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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項2号公然実施 G06Q 審判 全部申し立て 2項進歩性 G06Q |
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管理番号 | 1404742 |
総通号数 | 24 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-05-10 |
確定日 | 2023-10-11 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6979144号発明「ECの海外への提供を支援するための支援方法、そのためのプログラム、又は支援サーバ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6979144号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〕、2、4、5について訂正することを認める。 特許第6979144号の請求項1〜5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6979144号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜5に係る特許についての出願(特願2021−70059号)は、平成28年8月29日(優先権主張:平成27年8月28日)に出願された特願2017−538008号の一部を令和3年4月19日に新たな特許出願としたものであって、同年11月16日にその特許権の設定登録がされ、同年12月8日に特許掲載公報が発行された。 本件特許についての特許異議申立人 金澤毅(以下「異議申立人」という。)による特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年 5月10日 :特許異議の申立て(全請求項) 同年 8月24日付け:取消理由通知 同年 9月26日 :特許権者による意見書の提出、訂正請求 同年12月28日 :異議申立人による意見書の提出 令和5年 4月 3日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年 6月 6日 :特許権者による意見書の提出、訂正請求 同年 7月20日 :異議申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和5年6月6日の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜5について訂正することを求めるものであり、訂正の内容は、以下の訂正事項1〜12のとおりである(各訂正事項中の下線は、訂正箇所を示す。)。 なお、本件訂正請求により、先の令和4年9月26日にされた訂正請求は、取り下げられたものとみなされる(特許法120条の5第7項)。 また、本件訂正請求のうち、訂正事項1〜6に係る訂正前の請求項1〜3について、訂正前の請求項2及び3はそれぞれ請求項1を引用しているから、訂正前の請求項1〜3に対応する訂正後の請求項1〜3は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。しかるところ、特許権者は、訂正後の請求項2について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 (1) 請求項1〜3に係る訂正について ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品に関連づけられた第1のウェブページ」と記載されているのを「ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品を販売する第1のウェブページ」に訂正する(訂正事項1−1)。また、特許請求の範囲の請求項1に「アクセスしたユーザーの所在国を判定するステップ」と記載されているのを、「アクセスしたユーザーの所在国の国名を判定するステップ」に訂正する(訂正事項1−2)。 (請求項1を引用する請求項3も同様に訂正する。) イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトの1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバ」と記載されているのを、「前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバ」に訂正する。 (請求項1を引用する請求項3も同様に訂正する。) ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「前記ボタン又はバナーは、前記所在国に配送可の場合」と記載されているのを、「前記ボタン又はバナーは、前記国名の国に配送可の場合」に訂正する(請求項1を引用する請求項3も同様に訂正する。)。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項2に「 請求項1に記載の支援方法であって、」と記載されているのを、「 ECの海外への提供を支援するための支援方法であって、 ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品を販売する第1のウェブページにアクセスしたユーザーの所在国を判定するステップと、 前記ユーザーのユーザー端末のウェブブラウザを、前記第1のウェブページから、前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバにより提供される第2のウェブページに転送させるためのボタン又はバナーを表示させるステップと を含み、 前記第2のウェブページは、前記ある商品を購入する旨を通知するためのページであり、」に訂正する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項2に「前記ボタン又はバナーは、前記ECサイトのウェブページの下部に表示される。」と記載されているのを、「前記ボタンは、前記所在国が海外であり、海外に前記ある商品を配送可の場合に、前記ECサイトのウェブページの下部に表示される。」に訂正する。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の支援方法」と記載されているのを、「請求項1に記載の支援方法」に訂正する。 (2) 請求項4に係る訂正について ア 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項4に「ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品に関連づけられた第1のウェブページ」と記載されているのを「ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品を販売する第1のウェブページ」に訂正する(訂正事項7−1)。また、特許請求の範囲の請求項4に「アクセスしたユーザーの所在国を判定するステップ」と記載されているのを「アクセスしたユーザーの所在国の国名を判定するステップ」に訂正する(訂正事項7−2)。 イ 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項4に「前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトの1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバ」と記載されているのを、「前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバ」に訂正する。 ウ 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項4に「前記ボタン又はバナーは、前記所在国に配送可の場合」と記載されているのを、「前記ボタン又はバナーは、前記国名の国に配送可の場合」に訂正する。 (3) 請求項5に係る訂正について ア 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項5に「ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品に関連づけられた第1のウェブページ」と記載されているのを「ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品を販売する第1のウェブページ」に訂正する(訂正事項10−1)。また、特許請求の範囲の請求項5に「アクセスしたユーザーの所在国を判定し」と記載されているのを「アクセスしたユーザーの所在国の国名を判定し」に訂正する(訂正事項10−2)。 