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審決分類 |
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B08B 審判 全部無効 1項1号公知 B08B 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 B08B 審判 全部無効 1項2号公然実施 B08B 審判 全部無効 2項進歩性 B08B |
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管理番号 | 1405571 |
総通号数 | 25 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2024-01-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2022-08-23 |
確定日 | 2023-12-01 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第6529145号発明「支持具およびケース」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第6529145号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜6に係る特許についての出願は、平成30年1月18日を出願日としたものであって、令和元年5月24日に特許権の設定登録(請求項の数6)がされたものである。 その後、令和4年8月23日に請求人Wuerth Japan株式会社(以下、「請求人」という。)より請求項1〜6に係る特許について特許無効審判が請求され、令和5年2月3日に被請求人クリーンデバイス・テクノロジー株式会社(以下、「被請求人」という。)より審判事件答弁書が提出された。 その後、令和5年4月14日付けで審理事項通知書が通知され、令和5年6月2日に請求人より口頭審理陳述要領書が提出され、令和5年6月21日に被請求人より口頭審理陳述要領書が提出された。 さらに、令和5年7月7日付けで審理事項通知書が通知され、令和5年7月14日に口頭審理及び証拠調べが行われ、令和5年7月31日に被請求人より上申書(以下、「被請求人上申書」という。)が提出され、令和5年8月4日に請求人より上申書(以下、「請求人上申書」という。)が提出された。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1〜6に係る発明(以下、「本件特許発明1」などといい、これらの発明をまとめて「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 可撓性を備え内部を液体が流れる空洞を有し、一方に噴射口を備える長尺物に取り付けられ、 前記長尺物の表面を長手方向に取り囲み、予め所定の形状に前記長尺物を変形させ前記長尺物の変形および前記噴射口の向きを支持した状態で移動できることを特徴とする支持具。 【請求項2】 平ら状をなし、前記長尺物に巻き付けられる請求項1に記載の支持具。 【請求項3】 前記長尺物が変形したときに、その変形を支持する棒状体を収容する収容部を備える請求項1または2に記載の支持具。 【請求項4】 前記収容部は、前記長尺物に取り付けられたときに前記長尺物の長手方向に沿って複数形成されている請求項3に記載の支持具。 【請求項5】 前記噴射口の近辺を撮像するカメラを支持する支持部を有する請求項1ないし4のいずれかに記載の支持具。 【請求項6】 可撓性を備え内部を液体が流れる空洞を有し、一方に噴射口を備える長尺物に取り付けられ、 前記長尺物の表面を長手方向に取り囲み、予め所定の形状に前記長尺物を変形させ前記長尺物が変形したときに、前記長尺物の変形および前記噴射口の向きを支持した状態で移動できる支持体を収容可能な収容部を有することを特徴とするケース。」 第3 当事者の主張 1 請求人の主張及び証拠方法 (1)請求人の主張の概要 請求人は、本件特許の請求項1〜6に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、口頭審理陳述要領書、口頭審理調書、請求人上申書によれば、概略以下の無効理由1〜無効理由3を主張している。また、証拠方法として甲第1号証〜甲第34号証(枝番は省略)を提出している(以下、「甲第1の1号証」については、「甲1−1」と表記し、「甲第2号証」等についても、同様に表記する。)。 [無効理由1] (1)本件特許発明1、3、5、6 本件特許発明1、3、5、6は、甲1〜甲9、甲15〜甲34(枝番は省略。ただし、甲9ー2−1、甲9−2−2を除く。)により、型番AV7823の「多機能クリーニングボアスコープ」として、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然知られた、又は公然実施をされたと把握される発明(以下、「AV7823発明」という。)である。仮に、本件特許発明1、3、5、6が、AV7823発明と相違するとしても、本件特許発明1、3、5、6は、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が、AV7823発明及び甲11に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものである。 したがって、本件特許発明1、3、5、6は、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当するものであり、若しくは特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1、3、5、6に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (2)本件特許発明2、4 本件特許発明2、4は、当業者が、AV7823発明、甲11に記載された発明、甲12に記載された発明及び甲13に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものである。 したがって、本件特許発明2、4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明2、4に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 [無効理由2] (1)本件特許発明1、3、5、6 本件特許発明1、3、5、6は、甲4の2を考慮すると、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲4の1に記載された発明(以下、「甲4発明」という。)である。仮に、本件特許発明1、3、5、6が、甲4発明と相違するとしても、本件特許発明1、3、5、6は、本件特許の出願前に当業者が、甲4発明及び甲11に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものである。 したがって、本件特許発明1、3、5、6は、特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、又は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1、3、5、6に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (2)本件特許発明2、4 本件特許発明2、4は、当業者が、甲4発明、甲11に記載された発明、甲12に記載された発明及び甲13に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものである。 したがって、本件特許発明2、4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明2、4に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 [無効理由3] 本件特許発明1〜6は明確でなく、本件特許の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないから、本件特許発明1〜6に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 (2)証拠方法 提出された証拠は、以下のとおりである。 甲1−1:宣言書 甲1−2:宣言書の和訳 甲2−1:宣言書 甲2−2:宣言書の和訳 甲3:当該特許の先行技術となりうる資料について 甲4−1:QBH社の中国実用新案公報 甲4−2:甲4−1の機械翻訳 甲5−1:QBH社の2017年当時のカタログ 甲5−2:QBH社の2017年当時の小型のリーフレット 甲5−3:QBH社の2017年当時の大型のリーフレット 甲6−1:香港貿易発展局のホームページ 甲6−2:2017年香港秋季電子展への出展証明書 甲6−2−1:甲6−2の抄訳 甲6−3:2017年香港秋季電子展のブース位置を示す図面 甲6−4:2017年香港秋季電子展への出展申込の受領書 甲6−4−1:甲6−4の抄訳 甲6−5:2017年香港秋季電子展の様子を示す写真1 甲6−5−2:甲6−5 第3ページにおけるAV7823対応部分の拡大図像 甲6−5−3:甲6−5 第1ページにおけるAV7823対応部分の拡大図像 甲6−6:2017年香港秋季電子展の様子を示す写真2 甲6−7:2017年香港秋季電子展の様子を示す写真3 甲6−8:2017年香港秋季電子展の様子を示す写真4 甲7−1:製造販売時の送付票 甲7−1−1:甲7−1の抄訳 甲7−2:製品販売時の売上げ伝票 甲7−2−1:甲7−2の抄訳 甲7−3:製品販売時の譲渡契約書 甲7−3−1:甲7−3の抄訳 甲8:QBH社の2022年のカタログ 甲9−1:支持具相当部分の写真 甲9−2−1:支持具相当部分の分解写真 甲9−2−2:支持具相当部分の拡大写真 甲9−3:AV7823に取り付けた上記支持具相当部分の形状を示す写真 甲9−4:上記支持具相当部分の形状を示す写真 甲9−5:上記支持具相当部分の形状を示す写真 甲9−6:上記支持具相当部分の形状を示す写真 甲9−7:上記支持具相当部分の形状を維持できることを示す写真 甲9−8:上記支持具相当部分の形状を維持できることを示す写真 甲9−9:上記支持具相当部分の形状を維持できることを示す動画(DVD) 甲10:特許法概説第13版80ページ 甲11:特開2005−46273号公報 甲12:特許第5748251号公報 甲13:実用新案登録第3028117号公報(当審注:令和4年8月23日付け証拠説明書では、「特許第3028117号公報」と記載されているが、正しくは「実用新案登録第3028117号公報」である。) 甲14:本件特許公報 甲15−1:宣言書 甲15−2:甲15−1の抄訳 甲15−3:甲15−1の抄訳(甲15−2における誤訳の訂正) 甲16−1:甲15−1で言及の工場出荷票(SH20030308) 甲16−2:甲16−1の和訳 甲17−1:甲15−1で言及の工場出荷票(SH20040471) 甲17−2:甲17−1の和訳(当審注:令和5年6月2日付け証拠説明書では、「甲17−2の和訳」と記載されているが、正しくは「甲17−1の和訳」である。) 甲18−1:AV7823の部品構成の設計図 甲18−2:甲18−1における部品名等の英訳 甲18−3:甲18−2における部品番号1,2の品名の和訳 甲19−1:甲18−1における部品番号1,2を含む部材の設計図 甲19−2:甲19−1における部品名等の英訳 甲19−3:甲19−2における部品名の和訳 甲19−4:甲19−1における部品名等の英訳(甲19−2における誤訳の訂正) 甲19−5:甲19−4における部品名の和訳(甲19−3における誤訳の訂正) 甲20−1:QBHがフェイスブックに投稿した記事のトップページのスクリーンショット 甲20−2:甲20−1の製品画像部分を拡大した画像のスクリーンショット 甲20−3:甲20−2から表示ページを進めたページの画像のスクリーンショット 甲20−4:甲20−3から表示ページを進めたページの画像のスクリーンショット 甲20−5:甲20−4から表示ページを進めたページの画像のスクリーンショット 甲21−1:洗浄プローブの組立における「支持体への装着工程」の作業説明書 甲21−2:甲21−1の和訳 甲22−1:洗浄プローブの組立における「熱収縮チューブの加熱工程」の作業説明書 甲22−2:甲22−1の和訳 甲23:支持具相当部分の分解写真(甲9−1の差替写真) 甲24:支持具相当部分の拡大写真(甲9−2の差替写真) 甲25−1:宣言書 甲25−2:甲25−1の抄訳 甲26−1:甲5−1の第17〜18ページの和訳 甲26−2:甲5−1の第23〜26ページの和訳 甲27−1:甲5−2におけるAV7823に関する記載の英訳 甲27−2:甲27−1の和訳 甲28−1:甲5−3におけるAV7823に関する記載の英訳 甲28−2:甲28−1の和訳 甲29:甲8の第11ページの和訳 甲30−1:2023年7月10日付けのQBH社からの電子メール 甲30−2:甲30−1の訳文 甲31−1:宣言書 甲31−2:甲31−1の抄訳 甲32−1−1:コマーシャル・インボイス 甲32−1−2:甲31−1−1の抄訳 甲32−2−1:パッケージングリスト 甲32−2−2:甲32−2−1の抄訳 甲32−3−1:船荷証券又は複合船荷証券 甲32−3−2:甲32−3−1の抄訳 甲32−4−1:AV7823の発注書 甲32−4−2:甲32−4−1の抄訳 甲33:AV7823の収納容器と、その収納容器に貼られたラベルの写真 甲34:甲6−5の差替 2 被請求人の主張及び証拠方法 (1)被請求人の主張の概要 これに対し、被請求人は、本件審判事件は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。 (2)証拠方法 提出された証拠は、以下のとおりである。 乙1:GSVのウェブサイト 乙2:テクニカルシート 第4 当審の判断 1 請求人提出の証拠の記載内容等 請求人は、書証として甲1〜甲34(枝番は省略。)を提出している。 (1) 甲1−1、甲1−2 ア 甲1−1、甲1−2について 甲1−1は、Visual Inspecting Cleaning Borescope AV7823(以下、「AV7823製品」という。)