧内で回動でき、かつ、互いに背中合わせに並置することができるように、第1のパネル12及び第2のパネル14が第1の軸36及び第2の軸38によりそれぞれ回動する2軸構造の蝶番を採用している。そして、甲1発明の蝶番は、2軸でありながら、比較的小径の第1の軸36及び第2の軸38の各端部にそれぞれ締着つまみ42を装着して回すことによりセラミックジャケット40側又はゴム座金46側に摩擦力を生じさせ、この摩擦力で第1のパネル12及び第2のパネル14を互いに背中合わせを含む複数の位置に保持、固定できるようにした第1及び第2のロッキング機構を備えることで、蝶番を含む装置全体を片手で保持できるような薄型にできるようにしている。
ところで、甲4及び引用周知文献に記載された技術的事項は、外周側に複数の溝a〜e(又は凸凹10)が備えられた比較的大径の回転軸8(引用周知文献では回転軸6)、回転軸8(又は回転軸6)を表示板2(又は表示体ケース2)側に固定する可動部固定用ブラケット11(又はレバー6)、溝a〜e(又は凸凹10)に係合(嵌合)する回転軸止め用シャフト10(又はクリックツメ12)、回転軸止め用シャフト10(又はクリックツメ12)を溝a〜e又は凸凹10側に押圧する弾性部材9A(又はクリックバネ11)、並びに回転軸止め用シャフト10(又はクリックツメ12)及び弾性部材9A又はクリックバネ119を操作板(又は本体ケース1)側に固定する部材(引用周知文献では回転軸受けベース9)を必須の構成としており、それぞれ比較的大型の部品である。特に、外周側に複数の溝a〜e(又は凸凹)が備えられた回転軸8(引用周知文献では回転軸6)は、必然的に大径の軸とせざるを得ない。そして、甲1発明の蝶番の2つの軸36、38にそれぞれ甲4及び引用周知文献に記載された技術的事項を適用すると、必然的に蝶番は厚形化(大型化)することになり(下図参照)、装置全体を片手で保持できることが困難となってしまうため、甲1発明の目的に反することになる。
したがって、甲1発明に甲4文献又は引用周知文献に記載された技術的事項を適用することには阻害要因がある。

(令和5年2月6日付け答弁書の「第3」の「11」〜「13」83〜132頁)

(イ) 被請求人の主張に対する当審の判断
a 被請求人の主張aについて
仮の相違点1についての判断においては、甲1発明の第1の軸36のロッキング機構及び第2の軸38のロッキング機構に周知技術1を適用するものとして判断しておらず(前記(3)ア(ウ)参照)、これらのロッキング機構を周知技術1で置き換える必要はない。これらのロッキング機構とは別に、中間ストッパである周知技術1を甲1発明に適用すると判断しているのであるから、被請求人の主張aは前提において誤りである。

b 被請求人の主張bについて
前記1(2)ア(エ)において検討したとおり、本件訂正発明3の「中間左右見開き固定手段」(構成D)については、その具体的な構成は特定されておらず、周知技術1もこうした構成に対応して具体的な構成を問題とするものではないところ(前記イ(イ)を参照)、被請求人の上記主張は、甲4文献及び引用周知文献の「チルト機構」の具体的な構成を前提として甲1発明にこのような構成を適用することに阻害要因があるというものであるから、前提を異にするものというべきであって、採用できない(関連民事事件控訴審判決の30頁参照)。
その点を措くとしても、甲1発明の蝶番の2軸のそれぞれにチルト機構の部品を配置することが技術的に不可能なことではないことは、被請求人が作成した上図が正にそれを証明しており、蝶番がどの程度厚型化するかは設計次第であるといえる(関連民事事件控訴審判決の30頁参照)。
また、2軸構造の蝶番のそれぞれにチルト機構の中間ストッパを採用したとしても必然的に片手で保持することができなくなるともいえないし、「主にデータ入カパネルである第1のパネル12と、主にディスプレイパネルとして役立ち、かつ第2のデータ入力パネルとしても兼務する第2のパネル14と、第1のパネル12及び第2のパネル14上の書くためのスタイラス18を含むコンピュータノートブック10」という甲1発明の基本骨格が害されるものでもないから、甲1発明の目的に反するという被請求人の主張は採用できない。

(6) 無効理由1についての小括
以上検討のとおりであるから、本件訂正発明3及び本件訂正発明4は、いずれも甲1号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、本件訂正発明3及び本件訂正発明4についての無効理由1−1は理由がある。したがって、本件訂正発明3及び本件訂正発明4に係る特許は、同項の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
また、本件訂正発明3及び本件訂正発明4は、いずれも、甲1号証に記載された発明及び周知技術1、甲2技術事項又は甲3技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明3及び本件訂正発明4についての無効理由1−2から無効理由1−5は理由がある。
したがって、本件訂正発明3及び本件訂正発明4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。

3 無効理由2について
(1) 出願日の遡及について
ア 要旨変更の判断基準について
(ア) 明細書等の補正と明細書の要旨変更
旧特許法40条は、「願書に添附した明細書又は図面について出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前にした補正がこれらの要旨を変更するものと特許権の設定の登録があつた後に認められたときは、その特許出願は、その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす。」と規定しているところ、同条の規定する明細書の要旨の定義については、旧特許法は規定していない。
ところで、特許法2条1項の規定によれば、発明は技術的思想の創作であり、また旧特許法36条5項によれば、発明の構成に欠くことのできない事項のみを特許請求の範囲に記載しなければならないから、特許請求の範囲には、技術的思想を具現するために必要な技術的事項が記載されているものと考えられる。
他方、旧特許法41条には、「出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前に、願書に最初に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更する補正は、明細書の要旨を変更しないものとみなす。」と規定されており、特許請求の範囲を増加し減少し又は変更する補正をしても、補正をした時期が出願公告の決定の謄本の送達前で、しかもその補正の内容が願書に最初に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内での補正であれば、明細書の要旨を変更しないものとみなすとされているので(明細書の要旨変更の例外規定)、この規定の趣旨によれば、特許請求の範囲を増加したり、減少したり、変更したりすることは、本来明細書の要旨を変更するものであるということができる。
したがって、旧特許法41条の規定を同法2条1項及び36条5項の規定と併せて考慮すると、特許請求の範囲に記載された技術的事項をもって明細書の要旨とするのが妥当と考えられる。

(イ) 要旨変更の判断基準
前記(ア)を踏まえると、明細書又は図面を補正した結果、特許請求の範囲に記載した技術的事項が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でないものとなったとき、その補正は明細書の要旨を変更したものとするのが妥当である。
なお、「明細書又は図面に記載した事項の範囲内」とは、一字一句同じことが記載されていることをいうのではなく、出願時において、その発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が補正前の明細書及び図面の記載からみて、その事項自体を直接表現する記載はないが、補正前の明細書及び図面に記載されている技術内容を、出願の時点において当業者が客観的に判断すれば、その事項自体が記載してあったことに相当すると認められる事項も前記「明細書又は図面に記載した事項の範囲内」とみるべきである。
また、特許請求の範囲に記載した技術的事項が補正前の明細書又は図面に記載した事項の範囲内でないものとなるか否かを判断するに当っては、実質的に評価をすべきであるから、単に特許請求の範囲の記載自体が変更されるか否かについて考慮するだけでなく、特許請求の範囲の記載はそのままであっても、明細書又は図面を補正した結果、特許請求の範囲に記載した技術的事項が実質的に変更され、明細書に記載した事項の範囲内のものでなくなったか否かについても検討すべきである。

イ 要旨変更の審査基準についての当事者の主張と審尋について
(ア) 請求人の主張について
請求人は、三つの地裁判決(平成20年(ワ)4056号、平成20年(ワ)38602号、平成20年(ワ)8086号)を引用しつつ、旧特許法41条の「願書に最初に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」とは、当業者によって、明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるときは、当該補正は「明細書又は図面に記載した事項の範囲内」においてするものということはできず、明細書又は図面の要旨を変更するものということになると主張している(審判請求書94〜95頁の(1)ア参照)。
ただし、平成20年(ワ)4056号、平成20年(ワ)38602号、平成20年(ワ)8086号の裁判例における説示部分は、完全に一致するものではなく、差異がある。

(イ) 被請求人の主張について
被請求人は、旧特許法41条の「願書に最初に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」の基準は、特に周知技術などを特許請求の範囲中に追加する補正に関して、平成5年法改正後の特許法17条の2の「事項の範囲内」(いわゆる新規事項追加禁止の基準)よりも緩やかに(すなわち、補正できる範囲を広く)解しており、そのような解釈による特許審査基準の下で特許庁における特許審査実務が長年行われていたと主張している(令和3年5月24日付け答弁書96頁3(1)参照)。

(ウ) 審尋について
当審において、令和4年3月9日付けで「一般審査基準 明細書の要旨変更 特許庁編」を両当事者に送付するとともに、次の点について、後記の留意すべき点を伝えつつ、意見を求めたところ、請求人は異論がないとの意見であった(令和4年3月23日提出の回答書参照)。他方、被請求人からは、「一般審査基準 明細書の要旨変更 特許庁編」に基づいて判断されるべきことは当然である旨の意見が示された(令和4年3月24日提出の回答書2頁の「第1」参照)。

<審尋内容>
無効理由2−1(出願日繰り下がりに伴う新規性欠如)及び無効理由2−2(出願日繰り下がりに伴う補正要件違反)に関しまして、最先の出願の平成10年6月16日付けでした明細書の補正(甲10号証参照)が明細書又は図面の要旨を変更するものであるか否かが争点の一つとなっております。
合議体としては、上記争点の判断については、上記最先の出願が平成3年8月30日を出願日とすることから、平成5年法改正前特許法(以下「旧特許法」という。)の下での運用基準であった「一般審査基準 明細書の要旨変更 特許庁編」(特許庁策定)(以下「要旨変更審査基準」という。)に基づいて行うべきものと考えております。
つきましては、請求人及び被請求人におかれましては、後記の留意事項に十分ご留意しつつ、この審尋書と同日付けで別送した要旨変更審査基準の写しの内容をご確認いただき、次の点等について意見がございましたら、上記指定された期間内に回答して頂きますようお願いいたします。
(1) これまでの主張内容、相手の主張に対する反論内容等について、要旨変更審査基準に即した主張にするために、補正すべき点があるか。
ある場合は、当該補正の内容。
(2) 要旨変更審査基準に基づいて判断することに対する意見

<要旨変更審査基準を参照するにあたり特に留意すべき点>
a 明細書の要旨とは特許請求の範囲に記載された技術的事項であること(要旨変更審査基準1−2頁「1 明細書の要旨」及び3頁「2.1 要旨変更の取り扱い基準」参照)。
b 旧特許法41条の「記載した事項の範囲内」とは、一字一句同じことが記載されていることをいうのではなく、出願時において、当業者が補正前の明細書の記載からみて自明な事項も上記「記載した事項の範囲内」とみること。なお、「補正前の明細書の記載からみて自明な事項」とは、その事項自体を直接表現する記載はないが、補正前の明細書に記載されている技術内容を、出願の時点において当業者が客観的に判断すれば、その事項自体が記載してあったことに相当すると認められる事項であること(要旨変更審査基準3頁の「2.2 要旨変更を判断する場合の注意事項」の(2)第1段落及び4頁の(注)参照)。
c たとえ特許請求の範囲の記載はそのままであっても、明細書又は図面を補正した結果特許請求の範囲に記載した技術的事項が実質的に変更されるかについても留意して判断すること。(要旨変更審査基準3頁の「2.2 要旨変更を判断する場合の注意事項」の(2)の第2段落参照)
d 発明の目的、効果又は用途を付加、変更する補正についても、その補正により特許請求の範囲に記載した技術的事項が実質的に変わるか否かにより判断すること(要旨変更審査基準4頁の「2.2 要旨変更を判断する場合の注意事項」の(3)参照)。

ウ 最先の出願の出願日について
最先の出願の出願日を検討するため、当該出願についての平成10年6月16日付けの手続補正書(甲10)による補正(以下「甲10補正」という。)が明細書の要旨変更に該当するか否かについて検討する。
(ア) 甲10補正の内容
甲10補正は、明細書全文を補正するものであり、甲10補正後の特許請求の範囲の記載は次のaに示すとおりであり、甲10補正後の発明の詳細な説明における請求項1及び2に係る発明の効果についての記載は、次のbに示すとおりである。
なお、下線は合議体が付した。

a 甲10補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 次の(a)〜(g)の特徴を有する表示装置。
(a)画面をそれぞれ出力する複数のディスプレーが、使用時にはそれぞれが表示する各画面がユーザーの方向に向かうように、連続的に接続されている、
(b)前記の複数のディスプレーによる表示を制御することにより、前記の複数のディスプレーの表示画面が互いに協働して「あわせて一つの大きな画面」を表示できるようにするための表示制御手段を備えている、
(c)表示装置の使用時の全体の形状は、ユーザーの視線が延びる方向とほぼ平行な中心線を中心として、ユーザーから見たときの前記中心線の右半分の平面の面積と同左半分の平面の面積とが、ハードウェアとしてはほぼ左右均等となるように、構成されている、
(d)表示装置の使用時の全体の形状は、前記中心線の右半分の厚さ寸法と同左半分の厚さ寸法とが、ハードウェアとしてはほぼ左右均等となるように、構成されている、
(e)表示装置の使用時の表示画面の形状は、前記の「あわせて一つの大きな画面」の中の前記中心線から右半分の画面の面積及び形状と、同左半分の画面の面積及び形状とが、ユーザーから見たときにほぼ左右対称となるように、構成されている、
(f)表示装置の前記中心線に相当する部分は、表示装置の全体をユーザーがその手で支持しやすいように又はユーザーがその手の上に載置し易いように且つユーザーが前記の右半分の画面と左半分の画面との両者を同時に見易いように、前記中心線を中心にして、前記の右半分の画面と左半分の画面とが互いに近づく方向に折り曲げ自在となっている、
(g)表示装置は、前記中心線を中心として折り曲げられた前記の右半分と左半分とを任意の角度で固定するための固定手段であって、前記の右半分と左半分とが前記中心線を中心にして互いに近づく方向に折り曲げられたとき、表示装置の全体をユーザーがその手で支持し易いような又はユーザーがその手の上に載置し易ような且つユーザーが前記の右半分の画面と左半分の画面との両者を同時に見易いような角度の範囲である120度から170度までの範囲内の任意の角度で、固定するための固定手段、を備えている。
【請求項2】 請求項1の表示装置において、さらに、
使用時の全体の大きさが、ユーザーの片手のみで支持されて使用されるような小型のサイズに構成されている、ことを特徴とする、表示装置。」

b 甲10補正後の明細書の段落【0038】〜【0042】の記載
「【0038】
【発明の効果】以上に説明したように、本願の請求項1の発明によれば、次のような効果が得られるようになる。
(1)本願の請求項1の発明では、その特許請求の範囲に示すように、
(c)表示装置の使用時の全体の形状は、ユーザーの視線が延びる方向とほぼ平行な中心線を中心として、ユーザーから見たときの前記中心線の右半分の平面の面積と同左半分の平面の面積とが、ハードウェアとしてはほぼ左右均等となるように、構成されている、及び、
(d)表示装置の使用時の全体の形状は、前記中心線の右半分の厚さ寸法と同左半分の厚さ寸法とが、ハードウェアとしてはほぼ左右均等となるように、構成されている、という構成を有している。すなわち、本発明では、前記中心線を中心として、右半分と左半分とが、ハードウェアとしてその平面や厚さ寸法がほぼ左右均等になるように構成されている。したがって、本発明では、ユーザーが、本発明による表示装置を、前記中心線又はその近傍の部分を中心に、その手(特に片手のみ)で持つ(支持する)ようにした場合に、表示装置の全体が、このユーザーが持った(支持した)部分を中心に左右均等にバランスするので、ユーザーが表示装置をその手で(特に片手のみで)支持することが極めて容易になる。この点で、特開昭62−92025号公報(出願人:キャノン)及び特開昭63−118186号公報(半導体エネルギー研究所)では、折り畳み自在の表示装置が開示されている。しかしながら、これらの公報が開示する表示装置は、それらの図面に示すように、折り曲げる中心線を中心とする右半分の厚さ寸法とその左半分の厚さ寸法とが互いに大きく異なっているので、ユーザーがその折り曲げる中心線の部分を手で持っても、安定的に容易に支持することはできない(特に片手で持つ場合には支持し続けることは困難である)。この点で、これらの公報の開示内容と本発明とは大きく異なっている。したがって、これらの公報の表示装置には、本発明のような効果、課題、及び技術思想(中心線の右半分と左半分とがハードウェアとしてほぼ左右均等なので、中心線を介して左右のバランスが容易に図られるので、ユーザーは、中心線の部分を手で持つことにより、容易に安定的に支持し続けることができる)は、全く記載されておらず、またその示唆もない。
【0039】
(2)また、本願の請求項1の発明によれば、その特許請求の範囲に示すように、
(g)表示装置は、前記中心線を中心として折り曲げられた前記の右半分と左半分とを任意の角度で固定するための固定手段であって、前記の右半分と左半分とが前記中心線を中心にして互いに近づく方向に折り曲げられたとき、表示装置の全体をユーザーがその手で支持し易いような又はユーザーがその手の上に載置し易ような且つユーザーが前記の右半分の画面と左半分の画面との両者を同時に見易いような角度の範囲である120度から170度までの範囲内の任意の角度で、固定するための固定手段、を備えている、
という構成が採用されている。
つまり、本発明では、前記の中心線を中心として、その右半分と左半分とを、前記の折り曲げられた任意の角度で(すなわち、折り曲げられてその断面が略V字状になった状態で)固定すること(なお、本発明での「固定」には、摩擦力などにより半固定する場合や一時的に固定する場合なども、含まれる)が、可能になっている。
したがって、本発明では、ユーザーがその手で(特にその片手のみで)表示装置全体を支持するとき(又は、ユーザーが表示装置全体をその手の上に(特にその片手の上に)載置するとき)、ユーザーは、前記の折り曲げられた中心線又はその近傍の部分(デルタ部分)を中心に持って支持すること(又は、前記の折り曲げられた中心線又はその近傍の部分(デルタ部分)を中心にその両手又は片手の「手のひら」の上に置くこと)により、極めて容易に、前記表示装置の全体を安定的に支持することが可能になる。
すなわち、一般に、平板状の物体を両手又は片手のみで支持すること(又は、平板状の物体を両手又は片手の手のひらの上に載置すること)と、断面が略V字状になっている物体を両手又は片手で支持すること(又は、断面が略V字状になっている物体を両手又は片手の手のひらの上に載置すること)とを比較すると、後者の方が格段に容易であることは、経験上もまた理論上も明らかである。
すなわち、例えば、前者の平板状の物体では、その中央部分には、両手又は片手で持つときの「取っ掛かり」が存在しないので、ユーザーは必要以上の力を出して持つことが必要になる。これに対して、後者の略V字状の物体では、前記の略V字状のデルタ部分が両手又は片手で持つときの「取っ掛かり」となってくれるので、この部分を持てば小さな力でも容易に安定して持ち続けることができる。
また、例えば、前者の平板状の物体では、それを両手又は片手の「手のひら」の上に載せようとしても、平板状なので、手のひらの上をズルズル滑ってしまい易いため、そのズルズル滑るのを防ごうとして必要以上の力を入れる必要があり、且つ、必要以上に神経を集中させる必要があり、その結果、長時間支持し続けようとすると過度の疲労の原因となってしまう。これに対して、後者の略V字状の物体では、人間の両手又は片手の「手のひら」そのものが「断面が略V字状」となっている(すなわち、我々人間が両手又は片手で本や書類などの物を支持しているときの、その両手又は片手の「手のひら」の断面形状は、通常、「略V字状」となっている。つまり、通常、人間の「片手の手のひら」は、物を持つときは、断面が「略Vの字状」となるものである。また、通常、人間が両手を合わせて物を持つときの「両手の手のひら」の形状は、その全体の断面が「略Vの字状」となるものである。)ので、前記の略V字状の物体は、前記の人間の両手又は片手の「手のひら(断面が略V字状)」の中にうまくピッタリとフィットとして収まり易くなる。したがって、前記の略V字状の物体は、人間にとっては、極めて小さな力で、容易に、且つ安定的に、その両手又は片手の「手のひら」の上に載置し続けることができるものとなる。前記の「略V字形状」は、そのような有益な性質を有しているのである。
以上のように、本発明によれば、前記固定手段により、ユーザーが表示装置の全体を両手又は片手で支持すること又は両手又は片手の手のひらの上に載置することが、極めて容易になる。よって、本発明によれば、ユーザーが、通勤電車内や路上などの様々な場所で、立ったまま、表示装置を両手又は片手で支持しながら、又は表示装置を両手又は片手の手のひらの上に載置しながら、使用し続けることが極めて容易なる。
なお、特開平1−282587号公報では、左右が均等に分離された折り曲げ自在の表示装置が開示されている。しかしながら、この公報が開示する「折り曲げ部分を中心に左右均等になっている表示装置」は、その第1図、第3図、第4図、及び第6図に示すように、2つの表示画面が「互いに離れる方向に」折り曲げ自在となっている。よって、この公報の表示装置では、ユーザーが使用するときに、この「折り曲げた中心線の部分」を取っ掛かりに片手で持ったり、片手の手のひらの上に置くことは、全くできない。なぜなら、この公報の表示装置では、折り曲げる方向が、表示画面が「互いに離れる方向」となっているため、その折り曲げた中心線部分(デルタ部分)を片手の「手のひら」の上に置いたとき、表示画面の反対側の面がユーザーの両眼に対向するようになってしまう(これでは、折り曲げたときに、「見る」すなわち「使用する」ことはできない)からである。したがって、この公報の表示装置には、本発明の前述のように効果、課題、及び技術思想(前記中心線で折り曲げたときに、そのデルタ部分を、両手又は片手で支持するための「取っ掛かり」にできるので、全体を手で支持することが極めて容易になる。また、前記中心線で折り曲げたとき、折り曲げられた略V字状の部分が、同じく略V字状の部分を含む片手又は両手の「手のひら」の上にうまくフィットしやすいので、片手又は両手の手のひらの上に容易に且つ安定的に載置し続けることができる。)は、全く記載されておらず、またその示唆もないことは、明らかである。
【0040】
(3)本願の請求項1の発明によれば、その特許請求の範囲に示すように、
(e)表示装置の使用時の表示画面の形状は、前記の「あわせて一つの大きな画面」の中の前記中心線から右半分の画面の面積及び形状と、同左半分の画面の面積及び形状とが、ユーザーから見たときにほぼ左右対称となるように、構成されている、
(f)表示装置の前記中心線に相当する部分は、表示装置の全体をユーザーがその手で支持しやすいように又はユーザーがその手の上に載置し易いように且つユーザーが前記の右半分の画面と左半分の画面との両者を同時に見易いように、前記中心線を中心にして、前記の右半分の画面と左半分の画面とが互いに近づく方向に折り曲げ自在となっている、及び、
(g)表示装置は、前記中心線を中心として折り曲げられた前記の右半分と左半分とを任意の角度で固定するための固定手段であって、前記の右半分と左半分とが前記中心線を中心にして互いに近づく方向に折り曲げられたとき、表示装置の全体をユーザーがその手で支持し易いような又はユーザーがその手の上に載置し易ような且つユーザーが前記の右半分の画面と左半分の画面との両者を同時に見易いような角度の範囲である120度から170度までの範囲内の任意の角度で、固定するための固定手段、を備えている、
という構成が採用されている。
したがって、本発明によれば、ユーザーが前記各ディスプレーにより構成された「あわせて一つの大きな画面」を見るときに、その画面全体が前記中心線を中心に左右対称に分けられるため、ユーザーにとって極めて見易い画面が得られるようになっている。すなわち、一般に、人間の視神経においては、文書や画像を見る場合に、左右2つの目(両眼)で見つめるため、見る対象は、その中心線(両眼の位置)から左右対称になっている方が格段に見易いという性質を有している。だから、従来の本や新聞や雑誌などの紙媒体でも、必ず、ユーザーの視点(視線)が延びる方向にほぼ平行な中心線(折り曲げる線)を中心として、その表示部分が左右対称になるように配置されている。表示された文字や画像が前記の折り曲げる線(中心線)を中心に左右対称に配置されていないと、人間の視神経(左右対称が視神経にとっては自然で疲れない)に過度の付加を与えて必要以上に視神経の疲労を与えてしまうことになるが、本発明ではこのような不都合を有効に回避することができる。
【0041】
(4)本願の請求項1の発明によれば、その特許請求の範囲に示すように、
(g)表示装置は、前記中心線を中心として折り曲げられた前記の右半分と左半分とを任意の角度で固定するための固定手段であって、前記の右半分と左半分とが前記中心線を中心にして互いに近づく方向に折り曲げられたとき、表示装置の全体をユーザーがその手で支持し易いような又はユーザーがその手の上に載置し易ような且つユーザーが前記の右半分の画面と左半分の画面との両者を同時に見易いような角度の範囲である120度から170度までの範囲内の任意の角度で、固定するための固定手段、を備えている、
という構成が採用されている。
このように、本発明では、前記(g)の構成により、前記中心線を中心として任意の角度に折り曲げた状態で「固定」できるようになっているので、一般のユーザーにとって、前記の「あわせて一つの大きな画面」の全体が「さらに見やすい」ものとなっている。
すなわち、一般に、人間は、その左右の2つの目(両眼)で文字や画像を見るので、見る対象である文字や画像が表示された位置は、前記2つの目(両眼の位置)に対して、その全てが等距離に配置されていることが、「理想的」である。この観点からは、本や書類などに表示された画像や文字を見るときでも、前記左右の両眼の位置を中心とした略円弧状の物体の上に、文字や画像が表示されていることが「理想的」である(実際に、A3などの大きなサイズの紙の上に書かれた情報を我々が見るときには、そのA3サイズの紙の上の全ての表示が自分の両眼から等距離になるように、我々は、しばしば、無意識的に、そのA3サイズの紙を略円弧状に曲げて眺めていることがあるが、それは、このような理由に基づくものである)。
しかし、実際には、表示面を円弧状にすることは技術的に困難であるため、本や新聞や雑誌では、その中心線を中心として「その左右が互いに少し近づくように折り曲げられた状態」にして、その折り曲げられた紙の上に表示された文字や画像を見ることにより、いわば「疑似的に、前記の円弧状の物体上に表示されたのと同じような、見やすいという効果」を得ようとしている(つまり、本や雑誌を少しだけ折り曲げることにより、折り曲げない場合に比べて、本や雑誌の表示面の全体が、ユーザーの両眼に対して、疑似的に、あるいは近似的に、均等な距離に位置するようになる)。
そして、このことは、パソコンやテレビなどの表示画面についても同様に適用される。すなわち、パソコンやテレビなどの表示装置を眺めるユーザーにとっては、その表示画面は、ユーザーの両眼を中心とする円弧状に形成されること(表示面がユーザーの両眼から全て当距離にあること)が、本来は「理想的」である。しかし、実際にはそれは技術的にも困難であるため、本発明では、表示装置を、前記中心線を中心として少し折り曲げられた状態で「固定」することにより、本発明の表示装置による表示画面の全体を、いわば「疑似的に、前記の円弧状の物体上に表示されたのと同じような(ユーザーの両眼から当距離に配置されたのと同じような)状態」にして、ユーザーにとって、その表示画面の全体が「見やすい」という効果を、得させようとしている。すなわち、本発明のように、「前記中心線を中心として少し折り曲げられた状態で固定すること」により、ユーザーにとっては、その「両眼の位置からほぼ等距離の位置に画面の全体が広がるような状態」(疑似的に円弧状の物体の上に画面が表示されているのと同じような状態)が作出される。
つまり、本発明によれば、前記の(g)の構成によって、いわば「ユーザーの眼前の円弧状の物体上に画面が表示されたのと類似した状態」が得られる。よって、前記の「あわせて一つの大きな画面」の全体が、ユーザーにとって、極めて「見やすい」ものとなるのである。
なお、特開平1−282587号公報では、「中心線を介して左右が均等に分離された折り曲げ自在の表示装置」が開示されている。しかしながら、この公報が開示する「折り曲げ部分を中心に左右均等になっている表示装置」は、その第1図、第3図、第4図、及び第6図に示すように、表示画面が「互いに離れる方向に」折り曲げ自在となっている。よって、この公報の表示装置では、ユーザーが使用するときに、この「折り曲げた中心線の部分」を取っ掛かりに片手で持ったり、片手の手のひらの上に置くことは、全くできない。なぜなら、この公報の表示装置では、折り曲げる方向が、表示画面が「互いに離れる方向」となっているため、その折り曲げた中心線部分(デルタ部分)を片手の「手のひら」の上に置いたとき、表示画面の反対側の面(表示されていない面)の方がユーザーの両眼に対向するようになってしまうからである。したがって、この公報の表示装置による場合は、「ユーザーの両眼に対して表示画面の全体をほぼ等距離に配置するため、表示画面の中心線部分を中心に、その右半分と左半分とを、互いに近づける方向に少し折り曲げて固定する」ことは、全く不可能である(なぜなら、この公報の装置では、そもそも、表示面が互いに近づくように折り曲げ自在にはなっていないから)。したがって、この公報には、本発明の前述のような効果、課題、及び技術思想(前記「あわせて一つの大きな画面」の全体を、ユーザーの両眼の位置からほぼ等距離に配置するため、表示画面の中心線の部分を中心に、その右半分と左半分とを、互いに近づける方向に少し折り曲げて固定するようにし、これによって、ユーザーが前記「あわせて一つの大きな画面」の全体をより見やすくなるようにすること)は、全く記載されておらず、またその示唆もないことは、明らかである。
【0042】
(5)さらに、本願の請求項2の発明では、その特許請求の範囲に示すように、使用時の全体の大きさが、ユーザーの片手のみでも支持できるような小型のサイズに構成されている。
したがって、本発明によれば、前記の(c)、(d)、及び(g)の構成と相俟って、ユーザーが「片手のみ」で表示装置の全体を支持することや、ユーザーが「片手の手のひら」の上に表示装置の全体を載置したりすることが、極めて容易に行えるようになる。
すなわち、本発明では、前記の(c)、(d)、及び(g)の構成により、表示装置全体が、その中心線部分を境として、その右半分と左半分とが、ハードウェア的に左右均等になっているので、ユーザーは片手のみでも、左右のバランスをとりながら支持し続けることが極めて可能になる。
また、前記(g)の構成により、表示装置の中心線部分が折れ曲がって「略デルタ状部分」(略Vの字状の下端の部分)が形成されているため、この「略デルタ状部分」が片手で持つときの「取っ掛かり」となってくれるので、ユーザーは片手のみでも容易に表示装置全体を支持できるようになる。
また、前記(g)の構成により、表示装置の中心線部分が折れ曲がって、その全体が「断面略Vの字状」となるた、この「断面略Vの字状」の形状の部分が、ユーザーの片手の手のひらの「略Vの字状の部分」(通常、人間の「片手の手のひら」は、物を持つときは、断面が「略Vの字状」となるものである)にピッタリとフィットして収まるので、ユーザーは、片手の「手のひら」の上に、表示装置の全体を安定的に載置し続けることが可能になる。」