イ 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項5に「前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトの1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバ」と記載されているのを、「前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバ」に訂正する。 ウ 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項5に「前記ボタン又はバナーは、前記所在国に配送可の場合」と記載されているのを、「前記ボタン又はバナーは、前記国名の国に配送可の場合」に訂正する。 2 訂正の適否についての判断 以下、訂正の適否について判断する。 なお、特許異議の申立ては、上記第1のとおり、訂正前の全請求項(請求項1〜5)に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。 (1) 請求項1〜3に係る訂正について ア 訂正事項1について (ア) 訂正の目的 訂正事項1−1は、訂正前の請求項1の「ある商品に関連づけられた第1のウェブページ」との記載を「ある商品」と「第1のウェブページ」との「関連づけ」を具体的に特定して、その下位概念の「ある商品を販売する第1のウェブページ」に訂正するものであり、また、訂正事項1−2は、訂正前の請求項1の「判定するステップ」について、「所在国」が海外か否かを判定するのではなく、さらに具体的に個々の「所在国の国名」を判定することに訂正するものであるから、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (イ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか 上記(ア)のとおり、訂正事項1−1は、「ある商品に関連づけられた第1のウェブページ」を、その下位概念の「ある商品を販売する第1のウェブページ」に訂正するものであり、また、訂正事項1−2は、「判定するステップ」について、「所在国」が海外か否かを判定するのではなく、さらに具体的に個々の「所在国の国名」を判定することに訂正するものであって、いずれもカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、訂正事項1は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 (ウ) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項1−1について、願書に添付した明細書には「リンクによる転送先としては、支援サーバ100上で提供される任意のウェブページ又は転送元のECサイトに関連づけられたウェブページとすることができるが、海外ユーザーがアクセスしたウェブページが個別の商品ページである場合には、当該商品を購入対象としてショッピングカートに入れておくことができ、リンクの転送先を当該製品を購入する旨を通知するための購入ページ、決済ページなどのウェブページとすることもできる。」(【0133】)と記載されており、当該記載中の「個別の商品ページ」である「ウェブページ」が訂正後の請求項1の「第1のウェブページ」に対応し、さらに「個別の商品ページ」である「ウェブページ」において「当該商品を購入対象としてショッピングカートに入れておくことができ」るから、「個別の商品ページ」である「ウェブページ」は、「ある商品を販売する第1のウェブページ」といえる。また、訂正事項1−2について、願書に添付した明細書には「選別は、海外ユーザーの配送先住所の所在国に応じて行うことができる。たとえば、国名と輸入制限品目とを対応づけた輸入制限テーブルを参照して行うことができる。」(【0100】)と記載されており、所在国に応じた選別を行う際に、国名と輸入制限品目とを対応付けたテーブルを参照するのであるから、選別は「所在国の国名」を判定して行うものであるといえる。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 イ 訂正事項2について (ア) 訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項1の「前記ECサイトの1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバ」との記載を、「代理購入」を「ECサイトから」行うことを特定して、その下位概念の「前記ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバ」に訂正するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (イ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか 訂正事項2は、上記(ア)のとおり、「前記ECサイトの1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバ」を、その下位概念の「前記ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバ」に訂正するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 (ウ) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項2について、願書に添付した明細書には「支援サーバ100の運営者は、購入する旨の通知を受信した1又は複数の商品を海外ユーザーを代理して自らの配送先住所を用いて上記ECサイトから当該1又は複数の商品を入手する。運営者は、配送された当該1又は複数の商品を検品し、梱包し、海外ユーザーに発送する。」(【0092】)と記載されているところ、当該記載中の「上記ECサイト」は、請求項1の「ECサイト」に対応する。 したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 ウ 訂正事項3について (ア) 訂正の目的 訂正事項3は、上記ア(ア)の訂正事項1−2により、訂正前の請求項1の「判定するステップ」について、「所在国」が海外か否かを判定するのではなく、さらに具体的に個々の「所在国の国名」を判定することに訂正することにともない、「前記所在国に配送可の場合」を「前記国名の国に配送可の場合」に訂正するものであるから、訂正事項3は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (イ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか 上記(ア)のとおり、訂正事項3は、「前記所在国に配送可の場合」を「前記国名の国に配送可の場合」に訂正するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 (ウ) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項3について、願書に添付した明細書には「転送は、ユーザーの配送先住所の所在国を判定するステップさらに含み、判定の結果、当該所在国が海外の場合、又は、当該ECサイトにおいて配送不可とされる国に当該所在国が含まれる場合に行うことができる。」(【0134】)と記載されているところ、上記ア(ウ)のとおり、願書に添付した明細書には「所在国の国名」を判定することが記載されているから、「当該ECサイトにおいて配送不可とされる国に当該所在国が含まれる」か否かの判定は、「所在国の国名」を判定して行うものであるといえる。 したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 エ 訂正事項4について (ア) 訂正の目的 訂正事項4は、訂正前の請求項2が請求項1を引用する記載であるところ、請求項1の記載を請求項2の記載に明示的に記載するように訂正するものであるから、訂正事項4は、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。 