の製造会社であるシェンゼン QBH テクノロジー デベロップメント株式会社(原語表記、「 ![]() 」。以下、「QBH社」という。)が2022年4月28日に作成した宣言書であり、甲1−2は、請求人から提出された甲1−1の和訳である。 イ 甲1−1に記載された事項について 甲1−2を参考にすると、甲1−1では、AV7823製品のコアとなるパラメータ及び構造について、2016年6月23日より変更していないことが宣言されている。 (2) 甲2−1、甲2−2 ア 甲2−1、甲2−2について 甲2−1は、QBH社が作成した宣言書であり、甲2−2は、請求人から提出された甲2−1の和訳である。 なお、令和4年8月23日提出の証拠説明書によれば、甲2−1の作成年月日は2022年4月28日である。 イ 甲2−1に記載された事項について 甲2−2を参考にすると、甲2−1には、以下の事項が宣言されている。 (ア)QBH社が、AV7823製品を2016年に開発し、この製品を請求人であるウルトジャパン株式会社(審判注:「ウルトジャパン株式会社」は「Wuerth Japan株式会社」のカタカナ表記)に提供していること。 (イ)表紙に「Borescope Industry Leader」、「Borescope Solution」、「WE SCOPE YOUR VISION」と記載されているカタログ(審判注:甲8)が2022年のシーズン用のものであること。 (ウ)表紙に「ENDSCOPE」、「WE SCOPE YOUR VISION」と記載されているカタログ(審判注:甲5−1)が2017年のシーズン用のものであること。 (3) 甲4−1、甲4−2 ア 甲4−1、甲4−2について 甲4−1は、中華人民共和国知的産権局が2016年12月14日に発行した実用新案第205809408号公報(出願番号 201620626394.6)であり、甲4−2は、甲4−1の機械翻訳である。 イ 甲4−1に記載された事項について 甲4−1には、図面と共に以下の事項が記載されている(括弧「」内は当審による翻訳である。下線は、当審にて付与した。)。 (ア)段落0001〜0002には以下の記載がある。 ![]() 「技術分野 [0001]本実用新案は、産業用内視鏡の技術分野に属し、特に洗浄装置を備えた内視鏡に関するものである。 背景技術 [0002]社会の工業化に伴い、カメラ素子を搭載した電子内視鏡は、医療分野だけでなく、外れた部品の回収、配管内外の腐食状態の検出、タービン洗浄、配管閉塞検査などの産業機器のメンテナンス、金属欠陥検出にも広く利用されている。既存の洗浄機能付き携帯型内視鏡装置は、カメラ素子と液体スプレー素子がセットになっており、画像情報を得ながら特定の場所を洗浄・塗装することが可能である。 ガスラインやガスラインに接続されたガス供給装置の腐食の危険性が高まる。」 (イ)段落0037〜0043、及び、図1〜3には以下の記載がある。 ![]() ![]() 「[0037]図1〜図3を参照すると、本実施形態は、洗浄システムを備える内視鏡を開示し、前記洗浄システムは、液体導管2、ガスライン1、吸液配管7および液体貯蔵装置3から構成されている。 [0038]前記ガスライン1は、少なくとも部分的に前記液体導管2の内部に配置され、ガスライン1の外壁と液体導管2の内壁との間に液体流貫通キャビティ8が残され、前記ガスライン1は吸気口と排気口11を有し、前記排気口11は液体導管2の内部に位置し、ガスライン1は前記排気口11を介して液体導管2に接続されている。 [0039]前記液体導管2は、前記ガスライン1から離れた端部にシャワーヘッド41を備え、前記液体導管2は、前記ガスライン1に近い端部で閉鎖されている。 [0040]前記吸液配管7の一端は、前記液体貯蔵装置3内に置かれ、他端は前記液体流貫通キャビティ8に接続されている。 [0041]高圧ガスがガスライン1を介して液体導管2内に噴射され、高圧ガスの流通により液体導管2内の圧力が低下するので、液体貯蔵装置3内の液体が液体流貫通キャビティ8及び吸液配管7を介して吸い出され、高圧ガスと混合されてガスライン1の排気口11で霧化し、液体導管2のシャワーヘッド41で吹き出されるので、液体の霧化を効果的に向上させられる。そして、液体導管路2シャワーヘッド41で液体を噴霧し、液体の微粒化度を効果的に高める一方、液体流貫通キャビティ8によってガスライン1と液体導管路2が相互に隔離されているため、液体導管路2内に残留した液体が逆流する問題を回避できる。 [0042]前記液体貯蔵装置(3)は、液体貯蔵ボトルとボトルストッパとからなり、前記吸液配管(7)は前記ボトルストッパを通過し、前記液体貯蔵ボトルは、必要に応じて洗浄液、ラッカー、潤滑油および他の液体で満たされ得る。 [0043]好ましい態様として、前記吸液配管(7)は、第1の吸液配管(図示せず)と第2の吸液配管(図示せず)とからなり、切換弁(図示せず)を備え、この切換弁を介して前記第1の吸液配管、前記第2の吸液配管は前記液体流貫通キャビティ(8)と連通して切り換えられる。)」 ![]() ![]() (ウ)段落0046〜0049及び図4、図5には以下の記載がある。 ![]() ![]() 「[0046]前記第2出吸気口94は、密閉アセンブリ91を備え、前記密閉アセンブリ91は、第1の締結ナット911、第2の締結ナット913及び第1の両端接続シート912を備え、前記第1の両端接続シート912は、内部にガス通路914を備え、前記ガスライン1は、第1のガスライン部13及び第2のガスライン部14からなり、前記第1のガスライン部13及び前記第1のガスライン部13と前記第2のガスライン部14は共にホースであり、前記第1のガスライン部13と前記第2のガスライン部14はそれぞれ前記ガス通路914の両端にスナップ止めされ、前記第1の締結ナット911と前記第2の締結ナット913はそれぞれ両端接続座の両端にねじ込まれ、前記第2の両端接続座922の両端に前記第1締結ナット911と第2締結ナット913の外輪が嵌められ、前記第2両端接続座922の端部にクランプされて前記第1ガスライン部13と第2ガスライン部14をそれぞれ保持し、前記第1締結ナット911の外壁は、前記第2出吸気口94の内側にクランプされており、シール性が良好である。 [0047]前記第1出吸気口93には接続アセンブリ92が設けられ、前記接続アセンブリ92は第3締結ナット921と第2両頭接続座922からなり、前記第2両頭接続座922は内部に接続通路923を備え、前記ガスライン1は前記接続通路923を通り、ガスライン1の外壁と接続通路923の内壁の間に隙間が残され、液体流貫通キャビティ8と三方分岐管9の内腔を前記隙間を通して連通させ、前記液体導管2はホースであり、前記第1出吸気口93と液体導管2はそれぞれ前記接続路923の両端に接続され、前記第3締結ナット921は前記第2両頭接続座922にねじ込まれ、第3締結ナット921の外輪と第2両頭接続座922の端部は協力して液体導管2をクランプすることを使用して、液体導管2を固定し、密閉する。 [0048]前記洗浄システムを備える内視鏡は、蛇管4と、手持ち部5と、受信端6と、をさらに備える。 [0049]前記液体導管2は、第1の液体導管部21と第2の液体導管部22とからなり、前記第1の液体導管部21は前記蛇管4の内部に設けられ、前記シャワーヘッド41から戻った第1の液体導管部21の前記蛇管4によって導かれる端部が前記第2の液体導管部22から延び出し、前記第1の液体導管部21と前記第2の液体導管部22は取り外し可能に接続されて前記手持ち部5内部に設けられる。」 ![]() ![]() (エ)段落0056〜0057、及び、図6〜8には以下の記載がある。 ![]() 「[0056]図6〜図8を参照すると、前記シャワーヘッド41は、メインシャワーヘッド411とサイドシャワーヘッド412とからなり、前記蛇管4は、頭端と尾端とを有し、前記蛇管4の頭端には、メインカメラ46と調整弁44とサイドカメラ45とが設けられており、前記メインシャワーヘッド411及びメインカメラ46は蛇管4の頭端の端面に位置し、前記第1液体導管部21は、一端がメインシャワーヘッド411又はサイドシャワーヘッド412に接続され、前記調整弁44を介して蛇管4の端部から延び、前記調整弁44は三方ボール弁であり、調整弁44が反時計回りに回転して第1液体導管部21とサイドシャワーヘッド412を接続し、蛇管4の端部の側面方向からスプレーを噴出し、調整弁44が時計回りに回転して第1液体導管部21とメインシャワーヘッド411を接続し、蛇管4の端部方向から噴射される。 [0057]前記蛇管4には、信号交換用の信号伝送線43が設けられ、前記信号伝送線43は、一端が前記メインカメラ46及びサイドカメラ45に電気的に接続され、他端が蛇管4の端部から延出して映像信号接続ヘッド431を備え、前記手持ち部5には映像信号接続座57が備えられ、前記映像信号接続ヘッド431は前記映像信号接続座に取り外し可能に接続されている 57が着脱自在に接続され、また、前記手持ち部5には、メインカメラ46とサイドカメラ45の信号伝送を切り替えるためのカメラ切替スイッチ51が設けられる。」 ![]() ![]() (オ)段落0060〜0062には以下の記載がある。 ![]() ![]() 「[0060]前記第1の液体導管部21と信号伝送線43の大部分は、前記蛇管4に巻き付けられ、蛇管4の端部に位置する第1の液体導管部21と信号伝送線43は、分岐して、前記手持ち部5に着脱可能に接続された別の第1の液体導管部21と信号伝送線43を延長し、即ち蛇管4は手持ち部5に着脱可能に接続する。 [0061]前記蛇管4の端部には保護スリーブ42が設けられ、前記保護スリーブ42は蛇管4の軸に沿って変位可能であり、保護スリーブ42が手持ち部5に接続されたときに蛇管4の端部で第1の液体導管部21および信号伝送ライン43を覆い、蛇管4と手持ち部5との接続部を保護する。 [0062]図9を参照すると、ガスライン1が第1液体導管部21の内部に挿入され、ガスライン1と第1液体導管2との間に前記液体流貫通キャビティ8が残される。」 ウ 甲4発明 イ(ア)〜(オ)を総合すると、甲4−1には、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。 「可撓性を備え内部を液体が流れる液体流貫通キャビティ8を有し、一方にシャワーヘッド41を備え、第1の液体導管部21と第2の液体導管部22とからなる液体導管2と、 一端がメインカメラ46及びサイドカメラ45に電気的に接続された信号伝送線43と、 に取り付けられ、 第1の液体導管部21と信号伝送線43の大部分に巻きつけられる 蛇管4。」 (4) 甲5−1、甲25−1、甲25−2、甲26−1、甲26−2 ア 甲5−1、甲25−1、甲25−2、甲26−1、甲26−2について 甲2−1の宣言書によれば、甲5−1は、QBH社の2017年シーズンのカタログである。 甲25−1は、QBH社が2023年6月1日に作成した宣言書であり、甲25−2は、請求人から提出された甲25−1の和訳である。 また、甲26−1は、請求人から提出された甲5−1の第17〜18ページに記載されたAV7823の仕様の記載内容の和訳であり、甲26−2は、同第23〜26ページに記載された各種蛇管の説明内容の和訳である。 イ 甲5−1の頒布時期について 甲25−2として提出された和訳を参考にすると、甲25−1では、甲5−1〜甲5−3が2017年に発行されたものであることを宣言している。通常、製品カタログは、製品の販売以前に又は同時期に頒布されるものであることを考慮すると、甲25−1で宣言された内容は合理的であり、甲5−1〜甲5−3は、遅くとも2017年末には頒布されていたと推定される。 ウ 甲5−1に記載された事項について 甲5−1には以下の内容が記載されている。 (ア)第17〜18ページには、「AV7823」、「Multifunctional Cleaning Borescope」、「PATENT NO:20150298533.2」という見出しと共に、以下の写真及び表が記載されている。 ![]() ![]() 製品の特徴については、甲26−1を参考にすると、AV7823製品の本体について、イメージセンサー、有効ピクセル、焦点距離、視野角、プローブ直径、チューブ長、LEDランプ、スプレー量の仕様が記載され、モニターの特徴について、スクリーン、LCD、解像度、電池、充電プラグの仕様が記載されている。 (イ)第23〜24ページには、「INJECTOR+BORESCOPE」、「AV7822」、「3.5” Video Borescope With injector」という見出しと共に、以下の写真と、型番「AV7822」の製品の特徴が記載されている。 ![]() ![]() 製品の特徴については、甲26−2を参考にすると、AV7822製品の本体について、画像センサー、有効画素数、焦点距離、画角、プローブ直径、蛇管カメラ長、LEDランプの仕様が記載され、モニターの特徴について、データ出力、スクリーン、記録と写真、液晶画面、可能圧力の仕様が記載されている。 (ウ)第25〜26ページには、以下の各種蛇管の写真とともに、各種「Snake Tube」の仕様が記載されており、甲26−2を参考にすると、各種「共通蛇管」、「機能性蛇管」、「特許蛇管」について、型番、レンズ外径直径、画素数、調節可能長、多様性、特徴の項目が設けられ、各型番の特徴が記載されている。 ![]() (5) 甲5−2、甲27−1、甲27−2 ア 甲5−2、甲27−1、甲27−2について 甲5−2は、QBH社の2017年シーズンの小型のリーフレットである。上記(4)イに示した通り、甲5−2は、遅くとも2017年末には頒布されていたと推定される。 また、甲27−1は、請求人から提出された甲5−2のうちAV7823製品に関する記載の英訳であり、甲27−2は、甲27−1の和訳である。 イ 甲5−2に記載された事項について 甲5−2には、「清洗一体内視鏡」という欄に「AV7823」、「AV7822」、「AV7821」という記載の横に3つの製品の写真が掲載されており、甲27−1、甲27−2を参考にすると、「AV7823」という記載の横に、以下の製品特徴が記載されている。 「4.3インチ取り外し可能なディスプレイ 直径9mmのプローブ 4個のLEDライトを備える800mmの剛性蛇管 30万画素、視野角60度 焦点距離:30〜80mm ディスプレイ用リチウム電池1650MAH スプレーガンハンドル用リチウム電池800MAH スイッチ:電子制御スイッチ 水等級IP67 取り外し可能な蛇管」 ![]() (6) 甲5−3、甲28−1、甲28−2 ア 甲5−3、甲28−1、甲28−2について 甲5−3は、QBH社の2017年シーズンの大型のリーフレットである。