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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B23P
管理番号 1405745
総通号数 25 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-07-27 
確定日 2024-01-10 
事件の表示 特願2019−103610「ナットランナおよびねじ締付方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年12月10日出願公開、特開2020−196089、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和1年6月3日の出願であって、令和5年3月9日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月6日に意見書が提出され、同年7月3日付けで拒絶査定(原査定)がされた。これに対し、同年7月27日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和5年7月3日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1〜3及び5に係る発明は、以下の引用文献1に基いて、本願の請求項4、6及び7に係る発明は以下の引用文献1及び2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2017−170574号公報
引用文献2:特開平4−93183号公報

第3 本願発明
本願の請求項1〜7に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」〜「本願発明7」という。)は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1及び5は以下のとおりの発明である。

[本願発明1]
「雄ねじ又は雌ねじを回転するためのモータと、
前記モータの回転角を検出する角度センサと、
雄ねじと雌ねじを軸線方向に突合わせて押圧した状態で前記モータをねじ締め方向とは反対方向に逆回転させたときの雄ねじと雌ねじのねじ切り口の周期的衝突により発生する衝撃力を検出する振動センサと、
前記モータを駆動制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、雄ねじと雌ねじのねじ締め作動の前に前記モータを逆回転させると共に、前記振動センサが前記衝撃力を少なくとも2回連続して検出したときであって、1回目の検出時の前記角度センサの回転角θ1と、2回目の検出時の前記角度センサの回転角θ2の差分角θ2−θ1が、前記周期的衝突の理論角度周期と一致したときに、前記モータを正回転に切り替えることを特徴とするナットランナ。」

[本願発明5]
「ナットランナによるねじの締付方法であって、雄ねじと雌ねじを軸線方向に突合わせて押圧した状態でナットランナをねじ締め方向とは反対方向に逆回転させ、当該逆回転による雄ねじと雌ねじのねじ切り口の周期的衝突により発生する衝撃力を振動センサで検出し、前記振動センサが前記衝撃力を少なくとも2回連続して検出したときであって、1回目の検出時のナットランナの回転角θ1と、2回目の検出時のナットランナの回転角θ2の差分角θ2−θ1が、前記周期的衝突の理論角度周期と一致したときに、ナットランナを正回転に切り替えることを特徴とするねじ締付方法。」

なお、本願発明2〜4に係る発明は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明6及び7に係る発明は、本願発明5を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には次の事項が記載されている(下線は、当審で付したものである。)。
ア「【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、非螺合状態の雄ねじと雌ねじのうち締付工具の軸部に係合した一方により他方を押圧しながら、ねじを緩める方向に前記軸部を逆回転させるステップと、前記軸部を逆回転させたまま、前記雄ねじと前記雌ねじとのねじ山同士の衝突をセンサにより検出するステップと、前記センサにより検出された衝突の時間間隔と、前記軸部の回転速度から算出された衝突の理論周期と、が一致しているか否か判定するステップと、前記時間間隔と前記理論周期とが一致していると判定した場合にのみ、前記軸部を正回転させて前記雄ねじと前記雌ねじとを締め付けるステップと、を備えたねじ締付方法である。
このねじ締付方法では、センサにより検出された衝突の時間間隔と軸部の回転速度から算出された衝突の理論周期と、が一致しているか判定する。そして、時間間隔と理論周期とが一致していると判定した場合にのみ、軸部を正回転させて雄ねじと雌ねじとを締め付ける。そのため、雄ねじと雌ねじのねじ山同士の衝突とノイズとを区別し、螺合開始位置を正確に検出することができる。従って、ねじ山同士の衝突以外のノイズが発生する場合であっても、雄ねじと雌ねじの噛み込みを抑制することができる。」

イ「【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかるねじ締付装置1の全体構成の一例を示す模式図である。図1に示されるように、ねじ締付装置1は、本体部10と、本体部10の後述するモータ103を制御する制御部20とを有する。本体部10と制御部20とは、本体部10と制御部20との間で入出力される各種信号及び電流等を伝達する接続ケーブル30により電気的に接続されている。なお、本実施の形態では、本体部10と制御部20とが分離した構成例を示すが、制御部20が本体部10に組み込まれていてもよい。」