また、訂正事項4は、訂正前の請求項2が引用する請求項1の記載について、上記ア(ア)の訂正事項1−1と、上記イ(ア)の訂正事項2と同様の訂正をするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (イ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか 上記(ア)のとおり、訂正事項4は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることと、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 (ウ) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか 上記(ア)のとおり、訂正事項4は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項4は、上記ア(ア)の訂正事項1−1と、上記イ(ア)の訂正事項2と同様の訂正をするものであるところ、上記ア(ウ)及びイ(ウ)のとおり、訂正事項1−1及び訂正事項2は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 オ 訂正事項5について (ア) 訂正の目的 訂正事項5は、訂正前の請求項2が引用する請求項1の「前記ボタン又はバナーは、前記所在国に配送可の場合に表示される」こと及び訂正前の請求項2の「前記ボタン又はバナーは、前記ECサイトのウェブページの下部に表示される」ことについて、「前記ボタン又はバナー」との択一的記載の要素を削除して「前記ボタン」と訂正し、さらに「前記所在国に配送可の場合に表示される」との条件を「前記所在国が海外であり、海外に前記ある商品を配送可の場合に」との条件に変更するものである。しかるところ、この条件の変更に関連して、願書に添付した明細書には「転送は、ユーザーの配送先住所の所在国を判定するステップさらに含み、判定の結果、当該所在国が海外の場合、又は、当該ECサイトにおいて配送不可とされる国に当該所在国が含まれる場合に行うことができる。・・・配送の可否は、商品ごとに行われることもあり、一部の商品が配送不可であり、全体としては配送可である場合には転送を行うようにしてもよい。」(【0134】)との記載がある。そうすると、この条件の変更は、訂正前には「所在国に配送可の場合」に表示するとしていたものを、商品ごとに配送の可否を判定した場合における「当該所在国が海外の場合」に表示するとして、より限定的な条件による表示を行うものに変更したといえるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (イ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか 上記(ア)のとおり、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 (ウ) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項5について、願書に添付した明細書には、上記(ア)で示した段落【0134】の記載があり、商品ごとに配送の可否を判定した場合における「所在国が海外の場合」にボタンを表示することは、当業者において自明のことである。 したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 カ 訂正事項6について (ア) 訂正の目的 訂正事項6は、訂正前の請求項3の「請求項1又は2に記載の支援方法」について、択一的記載の要素を削除して「請求項1に記載の支援方法」と訂正するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (イ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか 上記(ア)のとおり、訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 (ウ) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか 上記(ア)のとおり、訂正事項6は、択一的記載の要素を削除して、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 したがって、訂正事項6は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (2) 請求項4に係る訂正について ア 訂正事項7 訂正事項7は、訂正事項1と同様の訂正である。 したがって、訂正事項7は、上記(1)アと同様、(ア)特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであり、(イ)カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、(ウ)願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。 イ 訂正事項8 訂正事項8は、訂正事項2と同様の訂正である。 したがって、訂正事項8は、上記(1)イと同様、(ア)特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであり、(イ)カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、(ウ)願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。 ウ 訂正事項9 訂正事項9は、訂正事項3と同様の訂正である。 したがって、訂正事項9は、上記(1)ウと同様、(ア)特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであり、(イ)カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、(ウ)願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。 (3) 請求項5に係る訂正について ア 訂正事項10 訂正事項10は、訂正事項1と同様の訂正である。 したがって、訂正事項10は、上記(1)アと同様、(ア)特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであり、(イ)カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、(ウ)願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。 イ 訂正事項11 訂正事項11は、訂正事項2と同様の訂正である。 したがって、訂正事項11は、上記(1)イと同様、(ア)特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであり、(イ)カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、(ウ)願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。 ウ 訂正事項12 訂正事項12は、訂正事項3と同様の訂正である。 したがって、訂正事項12は、上記(1)ウと同様、(ア)特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであり、(イ)カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、(ウ)願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。 3 小括 以上のとおり、本件訂正請求による訂正は適法にされたものであるから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜5について訂正することを認める。 なお、訂正後の請求項2に係る訂正事項4及び訂正事項5は、引用関係の解消を目的として含む訂正であって、その訂正は認められるものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項2について訂正が認められるときは請求項〔1〜3〕とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項〔1、3〕、2、4、5について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1〜5に係る発明(以下「本件発明1〜5」という。)は、訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 ECの海外への提供を支援するための支援方法であって、 ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品を販売する第1のウェブページにアクセスしたユーザーの所在国の国名を判定するステップと、 前記ユーザーのユーザー端末のウェブブラウザを、前記第1のウェブページから、前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバにより提供される第2のウェブページに転送させるためのボタン又はバナーを表示させるステップと を含み、 前記第2のウェブページは、前記ある商品を購入する旨を通知するためのページであり、 前記ボタン又はバナーは、前記国名の国に配送可の場合に表示される。 