上記(4)イに示した通り、甲5−3は、遅くとも2017年末には頒布されていたと推定される。 また、甲28−1は、請求人から提出された甲5−3のAV7823製品に関する記載の英訳であり、甲28−2は、甲28−1の和訳である。 イ 甲5−3に記載された事項について 甲5−3には、「清洗一体内視鏡」という欄に「AV7823」、「AV7822」、「AV7821」という記載と共に、以下の写真が掲載されており、AV7823の写真の下には、「中国専利号NO201620626394.6」と記載されている。 また、甲28−1、甲28−2を参考にすると、「AV7823」という記載の下には、以下の製品特徴が記載されている。 「1.手持ちのポータブルデザイン、操作及び携帯が非常に容易 2.直径9mmのレンズ、金属型ホース、折り曲げ耐性、固定の容易性、視認による洗浄のための取り外しをすることなく、自動車のエアコン中に空気を直接噴出することができる。 3.取り外し可能な4.3インチのHDディスプレイ 4.HDミニカメラ、高輝度のアジャスタブルLEDライト、大流量ノズル 5.自動車用充電器により、持続的に稼働 6.ソレノイドバルブキースイッチが液体及び空気の流量を制御。数万回のテストで異常なし。」 ![]() (7) 甲6−1〜甲6−8、甲34 ア 甲6−1〜甲6−8、甲34について 甲6−1は、香港貿易発展局が作成した、同局のホームページの写しである。 甲6−2は、香港貿易発展局が2017年9月30日に作成した2017年香港秋季電子展への出展証明書であり、甲6−2−1は、請求人から提出された甲6−2の抄訳である。 甲6−3は、香港貿易発展局が2017年9月に作成した2017年香港秋季電子展のブース位置を示す図面である。 甲6−4は、香港貿易発展局が2017年8月3日に作成した2017年香港秋季電子展への出展申込の受領書であり、甲6−4−1は、請求人から提出された甲6−4の抄訳である。 甲6−6〜甲6−8については、請求人上申書の4(1)によれば、パネルに「Taiwan」と表示されている写真であるため、撤回された。 また、甲6−5については、請求人上申書の4(2)によれば、複数の日付の写真が混在していたため撤回され、2017年10月13日に撮影した写真のみとしたものが甲34として改めて提出されている。甲34は、QBH社が2017年10月13日に撮影した2017年香港秋季電子展の様子を示す写真である。 イ 甲6−1〜甲6−4、甲34に記載された事項について 甲6−1には、「Hong Kong Electronics Fair 2017(Autumn Edition)」の見出しと共に、「Dates:10/13/2017−10/16/2017」、「Venue:Hong Kong Convention and Exhibition Centre(HKCEC),Hong Kong, China」と記載されており、2017年10月13日〜16日の期間、「2017年香港秋季電子展」(以下、単に「電子展」という。)が開催されたことが記載されている。 甲6−2には、甲6−2−1も参考にすると、電子展の展示申請書であって、QBH社の原語表記とともにQBH社の住所、展示場所の情報として展示場所の面積、費用が記載されており、ブース番号として「3CON―138」という番号が記載されている。 甲6−3には、電子展の会場図が記載されている。 甲6−4には、甲6−4−1も参考にすると、電子展の主催者である香港貿易振興協会から、QBH社に宛てて、参加資格を承認し、展示会に参加することを承認する旨が記載されている。 甲34には、「02_October 2017 Hongkong Electronics Fair advertisement」という見出し、「QQ図片20171013092213.jpg」というファイル名、「2017−10−13 09:28:36」という日時とともに以下の写真が記載されている。 ![]() 上記写真に写ったブースには、「3CON−138 QBH Technology Development Co. Ltd.」、「HK」という表示があり、ブース内には6枚の製品写真の掲示とともに、製品が展示されている。 また、次のページには、「07_Date verifications on exhibition photo(4)」という見出し、「2017年10月13日」という撮影日とともに以下の写真が記載されている。 ![]() また、「08_Date verifications on exhibition photo(5)」という見出し、「2017年10月13日」という撮影日とともに以下の写真が記載されている。 ![]() また、「09_Date verifications on exhibition photo(6)」という見出し、「2017年10月13日」という撮影日とともに以下の写真が記載されている。 ![]() (8) 甲7−1〜甲7−3−1 ア 甲7−1〜甲7−3−1について 甲7−1、甲7−2、甲7−3は、本件特許の出願前に、AV7823製品がQBH社から中化近代環保化工(西安)に販売されたことを示す取引書類であり、甲7−1−1、甲7−2−1、甲7−3−1はそれぞれ請求人から提出された甲7−1〜甲7−3の抄訳である。 イ 甲7−1、甲7−2、甲7−3に記載された事項について 甲7−1には、甲7−1−1も参考にすると、QBH社の原語表記の社名、納品書という見出しとともに、顧客番号として「XAHBーCGDD00005992」、製品番号として「AV7823」、物品名称/規格として「空調蒸発多機能洗浄機ボアスコープ」、数量として「200」が、日付「2017−06−14」とともに記載されている。 甲7−2には、甲7−2−1も参考にすると、「深※増値税送付票」(※は土偏に「川」)という見出し、「2017年6月14日」という日付とともに、「中化近代環保化工(西安)」と、QBH社の原語表記が記載されており、総額として、「10万4000元」との記載がある。しかしながら、本伝票における両社の位置づけは、文字がかすれており判読できない。 甲7−3は、譲渡契約書であり、甲7−3−1も参考にすると、「甲(購入者)」として「中化近代環保化工(西安)」が、「乙(提供者)」としてQBH社が、契約番号として「XAHBーCGDD00005863」が記載されており、第1条〜第十2条にわたって契約内容が記載されている。第1条には「品名、規格、数量、価格」として、「空調蒸発多機能洗浄機ボアスコープ」、「AV7823」、「200.000」、「520.000」、が記載されており、併せて総額として「104,000.00」が記載されている。また、同契約書には、署名日として2017年4月11日の日付が記載されており、第4条には、配送日として2017年5月10日の日付が記載されている。また、第1条〜第十2条には、特段、譲渡した製品に係る秘密保持に関する条項はなく、各ページ下部には「工作秘密、注意保密」と記載されている。 (9) 甲8、甲25−1、甲25−2、甲29 ア 甲8、甲25−1、甲25−2、甲29について 甲2−1の宣言書によれば、甲8は、QBH社の2022年シーズンのカタログである。 また、甲25−1は、QBH社が2023年5月31日に作成した宣言書であり、甲25−2は、請求人から提出された甲25−1の和訳である。 また、甲29は、甲8の第11ページに記載されたAV7823の仕様の記載内容の和訳である。 イ 甲8の頒布時期について 甲25−2として提出された和訳を参考にすると、甲25−1では、甲8が2021年に発行された2022年のシーズン用のものであることが宣言されている。通常、製品カタログは、製品の販売以前に又は同時期に頒布されるものであることを考慮すると、甲25−1で宣言された内容は合理的であり、甲8は、遅くとも2021年末には頒布されていたと推定される。 ウ 甲8に記載された事項について 甲8の第11ページには、甲29も参考にすると、「AV7823 Visual Inspecting Cleaning Borescope」という見出しとともに、以下の製品写真、カメラ頭部の写真、パッケージの写真、製品の紹介、特徴が記載されている。 ![]() 製品の紹介、特徴として、以下の記載がある。 「紹介 この視覚による洗浄用ボアスコープは、車のエバポレーターの洗浄、手が届かない部分や取り外しが困難な部分の狭い空間や死角の洗浄に広く使用することができます。洗剤を併用することで、容易かつ効果的にNDTと洗浄ができます。 特徴 ・人間工学に基づいた、持ち運び、使用が容易なデザイン ・9mmカメラ、可動かつ形成可能な蛇管 ・取り外し可能な4.3インチHDモニター ・マイクロHDカメラモジュール、輝度調節可能LEDライト ・液体と空気を制御するための電源」 また、蛇管、スクリーンの仕様、本体の項目に分けて3つの表が記載されており、蛇管については、画像センサーとして「CMOSセンサー」、有効画素数として「640x480」、焦点距離として「30mm〜80mm」、視角として「60°」、チューブ長として「600mm」、LED(AV7823)として「6X0603LED」と記載されている。 (10) 甲9−1〜甲9−9、甲23、甲24 ア 甲9−1〜甲9−9、甲23、甲24について 甲9−1は、支持具相当部分の写真であり、請求人代理人によって2022年9月18日に作成された。 甲9−3、甲9ー4は、支持具相当部分の形状を示す写真として提出されており、請求人によって2022年9月17日に作成されたものである。 甲9−5〜甲9−8は、上記支持具相当部分の形状を示す写真として提出されており、請求人によって2022年9月17日に作成されたものである。これらのうち、甲9−6〜甲9−8は、後述の甲9−9の動画のある時点における静止画像である。 甲9−9は、上記支持具相当部分の形状を維持できることを示す動画として提出されたものであり、請求人によって2022年9月17日に作成されたものである。 なお、口頭審理において、甲9−2−1、甲9−2−2は取り下げられた(第1回口頭審理調書参照)。その後、甲23、甲24が改めて提出された。 イ 甲9−1、甲23、甲24に記載された事項について 甲9−1には、以下の写真が記載されている。 ![]() また、甲23には、以下の写真が記載されている。 ![]() また、甲24には、以下の写真が記載されている。 ![]() ウ 上記イからわかること 甲9−1からは、湾曲した黒い形状をしており、左端部から、芯のようなものがでた物品が看取され、部材名として「支持具相当部分」と記載されている。 甲23には、甲9−1を分解した写真が示されており、「カバー部材(ケース)」と記載された部材と、当該部材から取り出された、「液体導管(中空管:長尺物)」と記載された透明な長尺物と、「信号伝送体(棒状体)」と記載された黒い長尺物の2本が両端部で接続され、お互いに略同一の「つ」の字状の外形に変形されている様子が看取される。 甲24には、「液体導管(中空管:長尺物)」と記載された透明な長尺物と、「信号伝送体(棒状体)」と記載された黒い長尺物の2本が、端部で「支持部」と記載された部材で固定されている様子が看取される。また、甲24の2枚目の写真は、「支持部」を拡大したものであり、「液体の噴出口」と記載された端部箇所と、「カメラ」と記載された端部箇所が看取される。 エ 甲9−3〜甲9−4に記載された事項について 甲9−3には、以下の写真が記載されている。 ![]() また、甲9−4には、以下の写真が記載されている。 ![]() オ 上記エからわかること 甲9−3〜甲9−4に記載された4枚の写真は、甲9−1、甲23、甲24に示された「支持具相当部分」に似た部材が取り付けられた機器が共通して写されており、「支持具相当部分」は予め「つ」の字状に湾曲された状態であることが看取される。また、各図は同じ場所、同じ画角で撮影されており、上記機器の後ろ側に移された時計が、11:28から、11:44、11:58、12:14と変化していることから、46分間の間、「支持具相当部分」が形状を維持し、液体の噴出口の向きも維持していたことが推認される。 カ 甲9−5〜甲9−9に記載、記録された事項について 甲9−5には、以下の写真が記載されている。 ![]() 甲9−6には、以下の写真が記載されており、甲9−9の動画からも、該写真に対応する場面が把握できる。 ![]() 甲9−7には、以下の写真が記載されており、甲9−9の動画からも、該写真に対応する場面が把握できる。 ![]() 甲9−8には、以下の写真が記載されており、甲9−9の動画からも、該写真に対応する場面が把握できる。 ![]() キ 上記カからわかること 甲9−5には、「支持具相当部分」という記載が付された長尺物が、機器から略水平に伸びており、人の手で支持されているのは機器本体のみであることから、それ自身で姿勢を維持できるものと推認される。 また、甲9−6〜甲9−8に記載された6枚の写真は、甲9−1、甲23、甲24に示された「支持具相当部分」に似た部材が取り付けられた機器が共通して写されており、「支持具相当部分」は、甲9−5とは異なり、「つ」の字状に湾曲された状態であることが看取される。また、各図は徐々に場所を移動しながら撮影されており、6枚の写真が撮影される間、「支持具相当部分」が形状を維持し、液体の噴出口の向きも維持していたことが推認される。 (11) 甲11 ア 甲11について 甲11は、日本国特許庁が2005年2月24日に発行した特開2005−46273号公報である。 イ 甲11に記載された事項について (ア)段落0017〜0019、図1、図2には以下の記載がある。 「【0017】 図1は本発明の係る内視鏡用オーバーチューブの基本構造を説明するためのもので、図1(a)は該内視鏡用オーバーチューブの外観構成を示す斜視図、図1(b)は本発明の特徴となる構成を説明するための該内視鏡用オーバーチューブの断面図である。 【0018】 本発明の内視鏡用オーバーチューブ1は、図1(a)に示すように、軟性鏡などの内視鏡を挿通可能な内視鏡挿通孔3Aを有し可撓性のチューブ形状に構成されたもので、内視鏡挿通孔3Aが連通され、変形自在な変形可能状態(第1の状態)と湾曲状態を保持したまま形状固定される変形保持状態(第2の状態)とに切替え可能な形状保持手段を有し、体腔内に挿入される挿入部3と、この挿入部3の手元側に配され、前記挿入部の第1の状態と第2の状態とを切替え操作するための操作部2とで、主に構成されている。 