(イ) 甲10補正後の請求項1について
a 甲10補正後の請求項1の(c)について
甲10補正により、請求項1には次の構成(c)が含まれるようになった。下線は合議体が付した。以下同様である。
「(c)表示装置の使用時の全体の形状は、ユーザーの視線が延びる方向とほぼ平行な中心線を中心として、ユーザーから見たときの前記中心線の右半分の平面の面積と同左半分の平面の面積とが、ハードウェアとしてはほぼ左右均等となるように、構成されている」
上記構成(c)について検討してみると、表示装置のハードウェアとしての右半分の平面の面積をS1とし、左半分の平面の面積をS2とすると、両者がほぼ左右均等となるように構成されているから、これを数式で定量的に表すと「S1≒S2」という関係式が成立することになる。

b 甲10補正後の請求項1の(d)について
甲10補正により、請求項1には次の構成(d)が含まれるようになった。
「(d)表示装置の使用時の全体の形状は、前記中心線の右半分の厚さ寸法と同左半分の厚さ寸法とが、ハードウェアとしてはほぼ左右均等となるように、構成されている」
上記構成(d)について検討してみると、表示装置のハードウェアとしての右半分の厚さ寸法をL1とし、左半分の厚さ寸法をL2とすると、両者がほぼ左右均等となるように構成されているから、これを数式で定量的に表すと「L1≒L2」という関係式が成立することになる。

c 表示装置の左半分・右半分の外形の大きさについて
前記a及びbの検討内容を踏まえると、表示装置のハードウェアとしての中心線の右半分及び左半分の外形の大きさは、それぞれ右半分の体積(V1)と左半分の体積(V2)として定量的に評価することができ、それぞれ以下のとおりに概ね表される。
V1=S1×L1
V2=S2×L2
そうすると、前記a及びbにおいて示した関係式から、「V1≒V2」が導かれることになる。
すなわち、甲10補正後の請求項1の構成(c)と構成(d)から、表示装置のハードウェアとしての中心線の右半分と左半分の外形の大きさ(体積)はほぼ左右均等となることがわかる。

(ウ) 甲10補正後の請求項1の発明の効果について
a 追加された発明の効果について
甲10補正により段落【0038】には、「本発明では、ユーザーが、本発明による表示装置を、前記中心線又はその近傍の部分を中心に、その手(特に片手のみ)で持つ(支持する)ようにした場合に、表示装置の全体が、このユーザーが持った(支持した)部分を中心に左右均等にバランスするので、ユーザーが表示装置をその手で(特に片手のみで)支持することが極めて容易になる。」という請求項1の発明の効果が追加された。

b 「左右均等にバランスする」ことの物理学的意味について
(a) 重力のモーメントの釣り合いについて
表示装置の全体が、ユーザーが持った(支持した)部分を中心に左右均等にバランスするとは、剛体の力学の概念を用いると、表示装置の中心線上にあるユーザーが支持する箇所を支点として、そのまわりの右半分に働く重力のモーメントと左半分に働く重力のモーメントがほぼ等しく、釣り合っていることを意味する。
ここで、一般に「力のモーメント」とは、物体に支点のまわりの回転を生じさせるような外力(例えば、重力)の性質を表す物理量であって、以下に示すとおり「支点」から「作用点」までの位置ベクトルと外力ベクトルの外積(ベクトル積)で表される。

この式は、力のモーメントの大きさNが、支点から力の作用点までの距離rと作用する力の大きさFとの積rFに比例することを意味しており、力のモーメントは、支点からみた物体の力学的な釣り合いを議論するために用いられる物理量である。物体に作用する力が重力である場合は、「力のモーメント」は「重力のモーメント」として議論されることになる。
以下では、甲10補正により追加された効果である「左右均等にバランスする」ために必要な条件を「重力のモーメント」を用いて検討する。

(b) 各表示板の内部構成について
各表示板の内部構成については、甲10補正後の明細書の【0007】〜【0009】及び図面の【図1】に次の記載がある。
「【0007】
【実施例】
第1実施例
以下図面を参照して本発明の1実施例を説明する。図1は本発明の第1実施例に係る、CD−ROM再生専用装置を示す概略正面図である。なおこの図1には、本発明に関係する部分のみ示してあり、従来公知の部分、例えば電源を入れるためのキーや再生・停止・早送り・巻戻し・検索等を指示するためのキー、検索のためのキーワードを入力するためのキーなどは、省略してある。
【0008】
図1において、符号1は枠体(きょう体)である。この枠体1の中には、CD−ROM駆動装置3、このCD−ROM駆動装置3からの信号を処理する信号処理装置4、LCD(液晶ディスプレー)、前記信号処理装置からの信号を受けてこのLCDを駆動するLCD駆動装置6、電源などが収納されている。またこの枠体1は、前記LCDによりLCD画面を出力するLCDパネル5(以下では符号5をLCD画面を示すものとしても用いる)を備えている。なお図1では、図示の便宜上CD−ROM駆動装置3は枠体1の外側に記載されているが、実際には枠体1の中の例えばLCD画面5を出力するLCDの裏側に収納されている。
【0009】
また符号2も枠体(きょう体)で、この枠体2の中には、LCDとこのLCDを駆動するためのLCD駆動装置8などが収納され、またこのLCDによりLCD画面を出力するLCDパネル7(以下ではこの符号7を画面を示すためにも用いる)が備えられている。」
「【図1】



上記記載から明らかなように、「枠体1」(表示装置の左半分)と「枠体2」(表示装置の右半分)は、その内部構成が異なっていて左右対称ではなく、前者には、「CD−ROM駆動装置3」や、「CD−ROM駆動装置3からの信号を処理する信号処理装置4」が配置されているのに対して、後者ではそのような構成は配置されていない。
そうすると、甲10補正後の明細書及び図面に開示された表示装置は、右半分と左半分でその内部構成や配置が異なっており、枠体内の質量分布も左半分と右半分で異なっている。
そこで、以下に示す合議体が作成した模式図を基にして質量分布が異なる左右の重力による回転軸周りのモーメントについて検討する。

[合議体が作成した模式図]


この模式図において、表示装置のユーザーが支持する回転軸を回転軸Oとし、右半分において回転軸Oからr1の位置にあり、回転軸Oに沿った座標がz1である微小領域(微小体積dv1)の質量密度をρ1とし、左半分において回転軸Oからr2の位置にあり、回転軸Oに沿った座標がz2である微小領域(微小体積dv2)の質量密度をρ2とした。
なお、「質量密度」とは、所定の大きさを有する物体の内部構造が均一でない場合に、物体中の各点における質量がどのように分布しているかを定量的に知るために用いられる概念であり、当該物体の内部を微少領域に分割し、ある一つの微小領域内における質量を当該微小領域の体積で割ったものである。
微小領域の場所が異なれば質量密度も異なるから、質量密度ρは、位置r、zを変数とした関数ρ(r,z)として表される。

(c) 各表示板に働く重力のモーメントについて
右半分と左半分の表示板に働く回転軸Oのまわりの重力のモーメントをそれぞれN1及びN2とすると、これらは微小領域に働く回転軸Oのまわりの重力のモーメントの大きさをそれぞれ右半分と左半分の全体積について積分したものであるから、それぞれ以下のとおりである。
なお、これらの関係式の導出については、後記の(キ)において詳述した。

右半分に働く回転軸Oのまわりの重力のモーメントの大きさ:

左半分に働く回転軸Oのまわりの重力のモーメントの大きさ:

ただし、積分範囲は各表示板内のすべての領域において行う。
また、式中のgは重力加速度の大きさを表し、θ1及びθ2は、回転軸Oから作用点までの位置ベクトルと重力ベクトルのなす角度を表す。

c 「左右均等にバランスする」ために必要な条件
(a) 表示装置の全体が、ユーザーが支持した部分を中心に左右均等にバランスするとは、ユーザーが支持した部分を回転軸として、そのまわりの右半分に働く重力のモーメントと左半分に働く重力のモーメントがほぼ等しく、釣り合っていることを意味するから、そのために必要な条件とは、
N1≒N2として定式化できる。

(b) しかしながら、表示装置の右半分と左半分の外形の大きさ(体積)がほぼ左右均等(V1≒V2)であるとしても、そのことにより表示装置の右半分に働く重力のモーメントと左半分に働く重力のモーメントがほぼ等しいこと(N1≒N2)が自動的に導かれるものではない。
なぜならば、前記b(b)において述べたとおり、表示装置の内部にある機械部品や電気・電子部品の構成や配置が右半分と左半分で相違しており、質量分布が表示装置の右半分と左半分で異なっている、すなわち、
ρ1(r,z)≠ρ2(r,z)であるから、たとえ体積についてV1≒V2が成立していたとしても、前記b(c)において導いた二つの式を見れば明らかなように、回転軸Oのまわりの重力のモーメントについてN1≠N2となるのが通常であるからである。

(c) すなわち、「表示装置の全体が、このユーザーが持った(支持した)部分を中心に左右均等にバランスする」という甲10補正で追加された効果を得るには、左右の質量分布が通常はρ1≠ρ2であるにも関わらず、左右の回転軸Oのまわりの重力のモーメントについてN1≒N2が成立するような特別なハードウエア構成を設定することが必要になる。

(エ) 甲10補正が明細書の要旨変更に該当することについて
a 以上の検討内容を踏まえて、甲10補正により、「表示装置の全体が、このユーザーが持った(支持した)部分を中心に左右均等にバランスする」という請求項1の発明の効果を追加したことが、明細書の要旨を変更することに該当するかについて検討する。

b 前記(イ)cにおいて検討したとおり、請求項1の構成(c)と構成(d)により導かれる、表示装置のハードウエアとしての左半分・右半分の外形の大きさが左右均等であることは、最先の出願の願書に最初に添付された明細書又は図面には明示的に記載されていないものの、図面【図1】及び【図2】の記載内容から、当業者にとって自明な事項であるとの主張が考え得るかもしれない。

c しかしながら、甲10補正により、「表示装置の全体が、このユーザーが持った(支持した)部分を中心に左右均等にバランスする」という請求項1の発明の効果が追加されたため、請求項1の表示装置は、ハードウエアとしての左半分・右半分の外形の大きさが左右均等であるだけでなく、ユーザが支持した部分を回転軸Oとして、そのまわりの右半分と左半分の重力のモーメントがほぼ等しくなるような特別なハードウエア構成を設定することまで要求されることになり、構成(c)及び構成(d)は、その前提条件としての意味をもつようになったといえる。
すなわち、表示装置の使用時の全体の形状について、中心線の右半分と左半分の面積と厚さ寸法がハードウェアとしてはほぼ左右均等となるように、構成されていると規定する構成(c)及び構成(d)が、甲10補正により、単に左右の大きさが等しいことだけを意味するのではなく、左右の回転軸のまわりの重力のモーメントまでも等しくなるようなハードウエア構成に設定されることを意味するようになった。

d 表示装置の使用時の全体の形状について、単に左右の大きさが等しいだけではなく、左右の回転軸のまわりの重力のモーメントまでも等しくなるようなハードウエア構成に設定されることは、最先の出願の願書に最初に添付された明細書又は図面には、当該事項の記載はなく、また、当業者にとってその事項自体を直接表現する記載はないが、補正前の明細書に記載されている技術内容を、出願の時点において当業者が客観的に判断すれば、その事項自体が記載してあったことに相当すると認められる事項であるともいえない。

e そうすると、甲10補正の結果、特許請求の範囲の請求項1の表示装置として、単に全体の形状の大きさとして左右が対称(均等)というだけでなく、左右の回転軸のまわりの重力のモーメントまでも等しくなるようなハードウエア構成に設定されたものを、その技術思想のうちに包摂するものとなるから、甲10補正は、明細書を補正した結果、特許請求の範囲に記載した技術的事項が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でないものとなる補正に該当するというべきである。
したがって、甲10補正は明細書の要旨を変更するものである。

(オ) 被請求人の主張について
a 被請求人の主張の概要
被請求人は、次の(a)〜(e)に示す主張をしている。
(a) 審判合議体は、ユーザーが持った(支持した)部分を中心に左右均等にバランスするという構成(ユーザーが表示装置をその手で(特に片手のみで)支持することが極めて容易になるという効果が生じるような構成)が、表示装置の内部構成及び質量の観点から、右半分に働く重力のモーメントと左半分に働く重力のモーメントとが左右均等であるという構成を意味するとしているが、その理由について全く明らかにしていない。
(b) 甲10補正では、表示装置の全体の外観形状がどのようなものかだけを問題としており、表示装置の内部構成及び質量がどのようなものかは全く問題にしていない。
(c) 甲10補正で追加された構成(c)の「表示装置の使用時の全体の形状」及び「平面の面積」や、構成(d)の「表示装置の使用時の全体の形状」及び「厚さ寸法」という文言を「表示装置の内部構成及び質量」と読み替えて理解することはできない。
(d) 「バランス」とは「つりあい。均衡。」(乙86、広辞苑第7版)という一般的意味を有する語であり、「重量の均衡」に限定して使用される語ではない。
(e) 重量が左右均等か否か問わず、全体の形状、平面の面積又は厚さ寸法が左右均等であるという構成は、ユーザーによる片手での支持を容易にする効果を生じる。
(令和4年7月26日差出の「審決予告に対する上申書」の「第3」4〜12頁)

b 被請求人の主張に対する当審の判断
(a) 甲10補正により追加された、段落【0038】の「表示装置の全体が、このユーザーが持った(支持した)部分を中心に左右均等にバランスするので、ユーザーが表示装置をその手で(特に片手のみで)支持することが極めて容易になる。」という請求項1の発明の効果は、表示装置を片手で支持した場合の支持の容易さについてのものであるところ、当該支持の容易さは、単に表示装置の外観(形状、面積、厚み)だけで決まるものではなく、左右のそれぞれの部分の重量差や、内部の質量分布の違いによる影響も考えることが必要である。
(b) このことは、以下のシーソーの簡単な事例を考えれば明らかである。例えば、シーソーの中心(支点)から等距離だけ離れた対向する左右の位置に同じ外観(形状、面積、厚み)のおもりを置いたとしても、おもりの比重が異なる(例えば、一方のおもりは中が空洞で、他方のおもりは中身が詰まっている)場合には、シーソーの釣り合いはとれず、どちらか一方に傾いてしまうから、シーソーの均衡は破れることになる。また、同じ外観(形状、面積、厚み)であり、かつ、同じ比重のおもりを用いたとしても、シーソーの中心(支点)から異なる距離だけ離れた対向する左右の位置に置く場合には、シーソーの釣り合いはとれず、どちらか一方に傾いてしまうから、やはりシーソーの均衡は破れることになる。
(c) 甲10補正の内容に即していえば、表示装置の外観(形状、面積、厚み)は同じでも、左半分と右半分のそれぞれの全体の重さが異なる場合には、それを中心線上で片手で支持しても安定して支持できないことは明らかである。また、表示装置の外観(形状、面積、厚み)は同じであり、左半分と右半分の全体の重さが同じでも、左半分の内部には中心線に近い位置に重い内部装置が搭載されており、右半分の内部には中心線から遠い位置に重い内部装置が搭載されている場合には、それを中心線上で片手支持しても安定して支持できないことは明らかである。
(d) 要するに、甲10補正により追加された表示装置を片手で支持した場合の支持の容易さは、支持した部分(支点)から見たときの左半分と右半分が力学的に釣り合っていることを前提としているのであって、甲10補正の「バランス」は一般的意味としてではなく、力学的な意味として理解すべきものである。そもそも「(特に片手のみで)支持すること」と補正しているのだから、表示装置に働く重力に抗するように片手の力で表示装置の中心を支えていることを前提としており、力学的な意味での「バランス」と解するのは極めて自然な解釈である。
(e) そして、重力が働いている物体が、ある支点において力学的に釣り合っているとき、その釣り合いの状態は、支点のまわりの重力のモーメントが等しいとして定式化されることは、古典力学の剛体の力学の常識である。
(f) 甲10補正後の明細書及び図面に開示された表示装置は、右半分と左半分でその内部構成や配置が異なっており(【0007】〜【0009】、【図1】参照)、枠体内の質量分布も左半分と右半分で異なっているから、表示装置の全体の形状、平面の面積又は厚さ寸法が左右均等でありさえすれば、左右が必ずつり合って片手支持を容易にするとはいえず、その前提として、左右のそれぞれの部分の重量差や、内部の質量分布の違いによる影響を考慮しなければならない。
(g) すなわち、甲10補正により、構成(c)及び構成(d)が、単に左右の大きさが等しいことだけを意味するのではなく、左右が力学的に釣り合っていること(左右の回転軸のまわりの重力のモーメントまでも等しくなること)までも意味するようになったのであり、その点において甲10補正は明細書の要旨を変更するものである。
(h) このことは、甲10補正前の最先の出願の当初明細書において、「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の携帯型電子情報機器においては、携帯の便利さを追求すればディスプレー装置などのサイズは小さいほどよいが、他方、ユーザーが使用するときの便宜を考えればディスプレー画面のサイズは見ずらくならない程度には大きくしておく必要がある、という二律背反の問題があった。本発明は、このような従来技術の二律背反の課題に着目してなされたもので、携帯の便利さ(コンパクト化)と使用時のディスプレー画面の見やすさ(画面の大きさのある程度の確保)という2つの要請を同時に満たし、前記の二律背反の問題を一挙に解決することができるディスプレー装置を提供することを目的とする。また本発明は、携帯時のコンパクト化を実現するとともに使用時には同時に複数のディスプレー画面をみることができる表示装置を提供することを目的とする。」と記載されており、最先の出願の当初明細書のその他の記載を参酌しても、「ユーザーが、例えば外出先(戸外)などで、例えば立ったままでも、その一方の片手だけを使って表示装置全体を極めて容易且つ安定的に支持することができる、片手支持可能な表示装置」を提供することなど課題としていないことからも裏付けることができる。
(i) また、本件訂正前の本件特許の明細書の段落【0065】には、「左右の均衡(バランス)が保たれた「ヤジロベエ」のような状態になり、その結果、片手だけでも極めて「左右に安定した状態」で支持できるようになる」との記載があり(段落【0047】にも同様の記載がある。)、「左右の均衡(バランス)が保たれた「ヤジロベエ」のような状態」とは、左右が力学的に釣り合っていること(支点のまわりの左右の重力のモーメントが等しくなること)を意味していることは明らかであるから、最先の出願(甲6)からの第3世代分割である本件特許出願(甲12補正後)においても、甲10補正の「バランス」が力学的な意味としてのバランスであることを前提としていたのであるから、被請求人の主張は、この点からみても失当である。
なお、本件特許の明細書の段落【0065】の上記記載や段落【0047】は本件訂正により削除されているところ(訂正事項A−3、A−4を参照)、上記「左右の均衡(バランス)が保たれた「ヤジロベエ」のような状態」という記載が削除されたとしても、甲10補正の「バランス」が力学的な意味とは異なる別の意味を有すると解釈できるその他の事情は見当たらない。
(j) 以上のとおりであるから、被請求人の前記aの主張は、採用できない。

(カ) 最先の出願の出願日について
前記(エ)の検討のとおり、甲10補正は明細書の要旨を変更するものであり、願書に添附した明細書について出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前にした補正がこの要旨を変更するものと特許権の設定の登録があつた後に認められたときに該当するから、旧特許法40条の規定により、最先の出願は、甲10補正の手続補正書を提出した平成10年6月16日にされたものとみなされる。

(キ) 重力のモーメントの導出について
a 力のモーメントの定義について
一般に「力のモーメント」とは、物体に支点のまわりの回転を生じさせるような外力(例えば、重力)の性質を表す物理量であって、以下に示すとおり「支点」から「作用点」までの位置ベクトルと外力ベクトルの外積(ベクトル積)で表される。