【請求項2】 ECの海外への提供を支援するための支援方法であって、 ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品を販売する第1のウェブページにアクセスしたユーザーの所在国を判定するステップと、 前記ユーザーのユーザー端末のウェブブラウザを、前記第1のウェブページから、前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバにより提供される第2のウェブページに転送させるためのボタン又はバナーを表示させるステップと を含み、 前記第2のウェブページは、前記ある商品を購入する旨を通知するためのページであり、 前記ボタンは、前記所在国が海外であり、海外に前記ある商品を配送可の場合に、前記ECサイトのウェブページの下部に表示される。 【請求項3】 請求項1に記載の支援方法であって、 前記判定は、前記ユーザー端末に割り当てられたIPアドレスに基づいて行う。 【請求項4】 コンピュータに、ECの海外への提供を支援するための支援方法を実行させるためのプログラムであって、前記支援方法は、 ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品を販売する第1のウェブページにアクセスしたユーザーの所在国の国名を判定するステップと、 前記ユーザーのユーザー端末のウェブブラウザを、前記ECサイトから、前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバにより提供される第2のウェブページに転送させるためのボタン又はバナーを表示させるステップと を含み、 前記第2のウェブページは、前記ある商品を購入する旨を通知するためのページであり、 前記ボタン又はバナーは、前記国名の国に配送可の場合に表示される。 【請求項5】 ECの海外への提供を支援するための装置であって、 ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品を販売する第1のウェブページにアクセスしたユーザーの所在国の国名を判定し、 前記ユーザーのユーザー端末のウェブブラウザを、前記ECサイトから、前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバにより提供される第2のウェブページに転送させるためのボタン又はバナーを表示させ、 前記第2のウェブページは、前記ある商品を購入する旨を通知するためのページであり、 前記ボタン又はバナーは、前記国名の国に配送可の場合に表示される。 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1〜5に係る特許に対して、当審が令和5年4月3日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 本件特許の請求項1〜5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において異議申立人が提出した以下の甲第1号証及び甲第2号証(以下、それぞれ「甲1」及び「甲2」という。)を証拠方法とする公然実施をされた発明であるから、特許法29条1項2号に該当し、特許を受けることができない、あるいは、公然実施をされた発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 <証拠方法> 甲第1号証(甲1):ウェブページ、NEWS RELEASE、「「価格.com」とベリトランスがサービス連携、商品の海外配送に対応 カートの多言語化・海外配送が可能なベリトランスの新サイト「BuySmartJapan」で4言語での購入画面の表示と、120の国と地域へ海外配送が可能に」、株式会社カカクコム、ベリトランス株式会社、[ONLINE]、公知日:2013年11月6日、検索日:2022年3月29日、インターネット<URL:https://corporate.kakaku.com/wordpress/wp-content/uploads/2013/11/20131106.pdf> 甲第2号証(甲2):ウェブページ、「BuySmartJapan ショッピングガイド」の動画データ、ベリトランス株式会社、公知日:2014年6月25日、検索日:2022年3月29日、インターネット<URL:https://www.youtube.com/watch?v=1oVrHeqe04A> 2 甲1、甲2及び公然実施発明 (1) 甲1について ア 甲1は、株式会社カカクコムとベリトランス株式会社の「「価格.com」とベリトランスがサービス連携、商品の海外配送に対応 カートの多言語化・海外配送が可能なベリトランスの新サイト「BuySmartJapan」で4言語での購入画面の表示と、120の国と地域へ海外配送が可能に」と題するプレスリリースのウェブページであり、本件特許についての出願の優先日前である「2013年11月6日」の記載とともに以下のとおり表示されている。 ![]() イ 上記アによれば、以下の事項が看取できる。 (ア) 「株式会社カカクコム(東京都渋谷区 代表取締役社長 田中 実、東証コード:2371、以下:カカクコム)とベリトランス株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:沖田 貴史、以下:ベリトランス)は、ベリトランスの新サイト「BuySmartJapan(読み:バイスマートジャパン)」を利用することで「価格.com(読み:価格ドットコム)」へ海外からアクセスするユーザが、掲載商品を購入できるようにしました。」 (イ) 「購買支援サイト「価格.com」は、月間約4,500万人の方々にご利用いただいていますが、そのうち海外在住のユーザは100万人以上にのぼります。しかしながら、「価格.com」掲載店舗で海外発送に対応しているお店は少なく、これらのユーザが商品購入を望んでも、購入できない状況がありました。そこでこの度「価格.com」は、ベリトランスの提供する「BuySmartJapan」と連携し、新たに4か国語(英語、中国語、韓国語、日本語)に対応したショッピングカートを用意することで、日本以外の120の国と地域への商品発送を開始します。」 (ウ) 「【「BuySmartJapan」の仕組み】 「BuySmartJapan」は、ベリトランスの提供するクロスボーダープラットフォーム「Veritrans XP」を利用しており、英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語、日本語の4言語に対応しているショッピングカートと120の国と地域への海外配送を実現するベリトランスの新サイトです。「価格.com」とのシステム連携を行い、掲載商品の情報を取得し、海外(日本以外のIPアドレス)からアクセスしたユーザに対応した言語での購入画面を表示します。決済手段はクレジットカード決済に加え、支付宝(アリペイ)、銀聯(ギンレン)、Paypal(ペイパル)決済に対応し、海外からアクセスするユーザがシンプルに安心して購入できる仕組みを提供しています。なお、購入された商品はベリトランスが「価格.com」掲載店舗から代理購入を行い、商品を発送します。」 (エ) 「【スキーム図】 ○1海外ユーザが価格.comにアクセス。 商品詳細ページ確認。 ○2BuySmartJapanのバナーをクリックし、BuySmartJapanに遷移。 商品を購入。 ○3BuySmartJapanが価格.com掲載店舗から商品を購入。 ○4価格.com掲載店舗が日本国内のBuySmartJapan配送センターに商品を配送。 ○5BuySmartJapan配送センターから商品を海外のユーザに発送。」 (甲1に表示された「〇」中に数字を配置した記号は、「〇1」等で示す。) (2) 甲2について 甲2は、「BuySmartJapan ショッピングガイド」と題する動画であり、該動画が表示されるウェブページには、本件特許についての出願の優先日前である「2014/06/25」の記載がある。そして、コンピュータにより甲2の動画を再生すると、再生開始からの下記の各経過時間において、以下のとおりの表示画面が表示される。 ア 動画再生時27秒時点の表示画面 ![]() 上記表示画面は、甲2の動画を再生したときの再生開始から27秒経過時点の表示画面(以下「表示画面A」という。)を示す。 表示画面Aは、「価格.com」の特定のヘッドホンに関するウェブページを表示するものであって、「購入可能な商品の場合、バナーがあらわれます。複数カラーがあるのでブラックを選択します。」との吹出し画像の表示より、前記特定のヘッドホンは購入可能な商品であることが看取できる。 イ 動画再生時29秒時点の表示画面 ![]() 上記表示画面は、甲2の動画を再生したときの再生開始から29秒経過時点の表示画面(以下「表示画面B」という。)を示す。 表示画面Bは、表示画面Aにおける複数カラーのうちのブラックを選択することで表示される画面を表しており、「価格.com」の特定のヘッドホン[ブラック]に関するウェブページを表示するものである。当該「ウェブページ」には、前記特定のヘッドホン[ブラック]の最安価格、価格帯が具体的に表示され、さらに、当該商品を購入できるショップの「ショップ一覧」へのリンクボタンが表示されている。 