【0019】 操作部2は、その外周の一部には前記内視鏡挿通孔3Aの軸方向に対して略鉛直方向に移動溝5が設けられており、この移動溝5には該移動溝5に沿ってスライド可能な操作レバー4が設けられている。」 ![]() ![]() (イ)段落0021〜0026には以下の記載がある。 「【0021】 さらに、詳細な構成を説明すると、挿入部3は、図1(b)に示すように、前記内視鏡挿通孔3Aを内部に形成する内シース6と、この内シース6の外周面に配された螺旋状形状管8と、内シース6及び螺旋状形状管8に対して所定の隙間を設けてこれらを収容する外シース7と、該挿入部3の先端部及び基端部内に配され、内シース6と螺旋状形状管8とを固定する固定部材11、11aとで主に構成されている。 【0022】 外シース7は、可撓性を有する筒状体であり、前記内シース6よりも若干硬めに構成されている。 【0023】 この外シース7内に配される内シース6は、前記外シース7よりも柔軟性がある材質で構成された筒状体であり、その外周面には先端部から基端部にかけて螺旋状形状管8が螺旋状に巻回されるように設けられている。 【0024】 この螺旋状形状管8は、例えば所定幅の板形状で形成された板部材が螺旋状に構成されたもので、巻回方向(螺旋方向)とは逆方向に回転力を与えることにより、外側に拡張する力を生じる特性を有している。 【0025】 螺旋状形状管8の先端部は、固定部材11によって内シース6の先端部と固定されている。一方、螺旋状形状管8の基端部(手元側)についても同様に、操作部2内において固定部材11aによって内シース6の基端部に固定されている。 【0026】 この構成において、該螺旋状形状管8が巻回されて固定された内シース6を、前記螺旋状形状管8の巻回方向(螺旋方向)とは逆方向に回転させることにより、該螺旋状形状管8の外側に拡張する力が生じることから、該内シース6自体を、内視鏡挿通孔3Aの軸に対して距離が遠ざかる外側方向に広げることができるようになっている。」 (ウ)段落0030〜0035には以下の記載がある。 「【0030】 本発明の内視鏡用オーバーチューブ1においては、操作部2の操作レバー4のポジション(操作位置)が図1(b)に示す状態で、挿入部3内の内シース6及び外シース7との位置関係も図1(b)に示す状態だとすると、この場合、挿入部3は可撓性を有した外シース7及び内シース6で構成されているので自在に変形、湾曲可能な変形可能状態(第1の状態)となる。 一方、操作部2の操作レバー4を螺旋状形状管8の巻回方向(螺旋方向)とは逆方向(図1(a)では下方向)にスライド操作すると、このスライド操作に連動して伝達部材9を介して内シース6に回転力を与え、つまり、螺旋状形状管8が巻回されて固定された内シース6を、前記螺旋状形状管8の巻回方向(螺旋方向)とは逆方向に回転させることにより、該螺旋状形状管8の外側に拡張する力が生じ、これにより、該内シース6自体を、内視鏡挿通孔3Aの軸に対して距離が遠ざかる外側方向(外シース7の内周面方向)に広げることになる。 【0031】 すると、螺旋状形状管8の外周面は、外シース7の内周面と接触して摩擦力が発生するため、挿入部3は、この状態を固定し確保する変形維持状態(第2の状態)となる。 【0032】 例えば、挿入部3を湾曲させた状態にて、操作レバー4をスライド操作させることにより、上記作用により、挿入部3の湾曲状態は変形維持状態(第2の状態)となり形状が固定されることになる。 【0033】 そして、挿入部3の第2の状態を解除する場合には、前記操作と逆の操作を行えば良い。 【0034】 すなわち、操作部2の操作レバー4を螺旋状形状管8の巻回方向(螺旋方向、図1(a)では上方向)にスライド操作すれば、このスライド操作に連動して伝達部材9を介して内シース6に回転力を与え、つまり、螺旋状形状管8が巻回されて固定された内シース6を、前記螺旋状形状管8の巻回方向(螺旋方向)に回転させることにより、該螺旋状形状管8の内側に戻る力が生じ、これにより、拡張されている内シース6自体を、内視鏡挿通孔3Aの軸に対して距離が近くなる軸方向に縮小させることになる。 【0035】 その結果、外シース7の内周面と接触して摩擦力を生じていた螺旋状形状管8の外周面は、外シース7の内周面と離れることにより、隙間が生じ、挿入部3を変形可能な変形可能状態(第1の状態)にすることができる。」 (エ)段落0039には以下の記載がある。 「【0039】 また、軟性鏡等の内視鏡の内視鏡操作によってのみ観察可能な位置の病変に対しても、一度視野に捉えることができれば、上記のように挿入部3のそのときの湾曲形状を固定することにより、内視鏡再挿入時も容易にその病変を視野内に捉えることが可能になる。」 (オ)以上の記載を総合すると、甲11には、以下の技術が記載されている。 「軟性鏡などの内視鏡を挿入、再挿入可能な内視鏡挿通孔3Aを有し可撓性のチューブ形状に構成された内視鏡用オーバーチューブ1であって、変形自在な変形可能状態(第1の状態)と湾曲状態を保持したまま形状固定される変形保持状態(第2の状態)とに切替え可能な形状保持手段を有し、体腔内に挿入される挿入部3と、この挿入部3の手元側に配され、前記挿入部の第1の状態と第2の状態とを切替え操作するための操作部2とで主に構成され、挿入部3は、内シース6と、この内シース6の外周面に配された螺旋状形状管8と、内シース6及び螺旋状形状管8に対して所定の隙間を設けてこれらを収容する外シース7とで主に構成され、操作部2の操作レバー4を螺旋状形状管8の巻回方向とは逆方向にスライド操作すると、螺旋状形状管8が巻回されて固定された内シース6を、前記螺旋状形状管8の巻回方向とは逆方向に回転させることにより、該螺旋状形状管8の外側に拡張する力が生じ、外シース7の内周面と接触して摩擦力が発生するため、挿入部3は、この状態を固定し確保する変形維持状態となるオーバーチューブ1。」 (12) 甲12 ア 甲12について 甲12は、日本国特許庁が2015年7月15日に発行した特許第5748251号公報である。 イ 甲12に記載された事項について (ア)段落0020〜0025、図1、図2には以下の記載がある。 「【0020】 本発明に係る排水縦管洗浄装置の一実施形態を図面を参照しながら説明する。 図1は、本発明に係る一実施形態の、排水縦管Lを洗浄するための排水縦管洗浄装置20の全体構成を示す模式説明図である。図1中、1は耐圧ホースであり、2は耐圧ホースの先端に装着された高圧水噴出ノズル2であり、3は耐圧ホース1に接続されて高圧水噴出ノズル2から高圧水を噴射させるための高圧水洗浄機であり、4は耐圧ホース1に沿って配される可撓性を有する直進性支持材であり、5はモニター11にケーブル5aで接続されたカメラであり、6は耐圧ホース1と直進性支持材4とケーブル5aを被覆する被覆管である。カメラ5は、高圧水噴出ノズル2付近の映像または画像を撮影する。また、7は被覆管6で束ねられた耐圧ホース1と直進性支持材4とカメラ5のケーブル5aとを上方に送り上げる送りローラである。また、8は分岐管8であり、分岐管8は排水縦管Lに一端が接続される主路8a,主路8aから分岐する分岐路8b及び分岐路8bへ向かって送風するための送風口8c,止水シール材8dを備える。9は、送風口8cに接続され、分岐路8bに向けて送風するためのブロアーである。また、10は、分岐管8から排出されるスラッジS及び水Wを固液分離する固液分離装置である。固液分離装置10は、スラッジSを捕捉する網10aと排水ポンプ10bとを備える。13は、被覆管6で束ねられた耐圧ホース1と直進性支持材4とカメラ5のケーブル5aとを巻回させてまとめるためのホースリールである。 【0021】 図2は、耐圧ホース1と直進性支持材4とケーブル5aとそれらを被覆する被覆管6の、高圧水噴出ノズル2に接続される先端付近を長手方向に断面視した模式断面図である。また、図3は、図2のII−II’断面を断面視したときの模式断面図である。 【0022】 図2及び図3に示すように、耐圧ホース1と直進性支持材4とケーブル5aとは、それらをまとめて束ねるように被覆管6で被覆されている。図3に示すように、被覆管6の内部には空隙Gが形成される。図3に示すように、被覆管6の先端は耐圧ホース1とカメラ5とを外部に導出させるようにして封止蓋14で閉じることにより、被覆管6の内部に水や崩したスラッジの破片が侵入することを防いでいる。 【0023】 本実施形態における直進性支持材とは、弾性ロッドまたは弾性管のような、巻回可能な可撓性と巻回状態から解放したときに直進性を有する線状または管状の部材である。このような直進性支持材は、可撓性を有するために作業現場へ巻回した状態で運搬することができるとともに、排水縦管に撓ませながら入線させた後は、排水縦管内で直線状に伸びる。このような直進性支持材としては、弾性ロッドが特に好ましく用いられる。弾性ロッドの具体例としては、例えば、グラスファイバー,カーボンファイバー,スチールファイバー,セラミックファイバー等で補強された繊維強化プラスチックを主体とし、1〜15mm、さらには3〜10mm程度の直径を有するようなロッドが好ましく用いられる。このような弾性ロッドの市販品としては、例えば、株式会社マーベル性のスーパーイエロー、スーパースネーク等が挙げられる。また、弾性管としては、アルミニウム管の内層と外層をポリエチレン等の樹脂で被覆したアルミニウム三層管等が挙げられる。 【0024】 耐圧ホースを支持する直進性支持材の本数は、1本以上であれば特に限定されず、直進性支持材の特性や作業する排水縦管の長さ等により適宜選択される。具体的には、高層建物が高ければ高いほど、耐圧ホースを支持するための直進性支持材の剛性が求められるために、高い高層建物の排水縦管を清掃する場合には、例えば2〜4本、さらには2〜3本程度であることが好ましい。 【0025】 また、被覆管は、耐圧ホース1と直進性支持材4とをまとめて束ねることができ、束ねた状態で巻回可能なものである限り、特に限定されない。その素材としては、ゴム、軟質プラスチック等が挙げられる。また、本実施形態においては、耐圧ホース1と直進性支持材4とケーブル5aとを被覆管6で被覆して束ねたが、被覆管6で被覆する代わりに、耐圧ホース1の長手方向の一定長さ毎にテープ等で固定して束ねる等、直進性支持材を耐圧ホース1に沿って支持するように配する方法は特に限定されない。また、アルミニウム三層管は、直進性支持材と被覆管の機能を兼ね備えることもできる。」 ![]() (イ)以上の記載を総合すると、甲12には以下の技術が記載されている。 「耐圧ホース1と、耐圧ホース1の先端に装着された高圧水噴出ノズル2と、耐圧ホース1に接続されて高圧水噴出ノズル2から高圧水を噴射させるための高圧水洗浄機3と、耐圧ホース1に沿って配される可撓性を有する直進性支持材4と、モニター11にケーブル5aで接続されたカメラ5と、耐圧ホース1と直進性支持材4とケーブル5aを被覆する被覆管6を備えた排水縦管洗浄装置20。」 (13) 甲13 ア 甲13について 甲13は、日本国特許庁が1996年8月30日に発行した実用新案登録第3028117号公報である。 イ 甲13に記載された事項について (ア)段落0006〜0009、図1〜3には以下の記載がある。 「【0006】 【考案の実施の形態】 図1はホースカバー10の平面図であり、図2は図1中のA−A断面図である。ホースカバー10は、長尺の長方形の基布11と、この基布11の表面の一つの長辺に沿って固着された細帯状の係止布12とから構成されている。基布11は、表布13と裏布14を互いの裏面を合わせて糸21、22で縫合したものである。糸21、22による縫合は、基布11の短尺方向を等分する位置に、長尺方向へ平行するように行われており、これはミシンによる直線縫いによって行われている。基布11の辺縁には縁止め布15が覆せられて、糸23によって基布11に縫合されている。縁止め布15の縫合も、ミシンによる直線縫いによって行われている。縁止め布15は、基布11の辺縁を装飾するとともに、基布の辺縁のほつれを防止する。また、基布11の係止布12が固着されている辺縁は、糸24によりほつれ止め縫いが施されている。さらに、係止布12の2つの長辺は、糸25、26により基布11に縫合されており、これによって、係止布12は基布11に固着されている。この係止布12の縫合も、ミシンによる直線縫いによって行われている。係止布12の長さは基布11の長さに等しく、係止布12の幅は基布11の幅よりも狭い。例えば、基布11の長さは70cm〜100cmであり、基布11の幅は15〜30cmである。また、係止布12の幅は基布11の幅の9分の1である。勿論、基布11の長さ及び幅、または係止布12の幅は、この寸法に限定されないことは言うまでもない。 【0007】 基布11の表裏の全面は面形の係止部材の雌面であり、係止布12の表面は面形の係止部材の雄面である。ここで、面形の係止部材とは、無数の係止突起が立設された雄面と、無数の被係止突起が立設された雌面とで対をなしている係止部材であり、布製のものが多い。また、雄面の係止突起の形状および雌面の被係止突起の形状は種々あり、雄面と雌面との区別の無い面形の係止部材もある。本実施例では、鈎状の係止突起を有する雄面とループ状の被係止突起を有する雌面とからなる面形の係止部材を用いた例を示す。勿論、係止突起がきのこ形、或いは「T」字形等の他の形状の面形の係止部材を用いても良いことは言うまでもない。 【0008】 表布13と裏布14は共に面形の係止部材の雌面を片面に有する布製品である。この布製品は織機で製織されるときに、雌面が作られながら製織されたものである。従って、平坦に織られた布に別体の雌面を縫合する必要がない。表布13と裏布14の表面には細い糸で形成された無数の微小なループ17が起立している。従って、基布11の表裏の両面にループ17が存在する。表布13と裏布14は例えばナイロン製であり、ループ17は数10ミクロン以下の細いナイロン糸を、直径1mm以下の環状に起設したものである。また、係止布12の表面には、無数の微小な係止爪16が起立している。係止布12は例えばナイロン製であり、係止爪16はループ17よりも太く、自立可能な太さを有するナイロン糸を立設して先端が基端方向へ屈曲した鈎状に形成されたものである。従って、係止布12の表面を基布11に重ねて圧着すると、係止爪16がループ17に引っ掛かり、これにより係止布12が基布11に付着される。この状態から係止布12を引き剥すと、係止爪16が弾性によって伸びてループ17から外れる。また、幾つかのループ17は係止爪16に引っ張られて切断される。これにより、係止爪16はループ17から脱出し、係止布12が基布11から離れる。 