そして、位置ベクトルの大きさをrとし、外力ベクトルの大きさをFとし、位置ベクトルと外力ベクトルのなす角度をθとすると、
力のモーメントの大きさNは以下のように表される。


b 各表示板の微小領域の質量について
表示装置のユーザーが支持する回転軸を回転軸Oとし、右半分において回転軸Oからr1の位置にあり、回転軸Oに沿った座標がz1である微小領域(微小体積dv1)の質量密度をρ1とし、左半分において回転軸Oからr2の位置にあり、回転軸Oに沿った座標がz2である微小領域(微小体積dv2)の質量密度をρ2とすると、各微小領域の質量はm1及びm2は次のようになる。
右半分の微小領域の質量:

左半分の微小領域の質量:


c 微小領域に働く重力について
各表示板には重力が働くところ、右半分において回転軸Oからr1の位置にあり、回転軸Oに沿った座標がz1である微小領域に働く重力の大きさをdF1とし、左半分において回転軸Oからr2の位置にあり、回転軸Oに沿った座標がz2である微小領域に働く重力の大きさをdF2とすると、それらは次のようになる。ただし、gは重力加速度の大きさを表す。
右半分の微小領域に働く重力の大きさ:


左半分の微小領域に働く重力の大きさ:


d 微小領域に働く重力のモーメントについて
各表示板の微小領域に働く重力は、回転軸Oのまわりに当該微小領域を回転させようとするところ、右半分において回転軸Oからr1の位置にあり、回転軸Oに沿った座標がz1である微小領域に働く回転軸Oのまわりの重力のモーメントの大きさをdN1とし、左半分において回転軸Oからr2の位置にあり、回転軸Oに沿った座標がz2である微小領域に働く回転軸Oのまわりの重力のモーメントの大きさをdN2とすると、それらは次のようになる。
ただし、θ1及びθ2は、回転軸Oから作用点までの位置ベクトルと重力ベクトルのなす角度を表す。
右半分の微小領域に働く回転軸Oのまわりの重力のモーメントの大きさ:

左半分の微小領域に働く回転軸Oのまわりの重力のモーメントの大きさ:


e 各表示板に働く重力のモーメントについて
右半分と左半分の表示板に働く回転軸Oのまわりの重力のモーメントをそれぞれN1及びN2とすると、これらは微小領域に働く回転軸Oのまわりの重力のモーメントの大きさをそれぞれ右半分と左半分の全体積について積分したもの(各微小領域の重力のモーメントを足し合わせたもの)であるから、それぞれ以下のとおりである。

右半分に働く回転軸Oのまわりの重力のモーメントの大きさ:

左半分に働く回転軸Oのまわりの重力のモーメントの大きさ:


エ 第1世代分割出願の出願日について
(ア) 前記ウにおいて検討したとおり、最先の出願は平成10年6月16日にされたものとみなされるべきであるから、その分割出願である、第1世代分割出願の出願日は、平成3年8月30日まで遡及はせず、第1世代分割出願の現実の出願日である平成9年11月10日である。

(イ) 第1世代分割出願の出願日が、平成9年11月10日に定まったため、第2分割出願が、最先の出願や第1世代分割出願に対して分割要件を満たしているか否かに関わらず、第2世代分割出願の出願日は、平成9年11月10日よりも前に遡及することはない。
同様に、第3世代分割出願(本件特許出願)が、最先の出願、第1世代分割出願及び第2世代分割出願に対して分割要件を満たしているか否かに関わらず、第3世代分割出願(本件特許出願)の出願日は、平成9年11月10日よりも前に遡及することはない。
そうすると、甲11(最先の出願の公開特許公報)は、本件特許の出願日よりも前の平成5年3月12日に発行された先行技術文献になり、また、本件特許出願についてされた甲12補正の適否は、新規事項の追加に当たるかどうかという基準で判断されることになるから、この段階で無効理由2−1及び無効理由2−2についての判断を行うことは可能である。

(ウ) 前記(イ)において示したとおり、本件特許の出願日は平成9年11月10日よりも前に遡及することはないから、無効理由2−1及び無効理由2−2の有無について判断するためには、第2世代分割出願の分割要件の適否及び本件特許出願の分割要件の適否の検討を行う必要はない。
しかしながら、紛争の一回的解決を図るという観点から、後記の「オ 第2世代分割出願の出願日について」及び「カ 本件特許の出願日について」において、分割要件の適否等の検討を行った。

(エ) なお、被請求人は、第2世代分割出願の甲13補正が明細書の要旨変更に該当しない旨の主張(令和4年7月26日差出の「審決予告に対する上申書」の「第4」12〜30頁)、及び、第3世代分割出願(本件特許)の甲14訂正が明細書の要旨変更に該当しない旨の主張(令和4年7月26日差出の「審決予告に対する上申書」の「第5」〜「第7」31〜39頁)をしているが、第1世代分割出願の出願日は平成9年11月10日であると判断したため、第2世代分割出願及び第3世代分割出願(本件特許出願)について旧特許法41条(明細書の要旨変更)の規定の適用はないから、被請求人の主張は前提において失当である。

オ 第2世代分割出願の出願日について
(ア) 分割要件の判断手法について
第2世代分割出願の出願日を確定するには、第2世代分割出願が第1世代分割出願に対して分割要件を満たしているか否かを判断する必要がある。
そして、当該分割要件は、第2世代分割出願の明細書等に記載された事項が、第1世代分割出願の出願当初の明細書等(甲7)に記載された事項の範囲内であるか否かにより判断される。
ここで、前記エに示したとおり、第1世代分割出願の出願日は、平成9年11月10日となるから、第2世代分割出願の平成14年7月8日付け手続補正書により補正された明細書等(甲13)が、第1世代分割出願の出願当初の明細書等(甲7)に対する補正後の明細書等であると仮定した場合に、その補正が第1世代分割出願の出願当初の明細書等(甲7)との関係において、新規事項を追加する補正であるか否かで判断することになる。
(「特許・実用新案審査基準」第VI部 特殊な出願 第1章 特許出願の分割(特許法第44条) 第1節 特許出願の分割の要件 3.実体的要件についての判断の3.2を参照。
「特許・実用新案審査ハンドブック」第VI部 特殊な出願 第1章 特許出願の分割 「6101 実体的要件についての判断に係る審査手順」、「6102 孫出願の審査に当たっての留意事項」を参照。)

(イ) 平成14年7月8日付け手続補正の内容について
第2世代分割出願の平成14年7月8日付け手続補正(以下「甲13補正」という。)により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。下線は合議体が付した。
「【請求項1】 画面をそれぞれ表示できる少なくとも「2つの表示板」を含む見開き型表示装置であって、
前記の「2つの表示板」を、それらがユーザーから見て上下方向又は左右方向に見開きにされた状態にも、それらが折り畳まれた状態にもできるように、互いに接続するための見開き接続手段と、
前記の「2つの表示板」を、それらの間の角度が、「ユーザーから見て上下方向又は左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態と互いに折り畳まれた状態との間の角度であって、約105度から約175度までの範囲内の角度」となるように、摩擦力やストッパやその他の手段により固定するための中間固定手段と、
テレビ放送局から電波又は有線により送信されるテレビ番組情報を、無線を介して受信するためのテレビ番組情報無線受信手段と、
前記テレビ番組情報無線受信手段により受信されたテレビ番組情報を前記「2つの表示板」の双方又は一方の表示板が出力する画面の全部又は一部に表示させるためのテレビ番組情報表示手段と、
前記「2つの表示板」の中の少なくとも一方の表示板が出力する画面の全部又は一部に、「ユーザーが情報を入力し記録するために使用する、情報入力用画面」を表示するための情報入力用画面表示手段と、
を備えたことを特徴とする見開き型表示装置。
【請求項2】 画面をそれぞれ表示できる少なくとも「2つの表示板」を含む見開き型表示装置であって、
前記の「2つの表示板」を、それらがユーザーから見て上下方向又は左右方向に見開きにされた状態にも、それらが折り畳まれた状態にもできるように、互いに接続するための見開き接続手段と、
前記の「2つの表示板」を、それらの間の角度が、「ユーザーから見て上下方向又は左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態と互いに折り畳まれた状態との間の角度であって、約105度から約175度までの範囲内の角度」となるように、摩擦力やストッパやその他の手段により固定するための中間固定手段と、
見開き型表示装置とは離れた場所に在る磁気ディスク装置などの情報記録装置から送信されてくる外部情報であってテレビ番組以外の外部情報を、無線を介して受信するための外部情報無線受信手段と、
前記外部情報無線受信手段が受信した外部情報を前記「2つの表示板」の双方又は一方の表示板が出力する画面の全部又は一部に表示させるための外部情報表示手段と、
前記「2つの表示板」の中の少なくとも一方の表示板が出力する画面の全部又は一部に、「ユーザーが情報を入力し記録するために使用する、情報入力用画面」を表示するための情報入力用画面表示手段と、
を備えたことを特徴とする見開き型表示装置。
【請求項3】 画面をそれぞれ表示できる少なくとも「2つの表示板」を含む見開き型表示装置であって、
前記の「2つの表示板」を、それらがユーザーから見て上下方向又は左右方向に見開きにされた状態にも、それらが折り畳まれた状態にもできるように、互いに接続するための見開き接続手段と、
前記の「2つの表示板」を、それらの間の角度が、「ユーザーから見て上下方向又は左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態と互いに折り畳まれた状態との間の角度であって、約105度から約175度までの範囲内の角度」となるように、摩擦力やストッパやその他の手段により固定するための中間固定手段と、
テレビ放送局から電波又は有線により送信されるテレビ番組情報を、無線を介して受信するためのテレビ番組情報無線受信手段と、
前記テレビ番組情報無線受信手段により受信されたテレビ番組情報を前記「2つの表示板」の双方又は一方の表示板が出力する画面の全部又は一部に表示させるためのテレビ番組情報表示手段と、
見開き型表示装置とは離れた場所に在る磁気ディスク装置などの情報記録装置から送信されてくる外部情報であってテレビ番組情報以外の外部情報を、無線を介して受信するための外部情報無線受信手段と、
前記外部情報無線受信手段が受信した外部情報を前記「2つの表示板」の少なくとも一方の表示板が出力する画面の全部又は一部に表示させるための外部情報表示手段と、
を備えたことを特徴とする見開き型表示装置。」

(ウ) 甲13補正と分割要件の充足、第2世代分割出願の出願日について
甲13補正により、第2世代分割出願の請求項1〜3において、2つの表示板をユーザーから見て上下方向に見開きにされた状態にも折り畳まれた状態にもできる点が追加された。
しかしながら、第1世代分割出願の出願当初の明細書又は図面(甲7)に開示されているのは、使用時にユーザーから見て左右方向に見開き状態にも折り畳まれた状態にもできる表示装置であって、2つの表示板をユーザーから見て上下方向に見開きにされた状態にも折り畳まれた状態にもできる表示装置は、第1世代分割出願の出願当初の明細書又は図面(甲7)には記載されておらず、またこれらの記載から自明であるということはできない。
そもそも、甲7に開示された発明は、中心線の「右半分」と「左半分」とがハードウェアとしてほぼ「左右均等」なので、ユーザーが持った部分を中心に「左右均等にバランス」するため、ユーザーは、片手のみで支持することができることを主題としているから、2つの表示板をユーザーから見て上下方向に見開きにされた状態にも折り畳まれた状態にもできるようにすることは、上記主題とは異なるものであって甲7に開示された事項ではあるとはいえない。
そうすると、甲13補正は、第1世代分割出願の出願当初の明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、第1世代分割出願の出願当初の明細書等(甲7)との関係において、新規事項を追加する補正である。
したがって、第2世代分割出願は、第1世代分割出願に対して分割要件を満たしておらず、その出願日は現実の出願日である平成12年2月9日である。

(エ) 被請求人の主張について
a 被請求人の主張の概要
被請求人は、次の(a)〜(e)に示す主張をしている。
(a) 第1世代分割出願の出願当初の明細書等(甲7)には、2つの表示板の見開き方に関する構成又は使用態様を「左右方向」に限定する記載は全く無く、「上下方向」は全く除外されない。
(b) ユーザーが片手だけで持つことができる重量しかない2つの表示板ならば、物理法則上、必ず、ユーザーが、その片手で、左右方向に見開きにでき且つ上下方向にも見開きにできるから、2つの表示板を上下方向に見開きにして使用する構成は、物理法則上、当業者に自明の事項である。
(c) 2つの表示板を上下方向に見開きにして使用する構成又は使用態様、及び、画面への表示方向を左右と上下とで切り換える表示制御用ソフトウエアの技術は、周知の技術的事項であって、当業者であれば第1世代分割出願の出願当初の明細書等(甲7)に記載の発明の目的から当然にその発明において用いることができると容易に判断することができるものであるから、当業者に自明の事項である。
(d) 2つの表示板を上下方向に見開きにして使用する構成又は使用形態は、第1世代分割出願の出願当初の明細書等(甲7)の【0015】中の「あたかも本を見開き状態にして本を読んでいるのと同じ感覚で使用できる」という記載、及び、本(絵本など)を上下方向に見開いて読むことが周知の技術的事項であったことから、当業者に自明の事項である。
(e) 第1世代分割出願の出願当初の明細書等(甲7)に記載の発明の目的及び作用効果・技術的意義は、ユーザーがその片手で2つの表示板を左右方向に見開きにして支持するか上下方向に見開きにして支持するかによって影響されない。
(令和4年7月26日差出の「審決予告に対する上申書」の「第4」12〜30頁)

b 被請求人の主張に対する当審の判断
甲7に開示された発明は、ユーザーから見て左右方向に見開きした状態において使用することを前提として、中心線の「右半分」と「左半分」とがハードウェアとしてほぼ「左右均等」であり、ユーザーが持った部分を中心に「左右均等にバランス」するため、ユーザーは、片手のみで支持することができることを主題としているところ、甲13補正後の請求項の「「2つの表示板」を、それらがユーザーから見て上下方向又は左右方向に見開きにされた状態」のうち、ユーザーから見て上下方向に見開きにされた状態における使用は、上記主題が前提とする使用形態とは異なる使用形態であるから、ユーザーが持った部分を中心に「左右均等にバランス」するという効果を奏するものではないことは明らかである。
甲7に開示された表示装置が、片手だけで左右方向にも、上下方向にも見開きにできるものであるとしても、ユーザーが持った部分を中心に「左右均等にバランス」するという効果は、左右方向に見開きした使用形態においてのみ奏するのであるから、甲7に開示された発明の作用効果や技術的意義は、見開きの方向が左右方向である場合に限られる。
甲13補正は、ユーザーから見て上下見開きにされた状態での使用形態においても、ユーザーが持った部分を中心に「左右均等にバランス」する効果を奏することを含むようにした点において、新たな技術的事項を導入することになるから、被請求人の主張は、採用されない。

カ 本件特許の出願日について
(ア) 分割要件の判断手法について
本件特許の出願日を確定するには、本件特許出願が第2世代分割出願に対して分割要件を満たしているか否かを判断する必要がある。
そして、当該分割要件は、本件特許の明細書等に記載された事項が、第2世代分割出願の出願当初の明細書等(甲8)に記載された事項の範囲内であるか否かにより判断される。
ここで、前記オに示したとおり、第2世代分割出願の出願日は、平成12年2月9日となるから、本件特許の本件訂正により認められた訂正特許請求の範囲及び訂正明細書並びに平成14年8月5日付け手続補正により補正された図面(甲12)(以下、これらを総称して「本件特許の明細書等」という。)が、第2世代分割出願の出願当初の明細書等(甲8)に対する補正後の明細書等であると仮定した場合に、その補正が第2世代分割出願の出願当初の明細書等(甲8)との関係において、新規事項を追加する補正であるか否かで判断することになる。

(イ) 訂正特許請求の範囲の内容について
本件特許の本件訂正により認められた訂正特許請求の範囲の請求項3及び4は、次のとおりである。
「【請求項3】
略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、
前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、
前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、
前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように、ストッパにより固定するための中間左右見開き固定手段とを備えており、前記ストッパは、前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものである、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
【請求項4】
画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、
前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、
前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、「ユーザから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように、ストッパにより固定するための左右見開き固定手段とを備えており、前記ストッパは、(a)前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板の間の見開き角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものであり、且つ(b)ユーザーが、前記少なくとも一方の表示板を、前記2つの表示板が前記所定の角度で固定された状態から互いに約180度で見開きにされる状態へと変化するようにさらに回動させるとき、前記少なくとも一方の表示板が、前記2つの表示板が互いに約180度で見開きにされる状態となるように、さらに回動できるようにするものである、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。」

(ウ) 訂正明細書の内容について
本件特許の本件訂正により認められた訂正明細書は、次の記載を含むものである。
「【0010】
【課題を解決するための手段】(用語説明)本明細書において、「固定」には、(a)摩擦力やチルト機構などにより「半固定」する場合(ここで、「半固定」とは、「固定」の一形態であって、ユーザーがある程度強めの所定量以上の力を加えることにより状態を変更させる(すなわち、固定状態を解除して、前記各表示板(各表示パネル)間の角度を変更させる)ことができるような状態、を言う)や、(b)ストッパ(例えば、2つの表示板を接続する蝶番の回動を所定の角度でストップさせるもの)などを使用して「一時的に固定」する場合、なども含まれる。
【0011】なお、上記の「固定手段」の一例としての「チルト機構」とは、2つの部材を接続するヒンジ部(蝶番)に装着・固定した軸とその軸に装着したコイルスプリングとにより前記2つの部材を任意の回転角度で保持できるようにした機構である。このような「チルト機構」は、従来より、例えばキーボードと薄型ディスプレイとを接続するノート型(ブック型)電子機器のヒンジ部(蝶番)などに設けられている周知の技術であって、例えば、実願平1−54228号(実開平2−145423号公報)のマイクロフィルム(この中の明細書の第4ページの第7−14行及び第4図参照)には、キーボードが備えられた本体側の固定金具と薄型ディスプレイが備えられた蓋体側の固定金具との間に装着された軸にコイルスプリングを装着すること等により、前記蓋体を前記本体に対して任意の回転角度で保持できるようにしたチルト機構が開示されている。
【0012】(本明細書中に含まれる複数の発明の概要)(当審注:2次訂正における訂正認容箇所)
1−(1)−1. 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、ユーザーから見て左右方向に見開きにされたときの前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、ストッパにより固定するための中間左右見開き固定手段であって、前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」から広げられて行く動作、をストップする機能と、前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「ユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態」から狭められて行く動作、をストップする機能と、を有する中間左右見開き固定手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
1−(1)−2. 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定するための中間左右見開き固定手段であって、記「2つの表示板」の、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」から広げられて行く動作、をストップする機能を有する中間左右見開き固定手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
1−(1)−3. 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定するための中間左右見開き固定手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
1−(2).画面をそれぞれ表示できる「少なくとも2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、前記「2つの表示板」を、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にも、それらが互いに折り畳まれた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度(あるいは、約105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約155度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度までの範囲内のいずれかの角度、又は約105度から約140度までの範囲内のいずれかの角度)」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
2−(1).画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の(複数の)表示板(2つ以上の表示パネル)」を含んでおり、ユーザーがその片手の上に載せてその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、前記の「2つ以上の(複数の)表示板」の中の「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、前記「2つ以上の(複数の)表示板」の中の「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度(あるいは、約105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約155度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度までの範囲内のいずれかの角度、又は約105度から約140度までの範囲内のいずれかの角度)」となるように、固定するための左右見開き固定手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
2−(2).画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にも、それらが互いに折り畳まれた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度(あるいは、約105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約155度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度までの範囲内のいずれかの角度、又は約105度から約140度までの範囲内のいずれかの角度)」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
3−(1).次の(a)〜(d)の内容を含むことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
(a)画面をそれぞれ出力する「複数の表示板」が、それぞれが表示する各画面がユーザーに対向することができるように、接続されている、
(b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがその片手のみでも支持することができるような小型のサイズに構成されている、
(c)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にも、それらが互いに折り畳まれた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段を備えている、
(d)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされているとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度(あるいは、約105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約155度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度までの範囲内のいずれかの角度、又は約105度から約140度までの範囲内のいずれかの角度)」となるように、固定するための左右見開き固定手段、を備えている。
3−(2).次の(a)〜(d)の内容を含むことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
(a)画面をそれぞれ出力する「複数の表示板」が、それぞれが表示する各画面がユーザーに対向することができるように、接続されている、
(b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがその片手のみでも支持することができるような小型のサイズに構成されている、
(c)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、折り畳み可能で且つユーザーから見て左右方向に見開き可能に接続するための左右見開き接続手段を備えている、
(d)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度(あるいは、約105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約155度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度までの範囲内のいずれかの角度、又は約105度から約140度までの範囲内のいずれかの角度)」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段、を備えている。
3−(3).次の(a)〜(d)のような内容を含むことを特徴とする表示装置。
(a)画面をそれぞれ出力する複数個の表示板が、それぞれが表示する各画面がユーザーに対向することができるように、接続されている、
(b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがその片手のみでも支持することができるような小型のサイズに構成されている、
(c)表示装置は、ユーザーから見て縦方向の線を境にして、その右側部分と左側部分とが、折り曲げ・折り畳み可能で且つユーザーから見て左右に見開き可能となっている、
(d)表示装置は、その使用時に、ユーザーから見て縦方向の線の右側部分と左側部分とを、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記右側部分と左側部分との間の見開き角度」が「約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度(あるいは、約105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約155度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度までの範囲内のいずれかの角度、又は約105度から約140度までの範囲内のいずれかの角度)」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段、を備えている。
4−(1).本願発明(上記1,2又は3などに記載の発明)において、前記左右見開き固定手段が固定する「2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」又は「ユーザーから見て縦方向の線の右側部分と左側部分との間の角度」は、表示装置の全体をユーザーがその片手で支持し易いような角度又はユーザーがその片手の上に載置し易いような角度であることが望ましい。
(一部削除)
(当審注:本件訂正の訂正事項A−1を参照。)
5.上記1,2,3又は4において、前記左右見開き固定手段は、前記の「2つの表示板」の接続部分に、「ユーザーがその片手の親指を安定的に置くことを可能にするための、断面略V字状の凹状(谷状)部分」を形成する作用を有している、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
6.上記1,2,3又は4において、前記左右見開き固定手段は、前記の「2つの表示板」の接続部分に、「ユーザーが、前記表示装置を、その片手の親指以外の指又は掌の上に安定的に載置することを可能にするための、断面略V字状の凸状(山状)部分」を形成する作用を有している、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
7.上記1から6までのいずれかにおいて、前記左右見開き固定手段は、前記左右見開き接続手段と一体的に構成されている(ハードウェア的に一体化されている)、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
なお、本発明において、「左右見開き固定手段が、左右見開き接続手段と一体的に構成されている(ハードウェア的に一体化されている)」ような場合とは、例えば、(1)前記左右見開き接続手段を構成する「ヒンジ部(蝶番)」の各部材に摩擦係数の高い素材を使用することにより、ヒンジ部(蝶番。接続部分)の摩擦係数を高めて、2つの表示板の間の角度が一時的に固定できるようにする場合(蝶番の接続面の摩擦係数を高くして、2つの表示板の間が所定の折り曲げ角度で一時的に固定できるようにしたもの、など)、(2)前記左右見開き固定手段を構成するストッパ部分と前記左右見開き接続手段とをプラスチック素材や金属素材などで一体成形する場合、などである。
8.上記1から6までのいずれかにおいて、前記左右見開き固定手段は、前記左右見開き接続手段又は前記表示板と容易に分離できないように構成されている、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
なお、本発明において、「左右見開き固定手段が、左右見開き接続手段又は表示板と容易に分離できないように構成されている」ような場合とは、例えば、(1)前記左右見開き固定手段と前記左右見開き接続手段(又は前記表示板)とが、プラスチック素材や金属素材などで一体成型されてハードウェア的に一体化されている場合(この場合は当然に「容易に分離できない」状態である)、(2)接着剤や溶接や係止用フックなどの手段を使用して、前記左右見開き固定手段を構成するストッパ部分を、前記左右見開き接続手段(又は前記表示板)に対して、容易に分離できないように固定している場合、(3)前記チルト機構(軸及びコイルスプリングなど)を2つの表示板の接続部分(ヒンジ部)に内蔵させた場合、などである。
9.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記表示板に、「ユーザーによるデータ入力のために使用される、データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を表示するためのデータ入力用画面表示手段、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
10.上記1から8のいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可能な表示装置から離れた場所に在る外部の情報記録装置に記録されている外部情報を無線を介して受信するための外部情報無線受信手段と、前記外部情報無線受信手段が受信した外部情報を前記表示板に表示させるための外部情報表示手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
11.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、テレビ放送局から電波又は有線により送信されるテレビ番組情報を無線を介して受信するためのテレビ番組情報無線受信手段と、前記テレビ番組情報無線受信手段により受信されたテレビ番組情報を前記表示板に表示させるためのテレビ番組情報表示手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
12.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可能な表示装置から離れた場所に在る外部の情報記録装置に記録されている外部情報を無線を介して受信するための外部情報無線受信手段と、前記外部情報無線受信手段が受信した外部情報を前記表示板に表示させるための外部情報表示手段と、テレビ放送局から電波又は有線により送信されるテレビ番組情報を無線を介して受信するためのテレビ番組情報無線受信手段と、前記テレビ番組情報無線受信手段により受信されたテレビ番組情報を前記表示板に表示させるためのテレビ番組情報表示手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
この場合、ユーザーは、前記表示装置に、受信した「テレビ番組」と前記無線受信手段からの「外部情報」を表示させることができる。
13.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可能な表示装置から離れた場所に在る外部の情報記録装置に記録されている外部情報を無線を介して受信するための外部情報無線受信手段と、前記外部情報無線受信手段が受信した外部情報を前記表示板に表示させるための外部情報表示手段と、前記表示板に、「ユーザーによるデータ入力のために使用される、データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を表示するためのデータ入力用画面表示手段と、を備えていることを特徴とする片手支持可能な表示装置。
この場合、ユーザーは、前記表示装置に、「離れた場所にある情報記録装置からの情報(外部情報)」と「データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を表示させることができる。
14.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、テレビ放送局から電波又は有線により送信されるテレビ番組情報を無線を介して受信するためのテレビ番組情報無線受信手段と、前記テレビ番組情報無線受信手段により受信されたテレビ番組情報を前記表示板に表示させるためのテレビ番組情報表示手段と、前記表示板に、「ユーザーによるデータ入力のために使用される、データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を表示するためのデータ入力用画面表示手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
この場合、ユーザーは、前記表示装置に、受信した「テレビ番組」と、様々な情報を入力するための「データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を、表示することができる。
15.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可能な表示装置から離れた場所に在る外部の情報記録装置に記録されている外部情報を無線を介して受信するための外部情報無線受信手段と、前記外部情報無線受信手段が受信した外部情報を前記表示板に表示させるための外部情報表示手段と、テレビ放送局から電波又は有線により送信されるテレビ番組情報を無線を介して受信するためのテレビ番組情報無線受信手段と、前記テレビ番組情報無線受信手段により受信されたテレビ番組情報を前記表示板に表示させるためのテレビ番組情報表示手段と、前記表示板に、「ユーザーによるデータ入力のために使用される、データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を表示するためのデータ入力用画面表示手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
この場合、ユーザーは、前記表示装置に、「テレビ番組」と「外部情報」と「データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を、表示させることができる。」