また、前記「ウェブページ」には、その下方に、 「日本国外へお住まいの方へ」 「こちらのバナーは日本以外のIPからサイトを閲覧されている方にのみ表示しております。」 「ご覧の商品を日本から世界120以上の国や地域にお届け致します。」 の各表示を含むバナーが表示されている。 さらに、表示画面Bには「ほしい商品ページにバナーが現れますので、クリック!」の吹き出し画像が表示されている。 ウ 動画再生時33秒時点の画面 ![]() 上記表示画面は、甲2の動画を再生したときの再生開始から33秒経過時点の表示画面(以下「表示画面C」という。)を示す。 表示画面Cは、表示画面Bの「ウェブページ」で「バナー」をクリックすることで表示される画面を表している。 表示画面Cによれば、前記バナーをクリックすると、 「こちらからは購入代行のサイトになります。」 「購入代行サービスとは、ユーザーが海外から日本の商品を購入したい際に、お客様の代わりに日本のECサイトで商品を購入してお客様に海外発送するサービスです。」 の各表示と、 「購入代行サービスの利用を開始する」と表示されたボタンと、 が表示されるポップアップウインドウが画面中央に表示されることが看取できるとともに、 「BuySmartJapanの商品詳細ページへ移動します。」 の表示が看取できる。 エ 動画再生時41秒時点の画面 ![]() 上記表示画面は、甲2の動画を再生したときの再生開始から41秒経過時点の表示画面(以下「表示画面D」という。)を示す。 表示画面Dは、表示画面Cの「購入代行サービスの利用を開始する」と表示されたボタンをクリックすると表示される「BuySmartJapanの商品詳細ページ」の画面であり、表示画面Cに表示された「BuySmartJapanの商品詳細ページ」が表示されたもの、すなわち、表示画面Bの特定のヘッドホン[ブラック]についての商品詳細ページが表示されたものといえる。 表示画面Dからみて、前記商品詳細ページは、「当サービスは、日本国外にお住まいの方に向けたサービスになります。日本国内への発送は承っておりません。」との表示とともに、通常価格、手数料、配送料金が表示され、数量を入力するボックスと、「購入する」と表示したボタンが表示されるウェブページといえる。 (3) 甲1及び甲2に基づくサービスの概要 甲1は、2013年11月6日に公表されたプレスリリースであって、表題のとおり、ベリトランス株式会社の新サイト「BuySmartJapan」によって、株式会社カカクコムの「価格.com」で取り扱う商品の海外発送を可能とした連携サービスについて記載されているものである。また、甲1には、「「価格.com」掲載店舗で海外発送に対応しているお店は少なく、海外在住のユーザが商品購入を望んでも、購入できない状況」であるところ(上記(1)イ(イ))、「ベリトランスの新サイト「BuySmartJapan(読み:バイスマートジャパン)」を利用することで「価格.com(読み:価格ドットコム)」へ海外からアクセスするユーザが、掲載商品を購入できるようにしました。」(同(ア))、「購入された商品はベリトランスが「価格.com」掲載店舗から代理購入を行い、商品を発送します。」(同(ウ))と記載されている。なお、上記(ア)の「海外からアクセスするユーザ」は、同(ウ)によれば「海外(日本以外のIPアドレス)からアクセスしたユーザ」のことである。 次に、甲2について検討するに、甲2は、不特定多数がアクセス可能な動画共有サイトである「YouTube」において、2014年6月25日に共有開始された「BuySmartJapan ショッピングガイド」と題する動画である。そして、上記(2)ア〜エによれば、「ユーザーが海外から日本の商品を購入したい際に、お客様の代わりに日本のECサイトで商品を購入してお客様に海外発送する」「購入代行サービス」の手順であって、「価格.com」のウェブサイトに掲載した商品を「BuySmartJapan」を利用して海外発送するための手順が示されているから、甲2には、甲1と同様、「BuySmartJapan」と「価格.com」が連携する同じサービスが記載されているということができる。 そうすると、甲2の動画が共有開始された2014年6月25日において、次のサービス(以下「本件サービス」という。)が実施されていたということができる。 [本件サービス] 「「価格.com」掲載店舗で海外発送に対応しているお店は少なく、海外在住のユーザが商品購入を望んでも、購入できない状況において、海外(日本以外のIPアドレス)から「価格.com」のサイトにアクセスしたユーザに対して、ベリトランスが「価格.com」掲載店舗から代理購入を行い、商品を海外発送するサービス」 (4) 公然実施発明 ア 甲1、甲2から把握できる具体的な本件サービス 上記(3)の本件サービスについて、甲1及び甲2に基づき、さらに検討する。 (ア) 甲1の「ベリトランスの新サイト「BuySmartJapan」」(上記(1)イ(ア))及び「購買支援サイト「価格.com」」(同(イ))について、一般にサイトの運営管理を行うためには当該サイトの運営管理を行うためのコンピュータであるサーバが用いられるから、本件サービスを実施する際に、「新サイト「BuySmartJapan」を運営管理するための「BuySmartJapan」のサーバと、購買支援サイト「価格.com」を運営管理するための「価格.com」のサーバを用いること」は明らかである。 (イ) 甲1の【スキーム図】(上記(1)ア)は、本件サービスの流れを示すものであるところ、「○1海外ユーザが価格.comにアクセス。商品詳細ページ確認。」(同イ(エ))とは、海外ユーザが「価格.com」のサイトにコンピュータ等の端末でアクセスすると、「価格.com」のサイトから海外ユーザの端末に対して商品詳細ページが提供され、海外ユーザが当該商品詳細ページの内容の確認を行うことである。また、「○2BuySmartJapanのバナーをクリックしBuySmartJapanに遷移。商品を購入。」(同(エ))とは、海外ユーザが「BuySmartJapan」のバナーをクリックすると、「価格.com」のサイトから「BuySmartJapan」のサイトに遷移して、所定の商品購入の手続を行うことである。そうすると、本件サービスは、「海外ユーザが「価格.com」のサイトに海外ユーザの端末でアクセスすると、「価格.com」のサイトから海外ユーザの端末に商品詳細ページが提供され、海外ユーザが「BuySmartJapan」のバナーをクリックすると、「価格.com」のサイトから「BuySmartJapan」のサイトに遷移して、所定の商品購入の手続を行うものである」といえる。 (ウ) 次に、甲2の手順では、「価格.com」の特定の商品の詳細を示すウェブページにおいて、当該商品を購入できるショップの「ショップ一覧」へのリンクボタンが表示されるとともに、画面下方に「日本国外にお住いの方へ」とともに「こちらのバナーは日本以外のIPからサイトを閲覧されている方にのみ表示しています。」という記載を含むバナー画像が表示されるところ(上記(2)イ)、「日本以外のIP」とは、甲1の「海外(日本以外のIPアドレス)からアクセスしたユーザに対応した言語での購入画面を表示します。」(上記(1)イ(ウ))との記載から、「日本以外のIPアドレス」を意味することが明らかである。そうすると、本件サービスは、「「価格.com」の特定の商品の詳細を示し、商品の最安価格、価格帯が表示され、さらに、当該商品を購入できるショップの「ショップ一覧」へのリンクボタンが表示されるウェブページにおいて、画面下方に日本以外のIPアドレスからサイトを閲覧している方にのみ表示する旨の記載を含むバナーを表示させる」ものであるといえる。 (エ) さらに、甲2の手順によれば、本件サービスは、「前記「価格.com」の特定の商品の詳細を示すウェブページにおいて、前記バナーをクリックすると、画面中央に「こちらからは購入代行のサイトになります。」という手順(上記(2)ウ)及び「購入代行サービスの利用を開始する」と表示されたボタンを含むポップアップウインドウを表示させ」、前記ボタンがクリックされると「BuySmartJapan」のサイトに遷移する手順を含むものであるといえる。 (オ) なお、上記(エ)の「ポップアップウインドウ」は、「ユーザー」が「海外(日本以外のIPアドレス)からアクセス」した場合、すなわち、「海外ユーザ」の場合に表示されるものである。そうすると、本件サービスは、「前記ポップアップウインドウにおいて、海外ユーザが前記ボタンをクリックすると、「BuySmartJapan」の特定の商品についての商品詳細ページに遷移させるものである。そして、当該商品詳細ページは、「当サービスは、日本国外にお住まいの方に向けたサービスになります。日本国内への発送は承っておりません。」との表示とともに、海外ユーザが選択した商品の商品情報と選択した商品の数量を入力する欄と、「購入する」と表示したボタンが表示されるウェブページ」であるといえる。 イ 公然実施発明 上記アによれば、本件特許についての出願の優先日である2015年8月28日より前に、本件サービスについて、以下の発明(以下「公然実施発明」という。)が実施されていたと認められる。 [公然実施発明] 「価格.com」掲載店舗で海外発送に対応しているお店は少なく、海外在住のユーザが商品購入を望んでも、購入できない状況において、海外(日本以外のIPアドレス)から「価格.com」のサイトにアクセスしたユーザに対して、ベリトランスが「価格.com」掲載店舗から代理購入を行い、商品を海外発送するサービスの方法であって、 ベリトランスの新サイト「BuySmartJapan」を運営管理するための「BuySmartJapan」のサーバと、購買支援サイト「価格.com」を運営管理するための「価格.com」のサーバを用い、 海外ユーザが「価格.com」のサイトに海外ユーザの端末でアクセスすると、「価格.com」のサイトから海外ユーザの端末に商品詳細ページが提供され、海外ユーザが「BuySmartJapan」のバナーをクリックすると、「価格.com」のサイトから「BuySmartJapan」のサイトに遷移して、所定の商品購入の手続を行うものであり、 「価格.com」の特定の商品の詳細を示し、商品の最安価格、価格帯が表示され、さらに、当該商品を購入できるショップの「ショップ一覧」へのリンクボタンが表示されるウェブページにおいて、画面下方に日本以外のIPアドレスからサイトを閲覧している方にのみ表示する旨の記載を含むバナーを表示させ、 前記「価格.com」の特定の商品の詳細を示すウェブページにおいて、前記バナーをクリックすると、画面中央に「こちらからは購入代行のサイトになります。」という記載と「購入代行サービスを利用する」と表示されたボタンを含むポップアップウインドウを表示させ、 前記ポップアップウインドウにおいて、海外ユーザが前記ボタンをクリックすると、「BuySmartJapan」の特定の商品についての商品詳細ページに遷移させ、当該商品詳細ページは、「当サービスは、日本国外にお住まいの方に向けたサービスになります。日本国内への発送は承っておりません。」との表示とともに、海外ユーザが選択した商品の商品情報と選択した商品の数量を入力する欄と、「購入する」と表示したボタンが表示されるウェブページである 方法。 3 当審の判断 (1) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と公然実施発明を対比する。 (ア) 「EC」とは「電子商取引」のことであるところ、公然実施発明の「購買支援サイト「価格.com」」は、ウェブページを介して商品の購買を支援するサイト、すなわち、ネット上における店舗とユーザーの電子商取引に関するサイトであるから、「ECサイト」ということができる。 そうすると、公然実施発明における「「価格.com」掲載店舗で海外発送に対応しているお店は少なく、海外在住のユーザが商品購入を望んでも、購入できない状況において、海外(日本以外のIPアドレス)からアクセスしたユーザに対して、「価格.com」掲載店舗から代理購入を行い、商品を海外発送する方法」は、「価格.com」掲載店舗で商品の海外発送に対応していないお店に対して、商品を海外発送できるように支援するものであるから、本件発明1の「ECの海外への提供を支援する支援方法」に相当する。 (イ) 公然実施発明の「「価格.com」の特定の商品の詳細を示し、商品の最安価格、価格帯が表示され、さらに、当該商品を購入できるショップの「ショップ一覧」へのリンクボタンが表示されるウェブページ」は、ECサイトのウェブページであって、商品の詳細等が示されているから、商品に関するウェブページであるということができる。しかしながら、商品を購入できるショップの「ショップ一覧」へのリンクボタンが表示されているように、当該ウェブページ自体は、商品を販売するウェブページではない。 そうすると、公然実施発明の「「価格.com」の特定の商品の詳細を示し、商品の最安価格、価格帯が表示され、さらに、当該商品を購入できるショップの「ショップ一覧」へのリンクボタンが表示されるウェブページ」と、本件発明1の「ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品を販売する第1のウェブページ」は、「ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品に関する第1のウェブページ」の点で共通する。 なお、公然実施発明は、上記「ウェブページ」において、「画面下方に日本以外のIPアドレスからサイトを閲覧している方にのみ表示する旨の記載を含むバナーを表示させ」るものである。そうすると、公然実施発明は、「バナーを表示させ」るために、上記「ウェブページ」に「アクセスしたユーザ」が「日本以外のIPアドレスからサイトを閲覧しているか」を判定、すなわち、「ウェブページ」に「アクセスしたユーザ」の端末の「IPアドレス」によって、ユーザーの所在国が日本か日本以外の国かを判定するステップを備えているといえる。したがって、公然実施発明の当該ステップは、本件発明1の「第1のウェブページにアクセスしたユーザーの所在国の国名を判定するステップ」と、「第1のウェブページにアクセスしたユーザーの所在国を判定するステップ」で共通する。 以上によれば、公然実施発明の「「価格.com」の特定の商品の詳細を示し、商品の最安価格、価格帯が表示され、さらに、当該商品を購入できるショップの「ショップ一覧」へのリンクボタンが表示されるウェブページ」にアクセスしたユーザーの所在国を判定するステップと、本件発明1の「ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品を販売する第1のウェブページにアクセスしたユーザーの所在国の国名を判定するステップ」とは、「ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品に関する第1のウェブページにアクセスしたユーザーの所在国を判定するステップ」で共通する。 (ウ)a 公然実施発明の「海外ユーザの端末」は、本件発明1の「ユーザーのユーザー端末」に相当する。また、公然実施発明の「海外ユーザの端末」は、「価格.com」の「ウェブページ」及び「BuySmartJapan」の「商品詳細ページ」を表示するものであるから、これらのウェブページを表示するための「ウェブブラウザ」を備えているといえる。 b 公然実施発明の「購買支援サイト「価格.com」を運営管理するための「価格.com」のサーバ」は、上記(ア)のとおり、「購買支援サイト「価格.com」」が「ECサイト」といえるから、本件発明1の「ECサイトを提供する第1のサーバ」に相当する。 c 公然実施発明の「ベリトランス」は、「「価格.com」掲載店舗」から商品を「代理購入」するものであって、「ECサイト」である「価格.com」から商品を代理購入するものではない。したがって、公然実施発明の「「価格.com」掲載店舗」から商品を「代理購入」する「ベリトランス」と、本件発明1の「ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者」とは、「1又は複数の商品の代理購入を行う者」で共通する。 d 公然実施発明の「ベリトランスの「BuySmartJapan」を運営管理するための「BuySmartJapan」のサーバ」は、「価格.com」のサーバ(第1のサーバ)とは異なるから、本件発明1の「第1のサーバ」とは異なる「第2のサーバ」に相当する。 e 公然実施発明の「「BuySmartJapan」の特定の商品についての商品詳細ページ」は、「BuySmartJapan」のサーバ(第2のサーバ)によって提供されるから、本件発明1の「第2のウェブページ」に相当する。 f 公然実施発明の「BuySmartJapan」の「「価格.com」の特定の商品の詳細を示し、商品の最安価格、価格帯が表示され、さらに、当該商品を購入できるショップの「ショップ一覧」へのリンクボタンが表示されるウェブページ」で表示される「バナー」は、当該「バナー」をクリックすると「購入代行サービスを利用する」と表示されたボタンを含むポップアップウインドウを表示させ、さらに前記ボタンをクリックすると、「BuySmartJapan」の特定の商品についての商品詳細ページに遷移させるものであるところ、上記「バナー」はウェブページを遷移(転送)させる目的で表示されるものであるから、本件発明1の「前記ユーザーのユーザー端末のウェブブラウザを、前記第1のウェブページから」、「第2のウェブページに転送させるための」「バナー」に相当する。 g 上記fにおける公然実施発明の「バナー」は、本件発明1に「ボタン又はバナー」と択一的に記載された選択肢の一方の「バナー」に相当する。 