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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C11D
管理番号 1405185
総通号数 25 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-25 
確定日 2024-01-16 
事件の表示 特願2017−209431「アルカリ洗浄剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月30日出願公開、特開2019− 81834、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年10月30日の出願であって、令和3年4月8日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月14日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月25日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ(謄本の発送は、11月30日)、これに対し、令和4年2月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年5月11日に前置報告がされ、同年7月14日に上申書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和3年11月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 (サポート要件)本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 (実施可能要件)本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正(令和4年2月25日に提出された手続補正書による補正)は、当該補正前の請求項1〜3に記載された発明を特定するために必要な事項である「多糖類増粘剤(B)」について、「前記多糖類増粘剤(B)は、キサンタンガム及び/又はカルボキシメチルセルロースナトリウムであり、前記アルカリ洗浄剤組成物全量に対する多糖類増粘剤(B)の配合量が0.3〜1.3重量%であり」と成分及び配合量を限定するものであり、また当該補正前の請求項1〜3に記載された発明を特定するために必要な事項である「アルカリ洗浄剤組成物」について、「前記アルカリ洗浄剤組成物の調合直後の粘度が20〜200mPa・sであり、調合後3週間経過時の粘度低下率が50%以下であり、前記粘度低下率は、前記アルカリ洗浄剤組成物における[(調合直後の粘度−調合後3週間経過時の粘度)/調合直後の粘度]×100(%)で表されるものであり、調合後3週間経過時の粘度は、調合直後のアルカリ洗浄剤組成物を45℃のインキュベーター内で3週間保管した時の粘度であり、前記粘度は、JIS Z 8803に準拠し、E型粘度計を用いて液温20℃、粘度計の回転数20rpmで測定され」と粘度を限定し、また「液体である」と限定するものであって、当該補正前の請求項1〜3に記載された発明と、当該補正後の請求項1〜3に記載される発明とは産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、当該補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、当該補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【0016】、【0017】、【0045】〜【0051】の記載に基づくものであるから、新規事項を追加するものではない。
さらに、後記の「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1〜3に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1〜3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明3」という。)は、令和4年2月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される、次のとおりの発明である。

「 【請求項1】
アルカリ剤(A)、
多糖類増粘剤(B)、
酸化防止剤(C)、及び、
水(H)を含むアルカリ洗浄剤組成物であって、
前記アルカリ剤(A)は無機アルカリ剤であり、
前記多糖類増粘剤(B)は、キサンタンガム及び/又はカルボキシメチルセルロースナトリウムであり、前記アルカリ洗浄剤組成物全量に対する多糖類増粘剤(B)の配合量が0.3〜1.3重量%であり、
前記アルカリ洗浄剤組成物の調合直後の粘度が20〜200mPa・sであり、
調合後3週間経過時の粘度低下率が50%以下であり、
前記粘度低下率は、前記アルカリ洗浄剤組成物における[(調合直後の粘度−調合後3週間経過時の粘度)/調合直後の粘度]×100(%)で表されるものであり、調合後3週間経過時の粘度は、調合直後のアルカリ洗浄剤組成物を45℃のインキュベーター内で3週間保管した時の粘度であり、
前記粘度は、JIS Z 8803に準拠し、E型粘度計を用いて液温20℃、粘度計の回転数20rpmで測定され、
pHが12.5以上であり、液体であることを特徴とするアルカリ洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記酸化防止剤(C)は食品添加物である請求項1に記載のアルカリ洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記アルカリ洗浄剤組成物全量に対する前記酸化防止剤(C)の配合量が0.01〜5.0重量%である請求項1又は2に記載のアルカリ洗浄剤組成物。」