【0009】 このように構成されたホースカバー10は、例えば図3に示すように、給油ホース3の先端部分の外周に巻回される。そして、係止布12と基布11とを重ねて圧接させることにより、係止布12と基布11とが係止される。これにより、ホースカバー10は給油ホース3の先端部分に装着され、かつ給油ホース3の先端部分がホースカバー10によって被覆される。給油ホース3の先端部分とは、給油ノズル4の後方部分である。図4に図3中のB−B断面図を示す。給油ホース3の外周に基布11が係止布11を内面として巻回されており、基布11の係止布12が無い側の一端11a側の外面の上に係止布12が重ねられている。この基布11の上に係止布12が重なっている部分において、基布11と係止布12とが係止されている。このとき、基布11によって給油ホース3を締め付けるように基布11の自由端11bを十分に引っ張り、そして係止布12を基布11上に重ねるようにする。これによって、ホースカバー10は、給油ホース3の外周に強固に巻回され、ホースカバー10が給油ホース3に沿って移動することが無くなる。また、基布11の全面が面形の係止部材の雌面になっているので、係止布12は基布11の何れの位置でも係止されることができる。従って、給油ホース3の直径が異なっても、常にホースカバー10を給油ホース3の外周に密着するように巻回することができる。」 ![]() ![]() ![]() (イ)以上を総合すると、甲13には、以下の技術が記載されている。 「長尺の長方形の基布11と、基布11の表面の一つの長辺に沿って固着された細帯状の係止布12とから構成され、給油ホース3の先端部分の外周に巻回されるホースカバー10。」 (14) 甲15−1〜甲15−3、甲16−1、甲16−2、甲17−1、甲17−2 ア 甲15−1〜甲15−3、甲16−1、甲16−2、甲17−1、甲17−2について 甲15−1は、QBH社が2023年5月16日に作成した宣言書であり、甲15−2は、請求人から提出された甲15−1の和訳、甲15−3は甲15−2の誤訳を訂正したものである。 また、甲16−1、甲17−1は、甲15−1で言及された工場出荷票であって、QBH社が作成したものであり、甲16−1には、日期として2020年3月30日と記載されており、甲17−1には、日期として2020年4月20日と記載されている。甲16−2、甲17−2はそれぞれ、甲16−1、甲17−1の和訳である。 イ 甲15−1、甲16−1、甲17−1に記載された事項について 甲15−2、甲15−3を参考にすると、甲15−1には、以下の点が宣言されている。 ・QBH社から請求人へ2020年4月に出荷された品物を含め、2016年4月以降から2023年5月16日までに販売したAV7823について、コアパラメータを変更していないこと。 ・QBH社から請求人へ出荷された納品書の番号が「SH20030308」、「SH20040271」であること。 ・コアパラメータとは、液体導管や蛇管の内径や外径、その長さや伝送路の長さなど、機械構造に関するものを含み、AV7823本体の色や性能パラメータを含まないこと。 ・蛇管に関する機械構造パラメータは2016年から現在に至るまで変更されていないこと。 また、甲16−2を参考にすると、甲16−1の工場出荷票には、「NO.SH20030308」という番号、「2020年3月30日」という日付、製品名として「AV7823+KS12」、製品規格として「ヴュルトカスタム」、数量として「501」が記載されている。 また、甲17−2を参考にすると、甲17−1の工場出荷票には、「NO.SH20040271」という番号、「2020年4月20日」という日付、製品名として「AV7823+KS12」、製品規格として「ヴュルトカスタム」、数量として「99」が記載されている。 (15) 甲18−1〜甲18−3、甲19−1〜甲19−5 ア 甲18−1〜甲18−3、甲19−1〜甲19−5について 甲18−1は、AV7823の部品構成の設計図であって、QBH社が2016年9月8日に作成したものであり、甲18−2は、請求人から提出された甲18−1の英訳、甲18−3は甲18−2に記載された部品名の和訳である。 また、甲19−1は、AV7821の部品の設計図であって、QBH社が2019年4月10日に作成したものであり、甲19−2は、請求人から提出された甲19−1の英訳、甲19−4は甲19−2における誤訳を訂正したものであり、甲19−3は甲19−2に記載された部品名の和訳、甲19−5は甲19−3の誤訳を訂正したものである。なお、請求人上申書の4(4)、(5)によれば、甲19−2、甲19−3は撤回されている。 イ 甲18−1に記載された事項について 甲18−1には、製品名称として「AV7823」、「2016.9.8」という手書きの日付とともに、分解図中の番号に対応する部品番号1〜41の部品名(物科名称)、部品の説明(物科描述)、数量が記載されており、以下の分解図が記載されている。 ![]() なお、甲18−2に記載された図は以下のとおり、甲18−1の図とは異なるものであり、部品番号も36までしか記載されていないものである。 ![]() また、甲18−3には、部品番号1について、部品名称が「液体導管」、部品の説明が「中空管、Φ3xΦ2mm」、量、単位として「850mm」が記載されており、部品番号2について、部品名称が「蛇管」、量、単位として「1個」が記載されている。 ウ 甲19−1に記載された事項について 甲19−1には、製品名称として「AV7821」、「2019.4.10」という日付とともに、分解図中の番号に対応する部品番号1〜15の部品名(物科名称)、部品の説明(物科描述)、数量が記載されており、以下の分解図が記載されている。 ![]() (16) 甲20−1〜甲20−5 ア 甲20−1〜甲20−5について 甲20−1、甲20−3、甲20−4、甲20−5は、QBH社が2017年3月28日にフェイスブックに投稿した記事のトップページのスクリーンショットであり、甲20−2は甲20−1の製品画像を拡大した画像のスクリーンショットである。 イ 甲20−1〜甲20−5に記載された事項について 甲20−1には、「Shenzhen QBH... ― Shenzhen QBH Technology Development Co.,ltd」という見出し、「m.facebook.com」という、フェイスブック社のドメインから始まるURL、「AV7823」という表示、「2017/03/28」という日付とともに以下の写真が記載されている。 ![]() また甲20−2には同写真を拡大したものが記載されており、甲20−3〜甲20−5には、それぞれ以下の写真が記載されている。 ![]() ![]() ![]() (17) 甲21−1、甲21−2 ア 甲21−1、甲21−2について 甲21−1は、QBH社が2022年10月20日に作成した、洗浄プローブの組立における「支持体への装着工程」の作業説明書であり、甲21−2は請求人が提出した甲21−1の和訳である。 イ 甲21−1に記載された事項について 甲21−2を参考にすると、甲21−1には、見出しとしてQBH社の原語表記があり、品名として「洗浄プローブ」、部品名として「噴出用部材前側」、工程名として「マウンティング部材への装着」、文書番号として「YHF−WI−PD−003」が記載され、以下の写真と共に作業手順の説明がなされている。 ![]() 「1.シリコーン成形物に中空管と信号伝送体を通す。 2.信号伝送体の頭部に825AB接着剤を配置、レンズ配置部の支持部への挿入 3.中空管の頭部に825AB接着剤を配置、中空管の支持部への挿入」 なお、甲21−1中、「AV7823」という記載は見られない。 (18) 甲22−1、甲22−2 ア 甲22−1〜甲22−2について 甲22−1は、QBH社が2022年10月20日に作成した、洗浄プローブの組立における「熱収縮チューブの加熱工程」の作業説明書であり、甲21−2は請求人が提出した甲22−1の和訳である。 イ 甲22−1に記載された事項について 甲22−2を参考にすると、甲22−1には、見出しとしてQBH社の原語表記があり、品名として「洗浄プローブ」、部品名として「噴出用部材前側」、工程名として「熱収縮チューブの加熱」、文書番号として「YHF−WI−PD−003」が記載され、以下の写真と共に作業手順の説明がなされている。 ![]() 「1.熱収縮チューブに信号伝送体と中空管を挿入、熱収縮チューブの端部をシリコーン成形物から約5mm離す。 2.中空管への鋼線の挿入 3.熱収縮チューブを電気オーブンで加熱、加熱温度:200℃、加熱時間:3分20秒」 なお、甲22−1中、「AV7823」という記載は見られない。 (19) 甲30−1、甲30−2 ア 甲30−1、甲30−2について 甲30−1は、2023年7月10日に、QBH社から送信された電子メールであり、甲30−2は請求人が提出した甲30−1の抄訳である。 イ 甲30−1に記載された事項について 甲30−2を参考にすると、甲30−1には、下の写真とともに、以下の点が記載されている。 ・ドメインが「qbhscope.hk」のメールアドレスから発信されており、QBH社から発信されていること。 ・ドメインが「wuerth.co.jp」のメールアドレスに宛てられており、請求人に送信されていること。 ・タイトルが、「Re: Additional Inquiry RE: Inquiries from Trial Examiner of Japan Patent Office for oral deliberation on July 14 2023」であり、2023年7月14日の口頭審理用の問い合わせメールに関する追加の問い合わせに対する返信であること。 ・QBH社のカタログのAV7823に装着される洗浄プローブがAV7821にも装着可能か否かを問う質問に対して、その通りであるとの返答がなされていること。 ウ 上記イからわかること 上記イによれば、請求人から、QBH社に対して、AV7823に装着される洗浄プローブがAV7821にも装着可能か否かを問い合わせたところ、QBH社から、装着可能である旨の回答があったことがわかる。 (20) 甲31−1、甲31−2 ア 甲31−1、甲31−2について 甲31−1は、QBH社が2023年7月26日に作成した宣言書であり、甲31−2は請求人が提出した甲31−1の抄訳である(甲31−2の作成年月日については、証拠説明書(4)では2017年3月28日としているが、甲31−1の宣言書が作成された後に翻訳文が作成されたことは明らかなので、日付は誤りと推定される。)。 イ 甲31−1に記載された事項について 甲31−2を参考にすると、甲31−1には、以下の事項が宣言されている。 (ア) 甲20−1〜甲20−5に示す画像は、2017年3月28日にQBH社によって撮影され、Facebookに投稿されたAV7823の写真であること。 (イ)甲20−1〜甲20−5に示す画像の製品は、2020年4月にQBH社から請求人に出荷された製品と色彩を除いて同じものであること。 (ウ)甲21−1、22−1は、洗浄プローブの組み立ての手順を示し、洗浄プローブは、信号伝送管、液体導管、モジュールを熱収縮性のカバーで覆い、その後熱収縮させることによって製造され、加熱前にカバーを適切な位置にセットする必要があるが、洗浄プローブの長さが800mmあるため、複数の写真を貼り合わせて作製されたものであること。 (エ)甲19−1に示す洗浄プローブは、AV7821、AV7823の標準仕様として、共通に用いられるものであること。 (21) 甲32−1−1〜甲32−4−2 ア 甲32−1−1〜甲32−4−2について 甲32−1−1は、QBH社が2020年4月23日に作成したコマーシャル・インボイスであり、甲32−1−2は、請求人が提出した甲32−1−1の翻訳文である。 また、甲32−2−1は、甲32−1のインボイスの記載のパッケージングの内容を示すリストであり、甲32−2−2は、請求人が提出した甲32−2−1の抄訳である。 また、甲32−3−1は、2020年4月28日に船荷引受会社によって作成された船荷証券又は複合船荷証券であり、甲32−3−2は、請求人が提出した甲32−3−1の抄訳である。 また、甲32−4−1は、AV7823の発注書であり、甲32−4−2は、請求人が提出した甲32−4−1の抄訳である。 イ 甲32−1−1〜甲32−4−2に記載された事項について 甲32−1−2を参考にすると、甲32−1−1には、コマーシャルインボイスという表題に続き、宛名人として「Wurth International Trading(Singapore)Pte.Ltd.」が記載され、日付として「2020−04−23」が記載され、Item No.として「0891764011961 3」が記載され、製品写真として以下の写真が掲載されている。 ![]() また、製品写真の横にはSpecificationsとして、概略以下の点が記載されている。 「・洗浄機能付きボアスコープ ・4.3“着脱可能モニタ ・直径9mmレンズ ・立体的な形を作れる長さ800mmの管 ・2個のLEDライト ・焦点距離:30−80mm」 また、Remarksと題された表には、配送番号として「1011410624」、配送日として「23rd April.2020」と記載されている。 甲32−2−2を参考にすると、甲32−2−1には、パッケージングリストという表題に続き、宛名人として「Wurth International Trading(Singapore)Pte.Ltd.」が記載され、日付として「2020−04−23」が記載され、Item No.として「0891764011961 3」が記載され、Remarkとして、「3個の欧州標準パレット上の33個のカートンのみ(パレットサイズ:1.2*0.8m、重量:22.5/パレット)」と記載されている。 また甲32−3−2を参考にすると、甲32−3−1には、「Ocean or Combined Transport Bill of Lading」(船荷証券又は複合船荷証券)という表題に続き、「(1)SHIPPER/EXPORTER」(荷主/輸出人)として、QBH社の原語表記が記載されており、「(2)CONSIGNEE or ORDER」(荷受人/注文者)として、「WURTH INTERNATIONAL TRADING(SINGAPORE)PTE.LTD.」と記載され、「(16)DESCRIPTION OF PACKAGES AND GOODS」(梱包及び商品の説明)として、概略以下の点が記載されている。 