「【0026】
また、この実施例においては、前記第1の枠体1と第2の枠体2を見開き状態にしたとき、これらの2つの枠体を、その両者の枠体1,2の各LCDパネル5,7の間の角度が「約180度の角度」で固定できるだけでなく、その両者の枠体1,2の各LCDパネル5,7の間の角度が「約105度から約170度まで(又は、約110度から約170度まで)の間の所定の角度(任意の角度)」で固定できる(例えば摩擦力やストッパやチルト機構により)ようにしている。よって、ユーザーは、本実施例による表示装置を、例えば、会社のデスクの上では約180度の角度に見開いた「完全見開き状態」で使用し、混雑している通勤電車の中では(他人に本実施例の装置が当たって迷惑がかかることのないように)例えば約105度〜約120度の角度に見開いた「半見開き状態」で使用する等、周囲の状況に応じた使用ができるようになる。」

「【0044】
【発明の効果】
1.本発明の基本的効果.
本発明では、「少なくとも2つの表示板(2つの表示パネル)を約105度から約170度までの間のいずれかの角度で固定するための左右見開き固定手段」を備えている。したがって、本発明では、ユーザーが、表示装置全体をその一方の片手のみで支持しようとするとき、前記左右見開き固定手段により形成される「断面略V字状の凹状部分(裏側から見ると、凸状部分)」又はその近傍の部分を、前記片手による支持の「取っ掛かり」とすることができる。よって、本発明によれば、ユーザーは、外出先(戸外)などで、例えば立ったままでも、2つの表示板を含む表示装置全体を、その一方の片手のみで容易且つ安定的に支持することができるようになる。
【0045】
すなわち、本発明では、前記の「ユーザーが、その片手の上に載せて、その片手だけで支持しながら使用できる(あるいは、小型の表示装置である)」という構成と、前記の「左右見開き固定手段」という構成とにより、「少なくとも2つ以上の表示板を見開き状態で使用するとき、ユーザーが、その片手の親指を、前記各表示板の左右見開き接続部分の表面側(ユーザー側)の断面略V字状の凹状部分(すなわち、約105度から約170度までの間のいずれかの角度に折り曲げられている谷状部分)に当てることにより、又は/及び、その片手の親指以外の指又は掌を、前記各表示板の見開き接続部分の裏面側(ユーザーに対向していない側)の山状の部分に当てることにより、ユーザーは、前記の表示板の全体を、ユーザーの片手だけで極めて容易且つ安定的に支持しながら使用することができる」という効果が得られる。
【0046】
(削除)
(当審注:本件訂正の訂正事項A−2を参照。)
【0047】
(削除)
(当審注:本件訂正の訂正事項A−3を参照。)
【0048】
2.上記の本発明の効果を図8を参照して説明すると、次の(1)〜(4)のとおりである。
【0049】
(1)図8(a)の場合の作用
図8(a)は、「互いに厚さ寸法が同一ではない2つの表示板(2つの表示パネル)91,92を、約180度の角度での完全見開きの状態に固定して成る表示装置を、ユーザーが片手で支持している場合」(本発明の範囲外)を示している。
【0050】
この場合は、ユーザーは、片手の親指93を前記2つの表示板91,92の表示画面側(ユーザーに対向する側)の何処かの場所に当てることになるが、その表示画面側は全体として約180度の水平面となっており、「親指を当てるときの、『取っ掛かり』となってくれるような部分(例えば、本発明における前記「断面略V字状の凹状部分」のような谷の部分)」が存在しないため、前記親指93の存在にも拘わらず前記各表示板91,92は「図示左右方向に、ぶれやすく、移動しやすい」状態となり、前記親指93により各表示板91,92を容易且つ安定的に支持することはできない。
【0051】
また、前記の片手の親指以外の指又は掌は、前記各表示板91,92の裏面側(ユーザーに対向しない側)に当てられるが、前記各表示板91,92の裏面側も全体として約180度の角度の略水平面となっており、「その親指以外の指又は掌を当てたときの、『取っ掛かり』になってくれる部分」が存在しないので、前記各表示板91,92は「図示左右方向に、ぶれやすく、移動しやすい」状態となり、前記親指以外の指又は掌により各表示板91,92を強く安定的に支持することはできない。
【0052】
以上より、この図8(a)の場合は、ユーザーが表示装置全体を片手だけで支持するときは、極めて不安定な支持しかできない。
【0053】
(2)図8(b)の場合の作用
次に、図8(b)は、「互いに厚さ寸法が異なる2つの表示板(2つの表示パネル)91,92を、ユーザーが自分の手で約130度くらいの角度で見開き状態にした(但し、前記2つの表示板を『前記約130度の左右見開き状態で固定(半固定を含む)すること』は、為されていない)まま、ユーザーが片手で支持している場合」(本発明の範囲外)を示している。
【0054】
この場合は、ユーザーは、片手の親指93を前記2つの表示板91及び92の接続部分の表示画面側(ユーザーに対向している側)に当てることになるので、この「断面略V字状の凹状の谷状部分(図8(b)の矢印Aで示す部分)」が「親指93を当てるときの、『取っ掛かり』のような部分」に一応はなってくれる。そのため、この「取っ掛かり」に当てられる親指93の存在により、前記各表示板91,92は、「図示左右方向に、ぶれること、移動すること」が少しは防止されるようになる。
【0055】
また、前記各表示板91,92の裏面側(ユーザーに対向していない側)は、前記各表示板91及び92が約130度の角度に突出する山状になっており、この「山状部分」が「前記親指以外の指又は掌を当てるに際しての『取っ掛かり』のような部分」に一応はなってくれるので、前記各表示板91,92が「図示左右方向に、ぶれること、移動すること」が、少しは防止されるようになっている。
【0056】
しかし、この図8(b)の場合は、前記の各表示板91と92との間の約130度くらいの角度での見開き状態が「固定(半固定を含む)」されてはいない(ユーザーが自分の手の力だけで約130度くらいの角度になるように支持しているだけである)。したがって、この図8(b)の場合は、各表示板91と92との間の角度は、図の矢印Bで示すように、「(約130度の角度のままで一定ということではなく)常にブラブラ・グラグラと不安定に変動してしまう状態」にある。よって、この図8(b)の場合は、各表示板91,92は、ユーザーが片手で支持している間、ずっと、図の矢印Bのように互いの接続部分の角度がブラブラと不安定に変動してしまう(前記の「各表示板91と92との間の角度(約130度)」が固定されておらず、一定していない)ので、ユーザーは、到底、片手のみで各表示板91,92を容易且つ安定的に支持することはできない。
【0057】
よって、ユーザーが各表示板91,92に表示された情報を見ようとしても、各表示板91,92が図の矢印Bのように常にブラブラ・グラグラと動いてしまうので、大変に見難く読み難くなってしまう(目も疲れてしまう)。また、本来的にブラブラと前記角度が変動してしまう2つの表示板91,92をユーザーが自分の手で約130度の角度に保持し続けなくてはならないので、ユーザーは手に不自然な力を入れ続ける必要があり、疲れてしまう。また、電子ペン94(図8(b)参照)を使用して文字を手書き入力するなどのペン入力操作や指先入力操作(タッチパネル方式での入力操作)をしようとする場合でも、入力操作時に発生するペン先又は指先からの押圧力により表示板92の位置が図の矢印Bのようにブラブラと大きく変動してしまい、大変に不安定であるため、手書き入力などのペン入力操作やタッチパネル式画面への指先の押圧操作などの「入力操作」が極めて難しくなってしまう。
【0058】
(3)図8(c)の場合の作用
次に、図8(c)は、本願発明の一実施形態で、「互いに厚さ寸法の異なる2つの表示板(2つの表示パネル)91,92が、約180度の完全見開き状態と折り畳み状態との間の、例えば約130度の角度で固定されている場合」である。
【0059】
この場合は、ユーザーは、片手の親指93を、前記2つの表示板91及び92の接続部分の表示画面側(ユーザーに対向している側)の「(2つの表示板91,92の接続部分の)断面略V字状の凹状に固定された谷状部分」((図8(c)の矢印A参照)に当てることになるので、この「断面略V字状の凹状に固定された谷状部分」が「親指93を当てるときの、『取っ掛かり』のような部分」となってくれる。そのため、この「取っ掛かりのような部分(谷状部分)」に当てられた親指93の存在により、前記各表示板91,92は、「図示左右方向に、ぶれること、移動すること」がほぼ完全に防止される。
【0060】
また、この場合は、ユーザーの前記片手の親指以外の指又は掌は、前記各表示板91,92の裏面側(ユーザーに対向していない側)に当てられるが、この裏面側は、前記各表示板91及び92が約130度の角度で固定されているため、「断面略V字状に突出・固定された山状部分」となっている(2つの表示板の接続部分のユーザーに対向する側が断面略V字状の凹状の谷状部分となっている場合は、その反対側(裏側)は、当然に、断面が略V字状の突状の山状部分となる)。そこで、この場合は、この裏面側の「断面が略V字状の突状に固定された山状部分」が、「前記の片手の親指以外の指又は掌を当てるときの『取っ掛かり』のような部分」となってくれる。そのため、前記の親指93の存在によるだけでなく、この「取っ掛かりのような部分(山状部分)」に当てられた親指以外の指又は掌の存在によっても、前記各表示板91,92が「図示左右方向に、ぶれること、移動すること」が、ほぼ完全に防止される。
【0061】
そして、この場合は、各表示板91,92が約130度の角度で見開き「固定(半固定を含む)」されているため、各表示板91,92の裏面側(ユーザーに対向しない側)の全体形状が、ユーザーの片手の「掌(手のひら)」の自然な形にフィットしやすい状態となる(なぜなら、人間の手をリラックスさせたときの自然な形とは、ちょうど「卵をつかむ」ときのような形であるが、このときの「掌(手のひら)」の形は、ちょうど「断面が略V字状の凹状」となるから)。
【0062】
そして、前記谷状部分を「取っ掛かり」として表面側(ユーザーに対向している側)に掛けられたユーザーの親指94と、その裏側の前記山状部分を「取っ掛かり」として裏面側(ユーザーに対向していない側)に掛けられたユーザーの親指以外の指又は掌とが、前記2つの表示板91,92を、その表面側と裏面側とからそれぞれ強固に安定的に支持するようになるので、表示装置をユーザーの片手の上に載せれば、ユーザーの片手のみでも、表示装置が全体として極めて容易且つ安定的に支持されるようになる。
【0063】
特に、電子ペン94による文字の手書き入力や指先による入力(タッチパネル方式)などの入力操作をするときでも、前記のように、2つの表示板91と92の間の角度が固定(半固定を含む)されているので、ペン先や指先から所定の押圧力を表示板92に与えても、表示板92が「ブラブラ・グラグラとぐらつく」ことはなく、入力ペンによる手書き入力などの入力操作やタッチパネル式画面への指先の操作などの「入力操作」が大変に安定的に且つ容易にできるようになる。
【0064】
(4)図8(d)の場合の作用
次に、図8(d)は、本願発明の一実施形態を示すもので、「互いに平面の面積と厚さ寸法がほぼ同一の2つの表示板(2つの表示パネル)91,92が、約130度の角度で見開かれた状態で固定されている場合」である。
【0065】
この場合も、図8(c)で前述したのと同様に、ユーザーは、片手のみでも極めて容易且つ安定的に表示装置を支持することができる。
(一部削除)
(当審注:本件訂正の訂正事項A−4を参照。)
【0066】
(削除)
(当審注:本件訂正の訂正事項A−5を参照。)
【0067】
3.次に、本発明の効果について、さらに、図9を参照して説明する。図9(a)に示すように、従来より、「キーボード104と、表示画面105aを表示するための表示パネル105とを、互いに折り畳み・見開き自在に接続したノート型パソコン」が販売されている。図9(a)は、この従来のノート型パソコンを元に、それをユーザーの片手の「掌(手のひら)」だけで支持できるように小型化したものを、本発明との比較のために特別に仮想的に用意して、それをユーザーが一方の片手だけで支持したときの動作を仮想的に示したものである。
【0068】
この場合は、ユーザーの親指101と小指102と掌103とにより、キーボード104の左右両側面と下面とを、それぞれ左右両側から及び下方向から支持することになる。そして、ユーザーは、他方の片手で、キーボード104を操作することができる。
【0069】
しかし、このような小型のノート型パソコンは、キーボード104と表示板105とが「ユーザーから見て左右方向(横方向)の線(図9(a)の一点鎖線Q参照)」を境にして折り曲げられている点で、2つの表示板が「ユーザーから見て上下方向(縦方向)の線(図9(b)の一点鎖線R参照)」を境にして折り曲げられている本発明とは、根本的に、その課題・構成・作用・効果を異にしている。
【0070】
すなわち、本発明では、図9(b)に示すように、2つの表示板(表示パネル)107,108が、「ユーザーから見て上下方向(縦方向)の線(図9(b)の一点鎖線R参照)」を境にして折り曲げ固定されている。
【0071】
そして、本発明では、この「ユーザーから見て上下方向(縦方向)の線R」に沿って、前記「断面略V字状の凹状部分(谷状部分)」が形成されている(図9(b)及び図9(c)の符号P参照)。そして、この「断面略V字状の凹状の谷状部分」Pが、ユーザーが前記2つの表示板107,108を安定的に支持するためにユーザーの親指106を掛けるための「取っ掛かり」となってくれている。また、本発明では、前記「断面略V字状の凹状の谷状部分」Pの裏側の「山状部分」が、ユーザーが前記2つの表示板107,108の裏面(ユーザーと対向していない側)にユーザーの親指以外の指又は掌を当てるための「取っ掛かり」となってくれている。
【0072】
以上のように、本発明では、図9(b)の符号Rで示す「ユーザーから見て上下方向(縦方向)の線」を境として、表示装置の右側部分と左側部分とを、前記の折り曲げられた任意の角度で(すなわち、断面が略V字状になった状態で)固定することが、可能になっている。
【0073】
したがって、本発明では、ユーザーがその片手で表示装置全体を支持するとき(又は、ユーザーが表示装置全体を片手の上に載置するとき)、ユーザーは、前記の折り曲げられた部分(「ユーザーから見て上下方向(縦方向)の線」又はその近傍の部分)に形成される「断面略V字状の凹状の谷状部分」に親指を掛けてそこを「取っ掛かり」にして表示装置を支持すること(又は、前記の断面略V字状の凹状の谷状部分の反対側の山状部分を「取っ掛かり」にして、表示装置を片手の親指以外の指又は掌の上に置くこと)により、前記表示装置の全体を極めて容易且つ安定的に支持することが可能になる。
【0074】
すなわち、一般に、▲1▼「平板状(表面が水平面状)の物体」を片手のみで支持すること(又は、平板状の物体を片手の掌の上に載置すること)と、▲2▼「断面が略V字状の凹部(谷状)になっている物体」を片手のみで支持すること(又は、「断面が略V字状の凹部になっている物体の裏面の山状部分」を片手の親指以外の指又は掌の上に載置すること)とを比較すると、後者(▲2▼)の方が格段に容易であることは、経験上もまた理論上も明らかである。
【0075】
すなわち、前者(▲1▼)の平板状の物体では、片手で持つときに、持つときの「取っ掛かり」が無いので、必要以上の握力が必要になり、片手の神経を集中させなくてはならないので、大変に緊張し疲れてしまう。これに対して、後者(▲2▼)の断面略V字状の物体では、前記の略V字状の谷状の部分とその裏側の山状部分がユーザーの手(指及び掌)で持つときの「取っ掛かり」となってくれるので、この部分を持てば小さな握力でも(すなわち、ユーザーが手に力を入れないで自然にリラックスした状態でも)容易に安定して持ち続けることができる。
【0076】
すなわち、前者(▲1▼)の平板状の物体では、それを片手の「掌(手のひら)」の上に載せようとしても、平板状なので、掌の上をズルズルと滑ってしまい易いため、そのズルズルと滑るのを防ごうとして必要以上の力を不自然な形で入れる必要があり、且つ、必要以上に神経を集中・緊張させる必要があり、その結果、長時間支持し続けようとすると過度の疲労(肩凝り、眼精疲労など)の原因となってしまう。
【0077】
これに対して、後者(▲2▼)の断面略V字状の物体では、極めて容易且つ安定的に、表示装置全体を、片手の「掌」の上で支持することが可能になる。
【0078】
なぜなら、まず、人間の片手の「掌」そのものが、もともと(自然にリラックスした状態においては)、「断面が略V字状の凹状」となっている(すなわち、片手で本や書類やタマゴなどの物を普通に支持している状態又は自然にリラックスした状態の片手の断面形状は、ちょうど「断面が略V字状の凹状=谷状」となっている)。そして、一般に、前記の表面側(ユーザー側)の断面略V字状の凹状の谷状部分の裏面側の山状の部分は、人間の片手の「掌」の中にちょうどうまくスッポリと収まり易い(人間の掌(手のひら)の形は、もともと、リラックスした状態では、ちょうど「断面が略V字状の凹状」となっているため)。したがって、本発明の左右見開き固定手段により形成される前記の各表示板間が断面略V字状に固定(半固定を含む)された表示装置は、ユーザーにとって、極めて小さな力で、リラックスした状態で、容易且つ安定的に、その片手の「掌」の上に載置し続けることを可能にするものなのである。
【0079】
以上のように、本発明によれば、前記左右見開き固定手段により、ユーザーが表示装置の全体を片手だけで支持すること又は片手の掌の上に載置することが、極めて容易になる。よって、本発明によれば、ユーザーが、外出中(戸外で)、例えば通勤電車内や路上などの様々な場所で、立ったままでも、表示装置を片手だけで支持しながら、又は表示装置を片手の掌の上に載置・支持しながら、安定的に使用し続けることが極めて容易になる。
【0080】
(削除)
(当審注:本件訂正の訂正事項A−6を参照。)」

(エ) 平成14年8月5日付け手続補正の内容について
平成14年8月5日付け手続補正により、図面において次の図8及び図9が追加された(甲12)。
「【図8】


「【図9】




(オ) 分割要件と本件特許出願の出願日について
前記(イ)〜(エ)において摘記した記載内容をみると、本件特許の明細書等に記載された以下のa(a−1)〜(a−3)に示す断面略V字状の部分に対する持ち方に関する一連の事項、b(b−1)及び(b−2)に示す左右見開き固定手段のハードウェア的構成に関する事項、(c)に示す左右見開き固定手段が「チルト機構やその他の手段」により固定すること(左右開き固定手段の具体例)が、第2世代分割出願の出願当初の明細書又は図面(甲8)には記載されておらず、またこれらの事項は、甲8の記載から自明であるということはできない。
そうすると、本件特許の明細書等が、第2世代分割出願の出願当初の明細書等(甲8)に対する補正後の明細書等であると仮定した場合に、その補正は、第2世代分割出願の出願当初の明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、第2世代分割出願の出願当初の明細書等(甲8)との関係において、新規事項を追加する補正である。
したがって、本件特許出願は、第2世代分割出願に対して分割要件を満たしておらず、本件特許の出願日は現実の出願日である平成14年7月5日である。

a 断面略V字状の部分に対する持ち方に関する一連の事項
(a−1) 左右見開き固定手段が、2つの表示板の接続部分に「ユーザーがその片手の親指を安定的に置くことを可能にするための、断面略V字状の凹状(谷状)部分」を形成する作用を有していること(【0012】)。

(a−2) 左右見開き固定手段が、2つの表示板の接続部分に「ユーザーが、前記表示装置を、その片手の親指以外の指又は掌の上に安定的に載置することを可能にするための、断面略V字状の凸状(山状)部分」を形成する作用を有していること(【0012】)。

(a−3) 上記(a−1)及び(a−2)の事項と関連した図8及び図9の図示内容並びにそれらの図示内容に対応した明細書の【0048】〜【0079】(発明の効果)の記載。

b 左右見開き固定手段のハードウェア的構成に関する事項
(b−1) 左右見開き固定手段が、左右見開き接続手段と一体的に構成されている(ハードウェア的に一体化されている)こと。
また、前記一体的な構成が、例えば、(1)前記左右見開き接続手段を構成する「ヒンジ部(蝶番)」の各部材に摩擦係数の高い素材を使用することにより、ヒンジ部(蝶番。接続部分)の摩擦係数を高めて、2つの表示板の間の角度が一時的に固定できるようにした構成(蝶番の接続面の摩擦係数を高くして、2つの表示板の間が所定の折り曲げ角度で一時的に固定できるようにしたもの、など)、(2)前記左右見開き固定手段を構成するストッパ部分と前記左右見開き接続手段とをプラスチック素材や金属素材などで一体成形した構成、などであること(【0012】)。

(b−2) 左右見開き固定手段が、左右見開き接続手段又は表示板と容易に分離できないように構成されていること。
また、前記容易に分離できない構成が、例えば、(1)前記左右見開き固定手段と前記左右見開き接続手段(又は前記表示板)とが、プラスチック素材や金属素材などで一体成型されてハードウェア的に一体化されている構成(この場合は当然に「容易に分離できない」状態である)、(2)接着剤や溶接や係止用フックなどの手段を使用して、前記左右見開き固定手段を構成するストッパ部分を、前記左右見開き接続手段(又は前記表示板)に対して、容易に分離できないように固定した構成、(3)前記チルト機構(軸及びコイルスプリングなど)を2つの表示板の接続部分(ヒンジ部)に内蔵させた構成、などであること(【0012】)。

(c) 左右見開き固定手段が「チルト機構やその他の手段」により固定すること(【0010】〜【0012】、【0026】)。

(カ) 被請求人の主張について
a 被請求人の主張の概要
被請求人は、次の(a)〜(c)に示す主張をしている。
(a) 「断面略V字状」の部分について
甲8の2つの表示板は、略平板状の表示板であるから、ユーザーが2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして使用するときは、2つの表示板の全体が断面略V字状となることは当業者に自明の事項である。
甲8の段落【0015】中の「ユーザーは、このCD−ROM再生装置をあたかも本を見開き状態にして本を読んでいるのと同じ感覚で使用できる。」という記載から、2つの表示板の画面が表示される側の接続部分(蝶番)及びその近傍の部分である谷状部分に片手の親指を当接し、その裏側の接続部分(蝶番)及びその近傍の部分である山状部分に片手の掌及び親指以外の指を当接させることにより、2つの表示板の全体を支持することは、当業者に自明の事項である。

(b) 一体的構成、容易に分離できない構成について
甲12補正により追加された「左右見開き固定手段が、左右見開き接続手段と一体的に構成されている(ハードウェア的に一体化されている)こと」は、一体成型されていることを意味するのではなく、「複数の部品の組み合わせにより一つのモジュール(一つの複合部品)」として構成されていることを意味していることは明らかであり、2つの表示板を接続して成る表示装置の技術分野における当業者が電子機器の設計をする際に当然に適宜考慮し選択する設計的事項にすぎないものであり、当業者に自明の事項である。
甲12補正により追加された「左右見開き固定手段が、左右見開き接続手段又は表示板と容易に分離できないように構成されていること」は、従来より周知ではない、特別な構成を含むものではないことは明らかであり、2つの表示板を接続して成る表示装置の技術分野における当業者であれば当然に知っている技術常識(周知技術)であるから、当業者が電子機器の設計をする際に当然に適宜考慮し選択する設計的事項にすぎないものであり、当業者に自明の事項である。

(c) 「チルト機構やその他の手段」について
第2世代分割出願の出願当初の明細書又は図面(甲8)の段落【0012】中の「ストッパを設ける等」の「等」の記載から、「その他の手段」は当業者に自明の事項である。
甲2や甲3などのような、従来の摩擦力を利用したチルト機構(フリーストップ型チルト機構)を代替し得る「(チルト機構や)その他の手段」が存在すること、それ自体も、甲8の記載及び技術常識からみて当業者に自明の事項である。
(令和4年7月26日差出の「審決予告に対する上申書」の「第5」〜「第7」31〜39頁)

b 被請求人の主張に対する当審の判断
(a) 「断面略V字状」の部分について
甲8において、ユーザーが2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして使用するときは、2つの表示板の全体が断面略V字状となることは当業者に自明の事項であるとしても、ユーザーの指や掌を当該断面略V字状部分にどのように当接させるかについてまでは、自明であるとはいえない。
甲8の段落【0015】中の「ユーザーは、このCD−ROM再生装置をあたかも本を見開き状態にして本を読んでいるのと同じ感覚で使用できる。」という記載は、ユーザーの指や掌を表示装置にどのように当接させるかについてまで言及していないから、この記載を根拠として当業者に自明の事項であるとはいえない。