第5 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献1について
(1)前置報告書に引用された特開2003−183697号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 少なくとも界面活性剤、有機酸、粘度付与剤及び香料を含有することを特徴とするトイレ用洗浄剤組成物。」
「【0002】
【従来の技術】一般に、トイレの便器は、常に水との接触、乾燥を繰り返し、水道水由来の無機物(カルシウム塩やシリケート)が比較的強固に結合している。また、トイレ空間には、排泄物の臭気が残存し、その程度は、水洗化率の向上、芳香・消臭剤、脱臭機能付きトイレの普及などにより減ってはきつつあるものの、逆に、家庭での衛生意識の高揚やトイレ空間の快適化への要望により、臭気に対する不満は依然として強いものである。
【0003】従来におけるトイレ用洗浄剤としては、洗浄剤と汚れの接触時間が十分となるように、粘度付与剤によって増粘され、且つ無機的汚れに有効な塩酸等の酸性洗浄成分が提案されているが、洗浄成分自身の臭気が強く、また強酸酸性下、安定な香料も限定されてしまう点に課題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の課題などに鑑み、これを解消しようとするものであり、便器の汚れ除去性とトイレ空間の臭気改善性を兼ね備えたトイレ用洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記従来の課題等を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、酸性洗浄成分に有機酸を用いることで、嗜好性の高い香料成分が使用可能となり、さらに、粘度付与剤により特定の粘度以上に増粘させると、洗浄力が向上することを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。すなわち、本発明のトイレ用洗浄剤組成物は、少なくとも界面活性剤、有機酸、粘度付与剤及び香料を含有することを特徴とするトイレ用洗浄剤組成物。」
「【0014】本発明に用いる粘度付与剤としては、酸性から弱酸性領域で安定なものが好ましい。例えば、キサンタンガム、モナートガム、グアーガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの天然系高分子やモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライトなどの天然もしくは合成粘土鉱物、あるいはポリビニルアルコールなどの水溶性合成高分子などが用いられる。これらの粘度付与剤は、単独で、または、2種以上を混合して用いることができる。また、これらの粘度付与剤の使用量は、優れた洗浄力を発揮させるために、本発明のトイレ用洗浄剤組成物の粘度(25℃)が60mPa・s以上、好ましくは100mPa・s以上となるように含有される。」
「【0031】また、香料安定化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンEとその誘導体、カテキン化合物、フラボノイド化合物、ポリフェノール化合物等が挙げられ、香料組成中に0.0001〜10質量%配合されるが、好ましくは、0.001〜5質量%配合される。これらの中で、好ましい安定化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエンである。本発明において、香料組成物とは、前記の香料成分、溶剤、香料安定化剤等からなる混合物である。」
「【0037】
【実施例】次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって何ら限定されるものではない。
【0038】〔実施例1〜111〕下記表1〜表9に示すトイレ用洗浄剤組成物を調製した。得られた洗浄剤組成物について、下記表1〜表9に示す容器タイプ〔ボトル、エアゾール、トリガー、図1(a)、(b)、(c)参照〕に充填し、下記試験法により、洗浄力試験、粘度の測定を行った。これらの試験結果を下記表1〜表9に示す。
【0039】なお、下記表1〜表9の香料A〜Dは下記表10〜表21に示す配合組成を使用した。また、下記表1〜表9において、*1〜*3は下記のものを使用した。
*1:キサンタンガム(ケルザンT、メルク社製、Mw=約200万)
*2:グアーガム(ジャガーC、ローディア社製)
*3:ヒドロキシエチルセルロース〔HECダイセルSP550、ダイセル化学工業社製、粘度:1000〜2000(25℃、Cps;回転数30rpm、ローターNo.3)
【0040】〔洗浄力評価方法〕
汚れの作製
10cm×10cmタイル(INAX社製、キラミックSPC−100)をトイレの傾斜部に設置して1週間使用した後、タイルを取り出しイオン交換水ですすいで乾燥させた。
評価方法
上記で作製したタイルを80°に立て掛け、評価用試料1mLを最上部に線状に塗布した。約2分間静置後、スポンジで擦り、イオン交換水にてすすいで乾燥させた後、目視で汚れ落ちの程度を下記評価基準で評価した。
評価基準:
5点:完全に汚れが落ちた、
4点:殆どの汚れが落ちた、
3点:汚れが半分落ちた
2点:少量の汚れが残っている、
1点:汚れが殆ど落ちない
【0041】〔粘度の測定方法〕
測定方法
B型粘度計(ローターNo.2、25℃)で粘度を測定し、下記評価基準で評価した。
評価基準
◎:100mPa・s以上、○:60〜100mPa・s、△:30〜60mPa・s、×:30mPa・s以下」
「【0044】 【表3】