「売主発注書番号:87940826 物品番号:0891764011961 3 説明:噴射器.A/C,スプレーガンー内視鏡−EVAPR−SD−記録−300ML 数量:3 内容物とされるもの:スプレーガン−内視鏡−EHSコード 84242029 荷積み日:2020年4月28日」 また、甲32−4−2を参考にすると、甲32−4−1には、「Purchase Order」(発注書)という表題に続き、作成日として「Feb 3,2020」、QBH社の社名、「Wurth International Trading(Singapore)Pte.Ltd.」が記載され、配送日として、「Mar 5.2020」が記載され、品目として概略以下の点が記載されている。 「品目:1 物品番号:0891764011961 3 詳細:噴射器.A/C,スプレーガンー内視鏡−EVAPR−SD−記録−300ML ベンダーの物品番号:AV7823−KS10 側方スプレー 梱包単位:3 数量:99」 また、発注書の末尾には、「Buyer」(買主)として、「Wurth International Trading(Singapore)Pte.Ltd.」、「Seller」(売主)として、「Shenzhen Yonghengfeng Intelligent」と記載されている。 (22) 甲33 ア 甲33について 甲33は、請求人代理人が2023年8月1日に作成したAV7823の収納容器とその収納容器に貼られたラベルの写真である。 イ 甲33に記載された事項について 甲33には以下の写真が記載されている。 ![]() 2番目の写真に写ったラベルには、以下の記載がある。 「Art 0891764011 Lot No. Multifunctional Cleaning Borescope Videoスコープ スプレーガン プレミアム」 2 無効理由1について (1)実施等の時期について ア 香港秋季電子展での展示について 1(7)ア及びイで示したとおり、甲6−1によれば、本件特許出願前である2017年10月13日〜16日の期間、香港の「Hong KongConvention and Exhibition Centre(HKCEC)」において「2017年香港秋季電子展」が開催され、甲6−2、甲6−3、甲6−4を総合すると、QBH社は、当該電子展のブース番号「3CON−138」に出展していたと認められる。 そして、1(7)イにあるとおり、甲34によれば、QBH社の展示ブースには、「AV7823製品」の写真を含む6点の製品写真が壁面に掲示され、その前の台には、複数の実機が展示されていたと認められる。上記電子展のような展示会は、参加者に対して製品に関する情報を伝える機会として、実機を伴って展示が行われることが通常であることを考慮すると、展示された実機には、「AV7823製品」の実機も含まれていたと認められる。 また、甲34によれば、機器本体にプローブを取り付けたものが複数種類展示されているところ、展示された実機は、いずれもプローブを取り付けた状態で展示されているから、「AV7823製品」の実機もプローブも含めた実機が展示されていたと認められる。「AV7823製品」が、本体にプローブを付属したセットで扱われていたことは、甲34に含まれる「08_Dateverifications on exhibition photo(5)」という見出しが付された写真であって、ケースにプローブとともに収納された写真、1(16)イに示したとおり、フェイスブックに、本体とプローブをセットにした状態で製品写真が掲載されていることからも推認される。 しかしながら、プローブ内部の構造、プローブを構成する各部品の性状などを含んだ、プローブに関する発明は、「AV7823製品」の外観(特に、プローブの外観)のみから認識できる性質のものではないから、上記電子展において、「AV7823製品」のプローブに関する発明の内容を不特定多数の者が知り得る状態で展示されていたとまでは認められず、上記電子展への出展によって「AV7823製品」のプローブに関する発明が公然知られた、あるいは公然実施されたとまではいえない。 イ 譲渡について 1(8)イによれば、2017年4月11日にQBH社と中化近代環保化工有限会社との間で、「AV7823製品」、200個を同年5月10日に配送する内容の譲渡契約が結ばれたと認められる。甲7−1の納品書、甲7−2の深※増値税送付票(※は土偏に「川」)は、記載された日付が同年6月14日であり、上記譲渡契約に係る物品の納品書であるかは疑義が残るものの、1(8)イを総合すると、遅くとも、2017年6月には、「AV7823製品」が中化近代環保化工有限会社に譲渡されたと推認される。そして、「AV7823製品」は、アに示したように、本体にプローブを付属したセットで扱われていたと推認できるから、当該プローブについても同様に譲渡されたと推認される。 また、1(8)イで示したとおり、甲7−3には、特段、譲渡した製品に係る秘密保持に関する条項はなく、また、各ページ下部の「工作秘密、注意保密」という記載も、表示箇所からみて譲渡契約書自体を両当事者以外に漏らさないという意味での機密表示であると認められる。 そうすると、当該譲渡によって、「AV7823製品」は、プローブに関する発明も含め、公然実施されたものと認められる。 (2)実施をされた発明(AV7823発明)について ア 2017年のAV7823について 上記(1)イにおいて譲渡された「AV7823製品」の構造について検討する。 (ア)請求人が甲9で示す機器について 1(14)イ、(21)イによれば、2020年2月に、「Wurth International Trading(Singapore) Pte.Ltd.」(以下、「買主会社」という。)からQBH社に対して、「AV7823製品」、数量99が発注され、当該注文は、物品番号「0891764011961 3」が割り当てられたと認められる。当該注文の品物は3つの欧州標準パレットに33セットずつ積載される形で、同年4月23日に梱包され、4月28日に荷積みされ、シンガポールへと配送された。 また、1(22)イによれば、「WURTH」というロゴが入ったケースに貼付されたラベルには、上記物品番号の上10桁と同じ数字が印字されており、請求人上申書によれば、この上10桁の数字が、請求人がグローバルで運用している商品番号である旨を述べている。 また、請求人上申書4(8)によれば、買主会社を経由して、上記品物が請求人へと渡った旨を説明している。買主会社と請求人との関係は必ずしも明らかでないが、「WURTH」というロゴが入ったケースに上記物品番号の上10桁と同じ数字が印字されていることを考慮すると、請求人は、「AV7823製品」を「WURTH」のブランドを付して販売することを意図していると推認され、請求人が上記買主会社を経由して「AV7823製品」を入手したという説明に不自然はない。 以上の点を総合すると、請求人が現在所有し、甲9−1〜甲9−9(甲9−2−1、甲9−2−2を除く)、甲23、甲24の作成に用いられた実機は、2020年4月にQBH社から出荷された「AV7823製品」であると推認される。 (イ)「AV7823製品」の時期的変遷について 1(1)イ、1(14)イによれば、「AV7823」のコアとなるパラメータ及び構造は、2020年4月にQBH社が出荷し、請求人が入手した品物を含め、2016年6月23日より変更されていないことが宣言されている。これに対し、被請求人は、答弁書において、コアとなるパラメータの「コア」が何を意味するのかが不明である旨を主張している。 被請求人が主張するように、確かにコアとなるパラメータが何であるかは判然とせず、1(14)イに示した、「コアパラメータとは、液体導管や蛇管の内径や外径、その長さや伝送路の長さなど、機械構造に関するものを含み、AV7823本体の色や性能パラメータを含まない」という宣言も、本件特許と関連する部分を恣意的に「コア」として宣言している可能性を排除できないため、即座に宣言を信用できるものではない。 しかしながら、1(7)イの展示の様子、1(16)の製品写真などからみて、2017年当時の「AV7823製品」と、甲9−1〜甲9−9(甲9−2−1、甲9−2−2を除く)、甲23、甲24に示される2020年4月にQBH社が出荷し、請求人が入手した「AV7823製品」とは、洗浄プローブが姿勢を維持できるという点において変化はなく、2017年ごろから2020年4月の間、プローブの構造は変更されていないと推定される。 他方、1(9)で挙げた甲8については、2022年シーズンのカタログであり、2017年当時の「AV7823製品」との間で変更が無いことが十分に示されているとはいえない。また、1(17)で挙げた甲21−1、1(18)で挙げた甲22−1については、作成日が2022年の作業手順書であって、「AV7823製品」との関連も不明である。したがって、次項の検討においては、1(9)ウ、1(17)イ、1(18)イの各事項を考慮することはできない。 (ウ)「AV7823発明」について 1(10)オ、キによれば、甲9−5〜甲9−8に示された「支持具相当部分」は、略水平に伸びた状態と、予め「つ」の字状に湾曲された状態との間で変形させられ、それぞれの形状を維持している。また、甲23、甲24も参照すると、透明な液体導管は、弾性変形可能であり可撓性を有していると考えられ、また、技術常識を勘案すると、信号伝送体は、その端部を支持する支持部に備えられたカメラに電気信号を伝送するために、金属で形成されていると認められる。そうすると、上記形状を維持し、予め所定の形状に変形させているのは、信号伝送体であって、信号伝送体は塑性変形可能であり可撓性を有しておらず、液体導管と信号伝送体を束ねたものも、全体として可撓性を有しないと推認される。 1(4)、1(5)、1(6)、1(7)、1(10)、1(15)、1(16)を総合すると、上記(1)イにおいて譲渡された「AV7823製品」は、プローブに関し、以下の構成を備えたものであったと認められる。 「可撓性を備え内部を液体が流れる空洞を有する液体導管と、 予め所定の形状に変形させることが可能な信号伝送体と、 前記液体導管の端部と前記信号伝送体の端部とを支持し、液体を噴出する噴出口とカメラを備えた支持部とを一体としたものに取り付けられ、 前記液体導管と前記信号伝送体の表面を長手方向に取り囲むカバー部材。」(以下、「AV7823発明」という。) (3)本件特許発明1、3、5、6について ア 本件特許発明1 (ア)対比 本件特許発明1と、AV7823発明とを対比すると、AV7823発明における「液体導管」、「支持部」及び「信号伝送体」を合わせたものは、「液体導管」が「内部を液体が流れる空洞」を有し、「支持部」が「液体導管」と「信号伝送体」の端部を支持して、これらが一体となり、一体となったものはその端部に「噴出口」を備えるから、本件特許発明1の「長尺物」と、「内部を液体が流れる空洞を有し、一方に噴射口を備える」点で共通する。そして、AV7823発明の「液体導管」と、「支持部」と、「信号伝送体」とを「一体としたものに取り付けられ」ることは、本件特許発明1の「長尺物に取り付けられ」ることに相当する。 また、本件特許発明1の「支持具」と、AV7823発明の「カバー部材」とは、長尺物の表面を長手方向に取り囲む管状の部材である点で共通する。 そうすると、本件特許発明1とAV7823発明とは、 「内部を液体が流れる空洞を有し、一方に噴射口を備える長尺物に取り付けられ、 前記長尺物の表面を長手方向に取り囲む管状の部材。」 という点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件特許発明1は、長尺物が「可撓性を備え」、「支持具」が、「予め所定の形状に前記長尺物を変形させ前記長尺物の変形及び前記噴射口の向きを支持した状態で移動できる」ようにするのに対して、AV7823発明は「液体導管」と、「支持部」と、「信号伝送体」とを一体としたものが可撓性を有さず、「カバー部材」は、「液体導管」と、「支持部」と、「信号伝送体」とを一体としたものの変形及び「支持部」の「噴出口」の向きを支持した状態で移動できるようにする機能を持たない点。 (イ)相違点に関する判断 上記相違点1について検討する。 AV7823発明は、「予め所定の形状に変形させることが可能な信号伝送体」を備えるものであり、上記のとおり、「信号伝送体」は塑性変形可能であり可撓性を有しないから、「液体導管」、「支持部」及び「信号伝送体」を合わせたものも、可撓性を有さず、予め所定の形状に変形させ、その変形及び噴出口の向きを支持した状態で移動する機能を持つものである。そうすると、AV7823発明においては、「カバー部材」に、予め所定の形状に長尺物を変形させ長尺物の変形および噴射口の向きを支持した状態で移動できるようにする機能を付加する動機が存在しない。 また、1(11)イ(オ)に示したとおり、甲11に記載された技術は、体腔内に挿入して用いる内視鏡などを挿入、再挿入可能な内視鏡挿通孔を有し可撓性のチューブ形状に構成された内視鏡用オーバーチューブに関するものであり、変形自在な変形可能状態と湾曲状態を保持したまま形状固定される変形保持状態とに切替え可能な形状保持手段を有しており、挿通した内視鏡がそれ自体で形状を保持できないところ、その形状を保持するために上記二つの状態を切り替え、内視鏡の再挿入時にも内視鏡を案内するものである。しかしながら、上に示したとおり、AV7823発明は、既に、予め所定の形状に変形させ、その変形及び噴出口の向きを支持した状態で移動する機能をはたしているものであるから、甲11に上記技術が記載されているとしても、甲11に記載された技術をAV7823発明に適用しようとする動機はない。 したがって、AV7823発明及び甲11に記載された技術に基づいて、上記相違点1に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)小括 上記のとおり、本件特許発明1は、AV7823発明と実質的な相違点があり、特許法第29条第1項第1号、第2号に該当するものでないから、本件特許発明1に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、当該証拠方法によって、無効とすべきものではない。 また、上に検討したとおり、本件特許発明1は、本件特許の出願前に当業者が、AV7823発明及び甲11に記載された技術に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、本件特許発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件特許発明1に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、当該証拠方法によって、無効とすべきものではない。 