ウ「【0017】
モータ103は、制御部20からの信号に従い駆動方向が切り替わるモータであり、軸部105を正回転及び逆回転に駆動可能である。ここで、正回転とは、ねじを締め付ける方向を言い、逆回転とは、ねじを緩める方向を言う。モータ103による回転力は、減速機104を介して、軸部105に伝達される。軸部105は、その先端において雄ねじ又は雌ねじと係合して、係合した雄ねじ又は雌ねじに回転力を伝達する。なお、モータ103の駆動により発生するトルクは、トルクを検出するセンサであるトルク検出部106により検出され、接続ケーブル30を介して制御部20に通知される。また、モータ103の回転は、回転を検出するセンサである回転検出部107により検出され、接続ケーブル30を介して制御部20に通知される。
【0018】
振動検出部108は、雄ねじと雌ねじとのねじ山同士の衝突を検出するセンサの一例であり、本体部10に発生した振動を測定する振動センサである。このように本実施の形態では、振動を測定することで衝突が検出される。したがって、容易に、雄ねじと雌ねじとのねじ山同士の衝突を検出することが可能となる。振動検出部108により測定された振動信号は、接続ケーブル30を介して制御部20に通知される。具体的には、振動検出部108は、検出した振動を電気信号に変換し、振動信号として制御部20に出力する。」

エ「【0023】
トルク信号増幅器206は、トルク検出部106から出力されたトルク信号を増幅する増幅器であり、増幅したトルク信号をA/D変換器207に出力する。
A/D変換器207は、トルク信号増幅器206から出力されたトルク信号について、アナログデジタル変換を行う変換器であり、デジタル信号をCPU演算処理部250に出力する。
回転角度変換部208は、回転検出部107により検出された信号を、モータ103の回転角度を示す信号である回転角度信号へと変換する回路であり、回転角度信号を回転速度変換部209及びCPU演算処理部250に出力する。
回転速度変換部209は、回転角度変換部208からの回転角度信号を、モータ103の回転速度を示す信号である回転速度信号へと変換する回路であり、回転速度信号を速度電流指令部202に出力する。
振動信号増幅器210は、振動検出部108により測定された振動信号を増幅する増幅器であり、増幅した振動信号をCPU演算処理部250に出力する。」

オ「【0057】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜
変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、衝突判定部253は、実測周期と、設定値記憶部201に記憶された理論周期とを比較したが、実測周期と比較される理論周期は、設定値記憶部201に記憶されたものでなくてもよい。例えば、本体部10に回転計が接続され、衝突判定部253等がこの回転計により計測された軸部105の回転情報から理論周期を算出してもよい。また、回転速度変換部209により取得された回転速度から理論周期が算出されてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、振動を検出することにより、雄ねじと雌ねじとのねじ山同士の衝突を検出する構成例について示したが、衝突音の検出により行ってもよい。この場合、振動検出部108に代えて、マイクロホンなどの音響センサを用いてもよい。また、振動による衝突の検出と、衝突音による衝突の検出とが併用されてもよい。」

カ 引用文献1の段落【0007】に記載された「前記センサにより検出された衝突の時間間隔と、前記軸部の回転速度から算出された衝突の理論周期と、が一致しているか否か判定するステップ」に関し、衝突を1回検出するのみでは「衝突の時間間隔」を算出することは不可能であるところ、技術常識を踏まえれば、このステップが実行されるタイミングは、前記センサが「衝突を複数回検出したとき」であるといえる。