h 上記a〜gによれば、公然実施発明の「海外ユーザの端末」のウェブブラウザを、「価格.com」の特定の商品の詳細を示し、商品の最安価格、価格帯が表示され、さらに、当該商品を購入できるショップの「ショップ一覧」へのリンクボタンが表示されるウェブページ」から、「ベリトランスの「BuySmartJapan」を運営管理するための「BuySmartJapan」のサーバ」により提供される「「BuySmartJapan」の特定の商品についての商品詳細ページ」に遷移させるための「バナー」を表示させるステップと、本件発明1の「前記ユーザーのユーザー端末のウェブブラウザを、前記第1のウェブページから、前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバにより提供される第2のウェブページに転送させるためのボタン又はバナーを表示させるステップ」とは、「前記ユーザーのユーザー端末のウェブブラウザを、前記第1のウェブページから、前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバにより提供される第2のウェブページに転送させるためのバナーを表示させるステップ」で共通する。 (エ) 公然実施発明の「「BuySmartJapan」の特定の商品についての商品詳細ページ」(第2のウェブページ)は、「海外ユーザが選択した商品の商品情報と選択した商品の数量を入力する欄と、「購入する」と表示したボタンが表示されるウェブページである」から、海外ユーザは、商品の数量を入力して「購入する」と表示したボタンをクリックすることで、当該商品を購入する旨を通知することができる。 そうすると、公然実施発明の「当該商品詳細ページ」が、「海外ユーザが選択した商品の商品情報と選択した商品の数量を入力する欄と、「購入する」と表示したボタンが表示されるウェブページ」であることは、本件発明1の「前記第2のウェブページは、前記ある商品を購入する旨を通知するためのページ」であることに相当する。 (オ) 公然実施発明は、「価格.com」掲載店舗で海外発送に対応しているお店は少なく、海外在住のユーザが商品購入を望んでも、購入できない状況において、海外(日本以外のIPアドレス)から「価格.com」のサイトにアクセスしたユーザに対して、ベリトランスが「価格.com」掲載店舗から代理購入を行い、商品を海外発送するサービスの方法である。そして、上記(イ)で説示したとおり、「前記ウェブページ」に「アクセスしたユーザ」の端末の「IPアドレス」が日本か日本以外の国かを判定し、日本以外の国からアクセスした海外ユーザの端末にのみ、画面下方に日本以外のIPアドレスからサイトを閲覧している方にのみ表示する旨の記載を含む「バナー」を表示し、当該「バナー」をクリックして遷移した、「商品詳細ページ」において「当サービスは、日本国外にお住まいの方に向けたサービスになります。日本国内への発送は承っておりません。」と表示されるものである。そうすると、公然実施発明の「バナー」は、「BuySmartJapan」が発送を行わない日本と判定されたユーザの端末には表示されずに、「BuySmartJapan」が発送を行う日本国外に住むと判定された海外ユーザの端末に表示されるものである。 一方、本件発明1の「前記ボタン又はバナーは、前記国名の国に配送可の場合に表示される」における「前記国名の国に配送可の場合」とは、「ユーザーの所在国の国名を判定するステップ」で判定した「ユーザーの所在国の国名の国」に「配送可の場合」のことである。 そうすると、公然実施発明の「バナー」が、「BuySmartJapan」が発送を行わない日本と判定されたユーザの端末には表示されずに、「BuySmartJapan」が発送を行う日本国外に住むと判定された海外ユーザの端末に表示されることと、本件発明1の「前記ボタン又はバナーは、前記国名の国に配送可の場合に表示される」ことは、「前記バナーは、前記所在国に配送可の場合に表示される」ことで共通する。 以上によれば、本件発明1と公然実施発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 [一致点] ECの海外への提供を支援するための支援方法であって、 ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品に関する第1のウェブページにアクセスしたユーザーの所在国を判定するステップと、 前記ユーザーのユーザー端末のウェブブラウザを、前記第1のウェブページから、前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバにより提供される第2のウェブページに転送させるためのバナーを表示させるステップと を含み、 前記第2のウェブページは、前記ある商品を購入する旨を通知するためのページであり、 前記バナーは、前記所在国に配送可の場合に表示される。 [相違点] [相違点1] 本件発明1は、「ECサイトから」「商品の代理購入」を行うため、ある商品に関するECサイトの第1のウェブページは「ある商品を販売する」ためのウェブページであるのに対し、公然実施発明は、「価格.com」掲載店舗から商品の代理購入を行うため、ある商品に関するECサイト(「価格.com」のサイト)の第1のウェブページは「ある商品を販売する」ためのウェブページではなく、「価格.com」掲載店舗が商品を販売することを支援するためのウェブページである点。 [相違点2] 判定するステップについて、本件発明1は、「ユーザーの所在国の国名」を判定するのに対し、公然実施発明は、「ユーザーの所在国」を判定するものであり、それにともない、本件発明1は、「ボタン又はバナー」が「前記国名の国」に配送可の場合に表示されるのに対し、公然実施発明は、「バナー」が、「BuySmartJapan」が発送を行わない日本と判定されたユーザの端末には表示されずに、「BuySmartJapan」が発送を行う日本国外に住むと判定された海外ユーザの端末に表示される点。 イ 判断 (ア) 新規性(特許法29条1項2号) 上記アのとおり、本件発明1と公然実施発明を対比すると相違点があるから、本件発明1は公然実施発明であるとはいえない。 (イ) 進歩性(特許法29条2項) 相違点1について検討するに、公然実施発明におけるECサイトである「価格.com」のサイトは、「価格.com」に掲載された店舗が商品を販売することを支援するためのサイトであって、「価格.com」のサイト自身が商品を販売するものではないし、商品を販売することが予定されているものでもない。 そうすると、公然実施発明において、商品を販売せず、販売することが予定もされていない「価格.com」のサイトについて、当該サイト自身で商品を販売するように変更しようと想起することはないから、「価格.com」のサイトの第1のウェブページを「ある商品を販売する」ためのウェブページに変更することの動機付けはない。 したがって、公然実施発明において、相違点1に係る構成を採用することは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。 以上によれば、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、公然実施発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 異議申立人の主張について これに対し、異議申立人は、令和5年7月20日付け意見書(4頁中段)において、甲2のウェブページである表示画面B(上記2(2)イ)は、ユーザが商品を購入するためのウェブページ、すなわち、商品を販売するウェブページであると主張する。 しかしながら、当該ウェブページが商品を販売するウェブページであるといえないことは、上記3(1)ア(イ)のとおりである。 なお、異議申立人は、ベリトランス社の「BuySmartJapan」を商品を販売する加盟店向けに提供し、該加盟店のECサイトから「BuySmartJapan」運営事務局が代理購入を行うことは本件特許の出願前に公然実施されていたと主張するが、公然実施発明の「価格.com」のサイトは、商品を販売するものではないし、商品を販売することが予定されているものでもないから、異議申立人の主張を前提としても、上記イ(イ)の判断を左右するものではない。 したがって、異議申立人の主張は採用できない。 エ 本件発明1についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1は、特許法29条1項2号に該当せず、特許を受けることができるものである。また、本件発明1は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 したがって、本件発明1に係る特許は、取り消されるべきものではない。 (2) 本件発明2について 本件発明2と、公然実施発明を対比すると、上記(1)アの[相違点1]を有する。 そうすると、上記(1)イと同様、本件発明2は、公然実施発明であるとはいえないし、公然実施発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 したがって、本件発明2は、特許法29条1項2号に該当せず、特許を受けることができるものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、本件発明2に係る特許は、取り消されるべきものではない。 (3) 本件発明3について 本件発明3は、上記第3のとおり、本件発明1の構成にさらに構成を付加し、本件発明1を限定したものであるから、上記(1)アの[相違点1]を有する。 