イ 本件特許発明3、5 (ア)対比 本件特許発明3、5と、AV7823発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1で相違する。 (イ)相違点に関する判断 上記相違点1については、上記ア(イ)で示したとおり、AV7823発明及び甲11に記載された技術に基づいて、上記相違点1に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)小括 上記のとおり、本件特許発明3、5は、AV7823発明と実質的な相違点があって、特許法第29条第1項第1号、第2号に該当するものでないから、本件特許発明3、5に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、当該証拠方法によって、無効とすべきものではない。 また、上記相違点1については上記(イ)に示したとおりであるから、本件特許発明3、5は、本件特許の出願前に当業者が、AV7823発明及び甲11に記載された技術に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、本件特許発明3、5は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件特許発明3、5に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、当該証拠方法によって、無効とすべきものではない。 ウ 本件特許発明6 (ア)対比 本件特許発明6と、AV7823発明とを対比すると、AV7823発明における「液体導管」、「支持部」及び「信号伝送体」を合わせたものは、「液体導管」が「可撓性を備え内部を液体が流れる空洞」を有し、「支持部」が「液体導管」と「信号伝送体」の端部を支持して、これらが一体となり、一体となったものはその端部に「噴出口」を備えるから、本件特許発明6の「長尺物」と、「内部を液体が流れる空洞を有し、一方に噴射口を備える」点で共通する。そして、AV7823発明の「液体導管」と、「支持部」と、「信号伝送体」とを「一体としたものに取り付けられ」ることは、本件特許発明6の「長尺物に取り付けられ」ることに相当する。 また、AV7823発明の「カバー部材」は、本件特許発明6の「ケース」に相当し、本件特許発明6の「前記長尺物の表面を長手方向に取り囲み、予め所定の形状に前記長尺物を変形させ前記長尺物が変形したときに、前記長尺物の変形及び前記噴射口の向きを支持した状態で移動できるようにする支持体を収容可能な収容部を有する」「ケース」と、AV7823発明の「前記液体導管と前記信号伝送体の表面を長手方向に取り囲むカバー部材」とは、長尺物の表面を長手方向に取り囲むケースである点で共通する。 そうすると、本件特許発明6とAV7823発明とは、 「内部を液体が流れる空洞を有し、一方に噴射口を備える長尺物に取り付けられ、 前記長尺物の表面を長手方向に取り囲むケース。」 という点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> 本件特許発明6は、長尺物が「可撓性を備え」、ケースが、「予め所定の形状に前記長尺物を変形させ前記長尺物が変形したときに、前記長尺物の変形及び前記噴射口の向きを支持した状態で移動できるようにする支持体を収容可能な収容部を有する」のに対して、AV7823発明は、「液体導管」と、「支持部」と、「信号伝送体」とを一体としたものが可撓性を有さず、「カバー部材」は、「液体導管」と、「支持部」と、「信号伝送体」とを一体としたものの変形及び支持部の「噴出口」の向きを支持した状態で移動できるようにする支持体を収容可能な収容部を有しない点。 (イ)相違点に関する判断 上記相違点2について検討する。 AV7823発明は、「予め所定の形状に変形させることが可能な信号伝送体」を備えるものであり、上記のとおり、「信号伝送体」は塑性変形可能であり可撓性を有しないから「液体導管」、「支持部」及び「信号伝送体」を合わせたものも、可撓性を有さず、予め所定の形状に変形させ、その変形及び噴出口の向きを支持した状態で移動する機能を持つものである。そうすると、AV7823発明においては、「カバー部材」に、予め所定の形状に長尺物を変形させ長尺物が変形したときに、長尺物の変形及び噴射口の向きを支持した状態で移動できるようにする支持体を収容可能な収容部を付加する動機が存在しない。 また、1(11)イ(オ)に示したとおり、甲11に記載された技術は、体腔内に挿入して用いる内視鏡などを挿入、再挿入可能な内視鏡挿通孔を有し可撓性のチューブ形状に構成された内視鏡用オーバーチューブに関するものであり、変形自在な変形可能状態と湾曲状態を保持したまま形状固定される変形保持状態とに切替え可能な形状保持手段を有しており、挿通した内視鏡がそれ自体で形状を保持できないところ、その形状を保持するために上記二つの状態を切り替え、内視鏡の再挿入時にも内視鏡を案内するものであり、上記相違点2に係る支持体を収容可能な収容部を開示していない。したがって、仮に、AV7823発明に甲11に記載された技術を採用したとしても、本件特許発明6には至らない。 さらに、上に示したとおり、AV7823発明は、それ自体で、予め所定の形状に変形させ、その変形及び噴出口の向きを支持した状態で移動する機能をはたしているものであるから、甲11に記載された技術をAV7823に適用しようとする動機もない。 したがって、AV7823発明及び甲11に記載された技術に基づいて、上記相違点2に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)小括 上記のとおり、本件特許発明6は、AV7823発明と実質的な相違点があり、特許法第29条第1項第1号、第2号に該当するものでないから、本件特許発明6に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、当該証拠方法によって、無効とすべきものではない。 また、上記相違点2については上記(イ)に示したとおりであるから、本件特許発明6は、本件特許の出願前に当業者が、AV7823発明及び甲11に記載された技術に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、本件特許発明6は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件特許発明6に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、当該証拠方法によって、無効とすべきものではない。 エ むすび 本件特許発明1、3、5、6は、AV7823発明と実質的な相違点があり、また、本件特許の出願前に当業者が、AV7823発明及び甲11に記載された技術に基いて、容易に発明をすることができたものでもない。 したがって、本件特許発明1、3、5、6は、特許法第29条第1項第1号、第2号に該当するものでなく、かつ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもないから、本件特許発明1、3、5、6に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、請求人提出の証拠方法によっては無効とすることはできない。 (4)本件特許発明2、4について ア 対比 本件特許発明2、4と、AV7823発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1で相違する。 イ 判断 上記相違点1については、上記(3)ア(イ)で示したとおり、AV7823発明及び甲11に記載された技術に基づいて、上記相違点1に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 また、1(12)イ(イ)に示したとおり、甲12に記載された技術は、排水管洗浄装置において、被覆管6によって耐圧ホース1と直進性支持材4とケーブル5aを被覆するものであるが、直進性支持材4は高い弾性を有するものであって、耐圧ホース1を直進的に上昇させるために用いられるものであって、予め所定の形状に耐圧ホース1を変形させ耐圧ホース1の変形及び向きを支持した状態で移動できるものではなく、相違点1に関する構成を開示していない。 したがって、甲12に記載された技術を考慮しても、相違点1に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 また、1(13)イ(イ)に示したとおり、甲13に記載された技術は、給油ホース3の先端部分の外周に巻回されるホースカバー10に関するものであるが、給油ホース3の変形、支持に関する構成は備えておらず、相違点1に関する構成を開示していない。 したがって、甲13に記載された技術を考慮しても、相違点1に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 小括 そうすると、本件特許発明2、4は、本件特許の出願前に当業者が、AV7823発明及び甲11〜甲13に記載された技術に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、本件特許発明2、4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件特許発明2、4に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、請求人提出の証拠方法によって、無効とすべきものではない。 (5)まとめ 以上のとおり、請求人が主張する無効理由1には理由がない。 3 無効理由2について (1)本件特許発明1、3、5、6について ア 本件特許発明1 (ア)対比 本件特許発明1と、甲4発明とを対比すると、甲4発明における「液体流貫通キャビティ8」は、内部を液体が流れる空間であるから、本件特許発明1の「空洞」に相当する。また、甲4発明における「シャワーヘッド4」は液体を噴射することが明らかであるから、本件特許発明1の「噴射口」に相当する。 また、甲4発明の「液体導管2」と「信号伝送線43」を合わせたものは、「蛇管4」により表面を長手方向に取り囲まれるものであるから、甲4発明における「液体導管2」と「信号伝送線43」を合わせたものと、本件特許発明1における「長尺物」とは、「内部を液体が流れる空洞を有し、一方に噴射口を備え」る点で共通し、甲4発明の「蛇管4」と、本件特許発明1の「支持具」とは、長尺物の表面を長手方向に取り囲む管状の部材である点で共通する。 そうすると、本件特許発明1と甲4発明とは、 「内部を液体が流れる空洞を有し、一方に噴射口を備える長尺物に取り付けられ、 前記長尺物の表面を長手方向に取り囲む管状の部材。」 という点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3> 本件特許発明1は、長尺物が「可撓性を備え」、「支持具」が、「予め所定の形状に前記長尺物を変形させ前記長尺物の変形および前記噴射口の向きを支持した状態で移動できる」のに対して、甲4発明は、「液体導管2」と「信号伝送線43」を合わせたものが全体として可撓性を有するか明らかでなく、「蛇管4」が、予め所定の形状に「液体導管2」と「信号伝送線43」を変形させ、「液体導管2」と「信号伝送線43」の変形および「シャワーヘッド4」の向きを支持した状態で移動できるか明らかでない点。 (イ)相違点に関する判断 上記相違点3について検討する。 1(11)イ(オ)に示したとおり、甲11に記載された技術は、体腔内に挿入して用いる内視鏡などを挿入、再挿入可能な内視鏡挿通孔を有し可撓性のチューブ形状に構成された内視鏡用オーバーチューブに関するものであり、変形自在な変形可能状態と湾曲状態を保持したまま形状固定される変形保持状態とに切替え可能な形状保持手段を有しており、挿通した内視鏡がそれ自体で形状を保持できないところ、その形状を保持するために上記二つの状態を切り替え、内視鏡の再挿入時にも内視鏡を案内するものである。 一方、甲4発明は上記のとおり、「液体導管2」と「信号伝送線43」を合わせたものが全体として可撓性を有するか明らかでないから、「蛇管4」に、予め所定の形状に「液体導管2」と「信号伝送線43」を変形させ、「液体導管2」と「信号伝送線43」の変形および「シャワーヘッド4」の向きを支持した状態で移動できるようにする機能を備えさせることの示唆はない。さらに、甲4には、「液体導管2」と「信号伝送線43」について、形状を保持するという課題は明示されておらず、また、甲11は患者の苦痛を軽減するという医療用内視鏡の技術分野に特有の課題を挙げており、産業用内視鏡に関する甲4発明に適用する動機があるとはいえない。また、甲11に記載された技術は、内視鏡の挿入、再挿入が可能なものであり、甲4発明の「蛇管4」とは使用の態様も異なるものである。 そうすると、甲4発明に対して、甲11に記載された技術を採用する動機があるとは言えない。 したがって、甲4発明及び甲11に記載された技術に基づいて、上記相違点3に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)小括 上記のとおり、本件特許発明1は、甲4発明と実質的な相違点があり、特許法第29条第1項第3号に該当するものでないから、本件特許発明1に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、当該証拠方法によって、無効とすべきものではない。 また、上記相違点3について上記(イ)に示したとおりであるから、本件特許発明1は、本件特許の出願前に当業者が、甲4発明及び甲11に記載された技術に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、本件特許発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件特許発明1に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、当該証拠方法によって、無効とすべきものではない。 イ 本件特許発明3、5 (ア)対比 本件特許発明3、5と、甲4発明とを対比すると、少なくとも上記相違点3で相違する。 (イ)相違点に関する判断 上記相違点3については、上記ア(イ)で示したとおり、甲4発明及び甲11に記載された技術に基づいて、上記相違点3に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)小括 上記のとおり、本件特許発明3、5は、甲4発明と実質的な相違点があって特許法第29条第1項第3号に該当するものでないから、本件特許発明3、5に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、当該証拠方法によって、無効とすべきものではない。 また、上記相違点3については上記(イ)に示したとおりであるから、本件特許発明3、5は、本件特許の出願前に当業者が、甲4発明及び甲11に記載された技術に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、本件特許発明3、5は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件特許発明3、5に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、当該証拠方法によって、無効とすべきものではない。 ウ 本件特許発明6 (ア)対比 本件特許発明6と、甲4発明とを対比すると、甲4発明における「液体流貫通キャビティ8」は、内部を液体が流れる空間であるから、本件特許発明6の「空洞」に相当する。また、甲4発明における「シャワーヘッド4」は液体を噴射することが明らかであるから、本件特許発明6の「噴射口」に相当する。 また、甲4発明における「蛇管4」は、第1の液体導管部21と信号伝送線43の大部分に巻きつけられるものであるから、本件特許発明6の「ケース」に相当する。 また、甲4発明の「液体導管2」と「信号伝送線43」を合わせたものは、「蛇管4」により表面を長手方向に取り囲まれるものであるから、甲4発明における「液体導管2」と「信号伝送線43」を合わせたものと、本件特許発明6における「長尺物」とは、「内部を液体が流れる空洞を有し、一方に噴射口を備え」、ケースによって「表面を長手方向に取り囲」まれる点で共通する。 そうすると、本件特許発明6と甲4発明とは、 「内部を液体が流れる空洞を有し、一方に噴射口を備える長尺物に取り付けられ、 前記長尺物の表面を長手方向に取り囲むケース。」 という点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4> 本件特許発明6は、長尺物が「可撓性を備え」、ケースが、「予め所定の形状に前記長尺物を変形させ前記長尺物が変形したときに、前記長尺物の変形および前記噴射口の向きを支持した状態で移動できる支持体を収容可能な収容部を有する」のに対して、甲4発明は、「液体導管2」と「信号伝送線43」を合わせたものが全体として可撓性を有するか明らかでなく、「蛇管4」が、予め所定の形状に「液体導管2」と「信号伝送線43」を変形させ、「液体導管2」と「信号伝送線43」の変形および「シャワーヘッド4」の向きを支持した状態で移動できる支持体を収容可能な収容部を有しない点。 (イ)相違点に関する判断 上記相違点4について検討する。 1(11)イ(オ)に示したとおり、甲11に記載された技術は、体腔内に挿入して用いる内視鏡などを挿入、再挿入可能な内視鏡挿通孔を有し可撓性のチューブ形状に構成された内視鏡用オーバーチューブに関するものであり、変形自在な変形可能状態と湾曲状態を保持したまま形状固定される変形保持状態とに切替え可能な形状保持手段を有しており、挿通した内視鏡がそれ自体で形状を保持できないところ、その形状を保持するために上記二つの状態を切り替え、内視鏡の再挿入時にも内視鏡を案内するものであり、上記相違点4に係る支持体を収容可能な収容部を開示していない。したがって、仮に、甲4発明に甲11に記載された技術を採用したとしても、本件特許発明6には至らない。一方、甲4発明は上記のとおり、「液体導管2」と「信号伝送線43」を合わせたものが全体として可撓性を有するか明らかでないから、「蛇管4」に、予め所定の形状に「液体導管2」と「信号伝送線43」を変形させ、「液体導管2」と「信号伝送線43」の変形および「シャワーヘッド4」の向きを支持した状態で移動できるようにする支持体を収容可能な収容部を備えさせることの示唆もない。さらに、甲4には、「液体導管2」と「信号伝送線43」について、形状を保持するという課題は明示されておらず、また、甲11は患者の苦痛を軽減するという医療用内視鏡の技術分野に特有の課題を挙げており、産業用内視鏡に関する甲4発明に適用する動機があるとはいえない。また、甲11に記載された技術は、内視鏡の挿入、再挿入が可能なものであり、甲4発明の「蛇管4」とは使用の態様も異なるものである。 そうすると、甲4発明に対して、甲11に記載された技術を採用する動機があるとは言えない。 したがって、甲4発明及び甲11に記載された技術に基づいて、上記相違点4に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)小括 本件特許発明6は、甲4発明と実質的な相違点があって特許法第29条第1項第3号に該当するものでないから、本件特許発明6に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、当該証拠方法によって、無効とすべきものではない。 また、相違点4については上記(イ)のとおりであるから、本件特許発明6は、本件特許の出願前に当業者が、甲4発明及び甲11に記載された技術に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、本件特許発明6は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件特許発明6に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、当該証拠方法によって、無効とすべきものではない。 エ むすび 本件特許発明1、3、5、6は、甲4発明と実質的な相違点があり、また、本件特許の出願前に当業者が、甲4発明及び甲11に記載された技術に基いて、容易に発明をすることができたものでもない。 したがって、本件特許発明1、3、5、6は、特許法第29条第1項第3号に該当するものでなく、かつ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもないから、本件特許発明1、3、5、6に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、請求人提出の証拠方法によっては無効とすることはできない。 (2)本件特許発明2、4について ア 対比 本件特許発明2と甲4発明とを対比すると、少なくとも上記相違点3で相違する。 イ 判断 相違点3については、上記(1)ア(イ)で示したとおり、甲4発明及び甲11に記載された技術に基づいて当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 また、1(12)イ(イ)に示したとおり、甲12に記載された技術は、排水管洗浄装置において、被覆管6によって耐圧ホース1と直進性支持材4とケーブル5aを被覆するものであるが、直進性支持材4は高い弾性を有するものであって、耐圧ホース1を直進的に上昇させるために用いられるものであって、予め所定の形状に耐圧ホース1を変形させ耐圧ホース1の変形及び向きを支持した状態で移動できるものではなく、相違点3に関する構成を開示していない。 したがって、甲12に記載された技術を考慮しても、相違点3に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 また、1(13)イ(イ)に示したとおり、甲13に記載された技術は、給油ホース3の先端部分の外周に巻回されるホースカバー10に関するものであるが、給油ホース3の変形、支持に関する構成は備えておらず、相違点3に関する構成を開示していない。 したがって、甲13に記載された技術を考慮しても、相違点3に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 小括 そうすると、本件特許発明2、4は、本件特許の出願前に当業者が、甲4発明及び甲11〜甲13に記載された技術に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、本件特許発明2、4は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件特許発明2、4に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、請求人提出の該証拠方法によって、無効とすべきものではない。 (3)まとめ 以上のとおり、請求人が主張する無効理由2には理由がない。 4 無効理由3について (1)明確性について 本件特許発明1は、「第2 本件特許発明」に示したとおり、支持具に関する発明であるところ、 「可撓性を備え内部を液体が流れる空洞を有し、一方に噴射口を備える長尺物に取り付けられ、 前記長尺物の表面を長手方向に取り囲み、予め所定の形状に前記長尺物を変形させ前記長尺物の変形および前記噴射口の向きを支持した状態で移動できることを特徴とする」ものである。 これらの発明特定事項のうち、「予め所定の形状に前記長尺物を変形させ」、「前記長尺物の変形および前記噴射口の向きを支持した状態で移動できる」といった事項は、支持具の構造を直接特定するものではなく、支持具が有する機能をもって発明を特定する事項である。 このような発明特定事項は、具体的な構造によらず、「予め所定の形状に前記長尺物を変形させ」、「前記長尺物の変形および前記噴射口の向きを支持した状態で移動できる」機能を発揮する構造を備えた支持具であれば、それらを包含するものであり、また、技術常識を考慮すれば、その機能、特性等を有するものを容易に理解できるから、明確である。 また、本件特許発明6は、「第2 本件特許発明」に示したとおり、ケースに関する発明であるところ、 「可撓性を備え内部を液体が流れる空洞を有し、一方に噴射口を備える長尺物に取り付けられ、 前記長尺物の表面を長手方向に取り囲み、予め所定の形状に前記長尺物を変形させ前記長尺物が変形したときに、前記長尺物の変形および前記噴射口の向きを支持した状態で移動できる支持体を収容可能な収容部を有することを特徴とする」ものである。 これらの発明特定事項のうち、「予め所定の形状に前記長尺物を変形させ前記長尺物が変形したときに、前記長尺物の変形および前記噴射口の向きを支持した状態で移動できる支持体を収容可能な収容部」といった事項は、ケースが有する収容部の構造を直接特定するものではなく、「支持体を収容可能な収容部」の機能をもって発明を特定する事項である。 このような発明特定事項は、具体的な構造によらず、「予め所定の形状に前記長尺物を変形させ前記長尺物が変形したときに、前記長尺物の変形および前記噴射口の向きを支持した状態で移動できる」機能を発揮する構造を備えた「支持体を収容可能な収容部」であれば、それらを包含するものであり、また、技術常識を考慮すれば、その機能、特性等を有するものを容易に理解できるから、明確である。 (2)請求人の主張について 請求人は、審判請求書第23〜24ページにおいて、以下の点を主張している。 「本件特許明細書の[0010]に記載されているように、支持具4は「ケース40」を備えており、このケース40には、複数の収容部(ポケット)41が設けられている。そして、前記収容部41に収容された棒状体6が、前記長尺物(ホース2)(甲14号証(本件特許明細書)の[0009]の5行目)の「変形を支持する」と記載されている(同書[0011])。 そうすると、上記支持具が、「予め所定の形状に前記長尺物を変形させ」、この変形した状態を「支持し」、「前記長尺物の噴出口の向きを支持」するためには、前記収容部41を備えるケース40及び前記収容部41に収容される棒状体6が必須の構成となるはずである。 もし、前記収容部41を備えるケース40及び前記収容部41に収容される棒状体6が必須の構成とならないというのであれば、上記支持具4を構成する素材についての説明が必要であるが、本件特許明細書中にはそのような記載は一切ない。…本件特許発明1は、上記支持具が「予め所定の形状に前記長尺物を変形させ」、この変形した状態を「支持し」、「前記長尺物の噴出口の向きを支持」する構成が記載されていないため、発明特定事項の技術的意味を理解することができない。さらに、本件特許発明1の出願当時の技術常識を考慮すると、発明特定事項が不足していることが明らかであるため、発明が不明確である。」 また、請求人は、審判請求書第25〜26ページにおいて、本件特許発明6について同様の点を主張している。 しかしながら、上記(1)のとおり、上記発明特定事項は、明確であるから、請求人が主張するような発明特定事項の不足があるとはいえず、請求人の主張は採用できない。 (3)まとめ よって、本件特許発明1〜6は明確であり、本件特許の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものであり、本件特許発明1〜6に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当せず、無効とすることはできない。 以上のとおり、請求人が主張する無効理由3には理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明1〜6の特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2023-09-29 |
結審通知日 | 2023-10-04 |
審決日 | 2023-10-20 |
出願番号 | P2018-006622 |
審決分類 |
P
1
113・
111-
Y
(B08B)
P 1 113・ 121- Y (B08B) P 1 113・ 113- Y (B08B) P 1 113・ 112- Y (B08B) P 1 113・ 537- Y (B08B) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
柿崎 拓 |
特許庁審判官 |
五十嵐 康弘 関口 哲生 |
登録日 | 2019-05-24 |
登録番号 | 6529145 |
発明の名称 | 支持具およびケース |
代理人 | 柴田 五雄 |
代理人 | 井上 真一郎 |
代理人 | 柴田 富士子 |