(2)引用文献1の【0041】を参照し、【0044】【表3】の実施例37に着目すると、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「C8〜18脂肪酸アミドプロピルベタイン2.5質量%、C12〜18アルキル4級アンモニウム塩0.5質量%、ジグリコール酸1.5質量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテル2.0質量%、エタノール3.0質量%、グアーガム1.0質量%、ジブチルヒドロキシトルエン0.005質量%、ギ酸0.3質量%、青色1号0.005質量%、香料A0.1質量%、精製水バランス量を含み、B型粘度計(ローターNo.2、25℃)で測定した粘度が100mPa・s以上である、トイレ用洗浄剤組成物」

2 引用文献2について
前置報告書に引用された特開2002−249800号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 次亜塩素酸塩を0.5〜4重量%と、有機系増粘剤と、水酸化カリウムおよび/または無機のカリウム塩を0.2〜5重量%含有し,25℃における粘度が7000〜20万cPでかつpHが12.5〜14である漂白剤組成物。」
「【0010】有機系増粘剤は、硬質材料表面に対する本発明の漂白剤組成物の付着効果を高め、結果としてかび除去効果を高めるために加えられる。有機系増粘剤としては、例えば分子中に水酸基、カルボキシル基、スルフォン酸基、エーテル基、アミノ基等を有する水溶性高分子化合物が挙げられ、具体的には(1)グアーガム、アルギン酸、キサンタンガム等、カゼイン等の植物、微生物、動物由来の天然高分子化合物およびその誘導体、(2)澱粉やセルロースを酸化、硫酸化、メチル化、カルボキシメチル化、ヒドロキシエチル化、ヒドロキシプロピル化、カチオン化した澱粉誘導体およびセルロース誘導体、(3)ポリアクリル酸ホモポリマーまたはアクリル酸と共重合可能なモノマーとのコポリマーであるポリアクリル酸誘導体、および該ポリアクリル酸ホモポリマーまたは該ポリアクリル酸誘導体を架橋したもの、(4)ポリビニールアルコールもしくはポリビニールアルコール誘導体、(5)ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリアルキレングリコールおよびその誘導体、(6)カチオン性ポリマー等が例示できる。有機系増粘剤は、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。上記水溶性高分子化合物のうち、増粘効果の持続性の観点から、上記(3)〜(5)の群から選ばれる1種以上が好ましく、(3)がより好ましい。有機系増粘剤の含有量は、本発明の組成物中、好ましくは0.1〜10重量%、更に好ましくは0.5〜5重量%である。
【0011】本発明の漂白剤組成物は水酸化カリウムおよび/または無機のカリウム塩を含有しているため、本発明で使用される有機系増粘剤が、次亜塩素酸ナトリウム等の強アルカリ中でも塩析等の作用を受けて溶解性を失うことなく、増粘効果を維持することができる。特に低温時、例えば5℃以下の温度でさえ溶解性の低下を抑え、製品貯蔵中における有機系増粘剤の分離を防ぐことができる。無機のカリウム塩としては、例えば、炭酸カリウム、珪酸カリウム等が挙げられる。水酸化カリウムおよび/または無機のカリウム塩は単独でも2種以上を混合して用いても良い。効果的に有機系増粘剤の増粘効果を維持して製品安定性を確保する観点から、少なくとも水酸化カリウムを含有させるとより好ましい。」
「【0024】次亜塩素酸塩が分解して有機系増粘剤を攻撃することにより、有機系増粘剤を低分子化させて製品粘度が急激に下がることを防ぎ、充分な製品安定性を得る観点から、漂白剤組成物のpHは、12.5〜14であり、12.7〜13.8が好ましく、12.8〜13.6がより好ましい。」
「【0026】本発明の漂白剤組成物の粘度は、硬質材料表面からの漂白剤組成物の流失を防止してかび除去性を向上したり、使用時の飛散を防止して安全性を高めたりする観点から、25℃における粘度は7000cP〜20万cPであり、1万〜10万cPが好ましく、1.5万〜6万cPがより好ましい。例えば風呂の垂直なタイル面に漂白剤組成物を長時間付着させて、充分なかび除去効果を発揮させる観点から、粘度は7000cP以上である。硬質材料上に付着させやすく塗布性等の作業性が良好な観点から、粘度は20万cP以下である。漂白剤組成物は、ゲル状態にすると漂白剤組成物を塗付しやすく、しかも塗付する時に漂白剤組成物が飛び散ったりせず好ましい。漂白剤組成物の粘度は、例えばBL型粘度計等により測定することができる。」
「【0031】実施例1〜7および比較例1〜4
表2および表3に示した漂白剤組成物の組成(重量%)になるように各成分を混合して、漂白剤組成物を得た。得られた漂白剤組成物について、その付着性、かび除去性、かび再発防止性および製品粘度安定性を以下に記載する試験により評価した。」
「【0038】
【表2】



