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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 D21H 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 D21H 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 D21H 審判 全部申し立て 2項進歩性 D21H |
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管理番号 | 1404851 |
総通号数 | 24 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-09-04 |
確定日 | 2023-12-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第7233278号発明「紙製バリア材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第7233278号の請求項1〜9に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第7233278号の請求項1〜9に係る特許についての出願は、平成31年3月26日(優先権主張 平成30年3月28日)の出願であって、令和5年2月24日にその特許権の設定登録がされ、令和5年3月6日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1〜9に係る特許に対し、令和5年9月4日に特許異議申立人亀崎伸宏(以下「申立人」という。)により、本件特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1〜9に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、まとめて「本件発明」ということもある。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 紙基材上に少なくとも水蒸気バリア塗工層を有する紙製バリア材料であって、該水蒸気バリア塗工層が水蒸気バリア性樹脂を含有し、該紙基材の下記方法により測定される点滴吸油度が100秒以上であることを特徴とする紙製バリア材料。 点滴吸油度の測定方法:一般軽油(軽油2号)1滴(10μl)をサンプルに対し注射器で自重滴下し、サンプルに浸透して液面の艶が無くなるまでの時間。 【請求項2】 前記水蒸気バリア塗工層が更に顔料を含有し、該顔料100重量部に対する前記水蒸気バリア性樹脂の含有量が、絶乾で30重量部以上350重量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の紙製バリア材料。 【請求項3】 前記紙基材上に更にガスバリア塗工層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の紙製バリア材料。 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか一項に記載の紙製バリア材料の少なくとも一方の面上に、さらに保護層を有することを特徴とする紙製バリア材料。 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか一項に記載の紙製バリア材料を使用した包装材料。 【請求項6】 請求項1〜4のいずれか一項に記載の紙製バリア材料を使用した袋。 【請求項7】 請求項1〜4のいずれか一項に記載の紙製バリア材料を使用したトレー。 【請求項8】 請求項1〜4のいずれか一項に記載の紙製バリア材料を使用したカップ。 【請求項9】 請求項1〜4のいずれか一項に記載の紙製バリア材料を使用した液体紙容器。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠として、以下の甲第1号証〜甲第5号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の理由1〜4を申立てている。なお、本件特許の願書に添付した明細書を、「本件明細書」という。 1 理由1(新規性) 本件発明1〜9は、下記の甲1又は甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件発明1〜9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 2 理由2(進歩性) 本件発明1〜9は、下記の甲1に記載された発明、甲2に記載された発明又は甲2に記載された発明及び甲3〜4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1〜9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 3 理由3(実施可能要件違反) 本件明細書には、「点滴吸油度が100秒以上である」紙基材を作成するための具体的な構成が示されていないことから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1〜9の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、本件発明1〜9に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 4 理由4(明確性違反) 本件発明1の「点滴吸油度の測定方法:一般軽油(軽油2号)1滴(10μl)をサンプルに対し注射器で自重滴下し、サンプルに浸透して液面の艶が無くなるまでの時間。」