(2)引用発明
上記(1)の記載事項などから、引用文献1には、次の引用発明1及び引用発明2が記載されていると認められる。
[引用発明1]
「雄ねじ又は雌ねじを回転するためのモータ103と、
モータ103の回転を検出するセンサである回転検出部107及び回転検出部107により検出された信号を、モータ103の回転角度を示す信号である回転角度信号へと変換する回路である回転角度変換部208と、
非螺合状態の雄ねじ又は雌ねじの一方により他方を押圧しながらモータ103をねじを緩める方向に逆回転させたときの雄ねじと雌ねじとのねじ山同士の衝突を検出する振動センサである振動検出部108と、
モータ103の回転を制御する制御部20とを備え、
制御部20は、非螺合状態の雄ねじ又は雌ねじの一方を他方に押圧しながら逆回転させると共に、振動検出部108がねじ山同士の衝突を複数回数検出したときであって、振動検出部108が検出した衝突の時間間隔と、モータ103により駆動される雄ねじ又は雌ねじの一方に係合する軸部105の回転速度から算出された衝突の理論周期とが一致したときに、モータ103を正回転に切り替える、ねじ締付装置。」

[引用発明2]
「ねじ締付装置1によるねじ締付方法であって、非螺合状態の雄ねじ又は雌ねじの一方により他方を押圧した状態でねじ締付装置1をねじを緩める方向に逆回転させ、逆回転させたときの雄ねじと雌ねじとのねじ山同士の衝突を振動センサである振動検出部108で検出し、振動検出部108がねじ山同士の衝突を複数回数検出したときであって、振動検出部108が検出した衝突の時間間隔と、モータ103により駆動される雄ねじ又は雌ねじの一方に係合する軸部105の回転速度から算出された衝突の理論周期とが一致したときに、ねじ締付装置1のモータ103を正回転に切り替える、ねじ締付方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の技術的事項が記載されている。
「そしてこの低速逆回転が所定回転数(1〜2回転)に達すると、コントローラ(18)はモータ(11)の低速逆回転を停止し、次に、通常の回転数にてモータ(11)を正転させる。」(第3ページ左上欄(第7欄)14〜18行)

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
後者の「雄ねじ又は雌ねじを回転するためのモータ103」は、前者の「雄ねじ又は雌ねじを回転するためのモータ」に相当し、
後者の「モータ103の回転を検出するセンサである回転検出部107及び回転検出部107により検出された信号を、モータ103の回転角度を示す信号である回転角度信号へと変換する回路である回転角度変換部208」は前者の「前記モータの回転角を検出する角度センサ」に相当する。

後者の「非螺合状態の雄ねじ又は雌ねじの一方により他方を押圧」する状態は、前者の「雄ねじと雌ねじを軸線方向に突合わせて押圧した状態」に相当し、
後者の「モータ103をねじを緩める方向に逆回転させ」ることは前者の「前記モータをねじ締め方向とは反対方向に逆回転させ」ることに相当し、
後者の「雄ねじと雌ねじとのねじ山同士の衝突を検出する振動センサである振動検出部108」は、前者の「雄ねじと雌ねじのねじ切り口の周期的衝突により発生する衝撃力を検出する振動センサ」に相当する。

後者の「モータ103の回転を制御する制御部20」は前者の「前記モータを駆動制御する制御手段」に相当する。

後者の「制御部20は、非螺合状態の雄ねじ又は雌ねじの一方を他方に押圧しながら逆回転させる」ことは、前者の「前記制御手段は、雄ねじと雌ねじのねじ締め作動の前に前記モータを逆回転させる」ことに相当し、
後者の「振動検出部108がねじ山同士の衝突を予め定められた複数回数検出したとき」は、前者の「前記振動センサが前記衝撃力を少なくとも2回連続して検出したとき」に相当し、
後者の「モータ103を正回転に切り替える」ことは、前者の「前記モータを正回転に切り替える」ことに相当する。

後者の「ねじ締付装置」は、前者の「ナットランナ」に相当する。

そして、後者の「振動検出部108が検出した衝突の時間間隔と、モータ103により駆動される雄ねじ又は雌ねじの一方に係合する軸部105の回転速度から算出された衝突の理論周期とが一致したとき」に「モータ103を正回転に切り替える」ことと、前者の「1回目の検出時の前記角度センサの回転角θ1と、2回目の検出時の前記角度センサの回転角θ2の差分角θ2−θ1が、前記周期的衝突の理論角度周期と一致したとき」に「前記モータを正回転に切り替える」こととは、「衝撃力の検出に基づき求めた周期が、前記周期的衝突の理論周期と一致したとき」に「前記モータを正回転に切り替える」ことの限りで共通する。