3 引用文献3について
前置報告書に引用された特開平2−218798号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。




「従来より、次亜塩素酸アルカリ金属塩を主基剤とする洗浄漂白剤組成物は多く知られている。
次亜塩素酸アルカリ金属塩は強力な酸化剤であり、特に便器用洗浄剤においてはこの酸化剤の他に強酸、強アルカリが併用されるので、その取扱いには充分な注意が必要である。このため、使用者の安全を考慮し、洗浄剤の通用部位を明確にするために洗浄剤を着色することが行われている。」(第2頁左上欄下から1行〜右上欄第8行)
「アルカリ性を呈する物質(b)としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、三燐酸ナトリウム等が挙げられ、これらのうち水酸化ナトリウムが好ましい。」(第3頁右上欄第9〜12行)
「〔実施例〕
次に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜3及び比較例l〜6
表−1に示す組成の各着色液体洗浄漂白剤組成物を調製し、それぞれの日光曝露下及び40°Cでの着色の安定性について評価した。」(第4頁左上欄第15〜18行)


」(第5頁)

4 引用文献4について
前置報告書に引用された特開2008−156389号公報(以下、「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
下記要件(1)を満たす(A)成分であるバイオフィルム崩壊剤を0.05〜10質量%含有することを特徴とするバイオフイルム用処理剤。
<要件(1)>
1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液を2質量%塩化カルシウム水溶液中に滴下して作成した球形のアルギン酸カルシウムゲル2gを1質量%濃度のバイオフィルム崩壊剤水溶液50mlに入れ、1時間後のゲル破砕強度が300g以下になる。」
「【請求項3】
(B)成分である次亜塩素酸アルカリ金属塩1〜6質量%、(C)成分であるアルカリ金属水酸化物:0.05〜5質量%及び(D)成分のアルキルアミンオキシドを0.1〜3質量%を含有することを特徴とする請求項1、2記載のバイオフイルム用処理剤。」
「【0001】
本発明は、浴室、台所、洗面所、トイレ等に発生したバイオフィルムを除去及びバイオフィルム付着予防する処理剤に関するものである。」
「【0024】
<(C)成分>
本発明の(C)成分はアルカリ金属水酸化物であり、特に限定されるものではない。本発明のバイオフィルム用処理剤に含有できるアルカリ金属水酸化物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができるが、この中でも水酸化ナトリウムが好ましい。
【0025】
(C)成分の含有量は、バイオフィルム用処理剤中0.05〜5質量%であり、好ましくは0.1〜2質量%である。(B)成分の次亜塩素酸アルカリ金属塩の安定性を考慮すると0.05質量%以上必要である。なお、通常、工業的に入手可能な(B)成分の次亜塩素酸アルカリ金属塩は、おおよそpH13程度の強アルカリ性にすることで次亜塩素酸アルカリ金属塩を安定化しており、このため、少量のアルカリ金属水酸化物を含む水溶液の形態で供給され、それを使用する漂白剤にも必然的にアルカリ金属水酸化物が含まれる。しかし、本発明においては、(C)成分の含有量は、次亜塩素酸アルカリ金属塩に混入されているアルカリ金属水酸化物の含有量を含まないものとする。」
「【0038】
[実施例1〜27、比較例1〜14]
表2〜5に示す組成のバイオフィルム用処理剤を常法に準じて調製し、遮光されたポリエチレン容器に充填し、下記方法でバイオフィルム除去力、泡または液付着滞留性及び低温安定性を評価した。結果を表2〜5に併記する。」
「【0053】