(b) 一体的構成、容易に分離できない構成について
甲12補正により追加された「左右見開き固定手段が、左右見開き接続手段と一体的に構成されている(ハードウェア的に一体化されている)こと」が、「複数の部品の組み合わせにより一つのモジュール(一つの複合部品)」として構成されていることを意味しているとしても、(1)前記左右見開き接続手段を構成する「ヒンジ部(蝶番)」の各部材に摩擦係数の高い素材を使用することにより、ヒンジ部(蝶番。接続部分)の摩擦係数を高めて、2つの表示板の間の角度が一時的に固定できるようにする場合(蝶番の接続面の摩擦係数を高くして、2つの表示板の間が所定の折り曲げ角度で一時的に固定できるようにしたもの、など)、(2)前記左右見開き固定手段を構成するストッパ部分と前記左右見開き接続手段とをプラスチック素材や金属素材などで一体成形する場合であることまでは、当業者に自明の事項であるとはいえない。
甲12補正により追加された「左右見開き固定手段が、左右見開き接続手段又は表示板と容易に分離できないように構成されていること」が、従来より周知ではない、特別な構成を含むものではないとしても、(1)前記左右見開き固定手段と前記左右見開き接続手段(又は前記表示板)とが、プラスチック素材や金属素材などで一体成型されてハードウェア的に一体化されている場合(この場合は当然に「容易に分離できない」状態である)、(2)接着剤や溶接や係止用フックなどの手段を使用して、前記左右見開き固定手段を構成するストッパ部分を、前記左右見開き接続手段(又は前記表示板)に対して、容易に分離できないように固定している場合、(3)前記チルト機構(軸及びコイルスプリングなど)を2つの表示板の接続部分(ヒンジ部)に内蔵させた場合であることまでは、当業者に自明の事項であるとはいえない。

(c) 「チルト機構やその他の手段」について
甲8の段落【0012】中の「ストッパを設ける等」の「等」の記載から、「その他の手段」は当業者に自明の事項であるとしても、当該「その他の手段」に「チルト機構」が含まれることまでは自明とはいえない。
従来の摩擦力を利用したチルト機構(フリーストップ型チルト機構)が甲2や甲3に開示されていても、それを根拠として甲8の「その他の手段」に「チルト機構」が含まれることが自明であるといえない。

(キ) 甲12補正と明細書の要旨変更
念のため、甲10補正が明細書の要旨を変更するものでなく、第1世代分割出願、第2世代分割出願及び本件特許出願がいずれも適法な分割出願であるとした場合において、本件特許の出願日を検討するため、平成14年8月5日付けの手続補正書(甲12)による補正(以下「甲12補正」という。)が明細書の要旨変更に該当するか否かについて検討する。

a 判断の概要
甲12補正後の明細書又は図面に記載された以下の(a)〜(c)に示す断面略V字状の部分に対する持ち方に関する一連の補正事項は、本件特許の出願当初の明細書又は図面(甲9)には記載されておらず、また、これらの事項は、甲9の記載から自明であるということはできない。

(a) 左右見開き固定手段が、2つの表示板の接続部分に「ユーザーがその片手の親指を安定的に置くことを可能にするための、断面略V字状の凹状(谷状)部分」を形成する作用を有していること(【0012】)。

(b) 左右見開き固定手段が、2つの表示板の接続部分に「ユーザーが、前記表示装置を、その片手の親指以外の指又は掌の上に安定的に載置することを可能にするための、断面略V字状の凸状(山状)部分」を形成する作用を有していること(【0012】)。

(c) 上記(a)及び(b)の事項と関連した図8及び図9の図示内容並びにそれらの図示内容に対応した明細書の【0048】〜【0080】(発明の効果)の記載。

b 「断面略V字状」の部分について
前記補正事項(a)〜(c)は、「左右見開き固定手段」に関する事項を含み、以下に詳述するとおり、「左右見開き固定手段」について、新しい作用・効果(「左右見開き固定手段」の新しい使い方、有用性)を追加するものである。まず、「左右見開き固定手段」が形成する「断面略V字状」の部分について、甲12補正の前後でどのように説明されていたのか検討する。

(a) 本件特許の当初明細書等(甲9)の記載について
前記補正事項(a)〜(c)の「左右見開き固定手段」が形成する「断面略V字状」の部分に関し、本件特許の出願当初の明細書又は図面(甲9)には次の記載がある。
「【0039】(2)本発明においては、前述のように、
・表示装置は、前記中心線を中心として折り曲げられた前記の右半分と左半分とを任意の角度で固定するための固定手段であって、前記の右半分と左半分とが前記中心線を中心にして互いに近づく方向に折り曲げられたとき、表示装置の全体をユーザーがその片手で支持し易いような又はユーザーがその片手の上に載置し易いような角度の範囲である約110度から約170度までの範囲内の任意の角度で、固定するための固定手段、を備えている、という構成が採用されている。つまり、本発明では、前記の中心線を中心として、その右半分と左半分とを、前記の折り曲げられた任意の角度で(すなわち、断面が略V字状になった状態で)固定すること(なお、本発明での「固定」には、摩擦力などにより半固定する場合や一時的に固定する場合なども、含まれる)が、可能になっている。したがって、本発明では、ユーザーがその片手で表示装置全体を支持するとき(又は、ユーザーが表示装置全体を片手の上に載置するとき)、ユーザーは、前記の折り曲げられた中心線又はその近傍の部分(デルタ部分)を中心に持って支持すること(又は、前記の折り曲げられた中心線又はその近傍の部分(デルタ部分)を中心に片手の「手のひら」の上に置くこと)により、前記表示装置の全体を、片手のみで安定的に且つ容易に支持することが可能になる。すなわち、一般に、平板状の物体を片手のみで支持すること(又は、平板状の物体を片手の手のひらの上に載置すること)と、断面が略V字状になっている物体を片手のみで支持すること(又は、断面が略V字状になっている物体を片手の手のひらの上に載置すること)とを比較すると、後者の方が格段に容易であることは、経験上もまた理論上も明らかである。例えば、前者の平板状の物体では、片手で持つときに、持つときの「取っ掛かり」がないので、必要以上の握力が必要になる。これに対して、後者の略V字状の物体では、前記の略V字状のデルタ部分が持つときの「取っ掛かり」となってくれるので、この部分を持てば小さな握力でも容易に安定して持ち続けることができる。また、例えば、前者の平板状の物体では、それを片手の「手のひら」の上に載せようとしても、平板状なので、手のひらの上をズルズル滑ってしまい易いため、そのズルズル滑るのを防ごうとして必要以上の力を入れる必要があり、且つ、必要以上に神経を集中させる必要があり、その結果、長時間支持し続けようとすると過度の疲労の原因となってしまう。これに対して、後者の略V字状の物体に関しては、人間の片手の「手のひら」そのものが自然な状態では「断面が略V字状」となっている(片手で本や書類などの物を支持している状態の片手の断面形状は略V字状となっている)ので、略V字状の物体は、人間の片手の「手のひら(断面が略V字状)」の中にうまくスッポリと収まり易い。したがって、略V字状の物体は、人間にとっては、極めて小さな力で、容易に且つ安定的に、その片手の「手のひら」の上に載置し続けることができる。以上のように、本発明によれば、前記固定手段により、ユーザーが表示装置の全体を片手で安定的に支持すること又は片手の手のひらの上に安定的に載置することが、極めて容易になる。よって、本発明によれば、ユーザーが、通勤電車内や路上などの様々な場所で、立ったまま、表示装置を片手で支持しながら、又は表示装置を片手の手のひらの上に載置しながら、使用し続けることが極めて容易になる。」

(b) 甲9の「断面略V字状」の意義について
前記(a)に摘記した記載から、本件特許の当初明細書等(甲9)では、表示装置の表示板が「折り曲げられた中心線又はその近傍の部分(デルタ部分)」を「断面が略V字状になっている物体」であると考え、「略V字状の物体では、前記の略V字状のデルタ部分が持つときの「取っ掛かり」となってくれるので、この部分を持てば小さな握力でも容易に安定して持ち続けることができる」としているところ、その理由は、「人間の片手の「手のひら」そのものが自然な状態では「断面が略V字状」となっている」ことから、「断面略V字状の物体は、人間の片手の「手のひら(断面が略V字状)の中にうまくスッポリと収まり易い」としている。
すなわち、本件特許の当初明細書等(甲9)では、折り曲げられた表示装置の断面略V字形状と、自然な状態での手のひらの断面略V字形状は、空間的な位置がずれることなく立体形状としてうまく重なり合うことにより、「うまくスッポリと収まる」ことを前提として、「略V字状の物体では、前記の略V字状のデルタ部分が持つときの「取っ掛かり」となってくれるので、この部分を持てば小さな握力でも容易に安定して持ち続けることができる」としている。
ここで、自然な状態での手のひらの断面略V字形状は、常識的に見て、「遠位手掌皮線(手相において「感情線」と呼ばれるもの)と近位手掌皮線(手相において「頭脳線」とよばれるもの)に概略沿って、谷底が形成される断面略V字形状である(参考図参照)。
参考図は、医学書院の下記URLのウェブサイトから引用した。
https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2022/hand_01

<参考図>


以上を踏まえると、甲9が説明している、折り曲げられた表示装置の断面略V字形状と、自然な状態での手のひらの断面略V字形状が「うまくスッポリと収まる」という、「略V字状の物体では、前記の略V字状のデルタ部分が持つときの「取っ掛かり」となってくれるので、この部分を持てば小さな握力でも容易に安定して持ち続けることができる」状態とは、次の参考図が示す状態であると考えるのが相当である。


そうすると、折り曲げられた表示装置の断面略V字形状と、手のひらの断面略V字形状が立体形状としてうまく重なり合った状態を維持するためには、表示装置の中心線と自然な状態での手のひらの断面略V字形状の谷の部分が平行になるような形態で支持することが必要となるから、そのような支持形態では、親指は、表示装置の中心線又はその近傍の部分(デルタ部分)に重なることはなく、表示板の中心線から離れた位置において、表示板と接触していることになる。
その場合に親指が表示板の裏面側において表示板と接触していたのでは、表示装置を手のひらの上に安定的に支持することはできないから、通常は、親指の他に例えば小指等を親指とともに表示板の表面側に置き、手のひらの断面略V字形状を維持しながら支持する持ち方が最も自然な持ち方である。
そうすると、本件特許の当初明細書等(甲9)においては、親指の他に例えば小指を表示板の中心線から離れた表面側の位置に置いて表示装置を手のひらに安定的に支持する持ち方を前提とし、そのような持ち方における「左右見開き固定手段」が形成する「断面略V字状」の部分の果たす意義(作用・効果)が甲9において開示されているといえる。

(c) 甲12補正後の記載について
甲12補正後の【0059】〜【0061】、【図8】の記載は次のとおりである。
「 【0059】
この場合は、ユーザーは、片手の親指93を、前記2つの表示板91及び92の接続部分の表示画面側(ユーザーに対向している側)の「(2つの表示板91,92の接続部分の)断面略V字状の凹状に固定された谷状部分」((図8(c)の矢印A参照)に当てることになるので、この「断面略V字状の凹状に固定された谷状部分」が「親指93を当てるときの、『取っ掛かり』のような部分」となってくれる。そのため、この「取っ掛かりのような部分(谷状部分)」に当てられた親指93の存在により、前記各表示板91,92は、「図示左右方向に、ぶれること、移動すること」がほぼ完全に防止される。
【0060】
また、この場合は、ユーザーの前記片手の親指以外の指又は掌は、前記各表示板91,92の裏面側(ユーザーに対向していない側)に当てられるが、この裏面側は、前記各表示板91及び92が約130度の角度で固定されているため、「断面略V字状に突出・固定された山状部分」となっている(2つの表示板の接続部分のユーザーに対向する側が断面略V字状の凹状の谷状部分となっている場合は、その反対側(裏側)は、当然に、断面が略V字状の突状の山状部分となる)。そこで、この場合は、この裏面側の「断面が略V字状の突状に固定された山状部分」が、「前記の片手の親指以外の指又は掌を当てるときの『取っ掛かり』のような部分」となってくれる。そのため、前記の親指93の存在によるだけでなく、この「取っ掛かりのような部分(山状部分)」に当てられた親指以外の指又は掌の存在によっても、前記各表示板91,92が「図示左右方向に、ぶれること、移動すること」が、ほぼ完全に防止される。
【0061】
そして、この場合は、各表示板91,92が約130度の角度で見開き「固定(半固定を含む)」されているため、各表示板91,92の裏面側(ユーザーに対向しない側)の全体形状が、ユーザーの片手の「掌(手のひら)」の自然な形にフィットしやすい状態となる(なぜなら、人間の手をリラックスさせたときの自然な形とは、ちょうど「卵をつかむ」ときのような形であるが、このときの「掌(手のひら)」の形は、ちょうど「断面が略V字状の凹状」となるから)。」

「【図8】



(d) 甲12補正後の「断面略V字状」の意義について
甲12補正後は、段落【0059】及び【0060】の記載から明らかなように、「断面略V字状の凹状(谷状)部分」は、親指を当てるときの『取っ掛かり』となる部分となり、断面略V字状の凸状(山状)部分」は、「前記の片手の親指以外の指又は掌を当てるときの『取っ掛かり』のような部分」となるとしており、断面略V字状の部分は、人の指を当てるのに適した部分(指の『取っ掛かり』として当てる部分)であるとしている。
そして、【図8】(c)から明らかなように、断面略V字状の部分に親指を当てると、手のひらの形状は断面略V字状の自然な状態から崩れたものとなり、「うまくスッポリと収まっている」とはいえず、単に親指を断面略V字状の部分に『取っ掛かり』として当てることにより、表示装置の表面と裏面から指で挟んで支持しているにすぎない。
(【0061】では、「ユーザーの片手の「掌(手のひら)」の自然な形にフィットしやすい状態となる」としており、「うまくスッポリと収まっている」状態であるとしていない。)
すなわち、甲12補正後は、本件特許の当初明細書等(甲9)とは異なり、折り曲げられた表示装置の断面略V字形状と、自然な状態での手のひらの断面略V字形状が、空間的な位置がずれることなく立体形状としてうまく重なり合うことを前提としておらず、表示装置の中心線と自然な状態での手のひらの断面略V字形状の谷の部分が平行になるような形態で支持することを必要としていない。
したがって、甲12補正後の持ち方は、甲9の持ち方とは異なり、親指と小指を表示板の表面側に置いて、手のひらの断面略V字形状を維持しながら支持するような持ち方を前提としておらず、親指を断面略V字状の部分に『取っ掛かり』として当てることにより、表示装置の表面と裏面から指で挟んで支持する持ち方に変更されたといえる。
そうすると、「左右見開き固定手段」が形成する「断面略V字状」の部分の果たす意義(作用・効果)が、本件特許の当初明細書等(甲9)と甲12補正後の間で異なるものとなることは明らかである。

c 甲12補正の明細書の要旨変更についての判断
前記bにおいて検討したとおり、「左右見開き固定手段」が形成する「断面略V字状」の部分については、本件特許の当初明細書等(甲9)では、手のひらの上に載置するのに適した部分(手のひらに「うまくスッポリと収まっている」部分)であるとしていたのに対して、甲12補正後は、人の指を当てるのに適した部分(指の『取っ掛かり』として当てる部分)であるとして、その意義が変更された。
ここで、「断面略V字状」の部分が指を当てるのに適した部分(指の『取っ掛かり』として当てる部分)であるという事項は、本件特許の当初明細書等(甲9)に記載はなく、また、当業者にとってその事項自体を直接表現する記載はないが、補正前の明細書に記載されている技術内容を、出願の時点において当業者が客観的に判断すれば、その事項自体が記載してあったことに相当すると認められるともいえない。
このように「断面略V字状」の部分の意義が、手のひらに載置するのに適した部分(手のひらに「うまくスッポリと収まっている」部分)であることから指を当てるのに適した部分(指の『取っ掛かり』として当てる部分)であることに変更されると、「左右見開き固定手段」の果たす作用・機能の認識が変質することになり、その結果、「取っ掛かり」という機能を有する手段としての「断面略V字状」の部分は、技術手段として意味が変化していることとなるから、このような作用・機能の認識変質をもたらす甲12補正は、技術思想を変質することとなり、特許請求の範囲に記載した技術的事項を実質的に変化させるものであるというべきである。
したがって、甲12補正の結果、特許請求の範囲に記載した技術的事項が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でないものとなったといえるから、甲12補正は、明細書の要旨を変更するものである。

d 小括
以上検討のとおり、甲10補正が明細書の要旨を変更するものでなく、第1世代分割出願、第2世代分割出願及び本件特許出願が適法な分割出願であるとしても、甲12補正は明細書の要旨を変更するものである。
そして、甲12補正は、本件特許の願書に添附した明細書について出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前にした補正であり、明細書の要旨を変更するものと特許権の設定の登録があつた後に認められたものであるから、平成5年法律第26号による改正前の特許法40条の規定により、本件特許の特許出願は、甲12補正について手続補正書を提出した時である平成14年8月5日にしたものとみなされるから、本件特許の現実の出願日である平成14年7月5日よりも前になることはない。

キ 出願日についての小括
以上検討した内容をまとめると以下の(ア)〜(エ)のとおりであり、本件特許の出願日が平成9年11月10日よりも前に遡及することはない。
そうすると、甲11(最先の出願の公開特許公報)は、本件特許の出願日よりも前の平成5年3月12日に発行された先行技術文献になり、また、本件特許出願についてされた甲12補正の適否は、新規事項の追加に当たるかどうかという基準で判断されることになる。

(ア) 最先の出願の出願日について
最先の出願について、願書に添附した明細書について出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前にした補正である甲10補正は、明細書の要旨を変更するものであるから、平成5年法律第26号による改正前の特許法40条の規定により、最先の出願は、甲10補正の手続補正書を提出した平成10年6月16日にされたものとみなされる。

(イ) 第1世代分割出願の出願日について
最先の出願の分割出願である、第1世代分割出願の出願日は、平成3年8月30日まで遡及はせず、第1世代分割出願の現実の出願日である平成9年11月10日である。

(ウ) 第2世代分割出願の出願日について
第2世代分割出願の甲13補正は、第1世代分割出願の出願当初の明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、第1世代分割出願の出願当初の明細書等(甲7)との関係において、新規事項を追加する補正であるから、第2世代分割出願は、第1世代分割出願に対して分割要件を満たしておらず、その出願日は現実の出願日である平成12年2月9日である。

(エ) 本件特許の出願日について
a 本件特許の明細書等は、第2代分割出願の出願当初の明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、第2世代分割出願の出願当初の明細書等(甲8)との関係において、新規事項を追加する補正であるから、本件特許出願は、第2世代分割出願に対して分割要件を満たしておらず、本件特許の出願日は現実の出願日である平成14年7月5日である。

b 仮に甲10補正が明細書の要旨を変更するものでなく、第1世代分割出願、第2世代分割出願及び本件特許出願が適法な分割出願であるとしても、前記カ(カ)において検討したとおり、甲12補正は、本件特許の願書に添附した明細書について出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前にした補正であり、明細書の要旨を変更するものと特許権の設定の登録があつた後に認められたものであるから、平成5年法律第26号による改正前の特許法40条の規定により、本件特許の特許出願は、甲12補正について手続補正書を提出した時である平成14年8月5日にしたものとみなされる。したがって、本件特許の出願日が前記aの平成14年7月5日よりも前になることはない。ただし、この場合、甲12補正に平成5年法律第26号による改正前の特許法40条の規定を適用したので、甲12補正が特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないことを理由とする無効理由2−2については、この場合には検討することはできず、無効理由2−1についての検討が行われることになる。

(2) 無効理由2−1について
ア 甲11発明の認定
(ア) 甲11号証の記載事項
最先の出願の公開特許公報である甲11号証(特開平5−61423号公報(平成5年3月12日発行))には、次の技術事項が記載されている。
a 2頁左欄1〜13行
「【特許請求の範囲】
【請求項1】第1の画面および第2の画面を、それぞれ出力する第1のディスプレーおよび第2のディスプレーと、
前記第1のディスプレーの端部と前記第2のディスプレーの端部を、互いに折り曲げ自在に接続する接続手段と、を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項2】互いに協働して1つの画面を構成できる第1の画面および第2の画面を、それぞれ出力する第1のディスプレーおよび第2のディスプレーと、
前記第1のディスプレーの端部と前記第2のディスプレーの端部を、互いに折り曲げ自在に接続する接続手段と、を含むことを特徴とする表示装置。」

b 2頁左欄14〜23行
「【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】本発明は、CD−ROM(コンパクトディスクを使用した読み出し専用メモリ)、FD(フロッピーディスク)、光磁気ディスク、ICカード、光カード等の情報記憶媒体から情報を読み出してディスプレー画面に表示できるディスプレー(表示装置)に係り、特に携帯時には携帯に便利なコンパクト・サイズでありながら使用時には比較的大きな見やすいディスプレー画面を提供できる、あるいは使用時に複数のディスプレー画面を提供できる、表示装置に関する。」

c 2頁左欄24〜41行
「【従来の技術】近年の情報化の進展に伴い、携帯用のコンパクト・サイズの電子情報機器、例えばCD−ROM再生専用装置(例えばソニー株式会社の商品名「データディスクマン」)、VTR(ビデオテープレコーダー)、TV(テレビ)、A4版ファイル・サイズのノートブックパソコン(パーソナルコンピュータ)、電子手帳、などの携帯型電子情報機器が続々と製品化されている。これらの携帯型電子情報機器においては、そのディスプレー画面の出力のためのディスプレーパネルとしてLCD(液晶ディスプレー)パネルなどを使用した薄型ディスプレーが使用されている。そして、このような情報機器においては、一般に、この薄型ディスプレーとキーボード等の入力装置とが、周知の手段により、互いに折り曲げ自在に、特に折り畳み自在に接続されている。そしてユーザーは、携帯時には、前記薄型ディスプレーと入力装置とを折り畳んだ状態で持ち運び、使用時には、これらのディスプレーと入力装置を互いに見開き状態にして使用するのが一般である。」

d 2頁左欄42行〜同頁右欄6行
「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の携帯型電子情報機器においては、携帯の便利さを追求すればディスプレー装置などのサイズは小さいほどよいが、他方、ユーザーが使用するときの便宜を考えればディスプレー画面のサイズは見ずらくならない程度には大きくしておく必要がある、という二律背反の問題があった。本発明は、このような従来技術の二律背反の課題に着目してなされたもので、携帯の便利さ(コンパクト化)と使用時のディスプレー画面の見やすさ(画面の大きさのある程度の確保)という2つの要請を同時に満たし、前記の二律背反の問題を一挙に解決することができるディスプレー装置を提供することを目的とする。また本発明は、携帯時のコンパクト化を実現するとともに使用時には同時に複数のディスプレー画面をみることができる表示装置を提供することを目的とする。」

e 2頁右欄7行〜3頁左欄34行
「【課題を解決するための手段】本発明に係る表示装置は、第1の画面および第2の画面を、それぞれ出力する第1のディスプレーおよび第2のディスプレーと、前記第1のディスプレーの端部と前記第2のディスプレーの端部を、互いに折り曲げ自在に接続する接続手段とを含むことを特徴とする。また本発明のディスプレーは、互いに協働して1つの画面を構成できる第1の画面および第2の画面を、それぞれ出力する第1のディスプレーおよび第2のディスプレーと、前記第1のディスプレーの端部と前記第2のディスプレーの端部を、互いに折り曲げ自在に接続する接続手段とを含むことを特徴とする。また本発明では、前記第1のディスプレーと第2のディスプレーを見開き状態にしたとき、これらの2つのディスプレーを、少なくともその両者の装置の画面の間の角度が120度から180度の間の所定の2つの角度で固定する手段をさらに含むのがよい。さらに本発明では、前記第1のディスプレーと第2のディスプレーを見開き状態にしたとき、これらの2つのディスプレーを、少なくともその両者のディスプレーの画面の間の角度が120度から180度の間の任意の角度で固定されるように、摩擦力により固定する手段をさらに含むのがよい。さらに本発明では、前記の第1および第2のディスプレーの少なくともいずれか一方は、情報入力機能をも有するもの、例えばディスプレー画面の中に表示されたアイコン(絵文字)等を所定の入力ペン等でポインティングすることより所定の情報を入力したり、所定の入力ペンで画面の所定の領域にローマ字やひらがなを手書き入力できるような入力装置を含むものであってもよい。」

f 2頁右欄35行〜3頁左欄6行
「【作用】請求項1の本発明によれば、ユーザーは、携帯時には2つのディスプレーを折り曲げてコンパクトにして持ち運び、使用時には、2つのディスプレーを見開きの状態にして2つのディスプレー画面から別個の情報を同時に見る等のメリットがある。また請求項2の本発明によれば、ユーザーは、携帯時には、第1と第2の2つのディスプレーを折り曲げ、あるいは折り畳むことにより、装置全体を携帯に便利なコンパクト・サイズにすることができる。またユーザーは、使用時には、第1と第2のディスプレーを見開き状態にして使用することにより、2つのディスプレー画面を、合わせて1つの大きな画面として使用することができる。つまり、前記の第1と第2のディスプレーを見開き状態にすると、ユーザーにとっては、これらの2つのディスプレーのそれぞれの第1の画面と第2の画面とは互いに並んだ状態になる。しかも、本発明では、これらの第1と第2の画面は互いに協働して1つの画面を構成できるようになっている。したがって、ユーザーは、これらの2つの(本発明の実施例としては3つ以上であってもよい)第1および第2の画面を合わせて1つの大きな画面として使用することが可能となる。」