したがって、本願発明1と引用発明1とは、次の一致点1で一致し、相違点1で相違する。

[一致点1]
「雄ねじ又は雌ねじを回転するためのモータと、
前記モータの回転角を検出する角度センサと、
雄ねじと雌ねじを軸線方向に突合わせて押圧した状態で前記モータをねじ締め方向とは反対方向に逆回転させたときの雄ねじと雌ねじのねじ切り口の周期的衝突により発生する衝撃力を検出する振動センサと、
前記モータを駆動制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、雄ねじと雌ねじのねじ締め作動の前に前記モータを逆回転させると共に、前記振動センサが前記衝撃力を少なくとも2回連続して検出したときであって、衝撃力の検出に基づき求めた周期が前記周期的衝突の理論周期と一致したときに、前記モータを正回転に切り替えるナットランナ。」

[相違点1]
「衝撃力の検出に基づき求めた周期が前記周期的衝突の理論周期と一致したとき」に「前記モータを正回転に切り替える」ことに関し、本願発明1は「1回目の検出時の前記角度センサの回転角θ1と、2回目の検出時の前記角度センサの回転角θ2の差分角θ2−θ1が、前記周期的衝突の理論角度周期と一致したとき」に「前記モータを正回転に切り替える」のに対し、引用発明1は「振動検出部108が検出した衝突の時間間隔と、モータ103により駆動される雄ねじ又は雌ねじの一方に係合する軸部105の回転速度から算出された衝突の理論周期とが一致したとき」に「モータ103を正回転に切り替える」点。

(2)相違点1の検討
上記相違点1について検討する。
引用文献1には、振動検出部108が検出した衝突の時間間隔を、回転検出部107ないし回転角度変換部208から得た角度の差分角に置き換えることや、軸部105の回転速度から算出された衝突の理論周期を、周期的衝突の理論角度周期に置き換えることは、記載も示唆もされていない。(なお、引用文献1の段落【0057】には、「実測周期と比較される理論周期は、設定値記憶部201に記憶されたものでなくてもよい。例えば、本体部10に回転計が接続され、衝突判定部253等がこの回転計により計測された軸部105の回転情報から理論周期を算出してもよい。」との記載があるが、これは時間的な理論周期を「設定値記憶部201に予め記憶された」ものから、「回転情報から算出された」ものへと変更することを述べているに過ぎず、衝突の検出に基づき求める周期を時間周期から角度差分へと変更し、それと比較する理論周期を時間的な理論周期から角度的な理論周期へと変更することを示唆するものではない。)
また、差分角が理論角度周期に一致したときに正回転に切り替えることが、ねじ締付装置において周知技術であったとも認められない。
したがって、引用発明1に基づいて、上記相違点1に係る本願発明1の構成に想到することは、当業者が容易になし得たこととは認められない。

そして、本願発明1は、上記相違点に係る構成によって「ボルトやナットの逆回転開始からのナットランナの加速時や、逆回転の回転速度が途中で変化しても、誤作動なく確実に締付動作を開始可能」(明細書の段落【0006】参照。)という、引用発明1からみて当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏すると認められる。

そうであれば、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1に基いて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1を減縮したものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1に基いて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明4について
原査定において引用された引用文献2には、差分角が理論角度周期と一致したとき正回転に切り替えることは記載も示唆もされていない。
そして、本願発明4は、本願発明1を減縮したものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明5について
(1)対比
本願発明5と引用発明2とを対比する。
後者の「ねじ締付装置1」による「ねじ締付方法」は、前者の「ナットランナ」による「ねじの締付方法」に相当し、
後者の「非螺合状態の雄ねじ又は雌ねじの一方により他方を押圧した状態でねじ締付装置1をねじを緩める方向に逆回転させ」ることは前者の「雄ねじと雌ねじを軸線方向に突合わせて押圧した状態でナットランナをねじ締め方向とは反対方向に逆回転させ」ることに相当し、
後者の「逆回転させたときの雄ねじと雌ねじとのねじ山同士の衝突を振動センサである振動検出部108で検出」することは、前者の「当該逆回転による雄ねじと雌ねじのねじ切り口の周期的衝突により発生する衝撃力を振動センサで検出」することに相当し、
後者の「振動検出部108がねじ山同士の衝突を予め定められた複数回数検出したとき」は、前者の「前記振動センサが前記衝撃力を少なくとも2回連続して検出したとき」に相当し、
後者の「ねじ締付装置1のモータ103を正回転に切り替える」ことは、前者の「ナットランナを正回転に切り替える」ことに相当する。

また、後者の「振動検出部108が検出した衝突の時間間隔と、モータ103により駆動される雄ねじ又は雌ねじの一方に係合する軸部105の回転速度から算出された衝突の理論周期と一致したとき」に「ねじ締付装置1のモータ103を正回転に切り替える」ことと、前者の「1回目の検出時のナットランナの回転角θ1と、2回目の検出時のナットランナの回転角θ2の差分角θ2−θ1が、前記周期的衝突の理論角度周期と一致したとき」に「ナットランナを正回転に切り替える」こととは、「衝撃力の検出に基づき求めた周期が、前記周期的衝突の理論周期と一致したとき」に「ナットランナを正回転に切り替える」ことの限りで共通する。

したがって、本願発明5と引用発明2とは、次の一致点2で一致し、相違点2で相違する。
[一致点2]
「ナットランナによるねじの締付方法であって、雄ねじと雌ねじを軸線方向に突合わせて押圧した状態でナットランナをねじ締め方向とは反対方向に逆回転させ、当該逆回転による雄ねじと雌ねじのねじ切り口の周期的衝突により発生する衝撃力を振動センサで検出し、前記振動センサが前記衝撃力を少なくとも2回連続して検出したときであって、衝撃力の検出に基づき求めた周期が、前記周期的衝突の理論周期と一致したときに、ナットランナを正回転に切り替えるねじ締付方法。」

[相違点2]
「衝撃力の検出に基づき求めた周期が、前記周期的衝突の理論周期と一致したとき」に、「ナットランナを正回転に切り替える」ことに関し、本願発明5は「1回目の検出時のナットランナの回転角θ1と、2回目の検出時のナットランナの回転角θ2の差分角θ2−θ1が、前記周期的衝突の理論角度周期と一致したとき」に「ナットランナを正回転に切り替える」のに対し、引用発明2は「振動検出部108が検出した衝突の時間間隔と、モータ103により駆動される雄ねじ又は雌ねじの一方に係合する軸部105の回転速度から算出された衝突の理論周期と一致したとき」に「ねじ締付装置1のモータ103を正回転に切り替える」点。

(2)相違点2の検討
上記相違点2について検討する。

上記相違点2は、技術的に見て上記1(1)の相違点1と同様の内容であるから、上記1(2)で検討したことと同様の理由により、引用発明2に基づいて、上記相違点2に係る本願発明5の構成に想到することは、当業者が容易になし得たこととは認められず、それゆえ、本願発明5は、当業者であっても、引用発明2に基いて容易に発明できたものとはいえない。

5 本願発明6及び7について
原査定において引用された引用文献2には、差分角が理論角度周期と一致したとき正回転に切り替えることは記載も示唆もされていない。
そして、本願発明6及び7は、本願発明5を減縮したものであるから、本願発明5と同様の理由により、当業者であっても、引用発明2及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-12-27 
出願番号 P2019-103610
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B23P)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 中屋 裕一郎
特許庁審判官 尾崎 和寛
内田 博之
発明の名称 ナットランナおよびねじ締付方法  
代理人 田中 秀佳  
代理人 熊野 剛  
代理人 城村 邦彦  

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