の測定条件が不明であることから、本件発明1及び本件発明2〜9は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、本件発明1〜9に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 5 証拠方法 甲第1号証:特開2013−158941号公報 甲第2号証:特開2013−144363号公報 甲第3号証:特開2010−275647号公報 甲第4号証:特開2004−332132号公報 甲第5号証:「日本工業規格 新聞巻取紙 JIS P 3001−1995」,財団法人 日本規格協会,平成7年6月30日,第1刷発行,p1−3 (以下、甲第1号証を「甲1」という。以下、他の甲各号証についても同様とする。) 第4 各甲号証 1 甲1に記載された発明 甲1の【0031】の記載から、水蒸気バリア層用塗工液を紙基材上に塗工することにより、水蒸気バリア層が構成されているといえる。 上記認定事項及び甲1に記載されている事項(特に、【請求項1】、【0001】、【0007】、【0025】、【0030】、【0031】〜【0036】、【表1】の記載を総合すれば、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「紙基材上に水蒸気バリア層を設ける紙製バリア包装材料であって、該水蒸気バリア層がアニオン性の水蒸気バリア性樹脂を含有する紙製バリア包装材料。」 2 甲2に記載された発明 甲2の【0029】、【0031】の記載から、水蒸気バリア層用塗工液を塗工することにより、水蒸気バリア層が構成されているといえる。 甲2に記載されている事項(特に、【請求項1】、【0001】、【0008】、【0019】、【0021】、【0025】、【0028】〜【0031】、【0037】、【0041】【表1】の記載を総合すれば、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「紙基材上に少なくとも水蒸気バリア層を設ける紙製バリア包装材料であって、該水蒸気バリア層が水蒸気バリア性樹脂を含有する紙製バリア包装材料。」 3 甲3に記載された事項 甲3の【0002】、【0003】の記載事項を総合すると、甲3には以下の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されている。 「ポリビニルアルコールによって包装材料の耐油度を向上させることができること。」 4 甲4に記載された事項 甲4の段落【0012】の記載事項から、甲4には以下の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されている。 「ポリビニルアルコールによって耐油紙を得ることができること。」 5 甲5に記載された事項 甲5の第3頁には、以下の事項(以下「甲5記載事項」という。)が記載されている。 「 ![]() 」 第5 当審の判断 以下、事案に鑑み、明確性、実施可能要件及び新規性・進歩性の順に検討する。 1 理由4(明確性)について (1)当審の判断 本件特許の請求項1で特定されている「点滴吸油度の測定方法」は、請求項1に「一般軽油(軽油2号)1滴(10μl)」を「サンプルに対し」、「注射器で自重滴下し」、「サンプルに浸透して液面の艶が無くなるまでの時間」を測定することと明確に定義されており、文言上不明確とするところはない。 また、発明の詳細な説明の段落【0054】「(評価方法) (1)点滴吸油度:一般軽油(軽油2号)1滴(10μl)をサンプルに対し注射器で自重滴下し、サンプルに浸透して液面の艶が無くなるまでの時間を計測した。」という記載を参酌すれば、当業者は本件特許の請求項1で特定された「点滴吸油度」が、どのような手法によって計測されるものであることが分かる。 (2)申立人の主張 申立人は、「一般軽油(軽油2号)1滴(10μl)をサンプルに対し注射器で自重滴下する際のサンプルまでの高さ(滴下距離)、使用する用具(注射針)および測定時の温度条件が記載されていません。」なる旨主張し(特許異議申立書(以下「申立書」という)第28〜29頁)、本件発明1〜9は明確でない旨、主張している。 しかしながら、サンプルまでの高さ(滴下距離)及び使用する用具(注射針)ついて検討するに、用具については、「一般軽油(軽油2号)1滴(10μl)をサンプルに対し」「自重滴下」できる注射器であればよく、サンプルまでの高さも、「一般軽油(軽油2号)1滴(10μl)」の「液面の艶」を確認できる程度の滴下距離、言い換えれば、軽油が飛散しない程度の距離を採用すればよいことは、計測を行う上で、当業者が当然に留意すべき事項といえる。また、測定時の温度条件についてみても、その測定の性質から、高温下や低温下等の過酷な条件下で測定する必然性はなく、当業者であれば常温下で計測することが自然である。なお、「点滴吸油度」については、甲5の日本工業規格にも見られるように当業者において確立された試験手法といえる。 (3)まとめ よって、本件特許の請求項1に係る発明、及び請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2〜9に係る発明は明確であるといえることから、申立人の主張は採用できない。 2 理由3(実施可能要件)について 上記理由4に記載したとおり、本件請求項1で特定されている「点滴吸油度の測定方法」については、本件明細書の段落【0054】に、「(評価方法) (1)点滴吸油度:一般軽油(軽油2号)1滴(10μl)をサンプルに対し注射器で自重滴下し、サンプルに浸透して液面の艶が無くなるまでの時間を計測した。」と記載されており、また、その測定手段が示されている。 そうしてみると、上記「1 理由4(明確性)について」の検討で述べたとおり、本件請求項1の「点滴吸油度の測定方法」の測定をどのように行うのかは当業者にとって明らかであることから、この測定を実施するにあたり当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を要するものではない。 