g 3頁左欄7行〜同頁右欄29行
「【実施例】以下図面を参照して本発明の1実施例を説明する。図1は本発明の第1実施例に係る、CD−ROM再生専用装置を示す概略正面図である。なおこの図1には、本発明に関係する部分のみ示してあり、従来公知の部分、例えば電源を入れるためのキーや再生・停止・早送り・巻戻し・検索等を指示するためのキー、検索のためのキーワードを入力するためのキーなどは、省略してある。図1において、符号1は枠体(きょう体)である。この枠体1の中には、CD−ROM駆動装置3、このCD−ROM駆動装置3からの信号を処理する信号処理装置4、LCD(液晶ディスプレー)、前記信号処理装置からの信号を受けてこのLCDを駆動するLCD駆動装置6、電源などが収納されている。またこの枠体1は、前記LCDによりLCD画面を出力するLCDパネル5(以下では符号5をLCD画面を示すものとしても用いる)を備えている。なお図1では、図示の便宜上CD−ROM駆動装置3は枠体1の外側に記載されているが、実際には枠体1の中の例えばLCD画面5を出力するLCDの裏側に収納されている。また符号2も枠体(きょう体)で、この枠体2の中には、LCDとこのLCDを駆動するためのLCD駆動装置8などが収納され、またこのLCDによりLCD画面を出力するLCDパネル7(以下ではこの符号7を画面を示すためにも用いる)が備えられている。また本実施例では、前記の枠体1と枠体2とは、図示のように、その端部同士が、比較的小さい丁番9と比較的大きい丁番10とにより、折り曲げ自在に接続(連結)されている。これにより、枠体1と枠体2とは、本実施例の平面図である図2に示すように、図2の(a)の見開き状態から、同(b)の半見開き状態を経て、さらに同(c)の折り畳み状態へと、自在に折り曲げることができるようになっている。また逆に、同(c)の状態から同(b)の状態を経て同(a)の状態にすることもできる。また本実施例では、丁番9および10を構成する部材間の摩擦力により、枠体1および枠体2との間は、任意の角度で一時的に固定または半固定でき、その一時的に固定した状態(例えば図2の(b)の状態)で使用できるようになっている。またこのような固定は単に摩擦力によるものであるため、ユーザーは、所定量以上の力を加えることにより自由にその角度を変化させることができるようになっている。なお本実施例での前記丁番9および10については、従来周知のものを使用できる。また本実施例では、丁番9および10の構造を従来周知の方法で工夫すること(ストッパを設ける等)により、2つの枠体1および2の間の角度が180度から90度までの間の例えば5段階の角度でストッパがかかって固定できるように、構成してもよい。また本実施例では、図1に示すように、LCD画面5と枠体1の図示右側の端部との間隔、およびLCD画面2と枠体2の図示左側の端部との間隔は、極めて小さいものとなっている。そして、枠体1と枠体2を接続する丁番のうち、2つのLCD5および7に対向する端部の間を接続する丁番9は、比較的小さいものを使用している。したがって、本実施例においては、LCD画面5および7の間の間隔は極めて小さいものとなっている。そのため、ユーザーにとっては、LCD画面5および7の間の間隔はほとんど無視できるものとなっており、ユーザーにとっては、この二つのLCD画面5および7が合わさってあたかも一つの大きな画面として見ることができるようになっている。なお前記枠体2内のLCD駆動装置8と枠体1内の信号処理装置4とは、比較的大きい丁番(ジョイント)10の中を通る信号線により接続されている(なお、このような、丁番の中を通る信号線を介してLCD駆動装置と信号処理装置とを接続するという構成は、市販のノートブックパソコン等において周知である)。そのため、1枚のCD−ROMを再生するとき、この再生信号は、信号処理装置4から2つのLCD駆動装置6および8の双方に送られるので、2つのLCD画面5および7は、互いに協働して1つの画面を表示できるようになっている。つまり、例えば、ユーザーがある百科事典を記録したCD−ROMを使用して「鯛」という魚を調べようとするとき、この鯛を検索して、鯛の写真をLCD画面5および7に表示させるときは、一つの鯛の写真の映像がLCD画面5および7の両方にまたがって大きく表示されることになる。」

h 3頁右欄30行〜4頁左欄34行
「また本実施例のLCD画面5および7によって表示できる情報は、前述の鯛の写真のような映像だけでなく、文字などのデータでもよい。例えば、本などの書籍のそれぞれの1ページ分の文字データを一つの情報ブロックとしてCD−ROMに記憶させておき、ある1ページ分の文字データの情報ブロックをLCD画面5に表示するとともに、その次のページの1ページ分の文字データの情報ブロックをLCD画面7に表示するようにしてもよい。こうすれば、ユーザーは、このCD−ROM再生装置をあたかも本を見開き状態にして本を読んでいるのと同じ感覚で使用できる。以上のように本実施例によば、2つのLCD画面5および7を、一つの信号処理装置4からの信号が入力されるLCD駆動装置6および8によりそれぞれ駆動されるようにして、この2つのLCD画面5および7が合わせて一つの大きな画面を形成できるようにすると共に、2つのLCD画面5および7をそれぞれ含む枠体1および2を、互いに折り曲げ自在に接続している。したがって、ユーザーは、このCD−ROM再生装置を使用するときは、図1および図2(a)に示すように、2つの枠体1および2を見開きの状態にして、LCD画面5および7の2つの画面を合わせた大きな面積の画面に、情報を表示させることができる。またユーザーは、例えば通勤電車の中などにおいて、片手でこのCD−ROM再生装置を使用するときは、図2の(b)に示すように、2つの枠体1および2の間の角度を約150度程度に折り曲げた状態でLCD画面をみるようにすることもできる。また混雑した通勤電車内では、この2つの枠体1および2の間の角度をさらに120度程度まで折り曲げた状態にして使用することもできる。さらにユーザーは、このCD−ROM再生装置を戸外の移動時に携帯しようとするときは、図2の(c)に示すように、2つの枠体1および2を折り畳み状態にすることにより、全体として、使用時の正面の面積の約半分であるコンパクトなサイズにして持ち運ぶことができる。またこの実施例では、前記第1の枠体1と第2の枠体2を見開き状態にしたとき、これらの2つの枠体を、少なくともその両者の枠体の画面の間の角度が120度から180度の間の所定の2つの角度で固定できる(ストッパにより)ようにしている。したがって、ユーザーは、例えば、会社のデスクの上では180度の角度に見開いた状態で使用し、混雑している通勤電車の中では(他人に装置が当たって迷惑がかかることのないように)120度の角度に見開いた状態で使用する等、周囲の状況に応じた使用ができるようになる。さらにこの実施例では、前記第1の枠体1と第2の枠体2を見開き状態にしたとき、これらの2つの枠体を、少なくともその両者の枠体の画面の間の角度が120度から180度の間の任意の角度で固定されるように、摩擦力により固定できるようにしている。したがって、ユーザーは、例えば、通勤電車の中で使用する場合、両手のうち一方の手で吊り革をつかんで他方の手のみでディスプレー装置を支えているときはこれを支えやすいように150度の角度に見開いた状態で使用し、また電車の中が混雑してきたら120度の角度に見開いた状態で使用する等、周囲の状況にさらに即応したきめ細かい使用が可能になる。」

i 5頁左欄43行〜同頁右欄8行
「以上本発明の実施例について説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではないことは勿論である。本発明は、例えば以下に述べるような構成をも含んでいるものと理解すべきである。実施例ではCD−ROM再生専用装置を開示しているが、本発明では、VTRや光磁気ディスク記録再生装置やICカードを使用した記録再生装置やパーソナル・コンピュータのように、記録装置および記録のための入力装置を含む電子機器にも適用できる。また単に画面への表示だけでなく、音声や振動や光などをも出力できる電子機器にも適用できる。とくに本発明の表示装置は、単にCD−ROM等の記録媒体からの情報を表示するために使用するだけでなく、例えば入力ペン等により情報を入力するためにその入力ペンを操作するための操作画面の表示のために使用するディスプレー、つまり入力装置としても使用できるディスプレーを含む。また本発明は、単にFDやCD−ROMのような記憶媒体から再生した情報を表示するディスプレー装置に限られるものではなく、例えば放送TV(テレビ)局または有線TV局から送られる情報を表示するための表示装置でもよい。また特に図1に示した第1実施例では、CD−ROM駆動装置3は枠体1に内蔵させているが、本発明では、これを枠体1および2から分離させて別個のユニットとし、この別個のユニットであるCD−ROM駆動装置から無線電波により枠体1内の信号処理装置4に信号を送るようにしてもよい。」

j 【図1】




k 【図2】




(イ) 甲11発明の認定
前記摘記事項gの記載を参酌しつつ図1を参照すると、LCD画面5及びLCD画面7は、略長方形であることが見て取れる(以下「図1からの認定事項」という。)。
この点も踏まえて、前記(ア)に摘記して下線を引いた事項及び摘記した図面の記載を総合すると、甲11には、次の発明(以下「甲11発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲11発明>
「 互いに協働して1つの画面を構成できる第1の画面および第2の画面を、それぞれ出力する第1のディスプレーおよび第2のディスプレーと、
前記第1のディスプレーの端部と前記第2のディスプレーの端部を、互いに折り曲げ自在に接続する接続手段と、を含むことを特徴とする表示装置であって(摘記事項a)、
前記第1のディスプレーと第2のディスプレーを見開き状態にしたとき、これらの2つのディスプレーを、少なくともその両者の装置の画面の間の角度が120度から180度の間の所定の2つの角度で固定する手段をさらに含むものであり(摘記事項e)、
前記第1のディスプレーと第2のディスプレーを見開き状態にしたとき、これらの2つのディスプレーを、少なくともその両者のディスプレーの画面の間の角度が120度から180度の間の任意の角度で固定されるように、摩擦力により固定する手段を含むものであり(摘記事項e)、
前記第1のディスプレーは、枠体1、この枠体1の中に収納されている、CD−ROM駆動装置3、このCD−ROM駆動装置3からの信号を処理する信号処理装置4、LCD(液晶ディスプレー)、前記信号処理装置からの信号を受けてこのLCDを駆動するLCD駆動装置6、電源を含むものであり(摘記事項g)、
この枠体1は、前記LCDによりLCD画面を出力するLCDパネル5を備えており(摘記事項g)、
前記第2のディスプレーは、枠体2、この枠体2の中に収納されている、LCDとこのLCDを駆動するためのLCD駆動装置8などを含み、このLCDによりLCD画面を出力するLCDパネル7が備えられており(摘記事項g)、
LCD画面5及びLCD画面7は、略長方形であり、(図1からの認定事項)、
前記の枠体1と枠体2とは、その端部同士が、比較的小さい丁番9と比較的大きい丁番10とにより、折り曲げ自在に接続(連結)されており、これにより、枠体1と枠体2とは、後記図2の(a)の見開き状態から、同(b)の半見開き状態を経て、さらに同(c)の折り畳み状態へと、自在に折り曲げることができるようになっており、また逆に、同(c)の状態から同(b)の状態を経て同(a)の状態にすることもできるようになっており(摘記事項g)、
丁番9および10を構成する部材間の摩擦力により、枠体1および枠体2との間は、任意の角度で一時的に固定または半固定でき、その一時的に固定した状態(例えば図2の(b)の状態)で使用できるようになっており(摘記事項g)、
このような固定は単に摩擦力によるものであるため、ユーザーは、所定量以上の力を加えることにより自由にその角度を変化させることができるようになっており(摘記事項g)、
ストッパを設ける等により、2つの枠体1および2の間の角度が180度から90度までの間の例えば5段階の角度でストッパがかかって固定できるようになっており(摘記事項g)、
ユーザーは、例えば、通勤電車の中で使用する場合、両手のうち一方の手で吊り革をつかんで他方の手のみでディスプレー装置を支えているときはこれを支えやすいように150度の角度に見開いた状態で使用し、また電車の中が混雑してきたら120度の角度に見開いた状態で使用する等、周囲の状況にさらに即応したきめ細かい使用が可能である(摘記事項h)、
表示装置。

図2



イ 本件訂正発明3について
(ア) 本件訂正発明3と甲11発明の対比
a 甲11発明における、「第1のディスプレー」と「第2のディスプレー」は、本件訂正発明3における「2つの表示板」に相当する。
甲11発明の「第1のディスプレー」と「第2のディスプレー」における「LCD画面5及びLCD画面7は、略長方形であ[る]」から、甲11発明は、略長方形の画面をそれぞれ表示できる2つの表示板を含んでいる表示装置であるといえる。
さらに、甲11発明は、「ユーザーは、例えば、通勤電車の中で使用する場合、両手のうち一方の手で吊り革をつかんで他方の手のみでディスプレー装置を支えているときはこれを支えやすいように150度の角度に見開いた状態で使用し、また電車の中が混雑してきたら120度の角度に見開いた状態で使用する等、周囲の状況にさらに即応したきめ細かい使用が可能である」。
したがって、本件訂正発明3と甲11発明は、「略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置」(構成A)の点において一致する。

b 甲11発明は、「前記第1のディスプレーの端部と前記第2のディスプレーの端部を、互いに折り曲げ自在に接続する接続手段」である「比較的小さい丁番9と比較的大きい丁番10」を備えているところ、甲11発明は「図2の(a)の見開き状態から、同(b)の半見開き状態を経て、さらに同(c)の折り畳み状態へと、自在に折り曲げることができるようになっており、また逆に、同(c)の状態から同(b)の状態を経て同(a)の状態にすることもできるようになって[いる]」。
したがって、本件訂正発明3と甲11発明は、「前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段」(構成B)を備えている点において一致する。

c 甲11発明は、「前記第1のディスプレーと第2のディスプレーを見開き状態にしたとき、これらの2つのディスプレーを、少なくともその両者のディスプレーの画面の間の角度が120度から180度の間の任意の角度で固定されるように、摩擦力により固定する手段を含むものであ[る]」。
したがって、本件訂正発明3と甲11発明は、「前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段」(構成C)を備えている点において一致する。

d(a) 甲11発明は、「ストッパを設ける等により、2つの枠体1および2の間の角度が180度から90度までの間の例えば5段階の角度でストッパがかかって固定できるようになって[いる]」ところ、このための構成は、本件訂正発明3における「前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「所定の角度」となるように、ストッパにより固定するための中間左右見開き固定手段」に相当する。
(b) 甲11発明は、「ユーザーは、例えば、通勤電車の中で使用する場合、両手のうち一方の手で吊り革をつかんで他方の手のみでディスプレー装置を支えているときはこれを支えやすいように150度の角度に見開いた状態で使用し、また電車の中が混雑してきたら120度の角度に見開いた状態で使用する等、周囲の状況にさらに即応したきめ細かい使用が可能である」から、前記(a)の点を踏まえると、「5段階の角度」のうちの一つとして「150度」を選択したものが包摂されるといえる。
(c) 前記(b)の点も踏まえると、「150度」は、「約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」であるから、本件訂正発明3と甲11発明は、次の点において一致するということができる。
「前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように、ストッパにより固定するための中間左右見開き固定手段とを備えており、前記ストッパは、前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものである」(構成D)点。

e 本件訂正発明3と甲11発明とは、「片手支持可能な表示装置」(構成E)の発明である点で一致する。

(イ) 本件訂正発明3についての小括
上記(ア)において検討したとおり、構成A〜Eの全てにおいて、本件訂正発明3と甲11発明は一致するから、本件訂正発明3は、甲11号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、新規性がない。

ウ 本件訂正発明4について
本件訂正発明4においては、表示装置は、「「2つ以上の表示板」を含んで[いる]」ところ、表示板が2つだけの表示装置も含むものであるから、この点は、新規性がないとの評価に影響しない。
また、甲11発明は、「ストッパを設ける等により、2つの枠体1および2の間の角度が180度から90度までの間の例えば5段階の角度でストッパがかかって固定できるようになって[いる]」から、5段階のうちのある段階において固定された状態からさらに回動できるようになっていることは明らかであり、甲11発明は、本件訂正発明4の「ストッパ」が「(b)ユーザーが、前記少なくとも一方の表示板を、前記2つの表示板が前記所定の角度で固定された状態から互いに約180度で見開きにされる状態へと変化するようにさらに回動させるとき、前記少なくとも一方の表示板が、前記2つの表示板が互いに約180度で見開きにされる状態となるように、さらに回動できるようにするものである」という構成に相当する構成を備えているといえる。
したがって、前記イ(ア)の検討結果を踏まえると、本件訂正発明3の場合と同様に、本件訂正発明4も、甲11号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、新規性がない。

エ 無効理由2−1についての小括
以上検討のとおり、本件訂正発明3及び本件訂正発明4は、特許法29条1項3号に該当するから、請求項3及び請求項4に係る発明についての特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項3及び請求項4に係る発明についての特許は、特許法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。

(3) 無効理由2−2について
ア 補正事項について
甲12補正により、以下の補正事項1から補正事項3が追加された。
なお、本件訂正が認められたことにより、明細書の段落【0012】及び【0065】の記載の一部が削除され、段落【0046】、【0047】、【0066】及び【0080】の記載の全部が削除されたものの、以下の補正事項1〜3に対応する記載は、削除されていない。
<補正事項1>
左右見開き固定手段が、2つの表示板の接続部分に「ユーザーがその片手の親指を安定的に置くことを可能にするための、断面略V字状の凹状(谷状)部分」を形成する作用を有していること(【0012】)。

<補正事項2>
左右見開き固定手段が、2つの表示板の接続部分に「ユーザーが、前記表示装置を、その片手の親指以外の指又は掌の上に安定的に載置することを可能にするための、断面略V字状の凸状(山状)部分」を形成する作用を有していること(【0012】)。

<補正事項3>
前記補正事項1及び2と関連した図8及び図9の図示内容並びにそれらの図示内容に対応した明細書の【0048】〜【0080】(発明の効果)の記載。
「【図8】


「【図9】



イ 検討
前記(1)カ(キ)において検討した結果を踏まえると、前記補正事項1〜3は、「左右見開き固定手段」について、新しい作用・効果(「左右見開き固定手段」の新しい使い方、有用性)を追加するものであるから、前記補正事項1〜3の補正は、本件訂正発明の「表示装置」の「左右見開き固定手段」について、当初明細書等の全ての記載を総合して導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであることは明らかである。
したがって、前記補正事項1〜3の補正は、いわゆる新規事項を追加する補正である。

ウ 無効理由2−2についての小括
以上検討のとおりであるから、本件特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
したがって、本件特許は、特許法123条1項1号に該当し、無効とすべきものである。

4 職権無効理由3について
(1) 当審における判断
本件訂正後の請求項3においては、「表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」の範囲についての限定はなく、本件訂正後の請求項4においては、「『2つの表示板の』間の見開き角度」の範囲についての限定はない。
この点に関し、本件訂正後の請求項3では、「前記ストッパは、前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものである」と特定されているものの、「互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するように」と規定しただけでは、2つの表示板の「最大の見開き角」が180度であることが自明であるとはいえない。本件訂正後の請求項4についても、同様の指摘が当てはまる。
したがって、本件訂正後の請求項3及び4においては、2つの表示板の最大の見開き角が180度よりも大きい角度であるものも含むものとなっている。
しかし、最大の見開き角度が180度を越えるものは、本件特許の明細書又は図面には記載されていないから、本件訂正後の請求項3及び4は、当該発明の課題を解決できると当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
したがって、本件訂正後の請求項3及び4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
前記3(1)キにおいて説示したとおり、本件特許の出願日は、平成9年11月10日よりも前に遡及することはないから、平成6年法律116号による改正後の特許法36条6項1号の規定に適合しない。
なお、仮に、本件特許の出願日が平成3年8月30日にまで遡及するとの立場からみても、適用法条が平成6年法律116号による改正前の特許法特許法36条5項1号に変わるだけで、法改正の前後でサポート要件についての実質的相違はないから、前記結論は変わらない。

(2) 被請求人の主張について
ア 被請求人の主張の概要
被請求人は、次のとおり主張している。
(ア) 訂正後の特許請求の範囲(請求項3等)中の「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」については、当業者ならば、約0度(折り畳み状態)から約180度までの範囲内の角度を意味すると理解するはずであるから、訂正後の特許請求の範囲(請求項3等)における「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」は、発明の詳細な説明に記載したもの(特許法36条6項1号)として、サポート要件を充足する。
(イ) もし万が一、訂正後の特許請求の範囲(請求項3等)中の「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」について、当業者ならば約180度を超える角度をも含むと理解すると仮定した場合であっても、発明の詳細な説明の記載や図面を参酌して発明の要旨を認定すべきことの結果として、訂正後の請求項3等における「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」は、発明の詳細な説明の記載や図面を参酌して認定した「約180度を超える角度を含む」という技術的意義を有すると理解すべきことになるから、結局、訂正後の特許請求の範囲(請求項3等)における「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」の技術的意義と、訂正後の明細書の発明の詳細な説明における「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」の技術的意義とは、互いに一致することになる。
よって、このように仮定した場合であっても、訂正後の特許請求の範囲(請求項3等)における「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」は、発明の詳細な説明に記載したもの(特許法36条6項1号)として、サポート要件を充足する。
(ウ) 訂正後の請求項4の「前記『2つの表示板』の間の見開き角度」についても、同様である。
(令和4年7月26日差出の「審決予告に対する上申書」の「第8」39〜46頁)

イ 被請求人の主張に対する当審の判断
(ア) 前記主張(ア)について検討すると、本件訂正後の請求項3における「前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように、ストッパにより固定するための中間左右見開き固定手段とを備えており、前記ストッパは、前記2つの表示板の少なくとも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度が前記所定の角度となったとき、前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものである」との構成は、2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化する途中において回動が所定の角度においてストップすることを規定するにとどまり、約180度の見開き状態が、見開きのできる限界(上限)であることまでを意味しない。
(イ) 前記主張(イ)について検討すると、明細書の発明の詳細な説明や図面に開示された2つの表示板の「最大の見開き角」が180度を超える角度を含むとは認められないから、本件訂正後の請求項3の「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約180度を超える角度を含む」とした場合には、本件訂正後の請求項3と、明細書の発明の詳細な説明との間において、「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」の最大見開き角度は、一致しないことになる。
(ウ) 本件訂正後の請求項4についても、同様である。
したがって、前記アの被請求人の主張を採用することはできない。

(3) 職権無効理由3についての小括
以上検討のとおり、本件特許の請求項3及び請求項4に係る発明についての特許は、特許法36条6項1号の規定に適合しないから、特許法123条4号に該当し、無効とすべきものである。

5 請求項1〜2、5〜12について
請求項1〜2、5〜10を削除する訂正は、本審決により認められた(前記第3の4(5)参照)。
また、請求項11及び請求項12を削除する訂正は、2次訂正の審決により、令和3年2月15日に部分確定した(前記第2の2(3)参照)。
したがって、請求項1〜2、5〜12に係る発明についての特許に対する特許無効審判請求は、訂正により存在しないこととなった請求項に対するものであり、不適法な請求であってその補正をすることができないものとなったから、特許法第135条の規定により却下する。