【0054】

【0055】

【0056】



5 引用文献5について
前置報告書に引用された特公平6−31423号公報(以下、「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。



「成分(B)の水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物は、変質油をケン化し、その除去を促進する作用を有するものであり、本組成物中に0.5〜5.0%、好ましくは1.0〜4.0%含有される。つまり、0.5%未満では変質油のケン化が不十分であり、十分な洗浄力を得られず、一方5%を越えて含有させても効果はそれ程向上せず、経済的でない上に安全性の面からも好ましくないからである。」(第2頁第4欄第20〜28行)
「実施例2
各種組成の液体洗浄剤組成物を調製し、性能を評価した。組成及び評価結果をまとめて表−2に示す。

」(第3頁第5欄下から1行〜第4頁)

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
引用発明の「グアーガム」は、本願発明1の「多糖類増粘剤(B)」に相当する。また、引用発明の「グアーガム」は「1.0質量%」配合されており、本願発明1の「洗浄剤組成物全量に対する多糖類増粘剤(B)の配合量が0.3〜1.3重量%であり」を充足する。
引用発明の「ジブチルヒドロキシトルエン」は、【0031】の記載から香料安定化剤であるが、本願明細書の【0050】【表1】の実施例において、酸化防止剤(C)として用いられており、本願発明1の「酸化防止剤(C)」に相当する。
引用発明の「精製水」は、本願発明1の「水(H)」に相当する。
引用発明の「トイレ用洗浄剤組成物」は、本願発明1の「洗浄剤組成物」に相当する。また、引用発明の「精製水」はバランス量含まれており、引用発明の「トイレ用洗浄剤組成物」は、本願発明1の「液体である」を充足する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「多糖類増粘剤(B)、
酸化防止剤(C)、及び、
水(H)を含む洗浄剤組成物であって、
前記洗浄剤組成物全量に対する多糖類増粘剤(B)の配合量が0.3〜1.3重量%であり、
液体である、アルカリ洗浄剤組成物。」

<相違点1>
洗浄剤組成物について、本願発明1は、「アルカリ剤(A)」を含むこと、「前記アルカリ剤(A)は無機アルカリ剤」であることが特定され、「pHが12.5以上」であり、「アルカリ」洗浄剤組成物であると特定されるのに対し、引用発明は、アルカリ剤を含むものではなく、pHが不明であり、アルカリ洗浄剤組成物ではない点。

<相違点2>
多糖類増粘剤(B)について、本願発明1は、「キサンタンガム及び/又はカルボキシメチルセルロースナトリウム」であるのに対し、引用発明は、「グアーガム」である点。

<相違点3>
洗浄剤組成物の粘度について、本願発明1は、「前記アルカリ洗浄剤組成物の調合直後の粘度が20〜200mPa・sであり、調合後3週間経過時の粘度低下率が50%以下であり、前記粘度低下率は、前記アルカリ洗浄剤組成物における[(調合直後の粘度−調合後3週間経過時の粘度)/調合直後の粘度]×100(%)で表されるものであり、調合後3週間経過時の粘度は、調合直後のアルカリ洗浄剤組成物を45℃のインキュベーター内で3週間保管した時の粘度であり、前記粘度は、JIS Z 8803に準拠し、E型粘度計を用いて液温20℃、粘度計の回転数20rpmで測定され」と特定されるのに対し、引用発明は、B型粘度計(ローターNo.2、25℃)で測定した粘度が100mPa・s以上であるものの、本願発明1の測定条件における、調合直後の粘度及び調合後3週間経過時の粘度が不明である点。