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1〜9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。 3 理由1、2(甲1発明に基づく新規性、進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、甲1発明の「紙基材」、「アニオン性の水蒸気バリア性樹脂」及び「紙製バリア包装材料」は、本件発明1の「紙基材」、「水蒸気バリア性樹脂」及び「紙製バリア材料」に相当する。 また、甲1発明の「水蒸気バリア層」は、甲1の【0031】の記載から、水蒸気バリア層用塗工液を塗工することにより構成されているといえることから、本件発明1の「水蒸気バリア塗工層」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、かつ、相違点1で相違する。 <一致点> 「紙基材上に少なくとも水蒸気バリア塗工層を有する紙製バリア材料であって、該水蒸気バリア塗工層が水蒸気バリア性樹脂を含有する紙製バリア材料。」 <相違点1> 「紙基材」に関して、本件発明1は、「点滴吸油度の測定方法:一般軽油(軽油2号)1滴(10μl)をサンプルに対し注射器で自重滴下し、サンプルに浸透して液面の艶が無くなるまでの時間。」「により測定される点滴吸油度が100秒以上である」のに対して、甲1発明は、点滴吸油度について明らかでない点。 イ 判断 <相違点1>について検討する。 甲1の【0031】には、 「[実施例1] (紙基材の作製) カナダ式標準ろ水度(CSF)500mlの広葉樹クラフトパルプ(LBKP)とCSF530mlの針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を80/20の重量比で配合して、原料パルプとした。原料パルプスラリーに、乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.1%、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を対絶乾パルプ重量あたり0.35%、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(PAEH)系樹脂を対絶乾パルプ重量あたり0.15%、さらに歩留剤として分子量1000万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.08%添加した後、デュオフォーマーFM型抄紙機にて300m/minの速度で抄紙し、坪量58g/m2の紙を得た。次いで、得られた紙に酸化澱粉(日本食品加工社製 MS#3600)10%、カチオン性薬品A(星光PMC社製DK6810)0.5%からなるサイズプレス液を2ロールサイズプレスで、片面あたり1.0g/m2塗工(カチオン性薬品塗工量 0.05g/m2)、乾燥し、坪量60g/m2の紙基材を得た。得られた紙基材をチルドカレンダーで平滑処理(速度300min/m、線圧50kgf/cm 1パス)を行った。 ・・・ (紙製バリア包装材料の作製) 得られた原紙上に塗工液Aを塗工量(乾燥)12g/m2となるよう塗工速度300m/minでブレードコーターを用いて片面塗工、乾燥した後、その上に塗工液Bを塗工量(乾燥)2.0g/m2となるよう塗工速度300m/minでロールコーターを用いて片面塗工し、紙製バリア包装材料を得た。」と記載されている(下線は参考のため当審が付与した。また、「・・・」は文章の省略を表す。以下同じ。)。 ここで、甲1には、「酸化澱粉」を紙の「片面あたり1.0g/m2」(両面合計で2.0g/m2)塗工して得られた「紙基材」が記載されているものの、当該事項と「点滴吸油度」との関係については何ら開示されていない。 したがって、甲1発明が、相違点1に係る本件発明1の構成を備えているとはいえず、甲1には、相違点1に係る本件発明1の構成について記載も示唆もされていない。 よって、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 申立人は、「本件特許発明に対応する出願(特願2019−059487号)の令和4年10月11日付の拒絶理由通知書」及び「令和4年11月14日付の出願人の意見書」を参照して、「澱粉においてもポリビニルアルコールと同様にその塗工量と点滴吸油度が概ね比例関係にあることが認識でき」ることから、甲1発明の「その点滴吸油度が概ね200秒、少なくとも100秒以上であることが推認できます。」(申立書16〜19頁)なる旨を主張しているが、上記で述べたとおり、本件発明1の「点滴吸油度」について甲1に明記されておらず、「点滴吸油度」と澱粉の「塗工量」との相関関係についても客観的な技術的文献や試験に基づくものではなく、憶測の域を出ず、ましてや本件特許の請求項1で特定されている「点滴吸油度の測定方法」による「点滴吸油度が100秒以上であること」について記載も示唆もないことから、上記主張は採用できない。 (2)本件発明2〜9について 本件発明2〜9は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したのと同じ理由により、本件発明2〜9は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 理由1、2(甲2発明に基づく新規性、進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、甲2発明の「紙基材」、「水蒸気バリア性樹脂」及び「紙製バリア包装材料」は、本件発明1の「紙基材」、「水蒸気バリア性樹脂」及び「紙製バリア材料」に相当する。 また、甲2発明の「水蒸気バリア層」は、甲2の【0029】、【0031】の記載から、水蒸気バリア層用塗工液を塗工することにより構成されているといえることから、本件発明1の「水蒸気バリア塗工層」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致し、かつ、相違点2で相違する。 <一致点> 「紙基材上に少なくとも水蒸気バリア塗工層を有する紙製バリア材料であって、該水蒸気バリア塗工層が水蒸気バリア性樹脂を含有する紙製バリア材料。」 <相違点2> 「紙基材」に関して、本件発明1は、「点滴吸油度の測定方法:一般軽油(軽油2号)1滴(10μl)をサンプルに対し注射器で自重滴下し、サンプルに浸透して液面の艶が無くなるまでの時間。」「により測定される点滴吸油度が100秒以上である」のに対して、甲2発明は、点滴吸油度について明らかでない点。 イ 判断 <相違点2>について検討する。 甲2の【0028】には、 「[実施例1] (紙基材の作製) カナダ式標準ろ水度(CSF)500mlの広葉樹クラフトパルプ(LBKP)とCSF530mlの針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を80/20の重量比で配合して、原料パルプとした。原料パルプスラリーに、乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.1%、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を対絶乾パルプ重量あたり0.35%、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(PAEH)系樹脂を対絶乾パルプ重量あたり0.15%、さらに歩留剤として分子量1000万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.08%添加した後、デュオフォーマーFM型抄紙機にて300m/minの速度で抄紙し、坪量59g/m2の紙を得た。次いで、得られた紙に固形分濃度5%に調製したサイズプレス液(ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA117))をロッドメタリングサイズプレスで、片面あたり1.0g/m2塗工、乾燥し、坪量60g/m2の原紙を得た。得られた原紙をチルドカレンダーを用いて、速度300min/m、線圧50kgf/cm 1パスにて平滑処理を行った。」、 また、【0031】には、 「(紙製バリア包装材料の作製) 得られた原紙上に塗工液Aを塗工量(乾燥重量)12g/m2となるよう塗工速度300m/minでブレードコーターを用いて片面塗工、乾燥した後、その上に塗工液Bを塗工量(乾燥)2.0g/m2となるよう塗工速度300m/minでロールコーターを用いて片面塗工し、紙製バリア包装材料を得た。」、 更に、【0037】には、 「[比較例2] サイズプレス液の種類を酸化澱粉(日本コーンスターチ社製、SK−20)に変更し、塗工液の濃度を5%から8%へ変更した以外は実施例1と同様にして紙製バリア包装材料を得た。」と記載されている。 ここで、甲2には、[比較例2]において「酸化澱粉」を紙の「片面あたり1.0g/m2」(両面合計で2.0g/m2)塗工して得られた「紙基材」が記載されているものの、上記3(1)イで述べた理由と同様、当該事項と「点滴吸油度」との関係については何ら開示されていない。 また、甲2には、「ポリビニルアルコール」を紙の「片面あたり1.0g/m2」(両面合計で2.0g/m2)塗工して得られた「紙基材」が記載されているものの、上記3(1)イと同様、当該事項と「点滴吸油度」との関係については何ら開示されていない。 更に、甲3〜4にも、相違点2に係る本件発明1の構成について記載も示唆もされていない。 したがって、甲2発明及び甲3〜4記載事項が、相違点2に係る本件発明1の構成を備えているとはいえず、甲2には、相違点2に係る本件発明1の構成について記載も示唆もされていない。 よって、本件発明1は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて、又は甲2発明及び甲3〜4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 申立人は、「本件特許発明に対応する出願(特願2019−059487号)の令和4年10月11日付の拒絶理由通知書」及び「令和4年11月14日付の出願人の意見書」を参照して、「澱粉においてもポリビニルアルコールと同様にその塗工量と点滴吸油度が概ね比例関係にあることが認識でき」ることから、甲2発明の「その点滴吸油度が概ね200秒、少なくとも100秒以上であることが推認できます。」(申立書21〜23頁)なる旨を主張しているが、上記3(1)イで述べた理由と同様、上記主張は採用できない。 (2)本件発明2〜9について 本件発明2〜9は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したのと同じ理由により、本件発明2〜9は、甲2発明ではなく、また、甲2発明及び甲3〜4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1〜9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2023-11-29 |
出願番号 | P2019-059487 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(D21H)
P 1 651・ 536- Y (D21H) P 1 651・ 537- Y (D21H) P 1 651・ 113- Y (D21H) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
山崎 勝司 |
特許庁審判官 |
藤井 眞吾 西本 浩司 |
登録日 | 2023-02-24 |
登録番号 | 7233278 |
権利者 | 日本製紙株式会社 |
発明の名称 | 紙製バリア材料 |
代理人 | 安藤 達也 |
代理人 | 中村 理弘 |
代理人 | 太田 千香子 |
代理人 | 山田 泰之 |