第9 むすび
以上のとおり、本件特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法123条1項1号に該当し、無効とすべきものである。
また、本件訂正発明3及び本件訂正発明4についての特許は、特許法29条1項又は2項の規定に違反してされたものであるから、請求項3及び請求項4に係る発明についての特許は、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
さらに、本件訂正発明3及び本件訂正発明4についての特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項3及び請求項4に係る発明についての特許は、同法123条1項4号に該当し、無効とすべきものである。
請求項1〜2、5〜12は、訂正により存在しないこととなったため、請求項1〜2、5〜12に係る発明についての特許に対する特許無効審判請求は不適法な請求であってその補正をすることができないものとなったから、特許法第135条の規定により却下する。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条及び62条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】 片手支持可能な表示装置
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、複数の表示板を備えた表示装置に係り、特に携帯時には携帯に便利なコンパクト・サイズでありながら使用時には比較的大きな見やすい表示画面を提供できる、あるいは使用時に複数の表示画面を提供できる、片手支持可能な表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の情報化の進展に伴い、携帯用のコンパクト・サイズの電子情報機器、例えばCD−ROM再生専用装置(例えばソニー株式会社の商品名「データディスクマン」)、VTR(ビデオテープレコーダー)、TV(テレビ)、A4版ファイル・サイズのノートブックパソコン(パーソナルコンピュータ)、電子手帳、などの携帯型電子情報機器が続々と製品化されている。
【0003】
これらの携帯型電子情報機器においては、その画面の出力のためのディスプレーパネルとしてLCD(液晶ディスプレー)パネルなどを使用した薄型ディスプレーが使用されている。そして、従来のノート型パソコンなどにおいては、一般に、この薄型ディスプレーとキーボードとが、周知の手段により、互いに折り曲げ自在に、且つ折り畳み自在に接続されている。そしてユーザーは、携帯時には、前記薄型ディスプレーとキーボードとを折り畳んだ状態で持ち運び、使用時には、これらのディスプレーとキーボードとを互いに上下方向に見開き状態にして使用するのが一般である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の携帯型電子情報機器においては、携帯の便利さを追求すればディスプレー装置などのサイズは小さいほどよいが、他方、ユーザーが使用するときの便宜を考えればディスプレー画面のサイズは見ずらくならない程度には大きくしておく必要がある、という二律背反の問題があった。そして、近年、このような二律背反の課題に着目して、携帯の便利さ(コンパクト化)と使用時のディスプレー画面の見やすさ(画面の大きさのある程度の確保)という2つの要請を同時に満たし、前記の二律背反の問題を一挙に解決することができる表示装置として、2つの表示板を接続し、不使用時には2つの表示板を収納又は携帯しやすいように折り畳み状態とし、使用時には2つの表示板を見開き状態とするような「折り畳み・見開き型の表示装置」が提案されている(例えば、特開平3−103889号公報)。
【0005】
しかしながら、このような従来から提案されている「折り畳み・見開き型の表示装置」においては、単に、不使用時には2つの表示板を収納又は携帯しやすいように折り畳み状態とし、使用時には2つの表示板を見開き状態とすることを提案するだけであり、「ユーザーが、外出先(戸外)などで、例えば立ったままで、その一方の片手だけを使って表示装置全体を容易且つ安定的に支持しながら、その他方の片手は、表示装置を支持すること以外の他の様々な動作を行うために(例えば電車の吊り革を掴むために)使用することができるようにできないか。」という問題意識(ニーズ)は、全く窺うことができない(前記公報などの先行技術文献には、このような問題意識については、何らの記載も示唆も無い)。
【0006】
携帯情報端末(PDA)や携帯電話などの移動体通信機器に使用するための表示装置を考えるときは、ユーザーが、外出先(戸外)などで、例えば立ったままで、その両手の一方の片手だけで容易且つ安定的に表示装置を支持しながら使用できること、そして、表示装置を支持していない他方の片手は、例えば、ユーザーが、電子ペンで表示画面に文字を手書き入力したり、タッチパネル式の表示画面を指先でタッチして操作したり、テンキーを押して数字や文字を入力したり、トラックボール・マウス・パッド・ジョイスティクなどのポインティングデバイスを操作したり、他の操作キーやジョグ・ダイヤルなどを操作したり、通勤電車の吊り革を掴んだり、隣の人と握手したり、などのような様々な動作を行うために使用できるようにすることが、極めて重要なはずである。
【0007】
本発明は、このような従来技術に関する問題意識から構想されたものであって、「ユーザーが、例えば外出先(戸外)などで、例えば立ったままでも、その一方の片手だけを使って表示装置全体を極めて容易且つ安定的に支持することができる、片手支持可能な表示装置」を提供することを課題(目的)とするものである。さらに、本発明は、「ユーザーが、例えば外出先(戸外)などで、例えば立ったままでも、その一方の片手だけを使って表示装置全体を極めて容易且つ安定的に支持しながら、その他方の片手は、(例えば文字入力動作や電車の吊り革を掴む動作などのような)表示装置を支持すること以外の他の様々な動作を行うために使うことができる、片手支持可能な表示装置」を提供することを課題(目的)とするものである。
【0008】
このような本発明の課題は、従来の先行技術文献の中には全く記載も示唆も無く、従来技術からは容易に予想・認識することができない「新規な課題」である。
【0009】
すなわち、本発明者は、本願発明の上記「課題」は、少なくとも本願の原出願の出願日(1991年8月30日)当時は、まだ「公知・自明」にはなっていなかったと考える。なぜなら、この当時は、まだ、「2つの表示板を互いに接続して使用する表示装置」は全く市販などされていなかったし、その製品化の予定なども皆無であった。確かに、この当時、既に、上記公報のように「2つの表示板を折り畳み自在に接続する」という表示装置のアイデアは一部だが開示されていた。しかし、このようなアイデアを発想した発明者たちは、おそらく、「2つの表示板を互いに接続して使用する表示装置」を、「単に頭の中で(紙とペンだけで)構想しただけ」か又は「何らかの試作品を作っただけ(といっても、当時の技術水準では、『片手の上に載せて使用するような小型のもの』を試作することは実際上不可能で、仮に何らかの試作が行われたとしても、せいぜい『大型のもので机の上に据え置いて使用するようなもの』しか作れなかったはずである)」かのいずれかのレベル(技術水準)に止まっていたはずである。もし、「2つの表示板を互いに接続して使用する表示装置」が実際に市販されて多数の一般人が利用するような状況になれば、その多数の一般人の中から、このような表示装置について、「一方の片手だけに載せて使用できるようにしたい、そして、それだけでなく、さらに、一方の片手だけで極めて容易且つ安定的に支持して使用できるようにしたい(そして、他方の片手は文字入力や電車の吊り革を掴むなどの他の様々な動作のために使えるようにしたい)」と考える人も出てきて、そのような「ニーズ・課題」(本願発明の課題に相当するもの)が「公知・自明」のものとなるであろう。しかし、実際には、少なくとも本願の原出願の出願日(1991年8月30日)当時は、「2つの表示板を互いに接続して使用する表示装置」が実際に市販されて一般人が利用することはなく(分割出願である本願を提出する時点でも、まだ、市販されていない)、またその製品化の予定もなく、従ってまた、前記の「課題・ニーズ」が「公知・自明」のものとなることも無かったのである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(用語説明)本明細書において、「固定」には、(a)摩擦力やチルト機構などにより「半固定」する場合(ここで、「半固定」とは、「固定」の一形態であって、ユーザーがある程度強めの所定量以上の力を加えることにより状態を変更させる(すなわち、固定状態を解除して、前記各表示板(各表示パネル)間の角度を変更させる)ことができるような状態、を言う)や、(b)ストッパ(例えば、2つの表示板を接続する蝶番の回動を所定の角度でストップさせるもの)などを使用して「一時的に固定」する場合、なども含まれる。
【0011】
なお、上記の「固定手段」の一例としての「チルト機構」とは、2つの部材を接続するヒンジ部(蝶番)に装着・固定した軸とその軸に装着したコイルスプリングとにより前記2つの部材を任意の回転角度で保持できるようにした機構である。このような「チルト機構」は、従来より、例えばキーボードと薄型ディスプレイとを接続するノート型(ブック型)電子機器のヒンジ部(蝶番)などに設けられている周知の技術であって、例えば、実願平1−54228号(実開平2−145423号公報)のマイクロフィルム(この中の明細書の第4ページの第7−14行及び第4図参照)には、キーボードが備えられた本体側の固定金具と薄型ディスプレイが備えられた蓋体側の固定金具との間に装着された軸にコイルスプリングを装着すること等により、前記蓋体を前記本体に対して任意の回転角度で保持できるようにしたチルト機構が開示されている。
【0012】(本明細書中に含まれる複数の発明の概要)
1−(1)−1. 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、ユーザーから見て左右方向に見開きにされたときの前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、ストッパにより固定するための中間左右見開き固定手段であって、前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」から広げられて行く動作、をストップする機能と、前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「ユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態」から狭められて行く動作、をストップする機能と、を有する中間左右見開き固定手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
1−(1)−2. 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定するための中間左右見開き固定手段であって、記「2つの表示板」の、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」から広げられて行く動作、をストップする機能を有する中間左右見開き固定手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
1−(1)−3. 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定するための中間左右見開き固定手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
1−(2).画面をそれぞれ表示できる「少なくとも2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、前記「2つの表示板」を、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にも、それらが互いに折り畳まれた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度(あるいは、約105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約155度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度までの範囲内のいずれかの角度、又は約105度から約140度までの範囲内のいずれかの角度)」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
2−(1).画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の(複数の)表示板(2つ以上の表示パネル)」を含んでおり、ユーザーがその片手の上に載せてその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、前記の「2つ以上の(複数の)表示板」の中の「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、前記「2つ以上の(複数の)表示板」の中の「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度(あるいは、約105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約155度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度までの範囲内のいずれかの角度、又は約105度から約140度までの範囲内のいずれかの角度)」となるように、固定するための左右見開き固定手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
2−(2).画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にも、それらが互いに折り畳まれた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度(あるいは、約105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約155度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度までの範囲内のいずれかの角度、又は約105度から約140度までの範囲内のいずれかの角度)」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
3−(1).次の(a)〜(d)の内容を含むことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
(a)画面をそれぞれ出力する「複数の表示板」が、それぞれが表示する各画面がユーザーに対向することができるように、接続されている、
(b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがその片手のみでも支持することができるような小型のサイズに構成されている、
(c)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にも、それらが互いに折り畳まれた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段を備えている、
(d)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされているとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度(あるいは、約105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約155度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度までの範囲内のいずれかの角度、又は約105度から約140度までの範囲内のいずれかの角度)」となるように、固定するための左右見開き固定手段、を備えている。
3−(2).次の(a)〜(d)の内容を含むことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
(a)画面をそれぞれ出力する「複数の表示板」が、それぞれが表示する各画面がユーザーに対向することができるように、接続されている、
(b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがその片手のみでも支持することができるような小型のサイズに構成されている、
(c)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、折り畳み可能で且つユーザーから見て左右方向に見開き可能に接続するための左右見開き接続手段を備えている、
(d)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度(あるいは、約105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約155度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度までの範囲内のいずれかの角度、又は約105度から約140度までの範囲内のいずれかの角度)」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段、を備えている。
3−(3).次の(a)〜(d)のような内容を含むことを特徴とする表示装置。
(a)画面をそれぞれ出力する複数個の表示板が、それぞれが表示する各画面がユーザーに対向することができるように、接続されている、
(b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがその片手のみでも支持することができるような小型のサイズに構成されている、
(c)表示装置は、ユーザーから見て縦方向の線を境にして、その右側部分と左側部分とが、折り曲げ・折り畳み可能で且つユーザーから見て左右に見開き可能となっている、
(d)表示装置は、その使用時に、ユーザーから見て縦方向の線の右側部分と左側部分とを、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記右側部分と左側部分との間の見開き角度」が「約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度(あるいは、約105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約155度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度までの範囲内のいずれかの角度、又は約105度から約140度までの範囲内のいずれかの角度)」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段、を備えている。
4−(1).本願発明(上記1,2又は3などに記載の発明)において、前記左右見開き固定手段が固定する「2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」又は「ユーザーから見て縦方向の線の右側部分と左側部分との間の角度」は、表示装置の全体をユーザーがその片手で支持し易いような角度又はユーザーがその片手の上に載置し易いような角度であることが望ましい。
5.上記1,2,3又は4において、前記左右見開き固定手段は、前記の「2つの表示板」の接続部分に、「ユーザーがその片手の親指を安定的に置くことを可能にするための、断面略V字状の凹状(谷状)部分」を形成する作用を有している、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
6.上記1,2,3又は4において、前記左右見開き固定手段は、前記の「2つの表示板」の接続部分に、「ユーザーが、前記表示装置を、その片手の親指以外の指又は掌の上に安定的に載置することを可能にするための、断面略V字状の凸状(山状)部分」を形成する作用を有している、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
7.上記1から6までのいずれかにおいて、前記左右見開き固定手段は、前記左右見開き接続手段と一体的に構成されている(ハードウェア的に一体化されている)、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
なお、本発明において、「左右見開き固定手段が、左右見開き接続手段と一体的に構成されている(ハードウェア的に一体化されている)」ような場合とは、例えば、(1)前記左右見開き接続手段を構成する「ヒンジ部(蝶番)」の各部材に摩擦係数の高い素材を使用することにより、ヒンジ部(蝶番。接続部分)の摩擦係数を高めて、2つの表示板の間の角度が一時的に固定できるようにする場合(蝶番の接続面の摩擦係数を高くして、2つの表示板の間が所定の折り曲げ角度で一時的に固定できるようにしたもの、など)、(2)前記左右見開き固定手段を構成するストッパ部分と前記左右見開き接続手段とをプラスチック素材や金属素材などで一体成形する場合、などである。
8.上記1から6までのいずれかにおいて、前記左右見開き固定手段は、前記左右見開き接続手段又は前記表示板と容易に分離できないように構成されている、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
なお、本発明において、「左右見開き固定手段が、左右見開き接続手段又は表示板と容易に分離できないように構成されている」ような場合とは、例えば、(1)前記左右見開き固定手段と前記左右見開き接続手段(又は前記表示板)とが、プラスチック素材や金属素材などで一体成型されてハードウェア的に一体化されている場合(この場合は当然に「容易に分離できない」状態である)、(2)接着剤や溶接や係止用フックなどの手段を使用して、前記左右見開き固定手段を構成するストッパ部分を、前記左右見開き接続手段(又は前記表示板)に対して、容易に分離できないように固定している場合、(3)前記チルト機構(軸及びコイルスプリングなど)を2つの表示板の接続部分(ヒンジ部)に内蔵させた場合、などである。
9.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記表示板に、「ユーザーによるデータ入力のために使用される、データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を表示するためのデータ入力用画面表示手段、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
10.上記1から8のいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可能な表示装置から離れた場所に在る外部の情報記録装置に記録されている外部情報を無線を介して受信するための外部情報無線受信手段と、前記外部情報無線受信手段が受信した外部情報を前記表示板に表示させるための外部情報表示手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
11.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、テレビ放送局から電波又は有線により送信されるテレビ番組情報を無線を介して受信するためのテレビ番組情報無線受信手段と、前記テレビ番組情報無線受信手段により受信されたテレビ番組情報を前記表示板に表示させるためのテレビ番組情報表示手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
12.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可能な表示装置から離れた場所に在る外部の情報記録装置に記録されている外部情報を無線を介して受信するための外部情報無線受信手段と、前記外部情報無線受信手段が受信した外部情報を前記表示板に表示させるための外部情報表示手段と、テレビ放送局から電波又は有線により送信されるテレビ番組情報を無線を介して受信するためのテレビ番組情報無線受信手段と、前記テレビ番組情報無線受信手段により受信されたテレビ番組情報を前記表示板に表示させるためのテレビ番組情報表示手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
この場合、ユーザーは、前記表示装置に、受信した「テレビ番組」と前記無線受信手段からの「外部情報」を表示させることができる。
13.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可能な表示装置から離れた場所に在る外部の情報記録装置に記録されている外部情報を無線を介して受信するための外部情報無線受信手段と、前記外部情報無線受信手段が受信した外部情報を前記表示板に表示させるための外部情報表示手段と、前記表示板に、「ユーザーによるデータ入力のために使用される、データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を表示するためのデータ入力用画面表示手段と、を備えていることを特徴とする片手支持可能な表示装置。
この場合、ユーザーは、前記表示装置に、「離れた場所にある情報記録装置からの情報(外部情報)」と「データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を表示させることができる。
14.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、テレビ放送局から電波又は有線により送信されるテレビ番組情報を無線を介して受信するためのテレビ番組情報無線受信手段と、前記テレビ番組情報無線受信手段により受信されたテレビ番組情報を前記表示板に表示させるためのテレビ番組情報表示手段と、前記表示板に、「ユーザーによるデータ入力のために使用される、データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を表示するためのデータ入力用画面表示手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
この場合、ユーザーは、前記表示装置に、受信した「テレビ番組」と、様々な情報を入力するための「データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を、表示することができる。
15.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可能な表示装置から離れた場所に在る外部の情報記録装置に記録されている外部情報を無線を介して受信するための外部情報無線受信手段と、前記外部情報無線受信手段が受信した外部情報を前記表示板に表示させるための外部情報表示手段と、テレビ放送局から電波又は有線により送信されるテレビ番組情報を無線を介して受信するためのテレビ番組情報無線受信手段と、前記テレビ番組情報無線受信手段により受信されたテレビ番組情報を前記表示板に表示させるためのテレビ番組情報表示手段と、前記表示板に、「ユーザーによるデータ入力のために使用される、データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を表示するためのデータ入力用画面表示手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
この場合、ユーザーは、前記表示装置に、「テレビ番組」と「外部情報」と「データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を、表示させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
(第1実施例) 図1は本発明の第1実施例に係る、CD−ROM再生専用装置を示す概略正面図である。なおこの図1には、本発明に強く関連する部分のみを示してあり、従来公知の部分、例えば電源を入れるためのキーや再生・停止・早送り・巻戻し・検索等を指示するためのキー、検索のためのキーワードを入力するためのキーなどは、図示を省略している。
【0014】
図1において、符号1は枠体(筐体)である。この枠体1の中には、CD−ROM駆動装置3、このCD−ROM駆動装置3からの信号を処理する信号処理装置4、前記信号処理装置4からの信号を受けてLCD(液晶ディスプレイ)画面を表示するためのLCD駆動装置6、電源などが収納されている。またこの枠体1は、前記LCD駆動装置6によりLCD画面が出力されるLCDパネル(表示板)5(本明細書では、符号5を、LCDパネルとLCD画面との両者を示すために用いている)を備えている。なお図1では、図示の便宜上CD−ROM駆動装置3は枠体1の外側に記載されているが、実際には枠体1の中の例えばLCD画面5を出力するLCDパネル5の裏側に収納されている。
【0015】
また符号2も枠体(筐体)で、この枠体2には、LCD画面7を表示するためのLCD駆動装置8などが収納され、またこのLCD駆動装置8によりLCD画面が出力されるLCDパネル(表示板)7(本明細書では、この符号7を、LCDパネルとLCD画面との両者を示すために用いている)が備えられている。
【0016】
また本実施例では、前記の枠体1と枠体2とは、図示のように、その端部同士が、3つの比較的小さい蝶番9と1つの比較的大きい蝶番10とにより、折り曲げ自在に接続(連結)されている。これにより、枠体1と枠体2とは、本実施例の平面図である図2に示すように、図2の(a)に示す約180度に見開かれた「左右完全見開き状態」から、図2(b)のような「左右半見開き状態」(図2(a)のように約180度に見開きにされた状態と、図2(c)のように各枠体1,2がそれぞれ画面が表示される側が互いに向き合うように折り畳まれた状態との間の状態)を経て、さらに図2(c)の「折り畳み状態」へと、自在に折り曲げることができるようになっている。また本実施例では、上記と逆に、図2(c)の状態から図2(b)の状態を経て図2(a)の状態にすることもできる。
【0017】
また本実施例では、枠体1と枠体2との間は、蝶番9及び10を構成する部材間の摩擦力により、任意の角度で一時的に固定(半固定)でき、その一時的に固定(半固定)した状態(例えば図2の(b)に示す状態で固定(半固定)した状態)で使用できるようになっている。またこのような「任意の角度での固定(半固定)」が前述のように単に摩擦力によるものであるときは、ユーザーは、所定量以上の力を加えることにより自由にその「固定(半固定)の角度」を変化させることができるようになっている。なお本実施例での前記蝶番9及び10については、従来周知のもの(例えばノート型パソコンのキーボードとディスプレイとを折り畳み・折り曲げ自在に接続する蝶番であって、摩擦力などにより、前記のキーボードとディスプレイとが「両者間の角度が少し折れ曲がっている状態」となるように保持できるようになっている蝶番など)を使用できる。
【0018】
また本実施例においては、蝶番9及び10の構造を従来周知の方法で工夫すること(例えば、ストッパを設けること等)により、2つの枠体1と枠体2の間が、例えば約105度から約170度まで(又は、約110度から約170度まで)の間の5段階の角度のいずれかの角度で、ストッパがかかって固定できるように構成するようにしてもよい。
【0019】
また本実施例では、図1に示すように、LCD画面5と枠体1の図示右側の端部との間隔、及びLCD画面7と枠体2の図示左側の端部との間隔は、極めて小さいものとなっている。そして、枠体1と枠体2を接続する蝶番のうち、2つのLCD5及び7に対向する端部の間を接続する3つの蝶番9は、比較的小さいものを使用している。したがって、本実施例においては、LCD画面5とLCD画面7との間の間隔は、「極めて小さいもの」となっている。そのため、ユーザーにとっては、LCD画面5とLCD画面7との間の間隔は「ほとんど無視できるもの」となっており、ユーザーにとっては、この「2つのLCD画面5及び7が合わさった、あたかも一つの大きな画面」として見ることができるようになっている。
【0020】
なお前記枠体2内のLCD駆動装置8と枠体1内の信号処理装置4とは、比較的大きい蝶番(ジョイント)10の中を通る信号線により接続されている(なお、このような、蝶番の中を通る信号線を介してLCD駆動装置と信号処理装置とを接続するという構成は、市販のノート型パソコン等において既に周知である)。そのため、1枚のCD−ROMを再生するとき、この再生信号は、信号処理装置4から2つのLCD駆動装置6及び8の双方に送られるので、2つのLCD画面5及び7は、互いに協働して1つの画面を表示できるようになっている。つまり、例えば、ユーザーがある百科事典を記録したCD−ROMを使用して「鯛」という魚を調べようとするとき、この鯛を検索して、鯛の写真をLCD画面5及び7に表示させるときは、一つの鯛の写真の映像がLCD画面5及び7の両方にまたがって大きく表示されることになる。
【0021】
また本実施例のLCD画面5及び7によって表示できる情報は、前述の鯛の写真のような映像だけでなく、文字などのデータでもよい。例えば、本などの書籍のそれぞれの1ページ分の文字データを一つの情報ブロックとしてCD−ROMに記憶させておき、ある1ページ分の文字データの情報ブロックをLCD画面5に表示するとともに、その次のページの1ページ分の文字データの情報ブロックをLCD画面7に表示するようにしてもよい。こうすれば、ユーザーは、このCD−ROM再生装置をあたかも本を見開き状態にして本を読んでいるのと同じ感覚で使用できる。
【0022】
以上のように、本実施例においては、2つのLCD画面5及び7を、一つの信号処理装置4からの信号が入力されるLCD駆動装置6及び8によりそれぞれ駆動されるようにして、この2つのLCD画面5及び7が協働して「合わせて一つの大きな画面」を形成できるようにすると共に、2つのLCD画面5及び7をそれぞれ含む枠体1及び2を、互いに折り曲げ・折り畳み自在に接続するようにしている。
【0023】
したがって、ユーザーは、このCD−ROM再生装置を使用するときは、図1及び図2(a)に示すように、2つの枠体1及び2を見開きの状態にして、LCD画面5及び7の2つの画面を合わせた大きな面積の画面に、情報を表示させることができる。
【0024】
またユーザーは、例えば通勤電車の中などにおいて、立ったまま、片手でこのCD−ROM再生装置を使用しようとするときは、図2の(b)に示すように、2つの枠体1及び2の間の角度を例えば約150度程度に折り曲げた状態(「半折り曲げ状態=半見開き状態」)でLCD画面5,7を見るようにすることもできる。また混雑した通勤電車内では、この2つの枠体1及び2の間の角度をさらに例えば約120度程度に折り曲げた状態(「半折り曲げ状態=半見開き状態」)に保持して使用することもできる。
【0025】
さらにユーザーは、このCD−ROM再生装置を戸外の移動時に携帯しようとするときは、図2の(c)に示すように、2つの枠体1及び2を折り畳み状態にすることにより、全体として、使用時の正面の面積の約半分であるコンパクトなサイズにして持ち運ぶことができる。
【0026】
また、この実施例においては、前記第1の枠体1と第2の枠体2を見開き状態にしたとき、これらの2つの枠体を、その両者の枠体1,2の各LCDパネル5,7の間の角度が「約180度の角度」で固定できるだけでなく、その両者の枠体1,2の各LCDパネル5,7の間の角度が「約105度から約170度まで(又は、約110度から約170度まで)の間の所定の角度(任意の角度)」で固定できる(例えば摩擦力やストッパやチルト機構により)ようにしている。よって、ユーザーは、本実施例による表示装置を、例えば、会社のデスクの上では約180度の角度に見開いた「完全見開き状態」で使用し、混雑している通勤電車の中では(他人に本実施例の装置が当たって迷惑がかかることのないように)例えば約105度〜約120度の角度に見開いた「半見開き状態」で使用する等、周囲の状況に応じた使用ができるようになる。
【0027】
また、さらに、ユーザーは、例えば、通勤電車の中で立ったまま、本実施例の表示装置を使用する場合、両手のうち一方の手で電車の吊り革を掴みながら他方の手のみで表示装置を支持するときは、本実施例の表示装置を片手のみでも支えやすいように例えば約150度の角度に見開いた「半見開き状態=半折り曲げ状態」で使用し、また電車の中が混雑してきたら(他人に本実施例の表示装置が当たって迷惑がかかることのないように)例えば約105度〜120度の角度に見開いた「半見開き状態=半折り曲げ状態」で使用する等、周囲の状況に即応したきめ細かい使用が可能になる。
【0028】
(第2実施例) 次に、本発明の第2実施例に係るCD−ROM再生専用装置を、図3から図5に基づいて説明する。
【0029】
図3において、符号11〜20は枠体(筐体)である。これらの各枠体11〜20は、図示を省略している蝶番により、その互いに隣合うもの同士(例えば、枠体11と枠体12、枠体12と枠体13、というように)が、互いに折り曲げ自在に接続されている。またこれらの各枠体11〜20には、LCD画面を表示するためのLCD駆動装置31〜40が、それぞれ内蔵されている。また各枠体11〜20の表面には、各LCD駆動装置31〜40により各LCD画面21〜30が出力されるLCDパネル21〜30が備えられている。
【0030】
なお、この図3では、各LCD画面21〜30は、あたかも隣合うもの同士が互いに接触しているかのように図示されているが、これは図示の便宜上そうなっているだけで、実際には、各LCD画面21〜30の互いに隣合うもの同士の間には、所定の間隔が存在する。そして、この所定の間隔の間には、各枠体11〜20の端部(図示せず)と、それらの各枠体11〜20の互いに隣合う端部を互いに折り曲げ自在に接続する蝶番(図示せず)と、が存在している。
【0031】
また本実施例において、前記枠体11には、CD−ROM駆動装置50からの信号を処理する信号処理装置51が内蔵されている(図3では図示の関係で信号処理装置51を枠体11の外に記載しているが、実際にはこれは枠体11内に内蔵されている)。またこの信号処理装置51には、前記の枠体11〜20の外部に備えられたCD−ROM駆動装置50からの信号が、有線又は無線を使用した公知の通信手段を介して入力されるようになっている。そしてこの信号処理装置51からの信号は、各LCD駆動装置31〜40に入力されるようになっている。
【0032】
したがって、この第2実施例では、前記枠体11〜20が、図3(正面図)及び図4(平面図)に示すように、その互いに隣合う枠体の平面同士の角度が約180度となるような見開き状態にされたとき、各LCD21〜30の各画面が互いに協働して1つの大きな画面を構成するようになっている。そして、例えばCD−ROMから「鯛」という魚の情報を検索してCD−ROMに記録されている鯛の写真をLCD21〜30により表示するときは、各LCDにより出力される全部で10個の画面21〜30が合わさって一体となって、その一体となった1つの大画面の中に鯛の写真が表示されるようになっている。
【0033】
またこの第2実施例では、各枠体11〜20の互いに隣合うもの同士を接続する蝶番(図示せず)は、図4の各点a〜iに示す位置に、それぞれ設けられている。よって、この第2実施例を持ち運ぶときは、図5の平面図に示すように、各枠体11〜20を前記の各点a〜i毎に蝶番を介して折り曲げることにより、このCD−ROM再生装置全体を、持ち運びに便利な略直方体の形に変形させることができる。
【0034】
なおこの第2実施例は、特にイベントなどに使用する巨大画面ディスプレーとして利用するとメリットが大きい。このような巨大画面ディスプレーは、従来は運搬や保管が大変困難であったが、本実施例によればそれが解消できる。
【0035】
(第3実施例) 次に図6は、本発明の第3実施例に係るCD−ROM再生装置を示す平面図である。この実施例では、各枠体11〜20を接続する蝶番は、図6のj〜rに示す各点の位置にそれぞれ設けられている。よって、この実施例に係る装置を持ち運ぶときは、図6のように、各枠体11〜20を、枠体11を一番内側にしてそれに連なる他の枠体12〜20(いわばキャタピラーのような形状のもの)を、順次にいわば巻物のようにくるくると丸めていくことにより、このCD−ROM再生装置全体を、持ち運びに便利な略円柱状に変形させることができる。
【0036】
(第4実施例) 次に本発明の第4実施例に係る携帯用TV(テレビ)を図7に基づいて説明する。この第4実施例の外側の形状は図1に示す第1実施例とほとんど同じである。違うのは、この図1の実施例にあった再生・停止・早送り・巻戻し等を指示するキー(図1では図示を省略している)の代わりに、テレビ用の番組のチャンネルを切り替えるためのキーや音声量を調節するキーやスピーカーなど(いずれも図7では図示を省略している)が備えられている点である。
【0037】
すなわち、図7において、枠体1a及び枠体2aには、それぞれTV用の液晶ディスプレー画面(LCD画面)5a及び7aが備えられている。そしてこれらの枠体1aの端部と枠体2aの端部は、蝶番9a及び10aにより、互いに折り曲げ・折り畳み自在に接続されている。また本実施例において、枠体1aと枠体2aにはそれぞれ、TV用の受信機(図示せず)と、この受信機からのテレビ信号を処理してLCD駆動装置に送る信号処理装置(図示せず)と、前記の各LCD画面5a及び7aに番組情報を出力するためのLCD駆動装置(図示せず)と、が内蔵されている。
【0038】
よって、この第4実施例に係る携帯用TVでは、ユーザーは、携帯時には枠体1aと2aを折り畳んで(図2の(c)参照)コンパクトにしてもち運ぶことができる。またユーザーは、使用時にはこれを図7のように見開き状態にして、例えばLCD画面5aには1チャンネルの番組を表示させるとともに、LCD画面7aには3チャンネルの番組を表示させることにより、2つの番組を同時に視聴することができるようになる。また、この場合、例えばLCD画面5aとLCD画面7aを「合わせて1つの大きな画面」となるように協働させて、この2つのLCD画面5aと7aとにより構成される「合わせて1つの大きな画面」に1チャンネルの番組を表示させるようにしてもよい。すなわち、第4実施例においては、TV用の受信機からの1つの番組のテレビ信号のみを1つの信号処理装置により処理して、その処理された信号を、各枠体1a及び2aのそれぞれに内蔵されたLCD駆動装置に供給するようにすることにより、「LCD画面5a及び7aを合わせた1つの大きな画面」に1つの番組を表示させるようにしてもよい。こうすれば、各LCD画面5aと7aを合わせた1つの横長の(パノラマの)画面が実現できるので、映画番組などの横長の映像もそのまま表示できるようになる。
【0039】
以上本発明の実施例について説明してきたが、本発明はこれらの各実施例に限定されるものではないことは勿論である。本発明は、例えば以下に述べるような構成をも含んでいるものと理解すべきである。
【0040】
例えば、前記の実施例ではCD−ROM再生専用装置の例を示しているが、本発明は、VTRや磁気ディスク記録再生装置やICカードを使用した記録再生装置やパーソナル・コンピュータのように、記録装置及び記録のための入力装置を含む電子機器にも適用することができる。また単に画面への表示だけでなく、音声や振動や光などをも出力できる電子機器にも適用できる。
【0041】
また本発明の表示装置は、単にCD−ROM等の記録媒体からの情報を表示するために使用するだけでなく、「ユーザーが情報を入力するときに使用する、情報入力用画面」を表示することができるディスプレー、例えば、「ユーザーが電子ペン等を使用して手書き文字などの情報を入力するための、電子ペン等を操作するための操作画面」を表示することができるディスプレー、タッチパネル機能を備えたディスプレー(タッチパネルを兼ねるディスプレー)であってユーザーが指先でデータを入力できるようにしたディスプレー、などでもよい。以上のように、本発明の表示装置は、「入力装置(入力装置の一部)としても使用できるディスプレー」をも含むものである。
【0042】
また本発明は、単にFDやCD−ROMのような記憶媒体から読み出した情報を表示するディスプレー装置に限られるものではなく、例えばTV(テレビ)放送局から無線電波により送られてくる情報(テレビ番組)又は有線テレビ(CATV)局からケーブル(有線)を介して送られてくる情報(テレビ番組)を、画面に表示するための表示装置にも、適用することができる。
【0043】
また、前記の図1に示した第1実施例では、CD−ROM駆動装置3は枠体1に内蔵させているが、本発明では、このCD−ROM駆動装置3を枠体1及び2から分離させて別個のユニットとし、この別個のユニットであるCD−ROM駆動装置(このCD−ROM駆動装置以外に、本明細書の段落0042などの中で言及しているようなパーソナル・コンピュータの一部として使用される記録装置などでもよい)から無線電波により枠体1内の信号処理装置4に信号を送信し、この信号処理装置4が無線で受信した情報を、枠体1,2の表示パネルの画面に表示するようにしてもよい。
【0044】
【発明の効果】
1.本発明の基本的効果.
本発明では、「少なくとも2つの表示板(2つの表示パネル)を約105度から約170度までの間のいずれかの角度で固定するための左右見開き固定手段」を備えている。したがって、本発明では、ユーザーが、表示装置全体をその一方の片手のみで支持しようとするとき、前記左右見開き固定手段により形成される「断面略V字状の凹状部分(裏側から見ると、凸状部分)」又はその近傍の部分を、前記片手による支持の「取っ掛かり」とすることができる。よって、本発明によれば、ユーザーは、外出先(戸外)などで、例えば立ったままでも、2つの表示板を含む表示装置全体を、その一方の片手のみで容易且つ安定的に支持することができるようになる。
【0045】
すなわち、本発明では、前記の「ユーザーが、その片手の上に載せて、その片手だけで支持しながら使用できる(あるいは、小型の表示装置である)」という構成と、前記の「左右見開き固定手段」という構成とにより、「少なくとも2つ以上の表示板を見開き状態で使用するとき、ユーザーが、その片手の親指を、前記各表示板の左右見開き接続部分の表面側(ユーザー側)の断面略V字状の凹状部分(すなわち、約105度から約170度までの間のいずれかの角度に折り曲げられている谷状部分)に当てることにより、又は/及び、その片手の親指以外の指又は掌を、前記各表示板の見開き接続部分の裏面側(ユーザーに対向していない側)の山状の部分に当てることにより、ユーザーは、前記の表示板の全体を、ユーザーの片手だけで極めて容易且つ安定的に支持しながら使用することができる」という効果が得られる。
【0046】 (削除)
【0047】 (削除)
【0048】
2.上記の本発明の効果を図8を参照して説明すると、次の(1)〜(4)のとおりである。
【0049】
(1)図8(a)の場合の作用
図8(a)は、「互いに厚さ寸法が同一ではない2つの表示板(2つの表示パネル)91,92を、約180度の角度での完全見開きの状態に固定して成る表示装置を、ユーザーが片手で支持している場合」(本発明の範囲外)を示している。
【0050】
この場合は、ユーザーは、片手の親指93を前記2つの表示板91,92の表示画面側(ユーザーに対向する側)の何処かの場所に当てることになるが、その表示画面側は全体として約180度の水平面となっており、「親指を当てるときの、『取っ掛かり』となってくれるような部分(例えば、本発明における前記「断面略V字状の凹状部分」のような谷の部分)」が存在しないため、前記親指93の存在にも拘わらず前記各表示板91,92は「図示左右方向に、ぶれやすく、移動しやすい」状態となり、前記親指93により各表示板91,92を容易且つ安定的に支持することはできない。
【0051】
また、前記の片手の親指以外の指又は掌は、前記各表示板91,92の裏面側(ユーザーに対向しない側)に当てられるが、前記各表示板91,92の裏面側も全体として約180度の角度の略水平面となっており、「その親指以外の指又は掌を当てたときの、『取っ掛かり』になってくれる部分」が存在しないので、前記各表示板91,92は「図示左右方向に、ぶれやすく、移動しやすい」状態となり、前記親指以外の指又は掌により各表示板91,92を強く安定的に支持することはできない。
【0052】
以上より、この図8(a)の場合は、ユーザーが表示装置全体を片手だけで支持するときは、極めて不安定な支持しかできない。
【0053】
(2)図8(b)の場合の作用
次に、図8(b)は、「互いに厚さ寸法が異なる2つの表示板(2つの表示パネル)91,92を、ユーザーが自分の手で約130度くらいの角度で見開き状態にした(但し、前記2つの表示板を『前記約130度の左右見開き状態で固定(半固定を含む)すること』は、為されていない)まま、ユーザーが片手で支持している場合」(本発明の範囲外)を示している。
【0054】
この場合は、ユーザーは、片手の親指93を前記2つの表示板91及び92の接続部分の表示画面側(ユーザーに対向している側)に当てることになるので、この「断面略V字状の凹状の谷状部分(図8(b)の矢印Aで示す部分)」が「親指93を当てるときの、『取っ掛かり』のような部分」に一応はなってくれる。そのため、この「取っ掛かり」に当てられる親指93の存在により、前記各表示板91,92は、「図示左右方向に、ぶれること、移動すること」が少しは防止されるようになる。
【0055】
また、前記各表示板91,92の裏面側(ユーザーに対向していない側)は、前記各表示板91及び92が約130度の角度に突出する山状になっており、この「山状部分」が「前記親指以外の指又は掌を当てるに際しての『取っ掛かり』のような部分」に一応はなってくれるので、前記各表示板91,92が「図示左右方向に、ぶれること、移動すること」が、少しは防止されるようになっている。
【0056】
しかし、この図8(b)の場合は、前記の各表示板91と92との間の約130度くらいの角度での見開き状態が「固定(半固定を含む)」されてはいない(ユーザーが自分の手の力だけで約130度くらいの角度になるように支持しているだけである)。したがって、この図8(b)の場合は、各表示板91と92との間の角度は、図の矢印Bで示すように、「(約130度の角度のままで一定ということではなく)常にブラブラ・グラグラと不安定に変動してしまう状態」にある。よって、この図8(b)の場合は、各表示板91,92は、ユーザーが片手で支持している間、ずっと、図の矢印Bのように互いの接続部分の角度がブラブラと不安定に変動してしまう(前記の「各表示板91と92との間の角度(約130度)」が固定されておらず、一定していない)ので、ユーザーは、到底、片手のみで各表示板91,92を容易且つ安定的に支持することはできない。
【0057】
よって、ユーザーが各表示板91,92に表示された情報を見ようとしても、各表示板91,92が図の矢印Bのように常にブラブラ・グラグラと動いてしまうので、大変に見難く読み難くなってしまう(目も疲れてしまう)。また、本来的にブラブラと前記角度が変動してしまう2つの表示板91,92をユーザーが自分の手で約130度の角度に保持し続けなくてはならないので、ユーザーは手に不自然な力を入れ続ける必要があり、疲れてしまう。また、電子ペン94(図8(b)参照)を使用して文字を手書き入力するなどのペン入力操作や指先入力操作(タッチパネル方式での入力操作)をしようとする場合でも、入力操作時に発生するペン先又は指先からの押圧力により表示板92の位置が図の矢印Bのようにブラブラと大きく変動してしまい、大変に不安定であるため、手書き入力などのペン入力操作やタッチパネル式画面への指先の押圧操作などの「入力操作」が極めて難しくなってしまう。
【0058】
(3)図8(c)の場合の作用
次に、図8(c)は、本願発明の一実施形態で、「互いに厚さ寸法の異なる2つの表示板(2つの表示パネル)91,92が、約180度の完全見開き状態と折り畳み状態との間の、例えば約130度の角度で固定されている場合」である。
【0059】
この場合は、ユーザーは、片手の親指93を、前記2つの表示板91及び92の接続部分の表示画面側(ユーザーに対向している側)の「(2つの表示板91,92の接続部分の)断面略V字状の凹状に固定された谷状部分」((図8(c)の矢印A参照)に当てることになるので、この「断面略V字状の凹状に固定された谷状部分」が「親指93を当てるときの、『取っ掛かり』のような部分」となってくれる。そのため、この「取っ掛かりのような部分(谷状部分)」に当てられた親指93の存在により、前記各表示板91,92は、「図示左右方向に、ぶれること、移動すること」がほぼ完全に防止される。
【0060】
また、この場合は、ユーザーの前記片手の親指以外の指又は掌は、前記各表示板91,92の裏面側(ユーザーに対向していない側)に当てられるが、この裏面側は、前記各表示板91及び92が約130度の角度で固定されているため、「断面略V字状に突出・固定された山状部分」となっている(2つの表示板の接続部分のユーザーに対向する側が断面略V字状の凹状の谷状部分となっている場合は、その反対側(裏側)は、当然に、断面が略V字状の突状の山状部分となる)。そこで、この場合は、この裏面側の「断面が略V字状の突状に固定された山状部分」が、「前記の片手の親指以外の指又は掌を当てるときの『取っ掛かり』のような部分」となってくれる。そのため、前記の親指93の存在によるだけでなく、この「取っ掛かりのような部分(山状部分)」に当てられた親指以外の指又は掌の存在によっても、前記各表示板91,92が「図示左右方向に、ぶれること、移動すること」が、ほぼ完全に防止される。
【0061】
そして、この場合は、各表示板91,92が約130度の角度で見開き「固定(半固定を含む)」されているため、各表示板91,92の裏面側(ユーザーに対向しない側)の全体形状が、ユーザーの片手の「掌(手のひら)」の自然な形にフィットしやすい状態となる(なぜなら、人間の手をリラックスさせたときの自然な形とは、ちょうど「卵をつかむ」ときのような形であるが、このときの「掌(手のひら)」の形は、ちょうど「断面が略V字状の凹状」となるから)。
【0062】
そして、前記谷状部分を「取っ掛かり」として表面側(ユーザーに対向している側)に掛けられたユーザーの親指94と、その裏側の前記山状部分を「取っ掛かり」として裏面側(ユーザーに対向していない側)に掛けられたユーザーの親指以外の指又は掌とが、前記2つの表示板91,92を、その表面側と裏面側とからそれぞれ強固に安定的に支持するようになるので、表示装置をユーザーの片手の上に載せれば、ユーザーの片手のみでも、表示装置が全体として極めて容易且つ安定的に支持されるようになる。
【0063】
特に、電子ペン94による文字の手書き入力や指先による入力(タッチパネル方式)などの入力操作をするときでも、前記のように、2つの表示板91と92の間の角度が固定(半固定を含む)されているので、ペン先や指先から所定の押圧力を表示板92に与えても、表示板92が「ブラブラ・グラグラとぐらつく」ことはなく、入力ペンによる手書き入力などの入力操作やタッチパネル式画面への指先の操作などの「入力操作」が大変に安定的に且つ容易にできるようになる。
【0064】
(4)図8(d)の場合の作用
次に、図8(d)は、本願発明の一実施形態を示すもので、「互いに平面の面積と厚さ寸法がほぼ同一の2つの表示板(2つの表示パネル)91,92が、約130度の角度で見開かれた状態で固定されている場合」である。
【0065】
この場合も、図8(c)で前述したのと同様に、ユーザーは、片手のみでも極めて容易且つ安定的に表示装置を支持することができる。
【0066】 (削除)
【0067】
3.次に、本発明の効果について、さらに、図9を参照して説明する。図9(a)に示すように、従来より、「キーボード104と、表示画面105aを表示するための表示パネル105とを、互いに折り畳み・見開き自在に接続したノート型パソコン」が販売されている。図9(a)は、この従来のノート型パソコンを元に、それをユーザーの片手の「掌(手のひら)」だけで支持できるように小型化したものを、本発明との比較のために特別に仮想的に用意して、それをユーザーが一方の片手だけで支持したときの動作を仮想的に示したものである。
【0068】
この場合は、ユーザーの親指101と小指102と掌103とにより、キーボード104の左右両側面と下面とを、それぞれ左右両側から及び下方向から支持することになる。そして、ユーザーは、他方の片手で、キーボード104を操作することができる。
【0069】
しかし、このような小型のノート型パソコンは、キーボード104と表示板105とが「ユーザーから見て左右方向(横方向)の線(図9(a)の一点鎖線Q参照)」を境にして折り曲げられている点で、2つの表示板が「ユーザーから見て上下方向(縦方向)の線(図9(b)の一点鎖線R参照)」を境にして折り曲げられている本発明とは、根本的に、その課題・構成・作用・効果を異にしている。
【0070】
すなわち、本発明では、図9(b)に示すように、2つの表示板(表示パネル)107,108が、「ユーザーから見て上下方向(縦方向)の線(図9(b)の一点鎖線R参照)」を境にして折り曲げ固定されている。
【0071】
そして、本発明では、この「ユーザーから見て上下方向(縦方向)の線R」に沿って、前記「断面略V字状の凹状部分(谷状部分)」が形成されている(図9(b)及び図9(c)の符号P参照)。そして、この「断面略V字状の凹状の谷状部分」Pが、ユーザーが前記2つの表示板107,108を安定的に支持するためにユーザーの親指106を掛けるための「取っ掛かり」となってくれている。また、本発明では、前記「断面略V字状の凹状の谷状部分」Pの裏側の「山状部分」が、ユーザーが前記2つの表示板107,108の裏面(ユーザーと対向していない側)にユーザーの親指以外の指又は掌を当てるための「取っ掛かり」となってくれている。
【0072】
以上のように、本発明では、図9(b)の符号Rで示す「ユーザーから見て上下方向(縦方向)の線」を境として、表示装置の右側部分と左側部分とを、前記の折り曲げられた任意の角度で(すなわち、断面が略V字状になった状態で)固定することが、可能になっている。
【0073】
したがって、本発明では、ユーザーがその片手で表示装置全体を支持するとき(又は、ユーザーが表示装置全体を片手の上に載置するとき)、ユーザーは、前記の折り曲げられた部分(「ユーザーから見て上下方向(縦方向)の線」又はその近傍の部分)に形成される「断面略V字状の凹状の谷状部分」に親指を掛けてそこを「取っ掛かり」にして表示装置を支持すること(又は、前記の断面略V字状の凹状の谷状部分の反対側の山状部分を「取っ掛かり」にして、表示装置を片手の親指以外の指又は掌の上に置くこと)により、前記表示装置の全体を極めて容易且つ安定的に支持することが可能になる。
【0074】
すなわち、一般に、▲1▼「平板状(表面が水平面状)の物体」を片手のみで支持すること(又は、平板状の物体を片手の掌の上に載置すること)と、▲2▼「断面が略V字状の凹部(谷状)になっている物体」を片手のみで支持すること(又は、「断面が略V字状の凹部になっている物体の裏面の山状部分」を片手の親指以外の指又は掌の上に載置すること)とを比較すると、後者(▲2▼)の方が格段に容易であることは、経験上もまた理論上も明らかである。
【0075】
すなわち、前者(▲1▼)の平板状の物体では、片手で持つときに、持つときの「取っ掛かり」が無いので、必要以上の握力が必要になり、片手の神経を集中させなくてはならないので、大変に緊張し疲れてしまう。これに対して、後者(▲2▼)の断面略V字状の物体では、前記の略V字状の谷状の部分とその裏側の山状部分がユーザーの手(指及び掌)で持つときの「取っ掛かり」となってくれるので、この部分を持てば小さな握力でも(すなわち、ユーザーが手に力を入れないで自然にリラックスした状態でも)容易に安定して持ち続けることができる。
【0076】
すなわち、前者(▲1▼)の平板状の物体では、それを片手の「掌(手のひら)」の上に載せようとしても、平板状なので、掌の上をズルズルと滑ってしまい易いため、そのズルズルと滑るのを防ごうとして必要以上の力を不自然な形で入れる必要があり、且つ、必要以上に神経を集中・緊張させる必要があり、その結果、長時間支持し続けようとすると過度の疲労(肩凝り、眼精疲労など)の原因となってしまう。
【0077】
これに対して、後者(▲2▼)の断面略V字状の物体では、極めて容易且つ安定的に、表示装置全体を、片手の「掌」の上で支持することが可能になる。
【0078】
なぜなら、まず、人間の片手の「掌」そのものが、もともと(自然にリラックスした状態においては)、「断面が略V字状の凹状」となっている(すなわち、片手で本や書類やタマゴなどの物を普通に支持している状態又は自然にリラックスした状態の片手の断面形状は、ちょうど「断面が略V字状の凹状=谷状」となっている)。そして、一般に、前記の表面側(ユーザー側)の断面略V字状の凹状の谷状部分の裏面側の山状の部分は、人間の片手の「掌」の中にちょうどうまくスッポリと収まり易い(人間の掌(手のひら)の形は、もともと、リラックスした状態では、ちょうど「断面が略V字状の凹状」となっているため)。したがって、本発明の左右見開き固定手段により形成される前記の各表示板間が断面略V字状に固定(半固定を含む)された表示装置は、ユーザーにとって、極めて小さな力で、リラックスした状態で、容易且つ安定的に、その片手の「掌」の上に載置し続けることを可能にするものなのである。
【0079】
以上のように、本発明によれば、前記左右見開き固定手段により、ユーザーが表示装置の全体を片手だけで支持すること又は片手の掌の上に載置することが、極めて容易になる。よって、本発明によれば、ユーザーが、外出中(戸外で)、例えば通勤電車内や路上などの様々な場所で、立ったままでも、表示装置を片手だけで支持しながら、又は表示装置を片手の掌の上に載置・支持しながら、安定的に使用し続けることが極めて容易になる。
【0080】 (削除)
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例に係るCD−ROM再生装置を示す正面図ある。
【図2】 図1の実施例を動作別に示す平面図である。
【図3】 本発明の第2実施例に係るCD−ROM再生装置を示す正面図である。
【図4】 第2実施例を示す平面図である。
【図5】 第2実施例の折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図6】 本発明の第3実施例を示す平面図である。
【図7】 本発明の第4実施例を示す平面図である。
【図8】 本発明の作用・効果を説明するための図である。
【図9】 本発明の作用・効果を説明するための図である。
【符号の説明】
1,2,11〜20,1a,2a 枠体
3,50 CD−ROM駆動装置
4,51 信号処理装置
5,7,21〜30,5a,7a LCD画面(LCDパネル)
6,8,31〜40 LCD駆動装置
9,10,9a,10a 蝶番(ジョイント)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、
前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、
前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、
前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるよ

板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合において、前記2つの表示板のそれ

【請求項4】
画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、
前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、
前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約150度から約170度までの範囲内の所定の角度」となるように、ストッパにより固定するための左右見

とも一方の表示板を前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度で見開きにされた状態へと変化するようにユーザーが回動させている場合

前記のユーザーが行っている回動をストップさせて前記2つの表示板間を固定するものであり、且つ(b)ユーザーが、前記少なくとも一方の表示板を、前記2つの表示板が前記所定の角度で固定された状態から互いに約180度で見開きにされる状態へと変化するようにさらに回動させるとき、前記少なくとも一方の表示板が、前記2つの表示板が互いに約180度で見開きにされる状態となるよう

表示装置。
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2023-07-27 
結審通知日 2023-07-31 
審決日 2023-08-18 
出願番号 P2002-196984
審決分類 P 1 113・ 121- ZAA (G09F)
P 1 113・ 536- ZAA (G09F)
P 1 113・ 537- ZAA (G09F)
P 1 113・ 851- ZAA (G09F)
P 1 113・ 55- ZAA (G09F)
P 1 113・ 113- ZAA (G09F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱野 隆
中塚 直樹
登録日 2002-12-20 
登録番号 3382936
発明の名称 片手支持可能な表示装置  
代理人 松本 陸  
代理人 上野 さやか  
代理人 鯨田 雅信  
代理人 塩月 秀平  
代理人 佐藤 宏樹  
代理人 鯨田 雅信  
代理人 大石 幸雄  
代理人 高村 和宗  
代理人 岡田 誠  

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