そうすると、上記(1)イと同様、本件発明3は、公然実施発明であるとはいえないし、公然実施発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 したがって、本件発明3は、特許法29条1項2号に該当せず、特許を受けることができるものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、本件発明3に係る特許は、取り消されるべきものではない。 (4) 本件発明4及び5について 本件発明4は、本件発明1の「支援方法」について、カテゴリーの異なる「支援方法を実行させるためのプログラム」とした発明である。 そうすると、本件発明4は、甲1及び甲2から認定される「支援方法を実行させるためのプログラム」(公然実施プログラム発明)と対比すると、上記(1)アの[相違点1]と同様の相違点を有することとなるから、上記(1)イと同様、本件発明4は、公然実施プログラム発明であるとはいえないし、公然実施プログラム発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件発明5も、本件発明1の「支援方法」について、カテゴリーの異なる「支援するための装置」とした発明である。 そうすると、本件発明5は、甲1及び甲2から認定される「支援するための装置」(公然実施装置発明)と対比すると、上記(1)アの[相違点1]と同様の相違点を有することとなるから、上記(1)イと同様、本件発明5は、公然実施装置発明であるとはいえないし、公然実施装置発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 したがって、本件発明4及び5は、特許法29条1項2号に該当せず、特許を受けることができるものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、本件発明4及び5に係る特許は、取り消されるべきものではない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された発明は、甲1に記載された発明あるいは甲2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号及び同条2項の規定により特許を受けることができない旨主張する。 しかしながら、甲1及び甲2から認定できる事項は、上記第4の2(1)及び(2)のとおりであるところ、甲1及び甲2のいずれか単独で、本件発明1〜5と対比可能な程度に刊行物に記載された発明あるいは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を認定することはできない。 なお、仮に、甲1及び甲2のいずれか単独で、刊行物に記載された発明あるいは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を認定したとしても、それらの発明と本件発明1〜5を対比すると、少なくとも上記第4の3(1)アの[相違点1]と同様の相違点を有することとなる。 そうすると、上記第4の3のとおり、本件発明1〜5は、公然実施発明(公然実施プログラム発明、公然実施装置発明)であるとはいえないし、公然実施発明(公然実施プログラム発明、公然実施装置発明)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、甲1及び甲2のいずれか単独で、刊行物に記載された発明あるいは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を認定したとしても、当審における判断に変わりはなく、決定の結論に影響を及ぼすものではない。 したがって、異議申立人の主張は採用できない。 2 また、異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において公然知られた発明であり、また、公然実施をされた発明であるから、特許法29条1項1号及び同項2号並びに同条2項の規定により特許を受けることができない旨主張する。 しかしながら、上記1と同様、甲1及び甲2のいずれか単独で、本件発明1〜5と対比可能な公然知られた発明あるいは公然実施をされた発明を認定することはできないし、認定したとしても、当審における判断に変わりはなく、決定の結論に影響を及ぼすものではない。 そして、甲1及び甲2の両者から認定できる公然実施発明(公然実施プログラム発明、公然実施装置発明)に基づいて、本件発明1〜5が容易に発明をすることができたものでないことは、上記第4のとおりである。 したがって、異議申立人の主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1〜5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1〜5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ECの海外への提供を支援するための支援方法であって、 ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品を販売する第1のウェブページにアクセスしたユーザーの所在国の国名を判定するステップと、 前記ユーザーのユーザー端末のウェブブラウザを、前記第1のウェブページから、前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバにより提供される第2のウェブページに転送させるためのボタン又はバナーを表示させるステップと を含み、 前記第2のウェブページは、前記ある商品を購入する旨を通知するためのページであり、 前記ボタン又はバナーは、前記国名の国に配送可の場合に表示される。 【請求項2】 ECの海外への提供を支援するための支援方法であって、 ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品を販売する第1のウェブページにアクセスしたユーザーの所在国を判定するステップと、 前記ユーザーのユーザー端末のウェブブラウザを、前記第1のウェブページから、前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバにより提供される第2のウェブページに転送させるためのボタン又はバナーを表示させるステップと を含み、 前記第2のウェブページは、前記ある商品を購入する旨を通知するためのページであり、 前記ボタンは、前記所在国が海外であり、海外に前記ある商品を配送可の場合に、前記ECサイトのウェブページの下部に表示される。 【請求項3】 請求項1に記載の支援方法であって、 前記判定は、前記ユーザー端末に割り当てられたIPアドレスに基づいて行う。 【請求項4】 コンピュータに、ECの海外への提供を支援するための支援方法を実行させるためのプログラムであって、前記支援方法は、 ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品を販売する第1のウェブページにアクセスしたユーザーの所在国の国名を判定するステップと、 前記ユーザーのユーザー端末のウェブブラウザを、前記ECサイトから、前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバにより提供される第2のウェブページに転送させるためのボタン又はバナーを表示させるステップと を含み、 前記第2のウェブページは、前記ある商品を購入する旨を通知するためのページであり、 前記ボタン又はバナーは、前記国名の国に配送可の場合に表示される。 【請求項5】 ECの海外への提供を支援するための装置であって、 ECサイトの第1のウェブページであって、ある商品を販売する第1のウェブページにアクセスしたユーザーの所在国の国名を判定し、 前記ユーザーのユーザー端末のウェブブラウザを、前記ECサイトから、前記ECサイトを提供する第1のサーバとは異なる第2のサーバであって、前記ECサイトから1又は複数の商品の代理購入を行う者の第2のサーバにより提供される第2のウェブページに転送させるためのボタン又はバナーを表示させ、 前記第2のウェブページは、前記ある商品を購入する旨を通知するためのページであり、 前記ボタン又はバナーは、前記国名の国に配送可の場合に表示される。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2023-09-28 |
出願番号 | P2021-070059 |
審決分類 |
P
1
651・
112-
YAA
(G06Q)
P 1 651・ 121- YAA (G06Q) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
伏本 正典 |
特許庁審判官 |
梶尾 誠哉 相崎 裕恒 |
登録日 | 2021-11-16 |
登録番号 | 6979144 |
権利者 | 株式会社ジグザグ |
発明の名称 | ECの海外への提供を支援するための支援方法、そのためのプログラム、又は支援サーバ |
代理人 | 弁理士法人六本木通り特許事務所 |
代理人 | 弁理士法人六本木通り特許事務所 |