(2)相違点についての判断
<相違点1>について検討する。
引用文献2の【0038】【表2】の実施例1〜7には、次亜塩素酸ナトリウム、水酸化カリウム、ポリカルボン酸(部分架橋物)等を含み、PHが12.9〜13.6であり、配合直後の粘度が0.8〜6.5万cP(8000〜65000mPa・s)であり、5℃30日保管後の粘度が1.0〜6.7万cP(10000〜67000mPa・s)である、漂白剤組成物が記載されている。また【0024】には、「次亜塩素酸塩が分解して有機系増粘剤を攻撃することにより、有機系増粘剤を低分子化させて製品粘度が急激に下がることを防ぎ、充分な製品安定性を得る観点から、漂白剤組成物のpHは、12.5〜14であり、12.7〜13.8が好ましく、12.8〜13.6がより好ましい。」と記載されている。
引用文献3の表−1の実施例1〜3には、次亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等を含む着色液体洗浄漂白剤組成物が記載されている。
引用文献4の【0053】【表2】、【0055】【表4】の実施例1〜27には、次亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等を含むバイオフイルム用処理剤が記載されている。
引用文献5の表−2の本発明品1〜5には、キサンタンガム、NaOHを含む液体洗浄剤組成物が記載されている。
しかしながら、引用文献1の【0003】には、「従来におけるトイレ用洗浄剤としては、洗浄剤と汚れの接触時間が十分となるように、粘度付与剤によって増粘され、且つ無機的汚れに有効な塩酸等の酸性洗浄成分が提案されているが、洗浄成分自身の臭気が強く、また強酸酸性下、安定な香料も限定されてしまう点に課題がある。」と記載され、【0005】には、「本発明者らは、上記従来の課題等を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、酸性洗浄成分に有機酸を用いることで、嗜好性の高い香料成分が使用可能となり、さらに、粘度付与剤により特定の粘度以上に増粘させると、洗浄力が向上することを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。」と記載されていること、請求項1には、「有機酸」を含むことが特定され、引用発明においても、「ジグリコール酸」及び「ギ酸」が含まれることから、引用発明は、酸性洗浄成分として有機酸を用いることで課題を解決するものである。また、引用文献1の【0014】には、「本発明に用いる粘度付与剤としては、酸性から弱酸性領域で安定なものが好ましい。例えば、キサンタンガム、モナートガム、グアーガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの天然系高分子やモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライトなどの天然もしくは合成粘土鉱物、あるいはポリビニルアルコールなどの水溶性合成高分子などが用いられる。」と記載されていることからも、トイレ用洗浄剤組成物は、酸性から弱酸性領域で用いられることが示唆されているといえる。そうすると、引用文献2〜5に、無機アルカリ剤を含む洗浄剤組成物が記載されているとしても、酸性洗浄成分として有機酸を用いる引用発明において、引用文献2〜5に記載の技術を採用し、無機アルカリ剤を添加し、pHが12.5以上であるアルカリ洗浄剤組成物とする動機はなく、むしろ酸性洗浄成分としての有機酸の働き及び粘度付与剤の安定性を損ねるため阻害要因があるといえるので、当業者が容易になし得たことであるとは認められない。
したがって、上記<相違点2>及び<相違点3>について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2〜5に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1にさらに限定を加えるものであり、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2〜5に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
審判請求時の補正により、本願発明1〜3は、「多糖類増粘剤(B)」について、「キサンタンガム及び/又はカルボキシメチルセルロースナトリウム」に特定し、「前記アルカリ洗浄剤組成物全量に対する多糖類増粘剤(B)の配合量が0.3〜1.3重量%であり」と特定され、「粘度」についても特定されたため、本願発明1〜3は、発明の詳細な説明に記載したものではないとはいえず、原査定の理由(特許法第36条第6項第1号(サポート要件))を維持することはできない。

2 特許法第36条第4項第1号実施可能要件)について
審判請求時の補正により、本願発明1〜3は、「多糖類増粘剤(B)」について、「キサンタンガム及び/又はカルボキシメチルセルロースナトリウム」に特定し、「前記アルカリ洗浄剤組成物全量に対する多糖類増粘剤(B)の配合量が0.3〜1.3重量%であり」と特定され、「粘度」についても特定されたため、発明の詳細な説明の記載は、本願発明1〜3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとはいえず、原査定の理由(特許法第36条第4項第1号実施可能要件))を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-12-26 
出願番号 P2017-209431
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C11D)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 亀ヶ谷 明久
特許庁審判官 門前 浩一
安積 高靖
発明の名称 アルカリ洗浄剤組成物  
代理人 弁理士法人WisePlus  

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